(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-06
(54)【発明の名称】イソキサゾリン誘導体を含む注射用製剤及びこの製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4725 20060101AFI20250130BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20250130BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20250130BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20250130BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20250130BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20250130BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20250130BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20250130BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20250130BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20250130BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20250130BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20250130BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20250130BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20250130BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20250130BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20250130BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20250130BHJP
A61K 47/69 20170101ALI20250130BHJP
A61K 47/40 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
A61K31/4725
A61P1/04
A61P1/16
A61P3/10
A61P9/00
A61P9/10
A61P19/00
A61P19/02
A61P25/00
A61P25/28
A61P29/00 101
A61P31/04
A61P31/12
A61P37/06
A61K9/08
A61K9/14
A61K47/04
A61K47/69
A61K47/40
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024546186
(86)(22)【出願日】2023-02-20
(85)【翻訳文提出日】2024-08-02
(86)【国際出願番号】 KR2023002402
(87)【国際公開番号】W WO2023163470
(87)【国際公開日】2023-08-31
(31)【優先権主張番号】10-2022-0023373
(32)【優先日】2022-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジェウク・ベク
(72)【発明者】
【氏名】スン・ウォン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ウン・ユン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA29
4C076BB11
4C076BB21
4C076CC01
4C076CC07
4C076CC11
4C076CC16
4C076CC21
4C076CC32
4C076CC35
4C076DD26Z
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4C076EE39E
4C076FF36
4C076FF63
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC67
4C086GA02
4C086GA07
4C086GA09
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA43
4C086MA56
4C086MA66
4C086NA03
4C086ZA02
4C086ZA15
4C086ZA36
4C086ZA68
4C086ZA96
4C086ZB08
4C086ZB15
4C086ZB33
4C086ZB35
4C086ZC35
(57)【要約】
本発明は、カスパーゼ阻害剤として有用なイソキサゾリン誘導体またはこの薬学的に許容可能な塩を活性薬理成分(API)として含む注射用製剤に関する。
本発明による注射用製剤は、高用量のAPIで構成された第1剤と再構成溶液を含む第2剤とを含み、患者に投与直前に第1剤と第2剤とを混合して製造されることができ、活性型APIを安定的に含んで含有しているので、患者に投与する場合、効果的に薬効を期待できる長所がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1の化合物、ホスフェート緩衝剤、可溶化剤(solubilizing agent)及びpH調節剤を含む粉末形態である第1剤;及び
pHが5ないし12である再構成(reconstitution)溶液を含む第2剤;を含む、注射用製剤:
【化1】
【請求項2】
前記ホスフェート緩衝剤は、リン酸ナトリウム2塩基性7水和物及びリン酸ナトリウム1塩基酸1水和物の混合物である、請求項1に記載の注射用製剤。
【請求項3】
前記ホスフェート緩衝剤の含量は、第1剤を基準にして1ないし15mMである、請求項1に記載の注射用製剤。
【請求項4】
前記可溶化剤はシクロデキストリンである、請求項1に記載の注射用製剤。
【請求項5】
前記シクロデキストリンは、アルファ‐シクロデキストリン、2‐ヒドロキシプロピル‐ベータ‐シクロデキストリン及びスルホブチルエーテル‐ベータ‐シクロデキストリンからなる群からいずれか一つが選択される、請求項4に記載の注射用製剤。
【請求項6】
前記シクロデキストリンの含量は第1剤を基準にして10ないし30重量%である、請求項4に記載の注射用製剤。
【請求項7】
前記第1剤及び前記第2剤を混合した再構成後の溶液のpHが5.0ないし7.0である、請求項1に記載の注射用製剤。
【請求項8】
前記第1剤及び前記第2剤を混合した再構成後の溶液の浸透圧が300mOsm/kgないし400mOsm/kgである、請求項1に記載の注射用製剤。
【請求項9】
前記化学式1の化合物の含量が前記第1剤及び前記第2剤を混合した再構成後の溶液を基準にして1ないし20mg/mlである、請求項1に記載の注射用製剤。
【請求項10】
(S1)ホスフェート緩衝剤、可溶化剤及び塩基性pH調節剤を含むpHが10ないし12である溶媒を製造する段階;
(S2)前記製造された溶媒に下記化学式1の化合物を溶解させてpHが6ないし8である第1溶液を製造する段階;
【化2】
(S3)前記第1溶液に酸性pH調節剤を添加してpH1.0ないし3.0である第2溶液を製造する段階;
(S4)前記第2溶液を凍結乾燥して粉末形態である第1剤を製造する段階;及び
(S5)pHが5ないし12である再構成溶液を含む第2剤を製造する段階;を含む、注射用製剤の製造方法。
