(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-19
(54)【発明の名称】端末、通信方法、及び無線通信システム
(51)【国際特許分類】
H04W 16/32 20090101AFI20241212BHJP
H04W 16/26 20090101ALI20241212BHJP
H04W 72/0457 20230101ALI20241212BHJP
【FI】
H04W16/32
H04W16/26
H04W72/0457 110
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539240
(86)(22)【出願日】2022-02-21
(85)【翻訳文提出日】2024-06-27
(86)【国際出願番号】 JP2022006990
(87)【国際公開番号】W WO2023157307
(87)【国際公開日】2023-08-24
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004381
【氏名又は名称】弁理士法人ITOH
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124844
【氏名又は名称】石原 隆治
(72)【発明者】
【氏名】ラマムールテイ,ヨギータ
(72)【発明者】
【氏名】大宮 陸
(72)【発明者】
【氏名】岩渕 匡史
(72)【発明者】
【氏名】小川 智明
(72)【発明者】
【氏名】鷹取 泰司
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA01
5K067DD11
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE24
5K067KK02
(57)【要約】
第1の基地局から第1のダウンリンク信号及び第2の基地局からの第2のダウンリンク信号を受信する受信部と、前記第1の基地局への第1のアップリンク信号及び前記第2の基地局への第2のアップリンク信号を送信する送信部と、UL-DL imbalanceを検出した場合に、前記第1の基地局とのダウンリンクの接続を行い、前記第2の基地局とのアップリンクの接続を行うプロセッサと、を有し、前記プロセッサは、前記第2の基地局からの指示信号を受信したことに応答して、前記第2の基地局とのアップリンクの接続を、中継装置を介した前記第2の基地局とのアップリンクの接続に変更する、端末。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基地局及び第2の基地局と通信する端末であって、
前記第1の基地局から第1のダウンリンク信号及び前記第2の基地局からの第2のダウンリンク信号を受信する受信部と、
前記第1の基地局への第1のアップリンク信号及び前記第2の基地局への第2のアップリンク信号を送信する送信部と、
前記第1のダウンリンク信号の前記端末における第1の受信電力が前記第2のダウンリンク信号の前記端末における第2の受信電力よりも大きく、かつ前記第1のアップリンク信号の前記第1の基地局における第3の受信電力が前記第2のアップリンク信号の前記第2の基地局における第4の受信電力以下である場合に、前記第1の基地局とのダウンリンクの接続を行い、前記第2の基地局とのアップリンクの接続を行うプロセッサと、
を有し、
前記プロセッサは、前記受信部が前記第2の基地局からの指示信号を受信したことに応答して、前記第2の基地局とのアップリンクの接続を、中継装置を介した前記第2の基地局とのアップリンクの接続に変更する、
端末。
【請求項2】
前記中継装置は、複数の反射素子を含み、反射波の進行方向を変更することが可能なReconfigurable Intelligent Surface (RIS)である、請求項1に記載の端末。
【請求項3】
前記送信部は、前記第2の基地局に対して、上り送信のためのスケジューリングリクエストを送信し、
前記受信部は、前記第2の基地局から前記上り送信のための位相又は送信タイミングの設定情報を含む上り送信のスケジューリング情報を受信する、
請求項1に記載の端末。
【請求項4】
前記送信部は、前記第2の基地局から受信した位相又は送信タイミングの設定情報を含む前記上り送信のスケジューリング情報に基づいて、前記中継装置を介して、前記第2の基地局にアップリンク信号を送信する、
請求項3に記載の端末。
【請求項5】
第1の基地局及び第2の基地局と通信する端末によって実行される通信方法であって、
前記第1の基地局から第1のダウンリンク信号及び前記第2の基地局からの第2のダウンリンク信号を受信するステップと、
前記第1の基地局への第1のアップリンク信号及び前記第2の基地局への第2のアップリンク信号を送信するステップと、
