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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】薬物送達機構
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/46 20060101AFI20241219BHJP
   A61M 5/20 20060101ALI20241219BHJP
   A61M 5/32 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
A61M5/46
A61M5/20 510
A61M5/32 510K
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535731
(86)(22)【出願日】2022-12-13
(85)【翻訳文提出日】2024-07-09
(86)【国際出願番号】 EP2022085635
(87)【国際公開番号】W WO2023110877
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】21315273.9
(32)【優先日】2021-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】マックス・デイヴィス
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・マーク・ケンプ
(72)【発明者】
【氏名】トム・レヴァー
(72)【発明者】
【氏名】マックス・ウィーブリンク
(72)【発明者】
【氏名】ロビー・ウィルソン
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD13
4C066EE14
4C066FF05
4C066LL15
4C066NN04
(57)【要約】
薬物送達機構であって、薬物送達デバイス(100)であって、薬物送達デバイスが、ニードル(18)を受領するように適応されたハウジング(10)であって、ニードルが、ユーザの皮膚(32)を突き刺すように構成されたハウジング(10)を備えている、薬物送達デバイス(100)を備え、薬物送達デバイスが駆動エネルギー源(28)を含み、薬物送達デバイスが、駆動エネルギー源から得られるエネルギーを使用して薬物送達動作を実行するように構成されており、薬物送達デバイスがオートインジェクターであり、薬物送達機構が、注入深さ調整部材(36、36a、36b、36c)を更に備え、注入深さ調整部材が、薬物送達デバイスのデバイス部材(14)に接続可能であるか又は接続され、注入深さ調整部材が、注入深さ調整部材がデバイス部材に接続されているときに、薬物送達機構が使用中にアジャスタ支持面(38)によって皮膚に支持される、アジャスタ支持面(38)を提供するように構成され、注入深さ調整部材が、注入深さ調整部材が装置部材に接続されるとき、ニードルが注入深さだけ皮膚を貫通することができる、注入深さを定義するように構成される、薬物送達機構が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物送達機構であって、
薬物送達デバイス(100)であって、前記薬物送達デバイスが、
-ニードル(18)を受領するように適応されたハウジング(10)であって、前記ニードルが、皮膚(32)を突き刺すように構成されたハウジング(10)を備えている、
薬物送達デバイス(100)を備え、
前記薬物送達機構が、注入深さ調整部材(36、36a、36b、36c)を更に備え、
前記注入深さ調整部材が、前記薬物送達デバイスのデバイス部材(14)に接続可能であるか又は接続され、
前記注入深さ調整部材が、アジャスタ支持面(38)であって、前記注入深さ調整部材が前記デバイス部材に接続されているときに、前記薬物送達機構が使用中に前記アジャスタ支持面(38)によって前記皮膚に支持される、アジャスタ支持面(38)を提供するように構成され、
前記注入深さ調整部材が、前記注入深さ調整部材が前記デバイス部材に接続されるとき、前記ニードルが前記皮膚を貫通することができる注入深さを定義するように構成される、薬物送達機構。
【請求項2】
前記薬物送達デバイスが薬物送達動作を実行するために動作されるときに、前記デバイス部材(14)が、部材支持面(16)によって前記薬物送達デバイス(100)が前記皮膚(32)に支持されることができる、前記部材支持面(16)を提供するように配置される、請求項1に記載の薬物送達機構。
【請求項3】
前記注入深さ調整部材(36、36a、36b、36c)が、前記デバイス部材(14)に解放可能に接続される、請求項1又は2に記載の薬物送達機構。
【請求項4】
前記薬物送達機構が、前記デバイス部材に解放可能に接続された複数の注入深さ調整部材(36、36a、36b、36c)を備えている、請求項3に記載の薬物送達機構。
【請求項5】
前記注入深さ調整部材(36、36a、36b、36c)が、前記薬物送達デバイス(100)から切断され、且つ、前記デバイス部材(14)に接続することができる、請求項1又は2に記載の薬物送達機構。
【請求項6】
前記薬物送達機構が、前記デバイス部材に接続されるときに、異なる注入深さを提供するように構成された複数の注入深さ調整部材(36)を備えている、請求項5に記載の薬物送達機構。
【請求項7】
前記複数の注入深さ調整部材(36a、36b、36c)が、注入深さ調整部材アセンブリを形成する、請求項6又は請求項4に記載の薬物送達機構。
【請求項8】
前記注入深さ調整部材アセンブリが、前記薬物送達デバイスのデバイス部材(14)に接続可能であるか又は接続される、請求項7に記載の薬物送達機構。
【請求項9】
前記複数の注入深さ調整部材が、前記注入深さ調整部材アセンブリが前記デバイス部材に接続されるとき、前記ニードルが前記皮膚を貫通することができる前記注入深さを定義するように構成される、請求項8に記載の薬物送達機構。
【請求項10】
前記注入深さ調整部材アセンブリの各注入深さ調整部材が、それぞれの前記注入深さ調整部材が露出されているときに、前記薬物送達機構が使用中にアジャスタ支持面(38)によって前記皮膚に支持される、それ自体の前記アジャスタ支持面(38)を提供するように構成されている、請求項7~9のいずれか一項に記載の薬物送達機構。
【請求項11】
前記薬物送達機構が、前記注入深さ調整部材に対するその回転方向に応じたその除去と同時に1つ又は複数の注入深さ調整部材を選択的に切り離すように構成された選択部材(70)を更に備え、それにより、前記選択部材の取り外しの後も前記注入深さ調整部材アセンブリの1つ又は複数の注入深さ調整部材が残ったままである、請求項7~10のいずれか一項に記載の薬物送達機構。
【請求項12】
前記デバイス部材(14)が、前記ハウジング(10)とは異なる部材であり、前記ハウジングに対して移動可能である、請求項1~11のいずれか一項に記載の薬物送達機構。
【請求項13】
前記薬物送達デバイス(100)が、取り外し可能な安全部材(56)であって、前記安全部材が取り外されない限り、前記ハウジング(10)に対する前記デバイス部材の移動を防止するように、前記デバイス部材(14)に動作可能に接続された前記取り外し可能な安全部材(56)を備えている、請求項12に記載の薬物送達機構。
【請求項14】
前記デバイス部材(14)がニードルシュラウド(14)である、請求項1~13のいずれか一項に記載の薬物送達機構。
【請求項15】
前記ニードル(18)が前記ハウジング(10)に対して軸方向に固定されている、請求項1~14のいずれか一項に記載の薬物送達機構。
【請求項16】
前記薬物送達デバイス(100)が、薬剤を保持する薬剤容器(22)を備えている、請求項1~15のいずれか一項に記載の薬物送達機構。
【請求項17】
前記注入深さ調整部材(36、36a、36b、36c)が前記デバイス部材(14)に接続される場合、前記注入深さ調整部材(36、36a、36b、36c)が前記デバイス部材にしっかりと接続される、請求項1~16のいずれか一項に記載の薬物送達機構。
【請求項18】
前記注入深さ調整部材(36)が前記デバイス部材(14)にネジ接続されるとともに、前記デバイス部材に対して回転可能であり、前記デバイス部材と前記注入深さ調整部材との間のネジ接続がセルフロック式である、請求項1~16のいずれか一項に記載の薬物送達機構。
【請求項19】
前記薬物送達機構が、複数の可能な注入深さから所望の注入深さを選択するように動作可能である選択機構を備えており、前記選択機構が、第1の位置から第2の位置に回転可能な選択部材(70)を備えており、前記第1の位置が、第1の注入深さに関する位置であるとともに、前記第2の位置が第2の注入深さに関する位置である、請求項1~18のいずれか一項に記載の薬物送達機構。
【請求項20】
前記選択部材(70)が、前記薬物送達デバイスから取り外し可能であり、前記第1の位置において、前記選択部材が、前記注入深さ調整部材(36、36a、36b、36c)が前記選択部材と共に前記デバイス部材から取り外されるように配置されており、前記第2の位置において、前記選択部材が前記注入深さ調整部材から結合解除され、それにより、前記選択部材が前記デバイスから取り外され、前記注入深さ調整部材が前記デバイス部材に接続されたままである、請求項19に記載の薬物送達機構。
【請求項21】
前記薬物送達デバイスが駆動エネルギー源(28)を含み、前記薬物送達デバイスが、前記駆動エネルギー源から得られるエネルギーを使用して薬物送達動作を実行するように構成されており、前記薬物送達デバイスがオートインジェクターである、請求項1~20のいずれか一項に記載の薬物送達機構。
【請求項22】
薬物送達機構であって、
薬物送達デバイス(100)であって、前記薬物送達デバイスが、
-ニードル(18)を受領するように適応されたハウジング(10)であって、前記ニードルが、皮膚(32)を突き刺すように構成されたハウジング(10)を備えている、
薬物送達デバイス(100)を備え、
前記薬物送達機構が、注入深さ調整部材アセンブリを形成する複数の注入深さ調整部材(36a、36b、36c)を更に備え、
前記注入深さ調整部材アセンブリが、前記薬物送達デバイスのデバイス部材(14)に接続可能であるか又は接続され、
前記注入深さ調整部材アセンブリの各注入深さ調整部材が、それぞれの前記注入深さ調整部材が露出されているときに、前記薬物送達機構が使用中にアジャスタ支持面(38)によって前記皮膚に支持される、それ自体の前記アジャスタ支持面(38)を提供するように構成されており、
前記複数の注入深さ調整部材が、前記注入深さ調整部材アセンブリが前記デバイス部材に接続されるとき前記ニードルが前記皮膚を貫通することができる、注入深さを定義するように構成されており、
前記薬物送達機構が、選択部材(70)であって、前記注入深さ調整部材に対するその回転方向に応じたその除去と同時に1つ又は複数の注入深さ調整部材を選択的に切り離すように構成された選択部材(70)を更に備え、それにより、前記選択部材の取り外しの後も前記注入深さ調整部材アセンブリの1つ又は複数の注入深さ調整部材が残ったままである、薬物送達機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、薬物送達機構、特に調整可能な注入深さを提供するのに適した薬物送達機構に関する。
【背景技術】
【0002】
薬物送達デバイスでは、薬物は、ユーザ(又は患者)の皮膚を貫通するニードルを介してユーザに送達されることが多い。ニードルは、特定の注入深さで皮膚に突き刺される。通常、特定のデバイスの注入深さは、デバイスの設計によって設定される。一部のユーザにとって、特定のデバイスが設計される注入深さは適していない。例えば、子供は、通常、成人と比較して、刺すべき皮膚の下に利用可能な組織が少ない。したがって、注入深さの減少は、子供にとって有利であろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特に注入深さ調整に関して、薬物送達デバイスに関連する改善を促進することは、本開示の目的である。
【0004】
この目的は、開示された主題、例えば添付の独立請求項に定義された主題によって達成される。有利な改良及び開発は、従属請求項に従い、且つ/又は下記で説明される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、薬物送達機構に関する。薬物送達機構は、薬物送達デバイスを含む。薬物送達デバイスは、薬剤容器から薬物又は薬剤を投与するために提供され得る。薬物送達デバイスはハウジングを含む。ハウジングは、ニードル及び、好ましくは薬剤容器を受領するように適合される。ニードル及び/又は薬剤容器は、ハウジング内に配置され得る。ニードルは、便宜上、ユーザの皮膚を突き刺すように構成される。ニードルを通して、薬剤は、ユーザ、例えばユーザの組織に投与され得る。薬物送達デバイスは、駆動エネルギー源、例えば駆動バネ、又はガスリザーバ等の別の種類のエネルギー源を含み得る。薬物送達デバイスは、例えば駆動エネルギー源から取得可能なエネルギーを使用して、薬物送達動作を実行するように構成される。駆動エネルギー源は、薬物送達デバイスの薬物送達動作のためのエネルギーを提供するように構成され得る。エネルギーは、薬剤容器から薬物を投与するために、薬物送達デバイスの駆動部材、例えばプランジャロッドを駆動するために使用され得る。薬物送達動作のために、駆動部材は、駆動エネルギー源によって提供されるエネルギーによってハウジングに対して遠位方向に移動され得る。
【0006】