【請求項11】
前記化学式1の化合物の含量が再構成後の溶液を基準にして1ないし20mg/mlである、請求項10に記載の注射用製剤の製造方法。
【請求項12】
前記ホスフェート緩衝剤は、リン酸ナトリウム2塩基性7水和物及びリン酸ナトリウム1塩基性1水和物の混合物である、請求項10に記載の注射用製剤の製造方法。
【請求項13】
前記ホスフェート緩衝剤の含量は溶媒を基準にして1ないし15mMである、請求項10に記載の注射用製剤の製造方法。
【請求項14】
前記可溶化剤はシクロデキストリンである、請求項10に記載の注射用製剤の製造方法。
【請求項15】
前記シクロデキストリンは、アルファ‐シクロデキストリン、2‐ヒドロキシプロピル‐ベータ‐シクロデキストリン及びスルホブチルエーテル‐ベータ‐シクロデキストリンからなる群からいずれか一つが選択されるものである、請求項14に記載の注射用製剤の製造方法。
【請求項16】
前記シクロデキストリンの含量は溶媒を基準にして10ないし30重量%である、請求項14に記載の注射用製剤の製造方法。
【請求項17】
前記注射用製剤は、骨関節炎、関節リウマチ、退行性関節炎、破壊性骨障害、ウイルス性肝炎による肝疾患、急性肝炎、肝硬化、ウイルス性肝炎による脳損傷、人間突発性肝不全、敗血症、臓器移植拒絶反応、虚血性心疾患、認知症、脳卒中、AIDSによる脳損傷、糖尿及び胃潰瘍からなる群から選択される疾患を治療または予防するための、請求項1に記載の注射用製剤。
【請求項18】
前記疾患は、骨関節炎、関節リウマチ、退行性関節炎及び破壊性骨障害からなる群から選択されるものである、請求項17に記載の注射用製剤。
【請求項19】
前記注射用製剤は単一投与量で、第1剤及び第2剤を混合した溶液状態で使われるものである、請求項1に記載の注射用製剤。
【請求項20】
前記注射用製剤は、第1剤及び第2剤を混合した後、関節腔内に投与されるものである、請求項19に記載の注射用製剤。
【請求項21】
前記注射用製剤は、第1剤及び第2剤を混合した後、30分以内に関節腔内に投与されるものである、請求項19に記載の注射用製剤。
【請求項22】
前記注射用製剤は、第1剤及び第2剤を混合した後、1回投与されるものである、請求項19に記載の注射用製剤。
【請求項23】
下記化学式1の化合物、ホスフェート緩衝剤、可溶化剤(solubilizing agent)及びpH調節剤を含む粉末形態である第1剤;及び
pHが5ないし12である再構成(reconstitution)溶液を含む第2剤;を含む注射用製剤であって、
【化3】
前記注射用製剤は、第1剤及び第2剤を混合した後、30分以内に下記化学式2の化合物及び下記化学式3の化合物の含量を測定した時、化学式2の化合物及び化学式3の化合物の全体含量のうち、化学式2の化合物の含量が94%以上である、注射用製剤:
【化4】
【化5】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2022年2月23日付韓国特許出願第10‐2022‐0023373に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されているすべての内容を本明細書の一部として組み込む。
【0002】
本発明は、カスパーゼ阻害剤として有用なイソキサゾリン誘導体またはこの薬学的に許容可能な塩を活性薬理成分(API)として含む注射用製剤及びこの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
カスパーゼ(caspase)は、システインプロテアーゼ(cysteine protease)であり、カスパーゼ阻害剤は、このようなカスパーゼの作用を抑制することで、カスパーゼの作用によって引き起こされる炎症や細胞死(apoptosis)を調節できる化合物である。このような化合物を投与して症状を無くしたり、緩和させることができる疾病としては、骨関節炎、関節リウマチ、退行性関節炎、破壊性骨障害、ウイルス性肝炎による肝疾患、急性肝炎、肝硬化、ウイルス性肝炎による脳損傷、人間突発性肝不全、敗血症、臓器移植拒絶反応、虚血性心疾患、認知症、脳卒中、AIDSによる脳損傷、糖尿、胃潰瘍などがある。
【0004】
カスパーゼ阻害剤として、多様な種類のイソキサゾリン誘導体及びイソキサゾリン誘導体のプロドラッグが知られている。前記イソキサゾリン誘導体のうち、(R)‐N‐((2S,3S)‐2‐(フルオロメチル)‐2‐ヒドロキシ‐5‐オキソテトラヒドロフラン‐3‐イル)‐5‐イソプロピル‐3‐(イソキノリン‐1‐イル)‐4,5‐ジヒドロイソオキサゾール‐5‐カルボキサミド(以下「化学式1の化合物」という)は、既にウイルス性肝炎による肝疾患、肝線維症、非アルコール性脂肪性肝炎(Nonalcoholic steatohepatitis:NASH)からその効能が立証されたことがある。
【化1】
【0005】
最近、前記化学式1の化合物を骨関節炎(OA:osteoarthritis)、関節リウマチ、退行性関節炎、破壊性骨障害などの骨関節と係る疾患に適用しようとする試みがある。
【0006】
骨関節と係る疾患の治療において、一般的な薬物投与方法は、潤滑液(synovial fluid)で満たされている関節腔(joint cavity)内に直接注射器で投与することである。経口投与の場合、全身へ薬物効果が及ぼすが、全身副作用を避けることはできない。一方、関節腔内に直接投与する場合、薬物の局所投与により、薬物が直接伝わる局所治療の効果だけでなく、高濃度の薬物を投与することができ、全身副作用を最小化することができるという長所がある。
【0007】
化学式1の化合物は、既存の肝疾患に対して経口用製剤で治療効果を確認したが、化学式1の化合物は水にあまり溶けないので、注射用製剤で剤形化するには困難がある。
【0008】
したがって、化学式1の化合物を注射剤で使うことができる高濃度の注射用製剤の開発が必要な実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国特許公報第0774999号(2007年11月02日)イソキサゾリン誘導体及びその製造方法
【特許文献2】韓国特許出願第2021‐0102476号(2021年08月04日)カスパーゼ阻害剤の骨関節炎緩和または治療における用途
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Ratziu et al.,‘A Phase 2、Randomized、Double‐Blind、Placebo‐Controlled Study of GS‐9450 in Subjects with Nonalcoholic Steatohepatitis' HEPATOLOGY、Vol.55,No.2,2012
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
これにより、本発明者らは前記問題を解決するために多角的に研究した結果、高含量の化学式1の化合物を活性薬理成分(API)とする注射用製剤を導き出すことが本発明の解決しようとする課題である。
【0012】
また、高含量の化学式1の化合物を活性薬理成分(API)とする注射用製剤において、活性薬理成分の安定性を高め、長期保管が可能な凍結乾燥注射用製剤を導き出すことが本発明の解決しようとする課題である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、下記化学式1の化合物、ホスフェート緩衝剤、可溶化剤(solubilizing agent)及びpH調節剤を含む粉末形態である第1剤;及びpHが5ないし12の再構成(reconstitution)溶液を含む第2剤;を含む、注射用製剤を提供する:
【化2】
【0014】
また、本発明は、前記ホスフェート緩衝剤がリン酸ナトリウム2塩基性7水和物及びリン酸ナトリウム1塩基酸1水和物との混合物である注射用製剤を提供する。
【0015】
また、本発明は、前記ホスフェート緩衝剤の含量が第1剤を基準にして1ないし15mMである注射用製剤を提供する。