前記第1のダウンリンク信号の前記端末における第1の受信電力が前記第2のダウンリンク信号の前記端末における第2の受信電力よりも大きく、かつ前記第1のアップリンク信号の前記第1の基地局における第3の受信電力が前記第2のアップリンク信号の前記第2の基地局における第4の受信電力以下である場合に、前記第1の基地局とのダウンリンクの接続を行い、前記第2の基地局とのアップリンクの接続を行うステップと、
を有し、
前記アップリンクの設定を行うステップは、前記第2の基地局からの指示信号を受信したことに応答して、前記第2の基地局とのアップリンクの接続を、中継装置を介した前記第2の基地局とのアップリンクの接続に変更する、
通信方法。
【請求項6】
第1の基地局、第2の基地局、中継装置、及び前記第1の基地局及び前記第2の基地局と通信する端末を備える無線通信システムであって、
前記第1の基地局は、
前記端末に第1のダウンリンク信号を送信する第1の送信部と、
前記端末からの第1のアップリンク信号を受信する第1の受信部と、
を有し、
前記第2の基地局は、
前記端末に第2のダウンリンク信号を送信する第2の送信部と、
前記端末からの第2のアップリンク信号を受信する第2の受信部と、
を有し、
前記端末は、
前記第1の基地局から前記第1のダウンリンク信号及び前記第2の基地局からの前記第2のダウンリンク信号を受信する受信部と、
前記第1の基地局への前記第1のアップリンク信号及び前記第2の基地局への前記第2のアップリンク信号を送信する送信部と、
前記第1のダウンリンク信号の前記端末における第1の受信電力が前記第2のダウンリンク信号の前記端末における第2の受信電力よりも大きく、かつ前記第1のアップリンク信号の前記第1の基地局における第3の受信電力が前記第2のアップリンク信号の前記第2の基地局における第4の受信電力以下である場合に、前記第1の基地局とのダウンリンクの接続を行い、前記第2の基地局とのアップリンクの接続を行うプロセッサと、
を有し、
前記プロセッサは、前記受信部が前記第2の基地局からの指示信号を受信したことに応答して、前記第2の基地局とのアップリンクの接続を、中継装置を介した前記第2の基地局とのアップリンクの接続に変更する、
無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムにおける端末及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
第5世代移動通信システム(5G(Above-6GHz))では、従来の周波数帯に加え、ミリ波帯と呼ばれる高周波数帯が利用される。一般に、5Gやローカル5Gなどで利用可能な28GHz帯などのAbove-6と呼ばれる高周波数帯の電波は、距離減衰が大きいことから、超高利得なビームフォーミング送信技術を用いることで、長距離伝送を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】W. Tang et al., “Wireless Communications With Reconfigurable Intelligent Surface: Path Loss Modeling and Experimental Measurement,” in IEEE Transactions on Wireless Communications, vol. 20, no. 1, pp. 421-439, Jan. 2021.
【非特許文献2】Y. Ramamoorthi and A. Kumar, "Dynamic Time Division Duplexing for Downlink/Uplink Decoupled Millimeter Wave-Based Cellular Networks," in IEEE Communications Letters, vol. 23, no. 8, pp. 1441-1445, Aug. 2019
【非特許文献3】S. Singh, X. Zhang, and J. G. Andrews, “Joint rate and SINR coverage analysis for decoupled uplink-downlink biased cell associations in HetNets,” IEEE Trans. Wireless Commun., vol. 14, no. 10, pp. 5360-5373, Oct. 2015.
【非特許文献4】3GPP, Technical Specification Group Radio Access Network; Evolved Universal Terrestrial Radio Access (E-UTRA) and NR; Multi-connectivity;, Tech. Rep. TR 37.740 v16.5.0, 2021.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、工場や倉庫内など、準静的または動的に大きな遮蔽物が移動するような空間において、Uplink(UL)とDownlink(DL)を分ける上下分離方式(DUDe: downlink and uplink decoupling)を適用する状況を想定する。
