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特表2025-501494少なくとも1つの中空構造を作製する方法及び装置、ミラー、EUVリソグラフィシステム、流体供給装置、及び流体を供給する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-22
(54)【発明の名称】少なくとも1つの中空構造を作製する方法及び装置、ミラー、EUVリソグラフィシステム、流体供給装置、及び流体を供給する方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/55 20140101AFI20250115BHJP
   B23K 26/082 20140101ALI20250115BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
B23K26/55
B23K26/082
G03F7/20 503
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535549
(86)(22)【出願日】2022-12-13
(85)【翻訳文提出日】2024-07-17
(86)【国際出願番号】 EP2022085520
(87)【国際公開番号】W WO2023110816
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】102021214310.5
(32)【優先日】2021-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102021214318.0
(32)【優先日】2021-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102022203593.3
(32)【優先日】2022-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100230514
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 卓也
(72)【発明者】
【氏名】トビアス ウルスペアガー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ノルテ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン グリーズン
(72)【発明者】
【氏名】ソーレン クノール
(72)【発明者】
【氏名】トーマス モンツ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ザルター
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル クラースナ
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ツァチェク
【テーマコード(参考)】
2H197
4E168
【Fターム(参考)】
2H197CA10
2H197GA01
2H197GA10
2H197HA03
4E168AD18
4E168AE04
4E168CA07
4E168CB04
4E168DA02
4E168DA46
4E168EA15
4E168JA14
4E168JA15
(57)【要約】
本発明は、パルスレーザ放射(35)による材料除去加工によって、ミラー、特にEUVミラー(M4)用の基板の形態のワークピース(25)に中空構造(28)を製造するための方法であって、パルスレーザ放射(35)を、放射入口側(27)から、パルスレーザ放射(35)に対して透明な材料から形成されるワークピース(25)に放射するステップと、パルスレーザ放射(35)を焦点領域(39)に集光するステップと、焦点領域(39)を移動パターン(41)に沿って移動させることにより、ワークピース(25)の材料を面的に除去するための除去フロント(46)を形成するステップと、除去フロント(46)をワークピース(25)内で移動させることによって中空構造(28)を製造するステップと、を含み、ワークピース(25)の放射入口側(27)におけるパルスレーザ放射(35)の入射放射方向(Z)に対して垂直に整列していない除去フロント(46)が、中空構造(28)の製造中に少なくとも断続的に形成され、中空構造が、流体が流れることができるチャネルの形態で製造される、方法に関する。本発明はまた、ミラー(M4)用の基板(25)の形態のワークピース(25)に流路(28)を製造するための方法であって、流路(28)がパルスレーザ照射(35)による材料除去加工によって製造され、流路(28)の製造中に流体供給(50)が少なくとも部分的に流路(28)に導入される方法に関する。本発明はまた、本方法を実施するための装置、およびミラー、特にEUVミラー、EUVリソグラフィ装置、流体供給装置、および流体供給方法を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルスレーザ照射(35)による材料除去加工によって、ミラー、特にEUVミラー(M4)用の基板の形態で、加工物(25)に中空構造(28)を製造するための方法であって、以下を含む方法:
パルスレーザ放射(35)を、放射入口側(27)から、パルスレーザ放射(35)に対して透明な材料から形成されている被加工物(25)に放射するステップと
パルスレーザ放射(35)を焦点領域(39)に集光する、
焦点領域(39)を移動パターン(41)に沿って移動させることにより、ワークピース(25)の材料を面的に除去するための除去フロント(46)を形成するステップと
ワークピース(25)内で除去フロント(46)を移動させて中空構造(28)を製造する、
特徴
被加工物(25)の放射入口側(27)においてパルスレーザ放射(35)の入射放射方向(Z)に対して垂直でない除去フロント(46)が、中空構造(28)の製造中に少なくとも断続的に形成され、中空構造(28)が、流体(32a)が流れることができるチャネル(28)の形態で製造される点である。
【請求項2】
中空構造が、流体(32a)が流れることができる湾曲したチャネル(28)の形態で製造される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、被加工物(25)の材料からのパルスレーザ放射(35)の最初の出現が、除去フロント(46)の領域にある方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、パルスレーザ放射(35)が、被加工物(25)の材料から出現した後、被加工物(25)の材料に再入射する方法。
【請求項5】
被加工物(25)内の除去前面(46)が、被加工物(25)の放射線入口側(27)への方向に少なくとも断続的に移動される、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ワークピース(25)内で除去前面(46)を移動させるとき、ワークピース(25)の材料は、除去前面(46)の縁部(46b)のうちワークピース(25)の放射線入口側(27)から遠い側(46c)に少なくとも断続的に隣接し、縁部(46b)はワークピース(25)の放射線入口側(27)から遠い。
【請求項7】
前記請求項のいずれか一項に記載の方法であって、除去前部(46)が、放射線入口側(27)とは反対側である被加工物(25)の側部(29)から出発して移動される方法。
【請求項8】
入射放射方向(Z)に対して20°から70°の間、好ましくは30°から60°の間の角度(α)で整列された除去フロント(46)が、少なくとも断続的に形成される、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
焦点領域(39)が、移動パターン(41)の相互にオフセットされた軌道(42)に沿って移動される、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、入射放射方向(Z)に対して垂直に整列していない除去フロント(46)を形成するために、焦点領域(39)が入射放射方向(Z)に沿ってオフセットしていることによって、移動パターン(41)の軌道(42)が入射放射方向(Z)に沿って互いにオフセットしていることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載の方法であって、移動パターン(41)の相互にオフセットされた軌道(42)のパルスレーザ放射(35)のパルスエネルギー(E )が、入射放射方向(Z)に対して垂直に整列されない除去前面(46)を形成するように変更され、焦点領域(39)が、好ましくは、入射放射方向(Z)に対して垂直な平面(FE)内で移動される方法。
【請求項12】
前記請求項のいずれか1項に記載の方法であって、好ましくは放射線入射側(27)に対して実質的に平行に延びる中空構造体(28)の断面(28b)を形成するために、中空構造体(28)の製造中に、除去前面(46)がワークピース内で入射放射線方向(Z)に対して横方向の移動方向(-X)に少なくとも断続的に移動される方法、放射線入射側(27)に近い方の端部(46a)の除去フロント(46)は、入射放射線方向(Z)に対して横方向に移動するとき、好ましくは移動方向(-X)に対して90°未満、好ましくは70°未満の角度(β)で整列される。
【請求項13】
入射放射線方向(Z)に対して実質的に平行に延びる中空構造体(28)のセクション(28a)を製造するために、中空構造体(28)の製造中に、除去フロント(46)が入射放射線方向(Z)に対して実質的に平行な方法で少なくとも断続的に移動される、前記請求項のいずれか1項に記載の方法、入射放射線方向(Z)に対して実質的に平行に延びる中空構造体(28)のさらなる断面(28c)を製造するために、好ましくは、放射線入射側(27)とは反対側であるワークピース(25)の側(29)から開始して、入射放射線方向(Z)に対して実質的に平行に延びる中空構造体(28)のさらなる断面(28c)を製造する。
【請求項14】
前記請求項のいずれか一項に記載の方法であって、中空構造体(28)の第1のセクション(28a、28c)と、中空構造体(28)の第2の隣接するセクション(28b)とが製造され、これらの長手方向(X、Z)は、70°から100°の間の角度(γ)、好ましくは90°の角度(γ)で互いに対して整列される方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、中空構造体(28)の製造中に丸み部(28d、28c)が形成され、第1の部分(28a、28c)と第2の部分(28b)とが丸み部において互いに合体する方法。
【請求項16】
前記請求項のいずれか一項に記載の方法であって、除去前部(46)が中空構造体(28)の製造中に流体(32b)と接触させられ、除去前部(46)が移動するときに流体(32b)が流体供給(50)によって除去前部(46)を追跡し、流体供給が少なくとも部分的に中空構造体(28)内に導入される方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法において、流体供給(50)が少なくとも1本の可撓性チューブ(52)からなり、除去前部(46)が少なくとも1本の可撓性チューブ(52)により流体(32b)によって、特に放射線入口側(27)から遠い被加工物(25)の側部(29)から出発して追跡されることを特徴とする方法。
【請求項18】
前記請求項のいずれか一項に記載の方法であって、除去フロント(46)を移動させるために、ワークピースを変位させることを特徴とする方法。
【請求項19】
除去前面(46)を形成するために、焦点領域(39)が、スキャナ光学ユニット(36)によって、移動パターン(41)の互いにオフセットされた軌道(42)に沿って移動される、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記請求項のいずれか一項に記載の方法であって、中空構造が、1mm以上20mm以下、好ましくは1mm以上5mm以下の直径(D)を有する円形断面を有する方法。
【請求項21】
中空構造が、少なくとも10cm、好ましくは少なくとも15cm、特に好ましくは少なくとも20cm、特に少なくとも70cmの長さ(L )を有する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
請求項1の前文による方法、特に先行する請求項のいずれか1項による方法であり、
除去前面(46)から離れた中空構造(28)が側方表面(57)によって区画され、中空構造(28)の製造中の除去前面(46)が、除去前面(46)に隣接する中空構造(28)の側方表面(57)の領域に対して除去前面角度(β’)で整列されることであって除去前面角度(β’)は、少なくとも断続的に、除去前面最小角度1°より大きく、少なくとも断続的に、除去前面最大角度89°より小さい
ことを特徴とする方法。
【請求項23】
ミラー、特にEUVミラー(M4)用の基板(25)の形態のワークピース(25)にチャネル(28)を製造するための方法であって、チャネル(28)は、パルスレーザ照射(35)による材料除去処理によって製造され、流体供給(50)は、チャネル(28)の製造中にチャネル(28)に少なくとも部分的に導入される。
【請求項24】
請求項23に記載の方法において、流体(32b)が、流体フィード(50)の助けを借りて、材料除去加工が実施される領域、特に材料除去加工中に形成される除去前面(46)の領域に供給され、除去前面(46)は、好ましくは、除去前面(46)がワークピース(25)内で移動されるときに、流体フィード(50)によって、特に自動化された方法で追跡されることを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項24または25に記載の方法において、流体供給(50)が、好ましくは湾曲した流路(28)に少なくとも部分的に導入される可撓性要素からなり、該可撓性要素が好ましくは可撓性チューブ(52)を形成することを特徴とする方法。
【請求項26】
チャンネル(28)が、少なくとも10cm、好ましくは少なくとも15cm、特に好ましくは少なくとも20cm、特に少なくとも70cmの長さ(L )で製造される、請求項24から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
基板(25)がモノリシックである、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
基板(25)が、チタンをドープした溶融シリカまたはガラスセラミックからなる、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
基板(25)の材料が、0℃と100℃の間、好ましくは19℃と40℃の間、特に好ましくは19℃と32℃の間であるゼロクロス温度(TZC )を有する、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
基板(25)の材料が、3K未満、好ましくは2K未満、特に好ましくは1K未満、特に0.1K未満であるゼロ交差温度(△TZC )の空間的変動を有する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
ミラー、特にEUVミラー(M4):
基板(25)、
基板(25)に塗布され、放射線、特にEUV放射線(16)を反射するコーティング(26)、
前記請求項のいずれか1項に記載の方法を用いて製造された少なくとも1つのチャネル(28)を含む基板(25)。
【請求項32】
ミラー、特にEUVミラー(M4):
流体(32b)が好ましくは流れる少なくとも1つの流路(28)を含む基板(25)であって、パルスレーザ照射(35)による材料除去処理によって形成される流路、
チャネル(28)は湾曲している、
と、1mmから20mm、好ましくは1mmから5mmの直径(D)、および/または少なくとも10cm、好ましくは少なくとも15cm、特に少なくとも20cmの長さ(L )を有するチャネル(28)とを含む。
【請求項33】
基板(25)がモノリシックである、請求項32に記載のミラー。
【請求項34】
チャネル(28)が、第1のセクション(28a、28c)と第2の隣接するセクション(28b)とを有し、これらの長手方向(X、Z)が、70°と100°との間の角度(γ)、好ましくは90°の角度(γ)で互いに対して整列されている、請求項32または33に記載のミラー。
【請求項35】
第1の部分(28a、28c)と第2の部分(28b)とが、丸みを帯びた部分(28d、28e)において互いに合体する、請求項34に記載のミラー。
【請求項36】
ミラー、特にEUVミラー(M4):
好ましくはモノリシック基板(125)、
放射線、特にEUV放射線(16)を反射するための反射コーティング(126)であって、コーティングは、好ましくはモノリシック基板(125)の表面(125a)に塗布される、反射コーティング(126)と
好ましくはモノリシック基板(125)内に延在し、流体(128)がそこを流れるように設計された少なくとも1つの中空構造(127)であって、中空構造(127)は、第1のセクション(131a、131b;134b、136b)および第2の隣接するセクション(134a、136a;133a、135a)を有し、これらのセクションは、60°と120°の間の角度(γ、γ’)、好ましくは80°と100°の間の角度(γ、γ’)、特に90°の角度(γ、γ’)で互いに対して整列され
中空構造体(127)は、丸みを帯びた部分(137a、137b、138)を有し、この部分において、第一の部分(131a、131b;134b、136b)と第二の部分(134a、136a;133a、135a)が互いに合体する。
【請求項37】
請求項36に記載のミラーであって、丸め部(137a、137b)の曲率半径Rと丸め部(137a、137b)の直径Dとの間のR/D比が、2~6、好ましくは2.5~5、特に2.5~3. 5であるミラー。
【請求項38】
請求項36または37に記載のミラーであって、丸められた部分(137a、137b)の直径Dが2mmから20mmの間、好ましくは2mmから12mmの間であるミラー。
【請求項39】
中空構造(127)が、反射コーティング(126)が塗布された表面(125a)の下方に延びる、特に冷却チャネルの形態の複数の温度制御チャネル(131)を備え、中空構造(127)が、分配器チャネル(134)を介して温度制御チャネル(131)に接続された流体分配器(133)と、コレクタチャネル(136)を介して温度制御チャネル(131)に接続された流体コレクタ(135)とを備える、請求項36から38のいずれか一項に記載のミラー。
【請求項40】
第1のセクションが、分配器チャネル(134)に隣接する温度制御チャネル(131)の端部セクション(131a)を形成し、第2のセクションが、端部セクション(131a)に隣接する分配器チャネルセクション(134a)を形成する、および/または第1のセクションが、コレクタチャネル(136)に隣接する温度制御チャネル(131)の端部セクション(131b)を形成し、第2のセクションが、端部セクション(131b)に隣接するコレクタチャネルセクション(136a)を形成する、請求項39に記載のミラー。
【請求項41】
流体分配器が入口チャネル(133)を形成し、そこから分配器チャネル(134)が分岐し、および/または流体コレクタが出口チャネル(135)を形成し、そこからコレクタチャネル(136)が分岐する、請求項39または40に記載のミラー。
【請求項42】
第1のセクションが、入口チャネル(133)に隣接する分配器チャネル(134)の合流セクション(134b)を形成し、第2のセクションが、合流セクション(134b)に隣接する入口チャネル(133)の分岐セクション(133a)を形成し、および/または、第1のセクションが、出口チャネル(135)に隣接するコレクタチャネル(136)の合流セクション(136b)を形成し、第2のセクションが、コレクタチャネル(136)の合流セクション(136b)に隣接する出口チャネル(135)の分岐セクション(135a)を形成する、請求項41に記載のミラー。
【請求項43】
入口流路(133)の分岐部(133a)と分配器流路(134)の合流部(134b)との間の角度(γ’)が90°より大きく、好ましくは100°より大きく、及び/又は出口流路(135)の分岐部とコレクタ流路(135)の合流部(136b)との間の角度(γ’)が90°より大きく、好ましくは100°より大きい、請求項42に記載のミラー。
【請求項44】
基板(125)の材料が、溶融シリカ、特にチタンをドープした溶融シリカ、およびガラスセラミックからなる群から選択される、請求項31から43のいずれか一項に記載のミラー。
【請求項45】
基板(25、125)の材料が、0℃と100℃との間、好ましくは19℃と40℃との間、特に好ましくは19℃と32℃との間であるゼロ交差温度(TZC )を有する、請求項31から44のいずれか一項に記載のミラー。
【請求項46】
基板(25、125)の材料が、3K未満、好ましくは2K未満、特に好ましくは1K未満、特に0.1K未満であるゼロ交差温度(△TZC )の空間変化を有する、請求項31から45のいずれか一項に記載のミラー。
【請求項47】
中空構造、特にチャネル(28)の形態が、継ぎ目領域(53)を有する、請求項31から46のいずれか一項に記載のミラー。
【請求項48】
請求項47に記載のミラーにおいて、特にチャネル(28)の形態の中空構造が、シーム領域(53)において、除去フロント(46)のエッジ輪郭(54)、少なくとも1つのバルジ(55)、横方向オフセット(56)または別の構造修正を有することを特徴とするミラー。
【請求項49】
ミラー、特にEUVミラー(M4):
基板(25)は、流体(32b)が好ましくは流れる湾曲した流路(28)を有し、流路は継ぎ目領域(53)を有する。
【請求項50】
請求項49に記載のミラーにおいて、チャネル(28)が、シーム領域(53)において、除去前部(46)、少なくとも1つの膨出部(55)、横方向オフセット(56)、または別の構造変更のエッジ輪郭(54)を有することを特徴とするミラー。
【請求項51】
請求項31から50のいずれか1項に記載の少なくとも1つのEUVミラー(M4)と、温度制御流体、特に冷却流体(32a、128)を、特にチャネル(28)の形態である少なくとも1つの中空構造(127)を通して流すように設計された温度制御装置、特に冷却装置(32)と、を備えるEUVリソグラフィシステム(1)。
【請求項52】
ミラー用、特にEUVミラー(M4)用の基板(25)の形態のワークピース(25)に少なくとも1つのチャネル(28)を形成するための装置(33)であって、以下からなる:
パルスレーザ放射(35)を生成するレーザー光源(34)、
レーザー放射(35)を焦点領域(39)に集光する集光装置(37)、
ワークピース(25)を受けるためのホルダ(44)、
パルスレーザ放射(35)を、ホルダ(44)によって受け止められた被加工物(25)の放射入口側(27)に放射し、焦点領域(39)を移動させるように設計されたスキャナ光学ユニット(36)と、を備えることを特徴とする、スキャナ。
装置(33)は、流路(28)に少なくとも部分的に導入可能な流体供給部(50)を備えている。
【請求項53】
請求項52に記載の装置において、流体供給部(50)は、流体(32b)を、材料除去加工が実施される領域、特に材料除去加工中に形成される除去前面(46)に供給するように設計されており、流体供給部(50)は、好ましくは、ワークピース(25)内を移動する間、除去前面(46)を追跡することができる。
【請求項54】
流体供給(50)が、可撓性要素、特に可撓性チューブ(52)をチャネル(28)に少なくとも部分的に導入するように設計されている、請求項52および53のいずれかに記載の装置。
【請求項55】
請求項52から54のいずれか1項に記載の装置であって、スキャナ光学ユニット(36)は、ワークピース(25)の材料の面的除去のための除去前面(46)を形成するために、移動パターン(41)に沿って焦点領域(39)を移動させるように設計されており、装置(33)は、ホルダ(44)によって受容されたワークピース(25)におけるパルスレーザ放射(35)の入射放射方向(Z)に対して垂直には整列していない除去前面(46)を形成するように設計されている、装置。
【請求項56】
入射放射方向(Z)に沿ってパルスレーザ放射(35)の焦点領域(39)をオフセットするための焦点オフセット装置(47)と、をさらに備える、請求項55に記載の装置。
入射放射方向(Z)に対して垂直でない除去フロント(46)を形成するために、入射放射方向(Z)に沿って移動パターン(41)の軌道(42)を互いに対してオフセットするように、フォーカスオフセット装置(47)を制御するように設計された制御装置(48)と
【請求項57】
請求項55および56のいずれかに記載の装置をさらに含む:
入射放射方向(Z)に対して垂直でない除去フロント(46)を形成するために、移動パターン(41)の互いにオフセットされた軌道(42)のパルスレーザ放射(35)のパルスエネルギー(E )を変更するようにレーザ源(34)を制御するように設計された制御装置(48)と、を備える。
【請求項58】
請求項52から57のいずれか1項に記載の装置であって、除去フロント(46)をワークピース(25)内で、好ましくは放射線入射側(27)とは反対側であるワークピース(25)の側部(29)から開始して、チャネル(28)を生成するために移動させるための位置決め装置(43)をさらに備え、位置決め装置(43)は、入射放射線方向(Z)に沿って、好ましくは入射放射線方向(Z)に対して横方向の少なくとも1つの方向(X、Y)に沿って、ワークピース(25)を変位させるように設計されていることを特徴とする装置。
【請求項59】
EUVミラー(M4)用の特にモノリシック基板(225)から、好ましくはレーザーアブレーションの方法で被加工物から材料を除去する際に、少なくとも1つの除去フロント(230a、230b)に流体(228)を供給するための流体供給装置(238)であって、以下からなる:
流体(228)を少なくとも1つの除去フロント(230a、230b)に供給するための、少なくとも1つの可撓性流体ライン(241)、好ましくは複数の可撓性流体ライン(241)と
ワークピース(225)のキャビティ(233、235)に挿入するための少なくとも1つの挿入部品(239、240)であって、流体(228)を少なくとも1つの除去フロント(230a、230b)に供給するために、少なくとも1つの可撓性流体ライン(241)が案内される少なくとも1つの案内チャネル(247)を有する挿入部品(239、240)。
【請求項60】
請求項59に記載の流体供給装置において、挿入部品(239、240)は、可撓性流体ライン(241)が各場合に案内される複数の案内チャネル(247)を有することを特徴とする流体供給装置。
【請求項61】
除去前部(230a、230b)から流体(228)を戻すために、流体が流れることができる隙間、特にリング隙間(249)が、流体ライン(241)と案内流路(247)の流路壁(247a)との間に形成されている、請求項59または60に記載の流体供給装置。
【請求項62】
ガイドチャネル(247)が、可撓性流体ライン(241)の方向を変更するための少なくとも1つの丸め部(250)を有する、請求項59から61のいずれか一項に記載の流体供給装置。
【請求項63】
挿入部品(239、240)が棒状であり、ガイドチャネル(247)が挿入部品(239)の端面(248)から挿入部品(239)の側方表面(245)まで延びている、請求項59から62のいずれか一項に記載の流体供給装置。
【請求項64】
請求項63に記載の流体供給装置において、ガイドチャネル(241)は、挿入部品(239)の側方表面(245)において開口部(246)に合流し、開口部は、好ましくは、挿入部品(239)の長手方向(Y)において互いに隣接して配置され、特に、挿入部品(239)の長手方向(Y)において互いに等間隔(A”)に配置される。
【請求項65】
棒状の挿入部品(239)が円筒形を有し、好ましくは5mmから10mmの間の直径(D’)を有する、請求項63または64に記載の流体供給装置。
【請求項66】
ガイドチャネル(247)が、1mmから4mmの間の直径(d)を有する、請求項60から65のいずれか一項に記載の流体供給装置。
【請求項67】
少なくとも1つの流体ライン(241)が1mm以下の外径(F)を有する、請求項59から66のいずれか一項に記載の流体供給装置。
【請求項68】
少なくとも1つの可撓性流体ライン(241)に流体(228)を供給するための流体供給装置(243)をさらに備える、請求項59から67のいずれか1項に記載の流体供給装置。
【請求項69】
請求項59から68のいずれか1項に記載の流体供給装置であって、ワークピース(225)の材料中の除去前部(230a、230b)の移動を少なくとも1つの可撓性流体ライン(241)によって自動追跡するための少なくとも1つの追跡装置(244)をさらに備える、流体供給装置。
【請求項70】
請求項54から64のいずれか1項に記載の流体供給装置(238)により流体(228)を、レーザーアブレーションの方法でワークピースから、特にEUVミラー(M4)用の好ましくはモノリシック基板(225)から材料を除去する際に、少なくとも1つの除去フロント(230a、230b)に供給するための方法であって、以下を含む方法:
挿入部品(239、240)をワークピース(225)のキャビティ(233、235)に挿入するステップと
流体(228)を、挿入部品(239、240)の少なくとも1つのガイドチャネル(247)に案内される少なくとも1つの可撓性流体ライン(241)を介して、少なくとも1つの除去フロント(230a、230b)に供給する。
【請求項71】
挿入部品(239、240)の挿入前に、キャビティ(233、235)が流体(228)で満たされ、キャビティ(233、235)に隣接する複数のチャネル部(237)が、流体(228)で満たされたキャビティ(233、235)を起点とするレーザーアブレーションによって形成される、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
請求項71に記載の方法において、複数の除去前線(230a、230b)が、挿入部品(239、240)のキャビティ(233、235)への挿入に続いて、チャネルセクション(237)から出発して生成され、複数のチャネル(231、234、235)を形成するために、被加工物(225)の材料内で移動され、複数の可撓性流体ライン(241)が、被加工物(225)の材料内での除去前線(230a、230b)の移動を追跡する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
【0002】
本発明は、パルスレーザ放射による材料除去加工によって、好ましくはミラー用、特にEUVミラー用の基板の形態の被加工物に少なくとも1つの中空構造を製造するための方法であって、以下を含む方法に関する:パルスレーザ放射を、パルスレーザ放射に対して透明な材料から形成された被加工物に、放射入口側から放射する工程と、パルスレーザ放射を焦点領域に集光する工程と、焦点領域を移動パターンに沿って移動させることにより、被加工物の材料を面的に除去するための除去フロントを形成する工程と、除去フロントを被加工物内で移動させることにより、中空構造を生成する工程と、を含む。本発明はまた、被加工物、好ましくはミラー用基板、特にEUVミラー用の基板にチャネルの形態の中空構造を製造する方法に関する。本発明はまた、ミラー、特にEUVミラー、および少なくとも1つのそのようなEUVミラーを有するEUVリソグラフィシステムに関する。
【0003】
さらに本発明は、少なくとも1つの中空構造、特に少なくとも1つのチャネルを、被加工物、好ましくはミラー、特にEUVミラー用の基板の形態で製造するための装置であって、パルスレーザ放射を生成するためのレーザ光源と、被加工物を受けるためのホルダと、レーザ放射を焦点領域に集光するための集光装置と、ホルダによって受けた被加工物の放射入口側にパルスレーザ放射を放射し、焦点領域を移動させるように設計されたスキャナ光学ユニットと、を備える装置に関する。
【0004】
本発明はまた、レーザーアブレーション、特に多光子レーザーアブレーションによって、被加工物、好ましくはEUVミラー用の特にモノリシック基板から材料を除去する際に、少なくとも1つの除去前面に流体を供給するための流体供給装置に関する。本発明はまた、少なくとも1つの除去前面に流体を供給する方法に関する。
【0005】
本願において、EUVリソグラフィ装置とは、EUVリソグラフィ分野で使用可能な光学系を意味すると理解される。リソグラフィシステムは、半導体部品の製造に使用されるEUVリソグラフィ用投影露光装置の他に、例えば、そのような投影露光装置に使用されるフォトマスク(以下、レチクルとも称する)の検査のための検査システム、構造化される半導体基板(以下、ウエハとも称する)の検査のための検査システム、またはEUVリソグラフィ用投影露光装置またはその部品の測定のために使用される計測システム(例えば、投影光学ユニットの測定のための計測システム)であってもよい。
【0006】
製造される半導体部品の構造幅を可能な限り小さくするために、EUVリソグラフィ装置とも呼ばれる最先端の投影露光装置は、EUV波長範囲とも呼ばれる極端紫外線波長範囲、すなわち約5nmから約30nmの範囲の動作波長用に設計されている。短波長放射のため、EUVミラーとも呼ばれるコーティングされたミラーがビーム誘導および集光に使用され、当該ミラーは熱膨張係数が非常に小さい材料からなる基板から構成される。例えば、基板材料は、熱膨張係数が非常に小さいチタンドープ溶融シリカとすることができる。露光ウェーハを製造する際の生産性は、EUV放射を生成するために使用されるEUV光源の出力に大きく依存する。しかし、EUVミラーに入射する放射線のパワーが大きいと、当該EUVミラーへの熱負荷が増大する。熱膨張係数が極めて小さいにもかかわらず、基板に導入される熱出力は、高精度のミラー表面の形状偏差につながる。EUVミラーの能動的な冷却は、生産性の向上と、その結果としてますます強力になるEUV光源の要求に応えるために提供される可能性がある。
【0007】
効率的な方法は、基板を冷却するために液体、例えば水が流れる内部流路を形成する体積冷却によって提供される。液体が流れる流路は、周方向に閉ざされた細長い空洞を形成し、空洞は分岐点を持たず、流路の第一端と第二端の間に延びる。一方または両方の端部において、流路は、基板の体積内に位置するさらなる中空構造に合流することができる。また、チャネルの一端または両端が基板の外側に開口することも可能である。この文脈における課題は、基板の体積内に冷却チャネルの形態の中空構造を実現することにあり、前記冷却チャネルは、原則として約1mmを超える比較的大きな直径を有し、EUV放射を反射するための反射コーティングが適用される基板の表面から通常約10mm以下の小さな距離で延在する。
【0008】
冷却液の供給と除去を行うには、通常、EUV放射が照射されるミラーの表面と実質的に平行に配置される冷却流路に、例えば基板の裏面に接続される可能性のある角度の付いた流路と戻り流路を備える必要がある。
【0009】
中空構造を製造するための一つのアプローチは、レーザー照射を用いた材料加工である。この場合、加工材料は適切な高パルス強度によって損傷される。溶融シリカ、ホウケイ酸ガラス、あるいはチタンをドープした溶融シリカのような従来のガラスは、可視から近赤外の波長のレーザー光線に対して透明である。
【発明の概要】
【0010】
発明の目的
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、ワークピース、好ましくはミラー用基板、特にEUVミラー用基板において、複雑な形状、特に曲線および/または角度のある形状を有する中空構造を製造することを可能にする方法および装置を提供することである。本発明のさらなる目的は、このような中空構造を有するミラー、特にEUVミラー、およびEUVリソグラフィ装置を提供することである。本発明のさらなる目的は、流体が中空構造を通って流れるときに生じる流れ誘起振動が低減されたミラー、特にEUVミラーを提供することにある。本発明のさらなる目的は、複雑な中空構造を製造する場合であっても、少なくとも1つの除去フロントへの流体供給を可能にする流体供給装置および方法を提供することにある。
【0012】
本発明の主題
【0013】
本発明の第1の態様では、この目的は、冒頭に述べたタイプの方法によって達成され、この方法では、中空構造を製造するために、被加工物の放射入口側でパルスレーザ放射の入射放射方向に対して垂直でない除去フロントが少なくとも断続的に形成され、中空構造は、好ましくは、流体、特に冷却流体が流れることができるチャネルの形態で製造される。流体は、加熱または冷却に使用される温度制御媒体とすることができる。流体は原則として液体であるが、気体であることもある。
【0014】
本願において、「アブレーションフロント」という用語は、「除去フロント」という用語と同義に使用される。被加工物の材料は除去フロントで除去される。除去フロントは、被加工物の材料と中空構造の既に形成された部分との間の界面を形成する。中空構造体の既に形成された部分の側部表面は、除去前面に隣接しており、より正確には除去前面のエッジ輪郭である。
【0015】
本発明者らは、アンダーカットを有する中空構造体、例えば湾曲した形状または角度のある形状を有する中空構造体の製造は、除去前面が、少なくとも断続的に、被加工物の放射入口側でパルスレーザ放射の入射放射方向に対して垂直に整列されるのではなく、除去前面がむしろ傾斜され、入射放射方向に対して90°とは異なる角度、すなわち0°から89°の間の角度で整列されることが有益であることを認識した。
【0016】
原則として、傾斜した除去フロントは、入射する放射方向に対して傾斜した平面内に延びるが、原理的には、除去フロントが平面でなく、平面形状から逸脱することも可能である。この場合、除去フロントがパルスレーザ放射の入射放射方向に対して整列している角度は、除去フロントの等価平面に対する角度であると理解される。等価平面とは、除去前面のすべての点から可能な限り小さい距離を有する平面である。等価平面は、従来の通常の最小二乗(OLS)法によって決定される。特に、除去フロントは、平面形状または平面形状からのわずかなずれしか持たない場合があり、例えば、小さな段差部の形で平面形状に近似する場合がある。
【0017】
入射放射方向は、パルスレーザ放射が放射入口側に入射する方向を意味すると理解される。それぞれの焦点位置に集光されたパルスレーザ放射は、典型的には、その伝搬方向が入射放射方向に対応するレーザービームである。パルスレーザ光線が被加工物の放射入口側に垂直に放射されない場合、被加工物の材料中におけるパルスレーザ光線の伝播方向は、屈折のために被加工物における入射放射方向と異なる。
【0018】
被加工物の放射入口側へのパルスレーザ放射の入射放射方向は、除去フロントを形成する際、一般に一定である。パルスレーザの入射放射方向が除去フロントの形成中に変化する場合、入射放射方向は、移動パターンの軌道に沿ったすべての焦点位置における放射入口側での入射放射方向の算術平均を意味すると理解される。
【0019】
原則として、被加工物の厚さ方向は、被加工物におけるパルスレーザ光の入射方向と実質的に平行である。厚さ方向は、パルスレーザ光が放射入口側を通過する位置における放射入口側の法線方向に対応する。パルスレーザ放射が被加工物に入射する放射入口側は、入射する放射方向に対して実質的に垂直に整列されたほぼ平面であってもよい。しかしながら、放射入射側が曲面、例えば、球面状の曲面、非球面状の曲面又は自由曲面を形成することも可能である。しかしながら、湾曲した鏡面を形成するために、中空構造体または中空構造体が製造された後であっても、例えば平面状の放射線入口側を機械的またはその他の方法で加工することができる。また、パルスレーザ放射が放射入口側に非垂直に入射することも可能である。
【0020】
アンダーカットを有する中空構造体を形成することを意図する場合、除去フロントは、少なくともアンダーカットを形成する間、入射放射線方向に対して90°とは異なる角度、すなわち0°から89°の間の角度で整列させることができる。一例として、このような配置は、長手方向軸が放射線の入射側と実質的に平行に走る中空構造の部分を形成することを意図する場合に有利である。当然のことながら、除去フロントは、入射放射線方向に対して、90°とは異なる角度で整列させることもでき、この角度は一定であるか、または任意に、中空構造全体の製造中にワークピース内の除去フロントの位置に応じて変化する。除去前面の角度は、連続的にゆっくりと変化させることが好ましく、すなわち、直接連続して形成される2つの除去前面の間の差角は小さくすることが好ましい。
【0021】
被加工物の材料の除去は、典型的には、放射されたレーザー放射の多光子吸収によって引き起こされ、これが、除去プロセスが多光子レーザーアブレーションとも呼ばれる理由である。多光子吸収は、以下に詳述するように、被加工物の材料中、および/または、材料の除去中に除去フロントと接触する流体(典型的には液体)中で起こり得る。他の化学的および/または物理的プロセスも、材料除去をもたらす可能性がある。放射されるレーザー放射のパラメータは、材料除去をもたらすべきそれぞれのプロセスに適合させるか、またはそれぞれのプロセスに最適化させることができる。
【0022】
中空構造は、好ましくは、流体、特に冷却流体が流れることができる湾曲した流路の形態で製造される。さらに上述したように、特にアンダーカットが設けられた中空構造体、例えば、流体が流れることができる湾曲した流路の形態の中空構造体は、さらに上述した方法によって製造することができる。
【0023】
変形例では、被加工物の材料からのパルスレーザ放射の最初の出現は、除去前面の領域にある。この変形例では、パルスレーザ放射は、被加工物の放射入口側と除去フロントとの間の被加工物の材料内を伝播する。
【0024】
この変形例の発展形では、パルスレーザ放射は、被加工物の材料から出現した後、被加工物の材料に再入射する。これは、典型的には、入射放射方向と平行に延びない中空構造の部分を形成することを意図する場合である。この場合、それぞれの焦点領域において被加工物の材料によって完全に吸収されなかったパルスレーザ放射線の一部が入射する被加工物の材料は、パルスレーザ放射線の入射放射方向において放射入射面から離れた除去前面の側に存在する。
【0025】
さらなる変形例では、ワークピース内の除去フロントは、ワークピースの放射線入口側への方向に少なくとも断続的に移動される。入射放射線方向と平行に延びる中空構造体のセクションが形成されている場合、ワークピースの放射線入口側への方向への除去前面の移動は、入射放射線方向と平行であり得る。しかしながら、例えば、中空構造体の角度のある部分または湾曲した部分が形成される場合には、放射線入口側への方向への除去前面の移動が、それに垂直な方向への移動と重畳されることも可能である。
【0026】
さらなる変形例では、ワークピース内で除去フロントを移動させるとき、ワークピースの材料は、除去フロントのエッジの、ワークピースの放射線入口側から遠い側に少なくとも断続的に隣接し、当該側は、ワークピースの放射線入口側から遠い。上述したように、これは、典型的には、入射放射線方向と平行に延在しない中空構造の部分を形成することを意図する場合である。
【0027】
更なる変形例では、除去フロントは、放射線の入射側とは反対側にあるワークピースの側面から出発して移動される。放射線入射側とは反対側であり、除去前面が開始するワークピースの側面は、一般にビーム入射側と実質的に平行に整列されるワークピースの裏面であってもよい。しかしながら、除去前面が開始するワークピースの側面は、ワークピースの体積内に位置する表面であってもよい。例えば、被加工物に既に中空構造が存在し、本方法によって製造される中空構造が、既に製造された中空構造から出発する場合、このような場合が考えられる。被加工物の体積内に既に存在する中空構造は、本明細書に記載した方法を用いて製造されたものであってもよいが、この中空構造が、例えば機械的研磨法を用いるなど、別の材料除去方法を用いて製造されたものであることも、原理的には可能である。
【0028】
変形例では、入射放射方向に対して0°から89°の間、好ましくは0°から80°の間、特に好ましくは20°から70°の間、特に30°から60°の間の角度で整列された除去フロントが、少なくとも断続的に形成される。さらに上述したように、除去前面のこのような位置合わせは、除去前面の下方に位置するワークピースの体積領域への材料修正の導入を防止または低減し、したがって、中空構造を製造する際にワークピース材料に導入される応力を著しく低減する。
【0029】
さらなる変形例では、焦点領域は、移動パターンの互いにオフセットした軌道に沿って移動される。ここで説明する方法では、移動パターンの軌道は、好ましくは互いに平行に整列され、直線状に延びる。一例として、隣接する軌道間の距離は約0.01mmから0.5mmの間とすることができる。しかしながら、このような整列は必須ではなく、すなわち、移動パターンの軌道は、任意に、例えば同心円状などの同心円状の輪郭の形で整列させることもできる。移動パターンの断面形状または除去前面の移動方向に垂直な平面へのその投影は、中空構造の断面形状に対応する。原則として、中空構造の断面形状は所望のものであり、例えば、円形、楕円形、多角形などであってもよい。ワークピース内の除去前面の位置に応じて移動パターンの空間的範囲を変更することにより、除去前面が移動する際に中空構造の断面の直径を一定の境界内で変更することもできる。
【0030】
