IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ロベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミト ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧 ▶ ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアの特許一覧

特表2024-5460412次元量子コンピューティングシステムにおける量子制御演算
<>
  • 特表-2次元量子コンピューティングシステムにおける量子制御演算 図1A
  • 特表-2次元量子コンピューティングシステムにおける量子制御演算 図1B
  • 特表-2次元量子コンピューティングシステムにおける量子制御演算 図1C
  • 特表-2次元量子コンピューティングシステムにおける量子制御演算 図1D
  • 特表-2次元量子コンピューティングシステムにおける量子制御演算 図2
  • 特表-2次元量子コンピューティングシステムにおける量子制御演算 図3A
  • 特表-2次元量子コンピューティングシステムにおける量子制御演算 図3B
  • 特表-2次元量子コンピューティングシステムにおける量子制御演算 図4
  • 特表-2次元量子コンピューティングシステムにおける量子制御演算 図5
  • 特表-2次元量子コンピューティングシステムにおける量子制御演算 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-17
(54)【発明の名称】2次元量子コンピューティングシステムにおける量子制御演算
(51)【国際特許分類】
   G06N 10/40 20220101AFI20241210BHJP
   G06N 10/20 20220101ALI20241210BHJP
   G06F 7/38 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
G06N10/40
G06N10/20
G06F7/38 510
G06F7/38 610
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527871
(86)(22)【出願日】2022-11-11
(85)【翻訳文提出日】2024-06-27
(86)【国際出願番号】 EP2022081612
(87)【国際公開番号】W WO2023084016
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】21208080.8
(32)【優先日】2021-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524178067
【氏名又は名称】ロベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミト ベシュレンクテル ハフツング
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フォークト, ニコラス フランツ ウォルフガング
(57)【要約】
本開示の1つの態様は、量子コンピューティングシステムを構成する方法に関し、当該量子コンピューティングシステムは、2次元(2D)格子上に配置された複数の量子ビットを含む。本開示の方法は、複数の量子ビットのうちの第1の1つ以上の量子ビットの選択を受信することを含み、第1の1つ以上の量子ビットは、所定の情報内容に初期化されるように構成される。本開示の方法は、複数の量子ビットのうちの第2の複数の量子ビットの選択を受信することをさらに含み、第2の複数の量子ビットのうちの1つ以上の量子ビットは、第1の1つ以上の量子ビットのうちのそれぞれ少なくとも1つの量子ビットに隣接し、かつ所定の情報内容を第1の1つ以上の量子ビットのうちのそれぞれ少なくとも1つの量子ビットから受信するように構成される。第1の態様の方法は、複数の量子計算操作を実行するように構成された複数の量子ビットのうちの第3の複数の量子ビットの選択を受信することをさらに含む。第1の態様の方法では、第3の複数の量子ビットの各量子ビットに対する複数の量子計算操作のうちの量子計算操作は、第1の1つ以上の量子ビットのうちのそれぞれ少なくとも1つの量子ビットからの所定の情報内容を使用して制御される。第1の態様の方法では、第2の複数の量子ビットのうちのいくつかの量子ビットからの各量子ビットは、第3の複数の量子ビットの少なくとも1つの量子ビットに隣接し、第2の複数の量子ビットのうちの前記いくつかの量子ビットからのそれぞれの量子ビットに隣接する第3の複数の量子ビットの各量子ビットは、前記それぞれの量子ビットから所定の情報内容を受信するように構成される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子コンピューティングシステムを構成する方法であって、前記量子コンピューティングシステムは、2次元(2D)格子上に配置された複数の量子ビットを備え、
前記複数の量子ビットのうちの第1の1つ以上の量子ビット(15;1a~1c)の選択を受信すること(100)であって、
前記第1の1つ以上の量子ビットは、所定の情報内容に初期化されるように構成されていることと、
前記複数の量子ビットのうちの第2の複数の量子ビット(16;2a~2c)の選択を受信すること(200)であって、
前記第2の複数の量子ビットのうちの1つ以上の量子ビット(2a;2c)は、前記第1の1つ以上の量子ビットのうちのそれぞれ少なくとも1つの量子ビット(1a;1c)に隣接し、かつ前記所定の情報内容を前記第1の1つ以上の量子ビットの前記それぞれ少なくとも1つの量子ビットから受信するように構成されていることと、
複数の量子計算操作を実行するように構成された前記複数の量子ビットのうちの第3の複数の量子ビット(17;3a~3c)の選択を受信すること(300)であって、
前記第3の複数の量子ビットの各量子ビットに対する前記複数の量子計算操作のうちの量子計算操作は、前記第1の1つ以上の量子ビットの前記それぞれ少なくとも1つの量子ビットからの前記所定の情報内容を使用して制御され、
前記第2の複数の量子ビットのうちのいくつかの量子ビットからの各量子ビット(2a)は、前記第3の複数の量子ビットの少なくとも1つの量子ビット(3a)に隣接しており、かつ
前記第2の複数の量子ビットのうちの前記いくつかの量子ビットからの各量子ビット(2a)に隣接している前記第3の複数の量子ビットの各量子ビット(3a)は、前記所定の情報内容を前記それぞれの量子ビットから受信するように構成されていることとを含む、方法。
【請求項2】
前記方法は、請求項1に記載の選択を受信するステップを実行した後で、
前記第1の1つ以上の量子ビットの前記それぞれ少なくとも1つの量子ビットを前記所定の情報内容に初期化すること(400)と、
前記第1の1つ以上の量子ビットの前記それぞれ少なくとも1つの量子ビットの前記所定の情報内容を、前記第1の1つ以上の量子ビットの前記それぞれ少なくとも1つの量子ビットに隣接する前記第2の複数の量子ビットのうちの前記1つ以上の量子ビットに送信すること(500)と、
前記第2の複数の量子ビットのうちの前記1つ以上の量子ビット(2a;2c)の前記所定の情報内容を、前記第2の複数の量子ビットのそれぞれ他の量子ビット(2b)に送信すること(600)であって、前記第2の複数の量子ビットの前記それぞれ他の量子ビットは、前記所定の情報内容を前記第2の複数の量子ビットのうちの前記1つ以上の量子ビット(2a;2c)から受信するように構成されることと、
前記第2の複数の量子ビットのうちの前記いくつかの量子ビットのうちの1つ以上の量子ビット(2a)の前記所定の情報内容を、前記第3の複数の量子ビットのそれぞれの隣接する1つ以上の量子ビット(3a)に送信すること(700)と、
前記第3の複数の量子ビットのうちの前記1つ以上の量子ビット(3a~3c)に対して複数の量子計算操作を実行すること(800)であって、前記1つ以上の量子ビットに対する前記複数の量子計算操作は、前記第3の複数の量子ビットのうちの前記1つ以上の量子ビットに送信された前記所定の情報内容を使用して制御されることと
を含む、量子コンピューティングシステムを制御することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1、第2及び第3の複数の量子ビットは、前記2次元格子上に対応する数のチェーンを形成し、
前記第1の1つ以上の量子ビットは、量子ビットの1つ以上のチェーンを備える第1の方向に延在し、
前記第2の複数の量子ビットは、前記第1の方向とは異なる第2の方向に延在し、
前記第2の複数の量子ビットは、量子ビットの2つ以上の非連結チェーンを備え、
前記第3の複数の量子ビットは、量子ビットの複数の連結チェーンを備え、
前記第3の複数の量子ビットの前記複数の連結チェーンの各チェーンは、前記第1及び第2の方向のいずれかに延在している、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の1つ以上の量子ビットの前記所定の情報内容は、前記1つ以上の量子ビットの量子状態(|ψ〉)に関する情報を含み、前記量子状態は、以下のうちの1つ、すなわち、
前記所定の情報内容が前記第1の1つ以上の量子ビットの単一量子ビットに関連する場合の、単一量子ビットの量子状態であって、
前記第1の1つ以上の量子ビットの前記単一量子ビットの前記量子状態は、第0の量子状態(|0〉)、第1の量子状態(|1〉)、又は前記第0の量子状態と前記第1の量子状態の線形重ね合わせ(α|0〉+β|1〉)であり得る状態と、
前記所定の情報内容が前記第1の1つ以上の量子ビットのうちの少なくとも2つの量子ビットに関する場合の、複数量子ビットの量子状態であって、
前記複数量子ビットの量子状態は、前記第1の1つ以上の量子ビットの前記少なくとも2つの量子ビットの各単一量子ビット量子状態のテンソル積を伴うテンソル積状態(
【数15】
)、又は絡み合い状態(
【数16】
)である状態と
のうちの1つである、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の1つ以上の量子ビットの前記それぞれ少なくとも1つの量子ビットを前記量子状態に初期化すること(410)と、
前記第1の1つ以上の量子ビットの前記それぞれ少なくとも1つの量子ビットのうちの1つの量子ビットの前記量子状態に関する情報を、前記1つの量子ビットから、前記第2の複数の量子ビットの前記2つ以上の非連結チェーンのうちの対応するチェーンの1つの量子ビットに送信すること(510)であって、
前記単一量子ビットは、前記第1の1つ以上の量子ビットの前記それぞれ少なくとも1つの量子ビットの前記1つの量子ビットに隣接していることと、
前記量子状態に関する情報を、前記第2の複数の量子ビットの前記2つ以上の非連結チェーンの前記対応するチェーンの前記単一量子ビットから、前記チェーンのそれぞれの隣接量子ビットに送信すること(610)と、
前記情報を、前記チェーンの前記それぞれの隣接量子ビットから、前記それぞれの隣接量子ビットに対して隣接している前記チェーンの次の量子ビットに繰り返し送信すること(620)であって、前記チェーンの前記次の量子ビットは、次の繰返しのための前記それぞれの隣接量子ビットであると見なされ、
オプションとして、前記第2の複数の量子ビットの前記2つ以上の非連結チェーンの前記対応するチェーン内の前記情報を繰り返し送信することは、前記情報が前記2つ以上の非連結チェーンの前記対応するチェーン内のいくつかの量子ビットに送信されるまで実行されることと
をさらに含む、請求項3及び4に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の複数の量子ビットの前記2つ以上の非連結チェーンの前記対応するチェーン内の1つ以上の量子ビットを前記第0の量子状態(|0〉)に初期化することと、
請求項5に記載の前記送信ステップ(510、610、620)を実行するために、前記2つ以上の非連結チェーンのそれぞれの隣接量子ビット間で、いくつかの連続する制御されたNOT(CNOT)演算(10)を使用することであって、オプションとして、前記いくつかの連続するCNOT演算からの1つ以上のCNOT演算は、それぞれの量子CNOTゲートによって実行されることと
をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、前記第2の複数の量子ビットの前記それぞれ1つ以上の量子ビットが前記所定の情報内容を送信した送信先である、前記第3の複数の量子ビットのうちの前記1つ以上の量子ビット(3a~3c)に対して前記複数の量子計算操作のうちの1つ以上の量子計算操作を実行した後で、前記第2の複数の量子ビットの前記それぞれ1つ以上の量子ビットを前記第0の量子状態(|0〉)にリセットすること(630)をさらに含み、オプションとして、前記リセットすること(630)は、前記2つ以上の非連結チェーンのそれぞれの隣接量子ビットの間にいくつかの連続するCNOT演算(10)を適用することを含む、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の1つ以上の量子ビットのうちのそれぞれ少なくとも2つの量子ビットを前記量子状態に初期化すること(415)と、
前記第1の1つ以上の量子ビットの前記それぞれ少なくとも2つの量子ビットの量子状態に関する情報を、前記量子ビットから、前記第2の複数の量子ビットの前記2つ以上の非連結チェーンのうちの対応するチェーンの単一量子ビットに送信すること(515)であって、
前記単一量子ビットは、前記第1の1つ以上の量子ビットの前記それぞれ少なくとも2つの量子ビットのうちの1つ以上の量子ビットに隣接していることと、
前記量子状態に関する情報を、前記対応するチェーンの前記単一量子ビットから、前記第2の複数の量子ビットの前記チェーンのそれぞれの隣接量子ビットに送信すること(615)と、
前記情報を、前記チェーンの前記それぞれの隣接量子ビットから、前記それぞれの隣接量子ビットに対して隣接している前記チェーンの次の量子ビットに繰り返し送信すること(625)であって、前記チェーンの前記次の量子ビットは、次の繰り返しのために前記それぞれの隣接量子ビットであると見なされ、
オプションとして、前記情報が前記2つ以上の非連結チェーンの前記対応するチェーン内の複数の量子ビットに送信されるまで、前記第2の複数の量子ビットの前記2つ以上の非連結チェーンの前記対応するチェーン内の情報を繰り返し送信することと
をさらに含む、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項9】
前記方法は、前記所定の情報内容を、前記第2の複数の量子ビットからの隣接量子ビットが利用できない前記第3の複数の量子ビットの量子ビットに送信することをさらに含み、前記送信ステップが、
前記所定の情報内容を、前記第2の複数の量子ビットのうちの前記いくつかの量子ビットの前記1つ以上の量子ビットの量子ビットから、前記第3の複数の量子ビットの前記それぞれの隣接する1つ以上の量子ビットの量子ビットに、前記量子ビットにSWAP演算を適用することによって送信することと、
前記所定の情報内容を、前記第3の複数の量子ビットの前記それぞれの隣接する1つ以上の量子ビットの前記量子ビットから、前記第2の複数の量子ビットからの隣接量子ビットが利用できない前記第3の複数の量子ビットの前記量子ビットに、前記量子ビットの間に配置される前記第3の複数の量子ビットの隣接量子ビット間にいくつかの後続のSWAP演算を繰り返し適用することによって送信することであって、
