(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】組織受領要素を含む薬物送達機構
(51)【国際特許分類】
A61M 5/20 20060101AFI20241219BHJP
A61M 5/32 20060101ALI20241219BHJP
A61M 5/42 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
A61M5/20 510
A61M5/20 500
A61M5/20 550
A61M5/32 502
A61M5/32 510D
A61M5/42 510
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535736
(86)(22)【出願日】2022-12-13
(85)【翻訳文提出日】2024-07-05
(86)【国際出願番号】 EP2022085641
(87)【国際公開番号】W WO2023110881
(87)【国際公開日】2023-06-22
(32)【優先日】2021-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】マックス・デイヴィス
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・マーク・ケンプ
(72)【発明者】
【氏名】トム・レヴァー
(72)【発明者】
【氏名】マックス・ウィーブリンク
(72)【発明者】
【氏名】ロビー・ウィルソン
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD13
4C066EE14
4C066FF05
4C066LL13
4C066LL15
4C066NN04
(57)【要約】
ハウジング(3)及び針を有する薬物送達デバイス(2)と、針通過開口(7)及び組織受領部分(8)を有する組織受領要素(6)とを含む、薬物送達機構(1)であって、組織受領要素は、深部穿刺による傷害のリスクを低減するために組織を組織受領部分に持ち上げるために、皮膚(9)と相互作用するように構成される、薬物送達機構(1)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物送達機構(1)であって、
ハウジング(3)を有する薬物送達デバイス(2)であって、前記ハウジングは、薬物容器(4)及び針(5)を受領するために提供される、薬物送達デバイス(2)と、
針通過開口(7)及び組織受領部分(8)を有する組織受領要素(6)とを含み、
前記組織受領要素は、前記薬物送達機構の使用中に患者の皮膚(9)に接触するように配置され、
前記組織受領部分は、前記針通過開口から離れた遠位方向に延在し、
前記薬物送達機構は、前記針通過開口及び前記針が、前記針が前記組織受領部分の外側に配置されている第1の位置(A)から、前記針が前記組織受領部分内に配置されている第2の位置(B)に互いに移動可能であるように構成され、
前記針は、前記第1の位置から前記第2の位置への相対移動中に前記組織受領部分に入り、前記組織受領部分に配置された組織を貫通し、
前記組織受領要素は、前記組織受領部分を組織で満たすために前記皮膚と相互作用するように構成され、
前記組織受領要素は、前記薬物送達デバイスの一部であるか、又は前記薬物送達デバイスに取り付け可能である、薬物送達機構(1)。
【請求項2】
前記組織受領部分(8)は、遠位端領域において、前記針通過開口(7)より大きい直径を有する、請求項1に記載の薬物送達機構(1)。
【請求項3】
前記組織受領要素(6)は、前記針通過開口(7)から見て遠位方向に延在する壁(10)を含み、
前記組織受領部分(8)は、前記壁の内面(10.1)によって横方向に区切られる、請求項1又は2に記載の薬物送達機構(1)。
【請求項4】
前記組織受領要素(6)は、前記壁(10)を画定するアーム(10.2)を含み、
前記アームは、前記薬物送達機構の半径方向に完全に対向する、請求項3に記載の薬物送達機構(1)。
【請求項5】
前記壁(10)はU字形の断面を有する、請求項3又は4に記載の薬物送達機構(1)。
【請求項6】
前記薬物送達機構は、針シュラウド本体を有する針シュラウド(11)を含み、
前記組織受領要素(6)は、前記針シュラウド本体の遠位端に配置されるか、又は前記針シュラウド本体の遠位端に取り付け可能である、請求項3~5のいずれか一項に記載の薬物送達機構(1)。
【請求項7】
前記組織受領要素(6)は、前記針シュラウド本体に分離可能に接続される、請求項6に記載の薬物送達機構(1)。
【請求項8】
前記組織受領要素(6)は、前記ハウジング(3)の遠位端部である、請求項3~5のいずれか一項に記載の薬物送達機構(1)。
【請求項9】
前記薬物送達機構は、
プランジャを前記ハウジング(3)に対して遠位方向に駆動して、前記薬物容器(4)から薬物の用量を分注するための、その中に貯蔵されたエネルギーを有するエネルギー貯蔵ユニットと、
第1の状態及び第2の状態を有するように構成されたプランジャ放出機構とを更に含み、
前記プランジャ放出機構が前記第2の状態にあるとき、前記エネルギー貯蔵ユニットの前記蓄積エネルギーが放出される、請求項1~8のいずれか一項に記載の薬物送達機構(1)。
【請求項10】
前記薬物送達デバイス(2)は、前記針(5)が前記針通過開口(7)に対して前記第1の位置(A)から前記第2の位置(B)に移動した後、前記プランジャ放出機構が前記第1の状態から前記第2の状態に切り替わるように構成される、請求項9に記載の薬物送達機構(1)。
【請求項11】
前記針シュラウド(11)は、前記ハウジング(3)に対して第1の針シュラウド位置(C)から第2の針シュラウド位置(D)まで軸方向に移動可能であり、
前記プランジャ放出機構は、前記針シュラウド(11)が前記第1の針シュラウド位置(C)から前記第2の針シュラウド位置(D)に移動した後、前記プランジャ放出機構が前記第1の状態から前記第2の状態に切り替わるように構成される、請求項9又は10のいずれか一項と組み合わせた、請求項6又は7に記載の薬物送達機構(1)。
【請求項12】
前記針(5)は、前記ハウジング(3)に対して固定される、請求項9~11のいずれか一項と組み合わせた、請求項6又は7に記載の薬物送達機構(1)。
【請求項13】
前記針(5)は、前記ハウジング(3)に対して移動可能である、請求項1~5及び8~10のいずれか一項に記載の薬物送達機構(1)。
【請求項14】
前記薬物送達デバイス(2)は、自動注入器である、請求項1~13のいずれか一項に記載の薬物送達機構(1)。
【請求項15】
前記薬物送達機構は、キャップ(12)を含み、
前記キャップは、前記組織受領要素(6)の一部を受領するのに適した半径方向の凹部を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の薬物送達機構(1)。