変形例では、入射放射方向に対して垂直に整列されていない除去フロントを形成するために、焦点領域が正又は負の入射放射方向にオフセットされていることによって、又は入射放射方向に沿って、移動パターンの軌道が互いにオフセットされている。この変形例では、移動パターンの軌道は、典型的には、直線状に延び、互いに平行に整列される。ここで説明する変形例の場合、移動パターンの個々の軌道は、入射放射線方向に対して斜めの除去前線を生成するために、入射放射線方向に沿って互いにオフセットされる。ある方向、例えばZ方向への移動は、それぞれの方向に沿った、又は平行な移動を意味すると理解され、方向の符号(+Z、-Z)は考慮されない。
【0031】
この変形例の最も単純なケースでは、焦点範囲は、移動パターンの横方向の端にある軌跡から始まる、さらに隣接する各軌跡に対して、入射放射方向に一定の絶対値だけオフセットされる。例として、ダイナミックズームレンズを使用して、入射放射方向に焦点範囲をオフセットすることができる。
【0032】
この変形例では、傾斜した除去フロントは、ダイナミックズームレンズを有するスキャナ光学ユニットによる入射放射方向の焦点範囲のオフセットと組み合わせた移動パターンの高速走査によって形成される。ワークピース内で除去フロントを移動させるために、通常、走査移動に比べて遅いワークピースの移動が、走査移動に重ね合わされる。あるいは、静止したワークピースの場合、スキャナ光学ユニットの走査野内の移動パターンの位置が変更されることによって、除去前面を移動させることができる。中空構造体の第1部分を製造する目的で、ワークピースの移動によって除去前面の位置を修正し、中空構造体の第2部分を製造する目的で、走査野内の移動パターンの位置を修正することによって、ワークピース内で除去前面を移動させることが可能である。
【0033】
更なる変形例では、移動パターンの互いにオフセットされた軌道におけるパルスレーザ放射のパルスエネルギーは、入射放射方向に対して垂直でない除去フロントを形成するように変更され、焦点領域は、好ましくは、入射放射方向に対して垂直な平面内で移動される。入射放射方向における焦点領域のオフセットを生成することの代替として、またはそれに加えて、相互にオフセットされた軌道におけるパルスレーザ放射のパルスエネルギーもまた変更することができる。この場合のパルスエネルギーは、移動パターンの第一の側方エッジの軌道から出発して、移動パターンの第二の反対側のエッジの軌道まで連続的に増加または減少されるのが一般的である。例えば、パルスエネルギーの高速調整は、パルスレーザ放射を生成するためのレーザー光源に作用し、1μs未満の応答時間を持つ音響光学変調器または電気光学変調器の助けを借りて達成することができる。
【0034】
原則として、ここで説明する方法の変形は、入射放射方向における焦点領域のオフセットと組み合わされないので、焦点位置を動的に適合させるための装置を省くことが可能である。したがって、焦点領域のパルスレーザ放射は焦点面に集光され、アブレーションパターンを生成する際に焦点面内で移動する。Fシータレンズまたはテレセントリックレンズを使用することで、スキャナ光学ユニットの助けを借りて軌跡を走査する際に、パルスレーザ放射の焦点面への集束を実現することができる。アブレーションプロセスの開始時、この場合、パルスレーザ放射は、例えばワークピースの裏側に位置する焦点面に集光することができる。
【0035】
パルスレーザ光が入射方向に対して垂直な焦点面に集光される場合でも、レーザーパルスの影響範囲に変化があるため、個々の軌道間でパルスエネルギーを変更することにより、斜めの除去前線を形成することができる:レーザーパルスの波長とパルス時間によって、被加工材の除去を発生させるには、ある閾値のエネルギー密度、あるいはある閾値の強度が必要になる。パルスエネルギーが大きいほど、焦点範囲または焦点面を起点として、材料の除去が発生する入射放射方向の領域の範囲も大きくなる。従って、パルスエネルギーを高速に調整することにより、放射線の入射側から離れた被加工物の側面から始まる除去前線の形成が可能となり、除去前線は、焦点領域が移動する焦点面に対して0°とは異なる角度で整列される。この場合も、中空構造を製造するために、ワークピースの移動によって除去前面をワークピース内で移動させることができる。このようにして、例えばズーム光学ユニットのアクチュエータのような追加の可動要素を必要とすることなく、斜めの除去フロントを生成することができる。
【0036】
変形例では、除去フロントは、好ましくは放射線入射側に対して実質的に平行に延びる中空構造のセクションを形成するために、中空構造の製造中にワークピース内で入射放射線方向に対して横方向に少なくとも断続的に移動され、放射線入射側に近い側の除去フロントは、入射放射線方向に対して横方向に移動するとき、好ましくは移動方向に対して90°未満、好ましくは70°未満の角度で整列される。本願の意味において、「実質的に平行」という語句は、平行な位置合わせ、または平行な位置合わせに対して±10°の角度での位置合わせを意味すると理解される。
【0037】
上述した方法は、特に、中空構造の「水平」セクション、すなわち、ワークピースの放射入口側に実質的に平行に延びるセクションを形成するために使用することができる。EUVミラー用基板の形態のワークピースの場合、このようなセクションは、一般に、この場合、中空構造の製造後に反射コーティングが施される光学面に対応する放射入口側から少し離れた位置に配置される。水平 セクションは、EUVミラーの光学面の効率的な温度制御を実現する。
【0038】
さらなる変形例では、放射線の入射側とは反対側であるワークピースの側から出発して、入射する放射線の方向に対して実質的に平行に延びる中空構造のセクションを製造するために、好ましくは、入射する放射線の方向に対して実質的に平行に延びる中空構造のさらなるセクションを製造するために、中空構造の製造中に、除去フロントは、入射する放射線の方向に対して実質的に平行に少なくとも断続的に移動される。中空構造体の製造後、ワークピースまたは基板の温度制御、特に冷却のために流体を流すことができる、例えば貫通チャネルの形態の連続中空構造体を形成するためには、一般に、中空構造体の上述の「水平」セクションを、放射線の入射側から遠いワークピースの側面、またはワークピースの他の側面に接続する必要がある。このため、中空構造体の「垂直」チャンネル部を、放射線の入射側から遠い被加工物の側面から出発して製造することができ、前記「垂直」チャンネル部は、中空構造体の「水平」チャンネル部に合流する。
【0039】
連続中空構造体を製造する場合、第1の工程で、中空構造体の第1の「垂直」セクションと「水平」セクションの一部のみを製造することが可能であり、すなわち、「水平」セクション内の除去フロントで終了する中空構造体が製造される。連続的な中空構造体を製造するために、中空構造体の第2の「垂直」チャネルセクションが第2の工程ステップで製造され、前記第2の「垂直」チャネルセクションは、既に製造された中空構造体の第1の「垂直」セクションが開始する位置から「水平」セクションの長さだけオフセットされた、放射線入口側から遠いワークピース側の異なる位置から開始する。
【0040】
第2工程中の除去フロントは、入射放射線方向に鏡映された第1工程中の除去フロントに対応する。第二の「垂直」セクションは、既に形成された「水平」セクションの一部と入射放射線方向に水平に延びる中空構造体の「水平」セクションのさらなる一部に変換される。中空構造体の「水平」セクションの両端は、連続加工によってオーバーラップ領域で相互に接続される。このようにして、中空構造体は全体的に開口し、第1の端部の流体入口から冷却流体を供給することができる連続流路を形成し、前記冷却流体は、他方の端部の流体出口で中空構造体から再び取り出すことができる。オーバーラップ領域にはシーム領域が形成される。シーム領域内では、流路の性質、特に流路の壁の性質は、以下に詳細に説明するように、シーム領域の外側の流路の性質、特に流路の壁の性質とは異なる。
【0041】
さらなる変形例では、中空構造体の第1の部分と、中空構造体の第2の隣接する部分とが製造され、これらの長手方向は、互いに対して70°から100°の間の角度、好ましくは90°の角度で整列される。さらに上述したように、アンダーカットを有する中空構造体の製造は、ここに記載した方法の場合に可能である。一例として、湾曲した冷却流路の形態の中空構造を、ここに記載した方法の助けを借りて製造することができる。特に、90°のカーブを有する、すなわち隣接するセクション間で約90°の方向変化を有する中空構造を製造することが可能である。一例として、このことは、中空構造体の「垂直」セクションと中空構造体の「水平」セクションとの間の上述の遷移の形成に有益である。しかし、ここで説明した、約90°のカーブを描くような移行は、必ずしも中空構造の「水平」セクションと「垂直」セクションの間で起こる必要はないことが理解される。
【0042】
変形例では、中空構造の製造中に丸みを帯びた部分が形成され、第一の部分と第二の部分は、前記丸みを帯びた部分で互いに合体する。隣接する2つの断面間の曲率が約90°の場合、キンクの形態の不連続な移行が生じず、むしろ移行が中空構造体の丸みを帯びた断面に沿って連続的に実施されることが有利であることが判明した。原則として、丸みを帯びた部分は一定の曲率半径を持つが、これは必須ではなく、曲率半径は変化してもよい。丸みを帯びた部分は、除去前面または中空構造にフラックスを供給するために、可撓性チューブによる追跡を単純化し、このフラックスは、以下でさらに詳細に説明されるように、除去前面の領域から除去生成物を効果的に除去する。
【0043】
さらなる変形例では、除去フロントは、中空構造の製造中に流体と接触させられ、除去フロントが移動するときに、流体は、流体供給によって除去フロントを追跡し、流体供給は、少なくとも部分的に中空構造内に導入される。通常、アブレーション生成物を除去し、加工物を冷却するために、特にパルスレーザ放射に対して透明な液体で焦点領域をすすぐことが必要である。液体は、ノズルの助けを借りて自由液体ジェットの形で加工物の裏側に導くことができ、または加工物を部分的に液体浴に浸すことができる。しかし、アブレーション生成物を除去するために、液体の代わりに気体、例えば圧縮空気を除去前面に接触させることもできる。
【0044】
例えばチャネルの形態の中空構造が長い長さを有する場合、除去前面の領域で局所的な洗浄を可能にするために、流体供給が中空構造内に少なくとも部分的に導入されることが必要である。この目的のために、流体供給部または流体供給部の一部、例えばノズルを中空構造内に少なくとも部分的に導入することができる。一例として、流体供給は、剛性パイプとして形成されるか、または剛性パイプからなり、その自由端にノズルが取り付けられ、パイプまたはノズルが中空構造内に少なくとも部分的に導入される。しかし、流体供給がノズルを持たないことも可能である。ノズルから出た流体がパイプと中空構造体の壁との間の隙間から取り出せるように、例えばパイプの形の流体供給部は、中空構造体の直径よりわずかに小さい外径を有する。
【0045】
この変形例の発展形では、流体供給は、少なくとも1つの可撓性チューブからなるか、または流体供給は、少なくとも1つの可撓性チューブを形成し、除去前線は、少なくとも1つの可撓性チューブによって流体によって追跡され、特に、放射線の入口側から遠いワークピースの側から出発する。
【0046】
湾曲した中空構造体を製造する場合、任意に90°湾曲または90°屈曲を有するが、除去生成物を効果的に除去するために、可撓性チューブを中空構造体の既に製造された部分に導入しなければならない。一般的にノズルが取り付けられるチューブの自由端は、この場合、除去前面から比較的短い距離に配置される。チューブは、ノズルから出る流体が、チューブと中空構造体の壁との間の隙間を通って、典型的にはワークピースの裏側に向かう方向に除去できるように、中空構造体の直径よりもわずかに小さい直径を有する。自由端または流体の出現のための端部片を有する他の可撓性要素は、除去前面を追跡することができる。
【0047】
更なる変形例では、除去フロントを移動させるために、ワークピースを移動、特に変位させる。例として、ワークピースの移動は、1つ、2つまたは3つの空間方向への変位の形で実施することができる。特に、互いに対して約90°に整列された中空構造体の2つのセクションの間に移行部がある場合、ワークピースは、重ね合わせられた移動の中で2つの空間方向に変位または移動されると有利である。サイズがスキャナ光学ユニットの処理領域を超えない中空構造の製造の場合、ワークピース内での除去前面の移動は、処理領域内での走査パターンの移動によって実現することもでき、その際、ワークピースは移動されない。この場合も、中空構造を製造する際に、入射放射方向に対して除去フロントのアライメントを変更することができる。
【0048】
さらなる変形例では、焦点領域は、除去フロントを形成するために、スキャナ光学ユニットによって移動パターンの互いにオフセットされた軌道に沿って移動される。除去フロントを形成するための焦点領域の移動は、この場合、スキャナ光学ユニットの助けによるパルスレーザ放射の高速偏向によって実施され、この目的のために、例えばガルバノミラーの形態の1つまたは複数のスキャナミラーから構成され得る。中空構造を製造するために、除去フロントを形成するための走査運動は、通常、ワークピースの比較的遅い運動と重ね合わされる。走査運動中に焦点領域を焦点面に集束させるために、通常、パルスレーザ放射がFθレンズまたはテレセントリックレンズを通過することが必要である。斜めの除去フロントを形成するために、入射放射方向に焦点領域のオフセットを生成する場合、このようなレンズは、一般的に、ダイナミックズームレンズと組み合わせて同様に使用される。Fシータレンズやテレセントリックレンズは、パルスレーザのパルスエネルギーを変更して斜め除去フロントを形成する場合にも使用される。
【0049】
さらなる変形例では、中空構造は、1mmから20mmの間、好ましくは1mmから5mmの間の直径を有する円形断面を有する。さらに上述したように、チャネルは、円形断面から逸脱した断面を有することもできる。この場合、流路の直径は、等価直径として知られているもの、すなわち、流路の流路断面に対応する面積を持つ円の直径であると理解されるが、この場合は円形ではない。流体の流れには、前述の数値範囲の直径を持つ流路が有利であることがわかった。
【0050】
さらなる変形例では、中空構造は少なくとも10cm、好ましくは少なくとも15cm、特に好ましくは少なくとも20cm、特に少なくとも70cmの長さを有する。さらに上述したように、特にかなりの長さを有する湾曲した流路の形態の中空構造体は、ここに記載した方法の助けを借りて製造することができる。
【0051】
本発明はまた、冒頭に述べたタイプの方法に関し、特に、上述の方法の1つまたは複数の変形例から構成することもできる。この方法において、除去前面から離れた中空構造は、側方表面によって区画され、中空構造の製造中の除去前面は、除去前面に隣接する中空構造の側方表面の領域に対して除去前面角度で整列され、除去前面角度は、少なくとも断続的に、除去前面最小角度1°より大きく、少なくとも断続的に、除去前面最大角度89°より小さい。除去フロント最小角度は好ましくは5°、10°、20°または30°である。除去フロント最大角度は、好ましくは85°、80°、70°または60°である。中空構造体の製造中の除去前面角度は、除去前面最小角度よりも永久的に大きく、および/または除去前面最大角度よりも永久的に小さくてもよいが、これは必須ではない。側方表面は、例えば円筒状の側方表面であってもよいが、これは必須ではない。一例として、中空構造は、好ましくは流体が流れることができる流路とすることができる。
【0052】
本発明はまた、ミラー、特にEUVミラー用の基板の形態のワークピースにおいて、特に流体が流れることができる流路を製造するための方法であって、パルスレーザ放射による材料除去処理によって流路を製造し、流路の製造中に流体供給を少なくとも部分的に流路に導入する方法に関する。上述したように、比較的長い長さの流路を製造するには、流路に少なくとも部分的に導入される流体供給を使用する必要がある。
【0053】
この方法の変形例では、流体は、流体供給部の助けを借りて、材料除去加工が実施される領域に、特に材料除去加工中に形成される除去前線に供給され、除去前線は、好ましくは、除去前線がワークピース内で移動されるときに、流体供給部によって、特に自動化された方法で追跡される。パルスレーザ照射による材料除去加工の範囲内では、例えば、さらに上述した方法によって実施することができ、長い流路の製造には、除去フロントを冷却し、アブレーション生成物を除去するための流体供給による除去フロントの追跡が必要である。一例として、流体供給は、パイプなどであり得、その自由端は、ノズルが取り付けられ得、典型的には、除去フロントから少し離れた位置に配置される。除去前面を流体で追跡することは、かなりの長さの直線チャネルが製造される場合にも必要である。この場合、上述した除去前面の斜めの位置合わせを任意に省略することが可能である。一例として、自動トラッキングは、以下に説明するトラッキング装置を用いて実施することができる。
【0054】
さらなる変形例では、流体供給は、好ましくは湾曲したチャネルに少なくとも部分的に導入される可撓性要素からなり、可撓性要素は、好ましくは可撓性チューブを形成する。さらに上述したように、可撓性要素、例えば可撓性チューブの形態の可撓性流体ラインの導入は、流路が湾曲し、例えば90°のたわみ等の形態のアンダーカットを有する場合であっても、流体による除去前面の追跡を可能にする。
【0055】
さらなる変形例では、チャネルは少なくとも10cm、好ましくは少なくとも15cm、特に好ましくは少なくとも20cm、特に少なくとも70cmの長さで製造される。上述したように、比較的長い長さのチャネルが製造される場合、トラッキングが必要とされる。さらに上述したように、チャネルは、パルスレーザ放射による材料除去加工によって製造される。別の方法、例えば機械的加工、例えばドリル加工によって製造された部分がチャネルに隣接している可能性がある。これらの部分の長さは、チャネルの長さを決定する際に考慮されないままである。
【0056】
さらなる変形例では、基板はモノリシックである。基板を形成するために2つ以上の部分体を接合する際に発生する基板材料の応力を可能な限り回避するために、ミラーの基板、例えばEUVミラーの基板はモノリシックに、すなわち一体的に形成されると有利である。上述した方法を用いれば、このようなモノリシック基板において、実質的に任意の所望の形状を有する中空構造を製造することが可能である。中空構造体または構造体は、特に冷却流路、すなわち冷却液体、例えば水の通過を可能にする中空構造体とすることができる。中空構造は、連続的な冷却流路とすることができるが、中空構造が1つ以上の分岐点を有することも可能である。中空構造体の冷却液入口および冷却液出口は、基板の裏面に配置することができるが、特に、中空構造体全体または複数の中空構造体の製造に他の材料除去方法を追加的に使用する場合、これは必須ではない。
【0057】
変形例では、基板はチタンをドープした溶融シリカまたはガラスセラミックからなる。さらに上述したように、EUVミラー用の基板は、通常、熱膨張係数が極めて小さいゼロ膨張材料として知られるもので構成される。
【0058】
原理的には、EUV ミラーの基板として使用するには不適当な被加工材にも、上記の方法で中空構造を導入することができる。この方法に適した被加工材は、ガラス、結晶、半導体などである。前提条件は、それぞれの材料が、入射するレーザー放射に対して透明であることである。例えばシリコンの場合、約1060nm以上の近赤外波長域の波長がこれに該当する。
【0059】
さらなる変形例では、基板の材料は、0℃と100℃の間、好ましくは19℃と40℃の間、特に好ましくは19℃と32℃の間であるゼロ交差温度を有する。ゼロ膨張材料は、例えばドープ溶融シリカ、特にチタンをドープした溶融シリカ、またはある種のガラスセラミックの形で、互いに正と負の熱膨張係数を持つ成分または相をピットする。この結果、熱膨張と温度との間には実質的に非線形の関係が生じ、熱膨張が消失するか、あるいは温度変化に対する感度が最も小さくなる温度値が正確に存在する。正確には、これがゼロクロス温度として知られているもので、ZCTとも呼ばれる。
【0060】
変形例では、基板の材料は、3K未満、好ましくは2K未満、特に好ましくは1K未満、特に0.1K未満であるゼロ交差温度の空間的変動を有する。ゼロ交差温度が基板の体積全体にわたって可能な限り一定、すなわち可能な限り少ない変動を示すと有利である。空間的変動とは、基板の体積におけるゼロ交差温度の最大値と最小値との差を意味すると理解される。ゼロ交差温度の空間的変動は、基板における中空構造の製造後の基板に関するものであり、ゼロ交差温度の空間的変動を決定する際に、中空構造の製造中にアブレーションされた材料は考慮されないままである。
【0061】
本発明はまた、基板と、基板に塗布され、放射線、特にEUV放射線を反射する役割を果たすコーティングと、を備えるミラー、特にEUVミラーに関し、基板は、上述の方法を用いて製造された、好ましくはチャネルの形態の、特に好ましくは流体が流れることができるチャネルの形態の、特に冷却流体が流れることができる冷却チャネルの形態の、少なくとも1つの中空構造を備える。原則として、中空構造はEUVミラーの温度制御のために機能し、流体はこの目的のためにそこを通される。しかし、中空構造は、例えば、センサ、アクチュエータなどの形態の1つまたは複数のコンポーネントを基板に統合するためなど、他の目的で基板に導入することもできる。パルスレーザ放射と反射コーティングの材料との間に生じる相互作用を避けるため、中空構造が製造されるとき、基板は通常、まだ反射コーティングを有していない。したがって、反射コーティングは、通常、中空構造の製造後にのみ基板に施される。
【0062】
本発明はまた、ミラー、特にEUVミラーであって、好ましくは流体が流れることができる少なくとも1つの流路を含む基板と、パルスレーザ照射による材料除去処理によって形成された流路と、を備え、流路は湾曲した形状を有し、流路は、1mm以上20mm以下、好ましくは1mm以上5mm以下の直径、および/または少なくとも10cm以上、好ましくは少なくとも15cm以上、特に少なくとも20cm以下の長さを有する、ミラー、特にEUVミラーに関する。チャネルは、パルスレーザ放射によって形成される基板を通って移動する除去フロントによって、特に上述の方法で、すなわち上述の方法によって、パルスレーザ放射による材料除去処理中に形成された可能性がある。特に、この場合の除去フロントは、少なくとも断続的に、被加工物の放射入口側でパルスレーザ放射の入射放射方向に対して垂直に整列されないことがある。湾曲チャネルは、特に、流体、例えば冷却流体の通過のために形成され得る。
【0063】
実施形態では、基板はモノリシックである。上述したように、2つ以上の部分体を接合して多部分基板を形成する際に生じる基板材料の応力は、モノリシック基板では回避され得る。
【0064】
さらなる実施形態では、流路は、第1の部分と第2の隣接する部分とを有し、これらの長手方向は、互いに対して70°から100°の間の角度、好ましくは90°の角度で整列している。約90°という比較的大きな角度での偏向は、基板の効果的な温度制御をもたらすために流体を流路に導く際に有利である。
【0065】
一実施形態では、第1のセクションと第2のセクションは、丸みを帯びたセクションで互いに合流する。丸みを帯びたセクションに沿って2つのセクションの間に連続的な移行が、以下に詳細に説明するように、キンクの形の移行に対して有利であることが判明した。
【0066】
本発明のさらなる態様は、ミラー、特にEUVミラーの形態で、放射線を反射するための光学素子に関し、以下のものを含む:好ましくはモノリシック基板と、放射線、特にEUV放射線を反射するための反射コーティングであって、コーティングは、好ましくはモノリシック基板の表面に塗布される、反射コーティングと、好ましくはモノリシック基板内に延在し、流体がそこを流れるように設計された少なくとも1つの中空構造と、を備える、中空構造は、第一のセクションと第二の隣接するセクションとを有し、これらのセクションは、60°から120°の間の角度、好ましくは80°から100°の間の角度、特に90°の角度で互いに対して整列され、中空構造は、第一のセクションと第二のセクションとが互いに合流する丸みを帯びたセクションを有する。この2つのセクションは、通常、丸みを帯びたセクションに隣接して実質的に直線状に延びるチャネルセクションである。丸みを帯びた部分にすぐ隣接して、2つの部分は、上述の角度で互いに対して整列された長手方向軸を有する。特に、第1のセクションと第2のセクションは、90°を超える角度、例えば100°を超える角度で互いに対して整列させることができる。
【0067】
特に、2つのセクションが互いにほぼ垂直に、すなわち、互いに対して60°から120°の間の角度で整列している場合、乱流をもたらし、流れに起因する振動を引き起こす流れの分離が、角または鋭角の形で基板の中空構造の2つのセクション間の移行部において中空構造の壁で生じる可能性がある。このため、中空構造の2つの部分が、できるだけ流線型の輪郭を有する丸みを帯びた部分で互いに合流することが提案されている。
【0068】
丸みを帯びた部分とは、角のない部分を意味する。その結果、第一の断面は、丸みを帯びた部分で第二の断面に連続的に合流する。中空構造体の断面または直径は、通常、丸みを帯びた部分内で一定であるが、任意に変化することもある。原則として、切り落とし部の断面または直径は、2つの断面の断面に対応するが、切り落とし部が分岐点に配置されている場合は、この限りではない。
【0069】
基板は、好ましくはモノリシック、つまり一体に形成され、基板の2つ以上の部分体が相互接続される接合面を持たない。
【0070】
丸みを帯びた部分は、中空構造を製造するための方法またはチャネルを製造するための方法の文脈で上述したように、パルスレーザ放射による材料除去加工によって製造することができ、その際、入射放射方向に対して斜めに整列された除去フロントが形成される。上述したように、直線形状から逸脱し、特に、基板の厚さ方向と平行に延在しない中空構造は、加工面または除去フロントの斜めの整列によって形成することができる。一例として、中空構造の丸みを帯びた部分は、斜めの除去フロントが同時に2つの互いに直交する方向に変位することによって生成され得る。
【0071】
一実施形態では、丸め部の曲率半径Rと丸め部の直径Dとの間のR/D比は、2~6、好ましくは2.5~5、特に2.5~3.5である。R/D比が2以上の場合、流れに起因する振動に関する大幅な改善、例えば50%超が既に達成され得る。理想的には、R/D比は約2.5と3.5の間、例えば3.0であり、流れに起因する振動に関する最大の改善は典型的にはそこで達成されるからである。R/D比は、6を超える値であってはならない。この実施形態では、丸みを帯びた部分は一定の曲率半径を有する。
【0072】
丸められた部分の流路断面は、典型的には円形であるが、任意に円形から逸脱し、例えば楕円形の形状を有することもある。この場合、切り落とされた部分の直径は、等価直径として知られているもの、すなわち、面積が切り落とされた部分の流れ断面に対応する円の直径であると理解されるが、この場合、すでに上述したように、円形ではない。
【0073】
丸みを帯びた部分の直径と丸みを帯びた部分の曲率半径の比率は、乱流のない流線形の流れ誘導、ひいては流れに起因する振動の回避に不可欠なパラメータであることがわかった。
【0074】
更なる実施形態では、丸め部の直径Dは2mmから20mmの間、好ましくは2mmから12mmの間である。指定されたオーダーの丸み付け部または中空構造の流路構造の直径は、与えられた境界条件に対して光学素子の効率的な温度制御のための十分な体積流量の発生を可能にする。原則として、中空構造内の流体の流速は秒速数メートルのオーダーである。
【0075】
一実施形態では、中空構造は、反射コーティングが適用される表面の下方に延びる複数の温度制御チャネル、特に冷却チャネルの形態の温度制御チャネルを備え、中空構造は、ディストリビュータチャネルを介して温度制御チャネル、特に冷却チャネルに接続された流体ディストリビュータと、コレクタチャネルを介して温度制御チャネル、特に冷却チャネルに接続された流体コレクタとを備える。温度制御流路は、通常、基板を冷却する役割を果たすため、以下では冷却流路とも呼ばれ、一般に、表面下の表面近傍領域に延在する。表面近傍領域とは、基板の表面から10mm以下の距離を意味すると理解される。表面からの距離は、基板の厚さ方向で測定され、後者は一般に、基板の一般に平面的な下側に対して垂直に配置される。表面からの冷却流路の距離が小さい結果、ミラー表面の効果的な冷却が可能となる。この距離は、それぞれの温度制御チャンネルと反射コーティングを施した表面との間の最小距離を意味すると理解される。
【0076】
原則として、流体分配器と流体回収器はそれぞれ、個々の冷却流路よりも大きな流路断面積を持つ。これにより、有益な流動条件の設定が可能になる。流体分配器および/または流体回収器は、好ましくは、冷却流路よりも、反射コーティングが施される表面から大きな距離に配置される。この配置により、一般に冷却流路よりも大きな表面積の空洞を有する流体分配器および/または流体回収器内の流体圧力による表面の変形を許容範囲内に抑えることができる。流体分配器は通常、流体入口に接続され、流体コレクタは通常、流体出口に接続される。各冷却流路は、正確に1つの分配器流路および正確に1つのコレクター流路に接続される可能性があるが、原理的な問題として、2つまたは任意に2つ以上の冷却流路のグループが、共通の分配器流路および共通のコレクター流路に接続されることも可能である。
【0077】
さらなる実施形態では、第1のセクションは、分配器チャネルに隣接する温度制御チャネル、特に冷却チャネルの端セクションを形成し、第2のセクションは、端セクションに隣接する分配器チャネルセクションを形成し、および/または、第1のセクションは、コレクタチャネルに隣接する温度制御チャネル、特に冷却チャネルの端セクションを形成し、第2のセクションは、端セクションに隣接するコレクタチャネルセクションを形成する。
【0078】
冷却流路は通常、反射コーティングが施された表面に対して実質的に平行に延びている。基板内の設置スペースは限られているため、それぞれの冷却流路に接続される分配流路またはコレクター流路は、一般に、反射コーティングが施された表面からほぼ直角に離れるように導かれる。つまり、コレクターまたは分配流路部分と冷却流路の隣接する端部分とは、通常、互いにほぼ直角に延びる。
【0079】
上述した丸みを帯びた部分により、特に直径に対する曲率半径の適切な比率を選択することで、流れに起因する振動を回避するか、少なくとも実質的に低減することができる。
【0080】
原則として、流体分配器と流体コネクタは、異なる設計を有することができる。一例として、流体分配器の流路断面および流体コレクターの流路断面は、それぞれ分配器流路およびコレクター流路から出発して、例えば漏斗の様式で先細りにすることができ、基板内で流体分配器および流体コレクターによって形成される空洞が不必要に大きくならないようにすることができる。
【0081】
さらなる実施形態では、流体分配器は入口チャネルを形成し、そこから分配器チャネルが分岐し、および/または流体コレクタは出口チャネルを形成し、そこからコレクタチャネルが分岐する。この実施形態では、流体コレクタおよび流体分配器は、一般に、分配器チャネルの長手方向に対して実質的に横方向に延び、コレクタチャネルの長手方向に対して横方向に延びる。原則として、分配器流路とコレクター流路は、それぞれ実質的に直角に入口流路と出口流路から分岐する。一例として、流体分配器および流体コレクターは、この場合、円筒状流路として形成されてもよく、この円筒状流路は、それぞれ、基板の外面側の入口開口部および出口開口部から出発して基板内に延びる。この場合、入口流路および出口流路は、例えばドリル穴として形成することができるが、これらを上述のアブレーション法によって製造することも可能である。
【0082】
この実施形態の発展形では、第1のセクションは、入口チャネルに隣接する分配器チャネルの合流セクションを形成し、第2のセクションは、合流セクションに隣接する入口チャネルの分岐セクションを形成し、および/または、第1のセクションは、出口チャネルに隣接するコレクタチャネルの合流セクションを形成し、第2のセクションは、コレクタチャネルの合流セクションに隣接する出口チャネルの分岐セクションを形成する。
【0083】
さらに上述したように、入口流路の長手方向および出口流路の長手方向は、それぞれ、それぞれのコレクタ流路および分配器流路の長手方向に対して実質的に垂直に延びる。分配器流路またはコレクター流路のそれぞれの分岐点では、入口流路または出口流路の分岐点に丸みを帯びた部分を設けることによって生じる流線型の形状も有利である。このようにして、段差を回避し、エッジを丸くすることができ、その結果、中空構造の形状をより流線型に設計することができ、入口流路および出口流路における流体の分離を回避するか、または少なくとも大幅に低減することができる。
【0084】
丸め部の直径と半径の比は、好ましくは上述の値の範囲内である。ただし、分岐点での曲率半径は一定でなくてもよい。また、分岐点における丸め部の流路径も必ずしも一定である必要はない。一例として、切り落とし部の断面は、入口流路から出発して先細りになっていてもよいし、出口流路から出発して先細りになっていてもよい。
【0085】
さらなる実施形態では、入口流路の分岐部と分配器流路の合流部との間の角度は90°より大きく、好ましくは100°より大きく、および/または出口流路の分岐部とコレクター流路の合流部との間の角度は90°より大きく、好ましくは100°より大きい。入口流路の分岐部と出口流路の分岐部、および分配器流路の分岐部とコレクター流路の分岐部が、それぞれ、互いに対して鈍角に整列していると、流れ案内にとって有益であることが見出された。
【0086】
さらなる実施形態では、基板の材料は、溶融シリカ、特にチタンをドープした溶融シリカ、およびガラスセラミックからなる群から選択される。反射コーティングが施される表面の変形を回避するために、この変形は、基板材料の不均一な加熱に起因する可能性があるため、EUVリソグラフィ用ミラーの基板は、通常、熱膨張係数が非常に小さいゼロ膨張材料として知られるものを使用して製造される。上述したように、これらの材料は硬くて脆いため、機械的な加工は困難である。しかし、このような材料でも、上述のレーザーアブレーションの方法を用いれば、実質的にあらゆる形状の中空構造を製造することができる。
【0087】
さらなる実施形態では、基板の材料は、0℃と100℃の間、好ましくは19℃と40℃の間、特に好ましくは19℃と32℃の間であるゼロ交差温度を有する。上述したように、ゼロ交差温度は、特に、EUVミラーの動作中の平均入射放射束に応じて決定される。
【0088】
一実施形態では、基板の材料は、3K未満、好ましくは2K未満、特に好ましくは1K未満、特に0.1K未満であるゼロ交差温度の空間変動を有する。上述したように、ゼロ交差温度の高い空間均一性は、ミラーの効率的な動作のために一般的に必要とされる。
【0089】
さらなる実施形態において、中空構造体、好ましくは特に流体が流れることができるチャネルは、シーム領域を有する。上述したように、シーム領域は、典型的には、チャネルの形態の中空構造体の製造中に形成され、このシーム領域では、連続チャネルを形成するために、レーザーアブレーションによって形成されたチャネルの2つの部分が一緒にされる。シーム領域内では、流路の性質、特に流路の壁の性質は、シーム領域の外側の流路の性質、特に流路の壁の性質とは少なくとも1つの性質が異なる。一例として、シーム領域内の流路の壁の表面または表面構造は、シーム領域の外側の流路の壁の表面または表面構造と異なる場合がある。
【0090】
この実施形態の発展形では、中空構造、好ましくは、特に流体が流れることができる流路は、シーム領域において、除去フロント、少なくとも1つのバルジ、横方向オフセット、または別の構造変更のエッジ輪郭を有する。
【0091】
継ぎ目領域において、チャネルのそれぞれの部分のレーザーアブレーションが終了した除去前面、または任意選択で2つの除去前面の輪郭または縁輪郭は、チャネルの形態の中空構造の表面構造において識別可能であるか、または書き込まれてもよい。チャネルの表面構造で識別可能な除去フロントのエッジ輪郭は、特に、除去フロントに隣接するチャネルの側方表面の領域に対して、例えば45°の角度をなすことがある。この角度は、通常、チャネルの製造中に除去フロントが入射放射方向に対して垂直に整列されなかったことに起因する。除去フロントのエッジ輪郭は、全周にわたって識別可能な場合もあれば、チャネルの表面構造の一部分においてのみ識別可能な場合もある。
【0092】
継ぎ目領域内の流路の壁には、長手方向に局所的に区切られた、流路の断面の増加または減少をそれぞれ形成する1つまたは複数の膨らみが生じることがある。さらに、流路の壁は、継ぎ目領域内で段差の様式で横方向にわずかなオフセットを有することがあり、この段差は、流路の2つの部分の結合の間に、および/または流路の2つの部分のわずかに異なる断面の理由で生じる。継ぎ目領域内の流路または流路の壁の性質は、継ぎ目領域内の流路の表面構造を継ぎ目領域の外側の流路の表面構造と区別する他の構造変更を有することもできることが理解される。
【0093】
本発明のさらなる態様は、ミラー、特にEUVミラーに関し、以下のものを含む:流体が好ましくは流れることができる、特に湾曲したチャネルを構成する基板であって、前記チャネルはシーム領域を有する、基板。上述したように、シーム領域は、レーザーアブレーションによって形成されたチャネルの2つの部分が一緒にされて連続チャネルを形成する場合に生じる。シーム領域は、典型的には、チャネルの両端から離間している。シーム領域は、チャネルの両端からほぼ同じ距離を有していてもよいが、これは必須ではない。上述したように、シーム領域内の流路、特に流路の壁の性質は、シーム領域の外側の流路、特に流路の壁の性質とは少なくとも1つの性質が異なる。
【0094】
一実施形態では、チャネルは、シーム領域において、除去フロント、少なくとも1つのバルジ、横方向オフセット、または別の構造変更のエッジ輪郭を有する。
【0095】
本発明の態様によるミラーは、特に、上述の本発明の態様によるミラーの特徴を有することができる。基板材料は、特に、チタンをドープした溶融シリカまたはガラスセラミックであってよい。基板はモノリシックな形状を有していてもよいが、これは必須ではない。
【0096】
本発明のさらなる態様は、上述のように設計された少なくとも1つのEUVミラーと、温度制御流体、特に冷却流体が、特にチャネルの形態である少なくとも1つの中空構造体を通って流れるように設計された温度制御装置、特に冷却装置と、を備えるEUVリソグラフィシステムに関する。EUVリソグラフィシステムは、ウェハを露光するためのEUVリソグラフィ装置とすることができ、または、EUVリソグラフィで使用されるマスク、ウェハなどを検査するためのEUV検査システムなど、EUV放射を使用する他の光学的配置とすることもできる。
【0097】
温度制御装置は、冷却装置として機能してもよく、例えば、冷却流体の形態の冷却剤、例えば冷却液体の形態の冷却剤、例えば冷却水の形態の冷却剤が、中空構造体を通って、特にチャネルの形態で流れるように形成されてもよい。この目的のために、温度制御装置または冷却装置は、任意に、ポンプと、適切な供給ラインおよび除去ラインも有することができる。温度制御装置は、基板を加熱するための加熱装置としても機能し得る。この場合、一般に同様に液体である加熱流体の形態の温度制御流体が、流路の形態の中空構造に供給される。温度制御装置が、ミラーの加熱と冷却の両方を行うように設計されていることも可能である。好ましくは、冷却と加熱の両方の場合において、流路の形態の中空構造に通される温度制御流体として水が使用される。
【0098】
基板の中空構造は、流体の入口用開口部と、流体の出口用開口部とを有する。入口開口部および出口開口部は、流路を温度制御装置に接続するために、それぞれ流体供給ラインおよび流体除去ラインのポートに接続することができる。流体的に分離された複数の中空構造または流路が基板内に延びている場合、これらは別々の入口開口部および出口開口部によって温度制御装置に接続される。
【0099】
本発明のさらなる態様は、冒頭に述べたタイプの装置に関し、この装置は、流路に少なくとも部分的に導入可能な流体供給部を備える。この装置は、上述した流路の製造方法を実施するためのものであり、その範囲内で材料除去処理が実施され、その範囲内で流体供給が少なくとも部分的に流路に導入される。上述したように、比較的長い流路は、適切な流体供給と除去前面の冷却の助けを借りて、アブレートされたワークピース材料の除去を必要とする。
【0100】
一実施形態では、流体供給は、流体供給の助けによって、材料除去加工が実施される領域、特に材料除去加工中に形成される除去前線に流体を供給するように設計され、流体供給は、好ましくは、ワークピース内での移動中に除去前線を追跡することができる。この目的のために、流体供給は静止したままでよく、被加工物は流体供給に対して相対的に移動することができるが、流体供給自体が適切なアクチュエータなどの助けを借りて移動することも可能である。この場合、流体供給は、典型的には、例えばパイプなどの形態で、流路に導入可能な要素から構成される。
【0101】
さらなる実施形態では、流体供給は、可撓性要素、特に可撓性チューブをチャネルに少なくとも部分的に導入するように設計される。切除された材料を除去前面からできるだけ効果的に除去するために、流体は、除去前面の近傍に、特にこれが湾曲したチャネルに関連する場合には、可撓性チューブなどの助けを借りて、供給される必要がある。自由端では、可撓性チューブは、例えば水または圧縮空気である流体を出現させるためのノズルを有することができる。角のないキャビティまたは例えば20mm未満の比較的短いキャビティ長さの場合、典型的には、除去前面とチューブまたはノズルからの流体の出現との間の距離の場合、可撓性チューブを静止状態で配置し、この目的のためにチューブに外部から作用させることなく、被加工物の移動を考慮してキャビティ内に自動的に導入することが可能である。ここで説明する装置は、以下に説明する流体供給装置の文脈で説明するように、流体供給装置と、オプションとして、可撓性チューブによる除去前面の自動追跡のための追跡装置とから構成することができる。
【0102】
さらなる実施形態では、スキャナ光学ユニットは、ワークピースの材料の面的除去のための除去フロントを形成するために、移動パターンに沿って焦点領域を移動させるように設計されており、装置は、ホルダによって受け取られたワークピースにおけるパルスレーザ放射線の入射放射方向に対して垂直には整列していない除去フロントを形成するように設計されている。典型的には、被加工物における入射放射方向、より正確には被加工物の放射入口側における入射放射方向は、重力方向に対応する。ホルダー内に配置される際、被加工物は、その厚さ方向(通常、放射線の入射側に対して垂直に走る)が重力方向に対応するように整列される。レーザー光源は、超短レーザーパルスの形でパルスレーザ放射を生成するように設計されており、典型的には、被加工物の材料をアブレーションするための多光子吸収の発生を可能にする。
【0103】
入射放射方向に対して垂直でない方向または平面に除去フロントを位置合わせする装置の設計には、数多くの選択肢がある。
【0104】
一実施形態において、装置はさらに、パルスレーザ放射の入射放射方向において又は入射放射方向に沿ってパルスレーザ放射の焦点領域をオフセットするための焦点オフセット装置と、入射放射方向に対して垂直でない除去フロントを形成するために、入射放射方向において又は入射放射方向に沿って移動パターンの軌道を互いに対してオフセットするように焦点オフセット装置を制御するように設計又はプログラムされた制御装置とを備える。
【0105】
この実施形態では、装置は、パルスレーザ放射の入射放射方向に沿って焦点領域を動的にオフセットするための焦点オフセット装置を備える。一例として、焦点オフセット装置は、動的ズームレンズとして形成することができる。制御装置は、適切なハードウェア及び/又はソフトウェアの形態で実装することができる。
【0106】
更なる実施形態において、装置は、入射放射方向に対して垂直に整列していない除去フロントを形成するために、移動パターンの相互にオフセットされた軌道のパルスレーザ放射のパルスエネルギーを修正するようにレーザ源を制御するように設計又はプログラムされた制御装置を備える。方法の文脈で上述したように、パルスレーザ放射は、集束オフセット装置を使用せずに、集束光学ユニットの助けを借りて、典型的には入射放射方向に対して垂直に整列された平面に集束される。スキャナ光学ユニットの走査フィールド内のすべての位置で同じ焦点面にパルスレーザ放射線を集光するために、装置は、Fθレンズまたはテレセントリックレンズで構成することができる。焦点領域が移動される焦点面に対して除去前面を斜めに位置合わせするために、この場合、パルスレーザ放射のパルスエネルギーは、相互にオフセットされた軌道の間で変更される。
【0107】
パルスエネルギーを変更するために、レーザー光源は、制御装置が作用する1つ以上の音響光学変調器または電気光学変調器を含むことができる。本方法の文脈で上述したように、パルスエネルギーは、一般に、アブレーションパターンの一方のエッジからアブレーションパターンの反対側のエッジに向かって増加または減少し、その結果、焦点面に対して斜めに整列した除去フロントが形成される。
【0108】
さらなる実施形態において、装置は、チャネルを生成する目的で、好ましくは放射線入射側とは反対側であるワークピースの側から出発して、ワークピース内で除去フロントを移動させるための位置決め装置を備え、位置決め装置は、入射放射線方向、好ましくは入射放射線方向に対して横方向の少なくとも1つの方向において、またはそれに沿ってワークピースを変位させるように設計されている。この目的のために、位置決め装置は、通常、被加工物のホルダーに作用する。位置決め装置は、特に2つ又は3つの異なる空間方向におけるワークピースの重ね合わせた移動又は変位を実現する、例えばリニアモータ等の形態の1つ又は複数の駆動装置から構成することができる。原理的には、位置決め装置がワークを回転させるように設計されていることも可能である。