前記いくつかの後続のSWAP演算を繰り返し適用することは、前記所定の情報が前記第2の複数の量子ビットからの隣接量子ビットが利用できない前記第3の複数の量子ビットの前記量子ビットに隣接している前記第3の複数の量子ビットの量子ビットに交換されるまで実行されることと、
前記所定の情報内容を、前記第2の複数の量子ビットの隣接量子ビットが利用できない前記第3の複数の量子ビットの前記量子ビットに隣接する前記第3の複数の量子ビットの前記量子ビットから、前記第2の複数の情報ビットからの隣接量子ビットが利用できない前記第3の複数の量子ビットの前記量子ビットに送信することであって、
前記第2の複数の量子ビットからの隣接量子ビットが利用できない前記第3の複数の量子ビットの前記量子ビットは、前記所定の情報内容を前記第3の複数の量子ビットの前記隣接量子ビットから受信するように構成されることと、
前記送信された所定の情報の制御下で前記第2の複数の量子ビットからの隣接量子ビットが利用できない前記第3の複数の量子ビットの前記量子ビットに対して複数の量子計算操作を実行することと
をさらに含む、請求項2乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記複数の量子計算操作を実行すること(800)は、前記第3の複数の量子ビットのそれぞれの量子ビットに適用された1つ以上の制御ユニタリ変換を実行すること(810)を含み、それによって前記それぞれの量子ビットの量子状態を変更し、前記それぞれの量子ビットに対する前記1つ以上のユニタリ変換は、前記それぞれの量子ビットに送信された前記所定の情報内容を使用して制御され、
オプションとして、前記第3の複数の量子ビットのそれぞれの量子ビットに対して前記1つ以上の制御ユニタリ変換を実行することは、前記それぞれの量子ビットに適用された制御された回転変換(Ra(θ);70)を実行すること(820)を含み、前記回転変換は、所定の軸(a)を中心とした所定の回転角度(θ)によって定義される、請求項1乃至9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記それぞれの量子ビットに適用される前記制御された回転変換(Ra(θ);70)を実行すること(820)は、
基底回転変換(Va,z)を前記それぞれの量子ビットに適用すること(830)であって、前記基底回転変換は、前記それぞれの量子ビットの回転軸(z)を中心として所定の軸(a)を回転させることに相当することと、
前記回転軸(z)を中心とした前記回転変換(Rz(θ/n))を前記それぞれの量子ビットに適用すること(840)であって、前記回転変換は、前記回転軸(z)を中心とした前記所定の回転角度の分数(θ/n)として定義されることと、
CNOT演算(10)を、前記それぞれの量子ビットと、前記それぞれの量子ビットに対して前記1つ以上のユニタリ変換を制御するために使用される前記それぞれの量子ビットに隣接する前記1つ以上の量子ビットからの量子ビットとに適用すること(850)と、
前記回転軸(z)を中心とした逆回転変換((Rz(-θ/n);95)を前記それぞれの量子ビットに適用すること(860)であって、前記逆回転変換は、前記回転軸(z)を中心とした前記所定の回転角度の前記分数(θ/n)として定義されることと、
CNOT演算(10)を、前記それぞれの量子ビットと、前記それぞれの量子ビットに対して前記1つ以上のユニタリ変換を制御するために使用される前記それぞれの量子ビットに隣接する前記1つ以上の量子ビットからの前記量子ビットとに適用すること(870)と、
前記それぞれの量子ビットに対して前記1つ以上のユニタリ変換を制御するために使用される前記1つ以上の量子ビットからの量子ビットが、対応する量子状態にある場合は、前記回転軸(z)を中心とした前記回転変換(Rz(θ/n))と、前記それぞれの量子ビット及び前記1つ以上の量子ビットからの前記量子ビットへの前記CNOT演算と、前記回転軸(z)を中心とした前記逆回転変換(Rz(-θ/n))と、前記それぞれの量子ビット及び前記1つ以上の量子ビットからの前記量子ビットへの前記CNOT演算との組み合わせを、回転とCNOT演算の前記組み合わせを使用した後で結果として得られた回転が、前記所定の回転角度(θ)だけ前記回転軸(z)を中心とした前記回転変換(Rz(θ/n))を適用することに相当するまで繰り返し適用すること(880)と、
前記それぞれの量子ビットに逆基底回転変換
【数17】
を適用すること(890)であって、前記逆基底回転変換は、前記それぞれの量子ビットの前記回転軸(z)の回転を前記所定の軸(a)に戻すことに相当し、
オプションとして、前記回転軸(z)を中心とした前記所定の回転角度の分数(θ/n)は、2mで除算された前記所定の回転角度として定義され、ここで、mは任意の整数であり、前記回転とCNOT演算の組み合わせは、前記それぞれの量子ビットと、前記1つ以上の量子ビットからの前記量子ビットとに2m回繰り返し適用されることと
を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記方法が、量子計算タスクを実行することをさらに含み、前記量子計算タスクは、前記第3の複数の量子ビットのうちの前記1つ以上の量子ビットに対して実行される前記複数の量子計算操作を含む、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の前記方法。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれかに一項に記載の前記方法のステップによって構成された量子コンピューティングシステム(1000)。
【請求項14】
制御された量子計算操作を実行するように構成され、請求項2乃至12のいずれか一項に記載の前記方法のステップを実行するように適合された、量子コンピューティングシステム(1000)。
【請求項15】
量子コンピューティングシステム(1000)を備えるリモートコンピューティングシステムであって、
請求項12に記載の前記方法に従った複数の量子計算操作を含む量子計算タスクの実行であり、
前記複数の量子計算操作は、請求項2乃至12のいずれか一項に記載の前記方法のステップに従って制御される、前記量子計算タスクの実行と、
コンピュータ実装システムへの前記計算タスクの結果の送信と
を行うように適合されている、リモートコンピューティングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、量子コンピューティングシステムを制御する方法に関する。関連する態様は、量子コンピューティングシステム及びリモートコンピューティングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
化学、生物学、固体物理学、暗号システムを扱う問題など、実世界の様々な問題を解決するために、様々な物理システムにおける量子計算の実施に対する関心が高まっている(例えば、E. Grumbling and M. Horowitz, “Quantum computing: Progress and Prospects” Washington, DC: The National Academies Press, 2019; https: //doi.org/10.17226/25196を参照)。目標は、従来のコンピュータと比較して計算を高速化したり、従来のアルゴリズムに基づいて古典的な計算を実行するスーパーコンピュータでも解決できない種類の問題を解決したりすることである。実際の量子システムをモデル化するために使用される量子コンピュータ(例えば、量子シミュレータ)で使用するための多くの既知の量子アルゴリズムでは、量子計算が実行される量子コンピュータのハードウェア上に(例えば、チップ上に)実装される量子ビットのサブセット(すなわち、量子状態)に制御ユニタリ変換を適用する必要がある。ここで、ユニタリ変換の制御は、古典的な値が、変換を適用するか否かを制御する古典的制御ではなく、ユニタリ変換が量子システムの状態に応じて適用され、それによって量子絡み合いを生じる量子制御である。このような制御ユニタリ変換を必要とするアルゴリズムの例として、量子位相推定アルゴリズムがある。
【0003】
重要なことには、量子コンピュータの物理的実現の可能性は、当該物理的実現を環境と結合することに関連する量子デコヒーレンスの影響を受けやすい。しかし、量子計算を制御するための既知の従来技術のいくつかは時間がかかり、その結果、量子ビットは、量子計算タスクを完了するために必要な時間間隔よりも短い時間間隔でコヒーレンスを失い得る。従って、量子コンピューティングシステムを制御するための新しい効率的な技術を開発する必要がある。
【発明の概要】
【0004】
本開示の第1の態様は、量子コンピューティングシステムを構成する方法に関し、当該量子コンピューティングシステムは、2次元(2D)格子上に配置された複数の量子ビットを含む。本開示の方法は、前記複数の量子ビットのうちの第1の1つ以上の量子ビットの選択を受信することを含み、前記第1の1つ以上の量子ビットは、所定の情報内容に初期化されるように構成される。前記方法は、前記複数の量子ビットのうちの第2の複数の量子ビットの選択を受信することをさらに含み、前記第2の複数の量子ビットのうちの1つ以上の量子ビットは、前記第1の1つ以上の量子ビットのうちのそれぞれ少なくとも1つの量子ビットに隣接し、かつ前記第1の1つ以上の量子ビットの前記それぞれ少なくとも1つの量子ビットから前記所定の情報内容を受信するように構成される。前記第1の態様の方法は、複数の量子計算操作を実行するように構成された前記複数の量子ビットのうちの第3の複数の量子ビットの選択を受信することをさらに含む。第1の態様の方法では、第3の複数の量子ビットの各量子ビットに対する複数の量子計算操作のうちの量子計算操作は、前記第1の1つ以上の量子ビットの前記それぞれ少なくとも1つの量子ビットからの前記所定の情報内容を使用して制御される。第1の態様の方法では、前記第2の複数の量子ビットのうちのいくつかの量子ビットからの各量子ビットは、前記第3の複数の量子ビットの少なくとも1つの量子ビットに隣接し、かつ前記第2の複数の量子ビットのうちの前記いくつかの量子ビットからのそれぞれの量子ビットに隣接する前記第3の複数の量子ビットの各量子ビットは、前記それぞれの量子ビットから前記所定の情報内容を受信するように構成される。
【0005】
第2の態様は、第1の態様に係る技術のステップのいずれかに従って構成された量子コンピューティングシステムを提供する。
【0006】
第3の態様は、制御された量子計算操作を実行する量子コンピューティングシステムを提供し、かつ第1の態様に係る技術のステップのいずれかを実行するようになされている。
【0007】
本開示の第4の一般的な態様は、量子コンピューティングシステムを備え、かつ量子計算タスクを実行するように構成されたリモートコンピューティングシステムに関し、前記量子計算タスクは、第1の態様に従ってそれぞれの量子ビットに対して実行される複数の量子計算操作を含むことができる。第4の態様の前記複数の量子計算操作は、第1の態様の方法ステップのいずれかに従って制御することができる。第4の態様のリモートコンピューティングシステムは、前記計算タスクの結果をコンピュータ実装システムに送信するようにさらに構成される。
【0008】
第1乃至第4の態様の技術は、有利な技術的効果を有し得る。
第1に、本開示の手法は、2次元格子に配置された量子ビットを有するハードウェアアーキテクチャ(例えば、1つ以上のチップ)を備える量子コンピューティングシステム上で制御された量子計算操作を実行することを含み、いくつかの従来技術と比較して前記制御に必要な操作の数が減少する。場合によっては、量子ビットに対して制御された操作を実行するために必要な量子ビット間のSWAP演算の数は、いくつかの従来技術と比較して、量子ビットの数Nと共によりゆっくりと増加する。例えば、本発明では、量子ビットに対する計算操作を制御するために使用されるアンシラ量子ビットの量子状態を送信することは、量子ビットの数と共にN1/2としてスケーリングされた1回限りの操作を必要とする場合があるが、一方、いくつかの従来技術では、量子計算中の異なる瞬間に実行される量子ビットに対する各制御操作に対して、前記量子状態の送信を実行する必要がある。さらに、量子計算タスクを達成するために必要ないくつかの量子ゲートは、本技術の量子ビット構成を使用することによって減少させることができ、その結果、量子コンピューティングシステムで発生する総デコヒーレンス又は不正確さが減少する。すなわち、各量子ゲートは、量子ゲートの物理的実現がユーザ指定の論理ゲート操作と一致しない可能性があるという事実に関連するデコヒーレンス及び/又は不正確さの潜在的な源である可能性がある(この問題はゲート不忠実度と呼ばれる) 。従って、それぞれの量子ビットに対して制御された計算操作を実行するために必要な2次元格子の量子ビットに対する操作の総数を減らすことによる利点は、上述の2つの要因をまとめて考慮すると、いくつかの従来技術と比較してより重要になる。
【0009】
第2に、本開示の技術は、制御された量子計算操作を並列に行うことを可能にするが、これは、いくつかの従来技術では不可能である。これは、制御された量子計算操作のさらなる高速化を提供することができ、量子計算タスクの実行時間全体を通して量子ビット間のコヒーレンスの保存をもたらし得る。
【0010】
いくつかの用語は、本明細書において以下のように使用される。
「量子ビット」(又は量子ビット)という用語は、(少なくとも)2つの量子状態又はこれらの量子状態の重ね合わせを有する量子力学システムに言及し得るが、これは、短く2レベルシステムとも呼ばれる。2レベルシステムは、量子情報を符号化して取得され得る量子情報を担持する基本単位である。例えば、2つのエネルギー準位及び対応するスピンアップ状態とスピンダウン状態を有する磁場内の電子のスピンは、量子ビットの物理的実現である。別の物理的実現では、2つの直交偏光を2つの量子ビット状態と見なされ得る1つの光子の偏光を扱う。場合によっては、2つの量子状態が2つの異なるエネルギー準位に、例えば、量子ビットの物理的実現として機能する物理システムの非調和エネルギースペクトル(又は言い換えると、エネルギー準位の非調和ラダーにおける選択された2つのエネルギー準位(これは、例えば超伝導量子ビットの場合の可能性がある)に関連付けられ得る。他の場合では、2つの量子状態は、2つの縮退エネルギー準位に関連付けられ得る(すなわち、それらは同じエネルギー値を共有する)が、これは、光子量子コンピュータの場合である可能性がある。単一量子ビットの量子状態は、2次元複素空間のベクトルとして表現できる波動関数によって記述することができ、その量子状態の変化(例えば、量子ビット状態の時間発展のために、かつ/又は量子ゲート操作の適用結果として)は、ブロッホ球上に可視化され得る(例えば、M. A. Nielsen and I. L. Chuang, “Quantum Computation and Quantum information”: 10th Anniversary Edition, Cambridge University Press, 2010を参照)。量子コンピューティングは、その複数量子ビットの量子状態が操作かつ変更され得るように、複数量子ビットに対する量子計算操作を含み得る(以下の説明も参照)。場合によっては、複数量子ビットの各量子ビットを互いに独立して扱うことができるが、その場合、複数量子ビットの量子状態は、分離可能な量子状態として記述してよく、つまり、各単一量子ビット状態のテンソル積として表すことができる(かつ、最終的には、個々の量子ビットの量子状態の対応する重ね合わせとして表すことができる)。その他の場合、複数量子ビットからの少なくとも2つの量子ビットを互いに独立して扱うことができない(もしくは言い換えると、互いに分離して記述することができない)場合は、複数量子ビットの量子状態は、個々の量子ビット状態のテンソル積に関して表すことができない絡み合い状態を表す(両方の状況をより詳細に説明している以下の説明も参照)。
