(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-30
(54)【発明の名称】正極活物質およびこれを含む正極
(51)【国際特許分類】
H01M 4/525 20100101AFI20250123BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20250123BHJP
H01M 4/131 20100101ALI20250123BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/131
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024543539
(86)(22)【出願日】2023-05-22
(85)【翻訳文提出日】2024-07-23
(86)【国際出願番号】 KR2023006942
(87)【国際公開番号】W WO2023224446
(87)【国際公開日】2023-11-23
(31)【優先権主張番号】10-2022-0062288
(32)【優先日】2022-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ウォン・シグ・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ピル・キム
(72)【発明者】
【氏名】ウン・ジュ・イ
(72)【発明者】
【氏名】テ・ヨン・リ
(72)【発明者】
【氏名】ファン・ヨン・チェ
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050AA12
5H050BA17
5H050CA08
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050EA10
5H050EA24
5H050GA03
5H050HA00
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA08
5H050HA13
(57)【要約】
本発明は、初期抵抗特性および寿命特性が改善した電池を実現することができる正極活物質およびこれを含む正極に関する発明であり、単粒子形態の正極活物質であって、前記正極活物質を正極活物質層の全重量に対して80重量%以上含む正極活物質層を含む正極を、圧延後の正極活物質層の密度が2.7g/cm3以上になるように圧延した後、正極活物質層をXRDで分析した時に、2θ 10゜~90゜区間で確認されたすべてのピークの面積に対する(003)ピークの面積の比率が30%以上を満たす正極活物質およびこれを含む正極に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単粒子形態の正極活物質であって、
前記正極活物質を正極活物質層の全重量に対して80重量%以上含む正極活物質層を含む正極を、圧延後の正極活物質層の密度が2.7g/cm
3以上になるように圧延した後、正極活物質層をXRDで分析した時に、2θ 10゜~90゜区間で確認されたすべてのピークの面積に対する(003)ピークの面積の比率が30%以上を満たす、正極活物質。
【請求項2】
前記正極を圧延する前と圧延した後の正極活物質層をXRDで分析した時に、2θ 10゜~90゜区間で確認されたすべてのピークの面積に対する(003)ピークの面積の比率差が10%以上を満たす、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項3】
前記単粒子形態の正極活物質は、結晶のc-軸方向の長さに対するa-軸方向の長さの比が1超である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項4】
前記単粒子形態の正極活物質は、1個~50個の単結晶粒子からなる、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項5】
前記単結晶粒子は、平均粒径(D
EBSD)が0.1μm~10μmである、請求項4に記載の正極活物質。
【請求項6】
前記単粒子形態の正極活物質は、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)およびマンガン(Mn)を含むリチウム複合遷移金属酸化物である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項7】
前記リチウム複合遷移金属酸化物は、リチウム以外の全体金属のうちニッケル(Ni)を60モル%以上含有する、請求項6に記載の正極活物質。
【請求項8】
前記リチウム複合遷移金属酸化物は、下記化学式1で表される組成を有する、請求項6に記載の正極活物質。
[化学式1]
Li
aNi
bCo
cMn
dM
1
eO
2
前記化学式1中、
M
1は、Al、Zr、B、W、Mo、Cr、Nb、Mg、Hf、Ta、La、Ti、Sr、Ba、Ce、Sn、Y、Zn、F、PおよびSから選択される1種以上であり、
0.90≦a≦1.1、0.60≦b<1.0、0<c<0.40、0<d<0.40、0≦e≦0.10、b+c+d+e=1である。
【請求項9】
集電体と、
前記集電体上に位置する正極活物質層とを含む正極であって、
前記正極活物質層は、請求項1に記載の正極活物質を含む、正極。
【請求項10】
前記正極を圧延する前と圧延した後の正極活物質層をXRDで分析した時に、2θ 10゜~90゜区間で確認されたすべてのピークの面積に対する(003)ピークの面積の比率差が10%以上である、請求項9に記載の正極。
【請求項11】
前記単粒子形態の正極活物質のリチウム移動経路と前記集電体の上部面に対する平行軸がなす角度をθとしたときに、(cosθ)
2値が0.6以上である、請求項9に記載の正極。
【請求項12】
前記単粒子形態の正極活物質は、結晶のc-軸方向が集電体の上部面に対して垂直な方向に整列されている、請求項9に記載の正極。
【請求項13】
前記単粒子形態の正極活物質は、結晶のc-軸方向の長さに対するa-軸方向の長さの比が1超である、請求項9に記載の正極。
【請求項14】
前記単粒子形態の正極活物質は、1個~50個の単結晶粒子からなる、請求項9に記載の正極。
【請求項15】
前記単結晶粒子は、平均粒径(D
EBSD)が0.1μm~10μmである、請求項14に記載の正極。
【請求項16】
前記単粒子形態の正極活物質は、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)およびマンガン(Mn)を含むリチウム複合遷移金属酸化物である、請求項9に記載の正極。
【請求項17】
前記リチウム複合遷移金属酸化物は、リチウム以外の全体金属のうちニッケル(Ni)を60モル%以上含有する、請求項16に記載の正極。
【請求項18】
前記リチウム複合遷移金属酸化物は、下記化学式1で表される組成を有する、請求項16に記載の正極。
[化学式1]
Li
aNi
bCo
cMn
dM
1
eO
2
前記化学式1中、
M
1は、Al、Zr、B、W、Mo、Cr、Nb、Mg、Hf、Ta、La、Ti、Sr、Ba、Ce、Sn、Y、Zn、F、PおよびSから選択される1種以上であり、
0.90≦a≦1.1、0.60≦b<1.0、0<c<0.40、0<d<0.40、0≦e≦0.10、b+c+d+e=1である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2022年5月20日付けの韓国特許出願第10-2022-0062288号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、単粒子形態の正極活物質およびこれを含む正極に関する。
【背景技術】
【0003】
最近、モバイル機器および電気自動車に関する技術開発と需要の増加に伴い、エネルギー源として、二次電池の需要が急激に増加している。
【0004】
