IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアの特許一覧

<>
  • 特表-内部ループリアクタ 図1
  • 特表-内部ループリアクタ 図2
  • 特表-内部ループリアクタ 図3
  • 特表-内部ループリアクタ 図4
  • 特表-内部ループリアクタ 図5
  • 特表-内部ループリアクタ 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-19
(54)【発明の名称】内部ループリアクタ
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/26 20060101AFI20241212BHJP
   B01J 4/00 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
B01J19/26
B01J4/00 102
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534032
(86)(22)【出願日】2022-12-07
(85)【翻訳文提出日】2024-06-06
(86)【国際出願番号】 EP2022084749
(87)【国際公開番号】W WO2023104863
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】21213096.7
(32)【優先日】2021-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロフラー,ラルフ ディルク
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルファート,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】フォン ハルボウ,エリック ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】ブルンナー,ベルンハルト
【テーマコード(参考)】
4G068
4G075
【Fターム(参考)】
4G068AA06
4G068AC16
4G068AD16
4G075AA13
4G075BA10
4G075BB05
4G075BD03
4G075BD04
4G075BD10
4G075DA02
4G075DA12
4G075DA18
4G075EB01
4G075EC01
4G075EC04
4G075EC10
(57)【要約】
内部ループリアクタが、側壁を備える垂直に配置された円筒状容器及びリアクタ流体出口手段と、容器内に垂直に配置された少なくとも1つのドラフトチューブとを備える。ドラフトチューブは内面及び外面を有し、ドラフトチューブは、チューブ入口端部及びチューブ出口端部を有するドラフトチューブ内に第1の導管を提供し、ドラフトチューブの外側且つ側壁内に第2の導管を提供し、第1の導管は第2の導管と流体連通する。リアクタは、チューブ入口端部から第1の導管に流体を注入するために、ドラフトチューブと同心状に配置された少なくとも1つのノズルを備える。ドラフトチューブの内面が、第1の導管がチューブ入口端部とチューブ出口端部との間における断面の環状狭窄部を呈するように、凸状に湾曲し、狭窄部がチューブ入口端部の近くに配置される。更に、ドラフトチューブの外面は、ドラフトチューブがチューブ入口端部とチューブ出口端部との間に周囲隆起部を呈するように凸状に湾曲する。本発明は、連続高圧反応を行うためのプロセスであって、流体が内部ループリアクタに導入され、反応した流体が、ループリアクタの流体出口を介して取り出される、プロセスに更に関する。ドラフトチューブ壁の内面の湾曲形状は、ドラフトチューブを通る流体を最適化された仕方で案内する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁を備える垂直に配置された円筒状容器(202)と、
前記容器内に垂直に配置された少なくとも1つのドラフトチューブ(203)であって、前記ドラフトチューブ(203)が内面及び外面を有し、前記ドラフトチューブ(203)が、チューブ入口端部(204)及びチューブ出口端部(205)を有する前記ドラフトチューブ(203)内に第1の導管を提供し、前記ドラフトチューブ(203)の外側且つ前記側壁内に第2の導管を提供し、前記第1の導管が前記第2の導管と流体連通する、少なくとも1つのドラフトチューブ(203)と、
前記チューブ入口端部(204)から前記第1の導管に流体を注入するための少なくとも1つのノズル(206)であって、前記ノズル(206)が前記ドラフトチューブ(203)と同心状に配置される、少なくとも1つのノズル(206)と、
リアクタ流体出口手段と
を備える、内部ループリアクタ(201)であって、
前記ドラフトチューブ(203)の前記内面が、前記第1の導管が前記チューブ入口端部(204)と前記チューブ出口端部(205)との間における断面の環状狭窄部(207)を呈するように、凸状に湾曲し、前記狭窄部が前記チューブ入口端部(204)の近くに配置され、前記ドラフトチューブ(203)の前記内面の前記凸状湾曲が、前記ドラフトチューブの長さの少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%にわたって延び、
