(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-06
(54)【発明の名称】有機ケイ素化合物を調製するプロセス
(51)【国際特許分類】
C07F 7/18 20060101AFI20250130BHJP
【FI】
C07F7/18 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024547250
(86)(22)【出願日】2023-02-01
(85)【翻訳文提出日】2024-08-08
(86)【国際出願番号】 EP2023052428
(87)【国際公開番号】W WO2023152001
(87)【国際公開日】2023-08-17
(32)【優先日】2022-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハース,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ゴージス,ヤン ニクラス
【テーマコード(参考)】
4H049
【Fターム(参考)】
4H049VN01
4H049VP01
4H049VQ02
4H049VQ19
4H049VQ20
4H049VR22
4H049VR42
4H049VS02
4H049VS21
4H049VT03
4H049VT21
4H049VU26
4H049VV02
4H049VW02
4H049VW05
(57)【要約】
本発明は、有機ケイ素化合物を調製するプロセス及びこうして得られた化合物の使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(III)
(III)R
1
xSi(-[-O-CH
2-CH
2-]
n-O-R
3)
4-x
の有機ケイ素化合物又はその混合物を調製する方法であって、式(Ia)
(Ia)R
1
xSi(OR
2)
4-x
の少なくとも1つのアルコキシアルキルシラン、及び/又は式(Ib)
(Ib)-(-SiR
1
2-O-)
y-
の環状シロキサンが、式(II)
(II)R
3-O-[-CH
2-CH
2-O-]
n-H
の少なくとも1つのアルコキシアルカノールと、少なくとも1つの酸又は少なくとも1つの塩基の存在下、任意選択的に溶媒中において0~200℃の温度で反応され、式中、
R
1は、フェニル又はC
1~C
4アルキル、好ましくはC
1~C
4アルキル、より好ましくはメチル、エチル又はn-ブチル、最も好ましくはメチル又はエチルであり、
R
2は、C
1~C
4アルキル、より好ましくはメチル、エチル又はn-ブチル、最も好ましくはメチル又はエチルであり、
R
3は、C
1~C
4アルキル、より好ましくはメチル、エチル又はn-ブチルであり、
xは、正の整数1、2又は3であり、
yは、正の整数3又は4、好ましくは3であり、及び
nは、2~5、好ましくは2~4、より好ましくは2又は3、最も好ましくは3の正の整数である、方法。
【請求項2】
x=2である化合物のみが前記式(Ia)のアルコキシアルキルシランとして使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記式(II)の前記少なくとも1つのアルコキシアルカノールは、前記式(Ia)の前記化合物中の1つの置換される基(R
2O-)当たり少なくとも1:1、好ましくは少なくとも1.1:1、特に好ましくは少なくとも1.2:1~4:1、非常に特に好ましくは少なくとも1.3:1~3:1、特に少なくとも1.5:1~2:1のモル比で使用される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの溶媒は、
- 開鎖又は環状エーテル、
- アルカノール、及び
- 炭化水素
からなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記溶媒は、アルカノールR
2OHである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記溶媒は、前記反応条件下で水及び/又はアルカノールR
2OHの同伴剤として作用する炭化水素である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記炭化水素は、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン又はヘプタンである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記反応は、
- アルカリ金属又はアルカリ土類金属の酸化物又は水酸化物、好ましくはアルカリ金属の水酸化物、
- アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩又は炭酸水素塩、
- アルカリ金属又はアルカリ土類金属の硫酸水素塩、
- アルカリ金属又はアルカリ土類金属のリン酸塩、リン酸水素塩又はリン酸二水素塩、
- アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩、
- 金属アルコキシド、好ましくは前記アルカノールR
2OHの金属アルコキシド、及び
- アミン
からなる群から選択される少なくとも1つの塩基の存在下で行われる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記反応は、
- 無機鉱酸、好ましくは硫酸、
- 有機カルボン酸、
- 有機スルホン酸、好ましくはアルキル又はアリールスルホン酸、及び
- 酸性イオン交換体
からなる群から選択される少なくとも1つの酸の存在下で行われる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記反応の過程で形成される揮発性成分及び任意選択的に使用される溶媒は、周囲圧力より少なくとも100ミリバール低い負圧を適用することによって除去され、好ましくは、前記負圧は、前記反応の過程で上昇される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記反応の過程で形成される揮発性成分及び任意選択的に使用される溶媒は、不活性ガスでの揮散により、好ましくはこれを反応混合物に通すことによって除去される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記反応は、精留カラムを備えた反応器内で行われ、その分離性能は、前記アルカノールR
2OHがカラムヘッドで低沸点物として十分に除去されることを確実にし、及びアルカノールR
2OHよりも高沸点である前記反応混合物中の成分、特に前記式(Ia)及び/又は(Ib)の前記反応物は、カラム還流として前記反応混合物に戻される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記式(Ia)の前記アルコキシアルキルシランは、ジメトキシジメチルシラン、ジメトキシジエチルシラン、ジエトキシジメチルシラン及びジエトキシジエチルシランからなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記式(II)の前記少なくとも1つのアルコキシアルカノールは、前記反応の過程にわたって数回に分けて又は連続的に前記反応に導入される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記式(Ia)及び/又は(Ib)の前記出発化合物は、前記式(II)の前記最初に投入されたアルコキシアルカノールに前記反応の過程にわたって数回に分けて又は連続的に導入される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記反応温度は、前記反応の過程で上昇される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つの酸又は塩基は、前記反応の終了時において、
- 濾過、
- 膜濾過、
- 逆浸透、
- 少なくとも1つの無機金属酸化物又は活性炭への吸着、及び
- 少なくとも1つの酸性、塩基性又は混合イオン交換体との接触
からなる群から選択される精製工程の少なくとも1つを通して除去される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記式(II)の前記少なくとも1つのアルコキシアルカノールの過剰量は、本質的に前記反応混合物中に残される、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
