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  • 特表-基板を処理するための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】基板を処理するための方法
(51)【国際特許分類】
   H03H 3/08 20060101AFI20241226BHJP
   H10N 30/853 20230101ALI20241226BHJP
【FI】
H03H3/08
H10N30/853
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024540907
(86)(22)【出願日】2023-01-05
(85)【翻訳文提出日】2024-08-27
(86)【国際出願番号】 EP2023050191
(87)【国際公開番号】W WO2023131654
(87)【国際公開日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】2200119
(32)【優先日】2022-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598054968
【氏名又は名称】ソイテック
【氏名又は名称原語表記】Soitec
【住所又は居所原語表記】Parc Technologique des fontaines chemin Des Franques 38190 Bernin, France
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】バートランド, イザベル
(72)【発明者】
【氏名】ベルハケミ, ジャメル
(72)【発明者】
【氏名】ランドル, ディディエ
(72)【発明者】
【氏名】ジロー, ドロテ
(72)【発明者】
【氏名】ムーレイ, オディール
【テーマコード(参考)】
5J097
【Fターム(参考)】
5J097AA24
5J097AA32
5J097GG03
5J097GG04
5J097HA03
(57)【要約】
本発明は、基板を処理するための方法であって、熱処理を実行する装置内で実行される少なくとも1つのステップを含む第1の基板を処理するステップであって、第1の基板が半導体材料または圧電材料から作製された基板である、ステップと、汚染除去基板、特にシリコン基板の熱処理によって、熱処理を実行する装置を汚染除去するステップと、次いで、熱処理を実行する装置内で実行される少なくとも1つのステップを含む第2の基板を処理するステップであって、第1の基板が半導体材料または圧電材料から作製された基板である、ステップとを含む、方法に関する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱処理を実行する機器内で実行される少なくとも1つの段階を含む、第1の基板を処理する段階であって、前記第1の基板が半導体材料または圧電材料を含む基板である、段階と、その後の
汚染除去基板、特にシリコン系基板、より具体的にはさらに単結晶もしくは多結晶シリコン、多孔質シリコン、またはSiOCHから作製された基板の熱処理を実行することによって、熱処理を実行する前記機器の、汚染金属元素による汚染レベルを低減する段階と、その後の
熱処理を実行する前記機器で実行される少なくとも1つの段階を含む、第2の基板を処理する段階であって、前記第2の基板が半導体材料または圧電材料を含む基板である、段階と
を含む、基板を処理するためのプロセス。
【請求項2】
前記第1の基板および前記第2の基板が異なる材料のものである、請求項1に記載の基板を処理するためのプロセス。
【請求項3】
前記第1の基板が、ニオブ酸リチウム(LiNbO)およびタンタル酸リチウム(LiTaO)から選択される圧電基板であり、ならびに/または前記第2の基板が、シリコン、シリコンカーバイド(SiC)、サファイア(Al)またはIII-V族半導体基板、特にヒ化ガリウム(GaAs)、から選択される半導体基板である、請求項2に記載の基板を処理するためのプロセス。
【請求項4】
前記汚染金属元素がリチウムである、請求項1~3のいずれか一項に記載の基板を処理するためのプロセス。
【請求項5】
前記汚染除去段階の前および/または後に、熱処理を実行する前記機器内の少なくとも1つの汚染成分の前記汚染レベルを判定する段階を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の基板を処理するためのプロセス。
【請求項6】
