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特表2024-546218スペクトル学習に基づく物質濃度測定装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-19
(54)【発明の名称】スペクトル学習に基づく物質濃度測定装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/3577 20140101AFI20241212BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20241212BHJP
【FI】
G01N21/3577
G06N20/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579773
(86)(22)【出願日】2022-11-16
(85)【翻訳文提出日】2023-12-26
(86)【国際出願番号】 KR2022018141
(87)【国際公開番号】W WO2024106564
(87)【国際公開日】2024-05-23
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】キム、チェ-ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ビョン-ムク
(72)【発明者】
【氏名】イ、チン-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ、キュ-ファン
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ヨン-ス
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059EE01
2G059EE12
2G059HH01
2G059JJ01
2G059MM01
2G059MM02
2G059MM03
2G059MM04
2G059MM05
(57)【要約】
機械学習によって対象物質の濃度を予測するための濃度予測モデルを生成する方法を開示する。濃度が既知の物質の基本スペクトルを所定の変形条件に基づいて変形した最適変形スペクトルを学習データとして生成する学習データ生成ステップと、前記学習データ生成ステップにおいて生成した所定の変形条件に基づいて変形した最適変形スペクトルと、前記最適変形スペクトルとそれぞれ対応する物質の実測濃度とを機械学習させて濃度予測モデルを生成する濃度予測モデル生成ステップと、を含む濃度予測モデルの生成方法は、予測しようとする分析物質ではない他の化合物によるスペクトルの変化を抑え、分析物質の濃度に応じたスペクトルの変化を極大化させることにより、物質濃度の予測に際しての正確度を向上させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械学習によって対象物質の濃度を予測するための濃度予測モデルを生成する方法であって、
濃度が既知の物質の基本スペクトルを所定の変形条件に基づいて変形した最適変形スペクトルを学習データとして生成する学習データ生成ステップと、
前記学習データ生成ステップにおいて生成した、所定の変形条件に基づいて変形した最適変形スペクトルと、前記最適変形スペクトルとそれぞれ対応する物質の実測濃度とを機械学習させて濃度予測モデルを生成する濃度予測モデル生成ステップと、
を含む、濃度予測モデルの生成方法。
【請求項2】
前記所定の変形条件は、
2以上の互いに異なる変形条件に基づいて基本スペクトルを変形して変形スペクトルを生成するスペクトル変形及び組合せステップと、
前記変形スペクトルから最適変形条件を導き出す最適変形条件導出ステップと、
によって導出した最適変形条件である、請求項1に記載の濃度予測モデルの生成方法。
【請求項3】
前記最適変形条件導出ステップは、
前記スペクトル変形及び組合せステップにおいて生成した変形スペクトルの基準類似度の標準偏差、実測濃度との相関係数、スペクトル変形の前後の多変量比をそれぞれ算出し、これらの和が最大となる変形条件を最適変形条件として導き出すことを含む、請求項2に記載の濃度予測モデルの生成方法。
【請求項4】
前記最適変形条件導出ステップは、
前記スペクトル変形及び組合せステップにおいて生成した各変形条件別の変形スペクトルの基準類似度の間の標準偏差である基準類似度の標準偏差(Ak)、実測濃度との相関係数(Bk)、スペクトル変形の前後の多変量比(Ck)をそれぞれ算出し、これらの線形関数であるFk(Ak,Bk,Ck)=aAk+bBk+cCk(a、b、cは定数値)の値が最大となる変形条件を最適変形条件として導き出くことを含み、
前記基準類似度の標準偏差を求めるための基準類似度、実測濃度との相関係数、スペクトル変形の前後の多変量比は、それぞれ下記の数式1,2、3によって算出される、請求項2に記載の濃度予測モデルの生成方法。
【数6】
(αは、組み合わせられた変形スペクトルの強さの組み合わせであり、βは、基準スペクトルの強さの組み合わせである。)
【数7】
(Xは基準類似度であり、Yは分析物質の実際の物質の濃度であり、Cov(X,Y)は、基準類似度(X)とこれに相当する分析物質の濃度(Y)との共分散値であり、Var(X)及びVar(Y)は、基準類似度(X)とこれに相当する分析物質の濃度(Y)の分散値である。)
【数8】
(多変量数は、取得したスペクトルのX軸に相当する所定の波長帯域において取得するデータの数である。)
【請求項5】
基本スペクトルを2以上の変形条件に基づいて変形して、基本スペクトルに対応する変形スペクトルを生成するスペクトル変形モジュールと、
前記各変形条件に基づく変形スペクトルの基準類似度の標準偏差、各変形スペクトルに対応する物質の実測濃度との相関係数、スペクトル変形の前後の多変量比をそれぞれ算出し、これらの和が最大となる変形条件に基づいて変形された最適変形スペクトルを算出する最適変形スペクトル算出モジュールと、
前記最適変形スペクトルと対応する物質の実測濃度を学習データとして機械学習して濃度予測モデルを生成する機械学習モジュールと、
を含んでなる、濃度予測モデルの生成アルゴリズムが記録されたコンピューター記録媒体。
【請求項6】
分析物質の濃度を予測するための濃度予測方法であって、
濃度を予測しようとする物質の予測スペクトルを取得する予測スペクトル取得ステップと、
前記取得した予測スペクトルを最適変形条件にて変形して最適変形予測スペクトルを生成する最適変形予測スペクトル生成ステップと、
前記最適変形予測スペクトルを濃度予測モデルに入力して濃度予測値を出力する予測濃度出力ステップと、
を含んでなり、
前記最適変形条件は、
実測濃度値が既知の所定の物質の基本スペクトルを2以上の互いに異なる変形条件に基づいて変形して変形スペクトルを生成するスペクトル変形及び組合せステップと、
前記生成した変形スペクトルから最適変形条件を導き出す最適変形条件導出ステップと、
によって導き出された変形条件であり、
前記濃度予測モデルは、
前記基本スペクトルを前記最適変形条件にて変形した最適変形スペクトルと、それに対応する実測濃度値とを機械学習して最適変形スペクトルから予測濃度値を算出するように学習されたニューラルネットワークまたは濃度予測アルゴリズムである、濃度予測方法。
【請求項7】
前記最適変形条件導出ステップは、
前記スペクトル変形及び組合せステップにおいて生成した変形スペクトルの基準類似度の標準偏差、実測濃度との相関係数、スペクトル変形の前後の多変量比をそれぞれ算出し、これらの和が最大となる変形条件を最適変形条件として導き出すことを含む、請求項6に記載の濃度予測方法。
【請求項8】
前記最適変形条件導出ステップは、
前記スペクトル変形及び組合せステップにおいて生成した各変形条件別の変形スペクトルの基準類似度の間の標準偏差である基準類似度の標準偏差(Ak)、実測濃度との相関係数(Bk)、スペクトル変形の前後の多変量比(Ck)をそれぞれ算出し、これらの線形関数であるFk(Ak,Bk,Ck)=aAk+bBk+cCk(a、b、cは定数値)の値が最大となる変形条件を最適変形条件として導出することを含み、
