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  • 特表-酸化的及び還元的浸出方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】酸化的及び還元的浸出方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 3/00 20060101AFI20241219BHJP
   C22B 3/06 20060101ALI20241219BHJP
   C22B 3/44 20060101ALI20241219BHJP
   C22B 23/00 20060101ALI20241219BHJP
   C22B 15/00 20060101ALI20241219BHJP
   C22B 21/00 20060101ALI20241219BHJP
   C22B 47/00 20060101ALI20241219BHJP
   C22B 59/00 20060101ALI20241219BHJP
   C22B 26/12 20060101ALI20241219BHJP
   C22B 7/00 20060101ALI20241219BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20241219BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20241219BHJP
   H01M 10/54 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C22B3/00
C22B3/06
C22B3/44
C22B23/00 102
C22B15/00 105
C22B21/00
C22B47/00
C22B59/00
C22B26/12
C22B7/00 C
H01M4/525
H01M4/505
H01M10/54
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534200
(86)(22)【出願日】2022-12-06
(85)【翻訳文提出日】2024-07-31
(86)【国際出願番号】 EP2022084662
(87)【国際公開番号】W WO2023104830
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】21212957.1
(32)【優先日】2021-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】スミス,ヴィンセント
(72)【発明者】
【氏名】ガーラッハ,ティル
(72)【発明者】
【氏名】ムラー,ベルンハルト
(72)【発明者】
【氏名】ローデ,ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】ボルン,ニルス-オロフ ヨアヒム
(72)【発明者】
【氏名】シールレ-アルント,ケルシュティン
(72)【発明者】
【氏名】ヤブロンカ,マルク
(72)【発明者】
【氏名】シルマ,アレクス
【テーマコード(参考)】
4K001
5H031
5H050
【Fターム(参考)】
4K001AA02
4K001AA07
4K001AA09
4K001AA10
4K001AA16
4K001AA19
4K001AA34
4K001AA39
4K001BA22
4K001DB02
4K001DB03
4K001DB04
4K001DB05
4K001DB16
4K001HA09
4K001HA12
4K001JA01
5H031BB02
5H031HH03
5H031HH06
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA08
5H050GA02
5H050GA05
5H050GA12
5H050GA15
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA10
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
本明細書に開示するのは、ゼロ酸化状態の1つ以上の金属と、金属オキシド、金属ヒドロキシド、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上とを含む材料を浸出する方法であり、この方法は、該材料を、6未満のpHを有する酸化性酸性水溶液と接触させる工程、及び、後続して、金属オキシド、金属ヒドロキシド、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上を還元剤で還元する工程を含む。また、金属イオンを含む水溶液を得るために材料を浸出する工程、及び金属イオンを分離して少なくとも1つの本質的に純粋な金属イオン溶液及び/又は少なくとも1つの本質的に純粋な固体金属イオン塩を得る工程を含む方法を開示する。さらに、材料を機械的に粉砕して黒色塊を得る工程、及びその黒色塊を浸出する工程を含む方法を開示する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼロ酸化状態の1つ以上の金属と、金属オキシド、金属ヒドロキシド、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上とを含む材料を浸出するための方法であって、
前記材料を、20℃~110℃の範囲の温度で10分~10時間の範囲の時間、6未満のpHを有し且つHCl、HSO、CHSOH、HNO、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上の酸を含み、そしてO、NO、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上をさらに含む、酸化性酸性水溶液と接触させる工程、及び
後続して、金属オキシド、金属ヒドロキシド、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上を、20℃~100℃の範囲の温度で10分~10時間の範囲の時間、SO、メタ重亜硫酸塩、重亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ジチオン酸塩、H、H、及びそれらの組み合わせから選択される還元剤で還元する工程
を含む方法。
【請求項2】
前記酸化性酸性水溶液がHSOを含み、そしてO、NO、又はそれらの組み合わせをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記還元剤がSOであり、そしてSOを、毎分溶液の総体積の20%以下の割合で溶液を通してスパージする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記材料が、黒色塊、正極活物質、正極、正極活物質前駆体、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上を含むリチウムイオン電池材料であり、及び/又は前記材料が、ニッケル、コバルト、マンガン、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記ゼロ酸化状態の1つ以上の金属が、ニッケル、コバルト、銅、アルミニウム、鉄、マンガン、希土類金属、及びそれらの組み合わせから選択され、及び/又は金属オキシドが、ニッケルオキシド、コバルトオキシド、銅オキシド、アルミニウムオキシド、鉄オキシド、マンガンオキシド、希土類オキシド、及びそれらの組み合わせから選択され、及び/又は金属ヒドロキシドが、ニッケルヒドロキシド、コバルトヒドロキシド、銅ヒドロキシド、アルミニウムヒドロキシド、鉄ヒドロキシド、マンガンヒドロキシド、希土類ヒドロキシド、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記材料が、
0.1質量パーセント~10質量パーセントのリチウム、
0質量パーセント~60質量パーセントのニッケル、
0質量パーセント~20質量パーセントのコバルト、
0質量パーセント~20質量パーセントの銅、
0質量パーセント~20質量パーセントのアルミニウム、
0質量パーセント~20質量パーセントの鉄、及び
0質量パーセント~20質量パーセントのマンガン
を含み、前記質量パーセントは、それぞれ前記材料の総質量によるものであり、