【請求項16】
前記薬物容器(4)は、シリンジである、請求項1~15のいずれか一項に記載の薬物送達機構(1)。
【請求項17】
前記薬物送達機構は、キャップ(12)を含み、
前記キャップ(12)は、針シールドリムーバを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の薬物送達機構(1)。
【請求項18】
前記組織受領部分(8)は、その遠位端から前記針通過開口(7)に向かって見て、継続的に先細である、請求項1~17のいずれか一項に記載の薬物送達機構(1)。
【請求項19】
薬物送達機構(1)であって、
ハウジング(3)を有する薬物送達デバイス(2)であって、前記ハウジングは、薬物容器(4)及び針(5)を受領するために提供される、薬物送達デバイス(2)と、
針通過開口(7)及び組織受領部分(8)を有する組織受領要素(6)とを含み、
前記組織受領要素は、前記薬物送達機構の使用中に患者の皮膚(9)に接触するように配置され、
前記組織受領部分は、前記針通過開口から離れた遠位方向に延在し、
前記薬物送達機構は、前記針通過開口及び前記針が、前記針が前記組織受領部分の外側に配置されている第1の位置(A)から、前記針が前記組織受領部分内に配置されている第2の位置(B)に互いに移動可能であるように構成され、
前記針は、前記第1の位置から前記第2の位置への相対移動中に前記組織受領部分に入り、前記組織受領部分に配置された組織を貫通し、
前記組織受領要素は、前記組織受領部分を組織で満たすために前記皮膚と相互作用するように構成され、
前記組織受領要素は、前記薬物送達デバイスの一部であるか、又は前記薬物送達デバイスに取り付け可能であり、
前記組織受領要素は、前記針通過開口から見て遠位方向に延在する壁(10)を含み、
前記組織受領部分は、前記壁の内面(10.1)によって横方向に区切られ、
前記薬物送達機構は、針シュラウド本体を有する針シュラウド(11)を含み、
前記組織受領要素は、前記針シュラウド本体の遠位端に取り付け可能である、薬物送達機構(1)。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
薬物を送達する際の患者の傷害のリスクを低減するため、且つ薬物を患者の体内に効果的に送達することを確保するために、患者の体内への針の貫通の深さが重要である。市販の薬物送達デバイス、特に自動注入器は、多くの場合、固定された針の貫通深さのみを有する機構を有する。しかし、これには欠点がある。一部の患者では、固定された針の貫通深さが、薬物の安全な送達を確実にするには深過ぎるか、十分でない場合がある。この問題は、特に薬物送達デバイスを子供に使用すべき場合に生じる。子供は、概して利用可能な組織が少なく、針によって貫通される可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
特に注射深度のユーザの安全性に関して、薬物送達機構に関連する改善を促進することが、本開示の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0003】
この目的は、本明細書に開示される主題、例えば添付の独立請求項に定義される主題によって達成される。好都合な改良及び開発は、従属請求項及び/又は下記の説明を受ける。
【0004】
本開示の一態様は、薬物送達機構に関する。薬物送達機構は、ハウジングを有する薬物送達デバイスを含み、ハウジングは、薬物容器及び針を受領するために提供される。
【0005】
針は、好都合にはユーザの皮膚を突き刺すように構成される。針を通して、医薬品は、ユーザに、例えばユーザの組織に投与され得る。一実施形態では、針は、例えばハウジング内に受領されるとき、ハウジングに対して軸方向に固定される。すなわち、ハウジングに対する針の軸方向移動は、好ましくは遠位方向及び/又は近位方向で防止され得る。針は、薬物送達デバイスのハウジング内に受領され得る。しかし、本開示の概念が、皮膚を突き刺すため及び/又は薬物送達動作のために、例えばバネによって駆動されてハウジングに対して移動するように構成された可動針を含むか、又は可動針を保持するように提供された装置にも適用されることに留意されたい。
【0006】
一実施形態では、針は、薬物容器の内部と流体連通してもよく、又は流体連通にされてもよい。針は、薬物容器に一体化されてもよい。薬物、例えば液体医薬品は、好都合には容器の内部に配置される。薬物容器は、シリンジ、例えば、ステーク針などの針が予め取り付けられたシリンジであってもよい。別法として、薬物容器はカートリッジであってもよく、これは例えばカートリッジセプタムを針ユニットの針で突き刺すことによって、別個の針ユニットと流体連通させなければならない場合がある。
【0007】
加えて、薬物送達機構は、針通過開口及び組織受領部分を有する組織受領要素を含む。組織受領要素は、薬物送達機構の使用中に患者の皮膚に接触するように配置され、組織受領部分は、針通過開口から離れた遠位方向に延在する。薬物送達機構は、針通過開口及び針が、針が組織受領部分の外側に配置されている第1の位置から、針が組織受領部分内に配置されている第2の位置に、互いに移動可能であるように構成され、第1の位置から第2の位置への相対移動中に針が組織受領部分に入り、組織受領部分に配置された組織を貫通する。組織受領要素は、組織受領部分を組織で満たすために、皮膚と相互作用するように構成される。
【0008】
組織受領要素の組織受領部分により、皮膚上の貫通領域を針の貫通深さに調整することができる。従って、薬物送達組立体は、薬物を送達する際の患者の傷害のリスクを低減し、特に患者が子供などのより薄い組織を有する患者である際に、薬物の信頼できる送達を確実にする。針が入る皮膚領域の調整は、皮膚を針通過開口に向かって移動させる方法で皮膚を操作することによって達成することができる。このようにして、針が皮膚を貫通する領域で組織の厚さが増加する。更に、針通過開口と針が互いに移動可能であるように構成される薬物送達機構は、組織受領部分への貫通に利用可能な組織厚さが操作される前に針が挿入されないことを達成することができる。これはまた、薬物送達機構の適用安全性の増加にもつながる。
【0009】
一実施形態では、組織受領部分は、その遠位端から針通過開口に向かって見て、継続的に先細であってもよい。換言すれば、組織受領部分の断面は、その遠位端から近位方向に減少してもよい。別法として、又は追加として、組織受領部分は、針通過開口に移行してもよい。例えば、組織受領部分の近位端は、針通過開口の遠位端に遷移してもよい。
【0010】
一実施形態では、組織受領要素は、薬物送達デバイスの一部である。しかし、組織受領要素はまた、薬物送達デバイスに取り付け可能であってもよい。
【0011】
一実施形態では、針通過開口は、ハウジング内のガイドチャネル若しくはトラックの遠位端部又は針シュラウドであり、この部分を通してその中で針が移動することができる。
