(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-21
(54)【発明の名称】アルファ6含有ニコチン性アセチルコリン受容体のための発現系及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/10 20060101AFI20250214BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20250214BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20250214BHJP
C12Q 1/06 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/12
C12Q1/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024547539
(86)(22)【出願日】2023-02-10
(85)【翻訳文提出日】2024-10-08
(86)【国際出願番号】 EP2023053378
(87)【国際公開番号】W WO2023152333
(87)【国際公開日】2023-08-17
(32)【優先日】2022-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397060175
【氏名又は名称】ヤンセン ファーマシューティカ エヌ.ベー.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149010
【氏名又は名称】星川 亮
(72)【発明者】
【氏名】ブレット,デイビット
(72)【発明者】
【氏名】マッタ,ホセ
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ79
4B063QR77
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4B063QX01
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4B065AA93Y
4B065AB01
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4B065BA02
4B065CA24
4B065CA46
(57)【要約】
α6含有ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)の発現のための単離された組換え細胞及びその使用方法が本明細書に開示されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離された組換え細胞であって、
a)nAChRのα6サブユニットをコードする異種核酸と、
b)BARPをコードする異種核酸と、
c)SULT2B1をコードする異種核酸と、
d)LAMP5をコードする異種核酸と、
e)CHATをコードする異種核酸と、
f)NACHOをコードする異種核酸と、を含む、単離された組換え細胞。
【請求項2】
g)nAChRのβ2サブユニットをコードする異種核酸と、
h)nAChRのβ3サブユニットをコードする異種核酸と、を更に含み、
nAChRの前記α6、β2、及びβ3サブユニットが、α6β2β3 nAChRを形成する、請求項1に記載の単離された組換え細胞。
【請求項3】
nAChRの前記α6サブユニットが、前記α6サブユニットの第2の細胞内ループ(ICL)の全配列又は部分配列がnAChRのα3サブユニットの第2のICLの対応する配列によって置き換えられているα6/3キメラであり、前記α6/3キメラ並びにnAChRの前記β2及びβ3サブユニットが、キメラα6/3β2β3 nAChRを形成する、請求項1又は2に記載の単離された組換え細胞。
【請求項4】
前記組換え細胞が、哺乳動物細胞である、請求項1~3のいずれか一項に記載の単離された組換え細胞。
【請求項5】
前記哺乳動物細胞が、ヒト胎児腎臓293T(HEK293T)細胞、HEK293F細胞、HeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NIH 3T3細胞、MCF-7細胞、Hep G2細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、及びCos7細胞からなる群から選択される、請求項4に記載の単離された組換え細胞。
【請求項6】
nAChRの前記α6サブユニットが、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の単離された組換え細胞。
【請求項7】
nAChRの前記β2サブユニットが、配列番号6のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項2~6のいずれか一項に記載の単離された組換え細胞。
【請求項8】
nAChRの前記β3サブユニットが、配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項2~7のいずれか一項に記載の単離された組換え細胞。
【請求項9】
前記α6サブユニットの第2のICLが、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記α3サブユニットの第2のICLが、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項3~8のいずれか一項に記載の単離された組換え細胞。
【請求項10】
前記α6/3キメラが、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項3~9のいずれか一項に記載の単離された組換え細胞。
【請求項11】
前記BARPが、配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の単離された組換え細胞。
【請求項12】
前記SULT2B1が、配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の単離された組換え細胞。
【請求項13】
前記LAMP5が、配列番号10のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の単離された組換え細胞。
【請求項14】
前記CHATが、配列番号11のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の単離された組換え細胞。
【請求項15】
前記NACHOが、配列番号12のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の単離された組換え細胞。
【請求項16】
α6含有nAChRのアゴニスト、アンタゴニスト、又は正のアロステリック調節因子を特定するための方法であって、前記方法が、
a)請求項1~15のいずれか一項に記載の単離された組換え細胞を薬剤と接触させることと、
b)前記単離された組換え細胞の前記α6含有nAChRの活性を決定することであって、前記薬剤が前記α6含有nAChRの活性を増強する場合に、前記薬剤が、アゴニスト又は正のアロステリック調節因子(PAM)であると特定され、前記薬剤が、前記単離された組換え細胞が前記薬剤と接触していなかった場合の前記α6含有nAChRの活性と比較して、前記α6含有nAChRの活性を減少させる場合に、前記薬剤がアンタゴニストであると特定される、決定することと、を含む、方法。
【請求項17】
α6β2β3 nAChRのアゴニスト、アンタゴニスト、又は正のアロステリック調節因子を特定するための方法であって、前記方法が、
a)請求項2~15のいずれか一項に記載の単離された組換え細胞を薬剤と接触させることと、
b)前記単離された組換え細胞の前記α6β2β3 nAChRの活性を決定することであって、前記薬剤が前記α6β2β3 nAChRの活性を増強する場合に、前記薬剤が、アゴニスト又は正のアロステリック調節因子(PAM)であると特定され、前記薬剤が、前記単離された組換え細胞が前記薬剤と接触していなかった場合の前記α6β2β3 nAChRの活性と比較して、前記α6β2β3 nAChRの活性を減少させる場合に、前記薬剤がアンタゴニストであると特定される、決定することと、を含む、方法。
【請求項18】
工程b)が、前記単離された組換え細胞のカルシウム流を決定することを含み、前記薬剤が、前記単離された組換え細胞が前記薬剤と接触していなかった場合の前記カルシウム流と比較して、前記カルシウム流を増強する場合に、前記薬剤がアゴニストであると特定される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
工程b)が、前記単離された組換え細胞のカルシウム流及びニコチン誘発性カルシウム流を決定することを含み、前記薬剤が、前記単離された組換え細胞が前記薬剤と接触していなかった場合の前記カルシウム流及びニコチン誘発性カルシウム流と比較して、カルシウム流を増強せず、かつニコチン誘発性カルシウム流を増強する場合に、前記薬剤が、PAMであると特定される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
