(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-14
(54)【発明の名称】酸化浸出方法
(51)【国際特許分類】
C22B 3/06 20060101AFI20250206BHJP
C22B 7/00 20060101ALI20250206BHJP
C22B 15/00 20060101ALI20250206BHJP
C22B 47/00 20060101ALI20250206BHJP
C22B 23/00 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
C22B3/06
C22B7/00 C
C22B15/00 105
C22B47/00
C22B23/00 102
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024545027
(86)(22)【出願日】2023-01-31
(85)【翻訳文提出日】2024-09-27
(86)【国際出願番号】 EP2023052353
(87)【国際公開番号】W WO2023148174
(87)【国際公開日】2023-08-10
(32)【優先日】2022-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】ローデ,ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】ボルン,ニルス-オロフ ヨアヒム
(72)【発明者】
【氏名】ドゥヒャルト,マルク
(72)【発明者】
【氏名】スミス,ヴィンセント
(72)【発明者】
【氏名】ゼーラー,ファビアン
(72)【発明者】
【氏名】ツィーシャンク,アンネ-マリー カロリネ
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA07
4K001AA09
4K001AA16
4K001AA19
4K001BA22
4K001DB03
4K001DB05
4K001DB11
4K001JA02
(57)【要約】
ゼロ酸化状態の銅を含む材料を浸出する方法であって、浸出混合物を形成するために該材料を6未満のpHを有する酸性水溶液と接触させる工程と、銅を式Li
pM
qM’
rO
sで表される酸化剤(OA)で酸化する工程とを含む方法を開示する。Mはニッケル、マンガン、及びコバルトから選択される1つ以上の金属を含み、M’はMg、Ca、Ba、Al、Ti、Zr、Zn、Fe、V、Mo、及びWから選択される1つ以上の金属を含み、pは1~1.4の範囲であり、qは0.6~2の範囲であり、rは0~1の範囲であり、sは2~4の範囲であり、そして浸出前の材料中に存在するモルで表される銅の総量をモルで表される酸化剤の総量で割った
【数1】
の範囲であり、
【数2】
であり、そして
【数3】
は、M’に含まれる酸化物としての各金属の最も安定な酸化数のモル平均を計算することによって決定されるM’の平均酸化数である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼロ酸化状態の銅を含む材料を浸出する方法であって、
浸出混合物を形成するために前記材料を6未満のpHを有する酸性水溶液と接触させる工程と、
銅を式Li
pM
qM’
rO
sで表される酸化剤で酸化する工程とを含み、
式中、
Mはニッケル、マンガン、及びコバルトから選択される1つ以上の金属を含み、
M’はMg、Ca、Ba、Al、Ti、Zr、Zn、Fe、V、Mo、及びWから選択される1つ以上の金属を含み、
pは1~1.4の範囲であり、
qは0.6~2の範囲であり、
rは0~1の範囲であり、
sは2~4の範囲であり、そして
浸出前の前記材料中に存在するモルで表される銅の総量をモルで表される前記酸化剤の総量で割った
【数1】
の範囲であり、
【数2】
であり、そして
【数3】
は、M’に含まれる酸化物としての各金属の最も安定な酸化数のモル平均を計算することによって決定されるM’の平均酸化数である、方法。
【請求項2】
【数4】
の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酸化剤が、式Li
(1+x)(Ni
aCo
bMn
cM
’
d)
(1-x)O
2で表されるリチウム化ニッケルコバルトマンガンオキシドを含み、式中、
M
’は、Mg、Ca、Ba、Al、Ti、Zr、Zn、Mo、V及びFeから選択され、
ゼロ≦x≦0.2、
0.1≦a≦0.95、
ゼロ≦b≦0.9、又は0.05<b≦0.5、
ゼロ≦c≦0.6、
ゼロ≦d≦0.1、及び
a+b+c+d=1である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記酸化剤が、式Li[Ni
hCo
iAl
j]O
2+tで表されるリチウム化ニッケル-コバルトアルミニウムオキシドを含み、式中、
hは0.8~0.95の範囲であり、
iは0.1~0.3の範囲であり、
jは0.01~0.10の範囲であり、そして
tは0~0.4の範囲である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記酸化剤が、式Li
(1+x)Mn
2-x-y-zM
yM
’
zO
4で表されるリチウム化マンガンオキシドを含み、式中、
xはゼロ~0.2の範囲であり、
y+zはゼロ~0.1の範囲であり、そして
M
’はAl、Mg、Fe、Ti、V、Zr及びZnから選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記酸化剤が、式xLi
(1+1/3)M
(2/3)O
2・yLiMO
2・zLiM’O
2で表される化合物を含み、式中のMは、酸化状態+4の少なくとも1つの金属を含み、M’は、少なくとも1つの遷移金属であり、そして0<x<1、0<y<1、0<z<1及びx+y+z=1である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記材料がリチウムイオン電池材料からの黒色塊であり、そして前記酸化剤が正極活物質である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
前記酸化剤の少なくとも50%を接触工程の後で前記浸出混合物に添加し、任意に、接触工程で、水素ガスが発生して、水素ガス発生率が接触工程中の最大水素ガス発生率の10%まで低下した後に、前記酸化剤の少なくとも50%を前記浸出混合物に添加する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
前記正極活物質が銅の50%~100%を酸化する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
O
2、N
2O、過酸化水素、及びペルオキソ二硫酸塩から選択される少なくとも1つを含む追加の酸化剤を前記浸出混合物へ添加することをさらに含み、任意に、接触工程で、水素ガスが発生して、水素ガス発生率が接触工程中の最大水素ガス発生率の10%まで低下した後に、前記追加の酸化剤を前記浸出混合物へ添加する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項11】
SO
2、メタ重亜硫酸塩、重亜硫酸塩、ジチオン酸塩、チオ硫酸塩、H
2O
2、及びH
2から選択される少なくとも1つを含む還元剤を前記浸出混合物へ添加することをさらに含み、任意に、銅の少なくとも50%が酸化された後に、前記還元剤を添加する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項12】
前記酸性水溶液が、H
2SO
4、メタンスルホン酸、及び硝酸から選択される少なくとも1つの酸を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項13】
前記酸性水溶液が、18モル/L~0.0001モル/Lの範囲の酸濃度を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項14】
前記材料が、該材料の総質量に対して0.1質量%~10質量%の銅を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項15】
請求項1又は2に記載の前記材料を浸出して金属イオンを含む水溶液を得ること、及び
前記金属イオンを分離して少なくとも1つの本質的に純粋な金属イオン溶液及び/又は少なくとも1つの本質的に純粋な固体金属イオン塩を得ること
を含む、方法。
【請求項16】
リチウムイオン電池、リチウムイオン電池廃棄物、リチウムイオン電池製造スクラップ、リチウムイオンセル製造スクラップ、リチウムイオン正極活物質、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの電池材料をリサイクルする方法であって、
任意に、前記少なくとも1つの電池材料を350℃~900℃の範囲の温度で熱処理すること、
前記少なくとも1つの電池材料を機械的に粉砕して黒色塊を得ること、
任意に、前記黒色塊を分類して微細画分及び粗画分を得ること、及び
前記黒色塊、任意に前記微細画分、前記粗画分、又は前記微細画分及び前記粗画分を、請求項1又は2に記載の浸出する方法に供すること、
を含む、方法。
【請求項17】
請求項1に記載の、ゼロ酸化状態の銅を含む材料を浸出する方法であって、浸出混合物を形成するために前記材料を6未満のpHを有する酸性水溶液と接触させる工程と、式Li
pM
qM’
rO
sで表される酸化剤で銅を酸化する工程とを含み、式中のMはニッケル、マンガン、及びコバルトから選択される1つ以上の金属を含み、M’はMg、Ca、Ba、Al、Ti、Zr、Zn、Fe、V、Mo、及びWから選択される1つ以上の金属を含み、pは1~1.4の範囲であり、qは0.6~2の範囲であり、rは0~1の範囲であり、sは2~4の範囲であり、そして浸出前の前記材料中に存在するモルで表される銅の総量をモルで表される前記酸化剤の総量で割った
【数5】
の範囲であり、
【数6】
であり、そして
【数7】
は、M’に含まれる酸化物としての各金属の最も安定な酸化数のモル平均を計算することによって決定されるM’の平均酸化数である、方法。
【請求項18】
請求項1に記載の、ゼロ酸化状態の銅を含む材料を浸出する方法であって、浸出混合物を形成するために前記材料を6未満のpHを有する酸性水溶液と接触させる工程と、式Li
(1+x)M
(1-x)O
2で表される正極活物質で銅を酸化する工程とを含み、式中のMはニッケル及びコバルトを含み、xは0~0.5の範囲であり、モルで表される銅の総量をモルで表される正極活物質の総量で割った
【数8】
の範囲である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願につながるプロジェクトは、Bundesministerium fuer Wirtschaft und Klimaschutz(DE;FKZ:16BZF101A)から資金提供を受けており、本書のあらゆる開示は、出願人が責任を負う。
【0002】
ゼロ酸化状態の銅を含む材料を浸出する方法であって、浸出混合物を形成するために該材料を6未満のpHを有する酸性水溶液と接触させる工程と、銅を式LipMqM’rOsで表される酸化剤で酸化する工程とを含む方法を開示する。また、リチウムイオン電池、リチウムイオン電池廃棄物、リチウムイオン電池製造スクラップ、リチウムイオンセル製造スクラップ、リチウムイオン正極活物質、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの電池材料をリサイクルする方法も開示する。また、式LipMqM’rOsで表される第1の材料を、ゼロ酸化状態の銅を含む第2の材料で還元する方法も開示する。
【背景技術】
【0003】
高純度リチウムは貴重な資源である。リチウムの多くの供給源、例えばリチウムイオン電池、リチウムイオン電池廃棄物、リチウム含有水、例えば地下水、及びリチウム含有未加工鉱石などは、種々の元素及び化合物の複雑な混合物である。リチウムイオン電池材料などの材料からのリチウムの除去及び精製は、リチウムイオン電池のリサイクルにおける例示的な工程である。リチウムイオン電池材料は種々の元素及び化合物の複雑な混合物であり、種々のリチウムではない不純物を除去することが望ましい場合がある。このような不純物は様々な酸化状態で存在する可能性があり、例えば、浸出プロセスの効率に影響を与え得る。例えば、いくつかの浸出プロセスにおいて、高酸化状態の金属は、低酸化状態又はゼロ酸化状態の金属よりも多かれ少なかれ効率的に浸出され得る。リチウムではない不純物も貴重な資源であり、そしてそのような材料から種々の元素及び化合物を分離及び精製することがさらに望ましい場合もある。
