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特表2024-546931熱可塑性連続気泡軟質ポリウレタンフォーム
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  • 特表-熱可塑性連続気泡軟質ポリウレタンフォーム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】熱可塑性連続気泡軟質ポリウレタンフォーム
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20241219BHJP
   C08G 18/65 20060101ALI20241219BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20241219BHJP
   C08G 18/76 20060101ALI20241219BHJP
   C08G 18/66 20060101ALI20241219BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20241219BHJP
【FI】
C08G18/00 F
C08G18/65 005
C08G18/48 054
C08G18/76 057
C08G18/66 074
C08G101:00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535851
(86)(22)【出願日】2022-12-12
(85)【翻訳文提出日】2024-06-14
(86)【国際出願番号】 EP2022085400
(87)【国際公開番号】W WO2023110753
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】21215299.5
(32)【優先日】2021-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルデマー スデルイコフスキ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ボーケアン
(72)【発明者】
【氏名】イラン オテロ マルティネス
(72)【発明者】
【氏名】エルマー ペゼルト
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034BA08
4J034CA04
4J034CA15
4J034CB03
4J034CB07
4J034CC03
4J034CC12
4J034CC61
4J034CC62
4J034CC65
4J034DA01
4J034DB04
4J034DB07
4J034DF01
4J034DG03
4J034DG04
4J034DG06
4J034DG09
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC22
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA01
4J034JA24
4J034JA32
4J034JA33
4J034JA42
4J034KA01
4J034KB02
4J034KC17
4J034KC35
4J034KD02
4J034KD07
4J034KD08
4J034KD12
4J034KE02
4J034LA24
4J034NA00
4J034NA08
4J034NA09
4J034QA01
4J034QA03
4J034QB01
4J034QB13
4J034QB14
4J034QB19
4J034QD03
4J034RA03
4J034RA05
4J034RA12
(57)【要約】
本発明は、フォーム密度15~100g/dm3を有する熱可塑性成形ポリウレタン軟質フォームの製造方法であって、(a)ジイソシアネート、(b)OH価280mg KOH/g未満および平均官価1.9~2.2を有するポリオール、(c)成分a)~c)の総質量に対して3~20質量%の1つ以上の連鎖延長剤、(d)任意に触媒、および(e)任意に充填剤および/またはポリウレタン添加剤をイソシアネート指数80~110で混合して反応混合物を形成し、ここで前記反応混合物に添加される水の量は、成分a)~e)の総質量に対して0.1質量%未満であること、前記反応混合物を、前記混合物の総質量に対して0.05質量%を上回る前記反応混合物のイソシアネート含有率でガスと混合して、密度110~800g/dm3を有するプレフォームを形成すること、前記プレフォームを型に注入すること、前記型に真空を適用して前記プレフォームをさらに膨張させること、および膨張されたプレフォームを硬化することを含む前記方法に関する。本発明はさらに、そのような方法から得られる熱可塑性軟質ポリウレタンフォーム、そのような熱可塑性軟質ポリウレタンフォームを含む複合材、およびそのような複合材のリサイクル方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォーム密度15~100g/dm3を有する熱可塑性成形ポリウレタン軟質フォームの製造方法であって、
a)ジイソシアネート、
b)OH価280mg KOH/g未満および平均官価1.9~2.2を有するポリオール、
c)成分a)~c)の総質量に対して3~20質量%の1つ以上の連鎖延長剤、
d)任意に触媒、および
e)任意に充填剤および/またはポリウレタン添加剤
を、イソシアネート指数80~110で混合して反応混合物を形成し、ここで前記反応混合物に添加される水の量は、成分a)~e)の総質量に対して0.1質量%未満であること、