工程b)が、前記単離された組換え細胞のニコチン誘発性カルシウム流を決定することを含み、前記薬剤が、前記単離された組換え細胞が前記薬剤と接触していなかった場合の前記ニコチン誘発性カルシウム流と比較して、前記ニコチン誘発性カルシウム流を減少させる場合に、前記薬剤がアンタゴニストであると特定される、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記単離された組換え細胞が、前記薬剤と接触する前に、約25℃~35℃で約20~50時間インキュベートされる、請求項16~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記薬剤が、小分子又はペプチドである、請求項16~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
(i)請求項1~15のいずれか一項に記載の単離された組換え細胞と、(ii)使用説明書と、を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2022年2月11日に出願された米国仮出願第63/309,092号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、α6含有ニコチン性アセチルコリン受容体(nicotinic acetylcholine receptor、nAChR)の発現のための単離された組換え細胞及びその使用方法に関する。
【0003】
(電子的に提出された配列表の参照)
本出願は、ST.26形式で電子的に提出されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、配列表を含む。当該ST.26コピーは、2023年1月26日に作成され、名称はJAB7137WOPCT1_SL.XMLであり、そのサイズは16,108バイトである。
【背景技術】
【0004】
大うつ病は、絶望感及び快感消失を含む衰弱性の症状を特徴とする。腹側被蓋野から側坐核へのドーパミン系(中脳辺縁系ドーパミン系)と、報酬に関連し、快楽的であり、動機付けられた行動とを結びつける強力な証拠が存在する。現時点で、ドーパミンニューロンを特異的に標的とする治療的介入は利用可能ではない。
【0005】
アセチルコリン(Acetylcholine、ACh)は、ドーパミンニューロンの調節において主要な役割を果たす。AChは、2つの主要な受容体であるイオン向性ニコチン性アセチルコリン受容体(ionotropic nicotinic、nAChR)及び代謝調節型ムスカリン性アセチルコリン受容体(metabotropic muscarinic、mAChR)に結合する。nAChRは、ドーパミンニューロンを脱分極させ、カルシウムを細胞に流入させる非選択性カチオンチャネルである。この脱分極は、バースト発火(>20Hz)と呼ばれる高周波数での活動電位の発生をもたらす。上述の行動に関して中脳辺縁系ドーパミン系の生理学的役割をコードするのは、ドーパミンニューロンのこのバースト発火である。したがって、nAChRを調節することは、気分障害に対する治療的介入をもたらし得る。
【0006】
nAChRは、それぞれが大きな細胞外N末端ドメイン(N-terminal domain、NTD)、大きな第2の細胞内ループ(intracellular loop、ICL)を含む細胞内及び細胞外ループによって接続された4つの膜貫通αヘリックス(TM1~TM4)からなる膜貫通ドメイン(transmembrane domain、TMD)並びに短い細胞外C末端からなる5つのサブユニットから組み立てられた膜結合複合体である。したがって、五量体nAChR複合体は、オルソステリック部位を含有する細胞外ドメイン、イオンチャネルを含有する膜貫通ドメイン、及び細胞内ドメインといった3つの構造的エンティティを含み、3つのエンティティは、それぞれ、5つのサブユニットのNTD、TMD、及びICLから組み立てられる。
【0007】
nAChRサブユニットα6(CHRNA6、アクセッション番号:NM_004198)を含有するnAChRは、ドーパミンニューロンにおいて選択的に発現され、気分障害を治療するための中脳辺縁系ドーパミン系の調節のための治療標的を与える。しかしながら、薬物開発の努力は、そのようなスクリーニングに典型的に使用される組換え系においてα6含有nAChRを発現することができないことによって妨げられてきた。
【0008】
α6含有nAChRを強く発現し、薬物開発に使用することができる組換え細胞株を開発する必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書では、単離された組換え細胞であって、a)nAChRのα6サブユニットをコードする異種核酸と、b)BARPをコードする異種核酸と、c)SULT2B1をコードする異種核酸と、d)LAMP5をコードする異種核酸と、e)CHATをコードする異種核酸と、f)NACHOをコードする異種核酸と、を含む、単離された組換え細胞が提供される。
【0010】
単離された組換え細胞の一実施形態では、単離された組換え細胞は、g)nAChRのβ2サブユニットをコードする異種核酸と、h)nAChRのβ3サブユニットをコードする異種核酸と、を更に含み、nAChRのα6、β2、及びβ3サブユニットが、α6β2β3 nAChRを形成する。
【0011】
単離された組換え細胞の更なる実施形態では、nAChRのα6サブユニットは、α6サブユニットの第2の細胞内ループ(intracellular loop、ICL)の全配列又は部分配列がnAChRのα3サブユニットの第2のICLの対応する配列によって置き換えられているα6/3キメラであり、α6/3キメラ並びにnAChRのβ2及びβ3サブユニットが、キメラα6/3β2β3 nAChRを形成する。
【0012】
単離された組換え細胞のなお更なる実施形態では、組換え細胞は、哺乳動物細胞である。
【0013】
単離された組換え細胞のなお更なる実施形態では、哺乳動物細胞は、ヒト胎児腎臓293T(human embryonic kidney 293T、HEK293T)細胞、HEK293F細胞、HeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣(Chinese hamster ovary、CHO)細胞、NIH 3T3細胞、MCF-7細胞、Hep G2細胞、ベビーハムスター腎臓(baby hamster kidney、BHK)細胞、及びCos7細胞からなる群から選択される。
【0014】
単離された組換え細胞のなお更なる実施形態では、nAChRのα6サブユニットは、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0015】
単離された組換え細胞のなお更なる実施形態では、nAChRのβ2サブユニットは、配列番号6のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0016】
単離された組換え細胞のなお更なる実施形態では、nAChRのβ3サブユニットは、配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0017】
単離された組換え細胞のなお更なる実施形態では、nAChRのβ3サブユニットは、α6サブユニットの第2のICLは、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、α3サブユニットの第2のICLは、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0018】
単離された組換え細胞のなお更なる実施形態では、α6/3キメラは、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0019】
単離された組換え細胞のなお更なる実施形態では、BARPは、配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0020】
単離された組換え細胞のなお更なる実施形態では、SULT2B1は、配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0021】
単離された組換え細胞のなお更なる実施形態では、LAMP5は、配列番号10のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0022】
単離された組換え細胞のなお更なる実施形態では、CHATは、配列番号11のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0023】
単離された組換え細胞のなお更なる実施形態では、NACHOは、配列番号12のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0024】
