(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-06
(54)【発明の名称】高導電性金属膜を選択的に堆積させるための方法
(51)【国際特許分類】
C23C 16/06 20060101AFI20250130BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
C23C16/06
C23C16/455
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024546105
(86)(22)【出願日】2023-01-27
(85)【翻訳文提出日】2024-09-06
(86)【国際出願番号】 US2023011779
(87)【国際公開番号】W WO2023150066
(87)【国際公開日】2023-08-10
(32)【優先日】2022-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チェン, フィリップ エス.エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】ヘンドリックス, ブライアン クラーク
(72)【発明者】
【氏名】キャメロン, トーマス エム.
【テーマコード(参考)】
4K030
【Fターム(参考)】
4K030AA03
4K030AA04
4K030AA11
4K030AA16
4K030BA01
4K030BA05
4K030BA12
4K030BA20
4K030CA02
4K030CA04
4K030CA12
4K030HA01
4K030LA15
(57)【要約】
酸素を含まないルテニウム前駆体を用いた選択的なルテニウムシード層の堆積と、それに続くタングステン、モリブデン、コバルト、ルテニウム、及び/又は銅含有前駆体などの金属含有前駆体のバルク堆積とを含む方法が提供される。ルテニウムシード層の堆積は、マイクロエレクトロニクスデバイス基板の導電部分に対して高度に選択的であり、マイクロエレクトロニクスデバイス基板の絶縁表面への堆積を最小限に抑える。特定の実施形態では、基板の導電部分は、窒化チタン、窒化タングステン、窒化タンタル、タングステン、コバルト、モリブデン、アルミニウム、及び銅から選択される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロエレクトロニクスデバイス基板上に金属含有膜を堆積させるための方法であって、金属はタングステン、モリブデン、コバルト、ルテニウム、及び銅から選択され、基板は、窒化チタン、窒化タングステン、窒化タンタル、窒化ニオブ、タングステン、モリブデン、コバルト、及び銅から選択され、
a.還元ガスの存在下で、気相堆積条件下で、基板を含む反応ゾーン中に、ルテニウム含有膜が厚さ約3~約15Åになるまで、酸素を含まないルテニウム前駆体材料を導入することと、続いて、
b.タングステン、モリブデン、コバルト、ルテニウム又は銅の金属含有前駆体を、気相堆積条件下で、所望の厚さのタングステン、モリブデン、コバルト、ルテニウム又は銅の金属含有膜を得るまで反応ゾーン中に導入することと
を含む方法。
【請求項2】
(a)のルテニウム前駆体材料が、化学気相堆積条件下で反応ゾーン中に導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
タングステン、モリブデン、コバルト、ルテニウム又は銅の金属含有前駆体が化学気相堆積条件下で反応ゾーン中に導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
タングステン、モリブデン、コバルト、ルテニウム又は銅の金属含有前駆体が、原子層堆積又はパルスCVD条件下で反応ゾーン中に導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
タングステン、モリブデン、コバルト、ルテニウム又は銅の金属含有前駆体が、
a.MoCl
5、MoOCl
4、MoO
2Cl
2;Mo(CO)
6、MoH
2(
iPrCp)
2;
b.WF
6、W(t-ブチル-N)
2(N(CH
3)
2)
2、WCl
5、WCl
6、及びWOCl
4;W(CO)
6、WH
2(
iPrCp)
2;
c.Co(t-ブチル-NCHCHN-t-ブチル)
2、Co
2(CO)
6(HCCCF
3)、及びCo
2(CO)
6(HCC(CH
3)
3);並びに
d.銅(I)2-メトキシ-1,3-ジイソプロピルアミジネート;銅(I)2-エトキシ-1,3-ジイソプロピルアミジネート;銅(I)2-t-ブトキシ-1,3-ジイソプロピルアミジネート、銅(I)2-イソプロピル-1,3-ジイソプロピルアミジネート;及び銅(I)2-ジメチルアミノ-1,3-ジイソプロピルアミジネート