【0109】
本発明のさらなる態様は、少なくとも1つの除去フロント、好ましくは複数の除去フロントに流体を供給するための、少なくとも1つの可撓性流体ライン、好ましくは複数の可撓性流体ラインと、ワークピースのキャビティに挿入するための挿入部品と、を備え、挿入部品は、少なくとも1つの除去フロントに流体を供給するために、少なくとも1つの可撓性流体ラインが案内されるか、または少なくとも1つの可撓性流体ラインが案内可能である、少なくとも1つのガイドチャネルを有する、冒頭に述べたタイプの流体供給装置に関する。
【0110】
中空構造を製造する際にワークピースの材料内で移動させられる少なくとも1つの除去フロントへの流体の供給のために、本発明のこの態様による流体供給装置は、少なくとも1つの可撓性流体ラインからなり、この可撓性流体ラインは、ワークピースを通って除去フロントが移動する間、除去フロントを追跡することができる。本発明による流体供給装置の場合、可撓性流体ライン、より正確には流体が出るその自由端を、基板内の所定の位置に配置するために、可撓性流体ラインは、被加工物の空洞に挿入された挿入部品のガイドチャネル内に案内される。
【0111】
これは、レーザーアブレーション、特に多光子レーザーアブレーションによって形成された1つまたは複数の構造体がキャビティの壁から分岐する場合に特に有利である。
【0112】
挿入部品がキャビティに挿入される前に、キャビティから分岐するそれぞれの構造の短い部分が、レーザーアブレーションによって既に生成されている可能性がある。この工程で形成される除去前面に流体を供給するために、被加工物を少なくとも部分的に液槽に浸漬することができる。除去フロントがキャビティの壁から通常約20~40mmを超える距離を有するとすぐに、アブレーションされた材料はもはや十分な範囲まで除去することができないため、液槽への浸漬は一般にもはや十分ではなく、アブレーションプロセスは停止する。キャビティから分岐し、約20~40mmを超える長さを持つ構造物を製造するためには、可撓性の流体ラインの助けを借りて、除去前線の動きを流体で追跡する。
【0113】
可撓性流体ラインは、レーザーアブレーションによって生成された中空構造が分岐したり、複雑すぎる他の形状を有していなければ、挿入部品がなくても除去フロントを追跡することもできる。しかし、挿入部品の助けを借りて、可撓性流体ラインは、上述したように、構造体がキャビティから開始または分岐すべき位置に配置することができる。したがって、挿入部品を使用すれば、分岐点を有する中空構造の場合でも、可撓性流体ラインまたは可撓性流体ラインをキャビティから分岐する構造またはキャビティから分岐する構造に手動で通すことなく、除去前面への流体の供給を確実にすることができる。
【0114】
レーザーアブレーションは、特に多光子レーザーアブレーションの形態で実施することができる。多光子レーザーアブレーションの場合に中空構造を形成するために、パルスレーザ放射、一般に超短パルスレーザ放射は、基板の材料を通して、被加工物の裏面上または被加工物内の表面上、例えば上述のキャビティの壁面上の点まで放射され、この点から、形成されるべき構造が開始されるべきである。多光子レーザーアブレーションの場合、除去フロントが生成され、このポイントを起点として、中空構造を形成するために基板の材料を通って移動する。多光子レーザーアブレーションによる材料の除去に関する詳細については、パルスレーザ放射による材料除去処理によって中空構造を製造するための上述の方法を参照されたい。そこに記載されているように、複雑な形状の中空構造を製造する目的で、除去前面または加工面は、パルスレーザ放射の入射放射方向に対して垂直ではなく、入射放射方向に対して垂直な面に対して傾斜するように整列させることができる。このようにして、レーザーアブレーションによって、直線状ではなくアンダーカットを有する中空構造体を製造することも可能である。
【0115】
流体は通常液体、例えば水であり、可撓性流体ラインから比較的高い圧力で出てくる。液体の代わりに、ガス、例えば圧縮空気を、アブレーション生成物を除去するために除去前面に接触させることができる。可撓性流体ラインまたはチューブの自由端には、流体を噴出させるためのノズルを取り付けることができるが、これは必須ではない。
【0116】
ワークピースは、好ましくはEUVミラー用の特にモノリシック基板である。モノリシック基板は一体に形成され、基板の2つ以上の部分体が相互接続される接合面を有さない。上述したように、このようなモノリシック基板における中空構造は、例えばチタンをドープした溶融シリカやガラスセラミックであってもよい、硬くて脆いガラス材料における機械的加工、例えばドリル加工や研削加工によって容易に製造することはできない。上述した空洞は、機械的加工によって製造することができ、例えば、空洞は、基板にフライス加工された穴であってもよい。しかし、キャビティは多光子レーザーアブレーションによって製造することも可能である。
【0117】
一実施形態では、挿入部品は、それぞれの場合に可撓性流体ラインが案内される複数のガイドチャネルを有する。任意選択で、キャビティから発出する相当数のチャネルまたは他の構造を有する中空構造の場合、したがって、複数のチャネルまたは他の構造を同時に生成することが有利である。この目的のために、被加工物の材料がアブレーションされる複数の除去フロントを同時に形成するために、複数のパルスレーザビームを被加工物の体積を通して同時に放射することができ、その結果、キャビティから分岐する複数の構造またはチャネルを同時に製造することができる。
【0118】
複数の除去前線を同時に生成するには、それぞれの除去前線を追跡する、対応する数のガイドチャネルまたはフレキシブルな流体ラインの助けを借りて、除去前線に流体を同時に供給する必要がある。理想的には、キャビティから分岐するすべての構造を同時に製造することができる。分岐する構造体の数が多すぎる場合は、これらの構造体を複数のグループに分け、それぞれを同時に処理してもよい。それぞれのグループの構造体の製造には、形成された異なる挿入部品を使用することができる。
【0119】
さらなる実施形態では、流体を除去フロントから戻すために、流体が流れることができる隙間、特にリング隙間が、流体ラインとガイドチャネルのチャネル壁との間に形成される。可撓性の流体ラインは、流体ライン内の除去前面に供給された流体が、通過可能な隙間を介して再び除去され得るように選択された直径を有する。原則として、間隙の流路断面積は、少なくとも可撓性流体ライン内の流体の流路断面積に対応すべきである。
【0120】
さらなる実施形態では、ガイドチャネルは、可撓性流体ラインの方向を変えるための少なくとも1つの丸みを帯びた部分を有する。原則として、被加工物の空洞から分岐する構造は、挿入部品が被加工物に挿入または導入される方向に沿って平行に延びていない。したがって、それぞれのガイドチャネルが挿入部品の端面から始まる場合、一般に、挿入部品内の可撓性流体ラインの方向を変更する必要がある。このような方向転換は、理想的には、ガイドチャネルの丸みを帯びた部分または湾曲した部分に沿って流体ラインを案内することによって実施される。丸みを帯びた部分において、好ましくは、斜めの角度、すなわち90°より大きい角度で可撓性流体ラインの方向転換が行われる。
【0121】
更なる実施形態では、挿入部品は棒状であり、少なくとも1つのガイドチャネルは、挿入部品の端面から挿入部品の側面まで延びている。この場合、被加工物内の空洞は、典型的には、好ましくは一定の直径を有し、被加工物の側面の開口部から始まって被加工物の容積内に延びる直線状のチャネルである。この場合、挿入部品は、挿入部品がワークピースの開口部からキャビティ内に押し込まれることによって、キャビティ内に挿入される。この場合、挿入部品の端面は、ワークピースの開口部を通して外部からアクセス可能であるため、可撓性の流体ラインは、挿入部品の端面においてワークピースから離れるように導かれ、ポンプ等からなる流体の供給装置に接続可能である。ガイドチャネルの上述の丸みを帯びた部分の助けにより、それぞれの可撓性流体ラインは、挿入部品の端面から挿入部品の側方表面へと案内されることができる。
【0122】
この実施形態の発展形では、ガイドチャネルは、挿入部品の側方において開口部に合流し、前記開口部は、好ましくは、挿入部品の長手方向において互いに隣接して配置され、特に、挿入部品の長手方向において互いに等距離に配置される。挿入部品の長手方向において開口部が互いに隣接して配置されているとは、開口部が挿入部品の長手方向に走る共通の直線または線に沿って延びていることを意味すると理解される。別の表現をすれば、開口部は、挿入部品の円周方向において互いにオフセットしていない。これは、共通の線に沿ってキャビティから分岐する複数の構造体を多光子レーザーアブレーションによって製造する場合に有利である。形成される構造体が互いに等距離に配置される場合、開口部も等距離に、すなわち挿入部品の長手方向に互いに同じ距離に配置される。
【0123】
この実施形態の発展形として、棒状の挿入部品は円形の円筒形状を有し、好ましくは5mmから10mmの間の直径を有する。挿入部品の形状は、キャビティの形状に適合しており、この場合も同様に円形の円筒形をしている。キャビティの直径は、挿入部品の直径よりもわずかに大きい。比較的大きな直径を有する円筒形のキャビティは、機械的加工、例えば研削によって製造することができ、例えばブラインドホールの形態にすることもできる。この場合、挿入部品は通常、空洞の端面に当たるまで円筒形の空洞に押し込まれる。このようにして、挿入部品の長手方向における開口部の位置が決定される。挿入部品は、さらに、挿入部品の側面の開口部が、周方向において、これらの開口部が、キャビティから分岐する構造体が開始すべき点に対応するように配置されるように、整列または回転される。さらに、挿入部品の端面には、軸方向の位置決めを簡単にするために、被加工物の切り欠きや溝にラッチする突出部、すなわち舌部を設けることができる。挿入部品が挿入される前に、例えば中実シリンダー形状のスペーサーをキャビティ内に導入し、挿入部品を前記スペーサーの端面に接触させることができる。このようにして、挿入部品の長さを短くすることができる。
【0124】
さらなる実施形態では、少なくとも1つのガイドチャネルは、1mmから4mmの間の内径を有する。キャビティから出る構造体は、一般に、挿入部品よりもかなり小さい直径を有する。これにより、挿入部品内に延びる複数のガイドチャネルを挿入部品内に収容することができるので有利である。
【0125】
さらなる実施形態では、少なくとも1つの流体ラインは、1mm以下の外径を有する。上述したように、一般に、流体ラインとそれぞれのガイドチャネルの壁との間には、流体が戻るための隙間が残っていることが必要である。従って、流体ラインの外径は、ガイドチャネルの内径よりも小さい。
【0126】
挿入部品は、様々な方法で形成することができる。例えば、ガイドチャネルは、パイプ、例えばステンレス鋼パイプまたはプラスチックパイプとして形成することができ、これらのパイプは、丸みを帯びた部分またはセクションを形成するために曲げられるか、または曲げられた。パイプ状のガイドチャネル、例えばステンレス鋼パイプやプラスチックパイプは、一緒に束ねることができ、例えば円筒形などの所望の形状を有する挿入部品を製造するために、適切な材料に成形することができる。
【0127】
あるいは、挿入部品は、付加製造法によって製造されてもよい。この場合、挿入部品は、典型的には、3-D印刷法を用いて製造された本体から構成され、中空構造のガイドチャネルは、付加製造中に形成される。挿入部品の製造には、金属、プラスチック、あるいは3-Dプリンティングで一般的なガラス状の材料を使用することができる。
【0128】
さらなる実施形態において、流体供給装置は、少なくとも1つの可撓性流体ラインに流体を供給するための流体供給装置を備える。流体供給装置は、流体を供給するための流体リザーバを含んでいてもよい。上述したように、通常、流体を比較的高い圧力で流体ラインから出させることが有利である。従って、流体供給装置の一部であり、対応する高圧を発生するポンプの助けを借りて、流体を可撓性流体ラインに供給することが有利である。
【0129】
さらなる実施形態において、流体供給装置は、ワークピースの材料内の除去前線の移動を少なくとも1つの可撓性流体ラインによって自動追跡するための少なくとも1つの追跡装置を備える。多光子レーザーアブレーションの場合、除去前線は通常、被加工物の体積内を一定の処理速度で移動する。可撓性流体ラインによる自動追跡も同様に、加工速度で実施される。追跡のために、可撓性流体ラインは、例えばコイル等から一定速度で巻き戻されることによって前進する。可撓性流体ラインによるトラッキングのためには、一般に、流体ラインの材料が十分な剪断剛性を有することが必要であるが、これは、可撓性流体ラインに使用される材料の場合に典型的である。除去前線がワークピースの材料内を異なる処理速度で移動する場合、トラッキング装置は、流体ラインが個々に適合した速度でトラッキングできるように設計することができる。
【0130】
本発明のさらなる態様は、多光子レーザーアブレーションの方法で、好ましくはEUVミラー用の特にモノリシック基板から、被加工物から材料を除去する際に、上記のように設計された流体供給装置によって、少なくとも1つの除去前線に流体を供給する方法に関し、この方法は、被加工物のキャビティに挿入部品を挿入する工程と、挿入部品の少なくとも1つのガイドチャネル内に案内される少なくとも1つの可撓性流体ラインを介して、少なくとも1つの除去前線に流体を供給する工程と、を含む。上述のように設計された流体供給装置により、可撓性流体ラインは、除去前線が被加工物内を移動する際に、自動化された方法で、除去前線を追跡することができる。
【0131】
変形例では、挿入部品の挿入前にキャビティが流体で満たされ、キャビティに隣接する複数のチャネルセクションが、流体で満たされたキャビティから始まる多光子レーザーアブレーションによって形成される。キャビティから始まったり分岐したりする比較的短い流路部分やその他の構造の製造では、可撓性流体ラインの助けを借りて除去前面に流体を局所的に供給することは、通常、必要ない:流路の長さが一般的に約20~40mm以下の場合、キャビティ全体、ひいては多光子吸収中に形成される流路部分が流体で満たされていれば十分である。一般的に、流体入りワークは、この目的のために、液体中または液体浴中(通常は水浴中)に部分的に浸漬される。
【0132】
この変形例の展開では、挿入部品のキャビティへの挿入に続いて、複数の除去前線がチャネル部の端面から出発して生成され、複数のチャネルを生成するためにワークピースの材料内で移動され、複数の可撓性流体ラインがワークピースの材料内での除去前線の移動に追従する。
【0133】
ワークピースがEUVミラー用の基板である場合、当該ワークピースは、例えば、流体分配器および流体収集器として機能し、それぞれに挿入部品が挿入される2つのキャビティを有することができる。この2つのキャビティは、第1のキャビティから分岐して第2のキャビティに開口する複数の流路によって流体的に相互接続されている。この場合、2つのキャビティのうちの1つのキャビティから、多光子レーザーアブレーションによって、それぞれのチャネルの長さの約半分に相当する第1または第2のチャネルセクションを形成することが可能である。流路の長さのほぼ中央に、製造中の2つの流路部分の除去前面の重なりがあり、その結果、連続流路が生じ、後者は流体分配器と流体コレクターを接続する。
【0134】
流路がEUVミラー用の冷却流路又は冷却構造である場合、これらは、典型的には、流体分配器と流体コレクタとの間を直線状に延びず、その代わりに角度が付けられ、一般に、EUVミラーの光学表面から比較的大きな距離を有する流体分配器から出発して流体が表面近傍に輸送される分配器流路を有する。流体は、通常、冷却水の形態で、冷却チャネルを形成するチャネル部において表面に沿って案内された後、コレクタチャネルにおいて表面から除去され、流体コネクタに供給される。
【0135】
本発明のさらなる特徴および利点は、本発明に必須の詳細を示す図面の図を参照しながら、以下に続く本発明の実施例の説明、および特許請求の範囲から明らかになるであろう。個々の特徴は、本発明の1つの変形例において、それぞれ単独で、または複数を任意の組み合わせで実施することができる。
【0136】
図面
【0137】
例示的な実施形態が概略図に描かれ、以下の説明で説明される。詳細には
【図面の簡単な説明】
【0138】
図1図1は、EUV投影露光装置の一例を示す概略図である。
図2図2a、bは、冷却チャネル状の中空構造が導入された基板を持つEUVミラーの概略図である、
図3図3は、アンダーカットを形成する際に、パルスレーザ照射による基板の材料除去加工によって図2aの中空構造を製造する装置の概略図である。
図4図4a-cは、基板におけるパルスレーザ放射の入射放射方向に相互にオフセットした軌道を有する移動パターンの平面図および側面図、ならびに図3の装置を用いた斜めに整列した除去フロントの生成を示す概略図である。
図5a図5aは、異なるパルスエネルギーでパルスレーザ光を集光する際に発生する、互いにオフセットした軌道を持つ移動パターンの平面図を模式的に示したものである。
図5b図5bは、図5aに示した異なるパルスエネルギーによるアブレーションパターンを用いてパルスレーザ放射を焦点面に集光したときに生じる、斜めの除去フロントがある基板の概略断面図である。
図6図6a-cは、中空構造体の製造の3つの異なる段階における、ノズルまたはフレキシブルチューブからなる流体供給による、図3に類似した概略図である。
図7図7a-cは、連続冷却チャネル形状の中空構造体の製造工程と、その工程で形成されるシーム領域の2つの工程を示す。
図8図8a、bは、図1の投影露光装置のミラーの概略断面図であり、冷却流路の形態の複数の温度制御流路を有する中空構造を有し、その端部は、丸みを帯びた部分を介して分配流路またはコレクター流路に合流する。
図9図9a-dは、分配流路と冷却流路の端部との間の丸みを帯びた部分を、4つの異なる曲率半径について同じ流路径で示した概略図である。
図10図10a-dは、コレクター流路と冷却流路の端部との間の丸みを帯びた部分を、4つの異なる曲率半径について、それぞれ同一の流路径で模式的に示したものである。
図11a図11aは、図8a、bに類似した中空構造を有するEUVミラー用基板の透視図であり、冷却チャネルの端部は、ディストリビュータチャネルまたはコレクタチャネルに対して鈍角に配置されている。
図11b図11bは、冷却流路の端部と分配流路の間の移行部における丸みを帯びた部分の概略図である。
図12図12a-dは、図8a、bに類似した中空構造を有するEUVミラー用基板を示す図であり、ディストリビューターチャネルとコレクターチャネルは、それぞれ入口チャネルと出口チャネルに対して鈍角に配置され、丸みを帯びた部分で入口チャネルまたは出口チャネルに合流する。
図13a図13a、bは、複数の冷却流路を有する中空構造を有する図1の投影露光装置のミラーの概略断面図である。
図13b図13a、bは、複数の冷却流路を有する中空構造を有する図1の投影露光装置のミラーの概略断面図である。
図13c図13cは、2つの異なる挿入部品を備えた流体供給装置を使用した中空構造体の製造中の図13a、bのミラーの概略図である。
図14図14a-cは、可撓性流体ラインを案内するための屈曲したパイプ状の複数のガイドチャネルを有する挿入部品を備えた流体供給装置の第1の実施例の概略図である。
図15図15a、bは、挿入部品が積層造形によって製造された流体供給装置の第2実施例の概略図である。
【0139】
以下の図面の説明において、同一の参照符号は、同一または機能的に同一の構成要素に使用される。
【0140】
マイクロリソグラフィ投影露光装置1の形態のEUVリソグラフィ用光学配置の本質的な構成要素を、図1を参照して以下に例示的に説明する。投影露光装置1の基本的なセットアップおよびその構成要素の説明は、この場合、限定的なものとして理解されるべきではない。
【0141】
投影露光装置1の照明システム2の一実施形態は、光源又は放射線源3に加えて、物体平面6内の物体フィールド5を照明するための照明光学ユニット4を備える。別の実施形態では、光源3は、照明システムの他の部分とは別のモジュールとして設けることもできる。この場合、照明システムは光源3から構成されません。
【0142】
被写界5に配置されたレチクル7が照明される。レチクル7はレチクルホルダ8によって保持される。レチクルホルダ8は、レチクル変位駆動装置9によって、特に走査方向に変位可能である。
【0143】
説明の便宜上、デカルトxyz座標系を図1に示す。x方向は図面の平面に垂直に後者に走る。y方向は水平に、z方向は垂直に走る。走査方向は図1のy方向に沿っている。z方向は物体平面6に垂直に走る。
【0144】
投影露光装置1は、投影システム10から構成される。投影システム10は、物体フィールド5を像面12内の像フィールド11に結像させる役割を果たす。レチクル7上の構造は、像面12内の像面11の領域に配置されたウエハ13の感光層上に結像される。ウェハ13はウェハホルダ14によって保持される。ウェハホルダ14は、ウェハ変位駆動装置15によって、特にY方向に沿って変位可能である。レチクル変位駆動装置9によるレチクル7の変位と、ウエハ変位駆動装置15によるウエハ13の変位は、互いに同期して行われる。
【0145】
放射線源3は、EUV放射線源である。放射線源3は、特に、以下では使用放射線、照明放射線または照明光とも呼ばれるEUV放射線16を放射する。特に、使用放射線は、5nmから30nmの範囲の波長を有する。放射線源3は、プラズマ源、例えばLPP源、すなわちレーザー生成プラズマ源、またはDPP源、すなわちガス放電生成プラズマ源とすることができる。また、放射光源であってもよい。放射源3は、FELの略称で呼ばれる自由電子レーザーであってもよい。
【0146】
放射源3から発せられた照明放射16は、コレクタミラー17によって集束される。コレクタミラー17は、1つ以上の楕円面及び/又は双曲面反射面を有するコレクタミラーとすることができる。コレクタミラー17の少なくとも1つの反射面は、照明放射線16によって、斜入射(GI)、すなわち45°を超える入射角で、または法線入射(NI)、すなわち45°未満の入射角で入射することができる。コレクタミラー17は、第一に、使用される放射に対する反射率を最適化するため、第二に、外来光を抑制するために、構造化および/またはコーティングすることができる。
【0147】
照明放射線16は、コレクタミラー17の下流の中間焦点面18の中間焦点を通って伝播する。中間焦点面18は、放射線源3及びコレクタミラー17を有する放射線源モジュールと、照明光学ユニット4との間の分離を表すことができる。
【0148】
照明光学ユニット4は、偏向ミラー19と、ビーム経路においてその下流側に配置された第1のファセットミラー20とから構成される。偏向ミラー19は、平面偏向ミラーであってもよいし、純粋な偏向効果を超えるビーム影響効果を有するミラーであってもよい。代替的または追加的に、偏向ミラー19は、照明放射16の使用光波長を、そこから逸脱した波長の外来光から分離する分光フィルタの形態であってもよい。第1のファセット・ミラー20は、複数の個々の第1のファセット21から構成され、これらは、以下ではフィールド・ファセットとも呼ばれる。図1には、例として、前記ファセット21の一部のみが描かれている。照明光学ユニット4のビーム経路において、第2のファセット・ミラー22が第1のファセット・ミラー20の下流に配置される。第2のファセット・ミラー22は、複数の第2のファセット23から構成されている。
【0149】
その結果、照明光学ユニット4は二重のファセットシステムを形成する。この基本原理は、フライアイコンデンサー(フライアイインテグレーター)とも呼ばれる。第2のファセット・ミラー22の助けを借りて、個々の第1のファセット21が物体フィールド5に結像される。第2のファセット・ミラー22は、物体フィールド5の上流側のビーム経路における最後のビーム成形ミラー、または実際には照明放射16のための最後のミラーである。
【0150】
投影装置10は、投影露光装置1のビーム経路における配置に従って連続番号が付された複数のミラーMiから構成される。
【0151】
図1に描かれた例では、投影システム10は6つのミラーM1からM6で構成されている。4枚、8枚、10枚、12枚、またはその他の数のミラーMiを用いた代替案も同様に可能である。最後尾のミラーM5と最後のミラーM6にはそれぞれ、照明光16のための貫通開口部が設けられている。投影光学系10は、二重不明瞭光学ユニットである。投影光学ユニット10は、0.4または0.5より大きく、0.6より大きくすることもでき、例えば0.7または0.75とすることもできる像側開口数を有する。
【0152】
照明光学ユニット4のミラーと同様に、ミラーMiは照明光16に対して高反射コーティングを施すことができる。
【0153】
図2a、bは、例示的な態様で、投影システム10のミラーM4を示し、前記ミラーは、反射コーティング26が施された表面27を有する基板25からなる。図示の例では、基板25の材料は、熱膨張係数が非常に小さいチタンドープ溶融シリカである。基板25は、熱膨張係数が可能な限り小さい別の材料、例えばガラスセラミックから形成することもできる。このような材料はゼロ膨張材料であり、熱膨張係数が正と負の成分または相を互いに突き合わせたものである。このような材料は、熱膨張が消失する、あるいは温度変化に最も敏感でなくなる温度値を正確に1つ持っている。正確には、これはゼロクロス温度TZC として知られているもので、ZCTとも呼ばれる。ここで説明する例では、基板25の材料である、熱膨張係数が非常に小さいチタンドープ溶融シリカは、0℃~100℃、典型的には19℃~40℃、特に19℃~32℃のゼロクロス温度TZC 。ゼロ交差温度TZC は、基板25の体積全体にわたって実質的に一定であり、3 K未満、2 K未満、1 K未満、または0.1 K未満の空間的変動を有し、空間的変動は、ゼロ交差温度の最大値と最小値の差TZC を示す。
【0154】
図示の例では、基板25はモノリシックな形状を有する。図示の例では、反射コーティング26は、屈折率の実部が異なる材料からなる複数の層対を有し、層は、例えば、EUV放射16の波長が13.5nmの場合、SiとMoから形成される可能性がある。基板25の表面27は、図2a、bでは平面領域として表されているが、曲率を有することもある。
【0155】
図2a、bに示す例では、基板25は、流路の形態の連続中空構造28を有し、この流路を通って、矢印で示す温度制御流体、本例では冷却流体32aの形態の冷却剤が流れることができ、温度制御流体は、ここで説明する例では水である。したがって、中空構造体28は、以下では冷却流路とも呼ばれることがある。基板25を加熱する目的で、加熱流体も中空構造28を流れることができることが理解される。冷却流路28は、基板25の裏面29に形成された冷却液入口30を起点として、垂直方向、すなわちXYZ座標系のZ方向に延びる第1の部分28aを有する。垂直方向Zは、基板25の厚さ方向Zに対応する。ここで説明する例では、基板25の上面27および下面29はそれぞれ、厚さ方向Zに対して垂直に並んでいる。
【0156】
冷却チャネル28の第1の垂直セクション28aは、水平方向、すなわちX方向に延びるセクション28bと隣接しており、冷却剤33はこのセクションを通って、垂直方向に延び、基板25の裏面29の冷却剤出口31に開口する冷却チャネル28の第3のセクション28cに流入する。それぞれの垂直部28a、28cと水平部28bとの間の2つの移行部を除いて、図2aに示す冷却流路の形態の中空構造28は、一定の直径を有する円形断面を有し、この直径は、図示の例では約1~5mmのオーダーである。図2bに示す連続冷却流路28が図2aに示す連続冷却流路28と異なる点は、冷却液入口30および冷却液出口31からそれぞれ始まる垂直部28a、cのそれぞれにおける部分が、冷却流路28の水平部28cへの移行部にそれぞれ位置する水平部28bおよび垂直部28a、cの短い部分よりも大きな直径を有する点である。
【0157】
冷却剤入口30に冷却剤32aを供給し、冷却剤出口31から冷却剤32aを除去するために、投影露光装置1は、図1に概略的に表されている冷却装置32を備える。図示の例では、冷却装置32は、冷却水の形態の冷却剤32aを冷却チャネル28またはミラーM4に供給する役割を果たし、この目的のために、冷却剤入口30に流体密に接続された、ここには描かれていない供給ラインから構成される。冷却装置32は、冷却水出口31から冷却水32aを除去するための、ここには描かれていない除去ラインも備えている。投影システム10の他のミラーM1~M3、M5、M6も中空構造28を有することができ、この中空構造28は、冷却目的のために、冷却装置32に接続されるか、あるいは任意に、この目的のために設けられたさらなる冷却装置に接続される。原理的には、どのような鏡も、冷却剤が流れることができる中空構造28を有することができることが理解される。一例として、これは、DUV/VUV波長範囲、可視波長範囲および/または赤外波長範囲の放射線を反射するように設計されたミラーに関連し得る。冷却装置32の代わりに、温度制御装置を投影露光装置1に設けることもでき、すなわち、ミラーM1~M6を冷却および/または加熱するために使用される装置を設けることもできる。加熱には、適当な温度制御流体32aを用いることができ、例えば、中空構造体28に供給される前に所望の温度に加熱される水を用いることができる。
【0158】
図3に概略的に示されている装置33は、図2aに示されている冷却チャネル28を生成する役割を果たす。装置33は、パルスレーザ放射35を生成するレーザー源34からなり、図3ではダッシュの形で表されている。レーザー光源34は、例えば10ps未満のピコ秒オーダーのパルス持続時間を有するレーザーパルスを生成するように設計された超短パルスレーザ光源であり、MW範囲のピークパルス出力を有する。レーザー光源34は、近赤外波長範囲、より正確には1030nmの波長を持つパルスレーザ放射35を生成するように設計されている。しかし、レーザー光源34は、可視波長域の波長または基板25の材料が透明である近赤外波長域の別の波長でパルスレーザ放射35を生成するように設計されることも可能である。
【0159】
装置33はまた、スキャナ光学ユニット36と集光装置37とから構成される。図示の例では、集光装置37はFθレンズとして設計され、パルスレーザビームの形態でパルスレーザ放射を基板25内の焦点領域39に集光する役割を果たす。スキャナ光学ユニット36は、パルスレーザ放射35を基板25のビーム入射面27上に、ビーム入射面27に対して垂直に整列された入射放射方向Zに放射し、基板25内の焦点領域39を移動させる役割を果たし、当該スキャナ光学ユニットは、この目的のために、2方向に傾斜可能なガルバノミラー40を含んで構成される。つのガルバノミラー40の代わりに、各々が1方向に傾斜可能な2つのガルバノミラーをスキャナ光学ユニット36内に配置することも可能である。また、ガルバノミラーの代わりに他のタイプのミラー、例えば圧電ミラーを使用することも可能である。
【0160】
上述したように、焦点領域39は、ミラー40を傾けることによって基板25内で移動させることができる。ガルバノミラー40のアライメントが異なる場合に電界の湾曲を補正するFθレンズ37の結果として、焦点領域39は、ミラー40が傾けられると、入射放射方向Zに垂直なXY平面内で移動する。したがって、基板25におけるパルスレーザ放射35の入射放射方向Zは、実質的に基板25の厚さ方向Zに対応する。
【0161】
スキャナ光学ユニット36の助けを借りて、焦点領域39は、図4aに平面図で示されているアブレーションパターン41に沿って移動される。アブレーションパターン41は、平行に整列され、Y方向に延び、図示の例ではX方向に互いに等間隔に配置された複数の直線軌道42を有する。軌道42が互いに同じ距離に配置されることは必須ではなく、むしろ、隣接する軌道42間の距離もアブレーションパターン41内でプロセスに依存して変化してもよい。
【0162】
図3に示す冷却チャネルの垂直断面28aを生成するために、図4aに示すアブレーションパターン41が、スキャナ光学ユニット36の助けを借りて、コーティングされていない基板25の裏面29上のXY平面上に生成される。スキャナ光学ユニット36が図5aに示すアブレーションパターン41を複数回生成する間に、図3に非常に概略的に表されており、基板25用のホルダ44に作用する位置決め装置43の助けにより、基板25は、基板25のビーム入口側27において、パルスレーザ放射35の入射放射方向Zの下方に変位する。このようにして、基板25の裏面29を起点として、図3に示す冷却流路28の垂直部28aが形成される。
【0163】
図3は、冷却チャネル28の垂直部28aと冷却チャネル28の水平部28bとの間にアンダーカット角90°のアンダーカットの形態の移行部を製造する場合の中空構造体28の製造工程を示している。その際、水平断面の製造のために材料を除去するために、図3に示すように、パルスレーザ放射35が垂直断面28aの上端部に沿って横方向に誘導されると、パルスレーザ放射35とその下の基板25の材料との相互作用が生じ、この相互作用によって、図3に実線の縦線45で示すように、基板25の材料に修正と応力が誘発される。
【0164】
この問題は、入射放射方向Zに対して垂直でない除去前面46を生成することによって是正される。図4cに示す例では、除去前面46は、入射放射方向Zに対して45°の角度αを有するが、入射放射方向Zに対する角度αは、大きくても小さくてもよく、例えば、入射放射方向Zに対して、0°~89°、10°~80°、20°~70°又は30°~60°の間の値範囲で整列させることができる。
【0165】
図4cにおいて、除去フロント46は、冷却チャネル28の水平部28bを生成するために、基板25の放射入口側27に向かう方向に傾斜させられるが、これは、まだ生成されていないことを理由に、図4cの表現において破線で示されている。冷却チャネル28の水平部28bを製造するために、図4cに矢印で示すように、基板25は、除去前面46に沿って材料を連続的にアブレーションするために、位置決め装置43の助けを借りてX方向に変位させられる。図4cから同様に明らかなように、前記除去前面が水平X方向に移動しているとき、基板25の放射入口側27により近い除去前面46の上縁46aは、負のX方向に対応する基板25内の除去前面46の移動方向に対して45°の角度βで整列される。放射線入射面27から離れた除去前面46の下縁46bは、中空構造体28の水平部28bが製造されるとき、除去前面46の上縁46aよりも移動方向にさらに突出する。このようにして、除去前面46の下縁46bのみが基板25の材料に隣接するので、水平部28bの製造中にパルスレーザ放射35と基板25の材料との相互作用を最小限に抑えることができる。同様に図4cから明らかなように、放射入射面27での入射に続く、被加工物25の材料からのパルスレーザ放射35の最初の再出射は、除去前面46の領域にある。
【0166】
図4cに示される例では、図4bに示されるように、入射放射方向Zにおける2つの隣接する軌道42の間で、焦点範囲39が、示される例では一定である値Δzだけ、それぞれの場合にオフセットされることによって、傾斜された除去前面46が生成される。入射放射方向Zに対して45°傾いた除去フロント46に沿った隣接する軌道42間の距離Aは、図示の例では約0.01mmから0.5mmの間、例えば約0.03mmである。隣接する軌跡42の横断の間に、入射放射線方向Zにおいて焦点領域39を迅速にオフセットできるようにするために、装置33は、動的ズームレンズの形態である焦点オフセット装置47を備える。焦点オフセット装置47は、入射放射方向Zのオフセットを生成するための制御装置48によって制御される。制御装置48はまた、入射放射方向Zのオフセットを、それぞれの軌道42に沿った焦点領域39の移動と同期させるために、レーザ源34およびスキャナ装置36を制御する役割を果たす。図示の例では、冷却チャネル28の円形断面の直径は約2mmである。
【0167】
図5a、bは、斜め除去前面46を形成するためのさらなる選択肢を示しており、この斜め除去前面46も同様に、入射放射方向Zに対して45°の角度αで位置合わせされている。図5bから明らかなように、中空構造体28を製造するための装置33は、フォーカスオフセット装置を有していない。図5bに示す装置33では、パルスレーザ放射35は、入射放射方向Zに対して垂直に整列された焦点面FEに集光される。図5aから明らかなように、パルスレーザ放射35のパルスエネルギーE は、図5aに軌跡42の線厚の増加によって示されているように、除去フロント46を形成するために、焦点面FE内の隣接する軌跡42または対応する走査線の間で漸増的に増加される。
【0168】
制御装置48は、パルスエネルギーE を増加させるためにレーザー源34に作用する。レーザー源34は、パルスエネルギーE を調整するための装置を含んでおり、この装置は、例えば、音響光学変調器又は電気光学変調器の形態とすることができる。このような変調器は、マイクロ秒以下のオーダーの応答時間を持ち、アブレーション・パターン41の2つの隣り合う軌道42の間でパルス・エネルギーE を素早く増加させることができる。図5bから明らかなように、パルスレーザ放射35が基板25の材料に及ぼす影響範囲は、他のパラメータに加えて、パルスエネルギーE にも依存する。パルスレーザ放射35の波長やパルスレーザ放射35のパルス持続時間などの指定されたパラメータに応じて、基板25の材料をアブレーションするには、ある閾値のエネルギー密度または強度が必要となる。パルスエネルギーE が大きいほど、焦点面FEを起点として、材料除去が起こり得る領域の範囲が大きくなる。
【0169】
図5bは、依然として除去が起こり得る入射放射線方向Zの境界49を有する基板25内のエネルギー密度の等線範囲を示す。図5aの矢印で示されるように、X方向におけるパルスエネルギーE の漸増の結果として、入射放射線方向Zにおける境界49を変位させ、入射放射線方向Zに対して45°の角度で整列された図5bに示される除去フロント49を形成することが可能である。その結果、装置33がこの目的のためにフォーカスオフセット装置47のような付加的な可動要素を有することなく、図5a、bと併せて説明した方法で、斜めの除去前面46を形成することができる。図3の文脈で説明したように、チャネル28の垂直部28aは、図5bに矢印で示すように、この場合、基板25のZ方向への下向きの移動によっても生成することができる。
【0170】
図6a~cは、垂直部28aおよび水平部28bを有し、これらが丸み部28dまたは曲線部で互いに合流する、角度のついた中空構造体28の製造の3つの段階を示している。この場合、中空構造体28を製造するための装置33は、図4a~cのように設計されており、すなわち、斜めの除去前面46を形成するための焦点オフセット装置47から構成されている。図6aから明らかなように、垂直チャネル部28aは、基板25が下方に変位されることによって第1段階で製造され、その結果、除去フロント46が基板25内で移動され、基板25の材料が連続的にアブレーションされ、一方、スキャナ光学ユニット36は静止したままである。材料除去にとって重要なのは、除去フロント46と基板25との間の相対的な移動だけであるため、基板25は入射放射線方向Zにおいて静止したままであってもよく、スキャナ光学ユニット36は、代替的に基板25内で除去フロント46を移動させるために上方に移動されてもよい。原理的には、基板25とスキャナ光学ユニット36のZ方向への重畳移動も可能である。
【0171】
除去された材料は、流体供給50の助けを借りて除去前面46から除去される。図示の例では、流体供給50は静止ノズル51からなり、そこから液体、図示の例では水32bが出、液体は垂直方向に噴出し、除去前面46に供給される。ノズル51が鉛直方向上方に配置されることにより、除去前面46からの除去粒子の標的を絞った除去が可能となり、除去粒子は、重力の作用により、ノズル51と中空構造体28の垂直部28aの壁面との間の隙間を通って除去される。このようにして、除去前面46は堆積物から実質的に解放されたままであり、除去を中断することなく実施することができる。同時に、液体32bを供給することにより、除去前面46または処理ゾーンを積極的に冷却することができ、その結果、基板25内の残留熱が低減される。液体32bを供給する代わりに、気体、例えば圧縮空気を、流体供給50の助けを借りて除去前面46に供給することもできる。
【0172】
図6bは、中空構造体28の製造中の段階を示し、この段階では、中空構造体28の丸み付け部28dが形成され、当該丸み付け部は、中空構造体28の垂直部28aと水平部28bとの間に90°の移行部を形成する。丸み部28dが形成されると、基板25は、矢印で示すように、Z方向への変位に加えてX方向にも変位するが、45°に傾斜した除去前面46は依然として上述の方法で形成される。
【0173】
丸められた部分28dは、図6cに示されるように、中空構造体28の水平部分28bの製造中に、除去前面46が前記可撓性チューブによって追跡される、可撓性チューブ52の中空構造体28への導入を可能にする。このようにして、水平部28bの製造中であっても、除去前部46から除去製品を効果的に除去することができる。チューブ52による連続的な追跡の結果、中空構造体28の達成可能な長さは、基板25のサイズとチューブ52の長さによってのみ制限される。
【0174】
上述した除去フロント46の傾斜は、パルスレーザ照射35による材料除去加工によって、例えば直線状に延びるチャネルの形態の中空構造を製造する場合には、必ずしも実施する必要はない。直線状に延びる比較的長い長さを有するチャネル28の形態の中空構造を製造することを意図する場合であっても、すすぎ液32bを除去前面46に供給するために、流体供給部50または流体供給部50の一部をチャネル28に少なくとも部分的に導入することが必要である。この目的のために、流体供給部50は、例えば、流路28内に少なくとも部分的に導入される剛性パイプ等から構成することができる。特に湾曲した流路28が形成されるべき場合には、流体供給部50は、例えば可撓性チューブ52の形態の可撓性要素から構成されてもよく、この可撓性要素は、除去前面46が前記可撓性要素の自由端によって追跡されるように、流路28内に少なくとも部分的に導入される。チューブ52の自由端にはノズルを取り付けることができるが、これは必須ではない。
【0175】
同様に図6cから明らかなように、中空構造体28の水平部28bの製造中の基板25の材料は、除去前面46の縁部46bの側部46cに隣接しており、当該側部は基板25の放射線入口側部27から離れており、すなわち基板25の材料は、図6cにおいて除去前面46の下縁部46bの下方に位置している。さらに、中空構造体28の水平部28bを製造する際、除去前面46の領域から出現する、または除去前面46から中空構造体28内に発散するレーザ放射35の一部は、基板25の材料に再入射し、正確には、図6cのチャネル28の形態の中空構造体の側方表面の下縁に再入射する。
【0176】
同様に図6cから明らかなように、除去前面46は、図示の例では円筒形であるチャネル28の側方表面57との角度β’を含み、この角度は以下では除去前面角度とも呼ばれる。チャネル28の製造中、除去フロント角度β’は、典型的には、少なくとも断続的に1°、5°、10°、20°または30°の除去フロント最小角度より大きく、少なくとも断続的に89°、85°、80°、70°または60°の除去フロント最大角度より小さい。チャネル28の製造中の除去前面角度β’は、除去前面最小角度よりも永久的に大きく、および/または除去前面最大角度よりも永久的に小さくてもよいが、これは必須ではない。
【0177】
図7a、bは、図6a~cと関連して説明した段階に続く、中空構造体28の製造中のさらなる2つの段階またはステップを示す。図7aから明らかなように、図6aに示す段階に対応する方法で、基板25の裏面29から出発して、中空構造体28のさらなる垂直部28c、それに続くさらなる丸み部28eが製造される。図7aに示す中空構造28の製造段階においては、図6aと比較して、除去前面46の位置合わせが鏡像化され、水平部28bを形成するために、基板が負のX方向に変位される。図7bから明らかなように、鏡面加工された除去前面46’は、連続的な加工により、当該鏡面加工された除去前面が中空構造体28の水平部28bの既に加工された部分に到達するまで水平方向に変位され、連続的な水平部28bが生成され、チャネルの形態の中空構造体28が連続的に開放される。
【0178】
継ぎ目領域53は、流路28を連続するように開くときに生じ、当該継ぎ目領域は、流路28のそれぞれの部分の製造中に形成されたそれぞれの最後の除去前面46、46’に対応する図7bの2つの隣接する破線の領域に延びる。継ぎ目領域53における流路28の性質、より正確には流路28の壁の性質は、少なくとも1つの性質の点で、継ぎ目領域の外側の流路28の壁の性質と異なるか、または継ぎ目領域53は、残りの流路28に対して少なくとも1つの構造変更を有する。
【0179】
図7cは、そのような構造変更の3つの例を示す:図7cに示す例では、まず、継ぎ目領域53内の流路28の壁の表面構造は、継ぎ目領域53の外側の流路28の壁の表面構造とは異なり、継ぎ目領域53内の表面構造上で、除去フロント46のエッジ輪郭54が観察可能である。他の除去フロント46’のエッジ輪郭も、シーム領域53のチャネル28の表面構造に部分的に書き込まれているが、これは図7cには描かれていない。除去フロント46のエッジ輪郭54は、図示の例では楕円状に延び、チャネル28の側方表面に対して約45°の角度、すなわち除去フロント46そのものと同じ角度で整列される(図6c参照)。
【0180】
図7cに示す例では、継ぎ目領域53のチャネル28の壁に4つの膨出部55がさらに形成され、膨出部はそれぞれチャネル28の断面を局所的に増加させる。チャネル28の断面を減少させる膨らみも同様に可能である。さらに、流路28の壁は、継ぎ目領域53の段差の様式でわずかな横方向のオフセット56を有し、これは、流路28の2つの部分のわずかに異なる断面積に遡ることができる。横方向のオフセットは、連続開口部を製造する際のチャネル28の2つの部分のわずかにずれた位置決めの結果として生じることもある。膨出部55と横方向のオフセット56の両方が、分かりやすくするために誇張して表現されていることが理解される。