前記反応混合物を、前記混合物の総質量に対して0.05質量%を上回る前記反応混合物のイソシアネート含有率でガスと混合して、密度110~800g/リットルを有するプレフォームを形成すること、
前記プレフォームを型に注入すること、
前記型に真空を適用して前記プレフォームをさらに膨張させること、および
膨張されたプレフォームを硬化すること
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記ガスが、標準圧力で20℃未満の沸点を有する化合物または化合物の混合物であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
適用される真空の圧力が800mbar未満であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記充填剤および/または添加剤(e)が、化合物(a)、(b)および(c)の総質量に対して少なくとも0.5質量%の、少なくとも1つのシロキサン-オキシアルキレン共重合体を含む界面活性物質を含むことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
ポリオール成分(b)が、ポリテトラメチレングリコールを含むことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記イソシアネート(a)が、イソシアネート(a)の総質量に対して少なくとも97質量%の4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートを含むことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記連鎖延長剤が、エタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオールおよび1,6-ヘキサンジオールからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法により得られる、フォーム密度15~100g/dm3を有する熱可塑性ポリウレタン軟質フォーム。
【請求項9】
エアフローが0.1dm3/秒を上回ること、
70℃且つ50%の圧縮での22時間の熱貯蔵後の圧縮永久ひずみが20%未満であること、および
圧縮荷重たわみ(CLD)硬さが10kPa未満であること
を特徴とする、請求項8に記載の熱可塑性ポリウレタン軟質フォーム。
【請求項10】
前記フォームの熱可塑性ポリウレタンが、190℃且つ3.4kgで、ASTM D 1238 Bに準拠するメルトフローインデックス0超、好ましくは10超を有することを特徴とする、請求項8または9に記載の熱可塑性ポリウレタン軟質フォーム。
【請求項11】
前記フォームがマットレスの一部または座席用の椅子張りであることを特徴とする、請求項8から10までのいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン軟質フォーム。
【請求項12】
請求項8から11までのいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン軟質フォームと、前記熱可塑性ポリウレタン軟質フォームとは異なり、前記フォームに対して組成が少なくとも90質量%同一である熱可塑性ポリウレタンとを含む、複合材。
【請求項13】
前記複合材の熱可塑性ポリウレタンの全ての成分が同一であることを特徴とする、請求項12に記載の複合材。
【請求項14】
前記複合材を溶融し、新たな熱可塑性ポリウレタン製品を形成する段階を含む、請求項13に記載の複合材のリサイクル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォーム密度15~100g/dm3を有する熱可塑性成形ポリウレタン軟質フォームの製造方法であって、(a)ジイソシアネート、(b)OH価280mg KOH/g未満および平均官価1.9~2.2を有するポリオール、(c)成分a)~c)の総質量に対して3~20質量%の1つ以上の連鎖延長剤、(d)任意に触媒、および(e)任意に充填剤および/またはポリウレタン添加剤をイソシアネート指数80~110で混合して反応混合物を形成し、ここで前記反応混合物に添加される水の量は、成分a)~e)の総質量に対して0.1質量%未満であること、前記反応混合物を、前記混合物の総質量に対して0.05質量%を上回る前記反応混合物のイソシアネート含有率でガスと混合して、密度110~800g/dm3を有するプレフォームを形成すること、前記プレフォームを型に注入すること、前記型に真空を適用して前記プレフォームをさらに膨張させること、および膨張されたプレフォームを硬化することを含む、前記方法に関する。本発明はさらに、そのような方法から得られる熱可塑性軟質ポリウレタンフォーム、そのような熱可塑性軟質ポリウレタンフォームを含む複合材、およびそのような複合材のリサイクル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンフォームのリサイクルは産業によって依然として満たされていないニーズである。化学的な後処理を必要とせずにバージングレードの原料の全体的な消費を少なくする、押出成形または射出成形による圧縮または発泡部材への軟質ポリウレタンフォームのリサイクルは、バージングレードの熱可塑性ポリウレタンの置き換えの可能性のために強く望まれている。
【0003】
従来のポリウレタン軟質フォームは、ポリイソシアネートと、平均官能価2.4~約4を有するポリオールと、発泡剤としての水との反応によって製造される。これは架橋されたポリウレタンをもたらし、ここでより高官能性のポリオールが化学架橋を形成し、ウレア基が物理架橋を形成する。
【0004】