から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
モリブデン金属含有前駆体が、MoCl
5、MoOCl
4、又はMoO
2Cl
2から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
タングステン金属含有前駆体が、WF
6及びW(t-ブチル-N)
2(N(CH
3)
2)
2から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
銅金属含有前駆体が銅(I)N’,N’’-ジイソプロピル-N,N-ジメチルグアニデートである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ルテニウム金属含有前駆体が、
[式中、Rは、C
1~C
4アルキルから選択される]
から選択される1つ又は複数の化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
Rがt-ブチルである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
酸素を含まないルテニウム前駆体が、
から選択される化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
ルテニウム金属含有前駆体が、
[式中、Rは、C
1~C
4アルキルから選択される]
から選択される化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
ルテニウム金属含有前駆体が、
から選択される1つ又は複数の化合物を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
工程a.のルテニウム含有膜が、約5.3Åの厚さを有する膜について約450μΩ・cmの電気抵抗率を示す、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、概して、気相堆積(蒸着)の分野に関する。特に、本発明は、ルテニウム含有前駆体を選択的に堆積させ、続いてマイクロエレクトロニクスデバイス基板上に様々な金属をバルク堆積させることに関する。
【0002】
優先権主張
[0002]本発明は、2022年2月3日出願の米国仮特許出願第63/306,287号に対して優先権を主張し、その特許は参照により本明細書中で援用される。
【背景技術】
【0003】
[0003]マイクロエレクトロニクスデバイスの製造では、通常、タングステンが窒化チタンバリア上に堆積される。本方法では、六フッ化タングステンとケイ素又はホウ素源とを使用して核形成層を堆積させ、その後、還元ガスとして六フッ化タングステンと水素とを使用してバルク堆積を行う。残念ながら、このような核生成層の材料は、非常に微細な粒子であることが多く、高い抵抗率を示す。さらに、この核形成工程は非選択的であるため、デバイスの側壁もこの高抵抗金属で覆われる傾向がある。
【0004】
[0004]マイクロエレクトロニクスデバイスの基板上へのモリブデン含有膜の堆積では、高純度で低抵抗のモリブデン金属を化学気相堆積させるために、五塩化モリブデンとオキシ四塩化モリブデンが開発された。しかしながら、モリブデンも、一般に、約500℃未満の温度で窒化チタン表面に堆積させるために、同様の非選択的パルス核形成技術を必要とする。
【0005】
[0005]したがって、周囲の誘電体に対して高い選択性を有し、低抵抗の核形成(すなわちシード)層を窒化チタンなどの金属表面に堆積させる能力が依然として必要とされており、それによってタングステン、モリブデン、コバルト、ルテニウム、銅などの金属含有膜などの材料のバルク堆積が可能になる。
【0006】
[0006]集積半導体デバイスのスケーリングでは、配線層を接続する導電性ビアの抵抗が、集積デバイス内の通信における全体的な抵抗容量(RC)遅延の大きな部分を占めるようになった。ビア抵抗を最小限に抑えるには、高抵抗バリア、接着層、核形成層によって消費される体積を最小限に抑える必要がある。ビアの体積全体を低抵抗金属で埋める方法の1つは、ビアの誘電体側壁から成長させることなく、ビアの底部の金属接点から上部に向かって核生成して成長させることである。したがって、このような金属接点上に選択的に堆積する必要がある。
【発明の概要】
【0007】