前記基準類似度の標準偏差を求めるための基準類似度、実測濃度との相関係数、スペクトル変形の前後の多変量比は、それぞれ下記の数式1,2、3によって算出される、請求項6に記載の濃度予測方法。
【数9】
(αは、組み合わせられた変形スペクトルの強さの組み合わせであり、βは、基準スペクトルの強さの組み合わせである。)
【数10】
(Xは基準類似度であり、Yは分析物質の実際の物質の濃度であり、Cov(X,Y)は、基準類似度(X)とこれに相当する分析物質の濃度(Y)との共分散値であり、Var(X)及びVar(Y)は、基準類似度(X)とこれに相当する分析物質の濃度(Y)の分散値である。)
【数11】
(多変量数は、取得したスペクトルのX軸に相当する所定の波長帯域において取得するデータの数である。)
【請求項9】
分析物質の濃度を予測するための濃度予測システムであって、
学習データの生成のための物質の基本スペクトル、または濃度を測定しようとする物質のスペクトルである予測スペクトルを取得するスペクトルデータ取得部と、
既に取得した物質の濃度データ及び公知の濃度測定器を用いて測定しようとする物質の実測濃度を取得する物質濃度データ取得部と、
前記基本スペクトル及び予測スペクトルの変形スペクトルの生成、最適変形条件の算出、機械学習の遂行及び濃度予測モデルの生成を行う演算及び制御装置と、
前記スペクトルデータ取得部において取得した分析物質の基本スペクトル、物質濃度データ取得部において取得した実測物質濃度値及び前記演算及び制御装置において生成した濃度予測モデルを記憶するメモリーと、
を備えてなる、濃度予測システム。
【請求項10】
前記演算及び制御装置は、
スペクトルデータ取得部において取得したスペクトルをスペクトル変形アルゴリズムに基づいてスペクトル変形しかつ組み合わせ、
変形されたスペクトルのうち、最適の濃度予測の正確度を示す変形スペクトルを最適変形スペクトルとして導き出し、
前記最適変形スペクトル及び対応する物質の実測濃度を学習データとして機械学習を行って濃度予測モデルを生成し、
生成された濃度予測モデルに前記予測スペクトルを入力して濃度の予測を行う、請求項9に記載の濃度予測システム。
【請求項11】
前記メモリーは、
前記スペクトル取得部において取得したスペクトルを変形条件に基づいて変形するスペクトル変形及び組合せモジュールと、
変形スペクトルのうち、最適の濃度予測の正確度を示す最適スペクトルを取得し、かつ最適変形条件を導き出す最適スペクトル導出モジュールと、
前記最適変形スペクトル及び実測物質濃度を学習データとして活用して機械学習を進め、濃度予測モデルを生成する機械学習モジュールと、
前記予測スペクトルを入力データとして濃度予測値を算出する濃度予測モジュールと、
を備える、請求項9に記載の濃度予測システム。
【請求項12】
濃度を予測しようとする物質の予測スペクトルを変形して変形スペクトルを生成するスペクトル変形モジュールと、
前記スペクトル変形モジュールを呼び出して、最適変形条件に基づいて前記予測スペクトルを変形した最適変形予測スペクトルを算出する最適スペクトル導出モジュールと、
前記最適変形予測スペクトルの入力を受けて予測濃度値を算出する濃度予測モジュールと、
を含んでなり、
前記濃度予測モジュールは、
前記最適変形条件に基づいて変形されたスペクトルと対応する物質の実測濃度に基づいて機械学習して生成された、濃度予測アルゴリズムが記録されたコンピューター記録媒体。
【請求項13】
分析物質の濃度を予測する濃度測定器であって、
分析物質のスペクトルである予測スペクトルを取得するスペクトルデータ取得部と、
最適変形条件に基づいて予測スペクトルを変形するスペクトル変形モジュール及び前記最適変形条件に基づいて前記予測スペクトルを変形した最適変形予測スペクトルから濃度予測値を算出する濃度予測モジュールが搭載されたメモリー装置と、
前記メモリー装置に搭載された前記濃度予測モジュールを読み込んで濃度を予測しようとする予測スペクトルから濃度予測値を算出するように制御する演算制御装置と、
を備える、濃度測定器。
【請求項14】
前記濃度測定器は、
外部のメモリー装置を接続するか又は、外部機器からデータの入出力を受けるデータ接続部を更に備えてなり、
前記メモリー装置は、
取り外し可能な形態で前記データ接続部に接続される、請求項13に記載の濃度測定器。
【請求項15】
外部のメモリー装置を接続するか又は、外部機器からデータの入出力を受けるデータ接続部を更に備えてなり、
前記メモリー装置は、
最適変形条件に基づいて前記予測スペクトルを変形するスペクトル変形モジュール及び前記最適変形条件に基づいて前記予測スペクトルを変形した最適変形予測スペクトルから濃度予測値を算出する濃度予測モジュールを前記データ接続部を介して外部機器から受信して記憶する、請求項13に記載の濃度測定器。
【請求項16】
前記データ接続部は、前記スペクトルデータ取得部と統合的に構成された、請求項14に記載の濃度測定器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶液内の物質の濃度をリアルタイムにて確認する方法に関し、より詳細には、濃度予測アルゴリズムに基づいて、物質の濃度が変化する工程溶液のリアルタイムの光学分析スペクトルを学習して分析しようとする物質の濃度を正確に予測する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶液内の物質の化学的な情報を取得するためには、赤外分光法(IR)、ラマン(Raman)分光法、紫外可視(UV-vis)分光法などの分光器を用いた光学的な分析法を用いてスペクトルを取得することができ、取得したスペクトルに基づいて物質の化学的な情報を取り出し、かつ濃度を計算する。
【0003】
従来の光学的な分析法を用いた物質濃度の分析の場合、多種多様な化学物質の混合状態によって成分に応じた物質の化学的な情報の区別がつき難く、これを区別して分析するために長時間がかかるため、リアルタイムにて目標とする分析物質の濃度を測定することが困難であるという問題が生じる。このような問題を解決するために、従来の技術は、マシンラーニングに基づく重回帰分析(Multi-Regression Analysis)、多項式回帰分析(Polynomial Regression Analysis)、部分的最小二乗(Partial Least Squares;PLS)や純分析物質信号(net analyte signal;NAS)アルゴリズムを利用することにより、多変量線形組み合わせを行うことで、分析物質の濃度を予測していた。このような方式は、特許文献1に開示されている。しかしながら、分析物質の濃度と分光器から取得したスペクトルとの関係が線形的ではない場合、アルゴリズムモデルの形成及び濃度の予測に対する正確度が低いという問題が生じる。なお、溶液内の分析物質の濃度に応じたスペクトルの変化が微々たるものである場合、モデルの学習率が低下するという問題がある。
【0004】
一方、マシンラーニングに基づく非線形回帰学習を行うことが可能な決定木(Decision Tree)、ランダムフォレスト(Random Forest)、サポートベクターマシン(Support Vector Machine)及びディープラーニング(深層学習;deep-learning)などを用いて、分析物質のスペクトルから濃度を予測することができる。しかし、これらの方式は、スペクトルに関する学習パラメーターの調節だけで予測モデルを生成するものであって、スペクトルが含んでいる多種多様な物質情報によって、目標物質の濃度の予測に対する正確度が低い。
【0005】
このような問題を改善するために、特許文献2は、背景信号、類似度区間の比較などを用いたスペクトル変形によってさらに正確な濃度の予測を試みている。
【0006】
しかしながら、これらの先行技術は、スペクトルの単なる変形によって濃度の予測を行うものであって、最適の濃度の予測のためのスペクトル前処理技術が不十分であった。上述した問題を解決するために、本発明は、物質の変形されたスペクトルによって機械学習(マシンラーニング)を行って濃度予測モデルを生成し、分析物質のスペクトルを変形して前記生成された濃度予測モデルに入力することにより、濃度予測モデルの正確度を向上させることのできる分析物質の濃度予測方法及びシステムを提供することを目的としている。
【0007】
