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特表2024-546960有機C1-C6-アルコキシシランとアルカリ化剤とを特定のモル比で混合することによる毛髪処理製品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】有機C1-C6-アルコキシシランとアルカリ化剤とを特定のモル比で混合することによる毛髪処理製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/58 20060101AFI20241219BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20241219BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
A61K8/58
A61Q5/00
A61Q5/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535993
(86)(22)【出願日】2022-11-09
(85)【翻訳文提出日】2024-06-14
(86)【国際出願番号】 EP2022081290
(87)【国際公開番号】W WO2023110229
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】102021214419.5
(32)【優先日】2021-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100162710
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 真理奈
(72)【発明者】
【氏名】ヤイザー,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】レヒナー,トルステン
(72)【発明者】
【氏名】ノヴォトニィ,マルク
(72)【発明者】
【氏名】シェープゲンス,ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】マティアシク,カーステン
(72)【発明者】
【氏名】タイリ,アヴニ
(72)【発明者】
【氏名】クルッパ,カロリン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルター,アンドレアス
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC911
4C083CC33
4C083CC36
4C083EE26
4C083EE28
4C083FF01
(57)【要約】
本出願は、(a)1個、2個または3個のケイ素原子を有する1以上の有機C-C-アルコキシシランと、(b)1以上のアルカリ化剤とのブレンドを含む、ケラチン物質、特にヒト毛髪の処理のための組成物を製造するための方法に関し、ここで、有機C-C-アルコキシシラン(a)は、式(G-1)によって決定されるアルカリ化剤のモル量に対応する量のアルカリ化剤(b)とブレンドされ、式中、mol(アルカリ化剤)は、使用されるアルカリ化剤のモル量を表し、mol(シラン)は、反応に使用されるC-C-アルコキシシランの総モル量を表し、n(アルコキシ)は、C-C-アルコキシシランあたりのC-C-アルコキシ基の数を表し、S-アルカリは、50~2000の整数を表す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)1個、2個または3個のケイ素原子を有する1以上の有機C-C-アルコキシシランと
(b)1以上のアルカリ化剤
とのブレンドを含む、ケラチン物質、特にヒトの毛髪を処理するための組成物を製造するための方法であって、
ここで、有機C-C-アルコキシシラン(a)は、式(G-1):
【数1】
[式中、
mol(アルカリ化剤)は、使用されるアルカリ化剤の総モル量を表し、
mol(シラン)は、使用されるC-C-アルコキシシランの総モル量を表し、
n(アルコキシ)は、C-C-アルコキシシランあたりのC-C-アルコキシ基の数を表し、
S-アルカリは、50~2,000の整数を表す]
に従い決定されるアルカリ化剤のモル量に対応する量のアルカリ化剤(b)とブレンドされる、方法。
【請求項2】
- (3-アミノプロピル)トリエトキシシラン、
- (3-アミノプロピル)トリメトキシシラン、
- (2-アミノエチル)トリエトキシシラン、
- (2-アミノエチル)トリメトキシシラン、
- (3-ジメチルアミノプロピル)トリエトキシシラン、
- (3-ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、
- (2-ジメチルアミノエチル)トリエトキシシラン、
- (2-ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、
- メチルトリメトキシシラン、
- メチルトリエトキシシラン、
- エチルトリメトキシシラン、
- エチルトリエトキシシラン、
- ヘキシルトリメトキシシラン、
- ヘキシルトリエトキシシラン、
- オクチルトリメトキシシラン、
- オクチルトリエトキシシラン、
- ドデシルトリメトキシシラン、
- ドデシルトリエトキシシラン、
- ビニルトリメトキシシラン、
- ビニルトリエトキシシラン、
- テトラメトキシシラン、および
- テトラエトキシシラン
からなる群から選択される1以上の有機C-C-アルコキシシラン(a)は、アルカリ化剤(b)とブレンドされることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
有機C-C-アルコキシシラン(a)は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、およびアンモニアからなる群から選択される1以上のアルカリ化剤(b)とブレンドされることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
有機C-C-アルコキシシラン(a)は、式(G-1)に従い決定されるアルカリ化剤のモル量に対応する量のアルカリ化剤(b)とブレンドされ、ここで、S-アルカリは、75~1,500の整数、好ましくは90~1,000の整数、より好ましくは100~700の整数、最も好ましくは150~550の整数を表すことを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
(a)40.0~99.88重量部、好ましくは50~98重量部、より好ましくは60~94重量部、最も好ましくは70~90重量部の、1個、2個または3個のケイ素原子を有する1つ以上の有機C-C-アルコキシシランと、
(b)0.11~2.43重量部、好ましくは0.15~2.2重量部、より好ましくは0.18~2.0重量部、さらにより好ましくは0.2~1.6重量部、最も好ましくは0.25~1.2重量部の、1以上のアルカリ化剤
とをブレンドすることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
(a1)30~70重量部の、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランからなる群からの1以上の有機C-C-アルコキシシランと、
(a2)10~40重量部の、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン、(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン、(2-アミノエチル)トリエトキシシラン、(2-アミノエチル)トリメトキシシラン、(3-ジメチルアミノプロピル)トリエトキシシラン、(3-ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、(2-ジメチルアミノエチル)トリエトキシシラン、および(2-ジメチルアミノエチル)トリメトキシシランからなる群からの1以上の有機C-C-アルコキシシラン、および
(b)0.11~2.43重量部の、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、および水酸化カルシウムからなる群からの1以上のアルカリ化剤
とをブレンドすることを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
(a)および(b)、または適用される場合(a1)、(a2)および(b)と、
(c)0~20重量部、好ましくは0.1~18重量部、より好ましくは1.5~16重量部、さらにより好ましくは3~14重量部、最も好ましくは5~12重量部の水
とをブレンドすることを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
(a)および(b)、または適用される場合(a1)、(a2)および(b)と、
(d)0~60重量部、好ましくは0~30重量部、より好ましくは0~20重量部、最も好ましくは0重量部の、ポリC-C-アルキレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、エタノール、イソプロパノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセロール、フェノキシエタノール、およびベンジルアルコールからなる群からの1以上の溶媒、
とをブレンドすることを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
以下の工程:
(1)1個、2個または3個のケイ素原子を有する1以上の有機C-C-アルコキシシラン(a)を反応容器に供給する工程、
(2)1以上のアルカリ化剤(b)と水(c)とを混合する工程、
(3)有機C-C-アルコキシシラン(a)と、アルカリ化剤(b)および水(c)の混合物とを、適用される場合、撹拌しながら、および/または反応容器中の混合物を30~90℃の温度に加熱しながらブレンドする工程、
(4)適用される場合、工程(3)で製造された混合物を1分~4時間、好ましくは1分~1時間撹拌する工程、
(5)(a)と(b)と(c)との混合物を反応容器から充填する工程
を含む、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の方法によって製造される、ケラチン物質、特にヒト毛髪を処理するための組成物。
【請求項11】
ケラチン物質を処理するための、特にケラチン物質を着色するための、特にヒトの毛髪を着色するための、請求項1~9のいずれかに記載の方法によって製造される組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、化粧品の分野であり、毛髪処理製品を製造するための方法に関する。本発明による方法の文脈において、1以上の有機C-C-アルコキシシランを、アルカリ化剤と特定のモル比で反応させる。
【0002】
第2の主題は、上述の方法に従って製造された、ケラチン物質、特にヒトの毛髪を処理するための組成物である。
【0003】
本発明の第3の主題は、ケラチン物質処理のため、特にケラチン物質の着色のため、特にヒトの毛髪の着色のための上述の方法によって製造された組成物の使用である。
【背景技術】
【0004】
ケラチン繊維、特に毛髪の形状および色を変えることは、現代の化粧品の重要な分野である。毛髪の色を変えるため、専門家には、染色の要求に応じた、様々な染色システム(染色系)が知られている。良好な堅牢性および良好な白髪カバー性を備えた長期的な強い染色のためには、通常、酸化染料が使用される。このような染料は通常、酸化染料前駆物質、いわゆる顕色成分およびカプラー成分を含み、これらは過酸化水素などの酸化剤の影響下で実際の染料を互いに生成する。酸化染料は、非常に長持ちする染色結果を特徴とする。
【0005】
直接染料を使用する場合、既に生成された染料が染色剤から毛髪繊維内に拡散する。酸化染毛と比較して、直接染料を用いて得られる染色物は、より短い保持期間およびより早い洗浄性を有する。直接染料を有する染料は、通常、5~20回の洗浄の間、毛髪に残留する。
【0006】
毛髪および/または皮膚の色を短期間変えるために、着色顔料の使用が知られている。着色顔料は、一般的には、不溶性の染色物質であると理解されている。着色顔料は、小粒子の形で染色組成物中に溶解せずに存在し、外部から毛髪繊維および/または皮膚表面に単に付着するにすぎない。従って、これらは通常、界面活性剤を含む洗浄剤で数回洗浄することで、残留することなく除去され得る。このタイプの様々な製品は、「ヘアマスカラ」の名称で市販されている。
【0007】
特に長持ちする染色をユーザーが望む場合は、これまで酸化染色剤の使用が唯一の選択肢であった。しかし、多くの最適化の試みにもかかわらず、酸化染毛剤では不快なアンモニア臭またはアミン臭を完全に回避することはできない。酸化染色剤の使用に伴う毛髪の損傷は、依然としてユーザーの毛髪に悪影響を及ぼす。
【0008】
欧州特許第2168633号明細書は、顔料を使用して長持ちする毛髪着色を製造するという課題に取り組む。この文献は、顔料、有機ケイ素化合物、疎水性ポリマーおよび溶剤を組み合わせて使用する場合、特にシャンプーに対して耐性を有する染色を毛髪に生じ得ると教示する。
【0009】
欧州特許第2168633号明細書において使用される有機ケイ素化合物は、アルコキシシラン類からの反応性化合物である。これらのアルコキシシランは、水の存在下、迅速に加水分解され、(それぞれの場合に使用されるアルコキシシランおよび水の量に応じて)加水分解生成物および/または縮合生成物を生成する。この反応に使用される水の量が、加水分解生成物または縮合生成物の特性に与える影響は、例えばWO 2013/068979 A2に記載されている。