[0007]要約すると、本発明は、酸素を含まないルテニウム前駆体を用いた選択的なルテニウムシード層の堆積と、それに続くタングステン、モリブデン、コバルト、ルテニウム、及び/又は銅含有前駆体などの金属含有前駆体のバルク堆積とを含む方法を提供する。ルテニウムシード層の堆積は、マイクロエレクトロニクスデバイス基板の導電部分に対して高度に選択的であり、マイクロエレクトロニクスデバイス基板の絶縁表面への堆積を最小限に抑える。特定の実施形態では、基板の導電部分は、窒化チタン、窒化タングステン、窒化タンタル(すべての導電性窒化物)、タングステン、コバルト、モリブデン、アルミニウム、及び銅(
図6の金属1)から選択される。特定の実施形態では、絶縁表面は、ケイ素酸化物、ケイ素窒化物、及びその他の誘電体、並びに低誘電率誘電体から選択される。
【0008】
[0008]ルテニウムシード層は、300℃でチタン窒化物基板上のp-シメンシクロヘキサジエン前駆体から5.3Å厚のルテニウム膜を堆積させたとき、約450μΩ-cmの堆積後の電気抵抗を示した。このプロセスは、隣接する酸化ケイ素表面に堆積されたルテニウムがわずか約0.3Åであることからもわかるように、選択性も高く、基板の絶縁部分よりも基板の導電部分に対して選択性を示している。この高導電性シード層により、上記の金属のバルク堆積が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】[0009]実施例1に記載のSiO
2に対する窒化チタンの自己制限堆積及び堆積選択性を示すグラフである。この堆積選択性は、5オングストロームのルテニウムで94%であることが実証された。
【
図2】[0010]窒化チタン上に形成されたルテニウム膜の、様々な厚さにおける堆積時の抵抗率を示すグラフである。
【
図3】[0011]窒化チタン基板上に堆積された5.3Å厚のルテニウム層の走査型電子顕微鏡写真(SEM)上面図である。(10分、446.1μΩ-cm)
【
図4】[0012]実施例2に記載の、H
2を共反応物としてエチルベンジル(1-エチル-1,4-シクロヘキサジエニル)Ruを堆積させた場合の、二酸化ケイ素に対するチタン窒化物の自己制限的堆積及び選択性を示すグラフである。
【
図5】[0013]実施例2に従って、様々な厚さにおける二酸化チタン及び二酸化ケイ素上のルテニウムの堆積時の抵抗率を示すグラフである。
【
図6】[0014]非選択的堆積によってビアを「金属2」で充填する際に空隙が生じることが多いという従来技術で提起された問題の図である。
図6bは、本発明のプロセスによって可能になると考えられるこの問題の解決策、すなわち、そのような空隙のないビア構造の図である。
図6cは、非常に選択的な方法で「金属1」上に金属2を選択的に堆積し、金属2でビアをボトムアップで埋めることを可能にした例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[0015]本明細書及び添付の特許請求の範囲の記述で使用される場合、単数形「一つの(a)」、「一つの(an)」、及び「その(the)」には、内容が明らかに別段の指示がない限り、複数の指示対象が含まれる。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される「又は」という用語は、内容が明確に別のことを指示しない限り、一般に「及び/又は」を含む意味で使用される。
【0011】
[0016]「約」という用語は通常、記載された値と等価であると見なされる数値の範囲を指す(例えば、同じ機能又は結果を有する)。多くの場合、「約」という用語には、最も近い有効数字に丸められた数値を含み得る。
【0012】
[0017]エンドポイントを使用して表現される数値範囲には、その範囲に含まれるすべての数値を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5を含む)。
【0013】
第一の態様において、本発明は、マイクロエレクトロニクスデバイス基板上に金属含有膜を堆積させる方法であって、金属はタングステン、モリブデン、コバルト、ルテニウム、及び銅から選択され、基板は、窒化チタン、窒化タングステン、窒化タンタル、窒化ニオブ、タングステン、モリブデン、コバルト、及び銅から選択され、
a.還元ガスの存在下で、気相堆積条件下で、基板を含む反応ゾーン中に、ルテニウム含有膜が厚さ約3~約15Åになるまで、酸素を含まないルテニウム前駆体材料を導入することと、続いて、
b.タングステン、モリブデン、コバルト、ルテニウム又は銅金属含有前駆体を、気相堆積条件下で、所望の厚さのタングステン、モリブデン、コバルト、ルテニウム又は銅の金属含有膜を得るまで反応ゾーン中に導入することと
を含む方法を提供する。
【0014】