ただし、ニッケル、コバルト、及びマンガンの少なくとも1つの含有量が0質量パーセントより高いことを条件とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記材料又はその前駆体を浸出する前に熱分解する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
前記酸化性酸性水溶液がOを含み、該Oが空気として供給され、そして該空気が、溶液を通してスパージされる1分あたりのOの溶液の総体積の20%以下に相当する割合で溶液を通してスパージされる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
接触工程の後且つ還元工程の前に、追加の金属オキシド及び/又は金属ヒドロキシドを添加することをさらに含み、及び/又は前記材料と6未満のpHを有する酸化性酸性水溶液との接触が水素ガスの形成を引き起こし、そして水素ガスの形成後に、O、NO、及び組合せから選択される酸化剤を添加することをさらに含み、及び/又は前記酸化性酸性水溶液が18モル/L~0.0001モル/Lの範囲の酸の濃度を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項10】
接触工程に後続して、金属オキシド、金属ヒドロキシド、金属カーボネート、金属バイカーボネート及びそれらの組合せから選択される1つ以上を含む追加の材料を添加することをさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項11】
請求項1に記載の材料を浸出して金属イオンを含む水溶液を得る工程、及び
金属イオンを分離して少なくとも1つの本質的に純粋な金属イオン溶液及び/又は少なくとも1つの本質的に純粋な固体金属イオン塩を得る工程
を含む方法。
【請求項12】
リチウムイオン電池、リチウムイオン電池廃棄物、リチウムイオン電池製造スクラップ、リチウムイオンセル製造スクラップ、リチウムイオン正極活物質、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの材料を機械的に粉砕して黒色塊を得る工程、及び
前記黒色塊を請求項1に記載の方法に供する工程であって、任意に、少なくとも1つの材料を熱処理工程に供することをさらに含む工程
を含む方法。
【請求項13】
接触工程に後続して塩基を加えることをさらに含み、好ましくは、該塩基がCaO、水酸化物塩、炭酸塩、及びそれらの組み合わせから選択され、任意に、前記水酸化物塩がLiOH、NaOH、KOH、NHOH、Ca(OH)、Ni(OH)、Co(OH)、Mn(OH)、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記酸化性酸性水溶液が過酸化水素をさらに含み、ただし、ニッケル、コバルト又はマンガンを含む金属オキシド又は金属ヒドロキシドから選択される1つ以上が、+2の酸化状態のこれらの金属を含有することを条件とする、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記追加の材料がニッケル及び/又はコバルトを含み、任意に前記追加の材料が正極活物質を含む、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リチウムを材料から、例えば電池材料から取り除くための方法、及びリチウムイオン電池材料をリサイクルするための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高純度リチウムは貴重な資源である。リチウムの多くの供給源、例えばリチウムイオン電池、リチウムイオン電池廃棄物、リチウム含有水、例えば地下水、及びリチウム含有未加工鉱石などは、種々の元素及び化合物の複雑な混合物である。リチウムイオン電池材料などの材料からのリチウムの除去及び精製は、リチウムイオン電池のリサイクルにおける例示的な工程である。リチウムイオン電池材料は種々の元素及び化合物の複雑な混合物であり、種々のリチウムではない不純物を除去することが望ましい場合がある。このような不純物は様々な酸化状態で存在する可能性があり、例えば、浸出プロセスの効率に影響を与え得る。例えば、いくつかの浸出プロセスにおいて、高酸化状態の金属は、低酸化状態又はゼロ酸化状態の金属よりも多かれ少なかれ効率的に浸出され得る。リチウムではない不純物も貴重な資源であり、そしてそのような材料から種々の元素及び化合物を分離及び精製することがさらに望ましい場合もある。
【0003】
よって、例えば電池材料などの材料からリチウムを取り除くための方法、及びリチウムイオン電池材料をリサイクルするための方法が必要とされている。例えば、種々の元素及び化合物の複雑な混合物、例えば種々の酸化状態で共存する混合金属を効率的且つ効果的に浸出する浸出法が必要とされている。例えば、リチウム回収率が高く且つリチウム純度が高い経済的な方法が必要とされている。また、回収率が高く且つ純度が高い経済的な方法も、例えばニッケル及びコバルトなどの価値のある金属を材料から取り除くために必要とされている。
【0004】
WO2021/174348A1は、リン酸鉄リチウム電池からの黒色塊材料を処理するための方法であって、a)黒色塊材料供給材料を受け取る工程と、b)黒色塊材料を4未満のpHで酸浸出し、それによって黒色塊供給材料からのリチウムの少なくとも80%、及び黒色塊供給材料からの鉄及びリンの少なくとも一部分を含む浸出貴液(PLS)を生成する工程と、工程b)を完了した後に第一の中間溶液を提供する工程と、第一の中間溶液から鉄及びリンの少なくとも90%を分離して出力溶液を提供する工程とを含む方法を開示している。
【0005】
WO2020/212587A1は、Li含有出発材料からNi及びCoなどの金属を回収する方法を開示しており、該方法は以下の工程:工程1:Liイオン電池又はその派生製品を含む前記出発材料を提供する工程、工程2:(1)前記出発材料中に存在するLiの30%、及び(2)0.70未満のLi:M比を得るように決定される前記出発材料中に存在するLiのパーセンテージのうち最大のものを超える量でLiを除去する工程、工程3:相対量のLi-低減生成物と鉱酸を使用してその後浸出し、それによってNi-及びCo-保有溶液を得る工程、及び工程4:Ni、Co、及び任意にMnを結晶化する工程を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2021/174348A1
【特許文献2】WO2020/212587A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
種々の酸化状態で共存する混合金属を効率的且つ効果的に浸出する浸出法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示するのは、ゼロ酸化状態の1つ以上の金属と、金属オキシド、金属ヒドロキシド、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上とを含む材料を浸出する方法であり、この方法は、該材料を、6未満のpHを有する酸化性酸性水溶液と接触させる工程、及び、後続して、金属オキシド、金属ヒドロキシド、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上を還元剤で還元する工程を含む。また、材料を浸出して金属イオンを含む水溶液を得る工程、及び金属イオンを分離して少なくとも1つの本質的に純粋な金属イオン溶液及び/又は少なくとも1つの本質的に純粋な固体金属イオン塩を得る工程を含む方法を開示する。さらに、リチウムイオン電池、リチウムイオン電池廃棄物、リチウムイオン電池製造スクラップ、リチウムイオンセル製造スクラップ、リチウムイオン正極活物質、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの材料を機械的に粉砕して黒色塊を得る工程、及びその黒色塊を浸出する工程を含む方法を開示する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示のいくつかの実施形態と一致する例示的なバッチプロセスを示す図である。
図2図2は、本開示のいくつかの実施形態と一致する例示的な連続プロセスを示す図である。
図3図3は、例示的な黒色塊のXRDパターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明