【0006】
この場合、上記のような高周波数帯の電波は直進性が高く、遮蔽物によるロスが大きくなってしまうため、端末からのアップリンク送信の性能向上が求められる。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであって、端末からのアップリンク送信の性能を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、第1の基地局及び第2の基地局と通信する端末であって、
前記第1の基地局から第1のダウンリンク信号及び前記第2の基地局からの第2のダウンリンク信号を受信する受信部と、前記第1の基地局への第1のアップリンク信号及び前記第2の基地局への第2のアップリンク信号を送信する送信部と、前記第1のダウンリンク信号の前記端末における第1の受信電力が前記第2のダウンリンク信号の前記端末における第2の受信電力よりも大きく、かつ前記第1のアップリンク信号の前記第1の基地局における第3の受信電力が前記第2のアップリンク信号の前記第2の基地局における第4の受信電力以下である場合に、前記第1の基地局とのダウンリンクの接続を行い、前記第2の基地局とのアップリンクの接続を行うプロセッサと、を有し、前記プロセッサは、前記受信部が前記第2の基地局からの指示信号を受信したことに応答して、前記第2の基地局とのアップリンクの接続を、中継装置を介した前記第2の基地局とのアップリンクの接続に変更する、端末、が提供される。
【発明の効果】
【0009】
実施例によれば、端末からのアップリンク送信の性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図4】Reconfigurable Intelligent Surface(RIS)の機能構成例を示す図である。
【
図5】RISに含まれる複数の素子の例を示す図である。
【
図6】基地局、端末、及びRISのハードウェア構成例を示す図である。
【
図9】DUDeのULにRISを適用する例を示す図である。
【
図10】DUDeのULにRISを適用した場合のUL性能の例を示す図である。
【
図11】DUDeのULにRISを適用する例を示す図である。
【
図12】無線システムの処理手順の例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
Reconfigurable Intelligent Surface(RIS)は、電磁信号の位相と振幅を適切に調整することでチャネルを制御する効果的な方法である。最近の研究や実験では様々なアーキテクチャや多重アクセス技術が提案されている。
【0012】
将来のヘテロジニアスネットワークではマルチコネクティビティが使用されると考えられ、端末(ユーザ装置であってもよい)が複数の送信ポイント(TP)に接続していることを考慮することが重要である。しかし、このような状況下では、配置された複数の基地局の送信電力の違いにより発生する送信電力の不均衡が発生する問題がある。これを補正する方法として、アップリンク(UL)とダウンリンク(DL)のアソシエーションを分割する方法がある。これを規格ではUL/DL分割と呼び、後に上下分離方式(DUDe)として発展させている。
【0013】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、実施の形態における無線通信システムの構成例を示す図である。
図1に示すように、無線通信システムは、マクロセル基地局10A、スモールセル基地局10B、端末20、Reconfigurable Intelligent Surface(RIS)30、及びネットワーク40等を含む。マクロセル基地局10A及びスモールセル基地局10Bは、有線又は無線により、ネットワーク40に接続される。マクロセル基地局10Aとスモールセル基地局10Bとは、例えば、X2インタフェースを介して、通信可能に接続される。スモールセル基地局10BとRIS30とは、有線又は無線により、通信可能に接続される。なお、
図1の例では、RIS30は、スモールセル基地局10Bと接続されることを想定しているが、本発明の実施例は、この例には限定されない。例えば、RIS30は、マクロセル基地局10Aと接続されてもよい。マクロセル基地局10A、スモールセル基地局10B、及び端末20はいずれも、ビームフォーミングを行って信号の送受信を行うことが可能である。
【0014】
マクロセル基地局10Aは、屋外等において、広い通信エリアを形成する基地局である。マクロセル基地局10Aは、高電力基地局等と呼ばれてもよい。マクロセル基地局10Aは、例えば、第5世代移動通信システム(5G)で利用される高周波数帯の電波を送受信することにより、端末20との間で、高速・大容量の無線通信を実現する。スモールセル基地局10Bは、屋内等において、狭い通信エリアを形成する基地局である。スモールセル基地局10Bは、低電力基地局等と呼ばれてもよい。スモールセル基地局10Bは、例えば、5Gで利用される高周波数帯の電波を送受信することにより、端末20との間で、高速の無線通信を実現する。端末20は、例えば、スマートフォン、タブレット端末、PC(Personal Computer)等の通信機器である。