[0019]本発明の方法は、高導電性ルテニウムシード層(工程a)が設けられた基板上に、特定の金属含有膜をバルク堆積させることを可能にする。この選択的に形成された高導電性ルテニウム層は、本明細書において援用される米国特許公開第2020/0149155号及び第2020/0157680号に記載された方法論を使用して堆積させることができる。前述のように、工程a.では、酸素を含まないルテニウム前駆体材料が利用される。一実施形態では、この酸素を含まないルテニウム前駆体は以下から選択される:
本明細書ではそれぞれ「p-シメンCHD Ru」及び「EBECHD Ru」と呼ぶ。
【0015】
[0020]約3~約15Åの厚さを有するルテニウムシード層が形成されると、工程bを利用して、タングステン、モリブデン、コバルト、ルテニウム又は銅の金属含有前駆体が導入される。これに関連して、工程bで利用されるルテニウム前駆体は、酸素を含まないルテニウム前駆体又は酸素含有ルテニウム前駆体であり得、いずれの場合も、既知のルテニウム前駆体材料から選択される。ルテニウム前駆体に酸素が含まれている場合、目的の金属を適切に(すなわち、酸化ゼロ状態で)堆積させるために、共反応物として還元ガスを利用することが望ましい場合がある。例示的な還元ガスは、水素、アンモニア、ヒドラジン、メチルヒドラジン、t-ブチルヒドラジン、1,2-ジメチルヒドラジン、及び1,1-ジメチルヒドラジンを含む。
【0016】
[0021]特定の実施形態では、気相堆積条件は、化学気相堆積、パルス化学気相堆積、及び原子層堆積として知られる反応条件を含む。パルス化学気相堆積の場合、中間(不活性ガス)パージ工程の有無にかかわらず、前駆体組成物と共反応物の一連の交互パルスを利用して、所望のエンドポイントまで膜厚を増やすことができる。
【0017】
[0022]特定の実施形態では、上記で示した前駆体化合物のパルス時間(すなわち、前駆体が基板に露出する持続時間)は、約1秒~30秒の範囲である。パージ工程が利用される場合、継続時間は約1~20秒又は1~30秒である。他の実施形態では、共反応物のパルス時間は5秒~60秒の範囲である。
【0018】
[0023]一実施形態では、工程a、すなわちルテニウムシード層の堆積の気相堆積条件は、反応ゾーン内の温度が約100℃~約400℃、又は約200℃~約350℃であり、圧力が約1Torr~約100Torrである。
【0019】
[0024]工程bの金属膜のバルク堆積は、選択された特定の金属前駆体に依存し、様々な温度、圧力、共反応ガスが関係する。
【0020】
[0025]例えば、モリブデンヘキサカルボニル及びタングステンカルボニルの場合、本明細書において援用される米国特許公開第2021/0062331号には、約250℃~約750℃の温度が記載されている。
【0021】
[0026]米国特許公開第2020/0199743号は、MoCl5、MoOCl4、MoO2Cl2、WCl6、WCl5、WOCl4、及びWO2Cl3などの前駆物質について、約480°C未満の温度及び約100Torr未満の圧力が記載されている。
【0022】
[0027]各種ルテニウム前駆体の場合、気相堆積温度は、概して、約100℃~約500℃であり、圧力は、概して、約10mTorr~約30Torrである。
【0023】
[0028]各種コバルト前駆体の場合、気相堆積温度は、概して、約70℃~約480℃であり、圧力は、概して、約0.2mTorr~約760Torrである。
【0024】
[0029]各種銅前駆体の場合、気相堆積温度は、概して、約40℃~約200℃であり、圧力は、概して、約0.2mTorr~約30Torrである。
【0025】
[0030]一実施形態では、工程a又は工程bにおけるルテニウム含有前駆体化合物は、以下から選択される1つ又は複数の化合物から選択される。
[式中、Rは、C
1~C
4アルキルから選択される。]
【0026】
[0031]一実施形態では、Rはt-ブチルである。
【0027】
[0032]上記の少なくとも1つから選択される化合物を含む前駆体組成物は、様々な表面上に低抵抗ルテニウムシード膜を形成するために使用することができる。一実施形態では、上記工程(a)において、ルテニウムシード層は化学気相堆積技術を使用して形成される。
【0028】
[0033]一実施形態では、工程(b)に示すタングステン、モリブデン、コバルト、ルテニウム又は銅の金属前駆体は、
a.MoCl5、MoOCl4、及びMoO2Cl2;Mo(CO)6、MoH2(iPrCp)2;(iPr=イソプロピル、Cp=シクロペンタジエニル)などのモリブデン前駆体と、
b.WF6、及びW(t-butyl-N)2(N(CH3)2)2;WCl5及びWCl6、WOCl4;W(CO)6、WH2(iPrCp)2などのタングステン前駆体と、
