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特表2024-546916TCRαβ、CD33及びCD123を標的とする免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチド
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】TCRαβ、CD33及びCD123を標的とする免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチド
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20241219BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20241219BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20241219BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20241219BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20241219BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241219BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20241219BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20241219BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241219BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20241219BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20241219BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61P35/02
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K39/395 U
A61K31/7088
A61P37/04
A61K48/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535740
(86)(22)【出願日】2022-12-16
(85)【翻訳文提出日】2024-07-09
(86)【国際出願番号】 EP2022086353
(87)【国際公開番号】W WO2023111266
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】21306822.4
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】22305477.6
(32)【優先日】2022-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505166225
【氏名又は名称】アブリンクス エン.ヴェー.
(71)【出願人】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】エレーヌ・ボヌヴォ
(72)【発明者】
【氏名】メリッサ・ダラース
(72)【発明者】
【氏名】アンネリース・ルーブルック
(72)【発明者】
【氏名】シュテファニ・スターレンス
(72)【発明者】
【氏名】ダイアン・ファン・フーリック
(72)【発明者】
【氏名】ジュディス・フェルヘルスト
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA02
4B064CA05
4B064CA06
4B064CA08
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA57X
4B065AA57Y
4B065AA72X
4B065AA72Y
4B065AA83X
4B065AA83Y
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA13
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB27
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB31
4C085CC23
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB09
4C086ZB27
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本技術は、急性骨髄性白血病(AML)に罹患している対象を処置するための新規なタイプの薬物を提供することを目的とする。具体的には、本技術は、少なくとも3つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むポリペプチドであって、少なくとも1つのISVDがT細胞受容体αβ(TCRαβ)に結合し、少なくともISVDがCD33に結合し、少なくとも1つのISVDがCD123に結合することを特徴とするポリペプチドを提供する。本技術はまた、核酸、ベクター及び組成物を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリペプチド、前記ポリペプチドを含む組成物、又は前記ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含む組成物であって、前記ポリペプチドが少なくとも3つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むか又はそれからなり、前記ISVDの各々が、1つ以上のペプチドリンカーを介して連結されていてもよい3つの相補性決定領域(それぞれCDR1~CDR3)を含み:及びa
a)第1のISVDが、T細胞受容体αβ(TCRαβ)に特異的に結合し、
i.配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR1、又は配列番号6と2若しくは1個のアミノ酸差を有するCDR1;
ii.配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR2、又は配列番号10と2若しくは1個のアミノ酸差を有するCDR2;及び
iii.配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR3、又は配列番号14と2若しくは1個のアミノ酸差を有するCDR3を含み;
b)第2のISVDがCD33に特異的に結合し、
iv.配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR1、又は配列番号7と2若しくは1個のアミノ酸差を有するCDR1;
v.配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR2、又は配列番号11と2若しくは1個のアミノ酸差を有するCDR2;及び
vi.配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR3、又は配列番号15と2若しくは1個のアミノ酸差を有するCDR3を含み;及び
c)第3のISVDがCD123に特異的に結合し、
vii.配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR1、又は配列番号8と2若しくは1個のアミノ酸差を有するCDR1;
viii.配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR2、又は配列番号12と2若しくは1個のアミノ酸差を有するCDR2;及び
ix.配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR3、又は配列番号16と2若しくは1個のアミノ酸差を有するCDR3を含み、
ISVDの順序が、前記ポリペプチドのN末端からC末端まで考慮される互いに対する相対位置を示す、ポリペプチド又は組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のポリペプチド又は組成物であって、
a.前記第1のISVDが、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR2及び配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR3を含み;
b.前記第2のISVDが、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR2及び配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR3を含み;及び
c.前記第3のISVDが、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR2及び配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR3を含む、ポリペプチド又は組成物。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれか一項に記載のポリペプチド又は組成物であって、
a.前記第1のISVDのアミノ酸配列が、配列番号2と90%を超える配列同一性を含み;
b.前記第2のISVDのアミノ酸配列が、配列番号3と90%を超える配列同一性を含み;及び
c.前記第3のISVDのアミノ酸配列が、配列番号4と90%を超える同一性の配列同一性を含む、ポリペプチド又は組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のポリペプチド又は組成物であって、
a.前記第1のISVDが、配列番号2のアミノ酸配列を含み;
b.前記第2のISVDが、配列番号3のアミノ酸配列を含み;及び
c.前記第3のISVDが、配列番号4のアミノ酸配列を含む、ポリペプチド又は組成物。
【請求項5】
前記ポリペプチドが、場合により1つ以上のペプチドリンカーを介して連結された1つ以上の他の基、残基、部分又は結合単位をさらに含み、前記1つ以上の他の基、残基、部分又は結合単位が、前記1つ以上の他の基、残基、部分又は結合単位を含まない対応するポリペプチドと比較して増大した半減期を有する前記ポリペプチドを提供する、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリペプチド又は組成物。
【請求項6】
前記ポリペプチドに増大した半減期を与える前記1つ以上の他の基、残基、部分又は結合単位が、ポリエチレングリコール分子、血清タンパク質又はその断片、血清タンパク質に結合し得る結合単位、Fc部分及び血清タンパク質に結合し得る低分子タンパク質又はペプチドからなる群から選択される、請求項5に記載の使用のためのポリペプチド又は組成物。
【請求項7】
前記ポリペプチドに増大した半減期を与える前記1つ以上の他の基、残基、部分又は結合単位が、血清アルブミン(ヒト血清アルブミンなど)又は血清免疫グロブリン(IgGなど)に結合することができる結合単位からなる群から選択される、請求項5又は6に記載のポリペプチド又は組成物。
【請求項8】
増大した半減期を有する前記ポリペプチドを提供する前記結合単位、ヒト血清アルブミンに結合し得る第4のISVDである、請求項7に記載のポリペプチド又は組成物。
【請求項9】
請求項8に記載のポリペプチド又は組成物であって、ヒト血清アルブミンに結合する前記第4のISVDが、
i.配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR1、又は配列番号9と2若しくは1個のアミノ酸差を有するCDR1;
ii.配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR2、又は配列番号13と2若しくは1個のアミノ酸差を有するCDR2;及び
iii.配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR3、又は配列番号17と2若しくは1個のアミノ酸差を有するCDR3を含む、ポリペプチド又は組成物。
【請求項10】
ヒト血清アルブミンに結合する前記ISVDが、配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR3を含む、請求項8又は9に記載のポリペプチド又は組成物。
【請求項11】
ヒト血清アルブミンに結合する前記ISVDのアミノ酸配列が、配列番号5と90%を超える配列同一性を含む、請求項8~10のいずれか一項に記載のポリペプチド又は組成物。
【請求項12】
ヒト血清アルブミンに結合する前記ISVDが、配列番号5のアミノ酸配列を含む、請求項8~11のいずれか一項に記載のポリペプチド又は組成物。
【請求項13】
前記ポリペプチドのアミノ酸配列が、配列番号1と90%を超える配列同一性を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のポリペプチド又は組成物。
【請求項14】
前記ポリペプチドが配列番号1のアミノ酸配列を含むか又はこれからなる、請求項1~13のいずれか一項に記載のポリペプチド又は組成物。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸。
【請求項16】
請求項15に記載の核酸を含む宿主又は宿主細胞。
【請求項17】
請求項1~14のいずれかに記載のポリペプチドの製造方法であって、
a.適切な宿主細胞若しくは宿主生物において、又は別の適切な発現系において、請求項15に記載の核酸を発現させるステップ;場合によりその後に:
b.請求項1~14のいずれか一項に記載のポリペプチドを単離及び/又は精製するステップ
を少なくとも含む、方法。
【請求項18】
請求項1~14のいずれか一項に記載の少なくとも1つのポリペプチド又は請求項15に記載の核酸を含む組成物。
【請求項19】
少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤及び/又はアジュバントをさらに含み、場合により1つ以上のさらなる薬学的に活性なポリペプチド及び/又は化合物を含む医薬組成物である、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
医薬として使用するための、請求項1~14のいずれか一項に記載のポリペプチド又は請求項18若しくは19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
急性骨髄性白血病AML)の治療に使用するための、請求項1~14のいずれか一項に記載のポリペプチド又は請求項18若しくは19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記AMLが再発性及び/又は難治性AMLである、請求項21に記載の使用のためのポリペプチド又は組成物。
【請求項23】
急性骨髄性白血病(AML)を治療する方法であって、それを必要とする対象に、薬学的活性量の請求項1~14のいずれか一項に記載のポリペプチド又は請求項18若しくは19のいずれか一項に記載の組成物を投与することを含む方法。
【請求項24】
前記AMLが再発性及び/又は難治性AMLである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
急性骨髄性白血病(AML)を治療するための医薬組成物の調製における、請求項1~14のいずれか一項に記載のポリペプチド又は請求項18若しくは19のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項26】
前記AMLが再発性及び/又は難治性AMLである、請求項25に記載のポリペプチド又は組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1 本技術の分野
本技術は、TCRαβ、CD33及びCD123を標的とするポリペプチドに関する。本発明はまた、これらのポリペプチドをコードする核酸分子、並びにこれらの核酸を含むベクターに関する。本技術はさらに、そのようなポリペプチド、核酸又はベクターを含む組成物に関する。本技術はまた、急性骨髄性白血病(AML)に罹患している対象を治療する方法に使用するためのそのような組成物に関する。また、本技術は、これらの組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2 技術的背景
今日まで、急性骨髄性白血病(AML)の治療は困難なままである。細胞傷害性T細胞は、すべての免疫細胞の中で悪性疾患の治療の可能性が最も高いと思われるため、AML治療アプローチは、細胞傷害性T細胞をAML細胞に向けることを目指している。CD33及びCD123抗原は、AMLのほとんどの場合の芽球及び白血病幹細胞で過剰発現されることが見出され、したがって、抗体に基づく治療のための適切な腫瘍関連標的抗原として使用された。Mylotarg(Gemtuzumab Ozogamicin;抗CD33抗体薬物コンジュゲート)は、AMLの治療のために登録された最初の標的化合物であった。最近の治療法は、AML細胞上の腫瘍抗原CD33又はCD123及び細胞傷害性T細胞上のCD3の1つを標的とする二重特異性抗体構築物に基づく。
【0003】
それにより、二重特異性抗体は、CD33+又はCD123+AML細胞に固定することができ、同時にT細胞上のCD3に結合することができる。このようにして、T細胞は腫瘍細胞に近接する。腫瘍細胞上の腫瘍抗原(CD33又はCD123)への二重特異性抗体の多重結合及びT細胞上のTCR関連CD3分子への同時結合は、TCRクラスター形成をもたらす。これは最終的に、TCR特異性に関係なく効率的なT細胞活性化をもたらす。次いで、AML細胞付近の細胞傷害性T細胞活性化は、腫瘍細胞の死滅をもたらし得る。現在臨床試験で試験されている二重特異性抗体構築物は、例えば、フロテツズマブ(MGD006;CD3/CD123 DART)、AMG330又はAMG673(両方ともCD3/CD33 BiTE)である。
【0004】
AML患者集団(患者間)及び個々の患者のAML芽球集団(患者内)の両方に見られるCD33及びCD123発現の不均一性を考慮すると、AMLの効果的な治療は複雑である。さらに、単一の腫瘍抗原を標的とすることは、治療的介入によって誘導される選択圧のために腫瘍細胞上のこの抗原の発現を失うリスクをもたらす(Gardner et al.,Blood,127(20),2406-2410(2016);Blood.2017 Jan 5;129(1):100-104)。したがって、単一の標的化療法の限界を克服し、より広い患者範囲を有する新しい治療アプローチが強く必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
3 本技術の概要
本発明者らは、急性骨髄性白血病(AML)細胞上のCD33及びCD123を二重標的化するポリペプチド(又はISVD構築物)が、T細胞上のT細胞受容体αβ(TCRαβ)を標的化することと組み合わされて、AML細胞の効果的な殺傷をもたらすことを見出した。CD33/CD123二重発現細胞に対する殺傷活性は、CD33/CD3 AMG 330 BiTE又はCD123/CD3 MGD006 DARTなどの単一標的化ベンチマークに匹敵した。しかしながら、本発明のポリペプチドは、CD33及びCD123単一発現細胞に対して強い殺傷活性を示したが、単一標的化ベンチマークは、それらの特異的標的を発現する細胞に対してのみ活性を示した。さらに、本発明のポリペプチドは、ベンチマークと比較して、類似又はさらに低いレベルの炎症性サイトカインを誘導する。
【0006】
いくつかの実施形態では、本技術のポリペプチドは効率的に製造され(例えば微生物宿主において)、皮下投与に有利且つ便利な高濃度で低い粘度を示した。さらに、そのようなポリペプチドは、処置される対象における既存の抗体に対する反応性が限られている(すなわち、抗体構築物による第1の処置の前に対象に存在する抗体)。好ましい実施形態では、そのようなポリペプチドは、連続治療が好都合に間隔を空けられるように十分に長い半減期を治療される対象において示す。
【0007】
本技術のポリペプチドは、少なくとも3つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むか又はこれからなり、ここで、少なくとも1つのISVDはTCRαβに特異的に結合し、少なくとも1つのISVDはCD33に特異的に結合し、少なくとも1つのISVDはCD123に特異的に結合する(例示的なポリペプチドを図1に示す)。好ましくは、TCRαβに結合する少なくとも1つのISVDはヒトTCRαβに特異的に結合し、CD33に結合する少なくとも1つのISVDはヒトCD33に特異的に結合し、CD123に結合する少なくとも1つのISVDはヒトCD123に特異的に結合する。
【0008】
ポリペプチドは、好ましくは、場合により1つ以上のペプチドリンカーを介して連結された1つ以上の他の基、残基、部分又は結合単位をさらに含み、前記1つ以上の他の基、残基、部分又は結合単位は、前記1つ以上の他の基、残基、部分又は結合単位を含まない対応するポリペプチドと比較して、増大した半減期を有するポリペプチドを提供する。例えば、結合単位は、血清タンパク質、好ましくはヒト血清アルブミンなどのヒト血清タンパク質に結合するISVDであり得る。
【0009】
本技術のポリペプチドを発現することができる核酸分子、核酸又は核酸を含むベクター、及びポリペプチド、核酸又はベクターを含む組成物も提供される。組成物は、好ましくは医薬組成物である。
