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特表2025-505485変性剤、それを含む変性共役ジエン系重合体、および該重合体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-28
(54)【発明の名称】変性剤、それを含む変性共役ジエン系重合体、および該重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/18 20060101AFI20250220BHJP
   C08C 19/25 20060101ALI20250220BHJP
   C08F 8/42 20060101ALI20250220BHJP
【FI】
C07F7/18 W
C08C19/25
C08F8/42
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531143
(86)(22)【出願日】2023-06-09
(85)【翻訳文提出日】2024-05-23
(86)【国際出願番号】 KR2023007923
(87)【国際公開番号】W WO2024135957
(87)【国際公開日】2024-06-27
(31)【優先権主張番号】10-2022-0178529
(32)【優先日】2022-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・クォン・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ジェ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ス・ヨン・イ
(72)【発明者】
【氏名】キョン・ファン・オ
(72)【発明者】
【氏名】テ・ヒ・イ
【テーマコード(参考)】
4H049
4J100
【Fターム(参考)】
4H049VN01
4H049VP04
4H049VQ35
4H049VR21
4H049VR43
4H049VU16
4H049VW01
4J100AB02Q
4J100AS02P
4J100BA77H
4J100CA04
4J100CA27
4J100CA31
4J100DA01
4J100DA04
4J100FA03
4J100FA06
4J100FA19
4J100HA35
4J100HA55
4J100HC78
4J100JA29
(57)【要約】
本発明は、共役ジエン系重合体の変性に有用であり、充填剤との親和力に優れて、共役ジエン系重合体の配合物性を向上させることができる変性剤、前記変性剤由来の官能基を含む変性共役ジエン系重合体、および該変性共役ジエン系重合体の製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される変性剤。
【化1】
(前記化学式1中、
Aは、炭素数6~20のアリーレン基、または炭素数5~20のヘテロアリーレン基であり、
およびLは、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキレン基であり、
およびLは、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキレン基であり、
~Rは、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基または炭素数1~20のアルコキシ基であり、ここで、R~Rの少なくとも1つは炭素数1~20のアルコキシ基であり、R~Rの少なくとも1つは炭素数1~20のアルコキシ基である。)
【請求項2】
前記化学式1中、
Aは、炭素数6~10のアリーレン基、または炭素数5~10のヘテロアリーレン基である、請求項1に記載の変性剤。
【請求項3】
前記化学式1中、
およびLは、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキレン基であって、LおよびLは互いに同一であり、
およびLは、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキレン基であって、LおよびLは互いに同一である、請求項1に記載の変性剤。
【請求項4】
前記化学式1中、
~Rは、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルコキシ基である、請求項1に記載の変性剤。
【請求項5】
前記化学式1で表される変性剤が、下記化学式1Aおよび化学式1Bで表される化合物から選択される、請求項1に記載の変性剤。
【化2】
(前記化学式1Aおよび化学式1B中、
~L、R~Rの定義は、前記化学式1での定義のとおりである。)
【請求項6】
前記化学式1で表される変性剤が、下記化学式1-1および化学式1-2で表される化合物から選択される、請求項1に記載の変性剤。
【化3】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2022年12月19日付の韓国特許出願第10-2022-0178529号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、共役ジエン系重合体の変性に有用であり、充填剤との親和力に優れて、共役ジエン系重合体の配合物性を向上させることができる変性剤、前記変性剤由来の官能基を含む変性共役ジエン系重合体、および該変性共役ジエン系重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、自動車に対する低燃費化の要求に伴い、タイヤ用ゴム材料として、回転抵抗が少なく、耐磨耗性、引張特性に優れるとともに、ウェットスキッド抵抗性で代表される調整安定性も兼備した共役ジエン系重合体が求められている。
【0004】
タイヤの回転抵抗を減少させるための方法としては、加硫ゴムのヒステリシス損を小さくする方法が挙げられ、かかる加硫ゴムの評価指標としては、50℃~80℃の反発弾性、tanδ、グッドリッチ発熱などが用いられている。すなわち、前記温度での反発弾性が大きいか、tanδ、グッドリッチ発熱が小さいゴム材料が好ましい。
【0005】
ヒステリシス損の小さいゴム材料としては、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、またはポリブタジエンゴムなどが知られているが、これらは、ウェットスキッド抵抗性が小さいという問題がある。そこで、近年、スチレン-ブタジエンゴム(以下、SBRという)またはブタジエンゴム(以下、BRという)などの共役ジエン系重合体または共重合体が乳化重合や溶液重合により製造され、タイヤ用ゴムとして用いられている。中でも、乳化重合に比べて溶液重合が有する最も大きい利点は、ゴムの物性を規定するビニル構造の含量およびスチレンの含量を任意に調節することができ、カップリング(coupling)や変性(modification)などによって分子量および物性などが調節可能であるという点である。したがって、最終的に製造されたSBRやBRの構造の変化が容易であるとともに、鎖末端の結合や変性によって鎖末端の動きを減少させ、シリカまたはカーボンブラックなどの充填剤との結合力を増加させることができるため、溶液重合によるSBRがタイヤ用ゴム材料として多く用いられている。