【0015】
端末20は、マクロセル基地局10A及びスモールセル基地局10Bとの間で、デュアルコネクティビティを設定することで、マクロセル基地局10A及びスモールセル基地局10Bと同時に通信することが可能である。スモールセル基地局10Bは、端末20と通信する際に、中継装置としてのRIS30を介して通信することが可能である。なお、
図1の例では、RIS30は、スモールセル基地局10Bと端末20との間の通信を中継することを想定しているが、本発明の実施例は、この例には限定されない。例えば、RIS30は、マクロセル基地局10Aと端末20との間の通信を中継してもよい。
【0016】
RIS30は、有線又は無線により、スモールセル基地局10Bに接続される(マクロセル基地局10Aに接続されてもよい)。RIS30は、スモールセル基地局10Bからの設定情報に応じて、端末20からの信号が搬送される搬送波の反射方向を変更することによって、端末20からの信号をスモールセル基地局10Bに中継することが可能である。
【0017】
図1には、マクロセル基地局10A、スモールセル基地局10B、端末20、及びRIS30がそれぞれ1つだけ示されているが、本発明の実施例は、この例には限定されない。無線通信システムには、1又は複数のマクロセル基地局10A、1又は複数のスモールセル基地局10B、1又は複数の端末20、及び1又は複数のRIS30が含まれてもよい。
【0018】
図2は、マクロセル基地局10A及びスモールセル基地局10Bの機能構成の一例を示す図である。
図2に示されるように、マクロセル基地局10A及びスモールセル基地局10Bは、いずれも、送信部110、受信部120、及び制御部130を有する。
図2に示す機能構成は一例に過ぎない。本実施の形態に係る動作を実行できるのであれば、機能区分及び機能部の名称はどのようなものでもよい。
【0019】
送信部110は、送信データから送信信号を作成し、当該送信信号を無線で送信する。受信部120は、各種の信号を無線受信し、受信した物理レイヤの信号からより上位のレイヤの信号を取得する。また、受信部120は受信する信号の測定を行って、受信電力等を取得する測定部を含む。
【0020】
制御部130は、基地局(マクロセル基地局10A又はスモールセル基地局10B)の制御を行う。なお、送信に関わる制御部130の機能が送信部110に含まれ、受信に関わる制御部130の機能が受信部120に含まれてもよい。
【0021】
図3は、端末20の機能構成の一例を示す図である。
図3に示されるように、端末20は、送信部210と、受信部220と、制御部230と、を有する。
図3に示す機能構成は一例に過ぎない。本実施の形態に係る動作を実行できるのであれば、機能区分及び機能部の名称はどのようなものでもよい。
【0022】
送信部210は、基地局(マクロセル基地局10A及び/又はスモールセル基地局10B)側に送信する信号を生成し、当該信号を無線で送信する機能を含む。受信部220は、基地局(マクロセル基地局10A及び/又はスモールセル基地局10B)から送信された各種の信号を受信し、受信した信号から、例えば、より上位のレイヤの情報を取得する機能を含む。また、受信部220は受信する信号の測定を行って、受信電力等を取得する測定部を含む。
【0023】
制御部230は、端末20の制御を行う。なお、送信に関わる制御部230の機能が送信部210に含まれ、受信に関わる制御部230の機能が受信部220に含まれてもよい。
【0024】
図4は、RIS30の機能構成の一例を示す図である。
図4に示されるように、RIS30は、送信部310、受信部320、制御部330、及び複数のエレメント340を有する。
図4に示す機能構成は一例に過ぎない。本実施の形態に係る動作を実行できるのであれば、機能区分及び機能部の名称はどのようなものでもよい。
【0025】
送信部310は、基地局(マクロセル基地局10A及び/又はスモールセル基地局10B)側に送信する信号を生成し、当該信号を有線及び/又は無線で送信する機能を含む。受信部320は、基地局(マクロセル基地局10A及び/又はスモールセル基地局10B)から送信された各種の信号を受信し、受信した信号から、例えば、より上位のレイヤの情報を取得する機能を含む。
【0026】
制御部330は、RIS30の制御を行う。複数のエレメント340は、端末20からの信号が搬送される搬送波の反射方向を変更する機能を有する。制御部330は、例えば、スモールセル基地局10Bからの指示信号に応じて、複数のエレメント340のうちの各エレメント340によって反射される反射波の反射位相(又は反射方向)を制御する機能を有する。例えば、制御部330は、複数のエレメント340のうちの各エレメント340のインピーダンス、素子間隔、及び/又は反射素子の向きを制御することで、反射波の反射位相(又は反射方向)を制御する。