【0012】
「遠位」又は「遠位端」という用語は、薬物送達デバイス又はその構成要素の、薬物送達デバイスの分注端部に最も近い位置に配置されるか又は配置されることになる端部を指す。「近位端」という用語は、装置又はその構成要素の、装置の分注端から最も遠くに配置されるか又は配置されことになる端部を指す。遠位端及び近位端は、軸の方向に互いに離れて配置される。軸は、薬物送達機構又はその要素の長手方向軸であってもよい。
【0013】
一実施形態では、薬物送達機構は、皮膚が組織受領部分内で膨らみ、針が第1の位置にあるときに、針先端が患者の皮膚に接触できないように構成される。このようにして、針によって引き起こされる意図しない傷害を防ぐことができる。
【0014】
一実施形態では、組織受領部分は、遠位端領域においてより大きな直径を有し、この端領域は、針通過開口より組織受領部分の近位端から最も遠い領域である。組織受領部分は、針通過開口の方向に先細であってもよい。この形状は、針入口点の領域における皮膚の変形を支持する。
【0015】
一実施形態では、組織受領部分の遠位端領域の直径は、18~20mm、例えば30mmを超えることができる。
【0016】
一実施形態では、組織受領要素は、針通過開口から見て遠位方向に延在する壁を含み、組織受領部分は、壁の内面によって横方向に区切られる。壁は皮膚の接触面として機能し、薬物送達機構が皮膚に押し付けられると皮膚が変形することを可能にする。壁の形状及び大きさを設計することにより、医薬品送達中に皮膚が操作される方法に特に影響を与えることが可能である。
【0017】
一実施形態では、組織受領要素は、互いに対して移動可能な壁を画定するアームを含む。更に、アームは、弾性的に柔軟であるように設計され得る。アームの可動性により、薬物送達機構が皮膚に押し付けられたときに、患者に痛みを生じさせないように、アームがわずかに屈曲することができる。
【0018】
一実施形態では、アームは、薬物送達機構の半径方向に完全に対向する。組織受領要素はまた、3、4、5、6、7又は8個などの3個以上のアームも含むことができ、それぞれは、組織受領部分の周囲に沿って均等に間隔を置く。更に、一実施形態では、アームがボウル形状を形成するように、アームが互いに真隣に配置されるように、アームの数が増加する。
【0019】
一実施形態では、壁の断面は湾曲している。遠位端から軸方向に近位端まで見ると、壁は凹状であることが可能である。これは、アームが組織受領部分の周りで湾曲していることを意味する。壁は、U字形断面を有してもよい。そのような形状は、皮膚が壁に均等に接することを可能にするので、皮膚上のデバイスの安全な保持が確実になる。しかし具体的には、これらの形状により、穿刺部位の領域の皮膚が針通過開口に向かって上方に膨らむ。
【0020】
一実施形態では、薬物送達機構は、針シュラウドを含む。針シュラウドは、針を覆うように提供され得る。針シュラウドは、針が皮膚を刺す前及び/又は針が皮膚から除去された後、例えば薬物送達動作の完了後に針を覆うように提供され得る。薬物送達動作が開始される前に、針シュラウドは、例えば針の先端を覆うために(例えば、遠位方向に針の先端を超えて軸方向に延在することによって)ハウジングから遠位に突き出てもよい。薬物送達動作のために、針シュラウドは、ハウジングに対して近位に移動され得る。薬物送達動作の完了後、針シュラウドは、例えば針の先端を覆うためにハウジングに対して遠位に移動し得る。薬物送達デバイスは、シュラウドバネを含んでもよい。シュラウドバネは、針シュラウドを例えばハウジングに対して遠位方向に移動させるために、針シュラウドと動作可能に連結可能であってもよく、又は連結されてもよい。針シュラウドを近位方向に移動させるために、シュラウドバネの力を克服する必要があり得る。例えば、薬物送達動作が完了し、デバイス又は機構が皮膚から取り除かれた後の最終位置では、針シュラウドは、例えばロック機構によってハウジングに対する近位移動に対してロックされ得る。
【0021】
一実施形態では、針シュラウドは活性化部材である。活性化部材は、薬物送達動作のトリガリングを可能にするため、又は薬物送達動作をトリガするために、ハウジングに対して移動されなければならないことがある部材である。薬物送達動作のトリガリングを可能にすることは、活性化部材の移動に加えて、トリガ部材などの別の部材を作動させなければならず、例えばトリガボタンを押さなければならないことを含み得る。
【0022】
一実施形態では、針シュラウドは、針シュラウド本体を含み、組織受領要素は、針シュラウド本体の遠位端に配置されるか、又は針シュラウド本体の遠位端に取り付け可能である。組織受領要素は、針シュラウド本体に分離可能に接続され得る。換言すれば、組織受領要素は、針シュラウドに予め取り付けられ得、針シュラウドから取り外し可能であり得る。組織受領要素は、針シュラウドに糸により又はスナップロックにより接続され得るか、又は接続可能であり得る。従って、針シュラウドを、組織受領要素の異なる形状及び寸法と組み合わせることが可能である。別法として、組織受領要素は、針シュラウド本体の一体型部分であり得、すなわち針シュラウド及び組織受領要素は、この場合は一体である。
【0023】
一実施形態では、組織受領要素は、ハウジングに分離可能に接続され得る。換言すれば、組織受領要素は、ハウジングの遠位端部に予め設置され得、例えば糸により又はスナップロックによりハウジングから取り外し可能であり得る。組織受領要素はハウジングから除去して、様々な組織受領要素の異なる形状及び寸法をハウジングに接続することができる。別法として、組織受領要素は、ハウジングの一体型部分であり得、すなわちハウジング及び組織受領要素は、この場合は一体である。この実施形態では、薬物送達機構は針シュラウドを有さず、組織受領要素がハウジングに取り付けられ、針はハウジングに対して軸方向に移動可能であることが可能である。
【0024】
薬物送達機構は、組織受領要素が薬物送達デバイスから除去されたか、又は離断されたときに、例えば組織受領要素が薬物送達デバイスから除去されたときに壊れる接続特徴を提供することによって、それを再接続できないように構成され得る。
【0025】
一実施形態では、組織受領要素は、例えば薬物送達機構が製造業者によって提供されるとき、薬物送達デバイスから離断される。好ましくは、ユーザは、組織受領要素をデバイス部材に接続するか否かを決定することができる。一旦、組織受領要素が薬物送達デバイスに接続されると、接続は解放可能又は解放不能(非解放可能)であり得る。
【0026】
一実施形態では、薬物送達機構は、エネルギー貯蔵ユニットを更に含む。エネルギー貯蔵ユニットは、駆動バネ又はガスリザーバなどの別の種類のエネルギー源であってもよい。薬物送達デバイスは、例えばエネルギー貯蔵ユニットから得られるエネルギーを使用して、薬物送達動作を実行するように構成される。エネルギー貯蔵ユニットは、薬物送達デバイスの薬物送達動作のためのエネルギーを提供するように構成され得る。エネルギーは、薬物容器から薬物を分注するために、薬物送達デバイスの駆動部材、例えばプランジャロッドを駆動するために使用され得る。薬物送達動作のために、駆動部材は、エネルギー貯蔵ユニットによって提供されるエネルギーによって、ハウジングに対して遠位方向に移動され得る。