リチウム二次電池は、一般的に、正極、負極、セパレータおよび電解質からなり、前記正極および負極は、リチウムイオンの挿入(intercalation)および脱離(deintercalation)が可能な活物質を含む。
【0005】
一方、リチウム二次電池に使用される正極活物質は、一般的に、サブミクロンサイズの微細な一次粒子が数百個凝集して形成される球状の二次粒子の形態を有する。しかし、二次粒子形態の正極活物質は、繰り返した充放電時に凝集していた一次粒子が分離するに伴い二次粒子が割れて電池特性が低下する問題がある。
【0006】
このような問題を解決するために、単粒子形態の正極活物質に関する開発が活発になされているものの、単粒子形態の正極活物質を用いて電極を製造する時に、単粒子形態の正極活物質の主な膨張方向であるc-軸方向を所望のとおりに整列するか、その整列の程度を数値化することに不都合がある。一方、単粒子形態の正極活物質の主な膨張方向であるc-軸方向が整列されておらず、ランダムに存在する場合、電池の寿命特性の減少、容量の低下、出力の低下などの問題が発生する。そのため、これを解消するための技術が必要な状況である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、初期抵抗特性および寿命特性が改善した電池を実現することができる正極活物質およびこれを含む正極を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、正極活物質およびこれを含む正極を提供する。
【0009】
(1)本発明は、単粒子形態の正極活物質であって、前記正極活物質を正極活物質層の全重量に対して80重量%以上含む正極活物質層を含む正極を、圧延後の正極活物質層の密度が2.7g/cm3以上になるように圧延した後、正極活物質層をXRDで分析した時に、2θ 10゜~90゜区間で確認されたすべてのピークの面積に対する(003)ピークの面積の比率が30%以上を満たす正極活物質を提供する。
【0010】
(2)本発明は、前記(1)において、前記正極を圧延する前と圧延した後の正極活物質層をXRDで分析した時に、2θ 10゜~90゜区間で確認されたすべてのピークの面積に対する(003)ピークの面積の比率差が10%以上を満たす正極活物質を提供する。
【0011】
(3)本発明は、前記(1)または(2)において、前記単粒子形態の正極活物質は、結晶のc-軸方向の長さに対するa-軸方向の長さの比が1超である正極活物質を提供する。
【0012】
(4)本発明は、前記(1)~(3)のいずれか一つにおいて、前記単粒子形態の正極活物質は、1個~50個の単結晶粒子からなる正極活物質を提供する。
【0013】
(5)本発明は、前記(4)において、前記単結晶粒子は、平均粒径(DEBSD)が0.1μm~10μmである正極活物質を提供する。
【0014】
(6)本発明は、前記(1)~(5)のいずれか一つにおいて、前記単粒子形態の正極活物質は、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)およびマンガン(Mn)を含むリチウム複合遷移金属酸化物である正極活物質を提供する。
【0015】
(7)本発明は、前記(6)において、前記リチウム複合遷移金属酸化物は、リチウム以外の全体金属のうちニッケル(Ni)を60モル%以上含有する正極活物質を提供する。
【0016】
(8)本発明は、前記(6)または(7)において、前記リチウム複合遷移金属酸化物は、下記化学式1で表される組成を有する正極活物質を提供する。
[化学式1]
LiaNibCocMndM1
eO2
前記化学式1中、
M1は、Al、Zr、B、W、Mo、Cr、Nb、Mg、Hf、Ta、La、Ti、Sr、Ba、Ce、Sn、Y、Zn、F、PおよびSから選択される1種以上であり、
0.90≦a≦1.1、0.60≦b<1.0、0<c<0.40、0<d<0.40、0≦e≦0.10、b+c+d+e=1である。
【0017】
(9)本発明は、集電体と、前記集電体上に位置する正極活物質層とを含む正極であって、前記正極活物質層は前記(1)~(8)のいずれか一つによる正極活物質を含む正極を提供する。
【0018】
(10)本発明は、前記(9)において、前記正極を圧延する前と圧延した後の正極活物質層をXRDで分析した時に、2θ 10゜~90゜区間で確認されたすべてのピークの面積に対する(003)ピークの面積の比率差が10%以上である正極を提供する。
【0019】
(11)本発明は、前記(9)または(10)において、前記単粒子形態の正極活物質のリチウム移動経路と前記集電体の上部面に対する平行軸がなす角度をθとしたときに、(cosθ)2値が0.6以上である正極を提供する。
【0020】
(12)本発明は、前記(9)~(11)のいずれか一つにおいて、前記単粒子形態の正極活物質は、結晶のc-軸方向が集電体の上部面に対して垂直な方向に整列されている正極を提供する。
【0021】
(13)本発明は、前記(9)~(12)のいずれか一つにおいて、前記単粒子形態の正極活物質は、結晶のc-軸方向の長さに対するa-軸方向の長さの比が1超である正極を提供する。
【0022】
(14)本発明は、前記(9)~(13)のいずれか一つにおいて、前記単粒子形態の正極活物質は、1個~50個の単結晶粒子からなる正極を提供する。
【0023】
(15)本発明は、前記(14)において、前記単結晶粒子は、平均粒径(DEBSD)が0.1μm~10μmである正極を提供する。
【0024】
(16)本発明は、前記(9)~(15)のいずれか一つにおいて、前記単粒子形態の正極活物質は、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)およびマンガン(Mn)を含むリチウム複合遷移金属酸化物である正極を提供する。
【0025】
(17)本発明は、前記(16)において、前記リチウム複合遷移金属酸化物は、リチウム以外の全体金属のうちニッケル(Ni)を60モル%以上含有する正極を提供する。
【0026】
(18)本発明は、前記(16)または(17)において、前記リチウム複合遷移金属酸化物は、下記化学式1で表される組成を有する正極を提供する。
[化学式1]
LiaNibCocMndM1
eO2
前記化学式1中、
M1は、Al、Zr、B、W、Mo、Cr、Nb、Mg、Hf、Ta、La、Ti、Sr、Ba、Ce、Sn、Y、Zn、F、PおよびSから選択される1種以上であり、
0.90≦a≦1.1、0.60≦b<1.0、0<c<0.40、0<d<0.40、0≦e≦0.10、b+c+d+e=1である。
【発明の効果】
【0027】
本発明による正極活物質は、前記正極活物質を正極活物質層の全重量に対して80重量%以上含む正極活物質層を含む正極を、圧延後の正極活物質層の密度が2.7g/cm3以上になるように圧延した後、正極活物質層をXRDで分析した時に、2θ 10゜~90゜区間で確認されたすべてのピークの面積に対する(003)ピークの面積の比率が30%以上を満たし、正極に適用する時に、正極活物質の膨張が抑制されることから、これを含む電池の初期抵抗特性および寿命特性を改善することができる。
【0028】
本発明による正極は、前記正極を圧延した後、正極活物質層をXRDで分析した時に、2θ 10゜~90゜区間で確認されたすべてのピークの面積に対する(003)ピークの面積の比率が30%以上であり、正極活物質層に含まれる正極活物質結晶の収縮/膨張方向である結晶構造のc-軸方向が集電体の上部面に対して垂直な方向に整列され、正極活物質の膨張を抑制することができることから、これを含む電池の初期抵抗特性および寿命特性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】実施例1の正極活物質のSEMイメージである。
【
図2】比較例1の正極活物質のSEMイメージである。
【
図3】比較例3の正極活物質のSEMイメージである。
【
図4】実施例1、2および比較例3、4の正極活物質を含む正極の圧延の前および圧延後の正極活物質層のXRDデータである。
【
