(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】電池ケース及び電池パック
(51)【国際特許分類】
H01M 50/202 20210101AFI20241219BHJP
H01M 50/227 20210101ALI20241219BHJP
H01M 50/231 20210101ALI20241219BHJP
H01M 50/224 20210101ALI20241219BHJP
H01M 50/233 20210101ALI20241219BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
H01M50/202 101
H01M50/227
H01M50/231
H01M50/224
H01M50/233
B32B27/00 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539784
(86)(22)【出願日】2022-12-21
(85)【翻訳文提出日】2024-06-28
(86)【国際出願番号】 EP2022087159
(87)【国際公開番号】W WO2023126266
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】202111677998.5
(32)【優先日】2021-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202123429243.1
(32)【優先日】2021-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】グオ ドン フー
(72)【発明者】
【氏名】シン ガン ワン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ガオ
(72)【発明者】
【氏名】シュアイ ピン ゴン
【テーマコード(参考)】
4F100
5H040
【Fターム(参考)】
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5H040AA14
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5H040CC01
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5H040LL06
5H040NN01
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つの樹脂系複合材料層と、少なくとも1つの防水層とを含む電池ケースを開示し、ここで、前記樹脂系複合材料層及び前記防水層は、ホットプレスにより互いに結合される。本発明はまた、前記電池ケースを含む電池パックを開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの樹脂系複合材料層(1)と、少なくとも1つの防水層(2)とを含むことを特徴とする電池ケースであって、前記樹脂系複合材料層(1)及び前記防水層(2)が、ホットプレスにより互いに結合される、前記電池ケース。
【請求項2】
前記樹脂系複合材料層(1)及び前記防水層(2)の数が、それぞれ1~4であることを特徴とする、請求項1に記載の電池ケース。
【請求項3】
前記樹脂系複合材料層(1)及び前記防水層(2)が、交互に配置されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の電池ケース。
【請求項4】
前記防水層(2)が、前記樹脂系複合材料層(1)の、前記電池により近い側に配置されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の電池ケース。
【請求項5】
前記電池ケースが、少なくとも2つの樹脂系複合材料層(1)と、少なくとも1つの防水層(2)とを含み、かつ前記防水層(2)が、前記の2つの樹脂系複合材料層(1)の間に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の電池ケース。
【請求項6】
前記樹脂系複合材料層(1)が、多孔質材料と、前記多孔質材料を覆う樹脂とを含む、樹脂系多孔質材料層であることを特徴とする、請求項1又は5に記載の電池ケース。
【請求項7】
前記樹脂系多孔質材料層が、多孔質構造を有することを特徴とする、請求項6に記載の電池ケース。
