(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-15
(54)【発明の名称】全身性硬化症の治療のためのIL-23特異的抗体
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20250107BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20250107BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20250107BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20250107BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20250107BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20250107BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20250107BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20250107BHJP
C07K 16/24 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P25/00 ZNA
A61K39/395 U
A61K39/395 D
A61K47/22
A61K47/26
A61K45/00
A61K31/519
A61P29/00
A61P37/06
C07K16/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535746
(86)(22)【出願日】2022-12-16
(85)【翻訳文提出日】2024-08-05
(86)【国際出願番号】 IB2022062372
(87)【国際公開番号】W WO2023111981
(87)【国際公開日】2023-06-22
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】509087759
【氏名又は名称】ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツド
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149010
【氏名又は名称】星川 亮
(72)【発明者】
【氏名】深澤 毅倫
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,シェン
(72)【発明者】
【氏名】角井 信一
(72)【発明者】
【氏名】川島 直子
(72)【発明者】
【氏名】記村 貴之
(72)【発明者】
【氏名】菊地(森島) 仁美
(72)【発明者】
【氏名】ムノズ,エルネスト
(72)【発明者】
【氏名】ローズ,シャウン
(72)【発明者】
【氏名】坂本 武彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 伸一
(72)【発明者】
【氏名】トーソー,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】右京 芳文
(72)【発明者】
【氏名】吉崎 歩
(72)【発明者】
【氏名】鄭 日川
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076BB13
4C076BB16
4C076CC01
4C076CC04
4C076CC07
4C076DD09
4C076DD38
4C076DD46
4C076DD58
4C076DD67
4C084AA17
4C084MA02
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4C085CC23
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG04
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB09
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZB08
4C086ZB11
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
患者における全身性硬化症を治療する方法は、患者が抗体に応答し、臨床エンドポイントのうちの1つ以上を満たすように、初回皮下投与及びその後の皮下投与で、IL-23特異的抗体、例えば、グセルクマブを投与する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者において全身性硬化症(SSc)を治療する方法であって、IL23に特異的な抗体を前記患者に投与することを含み、
前記抗体が、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含み、前記軽鎖可変領域が、
配列番号4の相補性決定領域軽鎖1(CDRL1)アミノ酸配列、
配列番号5のCDRL2アミノ酸配列、及び
配列番号6のCDRL3アミノ酸配列、を含み、
前記重鎖可変領域が、
配列番号1の相補性決定領域重鎖1(CDRH1)アミノ酸配列、
配列番号2のCDRH2アミノ酸配列、及び
配列番号3のCDRH3アミノ酸配列、を含み、
前記患者が、前記抗体に対する反応者と見なされ、前記患者が、前記抗体に対する反応者である、方法。
【請求項2】
前記抗体が、初回投与、前記初回投与の約4週間後の投与、及び前記初回投与の約8週間後の投与で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記初回投与並びに前記初回投与の約4週間後の前記投与及び前記初回投与の約8週間後の前記投与が、約200mg又は約400mgの前記抗体である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記初回投与、前記初回投与の約4週間後の前記投与、及び前記初回投与の約8週間後の前記投与について、前記抗体が静脈内投与される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記初回投与の約8週間後の前記投与を行った後、約4週間毎に、前記抗体の維持投与を行うことを更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記維持投与が、約200mgの抗体であり、皮下投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記患者が、臨床エンドポイントを満たすと同定されることにより、前記抗体に対する反応者である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記臨床エンドポイントが、修正ロッドナン皮膚スコア(mRSS)におけるベースラインからの変化である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記臨床エンドポイントが、前記初回投与の約24週間後に測定される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記臨床エンドポイントが、mRSSにおけるベースラインからの変化、mRSSの悪化、dcSScにおける米国リウマチ学会(American College of Rheumatology)の複合反応指数(ACR CRISS)において0.6のスコアを達成すること、努力性肺活量(FVC)及び予測FVCパーセントのベースラインからの変化、一酸化炭素に対する肺の絶対拡散能(DLCO)測定値及び算出パーセント予測DLCOにおけるベースラインからの変化、ベースラインで指潰瘍を有する患者における指潰瘍数のベースラインからの変化、健康評価質問票-障害指数(HAQ-DI)スコアにおけるベースラインからの変化、からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記臨床エンドポイントが、初回治療の約24週間後、52週間後、及び/又は104週間後に測定される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記臨床エンドポイントが、初回治療の約24週間後に測定される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記抗体が、配列番号8の軽鎖可変領域アミノ酸配列及び配列番号7の重鎖可変領域アミノ酸配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記抗体が、配列番号10の軽鎖アミノ酸配列及び配列番号9の重鎖アミノ酸配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記抗体が、前記医薬組成物の7.9%(w/v)のスクロース、4.0mMのヒスチジン、6.9mMのL-ヒスチジン一塩酸塩一水和物と、0.053%(w/v)のポリソルベート80と、を含む組成物中に存在し、希釈剤は、標準状態の水である、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
SScを治療するために使用される1つ以上の追加の薬物を前記患者に投与することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記追加の薬物が、免疫抑制剤、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、メトトレキサート(MTX)、抗B細胞表面マーカー抗体、抗CD20抗体、リツキシマブ、TNF阻害剤、コルチコステロイド、及び共刺激調節剤からなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
患者におけるSScを治療する方法であって、
(i)400mgのIL23特異的抗体の初回静脈内投与、と、(ii)前記初期投与の約4週間後の、400mgの前記抗体の静脈内投与と、(iii)前記初期投与の約8週間後の、400mgの前記抗体の静脈内投与と、iv)前記初期投与の約8週間後における投与の後、約4週間毎、200mgの前記抗体の皮下投与とを、患者に行うことを含み、
前記抗体は、配列番号8の軽鎖可変領域アミノ酸配列及び配列番号7の重鎖可変領域アミノ酸配列を含み、前記患者は、前記初回投与の約24週間後に臨床エンドポイントを満たすと同定されることにより、前記抗体に対する反応者であり、
前記臨床エンドポイントが、修正ロッドナン皮膚スコア(mRSS)のベースラインからの変化である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
(電子的に提出された配列表の参照)
本出願は、XML形式の配列表として米国特許商標庁特許センターを介して電子的に提出された、ファイル名「JBI6681WOPCT1 Sequence Listing.xml」、作成日2022年12月12日、サイズ11kbの配列表を含む。特許センターを介して提出された配列表は、本明細書の一部であり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、ヒトIL23に結合する抗体を用いて全身性硬化症を治療する方法を対象とする。具体的には、本発明は、抗IL23特異的抗体及び抗体の特定の医薬組成物を投与するための、用量及び投薬レジメン並びに使用及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
全身性硬化症(SSc)は、慢性かつしばしば進行性の経過を伴う、皮膚の肥厚及び硬化並びに内臓(胃腸管、心臓、肺、及び腎臓)での合併症を特徴とする複雑な自己免疫疾患である。SScの臨床的特徴の1つはその患者間変動性であり、臨床症状、自己抗体プロファイル、疾患進行、治療に対する応答、及び生存性における不均一性が観察されている。それらの皮膚への関わりの程度に基づいて、患者は、限定皮膚SSc(lcSSc)サブセット及びびまん性皮膚SSc(dcSSc)サブセットに分類される。lcSScでは、皮膚線維症は、指(強指症)、四肢遠位部、及び顔に限定される。他方、dcSScを有する患者は、lcSScと比較して、体幹及び四肢近位部を含む領域における皮膚線維症、広範な皮膚変化を伴う比較的急速な疾患進行、及び内臓での合併症の早期発症を有する。全身硬化症は、日本においては難病に指定されており、日本難病情報センターによると、2018年において中度から重度のSSc患者数は26,740人だった。世界中で、SScの有病率は、百万人あたり7~489人の範囲であり、発生率は、毎年百万人あたり0.6~122人の範囲であった。
【0004】
全身性硬化症は、現在の治療の大部分が、限られた有効性しか有しないために、高い疾病負荷及び満たされていない医学的必要性を有する。SScの自然経過に有意に影響を及ぼす薬物はなく、SSc全体の治療に対して承認されている高度な治療はない。dcSScにおける自家造血幹細胞移植(HSCT)の臨床試験では、皮膚及び肺の線維症、並びに健康関連の生活の質における有意義な改善を含む、延命効果が実証されている。しかしながら、これらの利益は、移植関連死亡のリスクの増加(これは、SScの治療におけるHSCTのより広い使用を制限するものである)と比較検討されなければならない。
【0005】
生存率は、ここ数十年で改善され、臨床疾患サブタイプ(dcSSc対lcSSc)及び臓器における合併症の程度と最もよく相関する。dcSScを有する患者の5年生存率は、1990~1993年のコホートにおける69%から2000~2003年のコホートにおける84%に有意に改善した。lcSScを有する患者の5年生存率は非常に高いレベルを維持しており、上と同じ期間で変化しなかった(それぞれ93%及び91%であった)。
【0006】
強皮症腎クリーゼに関連する死亡率は、アンジオテンシン変換酵素阻害剤の使用と共に、ここ数十年の間に有意に低下した。対照的に、肺合併症(ILD及び/又は肺動脈高血圧症)は、SScを有する患者における最も一般的な死因となっている。関節リウマチ(RA)とは対照的に、病理及び臨床的影響を減弱又は逆転させる疾患修飾療法の概念及び使用は、現在、SScに適用されていない。
【0007】
様々な薬物が、特定の症状又は器官系を治療するために使用される。低用量コルチコステロイドは、急性進行性患者の皮膚硬化に有用であり得るが、腎クリーゼにかかりやすくなり得るので、必要な場合にのみ使用される。チロシンキナーゼ阻害剤であるニンテダニブは、SScに関連するILDの治療用に承認済みである。メトトレキサート、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル、及びシクロホスファミドを含む種々の免疫抑制剤は、肺胞炎の助けとなり得る。ミコフェノール酸モフェチルは、ILDの治療にも有効である。プロスタサイクリン及びエンドセリン受容体アンタゴニストは、肺高血圧症に使用される。カルシウムチャネル遮断薬は、レイノー現象の助けとなり得る。プロスタグランジンE1又はプロスタサイクリン又は交感神経遮断薬の静脈内(IV)注入は、指虚血に使用することができる。逆流性食道炎は、プロトンポンプ阻害剤によって軽減される。
【0008】
SSc症状のいくつかを治療するために様々な薬剤が使用されているが、SScに対する明確な有効性及び安全性プロファイルを有する疾患修飾療法に対して、未だに満たされていない高い医学的ニーズが依然として存在する。
【0009】
インターロイキン(IL)-12は、2つのジスルフィド結合グリコシル化タンパク質サブユニット(それらのおよその分子量に関してp35及びp40と表記される)で構成された分泌型ヘテロ二量体サイトカインである。IL-12は主に抗原提示細胞によって産生され、T細胞又はナチュラルキラー(NK)細胞の表面上に発現される2鎖受容体複合体に結合することによって細胞媒介性免疫を促進する。IL-12受容体ベータ-1(IL-12Rβ1)鎖は、IL-12のp40サブユニットに結合し、IL-12とその受容体との間の一次相互作用をもたらす。しかしながら、細胞内シグナル伝達(例えば、STAT4リン酸化)及び受容体保有細胞の活性化を付与するのは、第2の受容体鎖であるIL-12Rβ2のIL-12p35ライゲーションである(Presky et al,1996)。抗原提示と同時に起こるIL-12シグナル伝達は、インターフェロンガンマ(IFNγ)産生を特徴とするTヘルパー1(Th1)表現型へのT細胞分化を引き起こすと考えられている(Trinchieri,2003)。Th1細胞は、いくつかの細胞内病原体に対する免疫を促進し、補結抗体アイソタイプを生成し、腫瘍免疫監視に寄与すると考えられる。それ故に、IL-12は、宿主防御免疫機構にとって重要な構成要素であると考えられる。
【0010】
IL-12のp40タンパク質サブユニットは、p19と表記される別個のタンパク質サブユニットと会合して、新規サイトカインであるIL-23を形成することもできることが発見された(Oppman et al,2000)。IL-23も2鎖受容体複合体を介してシグナル伝達する。p40サブユニットがIL-12とIL-23との間で共有されるため、IL-12Rβ1鎖もIL-12とIL-23との間で共有されることになる。しかしながら、IL-23特異的細胞内シグナル伝達(例えば、STAT3リン酸化)及びその後のT細胞によるIL-17産生を付与するのは、IL-23受容体複合体であるIL-23Rの第2の構成要素のIL-23p19ライゲーションである(Parham et al,2002、Aggarwal et al,2003)。最近の研究は、IL-23の生物学的機能とIL-12の生物学的機能が、これらの2つのサイトカイン間の構造的類似性にもかかわらず、異なることを示した(Langrish et al,2005)。
【0011】
抗体によるIL-12の中和が、乾癬、多発性硬化症(MS)、関節リウマチ、炎症性腸疾患、インスリン依存性(1型)真性糖尿病、及びブドウ膜炎の動物モデルの治療において有効であるため、IL-12及びTh1細胞集団の異常な制御は、多くの免疫媒介性疾患に関連している(Leonard et al,1995、Hong et al,1999、Malfait et al,1998、Davidson et al,1998)。しかしながら、これらの研究は共通のp40サブユニットを標的化しているため、IL-12及びIL-23の両方をインビボで中和した。したがって、IL-12又はIL-23が疾患を媒介していたかどうか、あるいは疾患の抑制を達成するために両サイトカインが阻害される必要があるかは明らかではない。最近の研究は、IL-23阻害が抗IL-12p40戦略と同等の利益を提供し得ることを、IL-23p19欠損マウス又はIL-23の特異的抗体中和により確認した(Cua et al,2003、Murphy et al,2003、Benson et al 2004)。
【0012】
SScの病因は複雑かつ多因子性であるが、蓄積された証拠は、IL23/IL-17経路がSScの病態生理に関与していることを示唆している。いくつかの臨床研究は、血清IL-23/IL-17及び皮膚IL-23が、健康なボランティアと比較して、SSc患者において増加することを示している。血清IL-23レベルと
間質性の肺の合併症の重症度/程度との相関関係が、SScを有する患者において観察された。
【0013】
ある症例の報告は、ウステキヌマブ(IL-12及びIL-23に対するmAb)が、乾癬及びSScの両方を有する患者において、皮膚の硬化を首尾よく改善したことを示した。日本では、SScを有する対象においてブロダルマブ、IL-17R抗体を評価するための第3相臨床治験が進行中である。先行するブロダルマブ第1b相治験(n=8)(NCT04368403)の結果は、公的に入手可能ではないが、第1相試験の効力及び安全転帰を評価して、現在進行中の第3相試験が開始された。
【0014】
総合すると、これらの観察は、SScの参加者におけるグセルクマブのこの概念実証(PoC)試験において、SScの発症過程におけるIL-23の機能を調査するのに十分な根拠を提供する。
【0015】
要約すると、SScに対する新たな治療選択肢、特に、有効性バーを上昇させ、臨床寛解を達成及び維持する患者の割合を最大化する可能性を有する新規な作用機序を有する療法に対する、相当な医学的必要性が依然として満たされておらずに存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
第1の態様において、本発明は、抗IL23特異的抗体(IL23p19又はIL23p19サブユニット抗体とも呼ばれる)、例えばグセルクマブを、治療の開始時の初回投与及びその後の時間間隔で、好ましくは初回投与後約4週間毎に、例えば0、4、8、12、16、20、24、28、32、36、40、44、及び/又は48週間目の投与で投与することを含む、SScに罹患している対象(患者)を治療する方法に関する。更に、別の一実施形態では、治療は、治療開始後96週間以上継続する。
【0017】
別の一態様において、本発明は、対象におけるSScの治療のための抗IL23特異的抗体、例えばグセルクマブの使用であって、抗体が、治療の開始時の初回投与及びその後の時間間隔で、好ましくは初回投与後約4週間毎に、例えば、0、4、8、12、16、20、24、28、32、36、40、44、及び/又は48週間目の投与で投与される使用に関する。更に、別の一実施形態では、治療は、治療開始後96週間以上継続する。
【0018】
一実施形態では、対象は、抗IL23特異的抗体を、(i)初回に400mg投与し、初回投与の4週間後に、及び初回投与の8週間後に静脈内投与され、(ii)その後は4週間毎に、200mgの投与で、抗IL23特異的抗体の皮下投与による治療を継続する。
【0019】
別の一態様では、本発明の方法で使用される組成物は、抗IL23特異的抗体を含む医薬組成物を含む。
【0020】
一実施形態において、SSc患者は、以下からなる群から選択される臨床エンドポイント及び/又は探索的エンドポイントにおいて有意な改善を達成する。
(i) mRSSにおけるベースラインからの変化、
(ii) mRSSの悪化、
(iii) dcSScにおける米国リウマチ学会(American College of Rheumatology)の複合反応指標(Combined Response Index)(ACR CRISS)において0.6のスコアを達成すること、
(iv) 努力性肺活量(forced vital capacity、FVC)及び予測FVCパーセントのベースラインからの変化、
(v) 一酸化炭素に対する肺の絶対拡散能(DLCO)測定値及び算出パーセント予測DLCO(derived percent predicted DLCO)におけるベースラインからの変化、
(vi) ベースラインで指潰瘍を有する患者における指潰瘍数のベースラインからの変化、
(vii) 健康評価質問票-障害指数(Health Assessment Questionnaire-Disability Index、HAQ-DI)スコアにおけるベースラインからの変化、
(viii) 胃食道逆流症の症状(Frequency Scale for the Symptoms of Gastroesophageal reflux disease、FSSG)スコアの頻度スケールにおけるベースラインからの変化、
(ix) 高分解能コンピュータ断層撮影(high-resolution computed tomography、HRCT)で評価される線維性変化のベースラインからの変化及び線維性変化の悪化、並びに
(x) 患者全体評価(Patient global assessment、PGA)及び/又は医師全体評価(Physician global assessment、PhGA)における、毛細血管鏡検査評価におけるベースラインからの変化。
【0021】
好ましい実施形態において、エンドポイントは、初回治療の約24、52又は104週間後に測定され得る。
【0022】
本発明の別の一態様では、医薬組成物は、任意選択で、医薬組成物の7.9%(w/v)スクロース、4.0mMヒスチジン、6.9mM L-ヒスチジン一塩酸塩一水和物、0.053%(w/v)のポリソルベート80の組成物中に存在する、(i)配列番号1、配列番号2、及び配列番号3の重鎖CDRアミノ酸配列と、(ii)配列番号4、配列番号5、及び配列番号6の軽鎖CDRアミノ酸配列と、を含むCDR配列を有する単離抗IL23特異的抗体を含み、希釈剤は標準状態の水である。
【0023】
本発明の方法の別の態様は、任意選択で、医薬組成物の7.9%(w/v)スクロース、4.0mMヒスチジン、6.9mM L-ヒスチジン一塩酸塩一水和物、0.053%(w/v)のポリソルベート80の組成物中に存在する、配列番号7の重鎖可変領域アミノ酸配列と、配列番号8の軽鎖可変領域アミノ酸配列と、を有する単離抗IL23特異的抗体を含む当該医薬組成物を投与することを含み、希釈剤は、本明細書に記載の用量及び投与計画に従ってSScで患者を治療する際に使用するための標準状態の水である。
【0024】
本発明の方法の更なる態様は、任意選択で、医薬組成物の7.9%(w/v)スクロース、4.0mMヒスチジン、6.9mM L-ヒスチジン一塩酸塩一水和物、0.053%(w/v)ポリソルベート80の組成物中に存在する、配列番号9の重鎖アミノ酸配列と、配列番号10の軽鎖アミノ酸配列と、を有する単離抗IL23特異的抗体を含む当該医薬組成物を投与することを含み、希釈剤は標準状態の水である。
【0025】
なお更なる実施形態において、本発明の方法は、任意選択で医薬組成物の7.9%(w/v)スクロース、4.0mMヒスチジン、6.9mM L-ヒスチジン一塩酸塩一水和物、0.053%(w/v)ポリソルベート80の組成物中に存在する、抗体グセルクマブ(Janssen Biotech,IncによってTremfya(登録商標)として販売されている)を含む当該医薬組成物を投与することを含み、希釈剤は標準状態の水である。
【0026】
本発明の1つ又は2つ以上の実施形態の詳細は、下記の説明に述べられている。他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明、図面、及び添付の特許請求の範囲から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本明細書に記載の主たる治験の概略図を示す。略語:DBL=データベースロック;IV=静脈内;N=参加者数;PE=主要エンドポイント;R=ランダム化;SC=皮下;SE=二次エンドポイント
【
図2】本明細書に記載のLTE試験の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書で使用される場合、SScに罹患している対象の治療方法は、単離された、組換え、及び/又は合成抗IL-23特異的ヒト抗体の投与を行うことを含み、並びに診断用及び治療用組成物、方法、及びデバイスを含む。
【0029】
本明細書で使用する場合、「抗IL-23特異的抗体」、「抗IL-23抗体」、「抗体部分」、又は「抗体断片」、及び/若しくは「抗体変異体」などは、本発明の抗体に組み込むことができる、重鎖若しくは軽鎖の少なくとも1つの相補性決定領域(complementarity determining region、CDR)若しくはそのリガンド結合部分、重鎖若しくは軽鎖可変領域、重鎖若しくは軽鎖定常領域、フレームワーク領域、又はこれらの任意の部分、あるいはIL-23受容体又は結合タンパク質の少なくとも一部分などであるが、これらに限定されない、免疫グロブリン分子の少なくとも一部を含む、任意のタンパク質又はペプチド含有分子を含む。このような抗体は、任意選択で、更に特異的なリガンドに影響を及ぼし、限定するものではないが、例えばこのような抗体は、インビトロ、インサイチュ、及び/又はインビボで、少なくとも1つのIL-23活性若しくは結合、又はIL-23受容体活性若しくは結合を、調節、低減、増大、拮抗、刺激、軽減、緩和、遮断、阻害、抑止する及び/又は妨げる。非限定的な例として、本発明の好適な抗IL-23抗体、特定された部分、又は変異体は、少なくとも1つのIL-23分子又はその特定された部分、変異体若しくはドメインに結合することができる。好適な抗IL-23抗体、特定された部分、又は変異体はまた、任意選択的に、少なくとも1つのIL-23活性又は機能にも影響を及ぼすことができ、そのような活性又は機能としては、RNA、DNA、若しくはタンパク質合成、IL-23の放出、IL-23受容体のシグナル伝達、膜IL-23の切断、IL-23活性、IL-23の産生、及び/又は合成などが挙げられるが、それらに限定されない。
【0030】
