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特表2025-500643薬物送達デバイスのためのキャリーケース及び薬物送達デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】薬物送達デバイスのためのキャリーケース及び薬物送達デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/00 20060101AFI20241226BHJP
   A61M 5/315 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
A61M5/00 518
A61M5/315
A61M5/315 550J
A61M5/315 550N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541166
(86)(22)【出願日】2023-01-09
(85)【翻訳文提出日】2024-07-09
(86)【国際出願番号】 EP2023050257
(87)【国際公開番号】W WO2023131691
(87)【国際公開日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】22315006.1
(32)【優先日】2022-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】マティーアス・フェルバー
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン・エーベルリ
(72)【発明者】
【氏名】アードリアン・ガイガー
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066EE06
4C066LL22
4C066QQ48
4C066QQ72
4C066QQ78
4C066QQ82
4C066QQ84
4C066QQ85
4C066QQ92
(57)【要約】
本発明は、薬物送達デバイス(10)を保管するためのキャリーケース(1)及び回転可能な用量ダイヤル部材(11)を有する薬物送達デバイス(10)に言及する。ケース(1)は、外側シェル(2)と、薬物送達デバイス(10)を受け入れ、且つ保持するための支持凹部(3)とを含む。加えて、ケース(1)は、薬物送達デバイス(10)の用量ダイヤル部材(11)に機械的に係合するためのカップリング部材(5)と、電動モータ(4)と、バッテリと、モータ(4)及びバッテリに接続されたプロセッサとをさらに含む。カップリング部材(5)は、カップリング部材(5)と係合されたときに用量ダイヤル部材(11)を回転させるために、前記モータ(4)によって駆動されるように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な用量ダイヤル部材を有する薬物送達デバイス(10)を保管するためのキャリーケースであって、
- 外側シェル(2)と、
- 前記薬物送達デバイス(10)を受け入れ、且つ保持するための支持凹部(3)と
を含み、
- 前記薬物送達デバイス(10)の前記用量ダイヤル部材(11)に機械的に係合するためのカップリング部材(5)と、
- 電動モータ(4)と、
- バッテリと、
- 前記モータ(4)及び前記バッテリに接続されたプロセッサと
をさらに含み、前記カップリング部材(5)は、前記カップリング部材(5)と係合されたときに前記用量ダイヤル部材(11)を回転させるために、前記モータ(4)によって駆動されるように構成される、キャリーケース。
【請求項2】
前記カップリング部材(5)は、歯車である、請求項1に記載のケース。
【請求項3】
前記モータ(4)は、任意選択的に、前記モータ(4)が閉ループ位置決めモードで動作可能であるように、前記プロセッサに接続された位置決めセンサ及び/又はエンコーダを含むマイクロギアモータである、請求項1又は2に記載のケース。
【請求項4】
別のデバイスと通信するために前記プロセッサに接続された通信ユニットをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のケース。
【請求項5】
前記通信ユニットは、Wi-Fi又はBluetooth等の無線ネットワークを介して別のデバイスと通信するための無線通信インターフェースを含む、請求項4に記載のケース。
【請求項6】
前記プロセッサに接続されたLCDディスプレイ(6)をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のケース。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記薬物送達デバイス(10)によって投与される投薬量に対応するデータを計算、受信及び/又は記憶するように構成される、請求項1~6のいずれか一項に記載のケース。
【請求項8】
前記プロセッサは、前記薬物送達デバイス(10)によって投与される投薬量に対応する規定の回転数だけ前記カップリング部材(5)を回転させるために、例えば位置決めセンサ及び/又はエンコーダからの信号に基づく閉ループ位置決めモードで前記モータ(4)を作動させるように構成される、請求項7に記載のケース。
【請求項9】
液体薬物の用量を設定及び投薬するための薬物送達デバイスであって、液体薬物を収容するカートリッジと、前記薬物送達デバイスによって送達される用量を選択するための用量ダイヤル設定動作及び前記設定用量を送達するための用量送達動作を行うように構成される用量設定及び駆動機構とを含み、前記用量設定及び駆動機構は、駆動されたカップリング部材(5)、好ましくは請求項1~8のいずれか一項に記載のケース(1)の前記カップリング部材(5)によって機械的に係合されるように構成された回転可能な用量ダイヤル部材(11)を含む、薬物送達デバイス。
【請求項10】
前記用量ダイヤル部材(11)は、径方向に内向きのギア歯のリングを含む、請求項9に記載の薬物送達デバイス。
【請求項11】
前記用量ダイヤル部材(11)は、前記薬物送達デバイス(10)の近位端部分に位置し、前記用量ダイヤル部材(11)の少なくとも径方向外面及び/又は近位側に向く環状面は、前記薬物送達デバイスのカバー部材(12)によって遮蔽される、請求項9又は10に記載の薬物送達デバイス。