【0181】
パルスレーザ照射35による材料除去処理の結果として、基板25に湾曲チャネル28の形態の中空構造を製造することができ、前記中空構造は、1mm以上20mm以下、特に1mm以上5mm以下の直径D、および/または少なくとも10cm、少なくとも15cm、少なくとも20cm、または少なくとも70cmの長さL を有する。図7Bに示される流路28は、20cmを超える長さL および5mmの直径Dを有する。基板25のゼロ交差温度TZC は、上記で規定した値の範囲内であり、モノリシック基板25の体積において実質的に一定である。すなわち、ゼロ交差温度の変動ΔTZC 、すなわち基板25の体積における最大ゼロ交差温度と最小ゼロ交差温度との差も、同様に上記で規定した値の範囲内である。
【0182】
図2a、bに関連して説明したように、冷却液の通過に使用できる中空構造28が、上述の方法で生成される。上述のものとは異なり、裏面除去は、基板25の裏面29からではなく、ビーム入口側27とは反対側であって基板25内に配置された基板25の側面から開始することもできる。一例として、これは、図2bに図示された縦孔の上端であり得、そこから出発して、中空構造28の2つの縦部28a、cが製造される。この場合、中空構造体28は、基板25の機械的加工をパルスレーザ照射35による材料除去加工と組み合わせたハイブリッド製造方法を用いて製造される。垂直孔ではなく、異なる配置の孔またはキャビティが、パルスレーザ照射35の助けを借りて中空構造体28の上述の製造の出発点として機能し得ることが理解される。
【0183】
要約すると、高アスペクトの垂直および水平の巨視的中空構造を、上述の方法でEUVミラーの基板25に導入することができる。水平または垂直アライメントから逸脱する中空構造または中空構造のセクションも、この方法で製造できることが理解される。投影システム10のミラーM1~M6のうちの1つだけでなく、中空構造を生成するために上述した方法で処理することができる他のミラー、特にEUVミラーであってもよいことが理解される。単一の連続冷却チャネル28よりも複雑な中空構造も、上述の方法によって製造することができ、例えば、Y分岐点またはT分岐点を有する中空構造が挙げられる。分岐点を有する中空構造も、上述の方法で製造することができ、その結果、基板の材料が損傷したり、応力が発生したりすることはない。
【0184】
図8A、Bは、投影システム10の一部であるモノリシック基板125を備えたミラーM4の実施形態のさらなる例を示している。図示の例では、基板125の材料は、熱膨張係数が非常に小さいチタンドープ溶融シリカである。基板125は、熱膨張係数が可能な限り小さい別の材料、例えばガラスセラミックから形成することもできる。基板125のゼロ交差温度TZC は、上記で規定された値範囲内にあり、モノリシック基板125の体積において実質的に一定である。つまり、ゼロ交差温度の変動ΔTZC 、つまり基板125の体積におけるゼロ交差温度の最大値と最小値との差も、同様に上記で規定された値範囲内にある。
【0185】
基板125の表面125aには、EUV放射16を反射するための反射コーティング126が施されている。反射コーティング126内に位置する表面125aの一部は、投影システム10のEUV放射116によって打たれ、ここには描かれていない反射コーティング126の光学的に使用される部分を形成する。EUV放射16を反射するために、反射コーティング126は、例えば、屈折率の異なる実数部を有する材料からなる複数の層対を有することができ、層は、例えば、EUV放射16の波長が13.5nmの場合、SiおよびMoから形成される可能性がある。
【0186】
基板125は、流体128が流れることができる中空構造127を有し、後者は図示の例では水である。図8aに矢印で示す流体128は、中空構造127の一部を形成する複数の冷却チャネル131を通って流れるように、側面の入口開口129から基板125内に入り、特に、反射コーティング126が施された基板125の表面125aを冷却する。
【0187】
流体128を入口開口部129に供給し、流体128を図8a、bには描かれていない出口開口部から除去するために、投影露光装置1は、冷却装置の形態である上述の温度制御装置32を備える。図示の例では、冷却装置32は、冷却水の形態の流体128を中空構造体127またはミラーM4に供給する役割を果たし、この目的のために、入口開口部129に流体密に接続される、ここには描かれていない供給ラインから構成される。冷却装置132はまた、基板125の出口開口部を介して、または中空構造体127から冷却水を除去するために、ここには描かれていない除去ラインから構成されている。
【0188】
図8Aから明らかなように、流体128は、入口開口部129を介して中空構造127の入口チャネル133に入り、当該入口チャネルは、流体分配器を形成し、そこから、各々が以下の冷却チャネル131と呼ばれる複数の温度制御チャネルのうちの1つに接続される複数の分配チャネル134が分岐する。冷却流路131は、図示の例では平面である基板125の表面125aから約5mmの距離A’をおいて配置され、表面125aに平行に、すなわちXYZ座標系のXY平面に平行に延びている。冷却流路131は、直線状に延び、平行に整列し、Y方向に対応する長手方向に、コーティング126によって覆われている基板125の表面125aのほぼ全体にわたって走っている;図8bを参照。冷却チャネル131から、流体128は、複数のコレクタチャネル136を経由して、図8bに示す例では出口チャネル135として形成されている流体コレクタへと流れる。出口流路135は、図8a、bには描かれていない上述の出口開口部を有し、これを介して流体128が基板125の中空構造127から出る。
【0189】
図8bから明らかなように、中空構造体127は、それぞれの分配器チャネル134が冷却チャネル131に合流する第1の丸みを帯びた部分137aを有する。従って、中空構造体127は第二の丸みを帯びた部分137bも有し、ここでそれぞれの冷却チャネル131がコレクタチャネル136に合流する。図示の例では、冷却流路131は、Y方向に対応する水平方向に直線状に延びており、分配流路134およびコレクタ流路136は、Z方向に対応する垂直方向に直線状に延びている。従って、冷却流路131の長手方向の軸は、分配流路134及びコレクタ流路136に対して90°の角度γで並んでいる。丸みを帯びた部分137a、bは、丸みを帯びていない「角のような」90°曲げの場合に発生する乱流の発生を回避するか、少なくとも大幅に低減するために、可能な限り流線形の流れ案内を生成する役割を果たす。乱流の低減は、結果として反射光学素子M4の流れに起因する振動の低減をもたらす。
【0190】
図9a~d及び図10a~dに示されるように、90°曲がり部における最適化された流れ案内のためには、丸め部137a、bが一定の曲率半径Rを有すると有利である。最適な流れ案内に不可欠なパラメータは、丸み部137a、137bの曲率半径Rと流れの直径Dとの比によって表される。
【0191】
図9a~dは、丸み付け部137aの曲率半径Rと丸み付け部137aの直径Dとの間の4つの異なる比率の場合における、それぞれの冷却流路131の端部131aと端部131aに隣接する分配流路部134aとが互いに隣接する第1の丸み付け部137aを示す。この場合、曲率半径Rは、図9a~dに示されるように、丸み消し部137aの中心で測定される。丸み消し部137aの直径Dは、図示した4つの例すべてにおいて5mmである。この場合の丸み部137aの直径Dは、流通路134の直径D及び冷却路131の直径Dに対応する。長さLは、図9a~dの図では約50mmである。図9a~dから明らかなように、R/D比は、図示の4つの例において、それぞれ、R/D=2、R/D=3、R/D=4、R/D=5である。
【0192】
図9a~dに類似した態様で、図10a~bは、それぞれの冷却チャネル131の端部131bと、端部131bに隣接するコレクタチャネル部136aとが互いに合流する、第2の丸み付け部137bを示す。丸み部137bの直径Dは、図10a~dでは10mmである。図10a~dの説明図において、長さLは約60mmである。また、図10a~dの図示において、R/D比は、図示の4つの例では、それぞれ、R/D=2、R/D=3、R/D=4、R/D=5である。それぞれの丸み付け部137a、137bの直径Dは、典型的には2mmから20mmの間であり、理想的には2mmから12mmの間である。
【0193】
上述したように、各丸め込み部137a、137bの曲率半径Rと直径Dとの間には、丸め込み部137a、137bの外周側における流動流体128の圧力が丸め込み部137a、bの内周側と比較して極僅かしか上昇しないように遠心力が作用し、これにより丸め込み部137a、bの上流側及び下流側において境界層剥離の低減を達成することができる最適な比率が存在する。図9a~d及び図10a~dは、流動する流体128の乱流運動エネルギーが所定値を超える領域の輪郭を示す図である。この場合、流体128は、分配流路部134aから、またはコレクタ流路部136aから、冷却流路131のそれぞれの端部131aまたは131bに流入すると仮定した。
【0194】
この目的のために、丸み付け部137a、137bの曲率半径Rと丸み付け部137a、137bの直径Dとの比は、2以上6以下、より好ましくは2.5以上5以下、理想的には2.5以上3.5以下が特に有利であることが判明した。通常、R/D比が2未満の場合、境界層分離の有意な減少はあり得ない。R/D比の最適値は典型的には2.5と3.5の間であるが、最適値は任意にこの値の範囲外であってもよい。R/D比が6.0を超える場合、通常、流動挙動が悪化する。
【0195】
実際には、丸みを帯びた部分137a、bは、上述したように、モノリシック基板125において従来の加工方法の助けを借りて製造することはできない。図示の例では、入口流路133と出口流路135のみが、正確には、それぞれの穴が基板125に導入されることによって、従来の加工方法によって製造される。対照的に、分配チャネル134、冷却チャネル131およびコレクタチャネル136は、基板25の材料のレーザーアブレーションによって製造され、レーザーアブレーションについては後述する。
【0196】
中空構造127の分配チャネル134、冷却チャネル131およびコレクタチャネル136を生成するために、パルスレーザビームは、反射コーティング126が適用される前に、基板125の表面125aから出発して基板125の材料を通して入口チャネル133の上側に放射され、そこで集束され、複数の平行なアブレーション経路を有する移動パターンが生成され、当該アブレーション経路は、基板25の厚さ方向Zに対して45°の角度で整列された除去フロント130aを形成する。この位置から、除去フロント130aは、基板125の材料をアブレーションし、分配チャネル34を形成するために、Z方向に対応する厚さ方向に、基板125に対して複数回変位する。変位の間、除去前面130aは静止したままであってもよく、除去前面130aが第1の丸め部137aの真下に位置するまで、基板125はZ方向上方に変位する。
【0197】
第1の丸み付け部137aを形成するために、除去前面130aまたは基板125は、Z方向およびY方向の両方向に重畳して変位する。第1の丸み付き部137aが形成された後、Z方向に対応する厚さ方向に対して45°で整列された除去前部130aは、当該除去前部が冷却流路131の長手方向のほぼ中央に位置するまで、当該冷却流路131または分配流路134に隣接する当該冷却流路131の端部131aを形成するために、Y方向に対応する冷却流路131の長手方向にのみ変位される。
【0198】
コレクタチャネル136、第2の丸み付け部137b、および冷却チャネル131の後半部または第2の丸み付け部137bに隣接する端部131bの製造は、出口チャネル135から出発するレーザアブレーションによって同様に実施され、その上側で、パルスレーザ放射は、最初に基板125を通して集光される。この工程で形成される更なる除去前面30bは、同様に、基板25の厚さ方向またはXY平面に対して45°に整列されるが、上述の除去前面130aに対してXZ平面に対して鏡面される。パルスレーザビームまたはパルスレーザ放射の厚さ方向または入射放射方向Zに対して角度をなす除去前面130a、130bの位置合わせは、典型的には、図4a~cおよび図5a、bの文脈で上述した方法で実施される。流体は、それぞれの除去フロント130a、130bからアブレーションされた材料を除去するため、または冷却目的のために、それぞれの除去フロント130a、130bに供給される。流体の供給は、典型的には、図6a~cの文脈で説明される方法で、流体供給によって、すなわち、中空構造127内への流体供給の少なくとも部分的な導入によって実施される。
【0199】
上述の中空構造体127において、丸みを帯びているのは2つの部分137a、137bのみであり、分配器流路134、コレクター流路136および冷却流路131は直線状に延びている。しかしながら、より複雑な中空構造127も、上述のレーザーアブレーション法の助けを借りて製造することができる。図11a、bは、基板125におけるそのような中空構造127の一例を示しており、この中空構造127は、図8a、bに図示した中空構造127に実質的に対応している。中空構造127が図8a、bの中空構造127と異なる点は、冷却チャネル131が、図示の例では凸状に湾曲している表面125aの曲率に追従する、わずかな曲率を有する点である。図11bに示す例では、分配チャネル134に隣接するそれぞれの冷却チャネル131の端部131aは、約115°の角度γで整列している。冷却流路131がZX平面内に延びる曲率を有するにもかかわらず、丸め部131aに隣接する端部131aについて、角度γを規定する長手方向軸を規定することが可能である。図11a、bには描かれていない第2の丸み付け部137bは、第1の丸み付け部137aに対応する態様で具現化されることが理解される。それぞれの丸み除去部137a、bの曲率半径Rと直径Dとの間のR/D比は、典型的には、上述の値範囲にある。
【0200】
図12a~dに示す基板125の場合、中空構造体127は、実質的に図8a、bに示す中空構造体127と同様に設計されているが、分配器チャネル134およびコレクタチャネル136が垂直方向に延びておらず、基板125の厚さ方向Zに対して約25°の角度で整列している点で後者とは異なっている。図8a、bに示す中空構造体127と同様に、図12a~dに示す中空構造体127は、それぞれの分配器チャネル134またはコレクタチャネル136と冷却チャネル131との間に、ここには描かれていない2つの丸み部137a、137bを有する。分配器流路134またはコレクタ流路136と冷却流路131との間の角度γは、この場合も90°であるが、入口流路133の長手方向軸線とそれぞれの分配器流路134との間の角度γ’が約115°であることを示す図12dから明らかなように、厚さ方向Zに対して約25°傾斜した平面内を通る。
【0201】
図12a~dに示す中空構造体127は、それぞれの分配器流路134の合流部134bが入口流路134、より正確には入口流路134の分岐部134aに移行する箇所、またはそれぞれのコレクター流路136の合流部136bが出口流路135の分岐部135aに移行する箇所に、丸め部138を有する。図示の例では、それぞれの丸め部138は、一定の直径または流路断面を有さず、代わりに、流路断面は、分岐部134aを起点として減少する。また、丸め部138は、それぞれの分配流路134またはコレクター流路136とそれぞれの冷却流路131との間に延びる2つの湾曲部137a、bの場合と同様に、一定の曲率半径Rを有していない。したがって、直径Dに対する曲率半径Rの最適化された比率を指定することはできない。丸みを帯びた部分138は、上述のレーザーアブレーション法の助けを借りて製造することもできる。
【0202】
少なくとも1つの丸みを帯びた部分137a、b、138を有する中空構造127は、上述の例に限定されるものではなく、原理的には、1つまたは複数のそのような部分を有する、他の、より複雑な中空構造127も、基板125を通って延在してもよいことが理解される。さらに、図11a、bの文脈で説明したような曲率を有する冷却チャネル131だけでなく、むしろ、分配器チャネル134およびコレクタチャネル136もまた、湾曲して延びていてもよい。
【0203】
図13A、Bは、投影システム10の一部である、図示の例ではモノリシック基板225を有するミラーM4のさらなる例を示している。図示の例では、基板225の材料は、熱膨張係数が非常に小さいチタンドープ溶融シリカである。基板225は、熱膨張係数ができるだけ小さい別の材料、例えばガラスセラミックから形成することもできる。
【0204】
反射コーティング226は、モノリシック基板225の表面225aに塗布される。反射コーティング226内に位置する表面225aの一部は、投影システム10のEUV放射16によって打たれ、ここには描かれていない反射コーティング226の光学的に使用される部分を形成する。EUV放射16を反射するために、反射コーティング226は、例えば、屈折率の異なる実数部を有する材料からなる複数の層対を有することができ、層は、例えば、EUV放射16の波長が13.5nmである。
【0205】
基板225は、流体228が流れることができる中空構造227を有し、後者は図示の例では水である。図13Aに矢印で示す流体228は、中空構造227の一部を形成する複数の冷却チャネル231を通って流れるように、側面の入口開口229から基板225内に入り、特に、反射コーティング226が施された基板225の表面225aを冷却する。
【0206】
流体228を入口開口229に供給し、流体228を図13cに図示されていない基板225の出口開口から除去するために、投影露光装置1は、図1に非常に概略的に描かれている冷却装置32の形態の温度制御装置を備える。図示の例では、冷却装置32は、冷却水の形態の流体228を中空構造227またはミラーM4に供給する役割を果たし、この目的のために、ここでは図示されていない供給ラインからなり、この供給ラインは、流体密閉式に入口開口229に接続されている。冷却装置32はまた、基板225の出口開口部または中空構造体227から冷却水を除去するために、ここには描かれていない除去ラインも備えている。投影システム10の他のミラーM1~M3、M5、M6および照明システム2のミラーもまた、冷却の目的で、冷却装置32に接続されるか、あるいは任意に、この目的のために設けられたさらなる温度制御装置または冷却装置に接続される。
【0207】
図13Aから明らかなように、流体228は、入口開口229を介して中空構造227の第1のキャビティ233に入り、当該キャビティは、複数の冷却チャネル231のうちの1つに各々接続された複数の分配チャネル234が分岐する流体分配器を形成する。冷却流路231は、図示の例では平面である基板225の表面225aから約2mm~約5mmの距離A’で配置され、表面225aに平行に、すなわちXYZ座標系のXY平面に平行に延びる。冷却流路231は、直線状に延び、平行に整列し、基板225の表面225aの、コーティング226によって覆われている部分のほぼ全体にわたって、長手方向、すなわちY方向に走る;図13bを参照。冷却チャネル231から、流体228は、複数のコレクタチャネル236を経由して、図13bに示す例では第2の円筒形キャビティ235として形成されている流体コレクタに流れる。流体228は、出口開口部230を介して基板225の中空構造227から出る。図示の例では、冷却チャネル231は、X方向に対応する水平方向に直線状に延び、分配チャネル234およびコレクタチャネル236は、Z方向に対応する垂直方向に直線状に延びている。従って、冷却チャネル231の長手方向軸は、分配チャネル234およびコレクタチャネル236に対して90°の角度で整列している。しかし、このような位置合わせは必須ではない。
【0208】
図13A-Cに示す中空構造体227を製造するために、以下の手順が実施される:最初に、流体分配器および流体コネクタを形成する2つの円筒形空洞233、235が、例えば研削または超音波研削などの機械的処理によって基板225の材料に導入される。その後、基板225は液槽、より正確には水槽に浸漬され、その結果、水の形態の流体228が入口開口部228から流体分配器の空洞233に入り、出口開口部230から流体コレクターの空洞235に入り、これらの空洞を満たす。流体238で満たされたそれぞれのキャビティ233、235から出発して、図13cから明らかなように、キャビティ233、235に隣接する複数の短い流路部分237が多光子レーザーアブレーションによって生成される。
【0209】
チャネル部237を製造するために、複数のパルスレーザ光は、基板225の表面225aから出発して、流体分配器を形成するキャビティ233の表面で基板225の材料を通して放射され、そこに集束される。したがって、キャビティ233の上面は、表面225aの形態で放射入口側とは反対側の基板225の側面を形成する。それぞれの放射入射パルスレーザビームによって、焦点領域は、Z方向に互いにオフセットされた複数の平行なアブレーション経路を有する移動パターンで移動され、基板225の厚さ方向Zに対して約45°の角度で整列された除去前面230aを形成する。放射されたレーザービームの焦点位置は、Z方向において変更され、Z方向におけるアブレーション経路のオフセットをもたらす。
【0210】
チャネル部237が始まるキャビティ233の表面上の点から出発して、除去前面230aは、基板225の材料を切除するため、およびチャネル部237を形成するために、基板225に対して厚さ方向、すなわちZ方向に複数回変位される。変位の間、除去前面230aは静止したままであってもよく、除去前面230aがキャビティ233の上側から約20~40mmの距離を有するまで、基板225はZ方向の下方に変位する。多光子レーザーアブレーションによって比較的長い長さを有するチャネル部237を製造するためには、以下でさらに詳細に説明するように、除去前面230aを流体228で局所的に洗浄することが必要である。流体コレクタを形成するキャビティ235から始まるチャネルセクション237の製造は、多光子レーザーアブレーションによって対応する方法で実施される。この工程で形成される更なる除去前面230bは、同様に、基板225の厚さ方向またはXY平面に対して約45°に整列されるが、上述の除去前面230aに対してXZ平面に対して鏡面される。
【0211】
図13a、bに示す中空構造227を形成するために、基板225を液槽から取り出し、液体228をキャビティ233、235から除去する。残りの中空構造体227を製造するために、水の形態の液体228をそれぞれの除去フロント230a、230bに供給する流体供給装置238が使用され、これは図13cに非常に概略的に描かれている。流体供給装置238は、2つの挿入部品239、240と、複数の可撓性流体ライン241とからなる。図示の例では、流体供給装置238は7本の流体ライン241から構成されている。流体ライン241は、流体供給装置238の流体供給装置243に接続されており、この流体供給装置243は、一般に数バールの圧力で可撓性流体ライン241内の流体228を圧送するポンプを有している。流体供給装置243はまた、中空構造227を形成するために除去前部230a、230bを基板225内で移動させる際に、可撓性流体ライン241の追跡、より正確には押し出しに役立つ追跡装置244を備える。一例として、追跡装置244は、それぞれの可撓性流体ライン241の一部が巻き取られるリール等から構成することができる。追跡のために、リールは、除去前面の移動速度に対応する一定の角速度で回転させることができる。追跡装置244はまた、異なるように形成されてもよいことが理解される。
【0212】
中空構造体277を製造するために、第1の棒状の円筒形の挿入部品239は、入口開口部229を通って第1のキャビティ233内に、当該挿入部品がその端面を第1のキャビティ233の端部に当てて静止するまで導入され、これにより盲孔が形成される。円周方向において、挿入部品239は、挿入部品239の側方表面245に形成される開口部246が、開口部246の数に対応する数のチャネルセクション237がキャビティ233から開始または分岐する、キャビティ233の壁上のそれらの位置に配置されるように位置合わせされる。円周方向における挿入部品239の位置合わせは、棒状の挿入部品239の端面239aに横方向に突出した部分が設けられていることによっても実施することができ、図13cを参照すると、この突出部分は、図13bに破線で示されているように、舌部として機能し、基板225の側面の対応する形状の溝に係合する。
【0213】
可撓性流体ライン241をチャネルセクション237に導入するために、挿入部品239は、図示の例では7つのガイドチャネル247から構成されている。挿入部品239は、より多いまたはより少ない数のガイドチャネル247を有することもできることが理解される。図13cに示された挿入部品239の端面239aの平面図である図14aから明らかなように、ガイドチャネル247のうちの6つは、中央ガイドチャネル247の周りに配置されている。図14a~cに示される例では、ガイドチャネル247は、挿入部品39の直径D’(図示の例では約9mm)を規定する固形材料248に埋め込まれるか鋳造されたステンレス鋼パイプである。円筒形キャビティ233の直径H、より正確にはその内壁233aの直径はわずかに大きく、約10mmである。それぞれのガイドチャネル247の内径dは約2mmである。可撓性流体ライン241の内径Fは約1mmである。
【0214】
図14aから明らかなように、それぞれの流体ライン241は、それぞれのガイドチャネル247の中心に延びている。リングギャップ249は、流体ライン241とそれぞれのガイドチャネル247の内壁247aとの間に位置している。リングギャップ249は、可撓性流体ライン241を通ってそれぞれの除去フロント230a、230bに供給される流体228を戻す役割を果たす。戻された流体228は、挿入部品239の端面239aから噴出し、そこから除去される。
【0215】
図14bから明らかなように、挿入部品239のそれぞれのガイドチャネル247は、可撓性流体ライン241が棒状の挿入部品239の側方表面245のそれぞれの開口部246に現れることができるように、可撓性流体ライン241の整列を、挿入部品239の長手方向(Y方向に対応する)に平行な方向からそれに垂直な方向に変更するための丸め部250を有する。丸みを帯びた部分250は、ガイドチャネル247を形成するそれぞれのステンレス鋼パイプを曲げることによって作られる。
【0216】
図13cおよび図14cから明らかなように、挿入部品239の側面245の開口部246は、挿入部品239の長手方向、すなわちY方向に対応する共通の線に沿って配置されている。これは、チャネル部237も同様に、キャビティ233の長手方向、すなわちY方向に対応する共通の線に沿って延びているため、通常必要なことである。側面245の隣接する開口部246間の距離A ”は、基板225の2つの隣接するチャネル部237間の距離に対応する。チャネル部237と挿入部品239の側方表面の開口部246は、共通の線に沿って走ることが必須ではなく、むしろ、共通の線に沿ったこのような配置からの逸脱が可能である。
【0217】
側方表面245の開口部246を長手方向に互いに隣接して配置するためには、典型的には、ガイドチャネル247を異なる長さで設計し、湾曲部250を互いに対してねじる必要があるが、これは、付加製造法によって製造されたという点で、図14a~cに示された挿入部品239とは異なる挿入部品239を示す図15a、bから極めて明らかである。図15a、bに示す挿入部品239は、円筒形の本体からなり、この本体には、積層造形中にガイドチャネル247が形成された。
【0218】
挿入部品239の側方表面245を越えて突出し、図15bに図示されている流体ライン241の自由端は、流体供給装置238の動作中にチャネル部237内に突出する。図13cに破線で図示された中空構造体227の部分を製造するために、既に形成された流路部分237の端面に、パルスレーザ放射による除去前面230a、230bが生成される。既に形成されたチャネル部237の端面は、放射入口側とは反対側であって、除去前面230a、230bが水平に延びる冷却チャネル231と水平になるまで基板225がZ方向に下方に変位することによって基板225に対して相対的に移動される出発点である基板225の側面を形成する。あるいは、例えば、基板225自体は静止したまま、除去前面230aを基板225内で移動させるために、放射されたパルスレーザ放射の焦点位置を、除去前面230aに沿った全ての点で同じ値だけ上方にオフセットすることができる。
【0219】
水平な冷却チャネル231を形成するために、基板225の厚さ方向、すなわちZ方向に対して、またはパルスレーザ放射の入射放射方向に対して約45°に位置合わせされた除去フロント230aは、冷却チャネル231のほぼ中央に位置するまで、冷却チャネル231の長手方向、すなわちX方向に変位される。この場合、基板225は典型的には静止しており、基板225にレーザ光を放射するための光学ユニットは、除去フロント230aを水平方向に変位させるために、適切な方法で変位および移動される。
【0220】
ここには描かれていない更なる流体供給装置の更なる挿入部材を使用して、複数の7つのコレクタチャネル235が、典型的には、基板225が静止したまま、除去フロント230bの各点において、基板225が下方に変位されることによって、または放射されたパルスレーザ放射の焦点位置が一定値だけ上方に変位されることによって、多光子レーザアブレーションによって第2のキャビティ235から出発して同時に生成される。その後、基板225を静止させたまま、除去フロント230bをY方向に移動させる。つの除去前面230a、230bは、例えば約400mmの長さを有するそれぞれの冷却チャネル231のほぼ中央で重なり、その結果、連続冷却チャネル231が形成され、分配チャネル234によって、流体分配器として機能する第1のキャビティ233に接続され、コレクタチャネル236によって、流体コレクタとして機能する第2のキャビティ235に接続される。
【0221】
以上のようにして、7つの分配チャネル234、冷却チャネル231およびコレクタチャネル236を同時に製造することが可能であり、その結果、中空構造体227の製造に要する時間を大幅に短縮することができる。図13cに図示された中空構造体227の残りの7つの分配チャネル234、冷却チャネル231およびコレクタチャネル236を製造するために、図13cに図示された挿入部品240を使用することができ、この場合、流体ライン241の出現のための開口部246’は、第1の挿入部品239の開口部246に対してオフセットされる。第2の挿入部品240が第1のキャビティ233に挿入されることによって、7つの分配流路234、冷却流路231、およびコレクター流路236の第2のグループの製造は、第1のグループの製造と同様に実施される。
【0222】
図13cに示されているのとは異なり、第2の挿入部品240は、第1の挿入部品239よりも短い長さを有していてもよいことが理解される。この場合、第2の挿入部品240を挿入する前に、例えば中実円筒形のスペーサをキャビティ233に導入し、挿入部品240を押し込むと、当該スペーサの端面に当接するようにしてもよい。あるいは、挿入部品240の端面に設けられた1つまたは複数の突出部は、ストッパとして機能してもよいし、キャビティ233への導入時に第2の挿入部品240の移動を制限するための静止面として機能してもよい。第2の挿入部品240の端面に取り付けられたストッパは、上述したように、第2の挿入部品240を円周方向に好適に位置合わせするために、舌片として機能し、基板225の外面に設けられた対応する溝に係合することもできる。
【0223】
図13cに描かれているような複雑な中空構造体227の製造の範囲内で、同時に製造された複数の除去前面230a、230bは、上述の流体供給装置238の助けを借りて、可撓性流体ライン241によって自動化された方法で追跡することができる。このようにして、複数の構造体、例えば冷却流路231を同時に製造することができ、結果として、複雑な中空構造体227を製造する際の時間の大幅な節約または生産性の向上をもたらす。
【0224】
図6a~cの文脈で上述された流体供給装置50は、例えば、図13c、図14a~cおよび図15a、bの文脈で説明された流体供給装置238として設計され得る。しかしながら、流体供給装置50が、流体供給装置238の構成部分の一部、例えば流体供給装置243および任意選択で追跡装置244のみから構成されることも可能である。後者は、例えば、図6a~cの文脈で説明された可撓性チューブ52の形態の少なくとも1つの可撓性流体ライン241による自動追跡のために使用され得る。
【0225】
本発明は、本明細書の一部を構成するが特許請求の範囲には含まれない以下の条項で定義される態様も含む。
【0226】
1.被加工物(25)、特にEUVミラー(M4)用基板に、パルスレーザ照射(35)による材料除去加工によって中空構造(28)を形成する方法であって、以下の工程を含む:
【0227】
パルスレーザ放射(35)を、放射入口側(27)から、パルスレーザ放射(35)に対して透明な材料から形成されている被加工物(25)に放射するステップと
【0228】
パルスレーザ放射(35)を焦点領域(39)に集光する、
【0229】
移動パターン(41)の互いにオフセットされた軌道(42)に沿って焦点領域(39)を移動させることにより、ワークピース(25)の材料を面的に除去するための除去フロント(46)を形成するステップと
【0230】
被加工物(25)の放射線入口側(27)とは反対側の側(29)から出発して、被加工物(25)内で除去前部(46)を移動させることにより、中空構造(28)を製造する工程、
【0231】
特徴
【0232】
中空構造体(28)の製造中に、被加工物(25)の放射入口側(27)においてパルスレーザ放射(35)の入射放射方向(Z)に対して垂直でない除去フロント(46)が少なくとも断続的に形成される点である。
【0233】
2.ワークピース(25)の放射入口側(27)において、パルスレーザ放射(35)の入射放射方向(Z)に対して20°から70°の間、好ましくは30°から60°の間の角度(α)で整列された除去前面(46)が、少なくとも断続的に形成される、条項1に記載の方法。
【0234】
3.入射放射方向(Z)に対して垂直に整列していない除去前面(46)を形成するために、焦点領域(39)が入射放射方向(Z)においてオフセットしていることによって、移動パターン(41)の軌道(42)が入射放射方向(Z)において互いにオフセットしている、条項1または2に記載の方法。
【0235】
4.移動パターン(41)の相互にオフセットされた軌道(42)のパルスレーザ放射(35)のパルスエネルギー(E )が、入射放射方向(Z)に対して垂直に整列されていない除去フロント(46)を形成するように変更され、焦点領域(39)が、好ましくは、入射放射方向(Z)に対して垂直な平面(FE)内で移動される、先行する条項のいずれか1つに記載の方法。
【0236】
5.好ましくは放射線入射側(27)に対して実質的に平行に延びる中空構造(28)の断面(28b)を形成するために、中空構造(28)の製造中に、除去前面(46)がワークピース内で入射放射線方向(Z)に対して横方向の移動方向(-X)に少なくとも断続的に移動される、先行する条項のいずれか1つに記載の方法、放射線入射側(27)に近い方の端部(46a)の除去フロント(46)は、入射放射線方向(Z)に対して横方向に移動するとき、好ましくは移動方向(-X)に対して90°未満、好ましくは70°未満の角度(β)で整列される。
【0237】
6.入射放射線方向(Z)に実質的に平行に延びる中空構造体(28)のセクション(28a)を製造するために、中空構造体(28)の製造中に、除去フロント(46)が入射放射線方向(Z)に実質的に平行な方法で少なくとも断続的に移動される、先行する条項のいずれか1つに記載の方法、入射放射線方向(Z)に対して実質的に平行に延びる中空構造(28)のさらなる断面(28c)を製造するために、好ましくは、放射線入射側(27)とは反対側であるワークピース(25)の側(29)から開始する。
【0238】
7.中空構造体(28)の第1のセクション(28a、28c)および中空構造体(28)の第2の隣接するセクション(28b)が製造され、これらの長手方向(X、Z)が、70°から100°の間の角度(γ)、好ましくは90°の角度(γ)で互いに対して整列される、先行する条項のいずれか1つに記載の方法。
【0239】
8.第7項に記載の方法であって、中空構造体(28)の製造中に、丸め部(28d、28e)が形成され、第1部分(28a、28c)と第2部分(28b)とが、前記丸め部において互いに合体する、方法。
【0240】
9.中空構造体(28)が製造されるとき、除去前面(46)が流体(32b)と接触させられ、流体(32b)は、除去前面(46)が放射線入口側(27)から遠いワークピース(25)の側面(29)から出発して移動させられるとき、好ましくは可撓性チューブ(52)によって除去前面(46)を追跡する、先行する条項のいずれか1つに記載の方法。
【0241】
10.除去フロント(46)を移動させるためにワークピースを変位させる、前記条項のいずれか1項に記載の方法。
【0242】
11.除去前面(46)を形成するために、焦点領域(39)がスキャナ光学ユニット(36)によって移動パターン(41)の互いにオフセットされた軌道(42)に沿って移動される、先行する条項のいずれか1つに記載の方法。
【0243】
12.基板(25)がモノリシックであり、チタンをドープした溶融シリカまたはガラスセラミックからなる、前記条項のいずれか1項に記載の方法。
【0244】
13.EUVミラー(M4):基板(25)、基板(25)に塗布され、EUV放射(16)を反射するコーティング(26)、特徴
【0245】
基板(25)が、前記条項のいずれか1つに記載の方法を用いて製造された少なくとも1つの中空構造(28)を備えるという点である。
【0246】
14.EUVリソグラフィシステム(1)であって、第13項に記載の少なくとも1つのEUVミラー(M4)と、冷却流体(32a)が少なくとも1つの中空構造(28)を流れるように設計された冷却装置(32)と、を備える。
【0247】
15.ワークピース(25)、特にEUVミラー(M4)用の基板に少なくとも1つの中空構造(28)を製造するための装置(33)であって、以下のものを含む:
【0248】
パルスレーザ放射(35)を生成するレーザー光源(34)、
【0249】
レーザー放射(35)を焦点領域(39)に集光する集光装置(37)、
【0250】
ワークピース(25)を受けるためのホルダ(44)、
【0251】
パルスレーザ放射(35)を、ホルダ(44)によって受け止められたワークピース(25)の放射入口側(27)に放射し、ワークピース(25)の材料を面的に除去するための除去フロント(46)を形成するために、移動パターン(41)の互いにオフセットされた軌道(42)に沿って焦点領域(39)を移動させるように設計されたスキャナ光学ユニット(36)と
【0252】
中空構造体(28)を製造するために、被加工物(25)の放射線入口側(27)とは反対側の側(29)から出発して、被加工物(25)内で除去フロント(46)を移動させるための位置決め装置(43)と
【0253】
特徴
【0254】
装置(33)は、ホルダ(44)によって受けられるワークピース(25)において、パルスレーザ放射(35)の入射放射方向(Z)に対して垂直でない除去フロント(46)を形成するように設計されている点である。
【0255】
16.入射放射方向(Z)においてパルスレーザ放射(35)の焦点領域(39)をオフセットするための焦点オフセット装置(47)と、をさらに備える、条項15に記載の装置。
【0256】
入射放射方向(Z)に対して垂直でない除去前面(46)を形成するために、入射放射方向(Z)において移動パターン(41)の軌道(42)を互いに対してオフセットするようにフォーカスオフセット装置(47)を制御するように設計された制御装置(48)と
【0257】
17.さらに以下を含む、条項15または16に記載の装置:
【0258】
入射放射方向(Z)に対して垂直でない除去フロント(46)を形成するために、移動パターン(41)の互いにオフセットされた軌道(42)のパルスレーザ放射(35)のパルスエネルギー(E )を変更するようにレーザ源(34)を制御するように設計された制御装置(48)と、を備える。
【0259】
18.位置決め装置(43)が、入射放射線方向(Z)に、好ましくは入射放射線方向(Z)に対して横方向の少なくとも1つの方向(X、Y)に、ワークピース(25)を変位させるように設計されている、条項15から17のいずれか1項に記載の装置。
【0260】
19.さらに以下を含む、条項15から18のいずれか一項に記載の装置:
【0261】
流体(32b)を除去前面(46)に供給するように設計された流体供給部(50)であって、好ましくは、除去前面(46)が、放射線の入射側(27)とは反対側であるワークピース(25)の側面(29)から出発して移動されるときに、流体(32b)によって追跡されるための可撓性チューブ(52)を有する、流体供給部(50)と、を備える。
【0262】
20.放射線を反射する光学素子(M4)、特にEUV放射線を反射する光学素子(16):
【0263】
モノリシック基板(25)、
【0264】
モノリシック基板(25)の表面(25a)に塗布される反射コーティング(26)と
【0265】
モノリシック基板(25)内に延在し、そこを流体(28)が流れるように設計された少なくとも1つの中空構造(27)であって、中空構造(27)は、第1のセクション(31a、31b;34b、36b)と第2の隣接セクション(34a、36a;33a、35a)を有し、これらは互いに対して60°から120°の間の角度(γ、γ’)、好ましくは80°から100°の間の角度(γ、γ’)、特に90°の角度(γ、γ’)で整列している、
【0266】
特徴
【0267】
中空構造体(27)が丸みを帯びた部分(37a、37b、38)を有し、その部分で第一の部分(31a、31b;34b、36b)と第二の部分(34a、36a;33a、35a)が互いに合体する。
【0268】
21.丸め部(37a、37b)の曲率半径Rと丸め部(37a、37b)の直径Dとの間のR/D比が、2~6、好ましくは2.5~5、特に2.5~3.5である、条項20に記載の光学素子。
【0269】
22.丸め部(37a、37b)の直径Dが、2mm以上20mm以下、好ましくは2mm以上12mm以下である、第20項または第21項に記載の光学素子。
【0270】
23.中空構造(27)が、反射コーティング(26)が塗布された表面(25a)の下方に延びる複数の冷却チャネル(31)を備え、中空構造(27)が、分配チャネル(34)を介して冷却チャネル(31)に接続された流体分配器(33)と、コレクタチャネル(36)を介して冷却チャネル(31)に接続された流体コレクタ(35)とを備える、条項20から22のいずれか一項に記載の光学素子。
【0271】
24.第1セクションが、分配器チャネル(34)に隣接する冷却チャネル(31)の端部セクション(31a)を形成し、第2セクションが、端部セクション(31a)に隣接する分配器チャネルセクション(34a)を形成する、及び/又は、第1セクションが、コレクタチャネル(36)に隣接する冷却チャネル(31)の端部セクション(31b)を形成し、第2セクションが、端部セクション(31b)に隣接するコレクタチャネルセクション(36a)を形成する、条項23に記載の光学素子。
【0272】
25.流体分配器が入口チャネル(33)を形成し、そこから分配器チャネル(34)が分岐し、および/または流体コレクタが出口チャネル(35)を形成し、そこからコレクタチャネル(36)が分岐する、条項23または24に記載の光学素子。
【0273】
26.第1のセクションが、入口チャネル(33)に隣接する分配チャネル(34)の合流セクション(34b)を形成し、第2のセクションが、合流セクション(34b)に隣接する入口チャネル(33)の分岐セクション(33a)を形成する、及び/又は、第1のセクションが、出口チャネル(35)に隣接するコレクタチャネル(36)の合流セクション(36b)を形成し、第2のセクションが、コレクタチャネル(36)の合流セクション(36b)に隣接する出口チャネル(35)の分岐セクション(35a)を形成する、第25項に記載の光学素子。
【0274】
27.入口流路(33)の分岐部(33a)と分配器流路(34)の合流部(34b)との間の角度(γ’)が90°より大きく、好ましくは100°より大きく、及び/又は出口流路(35)の分岐部とコレクタ流路(35)の合流部(36b)との間の角度(γ’)が90°より大きく、好ましくは100°より大きい、第26項に記載の光学素子。
【0275】
28.基板(25)の材料が、溶融シリカ、特にチタンドープ溶融シリカ、およびガラスセラミックからなる群から選択される、第20項から第27項までのいずれか1項に記載の光学素子。
【0276】
29.光学配置、特にEUVリソグラフィシステム(1):
【0277】
第20項から第28項までのいずれか1項に記載の少なくとも1つの光学素子(M4)と
【0278】
温度制御装置、特に冷却装置(32)は、流体(28)が少なくとも1つの中空構造(27)を流れるように設計されている。
【0279】
30.EUVミラー(M4)用の特にモノリシック基板(25)から、好ましくは多光子レーザアブレーションによって被加工物から材料を除去する際に、少なくとも1つのアブレーションフロント(30a、30b)に流体(28)を供給するための流体供給装置(38)であって、以下のものを含む:
【0280】