【0027】
一実施形態では、薬物送達デバイスは、自動注入器である。自動注入器では、薬物送達動作のためのエネルギーは、エネルギー貯蔵ユニットに予め貯蔵され得る。すなわち、ユーザは、薬物送達動作のためのエネルギーを、例えば使用のためにデバイスを準備するときに提供する必要はない。むしろ、このエネルギーは製造業者によってシステムにプリロードされてもよい。例えば、駆動バネは、薬物送達動作のためのエネルギーを提供するために、事前にストレスを加えられ得るか、又は事前に付勢され得る。
【0028】
一実施形態では、薬物送達機構は、第1の状態及び第2の状態を有するように構成されたプランジャ放出機構を含み、エネルギー貯蔵ユニットの蓄積エネルギーは、プランジャ放出機構が第2の状態にあるときに放出される。
【0029】
一実施形態では、エネルギー貯蔵ユニットは、プリロードされたバネを含むことができる。バネは、例えばコイルバネであってもよい。
【0030】
一実施形態では、プランジャ放出機構は、針が第1の位置から第2の位置まで針通過開口に対して移動した後、第1の状態から第2の状態に切り替えられる。
【0031】
一実施形態では、針シュラウドは、第1の針シュラウド位置から第2の針シュラウド位置までハウジングに対して軸方向に移動可能であり、プランジャ放出機構は、針シュラウドが第1の針シュラウド位置から第2の針シュラウド位置に移動した後、プランジャ放出機構が第1の状態から第2の状態に切り替えられるように構成される。
【0032】
一実施形態では、針は、エネルギー貯蔵ユニットがエネルギーを放出した後、針が第2の位置から第1の位置に移動するように構成される。
【0033】
一実施形態では、針シュラウドは、エネルギー貯蔵ユニットがエネルギーを放出した後、針シュラウドが第2の針シュラウド位置から第1の針シュラウド位置に移動するように構成される。
【0034】
一実施形態では、針はハウジングに対して移動可能ではなく、すなわち針はハウジングに対して固定される。
【0035】
一実施形態では、針シュラウドが第2の針シュラウド位置にある場合、針は第1の位置から第2の位置に排他的に移動可能である。
【0036】
一実施形態では、薬物送達デバイス組立体は、トリガボタンを含み、プランジャ放出機構が第2の状態にあるとき、及びトリガボタンがユーザによって操作された後に、エネルギー貯蔵ユニットの蓄積エネルギーが放出される。
【0037】
一実施形態では、針はハウジングに対して移動可能である。更に、針は、第2の状態ではハウジングに対して排他的に移動し得る。
【0038】
一実施形態では、薬物送達機構は、キャップを含み、キャップは、組織受領要素の一部を受領するのに適した半径方向の凹部を含む。凹部は、組織受領要素の壁の内面を受領するのに適し得る。
【0039】
一実施形態では、キャップは、組織受領要素を覆い、及び/又は受領し得る。
【0040】
一実施形態では、キャップは、壁の外面、すなわち組織受領部分に背を向ける壁の表面が、キャップが組織受領要素に嵌合されるときにキャップによって覆われないように構成される。
【0041】
一実施形態では、キャップは、薬物送達デバイス又は機構の遠位端、例えば針端を覆い、薬物送達デバイス又は機構から取り外し可能、又は離断可能であり得る。
【0042】
一実施形態では、キャップが取り外されると、薬物送達デバイス又は機構の針通過開口が露出し得る。
【0043】
一実施形態では、キャップは、針シールドリムーバを含む。針シールドリムーバは、好ましくは、針シールドに軸方向にロックされ、針シールドは、例えばキャップが薬物送達デバイス又は薬物送達機構上に所定の位置にあるときに、針を覆い得る。従って、例えば針シールドリムーバと針シールドとの相互作用に起因して、針シールドは、薬物送達デバイスからキャップと共に除去され得る。針シールドは、針に接続されるとき、針の遠位端(針先端)を覆い得る。
【0044】
異なる実施形態又は態様と併せて上述及び後述する特徴は、そのような組み合わせが本明細書で上述又は後述で明示的に開示されていない場合であっても、互いに組み合わせることができることに留意されたい。本開示及び具体的に提案された概念の更なる特徴、利点並びに利便性は、図面と併せて例示的実施形態の以下の説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】本発明による、薬物送達機構の例示的実施形態の等角図を示す。
【
図2】分注動作の前の
図1の実施形態の一部の断側面図を示す。
【
図3】分注動作中の
図1の実施形態の一部の別の断側面図を示す。
【
図4】本発明による、組織受領要素及び薬物送達デバイスの一部の等角図を示す。
【
図5】組織受領要素に接合された、本発明によるキャップの等角図を示す。
【
図6】上にキャップが装着された、
図1の実施形態の一部の断側面図を示す。
【
図7】キャップを取り外し中の、
図1の実施形態の一部の別の断側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
同一の要素、同一の種類の要素、及び同一又は同様に作用する要素は、図面内で同じ参照番号を提供されていることがある。
【0047】
図1~7は、本発明による薬物送達機構1の同じ実施形態を示す。
【0048】
薬物送達機構1は、薬物送達デバイス2を含む。薬物送達デバイス2は、国際公開第2015/004052A1号パンフレットに開示されたデバイスと非常に似ており、その開示内容全体は、あらゆる目的、特に駆動機構又はそこに名付けられている「プランジャ放出機構」の設計に関して参照により本明細書に組み込まれる。ハウジング3、薬物容器4及び針5(
図1に針5は示されていない)を有する薬物送達デバイス2。薬物容器4を受領するために提供されるハウジング3であって、
図1の薬物容器4は、ハウジング3の開口又は窓を通して見える。ハウジング3は、好都合には薬物送達デバイス2の長さの大部分、例えば薬物送達デバイス2の全長の60%以上、又は70%以上、又は80%以上を覆う。
【0049】
図1に示されるように、薬物送達機構1は、組織受領要素6を追加的に含む。組織受領要素6は、針通過開口7及び組織受領部分8を含む。組織受領要素6は、患者の皮膚9に接触して支持するように適合される。それ故に、組織受領要素6の遠位面は、支持面を提供する。支持面は、針通過開口7の周囲に延在し得る。組織受領部分8は、針通過開口7から離れた遠位方向に延在する。組織受領部分8は、壁10の内面10.1によって区切られる。壁10は、針通過開口7の遠位方向に配置され、内面10.1が支持面である。
【0050】