機能性流体、好ましくは油圧流体又はブレーキ流体としての又はそれにおける及び水を捕捉するための、請求項1~18のいずれか一項に従って得られる反応混合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ケイ素化合物を調製する方法及びこうして得られた化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリシロキサンは、米国交通省(US Department of Traffic)のDOT5規格に適合する油圧流体又は特定のブレーキ流体の成分として知られている。
【0003】
米国特許第3814691号明細書は、対応するアルキルシリルクロリドを、グリコールエーテルであり得る所望のアルコールと反応させることによる、このようなオルガノシランの調製を記載している。
【0004】
しかしながら、この反応によって得られるオルガノシランの欠点は、残留含有量の塩化物であり、これは、油圧システムの腐食の原因となり得、油圧システム内で優勢となっている高圧下で漏れを引き起こし得る。
【0005】
欧州特許出願公開第557027A1号明細書は、ポリシロキサンを最初に触媒の存在下でアルコールと反応させ、触媒を除去し、次いでグリコール及びグリコールエーテルと反応させる多段階プロセスを記載している。
【0006】
この反応方式の欠点は、最初の反応工程において、グリコール及びグリコールエーテルとの反応に使用できない高い割合の高分子量の残留物が形成されることである。
【0007】
米国特許出願公開第2015/0221986A1号明細書は、様々なアルコキシアルカノールを例えばヘキサメチルシクロトリシラザン又はアルコキシシランと反応させることによる、有機ケイ素化合物の調製を記載している。ヘキサメチルシクロトリシラザンから調製することの欠点は、この調製方法に伴う高い塩素含有量である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
目的は、反応混合物がその用途での使用について可能な限り容易であるように、生成物を高収率及び高純度で得ることができる、塩素を含まない有機ケイ素化合物を調製する方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、式(III)
(III)R1
xSi(-[-O-CH2-CH2-]n-O-R3)4-x
の有機ケイ素化合物又はその混合物を調製する方法によって達成され、ここで、式(Ia)
(Ia)R1
xSi(OR2)4-x
の少なくとも1つのアルコキシアルキルシラン、及び/又は式(Ib)
(Ib)-(-SiR1
2-O-)y-
の環状シロキサンが、式(II)
(II)R3-O-[-CH2-CH2-O-]n-H
の少なくとも1つのアルコキシアルカノールと、少なくとも1つの酸又は少なくとも1つの塩基の存在下、任意選択的に溶媒中において0~200℃の温度で反応され、式中、
R1は、フェニル又はC1~C4アルキル、好ましくはC1~C4アルキル、より好ましくはメチル、エチル又はn-ブチル、最も好ましくはメチル又はエチルであり、
R2は、C1~C4アルキル、より好ましくはメチル、エチル又はn-ブチル、最も好ましくはメチル又はエチルであり、
R3は、C1~C4アルキル、より好ましくはメチル、エチル又はn-ブチルであり、
xは、正の整数1、2又は3であり、
yは、正の整数3又は4、好ましくは3であり、及び
nは、2~5、好ましくは2~4、より好ましくは2又は3、最も好ましくは3の正の整数である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
式(Ia)
(Ia)R1
xSi(OR2)4-x
の出発化合物は、モノアルコキシトリアルキルシラン(x=3)、ジアルコキシジアルキルシラン(x=2)、トリアルコキシモノアルキルシラン(x=1)又はその混合物であり得る。ラジカルR1がフェニルである場合、これらは、それぞれ対応するモノアルコキシトリフェニルシラン、ジアルコキシジフェニルシラン及びトリアルコキシモノフェニルシランである。
【0011】
簡潔にするために、式(Ia)の化合物は、ラジカルR1としてフェニル基を含む場合でも、本文ではアルコキシアルキルシランと呼ばれる。
【0012】
式(Ia)の化合物を混合物の形態で使用する場合、式(III)の有機ケイ素化合物も同様に混合物の形態で得られる。式(Ia)の化合物の比は、ここで、一般に、混合物中の式(III)の個々の化合物の割合の比に対応する。
【0013】
x=1である式(Ia)の好ましい化合物は、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ-n-ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ-n-ブトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-プロピルトリ-n-ブトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、n-ブチルトリエトキシシラン、n-ブチルトリ-n-ブトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン及びフェニルトリ-n-ブトキシシランである。
【0014】
より好ましいのは、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン及びエチルトリエトキシシランであり、最も好ましいのは、メチルトリメトキシシラン及びエチルトリメトキシシランである。
【0015】
x=2である式(Ia)の好ましい化合物は、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ-n-ブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジ-n-ブトキシシラン、ジ-n-プロピルジメトキシシラン、ジ-n-プロピルジエトキシシラン、ジ-n-プロピルジ-n-ブトキシシラン、ジ-n-ブチルジメトキシシラン、ジ-n-ブチルジエトキシシラン、ジ-n-ブチルジ-n-ブトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン及びジフェニルジ-n-ブトキシシランである。
【0016】
より好ましいのは、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン及びジエチルジエトキシシランであり、最も好ましいのは、ジメチルジメトキシシラン及びジメチルジエトキシシランである。
【0017】
x=3である式(Ia)の好ましい化合物は、トリメチルモノメトキシシラン、トリメチルモノエトキシシラン、トリメチルモノ-n-ブトキシシラン、トリエチルモノメトキシシラン、トリエチルモノエトキシシラン、トリエチルモノ-n-ブトキシシラン、トリ-n-プロピルモノメトキシシラン、トリ-n-プロピルモノエトキシシラン、トリ-n-プロピルモノ-n-ブトキシシラン、トリ-n-ブチルモノメトキシシラン、トリ-n-ブチルモノエトキシシラン、トリ-n-ブチルモノ-n-ブトキシシラン、トリフェニルモノメトキシシラン、トリフェニルモノエトキシシラン及びトリフェニルモノ-n-ブトキシシランである。
【0018】
特に好ましいのは、トリメチルモノメトキシシラン、トリメチルモノエトキシシラン、トリエチルモノメトキシシラン及びトリエチルモノエトキシシランであり、最も好ましいのは、トリメチルモノメトキシシラン及びトリエチルモノメトキシシランである。
【0019】
好ましい実施形態では、式(Ia)のアルコキシアルキルシランの使用においてx=1である。
【0020】
更に特に好ましい実施形態では、式(Ia)のアルコキシアルキルシランの使用においてx=2であり、即ち純粋なジアルコキシジアルキルシランが式(Ia)の化合物として使用される。
【0021】
更に好ましい実施形態では、式(Ia)のアルコキシアルキルシランの混合物が使用され、より好ましくはx=2である化合物と、更にx=1及び/又はx=3である少なくとも1つの更なる化合物との混合物が使用され、最も好ましくはx=2である化合物が混合物の少なくとも50モル%、特に少なくとも75モル%、とりわけ少なくとも85モル%を構成するような混合物が使用される。
【0022】
式(Ib)
(Ib)-(-SiR1
2-O-)y-
(式中、y=3又は4、好ましくは3である)