前記ドラフトチューブ(203)の前記外面が、前記ドラフトチューブ(203)が前記チューブ入口端部(204)と前記チューブ出口端部(205)との間に周囲隆起部(208)を呈するように、凸状に湾曲し、前記周囲隆起部(208)が前記チューブ出口端部(205)の近くに配置されることが好ましく、前記ドラフトチューブ(203)の前記外面の前記凸状湾曲が、前記ドラフトチューブの前記長さの少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%にわたって延び、
前記ドラフトチューブ(203)の縁部が丸みを帯びる、内部ループリアクタ(201)。
【請求項2】
前記狭窄部における前記第1の導管の前記断面と、前記チューブ出口端部(205)における前記第1の導管の前記断面との比率が、前記チューブ出口端部(205)における平均開き角αが5°~8°になるように選択される、請求項1又は2に記載のリアクタ(201)。
【請求項3】
前記チューブ入口端部(204)における前記第1の導管の前記断面と、前記チューブ出口端部(205)における前記第1の導管の前記断面との比率が、0.5から3の範囲にある、請求項1又は2に記載のリアクタ(201)。
【請求項4】
前記チューブ入口端部(204)における前記第1の導管の前記断面と、前記チューブ出口端部(205)における前記第2の導管の断面との比率が、0.5から3の範囲にある、請求項1~3のいずれか1項に記載のリアクタ(201)。
【請求項5】
前記チューブ出口端部(205)における前記ドラフトチューブの外側断面と、前記隆起部(208)の最大断面との比率が、0.3から1の範囲にある、請求項1~4のいずれか1項に記載のリアクタ(201)。
【請求項6】
前記容器内に同心状に配置された1つのドラフトチューブ(203)と、前記ドラフトチューブ(203)に同心状に配置された1つのノズル(206)とを備える、請求項1~5のいずれか1項に記載のリアクタ(201)。
【請求項7】
複数のドラフトチューブ(203)であって、1つのノズル(206)が各ドラフトチューブ(203)に同心状に割り当てられる、複数のドラフトチューブ(203)を備える、請求項1~5のいずれか1項に記載のリアクタ(201)。
【請求項8】
前記ノズル(306)と前記ドラフトチューブ(308)との間に配置された偏向手段(309)であって、前記偏向手段(309)が、前記第2の導管を移動する流体を反対方向に偏向させるのに適し、前記偏向手段(309)が、部分トロイダル面を有する、偏向手段(309)を更に備える、請求項1~7のいずれか1項に記載のリアクタ(301)。
【請求項9】
前記ノズル(206)が、前記第1の導管に前記流体を概ね下向き方向に注入するように配置され、前記ドラフトチューブ(203)が、前記ノズル(206)の下方に本質的に同心状に配置され、前記第1の導管が下降導管であり、前記第2の導管が上昇導管である、請求項1~8のいずれか1項に記載のリアクタ(201)。
【請求項10】
前記ノズル(203)が、前記第1の導管に前記流体を概ね上向き方向に注入するように配置され、前記ドラフトチューブ(203)が、前記ノズル(206)の上方に本質的に同心状に配置され、前記第1の導管が上昇導管であり、前記第2の導管が下降導管である、請求項1~8のいずれか1項に記載のリアクタ(201)。
【請求項11】
連続高圧反応を行うためのプロセスであって、流体が、請求項1~10のいずれか1項に記載の内部ループリアクタ(201)に導入され、反応した流体が、前記ループリアクタ(201)の前記流体出口を介して取り出される、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部ループリアクタ及び内部ループリアクタにおいて連続高圧反応を行うためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
連続高圧反応のための内部ループリアクタは、反応物の十分な変換を高選択率で達成するために、高度な混合を可能にするよう適切に設計される。混合を強化する仕方の1つに、ドラフトチューブの使用によるものがある。ドラフトチューブ混合システムでは、通常円筒状で、両端が開口したチューブがリアクタの内部に垂直に配置されて、ドラフトチューブ内に円筒状の空間を形成し、ドラフトチューブ外に空間を形成する。
【0003】
典型的には、ループリアクタは、1つ以上の反応物をリアクタに注入するノズルの下方に配置された少なくとも1つのドラフトチューブを備える。ドラフトチューブは、ドラフトチューブ内に第1の導管を提供し、ドラフトチューブ外に反対向きの第2の導管を提供する。ノズルを通して注入された反応物は第1の導管を移動し、次いで、反応物と反応生成物とを含む混合物が第2の導管において反対方向に方向転換され、混合物は注入された反応物と逆混合される。
【0004】
ドラフトチューブの発生するフローパターンは循環流であり、循環流は、循環率(すなわち、ドラフトチューブを通る総質量流を供給質量流量で除したもの)によって特徴付けられ得る。総質量流は、供給質量流と、リアクタを循環する同伴流体とを含む。一般に、高い循環率がもたらされることが望ましい。循環率は、循環流体の圧力損失に依存し、そして圧力損失は流体特性及び流体フローパターンに依存する。流れの剥離が、例えばドラフトチューブ出口において発生することがあり、その結果、圧力損失が増加し、循環率を低下させることにつながる。
【0005】