更に、α6含有nAChRのアゴニスト、アンタゴニスト、又は正のアロステリック調節因子を特定するための方法であって、本方法が、a)上で提供される単離された組換え細胞を薬剤と接触させることと、b)単離された組換え細胞のα6含有nAChRの活性を決定することであって、薬剤がα6含有nAChRの活性を増強する場合に、薬剤が、アゴニスト又は正のアロステリック調節因子(positive allosteric modulator、PAM)であると特定され、薬剤が、単離された組換え細胞が薬剤と接触していなかった場合のα6含有nAChRの活性と比較して、α6含有nAChRの活性を減少させる場合に、薬剤がアンタゴニストであると特定される、決定することと、を含む、方法が本明細書で提供される。
【0025】
なお更に、α6β2β3 nAChRのアゴニスト、アンタゴニスト、又は正のアロステリック調節因子を特定するための方法であって、本方法が、a)上で提供される単離された組換え細胞を薬剤と接触させることと、b)単離された組換え細胞のα6β2β3 nAChRの活性を決定することであって、薬剤がα6β2β3 nAChRの活性を増強する場合に、薬剤が、アゴニスト又は正のアロステリック調節因子(PAM)であると特定され、薬剤が、単離された組換え細胞が薬剤と接触していなかった場合のα6β2β3 nAChRの活性と比較して、α6β2β3 nAChRの活性を減少させる場合に、薬剤がアンタゴニストであると特定される、決定することと、を含む、方法が本明細書で提供される。
【0026】
上の方法の一実施形態では、工程b)は、単離された組換え細胞のカルシウム流(calcium flux)を決定することを含み、薬剤が、単離された組換え細胞が薬剤と接触していなかった場合のカルシウム流と比較して、カルシウム流を増強する場合に、薬剤がアゴニストであると特定される。
【0027】
上の方法の更なる実施形態では、工程b)は、単離された組換え細胞のカルシウム流及びニコチン誘発性カルシウム流(nicotine-evoked calcium flux)を決定することを含み、薬剤が、単離された組換え細胞が薬剤と接触していなかった場合のカルシウム流及びニコチン誘発性カルシウム流と比較して、カルシウム流を増強せず、かつニコチン誘発性カルシウム流を増強する場合に、薬剤が、PAMであると特定される。
【0028】
上の方法のなお更なる実施形態では、工程b)は、単離された組換え細胞のニコチン誘発性カルシウム流を決定することを含み、薬剤が、単離された組換え細胞が薬剤と接触していなかった場合のニコチン誘発性カルシウム流と比較して、ニコチン誘発性カルシウム流を減少させる場合に、薬剤がアンタゴニストであると特定される。
【0029】
上で提供される方法のなお更なる実施形態では、単離された組換え細胞は、薬剤と接触する前に、約25℃~35℃で約20~50時間インキュベートされる。
【0030】
上で提供される方法のなお更なる実施形態では、薬剤は、小分子又はペプチドである。
【0031】
なお更に、(i)上で提供される単離された組換え細胞と、(ii)使用説明書と、を含むキットが本明細書で提供される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1A】シャペロンタンパク質の異なる組み合わせ(BARP+SULT2B1+LAMP5+NACHO又はBARP+SULT2B1+LAMP5+NACHO+CHAT)と共発現され、試験前に30℃でインキュベートされた場合のα6β2β3 nAChRの機能的発現を示すグラフである。
【
図1B】シャペロンタンパク質の異なる組み合わせ(BARP+SULT2B1+LAMP5+NACHO又はBARP+SULT2B1+LAMP5+NACHO+CHAT)と共発現され、試験前に37℃でインキュベートされた場合のα6/3β2β3 nAChRの機能的発現を示すグラフである。
【
図1C】シャペロンタンパク質の異なる組み合わせ(BARP+SULT2B1+LAMP5+NACHO又はBARP+SULT2B1+LAMP5+NACHO+CHAT)と共発現され、試験前に30℃でインキュベートされた場合のα6/3β2β3 nAChRの機能的発現を示すグラフである。
【
図2A】様々な濃度でのDHbE(α6含有nAChRの既知のアンタゴニスト)との第1のインキュベーション及びニコチンとの第2のインキュベーションの後のα6/3β2β3を発現する組換え細胞のFLIPRシグナルのプロットである。
【
図2B】様々な濃度でのMLA(α6含有nAChRの既知のアンタゴニスト)との第1のインキュベーション及びニコチンとの第2のインキュベーションの後のα6/3β2β3を発現する組換え細胞のFLIPRシグナルのプロットである。
【
図2C】様々な濃度でのメカミラミン(α6含有nAChRの既知のアンタゴニスト)との第1のインキュベーション及びニコチンとの第2のインキュベーションの後のα6/3β2β3を発現する組換え細胞のFLIPRシグナルのプロットである。
【
図2D】様々な濃度でのαコノトキシンMII(α6含有nAChRの既知のアンタゴニスト)との第1のインキュベーション及びニコチンとの第2のインキュベーションの後のα6/3β2β3を発現する組換え細胞のFLIPRシグナルのプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
「背景技術」において、また、本明細書全体を通じて、各種刊行物、論文及び特許が引用又は記載され、これらの参照文献のそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に含まれる文書、操作、材料、デバイス、物品などの考察は、本発明の前後関係を与えるためのものである。このような考察は、これらの事物のいずれか又は全てが、開示又は特許請求されるいずれかの発明に対する先行技術の一部を構成することを容認するものではない。
【0034】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるのと同じ意味を有する。そうでない場合、本明細書で使用される特定の用語は、本明細書に記載される意味を有する。
【0035】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a(1つの)」、「an(1つの)」及び「the(その)」は、特に文脈上明らかでない限り、複数の指示対象物を含むことに留意しなければならない。
【0036】
別途記載されない限り、本明細書に記載される濃度又は濃度範囲などのあらゆる数値は、全ての場合において、用語「約」によって修飾されているものとして理解されるべきである。したがって、数値は、通常、記載される値の±10%を含む。例えば、1mg/mLの濃度は、0.9mg/mL~1.1mg/mLを含む。同様に、1%~10%(w/v)の濃度範囲は0.9%(w/v)~11%(w/v)を含む。本明細書で使用される場合、数値範囲の使用は、文脈上別途明確に示されない限り、その範囲内の整数及び値の分数を含む、全ての可能な部分範囲、その範囲内の全ての個々の数値を明示的に含む。
【0037】
別途記載のない限り、一連の要素に先行する「少なくとも」という用語は、一連の全ての要素を指すと理解されるべきである。当業者であれば、単なる通常の実験手順を使用するだけで、本明細書に記載した本発明の特定の実施形態に対して多くの均等物を認識するか、又は確認することができよう。そのような均等物は、本発明によって包含されることが意図される。
【0038】
本明細書で使用される場合、「含む(comprises)、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含有する(contains)」、若しくは「含有する(containing)」という用語、又はこれらの任意の他の変形は、述べられている要素又は要素群を含むことが意図されるが、これら以外の他の要素又は要素群を除外するものではなく、非排他的又は非制限的であることが意図されることが理解されよう。例えば、一連の要素を含む組成物、混合物、プロセス、方法、物品、又は装置は、必ずしもそれらの要素のみに限定されるものではなく、明示的に列挙されない、又はそのような組成物、混合物、プロセス、方法、物品、若しくは装置に固有である他の要素を含んでもよい。更に、明示的に反対に明記されない限り、「又は」は包括的な「又は」を指すものであり、排他的な「又は」を指すものではない。例えば、条件A又はBは、Aが真であり(又は存在する)かつBが偽である(又は存在しない)場合、Aが偽であり(又は存在しない)かつBが真である(又は存在する)場合、並びにA及びBの両方が真である(又は存在する)場合、のいずれか1つによって満たされる。
【0039】
