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特表2024-547037フェニルホスホン酸亜鉛錯体及びリン酸エステル亜鉛錯体を含有する組成物、その製造方法、その結晶核剤としての使用、並びに、湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂接着剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】フェニルホスホン酸亜鉛錯体及びリン酸エステル亜鉛錯体を含有する組成物、その製造方法、その結晶核剤としての使用、並びに、湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂接着剤
(51)【国際特許分類】
   C07F 3/06 20060101AFI20241219BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20241219BHJP
   C08G 18/30 20060101ALI20241219BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20241219BHJP
   C08K 5/5357 20060101ALI20241219BHJP
   C08G 18/08 20060101ALI20241219BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20241219BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20241219BHJP
   C07F 9/38 20060101ALI20241219BHJP
   C07F 19/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C07F3/06
C08G18/10
C08G18/30 070
C08L75/04
C08K5/5357
C08G18/08 038
C09J175/04
C09J11/06
C07F9/38 B
C07F9/38 Z
C07F19/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536476
(86)(22)【出願日】2022-09-15
(85)【翻訳文提出日】2024-06-18
(86)【国際出願番号】 CN2022119017
(87)【国際公開番号】W WO2024055237
(87)【国際公開日】2024-03-21
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】マ ショカイ
(72)【発明者】
【氏名】吉田 拓矢
(72)【発明者】
【氏名】小松崎 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】セキ レイ
(72)【発明者】
【氏名】シ ルイキョク
(72)【発明者】
【氏名】リュウ ジキョウ
【テーマコード(参考)】
4H048
4H050
4J002
4J034
4J040
【Fターム(参考)】
4H048AA01
4H048AA02
4H048AB99
4H048AC90
4H048BB31
4H048BC31
4H048BE10
4H048VA20
4H048VA45
4H048VA66
4H048VB10
4H050AA01
4H050AA02
4H050AB99
4H050AC90
4H050BB31
4H050BC31
4H050BE10
4J002CK021
4J002DH006
4J002DH007
4J002GJ01
4J034CE01
4J034DA01
4J034DB03
4J034DB07
4J034DF01
4J034DF12
4J034DF16
4J034DF20
4J034DF21
4J034DF22
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC03
4J034HC09
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA42
4J034MA16
4J034QB10
4J034QB17
4J034RA08
4J040EF111
4J040EF131
4J040EF281
4J040EF282
4J040HD23
4J040HD30
4J040HD36
4J040JB01
4J040KA14
4J040KA25
4J040KA26
4J040KA28
4J040KA29
4J040KA31
4J040KA32
4J040KA35
4J040KA36
4J040KA42
(57)【要約】
【課題】 湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂の固化時間を更に短縮できる結晶核剤として好適に使用可能な組成物、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】式(1)で表されるフェニルホスホン酸及び式(2)で表されるリン酸エステルを同時に亜鉛化合物と反応させる工程を備える、フェニルホスホン酸亜鉛錯体及びリン酸エステル亜鉛錯体を含有する組成物の製造方法。

式(2)中、Rはアルキル基を表し、Rはアルキレン基を表し、nは1以上の整数を表す。nが2以上の整数である場合、複数存在するRは互いに同一であっても異なっていてもよい。Rの少なくとも一つはエチレン基を表す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表されるフェニルホスホン酸及び式(2)で表されるリン酸エステルを同時に亜鉛化合物と反応させる工程を備える、フェニルホスホン酸亜鉛錯体及びリン酸エステル亜鉛錯体を含有する組成物の製造方法。