【0010】
本技術のポリペプチドをコードする核酸又はベクターを含む宿主又は宿主細胞も提供される。
【0011】
本技術に従うポリペプチドの製造方法であって:
a.場合により適切な宿主細胞若しくは宿主生物において、又は別の適切な発現系において、本技術に従うポリペプチドをコードする核酸配列を発現させるステップ、次いで、場合により、
b.本技術によるポリペプチドの単離及び/又は精製するステップ
を少なくとも含む方法がさらに提供される。
【0012】
さらに、本技術は、医薬として使用するための、ポリペプチド、ポリペプチドを含む組成物、又はポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸若しくはベクターを含む組成物を提供する。好ましくは、ポリペプチド又は組成物は、急性骨髄性白血病(AML)の治療に使用するためのものであり、好ましくはAMLは再発性及び/又は難治性AMLである。
【0013】
さらに、AMLを治療する方法であって、それを必要とする対象に、薬学的に活性な量の本技術によるポリペプチド又は組成物を投与することを含む方法が提供される。AMLは、好ましくは再発性及び/又は難治性AMLである。好ましい実施形態では、方法は、1つ以上の追加の治療剤を投与することをさらに含む。
【0014】
AMLを治療するための医薬組成物の調製における本技術のポリペプチド又は組成物の使用がさらに提供され、AMLは好ましくは再発性及び/又は難治性AMLである。
【0015】
特に、本技術は以下の実施形態を提供する:
【0016】
実施形態1.医薬として使用するための、ポリペプチド、ポリペプチドを含む組成物、又はポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含む組成物であって、ポリペプチドが少なくとも3つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むか又はそれからなり、前記ISVDの各々が、1つ以上のペプチドリンカーを介して連結されていてもよい3つの相補性決定領域(それぞれCDR1~CDR3)を含み:
a)第1のISVDが、T細胞受容体αβ(TCRαβ)に特異的に結合し、
i.配列番号6のアミノ酸配列を有するか、又は配列番号6と2若しくは1個のアミノ酸差を有するCDR1;
ii.配列番号10のアミノ酸配列を有するか、又は配列番号10と2若しくは1個のアミノ酸差を有するCDR2;及び
iii.配列番号14のアミノ酸配列を有するか、又は配列番号14と2若しくは1個のアミノ酸差を有するCDR3を含み;
b)第2のISVDがCD33に特異的に結合し、
iv.配列番号7のアミノ酸配列を有するか、又は配列番号7と2若しくは1個のアミノ酸差を有するCDR1;
v.配列番号11のアミノ酸配列を有するか、又は配列番号11と2若しくは1個のアミノ酸差を有するCDR2;及び
vi.配列番号15のアミノ酸配列を有するか、又は配列番号15と2若しくは1個のアミノ酸差を有するCDR3を含み;及び
c)第3のISVDがCD123に特異的に結合し、
vii.配列番号8のアミノ酸配列を有するか、又は配列番号8と2若しくは1個のアミノ酸差を有するCDR1;
viii.配列番号12のアミノ酸配列を有するか、又は配列番号12と2若しくは1個のアミノ酸差を有するCDR2;及び
ix.配列番号16のアミノ酸配列を有するか、又は配列番号16と2若しくは1個のアミノ酸差を有するCDR3を含み、
ISVDが、N末端から始まる順序である、ポリペプチド、又は組成物。
【0017】
実施形態2.少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤及び/又はアジュバントをさらに含み、場合により1つ以上のさらなる薬学的に活性なポリペプチド及び/又は化合物を含む医薬組成物である、実施形態1に記載の使用のための組成物。
【0018】
実施形態3.実施形態1又は2に記載の使用のためのポリペプチド又は組成物であって、
a)前記第1のISVDが、配列番号6のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号10のアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号14のアミノ酸配列を有するCDR3を含み;
b)前記第2のISVDが、配列番号7のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号11のアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号15のアミノ酸配列を有するCDR3を含み;及び
c)前記第3のISVDが、配列番号8のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号12のアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号16のアミノ酸配列を有するCDR3を含む、ポリペプチド又は組成物。
【0019】
実施形態4.実施形態1~3のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド又は組成物であって、
a)前記第1のISVDのアミノ酸配列が、配列番号2と90%を超える配列同一性を有し;
b)前記第2のISVDのアミノ酸配列が、配列番号3と90%を超える配列同一性を有し;及び
c)前記第3のISVDのアミノ酸配列が、配列番号4と90%を超える同一性の配列同一性を有する、ポリペプチド又は組成物。
【0020】
実施形態5.実施形態1~4のいずれかに記載の使用のためのポリペプチド又は組成物であって、
a)前記第1のISVDが配列番号2のアミノ酸配列を有し;
b)前記第2のISVDが、配列番号3のアミノ酸配列を有し;及び
c)前記第3のISVDが、配列番号4のアミノ酸配列を有する、ポリペプチド又は組成物。
【0021】
実施形態6.前記ポリペプチドが、場合により1つ以上のペプチドリンカーを介して連結された1つ以上の他の基、残基、部分又は結合単位をさらに含み、前記1つ以上の他の基、残基、部分又は結合単位が、前記1つ以上の他の基、残基、部分又は結合単位を含まない対応するポリペプチドと比較して、増大した半減期を有するポリペプチドを提供する、実施形態1~5のいずれかに記載の使用のためのポリペプチド又は組成物。
【0022】
実施形態7.増大した半減期をポリペプチドに与える前記1つ以上の他の基、残基、部分又は結合単位が、ポリエチレングリコール分子、血清タンパク質又はその断片、血清タンパク質に結合し得る結合単位、Fc部分及び血清タンパク質に結合し得る低分子タンパク質又はペプチドからなる群から選択される、実施形態6に記載の使用のためのポリペプチド又は組成物。
【0023】
実施形態8.増大した半減期を有するポリペプチドを提供する前記1つ以上の他の基、残基、部分又は結合単位が、血清アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン)又は血清免疫グロブリン(例えば、IgG)に結合し得る結合単位からなる群から選択される、実施形態6~7のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド又は組成物。
【0024】
実施形態9.増大した半減期を有するポリペプチドを提供する前記結合単位が、ヒト血清アルブミンに結合し得るISVDである、実施形態8に記載の使用のためのポリペプチド又は組成物。
【0025】
実施形態10.ヒト血清アルブミンに結合するISVDが、
i.配列番号9のアミノ酸配列を有するか、又は配列番号9と2若しくは1個のアミノ酸差を有するCDR1;
ii.配列番号13のアミノ酸配列を有するか、又は配列番号13と2若しくは1個のアミノ酸差を有するCDR2;及び
iii.配列番号17のアミノ酸配列を有するか、又は配列番号17と2若しくは1個のアミノ酸差を有するCDR3を含む、実施形態9に記載の使用のためのポリペプチド又は組成物。
【0026】
実施形態11.ヒト血清アルブミンに結合するISVDが、配列番号9のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号13のアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号17のアミノ酸配列を有するCDR3を含む、実施形態9~10のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド又は組成物。
【0027】
実施形態12.ヒト血清アルブミンに結合する前記ISVDのアミノ酸配列が、配列番号5と90%を超える配列同一性を有する、実施形態9~11のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド又は組成物。
【0028】
実施形態13.ヒト血清アルブミンに結合する前記ISVDが、配列番号5のアミノ酸配列を有する、実施形態9~12のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド又は組成物。
【0029】
実施形態14.ポリペプチドのアミノ酸配列が、配列番号1と90%を超える配列同一性を有する、実施形態1~13のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド又は組成物。
【0030】
実施形態15.ポリペプチドが配列番号1のアミノ酸配列を含むか又はこれからなる、実施形態1~14のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド又は組成物。
【0031】
実施形態16.AMLの治療に使用するための、請求項1~15のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチド又は組成物。
【0032】
実施形態17.AMLが再発性及び/又は難治性AMLである、請求項16に記載の使用のためのポリペプチド又は組成物。
【0033】
実施形態18.少なくとも3つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むか、又はこれからなるポリペプチドであって、前記ISVDのそれぞれが、1つ以上のペプチドリンカーを介して連結されていてもよい3つの相補性決定領域(それぞれCDR1~CDR3)を含み:
a)第1のISVDが、T細胞受容体αβ(TCRαβ)に特異的に結合し、
i.配列番号6のアミノ酸配列を有するか、又は配列番号6と2若しくは1個のアミノ酸差を有するCDR1;
ii.配列番号10のアミノ酸配列を有するか、又は配列番号10と2若しくは1個のアミノ酸差を有するCDR2;及び
iii.配列番号14のアミノ酸配列を有するか、又は配列番号14と2若しくは1個のアミノ酸差を有するCDR3を含み;
b)第2のISVDがCD33に特異的に結合し、
iv.配列番号7のアミノ酸配列を有するか、又は配列番号7と2若しくは1個のアミノ酸差を有するCDR1;
v.配列番号11のアミノ酸配列を有するか、又は配列番号11と2若しくは1個のアミノ酸差を有するCDR2;及び
vi.配列番号15のアミノ酸配列を有するか、又は配列番号15と2若しくは1個のアミノ酸差を有するCDR3を含み;及び
c)第3のISVDがCD123に特異的に結合し、
vii.配列番号8のアミノ酸配列を有するか、又は配列番号8と2若しくは1個のアミノ酸差を有するCDR1;
viii.配列番号12のアミノ酸配列を有するか、又は配列番号12と2若しくは1個のアミノ酸差を有するCDR2;及び
ix.配列番号16のアミノ酸配列を有するか、又は配列番号16と2若しくは1個のアミノ酸差を有するCDR3を含み、
ISVDが、N末端から始まる順序である、ポリペプチド。
【0034】
実施形態19.実施形態18に記載のポリペプチドであって:
a)前記第1のISVDが、配列番号6のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号10のアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号14のアミノ酸配列を有するCDR3を含み;
b)前記第2のISVDが、配列番号7のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号11のアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号15のアミノ酸配列を有するCDR3を含み;及び
c)前記第3のISVDが、配列番号8のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号12のアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号16のアミノ酸配列を有するCDR3を含む、ポリペプチド。
【0035】
実施形態20.実施形態18又は19のいずれかに記載のポリペプチドであって:
a)前記第1のISVDのアミノ酸配列が、配列番号2と90%を超える配列同一性を有し;
b)前記第2のISVDのアミノ酸配列が、配列番号3と90%を超える配列同一性を有し;及び
c)前記第3のISVDのアミノ酸配列が、配列番号4と90%を超える同一性の配列同一性を有する、ポリペプチド。
【0036】
実施形態21.実施形態18~20のいずれか1つに記載のポリペプチドであって:
a)前記第1のISVDが配列番号2のアミノ酸配列を有し;
b)前記第2のISVDが、配列番号3のアミノ酸配列を有し;及び
c)前記第3のISVDが、配列番号4のアミノ酸配列を有する、ポリペプチド。
【0037】
実施形態22.前記ポリペプチドが、場合により1つ以上のペプチドリンカーを介して連結された1つ以上の他の基、残基、部分又は結合単位をさらに含み、前記1つ以上の他の基、残基、部分又は結合単位が、前記1つ以上の他の基、残基、部分又は結合単位を含まない対応するポリペプチドと比較して、増大した半減期を有するポリペプチドを提供する、実施形態18~21のいずれか1つに記載のポリペプチド。
【0038】
実施形態23.増大した半減期をポリペプチドに与える前記一つ以上の他の基、残基、部分又は結合単位が、ポリエチレングリコール分子、血清タンパク質又はその断片、血清タンパク質に結合し得る結合単位、Fc部分及び血清タンパク質に結合し得る小さなタンパク質又はペプチドからなる群から選択される、実施形態22に記載のポリペプチド。
【0039】
実施形態24.増大した半減期をポリペプチドに与える前記1つ以上の他の基、残基、部分又は結合単位が、血清アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン)又は血清免疫グロブリン(例えば、IgG)に結合し得る結合単位からなる群から選択される、実施形態22~23のいずれか1つに記載のポリペプチド。
【0040】
実施形態25.増大した半減期を有するポリペプチドを提供する前記結合単位が、ヒト血清アルブミンに結合し得るISVDである、実施形態24に記載のポリペプチド。
【0041】
実施形態26.ヒト血清アルブミンに結合するISVDが
i.配列番号9のアミノ酸配列を有するか、又は配列番号9と2若しくは1個のアミノ酸差を有するCDR1;
ii.配列番号13のアミノ酸配列を有するか、又は配列番号13と2若しくは1個のアミノ酸差を有するCDR2;及び
iii.配列番号17のアミノ酸配列を有するか、又は配列番号17と2若しくは1個のアミノ酸差を有するCDR3を含む、実施形態25に記載のポリペプチド。
【0042】
実施形態27.ヒト血清アルブミンに結合するISVDが、配列番号9のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号13のアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号17のアミノ酸配列を有するCDR3を含む、実施形態25~26のいずれか1つに記載のポリペプチド。
【0043】
実施形態28.ヒト血清アルブミンに結合する前記ISVDのアミノ酸配列が、配列番号5と90%を超える配列同一性を有する、実施形態25~27のいずれか1つに記載のポリペプチド。
【0044】
実施形態29.ヒト血清アルブミンに結合する前記ISVDが、配列番号5のアミノ酸配列を有する、実施形態25~28のいずれか1つに記載のポリペプチド。
【0045】
実施形態30.ポリペプチドのアミノ酸配列が、配列番号1と90%を超える配列同一性を有する、実施形態18~29のいずれか1つに記載のポリペプチド。
【0046】
実施形態31.配列番号1のアミノ酸配列を含むか又はこれからなる、実施形態18~29のいずれか1つに記載のポリペプチド。
【0047】
実施形態32.実施形態18~31のいずれか1つに記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸。
【0048】
実施形態33.実施形態32に記載の核酸を含む宿主又は宿主細胞。
【0049】
実施形態34.実施形態18~31のいずれか1つに記載のポリペプチドを製造するための方法であって:
a)適切な宿主細胞若しくは宿主生物において、又は別の適切な発現系において、実施形態32に記載の核酸を発現させ;場合によりその後に:
b)実施形態18~31のいずれか1つに記載のポリペプチドを単離及び/又は精製するステップを少なくとも含む、方法。
【0050】
実施形態35.実施形態18~31のいずれか1つに記載の少なくとも1つのポリペプチド又は実施形態32に記載の核酸を含む組成物。
【0051】
実施形態36少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤及び/又はアジュバントをさらに含み、場合により1つ以上のさらなる薬学的に活性なポリペプチド及び/又は化合物を含む医薬組成物である、実施形態35に記載の組成物。
【0052】
実施形態37.AMLを治療する方法であって、それを必要とする対象に、薬学的活性量の請求項18~31のいずれか1つに記載のポリペプチド又は請求項35~36のいずれか1つに記載の組成物を投与することを含む方法。
【0053】
実施形態38.前記AMLが再発性及び/又は難治性AMLである、請求項37に記載の方法。
【0054】
実施形態39.AMLを治療するための医薬組成物の調製における、請求項18~31のいずれか1つに記載のポリペプチド又は請求項35~36のいずれか1つに記載の組成物の使用。
【0055】
実施形態40.AMLが再発性及び/又は難治性AMLである、請求項39に記載のポリペプチド又は組成物の使用。
【0056】
4.図面の簡単な説明
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】リンカーを介して連結された一価構成要素/ISVD TCRαβ、CD33、CD123及びAlbをN末端からC末端に示す、本発明による多重特異性ISVD構築物の概略図。
図2】BB(右)に結合する一価CD33(左)及びCD123の、ヒト(上)又はカニクイザル(下)トランスフェクトCD33、それぞれCD123細胞への結合。
図3】A025001562(TCR-CD33-CD123多重特異性ISVD構築物、配列番号1)のヒトCD33及び/又はヒトCD123発現細胞ヘの結合。
図4】A025001562、TCR-CD33-CD123多重特異性ISVD構築物、配列番号1(黒い四角)及び参照TCR(灰色の点)の臨床グレードHSAの非存在下(点線の曲線)又は存在下(完全な曲線)における初代T細胞に対する競合アッセイにおける用量依存的阻害。
図5】50μM HSAの存在下でのインピーダンスベースアッセイ(xCELLigence)において15対1のエフェクター対標的比を使用した、対応する種のCD33(左)又はCD123(右)トランスフェクト細胞の用量依存性のヒト(上)又はカニクイザル(下)T細胞媒介性殺傷。
図6】10:1のエフェクター対標的比を使用したフローサイトメトリーベースのアッセイにおける用量依存性のヒト(左)又はカニクイザル(右)T細胞媒介MOLM-13細胞殺傷。%TO-PRO(登録商標)-3陽性標的細胞を、ISVDの濃度に対してプロットする。
図7】インピーダンスベースアッセイ(xCELLigence)において15対1のエフェクター対標的比を使用した用量依存性ヒトT細胞媒介性細胞殺傷。32~35時間のインキュベーション後の細胞指数(CI)を、ISVDの濃度に対してプロットする。
図8】A025001562(TCR-CD33-CD123多重特異性ISVD構築物、配列番号:1)のin vivo生物発光イメージングによるMolm13-luc AML腫瘍成長の阻害。
図9】A025001562(TCR-CD33-CD123多重特異性ISVD構築物、配列番号1)のex vivo生物発光イメージングによるMolm13-luc AML腫瘍成長の阻害。
図10】MOLM-13細胞におけるCD123及びCD33陽性対照と比較した、本発明によるISVDの用量依存性のヒトT細胞媒介性殺傷。
図11】KG-1a細胞におけるCD123及びCD33陽性対照と比較した、本発明によるISVDの用量依存性のヒトT細胞媒介性殺傷。
図12】U-937細胞におけるCD123及びCD33陽性対照と比較した、本発明によるISVDの用量依存性のヒトT細胞媒介性殺傷。
図13】ヒト末梢血単核細胞(PBMC)内のCD123及びCD33陽性対照並びに陰性対照(非標的化TCE)と比較した本発明によるISVDの用量依存性の単球枯渇。
図14】異なるサイトカインのパネルを使用した、健康なドナー由来のヒトPBMCにおける、CD123及びCD33陽性対照並びに陰性対照(非標的化TCE)と比較した、本発明によるISVDの用量依存性のサイトカイン放出。A.IL-6。B.IFNγ。C.TNFα。D.IL-2。
図15】すべての試験患者におけるCD33及びCD123陽性対照に対する本発明によるISVDのAML芽球殺傷。