【請求項12】
前記用量設定及び駆動機構は、手動で操作可能な注入トリガを含む、請求項9~11のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項13】
用量設定を防止するロック状態と、用量設定を可能にする解放状態との間で切り替えられ得るロック機構をさらに含む、請求項9~12のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項14】
前記ロック機構は、そのロック状態にあるときに前記用量ダイヤル部材(11)の回転を防止し、且つその解放状態にあるときに前記用量ダイヤル部材(11)の回転を可能にする、請求項13に記載の薬物送達デバイス。
【請求項15】
前記ロック機構は、そのロック状態に付勢され、且つ請求項1~9のいずれか一項に記載のケース内に前記薬物送達デバイスを配置することにより、特に前記用量ダイヤル部材(11)と前記カップリング部材(5)との機械的係合により、その解放状態に切り替えられる、請求項13又は14に記載の薬物送達デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、薬物送達デバイスのためのキャリーケースを対象とする。本発明は、薬物送達デバイス並びにそのようなキャリーケース及び対応する薬物送達デバイスのシステムにさらに関する。
【背景技術】
【0002】
ペン型薬物送達デバイスは、正式な医学訓練を受けていない人による定期的な注射が発生する用途を有する。これは、糖尿病に罹患している患者にとって一層一般的になっており、糖尿病では、自己医療により、そのような患者が自らの疾病の効果的な管理を行うことが可能になっている。実際には、そのような薬物送達デバイスは、ユーザがいくつかのユーザ可変用量の薬剤を個別に選択して投薬することを可能にする。しかしながら、正しい投薬量を設定することは、例えば、視覚障害及び/又は手の障害のある患者にとって困難又は負担であり得る。
【0003】
基本的に、以下の2種類の薬物送達デバイスがある:再設定可能デバイス(すなわち再使用可能)及び非再設定可能(すなわち使い捨て)。例えば、使い捨てペン送達デバイスは、自立型デバイスとして供給される。そのような自立型デバイスは、取り外し可能な事前充填カートリッジを有しない。むしろ、事前充填カートリッジは、デバイス自体を破壊せずには、これらのデバイスから取り外して交換することができない場合がある。したがって、そのような使い捨てデバイスは、再設定可能な用量設定機構を有する必要がない。本発明は、使い捨てデバイス及び再使用可能デバイスに適用可能である。
【0004】
薬物送達デバイスをキャリーケースに保管して、デバイスの損傷又はデバイスの汚染を防止することが一般に知られている。そのようなキャリーケースは、外側シェルと、薬物送達デバイスを受け入れ、且つ保持するための支持凹部とを含み得る。独国特許出願公開第42 08 677A1号明細書は、ペン型薬物送達デバイスのための受け入れセクション、用量設定ホイール及び用量設定ホイールに連結された歯車を有するケースを含む、視覚障害患者のための注入デバイスを開示している。用量設定ホイールは、薬物送達デバイスがケース内に保持されているとき、薬物送達デバイス上の環状歯車と係合するように構成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の目的は、特に視覚障害及び/又は手の障害のある患者のために用量設定を容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、例えば、独立請求項で定義される主題によって解決される。有利な実施形態及び改良形態は、従属請求項の対象である。しかしながら、本開示は、添付の特許請求の範囲で定義される主題に限定されないことに留意されたい。むしろ、本開示は、以下の説明から明らかになるように、独立請求項で定義されるものに加えて又はその代わりとして改良形態を含み得る。
【0007】
本開示の一態様は、外側シェルと、薬物送達デバイスを受け入れ、且つ保持するための支持凹部とを有するキャリーケースに関する。加えて、ケースは、薬物送達デバイスの回転可能な用量ダイヤル部材に機械的に係合するためのカップリング部材を含む。カップリング部材は、ギアボックス機構を含み得、且つ/又はその一部であり得る。さらに、ケースは、電動モータ、電力供給源、例えばコイン電池型バッテリ又は円筒型バッテリのような1つ又は複数のバッテリ並びにモータ及びバッテリに接続されたプロセッサを含み得る。プロセッサは、データを記憶するためのメモリを設けられ得るか又は含み得る。好ましくは、カップリング部材は、カップリング部材と係合されたときに用量ダイヤル部材を回転させるために、前記モータによって駆動されるように構成される。換言すると、ケースは、薬物送達デバイスの用量ダイヤル部材を作動させることによって用量設定動作を行うように構成及び適合される。この用量設定動作は、薬物送達デバイスの用量設定の唯一の可能性であり得るか、又は公知の手動用量設定動作の代替としての追加機能であり得る。したがって、薬物送達デバイスを保管し、保護することに加えて、ケースは、薬物送達デバイスによって投与される用量を設定することを可能にする追加機能を有する。
【0008】
ケースは、一般に、あらゆる種類の例えばペン型薬物送達デバイス及び注射針のようなそのアクセサリを保管し、保持するのに好適であり得る。他方で、本開示によるケースは、特定の種類の薬物送達デバイスと嵌合し、相互作用するように適合され、すなわち、薬物送達デバイスは、薬物送達デバイスによって投与される用量を設定するための回転可能な用量ダイヤル部材を含み、用量ダイヤル部材がケースのカップリング部材とかみ合って、カップリング部材から用量ダイヤル部材にトルクを伝達する。
【0009】
一例によれば、カップリング部材は、歯車、特に直列又はギア歯が径方向に外向きの歯車であり得る。モータは、マイクロギアモータ、すなわちモータとギアボックスとの組み合わせであり得、ギアボックスは、カップリング部材を含み得るか、又はカップリング部材によって係合可能であり得る。
【0010】