循環率は、幾何学的長さの比率、すなわち、リアクタ径とリアクタ長との比率、及び/又は管径とリアクタ長との比率の選択によって影響され得ることが示されている。更に、偏向領域の設計、例えば、ドラフトチューブ縁部、偏向器、及び内部の形状、並びにリアクタ構成要素の表面特性が検討されている。概要が、Blenke et al.,Verfahrenstechnik 3(1969),p.444-452.に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ループリアクタの性能を強化する大きなニーズが残っている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
-側壁を備える垂直に配置された円筒状容器と、
-容器内に垂直に配置された少なくとも1つのドラフトチューブであって、ドラフトチューブが内面及び外面を有し、ドラフトチューブが、チューブ入口端部及びチューブ出口端部を有するドラフトチューブ内に第1の導管を提供し、ドラフトチューブの外側且つ側壁内に第2の導管を提供し、第1の導管が第2の導管と流体連通する、少なくとも1つのドラフトチューブと、
-チューブ入口端部から第1の導管に流体を注入するための少なくとも1つのノズルであって、ノズルがドラフトチューブと同心状に配置される、少なくとも1つのノズルと、
-リアクタ流体出口手段と
を備える、内部ループリアクタであって、
ドラフトチューブの内面が、第1の導管がチューブ入口端部とチューブ出口端部との間における断面の環状狭窄部を呈するように、凸状に湾曲し、狭窄部がチューブ入口端部の近くに配置され、ドラフトチューブの内面の凸状湾曲が、ドラフトチューブの長さの少なくとも70%にわたって延び、
ドラフトチューブの外面が、ドラフトチューブがチューブ入口端部とチューブ出口端部との間に周囲隆起部を呈するように、凸状に湾曲し、周囲隆起部がチューブ出口端部の近くに配置されることが好ましく、ドラフトチューブの外面の凸状湾曲が、ドラフトチューブの長さの少なくとも70%にわたって延び、
ドラフトチューブの縁部が丸みを帯びる、内部ループリアクタに関する。
【0008】
リアクタは、ノズルを通して注入された流体が第1の導管を通って移動して、反応した流体を得、次いで、反応した流体が第2の導管を通って移動するように反対方向に方向転換され、その後、注入流体と逆混合されるように構成される。本発明によるドラフトチューブの構成により、ドラフトチューブの縁部上を流れる境界層を制御することができることが判明した。中実体に対する流れの迎え角がある限界に達すると、流れが乗り越えるには逆圧力勾配が大きくなりすぎる。このとき、流れは中実体の上面から剥離して、一般に失速と呼ばれる状態になる。本発明により、流れの剥離を減少させたり、又は流れの剥離を遅らせたりすることができる。流れの剥離が減少することにより、液体の摩擦が低下するため、再循環流の流線に沿った圧力降下が小さくなり、その結果、構成の循環率が向上する。ドラフトチューブ壁の内面の湾曲形状は、翼型の上の流体の流れに匹敵して、ドラフトチューブを通る流体を最適化された仕方で案内する。
【0009】
ドラフトチューブの内面は、ドラフトチューブの長手方向に湾曲し、すなわち換言すれば、凸形状を有し、その結果、第1の導管は、チューブ入口端部とチューブ出口端部との間に最小断面積を呈する。つまり、第1の導管の断面は、チューブ入口端部における断面から最小断面積に減少し、最小断面積からチューブ出口端部における断面に増加する。
【0010】
ドラフトチューブは、チューブ入口端部と狭窄部との間に、入口端部において広く、狭窄部において狭い、湾曲した略円錐形セクションを有する。ドラフトチューブを通って下流に流れる流体の少なくとも一部は、ドラフトチューブが終わるまでドラフトチューブの内面に沿って流れるように偏向される。チューブを通る流れは主に付着したままであるため、発生する圧力損失は少ない。狭窄部付近では、ドラフトチューブを通って下流に流れる流体が加速される。狭窄部とチューブ出口端部との間では、ドラフトチューブの断面積が再び広がる。その結果、面積の変化によって、質量保存と併せて、大きな面積を通過する速度は小さな面積を通過する速度よりも遅くなり、動圧の静圧への変換を伴う。ドラフトチューブを通って下流に流れる流体が狭窄部付近で加速されると、流れに半径方向の速度成分が加わって、循環流と注入流との間における混合が増加する。この場合に流れの剥離を避けることにより、大きな圧力損失は生じない。
【0011】
第1の態様では、ループリアクタは、1つのドラフトチューブと1つのノズルとを備える。ドラフトチューブの内面が第1の導管を画定し、ドラフトチューブの外面と容器の側壁とが第2の導管を画定する。この場合、ドラフトチューブは、容器内に本質的に同心状に配置されることが好ましい。ノズルは、ドラフトチューブと同心状に配置される。
【0012】
第2の態様では、ループリアクタは複数のドラフトチューブを備える。1つのノズルが、各ドラフトチューブに同心状に割り当てられる。ドラフトチューブは、ドラフトチューブの内面によって画定された第1の導管を提供し、ドラフトチューブの外側且つ側壁内に第2の導管を提供する。
【0013】
本明細書における議論は、特に記載がない限り、両方の態様に関する。第1の態様の実施形態が特に好ましいと考えられる。
【0014】
狭窄部における第1の導管の断面と、チューブ出口端部における第1の導管の断面との比率は、流れの剥離を回避するための要件によって決定される。よって、上記の比率は、狭窄部とチューブ出口端部との間の距離に依存する。好ましくは、狭窄部における第1の導管の断面と、チューブ出口端部における第1の導管の断面との比率は、チューブ出口端部における平均開き角αが5°~8°になるように選択される。「開き角α」は、ドラフトチューブの湾曲した内面の接線と外面の接線とのなす角を示す。
