(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-19
(54)【発明の名称】厚膜形成組成物、およびそれを用いた硬化膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 61/04 20060101AFI20241212BHJP
G03F 7/11 20060101ALI20241212BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20241212BHJP
C08F 299/02 20060101ALI20241212BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
C08L61/04
G03F7/11 503
G03F7/11 502
C08L101/00
C08F299/02
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535338
(86)(22)【出願日】2022-12-09
(85)【翻訳文提出日】2024-06-12
(86)【国際出願番号】 EP2022085122
(87)【国際公開番号】W WO2023110660
(87)【国際公開日】2023-06-22
(32)【優先日】2021-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【氏名又は名称】河原 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】野島 由雄
(72)【発明者】
【氏名】關藤 高志
(72)【発明者】
【氏名】仁川 裕
(72)【発明者】
【氏名】工藤 隆範
【テーマコード(参考)】
2H197
2H225
4J002
4J127
【Fターム(参考)】
2H197CA05
2H197HA03
2H197JA15
2H225AE05N
2H225AF18N
2H225AF64N
2H225AM10N
2H225AM61N
2H225AM80N
2H225AM93N
2H225AN10N
2H225AN38N
2H225AN39N
2H225AN53N
2H225BA01N
2H225BA02N
2H225BA32N
2H225CA12
4J002AA002
4J002CC021
4J002CC031
4J002CC101
4J002EJ016
4J002EJ026
4J002EJ036
4J002EJ046
4J002EJ066
4J002EL098
4J002EV257
4J002FD146
4J002FD157
4J002FD208
4J002FD319
4J002GP03
4J002HA05
4J127AA03
4J127AA04
4J127BB041
4J127BB081
4J127BB191
4J127BC031
4J127BC131
4J127BD111
4J127BG041
4J127BG04Y
4J127BG051
4J127BG05Y
4J127CA01
4J127DA17
4J127DA24
4J127DA26
4J127DA61
4J127EA03
4J127FA37
4J127FA41
(57)【要約】
特定の構造を有する炭化水素含有化合物(A)および溶媒(B)を含んでなる厚膜形成組成物:
ここで、溶媒(B)が、有機溶媒(B1)および比誘電率が20.0~90.0である有機溶媒(B2)を含んでなり;かつ厚膜形成組成物から形成される膜の膜厚が0.5~10μmである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素含有化合物(A)および溶媒(B)を含んでなる厚膜形成組成物:
ここで、
炭化水素含有化合物(A)が、式(A1)で表される単位(A1)を含んでなり
【化1】
(ここで、
Ar
11は、R
11で置換されたまたは非置換のC
6-60炭化水素であり、
R
11は、C
1-20アルキル、アミノ、またはC
1-20アルキルアミノであり、
R
12は、I、BrまたはCNであり、
p
11は0~5の数であり、p
12は0~1の数であり、q
11は0~5の数であり、q
12は0~1の数であり、r
11は0~5の数であり、s
11は0~5の数であり、
ただし、p
11、q
11およびr
11が1つの単位内で同時に0になることはない);
溶媒(B)が、有機溶媒(B1)および比誘電率が20.0~90.0である有機溶媒(B2)を含んでなり;かつ
厚膜形成組成物から形成される膜の膜厚が0.5~10μmである。
【請求項2】
有機溶媒(B2)の1気圧における沸点が100~400℃である、請求項1に記載の組成物:
好ましくは有機溶媒(B2)のδp/(δD+δp+δH)が20~50%である。
【請求項3】
架橋基を含んでなる成分(C)をさらに含んでなる、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
架橋基を含んでなる成分(C)が式(C1)で表される、請求項1~3の少なくともいずれか一項に記載の組成物:
【化2】
(ここで、
n
c1は、1、2、3、または4であり、
n
c2は、n
c1が1のときに0であり、n
c1が2以上のときに1であり、
n
c3は、0、1、または2であり、
n
c4は、1または2であり、
n
c5は、0または1であり、
L
cは、単結合、またはC
1-30炭化水素基であり、
R
cは、それぞれ独立に、C
1-6アルキル、またはC
6-10アリールであり、前記アルキル中のメチレンが-O-に置き換えられているかまたは置き換えられておらず、
R’は、水素またはメチルである)
【請求項5】
酸発生剤(D)をさらに含んでなる、請求項1~4の少なくともいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
組成物中の固形成分が以下の式(X)を満たす、請求項1~5の少なくともいずれか一項に記載の組成物。
1.5≦{原子の総数/(Cの数-Oの数)}≦3.5 式(X)
(ここで、
Cの数は、炭素原子の数であり、かつ
Oの数は、酸素原子の数である)
【請求項7】
ポリマー(E)をさらに含んでなる、請求項1~6の少なくともいずれか一項に記載の組成物:
好ましくは、組成物は高炭素材(F)を含んでなり;
好ましくは、組成物は界面活性剤(G)を含んでなり;
好ましくは、組成物は添加剤(H)を含んでなり;または
好ましくは、添加剤(H)が、酸、塩基、ラジカル発生剤、光重合開始剤、および基板密着増強剤からなる群から選択される。
【請求項8】
式(A1)が式(A1-1)、(A1-2)、(A1-3)および/または(A1-4)である、請求項1~7の少なくともいずれか一項に記載の組成物。
【化3】
(ここで、
Ar
21は、C
6-50芳香族炭化水素基であり、
R
21、R
22およびR
23は、それぞれ独立に、C
6-50芳香族炭化水素基、水素、または他の構成単位に結合する単結合であり、
n21は、0または1であり、
R
12、p
11、p
12、q
11、q
12、r
11およびs
11は、請求項1と同じ意味を有する)
【化4】
(ここで、
L
31およびL
32は、それぞれ独立に、単結合またはフェニレンであり、
n
31、n
32、m
31およびm
32は、それぞれ独立に、0~6であり、
R
12、p
11、p
12、q
11、q
12、r
11およびs
11は、請求項1と同じ意味を有する)
【化5】
(ここで、
Ar
41は、C
6-50芳香族炭化水素基であり、
R
41およびR
42は、それぞれ独立に、C
1-10アルキルであり、R
41とR
42とが共に結合して環を形成してもよく、
*41の位置の炭素原子は、第4級炭素原子であり、
L
41は、C
6-50アリーレン、または他の構成単位に結合する単結合であり、
R
12、p
11、p
12、q
11、q
12、r
11およびs
11は、請求項1と同じ意味を有する)
【化6】
(ここで、yは、0~2である)
【請求項9】
炭化水素含有化合物(A)がポリマーである、請求項1~8の少なくともいずれか一項に記載の組成物:
好ましくは、炭化水素含有化合物(A)の分子量が400~100,000であり;
好ましくは、前記ポリマーが合成されるときに使用されるアルデヒド誘導体が、合成に使用される全要素の和を基準として0~30mol%である;または
好ましくは、前記ポリマーがその主鎖に第2級炭素原子および第3級炭素原子を実質的に含まない。
【請求項10】
高炭素材(F)が式(F1)で表される、請求項7に記載の組成物。
【化7】
(ここで、
Ar
1は、単結合、C
1-6アルキル、C
6-12シクロアルキル、またはC
6-14アリールであり、
Ar
2は、C
1-6アルキル、C
6-12シクロアルキル、またはC
6-14アリールであり、
R
f1およびR
f2は、それぞれ独立に、C
1-6アルキル、ヒドロキシ、ハロゲン、またはシアノであり、
R
f3は、水素、C
1-6アルキル、またはC
6-14アリールであり、
ただし、Ar
2がC
1-6アルキルまたはC