薬物送達機構は、注入深さ調整部材を更に含む。注入深さ調整部材は、薬物送達デバイスのデバイス部材に接続可能又は接続される。注入深さ調整部材は、薬物送達デバイス又は薬物送達機構の注入深さを調整又は定義するように構成され得る。注入深さは、薬物送達動作中など、ニードルが皮膚内に突出する距離であり得る。注入深さ調整部材は、アジャスタ支持面であって、薬物送達機構が使用中、例えば、薬物送達動作中に、且つ/又は、注入深さ調整部材がデバイス部材に接続されているときに、アジャスタ支持面によって皮膚に支持される、アジャスタ支持面を提供するように構成されている。デバイス又は機構の「支持面」は、薬物送達機構又はデバイスが薬物送達動作に使用されるときに、薬物送達動作のためにニードルが皮膚に突き刺さる位置に隣接し得る。注入深さ調整部材は、例えばデバイス部材に接続されるときに注入深さを調整又は定義するように構成される場合があるか、調整又は定義する場合があり、この注入深さだけ、例えば薬物送達動作のため又は薬物送達動作の間、ニードルが皮膚を貫通することができる。例えば、注入深さ調整部材は、薬物送達動作のためにニードルが皮膚を貫通することができる注入深さを、例えば、アジャスタ支持面と、薬物送達デバイスが注入深さ調整部材なしでの薬物送達動作のために有する場合がある支持面との間の距離だけ、減少させる場合がある。本構成の薬物送達デバイスは、注入深さ調整部材と共に、及び注入深さ調整部材なしで使用することができる、完全に機能する薬物送達デバイスであり得る。好ましくは、注入深さ調整部材は、注入深さを、例えば所望の注入深さに調整するだけである。注入深さ調整部材がデバイス部材に接続される場合、それは、デバイス部材に対して軸方向に固定され得、好ましくは、両方向(例えば、近位及び遠位)の軸方向移動に対して固定され得るか、又は少なくとも注入深さを増加させる軸方向移動、例えば近位方向の移動に対して固定され得る。すなわち、注入深さ調整部材は、薬物送達デバイスの支持面とアジャスタ支持面との間の距離が、薬物送達機構の使用中に一定であるか又は少なくとも減少しないように、デバイス部材に対して固定され得る。これは、注入深さ調整部材がデバイス部材に接続された状態で薬物送達動作を実行することを含み得る。
【0007】
一実施形態では、薬物送達デバイスは、オートインジェクターである。オートインジェクターでは、薬物送達動作のためのエネルギーは、駆動エネルギー源に予め貯蔵され得る。すなわち、ユーザは、薬物送達動作のためのエネルギーを、例えば使用のためにデバイスを準備するときに提供する必要はない。むしろ、このエネルギーは製造者によってシステムにプリロードされ得る。例えば、駆動ネジは、薬物送達動作のためのエネルギーを提供するために、事前に応力が加えられ得るか又は事前に付勢され得る。
【0008】
一実施形態では、デバイス部材は、部材支持面を提供するように配置されており、この部材支持面によって薬物送達デバイスが、例えばユーザの皮膚である皮膚上に支持され得るか、支持されることが意図されており、且つ/又は、薬物送達デバイスが薬物送達動作を実施するように動作される場合にこの部材支持面が提供され、好ましくは、薬物送達デバイスに接続されている注入深さ調整部材を伴わない。すなわち、薬物送達デバイスが薬物送達デバイスに接続された注入深さ調整部材なしで動作される場合にデバイスの支持面を提供する部材は、注入深さ調整部材が接続可能又は接続される部材と同じ部材であり得、例えば、注入深さを調整した薬物送達デバイスを形成する。デバイス部材は、薬物送達デバイスの静的部材、例えば薬物送達動作のためのデバイスのハウジングに対して移動しない部材、又は薬物送達デバイスの可動部材であり得る。
【0009】
一実施形態では、(それぞれの)支持面、例えばアジャスタ支持面、デバイス支持面、及び/又は部材支持面は、便宜的に注入深さ調整部材がデバイス部材に接続されている場合の注入深さ調整部材のケースにおいて、遠位方向に向けられる。注入深さ調整部材は、デバイス部材に接続されると、例えば薬物送達動作が開始される前及び/又はニードルが皮膚を貫通する前に、薬物送達機構(その後、調整又は変更された注入深さを有する薬物送達デバイスであり得る)の遠位端を形成し得る。デバイス又は構成の遠位端を覆う可能性のあるキャップは、その後、既に取り外されている可能性がある。
【0010】
一実施形態では、注入深さ調整部材は、デバイス部材に解放可能に接続されるか、又は解放可能に接続可能である。換言すれば、注入深さ調整部材は、デバイス部材に予め取り付けられており、デバイス部材から取り外し可能であり得る。注入深さ調整部材を薬物送達デバイスから除去して、注入深さを変化させ、例えば増加させることができる。薬物送達機構は、例えば注入深さ調整部材が薬物送達デバイスから取り外されたときに切断される接続特徴を設けることによって、注入深さ調整部材が薬物送達デバイスから取り外されたか又は切断されたときに、再接続できないように構成され得る。これは、ユーザが、調整部材を再接続しようとすることができないことを知るという利点がある。注入深さ調整部材が薬物送達デバイスから取り外されるか又は切断されると、デバイスは薬物送達動作を開始する準備ができている場合がある。好ましくは、切断前にユーザを保護するために利用可能であった1つ又は複数の安全機構がもはや存在しなくてもよい。したがって、ユーザが、危険である場合がある注入深さ調整部材を再度取り付けようと試みることを防止することは、ユーザの安全性を高める可能性がある。代替的に、注入深さ調整部材をデバイス部材から切断し、デバイス部材に再接続することができる。
【0011】
一実施形態では、注入深さ調整部材は、例えば薬物送達機構が製造業者によって提供されるとき、薬物送達デバイスから切断される。好ましくは、ユーザは、注入深さを所望の注入深さに調整するために、注入深さ調整部材をデバイス部材に接続するかどうかを決定することができる。注入深さ調整部材がデバイス部材に接続されると、接続は解放可能又は解放不可能(解放可能ではない)となり得る。接続が解放可能ではない場合、ユーザは、デバイス部材に接続した後に注入深さ調整部材に干渉することが意味をなさないことを知っている。これは、調整部材がデバイス部材から切断されようとした場合に再使用できなかったためである。なぜなら、解放可能ではない接続のために、試みが成功した場合、部品の一方が永久的に損傷することになるからである。
【0012】
一実施形態では、薬物送達機構は、複数の注入深さ調整部材を含む。注入深さ調整部材は、異なる注入深さを提供するように構成され得る。
【0013】
注入深さ調整部材は、例えば所望の注入深さを達成するために、デバイス部材から切り離され、及び/又はデバイス部材に接続されて提供され得る。例えば、ユーザは、所望の注入深さに基づいて使用したい複数の調整部材のうちのいずれかを決定し、その注入深さ調整部材を複数の注入深さ調整部材から、デバイス部材への接続時に所望の注入深さを達成するデバイス部材に接続することができる。例えば、調整部材の第1のものは、デバイス部材に接続されたときに第1の注入深さを達成でき、調整部材の第2のものは、デバイス部材に接続されたときに第2の注入深さを達成することができ、ここで第1の注入深さと第2のデバイス部材とは異なっている。
【0014】
複数の注入深さ調整部材は、デバイス部材に接続されて提供され得るか、又はデバイス部材に予め取り付けられている場合がある。例えば、注入深さ調整部材は、注入深さ調整部材アセンブリの一部であり得る。注入深さ調整部材は、互いに相互接続され得る。注入深さ調整部材は、例えば所望の注入深さを達成するために、1つ又は複数の注入深さ調整部材をアセンブリ又はデバイス部材から切断又は解放することができるように、互いに及び/又はデバイス部材に解放可能に相互接続され得る。注入深さ調整部材の各々は、例えば表面が露出されたときに、それ自身のアジャスタ支持面を提供するように構成され得る。異なるアジャスタ支持面は、露出されると、異なる注入深さを達成することができる。1つ又は複数の注入深さ調整部材をデバイス部材又は注入深さ調整部材アセンブリの残りの部分から切断するとき、(部材が取り外されるにつれて)注入深さを増加させ得る。アセンブリの注入深さ調整部材は、スタック式に配置され得る。スタックの注入深さ調整部材のうちの最も近位のもののみがデバイス部材に直接接続され得る。他の注入深さ調整部材は、それぞれの調整部材に近位に隣接するスタックのその調整部材に直接接続され得る。
【0015】
一実施形態では、注入深さ調整部材は、薬物送達デバイスの遠位部分に接続され、又は接続可能である。注入深さ調整部材の接続特徴との接続インターフェースを形成し得るデバイス部材の一部は、デバイスの遠位端の近く又は遠位端に配置され得る。デバイス部材の部分は、ハウジングから遠位に突き出ているか、又はハウジングの遠位部分であり得る。
【0016】
一実施形態では、デバイス部材は、ハウジングとは異なる部材である。代替的に、デバイス部材はハウジングであり得る。デバイス部材がハウジングとは異なる部材である場合、デバイス部材は、ハウジングに対して移動可能であり得る。例えば、デバイス部材は、ハウジングから遠位側に突き出てもよい。デバイス部材は、ハウジングに対して、初期位置又は第1の位置から近位方向に、第2の位置、例えば動作位置に移動可能であり得る。第2の位置では、薬物送達動作はトリガ可能であり得るか、又は既に開始されている場合がある。デバイス部材は、デバイス部材に接続されている注入深さ調整部材を伴って、及び/又は伴わずに、例えば第1の位置から第2の位置にハウジングに対して移動可能であり得る。デバイス部材は、薬物送達動作をトリガするか又はトリガすることを可能にするために、ハウジングに対して移動されなければならない場合がある。すなわち、ハウジングに対するデバイス部材の移動は、薬物送達デバイスによって薬物送達動作が行われ得るように必要であり得る。デバイス部材は、移動されると、薬物送達動作の開始を直接トリガするトリガ部材であり得る。代替的に、別のトリガ部材が提供され得、デバイス部材の移動は、例えば、デバイス部材が移動しない限りトリガ部材の移動を防止する機械式ブロックを取り外すことによってトリガ部材を動作させることのみを可能にし得る。
【0017】
一実施形態では、薬物送達デバイスは、ニードルシュラウドを含む。デバイス部材は、ニードルシュラウドであり得る。ニードルシュラウドは、ニードルを覆うように提供され得る。ニードルシュラウドは、ニードルが皮膚に刺される前及び/又はニードルが皮膚から除去された後、例えば薬物送達動作の完了後にニードルを覆うように提供され得る。薬物送達動作が開始される前に、ニードルシュラウドは、例えばニードルの先端を覆うために(例えば、遠位方向にニードルの先端を超えて軸方向に延びることによって、例えば、例えば少なくともニードルシュラウドの支持面で)ハウジングから遠位側に突き出てもよい。薬物送達動作のために、ニードルシュラウドはハウジングに対して近位に移動され得る。薬物送達動作の完了後、ニードルシュラウドは、例えばニードルの先端を覆い、且つ/又はハウジングに対して第3の位置にハウジングに対して遠位に移動し得る。薬物送達デバイスは、シュラウドネジを備えてもよい。シュラウドネジは、ニードルシュラウドを例えばハウジングに対して遠位方向に移動させるために、ニードルシュラウドと動作可能に連結可能であるか、連結され得る。ニードルシュラウドを第1の位置から近位方向に移動させるために、シュラウドネジの力を克服しなければならない場合がある。例えば、薬物送達動作が完了し、デバイス又は機構が皮膚から取り除かれた後の最終位置又は第3の位置では、ニードルシュラウドは、例えばロック機構によってハウジングに対する近位移動に対してロックされ得る。
【0018】
一実施形態では、デバイス部材は、起動部材である。起動部材は、薬物送達動作のトリガを可能にするため又は薬物送達動作をトリガするためにハウジングに対して移動されなければならない部材である。薬物送達動作のトリガを可能にすることは、起動部材の移動に加えて、トリガ部材等の別の部材を作動させなければならず、例えばトリガボタンを押さなければならないことを含み得る。代替的に、デバイス部材自体がトリガ部材であり得る。したがって、デバイス部材が第2の位置に到達すると、薬物送達動作が開始され得、例えばプランジャロッドがハウジングに対して遠位方向に移動する。
【0019】
一実施形態では、ニードルは、例えばハウジング内に受領されると、ハウジングに対して軸方向に固定される。すなわち、ハウジングに対するニードルの軸方向移動は、好ましくは遠位方向及び/又は近位方向で防止され得る。ニードルは、薬物送達デバイスのハウジング内に受領され得る。ハウジングに対して固定されたニードルを有することは、ハウジングに対するニードルの位置変化が注入深さに影響を与えないため、注入深さを所望の注入深さに調整することを容易にする。しかしながら、本開示の概念は、例えばバネによって駆動されて、皮膚を突き刺すため及び/又は薬物送達動作のために、ハウジング及び/又はデバイス部材に対して移動するように構成された可動ニードルを備えるか、又は保持するように設けられたデバイスにも適用されることに留意されたい。
【0020】
一実施形態では、薬物送達デバイスは、薬剤を保持する薬剤容器を含む。ニードルは、薬剤容器の内部と流体連通している場合があるか、又は内部と流体連通するようにされ得る。ニードルは、薬剤容器に一体化され得る。薬剤、例えば液体薬剤は、容器の内部に便宜的に配置される。薬剤容器は、シリンジ、例えば、ステークニードルなどのニードルが予め取り付けられたシリンジであり得る。代替的に、薬剤容器はカートリッジであり得、これは例えばカートリッジの隔膜をニードルユニットのニードルで突き刺すことによって、別のニードルユニットと流体連通する必要があり得る。
【0021】