【0016】
また、本発明は、前記可溶化剤がベータ‐シクロデキストリンである注射用製剤を提供する。
【0017】
また、本発明は、前記ベータ‐シクロデキストリンがヒドロキシメチル‐ベータ‐シクロデキストリン、ヒドロキシエチル‐ベータ‐シクロデキストリン及びヒドロキシプロピル‐ベータシクロデキストリンからなる群からいずれか一つが選択される注射用製剤を提供する。
【0018】
また、本発明は、前記ベータ‐シクロデキストリンの含量が第1剤を基準にして10ないし30重量%である注射用製剤を提供する。
【0019】
また、本発明は、前記第1剤及び前記第2剤とを混合した再構成後溶液のpHが5.0ないし7.0である注射用製剤を提供する。
【0020】
また、本発明は、前記第1剤及び前記第2剤とを混合した再構成後溶液の浸透圧が300mOsm/kgないし400mOsm/kgである注射用製剤を提供する。
【0021】
また、本発明は、前記化学式1の化合物の含量が前記第1剤及び前記第2剤を混合した再構成後溶液を基準にして1ないし20mg/mlである注射用製剤を提供する。
【0022】
また、本発明は、(S1)ホスフェート緩衝剤、可溶化剤及び塩基性pH調節剤を含むpHが10ないし12である溶媒を製造する段階;(S2)前記製造された溶媒に下記化学式1の化合物を溶解させてpHが6ないし8である第1溶液を製造する段階;
【化3】
【0023】
(S3)前記第1溶液に酸性pH調節剤を添加してpH1.0ないし3.0である第2溶液を製造する段階;(S4)前記第2溶液を凍結乾燥して粉末形態である第1剤を製造する段階;及び(S5)pHが5ないし12である再構成溶液を含む第2剤を製造する段階;を含む、注射用製剤の製造方法を提供する。
【0024】
また、本発明は、前記化学式1の化合物の含量が再構成後溶液を基準にして1ないし20mg/mlである注射用製剤の製造方法を提供する。
【0025】
また、本発明は、前記ホスフェート緩衝剤がリン酸ナトリウム2塩基性7水和物及びリン酸ナトリウム1塩基酸1水和物の混合物である注射用製剤の製造方法を提供する。
【0026】
また、本発明は、前記ホスフェート緩衝剤の含量が溶媒を基準にして1ないし15mMである注射用製剤の製造方法を提供する。
【0027】
また、本発明は、前記可溶化剤がベータ‐シクロデキストリンである注射用製剤の製造方法を提供する。
【0028】
また、本発明は、前記ベータ‐シクロデキストリンがヒドロキシメチル‐ベータ‐シクロデキストリン、ヒドロキシエチル‐ベータ‐シクロデキストリン及びヒドロキシプロピル‐ベータシクロデキストリンからなる群からいずれか一つが選択される注射用製剤の製造方法を提供する。
【0029】
また、本発明は、前記ベータ‐シクロデキストリンの含量が溶媒を基準にして10ないし30重量%である注射用製剤の製造方法を提供する。
【0030】
また、本発明は、骨関節炎、関節リウマチ、退行性関節炎、破壊性骨障害、ウイルス性肝炎による肝疾患、急性肝炎、肝硬化、ウイルス性肝炎による脳損傷、人間突発性肝不全、敗血症、臓器移植拒絶反応、虚血性心疾患、認知症、脳卒中、AIDSによる脳損傷、糖尿及び胃潰瘍からなる群から選択される疾患を治療または予防するための注射用製剤を提供する。
【0031】
また、本発明は、前記疾患が骨関節炎、関節リウマチ、退行性関節炎及び破壊性骨障害からなる群から選択される注射用製剤を提供する。
【0032】
また、本発明は、単一投与量で、第1剤及び第2剤を混合した溶液状態で使われる注射用製剤を提供する。
【0033】
また、本発明は、第1剤及び第2剤を混合した後、関節腔内に投与される注射用製剤を提供する。
【0034】
また、本発明は、第1剤及び第2剤を混合した後、30分以内に関節腔内に投与される注射用製剤を提供する。
【0035】
また、本発明は、第1剤及び第2剤を混合した後、1回投与される注射用製剤を提供する。
【0036】
また、本発明は、下記化学式1の化合物、ホスフェート緩衝剤、可溶化剤(solubilizing agent)及びpH調節剤を含む粉末形態である第1剤;及びpHが5ないし12である再構成(reconstitution)溶液を含む第2剤;を含む注射用製剤で、
【化4】
前記注射用製剤は、第1剤及び第2剤を混合した後、30分以内に下記化学式2の化合物及び下記化学式3の化合物の含量を測定した時、化学式2の化合物及び化学式3の化合物の全体含量のうち、化学式2の化合物の含量が94%以上である注射用製剤を提供する:
【化5】
【化6】
【発明の効果】
【0037】
本発明による注射用製剤は、凍結乾燥剤形である第1剤と再構成溶液を含む第2剤とを含み、実際患者に投与する直前に第1剤及び第2剤を混合して薬物を製造した後、30分以内に患者に投与するので、活性型APIの含量が高い注射用製剤を提供することができる。
【0038】
また、活性薬理成分(API)の安定性を高め、長期保管が可能な凍結乾燥注射用製剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】撹拌時間に対するAPI混合溶液内のAPI純度を測定した結果を示す図面である。
【
図2】(a)は実施例52で製造されたAPI凍結乾燥最終剤形のTGA測定結果で、(b)は実施例52で製造されたAPI凍結乾燥最終剤形のDSC測定結果を示す図面である。
【
図3】実施例52で製造されたAPI凍結乾燥最終剤形のXRDパターン測定結果を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0041】
本発明で使われるすべての技術用語は、他に定義されない限り、本発明の関連分野で通常の知識を有する者が一般的に理解するものと同様の意味で使われる。また、本明細書には好ましい方法や試料が記載されるが、これと類似または同等なものなども本発明の範疇に含まれる。本明細書に参考文献として記載されるすべての刊行物の内容は、全体が本明細書に参照として統合される。
【0042】
本発明の化学式1の化合物は水にほとんど溶けないので、化学式1の化合物を高含量で溶かすことができる溶媒を見つけるために多様な組成の溶媒での溶解度を分析した。
【0043】
その結果、化学式1の化合物は、ホスフェート緩衝剤、可溶化剤(solubilizing agent)及びpH調節剤を含む溶媒の中で、pH4以下の酸性溶媒ではほとんど溶けないことに対し、pH6以上の弱酸性溶媒及びpH7.5以上の塩基性溶媒でよく溶けることを確認した。また、前記化学式1の化合物は、溶媒に溶けながら溶液のpHを減少させる性質を持つことを確認した。
【0044】
また、化学式1の化合物が水性溶媒に溶解される場合、ラクトン環が切れながら下記化学式2の化合物に変換されることを見つけ出した。この時、前記化学式2の化合物は活性を持つ形態であるが、前記化学式2の化合物は水溶液状態で速く構造異性体である化学式3の化合物に非可逆的に変換され、前記化学式3の化合物は化学式2の化合物とは違って、カスパーゼ阻害活性を示さない不活性形態であることを見つけ出した。
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
さらに、溶媒のpHによって化学式2の化合物から化学式3の化合物への変換率を確認した結果、酸性溶媒では化学式3の化合物がほとんど生成されないが、中性以上の塩基性溶媒では前記化学式3の化合物が速く生成されることを確認することができた。
【0049】
したがって、化学式1の化合物を溶かすためには、pHが高い塩基性溶媒を利用しなければならないが、前記化学式1の化合物が溶解されながら、溶液のpHを下げて溶解されていない化合物の溶解度を下げるだけでなく、溶解された化合物の活性型は塩基性溶媒で急速に不活性型に変更されることが分かった。このような機序は、化学式1の化合物をAPIとする注射剤剤形で活性成分の純度を下げるので、薬効に影響を及ぼすだけでなく、前記化学式1の化合物が溶解されながら溶液のpHを下げるので、個体への投与のための最終薬品製造の際にpHを調節することが難しいという問題がある。
【0050】