流体(28)を少なくとも1つのアブレーションフロント(30a、30b)に供給するための、少なくとも1つの可撓性流体ライン(41)、好ましくは複数の可撓性流体ライン(41)と
【0281】
ワークピース(25)のキャビティ(33、35)に挿入するための少なくとも1つの挿入部品(39、40)であって、流体(28)を少なくとも1つのアブレーションフロント(30a、30b)に供給するために、少なくとも1つの可撓性流体ライン(41)が案内される少なくとも1つの案内チャネル(47)を有する挿入部品(39、40)。
【0282】
31.挿入部品(39、40)が、可撓性流体ライン(41)が各場合に案内される複数の案内チャネル(47)を有する、第30項に記載の流体供給装置。
【0283】
32.流体(28)をアブレーションフロント(30a、30b)から戻すために、流体が流れることができる隙間、特にリング隙間(49)が、流体ライン(41)とガイドチャネル(47)のチャネル壁(47a)との間に形成されている、条項30または31に記載の流体供給装置。
【0284】
33.案内流路(47)が、可撓性流体ライン(41)の方向を変更するための少なくとも1つの丸め部(50)を有する、条項30から32のいずれか1項に記載の流体供給装置。
【0285】
34.挿入部品(39、40)が棒状であり、ガイドチャネル(47)が挿入部品(39)の端面(48)から挿入部品(39)の側方表面(45)まで延びている、条項30から33のいずれか1項に記載の流体供給装置。
【0286】
35.第34項に記載の流体供給装置であって、ガイドチャネル(41)は、挿入部品(39)の側方表面(45)において開口部(46)に合流し、開口部は、好ましくは、挿入部品(39)の長手方向(Y)において互いに隣接して配置され、特に、挿入部品(39)の長手方向(Y)において互いに等しい距離(A)に配置されている、流体供給装置。
【0287】
36.棒状の挿入部品(39)が円筒形を有し、好ましくは5mmから10mmの間の直径(D)を有する、条項34または35に記載の流体供給装置。
【0288】
37.少なくとも1つのガイドチャネル(47)が、1mm~4mmの直径(d)を有する、条項30から36のいずれか1項に記載の流体供給装置。
【0289】
38.少なくとも1つの流体ライン(41)が1mm以下の外径(F)を有する、条項30から37のいずれか1項に記載の流体供給装置。
【0290】
39.流体(28)を少なくとも1つの可撓性流体ライン(41)に供給するための流体供給装置(43)をさらに備える、条項30から38のいずれか1項に記載の流体供給装置。
【0291】
40.ワークピース(25)の材料中のアブレーションフロント(30a、30b)の移動を少なくとも1つの可撓性流体ライン(41)によって自動追跡するための少なくとも1つの追跡装置(44)をさらに備える、条項30から39のいずれか1項に記載の流体供給装置。
【0292】
41.多光子レーザーアブレーションの方法で被加工物から、特にEUVミラー(M4)用の好ましくはモノリシック基板(25)から材料を除去する際に、第30項から第40項までのいずれか1項に記載の流体供給装置(38)によって流体(28)を少なくとも1つのアブレーションフロント(30a、30b)に供給するための方法であって、以下を含む方法:
【0293】
挿入部品(39、40)をワークピース(25)のキャビティ(33、35)に挿入するステップと
【0294】
流体(28)を、挿入部品(39、40)の少なくとも1つのガイドチャネル(47)に案内される少なくとも1つの可撓性流体ライン(41)を介して、少なくとも1つのアブレーションフロント(30a、30b)に供給する。
【0295】
42.挿入部品(39、40)の挿入の前に、キャビティ(33、35)が流体(28)で満たされ、キャビティ(33、35)に隣接する複数のチャネルセクション(37)が、流体(28)で満たされたキャビティ(33、35)から始まる多光子レーザーアブレーションによって形成される、第41項による方法。
【0296】
43.挿入部品(39、40)のキャビティ(33、35)への挿入に続いて、複数のアブレーション前線(30a、30b)が、チャネルセクション(37)から出発して生成され、複数のチャネル(31、34、35)を形成するために、被加工物(25)の材料内で移動され、複数の可撓性流体ライン(41)が、被加工物(25)の材料内でのアブレーション前線(30a、30b)の移動を追跡する、第42項による方法。
図1
図2a
図2b
図3
図4a
図4b
図4c
図5a
図5b
図6a
図6b
図6c
図7a
図7b
図7c
図8a
図8b
図9a-9d】
図10a-10d】
図11a
図11b
図12a
図12b
図12c
図12d
図13a
図13b
図13c
図14a
図14b
図14c
図15a
図15b
【誤訳訂正書】
【提出日】2024-09-06
【誤訳訂正1】
【訂正対象書類名】明細書
【訂正対象項目名】全文
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルスレーザ放射による材料除去加工により、好ましくはミラー用、特にEUVミラー用の基板の形態の被加工物に少なくとも1つの中空構造を形成するための方法であって、パルスレーザ放射に対して透明な材料から形成された被加工物に放射線入射側からパルスレーザ放射を放射するステップと、パルスレーザ放射を焦点領域に集光するステップと、焦点領域を移動パターンに沿って移動させることにより、被加工物の材料の面状除去のための除去フロントを作製するステップと、除去フロントを被加工物内で移動させることにより、中空構造を作製するステップとを含む方法に関する。本発明は、好ましくはミラー用、特にEUVミラー用の基板の形態の被加工物に流路の形態の中空構造を作製する方法にも関する。本発明は、ミラー、特にEUVミラー、及び少なくとも1つの上記EUVミラーを有するEUVリソグラフィシステムにも関する。
【0002】
本発明はさらに、好ましくはミラー用、特にEUVミラー用の基板の形態の被加工物に少なくとも1つの中空構造、特に少なくとも1つの流路を形成する装置であって、パルスレーザ放射を生成するレーザ源と、被加工物を収容するホルダと、レーザ放射を焦点領域に集光する集光装置と、ホルダに収容された被加工物の放射線入射側にパルスレーザ放射を放射し、焦点領域を移動させるよう設計されたスキャナ光学ユニットとを備えた装置に関する。
【0003】
本発明は、被加工物から、好ましくはEUVミラー用の特にモノリシック基板からの、レーザアブレーション、特に多光子レーザアブレーションによる材料の除去時に、少なくとも1つの除去フロントに流体を供給する流体供給装置にも関する。本発明は、少なくとも1つの除去フロントに流体を供給する方法にも関する。
【背景技術】
【0004】
本願において、EUVリソグラフィシステムとは、EUVリソグラフィ分野で使用可能な光学系を意味すると理解される。半導体コンポーネントの形成に使用されるEUVリソグラフィ用投影露光装置に加えて、リソグラフィシステムは、例えば、以下ではレチクルとも称するこうした投影露光装置で使用されるフォトマスクの検査用の検査システム、以下ではウェハとも称する構造化される半導体基板の検査用の検査システム、又はEUVリソグラフィ用投影露光装置若しくはその部品の測定に、例えば投影光学ユニットの測定に使用される計測システムであり得る。
【0005】
形成される半導体コンポーネントの構造幅をできる限り小さくするために、EUVリソグラフィ装置としても知られる最先端の投影露光装置が、EUV波長域としても知られる極端紫外線波長域の、すなわち約5nm~約30nmの範囲の動作波長用に設計されている。短波長放射なので、EUVミラーとしても知られるコーティングされたミラーがビーム誘導及び集光に使用され、当該ミラーは、熱膨張係数が非常に小さい材料からなる基板を含む。例として、基板材料は、熱膨張係数が非常に小さいチタンドープ石英ガラスとすることができる。露光ウェハの形成時の生産性は、EUV放射の生成に使用されるEUV光源の出力に大きく依存する。しかしながら、EUVミラーに入射する放射線のパワーが大きいと、当該EUVミラーへの熱負荷が増大する。熱膨張係数が極めて小さいにもかかわらず、基板に導入される熱出力は、高精度のミラー表面の形状偏差につながる。生産性の向上と、その結果さらに強力なEUV光源の要求とを満たすために、EUVミラーの能動的な冷却が行われ得る。
【0006】
効率的な方法が、基板を冷却するために液体、例えば水が流れる内部流路の形態の体積冷却により提供され、こうした理由で、これらの流路を以下では冷却流路とも称する。液体が流れることができる流路は、周方向に閉鎖された細長い空洞を形成し、この空洞は分岐点を有さず、流路の第1端と第2端との間に延びる。一方又は両方の端において、流路は、基板の体積内に位置付けられたさらなる中空構造に合流し得る。流路の一端又は両端が基板の外側に開口することも可能である。この状況での課題は、概して約1mmを超える比較的大きな直径を有し、EUV放射を反射するための反射コーティングを塗布される基板の表面から通常は深さ約10mm以下の小さな距離に延びる、基板の体積内の冷却流路の形態で、中空構造を実現することにある。
【0007】
冷却液の供給及び除去を行うために、通常は、EUV放射を照射されるミラーの表面に実質的に平行な向きの冷却流路に、例えば基板の裏側に接続され得る屈曲した前進流路及び戻り流路を備える必要がある。
【0008】
中空構造を形成する1つの手法は、レーザ放射を用いた材料加工にある。この場合、被加工材料は適度に高いパルス強度により損傷を受ける。石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、又はチタンドープ石英ガラス等の従来のガラスは、可視~近赤外域の波長のレーザ放射に対して透明である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、被加工物、好ましくはミラー用、特にEUVミラー用の基板において、複雑な形状、特に湾曲及び/又は屈曲形状を有する中空構造の形成を可能にする方法及び装置を提供することである。本発明のさらに別の目的は、このような中空構造を含むミラー、特にEUVミラー、及びEUVリソグラフィ装置を提供することである。本発明のさらに別の目的は、流体が中空構造を流れる際に生じる流動励起振動が低減されるミラー、特にEUVミラーを提供することである。本発明のさらに別の目的は、複雑な中空構造を形成する場合でも、少なくとも1つの除去フロントへの流体供給を可能にする流体供給装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1態様では、この目的は、前述のタイプの方法であって、流体、特に冷却流体が流れることができる流路の形態で作製されることが好ましい中空構造を形成するために、被加工物の放射線入射側でパルスレーザ放射の入射放射線方向に対して垂直に向いていない除去フロントを少なくとも断続的に形成する方法により達成される。流体は、加熱又は冷却に用いられる温度制御媒体とすることができる。概して、流体は液体だが、ガスである場合もある。
【0011】
本願において、用語「アブレーションフロント」は、用語「除去フロント」と同義に用いられる。被加工物の材料は、除去フロントで除去される。除去フロントは、被加工物の材料と中空構造の形成済みの部分との間の界面を形成する。中空構造の形成済みの部分の側面は、除去フロントに隣接しており、より正確には除去フロントの縁輪郭である。
【0012】
本発明者らの認識では、アンダカットを有する、例えば湾曲又は屈曲形状を有する中空構造の形成の利点は、除去フロントが、少なくとも断続的に、被加工物の放射線入射側でパルスレーザ放射の入射放射線方向に対して垂直に向けられるのではなく、除去フロントが傾斜し、入射放射線方向に対して90°以外の角度、すなわち0°~89°の角度に向けられることである。
【0013】
概して、傾斜した除去フロントは、入射放射線方向に対して傾斜した平面内に延びるが、原理上は、除去フロントが平面でなく、平面形状から逸脱することも可能である。この場合、除去フロントがパルスレーザ放射の入射放射線方向に対して向けられる角度は、除去フロントの等価平面に対する角度であると理解される。等価平面とは、除去フロントの全ての点からできる限り小さい距離を有する平面である。等価平面は、従来の通常最小二乗(OLS)法により求められる。特に、除去フロントは、面状又は平面形状からのずれを極僅かにすることができ、例えば小さな段差部の形態で平面形状に近似し得る。
【0014】
入射放射線方向は、パルスレーザ放射が放射線入射側に入射する方向を意味すると理解される。それぞれの焦点位置に集光されたパルスレーザ放射は、通常は伝搬方向が入射放射線方向に対応するレーザビームである。パルスレーザ放射が被加工物の放射線入射側に垂直に放射されない場合、被加工物の材料中のパルスレーザ放射線の伝播方向は、屈折により被加工物における入射放射線方向と異なる。
【0015】
被加工物の放射線入射側へのパルスレーザ放射の入射放射線方向は、除去フロントの形成時には略一定である。パルスレーザの入射放射線方向が除去フロントの形成中に変化する場合、入射放射線方向は、移動パターンの軌道に沿った全ての焦点位置における放射線入射側での入射放射線方向の算術平均を意味すると理解される。
【0016】
概して、被加工物の厚さ方向は、被加工物におけるパルスレーザ放射の入射放射線方向に実質的に平行である。厚さ方向は、パルスレーザ放射が放射線入射側を通過する位置における放射線入射側の法線方向に対応する。パルスレーザ放射が被加工物に入射する放射線入射側は、入射放射線方向に対して実質的に垂直に向いた略平面であり得る。しかしながら、放射入射側が曲面、例えば、球面状の曲面、非球面状の曲面、又は自由曲面を形成することも可能である。しかしながら、曲面状のミラー面を形成するために、中空構造又は中空構造の形成後でも、例えば平面状の放射線入射側を機械的に又は他の方法で加工することができる。パルスレーザ放射が放射線入射側に非垂直に入射することも可能である。
【0017】
アンダカットを有する中空構造を形成することが意図される場合、除去フロントは、少なくともアンダカットの作製中に、入射放射線方向に対して90°以外の角度、すなわち0°~89°の角度に向けられ得る。例として、このような向きは、長手方向軸が放射線入射側に実質的に平行である中空構造の部分を形成することが意図される場合に有利である。当然ながら、除去フロントは、入射放射線方向に対して、90°以外の角度に向けることもでき、この角度は一定であるか、又は場合によっては中空構造全体の作製中に被加工物内の除去フロントの位置に応じて変わる。除去フロントの角度は、連続的にゆっくりと変化させるべきであり、すなわち、直接連続して形成される2つの除去フロント間の差角は小さくすべきである。
【0018】
被加工物の材料の除去は、通常は照射されるレーザ放射の多光子吸収により引き起こされるので、除去プロセスは多光子レーザアブレーションとも称する。多光子吸収は、以下に詳述するように、被加工物の材料中、及び/又は材料の除去中に除去フロントと接触する流体、通常は液体中で起こり得る。他の化学的プロセス及び/又は物理的プロセスも、材料除去をもたらし得る。照射されるレーザ放射のパラメータは、材料除去をもたらすべき各プロセスに適合され得るか又は各プロセスに最適化され得る。
【0019】
中空構造は、流体、特に冷却流体が流れることができる湾曲した流路の形態で作製されることが好ましい。さらに上述したように、特にアンダカットが設けられた中空構造、例えば、流体が流れることができる湾曲した流路の形態の中空構造は、さらに上述した方法によって形成され得る。
【0020】
変形形態では、パルスレーザ放射が被加工物の材料から最初に出るのは、除去フロントの領域である。この変形形態では、パルスレーザ放射は、被加工物の放射線入射側と除去フロントとの間の被加工物の材料内を伝播し、すなわち、放射線入射側と除去フロントとの間に空洞はない。
【0021】
この変形形態の発展形態では、パルスレーザ放射は、被加工物の材料から出た後に被加工物の材料に再入射する。これは、通常は入射放射線方向に平行に延びない中空構造の部分を形成することが意図される場合である。この場合、各焦点領域において被加工物の材料により完全に吸収されなかったパルスレーザ放射線の一部が入射する被加工物の材料は、除去フロントのうちパルスレーザ放射線の入射放射線方向で放射線入射面から遠い側に存在する。
【0022】
さらに別の変形形態では、被加工物内の除去フロントを、被加工物の放射線入射側への方向に少なくとも断続的に移動させる。入射放射線方向に平行に延びる中空構造の部分が形成され場合、被加工物の放射線入射側への方向への除去フロントの移動は、入射放射線方向に平行であり得る。しかしながら、例えば、中空構造の屈曲又は湾曲部が形成される場合、放射線入射側への方向の除去フロントの移動を、それに垂直な方向の移動と重畳せることも可能である。
【0023】
さらに別の変形形態では、被加工物内での除去フロントの移動時に、被加工物の材料は、被加工物の放射線入射側から遠い除去フロントの縁の側面に少なくとも断続的に隣接する。さらに上述したように、これは、通常は入射放射線方向に平行に延びない中空構造の部分を形成することが意図される場合である。
【0024】
さらに別の変形形態では、除去フロントを、被加工物の放射線入射側とは反対の側から始めて移動させる。被加工物の放射線入射側とは反対の除去フロントが始まる側は、概してビーム入射側に実質的に平行に向けられる被加工物の裏側であり得る。しかしながら、被加工物のうち除去フロントが始まる側は、被加工物の体積内に位置する面でもあり得る。例として、これは、被加工物に既に中空構造が存在し、本方法により形成される中空構造が、既に形成された中空構造からできる場合であり得る。被加工物の体積内に既に存在する中空構造は、本明細書に記載の方法を用いて形成されたものであり得るが、原則として、この中空構造が、例えば機械的研磨法等の異なる材料除去法を用いて形成されたものである可能性もある。
【0025】
一変形形態では、入射放射線方向に対して0°~89°、好ましくは0°~80°、特に好ましくは20°~70°、特に30°~60°の角度を向いた除去フロントが、少なくとも断続的に形成される。さらに上述したように、除去フロントのこのような向きにより、除去フロントの下方に位置する被加工物の体積領域への材料改質の導入が防止又は低減され、したがって、中空構造の形成時に被加工物材料に導入される応力が著しく低減される。
【0026】
さらに別の変形形態では、焦点領域は、移動パターンの相互にオフセットした軌道に沿って移動される。ここに記載の方法では、移動パターンの軌道は、好ましくは相互に平行な向きで直線状に延びる。例として、隣接する軌道間の距離は約0.01mm~0.5mmとすることができる。しかしながら、このような向きは必須ではなく、すなわち、移動パターンの軌道は、任意選択で、同心円状の輪郭の形態で、例えば同心円の形態で、又は任意の他の方法で配列されてもよい。移動パターンの断面形状又は除去フロントの移動方向に垂直な平面へのその投影は、中空構造の断面形状に対応する。原則として、中空構造の断面形状は所望に応じたものであり、例えば円形、楕円形、多角形等であり得る。被加工物内の除去フロントの位置に応じた移動パターンの空間的広がりを変更により、除去フロントの移動時に中空構造の断面の直径を特定の範囲内で変更することもできる。
【0027】
一変形形態では、入射放射線方向に対して垂直に向いていない除去フロントを形成するために、焦点領域を正又は負の入射放射線方向に又は入射放射線方向に沿ってオフセットさせることにより、移動パターンの軌道は相互にオフセットさせる。この変形形態では、移動パターンの軌道は、通常は直線状に延び、相互に平行に向けられる。ここに記載の変形形態の場合、移動パターンの個々の軌道は、入射放射線方向に対して斜めの除去フロントを発生させるために、入射放射線方向に沿って相互にオフセットされる。ある方向、例えばZ方向の移動は、その方向に沿った、又はその方向に平行な移動を意味すると理解され、方向の符号(+Z、-Z)は考慮されない。
【0028】
この変形形態の最も単純な場合では、焦点範囲は、移動パターンの外側縁の軌道から始めて隣接する軌道に進む毎に、入射放射線方向に一定の絶対値だけオフセットされる。例として、ダイナミックズームレンズを用いて、入射放射線方向に焦点範囲をオフセットすることができる。
【0029】
この変形形態では、傾斜した除去フロントを、ダイナミックズームレンズを有するスキャナ光学ユニットによる入射放射線方向の焦点範囲のオフセットと組み合わせた移動パターンの高速走査により形成する。被加工物内で除去フロントを移動させるために、通常は走査移動に比べて遅い被加工物の移動が、走査移動に重畳される。代替として、固定された被加工物の場合、スキャナ光学ユニットの走査野内の移動パターンの場所の変更により、除去フロントを移動させることができる。中空構造の第1部分を形成する目的で、被加工物の移動により除去フロントの位置を修正し、中空構造の第2部分を形成する目的で、走査野内の移動パターンの位置を修正することにより、被加工物内で除去フロントを移動させることが可能である。
【0030】
さらに別の変形形態では、移動パターンの相互にオフセットした軌道におけるパルスレーザ放射のパルスエネルギーは、入射放射線方向に対して垂直に向いていない除去フロントを形成するよう変更され、焦点領域は、入射放射線方向に対して垂直な平面内で移動させることが好ましい。入射放射線方向に焦点領域のオフセットを生じさせる代替として又はそれに加えて、相互にオフセットした軌道におけるパルスレーザ放射のパルスエネルギーも変更することができる。この場合のパルスエネルギーは、移動パターンの第1外側縁の軌道から始めて、移動パターンの反対側の第2縁の軌道まで通常は連続的に増加又は減少させる。例として、パルスレーザ放射を生成するためのレーザ源に作用し、1μs未満程度の応答時間を有する音響光学変調器又は電気光学変調器を用いて、パルスエネルギーの高速調整を達成することができる。
【0031】
概して、ここに記載の方法の変形形態は、入射放射線方向の焦点領域のオフセットと組み合わされないので、焦点位置を動的に適合させるための装置を省くことが可能である。したがって、焦点領域のパルスレーザ放射を焦点面に集光させ、アブレーションパターンの生成時に焦点面内で移動させる。スキャナ光学ユニットを用いた軌道の走査時に、Fθレンズ又はテレセントリックレンズを用いてパルスレーザ放射の焦点面への集束を実現することができる。アブレーションプロセスの開始時に、パルスレーザ放射を、この場合は例えば被加工物の裏側に位置する焦点面に集光させることができる。
【0032】
パルスレーザ放射が入射放射線方向に対して垂直な焦点面に集光される場合でも、レーザパルスの影響範囲に変化があったので、個々の軌道間でパルスエネルギーを変更することにより斜めの除去フロントを形成することができる。レーザパルスの波長及びパルス時間に応じて、特定のエネルギー密度閾値、あるいは特定の閾値強度が被加工材料の除去の発生に必要である。パルスエネルギーが大きいほど、焦点範囲又は焦点面を始点として材料の除去が起こる入射放射線方向の領域の範囲も大きくなる。したがって、パルスエネルギーの高速調整により、被加工物の放射線入射側から遠い側から始まる除去フロントの形成が可能となり、除去フロントは、焦点領域が移動する焦点面に対して0°以外の角度に向けられる。この場合も、中空構造を形成するために、被加工物の移動により除去フロントを被加工物内で移動させることができる。このように、この目的で追加の可動要素、例えばズーム光学ユニットのアクチュエータを必要とすることなく、斜めの除去フロントを発生させることができる。
【0033】
一変形形態では、放射線入射側に実質的に平行に延びることが好ましい中空構造の部分を形成するために、除去フロントを、中空構造の作製中に被加工物内で入射放射線方向を横切る移動方向に少なくとも断続的に移動させ、除去フロントの放射線入射側に近い側を、入射放射線方向に対する横方向移動時に移動方向に対して90°未満、好ましくは70°未満の角度に向けることが好ましい。本願の意味の範囲内で、「実質的に平行」という語句は、平行な向き、又は平行な向きに対して±10°の角度での向きを意味すると理解される。
【0034】
さらに上述した方法を用いて、特に、中空構造の「水平」部分、すなわち、被加工物の放射線入射側に実質的に平行に延びる部分を形成ことができる。EUVミラー用基板の形態の被加工物の場合、このような部分は、概して、この場合は中空構造の形成後に反射コーティングを塗布される光学面に対応する放射線入射側から僅かに離れて配置される。「水平」部分は、EUVミラーの光学面の効率的な温度制御の実現を可能にする。
【0035】
さらに別の変形形態では、被加工物の放射線入射側とは反対の側から始めて入射放射線方向に実質的に平行に延びる中空構造の部分を形成するために、また好ましくは、入射放射線方向に実質的に平行に延びる中空構造のさらに別の部分を形成するために、中空構造の作製中に、除去フロントを入射放射線方向に実質的に平行に少なくとも断続的に移動させる。中空構造の形成後に、被加工物又は基板の温度制御、特に冷却のために流体を流すことができる、例えば貫通流路の形態の連続した中空構造を形成するために、概して中空構造の上記「水平」部分を、被加工物の放射線入射側から遠い側又は被加工物の任意の他の側に接続する必要がある。この目的で、中空構造の「垂直」流路部分を、被加工物の放射線入射側から遠い側から始めて形成することができ、上記「垂直」流路部分は、中空構造の「水平」流路部分に合流する。
【0036】
連続した中空構造を形成する場合、第1プロセスステップにおいて中空構造の第1「垂直」部分と「水平」部分の一部のみとを形成することが可能であり、すなわち、「水平」部分内の除去フロントで終わる中空構造が形成される。連続した中空構造を形成するために、第2プロセスステップにおいて中空構造の第2「垂直」流路部分が形成され、当該第2「垂直」流路部分は、中空構造の既に形成された第1「垂直」部分が始まる位置から「水平」部分の長さだけオフセットした、被加工物の放射線入射側から遠い側の異なる位置から始まる。
【0037】
第2プロセスステップ中の除去フロントは、入射放射線方向で鏡像反転された第1プロセスステップ中の除去フロントに対応する。第2「垂直」部分は、「水平」部分の形成済みの一部と入射放射線方向で同じ高さに延びる中空構造の「水平」部分のさらなる一部に移行する。中空構造の「水平」部分の2つの端は、連続加工によりオーバーラップ領域で相互接続される。このようにして、中空構造は、開通して第1端の流体入口を介して冷却流体を供給することができる連続流路を形成し、上記冷却流体は、他端の流体出口で中空構造から再度除去することができる。オーバーラップ領域にはシーム領域が形成される。シーム領域内では、流路の性質、特に流路の壁の性質は、詳細に後述するようにシーム領域外の流路の性質、特に流路の壁の性質とは異なる。
【0038】
さらに別の変形形態では、長手方向が相互に対して70°~100°の角度、好ましくは90°の角度を向いた、中空構造の第1部分及び中空構造の隣接する第2部分が作製される。さらに上述したように、アンダカットを有する中空構造の形成が、ここに記載の方法の場合に可能である。例として、湾曲した冷却流路の形態の中空構造を、ここに記載の方法を用いて形成することができる。特に、90°の湾曲を有する、すなわち隣接する部分間で約90°の方向変化を有する中空構造を形成することが可能である。例として、これは、中空構造の「垂直」部分と中空構造の「水平」部分との間の上記移行部の形成に有益である。しかしながら、ここに記載の約90°の湾曲様式の移行は、必ずしも中空構造の「水平」部分と「垂直」部分の間で起こる必要はないことが理解される。
【0039】
一変形形態では、中空構造の作製中に丸み部分が形成され、第1部分及び第2部分は、上記丸み部分で相互に合流する。2つの隣接する部分間の曲率が約90°の場合、キンクの形態の不連続な移行部が生じるのではなく、移行が中空構造の丸み部分に沿って連続的に実現されることが有利であることが分かった。概して、丸み部分は一定の曲率半径を有するが、これは必須ではなく、曲率半径は変化してもよい。丸み部分は、除去フロント又は中空構造にフラックスを供給するための可撓性チューブによる追跡を単純化し、このフラックスは、より詳細に後述するように、除去フロントの領域から除去生成物を効果的に除去する。
【0040】
さらに別の変形形態では、除去フロントを、中空構造の作製中に流体と接触させ、この流体は、除去フロントの移動時に、中空構造内に少なくとも部分的に導入される流体供給部により除去フロントを追跡する。アブレーション生成物の除去及び加工物の冷却のために、特にパルスレーザ放射に対して透明な液体で焦点領域を洗浄することが通常は必要である。液体は、ノズルを用いて液体自由噴流の形態で被加工物の裏側に導くことができ、又は被加工物を液体浴に部分的に浸漬させることができる。しかしながら、アブレーション生成物を除去するために、液体の代わりにガス、例えば圧縮空気を除去フロントに接触させることができる。
【0041】
例えば流路の形態の中空構造の長さが長い場合、除去フロントの領域で局所的な洗浄を可能にするために、流体供給部が中空構造内に少なくとも部分的に導入される必要がある。この目的のために、流体供給部又は流体供給部の一部、例えばノズルが中空構造内に少なくとも部分的に導入され得る。例として、流体供給は、剛性管として形成されるか又は剛性管を含むことができ、その自由端にノズルが取り付けられ、管又はノズルが中空構造内に少なくとも部分的に導入される。しかしながら、流体供給部がノズルを有しない可能性もある。ノズルから出る流体を管と中空構造の壁との間の隙間により取り出すことができるように、例えば管の形態の流体供給部は、中空構造の直径よりも僅かに小さい外径を有する。
【0042】
この変形形態の発展形態では、流体供給部は少なくとも1つの可撓性チューブを含むか、又は流体供給部は少なくとも1つの可撓性チューブを形成し、除去フロントは、特に被加工物の放射線入射側から遠い側から始めて、少なくとも1つの可撓性チューブを用いて流体により追跡される。
【0043】
90°湾曲又は90°屈曲を任意に有する湾曲した中空構造を形成する場合、除去生成物の効果的な除去のために、可撓性チューブを中空構造の形成済みの部分に導入しなければならない。ノズルが通常は取り付けられるチューブの自由端は、この場合は除去フロントから比較的短い距離に位置決めされる。チューブは、ノズルから出る流体をチューブと中空構造の壁との間の隙間を介して通常は被加工物の裏側に向かう方向に確実に除去できるように、中空構造の直径よりも僅かに小さい直径を有する。自由端又は流体の排出用の端片を有する他の可撓性要素が、除去フロントを追跡してもよい。
【0044】
さらに別の変形形態では、除去フロントを移動させるために、被加工物を移動、特に変位させる。例として、被加工物の移動は、1つ、2つ又は3つの空間方向の変位の形態で実施することができる。特に、相互に対して約90°を向いた中空構造の2つの部分間に移行部がある場合、被加工物を重畳された移動内で2つの空間方向に変位又は移動させれば有利である。スキャナ光学ユニットの処理領域を超えないサイズの中空構造の形成の場合、被加工物内での除去フロントの移動は、被加工物を移動させずに処理領域内での走査パターンの移動により実現することもできる。この場合も、中空構造の形成時に、入射放射線方向に対して除去フロントの向きを変更することができる。
【0045】
さらに別の変形形態では、除去フロントを形成するために、スキャナ光学ユニットにより焦点領域を移動パターンの相互にオフセットした軌道に沿って移動させる。除去フロントを形成するための焦点領域の移動は、この場合はスキャナ光学ユニットを用いたパルスレーザ放射の高速偏向により実施され、スキャナ光学ユニットは、この目的のために例えばガルバノミラーの形態の1つ又は複数のスキャナミラーを含み得る。中空構造を形成するために、除去フロントを形成するための走査移動は、通常は被加工物の比較的低速の運動と重畳される。走査移動中に焦点領域を焦点面に集束させるために、通常はパルスレーザ放射がFθレンズ又はテレセントリックレンズを通過する必要がある。斜めの除去フロントを形成するために入射放射線方向に焦点領域のオフセットを発生させる場合、このようなレンズは、概して同様にダイナミックズームレンズと組み合わせて使用される。概して、Fθレンズ又はテレセントリックレンズは、パルスレーザ放射のパルスエネルギーを変更することにより斜め除去フロントを発生させる場合にも用いられる。
【0046】
さらに別の変形形態では、中空構造は、1mm~20mm、好ましくは1mm~5mmの直径の円形断面を有する。さらに上述したように、流路は、円形断面から逸脱した断面を有することもできる。この場合、流路の直径は、いわゆる相当直径、すなわちこの場合は円形ではない流路の流路断面に対応する面積を有する円の直径であると理解される。流体の流れには、上記値範囲の直径を有する流路が有利であることが分かった。
【0047】
さらに別の変形形態では、中空構造は、10cm以上、好ましくは15cm以上、特に好ましくは20cm以上、特に70cm以上の長さを有する。さらに上述したように、特にかなりの長さを有する湾曲した流路の形態の中空構造を、ここに記載の方法を用いて形成することができる。
【0048】
本発明は、上記方法の1つ又は複数の変形形態も含み得る前述のタイプの方法にも関する。本方法では、中空構造は、除去フロント以外では側面により画定され、中空構造の作製中の除去フロントは、中空構造の側面のうち除去フロントに隣接する領域に対して除去フロント角度を向き、除去フロント角度は、少なくとも断続的に除去フロント最小角度1°よりも大きく、少なくとも断続的に除去フロント最大角度89°よりも小さい。除去フロント最小角度は、5°、10°、20°又は30°であることが好ましい。除去フロント最大角度は、85°、80°、70°又は60°であることが好ましい。中空構造の作製中の除去フロント角度は、除去フロント最小角度よりも恒久的に大きく且つ/又は除去フロント最大角度よりも恒久的に小さくてもよいが、これは必須ではない。側面は、例えば円筒状の側面であり得るが、これは必須ではない。例として、中空構造は、流体が流れることができることが好ましい流路とすることができる。
【0049】
本発明は、ミラー用、特にEUVミラー用の基板の形態の被加工物において、特に流体が流れることができる流路を作製する方法であって、パルスレーザ放射による材料除去加工により流路を形成し、流路の作製中に流体供給部を少なくとも部分的に流路に導入する方法にも関する。さらに上述したように、長さが比較的長い流路の形成には、流路に少なくとも部分的に導入される流体供給部の使用が必要である。
【0050】
本方法の一変形形態では、流体供給部を用いて、材料除去加工が実行される領域に、特に材料除去加工中に形成される除去フロントに流体を供給し、除去フロントを、被加工物内での除去フロントの移動時に流体供給部により好ましくは追跡し、特に自動的に追跡する。例えばさらに上述した方法により実施され得るパルスレーザ放射による材料除去加工の範囲内では、長い流路の形成には、除去フロントの冷却及びアブレーション生成物の除去のための流体供給部による除去フロントの追跡が必要である。例として、流体供給部は管等とすることができ、ノズルが取り付けられている場合があるその自由端は、通常は除去フロントから僅かに離れて配置される。流体での除去フロントの追跡は、かなりの長さの直線流路が形成される場合にも必要である。この場合、上述した除去フロントの斜めの向きを任意に省くことが可能であり得る。例として、自動追跡は、後述する追跡装置を用いて実施することができる。
【0051】
さらに別の変形形態では、流体供給部は、好ましくは湾曲した流路に少なくとも部分的に導入される可撓性要素を含み、可撓性要素は、可撓性チューブを形成することが好ましい。さらに上述したように、例えば可撓性チューブの形態の可撓性流体ラインの形態の可撓性要素の導入は、流路が湾曲しており、例えば90°の撓み等の形態のアンダカットを有する場合でも、流体による除去フロントの追跡を可能にする。
【0052】
さらに別の変形形態では、流路は10cm以上、好ましくは15cm以上、特に好ましくは20cm以上、特に70cm以上の長さで形成される。さらに上述したように、長さが比較的長い流路が形成される場合に追跡が必要である。さらに上述したように、流路は、パルスレーザ放射による材料除去加工により形成される。異なる方法で、例えば機械加工、例えばドリル加工により形成された部分が流路に隣接する可能性がある。これらの部分の長さは、流路の長さの決定時には考慮されていない。
【0053】
さらに別の変形形態では、基板はモノリシックである。2つ以上の部分体を接合して基板を形成する際に発生する基板材料の応力をできる限り回避するために、ミラーの、例えばEUVミラーの基板がモノリシックに、すなわち一体に形成されれば有利である。さらに上述した方法を用いて、このようなモノリシック基板において、事実上任意の所望の形状を有する中空構造を形成することが可能である。中空構造は、特に冷却流路、すなわち冷却液、例えば水の通過を可能にする中空構造とすることができる。中空構造は、連続した冷却流路とすることができるが、中空構造が1つ以上の分岐点を有する可能性もある。中空構造の冷却剤入口及び冷却剤出口は、基板の裏側に配置され得るが、特に、中空構造全体又は複数の中空構造の形成に他の材料除去方法を追加的に用いる場合、これは必須ではない。
【0054】
一変形形態では、基板は、チタンドープ石英ガラス又はガラスセラミックからなる。さらに上述したように、EUVミラー用の基板は、通常は極めて小さな熱膨張係数を有するいわゆるゼロ膨張材料からなる。
【0055】
原理上は、中空構造は、EUVミラー用の基板としての使用に適さない被加工材料にも、上述の方法で導入され得る。本方法に適した被加工材料類は、ガラス、結晶、及び半導体である。前提条件は、各材料が入射するレーザ放射に対して透明であることである。例として、シリコンの場合、約1060nmを超える近赤外波長域の波長がこれに該当する。
【0056】
さらに別の変形形態では、基板の材料は、0℃~100℃、好ましくは19℃~40℃、特に好ましくは19℃~32℃であるゼロクロス温度を有する。例えばドープ石英ガラスの形態、特にチタンドープ石英ガラスの形態、又は特定のガラスセラミックの形態のゼロ膨張材料は、正の熱膨張係数を有する成分又は相と負の熱膨張係数を有する成分又は相とが対抗する。これにより、熱膨張と温度との間には事実上非線形の関係が生じ、熱膨張がなくなるか、又は温度変化の影響を最も受けにくい温度値が1つだけ存在する。正確には、これがいわゆるゼロクロス温度であり、ZCTとも称する。
【0057】
一変形形態では、基板の材料は、3K未満、好ましくは2K未満、特に好ましくは1K未満、特に0.1K未満であるゼロクロス温度の空間的変動を有する。ゼロクロス温度が基板の積全体にわたってできる限り一定、すなわちできる限り小さな変動を示せば有利である。空間的変動とは、基板の体積における最大ゼロクロス温度と最小ゼロクロス温度との差を意味すると理解される。ゼロクロス温度の空間的変動は、基板における中空構造の形成後の基板に関するものであり、すなわち、中空構造の作製中にアブレーションされた材料は、ゼロクロス温度の空間的変動の決定時には考慮されていない。
【0058】
本発明は、基板と、基板に塗布されて放射線、特にEUV放射線を反射する働きをするコーティングとを備えるミラー、特にEUVミラーであって、基板は、上述の方法を用いて形成された、好ましくは流路の形態の、特に好ましくは流体が流れることができる流路の形態の、特に冷却流体が流れることができる冷却流路の形態の、少なくとも1つの中空構造を含む、ミラーにも関する。概して、中空構造は、EUVミラーの温度制御に用いられ、流体がこの目的でそこに通される。しかしながら、中空構造は、例えば、例えばセンサ、アクチュエータ等の形態の1つ又は複数のコンポーネントを基板に組み込むために、任意の他の目的で基板に導入することもできる。パルスレーザ放射と反射コーティングの材料との間に生じる相互作用を回避するために、基板は、通常は中空構造の形成時にはまだ反射コーティングを有していない。したがって、反射コーティングは、通常は中空構造の形成後にのみ基板に塗布される。
【0059】
本発明は、ミラー、特にEUVミラーであって、流体が流れることができることが好ましい少なくとも1つの流路を含む基板を備え、流路は、パルスレーザ放射による材料除去加工により形成され、湾曲形態を有し、1mm~20mm、好ましくは1mm~5mmの直径、及び/又は10cm以上、好ましくは15cm以上、特に20cm以上の長さを有する、ミラーにも関する。流路は、特に上述のようなパルスレーザ放射による材料除去加工中に、すなわち上述の方法により、パルスレーザ放射により形成される基板を通って移動する除去フロントにより、形成されたものであり得る。特に、この場合の除去フロントは、少なくとも断続的に、被加工物の放射線入射側でパルスレーザ放射の入射放射線方向に対して垂直に向いていない場合がある。湾曲した流路は、特に、流体、例えば冷却流体の通過のために形成され得る。
【0060】
一実施形態では、基板はモノリシックである。上述のように、2つ以上の部分体を接合して多部品基板を形成する際に生じる基板材料の応力は、モノリシック基板では回避され得る。
【0061】
さらに別の実施形態では、流路は、長手方向が相互に対して70°~100°の角度、好ましくは90°の角度を向いた、第1部分及び隣接する第2部分を有する。約90°という比較的大きな角度の撓みは、基板の効果的な温度制御をもたらすために流路を通して流体を導く際に有利であり得る。
【0062】
一実施形態では、第1部分と第2部分は、丸み部分で相互に合流する。丸み部分に沿った2つの部分間の連続的な移行が、詳細に後述するように、キンクの形の移行部に対して有利であることが分かった。
【0063】
本発明のさらに別の態様は、ミラー、特にEUVミラーの形態の放射線を反射する光学素子であって、好ましくはモノリシック基板と、放射線、特にEUV放射線を反射する反射コーティングであって、コーティングは、好ましくはモノリシック基板の表面に塗布される、反射コーティングと、好ましくはモノリシック基板内に延びて流体を流すよう設計された少なくとも1つの中空構造であり、相互に対して60°~120°の角度、好ましくは80°~100°の角度、特に90°の角度を向いた第1部分及び隣接する第2部分を有し、第1部分及び第2部分が相互に合流する丸み部分を有する、中空構造とを備えた、光学素子に関する。この2つの部分は、通常は丸み部分のすぐ隣に実質的に直線状に延びる流路部分である。丸み部分のすぐ隣で、2つの部分は、相互に対して上記角度を向いた長手方向軸を有する。特に、第1部分及び第2部分は、相互に対して90°を超える角度、例えば100°を超える角度を向き得る。
【0064】
特に、2つの部分が相互に略垂直に、すなわち、相互に対して60°~120°の角度を向いている場合、角又は鋭い縁の形態の基板の中空構造の2つの部分間の移行部において、乱流をもたらして流動励起振動を引き起こす流れの剥離が中空構造の壁で生じ得る。この理由から、中空構造の2つの部分が、できる限り流線形のプロファイルを有する丸み部分で相互に合流することが提案される。
【0065】
丸み部分は、角のない部分を意味すると理解される。その結果、第1部分は、丸み部分で第2部分に連続的に合流する。中空構造の断面又は直径は、通常は丸み部分内で一定であるが、任意に変化する場合もある。概して、丸み部分の断面又は直径は、2つの部分の断面に対応するが、丸み部分が分岐点に配置されている場合、これは必須ではない。
【0066】
基板は、好ましくはモノリシックであり、すなわち一体に形成され、基板の2つ以上の部分体が相互接続される接合面を有しない。
【0067】
丸み部分は、中空構造を作製する方法又は流路を作製する方法の文脈で上述したように、パルスレーザ放射による材料除去加工により形成することができ、この方法では、入射放射線方向に対して斜めに向いた除去フロントが形成される。上述のように、直線形状から逸脱し、特に基板の厚さ方向に平行に延びない中空構造は、加工面又は除去フロントの斜めの向きにより形成することができる。例として、中空構造の丸み部分は、斜めの除去フロントが2つの相互に直交する方向に同時に変位することにより形成され得る。
【0068】
一実施形態では、丸み部分の曲率半径Rと丸み部分の直径DとのR/D比は、2~6、好ましくは2.5~5、特に2.5~3.5である。R/D比が2を超える場合、流動励起振動に関する大幅な改善、例えば50%超を既に達成することができる。理想的には、R/D比は約2.5~3.5、例えば3.0であり、それは流動励起振動に関する最大の改善が通常はこの比で達成されるからである。R/D比は、6を超える値とすべきではない。この実施形態では、丸み部分は一定の曲率半径を有する。
【0069】
丸み部分の流路断面は、通常は円形だが、任意に円形形状から逸脱し、例えば楕円形状を有することもできる。この場合、既に上述したように、丸み部分の直径は、いわゆる相当直径、すなわちこの場合は円形ではない丸み部分の流路断面に対応する面積を有する円の直径であると理解される。
【0070】
丸み部分の直径と丸み部分の曲率半径との比は、乱流のない流線形の流れ誘導、したがって流動励起振動の回避に不可欠なパラメータを表すことが分かった。
【0071】
さらに別の実施形態では、丸み部分の直径Dは、2mm~20mm、好ましくは2mm~12mmである。指定されたオーダの丸み部分又は中空構造の流路構造の直径は、所与の境界条件に対して光学素子の効率的な温度制御に十分な体積流量の発生を可能にする。概して、中空構造内の流体の流速はメートル毎秒のオーダである。
【0072】
一実施形態では、中空構造は、反射コーティングを塗布される表面の下方に延びる特に冷却流路の形態の複数の温度制御流路を備え、中空構造は、分配流路を介して温度制御流路、特に冷却流路に接続された流体分配部と、回収流路を介して温度制御流路、特に冷却流路に接続された流体回収部とを備える。温度制御流路は、通常は基板を冷却する働きをするので、以下では冷却流路とも称し、概して表面下の表面近傍領域に延びる。表面近傍領域と、基板の表面から10mm以下の距離を意味すると理解される。表面からの距離は、概して基板の略平面状の下側に対して垂直な向きの基板の厚さ方向で測定される。表面からの冷却流路の距離が小さい結果として、ミラーの表面の効果的な冷却をもたらすことができる。この距離は、各温度制御流路と反射コーティングを塗布された表面との間の最小距離を意味すると理解される。