【0027】
なお、複数のエレメント340は、例えば、リフレクトアレイとして構成されてもよい。
図5は、リフレクトアレイとしての複数のエレメント340の例を示す図である。複数のエレメント340をリフレクトアレイとして構成する場合において、例えば、複数のエレメント340の間の素子間隔を変更することで、反射波の反射位相を変更し、反射波の進行方向を変更することが可能である。なお、反射波の反射位相を変更する方法は、素子間隔を変更することには限定されず、複数のエレメント340のうちの各エレメント340のインピーダンスを変更することで行われてもよい。追加的又は代替的に、複数のエレメント340のうちの各エレメント340に入射波の反射方向を変更するための反射素子を含め、反射素子の向きを変更することで反射波の反射方向を変更してもよい。例えば、反射素子に、Micro Electro Mechanical Systems(MEMS)を利用したアクチュエータを含め、アクチュエータを形成する圧電材料に印加する電圧を制御することによって反射波の反射方向を制御する構成としてもよい。
【0028】
図2~
図4は、機能単位のブロックを示している。これらの機能ブロック(構成部)は、ハードウェア及びソフトウェアの少なくとも一方の任意の組み合わせによって実現される。各機能ブロックの実現方法は特に限定されない。すなわち、各機能ブロックは、物理的又は論理的に結合した1つの装置を用いて実現されてもよいし、物理的又は論理的に分離した2つ以上の装置を直接的又は間接的に(例えば、有線、無線などを用いて)接続し、これら複数の装置を用いて実現されてもよい。
【0029】
例えば、マクロセル基地局10A、スモールセル基地局10B、端末20、及びRIS30はいずれも、本実施の形態に係る処理を行うコンピュータとして機能してもよい。
図6は、マクロセル基地局10A、スモールセル基地局10B、端末20、及びRIS30のハードウェア構成例を示す図である。マクロセル基地局10A、スモールセル基地局10B、端末20、及びRIS30のうちのいずれの装置も、物理的には、ドライブ装置100、補助記憶装置102、メモリ装置103、CPU104、及びインタフェース装置105等を有するコンピュータ装置として構成されてもよい。ドライブ装置100、補助記憶装置102、メモリ装置103、CPU104、及びインタフェース装置105等は、それぞれバスBで相互に接続されている。
【0030】
コンピュータ装置において、処理を実現するプログラムは、CD-ROM等の記録媒体101によって提供される。プログラムを記憶した記録媒体101がドライブ装置100にセットされると、プログラムが記録媒体101からドライブ装置100を介して補助記憶装置102にインストールされる。但し、プログラムのインストールは必ずしも記録媒体101より行う必要はなく、ネットワークを介して他のコンピュータよりダウンロードするようにしてもよい。補助記憶装置102は、インストールされたプログラムを格納すると共に、必要なファイルやデータ等を格納する。
【0031】
メモリ装置103は、プログラムの起動指示があった場合に、補助記憶装置102からプログラムを読み出して格納する。CPU104は、メモリ装置103に格納されたプログラムに従ってコンピュータ装置に係る機能を実行する。インタフェース装置105は、ネットワークに接続するためのインタフェースとして用いられる。
【0032】
(UL-DL imbalance)
【0033】
図7は、マクロセル基地局10Aとスモールセル基地局10Bとの間に端末20が配置されている例を示す図である。端末20は、マクロセル基地局10Aとスモールセル基地局10Bとを結ぶ直線上を移動すると仮定する。
【0034】
この場合において、端末20がマクロセル基地局10Aからのダウンリンクの信号を受信する際の受信電力を受信電力Aとする。端末20がスモールセル基地局10Bからのダウンリンクの信号を受信する際の電力を受信電力Bとする。マクロセル基地局10Aが端末20からのアップリンクの信号を受信する際の受信電力を受信電力Cとする。スモールセル基地局10Bが端末20からのアップリンクの信号を受信する際の受信電力を受信電力Dとする。
【0035】
端末20がマクロセル基地局10Aに近い位置からスモールセル基地局10Bに移動する場合には、以下の状態1~状態3の3つの状態が考えられる。
【0036】
状態1:受信電力Aが受信電力B以上であり、かつ受信電力Cが受信電力D以上である場合を状態1とする。
【0037】
状態2:受信電力Aが受信電力B以上であり、かつ受信電力Cが受信電力D未満である場合を状態2とする。
【0038】
状態3:受信電力Aが受信電力B未満であり、かつ受信電力Cが受信電力D未満である場合を状態3とする。
