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特表2025-504451ゲルポリマー電解質を含むリチウム二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-12
(54)【発明の名称】ゲルポリマー電解質を含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/052 20100101AFI20250204BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20250204BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20250204BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20250204BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20250204BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20250204BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M10/0565
H01M4/525
H01M10/0568
H01M10/0569
H01M4/505
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024542426
(86)(22)【出願日】2022-12-09
(85)【翻訳文提出日】2024-07-17
(86)【国際出願番号】 KR2022020011
(87)【国際公開番号】W WO2023140503
(87)【国際公開日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】10-2022-0007460
(32)【優先日】2022-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】520407736
【氏名又は名称】漢陽大学校産学協力団
【氏名又は名称原語表記】IUCF-HYU(INDUSTRY-UNIVERSITY COOPERATION FOUNDATION HANYANG UNIVERSITY)
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】べ,ウ ジン
(72)【発明者】
【氏名】ワキタ,シンヤ
(72)【発明者】
【氏名】イ,カン ヘ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジュニョン
(72)【発明者】
【氏名】ムン,ジョンソク
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジョンソク
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジンワン
(72)【発明者】
【氏名】ウ,ヒュンシク
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヘミン
(72)【発明者】
【氏名】ピョ ス-ジン
(72)【発明者】
【氏名】バン,ア-ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ドン-ウォン
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ05
5H029AJ12
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AL12
5H029AL18
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029AM16
5H029HJ01
5H029HJ02
5H050AA07
5H050AA15
5H050BA17
5H050CA08
5H050CB02
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050CB29
5H050HA02
(57)【要約】
正極、負極、前記正極と前記負極との間に位置するセパレータ、およびゲルポリマー電解質を含むリチウム二次電池であって、前記正極は、リチウムコバルト系酸化物を含有する正極活物質を含み、前記ゲルポリマー電解質は高分子および電解液を含み、前記高分子は3個以上の官能基を有し、かつエーテル基を含有せず、前記電解液はリチウム塩および溶媒を含み、前記リチウム塩は、リチウムジフルオロ(オキサレート)ボレートおよびLiBFを含む、リチウム二次電池に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極、前記正極と前記負極との間に位置するセパレータ、およびゲルポリマー電解質を含むリチウム二次電池であって、
前記正極は、リチウムコバルト系酸化物を含有する正極活物質を含み、
前記ゲルポリマー電解質は、高分子および電解液を含み、
前記高分子は3個以上の官能基を有し、かつエーテル基を含有せず、
前記電解液は、リチウム塩および溶媒を含み、前記リチウム塩は、リチウムジフルオロ(オキサレート)ボレートおよびLiBFを含む、リチウム二次電池。
【請求項2】
前記ゲルポリマー電解質の前記高分子において、前記官能基は、エステル基、カーボネート基、またはこれらの組み合わせである、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項3】
前記ゲルポリマー電解質中の前記高分子は、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、またはこれらの組み合わせに由来する、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項4】
前記ゲルポリマー電解質における前記高分子および前記電解液の重量比は1:99~10:90である、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項5】