図16】AML試料あたりのCD33又はCD123陽性細胞のパーセンテージを示す散布図。
図17】CD123及びCD33陽性対照並びに陰性対照と比較した、本発明によるISVDに対する広範囲の疾患サブタイプを有するAML患者由来の原発性芽球の細胞生存率。A.患者番号3。B.患者番号4。C.患者番号5。
図18】本発明によるISVDで処置したカニクイザルの末梢血中で経時的に測定した総CD123+T細胞(A)、単球CD33+細胞(B)、CD4+T細胞(C)及びCD8+T細胞(D)の個々の絶対細胞数。動物M1及びM2には0.04μg/kgを投与し、M3及びM4には0.4μg/kgの本発明によるISVDの溶液の単回1時間連続静脈内注入を投与した。
【発明を実施するための形態】
【0058】
5 本技術の詳細な説明
本技術は、急性骨髄性白血病(AML)を処置するための新規なタイプの薬物を提供することを目的とする。
【0059】
本発明者らは、急性骨髄性白血病(AML)細胞上のCD33及びCD123を二重標的化するポリペプチド(又はISVD構築物)が、T細胞上のT細胞受容体αβ(TCRαβ)を標的化することと組み合わされて、AML細胞の効果的な殺傷をもたらすことを見出した。殺傷活性は、CD33/CD3 AMG 330 BiTE又はCD123/CD3 MGD006 DARTなどの単一標的化ベンチマークに匹敵するか、又はそれよりもさらに高かった。患者内及び患者間試料におけるAML細胞上のCD33及びCD123発現の高い不均一性のために、本発明のポリペプチドは、単一標的化ベンチマークと比較してより広い患者範囲を提供する。
【0060】
いくつかの実施形態では、本技術のポリペプチドは効率的に製造され(例えば微生物宿主において)、皮下投与に有利且つ便利な高濃度で低い粘度を示した。さらに、そのようなポリペプチドは、処置される対象における既存の抗体に対する反応性が限られている(すなわち、抗体構築物による第1の処置の前に対象に存在する抗体)。好ましい実施形態では、そのようなポリペプチドは、連続治療が好都合に間隔を空けられるように十分に長い半減期を治療される対象において示す。
【0061】
ポリペプチドは、少なくとも二重特異性であるが、例えば、三重特異性、四重特異性又は五重特異性であってもよい。さらに、ポリペプチドは少なくとも四価であるが、例えば五価又は六価などであってもよい。
【0062】
「二重特異性」、「三重特異性」、「四特異性」又は「五特異性」という用語はすべて「多重特異性」という用語に該当し、それぞれ2、3、4又は5つの異なる標的分子への結合を指す。「二価」、「三価」、「4価」、「5価」又は「6価」という用語はすべて「多価」という用語に該当し、それぞれ2、3、4又は5つの結合単位(ISVDなど)の存在を示す。例えば、ポリペプチドは、4つのISVDを含むか又は4つのISVDからなるポリペプチドなどの四特異性四価であり得、1つのISVDはヒトTCRαβに結合し、1つのISVDはヒトCD33に結合し、1つのISVDはCD123に結合し、1つのISVDはヒト血清アルブミン(例えば、配列番号1に示されるISVD構築物)に結合する。例えば、2つのISVDが同じ標的上の2つの異なるエピトープに結合する場合、例えば、2つのISVDがTCRαβに結合する場合、ポリペプチドは同時に二重特異性であり得る。「バイパラトピック」という用語は、同じ標的分子の2つの異なる部分(例えば、エピトープ)への結合を指す。
【0063】
用語「第1のISVD」、「第2のISVD」、「第3のISVD」などは、本明細書中で使用されるとき、ISVDの互いに対する相対的な位置を示すにすぎず、ここで、ナンバリングは、本発明のポリペプチドのN末端から開始される。したがって、「第1のISVD」は、「第2のISVD」よりもN末端に近く、一方、「第2のISVD」は、「第3のISVD」よりもN末端に近い。したがって、ISVD配置は、C末端から考えると逆である。ナンバリングは絶対的なものではなく、少なくとも3つのISVDの相対的な位置を示すにすぎないため、TCRαβ、CD33若しくはCD123に結合するさらなるISVD、又は別の標的に結合するISVDなどの他の結合単位/構成要素がポリペプチド中に存在し得ることは排除されない。例えば、下記でさらに記載されるように(特に、「(in vivo)半減期延長」の節を参照されたい)、ポリペプチドは、ヒト血清アルブミンに結合する別のISVDをさらに含むことができ、このISVDは、少なくとも3つのISVDのC末端に位置する第4のISVDであり得る。さらに、ISVDなどの他の結合単位/構成要素をその間に配置することができる可能性を排除するものではない。例えば、ポリペプチドは、例えば、「第2のISVD」と「第3のISVD」との間に位置することさえできる別のISVDをさらに含むことができる。
【0064】
上記に照らして、本発明は、少なくとも3つのISVDを含むか又はそれからなるポリペプチドであって、少なくとも1つのISVDがTCRαβに特異的に結合し、少なくとも1つのISVDがCD33に特異的に結合し、少なくとも1つのISVDがCD123に特異的に結合するポリペプチドを提供する。
【0065】
ポリペプチドの成分、好ましくはISVDは、1つ以上の適切なリンカー、例えばペプチドリンカーによって互いに連結されていてもよい。
【0066】
2つ以上の(ポリ)ペプチドを結合するためのリンカーの使用は、当業界でよく知られている。例示的なペプチドリンカーを表A-5に示す。よく使用されるクラスのペプチドリンカーは、「Gly-Ser」又は「GS」リンカーとして知られている。これらは、本質的にグリシン(G)及びセリン(S)残基からなるリンカーであり、通常、GGGGS(配列番号77)モチーフ(例えば、式(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)を有し、式中、nは1、2、3、4、5、6、7又はそれ以上であり得る)などのペプチドモチーフの1つ以上の反復を含む。そのようなGSリンカーのいくつかのしばしば使用される例は、9GSリンカー(GGGGSGGGS、配列番号80)15GSリンカー(n=3)及び35GSリンカー(n=7)である。例えば、Chen et al.Adv.Drug Deliv.Rev.2013 Oct 15;65(10);1357-1369及びKlein et al.,Protein Eng.Des.Sel.(2014)27(10);325-330を参照されたい。本発明のポリペプチドでは、ポリペプチドの成分を互いに連結するための9GSリンカーの使用が好ましい。
【0067】
好ましい実施形態では、TCRαβに特異的に結合するISVDは、ポリペプチドのN末端に位置する。本発明者らは、驚くべきことに、そのような構成がポリペプチドの製造収率を増加させ得ることを見出した。
【0068】
また、好ましい実施形態において、CD33に特異的に結合するISVDは、TCRαβに特異的に結合するISVDのC末端側に位置する。
【0069】
さらにより好ましい実施形態では、CD123に特異的に結合するISVDは、CD33に特異的に結合するISVDに対してC末端に配置され、それ自体は、TCRαβに特異的に結合するISVDに対してC末端に配置される。
【0070】
したがって、ポリペプチドは、ポリペプチドのN末端から出発する順序で、以下を含むか、又は以下からなることが好ましい:TCRαβに特異的に結合する第1のISVD、CD33に特異的に結合する第2のISVD、及びCD123に特異的に結合する第3のISVD、並びに本明細書中で定義されるような増大した半減期を有するポリペプチドを提供する任意の結合単位。増大した半減期を有するポリペプチドを提供する結合単位は、好ましくはISVDである。
【0071】
ポリペプチドが、ポリペプチドのN末端から出発する順序で、以下を含むか、又は以下からなることがさらにより好ましい:TCRαβに特異的に結合するISVD、リンカー、CD33に特異的に結合するISVD、リンカー、CD123に特異的に結合するISVD、リンカー及びヒト血清アルブミンに結合するISVD。より具体的には、ポリペプチドは、ポリペプチドのN末端から出発する順序で、以下を含むか、又は以下からなる:TCRαβに特異的に結合するISVD、9GSリンカー、CD33に特異的に結合するISVD、9GSリンカー、CD123に特異的に結合するISVD、20GSリンカー、及びヒト血清アルブミンに結合するISVD。
【0072】
ポリペプチドのそのような構成は、製造収率の増加、良好なCMC特性、並びに免疫応答の調節に関して最適化された機能性及びより強い効力を提供することができる。
【0073】
好ましくは、本技術のポリペプチドは、ヒト血清中の既存の抗体による結合の減少を示す。この目的のために、一実施形態では、ポリペプチドは、少なくとも1つのISVD、好ましくは各ISVDにおいて、アミノ酸位置11にバリン(V)を含み、アミノ酸位置89にロイシン(L)を含む(Kabatナンバリングによる)。別の実施形態では、ポリペプチドは、C末端ISVDのC末端に1~5個の(好ましくは天然に存在する)アミノ酸の伸長、例えば単一のアラニン(A)伸長を含む。ISVDのC末端は、通常、VTVSS(配列番号93)である。別の実施形態では、ポリペプチドは、少なくとも1つのISVDに(Kabatのナンバリングに従って)110位にリジン(K)又はグルタミン(Q)を含む。別の実施形態では、ISVDは、少なくとも1つのISVDの(Kabatのナンバリングに従って)112位にリジン(K)又はグルタミン(Q)を含む。これらの実施形態では、ISVDのC末端は、VKVSS(配列番号94)、VQVSS(配列番号95)、VTVKS(配列番号96)、VTVQS(配列番号97)、VKVKS(配列番号98)、VKVQS(配列番号99)、VQVKS(配列番号100)又はVQVQS(配列番号101)であり、単一アラニンの付加後、ポリペプチドのC末端は、例えば配列VTVSSA(配列番号102)、VKVSSA(配列番号103)、VQVSSA(配列番号104)、VTVKSA(配列番号105)、VTVQSA(配列番号106)、VKVKSA(配列番号107)、VKVQSA(配列番号108)、VQVKSA(配列番号109)又はVQVQSA(配列番号110)、好ましくはVTVSSA(配列番号102)を含む。別の実施形態では、ポリペプチドは、各ISVDのアミノ酸11位にバリン(V)及びアミノ酸89位にロイシン(L)(Kabatナンバリングに従う)を含み、少なくとも1つのISVDの110位にリジン(K)又はグルタミン(Q)を含んでいてもよく、(ポリペプチドのC末端が、例えば配列VTVSSA(配列番号102)、VKVSSA(配列番号103)又はVQVSSA(配列番号104)、好ましくはVTVSSA(配列番号102)を含むように)C末端ISVDのC末端に1個のアラニン(A)伸長などの1~5個(好ましくは天然に存在する)アミノ酸の伸長を含む。この点に関するさらなる情報については、例えば、国際公開第2012/175741号パンフレット及び国際公開第2015/173325号パンフレットを参照されたい。
【0074】
好ましい実施形態では、本発明のポリペプチドは、配列番号1と90%超、例えば95%超又は99%超の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はこれからなり、4つのISVDのCDRは、それぞれ以下のセクション「免疫グロブリン単一可変ドメイン」及び「(in vivo)半減期延長」に記載の項目AからD(又はKabat定義を使用する場合はA’からD’)で定義される通りであり、特に:
・ TCRαβに特異的に結合するISVDは、配列番号6のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号10のアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号14のアミノ酸配列を有するCDR3を有する;
・ CD33に特異的に結合するISVDは、配列番号7のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号11のアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号15のアミノ酸配列を有するCDR3を有する;
・ CD123に特異的に結合するISVDは、配列番号8のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号12のアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号16のアミノ酸配列を有するCDR3を有する;及び
・ ヒト血清アルブミンに結合するISVDは、配列番号9のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号13のアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号17のアミノ酸配列を有するCDR3を有するか、
又は、Kabat定義を使用する場合:
・ TCRαβに特異的に結合するISVDは、配列番号34のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号 38のアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号42のアミノ酸配列を有するCDR3を有する;
・ CD33に特異的に結合するISVDは、配列番号35のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号39のアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号43のアミノ酸配列を有するCDR3を有する;
・ CD123に特異的に結合するISVDは、配列番号36のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号40のアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号44のアミノ酸配列を有するCDR3を有する;及び
・ ヒト血清アルブミンに結合するISVDは、配列番号37のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号 41のアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号45のアミノ酸配列を有するCDR3を有する。
【0075】
特に、ポリペプチドは、好ましくは、配列番号1のアミノ酸配列を含むか又はこれからなる。最も好ましい実施形態では、ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列からなる。
【0076】
本発明のポリペプチドは、好ましくは、配列番号1のアミノ酸からなるポリペプチドと比較して、ヒトTCRαβ、ヒトCD33及びヒトCD123に対して、少なくとも半分の結合親和性、より好ましくは少なくとも同じ結合親和性を有し、結合親和性は、SPRなどの同じ方法を用いて測定される。
【0077】
5.1 免疫グロブリン単一可変ドメイン
「単一可変ドメイン」と互換的に使用される「免疫グロブリン単一可変ドメイン」(ISVD)という用語は、抗原結合部位が単一の免疫グロブリンドメイン上に存在し、単一の免疫グロブリンドメインによって形成される免疫グロブリン分子を定義する。これは、免疫グロブリン単一可変ドメインを「従来の」免疫グロブリン(例えば、モノクローナル抗体)又はそれらの断片(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)、scFv、di-scFv)と区別しており、2つの免疫グロブリンドメイン、特に2つの可変ドメインが相互作用して抗原結合部位を形成する。典型的に、従来の免疫グロブリンでは、重鎖可変ドメイン(V)と軽鎖可変ドメイン(V)が相互作用して抗原結合部位を形成する。この場合、VとVの両方の相補性決定領域(CDR)は抗原結合部位に寄与しており、すなわち合計6のCDRが抗原結合部位の形成に関わる。
【0078】
上述の定義に鑑み、従来の4鎖抗体(例えば、当業界で知られているIgG、IgM、IgA、IgD、若しくはIgE分子)の、又はFab断片、F(ab’)断片、ジスルフィド結合Fv等のFv断片、若しくはscFv断片、又はこのような従来の4鎖抗体から導き出された二重特異性抗体(すべて当業界で知られている)は通常、免疫グロブリン単一可変ドメインとはみなされず、それは、これらのケースでは、抗原のそれぞれのエピトープへの結合が通常、1つの(単一)免疫グロブリンドメインによってではなく、軽鎖及び重鎖可変ドメイン等の(関連する)免疫グロブリンドメインのペアによって、すなわちそれぞれの抗原のエピトープに共同で結合する免疫グロブリンドメインのV-Vペアによって起こるからである。
【0079】
それに対して、免疫グロブリン単一可変ドメインは、他の免疫グロブリン可変ドメインとペアにならずに、抗原のエピトープに特異的に結合できる。免疫グロブリン単一可変ドメインの結合部位は、単一V、単一VHH又は単一Vドメインにより形成される。
【0080】
そのため、単一可変ドメインは、それが単一の抗原結合単位(すなわち、基本的に単一可変ドメインからなり、単一抗原結合ドメインが機能的抗原結合単位を形成するために他の可変ドメインと相互作用する必要がない機能的抗原結合単位)を形成できる限り、軽鎖可変ドメイン配列(例えば、V-配列)若しくは適当なその断片、或いは重鎖可変ドメイン配列(例えば、V-配列若しくはVHH配列)又は適当なその断片であり得る。
【0081】
免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)は例えば、重鎖ISVD、例えばラクダ化V又はヒト化VHHを含むV,VHHとすることができる。好ましくは、これはラクダ化V又はヒト化VHHを含むVHHである。重鎖ISVDは、従来の4鎖抗体から、又は重鎖抗体から得ることができる。
【0082】
例えば、免疫グロブリン単一可変ドメインは、単一ドメイン抗体(又は単一ドメイン抗体としての使用に適したアミノ酸配列)、「dAb」又はdAb(又はdAbとしての使用に適したアミノ酸配列)(本明細書で定義されるように、NANOBODY(登録商標)ISVDを含むが、これに限定されない);他の単一可変ドメイン、又はそれらのいずれか1つの任意の適切な断片であってもよい。
【0083】
特に、免疫グロブリン単一可変ドメインは、ヒト化VHH若しくはラクダ化V又はその適切な断片を含むNANOBODY(登録商標)ISVDであり得る。[注:NANOBODY(登録商標)、NANOBODIES(登録商標)及びNANOCLONE(登録商標)は、Ablynx N.V.の登録商標である]
【0084】
「VHHドメイン」は、VHH、VHH抗原断片、及びVHH抗体としても知られ、もともと、「重鎖抗体」(すなわち、「軽鎖を持たない抗体」;Hamers-Casterman et al.Nature 363:446-448(1993))の抗原結合免疫グロブリン可変ドメインとして説明されていた。「VHHドメイン」という用語は、これらの可変ドメインを従来の4鎖抗体中に存在する重鎖可変ドメイン(本明細書では「Vドメイン」と呼ばれる)から、及び従来の4鎖抗体中に存在する軽鎖可変ドメイン(本明細書では「Vドメイン」と呼ばれる)から区別するために選択されている。VHHのさらなる説明については、Muyldermansによる総説論文(Molecular Biotechnology 74:277-302,2001の総説)、並びに一般的な背景技術として言及されている以下の特許出願を参照されたい:Vrije Universiteit Brusselの国際公開第94/04678号パンフレット、国際公開第95/04079号パンフレット及び国際公開第96/34103号パンフレット;Unileverの国際公開第94/25591号パンフレット、国際公開第99/37681号パンフレット、国際公開第00/40968号パンフレット、国際公開第00/43507号パンフレット、国際公開第00/65057号パンフレット、国際公開第01/40310号パンフレット、国際公開第01/44301号パンフレット、欧州特許第1134231号明細書及び国際公開第02/48193号パンフレット;Vlaams Instituut voor Biotechnologie(VIB)の国際公開第97/49805号パンフレット、国際公開第01/21817号パンフレット、国際公開第03/035694号パンフレット、国際公開第03/054016号パンフレット及び国際公開第03/055527号パンフレット;Algonomics N.V.及びAblynx N.V.の国際公開第03/050531号パンフレット。カナダ国家研究会議(National Research Council of Canada)による国際公開第01/90190号パンフレット;抗体協会(Institute of Antibodies)による国際公開第03/025020号パンフレット(=欧州特許第1433793号明細書);並びにAblynx N.V.による国際公開第04/041867号パンフレット、国際公開第04/041862号パンフレット、国際公開第04/041865号パンフレット、国際公開第04/041863号パンフレット、国際公開第04/062551号パンフレット、国際公開第05/044858号パンフレット、国際公開第06/40153号パンフレット、国際公開第06/079372号パンフレット、国際公開第06/122786号パンフレット、国際公開第06/122787号パンフレット及び国際公開第06/122825号パンフレット。
【0085】
典型的には、免疫グロブリンの作製は、実験動物の免疫化、ハイブリドーマを作製するための免疫グロブリン産生細胞の融合、及び所望の特異性についてのスクリーニングを含む。或いは、免疫グロブリンは、ナイーブ又は合成ライブラリーのスクリーニングによって、例えばファージディスプレイによって作製することができる。