【0010】
これらの加水分解生成物または縮合生成物をケラチン物質に適用すると、ケラチン物質上にフィルムまたは被覆が形成され、これがケラチン物質を完全に包み込み、このようにしてケラチン物質の特性に強く影響が及ぼされる。考えられる応用分野は、例えば、ケラチン繊維の長期的スタイリングまたは長期的形状変更である。この場合、ケラチン繊維は、所望の形状に力学的に成形された後、上述の被覆の形成によりその形状に固定される。別の非常に特に適当な応用可能性は、ケラチン物質の着色であり、この応用では、被覆またはフィルムは着色化合物、例えば顔料の存在下で生成される。顔料により染色されたフィルムがケラチン物質またはケラチン繊維の上に残留し、驚くほど耐洗浄性のある染色となる。
【0011】
アルコキシシランに基づく染色原理の大きな利点は、この種の化合物の高い反応性により非常に迅速な被覆が可能なことである。したがって、僅か数分という非常に短い適用時間の後でさえ、非常に良好な着色結果が達成され得る。しかし、これらの利点に加えて、アルコキシシランの高い反応性は、幾つかの欠点の原因にもなる。例えば、湿度および/または温度の変化などの製造および適用条件が僅かに変わるだけで、生成物の性能が大きな変化をもたらすことがある。特に、本発明に至る研究により、アルコキシシランはケラチン処理剤の製造中に生じる条件に対して極めて敏感に反応することがわかった。
【0012】
分析研究によれば、様々なシラン混合物およびブレンドの製造においては、複雑な加水分解および縮合反応が進行し、選択された反応条件に応じて異なる分子サイズのオリゴマー生成物が生じることが示されている。これに関連して、これらのシランオリゴマーの分子量が、後の製品の特性に大きな影響を与える可能性があることがわかった。製造中に誤った条件を選択すると、過度に大きいまたは過度に小さいシラン凝縮物が形成される可能性があり、その結果、後の製品の性能、特にケラチン物質の後の着色能力に悪影響を及ぼし得る。
【0013】
反応を促進または制御するために、C-C-アルコキシシランの加水分解およびオリゴマー化においてしばしば触媒が使用される。適当な触媒は先行技術から当業者に知られているが、触媒または反応促進剤としてのアルカリ化剤の一般的な使用も先行技術の文献に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】欧州特許第2168633号明細書
【特許文献2】国際出願公開2013/068979号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
アルカリ化剤を使用して進行する先行技術から既知の製造方法において、これらの方法を介して製造されたオリゴマーシランブレンドは、反応後に反応容器または反応器から非常に不十分にしか除去されないという問題が見出されている。従って、反応後、反応生成物の一部が反応器壁面に膜の形態で堆積し、非常に抵抗力が強いため、反応後に必要な洗浄が非常に複雑で、洗浄剤を大量に消費しなければならないという問題が発生した。
製造後に発生する反応器のこのような汚染は非常に望ましくない。
【0016】
従って、本出願の目的は、C-C-アルコキシシランに基づく毛髪処理製品の製造のための最適化された方法を提供することであった。これらの組成物に含まれるC-C-アルコキシシロキサンの混合物は、その後のケラチン物質への適用において最適な性能特性が達成されるように特異的に製造されることが望ましい。同時に、反応容器または反応器におけるシランブレンドの合成反応は、材料の大きな損失なしに反応生成物の最も完全な除去が可能であり、反応容器または反応器が時間を要する洗浄プロセスなしにさらなる製造プロセスに迅速に対応できるように制御可能であることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0017】
驚くべきことに、反応性有機C-C-アルコキシシラン(a)をアルカリ化剤(b)と非常に特定の量範囲でブレンドすることによってケラチン物質を処理するための組成物を製造する場合、前述の目的が優れた方法で達成され得ることがまさに見出されている。
【0018】
本発明の第1の主題は、
(a)1個、2個または3個のケイ素原子を有する1以上の有機C-C-アルコキシシランと
(b)1以上のアルカリ化剤
とのブレンドを含む、ケラチン物質、特にヒトの毛髪を処理するための組成物を製造するための方法であって、
ここで、有機C-C-アルコキシシラン(a)は、式(G-1):
【数1】
[式中、
mol(アルカリ化剤)は、使用されるアルカリ化剤の総モル量を表し、
mol(シラン)は、使用されるC-C-アルコキシシランの総モル量を表し、
n(アルコキシ)は、C-C-アルコキシシランあたりのC-C-アルコキシ基の数を表し、
S-アルカリは50~2,000の整数を表す]
に従い決定されるアルカリ化剤のモル量に対応する量のアルカリ化剤(b)とブレンドされる、方法である。
【0019】
ケラチン物質、特にヒトの毛髪に適用した場合、本発明によるこの方法を経て、ケラチン物質またはケラチン処理組成物を有する毛髪に、非常に均一で耐性のある被覆が生成され得ることが見出された。この被覆は、シャンプー、例えば織物との接触および櫛通しで生じるような摩擦、および、紫外線のような外的影響に対して極めて堅牢であることが証明された。同時に、これらのケラチン処理組成物は、反応器の壁に頑固な重合体凝集物が堆積することなく、且つ、反応器を複雑な洗浄にかけることなく、それらが製造された反応容器から非常に良好かつ容易に除去され得る。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<ケラチン物質処理剤>
ケラチン物質は、毛髪、皮膚、爪(例えば、手指の爪および/または足指の爪)を意味すると理解される。さらに羊毛、毛皮および羽毛も、ケラチン物質の定義にあてはまる。
【0021】
好ましくは、ケラチン物質は、ヒトの毛髪、ヒトの皮膚およびヒトの爪、特に、手指の爪および足指の爪であると理解される。ケラチン物質は、非常に特に好ましくはヒトの毛髪を意味すると理解される。
【0022】
ケラチン物質を処理するための剤は、例えば、ケラチン物質を着色するための剤、ケラチン物質、特にケラチン繊維を再成形若しくは成形するための剤、またはケラチン物質をコンディショニングまたはケアするための剤を意味すると理解される。本発明による方法によって製造される組成物は、ケラチン物質、特に好ましくはヒトの毛髪であるケラチン繊維を着色するのに特に良好な適合性を示す。
【0023】
本発明の文脈において、用語「着色剤」は、サーモクロミックおよびフォトクロミック染料、顔料、雲母、直接染料および/または酸化染料などの着色化合物の使用によってもたらされる、ケラチン物質、特に毛髪の着色に対して使用される。この染色において、前述の着色化合物は、ケラチン物質の表面上の特に均一で滑らかなフィルム内に堆積するか、またはケラチン繊維内に拡散する。フィルムは、有機ケイ素化合物のオリゴマー化または縮合によってイン・サイチュで形成され、着色化合物は、このフィルムまたは被覆と相互作用するか、またはそれに組み込まれる。
【0024】
1以上の有機C-C-アルコキシシラン(a)をアルカリ化剤(b)とブレンドすることによって、加水分解され縮合されたC-C-アルコキシシランのブレンドが製造され、これはシランブレンドとも呼ばれ得る。シランブレンドは、本発明によるケラチン処理組成物の成分である。適用において、シランブレンドは、ケラチン物質にそのまま適用することも、または適用前に1以上のさらなる組成物とブレンドすることもでき、その結果、追加の配合物とブレンドすることによって、すぐに使用できるケラチン処理組成物がまず生成される。
【0025】
<ケラチン処理組成物を製造するための方法>
有機C-C-アルコキシシラン(a)およびアルカリ化剤(b)の混合物の製造は、好ましくは、この目的に適した反応器または反応容器中で本発明に従い行われる。より少量のバッチに非常に適した反応容器は、例えば、化学反応に典型的に使用される1リットル、3リットルまたは5リットルの容量を有するガラスフラスコであり、例えば、グランドジョイントを有する、3リットル、シングルネックまたはマルチネックフラスコである。
【0026】
定義された条件下で、そこで決定された反応の処理を可能にし、制御できるように特別に設計され、製造された限定された空間(容器(container)、容器(vessel))は、反応器と呼ばれる。
【0027】
大きなバッチでは、金属製の反応器で反応を実施するのが有利であることがわかっている。典型的な反応器は、例えば、10リットル、20リットル、または50リットルの充填量を含み得る。生産規模の大きな反応器は、100リットル、500リットル、または1,000リットルの充填量も含み得る。
【0028】
二重壁反応器は、2つの反応器シェルまたは反応器壁を有し、温度制御液体が2つの壁の間に位置する領域において循環することができる。これにより、温度を所望の値に特に良好に設定することができる。
【0029】
反応器、特に熱交換表面を増加させた二重壁反応器の使用も特に適していることが証明されており、熱交換は内部継手を介して、または外部熱交換器を使用して行うことができる。
【0030】
対応する反応器は、例えば、ラボラトリー反応器(IKA社製)である。この場合、“LR-2.ST”モデル、または“magic plant”モデルを挙げることができる。
【0031】
さらに使用できる反応器は、薄膜蒸発器(thin-film evaporators)を備えた反応器である。なぜなら、非常に良好な熱放散およびそれにより特に正確な温度制御が、この方法で実施できるからである。薄膜蒸発器は、薄層蒸発器(thin-layer evaporators)とも呼ばれる。薄膜蒸発器は、例えば旭グラスプラント社から市販され得る。
【0032】
これらの前述の反応容器および反応器のタイプの全ては、本発明による製造方法の適用後に特に良好に洗浄され得る。
【0033】
<1以上のC-C-アルコキシシラン(a)のブレンド>
ケラチン物質、特にヒトの毛髪の処理のための本発明による製造方法は、1個、2個または3個のケイ素原子を有する1以上の有機C-C-アルコキシシラン(a)を1以上のアルカリ化剤(b)とブレンドすることを含む。
【0034】
有機C-C-アルコキシシランは、有機の非ポリマー性ケイ素化合物であり、好ましくは、1個、2個または3個のケイ素原子を有するシランの群から選択される。
【0035】
有機ケイ素化合物は、代替的にオルガノシリコン化合物とも呼ばれ、直接ケイ素-炭素結合(Si-C)を有するか、または炭素が酸素、窒素、または硫黄原子を介してケイ素原子に連結されている化合物である。本発明によるオルガノシリコン化合物は、1~3個のケイ素原子を含む化合物である。有機ケイ素化合物は、特に好ましくは、1個または2個のケイ素原子を含む。
【0036】
IUPAC法によると、用語「シラン」は、ケイ素骨格および水素に基づく化合物の物質群を示す。有機シランの場合では、水素原子は、完全にまたは一部、(置換)アルキル基および/またはアルコキシ基などの有機基により置換されている。
【0037】
本発明におけるC-C-アルコキシシランの特徴は、少なくとも1つのC-C-アルコキシ基がケイ素原子に直接結合していることである。従って、本発明におけるC-C-アルコキシシランは、少なくとも1つの構造単位R'R’’R'’’Si-O-(C-C-アルキル)[基R'、R’’およびR’’'は、ケイ素原子の他の3つの結合原子価を表す]を含む。
【0038】
ケイ素原子に結合したその1以上のC-C-アルコキシ基は非常に反応性が高く、水の存在下で迅速に加水分解され、その反応速度は、特に1分子当たりの加水分解性基の数にも依存する。加水分解性C-C-アルコキシ基がエトキシ基である場合、従って有機ケイ素化合物は好ましくは構造単位R'R’’R'’’Si-O-CH2-CH3を含む。基R'、R’’およびR’’'は、ケイ素原子の3つの残存する自由原子価を表す。
【0039】
非常に特に良好な結果は、本発明の方法において式(I)および/または(II)で示されるC-C-アルコキシシランを用いた場合に得られる。
【0040】
別の非常に特に好ましい実施形態において、本発明による方法は、
式(I)および/または(II):
【化1】
[式中、
- R、Rは、互いに独立して水素原子またはC-Cアルキル基を表し、
- Lは、直鎖または分岐鎖の、二価C-C20-アルキレン基を表し、
- R、Rは、互いに独立してC-C-アルキル基を表し、
- aは、1~3の整数を表し、
- bは、整数3-aを表す]
【化2】
[式中、
- R、R'、R''、R、R'およびR''は、互いに独立して、C-C-アルキル基を表し、
- A、A'、A''、A'''およびA''''は、互いに独立して、直鎖または分岐鎖の、二価C-C20-アルキレン基を表し、
- RおよびRは、互いに独立して、水素原子、C-C-アルキル基、ヒドロキシC-C-アルキル基、C-C-アルケニル基、アミノC-C-アルキル基、または式(III):
【化3】
〔式中、
-cは、1~3の整数を表し、
-dは、整数3-cを表し、
-c'は、1~3の整数を表し、
-d'は、整数3-c'を表し、
-c''は、1~3の整数を表し、
-d''は、整数3-c''を表し、
-eは、0または1を表し、
-fは、0または1を表し、
-gは、0または1を表し、
-hは、0または1を表し、
-ただし、基e、f、gおよびhの少なくとも1つは0とは異なる〕
で示される基を表す]