したがって、本発明者は多様な注射用製剤を研究した結果、前記化学式1の化合物を含む溶液を酸性化された溶液に製造した後凍結乾燥させることで、長期間保管の安定性が向上された凍結乾燥注射用製剤を完成した。
【0051】
注射用製剤の製造方法
本発明の一実施例によれば、注射用製剤の製造方法は下記段階を含む:
(S1)ホスフェート緩衝剤、可溶化剤及び塩基性pH調節剤を含むpHが10ないし12である溶媒を製造する段階;
(S2)前記製造された溶媒に下記化学式1の化合物を溶解させてpHが6ないし8である第1溶液を製造する段階;
【化10】
(S3)前記第1溶液に酸性pH調節剤を添加してpH1.0ないし3.0である第2溶液を製造する段階;
(S4)前記第2溶液を凍結乾燥して粉末形態である第1剤を製造する段階;及び
(S5)pHが5ないし12の再構成溶液を含む第2剤を製造する段階。
【0052】
本発明の一実施例において、注射用製剤の製造方法は、(S1)ホスフェート緩衝剤、可溶化剤及び塩基性pH調節剤を含む、pHが10ないし12である溶媒を製造する段階を含むことができる。
【0053】
前記緩衝剤、可溶化剤及び塩基性pH調節剤を含む溶媒は、前記化学式1の化合物を溶解させることができる溶媒の組成であり得る。
【0054】
前記溶媒は緩衝剤を含むことができる。前記緩衝剤は注射用製剤に使われることができる通常の緩衝剤を使うことができ、具体的な例としては、ホスフェート緩衝剤、トリス緩衝剤、MES緩衝剤などがあるが、これに制限されない。ホスフェート緩衝剤を使う場合、リン酸ナトリウム2塩基酸、リン酸ナトリウム1塩基酸、リン酸カリウム2塩基酸、リン酸カリウム1塩基酸、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。トリス緩衝剤を使う場合、TRIZMA(登録商標)緩衝剤を使うことができる。
【0055】
前記緩衝剤は、溶媒を基準にして1ないし15mMの濃度を有し、具体的には、1ないし15mM、2ないし15mM、3ないし15mM、4ないし15mM、5ないし15mM、1ないし14mM、2ないし14mM、3ないし14mM、4ないし14mM、5ないし14mM、1ないし13mM、2ないし13mM、3ないし13mM、4ないし13mM、5ないし13mM、1ないし12mM、2ないし12mM、3ないし12mM、4ないし12mM、5ないし12mM、1ないし11mM、2ないし11mM、3ないし11mM、4ないし11mM、5ないし11mM、1ないし10mM、2ないし10mM、3ないし10mM、4ないし10mMまたは5ないし10mMの濃度を有することができる。
【0056】
前記溶媒は、可溶化剤(solubilizing agent)を含むことができる。前記可溶化剤はシクロデキストリンまたはこの誘導体を含むことができる。前記シクロデキストリンは前記化学式1の化合物の溶解安定度を向上させ、凍結乾燥の際に安定的で、均一なケーキが形成されることに影響を及ぼすことがある。
【0057】
前記シクロデキストリン(cyclodextrin)は、6~12個のブドウ糖分子がアルファ‐1,4‐グリコシド結合をした環状のオリゴ糖であって、6個のブドウ糖分子が繋がったアルファ‐シクロデキストリン、7個のブドウ糖分子が繋がったベータ‐シクロデキストリン、及び8個のブドウ糖分子が繋がったガンマ‐シクロデキストリンなどがある。本発明で使われることができるシクロデキストリンとしては、前記3種類の他にシクロデキストリン誘導体も全て含むことができる。
【0058】
前記シクロデキストリンの誘導体は、アルファ‐シクロデキストリン、2‐ヒドロキシプロピル‐ベータ‐シクロデキストリン、スルホブチルエーテル‐ベータ‐シクロデキストリンなどがあり、具体的には、2‐ヒドロキシプロピル‐ベータ‐シクロデキストリンであってもよい。
【0059】
前記可溶化剤は、溶媒を基準にして10ないし30重量%含むことができる。具体的には、10ないし30重量%、10.5ないし30重量%、11ないし30重量%、11.5ないし30重量%、12ないし30重量%、10ないし29.5重量%、10.5ないし29.5重量%、11ないし29.5重量%、11.5ないし29.5重量%、12ないし29.5重量%、10ないし29重量%、10.5ないし29重量%、11ないし29重量%、11.5ないし29重量%、12ないし29重量%、10ないし28.5重量%、10.5ないし28.5重量%、11ないし28.5重量%、11.5ないし28.5重量%、12ないし28.5重量%、10ないし28重量%、10.5ないし28重量%、11ないし28重量%、11.5ないし28重量%または12ないし28重量%含むことができる。
【0060】
前記溶媒は塩基性pH調節剤を含むことができる。前記塩基性pH調節剤は、pH10ないし12の溶媒製造の際に使われることができ、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、アンモニア、炭酸水素ナトリウムなどが使われることができるが、これらの例のみに限定されるものではない。
【0061】
前記塩基性pH調節剤は、溶媒を基準にして20ないし40mMの濃度を有する。
【0062】
前記溶媒は前記緩衝剤及び塩基性pH調節剤を利用してpHを10ないし12に調節することができる。
【0063】
本発明の一実施例において、注射用製剤の製造方法は、(S2)前記製造された溶媒に下記化学式1の化合物を溶解させてpHが6ないし8である第1溶液を製造する段階を含むことができる:
【化11】
【0064】
前記化学式1の化合物は、pHが10ないし12の溶媒で溶解されることができる。前記化学式1の化合物が溶媒に溶解されながら、第1溶液のpHを下げるため、前記化学式1の化合物及び溶媒を混合した第1溶液のpHは6ないし8であってもよい。前記化学式1の化合物の混合溶液のpHが6ないし8範囲を脱する場合、APIを溶解することに適しないこともある。
【0065】
本発明の一実施例において、注射用製剤の製造方法は、(S3)前記第1溶液に酸性pH調節剤を添加してpH1.0ないし3.0の第2溶液を製造する段階を含むことができる。
【0066】
APIである化学式1の化合物は、pHが10ないし12の溶媒で溶解されるが、溶解された化学式1の化合物の活性型は塩基性溶液で急速に不活性型に変更される。したがって、前記第2溶液の製造はAPIを含む第1溶液のpHが高いほどAPIの活性型が水溶液で速く加水分解されて不活性型に変わることを防止するためである。
【0067】
前記第2溶液の製造はAPIが析出されてはならず、第2溶液の製造後、APIの安定性(純度)が維持されなければならない。このような条件を満たすために、第2溶液のpHは1.0ないし3.0の範囲であってもよい。具体的に、第2溶液のpHは、1.0ないし3.0、1.0ないし2.9、1.0ないし2.8、1.0ないし2.7、1.0ないし2.6または1.0ないし2.5であってもよい。
【0068】
前記第2溶液の製造のために添加される酸性pH調節剤は塩酸であってもよいが、これに限定されず、前記第2溶液のpHが1.0ないし3.0を満たすことができる過塩素酸、硝酸、硫酸などが使われることができる。
【0069】
本発明の一実施例において、注射用製剤の製造方法は、(S4)前記第2溶液を凍結乾燥して粉末形態である第1剤を製造する段階を含むことができる。
【0070】
本明細書で使われる用語「凍結乾燥」は、乾燥する物質が先に凍結され、続いて氷または凍結された溶媒が真空環境で昇華によって除去される工程を意味する。
【0071】
前記凍結乾燥は、‐80℃で3ないし5時間凍結した後、10ないし20Paで10ないし50時間乾燥させることができる。
【0072】
前記第1剤は、粉末、乾燥粉末または凍結乾燥物(lyophile)の形態であってもよい。前記第1剤は長期間保存が可能で、注射剤として製剤化が容易である。また、副作用を起こすような添加剤が存在しないので、人体に使うに全く害にならない。
【0073】
本発明の一実施例において、注射用製剤の製造方法は、(S5)pHが5ないし12である再構成溶液を含む第2剤を製造する段階を含むことができる。
