(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-26
(54)【発明の名称】機械学習を用いた血管新生加齢黄斑変性(NAMD)患者の最適な治療レジメンの予測
(51)【国際特許分類】
G16H 50/00 20180101AFI20250218BHJP
A61B 3/10 20060101ALI20250218BHJP
【FI】
G16H50/00
A61B3/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536116
(86)(22)【出願日】2022-12-16
(85)【翻訳文提出日】2024-08-02
(86)【国際出願番号】 US2022081880
(87)【国際公開番号】W WO2023115046
(87)【国際公開日】2023-06-22
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】514099673
【氏名又は名称】エフ・ホフマン-ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】キクチ, ユウスケ アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ノイベルト, アレス
(72)【発明者】
【氏名】ルイス, カルロス ケサダ
(72)【発明者】
【氏名】タイ, チエン
【テーマコード(参考)】
4C316
5L099
【Fターム(参考)】
4C316AA09
4C316AA13
4C316AB03
4C316AB11
4C316FB21
5L099AA04
(57)【要約】
対象の選択される治療レジメンを予測するための方法およびシステム。血管新生加齢黄斑変性(nAMD)と診断された対象のベースラインデータを受信する。転帰予測因子に対する複数の予測因子入力が、複数の治療レジメンに対するベースラインデータおよびレジメンデータを使用して形成される。複数の予測因子入力は、複数の治療レジメンのそれぞれについて異なる予測因子入力を含む。複数の処置スコアが、複数の予測因子入力を使用して転帰予測因子のセットを介して、複数の治療レジメンについて生成される。複数の処置スコアに基づいて、複数の治療レジメンのうちの1つが対象の選択される治療レジメンとして選択される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管新生加齢黄斑変性(nAMD)と診断された対象のベースラインデータを受信すること、
複数の治療レジメンについての前記ベースラインデータおよびレジメンデータを使用して転帰予測因子のための複数の予測因子入力を形成することであって、
前記複数の予測因子入力が、前記複数の治療レジメンのそれぞれについて異なる予測因子入力を含み、
前記転帰予測因子が、少なくとも1つの機械学習モデルを含む、複数の予測因子入力を形成すること、
前記転帰予測因子を介して、前記複数の予測因子入力を使用して前記複数の治療レジメンに対する複数の処置スコアを生成すること、および
前記複数の処置スコアに基づいて、前記複数の治療レジメンのうちの1つを前記対象の選択される治療レジメンとして選択することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記選択される治療レジメンが視力の改善を最大化し、注射頻度を最小化する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記選択することが、前記複数の治療レジメンのうちの単一の治療レジメンまたは前記複数の治療レジメンのうちの多重治療レジメンがスコアの基準を満たすかどうかを判定することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記選択することが、
前記スコアの基準を満たす前記単一の治療レジメンに応答して、前記単一の治療レジメンを前記対象の前記選択される治療レジメンとして選択すること、または
前記スコアの基準を満たす前記多重治療レジメンに応答して、前記選択される治療レジメンとして前記対象の処置の負荷基準のセットを満たす前記多重治療レジメンのうちの治療レジメンを特定することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記処置の負荷基準のセットは、最も少ない注射回数、最も低い注射頻度、最も低い投与量、最も低い薬剤強度、モニタリングの程度の減少、または副作用の減少のうちの少なくとも1つを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記生成することが、前記転帰予測因子を介して、前記複数の予測因子入力の各々を独立して処理して、前記複数の処置スコアを生成することを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記転帰予測因子は、複数の予測因子モデルを含み、
前記複数の予測因子モデルの各々は、少なくとも1つの機械学習モデルを含み、
前記複数の予測因子モデルの各々は、前記治療レジメンに対応する前記複数の予測因子入力の予測因子入力を使用して、前記複数の治療レジメンの対応する治療レジメンに対する前記複数の処置スコアの処置スコアを生成するように構成される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ベースラインデータは、
光干渉断層撮影(OCT)画像データ、
視力測定値、中心サブフィールド厚、低輝度欠損、年齢、または性別のうちの少なくとも1つを含む臨床データ、または
ベースラインの時点に対応するOCT画像データから生成されたセグメント化画像データから抽出された網膜特徴データのうちの少なくとも1つを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の治療レジメンのうちの対応する1つに対する前記レジメンデータが、処置と、前記処置の投与頻度、投与スケジュール、またはモニタリングスケジュールのうちの少なくとも1つとを特定する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記処置スコアのそれぞれが予測視力測定値である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの機械学習モデルが、線形回帰モデル、ランダムフォレスト(RF)モデル、勾配ブースティング・マシン(GBM)モデル、エクストリーム勾配ブースティング(XGBoost)、またはサポートベクターマシン(SVM)モデルのうちの少なくとも1つを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ベースラインの時点についての血管新生加齢黄斑変性(nAMD)と診断された対象についての臨床データおよび撮像データを受信すること、
前記撮像データを使用して網膜特徴データを生成することであって、前記網膜特徴データが、病理関連特徴、層関連体積特徴、または層関連厚さのうちの少なくとも1つを含む、網膜特徴データを生成すること、
少なくとも1つの機械学習モデルを含む転帰予測因子を介して、複数の治療レジメンに対する複数の処置スコアを生成すること、
前記複数の処置スコアに基づいて、前記複数の治療レジメンのうちの1つを前記対象の選択される治療レジメンとして選択することと
を含む、方法。
【請求項13】
前記選択することが、前記複数の治療レジメンのうちの単一の治療レジメンまたは前記複数の治療レジメンのうちの多重治療レジメンがスコアの基準を満たすかどうかを判定することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記選択することが、
前記スコアの基準を満たす前記単一の治療レジメンに応答して、前記単一の治療レジメンを前記対象の前記選択される治療レジメンとして選択すること、または
前記スコアの基準を満たす前記多重治療レジメンに応答して、前記選択される治療レジメンとして前記対象の処置の負荷基準のセットを満たす前記多重治療レジメンのうちの治療レジメンを特定することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記臨床データが、前記ベースラインの時点についての視力測定値、中心サブフィールド厚、低輝度欠損、年齢、または性別のうちの少なくとも1つを含み、前記撮像データが光干渉断層法(OCT)画像データを含む、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記処置スコアのそれぞれが予測視力測定値である、請求項12~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つの機械学習モデルが、線形回帰モデル、ランダムフォレスト(RF)モデル、勾配ブースティング・マシン(GBM)モデル、エクストリーム勾配ブースティング(XGBoost)、またはサポートベクターマシン(SVM)モデルのうちの少なくとも1つを含む、請求項12~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
血管新生加齢黄斑変性と診断された対象に対する選択される治療レジメンを予測するためのシステムであって、
機械実行可能コードを含む機械可読媒体を含有するメモリ、および
前記メモリに結合されたプロセッサを備え、
前記プロセッサは、前記プロセッサに、
血管新生加齢黄斑変性(nAMD)と診断された対象のベースラインデータを受信すること、
複数の治療レジメンについての前記ベースラインデータおよびレジメンデータを使用して転帰予測因子のための複数の予測因子入力を形成することであって、
前記複数の予測因子入力が、前記複数の治療レジメンのそれぞれについて異なる予測因子入力を含み、
前記転帰予測因子が、少なくとも1つの機械学習モデルを含む、複数の予測因子入力を形成すること、
前記転帰予測因子を介して、前記複数の予測因子入力を使用して前記複数の治療レジメンに対する複数の処置スコアを生成すること、および
前記複数の処置スコアに基づいて、前記複数の治療レジメンのうちの1つを前記対象の選択される治療レジメンとして選択することと
を行わせる前記機械実行可能コードを実行するよう構成される、システム。
【請求項19】
前記選択される治療レジメンが視力の改善を最大化し、注射頻度を最小化する、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記プロセッサは、前記プロセッサに、
前記複数の治療レジメンのうちの単一の治療レジメンまたは前記複数の治療レジメンのうちの多重治療レジメンがスコアの基準を満たすかどうかを判定すること、および
前記スコアの基準を満たす前記単一の治療レジメンに応答して、前記単一の治療レジメンを前記対象の前記選択される治療レジメンとして選択すること、または
前記スコアの基準を満たす前記多重治療レジメンに応答して、前記選択される治療レジメンとして前記対象の処置の負荷基準のセットを満たす前記多重治療レジメンのうちの治療レジメンを特定すること、を行わせる前記機械実行可能コードを実行するようさらに構成される、請求項18または19に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2022年10月13日に出願された「Predicting Optimal Treatment Regimen for Neovascular Age-Related Macular Degeneration(NAMD)using Machine Learning」と題する米国仮特許出願第63/415,949号、2022年4月13日に出願された、「Predicting Optimal Treatment Regimen for Neovascular Age-Related Macular Degeneration(NAMD)using Machine Learning」と題する米国仮特許出願第63/330,753号明細書、および2021年12月17日に出願された「Predicting Optimal Treatment Regimen for Neovascular Age-Related Macular Degeneration(NAMD)using Machine Learning」と題する米国仮特許出願第63/291,275号の優先権を主張するものであり、これらはそれぞれその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