本明細書に開示するのは、ゼロ酸化状態の1つ以上の金属と、金属オキシド、金属ヒドロキシド、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上とを含む材料を浸出する方法であり、この方法は、該材料を、6未満のpHを有する酸化性酸性水溶液と接触させる工程、及び、後続して、金属オキシド、金属ヒドロキシド、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上を還元剤で還元する工程を含む。
【0011】
酸化性酸性水溶液は、HCl、HSO、CHSOH、HNO、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの酸を含む。酸化性酸性水溶液は、O、NO、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上をさらに含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、酸化性酸性水溶液は、HSOを含む。いくつかの実施形態において、酸化性酸性水溶液は、HSO及びOを含む。いくつかの実施形態において、酸化性酸性水溶液はOを含み、そしてOは空気として供給される。いくつかの実施形態において、空気は3体積%以下の二酸化硫黄を含む。
【0013】
いくつかの実施形態において、材料を、6未満のpHを有する酸化性酸性水溶液と接触させることによって水素ガスが形成され、そして水素ガスの形成後に、O(例えば空気)、NO、及びそれらの組み合わせから選択される酸化剤が加えられる。
【0014】
いくつかの実施形態において、酸化性酸性水溶液は過酸化水素をさらに含み、ただし、ニッケル、コバルト又はマンガンを含む金属オキシド又は金属ヒドロキシドから選択される1つ以上が+2の酸化状態のこれらの金属を含有することを条件とする。
【0015】
いくつかの実施形態において、酸化性酸性水溶液は、材料1000質量部あたり1質量部未満のHを含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、ニッケル、コバルト、又はマンガンを含む金属オキシド又は金属ヒドロキシドから選択される1つ以上は、+2の酸化状態のこれら金属を、ニッケル、コバルト、又はマンガンを含む金属オキシド又は金属ヒドロキシドから選択される1つ以上の総質量に対して、5質量%~10質量%、10質量%~20質量%、又は20質量%~50質量%の範囲の量で含有する。
【0017】
いくつかの実施形態において、酸性水溶液は、18モル/L~0.0001モル/Lの範囲の酸の濃度を有する。
【0018】
還元剤は、SO、メタ重亜硫酸塩、重亜硫酸塩、チオ硫酸塩、H、H、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上である。
【0019】
いくつかの実施形態において、還元剤は、還元剤の総モル数による1モル%未満のHを含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、本方法は、接触工程の後且つ還元工程の前に、追加の金属オキシド及び/又は金属ヒドロキシドを加える工程をさらに含む。
【0021】
ゼロ酸化状態の1つ以上の金属と、金属オキシド、金属ヒドロキシド、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上とを含む材料を浸出するための方法は、材料を、ゼロ酸化状態の1つ以上の金属を酸化するための酸性の水性手段と接触させる工程、及び、後続して、材料を、金属オキシド、金属ヒドロキシド、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上を還元するための手段で処理する工程を含む。
【0022】
ゼロ酸化状態の1つ以上の金属を酸化するための酸性水性手段は、酸化性酸性水溶液である。ゼロ酸化状態の1つ以上の金属を酸化するための酸性水性手段は、酸化剤を含む。いくつかの実施形態において、酸化剤は、+0.1V~+1.5Vの範囲の標準電極電位を有する。いくつかの実施形態において、酸化剤は、+1V~+1.5Vの範囲の標準電極電位を有する。
【0023】
金属オキシド、金属ヒドロキシド、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上を還元するための手段は、還元剤を含む。いくつかの実施形態において、還元剤は、+1V~-0.5Vの範囲の標準電極電位を有する。いくつかの実施形態において、還元剤は、+0.2V~-0.3Vの範囲の標準電極電位を有する。
【0024】
いくつかの実施形態において、本方法は、リチウム、銅、ニッケル、コバルト、及びマンガンのうちの1つ以上を含む材料を浸出する方法であり、そして、該材料を、HSOを含む酸性水溶液と接触させる工程、Oを含む酸化剤を酸性水溶液を通してスパージする工程、及び、後続してSOを含む還元剤を酸性水溶液を通してスパージする工程を含む。
【0025】
いくつかの実施形態において、本方法は、接触工程に後続して、金属オキシド、金属ヒドロキシド、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上を含む追加の材料を加える工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、本方法は、接触工程の後且つ還元工程の前に、追加の金属オキシド及び/又は金属ヒドロキシドを加える工程を含む。
【0026】
また、材料を浸出して金属イオンを含む水溶液を得る工程、及び金属イオンを分離して少なくとも1つの本質的に純粋な金属イオン溶液及び/又は少なくとも1つの本質的に純粋な固体金属イオン塩を得る工程を含む方法も開示する。
【0027】
さらに、リチウムイオン電池、リチウムイオン電池廃棄物、リチウムイオン電池製造スクラップ、リチウムイオンセル製造スクラップ、リチウムイオン正極活物質、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの材料を機械的に粉砕して黒色塊を得る工程、及び該黒色塊を浸出する工程を含む方法を開示する。
【0028】
いくつかの実施形態において、開示する方法において、少なくとも1つの材料を熱処理工程に供する。
【0029】
定義
本明細書で使用する「a」又は「an」の実体とは、その実体の1つ以上を指し、例えば、「化合物(a compound)」は、特に断りのない限り、1つ以上の化合物又は少なくとも1つの化合物を指す。このように、用語「a」(又は「an」)、「1つ以上」、及び「少なくとも1つ」は、本明細書において互換的に使用される。
【0030】
本明細書で使用する「材料」という用語は、何かを構成する、又は作ることができる要素、構成要素、及び/又は物質を指す。
【0031】
本明細書で使用する「還元剤」とは、金属オキシド及び/又は金属ヒドロキシドを還元することができる化合物である。例えば、いくつかの還元剤は、いくつかの金属オキシド及び/又はいくつかの金属ヒドロキシドを還元することができるが、他のものは還元することができない。
【0032】
本明細書で使用する「酸化性酸性水溶液」とは、ゼロ酸化状態の金属を酸化することができる7未満のpHを有する水溶液である。例えば、いくつかの酸化性酸性水溶液は、ゼロ酸化状態のいくつかの金属を酸化することができるが、他のものは酸化することができない。
【0033】
本明細書で使用する「酸化剤」とは、ゼロ酸化状態の金属を酸化することができる化合物である。例えば、いくつかの酸化剤は、ゼロ酸化状態のいくつかの金属を酸化することができるが、他のものは酸化することができない。
【0034】
本明細書で使用する「溶液」とは、流体と1つ以上の化合物との組み合わせである。例えば、溶液中の1つ以上の化合物のそれぞれは、流体に溶解していても溶解していなくてもよい。
【0035】
本明細書で使用する「本質的に純粋な金属イオン溶液」とは、金属イオン、対イオン、溶媒を含む溶液であり、金属イオン及び対イオンの総質量は、溶媒の質量を除いて少なくとも50質量%である。
【0036】
本明細書で使用する「本質的に純粋な固体金属イオン塩」とは、金属イオンと対イオンを含む固体であり、金属イオンと対イオンの総質量は、溶媒の質量を除いて固体の少なくとも50質量%である。
【0037】
本明細書で使用する「スパージする(sparging)」という用語は、液体を通して気体を分散させることを指す。
【0038】
本明細書で使用する「塩基」という用語は、ヒドロニウムイオンと反応して酸性溶液のpH値を上昇させることができる材料を指す。