【0015】
本明細書では、「断面」という用語は、特に記載がない限り、関心のある領域の周囲によって画定される断面積に関連すると理解されたい。よって、第1の導管の断面は、ドラフトチューブの内面によって画定される。ドラフトチューブの内面の湾曲した形状又は凸状の形状に起因して、第1の導管の断面は、第1の導管の長さに沿って変化する。第1の導管の長さは、ドラフトチューブの長手方向における広がりに関連すると理解されたい。
【0016】
ドラフトチューブはチューブ入口端部とチューブ出口端部との間に狭窄部を有して、狭窄部における断面は、チューブ入口端部における断面とチューブ出口端部における断面との両方より小さくなるようにされる。チューブ入口端部における第1の導管の断面と、チューブ出口端部における第1の導管の断面とは、本質的に同じであっても又は異なってもよい。好ましい実施形態では、チューブ入口端部における第1の導管の断面と、チューブ出口端部における第1の導管の断面との比率は、0.5~3の範囲、好ましくは1~3の範囲、より好ましくは1~1.5の範囲にあり、例えば約1である。
【0017】
別の好ましい実施形態では、チューブ入口端部における第1の導管の断面と、チューブ出口端部における第2の導管の断面との比率は、0.5~3の範囲、好ましくは1~3の範囲、より好ましくは1~1.5の範囲にあり、例えば約1である。第2の導管の断面は、チューブ入口端部の断面が差し引かれた状態で、垂直に配置された円筒状容器の側壁によって画定される。チューブ入口端部の断面は、ドラフトチューブ壁を含むと理解されたい。
【0018】
ドラフトチューブの内面の凸状湾曲は、ドラフトチューブの長さの少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%にわたって延びる。
【0019】
ドラフトチューブの外面は、ドラフトチューブがチューブ入口端部とチューブ出口端部との間に周囲隆起部又は膨らみを呈するように湾曲し、周囲隆起部が、チューブ出口端部の近くに配置されることが好ましい。本実施形態では、ドラフトチューブは、凸状の内面と凸状の外面とを有する、すなわち換言すれば、ドラフトチューブは両凸状の長手方向セクションを有する。
【0020】
よって、第1の態様では、第2の導管がチューブ出口端部とチューブ入口端部との間に最小断面を呈する。つまり、第2の導管の断面は、チューブ出口端部における断面から最小断面積に減少し、最小断面積からチューブ入口端部における断面に増加する。本実施形態は、第1の態様のリアクタのためのものであることが特に好ましい。
【0021】
周囲隆起部は、チューブ出口端部の近くに配置されることが好ましい。好ましい実施形態では、ドラフトチューブの周囲隆起部は、チューブ出口端部からドラフトチューブの長さの50%以内、好ましくはチューブ出口端部からドラフトチューブの長さの20から30%以内に配置される。
【0022】
好ましい実施形態では、チューブ出口端部におけるドラフトチューブの外側断面と、隆起部の最大断面との比率は、0.3から1の範囲にあり、好ましくは0.5から1の範囲にある。
【0023】
ドラフトチューブの外面の凸状湾曲は、ドラフトチューブの長さの少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%にわたって延びる。
【0024】
ドラフトチューブは、例えば1つ以上の桁又はクロスビームを介してリアクタに固定される。リアクタにおいてドラフトチューブを固定するための手段は、流動抵抗を最低限としながらドラフトチューブを安定させると都合が良い。例えば、ドラフトチューブをリアクタに固定するための手段の容積は、可能な限り小さいことが好ましい。
【0025】
流体の流れをリアクタ全体に均一に分布させることを可能にするために、リアクタの側壁とドラフトチューブとの間の間隔が調整され得る。例えば、リアクタの側壁とドラフトチューブとの間の空間が大きすぎる場合、流体のほとんどが壁に沿って流れる一方、リアクタの中央部は少量の流体しか流れないことがある。このことは、第2の導管内での混合が不均一になることにつながり得る。よって、ノズル、ひいてはドラフトチューブ(複数化)の配置は、リアクタにおける混合効率に直接影響する。
【0026】
リアクタの側壁とドラフトチューブとの間の最適な間隔は、反応量、ドラフトチューブの長さ及び数、並びにリアクタの循環率など、様々なパラメータに依存する。この間隔によって、循環する反応混合物がチューブ入口端部に四方から本質的に均一な流量で引き込まれ得ることが好ましい。
【0027】
1つの実施形態では、ドラフトチューブの壁(又は側方領域)に開口部が設けられる。開口部により、ドラフトチューブのどちらの端部をも通って移動することなく、ドラフトチューブ壁を通る流体の十字流が可能になる。よって、開口部は、有利なことに、ドラフトチューブへの流体の流れの進入時の圧力損失を減少させ、流れの剥離を減少させる。更に、開口部は乱流を誘発するため、リアクタの混合効率を改善する。開口部は、典型的には、ドラフトチューブの上部に配置される。
【0028】
開口部は、矩形及び円形を含む多くの異なる形状の穿孔であってもよく、ドラフトチューブを通る流体の軸方向の流れを著しく悪化させることなく、ドラフトチューブ壁を通る所望のレベルの十字流を可能にするサイズ及び位置の穿孔である。製造の容易さの観点から、開口部はスリットであることが好ましい。本発明のより広い実施形態では、開口部の具体的な形状及びパターンは特に限定されず、製造の容易さ(又はコスト)に応じて選択される可能性が高い。矩形、正方形、円形、及び楕円形を含む単純な幾何学的形状が、いくつかの好ましい例である。開口部は、スパイクなど、乱流を促進する幾何学的なバリエーションを備えてもよい。