分野
この説明は、一般に、血管新生加齢黄斑変性(nAMD)と診断された対象に使用するための最適な治療レジメンを予測することを対象とする。より具体的には、この説明は、機械学習モデルを使用して生成された治療レジメンの処置スコアに基づいて、nAMDを有する対象に使用するための様々な潜在的治療レジメンから1つを選択するための方法およびシステムを提供する。
【背景技術】
【0003】
加齢黄斑変性(AMD)は、黄斑と呼ばれる、眼の網膜の中心領域に影響を及ぼす疾患である。AMDは、50歳以上の対象における視力喪失の主な原因である。血管新生型AMD(nAMD)は、AMDの2つの進行期のうちの1つである。nAMDでは、新しく異常な血管が黄斑の下で制御不能に成長し、血液から網膜に体液を漏出させることがある。この種の増殖は、腫脹、出血、線維症、他の問題、またはそれらの組合せを引き起こし得る。さらに、網膜内に漏れた液は、直ちに対象の視覚を歪めることがあり、経時的に、例えば網膜の光受容体の喪失を引き起こすことによって網膜自体を損傷する可能性がある。液はまた、黄斑をその基部から分離させ、重度かつ急速な視力喪失をもたらし得る。
【0004】
nAMDの処置は、典型的には、抗血管内皮増殖因子(抗VEGF)療法(例えば、ラニビズマブなどの抗VEGF薬)を含む。そのような処置に対する網膜の応答は、少なくとも部分的に対象特異的であり、その結果、異なる対象は、同じタイプの抗VEGF薬に対して異なって応答し得る。ファリシマブは、nAMDの新しい治療であり、モノクローナル抗体による治療法である。抗VEGF療法と、ファリシマブなどのモノクローナル抗体での処置との両方は、典型的には硝子体内注射によって投与され、場合によっては高価であり、副作用または合併症(例えば、充血、眼の痛み、感染、失明など)に関連付けられ得る。注射の回数または頻度はまた、患者にとって負担となり、疾患の抑制の低下につながる可能性がある。
【発明の概要】
【0005】
1つまたは複数の実施形態では、血管新生加齢黄斑変性(nAMD)を有する対象の選択される治療レジメンを予測する方法が提供される。nAMDと診断された対象のベースラインデータを受信する。転帰予測因子に対する複数の予測因子入力は、複数の治療レジメンに対するベースラインデータおよびレジメンデータを使用して形成される。複数の予測因子入力は、複数の治療レジメンの各々に対する異なる予測因子入力を含み、転帰予測因子は少なくとも1つの機械学習モデルを含む。複数の治療レジメンに対する複数の処置スコアは、複数の予測入力を使用して、転帰予測因子を介して生成される。複数の処置スコアに基づいて、複数の治療レジメンのうちの1つが対象の選択される治療レジメンとして選択される。
【0006】
1つまたは複数の実施形態において、nAMDを有する対象の選択される治療レジメンを予測するための方法が提供される。臨床データおよび撮像データは、ベースラインの時点についてnAMDと診断された対象について受信され得る。撮像データを用いて網膜特徴データを生成する。網膜特徴データは、病理関連特徴、層関連体積特徴、または層関連厚さのうちの少なくとも1つを含む。複数の治療レジメンに対する複数の処置スコアは、少なくとも1つの機械学習モデルを含む転帰予測因子を介して生成される。複数の処置スコアに基づいて、複数の治療レジメンのうちの1つが対象の選択される治療レジメンとして選択される。
【0007】
1つまたは複数の実施形態では、血管新生加齢黄斑変性(nAMD)と診断された対象に対する選択される治療レジメンを予測するためのシステムが提供される。システムは、機械実行可能コードを含む機械可読媒体を含むメモリと、メモリに結合されたプロセッサとを含む。プロセッサは、機械実行可能コードを実行して、プロセッサに、nAMDと診断された対象のベースラインデータを受信させるように構成される。プロセッサは、機械実行可能コードを実行して、プロセッサに、複数の治療レジメンに対するベースラインデータおよびレジメンデータを使用して転帰予測因子に対する複数の予測因子入力を形成させるように構成される。複数の予測因子入力は、複数の治療レジメンのそれぞれについて異なる予測因子入力を含む。転帰予測因子は、少なくとも1つの機械学習モデルを含む。プロセッサは、機械実行可能コードを実行して、プロセッサに、転帰予測因子を介して、複数の予測因子入力を使用して複数の治療レジメンに対する複数の処置スコアを生成させるように構成される。プロセッサは、機械実行可能コードを実行して、プロセッサに、複数の処置スコアに基づいて、複数の治療レジメンのうちの1つを対象の選択される治療レジメンとして選択させるように構成される。
【0008】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数のデータプロセッサと、非一時的機械可読記憶媒体であって、1つまたは複数のデータプロセッサ上で実行されると、1つまたは複数のデータプロセッサに、本明細書に開示された1つまたは複数の方法の一部もしくはすべてを実行させる命令を含む、非一時的コンピュータ可読記憶媒体とを含むシステムが提供される。
【0009】
いくつかの実施形態では、非一時的機械可読記憶媒体に有形に具現化され、1つまたは複数のデータプロセッサに、本明細書に開示された1つまたは複数の方法の一部もしくはすべてを実行させるように構成された命令を含むコンピュータプログラム製品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本開示は、以下の添付の図面と併せて説明される。
【0011】
【
図1】様々な実施形態にかかる、予測システム100のブロック図である。
【0012】
【
図2】1つまたは複数の実施形態による、
図1からの転帰予測システム110のブロック図である。
【0013】
【
図3】1つまたは複数の実施形態による、血管新生加齢黄斑変性(nAMD)を有する対象に使用する治療レジメンを選択するための例示的なワークフローの概略図である。
【0014】
【
図4】1つまたは複数の実施形態による、血管新生加齢黄斑変性(nAMD)を有する対象に使用する治療レジメンを選択するためのプロセスのフローチャートである。
【0015】
【
図5】1つまたは複数の実施形態による、血管新生加齢黄斑変性(nAMD)を有する対象に使用する治療レジメンを選択するためのプロセスのフローチャートである。
【0016】
【
図6】1つまたは複数の実施形態による異なるモデルの統計結果を示す表である。
【0017】
【
図7】様々な実施形態によるコンピュータシステムのブロック図である。
【0018】
添付の図面において、同様の構成要素および/または特徴は、同じ参照ラベルを有することができる。さらに、同じタイプの様々な構成要素は、参照ラベルの後に同様の構成要素を区別するダッシュおよび第2のラベルを続けることによって区別され得る。本明細書において第1の参照ラベルのみが使用される場合、説明は、第2の参照ラベルに関係なく、同じ第1の参照ラベルを有する同様の構成要素のいずれか1つに適用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
I.概要
血管新生加齢黄斑変性(nAMD)は、抗VEGFによる処置、抗体による処置、別の種類の処置、またはそれらの組合せで処置され得る。抗VEGFによる処置の2つの例は、ラニビズマブおよびアフリベルセプトであり、これらは硝子体内注射によって投与され得る。抗体の処置の一例は、血管内皮増殖因子(VEGF)を対象にしたモノクローナル抗体での処置、およびアンジオポイエチン2阻害薬である。典型的には、nAMDによる処置は、約4~約8週間ごとの範囲の頻度で、注射(例えば、硝子体内注射)によって投与される。しかしながら、一部の患者は、そのような頻繁な注射を必要としない場合がある。
【0020】
処置の頻度は、一般に患者にとって負担となり、現実世界における疾患抑制の低下につながり得る。例えば、処置の初期段階の後、患者は、臨機に(pro re nata)(PRN)または必要な期間にわたって毎月定期的に来院するようにスケジュールされ得る。このPRN期間は、例えば、21ヶ月から24ヶ月、または他の何らかの月単位での期間であり得る。PRN期間中の毎月の来院のために診療所を訪れることは、頻繁な処置を必要としない患者にとって負担となり得る。例えば、患者がPRN期間全体の間に5度以下の注射しか必要としない場合、毎月の来院のために移動することは過度に面倒であり得る。したがって、来院の患者コンプライアンスが経時的に低下し、疾患抑制の低下をもたらし得る。
【0021】
さらに、血管新生加齢黄斑変性(nAMD)の治療反応は、対象または患者によって異なる。例えば、異なる対象は、同じ種類の処置に関連する異なる注射頻度に対して、異なって反応し得る。一例として、同じ注射頻度による同じ処置を受けた2人の対象は、異なるレベルの視力の改善を経験し得る。いくつかの例では、同じまたは同様の視力の改善を達成するために、2人の対象が経時的に異なる数の注射を必要とする場合がある。他の例では、2人の対象は、同じまたは同様の視力の改善を達成するために、2つの異なる種類の処置を必要とする場合がある。
【0022】
したがって、本明細書に記載の実施形態は、最も少ない注射の回数または頻度で、対象において視力の改善を最大化する方法を有することが所望され得ることを認識している。治療レジメンは、処置(例えば、抗VEGF療法、モノクローナル抗体療法など)と、処置のための投与頻度、投与スケジュール、モニタリングスケジュール、またはそれらの組合せのうちの少なくとも1つとを同定し得る。投与頻度は、例えば、注射の頻度(例えば、硝子体内注射用)であり得る。投与スケジュールは、例えば、注射あたりの投与量であり得、一定のままであり得るか、または経時的に変化し得る(例えば、後の注射と比較して、前の注射での投与量が異なる)。モニタリングスケジュールは、例えば、処置の進行を評価するための1つまたは複数のモニタリング訪問または撮像セッションのスケジュールであり得る。
【0023】
本明細書に記載される実施形態は、血管新生加齢黄斑変性(nAMD)を有する所与の対象に対する治療レジメンを選択して、注射の回数または頻度が最も少ない対象における視力の改善を最大化するための方法およびシステムを提供する。例えば、多重治療レジメンを分析して、対象に対する各治療レジメンの予想される治療応答(または転帰)を判断し得る。最も低い処置の負荷で最良の応答(または転帰)をもたらす治療レジメンを、選択される治療レジメンとして使用し得る。場合によっては、選択される治療レジメンは、対象の最適な治療レジメンと呼ばれ得る。
【0024】
1つまたは複数の実施形態では、様々なタイプのベースラインデータ(例えば、ベースライン臨床データ、ベースライン光干渉断層法(OCT)画像データ、ベースラインOCT画像データから抽出された特徴データ、それらの組合せなど)が、複数の治療レジメンのそれぞれに対する治療応答を予測するために1つまたは複数の機械学習モデルを介して処理される。この予測は、例えば、処置スコアの形態であり得る。処置スコアは、例えば、未来の時点(例えば、処置、または処置の最初の投与の3ヶ月後、6ヶ月後、7ヶ月後、8ヶ月後、9ヶ月後、10ヶ月後、11ヶ月後、12ヶ月後、13ヶ月後、15ヶ月後、18ヶ月後、20ヶ月後、24ヶ月後、または何らかの他の数の月の後、数日後、もしくは数年後)の視力の測定値であり得る。他の例では、処置スコアは、視力の健常性を示す何らかの他の種類の測定値またはメトリックであり得る。