【0004】
よって、例えば電池材料などの材料からリチウムを除去するための方法、及びリチウムイオン電池材料をリサイクルするための方法が必要とされている。例えば、種々の元素及び化合物の複雑な混合物、例えば種々の酸化状態で共存する混合金属を効率的且つ効果的に浸出する浸出方法が必要とされている。例えば、リチウム回収率が高く且つリチウム純度が高い経済的な方法が必要とされている。また、例えば銅などの価値のある金属を材料から取り除くための回収率が高く且つ純度が高い経済的な方法も、必要とされている。
【0005】
CN111961839Aは、廃リチウムイオン電池の負極活物質と正極活物質から有価金属を浸出し、不純物を同期的に除去する方法を開示している。この方法は具体的には、廃リチウムイオン電池の負極活物質及び正極活物質を焙焼して、F及びPの不純物の一部を除去する工程と、焙焼終了後、焙焼材料を2段階の酸浸出方法で処理して有価金属を浸出し、且つFの大部分を除去する工程と、浸出液を化学的方法で処理して、Fe、Al、Cu及び残りのF、P及び他の不純物を除去する工程とを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電池材料などの材料からリチウム及び不純物を取り除くための方法、リチウムイオン電池材料をリサイクルするための方法、及び金属の回収率が高く且つ金属の純度が高い経済的な浸出方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ゼロ酸化状態の銅を含む材料を浸出する方法であって、浸出混合物を形成するために該材料を6未満のpHを有する酸性水溶液と接触させる工程と、銅を式Li
pM
qM’
rO
sで表される酸化剤(OA)で酸化する工程とを含む方法を開示する。ここで、Mはニッケル、マンガン、及びコバルトから選択される1つ以上の金属を含み、M’はMg、Ca、Ba、Al、Ti、Zr、Zn、Fe、V、Mo、及びWから選択される1つ以上の金属を含み、pは1~1.4の範囲であり、qは0.6~2の範囲であり、rは0~1の範囲であり、sは2~4の範囲であり、そして浸出前の材料中に存在するモルで表される銅の総量をモルで表される酸化剤の総量で割った
【数1】
の範囲であり、
【数2】
であり、そして
【数3】
は、M’に含まれる酸化物としての各金属の最も安定な酸化数のモル平均を計算することによって決定されるM’の平均酸化数である。
【0009】
また、リチウムイオン電池、リチウムイオン電池廃棄物、リチウムイオン電池製造スクラップ、リチウムイオンセル製造スクラップ、リチウムイオン正極活物質、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの電池材料をリサイクルする方法も開示し、この方法は、任意に、少なくとも1つの電池材料を350℃~900℃の範囲の温度で熱処理すること、少なくとも1つの電池材料を機械的に粉砕して黒色塊を得ること、任意に、その黒色塊を分類して微細画分及び粗画分を得ること、及び黒色塊、任意に微細画分、粗画分、又は微細画分及び粗画分を、本明細書に開示する浸出方法に供すること、を含む。
【0010】
また、式Li
pM
qM’
rO
sで表される第1の材料をゼロ酸化状態の銅を含む第2の材料で還元する方法も開示し、該方法は、混合物を形成するために第1の材料を6未満のpHを有する酸性水溶液と接触させる工程と、第1の材料を第2の材料で還元する工程とを含み、式中のMは、ニッケル、マンガン、及びコバルトから選択される1つ以上の金属を含み、M’は、Mg、Ca、Ba、Al、Ti、Zr、Zn、Fe、V、Mo、及びWから選択される1つ以上の金属を含み、pは1~1.4の範囲であり、qは0.6~2の範囲であり、rは0~1の範囲であり、sは2~4の範囲であり、そして、還元工程の前に第2の材料中に存在するモルで表される銅の総量をモルで表される第1の材料の総量で割った
【数4】
の範囲であり、式中、
【数5】
であり、そして
【数6】
は、M’に含まれる酸化物としての各金属の最も安定な酸化数のモル平均を計算することによって決定されるM’の平均酸化数である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本開示のいくつかの実施形態と一致する例示的なバッチプロセスを示す。
【
図2】
図2は、本開示のいくつかの実施形態と一致する例示的な連続プロセスを示す。
【
図3】
図3は、例示的な黒色塊のXRDパターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ゼロ酸化状態の銅を含む材料を浸出する方法であって、浸出混合物を形成するために該材料を6未満のpHを有する酸性水溶液と接触させる工程と、銅を式Li
pM
qM’
rO
sで表される酸化剤で酸化する工程とを含む方法を開示するものであり、式中のMは、ニッケル、マンガン、及びコバルトから選択される1つ以上の金属を含み、M’は、Mg、Ca、Ba、Al、Ti、Zr、Zn、Fe、V、Mo、及びWから選択される1つ以上の金属を含み、pは1~1.4の範囲であり、qは0.6~2の範囲であり、rは0~1の範囲であり、sは2~4の範囲であり、そして浸出前の材料中に存在するモルで表される銅の総量をモルで表される酸化剤の総量で割った
【数7】
の範囲であり、
【数8】
であり、そして
【数9】
は、M’に含まれる酸化物としての各金属の最も安定な酸化数のモル平均を計算することによって決定されるM’の平均酸化数である。
【0013】
いくつかの実施形態において、
【0014】
【0015】
いくつかの実施形態において、酸化剤は、式Li(1+x)(NiaCobMncM’
d)(1-x)O2で表されるリチウム化ニッケルコバルトマンガンオキシドを含み、式中、M’は、Mg、Ca、Ba、Al、Ti、Zr、Zn、Mo、V及びFeから選択され、ゼロ≦x≦0.2、0.1≦a≦0.95、ゼロ≦b≦0.9、又は0.05<b≦0.5、ゼロ≦c≦0.6、ゼロ≦d≦0.1、及びa+b+c+d=1である。
【0016】
いくつかの実施形態において、酸化剤は、式Li[NihCoiAlj]O2+tで表されるリチウム化ニッケルコバルトアルミニウムオキシドを含み、式中、hは0.8~0.95の範囲であり、iは0.1~0.3の範囲であり、jは0.01~0.10の範囲であり、そしてtは0~0.4の範囲である。
【0017】
いくつかの実施形態において、酸化剤は、式Li(1+x)Mn2-x-y-zMyM’
zO4で表されるリチウム化マンガンオキシドを含み、式中、xはゼロ~0.2の範囲であり、y+zはゼロ~0.1の範囲であり、そしてM’はAl、Mg、Fe、Ti、V、Zr及びZnから選択される。
【0018】
いくつかの実施形態において、酸化剤は、式xLi(1+1/3)M(2/3)O2・yLiMO2・zLiM’O2で表される化合物を含み、式中のMは、酸化状態+4のMn、Ni、Coの少なくとも1つの金属を含み、M’は、少なくとも1つの遷移金属であり、そして0<x<1、0<y<1、0<z<1及びx+y+z=1である。
【0019】
いくつかの実施形態において、材料はリチウムイオン電池材料からの黒色塊であり、そして酸化剤は正極活物質である。
【0020】
いくつかの実施形態において、酸化剤の少なくとも50%を接触工程の後で浸出混合物に添加し、任意に、接触工程で、水素ガスが発生して、水素ガス発生率が接触工程中の最大水素ガス発生率の10%まで低下した後に、酸化剤の少なくとも50%を浸出混合物に添加する。
【0021】
いくつかの実施形態において、正極活物質は銅の50%~100%を酸化する。
【0022】
いくつかの実施形態において、本方法は、O2、N2O、過酸化水素、及びペルオキソ二硫酸塩から選択される少なくとも1つを含む追加の酸化剤を浸出混合物へ添加することをさらに含み、任意に、接触工程で、水素ガスが発生して、水素ガス発生率が接触工程中の最大水素ガス発生率の10%まで低下した後に、追加の酸化剤を浸出混合物へ添加する。
【0023】
いくつかの実施形態において、本方法は、SO2、メタ重亜硫酸塩、重亜硫酸塩、ジチオン酸塩、チオ硫酸塩、H2O2、及びH2から選択される少なくとも1つを含む還元剤を浸出混合物へ添加することをさらに含み、任意に、銅の少なくとも50%が酸化された後に還元剤を添加する。
【0024】
いくつかの実施形態において、酸性水溶液は、H2SO4、メタンスルホン酸、及び硝酸から選択される少なくとも1つの酸を含む。
【0025】
いくつかの実施形態において、酸性水溶液は、18モル/L~0.0001モル/Lの範囲の酸濃度を有する。
【0026】
いくつかの実施形態において、材料は、材料の総質量に対して0.1質量%~10質量%の銅を含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示する方法によって金属イオンを含む水溶液が得られ、そして金属イオンを分離することで少なくとも1つの本質的に純粋な金属イオン溶液及び/又は少なくとも1つの本質的に純粋な固体金属イオン塩が得られる。
【0028】
定義
本明細書で使用する「a」又は「an」の実体とは、その実体の1つ以上を指し、例えば、「化合物(a compound)」は、特に断りのない限り、1つ以上の化合物又は少なくとも1つの化合物を指す。このように、用語「a」(又は「an」)、「1つ以上」、及び「少なくとも1つ」は、本明細書において互換的に使用される。
【0029】
本明細書で使用する「材料」という用語は、何かを構成する、又は作ることができる要素、構成要素、及び/又は物質を指す。
【0030】
本明細書で使用する「還元剤」とは、金属オキシド及び/又は金属ヒドロキシドを還元することができる化合物である。例えば、いくつかの還元剤は、いくつかの金属オキシド及び/又はいくつかの金属ヒドロキシドを還元することができるが、他のものは還元することができない。
【0031】
本明細書で使用する「酸化剤」とは、ゼロ酸化状態の金属を酸化することができる化合物である。例えば、いくつかの酸化剤は、ゼロ酸化状態のいくつかの金属を酸化することができるが、他のものは酸化することができない。
【0032】
本明細書で使用する「溶液」とは、流体と1つ以上の化合物との組み合わせである。例えば、溶液中の1つ以上の化合物のそれぞれは、流体に溶解していても溶解していなくてもよい。
【0033】
本明細書で使用する「本質的に純粋な金属イオン溶液」とは、金属イオン、対イオン、溶媒を含む溶液であり、金属イオン及び対イオンの総質量は、溶媒の質量を除いて少なくとも50質量%である。
【0034】
本明細書で使用する「本質的に純粋な固体金属イオン塩」とは、金属イオンと対イオンを含む固体であり、金属イオンと対イオンの総質量は、溶媒の質量を除いて固体の少なくとも50質量%である。
【0035】
本明細書で使用する「スパージング(sparging)」という用語は、液体を通して気体を分散させることを指す。
【0036】
本明細書で使用する「塩基」という用語は、ヒドロニウムイオンと反応して酸性溶液のpH値を上昇させることができる材料を指す。
【0037】
本明細書で使用する「標準電極電位」という用語は、電気化学の分野におけるその一般的な用途を有し、1バール及び298.15Kにおいて、水素分子が標準水素電極で溶媒和プロトンに酸化される、電気化学セルの起電力の値である。標準水素電極の電位は、定義上ゼロボルトである。例示的な文献は:Johnstone,A.H.「CRC Handbook of Chemistry and Physics-第69版 Editor in Chief RC Weast,CRC Press Inc.,Boca Raton,Florida、1988年、である。
【0038】
材料:
いくつかの実施形態において、材料はゼロ酸化状態の銅を含む。いくつかの実施形態において、材料は、材料の総質量に対して0.1質量%~30質量%の銅を含む。いくつかの実施形態において、材料は、材料の総質量に対して0.1質量%~20質量%の銅を含む。いくつかの実施形態において、材料は、材料の総質量に対して0.1質量%~10質量%の銅を含む。いくつかの実施形態において、材料は、材料の総質量に対して1質量%~10質量%の銅を含む。