前記汚染レベルが予め定められた汚染閾値を超える場合に前記汚染除去段階が実行される、請求項5に記載の基板を処理するためのプロセス。
【請求項7】
前記汚染除去段階が、少なくとも500℃、特に少なくとも800℃の温度で実行される、請求項1~6のいずれか一項に記載の基板を処理するためのプロセス。
【請求項8】
前記汚染除去段階が、酸化雰囲気下で、特に酸素を導入することによって実行される、請求項1~7のいずれか一項に記載の基板を処理するためのプロセス。
【請求項9】
前記汚染除去段階が、予め定められた期間、特に少なくとも30分間、より具体的には少なくとも1時間実行される、請求項1~8のいずれか一項に記載の基板を処理するためのプロセス。
【請求項10】
前記第2の基板を処理する前記段階を続ける前に、前記汚染除去段階が少なくとも1回繰り返され、特に各繰り返しにおいて新しい汚染除去基板が使用される、請求項1~9のいずれか一項に記載の基板を処理するためのプロセス。
【請求項11】
前記汚染除去基板が前記熱処理後に廃棄される、請求項1~10のいずれか一項に記載の基板を処理するためのプロセス。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセスにおける汚染除去基板としてのシリコン基板の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を処理するためのプロセスに関し、より詳細には、半導体基板および/または圧電基板の処理のためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体および/または圧電基板を使用するプロセスにおける熱処理中に、例えばリチウムなどの金属元素の拡散は、オーブンなどの熱処理を実行する機器の汚染をもたらし得る。この元素による汚染のレベルは、例えば、1平方センチメートル当たりの原子の数としてVPD-ICPMS(気相分解および誘導結合プラズマ質量分析法)によって判定することができる。汚染のレベルは、金属元素を含む基板を用いて実行されるサイクルの数、使用されるプロセスの条件および使用される基板のタイプに依存し得る。汚染レベルの大幅な増加は、特に、基板が機器内で破損した場合に観察される。機器における高レベルの汚染は、その後の生産収率を低下させる可能性がある。
【0003】
特定の元素による機器内の汚染はまた、1つの同じ機器に対して様々なタイプのプロセスを実行することを禁止し得、製造の柔軟性を大幅に低下させ、製造業者がプロセスおよび使用される材料に従っていくつかの別個の製造ラインを設置する必要があるため、汚染問題はまた、製造業者の生産ラインに悪影響を及ぼし得る。
【発明の概要】
【0004】
したがって、本発明の目的は、熱処理を実行する機器において、金属元素による汚染レベルを低減することを可能にする汚染除去プロセスの導入である。
【0005】
本発明の目的は、熱処理を実行する機器内で実行される少なくとも1つの段階を含む、第1の基板を処理する段階であって、第1の基板が半導体材料または圧電材料を含む基板である、段階と、その後の、汚染除去基板、特にシリコン系基板、より具体的にはさらに単結晶もしくは多結晶シリコン、多孔質シリコン、またはSiOCHから作製された基板の熱処理を実行することによって、汚染金属元素による機器の汚染レベルを低減する段階と、その後の、熱処理を実行する機器で実行される少なくとも1つの段階を含む、第2の基板を処理する段階であって、第2の基板が半導体材料または圧電材料を含む基板である、段階とを含む、基板を処理するためのプロセスにより達成される。VPD-ICPMSによる測定は、汚染除去段階中にそのような汚染除去基板を使用することにより、機器の汚染レベルを低減することが可能になることを示している。
【0006】
一実施形態によれば、汚染レベルを低減する段階に使用される汚染除去基板は、汚染除去段階専用の基板であり、この汚染除去段階にのみ使用される。したがって、第1の基板および第2の基板の熱処理の段階中に、汚染除去基板は、熱処理を実行する機器には存在しない。同様に、汚染除去段階中には、第1の基板も第2の基板も熱処理を実行する機器には存在しない。
【0007】
一実施形態によれば、第1および第2の基板は、異なる材料のものであり得る。一実施形態によれば、第1の基板は、ニオブ酸リチウム(LiNbO)およびタンタル酸リチウム(LiTaO)から選択される圧電基板であり得、ならびに/または第2の基板は、シリコン、シリコンカーバイド(SiC)、サファイア(Al)またはIII-V族半導体基板、特にヒ化ガリウム(GaAs)、から選択される半導体基板であり得る。したがって、汚染除去基板を使用することにより、同じ機器を使用して、2つの異なるタイプの基板に対して熱処理を実行することが可能になる。したがって、シリコンオンインシュレータ(SOI)および圧電オンインシュレータ(POI)タイプの基板などの異なるタイプの製品を、同じ機器を使用して製造することができる。