前記ゲルポリマー電解質の前記電解液中の前記リチウム塩の濃度は0.3M~4Mである、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項6】
前記ゲルポリマー電解質の前記電解液中の前記リチウムジフルオロ(オキサレート)ボレートおよび前記LiBFのモル比は20:80~80:20である、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項7】
前記ゲルポリマー電解質の前記電解液中の前記溶媒は、カーボネート系溶媒、エステル系溶媒、またはこれらの組み合わせである、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項8】
前記ゲルポリマー電解質の前記電解液において、前記溶媒は、フルオロエチレンカーボネートを含む、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項9】
前記フルオロエチレンカーボネートは、前記溶媒100体積%に対して5体積%~50体積%で含まれる、請求項8に記載のリチウム二次電池。
【請求項10】
前記正極における前記リチウムコバルト系酸化物は、下記化学式1で表される、請求項1に記載のリチウム二次電池:
[化学式1]
LiCo 1-x-y
前記化学式1中、0.9≦a≦1.8、0.7≦x≦1、0≦y≦0.3、MおよびMはそれぞれ独立して、Al、B、Ba、Ca、Ce、Cr、Cu、F、Fe、Mg、Mn、Mo、Nb、P、S、Si、Sr、Ti、V、W、Zr、またはこれらの組み合わせである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲルポリマー電解質を含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池は、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラなどに使用される携帯用電源としてだけでなく、電動工具、電気自転車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車などに使用される中大型電源として広く使用されている。
【0003】
しかし、液体電解質が注入されて製造される一般的なリチウム二次電池は、貫通、衝撃、加圧などの異常条件に置かれたり過熱したりする場合、電池が爆発したり火災を起こしたりするなど安全性の問題がある。そこで、安全性を確保するために液体電解質の代わりに半固体電解質や固体電解質を適用する試みが行われている。その中でゲルポリマー電解質(gel polymer electrolyte;GPE)は、高分子固体電解質に液体電解質が含まれてゲル状の半固体状態を示す電解質であって、自立型フィルム(free standing film)の形態で製造され、電池ケースに挿入されるか、または電池ケースに液体形態で注入した後、硬化してゲル状の電解質となるように製造することができる。ゲルポリマー電解質は、液体電解質に比べて安全性が著しく向上する利点があるが、液体電解質に比べて抵抗値が増加して容量が減少する問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、粘度低下なしに電池ケース内注入が可能なゲルポリマー電解質を適用することで既存の工程をそのまま使用することができ、安全性を著しく向上させつつ、寿命特性が改善されたリチウム二次電池を提供する。また、リチウムコバルト系酸化物を含む正極活物質を適用しながら、高電圧で電解質の分解現象なしに安定した駆動が可能なリチウム二次電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態では、正極、負極、正極と負極との間に位置するセパレータ、およびゲルポリマー電解質を含むリチウム二次電池であって、前記正極は、リチウムコバルト系酸化物を含有する正極活物質を含み、前記ゲルポリマー電解質は、高分子および電解液を含み、前記高分子は3個以上の官能基を有し、かつエーテル基を含有せず、前記電解液はリチウム塩および溶媒を含み、前記リチウム塩は、リチウムジフルオロ(オキサレート)ボレートおよびLiBFを含む、リチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池は、ゲルポリマー電解質を含むことによって安全性を著しく向上さえ、かつ寿命特性が改善することができる。前記ゲルポリマー電解質は、粘度低下なしに電池ケース内注入が可能であるため、既存の工程に適用できるという利点があり、正極活物質にリチウムコバルト酸化物を適用しても高電圧で化学反応を起こしたり分解されたりする問題がないため、安定した電池の駆動が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】リチウム二次電池を概略的に示す断面図である。
図2】実施例1で製造したゲルポリマー電解質に対するH NMR分析グラフである。
図3】実施例1および比較例1の電池に対する寿命特性を示すグラフである。
図4】実施例1、実施例2、および比較例2の電池に対する寿命特性を示すグラフである。
図5】実施例1、比較例3、および比較例4の電池に対する寿命特性を示すグラフである。
図6】実施例1、実施例3、および実施例4の電池に対する寿命特性を示すグラフである。
図7】高分子の含有量に応じたゲルポリマー電解液組成物の粘度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、具体的な実施形態についてこの技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように詳しく説明する。しかし、本発明は様々な異なる形態に実現することができ、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0009】
ここで使用される用語はただ例示的な実施形態を説明するために使用されたものであって、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。
【0010】
ここで「これらの組み合わせ」とは、構成物の混合物、積層物、複合体、共重合体、合金、ブレンド、反応生成物などを意味する。
【0011】