図5】実施例1の正極活物質を含む正極断面のEBSD Band Contrast(BC)イメージである。
【
図6】結晶粒のc-軸方向ベクトル(Euler angle)と電極に垂直な方向ベクトルとの角度(=リチウム移動経路(Li path)と電極に平行な方向ベクトルとの角度)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本明細書および特許請求の範囲にて使用されている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0031】
本明細書において、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、ステップ、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定するものであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、構成要素、またはこれらを組み合わせたものなどの存在または付加可能性を予め排除しないものと理解すべきである。
【0032】
本明細書において、「上に」という用語は、ある構成が他の構成のすぐ上面に形成される場合だけでなく、これらの構成の間に第3の構成が介在される場合をも含むことを意味する。
【0033】
本明細書において、「単粒子形態の正極活物質」は、従来の方法により製造された数百個の一次粒子が凝集して形成される球状の二次粒子形態の正極活物質と対比される概念であり、50個以下の単結晶粒子からなる正極活物質を意味する。具体的には本発明において、単粒子形態の正極活物質は、一つの単結晶粒子であってもよく、2個~50個、2個~40個、2個~30個、2個~20個、2個~15個、2個~10個、2個~5個の単結晶粒子が凝集した形態であってもよい。ここで、「単結晶粒子」は、走査電子顕微鏡を介して正極活物質を観測した時に認識される粒子の最小単位を意味する。
【0034】
本明細書において、平均粒径(D50)は、正極活物質前駆体、正極活物質またはリチウム遷移金属酸化物粉末の体積累積粒度分布の50%基準での粒子径を意味する。前記平均粒径(D50)は、レーザ回折法(laser diffraction method)を用いて測定することができる。例えば、正極活物質粉末を分散媒の中に分散した後、市販のレーザ回折粒度測定装置(例えば、Microtrac MT 3000)に導入して、約28kHzの超音波を出力60Wで照射してから、体積累積粒度分布グラフを得た後、体積累積量の50%に該当する粒子径を求めることで測定することができる。
【0035】
本明細書において、単結晶粒子の平均粒径(DEBSD)は、SEMを用いたEBSD分析により得られた単結晶粒子の体積累積粒度分布の50%基準での粒子サイズを意味する。前記EBSD分析は、SEM-EBSD装備(例:FEI社製、Quanta200-EDAX社製、Velocity super OIM 8)でイメージを取得し、これをイメージ分析ソフトウェア(EDAX OIM Analysis)により分析することができる。
【0036】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0037】
正極活物質
本発明は、単粒子形態の正極活物質であって、前記正極活物質を正極活物質層の全重量に対して80重量%以上含む正極活物質層を含む正極を、圧延後の正極活物質層の密度が2.7g/cm3以上になるように圧延した後、正極活物質層をXRDで分析した時に、2θ 10゜~90゜区間で確認されたすべてのピークの面積に対する(003)ピークの面積の比率が30%以上を満たす正極活物質を提供する。
【0038】
本発明において、圧延は、圧延後の正極活物質層の電極密度が2.7g/cm3以上、具体的には、2.7g/cm3~3.0g/cm3になるように、ロールプレス(Roll Perssing)方式で圧延することであり得る。具体的には、前記圧延は、圧延後の正極活物質層の電極密度が2.7g/cm3になるようにロールプレスすることであり得る。
【0039】
本発明による正極活物質は、正極活物質を正極活物質層の全重量に対して80重量%以上含む正極活物質層を含む正極を、圧延後の正極活物質層の密度が2.7g/cm3以上になるように圧延した後、正極活物質層をXRDで分析した時に、2θ 10゜~90゜区間で確認されたすべてのピークの面積に対する(003)ピークの面積の比率が、30%以上、具体的には、50%、60%以上、85%、95%以下を満たすことができる。
【0040】
(003)面は、リチウムが移動する方向であり、(003)面の法線方向は、正極活物質結晶の収縮/膨張方向である結晶構造のc-軸方向(以下、c-軸方向)である。したがって、上記の条件を満たす場合、本発明による正極活物質が正極に適用された時に、正極活物質層に含まれる正極活物質結晶のc-軸方向が集電体の上部面(または電極面)に対して垂直な方向に整列され、結果、本発明による正極活物質を含む正極を電池に適用した時に、外部ケースなどによって正極活物質結晶のc-軸方向への膨張が抑制されることから、電池の寿命性能が改善する効果がある。一方、XRD測定時には、集電体方向ではなく、正極活物質層方向にX線が入射されるように試料を位置させる。
【0041】
本発明によると、本発明による正極活物質は、正極活物質を正極活物質層の全重量に対して80重量%以上含む正極活物質層を含む前記正極を圧延する前と圧延した後の正極活物質層をXRDで分析した時に、2θ 10゜~90゜区間で確認されたすべてのピークの面積に対する(003)ピークの面積の比率差が10%、20%、30%以上、75%以下を満たすことができる。すなわち、圧延前の正極の正極活物質層をXRDで分析した時の2θ 10゜~90゜区間で確認されたすべてのピークの面積に対する(003)ピークの面積の比率と、圧延後の正極の正極活物質層をXRDで分析した時の2θ 10゜~90゜区間で確認されたすべてのピークの面積に対する(003)ピークの面積の比率との差が、10%、20%、30%以上、75%以下であることができる。この場合、正極活物質結晶の収縮/膨張方向であるc-軸方向が集電体の上部面(または電極面)に対して垂直な方向に整列され、電池の寿命性能が改善する効果がある。
【0042】
前記正極を圧延する前の正極活物質層は、XRDで分析した時に、2θ 10゜~90゜区間で確認されたすべてのピークの面積に対する(003)ピークの面積の比率が、10%、20%以上、40%、49%以下であることができる。
【0043】
前記単粒子形態の正極活物質は、平均粒径(D50)が0.1μm~10μmであることができる。具体的には、前記単粒子形態の正極活物質の平均粒径(D50)は、0.1μm、1.0μm、2.0μm以上、5.0μm、6.0μm、7.0μm、8.0μm、9.0μm、10.0μm以下であることができる。この場合、前記単粒子形態の正極活物質を含む電池の圧延率を高めることができ、電池の性能をより改善することができる。
【0044】
本発明によると、前記単粒子形態の正極活物質は、正極活物質結晶の収縮/膨張方向であるc-軸方向とリチウム移動経路の整列のために1個~50個の単結晶粒子からなることができる。具体的には、前記単粒子形態の正極活物質は、1個以上、5個、10個、20個、30個、40個、50個以下の単結晶粒子からなることができる。
【0045】
本発明によると、前記単結晶粒子は、平均粒径(DEBSD)が0.1μm~10μm、具体的には0.1μm、0.2μm以上、5μm、8μm、10μm以下であることができる。この場合、電極の製造時に、スラリー(正極活物質層形成用組成物)が凝集するかゲル化(gelation)することなどを防止することができ、充放電を繰り返す過程で粒子内にクラックが発生することを低減することができる。
【0046】
本発明によると、単粒子形態の正極活物質は、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)およびマンガン(Mn)を含むリチウム複合遷移金属酸化物であることができる。ここで、前記リチウム複合遷移金属酸化物は、リチウム以外の全体金属のうちニッケル(Ni)を60モル%、65モル%以上含むことができる。