一実施形態では、薬物送達デバイスは、安全部材を含む。安全部材は、取り外し可能な安全部材であり得る。すなわち、安全部材は、薬物送達デバイスから除去され得る。安全部材は、デバイス部材又はニードルシュラウドに動作可能に接続され得る。安全部材は、薬物送達動作の前にユーザが取り外すためにユーザがアクセス可能であり得る。安全部材は、好ましくは安全部材が取り外されない限り、例えば薬物送達動作が開始されるのに必要な位置に、ハウジングに対するデバイス部材又はニードルシュラウドの移動を防止するように提供又は配置され得る。デバイス部材又はニードルシュラウドのハウジングに対する、例えば近位方向への移動は、安全部材を取り外さない限り妨げられ得る。例えば、安全部材は、デバイス部材又はニードルシュラウドが薬物送達動作の開始に必要とされ得る第2の位置に到達する前及び/又はニードルが皮膚を突き刺すことができる前にハウジングに当接するように配置され得る。安全部材が取り外されると、デバイス部材の移動がもはや安全部材によって妨げられなくなることがある。この場合、薬物送達動作は、デバイス部材又はニードルシュラウドが第2の位置にあるか又は第2の位置に到達したとき、及び/又はニードルが皮膚を貫通したときに開始され得る。安全部材を定位置に有することは、注入深さ調整部材がユーザによってデバイス部材に接続されるか、又はユーザによって別様に(例えば直接)操作されて所望の注入深さを達成する場合に特に有利である。したがって、注入深さ調整部材をデバイス部材に接続した後(又はユーザが調整部材が不要と決定した場合)又は注入深さ調整部材の操作が完了した後に、安全部材が取り外され得る。好ましくは、薬物送達動作は、除去後にのみ開始することができる。安全部材は、薬物送達デバイスのキャップとは異なる場合がある。すなわち、キャップを取り外した後も、安全部材が依然として存在し得る。支持面(例えば、部材支持面又はアジャスタ支持面)を露出させるために、キャップ及び/又は安全部材を薬物送達デバイスから除去する必要があり得る。
【0022】
一実施形態では、注入深さ調整部材は、デバイス部材に接続されるとき、デバイス部材に堅固に接続される。すなわち、デバイス部材に対する注入深さ調整部材の位置(すなわち、回転位置及び/又は軸方向位置)は、便宜的には一定であり、且つ/又は部材がデバイス部材に接続されているときに変更できない。
【0023】
一実施形態では、注入深さ調整部材は、デバイス部材に接続されるとき、デバイス部材に対して移動可能である。したがって、デバイス部材と注入深さ調整部材とが接続されている場合、注入深さ調整部材をデバイス部材に対して移動させることによって注入深さを依然として調整することができる。調整部材とデバイス部材との間の相対位置は(例えば、相対移動可能性に関わらず)、デバイス部材又はニードルシュラウドを第1の位置から第2の位置に向かって及び/又は第2の位置の中に近位に移動するのに必要な力、例えば作動力に耐えるように、十分に安定し得る。すなわち、注入深さ調整部材とデバイス部材との接続は、例えば、薬物送達動作を開始することを可能にするために、又は薬物送達動作を開始するために、シュラウドネジの力(ニードルシュラウドの移動中に増加する可能性がある)、及び/又は、注入深さ調整部材に作用しなければならない作動力に反応するように十分に安定し得る。このようにして、1つの支持面が異なる注入深さに使用され得る(例えば、移動によって注入深さを連続的に変化させることによって)。逆に、注入深さ調整部材がデバイス部材に堅固に接続されている場合、異なる支持面(例えば、部材支持面及びアジャスタ支持面)は、異なる(例えば、別個の)注入深さに便宜的に対応する。
【0024】
一実施形態では、注入深さ調整部材は、デバイス部材に接続されるとき、デバイス部材にネジ接続される。注入深さ調整部材は、デバイス部材に接続されるとき、デバイス部材に対して回転可能であり得る。ネジ接続を介して、注入深さ調整部材は、注入深さ調整部材がデバイス部材に接続されている間、デバイス部材に対して回転すると軸方向に移動して注入深さを調整し得る。デバイス部材と注入深さ調整部材との間のネジ接続は、デバイス部材と注入深さ調整部材との間のネジのインターフェースによって形成され得る。ネジ接続は、少なくとも1つのセルフロックネジによって形成され得る。換言すれば、ネジ接続はセルフロックであり得る。セルフロックネジ接続は、セルフロックネジ接続によってネジ接続された部材のうちの1つに軸方向の負荷のみが印加された場合、この軸方向の負荷によってセルフロックネジ接続を介してネジ接続された部材間の相対的な回転移動が生じない接続である。したがって、軸方向の負荷を受けても、セルフロックネジ接続によって結合された部材間の相対的な軸方向の位置は軸方向の負荷の下で維持される。ネジ接続用のネジのピッチは、セルフロックネジ接続を実現するために適切に小さく選択され得る。一実施形態では、薬物送達機構は、選択機構を含む。選択機構は、例えば複数の可能な注入深さから、所望の注入深さを選択するために、例えばユーザによって操作可能であり得る。例えば、1つの注入深さは、部材支持面によって達成又は定義され得、1つは、互いに便宜的に軸方向にオフセットされるアジャスタ支持面によって達成され得る。選択機構は、選択部材を含み得る。選択部材は、例えばユーザによって移動可能であり得る。選択部材は、ハウジングに対して、及び/又はデバイス部材に対して移動可能であり得る。選択部材は、所望の注入深さを選択するために移動可能であり得る。選択部材は、所望の注入深さを選択するためにハウジングに対して回転可能であり得る。選択部材は、例えばハウジング及び/又はデバイス部材に対して、第1の位置から第2の位置に移動可能、例えば回転可能であり得る。第1の位置は、第1の注入深さの位置であり得、第2の位置は、第2の注入深さの位置であり得、第2の注入深さは、好ましくは、第1の注入深さとは異なる。ユーザは、例えば、1つ又は複数の事前に取り付けられた若しくは接続された注入深さ調整部材を切断するか、又は、事前に取り付けられた若しくは接続された注入深さ調整部材を全てデバイス部材上の定位置に残すことによって、複数の別個の注入深さから選択し得る。代わりに、ユーザは、例えば、選択部材を介してデバイス部材に対して注入深さ調整部材を移動させることによって、注入深さを連続的に変化させ得る。
【0025】
一実施形態では、選択部材は、注入深さ調整部材に動作可能に結合され、それにより、選択部材の移動が、例えばデバイス部材及び/又はハウジングに対する注入深さ調整部材の移動に変換される。
【0026】
一実施形態では、選択部材は、注入深さ調整部材に対して回転方向にロックされる。したがって、選択部材を回転させると、注入深さ調整部材が回転する。
【0027】
一実施形態では、選択部材は、例えば第1の位置から第2の位置に移動するとき、注入深さ調整部材及び/又はデバイス部材に対して移動可能であり、例えば回転可能である。
【0028】
一実施形態では、選択部材は、薬物送達デバイスに取り外し可能に接続される。
【0029】
一実施形態では、選択部材は、薬物送達デバイスから取り外し可能又は切断可能である。第1の位置では、選択部材は、注入深さ調整部材が選択部材と共にデバイス部材から取り外されるか又は切り離されるように配置され得る。例えば、選択部材の取り外し又は分離の間に、選択部材は、注入深さ調整部材に動作可能に結合され、例えば調整部材に軸方向にロックされ得る。注入深さ調整部材が取り外されると、支持面、例えば別の注入深さ調整部材のアジャスタ支持面又はデバイス部材の部材支持面が露出し得る。第2の位置では、選択部材は、注入深さ調整部材なしで取り除かれ得、それにより、注入深さ調整部材がデバイス部材に接続されたままである。したがって、アジャスタ支持面は、薬物送達動作のための支持面を形成し得る。第2の位置では、選択部材は、注入深さ調整部材から動作可能に分離され得る。選択部材の第2の位置では、選択特徴、例えば内向き凸部は、近位方向に面する注入深さ調整部材の表面と角度的に重なり得る。このようにして、選択部材は、遠位方向に取り外されると、選択特徴を介して表面と協働し、それによって同時に注入深さ調整部材を除去する。第2の位置では、選択特徴は、例えば、相互作用又は実質的な相互作用なしに選択特徴が注入深さ調整部材に沿って軸方向に移動することを可能にする注入深さ調整部材のスロットのために、注入深さ調整部材を越えて軸方向に移動し得る。したがって、第2の位置では、注入深さ調整部材は、デバイス部材上の定位置に留まり得る。
【0030】
一実施形態では、薬物送達機構は、選択部材の位置、例えば第1の位置及び第2の位置についての1つ又は複数の視覚的及び/又は触覚的表示を含む。代替的又は追加的に、薬物送達機構は、例えば、ハウジングに対する選択部材及び/若しくは注入深さ調整部材の位置に依存し、且つ/又は、注入深さ調整部材に対する選択部材の位置に依存する、現在選択されている注入深さに関する1つ又は複数の視覚的及び/又は触覚的表示を含み得る。表示、例えば視覚表示は、選択部材、注入深さ調整部材、デバイス部材、及び/又はハウジング、又はこれらの構成要素のいずれか1つの組み合わせによって提供され得る。
【0031】
一実施形態では、選択部材は、例えば第1の位置から第2の位置に移動されるときに、ハウジングに対する軸方向の移動に対して固定される。したがって、選択部材は、例えば所望の注入深さを選択するための選択手順中に、ハウジングに対して軸方向にロックされ得る。ハウジングへの接続は、選択部材が薬物送達デバイスから取り除かれ得るように解放可能であり得る。一実施形態では、薬物送達デバイス又は薬物送達機構は、キャップを含む。キャップは、薬物送達デバイス又は機構の遠位端、例えばニードル端部を覆い得、薬物送達デバイス又は機構から取り外し可能又は分離可能であり得る。キャップは、デバイス部材に接続されている注入深さ調整部材を覆い、及び/又は受領し得る。キャップが取り外されると、薬物送達デバイス又は機構のニードル通過開口が露出することがある。ニードル通路開口は、ニードルが皮膚を突き刺すために突出し得る開口であり得、キャップが除去される前はキャップによって覆われている場合がある。開口は、デバイス部材又は注入深さ調整部材の開口であり得る。
【0032】
一実施形態では、選択部材は、キャップに一体化されるか、又はキャップは選択部材である。選択部材は、薬物送達機構からキャップと共に除去され得る。
【0033】
一実施形態では、選択部材は、薬物送達デバイス又は機構のキャップとは異なる。特に、キャップが取り外されても、選択部材は、薬物送達デバイスに接続されたままであり得る。選択部材は、キャップの取り外し後、例えば取り外し後にのみ、注入深さを選択するためのユーザ操作に利用可能になり得る。選択部材は、例えば選択部材を適切に移動させることによって、ユーザによって所望の注入深さを選択するように操作可能であり得る。選択手順の完了後、選択部材は、薬物送達デバイスから除去され得る。別個の選択部材を有することにより、デバイスのための標準の、若しくは修正されていないキャップ、及び/又は、デバイスに対するキャップの標準の、若しくは認証されたインターフェースを使用することが容易になる。
【0034】
一実施形態では、選択部材は、選択部材が薬物送達デバイスに接続されているときに、注入深さ調整部材へのアクセスを防止し、且つ/又はユーザによる操作を防止するように配置される。選択部材は、薬物送達機構の遠位端を定義する表面、及び/又は、支持面、例えばアジャスタ支持面を径方向(好ましくは遠位にも)に覆うように配置される表面を有し得る。
【0035】
一実施形態では、薬物送達機構は、複数の異なる注入深さを提供するように構成される。
【0036】
一実施形態では、キャップは、ニードルシールドリムーバを含む。ニードルシールドリムーバは、好ましくは、ニードルシールドに軸方向にロックされ、ニードルシールドは、例えばキャップが薬物送達デバイス又は薬物送達機構上に定位置にあるときに、ニードルを覆い得る。したがって、ニードルシールドは、薬物送達デバイスからキャップと共に除去され得る。ニードルシールドは、ニードルに接続されるとき、ニードルの遠位端(ニードル先端)を覆い得る。
【0037】
一実施形態では、アジャスタ支持面及び/又は部材支持面は、ハウジングの外側に配置されている。例えば、常に、並びに/又は、ハウジングに対するデバイス部材及び/若しくは注入深さ調整部材(薬物送達デバイスに接続されている場合)の全ての位置に配置される。
【0038】
一実施形態では、注入深さ調整部材は、ニードル通路開口を定義する。ニードル先端は、皮膚を刺すためにニードル通路開口を通過し得る。(それぞれの)注入深さ調整部材のニードル通路開口の直径は、例えば、デバイス部材又はニードルシュラウドのニードル通路開口の直径に調整され得、例えば等しい場合がある。注入深さ調整部材のニードル通路開口の直径は、例えば、デバイス部材又はニードルシュラウドのニードル通路開口の直径以上であり得る。
【0039】
一実施形態では、注入深さ調整部材は、遠位スペーサ又は遠位シムとして機能するようにデバイス部材に接続される。
【0040】
一実施形態では、注入深さ調整部材は、デバイス部材に直接接続される。
【0041】
一実施形態では、注入深さ調整部材は、リング状の部分を有する。リング状部分の厚さ(又は軸方向延長)は、注入深さ調整部材によって注入深さが調整又は変更される距離を定義し得る。
【0042】
一実施形態では、注入深さ調整部材は、デバイス部材の遠位部分、例えばハウジングから遠位方向に突き出たデバイス部材の部分、例えばハウジングに対するデバイス部材の初期又は第1の位置に接続される。
【0043】
一実施形態では、注入深さ調整部材は、デバイス部材の円筒部分の領域でデバイス部材に接続される。デバイス部材は、円筒部分に加えて、円筒部分から近位まで延びる1つ又は複数のアームを有し得る。円筒部分は、デバイス部材の遠位部分であり得る。
【0044】
我々は、異なる実施形態又は態様と併せて上述及び後述する特徴は、たとえそのような組み合わせが上記又は下記で明示的に開示されていなくても、互いに組み合わせることができることに留意する。本開示、及び、特に提案された概念の更なる特徴、利点、及び便宜的ものは、図面と併せて例示的な実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1A-1D】薬物送達デバイスの実施形態を示す図である。
図2】異なる表示によって薬物送達機構の実施形態を示す図である。
図3A-3D】薬物送達機構の別の実施形態を示す図である。
図4】薬物送達機構の別の実施形態を示す図である。
図5】薬物送達機構の別の実施形態を示す図である。
図6A-6B】薬物送達機構の別の実施形態を示す図である。