ポリウレタンの分野において、軟質ポリウレタンフォームは通常、ポリオール相の架橋、および通常はポリウレタンの分解温度を上回るウレア硬質相の高い溶融温度に起因して、熱可塑性の処理によってリサイクル可能ではないことが周知である。両方の特性は、材料が従来の押出成形または射出成形条件下では溶融可能ではないか、またはそれらが極めて低いメルトフローを有することにより押出成形または射出成形を適用するために適さなくなるという問題をみちびく。
【0005】
国際公開第2019/122122号(WO2019/122122)は、押出により処理可能な好ましくは水発泡軟質連続気泡ポリウレタンフォームの製造方法を開示している。これは、ポリオール相における架橋密度を1.9~2.2に制限すること、および比較的低い含水率によって最終材料中での比較的低いウレア含有率をみちびくことによって達成される。この発明の欠点は、ウレア含有ポリウレタンフォームの高い溶融粘度に起因して、処理可能にするためにこの発泡材料をバージングレードの熱可塑性ポリウレタンと組み合わせなければならないことである。
【0006】
国際公開第2021/094239号(WO2021/094239)は、押出により処理可能な物理発泡軟質連続気泡ポリウレタンフォームの製造方法を開示している。これは、直鎖のポリオールと直鎖のイソシアネートとに基づき、それらが必要成分としての物理発泡剤によって密度<200g/dm3を有する連続気泡フォームへと膨張される、ポリウレタンのレシピを使用することにより達成される。物理発泡剤としてのガス、例えば窒素およびCO2の使用に言及されている一方で、当業者は国際公開第2021/122122号(WO2021122122)に開示されるような方法において、例えば250g/dm3未満の低い密度を達成することは困難であると認識している。記載される例において、水、および室温で液体であるハイドロハロオレフィンが発泡剤として使用される。この方法において、多量の独立気泡を有する軟質フォームが得られ、それは高い密度に加えて、冷却後に望ましくない高い収縮傾向を示す。さらに、このアプローチは、物理発泡剤の高いコストに起因する低い経済効率、および有機の物理発泡剤の環境への放出という欠点を有する。さらに、物理発泡剤の残留物が材料内で捕捉され、望ましくない放出として、後の段階で放出されることがある。物理発泡剤の蒸発に基づく発泡方法が温度のばらつきに対して極めて敏感であり、それが、例えばより低い密度をみちびくフォームの熱いコアと、より高い密度をみちびくより冷たい外部層との間で、密度における大きなばらつきをみちびくことがあることも公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2019/122122号
【特許文献2】国際公開第2021/094239号
【特許文献3】国際公開第2021/122122号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、フォーム密度15~100g/dm3を有し、熱可塑性の処理によってリサイクルされることができ、高い連続気泡含有率、良好な機械的特性、例えば低い圧縮永久ひずみ、低い硬度、および均質な密度を有する熱可塑性ポリウレタン軟質フォームを提供することであった。さらに、バージン熱可塑性ポリウレタンを添加することなく、熱可塑性の処理によってリサイクル可能なフォームであって、熱可塑性ポリウレタンが、メルトフローレートとしても知られる高いメルトフローインデックスを有する、前記フォームを提供することが課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
意外なことに、フォーム密度15~100g/dm3を有する熱可塑性成形ポリウレタン軟質フォームの製造方法であって、(a)ジイソシアネート、(b)OH価280mg KOH/g未満および平均官価1.9~2.2を有するポリオール、(c)成分a)~c)の総質量に対して3~20質量%の1つ以上の連鎖延長剤、(d)任意に触媒、および(e)任意に充填剤および/またはポリウレタン添加剤をイソシアネート指数80~110で混合して反応混合物を形成し、ここで前記反応混合物に添加される水の量は、成分a)~e)の総質量に対して0.1質量%未満であること、前記反応混合物を、前記混合物の総質量に対して0.05質量%を上回る前記反応混合物のイソシアネート含有率でガスと混合して、密度110~800g/dm3を有するプレフォームを形成すること、前記プレフォームを型に注入すること、前記型に真空を適用して前記プレフォームをさらに膨張させること、および膨張されたプレフォームを硬化することを含む、前記方法が判明した。
【0010】
熱可塑性ポリウレタン(TPU)の調製は、イソシアネートとポリオールとの混合物を必要とする。連鎖延長剤、触媒、充填剤、ポリウレタン添加剤のさらなる添加は任意であり、且つ個別に、または全ての可能な変法において行うことができる。
【0011】
好ましい実施態様は、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族および/または芳香族ジイソシアネートをジイソシアネート(a)およびそれらの混合物として利用する。