(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-19
(54)【発明の名称】電気化学素子用分離膜、及び該分離膜を含む電気化学素子
(51)【国際特許分類】
H01M 50/451 20210101AFI20250212BHJP
H01M 50/446 20210101ALI20250212BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20250212BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20250212BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20250212BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20250212BHJP
H01M 50/426 20210101ALI20250212BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20250212BHJP
【FI】
H01M50/451
H01M50/446
H01M50/414
H01M50/434
H01M50/443 M
H01M50/489
H01M50/426
H01M50/403 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024544506
(86)(22)【出願日】2023-01-26
(85)【翻訳文提出日】2024-07-25
(86)【国際出願番号】 KR2023001222
(87)【国際公開番号】W WO2023146317
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】10-2022-0011687
(32)【優先日】2022-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ア-ヨン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジュ-ソン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ボン-テ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ソン・シク・ムン
(72)【発明者】
【氏名】ジ-ミョン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ソン-ジェ・ハン
【テーマコード(参考)】
5H021
【Fターム(参考)】
5H021BB12
5H021CC03
5H021CC04
5H021EE02
5H021EE03
5H021EE10
5H021EE21
5H021HH01
5H021HH03
5H021HH06
(57)【要約】
本発明の一実施形態による電気化学素子用分離膜は、高分子多孔支持体、及び前記多孔支持体の少なくとも一面に形成された無機物複合空隙層を備え、前記無機物複合空隙層がバインダー高分子及び無機フィラーを含み、前記バインダー高分子が第1バインダー高分子及び第2バインダー高分子を含み、前記第1バインダー高分子の重量と第2バインダー高分子の重量との比が6:4~9:1であり、前記第1バインダー高分子が180℃以上のガラス転移温度(Tg)を有する非結晶性高分子であり、前記第2バインダー高分子がフッ化ビニリデン(VDF)由来の第1繰り返し単位とヘキサフルオロプロピレン(HFP)由来の第2繰り返し単位とを含むポリフッ化ビニリデン系共重合体であり、前記第2繰り返し単位の含量が前記ポリフッ化ビニリデン系共重合体の総重量を基準にして4~40重量%であることを特徴とする。本発明によれば、接着力が向上するとともに、メルトダウン温度が高くて高温における分離膜の収縮率が低く、耐熱性及び寸法安定性に優れた分離膜を提供することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学素子用分離膜であって、
前記分離膜が、高分子多孔支持体、及び前記多孔支持体の少なくとも一面に形成された無機物複合空隙層を備え、
前記無機物複合空隙層が、バインダー高分子及び無機フィラーを含み、
前記バインダー高分子が、第1バインダー高分子及び第2バインダー高分子を含み、
前記第1バインダー高分子の重量と第2バインダー高分子の重量との比が、6:4~9:1であり、
前記第1バインダー高分子が、180℃以上のガラス転移温度(Tg)を有する非結晶性高分子であり、
前記第2バインダー高分子が、フッ化ビニリデン(VDF)由来の第1繰り返し単位とヘキサフルオロプロピレン(HFP)由来の第2繰り返し単位とを含むポリフッ化ビニリデン系共重合体であり、
前記第2繰り返し単位の含量が、前記ポリフッ化ビニリデン系共重合体の総重量を基準にして4~40重量%である、電気化学素子用分離膜。
【請求項2】
前記第1バインダー高分子の重量と第2バインダー高分子の重量との比が6:4~7:3である、請求項1に記載の電気化学素子用分離膜。
【請求項3】
前記第2繰り返し単位の含量が、前記ポリフッ化ビニリデン系共重合体の総重量を基準にして4~15重量%である、請求項1に記載の電気化学素子用分離膜。
【請求項4】
前記無機物複合空隙層の気孔度が70%以上である、請求項1に記載の電気化学素子用分離膜。
【請求項5】
前記第1バインダー高分子が、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニルスルホン(PPSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホン(PSU)、又はこれらのうちの二つ以上を含む、請求項1に記載の電気化学素子用分離膜。