6-14アリールであり、かつ、R
f3がC
1-6アルキルまたはC
6-14アリールである場合、Ar
2とR
f3とが、互いに結合して環を形成していてもよく、
rおよびsは、それぞれ独立に、0、1、2、3、4または5であり、
それぞれ破線で囲まれたCy
3、Cy
4およびCy
5環の少なくとも1つは、隣接する芳香族炭化水素環Ph
7と縮合した芳香族炭化水素環であり、
それぞれ破線で囲まれたCy
6、Cy
7およびCy
8環の少なくとも1つは、隣接する芳香族炭化水素環Ph
8と縮合した芳香族炭化水素環である)
【請求項11】
組成物を基準として、炭化水素含有化合物(A)の含有量が3~40質量%である、請求項1~10の少なくともいずれか一項に記載の組成物:
好ましくは、組成物を基準として、溶媒(B)の含有量が50~97質量%であり;
好ましくは、炭化水素含有化合物(A)とポリマー(E)の含有量の総和を基準として、架橋基を含んでなる成分(C)の含有量が0~30質量%であり;
好ましくは、炭化水素含有化合物(A)とポリマー(E)の含有量の総和を基準として、酸発生剤(D)の含有量が0~5質量%であり;
好ましくは、溶媒(B)を基準として、有機溶媒(B1)の含有量が70~99質量%であり;
好ましくは、溶媒(B)を基準として、有機溶媒(B2)の含有量が1~20質量%であり;
好ましくは、炭化水素含有化合物(A)を基準として、ポリマー(E)の含有量が0~300質量%であり:
好ましくは、炭化水素含有化合物(A)とポリマー(E)の含有量の総和を基準として、高炭素材(F)の含有量が0~200質量%であり;または
好ましくは、炭化水素含有化合物(A)とポリマー(E)の含有量の総和を基準として、界面活性剤(G)の含有量が0~20質量%である)
【請求項12】
レジスト下層膜形成組成物である、請求項1~11の少なくともいずれか一項に記載の組成物:
好ましくは、前記組成物がスピンオンカーボン(SOC)膜形成組成物である。
【請求項13】
以下の工程を含んでなる硬化膜の製造方法:
(1)基板の上方に請求項1~12の少なくともいずれか一項に記載の組成物を適用し、炭化水素含有膜を形成する;および
(2)前記炭化水素含有膜を加熱する
ここで、
硬化膜の膜厚は0.5~10μmであり;
好ましくは、基板は平坦または非平坦基板であり;より好ましくは非平坦基板であり;
好ましくは、(2)の加熱が、340℃未満で行われ;
好ましくは、(2)の加熱が、70~330℃で行われ;
好ましくは、(2)の加熱が、2段階で行われ、1回目の加熱が70~330℃であり、2回目の加熱が200~330℃で行われ;または
好ましくは、硬化膜の表面抵抗率が10
9~10
16Ω□(より好ましくは10
12~10
16Ω□、さらに好ましくは10
13~10
16Ω□)である。
【請求項14】
以下の工程を含んでなる、レジスト膜の製造方法:
請求項13に記載の方法により硬化膜を製造する;
(3)前記硬化膜の上方にレジスト組成物を適用する;および
(4)前記レジスト組成物を加熱し、レジスト膜を形成する:
ここで、
好ましくは、(4)の加熱が、100~250℃および/または30~300秒間行われ;または
好ましくは、(4)の加熱が、大気または窒素ガス雰囲気にて行われる。
【請求項15】
以下の工程を含んでなるレジストパターンの製造方法
請求項14に記載の方法によりレジスト膜を製造する
(5)レジスト膜を露光する;および
(6)レジスト膜を現像する。
【請求項16】
以下の工程を含んでなる加工基板の製造方法:
請求項15に記載の方法によりレジストパターンを製造する;および
(7)前記レジストパターンをマスクとしてレジストパターンの下層を加工する。
【請求項17】
以下の工程を含んでなる、請求項16に記載の加工基板の製造方法:
請求項15に記載の方法によりレジストパターンを製造する;および
(7a)前記レジストパターンをマスクとして下層をドライエッチングする:
ここで、
好ましくは、(7a)の下層は硬化膜、中間層、または基板である。
【請求項18】
以下の工程を含んでなる、請求項16に記載の加工基板の製造方法:
請求項15に記載の方法によりレジストパターンを製造する;および
(7b)前記レジストパターンをマスクとしてイオン注入を行う、または
(7c)前記レジストパターンをマスクとしてレジストパターンの下層を加工し、下層パターンを形成し、下層パターンをマスクとしてイオン注入を行う。
【請求項19】
請求項16~18の少なくともいずれか一項記載の方法を含んでなるデバイスの製造方法:
好ましくは、加工基板に配線を形成することをさらに含んでなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚膜形成組成物、およびそれを用いた硬化膜の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造過程において、フォトレジスト(以下、簡略にレジストともいう)を用いたリソグラフィー技術による微細加工が一般的に行われている。微細加工の工程は、シリコンウェハ等の半導体基板上に薄いフォトレジスト層を形成し、その層を目的とするデバイスのパターンに対応するマスクパターンで覆い、その層をマスクパターンを介して紫外線等の活性光線で露光し、露光された層を現像することでフォトレジストパターンを得て、得られたフォトレジストパターンを保護膜として基板のエッチング処理することを含み、それにより上述のパターンに対応する微細凹凸を形成する。
【0003】
単一波長の紫外線(例えば、KrF光源248nm)を使用すること定在波の影響により、レジストパターンの寸法精度が低下するという問題が生じる。そこでこの問題を解決すべく、下層反射防止膜を設ける方法が広く検討されている。このような下層反射防止膜に要求される特徴として、反射防止効果が高いこと等が挙げられる。
さらなる微細加工を達成するため、ArF光源(193nm)や、EUV(13nm)を使用する方法が広く検討されている。この場合、レジストの膜厚が厚すぎるとレジストパターンが倒壊したり、現像残渣が生じやすい。そのため、レジストのみでは十分な保護膜の機能を得られないという問題がある。
そこでフォトレジストの下層に新たな保護膜を作成し、フォトレジストパターンを下層膜に転写し、この下層膜を保護膜として基板のエッチング処理する、マルチレイヤーという手法が一般的に広まっている。
マルチレイヤーの保護膜として種々のものが存在するが、非晶質の炭素膜を保護膜として使用することがある。
【0004】
溶液を塗布、焼成して炭素膜の保護膜の機能を上げる方法として、一般的な焼成温度である450℃を超えた焼成に耐える炭素膜を塗布し、例えば600℃で焼成することが挙げられる。その他に炭素膜形成溶液の固形物中の炭素濃度を上げる事で保護膜の機能を向上させることができるが、溶解性等の他の性能とトレードオフすることが一般的である。
【0005】
このような技術状況の中、特許文献1は、芳香族環単位を有する有機化合物を含む組成物を塗布し、酸素濃度10%未満の雰囲気で1回目の加熱をし、次に、酸素濃度が10%以上の雰囲気で例えば350℃の高温で2回目の加熱をすることで、硬化膜を形成する方法を検討する。
特許文献2は、フラーレンを含む組成物を塗布し、例えば350℃の高温で加熱硬化することにより、炭素濃度を上昇させ、エッチング耐性を向上させる方法について検討する。
【0006】
上記の検討では、200~300nm程度の薄膜の硬化膜について検討されているが、この範囲よりも厚膜においても、同様の特性を有する硬化膜が製造できることが求められてきている。厚膜では、薄膜よりも、保護膜としての機能が良好な膜質を達成することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014-219559号公報
【特許文献2】WO2018/115043
【非特許文献1】“Identification of high performance solvents for the sustainable processing of graphene”(H.J.Salavagione et al.,Green Chemistry 2017 Issue 19 p2550)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、低温で加熱しても、良好な特性を示す厚い硬化膜を形成することができれば、製造プロセスにおいて有用と考えた。本発明者は、いまだ改良が求められる1以上の課題が存在すると考えた。それらは例えば以下が挙げられる。
厚い硬化膜を得る;低温の加熱で硬化膜を得る;プロセスにおいて他の層に与えるダメージを避ける;膜密度が高い硬化膜を得る;膜硬度が高い硬化膜を得る;押込み硬さに優れる硬化膜を得る;押込み弾性率に優れる硬化膜を得る;エッチング耐性が高い硬化膜を得る;イオンインプラント処理に対する耐性が高い硬化膜を得る;イオンインプラント処理を受けても収縮量が少ない硬化膜を得る;埋め込み特性に優れる硬化膜を得る;溶媒への溶解性が高い;硬化膜の平坦性が高い;粘度が高い組成物を得る;硬化反応を促進する;上層膜とのインターミキシングをなくし、上層膜ヘの低分子成分の拡散を減らす。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による厚膜形成組成物は、炭化水素含有化合物(A)および溶媒(B)を含んでなり、