[式(2)中、Rはアルキル基を表し、Rはアルキレン基を表し、nは1以上の整数を表す。nが2以上の整数である場合、複数存在するRは互いに同一であっても異なっていてもよい。Rの少なくとも一つはエチレン基を表す。]
【請求項2】
前記式(1)で表されるフェニルホスホン酸の量に対する前記式(2)で表されるリン酸エステルの量のモル比が、1/99~60/40である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
式(3)で表されるフェニルホスホン酸亜鉛錯体と、式(4)で表されるリン酸エステル亜鉛錯体と、を含有する組成物。

[式(4)中、Rはアルキル基を表し、Rはアルキレン基を表し、nは1以上の整数を表す。nが2以上の整数である場合、複数存在するRは互いに同一であっても異なっていてもよい。Rの少なくとも一つはエチレン基を表す。]
【請求項4】
前記式(3)で表されるフェニルホスホン酸の量に対する前記式(4)で表されるリン酸エステルの量のモル比が、1/99~60/40である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の組成物の結晶核剤としての使用。
【請求項6】
イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーと、式(3)で表されるフェニルホスホン酸亜鉛錯体と、式(4)で表されるリン酸エステル亜鉛錯体と、を含有する、湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂接着剤。

[式(4)中、Rはアルキル基を表し、Rはアルキレン基を表し、nは1以上の整数を表す。nが2以上の整数である場合、複数存在するRは互いに同一であっても異なっていてもよい。Rの少なくとも一つはエチレン基を表す。]。
【請求項7】
前記式(3)で表されるフェニルホスホン酸の量に対する前記式(4)で表されるリン酸エステルの量のモル比が、1/99~60/40である、請求項6に記載の湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂接着剤。
【請求項8】
前記式(3)で表されるフェニルホスホン酸亜鉛錯体及び前記式(4)で表されるリン酸エステル亜鉛錯体の合計量が、湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂接着剤の全量を基準として0.1~10質量%である、請求項6又は7に記載の湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フェニルホスホン酸亜鉛錯体及びリン酸エステル亜鉛錯体を含有する組成物、その製造方法、その結晶核剤としての使用、並びに、湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂は、優れた接着性を有し、且つ接着時間を比較的自由に調整できるため、連続生産を必要とする接着加工や封止作業などの成形加工に用いられる接着剤に適しており、多岐にわたる分野で利用されている。しかし、初期強度が要求される化粧シートの木材ラッピング用途や、高速ラインで連続生産が要求される電気・電子部品、自動車部品用途では、ウレタン樹脂の冷却固化が不充分な状態のままで次の工程に移行してしまうという問題が生じ得る。
【0003】
上記のような問題を解決するため、フェニルホスホン酸化合物の金属塩を結晶核剤としてウレタン樹脂に添加することにより、固化時間の短縮化が図られてきた。例えば、特開2012-177016号公報には、ポリオールとポリイソシアネートを、結晶核剤として芳香族ホスホン酸の金属塩の存在下で反応させて得られるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂接着剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-177016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らの検討によれば、結晶核剤として芳香族ホスホン酸の金属塩を用いた場合、湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂の固化時間を更に短縮する余地がある。
【0006】
そこで、本発明の一側面は、湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂の固化時間を更に短縮できる結晶核剤として好適に使用可能な組成物、及びその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明の他の一側面は、固化時間が更に短縮された湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、特定のフェニルホスホン酸と特定のリン酸エステルを原料として用い、これらを同時に亜鉛化合物と反応させることにより、特定のフェニルホスホン酸亜鉛錯体及び特定のリン酸エステル亜鉛錯体を含む組成物が得られること、及び、当該組成物が湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂の固化時間を更に短縮できる結晶核剤として好適に使用可能であることを見出した。
【0008】
本発明は、以下の側面を含む。
[1] 式(1)で表されるフェニルホスホン酸及び式(2)で表されるリン酸エステルを同時に亜鉛化合物と反応させる工程を備える、フェニルホスホン酸亜鉛錯体及びリン酸エステル亜鉛錯体を含有する組成物の製造方法。

式(2)中、Rはアルキル基を表し、Rはアルキレン基を表し、nは1以上の整数を表す。nが2以上の整数である場合、複数存在するRは互いに同一であっても異なっていてもよい。Rの少なくとも一つはエチレン基を表す。
[2] 式(1)で表されるフェニルホスホン酸の量に対する式(2)で表されるリン酸エステルの量のモル比が、1/99~60/40である、[1]に記載の製造方法。
【0009】