ケースは、別のデバイスと通信するための通信ユニット、例えばWi-Fi若しくはBluetoothなどの無線ネットワークを介して別のデバイスと通信するための無線通信インターフェース又はさらにユニバーサルシリアルバス(USB)、ミニUSB若しくはマイクロUSBコネクタを受け入れるためのソケット等の有線通信リンクのためのインターフェースをさらに含み得る。好ましくは、ケースは、通信ユニットとして、RF、WiFi及び/又はBluetoothユニットを含む。通信ユニットは、ケースと、外部、例えば他の電子デバイス、例えば携帯電話、パーソナルコンピュータ、ラップトップ等との間の通信インターフェースとして設けられ得る。例えば、用量データは、通信ユニットによって外部デバイスに送信され得る。用量データは、外部デバイスで確立された用量ログ又は用量履歴のために使用され得る。加えて又は代替として、通信ユニットは、外部デバイスからデータ、例えばユーザの健康状態に関するデータ及び/又は薬物送達デバイスによって送達される薬物の量に関する用量データを受信し得る。
【0011】
通信ユニットに加えて又は通信ユニットの代替として、ケースは、少なくとも1つのデータ入力部材及び/又は少なくとも1つのデータ出力部材を含み得る。例えば、用量データは、少なくとも1つのデータ入力部材によって入力され得る。データ出力部材は、プロセッサに接続されたLCDディスプレイを含み得、例えば最後に投与された用量の履歴又は用量推奨値を表示し得る。
【0012】
本開示のケースを使用して薬物送達デバイスにおける用量の設定を容易にするために、プロセッサは、薬物送達デバイスによって投与される投薬量に対応するデータを計算、受信及び/又は記憶するように構成され得る。より詳細には、プロセッサは、薬物送達デバイスによって投与される投薬量に対応する規定の回転数だけカップリング部材を回転させるためにモータを作動させるように構成され得る。これは、任意の以前に設定された用量がキャンセルされるまで用量減少方向にカップリング部材を回転させ、その後、意図された用量が設定されるまで用量増加方向にカップリング部材を回転させることを含み得る。モータ、例えばギアボックスを有する小型DCモータを用いて規定数の回転をより正確に実行するために、モータ又は機構は、モータを閉ループ位置決めモードで動作させることができる位置センサ及び/又はエンコーダを含み得る。そのような位置センサ及び/又はエンコーダは、プロセッサに結合又は接続され得る。
【0013】
本開示のさらに別の態様によれば、例えば、可変又は固定用量で液体薬物を設定及び投薬するための薬物送達デバイスは、液体薬物を収容するカートリッジと、薬物送達デバイスによって送達される用量を選択するための用量ダイヤル設定動作及び設定された用量を送達するための用量送達動作を行うように構成される用量設定及び駆動機構とを含み得、用量設定及び駆動機構は、例えば、駆動されたカップリング部材、好ましくは上記のケースのカップリング部材によって機械的に係合されるように構成される回転可能な用量ダイヤル部材を含む。一例では、用量ダイヤル部材は、径方向に内側に向けられたギア歯のリングを含む。
【0014】
薬物送達デバイスは、空のカートリッジの交換を可能にする再使用可能なデバイスであり得る。例えば、カートリッジは、解放可能に取り付けられたカートリッジホルダに受け入れられ得る。
【0015】
一実施形態では、薬物送達デバイスは、少なくとも用量設定動作でハウジングに対して例えばらせん経路に沿って回転可能なダイヤルスリーブ、例えば番号スリーブを含む。加えて、手動で操作可能な注入トリガ、例えば用量及び/若しくは注入ボタン又はそれに軸方向及び/若しくは回転的にロックされた部材は、ダイヤルスリーブに対して軸方向に変位可能であり、少なくとも用量送達動作でハウジングに対して回転的に拘束され得る。
【0016】
本開示は、例えば、ユーザが注入ボタンに力を加えることによって手動で駆動されるデバイス、バネ等によって駆動されるデバイス及びこれら2つの概念を組み合わせたデバイス、すなわち依然としてユーザに注入力を加えることを必要とするバネ補助デバイスに適用可能である。バネ型デバイスは、事前に負荷がかけられたバネと、用量選択中にユーザによって負荷がかけられるバネとを含む。いくつかの蓄積エネルギーデバイスは、例えば、用量設定中、バネの事前負荷と、ユーザによって提供される追加エネルギーとの組み合わせを使用する。
【0017】
本開示の一態様によれば、用量ダイヤル部材は、薬物送達デバイスの近位端部分に位置し得る。設定用量の意図しない修正を防止するために、用量ダイヤル部材の少なくとも径方向外面及び/又は近位側に向く環状面は、薬物送達デバイスのカバー部材によって遮蔽され得る。
【0018】
加えて又は代替として、薬物送達デバイスは、用量設定を防止するロック状態と、用量設定を可能にする解放状態との間で切り替えられ得るロック機構をさらに含み得る。例えば、ロック機構は、そのロック状態にあるときに用量ダイヤル部材の回転を防止し、且つその解放状態にあるときに用量ダイヤル部材の回転を可能にする。任意選択的に、ロック機構は、そのロック状態に付勢され得、且つ薬物送達デバイスをケースに配置することにより、特に用量ダイヤル部材とカップリング部材との機械的係合により、その解放状態に切り替えられ得る。代替的な例では、ダイヤル部材の内部の幾何学的形状に一致する、軸方向にシフト可能な部分は、回転をロックし得、次いでカップリング部材によって押し込まれ、それにより回転を解放することができる。さらに別の代替手段として、内向きギアは、軸方向に可動なロック部材として使用され得、外向き歯を有する歯車は、ダイヤル部材として使用され得る。この場合、カップリング部材は、内向きの歯と適合する環状形状を有し得る。さらに、薬物送達デバイスは、例えば、カバーの下に環状スロットを含み得、デバイスがケースに入れられ、それにより機構をロック解除するとき、ケースの適合する幾何学的形状がこのスロットに入り得る。
【0019】
本開示は、キャリーケースと、上述したような薬物送達デバイスとを含む組み合わせ又はシステムをさらに対象とする。
【0020】
本開示は、上述したような電子システムを有する薬物送達デバイスにさらに関連し、その薬物送達デバイスは、薬剤を含むカートリッジを含む。
【0021】