ここで、
炭化水素含有化合物(A)が、式(A1)で表される単位(A1)を含んでなり
【化1】
(ここで、
Ar
11は、R
11で置換されたまたは非置換のC
6-60炭化水素であり
R
11は、C
1-20アルキル、アミノ、またはC
1-20アルキルアミノであり、
R
12は、I、BrまたはCNであり、
p
11は0~5の数であり、p
12は0~1の数であり、q
11は0~5の数であり、q
12は0~1の数であり、r
11は0~5の数であり、s
11は0~5の数であり、
ただし、p
11、q
11およびr
11が1つの単位内で同時に0になることはない);
溶媒(B)が、有機溶媒(B1)および比誘電率が20.0~90.0である有機溶媒(B2)を含んでなり;かつ
厚膜形成組成物から形成される膜の膜厚が0.5~10μmである。
【0010】
本発明による硬化膜の製造方法は、以下の工程を含んでなる:
(1)基板の上方に上記に記載の組成物を適用し、炭化水素含有膜を形成する;および
(2)前記炭化水素含有膜を加熱する
ここで、
硬化膜の膜厚は0.5~10μmである。
【0011】
本発明によるレジスト膜の製造方法は、以下の工程を含んでなる:
上記の方法により硬化膜を製造する;
(3)前記硬化膜の上方にレジスト組成物を適用する;および
(4)前記レジスト組成物を加熱し、レジスト膜を形成する。
【0012】
本発明によるレジストパターンの製造方法は、以下の工程を含んでなる:
上記の方法によりレジスト膜を製造する
(5)レジスト膜を露光する;および
(6)レジスト膜を現像する。
【0013】
本発明による加工基板の製造方法は、以下の工程を含んでなる:
上記の方法によりレジストパターンを製造する;および
(7)レジストパターンをマスクとしてレジストパターンの下層を加工する。
【0014】
本発明によるデバイスの製造方法は、上記の方法を含んでなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の硬化膜の製造方法を用いることで、以下の1または複数の効果を望むことが可能である。厚い硬化膜を得ることができる;低温の加熱で硬化膜を得ることができる;プロセスにおいて他の層に与えるダメージを避けることができる;膜密度が高い硬化膜を得ることができる;膜硬度が高い硬化膜を得ることができる;押込み硬さに優れる硬化膜を得ることができる;押込み弾性率に優れる硬化膜を得ることができる;エッチング耐性が高い硬化膜を得ることができる;イオンインプラント処理に対する耐性が高い硬化膜を得ることができる;イオンインプラント処理を受けても収縮量が少ない硬化膜を得ることができる;埋め込み特性に優れる硬化膜を得ることできる;溶媒への溶解性が高い;硬化膜の平坦性が高い;粘度が高い組成物を得ることができる;比誘電率が高い有機溶媒を含むことにより硬化反応を促進することができる;上層膜とのインターミキシングをなくしたり、上層膜ヘの低分子成分の拡散を減らすことが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態について詳細に説明すると以下の通りである。
【0017】
[定義]
本明細書において、特に限定されて言及されない限り、本パラグラフに記載の定義や例に従う。
単数形は複数形を含み、「1つの」や「その」は「少なくとも1つ」を意味する。ある概念の要素は複数種によって発現されることが可能であり、その量(例えば質量%やモル%)が記載された場合、その量はそれら複数種の和を意味する。
「および/または」は、要素の全ての組み合わせを含み、また単体での使用も含む。
「~」または「-」を用いて数値範囲を示した場合、これらは両方の端点を含み、単位は共通する。例えば、5~25モル%は、5モル%以上25モル%以下を意味する。
「Cx-y」、「Cx~Cy」および「Cx」などの記載は、分子または置換基中の炭素の数を意味する。例えば、C1-6アルキルは、1以上6以下の炭素を有するアルキル鎖(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル等)を意味する。
ポリマーが複数種類の繰り返し単位を有する場合、これらの繰り返し単位は共重合する。これら共重合は、交互共重合、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合、またはこれらの混在のいずれであってもよい。ポリマーや樹脂を構造式で示す際、括弧に併記されるnやm等は繰り返し数を示す。
温度の単位は摂氏(Celsius)を使用する。例えば、20度とは摂氏20度を意味する。
添加剤は、その機能を有する化合物そのものをいう(例えば、塩基発生剤であれば、塩基を発生させる化合物そのもの)。その化合物が、溶媒に溶解または分散されて、組成物に添加される形態もあり得る。本発明の一形態として、このような溶媒は溶媒(B)またはその他の成分として本発明にかかる組成物に含有されることが好ましい。
【0018】
[厚膜形成組成物]
本発明による厚膜形成組成物(以下、組成物ということがある)は、特定の構造を有する炭化水素含有化合物(A)および溶媒(B)を含んでなる。ここで、溶媒(B)は、有機溶媒(B1)および比誘電率が20.0~90.0である有機溶媒(B2)を含んでなり、かつ厚膜形成組成物から形成される膜の膜厚は0.5~10μm(好ましくは0.8~8μm;より好ましくは1.0~7.0μm)である。
本発明による厚膜形成組成物は、好ましくはレジスト下層膜形成組成物である。レジスト下層膜形成組成物の一例として、下層反射防止膜形成組成物が挙げられる。
本発明の一形態において、本発明による厚膜形成組成物は、好ましくはスピンオンカーボン(SOC)膜形成組成物である。SOCとしては、ハードマスク用SOC、芯材SOCが挙げられる。SOCはドライエッチング耐性やイオンインプラント耐性が高い塗布有機膜(またはマスク)として、より下方に存在する膜や基板を保護するために有用である。
【0019】
(A)炭化水素含有化合物
本発明による組成物は、炭化水素含有化合物(A)(以下、成分(A)ということがある。他の成分についても同じである。)を含んでなる。炭化水素含有化合物(A)は、式(A1)で表される単位(A1)を含んでなる。
成分(A)は単位(A1)を含んでいればよく、他の構成単位を含むことは許容される。成分(A)が他の構成単位を含み、かつ成分(A)がポリマーである場合、単位(A1)と他の構成単位が共重合することが好適な一形態である。本発明の好ましい一形態として、成分(A)は実質的に単位(A1)のみからなる。ただし、末端の修飾は許容される。
【0020】
式(A1)は以下である。
【化2】
ここで、
Ar
11は、R
11で置換されたまたは非置換のC
6-60炭化水素である。Ar
11は好ましくはナフチル環を含まない(より好ましくは縮合芳香環を含まない)。好適なAr
11として、9,9-ジフェニルフルオレン、9-フェニルフルオレン、フェニル、C
6-60直鎖ポリフェニレンおよびC
6-60分岐ポリフェニレンが挙げられ、これらはそれぞれ独立にR
11で置換されていても置換されていなくてもよい。Ar
11が非置換であることも本発明の好ましい一形態である。
R
11は、C
1-20アルキル、アミノ、またはC
1-20アルキルアミノである。ここで、アルキルは、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよい。R
11は、好ましくはC
1-10アルキル、またはC
1-10アルキルアミノ(より好ましくはC
1-3直鎖アルキル、C
1-3分岐アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、またはジメチルアミノ)である。
R
12は、I、BrまたはCN(好ましくはIまたはBr;より好ましくはI)である。
p
11は0~5の数である。ここで本発明の一形態として、成分(A)が2種類の単位(A1)を1つずつのみ構成として持つことがあり得る。Ar
11が共にフェニルであり、1つのAr
11に係るp
11=1であり、他方のAr
11に係るp
11=2という形態が有り得る。この場合、全体としてp
11=1.5である。本明細書において、特に言及しない限り、数について同様である。p
11は、好ましくは0、1、2または3(より好ましくは0、1または2;さらに好ましくは1)である。p
11=0も本発明の好適な一形態である。
p
12は0~1の数(好ましくは0または1;より好ましくは1)である。
q
11は0~5の数(好ましくは0、1、2または3;より好ましくは0、1または2;さらに好ましくは1)である。q
11=0も本発明の好適な一形態である。
q
12は0~1の数(好ましくは0または1;より好ましくは1)である。
r
11は0~5の数(好ましくは0、1、2または3であり;より好ましくは0、1または2;さらに好ましくは1)である。r