【0074】
本明細書で使われる用語「再構成(reconstitution)」とは、凍結乾燥粉末などの乾燥粉末に水または溶液を添加することで固体状態を液体状態に戻すことを意味し、本発明による再構成溶液は、第1剤に加えて液体状態で製造するための溶液を意味する。
【0075】
前記第2剤は、再構成媒体である滅菌精製水、注射用水、生理食塩水またはこれらの組み合わせを含み、前記再構成媒体に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムまたはこれらの組み合わせをさらに含む再構成溶液を含むことができる。
【0076】
前記再構成溶液のpHは5ないし12の溶液であってもよい。前記pHが5ないし12の再構成溶液を含む第2剤の製造は、pHが1.0ないし3.0である前記第2溶液を凍結乾燥して粉末形態に製造された第1剤を再構成するためのもので、注射用製剤を体内に投与する前に患者の痛み誘発防止のために体内に適した注射用製剤のpHを調節するためである。
【0077】
前記第2剤は再構成溶液の他にpHに影響を及ぼさない他の添加剤をさらに含むことができる。前記添加剤としては、防腐剤、界面活性剤などをさらに含むことができるが、これらの例のみに限定されず、当業界で通常使われる添加剤を選択的に含むことができる。前記防腐剤は2次汚染を防ぐためのもので、薬学的に許容される防腐剤を利用することができる。界面活性剤は、例えば、ポリオキシエチレン基を含む非イオン性界面活性剤を挙げることができるが、これに限定されず、薬学的に許容される界面活性剤を利用することができる。
【0078】
注射用製剤
本発明の一実施例によると、下記化学式1の化合物、ホスフェート緩衝剤、可溶化剤(solubilizing agent)及びpH調節剤を含む粉末形態である第1剤;及びpHが5ないし12の再構成(reconstitution)溶液を含む第2剤;を含む注射用製剤を提供することができる:
【化12】
【0079】
前記第1剤は、緩衝剤、可溶化剤及びpH調節剤を含むことができる。
【0080】
前記緩衝剤は、注射用製剤に使われることができる通常の緩衝剤を使用することができ、具体的な例としては、ホスフェート緩衝剤、トリス緩衝剤、MES緩衝剤などがあるが、これに制限されない。ホスフェート緩衝剤を使う場合、リン酸ナトリウム2塩基酸、リン酸ナトリウム1塩基酸、リン酸カリウム2塩基酸、リン酸カリウム1塩基酸、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。 トリス緩衝剤を使う場合、TRIZMA(登録商標)緩衝剤を使うことができる。
【0081】
前記緩衝剤は、第1剤を基準にして1ないし15mMの濃度を有し、具体的には、1ないし15mM、2ないし15mM、3ないし15mM、4ないし15mM、5ないし15mM、1ないし14mM、2ないし14mM、3ないし14mM、4ないし14mM、5ないし14mM、1ないし13mM、2ないし13mM、3ないし13mM、4ないし13mM、5ないし13mM、1ないし12mM、2ないし12mM、3ないし12mM、4ないし12mM、5ないし12mM、1ないし11mM、2ないし11mM、3ないし11mM、4ないし11mM、5ないし11mM、1ないし10mM、2ないし10mM、3ないし10mM、4ないし10mMまたは5ないし10mMの濃度を有することができる。
【0082】
前記可溶化剤は、シクロデキストリンまたはこの誘導体を含むことができる。前記シクロデキストリンは、前記化学式1の化合物の溶解安定度を向上させ、凍結乾燥の際に安定的で、均一なケーキが形成されることに影響を及ぼすことができる。
【0083】
前記シクロデキストリン(cyclodextrin)は、6~12個のブドウ糖分子がアルファ‐1,4‐グリコシド結合をした環状のオリゴ糖であって、6個のブドウ糖分子が繋がったアルファ‐シクロデキストリン、7個のブドウ糖分子が繋がったベータ‐シクロデキストリン、及び8個のブドウ糖分子が繋がったガンマ‐シクロデキストリンなどがある。本発明で使われてもよいシクロデキストリンとしては、前記3種類の他にシクロデキストリン誘導体も全て含むことができる。
【0084】
前記シクロデキストリンの誘導体は、アルファ‐シクロデキストリン、2‐ヒドロキシプロピル‐ベータ‐シクロデキストリン、スルホブチルエーテル‐ベータ‐シクロデキストリンなどがあり、具体的には、2‐ヒドロキシプロピル‐ベータ‐シクロデキストリンであってもよい。
【0085】
前記可溶化剤は、第1剤を基準にして10ないし30重量%含むことができる。具体的には、10ないし30重量%、10.5ないし30重量%、11ないし30重量%、11.5ないし30重量%、12ないし30重量%、10ないし29.5重量%、10.5ないし29.5重量%、11ないし29.5重量%、11.5ないし29.5重量%、12ないし29.5重量%、10ないし29重量%、10.5ないし29重量%、11ないし29重量%、11.5ないし29重量%、12ないし29重量%、10ないし28.5重量%、10.5ないし28.5重量%、11ないし28.5重量%、11.5ないし28.5重量%、12ないし28.5重量%、10ないし28重量%、10.5ないし28重量%、11ないし28重量%、11.5ないし28重量%または12ないし28重量%含むことができる。
【0086】
前記pH調節剤は、塩基性pH調節剤及び酸性pH調節剤を含むことができる。前記pH調節剤は前に説明したとおりである。
【0087】
前記第1剤は、粉末、乾燥粉末または凍結乾燥物(lyophile)の形態であってもよい。前記第1剤は、長期間保存が可能で、注射剤への製剤化が容易である。また、副作用を起こすような添加剤が存在しないので、人体に使うのに全く害にならない。
【0088】
前記第2剤は、pHが5ないし12の再構成溶液を含むことができる。前記再構成溶液は、前に説明したとおりである。
【0089】
本発明の一実施例による注射用製剤は、第1剤及び第2剤を混合した再構成後溶液のpHが5.0ないし7.0であってもよい。前記再構成後、溶液のpHが5.0ないし7.0範囲を脱する場合、患者に注射用製剤を投与する時に痛みを感じることがあるため、注射用製剤として使うには不向きである。
【0090】
本発明の一実施例による注射用製剤は、第1剤及び第2剤を混合した再構成後溶液の浸透圧が300mOsm/kgないし400mOsm/kgであってもよい。前記再構成後、溶液の浸透圧が300mOsm/kgないし400mOsm/kgの範囲を脱する場合、患者に注射用製剤を投与する時に痛みを感じることがあるため、注射用製剤として使うには不向きである。
【0091】
本発明の一実施例による注射用製剤は、前記化学式1の化合物の含量を投与対象患者の状態、目的とする治療の度合いなどに応じて異にすることができる。
【0092】
前記注射用製剤は、前記化学式1の化合物の含量を前記第1剤及び前記第2剤を混合した再構成後溶液を基準にして1ないし20mg/ml含むことができる。具体的に、前記化学式1の化合物の含量は、再構成後溶液を基準にして1ないし20mg/ml、5ないし20mg/ml、10ないし20mg/ml、1ないし15mg/ml、5ないし15mg/ml、10ないし15mg/ml、5mg/ml、10mg/ml、15mg/mlまたは20mg/mlであってもよく、これは1回分の用量で好ましい。
【0093】
前記化学式1の化合物の含量が1mg/ml未満の低濃度の場合、十分な治療効果を表すために、多い用量の注射液が投入されて患者の患部への投与時に難しさを引き起こすことがあって、20mg/ml超過の高濃度の場合、溶媒の溶解時にAPIが析出されたり患者の患部への投与時に痛みを引き起こすことがある。
【0094】
本発明の一実施例による注射用製剤は、前記化学式1の化合物を含む第1剤が第2剤と混合して前記化学式1の化合物が完全に溶解された透明な状態であってもよい。
【0095】
本発明の一実施例による注射用製剤は、患者に投与する直前に前記化学式1の化合物を含む第1剤を、前記再構成溶液を含む第2剤に再構成して、再構成後溶液を患者の患部に投与することで使われることができる。