【請求項8】
前記樹脂が、ポリウレタン、ポリ尿素又はエポキシ樹脂であり;かつ前記多孔質材料は、ガラス繊維、炭素繊維、天然繊維又は穴あき金属プレート、木材プレート及びプラスチックプレートであることを特徴とする、請求項6に記載の電池ケース。
【請求項9】
前記多孔質材料が、100~2400g/m
2の単層表面密度を有することを特徴とする、請求項6に記載の電池ケース。
【請求項10】
前記防水層(2)が、金属シート又はプラスチックシートを含むことを特徴とする、請求項1又は5に記載の電池ケース。
【請求項11】
前記金属シートが、アルミニウム合金、鉄、鋼及びアルミニウムから選択され、かつ前記プラスチックシートが、ポリエチレンPE、ポリ塩化ビニルPVC、ポリエチレンテレフタレートPET、ポリブチレンテレフタレートPBT、ポリプロピレンPP、ポリウレタンPU、ポリアミドPA、ポリビニルブチラールPVB及びエチレン-酢酸ビニルコポリマーEVAから選択されることを特徴とする、請求項10に記載の電池ケース。
【請求項12】
前記プラスチックシートが熱可塑性ポリウレタンTPUであることを特徴とする、請求項11に記載の電池ケース。
【請求項13】
前記防水層(2)が、0.01mm~1mmの厚さを有することを特徴とする、請求項1又は5に記載の電池ケース。
【請求項14】
前記電池ケースが、1.0mm~50mmの厚さを有することを特徴とする、請求項1又は5に記載の電池ケース。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか1項に記載の電池ケース;及び
前記電池ケース内部に配置される電池
を含むことを特徴とする、電池パック。
【請求項16】
前記電池ケースが、前記電池パックの上部カバー及び/又は下部カバーであることを特徴とする、請求項15に記載の電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新エネルギー車電池の分野に関する。より具体的には、本発明は、新エネルギー車電池用電池ケース、及び前記電池ケースを含む電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
当該技術分野における新エネルギー車用電池ケースは主に、アルミニウム合金トレーと、エンジニアリングプラスチックの射出成形により形成される電池カバーとの組合せを採用し、その結果、電池重量が大きく、かつ電力消費量が高い。そのため、新エネルギー車電池の軽量化は、常に、現代の車両技術の主な焦点及び難点のうちの1つとなっている。そのうえ、新エネルギー車の既存の電池はすべて、完全に閉鎖した構造を有するけれども、その防水効果は依然として不十分であり;このため、水に浸った場合に、それらの電池は、潜在的に大きな安全ハザードを生じる。殊に、近年、本国は、洪水又は湛水をまねいた激しい雨をしばしば経験しており、時には、新エネルギー車が、水に、殊に雨水に浸ることが起こる。雨水は、より強い伝導性を有しているので、該電池が漏れると、無視できない安全性の問題を生じる。
【0003】
中国実用新案第209786038号明細書(CN 209786038U)には、電池本体及び電池ケースを含み、良好な防水効果を有する車両用電池が開示されており、ここで、第1の防水層は、該電池ケースの内壁に密着され、かつ第2の防水層は、該電池本体の表面に密着され、かつ吸水層は、前記の第1の防水層と前記の第2の防水層との間に充填される。該発明は、防水材料及び吸水材料の複数の層の組合せを通じて良好な防水性能を達成するけれども、比較的複雑な構造を有し、かつその生産性は低く、かつ大規模な連続生産は困難である。
【0004】
中国実用新案第212810424号明細書(CN212810424U)には、電池パック、絶縁保護プレート、防水フィルム及びケースを含む防水防爆形三元系リチウム電池が開示されており、ここで、該絶縁保護プレート及び該防水フィルムは、該電池パックの外側に順次巻き付けられ、かつ該ケース内に位置しており、かつ防水接着剤は、該防水フィルムの両端の外側に塗布され、かつシリコーン層は、該防水フィルムと該ケースとの間に充填される。該発明も、複雑な構造の問題を有する。そのうえ、防水接着剤の使用は、複雑な製造方法をまねくだけではなく、規定された限度を超える総揮発性有機化合物(TVOC)の問題をまねくことにもなりうる。
【0005】
