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特表2025-503787基板の表面上にシリコンゲルマニウムの歪み緩和傾斜バッファ層を堆積する方法
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  • 特表-基板の表面上にシリコンゲルマニウムの歪み緩和傾斜バッファ層を堆積する方法 図1
  • 特表-基板の表面上にシリコンゲルマニウムの歪み緩和傾斜バッファ層を堆積する方法 図2
  • 特表-基板の表面上にシリコンゲルマニウムの歪み緩和傾斜バッファ層を堆積する方法 図3
  • 特表-基板の表面上にシリコンゲルマニウムの歪み緩和傾斜バッファ層を堆積する方法 図4
  • 特表-基板の表面上にシリコンゲルマニウムの歪み緩和傾斜バッファ層を堆積する方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-04
(54)【発明の名称】基板の表面上にシリコンゲルマニウムの歪み緩和傾斜バッファ層を堆積する方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20250128BHJP
   H01L 21/20 20060101ALI20250128BHJP
   C30B 25/16 20060101ALI20250128BHJP
   C23C 16/08 20060101ALI20250128BHJP
   C30B 29/52 20060101ALI20250128BHJP
【FI】
H01L21/205
H01L21/20
C30B25/16
C23C16/08
C30B29/52
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024543959
(86)(22)【出願日】2022-12-14
(85)【翻訳文提出日】2024-07-24
(86)【国際出願番号】 EP2022085871
(87)【国際公開番号】W WO2023143804
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】22154292.1
(32)【優先日】2022-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】599119503
【氏名又は名称】ジルトロニック アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Siltronic AG
【住所又は居所原語表記】Einsteinstrasse 172,81677 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベッカー,ルカス
(72)【発明者】
【氏名】シュトルク,ペーター
【テーマコード(参考)】
4G077
4K030
5F045
5F152
【Fターム(参考)】
4G077AA03
4G077BE05
4G077DB05
4G077DB12
4G077EA02
4G077ED06
4G077EF03
4G077HA06
4G077HA12
4G077TA04
4G077TA07
4G077TJ02
4G077TJ03
4K030AA03
4K030BA09
4K030BA29
4K030CA04
4K030CA12
4K030JA01
4K030JA10
4K030JA12
4K030LA15
5F045AA03
5F045AB01
5F045AC03
5F045AC05
5F045AD12
5F045AD13
5F045AD14
5F045AE29
5F045AF03
5F045BB12
5F045DP04
5F045DP28
5F045DQ10
5F045EK11
5F152LL03
5F152LN03
5F152LN14
5F152MM18
5F152NN03
5F152NQ04
(57)【要約】
基板の表面上にシリコンゲルマニウムの歪み緩和傾斜バッファ層を堆積する方法であって、表面が、シリコンと、最終含有量まで増加するゲルマニウムの含有量を有するバッファ層とからなり、800℃以上の堆積温度で基板の表面上に、第1段階および第2段階の間に、GeClおよびSiHClを導入することと、10%Ge/μm未満の傾斜率でバッファ層を成長させることと、第1段階の間は0.1μm/分以上であり、第2段階の間は0.1μm/分未満である成長速度でバッファ層を成長させることとを含む、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面上にシリコンゲルマニウムの歪み緩和傾斜バッファ層を堆積する方法であって、前記表面が、シリコンと、最終含有量まで増加するゲルマニウムの含有量を有する前記バッファ層とからなり、
800℃以上の堆積温度で前記基板の前記表面上に、第1段階および第2段階の間に、GeClおよびSiHClを導入することと、
10%Ge/μm未満の傾斜率で前記バッファ層を成長させることと、