c.Co(t-Butyl-NCHCHN-t-Butyl)2、Co2(CO)6(HCCCF3)、及びCo2(CO)6(HCC(CH3)3)などのコバルト前駆体であり、その他のコバルト前駆体については、Alain E. Kaloyerosら、ECS Journal of Solid State Science and Technology、8 (2) P119-P152 (2019)、“Cobalt Thin Films: Trends in Processing Technologies and Emerging Applications”、Seong Ho Hanら、“New Heteroleptic Cobalt Precursors for Deposition of Cobalt-based Thin Films, ACS Omega, http://pubs.acs.org/journal/acsodf、及び米国特許第10,872,770号及び米国特許公開第2018/044788号(参照により本明細書において援用される)に記載されている、コバルト前駆体と、
d.銅前駆体、例えば銅(I)アミジネート、銅(I)グアニデート前駆体、例えば銅(I)2-メトキシ-1,3-ジイソプロピルアミジネート;銅(I)2-エトキシ-1,3-ジイソプロピルアミジネート;銅(I)2-t-ブトキシ-1,3-ジイソプロピルアミジネート;銅(I)2-イソプロピル-1,3-ジイソプロピルアミジネート;銅(I)2-ジメチルアミノ-1,3-ジイソプロピルアミジネート;(参照により本明細書において援用される米国特許公開第2005/0281952号及び国際公開第2007/1422700号を参照。)一実施形態では、銅前駆体は銅(I)N’、N’’-ジイソプロピル-N、N-ジメチルグアニデートであり、以下「CuDMAPA」と称される。また、Peter G. Gordon et al 2015 ECS J. Solid State Sci. Technol. 4 N3188、米国特許第7,964,746号、第7,858,525号、及び米国特許公開第2008/0281476号も参照されたい。これらは参照により本明細書において援用される。
【0029】
[0034]所望のマイクロエレクトロニクスデバイス基板は、例えば単一ウエハCVD又はALD、あるいは複数のウエハを含む炉など、任意の適切な方法で反応ゾーンに配置され得る。
【0030】
[0035]一つの代替案では、本発明の方法は、ALD又はALDのようなプロセスとして実行することができる。本明細書で使用される「ALD又はALDのような」という用語は、(i)本明細書で説明されている化合物を含む前駆体組成物を含む各反応物、共反応物が、シングルウエハALDリアクター、セミバッチALDリアクター、又はバッチ炉ALDリアクターなどのリアクターに順次導入される、あるいは(ii)各反応物が、基板をリアクターの異なるセクションに移動又は回転させることによって基板又はマイクロエレクトロニクスデバイス表面に露出され、各セクションが不活性ガスカーテンによって分離される、つまり空間ALDリアクター又はロールツーロールALDリアクターなどのプロセスを指す。特定の実施形態では、得られるバルクALD金属膜の厚さは約0.5nm~約40nmの範囲であってもよい。
【0031】
[0036]本明細書に開示される堆積方法は、1つ又は複数のパージガスを必要とする場合がある。消費されなかった反応物及び/又は反応副生成物を除去するために使用されるパージガスは、前駆体組成物又は反反応物と反応しない不活性ガスである。例示的なパージガスは、アルゴン、窒素、ヘリウム、ネオン、及びそれらの混合物を含むが、これらに限定されない。特定の実施形態では、Arなどのパージガスが、約10~約2000sccmの流量で約0.1~1000秒間リアクター内に供給され、これにより、リアクター内に残っている可能性のある未反応の物質及び副生成物がパージされる。このようなパージガスは、前駆体組成物及び共反応物のいずれか又は両方に対する不活性キャリアガスとしても利用され得る。
【0032】
[0037]反応ゾーン内の前駆体組成物及び共反応物にエネルギーが適用され、反応が誘発され、マイクロエレクトロニクスデバイスの表面上に膜が形成される。このようなエネルギーは、熱、パルス熱、プラズマ、パルスプラズマ、ヘリコンプラズマ、高密度プラズマ、誘導結合プラズマ、X線、電子ビーム、光子、リモートプラズマ法、及びそれらの組み合わせによって提供することができるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、二次RF周波数源を使用して基板表面のプラズマ特性を変更することができる。堆積にプラズマが関与する実施形態では、プラズマ生成プロセスは、プラズマがリアクター内で直接生成される直接プラズマ生成プロセス、又は代替的に、プラズマが反応ゾーン及び基板から「遠隔的に」生成され、リアクター内に供給される遠隔プラズマ生成プロセスを含むことができる。