[3] 式(3)で表されるフェニルホスホン酸亜鉛錯体と、式(4)で表されるリン酸エステル亜鉛錯体と、を含有する組成物。

式(4)中、Rはアルキル基を表し、Rはアルキレン基を表し、nは1以上の整数を表す。nが2以上の整数である場合、複数存在するRは互いに同一であっても異なっていてもよい。Rの少なくとも一つはエチレン基を表す。
[4] 式(3)で表されるフェニルホスホン酸の量に対する式(4)で表されるリン酸エステルの量のモル比が、1/99~60/40である、[3]に記載の組成物。
[5] [3]又は[4]に記載の組成物の結晶核剤としての使用。
【0010】
[6] イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーと、式(3)で表されるフェニルホスホン酸亜鉛錯体と、式(4)で表されるリン酸エステル亜鉛錯体と、を含有する、湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂接着剤。

式(4)中、Rはアルキル基を表し、Rはアルキレン基を表し、nは1以上の整数を表す。nが2以上の整数である場合、複数存在するRは互いに同一であっても異なっていてもよい。Rの少なくとも一つはエチレン基を表す。
[7] 式(3)で表されるフェニルホスホン酸の量に対する式(4)で表されるリン酸エステルの量のモル比が、1/99~60/40である、[6]に記載の湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂接着剤。
[8] 式(3)で表されるフェニルホスホン酸亜鉛錯体及び式(4)で表されるリン酸エステル亜鉛錯体の合計量が、湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂接着剤の全量を基準として0.1~10質量%である、[6]又は[7]に記載の湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂接着剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一側面によれば、湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂の固化時間を更に短縮できる結晶核剤として好適に使用可能な組成物、及びその製造方法を提供することができる。また、本発明の他の一側面によれば、固化時間が更に短縮された湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂接着剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明の一実施形態は、式(1)で表されるフェニルホスホン酸及び式(2)で表されるリン酸エステルを同時に亜鉛化合物と反応させる工程(反応工程)を備える、フェニルホスホン酸亜鉛錯体及びリン酸エステル亜鉛錯体を含有する組成物の製造方法である。

【0013】
式(2)中、Rはアルキル基を表し、Rはアルキレン基を表し、nは1以上の整数を表す。
【0014】
で表されるアルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。Rで表されるアルキル基の炭素数は、1以上であってよく、15以下、14以下、13以下、又は12以下であってよい。式(2)で表されるリン酸エステルは、Rが互いに異なる2種以上のリン酸エステルの混合物であってもよい。
【0015】
で表されるアルキレン基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。Rで表されるアルキレン基の炭素数は、1以上又は2以上であってよく、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、又は3以下であってよい。nが2以上の整数である場合、複数存在するRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0016】
の少なくとも一つは、エチレン基を表す。すなわち、式(2)で表されるリン酸エステルは、少なくとも一つのオキシエチレン基を有する。Rのすべてがエチレン基であってよく、Rの一部がエチレン基、残部がエチレン基以外のアルキレン基であってもよい。
【0017】
nは、2以上、3以上、又は4以上の整数であってよく、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、又は4以下の整数であってよい。式(2)で表されるリン酸エステルは、nが互いに異なる2種以上のリン酸エステルの混合物であってもよい。
【0018】
式(2)で表されるリン酸エステルの平均分子量は、100以上、200以上、又は300以上であってよく、900以下、800以下、又は700以下であってよい。
【0019】
本明細書における平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により以下に示す条件で測定される数平均分子量を意味する。
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC-8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用する。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成する。
【0020】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-550」
【0021】
式(1)で表されるフェニルホスホン酸の量に対する式(2)で表されるリン酸エステルの量のモル比(式(2)で表されるリン酸エステルの量/式(1)で表されるフェニルホスホン酸の量)は、1/99以上であってよく、60/40以下であってよく、1/99~60/40であってよい。当該モル比の下限値は、2/98、5/95、10/90、15/85、又は20/80であってもよい。当該モル比の上限値は、55/45、50/50、45/55、40/60、35/65、30/70、又は25/75であってもよい。