で示される1以上の有機C-C-アルコキシシラン(a)を、アルカリ化剤(b)とブレンドすることを特徴とする。
【0041】
式(I)および(II)で示される化合物における置換基R、R、R、R、R、R'、R''、R、R'、R''、R、R、L、A、A'、A''、A'''およびA''''を、以下に例として説明する。
【0042】
-C-アルキル基の例は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基およびt-ブチル基、n-ペンチル基およびn-ヘキシル基である。プロピル、エチルおよびメチルが好ましいアルキル基である。C-C-アルケニル基の例は、ビニル、アリル、ブト-2-エニル、ブト-3-エニルおよびイソブテニルであり;好ましいC-C-アルケニル基は、ビニルおよびアリルである。ヒドロキシC-C-アルキル基の好ましい例は、ヒドロキシメチル、2-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシプロピル、3-ヒドロキシプロピル、4-ヒドロキシブチル基、5-ヒドロキシペンチルおよび6-ヒドロキシヘキシル基であり;2-ヒドロキシエチル基が特に好ましい。アミノC-C-アルキル基の例は、アミノメチル基、2-アミノエチル基、3-アミノプロピル基である。2-アミノエチル基が特に好ましい。直鎖二価のC-C20-アルキレン基の例としては、メチレン基(-CH-)、エチレン基(-CH-CH-)、プロピレン基(-CH-CH-CH-)、およびブチレン基(-CH-CH-CH-CH-)である。プロピレン基(-CH-CH-CH-)が特に好ましい。3C原子の鎖長から、2価のアルキレン基は分岐していることもある。分岐した2価のC-C20-アルキレン基の例は、(-CH-CH(CH)-)および(-CH-CH(CH)-CH-)である。
【0043】
式(I):
【化4】
で示されるオルガノシリコン化合物において、基RおよびRは、互いに独立して、水素原子またはC-Cアルキル基を表す。非常に特に好ましくは、RおよびRは、ともに水素原子を表す。
【0044】
直鎖または分岐鎖の、二価のC-C20-アルキレン基を表す構造単位またはリンカー-L-は、有機ケイ素化合物の中間部分に位置する。二価(divalente)のC-C20-アルキレン基は、代替的に二重結合(zweibindige)のC-C20-アルキレン基とすることもでき、これは、各-L-基が2つの結合に入ることができることを意味する
【0045】
好ましくは、-L-は、直鎖二価のC-C20-アルキレン基を表す。さらに好ましくは、-L-は、直鎖二価のC-C-アルキレン基を表す。特に好ましい-L-は、メチレン基(-CH-)、エチレン基(-CH-CH-)、プロピレン基(-CH-CH-CH-)またはブチレン基(-CH-CH-CH-CH-)を表す。非常に特に好ましくは、Lは、プロピレン基(-CH-CH-CH-)を表す。
【0046】
式(I):
【化5】
で示される本発明によるオルガノシリコン化合物は、各一端にケイ素含有基
-Si(OR3)a(R4)bを有する。
【0047】
末端構造単位-Si(OR3)a(R4)bにおいて、RおよびRは、それぞれ独立してC-C-アルキル基を表す。特に好ましくは、RおよびRは、互いに独立して、メチル基またはエチル基を表す。
【0048】
ここで、aは、1~3の整数を表し、bは、整数3-aを表す。aが数3を表す場合、bは0に等しい。aが数2を表す場合、bは1に等しい。aが数1を表す場合、bは2に等しい。
【0049】
工程(1)において、式(I)の少なくとも1つの有機C-C-アルコキシシランを水と混合するか、または反応に持ち込むと、特に良好な特性を有するケラチン処理組成物を製造することが可能であり、この場合、基R、Rは、互いに独立して、メチル基またはエチル基を表す。
【0050】
さらに、工程(1)において、式(I)の少なくとも1つの有機C-C-アルコキシシランを水と反応させた場合に、最良の洗浄堅牢性を有する着色料を得ることが可能であり、この場合、基aは数3を表す。この場合、基bは数0を表す。
【0051】
さらに好ましい実施態様において、本発明による方法は、式(I):
【化6】
[式中、
- R3、R4は、互いに独立してメチル基またはエチル基を表し、
- aは、数3を表し、
- bは、数0を表す]
で示される、1以上の有機C-C-アルコキシシラン(a)が、アルカリ化剤(b)とブレンドされることを特徴とする。
【0052】
本発明による目的を達成するために、特に好適な式(I)で示されるオルガノシリコン化合物は、
- (3-アミノプロピル)トリエトキシシラン
【化7】
- (3-アミノプロピル)トリメトキシシラン
【化8】
- (2-アミノエチル)トリエトキシシラン
【化9】
- (2-アミノエチル)トリメトキシシラン
【化10】
- (3-ジメチルアミノプロピル)トリエトキシシラン
【化11】
- (3-ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン
【化12】
- (2-ジメチルアミノエチル)トリエトキシシラン
【化13】
- (2-ジメチルアミノエチル)トリメトキシシラン、および/または
【化14】
である。
【0053】
さらに好ましい実施形態において、本発明による方法は、以下:
- (3-アミノプロピル)トリエトキシシラン
- (3-アミノプロピル)トリメトキシシラン
- 1-(3-アミノプロピル)シラントリオール
- (2-アミノエチル)トリエトキシシラン
- (2-アミノエチル)トリメトキシシラン
- 1-(2-アミノエチル)シラントリオール
- (3-ジメチルアミノプロピル)トリエトキシシラン
- (3-ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン
- 1-(3-ジメチルアミノプロピル)シラントリオール
- (2-ジメチルアミノエチル)トリエトキシシラン
- (2-ジメチルアミノエチル)トリメトキシシラン、および/または
- 1-(2-ジメチルアミノエチル)シラントリオール
からなる群から選択される1以上の有機C-C-アルコキシシラン(a)を、アルカリ化剤(b)とブレンドまたは反応することを特徴とする。
【0054】
本出願の目的において、ブレンド(blend)および混合(mix)という用語は同義に使用するされてよい。(a)および(b)は、ブレンド時または混合時に互いに反応する。
【0055】
式(I)で示される前記有機ケイ素化合物は市販されている。例えば、(3-アミノプロピル)トリメトキシシランはSigma-Aldrich社から購入できる。また、(3-アミノプロピル)トリエトキシシランは、Sigma-Aldrich社から市販されている。
【0056】
本発明による方法のさらなる実施形態の文脈において、式(II):
【化15】
で示される1以上の有機C-C-アルコキシシラン(a)は、アルカリ化剤(b)とブレンドまたは反応され得る。
【0057】
式(II)で示されるオルガノシリコン化合物は、それぞれその両末端にケイ素含有基(RO)(RSi-および-Si(R')d'(OR')c'を有する。
【0058】
式(II)で示される分子の中央部には、基-(A)-および-[NR-(A')]-および-[O-(A'')]-および-[NR-(A''')]-が存在する。この場合、e、f、gおよびhのそれぞれは、互いに独立して、数0または1を表してよく、ただしe、f、gおよびhの少なくとも1つは0とは異なる。言い換えると、本発明による式(II)で示されるオルガノシリコン化合物は、-(A)-および-[NR-(A')]-および-[O-(A'')]-および-[NR-(A''')]-からなる群から選の少なくとも1つの原子団を含む。
【0059】
2つの末端構造単位(RO)(RSi-および-Si(R')d'(OR')c'において、基R、R'、R''は、互いに独立してC-C-アルキル基を表す。基R、R'およびR''は、互いに独立してC-C-アルキル基を表す。
【0060】
この場合、cは1~3の整数を表し、dは整数3-cを表す。cが数3を表す場合、dは0に等しい。cが数2を表す場合、dは1に等しい。cが数1を表す場合、dは2に等しい。
【0061】
同様に、c'は1~3の整数を表し、d'は整数3-c'を表す。c'が数3を表す場合、d'は0である。c'が数2を表す場合、d'は1である。c'が数1を表す場合、d'は2に等しい。
【0062】
基cおよびc'が共に数3を表す場合、最高の洗浄堅牢性を有する染料を得ることができた。この場合、dおよびd'は、共に数0を表す。
【0063】
別の好ましい実施形態では、本発明による方法は、式(II):
【化16】
[式中、
- RおよびR'は、互いに独立して、メチル基またはエチル基を表し、
- cおよびc'は、共に数3を表し、
- dおよびd'は、共に数0を表す]
で示される1以上の有機C-C-アルコキシシラン(a)がアルカリ化剤(b)とブレンドまたは反応されること特徴とする。
【0064】
cおよびc'が共に数3であり、dおよびd'が共に数0である場合、式(IIa)で示される本発明によるオルガノシリコン化合物は、
【化17】
に相当する。
【0065】
e、f、gおよびhは互いに独立して、数0または1を表し、e、f、gおよびhの少なくとも1つは0とは異なる。従って、記号e、f、gおよびhは、原子団-(A)-および-[NR-(A')]-および-[O-(A'')]-および-[NR-(A''')]-のいずれかが、式(II)で示される有機ケイ素化合物の中央部に位置することを規定する。
【0066】
これに関して、特定の原子団の存在が、洗濯堅牢の染色結果に関して特に有利であることが証明された。特に良好な結果は、e、f、gおよびhの少なくとも2つが数1を表す場合に得られた。非常に好ましくは、eおよびfは共に数1を表す。さらには、gおよびhは特に好ましくは共に数0を表す。
【0067】
eおよびfが共に数1を表し、gおよびhが共に数0を表す場合、本発明によるオルガノシリコン化合物は、式(IIb):
【化18】
に相当する。
【0068】
基A、A'、A''、A'''およびA''''は互いに独立して、直鎖または分岐鎖の、二価のC-C20アルキレン基を表す。好ましくは、基A、A'、A''、A'''およびA''''は互いに独立して、直鎖二価のC-C20アルキレン基を表す。さらに好ましくは、基A、A'、A''、A'''およびA''''は互いに独立して、直鎖二価のC-C-アルキレン基を表す。
【0069】
二価のC-C20アルキレン基は、代替的に二価(divalente oder zweibindige)のC-C20アルキレン基と称されることがあり、これにより、各原子団A、A'、A''、A'''およびA''''が2つの結合を形成し得ることを意味する。
【0070】
特に好ましくは、基A、A'、A''、A'''およびA''''は互いに独立して、メチレン基(-CH-)、エチレン基(-CH-CH-)、プロピレン基(-CH-CH-CH-)またはブチレン基(-CH-CH-CH-CH-)を表す。非常に特に好ましくは、基A、A'、A''、A'''およびA''''は、プロピレン基(-CH-CH-CH-)を表す。
【0071】
官能基fが数1を表す場合、本発明による、式(II)で示されるオルガノシリコン化合物は、構造原子団-[NR-(A')]-を含む。
【0072】
官能基hが数1を表す場合、本発明による、式(II)で示されるオルガノシリコン化合物は、構造原子団-[NR-(A''')]-を含む。
【0073】
式中、基RおよびRは互いに独立して、水素原子、C-C-アルキル基、ヒドロキシC-C-アルキル基、C-C-アルケニル基、アミノC-C-アルキル基または式(III):
【化19】
で示される基を表す。
【0074】
最も好ましくは、官能基RおよびRは互いに独立して、水素原子、メチル基、2-ヒドロキシエチル基、2-アルケニル基、2-アミノエチル基、または式(III)で示される基を表す。
【0075】
fが数1を表し、hが数0を表す場合、本発明による有機ケイ素化合物は、原子団[NR-(A')]を含むが、原子団[NR-(A''')]を含まない。官能基Rが式(III)で示される原子団を表す場合、前処理剤(a)は、3つの反応性シラン基を有するオルガノシリコン化合物を含む。
【0076】
本発明に従う目的を達成するために、式(II)で示される適当なオルガノシリコン化合物は、
- 3-(トリメトキシシリル)-N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1-プロパンアミン
【化20】
- 3-(トリエトキシシリル)-N-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1-プロパンアミン
【化21】
- N-メチル-3-(トリメトキシシリル)-N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1-プロパンアミン
【化22】
- N-メチル-3-(トリエトキシシリル)-N-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1-プロパンアミン
【化23】
- 2-[ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アミノ]エタノール
【化24】
- 2-[ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]アミノ]エタノール
【化25】
- 3-(トリメトキシシリル)-N,N-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1-プロパンアミン
【化26】