【0033】
[0038]本明細書で使用される「マイクロエレクトロニクスデバイス」という用語は、マイクロエレクトロニクス、集積回路、又はコンピュータチップの用途で使用するために製造された3DNAND構造、フラットパネルディスプレイ、及びマイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)を含む半導体基板に対応する。「マイクロエレクトロニクスデバイス」という用語は、いかなる意味でも限定するものではなく、負チャネル金属酸化物半導体(nMOS)及び/又は正チャネル金属酸化物半導体(pMOS)トランジスタを含み、最終的にはマイクロエレクトロニクスデバイス又はマイクロエレクトロニクスアセンブリになるあらゆる基板が含まれることを理解すべきである。このようなマイクロエレクトロニクスデバイスには、少なくとも1つの基板が含まれており、この基板は、例えば、スズ、SiO2、Si3N4、OSG、FSG、炭化スズ、水素化炭化スズ、窒化スズ、水素化窒化スズ、炭窒化スズ、水素化炭窒化スズ、ホウ素窒化物、反射防止コーティング、フォトレジスト、ゲルマニウム、ゲルマニウム含有、ホウ素含有、Ga/As、フレキシブル基板、多孔質無機材料、銅やアルミニウムなどの金属、及びTiN、Ti(C)N、TaN、Ta(C)N、Ta、W、WNなどの拡散バリア層から選択することができる。
【0034】
[0039]実施例-
例1--H2共反応物によるp-シメン(1,3-シクロヘキサジエン)RuのCVD堆積
4μモル/分のp-シメンCHDRuと0.4 lpm(リットル/分)のH2を使用して、300℃、30TorrでRu金属を堆積させた。
【0035】
この例では、ルテニウム金属を300℃、30Torrで堆積させた。この例のデータは
図1に示されており、二酸化ケイ素よりも窒化チタンの方が堆積の選択性が優れていることを示している。
【0036】
例2--H
2共反応物を用いたエチルベンジル(1-エチル-1,4シクロヘキサジエニル)Ru[EBECHD Ru]のCVD堆積
エチルベンジル(1-エチル-1,4-シクロヘキサジエニル)Ru(4μモル/分の流量)を前駆体として使用し、0.4 lpmのH
2共反応物を使用して300℃、30Torrでルテニウム膜を堆積させた。この例のデータは
図4に示されており、二酸化ケイ素よりも窒化チタンの方が自己制限的な堆積と選択性があることを示している。
【0037】
例3(第2の工程は予測的)
第1の工程では、以下の条件下で6ÅのRuが基板のTiN領域に選択的に堆積される。300℃、30Torr、4μモル/分のp-シメンCHD Ruと0.4 lpm(リットル/分)のH2を使用して、3分間の堆積時間で処理した。(周囲の誘電体表面のRuは1Å未満である。)
【0038】
第2の工程では、基板は2slm(標準リットル/分)で流れる60TorrのH2内で400℃に保持される。MoCl5蒸気は、300sccmのArキャリアガスを使用して105°Cに保たれたProE-Vapアンプルから供給される。約10分で、<30mW-cm(マイクロオーム-cm)抵抗率を有する100ÅのMo金属が堆積される。
【0039】
例4a(Ru堆積)
この例では、以下の条件下で6ÅのRuが基板のTiN領域に選択的に堆積される。300℃、30Torr、4μモルモル/分のp-シメンCHD Ruと0.4 lpm(リットル/分)のH2を使用して、3分間の堆積時間で処理した。(周囲の誘電体表面のRuは1Å未満である。)
【0040】
例4b(スパッタリングされたRu表面へのCu堆積)
この例では、以下の条件下で230ÅのCuがRu層上に選択的に堆積される。基板は65℃に保持され、プロセス圧力は1Torrに制御される。470sccmのH2と490sccmのArの一定流量が存在する。CuDMAPA蒸気は、アンプルの上流で95TorrのArキャリアガスを使用して95℃に保たれたProE-Vapアンプルから18秒の長さのパルスで供給される。Cu前駆体の流れは0.5秒間のパージ時間の間停止される。150Wの直接プラズマが1.5秒間点灯し、その後プラズマの後に0.05秒間のパージが続く。550サイクル後、フィルムは、230Å厚であり、5.1mW-cm(マイクロオーム-cm)の抵抗率を有する。
【0041】