【0096】
本発明の一実施例による注射用製剤は、患者に投与する直前に第1剤及び第2剤を混合して使用するので、抗酸化剤、防腐剤など保存のための賦形剤をさらに含まなくてもよいが、再構成溶液を含む第2剤の場合、2次汚染を防ぐための防腐剤などが含まれることができる。
【0097】
本発明は、本発明の注射用製剤を利用してカスパーゼ関連疾患を治療したり予防する方法を提供する。
【0098】
前記「治療」とは、発病症状を見せる対象に使われる時、疾病の進行を中断または遅延させることを意味し、前記「予防」とは、発病症状は見せないが、そのような危険性の高い対象に使われる時、発病の兆しを中断または遅延させることを意味する。
【0099】
本発明の「カスパーゼ関連疾患」とは、カスパーゼを阻害することで治療ないし予防することができる疾病であって、例えば、骨関節炎、関節リウマチ、退行性関節炎、破壊性骨障害、ウイルス性肝炎による肝疾患、急性肝炎、肝硬化、ウイルス性肝炎による脳損傷、人間突発性肝不全、敗血症、臓器移植拒絶反応、虚血性心疾患、認知症、脳卒中、AIDSによる脳損傷、糖尿、胃潰瘍などを挙げることができるが、上記疾患のみに限定されるものではない。
【0100】
本発明の注射用製剤は、治療または予防を要する個体に投与され、個体のカスパーゼ関連疾患を治療または予防することができる。
【0101】
本発明の用語「投与」または「投与すること」は、本発明の注射用製剤の投与量を哺乳動物、鳥類、魚類または両生類を含む脊椎動物または非脊椎動物に注射で投与する方法を指す。好ましい投与方法は、治療しようとする疾患の種類、疾患の部位及び疾患の軽重度に応じて血管注射、皮下注射、経皮注射、筋肉注射、脊髓注射、肌内注射など通常の注射方法から選択することができ、特に、骨関節と係る疾患である骨関節炎、関節リウマチ、退行性関節炎、または破壊性骨障害の場合、関節腔内注射を選択することができる。
【0102】
本発明の注射用製剤を利用して関節腔内に注射する場合、超音波などを利用した照影方法を利用して案内したり、局所痲酔剤が先行または組み合わせられて投与されることができる。
【0103】
本発明の用語「個体」は、ヒト、またはヒトではない哺乳動物、例えば、犬、猫、マウス、ラット、牛、羊、豚、山羊、ヒトではない類人猿、または鳥類を称する。一部の具体例において、前記個体はヒトである。
【0104】
本発明の注射用製剤は、第1剤と第2剤とを混合して混合溶液を作った後、30分以内に個体に投与する。したがって、本発明の注射用製剤は単一患者への注入または投与のための単一投与のためのものである。
【0105】
また、本発明の注射用製剤には、さらに痛み止め、消炎剤、ステロイドなどの薬物と組み合わせて投与されることができる。具体的には、イブプロフェン、ナプロキセン、アスピリン、アセトアミノフェン、インドメタシン、経口または病変部位へのジクロフェナク、メロキシカム、セレコキシブ、ピロキシカム、エトドラク、ナブメトン、ルミラコキシブ、バルデコキシブ、エトリコキシブ、パレコキシブ、フェノプロフェン、オキサプロジン、メフェナム酸、ジフルニサル、フルルビプロフェン、ケトプロフェンから選択される非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs);プレドニゾン、メチルプレドニゾロンなどのコルチコイド系列薬剤、コデイン、ペンタニル、モルヒネ、メペリジンなどの麻薬類痛み止め、またはヒアルロン酸誘導体の注射剤などの薬物と組み合わせて投与されることができる。
【0106】
本発明は、本発明の注射用製剤を含むキットを提供する。本発明の一実施例において、前記キットは本発明の化学式1の化合物を含む第1剤、及び再構成溶液を含む第2剤を含む注射用製剤;前記製剤を投与するための一つ以上の注射器などの投与システム、前記第1剤及び第2剤を混合する方法、及び患者を治療するための説明などが記載されたキットの使用に関する説明書を含むことができる。
【0107】
本発明の一実施例において、前記キットはここに記述されたような製剤及び内容物が骨関節と係る疾患である骨関節炎、関節リウマチ、退行性関節炎または破壊性骨障害にかかった患者に投与されることが記載されたラベル(label)を含むことができる。ここで、患者に適する投与量を選択することは、患者の症状、年齢などを考慮して該当分野の通常の技術者の知識範囲内である。
【0108】
他に示さない限り、本明細書及び請求範囲に使われたすべての数字は、言及されても、言及されなくても、すべての場合に用語「約」によって修飾されるものとして理解しなければならない。また、本明細書及び特許請求範囲に使われた精密な数値は、本開示内容の追加的な実施様態を形成するものとして理解しなければならない。実施例に開示された数値の正確性を保障するために努力した。しかし、測定されたすべての数値は、内在的にそれぞれの測定技法で実測された標準偏差から生成された特定の誤差値を含むことができる。
【実施例】
【0109】
実施例及び比較例における各種評価は、次のように実施した。
【0110】
製造例
本発明において、活性薬理成分(API)として使われる化学式1の化合物である(R)‐N‐((2S,3S)‐2‐(フルオロメチル)‐2‐ヒドロキシ‐5‐オキソテトラヒドロフラン‐3‐イル)‐5‐イソプロピル‐3‐(イソキノリン‐1‐イル)‐4,5‐ジヒドロイソオキサゾール‐5‐カルボキサミド) [(R)‐N‐((2S,3S)‐2‐(fluoremethyl)‐2‐hydroxy‐5‐oxotetrahydrofuran‐3‐yl)‐5‐isopropyl‐3‐(isoquinoline‐1‐yl)‐4,5‐dihydroisooxazol‐5‐carboxamide)(以下「API」という)は、KR10‐0774999にしたがって製造された。
【0111】
試験例1:溶媒の組成によるAPI溶解の有無、溶媒のpH確認及びAPI混合溶液内のAPIの安定性確認(実施例1ないし16)
下記表1に記載されている組成でAPIを溶解して濃度10mg/mlのAPI混合溶液を作るための溶媒を製造した。下記表1のように、0ないし100mMのリン酸ナトリウム緩衝液(Sodium phosphate buffer:PB)、24ないし36mMの水酸化ナトリウム(Sodium hydroxide、NaOH)及び10ないし30%(w/v)のヒドロキシプロピルベータシクロデキストリン(Hydroxypropyl beta cyclodextrin:HPβCD)を含む溶媒を製造した。
【0112】
リン酸ナトリウム緩衝液は、リン酸ナトリウム2塩基性7水和物(Sodium phosphate dibasic heptahydrate)とリン酸ナトリウム1塩基性1水和物(Sodium phosphate monobasic monohydrate)とを混合してpH7.4に製造した。HPβCDは、モル当たり置換範囲(molar substitution range)は、0.81~0.99で、分子量は約1500g/molである非経口グレード(parenteral grade)の試薬を使った。
【0113】
下記表1のように、実施例1ないし16によって製造された溶媒1mlに10mgのAPIを入れて、約800rpmで30分間撹拌してAPI混合溶液を製造した。
【0114】
【0115】
下記表2は、前記表1に記載されている組成の溶媒にAPIを入れて混合したAPI混合溶液のpH及び混合30分後の前記API混合溶液におけるAPI安定性(純度)を確認した結果である。
【0116】
化学式1のAPIの活性型(Active form)は水溶液で速く加水分解されて活性がない状態の不活性型(Inactive form)に変わるので、API混合溶液の製造30分後のAPIの安定性(純度またはAPI混合溶液内の活性型の含量)を確認するために、HPLCを利用してピーク面積(%)を測定した。
【0117】
【0118】