【0039】
本明細書で使用する「標準電極電位」という用語は、電気化学の分野におけるその一般的な用途を有し、1バール及び298.15Kにおいて、水素分子が標準水素電極で溶媒和プロトンに酸化される、電気化学セルの起電力の値である。標準水素電極の電位は、定義上ゼロボルトである。例示的な文献は以下の通りである:Johnstone,A.H.「CRC Handbook of Chemistry and Physics-69th Edition Editor in Chief RC Weast,CRC Press Inc.,Boca Raton,Florida、1988年。
【0040】
本明細書で使用する、記載のガス体積及び流量は、標準温度及び標準圧力、すなわち0℃及び1013hPaにおける値を指す。
【0041】
材料:
材料は、ゼロ酸化状態の1つ以上の金属と、金属オキシド、金属ヒドロキシド、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上とを含む。
【0042】
いくつかの実施形態において、材料は、ニッケル、コバルト、マンガン、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上を含む。
【0043】
いくつかの実施形態において、ゼロ酸化状態の1つ以上の金属は、ニッケル、コバルト、銅、アルミニウム、鉄、マンガン、希土類金属、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0044】
いくつかの実施形態において、金属オキシドは、ニッケルオキシド、コバルトオキシド、銅オキシド、アルミニウムオキシド、鉄オキシド、マンガンオキシド、希土類オキシド、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0045】
いくつかの実施形態において、金属ヒドロキシドは、ニッケルヒドロキシド、コバルトヒドロキシド、銅ヒドロキシド、アルミニウムヒドロキシド、鉄ヒドロキシド、マンガンヒドロキシド、希土類ヒドロキシド、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0046】
いくつかの実施形態において、材料は、0.1質量パーセント~10質量パーセントのリチウム、0質量パーセント~60質量パーセントのニッケル、0質量パーセント~20質量パーセントのコバルト、0質量パーセント~20質量パーセントの銅、0質量パーセント~20質量パーセントのアルミニウム、0質量パーセント~20質量パーセントの鉄、及び0質量パーセント~20質量パーセントのマンガンを含み、質量パーセントはそれぞれ材料の総質量によるものである。いくつかの実施形態において、ニッケル、コバルト、及びマンガンの少なくとも1つの含有量は0質量パーセントより高い。
【0047】
いくつかの実施形態において、材料は、0.1質量パーセント~10質量パーセントのリチウム、0質量パーセント~60質量パーセントのニッケル、0質量パーセント~20質量パーセントのコバルト、0.1質量パーセント~20質量パーセントの銅、0質量パーセント~20質量パーセントのアルミニウム、0質量パーセント~20質量パーセントの鉄、及び0質量パーセント~20質量パーセントのマンガンを含み、質量パーセントはそれぞれ材料の総質量によるものである。いくつかの実施形態において、ニッケル、コバルト、及びマンガンの少なくとも1つの含有量は0質量パーセントより高い。
【0048】
いくつかの実施形態において、材料又はその前駆体は、浸出の前に熱分解される。いくつかの実施形態において、熱分解は、不活性雰囲気下、酸化性雰囲気下、還元性雰囲気下、又はそれらの組み合わせの下で行われる。
【0049】
いくつかの実施形態において、材料は、リチウムの、ニッケル、コバルト、マンガン、銅、アルミニウム、鉄、及びリンの総質量に対する質量比を0.01~10、0.01~5、0.01~2、又は0.01~1の範囲に有する。
【0050】
いくつかの実施形態において、材料は、式Li1+x(NiCoMnM11-xのリチウム化ニッケルコバルトマンガンオキシドを含み、式中、M1はMg、Ca、Ba、Al、Ti、Zr、Zn、Mo、V及びFeから選択され、ゼロ≦x≦0.2、0.1≦a≦0.95、ゼロ≦b≦0.9、又は0.05<b≦0.5、ゼロ≦c≦0.6、ゼロ≦d≦0.1、及びa+b+c+d=1である。
【0051】
いくつかの実施形態において、材料は、式Li[NiCoAl]O2+rのリチウム化ニッケル-コバルトアルミニウムオキシドを含み、式中、hは0.8~0.95の範囲、iは0.1~0.3の範囲、jは0.01~0.10の範囲、及びrはゼロ~0.4の範囲である。いくつかの実施形態において、材料は、式Li[NiCoAl]O2+rのリチウム化ニッケル-コバルトアルミニウムオキシドを含み、式中、hは0.8~0.90の範囲、iは0.1~0.3の範囲、jは0.01~0.10の範囲、及びrはゼロ~0.4の範囲である。
【0052】
いくつかの実施形態において、材料は、黒色塊、正極活物質、正極、正極活物質前駆体、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上を含むリチウムイオン電池材料である。
【0053】
「黒色塊」とは、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオン電池廃棄物、リチウムイオン電池製造スクラップ、リチウムイオンセル製造スクラップ、リチウムイオン正極活物質、及び/又はこれらの組み合わせに由来し、機械的プロセス、例えば機械的粉砕による、リチウムを含む材料を指す。例えば、黒色塊は、電池スクラップを機械的に処理して電極の活性成分、例えばグラファイト及び正極活物質を得ることによる電池スクラップに由来し、そしてケーシング、電極箔、ケーブル、セパレータ、及び電解質からの不純物が含まれ得る。いくつかの例では、電池スクラップを熱処理に供して有機物(例えば電解液)及びポリマー(例えばセパレータ及びバインダ)材料を熱分解してよい。このような熱処理は、電池材料の機械的粉砕の前又は後に行ってよい。いくつかの実施形態において、黒色塊を熱処理に供する。
【0054】
リチウムイオン電池は、例えばハンマーミル、ロータミルで分解、穿孔、粉砕してよく、及び/又は例えば産業用シュレッダーでシュレッダーにかけてよい。この種の機械的プロセスから、電池電極の活物質が得られる。有機プラスチック及びアルミニウム箔又は銅箔から作られたハウジング部品などの軽量画分は、例えば、強制ガス流、空気分離又は分級又はふるい分けで除去してよい。
【0055】
電池スクラップは、例えば、使用済み電池から、又は仕様外材料などの製造廃棄物に由来し得る。いくつかの実施態様において、材料は、機械的に処理された電池スクラップ、例えば、ハンマーミル、ロータミル又は工業用シュレッダーで処理された電池スクラップから得られる。このような材料は、平均粒径(D50)を1μm~1cm、例えば1μm~500μm、及びさらに例えば3μm~250μmの範囲に有する。
【0056】
ハウジングのような電池スクラップのより大きな部品、ワイヤ及び電極支持フィルムは、機械的に分離して、対応する材料を方法に使用される電池材料から除外できるようにしてよい。
【0057】
遷移金属オキシドを電流コレクターフィルムに結合する、又は例えば、グラファイトを電流コレクターフィルムに結合するのに使用されたポリマー結合剤を溶解及び分離するために、機械的に処理された電池スクラップを溶媒処理に供してよい。好適な溶媒は、純粋な形態の、下記のうちの少なくとも2つの混合物としての、又は1質量%~99質量%の水との混合物としての、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチル-ホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-エチルピロリドン及びジメチルスルホキシドである。
【0058】
いくつかの実施形態において、機械的に処理された電池スクラップを、様々な雰囲気下、広範囲の温度での熱処理に供してよい。いくつかの実施形態において、温度は100℃~900℃の範囲である。いくつかの実施形態において、300℃未満の低い方の温度は電池電解質から残留溶媒を蒸発させる役割を果たし、より高温ではバインダーポリマーが分解し、400℃を超える温度では、スクラップ材料に含有される炭素によって、又は還元性ガスを導入することによって遷移金属オキシドの一部が還元されるので、無機材料の組成が変化し得る。いくつかの実施形態において、温度を400℃未満に保つことにより、及び/又は熱処理前に炭素質材料を除去することにより、リチウム金属オキシドの還元が回避される。