- 3-(トリエトキシシリル)-N,N-ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1-プロパンアミン
【化27】
- N1,N1-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1,2-エタンジアミン
【化28】
- N1,N1-ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1,2-エタンジアミン
【化29】
- N,N-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-2-プロペン-1-アミン
【化30】
- N,N-ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-2-プロペン-1-アミン
【化31】
である。
【0077】
式(II)で示される前記有機オルガノシリコン化合物は、市販されている。
【0078】
CAS番号82985-35-1を有するビス(トリメトキシシリルプロピル)アミンは、例えばSigma-Aldrich社から購入できる。
【0079】
CAS番号13497-18-2を有するビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]アミンは、例えば、Sigma-Aldrich社から購入できる。
【0080】
N-メチル-3-(トリメトキシシリル)-N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1-プロパンアミンは、代替的にビス(3-トリメトキシシリルプロピル)-N-メチルアミンとしても称され、Sigma-Aldrich社またはFluorochem社から商業的に購入できる。
【0081】
CAS番号18784-74-2を有する3-(トリエトキシシリル)-N,N-ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1-プロパンアミンは、例えば、Fluorochem社またはSigma-Aldrich社から購入できる。
【0082】
他の好ましい実施形態では、本発明による方法は、
- 3-(トリメトキシシリル)-N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1-プロパンアミン
- 3-(トリエトキシシリル)-N-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1-プロパンアミン
- N-メチル-3-(トリメトキシシリル)-N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1-プロパンアミン
- N-メチル-3-(トリエトキシシリル)-N-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1-プロパンアミン
- 2-[ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アミノ]エタノール
- 2-[ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]アミノ]エタノール
- 3-(トリメトキシシリル)-N,N-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1-プロパンアミン
- 3-(トリエトキシシリル)-N,N-ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1-プロパンアミン
- N1,N1-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1,2-エタンジアミン
- N1,N1-ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1,2-エタンジアミン
- N,N-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-2-プロペン-1-アミン、および/または
- N,N-ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-2-プロペン-1-アミン
からなる群から選択される式(II)で示される、1以上の有機C-C-アルコキシシラン(a)を、アルカリ化剤(b)とブレンドする、または反応させることを特徴とする。
【0083】
さらなる染色試験において、本発明による方法において少なくとも1つの式(IV):
【化32】
で示される有機C-C-アルコキシシランが使用された場合、非常に特に有利であることも見出されている。
【0084】
式(IV)で示される化合物は、1個、2個または3個のケイ素原子を有するシランから選択されるオルガノシリコン化合物であり、オルガノシリコン化合物は、1分子当たり1以上の加水分解性基を含む。
【0085】
式(IV):
【化33】
[式中、
- Rは、C-C12-アルキル基を表し、
- R10は、C-C-アルキル基を表し、
- R11は、C-C-アルキル基を表し、
- kは、1~3の整数を表し、
- mは、整数3-kを表す]
で示される有機ケイ素化合物はまた、アルキル-C-Cアルコキシ-シラン型のシランとも称され得る。
【0086】
さらなる実施形態では、本発明による特に好ましい方法は、式(IV):
【化34】
[式中、
- Rは、C-C12-アルキル基を表し、
- R10は、C-C-アルキル基を表し、
- R11は、C-C-アルキル基を表し、
- kは、1~3の整数を表し、
- mは、整数3-kを表す]
で示される1以上の有機C-C-アルコキシシラン(a)を、アルカリ化剤(b)とブレンドすることを特徴とする。
【0087】
式(IV)で示される有機C-C-アルコキシシランにおいて、基Rは、C-C12-アルキル基を表す。このC-C12-アルキル基は、飽和しており、直鎖または分岐鎖であり得る。好ましくは、Rは、直鎖C-C-アルキル基を表す。好ましくは、Rは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、またはn-ドデシル基を表す。特に好ましくは、Rは、メチル基、エチル基、またはn-オクチル基を表す。
【0088】
式(IV)で示されるオルガノシリコン化合物において、基R10はC-C-アルキル基を表す。特に好ましくは、R10はメチル基またはエチル基を表す。
【0089】
式(IV)で示されるオルガノシリコン化合物において、基R11はC-C-アルキル基を表す。特に好ましくは、R11はメチル基またはエチル基を表す。
【0090】
さらに、kは1~3の整数を表し、mは整数3-kを表す。kが数3を表す場合、mは0に等しい。kが数2を表す場合、mは1に等しい。kが数1を表す場合、mは2に等しい。
【0091】
本発明による調製物の製造中に、官能基kが数3を表す式(IV)で示される少なくとも1つのオルガノシリコン化合物を使用した場合、最良の洗浄堅牢特性を有する着色料を得ることが可能であった。この場合、基mは数0を表す。
【0092】
本発明に従う目的を達成するために特に好適な、式(IV)で示されるオルガノシリコン化合物は、
- メチルトリメトキシシラン
【化35】
- メチルトリエトキシシラン
【化36】
- エチルトリメトキシシラン
【化37】
- エチルトリエトキシシラン
【化38】
- n-ヘキシルトリメトキシシラン(ヘキシルトリメトキシシランとも称される)
【化39】
- n-ヘキシルトリエトキシシラン(ヘキシルトリエトキシシランとも称される)
【化40】
- n-オクチルトリメトキシシラン(オクチルトリメトキシシランとも称される)
【化41】
- n-オクチルトリエトキシシラン(オクチルトリエトキシシランとも称される)
【化42】
- n-ドデシルトリメトキシシラン(ドデシルトリメトキシシランとも称される)、および/または
【化43】
- n-ドデシルトリエトキシシラン(ドデシルトリエトキシシランとも称される)
【化44】
である。
【0093】
別の好ましい実施形態では、本発明による方法は、
- (3-アミノプロピル)トリエトキシシラン
- (3-アミノプロピル)トリメトキシシラン
- (2-アミノエチル)トリエトキシシラン
- (2-アミノエチル)トリメトキシシラン
- (3-ジメチルアミノプロピル)トリエトキシシラン
- (3-ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン
- (2-ジメチルアミノエチル)トリエトキシシラン
- (2-ジメチルアミノエチル)トリメトキシシラン
- メチルトリメトキシシラン
- メチルトリエトキシシラン
- エチルトリメトキシシラン
- エチルトリエトキシシラン
- ヘキシルトリメトキシシラン
- ヘキシルトリエトキシシラン
- オクチルトリメトキシシラン
- オクチルトリエトキシシラン
- ドデシルトリメトキシシラン
- ドデシルトリエトキシシラン
- ビニルトリメトキシシラン、
- ビニルトリエトキシシラン
- テトラメトキシシラン、および
- テトラエトキシシラン
からなる群から選択される1以上の有機C-C-アルコキシシラン(a)を、アルカリ化剤(b)とブレンドすることを特徴とする。
【0094】
さらに、本発明による方法において、式(I)で示される少なくとも1つの有機C-C-アルコキシシラン(a1)および式(IV)で示される少なくとも1つの有機C-C-アルコキシシラン(a2)をアルカリ化剤(b)とブレンドすることが非常に特に好ましいことが見出されている。このようにして、有機C-C-アルコキシシラン(a1)および(a2)の加水分解または縮合反応は、対象とする方法で開始され、制御される。
【0095】
有機C-C-アルコキシシラン(a)とアルカリ化剤(b)との反応は、種々の方法で行うことができる。反応は、C-C-アルコキシシランがブレンドまたは混合によってアルカリ化剤と接触するとすぐに開始する。一つの可能性は、最初に所望の量のアルカリ化剤(b)(適用される場合、本ケースでは特定量の水)を反応容器または反応器中に添加し、次いでC-C-アルコキシシラン(a)を添加することである。
【0096】
さらなる実施形態において、まず反応容器または反応器中に有機C-C-アルコキシシラン(a)を供給し、次いで所望の量の1以上のアルカリ化剤(b)を添加することも可能である。また、この実施形態の範囲内において、アルカリ化剤(b)は、アルカリ化剤(b)と水との混合物の形態でC-C-アルコキシシラン(a)に添加され得る。
【0097】
<(a)と1以上のアルカリ化剤(b)とのブレンド>
本発明による製造方法において、上記の有機C-C-アルコキシシラン(a)は、1以上のアルカリ化剤(b)とブレンドされる。(a)および(b)がブレンドされると、C-C-アルコキシシランの加水分解、およびそれに続くオリゴマー化または縮合が始まる;換言すると、アルカリ化剤(b)の添加は、加水分解または縮合反応の開始および促進を引き起こす。
【0098】
アルカリ化剤(b)は、無機および/または有機塩基の群から選択される。
【0099】
最も特に、アルカリ化剤(b)は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、およびアンモニアからなる群から選択される。水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムが非常に特に好ましい。
【0100】
さらに特に好ましい実施態様において、本発明による方法は、有機C-C-アルコキシシラン(a)が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、およびアンモニアからなる群から選択される1以上のアルカリ化剤(b)と混合されることを特徴とする。
【0101】
さらに、さらなる無機アルカリ化剤または塩基も使用することができる。本発明によれば、さらに使用可能な、無機アルカリ化剤は、好ましくは、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、炭酸ナトリウム、および炭酸カリウムから形成される群から選択することができる。
【0102】
ア例えば有機塩基の群からのルカリ化剤(b)として、アルカノールアミンおよび/または塩基性アミノ酸を使用することができる。
【0103】
アルカノールアミンは、少なくとも1つのヒドロキシル基を有するC-C-アルキル塩基性構造を有する一級アミンから選択することができる。好ましいアルカノールアミンは、2-アミノエタン-1-オール(モノエタノールアミン)、3-アミノプロパン-1-オール、4-アミノブタン-1-オール、5-アミノペンタン-1-オール、1-アミノプロパン-2-オール、1-アミノブタン-2-オール、1-アミノペンタン-2-オール、1-アミノペンタン-3-オール、1-アミノペンタン-4-オール、3-アミノ-2-メチルプロパン-1-オール、1-アミノ-2-メチルプロパン-2-オール、3-アミノプロパン-1,2-ジオール、および2-アミノ-2-メチルプロパン-1,3-ジオールにより形成される群から選択される。
【0104】
本発明の意味において、アミノ酸は、その構造中に少なくとも1つのプロトン性アミノ基および少なくとも1つの-COOH基または1つの-SOH基を含む有機化合物である。好ましいアミノ酸は、アミノカルボン酸、特にα-(アルファ)-アミノカルボン酸およびω-アミノカルボン酸であり、α-アミノカルボン酸が特に好ましい。
【0105】
本発明によると、塩基性アミノ酸は、等電点pIが7.0より大きいアミノ酸を意味すると理解される。