【請求項6】
前記無機フィラーが、20nm~700nmの平均粒径を有する1次粒子である、請求項1に記載の電気化学素子用分離膜。
【請求項7】
前記無機フィラーが、アルミナ(Al
2O
3)、ヒュームドアルミナ、水酸化アルミニウム(Al(OH)
3)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)
2)、ベーマイト(AlOOH)、又はこれらのうちの二つ以上を含む、請求項1に記載の電気化学素子用分離膜。
【請求項8】
前記無機物複合空隙層が、無機物複合空隙層100重量部に対して3重量部以下の分散剤をさらに含む、請求項1に記載の電気化学素子用分離膜。
【請求項9】
前記分散剤がポリビニルピロリドン(PVP)である、請求項8に記載の電気化学素子用分離膜。
【請求項10】
正極、負極、前記正極と負極との間に介在された分離膜を含む電気化学素子であって、
前記分離膜が請求項1から9のいずれか一項に記載の電気化学素子用分離膜である、電気化学素子。
【請求項11】
前記電気化学素子がリチウム二次電池である、請求項10に記載の電気化学素子。
【請求項12】
請求項1に記載の電気化学素子用分離膜の製造方法であって、
(S1)高分子多孔支持体を準備する段階と、
(S2)バインダー高分子、無機フィラー、及び溶媒を含むスラリーを、前記高分子多孔支持体の少なくとも一面に塗布する段階と、
(S3)前記スラリーが塗布された高分子多孔支持体を、非溶媒を含む組成物に浸漬し乾燥して無機物複合空隙層を形成する段階と、を含み、
前記バインダー高分子が、第1バインダー高分子及び第2バインダー高分子を含み、
前記第1バインダー高分子の重量と第2バインダー高分子の重量との比が、6:4~9:1であり、
前記第1バインダー高分子が、180℃以上のガラス転移温度(Tg)を有する非結晶性高分子であり、
前記第2バインダー高分子が、フッ化ビニリデン(VDF)由来の第1繰り返し単位とヘキサフルオロプロピレン(HFP)由来の第2繰り返し単位とを含むポリフッ化ビニリデン系共重合体であり、
前記第2繰り返し単位の含量が、前記ポリフッ化ビニリデン系共重合体の総重量を基準にして4~40重量%である、電気化学素子用分離膜の製造方法。
【請求項13】
前記溶媒が有機溶媒である、請求項12に記載の電気化学素子用分離膜の製造方法。
【請求項14】
前記非溶媒が、水、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ブタンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリプロピレングリコール、アセトン、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、クロロホルム、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、シクロヘキサン、イソプロピルアルコール、又はこれらのうちの二つ以上を含む、請求項12に記載の電気化学素子用分離膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学素子用分離膜、及び該分離膜を含む電気化学素子に関する。
【0002】
本出願は、2022年1月26日付け出願の韓国特許出願第10-2022-0011687号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
最近、エネルギー貯蔵技術に関する関心が高まりつつある。携帯電話、カムコーダー及びノートパソコン、さらには電気自動車のエネルギーにまで適用分野が拡がり、電気化学素子の研究及び開発に対する努力がだんだん具体化している。その中でも、電気化学的原理に基づいて充放電可能なエネルギー貯蔵装置である二次電池の開発に関心が寄せられている。また、最近は、このような電池の開発において、容量密度及び比エネルギーを向上させるため、新たな電極と電池の設計に関連する研究開発が行われている。
【0004】
中でもリチウムイオン二次電池は、リチウムイオンが正極と負極との間を往復しながら電気を貯蔵して発生させることで、反復的な使用が可能な電池である。リチウムイオン二次電池は、電圧、エネルギー密度が高く、サイクル寿命が長くて保存性に優れ、高出力が可能であるという特徴を有していることから、携帯用IT機器、電気自動車用バッテリー及びエネルギー貯蔵システム(ESS:Energy Storage System)などへと適用分野が多様に拡がっている。その中でも、電気自動車の普及は二次電池の成長のメインキーであって、二次電池市場の主な成長原動力になっている。
【0005】
このような二次電池を構成する主な四つの構成は、正極、負極、電解液、分離膜である。これらの中の分離膜は、二次電池内の二つの電極である正極と負極とを隔離させて物理的な接触による電気的短絡を遮断し、微細気孔内に担持されている電解液を通じてイオンが両電極の間を移動可能な通路を提供することで、イオン伝導性を持たせる機能を有する。
【0006】
このような分離膜は、上記のような機能を有する微細多孔性高分子フィルム材料から構成されており、特に、ポリオレフィン系分離膜が広く使用されている。代表的なポリオレフィン系分離膜としては、ポリエチレン(PE)系又はポリプロピレン(PP)系の高分子材料が挙げられる。
【0007】
このような微細多孔性構造を形成する製造方法は、延伸工程に基づく乾式法(dry process)と抽出工程に基づく湿式法(wet process)とに大きく分けられ、求められる特性に応じて乾式分離膜と湿式分離膜とが使用されている。
【0008】