【0006】
かかる溶液重合によるSBRがタイヤ用ゴム材料として用いられる場合、前記SBR中のビニルの含量を増加させることで、ゴムのガラス転移温度を上昇させることにより、走行抵抗および制動力などのタイヤに要求される物性を調節することができるだけでなく、ガラス転移温度を適宜調節することで、燃料消費を低減することができる。前記溶液重合によるSBRは、アニオン重合開始剤を用いて製造し、形成された重合体の鎖末端を種々の変性剤を用いて結合させたり、変性させたりして用いられている。例えば、米国特許第4,397,994号には、一官能性開始剤であるアルキルリチウムを用いて、非極性溶媒下でスチレン-ブタジエンを重合することで得られた重合体の鎖末端の活性アニオンを、スズ化合物などの結合剤を用いて結合させた技術が提示されている。
【0007】
一方、タイヤトレッドの補強性充填剤として、カーボンブラックおよびシリカなどが用いられているが、補強性充填剤としてシリカを用いる場合、低ヒステリシス損失性およびウェットスキッド抵抗性が向上するという利点がある。しかしながら、疎水性表面のカーボンブラックに比べて、親水性表面のシリカはゴムとの親和性が低いため、分散性が悪いという欠点を有する。したがって、分散性を改善させるか、シリカとゴムとを結合させるための別のシランカップリング剤を使用する必要がある。そこで、ゴム分子の末端部に、シリカとの親和性や反応性を有する官能基を導入する方案が行われているが、その効果が十分ではない状況である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】US4397994A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、共役ジエン系重合体の変性に有用であり、充填剤との親和力に優れて、共役ジエン系重合体の配合物性を向上させることができる変性剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明は、新規な構造の変性剤を提供する。
【0011】
(1)本発明は、下記化学式1で表される変性剤を提供する。
【0012】
【化1】
【0013】
前記化学式1中、
Aは、炭素数6~20のアリーレン基、または炭素数5~20のヘテロアリーレン基であり、
およびLは、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキレン基であり、
およびLは、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキレン基であり、
~Rは、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基または炭素数1~20のアルコキシ基であり、ここで、R~Rの少なくとも1つは炭素数1~20のアルコキシ基であり、R~Rの少なくとも1つは炭素数1~20のアルコキシ基である。
【0014】
(2)本発明は、前記化学式1中、Aは、炭素数6~10のアリーレン基、または炭素数5~10のヘテロアリーレン基である、前記(1)に記載の変性剤を提供する。
【0015】
(3)本発明は、前記化学式1中、LおよびLは、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキレン基であって、LおよびLは互いに同一であり、LおよびLは、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキレン基であって、LおよびLは互いに同一である、前記(1)または(2)に記載の変性剤を提供する。
【0016】
(4)本発明は、前記化学式1中、R~Rは、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルコキシ基である、前記(1)~(3)の何れかに記載の変性剤を提供する。
【0017】
(5)本発明は、前記化学式1で表される変性剤が、下記化学式1Aおよび化学式1Bで表される化合物から選択される、前記(1)~(4)の何れかに記載の変性剤を提供する。
【0018】
【化2】
【0019】
【化3】
【0020】
前記化学式1Aおよび化学式1B中、
~L、R~Rの定義は、前記化学式1での定義のとおりである。
【0021】
(6)本発明は、前記化学式1で表される変性剤が、下記化学式1-1および化学式1-2で表される化合物から選択される、前記(1)~(5)の何れかに記載の変性剤を提供する。
【0022】
【化4】
【0023】
【化5】
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る変性剤を用いて、高い変性率で変性共役ジエン系重合体を製造することができ、充填剤との親和性に優れ、優れた加工性特性および配合物性を示す変性共役ジエン系重合体を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明が容易に理解されるように、本発明をより詳細に説明する。
【0026】
本発明の説明および特許請求の範囲で用いられている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈すべきである。
【0027】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0028】
用語の定義
本発明において用いる用語「置換」は、官能基、原子団、または化合物の水素が特定の置換基で置換されることを意味し、官能基、原子団、または化合物の水素が特定の置換基で置換される場合、官能基、原子団、または化合物中に存在する水素の個数に応じて、1個または2個以上の複数の置換基が存在し得る。また、複数の置換基が存在する場合、それぞれの置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0029】
本発明において用いる用語「アルキル基(alkyl group)」は、1価の脂肪族飽和炭化水素を意味し、メチル、エチル、プロピル、およびブチルなどの直鎖状アルキル基、およびイソプロピル(isopropyl)、sec-ブチル(sec-butyl)、tert-ブチル(tert-butyl)、およびネオペンチル(neo-pentyl)などの分岐状アルキル基の両方を含み得る。