【0029】
ドラフトチューブは、リアクタの動作の際、並びにリアクタの始動時及び停止時に、リアクタにおける圧力を維持するように設計される。リアクタで実行される反応が高圧を必要とする場合、ドラフトチューブは、典型的には、圧力補償のための通気口を有する中実の壁又は中空の壁を備える。ドラフトチューブの製造方法は、好ましくは3Dプリント及び/又は焼結によって、プロファイルの湾曲が高い精度で再現されるように選択されなければならない。
【0030】
リアクタは、チューブ入口端部を介して第1の導管に流体を注入するためのノズルを備える。1つの実施形態では、ノズルは、第1の導管に流体を概ね下向き方向に注入するように配置され、ドラフトチューブは、ノズルの下方に本質的に同心状に配置され、第1の導管は下降導管であり、第2の導管は上昇導管である。好ましくは、ノズルは、リアクタの蓋に配置される。高度な混合を可能にし、滞留域を避けるために、ノズルは蓋と同一平面にあるべきである。
【0031】
別の実施形態では、ノズルは、第1の導管に流体を概ね上向き方向に注入するように配置され、ドラフトチューブは、ノズルの上方に本質的に同心状に配置され、第1の導管は上昇導管であり、第2の導管は下降導管である。好ましくは、ノズルは、リアクタの底部に配置される。高度な混合を可能にし、滞留域を避けるために、ノズルはリアクタの底部と同一平面にあるべきである。
【0032】
ノズルは、1成分ノズルであっても又は2成分ノズルであってもよい。1成分ノズルでは、1種類の液体だけがノズルを介して注入される。1成分ノズルは、単純な構造を持つという利点を呈する。2成分ノズルでは、2種類の流体が別々にノズルを介して注入され、ノズルを出た後にのみ混合される。
【0033】
好ましい実施形態では、ノズルは2成分ノズルである。このような2成分ノズルは、例えば、第2の反応物の中央噴流の周囲に第1の反応物の環状噴流を供給するように設計されてもよい。これら2つの噴流の注入速度は同じであっても異なってもよい。好ましくは、注入速度は、高度な乱流、ひいては高度な混合を提供するために、異なる。
【0034】
2成分ノズルが、第2の反応物の中央噴流の周囲に第1の反応物の環状噴流を供給するように設計され、これら2つの噴流の注入速度が異なることが特に好ましい。本実施形態では、第1の反応物の噴流は、第2の反応物の中央噴流及びリアクタ内の反応混合物の両方に向かって大きなせん断面を有することにより、反応物の好都合な高速混合を可能にする。
【0035】
好ましい実施形態では、第2の反応物の注入速度と第1の反応物の注入速度との比率は、4:1から6:1の範囲、好ましくは4.5:1から5.5:1の範囲にあり、例えば5:1である。例えば、第1の反応物の注入速度は、約10から30m/s、好ましくは15から20m/sとすることができる。第2の反応物の注入速度は、約70から100m/s、好ましくは80から90m/sとすることができる。
【0036】
第2の態様では、ループリアクタは複数のドラフトチューブを備え、1つのノズルが各ドラフトチューブに同心状に配置される。この態様では、ノズルは並列に動作されることが好ましい。複数のノズルを並列に配置することにより、単一のノズルと比較して、反応混合物の適切な流体混合を維持しながら、スループットを向上させることができる。好ましくは、多数のノズルが中央ノズルの周囲に配置される。例えば、3つ以上のノズル、例えば、4つ、5つ、又は最も好ましくは6つのノズルが、中央ノズルの周囲に配置される。好ましくは、3つ以上のノズル、例えば、4つ、5つ、又は最も好ましくは6つのノズルが、中央ノズルの周囲に同心状に配置される。
【0037】
偏向領域の設計、例えば、ドラフトチューブ縁部の形状、並びに偏向手段の存在及び形状は、低圧力降下で高い循環率を可能にするように変更されてもよい。
【0038】
好ましい実施形態では、ループリアクタは、ノズルとドラフトチューブとの間に配置された偏向手段であって、偏向手段が、第2の導管を移動する流体を反対方向に偏向させるのに適する、偏向手段を備える。
【0039】
偏向手段は、好適には、チューブ入口端部を画定するドラフトチューブの端部に対して凹状である表面を備える。好ましい実施形態では、偏向手段は部分トロイダル面を有する。偏向手段は、トロイダル方向に平行な平面で二等分されたリングトーラスの上部部分の形状で設けられることが特に好ましい。この形状により、第2の導管において移動する流体を特に効率的に偏向させることができる。偏向手段は、注入流体ストリームの安定化を可能にし得る。このことが特に適切であるのは、第2の導管において移動する流体の流量がリアクタの断面にわたって均一でなく、注入流体ストリームの偏心につながり得る場合である。このような偏心は、対処せずにいると、循環率を低下させ得る。
【0040】
第1の導管が下降導管であり、第2の導管が上昇導管である場合、偏向手段の形状は、トロイダル方向に平行な平面で二等分された環状トーラスの上部部分を構成し、リングトーラスは、その高さの少なくとも50%、例えばその高さの少なくとも55%又は65%で二等分されることが好ましい。よって、リングトーラスの上部部分は、リングトーラスの下部部分と同じサイズである、又はリングトーラスの下部部分より小さい。別の好ましい実施形態では、偏向手段の形状は、トロイダル方向に平行な平面で二等分されたリングトーラスの上部部分を構成し、リングトーラスは、その高さの多くても85%、例えばその高さの80%で二等分される。これらの範囲では、偏向手段の入口は、流体の偏向に特に適した角度にされる。