一方、ポリオレフィンを用いた湿式分離膜が二次電池に適用される場合、電池の温度がポリオレフィンの融点以上に上昇すると、メルトダウン(melt-down)現象が発生して発火及び爆発を引き起こすなど、耐熱性が不十分である問題が提起されている。これを解決するため、分離膜の表面に無機物粒子とバインダー高分子をコーティングした技術が開発されている。その一環として開発されたセラミックコーティング安全性強化分離膜(SRS:Safety Reinforced Separator)が電気自動車用リチウムイオン二次電池に適用され、耐熱性分離膜技術の標準になっている。このような分離膜を製造するため、薄膜化し易い湿式分離膜が主に使用されている。
【0009】
このような湿式分離膜の製造方法として、乾式フィルムに高分子バインダーを非溶媒誘起相分離法(NIPS:Nonsolvent Induced Phase Separation)である浸漬相分離法でコーティングする方法が研究開発されている。
【0010】
このような方法の場合、分離膜の薄膜化によって抵抗の面で有利であるという長所があるが、相変らず熱による寸法安定性の面で不利であり、組成及び工程によってパッキング密度(packing density)の低下により微細空隙(microvoid)や巨大空隙(macrovoid)が発生する問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、接着力に優れるとともに、高温における安全性が確保された電気化学素子用分離膜を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、浸漬相分離方式を用いた分離膜の製造方法であって、接着力に優れるとともに、高温における安全性が確保された電気化学素子用分離膜の製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
その他の本発明の目的及び長点は、特許請求の範囲に記載された手段又は方法及びその組み合わせによって実現できることが容易に理解できるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者等は、下記の電気化学素子用分離膜、それを備えた電気化学素子及びその製造方法を通じて上述した課題を解決できることを見出した。
【0015】
第1具現例は、
電気化学素子用分離膜であって、
前記分離膜が、高分子多孔支持体、及び前記多孔支持体の少なくとも一面に形成された無機物複合空隙層を備え、
前記無機物複合空隙層が、バインダー高分子及び無機フィラーを含み、
前記バインダー高分子が、第1バインダー高分子及び第2バインダー高分子を含み、
前記第1バインダー高分子の重量と第2バインダー高分子の重量との比が、6:4~9:1であり、
前記第1バインダー高分子が、180℃以上のガラス転移温度(Tg)を有する非結晶性高分子であり、
前記第2バインダー高分子が、フッ化ビニリデン(VDF)由来の第1繰り返し単位とヘキサフルオロプロピレン(HFP)由来の第2繰り返し単位とを含むポリフッ化ビニリデン系共重合体であり、
前記第2繰り返し単位の含量が、前記ポリフッ化ビニリデン系共重合体の総重量を基準にして4~40重量%である、電気化学素子用分離膜に関する。
【0016】
第2具現例は、第1具現例において、
前記第1バインダー高分子の重量と第2バインダー高分子の重量との比が6:4~7:3である、電気化学素子用分離膜に関する。
【0017】
第3具現例は、第1具現例又は第2具現例において、
前記第2繰り返し単位の含量が前記ポリフッ化ビニリデン系共重合体の総重量を基準にして4~15重量%である、電気化学素子用分離膜に関する。
【0018】
第4具現例は、第1具現例~第3具現例のうちいずれか一具現例において、
前記無機物複合空隙層の気孔度が70%以上である、電気化学素子用分離膜に関する。
【0019】
第5具現例は、第1具現例~第4具現例のうちいずれか一具現例において、
前記第1バインダー高分子が、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニルスルホン(PPSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホン(PSU)、又はこれらのうちの二つ以上を含む、電気化学素子用分離膜に関する。
【0020】
第6具現例は、第1具現例~第5具現例のうちいずれか一具現例において、
前記無機フィラーが、20nm~700nmの平均粒径を有する1次粒子である、電気化学素子用分離膜に関する。
【0021】
第7具現例は、第1具現例~第6具現例のうちいずれか一具現例において、
前記無機フィラーが、アルミナ(Al2O3)、ヒュームドアルミナ(fumed alumina)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、ベーマイト(AlOOH)、又はこれらのうちの二つ以上を含む、電気化学素子用分離膜に関する。
【0022】
第8具現例は、第1具現例~第7具現例のうちいずれか一具現例において、
前記無機物複合空隙層が、無機物複合空隙層100重量部に対して3重量部以下の分散剤をさらに含む、電気化学素子用分離膜に関する。
【0023】
第9具現例は、第8具現例において、
前記分散剤がポリビニルピロリドン(PVP)である、電気化学素子用分離膜に関する。
【0024】
第10具現例は、正極、負極、前記正極と負極との間に介在された分離膜を含む電気化学素子であって、前記分離膜が第1具現例~第9具現例のうちのいずれか一具現例による電気化学素子用分離膜である電気化学素子に関する。
【0025】
第11具現例は、第10具現例において、
前記電気化学素子がリチウム二次電池である電気化学素子に関する。
【0026】
第12具現例は、第1具現例~第9具現例のうちのいずれか一具現例による電気化学素子用分離膜の製造方法であって、
(S1)高分子多孔支持体を準備する段階と、
(S2)バインダー高分子、無機フィラー、及び溶媒を含むスラリーを、前記高分子多孔支持体の少なくとも一面に塗布する段階と、