本明細書で使用される場合、複数の列挙された要素間の「及び/又は(and/or)」という接続的な用語は、個々の及び組み合わされた選択肢の両方を包含するものとして理解される。例えば、2つの要素が「及び/又は」によって接続される場合、第1の選択肢は、第2の要素なしに第1の要素が適用可能であることを指す。第2の選択肢は、第1の要素なしに第2の要素が適用可能であることを指す。第3の選択肢は、第1及び第2の要素が一緒に適用可能であることを指す。これらの選択肢のうちのいずれか1つは、意味に含まれ、したがって、本明細書に使用される場合、「及び/又は」という用語の要件を満たすことが理解される。選択肢のうちの2つ以上の同時適用性もまた、意味に含まれ、したがって、「及び/又は」という用語の要件を満たすことが理解される。
【0040】
本明細書で使用される場合、「からなる(consists of)」という用語、又は「からなる(consist of)」若しくは「からなる(consisting of)」などの変形は、明細書及び特許請求の範囲全体にわたって使用されるとき、任意の列挙された要素又は要素群を包含するが、追加の要素又は要素群が、指定の方法、構造、又は組成物に追加されないことを示す。
【0041】
本明細書で使用される場合、「から本質的になる(consists essentially of)」という用語、又は「から本質的になる(consist essentially of)」若しくは「から本質的になる(consisting essentially of)」などの変形は、明細書及び特許請求の範囲全体にわたって使用されるとき、任意の列挙された整数又は整数群を包含し、任意選択的に、指定の方法、構造、又は組成物の基本的又は新規の特性を実質的に変化させない任意の列挙された整数又は整数群を包含することを示す。M.P.E.P.§2 111.03.を参照されたい。
【0042】
好ましい本発明の構成要素の寸法又は特徴を指すときに本明細書で使用される「約」、「およそ」、「概ね」、「実質的に」などの用語は、当業者には理解されるように、記載の寸法/特徴が厳密な境界又はパラメータではなく、機能的に同じ又は類似する、それらからのわずかな相違を除外するものではないことを示すことも理解すべきである。最小値では、数値パラメータを含むこのような参照は、当該技術分野において受け入れられている数学的及び工業的原理(例えば、四捨五入、測定又は他の系統的誤差、製造公差など)を使用すると、最小有効数字は変化しない変形形態を含むであろう。
【0043】
2つ若しくは3つ以上の核酸又はポリペプチド配列の文脈における「同一である」又はパーセント「同一性」という用語は、以下の配列比較アルゴリズムのうちの1つを使用して又は目視検査によって測定したとき、一致が最大になるように比較及び位置合わせさせた場合に同じである、又は特定のパーセント分の同じであるアミノ酸残基若しくはヌクレオチドを有する、2つ若しくは3つ以上の配列又はサブ配列を指す。配列比較のために、典型的には1つの配列は、試験配列がそれに対して比較される参照配列として機能する。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験及び参照配列がコンピュータに入力され、必要に応じて、サブ配列座標が指定され、配列アルゴリズムプログラムパラメータが指定される。次いで、配列比較アルゴリズムは、指定されたプログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列の配列同一性パーセントを計算する。
【0044】
比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、Smith&Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所相同性アルゴリズム、Needleman&Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性アラインメントアルゴリズム、Pearson&Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.USA85:2444(1988)の類似性検索方法、これらのアルゴリズムのコンピュータ化された実装(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group、575 Science Dr.,Madison,WIにおけるGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA)、又は目視検査(全般的には、Current Protocols in Molecular Biology,F.M.Ausubel et al.,eds.,Current Protocols,a joint venture between Greene Publishing Associates,Inc.and John Wiley&Sons,Inc.,(1995 Supplement)(Ausubel)を参照されたい)によって行うことができる。
【0045】
配列同一性及び配列類似性のパーセントを決定するのに好適なアルゴリズムの例は、それぞれ、Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-410及びAltschul et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-3402に記載されているBLAST及びBLAST2.0アルゴリズムである。BLAST分析を行うためのソフトウェアは、国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information)を通じて公的に入手可能である。このアルゴリズムは、最初に、データベース配列における同じ長さのワードとアラインメントしたときにマッチするか、又はいくつかの正の値の閾値スコアTを満たすかのいずれかの、クエリー配列における長さWの短いワードを特定することによって、高スコア配列対(high scoring sequence pair、HSP)を特定することを伴う。上記のTは、隣接ワードスコア閾値(Altschul et al.,上記)と称される。これらの初期隣接ワードヒットは、それを含有するより長いHSPを見つけるために検索を開始するためのシードとして機能する。次いで、累積アライメントスコアを増加させることができる限り、各配列に沿ってワードヒットを両方向に延長する。
【0046】
ヌクレオチド配列については、パラメータM(マッチする残基の対についてのリワードスコア、常に0より大きい)及びパラメータN(不一致の残基についてのペナルティスコア、常に0より小さい)を使用して累積スコアを計算する。アミノ酸配列については、スコアリングマトリックスを使用して累積スコアを計算する。累積アライメントスコアがその最大獲得値から量Xだけ低下したとき、1つ又は2つ以上の負のスコアリング残基のアラインメントの蓄積により、累積スコアがゼロ以下になったとき、又はいずれかの配列の末端に達したときに、各方向におけるワードヒットの延長が停止される。BLASTアルゴリズムのパラメータW、T、及びXが、アラインメントの感度及び速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列に対するもの)は、デフォルトとして、ワード長(W)=11、期待値(E)=10、M=5、N=-4、及び両方の鎖の比較を使用する。アミノ酸配列に対しては、BLASTPプログラムは、デフォルトとして、ワード長(W)=3、期待値(E)=10、及びBLOSUM62スコアリングマトリックスを使用する(Henikoff&Henikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915(1992)を参照されたい)。
【0047】
配列同一性パーセントを計算することに加えて、BLASTアルゴリズムは、2つの配列間の類似性の統計解析も行う(例えば、Karlin&Altschul,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-5787(1993)を参照されたい)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの尺度は、最小合計確率(P(N))であり、これは、2つのヌクレオチド配列間又は2つのアミノ酸配列間のマッチが偶然に生じる確率の指標を提供する。例えば、核酸は、試験核酸と参照核酸との比較における最小合計確率が、約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満である場合、参照配列に類似しているとみなされる。
【0048】
2つの核酸配列又はポリペプチドが実質的に同一であることの更なる指標は、以下に記載されるように、第1の核酸によりコード化されるポリペプチドが、第2の核酸によりコード化されるポリペプチドと免疫学的に交差反応性であることである。したがって、ポリペプチドは、典型的には、第2のポリペプチドと実質的に同一であり、例えば、2つのペプチドは保存的置換によってのみ異なる。2つの核酸配列が実質的に同一である別の指標は、2つの分子がストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズすることである。
【0049】