【0025】
場合によっては、2つ以上の治療レジメンの治療応答(または転帰)の間に差がないか、または差が最小(例えば、選択された閾値より少ない)であり得る。これらの場合、処置の負荷が最も少ない治療レジメンが、選択された処置として選択され得る。処置の負荷は、例えば、限定されないが、注射の回数および/または頻度、推奨または必要とされるフォローアップ訪問の回数または頻度、1つまたは複数の副作用もしくは合併症の可能性、投薬の強度、または処置の管理もしくは維持をより困難にする何らかの他の種類の要因のうちの少なくとも1つに基づいて判定され得る。
【0026】
上述の改善をもたらすことができる方法論およびシステムの重要性および有用性を認識し、考慮に入れて、本明細書に記載の実施形態は、機械学習モデルを使用して、注射の回数または頻度を最小限にして視力の改善を最大化する、nAMDと診断された対象の治療レジメンを予測することを可能にする。対象のベースラインの状態に基づいて対象に対して選択される治療レジメンを個別化する能力を有することは、そのような対象により良好な利益をもたらすことができる、情報に基づいた個別化された治療の決定を行う際に臨床医を支援するよう促す。さらに、機械学習モデルによって予測された処置の転帰に基づいてそのような判定を行うことは、そうでなければ治療レジメンを分析し、選択される治療レジメンを特定するために必要とされ得る全体的なコンピューティングリソースを削減し得る。
【0027】
II.nAMDを有する対象のための治療レジメンを選択するためのシステム
II.A.概要
図1は、様々な実施形態にかかる、予測システム100のブロック図である。予測システム100を使用して、AMD、特にnAMDと診断された1人または複数の対象の処置の負荷を最小化しながら、視力の改善を最大化する、選択される治療レジメン101を、予測し得る。そのような患者の処置は、例えば、限定はされないが、抗VEGF処置、抗体処置、別のタイプの処置、またはこれらの組合せを含み得る。抗VEGF処置は、例えば、硝子体内注射によって投与され得るラニビズマブを含んでよい。抗体処置は、例えば、血管内皮増殖因子(VEGF)を対象にしたモノクローナル抗体処置およびアンジオポイエチン2阻害薬であり得るが、それらに限定されない。1つまたは複数の実施形態では、抗体処置はファリシマブを含む。
【0028】
前述のように、治療レジメンは、処置(例えば、抗VEGF療法、モノクローナル抗体療法など)と、処置のための投与頻度、投与スケジュール、モニタリングスケジュール、またはそれらの組合せのうちの少なくとも1つとを同定し得る。治療レジメンはまた、場合によっては処置アームとも称され得る。投与頻度は、例えば、注射の頻度(例えば、硝子体内注射用)であり得る。投与スケジュールは、例えば、注射あたりの投与量であり得、一定のままであり得るか、または経時的に変化し得る(例えば、後の注射と比較して、前の注射での投与量が異なる)。モニタリングスケジュールは、例えば、処置の進行を評価するための1つまたは複数のモニタリング訪問または撮像セッションのスケジュールであり得る。
【0029】
1つまたは複数の実施形態では、選択される治療レジメン101は、処置の負荷を最小限に抑えながら、対象の視力の改善を最大化する治療レジメンであり得る。処置の負荷は、例えば、限定されないが、注射の回数および/または頻度、推奨または必要とされるフォローアップ訪問の回数または頻度、1つまたは複数の副作用もしくは合併症の可能性、投薬の強度、または処置の管理もしくは維持をより困難にする何らかの他の種類の要因のうちの少なくとも1つに基づいて判定され得る。一例として、選択される治療レジメン101は、最も少ない注射の回数または最も低い注射の頻度を有しながら、最良の治療応答(または転帰)をもたらす治療レジメンであり得る。場合によっては、選択される治療レジメン101は、最適な治療レジメンと呼ばれ得る。
【0030】
予測システム100は、コンピューティングプラットフォーム102と、データストレージ104と、表示システム106とを含む。コンピューティングプラットフォーム102は、様々な形態をとり得る。1つまたは複数の実施形態では、コンピューティングプラットフォーム102は、互いに通信する単一のコンピュータ(もしくはコンピュータシステム)または複数のコンピュータを含む。他の例では、コンピューティングプラットフォーム102は、クラウドコンピューティングプラットフォームの形態をとる。いくつかの例では、コンピューティングプラットフォーム102は、モバイルコンピューティングプラットフォーム(例えば、スマートフォン、タブレット、スマートウォッチなど)の形態をとる。
【0031】
データストレージ104および表示システム106はそれぞれ、コンピューティングプラットフォーム102と通信する。いくつかの例では、データストレージ104、表示システム106、またはその両方は、コンピューティングプラットフォーム102の一部と見なされてもよく、さもなければコンピューティングプラットフォーム102と統合され得る。したがって、いくつかの例では、コンピューティングプラットフォーム102、データストレージ104、および表示システム106は、互いに通信する別個の構成要素であり得るが、他の例では、これらの構成要素のいくつかの組合せが一緒に統合され得る。データストレージ104は、例えば、データベース、スプレッドシート、サーバ、クラウドベースのストレージ、またはそれらの組合せを含み得るが、これらに限定されない。
【0032】
予測システム100は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組合せを使用して実装され得るデータ分析器108を含む。1つまたは複数の実施形態では、データ分析器108は、コンピューティングプラットフォーム102に実装される。
【0033】
データ分析器108は、転帰予測システム110およびレジメン予測因子112を含み、それらの各々が実装され得て、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはそれらの組合せを使用する。いくつかの実施形態では、転帰予測システム110およびレジメン予測因子112は、別個のモジュールとして実装され得る。他の実施形態では、レジメン予測因子112の少なくとも一部は、転帰予測システム110の一部として実装され得る。
【0034】
転帰予測システム110は、ベースラインデータ114を使用して、対応する複数の治療レジメン118に対する複数の処置スコア116を生成(または予測)する。いくつかの実施形態では、ベースラインデータ114は、1つまたは複数の通信リンク(例えば、有線通信リンク、無線通信リンク、光通信リンクなど)を介して、予測システム100の外部のソースから、少なくとも部分的に受信され得る。1つまたは複数の実施形態では、ベースラインデータ114は、データストレージ104から少なくとも部分的に検索される。
【0035】
治療レジメン118は、2つの治療レジメン、3つの治療レジメン、4つの治療レジメン、または対象に対して実施され得る他のいくつかの治療レジメンを含み得る。治療レジメン118は、処置タイプ、投与スケジュール、薬剤の強度もしくは濃度、注射回数、注射頻度、モニタリングスケジュール、またはそれらの組合せに関して異なり得る。このようにすると、2つの異なる治療レジメンが同じ処置に一致し得るが、他の要因(例えば、投与量および/または注射頻度)によって異なる場合もある。
【0036】
処置スコア116は、治療レジメン118の各々に対する対応する処置スコアを含み得る。処置スコア116の各々は、治療の応答または転帰を示すスコアであり得る。一例として、処置スコアが高いほど応答が良好であること(例えば、視覚に対する改善が一層多大であること)を示し、処置スコアが低いほど応答が不良であることを示す。他の例で、処置スコアが低いほど応答が良好であること(例えば、視覚に対する改善が一層多大であること)を示し、処置スコアが高いほど応答が不良であることを示す。
【0037】
処置スコアは、例えば、限定されないが、処置を受けている対象の予測される視力測定値(例えば、予測される最良矯正視力(BCVA))、予測される視力変化(例えば、BCVAの予測変化)、予測されるCST、CSTの予測される低下、または何らかの他の種類の反応メトリックのうちの少なくとも1つを示し得る。処置スコアは、処置後の選択された時点、例えば、限定されないが、処置後6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、24ヶ月、または何らかの他の時間について、生成され得る。
【0038】
1つまたは複数の実施形態では、処置スコア116は、処置後または処置の最初の投与後の未来のある時点の、対象について予測される視力測定値(例えば、BCVA)であり得る。この未来の時点は、例えば、3ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、13ヶ月、15ヶ月、18ヶ月、20ヶ月、24ヶ月、または他の何らかの数の月、日、または年であり得る。1つまたは複数の実施形態では、処置スコア116は、未来の時点の、対象について予測される視力測定値を表すまたはそれに基づいて生成されるメトリクスであり得る。
【0039】
ベースラインデータ114は、ベースラインの時点のデータを含み得る。ベースラインの時点は、例えば、処置より前の時点、または第1の処置投与(例えば、処置の1日目)と同時の時点であってよい。他の実施形態では、処置中の時点(例えば、x回目の処置の投与の1週間後、2週間後、4週間後、1ヶ月後、2ヶ月後、3ヶ月後など)である。異なるタイプのベースラインデータの例は、以下のセクションII.Bでより詳細に説明される。
【0040】
転帰予測システム110は、ベースラインデータ114を処理し、処置スコア116を生成するために異なる方法で実装され得る。転帰予測システム110の実装の例は、以下のセクションII.Bでより詳細に説明される。
【0041】
レジメン予測因子112を使用して、複数の処置スコア116に基づいて、対象と共に使用するための選択される治療レジメン101を特定し得る。1つまたは複数の実施形態では、レジメン予測因子112は、選択された基準119のセットを使用して、選択される治療レジメン101として治療レジメン118のうちの1つを特定する。選択された基準119のセットは、様々な基準を含み得る。例えば、選択された基準119のセットは、スコアの基準、処置の負荷基準のセット、またはその両方を含み得る。処置の負荷基準のセットは、例えば、限定されないが、最も少ない注射回数、最も低い注射頻度、最も低い投与量、最も低い薬物の強度、モニタリングの程度の減少、または副作用の減少のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0042】
1つまたは複数の実施形態において、スコアの基準は、処置スコアの基準である。例えば、スコアの基準は、最高の処置スコアまたは最低の処置スコアであり得る。いくつかの実施形態では、スコアの基準は、処置スコア116のサブセット(例えば、選択された範囲内に入る処置スコア116のサブセット、選択された閾値を上回る処置スコアのサブセット、選択された閾値を下回る処置スコアのサブセット、または何らかの他のサブセット)に対するものであり得る。これらの例では、スコアの基準は、サブセットの最高の処置スコアまたは最低の処置スコアであり得る。
【0043】
他の実施形態では、レジメン予測因子112は、処置スコア116に基づいて新しいスコアを計算し得る。これらの新しいスコアは、場合によっては、治療の応答または転帰の異なる種類の指標であり得る。これらの例では、スコアの基準は、これらの計算されたスコアに対するものであり得る。例えば、スコアの基準は、最高の計算されたスコアまたは最低の計算されたスコアであり得る。場合によっては、スコアの基準は、計算されたスコアのサブセット(例えば、選択された範囲内に入る計算スコアのサブセット、選択された閾値を上回る計算スコアのサブセット、選択された閾値を下回る計算スコアのサブセット、または何らかの他のサブセット)に対するものであり得る。