本明細書では、用語「薬物」又は「薬剤」は、同義的に使用され、1種又は複数の医薬品有効成分若しくは薬学的に許容可能な塩又はその溶媒和物及び任意選択的に薬学的に許容可能な担体を含有する医薬製剤を表す。医薬品有効成分(「API」)は、最も広義には、ヒト又は動物に対して生物学的効果を有する化学構造である。薬理学では、薬物又は薬剤は、疾病の治療、治癒、予防若しくは診断に使用されるか又はそうでなければ身体的若しくは精神的快適さを高めるために使用される。薬物又は薬剤は、限られた期間にわたって又は慢性疾患に対して定期的に使用され得る。
【0022】
下記で説明するように、薬物又は薬剤は、1種又は複数の疾病の治療のために、少なくとも1種のAPI又はこれらの組み合わせを様々なタイプの製剤で含むことができる。APIの例としては、500Da以下の分子量を有する小分子;ポリペプチド、ペプチド及びタンパク質(例えば、ホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント及び酵素);炭水化物及び多糖類;並びに核酸、二本鎖又は一本鎖DNA(ネイキッドDNA及びcDNAを含む)、RNA、アンチセンスDNA及びRNAなどのアンチセンス核酸、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子並びにオリゴヌクレオチドが挙げられ得る。核酸は、ベクター、プラスミド又はリポソーム等の分子送達システムに組み込まれ得る。1種又は複数の薬物の混合物も企図される。
【0023】
薬物又は薬剤は、薬物送達デバイスと共に使用するように適合された一次パッケージ又は「薬物容器」内に入れられ得る。薬物容器は、例えば、カートリッジ、シリンジ、リザーバ又は1種若しくは複数の薬物の保管(例えば、短期若しくは長期の保管)に好適なチャンバを提供するように構成された他の頑丈な若しくは可撓性の器であり得る。例えば、場合により、チャンバは、少なくとも1日(例えば、1日~少なくとも30日)薬物を保管するように設計され得る。場合により、チャンバは、薬物を約1ヶ月~約2年間にわたって保管するように設計され得る。保管は、室温(例えば、約20℃)又は冷蔵温度(例えば、約-4℃~約4℃)で行われ得る。場合により、薬物容器は、投与される医薬製剤の2種以上の成分(例えば、API及び希釈剤又は2種の異なる薬物)を各チャンバ内に1種ずつ別々に保管するように構成された二重チャンバカートリッジであり得るか又はそれを含み得る。そのような場合、二重チャンバカートリッジの2つのチャンバは、ヒト又は動物の体内に投薬する前及び/又はその間に2種以上の成分間の混合を可能にするように構成され得る。例えば、2つのチャンバは、(例えば、2つのチャンバ間の導管によって)それらが互いに流体連通するように構成され得、投薬する前にユーザが所望する場合に2種の成分を混合することを可能にし得る。代わりに又は加えて、2つのチャンバは、ヒト又は動物の体内への成分の投薬時に混合を可能にするように構成され得る。
【0024】
本明細書に記載されるような薬物送達デバイスに含まれる薬物又は薬剤は、多くの異なるタイプの医学的障害の治療及び/又は予防に使用され得る。障害の例としては、例えば、真性糖尿病又は真性糖尿病に伴う合併症、例えば糖尿病性網膜症、血栓塞栓症、例えば深部静脈血栓塞栓症又は肺血栓塞栓症が挙げられる。障害のさらなる例には、急性冠動脈症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、癌、黄斑変性症、炎症、花粉症、アテローム性動脈硬化症及び/又は関節リウマチが含まれる。API及び薬物の例は、Rote Liste 2014、例えば、限定されないが、メイングループ12(抗糖尿病薬物)又は86(オンコロジー薬物)及びMerck Index,15th editionなどのハンドブックに記載されているものである。
【0025】
1型若しくは2型真性糖尿病又は1型若しくは2型真性糖尿病に伴う合併症の治療及び/又は予防のためのAPIの例としては、インスリン、例えばヒトインスリン又はヒトインスリン類似体若しくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1類似体若しくはGLP-1受容体アゴニスト又はその類似体若しくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物或いはそれらの任意の混合物が挙げられる。本明細書で用いられる場合、「類似体」及び「誘導体」という用語は、天然に存在するペプチドに存在する少なくとも1つのアミノ酸残基の欠失及び/若しくは交換並びに/又は少なくとも1つのアミノ酸残基の付加により、天然に存在するペプチドの構造、例えばヒトインスリンの構造から形式的に誘導可能な分子構造を有するポリペプチドを指す。付加及び/又は交換されるアミノ酸残基は、コード可能アミノ酸残基又は他の天然に存在する残基又は純粋合成アミノ酸残基のいずれかであり得る。インスリン類似体は、「インスリン受容体リガンド」とも称される。特に、「誘導体」という用語は、1つ又は複数の有機置換基(例えば、脂肪酸)がアミノ酸の1つ又は複数に結合している、天然に存在するペプチドの構造、例えばヒトインスリンの構造から形式的に誘導可能な分子構造を有するポリペプチドを指す。任意選択的に、天然に存在するペプチドに存在する1つ若しくは複数のアミノ酸は、欠失し得、且つ/又はコード不可能アミノ酸を含む他のアミノ酸によって置換され得るか、又はコード不可能なアミノ酸を含むアミノ酸は、天然に存在するペプチドに付加され得る。
【0026】
インスリン類似体の例は、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルジン);Lys(B3)、Glu(B29)ヒトインスリン(インスリングルリシン);Lys(B28)、Pro(B29)ヒトインスリン(インスリンリスプロ);Asp(B28)ヒトインスリン(インスリンアスパルト);位置B28におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val又はAlaで置換され、位置B29においてLysがProで置換され得るヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28-B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン及びDes(B30)ヒトインスリンである。