好ましいジイソシアネートの例は、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、2-メチル-1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、2-エチル-1,4-ブチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、1,4-ブチレンジイソシアネート、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1-メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1-メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、2,2’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の異性体、例えば2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’-MDI)および4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-MDI)、1,5-ナフチレンジイソシアネート(1,5-NDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)の異性体、例えば2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)および2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)、3,3’-ジメチルビフェニルジイソシアネート、p-フェニルジイソイソシアネート1,2-ジフェニルエタンジイソシアネート、およびフェニレンジイソシアネートである。好ましい実施態様において、イソシアネート(a)は、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート2,4’-MDI、4,4’-MDI、MDIの混合物、例えば2,4’-MDIと4,4’-MDIとの混合物、2,4-TDIと2,6-TDIとNDIとの混合物からなる群から選択される。特に好ましくは、イソシアネート(a)は、イソシアネート(a)の総質量に対して少なくとも97質量%の4,4’-MDI、より好ましくは97~99%の4,4’-MDIを含む。
【0012】
OH価280mg KOH/g未満および平均官能価1.9~2.2を有するポリオール(b)として、熱可塑性ポリウレタンの分野において一般に使用される全てのポリオールを使用できる。イソシアネート反応性水素含有基は好ましくはヒドロキシル基である。ポリオールがポリエーテルオール、ポリエステルオールおよびポリカーボネートジオールまたはそれらの混合物から選択されることが特に好ましい。さらに好ましい実施態様において、熱可塑性ポリウレタンを調製するために使用されるポリオールは225~14mg KOH/g、より好ましくは190~20mg KOH/g、および特に190~28mg KOH/gのヒドロキシル価を有する。さらに好ましい実施態様において、ポリオールは平均官能価1.97~2.05、より好ましくは1.99~2.01、および特に2.00を有する。
【0013】
熱可塑性ポリウレタンは好ましくはポリエーテルオールから調製される。ポリエーテルジオール、例えばポリプロピレングリコール、エチレンオキシドキャップされたポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールまたはポリトリメチレンオキシドを使用することが特に好ましい。ポリテトラメチレングリコールが特に好ましいポリエーテルジオールである。ポリエーテルアルコール、およびポリテトラメチレングリコールであってヒドロキシル価190~45mg KOH/gを有するものを使用することが好ましい。ポリエーテルアルコールは個別に、または様々なポリエーテルアルコールの混合物として使用される。
【0014】
代替的な実施態様において、熱可塑性ポリウレタンを調製するためにポリエステルアルコールが使用される。これについて、好ましい実施態様においてはポリエステルジオールが使用される。好ましいポリエステルジオールはアジピン酸および/またはコハク酸、および2~8個の炭素原子を有するジオールから調製され、1,4-ブタンジオールが特に好ましい。ポリエステルアルコールの好ましい実施態様は、ヒドロキシル価190~45mg KOH/gを有する。
【0015】
特に好ましい実施態様において、ポリオールは少なくとも80質量%のポリオール成分(b)ポリテトラメチレングリコールを含み、ポリテトラメチレングリコールが特に好ましく、ここでポリテトラメチレングリコールはヒドロキシル価190~55mg KOH/gを有する。
【0016】
連鎖延長剤(c)として、各々成分a)~c)の総質量に対して3~20質量%、好ましくは3~10質量%、より好ましくは3~9質量%、および特に好ましくは3~8質量%の、熱可塑性ポリウレタンの分野において一般に公知の連鎖延長剤を使用できる。例えば、ヒドロキノンビス(2-ヒドロキシエチル)エーテル(HQEE)または3,5-ジエチルトルエン-2,4-ジアミンなどの芳香族化合物、C2~C10-ジオールなどの脂肪族化合物、または脂環式化合物が言及される。連鎖延長剤はイソシアネートに対して反応性の2つの水素基、好ましくは2つのヒドロキシル基を有し、且つ分子量62~400g/モル未満、好ましくは62~300g/モル未満、および特に好ましくは76~200g/モル未満を有する。本発明の好ましい実施態様において、連鎖延長剤(c)はエタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオールおよびそれらの混合物からなる群から選択され、特に好ましい実施態様において連鎖延長剤(c)は1,4-ブタンジオールである。
【0017】