本明細書で使用される場合、「ポリヌクレオチド」という用語は、同義的に「核酸分子」、「ヌクレオチド」、又は「核酸」とも称され、非修飾RNA若しくはDNA又は修飾RNA若しくはDNAであってもよい、任意のポリリボヌクレオチド又はポリデオキシリボヌクレオチドを指す。「ポリヌクレオチド」としては、一本鎖及び二本鎖DNA、一本鎖及び二本鎖の領域の混合物であるDNA、一本鎖及び二本鎖RNA、並びに一本鎖及び二本鎖の領域の混合物であるRNA、一本鎖若しくはより典型的には二本鎖、又は一本鎖及び二本鎖の領域の混合物であってもよいDNA及びRNAを含むハイブリッド分子が挙げられるが、これらに限定されない。加えて、「ポリヌクレオチド」は、RNA若しくはDNA又はRNA及びDNAの両方を含む三本鎖領域を指す。ポリヌクレオチドという用語には、1つ又は2つ以上の修飾された塩基を含有するDNA又はRNA、及び安定性又は他の理由により修飾された骨格を有するDNA又はRNAも含まれる。「修飾された」塩基は、例えば、トリチル化塩基及び異常な塩基、例えば、イノシンを含む。様々な修飾をDNA及びRNAに行うことができる。したがって、「ポリヌクレオチド」は、典型的には天然に認められるポリヌクレオチドの化学的、酵素的又は代謝的に修飾された形態、並びにウイルス及び細胞のDNA及びRNAの特徴を有する化学的形態を包含する。「ポリヌクレオチド」はまた、比較的短い核酸鎖(多くの場合、オリゴヌクレオチドと称される)も包含する。
【0050】
本明細書で使用される場合、「ペプチド」、「ポリペプチド」、又は「タンパク質」という用語は、アミノ酸から構成される分子を指すことができ、当業者によってタンパク質として認識され得る。本明細書では、アミノ酸残基の従来の1文字又は3文字コードが使用される。「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指すために、本明細書において互換的に使用することができる。ポリマーは、直鎖又は分岐鎖であってもよく、修飾されたアミノ酸を含むことができ、かつ非アミノ酸により中断されてもよい。この用語はまた、天然に修飾されているか、又は介入によって修飾されているアミノ酸ポリマー、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、又は任意の他の操作若しくは修飾、例えば、標識成分とのコンジュゲートを包含する。また、定義には、例えば、アミノ酸の1つ以上の類似体(例えば、非天然アミノ酸などを含む)を含有するポリペプチド、並びに当該技術分野において既知の他の修飾が含まれる。
【0051】
本明細書に記載のペプチド配列は、通常の慣習に従って記載され、ペプチドのN末端領域は左側にあり、C末端領域は右側にある。アミノ酸の異性体形態は既知であるが、別途明示的に示されない限り、示されるのはアミノ酸のL型である。
【0052】
単離された組換え細胞及び組換え細胞を作製する方法
本明細書に開示される発明は、少なくとも部分的には、細胞内で特定のシャペロンタンパク質とα6含有ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)(例えばα6β2β3 nAChR)とを同時発現させることにより、α6含有nAChRを高度に発現する細胞が生成され、細胞を薬物開発に有用なものにするという予想外の知見に基づく。nAChRのα6サブユニットを発現する組換え細胞及びnAChRのα6サブユニットの発現のための単離された組換え細胞を作製する方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、α6サブユニットは、その第2のICLが、nAChRのα3サブユニットの第2のICLの対応する配列によって部分的又は完全に置き換えられていてもよく、これはα6/3キメラタンパク質と呼ばれてもよい。α6β2β3 nAChRを発現する組換え細胞、及びα6β2β3 nAChRの発現のための単離された組換え細胞を作製する方法も、本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、α6サブユニットは、上述のα6/3キメラタンパク質であってもよく、組換え細胞は、α6/3β2β3 nAChRを発現する。
【0053】
本明細書で使用される場合、「α6β2β3ニコチン性アセチルコリン受容体」、「α6β2β3 nAChR」、「アルファ6ベータ2ベータ3ニコチン性アセチルコリン受容体」、及び「アルファ6ベータ2ベータ3 nAChR」という用語は、互換的に使用され、コリン作動性受容体のタンパク質ファミリーのメンバーであるα6β2β3ニコチン性アセチルコリン受容体タンパク質、好ましくはヒトα6β2β3 nAChRを指す。
【0054】
α6β2β3 nAChRは、α6、β2及びβ3サブユニットから構成されるリガンド開口型イオンチャネルである。α6サブユニットは、遺伝子CHRNA6(NM_004198)によってコードされ、β2サブユニットは、遺伝子CHRNB2(NM_000748)によってコードされ、β3サブユニットは、遺伝子CHRNB3(NM_000749)によってコードされる。一緒に発現されると、サブユニットは、一緒に集合してα6β2β3 nAChRを形成する。
【0055】
本発明によれば、α6β2β3 nAChRという用語はまた、α6サブユニットの第2のICLが、nAChRのα3サブユニットの第2のICLの対応するアミノ酸配列によって部分的又は完全に置き換えられている、キメラα6/3β2β3 nAChRを包含する。一実施形態では、α6サブユニットの第2のICLの一部分は、nAChRのα3サブユニットの第2のICLのアミノ酸配列によって置き換えられている。α3サブユニットは、遺伝子CHRNA3(NM_000743)によってコードされる。
【0056】
「組換え細胞」とは、細胞がタンパク質を異種性に発現している、1つ以上の個々の細胞、及び組換え細胞株を指す。本明細書中で使用される場合、細胞におけるタンパク質の「異種発現」とは、外因性核酸、例えば、発現されるべきタンパク質をコードする外因性核酸を細胞に導入することによって、タンパク質を発現するように細胞を改変することを指す。「異種核酸」は、細胞内に導入される、細胞にとって外因性の核酸を指す。いくつかの実施形態では、異種核酸は、DNAである。いくつかの実施形態では、異種核酸は、RNAである。細胞におけるタンパク質の異種発現は、種々の方法を使用して達成されることができる。例えば、タンパク質の発現を駆動することができるプロモータ(例えば、構成的プロモータ)をコードする核酸に作動可能に連結されているタンパク質をコードする核酸を含む発現ベクターを細胞内に導入してもよい。
【0057】
本明細書で使用される場合、「発現」という用語は、遺伝子産物の生合成を指す。この用語は、遺伝子のRNAへの転写を包含する。この用語はまた、RNAの1つ以上のポリペプチドへの翻訳も包含し、全ての天然に存在する、転写後及び翻訳後修飾も更に包含する。
【0058】
一般的な態様では、本発明は、薬物開発に有用であるα6含有nAChR(例えば、α6β2β3 nAChR、上述のキメラα6/3β2β3 nAChRを含む)を発現する細胞を作製又は生成する方法に関する。一実施形態では、本方法は、細胞に、nAChRのα6サブユニット(キメラα6/3サブユニットを含む)をコードする核酸、β固定及びβ調節タンパク質(β-anchoring and -regulatory protein、BARP、アクセッション番号:NM_152769)をコードする核酸、スルホトランスフェラーゼファミリー2Bメンバー1(Sulfotransferase Family 2B Member 1、SULT2B1、アクセッション番号:NM_177973)をコードする核酸、リソソーム関連膜タンパク質5(lysosomal-associated membrane protein 5、LAMP5、アクセッション番号:NM_012261)をコードする核酸、コリンO-アセチルトランスフェラーゼ(Choline O-Acetyltransferase、CHAT、アクセッション番号:NM_020984)をコードする核酸、及び膜貫通タンパク質35(transmembrane protein 35、TMEM35、NACHOとしても知られる、アクセッション番号:NM_021637)をコードする核酸を導入することを含む。nAChRのα6サブユニット(キメラα6/3サブユニットを含む)及びシャペロンタンパク質(すなわち、BARP、SULT2B1、LAMP5、CHAT、及びNACHO)をコードする核酸は、発現ベクター中(例えば、単一の発現ベクター中又は別々の発現ベクター中)に存在し得る。いくつかの実施形態では、nAChRのα6サブユニット(キメラα6/3サブユニットを含む)及びシャペロンタンパク質(すなわち、BARP、SULT2B1、LAMP5、CHAT、及びNACHO)をコードする核酸は、それぞれのタンパク質の発現を駆動することができるプロモータに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、プロモータは、構成的プロモータである。
【0059】