【0027】
インスリン誘導体の例は、例えば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン、Lys(B29)(N-テトラデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデテミル、Levemir(登録商標));B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン、B29-N-オメガ-カルボキシペンタデカノイル-ガンマ-L-グルタミル-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデグルデク、Tresiba(登録商標));B29-N-(N-リトコリル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン及びB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0028】
GLP-1、GLP-1類似体及びGLP-1受容体作動薬の例は、例えば、リキシセナチド(Lyxumia(登録商標))、エキセナチド(エキセンジン-4、Byetta(登録商標)、Bydureon(登録商標)、ヒラモンスターの唾液腺によって産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(Victoza(登録商標))、セマグルチド、タスポグルチド、アルビグルチド(Syncria(登録商標))、デュラグルチド(Trulicity(登録商標))、rエキセンジン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド/HM-11260C(エフペグレナチド)、HM-15211、CM-3、GLP-1エリゲン、ORMD-0901、NN-9423、NN-9709、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン、ビアドール-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、ZP-DI-70、TT-401(ペガパモドチド)、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、チルゼパチド(LY3298176)、バマドゥチド(SAR425899)、エキセナチド-XTEN及びグルカゴン-Xtenである。
【0029】
オリゴヌクレオチドの一例は、例えば、家族性高コレステロール血症の治療のためのコレステロール低下アンチセンス治療薬である、ミポメルセンナトリウム(Kynamro(登録商標))又はアルポート症候群の治療のためのRG012である。
【0030】
DPP4阻害剤の例としては、リナグリプチン、ビルダグリプチン、シタグリプチン、デナグリプチン、サキサグリプチン、ベルベリンがある。
【0031】
ホルモンの例としては、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン及びゴセレリンなどの脳下垂体ホルモン又は視床下部ホルモン又は調節性活性ペプチド及びそれらのアンタゴニストが挙げられる。
【0032】
多糖類の例としては、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン若しくは超低分子量ヘパリン又はそれらの誘導体或いは硫酸化多糖類、例えば上記多糖類のポリ硫酸化形態及び/又は薬学的に許容可能なそれらの塩が挙げられる。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容可能な塩の一例は、エノキサパリンナトリウムである。ヒアルロン酸誘導体の一例は、Hylan G-F 20(Synvisc(登録商標))、ヒアルロン酸ナトリウムである。
【0033】
本明細書で用いられる用語「抗体」は、免疫グロブリン分子又はその抗原結合部を指す。免疫グロブリン分子の抗原結合部の例としては、抗原への結合能を保持するF(ab)及びF(ab’)2フラグメントが挙げられる。抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、組換え抗体、キメラ抗体、脱免疫化若しくはヒト化抗体、完全ヒト抗体、非ヒト(例えば、マウス)抗体又は一本鎖抗体であり得る。いくつかの実施形態では、抗体は、エフェクタ機能を有し、且つ補体を固定することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、Fc受容体への結合能が低減されているか又は結合能がない。例えば、抗体は、Fcレセプタへの結合を支援しない、例えばFcレセプタ結合領域の突然変異若しくは欠失を有するアイソタイプ若しくはサブタイプ、抗体フラグメント又は突然変異体であり得る。抗体という用語は、4価二重特異性タンデム免疫グロブリン(TBTI)及び/又はクロスオーバー結合領域配向(CODV)を有する二重可変領域抗体様結合タンパク質に基づく抗原結合分子も含む。
【0034】
「フラグメント」又は「抗体フラグメント」という用語は、完全長抗体ポリペプチドを含まないが、依然として抗原に結合可能な完全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を含む抗体ポリペプチド分子由来のポリペプチド(例えば、抗体重鎖及び/又は軽鎖ポリペプチド)を指す。抗体フラグメントは、完全長抗体ポリペプチドの切断部分を含み得るが、この用語は、そのような切断フラグメントに限定されない。本発明に有用な抗体フラグメントとしては、例えば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、線状抗体、単一特異的又は多重特異的な抗体フラグメント、例えば二重特異的、三重特異的、四重特異的及び多重特異的抗体(例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)、1価又は多価抗体フラグメント、例えば2価、3価、4価及び多価の抗体、ミニボディ、キレート化組換え抗体、トリボディ又はバイボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュール免疫医薬(SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体及びVHH含有抗体が挙げられる。抗原結合抗体フラグメントの追加の例は、当技術分野で既知である。