【0106】
塩基性α-アミノカルボン酸は、少なくとも1つの不斉炭素原子を含む。本発明の文脈では、両方の存在し得るエナンチオマーを、特定の化合物またはその混合物として、特にラセミ体として同等に使用できる。しかし、天然に生じ得る異性体(通常はL-立体配置)を使用することが特に有利である。
【0107】
塩基性アミノ酸は、好ましくは、アルギニン、リジン、オルニチンおよびヒスチジン、より好ましくはアルギニンおよびリジンによって形成される群から選択される。他の好適な実施形態では、したがって、本発明による方法は、アルギニン、リジン、オルニチンおよび/またはヒスチジンからなる群からの塩基性アミノ酸がアルカリ化剤(b)として使用されることを特徴とする。
【0108】
<特定のモル比での(a)および(b)のブレンド>
有機C-C-アルコキシシラン(a)とアルカリ化剤(b)とを非常に特定のモル比でブレンドすることは、本発明による製造方法のための本発明にとって不可欠である。これらの特定のモル比を維持することにより、オリゴマー化および縮合反応を、一方では反応後、反応容器の洗浄が容易であるように、他方では良好な性能特性を有するケラチン処理組成物を製造することができるようにも制御することができる。
【0109】
製造方法において使用されるアルカリ化剤(b)の量は、molで示され、式(G-1):
【数2】

[式中、
mol(アルカリ化剤)は、使用されるアルカリ化剤の総モル量を表し、
mol(シラン)は、使用されるC-C-アルコキシシランの総モル量を表し、
n(アルコキシ)は、C-C-アルコキシシランあたりのC-C-アルコキシ基の数を表し、
S-アルカリは、50~2,000の整数を表す]
に従い決定されるアルカリ化剤のモル量に対応する。
【0110】
変数mol(アルカリ化剤)は、本発明による製造方法において使用され、有機C-C-アルコキシシラン(a)とブレンドされるアルカリ化剤(b)の総モル量である。
【0111】
mol(シラン)は、反応に使用されるC-C-アルコキシシランの総モル量を表す。特定の構造のC-C-アルコキシシラン(a)のみが使用される場合、総モル量mol(シラン)は、使用されるこのC-C-アルコキシシランのmol(シラン)のモル量に相当する。
【0112】
しかしながら、異なるC-C-アルコキシシラン(a)のブレンドがケラチン処理物の製造中に使用される場合、総モル量mol(シラン)は、使用される各C-C--アルコキシシランの個々のモル量の各々から合計される。
【0113】
このように、ケラチン物質の処理のための組成物を製造するために、いくつかのC-C-アルコキシシラン(a)を使用する場合、上記の式は、それぞれの和の形成によって展開され、式(G-1’):
【数3】

を形成する
【0114】
変数n(アルコキシ)は、有機C-C-アルコキシシランあたりの加水分解性アルコキシ基の数を示す。加水分解性アルコキシ基の数は、使用される各有機C-C-アルコキシシランに対し個々に決定される。例えば、3-アミノプロピルトリエトキシシランは、3個の加水分解性アルコキシ基(3-エトキシ基)を有する。メチルトリエトキシシランも同様に3個の加水分解性アルコキシ基(3エトキシ基)を有する。メチルトリメトキシシランも3個の加水分解性アルコキシ基(3メトキシ基)を有する。
【0115】
変数S-アルカリは、50~2,000の整数を表し、比例係数である。この変数は、有機C-C-アルコキシシラン(a)およびアルカリ化剤(b)が使用されるモル比を特定する。S-アルカリが大きいほど、使用されるアルカリの量は少なくなり、この使用量は、S-アルカリ=50およびS-アルカリ=2,000の端点で特定される特定の範囲でのみ変化させることができる。
【0116】
<計算例(computing example)1>
ケラチン物質を処理するための組成物の製造において、最初に、23.52gの3-アミノプロピルトリエトキシシラン(C23NOSi=221.37g/mol)および47.07gのメチルトリエトキシシラン(C18Si=178.34g/mol)を一緒にブレンドした。
23.52gの3-アミノプロピルトリエトキシシラン(AMEO)=0.106mol
3-アミノプロピルトリエトキシシランは、1分子あたり3個の加水分解性アルコキシ基を有する
47.07gのメチルトリエトキシシラン(MTES)=0.264mol
メチルトリメトキシシランは、1分子中あたり3個の加水分解性アルコキシ基を有する)
式(G-1’)を考慮し、アルカリ化剤の量は以下のように計算される:
【数4】

S-アルカリ=50-2,000である
mol(アルカリ化剤)=[(0.106x3)+(0.264x3)]/50=0.0222mol
mol(アルカリ剤)=[(0.106x3)+(0.264x3)]/2,000=0.000555mol(0.555mmolに相当)
【0117】
前記量の有機C-C-アルコキシシラン(a)を使用する場合、0.555mmol(ミリモル)~0.0222molのアルカリ化剤(b)が本発明による方法において添加される。
【0118】
このアルカリ化剤(b)は、例えば、0.555mmol(ミリモル)~0.0222molの水酸化ナトリウムであり得る。さらに、このアルカリ化剤(b)は、例えば、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムの混合物でもあり得、これらは、反応において、0.555mmol(ミリモル)~0.0222molの合計モル量で使用されるか、またはこの量で有機C-C-アルコキシシランとブレンドされる。
【0119】
比例係数S-アルカリが50~2,000の整数を表し得るとしても、S-アルカリが75~1,500の整数、好ましくは90~1,000の整数、より好ましくは100~700の整数、最も好ましくは150~550の整数を表す場合、本発明による目的を達成するために非常に特に好ましいことが見出された。
【0120】
S-アルカリについて前述の好ましい、特に好ましい量範囲が選択される場合、反応器の洗浄を特に容易かつ迅速に実施できることが観察された。同時に、これらの方法を経て製造された毛髪処理製品は、ケラチン物質に対して良好な性能特性も有していた。
【0121】
さらに特に好ましい実施態様の文脈では、本発明による方法は、有機C-C-アルコキシシラン(a)が、式(G-1)に従い決定されるアルカリ化剤のモル量に相当する量のアルカリ化剤(b)とブレンドされることを特徴とし、ここでS-アルカリは、75~1,500の整数、好ましくは90~1,000の整数、より好ましくは100~700の整数、最も好ましくは150~550の整数を表す。
【0122】
従って、以下:
(a)(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン、(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン、(2-アミノエチル)トリエトキシシラン、(2-アミノエチル)トリメトキシシラン、(3-ジメチルアミノプロピル)トリエトキシシラン、(3-ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、(2-ジメチルアミノエチル)トリエトキシシラン、(2-ジメチルアミノエチル)トリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、およびテトラエトキシシランからなる群からの1以上の有機C-C-アルコキシシランと
(b)水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、およびアンモニアからなる群からの1以上のアルカリ化剤とのブレンドを含む、ケラチン物質、特にヒトの毛髪の処理のための組成物を製造するための方法であって、
ここで、有機C-C-アルコキシシラン(a)は、式(G-1):
【数5】
[式中、
mol(アルカリ化剤)は、使用されるアルカリ化剤のモル量を表し、
mol(シラン)は、反応において使用されるC-C-アルコキシシランの総モル量を表し、
n(アルコキシ)は、C-C-アルコキシシランあたりのC-C-アルコキシ基の数を表し、
S-アルカリは、50~2,000の整数、好ましくは75~1,500の整数、より好ましくは90~1,000の整数、さらにより好ましくは100~700の整数、最も好ましくは150~550の整数に等しい]
に従い決定されるアルカリ化剤のモル量に対応する量のアルカリ化剤(b)とブレンドされる、方法が非常に特に好ましい。
【0123】
<(a)および(b)の使用量の量範囲>
上記の有機C-C-アルコキシシラン、特にそれら前述の好ましい、特に好ましい代表的なものは、好ましくは特定の量範囲で互いに混合される。
【0124】
(a)40.0~99.88重量部、好ましくは50~98重量部、より好ましくは60~94重量部、最も好ましくは70~90重量部の、1個、2個または3個のケイ素原子を有する1以上の有機C-C-アルコキシシランが、
(b)0.11~2.43重量部、好ましくは0.15~2.2重量部、より好ましくは0.18~2.0重量部、さらに好ましくは0.2~1.6重量部、最も好ましくは0.25~1.2重量部の1以上のアルカリ化剤とブレンドされる場合に、特に良好な結果が得られた。
【0125】
成分(a)および(b)の重量部の特定は、2つの物質クラスが互いにブレンドされる重量比を示す。これらの量および重量比の特定において、上記前提は、有機C-C-アルコキシシラン(a)が、式(G-1)に従い決定されるアルカリ化剤のモル量に対応する量のアルカリ化剤(b)とブレンドされると同時に常に適用される。
【0126】
1以上の有機C-C-アルコキシシラン(a)が40重量部の総量で、0.11重量部の総量のアルカリ化剤(b)とブレンドされる場合、例えば、40gの有機C-C-アルコキシシラン(a)が、0.11gのアルカリ化剤(b)と配合される。これらの重量の量の倍数、例えば80gの有機C-C-アルコキシシラン(a)と0.22gのアルカリ化剤(b)は、この比率条件に該当する。
【0127】
別の好ましい実施形態の範囲内において、本発明による方法は、
(a)40.0~99.88重量部、好ましくは50~98重量部、より好ましくは60~94重量部、最も好ましくは70~90重量部の、1個、2個または3個のケイ素原子を有する1以上の有機C-C-アルコキシシランと、
(b)0.11~2.43重量部、好ましくは0.15~2.2重量部、より好ましくは0.18~2.0重量部、さらにより好ましくは0.2~1.6重量部、最も好ましくは0.25~1.2重量部の1以上のアルカリ化剤
とをブレンドすることを特徴とする。
【0128】
別の好ましい実施形態の範囲内において、本発明による方法は、
(a1)メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランからなる群からの1以上の有機C-C-アルコキシシラン、30~70重量部と、
(a2)(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン、(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン、(2-アミノエチル)トリエトキシシラン、(2-アミノエチル)トリメトキシシラン、(3-ジメチルアミノプロピル)トリエトキシシラン、(3-ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、(2-ジメチルアミノエチル)トリエトキシシランおよび(2-ジメチルアミノエチル)トリメトキシシランからなる群からの1以上の有機C-C-アルコキシシラン、10~40重量部、および
(b)水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、および水酸化カルシウムからなる群からの1以上のアルカリ化剤、0.11~2.43重量部
とをブレンドすることを特徴とする。
【0129】
この特に好ましい実施形態の場合、例えば
(a1)メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランからなる群からの1以上の有機C-C-アルコキシシラン、30~70gは、
(a2)(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン、(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン、(2-アミノエチル)トリエトキシシラン、(2-アミノエチル)トリメトキシシラン、(3-ジメチルアミノプロピル)トリエトキシシラン、(3-ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、(2-ジメチルアミノエチル)トリエトキシシランおよび(2-ジメチルアミノエチル)トリメトキシシランからなる群からの1以上の有機C-C-アルコキシシラン、10~40g、および
(b)水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、および水酸化カルシウムからなる群からの1以上のアルカリ化剤、0.11~2.43g
とブレンドされ得る。本発明による比率条件が遵守されるならば、前述の物質クラス(a1)、(a2)および(b)のグラム数(grammage)の倍数を使用することもできる。
【0130】
<(a)および(b)、または(a1)、(a2)および(b)と水とのブレンド>
-C-アルコキシシラン(a1)およびアルカリ化剤(b)が水と接触するとすぐに、以下のスキーム(3-アミノプロピルトリエトキシシランの例を用いた反応スキーム)に従って発熱性加水分解反応が起こる:
【化45】