関連する先行技術としては、下記に掲げるような特許文献が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】大韓民国公開特許第2020-0018177号公報
【特許文献2】日本国登録特許第6871195号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した問題を解決するために案出されたものであって、その目的は、濃度予測モデルに分析物質のスペクトル変形アルゴリズムを追加して濃度予測の正確度を向上させることのできる分析物質の濃度予測方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、機械学習によって対象物質の濃度を予測するための濃度予測モデルを生成する方法であって、濃度が既知の物質の基本スペクトルを所定の変形条件に基づいて変形した最適変形スペクトルを学習データとして生成する学習データ生成ステップと、前記学習データ生成ステップにおいて生成した、所定の変形条件に基づいて変形した最適変形スペクトルと、前記最適変形スペクトルとそれぞれ対応する物質の実測濃度とを機械学習させて濃度予測モデルを生成する濃度予測モデル生成ステップと、を含む濃度予測モデルの生成方法を提供する。
【0011】
前記所定の変形条件は、2以上の互いに異なる変形条件に基づいて基本スペクトルを変形して変形スペクトルを生成するスペクトル変形及び組合せステップと、前記変形スペクトルから最適変形条件を導き出す最適変形条件導出ステップと、によって導出した最適変形条件であることを特徴としてもよい。
【0012】
前記最適変形条件導出ステップは、前記スペクトル変形及び組合せステップにおいて生成した変形スペクトルの基準類似度の標準偏差、実測濃度との相関係数、スペクトル変形の前後の多変量比をそれぞれ算出し、これらの和が最大となる変形条件を最適変形条件として導き出すものであることを特徴としてもよい。
【0013】
また、上記の目的を達成するために、本発明は、基本スペクトルを2以上の変形条件に基づいて変形して、基本スペクトルに対応する変形スペクトルを生成するスペクトル変形モジュールと、前記各変形条件に基づく変形スペクトルの基準類似度の標準偏差、各変形スペクトルに対応する物質の実測濃度との相関係数、スペクトル変形の前後の多変量比をそれぞれ算出し、これらの和が最大となる変形条件に基づいて変形された最適変形スペクトルを算出する最適変形スペクトル算出モジュールと、前記最適変形スペクトルと対応する物質の実測濃度を学習データとして機械学習して濃度予測モデルを生成する機械学習モジュールと、を含んでなる濃度予測モデルの生成アルゴリズムが記録されたコンピューター記録媒体を提供する。
【0014】
さらに、上記の目的を達成するために、本発明は、分析物質の濃度を予測するための濃度予測方法において、濃度を予測しようとする物質の予測スペクトルを取得する予測スペクトル取得ステップと、前記取得した予測スペクトルを最適変形条件にて変形して最適変形予測スペクトルを生成する最適変形予測スペクトル生成ステップと、前記最適変形予測スペクトルを濃度予測モデルに入力して濃度予測値を出力する予測濃度出力ステップと、を含んでなり、前記最適変形条件は、実測濃度値が既知の所定の物質の基本スペクトルを2以上の互いに異なる変形条件に基づいて変形して変形スペクトルを生成するスペクトル変形及び組合せステップと、前記生成した変形スペクトルから最適変形条件を導き出す最適変形条件導出ステップと、によって導き出された変形条件であり、前記濃度予測モデルは、前記基本スペクトルを前記最適変形条件にて変形した最適変形スペクトルと、それに対応する実測濃度値とを機械学習して最適変形スペクトルから予測濃度値を算出するように学習されたニューラルネットワークまたは濃度予測アルゴリズムであることを特徴とする、濃度予測方法を提供する。
【0015】
前記最適変形条件導出ステップは、前記スペクトル変形及び組合せステップにおいて生成した変形スペクトルの基準類似度の標準偏差、実測濃度との相関係数、スペクトル変形の前後の多変量比をそれぞれ算出し、これらの和が最大となる変形条件を最適変形条件として導き出すものであることを特徴としてもよい。
【0016】
さらにまた、上記の目的を達成するために、本発明は、分析物質の濃度を予測するための濃度予測システムにおいて、学習データの生成のための物質の基本スペクトル、または濃度を測定しようとする物質のスペクトルである予測スペクトルを取得するスペクトルデータ取得部と、既に取得した物質の濃度データ及び公知の濃度測定器を用いて測定しようとする物質の実測濃度を取得する物質濃度データ取得部と、前記基本スペクトル及び予測スペクトルの変形スペクトルの生成、最適変形条件の算出、機械学習の遂行及び濃度予測モデルの生成を行う演算及び制御装置と、前記スペクトルデータ取得部において取得した分析物質の基本スペクトル、物質濃度データ取得部において取得した実測物質濃度値及び前記演算及び制御装置において生成した濃度予測モデルを記憶するメモリーと、を備えてなる濃度予測システムを提供する。
【0017】
演算及び制御装置は、スペクトルデータ取得部において取得したスペクトルをスペクトル変形アルゴリズムに基づいてスペクトル変形しかつ組み合わせ、変形されたスペクトルのうち、最適の濃度予測の正確度を示す変形スペクトルを最適変形スペクトルとして導き出し、前記最適変形スペクトル及び対応する物質の実測濃度を学習データとして機械学習を行って濃度予測モデルを生成し、生成された濃度予測モデルに前記予測スペクトルを入力して濃度の予測を行うことを特徴としてもよい。
【0018】
前記メモリーは、スペクトル取得部において取得したスペクトルを変形条件に基づいて変形するスペクトル変形及び組合せモジュールと、変形スペクトルのうち、最適の濃度予測の正確度を示す最適スペクトルを取得し、かつ最適変形条件を導き出す最適スペクトル導出モジュールと、最適変形スペクトル及び実測物質濃度を学習データとして活用して機械学習を進め、濃度予測モデルを生成する機械学習モジュールと、予測スペクトルを入力データとして濃度予測値を算出する濃度予測モジュールと、を含むことを特徴としてもよい。
【0019】
さらにまた、上記の目的を達成するために、本発明は、濃度を予測しようとする物質の予測スペクトルを変形して変形スペクトルを生成するスペクトル変形モジュールと、前記スペクトル変形モジュールを呼び出して、最適変形条件に基づいて予測スペクトルを変形した最適変形予測スペクトルを算出する最適スペクトル導出モジュールと、前記最適変形予測スペクトルの入力を受けて予測濃度値を算出する濃度予測モジュールと、を含んでなり、前記濃度予測モジュールは、最適変形条件に基づいて変形されたスペクトルと対応する物質の実測濃度に基づいて機械学習して生成されたことを特徴とする濃度予測アルゴリズムが記録されたコンピューター記録媒体を提供する。
【0020】
さらにまた、上記の目的を達成するために、本発明は、分析物質の濃度を予測する濃度測定器において、分析物質のスペクトルである予測スペクトルを取得するスペクトルデータ取得部と、最適変形条件に基づいて前記予測スペクトルを変形するスペクトル変形モジュール及び最適変形条件に基づいて前記予測スペクトルを変形した最適変形予測スペクトルから濃度予測値を算出する濃度予測モジュールが搭載されたメモリー装置と、前記メモリー装置に搭載された濃度予測モジュールを読み込んで濃度を予測しようとする予測スペクトルから濃度予測値を算出するように制御する演算制御装置と、を備えることを特徴とする濃度測定器を提供する。
【0021】
前記濃度測定器は、外部のメモリー装置を接続したり、外部機器からデータの入出力を受けたりするデータ接続部を備えてなり、前記メモリー装置は、取り外し可能な形態で前記データ接続部に接続されることを特徴としてもよい。
【0022】
前記濃度測定器は、外部のメモリー装置を接続したり、外部機器からデータの入出力を受けたりするデータ接続部を備えてなり、前記メモリー装置は、最適変形条件に基づいて前記予測スペクトルを変形するスペクトル変形モジュール及び最適変形条件に基づいて前記予測スペクトルを変形した最適変形予測スペクトルから濃度予測値を算出する濃度予測モジュールを前記データ接続部を介して外部機器から受信して記憶することを特徴としてもよい。