の環状シロキサンを出発化合物として使用することも可能であり得る。
【0023】
ヘキサメチルシクロトリシロキサン又はオクタメチルシクロテトラシロキサン及びその混合物が好ましい。ヘキサエチルシクロトリシロキサン及びオクタエチルシクロテトラシロキサンも考えられるが、あまり好ましくない。
【0024】
式(III)(式中、x=2、特にR1=メチルである)のアルコキシアルキルオキシシランを所望の生成物として得る場合、式(Ib)の環状シロキサンを式(II)の少なくとも1つのアルコキシアルカノールと反応させる場合に本発明の好ましい実施形態である。
【0025】
特に所望の生成物がx=2である化合物から主になる場合、式(Ia)のアルコキシアルキルシランと式(Ib)の環状シロキサンとの混合物も可能である。
【0026】
本発明による方法では、式(Ib)の環状シロキサンよりも式(Ia)のアルコキシアルキルシランが出発化合物として好ましい。
【0027】
式(II)
(II)R3-O-[-CH2-CH2-O-]n-H
の少なくとも1つのアルコキシアルカノールにおいて、
R3は、C1~C4アルキル、より好ましくはメチル、エチル又はn-ブチルであり、及び
nは、2~5、好ましくは2~4、より好ましくは2又は3、最も好ましくは3の正の整数である。
【0028】
このようなアルコキシアルカノールの例は、グリコールモノアルキルエーテルとも呼ばれ、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル及びテトラエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルである。
【0029】
好ましいアルコキシアルカノールは、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル及びトリエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルである。
【0030】
より好ましいのは、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル及びトリエチレングリコールモノエチルエーテルであり、最も好ましいのは、トリエチレングリコールモノメチルエーテル及びトリエチレングリコールモノエチルエーテルである。
【0031】
アルコキシアルカノールは、単独で又は混合物として使用され得、ほとんどの場合、精製された個々のアルコキシアルカノールは、調製方法の結果として、依然として少量の高級及び低級の同族のアルコキシアルカノールを含む。
【0032】
好ましい実施形態では、式(III)において、組み込まれたアルコキシアルカノールの総量における、n=3であるアルコキシアルカノールの割合は、少なくとも75重量%、特に好ましくは少なくとも85重量%、非常に特に好ましくは少なくとも90%、特に少なくとも95重量%である。
【0033】
更に好ましい実施形態では、式(III)において、組み込まれたアルコキシアルカノールの総量における、n=2であるアルコキシアルカノールの割合は、20重量%以下、より好ましくは10重量%以下、最も好ましくは5重量%以下である。n=2であるアルコキシアルカノールは、調製方法の結果として、n=1であるアルコキシアルカノールも少量含み得る。しかしながら、n=2であるアルコキシアルカノール中のそれらの含有量は、好ましくは、7.5重量%未満、より好ましくは5重量%未満、最も好ましくは2.5重量%未満である。n=1であるこのようなアルコキシアルカノールの例は、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル及びエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルである。
【0034】
更に好ましい実施形態では、式(III)において、組み込まれたアルコキシアルカノールの総量における、nが少なくとも4である、好ましくはn=4であるアルコキシアルカノールの割合は、15重量%以下、より好ましくは5重量%以下、最も好ましくは3重量%以下である。n=4であるアルコキシアルカノールは、調製方法の結果として、n>4であるアルコキシアルカノールも少量含み得る。しかしながら、n=4であるアルコキシアルカノール中のそれらの含有量は、好ましくは、5重量%未満、より好ましくは2.5重量%未満、最も好ましくは1重量%未満である。
【0035】
式(III)において、組み込まれた全てのn=2~5であるアルコキシアルカノールの合計は、常に100重量%である。
【0036】
式(Ia)及び/又は(Ib)の反応物と式(II)のアルコキシアルカノールとの反応により、式(III)
(III)R1
xSi(-[-O-CH2-CH2-]n-O-R3)4-x
(式中、R1、R3、n及びxの値は、使用される反応物の値に本質的に対応する)
の有機ケイ素化合物が得られる。反応が不完全であった結果として又は個々のアルコキシアルカノールが異なる反応性を有する式(II)のアルコキシアルカノールの混合物が使用される場合、式(III)の生成物における組み込み比は、個々の場合において、反応に使用された式(II)のアルコキシアルカノールの比から逸脱し得る。
【0037】
式(Ia)及び/又は(Ib)及び(II)の出発化合物は、所望の比でともに混合され、互いに反応する。
【0038】
出発化合物は、この場合、互いに完全に混合され、所望の反応温度までともに加熱され得る。好ましい実施形態では、式(Ia)及び/又は(Ib)の出発化合物は、最初に投入され、式(II)のアルコキシアルカノールは、数回、例えば2~4回、好ましくは2若しくは3回に分けて又は連続的に反応時間にわたって添加される。アルコキシアルカノールの添加終了後、反応混合物は、反応を完了させるために更に一定期間加熱される。
【0039】
更に好ましい実施形態では、式(II)のアルコキシアルカノールは、最初に投入され、式(Ia)及び/又は(Ib)の出発化合物は、数回、例えば2~4回、好ましくは2若しくは3回に分けて又は連続的に反応時間にわたって添加される。式(Ia)及び/又は(Ib)の出発化合物の添加終了後、反応混合物は、反応を完了させるために更に一定期間加熱される。この実施形態は、式(Ia)及び/又は(Ib)の出発化合物が反応条件下でかなりの揮発性を有し、従って液体反応混合物からかなりの程度まで逃げる場合に特に好ましい。
【0040】
式(II)の少なくとも1つのアルコキシアルカノールは、使用される出発物質に応じて異なるモル比で使用される:
- x=1である(Ia)の使用:アルコキシアルカノール(II)は、少なくとも3:1のモル比で使用され、この場合、モル比は、化合物(II)中の遊離ヒドロキシ基と、化合物(Ia)中のケイ素原子との比を指す。好ましくは少なくとも3.1:1、特に好ましくは少なくとも3.2:1~6:1、非常に特に好ましくは少なくとも3.3:1~5:1、特に少なくとも3.5:1~4:1の比である。
- x=2である(Ia)又は(Ib)の使用:アルコキシアルカノール(II)は、少なくとも2:1のモル比で使用され、この場合、モル比は、化合物(II)中の遊離ヒドロキシ基と、化合物(Ia)及び(Ib)中のケイ素原子との比を指す。好ましくは、少なくとも2.1:1、特に好ましくは少なくとも2.2:1~5:1、非常に特に好ましくは少なくとも2.3:1~4:1、特に少なくとも2.5:1~3:1の比である。
- x=3である(Ia)の使用:アルコキシアルカノール(II)は、少なくとも1:1のモル比で使用され、この場合、モル比は、化合物(II)中の遊離ヒドロキシ基と、化合物(Ia)中のケイ素原子との比を指す。好ましくは少なくとも1.1:1、特に好ましくは少なくとも1.2:1~4:1、非常に特に好ましくは少なくとも1.3:1~3:1、特に少なくとも1.5:1~2:1の比である。
【0041】
一般に、アルコキシアルカノール(II)は、式(Ia)の化合物中の1つの置換される基(R2O-)当たり少なくとも1:1、好ましくは少なくとも1.1:1、特に好ましくは少なくとも1.2:1~4:1、非常に特に好ましくは少なくとも1.3:1~3:1、特に少なくとも1.5:1~2:1のモル比で使用される。
【0042】
異なるxの値を有する化合物(Ia)の混合物を使用する場合、この混合物のアルキル基R1の統計平均値x’が決定され、これは、各個別の化合物のモル比及びそれぞれの個別の化合物におけるアルキル基の数に対する各場合のxの値から導かれる。混合物が式(Ib)の環状シロキサンを少なくとも依然含む場合、その中に存在する1つのケイ素原子当たりのその割合は、x=2として考慮される。