(S3)前記スラリーが塗布された高分子多孔支持体を、非溶媒を含む組成物に浸漬し乾燥して無機物複合空隙層を形成する段階と、を含み、
前記バインダー高分子が、第1バインダー高分子及び第2バインダー高分子を含み、
前記第1バインダー高分子の重量と第2バインダー高分子の重量との比が、6:4~9:1であり、
前記第1バインダー高分子が、180℃以上のガラス転移温度(Tg)を有する非結晶性高分子であり、
前記第2バインダー高分子が、フッ化ビニリデン(VDF)由来の第1繰り返し単位とヘキサフルオロプロピレン(HFP)由来の第2繰り返し単位とを含むポリフッ化ビニリデン系共重合体であり、
前記第2繰り返し単位の含量が、前記ポリフッ化ビニリデン系共重合体の総重量を基準にして4~40重量%である、電気化学素子用分離膜の製造方法に関する。
【0027】
第13具現例は、第12具現例において、
前記溶媒が有機溶媒である、電気化学素子用分離膜の製造方法に関する。
【0028】
第14具現例は、第12具現例又は第13具現例において、
前記非溶媒が、水、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ブタンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリプロピレングリコール、アセトン、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、クロロホルム、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、シクロヘキサン、イソプロピルアルコール、又はこれらのうちの二つ以上を含む、電気化学素子用分離膜の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0029】
本発明の一具現例による電気化学素子用分離膜は、接着力が向上するとともに、メルトダウン温度が高くて高温における分離膜の収縮率が低く、耐熱性及び寸法安定性に優れる。
【0030】
したがって、本発明の一具現例による分離膜を用いて製造した電池の高温安全性を向上させることができる。
【0031】
本明細書に添付される図面は、本発明の好ましい実施形態を例示するものであり、発明の内容とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするものであるため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。一方、本明細書に添付される図面における要素の形状、大きさ、縮尺又は比率などはより明確な説明を強調するため誇張されることもある。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1a】実施例1による分離膜断面のSEMイメージである(倍率:1000倍)。
【
図1b】実施例1による分離膜断面のSEMイメージである(倍率:3000倍)。
【
図2a】実施例2による分離膜断面のSEMイメージである(倍率:1000倍)。
【
図2b】実施例2による分離膜断面のSEMイメージである(倍率:3000倍)。
【
図3a】実施例3による分離膜断面のSEMイメージである(倍率:1000倍)。
【
図3b】実施例3による分離膜断面のSEMイメージである(倍率:3000倍)。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を詳しく説明する。本明細書及び特許請求の範囲において使用された用語や単語は通常的及び辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。
【0034】
本明細書の全体において、ある部分が他の構成要素を「含む」とは、特に言及しない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0035】
また、本明細書の全体で使われる用語「約」は、言及された意味に固有の製造及び物質許容誤差が提示されるとき、その数値で又はその数値に近接した意味として使われ、本願の理解を補助するために正確又は絶対的な数値が言及された開示の内容を非良心的な侵害者が不当に利用することを防止するために使われる。
【0036】
本明細書の全体において、「A及び/又はB」の記載は「A、B、又はこれらの両方」を意味する。
【0037】
本発明の一実施形態による電気化学素子用分離膜は、
高分子多孔支持体、及び前記多孔支持体の少なくとも一面に形成された無機物複合空隙層を備え、
前記無機物複合空隙層が、バインダー高分子及び無機フィラーを含み、
前記バインダー高分子が、第1バインダー高分子及び第2バインダー高分子を含み、
前記第1バインダー高分子の重量と第2バインダー高分子の重量との比が、6:4~8:2であり、
前記第1バインダー高分子が、180℃以上のガラス転移温度(Tg)を有する非結晶性高分子であり、
前記第2バインダー高分子が、フッ化ビニリデン(VDF)由来の第1繰り返し単位とヘキサフルオロプロピレン(HFP)由来の第2繰り返し単位とを含むポリフッ化ビニリデン系共重合体であり、
前記第2繰り返し単位の含量が、前記ポリフッ化ビニリデン系共重合体の総重量を基準にして4~40重量%であることを特徴とする。
【0038】
本発明の一実施形態によれば、前記高分子多孔支持体は、気孔を有する構造であれば限定されず、多孔性高分子基材であり得、具体的には多孔性高分子フィルム基材又は多孔性高分子不織布基材であり得る。
【0039】
前記多孔性高分子フィルム基材は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンを含む多孔性高分子フィルムであり得、このようなポリオレフィン多孔性高分子フィルム基材は、例えば80~130℃の温度でシャットダウン(shut-down)機能を発現する。
【0040】
