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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】組成物及びその適用
(51)【国際特許分類】
   C11D 17/08 20060101AFI20241219BHJP
   C11D 7/00 20060101ALI20241219BHJP
   C11D 7/42 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C11D17/08
C11D7/00
C11D7/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024535673
(86)(22)【出願日】2022-12-08
(85)【翻訳文提出日】2024-06-14
(86)【国際出願番号】 EP2022084897
(87)【国際公開番号】W WO2023110599
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】21215646.7
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア カストロ,イヴェッテ
(72)【発明者】
【氏名】マット,ヤニック
(72)【発明者】
【氏名】ヒュッファー,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフ,エレナ
【テーマコード(参考)】
4H003
【Fターム(参考)】
4H003AB03
4H003AB19
4H003AB27
4H003AC05
4H003AC08
4H003BA12
4H003DA01
4H003DA05
4H003DB01
4H003DC02
4H003EA21
4H003EB04
4H003EB14
4H003EB16
4H003ED28
4H003FA03
4H003FA04
(57)【要約】
本発明は、
(A)少なくとも1つのポリマーであって、
(a)一般式(I)の1~3個の部分を担持するコアであって、
【化1】
式中、Zは、異なっているか又は同じであり、またC~C20アルキレンから選択され、上記のC~C20アルキレンにおいて、少なくとも1つのC原子が、ポリアルキレン鎖を担持するN原子によって置換され、上記のC~C20アルキレン中のC原子は、非置換である場合もあり、又は1つ以上のO-C~Cアルキル基で置換される場合もあり、
は、異なっているか又は同じであり、またC~C12アルキレン、Cアリーレン、及びC~C12シクロアルキレンから選択され、ここで、C~C12アルキレン及びC~C12シクロアルキレンは、非置換である場合もあり、又は1つ以上のO-C~Cアルキル基又はOH基で置換される場合もあり、C~C12シクロアルキレンは、1~3個のメチル基を担持する場合があるか、
或いは、クエン酸をベースとし、
X1は、水素及びメチル及びエチル、並びに前述のうち少なくとも2つの組み合わせから選択され、
nは、1~100の範囲内である、コアと、
(c)ポリアルキレンオキシド鎖と、を含む、ポリマーを含む組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体洗剤組成物であって、
(A)少なくとも1つのポリマーであって、
(a)一般式(I)の1~3個の部分を担持するコアであって、
【化1】
式中、Zは、異なっているか又は同じであり、またC~C20アルキレンから選択され、前記C~C20アルキレンにおいて、少なくとも1つのC原子が、ポリアルキレン鎖を担持するN原子によって置換され、前記C~C20アルキレン中の前記C原子は、非置換である場合もあり、又は1つ以上のO-C~Cアルキル基で置換される場合もあり、
は、異なっているか又は同じであり、またC~C12アルキレン、Cアリーレン、及びC~C12シクロアルキレンから選択され、ここで、C~C12アルキレン及びC~C12シクロアルキレンは、非置換である場合もあり、又は1つ以上のO-C~Cアルキル基又はOH基で置換される場合もあり、C~C12シクロアルキレンは、1~3個のメチル基を担持する場合があるか、
或いは、クエン酸をベースとし、
は、水素及びメチル及びエチル、並びに前述のうち少なくとも2つの組み合わせから選択され、
nは、1~100の範囲内である、コアと、
(b)ポリアルキレンオキシド鎖と、
を含む、ポリマーを含む、組成物。
【請求項2】
全てのZが、
(CHz1-[N(CHz2z4-N(CHz3-から選択され、式中、変数z1、z2、及びz3は、互いから独立して2~4から選択され、z4は0~2から選択され、各CH基は、非置換である場合もあり、又は1~2個のメチル若しくはメトキシ基で置換される場合もある、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(B)少なくとも1つのヒドロラーゼを追加で含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ヒドロラーゼ(B)が、トリアシルグリセロールリパーゼ(EC 3.1.1.3)から選択されるリパーゼ(B)である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリマー(A)が、2,500~80,000g/モルの範囲の平均分子量Mを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
全てのZが、-(CH-N-(CH、-(CH-N-(CH-、及び-(CH-N(CH-N-(CH-から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
洗濯物ケア又は硬質表面の洗浄のための、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項8】
(a)一般式(I)の1~3個の部分を担持するコアであって、
【化2】
式中、Zは、異なっているか又は同じであり、またC~C20アルキレンから選択され、前記C~C20アルキレンにおいて、少なくとも1つのC原子が、ポリアルキレン鎖を担持するN原子によって置換され、前記C~C20アルキレン中の前記C原子は、非置換である場合もあり、又は1つ以上のO-C~Cアルキル基で置換される場合もあり、
は、異なっているか又は同じであり、またC~C12アルキレン、Cアリーレン、及び-CHC(CO)(OH)-CH-、及びC~C12シクロアルキレンから選択され、ここで、C~C12アルキレン及びC~C12シクロアルキレンは、非置換である場合もあり、又は1つ以上のO-C~Cアルキル基又はOH基で置換される場合もあり、C~C12シクロアルキレンは、1~3個のメチル基を担持する場合があるか、
或いは、クエン酸をベースとし、
は、水素及びメチル及びエチル、並びに前述のうち少なくとも2つの組み合わせから選択され、
nは、1~100の範囲内であり、
がC~Cアルキル、水素、及びCH(X)-CH-N-Z-から選択される、コアと、
(b)ポリアルキレンオキシド鎖と、
を含むポリマー。
【請求項9】
2,500~80,000g/モルの範囲の平均分子量Mを有する、請求項8に記載のポリマー。
【請求項10】
全てのZが、(CHz1-[N(CHz2z4-N(CHz3-から選択され、式中、変数z1、z2、及びz3は、互いから独立して2~4から選択され、z4は0~2から選択され、各CH基は、それぞれ非置換である場合もあり、又は1~2個のメチル若しくはメトキシ基で置換される場合もある、請求項8又は9に記載のポリマー。
【請求項11】
全てのZが、-(CH-N-(CH、-(CH-N-(CH-、及び-(CH-N(CH-N-(CH-から選択される、請求項8~10のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項12】
が、C~Cアルキレンから選択される、請求項8~11のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項13】
請求項8~12のいずれか一項に記載のポリマーを作製するためのプロセスであって、
(α)一般式HN-Z’-NHのアミンを、3:1~1:3のアルキレンオキシド:N原子のモル比でアルキレンオキシドと反応させ、ここでアルキレンオキシドが、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドから選択され、それによって中間体が形成され、式中、Z’はZのように定義されるが、N原子はポリアルキレンオキシド鎖の代わりにHを担持する、工程と、
(β)工程(α)からの前記中間体を、少なくとも1つのジカルボン酸若しくはトリカルボン酸と、若しくは前述のものの混合物と、又は、それぞれの場合で、それらの対応する無水物若しくはC~Cアルキルエステルと、反応させることによってエステルを得る、工程と、
(γ)工程(β)からの前記エステルを、1つ以上の工程で、少なくとも1つのC~Cアルキレンオキシドと反応させる工程と、
を含む、プロセス。
【請求項14】
工程(β)で、工程(α)からの前記中間体が、コハク酸、マロン酸、セバシン酸、又はアジピン酸のジ-C~Cアルキルエステル、及び任意選択的に、クエン酸のトリエチルエステルと反応させられる、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
請求項8~12のいずれか一項に記載のポリマー(A)を、少なくとも1つのリパーゼ及び/又は少なくとも1つのプロテアーゼを含む洗剤組成物に添加することによって、液体洗剤組成物の洗浄性能を改善する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体洗剤組成物であって、
(A)少なくとも1つのポリマーであって、
(a)1~3個の一般式(I)の部分を担持するコアであって、
【化1】
式中、Zは、異なっているか又は同じであり、またC~C20アルキレンから選択され、上記のC~C20アルキレンにおいて、少なくとも1つのC原子が、ポリアルキレン鎖を担持するN原子によって置換され、上記のC~C20アルキレン中のC原子は、非置換である場合もあり、又は1つ以上のO-C~Cアルキル基で置換される場合もあり、
は、異なっているか又は同じであり、またC~C12アルキレン、Cアリーレン、及びC~C12シクロアルキレンから選択され、ここで、C~C12アルキレン及びC~C12シクロアルキレンは、非置換である場合もあり、又は1つ以上のO-C~Cアルキル基又はOH基で置換される場合もあり、C~C12シクロアルキレンは、1~3個のメチル基を担持する場合があるか、
或いは、クエン酸をベースとし、
は、水素及びメチル及びエチル、並びに前述のうち少なくとも2つの組み合わせから選択され、
nは、1~100の範囲内である、コアと、
(b)ポリアルキレンオキシド鎖と、を含む、ポリマーを含む組成物に関する。
【0002】
更に、本発明は、こうした組成物に対して有用なポリマー、及びこうしたポリマーを作製するプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
洗濯用洗剤は、いくつかの要件を満たすことが必要とされる。これらは、洗濯物からあらゆる種類の汚れ、例えば、あらゆる種類の顔料、クレイ、脂肪分を含む汚れ、並びに染料、例えば、食品、及び赤ワイン、紅茶、コーヒーなどの飲料、及びベリージュースを含む果実由来の染料を除去することを必要とする。洗濯用洗剤はまた、特定の保存安定性を示す必要もある。特に、液体の、又は吸湿成分を含有する洗濯用洗剤は、保存安定性が良好でない場合が多く、例えば酵素が非活性化される傾向がある。
【0004】
脂肪分を含む汚れは、依然として洗濯における難題である。除去のための多くの提案(ポリマー、酵素、界面活性剤)がなされてきたが、良好に作用する解決法が未だに関心の対象となっている。脂肪分の除去を補助するためにリパーゼの使用が提案されてきたが、特に液体洗濯用洗剤中で、多くのビルダーがリパーゼとは良好に協働しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、1つの目的は、上記で説明した要件を満たす洗剤組成物を提供することであった。更なる目的は、上記の要件を満たす成分を提供することであり、1つの目的は、こうした成分及び洗剤組成物を作製するためのプロセスを提供することであった。
【0006】
その結果、本明細書の以下で本発明の組成物、又は本発明による組成物とも称される、冒頭で定義された液体洗剤組成物が発見された。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の組成物は、
(A)少なくとも1つのポリマー(本明細書では、以降、ポリマー(A)とも称される)を含み、かかるポリマー(A)は、
(a)1~3個の一般式(I)の部分を担持するコアであって、
【化2】
式中、Zは異なっているか又は同じであり、
直鎖又は分岐鎖のC~C20アルキレン、好ましくはC~C12アルキレンから選択され、上記のC~C20アルキレン又はC~C12アルキレンにおいて、少なくとも1つのC原子が、ポリアルキレン鎖を担持するN原子によって置換され、例えば1~3個のC原子が置換される、コアを含む。
【0008】
前述の他にも、上記のC~C20アルキレン又はC~C12アルキレンは、さもなければ非置換である場合もあり、又は1つ以上のO-C~Cアルキル基で置換される場合もある。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態では、全てのZは、(CHz1-[N(CHz2z4-N(CHz3-から選択され、式中、変数z1、z2、及びz3は、互いから独立して2~4から選択され、z4は0~2から選択され、各CH基は、1~2個のメチル若しくはメトキシ基で置換される場合もあり、又は、好ましくは非置換である場合もある。
【0010】