ここで「含む」、「備える」または「有する」などの用語は実施された特徴、数字、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、一つまたは複数の他の特徴や数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないと理解されなければならない。
【0012】
図面で様々な層および領域を明確に表現するために厚さを拡大して示し、明細書全体にわたって類似の部分については同一図面符号を付けた。層、膜、領域、プレートなどの部分が他の部分「の上に」または「上に」あるというとき、これは他の部分「の直上に」ある場合だけでなくその中間にまた他の部分がある場合も含む。逆に、ある部分が他の部分「の直上に」あるというときには中間に他の部分がないことを意味する。
【0013】
また、ここで「層」は、平面図で観察したとき、全体面に形成されている形状だけでなく、一部面に形成されている形状も含む。
【0014】
また、平均粒径と平均サイズなどは当業者に広く公知された方法で測定することができ、例えば、粒度分析装置(Particle Size Analyzer)で測定するか、または透過電子顕微鏡写真または走査電子顕微鏡写真で測定することもできる。他の方法としては、動的光散乱法を用いてサイズなどを測定し、データ分析を実施してそれぞれの粒子サイズ範囲に対して粒子数をカウントした後、これから計算して平均粒径値を得ることもできる。別途の定義がない限り、平均粒径は、粒度分析装置で測定されたものであり、粒度分布で累積体積が50体積%である粒子の直径(D50)を意味することができる。
【0015】
リチウム二次電池
一実施形態では、正極、負極、前記正極と前記負極との間に位置するセパレータ、およびゲルポリマー電解質を含むリチウム二次電池を提供する。図1は、一実施形態によるリチウム二次電池を示す概略図である。図1を参照すると、リチウム二次電池100は、正極114と、正極114に対向して位置する負極112と、正極114と負極112との間に配置されているセパレータ113と、正極114、負極112、およびセパレータ113を含浸するゲルポリマー電解質(図示せず)とを含む電池セルと、前記電池セルを収めている電池容器120と、前記電池容器120を密封する密封部材140とを含む。
【0016】
ゲルポリマー電解質
一実施形態によるゲルポリマー電解質は、高分子および電解液を含むものであって、前記高分子は3個以上の官能基を有し、かつエーテル基を含有せず、前記電解液は、リチウム塩および溶媒を含み、前記リチウム塩は、リチウムジフルオロ(オキサレート)ボレートおよびLiBFを含むことを特徴とする。
【0017】
前記ゲルポリマー電解質は、電極組立体が挿入された電池ケースに注液された後、硬化させる方法で製造され、これにより、既存の非水電解液電池の製造工程に適用可能であるという利点がある。また、前記ゲルポリマー電解質は、電池ケースに注液時、低い粘度を維持することで良好な工程性を維持することができる。前記ゲルポリマー電解質は、熱硬化または光硬化によって容易に硬化し、これにより、ゲル状の固体状態を示すことができる。リチウム二次電池内で前記ゲルポリマー電解質は、架橋された高分子、あるいは硬化した高分子と電解液を含有するものと表現することもできる。
【0018】
前記ゲルポリマー電解質に含まれる高分子は、3個以上の官能基を有することによって電池ケース内で架橋および硬化することに有利であり、2個以下の官能基を有する高分子を適用した電池に比べてさらに優れた寿命特性を示すことができる。また、前記高分子は、エーテル基を含有しない多官能性高分子ともいえる。正極活物質としてリチウムコバルト系酸化物を適用する場合、電解質内エーテル基は4.4V程度の高電圧で化学反応を起こして分解されることがある。一方、一実施形態によるゲルポリマー電解質内高分子は、エーテル基を含有しない多官能性高分子であって、正極活物質にリチウムコバルト系酸化物を適用しても分解したり、化学反応を起こすことなく、リチウム二次電池の安定した長期間駆動を可能とする。一実施形態によるリチウム二次電池は、エーテル系多官能性高分子を含むゲルポリマー電解質を適用した電池に比べて、さらに優れた寿命特性を実現することができる。
【0019】
前記高分子で官能基は、例えば、エステル基(-C(=O)O-)、カーボネート基(-OC(=O)O-)、またはこれらの組み合わせであり得る。これにより、前記高分子は、エステル系多官能性高分子、またはカーボネート系多官能性高分子と表現することもできる。前記ゲルポリマー電解質は、エステル基およびカーボネート基より選択される官能基を3個以上含有し、エーテル基を含有しない高分子を含むものであり、これにより、工程性を向上させ、かつリチウム二次電池の安全性を確保し、寿命特性を画期的に改善することができる。
【0020】
前記高分子は、炭素-炭素二重結合を3個以上含有する化合物に由来するものであり得る。つまり、前記高分子は、炭素-炭素二重結合を3個以上含有する化合物が重合、架橋または硬化したものと理解できる。炭素-炭素二重結合を3個以上含有する化合物は、例えば、3個以上のアクリル基(CH=CH-C(=O)O-)を含有する化合物であり得る。前記高分子において炭素-炭素二重結合は、ゲルポリマー電解質が電池ケース内で硬化する過程で重合や架橋などの反応に関与し、最終電池内では検出されないことがある。硬化したゲルポリマー電解質状態では、エステル基またはカーボネート基などで検出することができる。
【0021】
前記高分子は、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、またはこれらの組み合わせに由来するものであり得る。
【0022】
前記高分子は、前記ゲルポリマー電解質100重量%に対して1重量%~10重量%で含まれてもよく、例えば、2重量%~8重量%、2重量%~6重量%、または3重量%~5重量%で含まれてもよい。このような含有量の範囲を満たす場合、ゲル状のポリマー電解質を効果的に製造することができ、リチウム二次電池の寿命特性を向上させることができる。
【0023】
前記ゲルポリマー電解質において、前記高分子と前記電解液の重量比は1:99~10:90であり、例えば、2:98~8:92、2:98~6:94、または3:97~5:95であり得る。このような重量比を満たす場合、ゲル状のポリマー電解質を効果的に製造することができ、リチウム二次電池の寿命特性を向上させることができる。