【0023】
前記データ接続部は、前記スペクトルデータ取得部と統合的に構成されてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、物質の変形されたスペクトルにて機械学習を行って濃度予測モデルを生成し、分析物質のスペクトルを変形して前記生成された濃度予測モデルに入力することにより、濃度予測モデルの正確度を向上させることができる。
【0025】
さらに、本発明は、スペクトルの変形に際して、各種の変形方式のうちの最適の変形方式(変形条件)を導き出し、導き出した最適の変形方式(変形条件)により変形した変形スペクトルにて濃度予測モデルを生成し、これを活用して濃度の予測を行うことにより、物質濃度の予測に際しての正確度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の分析物質の濃度を予測する濃度予測システム及び装置を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る濃度測定器のブロック図である。
図3】本発明の実施形態に係るインバース変形方式のスペクトル変形方法である。
図4】本発明の実施形態に係るフィルターリング変形方式のスペクトル変形方法である。
図5】本発明の実施形態に係るベースライン除去変形方式のスペクトル変形方法である。
図6】本発明の実施形態に係る区間平均化変形方式のスペクトル変形方法である。
図7】本発明の実施形態に係る区間除去変形方式のスペクトル変形方法である。
図8】本発明の濃度予測モデルを生成し、分析物質の濃度を予測する濃度予測方法を示す手順図である。
図9】本発明の最適スペクトル変形条件に基づく平均二乗誤差を示すグラフである。
図10】従来の技術の濃度予測方法の濃度の予測結果を示すグラフである。
図11】本発明の濃度予測方法の濃度の予測結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下では、添付図面に基づいて、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明の実施形態について詳しく説明する。しかしながら、本発明は、種々の異なる形態に具体化可能であり、ここで説明する実施形態に何ら限定されるものではない。なお、図中、本発明を明確に説明するために、説明とは無関係な部分は省略し、明細書の全般に亘って、類似の部分には類似の図面符号を付している。
【0028】
以下、添付図面に基づいて、本発明について詳しく説明する。
【0029】
本発明は、分析物質の濃度を予測する分析物質の濃度予測方法に関する。
【0030】
より具体的には、物質濃度予測モデルにスペクトル変形アルゴリズムを追加することにより、正確度が向上した物質濃度予測システム及び方法に関する。
【0031】
1.本発明の濃度予測モデルの生成及び濃度予測方法
【0032】
本発明の濃度予測モデルは、公知の分光計など物質のスペクトルを取得することが可能な装置から取得した濃度が既知であるか、あるいは、濃度を実験的に測定することが可能な物質のスペクトルを変形し、変形したスペクトルを学習して濃度値を予測するように機械学習して生成したものである。
【0033】
1.1.学習データの生成ステップ
【0034】
本発明は、上述した濃度が既知の物質のスペクトルを変形した変形スペクトルと当該物質の実測濃度を学習データとして用いる。さらに、本発明は、最適予測モデルを生成するために、各種のスペクトル変形方法及びそれらの組み合わせによるスペクトル変形条件のうち、最適の予測モデルを生成する最適スペクトル変形条件を求め、最適スペクトル変形条件にて変形した変形スペクトルデータ及び当該物質の実測濃度を学習データとして用いる。
【0035】
1.1.1.基本スペクトルSiデータの取得ステップ(S10)
【0036】
本発明においては、学習データとして用いようとするi個の基本スペクトルをSiと書き表わす。本発明において、基本スペクトルとは、公知の分光計などを用いて取得した最初のスペクトルデータのことをいう。本発明においては、取得したi個のスペクトルSをS1,S2,…,Siと書き表わす。
【0037】
1.1.2.実測物質濃度LCiデータの取得ステップ(S20)
【0038】
上述した基本スペクトルにそれぞれ対応する物質の実測濃度データLCiを取得する。各物質の濃度データLCiは、既に濃度が既知の物質に対して基本スペクトルSiを取得した場合、既知の物質濃度データを用い、本発明の濃度測定システムに連動される公知の濃度測定器を用いて基本スペクトルを取得した物質の濃度を実験的に測定した値であってもよい。
【0039】
1.1.3.最適変形スペクトルMoSiの取得ステップ(S30)
【0040】
本発明の学習データとして用いられる変形スペクトルは、上述した基本スペクトルを後述する変形条件に基づいて変形したスペクトルである。
【0041】
本発明においては、その説明のために、スペクトル変形条件については、後述する変形条件及びそれらの組み合わせに応じて、k種類の変形条件を設定することができ、第1、第2,…,第kの変形条件をそれぞれM1,M2,…,Mkと書き表わし、最適の濃度予測モデルを生成する最適変形条件をMoと書き表わす。
【0042】
各変形条件にて変形した変形スペクトルは、例えば、変形条件M1にて基本スペクトル(Si,i=1,2,…,n)を変形した場合,M1S1,M1S2,…M1Siと書き表わし、変形条件Mkにて変形した変形スペクトルは、MkSi(k=1,2,…,n,i=1,2,…,M)と書き表わすことができるということが通常の技術者にとって自明である筈である。
【0043】
本発明においては、これらの変形スペクトルMkSiのうち、最適の濃度予測の正確度を示す最適変形条件であるMoにて変形した変形スペクトルMoSiを学習データとして用いる。
【0044】
(1)スペクトルの変形及び組合せステップ
【0045】
最適変形条件を導き出すために、基本スペクトルSiを多種多様な変形条件に基づいて変形し、かつ組み合わせるステップである。
【0046】
以下に本発明において用いる5種類の方式の基本スペクトル変形条件の例を示す。本発明においては、下記の5種類の変形方法のうちのどちらか一方を用いることができれば、それらのうちの少なくとも2種以上の方式を選択的に組み合わせてスペクトル変形条件として用いることもできるが、これらの5種類の方式及びそれらの組み合わせのみに何ら制限されるものではなく、本発明の出願日の前に公知のスペクトル変形条件及びそれらの組み合わせをスペクトル変形条件として用いることができる。
【0047】
(i)変形条件1:インバース変形
【0048】
図3は、本発明の実施形態に係るインバース変形方式のスペクトル変形方法を示す。インバース変形は、取得したスペクトルのデータ値を逆数化させる変形を意味する。例えば、スペクトルの強さ(Intensity)をIxとしたとき、インバース変形により表わされるスペクトルの強さはに変形されることができる。このとき、Rは、スペクトルが大きな偏差を除去する変数であって、取得したインバース変形スペクトルのデータの偏差が特定のレベル以上に大きく現れないようにする。
【0049】
(ii)変形条件2:フィルターリング変形
【0050】
図4は、本発明の実施形態に係るフィルターリング変形方式のスペクトル変形方法を示す。フィルターリング変形は、取得したスペクトルの一部を選別的に遮断し、残りは透過させる方式の変形を意味する。スペクトルのピーク(peak)のうち、分析物質とは無関係なピークをフィルターリングすることにより、実際の分析物質と取得したスペクトルとの間の関係性を向上させることができる。
【0051】
(iii)変形条件3:ベースライン除去変形
【0052】
図5は、本発明の実施形態に係るベースライン除去変形方式のスペクトル変形方法を示す。分光器を用いてスペクトルを取得する場合、システムの特性によって現れる雑音(ノイズ)と測定物質サンプルとのバラツキなどを理由に、スペクトルデータは、理想的なベースラインを有することができない。したがって、スペクトルデータからベースラインの移動などによる影響を除去するためにベースラインを除去することにより、測定物質の濃度とスペクトルとの間の関係性を向上させることができる。ベースライン除去変形の場合、スペクトル同士の間のデータの類似性が増加する可能性があるため、測定物質の種類または分析方法によって使用有無を判断することができる。