「抗体」という用語は、抗体模倣薬を含む、あるいは単鎖抗体及びその断片などといった抗体の構造及び/若しくは機能を模倣する抗体の部分又はその特定の断片若しくは一部分を含む、抗体、その消化断片、特定の部分、及び変異体を包含するよう更に意図されている。機能断片としては、哺乳動物のIL-23に結合する抗原結合断片が挙げられる。例えば、Fab(例えば、パパイン消化による)、Fab’(例えば、ペプシン消化及び部分的還元による)及びF(ab’)2(例えば、ペプシン消化による)、facb(例えば、プラスミン消化による)、pFc’(例えば、ペプシン又はプラスミン消化による)、Fd(例えば、ペプシン消化、部分的還元及び再集合による)、Fv又はscFv(例えば、分子生物学的技術による)断片が挙げられるがこれらに限定されない、IL-23又はその一部分に結合することができる抗体断片が、本発明に包含される(例えば、上記のColligan,Immunologyを参照)。
【0031】
かかる断片は、当該技術分野において既知であり、かつ/又は本明細書に記載される、酵素による切断、合成、又は組換え技術により生成することができる。抗体はまた、1つ又は2つ以上の終止コドンが天然終止部位の上流に導入されている抗体遺伝子を使用して、種々の切断型で産生することもできる。例えば、F(ab’)2重鎖部をコードする遺伝子の組み合わせは、重鎖のCH1ドメイン及び/又はヒンジ領域をコードするDNA配列を含むように設計することができる。抗体の様々な部分を従来の技術により化学的に結合でき、又は遺伝子工学技術を用いて隣接タンパク質(contiguous protein)として調製できる。
【0032】
本明細書で使用するとき、「ヒト抗体」という用語は、タンパク質の実質的に全ての部分(例えば、CDR、フレームワーク、CL、CHドメイン(例えば、CH1、CH2、CH3)、ヒンジ(VL、VH))がわずかな配列変化又は変異を有するだけでヒトにおいて実質的に非免疫原性である抗体を指す。「ヒト抗体」は、ヒト生殖細胞系列型免疫グロブリン配列に由来する抗体又はそれに厳密に一致する抗体である場合もある。ヒト抗体は、生殖細胞系列型免疫グロブリン配列にコードされていないアミノ酸残基(例えば、インビトロにおけるランダムな若しくは部位特異的な変異の導入により、又はインビボにおける体細胞変異により導入された変異)を含んでもよい。多くの場合、これは、ヒト抗体がヒトにおいて実質的に非免疫原性であることを意味する。ヒト抗体は、それらのアミノ酸配列の類似性に基づいて群に分類されている。したがって、配列類似性検索を使用して、類似の直鎖配列を有する抗体を、ヒト抗体を作り出すためのテンプレートとして選択することができる。同様に、名称に霊長類(サル、ヒヒ、チンパンジーなど)、げっ歯類(マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ハムスターなど)、及び他の哺乳動物を含む抗体は、かかる種、亜属、属、亜科、及び科に特異的な抗体を指定する。更に、キメラ抗体は、上記の任意の組み合わせを含むことができる。かかる変化又は変異は、任意選択でかつ好ましくは、修飾されていない抗体に比べて、ヒト又は他の種における免疫原性を保持する又は低減させる。したがって、ヒト抗体は、キメラ抗体又はヒト化抗体とは異なる。
【0033】
ヒト抗体は、機能的に再構成されたヒト免疫グロブリン(例えば、重鎖及び/又は軽鎖)遺伝子を発現することができる非ヒト動物又は原核若しくは真核細胞により産生され得ることが指摘される。更に、ヒト抗体が単鎖抗体である場合、天然ヒト抗体では見られないリンカーペプチドを含むことができる。例えば、Fvは、重鎖の可変領域と軽鎖の可変領域とを接続する2~約8個のグリシン又は他のアミノ酸残基などのリンカーペプチドを含むことができる。かかるリンカーペプチドは、ヒト由来のものと見なされる。
【0034】
また、少なくとも2つの異なる抗原に対して結合特異性を有するモノクローナルの、好ましくはヒト抗体又はヒト化抗体である、二重特異的抗体、異種特異的抗体、異種結合性抗体、又は類似の抗体を使用してもよい。この場合、結合特異性のうち一方は少なくとも1つのIL-23タンパク質に対するものであり、他方は任意の他の抗原に対するものである。二重特異性抗体の製造方法は、当該技術分野において既知である。従来、二重特異性抗体の組換え産生は、2種の免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の共発現に基づき、ここで、2本の重鎖は異なる特異性を有する(Milstein and Cuello,Nature 305:537(1983))。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の無作為な組み合わせのために、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は10種の異なる抗体分子の可能な混合物を産生し、これらのうち1種のみが正しい二重特異的構造を有する。正確な分子の精製(通常アフィニティクロマトグラフィ工程により行われる)はかなり面倒であり、生成物の収率は低い。類似する手順が、例えば、国際公開第93/08829号、米国特許第6210668号、同第6193967号、同第6132992号、同第6106833号、同第6060285号、同第6037453号、同第6010902号、同第5989530号、同第5959084号、同第5959083号、同第5932448号、同第5833985号、同第5821333号、同第5807706号、同第5643759号、同第5601819号、同第5582996号、同第5496549号、同第4676980号、国際公開第91/00360号、同第92/00373号、欧州特許第03089号、Traunecker et al.,EMBO J.10:3655(1991)、Suresh et al.,Methods in Enzymology 121:210(1986)に開示されており、これらの各々は、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0035】
本発明の方法及び組成物において有用である抗IL-23特異的抗体(IL-23特異的抗体とも称される)(又はIL-23に対する抗体)は、IL-23への高親和性結合、並びに任意選択でかつ好ましくは、低毒性を有することを、任意選択で特徴とし得る。具体的には、可変領域、定常領域、及びフレームワークなどの個々の構成要素が、個々に及び/又は集合的に、任意選択でかつ好ましくは、低い免疫原性を有する、本発明の抗体、その特定の断片、又は変異体が本発明において有用である。本発明で使用することができる抗体は、任意選択で、症状の測定可能な緩和並びに低い及び/又は許容される毒性で、患者を長期間にわたって治療する能力を特徴とする。低い若しくは許容される免疫原性、及び/又は高い親和性、並びに他の好適な特性が、得られる治療結果に寄与することができる。「低い免疫原性」は、本明細書では、治療される患者の約75%未満、若しくは好ましくは約50%未満において有意なHAHA、HACA、若しくはHAMA応答を上昇させる、及び/又は治療される患者において低い力価(二重抗原酵素免疫アッセイで測定したとき約300未満、好ましくは約100未満)を上昇させることとして定義される(参照により全体が本明細書に組み込まれる、Elliott et al.,Lancet 344:1125-1127(1994))。「低い免疫原性」は、治療期間中の推奨治療過程にわたって推奨用量で治療された患者の25%未満、好ましくは治療された患者の10%未満で発生したとき、抗IL-23抗体で治療された患者における抗IL-23抗体に対する漸増可能なレベルの抗体の発生率として定義することもできる。
【0036】
「安全」という用語は、本発明の抗IL-23抗体(例えば、抗IL-23抗体グセルクマブ)による投与、投与レジメン、治療又は方法に関するとき、標準的治療又は別の比較基準と比較して、例えば、実施される臨床試験、例えば、第2相臨床試験、及びそれ以前の臨床試験からの、治療中に発生した有害事象(AE又はTEAEと称される)の比較的低い若しくは低減された頻度及び/又は低い若しくは低減された重症度を指す。有害事象とは、医薬品を投与された患者における好ましくない医療上の出来事である。特に、本発明の抗IL-23抗体による投与、投与レジメン又は治療に関連するとき、臨床的に証明された安全は、原因が抗IL-23抗体の使用による可能性がある、確率が高い、又は非常に可能性が高いと考えられる場合、抗体の投与に関連する有害事象の比較的低い若しくは低減された頻度及び/又は低い若しくは低減された重症度を指す。
【0037】
有用性
本発明の単離された核酸は、少なくとも1つの抗IL-23抗体又はその特定の変異体の産生に使用することができ、本抗体又は変異体は、SScの症状を診断、観察、調節、治療、緩和し、その発生の防止を支援、又はその症状を低減するために、細胞、組織、器官、又は動物(哺乳動物及びヒトを含む)を測定するために又はそれらに作用させるために使用することができる。
【0038】
かかる方法は、症状、作用、又は機序のかかる調節、治療、緩和、予防、若しくは低減を必要としている細胞、組織、器官、動物又は患者に、少なくとも1つの抗IL-23抗体を含む有効量の組成物又は医薬組成物を投与することを含み得る。有効量は、本明細書に記載される、又は関連分野で既知である、既知の方法を使用して行われかつ決定される、単回(例えば、ボーラス)、複数回、若しくは持続投与当たり約0.001~500mg/kgの量、又は単回、複数回、若しくは持続投与当たり0.01~5000μg/mLの血清中濃度を達成する量、又はそれらの中の任意の有効範囲若しくは値を含むことができる。
【0039】
引用文献
本明細書で引用する全ての刊行物又は特許は、具体的な指定の有無にかかわらず、参照によりその全体が本明細書に組み込まれ、本発明の時点での先行技術を示し、かつ/又は本発明の説明及び実施可能性を提供する。刊行物は、電子形式若しくは印刷形式で記録されたものを全て含む任意のメディア形式で利用可能な、任意の科学刊行物若しくは特許公報又は任意の他の情報を指す。以下の文献は、参照により全体が本明細書に組み込まれる:Ausubel,et al.,ed.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,Inc.,NY,NY(1987-2001)、Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition,Cold Spring Harbor,NY(1989)、Harlow and Lane,antibodies,a Laboratory Manual,Cold Spring Harbor,NY(1989)、Colligan,et al.,eds.,Current Protocols in Immunology,John Wiley & Sons,Inc.,NY(1994-2001)、Colligan et al.,Current Protocols in Protein Science,John Wiley & Sons,NY,NY,(1997-2001)。
【0040】
本発明の抗体-産生及び生成
本発明の方法に使用される少なくとも1つの抗IL-23は、任意選択で、当該技術分野において周知の細胞株、混合細胞株、不死化細胞、又は不死化細胞のクローン集団によって産生することができる。例えば、各々参照により全体が本明細書に組み込まれる、Ausubel,et al.,ed.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,Inc.,NY,NY(1987-2001)、Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition,Cold Spring Harbor,NY(1989)、Harlow and Lane,antibodies,a Laboratory Manual,Cold Spring Harbor,NY(1989)、Colligan,et al.,eds.,Current Protocols in Immunology,John Wiley & Sons,Inc.,NY(1994-2001)、Colligan et al.,Current Protocols in Protein Science,John Wiley & Sons,NY,NY,(1997-2001)を参照されたい。
【0041】
好ましい抗IL-23抗体は、配列番号7の重鎖可変領域アミノ酸配列及び配列番号8の軽鎖可変領域アミノ酸配列、並びに、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3の重鎖CDRアミノ酸配列及び配列番号4、配列番号5、及び配列番号6の軽鎖CDRアミノ酸配列を有するグセルクマブ(CNTO1959とも呼ばれる)である。他の抗IL-23抗体は本明細書に列挙される配列を有し、全内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,935,344号に記載されている。
【0042】
ヒトIL-23タンパク質又はその断片に特異的なヒト抗体は、単離されたIL-23タンパク質及び/又はそれらの一部(合成ペプチドなどの合成分子を含む)などの適切な免疫原性抗原に対して生じ得る。他の特異的な又は一般的な哺乳動物の抗体も同様に産生させることができる。免疫原性抗原の調製及びモノクローナル抗体の産生は、任意の好適な技術を使用して行うことができる。
【0043】
1つのアプローチでは、適切な不死細胞株(例えば、限定されるものではないが、Sp2/0、Sp2/0-AG14、NSO、NS1、NS2、AE-1、L.5、L243、P3X63Ag8.653、Sp2 SA3、Sp2 MAI、Sp2 SS1、Sp2 SA5、U937、MLA 144、ACT IV、MOLT4、DA-1、JURKAT、WEHI、K-562、COS、RAJI、NIH 3T3、HL-60、MLA 144、NAMALWA、NEURO 2Aなどの骨髄腫細胞株、又はヘテロミローマス、その融合産物、又はそれに由来する任意の細胞若しくは融合細胞、又は当該技術分野において周知の任意のその他の好適な細胞株)(例えば、www.atcc.org、www.lifetech.com.などを参照されたい)を、限定されるものではないが、単離された又はクローン化された脾臓、末梢血、リンパ、扁桃腺、又はその他の免疫若しくはB細胞含有細胞などの抗体産生細胞、あるいは内因性又は異種核酸として、組換え若しくは内因性、ウイルス、細菌、藻、原核生物、両生類、昆虫、爬虫類、魚、哺乳動物、げっ歯類、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ヒツジ、霊長類、真核生物、ゲノムDNA、cDNA、rDNA、ミトコンドリアDNA若しくはRNA、葉緑体DNA若しくはRNA、hnRNA、mRNA、tRNA、単一、二重若しくは三重鎖、ハイブリダイズなど、又はそれらの任意の組み合わせとしてのいずれかで、重鎖又は軽鎖の定常若しくは可変、又はフレームワーク若しくはCDR配列を発現する任意のその他の細胞と融合することにより、ハイブリドーマを産生する。例えば、参照により全体が本明細書に組み込まれる、上記のAusubel、及び上記のColligan,Immunologyの第2章を参照されたい。
【0044】
抗体産生細胞は、目的とする抗原で免疫化されたヒト又は他の好適な動物の末梢血、又は好ましくは脾臓若しくはリンパ節から得ることもできる。任意の他の好適な宿主細胞を使用して、本発明の抗体、その特定の断片又は変異体をコードする異種核酸若しくは内在核酸を発現させることもできる。融合細胞(ハイブリドーマ)又は組換え細胞は、選択的培養条件又は他の好適な既知の方法を使用して単離し、限界希釈若しくは細胞選別又は他の既知の方法によってクローニングすることができる。所望の特異性を有する抗体を産生する細胞は、好適なアッセイ(例えば、ELISA)によって選択することができる。
【0045】
ペプチド又はタンパク質ライブラリから組換え抗体を選択する方法が挙げられるが、これらに限定されない、必要とされる特異性を有する抗体を産生又は単離するのに好適な他の方法を使用することができる(例えば、バクテリオファージ、リボソーム、オリゴヌクレオチド、RNA、cDNAなどのディスプレイライブラリであるが、これらに限定されず、例えば、Cambridge antibody Technologies,Cambridgeshire,UK、MorphoSys,Martinsreid/Planegg,DE、Biovation,Aberdeen,Scotland,UK、BioInvent,Lund,Sweden、Dyax Corp.,Enzon,Affymax/Biosite、Xoma,Berkeley,CA、Ixsys.から入手可能である)。例えば、欧州特許第368,684号、国際出願第GB91/01134号、国際出願第GB92/01755号、国際出願第GB92/002240号、国際出願第GB92/00883号、国際出願第GB93/00605号、米国特許出願第08/350260号(5/12/94)、国際出願第GB94/01422号、国際出願第GB94/02662号、国際出願第GB97/01835号、(CAT/MRC)、国際公開第90/14443号、国際公開第90/14424号、国際公開第90/14430号、国際出願第US94/1234号、国際公開第92/18619号、国際公開第96/07754号、(Scripps)、国際公開第96/13583号、国際公開第97/08320号(MorphoSys)、国際公開第95/16027号(BioInvent)、国際公開第88/06630号、国際公開第90/3809号(Dyax)、米国特許第4,704,692号(Enzon)、国際出願第US91/02989号(Affymax)、国際公開第89/06283号、欧州特許第371998号、欧州特許第550400号、(Xoma)、欧州特許第229046号、国際出願第US91/07149号(Ixsys)、又は確率論的に生成されるペプチド若しくはタンパク質-米国特許第5723323号、同第5763192号、同第5814476号、同第5817483号、同第5824514号、同第5976862号、国際公開第86/05803号、欧州特許第590689号(Ixsys、適用された分子進化(Applied Molecular Evolution、AME)の前身、各々参照により全体が本明細書に組み込まれる)か、又は当該技術分野において既知であり、かつ/若しくは本明細書に記載される、ヒト抗体のレパートリーを産生することができるトランスジェニック動物の免疫化に依存する(例えば、SCIDマウス、各々参照により全体が組み込まれる、Nguyen et al.,Microbiol.Immunol.41:901-907(1997)、Sandhu et al.,Crit.Rev.Biotechnol.16:95-118(1996)、Eren et al.,Immunol.93:154-161(1998)、並びに関連特許及び出願)。かかる技術としては、リボソームディスプレイ(Hanes et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,94:4937-4942(May 1997)、Hanes et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,95:14130-14135(Nov.1998))、単一細胞抗体産生技術(例えば、選択リンパ球抗体方法(selected lymphocyte antibody method、「SLAM」)(米国特許第5,627,052号、Wen et al.,J.Immunol.17:887-892(1987)、Babcook et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:7843-7848(1996))、ゲルマイクロドロップレット及びフローサイトメトリー(Powell et al.,Biotechnol.8:333-337(1990)、One Cell Systems,Cambridge,MA、Gray et al.,J.Imm.Meth.182:155-163(1995)、Kenny et al.,Bio/Technol.13:787-790(1995))、B細胞選択物(Steenbakkers et al.,Molec.Biol.Reports 19:125-134(1994)、Jonak et al.,Progress Biotech,Vol.5,In Vitro Immunization in Hybridoma Technology,Borrebaeck,ed.,Elsevier Science Publishers B.V.,Amsterdam,Netherlands(1988))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
非ヒト抗体又はヒト抗体を操作又はヒト化するための方法も使用することができ、当該技術分野において既知である。概して、ヒト化抗体又は修飾抗体は、非ヒト、例えば、限定されるものではないが、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類、又は他の哺乳動物源由来の1つ又は2つ以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、「インポート」残基と多くの場合呼ばれる残基により置き換えられるが、この「インポート」残基は、典型的には既知のヒト配列の「インポート」可変ドメイン、定常ドメイン、又は他のドメインから得られる。
【0047】
既知のヒトIg配列が、例えば、:www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi、www.ncbi.nih.gov/igblast、www.atcc.org/phage/hdb.html、www.mrc-cpe.cam.ac.uk/ALIGNMENTS.php、www.kabatdatabase.com/top.html、ftp.ncbi.nih.gov/repository/kabat、www.sciquest.com、www.abcam.com、www.antibodyresource.com/onlinecomp.html、www.public.iastate.edu/~pedro/research_tools.html、www.whfreeman.com/immunology/CH05/kuby05.htm、www.hhmi.org/grants/lectures/1996/vlab、www.path.cam.ac.uk/~mrc7/mikeimages.html、mcb.harvard.edu/BioLinks/Immunology.html、www.immunologylink.com、pathbox.wustl.edu/~hcenter/index.html、www.appliedbiosystems.com、www.nal.usda.gov/awic/pubs/antibody、www.m.ehime-u.ac.jp/~yasuhito/Elisa.html、www.biodesign.com、www.cancerresearchuk.org、www.biotech.ufl.edu、www.isac-net.org、baserv.uci.kun.nl/~jraats/links1.html、www.recab.uni-hd.de/immuno.bme.nwu.edu、www.mrc-cpe.cam.ac.uk、www.ibt.unam.mx/vir/V_mice.html、http://www.bioinf.org.uk/abs、antibody.bath.ac.uk、www.unizh.ch、www.cryst.bbk.ac.uk/~ubcg07s、www.nimr.mrc.ac.uk/CC/ccaewg/ccaewg.html、www.path.cam.ac.uk/~mrc7/humanisation/TAHHP.html、www.ibt.unam.mx/vir/structure/stat_aim.html、www.biosci.missouri.edu/smithgp/index.html、www.jerini.de、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,U.S.Dept.Health(1983)に開示されている。
【0048】
かかるインポートされた配列を使用して、免疫原性を低減させるか、又は当該技術分野において既知であるように、結合、親和性、結合速度定数、解離速度定数、結合活性、特異性、半減期、若しくは任意の他の好適な特性を低減、増強、若しくは改変することができる。概して、CDR残基は、抗原結合に直接的にかつほとんど実質的に影響する。したがって、非ヒトCDR配列又はヒトCDR配列の一部又は全てを維持しつつ、可変領域及び定常領域の非ヒト配列をヒトアミノ酸又は他のアミノ酸に置き換えることもできる。
【0049】
抗体は、任意選択で、ヒト化されてもよい、又はヒト抗体は、抗原に対する高い親和性及び他の有利な生物学的特性を保持させたまま修飾させることができる。本目的を達成するためには、任意選択で、親配列及びヒト化配列の三次元モデルを使用して親配列及び種々の理論上のヒト化産物を解析するプロセスによって、ヒト化(又はヒト)抗体を調製することができる。三次元の免疫グロブリンモデルが一般的に利用可能であり、当業者に周知である。選択された免疫グロブリン配列候補について確率の高い三次元立体構造を図示及び表示するコンピュータプログラムが利用可能である。これらの表示を調べることにより、免疫グロブリン配列候補の機能において残基が示す可能性の高い働きの分析、すなわち免疫グロブリン候補の抗原結合能に影響する残基の分析が可能となる。このようにして、標的抗原に対する親和性の増強などといった所望の抗体特性が達成されるように、コンセンサス配列及びインポート配列からフレームワーク(FR)残基を選択し組み合わせることができる。
【0050】
加えて、本発明の方法に使用されるヒトIL-23特異的抗体は、ヒト生殖系列軽鎖フレームワークを含み得る。特定の実施形態では、軽鎖生殖系列配列は、A1、A10、A11、A14、A17、A18、A19、A2、A20、A23、A26、A27、A3、A30、A5、A7、B2、B3、L1、L10、L11、L12、L14、L15、L16、L18、L19、L2、L20、L22、L23、L24、L25、L4/18a、L5、L6、L8、L9、O1、O11、O12、O14、O18、O2、O4、及びO8を含むが、これらに限定されない、ヒトVK配列から選択される。ある特定の実施形態では、本軽鎖ヒト生殖系列フレームワークは、V1-11、V1-13、V1-16、V1-17、V1-18、V1-19、V1-2、V1-20、V1-22、V1-3、V1-4、V1-5、V1-7、V1-9、V2-1、V2-11、V2-13、V2-14、V2-15、V2-17、V2-19、V2-6、V2-7、V2-8、V3-2、V3-3、V3-4、V4-1、V4-2、V4-3、V4-4、V4-6、V5-1、V5-2、V5-4、及びV5-6から選択される。
【0051】
他の実施形態では、本発明の方法に使用されるヒトIL-23特異的抗体は、ヒト生殖細胞系列重鎖フレームワークを含み得る。特定の実施形態では、本重鎖ヒト生殖系列フレームワークは、VH1-18、VH1-2、VH1-24、VH1-3、VH1-45、VH1-46、VH1-58、VH1-69、VH1-8、VH2-26、VH2-5、VH2-70、VH3-11、VH3-13、VH3-15、VH3-16、VH3-20、VH3-21、VH3-23、VH3-30、VH3-33、VH3-35、VH3-38、VH3-43、VH3-48、VH3-49、VH3-53、VH3-64、VH3-66、VH3-7、VH3-72、VH3-73、VH3-74、VH3-9、VH4-28、VH4-31、VH4-34、VH4-39、VH4-4、VH4-59、VH4-61、VH5-51、VH6-1、及びVH7-81から選択される。
【0052】
特定の実施形態では、軽鎖可変領域及び/又は重鎖可変領域は、フレームワーク領域、又はフレームワーク領域の少なくとも一部分(例えば、FR2及びFR3などの2又は3つの小領域を含む)を含む。ある特定の実施形態では、少なくともFRL1、FRL2、FRL3、又はFRL4は、完全ヒトである。他の実施形態では、少なくともFRH1、FRH2、FRH3、又はFRH4は、完全ヒトである。いくつかの実施形態では、少なくともFRL1、FRL2、FRL3、又はFRL4は、生殖系列配列(例えば、ヒト生殖系列)であるか、又は特定のフレームワークのためのヒトコンセンサス配列(上述の既知のヒトIg配列の供給源で容易に入手可能である)を含む。他の実施形態では、少なくともFRH1、FRH2、FRH3、又はFRH4は、生殖系列配列(例えば、ヒト生殖系列)であるか、又は特定のフレームワークのためのヒトコンセンサス配列を含む。好ましい実施形態では、フレームワーク領域は、完全なヒトフレームワーク領域である。