【0039】
いくつかの実施形態において、材料は、材料の総質量に対して0.1質量%~30質量%のリチウムを含む。いくつかの実施形態において、材料は、材料の総質量に対して1質量%~20質量%のリチウムを含む。いくつかの実施形態において、材料は、材料の総質量に対して5質量%~20質量%のリチウムを含む。
【0040】
いくつかの実施形態において、材料は、リチウムイオン電池材料、例えば黒色塊である。いくつかの実施形態において、材料は、リチウムイオン電池材料、例えば黒色塊を含む。
【0041】
いくつかの実施形態において、材料は、ニッケル、コバルト、マンガン、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上を含む。
【0042】
いくつかの実施形態において、材料は、ニッケル、コバルト、アルミニウム、鉄、マンガン、希土類金属、及びそれらの組み合わせから選択されるゼロ酸化状態の1つ以上の金属をさらに含む。
【0043】
いくつかの実施形態において、材料は、0.1質量パーセント~10質量パーセントのリチウム、0質量パーセント~60質量パーセントのニッケル、0質量パーセント~20質量パーセントのコバルト、0質量パーセント~20質量パーセントの銅、0質量パーセント~20質量パーセントのアルミニウム、0質量パーセント~20質量パーセントの鉄、及び0質量パーセント~20質量パーセントのマンガンを含み、各質量パーセントは材料の総質量に対するものである。
【0044】
いくつかの実施形態において、材料又はその前駆体を、浸出に先立ち熱分解する。いくつかの実施形態において、熱分解は、不活性雰囲気下、酸化性雰囲気下、還元性雰囲気下、又はそれらの組み合わせの下で行う。
【0045】
「黒色塊」とは、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオン電池廃棄物、リチウムイオン電池製造スクラップ、リチウムイオンセル製造スクラップ、リチウムイオン正極活物質、及び/又はこれらの組み合わせに由来するリチウムを含み、機械的プロセス、例えば機械的粉砕による、材料を指す。例えば、黒色塊は電池スクラップに由来し得、その電池スクラップの機械的処理により、電極の活性成分、例えばグラファイト及び正極活物質が得られ、そしてケーシング、電極箔、ケーブル、セパレータ、及び電解質からの不純物が含まれ得る。いくつかの例では、電池スクラップを熱処理に供して有機物(例えば電解液)及びポリマー(例えばセパレータ及びバインダ)材料を熱分解してよい。このような熱処理は、電池材料の機械的粉砕の前又は後に行ってよい。いくつかの実施形態において、黒色塊を熱処理に供する。
【0046】
リチウムイオン電池は、例えばハンマーミル、ロータミルで分解、穿孔、粉砕してよく、及び/又は例えば産業用シュレッダーでシュレッダーにかけてよい。この種の機械的プロセスから、電池電極の活物質が得られる。有機プラスチック及びアルミニウム箔又は銅箔から作られたハウジング部品などの軽量画分は、例えば、強制ガス流、空気分離又は分級又はふるい分けで除去してよい。
【0047】
電池スクラップは、例えば、使用済み電池から、又は仕様外材料などの製造廃棄物に由来し得る。いくつかの実施形態において、材料は、機械的に処理された電池スクラップ、例えば、ハンマーミル、ロータミル又は産業用シュレッダーで処理された電池スクラップから得られる。このような材料は、平均粒径(D50)を1μm~1cm、例えば1μm~500μm、及びさらに例えば3μm~250μmの範囲に有する。
【0048】
ハウジングのような電池スクラップのより大きな部品、ワイヤ及び電極支持フィルムは、機械的に分離して、対応する材料を方法に使用される電池材料から除外できるようにしてよい。いくつかの実施形態において、分離は、手動又は自動分類によって行われる。例えば、磁性部品は、渦電流セパレータによる非磁性金属磁気分離により分離することができる。他の技術には、治具及びエアテーブルが含まれる。
【0049】
遷移金属オキシドを電流コレクターフィルムに結合する、又は例えば、グラファイトを電流コレクターフィルムに結合するのに使用されたポリマーバインダーを溶解及び分離するために、機械的に処理された電池スクラップを溶媒処理に供してよい。好適な溶媒は、純粋な形態の、下記のうちの少なくとも2つの混合物としての、又は1質量%~99質量%の水との混合物としての、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチル-ホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-エチルピロリドン及びジメチルスルホキシドである。
【0050】
いくつかの実施形態において、機械的に処理された電池スクラップを、様々な雰囲気下、広範囲の温度での熱処理に供してよい。いくつかの実施形態において、温度は100℃~900℃の範囲である。いくつかの実施形態において、より低い300℃未満の温度は電池電解質から残留溶媒を蒸発させる役割を果たし、より高温ではバインダーポリマーが分解し、400℃を超える温度では、スクラップ材料に含有される炭素によって又は還元性ガスを導入することによって遷移金属オキシドの一部が還元されるので、無機材料の組成が変化し得る。いくつかの実施形態において、温度を400℃未満に保つことにより、及び/又は熱処理前に炭素質材料を除去することにより、リチウム金属オキシドの還元が回避される。
【0051】
いくつかの実施形態において、熱処理は350℃及び900℃の範囲の温度で行われる。いくつかの実施形態において、熱処理は450℃~800℃の範囲の温度で行われる。いくつかの実施形態において、熱処理は、不活性、酸化性、又は還元性雰囲気下で行われる。いくつかの実施形態において、熱処理は、不活性又は還元性雰囲気下で行われる。いくつかの実施形態において、還元剤は、熱処理の条件下で、熱分解した有機(ポリマー)成分から形成される。いくつかの実施形態において、還元剤は、還元性ガス、例えばH2及び/又はCOの添加によって形成される。
【0052】
いくつかの実施形態において、材料は、ニッケル、コバルト、マンガン、銅、アルミニウム、鉄、リン又はそれらの組み合わせを含む。
【0053】
いくつかの実施形態において、材料は、リチウム対ニッケル、コバルト、マンガン、銅、アルミニウム、鉄、及びリンの総質量の質量比を、0.01~10の範囲に有する。いくつかの実施形態において、材料は、リチウム対ニッケル、コバルト、マンガン、銅、アルミニウム、鉄、及びリンの総質量の質量比を、0.01~5の範囲に有する。いくつかの実施形態において、材料は、リチウム対ニッケル、コバルト、マンガン、銅、アルミニウム、鉄、及びリンの総質量の質量比を、0.01~2の範囲に有する。いくつかの実施形態において、材料は、リチウム対ニッケル、コバルト、マンガン、銅、アルミニウム、鉄、及びリンの総質量の質量比を、0.01~1の範囲に有する。
【0054】
いくつかの実施形態において、リチウムイオン電池材料をリサイクルするための方法は、リチウムイオン電池、リチウムイオン電池廃棄物、リチウムイオン電池製造スクラップ、リチウムイオンセル製造スクラップ、リチウムイオン正極活物質、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つを機械的に粉砕して黒色塊を得ることを含む。
【0055】
酸化剤:
いくつかの実施形態において、酸化剤は、式LipMqM’rOsで表されるものである。
【0056】
いくつかの実施形態において、Mはニッケル、マンガン、及びコバルトから選択される1つ以上の金属を含み、M’はMg、Ca、Ba、Al、Ti、Zr、Zn、Fe、V、Mo、及びWから選択される1つ以上の金属を含み、pは1~1.4の範囲であり、qは0.6~2の範囲であり、rは0~1の範囲であり、sは2~4の範囲である。
【0057】
いくつかの実施形態において、酸化剤は、式Li(1+x)(NiaCobMncM’
d)(1-x)O2で表されるリチウム化ニッケルコバルトマンガンオキシドを含み、式中、M’は、Mg、Ca、Ba、Al、Ti、Zr、Zn、Mo、V及びFeから選択され、ゼロ≦x≦0.2、0.1≦a≦0.95、ゼロ≦b≦0.9、又は0.05<b≦0.5、ゼロ≦c≦0.6、ゼロ≦d≦0.1、及びa+b+c+d=1である。
【0058】
いくつかの実施形態において、酸化剤は、式Li[NihCoiAlj]O2+tで表されるリチウム化ニッケル-コバルトアルミニウムオキシドを含み、式中、hは0.8~0.95の範囲であり、iは0.1~0.3の範囲であり、jは0.01~0.10の範囲であり、そしてtはゼロ~0.4の範囲である。
【0059】
いくつかの実施形態において、酸化剤は、式Li(1+x)Mn2-x-y-zMyM’
zO4で表されるリチウム化マンガンオキシドを含み、式中、xはゼロ~0.2の範囲であり、y+zはゼロ~0.1の範囲であり、そしてM’はAl、Mg、Fe、Ti、V、Zr及びZnから選択される。
【0060】
いくつかの実施形態において、酸化剤は、式xLi(1+1/3)M(2/3)O2・yLiMO2・zLiM’O2で表される化合物を含み、式中のMは、酸化状態+4のMn、Ni、Coの少なくとも1つの金属を含み、M’は、少なくとも1つの遷移金属であり、そして0<x<1、0<y<1、0<z<1及びx+y+z=1である。
【0061】
いくつかの実施形態において、酸化剤は正極活物質である。
【0062】
いくつかの実施形態において、酸化剤は、リチウム化ニッケルコバルトマンガンオキシド、リチウム化ニッケルコバルトアルミニウムオキシド、リチウム化マンガンオキシド、正極活物質の製造からの製造廃棄物などの正極活物質を含むリチウムイオン電池スクラップ、及びそれらの組み合わせから選択される、少なくとも1つの正極活物質を含む。
【0063】
いくつかの実施形態において、リチウム化金属酸化物は、酸化剤として混合物の一部として用いられる。例えば、黒色塊は正極活物質を含んでよい。いくつかの実施形態において、黒色塊中の正極活物質の量は、当該技術分野において既知の方法により決定することができる。例えば、NCMの量の定量的評価を可能にするリートベルト精密化を伴うXRDによって正極活物質の量を決定できる。別の方法は、例えば、酸化還元滴定であり、ここでは材料を還元剤、例えばヨウ化カリウムと、反応:LipMqM’rOs+n(eM)J-+2sH+→pLi++qM2++rM’(OxM’)++0.5n(eM)I2+sH2Oにより反応させ、そして生成されるヨウ素の量の決定を、例えばチオ硫酸ナトリウムで滴定することによって行い、n(eM)を評価することができる。
【0064】
リチウム化金属酸化物が、例えば黒色塊との混合物の一部であるいくつかの実施形態において、混合物は、ゼロ酸化状態の銅以外のリチウム化金属酸化物を還元することができる材料を、限られた量でしか含有しない。例えば、リチウム化金属酸化物が混合物の一部であるいくつかの実施形態において、リチウム化金属酸化物を還元することができる銅ではない材料の、ゼロ酸化状態の銅に対するモル比は、3:1より低く、例えば1:1より低く、例えば1:4より低い。いくつかの実施形態において、リチウム化金属酸化物を還元することができる銅ではない材料は、酸化の際に対応するアルデヒド、ケトン、カルボン酸、又は二酸化炭素を形成するアルコール、アルデヒド、カルボン酸、エステル、及び/又はアセタールなどの有機化合物を含む。例えば、黒色塊は、電池電解質溶媒の残留成分を含有し得る。いくつかの実施形態において、銅ではない還元性材料の量は、混合物の20w%未満、又は10w%未満、又は5w%未満である。
【0065】
いくつかの実施形態において、酸化剤は、式Li1+x(NiaCobMncM1
d)1-xO2で表されるリチウム化ニッケルコバルトマンガンオキシドを含み、式中、M1は、Mg、Ca、Ba、Al、Ti、Zr、Zn、Mo、V及びFeから選択され、ゼロ≦x≦0.2、0.1≦a≦0.95、ゼロ≦b≦0.9(例えば0.05<b≦0.5)、ゼロ≦c≦0.6、ゼロ≦d≦0.1、及びa+b+c+d=1である。例示的なリチウム化ニッケルコバルトマンガンオキシドには、各xが上記で定義した通りであるLi(1+x)[Ni0.33Co0.33Mn0.33](1-x)O2、Li(1+x)[Ni0.5Co0.2Mn0.3](1-x)O2、