【0086】
NANOBODY(登録商標)ISVDなどの免疫グロブリン配列の作製は、国際公開第94/04678号パンフレット、Hamers-Casterman et al.1993及びMuyldermans et al.2001(Reviews in Molecular Biotechnology 74:277-302,2001)に広く記載されている。これらの方法においてラクダ科動物(camelids)はターゲット抗原で免疫化され、前記ターゲット抗原に対する免疫反応が引き起こされる。前記免疫化から得られたNANOBODY(登録商標)ISVDのレパートリーを、標的抗原に結合するISVDについてさらにスクリーニングする。
【0087】
これらの例では、抗体の生成には免疫化及び/又はスクリーニングのために精製された抗原が必要である。抗原は天然由来のものから、又は組換え産生の過程で精製し得る。
【0088】
免疫グロブリン配列のための免疫化及び/又はスクリーニングは、このような光源のペプチド断片を使って行うことができる。
【0089】
本発明は、マウス、ラット、ウサギ、ロバ、ヒト及びラクダ科の免疫グロブリン配列を含む、異なる起源の免疫グロブリン配列を使用し得る。本発明はまた、完全ヒト配列、ヒト化配列又はキメラ配列を含む。例えば、本発明は、ラクダ免疫グロブリン配列及びヒト化ラクダ免疫グロブリン配列、又はラクダ化ドメイン抗体、例えばWard et al(例えば国際公開第94/04678号パンフレット及びRiechmann,Febs Lett.,339:285-290,1994及びProt.9:531-537,1996)によって記載されるラクダ化dAbを含む。さらに、本発明はまた、融合された免疫グロブリン配列を使用し、例えば、多価及び/又は多重特異性構築物の形成(1つ以上のVHHドメインを含有する多価及び多重特異性ポリペプチド及びそれらの調製については、Conrath et al.,J.Biol.Chem.,Vol.276.10.7346~7350、2001、並びに例えば国際公開第96/34103号パンフレット及び国際公開第99/23221号パンフレットを参照)、並びに本発明の免疫グロブリン配列から誘導可能なタグ又は他の機能的部分、例えば毒素、標識、放射性化学物質などを含む免疫グロブリン配列を使用する。
【0090】
「ヒト化VHH」は、天然に発生するVHHドメインのアミノ酸配列に対応するが、「ヒト化」された、すなわち前記天然に発生するVHH配列のアミノ酸配列中(及び特にフレームワーク配列中)の1つ以上のアミノ酸残基を人間の従来の4鎖抗体からのVドメイン内の対応する位置において生じるアミノ酸残基の1つ以上(例えば、前述の通り)と置換されたアミノ酸配列を含む。これ自体は公知の方法で行うことができ、これは、例えば、本明細書のさらなる説明及び従来技術(例えば、国際公開第2008/020079号パンフレット)に基づいて当業者には明らかであろう。再び、このようなヒト化VHHはそれ自体知られているいずれの伝統的な方法でも取得でき、それゆえ開始材料として天然に発生するVHHドメインを含むポリペプチドを使って取得されたポリペプチドには厳格に限定されないことに留意すべきである。
【0091】
「ラクダ化V」は、天然に発生するVドメインのアミノ酸配列に対応するが、「ラクダ化」されている、すなわち従来の4鎖抗体からの天然に発生するVドメインのアミノ酸配列中の1つ以上のアミノ酸残基を、重鎖抗体のVHHドメイン中の対応する位置において生じるアミノ酸残基の1つ以上と置換されているアミノ酸配列を含む。これ自体は公知の方法で行うことができ、これは、例えば、本明細書のさらなる説明及び従来技術(例えば、国際公開第2008/020079号パンフレット)に基づいて当業者には明らかであろう。このような「ラクダ化」置換は、好ましくは本明細書において定義されているように、V-V界面及び/又はいわゆるラクダ科動物(Camelidae)ホールマーク残基を形成する、及び/又はそこに存在するアミノ酸の位置に挿入される(例えば、国際公開第94/04678号パンフレットと、前述のDavies及びRiechmann(1994及び1996)参照)。好ましくは、ラクダ化Vを生成又は設計するための開始材料又は開始点として使用されるV配列は、哺乳動物由来のV配列、例えば人間由来のV配列、例えばV3配列である。しかしながら、このようなラクダ化Vは、それ自体知られているいずれの適当な方法でも取得でき、それゆえ開始材料として天然に発生するVドメインを含むポリペプチドを使用して得られたポリペプチドには厳格に限定されないことに留意すべきである。
【0092】
1つ以上の免疫グロブリン配列を互いに及び/又は他のアミノ酸配列に(例えばジスルフィド架橋を介して)連結して、本発明においても有用であり得るペプチド構築物(例えば、Fab’断片、F(ab’)2断片、scFv構築物「ダイアボディ」及び他の多重特異性構築物)を提供し得ることに留意すべきである。例えば、Holliger及びHudsonによる総説、Nat Biotechnol2005 Sep;23(9):1126-36))を参照されたい。一般に、ポリペプチドが対象への(例えば、予防、治療及び/又は診断目的のための)投与を意図する場合、ポリペプチドは好ましくは前記対象に天然には存在しない免疫グロブリン配列を含む。
【0093】
免疫グロブリン単一可変ドメイン配列の好ましい構造は、4つのフレームワーク領域(「FRs」)からなると考えることができ、これらは、当業界及び本明細書において、それぞれ「フレームワーク領域1」(「FR1」)、「フレームワーク領域2」(「FR2」)、「フレームワーク領域3」(「FR3」)、「フレームワーク領域4」(「FR4」)と呼ばれ、これらのフレームワーク領域は3つの「相補性決定領域」(「CDR」)により中断され、これらは当業界及び本明細書において、それぞれ「相補性決定領域1」(「CDR1」)、「相補性決定領域2」(「CDR2」)、及び「相補性決定領域3」(「CDR3」)と呼ばれる。
【0094】
国際公開第08/020079号パンフレット(参照により本明細書に組み込まれる)の58頁及び59頁の段落q)にさらに記載されるように、免疫グロブリン単一可変ドメインのアミノ酸残基は、Vドメインの、Kabat et al.(“Sequence of proteins of immunological interest”、US Public Health Services,NIH Bethesda,MD,Publication No.91)によって与えられる、Riechmann及びMuyldermans、2000の記事におけるラクダ科動物(Camelids)からのVHHドメインに適用された(J.Immunol.Methods 240(1-2):185~195;例えば、この資料の図2を参照のこと)一般的なナンバリングに従ってナンバリングすることができる。Vドメイン及びVHHドメインについて当技術分野で周知であるように、CDRのそれぞれにおけるアミノ酸残基の総数は変動し得、Kabatナンバリング(すなわち、Kabatナンバリングに従う1つ以上の位置が実際の配列に占有されていなくてもよく、又は実際の配列がKabatナンバリングによって許容される数よりも多くのアミノ酸残基を含み得る)によって示されるアミノ酸残基の総数に対応し得ないことに留意すべきである。これは、一般に、Kabatによるナンバリングは、実際の配列中のアミノ酸残基の実際のナンバリングに対応してもしなくてもよいことを意味する。Vドメイン及びVHHドメイン中のアミノ酸残基の総数は通常、110~120の範囲、多くの場合、112~115であろう。しかしながら、これより短い、及び長い配列もまた、本明細書に記載の目的のために適当であり得ることに留意すべきである。
【0095】
本出願では、特に指示しない限り、CDR配列は、Kontermann and Duebel(Eds.2010,Antibody Engineering,vol 2,Springer Verlag Heidelberg Berlin,Martin,Chapter 3,pp.33-51)によって記載されるAbMナンバリングによって決定された。この方法によれば、FR1は1~25位のアミノ酸残基を含み、CDR1は26~35位のアミノ酸残基を含み、FR2は36~49位のアミノ酸を含み、CDR2は50~58位のアミノ酸残基を含み、FR3は59~94位のアミノ酸残基を含み、CDR3は95~102位のアミノ酸残基を含み、FR4は103~113位のアミノ酸残基を含む。
【0096】
CDR領域の決定は、異なる方法に従って行うこともできる。KabatによるCDR決定では、免疫グロブリン単一可変ドメインのFR1は1~30位のアミノ酸残基を含み、免疫グロブリン単一可変ドメインのCDR1は31~35位のアミノ酸残基を含み、免疫グロブリン単一可変ドメインのFR2は36~49位のアミノ酸を含み、免疫グロブリン単一可変ドメインのCDR2は50~65位のアミノ酸残基を含み、免疫グロブリン単一可変ドメインのFR3は66~94位のアミノ酸残基を含み、免疫グロブリン単一可変ドメインのCDR3は95~102位のアミノ酸残基を含み、免疫グロブリン単一可変ドメインのFR4は103~113位のアミノ酸残基を含む。
【0097】
このような免疫グロブリン配列において、フレームワーク領域はいずれの適当なフレームワーク領配列であってもよく、適当なフレームワーク配列の例は、当業者にとっては、例えば標準的ハンドブック及び本明細書に記載のさらなる開示及び先行技術に基づき、明らかであろう。
【0098】
フレームワーク配列は、好ましくは免疫グロブリンフレームワーク配列又は免疫グロブリンフレームワーク配列から(例えば、ヒト化又はラクダ化によって)導き出されたフレームワーク配列(の適当な組合せ)である。例えば、フレームワーク配列は、軽鎖可変ドメイン(例えば、V-配列)及び/又は重鎖可変ドメイン(例えば、V-配列又はVHH配列)から導き出されるフレームワーク配列であり得る。1つの特定の好ましい態様において、フレームワーク配列は、VHH-配列から導き出されたフレームワーク配列(その中では前記フレームワーク配列は場合により部分的又は完全にヒト化されている)か、又はラクダ化された(本明細書中で定義)従来のV配列のいずれかである。
【0099】
特に、本発明で使用されるISVD配列に存在するフレームワーク配列は、ISVD配列がヒト化VHH又はラクダ化Vを含むNANOBODY(登録商標)免疫グロブリン可変ドメインであるように、1つ以上のホールマーク残基(本明細書で定義される)を含み得る。そのようなフレームワーク配列(の適切な組み合わせ)のいくつかの好ましいが非限定的な例は、本明細書のさらなる開示から明らかになるであろう。
【0100】
ここでも、免疫グロブリン配列について本明細書中に一般的に記載されるように、前述のいずれかの適切な断片(又は断片の組み合わせ)、例えば、1つ以上のCDR配列を含み、適切には1つ以上のフレームワーク配列に隣接し、且つ/又は1つ以上のフレームワーク配列を介して連結される断片(例えば、これらのCDR及びフレームワーク配列と同じ順序で、断片が由来するフルサイズの免疫グロブリン配列に存在してもよい)を使用することも可能である。
【0101】
しかしながら、本発明は、ISVD配列(又はそれを発現するために使用されるヌクレオチド配列)の起源に関して限定されず、ISVD配列又はヌクレオチド配列が生成又は取得される(或いは生成又は取得されてきた)方法に関しても限定されないことに留意されたい。それゆえ、ISVD配列は天然に発生する配列(いずれかの適当な種から)でも、合成若しくは半合成配列でもよい。特定の、ただし非限定的な態様において、ISVD配列は天然に発生する配列(いずれかの適当な種から)又は、合成若しくは半合成配列であり、これには「ヒト化」(本明細書中で定義)免疫グロブリン配列(例えば部分的又は完全にヒト化されたマウス又はウサギ免疫グロブリン配列、及び特に部分的又は完全にヒト化されたVHH配列)、「ラクダ化」(本明細書中で定義)免疫グロブリン配列のほか、親和性成熟(例えば、合成、ランダム、又は天然に発生する免疫グロブリン配列から開始)、CDRグラフティング、ベニアリング、異なる免疫グロブリン配列から導き出された断片の結合、オーバラッププライマを使用したPCRアセンブリ、及びこれらと同様の、当業者の間でよく知られている免疫グロブリン配列エンジニアリング技術等の手法により得られた免疫グロブリン配列、又は前述のいずれかのあらゆる適当な組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0102】
同様に、ヌクレオチド配列は天然に発生するヌクレオチド配列又は合成若しくは半合成配列であり得、例えば、PCRにより適当な天然に発生する鋳型から単離された配列(例えば、細胞から単離されたDNA又はRNA)、ライブラリ(及び特に表現ライブラリ)から単離されたヌクレオチド配列、天然に発生するヌクレオチド配列への(ミスマッチPCR等の、それ自体知られた適当ないずれかの技術を用いた)変異導入により調製されたヌクレオチド配列、オーバラッププライマを使ってPCRにより調製されたヌクレオチド配列、又はそれ自体知られたDNA合成技術を使って調製されたヌクレオチド配列であり得る。
【0103】
上述のように、ISVDは、NANOBODY(登録商標) VHH又はその適切な断片であり得る。NANOBODY(登録商標)ISVDの一般的な説明については、以下のさらなる説明、及び本明細書で引用される先行技術を参照されたい。しかしながら、この点に関して、この説明及び従来技術は、いわゆる「V3クラス」(すなわち、V3クラスのヒト生殖系列配列(DP-47、DP-51又はDP-29など)に対して高度の配列相同性を有するNANOBODY(登録商標)ISVD)のNANOBODY(登録商標)ISVDを主に説明していることに留意されたい。しかしながら、本発明は、その最も広い意味で、一般に、任意のタイプのNANOBODY(登録商標)ISVDを使用することができ、例えば、国際公開第2007/118670号パンフレットに記載されているように、例えば、いわゆる「V4クラス」(すなわち、DP-78などのV4クラスのヒト生殖系列配列に対して高度の配列相同性を有するNANOBODY(登録商標)ISVD)に属するNANOBODY(登録商標)ISVDも使用することに留意されたい。
【0104】
一般に、NANOBODY(登録商標)ISVD(特に、(部分的に)ヒト化されたVHH配列及びラクダ化されたV配列を含むVHH配列)は、1つ以上のフレームワーク配列(本明細書に記載の通り)の中の1つ以上の「ホールマーク残基」(同じく本明細書にさらに記載の通り)の存在により特徴付けることができる。それゆえ、一般に、NANOBODY(登録商標)ISVDは下記の(一般的)構造を有する免疫グロブリン配列として定義できる:
FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4
ここで、FR1~FR4はそれぞれフレームワーク領域1~4を指し、CDR1~CDR3はそれぞれ相補性決定領域1~3を指し、ホールマーク残基の1つ以上は本明細書中でさらに定義される通りである。
【0105】
具体的に、NANOBODY(登録商標)ISVDは下記の(一般的)構造を有する免疫グロブリン配列とすることができ:
FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4
ここで、FR1~FR4はそれぞれフレームワーク領域1~4を指し、CDR1~CDR3はそれぞれ相補性決定領域1~3を指し、フレームワーク配列は本明細書中でさらに定義される通りである。
【0106】
より具体的には、NANOBODY(登録商標)ISVDは下記の(一般的)構造を有する免疫グロブリン配列とすることができ:
FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4
ここで、FR1~FR4はそれぞれフレームワーク領域1~4を指し、CDR1~CDR3はそれぞれ相補性決定領域1~3を指し、
Kabatナンバリングによる11、37、44、45、47、83、84、103、104、108位におけるアミノ酸残基の1つ以上は、下の表1に記されるホールマーク残基から選択される。
【0107】
【表1】
【0108】
【表2】
【0109】
本技術は、とりわけ、TCRαβ、CD33又はCD123に特異的に結合することができるISVDを使用する。本技術の文脈において、特定の標的分子「結合」は、抗体及びそれらのそれぞれの抗原の文脈において理解されるような当技術分野における通常の意味を有する。
【0110】
本技術のポリペプチドは、TCRαβに特異的に結合する1つ以上のISVD、CD33に特異的に結合する1つ以上のISVD、及びCD123に特異的に結合する1つ以上のISVDを含み得る。
【0111】
本技術において使用されるISVDは、ポリペプチドがTCRαβ、CD33及びCD123に特異的に結合することができるように、少なくとも3つのISVDを含むか又はそれからなる本技術のポリペプチドの一部を形成する。それにより、ポリペプチドは、CD33+CD123+白血病幹細胞(LSC)及び急性骨髄性白血病(AML)芽球上に固定することができ、同時に細胞傷害性T細胞上のTCRαβに結合することができる。このようにして、ポリペプチドは、T細胞をLSC及びAML芽球に近接させる。腫瘍細胞上の腫瘍抗原(CD33及びCD123)へのポリペプチドの複数の結合及び単一T細胞上のTCR分子への同時結合は、TCRクラスター形成及び最終的にはT細胞活性化をもたらす。LSC及びAML芽球に近接したT細胞の活性化は、AML患者において効率的な腫瘍細胞の死滅をもたらし、結果として治療効果をもたらし得る。
【0112】
したがって、本技術のポリペプチドにおいて使用される少なくとも3つのISVDの標的分子は、TCRαβ、CD33及びCD123である。例は、哺乳動物のCD33、CD123及びTCRαβである。ヒトTCRαβ(Uniprotアクセッション)、ヒトCD33(Uniprotアクセッション)及びヒトCD123(Uniprotアクセッション)が好ましいが、他の種由来のバージョン、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ネコ、イヌ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ブタ、非ヒト霊長類、例えばカニクイザル(本明細書中では「cyno」とも称する)、又はラクダ科動物(camelids)、例えばラマ若しくはアルパカ由来のTCRαβ、CD33及びCD123も本技術に適している。
【0113】
本技術で使用できるTCRαβ、CD123及びCD123に特異的に結合するISVDの具体例は、下記A~Cに記載の通りである:
A.ヒトTCRαβに特異的に結合し、
i.配列番号6のアミノ酸配列を有するか、又は配列番号6と2若しくは1つのアミノ酸差を有するCDR1;
ii.配列番号10のアミノ酸配列を有するか、又は配列番号10と2若しくは1つのアミノ酸差を有するCDR2;及び
iii.配列番号14のアミノ酸配列を有するか、又は配列番号14と2若しくは1つのアミノ酸差を有するCDR3、
好ましくは、配列番号6のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号10のアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号14のアミノ酸配列を有するCDR3を含む、ISVD。
【0114】
ヒトTCRαβに特異的に結合するそのようなISVDの好ましい例は、(前の項目Aで定義されたCDRに加えて)表A-2のTCRαβ-VHHについて示される1つ以上、好ましくはすべてのフレームワーク領域を有し、最も好ましくは、TCRαβ-VHH(配列番号2、表A-1及びA-2参照)の完全アミノ酸配列を有するISVDである。
【0115】
また、好ましい実施形態では、ヒトTCRαβに特異的に結合するISVDのアミノ酸配列は、配列番号2と90%超、例えば95%超又は99%超の配列同一性を有していてもよく、任意でCDRは前項目Aで定義された通りである。特に、TCRαβに特異的に結合するISVDは、好ましくは配列番号2のアミノ酸配列を有する。
【0116】
TCRαβに特異的に結合するそのようなISVDが、対応する参照CDR配列(上記項目A)に対して少なくとも1つのCDRに2つ又は1つのアミノ酸差を有する場合、ISVDは、好ましくは、TCRαβ-VHH(配列番号2)と同じ方法、例えばSPRを使用して測定される、ヒトTCRαβに対する結合親和性の少なくとも半分、より好ましくは少なくとも同じ結合親和性を有する。
【0117】
B.ヒトCD33に特異的に結合し、
i.配列番号7のアミノ酸配列を有するか、又は配列番号7と2若しくは1個のアミノ酸差を有するCDR1;
ii.配列番号11のアミノ酸配列を有するか、又は配列番号11と2若しくは1個のアミノ酸差を有するCDR2;及び
iii.配列番号15のアミノ酸配列を有するか、又は配列番号15と2若しくは1個のアミノ酸差を有するCDR3、
好ましくは、配列番号7のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号11のアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号15のアミノ酸配列を有するCDR3を含む、ISVD。
【0118】
ヒトCD33に特異的に結合するそのようなISVDの好ましい例は、(前の項目Bで定義されたCDRに加えて)表A-2のCD33-VHHについて示されるような1つ以上、好ましくはすべてのフレームワーク領域を有し、最も好ましくは、CD33-VHH(配列番号3、表A-1及びA-2参照)の完全アミノ酸配列を有するISVDである。
【0119】
また、好ましい実施形態では、ヒトCD33に特異的に結合するISVDのアミノ酸配列は、配列番号3と90%超、例えば95%超又は99%超の配列同一性を有し得、場合によりCDRは前の項目Bで定義された通りである。特に、CD33に結合するISVDは、好ましくは配列番号3のアミノ酸配列を有する。