【0047】
本発明によると、前記リチウム複合遷移金属酸化物は、下記化学式1で表される組成を有することができる。
【0048】
[化学式1]
LiaNibCocMndM1
eO2
【0049】
前記化学式1中、
M1は、Al、Zr、B、W、Mo、Cr、Nb、Mg、Hf、Ta、La、Ti、Sr、Ba、Ce、Sn、Y、Zn、F、PおよびSから選択される1種以上であり、
0.90≦a≦1.1、0.60≦b<1.0、0<c<0.40、0<d<0.40、0≦e≦0.10、b+c+d+e=1である。
【0050】
前記bは、リチウム複合遷移金属酸化物内のリチウム以外の金属元素のうちニッケルの原子分率を意味し、0.60、0.65、0.8、0.85以上、0.95、0.98以下であることができる。
【0051】
前記cは、リチウム複合遷移金属酸化物内のリチウム以外の金属元素のうちコバルトの原子分率を意味し、0.01以上、0.10、0.20、0.30、0.40以下であることができる。
【0052】
前記dは、リチウム複合遷移金属酸化物内のリチウム以外の金属元素のうちマンガンの原子分率を意味し、0.01以上、0.10、0.20、0.30、0.40以下であることができる。
【0053】
前記eは、リチウム複合遷移金属酸化物内のリチウム以外の金属元素のうちM1元素の元素分率を意味し、0以上0.02、0.05、0.10以下であることができる。
【0054】
ここで、前記正極活物質は、正極活物質層の全重量に対して80重量%~99重量%、より具体的には、85重量%~98重量%の含有量で含まれることができる。上述の含有量の範囲で含まれる時に、優れた容量特性を示すことができる。
【0055】
正極
本発明は、集電体と、前記集電体上に位置する正極活物質層とを含む正極であって、前記正極活物質層は、上述の本発明による正極活物質を含む正極を提供する。すなわち、本発明は、集電体と、前記集電体上に位置する正極活物質層とを含む正極であって、前記正極活物質層は、単粒子形態の正極活物質を正極活物質層の全重量に対して80重量%以上含み、前記正極を圧延した後、正極活物質層をXRDで分析した時に、2θ 10゜~90゜区間で確認されたすべてのピークの面積に対する(003)ピークの面積の比率が30%以上である正極を提供する。
【0056】
本発明において、圧延は、圧延後の正極活物質層の電極密度が、2.7g/cm3以上、具体的には、2.7g/cm3~3.0g/cm3になるようにロールプレス(Roll Perssing)方式により圧延することであり得る。具体的には、前記圧延は、圧延後の正極活物質層の電極密度が2.7g/cm3になるようにロールプレスすることであり得る。
【0057】
具体的には、前記正極は、正極集電体と、前記正極集電体の少なくとも一面に位置し、単粒子形態の正極活物質を含む正極活物質層とを含む。また、前記正極を圧延した後、正極活物質層をXRDで分析した時に、2θ 10゜~90゜区間で確認されたすべてのピークの面積に対する(003)ピークの面積の比率が30%以上である。具体的には、前記正極を圧延した後、正極活物質層をXRDで分析した時に、2θ 10゜~90゜区間で確認されたすべてのピークの面積に対する(003)ピークの面積の比率は、50%、60%以上、85%、95%以下であることができる。
【0058】
(003)面は、リチウムが移動する方向であり、(003)面の法線方向は、正極活物質結晶の収縮/膨張方向である結晶構造のc-軸方向(以下、c-軸方向)である。したがって、上記の条件を満たす場合、正極活物質層に含まれる正極活物質結晶のc-軸方向が集電体の上部面(または電極面)に対して垂直な方向に整列され、結果、本発明による正極を電池に適用した時に、外部ケースなどによって正極活物質結晶のc-軸方向への膨張が抑制されることから、電池の寿命性能が改善する効果がある。一方、XRD測定時には、集電体方向ではなく、正極活物質層方向にX線が入射されるように試料を位置させる。
【0059】
本発明によると、前記正極を圧延する前と圧延した後の正極活物質層をXRDで分析した時に、2θ 10゜~90゜区間で確認されたすべてのピークの面積に対する(003)ピークの面積の比率の差が10%、20%、30%以上、75%以下であることができる。すなわち、圧延前の正極の正極活物質層をXRDで分析した時の2θ 10゜~90゜区間で確認されたすべてのピークの面積に対する(003)ピークの面積の比率と圧延後の正極の正極活物質層をXRDで分析した時の2θ 10゜~90゜区間で確認されたすべてのピークの面積に対する(003)ピークの面積の比率との差が、10%、20%、30%以上、75%以下であることができる。この場合、正極活物質結晶の収縮/膨張方向であるc-軸方向が集電体の上部面(または電極面)に対して垂直な方向に整列され、電池の寿命性能が改善する効果がある。
【0060】
前記正極を圧延する前の正極活物質層は、XRDで分析した時に、2θ 10゜~90゜区間で確認されたすべてのピークの面積に対する(003)ピークの面積の比率が、10%、20%以上、40%、49%以下であることができる。
【0061】
また、前記正極において、前記単粒子形態の正極活物質のリチウム移動経路と前記集電体の上部面に対する平行軸がなす角度をθとしたときに、(cosθ)2値が0.6以上である。前記(cosθ)2値は、0.6以上、0.7、0.8、0.9、1以下であることができる。この場合、電池の寿命性能がより改善することができる。
【0062】
前記正極集電体は、電池に化学的変化を引き起こさず、導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素またはアルミニウムやステンレス鋼の表面に、炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理を施したものなどが使用されることができる。また、前記正極集電体は、通常、3μm~500μmの厚さを有することができ、前記集電体の表面上に微細な凹凸を形成して、正極活物質の接着力を高めることもできる。例えば、フィルム、シート、箔、網、多孔質体、発泡体、不織布体など、様々な形態で使用されることができる。
【0063】
前記正極活物質層は、単粒子形態の正極活物質とともに、導電材およびバインダーを含むことができる。
【0064】
本発明によると、前記単粒子形態の正極活物質は、結晶のc-軸方向が集電体の上部面に対して垂直な方向に整列されることができる。この場合、正極活物質結晶の収縮/膨張方向であるc-軸方向が集電体の上部面(または電極面)に対して垂直な方向に整列されるようになり、正極を電池に適用した時に、外部ケースなどによって正極活物質結晶のc-軸方向への膨張が抑制されることから、寿命性能がより改善することができる。
【0065】
本発明によると、前記単粒子形態の正極活物質は、正極活物質結晶の収縮/膨張方向であるc-軸方向が集電体の上部面(または電極面)に対して垂直な方向に整列されるようにするために、結晶のc-軸方向の長さに対するa-軸方向の長さの比が1超であることができる。すなわち、前記単粒子形態の正極活物質は、一方向、具体的には、c-軸方向への粒子の長さが短い形状を有することができる。
【0066】
本発明によると、前記単粒子形態の正極活物質は、正極活物質結晶の収縮/膨張方向であるc-軸方向とリチウム移動経路の整列のために、1個~50個の単結晶粒子からなることができる。具体的には、前記単粒子形態の正極活物質は、1個以上、5個、10個、20個、30個、40個、50個以下の単結晶粒子からなることができる。
【0067】
本発明によると、前記単結晶粒子は、平均粒径(DEBSD)が0.1μm~10μm、具体的には0.1μm、0.2μm以上、5μm、8μm、10μm以下であることができる。この場合、電極の製造時に、スラリー(正極活物質層形成用組成物)が凝集するかゲル化することなどを防止することができ、充放電を繰り返す過程で、粒子内にクラックが発生することを低減することができる。
