IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルジー・ケム・リミテッドの特許一覧

特表2025-504489分離膜、及び該分離膜を含むリチウム二次電池
<>
  • 特表-分離膜、及び該分離膜を含むリチウム二次電池 図1
  • 特表-分離膜、及び該分離膜を含むリチウム二次電池 図2
  • 特表-分離膜、及び該分離膜を含むリチウム二次電池 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-12
(54)【発明の名称】分離膜、及び該分離膜を含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/449 20210101AFI20250204BHJP
   H01M 50/426 20210101ALI20250204BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20250204BHJP
   H01M 50/463 20210101ALI20250204BHJP
   H01M 50/429 20210101ALI20250204BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20250204BHJP
【FI】
H01M50/449
H01M50/426
H01M50/414
H01M50/463 A
H01M50/429
H01M50/403 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024543251
(86)(22)【出願日】2023-01-26
(85)【翻訳文提出日】2024-07-19
(86)【国際出願番号】 KR2023001220
(87)【国際公開番号】W WO2023146315
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】10-2022-0011705
(32)【優先日】2022-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ア-ヨン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジュ-ソン・イ
(72)【発明者】
【氏名】キル-アン・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ボン-テ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジ-ミョン・イ
【テーマコード(参考)】
5H021
【Fターム(参考)】
5H021BB12
5H021CC04
5H021EE02
5H021EE05
5H021EE10
5H021HH01
5H021HH03
5H021HH06
5H021HH07
(57)【要約】
本発明は、分離膜、その製造方法及びそれを含むリチウム二次電池に関し、本発明の分離膜は、高分子多孔支持体、及び前記高分子多孔支持体の少なくとも一面に位置し、バインダー高分子を含むコーティング層を含み、前記バインダー高分子がポリフッ化ビニリデン系高分子及びシアノエチル化高分子を含み、前記コーティング層の表面粗さ(Ra)が300nm~500nmである。本発明による分離膜は、高分子多孔支持体上にコーティング層が不均一に形成されることにより、電池組み立て工程の作業性を向上させる効果を奏する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子多孔支持体と、
前記高分子多孔支持体の少なくとも一面に位置し、バインダー高分子を含むコーティング層と、を含み、
前記バインダー高分子がポリフッ化ビニリデン系高分子及びシアノエチル化高分子を含み、
前記コーティング層の表面粗さ(Ra)が300nm~500nmである、分離膜。
【請求項2】
前記シアノエチル化高分子が、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルプルラン、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、シアノエチルエステル、シアノエチルアセテート、シアノエチルホスフェート、又はこれらの2種以上の混合物を含む、請求項1に記載の分離膜。
【請求項3】
前記シアノエチルポリビニルアルコールが、下記化学式1で表される繰り返し単位と下記化学式2で表される繰り返し単位とを50:50~70:30のモル比で含む、請求項2に記載の分離膜。
【化1】
【化2】
【請求項4】
前記シアノエチル化高分子は、重量平均分子量(Mw)が100,000g/mol~400,000g/molであり、数平均分子量(Mn)が50,000g/mol~200,000g/molであり、ガラス転移温度(Tg)が0℃~100℃である、請求項1に記載の分離膜。
【請求項5】
前記ポリフッ化ビニリデン系高分子が、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン、及びポリフッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン-クロロフルオロエチレンの中から選択される1種又は2種以上を含む、請求項1に記載の分離膜。
【請求項6】
前記ポリフッ化ビニリデン系高分子が、ポリフッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレンを含む、請求項5に記載の分離膜。
【請求項7】
前記ポリフッ化ビニリデン系高分子とシアノエチル化高分子との重量比が85:15~99:1である、請求項1に記載の分離膜。
【請求項8】
前記コーティング層が、前記高分子多孔支持体の表面に局所的に凝集して形成されている、請求項1に記載の分離膜。
【請求項9】
前記コーティング層の表面粗さ(Ra)が320nm~420nmである、請求項1に記載の分離膜。
【請求項10】
高分子多孔支持体の少なくとも一面にバインダー高分子を含むコーティング用スラリーを塗布する段階と、
前記コーティング用スラリーが塗布された高分子多孔支持体を、前記バインダー高分子の非溶媒を含む組成物に浸漬してコーティング層を形成する段階と、を含み、
前記バインダー高分子がポリフッ化ビニリデン系高分子及びシアノエチル化高分子を含み、