【0120】
CD33に特異的に結合するそのようなISVDが、対応する参照CDR配列に対して少なくとも1つのCDRに2個又は1個のアミノ酸差を有する場合(上記項目B)、ISVDは、好ましくは、構築物CD33-VHH(配列番号3)と同じ方法、例えばSPRを使用して測定される、ヒトCD33に対する結合親和性の少なくとも半分、より好ましくは少なくとも同じ結合親和性を有する。
【0121】
C.ヒトCD123に特異的に結合し、
i.配列番号8のアミノ酸配列を有するか、又は配列番号8と2若しくは1つのアミノ酸差を有するCDR1;
ii.配列番号12のアミノ酸配列を有するか、又は配列番号12と2若しくは1つのアミノ酸差を有するCDR2;及び
iii.配列番号16のアミノ酸配列を有するか、又は配列番号16と2若しくは1つのアミノ酸差を有するCDR3、
好ましくは、配列番号8のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号12のアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号16のアミノ酸配列を有するCDR3を含むISVD。
【0122】
ヒトCD123に特異的に結合するそのようなISVDの好ましい例は、(前の項目Cで定義されたCDRに加えて)表A-2のCD123-VHHについて示されるような1つ以上、好ましくはすべてのフレームワーク領域を有し、最も好ましくは、CD123-VHH(配列番号4、表A-1及びA-2参照)の完全アミノ酸配列を有するISVDである。
【0123】
また、好ましい実施形態では、ヒトCD123に特異的に結合するISVDのアミノ酸配列は、配列番号4と90%超、例えば95%超又は99%超の配列同一性を有し得、場合によりCDRは前の項目Cで定義された通りである。特に、CD123に結合するISVDは、好ましくは配列番号4のアミノ酸配列を有する。
【0124】
CD123に特異的に結合するそのようなISVDが、対応する参照CDR配列に対して少なくとも1つのCDRに2つ又は1つのアミノ酸差を有する場合(上記項目C)、ISVDは、好ましくは、CD123-VHH(配列番号4)と同じ方法、例えばSPRを使用して測定される、ヒトCD123に対する結合親和性の少なくとも半分、より好ましくは少なくとも同じ結合親和性を有する。
【0125】
好ましくは、上記項目A~Cの下で定義されるISVDの各々は、本発明のポリペプチドに含まれる。上記項目A~Cで定義されたISVDの各々を含む本発明のそのようなポリペプチドは、好ましくは、配列番号1のアミノ酸からなるポリペプチドとしてのヒトTCRαβ、ヒトCD33及びヒトCD123に対する結合親和性の少なくとも半分、より好ましくは少なくとも同じ結合親和性を有し、結合親和性は、SPRなどの同じ方法を使用して測定される。
【0126】
上記項目A~Cで言及される配列番号は、AbMの定義によるCDRの定義に基づいている(表A-2参照)。Kabatの定義(表A-2.1を参照)による同じCDRを定義する配列番号は、上記項目A~Cにおいて同様に使用することができることに留意されたい。
【0127】
したがって、AbMの定義を使用して上記のような本発明において使用することができるTCRαβ、CD33又はCD123に特異的に結合する特定のISVDはまた、下記の項目A’~C’に示されるようなKabatの定義を使用して記載することができる:
A’.ヒトTCRαβに特異的に結合し、
i.配列番号34のアミノ酸配列を有するか、又は配列番号34と2若しくは1つのアミノ酸差を有するCDR1;
ii.配列番号38のアミノ酸配列を有するか、又は配列番号38と2若しくは1つのアミノ酸差を有するCDR2;及び
iii.配列番号42のアミノ酸配列を有するか、又は配列番号42と2若しくは1つのアミノ酸差を有するCDR3、
好ましくは、配列番号34のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号38のアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号42のアミノ酸配列を有するCDR3を含む、ISVD。
【0128】
ヒトTCRαβに特異的に結合するそのようなISVDの好ましい例は、(前の項目A’で定義されたCDRに加えて)表A-2.1のTCRαβ-VHHについて示される1つ以上、好ましくはすべてのフレームワーク領域を有し、最も好ましくは、TCRαβ-VHH(配列番号2、表A-1及びA-2.1参照)の完全アミノ酸配列を有するISVDである。
【0129】
B’.ヒトCD33に特異的に結合し、
i.配列番号35のアミノ酸配列を有するか、又は配列番号35と2若しくは1つのアミノ酸差を有するCDR1;
ii.配列番号39のアミノ酸配列を有するか、又は配列番号39と2若しくは1つのアミノ酸差を有するCDR2;及び
iii.配列番号43のアミノ酸配列を有するか、又は配列番号43と2若しくは1つのアミノ酸差を有するCDR3、
好ましくは、配列番号35のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号39のアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号43のアミノ酸配列を有するCDR3を含む、ISVD。
【0130】
ヒトCD33に特異的に結合するそのようなISVDの好ましい例は、(前の項目Bで定義されたCDRに加えて)表A-2.1のCD33-VHHについて示される1つ以上、好ましくはすべてのフレームワーク領域を有し、最も好ましくは、CD33-VHH(配列番号3、表A-1及びA-2.1参照)の完全アミノ酸配列を有するISVDである。
【0131】
C’.ヒトCD123に特異的に結合し、
i.配列番号36のアミノ酸配列を有するか、又は配列番号36と2若しくは1つのアミノ酸差を有するCDR1;
ii.配列番号40のアミノ酸配列を有するか、又は配列番号40と2若しくは1つのアミノ酸差を有するCDR2;及び
iii.配列番号44のアミノ酸配列を有するか、又は配列番号44と2若しくは1つのアミノ酸差を有するCDR3、
好ましくは、配列番号36のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号40のアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号44のアミノ酸配列を有するCDR3を含む、ISVD。
【0132】
ヒトCD123に特異的に結合するそのようなISVDの好ましい例は、(前の項目Cで定義されたCDRに加えて)表A-2.1のCD123-VHHについて示される1つ以上、好ましくはすべてのフレームワーク領域を有し、最も好ましくは、CD123-VHH(配列番号4、表A-1及びA-2.1参照)の完全アミノ酸配列を有するISVDである。
【0133】
第1のアミノ酸配列と第2のアミノ酸配列との間の「配列同一性」の百分率は、[第1のアミノ酸配列における、第2のアミノ酸配列の対応する位置のアミノ酸残基と同一のアミノ酸残基の数]を[第1のアミノ酸配列におけるアミノ酸残基の総数]で除し、[100%]を乗じることによって計算することができ、ここで、第2のアミノ酸配列におけるアミノ酸残基の各欠失、挿入、置換又は付加は、第1のアミノ酸配列と比較して、単一のアミノ酸残基における(すなわち、単一の位置における)差異と見なされる。
【0134】
通常、上に概説した計算方法に従って2つのアミノ酸配列間の「配列同一性」のパーセンテージを決定する目的で、最も多数のアミノ酸残基を有するアミノ酸配列を「第1」のアミノ酸配列と見なし、他のアミノ酸配列を「第2」のアミノ酸配列と見なす。
【0135】
本明細書で使用される「アミノ酸差異」は、参照配列に対する単一のアミノ酸残基の欠失、挿入又は置換を指し、好ましくは置換である。
【0136】
アミノ酸置換は、好ましくは保存的置換である。そのような保存的置換は、好ましくは、以下の群(a)~(e)内の1つのアミノ酸が同じ群内の別のアミノ酸残基によって置換される置換である:(a)小さな脂肪族、非極性又はわずかに極性の残基:Ala、Ser、Thr、Pro及びGly;(b)極性、負に荷電した残基及びそれらの(非荷電)アミド:Asp、Asn、Glu及びGln;(c)極性の正に荷電した残基:His、Arg及びLys;(d)大きな脂肪族非極性残基:Met、Leu、Ile、Val及びCys;及び(e)芳香族残基:Phe、Tyr及びTrp。
【0137】
特に好ましい保存的置換は以下の通りである:AlaからGly又はSer;ArgからLys;AsnからGln又はHis;AspからGlu;CysからSer;GlnからAsn;GluからAsp;GlyからAla又はPro;HisからAsn又はGln;IleからLeu又はVal;LeuからIle又はVal;LysからArg、Gln又はGlu;MetからLeu、Tyr、又はIle;PheからMet、Leu、又はTyr;SerからThr;ThrからSer;TrpからTyr;TyrからTrp;及び/又はPheからVal、Ile又はLeu。
【0138】
5.2 特異性
「特異性」、「特異的に結合する」又は「特異的結合」という用語は、ISVDなどの特定の結合単位が十分に高い親和性で結合することができる同じ生物由来の抗原などの異なる標的分子の数を指す(以下を参照)。「特異性」、「特異的に結合する」又は「特異的結合」は、本明細書では「選択性」、「選択的に結合する」又は「選択的結合」と互換的に使用される。ISVDなどの結合単位は、好ましくはそれらの指定された標的に特異的に結合する。
【0139】
結合単位の特異性/選択性は、親和性に基づいて決定することができる。親和性は、分子相互作用の強度又は安定性を示す。親和性は、一般に、mol/l(又はM)の単位を含むKD又は解離定数によって与えられる。親和性は、会合定数KAとして表すこともでき、KAは、1/KDに等しく、(mol/l)-1(又はM-1)の単位を有する。
【0140】
親和性は、標的分子上の部分と結合部位との間の結合強度の尺度である。KDの値が小さいほど、標的分子と標的化部分との間の結合強度が強くなる。
【0141】
典型的には、本技術で使用される結合単位(ISVDなど)は、10-5~10-12mol/l以下、好ましくは10-7~10-12mol/l以下、より好ましくは10-8~10-12mol/l(すなわち、会合定数(KA)が10~1012l/mol以上、好ましくは10~1012l/mol以上、より好ましくは10~1012l/mol)の解離定数(KD)でそれらの標的に結合する。
【0142】
10-4mol/lを超える任意のKD値(又は10l/mol未満の任意のKA値)は、一般に非特異的結合を示すと考えられる。
【0143】
特異的であると考えられる、抗原への免疫グロブリン配列の結合などの生物学的相互作用のKDは、典型的には10-5mol/l(10000nM又は10μM)~10-12mol/l(0.001nM又は1pM)以下の範囲である。
【0144】
したがって、特異的/選択的結合は、-同じ測定方法、例えばSPRを使用して-結合単位(又はそれを含むポリペプチド)が、10-5~10-12mol/l以下のKD値でTCRαβ、CD33及び/又はCD123に結合し、10-4mol/lを超えるKD値で関連する標的に結合することを意味し得る。
【0145】
したがって、本技術のポリペプチドは、好ましくは、配列番号1のアミノ酸からなるポリペプチドと比較して、ヒトTCRαβ、ヒトCD33及びヒトCD123に対して、少なくとも半分の結合親和性、より好ましくは少なくとも同じ結合親和性を有し、ここで、結合親和性は、SPRなどの同じ方法を用いて測定される。
【0146】
特定の種からの特定の標的への特異的結合は、結合単位が異なる種からの類似の標的にも特異的に結合することができることを排除しない。例えば、ヒトTCRαβへの特異的結合は、結合単位(又はそれを含むポリペプチド)がカニクイザル由来のTCRαβにも特異的に結合できることを排除するものではない。同様に、例えば、ヒトCD33又はCD123への特異的結合は、結合単位(又はそれを含むポリペプチド)がカニクイザル(「cyno」)由来のCD33又はCD123にも特異的に結合することができることを排除しない。
【0147】
指定された標的への結合単位の特異的結合は、例えばスキャッチャード解析及び/又は競合結合アッセイ、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素イムノアッセイ(EIA)及びサンドイッチ競合アッセイ、並びに当技術分野でそれ自体公知のそれらの様々なバリアントを含む、それ自体公知の任意の適切な方法;並びに本明細書で言及される他の技術で決定することができる。
【0148】
解離定数は、当業者には明らかなように、実際の解離定数又は見かけの解離定数であり得る。解離定数を決定する方法は当業者には明らかであり、例えば、以下に述べる技術を含む。この点で、10-4mol/l又は10-3mol/l(例えば、10-2mol/l)を超える解離定数を測定することが不可能であり得ることも明らかであろう。場合により、当業者には明らかであるように、(実際の又は見かけの)解離定数は、(実際の又は見かけの)会合定数(KA)に基づいて、関係[KD=1/KA]によって計算し得る。
【0149】
2つの分子間の分子相互作用の親和性は、周知の表面プラズモン共鳴(SPR)バイオセンサー技術(例えば、Ober et al.2001,Intern.Immunology 13:1551-1559を参照されたい)。本明細書で使用される「表面プラズモン共鳴」という用語は、バイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度の変化の検出によってリアルタイムの生物特異的相互作用の分析を可能にする光学現象を指し、一方の分子はバイオセンサーチップ上に固定化され、他方の分子はフロー条件下で固定化された分子上を通過して、kon、koff測定値、したがってK(又はK)値をもたらす。これは、例えば、周知のBIAcore(登録商標)システム(BIAcore International AB、GE Healthcare、Uppsala,Sweden及びPiscataway,NJ)を使用して実行することができる。さらなる説明については、Jonsson et al.(1993,Ann.Biol.Clin.51:19-26)、Jonsson et al.(1991 Biotechniques 11:620-627)、Johnsson et al.(1995,J.Mol.Recognit.8:125-131)、及び Johnnson et al.(1991,Anal.Biochem.198:268-277)を参照されたい。
【0150】
生体分子相互作用の親和性を決定するための別の周知のバイオセンサー技術は、バイオレイヤー干渉法(BLI)である(例えば、Abdiche et al.2008,Anal.Biochem.377:209-217を参照されたい)。本明細書で使用される「バイオレイヤー干渉法」又は「BLI」という用語は、2つの表面から反射された光の干渉パターンを分析する無標識光学技術を指す。内部参照層(参照ビーム)と、バイオセンサーチップ上の固定化タンパク質の層(信号ビーム)とを含む。バイオセンサーの先端に結合した分子の数の変化は、波長シフト(nm)として報告される干渉パターンのシフトを引き起こし、その大きさは、バイオセンサーの先端表面に結合した分子の数の直接的な尺度である。相互作用はリアルタイムで測定することができるので、会合速度及び解離速度並びに親和性を決定することができる。BLIは、例えば、周知のOctet(登録商標)Systems(Pall Life Sciences,Menlo Park,USAの一部門であるForteBio)を用いて行うことができる。
【0151】
或いは、親和性は、速度論的排除アッセイ(KinExA)(例えば、Drake et al.2004,Anal.Biochem.,328:35-43を参照のこと)で、KinExA(登録商標)platform(Sapidyne Instruments Inc,Boise,USA)を使用して測定することができる。本明細書で使用される「KinExA」という用語は、未修飾分子の真の平衡結合親和性及び速度論を測定するための溶液ベースの方法を指す。抗体/抗原複合体の平衡溶液を、抗原(又は抗体)でプレコートしたビーズが入ったカラムに通し、遊離抗体(又は抗原)を被覆分子に結合させる。このように捕捉された抗体(又は抗原)の検出は、抗体(又は抗原)に結合する蛍光標識タンパク質を用いて達成される。
【0152】
GYROLAB(登録商標)免疫アッセイシステムは、自動化された生物分析及び迅速な試料ターンアラウンドのためのプラットフォームを提供する(Fraley et al.2013,Bioanalysis 5:1765-74)。
【0153】
5.3(In vivo)半減期の延長
ポリペプチドは、場合により1つ以上のペプチドリンカーを介して連結された1つ以上の他の基、残基、部分又は結合単位をさらに含んでいてもよく、前記1つ以上の他の基、残基、部分又は結合単位は、前記1つ以上の他の基、残基、部分又は結合単位を含まない対応するポリペプチドと比較して、増大した(in vivo)半減期を有するポリペプチドを提供する。in vivo半減期延長は、例えば、ポリペプチドが、投与後にヒト対象などの哺乳動物において増大した半減期を有することを意味する。半減期は、例えばt1/2ベータとして表すことができる。
【0154】
基、残基、部分又は結合単位の種類は一般に限定されず、例えば、ポリエチレングリコール分子、血清タンパク質又はその断片、血清タンパク質に結合することができる結合単位、Fc部分、及び血清タンパク質に結合することができる小タンパク質又はペプチドからなる群から選択され得る。
【0155】
より具体的には、ポリペプチドに増大した半減期を提供する前記1つ以上の他の基、残基、部分又は結合単位は、ヒト血清アルブミンなどの血清アルブミン又はIgGなどの血清免疫グロブリンに結合することができる結合単位からなる群から選択することができ、好ましくはヒト血清アルブミンに結合することができる結合単位である。結合単位は、好ましくはISVDである。
【0156】
例えば、国際公開第04/041865号パンフレットは、血清アルブミンに結合する(特にヒト血清アルブミンに結合する)NANOBODY(登録商標)ISVDを記載しており、これは、前記タンパク質の半減期を増加させるために、他のタンパク質(所望の標的に結合する1つ以上の他のNANOBODY(登録商標)ISVDなど)に連結することができる。
【0157】
国際出願である国際公開第06/122787号パンフレットには、(ヒト)血清アルブミンに対するいくつかのNANOBODY(登録商標)ISVDが記載されている。これらのNANOBODY(登録商標)ISVDには、Alb-1(国際公開第06/122787号パンフレットの配列番号52)と呼ばれるNANOBODY(登録商標)ISVD、及びAlb-8(国際公開第06/122787号パンフレットの配列番号62)などのそのヒト化バリアントが含まれる。ここでも、これらを使用して、治療用タンパク質及びポリペプチド並びに他の治療用実体又は部分の半減期を延長することができる。
【0158】
さらに、国際公開第2012/175400号パンフレットには、Alb-23と呼ばれるAlb-1のさらに改良されたバージョンが記載されている。
【0159】
好ましい実施形態では、ポリペプチドは、国際公開第2012/175400号パンフレットの7~9頁に示されるように、Alb-1、Alb-3、Alb-4、Alb-5、Alb-6、Alb-7、Alb-8、Alb-9、Alb-10及びAlb-23、好ましくはAlb-8又はAlb-23又はそのバリアント、並びに国際公開第2012/175741号パンフレット、国際公開第2015/173325号パンフレット、国際公開第2017/080850号パンフレット、国際公開第2017/085172号パンフレット、国際公開第2018/104444号パンフレット、国際公開第2018/134235号パンフレット、国際公開第2018/134234号パンフレットに記載されるアルブミン結合剤から選択される血清アルブミン結合部分を含む。いくつかの好ましい血清アルブミン結合剤も表A-4に示す。本技術のポリペプチドの特に好ましいさらなる成分は、項目Cに記載の通りである。
【0160】
C.ヒト血清アルブミンに結合し、
i.配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR1、又は配列番号9と2若しくは1個のアミノ酸差を有するCDR1;
ii.配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR2、又は配列番号13と2若しくは1個のアミノ酸差を有するCDR2;及び
iii.配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR3、又は配列番号17と2若しくは1個のアミノ酸差を有するCDR3;
好ましくは、配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR2及び配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR3を含む、ISVD。
【0161】
ヒト血清アルブミンに結合するそのようなISVDの好ましい例は、(前の項目Cで定義されたCDRに加えて)表A-2の構築物ALB23002について示される1つ以上の(好ましくはすべての)フレームワーク領域を有し、最も好ましくは、構築物ALB23002の完全アミノ酸配列を含むISVDである(配列番号5、表A-1及びA-2参照)。
【0162】
項目Cは、以下のようにKabatの定義を使用して説明することもできる。
【0163】
C’.ヒト血清アルブミンに結合し、