11=0も本発明の好適な一形態である。
s
11は0~5の数(好適には0、1、2または3であり;より好ましくは0、1または2;さらに好ましくは1)である。s
11=0も本発明の好適な一形態である。
ただし、p
11、q
11およびr
11が1つの単位内で同時に0になることはない。
成分(A)が単位(A1)を複数有するとき、R
11はリンカーとしてAr
11同士に介在して結合していてもよい。1つのAr
11を置換するR
11は1つでも複数でもよく;好ましくは1つである。
1つの単位(A1)において、括弧で囲われた基(例えばp
11が併記された括弧で囲われた基)はR
11に結合していてもよい。この場合、当該基とAr
11をR
11はリンカーとして介在して結合する。
【0021】
例えば、下記の左の化合物は2つの単位(A1)から構成される成分(A)と解することができる。1つの単位(A1)でAr
11は9-フェニルフルオレンであり、他方の単位(A1)でAr
11は9,9-ジフェニルフルオレンである。いずれの単位(A1)においてもp
11=1であり、q
11=r
11=s
11=0である。下記の右側に示されるように、2つの単位(A1)それぞれにおいて、矢印で示される1つの結合は他の単位への結合には使用されていない。
【化3】
【0022】
式(A1)は、好ましくは式(A1-1)、(A1-2)、(A1-3)および/または(A1-4)である。
【0023】
式(A1-1)は以下である。
【化4】
ここで、
Ar
21は、C
6-50芳香族炭化水素基である。理論に拘束されないが、成分(A)の溶媒への溶解性が確保でき、厚膜を形成できる等の有利な効果が期待できるため、Ar
21は好ましくはフェニルである。Ar
21は、好ましくは縮合芳香環を含まない。
R
21、R
22およびR
23は、それぞれ独立に、C
6-50芳香族炭化水素基、水素、または他の構成単位に結合する単結合である。好ましくはR
21、R
22およびR
23はナフチル(より好ましくは縮合芳香環)を含まない。R
21、R
22およびR
23は、好ましくはフェニル、水素、または他の構成単位に結合する単結合(より好ましくはフェニルまたは他の構成単位に結合する単結合;さらに好ましくはフェニル)である。
n21は、0または1(好ましくは0)である。
R
12、p
11、p
12、q
11、q
12、r
11およびs
11の定義や好適例はそれぞれ独立に上記と同様である。
【0024】
式(A1-1)の構造を有する成分(A)の例としては、以下が挙げられる。
【化5】
【0025】
例えば、下記の左の化合物は、式(A-1)で表される2つの単位から構成される成分(A)と解することができる。一つの式(A-1)の構成において、実線矢印で示されるR
21は他の構成単位に結合する単結合であり、Ar
21は9,9-ジフェニルフルオレンであり、p
11=2であり、q
11=r
11=s
11=0である。p
11が添え字として付された括弧で囲まれた基はいずれもAr
21に結合する。他方の式(A-1)の構成において、破線矢印で示されるR
21は水素であり、Ar
21は9,9-ジフェニルフルオレンであり、p
11=2であり、q
11=r
11=s
11=0である。p
11で囲まれた基はいずれもAr
21に結合する。
【化6】
【0026】
本発明のさらに好適な一態様として、単位(A1-1)は単位(A1-1-1)である。構成単位(A1-1-1)は式(A1-1-1)で表される。
【化7】
p
11、p
12、q
11、q
12、r
11およびs
11の定義や好適例はそれぞれ独立に上記と同様である。ただし、1≦p
11+q
11+r
11≦4を満たす。
【0027】
式(A1-2)は以下である。
【化8】
ここで、
L
31およびL
32は、それぞれ独立に、単結合またはフェニレン(好ましくは単結合)である。
n
31、n
32、m
31およびm
32は、それぞれ独立に、0~6(好ましくは0、1、2、または3)である。n
31+n
32=5または6が好適な一形態である。L
31が単結合のとき、m
31=1である。L
32が単結合のとき、m
32=1である。
R
12、p
11、p
12、q
11、q
12、r
11およびs
11の定義や好適例はそれぞれ独立に上記と同様である。
【0028】
式(A1-2)の構造を有する成分(A)の例としては以下が挙げられる。
【化9】
【0029】
式(A1-3)は以下である。
【化10】
ここで、
Ar
41は、C
6-50芳香族炭化水素基(好ましくはフェニル)である。
R
41およびR
42は、それぞれ独立にC
1-10アルキル(好ましくは直鎖のC
1-6アルキル)であり、R
41とR
42とが共に結合して環(好ましくは飽和炭化水素環)を形成していてもよい。
*41の位置の炭素原子は、第4級炭素原子である。
L
41は、C
6-50アリーレン、または他の構成単位に結合する単結合(好ましくはフェニレンまたは他の構成単位に結合する単結合;より好ましくは他の構成単位に結合する単結合)である。
R
12、p
11、p
12、q
11、q
12、r
11およびs
11は、の定義および好適例はそれぞれ独立に上記と同様である
【0030】
式(A1-3)を有する成分(A)の例としては以下が挙げられる。
【化11】
【0031】
式(A1-4)は以下である。
【化12】
ここで、yは、0~2である(好ましくは0.5~1.5;より好ましくは0または1)。
式(A1-4)は、好ましくは式(Q-1a)、(Q-1b)、(Q-1c)、または(Q-1d)である。
【化13】
【0032】
好ましい一形態において、成分(A)は、式(Q-1a)、(Q-1b)、(Q-1c)、および(Q-1d)からなる群から選択される単位を含んでなるポリマー(以下、ポリマーQということがある)である。ポリマーQは、より好ましくは式(Q-1a)、(Q-1b)、(Q-1c)、および(Q-1d)からなる群から選択される単位のみからなり、より好ましくは、式(Q-1a)および(Q-1b)の繰り返し単位のみからなる。
【0033】
ポリマーQにおいて、(Q-1a)の繰り返し単位数Nqa、(Q-1b)繰り返し単位数Nqb、(Q-1c)繰り返し単位数Nqc、および(Q-1d)繰り返し単位数Nqdが、以下の式:
30%≦Nqa/(Nqa+Nqb+Nqc+Nqd)≦100%;
0%≦Nqb/(Nqa+Nqb+Nqc+Nqd)≦70%;
0%≦Nqc/(Nqa+Nqb+Nqc+Nqd)≦50%;および
0%≦Nqd/(Nqa+Nqb+Nqc+Nqd)≦70%
を満たすことが好ましい。
Nqa/(Nqa+Nqb+Nqc+Nqd)は、より好ましくは30~90%(さらに好ましくは40~80%;よりさらに好ましくは50~70%)である。
Nqb/(Nqa+Nqb+Nqc+Nqd)は、より好ましくは10~60%(さらに好ましくは20~50%;よりさらに好ましくは30~50%)である。
Nqc/(Nqa+Nqb+Nqc+Nqd)は、より好ましくは0~40%(さらに好ましくは10~30%)である。Nqc/(Nqa+Nqb+Nqc+Nqd)が0%であることも、好適な一形態である。
Nqd/(Nqa+Nqb+Nqc+Nqd)は、より好ましくは0~40%(さらに好ましくは10~30%)である。Nqd/(Nqa+Nqb+Nqc+Nqd)が0%であることも、好適な一形態である。ポリマーQにおいて、式(Q-1c)および(Q-1d)の繰返し単位のいずれか一方が存在し、他方が存在しない態様も好適である。
【0034】
ポリマーQの質量平均分子量(以下、Mwということがある)は、好ましくは400~100,000(より好ましくは5,000~75,000であり;さらに好ましくは6,000~50,000;よりさらに好ましくは9,000~20,000)である。本発明において、Mwはゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)にて測定することができる。同測定では、GPCカラムを40℃、溶出溶媒テトラヒドロフランを0.6mL/分、単分散ポリスチレンを標準として用いることが好適な一例である。以下において同様である。
【0035】
成分(A)は好ましくはポリマーである。成分(A)が式(A1-1)、(A1-2)または(A1-3)で表される単位を含むポリマーである場合、本発明の好適な一形態として、成分(A)が合成されるときに使用されるアルデヒド誘導体は、合成に使用される全要素の和を基準として、好ましくは0~30mol%(より好ましくは0~15mol%;さらに好ましくは0~5mol%;よりさらに好ましくは0mol%)である。当該アルデヒド誘導体の例として、ホルムアルデヒドが挙げられる。
アルデヒド誘導体を用いる代わりに、ケトン誘導体を使用することが本発明の好適な一形態である。
このように合成されたポリマーは主鎖に第2級炭素原子および第3級炭素原子が含まれない、または少ないという特徴を有し得る。本発明の好適な一形態として、前記ポリマーはその主鎖に、第2級炭素原子および第3級炭素原子を実質的に含まない。理論に拘束されないが、これによってポリマーが溶解性を確保しつつ、形成される膜の耐熱性の向上を期待できる。ただし末端修飾のようにポリマーの末端に第2級炭素原子および第3級炭素原子が含まれることは許容される。