例5a(Ru堆積)
この例では、以下の条件下で6ÅのRuが基板のTiN領域に選択的に堆積される。300℃、30Torr、4μモル/分のp-シメンCHD Ruと0.4 lpm(リットル/分)のH2を使用して、3分間の堆積時間で処理した。(周囲の誘電体表面のRuは1Å未満である。)
【0042】
例5b(スパッタリングされたRu表面へのCo堆積)
この例では、基板は0.5slmで流れる30TorrのH2で200℃に保持される。100sccmのHeキャリアガスを用いて130℃に保たれた気化器から、1分間に10マイクロモルのCo(t-ブチル-NCHCHN-t-ブチル)2蒸気が供給される。約15分で、<12mW-cm(マイクロオーム-cm)抵抗率を有する300ÅのCo金属が選択的に堆積される。
【0043】
[0040]態様
[0041]第1の態様では、本発明は、マイクロエレクトロニクスデバイス基板上に金属含有膜を堆積させる方法であって、金属はタングステン、モリブデン、コバルト、ルテニウム及び銅から選択され、基板は、窒化チタン、窒化タングステン、窒化タンタル、窒化ニオブ、タングステン、モリブデン、コバルト、及び銅から選択され、
a.還元ガスの存在下で、気相堆積条件下で、基板を含む反応ゾーン中に、ルテニウム含有膜が厚さ約3~約15Åになるまで、酸素を含まないルテニウム前駆体材料を導入することと、続いて、
b.タングステン、モリブデン、コバルト、ルテニウム又は銅金属含有前駆体を、気相堆積条件下で、所望の厚さのタングステン、モリブデン、コバルト、ルテニウム又は銅の金属含有膜を得るまで反応ゾーン中に導入することと
を含む方法を提供する。
【0044】
[0042]第2の態様では、(a)のルテニウム前駆体材料は、化学気相堆積条件下で反応ゾーンに導入される、本発明は、第一の態様のプロセスを提供する。
【0045】
[0043]本発明の第3の態様では、タングステン、モリブデン、コバルト、ルテニウム又は銅の金属含有前駆体が化学気相堆積条件下で反応ゾーンに導入される、第1の態様のプロセスを提供する。
【0046】
[0044]第4の態様では、本発明は、タングステン、モリブデン、コバルト、ルテニウム又は銅の金属含有前駆体が、原子層堆積又はパルスCVD条件下で反応ゾーンに導入される、第1の態様の方法を提供する。
【0047】
[0045]第5の態様では、本発明は、タングステン、モリブデン、コバルト、ルテニウム又は銅金属含有前駆体が、
MoCl5、MoOCl4、MoO2Cl2;Mo(CO)6、MoH2(iPrCp)2;
WF6、W(t-butyl-N)2(N(CH3)2)2、WCl5、WCl6、及びWOCl4;W(CO)6、WH2(iPrCp)2;
Co(t-Butyl-NCHCHN-t-Butyl)2、Co2(CO)6(HCCCF3)、及びCo2(CO)6(HCC(CH3)3);
銅(I)2-メトキシ-1,3-ジイソプロピルアミジネート、銅(I)2-エトキシ-1,3-ジイソプロピルアミジネート、銅(I)2-t-ブトキシ-1,3-ジイソプロピルアミジネート、銅(I)2-イソプロピル-1,3-ジイソプロピルアミジネート、及び銅(I)2-ジメチルアミノ-1,3-ジイソプロピルアミジネート
から選択される、第1~第4の態様のいずれか1つの方法を提供する。
【0048】
[0046]第6の態様では、本発明は、モリブデン金属含有前駆体は、MoCl5、MoOCl4、又はMoO2Cl2から選択される、第1~第5の態様のいずれか1つの方法を提供する。
【0049】
[0047]第7の態様において、本発明は、タングステン金属含有前駆体は、WF6及びW(t-ブチル-N)2(N(CH3)2)2から選択される、第1~第4の態様のいずれか1つの方法を提供する。
【0050】
[0048]第8の態様では、本発明は、銅金属含有前駆体が、銅(I)N’、N’’-ジイソプロピル-N、N-ジメチルグアニデートである、第1~第4の態様のいずれか1つの方法を提供する。
【0051】
[0049]第9の態様では、本発明は、ルテニウム金属含有前駆体が、以下から選択される1つ又は複数の化合物を含む:
[式中、Rは、C
1~C
4アルキルから選択される]
第1~第4の態様のいずれか1つの方法を提供する。
【0052】
[0049]第10の態様では、本発明は、Rがt-ブチルである第9の態様の方法を提供する。
【0053】
[0050]第11の態様では、本発明は、酸素を含まないルテニウム前駆体が、次式から選択される化合物を含む:
第1~第10の態様のいずれか1つの方法を提供する。
【0054】
[0051]第12の態様では、本発明は、ルテニウム金属含有前駆体が、以下から選択される化合物を含む:
[式中、Rは、C
1~C