【0053】
(iv)変形条件4:区間平均化変形
【0054】
図6は、本発明の実施形態に係る区間平均化変形方式のスペクトル変形方法を示す。区間平均化変形は、取得したスペクトルにおいて所定の区間のデータ値の平均化処理を施す変形を意味する。このとき、所定の区間のスペクトルデータのみならず、変数もすべて平均化させる。区間平均化変形もまた、分光器システムの雑音による雑ピークを除去して測定物質濃度とスペクトルとの間の関係性を向上させることができる。
【0055】
(v)変形条件5:区間除去変形
【0056】
図7は、本発明の実施形態に係る区間除去変形方式のスペクトル変形方法を示す。区間除去変形は、取得したスペクトルから所定の区間のデータ値を削除する変形を意味する。スペクトルのピークまたはデータのうち、測定しようとする分析物質とは無関係なピークまたはデータがある場合、区間除去変形を行うことで、全体の区間における測定物質の濃度とスペクトルとの間の関係性を向上させることができる。
【0057】
(2)最適変形条件Moの導出ステップ
【0058】
以下に説明する手順によって最適変形条件を導き出すステップである。
【0059】
本発明の発明者は、最適変形条件を各変形条件により変形された変形スペクトル(M1Si,M2S2,…,MkSi)の基準類似度の標準偏差(Ak)、濃度との相関係数(Bk)、多変量比(Ck)の関数値が最大となるようにする変形条件を最適変形条件に設定する場合、最適の予測モデルが生成されることを判明させ、これを本発明に適用した。
【0060】
特に、前記Ak,Bk,Ck値の線形関数と書き表わされるFk(Ak,Bk,Ck)=aAk+bBk+cCkの値が最大となる変形条件を最適変形条件に設定した。ここで、変形条件M1にて変形した場合、前記線形関数は、F1(A1,B1,C1)と書き表わされ、a、b、cは、ユーザーが設定する定数値であり、これは省略可能である。
【0061】
すなわち、本発明において、最適変形条件は、前記Fk(Ak,Bk,Ck)が最大となるkを導き出すことを意味し、最適変形条件Moにて変形したスペクトルに対するFo(Ao,Bo,Co)=Ao+Ao+Co値は、Fk(k=1,2,…,n)値のうちの最大値である。
【0062】
好ましくは、本発明において、最適変形条件は、前記Fk(Ak,Bk,Ck)が最大となるkを導き出すことを意味し、最適変形条件Moにて変形したスペクトルに対するFo(Ao,Bo,Co)=aAo+bAo+cCo値は、Fk(k=1,2,…,n)値のうちの最大値であり、このとき、a、b、cの各定数値は、6.5~7.7、0.5~2.0、2.5~4.0の範囲から選択された値であってもよく、さらに好ましくは、a、b、cは、それぞれ6.69、1.52、3.59として選択されてもよい。
【0063】
例えば、本発明のスペクトル最適変形条件導出部においては、上述した変形条件1~10にて学習データとして取得したi個のスペクトルSiをそれぞれ変形し、かつ組み合わせたk種類の変形スペクトルに対して、Fk値を計算し、最も大きいFkを示すk番目の変形条件Mkを最適変形条件Moとして導き出す。
【0064】
以下では、変形スペクトルの基準類似度の標準偏差(Ak)、濃度との相関係数(Bk)、多変量比(Ck)の値について説明する。
【0065】
(i)基準類似度の標準偏差(A)
【0066】
最適スペクトル変形条件を導き出すために、前記スペクトル変形方式またはそれらの組み合わせに応じて変形した、変形条件を異ならせたそれぞれの変形スペクトルと基準スペクトルとの基準類似度の標準偏差を計算する。
【0067】
ここで、基準スペクトルは、すべての波長帯域における強さ(intensity)がK(0ではない定数)である直線状のスペクトルであり、したがって、基準類似度の標準偏差は、すべての変形スペクトルと前記基準スペクトルとの基準類似度の標準偏差をそれぞれ計算する。例えば、変形前の基本スペクトルのサンプルが10個(S1,S2,…,S10)であり、10種類の変形組み合わせ方式(M1,M2,…,M10)によりそれぞれを変形したならば、100個の変形スペクトル(M11,…,M110,M21,…,M210,…M1010)が生成され、基準スペクトルを基準として100個の基準類似度を求めることができる。
【0068】
前記それぞれの変形条件に基づく変形スペクトルの基準類似度をそれぞれ求める。
【0069】
例えば、変形条件M1に基づいて変形された変形スペクトルM1Siに対して基準類似度の標準偏差(A1)を求め、このような方式により変形条件M2,…,Mkに基づいて変形された変形スペクトルM2Si,…,MkSiに対する基準類似度の標準偏差(Ak)を計算する。
【0070】
前記基準類似度の標準偏差は、基準スペクトルに比べての、前記変形条件を異ならせた変形スペクトルのコサイン(cosine)類似度を計算して求められるが、コサイン類似度は、直線状の基準スペクトルと変形スペクトル、すなわち、2つのスペクトルの間のコサイン角度を用いて求めることが可能な類似度を示すものであって、値が1に近づけば近づくほど、類似度が高いと判断することができる。基準類似度は、下記の数式1に従って計算される。
【0071】
【数1】
【0072】
上記の数式1において、αは、組み合わせられた変形スペクトルの強さの組み合わせを示し、βは、基準スペクトルの強さの組み合わせを示す。基準スペクトルの強さは、すべての多変量に対して一定の値を有する調整可能な定数である。
【0073】
上記の数式1によって、各変形条件に基づく変形スペクトルと基準スペクトルとの基準類似度値が計算され、基準類似度の標準偏差は、前記基準類似度の間の標準偏差を計算した結果値(Ak)を意味する。他の実施形態においては、変形スペクトルの数が所定の基準以上に多い場合、類似度間の標準偏差を類似度の平均で割って計算した結果値
【数2】
【0074】
を意味することもある。したがって、本発明において計算される基準類似度の標準偏差Aは、それぞれの変形スペクトル間の差の度合いを類推することが可能な値であって、変形スペクトル間の形状差を敏感に認識することができる。
【0075】
変形条件M1にて変形した変形スペクトルM1iに対する基準類似度の標準偏差をA1とし、これは、変形スペクトルM11,M12,…,M1i
【数3】
【0076】
として計算される。
【0077】
このような方式により、変形条件Mkにて変形した変形スペクトルMkiに対する基準類似度の標準偏差(Ak)を求める。
【0078】
(ii)物質濃度との相関係数(B)
【0079】
物質濃度との関係性は、前記スペクトルの基準類似度とこれに相当する実際の物質の濃度(実測濃度LCi)との間の関係を示す共分散値を最大値1に正規化した正規化値(normalized value)(B)を意味する。共分散値を最大値1に正規化した値は、-1から+1までを範囲として有することを特徴とする共分散の相関係数と同じであるため、共分散の相関係数にて計算しても結果値は同じである。すなわち、目標の物質濃度との関係性の計算は、Bを用いて変形スペクトルの形状とこれに応じた物質濃度との間の関係性を推定することができる。
【0080】
共分散の正規化値または共分散の相関係数は、下記の数式2に従って計算し、結果値は、いずれも-1以上、かつ、+1以下の範囲を有する。
【0081】
【数4】
【0082】
上記の数式2において、Xは、基準類似度を示し、Yは、分析物質の実際の物質の濃度を示す。
【0083】
また、Cov(X,Y)は、基準類似度(X)とこれに相当する分析物質の濃度(Y)との共分散値を示し、Var(X)及びVar(Y)は、基準類似度(X)とこれに相当する分析物質の濃度(Y)の分散値を示す。
【0084】
以上において、実際の物質の濃度とは、実験または別途の方式により自ら測定した実際の物質の濃度、あるいは、既知の物質の実際の濃度を意味する。この過程は、実際の物質の濃度と変形スペクトルとの間の関係性を学習の要素として反映する過程である。
【0085】