理論に拘束されないが、成分(A)を含むことで本組成物から形成される膜を硬くすることができたり、エッチング耐性を上げることができる。このような成分(A)として、単位(A1)が式(A1-1)、式(A1-2)および/または式(A1-3)であるものが挙げられる。
理論に拘束されないが、成分(A)を含むことで本組成物の粘度を上げることができたり、本組成から形成される膜のクラック耐性を上げることができる。このような成分(A)として、単位(A1)が式(A1-4)であるものが挙げられる。
【0036】
本発明の一形態として、成分(A)の分子量は、成分(A)の分子量は、好ましくは400~100,000(より好ましくは1,000~5,000;さらに好ましくは2,000~20,000)である。成分(A)がポリマーの場合、分子量はMwを用いる。
成分(A)において、式(A1-1)、(A1-2)または(A1-3)で表される単位を含む物質の分子量は、好ましくは500~6,000(より好ましくは500~4,000;さらに好ましくは1,500~3,000)である。
【0037】
成分(A)は、1種以上であってもよい。成分(A)は、式(A1-1)、(A1-2)または(A1-3)の構造を含んでなることが好ましく、より好ましくは式(A1-1)の構造を含んでなる。
成分(A)が2種以上である場合に、成分(A)は、好ましくは式(A1-1)、(A1-2)または(A1-3)の構造を有する化合物と、ポリマーQとの組み合わせを含んでなり、より好ましくは式(A1-1)の構造を有する化合物と、ポリマーQとの組み合わせを含んでなる。
【0038】
成分(A)の含有量は、組成物を基準として、好ましくは3~40質量%(より好ましくは10~35質量%;さらに好ましくは20~30質量%)である。
【0039】
(B)溶媒
本発明による組成物は溶媒(B)を含んでなる。溶媒(B)は、有機溶媒(B1)および比誘電率が20.0~90.0である有機溶媒(B2)を含んでなる。有機溶媒(B1)は好ましくは比誘電率が20.0~90.0ではなく;より好ましくは比誘電率が20未満であり;さらに好ましくは比誘電率が1~19であり;よりさらに好ましくは比誘電率が5~15である。
有機溶媒(B2)の比誘電率は好ましくは25~50(より好ましくは30~40;さらに好ましくは35~40)である。
比誘電率は、LCRメータ法によって測定することができる。例えば、LCRメータHP4284A(アジレント・テクノロジー)を用いて、測定周波数1MHz、20℃にて算出することができる。
【0040】
溶媒(B)が比誘電率の高い溶媒(B2)を含むことにより、厚膜かつ低温加熱であっても、硬度が高い硬化膜を得ることができる。理論に拘束されないが、溶媒(B2)の存在により、硬化反応が促進されると考えられる。例えば硬化反応において、中間体が発生しやすくなる、中間体が安定する、または成分(A)の可動範囲が広がりやすくなることが考えられる。
【0041】
有機溶媒(B2)の1気圧における沸点は、好ましくは100~400℃(より好ましくは150~250℃;さらに好ましくは190~250℃)である。
有機溶媒(B2)のδp/(δD+δp+δH)は、好ましくは20~50%(より好ましくは20~40%;さらに好ましくは30~40%)である。δD、δpおよびδHは、ハンセン溶解度パラメータの3つのパラメータである。ハンセン溶解度パラメータは公知の方法で得ることが可能である。例えば非特許文献1に記載の方法が使用可能である。
有機溶媒(B2)の例と、とその沸点、比誘電率、δp/(δD+δp+δH)を以下の表に挙げる。
【表1】
【0042】
有機溶媒(B1)は、有機溶媒(B2)であるものを除き、特に限定されない。有機溶媒(B1)は、炭化水素溶媒、エーテル溶媒、エステル溶媒、アルコール溶媒、ケトン溶媒、またはこれらの混合物である。
有機溶媒(B1)の例としては、例えば、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、アニソール、乳酸エチル(EL)、酢酸-n-ブチル(nBA)、n-ブチルエーテル(DBE)、またはこれらの混合物が挙げられる。有機溶媒(B1)は、好ましくはPGMEA、PGMEまたはこれらの混合物(より好ましくはPGMEAおよびPGMEの混合物)である。2種を混合する場合、質量比は好ましくは95:5~5:95(より好ましくは90:10~10:90;さらに好ましくは80:20~20:80)である。
【0043】
溶媒(B)は、有機溶媒(B1)および有機溶媒(B2)以外の溶媒、例えば水を含むことができる。他の層や膜との関係で、溶媒(B)が水を実体的に含まないことも、好意的な一形態である。(B)溶媒全体に占める水の量が、好ましくは0.1質量%以下(より好ましくは0.01質量%以下;さらに好ましくは0.001質量%以下)である。溶媒(B)が水を含まない(0.000質量%)ことも好適な一形態である。
【0044】
溶媒(B)の含有量は、組成物を基準として、好ましくは50~97質量%(より好ましくは60~90質量%;さらに好ましくは65~80質量%)である。
有機溶媒(B1)の含有量は、溶媒(B)を基準として、好ましくは70~99質量%(より好ましくは80~99質量%;さらに好ましくは90~98質量%)である。
有機溶媒(B2)の含有量は、溶媒(B)を基準として、好ましくは1~20質量%(より好ましくは1~15質量%;さらに好ましくは2~10質量%)である。
【0045】
(C)架橋基を含んでなる成分
本発明による組成物は、架橋基を含んでなる成分(C)をさらに含むことができる。成分(C)は、式(A1-1)、(A1-2)、(A1-3)および(A1-4)で表される成分(A)とは異なる成分である。つまり、これらの成分(A)の定義に該当する場合、架橋基を有していても、成分(A)であって、成分(C)ではない。
架橋基としては、例えば、ヒドロキシ、メトキシ、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ、エテニル、エテニルオキシ、2-プロぺニル、1-プロぺニル等が挙げられる。
理論に拘束されないが、成分(C)は、硬化膜形成時の密度向上に寄与し、上層膜(例えばレジスト膜)とのインターミキシングをなくし上層膜ヘの低分子成分の拡散を減らすことが可能と考えられる。
【0046】
架橋基を含んでなる成分(C)は、好ましくは式(C1)で表される。
【化14】
ここで、
n
c1は、1、2、3、または4(好ましくは1、2、または3;より好ましくは1または2)である。
n
c2は、n
c1が1のときに0であり、n
c1が2以上のときに1である。
n
c3は、0、1、または2(好ましくは2)である。
n
c4は、1または2(好ましくは1)である。
n
c5は、0または1(好ましくは0)である。
L
cは、単結合、またはC
1-30炭化水素基(好ましくは単結合、C
1-20アルキレン、C
6-30アリーレン;より好ましくは単結合)である
R
cは、それぞれ独立に、C
1-6アルキル、またはC
6-10アリールであり、前記アルキル中のメチレンが-O-に置き換えられているかまたは置き換えられていない。R
cは、好ましくはメチルまたはフェニルである。
R’は、水素またはメチル(好ましくはメチル)である。
【0047】
成分(C)の例としては、以下が挙げられる。
【化15-1】
【化15-2】
【0048】
成分(C)の含有量は、成分(A)と成分(E)の含有量の総和(成分(E)が含まれない場合は成分(A)の含有量を意味する、以下においても同じ)を基準として、好ましくは0~30質量%(より好ましくは1~20質量%;さらに好ましくは5~15質量%)である。
【0049】
(D)酸発生剤
本本発明による組成物は、(D)酸発生剤をさらに含むことができる。成分(D)は、耐熱性の向上(架橋反応促進)の観点で、有用である。
【0050】