【0053】
本発明の抗体のヒト化又は操作は、Winter(Jones et al.,Nature 321:522(1986)、Riechmann et al.,Nature 332:323(1988)、Verhoeyen et al.,Science 239:1534(1988))、Sims et al.,J.Immunol.151:2296(1993)、Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901(1987),Carter et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:4285(1992)、Presta et al.,J.Immunol.151:2623(1993)、米国特許第5723323号、同第5976862号、同第5824514号、同第5817483号、同第5814476号、同第5763192号、同第5723323号、同第5,766886号、同第5714352号、同第6204023号、同第6180370号、同第5693762号、同第5530101号、同第5585089号、同第5225539号、同第4816567号、国際出願第US98/16280号、同第US96/18978号、同第US91/09630号、同第US91/05939号、同第US94/01234号、国際出願第GB89/01334号、同第GB91/01134号、同第GB92/01755号、国際公開第90/14443号、同第90/14424号、同第90/14430号、欧州特許第229246号(各々参照により全体が明細書に組み込まれ、その中で引用される文献を含む)に記載されるものなどであるが、これらに限定されない、任意の既知の方法を使用して行うことができる。
【0054】
ある特定の実施形態では、抗体は、改変された(例えば、変異を導入された)Fc領域を含む。例えば、いくつかの実施形態では、Fc領域は、抗体のエフェクター機能を低減又は増強するように改変されている。いくつかの実施形態では、Fc領域は、IgM、IgA、IgG、IgE、又は他のアイソタイプから選択されるアイソタイプである。あるいは、又は加えて、アミノ酸修飾と、IL-23結合分子のFc領域のC1q結合及び/又は補体依存性細胞毒性機能を変更する1つ又は2つ以上の更なるアミノ酸修飾とを組み合わせることが有用であり得る。特に関心のある出発ポリペプチドは、C1qに結合するものであってもよく、補体依存性細胞毒性(complement dependent cytotoxicity、CDC)を示すものである。既存のC1q結合活性を有し、任意選択で、CDCを媒介する能力を更に有するポリペプチドは、これらの活性のうちの一方又は両方が増進するように修飾されてもよい。C1qを改変する、かつ/又はその補体依存性細胞傷害機能を修飾するアミノ酸修飾は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第0042072号に記載されている。
【0055】
上記に開示されるように、例えば、C1q結合及び/又はFcγR結合を修飾し、それにより、補体依存性細胞毒性(CDC)活性及び/又は抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity、ADCC)活性を変化させることによって、変更されたエフェクター機能を有する本発明のヒトIL-23特異的抗体のFc領域を設計することができる。「エフェクター機能」は、(例えば、対象における)生物学的活性を活性化する又は低減させる役割を果たす。エフェクター機能の例としては、C1q結合、CDC、Fc受容体結合、ADCC、貪食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体、BCR)のダウンレギュレーションなどが挙げられるが、これらに限定されない。かかるエフェクター機能は、Fc領域が、結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と結合することを必要とする場合があり、多種多用な試験法(例えば、Fc結合アッセイ、ADCCアッセイ、CDCアッセイなど)を使用して評価することができる。
【0056】
例えば、改善されたC1q結合及び改善されたFcγRIII結合を有する(例えば、改善されたADCC活性及び改善されたCDC活性の両方を有する)ヒトIL-23(又は抗IL-23)抗体の変異体Fc領域を生成することができる。あるいは、エフェクター機能を低減又は除去することが所望である場合、変異体Fc領域は、CDC活性を低減させるよう及び/又はADCC活性を低減させるよう修飾することができる。他の実施形態では、これらの活性のうちの1つのみが増強されてもよく、任意選択で、同時に他の活性が低減されてもよい(例えば、改善されたADCC活性と低減されたCDC活性を有するFc領域変異体、及びこの逆のFc領域変異体を生成するため)。
【0057】
Fc変異は、胎児性Fc受容体(neonatal Fc receptor、FcRn)との相互作用を改変し、それらの薬物動態特性を改善するように遺伝子を操作して、導入することもできる。FcRnへの結合を改善したヒトFc変異体の収集は、説明されている(Shields et al.,(2001).High resolution mapping of the binding site on human IgG1 for FcγRI,FcγRII、FcγRIII,and FcRn and design of IgG1 variants with improved binding to the FCγR、J.Biol.Chem.276:6591-6604)。
【0058】
別のタイプのアミノ酸置換は、ヒトIL-23特異的抗体のFc領域のグリコシル化パターンを改変するように働く。Fc領域のグリコシル化は、典型的に、N結合型又はO結合型のいずれかである。N結合型は、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合を指す。O結合型グリコシル化は、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリン又はスレオニンへの糖類、N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、又はキシロースのうちの1つの結合を指すが、5-ヒドロキシプロリン又は5-ヒドロキシリジンが使用される場合もある。アスパラギン側鎖ペプチド配列への炭水化物部分の酵素的結合のための認識配列は、アスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-スレオニンであり、ここで、Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸である。このため、ポリペプチド中にこれらのいずれかのペプチド配列が存在すると、潜在的なグリコシル化部位がもたらされる。
【0059】
グリコシル化パターンは、例えば、ポリペプチドに見出される1つ又は2つ以上のグリコシル化部位を欠失させること、及び/又はポリペプチド中に存在しない1つ又は2つ以上のグリコシル化部位を付加することによって改変され得る。ヒトIL-23特異的抗体のFc領域へのグリコシル化部位の付加は、上記のトリペプチド配列のうちの1つ又は2つ以上を含むようにアミノ酸配列を改変することによって首尾よく達成される(N結合型グリコシル化部位の場合)。代表的なグリコシル化変異体は、重鎖の残基Asn297のアミノ酸置換を有する。この改変は、元のポリペプチド配列への1つ又は2つ以上のセリン又はスレオニン残基の付加、又はこれらによる置換によって行われてもよい(O結合型グリコシル化部位の場合)。加えて、Asn 297をAlaに変更すると、グリコシル化部位の1つを除去することができる。
【0060】
ある特定の実施形態では、本発明のヒトIL-23特異的抗体は、GnT IIIがGlcNAcをヒトIL-23抗体に付加するように、ベータ(1,4)-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnT III)を発現する細胞において発現される。かかる様式で抗体を産生するための方法は、国際公開第9954342号、同第03011878号、特開第20030003097(A1)号、及びUmana et al.,Nature Biotechnology,17:176-180,Feb.1999に提供されており、これらは全て、参照によりそれらの全体が本明細書に明確に組み込まれる。
【0061】
抗IL-23抗体はまた、任意選択で、本明細書に記載及び/又は当該技術分野において既知であるように、ヒト抗体のレパートリーを生成することができるトランスジェニック動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、非ヒト霊長類など)の免疫化により生じる場合もある。ヒト抗IL-23抗体を産生する細胞は、本明細書に記載の方法のような好適な方法を使用して、かかる動物から単離し、不死化してもよい。
【0062】
ヒト抗原に結合するヒト抗体のレパートリーを産生することができるトランスジェニックマウスは、既知の方法(例えば、これらに限定されないが、各々参照により全体が本明細書に組み込まれる、Lonbergらに発行された米国特許第5,770,428号、同第5,569,825号、同第5,545,806号、同第5,625,126号、同第5,625,825号、同第5,633,425号、同第5,661,016号、及び同第5,789,650号、Jakobovitsらの国際公開第98/50433号、Jakobovitsらの国際公開第98/24893号、Lonbergらの国際公開第98/24884号、Lonbergらの国際公開第97/13852号、Lonbergらの国際公開第94/25585号、Kucherlapateらの国際公開第96/34096号、Kucherlapateらの欧州特許第0463151(B1)号、Kucherlapateらの欧州特許0710719(A1)号、Suraniらの米国特許第5,545,807号、Bruggemannらの国際公開第90/04036号、Bruggemannらの欧州特許第0438474(B1)号、Lonbergらの欧州特許第0814259(A2)号、Lonbergらの英国特許第2272440(A)号、Lonberg et al.Nature 368:856-859(1994),Taylor et al.,Int.Immunol.6(4)579-591(1994)、Green et al,Nature Genetics 7:13-21(1994)、Mendez et al.,Nature Genetics 15:146-156(1997)、Taylor et al.,Nucleic Acids Research 20(23):6287-6295(1992)、Tuaillon et al.,Proc Natl Acad Sci USA 90(8)3720-3724(1993)、Lonberg et al.,Int Rev Immunol 13(1):65-93(1995)、及びFishwald et al.,Nat Biotechnol 14(7):845-851(1996))によって生成することができる。概して、これらのマウスは、機能的に再構成された、又は機能的な再構成を受けることができる少なくとも1つのヒト免疫グロブリン遺伝子座に由来するDNAを含む、少なくとも1つの導入遺伝子を含む。かかるマウスの内因性免疫グロブリン遺伝子座を破壊又は欠失させて、マウスの、内因性遺伝子によりコードされている抗体の産生能を除去することができる。
【0063】
類似のタンパク質又は断片への特異的結合についての抗体のスクリーニングは、ペプチドディスプレイライブラリを使用して首尾よく達成することができる。本方法は、所望の機能又は構造をもつ個々のメンバーについてペプチドの大規模コレクションをスクリーニングすることを含む。ペプチドディスプレイライブラリの抗体スクリーニングは当該技術分野において周知である。ディスプレイされたペプチド配列は、3~5000又はそれ以上のアミノ酸長、高頻度で5~100アミノ酸長、多くの場合、約8~25アミノ酸長であることができる。ペプチドライブラリを作成する直接化学合成法に加えて、いくつかの組換えDNA方法も記述されている。1つのタイプは、バクテリオファージ又は細胞の表面上でのペプチド配列のディスプレイを含む。各バクテリオファージ又は細胞は、特定のディスプレイされたペプチド配列をコードするヌクレオチド配列を含有する。かかる方法は、国際公開第91/17271号、同第91/18980号、同第91/19818号、及び同第93/08278号に記載されている。
【0064】
ペプチドライブラリを作成するための他のシステムは、インビトロでの化学合成法及び組換え法の両方の態様を有する。国際公開第92/05258号、同第92/14843号、及び同第96/19256号を参照されたい。米国特許第5,658,754号及び同第5,643,768号も参照されたい。ペプチドディスプレイライブラリ、ベクター、及びスクリーニングキットは、Invitrogen(Carlsbad,CA)及びCambridge antibody Technologies(Cambridgeshire,UK)などの供給業者から市販されている。例えば、Enzonに譲渡された米国特許第4704692号、同第4939666号、同第4946778号、同第5260203号、同第5455030号、同第5518889号、同第5534621号、同第5656730号、同第5763733号、同第5767260号、同第5856456号、Dyaxに譲渡された米国特許第5223409号、同第5403484号、同第5571698号、同第5837500号、Affymaxに譲渡された米国特許第5427908号、同第5580717号、Cambridge antibody Technologiesに譲渡された米国特許第5885793号、Genentechに譲渡された米国特許第5750373号、Xomaに譲渡された米国特許第5618920号、同第5595898号、同第5576195号、同第5698435号、同第5693493号、同第5698417号、上記のColligan、上記のAusubel、又は上記のSambrookを参照されたい。上記特許及び刊行物は各々、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0065】
本発明の方法に使用される抗体は、このような抗体を乳中に産生するヤギ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ウサギなどのトランスジェニック動物又は哺乳動物を提供するために、核酸をコードする少なくとも1つの抗IL23抗体を使用して調製することもできる。かかる動物を、既知の方法を使用して提供することができる。例えば、限定されるものではないが、各々参照により全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第5,827,690号、同第5,849,992号、同第4,873,316号、同第5,849,992号、同第5,994,616号、同第5,565,362号、同第5,304,489号などを参照されたい。
【0066】
本発明の方法に使用される抗体は、植物部分又はそれから培養された細胞において、このような抗体、特定の部分、又は変異体を産生するトランスジェニック植物及び培養された植物細胞(例えば、タバコ及びトウモロコシであるが、これらに限定されない)を提供するために、核酸をコード化する少なくとも1つの抗IL23抗体を使用して更に調製することができる。非限定的な例として、例えば、誘導プロモータを用い、組換えタンパク質を発現するトランスジェニックタバコ葉をうまく使用して、大量の組換えタンパク質が提供されてきた。例えば、Cramer et al.,Curr.Top.Microbol.Immunol.240:95~118(1999)及びその中で引用される文献を参照されたい。また、トランスジェニックトウモロコシは、他の組換え系において産生されたタンパク質又は天然源から精製されたタンパク質に等しい生物学的活性を有する哺乳動物タンパク質を、商業生産レベルで発現させるために使用されてきた。例えば、Hood et al.,Adv.Exp.Med.Biol.464:127-147(1999)及びその中で引用される文献を参照されたい。抗体は、タバコ種子及びポテト塊茎を含む、単鎖抗体(single chain antibody、scFv)などの抗体断片を含むトランスジェニック植物の種子からも大量に生産されている。例えば、Conrad et al.,Plant Mol.Biol.38:101-109(1998)及びその中で引用される文献を参照されたい。したがって、本発明の抗体は、既知の方法に従って、トランスジェニック植物を使用して生産することもできる。例えば、Fischer et al.,Biotechnol.Appl.Biochem.30:99-108(Oct.,1999)、Ma et al.,Trends Biotechnol.13:522-7(1995)、Ma et al.,Plant Physiol.109:341-6(1995)、Whitelam et al.,Biochem.Soc.Trans.22:940-944(1994)、及びこれらの中で引用される文献も参照されたい。上記の文献は各々、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0067】
本発明の方法に使用される抗体は、広範囲にわたる親和性(KD)でヒトIL-23に結合することができる。好ましい実施形態では、ヒトmAbは、任意選択で、高い親和性でヒトIL-23に結合することができる。例えば、ヒトmAbは、ヒトIL-23を約10-7M以下、例えば、限定されないが、0.1~9.9(又はその中の任意の範囲若しくは値)×10-7、10-8、10-9、10-10、10-11、10-12、10-13、又はその中の任意の範囲若しくは値などのKDで結合することができる。
【0068】
抗原に対する抗体の親和性又は結合活性は、任意の好適な方法を用いて実験により求めることができる。(例えば、Berzofsky,et al.,「Antibody-Antigen Interactions,」Fundamental Immunology,Paul,W.E.,Ed.,Raven Press:New York,NY(1984)、Kuby,Janis Immunology,W.H.Freeman and Company:New York,NY(1992)、及び本明細書に記載される方法を参照されたい)。特定の抗体抗原相互作用について測定される親和性は、異なる条件(例えば、塩濃度、pH)下で測定された場合に異なることができる。したがって、親和性及び他の抗原結合パラメータ(例えば、KD、Ka、Kd)の測定は、好ましくは、抗体及び抗原の標準化溶液、及び本明細書で記載される緩衝剤などの標準化緩衝剤を用いて行われる。
【0069】
核酸分子
本明細書に開示される他の配列の中でも、例えば、本明細書に記載される軽鎖若しくは重鎖可変又はCDR領域のうちの少なくとも1つの隣接アミノ酸の少なくとも70~100%をコードするヌクレオチド配列、特定の断片、変異体、若しくはそれらのコンセンサス配列、又はこれらの配列のうちの少なくとも1つを含む寄託ベクターなどの本明細書に提供される情報を使用して、少なくとも1つの抗IL-23抗体をコードする本発明の核酸分子は、本明細書に記載されるか又は当該技術において既知の方法を使用して得ることができる。
【0070】
本発明の核酸分子は、mRNA、hnRNA、tRNA、若しくは任意の他の形態などのRNAの形態、又はクローニングにより得られる若しくは合成的に産生されるcDNA及びゲノムDNAが挙げられるが、これらに限定されないDNAの形態、又はこれらの任意の組み合わせであってもよい。DNAは、3本鎖、2本鎖若しくは1本鎖、又はこれらの任意の組み合わせであってもよい。DNA又はRNAの少なくとも1本の鎖の任意の部分は、センス鎖としても知られるコード鎖であってもよいし、又はアンチセンス鎖と呼ばれる、非コード鎖であってもよい。
【0071】
本発明の方法に使用される単離された核酸分子には、任意選択で1つ又は2つ以上のイントロン、例えば、限定されないが、少なくとも1つの重鎖若しくは軽鎖のCDR1、CDR2、及び/又はCDR3などの少なくとも1つのCDRの少なくとも1つの特定の部分を有するオープンリーディングフレーム(open reading frame、ORF)を含む核酸分子、抗IL-23抗体又は可変領域のコード配列を含む核酸分子、並びに上述のものとは実質的に異なるヌクレオチド配列を含むが、遺伝子コードの縮重のために、本明細書に記載される及び/又は当該技術分野で既知である少なくとも1つの抗IL-23抗体を依然としてコードする核酸分子を含み得る。当然のことながら、遺伝子コードは、当該技術分野において周知である。したがって、本発明の方法で使用される特異的な抗IL-23抗体をコードするそのような変性核酸変異体を作製することは、当業者には日常的であるだろう。例えば、上記のAusubelらを参照されたい。かかる核酸変異体は、本発明に含まれる。単離された核酸分子の非限定的な例としては、それぞれ、HC CDR1、HC CDR2、HC CDR3、LC CDR1、LC CDR2、及びLC CDR3をコードする核酸が挙げられる。
【0072】
本明細書に記載されるように、抗IL-23抗体をコードする核酸を含む核酸分子としては、それ自体で抗体断片のアミノ酸配列をコードするもの、抗体の全長若しくは抗体の一部分をコードする配列、抗体、断片若しくは部分のコード配列、並びに追加の配列、例えば、少なくとも1つのイントロンなど、前述の追加のコード配列を伴って、又は伴わずに、非コード5’及び3’配列、例えば、スプライシング及びポリアデニル化シグナル(例えば、mRNAのリボソーム結合及び安定性)を含む、転写、mRNAプロセシングにおいて役割を果たす転写された非翻訳配列を含むが、これに限定されない、追加の非コード配列と共に、少なくとも1つのシグナルリーダー若しくは融合ペプチドのコード配列、追加のアミノ酸、例えば、追加の機能を提供するアミノ酸をコードする追加のコード配列を挙げることができるが、これらに限定されない。したがって、抗体をコードする配列はマーカー配列に融合させることができ、例えば、マーカー配列は、これを融合させた抗体断片又は部分を含む抗体の精製を促進するペプチドをコードする配列である。
【0073】
本明細書に記載のポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイズするポリヌクレオチド
本発明の方法は、本明細書に開示されるポリヌクレオチドに対して、選択的なハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする単離された核酸を使用する。したがって、本実施形態のポリヌクレオチドは、かかるポリヌクレオチドを含む核酸を単離、検出、及び/又は定量するために使用することができる。例えば、本発明のポリヌクレオチドを使用して、寄託されたライブラリにおける部分長又は完全長クローンを同定、単離、又は増幅することができる。いくつかの実施形態においては、ポリヌクレオチドは、単離された、又はそうでなければヒト若しくは哺乳動物の核酸ライブラリのcDNAに相補的な、ゲノム配列又はcDNA配列である。
【0074】
好ましくは、cDNAライブラリは完全長配列の少なくとも80%、好ましくは完全長配列の少なくとも85%又は90%、より好ましくは完全長配列の少なくとも95%を含む。このcDNAライブラリは、稀な配列の発現量を増大させるよう正規化することができる。相補配列に対する配列同一性が低い配列を使用する、低又は中ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件が典型的なものであるが、これに限定されない。同一性がより高い配列には、任意選択で、中及び高ストリンジェンシーの条件を使用することができる。低ストリンジェンシー条件は、約70%の配列同一性をもつ配列の選択的ハイブリダイゼーションを可能にし、オーソロガス又はパラロガス配列を特定同定するために利用できる。
【0075】
任意選択で、ポリヌクレオチドは、抗体の少なくとも一部分をコードする。ポリヌクレオチドは、本発明の抗体をコードするポリヌクレオチドに対する選択的ハイブリダイゼーションに利用することができる核酸配列を包含する。例えば、各々参照により全体が本明細書に組み込まれる、上記のAusubel、上記のColliganを参照されたい。
【0076】
核酸の構築
単離された核酸は、当該技術分野において周知であるように、(a)組換え方法、(b)合成技術、(c)精製技術、及び/又は(d)これらの組み合わせを使用して作製することができる。
【0077】
核酸には、本発明のポリヌクレオチドに加えて、都合よく配列を含ませることができる。例えば、1つ又は2つ以上のエンドヌクレアーゼ制限部位を含むマルチクローニングサイトを核酸に挿入して、ポリヌクレオチドの単離に役立てることができる。また、翻訳可能な配列を挿入して、本発明の翻訳されたポリヌクレオチドの単離に役立てることができる。例えば、ヘキサヒスチジンマーカー配列は、本発明のタンパク質を精製するのに便利な手段を提供する。本発明の核酸(コード配列を除く)は、任意選択で、本発明のポリヌクレオチドのクローニング及び/又は発現のためのベクター、アダプター、又はリンカーである。
【0078】
かかるクローニング配列及び/又は発現配列に追加の配列を付加して、クローニング及び/又は発現におけるそれらの機能を最適化すること、ポリヌクレオチドの単離に役立てること、又は細胞へのポリヌクレオチドの導入を改善することができる。クローン化ベクター、発現ベクター、アダプター、及びリンカーの使用は、当該技術分野において周知である。(例えば、上記のAusubel、又は上記のSambrookを参照されたい)
【0079】
核酸を構築するための組換え方法
RNA、cDNA、ゲノムDNA、又はこれらの任意の組み合わせなどの単離された核酸組成物は、当業者に既知の任意の数のクローニング方法を用いて生物源から得ることができる。いくつかの実施形態では、本発明のポリヌクレオチドに対してストリンジェントな条件下で選択的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブが、cDNA又はゲノムDNAライブラリ内の所望の配列の同定に使用される。RNAの単離、並びにcDNA及びゲノムライブラリの構築は、当業者には周知である。(例えば、上記のAusubel、又は上記のSambrookを参照されたい)
【0080】
核酸のスクリーニング及び単離方法
本明細書に開示されているものなど、本発明の方法に使用されるポリヌクレオチドの配列に基づいたプローブを使用して、cDNA又はゲノムライブラリをスクリーニングすることができる。プローブを使用して、ゲノムDNA又はcDNA配列にハイブリダイズさせて、同じ又は異なる生体の相同遺伝子を単離することができる。当業者であれば、アッセイに様々な度合のハイブリダイゼーションストリンジェンシーを用いることができ、ハイブリダイゼーション又は洗浄媒質のいずれかをストリンジェントなものにできることを理解する。ハイブリダイゼーション条件がストリンジェントになるほど、二重鎖の形成が生じる際のプローブと標的との間の相補性の度合が大きくなるはずである。ストリンジェンシーの程度は、温度、イオン強度、pH、及びホルムアミドなどの部分的に変性する溶媒の存在のうちの1つ又は2つ以上によって制御され得る。例えば、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、例えば、0%~50%の範囲内でのホルムアミド濃度の操作により反応溶液の極性を変えることにより首尾よく変更される。検出可能な結合に必要とされる相補性(配列同一性)の程度は、ハイブリダイゼーション媒質及び/又は洗浄媒質のストリンジェンシーによって異なる。相補性の程度は、最適には100%、又は70~100%、又はその中の任意の範囲若しくは値である。しかしながら、プローブ及びプライマ中の配列のわずかな違いは、ハイブリダイゼーション及び/又は洗浄媒質のストリンジェンシーを低減させることで埋め合わせることができることを理解すべきである。
【0081】
RNA又はDNAの増幅方法は当該技術分野において周知であり、本明細書に提示される教示及び指針に基づいて、過度の実験なしに、本発明に従って使用することができる。
【0082】