【0041】
第1の導管が上昇導管であり、第2の導管が下降導管である場合、偏向手段の形状は、トロイダル方向に平行な面で二等分された環状トーラスの下部を構成し、リングトーラスは、その高さの多くても50%、例えばその高さの多くても45%又は35%で二等分されることが好ましい。よって、リングトーラスの下部部分は、リングトーラスの上部部分と同じサイズである、又はリングトーラスの上部部分より小さい。別の好ましい実施形態では、偏向手段の形状は、トロイダル方向に平行な平面で二等分されたリングトーラスの下部を構成し、リングトーラスは、その高さの少なくとも15%、例えばその高さの20%で二等分される。これらの範囲では、偏向手段の入口は、流体の偏向に特に適した角度にされる。
【0042】
好ましくは、偏向手段は、リアクタの蓋又はリアクタ底部に取り付けらないが、リアクタと偏向手段との間の間隙が滞留域を避けるのに十分に大きくなるように配置される。例えば、ノズルが第1の導管に流体を概ね下向きの方向に注入するように配置されるとき、リアクタの蓋と偏向手段との間の間隙は、少なくとも15mm、例えば少なくとも20mmである。同様に、ノズルが第1の導管に流体を概ね上向き方向に注入するように配置されるとき、リアクタ底部と偏向手段との間の間隙は、少なくとも15mm、例えば少なくとも20mmである。好ましい実施形態では、偏向手段はドラフトチューブに取り付けられる。
【0043】
ループリアクタにより、高い循環率が可能になる。循環率は、混合ドラフトを通る総質量流を供給質量流量によって除したものと理解されたい。総質量流は、供給質量流と、リアクタを循環する同伴流体とを含む。循環率が10:1を超えると、システムは、好都合なことに、連続攪拌タンクリアクタ(CSTR)の挙動に近づく。好ましくは、循環率は、少なくとも15:1、好ましくは20:1超である。
【0044】
上述のように、第1の導管はドラフトチューブの内面によって画定され、その長さはチューブ入口端部とチューブ出口端部との間の最短距離に対応する。同様に、第2の導管はドラフトチューブの外面によって画定され、その長さはチューブ出口端部とチューブ入口端部との間の最短距離に対応する。よって、ドラフトチューブの縁部は、第1の導管及び第2の導管の広がりを制限する。ドラフトチューブの縁部は丸みを帯びているが、これは、ドラフトチューブの縁部が鋭利な縁部を備えず、ドラフトチューブの内面及び外面のそれぞれの湾曲に滑らかに沿っていることを意味すると理解されたい。丸みを帯びた縁部は、反応物と反応生成物との混合物が反対方向に偏向された際に、表面に付着するのを助ける。このようなドラフトチューブ設計は低圧力降下、ひいては高い循環率を可能にする。
【0045】
本発明は、連続高圧反応を行うためのプロセスであって、流体が上記のループリアクタに導入され、反応した流体が、ループリアクタの流体出口を介して取り出される、プロセスに更に関する。
【0046】
本発明の内部ループリアクタは、気液材料間又は液液材料間の効果的な混合、液相中の気体又は液体の均一な分布、特定方向に沿った液体の高流量、及び高い物質移動速度を必要とする反応プロセスにおいて有用である。本発明の内部ループリアクタは、物質移動が反応プロセス全体の制御工程である反応、又は高温高圧反応系に特に有用である。
【0047】
商業的プロセスの具体的な例には、ホルムアルデヒド水溶液などのホルムアルデヒド源とイソブチレンとの反応によって、イソプレノール(3-メチル-3-ブテン-1-オール)を製造するためのプロセスがある。
【0048】
反応物を初期に急速且つ強く混合することは望ましいが、限定された逆混合の条件下で反応を継続し完了することが有利な場合もある。よって、反応混合物は、本発明のリアクタの後に配置された反応後チャンバに渡されてもよい。反応後チャンバでは、逆混合は制限される。
【0049】
ドラフトチューブの形状は、リアクタ全体の流体力学的動態を改善するように制御され得る。ドラフトチューブの形状を最適化することにより、より高い循環率が達成されて、最大混合効率を得ることができる。これらの結果を達成するために制御され得るパラメータには、最大厚さ、最大長、環状狭窄部の位置、及び/又は任意選択で周囲隆起部の位置がある。
【0050】
最適化の計算需要を制限するために、本方法は、事前定義された翼型形状を選択することを含み得る。この翼型形状は、その後、翼型形状を記述する様々な設計変数又はパラメータによって数値的に最適化される。
【0051】
好ましくは、事前定義された翼型形状は、NACA(米国航空諮問委員会)翼型から選択され、その形状は一連の数字を用いて記述される。数値コードの数字を特定の数式に入力して、翼型の断面を正確に生成し、その特性を計算することができる。したがって、NACAの4桁の翼断面は、1桁目が最大キャンバを翼弦のパーセンテージで表し、2桁目が翼型前縁からの最大キャンバの距離を翼弦の10分の1単位で表し、最後の2桁が翼型の最大厚さを翼弦のパーセントとして表すことによって、プロファイルを定義する。例えば、NACA2412翼型は、2%の最大キャンバを有し、最大キャンバが前縁から40%(すなわち、翼弦の0.4倍)に配置され、翼弦の12%の最大厚さを有する。
【0052】
適切なNACA翼型としては、タイプNACA 0XXXからNACA 2XXXの4桁翼型などの対称翼型又はわずかに非対称な翼型、及びタイプNACA XX10からNACA XX20の4桁翼型などの翼型の長さの10から20%の範囲にある厚さを有する翼型が挙げられる。特に好ましいタイプの翼型はNACA2412である。