i.配列番号37のアミノ酸配列を含むCDR1、又は配列番号37と2若しくは1個のアミノ酸差を有するCDR1;
ii.配列番号41のアミノ酸配列を含むCDR2、又は配列番号41と2若しくは1個のアミノ酸差を有するCDR2;及び
iii.配列番号45のアミノ酸配列を含むCDR3、又は配列番号45と2若しくは1個のアミノ酸差を有するCDR3;
好ましくは、配列番号37のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号41のアミノ酸配列を含むCDR2及び配列番号45のアミノ酸配列を含むCDR3を含む、ISVD。
【0164】
ヒト血清アルブミンに結合するそのようなISVDの好ましい例は、(前の項目C’で定義されたCDRに加えて)表A-2.1の構築物ALB23002について示される1つ以上、好ましくはすべてのフレームワーク領域を有し、最も好ましくは、構築物ALB23002の完全アミノ酸配列を含むISVDである(配列番号5、表A-1及びA-2.1参照)。
【0165】
また好ましい実施形態では、ヒト血清アルブミンに結合するISVDのアミノ酸配列は、配列番号5と90%超、例えば95%超又は99%超の配列同一性を有し得、場合によりCDRは前の項目Cで定義された通りである。特に、ヒト血清アルブミンに結合するISVDは、好ましくは配列番号5のアミノ酸配列を含む。
【0166】
ヒト血清アルブミンに対するそのようなISVD結合が、対応する参照CDR配列(上記項目C) 比較して少なくとも1つのCDRに2つ又は1つのアミノ酸差を有する場合、ISVDは、配列番号5に示される構築物ALB23002と少なくとも半分の結合親和性、好ましくは少なくとも同じ結合親和性をヒト血清アルブミンに対して有し、結合親和性は、SPRなどの同じ方法を使用して測定される。
【0167】
好ましい実施形態では、ヒト血清アルブミンへのそのようなISVD結合がC末端位置を有する場合、それはC末端アラニン(A)又はグリシン(G)伸長を示し、好ましくは配列番号64、65、67、69、70、71、72、73、74及び75から選択される(以下の表A-4参照)。ヒト血清アルブミンへのISVD結合が、C末端位置(すなわち、本技術のポリペプチドのC末端ISVDではない)以外の位置を含み、配列番号5、配列番号62、配列番号63、配列番号66及び配列番号68から選択される場合(下記の表A-4を参照のこと)。
【0168】
5.4 核酸分子
本技術のポリペプチドをコードする核酸分子も提供される。
【0169】
「核酸分子」(「核酸」と互換的に使用される)は、リン酸骨格を介して互いに連結されてヌクレオチド配列を形成するヌクレオチドモノマーの鎖である。核酸は、例えばポリペプチドの発現及び/又は産生のために、宿主細胞又は宿主生物を形質転換/トランスフェクトするために使用され得る。産生目的に適した宿主又は宿主細胞は当業者には明らかであり、例えば、任意の適切な真菌、原核生物若しくは真核生物の細胞若しくは細胞株又は任意の適切な真菌、原核生物若しくは真核生物であり得る。本技術のポリペプチドをコードする核酸を含む宿主又は宿主細胞も本技術に包含される。
【0170】
核酸は、例えば、DNA、RNA、又はそれらのハイブリッドであり得、PNAのような(例えば、化学的に)修飾ヌクレオチドも含み得る。これは一本鎖又は二本鎖であり得、好ましくは二本鎖DNAの形態である。例えば、本技術のヌクレオチド配列は、ゲノムDNA、cDNAであり得る。
【0171】
本技術の核酸は、それ自体公知の方法で調製又は取得することができ、及び/又は適切な天然源から単離することができる。天然に存在する(ポリ)ペプチドをコードするヌクレオチド配列は、例えば、配列変異を有するポリペプチドをコードする核酸分子を提供するために、部位特異的突然変異誘発に供することができる。また、当業者には明らかなように、核酸を調製するために、いくつかのヌクレオチド配列、例えば標的化部分をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列及び例えば1つ以上のリンカーをコードする核酸も適切な方法で一緒に連結することができる。
【0172】
核酸を生成するための技術は当業者には明らかであり、例えば、限定されないが、自動DNA合成;部位特異的突然変異誘発;2つ以上の天然に存在する配列及び/又は合成配列(又はその2つ以上の部分)を組み合わせること、切断型発現産物の発現をもたらす突然変異の導入;1つ以上の制限部位(例えば、適切な制限酵素を使用して容易に消化及び/又は連結することができるカセット及び/又は領域を作製するために)の導入、及び/又は1つ以上の「不一致」プライマーを使用したPCR反応による突然変異の導入を含み得る。
【0173】
5.5 ベクター
本技術のポリペプチドをコードする核酸分子を含むベクターも提供される。本明細書で使用されるベクターは、遺伝物質を細胞に運ぶのに適したビヒクルである。ベクターは、プラスミド若しくはmRNAなどの裸の核酸、又はリポソーム若しくはウイルスベクターなどのより大きな構造に組み込まれた核酸を含む。
【0174】
ベクターは、一般に、1つ以上の調節エレメント(例えば、1つ又はそれを超える適切なプロモーター、エンハンサー、ターミネーターなど)に場合により連結される少なくとも1つの核酸を含む。ベクターは、好ましくは発現ベクター、すなわち、コードされたポリペプチド又は構築物を適切な条件下で、例えばベクターが(例えば、ヒト)細胞に導入された場合に発現させるのに適したベクターである。DNAベースのベクターの場合、これは通常、転写(例えばプロモーター及びポリAシグナル)及び翻訳(例えば、コザック配列)のためのエレメントの存在を含む。
【0175】
好ましくは、ベクターにおいて、前記少なくとも1つの核酸及び前記調節エレメントは、互いに「作動可能に連結される」であり、これは、一般に、それらが互いに機能的関係にあることを意味する。例えば、プロモーターは、前記プロモーターがコード配列の転写及び/又は発現を開始又は他の方法で制御/調節することができる場合、コード配列に「作動可能に連結される」と考えられる(ここで、前記コード配列は、前記プロモーター「の管理下」であると理解されるべきである)。一般に、2つのヌクレオチド配列が作動可能に連結されている場合、それらは同じ向きにあり、通常は同じ読み枠にもある。それらは通常、本質的に連続しているが、これもまた必要ではない場合がある。
【0176】
好ましくは、ベクターの任意の調節エレメントは、それらが意図される宿主細胞又は宿主生物においてそれらの意図される生物学的機能を提供することができるようなものである。
【0177】
例えば、プロモーター、エンハンサー又はターミネーターは、意図された宿主細胞又は宿主生物において「操作可能」でなければならず、これは、例えば、前記プロモーターが、それが作動可能に連結されているヌクレオチド配列、例えばコード配列の転写及び/又は発現を開始又は他の方法で制御/調節することができなければならないことを意味する。
【0178】
5.6 組成物
本技術はまた、本技術の少なくとも1つのポリペプチド、本技術のポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸分子、又はそのような核酸分子を含む少なくとも1つのベクターを含む組成物を提供する。組成物は医薬組成物であり得る。組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤及び/又はアジュバントをさらに含んでいてもよく、1つ以上のさらなる薬学的に活性なポリペプチド及び/又は化合物を含んでいてもよい。
【0179】
5.7 宿主生物
本技術はまた、本技術のポリペプチド、本技術のポリペプチドをコードする核酸、及び/又は本技術のポリペプチドをコードする核酸分子を含むベクターを含む宿主細胞又は宿主生物に関する。
【0180】
適切な宿主細胞又は宿主生物は当業者には明らかであり、例えば、任意の適切な真菌、原核生物若しくは真核生物の細胞若しくは細胞株又は任意の適切な真菌、原核生物若しくは真核生物である。具体的としては、HEK293細胞、CHO細胞、大腸菌、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)等が挙げられる。最も好ましい宿主はピキア・パストリス(Pichia pastoris)である。
【0181】
5.8 ポリペプチドの方法及び使用
本技術は、本技術のポリペプチドの製造方法も提供する。この方法は、宿主細胞又は宿主生物をポリペプチドをコードする核酸で形質転換/トランスフェクトすること、宿主中でポリペプチドを発現させること、場合により1つ以上の単離及び/又は精製ステップが続くことを含み得る。具体的には、本方法は:
a)適切な宿主細胞若しくは宿主生物において、又は別の適切な発現系において、ポリペプチドをコードする核酸配列を発現させること;場合によりその後に:
b)ポリペプチドを単離及び/又は精製することを含み得る。
【0182】
産生目的に適した宿主細胞又は宿主生物は当業者には明らかであり、例えば、任意の適切な真菌、原核生物若しくは真核生物の細胞又は細胞株、又は任意の適切な真菌、原核生物若しくは真核生物であり得る。具体的としては、HEK293細胞、CHO細胞、大腸菌、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)等が挙げられる。最も好ましい宿主はピキア・パストリス(Pichia pastoris)である。
【0183】
本技術のポリペプチド、記載の核酸分子若しくはベクター、又は本技術のポリペプチド、核酸分子若しくはベクターを含む組成物、好ましくはポリペプチド又はそれらを含む組成物は、医薬として有用である。
【0184】
したがって、本技術は、医薬として使用するための、本技術のポリペプチド、記載の核酸分子若しくはベクター、又は本技術のポリペプチド、核酸分子若しくはベクターを含む組成物を提供する。
【0185】
急性骨髄性白血病(AML)、好ましくは再発性及び/又は難治性AMLの(予防的又は治療的)治療に使用するための、本技術のポリペプチド、記載される核酸分子若しくはベクター、又は本技術のポリペプチド、核酸分子若しくはベクターを含む組成物も提供される。
【0186】
AMLを処置する(予防的及び/又は治療的)方法であって、それを必要とする対象に、薬学的に活性な量の本技術のポリペプチド、記載される核酸分子若しくはベクター、又は本技術のポリペプチド、核酸分子若しくはベクターを含む組成物を投与することを含む方法がさらに提供される。
【0187】
本技術のポリペプチド、記載の核酸分子若しくはベクター、又は本技術のポリペプチド、核酸分子若しくはベクターを含む組成物の、好ましくはAMLを治療するための医薬組成物の調製における使用がさらに提供される。
【0188】
AMLは、再発性及び/又は難治性AMLであり得る。
【0189】
本技術の文脈で言及される「対象」は、任意の動物、好ましくは哺乳動物であり得る。哺乳動物の中でも、ヒトと非ヒト哺乳動物とを区別することができる。非ヒト動物は、例えばコンパニオンアニマル(例えば、イヌ、ネコ)、家畜(例えば、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、又はブタの動物)、又は一般に研究目的及び/又は抗体を産生するために使用される動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ネコ、イヌ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ブタ、非ヒト霊長類、例えばカニクイザル、又はラクダ科動物、例えばラマ若しくはアルパカ)であり得る。
【0190】
予防及び/又は治療目的の文脈において、対象は任意の動物、より具体的には任意の哺乳動物であり得るが、好ましくはヒト対象である。
【0191】
物質(ポリペプチド、核酸分子及びベクターを含む)又は組成物は、任意の適切な投与経路によって、例えば経腸(経口又は直腸など)又は非経口(例えば、皮膚上、舌下、頬側、鼻、関節内、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、経皮、又は経粘膜)投与によって対象に投与され得る。筋肉内、皮下又は皮内などの非経口投与が好ましい。最も好ましいのは皮下投与である。
【0192】
意図する治療結果を提供するために、有効量のポリペプチド、記載の核酸分子若しくはベクター、又はポリペプチド、核酸分子若しくはベクターを含む組成物を対象に投与することができる。
【0193】
1種以上の用量を投与することができる。2種以上の用量を投与する場合、ポリペプチド、組成物、核酸分子又はベクターの効果を最大化するために、用量を適切な間隔で投与することができる。
【0194】
【表3】
【0195】
【表4】
【0196】
【表5】
【0197】
【表6】
【0198】
【表7】
【0199】
【表8】
【0200】
【表9】
【実施例
【0201】
6 実施例
6.1 実施例1:多重特異性ISVD構築物の生成
多重特異性NANOBODY(登録商標)ISVDタンパク質をP.パストリス(P.pastoris)において発現させた。酵母発現ベクターは、AOX1プロモーター及びターミネーター、ゼオシンに対する耐性遺伝子及び出芽酵母α接合因子シグナルペプチドに対するコード情報を含む。NANOBODY(登録商標)ISVD一価構成要素(BB)をGSリンカーと組み合わせ、Golden Gateクローニング(Engler C、Marillonnet S.Golden GateクローニングMethods Mol Biol.2014;1116:119-31))によって発現ベクターにクローニングした。発現ベクターは、1つ以上のベクターに含まれるGSリンカーと共に、PCR増幅一価NANOBODY(登録商標)ISVD構成要素をクローニングするための2つのBpiI制限部位を含む。これらのエレメントはすべて、BpiI部位に隣接している。クローニングカセットの各位置に固有のヌクレオチドオーバーハングを使用することにより、所定の順序でシームレスなライゲーションが可能になる。サンガー配列確認後、大腸菌TOP10由来のプラスミドDNAを線状化し、エレクトロポレーションによって社内で調製した高コンピテントP.パストリス(P.pastoris)株NRRL Y-11430(ATCC 76273)に形質転換した。
【0202】
大腸菌(E.coli)TG1細胞(Lucigen、カタログ番号60502)(NANOBODY(登録商標)ISVDタンパク質発現ベクター含有)を、「5052」自己誘導培地を含有するバッフル付き振盪フラスコ中で37℃で2時間、続いて30℃(250rpm)で29時間増殖させた。細胞を遠心分離(20分、4500rpm、4℃)によってペレット化し、上清を捨て、ペレットを-20℃で一晩凍結した。次いで、凍結細胞ペレットを元の培養体積の1/12.5でDPBSに溶解し、穏やかに回転させながら4℃で1時間インキュベートして、細胞の外膜を破壊した。細胞を再度ペレット化し(20分、8500rpm、4℃)、NANOBODY(登録商標)ISVDタンパク質を含有する上清を回収し、濾過して直ちに精製を進めた。
【0203】
FLAG3Hisタグ付きNANOBODY(登録商標)ISVDタンパク質を、イミダゾール(前者)又は酸性溶出(後者)を用いたNiIDA/NTA(Genscript)樹脂上の固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)、引き続いて脱塩ステップ(Sephadex G25樹脂を含むPDカラム、GE Healthcare)、及び必要に応じて分取サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)(Superdex 75カラム、GE Healthcare)によってD-PBS中で精製した。この目的のために、ロボットステーション又はAKTA精製システムを使用した。
【0204】
タグレスNANOBODY(登録商標)ISVDタンパク質又はALB構成要素を含有する構築物を、Amsphere A3(JSR)又はMabCaptureA(Poros)樹脂上で精製し、続いて脱塩ステップ(Sephadex G25樹脂を含むPDカラム、GE Healthcare)を行い、必要に応じて、分取SEC(Superdex 75カラム、GE Healthcare)をD-PBS中で行った。N-オクチル-β-d-グルコピラノシド(OGP;Alpha Aesar、カタログ番号J67390)処理は、低LPSレベルが必要とされる場合は常に精製/ゲル濾過クロマトグラフィー中に実施した。OD280/OD340測定によって濃度を決定した。品質管理はSDS-PAGE及び質量分析によって行った。
【0205】
6.2 実施例2:TCRαβ、CD33、CD123及び血清アルブミンに対する多重特異性ISVD構築物結合親和性
配列番号1に示されるようなTCRαβ-CD33-CD123多重特異性ISVD構築物を作製した。
【0206】
6.2.1 ヒト及びカニクイザルのCD33及びCD123タンパク質に対する親和性決定
組換えhuCD33L-Fc、cyCD33L-Fc(捕捉設定による)又はhuCD123(捕捉設定による)タンパク質に対するTCRαβ-CD33-CD123多重特異性ISVD構築物(配列番号1)の、会合速度定数(k)、解離速度定数(k)及び平衡解離定数(K)として表される親和性を、ProteOn XPR36装置(BioRad Laboratories,Inc.)上の表面プラズモン共鳴(SPR)に基づくアッセイによって37℃で測定した。
【0207】
CD33に対する結合親和性を測定するための設定
抗huIgG(Fc)を、EDC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)及びNHS(N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)化学を使用して、アミンカップリングを介してGLH(長マトリクス、高容量)センサーチップに固定化した。次に、huCD33L-Fc及びcyCD33L-Fcを捕捉した(会合:120秒、25μL/分)。配列番号1に示される精製されたTCRαβ-CD33-CD123多重特異性ISVD構築物を異なる濃度(0.4nM~625nM)で120秒間注入し、解離を900秒間追跡した。
【0208】
CD123に対する結合親和性を測定するための設定
抗huIgG(Fc)を、EDC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)及びNHS(N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)化学を使用して、アミンカップリングを介してGLH(長マトリクス、高容量)センサーチップに固定化した。次に、huCD123-Fc及びcyCD123-Fcを捕捉した(会合:120秒、25μL/分)。配列番号1に示される精製されたTCRαβ-CD33-CD123多重特異性ISVD構築物を異なる濃度(1.2nM~300nM)で120秒間注入し、解離を45μl/分で900秒間追跡した。
【0209】
基準分析物レーン及びブランク緩衝液注入を差し引くことによってデータを二重参照した。親和定数(k、k、K)を、ProteOn Manager 3.1.0(バージョン3.1.0.6)ソフトウェアを使用してラングミュア1:1相互作用モデルを適用して計算した。
【0210】
ヒト及びカニクイザルCD33並びにヒト及びカニクイザルCD123に対する配列番号1に記載のTCRαβ-CD33-CD123多重特異性ISVD構築物の親和性測定の結果を、以下の表2及び表3に要約する。
【0211】
【表10】
【0212】
カニクイザルCD33(K=6.9nM)に対するTCRαβ-CD33-CD123多重特異性ISVD構築物の反応性は、ヒトCD33(K=7.6nM)に匹敵した。
【0213】
【表11】
【0214】
カニクイザルCD123(K=2nM)に対するTCRαβ-CD33-CD123多重特異性ISVD構築物の反応性は、ヒトCD123(K=0.59nM)より3.3倍低かった。
【0215】
結果(表2及び表3)は、多重特異性ISVD構築物がヒト/カニクイザルCD33及びヒト/カニクイザルCD123に高親和性で結合することを実証している。
【0216】
6.2.2 ヒト及びカニクイザルTCRαβタンパク質に対する親和性決定
TCRαβ-CD33-CD123多重特異性ISVD構築物(配列番号1)の、組換えhuTCR(2XN9)-ジッパー、cyTCR(AEA41865)-ジッパー(被覆設定による)に対する会合速度定数(k)、解離速度定数(k)及び平衡解離定数(K)として表される親和性を、ProteOn XPR36装置(BioRad Laboratories,Inc.)に基づくSPRベースアッセイによって37℃で評価した。
【0217】
TCRαβに対する結合親和性を測定するための設定
huTCR(2XN9)-ジッパー、cyTCR(AEA41865)-ジッパータンパク質をGLC(短マトリクス、通常容量)センサーチップでコーティングした。配列番号1に示される精製されたTCRαβ-CD33-CD123多重特異性ISVD構築物を異なる濃度(0.4nM~625nM)で120秒間注入し、解離を900秒間追跡した。
【0218】
基準分析物レーン及びブランク緩衝液注入を差し引くことによってデータを二重参照した。親和定数(k、k、K)を、ProteOn Manager 3.1.0(バージョン3.1.0.6)ソフトウェアを使用してラングミュア1:1相互作用モデルを適用して計算した。
【0219】
ヒト及びカニクイザルTCRαβに対する配列番号1に示されるTCRαβ-CD33-CD123多重特異性ISVD構築物の親和性測定の結果を以下の表4に要約する。参照として、ALB23002(配列番号5)に連結されたTCRαβ構成要素(配列番号2)のみからなるISVDを採用した。
【0220】
【表12】
【0221】
カニクイザルTCRαβ(K=6.7nM)に対するTCRαβ-CD33-CD123多重特異性ISVD構築物の反応性は、ヒトTCRαβ(K=21nM)よりも3倍高かった。