【0073】
概して、流体分配部と流体回収部はそれぞれ、個々の冷却流路よりも大きな流路断面を有する。これにより、有益な流動条件の設定が可能となる。流体分配部及び/又は流体回収部は、冷却流路よりも反射コーティングを施される表面から大きな距離に配置されることが好ましい。この配置により、概して冷却流路よりも大きな表面積の空洞を有する流体分配部及び/又は流体回収部内の流体圧力による表面の変形を許容限度内に抑えることができる。流体分配部は、通常は流体入口に接続され、流体回収部は、通常は流体出口に接続される。各冷却流路は、1つだけの分配流路及び1つだけの回収流路に接続され得るが、原則として、2つ又は任意に3つ以上の冷却流路の群が、共通の分配流路及び共通の回収流路に接続される可能性もある。
【0074】
さらに別の実施形態では、第1部分は、分配流路に隣接する温度制御流路の、特に冷却流路の端部分を形成し、第2部分は、端部分に隣接する分配流路部分を形成し、且つ/又は第1部分は、回収流路に隣接する温度制御流路の、特に冷却流路の端部分を形成し、第2部分は、端部分に隣接する回収流路部分を形成する。
【0075】
冷却流路は、通常は反射コーティングを塗布される表面に実質的に平行に延びる。基板内の設置空間は限られるため、各冷却流路に接続される分配流路又は回収流路は、概して反射コーティングを有する表面から略直角に遠ざかる、すなわち、回収部又は分配流路部分と冷却流路の隣接する端部分とは、通常は相互に略直角に延び、すなわち中空構造を流れる流体の略90°の偏向がある。
【0076】
上述の丸み部分により、特に直径に対する曲率半径の適切な比を選択することで、流動励起振動を回避するか又は少なくとも実質的に低減することができる。
【0077】
原理上は、流体分配部と流体コネクタとは、異なる設計を有し得る。例として、流体分配部の流路断面及び流体回収部の流路断面は、それぞれ分配流路及び回収流路から始めて例えば漏斗の様式で先細りであり得ることで、基板内で流体分配部及び流体回収部により形成される空洞が不必要に大きくならない。
【0078】
さらに別の実施形態では、流体分配部は入口流路を形成し、そこから分配流路が分岐し、且つ/又は流体回収部は出口流路を形成し、そこから回収流路が分岐する。この実施形態では、流体回収部及び流体分配部は、概して分配流路の長手方向に対して実質的に横方向に延び、回収流路の長手方向に対して実質的に横方向に延びる。概して、分配流路及び回収流路は、入口流路及び出口流路からそれぞれ実質的に直角に分岐する。例として、流体分配部及び流体回収部は、この場合は円筒形流路として形成されてもよく、この円筒状流路は、基板の外側の入口開口及び出口開口からそれぞれ始めて基板内に延びる。この場合、入口流路及び出口流路は、例えば穿孔として形成され得るが、これらを上述のアブレーション法により形成することも可能である。
【0079】
この実施形態の発展形態では、第1部分は、入口流路に隣接する分配流路の合流部分を形成して、第2部分は、合流部分に隣接する入口流路の分岐部分を形成し、且つ/又は、第1部分は、出口流路に隣接する回収流路の合流部分を形成して、第2部分は、回収流路の合流部分に隣接する出口流路の分岐部分を形成する。
【0080】
さらに上述したように、入口流路及び出口流路の長手方向は、各回収流路及び分配流路の長手方向に対して実質的に垂直に延びる。分配流路又は回収流路の各分岐点では、入口流路又は出口流路の分岐点に丸み部分を設けることにより生じ得る流線形の形状も有利である。このようにして、段差を回避し、縁に丸みを付けることができ、その結果、中空構造の形状をより流線形に設計することができ、入口流路及び出口流路における流体の剥離を回避するか又は少なくとも大幅に低減することができる。
【0081】
丸み部分の直径と半径との比は、上述の値範囲内であることが好ましい。しかしながら、丸み部分は、分岐点で一定の曲率半径を有しない場合がある。分岐点における丸み部分の流径も、必ずしも一定である必要はない。例として、丸み部分の断面は、入口流路から又は出口流路から始めて先細りであり得る。
【0082】
さらに別の実施形態では、入口流路の分岐部分と分配流路の合流部分との間の角度は90°よりも大きく、好ましくは100°よりも大きく、且つ/又は出口流路の分岐部分と回収流路の合流部分との間の角度は90°よりも大きく、好ましくは100°よりも大きい。入口流路及び出口流路の分岐部分と分配流路及び回収流路の分岐部分とがそれぞれ、相互に対して鈍角に向けられる場合、流れ誘導に有益であることが分かった。
【0083】
さらに別の実施形態では、基板の材料は、石英ガラス、特にチタンドープ石英ガラス、及びガラスセラミックを含む群から選択される。基板材料の不均一な加熱に起因する可能性がある、反射コーティングを塗布される表面の変形を回避するために、EUVリソグラフィ用ミラーの基板は、通常は非常に小さな熱膨張係数を有するいわゆるゼロ膨張材料を用いて形成される。上述のように、これらの材料は硬質且つ脆性なので、機械的な加工は困難である。しかしながら、上述のレーザアブレーション法を用いれば、このような材料で事実上いかなる形状の中空構造も形成することができる。
【0084】
さらに別の実施形態では、基板の材料は、0℃~100℃、好ましくは19℃~40℃、特に好ましくは19℃~32℃であるゼロクロス温度を有する。上述のように、ゼロクロス温度は、特にEUVミラーの動作中の平均入射放射束に応じて決まる。
【0085】
一実施形態では、基板の材料は、3K未満、好ましくは2K未満、特に好ましくは1K未満、特に0.1K未満であるゼロクロス温度の空間的変動を有する。上述のように、ゼロクロス温度の高い空間均一性が、ミラーの効率的な動作のために通常は必要である。
【0086】
さらに別の実施形態では、中空構造、好ましくは特に流体が流れることができる流路は、シーム領域を有する。上述のように、シーム領域は、流路の形態の中空構造の作製中に通常は形成され、このシーム領域では、連続した流路を形成するために、レーザアブレーションにより形成された流路の2つの部分が結合される。シーム領域内では、流路の、特に流路の壁の性質は、シーム領域外の流路の、特に流路の壁の性質とは少なくとも1つの特性が異なる。例として、シーム領域内の流路の壁の表面又は表面構造は、シーム領域外側の流路の壁の表面又は表面構造と異なり得る。
【0087】
この実施形態の発展形態では、中空構造、好ましくは特に流体が流れることができる流路は、シーム領域において、除去フロントの縁輪郭、少なくとも1つのバルジ、横方向オフセット、又は別の構造変更を有する。
【0088】
シーム領域において、流路の各部分のレーザアブレーションが終了した除去フロントの、又は任意に2つの除去フロントの輪郭又は縁輪郭は、流路の形態の中空構造の表面構造において識別可能であり得るか又はそこに刻まれ得る。流路の表面構造で識別可能な除去フロントの縁輪郭は、特に、除去フロントに隣接する流路の側面の領域に対して例えば45°の角度であり得る。この角度は、流路の作製中に除去フロントが入射放射線方向に対して垂直に向いていないことに通常は起因する。除去フロントの縁輪郭は、全周にわたって、又は場合によっては流路の表面構造の一部分においてのみ識別可能であり得る。
【0089】
シーム領域内の流路の壁には、長手方向に局所的に画定された流路の断面の拡大又は縮小をそれぞれ形成する1つ又は複数のバルジが生じ得る。さらに、流路の壁は、シーム領域内で段差の様式の僅かな横方向オフセットを有する場合があり、この段差は、流路の2つの部分の結合中に、且つ/又は流路の2つの部分の断面が僅かに異なることにより生じる。シーム領域内の流路又は流路の壁の性質は、シーム領域内の流路の表面構造をシーム領域外の流路の表面構造と区別する他の構造変更も有し得ることが理解される。
【0090】
本発明のさらに別の態様は、ミラー、特にEUVミラーであって、流体が流れることができることが好ましい特に湾曲した流路を含む基板であり、上記流路はシーム領域を有する基板を備えた、ミラーに関する。上述のように、シーム領域は、レーザアブレーションにより形成された流路の2つの部分が結合されて連続流路を形成する場合に生じる。シーム領域は、通常は流路の両端から離間している。シーム領域は、流路の両端から略同じ距離を有し得るが、これは必須ではない。上述のように、シーム領域内の流路の、特に流路の壁の性質は、シーム領域外の流路の、特に流路の壁の性質とは少なくとも1つの特性が異なる。
【0091】
一実施形態では、流路は、シーム領域において、除去フロントの縁輪郭、少なくとも1つのバルジ、横方向オフセット、又は別の構造変更を有する。
【0092】
本発明のこの態様によるミラーは、特に、本発明の上述の態様によるミラーの特徴を有し得る。基板材料は、特にチタンドープ石英ガラス又はガラスセラミックであり得る。基板はモノリシック形態を有し得るが、これは必須ではない。
【0093】
本発明のさらに別の態様は、EUVリソグラフィシステムであって、上述のように設計された少なくとも1つのEUVミラーと、温度制御流体、特に冷却流体を特に流路の形態の少なくとも1つの中空構造を通して流すよう設計された温度制御装置、特に冷却装置とを備えた、EUVリソグラフィシステムに関する。EUVリソグラフィシステムは、ウェハを露光するためのEUVリソグラフィ装置とすることができ、又はEUV放射を用いる他の何らかの光学装置、例えばEUVリソグラフィで用いられるマスク、ウェハ等の検査用のEUV検査システムとすることもできる。
【0094】
温度制御装置は、冷却装置として働くことができ、例えば、冷却流体の形態の冷却剤、例えば冷却液の形態の冷却剤、例えば冷却水の形態の冷却液を、特に流路の形態の中空構造に流すよう形成され得る。この目的のために、温度制御装置又は冷却装置は、任意選択で、ポンプを有すると共に、適切な供給ライン及び除去ラインも有することができる。温度制御装置は、基板を加熱するための加熱装置としても働き得る。この場合、概して同様に液体である加熱流体の形態の温度制御流体が、流路の形態の中空構造に供給される。温度制御装置が、ミラーの加熱及び冷却の両方を行うよう設計される可能性もある。冷却及び加熱の両方の場合に、流路の形態の中空構造に通される温度制御流体として水が好ましくは用いられる。
【0095】
基板の中空構造は、流体が入る入口開口及び流体が出る出口開口を有する。入口開口及び出口開口は、流路を温度制御装置に接続するために、それぞれ流体供給ライン及び流体除去ラインのポートに接続され得る。複数の流体的に分離された中空構造又は流路が基板内に延びる場合、これらは別個の入口開口及び出口開口により温度制御装置に接続される。
【0096】
本発明のさらに別の態様は、流路に少なくとも部分的に導入可能な流体供給部を備えた、前述のタイプの装置に関する。本装置は、上述の流路を作製する方法を実行するよう設計され、その範囲内で材料除去加工が実行され、その範囲内で流体供給が流路に少なくとも部分的に導入される。上述のように、比較的長い流路は、適切な流体供給及び除去フロントの冷却を用いたアブレーションされた被加工材料の除去を必要とする。
【0097】
一実施形態では、流体供給部は、流体供給部を用いて、材料除去加工が実行される領域に、特に材料除去加工中に形成される除去フロントに流体を供給するよう設計され、流体供給部は、被加工物内での移動中に除去フロントを追跡することができることが好ましい。この目的で、流体供給部は固定されたままとすることができ、被加工物は流体供給部に対して相対的に移動することができるが、適切なアクチュエータ等を用いて流体供給部自体を移動させる可能性もある。この場合、流体供給部は、例えば管等の形態で流路に導入可能な要素を通常は含む。
【0098】
さらに別の実施形態では、流体供給部は、可撓性要素、特に可撓性チューブを流路に少なくとも部分的に導入するよう設計される。アブレーションされた材料を除去フロントからできる限り効果的に除去するために、流体は、除去フロントの近傍に、特にこれが湾曲した流路に関連する場合には可撓性チューブ等を用いて、供給される必要がある。自由端では、可撓性チューブは、例えば水又は圧縮空気であり得る流体を出すためのノズルを有し得る。屈曲していない空洞又は例えば20mm未満の比較的短い空洞長さの場合、通常は除去フロントとチューブ又はノズルからの流体の排出との間に距離がある場合、可撓性チューブを固定状態で配置し、被加工物の移動により空洞内に自動的に導入することが可能であり、この目的のためのチューブに対する外部作用はない。ここに記載の装置は、以下に記載の流体供給装置の文脈で説明するように、流体補給装置と、任意選択で可撓性チューブによる除去フロントの自動追跡のための追跡装置とを備え得る。
【0099】
さらに別の実施形態では、スキャナ光学ユニットは、被加工物の材料の面状除去のための除去フロントを形成するために、移動パターンに沿って焦点領域を移動させるよう設計され、本装置は、ホルダにより収容された被加工物におけるパルスレーザ放射線の入射放射線方向に対して垂直に向いていない除去フロントを形成するよう設計される。通常は、被加工物における、より正確には被加工物の放射線入射側における入射放射線方向は、重力方向に対応する。ホルダに配置されると、被加工物は、通常は放射線入射側に対して垂直なその厚さ方向が重力方向に対応するように位置合わせされる。レーザ源は、超短レーザパルスの形態でパルスレーザ放射を生成するよう設計され、パルスレーザ放射は、被加工物の材料のアブレーションのための多光子吸収を発生させることができる。
【0100】
入射放射線方向に対して垂直の向きではない方向又は平面に除去フロントを位置合わせする装置の設計には、数多くの選択肢がある。
【0101】
一実施形態において、本装置はさらに、パルスレーザ放射の入射放射線方向で又は入射放射線方向に沿ってパルスレーザ放射の焦点領域をオフセットさせる焦点オフセット装置と、入射放射線方向に対して垂直に向いていない除去フロントを形成するために、入射放射線方向で又は入射放射線方向に沿って移動パターンの軌道を相互に対してオフセットさせるように焦点オフセット装置を制御するよう設計又はプログラムされた制御装置とを備える。
【0102】
この実施形態では、本装置は、パルスレーザ放射の入射放射線方向に沿って焦点領域を動的にオフセットさせる焦点オフセット装置を備える。例として、焦点オフセット装置は、ダイナミックズームレンズとして形成することができる。制御装置は、適切なハードウェア及び/又はソフトウェアの形態で実装され得る。
【0103】
さらに別の実施形態において、本装置は、入射放射線方向に対して垂直に向いていない除去フロントを形成するために、移動パターンの相互にオフセットした軌道のパルスレーザ放射のパルスエネルギーを変更するようにレーザ源を制御するよう設計又はプログラムされた制御装置を備える。方法の文脈で上述したように、パルスレーザ放射は、焦点オフセット装置を用いずに、集束光学ユニットを用いて、通常は入射放射線方向に対して垂直に向いた平面に集束される。スキャナ光学ユニットの走査野内の全ての位置で同じ焦点面にパルスレーザ放射線を集光するために、本装置は、Fθレンズ又はテレセントリックレンズを備え得る。焦点領域を移動させる焦点面に対して除去フロントを斜めに向けるために、パルスレーザ放射のパルスエネルギーは、この場合は相互にオフセットした軌道間で変更される。
【0104】
パルスエネルギーを変更するために、レーザ源は、制御装置が作用する1つ又は複数の音響光学変調器又は電気光学変調器を含み得る。方法の文脈で上述したように、パルスエネルギーは、概してアブレーションパターンの一方の縁からアブレーションパターンの反対側の縁に向かって増加又は減少し、その結果として焦点面に対して斜めに向いた除去フロントが形成される。
【0105】
さらに別の実施形態において、本装置は、流路を形成する目的で、好ましくは被加工物の放射線入射側とは反対の側から始めて被加工物内で除去フロントを移動させる位置決め装置を備え、位置決め装置は、入射放射線方向で又は入射放射線方向に沿って、好ましくは入射放射線方向を横切る少なくとも1つの方向で又はその方向に沿って被加工物を変位させるよう設計される。この目的で、位置決め装置は、通常は被加工物のホルダに作用する。位置決め装置は、特に2つ又は3つの異なる空間方向での被加工物の重畳した移動又は変位を実現する、例えばリニアモータ等の形態の1つ又は複数の駆動装置を含み得る。原理上は、位置決め装置が非加工物を回転させるよう設計される可能性もある。
【0106】
本発明のさらに別の態様は、少なくとも1つの除去フロントに、好ましくは複数の除去フロントに流体を供給するための、少なくとも1つの可撓性流体ライン、好ましくは複数の可撓性流体ラインと、被加工物の空洞に挿入するための挿入コンポーネントであり、少なくとも1つの除去フロントに流体を供給するために、少なくとも1つの可撓性流体ラインを案内するか又は案内可能である少なくとも1つのガイド流路を有する挿入コンポーネントとを備えた、冒頭に述べたタイプの流体供給装置に関する。
【0107】
中空構造の形成時に被加工物の材料内で移動させる少なくとも1つの除去フロントへの流体の供給のために、本発明のこの態様による流体供給装置は、被加工物を通した除去フロントの移動中に除去フロントを追跡することができる少なくとも1つの可撓性流体ラインを備える。本発明による流体供給装置の場合、可撓性流体ライン、より正確には流体が出るその自由端を、基板内の指定の位置に配置するために、可撓性流体ラインは、被加工物の空洞に挿入された挿入コンポーネントのガイド流路内に案内される。
【0108】
これは、レーザアブレーションにより、特に多光子レーザアブレーションにより形成された1つ又は複数の構造が空洞の壁から分岐する場合に特に有利であるが、その理由は、この場合、挿入コンポーネント又はガイド流路を用いて、流体ラインの各端を空洞の壁上の構造が出る位置に位置決めすることができ、構造の形成時に除去フロントを追跡できるからである。
【0109】
空洞への挿入コンポーネントの挿入前に、空洞から分岐する各構造の短い部分が、レーザアブレーションにより既に作製されている可能性がある。その際に形成される除去フロントに流体を供給するために、被加工物は液浴に少なくとも部分的に浸漬され得る。除去フロントが空洞の壁から通常は約20~40mmを超える距離になるとすぐに、アブレーションされた材料を十分に除去することができなくなり、アブレーションプロセスは徐々に停止するので、液浴への浸漬では概して十分ではなくなる。したがって、空洞から分岐して約20~40mmを超える長さを有する構造物を作製するためには、可撓性流体ラインを用いて、除去フロントの移動を流体で追跡する。
【0110】
レーザアブレーションにより作製された中空構造が分岐しておらず他の複雑すぎる形状も有していなければ、可撓性流体ラインは、挿入コンポーネントがなくても除去フロントを追跡することもできる。しかしながら、上述のように、挿入コンポーネントを用いて、可撓性流体ラインを構造が空洞から開始又は分岐すべき位置に配置することができる。したがって、分岐点を有する中空構造の場合でも、可撓性流体ラインを空洞から分岐する構造に手動で通す必要なく、挿入コンポーネントを用いて、除去フロントへの流体の供給を確保することが可能である。
【0111】
レーザアブレーションは、特に多光子レーザアブレーションの形態で実施することができる。多光子レーザアブレーションの場合に中空構造を形成するために、パルスレーザ放射、概して超短パルスレーザ放射が、基板の材料を通して被加工物の裏側又は被加工物内の表面上、例えば上記空洞の壁面上の点まで放射され、そこから形成すべき構造が始まることになる。多光子レーザアブレーションの場合、除去フロントが形成され、そこから始めて基板の材料を通って移動することで中空構造を形成する。多光子レーザアブレーションによる材料除去に関する詳細については、パルスレーザ放射による材料除去加工により中空構造を作製するための上述の方法を参照されたい。そこに記載のように、複雑な形状の中空構造を作製する目的で、除去フロント又は加工面は、パルスレーザ放射の入射放射線方向に対して垂直となるようにではなく、入射放射線方向に対して垂直な平面に対して傾くように位置合わせされ得る。このように、レーザアブレーションにより、直線状ではなくアンダカットを有する中空構造を作製することも可能である。
【0112】
流体は、通常は液体、例えば水であり、可撓性流体ラインから比較的高い圧力で出る。液体の代わりに、ガス、例えば圧縮空気を、アブレーション生成物を除去するために除去フロントに接触させることができる。流体を出すためのノズルを可撓性流体ライン又はチューブの自由端に取り付けることができるが、これは必須ではない。
【0113】
被加工物は、EUVミラー用の特にモノリシック基板であることが好ましい。モノリシック基板は、一体に形成され、基板の2つ以上の部分体が相互接続される接合面を有しない。上述のように、このようなモノリシック基板の中空構造は、例えばチタンドープ石英ガラス又はガラスセラミックであり得る硬質且つ脆性のガラス材料における機械加工、例えば穿孔又は研削により容易に作製することはできない。上述の空洞は、機械加工により作製することができ、例えば空洞は、基板にフライス加工された孔であり得る。しかしながら、多光子レーザアブレーションが大きな直径の空洞の作製時に時間のかかるものであっても、空洞はこの方法により作製することも可能である。
【0114】
一実施形態では、挿入コンポーネントは、可撓性流体ラインをそれぞれ案内する複数のガイド流路を有する。したがって、空洞から発出する相当数の流路又は他の構造を任意に有する中空構造の場合、複数の流路又は他の構造を同時に作製することが有利である。この目的で、被加工物の材料がアブレーションされる複数の除去フロントを同時に形成するために、複数のパルスレーザビームを被加工物の体積を通して同時に放射することができ、その結果、空洞から分岐する複数の構造又は流路を同時に形成することができる。
【0115】
複数の除去フロントを同時に形成するには、各除去フロントを追跡する対応する数のガイド流路又は可撓性流体ラインを用いて、除去フロントに流体を同時に供給する必要がある。理想的には、空洞から分岐する全ての構造を同時に作製することができる。分岐する構造の数が多すぎる場合は、これらの構造を複数の群に分割し、それぞれを同時に処理してもよい。各構造群の形成には、異なる形態の挿入コンポーネントを用いることができる。
【0116】
さらに別の実施形態では、流体を除去フロントから戻すために、流体が流れることができるギャップ、特にリングギャップが、流体ラインとガイド流路の流路壁との間に形成される。可撓性流体ラインは、流体ライン内の除去フロントに供給された流体を、通過可能なギャップを介して再度除去できるように選択された直径を有する。概して、ギャップの流路断面積は、可撓性流体ライン内の流体の流路断面積に少なくとも対応すべきである。
【0117】
さらに別の実施形態では、ガイド流路は、可撓性流体ラインの方向を変えるための少なくとも1つの丸み部分を有する。概して、被加工物の空洞から分岐する構造は、挿入コンポーネントが被加工物に挿入又は導入される方向に平行に延びていない。したがって、各ガイド流路が挿入コンポーネントの端面から始まる場合、概して挿入コンポーネント内の可撓性流体ラインの方向を変える必要がある。このような方向変化は、ガイド流路の丸み部分又は湾曲部分に沿って流体ラインを案内することにより理想的には実施される。丸み部分では、斜角で、すなわち90°よりも大きな角度で可撓性流体ラインの方向変化が行われることが好ましい。
【0118】
さらに別の実施形態では、挿入コンポーネントは棒状であり、少なくとも1つのガイド流路は、挿入部品の端面から挿入コンポーネントの側面まで延びる。この場合、被加工物の空洞は、通常は直線状の流路であり、一定の直径を有することが好ましく、被加工物の側面の開口から始めて被加工物の容積内に延びる。この場合、挿入コンポーネントは、挿入コンポーネントが被加工物の開口を通して空洞に押し込まれることにより、空洞に挿入される。この場合、挿入コンポーネントの端面は、被加工物の開口を通して外部からアクセス可能なので、可撓性流体ラインは、挿入コンポーネントの端面において被加工物から遠ざかり、ポンプ等を含む流体の供給装置に接続可能である。ガイド流路の上述の丸み部分を用いて、各可撓性流体ラインを、挿入コンポーネントの端面から挿入コンポーネントの側面まで案内することができる。
【0119】
この実施形態の発展形態では、ガイド流路は、挿入コンポーネントの側面で開口に合流し、当該開口は、好ましくは挿入コンポーネントの長手方向に隣り合って配置され、特に挿入コンポーネントの長手方向で相互に等距離に配置される。挿入コンポーネントの長手方向に隣り合った開口の配置は、開口が挿入コンポーネントの長手方向に延びる共通の直線又は線に沿って延びることを意味すると理解される。換言すれば、開口は、挿入コンポーネントの周方向で相互にオフセットしていない。これは、共通の線に沿って空洞から分岐する複数の構造を多光子レーザアブレーションにより形成することが意図される場合に有利である。形成される構造が相互に等距離に配置される場合、開口も等距離に、すなわち挿入コンポーネントの長手方向で相互に同じ距離に配置される。
【0120】
この実施形態の発展形態として、棒状の挿入コンポーネントは円筒形の形態を有し、好ましくは5mm~10mmの直径を有する。挿入コンポーネントの形状は、この場合は同様に円筒形の形態を有する空洞の形状に一致するよう適合される。空洞の直径は、挿入コンポーネントの直径よりも僅かに大きい。比較的大きな直径を有する円筒形の空洞は、機械加工により、例えば研削により形成することができ、例えば止まり穴の形態であり得る。この場合、挿入コンポーネントは、通常は空洞の端面に当接するまで円筒形の空洞に押し込まれる。このようにして、挿入コンポーネントの長手方向での開口の位置が規定される。挿入コンポーネントはさらに、挿入コンポーネントの側面の開口が、空洞から分岐する構造が始まる点に周方向で対応するように位置決めされるように、位置合わせされるか又は回転させられる。さらに、挿入コンポーネントの端面は、軸方向位置決めを簡略化するために、被加工物の切欠き又は溝に掛止する突出部分、すなわち舌部を有し得る。挿入コンポーネントの挿入前に、例えば中実シリンダの形態のスペーサを空洞内に導入し、挿入コンポーネントを上記スペーサの端面に接触させることができる。このようにして、挿入コンポーネントの長さを短縮することができる。
【0121】
さらに別の実施形態では、少なくとも1つのガイド流路は1mm~4mmの内径を有する。空洞から出る構造は、概して挿入コンポーネントよりも大幅に小さな直径を有する。これにより、挿入コンポーネント内に延びる複数のガイド流路を挿入コンポーネント内に収容することができるので有利である。
【0122】
さらに別の実施形態では、少なくとも1つの流体ラインは1mm以下の外径を有する。上述のように、概して流体が戻るためのギャップが流体ラインと各ガイド流路の壁との間に残る必要である。したがって、流体ラインの外径は、それに対応してガイド流路の内径よりも小さい。
【0123】
挿入コンポーネントは、様々な方法で形成され得る。例として、ガイド流路は、丸み部分を形成するために曲げられるか又は曲げてある管として、例えばステンレス鋼管又はプラスチック管として形成することができる。管の形態のガイド流路、例えばステンレス鋼管又はプラスチック管は、1つにまとめることができ、例えばシリンダの様式の所望の形状を有する挿入コンポーネントを作製するために、適切な材料に成形することができる。
【0124】
代替として、挿入コンポーネントは、付加製造法により作製され得る。この場合、挿入コンポーネントは、通常は3Dプリンティング法を用いて作製された本体からなり、中空構造の形態のガイド流路が付加製造中に形成される。挿入コンポーネントの作製には、金属、プラスチック、又は3Dプリンティングに典型的なガラス状の材料を利用することができる。
【0125】
さらに別の実施形態において、流体供給装置は、少なくとも1つの可撓性流体ラインに流体を供給する流体補給装置を備える。流体補給装置は、流体を補給するための流体リザーバを含み得る。上述のように、流体を比較的高い圧力で流体ラインから出すことが通常は有利である。したがって、流体補給装置の一部であり、対応する高圧を発生するポンプを用いて、流体を可撓性流体ラインに供給することが有利である。
【0126】
さらに別の実施形態において、流体供給装置は、被加工物の材料内の除去フロントの移動を少なくとも1つの可撓性流体ラインにより自動追跡する少なくとも1つの追跡装置を備える。多光子レーザアブレーションの場合、除去フロントは、通常は被加工物の体積内を一定の処理速度で移動する。可撓性流体ラインによる自動追跡も同様に、加工速度で実施される。追跡のために、可撓性流体ラインは、例えばコイル等から一定速度で巻き出されることにより前進する。可撓性流体ラインによる追跡のためには、通常は流体ラインの材料が十分な剪断剛性を有する必要があるが、これは、通常は可撓性流体ラインに用いられる材料の場合である。除去フロントが被加工物の材料内を異なる処理速度で移動する場合、追跡装置は、流体ラインが個々に適合した速度で追跡できるよう設計され得る。
【0127】
本発明のさらに別の態様は、多光子レーザアブレーションによる被加工物からの、好ましくはEUVミラー用の特にモノリシック基板からの材料の除去時に、上述のように設計された流体供給装置により少なくとも1つの除去フロントに流体を供給する方法であって、被加工物の空洞に挿入コンポーネントを挿入するステップと、挿入コンポーネントの少なくとも1つのガイド流路内に案内される少なくとも1つの可撓性流体ラインを通して少なくとも1つの除去フロントに流体を供給するステップとを含む、方法に関する。上述のように、上述のように設計された流体供給装置により、被加工物内での除去フロントの移動時に、可撓性流体ラインは自動的に除去フロントを追跡することができる。
【0128】
一変形形態では、挿入コンポーネントの挿入前に空洞に流体が充填され、流体を充填された空洞から始めて、空洞に隣接する複数の流路部分が多光子レーザアブレーションにより形成される。空洞から始まるか又は分岐する比較的短い流路部分又は他の構造の形成には、可撓性流体ラインを用いた除去フロントへの流体の局所的な供給は通常は必要ない。流路部分の長さが全体として約20mm~40mm以下の場合、空洞全体に、したがって多光子吸収中に形成される流路部分にも流体が充填されれば十分である。通常は、この目的のために、被加工物は流体と共に液体中又は液体浴中に、通常は水浴中に部分的に浸漬される。
【0129】
この変形形態の展開形態では、複数の流路を形成するために、複数の除去フロントが空洞への挿入コンポーネントの挿入後に流路部分の端面から始めて形成されて被加工物の材料内で移動され、複数の可撓性流体ラインが被加工物の材料内での除去フロントの移動を追跡する。
【0130】
被加工物がEUVミラー用の基板である場合、当該被加工物は、流体分配部及び流体回収部として働きそれぞれに挿入コンポーネントが挿入される2つの空洞を例えば有し得る。この2つの空洞は、第1空洞から分岐して第2空洞に開口する複数の流路により流体的に相互接続される。この場合、2つの空洞のそれぞれから、多光子レーザアブレーションにより各流路の長さの約半分に相当する第1又は第2流路部分をそれぞれ形成することが可能である。流路の長さの略中央で、作製中の2つの流路部分の除去フロントが重なり、その結果として連続した流路が生じ、これが流体分配部と流体回収部を接続する。
【0131】
流路がEUVミラー用の冷却流路又は冷却構造である場合、これらは、通常は流体分配部と流体回収部との間を直線状に延びるのではなく角度をなし、概してEUVミラーの光学面から比較的大きな距離を有する流体分配部から始めて流体を表面近傍に輸送する分配流路を有する。通常は冷却水の形態の流体は、冷却流路を形成する流路部分で表面に沿って案内された後に、回収流路で表面から除去され、流体コネクタに供給される。
【0132】
本発明のさらなる利点及び態様は、本発明に必須の詳細を示す図面の図を参照した以下の本発明の実施例の説明と、特許請求の範囲とから明らかとなろう。個々の特徴は、本発明の1つの変形形態において、それぞれ単独で又は複数を任意の組み合わせで実施することができる。
【0133】
例示的な実施形態を概略図に示し、以下の説明で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0134】
図1】EUV投影リソグラフィ用の投影露光装置の子午線断面の概略図を示す。
図2a】冷却流路の形態の中空構造が導入された基板を有するEUVミラーの概略図を示す。
図2b】冷却流路の形態の中空構造が導入された基板を有するEUVミラーの概略図を示す。
図3】アンダカットの形成時にパルスレーザ放射による基板の材料除去加工により図2aの中空構造を形成する装置の概略図を示す。
図4a】基板におけるパルスレーザ放射の入射放射線方向に相互にオフセットした軌道を有する移動パターンの平面図の概略図を示す。
図4b】基板におけるパルスレーザ放射の入射放射線方向に相互にオフセットした軌道を有する移動パターンの側面図の概略図を示す。
図4c図3の装置を用いた斜めの向きの除去フロントの形成を示す概略図である。
図5a】異なるパルスエネルギーでのパルスレーザ放射の集光時に発生する、相互にオフセットした軌道を有する移動パターンの平面図の概略図を示す。
図5b図5aに示す異なるパルスエネルギーでのアブレーションパターンを用いた焦点面へのパルスレーザ放射の集光時に生じる、斜めの除去フロントを有する基板の概略断面図を示す。
図6a】中空構造の形成の3つの異なる段階の1つにおける、ノズル又は可撓性チューブを含む流体供給部を含む図3に類似した概略図である。
図6b】中空構造の形成の3つの異なる段階の1つにおける、ノズル又は可撓性チューブを含む流体供給部を含む図3に類似した概略図である。
図6c】中空構造の形成の3つの異なる段階の1つにおける、ノズル又は可撓性チューブを含む流体供給部を含む図3に類似した概略図である。
図7a】連続した冷却流路の形態の中空構造の作製中の2つのプロセスステップの一方を示す。
図7b】連続した冷却流路の形態の中空構造の作製中の2つのプロセスステップの一方を示す。
図7c】その際に形成されるシーム領域を示す。
図8a】端部分が丸み部分を介して分配流路又は回収流路に合流する冷却流路の形態の複数の温度制御流路を有する中空構造を含む、図1の投影露光装置のミラーの概略断面図を示す。
図8b】端部分が丸み部分を介して分配流路又は回収流路に合流する冷却流路の形態の複数の温度制御流路を有する中空構造を含む、図1の投影露光装置のミラーの概略断面図を示す。
図9a】流路径を同一として曲率半径を異なる4つのうち1つとした、分配流路と冷却流路の端部分との間の丸み部分の概略図を示す。
図9b】流路径を同一として曲率半径を異なる4つのうち1つとした、分配流路と冷却流路の端部分との間の丸み部分の概略図を示す。
図9c】流路径を同一として曲率半径を異なる4つのうち1つとした、分配流路と冷却流路の端部分との間の丸み部分の概略図を示す。
図9d】流路径を同一として曲率半径を異なる4つのうち1つとした、分配流路と冷却流路の端部分との間の丸み部分の概略図を示す。
図10a】流路径を同一として曲率半径を異なる4つのうち1つとした、回収流路と冷却流路の端部分との間の丸み部分の概略図を示す。
図10b】流路径を同一として曲率半径を異なる4つのうち1つとした、回収流路と冷却流路の端部分との間の丸み部分の概略図を示す。
図10c】流路径を同一として曲率半径を異なる4つのうち1つとした、回収流路と冷却流路の端部分との間の丸み部分の概略図を示す。
図10d】流路径を同一として曲率半径を異なる4つのうち1つとした、回収流路と冷却流路の端部分との間の丸み部分の概略図を示す。
図11a】冷却流路の端部分が分配流路又は回収流路に対して鈍角に配置される、図8a、図8bに類似した中空構造を有するEUVミラー用の基板の斜視図を示す。
図11b】冷却流路の端部分と分配流路との間の移行部における丸み部分の概略図を示す。
図12a】分配流路及び回収流路がそれぞれ入口流路及び出口流路に対して鈍角に配置され、丸み部分で入口流路又は出口流路に合流する、図8a、図8bに類似した中空構造を有するEUVミラー用の基板の図を示す。
図12b】分配流路及び回収流路がそれぞれ入口流路及び出口流路に対して鈍角に配置され、丸み部分で入口流路又は出口流路に合流する、図8a、図8bに類似した中空構造を有するEUVミラー用の基板の図を示す。
図12c】分配流路及び回収流路がそれぞれ入口流路及び出口流路に対して鈍角に配置され、丸み部分で入口流路又は出口流路に合流する、図8a、図8bに類似した中空構造を有するEUVミラー用の基板の図を示す。
図12d】分配流路及び回収流路がそれぞれ入口流路及び出口流路に対して鈍角に配置され、丸み部分で入口流路又は出口流路に合流する、図8a、図8bに類似した中空構造を有するEUVミラー用の基板の図を示す。
図13a】複数の冷却流路を有する中空構造を含む図1の投影露光装置のミラーの概略断面図を示す。
図13b】複数の冷却流路を有する中空構造を含む図1の投影露光装置のミラーの概略断面図を示す。
図13c】2つの異なる挿入コンポーネントを含む流体供給装置を用いた中空構造の作製中の図13a、図13bのミラーの概略図を示す。
図14a】可撓性流体ラインを案内するための曲管の形態の複数のガイド流路を有する挿入コンポーネントを含む流体供給装置の第1実施例の概略図を示す。
図14b】可撓性流体ラインを案内するための曲管の形態の複数のガイド流路を有する挿入コンポーネントを含む流体供給装置の第1実施例の概略図を示す。
図14c】可撓性流体ラインを案内するための曲管の形態の複数のガイド流路を有する挿入コンポーネントを含む流体供給装置の第1実施例の概略図を示す。
図15a】挿入コンポーネントが付加製造により形成された流体供給装置の第2実施例の概略図を示す。
図15b】挿入コンポーネントが付加製造により形成された流体供給装置の第2実施例の概略図を示す。
【0135】
以下の図面の説明において、同一又は機能的に同一のコンポーネントには同一の参照符号を用いる。
【0136】
マイクロリソグラフィ投影露光装置1の形態のEUVリソグラフィ用光学装置の必須コンポーネントを、図1を参照して以下で例として説明する。投影露光装置1及びそのコンポーネントの基本構成の説明は、この場合は限定的なものと理解すべきではない。
【0137】
投影露光装置1の照明系2の一実施形態は、光源又は放射源3に加えて、物体面6の物体視野5を照明する照明光学ユニット4を有する。代替的な実施形態において、光源3は、照明系の残りの部分とは別個のモジュールとして設けることもできる。この場合、照明系は、光源3を含まない。
【0138】
物体視野5に配置されたレチクル7が照明される。レチクル7は、レチクルホルダ8により保持される。レチクルホルダ8は、レチクル変位ドライブ9により特に走査方向に変位可能である。
【0139】
説明のために、直交xyz座標系を図1に示す。x方向は図の平面に対して垂直に延びる。y方向は水平に延び、z方向は鉛直に延びる。図1では、走査方向はy方向に延びる。z方向は物体面6に対して垂直に延びる。
【0140】
投影露光装置1は、投影光学ユニット10を備える。投影光学ユニット10は、物体視野5を像面12の像視野11に結像する働きをする。レチクル7上の構造が、像面12の像視野11の領域に配置されたウェハ13の感光層に結像される。ウェハ13は、ウェハホルダ14により保持される。ウェハホルダ14は、ウェハ変位ドライブ15により特にy方向に沿って変位可能である。第1にレチクル変位ドライブ9によるレチクル7の変位、及び第2にウェハ変位ドライブ15によるウェハ13の変位は、相互に同期するように実施することができる。
【0141】
放射源3は、EUV放射源である。放射源3は、特に、以下で使用放射線、照明放射線、又は照明光とも称するEUV放射線16を出射する。特に、使用放射線は、5nm~30nmの範囲の波長を有する。放射源3は、プラズマ源、例えばLPP源、すなわちレーザ生成プラズマ源、又はGDPP源、すなわちガス放電プラズマ源であり得る。これは、シンクロトロンベースの放射源でもあり得る。放射源3は、頭文字でFELとも称する自由電子レーザであり得る。
【0142】
放射源3から出る照明放射線16は、コレクタミラー17により集束される。コレクタミラー17は、1つ又は複数の楕円反射面及び/又は双曲反射面を有するコレクタであり得る。コレクタミラー17の少なくとも1つの反射面に、照明放射線16が斜入射(GI)で、すなわち45°よりも大きな入射角で、又は垂直入射(NI)で、すなわち45°よりも小さな入射角で入射し得る。コレクタミラー17は、第1に使用放射線に対する反射率を最適化するために、第2に外来光を抑制するために、構造化且つ/又はコーティングされ得る。
【0143】
照明放射線16は、コレクタ17ミラーの下流で中間焦点面18の中間焦点を伝播する。中間焦点面18は、放射源3及びコレクタミラー17を有する放射源モジュールと照明光学ユニット4との間の分離を表し得る。
【0144】
照明光学ユニット4は、偏向ミラー19と、ビーム経路でその下流に配置された第1ファセットミラー20とを備える。偏向ミラー19は、平面偏向ミラー、あるいは純粋な偏向効果を超えたビーム影響効果を有するミラーであり得る。代替として又は追加として、偏向ミラー19は、照明放射線16の使用光波長を異なる波長の外来光から分離する分光フィルタの形態であり得る。第1ファセットミラー20は、以下で視野ファセットとも称する複数の個別の第1ファセット21を含む。図1は、当該ファセット21のいくつかのみを例として示す。照明光学ユニット4のビーム経路で、第1ファセットミラー20の下流に第2ファセットミラー22が配置される。第2ファセットミラー22は、複数の第2ファセット23を含む。
【0145】
したがって、照明光学ユニット4は二重ファセットシステムを形成する。この基本原理は、フライアイコンデンサ(フライアイインテグレータ)とも称する。第2ファセットミラー22を用いて、個々の第1ファセット21が物体視野5に結像される。第2ファセットミラー22は、物体視野5の上流のビーム経路で最後のビーム整形ミラー又は実際に照明放射線16に対する最終ミラーである。
【0146】
投影系10は、複数のミラーMiを含み、これらには投影露光装置1のビーム経路におけるそれらの配置に従って連続番号を付す。
【0147】
図1に示す例において、投影系10は、6個のミラーM1~M6を含む。4個、8個、10個、12個、又は任意の他の数のミラーMiでの代替も同様に可能である。最後から2番目のミラーM5及び最終ミラーM6はそれぞれ、照明放射線16用の通過開口を有する。投影系10は、二重遮蔽光学ユニットである。投影光学ユニット10は、0.4又は0.5よりも大きく、0.6よりも大きくてもよく、例えば0.7又は0.75であり得る像側開口数を有する。
【0148】
照明光学ユニット4のミラーと同様に、ミラーMiは、照明放射線16に対して高反射コーティングを有することができる。
【0149】
図2a、図2bは、投影系10のミラーM4を例示的に示し、当該ミラーは、反射コーティング26を塗布された表面27を有する基板25を含む。図示の例では、基板25の材料は、熱膨張係数が非常に小さいチタンドープ石英ガラスである。基板25は、熱膨張係数ができる限り小さい別の材料、例えばガラスセラミックからも形成され得る。これらの材料はゼロ膨張材料であり、正の熱膨張係数を有する成分又は相と負の熱膨張係数を有する成分又は相とが対抗する。これらの材料には、熱膨張がなくなるか、又は温度変化の影響を最も受けにくい温度値が1つだけある。正確には、これがいわゆるゼロクロス温度TZCであり、ZCTとも称する。ここに記載の例では、基板25の材料である、膨張係数が非常に小さいチタンドープ石英ガラスは、0℃~100℃、通常は19℃~40℃、特に19℃~32℃のゼロクロス温度TZCを有する。ゼロクロス温度TZCは、基板25の体積全体にわたって実質的に一定であり、3K未満、2K未満、1K未満、又は0.1K未満の空間的変動を有し、空間的変動は、ゼロクロス温度TZCの最大値と最小値との差を示す。
【0150】
図示の例では、基板25はモノリシック形態を有する。図示の例では、反射コーティング26は、屈折率の実部が異なる材料からなる複数の層対を有し、層は、EUV放射線16の波長が13.5nmの場合、例えばSi及びMoから形成される可能性がある。基板25の表面27は、図2a、図2bでは平面領域として表されているが、曲率も有し得る。
【0151】
図2a、図2bに示す例では、基板25は、流路の形態の連続した中空構造28を有し、矢印で示す温度制御流体、この場合は冷却流体32aの形態の冷却剤がここを流れることができ、温度制御流体は、ここに記載の例では水である。したがって、中空構造28は、以下では冷却流路と称することもある。基板25を加熱する目的で、加熱流体も中空構造28を流れることができることが理解される。冷却流路28は、基板25の裏側29に形成された冷却剤入口30から始めて垂直方向、すなわちXYZ座標系のZ方向に延びる第1部分28aを有する。垂直方向Zは、基板25の厚さ方向Zに対応する。ここに記載の例では、基板25の上側27及び下側29はそれぞれ、厚さ方向Zに対して垂直な向きである。
【0152】
冷却流路28の第1垂直部分28aは、水平方向、すなわちX方向に延びる部分28bに隣接し、ここを通って冷却剤33は、垂直方向に延びて基板25の裏側29の冷却剤出口31に開口する冷却流路28の第3部分28cに流入する。各垂直部分28a、28cと水平部分28bとの間の2つの移行部を除いて、図2aに示す冷却流路の形態の中空構造28は、図示の例では約1mm~5mmのオーダである一定の直径を有する円形断面を有する。図2bに示す連続した冷却流路28が図2aに示す連続した冷却流路28と異なる点は、冷却剤入口30及び冷却剤出口31からそれぞれ始まる垂直部分28a、28cのそれぞれにおける部分が、水平部分28b及び冷却流路28の水平部分28cへの移行部にそれぞれ位置する垂直部分28a、28cの短寸部よりも大きな直径を有することである。