【0011】
量子コンピューティングの文脈で量子ビットとして(すなわち、2レベルシステムとして)使用できるシステムのいくつかの物理的実現がある。本開示の量子ビットは、特定の物理的実現に限定されない。このような物理的実現の例は、共振器QED(cQED)に基づく量子コンピュータであり、ここでは、量子ビットは、高フィネス共振器に結合されたトラップ原子の内部状態によって提供される。回路量子電気力学を使用した量子コンピューティングの一例は、マイクロ波空洞 (量子バスと呼ばれる)に結合され、かつマイクロ波領域で放射する超伝導量子ビットに基づく超伝導量子コンピューティングであり、その量子状態は、ナノ加工ジョセフソン接合を横断する磁束、電荷、又は位相差を制御するために、電磁パルスによって操作される(例えば、https: //doi.org/10.1038/nature07128を参照)。別の例は、それぞれのホスト格子(例えば、純シリコン格子)に埋め込まれたドナー原子(例えば、リンドナー原子)の核スピン状態として実現される量子ビットを用いた固体核磁気共鳴(NMR)ケーン量子コンピュータに関する。他のいくつかの例では、量子ビットが、光格子(例えば、リュードベリ相互作用を介して相互作用する)にトラップされた中性原子(例えば、リュードベリ原子)の内部状態によって実現される場合は、量子コンピュータの物理的実現は光格子内の中性原子に基づき得る(例えば、https: //doi.org/10.1088/0953-4075/49/20/202001を参照)。さらに他の例では、量子コンピュータは、量子ドットコンピュータであることができ、ここで、量子ビットは、捕捉電子のそれぞれのスピン状態によって与えられる。
【0012】
「量子計算操作」という用語と、「量子計算」という関連用語は、それらの量子状態を変更可能な量子ビットの操作に言及し得る。1つ又は複数の量子ビットに対する量子計算操作は、量子ビットの量子状態を操作する量子ゲートによって、言い換えると、それらが保持する量子情報を用いて実行することができる。以下でさらに開示するように、単一量子ビットは、単一量子ビットの量子状態(例えば、基底状態、励起状態、又は両方の重ね合わせ)を形成し得る。場合によっては、複数の量子ビットは、テンソル積状態又は絡み合い状態にあることができる複数量子ビットの量子状態を形成することができる(詳細については下記の説明を参照)。量子ゲートは、散逸がない場合に量子ビットの波動関数のノルム保存を確保するユニタリ演算子U(例えば、それぞれのユニタリ行列によって表される)によって表されるが、これにより、そのエルミート共役によるこの演算子の積は恒等演算子UU=Iと等しくなり、ここで、†はエルミート共役のために保持され、Iは恒等演算子である。従って、量子ゲートは、量子ビットに対してユニタリ変換を実行するように構成される、すなわち、量子ゲートを表す前記ユニタリ演算子は、量子ビットの量子状態に対してユニタリ変換を実行する(以下の説明も参照)。アダマールゲートH、位相ゲートS、π/8ゲート、及びパウリX、Y、Zゲートは、上記のように量子ビットに対する作用を、ブロッホ球上で視覚化できる単一量子ビットゲートの例である(例えば、上記のM. A. NielsenとI. L. Chuangの書籍を参照)。1つ以上の量子ビットに対する任意の量子計算は、量子計算では普遍的と言われる量子ビットゲートの有限集合によって生成することができる。この場合、量子ビットに対するこの量子計算を表すユニタリ演算は、この有限集合からのゲートを備える量子回路によって実行される一連の操作に分解することができる。任意のユニタリ演算(例えば、任意の複数量子ビットの論理ゲートに対して実行されるユニタリ演算)は、2量子ビットの制御NOT(CNOT)ゲート及びそれに対応する数の単一量子ビットゲート、つまり、考慮中のユニタリ演算を特徴付けるいくつかの自由パラメーターを有する単一量子ビット回転から構成され得る。例えば、任意のユニタリ演算は、ユニバーサル量子ゲートとも呼ばれるアダマールゲート、位相ゲート、CNOTゲート、及びπ/8ゲートによって(所定の精度に)近似され得る(例えば、M. A. Nielsen and I. L. Chuang, “Quantum Computation and Quantum information”: 10th Anniversary Edition, Cambridge University Press, 2010を参照)。例えば、超伝導量子ビットの文脈では、レベル間のエネルギー分離と共振する周波数で量子ビットに結合された伝送線に送信されるマイクロ波パルスによって誘導される単一超伝導量子ビットの2つのエネルギー準位間の回転によって、単一量子ビットゲートを実現することができる。さらに、2量子ビットゲートは、例えば、マイクロ波空洞又は中間電気結合回路を介して2つの超伝導量子ビットを結合することによって実現することができる(例えば、https: //doi.org/10.1038/nature02851を参照)。中性原子量子コンピューティングの文脈では、2量子ビットゲートは、2ゲート操作を実行するのに十分に強い中性原子間の制御可能なリュードベリ相互作用を使用して実現することができる(例えば、https: //doi.org/10.1103/PhysRevX.10.021054を参照)。
【0013】
本明細書で使用される量子ビットに適用される「ユニタリ変換」という用語は、本開示では広く解釈されるべきであり、かつ前記量子ビットに作用するユニタリ演算によって引き起こされる量子ビットの量子状態のユニタリ変換に言及され得るが、これは、量子状態に作用するユニタリ演算子によって定義することができる。例えば、異なる1つ又は複数の量子ゲート(それぞれのユニタリ演算子によって表される)を量子ビットに適用する操作などの量子計算操作は、量子ビットの量子状態のユニタリ変換につながる可能性がある。その他の場合は、量子ビットの量子状態は、量子ビットのハミルトニアン(例えば、cQEDのジェインズ・カミングス・ハミルトニアン)に従ってユニタリ発展することができるが、これは、外部制御フィールド(例えば、磁場)との相互作用、並びにホスト格子又は空洞(例えば、超伝導量子コンピューティングの文脈における量子バス)との量子ビットの結合、及びそれらの可能な相互作用(例えば、リュードベリ原子の文脈における双極子間相互作用)を決定するエルミート演算子である。量子コンピューティング中に発生する量子ビットの量子状態のこのユニタリ時間発展(ユニタリ時間発展演算子によって表される)は、本明細書では「ユニタリ変換」とも呼ばれる。上記の説明のとおり、単一量子ビット回転は、ユニタリ変換の具体的事例である。
【0014】
量子ビット(例えば、2次元格子上に配置された)に関する「隣接性」という用語(又は「隣接する」という属性)は、本開示では広く解釈する必要があり、これにより、これら2つの量子ビットのいずれかの量子ビットと第3の量子ビットとの間に1つ以上の個別の量子ゲートを必要とせずに、2つの量子ビットに作用するユニバーサル量子ゲートを実現できる場合は、2つの量子ビットは隣接しているとして分類してよい。例えば、量子コンピュータが、第3の量子ビットを伴わずに2つの量子ビットに作用するユニバーサルゲートセットに関連するすべてのユニタリ演算を提供する場合、又はこれらがハードウェア上で物理的に結合されている場合、又は2つの量子ビットに作用するハードウェアネイティブの2量子ビットゲートが、2つの量子ビットの各個別の量子ビットと第3の量子ビットとの間に個別の量子ゲートを必要とせずに実現し得る場合などである。いくつかの例では、量子ビットは、例えば、それらが同じ又は異なる種類の量子ビット内で最隣接量子ビットである場合に(例えば、ある種類は制御量子ビットを表し、他の種類は量子計算操作が実行されるシステム量子ビットを表し得る)、又は考慮中の量子ビット間の距離が所定の特性距離以下である場合に、これらの量子ビットは隣接していると分類してよい(以下の説明も参照)。量子ビットの空間的な分離は、例えば双極子間相互作用を介して互いに直接相互作用する場合に決定的な要因となることがあるが、例えば、光学的にトラップされたリュードベリ原子の双極子間相互作用に当てはまる(例えば、https: //doi.org/10.1088/0953-4075/49/20/202001を参照)。他の例では、量子ビット間の空間距離が関連要因ではない場合があり、又は少なくとも量子ビットの隣接性を決定する関連要因だけではない場合もある。例えば、半導体量子ビットは、これらの量子ビットが結合されている量子バスを介して相互に結合でき、これにより、これらの量子ビットの磁束制御によって量子ビット結合を調整することができ、かつその空間的な分離が決定的な要因ではない場合もある。例えば、2量子ビットゲートがこれら2つの量子ビットに基づいて(第3の量子ビットを伴わずに)実現し得るか、又はこれら2つの量子ビットが絡み合い状態を形成し得るように、量子ビット結合が所定の臨界値を超える場合は、前記量子ビットは隣接量子ビットと見なしてよい。この場合、これらの空間的な分離が決定的な要因ではないかもしれない。他のいくつかの例では、超伝導量子ビットの量子ビット間結合は、これらを中間電気結合回路に接続することによって調整し得る(例えば、https: //doi.org/10.1038/s41586-019-1666-5を参照)。
【0015】
「アンシラ量子ビット」という用語と「補助アンシラ量子ビット」という用語は、「システム量子ビット」上の量子計算操作及び結果として生じるユニタリ変換を制御するために使用される量子ビットを指す。従って、アンシラ量子ビットによって制御されるユニタリ変換は、本明細書では制御ユニタリ変換という。「アンシラ量子ビット」は、所定の情報内容(例えば、それらが初期化されてなる絡み合い状態などの既知の量子状態)を含んでよく、かつこの情報を補助アンシラ量子ビットに送信してよい。いくつかの「アンシラ量子ビット」は、例えば量子計算中に、別の所定の情報内容を含むように再初期化されてよい。
【0016】
本明細書では、同じ又は異なる種類の量子ビット内の量子ビット間で「所定の情報内容を送信すること」は、広く解釈されるべきである。場合によっては、2つの隣接量子ビット間で所定の情報内容を送信することは、例えば、1つ以上の2量子ビットゲート、又はいくつかの例では前記2量子ビットゲートに加えて1つ以上の単一又は複数量子ビットゲートを使用して、ユニタリ変換を前記量子ビットに適用することを含んでよい。留意すべき点として、ユニタリ変換を伴う2つの隣接量子ビット間で「所定の情報内容を送信すること」は、これらの量子ビット間の直接的な(物理的な)相互作用、及び/又は例えば、ホスト格子/量子バス(上記の意味で)を介したこれらの量子ビットの相互作用を含んでよい。本明細書のいくつかの例では、「所定の情報内容」は、前記離れた量子ビット間に配置された隣接量子ビット間に適用されるそれぞれのユニタリ変換を介して、離れた量子ビット間で送信されてよい(さらなる詳細については以下の説明を参照)。本技術において、2つの隣接量子ビット間で「所定の情報内容を送信すること」は、「所定の情報内容」の送信元である量子ビットによって、「所定の情報内容」が送信される先の量子ビットに対して実行される量子計算操作を制御することを含んでよい。場合によっては、「所定の情報内容」は、前記制御を提供するために、例えば、量子計算操作の途中で(例えば、時間の異なる瞬間に)1回以上送信されてよい(さらに以下の説明も参照)。さらに、「所定の情報内容」を1つの量子ビットから前述の意味で別の隣接量子ビットに送信することができる場合は、「所定の情報内容」が送信される先の量子ビットは、「所定の情報内容」を受信するように構成されていると言ってよい。
【0017】
本明細書で使用される「量子ビットのチェーン」という用語は、本開示においては、2次元格子の平面上の同じ種類の量子ビットの1次元(1D)空間配置(例えば、1次元曲線又は直線に沿って)を参照して、広く解釈されるべきである。場合によっては、ある種類の量子ビットは、1つ以上の方向に延在する量子ビットの1つ以上の連結チェーンを備えることができる。加えて又はあるいは、ある種類の量子ビットは、例えば、別の種類の量子ビットの1つ以上のチェーンによって中断される、1つ以上の方向に延在する量子ビットの1つ以上の非連結チェーンを備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A】第1の態様に係る量子コンピューティングシステムを制御する方法を示す流れ図である。
図1B】第1の態様に係るさらなる可能な方法ステップを示す流れ図である。
図1C】第1の態様に係るさらなる可能な方法ステップを示す流れ図である。
図1D】第1の態様に係るさらなる可能な方法ステップを示す流れ図である。
図2】2次元格子上に配置された量子ビットを用いた本技術の可能な量子コンピューティングシステム1000を概略的に示す。ユニタリ変換は、それぞれの補助アンシラ量子ビットの制御下で蛇行状に配置されたシステム量子ビット17に対して実行され、これは、システム量子ビットの蛇行に隣接する水平チェーンを形成する。アンシラ量子ビット15の所定の情報内容(例えば、それらの量子状態)は、この図に示すように補助アンシラ量子ビット16に送信される(すなわち、重複される)。アンシラ量子ビット15は、垂直チェーンを形成する。
図3A】現在の技術に係る量子ビットの配置で可能な2つのトポロジーを概略的に示す。(a)正方形セルの頂点に4量子ビットを有する複数の正方形セルを備える2次元格子。それ以外の場合は、量子ビットの配置は、図2に示されているものと同様である。
図3B】現在の技術に係る量子ビットの配置で可能な2つのトポロジーを概略的に示す。図3Aに示されている正方形セルに対して(シート面に垂直な軸を中心として)45°回転した複数の正方形セルを備える2次元格子。黒丸及び白丸による量子ビットの表現は、正方形セルの認識を容易にするために使用される。アンシラ量子ビット15は、垂直方向の直線チェーン(a)又はジグザグチェーン(b)を形成し、一方、補助アンシラ量子ビット16の2本の直線チェーン(a)又はジグザグチェーン(b)は水平方向に配置されている。システム量子ビットは、水平方向及び垂直方向の両方に配置された直線チェーン(a)又はジグザグチェーン(b)を表す。(a)及び(b)における破線は、それぞれの隣接量子ビット間で所定の情報内容を送信することが可能であることを示す。
図4】アンシラ量子ビットの所定の情報内容を、一連の制御NOT(CNOT)演算10を介してそれぞれの補助アンシラ量子ビットに送信するための量子回路の例を示す。システム量子ビットに対する量子計算操作(例えば、ユニタリ変換)Ucontrol;20は、補助アンシラ量子ビットの制御下で実行され、これは、所定の情報内容をそれぞれのシステム量子ビットに送信する(この処理は、この図のブロック「Ucontrol」に入る垂直線によって概略的に示される)。これらの補助アンシラ量子ビットの量子状態は、一連のCNOT演算によって制御ユニタリ変換を達成した後でリセットされる。
図5】2つのアンシラ量子ビットを使用して、システム量子ビット(この図示されていない)に対してユニタリ変換を制御する別の可能な方法を示している。ここでは、両方のアンシラ量子ビットの所定の情報内容が考慮され、それぞれの補助アンシラ量子ビットに送信される。一例として、この操作は、この図に示すように配置された2つのアダマールゲートH;40と、1つの位相ゲートS;60と、6つのCNOTゲート10と、7つのπ/8ゲート;50とを備える量子回路によって表されるトフォリゲート30によって実行される。図中の演算子†は、対応する演算子Tのエルミート共役、例えばπ/8ゲートを表す行列に留まる。