【0035】
「相補性決定領域」又は「CDR」という用語は、特異的抗原認識を媒介する役割を主に担う、重鎖及び軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。「フレームワーク領域」という用語は、CDR配列ではなく、抗原結合が可能になるようにCDR配列の適正配置を維持する役割を主に担う、重鎖及び軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、典型的には、抗原結合に直接関与しないが、当技術分野で既知であるように、特定の抗体のフレームワーク領域内の特定の残基は、抗原結合に直接関与し得るか、又はCDR内の1つ又は複数のアミノ酸と抗原との相互作用能に影響を及ぼし得る。
【0036】
抗体の例は、抗PCSK-9 mAb(例えば、アリロクマブ)、抗IL-6 mAb(例えば、サリルマブ)及び抗IL-4 mAb(例えば、デュピルマブ)である。
【0037】
本明細書に記載するいずれのAPIの薬学的に許容可能な塩も薬物送達デバイスで薬物又は医薬品に使用することが企図される。薬学的に許容可能な塩は、例えば、酸付加塩及び塩基性塩である。
【0038】
本発明の完全な範囲及び趣旨から逸脱することなく、本明細書に記載のAPI、配合物、装置、方法、システム及び実施形態の様々な構成要素の修正形態(追加形態及び/又は削除形態)がなされ得、本発明は、そのような修正形態及びそのあらゆる全ての均等物を包含することが当業者に理解されるであろう。
【0039】
例示的な薬物送達デバイスには、ISO 11608-1:2014(E)のセクション5.2の表1に記載されるような針ベースの注入システムが含まれ得る。ISO 11608-1:2014(E)に記載されるように、針ベースの注入システムは、複数回用量容器システム及び単回用量(部分的又は完全な排出を伴う)容器システムに大別され得る。容器は、交換可能な容器であり得るか、又は統合された交換不可能な容器であり得る。
【0040】
ISO 11608-1:2014(E)にさらに記載されるように、複数回用量容器システムは、交換可能な容器を有する針ベースの注入デバイスを含み得る。そのようなシステムでは、各容器は、複数回分の用量を保持し、そのサイズは、固定又は可変であり得る(ユーザによって事前設定される)。別の複数回用量容器システムには、交換不可能な容器が統合された針ベースの注入デバイスが含まれ得る。そのようなシステムでは、各容器は、複数回分の用量を保持し、そのサイズは、固定又は可変であり得る(ユーザによって事前設定される)。
【0041】
ISO 11608-1:2014(E)にさらに記載されるように、単回用量容器システムは、交換可能な容器を有する針ベースの注入デバイスを含み得る。そのようなシステムの一例では、各容器は、単回用量を保持し、これにより送達可能な全容量が吐出される(完全排出)。さらなる例では、各容器は、単回用量を保持し、これにより送達可能な容量の一部分が吐出される(部分排出)。ISO 11608-1:2014(E)にも記載されるように、単回用量容器システムは、交換不可能な容器が統合された針ベースの注入デバイスを含み得る。そのようなシステムの一例では、各容器は、単回用量を保持し、これにより送達可能な全容量が吐出される(完全排出)。さらなる例では、各容器は、単一用量を保持し、これにより送達可能な容量の一部分が吐出される(部分排出)。
【0042】
本明細書で用いられる「軸方向」、「径方向」又は「周方向」という用語は、デバイス、カートリッジ、ハウジング又はカートリッジホルダの主長手方向軸、例えばカートリッジ、カートリッジホルダ又は薬物送達デバイスの近位端部及び遠位端部を通して延びる軸に対して使用され得る。
【0043】
ここで、本開示の非限定的な例示的実施形態が添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】キャリーケース及び対応する薬物送達デバイスの一実施形態の斜視図である。
図2】ケース及び薬物送達デバイスの詳細を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図では、同一の要素、同一に機能する要素又は同種の要素に同じ参照番号が付されている場合がある。
【0046】
下記では、いくつかの実施形態についてインスリン注入デバイスを参照して説明する。しかしながら、本開示は、そうした用途に限定されず、他の薬剤を出すように構成された注入デバイス又は一般の薬物送達デバイス、好ましくはペン型デバイス及び/若しくは注入デバイスと共に等しく展開され得る。
【0047】
本開示のいくつかの実施形態は、注入ボタンとグリップ(用量設定部材又は用量設定器)が組み合わされている、国際公開第2014/033195号パンフレット又は国際公開第2014/033197号パンフレットに記載の注入デバイスと共に使用するのに好適であると示されている。注入ボタンは、薬物送達デバイスの用量送達動作を開始及び/又は実行するためのユーザインターフェース部材を提供することができる。グリップ又はつまみは、用量設定動作を開始及び/又は実行するためのユーザインターフェース部材を提供し得る。両方のデバイスは、ダイヤル延長型であり、すなわち用量設定中にこれらのデバイスの長さが長くなる。用量設定及び用量吐出動作モード中のダイヤル延長部及びボタンと同じ運動学的挙動を有する他の注入デバイスは、例えば、Eli Lillyによって市販されているKwikpen(登録商標)デバイス(国際公開第2005/018721号パンフレットにも説明されている)及びNovo Nordiskによって市販されているNovopen(登録商標)4デバイス(米国特許第6,663,602号明細書にも説明されている)として知られている。したがって、これらのデバイスへの一般原則の適用は、明らかに明快であり、これ以上の説明を省略する。しかしながら、本開示の一般原則は、その運動学的挙動に限定されない。いくつかの他の実施形態は、別個の注入ボタン及びグリップ構成要素/用量設定部材がある、国際公開第2004/078239号パンフレット又は国際公開第2009/132777号パンフレットに記載されるような注入デバイスへの応用のために考案され得る。そのため、2つの別個のユーザインターフェース部材、用量設定動作のための1つと、用量送達動作のための1つとがあり得る。