【0153】
冷却剤入口30に冷却剤32aを供給し、冷却剤出口31から冷却剤32aを除去するために、投影露光装置1は、図1に概略的に表す冷却装置32を備える。図示の例では、冷却装置32は、冷却水の形態の冷却剤32aを冷却流路28又はミラーM4に供給する働きをし、この目的で、冷却剤入口30に流体密に接続されたここには図示しない供給ラインを含む。冷却装置32は、冷却剤出口31から冷却水32aを除去するために、ここには図示しない除去ラインも含む。投影系10の他のミラーM1~M3、M5、M6も中空構造28を有することができ、この中空構造28は、冷却目的のために、冷却装置32に接続されるか又はこの目的で設けられたさらなる冷却装置に任意に接続される。原理上は、いかなるミラーも、冷却剤が流れることができる中空構造28を有することができることが理解される。一例として、これは、DUV/VUV波長域、可視波長域及び/又は赤外波長域の放射線を反射するよう設計されたミラーに関し得る。冷却装置32の代わりに、温度制御装置、すなわちミラーM1~M6の冷却及び/又は加熱に用いられる装置を投影露光装置1に設けることもできる。適当な温度制御流体32a、例えば、中空構造28への供給前に所望の温度に加熱される水を加熱に用いることができる。
【0154】
図3に概略的に表す装置33は、図2aに示す冷却流路28を形成する働きをする。装置33は、図3ではダッシュ記号の形態で表すパルスレーザ放射35を生成するレーザ源34を含む。レーザ源34は、ピコ秒のオーダの、例えば10ps未満のパルス持続時間を有するレーザパルスを生成するよう設計された超短パルスレーザ源であり、MW範囲のピークパルス出力を有する。レーザ源34は、近赤外波長域、より正確には1030nmの波長を有するパルスレーザ放射35を生成するよう設計される。しかしながら、レーザ源34は、可視波長域の波長又は基板25の材料が透明である近赤外波長域の別の波長でパルスレーザ放射35を生成するよう設計される可能性もある。
【0155】
装置33は、スキャナ光学ユニット36及び集光装置37も含む。図示の例では、集光装置37はFθレンズとして設計され、パルスレーザビームの形態のパルスレーザ放射を基板25内の焦点領域39に集光する働きをする。スキャナ光学ユニット36は、ビーム入射側27に対して垂直な向きの入射放射線方向Zで、パルスレーザ放射35を基板25のビーム入射側27に放射し、基板25内の焦点領域39を移動させる働きをし、上記スキャナ光学ユニットは、この目的で、2方向に傾斜可能なガルバノミラー40を含む。1つのガルバノミラー40の代わりに、それぞれが1方向に傾斜可能な2つのガルバノミラーがスキャナ光学ユニット36内に配置される可能性もある。ガルバノミラーの代わりに他のタイプのミラー、例えば圧電ミラーを用いることも可能である。
【0156】
上述のように、焦点領域39は、ミラー40を傾けることにより基板25内で移動させることができる。ガルバノミラー40のアライメントが異なる場合に像面湾曲を補正するFθレンズ37の結果として、焦点領域39は、ミラー40が傾けられると、入射放射線方向Zに対して垂直なXY平面内で移動する。したがって、基板25におけるパルスレーザ放射35の入射放射線方向Zは、基板25の厚さ方向Zに実質的に対応する。
【0157】
スキャナ光学ユニット36を用いて、焦点領域39は、図4aに平面図で示すアブレーションパターン41に沿って移動される。アブレーションパターン41は、平行な向きにされ、Y方向に延び、図示の例ではX方向に相互に等距離に配置された複数の直線軌道42を有する。軌道42が相互に同じ距離に配置されることは必須ではなく、隣接する軌道42間の距離は、アブレーションパターン41内でプロセス依存的に変化することもできる。
【0158】
図3に示す冷却流路の垂直部分28aを作製するために、図4aに示すアブレーションパターン41が、スキャナ光学ユニット36を用いて、コーティングされていない基板25の裏側29上のXY平面上に生成される。スキャナ光学ユニット36が図5aに示すアブレーションパターン41を複数回生成する間に、図3に非常に概略的に表し基板25用のホルダ44に作用する位置決め装置43を用いて、基板25は、基板25のビーム入射側27におけるパルスレーザ放射35の入射放射線方向Zの下方に変位する。このようにして、基板25の裏側29から始めて、図3に示す冷却流路28の垂直部分28aが形成される。
【0159】
図3は、冷却流路28の垂直部分28aと冷却流路28の水平部分28bとの間にアンダカット角90°のアンダカットの形態の移行部を形成する場合の、中空構造28の作製ステップを示す。その際に、水平部分を形成するよう材料を除去するために、図3に示すように、パルスレーザ放射35が垂直部分28aの上端に沿って横方向に誘導される場合、これがパルスレーザ放射35とその下の基板25の材料との相互作用につながり、この相互作用は、図3に実線の縦線45で示すように、基板25の材料に変更及び応力を誘発する。
【0160】
この問題は、入射放射線方向Zに対して垂直に向いていない除去フロント46を発生させることにより修正される。図4cに示す例では、除去フロント46は、入射放射線方向Zに対して45°の角度αを有する。しかしながら、入射放射線方向Zに対する角度αは、それよりも大きくても小さくてもよく、例えば、入射放射線方向Zに対して、0°~89°、10°~80°、20°~70°又は30°~60°の値範囲の向きにされ得る。
【0161】
図4cにおいて、冷却流路28の水平部分28bを作製するために、除去フロント46を基板25の放射線入射側27に向かう方向に傾けるが、水平部分28bは、作製前なので図4cでは破線で示されている。冷却流路28の水平部分28bを作製するには、図4cに矢印で示すように、除去フロント46に沿って材料を連続的にアブレーションするために、位置決め装置43を用いて基板25をX方向に変位させる。図4cから同様に明らかなように、除去フロント46の水平X方向の移動中に、基板25の放射線入射側27により近い上記除去フロントの上縁46aは、負のX方向に対応する基板25内の除去フロント46の移動方向に対して45°の角度βに向けられる。放射線入射側27から遠い除去フロント46の下縁46bは、中空構造28の水平部分28bの形成時に、除去フロント46の上縁46aよりも大きく移動方向に突出する。このようにして、除去フロント46の下縁46bのみが基板25の材料に隣接するので、水平部分28bの作製中にパルスレーザ放射35と基板25の材料との相互作用を最小限に抑えることができる。同様に図4cから明らかなように、放射線入射側27での入射後に被加工物25の材料からパルスレーザ放射35が初めて出るのは、除去フロント46の領域である。
【0162】
図4cに示す例では、図4bに示すように、入射放射線方向Zの2つの隣接する軌道42間で、焦点領域39が図示の例では一定である値Δzだけそれぞれオフセットすることにより、傾いた除去フロント46が生じる。入射放射線方向Zに対して45°傾いた除去フロント46に沿った隣接する軌道42間の距離Aは、図示の例では約0.01mm~0.5mm、例えば約0.03mmである。隣接する軌道42の横断間に、入射放射線方向Zにおいて焦点領域39を迅速にオフセットできるようにするために、装置33は、ダイナミックズームレンズの形態である焦点オフセット装置47を含む。焦点オフセット装置47は、入射放射線方向Zのオフセットを発生させるための制御装置48により制御される。制御装置48は、入射放射線方向Zのオフセットを各軌道42に沿った焦点領域39の移動と同期させるために、レーザ源34及びスキャナ装置36を制御する働きもする。図示の例の冷却流路28の円形断面の直径は、約2mmである。
【0163】
図5a、bは、同様に入射放射線方向Zに対して45°の角度αを向いた斜めの除去フロント46を形成するためのさらなる選択肢を示す。図5bから明らかなように、中空構造28を作製する装置33は、焦点オフセット装置を有していない。図5bに示す装置33では、パルスレーザ放射35は、入射放射線方向Zに対して垂直に向いた焦点面FEに集光される。図5aから明らかなように、パルスレーザ放射35のパルスエネルギーEは、図5aに軌道42の線太さの増加で示されるように、除去フロント46を形成するために、焦点面FE内の隣接する軌道42又は対応する走査線間で漸増される。
【0164】
制御装置48は、パルスエネルギーEを増加させるためにレーザ源34に作用する。レーザ源34は、パルスエネルギーEを調整する装置を含み、この装置は、例えば音響光学変調器又は電気光学変調器の形態であり得る。このような変調器は、マイクロ秒以下のオーダの応答時間を有し、アブレーションパターン41の2つの隣接する軌道42間それぞれでパルスエネルギーEを速やかに増加させることができる。図5bから明らかなように、パルスレーザ放射35が基板25の材料に及ぼす影響範囲は、他のパラメータに加えて、パルスエネルギーEに応じて変わる。パルスレーザ放射35の波長及びパルスレーザ放射35のパルス持続時間等の指定のパラメータに応じて、特定の閾値のエネルギー密度又は強度が基板25の材料のアブレーションに必要である。パルスエネルギーEが大きいほど、焦点面FEから始めて材料除去が起こり得る領域の大きさが大きくなる。
【0165】
図5bは、入射放射線方向Zに除去が依然として起こり得る境界49がある、基板25内のエネルギー密度の等値線範囲を示す。図5aの矢印で示されるように、X方向にパルスエネルギーEが漸増する結果として、入射放射線方向Zに境界49を変位させて、入射放射線方向Zに対して45°の角度を向いた図5bに示す除去フロント49を形成することが可能である。その結果、装置33がこの目的で焦点オフセット装置47等の付加的な可動要素を有することなく、斜めの除去フロント46を図5a、図5bと併せて説明したように形成することができる。図3との関連で説明したように、流路28の垂直部分28aは、図5bに矢印で示すように、この場合は基板25のZ方向の下向き移動により形成することもできる。
【0166】
図6a~図6cは、丸み部28d又は湾曲部で相互に合流する垂直部分28a及び水平部分28bを有する、屈曲した中空構造28の形成の3つの段階を示す。この場合、中空構造28を作製する装置33は、図4a~図4cのように設計され、すなわち、斜めの除去フロント46を形成するために焦点オフセット装置47を含む。図6aから明らかなように、垂直流路部分28aは、基板25を下方に変位させる結果として除去フロント46が基板25内で移動して基板25の材料が連続的にアブレーションされる一方でスキャナ光学ユニット36は固定のままであることにより、第1段階で形成される。材料除去に最も重要なのは、除去フロント46と基板25との間の相対移動なので、基板25内で除去フロント46を移動させるために、代替的に基板25が入射放射線方向Zに固定のままでスキャナ光学ユニット36を上方に移動させてもよい。原理上は、基板25及びスキャナ光学ユニット36のZ方向の重畳移動も可能である。
【0167】
除去された材料は、流体供給部50を用いて除去フロント46から除去される。図示の例では、流体供給部50は固定ノズル51を含み、そこから液体、図示の例では水32bが出て垂直方向に流出し、除去フロント46に供給される。ノズル51が鉛直方向上向きであることにより、除去フロント46からの除去粒子の目標通りの除去が可能となり、除去粒子は、重力の作用によりノズル51と中空構造28の垂直部分28aの壁面との間のギャップを通って除去される。このようにして、除去フロント46には堆積物が実質的になく、除去を間断なく実施することができる。同時に、液体32bを供給することにより、除去フロント46又は処理ゾーンの能動的な冷却が可能であり、その結果として基板25内の残留熱が低減される。液体32bを供給する代わりに、流体供給50を用いてガス、例えば圧縮空気を除去フロント46に供給することもできる。
【0168】
図6bは、中空構造28の作製中の、中空構造28の垂直部分28aと水平部分28bとの間に90°の移行部を形成する中空構造28の丸み部分28dが形成される段階を示す。丸み部分28dの形成時に、矢印で示すように、基板25はZ方向への変位に加えてX方向にも変位するが、45°に傾斜した除去フロント46は依然として上述の方法で形成される。
【0169】
丸み部分28dにより、図6cに示すように、中空構造28の水平部分28bの作製中に除去フロント46を追跡する可撓性チューブ52を、中空構造28に導入することができる。このようにして、水平部分28bの作製中でも、除去生成物を除去フロント46から効果的に除去することができる。チューブ52による継続的な追跡の結果として、中空構造28の達成可能な長さは、基板25のサイズ及びチューブ52の長さのみにより制限される。
【0170】
除去フロント46の上述の傾斜は、パルスレーザ放射35による材料除去加工により、例えば直線状の流路の形態の中空構造を作製する場合には、必ずしも行う必要はない。直線状に延びる長さが比較的長い流路28の形態の中空構造を作製することが意図される場合でも、リンス液32bを除去フロント46に供給するために、流体供給部50又は流体供給部50の一部を流路28に少なくとも部分的に導入する必要がある。この目的で、流体供給部50は、例えば、流路28内に少なくとも部分的に導入される剛性管等を含み得る。特に湾曲した流路28を形成すべき場合には、流体供給部50は、例えば可撓性チューブ52の形態の可撓性要素を含むことができ、当該可撓性要素は、その自由端で除去フロント46を追跡するために流路28内に少なくとも部分的に導入される。チューブ52の自由端にはノズルが取り付けられ得るが、これは必須ではない。
【0171】
同様に図6cから明らかなように、中空構造28の水平部分28bの作製中の基板25の材料は、基板25の放射線入射側27から遠い除去フロント46の縁46bの側面46cに隣接しており、すなわち基板25の材料は、図6cでは除去フロント46の下縁46bの下方に位置する。さらに、中空構造28の水平部分28bの作製時に、除去フロント46の領域から出るか又は除去フロント46から中空構造28内に発せられるレーザ放射35の一部は、基板25の材料に再入射し、正確には、図6cでは流路28の形態の中空構造の側面の下縁に再入射する。
【0172】
同様に図6cから明らかなように、除去フロント46は、図示の例では円筒形である流路28の側面57との角度β’を含み、この角度は以下では除去フロント角度とも呼ばれる。流路28の作製中に、除去フロント角度β’は、通常は少なくとも断続的に1°、5°、10°、20°、又は30°の除去フロント最小角度よりも大きく、少なくとも断続的に89°、85°、80°、70°、又は60°の除去フロント最大角度よりも小さい。流路28の作製中の除去フロント角度β’は、除去フロント最小角度よりも恒久的に大きく且つ/又は除去フロント最大角度よりも恒久的に小さくてもよいが、これは必須ではない。
【0173】
図7a、図7bは、図6a~図6cと併せて説明した段階から続く、中空構造28の作製中のさらなる2つの段階又はステップを示す。図7aから明らかなように、図6aに示す段階に対応する方法で、基板25の裏側29から始めて、中空構造28のさらなる垂直部分28cが作製され、それにさらなる丸み部分28eが続く。図7aに示す中空構造28の形成段階では、図6aに比べて、除去フロント46の向きが鏡像反転され、水平部分28bを形成するために基板が負のX方向に変位される。図7bから明らかなように、鏡像反転された除去フロント46’を、当該鏡像反転された除去フロントが中空構造28の水平部分28bの加工済み部分に到達するまで連続加工により水平方向に変位させ、連続した水平部分28bが作製されて流路の形態の中空構造28が開通するようにする。
【0174】
シーム領域53が流路28の開通時に生じ、当該シーム領域は、流路28の各部分の作製中に形成されたそれぞれ最後の除去フロント46、46’に対応する図7bの2つの隣接する破線の領域に延びる。シーム領域53における流路28の性質、より正確には流路28の壁の性質は、少なくとも1つの特性がシーム領域外の流路28の壁の性質と異なるか、又はシーム領域53は、残りの流路28に対して少なくとも1つの構造変更を有する。
【0175】
図7cは、そのような構造変更の3つの例を示す。図7cに示す例では、まず、シーム領域53の流路28の壁の表面構造は、シーム領域53の表面構造上で除去フロント46の縁輪郭54が観察可能であるという点で、シーム領域53外の流路28の壁の表面構造とは異なる。他の除去フロント46’の縁輪郭も、シーム領域53の流路28の表面構造に部分的に書き込まれているが、これは図7cには図示されてない。除去フロント46の縁輪郭54は、図示の例では楕円状に延び、流路28の側面に対して約45°の角度、すなわち除去フロント46自体と同じ角度に向けられる(図6c参照)。
【0176】
図7cに示す例では、シーム領域53の流路28の壁に4つのバルジ55がさらに形成され、バルジはそれぞれが流路28の断面を局所的に大きくする。流路28の断面を小さくするバルジも同様に可能である。さらに、流路28の壁は、シーム領域53の段差の様式で僅かな横方向オフセット56を有し、これは、流路28の2つの部分の断面積が僅かに異なることに起因し得る。横方向オフセットは、連続した開口の形成時の流路28の2つの部分の僅かにずれた位置決めの結果としも生じ得る。バルジ55及び横方向オフセット56の両方が、明確化のために誇張して表されていることが理解される。
【0177】
パルスレーザ放射35による材料除去加工の結果として、基板25に湾曲した流路28の形態の中空構造を作製することができ、当該中空構造は、1mm~20mm、特に1mm~5mmの直径D、及び/又は10cm以上、15cm以上、20cm以上、又は70cm以上の長さLを有する。図7bに示す流路28は、20cmを超える長さL及び5mmの直径Dを有する。基板25のゼロクロス温度TZCは、上記で指定した値範囲内であり、モノリシック基板25の体積において事実上一定である。すなわち、ゼロクロス温度の変動ΔTZC、すなわち基板25の体積における最大ゼロクロス温度と最小ゼロクロス温度との差も、同様に上記で指定した値範囲内である。
【0178】
図2a、図2bと併せて説明したように、冷却液の通過に用いることができる中空構造28が、上述のように形成される。上述のものとは異なり、裏側除去は、基板25の裏側29からではなく、基板25のビーム入射側27とは反対で基板25内に配置された側からも開始することができる。例として、これは、中空構造28の2つの垂直部分28a、28cの作製の起点となる図2bに示す縦孔の上端であり得る。この場合、中空構造28は、基板25の機械加工をパルスレーザ放射35による材料除去加工と組み合わせたハイブリッド作製法を用いて作製される。縦孔ではなく、異なる向きの孔又は空洞が、パルスレーザ放射35を用いた中空構造28の上述の形成の起点として働き得ることが理解される。
【0179】
要約すると、高アスペクトの垂直及び水平の巨視的な中空構造を、上述のようにしてEUVミラーの基板25に導入することができる。水平又は垂直の向きから逸脱する中空構造又は中空構造の部分も、このようにして作製できることが理解される。中空構造を形成するために上述したように加工することができるのが、投影系10のミラーM1~M6のうちの1つだけでなく任意の他のミラー、特にEUVミラーでもあることが理解される。単一の連続した冷却流路28よりも複雑な中空構造、例えばY分岐点又はT分岐点を有する中空構造も、上述の方法により形成することができる。分岐点を有する中空構造も、上述の方法で形成することができ、それによる基板の材料の損傷も応力の発生もない。
【0180】
図8a、図8bは、投影系10の一部であるモノリシック基板125を備えたミラーM4の実施形態のさらに別の例を示す。図示の例では、基板125の材料は、熱膨張係数が非常に小さいチタンドープ石英ガラスである。基板125は、熱膨張係数ができる限り小さい別の材料、例えばガラスセラミックからも形成され得る。基板125のゼロクロス温度TZCは、上記で指定した値範囲内であり、モノリシック基板125の体積において事実上一定である。すなわち、ゼロクロス温度の変動ΔTZC、すなわち基板125の体積における最大ゼロクロス温度と最小ゼロクロス温度との差も、同様に上記で指定した値範囲内である。
【0181】
EUV放射線16を反射する反射コーティング126が、基板125の表面125aに塗布される。反射コーティング126内に位置付けられた表面125aの一部には、投影系10のEUV放射116が当たり、この部分はここには図示しない反射コーティング126の光学的使用部分を形成する。EUV放射線16を反射するために、反射コーティング126は、例えば、屈折率の実部が異なる材料からなる複数の層対を有することができ、層は、EUV放射線16の波長が13.5nmの場合、例えばSi及びMoから形成される可能性がある。
【0182】
基板125は、図示の例では水である流体128が流れることができる中空構造127を有する。図8aに矢印で示す流体128は、中空構造127の一部を形成する複数の冷却流路131を通って流れるように、側面の入口開口129を介して基板125に入り、こうして反射コーティング126を塗布された基板125の表面125aを特に冷却する。
【0183】
流体128を入口開口129に供給し、流体128を図8a、図8bには図示しない出口開口から除去するために、投影露光装置1は、冷却装置の形態である上述の温度制御装置32を備える。図示の例では、冷却装置32は、冷却水の形態の流体128を中空構造127又はミラーM4に供給する働きをし、この目的で、入口開口129に流体密に接続されるここには図示しない供給ラインを含む。冷却装置132は、基板125の出口開口を介して、又は中空構造127から冷却水を除去するために、ここには図示しない除去ラインも含む。
【0184】
図8aから明らかなように、流体128は、入口開口129を介して中空構造127の入口流路133に入り、当該入口流路は流体分配部を形成し、そこから、以下で冷却流路131と称する複数の温度制御流路の1つにそれぞれが接続された複数の分配流路134が分岐する。冷却流路131は、図示の例では平面である基板125の表面125aから約5mmの距離A’に配置され、表面125aに平行に、すなわちXYZ座標系のXY平面に平行に延びる。冷却流路131は、直線状に延び、平行に向けられ、Y方向に対応する長手方向に、基板125の表面125aのコーティング126で覆われた部分の略全体にわたって延びる。図8bを参照されたい。冷却流路131から、流体128は、複数の回収流路136を介して、図8bに示す例では出口流路135として形成される流体回収部へと流れる。出口流路135は、図8a、図8bには図示しない上述の出口開口を有し、これを介して流体128が基板125の中空構造127から出る。
【0185】
図8bから明らかなように、中空構造127は、各分配流路134が冷却流路131に合流する第1丸み部分137aを有する。したがって、中空構造127は、各冷却流路131が回収流路136に合流する第2丸み部分137bも有する。図示の例では、冷却流路131は、Y方向に対応する水平方向に直線状に延び、分配流路134及び回収流路136は、Z方向に対応する垂直方向に直線状に延びる。したがって、冷却流路131の長手方向軸は、分配流路134及び回収流路136に対して90°の角度γに向けられる。丸み部分137a、137bは、丸みのない「角状の」90°ベンドの場合に発生するような乱流の発生を回避するか又は少なくとも大幅に低減するために、できる限り流線形の流れ誘導を生じさせる働きをする。乱流の低減は、結果として反射光学素子M4の流動励起振動の低減をもたらす。
【0186】
図9a~図9d及び図10a~図10dに示すように、90°ベンドにおける最適化された流れ誘導のためには、丸み部分137a、137bが一定の曲率半径Rを有すれば有利である。最適な流れ誘導に不可欠なパラメータは、丸み部分137a、137bの曲率半径Rと流路径Dとの比により表される。
【0187】
図9a~図9dは、丸み部分137aの曲率半径Rと丸み部分137Aの直径Dとの4つの異なる比の場合の、各冷却流路131の端部分131aと端部分131aに隣接する分配流路部分134aとが相互に隣接する第1の丸み部分137aを示す。この場合、曲率半径Rは、図9a~図9dに示すように丸み部分137aの中心で測定される。丸み部分137aの直径Dは、図示の4つの例全てで5mmである。この場合の丸み部分137aの直径Dは、分配流路134の直径D及び冷却流路131の直径Dに対応する。長さLは、図9a~図9dの説明図では約50mmである。図9a~図9dか明らかなように、R/D比は、図示の4つの例ではそれぞれR/D=2、R/D=3、R/D=4、R/D=5である。
【0188】
図9a~図9dと同様に、図10a~図10bは、各冷却流路131の端部分131bと端部分131bに隣接する回収流路部分136aとが相互に合流する第2丸み部分137bを示す。丸み部分137bの直径Dは、図10a~図10dでは10mmである。図10a~図10dの説明図では、長さLは約60mmである。図10a~図10dの説明図において、R/D比は、図示の4つの例ではそれぞれR/D=2、R/D=3、R/D=4、R/D=5である。各丸み部分137a、137bの直径Dは、通常は2mm~20mmであり、理想的には2mm~12mmである。
【0189】
上述のように、各丸み部分137a、137bの曲率半径Rと直径Dとの間には、丸み部分137a、137bの外側における流動流体128の圧力が丸み部分137a、137bの内側に比べて極僅かにしか上昇しないように遠心力が作用し、これにより丸み部分137a、bの上流及び下流で境界層剥離の低減を達成することができる最適な比がある。図9a~図9d及び図10a~図10dは、流動流体128の乱流運動エネルギーが指定値を超える領域の輪郭を示す。この場合、流体128は、分配流路部分134aから又は回収流路部分136aから、冷却流路131の各端部分131a又は131bに流入すると仮定した。
【0190】
この目的で、丸み部分137a、137bの曲率半径Rと丸み部分137a、137bの直径Dとの比は、2~6以下、より好ましくは2.5~5、理想的には2.5~3.5が特に有利であると分かった。R/D比が2未満の場合、境界層剥離の有意な低減は通常はあり得ない。R/D比の最適値は典型的には2.5~3.5だが、最適値は場合によってはこの値範囲外でもあり得る。R/D比が6.0を超える場合、通常は流動挙動が悪化する。
【0191】
実際には、丸み部分137a、137bは、上述のように、モノリシック基板125に従来の加工方法を用いて作製することはできない。図示の例では、入口流路133及び出口流路135のみが、従来の加工方法により、正確にはそれぞれの穴が基板125に導入されることにより作製される。これに対して、分配流路134、冷却流路131、及び回収流路136は、基板25の材料のレーザアブレーションにより作製され、レーザアブレーションについては後述する。
【0192】
中空構造127の分配流路134、冷却流路131、及び回収流路136を作成するために、反射コーティング126の塗布前に、パルスレーザビームを、基板125の表面125aから基板125の材料を通して入口流路133の上側に放射してそこに集光させ、基板25の厚さ方向Zに対して45°の角度を向いた除去フロント130aを形成する複数の平行なアブレーション経路を有する移動パターンを生成する。この位置から、基板125の材料のアブレーション及び分配流路34の形成のために、除去フロント130aを、基板125に対してZ方向に対応する厚さ方向に複数回変位させる。変位中に、除去フロント130aは固定のままであってもよく、除去フロント130aが第1丸み部分137aの真下に位置するまで、基板125をZ方向上方に変位させる。
【0193】
第1丸み部分137aを作製するために、除去フロント130a又は基板125を、Z方向及びY方向の両方向の重畳移動で変位させる。第1丸み部分137aの形成後に、当該冷却流路131又は分配流路134に隣接する当該冷却流路131の端部分131aを形成するために、Z方向に対応する厚さ方向に対して45°を向いた除去フロント130aは、当該除去フロントが冷却流路131の長手方向の略中央に位置するまで、Y方向に対応する冷却流路131の長手方向に変位させられるだけである。
【0194】
回収流路136、第2丸み部分137b、及び冷却流路131の後半又は第2丸み部分137bに隣接する端部分131bの作製は、出口流路135から始まるレーザアブレーションにより同様に実施され、出口流路135の上側にパルスレーザ放射を最初に基板125を通して集光させる。その際に形成されるさらなる除去フロント30bは、同様に基板25の厚さ方向又はXY平面に対して45°に向けられるが、上述の除去フロント130aに対してXZ平面に関して鏡像反転される。パルスレーザビーム又はパルスレーザ放射の厚さ方向又は入射放射線方向Zに対して角度をなす除去フロント130a、130bの向きは、図4a~図4c及び図5a、図5bとの関連で上述したように通常は実施される。各除去フロント130a、130bからアブレーションされた材料を除去するため又は冷却目的のために、流体が各除去フロント130a、130bに供給される。流体の供給は、通常は図6a~図6cとの関連で説明したようにして、流体供給部により、すなわち中空構造127内への流体供給部の少なくとも部分的な導入により実施される。
【0195】
上述の中空構造127において、丸みがあるのは2つの部分137a、137bのみであり、分配流路134、回収流路136、及び冷却流路131は直線状に延びる。しかしながら、より複雑な中空構造127も、上述のレーザアブレーション法を用いて作製することができる。図11a、図11bは、基板125におけるそのような中空構造127の一例を示し、この中空構造127は、図8a、図8bに示した中空構造127に実質的に対応する。中空構造127が図8a、図8bの中空構造127と異なる点は、冷却流路131が、図示の例では凸状に湾曲している表面125aの曲率に従う若干の曲率を有することである。図11bに示す例では、分配流路134に隣接する各冷却流路131の端部分131aは、約115°の角度γに向けられる。冷却流路131がZX平面内に延びる曲率を有するにもかかわらず、丸み部分131aに隣接する端部131aについて角度γを規定する長手方向軸を規定することが可能である。図11a、図11bには図示しない第2丸み部分137bは、第1丸み部分137aに対応するようにして具現化されることが理解される。それぞれの丸み部分137a、137bの曲率半径Rと直DとのR/D比は、通常は上述の値範囲内である。
【0196】
図12a~図12dに示す基板125の場合、中空構造127は、図8a、図8bに示す中空構造127のように実質的に設計されるが、分配流路134及び回収流路136が垂直方向に延びておらず、基板125の厚さ方向Zに対して約25°の角度に向けられている点で後者とは異なる。図8a、図8bに示す中空構造127のように、図12a~図12dに示す中空構造127は、各分配流路134又は回収流路136と冷却流路131との間に、ここには図示しない2つの丸み部分137a、137bを有する。分配流路134又は回収流路136と冷却流路131との間の角度γは、この場合も90°だが、入口流路133の長手方向軸線と各分配流路134との間の角度γ’が約115°であることを示す図12dから明らかなように、厚さ方向Zに対して約25°傾斜した平面内に延びる。
【0197】
図12a~図12dに示す中空構造127は、各分配流路134の合流部分134bが入口流路134に、より正確には入口流路134の分岐部分134aに移行する、又は各回収流路136の合流部分136bが出口流路135の分岐部分135aに移行する、丸み部分138を有する。図示の例では、各丸み部分138は、一定の直径又は流路断面を有さず、その代わりに、流路断面は、分岐部分134aから始まって小さくなる。丸み部分138は、各分配流路134又は回収流路136と各冷却流路131との間に延びる2つの湾曲部分137a、137bの場合のように、一定の曲率半径Rを有しない。したがって、直径Dに対する曲率半径Rの最適化された比を指定することはできない。丸み部分138は、上述のレーザアブレーション法を用いて作製することもできる。
【0198】
少なくとも1つの丸み部分137a、137b、138を有する中空構造127は、上述の例に限定されるものではなく、原理上は、1つ又は複数のそのような部分を有する他のより複雑な中空構造127も、基板125を通って延び得ることが理解される。さらに、図11a、図11bとの関連で説明したような曲率を有する冷却流路131だけでなく、分配流路134及び回収流路136もまた、湾曲して延びていてもよい。
【0199】
図13a、図13bは、投影系10の一部である、図示の例ではモノリシック基板225を有するミラーM4のさらに別の例を示す。図示の例では、基板225の材料は、熱膨張係数が非常に小さいチタンドープ石英ガラスである。基板225は、熱膨張係数ができる限り小さい異なる材料、例えばガラスセラミックからも形成され得る。
【0200】
反射コーティング226は、モノリシック基板225の表面225aに塗布される。反射コーティング226内に位置付けられた表面225aの一部には、投影系10のEUV放射線16が当たり、この部分はここには図示しない反射コーティング226の光学的使用部分を形成する。EUV放射線16を反射するために、反射コーティング226は、例えば、屈折率の実部が異なる材料からなる複数の層対を有することができ、層は、EUV放射線16の波長が13.5nmの場合、例えばSi及びMoから形成される可能性がある。
【0201】
基板225は、図示の例では水である流体228が流れることができる中空構造227を有する。図13aに矢印で示す流体228は、中空構造227の一部を形成する複数の冷却流路231を通って流れるように、側面の入口開口229を介して基板225に入り、こうして反射コーティング226を塗布された基板225の表面225aを特に冷却する。
【0202】
流体228を入口開口229に供給し、流体228を図13cには図示しない出口開口から除去するために、投影露光装置1は、図1に非常に概略的に示す冷却装置32の形態の上述の温度制御装置を備える。図示の例では、冷却装置32は、冷却水の形態の流体228を中空構造227又はミラーM4に供給する働きをし、この目的で、入口開口229に流体密に接続されるここには図示しない供給ラインを含む。冷却装置32は、基板225の出口開口を介して、又は中空構造227から冷却水を除去するために、ここには図示しない除去ラインも含む。投影系10の他のミラーM1~M3、M5、M6及び照明系2のミラーも、冷却の目的で、冷却装置32に接続されるか又はこの目的で設けられたさらなる温度制御装置又は冷却装置に任意に接続される。
【0203】
図13aから明らかなように、流体228は、入口開口229を介して中空構造227の入口流路233に入り、当該入口流路は流体分配部を形成し、そこから、複数の冷却流路231の1つにそれぞれが接続された複数の分配流路234が分岐する。冷却流路231は、図示の例では平面である基板225の表面225aから約2mm~約5mmの距離A’に配置され、表面225aに平行に、すなわちXYZ座標系のXY平面に平行に延びる。冷却流路231は、直線状に延び、平行に向けられ、長手方向に、すなわち長手方向に、基板225の表面225aのコーティング226で覆われた部分の略全体にわたって延びる。図13bを参照されたい。冷却流路231から、流体228は、複数の回収流路236を介して、図13bに示す例では円筒形の第2空洞235として形成される流体回収部へと流れる。流体228は、出口開口230を介して基板225の中空構造227から出る。図示の例では、冷却流路231は、X方向に対応する水平方向に直線状に延び、分配流路234及び回収流路236は、Z方向に対応する垂直方向に直線状に延びる。したがって、冷却流路231の長手方向軸は、分配流路234及び回収流路236に対して90°の角度に向けられる。しかしながら、このような向きは必須ではない。
【0204】
図13a~図13cに示す中空構造227を作製するために、以下の手順が実行される。最初に、流体分配部及び流体コネクタを形成する2つの円筒形の空洞233、235を、機械加工により、例えば研削又は超音波研削により基板225の材料に導入する。その後、基板225を液浴に、より正確には水浴に浸漬させ、その結果として水の形態の流体228が入口開口228を通して流体分配部の空洞233に入り、出口開口230を通して流体回収部の空洞235に入り、これらの空洞を満たす。流体238を充填された各空洞233、235から始めて、図13cから明らかなように、空洞233、235に隣接する複数の短い流路部分237を多光子レーザアブレーションにより作製する。
【0205】
流路部分237を作製するために、複数のパルスレーザビームを、基板225の表面225aから始めて基板225の材料を通して流体分配部を形成する空洞233の表面に放射してそこに集光させる。したがって、空洞233の上側は、表面225aの形態の基板225の放射線入射側とは反対の側を形成する。各照射パルスレーザビームにより、Z方向に相互にオフセットして基板225の厚さ方向Zに対して約45°の角度を向いた除去フロント230aを形成する複数の平行なアブレーション経路を有する移動パターンで、焦点領域を移動させる。照射レーザビームの焦点位置を、Z方向で変更し、Z方向のアブレーション経路のオフセットをもたらす。
【0206】
流路部分237が始まる空洞233の表面上の点から始めて、基板225の材料のアブレーション及び流路部分237の形成のために、除去フロント230aを、基板225に対して厚さ方向、すなわちZ方向に複数回変位させる。変位中に、除去フロント230aは静止したままであってもよく、除去フロント230aが空洞233の上側から約20~40mmの距離を有するまで、基板225をZ方向下方に変位させる。多光子レーザアブレーションにより長さが比較的長い流路部分237を形成するために、以下でさらに詳細に説明するように、除去フロント230aを流体228で局所的に洗浄する必要がある。流体回収部を形成する空洞235から始まる流路部分237の作製は、多光子レーザアブレーションにより対応する方法で実施される。その際に形成されるさらに別の除去フロント230bは、同様に基板225の厚さ方向又はXY平面に対して約45°に向けられるが、上記除去フロント230aに対してXZ平面に関して鏡像反転される。
【0207】
図13a、図13bに示す中空構造227を形成するために、基板225を液浴から取り出し、液体228を空洞233、235から除去する。残りの中空構造227を形成するために、流体供給装置238を利用して水の形態の流体228を各除去フロント230a、230bに供給するが、これは図13cに非常に概略的に示されている。流体供給装置238は、2つの挿入コンポーネント239、240及び複数の可撓性流体ライン24を含む。図示の例では、流体供給装置238は7本の流体ライン241を含む。流体ライン241は、流体供給装置238の流体補給装置243に接続され、流体補給装置243は、概して数バールの圧力で可撓性流体ライン241内の流体228を圧送するポンプを有する。流体供給装置243は、中空構造227を形成するために除去フロント230a、230bを基板225内で移動させる際に、可撓性流体ライン241を追跡するのに、より正確には押し進めるのに役立つ追跡装置244も含む。例として、追跡装置244は、各可撓性流体ライン241の一部を巻き上げるリール等を含み得る。追跡の目的で、リールは、除去フロントの移動速度に対応する一定の角速度で回転させることができる。追跡装置244は、異なる形態で形成されてもよいことが理解される。
【0208】
中空構造277を形成するために、棒状且つ円筒形の第1挿入コンポーネント239を、当該挿入コンポーネントの端面が止まり穴を形成する第1空洞233の端に当接するまで、入口開口部229を通して第1空洞233内に導入する。挿入コンポーネント239の側面245に形成された開口246が、開口246の数に対応する数の流路部分237が開始又は分岐する空洞233の壁上の位置に配置されるように、挿入コンポーネント239を周方向で位置合わせする。挿入コンポーネント239の周方向の位置合わせは、棒状の挿入コンポーネント239の端面239aに横方向突出部分が設けられること(図13c参照)により実施することもでき、この突出部は、図13bに破線を用いて示すように、舌部として働き基板225の側面の対応する形状の溝に係合する。
【0209】
可撓性流体ライン241を流路部分237に導入するために、挿入コンポーネント239は、図示の例では7つのガイド流路247を含む。図14を参照されたい。挿入コンポーネント239は、より多い又はより少ない数のガイド流路247を有することもできることが理解される。図13cに示す挿入コンポーネント239をその端面239aの平面図で示す図14aから明らかなように、ガイド流路247の6つは、中央ガイド流路247の周りに配置されている。図14a~図14cに示す例では、ガイド流路247は、挿入コンポーネント39の直径D’、図示の例では約9mmを規定する固体材料248に埋め込まれ又は鋳込まれたステンレス鋼管である。円筒形の空洞233の、より正確にはその内壁233aの直径Hは僅かに大きく、約10mmである。各ガイド流路247の内径dは約2mmである。可撓性流体ライン241の内径Fは約1mmである。
【0210】
図14aから明らかなように、各流体ライン241は、それぞれのガイド流路247の中央に延びる。リングギャップ249が、流体ライン241とそれぞれのガイド流路247の内壁247aとの間に位置する。リングギャップ249は、可撓性流体ライン241を通って各除去フロント230a、230bに供給される流体228を戻す働きをする。戻された流体228は、挿入コンポーネント239の端面239aから出てそこから除去される。
【0211】
図14bから明らかなように、挿入コンポーネント239の各ガイド流路247は、可撓性流体ライン241が棒状の挿入コンポーネント239の側面245の各開口246から出ることができるように、可撓性流体ライン241の配列を、挿入コンポーネント239のY方向に対応する長手方向からそれに対して垂直な方向に変えるための丸み部分250を有する。丸み部分250は、ガイド流路247を形成する各ステンレス鋼管を曲げることにより作製される。
【0212】
図13c及び図14cから明らかなように、挿入コンポーネント239の側面245の開口246は、挿入コンポーネント239の長手方向、すなわちY方向に対応する共通の線に沿って配置される。流路部分237も同様に、空洞233の長手方向、すなわちY方向に対応する共通の線に沿って延びるので、通常はこれが必要である。側面245の隣接する開口246間の距離A’’は、基板225の2つの隣接する流路部分237間の距離に対応する。流路部分237及び挿入コンポーネント239の側面の開口246が、共通の線に沿って延びることは必須ではなく、共通の線に沿ったこのような配置からの逸脱が可能である。
【0213】
側面245の開口246を長手方向に隣り合って配置するためには、ガイド流路247を異なる長さで設計し、湾曲部分250を相互に対して捻ることが通常は必要であり、これは、付加製造法により作製されたという点で図14a~図14cに示す挿入コンポーネント239とは異なる挿入コンポーネント239を示す図15a、図15bから極めて明らかである。図15a、図15bに示す挿入コンポーネント239は、付加製造中にガイド流路247が形成された円筒形の本体からなる。
【0214】
挿入コンポーネント239の側面245を越えて突出する、図15bに示す流体ライン241の自由端は、流体供給装置238の動作中に流路部分237内に突出する。図13cに破線を用いて示す中空構造227の部分を形成するために、形成済みの流路部分237の端面に、パルスレーザ放射の照射による除去フロント230a、230bを作製する。形成済みの流路部分237の端面は、放射線入射側とは反対の側を形成し、そこから始めて、除去フロント230aが水平方向に延びる冷却流路231と同じ高さになるまで、基板225をZ方向下方に変位させることにより、除去フロント230a、230bを基板225に対して移動させる。代替として、例えば、基板225自体は静止したまま除去フロント230aを基板225内で移動させるために、照射されたパルスレーザ放射の焦点位置を除去フロント230aに沿った全ての点で同じ値だけ上方にオフセットさせることができる。
【0215】
水平な冷却流路231を形成するために、基板225の厚さ方向、すなわちZ方向に対して、又はパルスレーザ放射の入射放射線方向に対して約45°に向けられた除去フロント230aを、冷却流路231の略中央に位置するまで、冷却流路231の長手方向、すなわちX方向に変位させる。この場合、基板225は通常は静止しており、除去フロント230aを水平方向に変位させるために、基板225にレーザビームを放射するための光学ユニットを適切な方法で変位及び移動させる。
【0216】
ここには図示しないさらに別の流体供給装置のさらに別の挿入コンポーネントを用いて、基板225を下方に変位させることにより、又は基板225が静止したまま照射されたパルスレーザ放射の焦点位置を除去フロント230bの各点において一定値だけ上方に変位させることにより、通常は複数7つの回収流路235を第2の空洞235から始めて多光子レーザアブレーションにより同時に作製する。その後、基板225を静止させたまま、除去フロント230bをY方向に移動させる。2つの除去フロント230a、230bは、例えば長さが約400mmであり得る各冷却流路231の略中央で重なり、その結果、連続した冷却流路231が形成され、分配流路234により流体分配部として働く第1空洞233に接続され、回収流路236により流体回収部として働く第2空洞235に接続される。
【0217】