【0030】
本発明において用いる用語「アルキレン基(alkylene group)」は、メチレン、エチレン、プロピレン、およびブチレンなどの2価の脂肪族飽和炭化水素を意味し得る。
【0031】
本発明において用いる用語「アルコキシ基(alkoxy group)」は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、およびブトキシなどのように、アルキル基の末端の水素が酸素原子で置換された官能基、原子団、または化合物を何れも含む意味であり得る。
【0032】
本発明において用いる用語「ヘテロアルキル基(heteroalkyl group)」は、アルキル基中の炭素原子(末端の炭素原子は除く)が、1個以上のヘテロ原子で置換されたアルキル基を意味し得る。
【0033】
本発明において用いる用語「シクロアルキル基(cycloalkyl group)」は、環状の飽和炭化水素を意味し得る。
【0034】
本発明において用いる用語「アリール基(aryl group)」は、芳香族炭化水素を意味し、また、1つの環が形成された単環芳香族炭化水素(monocyclic aromatic hydrocarbon)、または2つ以上の環が結合された多環芳香族炭化水素(polycyclic aromatic hydrocarbon)の両方を含む意味であり得る。
【0035】
本発明において用いる用語「ヘテロアリール基(heteroaryl group)」は、アリール基中の炭素原子が1つ以上のヘテロ原子で置換されたアリール基を何れも含む意味であり得る。
【0036】
本発明において、用語「由来の単位」および「由来の官能基」は、ある物質に起因した成分、構造、またはその物質自体を意味し得る。
【0037】
本発明は、下記化学式1で表される変性剤を提供する。
【0038】
【化6】
【0039】
前記化学式1中、
Aは、炭素数6~20のアリーレン基、または炭素数5~20のヘテロアリーレン基であり、
およびLは、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキレン基であり、
およびLは、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキレン基であり、
~Rは、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基または炭素数1~20のアルコキシ基であり、ここで、R~Rの少なくとも1つは炭素数1~20のアルコキシ基であり、R~Rの少なくとも1つは炭素数1~20のアルコキシ基である。
【0040】
具体的に、前記化学式1中、Aは、炭素数6~20のアリーレン基、または炭素数5~20のヘテロアリーレン基であり、炭素数6~10のアリーレン基、または炭素数5~10のヘテロアリーレン基であってよい。具体的に、前記Aは、フェニレン基、ナフタレン基、ビフェニレン基、アントラセニレン基、フェナントレニレン基、フルオレニレン基などのアリーレン基であり、異種元素としてO、N、S、およびP原子のうち1個以上を含むヘテロアリーレン基であってよく、ピリジニレン基、ピリミジニレン基、トリアジニレン基、チオフェニレン基、フラニレン基、ジベンゾチオフェニレン基、ジベンゾフラニレン基、カルバゾリレン基などであってよい。
【0041】
具体的に、前記化学式1中、L~Lは、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキレン基であり、LおよびLは、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキレン基であって、LおよびLは互いに同一であり、LおよびLは、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキレン基であって、LおよびLは互いに同一であってよい。例えば、LおよびLは互いに同一であり、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数1~6のアルキレン基、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などであってよく、LおよびLは互いに同一であり、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数1~6のアルキレン基、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などであってよく、L~Lは何れもプロピレン基であってよい。
【0042】
具体的に、前記化学式1中、R~Rは、炭素数1~10のアルキル基または炭素数1~20のアルコキシ基であり、ここで、R~Rの少なくとも1つは炭素数1~20のアルコキシ基であり、R~Rの少なくとも1つは炭素数1~20のアルコキシ基である。より具体的に、前記R~Rは、何れも炭素数1~10のアルコキシ基であってよく、例えば、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~3のアルコキシ基、メトキシ基、エトキシ基などであってよい。
【0043】
具体的に、前記化学式1で表される変性剤は、下記化学式1Aおよび化学式1Bで表される化合物から選択されるものであってよい。
【0044】
【化7】
【0045】
【化8】
【0046】
前記化学式1Aおよび化学式1B中、
~L、R~Rの定義は、前記化学式1での定義のとおりである。
【0047】
前記化学式1で表される変性剤は、従来の変性剤と比べてアルコキシシラン官能基を多く含むため、高分子量の変性共役ジエン系重合体の製造が可能であり、O、Nなどのシリカ親和性官能基が存在するため、シリカ系充填剤との相互作用により優れた配合物性を示すことができる。また、化学式1で表される変性剤自体が構造的に平面を成すため、変性工程の時に重合体との結合反応が容易に進行されることができる。
【0048】
前記化学式1で表される変性剤は、下記化学式1-1および化学式1-2で表される化合物から選択されるものであってよい。
【0049】
【化9】
【0050】
【化10】
【0051】
本発明に係る前記化学式1で表される変性剤は、下記化学式2で表される化合物と、下記化学式3または化学式4で表される化合物とを反応させるステップにより製造されることができる。
【0052】
【化11】
【0053】
【化12】
【0054】
【化13】
【0055】
前記化学式2中、AおよびAは、それぞれ独立して、ハロゲン元素であり、具体的にClであってよい。
【0056】
前記化学式2~4中、各置換基についての定義は、上記の定義のとおりである。
【0057】