触媒が存在する場合、熱可塑性ポリウレタンの分野で一般に公知の触媒を使用できる。そのような触媒は特に、ジイソシアネート(a)のイソシアネート基と、ポリオール(b)、連鎖延長剤(c)およびイソシアネート反応性水素基を有する他の化合物、例えば連鎖延長剤の、イソシアネート反応性化合物、好ましくはヒドロキシル基との間の反応を触媒する。好ましい実施態様において、触媒は三級アミン、例えばトリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N-メチルモルホリン、N,N’-ジメチルピペラジン、2-(ジメチルアミノエトキシ)エタノール、ジアザビシクロ(2,2,2)オクタンおよび類似の物質の群から選択される。さらに好ましい実施態様において、少なくとも1つの触媒は有機金属化合物の群から選択され、例えばチタンエステル、鉄化合物、例えば鉄(III)アセチルアセトナト、スズ化合物、例えばスズジアセテート、スズジオクトエート、スズジラウレートまたは脂肪族カルボン酸のスズジアルキル塩、例えばジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレートなどが言及される。
【0018】
いくつかの実施態様は触媒を個別に利用する一方で、他の実施態様は触媒の混合物を利用する。1つの好ましい実施態様において使用される触媒は、少なくとも2つのイソシアネート反応性水素含有基を有する化合物、好ましくはポリヒドロキシ化合物に対して0.0001質量%~0.1質量%の量の触媒の混合物である。
【0019】
有用な添加剤(e)は、例えば界面活性物質、難燃剤、酸化安定剤、滑り助剤および離型助剤、染料および顔料、場合により例えば加水分解、光、熱または変色に対する追加的なさらなる安定剤、強化剤および可塑剤を含む。任意の充填剤は有機および/または無機であってよい。
【0020】
適した触媒および添加剤は、標準的な参考資料、例えば上記で引用されたGerhard W.Becker and Dietrich Braun, Kunststoffhandbuch, 第7巻 「ポリウレタン」, Carl Hanser Verlag, Munich, Vienna, 1993から識別され、且つ加水分解制御剤、難燃剤、連鎖移動剤を含む。
【0021】
加水分解制御剤、例えばポリマーおよび低分子量カルボジイミドを反応混合物に、任意に直接的にまたはポリオール(b)またはイソシアネート(a)の添加を介して添加することもできる。
【0022】
充填剤が含まれる場合、それらは例えば有機および無機の粉末または繊維状材料、およびそれらの混合物である。有用な有機充填剤は、例えば木粉、デンプン、亜麻繊維、麻繊維、ラミー繊維、ジュート繊維、サイザル麻繊維、綿繊維、セルロース繊維またはアラミド繊維を含む。有用な無機充填剤は、例えば、ケイ酸塩、バライト、ガラス球、ゼオライト、金属または金属酸化物を含む。粉末状の無機物、例えばチョーク、カオリン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、亜硝酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、シリカ、粉末石英、アエロジル、陶土、マイカまたは珪灰石、または球状または繊維状の無機物、例えば鉄粉、ガラスボール、ガラス繊維または炭素繊維を使用することが特に好ましい。平均粒径、または繊維状充填剤の場合、繊維の長さは、セルのサイズ以下の範囲であるべきである。0.1~100μmの範囲、および好ましくは1~50μmの範囲の平均粒径または平均繊維長が好ましい。充填剤は、成分(a)~(c)の総質量に対して0~40質量%の量で使用され得る。好ましい実施態様において、0~10質量%、より好ましくは0~5、および特に好ましくは0質量%の充填剤が使用される。
【0023】
熱可塑性成形組成物中に含まれるために有用な界面活性物質は、例えば出発材料の均質化を増大させるために使用され、セル構造を制御することもできる化合物を含む。適した界面活性物質は、例えば乳化剤、例えば硫酸化ひまし油または脂肪酸のナトリウム塩、および脂肪酸とアミンとの塩、例えばジエチルアミンオレエート、ジエタノールアミンステアレート、ジエタノールアミンリシノレエート、スルホン酸の塩、例えばドデシルベンゼン-またはジナフチルメタンジスルホン酸およびリシノール酸のアルカリ金属またはアンモニウム塩; 泡安定剤、例えばシロキサン-オキシアルキレン共重合体および他のオルガノシロキサン、エトキシ化アルキルフェノール、エトキシ化脂肪アルコール、パラフィン油、ひまし油エステルまたはリシノール酸エステル、ロート油および落花生油、およびセル制御剤、例えばパラフィン、脂肪アルコールおよびジメチルポリシロキサンを含む。側基としてポリオキシアルキレン部分およびフルオロアルカン部分を有するオリゴマーのポリアクリレートは、乳化作用、セル構造および/またはそれらの安定化を改善するためにさらに有用である。界面活性物質は典型的には、少なくとも2つのイソシアネート反応性水素含有基を有する化合物100質量%に対して0.01~5質量%の量で使用される。
【0024】
本発明の好ましい実施態様において、本発明による熱可塑性成形ポリウレタン軟質フォームは、化合物(a)、(b)および(c)の総質量に対して、少なくとも0.5質量%、好ましくは0.8~4質量%、より好ましくは1~2.5質量%、および特に好ましくは1.2~2質量%の界面活性物質、好ましくは少なくとも1つのオルガノシロキサン、および特に好ましくは少なくとも1つのシロキサン-オキシアルキレン共重合体を安定剤として含む。そのようなシロキサン-オキシアルキレン共重合体は周知であり、例えば商品名Tegostab(登録商標)B 8476、Tegostab(登録商標)BF 2370、Tegostab(登録商標)B 8110、Tegostab(登録商標)B8418、Tegostab(登録商標) B 8467(Evonik社)、Niax(登録商標)L 634(Momentive社)の下で市販されているか、またはそれらの組み合わせである。
【0025】