4アルキルから選択される]
第1~第4、又は第9の態様のいずれか1つの方法を提供する。
【0055】
[0052]第13の態様では、本発明は、ルテニウム金属含有前駆体が、以下から選択される1つ又は複数の化合物を含む:
第1~第4、又は第9の態様のいずれか1つの方法を提供する。
【0056】
[0053]第14の態様では、本発明は、工程1のルテニウム含有膜が、約5.3Åの厚さを有する膜に対して約450μΩ-cmの電気抵抗率を示す、第1~第12の態様のいずれか1つの方法を提供する。
【0057】
[0054]以上、本開示のいくつかの例示的な実施形態について説明したが、当業者であれば、本明細書に添付された特許請求の範囲内でさらに他の実施形態が作成及び使用され得ることは容易に理解されるであろう。この文書で取り上げられている開示の数多くの利点は、前述の説明で述べられている。しかしながら、この開示は、多くの点で、単なる例示に過ぎないことが理解されるであろう。当然ながら、開示の範囲は、添付の請求項が表現されている言語で定義される。
【手続補正書】
【提出日】2024-10-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロエレクトロニクスデバイス基板上に金属含有膜を堆積させるための方法であって、金属はタングステン、モリブデン、コバルト、ルテニウム、及び銅から選択され、基板は、窒化チタン、窒化タングステン、窒化タンタル、窒化ニオブ、タングステン、モリブデン、コバルト、及び銅から選択され、
a.還元ガスの存在下で、気相堆積条件下で、基板を含む反応ゾーン中に、ルテニウム含有膜が厚さ約3~約15Åになるまで、酸素を含まないルテニウム前駆体材料を導入することと、続いて、
b.タングステン、モリブデン、コバルト、ルテニウム又は銅の金属含有前駆体を、気相堆積条件下で、所望の厚さのタングステン、モリブデン、コバルト、ルテニウム又は銅の金属含有膜を得るまで反応ゾーン中に導入することと
を含む方法。
【請求項2】
タングステン、モリブデン、コバルト、ルテニウム又は銅の金属含有前駆体が、
a.MoCl
5、MoOCl
4、MoO
2Cl
2;Mo(CO)
6、MoH
2(
iPrCp)
2;
b.WF
6、W(t-ブチル-N)
2(N(CH
3)
2)
2、WCl
5、WCl
6、及びWOCl
4;W(CO)
6、WH
2(
iPrCp)
2;
c.Co(t-ブチル-NCHCHN-t-ブチル)
2、Co
2(CO)
6(HCCCF
3)、及びCo
2(CO)
6(HCC(CH
3)
3);並びに
d.銅(I)2-メトキシ-1,3-ジイソプロピルアミジネート;銅(I)2-エトキシ-1,3-ジイソプロピルアミジネート;銅(I)2-t-ブトキシ-1,3-ジイソプロピルアミジネート、銅(I)2-イソプロピル-1,3-ジイソプロピルアミジネート;及び銅(I)2-ジメチルアミノ-1,3-ジイソプロピルアミジネート
から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
モリブデン金属含有前駆体が、MoCl
5、MoOCl
4、又はMoO
2Cl
2から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
タングステン金属含有前駆体が、WF
6及びW(t-ブチル-N)
2(N(CH
3)
2)
2から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
銅金属含有前駆体が銅(I)N’,N’’ -ジイソプロピル-N,N-ジメチルグアニデートである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ルテニウム金属含有前駆体が、
[式中、Rは、C
1~C
4アルキルから選択される]
から選択される1つ又は複数の化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
Rがt-ブチルである、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
酸素を含まないルテニウム前駆体が、
から選択される化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ルテニウム金属含有前駆体が、
[式中、Rは、C
1~C
4アルキルから選択される]
から選択される化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ルテニウム金属含有前駆体が、
から選択される1つ又は複数の化合物を含む、請求項
4に記載の方法。
【国際調査報告】