DNA又はRNA増幅の既知の方法としては、ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction、PCR)及び関連する増幅プロセス(例えば、Mullisらの米国特許第4,683,195号、同第4,683,202号、同第4,800,159号、同第4,965,188号、Taborらの米国特許第4,795,699号及び同第4,921,794号、Innisの米国特許第5,142,033号、Wilsonらの米国特許第5,122,464号、Innisの米国特許第5,091,310号、Gyllenstenらの米国特許第5,066,584号、Gelfandらの米国特許第4,889,818号、Silverらの米国特許第4,994,370号、Biswasの米国特許第4,766,067号、Ringoldの米国特許第4,656,134号を参照されたい)、及び二本鎖DNA合成のためのテンプレートとして標的配列に対してアンチセンスRNAを使用するRNA媒介増幅(Malekらの米国特許第5,130,238号、商標名NASBA)が挙げられるが、これらに限定されず、これらの文献の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。(例えば、上記のAusubel、又は上記のSambrookを参照されたい。)
【0083】
例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を使用して、ゲノムDNA又はcDNAライブラリから直接、本発明の方法に使用されるポリヌクレオチド及び関連する遺伝子の配列を増幅することができる。PCR及び他のインビトロ増幅方法はまた、例えば、発現すべきタンパク質をコードする核酸配列をクローニングすること、サンプル中の所望のmRNAの存在を検出するため、核酸の配列決定のため、又は他の目的のためのプローブとして用いる核酸を作製することに関し有用であり得る。インビトロでの増幅方法によって当業者を導くのに十分な技術の例は、上記のBerger、上記のSambrook、及び上記のAusubel、並びにMullisらの米国特許第4,683,202号(1987)、及びInnis,et al.,PCR Protocols A Guide to Methods and Applications,Eds.,Academic Press Inc.,San Diego,CA(1990)に見られる。ゲノムPCR増幅用の市販キットは技術分野において既知である。例えば、Advantage-GC Genomic PCR Kit(Clontech)を参照されたい。加えて、例えば、T4遺伝子32タンパク質(Boehringer Mannheim)を用いて、長いPCR産物の収率を改善することができる。
【0084】
核酸を構築するための合成方法
本発明の方法に使用される単離された核酸は、既知の方法による直接化学合成によって調製することもできる(例えば、上記のAusubelらを参照されたい)。化学合成は、概して、相補的配列とのハイブリダイゼーションによって、又は1本鎖をテンプレートとして使用するDNAポリメラーゼとの重合によって、2本鎖DNAに変換可能な1本鎖オリゴヌクレオチドを産生する。当業者であれば、DNAの化学合成は約100又はそれ以上の塩基の配列に限定され得るが、より長い配列は、より短い配列のライゲーションによって得ることができることを認識する。
【0085】
組換え発現カセット
本発明は核酸を含む組換え発現カセットを使用する。核酸配列、例えば本発明の方法に使用される抗体をコードするcDNA又はゲノム配列を使用して、少なくとも1つの所望の宿主細胞に導入することができる組換え発現カセットを構築することができる。組換え発現カセットは、典型的には、意図される宿主細胞においてポリヌクレオチドの転写を導く、転写開始調節配列に操作可能に連結される、ポリヌクレオチドを含む。異種及び非異種(すなわち、内因性)プロモータの両方を利用して、核酸の発現を導くことができる。
【0086】
いくつかの実施形態では、プロモータ、エンハンサ、又は他の要素として機能する単離された核酸を、ポリヌクレオチドの発現を上方又は下方調節するために、本発明のポリヌクレオチドの非異種形の適切な位置(上流、下流、又はイントロン内)に導入することができる。例えば、変異、欠失、及び/又は置換により、インビボ又はインビトロで内因性プロモータを変化させることができる。
【0087】
ベクター及び宿主細胞
本発明はまた、単離された核酸分子を含むベクター、組換えベクターを用いて遺伝子工学処理された宿主細胞、及び当該技術分野において周知の組換え技術による少なくとも1つの抗IL-23抗体の産生に関する。例えば、各々参照により全体が本明細書に組み込まれる、上記のSambrookら、上記のAusubelらを参照されたい。
【0088】
ポリヌクレオチドは、任意選択で、宿主の増殖についての選択マーカーを含有するベクターに結合することができる。概して、プラスミドベクターは、リン酸カルシウム沈殿物などの沈殿物中に、又は荷電脂質との複合体中に導入される。ベクターがウイルスである場合は、適切なパッケージング細胞株を用いてインビトロでこれをパッケージングし、その後、宿主細胞内に形質導入することができる。
【0089】
DNA挿入物は、適切なプロモータに機能的に連結されるべきである。発現コンストラクトは、転写開始部位、転写終結部位、及び転写された領域内では翻訳のためのリボソーム結合部位を更に含む。コンストラクトにより発現した成熟した転写産物のコード部分は、好ましくは、翻訳されるべきmRNAの最後に適切に位置する開始及び終止コドン(例えば、UAA、UGA、又はUAG)で始まる翻訳を含み、哺乳動物又は真核生物細胞の発現ではUAA及びUAGが好ましい。
【0090】
発現ベクターが少なくとも1つの選択マーカーを含むことが好ましいが、任意選択である。かかるマーカーは、例えば、真核細胞培養のためのメトトレキサート(methotrexate、MTX)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(dihydrofolate reductase(DHFR、米国特許第4,399,216号、同第4,634,665号、同第4,656,134号、同第4,956,288号、同第5,149,636号、同第5,179,017号、アンピシリン、ネオマイシン(G418)、ミコフェノール酸、又はグルタミンシンセターゼ(glutamine synthetase、GS、米国特許第5,122,464号、同第5,770,359号、同第5,827,739号)抵抗性遺伝子、並びにE.coli及び他の細菌又は原核生物における培養のためのテトラサイクリン又はアンピシリン抵抗性遺伝子を含むが、これらに限定されない(上記の特許は、参照により全体が本明細書に組み込まれる)。上記の宿主細胞に対して適切な培養培地及び条件は、技術分野において既知である。好適なベクターは、当業者にとって容易に明白となる。宿主細胞へのベクターコンストラクトの導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、カチオン性脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、感染、又は他の既知の方法により達成することができる。かかる方法については、上記のSambrook、第1~4章及び第16~18章、上記のAusubel、第1、9、13、15、16章などの当該技術分野に記載されている。
【0091】
本発明の方法に使用される少なくとも1つの抗体は、融合タンパク質などの修飾された形態で発現され得、分泌シグナルだけでなく、追加の異種機能領域も含むことができる。例えば、追加アミノ酸の領域、特に荷電アミノ酸を抗体のN末端に追加して、精製中又は後続の処理及び保存中に、宿主細胞における安定性及び持続性を改善することができる。また、ペプチド部分を本発明の抗体に追加して、精製を促進することもできる。抗体又は少なくとも1つのその断片の最終調製前に、かかる領域を除去することができる。かかる方法は、上記のSambrook、第17.29~17.42章及び第18.1~18.74章、上記のAusubel、第16、17、及び18章などの多くの標準的な実験室マニュアルに記載されている。
【0092】
当業者であれば、本発明の方法に使用されるタンパク質をコードする核酸の発現に利用可能な多数の発現系について精通している。あるいは、核酸は、抗体をコードする内因性DNAを含有する宿主細胞内で、(操作により)オンに切り替えることにより、宿主細胞中で発現させることができる。かかる方法は、参照により全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第5,580,734号、同第5,641,670号、同第5,733,746号、及び同第5,733,761号に記載されているように、当該技術分野において周知である。
【0093】
抗体、その特定の部分又は変異体の産生に有用な細胞培養物の一例は、哺乳動物細胞である。哺乳動物細胞系は、多くの場合細胞からなる単層形態を取るが、哺乳動物細胞の懸濁液又はバイオリアクターを使用することもできる。無傷なグリコシル化タンパク質を発現可能ないくつかの好適な宿主細胞株が当該技術分野において開発されており、これにはCOS-1(例えばATCC CRL 1650)、COS-7(例えばATCC CRL-1651)、HEK293、BHK21(例えばATCC CRL-10)、CHO(例えばATCC CRL1610)及びBSC-1(例えばATCC CRL-26)細胞株、Cos-7細胞、CHO細胞、hep G2細胞、P3X63Ag8.653、SP2/0-Ag14、293細胞、HeLa細胞などが挙げられ、これらは例えば、American Type Culture Collection(Manassas,Va)(www.atcc.org)から容易に入手できる。好ましい宿主細胞としては、骨髄腫及びリンパ腫細胞などのリンパ系に由来する細胞が挙げられる。特に好ましい宿主細胞は、P3X63Ag8.653細胞(ATCC寄託番号CRL-1580)及びSP2/0-Ag14細胞(ATCC寄託番号CRL-1851)である。特に好ましい実施形態では、組換え細胞は、P3X63Ab8.653又はSP2/0-Ag14細胞である。
【0094】
これらの細胞の発現ベクターは、複製起点、プロモータ(例えば、後期又は初期SV40プロモータ、CMVプロモータ(米国特許第5,168,062号、同第5,385,839号)、HSV tkプロモータ、pgk(ホスホグリセレートキナーゼ)プロモータ、EF-1アルファプロモータ(米国特許第5,266,491号)、少なくとも1つのヒト免疫グロブリンプロモータ、エンハンサ、及び/又はリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位(例えば、SV40ラージT Agポリ付加部位)、並びに転写終結配列などのプロセシング情報部位などであるが、これらに限定されない、発現制御配列のうちの1つ又は2つ以上を含むことができる。例えば、上記のAusubelら、上記のSambrookらを参照されたい。本発明の核酸又はタンパク質の生成に有用なその他の細胞は周知である、並びに/あるいは例えば、American Type Culture Collection Catalogue of Cell Lines and Hybridomas(www.atcc.org)又はその他の周知の供給源若しくは商業的供給源から入手可能である。
【0095】
真核宿主細胞が利用される場合、典型的には、ベクター内にポリアデニル化又は転写終結配列が組み込まれる。終結配列の一例は、ウシ成長ホルモン遺伝子からのポリアデニル化配列である。転写の正確なスプライシングのための配列も、同様に含むことができる。スプライシング配列の一例は、SV40由来のVP1イントロンである(Sprague,et al.,J.Virol.45:773-781(1983))。加えて、当該技術分野において既知であるように、宿主細胞内の複製を制御するための遺伝子配列をベクター内に組み込むことができる。
【0096】
抗体の精製
抗IL-23抗体は、プロテインA精製、硫酸アンモニウム又はエタノール沈殿、酸抽出、陰イオン又は陽イオン交換クロマトグラフィ、ホスホセルロースクロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、親和性クロマトグラフィ、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィ及びレクチンクロマトグラフィが挙げられるがこれらに限定されない周知の方法により、組換え細胞培養物から回収し、精製することができる。高速液体クロマトグラフィ(「HPLC」)を精製に利用することもできる。例えば、各々参照により全体が本明細書に組み込まれる、Colligan,Current Protocols in Immunology又はCurrent Protocols in Protein Science,John Wiley & Sons,NY,NY(1997-2001)の、例えば、第1、4、6、8、9、10章を参照されたい。
【0097】
本発明の方法に使用される抗体には、天然に精製された産物、化学合成工程の産物、並びに例えば、酵母、高等植物、昆虫、及び哺乳動物細胞を含む、真核宿主から組換え技術により生産された産物が含まれる。組換え生産工程において利用される宿主に応じて、抗体は、グリコシル化されてもグリコシル化されなくてもよいが、グリコシル化されるのが好ましい。かかる方法は、全て参照により全体が本明細書に組み込まれる、上記のSambrook、セクション17.37~17.42、上記のAusubel、第10、12、13、16、18、及び20章、上記のColligan,Protein Science、第12~14章などの多くの標準的な実験室マニュアルに記載されている。
【0098】
抗IL-23抗体。
本発明による抗IL-23抗体は、抗体に組み込むことができる、免疫グロブリン分子の少なくとも一部、例えば、限定されないが、少なくとも1つのリガンド結合部分(ligand binding portion、LBP)、例えば、限定されないが、重鎖若しくは軽鎖の相補性決定領域(CDR)又はそのリガンド結合部分、重鎖又は軽鎖可変領域、フレームワーク領域(例えば、FR1、FR2、FR3、FR4、又はそれらの断片、更に任意選択的に、少なくとも1つの置換、挿入、又は欠失を含む)、重鎖若しくは軽鎖定常領域(例えば、少なくとも1つのCH1、ヒンジ1、ヒンジ2、ヒンジ3、ヒンジ4、CH2、若しくはCH3、又はそれらの断片、更に任意選択的に、少なくとも1つの置換、挿入、又は欠失を含む)、又はそれらの任意の部分を含む、任意のタンパク質又はペプチド含有分子を含む。抗体は、ヒト、マウス、ウサギ、ラット、げっ歯類、霊長類、又はこれらの任意の組み合わせなどであるが、これらに限定されない、任意の哺乳動物を含むか、又はそれに由来することができる。
【0099】
本発明の方法に使用される単離された抗体は、任意の好適なポリヌクレオチドによってコードされる本明細書に開示される抗体のアミノ酸配列、又は任意の単離若しくは調製された抗体を含む。好ましくは、ヒト抗体又は抗原結合断片は、ヒトIL-23に結合し、それにより、タンパク質の少なくとも1つの生物学的活性を部分的又は実質的に中和する。少なくとも1つのIL-23タンパク質又は断片の少なくとも1つの生物学的活性を部分的に又は好ましくは実質的に中和する、抗体、又はその特定の部分若しくは変異体は、タンパク質又は断片に結合し、それによりIL-23受容体へのIL-23の結合を介して、又は他のIL-23依存性若しくは媒介型機序を介して、媒介される活性を阻害することができる。本明細書で使用する場合、「中和抗体」という用語は、アッセイに応じて、約20~120%、好ましくは少なくとも約10、20、30、40、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100%又はそれ以上、IL-23依存性活性を阻害できる抗体を指す。IL-23依存性活性を阻害する抗IL-23抗体の能力は、好ましくは、本明細書に記載され、かつ/又は当該技術分野において既知の、少なくとも1つの好適なIL-23タンパク質又は受容体アッセイによって評価される。ヒト抗体は、任意のクラス(IgG、IgA、IgM、IgE、IgDなど)又はアイソタイプのものであってもよく、カッパ又はラムダ軽鎖を含むことができる。一実施形態では、ヒト抗体は、IgG重鎖又は規定された断片、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4(例えば、γ1、γ 2、γ3、γ4)のうちの少なくとも1つのアイソタイプを含む。このタイプの抗体は、本明細書に記載され、かつ/又は当該技術分野において既知である、少なくとも1つのヒト軽鎖(例えば、IgG、IgA、及びIgM)導入遺伝子を含む、トランスジェニックマウス又は他の非ヒトトランスジェニック哺乳動物を利用することによって調製することができる。別の一実施形態では、抗IL-23ヒト抗体は、IgG1重鎖と、IgG1軽鎖とを含む。
【0100】
抗体は、少なくとも1つのIL-23タンパク質、サブユニット、断片、部分、又はそれらの任意の組み合わせに特異的な少なくとも1つの特定のエピトープに結合する。本少なくとも1つのエピトープは、タンパク質の少なくとも一部分を含む少なくとも1つの抗体結合領域を含むことができ、このエピトープは好ましくは、タンパク質の少なくとも1つの細胞外部分、可溶性部分、親水性部分、外側部分、又は細胞質部分で構成されている。
【0101】
概して、ヒト抗体又は抗原結合断片は、少なくとも1つのヒト相補性決定領域(CDR1、CDR2、及びCDR3)又は少なくとも1つの重鎖可変領域の変異体、及び少なくとも1つのヒト相補性決定領域(CDR1、CDR2、及びCDR3)又は少なくとも1つの軽鎖可変領域の変異体を含む抗原結合領域を含む。CDR配列は、ヒト生殖細胞系列型配列に由来するものでも、生殖細胞系列型配列に厳密に一致するものでもよい。例えば、元の非ヒトCDRに由来する合成ライブラリからのCDRを使用することができる。これらのCDRは、元の非ヒト配列に由来する保存的置換の組込みによって形成され得る。別の特定の実施形態では、抗体又は抗原結合部分又は変異体は、対応するCDR1、2、及び/又は3のアミノ酸配列を有する少なくとも1つの軽鎖CDR(すなわち、CDR1、CDR2、及び/又はCDR3)の少なくとも一部分を含む抗原結合領域を有することができる。
【0102】
かかる抗体は、組換えDNA技術に関する従来技術を使用して抗体をコードする(すなわち、1つ又は2つ以上の)核酸分子を調製して発現させることによって、又は任意の他の好適な方法を使用することによって、従来技術を使用して抗体の種々の部分(例えば、CDR、フレームワーク)を一緒に化学的に結合させることにより調製することができる。
【0103】
抗IL-23特異的抗体は、画定されたアミノ酸配列を有する重鎖又は軽鎖可変領域のうちの少なくとも1つを含むことができる。例えば、好ましい実施形態では、抗IL-23抗体は、任意選択的に配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域のうちの少なくとも1つ、及び/又は任意選択的に配列番号8のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域のうちの少なくとも1つを含む。例えば、好ましい実施形態では、抗IL-23抗体は、任意選択的に配列番号9のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域のうちの少なくとも1つ、及び/又は任意選択的に配列番号10のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域のうちの少なくとも1つを含む。ヒトIL-23に結合し、かつ、規定された重鎖又は軽鎖可変領域を含む抗体は、当該技術分野で既知及び/又は本明細書に記載の、ファージディスプレイ(Katsube,Y.,et al.,Int J Mol.Med,1(5):863-868(1998))又はトランスジェニック動物を採用する方法など、好適な方法を使用して調製することができる。例えば、機能的に再配列されたヒト免疫グロブリン重鎖導入遺伝子と、機能的な再配列を受けることが可能なヒト免疫グロブリン軽鎖遺伝子座からのDNAを含む導入遺伝子と、を含むトランスジェニックマウスを、ヒトIL-23又はその断片で免疫化して抗体の生成を誘発することができる。所望である場合、抗体産生細胞を単離することができ、本明細書に記載され、かつ/又は当該技術分野において既知である、ハイブリドーマ又は他の不死化抗体産生細胞を調製することができる。あるいは、抗体、特定の部分又は変異体は、好適な宿主細胞内で、コード核酸又はその一部分を使用して発現させることができる。
【0104】
本発明はまた、本明細書に記載されるアミノ酸配列と実質的に同じである配列中のアミノ酸を含む抗体、抗原結合断片、免疫グロブリン鎖及びCDRに関する。好ましくは、かかる抗体又は抗原結合断片及びかかる鎖若しくはCDRを含む抗体は、高い親和性(例えば、約10-9M以下のKD)でヒトIL-23と結合することができる。本明細書に記載されている配列と実質的に同じであるアミノ酸配列としては、保存的アミノ酸置換並びにアミノ酸欠失及び/又は挿入を含む配列が挙げられる。保存的アミノ酸置換は、第1のアミノ酸のものに類似する化学的及び/又は物理的特性(例えば、電荷、構造、極性、疎水性/親水性)を有する第2のアミノ酸で、第1のアミノ酸を置換することを指す。保存的置換は、限定されるものではないが、1個のアミノ酸を、以下の群内の別のアミノ酸で置き換えることを含む:リジン(K)、アルギニン(R)、及びヒスチジン(H);アスパラギン酸塩(D)及びグルタミン酸塩(E);アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、セリン(S)、スレオニン(T)、チロシン(Y)、K、R、H、D、及びE;アラニン(A)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、メチオニン(M)、システイン(C)、及びグリシン(G);F、W、及びY;C、S、及びT。
【0105】
アミノ酸コード
本発明の抗IL-23抗体を構成するアミノ酸は、多くの場合略字表記される。アミノ酸表記は、その一文字コード、その三文字コード、名称、又は3つのヌクレオチドのコドンによりアミノ酸を表記することにより示すことができ、当該技術分野においてよく理解されている(Alberts,B.,et al.,Molecular Biology of The Cell,Third Ed.,Garland Publishing,Inc.,New York,1994を参照されたい)。
【0106】
【0107】
本発明の方法に使用される抗IL-23抗体は、本明細書で指定されるように、天然の突然変異又はヒトによる操作のいずれかによる、1つ又は2つ以上のアミノ酸の置換、欠失、又は付加を含み得る。
【0108】
当業者が行い得るアミノ酸置換の数は、上記のものを含む多くの要因に依存する。概して、任意の所与の抗IL-23抗体、断片又は変異体についてのアミノ酸置換、挿入、又は欠失の数は、本明細書で特定されるように、40、30、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、例えば、1~30、又はこの中の任意の範囲若しくは値を超えない。
【0109】
機能上不可欠である抗IL-23特異的抗体内のアミノ酸は、部位特異的変異誘発又はアラニンスキャニング変異誘発などの、当該技術分野において既知の方法により同定することができる(例えば、上記のAusubel、Chapters 8,15;Cunningham及びWells,Science 244:1081-1085(1989))。後者の手順では、分子内の残基毎に単個のアラニンによる変異を導入する。次いで、得られた変異型分子は、生物活性、例えば、限定されないが、少なくとも1つのIL-23中和活性について試験される。抗体結合にとって極めて重要である部位もまた、結晶化、核磁気共鳴又は光親和性標識などの構造分析によって同定することができる(Smith,et al.,J.Mol.Biol.224:899-904(1992)及びde Vos,et al.,Science 255:306-312(1992))。
【0110】
抗IL-23抗体は、配列番号1、2、3、4、5、及び6のうちの少なくとも1つの隣接アミノ酸のうちの5つから全てから選択される少なくとも1つの部分、配列、又は組み合わせを含むことができるが、これらに限定されない。
【0111】
IL-23抗体又は特定の部分若しくは変異体としては、上記配列番号の少なくとも3~5個の隣接アミノ酸、上記の配列番号の5~17個の隣接アミノ酸、上記の配列番号の5~10個の隣接アミノ酸、上記の配列番号の5~11個の隣接アミノ酸、上記の配列番号の5~7個の隣接アミノ酸、上記の配列番号の5~9個の隣接アミノ酸から選択される少なくとも1つの部分、配列、又は組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0112】
抗IL-23抗体は、更に任意選択的に、上記配列番号の5、17、10、11、7、9、119、又は108個の隣接アミノ酸のうちの70~100%の少なくとも1つのポリペプチドを含むことができる。一実施形態では、免疫グロブリン鎖又はその部分(例えば、可変領域、CDR)のアミノ酸配列は、上記の配列番号のうちの少なくとも1つの対応する鎖のアミノ酸配列と、約70~100%の同一性(例えば、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、又はこの中の任意の範囲若しくは値)を有する。例えば、軽鎖可変領域のアミノ酸配列を、上記の配列番号の配列と比較することができ、又は重鎖CDR3のアミノ酸配列を、上記の配列番号と比較することができる。好ましくは、70~100%のアミノ酸同一性(すなわち、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、又はこの中の任意の範囲若しくは値)は、当該技術分野において既知の好適なコンピュータアルゴリズムを使用して決定される。
【0113】
当該技術分野において既知の「同一性」とは、配列を比較することにより決定される、2つ若しくは3つ以上のポリペプチド配列間又は2つ若しくは3つ以上のポリヌクレオチド配列間の関係である。当該技術分野において、「同一性」とは、かかる配列のストリング間の一致によって決定される、ポリペプチド又はポリヌクレオチド配列間の配列関連性の程度も意味する。「同一性」及び「類似性」は、Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.,ed.,Oxford University Press,New York,1988、Biocomputing:Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.,ed.,Academic Press,New York,1993、Computer Analysis of Sequence Data,Part I,Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.,Humana Press,New Jersey,1994、Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987、及びSequence Analysis Primer,Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.,M Stockton Press,New York,1991、並びにCarillo,H.,and Lipman,D.,Siam J.Applied Math.,48:1073(1988)に記載されているものが挙げられるが、これらに限定されない、既知の方法によって容易に算出することができる。加えて、同一性の割合に関する値は、Vector NTI Suite 8.0(Informax,Frederick,MD)の構成要素であるAlignXのデフォルト設定を用いて作成される、アミノ酸及びヌクレオチド配列アラインメントから得ることができる。
【0114】
同一性を決定する好ましい方法は、試験される配列間で最大の一致度が得られるように設計される。同一性及び類似性を決定する方法は、公的に入手可能なコンピュータプログラムにおいて成文化(codified)されている。2つの配列間の同一性及び類似性を決定するための好ましいコンピュータプログラム方法は、GCGプログラムパッケージ(Devereux,J.,et al.,Nucleic Acids Research 12(1):387(1984)),BLASTP,BLASTN,and FASTA(Atschul,S.F.et al.,J.Molec.Biol.215:403-410(1990))を含むが、これらに限定されるものではない。BLAST Xプログラムは、NCBI及び他のソース(BLAST Manual,Altschul,S.,et al.,NCBINLM NIH Bethesda,Md.20894:Altschul,S.,et al.,J.Mol.Biol.215:403-410(1990)から公的に入手可能である。周知のSmith Watermanアルゴリズムも同一性を決定するために使用され得る。