【0048】
本明細書では、「遠位」は、薬物送達デバイス又はその構成要素の投薬端部に面するか若しくは向くように配置されるか若しくは配置されることになり、且つ/又は近位端とは反対に向く、反対に面するように配置されることになるか若しくは反対に面する方向、端部又は表面を指定するために使用される。他方で、「近位」は、薬物送達デバイス若しくはその構成要素の投薬端部及び/又は遠位端部とは反対に面する若しくは反対に向くように配置された若しくは配置されることになる方向、端部又は表面を指定するために使用される。遠位端部は、投薬端部に最も近い及び/又は近位端部から最も遠い端部であり得、近位端部は、投薬端部から最も遠い端部であり得る。近位面は、遠位端部とは反対に及び/又は近位端部に向かって面し得る。遠位面は、遠位端部に向かって及び/又は近位端部とは反対に面し得る。投薬端部は、例えば、針ユニットが存在するか又は装置に取り付けられることになる針端部であり得る。
【0049】
図1は、少なくとも1つの薬物送達デバイス10を保管するためのキャリーケース1の斜視図である。ケース1は、図示された例示的な実施形態では、2つのヒンジ付きハーフシェルからなる外側シェル2を含む。ハーフシェルは、図1に示されるように、開いてシェル2の内部にアクセスできるようにするか、又は少なくとも1つの薬物送達デバイス10を封入するために閉じられ得る。
【0050】
少なくとも1つの支持凹部3は、シェル2内において、ペン型薬物送達デバイス10を受け入れるように形成されて設けられる。この目的のために、支持凹部は、薬物送達デバイス10の少なくとも一部分を密着して受け入れるための形状を有する。例えば、薬物送達デバイス10は、支持凹部3にスナップ係合によって保持され得る。
【0051】
さらに、ケース1は、電動モータ4と、モータ4に接続された歯車5の形態のカップリング部材と、データ入力手段、例えばLCDディスプレイ6と、バッテリ(図示せず)と、モータ4、ディスプレイ6及びバッテリに接続されたプロセッサ(図示せず)とを含む。ケースは、任意選択的に、データ入力手段(図示せず)、例えばBluetooth(登録商標)通信インターフェース、及び/又はキーボード、及び/又はケース1のプロセッサ若しくはバッテリを外部デバイスと接続するためのソケットを含み得る。
【0052】
図2により詳細に示されるように、カップリング部材は、一連のギア歯が径方向に外向きの歯車5である。歯車5は、モータ4に回転的に接続されたギアボックスの一部であり得、モータ4が作動するときに歯車5を駆動する。歯車5は、薬物送達デバイス10がケース1の支持凹部3に受け入れられると、薬物送達デバイス10の回転可能な用量ダイヤル部材11とかみ合い、係合する。
【0053】
用量ダイヤル部材11は、薬物送達デバイス10の近位端部に位置し、図示の例では径方向に内向きのギア歯を含む。代替として、用量ダイヤル部材11は、外向きのギア歯又はカップリング部材としての対応するピンとの軸方向のカップリングを可能にする、遠位面上の幾何学的形状、例えば歯又は穴を含み得る。カバー12は、薬物送達デバイス10の一部として、少なくとも部分的に用量ダイヤル部材11を遮蔽するように提供される。図示の例では、カバー12は、用量ダイヤル部材11の径方向外面及び用量ダイヤル部材11の環状近位面を遮蔽し、それにより側方側及び近位側から用量ダイヤル部材11にアクセスすることを防止する。図2の例に示されるように、用量ダイヤル部材11の遠位面が薬物送達デバイス10の隣接する構成要素によって遮蔽される場合、用量ダイヤル部材11のギア歯は、例えば、図示のように歯車5によって径方向内側からのみアクセス可能である。この配置構成は、用量ダイヤル部材11の意図しない又は望ましくない操作を防止する。
【0054】
加えて又は代替として、薬物送達デバイス10は、用量設定を防止するロック状態と、用量設定を可能にする解放状態との間で切り替えられ得るロック機構(図示せず)を提供され得る。より詳細には、そのようなロック機構は、そのロック状態にあるとき、用量ダイヤル部材の望ましくない回転を防止し得、且つその解放状態にあるとき、特に用量設定中に用量ダイヤル部材の回転を可能にする。
【0055】
例示的な実施形態では、ロック機構は、そのロック状態に付勢され得る。これは、薬物送達デバイス10のアイドル状態、すなわちユーザがデバイスに何らの力又はトルクを加えない状態でロック機構がそのロック状態にあることを意味する。これは、ロック機構をそのロック状態で保持するバネによるものであり得るか、又はロック部材がロック状態にスナップ嵌めされ得ることによるものであり得る。他方で、ロック機構は、例えば、薬物送達デバイスをキャリーケース1に入れることによって自動的に且つ/又はユーザの作動によってその解放状態に切り替えられ得る。一例では、ロック機構は、用量ダイヤル部材11とカップリング部材、すなわち歯車5との機械的係合によってその解放状態に切り替えられ得る。代替として、薬物送達デバイス10がキャリーケース1の支持凹部3に受け入れられると、薬物送達デバイス10をケース1内に保持するクランプ特徴は、ロック機構をその解放状態に切り替え得る。
【0056】
バッテリ駆動ケース1は、自動的に、すなわちユーザの手動操作なしに且つ/又は自律的に、すなわちスマートフォン等の外部デバイスを使用することなく、薬物送達デバイス10に用量を設定するように構成され得る。これにより、用量設定中の用量精度が高くなり、手の障害及び/又は視覚障害のある患者の使用が容易になる。加えて、薬物送達デバイス10は、完全に機械的なデバイスであり得、例えば用量表示がなくても単純にされ得る。
【0057】