【0043】
従って、x=1の場合に30モル%、x=2の場合に60モル%及びx=3の場合に10モル%を含む化合物(Ia)の混合物では、例えば、アルキル基R1の統計的官能価は、x’=0.3×1+0.6×2+0.1×3=1.8となる。これにより、アルコキシ基(R2O-)又はSi-O結合の統計的官能価は、(4-x’)=2.2となる。
【0044】
x=1の場合に40モル%、x=2の場合に40モル%、x=3の場合に10モル%及びヘキサメチルシクロトリシロキサン10モル%を含む化合物(Ia)の混合物では、アルキル基R1の統計的官能価は、x’=0.4×1+0.4×2+0.1×3+0.1×3×2=2.1となる。従って、これにより、Si-O結合の統計的官能価は、0.4×3+0.4×2+0.1×1+0.1×3×2=2.7となる。
【0045】
次いで、アルコキシアルカノール(II)は、Si-O結合に基づいて少なくとも等モル比で好ましくは少なくとも1.1倍過剰、より好ましくは1.2~4倍過剰、最も好ましくは少なくとも1.3~3倍過剰で使用される。
【0046】
本発明の好ましい実施形態では、式(II)の少なくとも1つのアルコキシアルカノールが過剰に使用され、反応終了時に生成物中に残る。このようにして、式(III)の有機ケイ素化合物と式(II)の少なくとも1つのアルコキシアルカノールとの混合物を得ることができる。これらの混合物は、好ましくは、本質的に以下のように構成される:35~70重量%の式(III)の有機ケイ素化合物対65~30重量%の式(II)の少なくとも1つのアルコキシアルカノール、より好ましくは40~60重量%対40~60重量%、最も好ましくは45~55重量%対55~45重量%の式(III)の化合物対式(II)の化合物。
【0047】
残留溶媒及びまた酸又は塩基の残留物も少量存在し得、これらの残留物は、好ましくは、5重量%以下、特に好ましくは3重量%以下、非常に特に好ましくは2重量%以下、特に1重量%以下である。
【0048】
一実施形態では、出発化合物は、更なる溶媒を使用せずに互いに混合され、これは、反応の終了時に反応混合物から溶媒を除去する必要がないという利点を有する。これは、その条件下における出発化合物及び反応混合物の粘度が、液体の輸送及び混合を確実にするのに十分に低い場合に特に好ましい。
【0049】
更に好ましい実施形態では、反応は、少なくとも1つの溶媒、好ましくは1つの溶媒のみで行われる。少なくとも1つの溶媒は、好ましくは、
- 開鎖又は環状エーテル、
- アルカノール、及び
- 炭化水素
からなる群から選択される。
【0050】
開鎖及び環状エーテルの例は、ジエチルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、tert-ブチルエチルエーテル、tert-アミルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン及びジオキサンである。
【0051】
アルカノールの例は、C1~C10アルカノール、好ましくはメタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、2-エチルヘキサノール、n-オクタノール、2-プロピルヘプタノール及びn-デカノールである。アルカノールを溶媒として使用する場合、アルカノールR2OHが溶媒として使用される場合に好ましい実施形態である。
【0052】
アルカノールは、金属アルコキシドを塩基として使用する場合にのみ溶媒として好ましい。この場合、好ましい溶媒は、金属アルコキシドの形態でも使用されるアルカノールである。それ以外の場合、アルカノールを溶媒として使用することは、あまり好ましくない。
【0053】
溶媒として炭化水素を使用することが好ましく、その例は、脂肪族、脂環式又は芳香族のC5~C14炭化水素を主に含むものである。
【0054】
好ましい芳香族炭化水素は、トルエン、o-、m-又はp-キシレン、トリメチルベンゼン異性体、テトラメチルベンゼン異性体、エチルベンゼン、クメン、テトラヒドロナフタレン及びこうした物質を含む混合物である。
【0055】
(シクロ)脂肪族炭化水素の例は、デカリン、アルキル化デカリン及び直鎖又は分岐アルカン及び/又はシクロアルカン、特にシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン及びシクロヘプタンの異性体混合物である。
【0056】
好ましいアルカンは、n-ペンタン、ペンタン異性体混合物、n-ヘキサン、ヘキサン異性体混合物、n-ヘプタン、ヘプタン異性体混合物、n-オクタン、オクタン異性体混合物、ノナン異性体混合物、n-デカン及びデカン異性体混合物である。
【0057】
溶剤の更なる例は、ExxonMobil ChemicalのSolvesso(登録商標)製品、特にSolvesso(登録商標)100(CAS番号64742-95-6、主にC9及びC10芳香族化合物、沸点範囲約154~178℃)、150(沸点範囲約182~207℃)及び200(CAS番号64742-94-5)並びにShellのShellsol(登録商標)製品、Petrochem CarlessのCaromax(登録商標)(例えば、Caromax(登録商標)18)並びにDHCのHydrosol(例えば、Hydrosol(登録商標)A170など)である。パラフィン、シクロパラフィン及び芳香族化合物からなる炭化水素混合物もKristalloel(例えば、Kristalloel 30、沸点範囲約158~198℃又はKristalloel 60:CAS番号64742-82-1)、ホワイトスピリット(例えば、同様にCAS番号64742-82-1)又はソルベントナフサ(軽質:沸点範囲約155~180℃、重質:沸点範囲約225~300℃)で市販されている。このような炭化水素混合物の芳香族化合物含有量は、一般に、90重量%超、好ましくは95重量%超、より好ましくは98重量%超、最も好ましくは99重量%超である。ナフタレン含有量が特に低い炭化水素混合物を使用することが有利であり得る。
【0058】
炭化水素は、特に好ましくは、反応条件下において、特に式(Ib)の環状シロキサンを使用する場合に水の同伴剤として作用するか、又は特に式(Ia)のアルコキシアルキルシランを使用する場合にアルカノールR2OHの同伴剤として作用するものである。ヘテロ共沸混合物を形成し、反応混合物から蒸留除去した後、冷却して2相を形成し、その炭化水素相が反応に戻される炭化水素が好ましい。
【0059】
少なくとも1つの溶媒は、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン及びヘプタンからなる群から特に好ましくは選択される。
【0060】
溶媒を使用する場合、反応物の及び少なくとも1つの酸又は塩基の溶液中の濃度は、一般に、10重量%~90重量%、好ましくは20重量%~80重量%、より好ましくは重量30%~70重量%、最も好ましくは40重量%~60重量%である。
【0061】
例えば、蒸留による溶媒の除去は、反応の過程で濃度の増加をもたらす。
【0062】
出発化合物の反応を純粋に熱的に行うことが可能であるが、本発明によれば、少なくとも1つの酸又は少なくとも1つの塩基の存在下での反応が好ましい。
【0063】
少なくとも1つの酸は、好ましくは、
- 無機鉱酸、
- 有機カルボン酸、
- 有機スルホン酸、好ましくはアルキル又はアリールスルホン酸、及び
- 酸性イオン交換体
からなる群から選択される。
【0064】
無機鉱酸の例は、塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、リン酸及び亜リン酸であり、これらの中では硫酸及びリン酸が好ましく、硫酸が特に好ましい。
【0065】
無機鉱酸の中では、反応条件下で酸化効果を有する酸は、あまり好ましくない。本発明による方法の反応条件を、例えば反応温度を下げるか又は反応時間を短縮することにより、酸化効果がそれほど顕著にならないように選択することも考えられる。
【0066】
有機カルボン酸は、C1~C30カルボン酸、好ましくはC2~C20モノカルボン酸又はジカルボン酸、より好ましくはモノカルボン酸である。
【0067】
好ましい実施形態では、カルボン酸は、C1~C10モノカルボン酸、好ましくはC2~C6モノカルボン酸、より好ましくはC2~C4モノカルボン酸である。
【0068】
更に好ましい実施形態では、カルボン酸は、C10~C20脂肪酸である。
【0069】