上記のポリアルキレンオキシド側鎖は、C~Cアルキレンオキシド由来であり得る。C~Cアルキレンオキシドの例は、エチレンオキシド(「EO」)、プロピレンオキシド(「PO」)、ブチレンオキシド(「BuO」)、及び前述のうち少なくとも2つの組み合わせ、例えば、エチレンオキシド及びプロピレンオキシド、又はエチレンオキシド及びブチレンオキシドであり、好ましくは、各事例で、アルキレンオキシド単位の大半がEOである。プロピレンオキシド及びエチレンオキシド(大半がエチレンオキシドである)が好ましく、エチレンオキシドがより好ましい。
【0011】
本発明の一実施形態では、全てのZは、-(CH-N-(CH-、及び
-(CH-N-(CH及び-(CH-N-(CH-N-(CH-から選択される。好ましくは、全てのZは同じである。
【0012】
は、水素及びメチル及びエチル、並びに前述のうち少なくとも2つの組み合わせから選択され、メチル並びにメチルと水素との組み合わせが好ましく、水素がより好ましい。
【0013】
は、異なっているか又は同じであり、またC~C12アルキレン、好ましくはC~Cアルキレン、例えば、-CHCH-、-(CH-、-(CH-、-(CH-、-(CH-、-(CH-、-(CH10-、-(CH12-から選択され、好ましくは-CHCH-、-(CH-、-(CH-、更にはCアリーレン、及びC~C12シクロアルキレンであり、ここで、C~C12アルキレン及びC~C12シクロアルキレンは、非置換である場合もあり、又は1つ以上のO-C~Cアルキル基又はOH基で置換される場合もあり、C~C12シクロアルキレンは、1~3個のメチル基を担持する場合があるか、
或いは、クエン酸、例えば、-CH-C(COH)(OH)-CH-又は-CH-C(OH)(CH-COOH)-をベースとする。
【0014】
本発明の一実施形態では、ポリマー(A)中のAは、C~Cアルキレンとクエン酸をベースとする残基との、例えば1:10~15:1、好ましくは1:5~10:1のモル比での混合物である。
【0015】
nは、1~100、好ましくは10~75の範囲内である。
【0016】
式(I)の窒素原子上の自由原子価は、ポリアルキレン鎖(b)若しくは
-CH-CH(X)-O(CO)-A-(CO)-O-CHX-CH-N-Z-N単位、又は水素原子を担持する。分子量Mが10,000g/モル以上である実施形態では、式(I)の窒素原子上の自由原子価は、ポリアルキレン鎖(b)又は-CH-CH(X)-O-CHX-CH-N-Z-N単位を担持する。
【0017】
本発明の一実施形態では、ポリマー(A)は、更に、一般式(X)の1つ以上の構造単位を担持することができる。
【化3】
【0018】
本発明の一実施形態では、ポリマー(A)は、平均分子量Mを、2,500~300,000g/モル、好ましくは5,000~250,000g/モル、更により好ましくは最大で80,000g/モルの範囲で有する。平均分子量は、例えば、標準として直鎖ポリメチルメタクリレート(「PMMA」)を用いる、移動相としてのテトラヒドロフラン(THF)中のゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって決定することができる。
【0019】
本発明の一実施形態では、ポリマー(A)は、分子量分布M/Mを1.1~2.5の範囲で有する。
【0020】
本発明の一実施形態では、ポリマー(A)は、10重量%水溶液中で決定したハーゼン色数を20~500の範囲で有する。
【0021】
本発明の一実施形態では、ポリマー(A)は、DIN53240(2013)に従って測定して、1gのポリマー(A)あたり20~650、好ましくは30~100mg KOHの範囲のOH価を有する。
【0022】
本発明の一実施形態では、ポリマー(A)は、ASTM D2074-07に従って決定して、1gのポリマー(A)あたり10~650、好ましくは10~510、より好ましくは10~80mg KOHの範囲の総アミン価を有する。
【0023】
ポリマー(A)は、更に、
(b)ポリアルキレンオキシド鎖を含む。
【0024】
上記のポリアルキレンオキシド側鎖は、C~Cアルキレンオキシド由来であり得る。C~Cアルキレンオキシドの例は、エチレンオキシド(「EO」)、プロピレンオキシド(「PO」)、ブチレンオキシド(「BuO」)、及び前述のうち少なくとも2つの混合物、例えば、エチレンオキシド及びプロピレンオキシド、又はエチレンオキシド及びブチレンオキシドである。プロピレンオキシド及びエチレンオキシドが好ましく、エチレンオキシドがより好ましい。
【0025】
本発明の一実施形態では、ポリマー(A)におけるコア(a)とポリアルキレンオキシド鎖(b)との重量比は、1:100から1:2までの範囲内であり、1:40から1:3までが好ましい。
【0026】
本発明の一実施形態では、本発明の組成物は、少なくとも1つの酵素を含む。酵素はポリペプチド配列(本明細書ではアミノ酸配列とも称される)によって同定される。ポリペプチド配列は、酵素の「活性部位」を含む三次元構造を特定し、これが次にその触媒活性を決定する。ポリペプチド配列は、配列番号によって同定され得る。世界知的所有権機関(World Intellectual Property Office、WIPO)規格ST.25(1998)によると、本明細書のアミノ酸は、最初の文字が大文字の3文字記号、又は対応する1文字を用いて表される。
【0027】
本発明のいずれの酵素も、どちらも酵素活性を有する親酵素及び/又は変異体酵素と関連する。酵素活性を有する酵素は、酵素的に活性であるか又は酵素変換を及ぼす。つまり、酵素が基質に作用して、これらを生成物に変換する。本明細書の「酵素」という用語は、酵素の不活性変異体を包含しない。
【0028】
(「親酵素」とも称される親タンパク質又は酵素の)「親」配列は、(例えば、1つ以上のアミノ酸置換、挿入、欠失、又はこれらの組み合わせを導入することによって)変更を配列に導入して、親配列の「変異体」をもたらすための出発配列である。親酵素(又は親配列)という用語は、(更なる)変化を導入するための出発配列として使用される、野生型酵素(配列)及び合成的に生成された配列(酵素)を含む。
【0029】
用語「酵素変異体」又は「配列変異体」又は「変異体酵素」は、アミノ酸配列がその親酵素と特定の程度で異なる酵素を指す。別段の指示がない限り、「酵素活性を有する」変異体酵素とは、この変異体酵素がそれぞれの親酵素と同じ種類の酵素活性を有していることを意味する。
【0030】
本発明の変異体を記述する場合、以下に記載される命名法が用いられる。
【0031】
アミノ酸置換は、親酵素の元のアミノ酸、続いてアミノ酸配列中の位置の番号、続いて置換されたアミノ酸を提供することにより記述される。アミノ酸欠失は、親酵素の元のアミノ酸、続いてアミノ酸配列中の位置の番号、続いて*を提供することにより記述される。アミノ酸挿入は、親酵素の元のアミノ酸、続いてアミノ酸配列中の位置の番号、続いて元のアミノ酸及び追加のアミノ酸を提供することにより記述される。例えば、グリシンの隣のリジンの180位での挿入は、「Gly180GlyLys」又は「G180GK」として指定される。置換及び挿入が同じ位置に存在する場合、これは、S99SD+S99A又は要約すればS99ADとして示され得る。既存のアミノ酸残基と同一のアミノ酸残基が挿入される場合、命名法の縮重が生じる。例えば、グリシンが上の例でグリシンの後に挿入される場合、これは、G180GGによって示されることになる。異なる変更がある位置で導入され得る場合、異なる変更はカンマによって隔てられ、例えば、「Arg170Tyr,Glu」は、170位のアルギニンのチロシン又はグルタミン酸による置換を表す。或いは、異なる変更又は任意の置換は、ブラケット内に示され得る(例えば、Arg170[Tyr,Gly]若しくはArg170{Tyr,Gly}、又は短くR170[Y,G]若しくはR170{Y,G}、若しくは長くR170Y、R170G)。
【0032】
酵素変異体は、親酵素と比較した場合の配列同一性によって定義され得る。配列同一性は、通常、「%配列同一性」又は「%同一性」として示される。配列同一性を計算するためには、第1の工程で、配列アラインメントを生成しなくてはならない。本発明によれば、ペアワイズグローバルアラインメントを生成しなくてはならず、これは、2つの配列をそれらの完全長にわたってアラインさせなくてはならないことを意味し、これは通常、アラインメントアルゴリズムと称される数理的手法を使用することによって生成される。本発明によれば、アラインメントは、Needleman及びWunschのアルゴリズムを使用することによって生成される(J.Mol.Biol.(1979)48,p.443-453)。好ましくは、プログラム「NEEDLE」(European Molecular Biology Open Software Suite(EMBOSS))を、プログラムのデフォルトパラメーター(ギャップオープン=10.0、ギャップ伸長=0.5、及びマトリックス=EBLOSUM62)を用いて、本発明のために使用する。
【0033】
本発明によれば、以下の%同一性の計算が適用される。%同一性=(同一の残基/その完全長にわたり本発明のそれぞれの配列を示すアラインメント領域の長さ)*100。
【0034】
本発明によれば、酵素変異体は、それぞれの親酵素のアミノ酸配列と少なくともn%同一であるアミノ酸配列として説明することができ、ここで「n」は10~100の整数である。一実施形態では、変異体酵素は、親酵素の完全長アミノ酸配列と比較して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも82%、少なくとも84%、少なくとも86%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一であり、ここで、酵素変異体は酵素活性を有する。
【0035】
「酵素活性」とは、酵素1分子あたり1分あたりに変換される基質の分子(分子活性)に関連する、通常は酵素1ミリグラムあたりの単位(比活性)として表される、酵素によって発揮される触媒効果を意味する。変異体酵素は、上記の酵素変異体が、それぞれの親酵素の酵素活性の少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%を示すとき、本発明の酵素活性を有し得る。
【0036】
一実施形態では、酵素はヒドロラーゼから、好ましくはプロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、セルラーゼ、及びマンナナーゼから選択される。
【0037】
本発明の一実施形態では、本発明の組成物は、
(B)少なくとも1つのヒドロラーゼ(本明細書では、以降、ヒドロラーゼ(B)とも称される)を含む。これは、好ましくはリパーゼ(本明細書では、以降、リパーゼ(B)とも称される)から選択される。
【0038】
「リパーゼ」、「脂肪分解酵素」、「脂質エステラーゼ」は全て、ECクラス3.1.1の酵素(「カルボキシルエステルヒドロラーゼ」)を指す。かかるリパーゼ(B)は、リパーゼ活性(又は脂肪分解活性;トリアシルグリセロールリパーゼ、EC3.1.1.3)、クチナーゼ活性(EC3.1.1.74;クチナーゼ活性を有する酵素は、本明細書でクチナーゼと呼ばれ得る)、ステロールエステラーゼ活性(EC3.1.1.13)、及び/又はワックス-エステルヒドロラーゼ活性(EC3.1.1.50)を有し得る。リパーゼ(B)としては、細菌又は真菌起源のものが挙げられる。
【0039】
市販のリパーゼ(B)としては、Lipolase(商標)、Lipex(商標)、Lipolex(商標)及びLipoclean(商標)(Novozymes A/S)、Preferenz(商標)L(DuPont)、Lumafast(当初はGenencorから)、及びLipomax(Gist-Brocades/現DSM)の商品名で販売されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
好適なリパーゼ(B)としては、脂肪分解活性を有する上記のリパーゼの変異体であるものも挙げられる。好適なリパーゼ変異体としては、上記で開示した親酵素の完全長ポリペプチド配列と比較して少なくとも40~100%の同一性を有する変異体が挙げられる。一実施形態では、脂肪分解活性を有するリパーゼ変異体は、上記で開示した親酵素の完全長ポリペプチド配列と比較して少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一であり得る。
【0041】
リパーゼ(B)は、「脂肪分解活性」を有する。脂肪分解活性を決定するための方法は、文献で周知されている(例えば、Gupta et al.(2003),Biotechnol.Appl.Biochem.37,p.63-71を参照されたい)。例えば、リパーゼ活性は、基質であるパラ-ニトロフェニルパルミテート(pNP-パルミテート、C:16)中でのエステル結合加水分解によって測定することができ、黄色で、且つ405nmで検出可能なpNPを放出する。
【0042】
一実施形態では、リパーゼ(B)は、真菌トリアシルグリセロールリパーゼ(ECクラス3.1.1.3)から選択される。真菌トリアシルグリセロールリパーゼは、サーモマイセス・ラヌギノーサ(Thermomyces lanuginosa)のリパーゼから選択され得る。一実施形態では、少なくとも1つのサーモマイセス・ラヌギノーサ(Thermomyces lanuginosa)リパーゼは、米国特許第5869438号明細書の配列番号2のアミノ酸1~269によるトリアシルグリセロールリパーゼ、及び脂肪分解活性を有するその変異体から選択される。
【0043】
サーモマイセス・ラヌギノーサ(Thermomyces lanuginosa)リパーゼは、米国特許第5,869,438号明細書の配列番号2のアミノ酸1~269の完全長ポリペプチド配列と比較した場合、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は、少なくとも99%同一の脂肪分解活性を有する変異体から選択され得る。
【0044】
サーモマイセス・ラヌギノーサ(Thermomyces lanuginosa)リパーゼは、米国特許第5,869,438号明細書の配列番号2のアミノ酸1~269の機能性ドメインに属さない、保存的変異のみを含む脂肪分解活性を有する変異体から選択され得る。脂肪分解活性を有するこの実施形態のリパーゼ変異体は、米国特許第5,869,438号明細書の配列番号2のアミノ酸1~269の完全長ポリペプチド配列と比較した場合、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%類似し得る。