前記ステップで、化学式2で表される化合物と、化学式3または化学式4で表される化合物は、1:1.5~1:5.0のモル比、1:1.5~1:3.0のモル比、または1:1.5~1:2.5のモル比で反応させてよい。
【0058】
前記ステップで、化学式2で表される化合物と、化学式3または化学式4で表される化合物との反応は、20~200℃、30~180℃、または40~150℃の温度で1~72時間行ってよい。
【0059】
本発明の前記化学式1で表される変性剤を用いて、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を含み、少なくとも一側末端に前記化学式1で表される変性剤由来の官能基を含む、変性共役ジエン系重合体を製造することができる。
【0060】
前記共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位は、共役ジエン系単量体が重合時に成す繰り返し単位を意味し、前記共役ジエン系単量体は、一例として、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、ピペリレン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、イソプレン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、および2-ハロ-1,3-ブタジエン(ハロは、ハロゲン原子を意味する)からなる群から選択される1種以上であってよい。
【0061】
一方、前記変性共役ジエン系共重合体は、一例として、前記共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位とともに、芳香族ビニル単量体由来の繰り返し単位をさらに含む共重合体であってよい。
【0062】
前記芳香族ビニル単量体由来の繰り返し単位は、芳香族ビニル単量体が重合時に成す繰り返し単位を意味し、前記芳香族ビニル単量体は、一例として、スチレン、α-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、1-ビニルナフタレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-(p-メチルフェニル)スチレン、および1-ビニル-5-ヘキシルナフタレンからなる群から選択される1種以上であってよい。
【0063】
前記変性共役ジエン系重合体が芳香族ビニル単量体由来の繰り返し単位を含む共重合体である場合、前記変性共役ジエン系重合体は、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を最小20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、55重量%、もしくは60重量%で含み、最大95重量%、90重量%、もしくは80重量%で含んでよく、芳香族ビニル単量体由来の繰り返し単位を最小5重量%、10重量%、もしくは20重量%で含み、最大80重量%、70重量%、60重量%、55重量%、50重量%、45重量%、もしくは40重量%で含んでよい。この範囲内である場合に、回転抵抗、ウェットスキッド抵抗性、および耐磨耗性に優れる効果がある。
【0064】
本発明の一実施形態によると、前記共重合体はランダム共重合体であってよく、この場合、各物性間のバランスに優れる効果がある。前記ランダム共重合体は、共重合体を成す繰り返し単位が無秩序に配列されたものを意味し得る。
【0065】
本発明の一実施形態に係る前記変性共役ジエン系重合体は、数平均分子量(Mn)が10,000g/mol~2,000,000g/mol、50,000g/mol~1,800,000g/mol、または120,000g/mol~1,500,000g/molであってよく、重量平均分子量(Mw)が10,000g/mol~5,000,000g/mol、100,000g/mol~3,500,000g/mol、または120,000g/mol~2,000,000g/molであってよい。この範囲内である場合に、回転抵抗およびウェットスキッド抵抗性に優れる効果がある。さらに他の例として、前記変性共役ジエン系重合体は、分子量分布(Mw/Mn)が1.0~8.0、1.0~4.0、または1.0~3.5であってよく、この範囲内である場合に、物性間のバランスに優れる効果がある。
【0066】
ここで、前記重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)はそれぞれ、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により分析されるポリスチレン換算分子量であり、分子量分布(Mw/Mn)は多分散性(polydispersity)とも呼ばれ、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で計算したものである。
【0067】
さらに他の例として、前記変性共役ジエン系重合体は、ムーニー粘度(Mooney viscosity)が100℃で20~150であり、140℃で20~150であってよい。この範囲内である場合に、加工性および生産性に優れる効果がある。
【0068】
ここで、前記ムーニー粘度は、ムーニー粘度計、例えば、MV2000E(ALPHA Technologies社)のLarge Rotorを用いて、100℃および140℃、Rotor Speed 2±0.02rpmの条件で測定する。具体的に、重合体を室温(23±5℃)で30分以上放置した後、27±3gを採取してダイキャビティの内部に満たしておき、プラテン(platen)を作動させてトルクを印加しながら測定する。
【0069】
また、前記変性共役ジエン系重合体は、ビニルの含量が5重量%以上、10重量%以上、または10重量%~60重量%であってよく、この範囲内である場合に、ガラス転移温度が適切な範囲に調節されるため、回転抵抗、ウェットスキッド抵抗性、および低燃費性に優れる効果がある。ここで、前記ビニルの含量は、ビニル基を有する単量体と芳香族ビニル系単量体からなる共役ジエン系共重合体100重量%に対して、1,4-添加ではなく1,2-添加された共役ジエン系単量体の含量を意味し得る。
【0070】
一方、本発明において用いる用語「由来の繰り返し単位」、「由来の官能基」、および「由来基」は、ある物質に起因した成分、構造、またはその物質自体を意味し得る。
【0071】
変性共役ジエン系重合体の製造方法
また、本発明は、前記変性共役ジエン系重合体の製造方法を提供する。
【0072】