【0068】
本発明によると、単粒子形態の正極活物質は、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)およびマンガン(Mn)を含むリチウム複合遷移金属酸化物であることができる。ここで、前記リチウム複合遷移金属酸化物は、リチウム以外の全体金属のうちニッケル(Ni)を60モル%、65モル%以上含有することができる。
【0069】
本発明によると、前記リチウム複合遷移金属酸化物は、下記化学式1で表される組成を有することができる。
【0070】
[化学式1]
LiaNibCocMndM1
eO2
【0071】
前記化学式1中、
M1は、Al、Zr、B、W、Mo、Cr、Nb、Mg、Hf、Ta、La、Ti、Sr、Ba、Ce、Sn、Y、Zn、F、PおよびSから選択される1種以上であり、
0.90≦a≦1.1、0.60≦b<1.0、0<c<0.40、0<d<0.40、0≦e≦0.10、b+c+d+e=1である。
【0072】
前記bは、リチウム複合遷移金属酸化物内のリチウム以外の金属元素のうちニッケルの原子分率を意味し、0.60、0.65、0.8、0.85以上、0.95、0.98以下であることができる。
【0073】
前記cは、リチウム複合遷移金属酸化物内のリチウム以外の金属元素のうちコバルトの原子分率を意味し、0.01以上、0.10、0.20、0.30、0.40以下であることができる。
【0074】
前記dは、リチウム複合遷移金属酸化物内のリチウム以外の金属元素のうちマンガンの原子分率を意味し、0.01以上、0.10、0.20、0.30、0.40以下であることができる。
【0075】
前記eは、リチウム複合遷移金属酸化物内のリチウム以外の金属元素のうちM1元素の元素分率を意味し、0以上0.02、0.05、0.10以下であることができる。
【0076】
ここで、前記正極活物質は、正極活物質層の全重量に対して、80重量%~99重量%、より具体的には、85重量%~98重量%の含有量で含まれることができる。上述の含有量の範囲で含まれる時に、優れた容量特性を示すことができる。
【0077】
前記導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであり、構成される電池において、化学変化を引き起こさず、電子伝導性を有するものであれば、特に制限なく使用可能である。具体的な例としては、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;またはポリフェニレン誘導体などの伝導性高分子などが挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用されることができる。前記導電材は、正極活物質層の全重量に対して1重量%~30重量%含まれることができる。
【0078】
ここで、前記導電材は、電極に導電性を与えるために使用されるものであり、構成される電池において、化学変化を引き起こさず、電子伝導性を有するものであれば、特に制限なく使用可能である。具体的な例としては、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;またはポリフェニレン誘導体などの伝導性高分子などが挙げられ、これらのうち、1種単独または2種以上の混合物が使用されることができる。前記導電材は、正極活物質層の全重量に対して1重量%~30重量%含まれることができる。
【0079】
前記正極は、上述の正極活物質を用いる以外は、通常の正極の製造方法によって製造されることができる。具体的には、上述の正極活物質および選択的に、バインダーおよび導電材を溶媒の中に溶解または分散して製造した正極活物質層形成用組成物(スラリー)を正極集電体上に塗布した後、乾燥および圧延することで製造されることができる。ここで、前記正極活物質、バインダー、導電材の種類および含有量は、上述のとおりである。また、他の方法として、前記正極は、前記正極活物質層形成用組成物を別の支持体上にキャスティングした後、この支持体から剥離して得られたフィルムを正極集電体上にラミネーションすることで製造されることもできる。
【0080】
前記溶媒としては、当該技術分野において一般的に使用される溶媒であることができ、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide、DMSO)、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)、N-メチルピロリドン(NMP)、アセトン(acetone)または水などが挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用されることができる。前記溶媒の使用量は、スラリーの塗布厚さ、製造歩留まりを考慮して、前記正極活物質、導電材およびバインダーを溶解または分散し、以降、正極の製造のための塗布時に、優れた厚さ均一度を示すことができる粘度を有するようにする程度であれば十分である。
【0081】
リチウム二次電池
また、本発明は、前記正極を含む電気化学素子を製造することができる。前記電気化学素子は、具体的には、電池、キャパシタなどであることができ、より具体的には、リチウム二次電池であることができる。
【0082】
前記リチウム二次電池は、具体的には、正極と、前記正極と対向して位置する負極と、前記正極と負極との間に介在されるセパレータおよび電解質とを含み、前記正極は、上述のとおりであるため、具体的な説明を省略し、以下、残りの構成についてのみ具体的に説明する。
【0083】
また、前記リチウム二次電池は、前記正極、負極、セパレータの電極組立体を収納する電池容器、および前記電池容器を密封する密封部材を選択的にさらに含むことができる。
【0084】
前記リチウム二次電池において、前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体上に位置する負極活物質層とを含む。
【0085】
前記負極集電体は、電池に化学的変化を引き起こさず、高い導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレス鋼の表面に、炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理を施したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが使用されることができる。また、前記負極集電体は、通常、3μm~500μmの厚さを有することができ、正極集電体と同様、前記集電体の表面に微細な凹凸を形成して、負極活物質の結合力を強化することもできる。例えば、フィルム、シート、箔、網、多孔質体、発泡体、不織布体など、様々な形態で使用されることができる。
【0086】
前記負極活物質層は、負極活物質とともに、選択的に、バインダーおよび導電材を含む。
【0087】
前記負極活物質としては、リチウムの可逆的なインターカレーションおよびデインターカレーションが可能な化合物が使用されることができる。具体的な例としては、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素などの炭素質材料;Si、Al、Sn、Pb、Zn、Bi、In、Mg、Ga、Cd、Si合金、Sn合金またはAl合金など、リチウムと合金化が可能な金属質化合物;SiOβ(0<β<2)、SnO2、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物のように、リチウムをドープおよび脱ドープすることができる金属酸化物;またはSi-C複合体またはSn-C複合体のように、前記金属質化合物と炭素質材料を含む複合物などが挙げられ、これらのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用されることができる。また、前記負極活物質として、金属リチウム薄膜が使用されることもできる。また、炭素材料は、低結晶性炭素および高結晶性炭素などがいずれも使用可能である。低結晶性炭素としては、軟化炭素(soft carbon)および硬化炭素(hard carbon)が代表的であり、高結晶性炭素としては、無定形、板状、鱗片状、球状または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛、キッシュ黒鉛(Kish graphite)、熱分解炭素(pyrolytic carbon)、液晶ピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、炭素微小球体(meso-carbon microbeads)、液晶ピッチ(Mesophase pitches)および石油と石炭系コークス(petroleum or coal tar pitch derived cokes)などの高温焼成炭素が代表的である。