【0022】
式(1)で表されるフェニルホスホン酸及び式(2)で表されるリン酸エステルに同時に反応させる亜鉛化合物は、例えば、ハロゲン化亜鉛、酸化亜鉛、又は酢酸亜鉛であってよい。ハロゲン化亜鉛は、フッ化亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛、又はヨウ化亜鉛であってよい。
【0023】
亜鉛化合物の量は、式(1)で表されるフェニルホスホン酸及び式(2)で表されるリン酸エステルの合計量1モルに対して、0.8モル以上、0.9モル以上、又は0.95モル以上であってよく、1.2モル以下、1.1モル以下、又は1.05モル以下であってよい。
【0024】
反応工程では、例えば、式(1)で表されるフェニルホスホン酸及び式(2)で表されるリン酸エステルを水に溶解させた水溶液に対して、亜鉛化合物を水に溶解させた水溶液を加えることにより、式(1)で表されるフェニルホスホン酸及び式(2)で表されるリン酸エステルを同時に亜鉛化合物と反応させる。このとき、例えば、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液を徐々に加えることにより、上記の反応を進行させることができる。
【0025】
上記の反応により析出した白色沈殿物を濾過し、水で洗浄後、乾燥させることにより、フェニルホスホン酸亜鉛錯体及びリン酸エステル亜鉛錯体を含有する組成物を白色粉末として得ることができる。
【0026】
以上説明した製造方法により得られる組成物は、式(3)で表されるフェニルホスホン酸亜鉛錯体と、式(4)で表されるリン酸エステル亜鉛錯体と、を含有する。すなわち、本発明の他の一実施形態は、式(3)で表されるフェニルホスホン酸亜鉛錯体と、式(4)で表されるリン酸エステル亜鉛錯体と、を含有する組成物である。

【0027】
式(4)中、Rはアルキル基を表し、Rはアルキレン基を表し、nは1以上の整数を表す。nが2以上の整数である場合、複数存在するRは互いに同一であっても異なっていてもよい。Rの少なくとも一つはエチレン基を表す。R、R、及びnの詳細は、式(2)で表されるリン酸エステルについて説明したR、R、及びnの詳細と同様である。
【0028】
式(4)で表されるリン酸エステル亜鉛錯体の平均分子量は、150以上、250以上、又は350以上であってよく、950以下、850以下、又は750以下であってよい。
【0029】
組成物において、式(3)で表されるフェニルホスホン酸亜鉛錯体の量に対する式(4)で表されるリン酸エステル亜鉛錯体の量のモル比(式(4)で表されるリン酸エステル亜鉛錯体の量/式(3)で表されるフェニルホスホン酸亜鉛錯体の量)は、1/99以上であってよく、60/40以下であってよく、1/99~60/40であってよい。当該モル比の下限値は、2/98、5/95、10/90、15/85、又は20/80であってもよい。当該モル比の上限値は、55/45、50/50、45/55、40/60、35/65、30/70、又は25/75であってもよい。
【0030】
本実施形態の組成物は、式(3)で表されるフェニルホスホン酸亜鉛錯体に加えて、式(4)で表されるリン酸エステル亜鉛錯体を含むことにより、例えば式(3)で表されるフェニルホスホン酸亜鉛錯体のみを加える組成物に比べて、湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂の固化時間を更に短縮できる。また、一実施形態において、上記の組成物は、湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂接着剤の初期接着強さを向上させ得る。
【0031】
したがって、本実施形態の組成物は、結晶核剤として、より具体的にはウレタン樹脂の結晶化を促進する結晶核剤として、好適に使用できる。すなわち、本発明の他の一実施形態は、上記式(3)で表されるフェニルホスホン酸亜鉛錯体と、上記式(4)で表されるリン酸エステル亜鉛錯体と、を含有する組成物の結晶核剤(ウレタン樹脂の結晶化を促進する結晶核剤)としての使用(応用)である。
【0032】
本発明の他の一実施形態は、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーと、上記式(3)で表されるフェニルホスホン酸亜鉛錯体と、上記式(4)で表されるリン酸エステル亜鉛錯体と、を含有する、湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂接着剤である。
【0033】
イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーは、ポリオール(A)とポリイソシアネート(B)とを、上記式(3)で表されるフェニルホスホン酸亜鉛錯体及び上記式(4)で表されるリン酸エステル亜鉛錯体の存在下で反応させて得ることができる。
【0034】
ポリオール(A)は、脂肪族ポリエステルポリオールを含んでよく、2種の脂肪族ポリエステルポリオール(後述する脂肪族ポリエステルポリオール(a1)及び芳香族ポリエステルポリオール(a2))を含んでよく、2種の脂肪族ポリエステルポリオール(後述する脂肪族ポリエステルポリオール(a1)及び芳香族ポリエステルポリオール(a2))と、脂肪族ポリエステルポリオール以外のその他のポリオール(a3)とを含んでよい。
【0035】
前記脂肪族ポリエステルポリオール(a1)とは、脂肪族ポリカルボン酸と脂肪族ポリオールを主成分として公知慣用の方法により製造されるポリエステルポリオールであり、その製造法については、特に限定しない。
【0036】