図7A-7D】薬物送達機構の別の実施形態を示す図である。
図8A-8E】薬物送達機構の更なる実施形態を示す図である。
図9A-9E】薬物送達機構の更なる実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
同一の要素、同一の種類の要素、及び同一又は同様に作用する要素は、図面内で同じ参照番号を提供され得る。
【0047】
図1A~1Dは、薬物送達デバイス100の実施形態を示す図である。デバイス100は、上記及び下記で更に説明されている薬物送達機構におけるデバイスとして適している。図は、その動作中のデバイス100を異なる段階で示す。
【0048】
図1Aは、初期状態又は送達状態での薬物送達デバイス100を示す。薬物送達デバイスはハウジング10を含む。ハウジングは、その内部に薬剤容器(これらの図では明示的に示されていない)を保持するために提供され、且つ/又は保持する。薬剤、例えば液体薬剤は、薬剤容器に配置される。ハウジングは、ニードルを保持するために提供され、且つ/又は保持する。換言すれば、ニードルはハウジング内に配置され得るか又は配置可能であり得る。ニードルは、薬剤容器の不可欠な部分であり得、例えば(永久的又は解放可能に)薬剤容器本体に接続されているか、又は薬剤容器から分離されている。第1の場合、薬剤容器はシリンジであり得る。第2の場合、薬剤容器はカートリッジであり得る。カートリッジが薬剤容器として使用される場合、最初に、薬剤容器及びニードルは流体的に切断され得、薬剤容器内部とニードルとの間の流体連通は、薬物送達デバイスの動作中にのみ確立される。薬物送達動作を駆動するために提供される駆動機構は、便宜的にはハウジング10内に提供される(明示的に示されていない)。駆動機構は、プランジャロッド(明示的には図示されていない)を含む。薬物送達デバイスは、駆動エネルギー源、例えば圧縮ネジなどの駆動ネジ(明示的に示されていない)を更に含む。駆動エネルギー源は、薬物送達動作中にプランジャロッドを薬剤容器に対して遠位方向に駆動するように配置される。この移動中、薬剤容器内に移動可能に保持され、薬剤容器を近位で密封し得るストッパを、薬剤容器の出口に向かって移動させて、薬剤容器内に保持されている薬物又は薬剤を、出口を通して吐出させることができる。出口は、ニードルによって形成又は定義され得る。ネジとは異なる他の潜在的な駆動エネルギー源は、ガス圧力を提供するのに適したモータ又はリザーバによってプランジャロッドを駆動するための電力電池又はバッテリを含み、そこでガス圧力を使用して薬物送達動作を駆動することができる。薬物送達デバイスは、オートインジェクターである。オートインジェクターにおける薬物送達動作を駆動するためのエネルギーは、薬物送達デバイスに組み込まれた構成要素によって提供され得、通常は投与量設定手順の間にユーザによってエネルギーがバネに導入される、多くのネジ駆動のペンタイプの可変投与量インジェクタの場合のように、デバイスの動作中にユーザによってデバイスに導入される必要はない。薬物送達デバイスは、便宜的には、シングルショットデバイスであり、すなわち、1回分の投与量のみを投与するように提供される。薬物送達デバイスは、使い捨て薬物送達デバイス、すなわちその使用後に廃棄されるデバイスであり得る。デバイスは、ペンタイプデバイスであってもよい。薬剤容器及び/又はニードルは、薬物送達デバイス内、例えばハウジング内に軸方向に固定され得るか、又は例えば皮膚を突き刺すためにハウジングに対して移動可能であり得る。第1の場合、ユーザは、ニードルで皮膚を突き刺すための動きを実行する必要があり得る。第2の場合、ニードルの突き刺しは、薬物送達デバイスのニードル挿入機構によって駆動され得る。
【0049】
本明細書では、「遠位」は、薬物送達デバイス若しくはデバイス機構若しくはその構成要素の吐出端の方に面する若しくは指すように配置された若しくは配置されることになる、及び/又は近位端とは反対に向いているか、近位端とは反対に面するように配置されることになるか、若しくは近位端とは反対に面する、方向、端部、又は表面を指定するために使用される。他方で、「近位」は、吐出端及び/又は薬物送達デバイス若しくは送達機構若しくはその構成要素の遠位端とは反対に面する若しくは反対を指すように配置された若しくは配置されることになる方向、端部、又は表面を指定するために使用される。遠位端は、吐出端に最も近く且つ/又は近位端から最も遠い端部であってもよく、近位端は、吐出端から最も遠い端部であってもよい。近位表面は、遠位端とは反対に面してもよく、且つ/又は近位端に向かって面してもよい。遠位表面は、遠位端に向かって面してもよく、且つ/又は近位端とは反対に面してもよい。吐出端は、例えば、ニードルが配置されるか、ニードル又はニードルユニットが、デバイスに取り付けられているか、又は取り付けられることになるニードル端部であり得る。
【0050】
図1Aに示すように、薬物送達デバイスは、キャップ12を更に含む。キャップは、薬物送達デバイス100の遠位端に配置される。キャップは、デバイスの残りの部分、例えばハウジング及び/又は薬物送達デバイスの別の構成要素若しくは部材に取り外し可能に接続される。キャップは、例えば遠位に向けられた表面を有し、薬物送達デバイスの残りの部分の遠位端、及び/又は、ニードル、例えば遠位ニードル先端が、薬物送達動作の間又は薬物送達動作のために薬物送達デバイスの内部から皮膚を突き刺し得る際に通るニードル通路開口を覆う。キャップはニードルシールドリムーバを備えることができ、このニードルシールドリムーバは、例えばキャップがデバイスから分離されるか接続解除された場合(明示的には示されていない)に、ニードルシールドリムーバがキャップと共にニードルから除去されるようにニードルを覆うニードルシールドと係合する。ハウジング10は便宜的に、薬物送達デバイスの長さの大部分、例えば(キャップ12が取り付けられている、且つ/又はキャップが取り外された)薬物送達デバイス100の全長の60%以上、70%以上、又は80%以上を覆う。
【0051】
図1Bは、キャップ12が取り除かれている図1Aの薬物送達デバイスを示す。図1Bでは、デバイスは、操作可能な状態であり得、例えば、操作がトリガされたときに薬物送達動作を実行する準備ができている。図示のように、薬物送達デバイス100は、ニードルシュラウド14を更に含む。ニードルシュラウド14は、ハウジング10から遠位に突き出ており、且つ/又はキャップがハウジング10に取り付けられたままのときにキャップ12で覆われていた。ニードルシュラウド14は、ハウジング10に対して初期位置又は第1の位置から第2の位置又はトリガ位置に移動可能である。ニードルシュラウド14は、薬物送達動作が開始される前にハウジング10から突き出ている可能性のあるニードルの先端を超えて延びるように提供され得る。ニードルシュラウド14は、ハウジングに対して近位方向に移動可能である。この移動中、例えばニードルシュラウドが第2の位置に到達する前に、ニードルはユーザの皮膚を突き刺し得る。ニードルシュラウド14は、薬物送達デバイスのトリガ部材として機能し得る。トリガ部材としてのニードルシュラウドは、図1Bに示される初期位置又は第1の位置から第2の又はトリガ位置(図1Cを参照)に近位に移動すると、薬物送達動作を、好ましくは第2の位置にあるときに自動的に初期化し得る。薬物送達動作は、遠位方向へのプランジャロッドの動きを防ぐ機械式ロックを除去することによって、又はプランジャロッドを動かして移動しているニードルシュラウドを介して機械式ロックを係合解除することによって初期化することができる。或いは、ニードルシュラウドは、第1の位置から第2の位置に移動したとき、及び便宜上第2の位置にあるときにのみ薬物送達動作のトリガを可能にし得る。この場合、薬物送達動作を開始するために、別個のトリガ部材、例えばハウジング10の近位端にあるトリガボタンが提供され得る。トリガボタンを操作して薬物送達動作を開始することは、ニードルシュラウド14が第2の位置にある場合にのみ可能であり得る。また別の代替形態では、ニードルシュラウド14は、薬物送達デバイス100の使用前及び/又は使用後にニードルスティックの損傷を防ぐためにのみ提供され得る。この場合、ニードルシュラウドは駆動機構から完全に分離され得、且つ/又は薬物送達動作をトリガすること、又はトリガを可能にすることに全く関与しないことがある。
【0052】
ニードルシュラウド14は、間にユーザの皮膚を支持するように提供される。したがって、ニードルシュラウド14の遠位表面は、支持面16を提供し得る。支持面16は、ニードルシュラウド14に設けられるニードル通路開口17の周囲を画定及び/又は延び得る。支持面16は、リング状であり得、周方向に閉じられ、及び/又はニードルシュラウド14の内壁、例えばその遠位円筒部分から径方向に突出する内向き凸部によって定義され得る。支持面16は、便宜的には、ニードルシュラウド14の遠位端面である。
【0053】
図1Cは、ハウジング10に対する第2の位置におけるニードルシュラウド14を示している。これは、例えば、薬物送達動作が開始されたとき、開始され得るとき、及び/又はニードルが皮膚を貫通したときの位置である。ニードル18は、薬物送達デバイスの支持面16から軸方向に(特にシュラウド14のニードル通路開口17を通って)、ニードル18が支持面を越えて突き出て、皮膚を突き刺す(皮膚はこの図では示されていない)距離だけ飛び出ている。この距離は、注入深さに関する特徴である場合があるか、又は注入深さに等しい場合がある。デバイスは、薬物送達動作が完了するまで皮膚との接触を維持し、薬物送達デバイス100によって提供される可聴、触覚、及び/又は視覚的表示によって示され得る。
【0054】
薬物送達デバイスは、好ましくは、1mm、2mm、3mmのいずれか1つの値以上である注入深さで薬物送達動作を開始するように設計され得る。代替的又は追加的に、デバイスは、好ましくは7mm、6mm、5mmのいずれか1つの値以下である注入深さで薬物送達動作を開始するように設計され得る。薬物送達動作が開始される注入深さ(例えば、プランジャが解放されたとき)は、デバイスで達成可能な最大注入深さ以下であり得る。薬物送達動作が開始される注入深さは、5mm+/-2mmであり得、変動は公差に起因し得る。
【0055】
最大注入深さ(例えば、ニードルシュラウドがハウジングに対してその最も近位の位置に到達したとき)は、6mm、7mm、8mmの値以上であり得る。代替的又は追加的に、最大注入深さ(例えば、ニードルシュラウドがハウジングに対してその最も近位の位置に到達したとき)は、8mm、7mm、6mmの値以下であり得る。最大注入深さは、7mm+/-1mmであり得、変動は公差に起因し得る。
【0056】
その結果、薬物送達動作の開始のための最低深さ(開始深さ)と最高の最大注入深さとの間の範囲は、3mm~8mmであり得る。
【0057】
薬物送達動作が完了した後、デバイスは皮膚から除去され得る(図1Dを参照)。ニードルシュラウド14は、ネジ(図示せず)によって第1の位置に向かってハウジングに対して付勢され得る。したがって、デバイスが皮膚から取り除かれると、ニードルシュラウド14はハウジング10に対して第1の位置に向かって移動する。ニードルシュラウド14は、例えばその第1の位置を超えて、ハウジング10に対して最終、第3の又はロック位置に遠位に移動することができる。この位置では、ニードルシュラウド14は、例えばシュラウドのロック特徴とハウジングとの間のロックする係合によって、近位方向への移動に対して、ハウジング10に対して軸方向に便宜的にロックされる。軸方向にロックされているため、ニードルシュラウドは、ハウジングに対して近位に、第2の位置及び/又は第1の位置に移動することがもはやできなくなる。これにより、使用後のニードルスティックの損傷からユーザを保護する。この状態では、デバイスはロックアウトされる。図1Dを参照されたい。
【0058】
薬物送達デバイスのニードルが皮膚を貫通する注入深さは、通常、特定のニードル、例えば特定の長さのニードルを有する薬剤容器から薬物を吐出するように設計された薬物送達デバイスの設計によって設定される。しかしながら、薬物送達デバイスの主要部品の大部分又は全てを保持しながら、注入深さを容易に調整可能とすべき状況があり得る。特に、ニードルの長さ及び/又は直径は、薬剤容器の一般的な幾何学的形状と同様に変化しないままであり得る。例えば、小児用のオートインジェクターは、単純にニードルでの突き刺しに利用可能な組織が成人よりも子供の方が薄いため、より低い注入深さを必要とし得る。それゆえ、本明細書では、注入深さの変更、例えば機構の薬物送達デバイスによって達成される注入深さの減少を可能にする薬物送達機構に関するいくつかの概念が提案され、デバイスは、更に上述したデバイスの1つであり得る。
【0059】
A~Dの表示の図2は、注入深さを低減した薬物送達機構の概念を示す。概念は、例示的な薬物送達デバイス100を介して説明される。薬物送達デバイス100は、上記で説明した薬物送達デバイスと非常によく似ており、特に、国際公開第2015/004052A1号パンフレットで開示されているデバイスと非常によく似ており、その開示内容全体は、あらゆる目的のために、特に、この文献の中で称されるような駆動機構又は「プランジャリリース機構(plunger release mechanism)」の設計に関して、参照により本明細書に組み込まれる。
【0060】
表示A~Dの全ては、デバイス100を通る概略断面図を示す。ニードルシュラウド14は、全ての表示において、ハウジング10に対して既にある程度近位に移動している。これら表示では、プランジャロッド20が薬剤容器22と共に示されており、この薬剤容器22は、この実施形態では、その遠位端にニードル18を有するシリンジ、例えばガラスシリンジ本体のステークニードルである。薬剤容器22は、その近位端に、薬剤容器22の本体内部を近位側で密閉するストッパ24を含む。ストッパ24は、薬剤容器の内部から、例えばユーザの組織に薬物を吐出するために、本体に対して遠位方向及び/又はニードル18に向かって駆動されるように配置される。