適した難燃剤は例えばトリクレジルホスフェート、トリス(2-クロロエチル)ホスフェート、トリス(2-クロロプロピル)ホスフェート、トリス(1,3-ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3-ジブロモプロピル)ホスフェートおよびテトラキス(2-クロロエチル)エチレンジホスフェートを含む。既に言及されたハロゲン置換ホスフェートに加え、赤リン、酸化アルミニウム水和物、三酸化アンチモン、三酸化ヒ素、ポリリン酸アンモニウムおよび硫酸カルシウムを含む無機難燃剤、またはシアヌル酸誘導体、例えばメラミン、または少なくとも少なくとも2つの難燃剤の混合物、例えばリン酸アンモニウムおよびメラミンおよび任意にデンプンおよび/または膨張性黒鉛を使用して、製造された発泡ポリウレタンに難燃性を付与することもできる。ジイソシアネート(a)、ポリオール(b)および連鎖延長剤(c)の各々100質量部について、0質量%~50質量%、および好ましくは5質量%~25質量%の難燃剤または難燃剤混合物を使用することが有利であることが一般に立証されている。
【0026】
さらなる実施態様において、熱可塑性ポリウレタンはリン化合物を酸化防止剤として含み得る。好ましい実施態様は、三価のリンの有機リン化合物、例えばホスフィットおよびホスホナイトを使用する。適したリン化合物の例は、トリフェニルホスフィット、ジフェニルアルキルホスフィット、フェニルジアルキルホスフィット、トリス(ノニルフェニル)ホスフィット、トリラウリルホスフィット、トリオクタデシルホスフィット、ジステアリルペンタエリトリトールジホスフィット、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフィット、ジイソデシルペンタエリトリトールジホスフィット、ジ(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスフィット、トリステアリルソルビトールトリホスフィット、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニリレンジホスホナイト、トリイソデシルホスフィット、ジイソデシルフェニルホスフィット、およびジフェニルイソデシルホスフィットまたはそれらの混合物である。
【0027】
特に好ましい実施態様は、加水分解しにくいリン化合物を含み、なぜなら、リン化合物の相応の酸への加水分解は、ポリウレタン、特にポリエステルポリウレタンに損傷をもたらすことがあるからである。従って、特に加水分解しにくいリン化合物が、特にポリエステルポリウレタンのために適している。加水分解しにくいリン化合物の好ましい実施態様は、ジポリプロピレングリコールフェニルホスフィット、ジイソデシルホスフィット、トリフェニルモノデシルホスフィット、トリイソノニルホスフィット、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフィット、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニリレンジホスホナイト、およびジ(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスフィット、またはそれらの混合物である。
【0028】
さらに、連鎖移動剤を使用できる。連鎖移動剤が使用される場合、それらは典型的には分子量30g/モル~500g/モルを有する。連鎖移動剤は、イソシアネートとの反応に関して1つのみの官能基を有する化合物である。連鎖移動剤の例は、単官能性アルコール、単官能性アミン、好ましくはメチルアミンおよび/または単官能性ポリオールである。連鎖移動剤は、個別の成分の混合物の流動特性を特に制御するために使用され得る。好ましい実施態様における連鎖移動剤は、少なくとも2つのイソシアネート反応性水素含有基を有する化合物100質量部に対して、0質量部~5質量部の量、およびより好ましくは0.1質量部~1質量部の範囲の量で使用される。
【0029】
熱可塑性ポリウレタンを形成するための反応は、ジイソシアネート(a)およびイソシアネート反応性成分(b)および(c)、並びに任意に触媒(d)および充填剤および添加剤(e)を混合することによって開始される。反応混合物の形成は慣例的な指数で行われる。前記指数は、反応において使用される芳香族、脂肪族および/または脂環式ジイソシアネート(a)のイソシアネート基の総数の、ポリオール(b)および連鎖延長剤(c)、並びに触媒(d)および添加剤(e)におけるイソシアネート反応性水素原子を有する任意の化合物の、イソシアネート反応性基の総数、つまり活性水素の数に対する比として定義される。指数100は、ジイソシアネート(a)のイソシアネート基あたり1つの活性水素原子、つまり1つのイソシアネート反応性官能基があることを意味する。100を上回る指数は、イソシアネート反応性基、例えばヒドロキシル基があるよりも多くのイソシアネート基があることを意味する。
【0030】
特に好ましい実施態様において、熱可塑性ポリウレタンを形成するための反応は、80~110の指数、およびより好ましくは90~105、さらにより好ましくは95~102、および特に99~101の指数で行われる。
【0031】
本発明にとって、反応混合物に添加される水の量が、各々成分a)~e)の総質量に対して0.1質量%未満、好ましくは0.05質量%未満、および特に0.01質量%未満であることが必須である。水は別途添加されてもよいが、1つの成分の一部、例えばポリオール(b)または連鎖延長剤(c)の一部であってもよい。
【0032】