それぞれの有機カルボン酸の個々の例は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属カルボキシレートの項で以下に列挙されている。そこで述べられている好ましいものは、有機カルボン酸にも適用される。
【0070】
有機スルホン酸の例は、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、シクロドデカンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸及びノニルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、テトラデシルベンゼンスルホン酸、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸又はオクタデシルベンゼンスルホン酸などの、一重~三重のC6~C20-アルキル置換ベンゼンスルホン酸である。
【0071】
有機スルホン酸は、一般に、無機鉱酸よりも好ましい。
【0072】
酸性イオン交換体は、主に、ポリマーマトリックス、一般にポリスチレン系、ポリ(メタ)アクリレート系又はポリ(メタ)アクリル酸系のポリマーマトリックス中に、カルボン酸又はスルホン酸基、好ましくはカルボン酸基を有するものである。酸性イオン交換体の中では、弱酸性イオン交換体、特に酸性度がカルボキシル基によって決定されるものが好ましい。ポリ(メタ)アクリル酸に基づくものが非常に特に好ましい。
【0073】
少なくとも1つの塩基の存在下で実施する場合、これは、好ましくは、
- アルカリ金属又はアルカリ土類金属の酸化物又は水酸化物、好ましくはアルカリ金属の水酸化物、
- アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩又は炭酸水素塩、
- アルカリ金属又はアルカリ土類金属の硫酸水素塩、
- アルカリ金属又はアルカリ土類金属のリン酸塩、リン酸水素塩又はリン酸二水素塩、
- アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩、
- 金属アルコキシド、好ましくはアルカノールR2OHの金属アルコキシド、及び
- アミン、特に3級アミン
からなる群から選択される。
【0074】
アルカリ金属又はアルカリ土類金属の酸化物及び水酸化物の例は、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウムであり、これらの中ではアルカリ金属の水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが特に好ましく、水酸化ナトリウムが最も好ましい。
【0075】
アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩及び炭酸水素塩の例は、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素カリウムである。
【0076】
これらの中では、炭酸塩が好ましく、特にアルカリ金属炭酸塩が好ましく、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム及び炭酸カリウムが特に好ましく、炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムが最も好ましい。
【0077】
アルカリ金属又はアルカリ土類金属の硫酸水素塩の例は、硫酸水素カルシウム、硫酸水素マグネシウム、硫酸水素リチウム、硫酸水素ナトリウム及び硫酸水素カリウム、とりわけ硫酸水素ナトリウム及び硫酸水素カリウムである。
【0078】
アルカリ金属又はアルカリ土類金属のリン酸塩、リン酸水素塩又はリン酸二水素塩の例は、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸リチウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素カルシウム、リン酸水素マグネシウム、リン酸水素リチウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸二水素マグネシウム、リン酸二水素リチウム、リン酸二水素ナトリウム及びリン酸二水素カリウムである。
【0079】
アルカリ金属又はアルカリ土類金属カルボキシレートの好ましい例は、C1~C30カルボン酸、好ましくはC2~C20モノ又はジカルボン酸、より好ましくはモノカルボン酸のナトリウム塩及びカリウム塩である。
【0080】
好ましい実施形態では、カルボン酸は、C1~C10モノカルボン酸、好ましくはC2~C6モノカルボン酸、より好ましくはC2~C4モノカルボン酸である。
【0081】
このようなモノカルボン酸の例は、酢酸、プロピオン酸、n-酪酸及びイソ酪酸、ペンタン酸、ピバリン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、デカン酸及び2-プロピルヘプタン酸である。
【0082】
更に好ましい実施形態では、カルボン酸は、C10~C20脂肪酸である。その例は、デカン酸(カプリン酸)、ウンデカン酸、ドデカン酸(ラウリン酸)、トリデカン酸、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ペンタデカン酸、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)、マルガリン酸(ヘプタデカン酸)、ステアリン酸(オクタデカン酸)、パルミトレイン酸[(9Z)-ヘキサデカン-9-エン酸]、オレイン酸[(9Z)-オクタデカ-9-エン酸]、エライジン酸[(9E)-オクタデカ-9-エン酸]、エルカ酸[(13Z)-ドコス-13-エン酸]、リノール酸[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン酸]、リノレン酸[(9Z,12Z,15Z)-オクタデカ-9,12,15-トリエン酸]、エレオステアリン酸[(9Z,11E,13E)-オクタデカ-9,11,13-トリエン酸]、ノナデカン酸及びアラキン酸(エイコサン酸)である。
【0083】
本発明の好ましい実施形態では、金属アルコキシドは、塩基として使用され、好ましくは金属C1~C4アルコキシド、より好ましくは金属メトキシド、エトキシド、イソプロポキシド、n-プロポキシド、n-ブトキシド及びtert-ブトキシド、最も好ましくはアルカノールR2OHの金属アルコキシドが塩基として使用される。
【0084】
アルコキシドとして考えられるのは、あまり好ましくないが、フェノキシド、好ましくはフェノール、o-、m-又はp-クレゾール、2-tert-ブチル-4-メチルフェノール、6-tert-ブチル-2,4-ジメチルフェノール、2、6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2-tert-ブチルフェノール、4-tert-ブチルフェノール、2,4-ジ-tert-ブチルフェノール、2-メチル-4-tert-ブチルフェノール、4-tert-ブチル-2,6-ジメチルフェノール、ヒドロキノン又はヒドロキノンモノメチルエーテルの金属塩である。
【0085】
金属アルコキシドの金属は、好ましくは、リチウム、ナトリウム、カリウム、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、鉄、コバルト、ニッケル及び亜鉛、より好ましくはリチウム、ナトリウム、カリウム、アルミニウム及びチタンである。
【0086】
ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムtert-ブトキシド、アルミニウムトリ(イソプロポキシド)、チタンテトラ(n-ブトキシド)及びチタンテトラ(イソプロポキシド)が非常に特に好ましい。
【0087】
3級アミン/使用され得る3つの置換基を有する少なくとも1つの窒素原子を有するアミンの例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-ブチルアミン、トリ-n-ヘキシルアミン、トリ-n-オクチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルモルホリン、N-メチルピペリジン、N-メチルピロリジン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、ジメチルアニリン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(トリエチレンジアミン、DABCO)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン(DBN)及び1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン(DBU)が挙げられる。