【0088】
前記負極活物質は、負極活物質層の全重量に対して80重量%~99重量%含まれることができる。
【0089】
前記バインダーは、導電材、活物質および集電体間の結合を容易にする成分であり、通常、負極活物質層の全重量に対して0.1重量%~10重量%添加されることができる。このようなバインダーの例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレン-ブタジエンゴム、ニトリル-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、これらの様々な共重合体などが挙げられる。
【0090】
前記導電材は、負極活物質の導電性をより向上させるための成分であり、負極活物質層の全重量に対して10重量%以下、好ましくは、5重量%以下で添加されることができる。このような導電材は、当該電池において化学的変化を引き起こさず、導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使用されることができる。
【0091】
前記負極活物質層は、負極集電体上に、負極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材を溶媒の中に溶解または分散させて製造した負極活物質層形成用組成物を塗布し乾燥することで製造されるか、または前記負極活物質層形成用組成物を別の支持体上にキャストした後、この支持体から剥離して得られたフィルムを負極集電体上にラミネートすることで製造されることができる。
【0092】
一方、前記リチウム二次電池において、セパレータは、負極と正極を分離し、リチウムイオンの移動通路を提供するものであり、通常、リチウム二次電池においてセパレータとして使用されるものであれば、特に制限なく使用可能であり、特に、電解質のイオン移動に対して低抵抗であるとともに、電解液含湿能力に優れたものが好ましい。具体的には、多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体およびエチレン/メタクリレート共重合体などのポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムまたはこれらの2層以上の積層構造体が使用されることができる。また、通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布が使用されることもできる。また、耐熱性または機械的強度の確保のために、セラミック成分または高分子物質が含まれたコーティングされたセパレータが使用されることもでき、選択的に、単層または多層構造で使用されることができる。
【0093】
また、本発明で使用される電解質としては、リチウム二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル状高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質などが挙げられ、これらに限定されるものではない。
【0094】
具体的には、前記電解質は、有機溶媒およびリチウム塩を含むことができる。
【0095】
前記有機溶媒としては、電池の電気化学的反応に関わるイオンが移動することができる媒質の役割を果たすものであれば、特に制限なく使用可能である。具体的には、前記有機溶媒としては、メチルアセテート(methyl acetate)、エチルアセテート(ethyl acetate)、γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone)、ε-カプロラクトン(ε-caprolactone)などのエステル系溶媒;ジブチルエーテル(dibutyl ether)またはテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)などのエーテル系溶媒;シクロヘキサノン(cyclohexanone)などのケトン系溶媒;ベンゼン(benzene)、フルオロベンゼン(fluorobenzene)などの芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルカーボネート(dimethylcarbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethylcarbonate、DEC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethylcarbonate、EMC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)などのカーボネート系溶媒;エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒;R-CN(Rは、炭素数2~20の直鎖状、分岐状または環構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含むことができる)などのニトリル類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類;1,3-ジオキソランなどのジオキソラン類;またはスルホラン(sulfolane)類などが使用されることができる。中でも、カーボネート系溶媒が好ましく、電池の充放電性能を高めることができる高いイオン伝導度および高誘電率を有する環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートなど)と、低粘度の直鎖状カーボネート系化合物(例えば、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートまたはジエチルカーボネートなど)の混合物がより好ましい。この場合、環状カーボネートと直鎖状カーボネートは、約1:1~約1:9の体積比で混合して使用することが、電解液が優れた性能を示すことができる。
【0096】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池において使用されるリチウムイオンを提供することができる化合物であれば、特に制限なく使用可能である。具体的には、前記リチウム塩としては、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiSbF6、LiAl04、LiAlCl4、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiN(C2F5SO3)2、LiN(C2F5SO2)2、LiN(CF3SO2)2、LiCl、LiI、またはLiB(C2O4)2などが使用可能である。前記リチウム塩は、0.1M~2.0Mの濃度範囲内で使用することが好ましい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれると、電解質が適切な伝導度および粘度を有することから、優れた電解質の性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0097】