別の態様では、本方法は、細胞に、α6β2β3 nAChRのα6サブユニット(上述のキメラα6/3サブユニットを含む)をコードする核酸、α6β2β3 nAChRのβ2サブユニットをコードする核酸、α6β2β3 nAChRのβ3サブユニットをコードする核酸、BARPをコードする核酸、SULT2B1をコードする核酸、LAMP5をコードする核酸、CHATをコードする核酸、NACHOをコードする核酸を導入することを含み、本方法によって生成された細胞は、BARP、SULT2B1、LAMP5、CHAT、及びNACHOをコードする核酸を含まない同じ細胞と比較して、増加したレベルでα6β2β3 nAChR(上述のキメラα6/3 nAChRを含む)を発現する。
【0060】
別の態様では、本発明は、nAChRのα6(上述のキメラα6/3を含む)、β2、及びβ3サブユニット、BARP、SULT2B1、LAMP5、CHAT、及びNACHOを発現するように遺伝子修飾された細胞であって、遺伝子修飾された細胞が、同じ(又は実質的に同じ)条件下での非修飾細胞における同じタンパク質の発現と比較して、増加したレベルでこれらのタンパク質を発現する、遺伝子修飾された細胞に関する。
【0061】
別の態様では、本発明は、BARPをコードする核酸配列を含む発現ベクター、SULT2B1をコードする核酸配列を含む発現ベクター、LAMP5をコードする核酸配列を含む発現ベクター、CHATをコードする核酸配列を含む発現ベクター、及びNACHOをコードする核酸配列を含む発現ベクターからなる群から選択される少なくとも1つの発現ベクターを含む、単離された組換え細胞に関する。
【0062】
更なる態様では、本発明は、nAChRのα6サブユニット(上述のnAChRのキメラα6/3サブユニットを含む)をコードする異種核酸、nAChRのβ2サブユニットをコードする異種核酸、nAChRのβ3サブユニットをコードする異種核酸、BARPをコードする異種核酸、SULT2B1をコードする異種核酸、LAMP5をコードする異種核酸、CHATをコードする異種核酸、及びNACHOをコードする異種核酸を含む、単離された組換え細胞であって、α6(α6/3を含む)、β2、及びβ3サブユニットが、α6β2β3 nAChR(又はキメラα6/3β2β3 nAChR)を形成する、単離された組換え細胞に関する。一実施形態では、異種核酸は、発現ベクターの形態で組換え細胞に導入される。一実施形態では、本明細書に管理される単離された組換え細胞は、nAChRのα6サブユニット(上述のα6/3サブユニットをコードする核酸を含む)をコードする核酸を含む発現ベクター、nAChRのβ2サブユニットをコードする核酸を含む発現ベクター、nAChRのβ3サブユニットをコードする核酸を含む発現ベクター、BARPをコードする核酸を含む発現ベクター、SULT2B1をコードする核酸を含む発現ベクター、LAMP5をコードする核酸を含む発現ベクター、CHATをコードする核酸を含む発現ベクター、及びNACHOをコードする核酸を含む発現ベクターを含む。
【0063】
本明細書に記載される実施形態の任意の1つでは、nAChRのα6(α6/3を含む)、β2、及びβ3サブユニット、BARP、SULT2B1、LAMP5、CHAT、及びNACHOのうちのいずれか1つ以上をコードする核酸は、単一の発現ベクター中にあってもよく、別々の発現ベクター中にあってもよい。
【0064】
一実施形態では、nAChRのα6サブユニットは、配列番号1(NM_004198.2/NP_004189)のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、例えば、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0065】
【0066】
一実施形態では、α6サブユニットの第2のICLは、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、例えば、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0067】
【0068】
一実施形態では、nAChRのα3サブユニットは、配列番号3(NM_000743.5/NP_000734.2)のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、例えば、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0069】
【0070】
一実施形態では、α3サブユニットの第2のICLは、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、例えば、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0071】
【0072】
一実施形態では、例示的なキメラα6/3は、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも855、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、例えば95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0073】
【0074】
一実施形態では、nAChRのβ2サブユニットは、配列番号6(NM_000748.3/NP_000739.1)のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、例えば、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0075】
【0076】
一実施形態では、nAChRのβ3サブユニットは、配列番号7(NM_000749.5/NP_000740.1)のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、例えば、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0077】
【0078】
一実施形態では、BARPは、配列番号8(XM_017026555.1/XP_016882044.1)のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、例えば、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。又は、BARPは、配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、例えば、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、nAChRのα6サブユニット(上述のキメラα6/3サブユニットを含む)の発現を増強する特性を含む、タンパク質シャペル特性を有する。
【0079】
【0080】
一実施形態では、SULT2B1は、配列番号9(NM_177973.2/NP_814444.1)のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、例えば、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。又は、SULT2B1は、配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、例えば、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、nAChRのα6サブユニット(上述のキメラα6/3サブユニットを含む)の発現を増強する特性を含む、タンパク質シャペル特性を有する。
【0081】
【0082】
一実施形態では、LAMP5は、配列番号10(NM_012261.4/NP_036393.1)のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、例えば、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。又は、LAMP5は、配列番号10のアミノ酸配列に対して少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、例えば、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、nAChRのα6サブユニット(上述のキメラα6/3サブユニットを含む)の発現を増強する特性を含む、タンパク質シャペル特性を有する。
【0083】
【0084】
一実施形態では、CHATは、配列番号11(NM_020984.4/NP_066264.4)のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、例えば、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。又は、CHATは、配列番号11のアミノ酸配列に対して少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、例えば、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、nAChRのα6サブユニット(上述のキメラα6/3サブユニットを含む)の発現を増強する特性を含む、タンパク質シャペル特性を有する。