【0059】
いくつかの実施形態において、熱処理は350℃~900℃の範囲の温度で行われる。いくつかの実施形態において、熱処理は450℃~800℃の範囲の温度で行われる。いくつかの実施形態において、熱処理は、不活性、酸化性、又は還元性雰囲気下で行われる。いくつかの実施形態において、熱処理は、不活性又は還元性雰囲気下で行われる。いくつかの実施形態において、還元剤は、熱処理の条件下で、熱分解した有機(ポリマー)成分から形成される。いくつかの実施形態において、還元剤は、還元性ガス、例えばH及び/又はCOの添加によって形成される。
【0060】
いくつかの実施形態において、材料は、リチウム化ニッケルコバルトマンガンオキシド、リチウム化ニッケルコバルトアルミニウムオキシド、リチウム金属ホスフェート、リチウムイオン電池スクラップ、黒色塊、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つを含む。
【0061】
いくつかの実施形態において、材料は、式LiMPOのリチウム金属ホスフェートを含み、式中、xは1以上の整数であり、そしてMは金属、遷移金属、希土類金属、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0062】
いくつかの実施形態において、材料は、式Li1+x(NiCoMnM11-xのリチウム化ニッケルコバルトマンガンオキシドを含み、式中、M1は、Mg、Ca、Ba、Al、Ti、Zr、Zn、Mo、V及びFeから選択され、ゼロ≦x≦0.2、0.1≦a≦0.95、ゼロ≦b≦0.9(例えば0.05<b≦0.5)、ゼロ≦c≦0.6、ゼロ≦d≦0.1、及びa+b+c+d=1である。例示的なリチウム化ニッケルコバルトマンガンオキシドには、各xが上記で定義した通りであるLi(1+x)[Ni0.33Co0.33Mn0.33(1-x)
Li(1+x)[Ni0.5Co0.2Mn0.3(1-x)
Li(1+x)[Ni0.6Co0.2Mn0.2(1-x)
Li(1+x)[Ni0.7Co0.2Mn0.3(1-x)
Li(1+x)[Ni0.8Co0.1Mn0.1(1-x)
及びLi[Ni0.85Co0.13Al0.02]O
が含まれる。
【0063】
いくつかの実施形態において、材料は、ニッケル、コバルト、マンガン、銅、アルミニウム、鉄、リン、又はそれらの組み合わせを含む。
【0064】
いくつかの実施形態において、材料は、リチウムの、ニッケル、コバルト、マンガン、銅、アルミニウム、鉄、及びリンの総質量に対する質量比を0.01~10の範囲に有する。いくつかの実施形態において、材料は、リチウムの、ニッケル、コバルト、マンガン、銅、アルミニウム、鉄、及びリンの総質量に対する質量比を0.01~5の範囲に有する。いくつかの実施形態において、材料は、リチウムの、ニッケル、コバルト、マンガン、銅、アルミニウム、鉄、及びリンの総質量に対する質量比を0.01~2の範囲に有する。いくつかの実施形態において、材料は、リチウムの、ニッケル、コバルト、マンガン、銅、アルミニウム、鉄、及びリンの総質量に対する質量比を0.01~1の範囲に有する。
【0065】
いくつかの実施形態において、材料はLiMOを含み、式中、xは1以上の整数であり、そしてMは、金属、遷移金属、希土類金属、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0066】
いくつかの実施形態において、リチウムイオン電池材料をリサイクルするための方法は、リチウムイオン電池、リチウムイオン電池廃棄物、リチウムイオン電池製造スクラップ、リチウムイオンセル製造スクラップ、リチウムイオン正極活物質、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つを機械的に粉砕して黒色塊を得る工程を含む。
【0067】
いくつかの実施形態において、材料は、+1.1V~-1.7Vの範囲の標準電極電位を有する。いくつかの実施形態において、材料の0.1質量%~10質量%は+0.1V~+0.8Vの範囲の標準電極電位を有し、そして材料の0.1質量%~60質量%は-1.7V~-0.01Vの範囲の標準電極電位を有する(材料の総質量による)。
【0068】
いくつかの実施形態において、ゼロ酸化状態の1つ以上の金属はそれぞれ、1.1V~-1.7Vの範囲の標準電極電位を有する。いくつかの実施形態において、ゼロ酸化状態の1つ以上の金属はそれぞれ、-1.7V~+0.35Vの範囲の標準電極電位を有する。ゼロ酸化状態のいくつかの例示的な金属の標準電極電位には、Al/Al3+(E(0)=-1.66V)、Cu/Cu2+(E(0)=+0.35V)、Co/Co2+(E(0)=-0.28V)、Fe/Fe2+(E(0)=-0.44V)、及びNi/Ni2+(E(0)=-0.23V)が含まれる。
【0069】
いくつかの実施形態において、金属オキシド、金属ヒドロキシド、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上はそれぞれ、+0.1V~+1.9Vの範囲の標準電極電位を有する。いくつかの実施形態において、金属オキシド、金属ヒドロキシド、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上はそれぞれ、0.15V~+1.83Vの範囲の標準電極電位を有する。いくつかの例示的な金属イオン、例えば、酸化物又は水酸化物、及び金属オキシド及び/又は金属ヒドロキシドの溶解から生じ得る金属イオンの標準電極電位には、Co3+/Co2+(E(0)=+1.83V)、NiO+4H/Ni2++2HO(E(0)=+1.678V)、Mn3+/Mn2+(E(0)=+1.5415V)、及びMn(OH)/Mn(OH)+OH(E(0)=+0.15V)が含まれる。
【0070】
浸出:
浸出のための方法は、材料を、6未満のpHを有する酸化性酸性水溶液と接触させる工程、及び、後続して、金属オキシド、金属ヒドロキシド、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上を還元剤で還元する工程を含む。いくつかの実施形態において、材料は、ゼロ酸化状態の1つ以上の金属と、金属オキシド、金属ヒドロキシド、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上とを含む。
【0071】
酸化性酸性水溶液は、HCl、HSO、CHSOH、HNO、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上の酸を含む。いくつかの実施形態において、酸化性酸性水溶液は、HSO、O、NO、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態において、酸化性酸性水溶液は、HSOを含む。酸化性酸性水溶液は、O、NO、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上をさらに含む。いくつかの実施形態において、酸化性酸性水溶液は、酸化剤である酸、例えばHSOを含む。酸化性酸性水溶液は、酸ではない酸化剤、例えばO、NO、又はそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、酸化性酸性水溶液は、酸及び酸化剤を含む。いくつかの実施形態において、酸化性酸性水溶液は、酸化剤である酸を含み、そして酸ではない酸化剤をさらに含む。
【0072】
還元剤は、SO、メタ重亜硫酸塩、重亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ジチオン酸塩、H、H、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上である。
【0073】
いくつかの実施形態において、黒色塊を水中でスラリー化し、これはスラリーの総質量による黒色塊の質量パーセンテージ5%~30%の範囲で行う。いくつかの実施形態において、スラリー化した黒色塊を、6未満のpHを有する酸化性酸性水溶液と接触させる。いくつかの実施形態において、6未満のpHを有する酸化性酸性水溶液は、スラリー化した黒色塊から、酸及び/又は酸化剤の添加によって形成される。いくつかの実施形態において、酸化性酸性水溶液中のHSOの、黒色塊に対する質量比は、1:1~2:1の範囲である。いくつかの実施形態において、HSOは、接触工程の間にpHを調整するために添加される。