【0008】
一実施形態によれば、汚染金属元素はリチウムである。リチウムの存在は、シリコンタイプのプロセスでは禁止されており、ニオブ酸リチウム(LiNbO)またはタンタル酸リチウム(LiTaO)基板を単独で、またはシリコン系基板と組み合わせて使用するプロセスでさえ、リチウムのレベルが高すぎると、生産収率が低下し得る。本発明によるプロセスは、機器中のリチウムのレベルを低下させるのに有効である。
【0009】
一実施形態によれば、プロセスは、汚染除去段階の前および/または後に、熱処理を実行する機器内の少なくとも1つの汚染成分の汚染レベルを判定する段階を含むことができる。例えば汚染除去基板に対してVPD-ICPMS測定を実施することによる汚染レベルの知識は、汚染除去段階の実施のパラメータ、例えば持続時間、適用される温度および/もしくは雰囲気を調整すること、または汚染除去段階の結果を確認することを可能にする。
【0010】
一実施形態によれば、汚染レベルが予め定められた汚染閾値を超える場合、汚染除去段階を実行することができる。したがって、汚染除去段階は、必要な場合にのみ実行されてもよい。
【0011】
一実施形態によれば、汚染除去段階は、少なくとも500℃、特に少なくとも800℃の温度で実行することができる。汚染除去効果は、これらの温度から開始するとより効果的である。
【0012】
一実施形態によれば、汚染除去段階は、酸化雰囲気下で、特に酸素を導入することによって実行することができる。汚染除去効果は、酸化雰囲気下でより効果的である。
【0013】
一実施形態によれば、汚染除去段階は、予め定められた期間、特に少なくとも30分間、より具体的には少なくとも1時間実行することができる。これらの期間は、より一層効果的な汚染除去を可能にする。
【0014】
一実施形態によれば、第2の基板を処理する段階を続ける前に、汚染除去段階を少なくとも1回繰り返すことができ、特に各繰り返しにおいて新しい汚染除去基板が使用される。新しい汚染除去基板を用いて段階を繰り返すことにより、汚染除去の有効性を高めることができる。
【0015】
一実施形態によれば、汚染除去基板は、熱処理後に廃棄することができる。したがって、機器の再汚染のリスクが低減される。
【0016】
本発明の目的はまた、上述のプロセスにおける汚染除去基板としてシリコン基板を使用することによっても達成される。上記のようなプロセスのすべての利点は、シリコン基板を使用することによってもたらされ得る。
【0017】
本発明およびその利点は、続いて、有利な例示的な実施形態によって、特に以下の添付の図面の支援によってより詳細に説明され、参照番号は本発明の特徴を識別する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施形態による基板を処理するためのプロセスを図式的に表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、例示的な方法で、かつ図面を参照して、有利な実施形態を使用してより詳細に説明される。説明した実施形態は、単に可能な構成であり、上述したような個々の特徴は、互いに独立して提供することができ、または本発明の実施中に完全に省略することができることに留意されたい。
【0020】
図1は、一実施形態による基板を処理するためのプロセスを図式的に表す。
【0021】
段階S1の間、熱処理を実行する機器において、第1の基板に対して熱処理が実行される。第1の基板は、半導体材料または圧電材料を含む基板である。
【0022】
第1の実施形態のプロセスによれば、第1の基板は、ニオブ酸リチウム(LiNbO)およびタンタル酸リチウム(LiTaO)から選択される圧電基板である。機器は、例えば、1つ以上の基板を加熱するためのオーブン、または堆積反応装置、例えば化学蒸着(CVD)反応装置であり得る。
【0023】
熱処理は、アニーリング処理、層堆積中に必要な熱処理、POI基板を製造するための支持基板上への層の転写プロセス中の破砕処理、例えばSmartCut(登録商標)という名称で知られているようなプロセス、または周囲温度より高い温度、すなわち約20℃~25℃の温度を必要とする任意の処理であり得る。500℃を超える温度での処理が特に関連している。
【0024】