図6】システム量子ビット17に対して実行される軸aを中心とした一般回転Ra(θ);70を制御するための量子回路を概略的に示す。本実施形態では、このような一般回転は、それぞれの量子ビットの回転軸zを中心とした回転変換RZ(θ/2);90、それぞれの逆回転変換RZ(-θ/2);95、2つの対応する基底回転変換Va,x;80、及び2つのCNOT演算10を行うように構成された量子回路によって実行される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
最初に、いくつかの可能な実施について説明する前に、量子コンピューティングシステムの制御に関するいくつかの一般的な態様について説明する。量子コンピューティングシステムの制御に関する本開示の第1の態様の概要を、図1A図1Dに示すフローチャートに関連して示す。次に、本技術に係る量子コンピューティングシステム上に配置された量子ビットを用いる例示的トポロジーを、図2図3A及び図3Bに示す。次に、所定の情報内容をアンシラ量子ビットから補助アンシラ量子ビットに送信するための量子回路の2つの例を、図4及び図5に示す。最後に、システム量子ビットに対して一般回転を制御するための例示的な量子回路を図6に示す。
【0020】
図1A図1Dは、本開示の第1の態様に係る量子コンピューティングシステムを構成する方法を開示し、かつ提案する。本開示の量子コンピューティングシステムは、2次元(2D)格子上に配置された複数の量子ビットを備える(例えば、2次元格子の様々な実施形態が概略的に示される図2図3A及び図3B、並びにさらなる説明を参照)。対応する独立項の方法ステップは、図1A図1Dの実線で描かれたボックス内に要約され、一方、従属項の方法ステップは、破線で描かれたボックス内に示される。
【0021】
量子コンピューティングシステムを構成するための本技術は、複数の量子ビットのうちの第1の1つ以上の量子ビット15;1a~1cの選択の受信100を含み、第1の1つ以上の量子ビットは、所定の情報内容に初期化されるように構成される。第1の1つ以上の量子ビットの量子ビットは、量子計算操作(例えば、1つ以上の量子ビットに対するユニタリ変換)を制御することを目的とすることができ、かつ本明細書ではアンシラ量子ビットと呼んでよい。図2図3A及び図3Bに示す2次元格子の例では、アンシラ量子ビット1a~1cは、直線(図2図3Aに示すように、図3Aの5つのアンシラ量子ビットを有する)かつ垂直方向のジグザグ線(図3Bに示されているように、その中の5つのアンシラ量子ビットを有する)に沿って整列される。いくつかの例では、第1の1つ以上の量子ビットは、所定の情報内容を含む2つ以上、3つ以上、5つ以上、又は10以上の量子ビット(すなわち、上で定義したアンシラ量子ビット)を含んでよい。本明細書では、以下でより詳細に説明するように、アンシラ量子ビットの所定の情報内容は、その量子状態、例えば、前記アンシラ量子ビットが準備された(例えば、量子計算操作の一部の前又は最中に)既知の量子状態についての情報を含むことができる。
【0022】
本技術の次のステップは、複数の量子ビットのうちの第2の複数の量子ビット16;2a~2cの選択を受信すること200を含むことができ、第2の複数の量子ビットのうちの1つ以上の量子ビット2a;2cは、第1の1つ以上の量子ビットのうちのそれぞれ少なくとも1つの量子ビット1a;1cに隣接し、第1の1つ以上の量子ビットのうちのそれぞれ少なくとも1つの量子ビットから所定の情報内容を受信するように構成される(例えば、以下で詳細に説明する図4及び図5に関連して開示された量子コンピューティング回路によって)。いくつかの例では、以下でさらに詳細に明らかにされるように、第2の複数の量子ビットは、アンシラ量子ビットからの所定の情報内容(例えば、それらの量子状態)を、量子計算操作が前記アンシラ量子ビットの制御下で実行されなければならない量子ビット(例えば、アンシラ量子ビットに対して隣接していないシステム量子ビット)に送信することが要求される場合がある。従って、第2の複数の量子ビットの量子ビットは、本明細書全体を通して補助アンシラ量子ビットと呼んでよい。図2及び図3Aに示される2次元格子の例では、6つの補助アンシラ量子ビット2a~2cは、2つの対応する水平線に沿って整列された2つの非連結チェーンのメンバーであり、一方、図3Bの実施形態における4つの補助アンシラ量子ビット2a;2bは、水平方向にジグザグ線に沿って整列されている。いくつかの例では、第2の複数の量子ビット(すなわち、上述の定義による補助アンシラ量子ビット)は、2つ以上、3つ以上、5つ以上、又は10以上の量子ビットを含んでよい。図3A及び図3Bからもわかるように、補助アンシラ量子ビット2aはアンシラ量子ビット1aに対して最隣接しており、これにより、補助アンシラ量子ビット2aは、さらに上述の定義に従ってアンシラ量子ビット1aに対して隣接している量子ビットとして分類することができる。同じ理由で、図3Aの補助アンシラ量子ビット2cは、アンシラ量子ビット1cに隣接していると見なされ得る。よって、いくつかの例では、上述の補助アンシラ量子ビット2a及び2cは、それぞれアンシラ量子ビット1a及び1cから所定の情報内容を受信するように構成することができる。一方、図3Aの補助アンシラ量子ビット2bには隣接するアンシラ量子ビットがないが、なぜなら、前記補助アンシラ量子ビット2bとアンシラ量子ビットのチェーンとの間に別の補助アンシラ量子ビット2aがあるからである。同様に、場合によっては、隣接するアンシラ量子ビットを図3Bの補助アンシラ量子ビット2bに関連付けることはできないが、これは、前記補助アンシラ量子ビット2bから最も近いアンシラ量子ビット1aまでの距離が、例えば、この例では正方形セルのサイズである所定の特性距離を上回るからである。その他の場合、上述の定義に従って、量子ビット結合を増やすことができ(例えば、超伝導量子ビットの文脈における磁束制御又は付加的な電気回路を介して)、これにより、いくつかの例では2つの量子ビットが空間的に分離されているにもかかわらず、互いに隣接していると見なされ得る。従って、この場合は、量子ビット1a及び2bは隣接量子ビットとして分類することができる。
【0023】
本方法の次のステップは、複数の量子計算操作を実行するように構成された複数の量子ビットのうちの第3の複数の量子ビット17;3a~3cの選択を受信すること300を含むことができる。この場合、第3の複数の量子ビットの各量子ビットに対する複数の量子計算操作のうちの1つの量子計算操作(例えば、それぞれの量子ビットに対するユニタリ変換)は、第1の1つ以上の量子ビットのうちのそれぞれ少なくとも1つの量子ビットからの所定の情報内容を使用して(例えば、以下の図4及び図5の実施形態に関連して開示されるように、それぞれ1つ又は2つのアンシラ量子ビットの量子状態を使用して)制御することができる。量子計算操作が制御される第3の複数の量子ビットの量子ビットは、本開示では、システム量子ビットと呼んでよい。図2及び図3Aに示す2次元格子の例では、14個のシステム量子ビット3a;3b;3cは、第2の複数の量子ビット(すなわち、補助アンシラ量子ビット)に隣接する蛇行のメンバーであり、一方、図3Bの13個のシステム量子ビット3a;3b;3cは、第2の複数の量子ビットに隣接する蛇行のメンバーである。いくつかの例では、第3の複数の量子ビットは、2つ以上、3つ以上、5つ以上、又は10以上の量子ビット(すなわち、上述の定義によるシステム量子ビット)を含んでよい。場合によっては、第2の複数の量子ビット(すなわち、補助アンシラ量子ビット)の量子ビット総数Mは、第3の複数の量子ビットの量子ビット総数Nよりも小さくすることができる(M<N)。例えば、対応する比M/Nは、9/10以下、1/2以下、1/4以下、1/10以下の値であってもよい。
【0024】
本開示の技術では、第2の複数の量子ビットのうちのいくつかの量子ビットからの各量子ビット2a(すなわち、補助アンシラ量子ビット)は、第3の複数の量子ビットの少なくとも1つの量子ビット3a(すなわち、システム量子ビット)に隣接している。図3A及び図3Bの例では、可能な隣接する補助アンシラ量子ビットとシステム量子ビットは破線で指定されている。図3Aの例では、各補助アンシラ量子ビットはそれぞれのシステム量子ビットに隣接しており、一方、図3Bの例では、補助アンシラ量子ビットは、2つ又は3つのシステム量子ビットに隣接して存在している。いくつかの例では、第2の複数の量子ビットの各量子ビットは、第3の複数の量子ビットの少なくとも1つの量子ビットに隣接することができる(図3A及び図3Bに示す実施形態のように)。他の例では、第2の複数の量子ビットからの1つ以上の量子ビットには、第3の複数の量子ビットからの隣接量子ビットがない場合がある。例えば、1つ以上のこのような補助アンシラ量子ビットは、それに隣接する第3の複数の量子ビットの少なくとも1つの量子ビットを有するそれぞれの補助アンシラ量子ビット間に配置することができる(例えば、それらの間で所定の情報内容を送信するために)。本技術では、第2の複数の量子ビットのうちの前記いくつかの量子ビットからのそれぞれの量子ビット2a(すなわち、補助アンシラ量子ビット)に隣接する第3の複数の量子ビット(すなわち、システム量子ビット)の各量子ビット3aは、前記それぞれの量子ビットから所定の情報内容を受信するように構成される(例えば、図6に関連して開示された量子コンピューティング回路によって、以下の説明を参照)。言い換えると、このようにして、1つ以上のアンシラ量子ビットの所定の情報内容(例えば、それらの量子状態)を、対応する補助アンシラ量子ビットを介してシステム量子ビットに送信して、前記システム量子ビットに対する量子計算操作の制御を可能にすることができる。
【0025】
本技術では、第1の1つ以上の量子ビット、第2及び第3の複数の量子ビットは、量子コンピューティングシステムの設計フェーズで選択することができる。加えて又はあるいは、第1の1つ以上の量子ビット、第2及び第3の複数の量子ビットは、例えば自動的に(例えば、実行されるべき計算タスクに応じてプログラム/アルゴリズムによって)選択することができる。他の例では、第1の1つ以上の量子ビット、第2及び第3の複数の量子ビットは、ユーザが(例えば、適切なユーザインタフェースを介して)選択することができる。本開示の技術では、第1の1つ以上の量子ビット、第2及び第3の複数の量子ビットの選択を受信するステップ100、200、300は特に限定されず、場合によっては、量子ビットはこれらの第1の1つ以上の量子ビット及び2つの複数の量子ビットの間で(例えば、上述のようにユーザによって又は自動的に)再分配されてよい。例えば、ある量子計算タスクについては(より詳細については下記説明を参照)、量子コンピューティングシステムの複数の量子ビットからのいくつかの量子ビットを、第1の1つ以上の量子ビットのメンバーとして選択することができ、一方、別の量子計算タスクに対しては、前記いくつかの量子ビットからの1つ以上の量子ビット(例えば、全量子ビット)を、第2及び/又は第3の複数の量子ビットに属するように(例えば、量子計算タスクをより効率的に実行するように)選択してもよい。他の例では、同様の考慮が、第2及び/又は第3の複数の量子ビットからのいくつかの量子ビットに適用される。
【0026】
本方法の次のステップは、(量子コンピューティングシステムの構成に関連して)選択を受信するステップ100、200、300を実行した後で、量子コンピューティングシステムを制御することを含むことができる。本技術では、量子コンピューティングシステムの制御は、第1の1つ以上の量子ビットのうちのそれぞれ少なくとも1つの量子ビット(すなわち、アンシラ量子ビット)を、所定の情報内容(例えば、以下でより詳細に説明されるように、絡み合い状態などの既知の量子状態)に初期化すること400を含むことができる。次のステップでは、本方法は、第1の1つ以上の量子ビットのうちのそれぞれ少なくとも1つの量子ビット(例えば、1つの量子ビット又は2つ以上の量子ビット)の所定の情報内容を、第1の1つ以上の量子ビットのうちのそれぞれ少なくとも1つの量子ビットに隣接する第2の複数の量子ビットのうちの1つ以上の量子ビットに送信すること500を伴うことができる。言い換えると、上記の説明に従って、それぞれ1つ以上のアンシラ量子ビットの所定の情報内容(例えば、それらの量子状態)を、1つ以上の隣接する補助アンシラ量子ビットに送信することができる(例えば、以下に図4及び図5に関連して開示される量子コンピューティング回路によって)。図3A及び図3Bの例に戻ると、アンシラ量子ビット1a及び1cの所定の情報内容を、それぞれの隣接する補助アンシラ量子ビット2a及び2cに送信することができる。
【0027】
次のステップでは、第2の複数の量子ビットのうちの1つ以上の量子ビット2a;2c (すなわち、補助アンシラ量子ビット)の所定の情報内容を、第2の複数の量子ビットのそれぞれの他の量子ビット2bに送信すること600ができる。好適な例では、このステップを実行して、所定の情報内容を、隣接するアンシラ量子ビットが利用できないリモート補助アンシラ量子ビットに送信(言い換えると、配信/伝播)することができる(例えば、図4に関連して開示される量子コンピューティング回路によって)。本技術の第2の複数の量子ビットのそれぞれの他の量子ビット2bは、第2の複数の量子ビットのうちの前記1つ以上の量子ビット2a;2cから所定の情報内容を受信するように構成される。例えば、上述のように、図3A及び図3Bの補助アンシラ量子ビット2bに対して隣接するアンシラ量子ビットは存在しない。この場合、隣接するアンシラ量子ビット1aから受信した補助アンシラ量子ビット2aの所定の情報内容は(上記の説明に従って)、さらに補助アンシラ量子ビット2bに送信することができる。
【0028】
本開示の技術は、第2の複数の量子ビットのうちの前記いくつかの量子ビットのうちの1つ以上の量子ビット2a(すなわち、補助アンシラ量子ビット)の所定の情報内容を、第3の複数の量子ビットのそれぞれの隣接する1つ以上の量子ビット3a(すなわち、システム量子ビット)に送信すること700を含むことができる。言い換えると、以下にさらに詳細に開示される通り、かつ上述の定義に従って、それぞれの隣接するシステム量子ビットに送信された補助アンシラ量子ビットの所定の情報内容を使用して、前記システム量子ビットに対して制御された量子計算操作を提供することができる。いくつかの例では、複数の補助アンシラ量子ビットのうちの1つの補助アンシラ量子ビットの所定の情報内容を、それぞれの隣接するシステム量子ビットに送信することができる。例えば、図6に関連して以下でさらに開示されるように、補助アンシラ量子ビット2aの所定の情報内容は、1つ以上の制御NOT(CNOT)演算10を使用して、図3A及び図3Bに示されているそれぞれの隣接するシステム量子ビット3aに送信することができる。場合によっては、第2の複数の量子ビットのうちの前記いくつかの量子ビットからの1つ以上の量子ビットの各量子ビットの所定の情報内容を、第3の複数の量子ビットのそれぞれの隣接量子ビットに送信することができる。この状況は、図3Aの実施形態において、対応する補助アンシラ量子ビットとシステム量子ビットとの間に描かれた破線によって概略的に表されている。他のいくつかの場合では、第2の複数の量子ビットのうちの前記いくつかの量子ビットからの2つ以上、3つ以上、4つ以上の量子ビットの所定の情報内容を、第3の複数の量子ビットのそれぞれの隣接量子ビットに送信することができる。他の例では、複数の補助アンシラ量子ビットのうちの1つの補助アンシラ量子ビットの所定の情報内容を、それぞれ2つ以上の隣接するシステム量子ビットに送信することができる。図3Bの例では、破線の楕円で囲まれた右端の補助アンシラ量子ビットの所定の情報内容は、それぞれの破線で示されるように、3つの異なるシステム量子ビットに送信することができる。場合によっては、1つ以上の補助アンシラ量子ビット(例えば、各補助アンシラ量子ビット)の所定の情報内容を、それぞれ2つ以上、3つ以上、4つ以上の隣接するシステム量子ビットに送信することができる。