ハウジング3は、薬物容器4を保持するために提供され、及び/又は保持する。医薬品、例えば液体医薬品は、薬物容器4内に配置される。ハウジング3は、針5を保持するために提供され、及び/又は保持する。換言すれば、針5は、ハウジング3内に配置又は配置可能であり得る。針5は、薬物容器4の一体部分であることが可能であり、例えば(永久的若しくは解除可能に)薬物容器本体に接続されているか、又は薬物容器から分離されている。第1の場合、薬物容器4はシリンジであり得る。第2の場合、薬物容器4はカートリッジであり得る。カートリッジが薬物容器4として使用される場合、最初に、薬物容器及び針5を流体的に切断することができ、薬物容器内部と針との間の流体連通は、薬物送達デバイス2の動作中にのみ確立される。
【0051】
加えて、好都合には薬物送達動作を駆動するために提供される駆動機構は、ハウジング3に好都合に提供される。駆動機構は、プランジャロッド(明示的には図示されていない)を含む。図示の実施形態では、薬物送達デバイス2は、自動注入器である。
【0052】
図1に描くように、薬物送達機構1は、針シュラウド11を含み、針シュラウド11は、ハウジング3から遠位側に突出する。針シュラウド11は、ハウジング3に対して近位方向に移動可能である。針シュラウド11はまた、ハウジング3に対して遠位方向に移動可能であり得る。針シュラウド11は、針シュラウド本体を有し、組織受領要素6は、針シュラウド本体の遠位端に配置される。
【0053】
針シュラウド11は、ハウジング3に対して初期位置又は第1の針シュラウド位置Cから第2の針シュラウド位置Dまで移動可能である。第2の針シュラウド位置Dは、トリガ位置であり得る。
【0054】
図4に描かれたように、組織受領部分8及び壁10を有する組織受領要素6は、薬物送達デバイス2に、例えば糸により又はスナップロックにより分離可能に取り付けられる。壁10は、2本のアーム10.2を含む。アーム10.2は、薬物送達機構1の半径方向に完全に対向する。特に
図2、3、6、及び7に示されているように、壁はU字形の断面を有する。壁10の断面はまた、湾曲又は凹状にすることができる。従って、組織受領部分8は、遠位端領域において、針通過開口7より大きい直径を有する。組織受領部分8は、その遠位端から針通過開口に向かって見て、継続的に先細であってもよい。
【0055】
図2は、第1の位置Aにおける針5を示し、
図3は、針通過開口7に対する第2の位置Bにおける針5を示す。
図2はまた、第1の針シュラウド位置Cの針シュラウド11も示す一方で、
図3は、ハウジング3に対する第2の針シュラウド位置Dの針シュラウド11を示す。第1の位置Aでは、針5は、組織受領部分8の外側に配置され、位置Aでは針5は皮膚9を突き刺すことができない。第2の位置Bでは、針5は、組織受領部分8内に配置される。第2の位置Bでは、針5は皮膚9を突き刺し、遠位針先端は皮膚表面下の組織に配置されるので、針5から組織に薬物を送達できる。
図1~7の図示の実施形態では、薬物送達機構1は、針通過開口7及び針5が、第1の位置Aから第2の位置Bに互いに移動可能であるように構成される。更に、針シュラウド11は、第1の針シュラウド位置Cから第2の針シュラウド位置Dまで近位方向にハウジング3に対して軸方向に移動可能である。
【0056】
薬物送達機構1は、針通過開口7を覆うためのキャップ12を含む。キャップは
図5~7に示されている。キャップ12は、薬物送達機構1の遠位端に配置される。キャップ12は、機構の残りの部分、例えば組織受領要素6に分離可能に接続される。キャップ12は、ハウジング3及び/又は薬物送達デバイス2の別の構成要素若しくは部材に追加的又は代替的に分離可能に接続することができる。キャップ12は、針シュラウド11の遠位端、及び針5、例えば遠位針先端が薬物送達動作中又は薬物送達動作のために薬物送達デバイス2の内部から皮膚9を突き刺すために通過する針通過開口7を覆う。
【0057】
キャップ12は、針シールドリムーバ、すなわちグリッパを含むことができ、これは、例えば、キャップが薬物送達機構1から分離又は離断されたときに、針シールド13がキャップ12と共に針5から取り外されるように、針5を覆う針シールド13と係合する。
図7に見られるように、針通過開口7の直径は、キャップ12を取り外すときに、針シールドリムーバと針シールド13が共に針通過開口7を通して軸方向に移動できるように設計される。
図5に描かれたように、キャップ12は、組織受領要素6の一部を受領するのに適した半径方向の凹部12.1を含む。凹部12.1は、薬物送達機構1の半径方向に完全に対向する。好ましくは、
図6に描かれたように、凹部12.1の寸法は、キャップ12が組織受領要素6上に取り付けられたときに、壁10.1の内面が凹部12.1に押し付けられるようなものである。
【0058】
図1~7に示される実施形態では、本発明による薬物送達機構1の使用は、組織受領要素6からキャップ12を取り外すことから始まる。
図6は、キャップ12が取り付けられた薬物送達機構1を示している。キャップ12を取り外した後、針通過開口7及び壁10の内面10.1を患者の皮膚9上に配置できる。
図2及び
図3に見られるように、壁10の形状により、遠位軸方向に2つのアーム10.2に力がかかると、壁10の2つのアーム10.2の間に位置する皮膚の領域が近位方向に上方に膨らむ。アーム10.2は、剛体であり、すなわち、それに作用する半径方向及び/又は軸方向の力を反応させることができる。示された実施形態では、アーム10.2は、半径方向にわずかに弾力性があり得るので、アーム10.2を患者の皮膚に押し付けることで痛みが生じない。更に、皮膚表面に押し込まれたアームは、皮膚9上の薬物送達機構1のグリップを改善するので、送達プロセス中の薬物送達機構1の滑りが相殺される。薬物送達機構1を皮膚9上に置いた後、薬物送達機構1は
図2に示すような状態にある。この状態では、針5は第1の位置Aにあり、針シュラウド11は第1の針シュラウド位置Cにある。
【0059】
実施形態による薬物送達機構1は、エネルギー貯蔵ユニット、例えば圧縮バネ(図示せず)などの駆動バネを含む。エネルギー貯蔵ユニットは、薬物送達動作中に、薬物容器4に対して遠位方向にプランジャロッドを駆動するように配置される。この移動中、薬物容器内に可動的に保持され、薬物容器4を近位側で封止し得るストッパを、薬物容器4の出口に向かって移動させて、薬物容器4内に保持されている薬物又は医薬品を出口を通して分注することができる。出口は、針5によって形成又は画定され得る。バネとは異なる他の潜在的な駆動エネルギー源は、ガス圧力を提供するのに適したモータ若しくはリザーバによってプランジャロッドを駆動するための電力電池又はバッテリを含み、そこでガス圧力を使用して薬物送達動作を駆動することができる。薬物送達デバイス2は、自動注入器である。自動注入器における薬物送達動作を駆動するためのエネルギーは、薬物送達デバイス2に一体化された構成要素によって提供され得、通常、エネルギーが、用量設定手順中にユーザによってバネに負荷される、多くのバネ駆動のペン型可変用量注入器の場合のように、デバイスの動作中にユーザによってデバイスに負荷される必要はない。薬物送達デバイス2は、好都合には単一投与デバイスであり、すなわち、1用量のみを分注するように提供される。薬物送達デバイス2は、使い捨て薬物送達デバイス、すなわちその使用後に廃棄されるデバイスであり得る。デバイスは、ペン型デバイスであってもよい。医薬品容器4及び/又は針5は、薬物送達デバイス2内、例えばハウジング3内に軸方向に固定することができ、又はハウジング3に対して、例えば皮膚を突き刺すために移動可能である。第1の場合、ユーザは、針5で皮膚9を突き刺すための移動を実行しなければならない場合がある。第2の場合には、針5の穿孔は、薬物送達デバイス2の針挿入機構によって駆動され得る。