【0115】
ポリペプチド配列の比較に好ましいパラメータとしては、以下が挙げられる:
(1)アルゴリズム:Needleman and Wunsch,J.Mol Biol.48:443-453(1970)比較マトリックス:BLOSSUM62 from Hentikoff and Hentikoff,Proc.Natl.Acad.Sci,USA.89:10915-10919(1992)、
ギャップペナルティ:12
ギャップ長ペナルティ:4
これらのパラメータで有用なプログラムは、Genetics Computer Group,Madison Wisからの「ギャップ」プログラムとして公的に入手可能である。前述のパラメータは、ペプチド配列比較のためのデフォルトパラメータ(末端ギャップに関してペナルティがないのと同様に)である。
【0116】
ポリヌクレオチド比較のための好ましいパラメータとしては、以下が挙げられる:
(1)アルゴリズム:Needleman and Wunsch,J.Mol Biol.48:443-453(1970)
比較マトリックス:一致=+10、不一致=0
ギャップペナルティ:50
ギャップ長ペナルティ:3
Genetics Computer Group,Madison Wisからの「ギャップ」プログラムとして入手可能。これらは、核酸配列比較のデフォルトパラメータである。
【0117】
例として、ポリヌクレオチド配列は、別の配列と同一であり得る、つまり、100%同一であるか、又は参照配列と比較してある特定の整数までのヌクレオチド改変を含み得る。かかる改変は、少なくとも1つのヌクレオチドの欠失、置換(転移及び転換を含む)、又は挿入からなる群から選択され、この改変は、参照ヌクレオチド配列の5’若しくは3’末端位置で、又はこれらの末端位置の間のどこで生じてもよく、参照配列のヌクレオチド間に個々に、又は参照配列内の1つ又は2つ以上の隣接基のいずれかに分散していてもよい。ヌクレオチド改変の数は、配列中のヌクレオチドの総数に、対応する同一性パーセントの数値パーセント(100で割ったもの)を乗じ、その積を配列中のヌクレオチドの総数から差し引くこと、又は、
n.sub.n.ltorsim.x.sub.n-(x.sub.n.y)によって決定され、
式中、n.sub.nはヌクレオチド改変の数であり、x.sub.nは配列中のヌクレオチドの総数であり、yは、例えば、70%に対しては0.70、80%に対しては0.80、85%に対しては0.85、90%に対しては0.90、95%に対しては0.95などであり、x.sub.nとyとの任意の整数ではない積は、x.sub.nから差し引く前に最も近い整数に切り捨てる。
【0118】
上記の配列番号をコードするポリヌクレオチド配列の改変は、このコード配列中にナンセンス、ミスセンス、又はフレームシフト突然変異を作り出し、それにより、かかる改変後にポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを改変してもよい。同様に、ポリペプチド配列は、上記の配列番号の参照配列と同一であってもよく、すなわち、100%同一であるか、又は同一性パーセントが100%未満であるように、参照配列と比較してある特定の整数までのアミノ酸改変を含んでもよい。かかる改変は、少なくとも1つのアミノ酸の欠失、置換(保存的及び非保存的置換を含む)、又は挿入からなる群から選択され、この改変は、参照ポリペプチド配列のアミノ若しくはカルボキシ末端位置で、又はこれらの末端位置の間のどこで生じてもよく、参照配列のアミノ酸間に個々に、又は参照配列内の1つ又は2つ以上の隣接基のいずれかに分散していてもよい。所与の同一性%についてのアミノ酸変更の数は、上記配列番号中のアミノ酸の総数に、それぞれの同一性パーセントの数値パーセント(100で割ったもの)を乗じ、その積を上記配列番号中のアミノ酸の総数から差し引くことにより、又は
n.sub.a.ltorsim.x.sub.a-(x.sub.a.y)によって決定され、
式中、n.sub.aは、アミノ酸変更の数であり、x.sub.aは、上記配列番号中のアミノ酸の総数であり、yは、例えば、70%に対しては0.70、80%に対しては0.80、85%に対しては0.85などであり、x.sub.aとyとの整数ではない任意の積は、x.sub.aから差し引く前に最も近い整数に切り捨てる。
【0119】
代表的な重鎖及び軽鎖可変領域の配列、並びにそれらの部分は、上記の配列番号に示される。本発明の抗体、又はその特定された変異体は、本発明の抗体から任意の数の隣接アミノ酸残基を含むことができ、その数は、抗IL-23抗体における隣接残基数の10~100%からなる整数の群から選択される。任意選択で、隣接アミノ酸のこの部分配列は、少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、若しくはそれ以上のアミノ酸長、又はその中の任意の範囲若しくは値である。更に、かかる部分配列の数は、少なくとも2、3、4、又は5などの、1~20からなる群から選択される任意の整数であることができる。
【0120】
当業者が認識しているように、本発明には、本発明の少なくとも1つの生物学的活性抗体が含まれている。生物学的活性抗体は、天然(非合成)、内因性、又は関連する、及び既知の抗体のものの、少なくとも20%、30%、又は40%、好ましくは少なくとも50%、60%、又は70%、最も好ましくは少なくとも80%、90%、若しくは95%~100%、又はそれ以上(限定されるものではないが、比活性の最大10倍を含む)の比活性を有する。酵素活性及び基質特異性のアッセイ及び定量測定の方法は、当業者には周知である。
【0121】
別の態様では、本発明は、有機部分の共有結合により修飾される、本明細書に記載されるヒト抗体及び抗原結合断片に関する。かかる修飾は、改善された薬物動態特性(例えば、増大したインビボでの血清半減期)を有する抗体又は抗原結合断片を産生することができる。有機部分は、直鎖又は分枝鎖親水性ポリマー基、脂肪酸基、又は脂肪酸エステル基であることができる。特定の実施形態では、親水性ポリマー基は、分子量が約800~約120,000ダルトンであって、ポリアルカングリコール(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG))、炭水化物ポリマー、アミノ酸ポリマー又はポリビニルピロリドンであり得、脂肪酸基又は脂肪酸エステル基は、約8~約40個の炭素原子を含むことができる。
【0122】
修飾された抗体及び抗原結合断片は、抗体に直接的又は間接的に共有結合される、1つ又は2つ以上の有機部分を含むことができる。本発明の抗体又は抗原結合断片に結合される各有機部分は、独立して、親水性ポリマー基、脂肪酸基、又は脂肪酸エステル基であることができる。本明細書で使用するとき、「脂肪酸」という用語は、モノカルボン酸及びジカルボン酸を包含する。本明細書で使用する場合、「親水性ポリマー基」という用語は、オクタンよりも水に対する溶解度が高い有機ポリマーを意味する。例えば、ポリリシンは、オクタンよりも水に対する溶解度が高い。よって、ポリリシンの共有結合により修飾された抗体は、本発明に包含される。本発明の抗体を修飾するのに好適な親水性ポリマーは、直線状又は分岐状であることができ、例えば、ポリアルカングリコール(例えば、PEG、モノメトキシ-ポリエチレングリコール(mPEG)、PPGなど)、炭水化物(例えば、デキストラン、セルロース、オリゴ糖、多糖など)、親水性アミノ酸のポリマー(例えば、ポリリシン、ポリアルギニン、ポリアスパラギン酸など)、ポリアルカンオキシド(例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドなど)、及びポリビニルピロリドンを含む。好ましくは、本発明の抗体を修飾する親水性ポリマーは、個別の分子体として、約800~約150,000ダルトンの分子量を有する。例えば、PEG5000及びPEG20,000を使用することができ、下付き文字は、ポリマーの平均分子量(ダルトン)である。親水性ポリマー基は、1~約6個のアルキル基、脂肪酸基又は脂肪酸エステル基で置換することができる。脂肪酸又は脂肪酸エステル基で置換される親水性ポリマー類は、好適な方法を利用することによって調製することができる。例えば、アミン基を含むポリマーを、脂肪酸又は脂肪酸エステルのカルボン酸塩に連結させることができ、脂肪酸又は脂肪酸エステル上の活性化カルボン酸塩(例えば、N,N-カルボニルジイミダゾールで活性化されている)をポリマー上のヒドロキシル基に連結させることができる。
【0123】
本発明の抗体を修飾するために好適な脂肪酸及び脂肪酸エステルは、飽和されてもよいし、又は1つ若しくは2つ以上の不飽和単位を含有していてもよい。本発明の抗体を修飾するのに好適な脂肪酸としては、例えば、n-ドデカン酸塩(C12、ラウリン酸塩)、n-テトラデカン酸塩(C14、ミリスチン酸塩)、n-オクタデカン酸塩(C18、ステアリン酸塩)、n-エイコサン酸塩(C20、アラキジン酸塩)、n-ドコサン酸塩(C22、ベヘン酸)、n-トリアコンタン酸塩(C30)、n-テトラコンタン酸塩(C40)、シス-Δ9-オクタデカン酸塩(C18、オレイン酸塩)、全てのシス-Δ5,8,11,14-エイコサテトラエン酸塩(C20、アラキドン酸塩)、オクタンジオン酸、テトラデカンジオン酸、オクタデカンジオン酸、ドコサンジオン酸などが挙げられる。好適な脂肪酸エステルは、直鎖又は分枝鎖の低級アルキル基を含む、ジカルボン酸のモノエステルを含む。低級アルキル基は、1~約12個、好ましくは1~約6個の炭素原子を含むことができる。
【0124】
修飾ヒト抗体及び抗原結合断片は、1つ又は2つ以上の修飾剤と反応させることなどによって、好適な方法を使用して調製することができる。本明細書で使用するとき、「修飾剤」という用語は、活性化基を含む好適な有機基(例えば、親水性ポリマー、脂肪酸、脂肪酸エステル)を意味する。「活性化基」とは、適切な条件下で第2の化学基と反応し、これにより修飾剤と第2の化学基との間に共有結合を形成することのできる、化学部分又は官能基である。例えば、アミン反応性活性化基としては、トシル酸、メシル酸、ハロ(クロロ、ブロモ、フルオロ、ヨード)などの求電子基、N-ヒドロキシスクシニミジルエステル(NHS)などが挙げられる。チオール類と反応可能な活性化基としては、例えば、マレイミド、ヨードアセチル、アクリロリル、ピリジルジスルフィド、5-チオール-2-ニトロ安息香酸チオール(TNB-チオール)などが挙げられる。アルデヒド官能基は、アミン又はヒドラジド含有分子と連結することができ、アジド基は、三価リン基と反応してホスホルアミデート又はホスホルイミド結合を形成することができる。分子中に活性化基を導入するための好適な方法は、当該技術分野において既知である(例えば、Hermanson,G.T.、Bioconjugate Techniques,Academic Press:San Diego,CA(1996)参照)。活性化基は、有機基(例えば、親水性ポリマー、脂肪酸、脂肪酸エステル)に直接的に、又はリンカー部分、例えば、二価のC1~C12基(ここで、1つ又は2つ以上の炭素原子は酸素、窒素又は硫黄などのヘテロ原子に置換できる)を介して結合することができる。好適なリンカー部分としては、例えば、テトラエチレングリコール、-(CH2)3-、-NH-(CH2)6-NH-、-(CH2)2-NH-、及び-CH2-O-CH2-CH2-O-CH2-CH2-O-CH-NH-が挙げられる。リンカー部分を含む修飾剤は、例えば、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)の存在下で、モノ-Boc-アルキルジアミン(例えば、モノ-Boc-エチレンジアミン、モノ-Boc-ジアミノへキサン)を脂肪酸と反応させて、遊離アミンと脂肪酸カルボキシレートとの間にアミド結合を形成することによって生産することができる。Boc保護基を、トリフルオロ酢酸(TFA)処理により生成物から除去し、記載されているように別のカルボン酸塩に連結し得る一級アミンを露出させることができ、又はこれを無水マレイン酸と反応させ、結果として得られた生成物を環化させて脂肪酸の活性化マレイミド誘導体を産生することができる。(例えば、国際公開第92/16221号(Thompsonら)を参照されたく、この全教示が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0125】
修飾された抗体は、ヒト抗体又は抗原結合断片を修飾剤と反応させることによって生産することができる。例えば、有機部分は、アミン反応性修飾剤、例えば、PEGのNHSエステルを利用して、部位特異的なものではない方法で抗体に結合させることができる。抗体又は抗原結合断片のジスルフィド結合(例えば、鎖内ジスルフィド結合)を還元することによって、修飾されたヒト抗体又は抗原結合断片を調製することもできる。このとき、還元された抗体又は抗原結合断片をチオール反応性修飾剤と反応させて、本発明の修飾された抗体を生産することができる。本発明の抗体の特定の部位に結合される有機部分を含む修飾されたヒト抗体及び抗原結合断片は、逆タンパク質分解(Fisch et al.,Bioconjugate Chem.,3:147-153(1992)、Werlen et al.,Bioconjugate Chem.,5:411-417(1994)、Kumaran et al.,Protein Sci.6(10):2233-2241(1997)、Itoh et al.,Bioorg.Chem.,24(1):59-68(1996)、Capellas et al.,Biotechnol.Bioeng.,56(4):456~463(1997))、及びHermanson,G.T.,Bioconjugate Techniques,Academic Press:San Diego,CA(1996)に記載される方法などの好適な方法を使用して調製することができる。
【0126】
本発明の方法はまた、本明細書に記載されかつ/又は当該技術分野において既知であるように、天然に存在しない組成物、混合物、又は形態で提供される少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、又はそれ以上のその抗IL-23抗体を含む、抗IL-23抗体組成物を使用する。かかる組成物は、上記配列番号の隣接アミノ酸の70~100%、又はその特定の断片、ドメイン、若しくは変異体からなる群から選択される抗IL-23抗体のアミノ酸配列の、少なくとも1つ又は2つの完全長、C及び/若しくはN末端欠失変異体、ドメイン、断片、又は特定の変異体を含む、天然に存在しない組成物を含む。好ましい抗IL-23抗体組成物は、本明細書に記載される抗IL-23抗体配列、例えば、上記配列番号の70~100%、又はその特定の断片、ドメイン、若しくは変異体の少なくとも1つのCDR又はLBP含有部分として、少なくとも1つ又は2つの完全長、断片、ドメイン、又は変異体を含む。更に好ましい組成物は、例えば、上記配列番号などの70~100%、又はその特定の断片、ドメイン、若しくは変異体のうちの少なくとも1つを40~99%含む。かかる組成物の百分率は、当該技術分野において既知であるか、又は本明細書に記載されるように、重量、容量、濃度、モル濃度、あるいは液体若しくは無水溶液(dry solution)、混合物、懸濁液、エマルション、粒子、粉末、又はコロイドとしてのモル濃度によるものである。
【0127】
更なる治療活性成分を含む抗体組成物
本発明の方法に使用される抗体組成物は、任意選択で、抗感染症薬、心血管(CV)系作用薬、中枢神経系(CNS)薬、自律神経系(ANS)薬、呼吸器薬、消化(GI)管作用薬、ホルモン薬、体液又は電解質平衡薬、血液作用薬、抗腫瘍薬、免疫調節薬、眼、耳又は鼻用薬、局所作用薬、栄養薬などのうち、少なくとも1つから選択される、有効量の少なくとも1つの化合物又はタンパク質を更に含むことができる。かかる薬物は、本明細書に示される各々の製剤、適応症、投与量、及び投与を含めて、当該技術分野において周知である(例えば、各々参照により全体が本明細書に組み込まれる、Nursing 2001 Handbook of Drugs,21st edition,Springhouse Corp.,Springhouse,PA,2001、Health Professional’s Drug Guide 2001,ed.,Shannon,Wilson,Stang,Prentice-Hall,Inc,Upper Saddle River,NJ、Pharmcotherapy Handbook,Wells et al.,Appleton & Lange,Stamford,CTを参照されたい)。
【0128】
本発明の方法の抗体と組み合わせることができる薬物の例として、抗感染薬は、殺アメーバ薬又は少なくとも1種の抗原虫薬、駆虫薬、抗真菌薬、抗マラリア薬、抗結核薬又は少なくとも1種の抗らい菌薬、アミノグリコシド、ペニシリン、セファロスポリン、テトラサイクリン、スルホンアミド、フルオロキノロン、抗ウイルス薬、マクロライド抗感染薬、及び種々の抗感染薬から選択される少なくとも1種であることができる。ホルモン薬は、コルチコステロイド、アンドロゲン、又は少なくとも1種のアナボリックステロイド、エストロゲン、又は少なくとも1種のプロゲスチン、ゴナドトロピン、抗糖尿病薬、又は少なくとも1種のグルカゴン、甲状腺ホルモン、甲状腺ホルモン拮抗薬、下垂体ホルモン、及び副甲状腺様薬から選択される少なくとも1種であることができる。少なくとも1種のセファロスポリンは、セファクロル、セファドロキシル、セファゾリンナトリウム、セフジニル、塩酸セフェピム、セフィキシム、セフメタゾールナトリウム、セフォニシドナトリウム、セフォペラゾンナトリウム、セフォタキシムナトリウム、セフォテタン二ナトリウム、セフォキシチンナトリウム、セフポドキシムプロキセチル、セフプロジル、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシムナトリウム、セフトリアキソンナトリウム、セフロキシムアキセチル、セフロキシムナトリウム、塩酸セファレキシン、セファレキシン一水和物、セフラジン、及びロラカルベフから選択される少なくとも1種であることができる。
【0129】
少なくとも1種のコルチコステロイド(coricosteroid)は、ベタメタゾン、酢酸ベタメタゾン又はリン酸ベタメタゾンナトリウム、リン酸ベタメタゾンナトリウム、酢酸コルチゾン、デキサメサゾン、酢酸デキサメサゾン、リン酸デキサメサゾンナトリウム、酢酸フルドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、シピオン酸ヒドロコルチゾン、リン酸ヒドロコルチゾンナトリウム、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム、プレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウム、テブト酸プレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、及び二酢酸トリアムシノロンから選択される少なくとも1種であることができる。少なくとも1種のアンドロゲン又はタンパク質同化ステロイドは、ダナゾール、フルオキシメステロン、メチルテストステロン、デカン酸ナンドロロン、フェンプロピオン酸ナンドロロン、テストステロン、シピオン酸テストステロン、エナント酸テストステロン、プロピオン酸テストステロン、及びテストステロン経皮系から選択される少なくとも1種であることができる。
【0130】
少なくとも1種の免疫抑制剤は、アザチオプリン、バシリキシマブ、シクロスポリン、ダクリズマブ、リンパ球免疫グロブリン、ムロモナブ-CD3、ミコフェノール酸モフェチル、塩酸ミコフェノール酸モフェチル、シロリムス、及びタクロリムスから選択される少なくとも1種であり得る。
【0131】
少なくとも1種の局所抗感染薬は、アシクロビル、アンホテリシンB、アゼライン酸クリーム、バシトラシン、硝酸ブトコナゾール、リン酸クリンダマイシン、クロトリマゾール、硝酸エコナゾール、エリスロマイシン、硫酸ゲンタマイシン、ケトコナゾール、酢酸マフェニド、メトロニダゾール(局所)、硝酸ミコナゾール、ムピロシン、塩酸ナフチフィン、硫酸ネオマイシン、ニトロフラゾン、ナイスタチン、スルファジアジン銀、塩酸テルビナフィン、テルコナゾール、塩酸テトラサイクリン、チオコナゾール、及びトルナフテートから選択される少なくとも1種であることができる。少なくとも1種の疥癬殺虫剤若しくは殺シラミ薬は、クロタミトン、リンデン、ペルメトリン、及びピレトリンから選択される少なくとも1種であることができる。少なくとも1種の局所コルチコステロイドは、ジプロピオン酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、プロピオン酸クロベタゾール、デソニド、デスオキシメタゾン、デキサメサゾン、リン酸デキサメサゾンナトリウム、二酢酸ジフロラゾン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルランドレノリド、プロピオン酸フルチカゾン、ハルシノニド(halcionide)、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、吉草酸ヒドロコルチゾン、フロ酸モメタゾン、及びトリアムシノロンアセトニドから選択される少なくとも1種であることができる。(例えば、Nursing 2001 Drug Handbookの1098~1136ページを参照されたい。)
【0132】
抗IL-23抗体組成物は、かかる調節、治療、又は療法を必要とする細胞、組織、器官、動物、又は対象と接触するか又はそれに投与される少なくとも1つの抗IL-12/23p40又はIL-23抗体を含み、任意選択で、少なくとも1つのTNF拮抗薬(例えば、限定されないが、TNF化学若しくはタンパク質拮抗薬、TNFモノクローナル若しくはポリクローナル抗体又は断片、可溶性TNF受容体(例えば、p55、p70、又はp85)又は断片、その融合ポリペプチド、又は小分子TNF拮抗薬、例えば、TNF結合タンパク質I若しくはII(TBP-1又はTBP-II)、ネレリモンマブ(nerelimonmab)、インフリキシマブ、エタナセプト(eternacept)、CDP-571、CDP-870、アフェリモマブ、レネルセプトなど)、抗リウマチ薬(例えば、メトトレキサート、オーラノフィン、アウロチオグルコース、アザチオプリン、エタネルセプト、金チオリンゴ酸ナトリウム、ヒドロキシクロロキン硫酸塩、レフルノミド、スルファサラジン)、免疫化物質、免疫グロブリン、免疫抑制薬(例えば、アザチオプリン、バシリキシマブ、シクロスポリン、ダクリズマブ)、サイトカイン又はサイトカイン拮抗薬から選択される少なくとも1つを更に含む、任意の好適かつ有効な量の組成物又は医薬組成物のうちの少なくとも1つを更に含むことができる。かかるサイトカインの非限定的な例としては、IL-1~IL-40など(例えば、IL-1、IL-2など)のいずれかが挙げられるが、これらに限定されるものではない。好適な投与量は、当該技術分野において周知である。例えば、Wells et al.,eds.,Pharmacotherapy Handbook,2nd Edition,Appleton and Lange,Stamford,CT(2000)、PDR Pharmacopoeia,Tarascon Pocket Pharmacopoeia 2000,Deluxe Edition,Tarascon Publishing,Loma Linda,CA(2000)を参照されたく、これらの文献は各々、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0133】
本発明の方法に使用される抗IL-23抗体化合物、組成物、又は混合物は更に、希釈剤、結合剤、安定剤、緩衝剤、塩、親油性溶媒、保存剤、アジュバントなどであるがこれらに限定されない、任意の好適な助剤のうちの少なくとも1つを含み得る。医薬的に許容される助剤が好ましい。かかる滅菌溶液を調製する方法及びその非限定例は、当該技術分野において周知であり、例えば、Gennaro,Ed.,Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition,Mack Publishing Co.(Easton,PA)1990が挙げられるが、これに限定されない。当該技術分野において周知であるか、又は本明細書に記載される、抗IL-23抗体、断片、又は変異体組成物の投与方式、溶解度、及び/又は安定性に好適な医薬的に許容される担体は、日常的に選択することができる。
【0134】
本組成物において有用な医薬賦形剤及び添加剤は、これらに限定されるものではないが、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、脂質及び炭水化物(例えば、単糖類、二糖、三糖、四糖、及びオリゴ糖を含む糖類、アルジトール、アルドン酸、エステル化糖などの誘導体化糖、並びに多糖類又は糖ポリマー)を含み、これらは、単独で又は組み合わせて存在してもよく、単独で又は組み合わせて1~99.99重量%又は容量%含まれる。代表的なタンパク質賦形剤としては、ヒト血清アルブミン(HSA)などの血清アルブミン、組換えヒトアルブミン(rHA)、ゼラチン、カゼインなどが挙げられる。緩衝能においても機能し得る代表的なアミノ酸/抗体構成要素としては、アラニン、グリシン、アルギニン、ベタイン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、システイン、リシン、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、フェニルアラニン、アスパルテームなどが挙げられる。好ましいアミノ酸の1つはグリシンである。
【0135】
本発明で使用するのに好適な炭水化物賦形剤としては、例えば、フルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D-マンノース、ソルボースなどの単糖類、ラクトース、スクロース、トレハロース、セロビオースなどの二糖類、ラフィノース、メレジトース、マルトデキストリン、デキストラン、デンプン類などの多糖類、マンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトールソルビトール(グルシトール)、ミオイノシトールなどのアルジトールが挙げられる。本発明で使用するのに好ましい炭水化物添加物は、マンニトール、トレハロース、及びラフィノースである。
【0136】
抗IL-23抗体組成物はまた、緩衝剤又はpH調整剤を含むことができ、典型的には、緩衝剤は、有機酸又は塩基から調製される塩である。代表的な緩衝剤としては、クエン酸、アスコルビン酸、グルコン酸、炭酸、酒石酸、コハク酸、酢酸、又はフタル酸の塩などの有機酸塩、トリス、トロメタミン塩酸塩、又はリン酸緩衝剤が挙げられる。本組成物で使用するのに好ましい緩衝剤は、クエン酸などの有機酸塩である。
【0137】
更に、抗IL-23抗体組成物は、ポリビニルピロリドン、フィコール(ポリマー糖)、デキストレート(例えば、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンなどのシクロデキストリン)、ポリエチレングリコール、着香剤、抗菌剤、甘味料、抗酸化剤、帯電防止剤、界面活性剤(例えば、「TWEEN20」及び「TWEEN80」などのポリソルベート)、脂質(例えば、リン脂質、脂肪酸)、ステロイド(例えば、コレステロール)、及びキレート剤(例えば、EDTA)などのポリマー賦形剤/添加剤を含み得る。
【0138】
本発明による抗IL-23抗体、部分又は変異体組成物における使用に適したこれら及び追加の既知の製薬学的添加物及び/又は添加剤は、当該技術分野において既知であり、例えば、「Remington:The Science&Practice of Pharmacy」、19th ed.,Williams&Williams,(1995)、及び「Physician’s Desk Reference」、52nd ed,Medical Economics,Montvale,NJ(1998)に列挙されており、これらの開示は、参照により全体が本明細書に組み込まれる。好ましい担体又は添加物材料は、炭水化物(例えば、単糖類及びアルジトール)及び緩衝剤(例えば、クエン酸)又はポリマー剤である。例示的な担体分子はムコ多糖、ヒアルロン酸であり、これらは関節内送達に有用であり得る。
【0139】
製剤