【0061】
図示の実施形態では、薬剤容器22は、ハウジング10内で軸方向に支持される。この目的のために、薬剤容器支持体26がハウジング内に提供される。薬剤容器22は、例えば薬物送達動作の開始前、薬物送達動作中、及び/又は薬物送達動作の完了後に、薬剤容器支持体26上に支持され得る。支持体26は、遠位方向(好ましくは近位方向)の軸方向変位に対してハウジングに固定され、且つ/又はハウジング10に組み込まれるが、これは図示の概略図では明示的に示されていない。したがって、現在示されている実施形態では、薬剤容器は、好ましくは少なくとも遠位方向、より好ましくは近位方向にもハウジングに対する変位に対して固定される。薬剤容器22は、支持体26の近位に向いた表面を支持することができる遠位に向いた表面を提供する首部分を有する。首部分は、薬剤容器本体の近位端よりも、ニードルが突出する薬剤容器の薬剤容器本体の遠位端に近い。容器22は、ハウジング10内で遠位側で支持されている。デバイスの100は、駆動エネルギー源28、例えば駆動ネジをも含み、駆動エネルギー源28は、薬物送達動作が開始されるとプランジャロッド20を遠位方向に駆動するように配置される。
【0062】
表示A及びCは、ニードルシュラウド14が例えば薬物送達動作を開始するために近位側に移動されたが、プランジャロッド20が例えばニードルシュラウド14と係合することによって依然としてロックされている場合の薬物送達デバイス100の状況を示す。図示の実施形態では、ロックは参照30によって強調表示される。駆動エネルギー源28は、薬物送達動作のためにプランジャロッド20が遠位に移動する前に、プランジャロッド20内に少なくとも部分的に保持され得る。駆動エネルギー源28としての駆動バネは、バネによって発揮される駆動力に反応するのに適し得るハウジングの遠位に向いた表面を支持することができる。遠位に向いた表面は、ハウジングを近位側で区切ることができるが、概略図には示されていない。表示B及びDは、プランジャ20の遠位移動が許可された後の状況、例えば、遠位移動が機械式ロック30によってもはやブロックされていないが、開始される直前の状況を示す。表示B及びDでは、ニードルシュラウド14は、ハウジング10に対して第2の、又は最も近位の位置にある。第2の位置は、ニードルシュラウド14とハウジング内に設けられた停止部との間の当接によって定義され得、これは、ハウジング10に対するニードルシュラウド14の近位移動を制限する(明示的に示されていない)。全ての表示A~Dでは、皮膚32、例えば皮膚の最も外側の層が示されており、薬物送達動作のために遠位ニードル先端が配置される組織領域34も示されている。表示B及びDでは、ニードルは、組織34におけるその端の位置に到達しているが、表示A及びCでは、ニードルシュラウドが依然として近位側に移動するにつれてニードルは依然として皮膚を通してわずかに前進している。
【0063】
表示A及びBにおける薬物送達デバイス100は、薬物送達機構が、薬物送達デバイス100に接続された注入深さ調整部材36を備えている点で、図C及びDに示された薬物送達機構と異なっている。注入深さ調整部材36は、便宜的には、注入深さ調整部材が、薬物送達機構(又は追加の注入深さ調整部材を有する改良されたデバイス)がユーザの皮膚に対して支持する支持面38を定義又は提供するようにニードルシュラウド14に接続される。それゆえ、表示A及びBとは対照的に、表示C及びDの配置において、注入深さは、注入深さ調整部材36の厚さ、又は支持面38と支持面16との間の軸方向距離だけ減少する。注入深さ調整部材36は、例えば図示のように外側面上でニードルシュラウド14の遠位端部に接続される。注入深さ調整部材36は、ニードルシュラウド14に解放可能に、又は解放不可能であるように接続され得る。例えば、注入深さ調整部材36は、ニードルシュラウド、例えばその遠位端セクションにクリップ留めすることができる。ニードルシュラウド14の遠位端セクションは、円筒構成を有し得る。注入深さ調整部材36は、ニードル通路開口39を含み、又はこれを定義し、これはニードルシュラウド14のニードル通路開口17と整列され得る。両方の開口は、同じサイズ及び/又は直径を有し得る。薬物送達機構は、まだ接続されていない注入深さ調整部材36と共にユーザに提供され得、これにより、ユーザは、通常の注入深さで、すなわち、支持面16を薬物送達デバイスの皮膚接触表面として使用することによって薬物送達デバイスを使用したいか、又は、皮膚接触表面としての支持面38、及び低減された注入深さに繋がる注入深さ調整部材36を取り付けることによって、薬物送達デバイスを使用したいかを決定することができる。代わりに、注入深さ調整部材36は、薬物送達デバイス、例えばニードルシュラウド14に既に接続されていてもよく、ユーザは、注入深さを増加させるために薬物送達デバイスから注入深さ調整部材36を取り外すかどうか、又は、注入深さ調整部材36を定位置に保持し、それによってより小さな注入深さを規定するかを決定することができる。注入深さ調整部材は、薬物送達デバイス、例えばニードルシュラウド14に永久的又は解放可能に接続され得る。
【0064】
本開示では、注入深さ調整部材36を使用して、薬物送達デバイス100の注入深さを調整し、特に注入深さ調整部材によって定義される距離だけ注入深さを低減することが提案されている。以下の更なる実施形態の議論から明らかになるように、注入深さは、固定され得るか、又は例えば連続的又は別個のステップで変化し得る。
【0065】
図3A~3Dは、薬物送達機構の別の実施形態を示す。キャップ12及び/又はニードルシールド(例えば、硬質ニードルシールド若しくはRNS又はソフトニードルシールド若しくはSNS、例えば図9Aのニードルシールド72を参照)は、図示の状況で既にニードル18から取り除かれている場合がある。図3Aは、ニードルシュラウド14及びハウジング10を有する薬物送達デバイス100の遠位端部分を示す。図3には、注入深さ調整部材36も示されている(図3B~Dを参照)。図に示されている第1の位置でのニードルシュラウド14は、ニードルスティックの意図しない損傷を防ぐために、ニードル先端を超えて遠位に延びている。この実施形態では、シュラウドネジ40が示される(これはもちろん他の実施形態にも存在し得る)。ネジ40は、ニードルシュラウド14をハウジング10に対して遠位に付勢するように便宜的に配置される。ネジ40は、ニードルシュラウド14の内部近位表面、例えば支持面16から離れて向いた表面上で支持される。第1の位置を超えるハウジング10に対するシュラウド14の遠位移動は、例えばシュラウドとプランジャロッド20との相互作用によって防止され得る。
【0066】
図示の実施形態では、注入深さ調整部材36は、接続特徴42、例えばフレキシブルクリップアーム又はコンプライアントビームを有する。ニードルシュラウド14は、調整部材36をニードルシュラウド14に接続するための接続インターフェースを確立するための対応する特徴、例えば接続特徴42と協働するように調整される凹部を有する。ニードルシュラウド14の接続特徴は、シュラウドネジ40が支持される表面上又は表面に、例えばシュラウドネジ40とニードルシュラウド14との間の接触領域から径方向内向きにオフセットして提供することができる。接続は、解放可能であり得るか、解放不可能であり得る。接続が解放不可能の場合、注入深さ調整部材36がニードルシュラウド14に接続されると、接続されたままになり、例えば、少なくとも互いに接続されている構成要素の1つを破壊することなく取り外すことはできない。注入深さ調整部材36はシムであり、そこから接続特徴が軸方向に突き出ている。調整部材36は、リング状であり得、接続特徴42は、リングから近位方向、好ましくはリングの内縁部において軸方向に突き出ている。
【0067】
図示の実施形態では、注入深さ調整部材36は、複数のコンポーネントを有する注入深さ調整アセンブリ44の一部である。注入深さ調整アセンブリ44は、注入深さ調整部材36に加えて、更なる部材46を含む。注入深さ調整部材36は、更なる部材46内に配置及び/又は保持され得、好ましくは、例えば摩擦フィットによって解放可能に保持される。更なる部材46は、アセンブリ44の内部を画定する外側面又は外面を有し得、ここで、調整部材36は、内部に、好ましくは、例えばユーザの指を介して外部から容易にアクセスできないような方式で配置される。更なる部材46は、凸部50、例えば更なる部材46の遠位端から突出し、且つ/又は注入深さ調整部材36の開口で受領されるように配置される中心凸部を含み得る。更なる部材46は、ニードルシュラウド14の一部を受領するように便宜的に構成される。
【0068】
図3Bは、注入深さ調整部材36をニードルシュラウド14に取り付けるプロセス中のアセンブリ44を示す。図3Bでは、アセンブリはニードルシュラウド14の上を案内され、それにより、ニードルシュラウド14が更なる部材46の内部で部分的に受領される。接続特徴42と、ニードルシュラウドの対応する接続特徴とは、依然として軸方向に互いに分離されている。図3Cでは、注入深さ調整部材36は、ニードルシュラウド14に例えばスナップフィットによって接続されている。更なる部材46は、注入深さ調整部材36をシュラウド14に接続するためのアセンブリジグとして機能し得る。更なる部材46は、便宜的には、ハウジング10に、例えばその遠位に向いた表面に当接するように配置された、近位に向いた表面52を有する。ハウジング10と更なる部材46との間の当接は、好ましくは:
a)ニードルシュラウド14が、例えば、調整部材36のニードルシュラウド14への接続プロセス中にユーザによって近位に移動する前;並びに/又は、
b)ニードルシュラウドの遠位端がニードル先端を近位方向に通過する前及び/若しくはニードルシュラウド14が近位方向に移動した後;並びに/又は、
c)ニードルシュラウド14が第2の位置に到達する前及び/若しくはニードルシュラウドがニードルチップを通過した後
に確立される。それにもかかわらず、便宜的には、更なる部材46がハウジング10に隣接する前、又は少なくともそのときに、注入深さ調整部材36がニードルシュラウド14に接続されることが確実にされる。このようにして、接続プロセス中に、ニードルシュラウド14が更なる部材46を介してユーザによって誤って近位側に移動されることを防止する。したがって、接続プロセス中のニードル先端の損傷、及び/又は駆動機構の偶発的な発火又はトリガが回避され得る。したがって、更なる部材46とハウジング10との間の当接によって、注入深さ調整部材42のニードルシュラウド14への信頼性が高く安全な接続プロセスが容易になる。当接を図3Cに示す。
【0069】
注入深さ調整部材36をニードルシュラウド14に接続するのに必要な力は、例えばネジ40の力に対して、ニードルシュラウドをハウジングに対して第2の位置に近位に移動させるのに必要な力よりも便宜的に小さい。注入深さ調整部材の接続中に、例えばネジ40の力に対して、第1の位置から近位に、ニードルシュラウドがわずかに移動することがあり得るが、これは明示的に示されていない。注入深さ調整部材36をニードルシュラウド14に接続するのに必要な力は、ニードル先端がニードルシュラウド14から遠位に突き出るように、ニードルシュラウド14をニードル18に対して移動させるのに必要な力よりも低くてもよい。これは、接続特徴42と、対応する接続特徴とを適切に設計することによって支援できる。注入深さ調整部材36がニードルシュラウド14に接続されると、これは、更なる部材46とハウジング10との間の当接によってユーザに示され得るが、更なる部材46は、注入深さ調整部材を定位置に残したまま取り外して、ニードルシュラウド14に接続することができる。したがって、後続の薬物送達動作中、注入深さは注入深さ調整部材36によって定義され得、この部材の支持面38は皮膚に対して支持され得る。図3Dを参照されたい。我々は、更なる部材46が、ニードルシュラウド14への調整部材36の組立てを容易にし得るが、分配することもできることに留意する。すなわち、注入深さ調整部材36は、ニードルシュラウド14に組み立てるために、ユーザが直接タッチすることもできる。
【0070】
現在提案されている概念における注入深さ調整部材36は、ニードルシュラウドがハウジング10に対して所望の方法又は薬物送達デバイスの動作に必要な方法で移動可能であるようにニードルシュラウド14に調整される。例えば、注入深さ調整部材の外径は、ニードルシュラウドの外径に調整され得る。注入深さ調整部材の内径は、ニードルシュラウドの内径及び/又はニードルに調整され、それにより、ニードルは依然として調整部材の開口を通過して皮膚を突き刺すことができる。調整部材36は、ハウジング10に対するニードルシュラウド14のあらゆる可能な位置にハウジング10の外側に配置され得る。
【0071】
図4は、薬物送達機構の実施形態を示す。この機構は、ハウジング10及びキャップ12を有する薬物送達デバイス100を含む。更に、この機構は、複数の注入深さ調整部材36を含む。各部材は、異なる注入深さ(又は深さ減少)を達成するように構成され得る。デバイス100は、デバイスに接続された注入深さ調整部材なしで使用可能でもあり得、その結果、最大の注入深さが得られる場合がある。調整部材36の各々は、デバイスのニードルシュラウド14に取り付け可能であり得る(この実施形態では示されていない)。注入深さ調整部材36がアセンブリ44の形態で提供される場合、各アセンブリは、図3A~3Dと併せて前述したように構成され得る。デバイス100及び注入深さ調整部材の36は、共通のケース51内に配置され得る。異なる調整部材36は、どの調整部材36が所望の注入深さを達成するかをユーザに知らせるために、異なるようにコード化、例えば色分けされ得る。ケースは、どのコードがどの所望の注入深さに対応するかに関する情報を含み得る。
【0072】