本発明の一実施形態に係る前記変性共役ジエン系重合体の製造方法は、(S1)有機金属化合物を含む炭化水素溶媒中で、共役ジエン系単量体、または芳香族ビニル系単量体および共役ジエン系単量体を重合することで、有機金属が結合された活性重合体を製造するステップ(ステップ1)と、(S2)前記活性重合体と、下記化学式1で表される変性剤とを反応させるステップ(ステップ2)と、を含むことを特徴とする。
【0073】
【化14】
【0074】
前記化学式1の各置換基についての定義は、上記の定義のとおりである。
【0075】
前記ステップ1は、有機金属化合物が結合された活性重合体を製造するためのステップであり、有機金属化合物を含む炭化水素溶媒中で、共役ジエン系単量体、または芳香族ビニル系単量体および共役ジエン系単量体を重合することで行うことができる。
【0076】
前記炭化水素溶媒は、特に制限されるものではないが、例えば、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、イソオクタン、シクロヘキサン、トルエン、ベンゼン、およびキシレンからなる群から選択される1種以上であってよい。
【0077】
前記共役ジエン系単量体および芳香族ビニル系単量体は、上記の定義のとおりである。
【0078】
本発明の一実施形態によると、前記有機金属化合物は、単量体の総100gを基準として、0.01~10mmol、0.05~5mmol、0.1~2mmol、0.1~1mmol、0.15~0.8mmolで用いられてよい。
【0079】
前記有機金属化合物は、一例として、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、n-ブチルリチウム、s-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、n-デシルリチウム、t-オクチルリチウム、フェニルリチウム、1-ナフチルリチウム、n-エイコシルリチウム、4-ブチルフェニルリチウム、4-トリルリチウム、シクロヘキシルリチウム、3,5-ジ-n-ヘプチルシクロヘキシルリチウム、4-シクロペンチルリチウム、ナフチルナトリウム、ナフチルカリウム、リチウムアルコキシド、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド、リチウムスルホネート、ナトリウムスルホネート、カリウムスルホネート、リチウムアミド、ナトリウムアミド、カリウムアミド、およびリチウムイソプロピルアミドからなる群から選択される1種以上であってよい。
【0080】
一方、前記ステップ1における重合は極性添加剤を含んで行ってよく、前記極性添加剤は、単量体の総100gを基準として0.001g~50g、0.001g~10g、0.005g~0.2g、または0.01g~0.2g添加してよい。
【0081】
また、前記極性添加剤は、テトラヒドロフラン、2,2-ジ(テトラヒドロフリル)プロパン、ジエチルエーテル、シクロペンチルエーテル、ジプロピルエーテル、エチレンジメチルエーテル、ジエチルグリコール、ジメチルエーテル、3級ブトキシエトキシエタン、ビス(3-ジメチルアミノエチル)エーテル、(ジメチルアミノエチル)エチルエーテル、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、およびテトラメチルエチレンジアミンからなる群から選択される1種以上であり、具体的には、トリエチルアミンまたはテトラメチルエチレンジアミンであってよい。前記極性添加剤を含む場合、共役ジエン系単量体、または共役ジエン系単量体および芳香族ビニル系単量体を共重合させる際に、それらの反応速度の差を補完することにより、ランダム共重合体が容易に形成されるように誘導する効果がある。
【0082】
前記ステップ1における重合は、一例として、アニオン重合であってよく、具体的な例として、アニオンによる成長重合反応によって重合末端にアニオン活性部位を有するリビングアニオン重合であってよい。また、前記ステップ1における重合は、昇温重合、等温重合、または定温重合(断熱重合)であってよい。前記定温重合は、有機金属化合物を投入した後に任意に熱を加えず、その自体の反応熱で重合させるステップを含む重合方法を意味し、前記昇温重合は、前記有機金属化合物を投入した後に任意に熱を加えて温度を増加させる重合方法を意味し、前記等温重合は、前記有機金属化合物を投入した後に熱を加えて熱を増加させたり、熱を奪うことで、重合物の温度を一定に維持する重合方法を意味し得る。
【0083】
また、前記ステップ1における重合は、一例として、-20~80℃、0~80℃または10~80℃、10~70℃の温度範囲で行ってよい。
【0084】
前記ステップ1により製造された活性重合体は、重合体アニオンと有機金属カチオンが結合された重合体を意味し得る。
【0085】
前記ステップ2は、変性共役ジエン系重合体を製造するために、前記活性重合体と前記化学式1で表される変性剤とを反応させるステップである。
【0086】
本発明の一実施形態によると、前記化学式1で表される変性剤は、単量体の総100gを基準として0.1~100g、0.1~50g、具体的に0.1~25gの量で用いられてよい。
【0087】
また、本発明の一実施形態によると、前記化学式1で表される変性剤と有機金属化合物は、1:0.1~1:10のモル比、1:0.1~1:5のモル比、または1:0.2~1:4のモル比で用いられてよく、この範囲内である場合に、最適性能の変性反応を行うことができる。
【0088】
前記ステップ2の反応は、活性重合体に、前記変性剤に由来の官能基を導入させるための変性反応であり、0℃~90℃で1分~5時間反応を行ってよい。
【0089】
また、本発明の一実施形態によると、前記変性共役ジエン系重合体の製造方法は、回分式(バッチ式)、または1種以上の反応器を含む連続式重合方法により行ってよい。
【0090】
前記変性共役ジエン系重合体の製造方法は、一例として、本発明の前記ステップ2に引き続き、必要に応じて、溶媒および未反応単量体を回収および乾燥するステップのうち1以上のステップをさらに含んでよい。
【0091】
ゴム組成物
さらに、本発明は、前記変性共役ジエン系重合体を含むゴム組成物を提供する。
【0092】
本発明の一実施形態に係る前記ゴム組成物は、前記変性共役ジエン系重合体を10重量%以上、10重量%~100重量%、または20重量%~90重量%の量で含んでよい。この範囲内である場合に、引張強度、耐磨耗性などの機械的物性に優れるとともに、各物性間のバランスに優れる効果がある。
【0093】
また、前記ゴム組成物は、前記変性共役ジエン系重合体以外に、必要に応じて、他のゴム成分をさらに含んでよく、この際、前記ゴム成分は、ゴム組成物の総重量に対して90重量%以下の含量で含まれてよい。具体的な例として、前記他のゴム成分は、前記変性共役ジエン系重合体100重量部に対して1重量部~900重量部で含まれてよい。
【0094】