【0024】
前記ゲルポリマー電解質において、前記電解液はリチウム塩と溶媒とを含む。前記リチウム塩は、リチウムジフルオロ(オキサレート)ボレート(LiDFOB)およびテトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)を含む。前記ゲルポリマー電解質は、電解液内のリチウム塩として前記2種類を含むことで、寿命特性を画期的に改善することができる。一実施形態によるゲルポリマー電解質は、前記2種類のリチウム塩のうちのいずれか一つでも含まない場合に比べて、より優れた寿命特性を実現することができる。
【0025】
前記電解液中でLiDFOBおよびLiBFは、20:80~80:20のモル比で含まれてもよく、例えば、30:70~70:30、または40:60~60:40で含まれてもよい。前記リチウム塩がこのようなモル比で含まれることで、リチウム二次電池の寿命特性が改善され得る。
【0026】
前記電解液は、LiDFOBおよびLiBF以外に他のリチウム塩をさらに含むこともできる。前記他のリチウム塩は、例えば、LiPF、LiSbF、LiAsF、LiN(SO、Li(CFSON、LiN(SO、リチウムビスフルオロスルホニルイミド(LiFSI)、LiCSO、LiClO、LiAlO、LiAlCl、LiPO、リチウムジフルオロビスオキサレートホスフェート、LiCl、LiI、リチウムビス(オキサレート)ボレート(LiBOB)、またはこれらの組み合わせであり得る。
【0027】
前記電解液中の前記リチウム塩の濃度は0.3M~4Mであり、例えば、0.6M~3M、0.8M~2.5M、または1.0M~2.0Mであり得る。リチウム塩の濃度がこのような範囲を満たす場合、前記ゲルポリマー電解質は優れたリチウム伝導度を示すことができ、電池ケースに注入時に適切な濃度を維持することができ、硬化後ゲル状態を効果的に維持することができる。
【0028】
前記電解液中の前記溶媒は、一般的な非水電解液に使用される溶媒であり、一例として、カーボネート系溶媒、エステル系溶媒、またはこれらの組み合わせであり得る。また、前記溶媒は、エーテル系溶媒を含まないものであり得る。正極活物質としてリチウムコバルト系酸化物を適用する場合、高電圧範囲で電解液内のエーテル系成分が分解される問題が発生することがあり、一実施形態によるゲルポリマー電解質の電解液にはエーテル系溶媒が含まれないように設計することができる。
【0029】
前記カーボネート系溶媒としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、またはこれらの組み合わせであり得る。
【0030】
前記エステル系溶媒としては、メチルアセテート、エチルアセテート、n-プロピルアセテート、ジメチルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、γ-ブチロラクトン、デカノリド(decanolide)、バレロラクトン、メバロノラクトン(mevalonolactone)、カプロラクトン(caprolactone)、またはこれらの組み合わせであり得る。
【0031】
前記電解液の溶媒として2種類以上を混合して使用する場合、所望の電池の性能に応じて、その混合比率を適切に調節することができる。前記カーボネート系溶媒としては、例えば、環状カーボネートと鎖状カーボネートを混合したものを使用することができ、この場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートを約1:1~約1:9の体積比で混合することができる。
【0032】
一方、前記電解液の溶媒は、フルオロエチレンカーボネートを含むものであり得る。この場合、前記ゲルポリマー電解質は、良好な工程性を維持しながら優れた寿命特性を実現することができる。このとき、フルオロエチレンカーボネートは、前記溶媒100体積%に対して5体積%~50体積%で含まれるものであってもよく、例えば、5体積%~40体積%、10体積%~50体積%、15体積%~50体積%、または20体積%~40体積%で含まれてもよい。上記範囲で含まれることで、ゲルポリマー電解質を含むリチウム二次電池の寿命特性を向上させることができる。
【0033】
前記電解液の溶媒は、フルオロエチレンカーボネート以外のエチレンカーボネート系化合物をさらに含むことができ、または芳香族炭化水素系有機溶媒をさらに含むこともできる。
【0034】
前記エチレン系カーボネート系化合物は、例えば、ジフルオロエチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ジクロロエチレンカーボネート、ブロモエチレンカーボネート、ジブロモエチレンカーボネート、ニトロエチレンカーボネート、シアノエチレンカーボネートまたはこれらの組み合わせであり得る。
【0035】
前記芳香族炭化水素系溶媒は、例えば、ベンゼン、フルオロベンゼン、1,2-ジフルオロベンゼン、1,3-ジフルオロベンゼン、1,4-ジフルオロベンゼン、1,2,3-トリフルオロベンゼン、1,2,4-トリフルオロベンゼン、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、1,4-ジクロロベンゼン、1,2,3-トリクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、ヨードベンゼン、1,2-ジヨードベンゼン、1,3-ジヨードベンゼン、1,4-ジヨードベンゼン、1,2,3-トリヨードベンゼン、1,2,4-トリヨードベンゼン、トルエン、フルオロトルエン、2,3-ジフルオロトルエン、2,4-ジフルオロトルエン、2,5-ジフルオロトルエン、2,3,4-トリフルオロトルエン、2,3,5-トリフルオロトルエン、クロロトルエン、2,3-ジクロロトルエン、2,4-ジクロロトルエン、2,5-ジクロロトルエン、2,3,4-トリクロロトルエン、2,3,5-トリクロロトルエン、ヨードトルエン、2,3-ジヨードトルエン、2,4-ジヨードトルエン、2,5-ジヨードトルエン、2,3,4-トリヨードトルエン、2,3,5-トリヨードトルエン、キシレン、またはこれらの組み合わせであり得る。
【0036】
正極
正極114は、集電体、および前記集電体上に位置する正極活物質層を含み、前記正極活物質層は正極活物質を含み、選択的にバインダーおよび/または導電材を含むことができる。ここで集電体は、例えば、アルミニウム箔であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0037】
一実施形態による正極活物質は、リチウムコバルト系酸化物を含む。前記リチウムコバルト系酸化物はリチウムおよびコバルトを含有し、選択的に他の元素をさらに含む酸化物を意味する。前記リチウムコバルト系酸化物は、高容量を実現しながら優れた効率と寿命特性を示すことができ、経済的である。前記リチウムコバルト系酸化物は、上述したゲルポリマー電解質と電池駆動中あるいは異常条件でも互いに化学反応を起こしたり、分解または劣化せず、構造的安定性を維持することができる。正極活物質としてリチウムコバルト系酸化物を適用しながら、一実施形態によるゲルポリマー電解質を適用する場合、寿命特性などの電池性能を最大化することができる。
【0038】
前記リチウムコバルト系酸化物は、例えば、下記化学式1で表されるてもよい。
[化学式1]
LiCo 1-x-y
【0039】
前記化学式1中、0.9≦a≦1.8、0.7≦x≦1、0≦y≦0.3、MおよびMはそれぞれ独立して、Al、B、Ba、Ca、Ce、Cr、Cu、F、Fe、Mg、Mn、Mo、Nb、P、S、Si、Sr、Ti、V、W、Zr、またはこれらの組み合わせである。
【0040】
前記化学式1中、0.8≦x≦1、0≦y≦0.2、0.9≦x≦1、0≦y≦0.1、0.92≦x≦1、0≦y≦0.08、または0.95≦x≦1、0≦y≦0.05であり得る。
【0041】
前記正極活物質は、前記リチウムコバルト系酸化物の表面に位置するコーティング層をさらに含むこともできる。このコーティング層は、コーティング元素のオキシド、コーティング元素のヒドロキシド、コーティング元素のオキシヒドロキシド、コーティング元素のオキシカーボネートおよびコーティング元素のヒドロキシカーボネートより選択される少なくとも一つのコーティング元素化合物を含むことができる。コーティング層をなす化合物は、非晶質または結晶質であり得る。前記コーティング層に含まれるコーティング元素としては、Al、As、B、Ca、Co、Ga、Ge、K、Mg、Na、Si、Sn、Ti、V、Zr、またはこれらの組み合わせが挙げられる。コーティング層をなす化合物は、例えば、リチウム-金属酸化物、リチウム-金属水酸化物、および/またはリチウム-金属カーボネートであり得る。一例として、前記コーティング層は、リチウムジルコニウム酸化物を含むことができる。コーティング層形成工程は、正極活物質の物性に悪影響を与えない方法、例えば、スプレーコーティング、浸漬法、乾式コーティング、原子蒸着法、蒸発法などを使用することができる。
【0042】
前記正極活物質の平均粒径(D50)は1μm~25μmであり、例えば、4μm~25μm、5μm~20μm、8μm~20μm、または10μm~18μmであり得る。このような粒径範囲を有する正極活物質は、正極活物質層内の他の成分と調和して混合することができ、高容量および高エネルギー密度を実現することができる。前記平均粒径は、粒度分析装置で測定されたものであり、粒度分布で累積体積が50体積%である粒子の直径(D50)を意味する。
【0043】
前記正極活物質は、複数の1次粒子が凝集してなる2次粒子形態であってもよく、または単結晶(single crystal)形態であってもよい。また、前記正極活物質は球形または球形に近い形状であってもよく、あるいは多面体または不定形であってもよい。
【0044】
前記正極活物質層の総重量に対して、前記正極活物質は55重量%~99.8重量%で含まれてもよく、例えば、80重量%~90重量%で含まれてもよい。上記範囲で含まれる場合、リチウム二次電池の容量を最大化しながら寿命特性を向上させることができる。
【0045】
前記バインダーは、正極活物質粒子を互いによく付着させ、また、正極活物質を電流集電体によく付着させる役割を果たす。バインダーの代表的な例としては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン-ブタジエンラバー、アクリレートスチレン-ブタジエンラバー、エポキシ樹脂、ナイロンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
前記正極活物質層中のバインダーの含有量は、正極活物質層の全体重量に対して約0.1重量%~5重量%であり得る。
【0047】
前記導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を引き起こさず、電子伝導性材料であれば如何なるものでも使用可能であり、その例として、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブなどの炭素系材料;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などを含有し、金属粉末または金属繊維形態の金属系材料;ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー;またはこれらの混合物を含む導電性材料を使用することができる。前記正極活物質層中の導電材の含有量は、正極活物質層の全体重量に対して0.1重量%~5重量%であり得る。
【0048】
負極
リチウム二次電池において、負極112は、集電体、およびこの集電体上に位置する負極活物質層を含む。前記負極活物質層は負極活物質を含み、バインダーおよび/または導電材をさらに含むことができる。
【0049】
前記負極活物質は、リチウムイオンを可逆的に挿入/脱離することができる物質、リチウム金属、リチウム金属の合金、リチウムにドープおよび脱ドープ可能な物質または遷移金属酸化物を含む。
【0050】
前記リチウムイオンを可逆的に挿入/脱離することができる物質としては、炭素系負極活物質であって、例えば、結晶質炭素、非晶質炭素またはこれらの組み合わせを含むことができる。前記結晶質炭素の例としては、無定形、板状、鱗片状(flake)、球状または繊維状の天然黒鉛、または人造黒鉛などの黒鉛が挙げられ、前記非晶質炭素の例としては、ソフトカーボンまたはハードカーボン、メソフェーズピッチ炭化物、焼成されたコークスなどが挙げられる。
【0051】