前記脂肪族ポリエステルポリオール(a1)の合成に用いる脂肪族ポリカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカン二酸、ドデカン二酸、エイコサ二酸、シトラコン酸、イタコン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸などの炭素数4~12の脂肪族ポリカルボン酸が好ましい。
【0037】
前記脂肪族ポリカルボン酸は、例えば、メチルエステル等の低級アルキルエステル誘導体、酸無水物、酸ハロゲン化物等の対応する酸誘導体を用いてもよい。
【0038】
前記脂肪族ポリエステルポリオール(a1)の合成に用いる脂肪族ポリオールとしては、分子内に少なくとも2個の水酸基を持つものであり、炭素数2~12の脂肪族ポリオールが好ましい。前記(a1)は、直鎖、分岐、環状の何れの構造であってもよい。
【0039】
前記脂肪族ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどの直鎖型脂肪族ポリオール、あるいはネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチルプロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの分岐型脂肪族ポリオール、あるいはシクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式ポリオールが挙げられ、これらの中でも、エチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールが好ましい。
【0040】
また、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールFなどに各種アルキレンオキサイドを付加させた付加物も使用可能である。また、低分子量ポリオールを開始剤として使用し、γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトンなどを開環重合させた重合物も使用できる。これらは単独使用でも2種以上を併用してもよい。
【0041】
前記脂肪族ポリカルボン酸と前記脂肪族ポリオールの組合せの中でも、炭素数4~12の脂肪族ポリカルボン酸と炭素数2~12の脂肪族ポリオールの組合せにより製造される脂肪族ポリエステルポリオール(a1)をポリオール(A)に含有させることにより、ホットメルトウレタン樹脂接着剤の成形加工時の粘度安定性がより向上し、溶融粘度の低下防止に優れた効果を発現できるので、好ましい。
【0042】
また、前記芳香族ポリエステルポリオール(a2)とは、芳香族ポリカルボン酸と脂肪族ポリオール、あるいは脂肪族ポリカルボン酸と芳香族ポリオールを主成分として公知慣用の方法にて製造されるポリエステルポリオールであり、その製造法は特に限定しない。
【0043】
前記芳香族ポリカルボン酸とは、芳香環に少なくとも2個のカルボキシル基が結合したカルボン酸であり、好ましくは炭素数8~24の芳香族ポリカルボン酸であり、例えば、オルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ビフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸などが挙げられる。これらは単独使用でも2種以上を併用してもよい。
【0044】
また、前記芳香族ポリカルボン酸は、例えばメチルエステル等の低級アルキルエステル誘導体、酸無水物、酸ハロゲン化物等の対応する酸誘導体を用いてもよい。
【0045】
前記脂肪族ポリオールとしては、前記脂肪族ポリエステルポリオール(a1)の合成で使用可能な脂肪族ポリオールと同様のものが挙げられる。
【0046】
また、前記芳香族ポリエステルポリオール(a2)及び前記脂肪族ポリエステルポリオール(a1)の合成で使用可能な前記脂肪族ポリオールとしては、例えば、その炭素原子の一部を酸素原子や芳香環で置換したジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングルコール、1,4-ビス(β-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等であってもよい。これら脂肪族ポリオールも単独又は2種以上を併用してもよい。
【0047】
更に、これら芳香族ポリカルボン酸及び脂肪族ポリオールから得られるポリエステルポリオールの混合物であってもよい。
【0048】
前記芳香族ポリエステルポリオール(a2)の合成に使用可能な脂肪族ポリカルボン酸としては、前記脂肪族ポリエステルポリオール(a1)の合成で使用可能な脂肪族ポリカルボン酸と同様の炭素数4~12の脂肪族ポリカルボン酸が挙げられる。
【0049】
前記芳香族ポリオールとしては、特に限定しないが、例えば、エチレングリコールやネオペンチルグリコールなどの脂肪族ポリオールと、オルトフタル酸やテレフタル酸などの芳香族ポリカルボン酸から得られる芳香族ポリオールなどが挙げられる。
【0050】
また、前記芳香族ポリオールとして、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールFなどにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドが付加した付加物も使用可能である。
【0051】
前記脂肪族ポリエステルポリオール(a1)と芳香族ポリエステルポリオール(a2)の合成時の脂肪族ポリオールと芳香族ポリオールが有する水酸基と、脂肪族ポリカルボン酸と芳香族ポリカルボン酸のカルボキシル基との当量比(即ち[OH/COOH当量比]は、好ましくは1.03~1.50の範囲であり、より好ましくは1.05~1.30の範囲である。前記[OH/COOH当量比]がかかる範囲であれば、水酸基末端のポリオールをより多く生成させることができ、ポリイソシアネート(B)とのウレタン化反応をより容易に進行させることができるので、好ましい。
【0052】