【0044】
1つまたは複数の実施形態では、レジメン予測因子112は、選択された基準119のセットを最も完全近く満たす治療レジメン118の治療レジメンを、対象について使用するための選択される治療レジメン101として、特定し得る。一例として、レジメン予測因子112は、治療レジメン118の単一の治療レジメンまたは複数の治療レジメンがスコアの基準を満たすかどうかを最初に判定し得る。単一の治療レジメンがスコアの基準を満たす場合、レジメン予測因子112は、この単一の治療レジメンを選択される治療レジメン101として同定し、それにより、選択される治療レジメン101が、対象の処置の負荷を最小限に抑えながら視力の改善を最大化することを予測する。しかし、多重治療レジメンがスコアの基準を満たしている場合、レジメン予測因子112は、選択される治療レジメン101として対象の処置の負荷基準のセットを満たす治療レジメンを特定する。
【0045】
例えば、スコアの基準が最高処置スコアである場合、レジメン予測因子112は、最高処置スコアを有する治療レジメンを、選択される治療レジメン101として、選択し得る。しかし、特定の例では、治療レジメン118のうちの2つ以上の治療レジメンが同点になり得る。例えば、2つ以上の治療レジメンが、両方共最高処置スコアを有することによって、同点になり得る。別の例として、2つ以上の治療レジメンは、選択された閾値を下回る2つの処置スコア間の差がある、2つの最も高い処置スコアを有することによって、同点になり得る。
【0046】
そのように一致している場合、レジメン予測因子112は、選択される治療レジメン101として処置の負荷基準のセット(例えば、対象に対する処置の負荷が最も少ないもの)を満たす治療レジメンを選択し得る。1つまたは複数の実施形態では、レジメン予測因子112は、レジメンデータ120を使用して、どの同点の治療レジメンが処置の負荷基準のセットを満たす(例えば、対象に最も少ない負担を課す)かを同定する。
【0047】
レジメンデータ120は、治療レジメン118の各々の詳細を特定し得る。レジメンデータ120は、例えば、限定するものではないが、処置の種類と、処置のための投与頻度、投与スケジュール、モニタリングスケジュール、またはそれらの組合せのうちの少なくとも1つとを特定し得る。場合によっては、レジメンデータ120は、治療レジメン118の各々に関する他の情報をさらに特定し得る。例えば、レジメンデータ120は、副作用もしくは合併症の情報、投薬の強度、および/または所与の治療レジメンによって所与の対象に課される負荷に関する情報を特定し得る。
【0048】
データ分析器108は、選択される治療レジメン101、および場合によっては複数の処置スコア116、レジメンデータ120、またはその両方を使用して、最終出力122を形成し得る。最終出力122は、例えば、選択される治療レジメン101を特定し得る。場合によっては、最終出力122は、選択される治療レジメン101に関連するレジメンデータ120の情報の一部を含み得る。いくつかの例では、最終出力122は、治療レジメン118全体に対する処置スコア116を含む。これらの処置スコア116は、チャート形式、グラフ、表、ランク付けされたリスト、またはそれらの組合せで提示され得る。他の例では、最終出力122は、選択される治療レジメン101に対応する処置スコアのみを含む。さらに他の例では、最終出力122は、選択された数のみの最高(あるいは、最低)の処置スコアを含む。例えば、最終出力122は、上位の2つの処置スコアを含み得る。
【0049】
1つまたは複数の実施形態では、最終出力122は、選択される治療レジメン101に基づいて生成された他の情報を含む。例えば、選択される治療レジメン101の予測は、対象を臨床試験に含めるかまたは臨床試験から除外するために使用され得る。例えば、対象が複数の可能な治療レジメンのうちの1つの治療レジメンの臨床試験に割り当てられている場合、データ分析器108を使用して、最も低い処置の負荷に関して、対象にとってどの臨床試験が最も上手くいくと予想されるかを示す最終出力122を生成し得る。このようにして、最終出力122を使用して、全体的な処置の管理ならびに臨床試験集団の豊かさを改善し得る。
【0050】
1つまたは複数の実施形態では、最終出力122の少なくとも一部、または最終出力122の少なくとも一部のグラフィカルな表現が、表示システム106に表示される。いくつかの実施形態では、最終出力122の少なくとも一部または最終出力122の少なくとも一部のグラフィカルな表現は、遠隔デバイス124(例えば、モバイルデバイス、ラップトップ、サーバ、クラウドなど)に送信される。
【0051】
II.B.例示的な転帰予測因子
図2は、1つまたは複数の実施形態による、
図1からの転帰予測システム110のブロック図である。転帰予測システム110は、
図1に示す要素を引き続き参照して説明される。転帰予測システム110は、セクションII.Aで上述したように、対応する複数の治療レジメン118に対する複数の処置スコア116を予測するために使用される。転帰予測システム110は、転帰予測因子200を含み得る。転帰予測因子200は、例えば、予測因子モデルのセット204を含み得る。予測因子モデルのセット204は、1つまたは複数の予測因子モデルであり得る。1つまたは複数の実施形態では、予測因子モデルのセット204の各予測因子モデルは、1つまたは複数の機械学習モデルを含む。このようにして、予測因子モデルのセット204は、機械学習モデルのセット205から構成され得る。予測因子モデルのセット204が複数の予測因子モデルを含む場合、これらの予測因子モデルは、同じまたは同様の方法で実装され得る。場合によっては、これらの予測因子モデルのそれぞれが実装され得て、同じ機械学習モデルまたは同じ機械学習アーキテクチャを使用する。
【0052】
1つまたは複数の実施形態において、転帰予測因子200は、
図1に記載される治療レジメン118についての処置スコア116を予測するために使用され得る。処置スコア203は、処置スコア116の1つの一例であり得る。処置スコア116は、処置を受けている対象の予測される視力測定値(例えば、予測される最良矯正視力(BCVA))、予測される視力変化(例えば、BCVAの予測変化)、予測されるCST、CSTの予測される低下、または何らかの他の種類の反応メトリックのうちの少なくとも1つであり得るか、またはそれを示し得る。処置スコア203は、処置後の選択された時点、例えば、限定されないが、処置後6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、24ヶ月、または何らかの他の時間について、生成され得る。
【0053】
転帰予測システム110は、ベースラインデータ114を受信し、場合によってはまた、生成し得る。ベースラインデータ114は、処置スコア116を生成するために転帰予測因子200によって処理される複数の予測因子入力206を生成するために使用され得る。複数の予測因子入力206が治療レジメン118の各々に対する1つの予測因子入力を含むように、治療レジメン118に対して複数の予測因子入力206を生成し得る。
【0054】
1つまたは複数の実施形態では、ベースラインデータ114は、限定はしないが、ベースラインの時点についての臨床データ208、撮像データ210、またはそれらの組合せを含む。臨床データ208は、例えば、限定するものではないが、ベースライン人口統計データ、ベースライン視力測定値、ベースライン中心サブフィールド厚(CST)測定値、ベースライン低輝度欠損(LLD)、または他の何らかのタイプのベースライン測定値のうちの少なくとも1つを含み得る。ベースライン属性データは、例えば、限定はされないが、年齢、性別、または別のタイプの属性メトリックの少なくとも1つを含み得る。ベースライン視力測定値は、例えば、最高矯正視力(BCVA)測定値であってよい。ベースラインCST測定値は、例えば、単位がマイクロメートルであってよい。ベースラインLLDは、ベースラインBCVA測定値とベースライン低輝度視力(LLVA)測定値との間の差異であってよい。
【0055】
撮像データ210は、ベースラインの時点についての1つまたは複数のタイプの撮像データを含み得る。例えば、撮像データ210は、光干渉断層撮影(OCT)画像データ、カラー眼底画像データ、赤外画像データ、近赤外画像データ、眼底自発蛍光画像データ、蛍光眼底血管造影画像データ、別のタイプの三次元撮像データ、またはそれらの組合せを含み得る。1つまたは複数の実施形態では、撮像データ210は、三次元OCT撮像データ、OCT画像から抽出されたデータ(例えば、OCT正面画像)、OCT画像から抽出された表形式のデータ、何らかの他の形態の撮像データ、またはそれらの組合せを含む。OCT撮像データは、例えば、対象のOCTボリュームスキャンを一緒に形成するスペクトル領域OCT(SD-OCT)Bスキャンを含み得る。
【0056】
いくつかの実施形態において、転帰予測システム110は、複数の予測因子入力206を形成する際に使用するためのベースラインデータ114を生成するために使用することができる他のモデルを含み得る。例えば、転帰予測システム110は、セグメント化モデル212、特徴抽出モジュール214、またはその両方を含み得る。
【0057】
セグメント化モデル212を使用して、撮像データ210(例えば、OCT撮像データのもの)の自動的なセグメント化を実行し、セグメント化画像データ216を形成し得る。セグメント化モデル212が実装され得、ディープラーニングモデル(例えば、1つまたは複数のニューラルネットワーク)を使用する。例えば、セグメント化モデル212が実装され得、1つまたは複数の畳み込みニューラルネットワークを使用する。1つまたは複数の実施形態では、セグメント化モデル212はUネットを含む。いくつかの実施形態では、セグメント化画像データ216の少なくとも一部は、転帰予測因子200のための複数の予測因子入力206を形成するために使用される。いくつかの実施形態では、セグメント化画像データ216の少なくとも一部は、さらなる処理のために特徴抽出モジュール214に送信され得る。例えば、場合によっては、撮像データ210のOCTボリュームスキャンを形成するBスキャン(例えば、128のBスキャン)の各々をセグメント化して、セグメント化画像データ216(例えば、128のセグメント化画像)を形成し得る。しかし、特定の場合には、セグメント化画像の一部(例えば、20、30、40、50など)のみが処理のために特徴抽出モジュール214に送信されるか、または複数の予測因子入力206を形成するために使用される。
【0058】
セグメント化モデル212を介したセグメント化は、網膜画像の1つまたは複数の網膜(例えば、網膜関連)要素の検出および特定を含む。セグメント化画像データ216のセグメント化画像は、1つまたは複数のグラフィカルインジケータを使用して、セグメント化画像の1つまたは複数の網膜(例えば、網膜関連)要素を特定する。セグメント化画像は、1つまたは複数の網膜要素を特定するOCT画像の表現であり得、または1つまたは複数の網膜要素が特定されたOCT画像であり得る。
【0059】
例えば、1つまたは複数のカラーインジケータ、形状インジケータ、パターンインジケータ、シェーディングインジケータ、線、曲線、マーカ、ラベル、タグ、テキスト特徴、他の種類のグラフィカルインジケータ、またはそれらの組合せを使用して、網膜要素として特定された画像の部分(例えば、画素単位)を特定し得る。1つの具体例として、画素のグループは、特定の網膜液(例えば、IRFまたはSRF)を取得するものとして特定され得る。セグメント化画像は、カラーインジケータを使用してこの画素のグループを特定し得る。例えば、画素のグループの各画素は、特定の網膜液に固有の色を割り当て、それによって各画素を特定の網膜液に割り当て得る。別の例として、セグメント化画像は、パターン化された領域または形状(連続的または不連続的)を画素のグループにわたって適用することによって、画素のグループを特定し得る。