APIが溶けない溶媒(実施例3、5及び6)、APIの混合溶液のpHが6ないし8範囲を脱する溶媒(実施例1、7及び12ないし16)またはAPIの混合溶液製造30分後のAPIの純度(ピーク面積%)が94%未満になる溶媒(実施例1及び10ないし16)は、本発明のAPIを溶かすに適しないことを確認した。したがって、実施例2、4、8及び9で製造された溶媒がAPIを溶解するのに適した溶媒であることを確認した。
【0119】
実施例1ないし4において、ホスフェート緩衝液を含む溶媒(実施例2及び4)がpHの制御が容易でAPIを溶解したりAPIの混合溶液製造30分後のAPIの純度が94%以上を維持するに好適な溶媒であることを確認した。
【0120】
ホスフェート緩衝液の濃度が10mM以下で、NaOHの濃度が30ないし36mMの場合(実施例6、7及び11ないし16)、APIの混合溶液のpHが7.2以上であるため、NaOH濃度を適切な水準に下げることが望ましい。これはAPIの混合溶液のpHが高いほど化学式1のAPIの活性型が水溶液で速く加水分解されて不活性型に変わるためAPIの純度が低くなる問題がある。
【0121】
一方、ホスフェート緩衝液の濃度が10mM以下で、NaOHが24mMで、HPβCDの含量が12.5wt%ないし15wt%の場合(実施例8及び9)、APIの混合溶液のpHが6ないし7の範囲で、APIの純度も94%以上に維持されたので、実施例8及び9で製造された溶媒がAPIの混合溶液を製造するに適した溶媒であることを確認した。
【0122】
試験例2:酸性化された混合溶液製造及び酸性化された混合溶液でのAPI安定性確認(実施例17ないし22)
先に製造した実施例2、4、8及び9の溶媒を含むAPIの混合溶液に酸(6NのHCl)を添加して、酸性化された混合溶液を製造した。
【0123】
前記酸性化された混合溶液の製造は、APIの混合溶液のpHが高いほど化学式1のAPIの活性型が水溶液で速く加水分解されて不活性型に変わることを防ぐためである。
【0124】
下記表3のように、前記実施例2、4、8及び9で製造された溶媒を含むAPIの混合溶液に、酸性化溶液として6NのHClを利用して60ないし150mMのHClを投与した後、酸性化された混合溶液を製造した。
【0125】
【0126】
下記表4は前記表3に記載されているAPIの混合溶液に酸性化溶液を投与して製造された酸性化された混合溶液のpH及び酸性化された混合溶液でのAPI析出有無及びAPI安定性(純度)を確認した結果である。
【0127】
【0128】
前記表4の結果で、実施例17ないし22によって製造されたAPIを含む酸性化された混合溶液はAPIが析出されず、溶液内に溶けていることを確認した。
【0129】
実施例17及び18は、APIを含む酸性化された混合溶液のpHが約6.0であり、酸性化された混合溶液の製造後に純度が急激に落ちて、酸性化された混合溶液の製造から1日後には、約60%に減少した。これを通じて、APIを含む酸性化された混合溶液のpHが約6.0である場合、APIが安定的に存在しがたいことを確認した。
【0130】
実施例19及び20は、APIを含む酸性化された混合溶液のpHが約2.0ないし2.7で、酸性化された溶液の製造から1日後、純度の変化がほとんどなく、安定した状態で維持された。ただ、酸性化された混合溶液のpHが低いほど純度の変化が少なくてAPIがより安定していることを確認することができた。
【0131】
実施例21及び22は、APIを含む酸性化された混合溶液のpHが約1.7で、酸性化された混合溶液の製造から1日後、純度の変化がほとんどなく、安定した状態で維持された。
【0132】
したがって、APIを含む酸性化された溶液のpHが1.0ないし2.0である場合、APIが安定的に存在することを確認した。
【0133】
試験例3:凍結乾燥剤形の製造(実施例23ないし25)
先に製造された実施例20ないし22の溶液を凍結乾燥した。前記凍結乾燥は下記表5に記載されたような条件で行った。すなわち、凍結乾燥条件は‐80℃で3時間凍結した後、10ないし20Paで16時間または40時間乾燥させた。
【0134】
【0135】
前記実施例23ないし25で製造したAPI凍結乾燥剤形の性状は、白のケーキが均一に形成され、凍結乾燥がよくできたことを確認した。
【0136】
試験例4:再構成溶液の製造、再構成時間、再構成後のpH及び浸透圧、再構成後の安定性確認(実施例26ないし29)
先に製造された実施例23ないし25の凍結乾燥剤形を再構成するために、下記表6のように再構成溶液を製造した。再構成溶媒の投与体積は、前記実施例23ないし25で凍結乾燥後に水が抜けた体積を計算して求めた値である。前記凍結乾燥剤形に再構成溶媒を投入した後、速く振って再構成溶液を製造した。
【0137】
【0138】
下記表7は、実施例26ないし29によって製造された再構成溶液が再構成の際に透明な溶液になるまで要した時間、再構成後の溶液のpH及び浸透圧、並びに再構成後の溶液の純度を測定した結果である。ここで、再構成後の溶液の純度はUPLCを通じて確認した
【0139】
【0140】
前記表7の結果で、実施例26ないし29によって製造された再構成後の溶液のpHは6.4ないし6.9で、注射剤として使うには、いずれも適したpHであることを確認した。
【0141】
しかし、注射剤として使うための剤形の好ましい浸透圧範囲は300~400mOsm/kgで、この範囲未満あるいはこの範囲を超えると、患者は痛みを感じることがある。したがって、このような基準を適用した時、再構成後の溶液の浸透圧がそれぞれ308mOsm/kg及び365mOsm/kgである実施例28及び29が10mg/mlのAPIを含む注射剤剤形として好ましいことを確認した。
【0142】
試験例5:溶媒の組成によるAPI溶解有無、溶媒のpH確認及びAPI混合溶液内のAPIの安定性確認(実施例30ないし34)
下記表8に記載されている組成でAPIを溶解して濃度15mg/mlのAPI混合溶液を作るための溶媒を製造した。下記表8のように、5ないし10mMのリン酸ナトリウム緩衝液(Sodium phosphate buffer:PB)、35ないし40mMの水酸化ナトリウム(Sodium hydroxide、NaOH)及び17.5ないし20.0%(w/v)のヒドロキシプロピルベータシクロデキストリン(Hydroxypropyl beta cyclodextrin:HPβCD)を含む溶媒を製造した。
【0143】
リン酸ナトリウム緩衝液は、リン酸ナトリウム2塩基性7水和物(Sodium phosphate dibasic heptahydrate)とリン酸ナトリウム1塩基酸1水和物(Sodium phosphate monobasic monohydrate)とを混合してpH7.4に製造した。HPβCDはモル当たり置換範囲(molar substitution range)は0.81~0.99で、分子量は約1500g/molである非経口グレード(parenteral grade)の試薬を使った。
【0144】
下記表8のように実施例30ないし34によって製造された溶媒1mlに15mgのAPIを入れて、約800rpmで30分間撹拌してAPI混合溶液を製造した。
【0145】
【0146】
下記表9は、前記表8に記載されている組成の溶媒にAPIを入れて混合したAPI混合溶液のpH及び混合30分後の前記API混合溶液でのAPI安定性(純度)を確認した結果である。
【0147】
化学式1のAPIの活性型(Active form)は水溶液で速く加水分解されて活性のない状態である不活性型(Inactive form)に変わるので、API混合溶液の製造30分後のAPIの安定性(純度またはAPI混合溶液内の活性型の含量)を確認するために、HPLCを利用してピーク面積(%)を測定した。
【0148】
【0149】
前記表9の結果で、実施例30ないし34によって製造された溶媒はAPIを溶解するのに適した溶媒であることを確認した。
【0150】
ホスフェート緩衝液の濃度が10mM以下で、NaOH濃度が高いほど(実施例31及び34)、APIの混合溶液のpHが高くなることを確認した。NaOH濃度を適切な水準に下げることが好ましい。これは、API混合溶液のpHが高いほど化学式1のAPIの活性型が水溶液で速く加水分解されて不活性型に変わるので、APIの純度が低くなる問題がある。