前記脂肪族ポリエステルポリオール(a1)と芳香族ポリエステルポリオール(a2)の合成時の重縮合条件としては、異常な反応を起こさず、正常な生成物を得ることができれば、特に限定しない。通常は、所定量の脂肪族ポリカルボン酸と脂肪族ポリオール、あるいは芳香族ポリカルボン酸と脂肪族ポリオールを触媒の存在下又は不存在下で内温150~250℃で5~50時間、エステル化反応又はエステル交換反応を行い、次いで、重縮合反応を行なえばよい。
【0053】
重縮合反応は、触媒の存在下に行うことが反応が容易に進行するので、好ましい。前記触媒としては、特に限定せず、例えば、チタンテトラブトキシドなどのチタン系触媒、ジブチルスズオキシドなどのスズ系触媒などが挙げられる。
【0054】
前記触媒は、脂肪族ポリオールと脂肪族ポリカルボン酸、或いは脂肪族ポリオールと芳香族ポリカルボン酸と共に仕込んでもよく、あるいは無触媒で予備重合後に、加えてもよい。
【0055】
前記脂肪族ポリエステルポリオール(a1)と芳香族ポリエステルポリオール(a2)の製造において、両末端を殆ど水酸基にし、カルボキシル基末端を出来るだけ残存させない様にすることが望ましく、この目的のために、予備重合を行った後に前記触媒を加えることは効果的であり好ましい。
【0056】
前記脂肪族ポリエステルポリオール(a1)と芳香族ポリエステルポリオール(a2)の数平均分子量(Mn)は、好ましくは500~6000の範囲であり、より好ましくは1000~5000の範囲であり、特に好ましくは2000~4000の範囲である。前記(a1)と(a2)のMnがかかる範囲であるならば、用途に応じた強度と伸びなどの物性バランスを得ることができ、好ましい。
【0057】
前記その他のポリオール(a3)としては、例えばポリカーボネートポリオール、ポリラクトンポリオール、ポリエーテルポリオールなどが挙げられる。前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオールなどの前記直鎖型脂肪族ポリオールを用いて得られるポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。また、前記ポリラクトンポリオールとしては、例えばカプロラクトンモノマーの開環重合により得られるポリカプロラクトンポリオールなどが挙げられる。また、前記ポリエーテルポリオールとしては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。
【0058】
前記脂肪族ポリエステルポリオール(a1)/前記芳香族ポリエステルポリオール(a2)/前記その他のポリオール(a3)の含有比は、ポリオール(A)100質量部中に、20~60質量部/10~50質量部/0~50質量部であってよく、好ましくは、30~50質量部/20~40質量部/10~20質量部であってよい。含有比がかかる範囲であれば、前記ポリオール(A)の溶融粘度を適度な範囲に調整でき、優れた作業性と混和性を発現でき、且つ更に優れた固化性を有する湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂接着剤を得ることができる。
【0059】
前記ポリイソシアネート(B)は、公知慣用の脂肪族、芳香族、脂環式ポリイソシアネートなどを挙げることができ、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネ-ト(MDI;その4,4’体、2,4’体又は2,2’体、若しくはそれらの混合物、クルードMDI)、カルボジイミド変性MDI(変性MDI)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、カルボジイミド化ジフェニルメタンポリイソシアネート、キシレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネ-ト(TDI;その2,4体、又は2,6体、若しくはそれらの混合物)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、テトラメチルキシレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネ-ト、あるいはヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、あるいはイソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添ジフェニルメタンジイソシアネート(水添MDI)、水添キシリレンジイソシアネート(水添XDI)、シクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネートが挙げられ、これらの中でも、前記ポリオール(A)及び湿気(水)との反応が速く、作業性に優れることから、MDI、XDIが好ましい。これらは単独使用でも2種以上を併用しても構わない。
【0060】
前記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(以下「プレポリマー」という。)を合成する際に使用する前記ポリオール(A)と前記ポリイソシアネート(B)の割合は、反応挙動や製品品質などに悪影響を生じさせない範囲であればよく、通常、前記ポリイソシアネート(B)が有するイソシアネート基と、前記ポリオール(A)が有する水酸基との当量比(以下[NCO/OH当量比]という。)として、好ましくは1.2~4.0の範囲であり、より好ましくは1.5~3.0の範囲である。前記[NCO/OH当量比]がかかる範囲であれば、目的とする湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物の溶融粘度が適正な範囲になり、且つ優れた作業性、フィルム物性、更に優れた固化性などの性能を発現できる。
【0061】
反応条件は、反応挙動や製品品質などに悪影響を生じさせない範囲で設定すればよく、特に限定しないが、通常は、反応温度80~130℃で1~10時間、反応させることが好ましい。
【0062】