先に学習データとして取得したスペクトル対応物質の実際の濃度値であるLCi値が上記の数式2においてY値として入力される。X値としては、先に計算された基準類似度値が入力される。
【0086】
上述した計算式に従って計算された共分散値の正規化値(Bk)は、変形スペクトルの組み合わせに応じてそれぞれ計算する。例えば、変形組み合わせ方式Mk変形スペクトルM1Siに対して基準類似度を求め、これにより、対応物質の実際の濃度値LCiにて共分散値の正規化値(Bk)を計算する。
【0087】
(iii)スペクトル変形の前後の多変量比(C)
【0088】
本発明においては、最適スペクトル変形条件の他の変数として多変量比(C)を計算する。多変量比は、
【数5】
【0089】
と定義する。本発明における多変量数は、取得したスペクトルのX軸に相当する所定の波長帯域において取得するデータの数を意味する。例えば、分光器において1000nm~3000nmの波長帯域のスペクトルを1nmずつ取得したならば、このときの多変量数は、(3000-1000)であって、2000を有する。もし、変形方法のうち、区間除去変形を用いて1000-1500nmのスペクトルが除去されたならば、変形後の多変量数は(3000-1500)であって、合計で1500の多変量数を有する。他の例としては、区間平均化変形を行う場合には設定された区間の数に多変量数が減ることになる。
【0090】
このような方式によりスペクトル変形前の多変量数に比べてのスペクトル変形後の多変量数を計算してC値を求めることができ、このときのCは、MLモデルを用いてスペクトルの変形を学習するとき、スペクトル変形後の変数の数に対する自由度を推定することができる。
【0091】
上述した計算式に従って計算された多変量比(Ck)は、スペクトル変形前とスペクトル変形後のデータの数字によって異なってき、したがって、スペクトル変形によるデータの数字に対する自由度の代表値を示す。
【0092】
(3)最適変形スペクトルMoSiデータの算出
【0093】
上述した方式によりi*k個の変形スペクトルMkSiに対してFk(Ak,Bk,Ck)を最大とする変形条件であるMoを求めた後、基本スペクトルSiを変形条件Moにて変形して最適変形スペクトルMoSiデータを算出する。最適変形スペクトルMoSiデータは、先にFk(Ak,Bk,Ck)の算出過程において生成していたk=oである変形スペクトルMoSiデータをそのまま用いてもよい。
【0094】
1.2.機械学習及び濃度予測モデルの生成ステップ(S40)
【0095】
本発明は、機械学習によって上述した基本スペクトルSiを最適の変形条件Moにて変形した最適変形スペクトルMoSiとそれぞれ対応する物質の実測濃度LCiを学習データとして機械学習させて濃度予測モデルを生成する。
【0096】
本発明において生成する濃度予測モデルの学習に用いられるニューラルネットワークや学習モデルは、1種類の特定の方式に何ら制限されるものではなく、公知のスペクトルデータから濃度予測モデルを生成するニューラルネットワークや学習モデルが用いられてもよい。
【0097】
このように、最適変形スペクトルMoSiにて学習して生成された濃度予測モデルは、後述する濃度予測ステップにおいて濃度の予測に用いられる。
【0098】
1.3.濃度予測ステップ
【0099】
前記生成された濃度予測モデルを活用して新たな物質の濃度を予測する。濃度の予測は、予測スペクトルPSの取得ステップ、取得した予測スペクトルを上述した最適変形条件にて変形して最適変形予測スペクトルP.MoSを生成する最適変形予測スペクトルの生成ステップ及び最適変形予測スペクトルP.MoSデータを前記生成した濃度予測モデルに入力して予測濃度値PLCを出力する予測濃度の出力ステップを含む。
【0100】
(1)予測スペクトルPSの取得ステップ(P10)
【0101】
スペクトル取得部によって、濃度を予測しようとする物質のスペクトルを取得するステップである。
【0102】
(2)最適変形予測スペクトルP.MoSの生成ステップ(P20)
【0103】
上述した最適変形条件にて予測スペクトルを変形して最適変形予測スペクトルを生成するステップである。
【0104】
(3)予測濃度PLCの出力ステップ(P30)
【0105】
上述した最適変形予測スペクトルを、上述した最適変形スペクトル組にて機械学習して生成した濃度予測モデルに入力し、その出力である濃度予測値PLCを取得するステップである。
【0106】
<本発明の最適変形条件の検出に基づく予測モデルの性能の検証>
【0107】
図9は、スペクトル変形条件に基づく平均二乗誤差を示す。グラフは、F(A,B,C)に基づくlog(MSE平均)-1を示すが、MSEは、平均二乗誤差(Mean Square Error)を意味し、図9においては、F(A,B,C)が高ければ高いほど、log(MSE平均)-1が高い傾向を示すということを確認することができる。平均二乗誤差が低ければ低いほど、MLモデルを用いた濃度予測値の差が小さいということを意味し、したがって、生成されたMLモデルの正確度が高いということを示す。すなわち、MSE平均が低ければ低いほど、スペクトル変形を用いて高い正確度を有するMLモデルを生成する上で有利であるということを意味する。
【0108】
図10及び図11は、それぞれ従来の技術の濃度予測方法の濃度の予測結果及び本発明の濃度予測方法の濃度の予測結果を示すグラフを示す。図10は、従来の技術に従い、スペクトル変形を行わずに、ディープニューラルネットワーク(DNN)学習を進めたモデルに対する検証結果を示し、図11は、本発明に従い最適スペクトル変形を行ってDNN学習を進めたモデルに対する検証結果を示す。
【0109】
本発明における学習モデルの生成及び検証に際して、使用したデータは、培養器内の工程溶液のリアルタイムのスペクトルから基質として用いられるグルコースの濃度を予測するモデルにて予測及び結果を検証した。この検証において、最適変形条件Moにて変形したスペクトルに対するFo(Ao,Bo,Co)=aAo+bAo+cCo値は、Fk(k=1,2,…,n)値のうちの最大値であり、このとき、a、b、cは、それぞれ6.69、1.52、3.59として適用された。
【0110】
前記R2にて描かれる線は、回帰決定係数を示すものであって、その値が大きければ大きいほど、モデルの予測結果がさらに良好であるということを意味する。
【0111】
学習及び生成された濃度予測MLモデルを評価するために、濃度予測MLモデルの学習及び生成に用いられないように予め除外しておき、この除外されたデータを用いてモデルの性能をテストするが、このようなデータを検証データ(validation data)と称する。前記グラフ中において、緑色の点にて示されたfimseは、MLモデルの学習及び生成に用いられていない検証データに基づいて平均二乗誤差を評価した結果を示す。また、前記グラフ中において、黒色の点(ドット)にて示されたmmseは、MLモデルの学習及びMLモデルの生成に用いられた学習データに基づいて平均二乗誤差(Mean Squared Error;MSE)を評価した結果であり、赤色の点にて示されたpmseは、MLモデルの学習及び形成に用いられていない入力データに基づいて平均二乗誤差を評価した結果を示す。
【0112】
図11の本発明の最適スペクトル変形過程を用いて生成されたMLモデルの濃度予測の正確度をみると、図10の従来の技術に比べてR2値が高いということを確認することができ、pmse及びfimse点データもまた、予測検証線の上にさらに精度よく、しかも正確に分布しているということを確認することができる。
【0113】
2.本発明に係る物質濃度予測システム100
【0114】
図1は、本発明に係る物質濃度予測システム100を示す図である。
【0115】
図1を参照すると、本発明は、光学的な分析方法のための分光器(Spectrometer)に基づくものであり、分光器を用いて濃度が既知の物質及び濃度を予測しようとする物質のスペクトルを取得し、取得したスペクトルを分析して物質の濃度値を出力する。また、検出されたスペクトルと分析物質の濃度値は、濃度予測モデルの学習データとして適用され、濃度予測モデルを用いてさらに正確な濃度の予測のためのスペクトルの最適変形条件が導き出され、濃度予測モデルは、最適変形条件によりスペクトルを変形して予測しようとする分析物質の濃度を予測する。
【0116】