【0151】
試験例6:酸性化された混合溶液の製造及び酸性化された混合溶液でのAPI安定性確認(実施例35ないし39)
先に製造した実施例30ないし34の溶媒を含むAPIの混合溶液に酸(6N HCl)を添加して酸性化された混合溶液を製造した。
【0152】
前記酸性化された混合溶液の製造は、APIの混合溶液のpHが高いほど化学式1のAPIの活性型が水溶液で速く加水分解されて不活性型に変わることを防ぐためである。
【0153】
下記表10のように、前記実施例30ないし34で製造された溶媒を含むAPIの混合溶液に酸性化溶液として6N HClを利用して50ないし60mM HClを投与した後、酸性化された混合溶液を製造した。
【0154】
【0155】
下記表11は、前記表10に記載されているAPIの混合溶液に酸性化溶液を投与して製造された酸性化された混合溶液のpH及び酸性化された混合溶液でのAPI析出有無及びAPI安定性(純度)を確認した結果である。
【0156】
【0157】
前記表11の結果で、実施例35ないし39によって製造されたAPIを含む酸性化された混合溶液は、APIが析出されず、溶液内に溶けていることを確認した。実施例35及び36は、APIを含む酸性化された混合溶液のpHが約1.8ないし2.0で、酸性化された混合溶液の製造から1日後、純度の変化がほとんどなく、安定した状態で維持された。
【0158】
実施例37ないし39は、APIを含む酸性化された溶液のpHが約2.0ないし2.2で、pHが低い方であったが、酸性化された溶液製造から1日後に純度の変化が少し発生した。
【0159】
したがって、APIを含む酸性化された溶液のpHが2.0以下である場合、APIが安定的に存在することを確認した。
【0160】
試験例7:凍結乾燥剤形の製造(実施例40ないし44)
先に製造された実施例35ないし39の溶液を凍結乾燥した。前記凍結乾燥は下記表12に記載されたような条件で行った。すなわち、凍結乾燥の条件は、‐80℃で3時間凍結した後、10ないし20Paで40時間乾燥した。
【0161】
【0162】
実施例40ないし44で製造したAPI凍結乾燥剤形の性状は、不透明な白のケーキが均一に形成され、凍結乾燥がよくできたことを確認した。
【0163】
試験例8:再構成溶液の製造、再構成時間、再構成後の溶液のpH及び浸透圧、再構成後の安定性確認(実施例45ないし49)
先に製造された実施例40ないし44の凍結乾燥剤形を再構成するために、下記表13のように再構成溶液を製造した。再構成溶媒の投与体積は前記実施例40ないし44で凍結乾燥した後、水が抜けた体積を、計算を通じて求めた値である。前記凍結乾燥剤形に再構成溶媒を投入した後、速く振って再構成溶液を製造した。
【0164】
【0165】
下記表14は、実施例45ないし49によって製造された再構成溶液が再構成の際に透明な溶液になるまで要しれた時間、再構成後の溶液のpH及び浸透圧、及び再構成後の溶液の純度を測定した結果である。ここで、再構成後の溶液の純度は、UPLCを通じて確認した。
【0166】
【0167】
前記表14の結果で、実施例45ないし49によって製造された再構成後の溶液のpHは約5.8ないし7.0で、注射剤として使うにいずれも適したpHであることを確認した。
【0168】
しかし、注射剤として使うための剤形の好ましい浸透圧の範囲は300~400mOsm/kgで、この範囲未満あるいはこの範囲を超えると、患者は痛みを感じることがある。したがって、このような基準を適用した時、再構成後の溶液の浸透圧がそれぞれ372mOsm/kg及び367mOsm/kgである実施例47及び48が15mg/mlのAPIを含む注射剤剤形として好ましいことを確認した。
【0169】
実施例49の場合、再構成直後の純度が約93%で、再構成30分後の純度が約92%であって、APIの純度自体が低すぎて適しないことを確認した。
【0170】
試験例9:撹拌装備によるAPI混合溶液の製造
API混合溶液の製造において、撹拌装備によるAPI混合溶液内のAPIの純度変化を確認した。
【0171】
下記表15のように、APIの濃度及び溶媒の組成によって製造された混合溶液を互いに異なる撹拌装備であるホモジナイザー(Homogenizer)及びマグネチックスターラー(Magnetic stirrer)を利用してAPI混合溶液を製造した。
【0172】
【0173】
撹拌装備でホモジナイザーを利用した実施例50において、APIの湿潤性(wettability)はよくなかったが、溶媒上に浮遊せず、均一にAPIと溶媒がよくまじることを確認した。一方、撹拌装備でマグネチックスターラーを利用した実施例51において、APIが溶媒上にすぐ溶解されずに浮遊して、溶かすのに時間がさらにかかった。
【0174】
図1は、撹拌時間に対するAPI混合溶液内のAPI純度を測定した結果である。
図1と同様に、ホモジナイザーを利用した実施例50でAPIの純度は96.4%であって、マグネチックスターラーを利用した実施例51でAPIの純度は96.1%で、撹拌装備による純度変化に影響があるとは見がたい。ただ、溶解時間によって純度が大きく依存することを確認することができた。
【0175】
したがって、速くて均一に混合溶液を製造することができるホモジナイザーが撹拌装備として適することを確認した。
【0176】
試験例10:凍結乾燥剤形製造の際のAPIの純度変化
下記表16に記載されたように、API凍結乾燥最終剤形を製造した。
【0177】
【0178】
前記API凍結乾燥最終剤形の製造の際に、APIの純度変化を確認するために、溶媒の組成に溶解させる前のAPIの粉末、APIの混合溶液の製造及び凍結乾燥後の純度をUPLCを利用して測定した。
【0179】
【0180】
前記表17で、API凍結乾燥最終剤形の製造の際にAPIの混合溶液を製造する過程で純度が主に減少し、APIの混合溶液から凍結乾燥する過程では純度の変化がほとんどないことを確認した。
【0181】
試験例11:凍結乾燥剤形の熱分析及びXRDパターン分析
前記実施例52で製造されたAPI凍結乾燥最終剤形を30ないし350℃の温度範囲及び10℃/minの加熱速度の条件でTGA及びDSCを測定した。
【0182】
図2の(a)は、前記実施例52で製造されたAPI凍結乾燥最終剤形のTGA測定結果で、(b)は、前記実施例52で製造されたAPI凍結乾燥最終剤形のDSC測定結果である。
【0183】
図2において、初期の重量減少は残留水分に推定され、量は約1.8%で、APIの吸熱ピークが発見されなかったので、無定形(amorphous)状態であることを確認することができた。
【0184】
したがって、残留水分が1.8%(<2%)で、無定形API状態であるため、凍結乾燥がよくできたことを確認することができた。
【0185】
前記実施例52で製造されたAPI凍結乾燥最終剤形を45kVの電圧、40mAの電流、及び4゜ないし40゜のスキャン範囲の条件でXRDパターンを測定した。
【0186】
図3は、前記実施例52で製造されたAPI凍結乾燥最終剤形のXRDパターン測定結果である。
【0187】
図3において、API凍結乾燥最終剤形である実施例52は、HPβCDと同一パターンを示し、APIの粉末ピークは発見されなかった。したがって、APIが溶液内によく溶けて、凍結乾燥もよくできて、無定形のAPIに変わったことを確認することができた。
【0188】
試験例12:凍結乾燥剤形の固体状態の安定性分析
前記実施例52で、API凍結乾燥剤形の固体状態での有効期間を予測するために、下記表18のような条件で実施例52を保管した後、UPLCを利用して定性分析を行った。
【0189】
【0190】
前記表18において、実施例52の安定性試験で最も多く増加したIMPの%面積値を表示した。保管温度と時間が増加するほど、IMPが大きく増加することを確認した。
【0191】
したがって、実施例52のAPI凍結乾燥剤形は、5℃で約3年以下の有効期間を持つ安定した剤形であることを確認した。
【国際調査報告】