前記リチウム金属の合金としては、リチウムとNa、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Si、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge、AlおよびSnからなる群より選択される金属との合金を使用することができる。
【0052】
前記リチウムにドープおよび脱ドープ可能な物質としては、Si系負極活物質またはSn系負極活物質を使用することができる。前記Si系負極活物質としては、シリコン、シリコン-炭素複合体、SiOx(0<x<2)、Si-Q合金(前記Qは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、第13族元素、第14族元素、第15族元素、第16族元素、遷移金属、希土類元素およびこれらの組み合わせからなる群より選択される元素であり、Siを除く)、前記Sn系負極活物質としては、Sn、SnO、Sn-R合金(前記Rは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、第13族元素、第14族元素、第15族元素、第16族元素、遷移金属、希土類元素およびこれらの組み合わせからなる群より選択される元素であり、Snを除く)などが挙げられ、また、これらのうちの少なくとも一つとSiOを混合して使用することもできる。前記元素QおよびRとしては、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Tl、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものを使用することができる。
【0053】
前記シリコン-炭素複合体は、例えば、結晶質炭素およびシリコン粒子を含むコア、およびこのコア表面に位置する非晶質炭素コーティング層を含むシリコン-炭素複合体であり得る。前記結晶質炭素は、人造黒鉛、天然黒鉛またはこれらの組み合わせであり得る。前記非晶質炭素前駆体としては、石炭系ピッチ、メソフェーズピッチ、石油系ピッチ、石炭系オイル、石油系中質油またはフェノール樹脂、フラン樹脂、ポリイミド樹脂などの高分子樹脂を使用することができる。このとき、シリコンの含有量は、シリコン-炭素複合体の全体重量に対して10重量%~50重量%であり得る。また、前記結晶質炭素の含有量は、シリコン-炭素複合体の全体重量に対して10重量%~70重量%であり得、前記非晶質炭素の含有量は、シリコン-炭素複合体の全体重量に対して20重量%~40重量%であり得る。また、前記非晶質炭素コーティング層の厚さは5nm~100nmであり得る。前記シリコン粒子の平均粒径(D50)は10nm~20μmであり得る。前記シリコン粒子の平均粒径(D50)は、好ましくは10nm~200nmであり得る。前記シリコン粒子は、酸化された形態で存在し、このとき、酸化程度を示すシリコン粒子内Si:Oの原子含有量比率は99:1~33:67であり得る。前記シリコン粒子はSiO粒子であり、このとき、SiOにおいてxの範囲は0超、2未満であり得る。
【0054】
前記Si系負極活物質またはSn系負極活物質は、炭素系負極活物質と混合して使用することができる。Si系負極活物質またはSn系負極活物質と炭素系負極活物質を混合使用する場合、その混合比は重量比で1:99~90:10であり得る。
【0055】
前記負極活物質層中の負極活物質の含有量は、負極活物質層の全体重量に対して95重量%~99重量%であり得る。
【0056】
一実施形態では、前記負極活物質層はバインダーをさらに含み、選択的に導電材をさらに含むことができる。前記負極活物質層中のバインダーの含有量は、負極活物質層の全体重量に対して0.1重量%~5重量%であり得る。また、導電材をさらに含む場合、前記負極活物質層は、負極活物質を90重量%~99.8重量%、バインダーを0.1重量%~5重量%、導電材を0.1重量%~5重量%含むことができる。
【0057】
前記バインダーは、負極活物質粒子を互いによく付着させ、また、負極活物質を電流集電体によく付着させる役割を果たす。前記バインダーとしては、非水溶性バインダー、水溶性バインダー、またはこれらの組み合わせを使用することができる。
【0058】
前記非水溶性バインダーとしては、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、エチレンオキシドを含むポリマー、エチレンプロピレン共重合体、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドイミド、ポリイミドまたはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0059】
前記水溶性バインダーとしては、ゴム系バインダーまたは高分子樹脂バインダーが挙げられる。前記ゴム系バインダーは、スチレン-ブタジエンラバー、アクリレートスチレン-ブタジエンラバー、アクリロニトリル-ブタジエンラバー、アクリルゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、およびこれらの組み合わせから選択されるものであり得る。前記高分子樹脂バインダーは、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリエピクロロヒドリン、ポリホスファゼン、ポリアクリロニトリル、エチレンプロピレンジエン共重合体、ポリビニルピリジン、クロロスルホン化ポリエチレン、ラテックス、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコールおよびこれらの組み合わせから選択されるものであり得る。
【0060】
前記負極バインダーとして水溶性バインダーを使用する場合、粘性を付与することができるセルロース系化合物をさらに含むことができる。このセルロース系化合物としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、またはこれらのアルカリ金属塩などを1種以上混合して使用することができる。前記アルカリ金属としては、Na、KまたはLiを使用することができる。このような増粘剤の使用量は、負極活物質100重量部に対して0.1重量部~3重量部であり得る。
【0061】