図1中において、実線にて示されるデータの流れは、濃度予測モデルを生成するのに用いられるデータの流れを示すものであり、点線にて示されるデータの流れは、生成された濃度予測モデルを用いて物質の濃度を予測する手順に伴うデータの流れを示すものである。
【0117】
本発明の物質濃度予測システム100は、スペクトルデータ取得部10と、濃度データ取得部20と、演算部30と、メモリー40と、を備えてなる。以下、各構成要素について説明する。
【0118】
2.1.スペクトルデータ取得部10
【0119】
スペクトル取得部としては、光学的な分析のために公知の分光器及び分光測定器(spectrometer)が用いられることが可能である。分光器を用いて濃度を測定しようとする分析物質のスペクトルを取得し、前記取得したスペクトルは、分光器の種類に応じた分析方法を利用することにより、分析物質の濃度値として算出することができる。
【0120】
本発明のスペクトル取得部は、学習データ用の基本スペクトルSi、濃度の予測のための予測スペクトルPSiを取得する。スペクトル取得部10は、スペクトロメーターなどの外部機器、外部のスペクトル生成装置、メモリー40などから基本スペクトルまたは予測スペクトルを取得することができ、データの接続のためのデータ接続部11を備えていてもよい。
【0121】
(1)基本スペクトルSiの取得
【0122】
スペクトルデータ取得部10は、濃度が既知の物質の分光器から基本スペクトルを取得して、取得した基本スペクトル組を学習データとして用いる。本発明においては、取得したi個のスペクトルSをS1,S2,…,Siと書き表わす。基本スペクトルは、後述する機械学習モジュール43において学習データとして用いるべき変形スペクトルMSiの生成の根幹になる。
【0123】
基本スペクトルSiは、既に取得したスペクトルデータの形態でメモリーに予め記憶されてもよく、この場合、スペクトル取得部は、メモリーから基本スペクトルSiを取得する。
【0124】
(2)予測スペクトルPSiの取得
【0125】
スペクトルデータ取得部10はまた、生成した濃度予測モデルの入力として活用されて濃度を予測するための物質の予測スペクトルPSiを取得する。取得された予測スペクトルデータは、最適変形条件に基づいて予測最適変形スペクトルPMoSiに変形され、上述した手順に従って生成した濃度予測モデルに入力されて物質の濃度の予測に用いられる。
【0126】
2.2.物質濃度LCiデータ取得部20
【0127】
上述した基本スペクトルにそれぞれ対応する物質の濃度データLCiを取得する構成要素である。既知の物質の濃度である場合、濃度データLCiはメモリーに記憶していて、物質濃度LCiデータ取得部20においてメモリーを読み込んで取得することができ、これとは異なり、本発明の濃度測定システムと連動される公知の濃度測定器(図示せず)を用いて測定されたか、あるいは、実験的に測定された基本スペクトル対応物質濃度データLCiを取得する。
【0128】
濃度データ取得部20は、外部の濃度測定器、外部の実験データ記憶所、メモリー40などから既知であるか、あるいは、実験的に測定した濃度データを取得することができ、データの接続のためのデータ接続部21を備えていてもよい。
【0129】
2.3.演算及び制御装置30
【0130】
本発明の演算及び制御装置30としては、単一のCPUまたはマイクロプロセッサー、またはこれらを備えてなる端末装置、コンピューター装置、コンピューターサーバーなどが採用可能である。
【0131】
演算及び制御装置30は、システムの全般的な動作を制御して、データの取得及び格納、機械学習の遂行及び濃度予測モデルの生成、機械学習の結果として生成された濃度予測モデルの管理を行う。
【0132】
また、演算及び制御装置30は、本発明におけるスペクトルの変形及びこれを用いた最適変形条件の導出、最適変形条件に基づく変形スペクトルの生成及びこれを活用した濃度予測モデルの学習、濃度予測モデルの生成を司る。
【0133】
本発明の演算及び制御装置は、これらの動作を行うに際して、メモリーに搭載された各機能を制御するコンピュータープログラムを活用することができ、生成された濃度予測モデルを前記メモリーに記憶し、濃度の予測を行うときに再びメモリーから濃度予測モデルを読み込んで予測の演算を行う。これらの各機能を行うコンピュータープログラムは、それぞれ分割されたモジュールとして後述するメモリー装置に記憶されており、演算及び制御装置が必要となるときにこれらをメモリーから読み込んで各モジュールの機能を行うことができるということは、通常の技術者にとって容易に理解されることが可能であろう。
【0134】
以下、本発明の演算及び制御装置が行う各動作について説明する。
【0135】
(1)スペクトルの変形及び組み合わせ
【0136】
スペクトル取得部が取得した基本スペクトルSiを変形し、かつ組み合わせて変形スペクトルMkSiを生成する。この動作については、先に、1.1.3.節において説明した通りである。この手順を行うに際して、演算及び制御装置は、メモリーにソフトウェア/プログラムの形態で記憶されたスペクトル変形及び組合せモジュールまたは変形アルゴリズムを読み込んで行うことができる。
【0137】
本発明は、スペクトル変形及び組み合わせの手順は、演算及び制御装置に別途のモジュールとして構成されるマイクロプロセッサーなどによりスペクトル変形アルゴリズムに基づいてスペクトル変形及び組み合わせの手順を行うように別途のスペクトル変形及び組合せ部を構成してもよい。
【0138】
(2)最適変形スペクトルの導出
【0139】
上述した変形スペクトルMkSiから最適変形条件を導き出す。最適変形条件を導き出す具体的な手順は、先に1.1.3.節において説明した通りであり、後述するメモリーにソフトウェア/プログラムの形態で搭載された最適スペクトル導出モジュールを読み込んで行うことができる。
【0140】
(i)学習データとして用いられて濃度予測モデルを生成する最適変形スペクトルは、基本スペクトルSiに対する変形スペクトルから最適変形条件を求めて最適変形条件にて基本スペクトルSiを変形して算出するか、あるいは、既に生成した変形スペクトルのうち、最適変形条件に見合う変形スペクトルとして選択する。導き出された最適変形スペクトルは、後述する機械学習に入力データとして用いられる。
【0141】
導き出された最適変形条件Moは、今後の使用のためにメモリーに記憶されてもよい。
【0142】
(ii)濃度を予測しようとする場合、演算及び制御装置は、対象物質の予測スペクトルPSiを先に算出した最適変形条件Moにて変形して最適変形予測スペクトルMoPSiを生成する。最適変形予測スペクトルMoPSiは、濃度予測モジュール44に入力されて濃度予測値PLCを算出することになる。
【0143】
本発明は、他の実施形態として、別途のマイクロプロセッサーなどによりスペクトル変形及び組合せ部を別途に構成して、最適変形スペクトルの導出の手順を行うように構成されてもよい。
【0144】
(3)機械学習及び濃度予測モデルの生成
【0145】
本発明の制御及び演算部は、上述した1.2節において説明したように、基本スペクトルSiを最適の変形条件Moにて変形した最適変形スペクトルMoSiとそれぞれ対応する物質の実測濃度LCiを学習データとして機械学習を行って濃度予測モデルを生成する。生成された濃度予測モデルは、ソフトウェアプログラムまたはアルゴリズムの形態でメモリーに記憶されてもよい。
【0146】
(4)濃度の予測
【0147】
生成された濃度予測モデルに先に生成した最適変形予測スペクトルMoPSiを入力して濃度予測値PLCを算出する。
【0148】
2.4.メモリー装置40
【0149】
本発明の濃度予測システムにおけるメモリー装置40は、トレーニングデータとして用いられる濃度が既知の物質の濃度値データLCi及びその基本スペクトルSiを予め記憶するデータ記憶所として用いられることができ、下記の各コンピューターソフトウェアモジュールをコンピュータープログラム/ソフトウェアの形態で搭載して、本発明のシステムの各機能を行うようにする。なお、メモリー装置40は、制御及び演算部において算出された最適変形条件Moを記憶する。
【0150】