【0045】
サーモマイセス・ラヌギノーサ(Thermomyces lanuginosa)リパーゼは、米国特許第5,869,438号明細書の配列番号2のアミノ酸1~269と比較した場合、少なくとも以下のアミノ酸置換:T231R及びN233Rを含む脂肪分解活性を有する変異体から選択され得る。上記のリパーゼ変異体は、米国特許第5,869,438号明細書の配列番号2のアミノ酸1~269と比較して、以下のアミノ酸交換:Q4V、V60S、A150G、L227G、P256Kの1つ以上を更に含み得る。
【0046】
サーモマイセス・ラヌギノーサ(Thermomyces lanuginosa)リパーゼは、米国特許第5,869,438号明細書の配列番号2のアミノ酸1~269のポリペプチド配列内に少なくともアミノ酸置換T231R、N233R、Q4V、V60S、A150G、L227G、P256Kを含む脂肪分解活性を有する変異体から選択され得、米国特許第5,869,438号明細書の配列番号2のアミノ酸1~269の完全長ポリペプチド配列と比較した場合、少なくとも95%、少なくとも96%、又は少なくとも97%類似している。
【0047】
サーモマイセス・ラヌギノーサ(Thermomyces lanuginosa)リパーゼは、米国特許第5869438号明細書の配列番号2のアミノ酸1~269内にアミノ酸置換T231R及びN233Rを含む脂肪分解活性を有する変異体から選択され得、米国特許第5,869,438号明細書の配列番号2のアミノ酸1~269の完全長ポリペプチド配列と比較した場合、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%類似している。
【0048】
サーモマイセス・ラヌギノーサ(Thermomyces lanuginosa)リパーゼは、脂肪分解活性を有する米国特許第5869438号明細書の配列番号2のアミノ酸1~269の変異体であり得、米国特許第5,869,438号明細書の配列番号2のアミノ酸1~269の変異体は、アミノ酸置換T231R及びN233Rを含有することを特徴とする。上記のリパーゼは、本明細書ではLipexと称され得る。
【0049】
本発明の一実施形態では、上記のリパーゼ(B)のうち少なくとも2つの組み合わせが使用され得る。
【0050】
本発明の一実施形態では、リパーゼ(B)は、完成した本発明の組成物が該組成物の100~0.005LU/mg、好ましくは25~0.05LU/mgの範囲の脂肪分解酵素活性を有するような量で、本発明の組成物に含まれる。リパーゼ単位(LU)は、以下の条件下で、pHスタット中に1分間あたり1μmolの滴定脂肪酸を産生するリパーゼの量である:温度30℃;pH=9.0;5mmol/lのトリス緩衝液中13mmol/lのCa2+及び20mmol/lのNaClの存在下で、基質が3.3重量%のオリーブ油及び3.3重量%のアラビアガムのエマルションであること。
【0051】
本発明の一実施形態では、本発明の組成物は、
(D)少なくとも1つのプロテアーゼ(D)(以下、プロテアーゼ(D)とも称される)を含む。
【0052】
一実施形態では、少なくとも1つのプロテアーゼ(D)は、セリンエンドペプチダーゼ(EC 3.4.21)の群から選択され、より好ましくはサブチリシンタイプのプロテアーゼ(EC 3.4.21.62)の群から選択される。セリンプロテアーゼ又はセリンペプチダーゼは、触媒反応中に基質との共有結合付加物を形成するセリンを触媒活性部位に有することを特徴とする。本発明の文脈におけるセリンプロテアーゼは、キモトリプシン(例えばEC3.4.21.1)、エラスターゼ(例えばEC3.4.21.36)、エラスターゼ(例えばEC3.4.21.37又はEC3.4.21.71)、グランザイム(例えばEC3.4.21.78又はEC3.4.21.79)、カリクレイン(例えばEC3.4.21.34、EC3.4.21.35、EC3.4.21.118、又はEC3.4.21.119)、プラスミン(例えばEC3.4.21.7)、トリプシン(例えばEC3.4.21.4)、トロンビン(例えばEC3.4.21.5)、及びサブチリシンからなる群から選択され得る。サブチリシンは、サブチロペプチダーゼ、例えばEC3.4.21.62としても既知であり、後者は以下「サブチリシン」とも称される。セリンプロテアーゼのサブチリシン関連クラスは、これらをセリンプロテアーゼのキモトリプシン関連クラスと区別する触媒三残基を画定する共通のアミノ酸配列を共有する。セリンプロテアーゼに関連するサブチリシン及びキモトリプシンの両方が、アスパラギン酸、ヒスチジン及びセリンを含む触媒三残基を有する。
【0053】
プロテアーゼは、「プロテアーゼ活性」又は「タンパク質分解活性」を作用させる活性タンパク質である。タンパク質分解活性は、所定の期間におけるプロテアーゼ又はタンパク質分解酵素によるタンパク質の分解の速度に関連する。
【0054】
タンパク質分解活性を分析するための方法は、文献で周知されている(例えば、Gupta et al.(2002),Appl.Microbiol.Biotechnol.60: 381-395を参照されたい)。タンパク質分解活性は、基質としてスクシニル-Ala-Ala-Pro-Phe-p-ニトロアニリドを使用することによって決定され得る(Suc-AAPF-pNA、短AAPF;例えばDelMar et al.(1979),Analytical Biochem 99,316-320を参照されたい)。pNAは、タンパク質分解切断によって基質分子から切断され、OD405の測定によって定量化が可能な黄色の遊離pNAの放出をもたらす。
【0055】
タンパク質分解活性は、酵素1グラムあたりの単位で提供され得る。例えば、1Uのプロテアーゼは、(カゼインを基質として)pH8.0及び37℃で1分間あたり1μmolのフォリン陽性アミノ酸及びペプチド(チロシンとして)を遊離させるプロテアーゼの量に相当し得る。
【0056】
サブチリシンタイプのプロテアーゼ(EC3.4.21.62)は、バシラス属(Bacillus)、クロストリジウム属(Clostridium)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、ゲオバシラス属(Geobacillus)、ラクトバシラス属(Lactobacillus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、オセアノバシラス属(Oceanobacillus)、スタヒロコッカス属(Staphylococcus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、若しくはストレプトマイセス属(Streptomyces)プロテアーゼから選択される微生物に由来する細菌プロテアーゼ、又は例えばカンピロバクター属(Campylobacter)、大腸菌(E.coli)、フラボバクテリウム属(Flavobacterium)、フソバクテリウム属(Fusobacterium)、ヘリコバクター属(Helicobacter)、リオバクター属(llyobacter)、ナイセリア属(Neisseria)、シュードモナス属(Pseudomonas)、サルモネラ属(Salmonella)、及びウレアプラズマ属(Ureaplasma)などのグラム陰性菌ポリペプチドであり得る。
【0057】
本発明の一態様では、少なくとも1つのプロテアーゼ(D)は、バシラス・アルカロフィルス(Bacillus alcalophilus)、バシラス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バシラス・ブレビス(Bacillus brevis)、バシラス・サーキュランス(Bacillus circulans)、バシラス・クラウシイ(Bacillus clausii)、バシラス・コアグランス(Bacillus coagulans)、バシラス・フィルムス(Bacillus firmus)、バシラス・ギブソニイ(Bacillus gibsonii)、バシラス・ラウタス(Bacillus lautus)、バシラス・レンタス(Bacillus lentus)、バシラス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バシラス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バシラス・プミルス(Bacillus pumilus)、バシラス・スファエリクス(Bacillus sphaericus)、バシラス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)、枯草菌(Bacillus subtilis)又はバシラス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)プロテアーゼから選択される。
【0058】
本発明の一実施形態では、少なくとも1つのプロテアーゼ(D)は、バシラス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)BPN’由来のサブチリシン(Vasantha et al.(1984)J.Bacteriol.Volume 159,p.811-819及びJA Wells et al.(1983)のNucleic Acids Research,Volume 11,p.7911-7925によって記載されている)、バシラス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)由来のサブチリシン(サブチリシンカールスバーグ;EL Smith et al.(1968)のJ.Biol Chem,Volume 243,pp.2184-2191及びJacobs et al.(1985)のNucl.Acids Res,Vol 13,p.8913-8926に開示される)、サブチリシンPB92(アルカリプロテアーゼPB92の元の配列は欧州特許第283075A2号明細書に記載される)、国際公開第89/06279号パンフレットに開示されるサブチリシン147及び/又は309(それぞれEsperase(登録商標)、Savinase(登録商標))、国際公開第91/02792号パンフレットに開示されるバシラス・レンタス(Bacillus lentus)由来のサブチリシン、例えば国際公開第95/23221号パンフレットに記載されているバシラス・レンタス(Bacillus lentus)DSM5483由来のサブチリシン、又はバシラス・レンタス(Bacillus lentus)DSM5483の変異体、ドイツ国特許第10064983号明細書に開示されるバシラス・アルカロフィルス(Bacillus alcalophilus)(DSM11233)由来のサブチリシン、国際公開第2003/054184号パンフレットに開示されるバシラス・ギブソニイ(Bacillus gibsonii)(DSM14391)由来のサブチリシン、国際公開第2003/056017号パンフレットに開示されるバシラス属(Bacillus sp.)(DSM14390)由来のサブチリシン、国際公開第2003/055974号パンフレットに開示されるバシラス属(Bacillus sp.)(DSM14392)由来のサブチリシン、国際公開第2003/054184号パンフレットに開示されるバシラス・ギブソニイ(Bacillus gibsonii)(DSM14393)由来のサブチリシン、国際公開第2005/063974号パンフレットに記載される配列番号4を有するサブチリシン、国際公開第2005/103244号パンフレットに記載される配列番号4を有するサブチリシン、国際公開第2005/103244号パンフレットに記載される配列番号7を有するサブチリシン、及びドイツ国特許出願第102005028295.4号明細書に記載される配列番号2を有するサブチリシンから選択される。
【0059】
本発明による有用なプロテアーゼの例は、国際公開第92/19729号パンフレット、国際公開第95/23221号パンフレット、国際公開第96/34946号パンフレット、国際公開第98/20115号パンフレット、国際公開第98/20116号パンフレット、国際公開第99/11768号パンフレット、国際公開第01/44452号パンフレット、国際公開第02/088340号パンフレット、国際公開第03/006602号パンフレット、国際公開第2004/03186号パンフレット、国際公開第2004/041979号パンフレット、国際公開第2007/006305号パンフレット、国際公開第2011/036263号パンフレット、国際公開第2011/036264号パンフレット、及び国際公開第2011/072099号パンフレットに記載された変異体を含む。好適な例は、特には、タンパク質分解活性を有する、以下の位置のうち1つ以上にアミノ酸置換を有する、欧州特許第1921147号明細書に記載されている配列番号22(バシラス・レンタス(Bacillus lentus)DSM5483に由来する成熟アルカリプロテアーゼの配列である)に由来するサブチリシンプロテアーゼの変異体を含む:3、4、9、15、24、27、33、36、57、68、76、77、87、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、106、118、120、123、128、129、130、131、154、160、167、170、194、195、199、205、206、217、218、222、224、232、235、236、245、248、252、及び274位(BPN付番に従う)。一実施形態では、こうしたプロテアーゼは、Asp32、His64、及びSer221位(BPN付番に従う)では変異していない。
【0060】