【0029】
本方法の次のステップは、第3の複数の量子ビットのうちの1つ以上の量子ビット3a~3cに対して複数の量子計算操作を実行すること800を含むことができる(例えば、1つ以上のそれぞれのシステム量子ビットに対して実行される1つ以上のユニタリ変換)。前記1つ以上の量子ビットに対する複数の量子計算操作は、第3の複数の量子ビットのうちの1つ以上の量子ビットに送信された所定の情報内容を使用して制御することができる。言い換えると、システム量子ビットに対する量子計算操作は、例えば、それぞれの1つ以上の隣接する補助アンシラ量子ビットから前記システム量子ビットに送信された所定の情報内容を使用して(例えば、それらの量子状態を使用して)制御することができる。いくつかの例では、所定の情報内容は、このような制御を提供するための量子計算操作の過程で、それぞれ1つ以上の隣接する補助アンシラ量子ビットから前記システム量子ビットに1回以上送信してよい(以下のさらなる説明と、例えば、図6に示される補助アンシラ量子ビット及びシステム量子ビットに適用される上述の2つのCNOT演算を参照)。上記の開示によれば、所定の情報内容は、それぞれ1つ以上のアンシラ量子ビットから発生する。このようにして、システム量子ビットに対して実行される本技術の量子計算操作は、対応するアンシラ量子ビットによって制御することができる(この制御プロセスを概略的に図示した図2も参照)。例えば、図3A及び図3Bのシステム量子ビット3aに対して実行される量子計算操作は、上述の意味で、補助アンシラ量子ビット2aを介してアンシラ量子ビット1aによって制御することができる。
【0030】
本技術では、2次元格子上の複数の量子ビットからの1つの量子ビットは、前記1つの量子ビットから他の量子ビットまでの距離が所定の特性距離以下である場合に、複数の量子ビットからの他の量子ビットに隣接していると見なすことができる(上記の定義も参照)。いくつかの例では、所定の特性距離は、2次元格子上に配置された複数の量子ビットの量子ビット間(例えば、上述の第1、第2及び第3の複数の量子ビット間)の平均距離に比例し得る。場合によっては、これらの量の間の比例係数を、0.5以下、0.9以下、1.2以下、1.5以下であるように選択してよい。所定の特性距離が、量子ビット間の平均距離に等しくなる場合もある。これら2つの代替例は、例えば、図3A及び図3Bに示す実施形態のように、2次元格子が正方形セルを備える場合に好ましいかもしれない。さらに他の例では、第1の1つ以上の量子ビットの量子ビット間の平均距離が、第2及び/又は第3の複数の量子ビットの量子ビット間の平均距離と異なる場合、隣接量子ビットを特定するために、いくつかの所定の特性距離を取ることができる。例えば、所定の特性距離は、同一又は異なる複数の量子ビット内の量子ビット間のそれぞれの平均距離に比例するか、又は等しいかもしれない。場合によっては、比例係数の値は、単一の所定の特性距離の場合と同様に選択されてもよい。
【0031】
代替例では、複数の量子ビットの量子ビット間の隣接性を、異なる方法で決定することができる。いくつかの例では、2次元格子上に配置された複数の量子ビットのうちの1つ以上の量子ビットは、第1、第2及び第3の複数の量子ビットのうちの1つ以上からの少なくとも1つのそれぞれの最隣接量子ビットを有し得る。この場合、少なくとも1つのそれぞれの最隣接量子ビットは、前記1つ以上の量子ビットに隣接していると見なされてよい。例えば、図3Aの補助アンシラ量子ビット2a(第2の複数の量子ビットのメンバー)は、最隣接メンバーの補助アンシラ量子ビット2b(第2の複数の量子ビットの別のメンバー)、最隣接メンバーのアンシラ量子ビット1a(第1の1つ以上の量子ビットのメンバー)、及び最隣接メンバーのシステム量子ビット3a(第3の複数の量子ビットのメンバー)を有する。場合によっては、2次元格子上に配置された複数の量子ビットの各量子ビットは、第1、第2及び第3の複数の量子ビットのうちの1つ以上からの少なくとも1つのそれぞれの最隣接量子ビットを有することができ、ここで、少なくとも1つのそれぞれの最隣接量子ビットは、前記量子ビットに隣接していると見なされてよい。さらに他の例では、複数の量子ビットの量子ビット間の隣接性は、上で定義された量子ビット間の1つ以上の所定の特性距離と、それぞれの最隣接量子ビットの存在との両方に基づいて決定することができる。
【0032】
本開示の技術では、第1、第2及び第3の複数の量子ビットは、2次元格子上の対応する数のチェーンを形成することができる。場合によっては、第1の1つ以上の量子ビット(すなわち、アンシラ量子ビット)は、量子ビットの1つ以上のチェーンを備える第1の方向(例えば、図3Aのように垂直方向)に延在し得る。本技術の第2の複数の量子ビット(すなわち、補助アンシラ量子ビット)は、第1の方向とは異なる第2の方向(例えば、図3Aのように水平方向)に延在し得る。いくつかの例では、第2の複数の量子ビットは、量子ビットの2つ以上の非連結チェーンを備えることができる(例えば、補助アンシラ量子ビットの2つのチェーンが図3Aに示されている)。場合によっては、第3の複数の量子ビット(すなわち、システム量子ビット)は、量子ビットの複数の連結チェーンを備えることができ、ここで、第3の複数の量子ビットの複数の連結チェーンの各チェーンは、第1の方向及び第2の方向(例えば、図3A及び図3Bに示すように水平方向及び垂直方向)のいずれかに延在する。いくつかの例では、第2の方向に延在する第3の複数の量子ビットの複数の連結チェーンからの1つ以上のチェーン(例えば、各チェーン)は、第1の方向に延在する量子ビットの複数の連結チェーンからの対応するチェーンに接続することができる。留意すべき点として、第1、第2及び第3の複数の量子ビットが第1及び/又は第2の方向に延在することは、本開示では広く解釈されるべきである。いくつかの例では、量子ビットの対応するチェーンの形状は、それぞれの方向に延在する2次元格子の平面上に1次元(1D)の曲線を形成し得る。
【0033】
2次元格子上に配置された量子ビットを用いる本技術の1つのトポロジーでは、第1の1つ以上の量子ビットは、第1の方向に直線状に整列されたチェーン(例えば、図3Aのアンシラ量子ビットの垂直チェーン)を形成することができる。さらに、第2の複数の量子ビットの2つ以上の非連結チェーンの各チェーンは、第2の方向にそれぞれ直線状に整列することができる(例えば、図3Aの補助アンシラ量子ビットの2つの水平非連結チェーン)。場合によっては、第3の複数の量子ビットの複数の連結チェーンの各チェーンは、第1及び第2の方向のいずれかにそれぞれ直線状に整列することができる(例えば、システム量子ビットの2つの垂直チェーンは、図3Aのシステム量子ビットの3つの水平チェーンに対応して接続されている)。いくつかの例では、複数の連結チェーンは、第1の方向に延在する第2の複数の量子ビットに隣接して蛇行状に配置することができる(例えば、システム量子ビットの蛇行は、図3Aに示すように垂直方向に延びる)。場合によっては、第2の方向に整列された複数の連結チェーンからの複数のチェーンは、第2の複数の量子ビットの2つ以上の非連結チェーンからの対応するチェーンによって第2のチェーンごとに中断される(例えば、システム量子ビットの蛇行からの2本の水平方向のチェーンが、補助アンシラ量子ビットの2つの水平方向の非連結チェーンによって中断されている図3Aを参照)。
【0034】
本技術の代替トポロジーでは、第1の1つ以上の量子ビットは、第1の方向にジグザグ線に整列されたチェーンを形成する(例えば、図3Bに示すようなアンシラ量子ビットのジグザグチェーン)。さらに、第2の複数の量子ビットの2つ以上の非連結チェーンの各チェーンは、第2の方向にそれぞれのジグザグ線に整列することができる(例えば、図3Bに示した補助アンシラ量子ビットのジグザグ水平チェーンを参照)。場合によっては、第3の複数の量子ビットの複数の連結チェーンの各チェーンは、第1及び第2の方向のいずれかにそれぞれのジグザグ線に整列することができる(例えば、図3Bでは、システム量子ビットの1つの垂直ジグザグチェーンは、システム量子ビットの2つの水平ジグザグチェーンに対応して接続されている)。いくつかの例では、図3Aの実施形態と同様に、複数の連結チェーンは、第1の方向に延在する第2の複数の量子ビットに隣接して蛇行状に配置することができる(例えば、図3Bに示すように、システム量子ビットの蛇行は垂直方向に延在する)。場合によっては、第2の方向に整列した複数の連結チェーンからの複数のチェーンは、第2の複数の量子ビットのうちの2つ以上の非連結チェーンからの対応するチェーンによって第2のチェーンごとに中断される(例えば、システム量子ビットの蛇行からの2つのジグザグ水平チェーンが、補助アンシラ量子ビットのジグザグの水平チェーンによって分断されている、図3Bを参照)。
【0035】
本開示のいくつかの例では、第2の複数の量子ビット(すなわち、補助アンシラ量子ビット)の2つ以上の非連結チェーンの各チェーンは、第1の1つ以上の量子ビット(すなわち、アンシラ量子ビット)のそれぞれの量子ビットに隣接する単一量子ビットを備えることができ、ここで、前記単一量子ビットは、第1の所定の距離だけ、それぞれの量子ビットから離される。図3A及び図3Bの例に戻ると、2つの補助アンシラ量子ビット2a及び2cは、それぞれアンシラ量子ビット1a及び1cに隣接し、2つの最隣接補助アンシラ量子ビット間の距離に等しい距離だけ、前記アンシラ量子ビット1a及び1cから離される(例えば、2つの最隣接の補助アンシラ量子ビット間の距離は、すべての補助アンシラ量子ビットについて同じであり得る)。いくつかの例では、第1の所定の距離は、2つの最隣接の補助アンシラ量子ビット間の前記距離に比例することができる(例えば、これらの量の間の比例係数は、2.0以下、1.0以下、又は0.5以下である)。さらに、第2の複数の量子ビットの2つ以上の非連結チェーンの各チェーンは、量子ビットの2つ以上の非連結チェーンのそれぞれの後続のチェーンから、第2の所定の距離だけ離すことが可能である(例えば、第2の所定の距離は、図3Aに示される2つの破線の楕円で囲まれた補助アンシラ量子ビットの2つの水平チェーンの間の距離に対応する)。いくつかの例では、第2の方向に整列された第3の複数の量子ビットの複数の連結チェーンからの一組の後続のチェーンは、前記一組のチェーンが中断されていない場合は、第3の所定の距離だけ離すことができ(例えば、図3Aのシステム量子ビットの2つの連続した水平チェーンを参照)、そうでなければ、前記一組の後続のチェーンは、第4の所定の距離だけ離すことができる(例えば、図3Aのシステム量子ビットの2つの中断された水平チェーンを参照)。いくつかの例では、第1の所定の距離と第3の所定の距離が等してよい。加えて又はあるいは、第2の所定の距離は、第1の所定の距離の3倍長くてもよい。さらに、加えて又はあるいは、第4の所定の距離は、第1の所定の距離の2倍長くてもよい。
【0036】
本技術の一例では、2次元格子は矩形格子とすることができる。他の例では、2次元格子は正方格子とすることができる。さらに他の例では、2次元格子は、他の任意の2次元形状(例えば、多角形、四角形、五角形、六角形、平行四辺形、円形、又は三角形)とすることができる。いくつかの例では、2次元格子に配置された複数の量子ビットからの複数量子ビットを等間隔に配置することができる。例えば、第1、第2及び第3の複数の量子ビットのうちの1つ以上からの全量子ビットを等間隔に配置することができる。場合によっては、2次元格子の全量子ビットを等間隔に配置することができる。さらに、場合によっては、2次元格子(例えば、矩形又は正方形の格子)は、正方形セルの頂点に4つの量子ビットを有する複数の正方形セルを備えることができ、ここで、前記4つの量子ビットからの各量子ビットは、第1、第2及び第3の複数の量子ビットのいずれかの量子ビットである。図3Aの量子ビットトポロジーでは、アンシラ量子ビット、補助アンシラ量子ビット、及びシステム量子ビットの異なる組み合わせを有する正方形セルがある。例えば、1つの正方形セルはシステム量子ビットのみを備えることができる一方で、すべての列記された種類の量子ビットを備えてよい。同様の状況は、図3Bに示されている他方の量子ビットトポロジーからもわかり、その2次元格子は、図3Aに示されている正方形セルに対して(シート面に垂直な軸を中心として)45°回転した複数の正方形セルを備える。加えて又はあるいは、2次元格子は、四角形セル(例えば、矩形セル)の頂点に4つの量子ビットを有する複数の四角形セル(例えば、矩形セル)を備えることができ、ここで、前記4つの量子ビットからの各量子ビットは、量子ビットの第1、第2及び第3の複数の量子ビットの1つからの量子ビットである。加えて又はあるいは、2次元格子は、三角形セルの頂点に3つの量子ビットを有する複数の三角形セルを備えることができ、ここで、前記3つの量子ビットの各量子ビットは、第1、第2及び第3の複数の量子ビットの1つからの量子ビットである。
【0037】
本開示の技術では、第1の1つ以上の量子ビット(すなわち、アンシラ量子ビット)の所定の情報内容は、前記1つ以上の量子ビットの量子状態
【数1】
に関する情報を含むことができる。場合によっては、所定の情報内容が第1の1つ以上の量子ビットの単一量子ビットに関する場合、量子状態は、単一量子ビットの量子状態(例えば、複数のアンシラ量子ビットのうちの1つの単一量子ビットの量子状態)であり得る。一例では、第1の1つ以上の量子ビットの単一量子ビットの量子状態は、例えば、前記量子ビットの基底状態に対応する第0の量子状態(すなわち、最も低いエネルギーを有する状態、もしくは言い換えると、非励起状態)であり得る。この状態は、例えば、当業者にとって既知であるブラ-ケット記法のケットベクトル|0〉によって表すことができる。他の例では、第1の1つ以上の量子ビットの単一量子ビットの量子状態は、例えば、前記量子ビットの第1の励起状態(すなわち、エネルギーが基底状態に最も近い励起状態)に対応する第1の量子状態であり得る。この状態は、今度はケットベクトル|1〉によって表してよい。さらに他の例では、第1の1つ以上の量子ビットの単一量子ビットの量子状態は、第0及び第1の量子状態の線形重ね合わせであり得る。この場合、アンシラ量子ビットの量子状態は、例えば、
【数2】
と書くことができ、ここで、αとβは0でない振幅である。その他の場合は、所定の情報内容が、第1の1つ以上の量子ビットのうちの少なくとも2つの量子ビットに関する場合に、前記1つ以上の量子ビットの量子状態|ψ〉は、複数量子ビットの量子状態であることができる。場合によっては、複数量子ビットの量子状態は、第1の1つ以上の量子ビットのうちの少なくとも2つの量子ビットの各単一量子ビットの量子状態のテンソル積を伴うテンソル積状態(分離可能な量子状態ともいう)
【数3】
であることができ、ここで、Lは前記量子ビットの数であり、
【数4】
はテンソル積を示す。例えば、その量子状態が第0及び第1の量子状態、|ψ〉11|0〉+β1|1〉と、|ψ〉22|0〉+β2|1〉との線形重ね合わせである、2つのアンシラ量子ビットのテンソル積状態は、
【数5】