一方、本発明の濃度予測システムは、下記の各ソフトウェアモジュールを搭載して構成されてもよいが、それぞれのモジュールをそれぞれ別々の記憶所に分離して構成してもよい。本発明においていうメモリー装置40は、必ずしも一つの物理的な記憶所に制限されるとは限らない。
【0151】
また、本発明のメモリーは、コンピューターシステム、サーバーシステムなどのメモリー装置に置き換えられてもよく、以下において説明する各プログラムモジュールまたは各ソフトウェアアルゴリズムを含む別途のCD、ハードディスク、USBなどを備える可動式メモリー装置として実現されてもよい。
【0152】
以下において説明するそれぞれの「モジュール」は、当該機能を行うように構成された一連のコンピューターソフトウェアアルゴリズムを意味することがある。
【0153】
(1)スペクトル変形及び組合せモジュール41
【0154】
本発明のメモリーは、上述した1.1.3節の最適変形スペクトル取得ステップにおいて説明した(1)スペクトルの変形及び組合せステップを行う各変形方法及び変形を行うコンピューターソフトウェアモジュールまたは変形アルゴリズムを搭載する。
【0155】
(2)最適スペクトル導出モジュール42
【0156】
本発明のメモリーは、上述した1.1.3節の最適変形スペクトル取得ステップにおいて説明した(2)最適変形条件の導出ステップを行い、前記スペクトル変形及び組合せモジュールを呼び出して最適変形条件に基づく最適変形スペクトルを算出するコンピューターソフトウェアモジュールを搭載する。
【0157】
(3)機械学習モジュール43
【0158】
本発明のメモリーは、上述した1.1.3節の最適変形スペクトル取得ステップにおいて説明した(3)最適変形スペクトルデータを算出し、これを濃度が既知の物質の濃度値データLCiとともに学習データとして活用して、先の1.2節において説明した機械学習の過程を進めて濃度予測モデルを生成する機械学習モジュールとしてのコンピューターソフトウェアモジュールを搭載する。
【0159】
(4)濃度予測モジュール44
【0160】
先の機械学習モジュール43が生成した濃度予測モデルを行うコンピューターソフトウェアモジュールを搭載する。
【0161】
所定の物質の濃度を予測しようとするとき、演算及び制御装置30は、濃度を予測しようとする物質の予測スペクトルPSiを入力データとしてその変形スペクトルである最適変形予測スペクトルPMoSiを予測メモリーの濃度予測モジュール44に入力し、濃度予測モジュール44は、濃度予測値PLCiを算出する。
【0162】
本発明の濃度測定システムは、測定しようとする物質の種類に応じて異なるように設定される最適変形条件に対応するように、最適変形条件を変更して設定するように構成されてもよい。演算及び制御装置30は、システムの画面表示部(図示せず)に表示する選択入力または物理的なスイッチ(図示せず)から入力される選択入力を受け入れて決定された所定の最適変形条件の入力を受け、これに対応するスペクトル変形モジュールをメモリー40から呼び出してスペクトルを変形し、これを再びメモリー40から呼び出した濃度予測モデルに入力して予測濃度値を出力するように演算する。この場合、メモリー40には特定の最適変形条件にそれぞれ対応する多数の濃度予測モデルに対応する濃度予測モジュール44を上述した濃度予測モデルの生成方法に従って生成して記憶することができるということは通常の技術者にとって自明であるといえるであろう。
【0163】
3.本発明に係る濃度測定器
【0164】
図2を例にとって、本発明の技術思想に基づいて生成された濃度予測モジュール44を搭載した濃度測定器について説明する。
【0165】
本発明の濃度測定器は、先の2節において説明したスペクトルデータ取得部10と、演算及び制御装置30と、メモリー装置40と、を搭載する。各構成要素は、先の2節において説明した濃度測定システムとは異なるように設定されることができるが、以下にそれについて詳しく説明する。
【0166】
(1)スペクトルデータ取得部10
【0167】
本発明の濃度測定器のスペクトルデータ取得部10は、対象物質の予測スペクトルPSiデータを取得する。その入力としては、接触、非接触にて濃度を測定しようとする物質のスペクトルデータを出力する公知のスペクトロメーター、分光器、光学センサーなどが出力するデータを含む。
【0168】
(2)メモリー装置40
【0169】
本発明の濃度測定器のメモリー装置40は、2.4節において説明したメモリー装置40に搭載される(1)スペクトル変形及び組合せモジュール、導き出された最適変形条件Mo及び既に学習した最適変形スペクトルに基づく(4)濃度予測モジュール44を搭載する。
【0170】
用途に応じて、濃度測定器のメモリー装置40は、スペクトル変形及び組合せモジュールのうち、既に算出した最適変形条件に基づくスペクトル変形モジュールのみを含むように構成されてもよく、このときにも、同様に、搭載される濃度予測モジュール44は、最適変形スペクトルを学習データとして既に学習した濃度予測モジュール44である。
【0171】
(3)演算及び制御装置30
【0172】
本発明の濃度測定器の演算及び制御装置30は、メモリー装置40に搭載された最適変形条件、スペクトル変形及び組合せモジュール及び濃度予測モジュール44を活用して、取得した対象物質の予測スペクトルPSiデータから濃度予測値PLCiを算出する。
【0173】
本発明の濃度測定器は、測定しようとする物質の種類に応じて異なるように設定される最適変形条件に対応するように最適変形条件を変更して設定するように構成される。演算及び制御装置30は、画面表示部(図示せず)に表示する選択入力または物理的なスイッチ(図示せず)から入力される選択入力を受け入れて予め決定された所定の最適変形条件の入力を受け、これに対応するスペクトル変形モジュールをメモリー装置40から呼び出してスペクトルを変形し、これを再びメモリー装置40から呼び出した濃度予測モデルに入力して予測濃度値を出力するように演算する。この場合、メモリー装置40には特定の最適変形条件にそれぞれ対応する多数の濃度予測モデルに対応する濃度予測モジュール44を上述した方式により生成して記憶しておき、対応する物質に見合う濃度予測モジュール44を呼び出して予測濃度を算出するように制御されてもよいということは通常の技術者にとって自明である。一方、濃度予測モジュール44は、特定の変形スペクトルを学習して生成したものではなく、通常の汎用スペクトル濃度予測モデルを用いることもできる。
【0174】
(4)データ接続部21
【0175】
一方、本発明の濃度測定器は、外部のメモリー装置40装置を接続したり、外部機器からデータの入出力を受けたりするデータ接続部をさらに備えていてもよい。
【0176】
データ接続部は、前記スペクトルデータ取得部10と統合的に構成されて、スペクトルデータとは異なるデータの入力を外部機器から受けることもできる。
【0177】
データ接続部を介してスペクトル変形及び組合せモジュール41、最適変形条件、既に生成した濃度予測モデルを受信して前記メモリー装置40に記憶することができ、このような構成によって濃度を測定しようとする物質の性格に応じて異なるように設定される最適変形条件及びスペクトル変形及び組合せモジュール41、濃度予測モデルを濃度測定器のメモリー装置40に記憶して濃度の測定に適用することができる。
【0178】
データ接続部は、外部に移動可能なメモリー装置40を接続することが可能なように構成されてもよく、この場合、前記メモリー装置40に追加してまたは前記メモリー装置40に置き換えて接続される外部のメモリー装置40にスペクトル変形及び組合せモジュール41、最適変形条件、既に生成した濃度予測モデルを記憶し、前記演算及び制御装置30がこれを読み込んで濃度の予測に活用するように構成される。
【符号の説明】
【0179】
本発明の明細書及び図面において用いられた符号の名称は、下記の通りである。
【0180】
100:濃度予測システム
10:スペクトルデータ取得部
20:物質濃度データ取得部
30:演算及び制御装置
40:メモリー装置
41:スペクトル変形及び組合せモジュール
42:最適スペクトル導出モジュール
43:機械学習モジュール
44:濃度予測モジュール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】