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特表2025-505229稀少遺伝性肥満症の予防または治療におけるメラノコルチン-4受容体アゴニストの使用
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  • 特表-稀少遺伝性肥満症の予防または治療におけるメラノコルチン-4受容体アゴニストの使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-21
(54)【発明の名称】稀少遺伝性肥満症の予防または治療におけるメラノコルチン-4受容体アゴニストの使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/5377 20060101AFI20250214BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20250214BHJP
   C07D 207/16 20060101ALN20250214BHJP
【FI】
A61K31/5377
A61P3/04
C07D207/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024547302
(86)(22)【出願日】2023-02-07
(85)【翻訳文提出日】2024-10-07
(86)【国際出願番号】 KR2023001712
(87)【国際公開番号】W WO2023153762
(87)【国際公開日】2023-08-17
(31)【優先権主張番号】10-2022-0016377
(32)【優先日】2022-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヒ・ドン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ヒェ・キョン・ファン
(72)【発明者】
【氏名】ス・ジン・ヨ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC73
4C086GA06
4C086GA12
4C086GA13
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA70
(57)【要約】
本発明は、メラノコルチン-4受容体(MC4R)経路に関連する稀少遺伝性肥満疾患、詳細には、プロオピオメラノコルチン(POMC)欠損症に関連する稀少遺伝性肥満疾患を予防または治療するための化学式1の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロオピオメラノコルチン(POMC)欠損症に関連する稀少遺伝性肥満疾患を予防または治療するための薬剤であって、治療有効量の式1の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、前記薬剤:
【化1】
(式1中、R1はC~Cアルキルである)。
【請求項2】
前記式1の化合物が、下記の式2のN-((3S,5S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-5-(モルホリン-4-カルボニル)ピロリジン-3-イル)-N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミドであることを特徴とする、請求項1に記載の薬剤。
【化2】
【請求項3】
前記薬学的に許容される塩が、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、臭化水素酸、及びヨウ化水素酸からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の薬剤。
【請求項4】
経口剤形であることを特徴とする、請求項1に記載の薬剤。
【請求項5】
プロオピオメラノコルチン(POMC)欠損症に関連する稀少遺伝性肥満疾患を予防または治療するための医薬組成物であって、治療有効量の式1の化合物またはその薬学的に許容される塩を、薬学的に許容される担体とともに含む、前記医薬組成物。
【化3】
(式1中、R1はC~Cアルキルである)。
【請求項6】
前記式1の化合物が、式2のN-((3S,5S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-5-(モルホリン-4-カルボニル)ピロリジン-3-イル)-N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミドであることを特徴とする、請求項5に記載の医薬組成物。
【化4】
【請求項7】
前記薬学的に許容される塩が、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、臭化水素酸、及びヨウ化水素酸からなる群から選択されることを特徴とする、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項8】
経口剤形であることを特徴とする、請求項5に記載の薬剤。
【請求項9】
プロオピオメラノコルチン(POMC)欠損症に関連する稀少遺伝性肥満疾患を予防または治療するための薬剤の調製のための、式1の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用:
【化5】
(式1中、R1はC~Cアルキルである)。
【請求項10】
前記式1の化合物が、式2のN-((3S,5S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-5-(モルホリン-4-カルボニル)ピロリジン-3-イル)-N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミドであることを特徴とする、請求項9に記載の使用。