【0074】
いくつかの実施形態において、黒色塊はスラリーとして提供される。いくつかの実施形態において、黒色塊は水中のスラリーとして提供される。いくつかの実施形態において、黒色塊は、後続の処理工程からの水性側流、例えばフィルターからの洗浄液体中のスラリーとして提供される。いくつかの実施形態において、黒色塊は固体として提供される。
【0075】
いくつかの実施形態において、正極活物質はスラリーとして提供される。いくつかの実施形態において、正極活物質は、水中のスラリーとして提供される。いくつかの実施形態において、正極活物質は、後続の処理工程からの水性側流、例えばフィルターからの洗浄液体中のスラリーとして提供される。いくつかの実施形態において、正極活物質は固体として提供される。
【0076】
いくつかの実施形態において、混合水酸化物沈殿物はスラリーとして提供される。いくつかの実施形態において、混合水酸化物沈殿物は、水中のスラリーとして提供される。いくつかの実施形態において、混合水酸化物沈殿物は、後続の処理工程からの水性側流、例えばフィルターからの洗浄液体中のスラリーとして提供される。いくつかの実施形態において、混合水酸化物沈殿物は固体として提供される。
【0077】
材料と酸化性酸性水溶液との接触は、50℃~110℃の範囲の温度で行われる。いくつかの実施形態において、材料と酸化性酸性水溶液との接触は、2時間~4時間の範囲で行われる。いくつかの実施形態において、材料と酸化性酸性水溶液との接触は第一の温度で行われ、還元工程は第二の温度で行われ、第二の温度は第一の温度の70%~20%の範囲である(単位:℃)。
【0078】
いくつかの実施形態において、酸化性酸性水溶液は空気を含む。いくつかの実施形態において、空気は3体積%以下の二酸化硫黄を含む。いくつかの実施形態において、材料と6未満のpHを有する酸化性酸性水溶液との接触は、酸化性酸性水溶液を通して空気をスパージすることを含む。いくつかの実施形態において、空気を20溶液体積%/分以下の割合で酸化性酸性水溶液を通してスパージする。いくつかの実施形態において、空気を0.1~20溶液体積%/分の範囲の割合で酸化性酸性水溶液を通してスパージする。この割合は、酸化性酸性水溶液を通してスパージされる1分あたりのOの体積を指し、すなわち、溶液を通してスパージされる空気の体積の約21%に等しい。
【0079】
いくつかの実施形態において、酸化性酸性水溶液は-1.0~3の範囲のpHを有する。
【0080】
いくつかの実施形態において、材料と6未満のpHを有する酸化性酸性水溶液との接触は、最初に材料を酸と接触させ、そして後続して、O、NO、及び組み合わせから選択される酸化剤を添加することを含む。いくつかの実施形態において、材料と6未満のpHを有する酸化性酸性水溶液との接触は、最初に材料を水素ガスの形成を引き起こす酸と接触させ、そして水素ガスの形成に続いて(すなわち、水素ガスの形成が収まった後に)、O、NO、及び組み合わせから選択される酸化剤を添加することを含む。いくつかの実施形態において、材料と6未満のpHを有する酸化性酸性水溶液との接触は、最初に材料を水素ガスの形成を引き起こす酸と接触させること、ガスクロマトグラフィー及び/又は水素センサーによって水素ガスの形成を監視すること、及び水素ガスの形成に続いて(すなわち、水素ガスの形成が収まった後に)、O、NO、及び組み合わせから選択される酸化剤を添加することを含む。いくつかの実施形態において、材料と6未満のpHを有する酸化性酸性水溶液との接触は、最初に材料を水素ガスの形成を引き起こす酸と接触させること、ガスクロマトグラフィー及び/又は水素センサーによって水素ガスの形成を監視すること、そして水素ガスの濃度が5体積%未満、例えば1体積%未満、例えば0.1体積%未満である場合、O、NO、及び組み合わせから選択される酸化剤を添加することを含む。
【0081】
いくつかの実施形態において、過剰の酸化性ガスO、例えば空気中の、及び/又はNOは、排出ガスから浸出反応器に戻りリサイクルされる。
【0082】
いくつかの実施形態において、還元剤はSOを含み、そしてSOを、20溶液体積%/分以下の割合で溶液を通してスパージする。いくつかの実施形態において、SOを、0.1~20溶液体積%/分の範囲の割合で溶液を通してスパージする。いくつかの実施形態において、SOを、1時間~3時間、溶液を通してスパージする。
【0083】
いくつかの実施形態において、還元剤はSOを含み、そしてSOは、O又は10%以上のSOを含有する空気との混合物として提供される。いくつかの実施形態において、還元剤はSOを含み、そしてSOは、O又は空気との混合物として提供されない。いくつかの実施形態において、還元剤はSOを含み、そしてSOは少なくとも90%、例えば99%の純度を有する純粋なガスとして、又は不活性ガス、例えば窒素及び/又はアルゴンとの混合物として、提供される。
【0084】
いくつかの実施形態において、還元工程は周囲温度で行われる。
【0085】
いくつかの実施形態において、接触工程に後続して、本方法は、塩基を添加することをさらに含む。いくつかの実施形態において、塩基は、CaO、水酸化物塩、炭酸塩、及びそれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態において、水酸化物塩は、LiOH、NaOH、KOH、NHOH、Ca(OH)、CaCO、Ni(OH)、Co(OH)、Mn(OH)、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0086】
いくつかの実施形態において、本方法はバッチ式で行われる。
【0087】
いくつかの実施形態において、本方法は、少なくとも2個の反応容器で連続的に実施される。いくつかの実施形態において、本方法は、例えば、3個、4個、5個、6個、7個、又はそれ以上の反応容器で連続的に実施される。いくつかの実施形態において、黒色塊を第一の反応容器に添加し、酸化剤を第二及び/又は第三の反応容器に添加し、正極活物質及び/又は混合水酸化物沈殿物を第四の反応容器に添加し、そして還元剤を第四、第五、及び/又は第六の反応容器に添加する。
【0088】
いくつかの実施形態において、過剰の二酸化硫黄は、排出ガスから反応器に戻りリサイクルされる。
【0089】
いくつかの実施形態において、還流コンデンサーが少なくとも1つの反応容器に取り付けられる。
【0090】
いくつかの実施形態において、材料と酸化性酸性水溶液との接触は、周囲圧力で実施される。いくつかの実施形態において、材料と酸化性酸性水溶液との接触は、高圧で行われる。
【0091】
いくつかの実施形態において、接触工程は、20℃~100℃の範囲の温度で10分~10時間、例えば、2時間~5時間の範囲の持続時間である。いくつかの実施形態において、接触工程は、100℃で3時間~5時間の範囲の持続時間である。いくつかの実施形態において、接触工程は60℃で3時間~5時間の範囲の持続時間である。いくつかの実施形態において、接触工程は25℃で3時間~5時間の範囲の持続時間である。
【0092】
いくつかの実施形態において、還元工程は、20℃~100℃の範囲の温度で10分~10時間、例えば、2時間~5時間の範囲の持続時間である。いくつかの実施形態において、還元工程は、100℃で3時間~5時間の範囲の持続時間である。いくつかの実施形態において、還元工程は60℃で3時間~5時間の範囲の持続時間である。いくつかの実施形態において、還元工程は25℃で3時間~5時間の範囲の持続時間である。
【0093】
いくつかの実施形態において、材料を浸出して金属イオンを含む水溶液を得、そして金属イオンを分離して少なくとも1つの本質的に純粋な金属イオン溶液及び/又は少なくとも1つの本質的に純粋な固体金属イオン塩を得る工程を含む方法を、本明細書に開示する。
【0094】
いくつかの実施形態において、本質的に純粋な固体金属イオン塩は、金属イオン及び対イオンを含む固体であり、金属イオン及び対イオンの総質量は、全水などの溶媒の質量を除いて固体の少なくとも50質量%である。いくつかの実施形態において、本質的に純粋な固体金属イオン塩は、金属イオン及び対イオンを含む固体であり、金属イオン及び対イオンの総質量は、溶媒の質量を除いて固体の少なくとも70質量%である。いくつかの実施形態において、本質的に純粋な固体金属イオン塩は、金属イオン及び対イオンを含む固体であり、金属イオン及び対イオンの総質量は、溶媒の質量を除いて固体の少なくとも80質量%である。いくつかの実施形態において、本質的に純粋な固体金属イオン塩は、金属イオン及び対イオンを含む固体であり、金属イオン及び対イオンの総質量は、溶媒の質量を除いて固体の少なくとも90質量%である。いくつかの実施形態において、本質的に純粋な固体金属イオン塩は、金属イオン及び対イオンを含む固体であり、金属イオン及び対イオンの総質量は、溶媒の質量を除いて固体の少なくとも95質量%である。いくつかの実施形態において、本質的に純粋な固体金属イオン塩は、金属イオン及び対イオンを含む固体であり、金属イオン及び対イオンの総質量は、溶媒の質量を除いて固体の少なくとも99質量%である。