図5は、薬物送達機構の別の実施形態を示す図である。図5では、注入深さ調整部材36は、ニードルシュラウド14に事前に取り付けられているか又は接続されている。注入深さ調整部材36は、好ましくは解放可能にニードルシュラウド14に接続される。部材36は、より大きな注入深さを達成するためにユーザによって除去され得、例えば、それによってニードルシュラウド14の支持面16が露出する(図5では明示的に示されていない)。取り外しを容易にするために、注入深さ調整部材36はタブ54を含み得る。ニードルシュラウド14から注入深さ調整部材54を取り外すために、タブ54をユーザが握ってもよい。キャップ12が定位置にあるとき、タブ54は、例えば軸方向に向けられるように偏向され得る。タブ54は、例えばタブ54の弾力性のために、キャップ12が取り外されてニードルシュラウド14及び/又は注入深さ調整部材36が露出する場合にのみ、図5に示される径方向に突出する形状を想定し得る。
【0073】
図6A及び図6Bは、図6Aでは斜視図に基づき、図6Bでは概略断面図に基づいて、別の実施形態を示している。ここでは、安全部材56がニードルシュラウド14に接続されている(キャップ12が既に取り外された後)。安全部材56は、便宜上、ニードルシュラウド14から取り外し可能である。安全部材56は、注入深さ調整部材36(図6A及び6Bには示されていないが、それでも存在する場合がある)がニードルシュラウド14に接続された後、便宜的に除去される。安全部材56は、ニードルシュラウド14が取り外されない限り、例えばニードルシュラウド14及びハウジング10と協働することによって、ニードルシュラウド14の近位移動を防ぐように配置される。取り外しを容易にするために、安全部材56を取り外すためにユーザが握ることのできるタブ58が提供され得る。安全部材56は、ニードルシュラウド14に接続されると、ニードルシュラウド14の外側面から径方向に突き出てもよい。安全部材56は、リング状であり得る。ニードルシュラウド14は、リングを通して突き出ることができる。安全部材56の近位に向いた表面は、ハウジング10の遠位に向いた表面に接するか又はそれに接するように配置され、且つ/又は安全部材56の遠位に向いた表面は、ニードルシュラウド14の近位に向いた表面に接するように配置されるか又は接する。安全部材56は、好ましくは、ニードルシュラウド14の移動を、更なる部材46とハウジングとの間の当接に関して上記で説明したのと同じ方法で防止又は制限する(上のa)~c)を更に参照されたい)。それゆえ、ニードルスティックの損傷及び/又は駆動機構の偶発的な発火が防止され得る。安全部材56は、本明細書に開示される実施形態のいずれか1つに実施され得る。注入深さ調整部材がニードルシールドに対する取り外し又は移動のためなど、操作のために利用可能である場合、安全部材を含めることが特に便宜的である。追加の安全部材56を提供することにより、ユーザが注入深さ調整部材36を操作している間に、デバイスが誤って発火したり、ユーザにニードルが刺さったりすることを回避することができる。安全部材56が、例えば遠位支持面38を提供するために、ニードルシュラウドに対して第1の位置又は非動作位置から動作位置に移動する必要がある注入深さ調整部材として構成されることも考えられる。そのような実施形態は、明示的に示されていない。
【0074】
図7A~7Dは、薬物送達機構の更なる実施形態を示す。薬物送達機構は、それぞれの場合において、注入深さ調整部材36を含む。調整部材36は、(デバイス部材に接続された)薬物送達デバイス100に事前に取り付けられ得るか、又はユーザによって取り付け可能であり得る。注入深さ調整部材36は、いずれの場合も、ニードルシュラウド14の遠位端部に接続されている。注入深さ調整部材36は更に、ニードルシュラウド14に移動可能に接続又は接続可能である。それぞれの注入深さ調整部材36は、ニードルシュラウド14にネジで係合するか又は係合可能である。図7Aでは、ニードルシュラウド14は、内径、例えばニードル通路開口の内径、例えばニードルシュラウド14によって提供される支持面16に隣接し得る領域にネジ66を有する。このネジは、注入深さ調整部材、例えば外側ネジ等の嵌合ネジ68によってネジ係合され得る。図7Bでは、ネジ係合は、ニードルシュラウド14の外側ネジ66と、好ましくは注入深さ調整部材36の嵌合内側ネジ68によって確立される。
【0075】
ニードルシュラウド14に対して注入深さ調整部材36をネジ込むことにより、注入深さを調整、例えば減少又は増加させることができる。具体的には、注入深さ調整部材36によって提供される支持面38は、部材36をニードルシュラウド14に対して一方向に回転させるときに、ベアリングによって提供される支持面16から軸方向に、及び/又はニードルシュラウド14に対して遠位に移動させることができる。このようにして、注入深さを更に低減することができる。注入深さ調整部材を反対の軸方向に移動させることにより、例えば反対方向に回転させることにより、深さは、例えば調整部材の最も近位位置に達するまで、再び増加され得る。注入深さ調整部材がニードルシュラウド14から、例えばそれをニードルシュラウド14から緩めることによって切り離された場合、ニードルシュラウド14をその支持面16と共に使用して、薬物送達動作のために皮膚に接触させることができる。ニードルシュラウド14と注入深さ調整部材36との間のネジ接続は、好ましくは、セルフロックネジ接続である。このようにして、ネジ40のネジ力の寄与を含み得る力である、ニードルシュラウド14を第1の位置から近位方向に第2の位置に移動するのに必要な起動力又は変位力は、ネジ接続に作用し得るが、注入深さ調整部材とニードルシュラウド14との間に相対的な回転移動を生じさせない。図7Cでは、注入深さ調整部材は、注入深さを更に低減するために遠位方向に移動されている。
【0076】
図7A~7Dに示される実施形態では、注入深さは連続的に変化し得るか、又は決まった数の注入深さから選択され得る。決まった数の注入深さは、デバイス又は機構上の表示により、例えばニードルカバー14(又は安全部材56)及び注入深さ調整部材36上の表示の整列によって示され得る。これは、図7Dでは、表示60で示されている。注入深さ調整部材36は、図示の実施形態においてユーザによって手動で操作され得る。
【0077】
図8A~8Eは、薬物送達機構の更なる実施形態を示す。この実施形態は、図7A~7Dと併せて説明したものと非常に類似している。したがって、以下ではその違いに焦点を当てる。この実施形態では、注入深さは、注入深さ調整部材36を直接操作することによっては手動で調整されない。むしろ、注入深さ調整部材は、選択部材70に動作可能に結合される。選択部材70は、所望の注入深さを選択するためにユーザによって操作されるように提供される。選択部材70は、図8A~8Dに示される実施形態におけるキャップ12である。しかしながら、キャップ12に加えて別の選択部材70も可能である(例えば図8Eにおいて、以下を更に参照されたい)。図8A~8Cは、注入深さを所望の注入深さに調整するための調整又は選択プロセス中の異なる段階を示す。選択部材70は、注入深さ調整部材36に対して回転方向にロックされる。この目的のために、選択部材70又はキャップ12は、1つ又は複数のインターフェース特徴又は選択特徴62、例えば1つ又は複数の隆起部又は1つ又は複数のボスなどのスプライン特徴を有する。特徴62は、選択部材70を注入深さ調整部材36に動作可能に結合するため、例えば調整部材36の対応するインターフェース特徴64、例えば長手方向又は軸方向(すなわち遠位及び/又は近位)に向けられたスロットに係合するために提供される。図8Bは、選択部材70又はキャップ12の残りの部分を含まない、特徴62及び64のみを示す。
【0078】
選択部材又はキャップ12が、注入深さ調整部材36に対して結合、例えば回転方向にロックされると、選択部材70の回転が注入深さ調整部材36に伝達され、所望の注入深さに達するまで、ニードルシュラウド14に対して注入深さ調整部材36を移動、例えば回転させる。選択部材70又はキャップ12は、選択部材70又はキャップ12がハウジング10に対して回転すると、選択部材70又はキャップ12がニードルシュラウド14及び/又はハウジング10に対する相対位置を変化させないように、ニードルシュラウド14及び/又は注入深さ調整部材36に対して配置されている。換言すれば、選択部材70又はキャップ12は、ハウジング10に対して軸方向にロックされ、回転可能である。しかしながら、選択部材70又はキャップ12が回転すると、注入深さ調整部材36は、調整部材36をニードルシュラウド14にネジによって結合するネジ、例えばネジ66又は68のピッチに対応するか又はピッチによって決定される量で、ニードルシュラウド14に対して移動する。例えば、選択部材70又はキャップ12は、ハウジング内の周方向に配置されたリング状の凹部と係合する1つ又は複数のコンプライアントアームを有し得る。ハウジング及び/又はキャップ12の外側の表示は、現在の注入深さ(図示せず)を示し得る。所望の注入深さが選択されると(図8Cを参照)、例えばキャップをハウジング10に対して及び/又は注入深さ調整部材36に対して遠位方向に引くことによって、選択部材70又はキャップ12が除去され得る(図8Dを参照)。選択部材70又はキャップ12を取り外すための移動は、注入深さ調整部材36と選択部材70又はキャップ12との間のスプライン結合により許可される。
【0079】
図8A~8Eに示される実施形態では、キャップ12が薬物送達デバイス100に取り付けられたときにニードル18を覆うニードルシールド72が示されている。ニードルシールド72は、例えばキャップに設けられたプロング又はバーブ(図示せず)によって、キャップ12と共に取り除かれるように、キャップ12に軸方向及び/又は回転方向にロックされ得る。キャップ12が回転すると、ニードルシールド72も、ハウジング10及び/又はニードルシュラウド14に対して回転し得る。薬剤容器22も、ハウジング10に対して回転し得るか、又は例えば一致した回転停止部によってハウジングに対して回転がロックされ得る。薬剤容器がニードルシールド72と共に回転する場合、ニードルシールド72とニードル18との間に相対的な回転移動がなく、ニードル18が損傷するリスクが低減され得る。
【0080】
キャップ12は、図8A~8Dに示されるように、注入深さ調整部材36と直接係合し得る。代替的に、キャップ12は、注入深さ調整部材36に間接的に結合するか、又は注入深さ調整部材36から分離することができる。このオプションを図8Eに示す。この目的のために、キャップ12に加えて選択部材70が提供され得る。部材70は、キャップ12の内部に少なくとも部分的に配置される。キャップ12が定位置にある場合、選択部材70にはデバイスの外部からアクセスできない。キャップ12はデバイスから取り外すことができ、それによって選択部材70を定位置に残す。キャップ12は、キャップの回転が選択部材に移動しないように選択部材から切り離すことができ、又はキャップ12がハウジング10に対して回転方向にロックされ、且つ/若しくは(例えば、回転せずに)引っ張ることによってハウジングから取り外し可能であり得る。したがって、例えばハウジング10及び/又はニードルシュラウド14に対するニードルシールドの回転を伴わずに、ニードルシールド72と共に、通常の方法で、キャップ12をデバイス100から取り外すことができる。選択部材70は、便宜的には注入深さ調整部材36に対して回転がロックされ、且つ/又は且つ操作可能であり、例えば、キャップ12の取り外し後に所望の注入深さに達するまで回転させることができる。所望の注入深さが設定されると、選択部材70もデバイスから取り外すことができる。選択部材70は、ハウジング10に対するニードルシュラウド14の動きをブロック若しくは防止するように、且つ/又は、部材70がデバイス100から取り外される前に、(例えば、注入深さ調整部材36を介して)ニードルシュラウド14へのアクセスを防ぐように、便宜的に配置される。これにより、ユーザの安全性が向上するか、注入深さ調整中に不慮の発火やトリガが発生するリスクが軽減される。図8Eに示されている選択部材70が取り外された後に、デバイスは図8Dに示されている構成を有する。
【0081】
選択部材70及び/又はキャップ12を所望の注入深さに達するまで定位置に置くことは、ユーザの方向が注入深さ調整部材を操作する場合と比較して、注入深さ調整プロセス全体を通してユーザがニードルスティック損傷から保護されるという利点があり得る。
【0082】
図9A~9Eは、薬物送達機構の更なる実施形態を示す。先に議論した実施形態のように、所望の注入深さを選択するために、ハウジング10及び/又はニードルシュラウド14に対して移動可能である選択部材70が提供される。したがって、先に説明した特徴は、この実施形態にも適用される。先に説明した実施形態のように、キャップ12は、選択部材70として作用する場合があるか、キャップ12から分離された別の選択部材70が設けられる場合がある。後者の場合、キャップ12を(ニードルシールド72と共に)除去することができ、選択部材70をユーザの操作に利用可能とする。ここでも、ニードルシールド72は、キャップ12に対して軸方向及び/又は回転方向にロックされ得る。選択部材70は、(前の実施形態のように)スリーブであり得るか又はスリーブを含み得る。
【0083】
図示の実施形態では、注入深さ調整部材36は、ニードルシュラウド14に接続される。図示のように、複数の注入深さ調整部材36a~36cが積み重ねられて配置される。しかしながら、現在議論されている概念はまた、ニードルシュラウド14に接続されたか、又は事前に取り付けされた、ただ1つの注入深さ調整部材36でも機能することが理解される。複数の注入深さ調整部材が図示のように提供される場合、これらの部材は、好ましくは相互接続される。特に、部材36cは、好ましくは、次の部材36bに接続される。部材36bは、部材36aに接続され得る。部材36aは、ニードルシュラウド14に接続され得る。関連する接続特徴、例えばスナップ特徴は、それぞれの接続のために提供され得、これは例えば解放可能であり得る(しかし、好ましくは再確立可能ではない)。選択部材70は、選択特徴62、例えば径方向内側に突出したボスを含む。部材36a~36cは、ニードルシュラウド14に接続されるか又は予め取り付けられる注入深さ調整部材アセンブリを形成し得る。アセンブリの注入深さ調整部材は、アセンブリ又はニードルシュラウドから選択的に取り外し可能であり得る。選択部材70は、注入深さ調整部材に対するその回転方向に応じて、アセンブリの1つ又は複数の部材をその取り外しと同時に選択的に切り離すように構成される。選択部材を取り除いた後に、アセンブリの1つ又は複数の部材が残る場合がある。