Li(1+x)[Ni0.6Co0.2Mn0.2](1-x)O2、Li(1+x)[Ni0.7Co0.2Mn0.3](1-x)O2、
Li(1+x)[Ni0.8Co0.1Mn0.1](1-x)O2、及びLi[Ni0.85Co0.13Al0.02]O2が含まれる。
【0066】
いくつかの実施形態において、酸化剤は、式Li[NihCoiAlj]O2+tで表されるリチウム化ニッケルコバルトアルミニウムオキシドを含み、式中、hは0.8~0.95の範囲であり、iは0.1~0.3の範囲であり、jは0.01~0.10の範囲であり、そしてtはゼロ~0.4の範囲である。
【0067】
いくつかの実施形態において、酸化剤はLixMO2を含み、式中、xは1以上の整数であり、そしてMは、金属、遷移金属、希土類金属、及びそれらの組み合わせから選択される。
いくつかの実施形態において、酸化剤は、式Li(1+x)Mn2-x-y-zMyM’
zO4で表されるリチウム化マンガンオキシドを含み、式中、xはゼロ~0.2の範囲であり、y+zはゼロ~0.1の範囲であり、そしてM’はAl、Mg、Fe、Ti、V、Zr及びZnから選択される。
【0068】
いくつかの実施形態において、酸化剤は、式xLi(1+1/3)M(2/3)O2・yLiMO2・zLiM’O2で表される化合物を含み、式中のMは、酸化状態+4のMn、Ni、Coの少なくとも1つの金属を含み、M’は、少なくとも1つの遷移金属であり、そして0<x<1、0<y<1、0<z<1及びx+y+z=1である。
【0069】
いくつかの実施形態において、さらなる酸化剤は、酸、例えば、H2SO4、HNO3、及びそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、酸化剤は酸ではなく、例えば、O2、N2O、及びそれらの組み合わせである。
【0070】
いくつかの実施形態において、さらなる酸化剤は、+0.1V~+1.5Vの範囲の標準電極電位を有する。いくつかの実施形態において、酸化剤は、+0.4V~+1.3Vの範囲の標準電極電位を有する。いくつかの実施形態において、酸化剤は、+1V~+1.5Vの範囲の標準電極電位を有する。
【0071】
還元剤:
いくつかの実施形態において、還元剤は、SO2、メタ重亜硫酸塩、重亜硫酸塩、ジチオン酸塩、チオ硫酸塩、H2O2、H2、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上である。
【0072】
いくつかの実施形態において、還元剤は、+1V~-0.5Vの範囲の標準電極電位を有する。いくつかの実施形態において、還元剤は、+0.2V~-0.3Vの範囲の標準電極電位を有する。
【0073】
過酸化水素は、反応相手に応じて還元剤又は酸化剤として機能する。考えられる酸化反応及び還元反応は:H2O2→O2+2e-+2H+、及びH2O2+2e-+2H+→2H2Oである。いくつかの実施形態において、反応相手の標準電極電位は、どの反応が起こるかに影響する。例えば、或る特定の条件下では、過マンガン酸塩(MnO4
-)は過酸化水素によって還元されるが、一方でFe2+は酸化される。いくつかの実施形態において、水の形成にH+が必要であるので、酸性条件が高いほど酸化反応に有利であり、そしてH+が反応中に生成されるので、酸性条件が低いほど還元反応に有利である。いくつかの実施形態において、1つ以上の金属M及び使用される条件に応じて、以下の反応:2LiMO2+H2O2+3H2SO4→2LiSO4+2MSO4+4H2O+O2、及びM+H2O2+H2SO4→MSO4+2H2Oが起こることも起こらないこともある。
【0074】
酸性水溶液:
いくつかの実施形態において、酸性水溶液は、H2SO4、メタンスルホン酸、及び硝酸から選択される少なくとも1つの酸を含む。
【0075】
いくつかの実施形態において、酸性水溶液は、18モル/L~0.0001モル/Lの範囲の酸濃度を有する。いくつかの実施形態において、酸性水溶液は、18モル/L~0.001モル/Lの範囲の酸濃度を有する。いくつかの実施形態において、酸性水溶液は、18モル/L~0.01モル/Lの範囲の酸濃度を有する。いくつかの実施形態において、酸性水溶液は、18モル/L~0.1モル/Lの範囲の酸濃度を有する。いくつかの実施形態において、酸性水溶液は、18モル/L~1モル/Lの範囲の酸濃度を有する。いくつかの実施形態において、酸性水溶液は、10モル/L~0.0001モル/Lの範囲の酸濃度を有する。いくつかの実施形態において、酸性水溶液は、1モル/L~0.0001モル/Lの範囲の酸濃度を有する。いくつかの実施形態において、酸性水溶液は、10モル/L~1モル/Lの範囲の酸濃度を有する。
【0076】
いくつかの実施形態において、酸性水溶液は、H2SO4、O2、N2O、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態において、酸性水溶液は、H2SO4を含む。いくつかの実施形態において、酸性水溶液は、H2SO4、CH3SO3H、HNO3、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上の酸を含む。いくつかの実施形態において、酸性水溶液は、O2、N2O、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上をさらに含む。いくつかの実施形態において、酸性水溶液に添加される唯一の酸化剤は、式LipMqM’rOsで表されるCAM材料である。いくつかの実施形態において、酸性水溶液は、酸化剤でもある酸、例えば、H2SO4を含む。いくつかの実施形態において、酸性水溶液は、酸ではない酸化剤、例えば、O2、N2O、又はそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、酸性水溶液は、酸及び酸化剤を含む。いくつかの実施形態において、酸性水溶液は、酸、及び式LipMqM’rOsで表される酸化剤を含む。いくつかの実施形態において、酸性水溶液は、酸化剤でもある酸を含み、そして酸ではない酸化剤をさらに含む。
【0077】
浸出の方法:
いくつかの実施形態において、ゼロ酸化状態の銅を含む材料を浸出する方法が提供され、該方法は、浸出混合物を形成するために材料を6未満のpHを有する酸性水溶液と接触させる工程と、式Li
pM
qM’
rO
sで表される酸化剤で銅を酸化する工程とを含み、式中のMはニッケル、マンガン、及びコバルトから選択される1つ以上の金属を含み、M’はMg、Ca、Ba、Al、Ti、Zr、Zn、Fe、V、Mo、及びWから選択される1つ以上の金属を含み、pは1~1.4の範囲であり、qは0.6~2の範囲であり、rは0~1の範囲であり、sは2~4の範囲であり、そして浸出前の材料中に存在するモルで表される銅の総量をモルで表される酸化剤の総量で割った
【数11】
の範囲であり、
【数12】
であり、そして
【数13】
は、M’に含まれる酸化物としての各金属の最も安定な酸化数のモル平均を計算することによって決定されるM’の平均酸化数である。
【0078】
いくつかの実施形態において、
【数14】
の範囲である。
【0079】
いくつかの実施形態において、酸化剤の少なくとも50%を、接触工程の後で浸出混合物に添加し、任意に、接触工程で、水素ガスが発生して、水素ガス発生率が接触工程中の最大水素ガス発生率の10%まで低下した後に、酸化剤の少なくとも50%を浸出混合物に添加する。
【0080】
いくつかの実施形態において、酸化剤の少なくとも50%を、接触工程の後で浸出混合物に添加し、接触工程で、水素ガスが発生して、水素ガス発生率が接触工程中の最大水素ガス発生率の10%まで低下した後に、酸化剤の少なくとも50%を浸出混合物に添加する。
【0081】
いくつかの実施形態において、酸化剤の少なくとも10%を、接触工程の後で浸出混合物に添加し、任意に、接触工程で、水素ガスが発生して、水素ガス発生率が接触工程中の最大水素ガス発生率の10%まで低下した後に、酸化剤の少なくとも10%を浸出混合物に添加する。
【0082】
いくつかの実施形態において、酸化剤の少なくとも10%を、接触工程の後で浸出混合物に添加し、接触工程で、水素ガスが発生して、水素ガス発生率が接触工程中の最大水素ガス発生率の10%まで低下した後に、酸化剤の少なくとも10%を浸出混合物に添加する。
【0083】
いくつかの実施形態において、酸化剤の少なくとも90%を、接触工程の後で浸出混合物に添加し、任意に、接触工程で、水素ガスが発生して、水素ガス発生率が接触工程中の最大水素ガス発生率の10%まで低下した後に、酸化剤の少なくとも90%を浸出混合物に添加する。
【0084】
いくつかの実施形態において、酸化剤の少なくとも90%を、接触工程の後で浸出混合物に添加し、接触工程で、水素ガスが発生して、水素ガス発生率が接触工程中の最大水素ガス発生率の10%まで低下した後に、酸化剤の少なくとも90%を浸出混合物に添加する。
【0085】
いくつかの実施形態において、本方法は、O2、N2O、過酸化水素、及びペルオキソ二硫酸塩から選択される少なくとも1つを含む追加の酸化剤を浸出混合物へ添加することをさらに含み、任意に、接触工程で、水素ガスが発生して、水素ガス発生率が接触工程中の最大水素ガス発生率の10%まで低下した後に、さらなる酸化剤を浸出混合物に添加する。
【0086】
いくつかの実施形態において、本方法は、O2、N2O、過酸化水素、及びペルオキソ二硫酸塩から選択される少なくとも1つを含む追加の酸化剤を浸出混合物へ添加することをさらに含み、接触工程で、水素ガスが発生して、水素ガス発生率が接触工程中の最大水素ガス発生率の10%まで低下した後に、さらなる酸化剤を浸出混合物に添加する。
【0087】
いくつかの実施形態において、SO2、メタ重亜硫酸塩、重亜硫酸塩、ジチオン酸塩、チオ硫酸塩、H2O2、及びH2から選択される少なくとも1つを含む還元剤を浸出混合物へ添加することをさらに含み、任意に、銅の少なくとも50%が酸化された後に、還元剤を添加する。
【0088】
いくつかの実施形態において、SO2、メタ重亜硫酸塩、重亜硫酸塩、ジチオン酸塩、チオ硫酸塩、H2O2、及びH2から選択される少なくとも1つを含む還元剤を浸出混合物へ添加することをさらに含み、任意に、銅の少なくとも10%が酸化された後に、還元剤を添加する。
【0089】
いくつかの実施形態において、SO2、メタ重亜硫酸塩、重亜硫酸塩、ジチオン酸塩、チオ硫酸塩、H2O2、及びH2から選択される少なくとも1つを含む還元剤を浸出混合物へ添加することをさらに含み、任意に、銅の少なくとも90%が酸化された後に、還元剤を添加する。
【0090】
いくつかの実施形態において、酸性水溶液は、H2SO4、メタンスルホン酸、及び硝酸から選択される少なくとも1つの酸を含む。
【0091】
いくつかの実施形態において、酸性水溶液は、18モル/L~0.0001モル/Lの範囲の酸濃度を有する。いくつかの実施形態において、酸性水溶液は、18モル/L~0.001モル/Lの範囲の酸濃度を有する。いくつかの実施形態において、酸性水溶液は、18モル/L~0.01モル/Lの範囲の酸濃度を有する。いくつかの実施形態において、酸性水溶液は、18モル/L~0.1モル/Lの範囲の酸濃度を有する。いくつかの実施形態において、酸性水溶液は、18モル/L~1モル/Lの範囲の酸濃度を有する。いくつかの実施形態において、酸性水溶液は、10モル/L~0.0001モル/Lの範囲の酸濃度を有する。いくつかの実施形態において、酸性水溶液は、1モル/L~0.0001モル/Lの範囲の酸濃度を有する。いくつかの実施形態において、酸性水溶液は、10モル/L~1モル/Lの範囲の酸濃度を有する。
【0092】
いくつかの実施形態において、方法は、本明細書に開示する方法によって材料を浸出して金属イオンを含む水溶液を得ること、及び金属イオンを分離して少なくとも1つの本質的に純粋な金属イオン溶液及び/又は少なくとも1つの本質的に純粋な固体金属イオン塩を得ること、を含む。
【0093】
いくつかの実施形態において、リチウムイオン電池、リチウムイオン電池廃棄物、リチウムイオン電池製造スクラップ、リチウムイオンセル製造スクラップ、リチウムイオン正極活物質、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの電池材料をリサイクルする方法が提供され、この方法は以下:任意に、少なくとも1つの電池材料を350℃~900℃の範囲の温度で熱処理すること、少なくとも1つの電池材料を機械的に粉砕して黒色塊を得ること、任意に、黒色塊を分類して微細画分及び粗画分を得ること、及び黒色塊、任意に微細画分、粗画分、又は微細画分及び粗画分を本明細書に開示する浸出方法に供すること、を含む。