そのため、現代の新エネルギー車の性能要件をより良好に満たすために、単純な方法、優れた機械的強さ及び良好な防水性能により特徴付けられる、新規な軽量電池パックを絶えず開発する需要が依然としてある。
【0006】
発明の概要
上記の課題に取り組むために、本発明は、単純な構造、軽量、優れた機械的強さ及び良好な防水効果を有する電池ケース、並びに前記電池ケースを含む電池パックを提供することを目的とする。
【0007】
本発明による電池ケースは、少なくとも1つの樹脂系複合材料層と、少なくとも1つの防水層とを含み、かつ前記樹脂系複合材料層及び前記防水層は、ホットプレスにより互いに結合される。
【0008】
一部の実施態様において、前記電池ケースは、少なくとも2つの樹脂系複合材料層と、少なくとも1つの防水層とを含み、かつ前記防水層は、前記の2つの樹脂系複合材料層の間に配置される。
【0009】
本発明はまた、上記のような電池ケースと、前記電池ケース内部に配置された電池とを含む、電池パックを提供する。
【0010】
有利な効果
本発明の電池ケースは、顕著な軽量効果を有するだけではなく、優れた機械的強さ及び良好な防水効果、並びに単純な構造も有する。
【0011】
本発明の実施態様をより明確に説明するために、前記実施態様の説明において必要とされる図面は、以下に簡単に説明される。明らかに、以下の説明における図面は、本発明の一部の実施態様を示すに過ぎず、かつ当業者は、創造的な労力を要することなくこれらの図面から他の実施態様を導き出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】従来技術における電池パックの構造図である。
【
図2】本発明の例1による電池ケースの構造図である。
【
図3】本発明の例2による電池ケースの構造図である。
【
図4】本発明の例1による電池パックの、前記電池ケースの上部カバーとしての使用を示す構造図である。
【
図5】本発明の例2による電池ケースの、前記電池パックの上部カバーとしての使用を示す構造図である。
【
図6】本発明の例2による電池ケースの、前記電池パックの上部カバー及び下部カバーの双方としての使用を示す構造図である。
【0013】
前記図において、「1」は、樹脂系複合材料層をいい、かつ「2」は、防水層をいう。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の添付図面を参照して本発明の実施態様における技術的解決手段は、明確にかつ完全に説明される。明らかに、記載された実施態様は、本発明の実施態様の全てではなく一部に過ぎない。創造的な労力を要することなく本発明の実施態様に基づき当業者により得られる全ての他の実施態様は、本発明の保護範囲に含まれる。
【0015】
本発明の明細書において、用語「内側」、「外側」、「上側」、「下側」等が、図面に図示されるような方向又は位置関係に基づく方向又は位置関係を示し、かつ本発明の説明を容易にするために過ぎず、参照される部材又は要素が、前記の特定の方向を有していなければならないか又は前記の特定の方向において構成されることを示すか又は示唆するのではなく、ひいては本発明を限定するものとして解釈すべきではないことが理解されるべきである。本発明の明細書において、他に記載されない限り、前記の「少なくとも1つの層」は、1つ以上の層を意味する。
【0016】
図1を参照して、
図1は、電池ケース(110及び110’)を含む従来技術における電池パック100の構造図であり;前記電池ケースは、前記電池パック100の上部カバー110及び下部カバー110’として使用することができ;かつ前記上部カバー110及び前記下部カバー110’は共同して、要素、例えば電池又は電池モジュール(示されない)を置くための空間120を形成する。本発明において、前記電池パック100は、新エネルギー車の電池パックを含むが、これに限定されない。
【0017】
それにもかかわらず、上記のように、現在の電池パックケースは、重すぎる、防水性ではない及び/又は複雑な方法により製造されるという課題を有する。
【0018】
それらの課題を解決するために、本発明は、少なくとも1つの樹脂系複合材料層と、少なくとも1つの防水層とを含む電池ケースを提供し、ここで、前記樹脂系複合材料層及び前記防水層は、ホットプレスにより互いに結合される。前記防水層は、前記樹脂系複合材料層の、前記電池により近い又は前記電池からさらに離れた側に配置される。
【0019】
ホットプレスによって結合される樹脂系複合材料層及び防水層を使用することにより、本発明の電池ケースは、顕著な軽量効果を達成するだけではなく、優れた機械的強さ、良好な防水効果、及び単純な構造も有する。