このとき、前記多孔性高分子フィルムは、高密度ポリエチレン、線形低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超分子量ポリエチレンなどのポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリペンテンなどのポリオレフィン系高分子の単独、これらの2種以上を混合した高分子、又はこれらの誘導体から形成され得る。
【0041】
このような高分子多孔支持体として適用可能な市販中のポリオレフィン多孔性高分子フィルムの代表的な例としては、湿式ポリエチレン系(旭化成イーマテリアルズ、東レ、SKアイイーテクノロジー、シャンハイエナジー、Sinoma、Entek)、乾式ポリプロピレン系(Shenzhen Senior、Cangzhou Mingzhu)、乾式ポリプロピレン/ポリエチレン多層構造系(Polypore、Ube)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
また、前記多孔性高分子フィルム基材は、ポリオレフィンの他にポリエステルなどの多様な高分子を用いてフィルム状に成形して製造してもよい。また、前記多孔性高分子フィルム基材は、2層以上のフィルム層が積層された構造で形成され得、各フィルム層は上述したポリオレフィン、ポリエステルなどの高分子単独で又はこれらを2種以上混合した高分子から形成され得る。
【0043】
また、前記多孔性高分子フィルム基材及び多孔性不織布基材は、上述したポリオレフィン系の他にポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなど)、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルファイドなどをそれぞれ単独で又はこれらを混合した高分子から形成され得る。
【0044】
このような高分子多孔支持体の厚さは、特に制限されないが、1μm以上、3μm以上、15μm以下、10μm以下であり得る。前記高分子多孔支持体の厚さがこのような範囲を満たす場合、機械的物性を維持しながらも、抵抗層として作用する問題を改善することができる。
【0045】
前記高分子多孔支持体の気孔サイズ及び気孔度には特に制限がないが、気孔度は10~95%範囲、気孔サイズ(直径)は0.1~50μmであり得る。気孔サイズ及び気孔度がこのような範囲を満たす場合、抵抗層として作用する問題を防止し、機械的物性を維持することができる。また、前記高分子多孔支持体は繊維又は膜(membrane)形態であり得る。
【0046】
前記無機物複合空隙層は、前記高分子多孔支持体の一面に位置し、バインダー高分子及び無機フィラーを含む。
【0047】
前記無機物複合空隙層は、分離膜の一構成層であって、正極と負極との短絡を防止する隔離層の役割を果たすと同時に、高分子多孔支持体が直接リチウム金属と接触することを防止することができる。
【0048】
前記無機物複合空隙層では、無機フィラーが充填されて互いに接触した状態で前記バインダー高分子によって互いに結着し、これにより無機フィラー同士の間にインタースティシャル・ボリューム(interstitial volume)が形成され、前記無機フィラー同士の間のインタースティシャル・ボリュームは空き空間になって気孔を形成する。すなわち、バインダー高分子は、無機フィラー同士が結着した状態を維持するようにこれらを付着、例えば、バインダー高分子が無機フィラー同士を連結及び固定している。また、前記無機物複合空隙層の気孔は、無機フィラー同士の間のインタースティシャル・ボリュームが空き空間になって形成された気孔であり、これは無機フィラーによる充填構造(closed packed or densely packed)で実質的に接触する無機フィラーによって限定される空間である。
【0049】
前記無機フィラーは、無機フィラー同士の間の空き空間を形成可能にして微細気孔を形成する役割と、物理的形態を維持可能にする一種のスペーサ(spacer)の役割とを兼ね、一般に200℃以上の高温になっても物理的特性が変わらない特性を有するため、形成された有機/無機複合多孔性フィルムは耐熱性に優れる。
【0050】
したがって、前記分離膜を含むリチウム二次電池では、高温、過充電、外部の衝撃などの内部又は外部の要因による過酷な条件下で電池の内部で高分子多孔支持体が破裂しても、両電極が完全に短絡することを無機物複合空隙層が阻止でき、もし短絡が発生しても短絡領域が拡がることが抑制されて、電池の安全性を向上させることができる。
【0051】
本発明の一実施形態において、前記無機物複合空隙層の気孔度(porosity)は70%以上であり得る。具体的には、前記無機物複合空隙層の気孔度は、無機物複合空隙層の組成によって決定され得るが、70%~85%の範囲又は75%~83%の範囲であり得る。前記無機物複合空隙層の気孔度がこのような範囲を満たす場合、抵抗が減少する効果が奏される。
【0052】
前記無機物複合空隙層の厚さは、1μm以上、3μm以上、50μm以下、30μm以下、20μm以下の範囲であり得る。
【0053】
前記無機フィラーは、電気化学的に安定さえすれば特に限定されない。すなわち、本発明で使用可能な無機フィラーは、適用される電池の作動電圧範囲(例えば、Li/Li+基準で0~5V)で酸化及び/又は還元反応が起きないものであれば、特に限定されない。このような無機フィラーの例としては、アルミナ(Al2O3)、ヒュームドアルミナ(fumed alumina)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、ベーマイト(AlOOH)、又はこれらのうちの二つ以上の混合物などが使用され得る。具体的には、アルミナ(Al2O3)が使用され得る。
【0054】