前記コーティング層の表面粗さ(Ra)が300nm~500nmである、分離膜の製造方法。
【請求項11】
前記コーティング用スラリー内の固形分の含量が1重量%~7重量%である、請求項10に記載の分離膜の製造方法。
【請求項12】
正極、負極、及び前記正極と負極との間に介在された分離膜を含み、
前記分離膜が請求項1から9のいずれか一項に記載の分離膜である、リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離膜、及び該分離膜を含むリチウム二次電池に関する。
【0002】
本出願は、2022年1月26日付け出願の韓国特許出願第10-2022-0011705号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
最近、エネルギー貯蔵技術に関する関心が高まりつつある。携帯電話、カムコーダー及びノートパソコン、さらには電気自動車のエネルギーにまで適用分野が拡がり、電気化学素子の研究及び開発に対する努力がだんだん具体化している。その中でも、電気化学的原理に基づいて充放電可能なエネルギー貯蔵装置である二次電池の開発に関心が寄せられている。また、最近は、このような電池の開発において、容量密度及び比エネルギーを向上させるため、新たな電極と電池の設計に関連する研究開発が行われている。
【0004】
このような電子機器の電源として使用される電池の高エネルギー密度化に対する要求が高まっている。リチウム二次電池は、このような要求に最も応えられる電池であって、現在これに対する研究が活発に行われている。
【0005】
中でもリチウムイオン二次電池は、リチウムイオンが正極と負極との間を往復しながら電気を貯蔵して発生させることで、反復的な使用が可能な電池である。リチウムイオン二次電池は、電圧、エネルギー密度が高く、サイクル寿命が長くて保存性に優れ、高出力が可能であるという特徴を有していることから、携帯用IT機器、電気自動車用バッテリー及びエネルギー貯蔵システム(ESS:Energy Storage System)などへと適用分野が多様に拡がっている。その中でも、電気自動車の普及は二次電池の成長のメインキーであって、二次電池市場の主な成長原動力になっている。
【0006】
このような二次電池を構成する主な四つの構成は、正極、負極、電解液、分離膜である。これらの中の分離膜は、二次電池内の二つの電極である正極と負極とを隔離させて物理的な接触による電気的短絡を遮断し、微細気孔内に担持されている電解液を通じてイオンが両電極の間を移動可能な通路を提供することで、イオン伝導性を持たせる機能を有する。
【0007】
このような分離膜は、上記のような機能を有する微細多孔性高分子フィルム材料から構成されており、特に、ポリオレフィン系分離膜が広く使用されている。代表的なポリオレフィン系分離膜としては、ポリエチレン(PE)系又はポリプロピレン(PP)系の高分子材料が挙げられる。
【0008】
このような微細多孔性構造を形成する製造方法は、延伸工程に基づく乾式法(dry process)と抽出工程に基づく湿式法(wet process)とに大きく分けられ、求められる特性に応じて乾式分離膜と湿式分離膜とが使用されている。このような二つの方法は両方とも研究開発が続いているが、現在は湿式分離膜が二次電池用分離膜市場を主導している。
【0009】
具体的には、代表的なポリオレフィン系分離膜であるポリエチレン(PE)系高分子を用いた湿式分離膜は、携帯電子機器用小型リチウムイオン二次電池では大した問題なく使用されているが、電気自動車用の使用時又は電池の誤使用時には、PEの融点(Tm)が低いことから、電池の温度がPEの融点以上に上昇すると、メルトダウン(melt-down)現象が発生して発火及び爆発を引き起こすなどと耐熱性に劣るという問題が近年提起されている。
【0010】
これを解決するため、熱的特性に優れたポリプロピレン(PP)系高分子を用いた乾式分離膜の使用が本格化しており、ポリプロピレン(PP)系高分子の使用に際してリチウムイオン電池の安定性を確保するため、分離膜の表面に無機物粒子と高分子バインダーをコーティングする技術が開発されている。その一環として開発されたセラミックコーティング安全性強化分離膜(SRS:Safety Reinforced Separator)が電気自動車用リチウムイオン二次電池に適用され、耐熱性分離膜技術の標準になっている。このような分離膜を製造するため、薄膜化し易い湿式分離膜が主に使用されている。
【0011】
このような湿式分離膜の製造方法として、乾式PPフィルムに高分子バインダーを非溶媒誘起相分離法(NIPS:Nonsolvent Induced Phase Separation)である浸漬相分離法でコーティングする方法が研究開発されている。このような方法の場合、溶媒、例えばN-メチル-2-ピロリドン(NMP)の再利用を通じて工程のコストを節減し、且つ、均一なコーティング及び接着力の確保が可能であるという長所があるが、電池の組み立て工程でコーティング層の粘性によって工程走行に不利であるという短所がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、電気化学的性能に優れながらも安定性が確保されたリチウム二次電池用分離膜を提供することである。
【0013】
また、本発明が解決しようとする他の課題は、分離膜内のコーティング層の粘性が改善して、電池の製造時の組み立て工程の作業性が向上した分離膜を提供することである。
【0014】
また、本発明が解決しようとするさらに他の課題は、コーティング層の粘性の改善だけでなく、表面粗さが増加して、電池の製造時の組み立て工程の作業性が向上した分離膜を提供することである。
【0015】
また、本発明が解決しようとするさらに他の課題は、上記のような特性を有する分離膜の製造方法及び該分離膜を用いたリチウム二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するため、
本発明の一態様によれば、下記具現例の分離膜が提供される。
【0017】
第1具現例によれば、
高分子多孔支持体、及び前記高分子多孔支持体の少なくとも一面に位置し、バインダー高分子を含むコーティング層を含み、前記バインダー高分子がポリフッ化ビニリデン系高分子及びシアノエチル化高分子を含み、前記コーティング層の表面粗さ(Ra)が300nm~500nmである分離膜が提供される。
【0018】
第2具現例によれば、第1具現例において、