前記第1段階の間は0.1μm/分以上であり、前記第2段階の間は0.1μm/分未満である成長速度で前記バッファ層を成長させることと
を含む、方法。
【請求項2】
前記第1段階が、ゲルマニウムの前記最終含有量の約1/3に達するまでに終了する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ゲルマニウムの前記最終含有量が、2%Ge以上かつ90%Ge以下である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記バッファ層が、化学気相成長によって堆積される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記バッファ層を、シリコン単結晶ウェハまたはSOIウェハ上に成長させる、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の表面上にシリコンゲルマニウムの歪み緩和傾斜バッファ層を堆積する方法に関し、表面は、シリコンと、最終含有量まで増加するゲルマニウムの含有量を有するバッファ層とからなる。
【背景技術】
【0002】
先行技術/課題
シリコンゲルマニウムまたは略してSiGe(Silicon germanium)は、式Si1-xGex(式中、0<x<1である)によるシリコンおよびゲルマニウムの両方を含む半導体である。したがって、25%Geのゲルマニウム含有量は、式Si0.75Ge0.25で表される。
【0003】
シリコンとシリコンゲルマニウムとの間の格子不整合のために、ヘテロエピタキシャルSi1-xGexバッファ層は、Si基板上に臨界厚さまで歪み成長し、歪みエネルギーは十分に高くなり、エピタキシャル層を緩和して歪みを低減するミスフィット転位(層の表面を貫通するそれらのそれぞれの貫通転位セグメント)を形成することが好ましい。緩和されたSiGeバッファ層を使用して、改善された特性を有する電子デバイスを製造するために歪みシリコンをその上に堆積させることができる。緩和されたSiGeバッファ層の品質は、貫通転位密度(TDD:Threading Dislocation Density)によって大きく決定される。
【0004】
国際公開第2004/084268号および米国特許出願公開第2007/0077734号は各々、シリコン単結晶構造上にエピタキシャルゲルマニウム含有層を堆積する方法を開示している。
【0005】
米国特許出願公開第2015/0318355号は、第1および第2のSiGe層を含む歪み緩和バッファの製造を開示しており、第2のSiGe層のTDDは1×10/cm未満である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、比較的容易に実行することができ、比較的低いTDDへのアクセスを提供するシリコンゲルマニウムの歪み緩和傾斜バッファ層を基板の表面に堆積する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
基板の表面上にシリコンゲルマニウムの歪み緩和傾斜バッファ層を堆積する方法であって、表面が、シリコンと、最終含有量まで増加するゲルマニウムの含有量を有するバッファ層とからなり、
800℃以上の堆積温度で基板の表面上に、第1段階および第2段階の間に、GeClおよびSiHClを導入することと、
10%Ge/μm未満の傾斜率でバッファ層を成長させることと、
第1段階の間は0.1μm/分以上であり、第2段階の間は0.1μm/分未満である成長速度でバッファ層を成長させることと
を含む、方法が提供される。
【0008】
説明
以下の考察および知見は、本発明を理解するのに役立つ。
【0009】
ミスフィット転位による緩和は、最終的なTDDに異なる方法で影響を及ぼす2つのメカニズムによって達成することができる:
(i)新たな転位ループの核生成および滑動;各新しいループは2つの貫通転位を生成し、最終TDDを増加させる。
【0010】
(ii)既存の転位ループの滑動および伸長;既存のループが滑動してバッファ層を弛緩させ、TDDは増加しない。
【0011】
低TDDのSiGeバッファ層は、長いミスフィット転位セグメントを形成するバッファ層内を遠くまで滑動する低数のハーフループを有するのに対して、高TDDのバッファ層は、短いミスフィット転位セグメントのみを有する高数のハーフループを有する。したがって、最終的なTDDは、(i)と(ii)との間のバランス、すなわち、生成されるハーフループの数およびそれらが妨げられることなく滑動することができる時間の結果である。
【0012】
2つの機構(i)および(ii)のバランスは、バッファ層成長の異なる相において異なる重要性を有する。バッファ層成長の初期段階では、バッファ層内に転位が存在せず、バッファ層を緩和するために新しいループを核形成する必要があり、したがって(i)が支配的な機構である。継続的な傾斜間、(ii)が低いTDDを受け取る支配的なメカニズムであることが好ましい。
【0013】