一実施形態では、少なくとも1つのプロテアーゼ(D)は、欧州特許第1921147号明細書に記載される配列番号22の配列を有するか、又はこれと少なくとも80%同一であり、且つタンパク質分解活性を有するプロテアーゼである。一実施形態では、上記のプロテアーゼは、101位(BPN付番に従う)にアミノ酸、グルタミン酸、又はアスパラギン酸、又はアスパラギン、又はグルタミン、又はアラニン、又はグリシン、又はセリンを有することを特徴とし、且つタンパク質分解活性を有する。一実施形態では、上記のプロテアーゼは、1つ以上の更なる置換:(a)位置3でのスレオニン(3T)、(b)位置4でのイソロイシン(4I)、(c)位置63でのアラニン、スレオニン又はアルギニン(63A、63T又は63R)、(d)位置156でのアスパラギン酸又はグルタミン酸(156D又は156E)、(e)位置194でのプロリン(194P)、(f)位置199でのメチオニン(199M)、(g)位置205でのイソロイシン(205I)、(h)位置217でのアスパラギン酸、グルタミン酸又はグリシン(217D、217E又は217G)、(i)(a)~(h)に従う2つ以上のアミノ酸の組み合わせを含む。
【0061】
少なくとも1つのプロテアーゼ(D)は、欧州特許第1921147号明細書に記載される配列番号22と少なくとも80%同一であり得、1つのアミノ酸((a)~(h)に従う)又は(i)に従う組み合わせを、アミノ酸101E、101D、101N、101Q、101A、101G、又は101S(BPN付番に従う)と共に含むことを特徴とする。一実施形態では、上記のプロテアーゼは、変異(BPN付番に従う)R101E、又はS3T+V4I+V205I、又はR101E並びにS3T、V4I、及びV205I、又はS3T+V4I+V199M+V205I+L217Dを含み、且つタンパク質分解活性を有することを特徴とする。101Eを含む欧州特許第1921147号明細書に記載される配列番号22の配列を有するプロテアーゼは、本明細書ではLavergyと称され得る。
【0062】
一実施形態では、欧州特許第1921147号明細書に記載される配列番号22のプロテアーゼは、変異(BPN付番に従う)S3T+V4I+S9R+A15T+V68A+D99S+R101S+A103S+I104V+N218Dを含み、且つタンパク質分解活性を有することを特徴とする。
【0063】
本発明の組成物は、全て上記で開示される通り、好ましくはセリンエンドペプチダーゼ(EC 3.4.21)の群から選択され、より好ましくはサブチリシンタイプのプロテアーゼ(EC 3.4.21.62)の群から選択される少なくとも2つのプロテアーゼの組み合わせを含み得る。
【0064】
リパーゼ(B)とプロテアーゼ(D)との組み合わせ、例えばどちらも組成物の全重量を基準として1~2重量%のプロテアーゼ(D)と0.1~0.5重量%のリパーゼ(B)との組み合わせを、組成物中で使用することが好ましい。
【0065】
本発明との関係においては、リパーゼ(B)及び/又はプロテアーゼ(D)は、「適用において利用可能な」その酵素活性が、保存前の初期酵素活性と比較して少なくとも60%に等しい場合に、安定であるとみなされる。酵素は、本発明においては、適用において利用可能なその酵素活性が、保存前の初期酵素活性と比較して少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は少なくとも99.5%であるならば、安定していると言うことができる。
【0066】
100%からa%を引くことによって、保存前の初期酵素活性と比較して「保存中の酵素活性の損失量」が得られる。一実施形態では、酵素は、本発明によれば、保存中に酵素活性の損失が本質的に生じない、すなわち、酵素活性の損失が保存前の初期酵素活性と比較して0%に等しい場合、安定している。本発明において、酵素活性の損失が本質的にないとは、酵素活性の損失が30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満であることを意味し得る。
【0067】
本発明の一実施形態では、本発明の組成物は、
(C)少なくとも1つのアニオン性界面活性剤(以下、アニオン性界面活性剤(C)とも称される)を含む。
【0068】
アニオン性界面活性剤(C)の例は、C~C18アルキル硫酸塩のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩、C~C18脂肪アルコールポリエーテル硫酸塩のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩、エトキシル化C~C12アルキルフェノールの硫酸半エステル(エトキシル化:1~50molのエチレンオキシド/モル)のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩、C12~C18スルホ脂肪酸アルキルエステル、例えばC12~C18スルホ脂肪酸メチルエステルのアルカリ金属塩及びアンモニウム塩、更にはC12~C18アルキルスルホン酸のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩、並びにC10~C18アルキルアリールスルホン酸のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩である。上述の化合物のアルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩が特に好ましい。
【0069】
アニオン性界面活性剤(C)の更なる例は、石鹸、例えばステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、エーテルカルボン酸塩、及びアルキルエーテルリン酸塩のナトリウム塩又はカリウム塩である。
【0070】
本発明の好ましい実施形態では、アニオン性界面活性剤(C)は、一般式(II)の化合物から選択され、
-O(CHCHO)-SOM (II)
式中、
は、特に偶数の炭素原子を有するn-C10~C18アルキル、例えばn-デシル、n-ドデシル、n-テトラデシル、n-ヘキサデシル、又はn-オクタデシル、好ましくはC10~C14アルキル、更により好ましくはn-C12アルキルであり、
xは、1~5の範囲の数字であり、好ましくは2~4、更により好ましくは3である。
Mは、アルカリ金属、好ましくはカリウム、更により好ましくはナトリウムから選択される。
【0071】
アニオン性界面活性剤(C)においては、xは平均数であり得、従ってnは必ずしも整数ではないが、式(I)の個別の分子では、xは整数を表す。
【0072】
本発明の一実施形態では、本発明の組成物は、0.1~60重量%のアニオン性界面活性剤(C)、好ましくは5~50重量%を含み得る。
【0073】
本発明の組成物は、前述したもの以外の成分を含み得る。例は、非イオン性界面活性剤、香料、染料、殺生物剤、防腐剤、酵素、ヒドロトロープ、ビルダー、粘度調整剤、ポリマー、緩衝液、脱泡剤、及び防食添加剤である。
【0074】
好ましい本発明の組成物は、1つ以上の非イオン性界面活性剤を含み得る。
【0075】
好ましい非イオン性界面活性剤は、アルコキシル化アルコール、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドの二元及び多元ブロックコポリマー、並びにソルビタンとエチレンオキシド又はプロピレンオキシドとの反応生成物、アルキルポリグリコシド(APG)、ヒドロキシアルキル混合エーテル及びアミンオキシドである。
【0076】
アルコキシル化アルコール及びアルコキシル化脂肪アルコールの好ましい例は、例えば、一般式(III a)の化合物であり、
【化4】
式中、変数は、以下の通り定義される:
は、同一であるか又は異なり、水素及び直鎖C~C10アルキルから選択され、好ましくは、それぞれの場合で同一であり、エチル、特に好ましくは水素又はメチルであり、
は、分岐鎖又は直鎖のC~C22アルキル、例えば、n-C17、n-C1021、n-C1225、n-C1429、n-C1633、又はn-C1837から選択され、
は、C~C10アルキル、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、1,2-ジメチルプロピル、イソアミル、n-ヘキシル、イソヘキシル、sec-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、n-ノニル、n-デシル、又はイソデシルから選択される。
変数e及びfは、0~300の範囲内であり、eとfとの和は少なくとも1、好ましくは3~50の範囲内である。好ましくは、eは1~100の範囲内であり、fは0~30の範囲内である。
【0077】
一実施形態では、一般式(II)の化合物は、ブロックコポリマー又はランダムコポリマーであり得、ブロックコポリマーが好ましい。
【0078】
アルコキシル化アルコールの他の好ましい例は、例えば、一般式(III b)の化合物であり、
【化5】
式中、変数は、以下の通り定義される:
は、同一であるか又は異なり、水素及び直鎖C~Cアルキルから選択され、好ましくは、それぞれの場合で同一であり、エチル、特に好ましくは水素又はメチルであり、
は、分岐鎖又は直鎖のC~C20アルキル、特にn-C17、n-C1021、n-C1225、n-C1327、n-C1531、n-C1429、n-C1633、n-C1837から選択され、
aは、0~10、好ましくは1~6の範囲の数であり、
bは、1~80、好ましくは4~20の範囲の数であり、
dは、0~50、好ましくは4~25の範囲の数である。
【0079】
a+b+dの和は、好ましくは5~100の範囲内、更により好ましくは9~50の範囲内である。
【0080】
一般式(III)の化合物は、ブロックコポリマー又はランダムコポリマーであり得、ブロックコポリマーが好ましい。
【0081】
更に好適な非イオン性界面活性剤は、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドから構成されるジブロック及びマルチブロックコポリマーから選択される。更なる好適な非イオン性界面活性剤は、エトキシル化又はプロポキシル化ソルビタンエステルから選択される。アミンオキシド又はアルキルポリグリコシド、特に直鎖C~C16アルキルポリグリコシド及び分岐鎖C~C14アルキルポリグリコシド、例えば一般平均式((IV)の化合物も同様に好適である。
【化6】
式中、
は、C~Cアルキル、特にエチル、n-プロピル又はイソプロピルであり、
は、-(CH)-Rであり、
は、4~6個の炭素原子を有する単糖、特にグルコース及びキシロースから選択され、
yは、1.1~4の範囲内であり、yは平均数である。
【0082】
非イオン性界面活性剤の更なる例は、一般式(V)及び(VI)の化合物であり、
【化7】
AOはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、及びブチレンオキシドから選択され、
EOはエチレンオキシド、CHCH-Oであり、
は分岐鎖又は直鎖のC~C18アルキルから選択され、Rは上記で定義した通りである。
【0083】
はプロピレンオキシド及びブチレンオキシドから選択され、
wは15~70、好ましくは30~50の範囲の数であり、
w1及びw3は1~5の範囲の数字であり、
w2は13~35の範囲の数字である。
【0084】
好適な更なる非イオン性界面活性剤の概説は、欧州特許出願公開第A0851023号明細書及び独国特許出願公開第A19819187号明細書で見出すことができる。
【0085】
上記から選択される2つ以上の異なる非イオン性界面活性剤の混合物もまた存在し得る。
【0086】
存在し得るその他の界面活性剤は、両性(双性イオン性)界面活性剤及びアニオン性界面活性剤並びにこれらの混合物から選択される。
【0087】
両性界面活性剤の例は、使用条件下で同じ分子内に正及び負電荷を有する界面活性剤である。両性界面活性剤の好ましい例は、いわゆるベタイン界面活性剤である。ベタイン界面活性剤の多くの例が、1分子あたり1つの四級化窒素原子及び1つのカルボン酸基を有する。両性界面活性剤の特に好ましい例は、コカミドプロピルベタイン(ラウラミドプロピルベタイン)である。
【0088】
アミンオキシド界面活性剤の例は、一般式(VII)の化合物であり、
1011N→O (VII)
式中、R、R10及びR11は、互いに独立して、脂肪族、脂環式、又はC~CアルキレンC10~C20アルキルアミド部分から選択される。好ましくは、Rは、C~C20アルキル又はC~CアルキレンC10~C20アルキルアミドから選択され、R10及びR11の両方がメチルである。
【0089】
特に好ましい例は、ラウラミンオキシドと称される場合もある、ラウリルジメチルアミンオキシドである。更なる特に好ましい例は、コカミドプロピルアミンオキシドと称される場合もある、コカミジルプロピルジメチルアミンオキシドである。
【0090】
本発明の一実施形態では、本発明の組成物は、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及びアミンオキシド界面活性剤から選択される少なくとも1つの界面活性剤を、0.1~60重量%含有し得る。
【0091】
好ましい実施形態では、本発明の洗浄剤用固体洗剤組成物、特に自動食器洗い用固体洗剤組成物は、アニオン性界面活性剤を一切含有しない。
【0092】
本発明の組成物は、ブリーチとも称される少なくとも1つの漂白剤を含有し得る。漂白剤は、塩素系ブリーチ及び過酸化物ブリーチから選択され得、過酸化物ブリーチは、無機過酸化物ブリーチ及び有機過酸化物ブリーチから選択され得る。アルカリ金属過炭酸塩、アルカリ金属過ホウ酸塩、及びアルカリ金属過硫酸塩から選択される無機過酸化物ブリーチが好ましい。
【0093】
有機過酸化物ブリーチの例は、有機過カルボン酸、特に有機過カルボン酸である。
【0094】
本発明の組成物においては、アルカリ金属過炭酸塩、特に過炭酸ナトリウムが、好ましくはコーティング形態で用いられる。こうしたコーティングは、有機性のものであっても無機性のものであってもよい。例は、グリセロール、硫酸ナトリウム、ケイ酸塩、炭酸ナトリウム、及び前述のうち少なくとも2つの組み合わせ、例えば炭酸ナトリウムと硫酸ナトリウムとの組み合わせである。
【0095】