反応方式は、例えばバッチ反応、半連続反応、連続反応など、公知の反応方式を選択することができる。
【0063】
また、反応は、溶媒中でも無溶媒でも行うことが可能である。但し、溶媒中で反応を行う場合には、反応塗中あるいは反応終了後に脱溶媒を行ない、最終的には無溶媒とすることが、好ましい。脱溶媒の方法は、特に限定しない。
【0064】
式(3)で表されるフェニルホスホン酸亜鉛錯体及び式(4)で表されるリン酸エステル亜鉛錯体の合計量は、湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂接着剤の全量を基準として、0.1質量%以上であってよく、10質量%以下であってよく、0.1~10質量%であってよい。当該合計量の下限値は、湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂接着剤の全量を基準として、0.3質量%、0.5質量%、又は1質量%であってもよい。当該合計量の上限値は、湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂接着剤の全量を基準として、7質量%、5質量%、又は3質量%であってもよい。
【0065】
湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂接着剤において、式(3)で表されるフェニルホスホン酸亜鉛錯体の量に対する式(4)で表されるリン酸エステル亜鉛錯体の量のモル比(式(4)で表されるリン酸エステル亜鉛錯体の量/式(3)で表されるフェニルホスホン酸亜鉛錯体の量)は、1/99以上であってよく、60/40以下であってよく、1/99~60/40であってよい。当該モル比の下限値は、2/98、5/95、10/90、15/85、又は20/80であってもよい。当該モル比の上限値は、55/45、50/50、45/55、40/60、35/65、30/70、又は25/75であってもよい。
【0066】
本実施形態の湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂接着剤は、従来公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等のその他の樹脂を更に含有してもよく、その他の添加剤を更に含有してもよい。その他の添加剤としては、例えば、整泡剤、酸化防止剤、脱泡剤、紫外線吸収剤、砥粒、充填剤、顔料、染料、着色剤、増粘剤、界面活性剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、耐熱安定剤、粘着付与剤、硬化触媒、安定剤、蛍光増白剤、シランカップリング剤、ワックス等が例示できる。
【0067】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0068】
[実施例1]
(フェニルホスホン酸亜鉛錯体とリン酸エステル亜鉛錯体を含む組成物の製造)
3リットル4ツ口フラスコに、式(1)で表されるフェニルホスホン酸12.3質量部(78.0mmol)と、式(2A):
(式中、nは1以上の整数を表す)
で表される平均分子量480のリン酸エステル2.0質量部(4.1mmol)と、水600質量部とを加え水溶液を調製した。このフラスコに塩化亜鉛11.2質量部(82.2mmol)と水260質量部から調製した水溶液をさらに加え、混合した。攪拌下、この水溶液に、0.1M水酸化ナトリウム水溶液1608質量部を6時間かけて加え、反応させた。析出した白色沈殿を濾過し、水で洗浄後、80℃で2時間以上減圧乾燥させ、式(3)で表されるフェニルホスホン酸亜鉛錯体と、式(4A):
(式中、nは1以上の整数を表す)
で表される平均分子量543のリン酸エステル亜鉛錯体と、を含む組成物1を白色粉末として得た。
【0069】
(湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂接着剤の製造)
1リットル4ツ口フラスコに、ポリプロピレングリコール(Mn=1000)30質量部、及び1,6-ヘキサンジオール(HD)とアジピン酸(AA)をHD/AA=46/54質量比で反応させて得られる脂肪族ポリエステルポリオール(Mn=4500)40質量部、及び1,6-ヘキサンジオール(HD)、ネオペンチルグリコール(NPG)、エチレングリコール(EG)、イソフタル酸(iPA)、テレフタル酸(tPA)をHD/NPG/EG/iPA/tPA=7/14/18/40/21質量比で反応させて得られる芳香族ポリエステルポリオール(Mn=5000)30質量部を混合し溶融させてポリオール(A)を調製した。
次いで、上記(A)に結晶核剤として組成物1を1.2質量部(接着剤全量を基準として1.0質量%)加え、110℃に加熱して減圧条件下、水分が0.05質量%になるまで脱水した。
その後、70℃に冷却し、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネートを19質量部加えて、次いで90℃でNCO含有量(%)が一定になるまで3時間反応させ、湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂接着剤を得た。
【0070】
[実施例2]
実施例1において、フェニルホスホン酸を11.7質量部(73.9mmol)、式(2A)で表されるリン酸エステルを3.9質量部(8.2mmol)用いたこと以外は同様の操作を行い、組成物2を白色粉末として得た。また、実施例1において、組成物2を用いたこと以外は同様の操作を行い、湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂接着剤を得た。
【0071】
[実施例3]
実施例1において、フェニルホスホン酸を10.0質量部(63.3mmol)、式(2A)で表されるリン酸エステルを9.0質量部(18.8mmol)用いたこと以外は同様の操作を行い、組成物3を白色粉末として得た。また、実施例1において、組成物3を用いたこと以外は同様の操作を行い、湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂接着剤を得た。