【0095】
いくつかの実施形態において、本質的に純粋な金属イオン溶液は、金属イオン、対イオン、及び溶媒を含む溶液であり、金属イオン及び対イオンの総質量は、溶媒の質量を除いて溶液の少なくとも50質量%である。いくつかの実施形態において、本質的に純粋な金属イオン溶液は、金属イオン、対イオン、溶媒を含む溶液であり、金属イオン及び対イオンの総質量は、溶媒の質量を除いて溶液の少なくとも70質量%である。いくつかの実施形態において、本質的に純粋な金属イオン溶液は、金属イオン、対イオン、溶媒を含む溶液であり、金属イオン及び対イオンの総質量は、溶媒の質量を除いて溶液の少なくとも80質量%である。いくつかの実施形態において、本質的に純粋な金属イオン溶液は、金属イオン、対イオン、溶媒を含む溶液であり、金属イオン及び対イオンの総質量は、溶媒の質量を除いて溶液の少なくとも90質量%である。いくつかの実施形態において、本質的に純粋な金属イオン溶液は、金属イオン、対イオン、溶媒を含む溶液であり、金属イオン及び対イオンの総質量は、溶媒の質量を除いて溶液の少なくとも95質量%である。いくつかの実施形態において、本質的に純粋な金属イオン溶液は、金属イオン、対イオン、溶媒を含む溶液であり、金属イオン及び対イオンの総質量は、溶媒の質量を除いて溶液の少なくとも99質量%である。
【0096】
いくつかの実施形態において、金属イオンを分離して少なくとも1つの本質的に純粋な金属イオン溶液及び/又は少なくとも1つの本質的に純粋な固体金属イオン塩を得る工程は、固体/液体分離、抽出、沈殿、結晶化、及びそれらの組み合わせのうちの1つ以上を含む。
【0097】
いくつかの実施形態において、本方法は、その一部又は全部を、センサー及びアクチュエーターによって制御される連続プロセスとして、コンピュータベースのプロセス制御システムの一部として実施することができる。
【0098】
酸化剤:
酸化性酸性水溶液は酸化剤を含む。いくつかの実施形態において、酸化剤は、例えば、HSO、HNO、及びそれらの組み合わせなどの酸である。いくつかの実施形態において、酸化剤は、例えば、O、NO、及びそれらの組み合わせなどの酸ではない。
【0099】
いくつかの実施形態において、酸化性酸性水溶液は、酸化剤ではない酸と、酸ではない酸化剤とを含む。いくつかの実施形態において、酸化性酸性水溶液は、酸化剤である酸と、酸ではない酸化剤とを含む。いくつかの実施形態において、酸化性酸性水溶液は、酸化剤ではない酸と、酸である酸化剤とを含む。いくつかの実施形態において、酸化性酸性水溶液は、酸化剤である酸と、酸である酸化剤とを含む。いくつかの実施形態において、酸化性酸性水溶液は、酸化剤である酸を含む。いくつかの実施形態において、酸性水溶液は、酸化性酸性水溶液である。いくつかの実施形態において、酸性水溶液は、酸化性酸性水溶液ではない。
【0100】
いくつかの実施形態において、酸化剤は、+0.1V~+1.5Vの範囲の標準電極電位を有する。いくつかの実施形態において、酸化剤は、+0.4V~+1.3Vの範囲の標準電極電位を有する。いくつかの実施形態において、酸化剤は、+1V~+1.5Vの範囲の標準電極電位を有する。
【0101】
還元剤:
還元剤は、SO、メタ重亜硫酸塩、重亜硫酸塩、ジチオン酸塩、チオ硫酸塩、H、H、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上である。
【0102】
いくつかの実施形態において、還元剤は、+1V~-0.5Vの範囲の標準電極電位を有する。いくつかの実施形態において、還元剤は、+0.2V~-0.3Vの範囲の標準電極電位を有する。
【0103】
過酸化水素は、反応相手によって還元剤又は酸化剤として機能することができる。可能な酸化反応及び還元反応は:
⇔O+2e+2H
及び
+2e+2H⇔2H
である。いくつかの実施形態において、反応相手の標準電極電位は、どの反応が起こるかに影響する。例えば、或る特定の条件下では、過マンガン酸塩(MnO )は過酸化水素によって還元され、一方でFe2+は酸化される。いくつかの実施形態において、水の形成にHが必要であるので、酸性条件が高いほど酸化反応に有利であり、そしてHが反応中に生成されるので、酸性条件が低いほど還元反応に有利である。いくつかの実施形態において、1つ以上の金属M及び使用される条件によって、以下の反応が起こることも起こらないこともある:
2LiMO+H+3HSO⇔2LiSO+2MSO+4HO+O、及びM+H+HSO⇔MSO+2HO。
【0104】
例示的なバッチプロセス:
図1は、本開示のいくつかの実施形態と一致する例示的なバッチプロセス(100)を示す。いくつかの実施形態において、材料(102)、例えばニッケル、コバルト、及びマンガン種を含む黒色塊を、0未満のpHで酸性水溶液を含む連続撹拌反応容器(101)中で酸浸出する。いくつかの実施形態において、水素ガスが発生する(105)。いくつかの実施形態において、酸化剤、例えばO及び/又はNOを添加する(103)。いくつかの実施形態において、pHを1~2の範囲のpHまで、例えば正極活物質及び/又は混合水酸化物沈殿物を用いて調整し、そして還元剤、例えばSOを導入する(104)。いくつかの実施形態において、得られた液相(106)及び固相(105)を、固液分離、例えば濾過、遠心分離、及び/又は沈降によって分離する。
【0105】
例示的な連続プロセス:
図2は、本開示のいくつかの実施形態と一致する例示的な連続プロセス(200)を示す。いくつかの実施形態において、材料(202)、例えばニッケル、コバルト、及びマンガン種を含む黒色塊を、0未満のpHで酸性水溶液を含む連続撹拌反応容器(201)中で酸浸出する。いくつかの実施形態において、酸浸出は、1つ以上の追加の連続撹拌反応容器(203)中でさらに行う。いくつかの実施形態において、酸化剤、例えば、O及び/又はNOを、連続撹拌反応容器(204)に添加する(205)。いくつかの実施形態において、添加した酸化剤の存在下での酸浸出を、1つ以上の追加の連続撹拌反応容器(206)でさらに行う。いくつかの実施形態において、pHは1~2の範囲のpHまで、例えば正極活物質及び/又は混合水酸化物沈殿物を用いて調整し、そして還元剤、例えばSOを連続撹拌反応容器(207)に導入する(208)。いくつかの実施形態において、添加した還元剤の存在下での浸出を、1つ以上の追加の連続撹拌反応容器(209)でさらに行う。いくつかの実施形態において、得られた液相(211)及び固相(210)を、固液分離、例えば濾過、遠心分離、及び/又は沈降によって分離する。
【実施例
【0106】
以下の実施例は例示を意図したものであり、決して本開示の範囲を限定するものではない。
【0107】
略語
% パーセント
CO 炭酸カリウム
NaCO 炭酸ナトリウム
Na 四ホウ酸ナトリウム
p.a.グレード プロ分析グレード
n.d. 決定せず
wt% 質量パーセント
NaOH 水酸化ナトリウム
Li リチウム
Ni ニッケル
Co コバルト
Mn マンガン
Cu 銅
Al アルミニウム
Fe 鉄
P リン
F フッ素
Ca カルシウム
【0108】
例示的な元素分析
固体サンプルの元素分析は、硝酸及び塩酸での消化(供給サンプル、実施例1及び2)、又はKCO-NaCO/Na融解及び融解残渣の塩酸への溶解による消化(実施例3及び4)によって行った。
【0109】
得られたサンプル溶液中の金属は、誘導結合プラズマ(ICP-OES)を用いた発光分光法によって測定した。
【0110】
全体的なフッ素含有量決定のためのサンプル調製(廃棄サンプル)に関して、DIN EN 14582:2016-12に従って、フッ素及びフッ化物の元素分析を行った;検出方法はイオン選択電極測定であった。DIN 38405-D4-2:1985-07(水サンプル;無機固体の消化、その後の酸支持蒸留及びイオン選択電極を用いたフッ化物の決定)。
【0111】
全炭素は、サンプルの燃焼後に得られたガスを熱伝導率検出器を用いたガスクロマトグラフィーで測定した。
【0112】