と書くことができ、ここで、αiとβi (i=1,2)は対応する振幅である。その他の場合は、複数量子ビットの量子状態は、テンソル積状態に関して表すことができない量子状態である絡み合い状態
【数6】
であることができるが、これは、第1の1つ以上の量子ビットのうちの少なくとも2つの量子ビットの各々の量子状態が、前記少なくとも2つの量子ビットからの残りの量子ビットの量子状態から独立して扱うことができないからである。いくつかの場合には、2つのアンシラ量子ビットがベル状態の1つに準備され、そのような絡み合い状態の例は、
【数7】
及び
【数8】
として書くことができる(4つの異なるベル状態が、2つのアンシラ量子ビットに対して存在する)。
【0038】
本開示の技術は、第1の1つ以上の量子ビット(すなわち、アンシラ量子ビット)のそれぞれ少なくとも1つの量子ビットを量子状態(例えば、上記で開示した複数量子ビット又は単一量子ビットの量子状態)に初期化すること410をさらに含むことができる。例えば、このような初期化は、1つ以上のアンシラ量子ビットをそれぞれの量子状態で準備するように、単一及び/又は複数量子ビットの量子ビットゲート(例えば、2及び/又は3量子ビットゲート)を備えるそれぞれの量子回路によって実行することができる。次のステップでは、本方法は、第1の1つ以上の量子ビットのうちのそれぞれ少なくとも1つの量子ビットのうちの1つの量子ビットの量子状態に関する情報を、前記1つの量子ビットから第2の複数の量子ビットの2つ以上の非連結チェーンのうちの対応するチェーンの単一量子ビットに送信すること510を含むことができ、前記単一量子ビットは、第1の1つ以上の量子ビットのうちのそれぞれ少なくとも1つの量子ビットのうちの1つの量子ビットに隣接している。例えば、アンシラ量子ビット1aの量子状態に関する情報は、場合によっては、アンシラ量子ビットのチェーンからの他のアンシラ量子ビットに関する情報を含んでよく(例えば、上で紹介した絡み合い状態の場合)、当該情報は、隣接する補助アンシラ量子ビット2aに送信することができる(図3A及び図3Bを参照)。図3Aからのアンシラ量子ビット1cの量子状態に関する情報は、例えば、同様の方法で隣接する補助アンシラ量子ビット2cに送信することができる。従って、いくつかの例では、第1の1つ以上の量子ビットのうちのそれぞれ少なくとも1つの量子ビットのうちの1つの量子ビットの量子状態に関する情報は、それぞれの量子ビットの前記1つの量子ビットから第2の複数の量子ビットの2つ以上の非連結チェーンのいくつかの対応するチェーン(例えば、各対応するチェーン)の単一量子ビットに送信することができ、前記単一量子ビットは、第1の1つ以上の量子ビットのうちのそれぞれ少なくとも1つの量子ビットのうちの1つの量子ビットに隣接している。
【0039】
本技術の次のステップは、量子状態に関する情報を、第2の複数の量子ビットの2つ以上の非連結チェーンのうちの対応するチェーンの単一量子ビットから、前記チェーンのそれぞれの隣接する量子ビットに送信すること610を含むことができる。例えば、図3A及び図3Bの補助アンシラ量子ビット2aは、上記の説明に一致する隣接するアンシラ量子ビット1aから受信した量子状態に関する前記情報を、補助アンシラ量子ビット2aに対して隣接する補助アンシラ量子ビット2bに送信することができる。第1の態様の方法は、前記チェーンのそれぞれの隣接量子ビットから、それぞれの隣接量子ビット対して隣接するチェーンの次の量子ビットに、情報を繰り返し送信すること620をさらに含むことができる(例えば、図3Aの補助アンシラ量子ビット2bは、それに対して右側にある隣接する量子ビットに情報を送信してもよい)。この場合、チェーンの次の量子ビットは、次の繰返しのためにそれぞれの隣接量子ビットであると見なすことができる。いくつかの例では、2つ以上の非連結チェーンのうちの対応するチェーン内のいくつかの量子ビット(例えば、各量子ビット)に情報が送信されるまで、第2の複数の量子ビットの2つ以上の非連結チェーンのうちの対応するチェーン内の情報を繰り返し送信すること620を実行することができる。言い換えると、アンシラ量子ビット(例えば、図3A及び図3Bのアンシラ量子ビット1a)の量子状態に関する情報を、最初にそれぞれの隣接する補助アンシラ量子ビットに(例えば、図3A及び図3Bの補助アンシラ量子ビット2aに)送信し、次にこのチェーンの他の(離れた)補助アンシラ量子ビットに送信することができる(例えば、最初に補助アンシラ量子ビット2bに、次に同じチェーン内のこの量子ビット2bの右側に位置する他の補助アンシラ量子ビットに)。
【0040】
一実施形態では、本技術は、第2の複数の量子ビットの2つ以上の非連結チェーンのうちの対応するチェーン内の1つ以上の量子ビットを、第0の量子状態|0〉に初期化することを含むことができる。従って、この例では、対応するチェーンの補助アンシラ量子ビットは、上記で紹介された基底状態に初期化される。次のステップでは、図4に示すように、2つ以上の非連結チェーンのそれぞれの隣接量子ビット間のいくつかの連続する制御NOT(CNOT)演算10を使用して、前述の送信ステップ510、610、620を実行することができる。具体的には、前の量子ビットが量子状態|1〉(・によって示されるそれぞれの記号の直前)を有する場合、又はそうでない場合で、前の量子ビットが量子状態|0〉を有し、後続の量子ビットの量子状態を変更しないままである場合、図4の量子回路の各CNOT演算の機能(後述するシステム量子ビットに対して実行される後続の制御された量子計算操作、例えば制御ユニタリ変換を示すブロックUcontrolの前の4つのCNOTゲート10を参照)は、後続の量子ビット(
【数9】
によって示されるそれぞれの記号の直前)をネゲートすることである。言い換えると、この図に示されているアンシラ量子ビットが第0の量子状態|0〉に初期化される場合、図4に示されている補助アンシラ量子ビット1~4の量子状態は、これらの連続するCNOT演算を適用した後も、初期第0の量子状態|0〉のままである。それ以外の場合、アンシラ量子ビットの量子状態が第1の量子状態|1〉に初期化された場合は、図4に示されている補助アンシラ量子ビット1~4の量子状態は、初期第0の量子状態|0〉から第1の量子状態|1〉に反転される。最後に、図4に示されているアンシラ量子ビットが、第0の量子状態と第1の量子状態の線形重ね合わせ|ψ〉=α|0〉+β|1〉で用意されている場合、又は前記アンシラ量子ビットの量子状態が、他のアンシラ量子ビット(この図には示されていない)を伴う絡み合い状態の構成要素である場合は、図4のアンシラ量子ビットの量子状態に関する情報を、補助アンシラ量子ビット1~4に送信することもできる。
【0041】
本技術のいくつかの例では、上記で紹介された前記いくつかの連続するCNOT演算からの1つ以上のCNOT演算を、それぞれの量子CNOTゲートによって実行することができる。加えて又はあるいは、1つ以上のCNOT演算は、前記1つ以上のCNOT演算を、ネイティブハードウェアゲート(すなわち、量子コンピュータ及び/又は量子ビットトポロジーの特定のアーキテクチャで利用可能なゲート)によって実行される対応する量子演算にそれぞれ分解することを含んでよい。
【0042】
本開示の技術は、第2の複数の量子ビットのうちのそれぞれ1つ以上の量子ビットが、所定の情報内容を送信した先の、第3の複数の量子ビットのうちの1つ以上の量子ビット3a~3cに対して、複数の量子計算操作のうちの1つ以上の量子計算操作(例えば、システム量子ビットに対して実行された1つ以上のユニタリ変換)を実行した後で、第2の複数の量子ビットのそれぞれの1つ以上の量子ビット(すなわち、補助アンシラ量子ビット)を第0の量子状態|0〉にリセットすること630をさらに含むことができる。場合によっては、システム量子ビットに対して量子計算操作の第1の部分を達成した後で、補助アンシラ量子ビットを第0の量子状態にリセットすることは、それぞれのアンシラ量子ビットによるこれらのシステム量子ビットに対する量子計算操作の後続の部分の制御を可能にするために必要な場合がある。例えば、前記それぞれのアンシラ量子ビットの所定の情報内容は、量子計算操作の第1の部分が実行された後で変更することができる(例えば、別の量子状態に初期化することができる)。この場合、補助アンシラ量子ビットは、補助アンシラ量子ビットの前の量子状態との干渉/混合の可能性を回避するために、それぞれのアンシラ量子ビットの量子状態に関する情報を受信する前に、第0の状態にリセットすることができる。いくつかの例では、リセットのステップ630は、2つ以上の非連結チェーンのそれぞれの隣接量子ビット間にいくつかの連続するCNOT演算10を適用することを含むことができる。非包括的な一実施形態では、送信ステップ510、610、及び620で先に使用されたのと前記いくつかの連続するCNOT演算10を、逆の順序で補助アンシラ量子ビットに適用することができる(ブロックUcontrolの後で補助アンシラ量子ビット4~1に適用される図4の4つのCNOTゲート10を参照)。
【0043】
加えて又はあるいは、本方法は、第1の1つ以上の量子ビットのうちのそれぞれ少なくとも2つの量子ビットを、前述の実施形態と同様の量子状態に初期化すること415を含むことができる。例えば、このような初期化は、単一及び/又は複数量子ビットのゲート(例えば、2及び/又は3量子ビットゲート)を備えるそれぞれの量子回路によって実行され、それぞれの量子状態に1つ以上のアンシラ量子ビットを準備することができる。次のステップでは、本方法は、第1の1つ以上の量子ビットのうちのそれぞれ少なくとも2つの量子ビットの量子状態(例えば、少なくとも2つのアンシラ量子ビットの複数量子ビットの量子状態)に関する情報を、前記量子ビットから第2の複数の量子ビットの2つ以上の非連結チェーンのうちの対応するチェーンの単一量子ビットに(すなわち、単一の補助アンシラ量子ビットに)送信すること515を含むことができ、ここで、前記単一量子ビットは、第1の1つ以上の量子ビットのうちのそれぞれ少なくとも2つの量子ビットのうちの1つ以上の量子ビットに隣接している。場合によっては、対応するチェーンの単一量子ビット(すなわち、単一の補助アンシラ量子ビット)は、第1の1つ以上の量子ビットのうちのそれぞれ少なくとも2つの量子ビット(例えば、それぞれ少なくとも2つの量子ビットの全量子ビット)に隣接することができる。例えば、図3Bの2つのアンシラ量子ビット1a及び1bの量子状態(例えば、これら2つの量子ビットのみ又はこのチェーンのいくつかの他のアンシラ量子ビットと共にこれらの量子ビットを伴う絡み合い状態)に関する情報を、隣接する補助アンシラ量子ビット2aに送信することができる。従って、いくつかの例では、前記量子ビットからのそれぞれ少なくとも2つの量子ビットの量子状態に関する情報を、第2の複数の量子ビットの2つ以上の非連結チェーンのいくつかの対応するチェーン(例えば、各対応するチェーン)の単一量子ビットに送信することができる。図3Bの例では、前記単一量子ビット(すなわち、補助アンシラ量子ビット2a)は、第1の1つ以上の量子ビットのうちのそれぞれ少なくとも2つの量子ビット(すなわち、図3Bの2つのアンシラ量子ビット1a及び1b)に隣接している。さらに他の例では、対応するチェーンの単一量子ビットは、2つより多い量子ビットに隣接することができるが、第1の1つ以上の量子ビットのうちのそれぞれ少なくとも2つの量子ビットの量子ビット総数よりも少ない。
【0044】
本技術では、第1の1つ以上の量子ビットのうちのそれぞれ少なくとも2つの量子ビットの量子状態に関する情報を送信すること515は、前記単一量子ビットに隣接していない第1の1つ以上の量子ビットのうちのそれぞれ少なくとも2つの量子ビットの量子ビットの量子状態に関する情報を、第2の複数の量子ビットの2つ以上の非連結チェーンのうちの対応するチェーンの前記単一量子ビットに隣接している第1の1つ以上の量子ビットのうちのそれぞれ少なくとも2つの量子ビットの量子ビットに送信することを含んでよい。例えば、単一量子ビットに隣接する量子ビットと、単一量子ビットに隣接していない量子ビットとが互いに隣接している場合、前記非隣接量子ビットと隣接量子ビットは、単一のSWAP演算を介してそれらの量子状態に関する情報を交換することができる(すなわち、これら2つの量子ビットの情報を交換する操作、又はこの操作をネイティブハードウェアゲートに分解する操作であるが、さらなる詳細については以下の説明を参照)。その他の場合は、単一量子ビットに対して前記非隣接量子ビットと隣接量子ビットが互いに隣接していない場合、それらの間の情報の交換は、前記非隣接量子ビットと隣接量子ビットとの間に配置された第1の1つ以上の量子ビットのうちのそれぞれ少なくとも2つの量子ビットの隣接量子ビット間に、いくつかの後続のSWAP演算を繰り返し適用することを含んでよい。具体的には、非隣接量子ビット(すなわち、それぞれの補助アンシラ量子ビットに隣接していないアンシラ量子ビット)の量子状態に関する情報が、隣接量子ビット(すなわち、それぞれの補助アンシラ量子ビットに隣接するアンシラ量子ビット)に送信されるまで、前記いくつかの後続のSWAP演算の適用を繰り返し実行することができる。隣接量子ビットに送信されたその量子状態に関する非隣接量子ビットの情報(例えば、上記に開示されたSWAP演算によって)は、図4に関連してさらに上述したのと同様の方法で、隣接量子ビットから、第2の複数の量子ビットの2つ以上の非連結チェーンのうちの対応するチェーンの前記単一量子ビットにさらに送信することができる。好ましい実施形態では、前記単一量子ビットに隣接する第1の1つ以上の量子ビットのうちのそれぞれ少なくとも2つの量子ビットからの量子ビットの量子状態に関する情報を、最初にこれらの量子ビットから前記単一量子ビットに送信することができる。次のステップでは、前述のように、その量子状態に関する情報を前記単一量子ビットにさらに送信するために、SWAP演算を前記単一量子ビットに隣接しない量子ビットに適用することができる。場合によっては、非隣接量子ビットの量子状態に関する情報を送信するステップを実行した後で、参加する量子ビットの量子状態が、第1の1つ以上の量子ビットから、SWAP演算が適用される前のそれらの以前の(例えば、初期の)量子状態に戻るまで、いくつかの後続のSWAP演算を逆の順序で実行することができる。場合によっては、前述の手順を、前記単一量子ビットに隣接していない第1の1つ以上の量子ビットのうちの少なくとも2つの量子ビットからのいくつかの量子ビット(例えば、各量子ビット)に適用することができる。
【0045】
例えば、前段落で開示されている方法ステップは、図3Aに示す実施形態によって明らかにされてよい。具体的には、図3Aの隣接する補助アンシラ量子ビット2aはアンシラ量子ビット1aに隣接しているが、一方、隣接する補助アンシラ量子ビット2aは、アンシラ量子ビット1bに隣接していない(例えば、後者は上記でさらに説明された意味での最隣接ではないからである)。この場合、アンシラ量子ビット1bの量子状態と、アンシラ量子ビット1aの量子状態に関する情報は、1回のSWAP演算(又はネイティブハードウェアゲートへの分解)を介してこれらの量子ビット間で交換することができ、これにより、アンシラ量子ビット1bの量子状態に関する情報は、アンシラ量子ビット1aに(物理的に)配置される。次に、例えば図4に関連して上記でさらに開示されているように、この情報(すなわち、アンシラ量子ビット1bの量子状態に関する情報)は、アンシラ量子ビット1aから隣接する補助アンシラ量子ビット2aにさらに送信することができる。最後に、逆SWAP演算をアンシラ量子ビット1b及び1aに適用して、SWAP演算を適用する前のそれらの以前の(例えば、初期の)量子状態を復元することができる。