前記ゴム成分は、一例として、天然ゴムまたは合成ゴムであってよく、具体的な例として、シス-1,4-ポリイソプレンを含む天然ゴム(NR);前記一般的な天然ゴムを変性または精製した、エポキシ化天然ゴム(ENR)、脱蛋白天然ゴム(DPNR)、水素化天然ゴムなどの変性天然ゴム;スチレン-ブタジエン共重合体(SBR)、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン-プロピレン共重合体、ポリイソブチレン-コ-イソプレン、ネオプレン、ポリ(エチレン-コ-プロピレン)、ポリ(スチレン-コ-ブタジエン)、ポリ(スチレン-コ-イソプレン)、ポリ(スチレン-コ-イソプレン-コ-ブタジエン)、ポリ(イソプレン-コ-ブタジエン)、ポリ(エチレン-コ-プロピレン-コ-ジエン)、ポリスルフィドゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、ハロゲン化ブチルゴムなどの合成ゴムであってよく、これらのうち何れか1つまたは2つ以上の混合物が使用可能である。
【0095】
前記ゴム組成物は、一例として、本発明の変性共役ジエン系重合体100重量部に対して、0.1重量部~200重量部、または10重量部~120重量部の充填剤を含んでよい。前記充填剤は、一例として、シリカ系充填剤であってよく、具体的な例として、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、またはコロイドシリカなどであってよく、好ましくは、破壊特性の改良効果およびウェットグリップ性(wet grip)の両立効果が最も高い湿式シリカであってよい。また、前記ゴム組成物は、必要に応じて、カーボンブラック系充填剤をさらに含んでよい。
【0096】
他の例として、前記充填剤としてシリカが用いられる場合、補強性および低発熱性を改善するためのシランカップリング剤がともに用いられてよい。具体的な例として、前記シランカップリング剤は、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、またはジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィドなどであってよく、これらのうち何れか1つまたは2つ以上の混合物が使用可能である。好ましくは、補強性の改善効果を考慮すると、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドまたは3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィドであってよい。
【0097】
また、本発明の一実施形態に係る前記ゴム組成物は、ゴム成分として、活性部位にシリカとの親和性が高い官能基が導入された変性共役ジエン系重合体が用いられているため、シランカップリング剤の配合量が通常の場合よりも低減されることができる。したがって、前記シランカップリング剤は、シリカ100重量部に対して、1重量部~20重量部、または5重量部~15重量部で用いられてよい。この範囲内である場合に、カップリング剤としての効果が十分に発揮されながらも、ゴム成分のゲル化が防止される効果がある。
【0098】
本発明の一実施形態に係る前記ゴム組成物は、硫黄架橋性であってよく、加硫剤をさらに含んでよい。前記加硫剤は、具体的に、硫黄粉末であってよく、ゴム成分100重量部に対して0.1重量部~10重量部で含まれてよい。この範囲内である場合に、加硫ゴム組成物が必要とする弾性率および強度を確保するとともに、低燃費性に優れる効果がある。
【0099】
本発明の一実施形態に係る前記ゴム組成物は、上記の成分の他に、ゴム工業界で通常用いられる各種添加剤、具体的には、加硫促進剤、プロセス油、可塑剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華(zinc white)、ステアリン酸、熱硬化性樹脂、または熱可塑性樹脂などをさらに含んでよい。
【0100】
前記加硫促進剤としては、一例として、M(2-メルカプトベンゾチアゾール)、DM(ジベンゾチアジルジスルフィド)、CZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド)などのチアゾール系化合物、もしくはDPG(ジフェニルグアニジン)などのグアニジン系化合物が使用可能であり、ゴム成分100重量部に対して0.1重量部~5重量部で含まれてよい。
【0101】
前記プロセス油は、ゴム組成物中で軟化剤として作用するものであって、一例として、パラフィン系、ナフテン系、または芳香族系化合物であってよく、引張強度および耐磨耗性を考慮すると芳香族系プロセス油が、ヒステリシス損および低温特性を考慮するとナフテン系またはパラフィン系プロセス油が使用できる。前記プロセス油は、一例として、ゴム成分100重量部に対して100重量部以下の含量で含まれてよく、この範囲内である場合に、加硫ゴムの引張強度、低発熱性(低燃費性)の低下を防止する効果がある。
【0102】
前記老化防止剤は、一例として、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、またはジフェニルアミンとアセトンの高温縮合物などであってよく、ゴム成分100重量部に対して0.1重量部~6重量部で用いられてよい。
【0103】
本発明の一実施形態に係る前記ゴム組成物は、前記配合処方に応じて、バンバリーミキサー、ロール、インターナルミキサーなどの混練機を用いて混練することで得られ、成形加工後、加硫工程により、低発熱性および耐磨耗性に優れたゴム組成物が得られる。
【0104】
これにより、前記ゴム組成物は、タイヤトレッド、アンダトレッド、サイドウォール、カーカスコーティングゴム、ベルトコーティングゴム、ビードフィラー、チェーファー、またはビードコーティングゴムなどのタイヤの各部材や、防塵ゴム、ベルトコンベア、ホースなどの各種工業用ゴム製品の製造において有用である。
【0105】
尚、本発明は、前記ゴム組成物を用いて製造されたタイヤを提供する。
【0106】
前記タイヤは、タイヤまたはタイヤトレッドを含んでよい。
【0107】
実施例
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明する。しかし、下記実施例は、本発明を例示するためのものであって、これらのみによって本発明の範囲が限定されるものではない。
【0108】
製造例1
(1)1,4-ビス(3-クロロプロポキシ)ベンゼンの合成
250mLのフラスコに、ヒドロキノン(5.0g、45.4mmol)、1-ブロモ-3-クロロプロパン(11.2g)、リン酸カリウム(38.56g)、メタノール(45.4mL)を入れ、一晩還流した。反応後に水、ジクロロメタンで終結させた。最終的に乾燥して生成物を得た。