【0020】
本発明において、前記樹脂系複合材料層及び前記防水層は、ホットプレスにより互いに結合されて、一体構造を形成する。前記ホットプレスは、前記樹脂系複合材料中の前記樹脂自体の結合特性を結合のために使用することにより実施され、このことは追加の接着剤を必要とせず、ひいては接着剤の塗布の省略を可能にし、それにより単純な方法をもたらす。
【0021】
本発明において、前記樹脂系複合材料層及び防水層の数は、特に限定されず、かつ当業者は、実際の要件に従い前記層の適切な数を選択することができる。例えば、一部の実施態様において、前記樹脂系複合材料層及び防水層の数はそれぞれ、1~4、例えば1、2、3又は4である。好ましくは、前記樹脂系複合材料層の数は、1~3、例えば1、2又は3である。好ましくは、前記防水層の数は、1~3、例えば1、2又は3である。
【0022】
本発明の好ましい実施態様において、前記樹脂系複合材料層及び前記防水層は、交互に配置される。このようにして配置された前記樹脂系複合材料層及び前記防水層は、前記電池ケースが優れた機械的強さ、良好な防水性能及び軽量の利点を同時に有することを可能にする。
【0023】
本発明において、用語「交互に」が記載される場合に、前記電池ケースにおいて、樹脂系複合材料層のみが、防水層に結合され、かつ防水層のみが、樹脂系複合材料層に結合されることを意味する。そのため、用語「交互に」の使用は、本発明の電池ケースにおいて、互いに結合された2つの防水層がなく、かつ互いに結合された2つの樹脂系複合材料層がないことを意味する。特に、前記電池ケースが、1つの樹脂系複合材料層と、1つの防水層とのみを含む場合に、用語「交互に」は、1つの樹脂系複合材料層及び1つの防水層の接合をいう。
【0024】
本発明の好ましい実施態様において、前記防水層は、前記樹脂系複合材料層の、前記電池により近い側に配置される。そのため、前記電池ケースの、前記電池からさらに離れた最外層は、樹脂系複合材料層である。それに応じて、前記電池ケースが外力を受ける場合に、前記最外層としての前記樹脂系複合材料層は、衝撃吸収の役割を果たすことができ、こうして前記防水層の損傷及びそれにより最終的な防水効果への影響を回避する。そのうえ、この配置は、前記ホットプレスプロセス中に前記防水層中に発生されるしわが、前記電池ケースの外側に露出されることを防止することもでき、それにより前記電池ケース部材の外観を改善する。
【0025】
本発明の一実施態様において、前記電池ケースは、少なくとも2つの樹脂系複合材料層と、少なくとも1つの防水層とを含み、かつ前記防水層は、前記の2つの樹脂系複合材料層の間に配置される。そのため、前記電池から離れた最外層と前記電池ケースの電池により近い最内層との双方が、樹脂系複合材料層であり、すなわち前記防水層をより良好に保護することができる配置である。同時に、この配置は、前記ホットプレスプロセス中に前記防水層中に発生されるしわが、前記電池ケースの外側に露出されることを回避することができ、それにより、前記電池ケース部材の全体の外観を改善する。そのうえ、樹脂マトリックス複合材料の2つの層を配置することにより、前記電池ケースの機械的強さをさらに高めることができる。
【0026】
一実施態様において、前記樹脂系複合材料層は、樹脂系多孔質材料層である。前記樹脂系多孔質材料は、当該技術分野において公知の材料であり、多孔質材料と、前記多孔質材料を覆う樹脂とを含む。前記樹脂系多孔質材料において、前記樹脂は、前記多孔質材料の間隙又は細孔中に充填されるか、又は前記多孔質材料は、前記樹脂中に浸漬される。
【0027】
そのうえ、前記樹脂系多孔質材料中の前記樹脂及び多孔質材料は、当該技術分野において公知の材料でもある。
【0028】
好ましい実施態様において、前記樹脂系多孔質材料層は、多孔質構造を有する。好ましくは、前記多孔質構造は、前記樹脂系多孔質材料層中の前記樹脂の発泡により発生されるセルに由来する。樹脂の発泡により形成されるセル構造は、当業者に公知である。そのため、一部の実施態様において、前記樹脂系多孔質材料層、殊にその断面は、セルと同様の多孔質構造を有する。
【0029】
本発明において、前記「セル」は、発泡樹脂の一個の小さい空洞を構成する最小構造単位をいい、かつとりわけ、発泡剤、ガスの機械的導入、又は可溶性物質の溶解により前記樹脂の発泡中に形成される。前記発泡は、例えば、物理発泡及び化学発泡を含む。前記物理発泡は、物理発泡剤のガス化を通じた発泡をいう。前記化学発泡は、化学発泡剤、例えば水及びイソシアネートの化学反応を通じてガス(例えば二酸化炭素)を発生させることによる発泡をいう。セルを形成する方法は、当業者に公知である。
【0030】
一部の実施態様において、前記樹脂系多孔質材料層中の樹脂は、ポリウレタン又はポリ尿素、エポキシ樹脂又は不飽和樹脂を含み;好ましくは、前記樹脂は、ポリウレタン樹脂である。一部の実施態様において、前記樹脂は、発泡樹脂、例えば発泡ポリウレタン樹脂である。発泡樹脂を使用することにより、前記電池ケースは、さらに軽量化することができる。一部の実施態様において、前記樹脂は、100~1200g/L、好ましくは100~500g/Lの密度を有する。
【0031】
一部の実施態様において、前記樹脂系多孔質材料層中の前記多孔質材料は、100~2400g/m2の単層表面密度を有する。本発明において、前記「単層表面密度」は、1つの樹脂系多孔質材料層を形成する多孔質材料中の単位面積当たりの質量をいう。前記単層表面密度を測定する方法は、当業者に公知である。
【0032】
当該技術分野において公知であるように、前記多孔質材料は、強化材料とも呼ばれる。例えば、前記多孔質材料は、繊維材料、例えばガラス繊維(GF)、炭素繊維、天然繊維(例えば竹繊維)、殊に布、不織布の形の天然繊維、及び穴あき(浸透性又は非浸透性)フレーク状材料、例えば穴あき金属プレート、木材プレート及びプラスチックプレート、例えば発泡アルミニウム及びハニカムパネルを含む。好ましい実施態様において、前記多孔質材料は、繊維強化材料、特にガラス繊維(GF)である。好ましくは、前記多孔質材料は、フェルトの形のガラス繊維材料、例えばガラス繊維フェルトである。
【0033】
一部の実施態様において、前記防水層は、当該技術分野において公知の金属シート又はプラスチックシートを含む。好ましくは、前記金属シートは、アルミニウム合金、鉄、鋼及びアルミニウムから選択される。好ましくは、前記プラスチックシートは、以下の材料のうち少なくとも1種:ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリプロピレン(PP)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリウレタン(PU)、ポリアミド(PA)、ポリビニルブチラール(PVB)及びエチレン-酢酸ビニルコポリマー(EVA)から選択される。好ましい実施態様において、前記プラスチックシートは、ポリウレタン(PU)、より好ましくは、熱可塑性ポリウレタン(TPU)から選択される。
【0034】
本発明において、前記防水層は0.01~1mm、好ましくは0.02~0.3mmの厚さを有する。上記の範囲内の厚さは、一方では、前記樹脂系複合層及び前記防水層が、一体構造へホットプレスされる場合に、該層の間の良好な付着を保証し、かつ他方では、得られた電池ケースが、優れた物理的性質、殊に防水性能を有することも保証する。
【0035】
本発明の電池ケースは、1.0~50mm、好ましくは1.0~10mmの厚さを有する。そのうえ、前記電池ケースは、0.5~2.7g/m3、好ましくは1.1~1.8g/m3の全密度を有する。そのため、本発明の電池ケースは、顕著な軽量効果を有する。本明細書において記載される「全密度」は、GB/T 1033.1-2008に従って決定されるような、前記電池ケース自体の全質量の、その全体積に対する比をいう。
【0036】
本発明はまた、上記のような電池ケースと、前記電池ケース内部の電池とを含む電池パックを提供する。
【0037】
本発明の一実施態様において、前記電池ケースは、前記電池パックの上部カバー及び/又は下部カバーである。好ましくは、前記電池パックの上部カバー及び下部カバーは、当該技術分野において公知の方法において(例えばボルト止めにより)接合される。前記上部カバー及び前記下部カバーは共同して、電池を置くための空間を形成する。
【0038】
好ましい実施態様において、前記電池ケースは、前記電池に適合された形状を有する。
【0039】
以下に、本発明の特定の実施態様は、例として説明される。しかしながら、本発明は、これらの例により限定されないことが理解される。
【実施例】
【0040】
試験方法
全密度:GB/T 1033.1-2008
引張強さ:GB/T 1447-2005
防水性能:GB 38031-2020。
【0041】
電池ケースの製造
例1
図2は、本発明の例1による電池ケースを図示する。