前記導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を引き起こさず、電子伝導性材料であれば如何なるものでも使用可能である。具体的な例としては、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブなどの炭素系材料;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などを含み、金属粉末または金属繊維形態の金属系材料;ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー;またはこれらの混合物を含む導電性材料を使用することができる。
【0062】
前記負極集電体としては、銅箔、ニッケル箔、ステレンス鋼箔、チタニウム箔、ニッケル発泡体、銅発泡体、導電性金属がコーティングされたポリマー基材、およびこれらの組み合わせから選択されるものを使用することができる。
【0063】
セパレータ
セパレータ113は、正極114と負極112を分離し、リチウムイオンの移動通路を提供するものであって、リチウムイオン電池において通常使用されるものであれば如何なるものでも使用可能である。つまり、電解質のイオン移動に対して低い抵抗を有し、かつ電解液含湿能力に優れたものを使用することができる。例えば、ガラス繊維、ポリエステル、テフロン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、またはこれらの組み合わせの中より選択されたものであって、不織布でも織布形態でも構わない。例えば、リチウムイオン電池にはポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系高分子セパレータが主に使用され、耐熱性または機械的強度の確保のためにセラミック成分または高分子材料が含まれているコーティングされたセパレータを使用することもでき、選択的に単層または多層構造で使用することができる。
【0064】
一方、一実施形態では、炭素-炭素二重結合を含有する官能基を3個以上有し、かつエーテル基を含有しない高分子前駆体を準備し;リチウムジフルオロ(オキサレート)ボレートおよびLiBFを含むリチウム塩と溶媒を含む電解液を準備し;前記高分子前駆体と前記電解液とを混合してゲルポリマー電解質組成物を準備し;リチウムコバルト系酸化物を含有する正極活物質を含む正極、セパレータ、および負極を含む電極組立体を電池ケースに挿入し;前記電池ケースに前記ゲルポリマー電解質組成物を注入し;そして、前記ゲルポリマー電解質組成物を硬化して、ゲルポリマー電解質が含まれているリチウム二次電池を得ることを含むリチウム二次電池の製造方法を提供する。
【0065】
各構成に関する説明は上述した通りである。前記ゲルポリマー電解質組成物を硬化することは、例えば、熱硬化であってもよく、前記熱硬化は、例えば、50℃~200℃で10分~5時間行うことができる。
【0066】
以下、本発明の実施例および比較例を記載する。下記の実施例は、本発明の一例示に過ぎず、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0067】
実施例1
1.ゲルポリマー電解質組成物の製造
高分子前駆体としてトリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)を準備した。電解液成分として、フルオロエチレンカーボネート(FEC)およびジエチルカーボネート(DEC)を1:2の体積比で混合した溶媒にリチウムジフルオロ(オキサレート)ボレート(LiDFOB)およびLiBFをそれぞれ0.6Mのモル濃度に溶解した電解液(合計1.2M)を準備した。
【0068】
準備した電解液と高分子前駆体を97:3の重量比で混合してゲルポリマー電解質組成物を準備した。
【0069】
2.電池の製造
Li1.02Co0.9823Al0.0127Mg0.005正極活物質96重量%、ポリフッ化ビニリデンバインダー2重量%、カーボンナノチューブ導電材2重量%、およびN-メチルピロリドン溶媒をミキサーで混合して正極活物質層組成物を準備し、これをアルミニウム箔でコーティングした後、乾燥および圧延して正極を作製した。
【0070】
準備した正極とリチウム金属対極との間にポリエチレンポリプロピレン多層構造のセパレータを介して電極組立体を準備した。この電極組立体をパウチ型電池ケースに挿入し、準備したゲルポリマー電解質組成物をケース内に注入した後、70℃で3時間熱処理して前記電解質組成物を硬化することで、ゲルポリマー電解質が形成されたハーフセルを作製した。
【0071】
評価例1:H NMR評価
実施例1で硬化した後のゲルポリマー電解質に対してH NMR分析を行い、その結果を図2に示す。図2を参照すると、点線の丸で表した部分である炭素-炭素二重結合ピークが消えたことを確認することができた。これにより、硬化過程で高分子前駆体の炭素-炭素二重結合が全て反応に関与したことが分かった。つまり、電解液組成物の高分子前駆体が一種の架橋された高分子に100%変換されたことが分かった。
【0072】
比較例1(エーテル系高分子)
ゲルポリマー電解質組成物の高分子前駆体として、エーテル基を含有する3官能性化合物であるエトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート(ETPTA)を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法でゲルポリマー電解質組成物および電池を作製した。
【0073】
評価例2:寿命特性評価
実施例1および比較例1で製造した電池を25℃で0.1Cの定電流で上限電圧4.25Vまで充電した後、放電終止電圧3.5Vまで0.1Cの定電流で放電して初期充放電を行った。その後、3.5V~4.25Vの電圧範囲で0.5Cに充電および0.5Cに放電することを200回繰り返した。200サイクルの間放電容量を測定し、初期放電容量に対する各サイクルの放電容量の比率である容量維持率を評価して、その結果を図3に示す。
【0074】
図3を参照すると、エーテル系高分子を適用した比較例1の場合、サイクル序盤から容量維持率が低下して200サイクルでは70%水準の維持率が出たのに対し、実施例1の場合、200サイクルで90%水準の容量維持率が得られたので、優れた寿命特性を示していることを確認することができた。