【0088】
好ましいのは、トリ-n-ブチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(トリエチレンジアミン、DABCO)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン(DBN)及び1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン(DBU)である。
【0089】
少なくとも1つの酸又は少なくとも1つの塩基は、化合物(Ia)及び(Ib)中のケイ素原子に基づいて一般に5~30モル%、好ましくは10~25モル%の量で使用される。
【0090】
反応温度は、0(ゼロ)~200℃、好ましくは40~190℃、特に好ましくは50~180℃、非常に特に好ましくは60~170℃、特に70~160℃である。好ましい実施形態では、反応温度は、反応の過程で例えば最大80℃、好ましくは最大60℃、より好ましくは最大50℃上昇する。これは、出発化合物の少量成分が少なくとも50%の程度、好ましくは少なくとも70%の程度、より好ましくは少なくとも80%の程度まで変換されて、温度上昇によって反応が完了するまで進行する場合に特に好ましい。
【0091】
反応を過圧、例えば最大20、好ましくは最大15、より好ましくは最大10バールの過圧で行うことが有利であり得る。これは、出発化合物の少なくとも1つの沸点が反応温度より約30℃、好ましくは20℃低い場合に特に好ましい。
【0092】
出発化合物の沸点が所望の反応温度から十分に離れている場合、反応は、好ましくは、標準圧力で行われる。
【0093】
反応の過程で形成される揮発性成分及び任意選択的に使用される溶媒を除去するために、好ましくは周囲圧力より少なくとも100ミリバール低い、より好ましくは少なくとも200ミリバール、最も好ましくは周囲圧力より少なくとも500ミリバール低い負圧を適用することができ、好ましくは、負圧は、反応及び揮発性成分の除去の過程で200ミリバール、好ましくは100ミリバール、より好ましくは50ミリバール、最も好ましくは20ミリバールの最終圧力まで上昇される。
【0094】
揮発性の酸又は塩基を含み得る除去された溶媒は、次いで、反応のその後の実施で再利用することができる。
【0095】
好ましい実施形態では、反応の過程で形成される揮発性成分及び任意選択的に使用される溶媒は、不活性ガスでの揮散により、好ましくはこれを反応混合物に通すことによって除去される。
【0096】
反応条件下で不活性であるガスの例は、窒素、アルゴン、二酸化炭素又は酸素含有量が10体積%未満、好ましくは8体積%未満、より好ましくは5体積%未満の酸素欠乏空気、好ましくは窒素又はアルゴン、より好ましくは窒素である。
【0097】
不活性ガスは、浸漬管、リングライン、ノズル又はフリットを通して導入され得る。
【0098】
更に、反応混合物に少なくとも1つの酸化防止剤、好ましくは少なくとも1つのフェノール化合物を添加することが効果的であり得る。酸化防止剤の効果の1つは、反応の収率を高めることである。
【0099】
フェノール化合物の例は、アルキルフェノール、例えばo-、m-又はp-クレゾール(メチルフェノール)、2-tert-ブチル-4-メチルフェノール、6-tert-ブチル-2,4-ジメチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2-tert-ブチルフェノール、4-tert-ブチルフェノール、2,4-ジ-tert-ブチルフェノール、2-メチル-4-tert-ブチルフェノール、4-tert-ブチル-2,6-ジメチルフェノール又は2,2’-メチレンビス(6-tert-ブチル-4-メチルフェノール)、4,4’-オキシジフェニル、3,4-メチレンジオキシジフェノール(セサモール)、3,4-ジメチルフェノール、ヒドロキノン、カテコール(1,2-ジヒドロキシベンゼン)、2-(1’-メチルシクロヘキサ-1’-イル)-4,6-ジメチルフェノール、2-又は4-(1’-フェニル-エタ-1’-イル)-フェノール、2-tert-ブチル-6-メチルフェノール、2,4,6-トリス-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,4-ジ-tert-ブチルフェノール、4-tert-ブチルフェノール、ノニルフェノール[11066-49-2]、オクチルフェノール[140-66-9]、2,6-ジメチルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールB、ビスフェノールC、ビスフェノールS、3,3’,5,5’-テトラブロモビスフェノールA、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、BASFSEのKoresin(登録商標)、メチル3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、4-tert-ブチルカテコール、2-ヒドロキシベンジルアルコール、2-メトキシ-4-メチルフェノール、2,3,6-トリメチルフェノール、2,4,5-トリメチルフェノール、2,4,6-トリメチルフェノール、2-イソプロピルフェノール、4-イソプロピルフェノール、6-イソプロピル-m-クレゾール、n-オクタデシルβ-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,1,3-トリス-(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,3,5-トリス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチルイソシアヌレート、1,3,5-トリス-(2,6-ジメチル-3-ヒドロキシ-4-tert-ブチルベンジル)イソシアヌレート又はペンタエリスリトールテトラキス[β-(3,5,-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,6-ジ-tert-ブチル-4-ジメチルアミノメチルフェノール、6-イソブチル-2,4-ジニトロフェノール、6-sec-ブチル-2,4-ジニトロフェノール、BASF SEのIrganox(登録商標)565、1141、1192、1222及び1425、オクタデシル3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ヘキサデシル3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクチル3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3-チア-1,5-ペンタンジオールビス-[(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,8-ジオキサ-1,11-ウンデカンジオールビス[(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,8-ジオキサ-1,11-ウンデカンジオールビス-[(3’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)プロピオネート]、1,9-ノナンジオールビス[(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,7-ヘプタンジアミンビス[3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、1,1-メタンジアミンビス[3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ヒドラジド、3-(3’,5’-ジメチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ヒドラジド、ビス(3-tert-ブチル-5-エチル-2-ヒドロキシフェン-1-イル)メタン、ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェン-1-イル)メタン、ビス[3-(1’-メチルシクロヘキサ-1’-イル)-5-メチル-2-ヒドロキシフェン-1-イル]メタン、ビス(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェン-1-イル)メタン、1,1-ビス(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェン-1-イル)エタン、ビス(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェン-1-イル)スルフィド、ビス(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチル-フェン-1-イル)スルフィド、1,1-ビス(3,4-ジメチル-2-ヒドロキシフェン-1-イル)-2-メチルプロパン、1,1-ビス(5-tert-ブチル-3-メチル-2-ヒドロキシフェン-1-イル)ブタン、1,3,5-トリス[1’-(3’’,5’’-ジ-tert-ブチル-4’’-ヒドロキシフェン-1’’-イル)-メタ-1’-イル]-2,4,6-トリメチルベンゼン、1,1,4-トリス(5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシ-2’-メチル-フェン-1’-イル)ブタン、アミノフェノール、例えばパラアミノフェノール、3-ジエチルアミノフェノール、ニトロソフェノール、例えばパラニトロソフェノール、p-ニトロソ-o-クレゾール、アルコキシフェノール、例えば2-メトキシフェノール(グアイアコール、カテコールモノメチルエーテル)、2-エトキシフェノール、2-イソプロポキシフェノール、4-メトキシフェノール(ヒドロキノンモノメチルエーテル)、モノ-又はジ-tert-ブチル-4-メトキシフェノール、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシアニソール、3-ヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール、2,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシベンジルアルコール(シリンガアルコール)、4-ヒドロキシ-3-メトキシベンズアルデヒド(バニリン)、4-ヒドロキシ-3-エトキシベンズアルデヒド(エチルバニリン)、3-ヒドロキシ-4-メトキシベンズアルデヒド(イソバニリン)、1-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)エタノン(アセトバニロン)、オイゲノール、ジヒドロオイゲノール、イソオイゲノール、トコフェロール、例えばα-、β-、γ-、δ-及びε-トコフェロール、トコール、α-トコフェロールヒドロキノン及び2,3-ジヒドロ-2,2-ジメチル-7-ヒドロキシベンゾフラン(2,2-ジメチル-7-ヒドロキシクマリン)、Trolox(登録商標)、没食子酸、フェルラ酸、桂皮酸及びその誘導体、ヒドロキノン又はヒドロキノンモノメチルエーテル、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、2-メチル-p-ヒドロキノン、2,3-ジメチルヒドロキノン、トリメチルヒドロキノン、4-メチルカテコール、tert-ブチルヒドロキノン、3-メチルカテコール、ベンゾキノン、2-メチル-p-ヒドロキノン、2,3-ジメチルヒドロキノン、トリメチルヒドロキノン、3-メチルカテコール、4-メチルカテコール、tert-ブチルヒドロキノン、4-エトキシフェノール、4-ブトキシフェノール、ヒドロキノンモノベンジルエーテル、p-フェノキシフェノール、2-メチルヒドロキノン、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、テトラメチル-p-ベンゾキノン、ジエチル1,4-シクロヘキサンジオン-2,5-ジカルボキシレート、フェニル-p-ベンゾキノン、2,5-ジメチル-3-ベンジル-p-ベンゾキノン、2-イソプロピル-5-メチル-p-ベンゾキノン(チモキノン)、2,6-ジイソプロピル-p-ベンゾキノン、2,5-ジメチル-3-ヒドロキシ-p-ベンゾキノン、2,5-ジヒドロキシ-p-ベンゾキノン、エンベリン、テトラヒドロキシ-p-ベンゾキノン、2,5-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノン、2-アミノ-5-メチル-p-ベンゾキノン、2,5-ビスフェニルアミノ-1,4-ベンゾキノン、5,8-ジヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、2-アニリノ-1,4-ナフトキノン、アントラキノン、N,N-ジメチルインドアニリン、N,N-ジフェニル-p-ベンゾキノンジイミン、1,4-ベンゾキノンジオキシム、コエルリグノン、3,3’-ジ-tert-ブチル-5,5’-ジメチルジフェノキノン、p-ロソリン酸(アウリン)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-ベンジリデンベンゾキノン、2,5-ジ-tert-アミルヒドロキノン、3-エチル-1,5-ジメチル-1H-ピラゾール-4-オールである。
【0100】
所望の変換率に達するか又はほぼ達し、溶媒が使用される場合、好ましくは蒸留又は精留により、任意選択的に不活性ガスによる揮散によって補助されて反応混合物から溶媒を除去することができる。これは、好ましくは、反応混合物の温度を上昇させ、且つ/又は圧力を低下させることにより、好ましくはこれらの2つの手段の組み合わせにより行うことができる。この温度上昇により、通常反応が完了する。
【0101】
単一段階蒸留は、反応器から又はロータリーエバポレーター、薄膜エバポレーター、流下膜エバポレーター、ワイパーブレードエバポレーター、Sambayエバポレーター等、及びそれらの組み合わせなどの適切な装置を通過させることによって行われ得る。
【0102】
精留は、好ましくは、反応器に取り付けられた蒸留カラム、例えばトレイカラムを介して行われ、これは、必要に応じて内部部品、バルブ、サイドドロー等を装備され得る。使用される蒸留カラムは、それ自体公知の設計で実現され得る(例えば、Sattler,Thermische Trennverfahren[Thermal separation processes],2nd edition 1995,Weinheim,p.135 ff;Perry’s Chemical Engineers Handbook,7th edition 1997,New York,section 13を参照されたい)。使用される蒸留カラムは、分離トレイ、例えば穿孔トレイ、ベルトレイ若しくはバルブトレイ、整列した充填物、例えば金属薄板又は布製充填物又はランダム充填物の不規則に配置されたベッドなどの分離内部部品を含み得る。理論上の分離トレイは、通常、最大20、好ましくは最大10で十分である。
【0103】
本発明の特定の一実施形態では、反応は、反応蒸留の形態で行われる。
【0104】
この場合、出発化合物の反応は、分離カラムの分離内部部品でかなりの程度又は更に完全に起こる。生成物として形成されるアルカノールR2OHは、一般に、反応系中で最も低沸点の成分であるため、これは、形成直後に蒸留によって反応平衡から直接除去され、これにより、反応は、比較的温和な条件下で進行する。理論上のプレートの数は、この場合、他の低沸点の化合物、一般に式(Ia)のアルコキシアルキルシラン及び式(Ib)の環状シロキサンが反応混合物中に残るように選択される。
【0105】
反応蒸留の一実施形態では、この場合、反応を進行させるために、分離内部部品は、酸又は塩基でコーティングされる。これは、反応混合物が分離内部部品と直接接触しない限り、著しい反応が起こらないという利点を有する。これにより、酸又は塩基の存在によって促進される副反応又は更なる反応も抑制される。
【0106】
反応物と分離内部部品との接触を増加させるために、蒸留受容器から一部を取り出し、還流として分離内部部品に供給し、任意選択的に式(II)の新しい未反応のアルコキシアルカノールを補充する。
【0107】
反応蒸留の更なる実施形態では、少なくとも1つの酸又は少なくとも1つの塩基は、還流とともに分離内部部品に供給される。これは、酸又は塩基が蒸留受容器にも存在し、反応が、分離内部部品だけでなく、蒸留受容器でも起こり、これにより空時収量が向上するという利点を有する。
【0108】