図2に示されるように、前記電池ケースは、2層構造を有していた。具体的には、前記構造は、樹脂系複合材料層1及び防水層2を含んでいた。前記防水層2は、前記樹脂系複合層1の、前記電池(示されない)により近い側に位置していた。
【0042】
この実施態様の電池ケースを、以下の工程により製造した:工程1)最初に、ポリウレタン樹脂材料をガラス繊維フェルトの両側(又は片側)にノズルを通じてスプレーし;工程2)熱可塑性ポリウレタンTPU製の防水層をモールド中に置き、かつ工程1)において得られた未硬化の樹脂系ガラス繊維フェルトを、前記防水層の表面に置き;かつ工程3)上側モールド及び下側モールドを一緒にクランプ締めし、ついでホットプレスにより硬化させて、一体品を形成する。
【0043】
この実施態様において、前記防水層2は、0.05mmの厚さを有しており、かつ前記電池ケースは、1.6mmの厚さを有していた。得られた電池ケースは、1.5g/m3の全密度、及び165MPaの引張強さを有していた。そのため、本発明の電池ケースは、顕著な軽量効果を有するだけではなく、優れた機械的強さも有していた。
【0044】
例2
図3は、本発明の例2による電池ケースを図示する。
図3に示されるように、前記電池ケースは、3層構造を有していた。具体的には、前記構造は、2つの樹脂系複合材料層1及び1つの防水層2を含んでいた。前記防水層2は、前記の2つの樹脂系複合層1の間に位置していた。前記の2つの樹脂系複合材料層1及び前記の1つの防水層2は、ホットプレスにより結合させた。
【0045】
この実施態様の電池ケースを、以下の工程により製造した:工程1)ガラス繊維フェルトの2つの層を用意し;工程2)熱可塑性ポリウレタンTPU製の防水層をガラス繊維フェルトの2つの層間に置き;工程3)ポリウレタン樹脂材料をガラス繊維フェルトの前記の2つの層の表面にそれぞれ、ノズルを通じてスプレーし;かつ工程4)上側モールド及び下側モールドを合わせてクランプ締めし、ついでホットプレスにより硬化させて一体品を形成する。
【0046】
この実施態様において、前記防水層2は、0.05mmの厚さを有し、かつ前記電池ケースは1.3mmの厚さを有していた。得られた電池ケースは、1.7g/m3の全密度、及び223MPaの引張強さを有していた。そのため、本発明の電池ケースは、顕著な軽量効果を有しているだけではなく、優れた機械的強さも有していた。
【0047】
電池パックの製造及び防水試験
図4は、本発明の例1による電池ケースの、前記電池パックの上部カバーとしての使用を図示する。
図5は、本発明の例2による電池ケースの、前記電池パックの上部カバーとしての使用を図示する。
図6は、本発明の例2による電池ケースの、前記電池パックの上部カバー及び下部カバーの双方としての使用を図示する。前記電池パックの上部カバー及び下部カバーを、ボルトにより接合した。前記上部カバー及び前記下部カバーは共同して、電池(示されない)を置くための空間を形成する。
【0048】
図4~6に示された上記の電池パックを、GB 38031-2020に従う防水性能について試験した。前記電池パックを、1.5mの水深を有する水槽3中に30分間置き、かつ気泡は観察されず、かつ水は前記電池パック中へ漏れなかった。続く1時間の間に、気泡も水漏れも観察されなかった。
【0049】
上記の
図4に示された電池ケース中の防水層2が、前記樹脂系複合層1の、前記電池により近い側に配置されるけれども、当業者が、前記防水層2が前記樹脂系複合層1の、前記電池からさらに離れた側に配置される場合に、前記電池ケースも優れた防水性能を有することを理解することに注意されるべきである。
【0050】
上記の結果は、本発明の電池ケースが、顕著な軽量効果を有するだけではなく、優れた機械的強さ、優れた防水性能、及び単純な製造方法により特徴付けられることも示す。
【0051】
本発明の基本原理及び例示的な実施態様は上記に記載される。上記の説明は、本発明の例示に過ぎず、かつ本発明は、上記の実施態様に限定されないことが当業者により理解されるべきである。多くの変更及び変形は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく本発明になされることができる。そのような全ての変更及び変形は、本発明の保護範囲内である。
【符号の説明】
【0052】
1 樹脂系複合材料層、 2 防水層、 100 電池パック、 110 上部カバー、110’ 下部カバー、 120 空間
【国際調査報告】