【0094】
いくつかの実施形態において、リチウムイオン電池、リチウムイオン電池廃棄物、リチウムイオン電池製造スクラップ、リチウムイオンセル製造スクラップ、リチウムイオン正極活物質、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの電池材料をリサイクルする方法が提供され、この方法は以下:少なくとも1つの電池材料を350℃~900℃の範囲の温度で熱処理すること、少なくとも1つの電池材料を機械的に粉砕して黒色塊を得ること、及び黒色塊を本明細書に開示する浸出方法に供すること、を含む。
【0095】
いくつかの実施形態において、リチウムイオン電池、リチウムイオン電池廃棄物、リチウムイオン電池製造スクラップ、リチウムイオンセル製造スクラップ、リチウムイオン正極活物質、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの電池材料をリサイクルする方法が提供され、この方法は以下:任意に、少なくとも1つの電池材料を350℃~900℃の範囲の温度で熱処理すること、少なくとも1つの電池材料を機械的に粉砕して黒色塊を得ること、及び黒色塊を本明細書に開示する浸出方法に供すること、を含む。
【0096】
いくつかの実施形態において、式Li
pM
qM’
rO
sで表される第1の材料をゼロ酸化状態の銅を含む第2の材料で還元する方法が提供され、該方法は、混合物を形成するために第1の材料を6未満のpHを有する酸性水溶液と接触させる工程と、第1の材料を第2の材料で還元する工程とを含み、式中のMは、ニッケル、マンガン、及びコバルトから選択される1つ以上の金属を含み、M’は、Mg、Ca、Ba、Al、Ti、Zr、Zn、Fe、V、Mo、及びWから選択される1つ以上の金属を含み、pは1~1.4の範囲であり、qは0.6~2の範囲であり、rは0~1の範囲であり、sは2~4の範囲であり、そして、還元工程の前に第2の材料中に存在するモルで表される銅の総量をモルで表される第1の材料の総量で割った値、
【数15】
の範囲であり、
【数16】
であり、そして
【数17】
は、M’に含まれる酸化物としての各金属の最も安定な酸化数のモル平均を計算することによって決定されるM’の平均酸化数である。
【0097】
いくつかの実施形態において、黒色塊を水中でスラリー化する。スラリー化は、スラリーの総質量による黒色塊の質量パーセンテージ5%~30%の範囲で行う。いくつかの実施形態において、スラリー化した黒色塊を、6未満のpHを有する酸性水溶液と接触させる。いくつかの実施形態において、6未満のpHを有する酸性水溶液は、スラリー化した黒色塊から、酸及び酸化剤の添加によって形成される。いくつかの実施形態において、酸性水溶液中のH2SO4の黒色塊に対する質量比は、1:1~2:1の範囲である。いくつかの実施形態において、接触工程の間にH2SO4を添加してpHを調整する。
【0098】
いくつかの実施形態において、黒色塊はスラリーとして提供される。いくつかの実施形態において、黒色塊は水中のスラリーとして提供される。いくつかの実施形態において、黒色塊は、後続の処理工程からの水性側流、例えばフィルターからの洗浄液体中のスラリーとして提供される。いくつかの実施形態において、黒色塊は固体として提供される。
【0099】
いくつかの実施形態において、正極活物質はスラリーとして提供される。いくつかの実施形態において、正極活物質は、水中のスラリーとして提供される。いくつかの実施形態において、正極活物質は、後続の処理工程からの水性側流、例えばフィルターからの洗浄液体中のスラリーとして提供される。いくつかの実施形態において、正極活物質は固体として提供される。
【0100】
いくつかの実施形態において、浸出のための方法は、材料を6未満のpHを有する酸性水溶液と接触させる工程、及び、その後続いて、金属酸化物、金属水酸化物、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上を還元剤で還元する工程を含む。
【0101】
いくつかの実施形態において、酸性水溶液は、H2SO4、O2、N2O、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態において、酸性水溶液は、H2SO4を含む。いくつかの実施形態において、酸性水溶液は、H2SO4、CH3SO3H、HNO3、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上の酸を含む。いくつかの実施形態において、酸性水溶液は、O2、N2O、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上をさらに含む。いくつかの実施形態において、酸性水溶液に添加される唯一の酸化剤は、式LipMqM’rOsで表されるCAM材料である。いくつかの実施形態において、酸性水溶液は、酸化剤でもある酸、例えば、H2SO4を含む。いくつかの実施形態において、酸性水溶液は、酸ではない酸化剤、例えば、O2、N2O、又はそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、酸性水溶液は、酸及び酸化剤を含む。いくつかの実施形態において、酸性水溶液は、酸、及び式LipMqM’rOsで表される酸化剤を含む。いくつかの実施形態において、酸性水溶液は、酸化剤でもある酸を含み、そして酸ではない酸化剤をさらに含む。
【0102】
いくつかの実施形態において、還元剤は、SO2、メタ重亜硫酸塩、重亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ジチオン酸塩、H2O2、H2、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上である。
【0103】
いくつかの実施形態において、本方法は、混合水酸化物沈殿物を用いて水溶液のpHを調整することをさらに含む。いくつかの実施形態において、本方法は、遷移金属水酸化物、遷移金属炭酸塩から選択される少なくとも1つの化合物を用いて水溶液のpHを調整することをさらに含む。いくつかの実施形態において、化合物の遷移金属は、黒色塊中に既に存在する。いくつかの実施形態において、遷移金属水酸化物はCAM前駆体である。いくつかの実施形態において、遷移金属水酸化物及び/又は遷移金属炭酸塩は、スラリーとして提供される。いくつかの実施形態において、遷移金属水酸化物及び/又は遷移金属炭酸塩は、水中のスラリーとして提供される。いくつかの実施形態において、遷移金属水酸化物及び/又は遷移金属炭酸塩は、後続の処理工程からの水性側流、例えばフィルターからの洗浄液体中のスラリーとして提供される。いくつかの実施形態において、遷移金属水酸化物及び/又は遷移金属炭酸塩は、固体として提供される。
【0104】
いくつかの実施形態において、材料を酸性水溶液と接触させることは、50℃~110℃の範囲の温度で行われる。いくつかの実施形態において、材料を酸性水溶液と接触させることは、2時間~4時間の範囲で行われる。いくつかの実施形態において、材料を酸性水溶液と接触させることは第1の温度で行われ、そして酸化工程は第2の温度で行われ、そして第2の温度は第1の温度の100%~20%の範囲である。
【0105】
いくつかの実施形態において、材料を酸性水溶液と接触させることは、50℃~110℃の範囲の温度で行われる。いくつかの実施形態において、材料を酸性水溶液と接触させることは、2時間~4時間の範囲で行われる。いくつかの実施形態において、材料を酸性水溶液と接触させることは第1の温度で行われ、酸化工程は第2の温度で行われ、そして第2の温度は第1の温度の100%~20%の範囲であり、還元工程は第3の温度で行われ、そして第3の温度は第1の温度の80%~20%の範囲である。
【0106】
いくつかの実施形態において、酸性水溶液は空気を含む。いくつかの実施形態において、酸素を含むガスは、浸出混合物を通してスパージングされない。いくつかの実施形態において、酸性水溶液は空気を含まない。いくつかの実施形態において、酸性水溶液は1000ppm未満の空気を含む。いくつかの実施形態において、空気は3体積%以下の二酸化硫黄を含む。いくつかの実施形態において、材料を6未満のpHを有する酸性水溶液と接触させる工程は、酸性水溶液を通して空気をスパージングすることを含む。いくつかの実施形態において、空気は酸性水溶液を通して20%溶液体積/分の速度でスパージングされる。
【0107】
いくつかの実施形態において、酸性水溶液は-1.0~3の範囲のpHを有する。
【0108】
いくつかの実施形態において、材料を6未満のpHを有する酸性水溶液と接触させる工程は、最初に材料を酸と接触させて水素ガスの形成を引き起こし、そして水素ガスの形成に続いて、酸化剤を添加することを含む。いくつかの実施形態において、材料を6未満のpHを有する酸性水溶液と接触させる工程は、最初に材料を酸と接触させて水素ガスの形成を引き起こすこと、ガスクロマトグラフィー及び/又は水素センサーによって水素ガスの形成を監視すること、及び水素ガスの形成に続いて酸化剤を添加することを含む。いくつかの実施形態において、材料を6未満のpHを有する酸性水溶液と接触させる工程は、最初に材料を酸と接触させて水素ガスの形成を引き起こすこと、ガスクロマトグラフィー及び/又は水素センサーによって水素ガスの形成を監視すること、そして水素ガスの濃度が5体積%未満、例えば1体積%未満、例えば0.1体積%未満である場合、酸化剤を添加することを含む。
【0109】
いくつかの実施形態において、過剰の酸化性ガスO2、例えば空気中の、及び/又はN2Oは、排出ガスから浸出反応器に戻りリサイクルされる。
【0110】
いくつかの実施形態において、還元剤はSO2を含み、そしてSO2を、20溶液体積%/分以下の速度で1時間~3時間、溶液を通してスパージングする。いくつかの実施形態において、還元剤はSO2を含み、そしてSO2は、O2又は10%以上のSO2を含有する空気との混合物として提供される。いくつかの実施形態において、還元剤はSO2を含み、そしてSO2は、O2又は空気との混合物として提供されない。いくつかの実施形態において、還元剤はSO2を含み、そしてSO2は少なくとも90%、例えば99%の純度を有する純粋なガスとして、又は不活性ガス、例えば窒素及び/又はアルゴンとの混合物として、提供される。
【0111】
いくつかの実施形態において、還元工程は周囲温度で行われる。
【0112】
いくつかの実施形態において、接触工程に後続して、本方法は、塩基を添加することをさらに含む。いくつかの実施形態において、塩基は、CaO、ヒドロキシド塩、カーボネート塩、及びそれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態において、ヒドロキシド塩は、LiOH、NaOH、KOH、NH4OH、Ca(OH)2、CaCO3、Ni(OH)2、Co(OH)2、Mn(OH)2、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0113】
いくつかの実施形態において、本方法はバッチ式で行われる。
【0114】
いくつかの実施形態において、本方法は、少なくとも2個の反応容器で連続的に実施される。いくつかの実施形態において、本方法は、例えば、3個、4個、5個、6個、7個、又はそれ以上の反応容器で連続的に実施される。いくつかの実施形態において、黒色塊を第1の反応容器に添加し、酸化剤を第2及び/又は第3の反応容器に添加し、正極活物質及び/又は混合水酸化物沈殿物を第4の反応容器に添加し、そして還元剤を第4、第5、及び/又は第6の反応容器に添加する。
【0115】
いくつかの実施形態において、過剰の二酸化硫黄は、排出ガスから反応器に戻りリサイクルされる。
【0116】
いくつかの実施形態において、還流コンデンサーが少なくとも1つの反応容器に取り付けられる。
【0117】
いくつかの実施形態において、材料を酸性水溶液と接触させることは、周囲圧力で実施される。いくつかの実施形態において、材料を酸性水溶液と接触させることは、高圧で行われる。
【0118】