【0060】
更に、薬物送達機構1は、第1の状態及び第2の状態を有するように構成されたプランジャ放出機構(図示せず)を含む。示された実施形態では、プランジャ放出機構は、第1の状態でエネルギー貯蔵ユニットからのエネルギーの放出を防ぎ、第2の状態でエネルギー貯蔵ユニットからのエネルギーの放出を可能にする。
図2では、プランジャ放出機構は第1の状態である。プランジャ放出機構は、プランジャロッドの遠位方向への移動を防止する機械的ロックであり得る。
【0061】
針5が第1の位置Aにあり、針シュラウド11が第1の針シュラウド位置Cにある後、ハウジング3を針シュラウド11に対して移動させることによって薬物送達動作を初期化できる。この動きにより、針5が遠位方向に進むので、針5が皮膚9を貫通する。加えて、この動きにより、プランジャ放出機構のロックが解除される。プランジャ放出機構は、エネルギー貯蔵ユニットのエネルギーを放出するので、薬物は、組織受領部分8内に置かれた皮膚9の膨らみ領域に注入される。この状態は
図3に示されており、ここで、針5は第2の位置Bにあり、針シュラウド11は第2の針シュラウド位置Dにある。
【0062】
薬物送達動作が完了した後、薬物送達機構を皮膚9から取り外してもよい。針シュラウド11は、ハウジング3に対して付勢されてもよい。従って、組織受領要素6が皮膚9から取り外されると、針シュラウド11は、第1の針シュラウド位置Cに向かって移動される。針シュラウド11は、例えば第1の針シュラウド位置Cを超えて、ハウジング3に対して最終的なロック位置に移動することができる。この位置では、針シュラウド11は、好都合には、例えばシュラウド11のロック機能とハウジング3との間のロック係合により、近位方向への移動に対して、ハウジング3に対して軸方向にロックされる。軸方向にロックされているため、針シュラウド11は、ハウジング3に対して近位側にもはや移動できない。これにより、使用後の針スティックの損傷からユーザを保護する。
【0063】
「薬物」又は「医薬品」という用語は、本明細書では同義語として使用され、1つ又は複数の医薬品有効成分又は薬学的に許容されるその塩若しくは溶媒和物、及び任意選択で、薬学的に許容される担体を含む医薬製剤を示す。医薬品有効成分(「API」)とは、最も広範な意味では、ヒト又は動物に生物学的影響を及ぼす化学構造である。薬理学では、薬物又は医薬品は、疾患の処置、治療、予防若しくは診断に使用されるか、又は別法により身体的若しくは精神的健康を向上させるために使用される。薬物又は医薬品は、限られた継続期間にわたって又は慢性疾患では定期的に使用され得る。
【0064】
以下に説明するように、薬物又は医薬品は、1つ又は複数の疾患の治療のために様々なタイプの製剤中に少なくとも1つのAPI又はその組合せを含むことができる。APIの例としては、500Da以下の分子量を有する低分子、ポリペプチド、ペプチド及びタンパク質(例えば、ホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント及び酵素)、炭水化物及び多糖、並びに核酸、二本鎖又は一本鎖DNA(ネイキッド及びcDNAを含む)、RNA、アンチセンスDNA及びRNAなどのアンチセンス核酸、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子及びオリゴヌクレオチドが挙げられ得る。核酸は、ベクター、プラスミド又はリポソームなどの分子送達システムに組み込まれ得る。1つ又は複数の薬物の混合物も企図される。
【0065】
薬物又は医薬品は、薬物送達デバイスでの使用に適合された一次パッケージ又は「薬物容器」内に含有され得る。薬物容器は、例えば、1つ又は複数の薬物の貯蔵(例えば、短期若しくは長期貯蔵)に適したチャンバを提供するように構成されたカートリッジ、シリンジ、リザーバ又は他の固体若しくは可撓性容器であり得る。例えば、場合によっては、チャンバは、薬物を少なくとも1日(例えば、1日~少なくとも30日)貯蔵するように設計され得る。場合によっては、チャンバは、薬物を約1ヶ月~約2年間貯蔵するように設計され得る。貯蔵は、室温(例えば、約20℃)又は冷蔵温度(例えば、約-4℃~約4℃)で行われ得る。場合によっては、薬物容器は、投与される医薬製剤の2つ以上の成分(例えば、APIと希釈剤又は2つの異なる薬物)を各チャンバに1つずつ個別に貯蔵するように構成されたデュアルチャンバカートリッジであり得るか又はそれを含み得る。かかる場合、デュアルチャンバカートリッジの2つのチャンバは、人体若しくは動物体への投薬前及び/又は投薬中に2つ以上の成分間の混合を可能にするように構成され得る。例えば、2つのチャンバは、互いに流体連通するように(例えば、2つのチャンバ間の導管を介して)且つ必要に応じて投薬前にユーザによる2つの成分の混合を可能にするように構成され得る。別法として又は追加として、2つのチャンバは、人体又は動物体への成分の投薬時に混合を可能にするように構成され得る。
【0066】
本明細書に記載する薬物送達デバイスに含まれる薬物又は医薬品は、多くの異なるタイプの医学的障害の治療及び/又は予防のために使用することができる。障害の例としては、例えば、糖尿病又は糖尿病に伴う合併症、例えば糖尿病性網膜症、血栓塞栓障害、例えば深部静脈血栓塞栓症又は肺血栓塞栓症が挙げられる。障害の更なる例は、急性冠症候群(ACS)、アンギナ、心筋梗塞、癌、黄斑変性、炎症、枯草熱、アテローム硬化症及び/又は関節リウマチである。API及び薬物の例は、Rote Liste 2014、例えば、限定されるものではないが、メイングループ12(抗糖尿病薬物)又は86(オンコロジー薬物)、及びMerck Index,15th editionなどのハンドブックに記載されているものである。
【0067】