例えば、ケース1は、ケース1で記憶及び/又は計算された用量情報に基づいて用量を設定するように構成され得る。用量は、歯車5が、設定される意図された用量に対応する予め決められた回転数だけ回転されるように、モータ4を動作させることによって設定される。図2に示される種類のモータ、すなわちギアボックスを有する小型DCモータで規定数の回転をより正確に実行するために、モータ又は機構は、位置センサ、すなわちエンコーダ(図示せず)を含み得、閉ループ位置決めモードでモータを動作させ得る。このようなシナリオでは、歯車5に患者がアクセスできないこと及び/又はケース1から薬物送達デバイス10を取り除いた後に設定用量がロックされることが望ましい場合がある。一例として、薬物送達デバイス10は、注入トリガ(図示せず)を除き、アクセス可能な可動部品を全く有しないように設計され得る。
【0058】
ケース1のプロセッサは、薬物送達デバイス10によって投与される投薬量に対応するデータを計算、受信及び/又は記憶するようにさらに構成され得る。これは、ケース1で受信及び/若しくは記憶され、且つ/又は外部デバイスによってケース1に送信される健康データ又は他の患者データに基づいて必要な用量を選択する用量コーチの機能を含み得る。
【符号の説明】
【0059】
1 キャリーケース
2 外側シェル
3 支持凹部
4 モータ
5 カップリング部材(歯車)
6 ディスプレイ
10 薬物送達デバイス
11 用量ダイヤル部材
12 カバー
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-07-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な用量ダイヤル部材を有する薬物送達デバイス(10)を保管するためのキャリーケースであって、
- 外側シェル(2)と、
- 前記薬物送達デバイス(10)を受け入れ、且つ保持するための支持凹部(3)と
を含み、
- 前記薬物送達デバイス(10)の前記用量ダイヤル部材(11)に機械的に係合するためのカップリング部材(5)と、
- 電動モータ(4)と、
- バッテリと、
- 前記モータ(4)及び前記バッテリに接続されたプロセッサと
をさらに含み、前記カップリング部材(5)は、前記カップリング部材(5)と係合されたときに前記用量ダイヤル部材(11)を回転させるために、前記モータ(4)によって駆動されるように構成される、キャリーケース。
【請求項2】
前記カップリング部材(5)は、歯車である、請求項1に記載のケース。
【請求項3】
前記モータ(4)は、任意選択的に、前記モータ(4)が、前記モータを閉ループ位置決めモードで動作させるように動作可能であるように、前記プロセッサに接続された位置決めセンサ及び/又はエンコーダを含むマイクロギアモータである、請求項1又は2に記載のケース。
【請求項4】
別のデバイスと通信するために前記プロセッサに接続された通信ユニットをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のケース。
【請求項5】
前記通信ユニットは、Wi-Fi又はBluetooth等の無線ネットワークを介して別のデバイスと通信するための無線通信インターフェースを含む、請求項4に記載のケース。
【請求項6】
前記プロセッサに接続されたLCDディスプレイ(6)をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のケース。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記薬物送達デバイス(10)によって投与される投薬量に対応するデータを計算、受信及び/又は記憶するように構成される、請求項1~6のいずれか一項に記載のケース。
【請求項8】
前記プロセッサは、前記薬物送達デバイス(10)によって投与される投薬量に対応する規定の回転数だけ前記カップリング部材(5)を回転させるために、例えば位置決めセンサ及び/又はエンコーダからの信号に基づく閉ループ位置決めモードで前記モータ(4)を作動させるように構成される、請求項7に記載のケース。
【請求項9】
液体薬物の用量を設定及び投薬するための薬物送達デバイスであって、液体薬物を収容するカートリッジと、前記薬物送達デバイスによって送達される用量を選択するための用量ダイヤル設定動作及び前記設定用量を送達するための用量送達動作を行うように構成される用量設定及び駆動機構とを含み、前記用量設定及び駆動機構は、駆動されたカップリング部材(5)、好ましくは請求項1~8のいずれか一項に記載のケース(1)の前記カップリング部材(5)によって機械的に係合されるように構成された回転可能な用量ダイヤル部材(11)を含む、薬物送達デバイス。
【請求項10】
前記用量ダイヤル部材(11)は、径方向に内向きのギア歯のリングを含む、請求項9に記載の薬物送達デバイス。
【請求項11】
前記用量ダイヤル部材(11)は、前記薬物送達デバイス(10)の近位端部分に位置し、前記用量ダイヤル部材(11)の少なくとも径方向外面及び/又は近位側に向く環状面は、前記薬物送達デバイスのカバー部材(12)によって遮蔽される、請求項9又は10に記載の薬物送達デバイス。
【請求項12】
前記用量設定及び駆動機構は、手動で操作可能な注入トリガを含む、請求項9~11のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項13】
用量設定を防止するロック状態と、用量設定を可能にする解放状態との間で切り替えられ得るロック機構をさらに含む、請求項9~12のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項14】
前記ロック機構は、そのロック状態にあるときに前記用量ダイヤル部材(11)の回転を防止し、且つその解放状態にあるときに前記用量ダイヤル部材(11)の回転を可能にする、請求項13に記載の薬物送達デバイス。
【請求項15】
前記ロック機構は、そのロック状態に付勢され、且つ請求項1~9のいずれか一項に記載のケース内に前記薬物送達デバイスを配置することにより、特に前記用量ダイヤル部材(11)と前記カップリング部材(5)との機械的係合により、その解放状態に切り替えられる、請求項13又は14に記載の薬物送達デバイス。
【国際調査報告】