【0053】
最大プロファイルの選択は、リアクタ及びドラフトチューブ設計の長さと厚さとの比率によって決まる。プロファイルの前縁及び後縁におけるわずかな変更は、長さの最大20%の範囲まで実行可能であり、チューブの内側プロファイル形状と外側プロファイル形状とを「結合(marry)」させるために必要な場合がある。
【0054】
ドラフトチューブの設計は、以下の工程、すなわち、
1)翼型、特にNACA 0XXXからNACA 2XXX又はNACA XX10からNACA XX20、好ましくはNACA 2412からなる群から選択される翼型の標準プロファイル記述を選択することと、
2)リアクタの設計寸法に応じてプロファイルをスケーリングすることと、
3)ドラフトチューブの内面の翼型の半分のプロファイルを、プロファイルの前縁がノズルを向く状態で想定し、且つ
ドラフトチューブの外面の翼型の半分のプロファイルを、後縁がノズルを向く状態で想定することであって、プロファイルの前縁及び後縁における変更が、長さの最大20%の範囲で実行可能である、ことと、
4)翼型形状を記述するパラメータを最高の循環率に到達するように変えることによって、計算流体力学によってドラフトチューブの形状を最適化することと
によって最適化され得る。
【0055】
リアクタの反応速度論を考慮した比較計算流体力学が使用されて、最適化された設計によって得られた選択性及び変換率を確認し得る。反応速度論の較正は、既存のリアクタ構成から得られた既知の選択性及び変換率に基づき得る。
【0056】
添付の図面及び実施例によって、本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】比較対照のループリアクタの概略側面図である。
図2】本発明によるループリアクタの概略側面図である。
図3】本発明による更なるループリアクタの概略側面図である。
図4図3に示す偏向手段の概略上面図である。
図5】CFD計算を介して得られた、円筒状ドラフトチューブを有する公知の内部ループリアクタにおけるフローパターンの概略抜粋図である。
図6】CFD計算を介して得られた、本発明による内部ループリアクタにおけるフローパターンの概略抜粋図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1によれば、リアクタ101は、側壁を備える垂直に配置された円筒状容器102と、容器内に垂直且つ同心状に配置されたドラフトチューブ103とを備える。ドラフトチューブは、チューブ入口端部104と、チューブ出口端部105と、内面と、外面とを有する。ドラフトチューブは、ドラフトチューブ内に第1の導管103を提供し、ドラフトチューブ103の外側且つ側壁内に第2の導管を提供し、第1の導管は第2の導管と流体連通する。
【0059】
リアクタ101は、チューブ入口端部104から第1の導管に流体を注入するためのノズル106を更に備える。ノズルは、ドラフトチューブ103の上方に同心状に配置される。リアクタは、流体がノズル106を通して注入されるとき、ドラフトチューブ103が、ドラフトチューブ103内に下降導管を提供し、ドラフトチューブ103外に上昇導管を提供するように設計される。
【0060】
リアクタは、リアクタ流体出口手段(図1には示さず)を備え、リアクタ流体出口手段を通って、反応生成物がリアクタから外に案内され、更なる処理を受け得る。
【0061】
図2によれば、リアクタ201は、側壁を備える垂直に配置された円筒状容器202と、容器内に垂直且つ同心状に配置されたドラフトチューブ203とを備える。ドラフトチューブは、チューブ入口端部204と、チューブ出口端部205と、内面と、外面とを有する。
【0062】
リアクタ201は、チューブ入口端部204から第1の導管に流体を注入するためのノズル206を更に備える。ノズルは、ドラフトチューブ203の上方に同心状に配置される。リアクタは、流体がノズル206を通して注入されるとき、ドラフトチューブ203が、ドラフトチューブ203内に下降導管を提供し、ドラフトチューブ203外に上昇導管を提供するように設計される。
【0063】
ドラフトチューブ203の内面は、第1の導管が断面の狭窄部207を呈するように湾曲する。ドラフトチューブ203の外面は、ドラフトチューブ203がチューブ出口端部205の近くに配置された周囲隆起部208を呈するように湾曲する。ドラフトチューブは、ドラフトチューブ203内に第1の導管を提供し、ドラフトチューブ203の外側且つ側壁内に第2の導管を提供し、第1の導管は第2の導管と流体連通する。
【0064】
リアクタは、リアクタ流体出口手段(図2には示さず)を備え、リアクタ流体出口手段を通って、反応生成物がリアクタから外に案内され、更なる処理を受け得る。
【0065】
図3によれば、リアクタ301は、側壁を備える垂直に配置された円筒状容器302と、容器内に垂直且つ同心状に配置されたドラフトチューブ303とを備える。ドラフトチューブは、チューブ入口端部304と、チューブ出口端部305と、内面と、外面とを有する。
【0066】
リアクタ301は、チューブ入口端部304から第1の導管に流体を注入するためのノズル306を更に備える。ノズルは、ドラフトチューブ303の上方に同心状に配置される。リアクタは、流体がノズル306を通して注入されるとき、ドラフトチューブ303が、ドラフトチューブ303内に下降導管を提供し、ドラフトチューブ203外に上昇導管を提供するように設計される。