【0131】
シラン分子あたりの加水分解可能なC-C-アルコキシ基の数に応じて、使用されるC-C-アルコキシシラン1個あたり、加水分解反応はいくどもおこり得る。
【化46】
または
【0132】
この加水分解反応は、アルカリ化剤(b)の存在によって促進される。
【0133】
ケラチン物質上に特に良好な被覆を生じる組成物の製造のためには、水を化学量論量(substoichiometric amount)で使用することが明示的に非常に特に好ましいことが見出されている。この場合、使用される水の量は、理論上、Si原子上に存在する全ての加水分解性C-C-アルコキシ基、すなわちアルコキシシラン基を加水分解するのに必要とされる量未満である。従って、有機C-C-アルコキシシランの部分加水分解が非常に好ましい。
【0134】
この理由のために、本発明による製造方法において、有機C-C-アルコキシシラン(a1)およびアルカリ化剤(b)が、水(c)と混合される場合、非常に特に好ましい。(a)および(b)を特定量の水とブレンドすることが特に好ましい。(a)および(b)を前述の重量部(またはその倍数)で使用し、これらを0~20重量部、好ましくは0.1~18重量部、より好ましくは1.5~16重量部、さらにより好ましくは3~14重量部、最も好ましくは5~12重量部の水と混合することが非常に特に好ましい。
【0135】
さらに特に好ましい実施形態の範囲内において、本発明による方法は、(a)および(b)、または適用される場合(a1)、(a2)および(b)を、(c)0~20重量部、好ましくは0.1~18重量部、より好ましくは1.5~16重量部、さらにより好ましくは3~14重量部、最も好ましくは5~12重量部の水とブレンドすることを特徴とする。
【0136】
水は、連続的に、部分的に、または総量として直接添加され得る。十分な温度制御を確実にするために、反応混合物は好ましくは冷却され、および/または水の添加量および添加速度は適合される。使用されるシランの量に依存して、添加および反応は2分~最大72時間にわたって行われ得る。
【0137】
さらなる実施形態の文脈において、水(c)は、最初にアルカリ化剤(b)と混合されてもよく、(b)および(c)のこの混合物は、次いで有機C-C-アルコキシシランとブレンドされてもよい。
【0138】
<溶媒の使用(d)>
本発明による製造方法は、溶媒の使用を省略することが可能である。しかしながら、難溶性の有機C-C-アルコキシシランの溶解性を向上させるため、および製造工程の発熱性を制御するためなどの様々な理由のため、本発明によるケラチン処理組成物の製造において、水以外の1以上の溶媒を使用することが有利であり得る。
【0139】
この実施形態の文脈において、成分(a)および(b)、適用される場合(c)-または(a1)、(a2)、(b)および適用される場合(c)-は、特に前述の好ましい特に好ましい重量部で、溶媒(d)と混合される。
【0140】
混合は、例えば、まず、水とは異なる溶媒(d)を適当な反応器または反応容器に投入し、次いで、C-C-アルコキシシラン(a)を添加することにより行われ得る。添加は、滴下または注入により実施され得る。さらに、本発明によれば、まず少なくとも1つの有機C-C-アルコキシシラン(a)を反応容器に供給し、次いで溶媒(d)を添加または滴下することも同様に可能である。この目的のために、アルカリ化剤(b)は、そのまま存在してもよいし、または水と予めブレンドされてもよく、(a)および(d)の混合物に添加することができる。
【0141】
逐次的な手順、すなわち、最初に溶媒と最初の有機C-C-アルコキシシランを添加し、次に溶媒を添加し、次にさらなる有機C-C-アルコキシシランを再度添加することも可能である。
【0142】
溶媒は好ましくは撹拌しながら添加する。
【0143】
標準圧力(1,013hPa)において、20~90℃、好ましくは30~85℃、非常に特に好ましくは40~80℃の沸点を有する溶媒を選択することが好ましいことがある。
【0144】
適当な溶媒は、例えば以下である:
- 40℃の沸点(1,013mbar)を有するジクロロメタン
- 65℃の沸点(1,013mbar)を有するメタノール
- 65.8℃の沸点(1,013mbar)を有するテトラヒドロフラン
- 78℃の沸点(1,013mbar)を有するエタノール、
- 82℃の沸点(1,013mbar)を有するイソプロパノール、
- 82℃の沸点(1,013mbar)を有するアセトニトリル。
【0145】
さらに、非常に特に好ましい溶媒は、一価または多価のC-C12アルコールの群から選択され得る。一価または多価のC-C12アルコールは、1以上のヒドロキシ基を有する1~12個の炭素原子を有する化合物である。ヒドロキシル基とは異なるさらなる官能基は、本発明に従い、C-C12アルコール中には存在しない。C-C12アルコールは脂肪族であっても芳香族であってもよい。
【0146】
メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、ベンジルアルコール、2-フェニルエタノール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、およびグリセロールを、例えば適当なC-C12アルコールとして挙げることができる。非常に特に適当なC-C12アルコールは、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールである。
【0147】
さらに特に好ましい実施形態の範囲内において、本発明による方法は、(a)および(b)-または適用される場合(a1)、(a2)および(b)-を、
(d)ポリC-C-アルキレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、エタノール、イソプロパノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセロール、フェノキシエタノール、およびベンジルアルコールからなる群からの1以上の溶媒、0~60重量部、好ましくは0~30重量部、より好ましくは0~20重量部、最も好ましくは0重量部とブレンドすることを特徴とする。
【0148】
加水分解または縮合反応が終了した後、溶媒を再び除去することができる。除去は、減圧下での蒸留-例えば、ロータリーエバポレーターを使用すること-によって行うことができる。しかしながら、さらなる研究により、有機C-C-アルコキシシロキサンの混合物中に溶媒または溶媒を残しておくことも有利であってよいことが示されている。
【0149】
<製造方法における工程>
既に上述したように、物質クラス(a)および(b)、または、(a1)、(a2)および(b)、並びに適用される場合(c)、並びに、適用される場合(d)のブレンドは、異なる方法および異なる順序で行うことができる。
【0150】
以下の工程を含む方法が、本発明による目的を達成するのに非常に特に好適であることが見出されている:
(1)1個、2個または3個のケイ素原子を有する1以上の有機C-C-アルコキシシラン(a)を反応容器中に供給する工程、
(2)1以上のアルカリ化剤(b)を水(c)と混合する工程、
(3)有機C-C-アルコキシシラン(a)と、アルカリ化剤(b)および水(c)の混合物とを、適用される場合、撹拌しながら、および/または反応容器中の混合物を30~90℃の温度に加熱しながら、ブレンドする工程、
(4)適用される場合、工程(3)で製造された混合物を1分~4時間、好ましくは1分~1時間撹拌する工程、
(5)(a)と(b)と(c)との混合物を反応容器から充填する工程。
【0151】
さらなる実施態様の文脈において、以下の工程を含む本発明による方法が特に好ましい:
(1)1個、2個または3個のケイ素原子を有する1以上の有機C-C-アルコキシシラン(a)を反応容器中に供給する工程、
(2)1以上のアルカリ化剤(b)を水(c)と混合する工程、
(3)有機C-C-アルコキシシラン(a)と、アルカリ化剤(b)および水(c)の混合物とを、適用される場合、撹拌しながら、および/または反応容器中の混合物を30~90℃の温度に加熱しながら、ブレンドする工程、
(4)適用される場合、工程(3)で製造された混合物を1分~4時間、好ましくは1分~1時間撹拌する工程、
(5)(a)と(b)と(c)との混合物を反応容器から充填する工程。
【0152】
さらなる実施態様の文脈において、示された順序で以下の工程を含む本発明による方法が特に好ましい:
(1)1個、2個または3個のケイ素原子を有する1以上の有機C-C-アルコキシシラン(a)を反応容器中に供給する工程、
(2)1以上のアルカリ化剤(b)を水(c)と混合する工程、
(3)有機C-C-アルコキシシラン(a)と、アルカリ化剤(b)および水(c)の混合物とを、適用される場合、撹拌しながら、および/または反応容器中の混合物を30~90℃の温度に加熱しながら、ブレンドする工程、
(4)適用される場合、工程(3)で製造された混合物を1分~4時間、好ましくは1分~1時間撹拌する工程、
(5)(a)と(b)と(c)との混合物を反応容器から充填する工程。
【0153】
このようにして製造される(a)と(b)と(c)と、適用される場合(d)との混合物は、代替的にシランブレンドとも称され得る。
【0154】
任意段階として、本発明による方法は、1以上の化粧品成分の添加も含んでよい。さらなる成分は、例えば、工程(1)、(2)、(3)、(4)、および/または(5)のいずれかの後に添加され得る。
【0155】
工程において任意に使用され得る化粧品成分は、剤にさらなる好ましい特性を付与するための全ての適当な成分であり得る。例えば、増粘またはフィルム形成ポリマーの群からの化粧品成分、非イオン性、カチオン性、アニオン性または双性イオン性/両性イオン性界面活性剤の群からの界面活性化合物、顔料、直接染料、酸化染料前駆物質の群からの着色化合物、C-C30脂肪アルコール、炭化水素化合物、脂肪酸エステルの群からの脂肪成分、pH調整剤の群に関連する酸および塩基、香料、防腐剤、植物抽出物、およびタンパク質加水分解物を添加することができる。
【0156】
<ケラチン物質を処理するための剤>
上記方法により、ケラチン物質に適用した場合に極めて良好な性能を示す、予備加水分解または縮合シランブレンドの製造が可能になる。
【0157】
原則的に、この方法によって製造されるケラチン処理組成物は、様々な目的、例えば、ケラチン物質を着色するための組成物として、ケラチン物質のケアのための組成物として、またはケラチン物質の形状を変化させるための組成物として使用することができる。
【0158】
本発見のさらなる主題は、本発明の第1の主題の説明において詳細に開示したような方法によって製造された、ケラチン物質、特にヒトの毛髪を処理するための組成物である。
【0159】
さらに非常に特に好ましい実施形態において、本発明による組成物は、ケラチン物質を着色するため、ケラチン物質をケアするため、またはケラチン物質の形状を変化させるための組成物であることを特徴とする。
【0160】
製造される組成物は、染色方法における使用に明示的に非常に特に好適である。
【0161】
着色剤として使用する場合、少なくとも1つの着色化合物を、例えば、工程(1)、(2)、(3)、(4)、および/または(5)において、またはこれらの工程の1つの前または後に、組成物に添加することができ、着色化合物は、顔料、直接染料、および/または酸化染料前駆体からなる群から選択することができる。この場合、予備加水分解/縮合したC-C-アルコキシシランに加えて、着色化合物も含有する、ケラチン物質を着色するための組成物を得ることができる。
【0162】
<ケラチン物質の処理のための組成物の使用>
本発明のさらなる主題は、ケラチン物質の処理のための、特にケラチン物質を着色するための、特にヒトの毛髪を着色するための、本発明の第1の主題の方法により製造される組成物の使用である。
【0163】
染色方法において本発明による方法によって製造された生成物を使用する場合、1以上の着色化合物を使用することができる。上述したように、着色化合物は、製造工程中に化粧品成分として反応混合物に添加することができ、でなければ、別個に包装された調製物の成分として使用者に提供することができる。
【0164】
着色化合物または化合物は、好ましくは、顔料、直接染料、酸化染料、フォトクロミック染料、およびサーモクロミック染料からなる群から選択することができ、特に好ましくは、顔料および/または直接染料からなる群から選択され得る。
【0165】
本発明の意味における顔料は、25℃での水への溶解度が0.5g/L未満、好ましくは0.1g/L未満、なおより好ましくは0.05g/L未満である染色化合物を意味すると理解される。水への溶解度は、例えば、以下に示す方法で測定できる。ビーカーに0.5gの顔料を秤量する。撹拌棒を加える。次いで、1リットルの蒸留水を添加する。この混合物をマグネチックスターラー上で攪拌しながら25℃に1時間加熱する。この時間の経過後、混合物中に顔料の未溶解成分がまだ見える場合、顔料の溶解度は0.5g/L未満である。微細に分散している可能性のある顔料の強度が高いために、顔料-水混合物を目視で評価できない場合は、混合物をろ過する。ろ紙上に未溶解顔料の一部が残留する場合、その顔料の溶解度は0.5g/L未満である。
【0166】
適当な顔料は、無機由来および/または有機由来であり得る。
【0167】
好ましい実施形態において、本発明による剤は、無機および/または有機顔料の群からの少なくとも1つの染色化合物を含有することを特徴とする。
【0168】