前記無機フィラーの平均粒径(D50)は、均一な厚さの無機物複合空隙層の形成及びその適切な空隙率のため、20nm~700nmの範囲であることが好ましい。具体的には、100nm~500nmの範囲であり得る。前記無機フィラーの平均粒径(D50)がこのような範囲を満たす場合、無機物複合空隙層用スラリーの分散性が維持されて分離膜の物性を調節し易く、分離膜の厚さが過剰に増加して機械的物性が低下するか又は過大な気孔サイズによって電池充放電時に内部短絡が起きる問題を防止することができる。また、パッキング密度(packing density)が増加して熱収縮率に寄与でき、上記の範囲の粒度で優れた高耐熱性を示すことができる。
【0055】
本発明において、無機フィラーの平均粒径(D50)は、粒径分布の50%基準での粒径と定義される。本発明において、無機フィラーの平均粒径(D50)は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)又は電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)などを用いた電子顕微鏡による観察、又は、レーザー回折法を用いて測定し得る。レーザー回折法によって測定するとき、より具体的には、無機フィラーを分散媒中に分散させた後、市販のレーザー回折粒度測定装置(例えばMicrotrac MT3000)に導入し、約28kHzの超音波を出力60Wで照射した後、測定装置における粒径分布の50%基準での平均粒子粒径(D50)を算出し得る。
【0056】
また、前記無機フィラーは、単一粒子である1次粒子、又は1次粒子の凝集体から形成された2次粒子であり得る。
【0057】
前記無機フィラーの含量は、特に制限されないが、無機物複合空隙層の全体重量を基準にして100重量%当たり50重量%以上、60重量%以上、95重量%以下、97重量%以下、99重量%以下であり得る。すなわち、前記無機フィラーとバインダー高分子との重量比は、50:50以上、60:40以上、70:30以上、95:5以下、97:3以下、99:1以下であり、50:50~99:1、詳しくは60:40~97:3、より詳しくは70:30~95:5であり得る。前記無機フィラーの含量が上記の範囲を満たす場合、バインダー高分子の含量が過多になって形成される無機物複合空隙層の気孔サイズ及び気孔度が減少する問題を防止することができ、バインダー高分子の含量が少なくなって無機物同士の接着力が低下し、無機物複合空隙層の耐剥離性が劣化する問題も解消することができる。
【0058】
前記バインダー高分子は、第1バインダー高分子及び第2バインダー高分子を含む。好ましくは、前記バインダー高分子は、実質的に第1バインダー高分子及び第2バインダー高分子からなり得る。ここで、用語「実質的に」は、製造工程上、不可避に微量又は痕跡量の不純物又は他の成分が含まれるが、これら不純物又は他の成分が本発明が達成しようとする目的に有意な影響を及ぼさない量で含まれることを意味する。
【0059】
前記第1バインダー高分子は、180℃以上のガラス転移温度(Tg)を有する非結晶性高分子である。具体的には、前記第1バインダー高分子は、ガラス転移温度(Tg)が180℃~350℃にある非結晶性高分子であり得る。例えば、前記非結晶性バインダー高分子は、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニルスルホン(PPSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホン(PSU)、又はこれらのうちの二つ以上の混合物などであり得るが、これらに限定されるものではない。具体的には、前記非結晶性バインダー高分子のガラス転移温度は、ポリイミドの場合約250~340℃であり、ポリアミドイミドの場合約280~290℃であり、ポリエーテルイミドの場合約217℃であり、ポリフェニルスルホンの場合約222℃であり、ポリエーテルスルホンの場合約230℃であり、ポリスルホンの場合約185℃である。
【0060】
前記第2バインダー高分子は、フッ化ビニリデン(VDF)由来の第1繰り返し単位とヘキサフルオロプロピレン(HFP)由来の第2繰り返し単位とを含むポリフッ化ビニリデン系共重合体である。好ましくは、前記第2バインダー高分子は、実質的に前記第1繰り返し単位及び第2繰り返し単位からなるポリフッ化ビニリデン系共重合体であり得る。
【0061】
前記第2繰り返し単位の含量は、前記ポリフッ化ビニリデン系共重合体の総重量を基準にして4~40重量%である。具体的には、4~15重量%であり得る。前記第2繰り返し単位の含量が上記の範囲よりも少ないと、溶媒に対する溶解度が低くて工程を制御し難く、相分離速度が速くてコーティング層内の結着力が低下する問題がある。また、第2繰り返し単位の含量が上記の範囲よりも多いと、溶媒に対する溶解度が高くて相分離特性の実現に問題がある。そこで、第2繰り返し単位の含量は提示された範囲を満たすことが、電極との接着力に寄与するという点で有利である。
【0062】
本発明において、前記第1バインダー高分子の重量と第2バインダー高分子の重量との比は6:4~9:1である。具体的には、6:4~7:3であり得る。
【0063】
第1バインダー高分子の重量と第2バインダー高分子の重量との比が上記の範囲を満たす場合、接着力と耐電圧特性の面でさらに有利である。例えば、第1バインダー高分子の重量が上記の範囲から外れると、耐熱性及び耐電圧特性が劣化するおそれがある。
【0064】
前記無機物複合空隙層は、無機物複合空隙層の成分として、バインダー樹脂及び無機フィラーの他に、必要に応じて、分散剤、難燃剤などのその他の添加剤をさらに含み得る。
【0065】
本発明の一実施形態によれば、前記無機物複合空隙層は、無機物複合空隙層100重量部に対して3重量部以下の分散剤をさらに含み得る。このとき、前記分散剤は、ポリビニルピロリドン(PVP)であり得る。前記分散剤を含むことで、第1バインダー高分子の親水性が増加し、無機フィラーの分散性にも寄与する。さらに、前記無機物複合空隙層と高分子多孔支持体との結合力が増加する。