1型若しくは2型糖尿病又は1型若しくは2型糖尿病に伴う合併症の治療及び/或いは予防のためのAPIの例としては、インスリン、例えば、ヒトインスリン、又はヒトインスリン類似体若しくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1類似体若しくはGLP-1受容体アゴニスト、又はその類似体若しくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物、又はそれらのいずれかの混合物が挙げられる。本明細書で用いられる場合、「類似体」及び「誘導体」という用語は、天然に発生するペプチドに発生する少なくとも1つのアミノ酸残基の欠失及び/若しくは交換により、並びに/又は少なくとも1つのアミノ酸残基の付加により、天然に発生するペプチドの構造、例えばヒトインスリンの構造から形式的に誘導可能な分子構造を有するポリペプチドを指す。付加及び/又は交換アミノ酸残基は、コード可能アミノ酸残基若しくは他の天然に発生する残基、又は純合成アミノ酸残基のいずれかであることが可能である。インスリン類似体は、「インスリン受容体リガンド」とも称される。特に、「誘導体」という用語は、天然に発生するペプチドの構造から形式的に誘導可能な分子構造、例えば1つ又は複数の有機置換基(例えば脂肪酸)がアミノ酸の1つ又は複数に結合したヒトインスリンの分子構造を有するポリペプチドを指す。任意選択的に、天然に発生するペプチドに発生する1つ若しくは複数のアミノ酸が欠失し、且つ/又は非コード可能アミノ酸を含む他のアミノ酸によって置き換えられるか若しくは天然に発生するペプチドに非コード可能であるものを含めてアミノ酸が付加される。
【0068】
インスリン類似体の例は、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン)、Lys(B3)、Glu(B29)ヒトインスリン(インスリングルリシン)、Lys(B28)、Pro(B29)ヒトインスリン(インスリンリスプロ)、Asp(B28)ヒトインスリン(インスリンアスパルト)、位置B28におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val又はAlaで置換され、位置B29においてLysがProで置換され得るヒトインスリン、Ala(B26)ヒトインスリン、Des(B28-B30)ヒトインスリン、Des(B27)ヒトインスリン及びDes(B30)ヒトインスリンである。
【0069】
インスリン誘導体の例は、例えば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン、Lys(B29)(N-テトラデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデテミル、Levemir(登録商標))、B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン、B29-N-ミリストイルヒトインスリン、B29-N-パルミトイルヒトインスリン、B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン、B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン、B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン、B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン、B29-N-(N-パルミトイル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン、B29-N-オメガ-カルボキシペンタデカノイル-ガンマ-L-グルタミル-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデグルデク、Tresiba(登録商標))、B29-N-(N-リトコリル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン、B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン及びB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0070】
GLP-1、GLP-1類似体及びGLP-1受容体作動薬の例は、例えば、リキシセナチド(Lyxumia(登録商標))、エキセナチド(エキセンジン-4、Byetta(登録商標)、Bydureon(登録商標)、ヒラモンスターの唾液腺によって産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(Victoza(登録商標))、セマグルチド、タスポグルチド、アルビグルチド(Syncria(登録商標))、デュラグルチド(Trulicity(登録商標))、rエキセンジン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド/HM-11260C(エフペグレナチド)、HM-15211、CM-3、GLP-1エリゲン、ORMD-0901、NN-9423、NN-9709、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン、ビアドール-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、ZP-DI-70、TT-401(ペガパモドチド)、BHM-034.MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、チルゼパチド(LY3298176)、バマドゥチド(SAR425899)、エキセナチド-XTEN及びグルカゴン-Xtenである。
【0071】
オリゴヌクレオチドの一例は、例えば家族性高コレステロール血症の治療用のコレステロール低下アンチセンス治療薬である、ミポメルセンナトリウム(Kynamro(登録商標))又はアルポート症候群の治療用のRG012である。家族性高コレステロール血症の治療用のコレステロール低下アンチセンス治療薬である、ミポメルセンナトリウム(Kynamro(登録商標))又はアルポート症候群の治療用のRG012である。
【0072】
DPP4阻害剤の例としては、リナグリプチン、ビルダグリプチン、シタグリプチン、デナグリプチン、サキサグリプチン、ベルベリンがある。
【0073】
ホルモンの例としては、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン及びゴセレリンなどの脳下垂体ホルモン又は視床下部ホルモン又は調節性活性ペプチド及びそれらのアンタゴニストが挙げられる。
【0074】
多糖類の例としては、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、若しくは超低分子量ヘパリン、又はそれらの誘導体、或いは上記多糖類の硫酸化形態、例えばポリ硫酸化形態及び/又は製薬上許容されるそれらの塩が挙げられる。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの製薬上許容される塩の一例は、エノキサパリンナトリウムである。ヒアルロン酸誘導体の一例は、Hylan G-F 20(Synvisc(登録商標))、ヒアルロン酸ナトリウムである。