【0072】
[実施例4]
実施例1において、フェニルホスホン酸を9.1質量部(57.5mmol)、式(2A)で表されるリン酸エステルを11.8質量部(24.6mmol)用いたこと以外は同様の操作を行い、組成物4を白色粉末として得た。また、実施例1において、組成物4を用いたこと以外は同様の操作を行い、湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂接着剤を得た。
【0073】
[実施例5]
実施例1において、フェニルホスホン酸を6.5質量部(41.1mmol)、式(2A)で表されるリン酸エステルを19.7質量部(41.1mmol)用いたこと以外は同様の操作を行い、組成物5を白色粉末として得た。また、実施例1において、組成物5を用いたこと以外は同様の操作を行い、湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂接着剤を得た。
【0074】
[実施例6]
3リットル4ツ口フラスコに、フェニルホスホン酸12.6質量部(80.0mmol)と、式(2B):
(式中、RはC1225又はC1429のアルキル基を表す。)
で表される平均分子量671のリン酸エステル酸1.4質量部(2.1mmol)と、水600質量部とを加え水溶液を調製した。このフラスコに塩化亜鉛11.2質量部(82.2mmol)と水260質量部から調製した水溶液をさらに加え、混合した。攪拌下、この水溶液に、0.1M水酸化ナトリウム水溶液1606質量部を6時間かけて加え、反応させた。析出した白色沈殿を濾過し、水で洗浄後、80℃で2時間以上減圧乾燥させ、式(3)で表されるフェニルホスホン酸亜鉛錯体と、式(4B):
(式中、RはC1225又はC1429のアルキル基を表す。)
で表される平均分子量735のリン酸エステル亜鉛錯体と、を含む組成物6を白色粉末として得た。
また、実施例1において、組成物6を用いたこと以外は同様の操作を行い、湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂接着剤を得た。
【0075】
[実施例7]
実施例6において、フェニルホスホン酸を12.3質量部(78.0mmol)、式(2B)で表されるリン酸エステルを2.7質量部(4.1mmol)用いたこと以外は同様の操作を行い、組成物7を白色粉末として得た。また、実施例1において、組成物7を用いたこと以外は同様の操作を行い、湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂接着剤を得た。
【0076】
[実施例8]
実施例6において、フェニルホスホン酸を11.7質量部(73.9mmol)、式(2B)で表されるリン酸エステルを5.4質量部(8.2mmol)用いたこと以外は同様の操作を行い、組成物8を白色粉末として得た。また、実施例1において、組成物8を用いたこと以外は同様の操作を行い、湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂接着剤を得た。
【0077】
[実施例9]
実施例6において、フェニルホスホン酸を10.0量部(63.3mmol)、式(2B)で表されるリン酸エステルを12.5質量部(18.7mmol)用いたこと以外は同様の操作を行い、組成物9を白色粉末として得た。また、実施例1において、組成物9を用いたこと以外は同様の操作を行い、湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂接着剤を得た。
【0078】
[比較例1]
実施例1において、組成物1を添加しなかったこと以外は同様の操作を行い、湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂接着剤を得た。
【0079】
[比較例2]
実施例1において、組成物1に代えて、以下の手順で得たフェニルホスホン酸亜鉛錯体を用いたこと以外は同様の操作を行い、湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂接着剤を得た。
3リットル4ツ口フラスコに、フェニルホスホン酸10.0質量部(63.3mmol)と水400質量部とを加え水溶液を調製した。このフラスコに塩化亜鉛8.6質量部(63.3mmol)と水200質量部から調製した水溶液をさらに加え、混合した。攪拌下、この水溶液に、0.1M水酸化ナトリウム水溶液1244質量部を6時間かけて加え、反応させた。析出した白色沈殿を濾過し、水で洗浄後、80℃で2時間以上減圧乾燥させ、フェニルホスホン酸亜鉛錯体を白色粉末として得た。
【0080】
[固化時間(オープンタイム)の評価]
得られた実施例及び比較例の各湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂接着剤を120℃で加熱溶融状態にし、基材であるポリプロピレンシート上に50μmの厚みとなるように塗布した。次いで、前記で塗布した接着剤層の上に、表面部材としてクラフト紙を載置し、直ちに23℃の恒温槽へ放置した。恒温層内へ放置した時点を基点とし、前記クラフト紙が前記接着剤層に接着しなくなるまでの時間(単位:秒)を測定して、23℃での固化時間(23℃でのオープンタイム)とした。結果を表1に示す。
【0081】
[初期接着強さの評価]
得られた実施例及び比較例の各湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂接着剤を120℃で加熱溶融状態にし、接着剤1mlを一面の面積が4cmの木質ブロック基材に塗布した。次いで、接着剤を塗布していないもう一つの木質ブロック基材と貼り合わせ、23℃の恒温槽で3分間放置後、引張り強度(mPa)を測定して、初期接着強さとした。
【0082】
[表1]
【国際調査報告】