上述したとおり、本発明は、好ましくは、生理食塩水又は選択された塩を含むリン酸緩衝剤である安定した製剤、並びに保存剤を含有する保存溶液及び製剤、並びに製薬学的に許容できる製剤中に少なくとも1つの抗IL-23抗体を含む薬剤学的又は獣医学的用途に好適な多用途保存製剤を提供する。保存製剤は、水性希釈剤中に、少なくとも1つのフェノール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、硝酸フェニル水銀、フェノキシエタノール、ホルムアルデヒド、クロロブタノール、塩化マグネシウム(例えば、六水和物)、アルキルパラベン(メチル、エチル、プロピル、ブチルなど)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、及びチメロサール、又はそれらの混合物からなる群から任意選択で選択される、少なくとも1つの既知の保存剤を含む。当該技術分野において既知であるように、0.001~5%、又はその中の任意の範囲若しくは値、例えば、0.001、0.003、0.005、0.009、0.01、0.02、0.03、0.05、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.3、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9など、又はその中の任意の範囲若しくは値の、任意の好適な濃度又は混合物を使用することができる。非限定的な例としては、保存剤無添加、0.1~2%のm-クレゾール(例えば、0.2、0.3.0.4、0.5、0.9、1.0%)、0.1~3%のベンジルアルコール(例えば、0.5、0.9、1.1、1.5、1.9、2.0、2.5%)、0.001~0.5%のチメロサール(例えば、0.005、0.01)、0.001~2.0%のフェノール(例えば、0.05、0.25、0.28、0.5、0.9、1.0%)、0.0005~1.0%のアルキルパラベン(例えば、0.00075、0.0009、0.001、0.002、0.005、0.0075、0.009、0.01、0.02、0.05、0.075、0.09、0.1、0.2、0.3、0.5、0.75、0.9、1.0%)などが挙げられる。
【0140】
上述のとおり、本発明の方法は、包装材と、任意選択で水性希釈剤中に処方された緩衝剤及び/又は保存剤を伴う少なくとも1つの抗IL-23特異的抗体の溶液を含む少なくとも1つのバイアルと、を含む製品を使用し、この包装材は、かかる溶液を1、2、3、4、5、6、9、12、18、20、24、30、36、40、48、54、60、66、72時間以上にわたり保持することができることを記したラベルを含む。本発明は、包装材と、凍結乾燥された抗IL-23特異的抗体を含む第1のバイアルと、処方された緩衝剤又は保存剤の水性希釈剤を含む第2のバイアルと、を含む製品を更に使用し、この包装材は、抗IL-23特異的抗体を水性希釈剤でもどして、24時間以上にわたって保持することができる溶液を形成するように患者に指示するラベルを含む。
【0141】
本発明により使用される抗IL-23特異的抗体は、本明細書に記載されるか又は当該技術分野において既知の、哺乳動物細胞又はトランスジェニック調製物から産生することを含む組換え手段により産生され得るか、又は他の生物源から精製され得る。
【0142】
抗IL-23特異的抗体の範囲は、湿式/乾式系の場合、もどすときに約1.0μg/mL~約1000mg/mLの濃度が得られる量で含まれるが、より低い濃度及び高い濃度でも作業可能であり、意図される送達ビヒクルに依存し、例えば溶液製剤では、経皮パッチ、肺、経粘膜、又は浸透圧性若しくはマイクロポンプ方法とは異なる。
【0143】
好ましくは、水性希釈剤は、任意選択で、医薬的に許容される保存剤を更に含む。好ましい保存剤には、フェノール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、アルキルパラベン(メチル、エチル、プロピル、ブチルなど)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、及びチメロサール、又はそれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられる。製剤中で使用される保存剤の濃度は、抗菌効果を生み出すのに十分な濃度である。かかる濃度は選択された保存剤によって異なり、当業者により容易に決定される。
【0144】
他の賦形剤、例えば、等張剤、緩衝剤、抗酸化剤、及び保存剤エンハンサは、任意選択でかつ好ましくは希釈剤に添加することができる。グリセリンなどの等張剤が、既知の濃度で概して使用される。好ましくは、生理学的に耐性の緩衝剤を添加して、改善されたpH制御を提供する。製剤は、約pH4~約pH10、及び好ましくは約pH5~約pH9の範囲、及び最も好ましくは約6.0~約8.0の範囲などの、広範囲のpH範囲を網羅とすることができる。好ましくは、本発明の製剤は、約6.8~約7.8のpHを有する。好適な緩衝剤には、リン酸緩衝剤、最も好ましくは、リン酸ナトリウム、特にリン酸緩衝生理食塩水(phosphate buffered saline、PBS)が含まれる。
【0145】
その他の添加剤、例えばTween20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)、Tween40(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート)、Tween80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)、Pluronic F68(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー)、及びPEG(ポリエチレングリコール)などの、医薬的に許容される可溶化剤、又はポリソルベート20若しくは80又はポロキサマー184若しくは188、Pluronic(登録商標)ポリル(polyl)などの非イオン性界面活性剤、その他のブロックコポリマー、並びにEDTA及びEGTAなどのキレート剤を、任意に製剤又は組成物に添加して、凝集を低減させることができる。これらの添加物は、製剤を投与するためにポンプ又はプラスチック容器が使用される場合に特に有用である。医薬的に許容される界面活性剤の存在により、タンパク質が凝集する傾向が軽減される。
【0146】
製剤は、少なくとも1つの抗IL-23抗体と、フェノール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、アルキルパラベン(メチル、エチル、プロピル、ブチルなど)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、及びチメロサール、又はこれらの混合物からなる群から選択される保存剤と、を水性希釈剤中で混合することを含むプロセスにより調製することができる。少なくとも1つの抗IL-23特異的抗体と保存剤との水性希釈剤中での混合は、従来の溶解及び混合手順を使用して実施される。好適な製剤を調製するために、例えば、緩衝溶液中の一定量の少なくとも1つの抗IL-23特異的抗体を、所望の濃度のタンパク質及び保存剤を提供するために十分な量の緩衝溶液中で所望の保存剤と組み合わせる。本プロセスの変化形態は、当業者によって認識される。例えば、構成成分の添加順序、追加の添加剤の使用の有無、製剤調製時の温度及びpHは全て、使用する投与濃度及び投与手段に関して最適化することのできる因子である。
【0147】
製剤は、透明な溶液として、又は水、保存剤及び/若しくは賦形剤、好ましくはリン酸塩緩衝剤及び/若しくは生理食塩水、並びに選択された塩を水性希釈剤中に含有する第2のバイアルでもどされる、凍結乾燥された抗IL-23特異的抗体のバイアルを含むデュアルバイアル(dual vial)として、患者に提供することができる。単一溶液バイアル又は再構成を必要とするデュアルバイアルはいずれも複数回再利用することができ、単一又は複数の患者治療サイクルを満たすことができ、したがって、現在使用できるよりも便利な治療レジメンを提供することができる。
【0148】
本製品は、即時から24時間以上の範囲の期間にわたる投与に有用である。したがって、本発明により特許請求される製品は、患者に大きな利益を提供する。本発明の製剤は、任意選択で、約2℃~約40℃の温度で安全に保存し、タンパク質の生物学的活性を長期間保持することができ、したがって、包装ラベルで、溶液を6、12、18、24、36、48、72、又は96時間以上保持及び/又は使用し得ることを記することができる。保存されている希釈剤を使用する場合には、かかるラベルは、最高1~12か月、半年、1年半、及び/又は2年までの使用を含むことができる。
【0149】
抗IL-23特異的抗体の溶液は、少なくとも1つの抗体を水性希釈剤中で混合することを含むプロセスにより調製することができる。混合は、従来の溶解及び混合手順を使用して実施される。好適な希釈剤を調製するために、例えば、水又は緩衝剤中の一定量の少なくとも1つの抗体を、所望の濃度のタンパク質、及び任意選択で保存剤又は緩衝剤を提供するのに十分な量で組み合わせる。本プロセスの変化形態は、当業者によって認識される。例えば、構成成分の添加順序、追加の添加剤の使用の有無、製剤調製時の温度及びpHは全て、使用する投与濃度及び投与手段に関して最適化することのできる因子である。
【0150】
特許請求される製品は、透明な溶液として、又は水性希釈剤を含有する第2のバイアルでもどされる、凍結乾燥された少なくとも1つの抗IL-23特異的抗体のバイアルを含むデュアルバイアルとして、患者に提供することができる。単一溶液バイアル又は再構成を必要とするデュアルバイアルはいずれも複数回再利用することができ、単一又は複数の患者治療サイクルを満たすことができ、したがって、現在使用できるよりも便利な治療レジメンを提供する。
【0151】
特許請求される製品は、透明な溶液、又は水性希釈剤を含有する第2のバイアルでもどされる、凍結乾燥された少なくとも1つの抗IL-23特異的抗体のバイアルを含むデュアルバイアルを、薬局、診療所、又はその他のかかる機関及び施設に提供することによって、患者に対し間接的に提供することができる。この場合の透明溶液は最高1リットル又は更にはそれ以上の容量であってもよく、この大きな容器からより少量の少なくとも1つの抗体溶液を1回又は複数回取り出してより小さなバイアルに移し、かつ薬局又は診療所により顧客及び/又は患者に提供できる。
【0152】
単一バイアルシステムを含む承認済みデバイスとしては、溶液を送達するためのペン型注射器デバイス、例えば、BD Pens、BD Autojector(登録商標)、Humaject(登録商標)、NovoPen(登録商標)、B-DPen(登録商標)、AutoPen(登録商標)、及びOptiPen(登録商標)、GenotropinPen(登録商標)、Genotronorm Pen(登録商標)、Humatro Pen(登録商標)、Reco-Pen(登録商標)、Roferon Pen(登録商標)、Biojector(登録商標)、Iject(登録商標)、J-tip Needle-Free Injector(登録商標)、Intraject(登録商標)、Medi-Ject(登録商標)、Smartject(登録商標)など(Becton Dickensen(Franklin Lakes,NJ、www.bectondickenson.com)、Disetronic(Burgdorf、Switzerland、www.disetronic.com)、Bioject(Portland,Oregon(www.bioject.com)、National Medical Products,Weston Medical(Peterborough,UK,www.weston-medical.com)、Medi-Ject Corp(Minneapolis,MN,www.mediject.com)によって製造又は開発されているもの)、及び類似の好適なデバイスが挙げられる。デュアルバイアルシステムを含む認知されたデバイスとしては、もどした溶液を送達するために、凍結乾燥された薬物をカートリッジ内でもどすためのペン型注射器システム、例えばHumatroPen(登録商標)などが挙げられる。好適なその他のデバイスの例としては、予め充填された注射器、自動注射器、針なし注射器、及び針なしIV注入セットが挙げられる。
【0153】
本製品は、包装材を含み得る。包装材は、規制当局によって必要とされる情報に加えて、本製品を使用することができる条件を提供する。本発明の包装材は、適用できる場合、少なくとも1つの抗IL-23抗体を水性希釈剤でもどして溶液を形成し、2~24時間以上の期間にわたって、この溶液を湿式/乾式の2つのバイアル製品に使用する、という指示を患者に提供する。シングルバイアルの溶液製品、プレフィルドシリンジ、又は自己注射器の場合、ラベルは、かかる溶液を2~24時間以上の期間にわたって使用することができることを示す。本製品は、ヒト用医薬製品用途に有用である。
【0154】
本発明の方法に使用される製剤は、抗IL-23抗体及び選択された緩衝剤、好ましくは生理食塩水又は選択された塩を含有するリン酸塩緩衝剤を混合することを含むプロセスにより調製することができる。抗IL-23抗体と緩衝剤との水性希釈剤中での混合は、従来の溶解及び混合手順を使用して実施される。好適な製剤を調製するために、例えば、水又は緩衝剤中の一定量の少なくとも1つの抗体を、所望の濃度のタンパク質及び緩衝剤を提供するのに十分な量の水中で所望の緩衝剤と組み合わせる。本プロセスの変化形態は、当業者によって認識される。例えば、構成成分の添加順序、追加の添加剤の使用の有無、製剤調製時の温度及びpHは全て、使用する投与濃度及び投与手段に関して最適化することのできる因子である。
【0155】
本発明の方法は、ヒト又は動物患者に投与するのに有用であり、かつ許容される様々な製剤を含む医薬組成物を提供する。かかる医薬組成物は、希釈剤として「標準状態」の水、及び当業者に周知の日常的な方法を使用して調製される。例えば、ヒスチジン及びヒスチジン一塩酸塩水和物などの緩衝構成要素が最初に提供され、続いて適切な非最終容量の「標準状態」の水希釈剤、スクロース、及びポリソルベート80が添加され得る。次いで、単離された抗体を添加することができる。最後に、水を希釈剤として使用して「標準状態」条件の下で、医薬組成物の容量を所望の最終容量に調整する。当業者であれば、医薬組成物の調製に好適ないくつかの他の方法を認識する。
【0156】
医薬組成物は、水の容量単位当たりの示される質量の各構成成分を含むか、又は「標準状態」の示されるpHを有する水溶液又は懸濁液であってもよい。本明細書で使用するとき、「標準状態」という用語は、25℃±2℃の温度及び1気圧の圧力を意味する。「標準状態」という用語は、当該技術分野では、当該技術分野が認識する単一の温度又は圧力のセットを指すように使用されないが、代わりに参照「標準状態」条件下の特定の組成物を含む溶液又は懸濁液を説明するために使用される温度及び圧力を特定する参照状態である。これは、溶液の容量が一つには温度及び圧力の関数であるためである。当業者であれば、本明細書に開示されるものと同等の医薬組成物を他の温度及び圧力で生産することができることを認識する。かかる医薬組成物が本明細書に開示されるものと同等であるかは、上記に定義された「標準状態」条件下(例えば、25℃±2℃及び1気圧の圧力)で決定されるべきである。
【0157】
重要なことに、かかる医薬組成物は、医薬組成物の単位容積当たり「約」ある特定の値の構成要素の質量(例えば、「約0.53mgのL-ヒスチジン」)を含有するか、又は約ある特定の値のpH値を有し得る。医薬組成物中に存在する構成要素の質量又はpH値は、単離された抗体が医薬組成物に存在するか、又は単離された抗体が医薬組成物から除去された後(例えば、希釈により)に、医薬組成物中に存在する単離された抗体がペプチド鎖に結合することができる場合の、「約」所与の数値である。つまり、構成要素の質量値又はpH値などの値は、単離された抗体を医薬組成物中に入れた後に単離された抗体の結合活性が維持され、検出可能である場合の、「約」所与の数値である。
【0158】
競合結合分析を行って、IL-23特異的mAbが類似の若しくは異なるエピトープに結合し、かつ/又は互いに競合するかを決定する。ELISAプレート上にAbを個々にコーティングする。競合するmAbを添加し、続いてビオチン化hrIL-23を添加する。陽性対照には、コーティングに同じmAbを競合mAb(「自己競合」)として使用してもよい。IL-23結合は、ストレプトアビジンを使用して検出される。これらの結果は、mAbがIL-23上の類似の又は部分的に重複するエピトープを認識するかどうかを示す。
【0159】
本発明の方法の一態様は、医薬組成物を患者に投与する。
【0160】
医薬組成物の一実施形態では、単離された抗体濃度は、1mLの医薬組成物当たり約77~約104mgである。医薬組成物の別の実施形態では、pHは約5.5~約6.5である。
【0161】
安定又は保存製剤は、透明な溶液として、又は水性希釈剤中に保存剤若しくは緩衝剤及び添加物を含有する第2のバイアルで再構成される、凍結乾燥された少なくとも1つの抗IL-23抗体のバイアルを含むデュアルバイアルとして、患者に提供することができる。単一溶液バイアル又は再構成を必要とするデュアルバイアルはいずれも複数回再利用することができ、単一又は複数の患者治療サイクルを満たすことができ、したがって、現在使用できるよりも便利な治療レジメンを提供する。
【0162】
抗IL-23抗体を安定化する他の製剤又は方法は、抗体を含む凍結乾燥粉末の透明溶液以外のものであってよい。非透明溶液としては、微粒子懸濁液を含む製剤があり、かかる微粒子は、ミクロスフェア、微小粒子、ナノ粒子、ナノスフェア、又はリポソームとして様々に知られる種々の大きさの構造内に、抗IL-23抗体を含有する組成物である。活性薬剤を含有するかかる比較的均質な本質的に球状の微粒子製剤は、米国特許第4,589,330号に教示されるとおり、活性薬剤及びポリマーを含有する水相と非水相とを接触させ、次に、非水相を蒸発させて水相からの粒子の合体を引き起こすことにより、形成することができる。多孔性微小粒子は、米国特許第4,818,542号に教示されるとおり、連続溶媒中に分散された活性薬剤とポリマーとを含有する第1相を使用し、凍結乾燥又は希釈-抽出-沈殿により懸濁液からこの溶媒を除去することで調製することができる。こうした調製に好ましいポリマーは、ゼラチン寒天、デンプン、アラビノガラクタン、アルブミン、コラーゲン、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、グリコリド-L(-)ラクチドポリ(エプシロン-カプロラクトン、ポリ(エプシロン-カプロラクトン-CO-乳酸)、ポリ(エプシロン-カプロラクトン-CO-グリコール酸)、ポリ(β-ヒドロキシ酪酸)、ポリエチレンオキシド、ポリエチレン、ポリ(アルキル-2-シアノアクリレート)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリアミド、ポリ(アミノ酸)、ポリ(2-ヒドロキシエチルDL-アスパルトアミド)、ポリ(エステル尿素)、ポリ(L-フェニルアラニン/エチレングリコール/1,6-ジイソシアナトヘキサン)及びポリ(メチルメタクリレート)からなる群から選択される、天然又は合成のコポリマー又はポリマーである。特に好ましいポリマーは、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、グリコリド-L(-)ラクチドポリ(エプシロン-カプロラクトン、ポリ(エプシロン-カプロラクトン-CO-乳酸)、及びポリ(エプシロン-カプロラクトン-CO-グリコール酸)などのポリエステルである。ポリマー及び/又は活性物質を溶解させるのに有用な溶媒としては、水、ヘキサフルオロイソプロパノール、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、ヘキサン、ベンゼン、又はヘキサフルオロアセトンセスキ水和物が挙げられる。活性物質含有相を第2相に分散させるプロセスは、ノズル内のオリフィスに当該第1相を圧力で強制的に通して液滴形成に作用させることを含むことができる。
【0163】
乾燥粉末製剤は、例えば、噴霧乾燥法、又は蒸発による溶媒抽出法、若しくは水性若しくは非水性溶媒を除去するための1つ又は2つ以上の工程が後続する結晶性組成物の沈殿による溶媒抽出法などの、凍結乾燥以外のプロセスの結果として得てもよい。噴霧乾燥抗体製剤の調製は、米国特許第6,019,968号に教示されている。抗体ベースの乾燥粉末組成物は、抗体の溶液又はスラリーを、及び任意選択で、呼吸用乾燥粉末を提供するための条件下で溶媒中の、賦形剤を、噴霧乾燥させることによって生産され得る。溶媒としては、容易に乾燥可能な、例えば水及びエタノールなどの極性化合物が挙げられる。抗体の安定性は、酸素不在下、例えば窒素ブランケット下において噴霧乾燥手順を実施すること、又は乾燥用気体として窒素を使用することにより増強され得る。別の比較的乾燥した製剤は、国際公開第9916419号に教示されている典型的にはヒドロフルオロアルカン噴射剤を含む懸濁培地中に分散した複数の有孔微細構造の分散物である。安定化された分散物は、定量吸入器を用いて患者の肺に投与できる。噴霧乾燥された薬物の商業的製造において有用な機器は、Buchi Ltd.又はNiro Corp.により製造されている。
【0164】
本明細書に記載される安定若しくは保存製剤又は溶液中のいずれかで抗IL-23抗体は、当該技術分野において周知である、SC若しくはIM注射、経皮、経肺、経粘膜、埋め込み、浸透圧ポンプ、カートリッジ、マイクロポンプ、又は当業者により理解される他の手段などの種々の送達方法を介して、本発明に従って患者に投与することができる。
【0165】
治療への応用
本発明はまた、当該技術分野において既知であるか、又は本明細書に記載される、少なくとも1つの本発明のIL-23抗体を用いて、例えば、細胞、組織、器官、動物、又は患者に、治療有効量のIL-23特異的抗体を投与又は接触させて、細胞、組織、器官、動物、又は患者におけるSScを調節又は治療するための方法をも提供する。
【0166】
本発明のいずれの方法も、かかる調節、治療、又は療法を必要としている細胞、組織、器官、動物、又は患者に、抗IL-23抗体を含む有効量の組成物又は医薬組成物を投与することを含み得る。かかる方法は、任意選択で、かかる疾患又は障害の治療のための同時投与又は併用療法を更に含むことができ、ここで、この少なくとも1つの抗IL-23抗体、その特定の部分、又は変異体を投与することは、少なくとも1つのTNF拮抗薬(例えば、限定されないが、化学物質性若しくはタンパク質性TNF拮抗薬、TNFモノクローナル若しくはポリクローナル抗体若しくは断片、可溶性TNF受容体(例えば、p55、p70、又はp85)若しくは断片、その融合ポリペプチド、又は低分子TNF拮抗薬、例えば、TNF結合タンパク質I又はII(TBP-1又はTBP-II)、ネレリモンマブ、インフリキシマブ、エタネルセプト(eternacept)(Enbrel(商標))、アダリムマブ(Humira(商標))、CDP-571、CDP-870、アフェリモマブ、レネルセピトなど)、抗リウマチ薬(例えば、メトトレキサート、オーラノフィン、アウロチオグルコース、アザチオプリン、金チオリンゴ酸ナトリウム、硫酸ヒドロキシクロロキン、レフルノミド、スルファサラジン)、筋弛緩薬、麻薬、非ステロイド性抗炎症薬(non-steroid anti-inflammatory drug、NSAID)、鎮痛薬、麻酔薬、鎮静薬、局所麻酔薬、神経筋遮断薬、抗菌薬(例えば、アミノグリコシド、抗真菌薬、抗寄生虫薬、抗ウイルス薬、カルバペナム、セファロスポリン、フルオロキノロン、マクロライド、ペニシリン、スルホンアミド、テトラサイクリン、他抗菌薬)、乾癬治療薬、コルチコステロイド、アナボリックステロイド、糖尿病関連薬、ミネラル、栄養薬、甲状腺剤、ビタミン、カルシウム関連ホルモン、止瀉薬、鎮咳薬、制吐剤、抗腫瘍薬、緩下剤、抗凝固薬、エリスロポエチン(例えば、エポエチンアルファ)、フィルグラスチム(例えば、G-CSF、Neupogen)、サルグラモスチム(GM-CSF、Leukine)、免疫付与剤、免疫グロブリン、免疫抑制剤(例えば、バシリキシマブ、シクロスポリン、ダクリズマブ)、成長ホルモン、ホルモン補充薬、エストロゲン受容体調節薬、散瞳剤、毛様体筋麻痺薬、アルキル化剤、代謝拮抗薬、分裂阻害剤、放射性医薬品、抗うつ薬、抗躁薬、抗精神病薬、抗不安薬、睡眠薬、交感神経刺激薬、刺激薬、ドネペジル、タクリン、ぜんそく薬、ベータ作用薬、吸入ステロイド、ロイコトリエン阻害剤、メチルキサンチン、クロモリン、エピネフリン若しくは類似体、ドルナーゼアルファ(Pulmozyme)、サイトカイン若しくはサイトカイン拮抗薬から選択される少なくとも1つを、前に、同時に、及び/又は後に投与することを更に含む。好適な投与量は、当該技術分野において周知である。例えば、Wells et al.,eds.,Pharmacotherapy Handbook,2nd Edition,Appleton and Lange,Stamford,CT(2000)、PDR Pharmacopoeia,Tarascon Pocket Pharmacopoeia 2000,Deluxe Edition,Tarascon Publishing,Loma Linda,CA(2000)、Nursing 2001 Handbook of Drugs,21st edition,Springhouse Corp.,Springhouse,PA,2001、Health Professional’s Drug Guide 2001,ed.,Shannon,Wilson,Stang,Prentice-Hall,Inc,Upper Saddle River,NJを参照されたく、これらの参考文献は各々、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0167】
治療処置
典型的には、SScの治療は、有効な量又は投与量の抗IL-23抗体組成物を投与することによって影響を受け、これは、組成物に含まれる活性剤の特異的活性に応じて、合計で、平均して、1投与当たり、患者1キログラム当たり少なくとも約0.01~500ミリグラムの範囲の抗IL-23抗体であり、好ましくは、単回又は複数回投与当たり、患者1キログラム当たり少なくとも約0.1~100ミリグラムの抗体である。あるいは、有効な血清濃度は、単回又は複数回投与当たり、0.1~5000μg/mLの血清濃度を含み得る。好適な投与量は、医療従事者には既知であり、当然のことながら、具体的な疾患状態、投与される組成物の比活性、及び治療を受けている具体的な患者に依存する。いくつかの場合では、所望の治療量を達成するために、反復投与、すなわち特定の監視された投与又は計量された投与の反復個別投与を提供することが必要となる場合があり、この場合、個別投与は、所望の1日の用量又は効果が得られるまで繰り返される。
【0168】
好ましい用量は、任意選択で、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99及び/若しくは100~500mg/kg/投与、又はその任意の範囲、値若しくは分画を含むか、あるいは単回若しくは複数回投与当たり0.1、0.5、0.9、1.0、1.1、1.2、1.5、1.9、2.0、2.5、2.9、3.0、3.5、3.9、4.0、4.5、4.9、5.0、5.5、5.9、6.0、6.5、6.9、7.0、7.5、7.9、8.0、8.5、8.9、9.0、9.5、9.9、10、10.5、10.9、11、11.5、11.9、20、12.5、12.9、13.0、13.5、13.9、14.0、14.5、4.9、5.0、5.5.、5.9、6.0、6.5、6.9、7.0、7.5、7.9、8.0、8.5、8.9、9.0、9.5、9.9、10、10.5、10.9、11、11.5、11.9、12、12.5、12.9、13.0、13.5、13.9、14、14.5、15、15.5、15.9、16、16.5、16.9、17、17.5、17.9、18、18.5、18.9、19、19.5、19.9、20、20.5、20.9、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、96、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、及び/若しくは5000μg/mLの血清濃度、又はその任意の範囲、値若しくは分画を得るように含み得る。
【0169】
あるいは、投与される投与は、特定の薬剤の薬力学的特徴並びにその投与方法及び経路、受容者の年齢、健康状態及び体重、症状の性質及び程度、同時治療の種類、治療頻度、並びに所望の作用などの既知の因子に応じて異なり得る。活性成分の投与量は、通常、体重1キログラム当たり約0.1~100ミリグラムであり得る。通常、0.1~50、好ましくは0.1~10ミリグラム/キログラム/投与、又は徐放性形態が、所望の結果を得るために有効である。
【0170】