【0085】
【0086】
一実施形態では、NACHOは、配列番号12(NM_021637.3/NP_067650.1)のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、例えば、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。又は、NACHOは、配列番号12のアミノ酸配列に対して少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、例えば、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、nAChRのα6サブユニット(上述のキメラα6/3サブユニットを含む)の発現を増強する特性を含む、タンパク質シャペル特性を有する。
【0087】
【0088】
本明細書で開示される組換え細胞を調製するために、(例えば、DNAベクターを介した)DNA形質移入及びRNA形質導入などの、異種核酸を細胞に導入するための任意の適切な手段を本明細書で使用することができる。一実施形態では、組換え細胞を生成するために細胞に導入される異種核酸は、ベクター、好ましくは発現ベクターを使用することによって調製される。用語「ベクター」は、連結されたもう1つの核酸を輸送する能力をもつ核酸分子を意味する。ベクターの代表的な一例であるプラスミドは、環状二本鎖DNAループを指し、追加のDNAセグメントがこれに挿入され得る。別のタイプのベクターは、追加のDNAセグメントを挿入することができるウイルスベクターである。発現ベクターは、それらが操作可能に連結される遺伝子の発現を指向することができるベクターである。本明細書で使用される発現ベクターは、宿主細胞における核酸の発現に適した形態のタンパク質配列をコードする核酸を含む。したがって、発現ベクターは、発現のために使用される宿主細胞に基づいて選択され、発現される核酸配列に作動可能に連結された1つ以上の調節配列(例えば、プロモータ)を含むことができる。発現ベクターに関して使用される場合、「作動可能に連結された」とは、目的のヌクレオチド配列が、ヌクレオチド配列の発現を可能にする様式で(例えば、インビトロ転写/翻訳系において、又はベクターが宿主細胞に導入される場合、宿主細胞において)調節配列に連結されることを意味することが意図される。発現ベクターの設計は、ベクターの意図される用途のみならず、形質転換される宿主細胞の選択及び望ましいタンパク質の発現レベルなどの因子に依存し得るということを、当業者は理解するであろう。
【0089】
本開示を考慮して、プラスミド、コスミド、ファージベクター又はウイルスベクターなどの、当業者に知られている任意のベクターを使用することができる。一実施形態では、ベクターは、プラスミドなどの発現ベクターである。ベクターは、例えば、プロモータ、リボソーム結合エレメント、ターミネータ、エンハンサ、選択マーカー、及び複製起点という、発現ベクターの従来の機能を確立するための任意のエレメントを含むことができる。プロモータは、常時発現型、誘導型、又は再形成可能なプロモータであり得る。細胞に核酸を送達することができる多数の発現ベクターが当該技術分野において知られており、本明細書において使用することができる。従来のクローニング技術又は人工遺伝子合成法を使用して、本発明の実施形態に従った発現ベクターを生成することができる。
【0090】
本開示を考慮して、当業者に知られている任意の細胞を、nAChRのα6(キメラα6/3を含む)、β2、β3サブユニット、BARP、SULT2B1、LAMP5、CHAT、及びNACHOの組換え発現のために使用することができる。一実施形態では、組換え細胞は、哺乳動物細胞である。適切な哺乳動物細胞は、ヒト胎児由来腎臓293T(HEK293T)細胞、HEK293F細胞、HeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NIH 3T3細胞、MCF-7細胞、Hep G2細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞及びCos7細胞から選択されてもよい。
【0091】
α6β2β3 nAChRのアゴニスト、アンタゴニスト、又は正のアロステリック調節因子を特定する方法
α6含有nAChR(例えば、α6β2β3 nAChR、上述のキメラα6/3β2β3 nAChRを含む)のアゴニスト、アンタゴニスト、又は正のアロステリック調節因子(PAM)を特定する方法が、本明細書で更に提供される。PAMは、活性部位以外のタンパク質表面上の部位で結合し、したがって、タンパク質結合部位の立体構造を変化させる化合物である。
【0092】
一実施形態では、本方法は、本明細書に開示される単離された組換え細胞を、組換え細胞が成長する条件下で培養することと、組換え細胞を薬剤と接触させることと、薬剤が、α6β2β3 nAChR(上述のキメラα6/3β2β3 nAChRを含む)のアゴニスト、アンタゴニスト、又はPAMであるかどうかを決定することと、を含み、アゴニスト又はPAMは、α6β2β3 nAChR(上述のキメラα6/3β2β3 nAChRを含む)の活性を増強し、アンタゴニストは、薬剤と接触しなかった組換え細胞におけるα6β2β3 nAChR(上述のキメラα6/3β2β3 nAChRを含む)の活性と比較して、α6β2β3 nAChRの活性を減少させる。本明細書で使用される場合、アゴニストは、α6β2β3 nAChR(上述のキメラα6/3β2β3 nAChRを含む)の機能を増強する働きをする分子/化合物/ペプチドを指す。本明細書で使用される場合、PAMは、受容体を直接的に活性化させることなく、リガンドに対するα6β2β3 nAChR(上述のキメラα6/3β2β3 nAChRを含む)の応答の効果を増強する分子/化合物/ペプチドを指す。本明細書で使用される場合、「増強する」、「増強された」、「増加する」、又は「増加された」という用語は、α6β2β3 nAChR(上述のキメラα6/3β2β3 nAChRを含む)活性に関して使用されるときに、アゴニスト又はPAMが投与されていない細胞において観察された対応するシグナル伝達と比較して、受容体を介したシグナル伝達が増加していることを指す。本明細書で使用される場合、アンタゴニストは、α6β2β3 nAChR(上述のキメラα6/3β2β3 nAChRを含む)の機能を遮断させ、減少させ、又は減衰させる働きをする分子/化合物/ペプチドを指す。特定の実施形態では、薬剤は、小分子又はペプチドである。
【0093】
一実施形態では、FLIPRアッセイを使用して、α6β2β3 nAChR(上述のキメラα6/3β2β3 nAChRを含む)媒介性カルシウム流のアゴニストを特定する。このアッセイでは、組換え細胞は、カルシウム感受性色素(Ca5など)と共にインキュベートされ、試験化合物に曝露され、FLIPRTETRAによってカルシウム流が画像化される。
【0094】
一実施形態では、FLIPRアッセイを使用して、ニコチン誘発性α6β2β3 nAChR(上述のキメラα6/3β2β3 nAChRを含む)媒介性カルシウム流のアゴニストを特定する。このアッセイでは、組換え細胞は、カルシウム感受性色素(Ca5など)と共にインキュベートされる。二重添加プロトコルを使用して、組換え細胞は、第1の期間中に試験化合物に曝露され、第2の期間中にニコチンに(例えば、EC80(236nM)で)曝露される。その後、カルシウム流は、FLIPRTETRAによって画像化される。
【0095】
一実施形態では、FLIPRアッセイを使用して、ニコチン誘発性α6β2β3 nAChR(上述のキメラα6/3β2β3 nAChRを含む)媒介性カルシウム流を正に調節又は強化する化合物を特定する。このアッセイでは、組換え細胞は、カルシウム感受性色素(Ca5など)と共にインキュベートされる。二重添加プロトコルを使用して、組換え細胞は、第1の期間中に試験化合物に曝露され、第2の期間中にニコチンに(例えば、EC80(236nM)で)曝露される。その後、カルシウム流は、FLIPRTETRAによって画像化される。試験化合物が、ニコチン誘発性α6β2β3 nAChR(上述のキメラα6/3β2β3 nAChRを含む)媒介性カルシウム流を増強するが、(上述のように決定される)アゴニストとしてカルシウム流を増強しない場合、その試験化合物は、α6β2β3 nAChR(上述のキメラα6/3β2β3 nAChRを含む)の正のアロステリック調節因子(PAM)又は強化因子と呼ばれる。
【0096】