好ましい顔料は、合成または天然の無機顔料から選択される。天然由来の無機着色顔料は、例えば、チョーク、黄土、アンバー、緑土、焼成テーラ・ディ・シエナまたはグラファイトから製造できる。さらに、黒色酸化鉄などの黒色顔料、ウルトラマリンまたは赤色酸化鉄などの有色顔料、および蛍光顔料または燐光顔料を、無機着色顔料として使用できる。
【0169】
有色の金属酸化物、金属水酸化物および金属酸化物水和物、混合相顔料、硫黄含有ケイ酸塩、ケイ酸塩、金属硫化物、複合金属シアン化物、金属硫酸塩、クロム酸塩および/またはモリブデン酸塩は特に適当である。特に好ましい顔料は、黒色酸化鉄(CI 77499)、黄色酸化鉄(CI 77492)、赤色および褐色酸化鉄(CI 77491)、マンガンバイオレット(CI 77742)、ウルトラマリン(スルホケイ酸アルミニウムナトリウム、CI 77007、Pigment Blue 29)、酸化クロム水和物(CI 77289)、紺青(フェロシアン化鉄、CI 77510)および/またはカルミン(コチニール)である。
【0170】
また、本発明による特に好ましい顔料の群からの染料化合物は、有色真珠光沢顔料である。これらは、通常、雲母系であり、1以上の金属酸化物で被覆されてよい。雲母は層状ケイ酸塩である。これらのケイ酸塩の最も重要な代表例は、白雲母、金雲母、ソーダ雲母、黒雲母、リシア雲母およびマーガライトである。金属酸化物と組み合わせた真珠光沢顔料を製造するには、雲母、主に白雲母または金雲母を金属酸化物で被覆する。
【0171】
天然の雲母の代替品として、1以上の金属酸化物で被覆された合成雲母を真珠光沢顔料として使用できる。特に好ましい真珠光沢顔料は、天然または合成の雲母系であり、上述の金属酸化物の1以上で被覆される。金属酸化物の層の厚さを変えることで、それぞれの顔料の色を変えることができる。
【0172】
さらなる好ましい実施形態において、本発明による組成物は、それ(b)が、着色金属酸化物、金属水酸化物、金属酸化物水和物、ケイ酸塩、金属硫化物、複合金属シアン化物、金属硫酸塩、ブロンズ顔料からなる群、および/または、少なくとも1つの金属酸化物および/または1つの金属オキシ塩化物で被覆される雲母系染色化合物から選択される、顔料の群からの少なくとも1つの染色化合物を含有することを特徴とする。
【0173】
別の好ましい実施態様では、本発明における組成物は、それ(b)が、二酸化チタン(CI 77891)、黒色酸化鉄(CI 77499)、黄色酸化鉄(CI 77492)、赤色および/または褐色酸化鉄(CI 77491、CI 77499)、マンガンバイオレット(CI 77742)、ウルトラマリン(スルホケイ酸アルミニウムナトリウム、CI 77007、Pigment Blue 29)、酸化クロム水和物(CI 77289)、酸化クロム(CI 77288)および/または紺青(フェロシアン化鉄、CI 77510)からなる群からの1以上の金属酸化物で着色された雲母系顔料から選択される少なくとも1つの着色化合物を含むこと特徴とする。
【0174】
特に適当な着色顔料の例は、Merck社からRona(登録商標)、Colorona(登録商標)、Xirona(登録商標)、Dichrona(登録商標)およびTimiron(登録商標)の商品名で、Sensient社からAriabel(登録商標)およびUnipure(登録商標)の商品名で、Eckart Cosmetic Colors社からPrestige(登録商標)の商品名で、Sunstar社からSunshine(登録商標)の商品名で市販されている。
【0175】
商品名がColorona(登録商標)の特に好ましい着色顔料は、例えば以下である:
Colorona Copper,Merck,雲母,CI 77491(酸化鉄)
Colorona Passion Orange,Merck,雲母,CI 77491(酸化鉄),アルミナ
Colorona Patina Silver,Merck,雲母,CI 77499(酸化鉄),CI 77891(二酸化チタン)
Colorona RY,Merck,CI 77891(二酸化チタン),雲母,CI 75470(カーマイン)
Colorona Oriental Beige,Merck,雲母,CI 77891(二酸化チタン),CI77491(酸化鉄)
Colorona Dark Blue,Merck,雲母,二酸化チタン,フェロシアン化鉄
Colorona Chameleon,Merck,CI 77491(酸化鉄),雲母
Colorona Aborigine Amber,Merck,雲母,CI 77499(酸化鉄),CI 77891(二酸化チタン)
Colorona Blackstar Blue,Merck,CI77499(酸化鉄),雲母
Colorona Patagonian Purple,Merck,雲母,CI77491(酸化鉄),CI 77891(二酸化チタン),CI77510(フェロシアン化鉄)
Colorona Red Brown,Merck,雲母,CI 77491(酸化鉄),CI 77891(二酸化チタン)
Colorona Russet,Merck,CI 77491(二酸化チタン),雲母,CI 77891(酸化鉄)
Colorona Imperial Red,Merck,雲母,二酸化チタン(CI77891),D&C RED NO.30(CI 73360)
Colorona Majestic Green,Merck,CI 77891(二酸化チタン),雲母,CI 77288(酸化クロムグリーン)
Colorona Light Blue,Merck,雲母,二酸化チタン(CI77891),フェロシアン化鉄(CI 77510)
Colorona Red Gold,Merck,雲母,CI 77891(二酸化チタン),CI 77491(酸化鉄)
Colorona Gold Plus MP 25,Merck,雲母,二酸化チタン(CI 77891),酸化鉄(CI 77491)
Colorona Carmine Red,Merck,雲母,二酸化チタン,カーマイン
Colorona Blackstar Green,Merck,雲母,CI 77499(酸化鉄)
Colorona Bordeaux,Merck,雲母,CI 77491(酸化鉄)
Colorona Bronze,Merck,雲母,CI 77491(酸化鉄)
Colorona Bronze Fine,Merck,雲母,CI 77491(酸化鉄)
Colorona Fine Gold MP 20,Merck,雲母,CI 77891(二酸化チタン),CI 77491(酸化鉄)
Colorona Sienna Fine,Merck,CI 77491(酸化鉄),雲母
Colorona Sienna,Merck,雲母,CI 77491(酸化鉄)
Colorona Precious Gold,Merck,雲母,CI 77891(二酸化チタン),シリカ,CI 77491(酸化鉄),酸化スズ
Colorona Sun Gold Sparkle MP 29,Merck,雲母,二酸化チタン,酸化鉄,雲母,CI 77891,CI 77491(EU)
Colorona Mica Black,Merck,CI 77499(酸化鉄),雲母,CI 77891(二酸化チタン)
Colorona Bright Gold,Merck,雲母,CI 77891(二酸化チタン),CI 77491(酸化鉄)
Colorona Blackstar Gold,Merck,雲母,CI 77499(酸化鉄)。
【0176】
商品名がXirona(登録商標)の他の特に好ましい着色顔料は、例えば以下である:
Xirona Golden Sky,Merck,シリカ,CI 77891(二酸化チタン),酸化スズ
Xirona Caribbean Blue,Merck,雲母,CI 77891(二酸化チタン),シリカ,酸化スズ
Xirona Kiwi Rose,Merck,シリカ,CI 77891(二酸化チタン),酸化スズ
Xirona Magic Mauve,Merck,シリカ,CI 77891(二酸化チタン),酸化スズ。
【0177】
また、商品名がUnipure(登録商標)の特に好ましい着色顔料は、例えば以下である:
Unipure Red LC 381 EM,Sensient CI 77491(酸化鉄),シリカ
Unipure Black LC 989 EM,Sensient,CI 77499(酸化鉄),シリカ
Unipure Yellow LC 182 EM,Sensient,CI 77492(酸化鉄),シリカ。
【0178】
別の実施態様の文脈において、本発明による剤または本発明による調製物は、有機顔料の群からの1以上の染色化合物をさらに含有することもできる。
【0179】
本発明における有機顔料は、例えばニトロソ、ニトロ-アゾ、キサンテン、アントラキノン、イソインドリノン、イソインドリン、キナクリドン、ペリノン、ペリレン、ジケト-ピロロピロール、インディゴ、チオインディゴ、ジオキサジンおよび/またはトリアリールメタン化合物の群から選択されてよい、相応に不溶性の有機染料またはカラーラッカーである。
【0180】
特に適当な有機顔料は、例えば、カーマイン、キナクリドン、フタロシアニン、ソルガム、カラーインデックスがCl 42090,CI 69800,CI 69825,CI 73000,CI 74100,CI 74160の青色顔料、カラーインデックスがCI 11680,CI 11710,CI 15985,CI 19140,CI 20040,CI 21100,CI 21108,CI 47000,またはCI 47005の黄色顔料、カラーインデックスがCI 61565,CI 61570,またはCI 74260の緑色顔料、カラーインデックスがCI 11725,CI 15510,CI 45370,またはCI 71105の橙色顔料、およびカラーインデックスがCI 12085,CI 12120,CI 12370,CI 12420,CI 12490,CI 14700,CI 15525,CI 15580,CI 15620,CI 15630、CI 15800,CI 15850,CI 15865,CI15880,CI 17200,CI 26100、CI 45380,CI 45410,CI 58000,CI 73360,CI 73915および/またはCI 75470の赤色顔料が含まれ得る。
【0181】
別の特に好ましい実施態様では、本発明による組成物は、カーマイン、キナクリドン、フタロシアニン、ソルガム、カラーインデックスがCl 42090,CI 69800,CI 69825,CI 73000,CI 74100,CI 74160の青色顔料、カラーインデックスがCI 11680,CI 11710,CI 15985,CI 19140,CI 20040,CI 21100,CI 21108,CI 47000,またはCI 47005の黄色顔料、カラーインデックスがCI 61565,CI 61570,またはCI 74260の緑色顔料、カラーインデックスがCI 11725,CI 15510,CI 45370,またはCI 71105の橙色顔料、およびカラーインデックスがCI 12085,CI 12120,CI 12370,CI 12420,CI 12490,CI 14700,CI 15525,CI 15580,CI 15620,CI 15630、CI 15800,CI 15850,CI 15865,CI15880,CI 17200,CI 26100、CI 45380,CI 45410,CI 58000,CI 73360,CI 73915および/またはCI 75470の赤色顔料からなる群から選択される有機顔料の群からの少なくとも1つの着色化合物を含むことを特徴とする。
【0182】
有機顔料はカラーラッカーであってもよい。本発明の意味において、用語「カラーラッカー」は、吸収された染料の層を含む粒子を意味し、粒子および染料からなるユニットは、上記条件下で不溶性である。粒子は例えば無機物質でってよく、これは、アルミニウム、シリカ、ホウケイ酸カルシウム、ホウケイ酸カルシウムアルミニウム、またはアルミニウムであってよい。
【0183】
例えば、アリザリンカラーラッカーをカラーラッカーとして使用できる。
【0184】
優れた耐光性および耐温度性のためには、本発明による剤における前記顔料の使用が特に好ましい。使用する顔料が特定の粒度を有する場合、さらに好ましい。この粒子サイズは、一方では、形成されるポリマーフィルム中の顔料の均一な分布をもたらし、他方では、化粧剤の塗布後の髪または肌のざらつきを回避する。したがって、本発明によれば、少なくとも1つの顔料が、1.0~50μm、好ましくは5.0~45μm、好ましくは10~40μm、特に14~30μmの平均粒度D50を有することが有利である。平均粒度D50は、例えば、動的光散乱(DLS)を用いて測定できる。
【0185】
顔料または顔料たちは、本発明による組成物または調製物の総重量に対して、いずれの場合も0.001~20重量%、特に0.05~5重量%の量で使用され得る。
【0186】
本発明による組成物は、染色化合物として1以上の直接染料を含有してもよい。直接染料は、毛髪に直接作用し、色を形成するために酸化工程を必要としない染料である。直接染料は通常、ニトロフェニレンジアミン、ニトロアミノフェノール、アゾ染料、アントラキノン、トリアリールメタン染料、またはインドフェノールである。
【0187】
本発明の意味における直接染料は、0.5g/Lより大きい25℃での水への溶解度(760mmHg)を有し、従って顔料として扱われない。本発明の意味において、直接染料は、好ましくは1.0g/Lより大きい25℃での水への溶解度(760mmHg)を有する。本発明の意味において、直接染料は、特に好ましくは、1.5g/Lより大きい25℃での水への溶解度(760mmHg)を有する。
【0188】
直接染料は、アニオン性、カチオン性、および非イオン性直接染料に分けられる。
【0189】