前記シアノエチル化高分子は、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルプルラン、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、シアノエチルエステル、シアノエチルアセテート、シアノエチルホスフェート、又はこれらの2種以上の混合物を含み得る。
【0019】
第3具現例によれば、第1具現例又は第2具現例において、
前記シアノエチルポリビニルアルコールは、下記化学式1で表される繰り返し単位と下記化学式2で表される繰り返し単位とを50:50~70:30のモル比で含み得る。
【0020】
【化1】
【0021】
【化2】
【0022】
第4具現例によれば、第1具現例~第3具現例のうちいずれか一具現例において、
前記シアノエチル化高分子は、重量平均分子量(Mw)が100,000g/mol~400,000g/molであり、数平均分子量(Mn)が50,000g/mol~200,000g/molであり、ガラス転移温度(Tg)が0℃~100℃であり得る。
【0023】
第5具現例によれば、第1具現例~第4具現例のうちいずれか一具現例において、
前記ポリフッ化ビニリデン系高分子は、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン(PVDF-TFE)、ポリフッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン、及びポリフッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン-クロロフルオロエチレンの中から選択される1種又は2種以上を含み得る。
【0024】
第6具現例によれば、第1具現例~第5具現例のうちいずれか一具現例において、
前記ポリフッ化ビニリデン系高分子は、ポリフッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレンを含み得る。
【0025】
第7具現例によれば、第1具現例~第6具現例のうちいずれか一具現例において、
前記ポリフッ化ビニリデン系高分子とシアノエチル化高分子との重量比が85:15~99:1であり得る。
【0026】
第8具現例によれば、第1具現例~第7具現例のうちいずれか一具現例において、
前記コーティング層が、前記高分子多孔支持体の表面に局所的に凝集して形成され得る。
【0027】
第9具現例によれば、第1具現例~第8具現例のうちいずれか一具現例において、
前記コーティング層の表面粗さ(Ra)が320nm~420nmであり得る。
【0028】
本発明の他の一態様によれば、下記具現例の分離膜の製造方法が提供される。
【0029】
第10具現例によれば、
高分子多孔支持体の少なくとも一面にバインダー高分子を含むコーティング用スラリーを塗布する段階、及び前記コーティング用スラリーが塗布された高分子多孔支持体を、前記バインダー高分子の非溶媒を含む組成物に浸漬してコーティング層を形成する段階を含み、前記バインダー高分子がポリフッ化ビニリデン系高分子及びシアノエチル化高分子を含み、前記コーティング層の表面粗さ(Ra)が300nm~500nmである分離膜の製造方法が提供される。
【0030】
第11具現例によれば、第10具現例において、
前記コーティング用スラリー内の固形分の含量が1重量%~7重量%であり得る。
【0031】
本発明のさらに他の一態様によれば、下記具現例のリチウム二次電池が提供される。
【0032】
第12具現例によれば、
正極、負極、及び前記正極と負極との間に介在された分離膜を含み、前記分離膜が上述した第1具現例~第9具現例のうちいずれか一具現例による分離膜であるリチウム二次電池が提供される。
【0033】
第13具現例によれば、
上述した第1具現例~第9具現例のうちいずれか一具現例による分離膜を製造する方法が提供される。
【0034】
第14具現例によれば、
正極、負極、及び前記正極と負極との間に介在された分離膜を含み、前記分離膜が上述した第10具現例、第11具現例及び第13具現例のうちいずれか一具現例による分離膜の製造方法によって製造された分離膜であるリチウム二次電池が提供される。
【発明の効果】
【0035】
本発明の一態様による分離膜は、正極と負極との間の電気的短絡の遮断及びイオン伝導性に優れ、二次電池に使用の際、電池の耐熱安定性を向上させることができる。
【0036】
本発明の一態様による分離膜は、コーティング層の局所的な凝集によって表面の粘性が改善され、電池の組み立て工程時の作業性及び製造された電池の性能を向上させることができる。
【0037】
本発明の一態様による分離膜は、製造時の相分離の不安定性を誘導してコーティング層の凝集を誘導することで、表面粗さが向上して、電池の組み立て工程時の作業性及び製造された電池の性能を向上させることができる。
【0038】
本発明の一態様による分離膜の製造方法は、上述した分離膜を製造することができる。
【0039】
本発明の一態様による分離膜の製造方法は、固形分の含量が低いコーティング用スラリーを用いることにより、分離膜内で局所的に凝集したコーティング層を製造することで、粘性が改善された分離膜を製造することができる。
【0040】
本発明の一態様によるリチウム二次電池は、上記のような分離膜を適用することで、耐熱安定性及び電池性能を向上させることができる。
【0041】
本発明の一態様による分離膜、分離膜の製造方法、及びリチウム二次電池の特性は上述したものに限定されず、本発明の効果も上述した効果に限定されるものではない。
【0042】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の好ましい実施形態を例示するものであり、発明の詳細な説明とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本発明の実施例1によるコーティング層のSEMイメージである。
図2】本発明の実施例2によるコーティング層のSEMイメージである。
図3】本発明の比較例1によるコーティング層のSEMイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明を詳しく説明する。しかし、本発明は下記の内容のみによって限定されるものではなく、必要によって各構成要素が多様に変形又は選択的に混用され得る。したがって、本発明の思想及び技術範囲に含まれるすべての変更、均等物又は代替物を含むものとして理解されねばならない。