【0039】
状態1の場合、端末20がマクロセル基地局10Aからのダウンリンクの信号を受信する受信電力Aは、端末20がスモールセル基地局10Bからのダウンリンクの信号を受信する受信電力B以上である。従って、状態1の場合には、端末20は、ダウンリンクでマクロセル基地局10Aとの接続を行うことが効率的である。
【0040】
また、状態1の場合、マクロセル基地局10Aが端末20からのアップリンクの信号を受信する受信電力Cは、スモールセル基地局10Bが端末20からのアップリンクの信号を受信する受信電力D以上である。従って、状態1の場合には、端末20は、アップリンクでマクロセル基地局10Aとの接続を行うことが効率的である。
【0041】
つまり、状態1の場合、端末20は、アップリンク及びダウンリンクでマクロセル基地局10Aとの接続を行うことが効率的である。
【0042】
状態3の場合、端末20がマクロセル基地局10Aからのダウンリンクの信号を受信する受信電力Aは、端末20がスモールセル基地局10Bからのダウンリンクの信号を受信する受信電力B未満である。従って、状態3の場合には、端末20は、ダウンリンクでスモールセル基地局10Bとの接続を行うことが効率的である。
【0043】
また、状態3の場合、マクロセル基地局10Aが端末20からのアップリンクの信号を受信する受信電力Cは、スモールセル基地局10Bが端末20からのアップリンクの信号を受信する受信電力D未満である。従って、状態3の場合には、端末20は、アップリンクでスモールセル基地局10Bとの接続を行うことが効率的である。
【0044】
つまり、状態3の場合、端末20は、アップリンク及びダウンリンクでスモールセル基地局10Bとの接続を行うことが効率的である。
【0045】
状態2の場合、端末20がマクロセル基地局10Aからのダウンリンクの信号を受信する受信電力Aは、端末20がスモールセル基地局10Bからのダウンリンクの信号を受信する受信電力B以上である。従って、状態2の場合には、端末20は、ダウンリンクでマクロセル基地局10Aとの接続を行うことが効率的である。
【0046】
また、状態2の場合、マクロセル基地局10Aが端末20からのアップリンクの信号を受信する受信電力Cは、スモールセル基地局10Bが端末20からのアップリンクの信号を受信する受信電力D未満である。従って、状態2の場合には、端末20は、アップリンクでスモールセル基地局10Bとの接続を行うことが効率的である。
【0047】
(DUDe)
【0048】
状態2のように、ダウンリンクではマクロセル基地局10Aからの受信電力が大きく、アップリンクではスモールセル基地局10Bでの受信電力が大きい状態をUL-DL imbalance(UL-DL不均衡)と呼ぶ。UL-DL imbalanceの場合に、通信の効率を高める方法として、ULとDLを分けるDownlink and Uplink Decoupling(上下分離方式:DUDe)を適用することができる。
【0049】
DUDeとは、複数種類の基地局が存在するネットワークにおいて、ダウンリンクの送信元基地局とアップリンクの送信先基地局をそれぞれ独立に選択することでスループットを向上させる方式である。
【0050】
図8は、端末20が、DUDe方式を適用して、マクロセル基地局10A及びスモールセル基地局10Bと通信する例を示す図である。例えば、端末20は、マクロセル基地局10A及びスモールセル基地局10Bとの間で、デュアルコネクティビティを設定し、その後、無線ベアラの設定を変更することで、DUDe方式を適用して、マクロセル基地局10A及びスモールセル基地局10Bと通信してもよい。
【0051】
ここで、工場や倉庫内など、準静的または動的に大きな遮蔽物が移動するような空間において、DUDeを適用する状況を想定する。例えば、
図11に示すように、端末20とスモールセル基地局10Bとの間に、遮蔽物が置かれ、見通し内通信ができなくなったと仮定する。また、RIS30が天井に配置され、端末20とRIS30との間、及びRIS30とスモールセル基地局10Bとの間には、遮蔽物が存在しないと仮定する。
【0052】
図11の例では、端末20からの入射波は、RIS30に入射し、RIS30によって反射される。この場合において、RIS30によって反射波の進行方向を調整することによって、スモールセル基地局10Bにおける端末20からのアップリンクの信号の受信電力を最適化(最大化)することが可能である。追加的又は代替的に、RIS30によって反射波の進行方向を変更することによって、端末20と通信するスモールセル基地局10Bを別のスモールセル基地局10Bに切り替えることが可能である。
【0053】
図9は、端末20が、DUDe方式を適用して、マクロセル基地局10A及びスモールセル基地局10Bと通信する例を示す図である。
図9の例では、端末20とスモールセル基地局10Bとの間のアップリンクの通信は、RIS30によって中継される。なお、
図9の例では、