各々ジイソシアネート(a)、ポリオール(b)および連鎖延長剤(c)の総質量に対して0.05質量%を上回る、好ましくは0.1質量%を上回り且つ15質量%未満、より好ましくは1質量%を上回り且つ10質量%未満、および特に好ましくは1.5質量%を上回り且つ5質量%未満の、反応混合物のイソシアネート基含有率(NCO含有率としても知られる)で、反応混合物をガスと混合して、密度110~800g/dm3、好ましくは200~350g/dm3を有するプレフォームを形成する。好ましくはこのガスは反応混合物の成分と反応しない。本発明の意味においてガスとして適しているのは、大気圧(標準圧力、1013hPa)で20℃未満、好ましくは0℃未満の沸点を有する化合物である。適したガスは二酸化炭素、窒素、酸化窒素または空気である。混合を従来の手段、例えば機械ミキサーによって実施できる。
【0033】
次いで、得られたプレフォームを型に注入する。型内のプレフォームの量は、本発明による熱可塑性軟質フォームの所望の密度が達成され得るように計算される。型に真空を適用してプレフォームを膨張させる。本発明にとって、真空を適用する時点でのプレフォームのNCO含有率が、各々ジイソシアネート(a)、ポリオール(b)および連鎖延長剤(c)の総質量に対して、0.1質量%~15質量%未満、より好ましくは1質量%を上回り且つ10質量%未満、および特に好ましくは1.5質量%を上回り且つ5質量%未満の範囲であることが必須である。型は通常の温度、例えば20℃~120℃、好ましくは30℃~80℃、および特に好ましくは40℃~70℃で熱処理され得る。一般に適用される真空は、少なくとも型を充填するために必要とされるような低さの真空であり、プレフォームの密度、型の体積、および型内に注入されたプレフォームの量に依存する。一般に、適用される真空の絶対圧は60,000Pa未満、好ましくは1000Paを上回り且つ60,000Pa未満、より好ましくは5,000Paを上回り且つ30,000Pa未満、およびより好ましくは10,000Paを上回り且つ25,000Pa未満である。
【0034】
フォームが硬化したら、それを型から取り出す。フォームは例えば、真空の除去に起因して体積が各々型の総体積に対して20%より多く変化しない、好ましくは10%以下、5%以下の際に取り出すことができる。
【0035】
本発明による熱可塑性ポリウレタン軟質フォームは、
15~100g/dm3、好ましくは20~80g/dm3、より好ましくは25~60g/dm3、および特に好ましくは30~50g/dm3のフォーム密度、
0.1dm3/秒を上回る、好ましくは0.15dm3/秒を上回る、連続気泡含有率についてのパラメータとしてのDIN EN ISO 7231(2010年12月)に準拠するエアフロー、
好ましくは20%未満、より好ましくは15%未満、およびより好ましくは10%未満の、22時間/70℃/50%でのDIN EN ISO 1856(2020年11月)に準拠する圧縮永久ひずみ、
好ましくは10kPa未満、より好ましくは7kPa未満、および最も好ましくは5kPa未満の、DIN EN ISO 3386(2015年10月)に準拠する40%での硬さCLDを有する。
【0036】
本発明によるフォームの熱可塑性ポリウレタンは好ましくは、220℃且つ21.6kgの重量で0g/10分を上回る、より好ましくは10g/10分を上回る、220℃且つ21.6kgの重量で50g/10分を上回る、より好ましくは190℃且つ21.6kgの重量で5g/10分を上回る、および最も好ましくは190℃且つ21.6kgの重量で20g/10分を上回る、ASTM D 1238 Bに準拠するメルトフローインデックスを有する。この発明の特に好ましい実施態様において、190℃且つ21.6kgの重量でのメルトフローインデックスは5g/10分~150g/10分である。
【0037】
本発明の好ましい実施態様において、フォームはマットレスの一部、座席の椅子張り、自動車用座席またはオフィスの椅子の一部、靴底の一部、クッションまたはソファーである。本発明による熱可塑性フォームは、本発明による熱可塑性ポリウレタン軟質フォームと、前記熱可塑性ポリウレタン軟質フォームとは異なる熱可塑性ポリウレタンとを含む複合材の一部であってもよい。これは、例えばクッションのフォームまたは座席のフォームとして適用する際にフォームを覆う織物または不織材料としての繊維材料、中実または発泡熱可塑性エラストマー(TPE)、例えば膨張熱可塑性エラストマービーズ(ビーズフォームまたは粒子フォームとも称される)、例えばTPUビーズ(E-TPU)、例えば靴底または甲材料としての靴の用途におけるものであることができる。好ましくはそのような多材料のTPUラミネートは、それらの出発物質において10質量%未満異なるTPUを含み、且つ好ましくは同じTPU構造ブロックが使用される。
【0038】
TPEビーズ、またはより好ましいTPUビーズが上記のTPUフォームとの組み合わせで使用される場合、それらをプレフォームに添加して混合物を得て、その上で粒子フォームおよびブロックフォームの組み合わせを得ることができるか、または例えばスチームチェスト成形によって得られたビーズフォーム部分として使用され、ここで記載される熱可塑性成形ポリウレタン軟質フォームに隣接して配置されるか、付着されるかまたは直接的に溶融されるかのいずれかであることができる。
【0039】
本発明によるTPUフォームは、熱および/または圧力をその表面に適用することによって容易に改質され得る。例えばこの熱処理によって中実の表面層が得られるか、またはフォームがその表面を溶融することおよび他の材料に接触することによって任意の他の表面材料に付着することができる。
【0040】
本発明によるTPUフォームは、例えば押出機内でTPUを単に溶融することによって容易にリサイクルされ得る。そのような方法のために、バージンTPUを追加する必要はなく、なぜなら本発明による溶融フォームは非常に高いメルトフローインデックスを有するからである。溶融したTPUを次に、新たなTPU材料を製造するために使用できる。
【0041】