上述のようにして、7つの分配流路234、冷却流路231、及び回収流路236を同時に作製することが可能であり、その結果、中空構造227の作製に要する時間を大幅に短縮することができる。図13cに示す中空構造227の残りの7つの分配流路234、冷却流路231、及び回収流路236を作製するために、図13cに示す挿入コンポーネント240を利用することができ、その場合、流体ライン241を出すための開口部246’は、第1挿入コンポーネント239の開口246に対してオフセットされる。第2挿入コンポーネント240を第1空洞233に挿入することにより、7つの分配流路234、冷却流路231、及び回収流路236の第2群の作製は、第1群の形成と同様に実施される。
【0218】
図13cに示すのとは異なり、第2挿入コンポーネント240は、第1挿入コンポーネント239よりも長さが短くてもよいことが理解される。この場合、例えば中実シリンダの形態のスペーサを空洞233に導入した後に第2挿入コンポーネント240を導入し、挿入コンポーネント240を押し込むと上記スペーサの端面に当接するようにすることができる。代替として、挿入コンポーネント240の端面にある1つ又は複数の突出部分が、ストッパとして、又は空洞233への導入時に第2挿入コンポーネント240の移動を制限するための当接面として働き得る。第2挿入コンポーネント240の端面に取り付けられたストッパも、上述のように第2挿入コンポーネント240を周方向に適切に位置合わせするために、舌部として働き基板225の外側の対応する溝に係合することもできる。
【0219】
図13cに示す複雑な中空構造227の作製の範囲内で、同時に作製された複数の除去フロント230a、230bは、上述の流体供給装置238を用いて、可撓性流体ライン241により自動的に追跡することができる。このようにして、複数の構造、例えば冷却流路231を同時に作製することができ、結果として、複雑な中空構造227の作製時の時間の大幅な節約又は生産性の向上を得ることができる。
【0220】
図6a~図6cとの関連で上述した流体供給部50は、例えば、図13c、図14a~図14c、及び図15a、図15bとの関連で説明した流体供給装置238として設計され得る。しかしながら、流体供給部50が、流体供給装置238の構成品の一部、例えば流体供給装置243及び任意選択で追跡装置244のみを含むこと可能性もある。後者は、例えば、図6a~図6cとの関連で説明した可撓性チューブ52の形態の少なくとも1つの可撓性流体ライン241による自動追跡に用いることができる。
【0221】
本発明は、本明細書の一部を形成するが特許請求の範囲ではない以下の項に記載の態様も含む。
【0222】
1.被加工物(25)、特にEUVミラー(M4)用の基板に、パルスレーザ放射(35)による材料除去加工により中空構造(28)を作製する方法であって、
パルスレーザ放射(35)に対して透明な材料から形成された被加工物(25)に放射線入射側(27)からパルスレーザ放射(35)を放射するステップと、
パルスレーザ放射(35)を焦点領域(39)に集光するステップと、
焦点領域(39)を移動パターン(41)の相互にオフセットした軌道(42)に沿って移動させることにより、被加工物(25)の材料の面状除去のための除去フロント(46)を作製するステップと、
被加工物(25)の放射線入射側(27)とは反対の側(29)から始めて、除去フロント(46)を被加工物(25)内で移動させることにより、中空構造(28)を作製するステップと
を含む方法において、
中空構造(28)の作製中に、被加工物(25)の放射線入射側(27)でパルスレーザ放射(35)の入射放射線方向(Z)に対して垂直に向いていない除去フロント(46)が、少なくとも断続的に形成されることを特徴とする方法。
【0223】
2.第1項に記載の方法において、被加工物(25)の放射線入射側(27)におけるパルスレーザ放射(35)の入射放射線方向(Z)に対して20°~70°、好ましくは30°~60°の角度(α)を向いた除去フロント(46)が、少なくとも断続的に形成される方法。
【0224】
3.第1項又は第2項に記載の方法において、入射放射線方向(Z)に対して垂直に向いていない除去フロント(46)を形成するために、焦点領域(39)を入射放射線方向(Z)にオフセットさせることにより、移動パターン(41)の軌道(42)を入射放射線方向(Z)に相互にオフセットさせる方法。
【0225】
4.第1項~第3項のいずれか1つに記載の方法において、移動パターン(41)の相互にオフセットされた軌道(42)のパルスレーザ放射(35)のパルスエネルギー(E)を、入射放射線方向(Z)に対して垂直に向いていない除去フロント(46)を形成するよう変更し、焦点領域(39)を、好ましくは入射放射線方向(Z)に対して垂直な平面(FE)内で移動させる方法。
【0226】
5.第1項~第4項のいずれか1つに記載の方法において、放射線入射側(27)に実質的に平行に延びることが好ましい中空構造(28)の部分(28b)を形成するために、中空構造(28)の作製中に、除去フロント(46)を、被加工物内で入射放射線方向(Z)を横切る移動方向(-X)に少なくとも断続的に移動させ、除去フロント(46)の放射線入射側(27)に近い端(46a)を、入射放射線方向(Z)に対する横方向移動時に移動方向(-X)に対して90°未満、好ましくは70°未満の角度(β)に向ける方法。
【0227】
6.第1項~第5項のいずれか1つに記載の方法において、被加工物(25)の放射線入射側(27)とは反対の側(29)から始めて入射放射線方向(Z)に実質的に平行に延びる中空構造(28)の部分(28a)を作製するために、また好ましくは、入射放射線方向(Z)に実質的に平行に延びる中空構造(28)のさらに別の部分(28c)を作製するために、中空構造(28)の作製中に、除去フロント(46)を、入射放射線方向(Z)に実質的に平行に少なくとも断続的に移動させる方法。
【0228】
7.第1項~第6項のいずれか1つに記載の方法において、長手方向(X、Z)が相互に対して70°~100°の角度(γ)、好ましくは90°の角度(γ)を向いた、中空構造(28)の第1部分(28a、28c)及び中空構造(28)の隣接する第2部分(28b)を作製する方法。
【0229】
8.第7項に記載の方法であって、中空構造(28)の作製中に丸み部分(28d、28e)を形成し、第1部分(28a、28c)及び第2部分(28b)は、丸み部分で相互に合流する方法。
【0230】
9.第1項~第8項のいずれか1つに記載の方法において、除去フロント(46)を、中空構造(28)の作製時に流体(32b)と接触させ、流体(32b)は、被加工物(25)の放射線入射側(27)から遠い側(29)から始めた除去フロント(46)の移動時に、好ましくは可撓性チューブ(52)により除去フロント(46)を追跡する方法。
【0231】
10.第1項~第9項のいずれか1つに記載の方法において、被加工物を、除去フロント(46)を移動させるために変位させる方法。
【0232】
11.第1項~第10項のいずれか1つに記載の方法において、除去フロント(46)を形成するために、焦点領域(39)を、スキャナ光学ユニット(36)により移動パターン(41)の相互にオフセットした軌道(42)に沿って移動させる方法。
【0233】
12.第1項~第11項のいずれか1つに記載の方法において、基板(25)は、モノリシックであり、チタンドープ石英ガラス又はガラスセラミックからなる方法。
【0234】
13.EUVミラー(M4)であって、
基板(25)と、
基板(25)に塗布されてEUV放射(16)を反射する働きをするコーティング(26)と
を備え、基板(25)は、節1~12いずれか1つに記載の方法を用いて作製された少なくとも1つの中空構造(28)を含むEUVミラー。
【0235】
14.EUVリソグラフィシステム(1)であって、節13に記載の少なくとも1つのEUVミラー(M4)と、冷却流体(32a)を少なくとも1つの中空構造(28)に流すよう設計された冷却装置(32)とを備えたEUVリソグラフィシステム。
【0236】
15.被加工物(25)、特にEUVミラー(M4)用の基板に少なくとも1つの中空構造(28)を作製する装置(33)であって、
パルスレーザ放射(35)を生成するレーザ源(34)と、
レーザ放射(35)を焦点領域(39)に集光する集光装置(37)と、
被加工物(25)を収容するホルダ(44)と、
被加工物(25)の材料の面状除去のための除去フロント(46)を形成するためにホルダ(44)に収容された被加工物(25)の放射線入射側(27)にパルスレーザ放射(35)を放射し、移動パターン(41)の相互にオフセットした軌道(42)に沿って焦点領域(39)を移動させるよう設計されたスキャナ光学ユニット(36)と、
中空構造(28)を作製するために、被加工物(25)の放射線入射側(27)とは反対の側(29)から始めて被加工物(25)内で除去フロント(46)を移動させる位置決め装置(43)と
を備え、
装置(33)は、ホルダ(44)により収容された被加工物(25)において、パルスレーザ放射(35)の入射放射線方向(Z)に対して垂直に向いていない除去フロント(46)を形成するよう設計されることを特徴とする装置。
【0237】
16.第15項に記載の装置において、入射放射線方向(Z)でパルスレーザ放射(35)の焦点領域(39)をオフセットするための焦点オフセット装置(47)と、
入射放射線方向(Z)に対して垂直に向いていない除去フロント(46)を形成するために、入射放射線方向(Z)で移動パターン(41)の軌道(42)を相互に対してオフセットさせるように焦点オフセット装置(47)を制御するよう設計された制御装置(48)と
をさらに備えた装置。
【0238】
17.第15項又は第16項に記載の装置において、
入射放射線方向(Z)に対して垂直に向いていない除去フロント(46)を形成するために、移動パターン(41)の相互にオフセットした軌道(42)のパルスレーザ放射(35)のパルスエネルギー(E)を変更するようにレーザ源(34)を制御するよう設計された制御装置(48)
をさらに備えた装置。
【0239】
18.第15項~第17項のいずれか1つに記載の装置において、位置決め装置(43)は、入射放射線方向(Z)に、好ましくは入射放射線方向(Z)を横切る少なくとも1つの方向(X、Y)に、被加工物(25)を変位させるよう設計される装置。
【0240】
19.第15項~第18項のいずれか1つに記載の装置において、
流体(32b)を除去フロント(46)に供給するよう設計された流体供給部(50)であり、被加工物(25)の放射線入射側(27)とは反対の側(29)から始めた除去フロント(46)の移動時に流体(32b)により追跡する可撓性チューブ(52)を有することが好ましい、流体供給部(50)と
をさらに備えた装置。
【0241】
20.放射線を反射する、特にEUV放射線(16)を反射する光学素子(M4)であって、
モノリシック基板(25)と、
モノリシック基板(25)の表面(25a)に塗布される反射コーティング(26)と、
モノリシック基板(25)内に延びて流体(28)を流すよう設計された少なくとも1つの中空構造(27)であり、相互に対して60°~120°の角度(γ、γ’)、好ましくは80°~100°の角度(γ、γ’)、特に90°の角度(γ、γ’)を向いた第1部分(31a、31b;34b、36b)及び第2の隣接部分(34a、36a;33a、35a)を有する中空構造(27)と
を備え、
中空構造(27)は、第1部分(31a、31b;34b、36b)及び第2部分(34a、36a;33a、35a)が相互に合流する丸み部分(37a、37b、38)を有することを特徴とする光学素子。
【0242】
21.第20項に記載の光学素子において、丸み部分(37a、37b)の曲率半径Rと丸み部分(37a、37b)の直径DとのR/D比が、2~6、好ましくは2.5~5、特に2.5~3.5である光学素子。
【0243】
22.第20項又は第21項に記載の光学素子において、丸み部分(37a、37b)の直径Dは、2mm~20mm、好ましくは2mm~12mmである光学素子。
【0244】
23.第20項~第22項のいずれか1つに記載の光学素子において、中空構造(27)は、反射コーティング(26)を塗布された表面(25a)の下方に延びる複数の冷却流路(31)を含み、中空構造(27)は、分配流路(34)を介して冷却流路(31)に接続された流体分配部(33)と、回収流路(36)を介して冷却流路(31)に接続された流体回収部(35)とを含む光学素子。
【0245】
24.第23項に記載の光学素子において、第1部分は、分配流路(34)に隣接する冷却流路(31)の端部分(31a)を形成して、第2部分は、端部分(31a)に隣接する分配流路部分(34a)を形成し、且つ/又は第1部分は、回収流路(36)に隣接する冷却流路(31)の端部分(31b)を形成して、第2部分は、端部分(31b)に隣接する回収流路部分(36a)を形成する光学素子。
【0246】
25.第23項又は第24項に記載の光学素子において、流体分配部は、分配流路(34)が分岐する入口流路(33)を形成し、且つ/又は流体回収部は、回収流路(36)が分岐する出口流路(35)を形成する光学素子。
【0247】
26.第25項に記載の光学素子において、第1部分は、入口流路(33)に隣接する分配流路(34)の合流部分(34b)を形成して、第2部分は、合流部分(34b)に隣接する入口流路(33)の分岐部分(33a)を形成し、且つ/又は、第1部分は、出口流路(35)に隣接する回収流路(36)の合流部分(36b)を形成して、第2部分は、回収流路(36)の合流部分(36b)に隣接する出口流路(35)の分岐部分(35a)を形成する光学素子。
【0248】
27.第26項に記載の光学素子において、入口流路(33)の分岐部分(33a)と分配流路(34)の合流部分(34b)との間の角度(γ’)は、90°よりも大きく、好ましくは100°よりも大きく、且つ/又は出口流路(35)の分岐部分と回収流路(35)の合流部分(36b)との間の角度(γ’)は、90°よりも大きく、好ましくは100°よりも大きい光学素子。
【0249】
28.第20項~第27項のいずれか1つに記載の光学素子において、基板(25)の材料は、石英ガラス、特にチタンドープ石英ガラス、及びガラスセラミックを含む群から選択される光学素子。
【0250】
29.光学装置、特にEUVリソグラフィシステム(1)であって、
節20~28のいずれか1つに記載の少なくとも1つの光学素子(M4)と、
温度制御装置、特に流体(28)を少なくとも1つの中空構造(27)に流すよう設計された冷却装置(32)と
を備えた光学装置。
【0251】
30.被加工物からの、好ましくはEUVミラー(M4)用の特にモノリシック基板(25)からの多光子レーザアブレーションによる材料の除去時に、少なくとも1つのアブレーションフロント(30a、30b)に流体(28)を供給する流体供給装置(38)であって、
少なくとも1つのアブレーションフロント(30a、30b)に流体(28)を供給するための、少なくとも1つの可撓性流体ライン(41)、好ましくは複数の可撓性流体ライン(41)と、
被加工物(25)を空洞(33、35)に挿入するための少なくとも1つの挿入コンポーネント(39、40)であり、少なくとも1つのアブレーションフロント(30a、30b)に流体(28)を供給するために、少なくとも1つの可撓性流体ライン(41)を案内する少なくとも1つのガイド流路(47)を有する挿入コンポーネント(39、40)と
を備えた流体供給装置。
【0252】
31.第30項に記載の流体供給装置において、挿入コンポーネント(39、40)は、可撓性流体ライン(41)をそれぞれ案内する複数の案内流路(47)を有する流体供給装置。
【0253】
32.第30項又は第31項に記載の流体供給装置において、流体(28)をアブレーションフロント(30a、30b)から戻すために、流体が流れることができるギャップ、特にリングギャップ(49)が、流体ライン(41)とガイド流路(47)の流路壁(47a)との間に形成される流体供給装置。
【0254】
33.第30項~第32項のいずれか1つに記載の流体供給装置において、案内流路(47)は、可撓性流体ライン(41)の方向を変更するための少なくとも1つの丸み部分(50)を有する流体供給装置。
【0255】
34.第30項~第33項のいずれか1つに記載の流体供給装置において、挿入コンポーネント(39、40)は、棒状であり、ガイド流路(47)は、挿入コンポーネント(39)の端面(48)から挿入コンポーネント(39)の側面(45)まで延びる
流体供給装置。
【0256】
35.第34項に記載の流体供給装置において、ガイド流路(41)は、挿入コンポーネント(39)の側面(45)で開口(46)に合流し、開口は、好ましくは挿入コンポーネント(39)の長手方向(Y)に隣り合って配置され、特に挿入コンポーネント(39)の長手方向(Y)で相互に等距離(A)に配置される流体供給装置。
【0257】
36.第34項又は第35項に記載の流体供給装置において、棒状の挿入コンポーネント(39)は円筒形の形態を有し、好ましくは5mm~10mmの直径(D)を有する流体供給装置。
【0258】
37.第30項~第36項のいずれか1つに記載の流体供給装置において、少なくとも1つのガイド流路(47)は、1mm~4mmの直径(d)を有する流体供給装置。
【0259】
38.第30項~第37項のいずれか1つに記載の流体供給装置において、少なくとも1つの流体ライン(41)は1mm以下の外径(F)を有する流体供給装置。
【0260】
39.第30項~第38項のいずれか1つに記載の流体供給装置において、少なくとも1つの可撓性流体ライン(41)に流体(28)を供給する流体補給装置(43)をさらに備えた流体供給装置。
【0261】
40.第30項~第39項のいずれか1つに記載の流体供給装置において、被加工物(25)の材料内のアブレーションフロント(30a、30b)の移動を少なくとも1つの可撓性流体ライン(41)により自動追跡する少なくとも1つの追跡装置(44)をさらに備えた流体供給装置。
【0262】
41.多光子レーザアブレーションによる被加工物からの、特にEUVミラー(M4)用の好ましくはモノリシック基板(25)からの材料の除去時に、節30~40のいずれか1つに記載の流体供給装置(38)により少なくとも1つのアブレーションフロント(30a、30b)に流体(28)を供給する方法であって、
被加工物(25)の空洞(33、35)に挿入コンポーネント(39、40)を挿入するステップと、
挿入コンポーネント(39、40)の少なくとも1つのガイド流路(47)内に案内される少なくとも1つの可撓性流体ライン(41)を通して少なくとも1つのアブレーションフロント(30a、30b)に流体(28)を供給するステップと
を含む方法。
【0263】
42.第41項に記載の方法において、挿入コンポーネント(39、40)の挿入前に空洞(33、35)に流体(28)を充填し、流体(28)を充填された空洞(33、35)から始めて、空洞(33、35)に隣接する複数の流路部分(37)を多光子レーザアブレーションにより形成する方法。
【0264】
43.第42項に記載の方法において、複数の流路(31、34、35)を形成するために、複数のアブレーションフロント(30a、30b)を挿入コンポーネント(39、40)の空洞(33、35)への挿入後に流路部分(37)から始めて形成して被加工物(25)の材料内で移動させ、複数の可撓性流体ライン(41)は、被加工物(25)の材料内でのアブレーションフロント(30a、30b)の移動を追跡する方法。
【誤訳訂正2】
【訂正対象書類名】特許請求の範囲
【訂正対象項目名】全文
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミラー用、特にEUVミラー(M4)用の基板の形態の被加工物(25)に、パルスレーザ放射(35)による材料除去加工により中空構造(28)を作製する方法であって、
前記パルスレーザ放射(35)に対して透明な材料から形成された前記被加工物(25)に放射線入射側(27)から前記パルスレーザ放射(35)を放射するステップと、
前記パルスレーザ放射(35)を焦点領域(39)に集光するステップと、
前記焦点領域(39)を移動パターン(41)に沿って移動させることにより、前記被加工物(25)の材料の面状除去のための除去フロント(46)を形成するステップと、
前記除去フロント(46)を前記被加工物(25)内で移動させることにより、前記中空構造(28)を作製するステップと
を含む方法において、
中空構造(28)の作製中に、前記被加工物(25)の前記放射線入射側(27)で前記パルスレーザ放射(35)の入射放射線方向(Z)に対して垂直に向いていない除去フロント(46)を、少なくとも断続的に形成すること、及び前記中空構造(28)を、流体(32a)が流れることができる流路(28)の形態で作製することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記中空構造を、流体(32a)が流れることができる湾曲した流路(28)の形態で作製する方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、前記パルスレーザ放射(35)が前記被加工物(25)の材料から最初に出るのは、前記除去フロント(46)の領域である方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、前記パルスレーザ放射(35)は、前記被加工物(25)の材料から出た後に該被加工物(25)の材料に再入射する方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の方法において、前記被加工物(25)内の前記除去フロント(46)を、前記被加工物(25)の前記放射線入射側(27)への方向に少なくとも断続的に移動させる方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の方法において、前記被加工物(25)内での前記除去フロント(46)の移動時に、前記被加工物(25)の材料は、被加工物(25)の放射線入口側(27)から遠い前記除去フロント(46)の縁(46b)の側面(46c)に少なくとも断続的に隣接し、前記縁(46b)は、前記被加工物(25)の前記放射線入射側(27)から遠い方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法において、前記除去フロント(46)を、前記被加工物(25)の前記放射線入射側(27)とは反対の側(29)から始めて移動させる方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の方法において、前記入射放射線方向(Z)に対して20°~70°、好ましくは30°~60°の角度(α)を向いた除去フロント(46)を、少なくとも断続的に形成する方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の方法において、前記焦点領域(39)を、前記移動パターン(41)の相互にオフセットした軌道(42)に沿って移動させる方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、前記入射放射線方向(Z)に対して垂直に向いていない前記除去フロント(46)を形成するために、前記焦点領域(39)を前記入射放射線方向(Z)に沿ってオフセットさせることにより、前記移動パターン(41)の前記軌道(42)を前記入射放射線方向(Z)に沿って相互にオフセットさせる方法。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の方法において、前記移動パターン(41)の前記相互にオフセットした軌道(42)の前記パルスレーザ放射(35)のパルスエネルギー(E)を、前記入射放射線方向(Z)に対して垂直に向いていない前記除去フロント(46)を形成するように変更し、前記焦点領域(39)を、好ましくは前記入射放射線方向(Z)に対して垂直な平面(FE)内で移動させる方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の方法において、前記放射線入射側(27)に実質的に平行に延びることが好ましい前記中空構造(28)の部分(28b)を形成するために、前記中空構造(28)の作製中に、前記除去フロント(46)を、前記被加工物内で前記入射放射線方向(Z)を横切る移動方向(-X)に少なくとも断続的に移動させ、前記除去フロント(46)の前記放射線入射側(27)に近い端(46a)を、前記入射放射線方向(Z)に対する横方向移動時に前記移動方向(-X)に対して90°未満、好ましくは70°未満の角度(β)に向ける方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の方法において、前記被加工物(25)の前記放射線入射側(27)とは反対の側(29)から始めて前記入射放射線方向(Z)に実質的に平行に延びる前記中空構造(28)の部分(28a)を作製するために、また好ましくは、前記入射放射線方向(Z)に実質的に平行に延びる前記中空構造(28)のさらに別の部分(28c)を作製するために、前記中空構造(28)の作製中に、前記除去フロント(46)を、前記入射放射線方向(Z)に実質的に平行に少なくとも断続的に移動させる方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の方法において、前記長手方向(X、Z)が相互に対して70°~100°の角度(γ)、好ましくは90°の角度(γ)を向いた、前記中空構造(28)の第1部分(28a、28c)及び前記中空構造(28)の隣接する第2部分(28b)を作製する方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、前記中空構造(28)の作製中に丸み部分(28d、28c)を形成し、前記第1部分(28a、28c)及び前記第2部分(28b)は、前記丸み部分で相互に合流する方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の方法において、前記除去フロント(46)を、前記中空構造(28)の作製中に流体(32b)と接触させ、該流体(32b)は、前記除去フロント(46)の移動時に、前記中空構造(28)内に少なくとも部分的に導入される流体供給部(50)により前記除去フロント(46)を追跡する方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法において、前記流体供給部(50)は、少なくとも1本の可撓性チューブ(52)を含み、前記除去フロント(46)を、特に前記被加工物(25)の前記放射線入射側(27)から遠い側(29)から始めて、前記少なくとも1つの可撓性チューブ(52)を用いて前記流体(32b)により追跡する方法。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか1項に記載の方法において、前記除去フロント(46)を移動させるために、前記被加工物を変位させる方法。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか1項に記載の方法において、前記除去フロント(46)を形成するために、スキャナ光学ユニット(36)により前記焦点領域(39)を、前記移動パターン(41)の相互にオフセットした軌道(42)に沿って移動させる方法。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか1項に記載の方法において、前記中空構造は、1mm~20mm、好ましくは1mm~5mmの直径(D)を有する円形断面を有する方法。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか1項に記載の方法において、前記中空構造は、10cm以上、好ましくは15cm以上、特に好ましくは20cm以上、特に70cm以上の長さ(L)を有する方法。
【請求項22】
請求項1の前文に記載の、特に請求項1~21のいずれか1項に記載の方法において、
前記中空構造(28)は、前記除去フロント(46)以外では側面(57)により画定され、前記中空構造(28)の作製中の前記除去フロント(46)は、前記中空構造(28)の前記側面(57)のうち前記除去フロント(46)に隣接する領域に対して除去フロント角度(β’)を向き、該除去フロント角度(β’)は、少なくとも断続的に除去フロント最小角度1°よりも大きく、少なくとも断続的に除去フロント最大角度89°よりも小さいことを特徴とする方法。
【請求項23】
ミラー用、特にEUVミラー(M4)用の基板(25)の形態の被加工物(25)に流路(28)を作製する方法であって、該流路(28)を、パルスレーザ照射(35)による材料除去加工により作製し、流体供給部(50)を、前記流路(28)の作製中に該流路(28)に少なくとも部分的に導入する方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法において、前記流体供給部(50)を用いて、材料除去加工が実行される領域に、特に材料除去加工中に形成される除去フロント(46)に流体(32b)を供給し、前記除去フロント(46)を、前記被加工物(25)内での前記除去フロント(46)の移動時に前記流体供給部(50)により好ましくは追跡し、特に自動的に追跡する方法。
【請求項25】
請求項24又は25に記載の方法において、前記流体供給(50)は、好ましくは湾曲した流路(28)に少なくとも部分的に導入される可撓性要素を含み、該可撓性要素は、好ましくは可撓性チューブ(52)を形成する方法。
【請求項26】
請求項24~26に記載の方法において、前記流路(28)は、10cm以上、好ましくは15cm以上、特に好ましくは20cm以上、特に70cm以上の長さ(L)で作製される方法。
【請求項27】
請求項1~26のいずれか1項に記載の方法において、前記基板(25)は、モノリシックである方法。
【請求項28】
請求項1~27のいずれか1項に記載の方法において、前記基板(25)は、チタンドープ石英ガラス又はガラスセラミックからなる方法。
【請求項29】
請求項1~28のいずれか1項に記載の方法において、前記基板(25)の材料は、0℃~100℃、好ましくは19℃~40℃、特に好ましくは19℃~32℃であるゼロクロス温度(TZC)を有する方法。
【請求項30】
請求項1~29のいずれか1項に記載の方法において、前記基板(25)の材料は、3K未満、好ましくは2K未満、特に好ましくは1K未満、特に0.1K未満であるゼロクロス温度の空間的変動(△TZC)を有する方法。
【請求項31】
ミラー、特にEUVミラー(M4)であって、
基板(25)と、
該基板(25)に塗布され、放射線、特にEUV放射線(16)を反射するコーティング(26)と
を備え、前記基板(25)は、請求項1~30のいずれか1項に記載の方法を用いて作製された少なくとも1つの流路(28)を含むミラー。
【請求項32】
ミラー、特にEUVミラー(M4)であって、
流体(32b)が流れることができることが好ましい少なくとも1つの流路(28)を含む基板(25)
を備え、前記流路(28)は、パルスレーザ放射(35)による材料除去加工により形成され、
前記流路(28)は湾曲形態を有し、且つ
前記流路(28)は、1mm~20mm、好ましくは1mm~5mmの直径(D)、及び/又は10cm以上、好ましくは15cm以上、特に20cm以上の長さ(L)を有するミラー。
【請求項33】
請求項32に記載のミラーにおいて、前記基板(25)は、モノリシックであるミラー。
【請求項34】
請求項32又は33に記載のミラーにおいて、前記流路(28)は、長手方向(X、Z)が相互に対して70°~100°角度(γ)、好ましくは90°の角度(γ)を向いた、第1部分(28a、28c)及び隣接する第2部分(28b)を有するミラー。
【請求項35】
請求項34に記載のミラーにおいて、前記第1部分(28a、28c)及び第2部分(28b)は、丸み部分(28d、28e)で相互に合流するミラー。
【請求項36】
ミラー、特にEUVミラー(M4)であって、
好ましくはモノリシック基板(125)と、
放射線、特にEUV放射線(16)を反射する反射コーティング(126)であり、前記好ましくはモノリシック基板(125)の表面(125a)に塗布される反射コーティング(126)と、
前記好ましくはモノリシック基板(125)内に延びて流体(128)を流すよう設計された少なくとも1つの中空構造(127)であり、相互に対して60°~120°の角度(γ、γ’)、好ましくは80°~100°の角度(γ、γ’)、特に90°の角度(γ、γ’)を向いた第1部分(131a、131b;134b、136b)及び隣接する第2部分(134a、136a;133a、135a)を有する、中空構造(127)と
を備え、該中空構造(127)は、第1部分(131a、131b;134b、136b)及び第2部分(134a、136a;133a、135a)が相互に合流する丸み部分(137a、137b、138)を有するミラー。
【請求項37】
請求項36に記載のミラーにおいて、前記丸み部分(137a、137b)の曲率半径Rと丸み部分(137a、137b)の直径DとのR/D比が、2~6、好ましくは2.5~5、特に2.5~3.5であるミラー。
【請求項38】
請求項36又は37に記載のミラーにおいて、前記丸み部分(137a、137b)の直径Dは、2mm~20mm、好ましくは2mm~12mmであるミラー。
【請求項39】
請求項36~38のいずれか1項に記載のミラーにおいて、前記中空構造(127)は、前記反射コーティング(126)を塗布された前記表面(125a)の下方に延びる、特に冷却流路の形態の複数の温度制御流路(131)を含み、前記中空構造(127)は、分配流路(134)を介して前記温度制御流路(131)に接続された流体分配部(133)と、回収流路(136)を介して前記温度制御流路(131)に接続された流体回収部(135)とを含むミラー。
【請求項40】
請求項39に記載のミラーにおいて、前記第1部分は、分配流路(134)に隣接する前記温度制御流路(131)の端部分(131a)を形成して、第2部分は、前記端部分(131a)に隣接する分配流路部分(134a)を形成し、且つ/又は前記第1部分は、回収流路(136)に隣接する前記温度制御流路(131)の前記端部分(131b)を形成して、前記第2部分は、前記端部分(131b)に隣接する回収流路部分(136a)を形成するミラー。
【請求項41】
請求項39又は40に記載のミラーにおいて、前記流体分配部は、分配流路(134)が分岐する入口流路(133)を形成し、且つ/又は前記流体回収部は、回収流路(136)が分岐する出口流路(135)を形成するミラー。
【請求項42】
請求項41に記載のミラーにおいて、前記第1部分は、前記入口流路(133)に隣接する前記分配流路(134)の合流部分(134b)を形成して、前記第2部分は、前記合流部分(134b)に隣接する前記入口流路(133)の分岐部分(133a)を形成し、且つ/又は前記第1部分は、前記出口流路(135)に隣接する前記回収流路(136)の合流部分(136b)を形成して、前記第2部分は、前記回収流路(136)の前記合流部分(136b)に隣接する前記出口流路(135)の分岐部分(135a)を形成するミラー。
【請求項43】
請求項42に記載のミラーにおいて、前記入口流路(133)の前記分岐部分(133a)と前記分配流路(134)の前記合流部(134b)との間の角度(γ’)は、90°よりも大きく、好ましくは100°よりも大きく、且つ/又は前記出口流路(135)の前記分岐部分と前記回収流路(135)の前記合流部分(136b)との間の角度(γ’)は、90°よりも大きく、好ましくは100°よりも大きいミラー。
【請求項44】
請求項31~42のいずれか1項に記載のミラーにおいて、前記基板(125)の材料は、石英ガラス、特にチタンドープ石英ガラス、及びガラスセラミックを含む群から選択されるミラー。
【請求項45】
請求項31~44のいずれか1項に記載のミラーにおいて、前記基板(25、125)の材料は、0℃~100℃、好ましくは19℃~40℃、特に好ましくは19℃~32℃であるゼロクロス温度(TZC)を有するミラー。
【請求項46】
請求項31~45のいずれか1項に記載のミラーにおいて、前記基板(25、125)の材料は、3K未満、好ましくは2K未満、特に好ましくは1K未満、特に0.1K未満であるゼロクロス温度(△TZC)の空間的変動を有するミラー。
【請求項47】
請求項31~46のいずれか1項に記載のミラーにおいて、特に前記流路(28)の形態の前記中空構造は、シーム領域(53)を有するミラー。
【請求項48】
請求項47に記載のミラーにおいて、特に前記流路(28)の形態の前記中空構造は、前記シーム領域(53)において、除去フロント(46)の縁輪郭(54)、少なくとも1つのバルジ(55)、横方向オフセット(56)又は別の構造変更を有するミラー。
【請求項49】
ミラー、特にEUVミラー(M4)であって、
流体(32b)が流れることができることが好ましい特に湾曲した流路(28)を含む基板(25)であり、前記流路はシーム領域(53)を有する基板(25)
を備えたミラー。
【請求項50】
請求項49に記載のミラーにおいて、前記流路(28)は、前記シーム領域(53)にて、除去フロント(46)の縁輪郭(54)、少なくとも1つのバルジ(55)、横方向オフセット(56)、又は別の構造変更を有するミラー。
【請求項51】
EUVリソグラフィ装置(1)であって、請求項31~50のいずれか1項に記載の少なくとも1つのEUVミラー(M4)と、温度制御流体、特に冷却流体(32a、128)を特に流路(28)の形態の少なくとも1つの中空構造(127)を通して流すよう設計された温度制御装置、特に冷却装置(32)とを備えたEUVリソグラフィシステム。
【請求項52】
ミラー用、特にEUVミラー(M4)用の基板(25)の形態の被加工物(25)に少なくとも1つの流路(28)を作製する装置(33)であって、
パルスレーザ放射(35)を生成するレーザ源(34)と、
前記レーザ放射(35)を焦点領域(39)に集光する集光装置(37)と、
前記被加工物(25)を収容するホルダ(44)と、
該ホルダ(44)に収容された被加工物(25)の放射線入射側(27)に前記パルスレーザ放射(35)を放射し、前記焦点領域(39)を移動させるよう設計されたスキャナ光学ユニット(36)と
を備えた装置(33)において、
該装置(33)は、前記流路(28)に少なくとも部分的に導入可能な流体供給部(50)を備えることを特徴とする装置。
【請求項53】
請求項52に記載の装置において、前記流体供給部(50)は、材料除去加工が実行される領域に、特に材料除去加工中に形成される除去フロント(46)に流体(32b)を供給するよう設計され、前記流体供給部(50)は、好ましくは、前記被加工物(25)内での移動中に前記除去フロント(46)を追跡することができることが好ましい装置。
【請求項54】
請求項52又は53に記載の装置において、前記流体供給部(50)は、可撓性要素、特に可撓性チューブ(52)を前記流路(28)に少なくとも部分的に導入するよう設計される装置。
【請求項55】
請求項52~54のいずれか1項に記載の装置において、前記スキャナ光学ユニット(36)は、前記被加工物(25)の材料の面状除去のための除去フロント(46)を形成するために、移動パターン(41)に沿って前記焦点領域(39)を移動させるよう設計され、該装置(33)は、前記ホルダ(44)により収容された前記被加工物(25)における前記パルスレーザ放射(35)の入射放射線方向(Z)に対して垂直に向いていない除去フロント(46)を形成するよう設計される装置。
【請求項56】
請求項55に記載の装置において、前記入射放射線方向(Z)に沿って前記パルスレーザ放射(35)の前記焦点領域(39)をオフセットさせる焦点オフセット装置(47)と、
前記入射放射線方向(Z)に対して垂直に向いていない前記除去フロント(46)を形成するために、前記入射放射線方向(Z)に沿って前記移動パターン(41)の軌道(42)を相互に対してオフセットさせるように前記焦点オフセット装置(47)を制御するよう設計された制御装置(48)と
をさらに備えた装置。
【請求項57】
請求項55又は56に記載の装置において、
前記入射放射線方向(Z)に対して垂直に向いていない前記除去フロント(46)を形成するために、前記移動パターン(41)の相互にオフセットした軌道(42)の前記パルスレーザ放射(35)のパルスエネルギー(E)を変更するように前記レーザ源(34)を制御するよう設計された制御装置(48)
をさらに備えた装置。
【請求項58】
請求項52~57のいずれか1項に記載の装置において、前記流路(28)を作製するために、好ましくは前記被加工物(25)の前記放射線入射側(27)とは反対の側(29)から始めて前記被加工物(25)内で前記除去フロント(46)を移動させる位置決め装置(43)をさらに備え、該位置決め装置(43)は、前記入射放射線方向(Z)に沿って、好ましくは該入射放射線方向(Z)を横切る少なくとも1つの方向(X、Y)に沿って前記被加工物(25)を変位させるよう設計される装置。
【請求項59】
被加工物からの、好ましくはEUVミラー(M4)用の特にモノリシック基板(225)からのレーザアブレーションによる材料の除去時に、少なくとも1つの除去フロント(230a、230b)に流体(228)を供給する流体供給装置(238)であって、
前記少なくとも1つの除去フロント(230a、230b)に前記流体(228)を供給するための、少なくとも1つの可撓性流体ライン(241)、好ましくは複数の可撓性流体ライン(241)と、
前記被加工物(225)を空洞(233、235)に挿入するための少なくとも1つの挿入コンポーネント(239、240)であり、前記少なくとも1つの除去フロント(230a、230b)に前記流体(228)を供給するために、前記少なくとも1つの可撓性流体ライン(241)を案内する少なくとも1つのガイド流路(247)を有する挿入コンポーネント(239、240)と
を備えた流体供給装置。
【請求項60】
請求項59に記載の流体供給装置において、前記挿入コンポーネント(239、240)は、前記可撓性流体ライン(241)をそれぞれ案内する複数のガイド流路(247)を有する流体供給装置。
【請求項61】
請求項59又は60に記載の流体供給装置において、前記除去フロント(230a、230b)から流体(228)を戻すために、流体が流れることができるギャップ、特にリングギャップ(249)が、前記流体ライン(241)と前記ガイド流路(247)の流路壁(247a)との間に形成される流体供給装置。
【請求項62】
請求項50~61のいずれか1項に記載の流体供給装置において、前記ガイド流路(247)は、前記可撓性流体ライン(241)の方向を変更するための少なくとも1つの丸み部分(250)を有する流体供給装置。
【請求項63】
請求項59~52のいずれか1項に記載の流体供給装置において、前記挿入コンポーネント(239、240)は、棒状であり、前記ガイド流路(247)は、前記挿入コンポーネント(239)の端面(248)から前記挿入コンポーネント(239)の側面(245)まで延びる流体供給装置。
【請求項64】
請求項63に記載の流体供給装置において、前記ガイド流路(241)は、前記挿入コンポーネント(239)の前記側面(245)で開口(246)に合流し、該開口は、好ましくは前記挿入コンポーネント(239)の長手方向(Y)に隣り合って配置され、特に、前記挿入コンポーネント(239)の長手方向(Y)で相互に等距離(A’’)に配置される流体供給装置。
【請求項65】
請求項63又は64に記載の流体供給装置において、前記棒状の挿入コンポーネント(239)は、円筒形の形態を有し、好ましくは5mm~10mmの間の直径(D’)を有する流体供給装置。
【請求項66】
請求項60~65のいずれか1項に記載の流体供給装置において、前記ガイド流路(247)は、1mm~4mmの間の直径(d)を有する流体供給装置。
【請求項67】
請求項59~66のいずれか1項に記載の流体供給装置において、前記少なくとも1つの流体ライン(241)は、1mm以下の外径(F)を有する流体供給装置。
【請求項68】
請求項59~67のいずれか1項に記載の流体供給装置において、前記少なくとも1つの可撓性流体ライン(241)に前記流体(228)を供給する流体供給装置(243)をさらに備えた流体供給装置。
【請求項69】
請求項59~68のいずれか1項に記載の流体供給装置において、前記被加工物(225)の材料内の前記除去フロント(230a、230b)の移動を前記少なくとも1つの可撓性流体ライン(241)により自動追跡する少なくとも1つの追跡装置(244)をさらに備えた流体供給装置。
【請求項70】
請求項54~64のいずれか1項に記載の流体供給装置(238)により、被加工物からの、特にEUVミラー(M4)用の好ましくはモノリシック基板(225)からのレーザアブレーションによる材料の除去時に、少なくとも1つの除去フロント(230a、230b)に流体(228)を供給する方法であって、
前記被加工物(225)の空洞(233、235)に挿入コンポーネント(239、240)を挿入するステップと
前記挿入コンポーネント(239、240)の少なくとも1つのガイド流路(247)内に案内される少なくとも1つの可撓性流体ライン(241)を通して少なくとも1つの除去フロント(230a、230b)に前記流体(228)を供給するステップと
を含む方法。
【請求項71】
請求項70に記載の方法において、前記挿入コンポーネント(239、240)の挿入前に前記空洞(233、235)に前記流体(228)を充填し、該流体(28)を充填された前記空洞(233、235)から始めて、該空洞(233、235)に隣接する複数の流路部分(237)をレーザアブレーションにより形成する方法。
【請求項72】
請求項71に記載の方法において、複数の流路(231、234、235)を形成するために、複数の除去フロント(230a、230b)を前記挿入コンポーネント(239、240)の前記空洞(233、235)への挿入後に前記流路部分(237)から始めて形成して前記被加工物(225)の材料内で移動させ、前記複数の可撓性流体ライン(241)は、前記被加工物(225)の材料内での前記除去フロント(230a、230b)の移動を追跡する方法。
【国際調査報告】