成分(D)としては、加熱によって強酸を発生させることが可能な熱酸発生剤(TAG)が挙げられる。好ましい熱酸発生剤は、80度を超える温度で活性化するものである。熱酸発生剤の例は、金属不含のスルホニウム塩およびヨードニウム塩、例えば、強非求核酸のトリアリールスルホニウム、ジアルキルアリールスルホニウム、およびジアリールアルキルスルホニウム塩、強非求核酸のアルキルアリールヨードニウム、ジアリールヨードニウム塩;および強非求核酸のアンモニウム、アルキルアンモニウム、ジアルキルアンモニウム、トリアルキルアンモニウム、テトラアルキルアンモニウム塩である。また、共有結合型(covalent)熱酸発生剤も、有用な添加剤として考えられ、例えばアルキルまたはアリールスルホン酸の2-ニトロベンジルエステル、および熱分解して遊離スルホン酸をもたらすスルホン酸のその他のエステルがある。その例は、ジアリールヨードニウムパーフルオロアルキルスルホネート、ジアリールヨードニウムトリス(フルオロアルキルスルホニル)メチド、ジアリールヨードニウムビス(フルオロアルキルスルホニル)メチド、ジアリールヨードニウムビス(フルオロアルキルスルホニル)イミド、ジアリールヨードニウム第4級アンモニウムパーフルオロアルキルスルホネートである。不安定なエステルの例は、トシル酸2-ニトロベンジル、トシル酸2,4-ジニトロベンジル、トシル酸2,6-ジニトロベンジル、トシル酸4-ニトロベンジル;2-トリフルオロメチル-6-ニトロベンジル4-クロロベンゼンスルホネート、2-トリフルオロメチル-6-ニトロベンジル4-ニトロベンゼンスルホネートなどのベンゼンスルホネート;フェニル4-メトキシベンゼンスルホネートなどのフェノール系スルホネートエステル;第4級アンモニウムトリス(フルオロアルキルスルホニル)メチド、および第4級アルキルアンモニウムビス(フルオロアルキルスルホニル)イミド、有機酸のアルキルアンモニウム塩、例えば10-カンファースルホン酸のトリエチルアンモニウム塩である。様々な芳香族(アントラセン、ナフタレン、またはベンゼン誘導体)スルホン酸アミン塩が、米国特許第3,474,054号、第4,200,729号、第4,251,665号、および第5,187,019号に開示されたものも含めて、TAGとして用いることができる。
【0051】
成分(D)の含有量は、成分(A)と成分(E)の含有量の総和を基準として、好ましくは0~5質量%(より好ましくは0.1~3質量%;さらに好ましくは0.5~2質量%)である。
【0052】
(E)ポリマー
本発明による組成物は、ポリマー(E)をさらに含むことができる。明確性のために記載するが、ポリマー(E)は、組成物中の他の成分とは異なる。例えば成分(A)や成分(F)とは異なる。ポリマー(E)は、特に限定されないが、例えば、スチレン、ヒドロキシスチレン、またはこれらいずれかの共重合体が挙げられる。
ポリマー(E)の含有量は、成分(A)を基準として、好ましくは0~300質量%(より好ましくは0.1~50質量%;さらに好ましくは0.1~10質量%)である。ポリマー(E)を含まない(0.0質量%)ことも、本発明の好適な態様である。
ポリマー(E)のMwは、好ましくは1,000~100,000(より好ましくは2,000~10,000)である。
【0053】
(F)高炭素材
本発明による組成物は、(F)高炭素材料をさらに含むことができる。成分(F)を加えることにより、組成物全体として後述の式(X)を満たすことができ、またエッチング耐性にすぐれた硬化膜を形成することができる。明確性のために記載するが、成分(F)は組成物中の他の成分とは異なる。例えば、成分(F)は、式(A1-1)、(A1-2)、(A1-3)および(A1-4)で表される構造を含む成分(A)とは異なる。例えば、成分(F)は、式(C1)で表される成分(C)とは異なる。成分(F)は低分子でも高分子でもよく、好ましくは炭素(C)、酸素(O)および水素(H)のみから構成され、より好ましくは炭素(C)および水素(H)のみから構成される。理論に拘束されないが、本発明の組成物が成分(F)を含むことによって、エッチング耐性がより優れた厚膜を得ることができる。
【0054】
高炭素材(F)は、好ましくは式(F1)で表される。
【化16】
ここで、
Ar
1は、単結合、C
1-6アルキル、C
6-12シクロアルキル、またはC
6-14アリール(好ましくは、単結合、C
1~6アルキルまたはフェニル;より好ましくは単結合、直鎖C
3アルキル、直鎖C
6アルキル、ターシャリーブチルまたはフェニル;さらに好ましくは単結合またはフェニル)である。
Ar
2は、C
1-6アルキル、C
6-12シクロアルキル、またはC
6-14アリール(好ましくは、イソプロピル、ターシャリーブチル、C
6シクロアルキル、フェニル、ナフチル、フェナンスリルまたはビフェニル;より好ましくはフェニル)である。
R
f1およびR
f2は、それぞれ独立に、C
1-6アルキル、ヒドロキシ、ハロゲン、またはシアノ(好ましくは、メチル、エチル、プロピル、イソピロピル、ターシャリーブチル、ヒドロキシ、フッ素、塩素またはシアノ;より好ましくはメチル、ヒドロキシ、フッ素または塩素)である。
R
f3は、水素、C
1-6アルキル、またはC
6-14アリール(好ましくは、水素、C
1~6アルキルまたはフェニル;より好ましくは水素、メチル、エチル、直鎖C
5アルキル、ターシャリーブチルまたはフェニル;さらに好ましくは水素またはフェニル;よりさらに好ましくは水素)である。
ただし、Ar
2がC
1-6アルキルまたはC
6-14アリールであり、かつ、R
f3がC
1-6アルキルまたはC
6-14アリールである場合、Ar
2とR
f3とが、互いに結合して環を形成していてもよい。
rおよびsは、それぞれ独立に、0、1、2、3、4または5(好ましくは0または1;より好ましくは0)である。
それぞれ破線で囲まれたCy
3、Cy
4およびCy
5環の少なくとも1つは、隣接する芳香族炭化水素環Ph
7と縮合した芳香族炭化水素環であり、該芳香族炭化水素環の炭素数は芳香族炭化水素環Ph
7の炭素を含めてC
10-14であることが好ましく、C
10であることがより好ましい。
それぞれ破線で囲まれたCy
6、Cy
7およびCy
8環の少なくとも1つは、隣接する芳香族炭化水素環Ph
8と縮合した芳香族炭化水素環であり、該芳香族炭化水素環の炭素数は芳香族炭化水素環Ph
8の炭素を含めてC
10~14であることが好ましく、C
10であることがさらに好ましい。
式(F1)において、R
f1、R
f2およびOHの結合位置は限定されない。
【0055】
例えば、下記化合物は式(F1)において以下の構成を取ることができる。芳香族炭化水素環Ph
7と芳香族炭化水素環Cy
5が縮合してナフチル環を構成し、OHは芳香族炭化水素環Cy
5に結合している。また、Ar
1は単結合であり、Ar
2とR
f3はフェニルであり、A
r2とR
f3は結合して炭化水素環(フルオレン)を形成している。
【化17】
【0056】
式(F1)で表される高炭素材料の具体例としては例えば以下が挙げられる。
【化18】
【0057】
成分(F)の含有量は、成分(A)と成分(E)の含有量の総和を基準として、好ましくは0~200質量%(より好ましくは0~75質量%;さらに好ましくは1~50質量%;よりさらに好ましくは15~30質量%)である。成分(F)を含まない(0.0質量%)ことも、本発明の好適な一態様である。
【0058】
(G)界面活性剤
本発明による組成物は(G)界面活性剤をさらに含むことができる。成分(G)を含むことで、塗布性を向上させることができる。
本発明に用いることができる界面活性剤としては、(I)陰イオン界面活性剤、(II)陽イオン界面活性剤、または(III)非イオン界面活性剤を挙げることができ、より具体的には(I)アルキルスルホネート、アルキルベンゼンスルホン酸、およびアルキルベンゼンスルホネート、(II)ラウリルピリジニウムクロライド、およびラウリルメチルアンモニウムクロライド、ならびに(III)ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、およびポリオキシエチレンアセチレニックグリコールエーテル、フッ素含有界面活性剤、例えばフロラード(住友3M)、MEGAFACE(DIC)、スルフロン(旭硝子)、または有機シロキサン界面活性剤(例えばKP341、信越化学工業)が好ましい。
【0059】
成分(G)の含有量は、成分(A)と成分(E)の含有量の総和を基準として、好ましくは0~20質量%(より好ましくは0~2質量%;さらに好ましくは0.01~1質量%)である。
【0060】
(H)添加剤
本発明による組成物は、上記の成分以外の添加剤(H)をさらに含むことができる。添加剤(H)は、好ましくは、酸、塩基、ラジカル発生剤、光重合開始剤、および基板密着増強剤からなる群から選択される。
成分(H)の含有量は、成分(A)と成分(E)の含有量の総和を基準として、好ましくは0~10質量%(より好ましくは0.001~10質量%;さらに好ましくは0.001~5質量%である)。成分(H)を含まない(0%)であることも本発明の好ましい一形態である。
【0061】
本発明による組成物は、含有される固形成分の炭素含有量が高いことが好ましい。すなわち、組成物に含有される1または複数の固形成分(組成物におけるそれぞれの固形成分の合計)が以下の式(X)を満たすとき、炭素含有量が高くて好ましい。例えば、本厚膜形成組成物が炭化水素含有化合物(A)、ポリマー(E)および界面活性剤(G)の3種を固形成分として有する場合、固形成分全体として式(X)を満たすことが好ましい。モル比を用いて計算することができる。
1.5≦{原子の総数/(Cの数-Oの数)}≦3.5 式(X)
ここで、
Cの数は、炭素原子の数であり、かつ
Oの数は、酸素原子の数である。
好ましくは、式(X)は、式(X)’または式(X)’’である。
1.5≦{全原子数/(C数-O数)}≦2.4 式(X)’
1.8≦{全原子数/(C数-O数)}≦2.4 式(X)’’
【0062】
[硬化膜の製造方法]
本発明による硬化膜の製造方法は、以下の工程を含んでなる。
(1)基板の上方に上記の本発明による組成物を適用し、炭化水素含有膜を形成する;および