非限定的な例として、ヒト又は動物の治療は、単回投与、静注投与、又は反復投与を使用して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39若しくは40日目のうちの少なくとも1日に、あるいは又は追加的に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51若しくは52週目のうちの少なくとも1週に、あるいは又は追加的に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19若しくは20年目のうちの少なくとも1年に、又はこれらの任意の組み合わせで、1日当たり0.1~100mg/kg、例えば、0.5、0.9、1.0、1.1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、45、50、60、70、80、90、又は100mg/kgの、本発明の少なくとも1つの抗体の1回又は周期的な投与量として提供され得る。
【0171】
体内投与に好適な剤形(組成物)は、概して、ユニット又は容器当たり約0.001ミリグラム~約500ミリグラムの活性成分を含む。これらの医薬組成物において、活性成分は、組成物の総重量に基づいて、通常、約0.5~99.999重量%の量で存在する。
【0172】
非経口投与に関して、抗体は、医薬的に許容される非経口ビヒクルと合わせて、又は別個に提供される、溶液、懸濁液、エマルション、粒子、粉末、若しくは凍結乾燥粉末として製剤化され得る。かかるビヒクルの例は、水、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、及び1~10%ヒト血清アルブミンである。リポソーム及び不揮発性油などの非水性ビヒクルを使用することもできる。ビヒクル又は凍結乾燥粉末は、等張性及び化学安定性を維持する添加剤(例えば、等張性に関しては塩化ナトリウム、マンニトール、化学安定性に関しては緩衝剤及び保存剤)を含有することができる。製剤は、既知の又は好適な技術によって滅菌される。
【0173】
好適な医薬担体は、本分野での標準的参考書であるRemington’s Pharmaceutical Sciences,A.Osolの最新版に記載されている。
【0174】
代替的投与
医薬有効量の抗IL-23抗体を投与するために、本発明に従って、多くの既知の及び開発された方式を使用することができる。以下の記述では経肺投与が使用されているが、本発明に従って他の投与方式を使用して、好適な結果を得てもよい。本発明のIL-23特異的抗体は、担体中で、溶液、エマルション、コロイド若しくは懸濁液として、又は乾燥粉末として、吸入によるか、又は本明細書に記載される若しくは当該技術分野において既知である他の方法による投与に適した様々なデバイス及び方法のいずれかを使用して、送達することができる。
【0175】
非経口製剤及び投与
非経口投与用製剤は、一般的な賦形剤として滅菌水又は生理食塩水、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール、植物性油、水素化ナフタレンなどを含有してもよい。注射用の水性又は油性懸濁液は、既知の方法に従って、適切な乳化剤又は加湿剤及び懸濁剤を使用することによって調製することができる。注射剤は、例えば水溶液、無菌注射液又は溶媒中懸濁液などの非毒性の非経口投与可能な希釈剤であることができる。使用可能なビヒクル又は溶媒としては、水、リンゲル液、等張生理食塩水などが許容され、通常の溶媒又は懸濁溶媒としては、無菌の不揮発性油を使用することができる。これらの目的では、天然又は合成若しくは半合成の、脂肪油又は脂肪酸、天然又は合成若しくは半合成の、モノグリセリド又はジグリセリド又はトリグリセリドを含む、あらゆる種類の不揮発性油及び脂肪酸を使用することができる。非経口投与は当該技術分野において既知であり、従来の注射手段、米国特許第5,851,198号に記載のガス加圧式無針注射デバイス、及び米国特許第5,839,446号に記載のレーザ穿孔機デバイスが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらは参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0176】
代替的送達
本発明は更に、非経口、皮下、筋肉内、静脈内、関節内、気管支内、腹部内、嚢内、軟骨内、洞内、腔内、小脳内、脳室内、結腸内、子宮頸部内、胃内、肝内、心筋内、骨内、骨盤内、心膜内、腹腔内、胸膜内、前立腺内、肺内、直腸内、腎内、網膜内、脊髄内、滑液嚢内、胸腔内、子宮内、膀胱内、病巣内、ボーラス、膣内、直腸、口腔内、舌下、鼻腔内又は経皮手段による抗IL-23抗体の投与に関する。抗IL-23抗体組成物は、特に液体溶液若しくは懸濁液の形態で、非経口(皮下、筋肉内、又は静脈内)又は任意の他の投与用に使用するために、特に、クリーム剤及び座剤などであるが、これらに限定されない半固体形態で、膣若しくは直腸投与における使用のために、錠剤若しくはカプセル剤などであるが、これらに限定されない形態で、口腔若しくは舌下投与用に、あるいは散剤、点鼻薬若しくはエアロゾル、又はある特定の薬剤などであるが、これらに限定されない形態で、鼻腔内用に、あるいは、皮膚構造を改変するか又は経皮パッチ中の薬物濃度を増加させるかのいずれかのために、ジメチルスルホキシドなどの化学的促進剤を用いて(参照により全体が本明細書に組み込まれるJunginger,et al.In「Drug Permeation Enhancement;」Hsieh,D.S.,Eds.,pp.59-90(Marcel Dekker,Inc.New York 1994)、又はタンパク質及びペプチドを含有する製剤の皮膚への適用(国際公開第98/53847号)、又は電気穿孔法などの一過性の輸送経路を作り出すための、若しくはイオントフォレシスなどの皮膚を通して荷電薬物の移動度を増加させるための電界の適用、又は超音波導入などの超音波の適用(米国特許第4,309,989号及び同第4,767,402号)を可能にする酸化剤を用いて、限定されるものではないが、ゲル、軟膏、ローション、懸濁液若しくはパッチ送達系システムなどで、経皮用に、調製することができる(上記の刊行物及び特許は、参照により全体が本明細書に組み込まれる)。
【0177】
本発明を全般的に記述してきたが、上記と同様のことは、実例として提供されるが制限することを意図していない以下の実施例を参照することにより、より容易に理解される。更に、本発明の詳細は、以下の非限定的実施例によって例示される。本明細書の全ての引用の開示は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0178】
実施例1-全身性硬化症のIL23抗体による治療
全身性硬化症を有する参加者におけるグセルクマブの多施設、無作為化、プラセボ対照、二重盲検、概念実証試験
グセルクマブ(CNTO1959)は、高い特異性及び親和性を有するヒトインターロイキン(IL)-23に結合する完全ヒト免疫グロブリンG1ラムダ(IgG1λ)モノクローナル抗体(mAb)である。グセルクマブがIL-23のp19サブユニットに結合することにより、細胞表面IL-23受容体と細胞外IL-23との結合が遮断され、IL-23特異的細胞内シグナル伝達及びその後のサイトカイン産生が阻害される。このようにして、グセルクマブは、調べた全てのインビトロアッセイにおいてIL-23の生物学的活性を阻害する。
【0179】
【0180】
【0181】
仮説
最近発症したSSc患者の皮膚試料から得られたリボ核酸(RNA)配列決定(RNA-seq)データの内部分析は、IL-23/IL17関連遺伝子のアップレギュレーションを示した(global Translational Science Medicine teamからの分析)。
【0182】
これは、更なる臨床開発を支持するために、プラセボと比較して、SScを有する参加者におけるグセルクマブの早期有効性シグナルを検出することを目的とした概念実証(PoC)試験である。
● 帰無仮説は、主要評価項目についてのグセルクマブとプラセボとの間の治療差が0に等しいということである。
● 代替仮説は、主要評価項目についてのグセルクマブとプラセボとの間の治療差が0ではないということである。
【0183】
この試験のPoCの性質に起因して、0.2の両側αが、このPoC仮説を試験するために割り当てられる。PoC目的は、このPoC仮説を検定するために計算されたp値が0.2未満である場合に満たされると考えられる。
【0184】
臨床的エンドポイントの説明
修正されたRodnan皮膚スコア
mRSSは、皮膚の硬化を推定するための有効な身体的検査法である。それは、皮膚の厚さを測定する生体組織検査と相関し、特に初期の病気における予後及び内臓の合併症を反映する。これは、17の身体領域にわたって0(正常)~3(重度の硬化)の順序スケールでスコア付けされ、最大スコア51で、SScの重症度を分類するために使用される。これは、無作為化された臨床試験における一次及び二次転帰測定値として広く使用されている。この評価は、皮膚スコアリングにおいて経験及び訓練を受けた医師によって行われるべきである。観察者間の変動を防ぐために、同じ医師が、試験全体を通して同じ参加者について皮膚スコア付けを行わなければならない。
【0185】
びまん性皮膚全身性硬化症スコアにおける米国リウマチ学会の複合反応指数
ACR CRISSは、SScの専門家の国際グループによって開発された初期dcSScにおける臨床試験の複合反応指数である。無作為化臨床試験におけるACR CRISSアルゴリズムの適用は、2段階のプロセスである。最初に、参加者が「改善されていない」の基準を満たしているかどうかを評価する。「はい」の場合、これらの参加者には0.0の確率スコアが割り当てられる。
【0186】
治験責任医師は、参加者が基準を満たしているかどうかを評価する:
● 新強皮症腎クリーゼ
● 15%以上であると(相対的)を予測FVC%の低下であって、1か月以内の別のFVC検査、(以前の胸部のHRCTがILDを示さなかった場合)ILDを確認するためのHRCT、及び予測*値の80%未満のFVCによって確認されたもの。
● 治療を必要とする左心室不全(左心室駆出率45%以下と定義される)の新たな発症*
● 治療を必要とする右側心臓カテーテル法におけるPAHの新たな発症*
*全身性硬化症に起因する
【0187】
残りの参加者について、5つの測定値:mRSS、予測FVCの%、HAQ-DI、患者の全体的な評価、及び医師の全体的な評価における変化に基づいて確率を計算し、ここで、各測定値は、0~1の確率スコアを有する。ACR CRISスコアは、スポンサーによって計算される。
【0188】
肺機能試験
以下の肺機能測定が局所的に実施される:
● FVC及び予測FVCのパーセント
● DLCO(mL/min/mmHg)及び予測DLCO(ヘモグロビン補正)のパーセント。また、酸素飽和度データが収集される。
【0189】
医師の全般的評価
PhGA評価された、対象の全体的なSSc状態が、10cmの視覚的アナログスケールを使用して評価される。なお、スコア0=優れている、スコア10=非常に劣っている。
【0190】
健康評価質問表-障害指数
スタンフォードHAQは、以下の8つの領域にわたる、日常生活の活動に関する身体機能を評価する簡単な自己報告アンケートである:着衣及び身づくろい、起きていること、摂食、歩行、衛生、リーチ、グリップ、及び活動。RAにおける使用のために最初に開発されたものであるが、例えば突発性炎症性ミオパチーを含む種々のリウマチ状態に首尾よく適用されている。起きていること、摂食、及びリーチカテゴリーの質問に文化的に適切な修正を加えて日本語に翻訳されたスタンフォードHAQが、研究において使用される。
【0191】
胃食道逆流症(FSSG)の症状の頻度尺度
FSSGアンケートは、GERDの食道症状を評価するための簡潔なアンケートであり、内視鏡的食道炎に基づいて検証される。FSSGの元のバージョンは、GERDの最も一般的な7つの酸逆流に関連する症状及び5つの運動障害に関連する症状からなり、より高いスコアは、根底にあるGERDをより示す。各スコアを以下のように決定した:0=なし、1=たまに、2=時々、3=頻繁に、及び4=常に。
【0192】
PRO機器は、現地のガイドラインに従って現地の言語で提供される。
● PRO機器は、規制当局及び施設内倫理委員会(IRB)/独立倫理委員会(IEC)提出のために利用可能でなければならず、したがって、PRO機器又はスクリーンショットは、プロトコルに添付されるか、又はプロトコルと共に提出される機器と共にコンパニオンマニュアルで提供される必要がある。
● PRO及びAEデータは互いに調整されない。
【0193】
指潰瘍評価
指潰瘍は、痂皮で覆われた病変を含む上皮の喪失を伴う全層(最大直径3mm超)にわたる皮膚損傷と定義される(なお、微小な点食傷跡及び過角化性病変は除外されることに留意されたい)。治癒は、疼痛及び滲出液がなくなることを伴う再上皮化によって定義される。指潰瘍評価は、治験中に、指名された治験責任医師によって行われる。潰瘍数及び潰瘍負荷は、治験依頼者によって計算される。
【0194】
爪郭毛細血管鏡
爪郭毛細血管鏡検査は、爪郭毛細血管を視覚化し、微小血管形態を評価するための非侵襲的方法である。爪郭毛細血管異常は、SScのACR/EULAR分類基準に含まれる。爪郭毛細血管異常を、爪郭毛細血管鏡検査を使用することによって評価する。SSc中の爪郭毛細血管の典型的な変化には、毛細血管の総数、毛細血管の寸法、毛細血管の形態、出血、毛細血管中の血流速度、及び爪郭の長さが含まれる。これらの変化は計算される。視覚媒体を撮影する。
【0195】
高分解能コンピュータ断層撮影(HRCT)評価
肺の合併症は、SSc患者における罹患率及び死亡率の最も重要な原因の1つである。コンピュータベースのスコアリングの最近の進歩により、CT画像の分析は、ILDにおける線維性変化を評価する方法として注目されている。テクスチャベースの分析及びコンピュータビジョンベースのアプローチは、撮像データに適用され、胸部CT画像における肺線維症の程度を評価するために使用されることができる。この評価は中央で行われるべきである。
【0196】
バイオマーカー
任意選択のバイオマーカーサブ試験では、同意した全ての参加者から、0週目に非病変(罹患していない)皮膚試料の生検試料、及び0週目及び24週目に病変(0週目)皮膚試料を得る。
【0197】
これらの試料から収集されたデータは、以下の目的を含むがこれらに限定されない探索的試験のために使用される。
● グセルクマブの分子効果を理解する。
● SScの病因を理解する。
● なぜ個々の参加者がグセルクマブに対して異なる応答をし得るかを理解する。
● 皮膚又は全身の炎症に対するグセルクマブによる治療のインパクトを理解する。
● グセルクマブによる治療に対して応答性又は非応答性であり得るSSc又はSSc集団を同定するための診断試験を開発する。
【0198】
全体的な計画
これは、米国リウマチ学会(ACR)及び欧州リウマチ学会(EULAR)2013基準に従ってSScと診断され、罹患期間(最初の非レイノー現象発現からの時間として定義される)が36ヶ月以下であり、mRSSが10以上22以下である、18歳から75歳の間(両端を含む)の男女における、グセルクマブの有効性を評価するための、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、並行、多施設介入試験である。
【0199】
参加者は、ILDの存在(はい、いいえ)、ベースラインmRSS(低[10以上15以下]又は高[16以上22以下])、及びベースライン抗トポイソメラーゼI抗体状態(陽性、陰性)の無作為化階層に基づいて、1:1の比率で、以下の治療群の1つに無作為に割り当てられる。
● グセルクマブ(群/アームA):0週目、4週目、及び8週目にグセルクマブ400mg静脈内(IV)投与(誘導)し、続いて12週目から48週目まで、4週間毎(Q4W)にグセルクマブ200mg皮下(SC)投与(維持)した。
● プラセボ(群/アームB):0週目、4週目、及び8週目に、マッチするプラセボをIV投与(誘導)し、続いて12週目から48週目まで、Q4WでマッチするプラセボをSC投与(維持)した。
【0200】
主な試験は、以下の3つのフェーズで実施される:最大6週間のスクリーニングフェーズ、52週間の二重盲検介入フェーズ、及び最後の試験来診以降の任意のAEを収集するための、参加者の最後の治験投薬介入から12週間後の介入後フォローアップ来診による、安全フォローアップフェーズ。
【0201】
主試験(0週目~52週目:すなわち、48週目の評価後、52週目の評価前)を完了し、治験責任医師の意見で継続治療から利益を得ることができる参加者は、52週目の前又は52週目にICFに署名することによって、LTEに参加する。個々の参加期間は、LTEなしでは約66週間であり、LTEありでは118週間である。
【0202】
3つの計画されたデータベースロック(DBL)が起こる:全ての参加者が24週目の来院を完了したとき(以下、「24週目DBL」と称する)、主要試験の試験終了(EOS)(LTEに参加した参加者については52週目の来院、又はLTEに参加しなかった参加者については60週目の来院、以下、「52週目DBL」と称する)、及びLTEのEOS(112週目の来院、以下、「最終DBL」と称する)。なお、LTEがIDC(Internal Decision Committee)の推奨(セクションλ.5)に従って終了する場合、2つのDBL(24週目及び52週目のDBL)のみが存在し、24週目のDBLの時点ですでにLTEに参加した参加者について収集されたLTEデータは、52週目又は60週目の来院までのデータと共に52週目のDBLで分析されるということに留意されたい。
【0203】
キーとなる有効性評価は、mRSS、ACR CRISSスコア、肺機能試験:FVC及び予測FVCのパーセンテージ、並びにDLCO(mL/分/mmHg)及び予測DLCOのパーセンテージ(ヘモグロビン補正)、PhGA、及びPGAを含む。キーとなる安全評価には、AEのモニタリング(SAE、特に興味深いAE[AESI]、感染症、注射部位の反応、注入に一時的に関連する有害事象、及び過敏性反応を含む)、身体検査、バイタルサイン測定、心電図検査(ECG)測定、臨床検査、ILD(中央読み取りHRCTによって評価される)、及び結核(TB)評価が含まれる。更に、PK、バイオマーカー、及び免疫原性評価もまた、この試験において実施される。
【0204】
参加者数
試験は、介入群当たり28人の参加者が計画され、合計約56人の参加者を登録することを標的とする。
【0205】
介入群及び継続期間
参加者は、以下の試験介入群のうちの1つに対して、1:1の比率で無作為に割り当てられる。
● グセルクマブ(群/アームA):0週目、4週目、及び8週目にグセルクマブ400mgをIV投与(誘導)し、続いて12週目から48週目まで、Q4Wで、グセルクマブ200mgをSC投与(維持)する。
● プラセボ(群/アームB):0週目、4週目、及び8週目に、マッチするプラセボをIV投与(誘導)し、続いて12週目から48週目まで、Q4WでマッチするプラセボをSC投与(維持)する。
【0206】
LTEの間、全ての参加者は、彼らが主試験中に属しているアームに応じて、以下のようにLTEにおいてグセルクマブ治療を受ける。
● 群/アームA(主試験からのグセルクマブアーム):LTEの52週目、56週目、及び60週目に、グセルクマブ200mgをSCで投与し、プラセボをIVで投与し、続いてLTEの64週目から100週目までグセルクマブ200mgをSCで、Q4Wで投与する。
● 群/アームB(主試験からのプラセボアーム):LTEの第52週、第56週、及び第60週に、プラセボをSCで投与し、グセルクマブ400mgをIVで投与し、続いてLTE第64週から第100週までグセルクマブ200mgをSCで、Q4Wで投与する。
【0207】
個々の参加期間は、LTEなしで約66週間であり、LTEありで118週間である。
【0208】
有効性評価
有効性評価は、以下を含む。
● mRSS
● ACR CRISSスコア
● 肺機能検査(PFT):
- FVC及び予測されるFVCのパーセンテージ
- DLCO(mL/min/mmHg)及び予測DLCOのパーセンテージ(ヘモグロビン補正)。
● PhGA
● 患者が報告する転帰(PRO):
- PGA
- HAQ-DI
- FSSG質問票
● 指潰瘍評価
● 爪郭毛細血管鏡検査法
● 肺HRCT(中央で読み取り)
【0209】
薬物動態評価
治験依頼者のそれぞれのアッセイ法によって、又はその監督の下で、それぞれの有効で特異的かつ高感度な方法を用いて、血清サンプルを分析して、グセルクマブの濃度を判定する。
【0210】
免疫原性評価
血清サンプルをグセルクマブに結合する抗体についてスクリーニングし、確認された陽性サンプルの力価を報告する。抗グセルクマブ抗体について陽性の血清サンプルは、グセルクマブに対する中和抗体(Nab)について更に特徴付けられる。他の分析を行って、抗グセルクマブ抗体の安定性を検証し、かつ/又はグセルクマブの免疫原性を更に特徴付けしてもよい。
【0211】
自己抗体
スクリーニング時に試料を収集して、自己抗体(抗リボ核酸[RNA]ポリメラーゼ、抗セントロメア、及び抗トポイソメラーゼが挙げられるが、これらに限定されない)の存在を評価する。
【0212】
薬力学及びバイオマーカー
末梢血単核細胞(PBMC)及び血清試料を、評価スケジュールSoA)において指定された時点で収集して、血液細胞及び分子バイオマーカーを評価し、組織/有効性PD読み出しにおける標的エンゲージメントの評価を可能にする。
【0213】
任意選択のバイオマーカーサブ試験では、同意した全ての参加者から、0週目に非病変(罹患していない)皮膚試料の生検試料、及び0週目及び24週目に病変(0週目)皮膚試料を得る。
【0214】
薬理遺伝学的評価
薬理遺伝学的血液サンプルは、必要に応じ、薬理遺伝学的調査を可能にするために、試験のこのコンポーネントに個別に同意する参加者から収集される。薬理遺伝学的研究への参加者の参加は任意である。
【0215】
安全性評価
各試験来院時に行われる安全性評価は、AE(来診時及び評価来診間に生じるもの)の評価、ILDモニタリング(中央で読み取られたHRCTによって評価される)、TB評価及び他の感染症評価、臨床検査血液検査(C反応性蛋白質を含む血液学及び血清化学)、妊娠検査、身体検査、ECG測定、バイタルサイン、併用薬レビュー、並びに注射部位反応、過敏性反応、及び注入に一時的に関連するAEについての観察を含む。更に、表面抗原(HBsAg)陰性、コア抗体(抗HBc)及び/又は表面抗体(抗HBs)陽性に適格であり、HBV DNA試験が陰性である参加者については、HBV DNA定量は、少なくとも3ヶ月又はそれより短い間隔でモニターされるべきである。
【0216】
統計的方法
試料サイズの決定
ベースラインから6ヶ月までのmRSS変化における[-4.7,-1.7]の95%信頼区間(CI)は、臨床的に意味のある変化と見なされる。この95%CI値の下限、-4.7は、グセルクマブがほとんどのグセルクマブ治療参加者において、臨床的に意味のある変化を達成することができると仮定して、この試験のサンプルサイズ計算における、予測治療差異として採用されている。
【0217】
8ポイントの標準偏差(SD)、0.20の両側有意水準で80%の検出力、1:1の無作為化比を仮定すると、-4.7ポイントの治療効果を検出するために、合計少なくとも54人の参加者が必要とされる。無作為化された2人までの参加者を考慮に入れるが、ベースライン後の有効性評価は行わず、約56人(各28人)の無作為化された参加者を計画する。
【0218】
分析セットのための母集団
有効性及び参加者情報の分析は、少なくとも1投与(完全又は部分的)の試験のための介入を受けた全ての無作為化された参加者を含み、彼らが実際に受けた治療にかかわらず、無作為化された治療群に基づいて分析される。
【0219】
安全性分析セットは、試験介入の少なくとも1用量(部分的又は完全)を受ける全ての無作為化された参加者を含み、参加者は、割り当てられる治療群にかかわらず、彼らが受ける治療に基づいて分析される。
【0220】
薬物動態分析セットは、少なくとも1回の完全用量のグセルクマブを受け、少なくとも1つの観察された投与後PKデータを有する全ての参加者を含む。
【0221】
免疫原性分析セットは、少なくとも1回のグセルクマブ投与を受け、少なくとも1つの観察された投与後免疫反応データを有する全ての参加者を含む。
【0222】
有効性分析
連続変数のn、平均、SD、中央値、分位間範囲、最小値、及び最大値、並びに離散変数の数及び百分率などの単純な記述要約統計を使用して、ほとんどのデータを要約する。
【0223】
主要評価項目(24週目におけるmRSSのベースラインからの変化)については、混合効果モデル反復測定(MMRM)モデルを使用して、治療どうしの比較を行う。MMRMモデルは、固定効果として、治療群、ベースラインmRSS、層別因子、来院、来院毎の治療群の相互作用、及び来院毎のベースラインmRSSの相互作用を含む。治療効果は、差の最小二乗(LS)平均に基づいて推定される。両側80%CIと共にLS平均差についてのp値を提示する。適切であれば、主要エンドポイントについての感度及びサブグループ分析を行う。これらの分析及びデータ処理規則の詳細は、統計分析計画(SAP)において特定される。
【0224】
全ての他の有効性エンドポイントは、治療群毎に経時的に要約される。治療同士の比較は、反復連続測定が存在するMMRMモデル、又は二分反応変数が存在するロジスティックモデルを用いて行われる。二次エンドポイントに対しする多重比較のための調整は行われず、全てのp値は名目上と見なされる。分析の詳細な方法及びデータ処理規則は、SAPにおいて提供される。
【0225】
安全性分析
日常的な安全性評価は、安全性分析セットに基づいて行われる。有害事象、SAE、関連するAE、及び重症度別のAEは、治療群毎にまとめられる。ILDのような他のAESIの更なる仕様は、SAPで説明される。
【0226】
検査室パラメータ、及び選択された検査室パラメータ(血液学及び化学)におけるベースラインからの変化、並びに全米癌研究所の有害事象に関する共通用語基準(NCI-CTCAE)毒性等級付けに基づく異常な検査室パラメータ(血液学及び化学)を有する参加者の数は、治療群毎にまとめられる。
【0227】
臨床的に関連するECG異常は、頻度表によって評価される。体温、脈拍/心拍数、呼吸数、及び血圧(収縮期及び拡張期)の値並びにベースラインからの変化の記述統計量を、スケジュールされた各時点で要約する。臨床的に重要な限界値を超える値を有する参加者の割合を要約する。
【0228】
薬物動態分析
特に明記しない限り、PK分析は、PK分析セットに基づく。経時的な血清中グセルクマブ濃度を、各名目上のサンプリング時点での記述統計を用いて要約する。定量可能な最低濃度未満の全ての濃度又は消失したデータは、濃度データベース又はデータ提示中でそのように標識される。定量可能な最低濃度を下回る濃度は、要約統計においてゼロとして扱われる。
【0229】
PK分析からの除外を含む分析のための詳細な規則は、SAPに明記される。
【0230】
適切な場合には、母集団PKモデリングが実施されてもよい。母集団PK分析が実施される場合、これらの分析の結果は別個の報告で提示される。
【0231】
免疫原性の分析
抗グセルクマブ抗体の発生率及び力価を、免疫原性分析セットについてまとめる。抗グセルクマブ抗体が陽性である参加者のリストが提供される。抗グセルクマブ抗体の最大力価は、グセルクマブに対する抗体が陽性である参加者について要約される。
【0232】
グセルクマブに対する抗体について陽性であり、グセルクマブに対する中和抗体について評価可能なサンプルを有する参加者について、グセルクマブに対するNabの発生率をまとめる。
【0233】
薬力学分析
グセルクマブに関連するPDマーカー及びSScに関連するマーカーを評価するために、全ての対象から血清を採取する。測定は、IL-17A、IL-17F、IL-22、ベータデフェンシン-2(BD-2)、及びSAAの血清レベルを含み得るが、これらに限定されない。バイオマーカー発見のためのより広範なプロテオミクスプロファイリング(例えば、Olink法による)を行うことができる。
【0234】
PBMCの単離のための血液試料はまた、治療前及び治療中に免疫細胞集団を測定するためのマルチパラメータフローサイトメトリー又はマスサイトメトリー(CyTOF)分析による、その後の免疫表現型検査分析のために収集される。遺伝子発現分析も行うことができるが、これは、単一細胞RNA配列決定(RNA-seq)プロファイリングを含み得る。
【0235】
薬力学的/バイオマーカー分析の結果は、別個の報告で提示され得る。
【0236】
バイオマーカー分析