【0060】
網膜要素は、網膜層の要素または網膜病理要素のうちの少なくとも1つから構成され得る。1つまたは複数の網膜層要素の検出および特定は、層要素(または網膜層要素)のセグメント化と呼ばれ得る。1つまたは複数の網膜病理学的要素の検出および特定は、病理学的要素(または網膜病理学的要素)のセグメント化と呼ばれ得る。
【0061】
網膜層要素は、例えば、網膜層または網膜層に関連する境界であり得る。網膜層の例には、内境界膜(ILM)層、網膜神経線維層、神経節細胞層、内網状層、内顆粒層、外網状層、外顆粒層、外境界膜(ELM)層、光受容体層、網膜色素上皮(RPE)層、RPE剥離の層、ブルッフ膜(BM)層、脈絡毛細管層、脈絡膜間質層、楕円体領域(EZ)、および他の種類の網膜層が含まれるが、これらに限定されない。場合によっては、網膜層は、1つまたは複数の層から構成され得る。一例として、網膜層は、外網状層とヘンレの線維層(OPL-HFL)との間の界面であり得る。網膜層に関連する境界は、例えば、網膜層の内側境界、網膜層の外側境界、網膜層の病理学的特徴に関連する境界(例えば、網膜層の剥離の内側または外側の境界)、または何らかの他の種類の境界であり得る。例えば、境界は、RPE(IB-RPE)分離層の内側境界、RPE(OB-RPE)分離層の外側境界、または別のタイプの境界であり得る。
【0062】
網膜の病理学的要素は、例えば、網膜の病理(例えば、AMDまたは糖尿病性黄斑浮腫などの疾患または状態)を示す流体(例えば、流体ポケット)、細胞、固体物質、またはそれらの組合せを含み得る。例えば、特定の網膜液の存在は、nAMDの徴候であり得る。網膜の病理学的要素の例には、網膜内液(IRF)、網膜下液(SRF)、色素上皮剥離に関連する液(PED)、反射亢進物質(HRM)、網膜下反射亢進物質(SHRM)、網膜内反射亢進物質(IHRM)、反射亢進病巣(HRF)、網膜液ポケット、ドルーゼン、線維症の発症、および破壊が含まれるが、これらに限定されない。場合によっては、網膜の病理学的要素は、網膜層または網膜帯の破壊(例えば、不連続、層間剥離、損失など)であり得る。例えば、破壊は、楕円体領域、ELM、RPE、または別の層または領域の破壊であり得る。破壊は、破壊の領域における細胞(例えば、感光体)の損傷または喪失を表し得る。いくつかの例では、網膜の病理学的要素は、透明IRF、濁ったIRF、透明SRF、濁ったSRF、何らかの他の種類の透明な網膜液、何らかの他の種類の濁った網膜液、またはそれらの組合せであり得る。
【0063】
特徴抽出モジュール214を使用して、セグメント化モデル212によって生成されたセグメント化画像データ216から網膜特徴データ218を抽出するか、またはセグメント化モデル212から直接受信したデータから網膜特徴データ218を集約し得る。1つまたは複数の実施形態では、網膜特徴データ218の少なくとも一部は、複数の予測因子入力206を形成するために使用され得る。網膜特徴データ218は、例えば、限定はしないが、任意の数または組合せの特徴(例えば、定量的網膜特徴)の値を含み得る。これらの特徴は、病理学に関連する特徴、層に関連する体積の特徴、層に関連する厚さの特徴、またはそれらの組合せを含み得る。特徴の例には、最大網膜層厚、最小網膜層厚、平均網膜層厚、網膜層に関連する境界の最大の高さ、網膜液ポケットの容積、液ポケットの長さ、液ポケットの幅、網膜液ポケットの数、および複数の過反射焦点が含まれるが、これらに限定されない。したがって、特徴の少なくともいくつかは、体積測定的な特徴であり得る。例えば、特徴データは、選択された各OCT画像(例えば、単一OCT Bスキャン)について導出され、次いで組み合わされてボリュームワイド値を形成し得る。1つまたは複数の実施形態では、1から200の特徴が、網膜特徴データ218に含まれ得る。
【0064】
このようにして、臨床データ208の少なくとも一部、撮像データ210の少なくとも一部、セグメント化画像データ216の少なくとも一部、網膜特徴データ218の少なくとも一部、またはそれらの組合せを使用して、処理のために転帰予測因子200に送信される、複数の予測因子入力206の各予測因子入力を形成し得る。この情報は、複数の予測因子入力206の各々について同じであり得る。
【0065】
さらに、複数の予測因子入力206の各々は、対応する治療レジメンのレジメンデータ120の少なくとも一部をさらに含み得る。例えば、予測因子モデルのセット204が単一の予測因子モデルを含む(例えば、1つまたは複数の機械学習モデルを含み得る)場合、複数の予測因子入力206の各予測因子入力は、独立して単一の予測因子モデルに供給され得る。各予測因子入力は、その対応する治療レジメンのレジメンデータ120の一部を含む。このようにして、複数の予測因子入力206の各々は、処置スコア116を生成するために独立して単一の予測因子モデルを介して(例えば、異なる順方向パスを介して)処理される。
【0066】
他の例では、予測因子モデルのセット204が複数の予測因子モデルを含み、それぞれが治療レジメン118の異なるものに対応する場合、複数の予測因子モデル206のそれぞれをその対応する予測因子モデルに送信して、全体で処置スコア116を生成し得る。このようにして、複数の予測因子モデルのそれぞれは、対応する治療レジメンの処置スコアを生成するように特に調整される。
【0067】
転帰予測因子202は、様々な異なる方法で実施され得る。1つまたは複数の実施形態では、転帰予測因子202が実装され得、人工知能モデルまたは機械学習モデルの任意の数または組合せを使用する。転帰予測因子202は、複数のモデルおよび/またはアルゴリズムから構成され得る。例えば、予測因子モデルのセット204の各予測因子モデルは、回帰モデル、線形モデル、ランダムフォレストモデル、XGBoostアルゴリズム、ディープラーニングモデル(例えば、ニューラルネットワーク)、および/または他のタイプの機械学習モデルの任意の数または組合せを含み得る。
【0068】
1つまたは複数の実施形態では、転帰予測因子202(例えば、予測因子モデルのセット204のうちの1つ)は、ディープラーニングモデルおよび記号モデル(例えば、古典的な機械学習モデル)を含む。1つまたは複数の実施形態では、ディープラーニングモデルは、1つまたは複数のニューラルネットワークを含み、これらの1つまたは複数のニューラルネットワークのうちの少なくとも1つは、ディープラーニングニューラルネットワーク(または深層ニューラルネットワーク(DNN))である。1つまたは複数の実施形態では、記号モデルは、記号機械学習を使用する1つまたは複数のモデルを含む。記号モデルは、例えば、限定されるわけではないが、線形モデル、ランダムフォレストモデル、エクストリーム勾配ブースティング(XGBoost)アルゴリズム、サポートベクターマシン(SVM)モデル、または記号学習を使用する別の種類のモデルもしくはアルゴリズムのうちの少なくとも1つを含み得る。
【0069】
様々な実施形態において、転帰予測因子202は、処置スコア203を生成するためにモデル積層手法を使用し得る。モデル積層手法では、例えば、第1の機械学習モデル(例えば、ディープラーニングモデル)を使用して、第2の機械学習モデル(例えば、記号モデル)に入力として送信される中間処理スコアを生成し得る。中間処置スコアは、他のデータ(例えば、ベースライン臨床データ)と共に、処理のために第2の機械学習モデルに入力として送信され得る。次いで、第2の機械学習モデルは、処置スコア203を生成する。
【0070】
様々な実施形態において、転帰予測因子202は、処置スコア203を生成するためにモデル平均化アプローチを使用し得る。モデル平均化アプローチでは、少なくとも2つの異なる機械学習モデルは、複数の予測因子入力206を使用して中間処置スコアを生成し得る。次いで、これらの中間処置スコアを平均(例えば、等しい重み付けを介して)して、処置スコア203を生成し得る。
【0071】
合わせて、転帰予測因子200は処置スコア116を生成する。次いで、処置スコア116を、
図1に関して上述したレジメン予測因子112に送信して、対象について使用するための選択される治療レジメン101を予測し得る。
【0072】
II.C.選択される治療レジメンを予測するための例示的なワークフロー
図3は、選択される治療レジメンの予測のための例示的なワークフローの概略図である。ワークフロー300は、引き続き
図1および
図2の要素を参照して説明される。ワークフロー300は、選択される治療レジメン101を予測するために機械学習を使用してベースラインデータ114をどのように処理し得るかを示す。予測因子モデル302は、
図2の転帰予測因子200における予測因子モデルのセット204における予測因子モデルの一例であり得る。予測因子モデル302は、複数の治療レジメンについて複数の場合(例えば、複数のサイクルの処理)に使用され得る。例えば、3つの異なる治療レジメンについて、予測因子モデル302は、3つの異なる入力を使用して3つの異なる時間に実行され得る。予測因子モデル302が実装され得、機械学習モデル(例えば、線形回帰モデル、SVM、XGBoostアルゴリズム、ランダムフォレストなどである)を使用する。
【0073】
ベースラインデータ114は、予測因子モデル302の各々の事例の入力として使用され得る。
図3において、ベースラインデータ114は、ベースライン視力測定値、ベースラインCST測定値、ベースラインの年齢、および性別を含む。第1の治療レジメンデータ306は、予測因子モデル302の第1の事例の入力として使用され得る。第2の治療レジメンデータ307は、予測因子モデル302の第2の事例の入力として使用され得る。第3の治療レジメンデータ310は、予測因子モデル302の第3の事例の入力として使用され得る。第1の治療レジメンデータ306、第2の治療レジメンデータ307、および第3の治療レジメンデータ310は、
図1および
図2に関して説明したレジメンデータ120の異なる部分であってもよく、それぞれが異なる対応する治療レジメン(例えば、
図1の治療レジメン118の異なる1つ)を特定する。
【0074】
各事例または実行サイクル(または順方向パス)の間、予測因子モデル302は、受信された入力を処理する。予測因子モデル302は、その事例の対応する指定された治療レジメンの処置スコアを生成する。例えば、第1の事例において、予測因子モデル302は、処置スコア312を生成し、第2の事例では、予測因子モデル302は処置スコア314を生成し、第3の事例では、予測因子モデル302は処置スコア316を生成する。
【0075】
これらの処置スコアは、レジメン予測因子112によって処理される。レジメン予測因子112は、選択される治療レジメン101を特定するためのスコアの基準を含み得る、選択された基準のセットを使用する。例えば、レジメン予測因子112は、最大値の関数に供与される入力の最大値を特定する最大値の関数を使用し得る。言い換えれば、レジメン予測因子112は、最大処置スコアであるスコアの基準を満たす処置スコアを特定する。
【0076】
III.選択される治療レジメンを予測するための例示的な方法
図4は、1つまたは複数の実施形態による選択される治療レジメンを予測するためのプロセスのフローチャートである。1つまたは複数の実施形態において、プロセス400が実装され得、
図1に記載される予測システム100および/または
図1~
図2に記載される転帰予測システム110を使用する。プロセス400は様々なステップを含み、
図1~
図2を引き続き参照して説明し得る。
図4に明示的に示されていない1つまたは複数のステップが、プロセス400のステップの前、後、間、または一部として含まれ得る。いくつかの実施形態では、プロセス400はステップ402から開始され得る。
【0077】