いくつかの実施形態において、接触工程は、20℃~100℃の範囲の温度で10分~10時間の範囲の持続時間である。いくつかの実施形態において、接触工程は、100℃で3時間~5時間の範囲の持続時間である。いくつかの実施形態において、接触工程は60℃で3時間~5時間の範囲の持続時間である。いくつかの実施形態において、接触工程は25℃で3時間~5時間の範囲の持続時間である。
【0119】
いくつかの実施形態において、酸化工程は、20℃~100℃の範囲の温度で10分~10時間の範囲の持続時間である。いくつかの実施形態において、酸化工程は、100℃で3時間~5時間の範囲の持続時間である。いくつかの実施形態において、酸化工程は60℃で3時間~5時間の範囲の持続時間である。いくつかの実施形態において、酸化工程は25℃で3時間~5時間の範囲の持続時間である。
【0120】
いくつかの実施形態において、還元工程は、20℃~100℃の範囲の温度で10分~10時間の範囲の持続時間である。いくつかの実施形態において、還元工程は、100℃で3時間~5時間の範囲の持続時間である。いくつかの実施形態において、還元工程は60℃で3時間~5時間の範囲の持続時間である。いくつかの実施形態において、還元工程は25℃で3時間~5時間の範囲の持続時間である。
【0121】
いくつかの実施形態において、本方法は、本明細書に開示する材料を浸出して金属イオンを含む水溶液を得ること、及び金属イオンを分離して少なくとも1つの本質的に純粋な金属イオン溶液及び/又は少なくとも1つの本質的に純粋な固体金属イオン塩を得ることを含む。
【0122】
いくつかの実施形態において、本質的に純粋な固体金属イオン塩は、金属イオン及び対イオンを含む固体であり、金属イオン及び対イオンの総質量は、全水などの溶媒の質量を除いて固体の少なくとも50質量%である。いくつかの実施形態において、本質的に純粋な固体金属イオン塩は、金属イオン及び対イオンを含む固体であり、金属イオン及び対イオンの総質量は、溶媒の質量を除いて固体の少なくとも70質量%である。いくつかの実施形態において、本質的に純粋な固体金属イオン塩は、金属イオン及び対イオンを含む固体であり、金属イオン及び対イオンの総質量は、溶媒の質量を除いて固体の少なくとも80質量%である。いくつかの実施形態において、本質的に純粋な固体金属イオン塩は、金属イオン及び対イオンを含む固体であり、金属イオン及び対イオンの総質量は、溶媒の質量を除いて固体の少なくとも90質量%である。いくつかの実施形態において、本質的に純粋な固体金属イオン塩は、金属イオン及び対イオンを含む固体であり、金属イオン及び対イオンの総質量は、溶媒の質量を除いて固体の少なくとも95質量%である。いくつかの実施形態において、本質的に純粋な固体金属イオン塩は、金属イオン及び対イオンを含む固体であり、金属イオン及び対イオンの総質量は、溶媒の質量を除いて固体の少なくとも99質量%である。
【0123】
いくつかの実施形態において、本質的に純粋な金属イオン溶液は、金属イオン、対イオン、及び溶媒を含む溶液であり、金属イオン及び対イオンの総質量は、溶媒の質量を除いて溶液の少なくとも50質量%である。いくつかの実施形態において、本質的に純粋な金属イオン溶液は、金属イオン、対イオン、溶媒を含む溶液であり、金属イオン及び対イオンの総質量は、溶媒の質量を除いて溶液の少なくとも70質量%である。いくつかの実施形態において、本質的に純粋な金属イオン溶液は、金属イオン、対イオン、溶媒を含む溶液であり、金属イオン及び対イオンの総質量は、溶媒の質量を除いて溶液の少なくとも80質量%である。いくつかの実施形態において、本質的に純粋な金属イオン溶液は、金属イオン、対イオン、溶媒を含む溶液であり、金属イオン及び対イオンの総質量は、溶媒の質量を除いて溶液の少なくとも90質量%である。いくつかの実施形態において、本質的に純粋な金属イオン溶液は、金属イオン、対イオン、溶媒を含む溶液であり、金属イオン及び対イオンの総質量は、溶媒の質量を除いて溶液の少なくとも95質量%である。いくつかの実施形態において、本質的に純粋な金属イオン溶液は、金属イオン、対イオン、溶媒を含む溶液であり、金属イオン及び対イオンの総質量は、溶媒の質量を除いて溶液の少なくとも99質量%である。
【0124】
いくつかの実施形態において、金属イオンを分離して少なくとも1つの本質的に純粋な金属イオン溶液及び/又は少なくとも1つの本質的に純粋な固体金属イオン塩を得ることは、固体/液体分離、抽出、沈殿、結晶化、及びそれらの組み合わせのうちの1つ以上を含む。
【0125】
いくつかの実施形態において、本方法は、その一部又は全部を、センサー及びアクチュエーターによって制御される連続プロセスとして、コンピュータベースのプロセス制御システムの一部として実施することができる。
【0126】
電子当量:
理論に拘束されることを望むものではないが、浸出プロセスの間、電子は、例えば銅などのゼロ酸化状態の金属から、式Li
pM
qM’
rO
sで表される酸化剤に移動すると考えられる。さらに、例えば銅から式Li
pM
qM’
rO
sで表される酸化剤に移動し得る式Li
pM
qM’
rO
sで表される酸化剤1モルあたりの電子の数は、以下の式:
【数18】
によって提供されると考えられ、式中、
【数19】
は、M’に含まれる酸化物としての各金属の最も安定な酸化数のモル平均を計算することによって決定されるM’の平均酸化数である。
【0127】
M’の平均酸化数
【数20】
は、M’に含まれる酸化物としての各金属の最も安定な酸化数のモル平均を計算することによって決定される。酸化物としてのMgの最も安定な酸化数は2である。酸化物としてのCaの最も安定な酸化数は2である。酸化物としてのBaの最も安定な酸化数は2である。酸化物としてのAlの最も安定な酸化数は3である。酸化物としてのTiの最も安定な酸化数は4である。酸化物としてのZrの最も安定な酸化数は4である。酸化物としてのZnの最も安定な酸化数は2である。酸化物としてのFeの最も安定な酸化数は3である。酸化物としてのVの最も安定な酸化数は5である。酸化物としてのMoの最も安定な酸化数は6である。酸化物としてのWの最も安定な酸化数は6である。モル平均は、M’が含む1つ以上の金属に関して取られる。
【0128】
例えば、Li(1+x)(NiaCobMncM’
d)(1-x)O2(x=0.1、a=b=c=0.3及びd=0.1、そしてM’は酸化数+4のZrである)は、LipMqM’rOs(p=1.1、q=0.81、r=0.09及びs=2)として記述することもでき、そしてn(eM)=1.14が得られる(ここでも以下の例でも、n(eM)は小数点以下2桁に丸められる)。
【0129】
例えば、Li(1+x)(NiaCobMncM’
d)(1-x)O2(x=0.1、a=b=c=0.3及びd=0.1、そしてM’は30モル%のMg、20モル%のZr、10モル%のV及び40モル%のWからなり、平均酸化数はOxM’=0.3×2+0.2×4+0.1×5+0.4×6=4.3である)は、LipMqM’rOs(p=1.1、q=0.81 r=0.09及びs=2である)として記述することもでき、そして(eM)=1.10が得られる。
【0130】
例えば、Li[NihCoiAlj]O2+t(h=0.9、i=0.1、j=0.05及びt=0.2)は、LipMqM’rOs(p=1.1、q=1、r=0.05及びs=2.2)として記述することもでき、n(eM)=1.25が得られる。
【0131】
例えば、Li(1+x)Mn2-x-y-zMyM’
zO4(x=0.2、y=z=0.05、そしてM’は酸化数+2のMgである)は、LipMqM’rOs(p=1.2、q=1.75、r=0.05及びs=4)として記述することもでき、n(eM)=1.83が得られる。
【0132】
例えば、xLi(1+1/3)M(2/3)O2・yLiMO2・zLiM’O2(x=0.9、y=z=0.05そしてM’は酸化数+6のW)は、LipMqM’rOs(p=1.3、q=0.65、r=0.05及びs=2)として記述することもでき、n(eM)=1.69が得られる。
【0133】
例示的なバッチプロセス:
図1は、本開示のいくつかの実施形態と一致する例示的なバッチプロセス(100)を示す。いくつかの実施形態において、材料(102)、例えば銅を含む黒色塊を、0未満のpHで酸性水溶液を含む連続撹拌反応容器(101)中で酸浸出する。いくつかの実施形態において、水素ガスが発生する(105)。いくつかの実施形態において、式Li
pM
qM’
rO
sで表される酸化剤を添加する(103)。いくつかの実施形態において、pHを1~2の範囲のpHまで、例えば混合水酸化物沈殿物を用いて調整し、そして還元剤、例えばSO
2を導入する(104)。いくつかの実施形態において、得られた液相(106)及び固相(105)を、固液分離、例えば濾過、遠心分離、及び/又は沈降によって分離する。
【0134】
例示的な連続プロセス:
図2は、本開示のいくつかの実施形態と一致する例示的な連続プロセス(200)を示す。いくつかの実施形態において、材料(202)、例えば銅を含む黒色塊を、0未満のpHで酸性水溶液を含む連続撹拌反応容器(201)中で酸浸出する。いくつかの実施形態において、酸浸出は、1つ以上の追加の連続撹拌反応容器(203)中でさらに行う。いくつかの実施形態において、式Li
pM
qM’
rO
sで表される酸化剤を、連続撹拌反応容器(204)に添加する(205)。いくつかの実施形態において、添加した酸化剤の存在下での酸浸出を、1つ以上の追加の連続撹拌反応容器(206)でさらに行う。いくつかの実施形態において、pHを1~2の範囲のpHまで、例えば混合水酸化物沈殿物を用いて調整し、そして還元剤、例えばSO
2を連続撹拌反応容器(207)に導入する(208)。いくつかの実施形態において、添加した還元剤の存在下での浸出を、1つ以上の追加の連続撹拌反応容器(209)でさらに行う。いくつかの実施形態において、得られた液相(211)及び固相(210)を、固液分離、例えば濾過、遠心分離、及び/又は沈降によって分離する。
【実施例】
【0135】
以下の実施例は例示を意図したものであり、決して本開示の範囲を限定するものではない。
【0136】
略語
% パーセント
K2CO3 炭酸カリウム
Na2CO3 炭酸ナトリウム
Na2B4O7 四ホウ酸ナトリウム
p.a.グレード プロ分析グレード
n.d. 決定せず
wt% 質量パーセント
NaOH 水酸化ナトリウム
Li リチウム
Ni ニッケル
Co コバルト
Mn マンガン
Cu 銅
Al アルミニウム
Fe 鉄
P リン
F フッ素
Ca カルシウム
【0137】
例示的な元素分析
固体サンプルの元素分析は、硝酸及び塩酸での消化(供給サンプル、実施例1及び2)、又はK2CO3-Na2CO3/Na2B4O7融解及び融解残渣の塩酸への溶解による消化(実施例3及び4)によって行った。
【0138】
得られたサンプル溶液中の金属は、誘導結合プラズマ(ICP-OES)を用いた発光分光法によって測定した。
【0139】
全体的なフッ素含有量決定のためのサンプル調製(廃棄サンプル)に関して、DIN EN 14582:2016-12に従って、フッ素及びフッ化物の元素分析を行った;検出方法はイオン選択電極測定であった。DIN 38405-D4-2:1985-07(水サンプル;無機固体の消化、その後の酸支持蒸留及びイオン選択電極を用いたフッ化物の決定)。
【0140】
全炭素は、サンプルの燃焼後に得られたガスを熱伝導率検出器を用いたガスクロマトグラフィーで測定した。
【0141】
硫黄は、不活性ガス/酸素雰囲気中でサンプルを触媒燃焼させることにより決定した。ここで硫黄はSO2及びSO3の混合物に変換される。形成されたSO3は、銅顆粒でSO2に還元した。燃焼ガスの乾燥及び分離後、熱伝導率又はIR分光分析法により、硫黄をSO2として検出及び定量した。
【0142】
黒色塊
以下に示す実施例について、黒色塊は、電池スクラップの熱分解を伴うプロセスによって得られた。材料は少量の硫黄を含有した。分析した金属は、MnO、CoO、NiOのような酸化性化合物、LiF、LiAlO2、Li2CO3のような塩、及び/又はニッケル、コバルト、及び銅のようなゼロ酸化状態の金属として存在した。炭素は主に、いくらかのすすを伴ったグラファイト又はコークスの形態の元素状炭素であった。
【0143】
実施例1~4で使用した黒色塊1、及び実施例5~7で使用した黒色塊2の組成を表1に示す。
【0144】