前記電解質には、前記電解質の構成成分の他にも、電池の寿命特性の向上、電池の容量減少の抑制、電池の放電容量の向上などのために、例えば、ジフルオロエチレンカーボネートなどのハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノールまたは三塩化アルミニウムなどの添加剤が1種以上さらに含まれることもできる。この際、前記添加剤は、電解質の全重量に対して0.1重量%~5重量%含まれることができる。
【0098】
前記のように、本発明による正極活物質を含むリチウム二次電池は、優れた放電容量、出力特性および寿命特性を安定的に示すことから、携帯電話、ノート型パソコン、デジタルカメラなどのポータブル機器、およびハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle、HEV)などの電気自動車分野などにおいて有用である。
【0099】
したがって、本発明の他の一実施態様によると、前記リチウム二次電池を単位セルとして含む電池モジュールおよびこれを含む電池パックが提供される。
【0100】
前記電池モジュールまたは電池パックは、パワーツール(Power Tool);電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車、およびプラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)を含む電気自動車;または電力貯蔵用システムのいずれか一つ以上の中大型デバイスの電源として用いられることができる。
【0101】
本発明のリチウム二次電池の外形は、特に制限されないが、缶を使用した円筒型、角型、パウチ(pouch)型またはコイン(coin)型などであることができる。
【0102】
本発明によるリチウム二次電池は、小型デバイスの電源として使用される電池セルに使用されるだけでなく、多数の電池セルを含む中大型電池モジュールに単位電池としても好ましく使用されることができる。
【0103】
以下、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施することができるように、本発明の実施例について詳細に説明する。しかし、本発明は、様々な相違する形態に実現されることができ、ここで説明する実施例に限定されない。
【0104】
実施例および比較例
実施例1
Ni0.95Co0.03Mn0.02(OH)2で表される組成を有し、平均粒径(D50)が3.5μmである正極活物質前駆体とLiOHを1:1.05のモル比で混合し、酸素雰囲気下、870℃の温度で9時間一次焼成して仮焼成品を製造し、前記仮焼成品を粉砕した後、酸素雰囲気下、750℃の温度で9時間二次焼成して、LiNi0.95Co0.03Mn0.02O2で表される組成を有する単粒子形態のリチウム複合遷移金属酸化物を製造した。
【0105】
製造した単粒子形態のリチウム複合遷移金属酸化物にパウダー状のCo(OH)2(HUAYOU COBALT社製)を1:0.02のモル比で混合して混合物を準備した。前記混合物を酸素雰囲気下、700℃の温度で5時間熱処理して、単粒子形態の正極活物質を製造した。
【0106】
実施例2
Ni0.88Co0.03Mn0.09(OH)2で表される組成を有し、平均粒径(D50)が3.5μmである正極活物質前駆体とLiOHを1:1.05のモル比で混合し、酸素雰囲気下、900℃の温度で9時間一次焼成して仮焼成品を製造し、前記仮焼成品を粉砕した後、酸素雰囲気下、780℃の温度で9時間二次焼成して、LiNi0.88Co0.03Mn0.09O2で表される組成を有する単粒子形態のリチウム複合遷移金属酸化物を製造した。
【0107】
製造した単粒子形態のリチウム複合遷移金属酸化物にパウダー状のCo(OH)2(HUAYOU COBALT社製)を1:0.02のモル比で混合して混合物を準備した。前記混合物を酸素雰囲気下、700℃の温度で5時間熱処理して、単粒子形態の正極活物質を製造した。
【0108】
比較例1
Ni0.95Co0.03Mn0.02(OH)2で表される組成を有し、平均粒径(D50)が3.5μmである正極活物質前駆体とLiOHを1:1.05のモル比で混合し、酸素雰囲気下、800℃の温度で9時間一次焼成して仮焼成品を製造し、前記仮焼成品を粉砕した後、酸素雰囲気下、750℃の温度で9時間二次焼成して、LiNi0.95Co0.03Mn0.02O2で表される組成を有する単粒子形態と二次粒子形態の中間形態であるリチウム複合遷移金属酸化物を製造した。
【0109】
製造した単粒子形態のリチウム複合遷移金属酸化物にパウダー状のCo(OH)2(HUAYOU COBALT社製)を1:0.02のモル比で混合して混合物を準備した。前記混合物を酸素雰囲気下、700℃の温度で5時間熱処理して、単粒子形態と二次粒子形態の中間形態である正極活物質を製造した。
【0110】
比較例2
Ni0.88Co0.03Mn0.09(OH)2で表される組成を有し、平均粒径(D50)が3.5μmである正極活物質前駆体とLiOHを1:1.05のモル比で混合し、酸素雰囲気下、820℃の温度で9時間一次焼成して仮焼成品を製造し、前記仮焼成品を粉砕した後、酸素雰囲気下、780℃の温度で9時間二次焼成して、LiNi0.88Co0.03Mn0.09O2で表される組成を有する単粒子形態と二次粒子形態の中間形態であるリチウム複合遷移金属酸化物を製造した。
【0111】
製造した単粒子形態のリチウム複合遷移金属酸化物にパウダー状のCo(OH)2(HUAYOU COBALT社製)を1:0.02のモル比で混合して混合物を準備した。前記混合物を酸素雰囲気下、700℃の温度で5時間熱処理して、単粒子形態と二次粒子形態の中間形態である正極活物質を製造した。
【0112】
比較例3
Ni0.95Co0.03Mn0.02(OH)2で表される組成を有し、平均粒径(D50)が3.5μmである正極活物質前駆体とLiOHを1:1.05のモル比で混合し、酸素雰囲気下、750℃の温度で9時間焼成して、LiNi0.95Co0.03Mn0.02O2で表される組成を有するリチウム複合遷移金属酸化物を製造した。
【0113】
製造した単粒子形態のリチウム複合遷移金属酸化物にパウダー状のCo(OH)2(HUAYOU COBALT社製)を1:0.02のモル比で混合して混合物を準備した。前記混合物を酸素雰囲気下、700℃の温度で5時間熱処理して、二次粒子形態の正極活物質を製造した。
【0114】
比較例4
Ni0.88Co0.03Mn0.09(OH)2で表される組成を有し、平均粒径(D50)が3.5μmである正極活物質前駆体とLiOHを1:1.05のモル比で混合し、酸素雰囲気下、800℃の温度で9時間焼成して、LiNi0.88Co0.03Mn0.09O2で表される組成を有するリチウム複合遷移金属酸化物を製造した。
【0115】
製造した単粒子形態のリチウム複合遷移金属酸化物にパウダー状のCo(OH)2(HUAYOU COBALT社製)を1:0.02のモル比で混合して混合物を準備した。前記混合物を酸素雰囲気下、700℃の温度で5時間熱処理して、二次粒子形態の正極活物質を製造した。
【0116】
比較例5
Ni0.88Co0.03Mn0.09(OH)2で表される組成を有し、平均粒径(D50)が3.5μmである正極活物質前駆体とLiOHを1:1.05のモル比で混合し、酸素雰囲気下、840℃の温度で9時間焼成して、LiNi0.88Co0.03Mn0.09O2で表される組成を有するリチウム複合遷移金属酸化物を製造した。
【0117】
製造したリチウム複合遷移金属酸化物にパウダー状のCo(OH)2(HUAYOU COBALT社製)を1:0.02のモル比で混合して混合物を準備した。前記混合物を酸素雰囲気下、700℃の温度で5時間熱処理して、二次粒子形態の正極活物質を製造した。
【0118】
実験例
実験例1:SEMイメージ分析