式(II)の少なくとも1つのアルコキシアルカノール及び式(III)の生成物は、一般に、反応混合物中で最も沸点の高い成分である一方、式(Ia)及び/又は(Ib)の反応物及び形成されるアルカノールR2OHは、低沸点である。反応中、式(Ia)及び/又は(Ib)の反応物は、反応に利用可能である必要があり、即ち反応混合物中に維持される必要がある一方、形成されたアルカノールR2OHは、好ましくは、反応混合物から除去される。従って、アルカノールR2OHが系中で最も低沸点の化合物であり、式(Ia)及び/又は(Ib)の反応物の沸点がR2OHのものと、式(II)のアルコキシアルカノール及び式(III)の生成物のものとの間にあるように反応条件及び成分が選択される場合、好ましい実施形態である。
【0109】
この場合、反応が、精留カラムを備えた反応器内で行われ、その分離性能が、アルカノールR2OHがカラムヘッドで低沸点物として十分に除去されることを確実にする一方、R2OHよりも高沸点である反応混合物中の成分、特に式(Ia)及び/又は(Ib)の反応物がカラム還流として反応混合物に戻される場合、特に好ましい実施形態である。反応混合物が溶媒を更に含む場合、好ましくは、これも同様に反応混合物に還流として戻されるか、又はさもなければアルカノールR2OHとともにオーバーヘッド生成物として取り出され得る。溶媒及びアルカノール及び生成される水が凝縮後に2相混合物を生成する場合、相を分離した後、溶媒相は、反応混合物に戻され得る。
【0110】
この実施形態は、式(Ia)のアルコキシアルキルシランとして、ジメトキシジメチルシラン(沸点81℃)又はジメトキシジエチルシランを使用する場合に特に好ましい。この場合、メタノールは、標準圧力において沸点65℃で放出され、精留によってジメトキシジメチルシランから分離されるか又は少なくとも除去され得る。
【0111】
この実施形態は、式(Ia)のアルコキシアルキルシランとしてジエトキシジメチルシラン(沸点113~114℃)又はジエトキシジエチルシラン(沸点約159℃)を使用する場合に特に好ましい。この場合、エタノールは、標準圧力において沸点78℃で放出され、精留によってジメトキシジメチルシラン及びジエトキシジエチルシランから分離されるか又は少なくとも除去され得る。
【0112】
この実施形態は、使用される式(Ib)の環状シロキサンがヘキサメチルシクロトリシロキサン(沸点134℃)又はオクタメチルシクロテトラシロキサン(沸点175~176℃)である場合に特に好ましい。この場合、水は、標準圧力において沸点100℃で放出され、精留によって分離されるか又は少なくとも除去され得る。
【0113】
反応の最後に、式(Ia)及び/又は(Ib)の未反応の反応物及び存在する任意の溶媒は、次いで、蒸留によって反応混合物から除去される。
【0114】
溶媒を除去した後、反応混合物を精製する。
【0115】
所望の変換が達成され、溶媒が使用されなかった場合、一般に、反応は、冷却によって停止され、反応混合物は、精製される。反応混合物は、精製のために反応混合物が十分に低い粘度を有する温度に放置される。
【0116】
精製は、反応終了時において、少なくとも1つの酸又は塩基及び依然として存在する任意の溶媒を、
- 濾過、
- 膜濾過、
- 逆浸透、
- 少なくとも1つの無機金属酸化物又は活性炭への吸着、及び
- 少なくとも1つの酸性、塩基性又は混合イオン交換体との接触
からなる群から選択される精製工程の少なくとも1つを通して除去する。
【0117】
最初の3つの技術は、当業者によく知られている。
【0118】
吸着は、無機材料、例えばシリカゲル、ケイ酸塩、アルミナ、ゼオライト、珪藻土、混合アルミニウム/シリコン酸化物並びにまた炭酸カルシウム及び酸化物又は活性炭若しくは木炭で行われ得る。
【0119】
塩基性材料は、好ましくは、酸の除去に使用され、その逆も同様である。
【0120】
酸は、好ましくは、反応混合物を塩基性イオン交換体に通すことによって除去され、塩基は、反応混合物を酸性イオン交換体に通すことによって除去される。
【0121】
精製されると、反応混合物は、本質的に酸、塩基及び溶媒を含まず、機能性流体、好ましくは油圧流体又はブレーキ流体として又はそれにおいて及び水を捕捉するために使用され得る。
【0122】
意図される使用のために、反応混合物に更なる典型的な添加剤を加えることが必要であり得る。その例は、腐食防止剤、消泡剤、pH安定剤又は酸化防止剤である。
【0123】
本発明の記載された方法の利点は、反応混合物を穏やかな条件下で得ることができることである。特に、反応混合物は、ハロゲン化物、特に塩化物を含まず、これは、反応混合物が、対応するアルキルクロロシランから得られる対応する化合物よりも低い腐食性を示すことを意味する。このようにして得られた反応混合物中のハロゲン化物、特に塩化物の含有量は、一般に、重量で100ppm以下、好ましくは75ppm以下、特に好ましくは50ppm以下、非常に好ましくは25ppm以下、特に15ppm以下、更に10ppm以下である。
【実施例】
【0124】
一般的手順(実施例1)
水分離器、還流冷却器、温度計及び窒素注入口を備えた3つ口フラスコにシクロヘキサン40mlを添加した。次いで、これにトリエチレングリコールモノメチルエーテル(50.0g、0.30モル、2.0当量)、ジメトキシジメチルシラン(18.3g、0.15モル、1.0当量)及びナトリウムメトキシド(0.40g、7.5ミリモル、5モル%)を添加した。
【0125】
混合物を室温で5分間撹拌し、次いで加熱して6.5時間還流した。室温まで冷却後、粗製生成物を減圧蒸留(22~160℃、0.24ミリバール)によって精製した。
【0126】
生成物画分(21.0g、57ミリモル,37%単離収率)は、142℃及び0.24ミリバールで無色液体として通過した。構造は、NMR及び高分解能質量分析(HRMS)によって確認した。
【0127】
HRMS:予測値402.2518[M+NH4]+、実測値402.2514
1H NMR(500MHz,CDCl3):δ=0.02(s,6H),3.25(s,6H)3.42(m,4H),3.46(t,J=5.3Hz,4H),3.50-3.60(m,12H),3.71(t,J=5.3Hz,4H).
13C NMR(125MHz,CDCl3):δ=-3.5,55.6,61.4,70.1,70.20.70.23,71.5,72.0,
29Si NMR(99MHz,CDCl3):δ=-1.85.
【0128】
実施例2 - 出発物質の変更
実施例1と同様に、表に指定された出発物質を、指定された温度で記載された時間にわたってモル比2:1でトリエチレングリコールモノメチルエーテル(MTG-OH)と反応させた。
【0129】
反応混合物における収率は、生成物と未反応のトリエチレングリコールモノメチルエーテルのみが反応混合物中に存在すると仮定して、1H NMRによって決定された。
【0130】
【0131】
実施例3 - 触媒の変更
実施例1と同様に、ジエトキシジメチルシランを、表に指定された触媒の存在下、指定された量で126℃において、記載された時間にわたって2.0当量のトリエチレングリコールモノメチルエーテルと反応させた。
【0132】
実施例2と同様に、反応混合物における収率は、1H NMRによって決定された。
【0133】
【0134】
実施例4 - アルコキシアルカノールの変更
実施例1と同様に、ジエトキシジメチルシランを、5モル%のナトリウムエトキシドの存在下、135℃で2.5時間にわたり、2.0当量の記載のアルコキシアルカノールと反応させ、次いで100ミリバールの減圧を更に1時間かけた。
【0135】
収率は、単離収率を意味し、純度は、NMRによって決定された。
【0136】
【0137】
n=2及びn=3である高級アルコキシアルカノールは、反応でモノエチレングリコールモノメチルエーテルよりも高い収率をもたらすことがわかった。
【0138】
実施例5 - 触媒の量及びアルコキシアルカノールの量の変更
実施例1と同様に、ジエトキシジメチルシランを、1モル%の炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)の存在下で126℃において、示された時間にわたり、記載された当量のトリエチレングリコールモノメチルエーテル(MTG-OH)と反応させた。
【0139】
いくつかの実験では、1000ppmの酸化防止剤(トリエチレングリコールモノメチルエーテルに溶解)を表に従って反応混合物に更に添加した。実施例2と同様に、反応混合物における収率は、1H-NMRによって決定された。
【0140】
【0141】
酸化防止剤の添加により、収率が大幅に増加することがわかる。
【国際調査報告】