【0045】
本明細書に使用された「重量平均分子量(Mw)」及び「数平均分子量(Mn)」は、当業界に周知の通常の方法によって測定されたものであり、例えばゲル浸透クロマトグラフィー(GPC:Gel Permeation Chromatograph)方法で測定されたものであり得る。
【0046】
本明細書に使用された「ガラス転移温度(Tg)」は、当業界に周知の通常の方法によって測定されたものであり、例えば示差走査熱量分析法(DSC:Differential Scanning Calorimetry)によって測定されたものであり得る。
【0047】
本明細書に使用された「表面粗さ(Ra)」は、表面の切断面が成す曲線を測定し、基準長さ(中心平均線)で粗さなく扁平であると仮定したときの平均高さを測定した値であり、例えば光学プロファイラー(New View 8300、Zygo社製)を用いて測定されたものであり得る。
【0048】
本明細書に使用された「気孔サイズ」は、当業界に周知の通常の方法によって測定されたものであり、例えばキャピラリーフローポロメトリー(capillary flow porometry)によって測定されたものであり得る。
【0049】
本明細書に使用された「気孔度(porosity)%」は、気孔度測定対象層の厚さ、横及び縦から計算した体積から、測定対象層の各構成成分の重さと密度で換算した体積を減算(substraction)した値を示す。
【0050】
本明細書に使用された「平均粒径(D50)」は、粒径に応じた粒子個数累積分布の50%地点での粒径を意味し、前記粒径はレーザー回折法(laser diffraction method)を用いて測定されたものであり得る。具体的には、測定対象粉末を分散媒中に分散させた後、市販のレーザー回折粒度測定装置(例えば、Microtrac S3500)に導入し、粒子がレーザー光を通過するとき、粒子サイズに応じた回折パターンの差を測定して粒度分布を算出する。測定装置において、粒径に応じた粒子個数累積分布の50%になる地点での粒子直径を算出することで、D50粒径を測定し得る。
【0051】
本発明の一実施形態による分離膜は、
高分子多孔支持体、及び前記高分子多孔支持体の少なくとも一面に位置し、バインダー高分子を含むコーティング層を含み、前記バインダー高分子がポリフッ化ビニリデン系高分子及びシアノエチル化高分子を含み、前記コーティング層の表面粗さ(Ra)が300nm~500nmである。
【0052】
本発明の一実施形態によれば、前記高分子多孔支持体は気孔を有する構造であれば限定されず、多孔性高分子基材であり得、具体的には多孔性高分子フィルム基材及び多孔性高分子不織布基材の少なくとも一つであり得る。
【0053】
前記多孔性高分子フィルム基材は、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィンを含む多孔性高分子フィルムであり得るが、これらに限定されるものではない。前記ポリオレフィンからなる多孔性高分子フィルム基材は、例えば80℃~130℃の温度でシャットダウン(shut-down)機能を発現するものであり得る。
【0054】
このとき、前記ポリオレフィンは、高密度ポリエチレン(HDPE)、線形低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)などのポリエチレン;ポリプロピレン;ポリブチレン;ポリペンテン;ポリへキセン;ポリオクテン;エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、4-メチルペンテン、へキセン、及びオクテンのうちの2種以上の共重合体;又はこれらの混合物を含み得る。
【0055】
このような高分子多孔支持体として適用可能な市販中のポリオレフィン多孔性高分子フィルムの代表的な例としては、湿式ポリエチレン系(旭化成イーマテリアルズ、東レ、SKアイイーテクノロジー、シャンハイエナジー、Sinoma、Entek)、乾式ポリプロピレン系(Shenzhen Senior、Cangzhou Mingzhu)、乾式ポリプロピレン/ポリエチレン多層構造系(Polypore、Ube)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0056】
前記ポリオレフィンの重量平均分子量(Mw)は、200,000g/mol~1,500,000g/mol、220,000g/mol~1,000,000g/mol、又は250,000g/mol~800,000g/molであり得る。前記ポリオレフィンの重量平均分子量が上述した範囲である場合、ポリオレフィンを適用した多孔支持体の均一性及び製膜工程性を確保するとともに、最終的な強度及び耐熱性に優れた分離膜が得られる。
【0057】
また、前記多孔性高分子フィルム基材は、ポリオレフィンの他にポリエステルなどの多様な高分子を用いてフィルム状に成形して製造してもよい。また、前記多孔性高分子フィルム基材は、2層以上のフィルム層が積層された構造で形成され得、各フィルム層は上述したポリオレフィン、ポリエステルなどの高分子単独で又はこれらを2種以上混合した高分子から形成され得る。
【0058】
また、前記多孔性高分子フィルム基材及び多孔性不織布基材は、上述したポリオレフィン系の外にポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルファイド、ポリエチレンナフタレートなどをそれぞれ単独で又はこれらを混合した高分子から形成され得る。
【0059】
このような高分子多孔支持体の厚さは、特に制限されないが、1μm以上、5μm以上、50μm以下、100μm以下であり得る。前記高分子多孔支持体の厚さがこのような範囲を満たす場合、機械的物性を維持しながらも、抵抗層として作用する問題点を改善できるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0060】
前記高分子多孔支持体の気孔サイズ及び気孔度には特に制限がないが、気孔度は10~95%範囲、気孔サイズ(直径)は0.1μm~50μmであり得る。気孔サイズ及び気孔度がこのような範囲を満たす場合、抵抗層として作用する問題を防止し、機械的物性を維持することができる。また、前記高分子多孔支持体は繊維又は膜(membrane)形態であり得る。
【0061】