本技術の次のステップは、量子状態に関する情報を、対応するチェーンの単一量子ビットから、第2の複数の量子ビットの前記チェーンのそれぞれの隣接量子ビットに送信すること615を含むことができる。例えば、図3A又は図3Bの補助アンシラ量子ビット2aは、量子状態に関する前記情報(図3Aのようにアンシラ量子ビット1aのみが補助アンシラ量子ビット2aに隣接しているか、又は図3Bのようにアンシラ量子ビット1a及び1bの両方がこの補助アンシラ量子ビット2aに隣接している、2つのアンシラ量子ビット1a及び1bから受信される)を、補助アンシラ量子ビット2aに対して隣接している補助アンシラ量子ビット2bに送信することができる。本方法はさらに、前記チェーンのそれぞれの隣接量子ビットから、それぞれの隣接量子ビットに対して隣接しているチェーンの次の量子ビットに、情報を繰り返し送信すること625を含むことができる(例えば、先の実施形態と同様に、図3A又は図3Bの補助アンシラ量子ビット2bは、それに対して右側にある隣接量子ビットに情報を送信してよい)。この場合、チェーンの次の量子ビットは、次の繰返しのためのそれぞれの隣接量子ビットであると見なすことができる。いくつかの例では、2つ以上の非連結チェーンのうちの対応するチェーン内のいくつかの量子ビット(例えば、各量子ビット)に情報が送信されるまで、第2の複数の量子ビットの2つ以上の非連結チェーンのうちの対応するチェーン内の情報を繰り返し送信すること625を実行することができる。言い換えると、アンシラ量子ビット(例えば、図3A又は図3Bの2つのアンシラ量子ビット1a及び1b)の量子状態に関する情報は、最初にそれぞれの隣接する補助アンシラ量子ビットに(例えば、図3A及び図3Bの補助アンシラ量子ビット2aに)送信し、次にこのチェーンの他の(離れた)補助アンシラ量子ビットに(例えば、最初に補助アンシラ量子ビット2bに、次に同一チェーン内のこの量子ビット2bの右側に位置する他の補助アンシラ量子ビットに)送信することができる。
一実施形態では、本技術は、第2の複数の量子ビットの2つ以上の非連結チェーンのうちの対応するチェーン内の1つ以上の量子ビットを、第0の量子状態|0〉に初期化することを含むことができる(図4に示した実施形態に関連する説明と同様)。従って、この例では、対応するチェーンの補助アンシラ量子ビットは、上で紹介されたそれらの基底状態に初期化される。次のステップでは、第1の1つ以上の量子ビットのうちのそれぞれの2つの量子ビット(すなわち、それぞれのアンシラ量子ビット)と、第2の複数の量子ビットの2つ以上の非連結チェーンのうちの対応するチェーンの単一量子ビット(すなわち、単一の補助アンシラ量子ビット)とに作用する3量子ビットの量子ゲートを使用して、それぞれの2つ以上の量子ビットの量子状態に関する情報を前記単一量子ビットに送信することができる。例えば、図5の実施形態では、2つのアンシラ量子ビット1と2の量子状態に関する情報は、3量子ビットの量子ゲートを使用して補助アンシラ量子ビット1に送信される。場合によっては、図5に示す実施形態のように、3量子ビットの量子ゲートはトフォリゲート30であることができる。1つの非包括的な例では、トフォリゲートは、例えば図5に示すように、対応する順序で配置された、いくつかのアダマルドゲートH;40、いくつかの位相ゲートS;60、いくつかのCNOTゲート、及びいくつかのπ/8ゲートT;50を備える量子回路であることができる(例えば、M. A. Nielsen and I. L. Chuang, “Quantum Computation and Quantum information”: 10th Anniversary Edition, Cambridge University Press, 2010を参照)。アダマールゲート、位相ゲート、及びπ/8ゲートは、当業者にとって既知である単一量子ビットゲートである。いくつかの例では、アダマールゲート、π/8-ゲート、位相ゲート、及びCNOTゲートの1つ以上によって実行される操作は、前記操作をネイティブハードウェアゲートによって実行される対応する量子操作にそれぞれ分解することを含んでよい。いくつかの例では、第1の1つ以上の量子ビットのうちの2つの量子ビットが両方とも単一量子ビットに隣接している場合、それぞれの2つ以上の量子ビットの量子状態に関する情報を前記単一量子ビットに直接送信することができる(例えば、上述のSWAP演算を伴わずに)。他の例では、第1の1つ以上の量子ビットのうちの2つの量子ビットの1つが単一量子ビットに隣接していない(例えば、図5のアンシラ量子ビット1が補助アンシラ量子ビット1に隣接していない)場合、前記非隣接量子ビットの量子状態に関する情報を、前記非隣接量子ビットから、単一量子ビットに隣接する第1の1つ以上の量子ビットのうちの2つの量子ビットからの別の量子ビットに(例えば、図5のアンシラ量子ビット1から、補助アンシラ量子ビット1に隣接するアンシラ量子ビット2に)送信することができる。例えば、図5のアンシラ量子ビット1と2の間のSWAP演算は、図5のアンシラ量子ビット1と補助アンシラ量子ビット1との間のCNOT演算の各々の直前に適用することができる。次に、アンシラ量子ビット1の量子状態に関する情報を含むアンシラ量子ビット2と、補助アンシラ量子ビット1との間に、CNOT演算を適用することができる。これは、アンシラ量子ビット1と補助アンシラ量子ビット1との間でCNOT演算が実行されるということに等しいであろう。次のステップでは、第1の1つ以上の量子ビットのうちの2つの量子ビット(すなわち、アンシラ量子ビット1と2)に逆SWAP演算を適用して、SWAP演算を適用する前のそれらの以前の(例えば、初期の)量子状態を復元することができる。
【0046】
次のステップでは、図4に示す先行する実施形態と同様に、量子状態に関する情報を、対応するチェーンの単一量子ビットから、第2の複数の量子ビットの前記チェーンのそれぞれの隣接量子ビットに(例えば、図5の補助アンシラ量子ビット1から図4の補助アンシラ量子ビット2に)送信すること615、及び前記チェーンのそれぞれの隣接量子ビットから、それぞれの隣接量子ビットに対して隣接するチェーンの次の量子ビットに(例えば、図4に示すように補助アンシラ量子ビット2から他の補助アンシラ量子ビット3及び4に)、前記情報を繰り返し送信すること625に関連するステップを実行するために、いくつかの連続するCNOT演算を使用することができる。同様に、図4の実施形態に関連して開示されたように、上記で紹介された前記いくつかの連続するCNOT演算からの1つ以上のCNOT演算は、それぞれの量子CNOTゲート10によって実行することができる。加えて又はあるいは、1つ以上のCNOT演算は、前記1つ以上のCNOT演算を、ネイティブハードウェアゲートによって実行される対応する量子操作にそれぞれ分解することを含んでよい。いくつかの例では、第2の複数の量子ビットのそれぞれの1つ以上の量子ビット(すなわち、補助アンシラ量子ビット)をリセットするステップ630は、図4に示される実施形態に関連して、さらに上述した方法と同様の方法で実行することができる。
【0047】
本開示の技術は、所定の情報内容(例えば、アンシラ量子ビットの量子状態)を、第2の複数の量子ビットからの隣接量子ビットが利用できない(つまり隣接する補助アンシラ量子ビットが利用できない)第3の複数の量子ビットのうちの量子ビットに(例えば、複数の量子計算操作の1つ以上が実行されなければならない対応するチェーンのシステム量子ビットに)送信することをさらに含むことができる。本開示の技術では、この送信ステップは、所定の情報内容を、第2の複数の量子ビットのうちの前記いくつかの量子ビットのうちの1つ以上の量子ビットの量子ビット(すなわち、補助アンシラ量子ビット)から、第3の複数の量子ビットのそれぞれの隣接する1つ以上の量子ビットの量子ビット(すなわち、前記補助アンシラ量子ビットに隣接するシステム量子ビット)に、前記量子ビットにSWAP演算(すなわち、考慮中の2つの量子ビットの量子状態を交換する操作)を適用することによって送信することを含むことができる。例えば、図3A及び図3Bの実施形態に示されるシステム量子ビット3cは、隣接する補助アンシラ量子ビットを有さないシステム量子ビットである。この場合、それぞれの隣接する補助量子ビットからの所定の情報内容は、上記の開示と一致するSWAP演算によってシステム量子ビット3bに送信することができる(両図の破線は、システム量子ビット3bと、複数の補助アンシラ量子ビットの中のそのパートナーとの間の隣接性を示す)。
【0048】
本方法の次のステップは、所定の情報内容を、第3の複数の量子ビットのそれぞれ隣接する1つ以上の量子ビットの量子ビットから、第2の複数の量子ビットからの隣接量子ビットが利用できない第3の複数の量子ビットの量子ビットに、前記量子ビット間に配置される第3の複数の量子ビットの隣接量子ビット間にいくつかの後続のSWAP演算を繰り返し適用することによって送信することを含むことができる。場合によっては、所定の情報が、第2の複数の量子ビットからの隣接量子ビットが利用できない第3の複数の量子ビットの量子ビットに隣接する第3の複数の量子ビットの量子ビットに交換されるまで、前記いくつかの後続のSWAP演算の繰り返しの適用が実行される。言い換えると、上記の補助アンシラ量子ビットの所定の情報が、隣接する補助アンシラ量子ビットを有さないシステム量子ビットに隣接するシステム量子ビットに交換されるまで、隣接するシステム量子ビット間のSWAP演算が実行される。
【0049】
図3A及び図3Bの例に戻ると、上記のシステム量子ビット3cと3bは隣接しており、その結果、この場合、SWAP演算が必要ない(システム量子ビット3bは、上記の説明に従って補助アンシラ量子ビットの所定の情報を含む)。一方、所定の情報内容を図3Aの2次元格子の右下隅に位置するシステム量子ビットに送信するために、1つのSWAP演算が、システム量子ビット3cと3bの間で必要になる場合がある。場合によっては、必要とされるSWAP演算の数は、それぞれの補助アンシラ量子ビット(ここから所定の情報内容が送信される)と、隣接する補助アンシラ量子ビットが利用できないシステム量子ビットとの間のいくつかのシステム量子ビットに比例する(例えば、等しい)ことができる。留意すべき点として、本技術で補助アンシラ量子ビットを使用することは、制御を提供するために必要ないくつかの時間のかかるSWAP演算を減らし得るものであり、これは、いくつかのシステム量子ビットが、それぞれの隣接する補助アンシラ量子ビットを有することができるからである(例えば、システム量子ビットの総数Nの50%以上、75%以上、90%以上、95%は、それぞれ隣接する補助アンシラ量子ビットを有することができる)。従って、本技術のいくつかの例では、制御のために必要なSWAP演算の数は、Nから独立し得るが、一方、いくつかの従来技術では、SWAP演算の数は、N1/2に比例してよい。
【0050】
本開示の技術は、所定の情報内容を、第2の複数の量子ビットからの隣接量子ビットが利用できない第3の複数の量子ビットの量子ビットに隣接する第3の複数の量子ビットの量子ビットから、第2の複数の量子ビットからの隣接量子ビットが利用できない第3の複数の量子ビットの前記量子ビットに送信することをさらに含むことができる(例えば、所定の情報内容を図3Aのシステム量子ビット3cから図3Aの2次元格子の右下隅に位置するシステム量子ビットに送信する)。本技術では、第2の複数の量子ビットからの隣接量子ビットが利用できない第3の複数の量子ビットの量子ビットは、所定の情報内容を第3の複数の量子ビットの前記隣接量子ビットから受信するように構成することができる。従って、それぞれの補助アンシラ量子ビットの所定の情報内容(例えば、その量子状態)は、隣接する補助アンシラ量子ビットを有さないシステム量子ビットに隣接するシステム量子ビットに物理的に含まれ、前記隣接するシステム量子ビットから、隣接する補助アンシラ量子ビットを有さないシステム量子ビットに送信することができる。いくつかの例では、図6に関連して以下でさらに説明するように、これらのシステム量子ビット間で所定の情報を送信することは、例えば前記制御を提供するためにこれらの量子ビット間でいくつかのCNOT演算(例えば、2つのCNOT演算)を使用して、補助アンシラ量子ビットとそれぞれの隣接するシステム量子ビットとの間で所定の情報を送信するために使用される方法と同様の方法で実行することができる。
【0051】
次のステップでは、本明細書の方法は、送信された所定の情報の制御下で第2の複数の量子ビットからの隣接量子ビットが利用できない第3の複数の量子ビットの量子ビットに対して複数の量子計算操作を実行することを含むことができる(例えば、図6の実施形態に示したものと同様の方法で、以下の説明を参照)。本技術のいくつかの場合では、(送信された所定の情報の制御下で)前記量子ビットに対して複数の量子計算操作からの1つ以上の操作を実行した後で、本方法は、SWAP演算に参加している第3の複数の量子ビットからの量子ビットの量子状態が、SWAP演算が適用される前のそれらの以前の量子状態に戻るまで、いくつかの後続のSWAP演算を逆順で実行することをさらに含むことができる。場合によっては、上述の手順は、第2の複数の量子ビットからの隣接量子ビットが利用できない第3の複数の量子ビットのうちのいくつかの量子ビット(例えば、各量子ビット)に適用することができる。
【0052】
本技術のいくつかの例では、2つの量子ビットを交換するために、前記いくつかのSWAP演算をそれぞれの量子回路によって実行することができる。いくつかの例では、それぞれの量子回路は、当業者にとって既知である3つのCNOT量子ゲートを備えることができる(例えば、M. A. Nielsen and I. L. Chuang, “Quantum Computation and Quantum information”: 10th Anniversary Edition, Cambridge University Press, 2010を参照)。加えて又はあるいは、1つ以上のSWAP演算は、前記SWAP演算をネイティブハードウェアゲートによって実行される対応する量子操作にそれぞれ分解することを含むことができる。
本開示の技術では、複数の量子計算操作を実行するステップ800は、第3の複数の量子ビットのそれぞれの量子ビット(すなわち、システム量子ビット)に適用される1つ以上の制御ユニタリ変換810を実行することを含み、それによって、前記それぞれの量子ビットの量子状態を変更し、それぞれの量子ビットに適用される1つ以上のユニタリ変換は、上述の説明に従ってそれぞれの量子ビットに送信された所定の情報内容を使用して制御されてよい。例えば、所定の情報内容(例えば、それぞれの1つ以上のアンシラ量子ビットの量子状態)は、前記制御を提供するためにいくつかのCNOT演算(例えば、2つのCNOT演算)を使用して、量子計算操作の過程でそれぞれの量子ビットに1回以上(すなわち、時間の異なる瞬間に)送信されてよい(図6及び以下の説明を参照)。いくつかの例では、それぞれの量子ビットに対する1つ以上のユニタリ変換は、前記それぞれの量子ビットに作用する対応する1つ以上の量子単一量子ビットゲートによって実行することができる(例えば、異なる量子単一ゲートは、異なる瞬間又は時間間隔で前記それぞれの量子ビットに作用することができる)。場合によっては、1つ以上の量子単一量子ビットゲートによって実行される1つ以上のユニタリ変換は、前記それぞれの量子ビットの量子状態のユニタリ時間発展をもたらすことができる。いくつかの例では、第1の1つ以上の量子ビットからのそれぞれの量子ビットの制御下の第3の複数の量子ビット(すなわち、システム量子ビット)のうちのいくつかの量子ビット(例えば、全量子ビット)に対して、複数のユニタリ変換を実行することができる。場合によっては、複数のユニタリ変換は、第3の複数の量子ビット(すなわち、システム量子ビット)のうちの前記いくつかの量子ビットに対して並列かつ/又は順次に実行される量子計算タスクを形成することができる。