【0084】
図9Bは、選択部材70の残りの部分を含まない選択特徴62を示す。選択特徴62は、ニードルシュラウド14又は注入深さ調整部材(アセンブリ)に対する選択特徴62の回転位置に応じて、矢印74で示されている遠位方向に移動したときに、選択特徴が1つ又は複数の注入深さ調整部材36をニードルシュラウド14(又はアセンブリ)から取り外すか、ニードルシュラウド(又はアセンブリ)から注入深さ調整部材を取り外さないように配置される。図8Bに示される位置で、選択部材70又はキャップ12が遠位に移動されて、例えば、デバイスからキャップ12又は選択部材70を取り外す場合、注入深さ調整部材はどれも取り外されず、注入深さはこの機構で達成可能な最低の深さとなる。これは、スロットが注入深さ調整部材の全体に延在し、選択特徴がスロット内で遠位に移動し、ニードルシュラウド14からその部材を切断する方法で注入深さ調整部材のいずれとも相互作用しないためである。注入深さは、ニードルシュラウド14及び/又は注入深さ調整部材36に対して選択特徴62又は選択部材70を(例えば、図9Bに示される位置から時計回りに)回転させることにより段階的に増加させることができる。図9Bでは、ニードルシュラウド14又は注入深さ調整部材に対して、例えば選択部材70をそれに応じて回転させることによって、更に3つの別個の相対角度又は回転位置が可能である。各相対位置では、選択部材70が相対回転位置に応じて取り外されると、1つ、2つ、又は3つ(全て)の注入深さ調整部材36a~36cがニードルシュラウド14から切り離されるか又は取り除かれるため、異なる所望の注入深さが達成される。これは、選択特徴が、ニードルシュラウド14に接続されたままである調整部材に沿って凹部又はスロット内を移動し、次の注入深さ調整部材の近位に向いた表面と係合するためである。次に、この注入深さ調整部材は、選択特徴62が係合する注入深さ調整部材から遠位に配置された全ての注入深さ調整部材と共にニードルシュラウド14から切り離される。
【0085】
図9Cに示される状況では、選択部材70又はキャップ12は、図9Bに示される第1の位置から見て、第3の位置に回転されている。その後、選択部材70又はキャップ12が分離されると、注入深さ調整部材36b及び36cも同様に分離される。したがって、唯一の注入深さ調整部材、すなわち注入深さ調整部材36aが残る。もちろん、動作原理はまた、ニードルシュラウド14から取り外されるか、調整部材及び/又はニードルシュラウド14に対する選択部材の回転位置に依存しない、1つの注入深さ調整部材のみでも機能することを理解すべきである。また、原理は、2つ、又は4つ以上の注入深さ調整部材で機能し、ここで、選択特徴62のニードルシュラウド14又は注入深さ調整部材に対する相対的な回転位置に応じて、選択された注入深さ調整部材は、ニードルシュラウド14に接続されたままであるか又はニードルシュラウド14から取り外される。ニードルシュラウド14及び/又は注入深さ調整部材に対する選択特徴62の回転可能性は、図9Bの矢印76によって示される。
【0086】
図9Dは、選択部材70又はキャップ12がデバイスから切り離されたか分離された後、所望の注入深さの注入深さ調整部材のみが残るか(ここでは部材36a)、又はニードルシュラウド14のみが残る(図示されていない)状況を示す。
【0087】
図9Eは、(図8Eの実施形態のように)キャップ12を選択部材とは独立して(ニードルシールド72と共に)除去できるように、キャップ12から分解される選択特徴62を有する選択部材70を使用する実施形態を示す。
【0088】
本開示では、1つの注入深さ調整部材の厚さ又は1つの注入深さ調整部材によって提供される注入深さの減少は、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、1mm、1.1mm、1.2mm、1.3mm、1.4mm、1.5mmのうちの1つの値以上であり得る。代替的又は追加的に、1つの注入深さ調整部材の厚さ又は1つの注入深さ調整部材によって提供される注入深さの減少は、3.0mm、2.5mm、2.0mm、1.9mm、1.8mm、1.7mm、1.6mm、1.5mmのうちの1つの値以下であり得る。これらの寸法は、1つの注入深さ調整部材のみを有する機構に特に適し得る。代わりに、これらは、注入深さ調整アセンブリのそれぞれの注入深さ調整部材又はアセンブリ全体の厚さに関連し得る。調整部材にプラスチックの構成要素を使用する場合、減少は、好ましくは0.5mm以上である。調整部材に金属の構成要素を使用して、より小さな減少に到達することができる。
【0089】
注入深さ調整部材アセンブリが提供される場合、それぞれの部材は、以下の内の1つの値以上の厚さを有する場合があるか、又は、それぞれの注入深さ調整部材によって提供される注入深さの減少は、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、1mmの内の1つの値以上である場合がある。代替的又は追加的に、それぞれの部材の厚さは、以下の内の1つの値以下である場合があるか、又は、それぞれの注入深さ調整部材によって提供される注入深さの減少は、1.5mm、1.4mm、1.3mm、1.2mm、1mmの内の1つの値以下である場合がある。
【0090】
一例として、図9A以下におけるアセンブリの3つの調整部材に0.5mmの増分を使用することができ、その結果、2~7mm(全ての調整部材が定位置にある)、2.5~7.5(1つが除去された)、3~8mm(2つが除去された)、及び3.5~8.5mm(全てが除去され、ニードルシュラウド面が皮膚に支持されるために使用される)の範囲の注入深さ(最低開始深さから最も高い最大深さまで)が得られる。
【0091】
より広い範囲を対象とし、プラスチック部品を採用することができる別の例として、2~7mm(全ての部材が定位置にある)、3~8mm(1つが除去された)、4~9mm(2つが除去された)、及び5~10mm(全てが除去され、ニードルシュラウド面が使用される)の深さをターゲットとする3つの調整部材に関して、1mmの増分を使用することができる。この実施例では、特定の領域で高い皮下脂肪層を有するものに、より深い注射を可能にするであろう。
【0092】
図8の実施形態のように)注入深さの減少が連続的に調整可能である場合、深さ範囲は、2mm~7mm(最低開始深さ~最高注入深さ)であり得る。
【0093】
調整部材が選択され得るデバイス、例えば図3A~D及び図4の場合、調整部材はまた、0.5~1mmの増分を使用し得、可能な深さ範囲は2~7mmである。
【0094】
例えば図5、6A、及び6Bにあるように、1つの事前に取り付けられた調整部材を有するデバイスの場合、取り付けられた調整部材は、2~7mmの範囲の注入深さをターゲットとし得、定位置にない部材の場合、2.5mm~7.5mm、又はより大である深さを実施することができる。
【0095】
11mm、10mm、9mm、8mm、7mm、6.5mm、6mm、5.5mm、5mmの値以下の最大注入深さは、子供及び/又は成人に適し得る。理想的な注入深さは皮下脂肪層に依存し得る(脂肪層が顕著である場合、より高い注入深さが好ましい)。代替的又は追加的に、子供又は成人の注入深さは、2mm、2.5mm、3mm、3.5mm、4mm、4.5mm、5mmのいずれか1つの値以上であるべきである。本明細書で提案されている機構は、1つ又は複数の注入深さ調整部材によって、そのような注入深さを達成し得る。
【0096】
修正されていない薬物送達デバイス、すなわち注入深さ調整部材がデバイスに接続されていない場合の最大注入深さは、上記で指定された子供に適した注入深さの下限に記載されている値よりも大きくてもよく、且つ/又は、例えば11mm、10mm、9mm、8mm、若しくは7mmであってもよい。
【0097】
薬物送達機構は、注入深さ調整部材が薬物送達デバイスから解放又は切断されたときに、例えば注入深さ調整部材が薬物送達デバイスから取り外されたときに切断される接続特徴を設けることによって、再接続できないように構成され得る。これは、ユーザが、調整部材を再接続しようとすることができないことを知るという利点がある。調整部材が取り外されると、デバイスは薬物送達動作を開始する準備ができており、1つ又は複数の安全機構がもはや存在しなくてもよい。したがって、ユーザが危険であり得る調整部材の再取り付けを試みることを防止することは、ユーザの安全性を高める可能性がある。
【0098】
我々は、薬物送達動作中にハウジング自体が皮膚に支持されるデバイス、すなわち部材支持面を提供するデバイス部材がハウジングであるデバイスもあることに留意する。この場合、ニードルシュラウドは、薬物送達動作が完了した後、又は完全に投与された後にのみニードルを覆うように移動され得る。したがって、ニードルシュラウドに関する上記の言及は、薬物送達動作中に部材支持面で皮膚に支持されるように構成された(ニードルシュラウド14とは潜在的に異なる)一般的なデバイス部材も指すことを理解すべきである。提案された注入深さ調整部材は、更に上述したようにデバイス部材に接続されるか、又は接続可能であり得る。注入深さは、特に、開示された概念による可動容器又はニードルを有するデバイスのためにも調整され得る。
【0099】
本明細書では、用語「薬物」又は「薬剤」は同義的に使用され、1つ又は複数の医薬品有効成分又は薬学的に許容可能な塩又はその溶媒和物及び任意選択的に薬学的に許容可能な担体を含有する医薬製剤を表す。医薬品有効成分(「API」)は、最も広義には、ヒト又は動物に対して生物学的効果を有する化学構造である。薬理学において、薬物又は薬剤は、疾病の治療、治癒、予防、若しくは診断に使用されるか、又はそうでなければ身体的若しくは精神的快適さを高めるために使用される。薬物又は薬剤は、限られた期間にわたって、又は慢性疾患に対しては定期的に使用され得る。
【0100】
以下で説明するように、薬物又は薬剤は、1つ又は複数の疾病の治療のために、少なくとも1種のAPI、又はこれらの組み合わせを、様々なタイプの製剤で含むことができる。APIの例としては、500Da以下の分子量を有する低分子;ポリペプチド、ペプチド、及びタンパク質(例えば、ホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、及び酵素);炭水化物及び多糖類;並びに、核酸、二本鎖又は一本鎖DNA(ネイキッドDNA及びcDNAを含む)、RNA、アンチセンスDNA及びRNAなどのアンチセンス核酸、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、並びにオリゴヌクレオチドが挙げられ得る。核酸は、ベクター、プラスミド、又はリポソームなどの分子送達システムに組み込まれ得る。1つ又は複数の薬物の混合物も企図される。
【0101】
薬物又は薬剤は、薬物送達デバイスと共に使用するように適合された一次パッケージ又は「薬剤容器」内に収容され得る。薬物容器は、例えば、カートリッジ、シリンジ、リザーバ、又は1つ又は複数の薬物の保存(例えば、短期又は長期の保存)に好適なチャンバを提供するように構成された他の頑丈な若しくは可撓性の器であってもよい。例えば、いくつかの例では、チャンバは、少なくとも1日(例えば、1日~少なくとも30日)薬物を貯蔵するように設計され得る。場合によっては、チャンバは、薬物を約1ヶ月から約2年間、貯蔵するように設計され得る。貯蔵は、室温(例えば、約20℃)又は冷蔵温度(例えば、約-4℃~約4℃)で行われ得る。いくつかの例では、薬物容器は、投与される医薬製剤の2種以上の成分(例えば、API及び希釈剤、又は2種の異なる薬物)を各チャンバ内に1つずつ別個に貯蔵するように構成された二重チャンバカートリッジであってもよく、又はそれを含んでもよい。そのような場合、二重チャンバカートリッジの2つのチャンバは、ヒト又は動物の体内に吐出する前及び/又はその間に、2つ以上の成分間の混合を可能にするように構成されてもよい。例えば、2つのチャンバは、(例えば、2つのチャンバ間の導管によって)それらが互いに流体連通するように構成されてもよく、吐出前にユーザが所望する場合に2つの成分を混合することを可能にすることができる。代わりに又は加えて、2つのチャンバは、ヒト又は動物の体内への成分の吐出時に混合を可能にするように構成され得る。
【0102】
本明細書に記載される薬物送達デバイスに含まれる薬物又は薬剤は、多くの異なるタイプの医学的障害の治療及び/又は予防に使用され得る。障害の例としては、例えば、真性糖尿病、又は真性糖尿病に伴う合併症、例えば糖尿病性網膜症、血栓塞栓症、例えば深部静脈血栓塞栓症又は肺血栓塞栓症が挙げられる。障害の更なる例には、急性冠動脈症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、癌、黄斑変性症、炎症、花粉症、アテローム性動脈硬化症、及び/又は関節リウマチが含まれる。API及び薬物の例は、Rote Liste 2014、例えば、限定されるものではないがメイングループ12(抗糖尿病薬物)又は86(オンコロジー薬物)、及びMerck Index,15th editionなどのハンドブックに記載されているものである。
【0103】