【化6】
【請求項11】
前記薬学的に許容される塩が、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、臭化水素酸、及びヨウ化水素酸からなる群から選択されることを特徴とする、請求項9に記載の使用。
【請求項12】
前記薬剤が経口製剤であることを特徴とする、請求項9に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メラノコルチン-4受容体(MC4R)経路に関連する稀少遺伝性肥満疾患、詳細には、プロオピオメラノコルチン(POMC)欠損症に関連する稀少遺伝性肥満疾患を予防または治療する目的での式1の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用に関する:
【化1】
(式1中、R1はC~Cアルキルである)。
【背景技術】
【0002】
メラノコルチン受容体(MCR)は、Gタンパク質共役受容体(GPCR)の一種であり、Gタンパク質の主な役割は、セカンドメッセンジャーを活性化して、シグナル伝達を介した多くの生理的刺激に対する細胞応答を調節することである。現在までに5種類のメラノコルチン受容体が特定されている。MC1Rは、メラノサイト及びマクロファージに発現しており、メラノサイトでは、メラニン色素を調節することによって皮膚及び毛髪の色を決定する。MC2Rは、副腎及び脂肪組織に発現しており、副腎における副腎皮質刺激ホルモンによる副腎皮質ホルモン分泌の調節におけるその媒介機能は周知である。MC3R、MC4R、及びMC5Rは、脳及び神経末端に発現し、メラノコルチンペプチドの中枢神経作用を媒介すると考えられ、行動、学習、記憶、食欲、ならびにニューロンの発達及び再生に対する影響として現れる。現在までに、MC3Rは勃起不全及び炎症反応に関与することが知られており、MC4Rは肥満及び糖尿病に関与することが知られており、それぞれの受容体の特異性に関する研究が活発に行われている(MacNeilDJ et al.,Eur J Pharmacol. 2002,450,93)。その結果、活動性肥満のヒトでの遺伝子研究では、MC4Rが深く関与していることが示され、MC4Rを除去した遺伝子改変マウス(ノックアウトマウス)は過食によって肥満を発症することが示されており、この受容体が食欲調節における重要な役割を果たしていることが示されている((Lu D,Willard D et al.,Nature 1994,371(6500),799;Huszar D et al.,Cell 1997,88(1),131;Hinney A et al.,J Clin Endocrinol Metab 1990,84(4),1483)。
【0003】
これに対して、既存の肥満治療薬は、主に中枢神経系に作用する食欲抑制剤であり、それらのほとんどは、神経伝達物質の作用を調節する薬物(例えば、フェンテルミン、マジンドール、ロルカセリン、フルオキセチン、及びシブトラミン)である。しかしながら、これらの神経伝達物質モジュレーターは、多くのサブタイプ受容体を介して食欲抑制以外の様々な生理学的機能に広範な影響を及ぼす。したがって、上記の薬物の場合、各サブタイプに対する選択性を欠くという欠点があり、したがって、長期にわたって投与された場合、様々な副作用を生じる。これに対して、神経伝達物質ではなく神経ペプチドであるメラノコルチンアンタゴニストは、MC4R遺伝子ノックアウト(KO)マウスにおいてエネルギー代謝以外の他の全ての機能が正常であるものとして、他の生理学的機能に影響を与えることなく、食欲抑制による体重減少を誘導することができるという利点を有する。
【発明の概要】
【0004】
発明の課題
本発明は、メラノコルチン-4受容体(MC4R)経路に関連する稀少遺伝性肥満疾患、詳細には、プロオピオメラノコルチン(POMC)欠損症に関連する稀少遺伝性肥満疾患の予防または治療に使用するための式1の化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する:
【化2】
(式1中、R1はC~Cアルキルである)。
【0005】
課題を解決するための手段
本発明は、プロオピオメラノコルチン(POMC)欠損症に関連する稀少遺伝性肥満疾患を予防または治療するための薬剤であって、治療有効量の式1の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、薬剤を提供する:
【化3】
(式1中、R1はC~Cアルキルである)。
【0006】
本発明はまた、プロオピオメラノコルチン(POMC)欠損症に関連する稀少遺伝性肥満疾患を予防または治療するための医薬組成物であって、治療有効量の式1の化合物またはその薬学的に許容される塩を、薬学的に許容される担体とともに含む、医薬組成物も提供する。
【0007】
さらに、本発明は、プロオピオメラノコルチン(POMC)欠損症に関連する稀少遺伝性肥満疾患を予防または治療する方法であって、稀少遺伝性肥満疾患を予防または治療を必要とする対象に、治療有効量の式1の化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法を提供する。
【0008】
本発明はまた、プロオピオメラノコルチン(POMC)欠損症に関連する稀少遺伝性肥満疾患を予防または治療するための式1の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用も提供する。
【0009】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0010】
本発明の一態様によれば、プロオピオメラノコルチン(POMC)欠損症に関連する稀少遺伝性肥満を予防または治療するための薬剤であって、治療有効量の式1の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、薬剤が提供される。