本発明の一実施形態によれば、前記高分子多孔支持体の少なくとも一面に位置するコーティング層はバインダー高分子を含み、前記バインダー高分子はポリフッ化ビニリデン系高分子及びシアノエチルポリビニルアルコールを含む。
【0062】
ポリフッ化ビニリデン(PVDF)は、高い熱的安定性及び耐化学性のため、主に水処理に使用される精密濾過(MF)膜又は限外濾過(UF)膜に広く使用されている材料であり、分離膜の製造においても集中的に研究されている材料である。具体的には、PVDFは、結晶性高分子であって、59.4%のフッ素、3%の水素、及び残部37.6%の炭素原子から構成されており、その結晶構造によってα、β、γ、δの4種の構造に分けられるが、この構造は温度、冷却速度、延伸などの一定の条件によって入れ替わる。PVDFは、通常、35%~70%の結晶化度を有するが、前記結晶構造及び結晶化度はPVDFの機械的性質に非常に大きい影響を及ぼし得る。他にもPVDFは、強いC-F結合によって高い耐熱性を有し、塩基性溶液、エステル類、ケトン類などを除いて、比較的に安定的な耐化学性を有する。このような理由から、PVDFを用いる場合、従来のPP、PTFEなどの高分子材料に比べて溶媒の選択が多様であり、相転移(phase inversion)法によって容易に多様な気孔構造を有する分離膜の製造が可能であるという長所を有する。
【0063】
これにより、前記バインダー高分子は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)系の高分子を含むことで、安定的な分離膜を提供することができるという長所があるが、本発明の特性がこれに限定されることはない。
【0064】
本明細書において、用語「ポリフッ化ビニリデン系の高分子」は、-(C)-で表される繰り返し単位のみからなるポリフッ化ビニリデン(PVDF)を意味するだけでなく、高分子の構造内にポリフッ化ビニリデンで表される繰り返し単位である-(C)-で表される繰り返し単位が少なくとも一つ以上含まれるすべての高分子を総称するものとして使用される。
【0065】
前記ポリフッ化ビニリデン系高分子は、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン(PVDF-TFE)、ポリフッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン(PVDF-CTFE)、ポリフッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン(PVDF-TrFE)、及びポリフッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン-クロロフルオロエチレン(PVDF-TrFE-CFE)から選択される1種又は2種以上を含み得るが、これらに限定されるものではない。
【0066】
本発明の一実施形態において、前記ポリフッ化ビニリデン系高分子はポリフッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン(PVDF-CTFE)を含み得る。
【0067】
本発明の他の実施形態において、前記ポリフッ化ビニリデン系高分子は、例えばガラス転移温度(Tg)が-200℃~200℃であり得る。前記バインダー高分子のガラス転移温度が上述した範囲を満たす場合、最終的に形成されるコーティング層の柔軟性及び弾性などの機械的物性が向上できるが、本発明がこれに限定されることはない。
【0068】
本発明のさらに他の実施形態において、前記ポリフッ化ビニリデン系高分子はイオン伝導性を有するものであり得る。イオン伝導性を有するバインダー高分子を含むことで、電池の性能をさらに向上させることができる。前記ポリフッ化ビニリデン系高分子は、誘電率定数が1.0~100(測定周波数=1kHz)、又は10~100であり得る。前記誘電率定数が上述した範囲を満たす場合、電解液における塩の解離度を向上させる効果があるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0069】
本明細書において、用語「シアノエチル化高分子」は、高分子の構造内の少なくとも一つの位置でシアノエチル基(-CCN)が置換されたすべての高分子を総称するものとして使用される。
【0070】
例えば、本発明の一実施形態において、前記シアノエチル化高分子はシアノエチルポリビニルアルコールであり得、用語「シアノエチルポリビニルアルコール」はポリビニルアルコールに存在する少なくとも一つのヒドロキシ基(-OH)に存在する水素がシアノエチル(-CCN)で置換されてシアノエチル化されたポリビニルアルコールを意味する。前記シアノエチルポリビニルアルコールは、ポリビニルアルコールの少なくとも一つのヒドロキシ基がシアノエチル化された構造を有するものであれば制限なく使用可能であり、その製造方法は特に限定されるものではない。
【0071】
前記バインダー高分子がシアノエチル化高分子を含むことで、バインダー製造のためのコーティング層の浸漬相分離の際、非溶媒である水(HO)との親和性が増加して相分離の不安定性を誘導することにより、局所的に凝集したコーティング層の形成を誘導する効果を奏するが、本発明の機序がこれらに限定されるものではない。
【0072】
本発明の他の実施形態によれば、前記シアノエチル化高分子は、例えばシアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルプルラン、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、シアノエチルエステル、シアノエチルアセテート、シアノエチルホスフェート、又はこれらの2種以上の混合物を含み得るが、これらに限定されるものではない。
【0073】
本発明の一実施形態において、前記シアノエチル化高分子は、シアノエチルポリビニルアルコールを含み得る。
【0074】
本発明の一実施形態において、前記シアノエチルポリビニルアルコールは、下記化学式1で表される繰り返し単位のみからなるものであり得る。
【0075】
【化3】
【0076】
本発明の一実施形態において、前記シアノエチルポリビニルアルコールは、ポリビニルアルコールのヒドロキシ基に対して100%シアノエチル化されたものでなければ、化学式1で表される繰り返し単位の他にも下記化学式2で表される繰り返し単位を含み得る。
【0077】
【化4】
【0078】