1型若しくは2型真性糖尿病又は1型若しくは2型真性糖尿病に伴う合併症の治療及び/又は予防のためのAPIの例としては、インスリン、例えば、ヒトインスリン、又はヒトインスリン類似体若しくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1類似体若しくはGLP-1受容体アゴニスト、又はその類似体若しくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物、又はそれらの任意の混合物が挙げられる。本明細書で用いられる場合、「類似体」及び「誘導体」という用語は、天然に存在するペプチドに存在する少なくとも1つのアミノ酸残基の欠失及び/又は交換により、並びに/或いは少なくとも1つのアミノ酸残基の付加により、天然に存在するペプチドの構造、例えばヒトインスリンの構造から形式的に誘導可能な分子構造を有するポリペプチドを指す。付加及び/又は置換されるアミノ酸残基は、コード可能アミノ酸残基又は他の天然に存在する残基又は純粋合成アミノ酸残基のいずれかであり得る。インスリン類似体は、「インスリン受容体リガンド」とも称される。特に、「誘導体」という用語は、1つ又は複数の有機置換基(例えば、脂肪酸)がアミノ酸のうちの1つ又は複数に結合している、天然に存在するペプチドの構造、例えばヒトインスリンの構造から形式的に誘導可能な分子構造を有するポリペプチドを指す。任意選択で、天然に存在するペプチドに存在する1つ又は複数のアミノ酸が欠失していてもよく、且つ/又はコード不可能アミノ酸を含む他のアミノ酸によって置換されてもよく、又はコード不可能なアミノ酸を含むアミノ酸が天然に存在するペプチドに付加されてもよい。
【0104】
インスリン類似体の例は、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルジン);Lys(B3)、Glu(B29)ヒトインスリン(インスリングルリシン);Lys(B28)、Pro(B29)ヒトインスリン(インスリンリスプロ);Asp(B28)ヒトインスリン(インスリンアスパルト);位置B28におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、又はAlaで置換され、位置B29においてLysがProで置換され得るヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28-B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン及びDes(B30)ヒトインスリンである。
【0105】
インスリン誘導体の例は、例えば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン、Lys(B29)(N-テトラデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデテミル、Levemir(登録商標));B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン、B29-N-オメガ-カルボキシペンタデカノイル-ガンマ-L-グルタミル-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデグルデク、Tresiba(登録商標));B29-N-(N-リトコリル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン及びB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0106】
GLP-1、GLP-1類似体及びGLP-1受容体作動薬の例は、例えば、リキシセナチド(Lyxumia(登録商標))、エキセナチド(エキセンジン-4、Byetta(登録商標)、Bydureon(登録商標)、ヒラモンスターの唾液腺によって産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(Victoza(登録商標))、セマグルチド、タスポグルチド、アルビグルチド(Syncria(登録商標))、デュラグルチド(Trulicity(登録商標))、rエキセンジン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド/HM-11260C(エフペグレナチド)、HM-15211、CM-3、GLP-1エリゲン、ORMD-0901、NN-9423、NN-9709、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン、ビアドール-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、ZP-DI-70、TT-401(ペガパモドチド)、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、チルゼパチド(LY3298176)、バマドゥチド(SAR425899)エキセナチド-XTEN及びグルカゴン-Xtenがある。
【0107】
オリゴヌクレオチドの一例は、例えば、家族性高コレステロール血症の治療用のコレステロール低下アンチセンス治療薬である、ミポメルセンナトリウム(Kynamro(登録商標))又はアルポート症候群の治療用のRG012である。
【0108】
DPP4阻害剤の例としては、リナグリプチン、ビルダグリプチン、シタグリプチン、デナグリプチン、サキサグリプチン、ベルベリンがある。
【0109】
ホルモンの例としては、ゴナドトロピン(ホリトロピン、ルトロピン、コリオゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(Somatropine)(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、リュープロレリン、ブセレリン、ナファレリン、及びゴセレリンなどの、下垂体ホルモン又は視床下部ホルモン又は調節活性ペプチド及びそれらのアンタゴニストが挙げられる。
【0110】
多糖類の例としては、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、超低分子量ヘパリン若しくはそれらの誘導体又は上記多糖類の硫酸化形態、例えばポリ硫酸化形態及び/又は薬学的に許容されるそれらの塩が挙げられる。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例には、エノキサパリンナトリウムがある。ヒアルロン酸誘導体の例は、Hylan G-F 20(Synvisc(登録商標))、ヒアルロン酸ナトリウムである。
【0111】
本明細書で用いられる「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子又はその抗原結合部分を指す。免疫グロブリン分子の抗原結合部分の例としては、抗原への結合能を保持するF(ab)及びF(ab’)2フラグメントが挙げられる。抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、組換え抗体、キメラ抗体、脱免疫化若しくはヒト化抗体、完全ヒト抗体、非ヒト(例えば、マウス)抗体又は一本鎖抗体であり得る。いくつかの実施形態では、抗体は、エフェクター機能を有し、且つ補体を固定することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、Fc受容体への結合能が低減されているか又は結合能がない。例えば、抗体は、Fcレセプタへの結合を支援しない、例えば、Fcレセプタ結合領域の突然変異若しくは欠失を有するアイソタイプ若しくはサブタイプ、抗体フラグメント又は突然変異体であり得る。抗体という用語は、四価二重特異性タンデム免疫グロブリン(TBTI)及び/又はクロスオーバー結合領域配向(CODV)を有する二重可変領域抗体様結合タンパク質に基づく抗原結合分子も含む。
【0112】
「フラグメント」又は「抗体フラグメント」という用語は、完全長抗体ポリペプチドを含まないが依然として抗原に結合可能な完全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を含む抗体ポリペプチド分子由来のポリペプチド(例えば、抗体重鎖及び/又は軽鎖ポリペプチド)を指す。抗体フラグメントは、完全長抗体ポリペプチドの切断部分を含み得るが、この用語は、そのような切断フラグメントに限定されない。本発明に有用な抗体フラグメントとしては、例えば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、線状抗体、単一特異的又は多重特異的な抗体フラグメント、例えば二重特異的、三重特異的、四重特異的及び多重特異的抗体(例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)、1価又は多価抗体フラグメント、例えば2価、3価、4価及び多価の抗体、ミニボディ、キレート化組換え抗体、トリボディ又はビボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュール免疫医薬(SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体及びVHH含有抗体が挙げられる。抗原結合抗体フラグメントの追加の例は、本技術分野において既知である。
【0113】
「相補性決定領域」又は「CDR」という用語は、特異的抗原認識を媒介する役割を主に担う、重鎖及び軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。「フレームワーク領域」という用語は、CDR配列ではなく、且つ抗原結合が可能になるようにCDR配列の適正配置を維持する役割を主に担う、重鎖及び軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、典型的には抗原結合に直接関与しないが、本技術分野で既知であるように、ある特定の抗体のフレームワーク領域内のある特定の残基は、抗原結合に直接関与し得るか、又はCDR内の1つ又は複数のアミノ酸と抗原との相互作用能に影響を及ぼし得る。
【0114】
抗体の例は、抗PCSK-9 mAb(例えば、アリロクマブ)、抗IL-6 mAb(例えば、サリルマブ)及び抗IL-4 mAb(例えば、デュピルマブ)である。
【0115】
本明細書に記載されるいずれのAPIの薬学的に許容可能な塩も、薬物送達デバイスで薬物又は薬剤に使用することが企図される。薬学的に許容可能な塩は、例えば、酸付加塩及び塩基性塩である。
【0116】
本発明の完全な範囲及び趣旨から逸脱することなく、本明細書に記載のAPI、配合物、装置、方法、システム及び実施形態の様々な構成要素の修正(追加及び/又は削除)が行われ得、本発明は、そのような修正形態及びそのあらゆる全ての均等物を包含することが当業者に理解されるであろう。
【0117】
例示的な薬物送達デバイスには、ISO 11608-1:2014(E)のセクション5.2の表1に記載されるようなニードルベースの注入システムが含まれ得る。ISO 11608-1:2014(E)に記載されるように、ニードルベースの注入システムは、多回用量容器システム及び単回用量(部分的又は完全な排出を伴う)容器システムに大別され得る。容器は、交換可能な容器であり得るか又は統合された非交換可能な容器であり得る。
【0118】
ISO 11608-1:2014(E)に更に記載されるように、多回用量容器システムは、交換可能な容器を有するニードルベースの注入デバイスを含み得る。そのようなシステムでは、各容器は、複数の用量を保持し、そのサイズは、固定であっても可変であり得る(ユーザによって事前設定される)。別の複数回用量容器システムには、交換不可能な容器が統合されたニードルベースの注入デバイスが含み得る。そのようなシステムでは、各容器は、複数の用量を保持し、そのサイズは、固定であっても可変であり得る(ユーザによって事前設定される)。
【0119】
ISO 11608-1:2014(E)に更に記載されているように、単回用量容器システムは、交換可能な容器を有するニードルベースの注入デバイスを含み得る。そのようなシステムの一例では、各容器は、単回用量を保持し、これにより、送出可能な全容量が排出される(完全排出)。更なる例では、各容器は、単一の用量を保持し、これにより、送出可能な容量の一部が排出される(部分排出)。ISO 11608-1:2014(E)にもまた記載されているように、単回用量容器システムは、交換不可能な容器が統合されたニードルベースの注入デバイスを含んでもよい。そのようなシステムの一例では、各容器は、単回用量を保持し、これにより、送達可能な全容量が排出される(完全排出)。更なる例では、各容器は、単一用量を保持し、これにより、送達可能な容量の一部が排出される(部分排出)。
【0120】
本明細書に記載する任意の発明は、例示的実施形態に関連する説明によって限定されるものではない。むしろ、本発明及び関連する開示は、特徴又は組み合わせ自体が特許請求の範囲又は例示的な実施形態に明示的に記載されていないとしても、任意の新規な特徴及び特徴の任意の組み合わせを含み、特に特許請求の範囲における特徴の任意の組み合わせを含む。
【符号の説明】
【0121】
10 ハウジング
12 キャップ
14 ニードルシュラウド
16 支持面
17 ニードル通路開口
18 ニードル
20 プランジャロッド
22 薬剤容器
24 ストッパ
26 薬剤容器支持体
28 駆動エネルギー源
30 ロック
32 皮膚
34 組織領域
36 注入深さ調整部材
38 支持面
39 ニードル通路開口
40 シュラウドネジ
42 接続特徴
44 注入深さ調整アセンブリ
46 更なる部材
48 外側面
50 凸部
51 ケース
52 表面
54 タブ
56 安全部材
58 タブ
60 表示
62 インターフェース特徴/選択特徴
64 インターフェース特徴
66 ネジ
68 ネジ
70 選択部材/結合部材
72 ニードルシールド
74 矢印
76 矢印
100 薬物送達デバイス
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
【国際調査報告】