好適な塩素含有ブリーチは、例えば、1,3-ジクロロ-5,5-ジメチルヒダントイン、N-クロロスルファミド、クロラミンT、クロラミンB、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸マグネシウム、次亜塩素酸カリウム、ジクロロイソシアヌル酸カリウム、及びジクロロイソシアヌル酸ナトリウムである。
【0096】
本発明の組成物は、例えば、3~10重量%の塩素含有ブリーチを含み得る。
【0097】
本発明の組成物は1つ以上のブリーチ触媒を含み得る。漂白触媒は、ブリーチ増進性遷移金属塩、又は例えばマンガン-、鉄-、コバルト-、ルテニウム-、若しくはモリブデン-サレン錯体若しくは-カルボニル錯体などの遷移金属錯体から選択され得る。窒素含有三脚型配位子とのマンガン、鉄、コバルト、ルテニウム、モリブデン、チタン、バナジウム及び銅錯体並びにまたコバルト-、鉄-、銅-及びルテニウム-アミン錯体も漂白触媒として使用することができる。
【0098】
本発明の組成物は1つ以上のブリーチ活性化剤、例えばN-メチルモルホリニウム-アセトニトリル塩(「MMA塩」)、トリメチルアンモニウムアセトニトリル塩、例えば、N-ノナノイルスクシンイミドなどのN-アシルイミド、1,5-ジアセチル-2,2-ジオキソヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン(「DADHT」)、又はニトリルクワット(トリメチルアンモニウムアセトニトリル塩)を含み得る。
【0099】
好適なブリーチ活性化剤の更なる例は、テトラアセチルエチレンジアミン(TAED)及びテトラアセチルヘキシレンジアミンである。
【0100】
香料の例は、サリチル酸ベンジル、Lilial(登録商標)として市販されている2-(4-tert-ブチルフェニル)2-メチルプロピオナール、及びヘキシルシンナムアルデヒドである。
【0101】
染料の例は、アシッドブルー9、アシッドイエロー3、アシッドイエロー23、アシッドイエロー73、ピグメントイエロー101、アシッドグリーン1、ソルベントグリーン7、及びアシッドグリーン25である。
【0102】
本発明の組成物は、1つ以上の防腐剤又は殺生物剤を含有し得る。殺生物剤及び防腐剤は、微生物からの攻撃に起因する本発明の液体洗剤組成物の変質を防ぐ。殺生物剤及び防腐剤の例は、BTA(1,2,3-ベンゾトリアゾール)、塩化ベンザルコニウム、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン(「BIT」)、2-メチル-2H-イソチアゾール-3-オン(「MIT」)、及び5-クロロ-2-メチル-2H-イソチアゾール-3-オン(「CIT」)、安息香酸、ソルビン酸、1,5-ペンタンジアール、ブチルカルバミン酸ヨードプロピニル(「IPBC」)、ジクロロジメチルヒダントイン(「DCDMH」)、ブロモクロロジメチルヒダントイン(「BCDMH」)、及びジブロモジメチルヒダントイン(「DBDMH」)である。防腐剤の更なる例は、2-フェノキシエタノール及び4,4’-ジクロロ2-ヒドロキシジフェニルエーテル(「ジクロサン」)である。
【0103】
粘度調整剤の例は、寒天、カラギーナン、トラガカント、アラビアガム、アルギン酸塩、ペクチン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、ゼラチン、ローカストビーンガム、架橋ポリ(メタ)アクリレート、例えばビス(メタ)アクリルアミドで架橋されたポリアクリル酸、更にケイ酸、粘土(限定されるものではないがモンモリロナイト、ゼオライト、デキストリンなど)、及びカゼインである。
【0104】
本発明の文脈におけるヒドロトロープとは、水中で限定された溶解度を示す化合物の溶解を促進する化合物である。ヒドロトロープの例は、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコールなどの有機溶媒、及び通常の条件下で水混和性である更なる有機溶媒であるが、これらに限定されない。好適なヒドロトロープの更なる例は、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、及びクメンスルホン酸のナトリウム塩である。
【0105】
ポリマー(A)以外のポリマーの例は、特にはポリアクリル酸及びその対応するアルカリ金属塩、特にそのナトリウム塩である。好適なポリマーは、特にポリアクリル酸であり、好ましくは2,000~40,000g/モル、好ましくは2,000~10,000g/モル、特に3,000~8,000g/モルの範囲の平均分子量Mを有し、それぞれが部分的又は完全にアルカリ、特にナトリウムで中和される。同様に好適なコポリマー性ポリカルボン酸塩は、特に、アクリル酸とメタクリル酸とのコポリマー、並びにアクリル酸又はメタクリル酸とマレイン酸及び/又はフマル酸とのコポリマーである。ポリアクリル酸及びその対応するアルカリ金属塩は、汚れ再付着防止剤として機能し得る。
【0106】
ポリマーの更なる例は、ポリビニルピロリドン(PVP)である。ポリビニルピロリドンは、移染防止剤としての役割を果たし得る。
【0107】
ポリマーの更なる例は、ポリエチレンテレフタレート、ポリオキシエチレンテレフタレート、及び1分子当たり1個又は2個の親水性基で末端封止されたポリエチレンテレフタレートであり、親水性基は、CHCHCH-SONa、CHCH(CH-SONa)、及びCHCH(CHSONa)CH-SONaから選択される。
【0108】
緩衝液の例は、モノエタノールアミン及びN,N,N-トリエタノールアミンである。
【0109】
脱泡剤の例はシリコーンである。
【0110】
本発明の組成物は、汚れた洗濯物の洗浄における油などの有機脂肪性汚れに対してのみ良好であるわけではない。本発明の液体洗剤組成物は、赤ワイン、お茶、コーヒー、野菜類、及びベリー汁などの様々な果汁由来の染みなどであるがこれらに限定されない漂白不可能な染みを洗濯物から除去するのに非常に有用である。その上、本発明の液体洗剤組成物は、織布上に残留物を残さない。
【0111】
したがって、本発明の更なる態様は、洗濯物ケアにおける本発明の組成物の使用である。この文脈における洗濯物ケアとしては、洗濯物洗浄が挙げられる。
【0112】
別の態様では、本発明の組成物は、硬質表面の洗浄に有用である。したがって、本発明の更なる態様は、硬質表面の洗浄における本発明の組成物の使用である。
【0113】
本発明の文脈において、「硬質表面の洗浄用組成物」という用語は、ホームケア用及び業務用の洗浄剤を含む。「硬質表面の洗浄用組成物」という用語は、食器洗い、特に手動食器洗い及び自動食器洗い並びに陶器(ware)洗い用の組成物、並びに、浴室洗浄用、台所洗浄用、床洗浄用、パイプのデスケーリング用、窓洗浄用、トラック洗浄を含む自動車洗浄用、更にはオープンプラント洗浄用、CIP洗浄(cleaning-in-place)用、金属洗浄用、殺菌洗浄用、ファーム(farm)洗浄用、高圧洗浄用の組成物などであるがこれらに限定されない硬質表面の洗浄用組成物を含むが、洗濯用洗剤組成物は含まない。硬質表面の洗浄用組成物の特別な実施形態は、自動食器洗い用組成物である。
【0114】
本発明の文脈において、「硬質表面の洗浄用組成物」及び「硬質表面洗浄剤用組成物」という用語は、互換的に使用される。
【0115】
本発明の文脈において、また別段明記されない限り、洗濯洗剤組成物の成分の文脈におけるパーセントは、重量パーセントであり、対応の洗濯洗剤組成物の総固形分を基準とする。本発明の文脈において、また別段明記されない限り、硬質表面洗浄剤用の洗剤組成物の成分の文脈におけるパーセントは重量パーセントであり、硬質表面の洗浄用の洗剤組成物の総固形分を基準とする。
【0116】
本発明の組成物は、自動食器洗いに使用される場合、
(E)アミノポリカルボン酸及び好ましくはそれらのアルカリ金属塩から選択される少なくとも1つのビルダー構成成分(本発明の文脈においては、錯化剤(E)又は金属イオン封鎖剤(E)とも称される)を含有することが好ましい。本発明の文脈においては、金属イオン封鎖剤及びキレート剤という用語は互換的に使用される。
【0117】
金属イオン封鎖剤(E)の例は、MGDA(メチルグリシン二酢酸)、GLDA(グルタミン酸二酢酸)、IDS(イミノジサクシネート)、EDTA、並びに例えばN原子のうち20~90モル%が少なくとも1つのCHCOO基を含むポリエチレンイミンなどの錯化基を有するポリマーのアルカリ金属塩、及びそれらの対応するアルカリ金属塩、特にそれらのナトリウム塩、例えばMGDA-Na、GLDA-Na、又はIDS-Naである。
【0118】
好ましい金属イオン封鎖剤は、一般式(IX a)のものであり、
[CH-CH(COO)-N(CH-COO)]M3-x (IX a)
式中、Mは同じか又は異なるアンモニウム及びアルカリ金属カチオン、例えばナトリウム、カリウム、及び前述のうち少なくとも2つの組み合わせのカチオンから選択される。アンモニウムはアルキルで置換されていてもよいが、非置換アンモニウムNH が好ましい。アルカリ金属カチオンの好ましい例は、ナトリウム、及びカリウム、並びにナトリウムとカリウムとの組み合わせであり、一般式(II a)の化合物において全てのMが同じであり、これらが全てNaであることが更に好ましく、
式(II a)中のxは、0~1.0の範囲内である)のものであるか、
又は(IX b)
[OOC-CHCH-CH(COO)-N(CH-COO)]M4-x (IX b)
(式中、Mは上記で定義した通りであり、式(IX b)中のxは0~2.0、好ましくは0~1.0の範囲内である)のものであるか、
又は(IX c)
[OOC-CH-CH(COO)]-N-CH(COO)-CH-COO]M4-x (IX c)
(式中、Mは上記で定義した通りであり、式(II c)中のxは0~2.0、好ましくは0~1.0の範囲内である)のものである。
【0119】
本発明の一実施形態では、上記の本発明の組成物は、前述のうち少なくとも2つの組み合わせ、例えば一般式(IX a)のキレート剤と一般式(IX b)のキレート剤との組み合わせを含有する。
【0120】
一般式(IX a)及び(IX b)のキレート剤が好ましい。一般式(IX a)のキレート剤が更により好ましい。
【0121】
本発明の一実施形態では、一般式(IX a)の化合物は、ラセミ体MGDAのアンモニウム又はアルカリ金属塩から、並びに式(IX a)のL-及びD-鏡像体の混合物のアンモニウム及びアルカリ金属塩から選択され、上記の混合物は、鏡像体過剰率(ee)が5~99%、好ましくは5~95%、より好ましくは10~75%、更に好ましくは10か~66%までの範囲内の各L異性体を主に含有する。
【0122】
本発明の一実施形態では、一般式(IX b)の化合物は、式(IX b)のL-及びD-鏡像体の混合物の少なくとも1つのアルカリ金属塩から選択され、上記の混合物は、ラセミ混合物、又は好ましくは、例えば鏡像体過剰率(ee)が5~99%、好ましくは15~95%の範囲内の各L異性体を主に含有する。
【0123】
一般式(IX a)の化合物の鏡像体過剰率は、偏光を測定すること(旋光分析法)によって、又は好ましくはクロマトグラフィーによって、例えばキラルカラムを備えたHPLCによって、例えば固定相として1つ以上のシクロデキストリンを用いるか又は配位子交換(Pirkleブラシ)概念のキラル固定相を用いて決定することができる。銅(II)塩の存在下でD-ペニシラミンなどの固定化光学活性アミンを用いるHPLCによるeeの決定が好ましい。一般式(IX b)塩の化合物の鏡像体過剰率は、偏光を測定すること(旋光分析法)によって決定できる。
【0124】
リン酸塩が使用される状況下では環境上の問題が生じるため、有利な組成物はリン酸塩を含まないことが好ましい。本発明の文脈において「リン酸塩を含まない」とは、リン酸塩及びポリリン酸塩の含有量が、重量測定により測定して、合計で1重量%まで、好ましくは10ppm~0.2重量%の検出レベルの範囲内にあることを意味するものと理解されたい。
【0125】
本発明の一実施形態では、本発明の組成物は、総固形分を基準に0.5~50重量%の範囲内の金属イオン封鎖剤(E)、好ましくは1~35重量%を含有する。
【0126】
液体洗濯用組成物として好適なものとするために、本発明の組成物は、バルク形態であってもよく、又は単位用量、例えば小袋若しくはパウチの形態であってもよい。パウチに好適な材料は、ポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマーである。
【0127】
本発明の好ましい実施形態では、本発明の組成物は、雰囲気温度下で液体又はゲルタイプである。本発明の別の好ましい実施形態では、本発明の組成物は、雰囲気温度下で固形状、例えば粉末又は錠剤である。
【0128】
本発明の一実施形態では、本発明の組成物は液体又はゲルタイプであり、7~9、好ましくは7.5~8.5の範囲内のpH値を有する。本発明の組成物が固形状の実施形態では、これらのpH値は、蒸留水に1g/100mlで溶解した後、雰囲気温度で決定して7.5~11の範囲内であり得る。本発明の組成物がタイル、例えば浴室のタイルなどの硬質表面に使用される実施形態では、これらのpH値は、酸性、例えば3~6となる場合さえあり得る。
【0129】
本発明の一実施形態では、本発明の組成物は液体又はゲルタイプであり、80℃の真空下で乾燥させることにより決定して8~80%、好ましくは10~50%の範囲内の総固形分を有する。
【0130】
本発明の別の態様は、ポリマー(A)に関し、これは、以下、本発明のポリマー(A)、又は単にポリマー(A)とも称される。本発明のポリマー(A)は、
(a)一般式(I)の1~3個の部分を担持するコアであって、
【化8】
式中、Zは異なっているか又は同じであり、
直鎖又は分岐鎖のC~C20アルキレン、好ましくはC~C12アルキレンから選択され、上記のC~C20アルキレン又はC~C12アルキレンにおいて、少なくとも1つのC原子が、ポリアルキレン鎖を担持するN原子によって置換され、例えば1~3個のC原子が置換される、コアを含む。
【0131】