本発明の一実施形態において、前記シアノエチルポリビニルアルコールは、化学式1で表される繰り返し単位及び化学式2で表される繰り返し単位を含み得、例えば化学式1で表される繰り返し単位と化学式2で表される繰り返し単位とのモル比が50:50~70:30であり得るが、これに限定されるものではない。
【0079】
本発明の他の実施形態において、化学式1で表される繰り返し単位と化学式2で表される繰り返し単位とのモル比は、例えば50:50以上、55:45以上、60:40以上、62.5:37.5以上、70:30以下、67.5:32.5以下であり得る。前記繰り返し単位同士のモル比が上記の範囲である場合、コーティング層の粘性の改善程度が向上する効果が奏されるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0080】
本発明の他の実施形態において、前記シアノエチル化高分子は、重量平均分子量(Mw)が100,000g/mol~400,000g/molであり得る。具体的には、前記シアノエチル化高分子のMwは100,000g/mol~350,000g/mol、より具体的には130,000g/mol~300,000g/mol、又は150,000g/mol~250,000g/molであり得る。
【0081】
本発明の他の実施形態において、前記シアノエチル化高分子は、数平均分子量(Mn)が50,000g/mol~200,000g/molであり得る。具体的には、前記シアノエチル化高分子のMnは80,000g/mol~170,000g/mol、又は100,000g/mol~140,000g/molであり得る。
【0082】
本発明の他の実施形態において、前記シアノエチル化高分子は、ガラス転移温度(Tg)が0℃~100℃であり得る。具体的には、前記シアノエチル化高分子のTgは30℃~90℃、50℃~80℃、より具体的には10℃~60℃であり得る。
【0083】
本発明の他の実施形態において、前記シアノエチル化高分子は、重量平均分子量(Mw)が150,000g/mol~250,000g/molであり、数平均分子量(Mn)が100,000g/mol~140,000g/molであり、ガラス転移温度(Tg)が10℃~60℃であり得る。
【0084】
本発明において、前記シアノエチル化高分子のMw、Mn及びTgがそれぞれ上記のような範囲を満たす場合、コーティング層の粘度の改善程度が向上するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0085】
本発明の一実施形態において、前記バインダー高分子内の前記ポリフッ化ビニリデン系高分子とシアノエチル化高分子との重量比は、例えば85:15~99:1(ポリフッ化ビニリデン系高分子:シアノエチル化高分子)であり得る。具体的には、前記重量比は90:10~99:1、85:15~95:5又は90:10~95:5であり得、より具体的には93:7~95:5又は90:10~93:7であり得、さらに具体的には93:7であり得る。前記重量比が上記のような範囲を満たす場合、コーティング層の粘度の改善程度が向上するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0086】
本発明の一実施形態による分離膜は、前記コーティング層の表面粗さ(Ra)が300nm~500nmである。具体的には、300nm以上、310nm以上、320nm以上、330nm以上、340nm以上、350nm以上、360nm以上、370nm以上、380nm以上、390nm以上、又は400nm以上、500nm以下、490nm以下、480nm以下、470nm以下、460nm以下、又は450nm以下であり得る。より具体的には、前記コーティング層の表面粗さ(Ra)が300nm~500nm又は320mm~420mmであり得る。前記コーティング層の表面粗さ(Ra)が300nm~500nmの範囲を満たす場合、摩擦力が発生して走行特性が良好になる効果を奏するという面で有利である。
【0087】
本発明の一実施形態において、前記バインダー高分子は、上述したポリフッ化ビニリデン系高分子及びシアノエチル化高分子の他にも、通常のバインダー高分子をさらに含み得る。さらに包含可能な通常のバインダー高分子は、例えばポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、エチレンビニルアセテート共重合体、ポリエチレンオキサイド、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、プルラン、カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエン共重合体、ポリイミド、又はこれらのうちの二つ以上の混合物を挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0088】
本発明の他の実施形態において、前記バインダー高分子が前記ポリフッ化ビニリデン系高分子及びシアノエチル化高分子の外に他のバインダー高分子をさらに含む場合、追加的に含まれるバインダー高分子の含量は本発明の目的から逸脱しない範囲内であれば十分であり、特に限定されるものではない。
【0089】
本発明の一実施形態において、前記コーティング層の厚さは、高分子多孔支持体の一面において1.5μm~5.0μmであり得る。前記コーティング層の厚さが上述した範囲を満たす場合、表面摩擦力の発生によって固定走行性が改善されるだけでなく、電極との接着力に優れながらも電池のセル強度を容易に増加させることができる。
【0090】
本発明の一実施形態によれば、前記コーティング層は、前記高分子多孔支持体の表面に局所的に凝集して形成され得る。
【0091】
前記コーティング層は、それを製造するためのスラリー組成物がバインダー高分子としてポリフッ化ビニリデン系高分子及びシアノエチルポリビニルアルコールを含むが、固形分の含量を最小限にすることで、相分離の不安定性を誘導し、それによって前記高分子多孔支持体の少なくとも一面に局所的に凝集したコーティング層が形成されたものであり得る。
【0092】
本発明の一実施形態において、前記コーティング層が局所的に凝集して形成されている様子は、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)で観察され得る。
【0093】
本発明の他の実施形態において、前記コーティング層が局所的に凝集して形成されていることは、例えばコーティング層の表面粗さ(Ra)の測定を通じて確認され得る。