硫黄は、不活性ガス/酸素雰囲気中でサンプルを触媒燃焼させることにより決定した。ここで硫黄はSO及びSOの混合物に変換される。形成されたSOは、銅顆粒でSOに還元した。燃焼ガスの乾燥及び分離後、熱伝導率又はIR分光分析法により、硫黄をSOとして検出及び定量した。
【0113】
黒色塊
以下に示す実施例では、リチウムイオン電池を機械的に粉砕し、その後、黒色塊を微粉末としてリチウムイオン電池の他の構成要素から分離することにより、黒色塊を得た。黒色塊は、電池スクラップの熱分解を伴うプロセスによって得られた。材料は少量の硫黄を含有した。分析した金属は、MnO、CoO、NiOのような酸化化合物、LiF、LiAlO、LiCOのような塩、及び/又はニッケル、コバルト、及び銅のようなゼロ酸化状態の金属として存在した。炭素は、主にグラファイトの形態の元素状炭素であり、いくらかのすす又はコークスを伴った。
【0114】
実施例1、2、及び4で使用した黒色塊の組成を表1に示す。
【0115】
【表1】
【0116】
図3は、黒色塊のXRDパターンを示す。図3において、「a」はグラファイト、「b」はニッケル-コバルト-マンガン、「c」はNiO、「d」はCoO、「e」はMnO、「f」はNiを示し、そして残りの反射はリチウム塩及び不純物に対応する。
【0117】
実施例3で使用した黒色塊の組成を表2に示す。
【0118】
【表2】
【0119】
正極活物質
実施例1及び2で使用した正極活物質(CAM)は、BASF Corp社から市販されているHEDTM NCMと呼ばれるCAMであり、その組成は、49.8質量%のNi、5.9質量%のCo、2.6質量%のMn、及び7.3質量%のLiであった。
【0120】
混合水酸化物沈殿物
実施例1及び2で使用した混合水酸化物沈殿物(MHP)は、PNG(パプアニューギニア)のMCC(Metallurgical Corporation of China)Ramu工場で以下の手順に従って製造された市販のMHPであった:(1)リモナイトラテライト鉱石フラクションのHPAL(高圧酸浸出)硫酸浸出、(2)CaCOを用いた沈殿による残留酸の中和及びFe/Al除去によるpH上昇、(3)分離したPLSからNaOHを用いてNi及びCoをMHPとして沈殿させ、そして(4)CaOを使用した最終沈殿工程-この第二段階の沈殿物はオートクレーブ排出スラリーの中和に戻りリサイクルされ、ここでNi及びCo(及びMn)が再浸出される。
【0121】
MHPの組成を表3に示す。
【0122】
【表3】
【0123】
実施例1
この実施例では、黒色塊を6未満のpHを有する酸化性酸性水溶液と接触させ、そして後続して還元剤で還元した。
【0124】
バッフル付きの5Lビーカーに1.5Lの水を加えた。次いで450gのHSOを撹拌しながら加え、続いて300gの黒色塊を加えた。スラリーを85℃のホットプレートで加熱した。スラリー温度を約85℃に保ちながら、空気を毎分0.4リットル(lpm)で2.5時間、溶液を通してスパージした。次に、52gの正極活物質を加えた。次いで混合ヒドロキシ沈殿物を加えることによってpHを1.5まで調整した。その後、SOを0.13lpmで2時間、溶液を通してスパージした。浸出液の組成を表4に示す。
【0125】
【表4】
【0126】
Ni、Co、Mn、及びLiの各元素の回収率は99%超であった。Cuの回収率は、洗浄及び乾燥した浸出残渣の分析に基づき、98%~99%の範囲であった。
【0127】
実施例2
この実施例では、黒色塊を6未満のpHを有する酸化性酸性水溶液と接触させ、そして後続して還元剤で還元した。
【0128】
内部電熱コイルを取り付けたバッフル付きの20Lポリフッ化ビニリデン(PVDF)浸出槽に、15.7Lの水を加えた。次いで、3kgの98質量%水性HSOを撹拌しながら加え、続いて2.2kgの黒色塊を加えた。スラリーを85℃で加熱した。温度を約85℃に保ちながら、空気を4lpmで4.5時間、溶液を通してスパージした。次に、384gの正極活物質を加えた。次いで混合ヒドロキシ沈殿物を加えることによってpHを1.5まで調整した。その後、SOを1.34lpmで2時間、溶液を通してスパージした。その後、溶液を真空ナッチェフィルターでろ過した。浸出液の組成を表5に示す。
【0129】
【表5】
【0130】
Ni、Co、Mn、及びLiの各元素の回収率は99%超であった。Cuの回収率は、洗浄及び乾燥した浸出残渣の分析に基づき、98%~99%の範囲であった。
【0131】
実施例3(比較)
この実施例では、表2に示す組成の黒色塊を硫酸で浸出した。酸化剤としての空気は導入せず、そして二酸化硫黄還元剤も導入しなかった。
【0132】
反応容器中、408gの黒色塊を1001gの脱イオン水にアルゴン雰囲気下で懸濁した。この混合物に、459gの硫酸(96質量%)を、Rushtonタービンで激しく撹拌しながら約45分の時間をかけてゆっくりと加えた。酸の添加後、反応器を約60分以内に95℃に加熱した。反応器をこの温度でさらに120分間保持した。次に、反応器を周囲温度まで冷却した。反応器内容物を濾過し、水で洗浄し、そして乾燥させて、157.7gの黒色固体を得た。固体残留物の分析を表6に示す。表6のデータから、黒色固体の酸溶解により、正極活物質を構成するほとんどすべての金属が溶解し、一方で約49%の銅は溶解しないままであったことがわかる。残渣中の硫黄含有量は低いままであった。
【0133】
【表6】
【0134】
実施例4(比較)
この実施例では、表1に示す組成の黒色塊を、酸化剤としての空気は導入しないが二酸化硫黄の存在下で、硫酸で浸出した。
【0135】
反応容器中、205gの黒色塊を563gの脱イオン水にアルゴン雰囲気下で懸濁した。この混合物に、266gの硫酸(96質量%)を、Rushtonタービンで激しく撹拌しながら約45分の時間をかけてゆっくりと加えた。同時に、二酸化硫黄を2.7g/hの割合で反応器に供給した。反応器を出たガスは、1729gの水中50gの銅-(II)-スルフェートペンタヒドレートの溶液1779gを満たしたスクラバーに供給した。酸の添加後、反応器を40分以内に96℃に加熱した。反応器をこの温度でさらに205分間保持した。次に、二酸化硫黄の添加を止め、そして反応器を周囲温度まで冷却した。反応器内容物を濾過し、水で洗浄し、そして乾燥させて、61.65gの黒色固体を得た。硫酸及び二酸化硫黄の添加開始から65分後、最初は青色であった銅スルフェート溶液が緑色を帯び始め、そして暗色の沈殿物が形成された。スクラバーの沈殿物も濾過して水で洗浄し、そして乾燥させて、0.116gの暗色の固体を得た。固体残渣の分析を表7に示す。
【0136】
【表7】
【0137】
表7のデータは、不溶性の硫黄含有相が反応中に形成されたことを示しており、これは供給された黒色塊(表2)には存在しなかった。反応器生成物中のCu:Sのモル比は3:2であった。スクラバー生成物中のCu:Sのモル比は約12:5であった。理論に束縛されることを望むものではないが、二酸化硫黄の存在下における還元条件下では、銅-(II)-スルフィドCuSと銅-(I)-スルフィドCuSの混合物が反応器内で形成されたと考えられる。スクラバー生成物は、銅が過剰であったことを説明するいくらかの硫酸銅が吸着していたCuSであった。フィルター残渣の銅の量は、銅の約92%に相当した。
【0138】
実施例1及び2と実施例3とを比較すると、後続のSOによる還元工程が、向上した浸出性能、例えば銅収率の向上をもたらしたと考えられる。
【0139】
実施例1及び2と実施例4とを比較すると、後続のSOによる還元工程が、例えばSOで同時還元するのとは対照的に、向上した浸出性能、例えば収率の向上及び潜在的に望ましくない副生成物、例えば銅-(II)-スルフィドCuS及び/又は銅-(I)-スルフィドCuSの生成の低減をもたらすと考えられる。
【0140】
実施例1~4を比較すると、ゼロ酸化状態の1つ以上の金属と、金属オキシド、金属ヒドロキシド、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上とを含む材料を浸出するための方法であって、材料を、6未満のpHを有する酸化性酸性水溶液と接触させる工程、及び、後続して、金属オキシド、金属ヒドロキシド、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上を還元剤で還元する工程を含む方法は、例えば接触工程を省略する方法、還元工程を省略する方法、及び/又は接触工程に還元工程が後続しない方法と比較して、驚くほど向上した浸出性能をもたらすと考えられる。
図1
図2
図3
【国際調査報告】