【0075】
実施例2(高分子変更)
ゲルポリマー電解質組成物の高分子前駆体として、4官能性化合物であるペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)を使用し、電解液と高分子組成物を98:2の重量部で混合したことを除いては、実施例1と同様の方法でゲルポリマー電解質組成物および電池を作製した。
【0076】
比較例2(2官能性高分子)
ゲルポリマー電解質組成物の高分子前駆体として、2官能性化合物であるポリカプロラクトンジアクリレートを使用し、電解液と高分子組成物を96:4の重量部で混合したことを除いては、実施例1と同様の方法でゲルポリマー電解質組成物および電池を作製した。
【0077】
評価例3:寿命特性評価
実施例1、実施例2、および比較例2で作製した電池を前記評価例2と同様の方法で初期充放電およびサイクルを行った。200サイクルの間放電容量を測定し、初期放電容量に対する各サイクルの放電容量の比率である容量維持率を評価して、その結果を図4に示す。
【0078】
図4を参照すると、比較例2の場合、50サイクル程度から容量が低下し、200サイクルでの容量維持率が50%水準と非常に低くなったのに対し、実施例1および実施例2の場合、良好な容量維持率が示されたことが分かった。これにより、ゲル高分子電解質に2官能性高分子を適用した比較例2に比べて、3官能性以上の高分子を適用した実施例1および実施例2の場合、寿命特性が改善される効果があることを確認することができた。
【0079】
比較例3(電解液変更)
ゲルポリマー電解質組成物の電解液成分として、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、およびジエチルカーボネートを3:5:2の体積比で混合した溶媒100体積部に対してフルオロエチレンカーボネートを5体積部添加し、ビニレンカーボネートを3体積部添加し、LiPFリチウム塩を1.15Mのモル濃度に溶解した電解液を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法でゲルポリマー電解質組成物および電池を作製した。
【0080】
比較例4(電解液変更)
ゲルポリマー電解質組成物の電解液成分として、エチルメチルカーボネートおよびフルオロエチレンカーボネートを3:1の体積比で混合した溶媒にLiTFSIリチウム塩を0.8Mのモル濃度で溶解し、LiDFOBリチウム塩を0.2M溶解した電解液を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法でゲルポリマー電解質組成物および電池を作製した。
【0081】
評価例4:寿命特性評価
実施例1、比較例3、および比較例4で作製した電池を前記評価例2と同様の方法で初期充放電およびサイクルを行った。約80サイクルを行い、初期放電容量に対する各サイクルの放電容量の比率を容量維持率で評価し、その結果を図5に示す。
【0082】
図5を参照すると、実施例1の場合、90%以上の容量維持率を示し、優れた寿命特性を示しているのに対し、電解液組成を変更した比較例3の場合、20サイクルで容量が急落し、さらに他の電解液組成を使用した比較例4の場合、10サイクルとなる前に容量が急減して寿命特性が顕著に良くないため、ゲルポリマー電解質成分に適さないことを確認することができた。
【0083】
実施例3(高分子含有量比率変更)
電解液と高分子前駆体を99:1の重量比で混合したことを除いては、実施例1と同様の方法でゲルポリマー電解質組成物および電池を作製した。
【0084】
実施例4(高分子含有量比率変更)
電解液と高分子前駆体を95:5の重量比で混合したことを除いては、実施例1と同様の方法でゲルポリマー電解質組成物および電池を作製した。
【0085】
評価例5:寿命特性評価
実施例1、実施例3、および実施例4で製造した電池に対して評価例2と同様の方法で初期充放電およびサイクルを行った。約120サイクルを行い、初期放電容量に対する各サイクルの放電容量の比率を容量維持率で評価し、その結果を図6に示す。
【0086】
図6を参照すると、高分子が1重量%の比率で含まれている実施例3の場合、120サイクルで80%水準の容量維持率を示し、高分子含有量が3重量%である実施例1と5重量%の実施例4の場合、90%水準の容量維持率を示し、他の比較例に比べて高い水準の寿命特性を実現していることを確認することができた。
【0087】
評価例6:ゲルポリマー組成物の粘度評価
高分子前駆体の含有量が1重量%である実施例3、高分子前駆体の含有量が3重量%である実施例1、高分子前駆体の含有量が5重量%である実施例4、および高分子なしに電解液のみを適用した参考例1のそれぞれの場合に対して、電池ケース内注液前のゲルポリマー電解液組成物の粘度を測定し、その結果を図7に示す。
【0088】
ここで粘度は、ブルックフィールド(brookfield)粘度計を用いて、62スピンドル(spindle)で5rpmで測定した。このとき、前記粘度測定のための基準溶媒は、粘度計校正用標準溶液としてミネラルオイル(KS1000 & 5000)である。
【0089】
図7を参照すると、高分子の含有量が0%から5%に増加するほど、ゲルポリマー電解質組成物の伝導はむしろ低くなることを確認することができた。高分子成分によりゲルポリマー電解質組成物の粘度が電解液に対して高くなる場合、電池ケースに注液することが難しく、工程性に問題となることがあるが、一実施形態によるゲルポリマー電解質組成物は含有される電解液(高分子0%)の粘度よりさらに低い粘度を示すことで、注液過程で何の問題を起こさずに良好な工程性を確保することができ、既存の非水電解液電池の製造工程をそのまま適用できる利点がある。
【0090】
以上、好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されない。また、特許請求の範囲で定義している基本概念を利用した当業者の多様な変形および改良形態も本発明の権利範囲に属する。
【符号の説明】
【0091】
100:リチウム二次電池
112:負極
113:セパレータ
114:正極
120:電池容器
140:封入部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】