前述の他にも、上記のC~C20アルキレン又はC~C12アルキレンは、さもなければ非置換である場合もあり、又は1つ以上のO-C~Cアルキル基で置換される場合もある。
【0132】
本発明の一実施形態では、全てのZは、(CHz1-[N(CHz2z4-N(CHz3-から選択され、式中、変数z1、z2、及びz3は、互いから独立して2~4から選択され、z4は0~2から選択され、各CH基は、1~2個のメチル若しくはメトキシ基で置換される場合もあり、又は、好ましくは非置換である場合もある。
【0133】
上記のポリアルキレンオキシド側鎖は、C~Cアルキレンオキシド由来であり得る。C~Cアルキレンオキシドの例は、エチレンオキシド(「EO」)、プロピレンオキシド(「PO」)、ブチレンオキシド(「BuO」)、及び前述のうち少なくとも2つの組み合わせ、例えば、エチレンオキシド及びプロピレンオキシド、又はエチレンオキシド及びブチレンオキシドであり、好ましくは、各事例で、アルキレンオキシド単位の大半がEOである。大半がエチレンオキシドのプロピレンオキシド及びエチレンオキシドが好ましく、エチレンオキシドがより好ましい。
【0134】
本発明の一実施形態では、全てのZは、-(CH-N-(CH-、及び
-(CH-N-(CH-及び-(CH-N(CH-N-(CH-から選択される。好ましくは、全てのZは同じである。
【0135】
は、水素及びメチル及びエチル、並びに前述のうち少なくとも2つの組み合わせから選択され、メチル並びにメチルと水素との組み合わせが好ましく、水素がより好ましい。
は、異なっているか又は同じであり、またC~C12アルキレン、好ましくはC~Cアルキレン、例えば、-CHCH-、-(CH-、-(CH-、-(CH-、-(CH-、-(CH-、-(CH10-、-(CH12-から選択され、好ましくは-CHCH-、-(CH-、-(CH-、更にはCアリーレン、及びC~C12シクロアルキレンであり、ここで、C~C12アルキレン及びC~C12シクロアルキレンは、非置換である場合もあり、又は1つ以上のO-C~Cアルキル基又はOH基で置換される場合もあり、C~C12シクロアルキレンは、1~3個のメチル基を担持する場合があるか、
或いは、クエン酸、例えば、-CH-C(COH)(OH)-CH-又は-CH-C(OH)(CH-COOH)-をベースとする。
【0136】
本発明の一実施形態では、本発明のポリマー(A)中のAは、C~Cアルキレンとクエン酸をベースとする残基との、例えば1:10~15:1、好ましくは1:5~10:1のモル比での混合物である。
【0137】
nは、1~100、好ましくは10~75の範囲内である。
【0138】
式(I)の窒素原子上の自由原子価は、ポリアルキレン鎖(b)若しくは
-CH-CH(X)-O(CO)-A-(CO)-O-CHX-CH-N-Z-N単位、又は水素原子を担持する。分子量Mが10,000g/モル以上の実施形態では、式(I)の窒素原子上の自由原子価は、ポリアルキレン鎖(b)又は-CH-CH(X)-O-CHX-CH-N-Z-N単位を担持する。
【0139】
本発明の一実施形態では、本発明のポリマー(A)は、更に、一般式(X)の1つ以上の構造単位を担持することができる。
【化9】
【0140】
本発明の一実施形態では、本発明のポリマー(A)は、平均分子量Mを、2,500~300,000g/モル、好ましくは5,000~250,000g/モルの範囲で有する。平均分子量は、例えば、標準として直鎖状のPMMAを用いて、移動相としてのTHF中のGPCによって決定することができる。
【0141】
本発明の一実施形態では、本発明のポリマー(A)は、分子量分布M/Mを1.1~2.5の範囲で有する。
【0142】
本発明の一実施形態では、本発明のポリマー(A)は、10重量%水溶液中で決定したハーゼン色数を20~500の範囲で有する。
【0143】
本発明の一実施形態では、本発明のポリマー(A)は、DIN53240(2013)に従って測定して、1gのポリマー(A)あたり20~650、好ましくは30~100mg KOHの範囲のOH価を有する。
【0144】
本発明の一実施形態では、本発明のポリマー(A)は、ASTM D2074-07に従って決定して、1gのポリマー(A)あたり10~650、好ましくは10~510、より好ましくは10~80mg KOHの範囲の総アミン価を有する。
【0145】
本発明のポリマー(A)は、更に、
(b)ポリアルキレンオキシド鎖を含む。
【0146】
上記のポリアルキレンオキシド側鎖は、C~Cアルキレンオキシド由来であり得る。C~Cアルキレンオキシドの例は、エチレンオキシド(「EO」)、プロピレンオキシド(「PO」)、ブチレンオキシド(「BuO」)、及び前述のうち少なくとも2つの混合物、例えば、エチレンオキシド及びプロピレンオキシド、又はエチレンオキシド及びブチレンオキシドである。プロピレンオキシド及びエチレンオキシドが好ましく、エチレンオキシドがより好ましい。
【0147】
本発明の一実施形態では、本発明のポリマー(A)におけるコア(a)とポリアルキレンオキシド鎖(b)との重量比は、1:100から1:2までの範囲内であり、1:40から1:3までが好ましい。
【0148】
本発明のポリマー(A)は、本発明の組成物の製造に極めて適している。本発明のポリマー(A)は、生分解性を示す。
【0149】
一態様では、本発明は、本発明のポリマー(A)を、好ましくは少なくとも1つのリパーゼ及び/又は少なくとも1つのプロテアーゼを含む洗剤組成物に添加することによって、液体洗剤組成物の洗浄性能を改善する方法に関する。
【0150】
本明細書で「改善された洗浄性能」という用語は、ポリマー(A)が、適切な洗浄条件下で、ポリマー(A)を含まない洗剤組成物の洗浄性能と比較してより良好な、即ち改善された染み除去特性を提供することを示し得る。一実施形態では、「改善された洗浄性能」とは、ポリマー(A)、並びに少なくとも1つの酵素、好ましくは少なくとも1つのヒドロラーゼ(B)、特に少なくとも1つのリパーゼ(B)、及び/又は少なくとも1つのプロテアーゼ(D)を含む洗剤の洗浄性能が、ポリマー(A)を含み且つ酵素を含まない洗剤の洗浄性能と比較して改善されることを意味する。一実施形態では、「改善された洗浄性能」とは、ポリマー(A)、並びに酵素、好ましくはヒドロラーゼ(B)、より好ましくはリパーゼ(B)、及び/又はプロテアーゼ(D)を含む洗剤の洗浄性能が、少なくとも1つの酵素、好ましくは少なくとも1つのヒドロラーゼ(B)、好ましくはリパーゼ(B)、及び/又は少なくとも1つのプロテアーゼ(D)を含み、ポリマー(A)を含まない洗剤の洗浄性能と比較して改善されることを意味する。
【0151】
本明細書の用語「適切な洗浄条件」は、洗濯機、自動食器洗浄機、又は手動での洗浄プロセスにおいて実際に使用される条件、特に、洗浄温度、時間、洗浄装置、泡濃度、洗剤の種類、及び水の硬度を指す。
【0152】
本発明の更なる態様は、本発明のポリマー(A)を作製するためのプロセスに関し、これは以下、本発明のプロセスとも称される。本発明のプロセスは、以下の工程(α)、(β)、及び(γ)を含む。
(α)一般式HN-Z’-NHのアミンを、3:1~1:3、好ましくは1.5:1.0~1.0:2.5のアルキレンオキシド:N原子のモル比で、アルキレンオキシドと、更により好ましくはエチレンオキシド及びプロピレンオキシドから選択されるアルキレンオキシドと、反応させることによって中間体を形成する工程。
(β)工程(α)からの中間体を、少なくとも1つのジカルボン酸若しくはトリカルボン酸と、若しくは前述のものの混合物と、又は、それぞれの場合で、それらの対応する無水物若しくはC~Cアルキルエステルと、反応させることによってエステルを得る工程。
(γ)工程(β)からのエステルを、1つ以上の工程で、少なくとも1つのC~Cアルキレンオキシドと反応させる工程。
【0153】
工程(α)、(β)、及び(γ)について、以下でより詳細に説明する。
【0154】
工程(α)では、一般式HN-Z’-NHのアミンをアルキレンオキシドと反応させる。変数Z’はZのように定義されるが、N原子がポリアルキレンオキシド鎖の代わりにHを担持する。本発明では、異性体アミンの混合物は、「1つのアミン(an amine)」とみなされる。
【0155】
アミンHN-Z’-NHの好ましい例は、HN-(CH-NH-(CH-NH、HN-(CH-NH-(CH-NH(「N3アミン」)、及び(N,N’-ビス-(3-アミノプロピル)-エチレンジアミン(「N4アミン」)、
N-(CH-NH-(CH-NH-(CH-NH、及びN3アミンとN4アミンとの組み合わせ(例えば、1:9~9:1の範囲のモル比の)である。
【0156】
工程(α)で反応するアルキレンオキシドは、エチレンオキシド(「EO」)、プロピレンオキシド(「PO」)、及び前述の混合物から選択される。プロピレンオキシド及びエチレンオキシドが好ましく、エチレンオキシドがより好ましい。
【0157】
N4アミン及びエチレンオキシドに基づく例示的な工程(α)では、以下の化合物
【化10】
及び、EOとNとの比に応じて、以下のうち1つ以上
【化11】
並びに対応するモノエトキシレートを含有する化合物の混合物が形成される。
【0158】
工程(α)は、溶媒と共に実施されても、溶媒なしで実施されてもよい。一般式HN-Z’-NHのアミンが反応温度で液状である実施形態では、上記のアミンをバルクで用いることが好ましい。一般式HN-Z’-NHのアミンが反応温度で固体である実施形態では、溶媒を用いることが好ましい。好適な溶媒は、非プロトン溶媒、例えば炭化水素、例えばトルエン及びエーテル、例えばジ-n-ブチルエーテルである。
【0159】
本発明の一実施形態では、工程(α)は、一般式HN-Z’-NHのアミンを、アルコキシル化の前に水で、例えば重量基準で100:1~1:1、特に20:1~5:1のアミン:水比で希釈することを含み得る。
【0160】
好ましくは、工程(α)は、触媒なしで実行される。
【0161】
本発明の一実施形態では、工程(α)は、90~150℃、好ましくは100~135℃の反応温度で実施される。
【0162】
本発明の一実施形態では、工程(α)は、最大15bar、好ましくは最大10bar、例えば1~8barの圧力下で実行され得る。工程(α)を実行するのに好ましい容器は、オートクレーブ及び管形反応器である。
【0163】
本発明の一実施形態では、工程(α)は、30分間~10時間、好ましくは1時間~7時間の範囲の期間を有する。
【0164】
工程(α)は、不活性ガス雰囲気、例えば窒素又は希ガス下で実行され得る。別の実施形態では、工程(α)は、アルキレンオキシドの雰囲気下で実行される。不活性ガス雰囲気が好ましい。工程(α)から中間体が形成される。中間体を、例えば未反応のアルキレンオキシド及び存在する場合は水分を除去することによって後処理することも可能であり、或いは工程(α)からの中間体を更なる後処理を行わずに使用することも可能である。上記の未反応のアルキレンオキシド及び存在する場合は水分の除去は、500mbar~0mbar、好ましくは100mbar~20mbarの範囲の圧力、及び20~120℃、好ましくは60~100℃の範囲の温度での蒸発によって実施され得る。工程(α)からの中間体は、通常は化合物の混合物である。
【0165】
中間体は工程(α)で得られる。
【0166】
工程(β)では、工程(α)からの中間体を、少なくとも1つのジカルボン酸若しくはトリカルボン酸と、若しくは前述のものの混合物と、又は、それぞれの場合で、それらの対応する無水物若しくはC~Cアルキルエステルと反応させることによってエステルを得る。好ましいジ-及びトリカルボン酸は、C~C10アルキレンジカルボン酸、及びC~C10アルキレントリカルボン酸、並びに1つのC~C10アルキレントリカルボン酸と少なくとも1つのC~C10アルキレンジカルボン酸との組み合わせ及び対応するC~Cアルキルエステルの組み合わせである。好ましいエステルは、対応するメチルエステル及びエチルエステルである。
【0167】
~C10アルキレン及びC~C10アルキレンは、未置換であってもよく、例えばメチル又はヒドロキシルで置換されていてもよい。
【0168】
工程(β)の一実施形態では、工程(α)からの中間体が、コハク酸、マロン酸、セバシン酸、又はアジピン酸のジ-C~Cアルキルエステル、及び任意選択的に、クエン酸のトリエチルエステルと反応させられる。
【0169】
工程(β)の別の実施形態では、工程(α)からの中間体は、コハク酸、マロン酸、セバシン酸、アスパラギン酸、又はアジピン酸、及び任意選択的にクエン酸と反応させられる。
【0170】
工程(β)は、20~180℃の範囲の温度で実行され得る。エステル、特にC~Cアルキルエステル、例えばアジピン酸ジエチルエステル、コハク酸ジエチル、アジピン酸ジメチルエステル、コハク酸ジメチル、クエン酸トリエチルなどが用いられる実施形態では、25~150℃の範囲の温度が好ましい。無水物、例えば無水コハク酸が適用される実施形態では、25~150℃が好ましい。対応する遊離酸が用いられる実施形態では、100~180℃の範囲の温度が好ましい。特に、100℃以上の温度が適用される実施形態では、温度をランプアップさせることが好ましい。
【0171】
工程(β)は、任意の圧力、例えば10mbar~10barで実施され得る。周囲圧力、及び例えば10~500mbar未満の圧力が好ましい。
【0172】
工程(β)の過程で、水、又はアルコール、例えばメタノール若しくはエタノールが形成される。こうした副生成物を、例えば留去によって除去することが好ましい。好適な用具は、ディーン・スターク機器、蒸留ブリッジ、除水装置、及び蒸留による水又はアルコールの除去に役立ち得るその他の機器である。
【0173】
工程(β)は、溶媒の存在下で実施してもよく、溶媒の不在下で実施してもよい。好適な溶媒は、トルエンなどの芳香族溶媒、脂肪族炭化水素、又は脂環式溶媒、例えばデカン、シクロヘキサン、n-ヘプタンなどである。しかし、特に反応混合物が反応温度で液状である場合は、工程(β)を溶媒の不在下で実施することが好ましい。
【0174】
本発明の一実施形態では、工程(β)は触媒の存在下で実施される。
【0175】
好適な触媒の例は、特には酸性触媒、例えば無機酸及び有機酸である。
【0176】