好ましい実施形態では、細胞は、FLIPRアッセイ、又はα6β2β3 nAChR(上述のキメラα6/3β2β3 nAChRを含む)活性を測定するための他のアッセイの前に、約25~35℃で約20~50時間インキュベートされる。いくつかの実施形態では、細胞は、アッセイの前に、約25℃、約26℃、約27℃、約28℃、約29℃、約30℃、約31℃、約32℃、約33℃、約34℃又は約35℃で、約20時間、約25時間、約30時間、約35時間、約40時間、約45時間又は約50時間インキュベートされる。
【0097】
発現系及びキット
単離された組換え細胞を含む発現系及びキットが、本明細書において更に提供される。発現系及びキットは、使用説明書を更に含んでもよい。
【実施例】
【0098】
当業者は、広い発明概念から逸脱することなく、上で説明される実施形態に変更を行うことができることを理解するであろう。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に制限されず、本明細書によって定義されるように本発明の趣旨及び範囲内の修正を包含することを意図するものと理解される。
【0099】
材料
【0100】
【0101】
細胞株
・FreeStyle 293F細胞株(ThermoFisher Scientificカタログ番号R79007)
ベクター構築物
・pcDNA3.1-α6/3(α6/3キメラ、α6:1-338;465-505、α3:339-464)
・pCMV6-XL5-β2
・pcDNA3.1-β3
・pcDNA3.1-BARP
・pcDNA3.1-NACHO
・pcDNA3.1-SULT2B1
・pcDNA3.1-LAMP5
・pcDNA3.1-CHAT
【0102】
培養培地
・FreeStyle 293発現培地
【0103】
形質移入試薬
・FectoPRO DNA形質移入試薬
【0104】
播種培地
・DMEM+L-グルタミン+ピルビン酸ナトリウム
・10%FBS
・1X Pen/Strep
【0105】
化合物希釈/Ca5緩衝液
・1mMのMg2+及び2mMのCa2+が補充されたHEPES緩衝生理食塩水溶液(500mL)
【0106】
カルシウム5(Ca5)色素(Molecular Devices)
・カルシウム色素をハンクス緩衝塩溶液中に25倍濃度で希釈した。色素を、2mM CaCl2及び1mM MgCl2を含むHEPESアッセイ緩衝液中で1倍に希釈した。
【0107】
方法及び手順
1日目細胞調製
・細胞を遠心分離し、新鮮な予め加温された培地中に再懸濁することによって、1×106細胞/mLの細胞懸濁液を調製する。形質移入の日に細胞密度を再調整する必要はない。
【0108】
2日目形質移入
・以下のプロトコルは、例として100mLの形質移入を使用する。90mLの細胞を振盪しながら、10mLのFreestyle 293発現培地中で以下の形質移入混合物を調製する。
・FectoPRO(登録商標)試薬を5秒間ボルテックス撹拌した後、75μLのFectoPRO(全培養培地1mL当たり0.75uLの試薬)を空の50mLチューブに添加する。
・第2の50mLチューブで、50μgのDNA(全培養培地1mL当たり0.5μgの総DNA、全てのプラスミド1:1)をFreestyle 293発現培地で最終体積10mLになるまで希釈する。穏やかにボルテックス撹拌する。
・希釈したDNAを純粋なFectoPRO(登録商標)試薬に全て一度に移す。溶液を直ちにホモジナイズし、室温で10分間インキュベートする。
・10mLのFectoPRO(登録商標)/DNA形質移入混合物を細胞に移し、培養物をホモジナイズする。
【0109】
3日目細胞を播種する
・細胞を300×Gで5分間かけて沈降させ、上清を吸引し、10mLの播種培地に再懸濁する。
・50μLに25,000細胞/ウェルを播種する(5×105細胞/mL)。
・加湿雰囲気中、プレートを5%CO2、30℃で24時間インキュベートする。
【0110】
4日目FLPRアッセイ
・化合物希釈緩衝液を使用してプレート洗浄機でプレートを洗浄し(4回洗浄×100μL/洗浄)、各ウェルに25μLを残す。
・25μLの2倍のCa5色素を各ウェルに添加する。
・室温で1時間インキュベートする。
・化合物希釈緩衝液を使用してプレート洗浄機でプレートを洗浄し(4回洗浄×100μL/洗浄)、各ウェルに25μLを残す。
【0111】
アンタゴニスト
・化合物添加のためにプレートをFLIPRに移す。第1の添加プレート-2倍のアンタゴニスト(25μLの試験化合物)。第2の添加プレート-1倍のアンタゴニスト、3倍のアゴニスト(25μLのニコチンEC80)EC80ニコチン236nM(25μL、3倍=708nM)。アンタゴニストの対照ウェルは、カラム23及び24にあった。陽性対照ウェルは、第1の添加においてIC100 DHBe(25μL、3倍=30μM)を受け、陰性対照は、緩衝液(25μL)を受けた。対照ウェルへの第2の添加は、IC100 DHBe(10μM)及びEC80ニコチン236nM(25μL、3倍=708nM)であった。
【0112】
アゴニスト
・化合物添加のためにプレートをFLIPRに移す。2倍のアゴニスト(25μL)の単一添加プレート。アゴニストの対照ウェルは、カラム23及び24にある。陽性対照ウェルは、EC100ニコチン(25μL、2倍=2μM)を受けた。陰性対照ウェルは、緩衝液+ビヒクル(25μL)を受けた。
【0113】
α6β2β3 nAChRの機能的発現
nAChRのヒトα6、β2、及びβ3サブユニットをコードする核酸を、HEK293T細胞においてcDNAの特定の組み合わせ(BARP+SULT2B1+LAMP5+NACHO又はBARP+SULT2B1+LAMP5+NACHO+CHAT)と共形質移入し、37℃で一晩、続いて30℃で24~48時間インキュベートした。形質移入された細胞をCa5色素と共に室温で1時間インキュベートし、続いてE
maxニコチン(10μM)で刺激した。形質移入されたニコチン誘発性Ca
2+シグナルを
図1Aにグラフで示す。示されるように、BARP、SULT2B1、LAMP5、NACHO、及びCHATによる共形質移入(「+CHAT」として示される)は、BARP、SULT2B1、LAMP5、及びNACHOによる共形質移入(「-CHAT」として示される)と比較して、α6β2β3 nAChR機能(すなわち、ニコチン誘発性カルシウム流)を増強する。
【0114】
α6/3β2β3 nAChRの機能的発現
キメラα6/3並びにnAChRのヒトβ2及びβ3サブユニットをコードする核酸を、HEK293T細胞においてcDNAの特定の組み合わせ(BARP+SULT2B1+LAMP5+NACHO又はBARP+SULT2B1+LAMP5+NACHO+CHAT)と共形質移入し、37℃で一晩インキュベートした。形質移入された細胞をCa5色素と共に室温で1時間インキュベートし、続いてE
maxニコチン(10μM)で刺激した。形質移入されたニコチン誘発性Ca
2+シグナルを
図1Bにグラフで示す。示されるように、BARP、SULT2B1、LAMP5、NACHO、及びCHATによる共形質移入(「+CHAT」として示される)は、BARP、SULT2B1、LAMP5、及びNACHOによる共形質移入(「-CHAT」として示される)と比較して、α6/3β2β3 nAChR機能(すなわち、ニコチン誘発性カルシウム流)を増強する。
【0115】
別個に、Ca5色素とのインキュベーション及びニコチンによる刺激の前に、形質移入されたHEK293T細胞を30℃で24~48時間インキュベートした。形質移入されたニコチン(10μM)誘発性Ca
2+シグナルを
図1Cにグラフで示す。ここで再び、BARP、SULT2B1、LAMP5、NACHO、及びCHATによる共形質移入(「+CHAT」として示される)は、BARP、SULT2B1、LAMP5、及びNACHOによる共形質移入(「-CHAT」として示される)と比較して、α6/3β2β3 nAChR機能(すなわち、ニコチン誘発性カルシウム流)を増強する。加えて、30℃でインキュベートした形質移入細胞は、37℃でインキュベートしたものよりもはるかに高いnAChR機能(すなわち、ニコチン誘発性カルシウム流)を示し、これにより、α6含有nAChRの調節因子についてのより強固なスクリーニングを可能にする。
【0116】
α6/3β2β3 nAChRのニコチン誘発性活性に対するアンタゴニストの濃度応答曲線
上述のように、BARP、SULT2B1、LAMP5、NACHO、及びCHATをコードする核酸と共に、nAChRのα6/3、β2、及びβ3サブユニットをコードする核酸により形質移入されたHEK293T細胞を、30℃で24~48時間インキュベートした。次いで、形質移入された細胞を、Ca5色素と共に室温で1時間インキュベートし、その後、2回の添加プロトコル(第1の添加:種々の濃度のアンタゴニスト(すなわち、DHbE、MLA、メカミラミン、又はα-コノトキシンMII)を用いて3分間、第2の添加:ニコチン(EC80、236nm)を用いて3.5分間)を使用して刺激した。次いで、ニコチン誘発性カルシウム流を、FLIPR
TETRAイメージャを使用して測定し、最終FLIPRシグナルを平均化し、プロットした(
図2A~2D)。示されるように、試験されたアンタゴニストの各々は、用量依存様式でニコチン誘発性カルシウム流を減少させる。
【配列表】
【国際調査報告】