【0145】
図3は、黒色塊1のXRDパターンを示す。
図3において、「a」はグラファイト、「b」はニッケル-コバルト-マンガン、「c」はNiO、「d」はCoO、「e」はMnO、「f」はNiを示し、そして残りの反射はリチウム塩及び不純物に対応する。
【0146】
式LipMqM’rOsで表される正極活物質
実施例で使用した正極活物質(CAM)は、ほぼ等モル量のニッケル、コバルト及びマンガンを含有するNCM111タイプの材料であった。この材料の組成は、Li(x+1)(Ni0,34Co0,32Mn0,34)(1-x)O2(x=0.0628)として表すことができる。この材料は、LipMqM’rOsとしても記述することができ、p=1.0682、q=0.9372、r=0、s=2でありn(eM)=1.13が得られる。ニッケル、コバルト、及びマンガンの正式な平均酸化状態は+3.1340、すなわちニッケル、コバルト、及びマンガンの13.4%が酸化状態+4であり、そして86.6%が酸化状態+3である。CAMの組成は、19.8質量%のNi、18.9質量%のCo、18.3質量%のMn、及び7.8質量%のLiであった。
【0147】
実施例1
この実施例では、黒色塊を6未満のpHを有する酸性水溶液に接触させ、酸化剤として空気を添加したが、式LipMqM’rOsで表される酸化剤は添加しなかった。その後、還元剤SO2を添加した。
【0148】
反応容器中に、162.37gの黒色塊1を、348.65gの脱イオン水にアルゴン雰囲気下で懸濁した。反応容器は、毎時20ノルマルリットルのアルゴン流下で一定に保った。この混合物に、227.32gの硫酸(96w%)を、Rushtonタービンを用いた500rpmの撹拌下、約45分の時間をかけてゆっくりと添加した。添加した酸は、計算上の初期酸濃度(w/o反応)39.5%、酸対黒色塊の質量比1.4に相当した。酸添加後、反応器を約115分で100℃に加熱した。水素が発生し、溶液の酸化還元電位は約-140mV対Ag/AgCl2であった。水素の発生はオンラインのガスクロマトグラフで測定した。硫酸添加開始から152分後に水素の発生は止まり、この間に合計8.2ノルマルリットルのH2が発生した。これは0.37モルの水素に相当した。この後、反応器の温度は低下して30分後に80℃に達し、酸化還元電位が-180mVまで低下したことが観察された。反応器スラリーのサンプルを濾過し、蛍光X線分析で分析した。濾液は2.02%のNi、1.296%のCo、1.367%のMn、0.003%のCuを含有していた。
【0149】
次に、ガス供給をアルゴンから毎時20ノルマルリットルの空気に変更し、撹拌速度を1200rpmに上げて良好な気液混合を確実とした。30分以内に酸化還元電位は+83mVまで上昇し、さらに90分後には+131mVに達した。次に、反応器から別のサンプルを採取して濾過し、蛍光X線分析で分析した。濾液は、2.024%のNi、1.283%のCo、1.348%のMn、0.139%のCuを含有していることが確認された。理論に拘束されることを望むものではないが、空気の添加による酸化還元電位の上昇が銅の溶解速度を著しく増加させたと考えられる。
【0150】
その後、反応ガスを空気から二酸化硫黄に変えた。二酸化硫黄雰囲気下でさらに120分後、反応混合物を室温まで冷却して濾過した。フィルター残渣を洗浄し、乾燥させて49.1gの乾燥物を得た。組成及び対応する元素回収率を表2に示す。
【0151】
【0152】
実施例2
この例では、黒色塊を6未満のpHを有する酸性水溶液に接触させ、酸化剤として空気を添加し、式LipMqM’rOs、ここでは式Li(x+1)(Ni0,34Co0,32Mn0,34)(1-x)O2(x=0.0628)の酸化剤CAMを添加した。その後、還元剤SO2を添加した。
【0153】
反応容器中に、174.13gの黒色塊1を、337.21gの脱イオン水にアルゴン雰囲気下で懸濁した。反応容器は、毎時20ノルマルリットルのアルゴン流下で一定に保った。この混合物に、243.78gの硫酸(96w%)を、Rushtonタービンを用いた500rpmの撹拌下、約55分間の時間をかけてゆっくりと添加した。添加した酸は、計算上の初期酸濃度(w/o反応)42.0%、酸対黒色塊の質量比及びCAM比1.35に相当した。酸添加後、反応器を約110分で100℃に加熱した。水素が発生し、溶液の酸化還元電位は約-180mV対Ag/AgCl2であった。水素の発生はオンラインのガスクロマトグラフで測定した。硫酸添加開始から110分後に水素の発生は止まり、この間に合計7.7ノルマルリットルのH2が発生した。これは0.34モルの水素に相当した。この後、反応器の温度は低下して30分後に80℃に達した。反応器スラリーのサンプルを採取し、濾過し、そして蛍光X線分析で分析した。濾液は1.514%のNi、0.941%のCo、1.838%のMn及び0.004%のCuを含有していた。
【0154】
次いで、ガス供給をアルゴンから20ノルマルリットル/時間の空気に変更し、撹拌速度を1200rpmに上げて良好な気液混合を確実とした。30分以内に酸化還元電位は+114mVまで上昇した。この時点で、6.2gのCAMを乾燥粉末として反応混合物に添加した。さらに90分間撹拌した後、反応器から別のサンプルを採取して濾過し、蛍光X線分析で分析した。濾液は、1.497%のNi、0,888%のCo、1.615%のMn及び0.546%のCuを含有していることが確認された。
【0155】
その後、反応ガスを空気から二酸化硫黄(流量約3g/h)に変更した。総供給量約4gのSO2に相当する二酸化硫黄雰囲気下でさらに80分後、反応混合物を室温まで冷却し、濾過した。フィルター残渣を洗浄し、乾燥して42.0gの乾燥物を得た。組成と対応する元素回収率を表3に示す。
【0156】
【0157】
実施例1と実施例2を比較すると、実施例2は、同様の反応条件下で、CAMの添加によって銅の回収率が55%から99%に向上したことを示している。理論に拘束されることを望むものではないが、実施例2では、0.23当量の電子(Cu→Cu+2e
-)に相当する0.115モルのCuが、0.066モルのCAM(すなわち
【数21】
(これは0.075当量の電子(Li
(1+x)M
(1-x)O
2+(1+x)/(1-x)e
-→Li
2O+MO)に相当する)及び空気によって酸化されたと考えられる。
【0158】
実施例3
この例では、黒色塊を6未満のpHを有する酸性水溶液と接触させ、空気を添加せず、式LipMqM’rOsで表される酸化剤、ここでは式Li(x+1)(Ni0,34Co0,32Mn0,34)(1-x)O2(x=0.0628)のCAMを添加した。その後、還元剤SO2を添加した。
【0159】
反応容器中に、139.6gの黒色塊1を、357.7gの脱イオン水にアルゴン雰囲気下で懸濁した。反応容器は、毎時20ノルマルリットルのアルゴン流下で一定に保った。この混合物に、208gの硫酸(96wt%)を、Rushtonタービンを用いた500rpmの撹拌下、約18分間の時間をかけてゆっくりと添加した。添加した酸は、計算上の初期酸濃度(w/o反応)35.3%、酸対黒色塊の質量比及びCAM比1.34に相当した。酸添加後、反応器を約56分以内で100℃に加熱した。水素が発生し、溶液の酸化還元電位は約-130mV対Ag/AgCl2であった。硫酸添加開始から110分後、水素の発生は止まった。反応器スラリーのサンプルを採取し、濾過して、蛍光X線分析で分析した。濾液は1.909%のNi、1.224%のCo、1.296%のMn、0.007%のCuを含有していた。
【0160】
さらに11分後、9gのCAMを乾燥粉末として反応混合物に添加した。さらに30分間撹拌し、その間に反応器の温度を80℃まで冷却した後、反応器から別のサンプルを採取して濾過し、蛍光X線分析で分析した。濾液は、2,028%のNi、1.349%のCo、1.416%のMn及び0.314%の、Cuを含有し、そしてpH値は0.04であったことが確認された。
【0161】
反応器を窒素下80℃でさらに1時間保持したが、この間、溶液中の金属含有量に大きな変化は見られなかった。次いで反応器を周囲温度まで冷却して、窒素下で一晩静置した。
【0162】
翌日、反応器を80℃に加熱した。溶液中の金属濃度はわずかに上昇し、2.149%のNi、1.436%のCo、1.524%のMn及び0.364%のCuであった。80℃到達後67分で窒素流を止め、2.2g/hの純粋な二酸化硫黄ガス流と交換した。Rushtonタービンの撹拌速度を1200rpmに上げた。この条件で反応器をさらに120分間保持したが、合計4.4gのSO2供給に対応した。
【0163】
その後、二酸化硫黄を窒素と交換し、撹拌機の回転数を500分に下げ、反応器の加熱を停止した。反応器内容物が室温に達した時点で反応器内容物を濾過し、濾過残渣を洗浄及び乾燥した。最終的なフィルター残渣の質量は41.1gであった(試料質量で補正)。フィルター残渣の最終組成と、それに対応する浸出液中の金属回収率を表4にまとめた。
【0164】
【0165】
理論に拘束されることを望むものではないが、実施例3では、0.184当量の電子(Cu→Cu+2e
-)に相当する0.092モルのCuが、0.096モルのCAM(すなわち
【数22】
(これは0.109当量の電子(Li
(1+x)M
(1-x)O
2+(1+x)/(1-x)e
-→Li
2O+MO)に相当する)によって、空気なしで酸化されたと考えられる。
【0166】
実施例4
実施例4では、硫酸の量を低下させ、SO2の供給量を多くした以外は、実施例3の手順を繰り返した。
【0167】
このようにして、139.6gの黒色塊1をアルゴン雰囲気下で386.0gの脱イオン水に懸濁した。反応容器は、毎時20ノルマルリットルのアルゴン流下で一定に保った。この混合物に、175gの硫酸(96wt%)を、Rushtonタービンを用いた500rpmの撹拌下、約20分間の時間をかけてゆっくりと添加した。添加した酸は、計算上の初期酸濃度(w/o反応)30.0%、酸対黒色塊の質量比及びCAM比1.13に相当した。9gのCAM添加後38分で、液相のサンプルを分析した。この液相は、2.105%のNi、1.411%のCo、1.48%のMn及び0.235%のCuを含有しており、pH値は0.7であった。CAM添加102分後、SO2を80℃の反応器に4.3g/hの流量で供給し、これは120分間で8.6gのSO2供給に対応した。最終的な金属回収率に関する結果を表5にまとめた。乾燥したフィルター残渣の質量は41.2gであった。
【0168】
【0169】
理論に拘束されることを望むものではないが、0.184当量の電子(Cu→Cu+2e-)に相当する0.092モルのCuが、0.096モルのCAM(0.109当量の電子(Li(1+x)M(1-x)O2+(1+x)/(1-x)e-→Li2O+MO)に相当する)によって、空気なしで酸化されたと考えられる。実施例3と実施例4を比較すると、CAMによる銅の酸化に対する酸濃度の効果が観察された。
【0170】
実施例5
この実施例では、黒色塊を6未満のpHを有する酸性水溶液と接触させ、空気を加えず、式LipMqM’rOsで表される酸化剤、ここでは式Li(x+1)(Ni0,34Co0,32Mn0,34)(1-x)O2(x=0.0628)で表されるCAMを添加した。その後、還元剤(SO2)は添加しなかった。
【0171】
還流冷却器及び滴下ロートを備えた反応容器に、1209.2gの黒色塊2を2883.1gの脱イオン水に窒素雰囲気下で懸濁した。反応容器を窒素でフラッシングし、実験全体を通して毎時20ノルマルリットルの窒素の一定流下に保った。この混合物に、1538.5gの硫酸(96w%)を、約270分の時間をかけ、3重クロスビームスターラーを用いて500rpmで撹拌しながら、開始温度40℃でゆっくりと添加した。この期間の間、反応器内の温度を50℃と60℃の間に保った。水素ガスが発生し、反応混合物にいくらかの泡立ちが生じた。このため、酸添加及び加熱はゆっくりと行った。酸の添加後、温度をさらに185分間50℃に保ち、その後反応器を冷却し、さらに室温で一晩855分間保持した。その後、反応混合物をさらに113分間62℃まで加熱し、次いでさらに225gの硫酸(96%)を55分間添加した。添加した酸は、合計で36.4%の計算上の初期酸濃度(w/o反応)及び酸対黒色塊の質量比1.3に相当した。酸の添加完了後、反応器を169分以内に100℃まで加熱した。反応器内容物をこの温度でさらに53分間保持した後、最初のサンプルを採取し、濾過し、洗浄したフィルター残渣をウェットフィルターケーキとして蛍光X線分析で分析した。フィルター残渣は、0.69%のNi、0.1%のCo、0.01%のMn、2.13%のCuを含有していた。フィルター残渣の含水率は約50%で、銅のほとんどが溶解していない可能性が高いことがわかった。