(2)前記炭化水素含有膜を加熱する。
ここで、硬化膜の膜厚は0.5~10μm(好ましくは1~8μm;より好ましくは1.5~5μm;さらに好ましくは2~4μm)である。以降において、()内の数字は工程の順番を示す。例えば、(1)、(2)、(3)の工程が記載されている場合、工程の順番は前記の通りになる。
【0063】
工程(1)
基板としては、半導体ウェハー、液晶表示装置用ガラス基板、有機EL表示装置用ガラス基板、プラズマディスプレイ用ガラス基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用ガラス基板、太陽電池用基板、等が挙げられる。基板は平坦基板であってもよく、また加工等が施され非平坦基板であってもよいが、好ましくは非平坦基板である。基板は複数の層が積層されることで構成されてもよい。好ましくは、基板の表面は半導体である。半導体は酸化物、窒化物、金属、これらのいずれかの組合せのいずれから構成されていても良い。また、好ましくは、基板の表面はSi、Ge、SiGe、Si3N4、TaN、SiO2、TiO2、Al2O3、SiON、HfO2、Ta2O5、HfSiO4、Y2O3、GaN、TiN、TaN、Si3N4、NbN、Cu、Ta、W、Hf、Alからなる群から選ばれる。
基板の上方に、適当な方法により本発明による組成物を適用する。本発明において、上方とは、直上に形成される場合および他の層を介して形成される場合を含む。適用方法は特に限定されないが、例えばスピナー、コーターによる塗布による方法が挙げられ、これによって炭化水素含有膜が形成される。
【0064】
工程(2)
炭化水素含有膜を加熱することにより硬化膜が製造される。(2)の加熱温度は、好ましくは340℃未満(より好ましくは70~330℃)である。ここでの温度は加熱雰囲気、例えばホットプレートの加熱面温度である。加熱時間は、好ましくは30~300秒間(より好ましくは60~240秒間)である。加熱は複数に分けて行う(ステップベイク)ことも可能である。好ましくは、(2)の加熱が、2段階で行われ、1回目が70~330℃であり、2回目が200~330℃で行われる。また、2段階の加熱が行われるとき、1回目が30~120秒、2回目が60~180秒で行われることが好ましい。2段階の加熱を行うとき、2回目の温度が1回目より高いことが好ましい。2段階の加熱を行うとき、2回目の時間が1回目より長いことが好ましい。
一般に、高温の加熱を行うことで、硬化反応を促進し、硬化膜の高密度化に寄与することができる。理論に拘束されないが、本発明によれば、高温加熱を行わなくても、硬化膜の高密度化が達成できる。
加熱の雰囲気としては空気が好適である。炭化水素含有膜の酸化を防止するために酸素濃度を低減させることもできる。例えば、不活性ガス(N2、Ar、Heまたはその混合物)を雰囲気に注入することで、酸素濃度を1,000ppm以下(好適には100ppm以下)にしてもよい。
【0065】
硬化膜の表面抵抗率は、好ましくは109~1016Ω□(Ohm square)である。この表面抵抗率はより好ましくは1012~1016Ω□;さらに好ましくは1013~1016Ω□である。形成される硬化膜は導電性高分子膜ではない。
【0066】
[レジスト膜、レジストパターンの製造方法]
本発明による方法で製造された硬化膜の上方にレジスト膜を製造することができる。レジスト膜の製造方法は、以下の工程を含んでなる。
上記に記載の方法により硬化膜を製造する;
(3)前記硬化膜の上方にレジスト組成物を適用する;および
(4)前記レジスト組成物を加熱し、レジスト膜を形成する。
本発明による方法で製造されたレジスト膜からレジストパターンを製造することもできる。本発明によるレジストパターンの製造方法は、以下の工程を含んでなる。
上記に記載の方法によりレジスト膜を製造する
(5)レジスト膜を露光する;および
(6)レジスト膜を現像する。
【0067】
工程(3)および(4)
硬化膜の上方に、適当な方法によりレジスト組成物を適用する。適用方法は特に限定されないが、例えばスピナー、コーターによる塗布による方法が挙げられる。適用後、加熱することによりレジスト膜が形成される。(4)の加熱は、例えばホットプレートによって行われる。加熱温度は、好ましくは100~250℃である。ここでの温度は加熱雰囲気、例えばホットプレートの加熱面温度である。加熱時間は、好ましくは30~300秒間(より好ましくは60~180秒間)である。加熱は、好ましくは大気または窒素ガス雰囲気にて行われる。
レジスト膜の膜厚は、目的に応じて選択される。レジスト層の厚さを1μmより大きくすることも可能である。
【0068】
工程(5)
レジスト膜に、所定のマスクを通して露光が行なわれる。露光に用いられる光の波長は特に限定されないが、波長が190~440nmの光で露光することが好ましい。具体的には、KrFエキシマレーザー(波長248nm)、ArFエキシマレーザー(波長193nm)、i線(波長365nm)、h線(波長405nm)、g線(波長436nm)等を使用することができる。波長は、より好ましくは240~440nm、さらに好ましくは360~440nmであり、よりさらに好ましくは365nmである。これらの波長は±1%の範囲が許容される。
【0069】
露光後、露光後加熱(post exposure bake、以下PEBということがある)を任意に行ってもよい。露光後加熱は、例えばホットプレートによって行われる。露光後加熱の温度は好ましくは80~160℃(より好ましくは105~115℃)であり、加熱時間は30~600秒間(好ましくは60~200秒間)である。加熱は、好ましくは大気または窒素ガス雰囲気にて行われる。
【0070】
工程(6)
露光(必要に応じてPEB)後、現像液を用いて現像が行なわれ、レジストパターンが製造される。現像法としては、パドル現像法、浸漬現像法、揺動浸漬現像法など従来フォトレジストの現像の際用いられている方法を用いることができる。また現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウムなどの無機アルカリ、アンモニア、エチルアミン、プロピルアミン、ジエチルアミン、ジエチルアミノエタノール、トリエチルアミンなどの有機アミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)などの第四級アミンなどを含む水溶液が用いられ、好ましくは2.38質量%TMAH水溶液である。現像液に、さらに界面活性剤を加えることもできる。現像液の温度は好ましくは5~50℃(より好ましくは25~40℃)、現像時間は好ましくは10~300秒(より好ましくは30~60秒)である。現像後、必要に応じて、水洗またはリンス処理を行うこともできる。
【0071】
[加工基板の製造方法]
本発明による方法で製造されたレジストパターンを用いて、加工基板を製造することができる。本発明による加工基板の製造方法は、以下の工程を含んでなる。
上記に記載の方法によりレジストパターンを製造する;および
(7)前記レジストパターンをマスクとしてレジストパターンの下層を加工する。
上記(7)の加工とは、構造的な変化だけではなく、物性的または化学的な変化を含む。例えば下記(7a)の工程では下層がエッチングされることで構造的に変化することが、加工に該当する。また例えば下記(7b)または(7c)の工程ではイオン注入を行うことによって、対象の物性が変化する。
【0072】
本発明による方法で製造されたレジストパターンをマスクとしてドライエッチングを行い、加工基板を製造することができる。よって好ましい一形態において、本発明による加工基板の製造方法は、以下の工程を含んでなる。
上記に記載の方法によりレジストパターンを製造する;および
(7a)前記レジストパターンをマスクとして下層をドライエッチングする。
好ましくは、(7a)の下層は硬化膜、中間層、または基板(より好ましくは基板)である。中間層は、レジストパターンと本発明の硬化膜の間に存在する場合と、硬化膜と基板の間に存在する場合がある。より好適には後者であり、例えばSiON膜およびSpin on glass膜が挙げられる。
(7a)において、レジストパターンをマスクとして、本発明の硬化膜をエッチングして硬化膜パターンを形成し、硬化膜パターンをマスクとして基板をエッチングすることも、本発明の好適な態様である。また、レジストパターンをマスクとして、基板を直接エッチングすることも、本発明の好適な態様である。(7a)において、レジストパターンをマスクとして、中間層をエッチングして中間層パターンを形成し、中間層パターンをマスクとして基板をエッチングすることも、本発明の別の態様として好適である。
(7a)工程のガスは、好適にはO2、CF4、Ar、CHF3、Cl2、BCl3、またはこれらいずれかの混合(より好適にはO2、CF4、Arの混合)である。
【0073】
本発明による方法で製造されたレジストパターンまたはその下層をマスクとしてイオンエッチングを行い加工基板を製造することができる。よって、好ましい別の一形態において、本発明による加工基板の製造方法は、以下の工程を含んでなる。