【0222】
結果(表4)は、多重特異性ISVD構築物がヒト/カニクイザルTCRαβに高親和性で結合することを実証している。
【0223】
6.2.3 ヒト、マウス及びカニクイザル血清アルブミンに対する親和性決定
C末端ALB23002半減期延長を介したヒト、カニクイザル及びマウス血清アルブミンへの組換え体に対するTCRαβ-CD33-CD123多重特異性ISVD構築物(配列番号1)の、結合速度定数(k)、解離速度定数(k)及び平衡解離定数(K)として表される結合親和性(被覆設定による)を、ProteOn XPR36装置(BioRad Laboratories,Inc.)に基づくSPRベースアッセイによって37℃で評価した。
【0224】
結合親和性血清アルブミンを測定するための設定
EDC及びNHS化学(使用したランニング緩衝液:HBS-EP+、pH7.4)を使用して、アミンカップリングを使用するアミンカップリングを使用して、ヒト、カニクイザル及びマウス血清アルブミンをProteOn GLCセンサーチップに固定化した。アルブミンをpH4.5酢酸緩衝液中2.5μg/mL(HSA及びMSA)及び5μg/mL(CSA)の2つの濃度で固定化し、CSAについては最大220RU、MSAについては150RU及びHSAについては110RUの固定化レベルをもたらした。精製した多価VHHを異なる濃度(4.3nM~416nM)で2分間(流速45μL/分)注入し、解離を900秒間追跡した。サイクル間の再生は、10mMグリシン-HCL、pH1.5を100μL/分で47秒間注入することからなった。
【0225】
参照リガンドレーン及び緩衝液注入を差し引くことによって、データを二重参照した。ProteOn Manager 3.1.0(バージョン3.1.0.6)ソフトウェアモデルを使用して、Langmuir 1:1相互作用モデルでのフィッティングによって処理曲線を評価し、親和定数(k、k、K)を計算した。
【0226】
ヒト、マウス及びカニクイザル血清アルブミンに対する配列番号1に示されるTCRαβ-CD33-CD123多重特異性ISVD構築物の親和性測定の結果を、以下の表5に要約する。
【0227】
【表13】
【0228】
CSAに対する交差反応性が確認された。さらに、動態パラメータは報告されなかったが、MSAに対する親和性は、半減期延長を得て血清アルブミンの半減期を採用するのに十分良好であった。
【0229】
結果(表5)は、多重特異性ISVD構築物がヒト/マウス/カニクイザルTCRαβに高親和性で結合することを実証している。
【0230】
6.3 実施例3:膜結合CD33及び/又はCD123に対する多重特異性ISVD構築物結合親和性
標的細胞株上のCD33/CD123に対する結合親和性を測定するための設定
CD33及び/又はCD123を発現する標的細胞株に対するTCRαβ-CD33-CD123多重特異性ISVD構築物の結合親和性を、フローサイトメトリーを使用して評価した。CD123を発現する標的細胞株は、国際公開第2018/091606A1号パンフレットに詳細に記載されている。
【0231】
トランスフェクトされたCD33細胞を以下のように作製した。Flp-In(Flpリコンビナーゼ媒介インテグレーションによって安定な哺乳動物発現細胞株を生成するためのFlp-In(商標)システム(Invitrogen、K601001、K601002))部位特異的組換え技術を使用して、CD33の組換え過剰発現を有する安定なCHO Flp-In(Invitrogen、R758-07)細胞株を作製した。これにより、サッカロミセス・セルビシエ(Saccharomyces cerevisiae)由来のFlpリコンビナーゼ(pOG44)によって、FRT(Flp Recombination Target)部位の特定のゲノム位置でDNA組込みが起こる。Flp-In(商標)宿主細胞株及び発現プラスミド(pcDNA5)は両方ともこのFRT部位を含有し、それによって単一の相同DNA組換えを可能にする。ヒトCD33の配列はNCBI RefSeq NP_001763に由来し、カニクイザルCD123の配列はNCBI genbank番号XP_005590138に由来した。
【0232】
簡単に記載すると、細胞を集め、V底96ウェルプレートに移し(5×10細胞/ウェル)、30μMの臨床グレードのHSA(CSL Behring、2160-679)の存在下、100μLの最終容量で、FACSバッファー(10%FBS(Sigma、F7524)及び0.05%アジ化ナトリウム(Acros Organics、19038年)を含むD-PBS(Gibco、14190))中、4℃で30分間、TCRαβ-CD123-CD33多重特異性ISVD構築物の段階希釈物と共にインキュベートした。次に、細胞をFACS緩衝液で3回洗浄し、FLAG3Hisタグ付きCD123-CD33-TCR多重特異性ISVD構築物の検出のために4℃で30分間、1μg/mLマウスモノクローナル抗FLAG(登録商標)M2抗体(Sigma-Aldrich、F1804)と共に、又はALB BBによるNANOBODY(登録商標)ISVDの検出のために3μg/mL mAb抗VHH抗体(ABH0077)(APS+インハウス、A-0006-00_ABH0077_SF_AB1891)と共にインキュベートした。次に、細胞をFACS緩衝液で3回洗浄し、最終体積100μLで、5μg/mLのアロフィコシアニン(APC) AffiniPureヤギ抗マウスIgG(サブクラス1+2a+2b+3)、Fcγ断片特異的(Jackson Immunoresearch、115-136-071)と共に4℃で30分間インキュベートした。その後、細胞を、1μg/mLのヨウ化プロピジウム(PI、シグマP4170)を補充した50μLの冷FACS緩衝液に再懸濁して、生細胞と死細胞とを区別した。染色後、MACSQuant Xフローサイトメーター(Miltenyi Biotec)を用いて細胞を取得し、FlowLogic(Miltenyi Biotec)を用いて分析した。最初に、細胞を破片と区別するために、FSC-SSC分布に基づいて、全イベントの80%超を表すP1集団を選択した。この集団(P1)から、PI陽性(死)細胞を除外し、PI陰性細胞のAPC蛍光強度の中央値を評価した。
【0233】
初代T細胞に対する結合親和性を測定するための設定
初代T細胞に対するTCRαβ-CD33-CD123多重特異性ISVD構築物の結合親和性を、FLAG3Hisタグ付き一価TCR ISVDをリガンドとして使用する競合設定においてフローサイトメトリーを使用して評価した。
【0234】
簡単に説明すると、ヒト初代T細胞又はカニクイザル初代T細胞を解凍し、V底96ウェルプレート(100μL中7.5×10細胞/ウェル)に移し、30μM臨床グレードHSA CSLベーリング、2160~679の存在下、FACS緩衝液(10%FBS(シグマ、F7524)及び0.05%アジ化ナトリウム(Acros Organics、19038)を含むD-PBS(Gibco、14190))中、TCRαβ-CD33-CD123多重特異性ISVD構築物の段階希釈物及び固定濃度のリガンドと共に4℃で30分間、最終容量100μLでインキュベートした。アッセイで使用したリガンドの濃度は、その結合EC50未満であった。4℃で90分間のインキュベーション期間の後、リガンド結合のレベルをフローサイトメトリーによって決定した。そこで、細胞を3回洗浄し、1μg/mlマウスモノクローナルANTI-FLAG(登録商標)M2抗体(Sigma-Aldrich、F1804)と共に4℃で30分間インキュベートし、再び洗浄し、最終体積100μLで5μg/mlのアロフィコシアニン(APC)AffiniPureヤギ抗マウスIgG(サブクラス1+2a+2b+3)、Fcγ断片特異的(Jackson Immunoresearch、115-136-071)と共に4℃で30分間インキュベートした。その後、細胞を、1μg/mlヨウ化プロピジウム(PI、Sigma、P4170)を補充したFACS緩衝液に再懸濁して、生細胞と死細胞とを区別した。染色後、MACSQuant Xフローサイトメーター(Miltenyi Biotec)を用いて細胞を取得し、FlowLogic(Miltenyi Biotec)を用いて分析した。最初に、細胞を破片と区別するために、FSC-SSC分布に基づいて、全イベントの80%超を表すP1集団を選択した。この集団(P1)から、PI陽性(死)細胞を除外し、PI陰性細胞のAPC蛍光強度の中央値を評価した。
【0235】
ヒト-カニクイザル交差反応性は、上記のようにフローサイトメトリーを使用して、ヒト若しくはカニクイザルCD33トランスフェクト細胞株又はヒト若しくはカニクイザルCD123トランスフェクト細胞株への一価CD33構成要素(配列番号3)及び一価CD123構成要素(配列番号4)の結合を試験することによって評価した。結果を図2にグラフで表す。異なる実験のEC50値を表6(CD33トランスフェクト標的細胞)及び表7(CD123トランスフェクト標的細胞)に要約する。
【0236】
【表14】
【0237】
【表15】
【0238】
ヒト及びカニクイザルの膜標的への一価CD33及びCD123ビルディングブロックの結合が確認された。ヒトとカニクイザルとの間のEC50の差は、CD33への結合については2倍未満の減少であり、CD123細胞への結合については3倍の減少であった(表7)。
【0239】
結論として、組換えヒト及びカニクイザルCD33及びCD123タンパク質に対する結合親和性に加えて、ヒト及びカニクイザル細胞発現CD33及びCD123に対するTCRαβ-CD33-CD123多重特異性ISVD構築物の用量依存的結合も確認された(n=1)。
【0240】
CD123-CD33-TCR多重特異性ISVD構築物及び参照TCR-ISVD構築物(ALB23002に連結されたTCRαβ構成要素(配列番号2)のみからなる(配列番号5))のヒトT細胞及びカニクイザルT細胞への結合を、上記のようにフローサイトメトリーを使用して競合設定で評価した(図3)。
【0241】
DRCの例示的な例を図4に示す。ISVD構築物を複数の健常ドナーT細胞で試験した。グローバルIC50を表8に示す。
【0242】
【表16】
【0243】
要約すると、カニクイザル初代T細胞に対するTCRαβ-CD33-CD123多重特異性ISVD構築物の交差反応性が確認された。初代カニクイザルT細胞のEC50(=729nM)は、ヒト初代T細胞のEC50(=218M)よりも約3倍高かった。
【0244】
6.4 実施例4:多重特異性ISVD構築物誘導T細胞媒介性標的細胞殺傷
6.4.1 インピーダンスに基づく細胞傷害性アッセイ
ISVD構築物を、ヒト又はカニクイザルの初代エフェクターT細胞及び接着性標的細胞を使用したインピーダンスベースの細胞傷害性アッセイにおけるリダイレクトされたT細胞媒介性殺傷について(例えば、国際公開第2018091606A1号パンフレットに記載されているように)特徴付けた。xCELLigence装置(Roche)を用いて、電極表面への標的細胞の接着によって誘導されるインピーダンスの変化を測定した。T細胞は非接着性であり、したがってインピーダンス測定値に影響を及ぼさない。xCELLigence(登録商標)RTCA MP機器は、電気インピーダンスの変化を定量化し、細胞によって覆われる組織培養ウェルの総面積に正比例する細胞指数と呼ばれる無次元パラメータとして表示する。アッセイ培地(標的細胞増殖培地(選択抗生物質なし)+1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Life technologies カタログ番号15140)中96 Eプレート(ACEA Biosciences;05 232 368 001)の各ウェルに、50μLの4倍濃度HSA溶液を添加した(いくつかのアッセイでは、200μMを使用して50μMの最終濃度を有し、他のアッセイでは、120μMを使用して30μMの最終濃度を有した)。外側ウェルを使用せず、200μLの培地又はD-PBSで満たした。96 EプレートをxCELLigence(登録商標)ステーション(37℃インキュベータ内、5%CO2)に置き、細胞の非存在下で、アッセイ培地のバックグラウンドインピーダンスを測定するために単一の測定を行った。続いて、アッセイ培地中の50μLの標的細胞(2×10細胞/ウェル)を96 Eプレートに播種し、アッセイ培地中の50μLの連続希釈ISVD構築物溶液(4X濃度)を添加した。(最終体積=200μL)。室温で30分後、アッセイ培地中の初代T細胞(3×105細胞/ウェル)50μLをウェルあたり添加して、15:1のエフェクター対標的比を達成した。プレートをxCELLigence(登録商標)ステーションに置き、インピーダンスを15分ごとに4日間測定した。データは、結果に示される固定時点で分析した。
【0245】
6.4.2 フローサイトメトリーに基づく細胞傷害性アッセイ
ISVD構築物を、エフェクター細胞及び非接着性標的細胞としてヒト初代T細胞又はカニクイザル初代T細胞を使用するフローサイトメトリーベースの細胞傷害性アッセイにおいて、リダイレクトされたT細胞媒介性殺傷について特徴付けた。PKH26赤色蛍光細胞リンカーキット(Sigma、PKH26GL-1KT)を製造者の説明書に従って使用して、標的細胞を4μM PKH26膜色素で標識した。エフェクター細胞(2.5×10細胞/ウェル)及びPKH標識標的細胞(2.5×10細胞/ウェル)を、標的細胞株(1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Life Technologies、15140)及び50μM AlブレックスHSA(CSL Behring、2160-679)を含む標的増殖培地)のアッセイ培地中、96ウェルV底プレート(Greiner Bio-one、#651 180)(エフェクター対標的比10:1)中で共インキュベートした。濃度依存性細胞溶解の分析のために、標的アッセイ培地中のISVD構築物の段階希釈物を細胞に添加し、5%CO2雰囲気下、37℃で18時間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を遠心分離によってペレット化し、FACS緩衝液(10%FBS(Sigma、F7524)及び0.05%アジ化ナトリウム(Acros Organics、19038)を含むD-PBS(Gibco、14190))で洗浄した。その後、細胞を、5nMのTO-PRO(登録商標)-3ヨウ化物(642?661)(ThermoFisher Scientific、T3605)が補充された100μLのFACS緩衝液に再懸濁して、生細胞と死細胞とを区別した。細胞を、MACSQuant Xフローサイトメーター(Miltenyi Biotec)を使用して分析した。試料あたり、70μLの総試料体積を取得した。PKH26陽性細胞にゲーティングを設定し、この集団内でTO-PRO(登録商標)-3陽性細胞を決定した。比溶解パーセント=((%TO-PRO-3+構築物なし-%TO-PRO-3+構築物あり)/%TO-PRO-3+構築物なし) ×100。
【0246】
CD33、CD123及びTCRに対するTCRαβ-CD33-CD123多重特異性ISVD構築物の機能的交差反応性分析を、ヒト又はカニクイザルの初代T細胞及び接着性ヒト又はカニクイザルのトランスフェクトCD33又はCD123細胞を使用したインピーダンスベースの細胞傷害性アッセイ(xCELLigence)で決定した。
【0247】
NANOBODY(登録商標)ISVDを上記のようにHSAで完全に飽和させるために、6.4.1及び6.4.2で上記したように、すべてのアッセイを過剰量のHSAの存在下で実行した。参照TCR-ISVDを陰性対照として使用した。結果を図5及び6並びに表9に示す。
【0248】
6.4.3 結果
ヒト初代T細胞とカニクイザル初代T細胞とを比較したアッセイ結果を図5及び図7にグラフで示す。ヒトCD33及びヒトCD123トランスフェクト細胞のヒトT細胞媒介性細胞殺傷の評価を、異なるヒトドナー由来のT細胞を使用して行い、これにより、グローバルIC50値を計算することができた(表9)。ヒトCD33及びヒトCD123トランスフェクト細胞のカニクイザルT細胞媒介殺傷の評価を、1匹のカニクイザル由来のT細胞を使用して行った。IC50値を表10に要約する。
【0249】
【表17】
【0250】
ヒト標的発現細胞に対するグローバルIC50は、CD33及びCD123についてそれぞれ5、4.10-11M及び2、5.10-11Mであった。
【0251】
【表18】
【0252】
TCRに対するTCRαβ-CD33-CD123 ISVD構築物のヒトカニクイザル交差反応性を確認するために、上記のように50μM HSAの存在下でCD33、CD123二重発現ヒトMOLM-13標的細胞株と組み合わせてヒト又は初代T細胞のいずれかを使用して、フローサイトメトリーに基づくT細胞媒介MOLM-13細胞殺傷でISVD構築物を評価した。これらの結果のグラフ図を図6に示す。異なるドナーを使用したヒトT細胞媒介殺傷アッセイにおいて試験されたTCRαβ-CD33-CD123 ISVD構築物のさらなるデータが利用可能であり、これにより、グローバルEC50値を計算することができた(表11)。カニクイザルT細胞媒介性殺傷アッセイのEC50値を表12に示す。
【0253】
【表19】
【0254】
【表20】
【0255】
結論として、TCRαβ-CD33-CD123 ISVD構築物は、ヒト及びカニクイザルヒト標的細胞媒介性殺傷アッセイの両方において機能的であった。CD33/CD123二重陽性AML細胞株に対する記載されたISVDのグローバルな殺傷効力は、1、8.10-11Mであった。
【0256】
6.5 実施例5:T細胞ヒト化NSGマウスに移植したCD123Molm-13-luc播種性AMLモデルにおけるTCRαβ-CD33-CD123多重特異性ISVD構築物のin vivo有効性の前臨床
6.5.1 材料及び方法
細胞株及びヒト材料
CD123 Molm-13を発現するヒトAML由来細胞株は、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen(Braunschweig,Germany)から入手した。Molm-13細胞をRPMI1640 Glutamax培地(ウシ胎児血清20%で完成)中で培養して増殖させた(37℃、5%CO、95%湿度)。細胞を、非複製レンチウイルスによって保有されるルシフェラーゼベクター(SV40-PGL4-Puro)に感染させた。ポリクローナルMolm-13-lucを、2μg/mlピューロマイシンを使用して選択した。
【0257】
in vivo投与のためのヒトT細胞の精製及び増幅
健常なドナー由来の新鮮なヒト末梢血は、EFS(Etablissement Francais du Sang,Ile-de-France,Franceより供給された。
【0258】
新鮮なヒト末梢血単核細胞(PBMC)を、ブレーキなしで室温にて40分間、200 gでのFicoll勾配遠心分離によって単離した。ペレットを洗浄し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)によって完了した最終体積50mlに再懸濁した。総生存PBMC数をVi-CELLカウンター(Beckman Coulter Life Sciences、Brea,CA,USA)によって決定した。ペレットをautoMACS Running Buffer(Miltenyi Biotec)に回収した。製造業者の指示に従って、Pan T Cell Isolation Kit(Miltenyi Biotec)及びautoMACSを使用してPBMCからT細胞を単離した。精製されたT細胞を、CD3及びCD28の同時刺激に基づくT Cell TRANSACTマトリクス活性化/拡大キット(Miltenyi Biotec)を使用して、in vitroで14日間にわたって活性化及び拡大培養した。Miltenyi手順によれば、活性化プロトコルは、20 000 IUの可溶性IL-2及び1%ペニシリン-ストレプトマイシン(Gibco)を補充したTexMACS培地(Miltenyi Biotec)中のTRANSACTマトリクスの存在下でT細胞を2週間培養することを伴った。増殖の14日目に、T細胞を回収し、5×10細胞/mlの最終濃度でPBSに再懸濁し、10個の細胞を各動物に腹腔内(IP)注射によって投与した。動物注射前のT細胞生存率は85%超であると試験されている。
【0259】
in vivo特性評価
すべてのin vivo実験は、Sanofi倫理委員会によって承認され、現地及び機関の法律、AAALAC認定施設における倫理及びガイダンスに従って実施された。
【0260】
TCRαβ-CD33-CD123多重特異性ISVD構築物(配列番号1)抗腫瘍活性を、非照射NOD.Cg-Prkdcscid Il2rgtm1Wjl/SzJ(NSG) マウスにおけるMolm13-luc AML生着後に評価した(Charles River Laboratories、Saint-Germain-Nuelles,France)。6~8週齢の雌動物に、0日目にマウス1匹当たり10個/0.2mlのMolm-13-luc細胞を静脈内(IV)移植した。同じ動物に、マウス1匹あたり10個/0.2mlのヒトT細胞を1日目に腹腔内移植した。
【0261】
動物を、全身生物発光イメージング(BLI)シグナル均一性及び3日目の長骨シグナルセグメント化によって評価した腫瘍骨髄生着に基づいて群間に分配した。マウスを、12、1.2、0.12及び0.012nmol/kg Q2DのTCRαβ-CD33-CD123多重特異性ISVD構築物(配列番号1)により、4日目から12日目まで、又はCD33若しくはCD123結合ISVDを有さない参照(Alb-ISVD(配列番号5)に連結されたTCRαβ-ISVD(配列番号2))により、1.2nmol/kg QD(4~13日目)又はCD123/CD3陽性対照1.3nmol/kg QD(4~13日目)でIV処理した、表13を参照のこと。縦方向in vivo生物発光イメージング(BLI)を行って、播種性腫瘍成長をモニタリングした。マウスを14日目に屠殺し、肝臓、脾臓、卵巣及び腹部脂肪などの深部軟組織における衝撃評価のためにBLI下で剖検した。