【0066】
本発明の一実施形態によれば、
本発明の一実施形態による電気化学素子用分離膜の製造方法であって、
(S1)高分子多孔支持体を準備する段階と、
(S2)バインダー高分子、無機フィラー、及び溶媒を含むスラリーを、前記高分子多孔支持体の少なくとも一面に塗布する段階と、
(S3)前記スラリーが塗布された高分子多孔支持体を、非溶媒を含む組成物に浸漬し乾燥して無機物複合空隙層を形成する段階と、を含み、
前記バインダー高分子が、第1バインダー高分子及び第2バインダー高分子を含み、
前記第1バインダー高分子の重量と第2バインダー高分子の重量との比が、6:4~9:1であり、
前記第1バインダー高分子が、180℃以上のガラス転移温度(Tg)を有する非結晶性高分子であり、
前記第2バインダー高分子が、フッ化ビニリデン(VDF)由来の第1繰り返し単位とヘキサフルオロプロピレン(HFP)由来の第2繰り返し単位とを含むポリフッ化ビニリデン系共重合体であり、
前記第2繰り返し単位の含量が、前記ポリフッ化ビニリデン系共重合体の総重量を基準にして4~40重量%である、電気化学素子用分離膜の製造方法が提供される。
【0067】
前記無機物複合空隙層に前記無機フィラーを適用するとき、前記スラリーは、前記バインダー高分子を溶媒(無機フィラーに対しては分散媒であり得る)に溶解させた後、無機フィラーを添加し、それを分散させて製造し得る。具体的には、本発明では、第1バインダー高分子及び第2バインダー高分子を含むバインダー高分子を有機溶媒に溶解させた後、無機フィラーを添加し、それを分散させて製造し得る。このとき、無機フィラーは適切な大きさに破砕された状態で添加され得、又は、バインダー高分子の溶液に無機フィラーを添加した後、ボールミル法などで破砕して分散させてもよい。
【0068】
前記溶媒としては、前記バインダー高分子と溶解度指数が類似し、沸点の低いものが適用され得る。これは均一な混合と以降の溶媒除去を容易にするためである。このような溶媒は、有機溶媒であり得る。具体的には、アセトン、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、クロロホルム、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、シクロヘキサン、メタノール、エタノール、及びイソプロピルアルコールの中から選択された1種の化合物又は2種以上の混合物であり得る。
【0069】
このとき、前記溶媒は、一緒に混合するバインダー高分子の種類に応じて、それを溶解させる溶媒の役割及びそれを分散させる分散媒の役割を果たし得る。
【0070】
本発明の一実施形態によれば、前記スラリーを高分子多孔支持体に塗布する方法としては、前計量(pre-metering)方式と後計量(post-metering)方式がある。前計量方式は、塗布量を予め決定して導入する方式であって、例えば、スロットダイコーティング、グラビアコーティングなどがある。後計量方式は、塗布液であるスラリーを高分子多孔支持体に十分な塗布量で塗布した後、規定された量を掻き出す方式であり、例えば、バーコーティングがある。他にも、前記前計量方式と後計量方式とを結合した直接計量(direct-metering)コーティングがある。
【0071】
上述した方法などの非制限的な方法によって前記スラリーを塗布し、前記スラリーが塗布された高分子多孔支持体を、非溶媒を含む組成物に浸漬することで相分離して無機物複合空隙層を形成し得る。
【0072】
本発明の一実施形態によれば、前記非溶媒は、水系溶媒又は水系溶媒に油系溶媒を混合して使用し得る。例えば、水、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ブタンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリプロピレングリコール、アセトン、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、クロロホルム、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、シクロヘキサン、イソプロピルアルコール、又はこれらのうちの二つ以上を含み得る。具体的には、非溶媒として水にN-メチル-2-ピロリドンを混合するか、又は、水にジメチルアセトアミドを混合して使用し得る。
【0073】
本発明の一実施形態による電気化学素子は、正極、負極、前記正極と負極との間に介在された分離膜を含み、前記分離膜は上述した本発明の一実施形態による分離膜である。
【0074】
本発明の分離膜とともに適用される電極としては、特に限定されず、当業界で周知の通常の方法によって電極活物質を電極電流集電体に結着させた形態で製造し得る。
【0075】
前記電極活物質のうちの正極活物質の非制限的な例としては、従来のリチウム二次電池の正極に使用される通常の正極活物質が使用可能であり、特にリチウムマンガン酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウム鉄酸化物、又はこれらを組み合わせたリチウム複合酸化物が好ましい。
【0076】
負極活物質の非制限的な例としては、従来のリチウム二次電池の負極に使用される通常の負極活物質が使用可能であり、特にリチウム金属又はリチウム合金、炭素、石油コークス(petroleum coke)、活性炭、グラファイト、又はその他の炭素類などのリチウム吸着物質などが好ましい。
【0077】
正極電流集電体の非制限的な例としては、アルミニウム、ニッケル、又はこれらの組み合わせによって製造されるホイルなどが挙げられ、負極電流集電体の非制限的な例としては、銅、金、ニッケル又は銅合金、又はこれらの組み合わせによって製造されるホイルなどが挙げられる。
【0078】