図11に示されるように、端末20からの入射波をRIS30が反射する際に、スモールセル基地局10Bからの指示信号に応じて、RIS30が、反射波の反射方向を制御する。RIS30は、スモールセル基地局10Bにおける端末20からのアップリンクの信号(RIS30からの反射波)の受信電力が最適化(最大化)されるように、反射波の反射方向を制御してもよい。追加的又は代替的に、RIS30は、反射波の反射方向を制御することによって、端末20と通信するスモールセル基地局10Bを別のスモールセル基地局10Bに切り替えることによって、アップリンクの通信を最適化してもよい。
【0054】
例えば、RIS30が反射波の反射方向として、方向1、方向2、...、方向nのいずれかを選択できると仮定する。スモールセル基地局10Bは、RIS30に対して、時刻1、時刻2、...、時刻nにおいて、端末20からの所定の参照信号を、対応する方向1、方向2、...、方向nで反射するように指示する。スモールセル基地局10Bは、時刻1、時刻2、...、時刻nにおいて受信した参照信号の受信電力値1、受信電力値2、...受信電力値nを比較し、これらの受信電力値のうちの最大の受信電力値に対する方向を、RIS30に対して指示してもよい。
【0055】
別の例として、端末20と通信中のスモールセル基地局10Bの近傍に別のスモールセル基地局10Bが配置されていると仮定する。スモールセル基地局10Bと別のスモールセル基地局10Bとは、X2インタフェースを介して通信可能であると仮定する。端末20と通信中のスモールセル基地局10Bは、RIS30に対して、時刻1、時刻2、...、時刻nにおいて、端末20からの所定の参照信号を、対応する方向1、方向2、...、方向nで反射するように指示する。スモールセル基地局10Bは、時刻1、時刻2、...、時刻nにおいてスモールセル基地局10B自身が受信した参照信号の受信電力値1A、受信電力値2A、...受信電力値nAと、別のスモールセル基地局10Bが受信した参照信号の受信電力値1B、受信電力値2B、...受信電力値nBを比較し、受信電力値1A、受信電力値2A、...受信電力値nA、及び受信電力値1B、受信電力値2B、...受信電力値nBの中の最大の受信電力値を特定する。
【0056】
スモールセル基地局10Bは、スモールセル基地局10B自身にて、当該特定した最大の受信電力値に対応する参照信号が受信されている場合には、端末20との通信先をスモールセル基地局10Bのままとし、当該最大の受信電力値に対する方向を、RIS30に対して指示してもよい。スモールセル基地局10Bは、別のスモールセル基地局10Bにて、当該特定した最大の受信電力値に対応する参照信号が受信されている場合には、当該最大の受信電力値に対する方向を、RIS30に対して指示すると共に、端末20の通信先を別のスモールセル基地局10Bに変更するように端末20に指示してもよい。なお、上述の例では、スモールセル基地局10Bが端末20の近傍に2つ配置されていることを仮定しているが、本発明の実施例はこの例には限定されない。例えば、端末20の近傍に3つ以上のスモールセル基地局10Bが配置されていてもよい。
【0057】
図10は、DUDeのULにRISを適用した場合のUL性能の例を示す図である。上述の通り、端末20とスモールセル基地局10Bとの間の通信を、RIS30によって中継し、その際に、端末20からの信号を搬送する搬送波のRIS30による反射方向を制御することによって、スモールセル基地局10Bにおける端末20からのアップリンクの信号の受信電力を最適化(最大化)することが可能である。
図10の例では、
図7の例と比較して、UL-DL imbalanceの場合の、端末20からのアップリンク信号のスモールセル基地局10Bにおける受信電力が高くなっている。
【0058】
上述の通り、DUDeのULにRISを適用した場合には、端末20は、アップリンク及びダウンリンクにおいて、最適な基地局に常に接続され得る。特に、遮蔽が多い環境では、端末20の近くの最適なスモールセル基地局10BにULトラフィックをオフロードすることが可能である。遮蔽環境(及びUL-DL不均衡が発生する領域)に置かれる端末20のDL及びULの全体的な通信速度を向上させ、システムのスループットを効果的に高めることが可能である。なお、受信電力は、自由空間の経路損失に基づいて計算してもよい。
【0059】
図12は、無線通信システムで実行される処理手順の一例を説明するためのフローチャートである。
【0060】
ステップS110において、マクロセル基地局10Aは、端末20からメジャメントレポートを受信する。当該メジャメントレポートには、端末20の近傍に置かれる基地局(マクロセル基地局10A及びスモールセル基地局10Bを含む)からの信号の受信電力値を示す情報が含まれる。
【0061】
ステップS120において、マクロセル基地局10Aと端末20との間の通信が設定される。ステップS130において、マクロセル基地局10Aは、端末20に対して、ダウンリンク通信のスケジューリングを行う。