ステップ402は、血管新生加齢黄斑変性(nAMD)と診断された対象のベースラインデータを受信することを含む。ベースラインデータは、例えば、
図1~
図2のベースラインデータ114であり得る。例えば、ベースラインデータは、ベースラインの時点についての臨床データ、撮像データ、セグメント化画像データ、網膜特徴データ、またはそれらの組合せを含み得る。臨床データは、例えば、少なくともベースラインの年齢、性別、ベースラインCST、ベースライン視力測定値(例えば、ベースラインのBCVA)、または何らかの他の種類のベースライン因子の少なくとも1つを含み得る。
【0078】
ステップ404は、複数の治療レジメンに対するベースラインデータおよびレジメンデータを使用して転帰予測因子に対する複数の予測因子入力を形成することを含む。複数の予測因子入力は、複数の治療レジメンのそれぞれについて異なる予測因子入力を含む。転帰予測因子は、少なくとも1つの機械学習モデルを含む。例えば、転帰予測因子は、1つまたは複数の予測因子モデルを含み得、その各々は、線形回帰モデル、ランダムフォレスト(RF)モデル、勾配ブースティング・マシン(GBM)モデル、エクストリーム勾配ブースティング(XGBoost)、またはサポートベクターマシン(SVM)モデルのうちの少なくとも1つから構成され得る。他の実施形態では、転帰予測因子は、ディープラーニングモデル(例えば、1つまたは複数のニューラルネットワーク)を含み得る。転帰予測因子は、例えば、
図2の転帰予測因子200であり得る。
【0079】
複数の予測因子入力は、例えば、
図2の複数の予測因子入力206であり得るが、これに限定されない。レジメンデータは、例えば、
図1~
図2のレジメンデータ120であり得る。複数の治療レジメンの対応する1つのレジメンデータは、処置と、処置の投与頻度、投与スケジュール、またはモニタリングスケジュールの少なくとも1つとを特定する。さらに、複数の予測因子入力206の各々は、その特定の治療レジメンを特定する治療レジメンデータを含むことによって、複数の治療レジメンのうちの異なるものに対応する。
【0080】
対応する治療レジメンのための予測因子入力はまた、例えば、限定されないが、臨床データおよび網膜特徴データを含み得る。網膜特徴データは、ステップ402で受信されるベースラインデータに含まれてもよい。他の例では、網膜特徴データは、ベースラインデータに含まれるセグメント化画像データから抽出され得る。さらに他の例では、網膜特徴データは、ステップ402で受信されたベースラインデータに含まれる撮像データ(例えば、ベースラインOCTボリュームスキャン)に基づいて生成されたセグメント化画像データから抽出され得る。
【0081】
ステップ406は、転帰予測因子を介して、複数の治療レジメンに対する複数の処置スコアを生成することを含む。処置スコアの各々は、例えば、処置を受けている対象の予測される視力測定値(例えば、予測BCVA)、予測される視力変化(例えば、BCVAの予測変化)、予測されるCST、CSTの予測される低下、または何らかの他の種類の反応メトリックであり得る。処置スコアは、処置後の選択された時点、例えば、限定されないが、処置後6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、24ヶ月、または何らかの他の時間について、生成され得る。一例では、処置スコアは9ヶ月目のBCVAと予測される。
【0082】
ステップ408は、複数の処置スコアに基づいて、複数の治療レジメンのうちの1つを対象の選択される治療レジメンとして選択することを含む。選択される治療レジメンは、処置の負荷を最小限に抑えながら視力の改善を最大化する(例えば、注射回数、注射頻度)。いくつかの実施形態では、ステップ408は、複数の治療レジメンのうちの単一の治療レジメン、または複数の治療レジメンのうちの多重治療レジメンがスコアの基準を満たすかどうかを判定することを含む。スコアの基準は、例えば、最高(最大)処置スコア、最低(最小)処置スコア、最高計算スコア(例えば、処置スコアから計算された、または他の方法で導出されたスコア)、最低計算スコア、または何らかの他の種類の処置スコアであり得る。場合によっては、処置スコアまたは処置スコアに基づいて計算されたスコアは、文字または他のテキストを含み得る。スコアの基準は、処置スコアまたは計算されたスコアに基づいて、最良の予測された処置の転帰または応答を特定するために選択され得る。
【0083】
多重治療レジメンは、同点であることによってスコアの基準を満たし得る。例えば、2つの処置スコアは、同じ値を共有することによって同点になり得る。他の場合には、スコアは、選択された閾値未満の差を有することによって同点になり得る。例えば、限定するものではないが、1以下の数値差を同点と見なし得る。
【0084】
単一の治療レジメンがスコアの基準を満たす場合、ステップ408は、単一の治療レジメンを対象の選択される治療レジメンとして選択することを含み得る。しかしながら、多重治療レジメンがスコアの基準を満たす場合、ステップ408は、選択される治療レジメンとして対象の処置の負荷基準のセットを満たす複数の治療レジメンのうちの治療レジメンを特定することを含み得る。処置の負荷基準のセットは、例えば、限定されないが、最も少ない注射回数、最も低い注射頻度、最も低い投与量、最も低い薬物の強度、モニタリングの程度の減少、または副作用の減少のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0085】
図5は、1つまたは複数の実施形態による選択される治療レジメンを予測するためのプロセスのフローチャートである。1つまたは複数の実施形態において、プロセス500が実装され得、
図1に記載される予測システム100および/または
図1~
図2に記載される転帰予測システム110を使用する。プロセス500は様々なステップを含み、
図1~
図2を引き続き参照して説明し得る。
図5に明示的に示されていない1つまたは複数のステップが、プロセス500のステップの前、後、間、または一部として含まれ得る。いくつかの実施形態では、プロセス500はステップ502から開始され得る。
【0086】
ステップ502は、ベースラインの時点についての血管新生加齢黄斑変性(nAMD)と診断された対象についての臨床データおよび撮像データを受信することを含む。臨床データおよび撮像データは、例えば、
図2の臨床データ208および撮像データ210であり得る。
【0087】
ステップ504は、撮像データを使用して網膜特徴データを生成することを含み、網膜特徴データは、病理関連特徴、層関連体積特徴、または層関連厚さのうちの少なくとも1つを含む。網膜特徴データは、例えば、
図2の網膜特徴データ218であり得る。
【0088】
ステップ506は、少なくとも1つの機械学習モデルを含む転帰予測因子を介して、複数の治療レジメンに対する複数の処置スコアを生成することを含む。1つまたは複数の実施形態では、機械学習モデルの各々が実装され得、回帰モデル、XGBoost、SVMモデル、ランダムフォレスト、および/または別のタイプの機械学習モデルを使用する。処置スコアの各々は、例えば、処置を受けている対象の予測される視力測定値(例えば、予測BCVA)、予測される視力変化(例えば、BCVAの予測変化)、予測されるCST、CSTの予測される低下、または何らかの他の種類の反応メトリックであり得る。処置スコアは、処置後の選択された時点、例えば、限定されないが、処置後6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、24ヶ月、または何らかの他の時間について、生成され得る。
【0089】
ステップ508は、複数の処置スコアに基づいて、複数の治療レジメンのうちの1つを対象の選択される治療レジメンとして選択することを含む。ステップ508は、
図4に関して上述したプロセス400のステップ408と同様の方法で実施され得る。
【0090】
IV.例示的な研究結果
一研究において、Q4W(すなわち、4週間ごと)で0.5mgのラニビズマブにより処置された324名の対象の眼からなるデータセットである。これらの対象は、ラニビズマブによる処置前、処置未経験であった。対象のベースラインBCVAは、20/40~20/320(すなわち、早期処置糖尿病性網膜症重症度(ETDRS)の文字による73~24)の範囲であった。全対象が50歳以上であった。
【0091】
ベンチマーク特徴(例えば、年齢、性別、ベースラインBCVA、ベースラインCST)に基づいて、対象での使用のための選択される治療レジメン(例えば、最適な治療レジメン)を予測するために訓練を行った。ベンチマーク特徴および撮像データから(例えば、SD-OCT画像から生成されたセグメント化画像から)得られた網膜特徴データに基づいて、選択される治療レジメンを同定するための訓練も行った。
【0092】
線形モデル、ランダムフォレストモデル、XGBoostモデル、およびサポートベクターマシンモデルのそれぞれは、ベンチマーク特徴およびベンチマーク特徴+網膜特徴の両方について処置スコア(例えば、9ヶ月目の予測されるBCVA)を予測するために開発された。最も高い処置スコアを有するレジメンを、選択される治療レジメンとして選択した。モデルのパフォーマンスを、ネストされた交差検証(5倍、10回反復)においてR2スコア(すなわち、決定係数)を使用して評価した。
【0093】
図6は、1つまたは複数の実施形態による異なるモデルの統計結果を示す表600である。表600は、線形モデル、ランダムフォレストモデル、XGBoostモデル、およびサポートベクターマシンモデルを使用して、ベンチマーク特徴と画像由来の網膜特徴の両方に基づいて処置スコアを計算することが、この特定の研究で良好に機能し、XGBoostが概して最も良好に機能することを示している。
【0094】
V.コンピュータ実装システム
図7は、様々な実施形態によるコンピュータシステムの一例を示すブロック図である。コンピュータシステム700は、
図1において上述されたコンピューティングプラットフォーム102の1つの実装形態の一例であり得る。1つまたは複数の例では、コンピュータシステム700は、情報を通信するためのバス702または他の通信機構と、情報を処理するためにバス702と結合されたプロセッサ704とを含むことができる。様々な実施形態では、コンピュータシステム700は、プロセッサ704によって実行される命令を判定するためにバス702に結合された、ランダムアクセスメモリ(RAM)706または他の動的記憶装置とすることができるメモリも含むことができる。メモリはまた、プロセッサ704によって実行される命令の実行中にテンポラリ変数または他の中間情報を記憶するために使用可能である。様々な実施形態では、コンピュータシステム700は、プロセッサ704のための静的情報および命令を記憶するためにバス702に結合された読み出し専用メモリ(ROM)708または他の静的記憶装置をさらに含むことができる。磁気ディスクまたは光ディスクなどの記憶装置710が設けられ、情報および命令を記憶するためにバス702に結合され得る。
【0095】
様々な実施形態では、コンピュータシステム700は、バス702を介して、コンピュータユーザに情報を表示するために、陰極線管(CRT)または液晶ディスプレイ(LCD)などのディスプレイ712に結合可能である。英数字および他のキーを含む入力デバイス714は、情報およびコマンド選択をプロセッサ704に通信するためにバス702に結合可能である。別のタイプのユーザ入力デバイスは、プロセッサ704に方向情報およびコマンド選択を通信し、かつディスプレイ712上のカーソル移動を制御するための、マウス、ジョイスティック、トラックボール、ジェスチャ入力デバイス、視線ベースの入力デバイス、またはカーソル方向キーなどのカーソルコントロール716である。この入力デバイス716は、典型的には、デバイスが平面内の位置を指定することを可能にする第1の軸(例えば、x)および第2の軸(例えば、y)の二軸の二自由度を有する。しかしながら、三次元(例えば、x、y、およびz)カーソル移動を可能にする入力デバイス716も本明細書で企図されることは理解されるべきである。