【0262】
【表21】
【0263】
データ収集及び有効性基準
動物の体重を3日目からアッセイ終了までモニタリングして、治療の影響を追跡した。3日間連続して20%の体重減少若しくは15%の体重減少又は10%以上の薬物死をもたらす投与量を、過剰に毒性のある投与量と考えた。動物の体重は腫瘍重量を含んでいた。
【0264】
腫瘍成長を、画像の5分前にケタミン(登録商標)/キシラジン(登録商標)(120mg/kg;6mg/kg IM、5ml/kg)で麻酔した動物の画像処理の15分前に、甲虫ルシフェリンカリウム塩160mg/kg Ip注射を使用して、腫瘍注射後3、7、10、及び14日目にin vivoでルシフェラーゼ活性測定を介してLiving Image 4.5.2取得ソフトウェア(PerkinElmer)と共にIVIS Lumina XRMSイメージャ(PerkinElmer、Waltham,MA,USA)を使用するin vivo BLIによって評価した。腫瘍成長は、生物発光シグナル曲線(光子/秒で表される)に基づいた。
【0265】
腫瘍移植後7、10及び14日目にBLIシグナル測定によって、全身及び後肢の長骨において腫瘍成長を追跡した。主要有効性エンドポイントは、治療群と対照群との間のベースラインからの腫瘍シグナル変化の変化の比(T/C)、部分退縮(PR)及び完全退縮(CR)である。
【0266】
生物発光シグナル曲線(Phot/秒で表される)に基づく腫瘍増殖を各処置群の各動物について経時的に描画し、全身体(線形スケール)及び骨セグメント化シグナル(Logスケール)の両方について中央曲線±MADとして表した。各処置(T)及び対照(C)についての腫瘍生物発光シグナルの変化は、各動物及び各日について、指定された観察日の腫瘍シグナルから最初の処置日(病期分類日)の腫瘍シグナルを差し引くことによって計算される。中央値Tを処置群について計算し、中央値Cを対照群について計算する。次いで、比T/Cが計算され、パーセンテージとして表される。
dT/dC=[(T終了中央値-T日中央値3)/(C終了中央値-C日中央値3)]×100
【0267】
用量は、dT/dCが42%未満である場合に治療活性であり、dT/dCが10%未満である場合に非常に活性であると考えられる。dT/dCが0未満である場合、用量は高活性であると考えられ、退縮のパーセンテージは日付を記録される。
【0268】
腫瘍退縮率は、処置の1日目のシグナルと比較した、特定の観察日の処置群における腫瘍シグナル減少の%として定義される。
【0269】
各動物について、特定の時点で退縮%を計算する。ip注射ミスによるルシフェリン動態変動に起因するシグナル変動のリスクを考慮して、各動物について少なくとも2つの連続する時点で観察される場合、真の退縮を考慮する。
【数1】
【0270】
部分退縮(PR):2つの連続した時点で治療開始時に腫瘍シグナルが腫瘍シグナルを下回って減少する場合、退縮は部分的であると定義され、1つは開始シグナルの50%未満である。完全退縮(CR):腫瘍シグナルが開始シグナルの80%未満に低下した場合、退縮を完全と定義する。
【0271】
生物統計学的分析
経時的な生物発光シグナル曲線に基づく腫瘍成長を、各処置群の各動物について測定した。長手方向のinvivo BLIデータのために、分散型(ANOVA型)の2つのノンパラメトリック二元解析、続いて多重度についてボンフェローニ-ホルム(Bonferroni-Holm)調整による2つのコントラスト解析を、毎日繰り返し測定して行った:p>0.05:NS,0.05<p>0.01:*,p<0.01:**。最終ex vivo BLIデータのために、ランク変換された生物発光シグナル上の因子群を用いた一元配置ANOVAを行った。中央値±絶対偏差の中央値を有する記述統計を群及び測定日によって提供した:p>0.05:NS,0.05<p>0.01:*,p<0.01:**。
【0272】
6.5.2 結果
TCRαβ-CD33-CD123多重特異性ISVD構築物は、in vivoでMolm-13-luc AML異種移植モデルにおいて抗白血病効果を誘導する(図8A)。
【0273】
ヒトエフェクターT細胞(T細胞/腫瘍比R=10)の存在下で、Molm-13-luc異種移植モデルにおいて2日ごとに静脈内投与されたTCRαβ-CD33-CD123多重特異性ISVD構築物は、すべての用量において十分に忍容性であった。有害事象又は体重の変化の証拠は治療下で観察されなかった。TCRαβ-CD33-CD123多重特異性ISVD構築物は、試験したすべての用量で、同じ活性(0,012;0,12;12及び12nmol/kgでそれぞれ2%(p<0.0001)、対2%(p<0.0001)、2%(p<0.0001)及び3%(p<0.0001)のdT/dC)で全身の腫瘍増殖を阻害した(図8A、8B)。
【0274】
すべての標的病変の最長直径(LD)の合計は、ベースライン合計LDであった。ベースライン合計LDを、客観的な腫瘍応答を特徴付けるための参照として使用した。
【0275】
長骨では、0.012nmol/kgで3/8完全奏効(CR;全病変の消失)及び1/8部分奏効(PR;ベースライン合計LDを参照として、標的病変のLDの合計の少なくとも30%の減少)が観察された。
【0276】
3/8CR及び1/8PRが0.12nmol/kgで観察され、4/8CR及び3/8PRが1.2nmol/kgで観察され、3/7CR及び3/7PRが12nmol/kgで観察された(図8C)。参照TCR-ISVD構築物は、1.2nmol/kg(80%のdT/dC)でMolm13-luc腫瘍成長に対して全体的に不活性であった。CD123/CD3陽性対照1、3nmol/kgは、長骨における4/8 CRを伴って、腫瘍増殖をdT/dC 8%で阻害した(NSをA025001562(TCR-CD33-CD123多重特異性ISVD構築物、配列番号1) 処置)(図8A、8B)。
【0277】
最終ex vivo生物発光イメージングに基づいて、TCRαβ-CD33-CD123多重特異性ISVD構築物は、肝臓(p<0.0001)、脾臓(p<0.0001)及び卵巣(p<0.0001)において腫瘍成長を有意に阻害したが、すべての試験された用量で腹部脂肪においては阻害せず、参照ISVD TCR-HLEがすべての組織において不活性であり、CD123/CD3陽性対照は、肝臓(p<0.0001)及び脾臓(p<0.0001)において腫瘍負荷を有意に阻害したが、卵巣(NS)又は腹部脂肪組織においては阻害しなかった。(図9
【0278】
6.6 実施例6:T細胞媒介ヒト標的細胞殺傷
6.6.1 材料及び方法
ISVD構築物を、エフェクター細胞及び非接着性標的細胞としてヒト初代T細胞を使用するフローサイトメトリーベースの細胞傷害性アッセイにおいて、リダイレクトされたT細胞媒介性殺傷について特徴付けた。CD123及び/又はCD33陽性標的細胞(MOLM-13、DSMZ ACC 554、U-937、ATCC(登録商標)CRL1593.2、及びKG-1a、ATCC(登録商標)CCL246.1(商標))を、PKH26赤色蛍光細胞リンカーキット(Sigma、PKH26GL-1KT)を製造者の説明書に従って使用して、4μM PKH-26膜色素で標識した。エフェクター細胞(2.5×10細胞/ウェル)及びPKH標識標的細胞(2.5×10細胞/ウェル)を、標的細胞株のアッセイ培地(抗生物質を含まない標的増殖培地)中の96ウェルV底プレート(Greiner Bio-one、#651 180)(エフェクター対標的比10:1)中で共インキュベートした。濃度依存性細胞溶解の分析のために、標的アッセイ培地中の化合物の段階希釈液を細胞に添加し、5%CO2雰囲気下、37℃で18時間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を遠心分離によってペレット化し、FACS緩衝液(Sigmaの10%FBS及びMerckの0.05%アジ化ナトリウムを含むGibcoのD-PBS)で洗浄した。その後、細胞を、5nM TO-PRO(登録商標)-3ヨウ化物(642?661)(ThermoFisher Scientific、T3605)が補充されたFACS緩衝液に再懸濁して、生細胞と死細胞とを区別した。細胞を、FACS Arrayフローサイトメーター(BD Biosciences)を使用して分析した。試料あたり、80μLの総試料体積を取得した。PKH26陽性細胞にゲーティングを設定し、この集団内でTO-PRO(登録商標)-3陽性細胞を決定した。比溶解パーセント=((%TO-PRO(登録商標)-3+ISVDなし-%TO-PRO(登録商標)-3+ISVDあり)/(%TO-PRO(登録商標)-3+ISVDなし))×100。
【0279】
本発明による多重特異性TCRαβ-CD33-CD123 ISVD構築物を、CD33結合ISVD又はCD123結合ISVDのいずれかが無関係なISVD IRR(CD33に結合せず、CD123に結合しない;表23)並びにCD123/CD3陽性対照及びCD33/CD3陽性対照によって置き換えられた対応する構築物と比較した。結果を図10図11及び図12に示す。
【0280】
6.6.2 結果
図10に見られるように、MOLM-13細胞では、試験したすべての化合物が腫瘍細胞殺傷を誘発したが、これは、MOLM-13細胞がCD123及びCD33の両方が陽性であるので予想される。ISVD構築物のうち、二重標的化フォーマット(CD33/CD123 TCE)が最も強力な腫瘍細胞殺傷を有した。
【0281】
U-937及びKG-1a細胞における殺傷効力及び溶解の割合を表24並びに図11及び図12に示す。
【0282】
【表22】
【0283】
【表23】
【0284】
TCR-CD123単一標的化ISVDは、CD123/CD3陽性対照についても観察されたように、CD123-U-937細胞の殺傷をほとんど誘導しなかった。同様に、CD33単一標的化ISVDは、CD33/CD3陽性対照についても観察されたように、CD33-/+KG-1a細胞の低レベルの殺傷のみを誘導した。他方、二重標的化TCRαβ-CD33-CD123 ISVD(構築物A)は、CD33-細胞株及びCD123-細胞株の両方で強力な腫瘍細胞殺傷を示し、したがって二重標的化アプローチの利点を例証した。
【0285】
6.7 実施例7:サイトカイン放出アッセイ
サイトカイン放出症候群(CRS)はT細胞エンゲージャーの既知の副作用であるため、本発明によるTCRαβ-CD33-CD123多重特異性ISVD構築物のサイトカイン放出プロファイルを自己健常ドナーPBMCアッセイで決定した。並行して、ヒトPBMC内の単球の自己枯渇を評価した。本発明によるISVDの官能性を2つのツール分子と比較した:CD123/CD3陽性対照及びCD33/CD3陽性対照。非標的T細胞エンゲージャー(TCE)ISVDを陰性対照として使用した。
【0286】
6.7.1 材料及び方法
Lymphoprep(商標)溶液を含むLeucosep(商標)チューブを使用して全血から単離された合計200000個のPBMC(培養培地中2×106細胞/mLで100μL)を96ウェルV底クリアウェルプレート(Greiner CELLSTAR(登録商標)96ウェルプレート;651:180)に移した。
【0287】
次に、試験対象化合物の段階希釈液50μL又は空ウェル用の培養培地50μLをウェルに添加した。
【0288】
処置PBMCを含む培養プレートを37℃、5%CO2で20時間インキュベートした。一晩(20時間)のインキュベーション後、PBMCを300gで2分間遠心分離した。上清を回収し、新しい96ウェル貯蔵プレートに移し、サイトカイン測定のために-20°Cで凍結した。細胞ペレットを100μLの冷FACS緩衝液に懸濁し、100μLのFACS緩衝液で1回洗浄した。
【0289】
その後、PBMCを300gで2分間、4℃で遠心分離した。上清を捨て、細胞を30μLの希釈Fcブロック(FACS緩衝液中1/200)(BD,564220)に再懸濁し、室温で10分間インキュベートした。
【0290】
次に、30μLの(2X)抗体染色混合物(CD123、HLA-DR及びCD14抗体)をPBMC懸濁液に添加し、暗所で4℃で30分間インキュベートした。
【0291】
次いで、細胞懸濁液を2回洗浄し、50μLの希釈したTO-PRO(商標)-3ヨウ化物に再懸濁した。プレートをMACSQuantXで読み取った。読み取ったのは、フローサイトメトリーによる各サブセットの生細胞数の検出であった。単球をSSC%CD14+によって定量した(図13)。
【0292】
ヒトPBMCの一晩のインキュベーションからの凍結上清を使用して、Bio-radからのマルチプレックスビーズアッセイを使用して、IL-2、IL-6、IFNγ、TNFαを含む一連のサイトカインを測定した。アッセイは、製造業者のガイドラインに従って実施した。Luminex FlexMAP 3Dシステムを使用して、反応からのデータを取得した(図14)。
【0293】
6.7.2 結果
TCRαβ-CD33-CD123多重特異性ISVD構築物は、すべてのドナーにおいてサイトカイン産生に関連する単球の枯渇を誘導した。非標的化TCEは、殺傷もサイトカイン放出も示さなかった(図13参照)。図13に示されるデータは、1名のドナーからのデータであり、これは、PBMCを提供した6名すべてのドナーのデータを表す。
【0294】
さらに、本発明によるISVD構築物によって誘導されるサイトカインの効力及び最高レベルの両方は、CD123/CD3対照化合物と比較して実質的に低かった。CD33/CD3対照と比較して、本発明によるISVD構築物によって誘導されたIL-6及びTNFα産生は同等であった。IL-2及びIFNγのレベルはCD33/CD3対照よりも高かったが、レベルは依然として許容可能であった。
【0295】
これに基づいて、本発明によるISVD構築物は、他のCD123又はCD33標的化化合物よりもCRSを誘導するリスクが高くなく、ヒトにおける使用に安全であるべきであると結論付けることができる。
【0296】
6.8 実施例8:ex vivo初代AML細胞死滅アッセイ
6.8.1 材料及び方法
CD33/CD3陽性対照によって媒介されるAML芽球の溶解を以下のように試験した:原発診断又は再発を有する患者からのAML試料を、他の細胞を添加せずにex vivo共培養系で使用した。したがって、E:T比は、原発性AML試料内の残存T細胞の数によって決定した。AML患者からの全血試料は、Marseille(La Conception,AP-HM)又はMontpellieの公共病院又は中央研究所によって提供された。
【0297】
最初に、1mLの全血試料を50mLチューブごとに分配し、40mLの(1×)赤血球溶解緩衝液を添加し、室温で10分間インキュベートした。インキュベーション後、ペレットをPBS(Eurobio CS1PBS01-01)で洗浄し、1mLの培養培地((RPMI(Eurobio カタログ番号CM1RPM00-01)FCS 10%(Sigma カタログ番号F2442-500ml 17L484)、非必須アミノ酸1%(Eurobio カタログ番号CSTAAN00)、グルタミン1%(Eurobio カタログ番号CSTGLU00)ピルビン酸ナトリウム1%(Eurobio カタログ番号CSTVAT00)、ペニシリン/ストレプトマイシン、(Eurobio カタログ番号CABPES01))に再懸濁した。
【0298】
次に、300μLのAML芽球細胞を、1mL(2×)の飽和濃度の本発明によるTCRαβ-CD33-CD123多重特異性ISVD構築物(CD33/CD123 TCE)、陽性対照(CD33/CD3又はCD123/CD3)又は陰性対照(非標的化TCE)の存在下で、6ウェルプレート中のウェルあたり700μLの培養培地に添加し、5%COで37℃でインキュベートした。4日間のインキュベーション後、細胞を回収し、PBSで1回洗浄した。
【0299】
次に、Zombie Violet生存マーカー(PBSで1/100希釈)を細胞ペレットに添加し、暗所で室温で5分間インキュベートした。
【0300】
次いで、細胞を洗浄し、抗体カクテル(CD45、CD33、CD34、CD38、CD14、CD123、CD11抗体)で染色し、氷上で10分間インキュベートした。
【0301】
次に、細胞を洗浄し、1.5mLのPBS+2%パラホルムアルデヒドで4℃で30分間固定した。30分間のインキュベーション後、パラホルムアルデヒドを9mLの希釈剤で希釈した。データをCytoflexサイトメーターで分析した。結果を図15図17に示す。
【0302】
6.8.2 結果
AML試料あたりのCD33又はCD123陽性細胞のパーセンテージを図16に示す。見られるように、すべての患者はCD33及びCD123陽性細胞の両方の数が多かった。さらに、AML患者は広範囲の疾患サブタイプを有していた。したがって、AML試料はこのアッセイでの使用に適していた。
【0303】
図15には、すべてのAML患者試料におけるAML芽球細胞殺傷が示されている。各ドットは、本発明によるISVD又は陰性対照(非標的化TCE)に対して正規化された陽性対照の1つでの処置後に生存している芽球数を表す。数人の別々の患者の結果が図17で強調されている。
【0304】
見られるように、本発明によるISVDで処理した芽球細胞の細胞生存率は、平均して、陽性対照と比較して最も低かった。すべての患者からの細胞は明確な応答を示したが、応答は患者によって異なっていた。これは、本発明によるISVDがCD123及びCD33陽性腫瘍細胞の殺細胞を標的化することができることを示す。
【0305】
6.9 実施例9:非ヒト霊長類(NHP)試験
本発明によるTCRαβ-CD33-CD123多重特異性ISVD構築物の薬物動態(PK)、薬力学(PD)及び非臨床安全性プロファイルをカニクイザルにおける研究で評価した。
【0306】
6.9.1 材料及び方法
本発明によるISVD構築物を、単回用量の1時間連続静脈内(IV)注入とそれに続く21日間の観察期間として合計4匹の雄カニクイザルに投与した。ISVDの全身曝露及び潜在的毒性を決定し、PDエンドポイント(免疫細胞評価)を評価した。研究設計を表25に示す。
【0307】
【表24】
【0308】
6.9.2 安全性
カニクイザルへのISVD構築物の単回1時間連続IV注入は十分に忍容された。試験の経過中に死亡及び治療関連臨床徴候は発生しなかった。処置に関連する体重変化及び体温変化は観察されなかった。
【0309】
サイトカイン評価は、0.04μg/kgでの単回投与として投与されたISVD構築物に関連するIL-6の非常に最小の増加(注入開始の2時間及び/又は6時間後に発生し、24時間以内にベースラインに戻るピーク)のみを示した。0.04μg/kgでは、IFN-γ、IL-1β、IL-2、IL-8及びTNF-αレベルの変化は観察されなかった。IL-2、IL-6、IFN-γ及びTNF-αの非常に最小から最小への増加(注入開始2時間及び/又は6時間後に発生し、24時間以内にベースラインに戻るピーク)は、0.4μg/kgで単回投与として投与されたISVD構築物と関連していた。本発明によるTCR-CD33-CD123多重特異性ISVD構築物に関連する変化は、0.4μg/kgのサルのIL-1β及びIL-8レベルでは観察されなかった。
【0310】
したがって、本発明によるISVD構築物は、このNHPモデルにおいて十分に許容されたと結論付けることができる。
【0311】
6.9.3 薬物動態
ISVD構築物の1時間の注入後、血清レベルを、サルにおいて0.04μg/kgで3日まで、0.4μg/kgで7日まで定量することができた。全体として、約0.07L/日/kgのクリアランスが、0.04μg/kg及び0.4μg/kgの用量レベルでのIV注入後に観察された。最終排出半減期は、1日に近いと推定されている。0.04μg/kgから0.4μg/kgまで、ISVD構築物曝露(AUC)は、用量比例によって予想されるよりもわずかに減少した増加を示し、用量の10倍の増加に対して、曝露は7.7倍増加したが、これはおそらく、1匹のサル(M3)で観察された曝露が低かったためである。PKパラメータを表26に報告する。
【0312】
【表25】
【0313】
6.9.4 薬力学
0.04及び0.4μg/kgでのカニクイザルへのISVD構築物の単回用量IV注入は、両方の用量レベルでCD123+細胞集団及びCD33+単球の変化を誘導した。これらの変化は以下からなっていた:
- 注入開始の6時間後から開始して、すべての動物について観察された総CD123+細胞数の総減少この減少は、試験全体を通してすべての動物について維持された。
- 注入開始の6時間後から開始して(及び0.04μg/kgのISVD構築物を受けている動物M1については1日目まで)、すべての動物について観察された単球CD33+細胞数の総減少。動物M3については、1日目に完全な回復が観察された。
【0314】
また、CD4+及びCD8+細胞数の総減少が注入開始の6時間後からすべての動物について観察された。CD8+細胞については、完全な回復が3日目に観察され、動物M4についてはリバウンド効果があった。CD4+細胞については、動物M4については3日目に完全な回復が観察された。
【0315】
細胞数を図18に可視化した。
【0316】
7 産業上の利用可能性
本明細書に記載のポリペプチド、それをコードする核酸分子、核酸を含むベクター及び組成物は、例えば急性骨髄性白血病に罹患している対象の治療に使用され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B-8C】
図9
図10
図11
図12
図13
図14A-14C】
図14D
図15
図16
図17A
図17B-17C】
図18A-18C】
図18D
【配列表】
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【国際調査報告】