上記に記載の方法によりレジストパターンを製造する;および
(7b)前記レジストパターンをマスクとしてイオン注入を行う、または
(7c)前記レジストパターンをマスクとしてレジストパターンの下層を加工し、下層パターンを形成し、下層パターンをマスクとしてイオン注入を行う。
上記(7b)および(7c)において、下層および中間層の説明および好適例は、別に記載しない限り、上記(7a)とそれぞれと同様である。上記(7b)において、イオン注入の対象は好適には基板または中間層(より好ましくは基板)である。上記(7c)において、下層は好ましくは硬化膜または中間層(より好ましくは硬化膜)である。上記(7c)において、下層パターンをマスクとしたイオン注入の対象は好適には基板または中間層(より好ましくは基板)である。(7b)および(7c)を比較すると、(7c)を含む方法が、本発明の加工基板の製造方法としてより好適である。
イオン注入は、公知のイオン注入装置を用いて、公知の方法により行うことができる。
半導体素子や液晶表示素子 等の製造においては、基板表面に不純物拡散層を形成することが行われている。不純物拡散層の形成は、通常、不純物の導入と拡散の二段階で行われている。導入の方法の1つとして、リンやホウ素などの不純物を真空中でイオン化し、高電界で加速して支持体表面に打ち込むイオンインプランテーション(イオン注入)がある。レジストパターンまたは下層パターンは基板表面に選択的に不純物イオンを打ち込む際のマスクとして利用される。イオン注入時のイオン加速エネルギーとして、10~200keVのエネルギー負荷がレジストパターンに加わり、マスクパターンが破壊されることがある。理論に拘束されないが、本発明の硬化膜は、厚くしても、膜を硬くすることができ、かつ膜の収縮量を小さくすることができるため、イオン注入に好適である。イオン源(不純物元素)としては、ホウ素、りん、砒素、アルゴンなどのイオンが挙げられる。基板上の薄膜としては、ケイ素、ニ酸化ケイ素、チッカ珪素、アルミニウムなどが挙げられる。
【0074】
[デバイスの製造方法]
上記の方法を含んでなる製造方法によりデバイスを製造することができる。本発明によるデバイスの製造方法は、好ましくは加工基板に配線を形成することをさらに含んでなる。デバイスとしては、半導体素子、液晶表示素子、有機EL表示素子、プラズマディスプレイ素子、太陽電池素子が挙げられる。デバイスとは、好ましくは半導体である。
【0075】
[実施例]
本発明を諸例により説明すると以下の通りである。なお、本発明の形態はこれらの例のみに限定されるものではない。
【0076】
実施例において、質量平均分子量はGPCを用いて測定する。
【0077】
<実施例1の組成物の調製>
有機溶媒(B1)としてPGME、PGMEAを用い、有機溶媒(B2)としてγ-バレロラクトンを用いる。質量比67.5:27.5:5(=PGME:PGMEA:γ-バレロラクトン)で混合し、溶媒(B)を得る。
固形成分として、炭化水素含有化合物(A)としてa1、架橋基を含んでなる成分(C)としてc1、酸発生剤(D)としてd1を質量比で90:9:1となるように溶媒(B)に添加する。実施例1では膜厚3.0μmの膜を形成するため、固形成分が組成物の全質量と比して29質量%となるように調製する。これに組成物の全質量と比して0.1質量%となるように界面活性剤(G)としてMEGAFACE R-40(DIC)を添加する。これを室温で30分間攪拌することで、溶液を得る。目視で各固形成分が完全に溶解していることを確認する。得た溶液を0.1μmのポリエチレン樹脂製のフィルター(インテグリス、CWUV031S2)で濾過し、実施例1の組成物を得る。
【化19】
a1:上記ポリマー、Mw=2,100
【化20】
c1:テトラメトキシメチル-ビスフェノール
【化21】
d1:熱酸発生剤 ドデシルベンゼンスルホン酸、トリエチルアミン塩
【0078】
<実施例2~5、参考例1~5、および比較例1~5の組成物の調製>
固形成分、溶媒の種類、添加量を表2のように変更する以外は、実施例1の組成物の調製と同様に操作を行う。それぞれ目視で固形成分が完全に溶解していることを確認し、実施例1の組成物の調製と同様にろ過を行う。これらによって、実施例組成物2~5、参考例組成物1~5、および比較例1~5の組成物を調製する。膜厚3.0μmの膜を形成する組成は固形成分が組成物の全質量と比して29質量%となるように調製する。膜厚0.3μmの膜を形成する組成は固形成分が組成物の全質量と比して15質量%となるように調製する。膜厚が3.0μmであっても0.3μmであっても、全質量と比して0.1質量%となるように界面活性剤(G)としてMEGAFACE R-40(DIC)を添加する。
【化22】
a2:上記ポリマー、Mw=2,100
a3:mクレゾールとpクレゾール(質量比6:4)のランダム共重合体であるノボラック樹脂、Mw12,000
【表2】
使用する溶媒の物性値は以下である。
【表3】
【0079】
<膜の形成>
スピンコーター(ミカサ)を用いて、4インチSiベアウェハーに、各組成物を1,500rpmで塗布する。一度目の加熱として、空気雰囲気でホットプレートを用いて250℃60秒加熱する。二度目の加熱は、表4の加熱温度に記載の温度で、空気雰囲気でホットプレートを用いて120秒加熱する。これにより組成物から硬化膜を得る。
【0080】
<膜厚の測定>
上述の通りに形成する膜を有する基板から切片を作成し、JSM-7100F(日本電子)でSEM写真を得て、膜厚を測定する。
【0081】
<エッチングレートの測定>
エッチング装置NE-5000N(ULVAC)を用いてチャンバー圧力を0.17mT、RFパワーを200W、ガス流量をCF4(50sccm)、Ar(35sccm)、O2(4sccm)、時間30秒で、ウェハー上の各膜をドライエッチングする。
エッチング前の膜厚とエッチング後の膜厚を上述の「膜厚の測定」に記載のように測定し、前者と後者の差分を得て、単位時間あたりのエッチングレートを算出する。参考例3のエッチングレートを100%とし、各組成から形成される膜のエッチングレートを算出し、表4に記載する。
参考例1と比較例1、参考例2と比較例2、参考例3と比較例3、参考例4と比較例4を比べると分かるように、膜厚を増やすことでエッチング耐性が低くなる。0.3μm膜厚の参考例1、2、3および4はエッチング耐性が高いが、実施例は3.0μm膜厚にも関わらず良いエッチング耐性を示している。
【0082】
<膜硬度の測定>
上記に記載の硬化膜の膜硬度を測定する。ENT-2100押し込み硬さ試験機(エリオニクス)を用いて、膜厚が0.3μmのものは10μN、3μmのものは100μN、測定回数を100回、ステップ間隔を100msで、ウェハー上の各膜に押し込み荷重をかける。これにより押込み硬さ(GPa)および押し込み弾性率(GPa)を算出する。結果を表4に記載する。
膜厚によって押し込む力を変える理由は膜厚違いの要因を無くすために、膜厚と針の押し込み量の比率を一致させるためである。
参考例1と比較例1、参考例2と比較例2、参考例3と比較例3、参考例4と比較例4を比べると分かるように、膜厚を増やすことで膜硬度が下がる。参考例3と参考例4を比べると分かるように、焼成温度を300℃から350℃に上げると0.3μm膜厚では膜硬度が上がる。一方、比較例3と比較例4を比べると分かるように、焼成温度を300℃から350℃に上げても、3.0μm膜厚では膜硬度が余り上がらない。実施例は3.0μm膜厚であっても、高い膜硬度を示す。一方、比誘電率が4.33であるアニソールを溶媒に用いる比較例5は、膜硬度が低い。
【表4】
【0083】
<イオンインプラント処理後の膜収縮量の測定>
表5に記載の組成物から形成する硬化膜についてイオンインプラント処理後の膜収縮量を測定を行う。装置名EXCEED2300H(日新イオン機器)を用いて、加圧電圧180kV、照射量1015ion/cm2、入射角度0°、イオン種Bの条件で、ターゲット深さを1μmとし、イオンインプラント処理を行う。
イオンインプラント前の膜厚とイオンインプラント後の膜厚を上述の「膜厚の測定」に記載のように測定し、前者と後者の差分を得て、膜収縮量を得る。結果を表5に記載する。
実施例はイオンインプラント処理による膜収縮量が、比較例よりも小さい。
【0084】
<埋め込み性の評価>
表5に記載の組成物から形成する硬化膜について埋め込み性を評価する。高さ0.5μm、ラインスペース比1:1、250nmのトレンチパターンが加工された基板表面を有する8インチSi加工基板を準備する。各組成物を加工基板に1,500rpmで塗布する。一度目の加熱として、空気雰囲気でホットプレートを用いて250℃60秒加熱する。二度目の加熱は、表5の加熱温度に記載の温度で、空気雰囲気でホットプレートを用いて120秒加熱する。これにより各組成物から硬化膜を形成する。膜が形成された基板から切片を形成し、SEMで観察する。埋め込み特性の評価基準は以下である。結果を表5に記載する。
A:空隙や泡が確認されず、トレンチが膜で埋まっている。
B:空隙や泡が確認され、トレンチが膜で埋まっていない。
【表5】
【国際調査報告】