リチウム原子による熱機器の汚染は、そのような熱処理中の拡散の現象に続いて起こり得ることが知られている。機器における汚染のレベルは、第1の基板を用いて実行されるサイクルの数、使用されるプロセスの条件、および使用される第1の基板のタイプに依存する。基板が偶発的または意図的に、例えば破砕段階中に機器内で破損した場合、汚染の大幅な増加が観察される。
【0025】
本発明によれば、熱処理を実行する機器の汚染レベルを低減するために、汚染除去段階S2が続いて実行される。機器におけるリチウムの存在を低減するために、汚染除去基板が機器に導入される。第1の実施形態では、シリコン基板が使用される。これは、その天然酸化物の有無にかかわらず、シリコンウェハである。シリコン基板は、約350℃の温度で導入され、その後、少なくとも500℃、好ましくは少なくとも800℃に加熱される。この温度は、少なくとも30分間、好ましくは少なくとも1時間維持される。この汚染除去段階は、酸化雰囲気下で、特に酸素を機器に導入することによって実行される。
【0026】
汚染除去基板は、その後、機器への再導入中の新たな汚染を防止するために廃棄される。
【0027】
段階S2の後の機器に導入され、酸化雰囲気下で少なくとも30分間、好ましくは少なくとも1時間、少なくとも500℃、好ましくは少なくとも800℃に同様に加熱された新しいシリコン基板に、VPD-ICPMS測定を適用した。これらの測定は、段階S2の間に使用されたシリコン基板上の同じ測定と比較して、リチウムの表面密度の低下を示した。VPD-ICPMS測定は以下のように動作する:ICPMS分析の前に、表面を150μlのHF/HNO溶液で拭い、続いてこの溶液を250μlのHF/HNO溶液で希釈した後、特に気相中でHFの使用によるエッチングによって天然酸化物層を分解する。
【0028】
汚染除去段階S2の後、プロセスは、第2の基板を処理するためのプロセスである段階S3に続く。第2の基板は、半導体材料または圧電材料を含む基板であり得る。第2の基板は、第1の基板と同じ材料または別の材料であり得る。
【0029】
同じ材料が使用される場合、第2の基板の処理は、第1の基板と同じであり得る。
【0030】
別の材料が使用される場合、例として、シリコン、シリコンカーバイド(SiC)、サファイア(Al)またはIII-V族半導体基板、特にヒ化ガリウム(GaAs)、から選択される半導体基板であり得る。
【0031】
第2の基板の処理は、同じく熱処理を実行する機器において実行される少なくとも1つの段階を含む。機器が事前に汚染除去されていることを考えると、典型例としてリチウムの場合、第2の基板の処理の品質は汚染物質の影響を受けないか、または影響が少ない。これは、汚染除去段階のないプロセスと比較して、収率の増加を得ることを可能にする。第1の基板に関して、熱処理は、アニーリング処理、層堆積中に必要な熱処理、SOI基板を製造するための支持基板上への層の転写プロセス中の破砕処理、例えばSmartCut(登録商標)という名称で知られているようなプロセス、または周囲温度より高い温度、すなわち約20℃~25℃の温度を必要とする任意の他の処理であり得る。500℃を超える温度での処理が特に関連している。
【0032】
汚染レベルを低減する段階S2に使用される汚染除去基板は、汚染除去段階専用の基板であり、この汚染除去段階にのみ使用される。したがって、第1の基板および第2の基板の熱処理の段階S1およびS2中に、汚染除去基板は、熱処理を実行する機器には存在しない。同様に、汚染除去段階S2中には、第1の基板も第2の基板も熱処理を実行する機器には存在しない。
【0033】
本発明によるプロセスの代替形態によれば、段階S3を続ける前に、汚染除去段階S2は少なくとも1回繰り返され、各繰り返しにおいて新しい汚染除去基板が使用される。したがって、段階S2の各繰り返しにおいて汚染元素が汚染除去基板に捕捉されるため、機器の汚染除去のレベルをさらに改善することができる。これにより、汚染レベルをVPD-ICPMS測定装置の検出限界以下に低減することが可能となる。別の代替形態によれば、VPD-ICPMSによって測定された汚染が予め定められた汚染閾値、例えば1×1013at/cmを超える場合、プロセスS2が繰り返される。VPD-ICPMSを使用する代わりに、二次イオン質量分析(「SIMS」とも呼ばれる)によって汚染を測定することも可能である。本発明によるプロセスは、シリコン基板を使用して実行するのに有効かつ簡単な方法で、オーブンなどの熱処理機器の汚染を低減することを可能にする。所望の汚染除去のレベルに応じて、その後の製造プロセスで機器の使用を続ける前に、プロセスを繰り返すことができる。
図1
【国際調査報告】