したがって、バッファ成長の2つの相中に採用される成長条件は、個別に最適化されなければならず、これは本発明の中核である。緩和バッファ層の低い最終TDDを生成するために、バッファ層成長の異なる段階で異なる成長速度が使用される。
【0014】
SiGeバッファ層の堆積の第1段階の間は成長速度は0.1μm/分以上であるが、第2段階の間の成長速度は0.1μm/分未満である。成長速度は、第1段階では0.3μm/分以上0.6μm/分以下であり、第2段階では0.01μm/分以上0.095μm/分以下であることが好ましい。
【0015】
バッファ層の厚さ当たりのゲルマニウムの含有量の増加に関する傾斜率は、堆積プロセスの第1および第2段階の両方において10%Ge/μm未満である。
【0016】
第1段階中のより高い成長速度は、緩和プロセスの核生成相における最適条件を確実にし、低ベースTDDをもたらす。このTDDは、第2段階で非常に低い成長速度および傾斜率を採用することによって、継続的な傾斜中に低く維持される。
【0017】
好ましくは、第1段階は、Geの最終含有量の約1/3に達するまでに終了する。第2段階は、Geの最終含有量に達したときに終了する。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、ゲルマニウムの最終含有量は、2%Ge以上かつ90%Ge以下である。好ましい実施形態によれば、最終含有量は25%Geであり、8%Geの含有量に達したときに第1段階が終了する。
【0019】
SiGeバッファ層は、GeClとSiHClを前駆体ガスとし、800℃以上である堆積温度でCVD法(化学気相成長:chemical vapor deposition)を用いて成長させる。
【0020】
好ましくは、SiGeバッファ層は、シリコン単結晶ウェハまたはSOIウェハ(シリコン・オン・インシュレータ:silicon on insulator)の表面に堆積される。
【0021】
本発明を、図および実施例を参照することによって更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、第1の実験セットで使用されるサンプル構成を概略的に示す。
図2図2は、第1の実験セットの結果を示す。
図3図3は、第2の実験セットで使用されるサンプル構成を概略的に示す。
図4図4は、第2の実験セットの結果を示す。
図5図5は、実施例の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
実施例
バッファ成長の第1段階(核生成相)におけるTDDに対する成長速度の影響が、第1の実験セットにおいて調べられている。第1の実験セットで使用したサンプル構成を図1に示す。
【0024】
シリコン単結晶ウェハ1(図1)上に、最終濃度8%Geの傾斜SiGeバッファ層2を成長させた。成長速度を0.05μm/分から0.8μm/分まで変化させ、4%Ge/μmの傾斜率を使用した。得られたTDDを欠陥選択的エッチング後に測定した。成長速度GRに対するTDDを示す図2に示すように、TDDは、成長速度が増加するにつれて0.46μm/分で最小まで減少する。
【0025】
バッファ成長の第2段階(傾斜相)における成長速度の影響を、第2の実験セットにおいて調べた。第2の実験セットで使用したサンプル構成を図3に示す。
【0026】
8%Ge濃度を有する第1のSiGeバッファ層2の上に、第2の傾斜バッファ層3を16%Geの最終濃度まで成長させた。4%Ge/μmの傾斜率が使用されている。第2層2の成長速度を、0.05μm/分から0.95μm/分まで変化させた。0.05μm/分~0.23μm/分では、TDDは増加し、より高い成長速度では、TDDは一定のままである。図4に示すように、より低い成長速度で最も低いTDDが実現される。
【0027】
25%Geのゲルマニウム含有量までの完全歪み緩和傾斜バッファ層が、本願発明(実施例)に従ってシリコン単結晶ウェハ上に堆積されている。堆積プロセスの第1段階中、すなわちプロセスの開始から8%Geのゲルマニウム含有量に達するまで、成長速度は、第1の実験セットの結果に従って、ベース層内に低ベースTDDを生成するために0.46μm/分であった。25%Geの最終含有量まで更に傾斜するために、成長速度は、第2の実験セットの結果に従って0.05μm/分であった。全体的な傾斜率は、2.1%Ge/μmであった。成長したバッファ層の厚さにわたる成長したバッファ層中のゲルマニウムの含有量を示す図5に示すように、達成された最終TDDは4×10/cmであった。図5の点線は堆積プロセスの第1段階を表し、実線は堆積プロセスの第2段階を表す。
【0028】
一連の実験および実施例は、ASM製のEPSILON3200型の市販のエピタキシャルリアクタ内で、堆積温度1050℃、前駆体ガスとしてGeClおよびSiHClを用いて行った。
【符号の説明】
【0029】
1 基板
2 第1の成長速度で成長させた第1のシリコンゲルマニウムバッファ層
3 第2の成長速度で成長させた第2のシリコンゲルマニウムバッファ層
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】