【0075】
本明細書で用いられる用語「抗体」は、免疫グロブリン分子又はその抗原結合部を指す。免疫グロブリン分子の抗原結合部の例としては、抗原への結合能を保持するF(ab)及びF(ab’)2フラグメントが挙げられる。抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、組換え抗体、キメラ抗体、脱免疫化若しくはヒト化抗体、完全ヒト抗体、非ヒト(例えば、マウス)抗体又は一本鎖抗体であることが可能である。いくつかの実施形態では、抗体は、エフェクタ機能を有し、且つ補体を固定することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、Fc受容体への結合能が低減されているか又は結合能がない。例えば、抗体は、Fc受容体への結合を支援しない、例えば、Fc受容体結合領域の突然変異若しくは欠失を有するアイソタイプ又はサブタイプ、抗体フラグメント又は突然変異体であることが可能である。抗体という用語は、四価二重特異性タンデム免疫グロブリン(TBTI)及び/又はクロスオーバー結合領域配向(CODV)を有する二重可変領域抗体様結合タンパク質に基づく抗原結合分子も含む。
【0076】
「フラグメント」又は「抗体フラグメント」という用語は、完全長抗体ポリペプチドを含まないが、依然として抗原に結合可能な完全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を含む、抗体ポリペプチド分子由来のポリペプチド(例えば、抗体重鎖及び/又は軽鎖ポリペプチド)を指す。抗体フラグメントは、完全長抗体ポリペプチドの切断部分を含むことができるが、この用語は、そうした切断フラグメントに限定されない。本発明に有用な抗体フラグメントとしては、例えば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、線状抗体、単一特異的又は多重特異的な抗体フラグメント、例えば二重特異的、三重特異的、四重特異的及び多重特異的抗体(例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)、1価又は多価抗体フラグメント、例えば2価、3価、4価及び多価の抗体、ミニボディ、キレート化組換え抗体、トリボディ又はビボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュール免疫医薬(SMIP)、結合ドメインイムノグロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体及びVHH含有抗体が挙げられる。抗原結合抗体フラグメントの追加の例は、当技術分野で公知である。
【0077】
「相補性決定領域」すなわち「CDR」という用語は、特異的抗原認識を媒介する役割を主に担う、重鎖及び軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。「フレームワーク領域」という用語は、CDR配列ではなく、且つ抗原結合が可能になるようにCDR配列の適正配置を維持する役割を主に担う、重鎖及び軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、典型的には抗原結合に直接関与しないが、当技術分野で公知であるように、特定の抗体のフレームワーク領域内の特定の残基は、抗原結合に直接関与できるか、又はCDR内の1つ若しくは複数のアミノ酸と抗原との相互作用能に影響を及ぼすことができる。
【0078】
抗体の例は、抗PCSK-9 mAb(例えば、アリロクマブ)、抗IL-6 mAb(例えば、サリルマブ)及び抗IL-4 mAb(例えば、デュピルマブ)である。
【0079】
本明細書に記載するいずれのAPIの薬学的に許容可能な塩も、薬物送達デバイスで薬物又は医薬品に使用することが企図される。薬学的に許容可能な塩は、例えば、酸付加塩及び塩基性塩である。
【0080】
本発明の完全な範囲及び精神から逸脱することなく、本明細書に記載のAPI、配合物、装置、方法、システム及び実施形態の様々な構成要素の修正(追加及び/又は削除)が行われ得、本発明は、そのような修正形態及びそのあらゆる均等物を包含することが当業者に理解されるであろう。
【0081】
例示的な薬物送達デバイスには、ISO 11608-1:2014(E)のセクション5.2の表1に記載されているような針ベースの注入システムが含まれ得る。ISO 11608-1:2014(E)に記載されているように、針ベースの注入システムは、多回用量容器システム及び単回用量(部分的又は完全な排出を伴う)容器システムに大別され得る。容器は、交換可能な容器であり得るか、又は統合された非交換可能な容器であり得る。
【0082】
ISO 11608-1:2014(E)に更に記載されているように、多回用量容器システムは、交換可能な容器を有する針ベースの注入デバイスが含まれ得る。そのようなシステムでは、各容器は、複数の用量を保持し、そのサイズは、固定又は可変であり得る(ユーザによって事前設定される)。別の多回用量容器システムには、交換不可能な容器が統合された針ベースの注入デバイスが含まれ得る。そのようなシステムでは、各容器は、複数の用量を保持し、そのサイズは、固定又は可変であり得る(ユーザによって事前設定される)。
【0083】
ISO 11608-1:2014(E)に更に記載されているように、単回用量容器システムは、交換可能な容器を有する針ベースの注入デバイスが含まれ得る。そのようなシステムの一例では、各容器は、単回用量を保持し、これにより、送出可能な全容量が排出される(完全排出)。更なる例では、各容器は、単回用量を保持し、これにより、送出可能な容量の一部が排出される(部分排出)。ISO 11608-1:2014(E)にも記載されているように、単回用量容器システムは、交換不可能な容器が統合された針ベースの注入デバイスが含まれ得る。そのようなシステムの一例では、各容器は、単回用量を保持し、これにより、送出可能な全容量が排出される(完全排出)。更なる例では、各容器は、単回用量を保持し、これにより、送出可能な容量の一部が排出される(部分排出)。
【符号の説明】
【0084】
1 薬物送達機構
2 薬物送達デバイス
3 ハウジング
4 薬物容器
5 針
6 組織受領要素
7 針通過開口
8 組織受領部分
9 皮膚
10 壁
10.1 壁内面
10.2 アーム
11 針シュラウド
12 キャップ
12.1 キャップ凹部
13 針シールド
A 第1の位置針
B 第2の位置針
C 第1の位置針シュラウド
D 第2の位置針シュラウド
【国際調査報告】