本発明の一実施形態による電気化学素子で使用される電解液は、A+B-などの構造の塩であり、A+はLi+、Na+、K+などのアルカリ金属陽イオン又はこれらの組み合わせからなるイオンを含み、B-はPF6
-、BF4
-、Cl-、Br-、I-、ClO4
-、AsF6
-、CH3CO2
-、CF3SO3
-、N(CF3SO2)2
-、C(CF2SO2)3
-などの陰イオン又はこれらの組み合わせからなるイオンを含む塩を、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、エチルメチルカーボネート(EMC)、γ-ブチロラクトン、又はこれらの混合物からなる有機溶媒に溶解又は解離したものであるが、これらに限定されることはない。
【0079】
前記電解液の注入は、最終製品の製造工程及び求められる物性に応じて、電池製造工程のうち適切な段階において行えばよい。すなわち、電池組み立ての前又は電池組み立ての最終段階などにおいて注入すればよい。
【0080】
また、本発明は、電極組立体を含む電池を単位電池として含む電池モジュール、前記電池モジュールを含む電池パック、及び前記電池パックを電源として含むデバイスを提供する。このとき、前記デバイスの具体的な例としては、電気モータによって動力を受けて駆動するパワーツール;電気自動車(EV:Electric Vehicle)、ハイブリッド電気自動車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)などを含む電気車;電気自転車(E-bike)、電気スクーター(E-scooter)を含む電気二輪車;電気ゴルフカート;電力貯蔵用システムなどが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0081】
以下、本発明を具体的な実施例を挙げて詳しく説明する。しかし、本発明による実施例は多くの他の形態に変形され得、本発明の範囲が後述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は当業界で平均的な知識を持つ者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0082】
[実施例]
下記の方法でそれぞれの実施例及び比較例の分離膜を製造した。
【0083】
<実施例1>
有機溶媒としてのN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に、ポリエーテルイミド(PEI、重量平均分子量:128,000)及びPVDF-HFP(HFP由来の繰り返し単位を4.4重量%含有、重量平均分子量:744,000)を溶解させ、無機フィラーとして平均粒径20nmのAl2O3ナノ粒子を分散させてスラリーを準備した。PEI:PVDF-HFPの重量比は6:4であり、PEI+PVDF-HFP:無機物粒子の重量比は4:6であった。このとき、スラリー内の固形分の含量は12%であった。
【0084】
製造されたスラリーをポリエチレン多孔支持体(厚さ6.5μm、気孔度37%)の両面に塗布した後、浸漬相分離工程(NIPS)を施すため、水が入った凝固槽に投入して乾燥した。乾燥後の無機物複合空隙層の気孔度は81.4%であった。
【0085】
<実施例2~4、比較例1及び2>
下記の表1のように、スラリーの組成を変更したことを除き、実施例1と同様の方法で分離膜を製造した。
【0086】
<分離膜の物性評価>
実施例及び比較例で製造された分離膜の物性を以下のような方法で評価した。その結果を下記表1に記載した。
【0087】
【0088】
(1)メルトダウン温度の測定
熱機械分析方法(TMA:Thermomechanical Analysis)装置(TAインスツルメント、Q400)に長さ10mmの分離膜を入れ、19.6mNの張力を加えた状態で昇温条件(30℃から5℃/分)に晒した。温度の上昇とともにサンプルの長さ変化が伴い、長さが急増してサンプルが切れる温度を測定した。機械方向(MD:Machine direction)及び横方向(TD:Transverse direction)をそれぞれ測定し、メルトダウン温度と定義した。
【0089】
(2)無機物複合空隙層の気孔度の測定
実施例及び比較例で製造した分離膜を用いて無機物複合空隙層の気孔度を測定した。
【0090】
気孔度(porosity)は、分離膜の横長さ/縦長さ/厚さを測定して体積を求め、重さを測定し、その体積において分離膜が100%を占めているときの重さに対する比率で計算して測定した。
【0091】
気孔度(%)={(実質体積)/(コンパクト体積)}/(実質体積)×100
コンパクト体積=ローディング量/密度
実質体積=分離膜の厚さ
【0092】
(3)熱収縮率の評価
5cm×5cmで切断した分離膜を150℃のコンベクションオーブンで30分間放置した後、機械方向及び横方向に対して変化した長さをそれぞれ測定した。
【0093】
熱収縮率(%)={(収縮前寸法-収縮後寸法)/収縮前寸法}×100
【0094】
(4)接着力の評価
活物質[天然黒鉛及び人造黒鉛(重量比5:5)]、導電材[スーパーP]、バインダー[ポリフッ化ビニリデン(PVDF)]を92:2:6の重量比で混合し、水に分散させた後、銅ホイルにコーティングして負極を製造し、25mm×70mmの大きさで裁断して準備した。
【0095】
実施例及び比較例で製造した分離膜を25mm×70mmの大きさで裁断して準備した。準備した分離膜と負極とを重ねた後、100μmのPETフィルムの間に挟み、平板プレスを用いて接着した。このとき、平板プレスは60℃、6.5MPaの圧力条件で1秒間加熱した。
【0096】
接着された分離膜と負極との終端部をUniversal Testing Systems(UTM、Instron社製)に取り付けた後、測定速度300mm/分で180°に力を加え、負極と負極に接着された分離膜とが分離するのに必要な力を測定した。
【国際調査報告】