1H NMR(CDCl3, 500 MHz): 6.84 ppm(s, 4H), 4.07 ppm(m, 4H), 3.74 ppm(m, 4H), 2.21 ppm(m, 4H)
【0109】
(2)3,3’-(1,4-フェニレンビス(オキシ)ビス(N,N-ビス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)プロパン-1-アミンの合成
100mLのフラスコに、1,4-ビス(3-クロロプロポキシ)ベンゼン(5.7g、21.8mmol)、トリメチルアミン(4.6mL)、ビス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミン(15.7mL)を入れ、150℃で一晩撹拌した。反応完了後、濾過し、真空乾燥して生成物を得た。
H核磁気共鳴分光学的スペクトルを観察し、下記化学式で表される化合物であることを確認した。
1H NMR(CDCl3, 500 MHz): 6.80 ppm(s, 4H), 3.93 ppm(m, 4H), 3.55 ppm(s, 36H), 2.57 ppm(m, 4H), 2.41 ppm(m, 8H), 1.86 ppm(m, 4H), 1.53 ppm(m, 8H), 0.60 ppm(m, 8H)
【0110】
【化15】
【0111】
製造例2
(1)1,5-ビス(3-クロロプロポキシ)ナフタレンの合成
250mLのフラスコに、ナフタレン-1,5-ジオール(5.0g、31.2mmol)、1-ブロモ-3-クロロプロパン(7.72g)、リン酸カリウム(26.5g)、メタノール(31.2mL)を入れ、一晩還流した。反応後に、水、ジクロロメタンで終結させた。最終的に乾燥して生成物を得た。
1H NMR(CDCl3, 500 MHz): 7.81 ppm(m, 2H), 7.38 ppm(m, 2H), 6.86 ppm(m, 2H), 4.28 ppm(m, 4H), 3.70 ppm(m, 4H), 2.46 ppm(m, 4H)
【0112】
(2)3,3’-(ナフタレン-1,5-ジイルビス(オキシ))ビス(N,N-ビス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)プロパン-1-アミン)の合成
100mLのフラスコに、1,5-ビス(3-クロロプロポキシ)ナフタレン(5.1g、16.3mmol)、トリメチルアミン(6.8mL)、ビス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミン(11.8mL)を入れ、150℃で一晩撹拌した。反応完了後、濾過し、真空乾燥して生成物を得た。
H核磁気共鳴分光学的スペクトルを観察し、下記化学式で表される化合物であることを確認した。
【0113】
1H NMR(CDCl3, 500 MHz): 7.79 ppm(s, 2H), 7.33 ppm(s, 2H), 4.18 ppm(m, 4H), 3.55 ppm(s, 36H), 2.95 ppm(m, 4H), 2.62 ppm(m, 4H), 1.67 ppm(m, 8H), 1.31 ppm(m, 8H), 0.62 ppm(m, 8H)
【0114】
【化16】
【0115】
実施例1
20Lのオートクレーブ反応器に、n-ヘキサン4.733g、スチレン375.0g、1,3-ブタジエン593.8g、および極性添加剤としてN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)1.4gを投入した後、n-ブチルリチウム5.0g(10wt% in n-ヘキサン)を投入し、反応器の内部温度を40℃に調整して断熱昇温反応を進行させた。30分程度経過した後、1,3-ブタジエン31.3gを投入して重合体の末端をブタジエンでキャッピングした。
【0116】
その後、変性剤として、製造例1で製造した化学式1-1で表される化合物を2.0g添加した([TMEDA]:[act.Li]=3.1:1モル比、[変性剤]:[act.Li]=0.3:1モル比)。その後、エタノールを用いて反応を停止させ、酸化防止制であるWingstay Kがヘキサンに30重量%溶解されている溶液17gを添加した。その結果として得られた重合物をスチームで加熱された温水に入れ、撹拌して溶媒を除去した後、ロール乾燥して残量の溶媒と水を除去し、変性スチレン-ブタジエン共重合体を製造した。
【0117】
実施例2
変性剤として、前記製造例2で製造した化学式1-2で表される化合物を2.2g投入したことを除き、実施例1と同様に変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0118】
比較例1
変性剤としてSiCl4を0.64g使用し、[変性剤]:[act.Li]=0.48:1のモル比としたことを除き、前記実施例1と同様に変性スチレン-ブタジエン共重合体を製造した。
【0119】
比較例2
変性剤でとしてN-メチル-3-(トリメトキシシリル)-N-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)プロパン-1-アミンを0.97g使用し、[変性剤]:[act.Li]=0.35:1のモル比としたことを除き、前記実施例1と同様に変性スチレン-ブタジエン共重合体を製造した。
【0120】
比較例3
変性剤としてトリス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミンを1.4g使用し、[変性剤]:[act.Li]=0.36:1のモル比としたことを除き、前記実施例1と同様に変性スチレン-ブタジエン共重合体を製造した。
【0121】
実験例1
前記実施例および比較例で製造した変性共役ジエン系重合体に対して、重合体中のスチレン単位の含量およびビニルの含量、重量平均分子量(Mw、×10g/mol)、数平均分子量(Mn、×10g/mol)、分子量分布(MWD)、およびムーニー粘度(MV)をそれぞれ測定した。
【0122】
1)スチレン結合の含量および1,2-ビニル結合の含量
各重合体中のスチレン結合の含量(SM)および1,2-ビニル結合の含量(Vi)は、Varian VNMRS 500 MHz NMRを用いて測定および分析した。NMR測定時に、溶媒としては1,1,2,2-テトラクロロエタンを使用し、溶媒ピーク(solvent peak)は6.00ppmで計算し、7.2~6.9ppmはランダムスチレン、6.9~6.2ppmはブロックスチレン、5.8~5.1ppmは1,4-ビニルおよび1,2-ビニル、5.1~4.5ppmは1,2-ビニルのピークとして、スチレン単位結合の含量および1,2-ビニル結合の含量を計算した。
【0123】