さらなる好ましい実施態様において、本発明による剤は、染色化合物として、少なくとも1つのアニオン性、カチオン性、および/または非イオン性の直接染料を含むことを特徴とする。
【0190】
さらに好ましい実施態様において、本発明による剤は、少なくとも1つのアニオン性、カチオン性、および/または非イオン性の直接染料を含むことを特徴とする。
【0191】
適当なカチオン性直接染料は、例えば、Basic Blue 7,Basic Blue 26,Basic Violet 2,およびBasic Violet 14,Basic Yellow 57,Basic Red 76,Basic Blue 16,Basic Blue 347(Cationic Blue 347 / Dystar),HC Blue No.16,Basic Blue 99,Basic Brown 16,Basic Brown 17,Basic Yellow 57,Basic Yellow 87,Basic Orange 31,Basic Red 51,Basic Red 76である。
【0192】
非イオン性直接染料として、特に非イオン性ニトロおよびキノン染料並びに天然アゾ染料を使用できる。適当な非イオン性直接染料は、以下の国際名称または商品名で知られる化合物である:HC Yellow 2,HC Yellow 4,HC Yellow 5,HC Yellow 6,HC Yellow 12,HC Orange 1,Disperse Orange 3,HC Red 1,HC Red 3,HC Red 10,HC Red 11,HC Red 13,HC Red BN,HC Blue 2,HC Blue 11,HC Blue 12,Disperse Blue 3,HC Violet 1,Disperse Violet 1,Disperse Violet 4,Disperse Black 9、および1,4-ジアミノ-2-ニトロベンゼン、2-アミノ-4-ニトロフェノール、1,4-ビス-(2-ヒドロキシエチル)-アミノ-2-ニトロベンゼン、3-ニトロ-4-(2-ヒドロキシエチル)-アミノフェノール、2-(2-ヒドロキシエチル)アミノ-4,6-ジニトロフェノール、4-[(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-3-ニトロ-1-メチルベンゼン、1-アミノ-4-(2-ヒドロキシエチル)-アミノ-5-クロロ-2-ニトロベンゼン、4-アミノ-3-ニトロフェノール、1-(2’-ウレイドエチル)アミノ-4-ニトロベンゼン、2-[(4-アミノ-2-ニトロフェニル)アミノ]安息香酸、6-ニトロ-1,2,3,4-テトラヒドロキノキサリン、2-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、ピクラミン酸およびその塩、2-アミノ-6-クロロ-4-ニトロフェノール、4-エチルアミノ-3-ニトロ安息香酸および2-クロロ-6-エチルアミノ-4-ニトロフェノール。
【0193】
アニオン性直接染料は、酸性染料とも称される。酸性染料は、少なくとも1個のカルボン酸基(-COOH)および/または少なくとも1個のスルホン酸基(-SOH)を有する直接染料である。pH値に依存して、カルボン酸基またはスルホン酸基のプロトン化形態(-COOH、-SOH)は、それらの脱プロトン化形態(-COO、-SO )と平衡関係で存在する。プロトン化形態の割合は、pH値の低下とともに増加する。直接染料をその塩の形態において使用する場合、カルボン酸基またはスルホン酸基は脱プロトン化形態で存在し、電気的中性を維持するために、対応する化学量論的に同等のカチオンで中和される。本発明による酸性染料は、そのナトリウム塩および/またはそのカリウム塩の形態でも使用できる。
【0194】
本発明の意味における酸性染料は、0.5g/Lより大きい25℃での水への溶解度(760mmHg)を有し、従って、顔料としてみなされない。好ましくは、本発明の意味における酸性染料は、1.0g/Lより大きい25℃での水への溶解度(760mmHg)を有する。
【0195】
酸性染料のアルカリ土類塩(例えばカルシウム塩およびマグネシウム塩)またはアルミニウム塩は、対応するアルカリ塩よりも低い溶解度をしばしば有する。これらの塩の溶解度が0.5g/L未満(25℃、760mmHg)である場合、それらは直接染料の定義にあてはまらない。
【0196】
酸性染料の本質的な特徴は、アニオン性電荷を形成する能力であり、その原因となるカルボン酸基またはスルホン酸基は通常、様々な発色団系に結合している。適当な発色団系は、例えば、ニトロフェニレンジアミン、ニトロアミノフェノール、アゾ染料、アントラキノン染料、トリアリールメタン染料、キサンタン染料、ローダミン染料、オキサジン染料および/またはインドフェノール染料の構造に見られる。
【0197】
例えば、1以上の化合物が、適当な酸性染料として下記群から選択され得る:Acid Yellow 1(D&C Yellow 7、Citronin A、Ext.D&C Yellow No.7、Japan Yellow 403、CI 10316、COLIPA n°B001)、Acid Yellow 3(COLIPA n°:C 54、D&C Yellow N°10、Quinoline Yellow、E104、Food Yellow 13)、Acid Yellow 9(CI 13015)、Acid Yellow 17(CI 18965)、Acid Yellow 23(COLIPA n°29、Covacap Jaune W 1100(LCW)、Sicovit Tartrazine 85 E 102(BASF)、Tartrazine、Food Yellow 4、Japan Yellow 4、FD&C Yellow No.5)、Acid Yellow 36(CI 13065)、Acid Yellow 121(CI 18690)、Acid Orange 6(CI 14270)、Acid Orange 7(2-Naphthol orange、Orange II、CI 15510、D&C Orange 4、COLIPA n°C015)、Acid Orange 10(CI 16230;Orange G ナトリウム塩)、Acid Orange 11(CI 45370)、Acid Orange 15(CI 50120)、Acid Orange 20(CI 14600)、Acid Orange 24(BROWN 1;CI 20170;KATSU201;ナトリウム塩不含有;Brown No.201;RESORCIN BROWN;ACID ORANGE 24;Japan Brown 201;D&C Brown No.1)、Acid Red 14(C.I.14720)、Acid Red 18(E124、Red18;CI 16255)、Acid Red 27(E123、CI 16185、C-Rot46、Echtrot D、FD&C Red Nr.2、Food Red 9、Naphtholrot S)、Acid Red 33(Red33、Fuchsia Red、D&C Red33、CI 17200)、Acid Red 35(CI C.I.18065)、Acid Red 51(CI 45430、Pyrosin B、Tetraiodfluorescein、Eosin J、Iodeosin)、Acid Red 52(CI 45100、Food Red106、Solar Rhodamine B、Acid Rhodamine B、Red n°106 Pontacyl Brilliant Pink)、Acid Red 73(CI 27290)、Acid Red 87(Eosin、CI 45380)、Acid Red 92(COLIPA n°C53、CI 45410)、Acid Red 95(CI 45425、Erythtosine,Simacid Erythrosine Y)、Acid Red 184(CI 15685)、Acid Red 195、Acid Violet 43(Jarocol Violet 43、Ext. D&C Violet no.2、CI 60730、COLIPA n°C063)、Acid Violet 49(CI 42640)、Acid Violet 50(CI 50325)、Acid Blue 1(Patent Blue、CI 42045)、Acid Blue 3(Patent Blue V、CI 42051)、Acid Blue 7(CI 42080)、Acid Blue 104(CI 42735)、Acid Blue 9(E 133、Patentblau AE、Amidoblau AE、Erioglaucin A、CI 42090、CI Food Blue 2)、Acid Blue 62(CI 62045)、Acid Blue 74(E 132、CI 73015)、Acid Blue 80(CI 61585)、Acid Green 3(CI 42085、Foodgreen1)、Acid Green 5(CI 42095)、Acid Green 9(C.I.42100)、Acid Green 22(C.I.42170)、Acid Green 25(CI 61570、Japan Green 201、D&C Green No.5)、Acid Green 50(Brilliant Acid Green BS、CI 44090、Acid Brilliant Green BS、E142)、Acid Black 1(Black no 401、Naphthalene Black 10B、Amido Black 10B、CI 20470、COLIPA no B15)、Acid Black 52(CI 15711)、Food Yellow 8(CI 14270)、Food Blue 5、D&C Yellow 8、D&C Green 5、D&C Orange 10、D&C Orange 11、D&C Red 21、D&C Red 27、D&C Red 33、D&C Violet 2および/またはD&C Brown 1。
【0198】
例えば、アニオン性直接染料の水溶性は、下記方法で測定できる。0.1gのアニオン性直接染料をビーカーに入れる。撹拌棒を加える。次いで、100mLの水を添加する。この混合物をマグネチックスターラーで撹拌しながら25℃に加熱する。60分間撹拌する。次いで、水性混合物を視覚的に評価する。未溶解残留物がまだ存在する場合、例えば10mL刻みで、水の量を増やす。使用した染料の量が完全に溶解するまで水を加える。染料の強度が高いために、染料-水混合物を視覚的に評価できない場合は、混合物をろ過する。未溶解染料の一部がろ紙上に残留する場合は、より多くの水を用いて溶解度試験を繰り返す。0.1gのアニオン性直接染料が25℃で100mLの水に溶解した場合、その染料の溶解度は1.0g/Lである。
【0199】
Acid Yellow 1は、8-ヒドロキシ-5,7-ジニトロ-2-ナフタレンスルホン酸二ナトリウム塩と称され、少なくとも40g/Lの水への溶解度(25℃)を有する。
【0200】
Acid Yellow 3は、2-(2-キノリル)-1H-インデン-1,3(2H)-ジオンのモノスルホン酸およびシススルホン酸のナトリウム塩の混合物であり、20g/Lの水への溶解度(25℃)を有する。
【0201】
Acid Yellow 9は、8-ヒドロキシ-5,7-ジニトロ-2-ナフタレンスルホン酸の二ナトリウム塩であり、その水溶性は40g/L(25℃)より大きい。
【0202】
Acid Yellow 23は、4,5-ジヒドロ-5-オキソ-1-(4-スルホフェニル)-4-((4-スルホフェニル)アゾ)-1H-ピラゾール-3-カルボン酸の三ナトリウム塩であり、25℃の水に高度に溶解する。
【0203】
Acid Orange 7は、4-[(2-ヒドロキシ-1-ナフチル)アゾ]ベンゼンスルホネートのナトリウム塩である。その水溶性は7g/L(25℃)より大きい。
【0204】
Acid Red 18は、7-ヒドロキシ-8-[(E)-(4-スルホナト-1-ナフチル)-ジアゼニル)]-1,3-ナフタレンジスルホネートの三ナトリウム塩であり、20重量%より大きい非常に高い水溶性を有する。
【0205】
Acid Red 33は、5-アミノ-4-ヒドロキシ-3-(フェニルアゾ)-ナフタレン-2,7-ジスルホネートの二ナトリウム塩であり、その水溶性は2.5g/L(25℃)である。
【0206】
Acid Red 92は、3,4,5,6-テトラクロロ-2-(1,4,5,8-テトラブロモ-6-ヒドロキシ-3-オキソキサンテン-9-イル)安息香酸の二ナトリウム塩であり、その水溶性は10g/L(25℃)より大きいと特定されている。
【0207】
Acid Blue 9は、2-({4-[N-エチル(3-スルホナトベンジル]アミノ]フェニル}{4-[(N-エチル(3-スルホナトベンジル)イミノ]-2,5-シクロヘキサジエン-1-イリデン}メチル)-ベンゼンスルホネートの二ナトリウム塩であり、20重量%(25℃)より大きい水溶性を有する。
【0208】
さらに、サーモクロミック染料を使用することもできる。サーモクロミズムは、温度によって物質の色を可逆的または不可逆的に変化させる性質を含む。これは、強度を変化させることおよび/または最大波長を変化させることの両方によって起こり得る。
【0209】
最後に、フォトクロミック染料を使用することも可能である。フォトクロミズムは、光、特に紫外線の照射によって、物質の色を可逆的または不可逆的に変化させる性質を含む。これは、強度を変化させることによって、および/または、最大波長を変化させることの両方によって起こり得る。
【0210】
本発明による組成物の追加の好ましい実施形態および本発明による使用に関しては、本発明による方法について述べたことが準用される。
【国際調査報告】