治療の間の皮膚における遺伝子発現変化の特徴付けは、0週目及び24週目に、RNA-seqによって決定されて分析される。実現可能であれば、0週目に非病変(未感染)皮膚試料を採取し、0週目及び24週目の両方で、病変(0週目)試料が採取される。実行可能であれば、免疫組織化学(IHC)/免疫蛍光(IF)/インサイチュハイブリダイゼーション(ISH)によって決定されるような皮膚における組織免疫病理学的変化の特徴付け、並びに組織学的分析(例えば、線維症)が実施され得る。マルチパラメータタンパク質プロファイリング(例えば、CyTOFを想起せよ)が考慮され得る。
【0237】
薬物動態/薬力学的分析
グセルクマブの血清中濃度と、血中又は皮膚生検中のバイオマーカーを含む有効性測定値及び/又は関連するPDエンドポイントとの間の関係は、適切な場合にグラフで調査することができる。任意の視覚的傾向が観察された後、必要と思われる場合、追加の分析を行ってもよい。
【0238】
薬理ゲノミクス分析
遺伝子分析は、ある薬物に対して異なった応答をする集団サブグループを同定するのに役立ち得る。0週目の単一試料を用いて、グセルクマブの分子効果、臨床的有効性、又は忍容性に影響を及ぼし得る遺伝因子を探索し、SScに関連する遺伝因子を同定する。目的の遺伝子座は、IL12RB1遺伝子であり、報告されたSScリスク対立遺伝子がこの遺伝子において同定されており、遺伝子産物(IL-23の受容体をコードする)の発現との潜在的な関連がある。DNAサンプルに適用される分析は、そのゲノムにわたる多型をスキャンするために、分子アレイを使用する遺伝子型決定に焦点を当ててもよい。DNAサンプリングへの参加は任意である。
【0239】
試験母集団
適格参加者のスクリーニングは、試験による介入の投与前6週間以内に実施される。本試験に参加者を登録するための組み入れ基準及び除外基準を以下に記述する。これらの基準について疑問がある場合、治験担当者は、適切な治験依頼者担当者に相談し、試験に参加者を登録する前に問題を解決しなければならない。逸脱事例は許可されない。
【0240】
1.1.組み入れ基準
各潜在的参加者は、試験に登録されるのに、以下の基準の全てを満たす必要がある:
1.男性又は女性(染色体補体によって割り付けられた生殖器官及び機能に従う)である。
2.年齢18~75歳(境界値を含む)。
【0241】
参加者のタイプ及び疾患の特徴
3.健康診断、病歴、バイタルサイン、スクリーニング時に行われた12リードECGに基づいて医学的に安定している。いかなる異常も、試験集団における基礎疾患と一致しなければならず、この決定は、参加者のソース文書に記録され、治験責任医師によって初期化されなければならない。
4.スクリーニングで行われる臨床検査試験に基づいて医学的に安定である。肝臓酵素、血液凝固、血液学、又は尿分析を含む血清化学パネルの結果が正常な基準範囲外である場合、参加者は、研究者が、異常な結果又は正常な結果からの逸脱を、臨床的に有意でないと、又は試験中の集団にとっては適切かつ妥当であると判断した場合にのみ、含まれてもよい。この決定は、参加者の情報源文書に記録され、治験責任医師によって頭文字で署名されている必要がある。
5.ACR及びEULAR 2013基準によるSScの診断。
6.ルロイ基準、すなわち、末端線維症に加えて肘及び膝に近位の皮膚線維症に従って、皮膚SScが拡散する。
7.36ヶ月以下の病気の持続期間(最初の非レイノー現象発現からの時間として定義される)。
8.スクリーニング時及び0週目に、10以上かつ22以下のmRSS単位。
9.スクリーニング時に、予測の60%以上であるFVC。
10.スクリーニング時に、予測の40%以上のDLCO(ヘモグロビン補正)。
11.スクリーニング時に以下の基準の1つを満たす参加者:
a)過去2~6ヶ月以内に実施された評価と比較して、3mRSS単位以上の増加。*
b)過去2~6ヶ月以内に実施された評価と比較して、2mRSS単位以上の増加を伴う1つの新たな身体領域での合併症。*
c)過去2~6ヶ月以内の評価と比較して、1mRSS単位以上の増加を伴う2つの新たな身体領域での合併症。*
*2ヶ月以内にmRSSが減少した参加者を除外する。
12.修正1により改変された基準
12.1以下のパラメータ範囲内で検査室によるスクリーニング試験結果を有し、検査室によるパラメータのうちの1つ又は2つ以上が範囲外である場合、検査室による値について1回の再試験が許容される:
【0242】
【0243】
受けられた併用薬物療法又は過去の薬物療法
13.用量又は頻度を変化させない以下の薬剤による定期的な治療は、以下のように許容される:
a)経口グルココルチコイド(プレドニゾロン又は等価物の平均1日用量が10mg以下)を
試験介入の最初の投与の前に6週間以上、かつ安定した用量で2週間以上。
現在、経口グルココルチコイドを使用していない場合には
試験介入の最初の投与の6週間前以上にわたって、それらを受けていてはならない。
b)安定用量の非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)又は他の鎮痛薬を
試験介入の最初の投与の2週間前以上。
c)試験介入の最初の投与の2週間以上前の、安定用量のエンドセリン受容体拮抗薬(例えば、ボセンタン、アンブリセンタン及びマシテンタン)。
d)試験介入の初回投与の2週間以上前の、安定用量でのホスホジエステラーゼ5阻害剤(例えば、シルデナフィル及びタダラフィル)。
e)安定な用量でのプロスタサイクリン(例えば、エポプロステロール、イロプロスト及びトレプロスチニル)を
試験介入の最初の投与の2週間以上前。
f)試験介入の初回投与前の4週間以上前の、許可された、皮膚疾患のための局所投薬。
【0244】
結核
14.被験者は、以下のTBスクリーニング基準に従って適格と見なされる:
a)スクリーニング前に、潜在性又は活動性TBの履歴がないこと。潜在性TBの履歴を有し、かつ以下の基準のうちの1つを満たす参加者は例外となる:
- 潜在性TBの治療を現在受けているか、又は
- 試験介入の初回投与前に潜在性TBの治療を開始する
又は
- 介入の初回実施の5年前までに潜在性TBに対する適切な治療を完了していることについて文書化している。以前の抗TB治療の妥当性を検証し、適切な文書を提供することは、治験責任医師の責任である。試験介入の最初の投与の5年以上前に潜在性TBに対する適切な治療を完了した病歴及び文書を有する患者は適格ではない。
b)病歴及び/又は身体的検査の際に活動性TBを示唆する徴候又は症状を有しないこと。
c)活動性TBを有する人と最近密接な接触がなかったこと、又はかかる接触があった場合は、TB専門医師に紹介して追加評価を受け、保証された場合は、試験介入の最初の投与前に、潜在性TBのための適切な治療を受けること。
d)試験介入の最初の投与前2カ月以内に、インターフェロンガンマ放出アッセイ(IGRA;QuantiFERON-TB(登録商標)又はT-SPOT(登録商標))陰性の結果を有するか、活動性TBが排除され、潜在性TBの適切な治療が試験介入の初回投与前に開始されたという新たに同定された陽性IGRA検査結果を有する(臨床検査マニュアルを参照)。
最初のIGRA試験の結果が不確定である対象は、試験を繰り返すべきである。2回目のIGRA試験の結果も不確定である場合、被験者は、活動性TBが除外され、胸部X線写真がTB(活動性又は古い、非活動性TB)を示唆する異常を示さず、被験者が治験責任医師によって判断されるTBの更なるリスク因子を有しない場合、潜在性TBの治療なしで組み入れることができる。この判定は、治験依頼者のメディカルモニタに速やかに報告され、対象のソースドキュメントに記録され、治験責任医師によって頭文字で略式署名される必要がある。
注:潜在性TBの履歴を有する、及び潜在性TBの治療を継続中であるか、又は上述のように十分な治療を完了したとの文書がある参加者では、スクリーニング時にIGRAは必要ではなく、上記のように十分な治療を完了したことを実証した参加者は、潜在性TBのための更なる治療を開始することは必要ではない。
e)試験介入の初回投与の前、12週間以内に行った胸部X線写真(前後方向の像及び側面像の両方)があり、画像読み取りに適格な医師(例えば、放射線医又は呼吸器科医)の読み取りを受け、現在活動性のTB又は古い非活動性TBの証拠がないこと。胸部コンピュータ断層撮影(CT)もまた、治験責任医師によって適切であると考えられた場合には実施され得る。
【0245】
性別及び避妊/バリア要件
15.妊娠の可能性のある女性は、スクリーニング及びベースラインにおいて尿妊娠検査の陰性結果を有しなければならない。
16.女性は、以下の条件を満たさなければならない:
a.妊娠の可能性がない
b.妊娠の可能性があり、かつ
○ 効果の高い、好ましくはユーザー非依存の避妊方法(一貫して正確に使用された場合、1年当たりの失敗率が1%未満)を実施し、介入を受ける間に、かつ、最終投与から12週間後(すなわち、関連する全身曝露の終了)まで、効果の高い方法を維持することに同意すること。治験責任医師は、試験介入の最初の投与に関連して、避妊法の失敗(例えば、服薬不履行、最近開始)の可能性を評価すべきである。
注記:試験開始後に、参加者の妊娠の可能性が変化した場合(例えば、初経前の女性が初経を経験する場合)、又は妊娠リスクが変化した場合(例えば、異性間性交に活発的でない女性が活発的になるなど)、女性は、組み入れ及び除外基準全体に記述されているように、効果の高い避妊方法の実施を開始しなければならない。
17.女性は、試験中及び試験介入の最後の投与後12週間、生殖補助の目的で卵子(卵細胞、卵母細胞)を提供しないことに同意する必要がある。
18.修正1により改変された基準
18.1男性参加者は、試験中及び試験介入の最後の投与後少なくとも12週間、以下に同意しなければならない:
● 生殖目的で精子を提供しないことに同意する必要がある。
● 男性参加者は、別の人物に射精液を移行する行為を行う際はコンドームを着用しなければならない。
● 男性参加者はまた、コンドームには破損又は漏れが生じることがあるので、女性パートナーが効果の高い避妊法を使用することの利益について助言されるべきである。
【0246】
インフォームドコンセント
19.各自が試験の目的とそれに必要な手順を理解し、試験に参加する意思があることを示す、インフォームドコンセントフォーム(ICF)に署名しなければならない。
20.研究用に任意のDNA試料を提供することに同意する場合は、別のインフォームドコンセントフォームに署名しなければならない。任意選択的DNA研究サンプルについての同意を拒否したことで、参加者を試験への参加から除外することはない。
21.このプロトコルで指定された生活様式の制限事項を守る意思があり、それが可能であること。
【0247】
1.2.除外基準
以下の基準のいずれかを満たす潜在的参加者は、試験の参加から除外される:
【0248】
医学的状態
1.肝不全又は腎不全の病歴(推定クレアチニンクリアランスが60mL/分未満);又は顕著な心臓、血管、肺、胃腸、内分泌、神経学的、血液学的、リウマチ学的、精神的、又は代謝的な障害を有する。
2.喀血、肺出血、腎クリーゼを含む、何らかの既知の重篤な又は制御されないSSc合併症を有する。
● 心エコー検査及び肺機能検査又は右心カテーテル法によって決定されるような重篤な肺の高血圧を有する。重度の肺高血圧症としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
左室駆出率が40%未満
● ピーク三尖弁逆流速度が3.4(m/s)超
● 安静時心拍数が50bpm未満
● 収縮血圧がλ0mmHg未満
● 相当な伝導異常を示唆するECG所見
3.酸素療法を必要とする間質性肺疾患を有する。
4.SScの評価に干渉し得るSSc以外の任意のリウマチ性疾患、例えばRA、リウマチ性多発筋痛症(PMR)、全身性紅斑性狼瘡、多発性筋炎/皮膚筋炎などを有する。
5.重篤な、進行した、又は制御されていない腎臓、心臓、血管、肺、胃腸、内分泌、神経、血液、リウマチ、精神、又は代謝障害の診断又は徴候若しくは症状を現在有している。(又は、治験責任医師の意見では、この試験に参加することによって参加者を危険にさらす何らかの他の付随する医学的状態)。
6.最初の試験介入の12週間以内に、何らかの主要な虚血事象が現在ある、又はあったことがある。
7.リンパ腫を含むリンパ増殖性疾患の病歴を有する;MGUS、重要性不明の単クローン性免疫グロブリン血症を有する;又はリンパ節症若しくは脾腫などの可能性のあるリンパ増殖性疾患を示唆する徴候及び症状を有する。
9.慢性腎感染症、慢性胸部感染症(例えば気管支拡張症)再発性尿路感染症(再発性腎盂腎炎又は慢性継続性膀胱炎)、真菌感染症(例えば、粘膜皮膚カンジダ症、ただし爪床の真菌感染症を除く)、又は開放、排膿、若しくは感染皮膚創傷若しくは潰瘍が含まれるがこれらに限定されない、慢性又は再発性の感染症の病歴があるか又は進行中である場合。
10.被験者が、重篤な感染症(敗血症、肺炎、若しくは腎盂腎炎を含む)を現在有している若しくは有したことがある、又は最初の試験介入前の2ヶ月間に感染のために入院したか若しくはIV抗生物質の投与を受けている。
11.非結核性マイコバクテリア感染症又は臨床的に有意な日和見感染症(例えば、サイトメガロウイルス、ニューモシスチス症、侵入性アスペルギルス症)を現在有しているか、又は有したことがある。
12.スクリーニング前に、潜伏性又は急性肉芽腫性感染症(ヒストプラスマ症又はコクチジオイデス症が含まれる)の履歴がある場合。
13.感染した関節プロテーゼの病歴を有するか、又はそのプロテーゼが取り外されていない、若しくは交換されていない場合、関節プロテーゼの疑わしい感染のための抗生物質を、最初の試験介入の6か月以内に受けている。
14.ヒト免疫不全ウイルス(HIV[HIV抗体に対する血清学的陽性])の病歴を有するか、又はそれに感染している。B型肝炎ウイルス(HBV)感染症の試験で陽性である。スクリーニング時にC型肝炎ウイルス(HCV)に対する抗体を有する。
15.ベースライン前の6週間中に:(a)確認されたSARS-CoV-2(コロナウイルス病2019[COVID-19])感染症(検査陽性)、又は(b)SARS-CoV-2感染が疑われる(文書化された検査結果を伴わない臨床的特徴)、又は(c)既知のSARS-CoV-2感染を有する若しくは疑われる人との濃厚接触、のいずれかを有していた。
参加者が検証されたSARS-CoV-2試験に対して記録された陰性結果を有する場合、この基準に対する例外が与えられ得る:
(i)上記の条件(a)、(b)、(c)の少なくとも2週間後(存在する場合、重要な臨床的特徴、例えば、発熱、咳、呼吸困難の消散から時間を計った)に得られたものであり、
かつ
(ii)陰性検査結果とベースライン検査来院との間の期間中に、上記の条件(a)、(b)、(c)が全て存在しない。
COVID関連の除外についての注記:
● COVID関連の検査(SARS-CoV-2ウイルスの存在及びそれに対する免疫について)の分野は急速に進化している。追加の検査は、治験責任医師によって必要とみなされた場合、スクリーニングの一部として及び/又は試験中に、当局からの現在の規制/指導/標準治療に従って実施され得る。
● 注意:重度のCOVID-19病に対してより高いリスクを有する可能性のある者については、試験に登録することの潜在的利益及びリスクを比較するとき及び試験への参加中、現地の保健当局からの指導に従う。
16.過去4ヶ月以内に最近の単皮膚分節性帯状疱疹の発疹を経験した。これまでに、多皮性帯状疱疹(一次又は隣接するデルマトームの外側の病変外観として定義される)又は中枢神経系帯状疱疹感染症を有したことがある。
17.現在、悪性腫瘍を有するか、又はスクリーニング前の5年前以内に悪性腫瘍の履歴(適切に治療され、初回の研究介入前の少なくとも3ヶ月間に再発のエビデンスがない、非黒色腫皮膚癌、又は、治療され、初回試験介入実施前の少なくとも3ヶ月間に再発のエビデンスがない、子宮頸部上皮内癌を除く)を有する場合。
注:前悪性病変は、治験依頼者の医療モニターと議論されるべきである。
18.HSCTを含む移植臓器を有する(最初の試験介入の3ヶ月超前の角膜移植手術を除く)。
19.グセルクマブ又はその賦形剤に対する既知のアレルギー、過敏症、又は不耐性を有する。
【0249】
診断評価
20.スクリーニング前8週間以内に大手術(例えば、全身麻酔及び入院を必要とする)を受けたことがあるか、又はそのような手術から完全に回復していないか、又は参加者が試験に参加すると予想される期間中にそのような手術が計画されている。
注:局所麻酔下で施行される外科治療が計画されている参加者は、参加可能である。
21.スクリーニング前1年間以内に、Diagnostic and Statistical Manual of Disorder(第5版)の基準に従って、薬物又はアルコール乱用の履歴がある。
【0250】
以前の療法及び併用される療法
22.最初の試験介入の前に、何らかの治験用又は承認済み免疫調節生物学的薬剤で先行して治療されている。なおその治療は、以下を含むがそれらに限定されない:
● 以下の治療を受けた:
- IL-23阻害剤療法(グセルクマブ、リサンキズマブ、チルドラキズマブ、ブラジクマブ、ミリキズマブを含むが、これらに限定されない)
- IL-12/23阻害剤(ウステキヌマブ)
- IL-17阻害剤(セクキヌマブ、イキゼキズマブ、ブロダルマブ)
● 12週間以内又は5半減期(いずれか長い方)以内に以下の治療を受けた:
- トシリズマブ(アクテムラ)
- シルクマブ、サリルマブ、マブリリムマブ、アバタセプト、ベリムマブ
- チロシンキナーゼ阻害薬(ニンテダニブ)
- 全身的及び局所的ヤヌスキナーゼ阻害剤(例えば、トファシチニブ、ウパダシチニブ)
● 1年又は5半減期(いずれか長い方)以内に、以下の治療を受けた:
- リツキシマブ
注記:列挙されていない生物学的薬剤については、治験依頼者の医療モニターと議論され、同意されるべきである。
23.以下の治療を受けた:
● 試験介入の6ヶ月以内に:
- 細胞毒性薬(シクロホスファミド、クロラムブシル、ナイトロジェンマスタード、又は他のアルキル化剤)
- 静脈内免疫グロブリン(IVIG)、アフェレーシス療法(血漿アフェレーシス又は白血球アフェレーシス)
● 最初の試験介入の6週間以内に:
- 全身免疫抑制剤(シクロスポリンA、アザチオプリン、タクロリマス、シロリマス、スルファサラジン、コレスチラミンウォッシュアウトを伴うレフルノミド又はミコフェノール酸モフェチル/ミコフェノール酸を含むが、これらに限定されない)
- 筋肉内、関節内、滑液嚢内、硬膜外、病変内、又はIVのグルココルチコイド
これらの療法の使用に関するいかなる質問又は懸念も、治験依頼者及び/又は医療監視者と議論されるべきである。
【0251】
以前の/同時の臨床試験経験
24.3か月又は5半減期(いずれか長い方)以内に治験介入(治験ワクチンを含む)を受けたか、又は試験介入の計画された最初の投与の3か月以内に、侵襲性治験医療装置を使用しているか、又は治験に現在登録されている。
25.無作為化の12か月以内にカルメット・ゲラン桿菌(Bacille Calmette-Guerin、BCG)ワクチン接種を受けたか、又は、無作為化の12週間以内に他の生菌又は生ウイルスワクチン接種を受けた。
26.この治験に登録している間に、又は最後の試験介入実施後の12週間以内に、妊娠しているか、若しくは母乳を与えているか、又は妊娠する計画をしている女性である。
27.この試験に登録している間に、又は最後の試験介入実施後の12週以内に、子供の父親となる計画をしている男性である。
28.治験担当者の意見によれば、参加が参加者の最善の利益とならない(例えば、健康を損ねる)か、又はプロトコルに指定された評価を妨げる、制限する、若しくは混乱させる可能性がある何らかの条件。
【0252】
試験介入
本試験で使用するための治験依頼者製造の組合せ製品は、UltraSafeプラス(商標)パッシブニードルガードと共に組み立てられたプレフィルドシリンジ(PFS)である(PFS-U)。
【0253】
調製/取り扱い/保管
グセルクマブの、IV投与用最終バイアル製品(final vialed product、FVP[IV])は、10mg/mLの濃度で20mLを含有する、単回使用ガラスバイアル中の滅菌溶液として供給される。試験介入は、IPPIの臨床現場に提供された指示に基づいてIV投与用に準備される。
【0254】
グセルクマブは、SC投与用に、UltraSafeプラス(商標)パッシブニードルガードにおいて組み立てられた、単回使用PFS(PFS-U)中の100mg/mL滅菌溶液として供給される。SC投与用に、グセルクマブのプラセボは、PFS-Uに組み立てられた単回使用PFS中の1mL滅菌溶液として供給される。
【0255】
グセルクマブ及びグセルクマブ用プラセボは、透明でかつ無色から淡黄色の溶液であるべきであり、これは小さな半透明の粒子を含有し得る。液体が濁っていたり、変色していたりするか、又は大きな粒子を有する場合には、そのグセルクマブ及びグセルクマブ用プラセボは使用してはいけない。試験介入物質の調製及び投与の間、光からの保護は必要とされないが、日光への直接曝露は回避しなければならない。試験介入材料の調製及び投与中には無菌の技法を使用する必要がある。
【0256】
実施例2-SScを用いた患者の治療の結果
日本の東京大学病院の全身性硬化症センターにおいて、SScを併発した尋常性乾癬(psoriasis vulgaris、pSV)の3つの症例をグセルクマブで治療したところ、pSVのみならずSScに対しても良好な治療効果が得られた。全ての症例は、近隣の医師によってpSVを有することが疑われ、近隣の医師は、それらを、詳細な検査及び治療のために紹介したものである。病理学を含む精密検査により、これらの患者におけるpSVの診断が確定された。更に、これらの患者は、指から上腕に延びる皮膚硬化を有していた。全ての症例は、ACR/EULAR基準に基づいて、SScを併発していると判定された。レイノー現象以外のSSc症状の最初の出現の時点を、質問することによって同定し、SSc罹患の持続期間を決定した。更に精査すると、全ての患者が、消化管内視鏡によって胃食道逆流症(ERD)を有することが判明した。更に、1人の患者(症例#2;表4)は、HRCTで軽度の間質性肺疾患(ILD)を有し、パーセント予測努力性肺活量(FVC)及び一酸化炭素に対する肺拡散能(DLco)が、それぞれ74.7%及び88.1%であった。関節炎、肺高血圧症、及び腎クリーゼを含む他の合併症がないことは、リウマチ専門医によって確認された。これらの全身評価の後、全ての患者は、pSV用の生物製剤で治療されることを望んだ。この目的のために、100mgのGUSを、0週目及び4週目に皮下投与し、その後8週間の間隔で皮下投与した。全ての場合において、GUS以外の唯一の治療は、局所ステロイドであった。pSV重症度を乾癬面積及び重症度指数(psoriasis area and severity index、PASI)によって評価し、SScを、修正ロドナン総皮膚厚スコア(modified Rodnan total skin thickness score、MRTSS)及びSScについての複合応答指数(combined response index for SSc、CRISIS)によって評価した。患者背景情報と、GUSによる治療の開始時点及び6ヶ月後の臨床データとを表4に示す。
【0257】
全ての場合において、GUSによる治療は、治療の6ヶ月後に、ゼロのPASIという結果をもたらした。SScの皮膚硬化も改善され、MRTSSは、各症例で6超も減少した。CRISSも全ての症例において改善した。更に、GERDもGUS投与後に改善し、重症度の尺度であるFスケールは5ポイント超も減少した。治療期間を通してILDの悪化はなかった。有害事象は観察されなかった。全ての患者から書面によるインフォームドコンセントを得た。本報告は、SScに対する抗IL-23抗体療法が有益であり得ることを示唆している。SScに対する抗IL-23抗体療法の効果は、将来の大規模試験において明らかになることが予想される。
【0258】
【表5】
dcSSc、拡散性皮膚SSc;lcSSc、限定皮膚SSc;WBC、白血球;Hb、ヘモグロビン;PLT、血小板;CRP、C反応性タンパク質;SP-D、サーファクタントタンパク質D;KL-6、Krevs von den Lungen-6;RNAP、抗RNAポリメラーゼIII抗体;Topo I、抗トポイソメラーゼI抗体;CENP、抗セントロメアタンパク質抗体;+、存在;-、不存在。
【0259】
本発明は、以下の番号付けされた実施形態を参照して説明することができる。
1.患者における全身性硬化症(SSc)の治療のためのIL23に特異的な抗体の使用であって、抗体が、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含み、軽鎖可変領域が、
配列番号4の相補性決定領域軽鎖1(CDRL1)アミノ酸配列、
配列番号5のCDRL2アミノ酸配列、及び
配列番号6のCDRL3アミノ酸配列、を含み、
当該重鎖可変領域が、
配列番号1の相補性決定領域重鎖1(CDRH1)アミノ酸配列、
配列番号2のCDRH2アミノ酸配列、及び
配列番号3のCDRH3アミノ酸配列、を含み、かつその使用は、結果として、患者において臨床的応答をもたらす、使用。
2.抗体が、初回投与、初回投与の約4週間後の投与、及び初回投与の約8週間後の投与で投与される、実施形態1に記載の使用。
3.抗体が、静脈内に投与される、実施形態2に記載の使用。
4.初回投与並びに初回投与の約4週間後の投与及び初回投与の約8週間後の投与が、200mg又は400mgの抗体である、実施形態1に記載の使用。
5.初回投与並びに初回投与の約4週間後の投与及び約8週間後の投与が、400mgの抗体である、実施形態4に記載の使用。
6.抗体は、初回投与の約8週間後の投与後に、約4週間毎に皮下投与される、実施形態5に記載の使用。
7.皮下投与が、200mgの抗体である、実施形態6に記載の使用。
8.患者が、抗体に対する反応者(responder)であり、臨床エンドポイントを満たすと同定され、臨床エンドポイントは、mRSSにおけるベースラインからの変化、mRSSの悪化、dcSScにおける米国リウマチ学会(American College of Rheumatology)の複合反応指数(ACR CRISS)において0.6のスコアを達成すること、努力性肺活量(FVC)及び予測FVCパーセントのベースラインからの変化、一酸化炭素に対する肺の絶対拡散能(DLCO)測定値及び算出パーセント予測DLCOにおけるベースラインからの変化、ベースラインで指潰瘍を有する患者における指潰瘍数のベースラインからの変化、健健康評価質問票-障害指数(HAQ-DI)スコアにおけるベースラインからの変化、胃食道逆流症の症状(FSSG)スコアの頻度スケールにおけるベースラインからの変化と、高分解能コンピュータ断層撮影(HRCT)で評価される線維性変化のベースラインからの変化及び線維性変化の悪化と、患者全体評価(PGA)及び/又は医師全体評価(PhGA)における、毛細血管鏡検査評価におけるベースラインからの変化と、である、実施形態1に記載の使用。
9.臨床エンドポイントが、初回治療の約24週間後、52週間後、及び/又は104週間後に測定される、実施形態8に記載の使用。
10.臨床エンドポイントが、初回治療の約24週間後に測定される、実施形態9に記載の使用。
11.抗体が、配列番号8の軽鎖可変領域アミノ酸配列及び配列番号7の重鎖可変領域アミノ酸配列を含む、実施形態1に記載の使用。
12.抗体が、配列番号10の軽鎖アミノ酸配列及び配列番号9の重鎖アミノ酸配列を含む、実施形態1に記載の使用。
13.抗体が、医薬組成物の7.9%(w/v)のスクロース、4.0mMのヒスチジン、6.9mMのL-ヒスチジン一塩酸塩一水和物と、0.053%(w/v)のポリソルベート80と、を含む組成物中に存在し、希釈剤は、標準状態の水である、実施形態11又は12に記載の使用。
14.SScを治療するために使用される1つ以上の追加の薬物の使用を更に含む、実施形態1に記載の使用。
15.追加の薬物が、免疫抑制剤、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、メトトレキサート(MTX)、抗B細胞表面マーカー抗体、抗CD20抗体、リツキシマブ、TNF阻害剤、コルチコステロイド、及び共刺激調節剤からなる群から選択される、実施形態14に記載の使用。
16.(i)400mgの初回静脈内投与と、(ii)初回投与の約4週間後の、400mgの静脈内投与と、(iii)初回投与の約8週間後の、400mgの静脈内投与と、(iv)初回投与の約8週間後における静脈内投与の後、約4週間毎、200mgの抗体の皮下投与での、患者における中度から重度に活性であるSScの治療のための、IL23に特異的な抗体の使用であって、
抗体は、配列番号8の軽鎖可変領域アミノ酸配列及び配列番号7の重鎖可変領域アミノ酸配列を含み、患者は、初回投与の約24週間後に臨床エンドポイントを満たすと同定されることにより、抗体に対する反応者であり、臨床エンドポイントが、修正ロッドナン皮膚スコア(mRSS)のベースラインからの変化である、使用。
【0260】
配列表
【0261】
【0262】
【0263】
【0264】
【0265】
【0266】
【配列表】
【国際調査報告】