本発明による熱可塑性ポリウレタン軟質フォームの利点は、良好な機械的特性およびリサイクルおよび再利用の可能性に加え、その熱可塑性ポリウレタン材料は揮発性有機材料の放出、特に物理発泡剤の残留物の放出が少ないこと、均質な密度、および表面上で従来の軟質ポリウレタンフォームに比してMDA含有率が低いことである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】フォームのDMA測定を示す図である。
【実施例
【0043】
本発明を以下の実施例によって説明する。
【0044】
以下の物質が適用された:
ポリオール1 ポリTHF 1000、BASF社、OH価112を有する直鎖のポリテトラメチレングリコール。
【0045】
ポリオール2 ポリTHF 2000、BASF社、OH価56を有する直鎖のポリテトラメチレングリコール。
【0046】
ポリオール3 Lupranol 1000/1、BASF社、KOH触媒によって触媒され且つOH価55の直鎖のポリプロピレングリコール。
【0047】
イソシアネート1 Lupranat ME、BASF社、少なくとも97%の純度の4,4’-MDI。
【0048】
イソシアネート2は、少なくとも97%の純度の4,4’-MDIおよびOH価56を有する直鎖のポリテトラメチレングリコールに基づくプレポリマーであり、46.5%のポリテトラメチレングリコールおよび53.5%のイソシアネートの組成を有する。
【0049】
化学発泡剤: 水。
【0050】
物理発泡剤: Opteon(登録商標)1100、Chemours社。
【0051】
従来技術による実験手順(例1、3~5)
ポリオール、連鎖延長剤、触媒、および任意に化学発泡剤および物理発泡剤を表1に従って、25℃で、または室温で固体の原料を使用する場合は50℃で混合する。次に、この混合物100グラムを相応の量のイソシアネート(インデックス100)と混合し、開いた型に温度40℃で注ぎ入れる。
【0052】
本発明によって処理された例(例2)
ポリオール、連鎖延長剤、触媒、および任意に化学発泡剤および物理発泡剤を表1に従って、25℃で、または室温で固体の原料を使用する場合は50℃で混合する。次に、この混合物100グラムを相応の量のイソシアネート(インデックス100)と混合し、強力に混合しながらガスを添加し、混合物のかさ密度を300g/l未満に低下させて、完全には硬化されていない独立気泡の注入可能なプレフォームをもたらす。プレフォームの3.8質量%の残留NCO含有率で、開いた型をその体積の1/10までこのプレフォームで充填し、直ちに真空チャンバに入れ、約10,000~20,000Paの絶対圧を有する真空を適用する。一定の真空下で試料を硬化させる。次いで真空を除去する。物理的特性の測定は、少なくとも24時間後に周囲条件で行われた。
【0053】
【表1-1】
【0054】
【表1-2】
【0055】
フォームの圧縮荷重たわみ(CLD)硬さおよび密度を、DIN EN ISO 3386(2015年10月)に準拠して特定した。
【0056】
エアフローをDIN EN ISO 7231(2010年12月)に準拠して特定した。
【0057】
引張強さおよび伸びを、DIN EN ISO 1798(2008年4月)に準拠して特定した。
【0058】
圧縮永久ひずみを22時間、70℃で、且つ50%の圧縮について、DIN EN ISO 1856(2020)に準拠して特定した。
【0059】
反撥弾性率をDIN EN ISO 8307(2018)に準拠して特定した。
【0060】
湿潤圧縮永久ひずみを22時間、50℃、相対湿度95%で、且つ70%の圧縮について、DIN EN ISO 1856(2020)に準拠して特定した。
【0061】
発泡剤からの放出を、VDA 277(1995)に準拠して測定した。試料を周囲条件で24時間貯蔵した後、0.5gの試料を試験バイアルに充填し、1時間、120℃で熱処理した。気相をガスクロマトグラフに注入した。
【0062】
フォーム内での密度ばらつきを特定するために、50×50×50cmの試料を説明に従って、型の温度40℃で製造する。周囲条件で24時間後、フォームの試料を水平に切断し、上方の20cmおよび下方の10cmを廃棄する。残りの試料をサイズ10×10×5cmの測定試料へと切断する。密度のばらつきは、最高の密度を有する測定試料の密度を、最低の密度を有する測定試料の密度で除算することにより、パーセンテージの値として与えられる。
【0063】
NCO含有率を、DIN EN ISO 14896(2009)に準拠して滴定により特定する。ヒドロキシル価またはOH価を、DIN EN ISO 4692-2 (2016)に準拠して滴定を介して特定する。
【0064】
動的機械分析(DMA)を、Rheometric Scientific(ARES)製の機器において、DIN EN ISO 6721(2019)に準拠して行った。
【0065】
図1に比較例1および本発明の例2によるフォームのDMA測定を示す。本発明によるフォームは、従来技術によるフォームに対するいくつかの利点を示すことが観察できる。
【0066】
従来技術によるフォームに比して、本発明のフォームは、マットレス、椅子張りおよびクッションとしての快適な適用のために望ましい0℃~50℃の範囲での優れた粘弾性プラトーを示す。
【0067】
物理発泡剤は溶剤として作用して、結晶性MDI/連鎖延長剤の硬質相の、軟質相中での溶解をみちびくことがあり、それが相分離を妨げて、0℃~+50℃の適用範囲において同じポリウレタンマトリックス組成について、遙かに高い硬さをみちびくと考えられ、それはフォームの快適な適用にとっては望ましくない。本発明の方法は非常に良好な相分離をみちびき、それは適用範囲内でのDMA測定における優れた粘弾性プラトーによって示される。最終的な適用において、これは、快適な適用にとって望ましい劇的に低減されたCLD硬さをみちびく。
図1
【国際調査報告】