【0011】
本発明の別の態様によれば、プロオピオメラノコルチン(POMC)欠損症に関連する稀少遺伝性肥満を予防または治療するための医薬組成物であって、治療有効量の式1の化合物またはその薬学的に許容される塩を、薬学的に許容される担体とともに含む、医薬組成物も提供される。
【0012】
本発明による一実施形態では、式1の化合物は、下記の式2のN-((3S,5S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-5-(モルホリン-4-カルボニル)ピロリジン-3-イル)-N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミドである:
【化4】
【0013】
本発明による別の実施形態では、薬学的に許容される塩としては、これらに限定されるものではないが、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸などの無機酸;酒石酸、ギ酸、クエン酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、グルコン酸、安息香酸、乳酸、フマル酸、マレイン酸などの有機カルボン酸;ならびにメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、またはナフタレンスルホン酸などのスルホン酸などのスルホン酸によって形成される酸付加塩が挙げられる。本発明による別の実施形態では、薬学的に許容される塩は、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、臭化水素酸、及びヨウ化水素酸からなる群から選択することができる。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される塩は、塩酸塩である。
【0014】
本発明による別の実施形態では、式1の化合物の塩酸塩は、以下のスキーム1に従って調製することができる。しかしながら、本発明に関連する当業者であれば、式1の構造に基づいて様々な方法によって式1の化合物を調製することができる。
[スキーム1]
【化5】
【0015】
上記のスキーム1において、
R2は、C~Cアルキルであり、
R3は、非置換、または1個または2個のC~Cアルキルで置換されたC~Cシクロアルキルであり、
R4及びR5は、それぞれ独立して、水素またはハロゲンである。
【0016】
本発明によれば、式1の化合物は、プロオピオメラノコルチン(POMC)欠損症に関連する稀少遺伝性肥満疾患を効率的に予防または治療することができる。プロオピオメラノコルチン(POMC)は、241個のアミノ酸残基を有する前駆体ポリペプチドであり、下垂体前葉及び中葉で合成され、メラノサイト刺激ホルモン(MSH)、エンドルフィン、及びコルチコトロフィンなどのいくつかのペプチドホルモンの前駆体として作用する。アルファ-MSHは、メラノコルチン-4受容体(MC4R)のリガンドとして、MC4Rの上流で作用し、それをコードするPomc遺伝子が欠損し、正常に発現しない場合、重度の早期発症型肥満を引き起こし得る。
【0017】
本発明による別の実施形態では、個々の対象における「治療有効量」とは、上記に述べた薬理学的効果、すなわち、治療効果を得るうえで十分な量を意味し、化合物の量は、対象の状態及びその重症度、投与方法、及び治療対象の年齢に依存するが、関連技術分野の当業者が自身の知識に基づいて決定することができる。
【0018】
本発明による別の実施形態では、式1の化合物の治療有効投与量、例えば、成人を治療するのに必要な投与量は、一般的には、投与の頻度及び強度に応じて、約0.1~500mg/日の範囲である。成人への筋肉内投与または静脈内投与の場合、単回用量に分割された約0.1~300mg/日の総投与量で通常十分であるが、患者によってはより高い1日投与量が望ましい場合もある。
【0019】
本発明における「医薬組成物」は、本発明による活性化合物以外に、担体、希釈剤、賦形剤などの他の化学成分を含み得る。したがって、医薬組成物は、必要に応じて、薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、またはそれらの組み合わせを含み得る。医薬組成物は、化合物の生体への投与を容易にする。これらに限定されるものではないが、経口、注射、エアロゾル、非経口、及び局所投与を含む、化合物を投与するための様々な方法が存在する。
【0020】
本明細書で使用する場合、「担体」とは、細胞または組織への化合物の導入を促進する化合物を意味する。例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)は、生物の細胞または組織中への多くの有機化合物の導入を促進する一般的な担体である。
【0021】
本明細書で使用する場合、「希釈剤」とは、対象化合物の生物学的に活性な形態を安定化するとともに、化合物を溶解する、水に希釈される化合物として定義される。緩衝液に溶解した塩は、当該技術分野で希釈剤として使用されている。一般的に使用される緩衝液はリン酸緩衝生理食塩水であり、ヒトの体液の塩形態を模倣したものである。緩衝塩は低濃度で溶液のpHを調節できることから、緩衝された希釈剤が化合物の生物活性を変化させることは稀である。
【0022】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される」とは、化合物の生物活性及び物理的特性を損なわない特性を意味する。
【0023】
本発明において、化合物は、目的に応じて様々な医薬剤形に製剤化することができる。本発明に従って医薬組成物を調製する場合、活性成分、具体的には、式1の化合物またはその薬学的に許容される塩を、調製される製剤に応じて選択され得る様々な薬学的に許容される担体と混合する。例えば、本発明による医薬組成物は、目的に応じて注射用製剤、経口製剤などとして製剤化することができる。