【0053】
本技術では、第3の複数の量子ビットのそれぞれの量子ビット(すなわち、システム量子ビット)に対して1つ以上の制御ユニタリ変換を実行することは、それぞれの量子ビットに適用される制御された回転変換Ra(θ);70(図6及び以下の説明を参照)を実行すること820を含むことができ、ここで、回転変換は、所定の軸aを中心とした所定の回転角度θによって定義される。角度θは、制御された回転を含む量子計算タスクがコンパイルされる場合、例えば、対象の量子システムの量子ハミルトニアンによって定義される時間発展の制御されたシミュレーションに関連する量子計算タスクを実行する(例えば、量子化学又は凝縮系物理学を扱う)場合に決定することができる。この設定では、角度θは、例えば、量子位相推定(QPE)を使用してハミルトニアン系の基底状態及び/又は励起状態を決定する場合に、ハミルトニアンの特定の項目の振幅及びシミュレートされる時間によって事前に決定されてよい。別の例では、角度θは、量子コンピューティングタスクがコンパイルされた後で、但し、量子コンピューティングタスクが実行される前に、事前に決定することができる。これは、例えば、変分又はハイブリッド量子古典アルゴリズムの場合であり、ここで、量子コンピューティングタスクは、古典的な最小化と組み合わされ、θの値はコスト関数の最小化の一部としてハイブリッドアルゴリズムの古典的な部分によって決定される。一連のこのような制御された回転変換は、例えば、量子位相推定アルゴリズム又は変分ハイブリッド量子古典アルゴリズムで使用されてよい。場合によっては、それぞれの量子ビットに適用される回転変換Ra(θ);70を実行することは、基底回転変換Va,zをそれぞれの量子ビットに適用すること830(すなわち、各量子ビットの量子状態が定義される基底ベクトルの回転)を含むことができ、ここで、基底回転変換は、それぞれの量子ビットの回転軸zを中心として所定の軸aを回転することに相当する。例えば、それぞれの量子ビットの量子状態は、ブロッホ球上のベクトルとして定義することができ、基底回転変換は、ブロッホ基底ベクトルの回転に対応し得る。一例では、図6に概略的に示されている基底回転変換Va,zは、表される対応する演算子によって、例えばそれぞれの回転行列によって定義することができる。同様に、制御された回転変換Ra(θ)は、ブロッホ球上で表されるそれぞれの量子ビットの量子状態に作用する対応する回転行列によって表すことができる演算子によって定義される。
【0054】
次のステップでは、本方法は、回転軸zを中心とした回転変換Rz(θ/n)を前記それぞれの量子ビットに適用すること840を含むことができ、ここで、回転変換は、回転軸zを中心とした所定の回転角度の分数θ/n;90として定義することができる。ここで、nは整数を表す。いくつかの例では、回転変換Rz(θ/2)は、2×2の行列、例えば次の式によって表すことができる演算子によって定義される。
【数10】
【0055】
図6の実施形態では、n=2であるため、この例では、回転変換Rz(θ/2)は、回転軸zを中心とした所定の回転角度のθ/2;90の半分によって定義することができる。次に、第1の態様の方法は、それぞれの量子ビットと、それぞれの量子ビットに対する1つ以上のユニタリ変換を制御するために使用される前記それぞれの量子ビットに隣接する1つ以上の量子ビットからの量子ビットとにCNOT演算10を適用すること850を含むことができる。従って、CNOT演算を適用することによって、所定の情報内容を、前記隣接量子ビットから、制御された回転変換Ra(θ);70が適用されるそれぞれの量子ビットに送信することができる。上記の説明に従って、それぞれの量子ビットに対して隣接する補助アンシラ量子ビットが利用できない場合、第3の複数の量子ビットのそれぞれの量子ビット(すなわち、それぞれのシステム量子ビット)に対して1つ以上のユニタリ変換を制御するために使用される量子ビット(又は省略すると制御量子ビット)は、隣接する補助アンシラ量子ビット又は隣接するシステム量子ビットであることができる。例えば、図3A及び図3Bの補助アンシラ量子ビット2aは、システム量子ビット3aに隣接しており、システム量子ビット3aに対して前記ユニタリ演算を制御するために使用することができる。
【0056】
本開示の次のステップは、回転軸zを中心とした逆回転変換Rz(-θ/n);95を前記それぞれの量子ビットに適用すること860を含むことができ、ここで、逆回転変換は、回転軸zを中心とした所定の回転角度の分数θ/nとして定義することができる(すなわち、同じ角度θ/nが回転変換に使用される)。図6の実施形態では、逆回転変換Rz(-θ/2)は、回転軸zを中心とした所定の回転角度θ/2;90の半分によって定義することができる。次のステップでは、本手法は、CNOT演算10をそれぞれの量子ビットと、それぞれの量子ビットに対して1つ以上のユニタリ変換を制御するために使用される前記それぞれの量子ビットに隣接する1つ以上の量子ビットからの量子ビットとに適用すること870を含むことができる(この第2のCNOT演算は、逆回転変換Rz(-θ/2)の直後にそれぞれの量子ビットに適用されるものとして図6に示されている)。例えば、制御量子ビット、図6に示されている補助アンシラ量子ビットが第0の量子状態|0〉である場合(例えば、上でさらに開示された初期化ステップの後)、2つのCNOT演算が適用されたときに、それぞれの量子ビットの対応する量子状態は変更されないままとなる。従って、それぞれの量子ビット(すなわち、図6のそれぞれのシステム量子ビット)は、前述の2つの回転と2つのCNOT演算を適用した後で、所定の回転角度θ/nだけ前後に回転される。これら4つの演算の結果は、Rz(θ/n)Rz(-θ/n)=Iとして表すことができ、ここで、Iは恒等演算子を表す(例えば、2×2の単位行列で表される)。一方、制御量子ビットが第1の量子状態|1〉にある場合(例えば、初期化ステップの後)、それぞれの量子ビットの量子状態は各CNOTゲートで反転することができる。例えば、それぞれの量子ビットの重ね合わせ量子状態
【数11】
は、CNOT演算によって
【数12】
に反転される。この場合、それぞれの量子ビット(すなわち、図6のそれぞれのシステム量子ビット)は、上述の2つの回転と2つのCNOT演算を適用した後で、所定の回転角度2θ/nの2倍だけ前方に回転される。これら4つの操作の結果は、Rz(θ/n)Rz(θ/n)=Rz(2θ/n)として表すことができ、ここで、Rz(2θ/n)は、回転軸zを中心として角度2θ/nだけ回転を実行する回転変換を表す(例えば、2×2の回転行列で表される)。図6の例に戻ると、この実施形態ではn=2であるため、それぞれの量子ビットは、これら4つの演算を適用した後で、所定の回転角度θだけ回転される。
【0057】
本技術の次のステップは、それぞれの量子ビットに対して1つ以上のユニタリ変換を制御するために使用される1つ以上の量子ビットからの量子ビットが、対応する量子状態(例えば、第1の量子状態|1〉)にある場合、前記回転とCNOT演算の組み合わせを使用した後で結果として得られる回転が、所定の回転角度θによって回転軸zを中心とした回転変換RZ(θ)を適用することに相当するまで、回転軸zを中心とした回転変換RZ(θ/n)と、それぞれの量子ビットへの、かつ1つ以上の量子ビットからの量子ビットへのCNOT演算と、回転軸zを中心とした逆回転変換RZ(-θ/n)と、それぞれの量子ビットへの、かつ1つ以上の量子ビットからの量子ビットへのCNOT演算との組み合わせを繰り返し適用すること880を含むことができる。例えば、図6の実施形態に関連して上述したように、制御量子ビットが第1の量子状態|1〉にある場合(例えば、初期化ステップの後にこの状態に準備された場合)、各量子ビットは、2つの回転と2つのCNOT演算を適用した後で所定の回転角度θだけ回転され、従って、それ以上の繰返し処理は必要ない。場合によっては、例えばn>2の場合、所定の軸aを中心とした所定の回転角度の分数θ/nは、2mで除算された所定の回転角度として定義できる、ここで、mは任意の整数である。この場合、回転とCNOT演算の前記組み合わせは、それぞれの量子ビットと、1つ以上の量子ビットの量子ビットとに2m回繰り返して適用することができ、これにより、制御量子ビットが第1の量子状態|1〉にある場合は、所定の回転角度θだけそれぞれの量子ビットを回転させる。一方、制御量子ビットが第0の量子状態|0〉にある場合は、上記で詳しく説明したように、それぞれの量子ビットの対応する量子状態は、この繰返し手順を適用しても変更されないままである。次のステップでは、それぞれの量子ビットに逆基底回転変換
【数13】
を適用すること890ができ、ここで、逆基底回転変換は、それぞれの量子ビットの回転軸zを所定の軸aに戻すことに相当する。いくつかの例では、逆基底回転変換
【数14】
は、基底回転変換Va,zを定義する演算子Va,zに関するエルミート共役である演算子(又はそれぞれの行列表現)によって定義される変換として定義することができる。好ましい事例では、上で開示されたすべての方法ステップ830~880の結果は、それぞれの量子ビットに適用される制御された回転変換Ra(θ);70に相当することができる。
【0058】
本技術のいくつかの例では、制御された回転変換Ra(θ);70のために使用される1つ以上のCNOT演算は、それぞれの量子CNOTゲートによって実行することができる。加えて又はあるいは、1つ以上のCNOT演算は、前記1つ以上のCNOT演算を、ネイティブハードウェアゲートによって実行される対応する量子操作にそれぞれ分解することを含んでよく、ネイティブハードウェアゲートは、さらに上述したように、量子コンピュータ及び/又は量子ビットトポロジーの特定のアーキテクチャで利用可能なゲートである。
【0059】
本開示の技術は、量子計算タスクを実行することをさらに含むことができ、量子計算タスクは、第3の複数の量子ビットのうちの1つ以上の量子ビット(つまりシステム量子ビット)に対して実行される複数の量子計算操作を含む。例えば、量子計算タスクは、量子システムのシミュレーション、計算化学、計算生物学、固体物理学、量子アニーリング、量子機械学習、検索問題、暗号などの分野における1つ以上の問題を含むことができる。いくつかの例では、1つ以上の量子計算操作は、異なるシステム量子ビットに対して並列に実行することができる。例えば、第1の数の操作は、第1の時間間隔中に第2の数のシステム量子ビットに対して順次実行される第2の数の操作と並行して、第1の数のシステム量子ビットに対して順次実行することができる。場合によっては、第1の数のシステム量子ビットを制御するために使用される第1の1つ以上の量子ビットの第1の数の量子ビット(すなわち、アンシラ量子ビット)は、初期化されることができ、かつ/又は所定の情報内容(例えば、それらの量子状態)を、第2の時間間隔(第1の時間間隔と等しいか又は異なってよい)中に第2の数のシステム量子ビットに対して第2の数の操作を実行するのと並行して、第1の数のシステム量子ビットに送信することができる。従って、本開示の技術は、補助アンシラ量子ビットを使用しないいくつかの先行技術の手法と比較して計算時間をさらに削減することができ、その結果、上述の意味で並列操作を利用することができない。
【0060】
第2の態様は、第1の態様に係る技術のステップのいずれかに従って構成された量子コンピューティングシステム1000を提供する。
【0061】
第3の態様は、制御された量子計算操作を実行するための、かつ第1の態様に係る技術のステップのいずれかを実行するようになされた、量子コンピューティングシステム1000を提供する。いくつかの例では、第3の態様の量子コンピューティングシステムは、第2の態様の量子コンピューティングシステムに従って構成される。本開示はまた、第1の態様に係る技術のステップのいずれかを実行するようになされているコンピュータプログラムに関する。本開示はまた、コンピュータ可読媒体(例えば、光記憶媒体などの機械可読記憶媒体、又は読み取り専用メモリ、例えばフラッシュメモリ)、かつ本開示のコンピュータプログラムを格納又は符号化する信号に関する。
【0062】
第2及び/又は第3の態様の量子コンピューティングシステムは、少なくとも1つのプロセッサ(例えば、量子プロセッサ)、少なくとも1つのメモリ(実行されると、本開示の第1の態様に係る方法ステップ又はコンピュータプログラムを実行するプログラムを含んでよい)、及び入出力のための少なくとも1つのインターフェイスを含んでよい。いくつかの例では、量子コンピューティングシステムは、例えば、1つ以上のチップ、量子データプレーン、制御プレーン、測定プレーン、制御プロセッサプレーン、ホストプロセッサなどの1つ又は任意の組み合わせを備えるハードウェアアーキテクチャを備えることができる。第2及び/又は第3の態様の量子コンピューティングシステムのハードウェアアーキテクチャは、さらに上述したように、高フィネス共振器(例えば、マイクロ波空洞に結合された超伝導量子ビット)に結合された量子ビットに基づくことができる。他の例では、量子コンピューティングシステムは、それぞれのホスト格子に埋め込まれたドナー原子の核スピン状態として実現される量子ビットに基づくハードウェアアーキテクチャを備えることができる。さらに他の例では、量子コンピューティングシステムは、光格子内の中性原子に基づくハードウェアアーキテクチャを備えることができる。いくつかの例では、量子コンピューティングシステムは、スタンドアロンのコンピュータ装置であることができる。他の例では、量子コンピューティングシステムは、本開示の技術のステップを実行する以外の他の目的も果たすコンピュータ装置又はシステムに一体化できる。さらに他の例では、量子コンピューティングシステムは、ネットワーク(例えば、インターネット)を介して通信する分散システムであってよい。
【0063】
本開示の第4の一般的な態様は、量子コンピューティングシステムを備えるリモートコンピューティングシステムに関し、リモートコンピューティングシステムは、量子計算タスクを実行するように構成されてよく、量子計算タスクは、第1の態様に従ってそれぞれの量子ビットに対して実行される複数の量子計算操作を含むことができる。(リモートコンピューティングシステムによって実行される)第4の態様の複数の量子計算操作は、第1の態様の方法ステップのいずれかに従って制御することができる。いくつかの例では、リモートコンピューティングシステムは、量子計算タスクに関する問い合わせをコンピュータ実装システム(例えば、リモートコンピューティングシステムに対して外部にある)から受信するように構成されてよい。第4の態様のリモートコンピューティングシステムは、計算タスクの結果(例えば、システム量子ビットに対して実行される複数の制御された量子計算操作に基づく)をコンピュータ実装システムに(例えば、問い合わせの送信元のコンピュータ実装システムに)送信するように、さらに構成することができる。いくつかの例では、第4の態様の量子コンピューティングシステムのハードウェアアーキテクチャは、上記の第2及び/又は第3の態様からの量子コンピューティングシステムのハードウェアアーキテクチャの1つ以上の構築要素(又は要素のブロック)を備えることができる。場合によっては、第4の態様の量子コンピューティングシステムのハードウェアアーキテクチャは、上記の第2及び/又は第3の態様からの量子コンピューティングシステムのハードウェアアーキテクチャと同じであってよい。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
【国際調査報告】