【0094】
本発明の一実施形態による分離膜は、コーティング層の粘性が改善されて表面粗さが増加して、電池の組み立て工程性を向上させることができるが、本発明の分離膜の特性がこれに限定されるものではない。
【0095】
本発明の他の一実施形態による分離膜の製造方法は、
高分子多孔支持体の少なくとも一面にバインダー高分子を含むコーティング用スラリーを塗布する段階、及び前記コーティング用スラリーが塗布された高分子多孔支持体を、前記バインダー高分子の非溶媒を含む組成物に浸漬してコーティング層を形成する段階を含み、前記バインダー高分子がポリフッ化ビニリデン系高分子及びシアノエチル化高分子を含み、前記コーティング層の表面粗さ(Ra)が300nm~500nmである分離膜の製造方法である。
【0096】
本発明の一態様による分離膜の製造方法において、前記高分子多孔支持体、バインダー高分子、ポリフッ化ビニリデン系高分子、シアノエチル化高分子、コーティング層の構成、及びコーティング層の表面粗さ(Ra)についての説明は、分離膜について上述したものを援用する。
【0097】
本発明の一実施形態において、前記コーティング層を形成する段階は、前記高分子多孔支持体の少なくとも一面に、バインダー高分子を含むコーティング用スラリーを用いて浸漬相分離によってコーティング層を形成するものであり得る。
【0098】
具体的には、前記コーティング層を形成する段階は、前記高分子多孔支持体の少なくとも一面に、バインダー高分子及び溶媒を含むコーティング用スラリーを塗布する段階と、前記コーティング用スラリーが塗布された高分子多孔支持体を、前記バインダー高分子の非溶媒を含む組成物に浸漬してコーティング層を形成する段階と、を含み得る。
【0099】
前記溶媒としては、前記バインダー高分子と溶解度指数が類似し、沸点の低いものが適用され得る。これは均一な混合と以降の溶媒除去を容易にするためである。
【0100】
このような溶媒の例としては、互いに独立して、アセトン、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、シクロヘキサン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール及び水の中から選択された1種の化合物又は2種以上の混合物であり得る。
【0101】
このとき、前記溶媒は、一緒に混合されるバインダー高分子の種類に応じて、それを溶解させる溶媒の役割及びそれを分散させる分散媒の役割を果たし得る。
【0102】
本発明の一実施形態によれば、前記コーティング用スラリーを高分子多孔支持体に塗布する方法としては、前計量(pre-metering)方式と後計量(post-metering)方式がある。前計量方式は、塗布量を予め決定して導入する方式であって、例えば、スロットダイコーティング、グラビアコーティングなどがある。後計量方式は、塗布液であるスラリーを高分子多孔支持体に十分な塗布量で塗布した後、規定された量を掻き出す方式であり、例えば、バーコーティングがある。他にも、前記前計量方式と後計量方式とを結合した直接計量(direct-metering)コーティングがある。
【0103】
上述した方法などの非制限的な方法によって前記コーティング用スラリーを塗布し、前記コーティング用スラリーが塗布された高分子多孔支持体を非溶媒を含む組成物に浸漬することで相分離してコーティング層を形成し得る。
【0104】
本発明の一実施形態において、前記コーティング用スラリー内の固形分の含量は1重量%~7重量%であり得る。具体的には、前記固形分の含量は1重量%以上、1.5重量%以上、2重量%以上、2.5重量%以上、又は3重量%以上、7重量%以下、6.5重量%以下、6重量%以下、5.5重量%以下、5重量%以下、4.5重量%以下、又は4重量%以下、例えば1重量%~7重量%、2重量%~6重量%、又は3重量%~6重量%であり得る。前記コーティング用スラリー内の固形分の含量を上記の範囲にする場合、前記高分子多孔支持体上に不均一なコーティング層を形成するようになって、コーティング層の粘性の問題を改善することができる。例えば、前記固形分の含量が1重量%未満であると、コーティング層の固まりが発生せず、Raの変化が大きくない。また、前記固形分の含量が7重量%を超えると、固形分の投入コストに対比した効果の改善程度が不十分であるという問題がある。
【0105】
本発明の他の実施形態において、前記コーティング用スラリー内の固形分の含量を7重量%以下にすることで、コーティング層の浸漬相分離の際に相分離の不安定性を誘導することにより、コーティング層の局所的な凝集が誘導されたコーティング層を製造することができるが、本発明の機序がこれらに限定されるものではない。
【0106】
本発明の一実施形態による分離膜の製造方法によれば、上述した分離膜を製造することができる。
【0107】
本発明のさらに他の一実施形態によるリチウム二次電池は、
正極、負極、及び前記正極と負極との間に介在された分離膜を含み、このとき、前記分離膜は上述した分離膜を含む。
【0108】
本発明の一実施形態による分離膜を含むリチウム二次電池は、高分子多孔支持体上に局所的に凝集して表面粗さが向上したコーティング層が形成された分離膜を用いるため、電池の電気化学的性能に優れるだけでなく、工程作業性を向上させることができる。
【0109】
前記リチウム二次電池は、リチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池、又はリチウムイオンポリマー二次電池などを含み得る。
【0110】
本発明の分離膜とともに適用される正極と負極の両電極としては、特に限定されず、当業界で周知の通常の方法によって電極活物質を電極電流集電体に結着させた形態で製造し得る。
【0111】
前記電極活物質のうちの正極活物質の非制限的な例としては、従来の電気化学素子の正極に使用される通常の正極活物質が使用可能であり、特にリチウムマンガン酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウム鉄酸化物、又はこれらを組み合わせたリチウム複合酸化物を使用し得る。
【0112】
前記電極活物質のうちの負極活物質の非制限的な例としては、従来の電気化学素子の負極に使用される通常の負極活物質が使用可能であり、特にリチウム金属又はリチウム合金、炭素、石油コークス(petroleum coke)、活性炭、グラファイト、又はその他の炭素類、ケイ素、ケイ素酸化物などのリチウム吸着物質などが好ましい。