本発明のための酸性無機触媒としては、例えば、硫酸、リン酸、ホスホン酸、次亜リン酸HPO、硫酸アルミニウム水和物、ミョウバン、酸性シリカゲル(pH5~6)、及び酸性アルミナが挙げられる。例えば、酸性無機触媒としての一般式Al(ORのアルミニウム化合物及び一般式Ti(ORのチタン酸塩もまた好適であり、残基Rはそれぞれ同一か又は異なり、互いに独立して、
~C10アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、1,2-ジメチルプロピル、イソアミル、n-ヘキシル、イソヘキシル、sec-ヘキシル、n-ヘプチル、イソヘプチル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、n-ノニル、又はn-デシル、
~C12-シクロアルキル、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、及びシクロドデシル、好ましくはシクロペンチル、シクロヘキシル、及びシクロヘプチルから選択される。
【0177】
好ましくは、Al(OR及びTi(ORにおける残基Rはそれぞれ同一であり、イソプロピル又は2-エチルヘキシルから選択される。
【0178】
好ましい酸性有機金属触媒は、例えば、ジアルキルスズオキシド(RSnOから選択され、Rは上記で定義される通りである。酸性有機金属触媒の特に好ましい一代表例は、オキソ-スズの形態で市販されるジ-n-ブチルスズオキシドである。
【0179】
好ましい酸性有機触媒は、例えば、リン酸基、スルホン酸基、硫酸基又はホスホン酸基を含有する酸性有機化合物である。特に好ましくは、例えばパラ-トルエンスルホン酸又はメタンスルホン酸などのスルホン酸である。酸性有機触媒として酸性イオン交換体も使用可能であり、その例は、スルホン酸基を含有し、約2モル%のジビニルベンゼンで架橋されたポリスチレン樹脂である。メタンスルホン酸が特に好ましい。
【0180】
また、2つ以上の上述の触媒の組み合わせを使用することも可能である。別の可能性は、固定化された形態で、離散分子の形態であるそれらの有機触媒又は有機金属触媒或いは無機触媒を使用することである。
【0181】
酸性無機触媒、有機金属触媒、又は有機触媒の使用が望まれる場合、本発明に従って使用される触媒の量は、それぞれ反応物質の総量に基づいて0.01~10重量%、好ましくは0.1~2重量%、より好ましくは0.2~1重量%である。
【0182】
本発明の別の実施形態では、工程(β)は触媒なしで実施される。
【0183】
本発明の一実施形態では、工程(β)は、30分間から最大15時間の範囲の期間を有する。
【0184】
工程(β)を実施することにより、エステルが得られる。
【0185】
本発明の一実施形態では、工程(β)における反応により、対応するジカルボン若しくはトリカルボン酸、又は前述のものの混合物の、全てのカルボン酸基又はエステル基又は無水物基の完全な変換、或いは、いずれの場合でもそれらの対応する無水物若しくはC1~C4アルキルエステルの完全な変換がもたらされる。しかし、多くの実施形態では、エステル又はカルボン酸基若しくは無水物基の変換が不完全であるために、エステルがカルボン酸基又はC~Cアルキルエステル基を依然として担持していることが観察される。反応の完全性は、例えばEN ISO 660:2009に従って酸価を決定することにより評価され得る。
【0186】
本発明の一実施形態では、例えばクエン酸又はそのC~Cエステルの更なる基が、例えばヒドロキシル基と反応する場合がある。
【0187】
工程(β)から得られたエステルは、例えば溶媒を除去することにより、又は酸を中和することにより、単離及び精製が可能である。特に、触媒も溶媒も用いられることがなかった工程(β)の実施形態では、得られたエステルは、更なる精製工程を経ずに工程(γ)に送ることが好ましい。
【0188】
工程(γ)では、工程(β)からのエステルを、少なくとも1つのC~Cアルキレンオキシドと反応させる。C~Cアルキレンオキシドの例は、エチレンオキシド(「EO」)、プロピレンオキシド(「PO」)、ブチレンオキシド(「BuO」)、及び前述のうち少なくとも2つの混合物である。プロピレンオキシド及びエチレンオキシドが好ましく、エチレンオキシドがより好ましい。
【0189】
本発明の一実施形態では、工程(γ)のアルキレンオキシドと工程(β)のエステルとの重量比は、コア(a)と側鎖(b)との比に相当し、従って1:100から1:2までであり、1:40から1:3までが好ましい。
【0190】
工程(γ)は、好ましくは触媒、例えば塩基又は二重金属シアン化物の存在下で実施される。
【0191】
本発明の一実施形態では、工程(γ)は塩基の存在下で実行される。水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ナトリウム又はカリウムアルコキシド、例えばカリウムメチレート(KOCH)、カリウムtert-ブトキシド、ナトリウムエトキシド、及びナトリウムメチレート(NaOCH)などの好適な塩基、好ましくは、水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムから。触媒の更なる例は、水素化ナトリウム及び水素化カルシウムなどのアルカリ金属水素化物及びアルカリ土類金属水素化物、並びに炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩である。アルカリ金属水酸化物が好ましく、水酸化カリウム及び水酸化ナトリウム並びにアルカリ金属アルコキシドが好ましく、t-ブタノール中のカリウムt-ブトキシド、n-ヘキサノール中のナトリウムn-ヘキサノレート及びn-ノナノール中のナトリウムメタノレートが特に好ましい。塩基の典型的な使用量は、工程(β)からの縮合体及びC~Cアルキレンオキシドの総量に基づいて、0.05~10重量%、具体的には0.5~2重量%である。
【0192】
本発明の一実施形態では、工程(γ)は二重金属シアン化物の存在下で実行される。二重金属シアン化物(以下、二重金属シアン化合物又はDMC化合物とも称される)は、通常、少なくとも2つの異なる金属を含み、そのうち少なくとも1つは遷移金属から選択され、もう1つは遷移金属及びアルカリ土類金属、並びに更にはシアン化物対イオンから選択される。アルコキシル化に特に好適な触媒は、亜鉛、コバルト、若しくは鉄、又はそのうち2つを含有する二重金属シアン化合物である。例えば、ベルリン青が特に好適である。
【0193】
結晶性DMC化合物を使用することが好ましい。好ましい実施形態では、酢酸亜鉛を更なる金属塩成分として含むZn-Co型の結晶性DMC化合物が、触媒として使用される。かかる化合物は、単斜晶系構造で結晶化し、血小板状の癖を有する。
【0194】
本発明の一実施形態では、本発明の合成は、ヘキサシアノコバルト酸塩から選択される少なくとも1つの二重金属シアン化物の存在下で、例えば亜鉛と共に実行される。
【0195】
二重金属シアン化合物は、粉末、ペースト、又は懸濁液として使用してもよく、成形物を得るために成形してもよく、成形物、発泡体などに導入してもよく、成形物、発泡体などに塗布してもよい。
【0196】
好ましくは、工程(γ)に使用するDMC触媒は、工程(β)で得た重縮合体を基準に、5~2000ppm(すなわち、生成物1kgあたりの触媒のmg)、好ましくは1000ppm未満、特に500ppm未満、特に好ましくは100ppm未満、例えば50ppm又は35ppm未満、特に好ましくは25ppm未満であり、ここでppmは工程(β)で得られた重縮合体の質量ppm(百万分率)を指す。
【0197】
工程(γ)は、バルクで実行することもでき(実施形態(i))、又は有機溶媒中で実施することもできる(実施形態(ii))。実施形態(i)では、工程(β)で得られた重縮合体から水分を除去することができる。こうした水分の除去は、0.01~0.5barの範囲の減圧下で80~150℃の範囲の温度まで加熱し、水を留去することによって行うことができる。
【0198】
本発明の一実施形態では、工程(γ)は、70~200℃、好ましくは100~180℃の範囲の反応温度で実行される。
【0199】
本発明の一実施形態では、工程(γ)は本発明のポリマー(A)の合成ごとに1回実行される。代替的な一実施形態では、工程(γ)は本発明のポリマー(A)の合成ごとに数回、例えば最大で4回、例えば同じか又は好ましくは異なるC~Cアルキレンオキシドで実行される。例えば、工程(β)で得られた重縮合体を、エチレンオキシドを用いた第1のアルコキシル化(γ1)に供すること、及び工程(γ1)からの生成物を、例えばプロピレンオキシドを用いた第2のアルコキシル化(γ2)に供することが可能である。
【0200】
本発明の一実施形態では、工程(γ)は、最大10bar、特に最大8bar、例えば1~8barの圧力下で実行される。
【0201】
本発明の一実施形態では、工程(γ)の反応時間は、一般に0.5~12時間の範囲である。
【0202】
工程(γ)の実施形態(ii)に好適な有機溶媒の例は、非極性及び極性の非プロトン性有機溶媒である。特に好適な非極性の非プロトン性溶媒の例としては、脂肪族及び芳香族炭化水素、例えばヘキサン、シクロヘキサン、トルエン及びキシレンが挙げられる。特に好適な極性の非プロトン性溶媒の例は、エーテル、具体的にはテトラヒドロフラン及び1,4-ジオキサンなどの環状エーテル、更にはジメチルホルムアミド及びジメチルアセトアミドなどのN,N-ジアルキルアミド、並びにN-メチルピロリドンなどのN-アルキルラクタムである。上記の有機溶媒のうち少なくとも2つの混合物を使用することもまた可能である。好ましい有機溶媒はキシレン及びトルエンである。
【0203】
実施形態(ii)では、第1の工程で得られた溶液は、触媒及び溶媒を添加する前又は後に、脱水した後にアルキレンオキシドに晒され、上記の水分除去は、有利には、好ましくは窒素流でサポートして、120~180℃の範囲の温度で水分を除去することにより行われる。後続のアルキレンオキシドとの反応は、実施形態(i)と同様に達成することができる。実施形態(i)では、本発明のアルコキシル化ポリアルキレンイミンは、直接バルクで得られ、必要に応じて水に溶解され得る。実施形態(ii)では、後処理のために、有機溶媒を典型的には水と置き換える。本発明のアルコキシル化ポリアルキレンイミン(B)は、代替的に、バルクで単離することもできる。
【0204】
任意選択的な後処理工程には、工程(γ)で使用した触媒の非活性化が含まれ得る(塩基性触媒の場合は中和による)。
【0205】
本発明のプロセスは、漂白工程又は不純物の還元的除去を必要としない。
【0206】
本発明を実施例により更に例示する。
【実施例
【0207】
概論
反応は、別段明記されない限り窒素雰囲気下で実施した。
パーセンテージは、別段明記されない限り重量%を指す。
GPCは、移動相としてヘキサフルオロイソプロパノール(「HFIP」)を用いて実施し、内部標準として直鎖PMMAを用いた。
ヒドロキシル価(OH価)は、DIN 53240(2013)に従って決定した。
アミン価は、ASTM D2074-07に従って決定した。
ハーゼン色数は、DIN ISO 6271、ASTM D 1209に従い、分光光度検出で測定した。(2°基準観測者、標準光、層厚11mm、蒸留水を対照とする)。
rpm:毎分回転数
N,N’-ビス-(3-アミノプロピル)-エチレンジアミン):N4アミン
N-(CH-NH-(CH-NH(「N3アミン」)
【0208】
I.本発明のポリマーの合成
I.1 中間体の合成、工程(α)
I.1.1 ITM.1の合成、工程(α.1)
3.5リットルの鋼鉄製オートクレーブに、1.2kg(6.88モル)のN4アミン及び120gの水を投入し、続いて100℃に加熱した。続いて、50gのエチレンオキシドを10分間以内にオートクレーブへと投与した。発熱反応の開始が観察された。その後、850gのエチレンオキシド(「EO」)を14時間以内にオートクレーブへと投与した(EOの総量:20.45モル)。この系を、更に6時間100℃に維持した。その後、混合物をオートクレーブから取り出し、残留するEO及び水を80℃の減圧下(20mbar)で2時間ストリップした。2.1kgの中間体ITM.1を、黄色のワックスとして得た。
【0209】
I.1.2 ITM.2の合成、工程(α.2)
3.5リットルの鋼鉄製オートクレーブに、1.0kg(5.7モル)のN4アミン及び100gの水を投入し、続いて100℃に加熱した。続いて、50gのエチレンオキシドを10分間以内にオートクレーブへと投与した。発熱反応の開始が観察された。その後、860gのエチレンオキシド(「EO」)を20時間以内にオートクレーブへと投与した(EOの総量:20.7モル)。この系を、更に6時間100℃に維持した。その後、混合物をオートクレーブから取り出し、残留するEO及び水を80℃の減圧下(20mbar)で2時間ストリップした。1.91kgの中間体ITM.2を、透明な粘性液として得た。
【0210】
I.1.3 ITM.3の合成、工程(α.3)
3.5リットルの鋼鉄製オートクレーブに、1.0kg(8.53モル)のN3アミン及び100gの水を投入し、続いて100℃に加熱した。続いて、50gのエチレンオキシドを10分間以内にオートクレーブへと投与した。発熱反応の開始が観察された。その後、889gのエチレンオキシド(「EO」)を14時間以内にオートクレーブへと投与した(EOの総量:21.3モル)。この系を、更に6時間100℃に維持した。その後、混合物をオートクレーブから取り出し、残留するEO及び水を80℃の減圧下(20mbar)で2時間ストリップした。1.94kgの中間体ITM.3を、粘性液として得た。
【0211】
I.1.4 ITM.4の合成、工程(α.4)
3.5リットルの鋼鉄製オートクレーブに、1.0kg(5.74モル)のN4アミン及び100gの水を投入し、続いて100℃に加熱した。続いて、50gのプロピレンオキシドを10分間以内にオートクレーブへと投与した。発熱反応の開始が観察された。その後、950gのプロピレンオキシド(「PO」)を20時間以内にオートクレーブへと投与した(POの総量:17.2モル)。この系を、更に6時間100℃に維持した。その後、混合物をオートクレーブから取り出し、残留するPO及び水を80℃の減圧下(20mbar)で2時間ストリップした。1.91kgの中間体ITM.4を、透明な粘性液として得た。