【0096】
本教示のある特定の実装形態と一致するように、プロセッサ704が、RAM706に含有される1つまたは複数の命令の1つまたは複数のシーケンスを実行することに応答して、結果がコンピュータシステム700によって提供可能である。そのような命令は、記憶装置710など、別のコンピュータ可読媒体またはコンピュータ可読記憶媒体からRAM706に読み込み可能である。RAM706に含有される命令のシーケンスの実行は、プロセッサ704に、本明細書に説明されるプロセスを実行させることができる。あるいは、本教示を実装するために、ソフトウェア命令の代わりに、またはソフトウェア命令と組み合わせて、ハードワイヤード回路が使用され得る。したがって、本教示の実装形態は、ハードウェア回路とソフトウェアとのいかなる特定の組合せにも限定されるものではない。
【0097】
本明細書で使用される「コンピュータ可読媒体」(例えば、データストア、データストレージ、データ記憶装置など)または「コンピュータ可読記憶媒体」という用語は、実行のためにプロセッサ704に命令を提供することに関与する任意の媒体を指す。そのような媒体は、不揮発性媒体、揮発性媒体、および伝送媒体を含むがこれらに限定されるものではない多くの形態をとることができる。不揮発性媒体の例は、限定はされないが、記憶装置710などの光学、固体、磁気ディスクを含むことができる。揮発性媒体の例は、限定はされないが、RAM706などの動的メモリを含むことができる。伝送媒体の例は、限定はされないが、バス702を備えるワイヤを含む、同軸ケーブル、銅線、および光ファイバを含むことができる。
【0098】
コンピュータ可読媒体の一般的な形態は、例えば、フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、または任意の他の磁気媒体、CD-ROM、任意の他の光学媒体、パンチカード、紙テープ、孔のパターンを有する任意の他の物理媒体、RAM、PROM、およびEPROM、フラッシュEPROM、任意の他のメモリチップまたはカートリッジ、またはコンピュータが読み取ることができる任意の他の有形媒体を含む。
【0099】
コンピュータ可読媒体に加えて、命令またはデータは、実行のためにコンピュータシステム700のプロセッサ704に1つまたは複数の命令のシーケンスを提供するために、通信装置またはシステムに含まれる伝送媒体上の信号として提供可能である。例えば、通信装置は、命令およびデータを示す信号を有するトランシーバを含み得る。命令およびデータは、1つまたは複数のプロセッサに、本明細書における開示に概説される機能を実装させるように構成されている。データ通信伝送接続の代表的な例は、これらに限定されるものではないが、電話モデム接続、ワイドエリアネットワーク(WAN)、ローカルエリアネットワーク(LAN)、赤外線データ接続、NFC接続、光通信接続などを含むことができる。
【0100】
本明細書に説明される方法、フローチャート、図、および付随する開示は、コンピュータシステム700をスタンドアロンデバイスとして使用して、またはクラウドコンピューティングネットワークなどの共有コンピュータ処理リソースの分散ネットワーク上で実装可能であることは理解されるべきである。
【0101】
本明細書に記載の方法論は、用途に応じて様々な手段によって実装され得る。例えば、これらの方法論は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはそれらの任意の組合せで実装され得る。ハードウェア実装形態の場合、処理ユニットは、1つまたは複数の特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理デバイス(DSPD)、プログラマブル論理デバイス(PLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明される機能を実施するように設計された他の電子ユニット、またはそれらの組合せ内に実装され得る。
【0102】
様々な実施形態において、本教示の方法は、C、C++、Pythonなどのような従来のプログラミング言語で書かれたファームウェアおよび/またはソフトウェアプログラムおよびアプリケーションとして実装され得る。ファームウェアおよび/またはソフトウェアとして実装される場合、本明細書に記載の実施形態は、コンピュータに上述の方法を実行させるためのプログラムが格納された非一時的コンピュータ可読媒体において実装され得る。本明細書に記載の様々なエンジンがコンピュータシステム700などのコンピュータシステム上に設けられ得、それによって、プロセッサ704は、メモリ構成要素RAM706、ROM708、または記憶装置710のいずれか1つ、またはそれらの組合せによって提供される命令、および入力デバイス714を介して提供されるユーザ入力にしたがって、これらのエンジンによって提供される分析および決定を実行することを理解されたい。
【0103】
VI.例示的な定義およびコンテキスト
本開示は、これらの例示的な実施形態および適用例、または例示的な実施形態および適用例が動作する、もしくは本明細書に記載される方法に限定されない。さらに、図は、簡略化されたまたは部分的な図を示す場合があり、図の要素の寸法は、誇張されているか、または比例していない場合がある。
【0104】
さらに、「~の上にある(on)」、「~に取り付けられている(attached to)」、「~に接続されている(connected to)」、「~に結合されている(coupled to)」という用語または同様の用語が本明細書で使用される際、1つの要素が別の要素の上に直接あるか、別の要素に直接取り付けられているか、別の要素に接続されているか、別の要素に結合されているか、または1つの要素と別の要素との間に1つまたは複数の介在要素が存在するかどうかにかかわらず、1つの要素(例えば、構成要素、材料、層、基板など)は、別の要素「の上にある」、「に取り付けられている」、「に接続されている」、または「に結合されている」可能性がある。さらに、要素のリスト(例えば、要素a、b、c)が参照される場合、そのような参照は、リスト化された要素のいずれか1つそれ自体、リスト化された要素のすべてより少ないものからなる任意の組合せ、および/または、リスト化された要素のすべての組合せを含むことが意図されている。本明細書におけるセクションの分割は、単に検討を容易にするためのものであり、説明された要素の任意の組合せを限定するものではない。
【0105】
「対象」という用語は、臨床治験の対象、処置を受ける人、抗がん剤の療法を受ける人、寛解または回復に向けてモニタリングされている人、(例えば、病歴により)予防健康分析を受ける人、または任意の他の人もしくは対象の患者を指す場合がある。様々な場合において、「対象」および「患者」は、本明細書では交換可能に使用され得る。
【0106】
特に定義されない限り、本明細書に記載の本教示に関連して使用される科学用語および技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。さらに、別段文脈によって示されない限り、単数形の用語は複数形を含むものとし、複数形の用語は単数形を含むものとする。一般に、本明細書に記載される化学、生化学、分子生物学、薬理学および毒物学に関連して利用される命名法ならびにそれらの技術は、当技術分野では周知であり、一般的に使用されるものである。
【0107】
本明細書で使用される場合、「実質的に」は、意図された目的のために機能するのに十分であることを意味する。したがって、「実質的に」という用語は、当業者によって予想されような、絶対的または完全な状態、寸法、測定値、結果などからのわずかな、有意でない変動を可能にするが、全体的な性能に目立つほど影響を及ぼさない。数値または数値として表すことのできるパラメータもしくは特性について、「実質的に」とは、10%以内を意味する。
【0108】
「1つ」という用語は、2つ以上を意味する。
【0109】
本明細書で使用される場合、「複数」という用語は、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上であり得る。
【0110】
本明細書で使用される場合、「のセット」という用語は、1つまたは複数を意味する。例えば、項目のセットは、1つまたは複数の項目を含む。
【0111】
本明細書で使用される際、「~のうちの少なくとも1つ」という語句は、項目のリストと共に使用されるとき、列挙された項目のうちの1つまたは複数の異なる組合せが使用されてよく、場合によっては、リストにおける項目のうちの1つのみが使用されることを意味する。項目は、特定の物体、物、ステップ、操作、プロセス、またはカテゴリであり得る。換言すれば、「のうちの少なくとも1つ」は、リストから項目の任意の組合せまたは任意の数の項目を使用し得るが、リスト内の項目のすべてが使用されるわけではないことを意味する。例えば、限定されないが、「項目A、項目B、または項目Cの少なくとも1つ」は項目A;項目Aおよび項目B;項目B;項A、項B、項C;項B、項C;または項目AおよびCを意味する。場合によっては、「項目A、項目B、または項目Cの少なくとも1つ」は、項目Aのうちの2つ、項目Bのうちの1つ、および項目Cの10;項目Bの4個と項目Cの7個;またはいくつかの他の適切な組合せを意味するが、これらに限定されない。
【0112】
本明細書で使用される際、「モデル」は、1つまたは複数のアルゴリズム、1つまたは複数の数学的手法、1つまたは複数の機械学習アルゴリズム、またはこれらの組合せを含んでよい。
【0113】
本明細書で使用される際、「機械学習」は、アルゴリズムを使用してデータを解析し、そこから学習し、次いで世界の何かについての判定または予測を行う実践であってよい。機械学習は、ルールベースのプログラミングに依存することなくデータから学習することができるアルゴリズムを使用する。
【0114】
本明細書で使用される「人工ニューラルネットワーク」または「ニューラルネットワーク」(NN)は、算出のコネクショニスティック手法に基づいて情報を処理する人工ニューロンの相互接続されたグループを模倣する数学的アルゴリズムまたは算出モデルを指し得る。ニューラルネットと呼ばれることもあるニューラルネットワークは、受信された入力について出力を予測するために、線形単位、非線形単位、またはその両方の1つまたは複数の層を用いることができる。いくつかのニューラルネットワークは、出力層に加えて1つまたは複数の隠れ層を含む。各隠れ層の出力は、ネットワーク内の次の層、すなわち、次の隠れ層または出力層への入力として使用される。ネットワークの各層は、各パラメータセットの現在の値に従って、受信した入力から出力を生成する。様々な実施形態において、「ニューラルネットワーク」への言及は、1つまたは複数のニューラルネットワークへの言及であり得る。
【0115】
ニューラルネットワークは2つのやり方で情報を処理し得、すなわち、ニューラルネットワークが訓練されているとき、ニューラルネットワークは訓練モードにあり、ニューラルネットワークが学習したものをニューラルネットワークが実践に移すとき、ニューラルネットワークは推論(または予測)モードにある。ニューラルネットワークは、出力が訓練データの出力と一致するように、ネットワークが中間隠れ層内の個々のノードの重み係数を調整する(その挙動を変更する)ことを可能にするフィードバックプロセス(例えば、バックプロパゲーション)を通じて学習する。換言すれば、ニューラルネットワークは、訓練データ(学習例)を供給されることによって学習し、最終的には、新たな範囲または入力のセットが提示された場合であっても、正しい出力に到達する方法を学習する。ニューラルネットワークは、例えば、限定はされないが、フィードフォワードニューラルネットワーク(FNN)、リカレントニューラルネットワーク(RNN)、モジュラーニューラルネットワーク(MNN)、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)、残差ニューラルネットワーク(ResNet)、常微分方程式ニューラルネットワーク(ニューラル-ODE)、または別のタイプのニューラルネットワークのうちの少なくとも1つを含み得る。