【0113】
前記電極電流集電体のうちの正極電流集電体の非制限的な例としては、アルミニウム、ニッケル、又はこれらの組み合わせによって製造されるホイルなどが挙げられ、負極電流集電体の非制限的な例としては、銅、金、ニッケル又は銅合金、又はこれらの組み合わせによって製造されるホイルなどが挙げられる。
【0114】
本発明の一実施形態による電気化学素子で使用される電解液は、Aのような構造の塩であり、AはLi、Na、Kなどのアルカリ金属陽イオン又はこれらの組み合わせからなるイオンを含み、BはPF 、BF 、Cl、Br、I、ClO 、AsF 、CHCO 、CFSO 、N(CFSO 、C(CFSO などの陰イオン又はこれらの組み合わせからなるイオンを含む塩を、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、エチルメチルカーボネート(EMC)、γ-ブチロラクトン、又はこれらの混合物からなる有機溶媒に溶解又は解離したものであるが、これらに限定されることはない。
【0115】
前記電解液の注入は、最終製品の製造工程及び求められる物性に応じて、電池製造工程のうち適切な段階において行えばよい。すなわち、電池組み立ての前又は電池組み立ての最終段階などにおいて注入すればよい。
【実施例
【0116】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。なお、下記の実施例は本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲がこれらに限定されるものではない。
【0117】
[分離膜の製造方法及び表面粗さの評価]
下記のような方法によって乾式下地の一面にコーティング層が形成された分離膜を取得した後、光学プロファイラー(New View 8300、Zygo社製)を用いて製造された分離膜のコーティング層の表面粗さ(Ra)を測定した。
【0118】
コーティング層の製造において、溶媒はN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を用い、浸漬相分離は凝固液の温度を20℃未満に制御し、リンス液の温度は40℃以上に制御し、最後リンス液の温度を乾燥温度よりも低い温度に制御して行った。
【0119】
<実施例1>
PVDF-CTFEとシアノエチル化PVAバインダー(CN置換率65mol%)とを93:7の重量比で混合して固形分の含量が5.5%であるスラリー製造した後、乾式下地(13.6μm、PP材料)に前記スラリーを用いてドット(dot)パターンのマイクログラビア(登録商標)バーで浸漬相分離コーティングし、最終厚さ15μmの分離膜を製造した。
【0120】
このとき、製造された分離膜のコーティング層の表面粗さ(Ra)は350nmであった。
【0121】
<実施例2>
PVDF-CTFEとシアノエチル化PVAバインダー(CN置換率65mol%)とを93:7の重量比で混合して固形分の含量が3%であるスラリー製造し、これを用いて格子模様のマイクログラビア(登録商標)バーでコーティング層を形成したことを除き、実施例1と同様の方法で最終厚さが15μmである分離膜を製造した。
【0122】
このとき、製造された分離膜のコーティング層の表面粗さ(Ra)は450nmであった。
【0123】
<比較例1>
バインダー高分子としてPVDF-CTFEを用いて固形分の含量が5.5%であるスラリーを製造したことを除き、実施例1と同様の方法で最終厚さが15μmである分離膜を製造した。
【0124】
<比較例2>
PVDF-CTFEとシアノエチル化PVAバインダー(CN置換率87mol%)とを95:5の重量比で混合して固形分の含量が1%であるスラリーを製造し、これを用いてコーティング層を形成したことを除き、実施例1と同様の方法で最終厚さが15μmである分離膜を製造した。
【0125】
このとき、製造された分離膜のコーティング層の表面粗さ(Ra)は150nmであった。
【0126】
<比較例3>
シアノエチル化PVAバインダーとしてCN置換率87mol%のものを使用したことを除き、実施例2と同様の方法で最終厚さが15μmである分離膜を製造した。
【0127】
このとき、製造された分離膜のコーティング層の表面粗さ(Ra)は132nmであった。
【0128】
<比較例4>
固形分の含量が1%であるスラリーを製造したことを除き、実施例1と同様の方法で最終厚さが15μmである分離膜を製造した。
【0129】
このとき、製造された分離膜のコーティング層の表面粗さ(Ra)は152nmであった。
【0130】
<比較例5>
PVDF-CTFEとPEG400とを93:7の重量比で混合して固形分の含量が5.5%であるスラリーを製造し、これを用いてコーティング層を形成したことを除き、実施例1と同様の方法で最終厚さが15μmである分離膜を製造した。
【0131】
このとき、製造された分離膜のコーティング層の表面粗さ(Ra)は164nmであった。
【0132】
<比較例6>
PVDF-CTFEとPEG6000とを93:7の重量比で混合して固形分の含量が5.5%であるスラリーを製造し、これを用いてコーティング層を形成したことを除き、実施例1と同様の方法で最終厚さが15μmである分離膜を製造した。
【0133】
このとき、製造された分離膜のコーティング層の表面粗さ(Ra)は144nmであった。
【0134】
<SEMイメージの分析結果>
図1には実施例1の分離膜のSEMイメージ、図2には実施例2の分離膜のSEMイメージ、及び図3には比較例1の分離膜のSEMイメージが示されている。
【0135】
図1図2及び図3のイメージを比べると、バインダー高分子としてポリフッ化ビニリデン系高分子及びシアノエチルポリビニルアルコールを含むコーティング層は、表面が不均一であり、所定の領域に凝集して形成されていることが確認できる。
【0136】
<表面粗さ値の分析結果>
以上の結果から実施例1及び2による分離膜は、表面粗さ(Ra)が向上して分離膜の粘性を改善し、それによって電池の組み立て工程時の走行安定性及び作業性を向上できることが確認された。
【0137】
以上のように、本発明を実施例と図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の属する分野で通常の知識を持つ者によって本発明の範囲内で多様な応用及び変形が可能であることは言うまでもない。
図1
図2
図3
【国際調査報告】