【0212】
I.2 コア(a)の合成
I.2.1 工程(β.1):ITM.1:クエン酸:セバシン酸:6:1:9
攪拌棒、ディーン・スターク機器、窒素導入口、及び内部温度計を備えた500mlのフラスコに、クエン酸(14.61g、0.076mol)、セバシン酸(138.39g、0.684mol)、及びITM.1(127.0g、0.456mol)を投入した。窒素雰囲気下で反応混合物を60rpmで攪拌し、25分間かけて87℃に加熱した。温度の上昇に伴い粘度が低下したため、攪拌速度を210rpmに調整した。続いて、反応混合物を120~130℃(内部温度)に加熱した。穏やかな発泡が観察された。水を留去して回収した。窒素雰囲気下、120~130℃(内部温度)での攪拌を合計で9時間続けた。続いて、反応混合物をゆっくりと冷却した。得られたエステル(「コア」)(a.1)を、透明な琥珀色の粘性物質として回収した。
【0213】
I.2.2 工程(β.2):ITM.1:クエン酸:セバシン酸:10:1:9
攪拌棒、ディーン・スターク機器、窒素導入口、及び内部温度計を備えた500mlのフラスコに、クエン酸(11.22g、0.058mol)、セバシン酸(106.26g、0.525mol)、及びITM.1(162.5g、0.584mol)を投入した。窒素雰囲気下で反応混合物を60rpmで攪拌し、30分間かけて88℃に加熱した。温度の上昇に伴い粘度が低下したため、攪拌速度を210rpmに調整した。続いて、反応混合物を120~130℃(内部温度)に加熱した。発泡が観察された。水を留去して回収した。窒素雰囲気下、120~130℃(内部温度)での攪拌を合計で25時間続けた。続いて、反応混合物をゆっくりと冷却した。得られたエステルであるコア(a.2)を、琥珀色の粘性物質として回収した。
【0214】
I.2.3 工程(β.3):ITM.1:クエン酸:アジピン酸(5:1:4)
攪拌棒、ディーン・スターク機器、窒素導入口、及び内部温度計を備えた500mlのフラスコに、クエン酸(22.36g、0.116mol)、アジピン酸(68.08g、0.466mol)、及びITM.1(178.2g、0.582mol)を投入した。窒素雰囲気下で反応混合物を60rpmで攪拌し、1時間かけて100℃に加熱した。温度の上昇に伴い粘度が低下したため、攪拌速度を210rpmに調整した。続いて、反応混合物を120~130℃(内部温度)に加熱した。発泡が観察された。水を留去して回収した。窒素雰囲気下、120~130℃(内部温度)での攪拌を合計で2時間続けた。続いて、反応混合物をゆっくりと冷却した。得られたエステルであるコア(a.3)を、琥珀色の粘性物質として回収した。
【0215】
更なるコアを、表1に従って合成した。
【0216】
【表1】
【0217】
工程(γ.1)、コアのエトキシル化:
3.5Lのオートクレーブに、107.0gのコア(a.1)及び4.5gの水酸化カリウム水溶液(50重量%)を投入し、オートクレーブを減圧下で窒素フラッシュしながら120℃に加熱することによって水分を除去した。オートクレーブを130℃に加熱し、10分間以内に50gのエチレンオキシドを投入した。続いて、表2の通りのエチレンオキシドを、17時間以内に反応混合物へと添加した。得られた反応混合物を130℃で更に6時間反応させた。続いてオートクレーブを80℃に冷却した。反応混合物を窒素でストリップし、揮発性化合物を80℃の減圧下で除去した。その結果、本発明のポリマー(A.1.1)を暗琥珀色の固体として得た。
【0218】
工程(γ.2)、本発明のポリマーのプロポキシル化:
3.5Lのオートクレーブに、444gのポリマー(A.1.1)及び3.5gの水酸化カリウム水溶液(50重量%)を投入し、オートクレーブを減圧下で窒素フラッシュしながら120℃に加熱することによって水分を除去した。オートクレーブを130℃に加熱し、10分間以内に50gのプロピレンオキシドを投入した。続いて、表2の通りのプロピレンオキシドを、20時間以内に反応混合物へと添加した。得られた反応混合物を130℃で更に6時間反応させた。続いてオートクレーブを80℃に冷却した。反応混合物を窒素でストリップし、揮発性化合物を80℃の減圧下で除去した。その結果、ポリマー(A.1.2)を暗琥珀色の固体として得た。
【0219】
【表2】
【0220】
【表3】
【0221】
II.洗濯及び洗浄性能
II.1洗濯物の洗浄
3.0g/Lの液体試験洗剤L.1(表3の組成を参照されたい)を含有する硬度14°dHの水(2.5mmol/L;Ca:Mg:HCO4:1:8)と、2.0%の表2の本発明のポリマー(A.1.1)~(A.1.2)と、を用いた洗濯溶液を調製して、本発明のポリマーの一次洗濯性能を洗濯機中で試験した。
【0222】
【表4】
【0223】
【表5】
【0224】
洗濯機での性能試験(Miele SOFTTRONIC W 1935 WTL、30℃、短時間プログラム、1200rpm、3.5kgバラスト荷重)のために、3つのマルチステインモニター(M1、M2、M3)を、追加の汚れバラストとしての4つのSBL-2004シート(wfk Testgewebe GmbH,DE;64グラムのバラスト汚れに相当する)と一緒に洗濯した。
【0225】
表4.洗濯機のマルチステインモニター試験
MSM1(円形染み、直径5cm):
CFT PC-H144:ポリエステル/綿(65:35)上の赤色陶磁器用クレイ
CFT KC-H115:ニット綿上の標準クレイ
CFT PC-H145:ポリエステル/綿(65:35)上のテニスコートクレイ
CFT KC-H018:ニット綿上の土壌クレイ
MSM2:
CFT C-S-10:綿上の着色剤を含む乳脂肪
CFT C-S-62:綿上の着色ラード
CFT C-S-78:綿上の顔料を含む大豆油
EMPA 112:綿上のココア
EMPA 141/1:綿上の口紅
EMPA 125:界面活性剤及びリパーゼの作用を受けやすい綿布上の汚れ
wfk20D:ポリエステル/綿混布上の顔料及び皮脂系脂肪
CFT C-S-70:綿上のチョコレート/ムースクリーム
MSM3:
wfk20D:ポリエステル/綿混布上の顔料及び皮脂系脂肪
EMPA 101:カーボンブラック/オリーブ油で汚された綿
EMPA 141/2:口紅で汚されたポリエステル/綿(65:35)
CFT PC-S-04:着色オリーブ油
EMPA 114:赤ワインで汚された綿
EMPA 112:ココアで汚された綿
EMPA 116:血液/ミルク/インクで汚された綿
CFT C-S-01:綿上でエージングさせた血液
CFT C-S-08:綿上のイネ科草本
CFT C-10:綿上の顔料/油/ミルク
CFT PC-05:ポリエステル/綿(65:35)上の血液/ミルク/インク
【0226】
色測定を用いて総合的な洗浄の度合いを評価した。モニター上の染みの反射率値は、460nmのUVカットオフフィルターを備えた球反射率分光計(sphere reflectance spectrometer)(Datacolor,USAからのSF 500型、波長範囲360~700nm、光学ジオメトリd/8°)を使用して測定した。ここでは、CIE-Labによる色空間の分類を利用して、モニターのそれぞれの染みに対して明度L*、赤-緑色軸に関するa*値及び黄-青色軸に関するb*値を洗浄前後に測定して平均した。以下の式
【数1】
の評価色ツールによって自動的に定義及び計算される色値(デルタE、ΔE)値の変化は、達成された洗浄効果の尺度である。全ての実験を3回繰り返し、代表的平均値を得た。
【0227】
デルタE値が高いほど優れた洗浄性を示す。どの染みも、当業者であれば目視で1単位の差を発見できる。訓練された者でなくても、2単位であれば目視で容易に発見することができる。対応するM1及びM2+M3の4、8、及び11種の染み、並びに数種類の選択された単一種の染みに対する配合物のΔE値を表5に示す。
【0228】
【表6】
【0229】
試験では、本発明のポリマーを用いたMSM1及びMSM2+MSM3モニターの両方のΔEで、洗い性能効果を見ることができた。最初にエトキシル化され、続いてプロポキシル化されたポリマー(A)で、皮脂及び口紅などの脂肪を含有する染み(wfk20D及びEMPA141/2)に対するより高い効果が見られた。
【0230】
II.2 硬質表面の洗浄
非イオン性界面活性剤:(IV.1):n-C16-アルキル/n-C18-アルキル-ポリグルコシド(yが約1.3)
II.2.1 比較配合物C-HSC.1の製造
250mlの容器に80gの水を投入した。続いて、6gのNaOH(50%)水溶液及び8gのブチレンジグリコール(BDG)を添加し、続いて2gの(IV.1)の50%水溶液を添加した。均質化は、雰囲気温度で5分間にわたる中程度の攪拌(磁気)により達成した。比較配合物C-HSC.1を得た。
【0231】
II.2.2 本発明の配合物HSC.2の製造
250mlの容器に80gの水を投入した。続いて、6gのNaOH(50%)水溶液及び8gのブチレンジグリコール(BDG)を添加し、続いて2gの(IV.1)の50%水溶液及び4gの本発明のポリマー(A.3.2)を添加した。均質化は、雰囲気温度で5分間にわたる中程度の攪拌(磁気)により達成した。本発明の配合物HSC.2を得た。
【0232】
II.2.3 本発明の配合物HSC.3の製造
250mlの容器に80gの水を投入した。続いて、6gのNaOH(50%)水溶液及び8gのブチレンジグリコール(BDG)を添加し、続いて5gのMGDA-Naの41重量%溶液、2gの(IV.1)の50%水溶液、及び2gの本発明のポリマー(A.3.2)を添加した。均質化は、雰囲気温度で5分間にわたる中程度の攪拌(磁気)により達成した。本発明の配合物HSC.3を得た。
【0233】
II.2.4 本発明の配合物HSC.4の製造
250mlの容器に80gの水を投入した。続いて、6gのNaOH(50%)水溶液及び8gのブチレンジグリコール(BDG)を添加し、続いて5gのMGDA-Naの41重量%溶液、2gの(IV.1)の50%水溶液、及び2gの本発明のポリマー(A.5.2)を添加した。均質化は、雰囲気温度で5分間にわたる中程度の攪拌(磁気)により達成した。本発明の配合物HSC.4を得た。
【0234】
II.2.5 本発明の配合物HSC.5の製造
250mlの容器に80gの水を投入した。続いて、6gのNaOH(50%)水溶液及び8gのブチレンジグリコール(BDG)を添加し、続いて5gのMGDA-Naの41重量%溶液、2gの(IV.1)の50%水溶液、及び2gの本発明のポリマー(A.9.2)を添加した。均質化は、雰囲気温度で5分間にわたる中程度の攪拌(磁気)により達成した。本発明の配合物HSC.5を得た。
【0235】
雰囲気温度でのステンレス鋼の表面に対する洗浄性能に関する性能を評価した。
【0236】
試験汚れ:油性汚れを、25.0%のバター、25.0%のラード、25.0%のマーガリン、20.0%のケチャップ、2.5%のマスタード、及び2.5%のジャガイモでんぷんを40~45℃で連続的に攪拌しながら混合することにより調製した。油性汚れが得られた。
【0237】
ステンレス鋼プレート(15x10cm)をエタノールで予備洗浄し、続いてその重量を測定した。約1.5gの油性汚れを、各プレートにローラーで均一に塗布した。続いて、プレートをオーブンで2時間かけて200℃に加熱した。続いて、プレートを雰囲気温度まで冷却し、2時間保存した。最後に、洗浄試験を実施した。
【0238】
2gの本発明の配合物/又は比較配合物を、それぞれトリガー噴霧器で汚れたステンレス鋼プレート上に均一に噴霧し、2分間作用させた。更に、汚れたプレートの表面を、セルロースタイプの湿潤スポンジで拭いた(力は一切加えなかった)。
【0239】
汚れ除去の評価を目視で実施し、3回の実験の平均値を基準とした。
1 除去なし
2 わずかな除去(10~30%の表面が洗浄された)
3 平均的な除去(40~最大70%の表面が洗浄された)
4 良好な除去(70%超~90%の表面が洗浄された)
5 優れた除去(90%超の表面が洗浄された)
パーセンテージは、表面を基準とする。結果を表6にまとめる。
【0240】
【表7】
【0241】
III.生分解試験
概要:試験は、OECDガイドラインに従って実施した。OECDガイドラインによれば、試験は以下の場合に有効である:
1.参照物質が14日以内に60%に達する。
2.試験終了までの試験再現の極値の差異が20%未満である。
3.接種物ブランクの酸素摂取量が20~30mg O/lであり、60mg O/lを超えてはならない。
4.試験終了時に測定されるpH値が6~8.5でなければならない。
【0242】
本発明の文脈で用いられた試験方法の説明:
汚水中の生分解を、OECD 301Fのマノメーター呼吸測定法を用いて3回試験した。OECD 301Fは、酸素の消費量を測定することにより汚水試料の生分解を測定する好気性検査である。測定された量の汚水に、名目上唯一の炭素源である100mg/Lの試験物質を接種物(ドイツ、マンハイムの市営下水処理場から採取された通気汚泥)と共に添加した。この汚泥を、密閉したフラスコ内で一定温度(25℃)で28日間攪拌した。酸素の消費量は、Oxi TopCを使用して密閉フラスコ内の圧力の変化を測定することによって決定する。放出された二酸化炭素は、水酸化ナトリウム溶液中に吸収される。硝化作用による酸素の消費を防ぐために、硝化阻害剤をフラスコに添加した。試験物質が生分解される間に微生物個体群により摂取される酸素量(並行して行われるブランク接種物による摂取に対して補正される)は、ThOD(化合物の元素分析によって測定される理論的酸素要求量)の百分率として表される。陽性対照のグルコース/グルタミン酸を、参照物質として各キャビネットの試験試料と共に実施する。
【0243】
計算:
理論的酸素要求量:ある化合物をその最終的な酸化生成物に酸化するのに必要なOの量。この量は、元素分析データを使用して計算される。
【0244】
生分解%
実験によるO摂取量×100とし、理論的酸素要求量で除算する。
【0245】
生分解性試験の結果を表7にまとめる。
【0246】
【表8】
【0247】
【表9】
【国際調査報告】