【0067】
ドラフトチューブ303の内面は、第1の導管が断面の狭窄部307を呈するように湾曲する。ドラフトチューブ303の外面は、ドラフトチューブ303がチューブ出口端部305の近くに配置された周囲隆起部308を呈するように湾曲する。ドラフトチューブは、ドラフトチューブ303内に第1の導管を提供し、ドラフトチューブ303の外側且つ側壁内に第2の導管を提供し、第1の導管は第2の導管と流体連通する。
【0068】
更に、リアクタ301は、トロイダル方向に平行な平面で二等分されたリングトーラスの上部部分の形状の偏向手段309を備え、その上面図を図4に示す。偏向手段309は、上昇導管において上向きに移動する流体を下向き方向に偏向させて、注入流体と流体を逆混合させるように設計される。
【0069】
リアクタは、リアクタ流体出口手段(図3には示さず)を備え、リアクタ流体出口手段を通って、反応生成物がリアクタから外に案内され、更なる処理を受け得る。
【実施例
【0070】
循環率(すなわち、混合ドラフトを通る総質量流を供給質量流量によって除したもの)及び反応の選択性に関する計算流体力学シミュレーションによって、内部ループリアクタを評価した。総質量流は、供給質量流と、リアクタを循環する同伴流体とを含む。計算には、有限体積法に基づく市販のCFDコード(ANSYS FLUENT)を使用した。乱流、並びに温度依存材料特性及び混合物依存材料特性を考慮するために、数値サブモデルを用いた。実際のユニット設計条件から境界条件を得た。上述のように、翼型形状を記述するパラメータを最高の循環率に到達するように変えることによって、ドラフトチューブの形状を最適化した。
【0071】
実施例1(比較対照)
リアクタの上部にイソブチレン及びホルムアルデヒドを注入するノズルの下方に円筒状ドラフトチューブを配置した内部ループリアクタを想定している。混合チャンバを構成するリアクタの上部は、リアクタの下部に配置された反応後チャンバの上方に配置される。混合チャンバと反応後チャンバとは穿孔プレートによって分離される。
【0072】
リアクタについては、約5mの混合区画の高さ、約1.4mのリアクタの直径、約3.5mのドラフトチューブの長さを想定した。
【0073】
250baraの圧力及び270℃の温度を有するリアクタに、ホルムアルデヒド水溶液(40重量%)及び超臨界イソブチレンを注入することを想定した。
【0074】
リアクタは、(100%の設計負荷において)20の循環率を実現にした。リアクタの混合区画内における反応選択性は70%と計算された。
【0075】
50%の設計負荷において、リアクタは、約30%の循環率を実現にした。
【0076】
このリアクタのCFD計算によって得られたフローパターンを図5に示す。図5は、ドラフトチューブの中心軸(図5の右端)からの半径方向断面を描いている。上縁を含むドラフトチューブ壁の上部部分は501と示されている。網掛けされた領域502は正味上昇流を示す。網掛けされていない領域503は正味下降流を示す。
【0077】
フローパターンは、ドラフトチューブの外側の正味上昇流を示している。ドラフトチューブ内には、正味下降流502が存在する。しかしながら、ドラフトチューブの内壁に沿って、かなりの正味上昇流が存在する。これは、滞留域をもたらす流れの剥離を示しており、滞留域は、圧力損失を増やし、循環率を低下させることにつながる。
【0078】
実施例2
リアクタの上部にイソブチレン及びホルムアルデヒドを注入するノズルの下方にドラフトチューブを配置した本発明による内部ループリアクタを想定している。上で論じた工程にしたがってドラフトチューブの設計を最適化した。その際、翼型の標準プロファイル記述としてNACA 2412を選択した。混合チャンバを構成するリアクタの上部は、リアクタの下部に配置された反応後チャンバの上方に配置される。混合チャンバと反応後チャンバとは穿孔プレートによって分離される。
【0079】
リアクタについては、約5mの混合区画の高さ、約1.4mのリアクタの直径、約3.2mのドラフトチューブの長さを想定した。本発明にしたがってドラフトチューブの形状を定めた。
【0080】
250baraの圧力及び270℃の温度を有するリアクタに、ホルムアルデヒド水溶液(40重量%)及び超臨界イソブチレンを注入することを想定した。
【0081】
リアクタは、(100%の設計負荷において)30の循環率を実現にした。リアクタの混合区画内における反応選択性は70から75%と計算された。
【0082】
50%の設計負荷において、リアクタは、約50%の循環率を実現にした。
【0083】
本発明によるリアクタは、循環率を改善することができ、選択性を高めることができることは明らかである。
【0084】
このリアクタのCFD計算によって得られたフローパターンを図6に示す。図6は、ドラフトチューブの中心軸(図6の右端)からの半径方向断面を描いている。上縁を含むドラフトチューブ壁の上部部分は601と示されている。網掛けされた領域602は正味上昇流を示す。網掛けされていない領域603は正味下降流を示す。
【0085】
フローパターンは、ドラフトチューブの外側の正味上昇流を示している。ドラフトチューブ内には、正味下降流602が存在する。ドラフトチューブの内壁に沿って、無視できる程度の正味上昇流の領域しか存在しない。このことは、本質的に流れの剥離がないことを示している。よって、より高い循環率及び反応物のより良い混合が達成され、その結果、より高い選択性が実現される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】