【0116】
VII.例示的な実施形態の列挙
実施形態1:血管新生加齢黄斑変性(nAMD)と診断された対象のベースラインデータを受信すること、複数の治療レジメンについてのベースラインデータおよびレジメンデータを使用して転帰予測因子のための複数の予測因子入力を形成することであって、複数の予測因子入力が、複数の治療レジメンのそれぞれについて異なる予測因子入力を含み、転帰予測因子が、少なくとも1つの機械学習モデルを含む、複数の予測因子入力を形成すること、転帰予測因子を介して、複数の予測因子入力を使用して複数の治療レジメンに対する複数の処置スコアを生成すること、および複数の処置スコアに基づいて、複数の治療レジメンのうちの1つを対象の選択される治療レジメンとして選択すること、を含む、方法。
【0117】
実施形態2:選択される治療レジメンが視力の改善を最大化し、注射頻度を最小化する、実施形態1に記載の方法。
【0118】
実施形態3:選択することが、複数の治療レジメンのうちの単一の治療レジメンまたは複数の治療レジメンのうちの多重治療レジメンがスコアの基準を満たすかどうかを判定することを含む、実施形態1または2に記載の方法。
【0119】
実施形態4:選択することが、スコアの基準を満たす単一の治療レジメンに応答して、単一の治療レジメンを対象の選択される治療レジメンとして選択すること、またはスコアの基準を満たす複数の治療レジメンに応答して、選択される治療レジメンとして対象の処置の負荷基準のセットを満たす複数の治療レジメンのうちの多重治療レジメンを特定することをさらに含む、実施形態3に記載の方法。
【0120】
実施形態5:処置の負荷基準のセットは、最も少ない注射回数、最も低い注射頻度、最も低い投与量、最も低い薬物の強度、モニタリングの程度の減少、または副作用の減少のうちの少なくとも1つを含む、実施形態4に記載の方法。
【0121】
実施形態6:生成することが、転帰予測因子を介して、複数の予測因子入力の各々を独立して処理して、複数の処置スコアを生成することを含む、実施形態1~5のいずれか一項に記載の方法。
【0122】
実施形態7:転帰予測因子は、複数の予測因子モデルを含み、複数の予測因子モデルの各々は、少なくとも1つの機械学習モデルを含み、複数の予測因子モデルの各々は、治療レジメンに対応する複数の予測因子入力の予測因子入力を使用して、複数の治療レジメンの対応する治療レジメンに対する複数の処置スコアの処置スコアを生成するように構成される、実施形態1~5のいずれか一項に記載の方法。
【0123】
実施形態8:ベースラインデータは、光干渉断層撮影(OCT)画像データ、視力測定値、中心サブフィールド厚、低輝度欠損、年齢、または性別のうちの少なくとも1つを含む臨床データ、またはベースラインの時点に対応するOCT画像データから生成されたセグメント化画像データから抽出された網膜特徴データのうちの少なくとも1つを含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0124】
実施形態9:複数の治療レジメンのうちの対応する1つに対するレジメンデータが、処置と、処置の投与頻度、投与スケジュール、またはモニタリングスケジュールのうちの少なくとも1つとを特定する、実施形態1~8のいずれか一項に記載の方法。
【0125】
実施形態10:処置スコアのそれぞれが予測視力測定値である、実施形態1~9のいずれか一項に記載の方法。
【0126】
実施形態11:少なくとも1つの機械学習モデルが、線形回帰モデル、ランダムフォレスト(RF)モデル、勾配ブースティング・マシン(GBM)モデル、エクストリーム勾配ブースティング(XGBoost)、またはサポートベクターマシン(SVM)モデルのうちの少なくとも1つを含む、実施形態1~10のいずれか一項に記載の方法。
【0127】
実施形態12:ベースラインの時点についての血管新生加齢黄斑変性(nAMD)と診断された対象についての臨床データおよび撮像データを受信すること、撮像データを使用して網膜特徴データを生成することであって、網膜特徴データが、病理関連特徴、層関連体積特徴、または層関連厚さのうちの少なくとも1つを含む、網膜特徴データを生成すること、少なくとも1つの機械学習モデルを含む転帰予測因子を介して、複数の治療レジメンに対する複数の処置スコアを生成すること、複数の処置スコアに基づいて、複数の治療レジメンのうちの1つを対象の選択される治療レジメンとして選択すること、を含む、方法。
【0128】
実施形態13:選択することが、複数の治療レジメンのうちの単一の治療レジメンまたは複数の治療レジメンのうちの多重治療レジメンがスコアの基準を満たすかどうかを判定することを含む、実施形態12に記載の方法。
【0129】
実施形態14:選択することが、スコアの基準を満たす単一の治療レジメンに応答して、単一の治療レジメンを対象の選択される治療レジメンとして選択すること、またはスコアの基準を満たす多重治療レジメンに応答して、選択される治療レジメンとして対象の処置の負荷基準のセットを満たす多重治療レジメンのうちの治療レジメンを特定することをさらに含む、実施形態13に記載の方法。
【0130】
実施形態15:臨床データが、ベースラインの時点についての視力測定値、中心サブフィールド厚、低輝度欠損、年齢、または性別のうちの少なくとも1つを含み、撮像データが光干渉断層法(OCT)画像データを含む、実施形態12~14のいずれか一項に記載の方法。
【0131】
実施形態16:処置スコアのそれぞれが予測視力測定値である、実施形態12~15のいずれか一項に記載の方法。
【0132】
実施形態17:少なくとも1つの機械学習モデルが、線形回帰モデル、ランダムフォレスト(RF)モデル、勾配ブースティング・マシン(GBM)モデル、エクストリーム勾配ブースティング(XGBoost)、またはサポートベクターマシン(SVM)モデルのうちの少なくとも1つを含む、実施形態12~16のいずれか一項に記載の方法。
【0133】
実施形態18:血管新生加齢黄斑変性と診断された対象に対する選択される治療レジメンを予測するためのシステムであって、機械実行可能コードを含む機械可読媒体を含有するメモリ、およびメモリに結合されたプロセッサを備え、プロセッサは、プロセッサに、血管新生加齢黄斑変性(nAMD)と診断された対象のベースラインデータを受信すること、複数の治療レジメンについてのベースラインデータおよびレジメンデータを使用して転帰予測因子のための複数の予測因子入力を形成することであって、複数の予測因子入力が、複数の治療レジメンのそれぞれについて異なる予測因子入力を含み、転帰予測因子が、少なくとも1つの機械学習モデルを含む、複数の予測因子入力を形成すること、転帰予測因子を介して、複数の予測因子入力を使用して複数の治療レジメンに対する複数の処置スコアを生成すること、および複数の処置スコアに基づいて、複数の治療レジメンのうちの1つを対象の選択される治療レジメンとして選択すること、を行わせる機械実行コードを実行するよう構成される、システム。
【0134】
実施形態19:選択される治療レジメンが視力の改善を最大化し、注射頻度を最小化する、実施形態18に記載のシステム。
【0135】
実施形態20:プロセッサは、プロセッサに、複数の治療レジメンのうちの単一の治療レジメンまたは複数の治療レジメンのうちの多重治療レジメンがスコアの基準を満たすかどうかを判定すること、およびスコアの基準を満たす単一の治療レジメンに応答して、単一の治療レジメンを対象の選択される治療レジメンとして選択すること、またはスコアの基準を満たす複数の治療レジメンに応答して、選択される治療レジメンとして対象の処置の負荷基準のセットを満たす複数の治療レジメンのうちの治療レジメンを特定すること、を行わせる機械実行コードを実行するようさらに構成される、実施形態18または19に記載のシステム。
【0136】
VIII.さらなる考察
本書のセクションおよびサブセクション間の見出しおよび小見出しは、読み易さを改善するために含まれるに過ぎず、特徴がセクションおよびサブセクションをまたいで組み合わされ得ないことを示唆するものではない。したがって、セクションおよびサブセクションは、別個の実施形態を説明するものではない。
【0137】
本開示のいくつかの実施形態は、1つまたは複数のデータプロセッサを含むシステムを含む。いくつかの実施形態では、システムは、1つまたは複数のデータプロセッサ上で実行されると、1つまたは複数のデータプロセッサに、本明細書に開示された1つまたは複数の方法の一部または全部および/または1つまたは複数のプロセスの一部または全部を実行させる命令を含む非一時的コンピュータ可読記憶媒体を含む。本開示のいくつかの実施形態は、非一時的機械可読記憶媒体に有形に具現化されたコンピュータプログラム製品であって、1つ以上のデータプロセッサに、本明細書に開示された1つ以上の方法の一部または全部ならびに/あるいは1つ以上のプロセスの一部または全部を実行させるように構成された命令を含んでいる、コンピュータプログラム製品を含む。
【0138】
使用された用語および表現は、限定ではなく説明の用語として使用され、そのような用語および表現の使用において、示されて説明された特徴の均等物またはその一部を除外する意図はないが、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で様々な変更が可能であることが認識される。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明は実施形態および任意の特徴によって具体的に開示されているが、本明細書に開示された概念の修正および変形は当業者によって使用されてもよく、このような修正および変形は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内にあるものと見なされることを理解されたい。
【0139】
その後の説明は、好ましい例示的な実施形態のみを提供し、本開示の範囲、適用可能性または構成を限定することを意図しない。むしろ、好ましい例示的な実施形態のその後の説明は、様々な実施形態を実装するための可能な説明を当業者に提供する。添付の特許請求の範囲に記載の趣旨および範囲から逸脱することなく、要素(例えば、ブロック図または概略図の要素、フロー図の要素など)の機能および配置に様々な変更が加えられ得ることが理解される。
【0140】
実施形態の完全な理解を提供するために、以下の説明において具体的な詳細が与えられる。しかしながら、これらの具体的な詳細なしで実施形態が実施され得ることが理解されよう。例えば、回路、システム、ネットワーク、プロセス、および他の構成要素は、実施形態を不必要な詳細で不明瞭にしないために、ブロック図の形態の構成要素として示されることがある。他の事例では、実施形態を不明瞭にすることを避けるために、周知の回路、プロセス、アルゴリズム、構造、および技術は不必要な詳細なしに示されることがある。
【0141】
本教示は様々な実施形態に関連して説明されているが、本教示がそのような実施形態に限定されることは意図されていない。逆に、本教示は、当業者によって理解されるように、様々な代替物、改変物、および均等物を包含する。
【0142】
様々な実施形態を説明する際に、本明細書は、特定の一連のステップとして方法および/またはプロセスを提示している場合がある。しかしながら、方法またはプロセスが本明細書に記載の特定の順序のステップに依存しない限り、方法またはプロセスは記載された特定の順序のステップに限定されるべきではなく、当業者は、順序が変更されてもよく、依然として様々な実施形態の趣旨および範囲内にあることを容易に理解することができる。
【国際調査報告】