【0024】
本発明の化合物は、既知の医薬担体及び賦形剤を用いて既知の方法によって製剤化することができ、単位剤形または複数回用量容器で導入することができる。製剤の形態は、油性または水性媒体中の溶液、懸濁液、またはエマルションの形態であってよく、従来の分散剤、懸濁剤、または安定化剤を含有してもよい。製剤は、乾燥粉末の形態としてもよく、例えば、使用に先立って滅菌されたパイロジェンフリー水に溶かしてもよい。本発明の化合物はまた、カカオ脂または他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を使用して坐剤形態に製剤化することもできる。経口投与用の固体剤形は、カプセル剤、錠剤、丸剤、顆粒剤、及び錠剤であってよく、カプセル剤及び錠剤が特に有用である。錠剤及び丸剤は、好ましくは腸溶性コーティングを用いて調製される。固体剤形は、本発明の化合物を、例えば、スクロース、ラクトース、デンプンなどの1つ以上の不活性希釈剤、及び例えば、滑沢剤、崩壊剤、結合剤などの担体、例えばステアリン酸マグネシウムなどと混合することによって調製することができる。組成物はまた、例えば、ローション、軟膏、ゲル、クリーム、パッチ、またはスプレーなどの経皮剤形として製剤化することもできる。本発明による別の実施形態では、薬剤または医薬組成物は経口製剤とすることができる。
【0025】
本明細書で使用する場合、「予防」とは、疾患に感染する可能性を低減またはなくすことを意味する。
【0026】
本明細書で使用する場合、「治療」とは、疾患の症状を示す対象に使用される際に疾患の進行を停止、遅延、または緩和することを意味する。
【0027】
発明の効果
本発明による薬剤または医薬組成物は、メラノコルチン-4受容体(MC4R)経路に関連する稀少遺伝性肥満疾患、詳細には、プロオピオメラノコルチン(POMC)欠損症に関連する稀少遺伝性肥満疾患を効率的に予防または治療することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】高脂肪食(HFD)のPOMCヘテロ接合型欠損マウスモデルにおける抗肥満効果の結果を示すグラフである。
図2】高脂肪食(HFD)のPOMCホモ接合型欠損マウスモデルにおける抗肥満効果の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施例によってより詳細に説明する。しかしながら、これらの実施例は、あくまで例として1つ以上の実施形態を説明することを目的としたものであって、本発明の範囲はそれによって限定されない。
【0030】
調製例:N-((3S,5S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-5-(モルホリン-4-カルボニル)ピロリジン-3-イル)-N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド塩酸塩の合成
【化6】
【0031】
表題化合物を以下のステップA、B、C、及びDにより得た。
【0032】
ステップA:メチル (2S,4S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-4-(N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド)ピロリジン-2-カルボキシレートの調製
【0033】
調製例1から得られたメチル (2S,4S)-4-(N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド)ピロリジン-2-カルボキシレート塩酸塩(28.7g、82.73mmol)、(3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボン酸(24.5g、86.87mmol)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(22.2g、115.83mmol)、及び調製例2から得られた1-ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(15.7g、115.83mmol)を、N,N’-ジメチルホルムアミド(400ml)に溶かし、N,N’-ジイソプロピルエチルアミン(72.0ml、413.66mmol)をゆっくりと加えた。室温で16時間撹拌した後、反応溶媒を減圧下で濃縮して、0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで2回抽出した。有機層を塩化ナトリウム水溶液及び水で2回洗浄し、次いで、無水硫酸マグネシウムで乾式濾過した。濾液を減圧下で濃縮し、カラムクロマトグラフィーにより精製して標題化合物(41.19g、87%)を得た。
MS [M+H] = 575 (M+1)
【0034】
ステップB:(2S,4S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-4-(N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド)ピロリジン-2-カルボン酸の調製
【0035】
上記ステップAから得られたメチル(2S,4S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-4-(N-((1s、4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド)ピロリジン-2-カルボキシレート(39.4g、68.62mmol)をメタノール(450ml)に溶かした後、6Nの水酸化ナトリウム(57.2ml、343.09mmol)を加えた。室温で16時間撹拌し、6Nの塩酸でpHを約5に調整した後、反応溶液を減圧下で濃縮した。濃縮物をジクロロメタンに溶かし、不溶性固体を濾紙で濾過した。濾液を減圧下で濃縮して粗生成物(38.4g、99%)を得、これを精製することなく次のステップで使用した。