【0062】
ステップS110においてマクロセル基地局10Aが受信したメジャメントレポートにおいて、スモールセル基地局10Bからの受信電力値が所定の閾値よりも大きいことが示されていた場合、マクロセル基地局10Aは、端末20とスモールセル基地局10Bとの間のアップリンク通信の設定を行うことを決定する。ステップS140において、マクロセル基地局10Aは、端末20とスモールセル基地局10Bとの間のアップリンク通信の設定を行うことを端末20に通知する。
【0063】
次に、
図12のステップS210において、マクロセル基地局10Aは、スモールセル基地局10Bに対して、スモールセル基地局10Bの追加の要求(Small Cell base station(SCBS) addition request)を送信する。ステップS220において、スモールセル基地局10Bは、スモールセル基地局10Bの追加の要求に対する肯定応答(SCBC Addition request acknowledgement)を送信する。
【0064】
ステップS220において、スモールセル基地局10Bの追加の要求に対する肯定応答を受信したことに応答して、マクロセル基地局10Aは、ステップS230において、端末20のアップリンク通信の設定を変更するための設定情報である、Radio Resource Control(RRC) Connection reconfiguration for ULを、端末20に送信する。
【0065】
ステップS230において、RRC Connection reconfiguration for ULを受信したことに応答して、ステップS240において、端末20は、RRC Connection reconfiguration complete for ULをマクロセル基地局10Aに送信する。ステップS240において、RRC Connection reconfiguration complete for ULを受信したことに応答して、ステップS250において、マクロセル基地局10Aは、SCBS Reconfiguration completeをスモールセル基地局10Bに送信する。
【0066】
次に、
図12のステップS310において、端末20とスモールセル基地局10Bとの間で、ランダムアクセス手順が実行される。ステップS310において、端末20とスモールセル基地局10Bとの間のアップリンクの通信が設定された後、スモールセル基地局10Bは、端末20とスモールセル基地局10Bとの間のアップリンク通信を、RIS30によって中継させるための再設定を行う。
【0067】
ステップS320において、端末20は、アップリンクのスケジューリングリクエストをスモールセル基地局10Bに送信する。ステップS330において、スモールセル基地局10Bは、端末20に対するスケジューリングを行う。この場合において、スモールセル基地局10Bは、端末20とのアップリンク通信をRIS30に中継させることを決定してもよい。追加的に、スモールセル基地局10Bは、RIS30によって反射された端末20からの信号のスモールセル基地局10Bにおける受信電力が最適化(最大化)されるように、RIS30に対して送信すべき位相及びタイミング情報を含む設定情報を設定してもよい。
【0068】
ステップS340において、スモールセル基地局10Bは、位相及びタイミング情報を含む設定情報を、RIS30に送信する。RIS30は、受信した位相及びタイミング情報に基づいて、端末20からの信号の搬送波を反射する方向を調整してもよい。ステップS350において、スモールセル基地局10Bは、端末20にULスケジューリンググラントを送信する。この際に、スモールセル基地局10Bは、RIS30を介して、ULスケジューリンググラントを端末20に送信してもよい。ULスケジューリンググラントには、端末20からの信号を、RIS30を介してスモールセル基地局10Bに送信するためのリソース(時間及び周波数領域のリソース)を指定する情報が含まれてもよい。
【0069】
その後、ステップS360において、端末20は、RIS30に対して、UL送信を行い、ステップS370において、RIS30は、端末20からのUL送信を、スモールセル基地局10Bに中継する。
【0070】
上述したように、実施例によれば、DUDeのULにRIS30を適用することで、端末20のDL及びULの全体的な通信レートを向上することができる。従って、無線通信システムのスループットを効果的に高めることができる。
【符号の説明】
【0071】
10A マクロセル基地局
10B スモールセル基地局
20 端末
30 RIS
40 ネットワーク
110 送信部
120 受信部
130 制御部
210 送信部
220 受信部
230 制御部
310 送信部
320 受信部
330 制御部
340 エレメント
100 ドライブ装置
101 記録媒体
102 補助記憶装置
103 メモリ装置
104 CPU
105 インタフェース装置
B バス
【国際調査報告】