【0172】
水素ガスの発生が停止した時に、反応器を80℃まで冷却した。最初のサンプルを採取してから66分後、80gの純CAMを乾燥粉末として反応混合物に添加した。CAMの添加から30分後、第2のサンプルを採取し、濾過し、洗浄したウェットフィルター残渣を蛍光X線分析で分析した。残渣は0.56%のNi、0.09%のCo、0.01%のMnを含有し、Cu含有量は0.618%であった。
【0173】
さらに8gのCAMを添加し、さらに31分後に別の試料を採取した。洗浄したウェットフィルター残渣のCu含有量は0.56%に低下し、サンプルは0.54%のNi、0.08%のCo及び0.01%のMnを含有していた。その間、反応器の温度は80℃に達していた。さらに15gのCAMを添加し、さらに30分後に別のサンプルを採取した。洗浄したウェットフィルター残渣のCu含有量は0.54%にわずかに低下しただけであった。反応器を80℃でさらに21分間保持し、その後反応器を冷却し、さらに室温で一晩882分間保持した。
【0174】
その後、反応器をさらに70分かけて80℃まで再加熱した。夜間の反応の進行を確認するため、5回目のサンプルを採取した。洗浄した湿式フィルターケーキのCu含有量は0.47%であり、そして濾液のpH値は1.3であった。反応混合物の酸性度を上げるため、5回目のサンプリングから40分後に100gの硫酸(96%)を添加した。さらに35分後、6回目のサンプルを採取し、洗浄したウェットフィルター残渣は0.37%のNi、0.05%のCo、0.009%のMn及び0.34%のCuを含有していた。さらに63分後、11.5gのCAMを添加した。さらに93分後、別の11.5gのCAMを反応器に添加した。
【0175】
それぞれの添加から40分後にサンプルを採取し、洗浄したウェットフィルターケーキを分析したところ、Cu含有量はそれぞれ0.29%及び0.11%であった。
【0176】
後者のサンプリングから81分後に9回目の最後のサンプルを採取し、洗浄したウェットフィルターケーキを分析した。残留物は0.26%のNi、0.04%のCo、0.01%のMn及び0.13%のCuを含有していた。
【0177】
この時点で、1202gの脱イオン水を添加した。反応器を室温まで冷却し、室温で一晩保った。次いで反応器内容物を濾過し、濾過残渣を合計3.906gの脱イオン水で4つの分取に分けて洗浄した。ウェットフィルターケーキの質量は847.5gで、含水率は43.7%であった。回収濾液の質量は5751gであった。洗浄濾液の総質量は5182gであった。濾過残渣の元素組成及び算出した浸出回収率を表6に要約する。
【0178】
【0179】
理論に拘束されることを望むものではないが、1.56当量の電子(Cu→Cu+2e-)に相当する0.78モルのCuが、1.35モルのCAM(1.53当量の電子(Li(1+x)M(1-x)O2+(1+x)H++(1+x)/(1-x)e-→(1+x)/2Li2O+(1-x)MO+(1+x)/2H2O)に相当する)によって、空気なしで酸化されたと考えられる。比(モルCu)/(モルCAM)は0.58であり、n(eM)0.51が得られた。
【0180】
実施例6
この例では、黒色塊を6未満のpHを有する酸性水溶液と接触させ、空気は添加せず、式LipMqM’rOsで表される酸化剤、ここでは式Li(x+1)(Ni0,34Co0,32Mn0,34)(1-x)O2(x=0.0628)で表されるCAMを、硫酸投入の開始前に添加した。その後、還元剤(SO2)は添加しなかった。
【0181】
還流冷却器及び滴下ロートを備えた反応容器に、909.1gの黒色塊2及び94.7gのCAMを、窒素雰囲気下で2166gの脱イオン水に懸濁した。反応開始時に添加したCAMの量は、反応混合物中に含有される銅の溶解に必要な化学量論的計算量に相当する。反応容器を窒素でフラッシングし、実験全体を通して毎時20ノルマルリットルの窒素の一定流下に保った。
【0182】
反応器内容物を80℃まで加熱し、次いで1321gの硫酸(96w%)を、約250分の時間をかけ、3重クロスビームスターラーを用いて500rpmで撹拌しながら、開始温度でゆっくりと添加した。この期間の間、反応器の温度を80℃に保った。水素ガスが発生し、反応混合物にいくらかの泡立ちが生じた。このため、酸添加はゆっくりと行った。酸の添加後、温度を25分間80℃に保ち、その後100分以内に99℃まで上げた。反応器温度はさらに90分間99℃に保った。最初のサンプルを採取し、分析したところ、ウェットフィルター残渣は0.6%のNi、0.08%のCo、0.006%のMn及び1.32%のCuを含有しており、濾液は5.3%のNi、2.1%のCo、0.5%のMn及び0.04%のCuを含有していた。これらのデータから、黒色塊のNi、Co、Mnの大部分はすでに溶解しており、銅はごくわずかしか浸出していないことが示された。
【0183】
その後、反応器を冷却し、さらに室温で一晩925分間保持した。その後、反応混合物をさらに72分間で80℃まで加熱し、9分間で水182g及び硫酸(96%)100gを添加した。13分後、66.5gのCAMを反応器に添加した。52分後、2回目のサンプルを採取し、分析したところ、ウェットフィルター残渣は0.44%のNi、0.06%のCo、0.007%のMn及び0.64%のCuを含有していた。2回目のサンプル採取から23分後、さらに28.4gのCAMを反応器に添加した。
【0184】
さらに1時間後、3回目のサンプルを採取し、分析した。ウェットフィルター残渣は0.43%のNi、0.06%のCo、0.01%のMn及び0.25%のCuを含有し、濾液は5.2%のNi、2.3%のCo、0.8%のMn及び0.7%のCuを含有していた。
【0185】
3回目のサンプルを採取してから25分後、追加の硫酸(96%)30gを添加し、反応器内容物をさらに40分間撹拌した。添加した酸は、合計で36.6%の計算上の初期酸濃度(w/o反応)及び酸対黒色塊の質量比1.3に相当した。
【0186】
この後、反応器の加熱を止め、室温まで冷却しても金属塩が結晶化しないように脱イオン水876gを添加した。その後、スラリーを濾過して4338gの濾液を得た。反応器に847gの水を流し、これも濾過し、濾過残渣の洗浄濾液をさらに5回分追加して合わせた(合計5318g)。ウェットフィルターケーキの質量は682gで、含水率は42.0%であった。フィルター残渣の元素組成及び算出した浸出回収率を表7に要約する。
【0187】
【0188】
理論に拘束されることを望むものではないが、実施例6では、1.17当量の電子(Cu→Cu+2e-)に相当する0.59モルのCuが、合計2.03モルのCAM(2.30当量の電子(Li(1+x)M(1-x)O2+(1+x)H++(1+x)/(1-x)e-→(1+x)/2Li2O+(1-x)MO+(1+x)/2H2O)に相当する)によって、空気なしで酸化されたと考えられる。比(モルCu)/(モルCAM)は0.29であり、n(eM)0.26が得られた。実施例5と6を比較すると、水素発生が停止した後にCAMを添加した場合の有益な効果が実証される(実施例5)。対照的に、反応の開始時にCAMを添加すると(実施例6)、発生した水素によるCAMの部分的な還元に起因して、CAMによる銅酸化の効率が低下し得る。
【0189】
実施例7
この例では、黒色塊を6未満のpHを有する酸性水溶液と接触させ、空気は添加せず、式LipMqM’rOsで表される酸化剤、ここでは式Li(x+1)(Ni0,34Co0,32Mn0,34)(1-x)O2(x=0.0628)で表されるCAMを添加した。硫酸の添加は、浸出液のpH値を、反応全体を通して約1.5のpH値を維持するよう注意深く制御しながら行った。その後、還元剤(SO2)は添加しなかった。
【0190】
還流冷却器及び滴下ロートを備えた反応容器に、910.8gの黒色塊2を、窒素雰囲気下で2166gの脱イオン水に懸濁した。反応容器を窒素でフラッシングし、実験全体を通して1時間当たり20ノルマルリットルの窒素の一定流下に保った。反応器内容物を86分以内に80℃に加熱した。この混合物に312gの硫酸(96w%)を、30分以内で3重クロスビームスターラーを用いて500rpmで撹拌しながら、開始温度25℃でゆっくりと添加し、スラリーのpH値を12.3から2.1に下げた。
【0191】
この期間の間、反応器の温度を80℃から92℃まで上げた。水素ガスが発生し、反応混合物にいくらかの泡立ちが生じた。pH値を約1.5に維持するように制御しながら、硫酸の添加を次の359分間続けた。酸添加開始から100分後、反応器の温度は上昇し始め、酸添加開始から280分後に約100℃に到達した。酸添加開始から409分で、反応混合物にさらに31gの水を添加した。15分後、1回目のサンプルを採取し、濾過し、分析した。ウェットフィルター残渣は2.24%のNi、0.36%のCo、0.007%のMn及び1.72%のCuを含有しており、濾液は4.7%のNi、1.6%のCo、0.08%のMn及び0.01%のCuを含有していた。
【0192】
その後、反応器を冷却し、室温で一晩885分間保持した。翌日、反応器を108分以内に100℃まで再加熱した。195分後、2回目のサンプルを採取し、分析した。ウェットフィルター残渣は0.79%のNi、0.15%のCo、0.006%のMn、1.77%のCuを含有しており、濾液は5.7%のNi、1.8%のCo、0.09%のMn及び0.01%のCuを含有していた。これらのデータから、ニッケル、コバルト及びマンガン種は、純酸浸出の段階の間に約1.5のpH値で大幅に浸出された一方で、銅はほとんど溶解しなかったことが実証される。
【0193】
2回目のサンプリング後、反応器温度を67分後に到達した90℃に設定した。2回目のサンプリング後82分で、20.5gのCAM及び11gの水を添加した。最初のCAM添加から30分後に3回目のサンプルを採取したが、分析ではわずかな変化しか示されなかった。従って、最初のCAM添加から55分後に、さらに21gのCAMを添加した。38分後、4回目のサンプルを採取し、分析した。それでも濃度の変化はわずかであったが、濾液中のCu濃度は0.2%に上昇した。
【0194】
反応器をさらに32分間90℃で保持し、その後冷却して室温で一晩930分間保持した。その後、反応器を105分以内に再び90℃に加熱し、20.4gのCAMを添加した。40分後、5回目のサンプルを採取し、分析したところ、ウェットフィルター残渣は0.65%のNi、0.09%のCo、0.02%のMn及び1.62%のCuを含有しており、濾液は5.8%のNi、1.6%のCo、0.3%のMn及び0.3%のCuを含有していた。その後265分以内に、さらに50gのCAMを4つに分けて添加し、11gの水も1回分添加した。最後のCAMの添加から30分後に別のサンプルを採取し、分析したところ、ウェットフィルター残渣は0.41%のNi、0.06%のCo、0.01%のMn及び0.26%のCuを含有しており、濾液は5.2%のNi、2.0%のCo、0.4%のMn及び0.6%のCuを含有しており、濾液のpH値は1.7であった。最後のサンプリングから50分後、反応器の加熱を止め、室温まで冷却しても金属塩が結晶化しないように脱イオン水851gを添加した。その後、スラリーを濾過して3602gの濾液を得た。反応器に1003gの水を流し、これも濾過し、濾過残渣の洗浄濾液をさらに5回分追加して合わせた(合計4814g)。ウェットフィルターケーキの質量は640gで、含水率は42.3%であった。フィルター残渣の元素組成及び算出した浸出回収率を表8に要約する。
【0195】
【0196】
理論に拘束されることを望むものではないが、実施例7では、1.18当量の電子(Cu→Cu+2e-)に相当する0.59モルのCuが、1.2モルのCAM(1.36当量の電子(Li(1+x)M(1-x)O2+(1+x)H++(1+x)/(1-x)e-→(1+x)/2Li2O+(1-x)MO+(1+x)/2H2O)に相当する)によって、空気なしで酸化されたと考えられる。比(モルCu)/(モルCAM)は0.49であり、n(eM)0.43が得られた。
【国際調査報告】