MS [M+H] = 561 (M+1)
【0036】
ステップC:N-((3S,5S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-5-(モルホリン-4-カルボニル)ピロリジン-3-イル)-N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミドの調製
【0037】
上記ステップBから得られた(2S,4S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-4-(N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド)ピロリジン-2-カルボン酸(38.4g、68.60mmol)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(18.4g、96.04mmol)、及び1-ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(13.0g、96.04mmol)を、N,N’-ジメチルホルムアミド(200ml)に溶かした後、モルホリン(5.9ml、68.80mmol)及びN,N’-ジイソプロピルエチルアミン(59.7ml、343.02mmol))をゆっくりと順次添加した。室温で16時間撹拌した後、反応溶液を減圧下で濃縮し、次いで0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで2回抽出した。有機層を塩化ナトリウム水溶液及び水で2回洗浄し、次いで無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾液を減圧下で濃縮し、カラムクロマトグラフィーにより精製して標題化合物(37.05g、86%)を得た。
MS [M+H] = 630 (M+1)
【0038】
ステップD:N-((3S,5S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-5-(モルホリン-4-カルボニル)ピロリジン-3-イル)-N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド塩酸塩の調製
【0039】
上記ステップCから得られたN-((3S,5S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-5-(モルホリン-4-カルボニル)ピロリジン-3-イル)-N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド塩酸塩(5.0g、7.95mmol)を酢酸エチル(50ml)に溶かした後、2Nの塩酸-酢酸エチル溶液(3.97ml、15.89mmol)をゆっくりと加えた。室温で30分間撹拌した後、反応溶媒を減圧下で濃縮した。得られた粗固体を、ヘキサン及びジエチルエーテルを使用したトリチュレーションにより精製して標題化合物を得た(5.23g、99%)。
MS [M+H] = 630 (M+1)
【0040】
H NMR (500 MHz, CDOD) δ 7.49-7.44 (m, 4H), 4.83 (m, 1H), 4.23-4.20 (m, 1H), 3.95-3.91 (m, 2H), 3.79-3.47 (m, 14H), 3.03-3.00 (m, 1H), 2.86-2.82 (m, 1H), 2.73-2.67 (m, 1H), 2.20-2.14 (m, 1H), 1.97 (m, 1H), 1.80-1.62 (m, 5H), 1.50 (s, 9H), 1.44-1.27 (m, 3H), 1.06-1.04 (m, 9H)
【0041】
実施例 Pomcノックアウトマウスモデル実験
【0042】
プロオピオメラノコルチン(POMC)は、メラノコルチン-4受容体(MC4R)のリガンドであるアルファ-MSHの前駆体ポリペプチドであり、メラノコルチン-4受容体の上流で作用する。このプロオピオメラノコルチンタンパク質が適切に発現されていないPOMCノックアウトマウスは、遺伝性肥満疾患であるPOMC欠損型肥満を反映するモデルであり、マウスは、食欲過剰及び重度肥満などの異常な代謝疾患関連表現型を示す。
【0043】
プロオピオメラノコルチン(POMC)をコードするPomc遺伝子が正常に発現していないPomcヘテロ接合型ノックアウトマウスに、60kcal%の高脂肪食(60kcal%の脂肪を含む食餌)を与えながら、調製例から得られたN-((3S,5S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-5-(モルホリン-4-カルボニル)ピロリジン-3-イル)-N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド塩酸塩(以下、「試験化合物」と称する)を10mg/kgまたは30mg/kgの用量で約3週間にわたり投与して抗肥満効果を調べ、その結果を図1に示す。
【0044】
プロオピオメラノコルチン(POMC)をコードするPomc遺伝子が発現していないPomcホモ接合型ノックアウトマウスに、45kcal%の高脂肪食(45kcal%の脂肪を含む食餌)を与えながら、試験化合物を10mg/kgまたは30mg/kgの用量で約10日間投与して抗肥満効果を調べ、その結果を図2に示す。
【0045】
図1及び2から分かるように、本発明の試験化合物が優れた抗肥満効果を示すことが確認できる。
図1
図2
【国際調査報告】