2)重量平均分子量、数平均分子量、分子量分布
前記重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)はGPC(Gel permeation chromatograph)分析により測定し、分子量分布(MWD、Mw/Mn)は、測定された前記各分子量から計算して得た。
【0124】
具体的に、前記GPCは、PLgel Olexis(Polymer Laboratories社)カラム2本とPLgel mixed-C(Polymer Laboratories社)カラム1本を組み合わせて使用し、新たに交替したカラムは、何れも混床(mixed bed)タイプのカラムを使用した。また、分子量の計算時に、GPC基準物質(Standard material)としてはPS(polystyrene)を使用して実施した。
【0125】
3)ムーニー粘度
前記ムーニー粘度(MV、(ML1+4、@100℃ MU)は、MV-2000(ALPHA Technologies社)にて、100℃で、Rotor Speed 2±0.02rpm、Large Rotorを用いて測定した。この際、用いられた試料は、室温(23±5℃)で30分以上放置した後、27±3gを採取してダイキャビティの内部に満たしておき、プラテンを作動させて4分間測定した。
【0126】
【表1】
【0127】
前記結果のように、本発明に係る化学式1で表される変性剤を使用した実施例の変性共役ジエン系重合体は、比較例と比較すると、分子量が比較例よりも著しく高く現れたのにもかかわらず、ムーニー粘度の増加幅は相対的に大きくないことを確認した。これは、実施例で製造された変性共役ジエン系重合体が星形高分子の形態を有することを表す結果である。また、このような構造を有する実施例の変性共役ジエン系重合体は、加工性が向上し、高分子量特性により摩耗性能に優れるはずであることが分かる。
【0128】
実験例2
前記実施例および比較例で製造した変性共役ジエン系重合体を含むゴム組成物、およびそれから製造された成形品の物性を比較分析するために、引張特性、耐磨耗性、およびウェットスキッド抵抗性をそれぞれ測定した。
【0129】
1)ゴム試験片の製造
実施例および比較例の変性共役ジエン系重合体を原料ゴムとして、下記表2に示した配合条件で配合した。表2中の原料は、ゴム100重量部を基準とした各重量部である。
【0130】
【表2】
【0131】
具体的に、前記ゴム試験片は、第1段混練および第2段混練を経て混練される。第1段混練では、温度制御装置付きのバンバリーミキサーを用いて、原料ゴム、シリカ(充填剤)、有機シランカップリング剤(X50S、Evonik)、プロセス油(TDAE oil)、亜鉛華(ZnO)、ステアリン酸、酸化防止剤(TMQ(RD)(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンポリマー)、老化防止剤(6PPD((ジメチルブチル)-N-フェニル-フェニレンジアミン)、およびワックス(Microcrystaline Wax)を混練した。この際、混練機の温度を制御し、150℃の排出温度で一次配合物を得た。第2段混練では、前記一次配合物を室温まで冷却した後、混練機に一次配合物、硫黄粉末、ゴム促進剤(DPG(ジフェニルグアニジン))、および加硫促進剤(CZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド))を加え、100℃以下の温度で混合して二次配合物を得た。その後、160℃で20分間キュアリング工程を経てゴム試験片を製造した。
【0132】
2)引張特性
引張特性は、ASTM412の引張試験法に準じて各試験片を製造し、前記試験片の300%伸び時の引張応力(300%モジュラス)、試験片の破断強度(引張強度)、および引張率を測定した。
【0133】
具体的に、引張特性は、Universal Test Machin 4204(Instron社)引張試験機を用いて、室温で50cm/minの速度で測定した。表3の結果値は、比較例1の結果値を基準としてIndex(%)で示したものであり、数値の高いほど優れることを意味する。
【0134】
3)粘弾性特性
粘弾性特性は、動的機械分析機(TA社製)を用い、歪みモードで、周波数10Hz、各測定温度(-60℃~60℃)で変形を変化させながらtanδを測定した。ペイン効果(Payne effect)は、変形0.28%~40%での最小値と最大値の差で示した。低温0℃でのtanδが高いほど、ウェットスキッド抵抗性に優れることを意味し、高温60℃でのtanδが低いほど、ヒステリシス損が少なく、回転抵抗性(燃費性)に優れることを意味するが、表3中の結果値は、比較例1の測定値を基準値として指数化して示したものであるため、その数値が高いほど優れることを意味する。
【0135】
4)加工性特性
前記1)ゴム試験片の製造時に得られた二次配合物のムーニー粘度(MV、(ML1+4、at 100℃ MU)を測定し、各重合体の加工性特性を比較分析した。この際、ムーニー粘度の測定値が低いほど、加工性特性に優れることを意味するが、表3中の結果値は、比較例1の測定値を基準値として指数化して示したものであるため、その数値が高いほど優れることを意味する。
【0136】
具体的に、MV-2000(ALPHA Technologies社)にて、Large Rotorを用いて、100℃、Rotor Speed 2±0.02rpmで、各二次配合物は室温(23±5℃)で30分以上放置した後、27±3gを採取してダイキャビティの内部に満たしておき、プラテンを作動させて4分間測定した。
【0137】
5)耐磨耗性(DIN摩耗試験)
各ゴム試験片に対して、ASTM D5963に準じてDIN摩耗試験を行い、DIN loss index(損失体積指数(loss volume index):ARIA(Abration resistance index、Method A)で示した。数値が高いほど優れることを意味する。
【0138】
【表3】
【0139】
前記表3に示されたように、実施例の変性共役ジエン系重合体は、引張特性、粘弾性特性、耐磨耗性、および加工性特性がバランスよく改善される効果があることを確認した。
【0140】
上記の結果から、本発明の変性共役ジエン系重合体は、化学式1で表される変性剤由来の官能基を含むことで、高分子量の重合体を形成することができ、それを含むゴム組成物は、耐磨耗性特性が向上することを確認した。また、充填剤との親和性に優れ、それを含むゴム組成物の加工性、引張特性などが何れも向上していることを意味する。このことから、本発明の変性共役ジエン系重合体は、化学式1で表される変性剤により変性されることで、類似の構造の他の変性剤により変性された重合体では実現が不可能な著しい効果があることが分かる。
【国際調査報告】