走査電子顕微鏡(SEM)(JEOL社製、JSM-7900F;加速電圧20kV)で実施例1、比較例1および比較例3の正極活物質を測定し、それぞれのSEMイメージを取得し、これをそれぞれ
図1、
図2および
図3に示した。
【0119】
図1は、実施例1の正極活物質のSEMイメージであり、
図2は、比較例1の正極活物質のSEMイメージであり、
図3は、比較例3の正極活物質のSEMイメージである。
【0120】
図1~
図3を参照すると、実施例1の正極活物質は、単粒子形態で1個~少数個の粒子(平均粒径(D
EBSD)が1.5μm)からなるのに対し、比較例3の正極活物質は、二次粒子形態であり、比較例1の正極活物質は、本発明で定義した単粒子形態と二次粒子形態の中間形態であることを確認することができる。
【0121】
実験例2:XRDデータ分析
(分析用電極試料準備)
実施例1、2および比較例1~4で製造したそれぞれの正極活物質、カーボンブラック(Denka社製、DenkaBlack)導電材およびPVdF(Kureha社製、KF1300)バインダーを95:3:2の重量比で、N-メチルピロリドン(NMP)(大井化金社製)溶媒に添加して、正極活物質層形成用組成物を製造した。
【0122】
厚さ20μmのアルミニウム箔集電体の一面に前記正極活物質層形成用組成物を塗布し、135℃の温度で3時間乾燥して、正極活物質層を形成した。次いで、圧延後の正極活物質層の電極密度が2.7g/cm3になるようにロールプレス(Roll Perssing)方式で圧延し、正極を製造した。
【0123】
参考までに、電極密度は、電極単位面積当たりの正極活物質の質量(導電材、バインダー、集電体の重量を除く)を電極の単位体積(集電体以外の厚さ×単位面積)で除した値である。
【0124】
(XRD測定および分析)
Panalytical社製のEmpyrean XRD装置を利用(Cu-target、電圧:45kV、電流:40mA、2θ:10゜~90゜)して、実施例1、2および比較例1~4の正極活物質を含む正極の圧延前および圧延後の正極活物質層のXRDデータを取得し、これを
図4に示した。そして、2θ 10~90゜区間で確認されたすべてのピークの面積に対する(003)ピークの面積の比率の値を下記表1に示した。
【0125】
【0126】
図4を参照すると、実施例1および2の場合、比較例3および4に比べて、圧延の前と後の両方において(003)ピークの面積の比率が高いことを確認することができる。特に、圧延過程で粒子が再配列されて圧延の前と後の差が非常に大きく、圧延後の値も比較例3および4との差が大きいことを確認することができる。
【0127】
実験例3:EBSDデータ分析
実験例2と同じ方法で分析用電極試料を準備し、HITACHI社製のIM5000を利用(加速電圧:6kV)して、前記正極にアルゴン(Ar)イオンビームを照射して、イオンミリング方法で切断して正極の断面を取得し、JEOL社製のJSM-7900Fを利用(加速電圧:20kV)して、前記正極の断面を測定および分析した。イメージプロセッシング-EBSD定量化(quantification)分析ソフトウェアとしては、OXFORD Instruments社製のAztecCrystalを用いた。
【0128】
図5は、実施例1の正極活物質を含む正極断面のEBSD Band Contrast(BC)イメージであり、
図5の(A)には、粒子の長軸を赤色矢印で表示し、
図5の(B)には、結晶方位による結晶粒モデルを六角柱状に示した(結晶構造模型の長い方の方向がc-軸を意味する)。EBSD BCイメージにおいて、垂直方向(Y1)は、電極に垂直な方向であり、水平方向(X1)は、電極と平行な方向である。
【0129】
参考までに、
図5のイメージは、断面であり、実際、三次元の粒子では、任意の一軸方向の粒子の長さが他の二つの軸に比べて長い形状を有している。
【0130】
EBSD分析により得られたイメージ内のすべての結晶粒(約50個~100個)のc-軸方向ベクトル(Euler angle)と電極に垂直な方向ベクトルとの角度(=リチウム移動経路(Li path)と電極に平行な方向ベクトルとの角度)をθとし、各結晶粒の(cosθ)2の値を計算し、すべての結晶粒の(cosθ)2の値の平均を下記表2に示し、正極活物質のリチウム移動経路と電極が整列された程度を確認した。
【0131】
図6に結晶粒のc-軸方向ベクトル(Euler angle)と電極に垂直な方向ベクトルとの角度(=リチウム移動経路(Li path)と電極に平行な方向ベクトルとの角度)を示し、(cosθ)
2の値が1に近いほど、リチウム移動経路と電極面方向が平行であると考えられる。
【0132】
【0133】
実験例4:電池特性の評価
(ハーフセルの製造)
実施例1、2および比較例1~4で製造したそれぞれの正極活物質、カーボンブラック(Denka社製、DenkaBlack)導電材およびPVdF(Kureha社製、KF1300)バインダーを95:3:2の重量比で、N-メチルピロリドン(NMP)(大井化金社製)溶媒に添加して、正極活物質層形成用組成物を製造した。
【0134】
厚さ20μmのアルミニウム箔集電体の一面に前記正極活物質層形成用組成物を塗布し、135℃の温度で3時間乾燥して、正極活物質層を形成した。次いで、圧延後の正極活物質層の空隙率が20体積%になるように、ロールプレス(Roll Perssing)方式により圧延し、正極を製造した。
【0135】
前記正極とともに、リチウム金属を負極として使用して、ハーフセル(half-cell)を製造した。
【0136】
(1)初期抵抗(DCIR)評価
前記で製造したハーフセルをそれぞれ25℃で0.2Cの定電流(CC)で4.25Vになるまで充電し、その後、4.25Vの定電圧(CV)で充電して、充電電流が0.05mAh(cut-off current)になるまで充電した後、0.2Cの定電流で10秒間放電しながら取得した、満充電状態の時と放電開始後、10秒が経た時との電圧差を電流で除して初期抵抗を求め、その結果を下記表3に示した。
【0137】
(2)容量維持率および抵抗増加率の評価
前記で製造したハーフセルをそれぞれ25℃で、0.2Cの定電流(CC)で4.25Vになるまで充電し、その後、4.25Vの定電圧(CV)で充電して、充電電流が0.05mAh(cut-off current)になるまで充電した後、20分間放置した後、0.2Cの定電流で、2.5Vになるまで放電した。
【0138】
その後、セルを45℃のチャンバに移し、0.33Cの定電流で、4.25Vになるまで充電し、その後、4.25Vの定電圧(CV)で充電して、充電電流が0.05mAh(cut-off current)になるまで充電した後、0.33Cの定電流で2.5Vになるまで放電することを1サイクルとし、充放電を30サイクル行った。ここで、最初のサイクルの放電容量に対する30回目のサイクルの放電容量の百分率を容量維持率とし、下記表3に示した。また、最初のサイクルのDCIR値に対する30回目のサイクルのDCIR値の百分率を抵抗増加率とし、下記表3に示した。参考までに、n回目のサイクルのDCIR値は、n回目のサイクルで0.33Cの定電流で2.5Vになるまで放電しながら取得した、満充電状態の時と放電開始後、10秒が経た時との電圧差を電流で除して計算した値である。
【0139】
【0140】
表1~3を参照すると、正極を圧延した後、正極活物質層をXRDで分析した時に、2θ 10~90゜区間で確認されたすべてのピークの面積に対する(003)ピークの面積の比率が30%以上である実施例1、2の単粒子形態の正極活物質を含む正極の場合、比較例3、4の二次粒子形態の正極活物質を含む正極と比較例1、2の単粒子形態と二次粒子形態の中間形態の正極活物質を含む正極に比べて、初期抵抗特性、寿命特性に優れていることを確認することができる。また、実施例1、2の単粒子形態の正極活物質を含む正極の場合、数百個の一次粒子が凝集した二次粒子形態と単粒子形態が混合した状態で存在する比較例5の正極活物質に比べて、寿命特性が著しく優れていることを確認することができる。
【国際調査報告】