(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-28
(54)【発明の名称】ポジ型リフトオフレジスト組成物およびそれを用いたレジストパターンの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20250220BHJP
G03F 7/26 20060101ALI20250220BHJP
G03F 7/038 20060101ALI20250220BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20250220BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/004 503A
G03F7/26 513
G03F7/038 601
G03F7/20 521
G03F7/20 501
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024543391
(86)(22)【出願日】2023-02-15
(85)【翻訳文提出日】2024-07-22
(86)【国際出願番号】 EP2023053692
(87)【国際公開番号】W WO2023156419
(87)【国際公開日】2023-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2022024091
(32)【優先日】2022-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【氏名又は名称】高橋 正俊
(72)【発明者】
【氏名】矢野 友嗣
(72)【発明者】
【氏名】浜 祐介
(72)【発明者】
【氏名】仁川 裕
【テーマコード(参考)】
2H196
2H197
2H225
【Fターム(参考)】
2H196AA25
2H196BA11
2H196EA05
2H196HA28
2H197CA06
2H197CA08
2H197CA10
2H197CE10
2H197HA03
2H197HA04
2H197HA05
2H197JA22
2H225AF05P
2H225AF24P
2H225AF63P
2H225AF64P
2H225AF75P
2H225AF83P
2H225AH04
2H225AH12
2H225AH19
2H225AJ04
2H225AJ13
2H225AJ44
2H225AJ48
2H225AM45P
2H225AM80P
2H225AM86P
2H225AN05P
2H225AN38P
2H225AN39P
2H225AN62P
2H225BA01P
2H225BA26P
2H225BA33P
2H225CA12
2H225CB06
2H225CB08
2H225CC03
2H225CC15
(57)【要約】
【課題】ポジ型リフトオフレジスト組成物の提供。
【解決手段】特定の構造を有し、cLogPが2.76~3.35であるポリマー(A)、光酸発生剤(B)、および溶媒(C)を含んでなるポジ型リフトオフレジスト組成物。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー(A)、光酸発生剤(B)および溶媒(C)を含んでなるポジ型リフトオフレジスト組成物:
ここで、
ポリマー(A)のcLogPが、2.76~3.35であり、
ポリマー(A)が、式(A-1)~(A-4)で示される繰り返し単位のうち少なくともいずれか1つを含んでなり、かつ
溶解速度調整剤(D)の含有量が、ポリマー(A)100質量部に対して、0~1.0質量部であり、溶解速度調整剤(D)は式(D-1)で表される。
【化1】
(ここで、
R
11、R
21、R
41およびR
45は、それぞれ独立にC
1-5アルキル(ここで、アルキル中の-CH
2-が-O-によって置きかえられていてもよい)であり;
R
12、R
13、R
14、R
22、R
23、R
24、R
32、R
33、R
34、R
42、R
43、およびR
44は、それぞれ独立に、水素、C
1-5アルキル、C
1-5アルコキシ、または-COOHであり;
p11は0~4であり、p15は1~2であり、p11+p15≦5であり、
p21は0~5であり、
p41は0~4であり、p45は1~2であり、p41+p45≦5であり;
P
31はC
4-20アルキルである(ここで、アルキルの一部または全部が環を形成してもよく、アルキルのHの一部または全部がハロゲンと置換してもよい))
【化2】
(式中、
nd1は、それぞれ独立に、1、2または3であり、
nd2は、それぞれ独立に、0、1、2または3であり、
R
d1は、それぞれ独立に、C
1-7アルキルであり、
L
dは、C
1-15の2価のアルキレン(これは、ヒドロキシ置換されていてもよいアリールによって置換されていてもよく、L
d以外の置換基と環を形成していてもよい)である)
【請求項2】
ポリマー(A)における、式(A-1)、(A-2)、(A-3)および(A-4)で表される繰り返し単位の、繰り返し単位数n
A-1、n
A-2、n
A-3、およびn
A-4が、
n
A-1/(n
A-1+n
A-2+n
A-3+n
A-4)=40~80%、
n
A-2/(n
A-1+n
A-2+n
A-3+n
A-4)=0~40%、
n
A-3/(n
A-1+n
A-2+n
A-3+n
A-4)=0~40%、または
n
A-4/(n
A-1+n
A-2+n
A-3+n
A-4)=0~60%である、請求項1に記載の組成物:
好ましくは、ポリマー(A)に含まれる全ての繰り返し単位の総数n
totalとすると、
(n
A-1+n
A-2+n
A-3+n
A-4)/n
total=80~100%を満たす。
【請求項3】
光酸発生剤(B)が、式(B-1)で表されるか、または式(B-2)の構造を含んでなる、請求項1または2に記載の組成物:
B
n+カチオン B
n-アニオン (B-1)
ここで、
B
n+カチオンは式(BC1)で表されるカチオン、式(BC2)で表されるカチオン、式(BC3)で表されるカチオン、または式(BC4)で表されるカチオンであり、B
n+カチオンは全体としてn価であり、nは1~3であり、
B
n-アニオンは、式(BA1)で表されるアニオン、式(BA2)で表されるアニオン、式(BA3)で表されるアニオン、式(BA4)で表されるアニオン、または式(BA5)で表されるアニオンであり、B
n-アニオンは、全体としてn価である。
【化3】
(ここで、
R
b1は、それぞれ独立に、C
1-6アルキル、C
1-6アルコキシ、C
6-12アリール、C
6-12アリールチオ、またはC
6-12アリールオキシであり、
nb1は、それぞれ独立に、0、1、2または3である)
【化4】
(ここで、
R
b2は、それぞれ独立に、C
1-6アルキル、C
1-6アルコキシ、またはC
6-12アリールであり、
nb2は、それぞれ独立に、0、1、2または3である)
【化5】
(ここで、
R
b3は、それぞれ独立に、C
1-6アルキル、C
1-6アルコキシ、またはC
6-12アリールであり、
R
b4は、それぞれ独立に、C
1-6アルキルであり、
nb3は、それぞれ独立に、0、1、2または3である)
【化6】
(ここで、
L
b1は、単結合またはC
1-3の二価のアルキレンであり、前記アルキレン中のメチレンがカルボニルで置き換えられていてもよく、
R
b5は、それぞれ独立に、C
1-6アルキル、C
1-6アルコキシ、またはC
6-12アリールであり、
R
b6は、それぞれ独立に、C
1-6アルキルであり、
nb4は、それぞれ独立に、0、1、2または3である)
【化7】
(ここで、R
b7は、それぞれ独立に、C
1-6フッ素置換アルキル、C
1-6フッ素置換アルコキシ、またはC
1-6アルキルである)
【化8】
(ここで、R
b8は、C
1-10フッ素置換アルキル、C
1-6フッ素置換アルコキシ、C
6-12フッ素置換アリール、C
2-12フッ素置換アシル、またはC
6-12フッ素置換アルコキシアリールである)
【化9】
(ここで、
R
b9は、それぞれ独立に、C
1-6フッ素置換アルキル、C
1-6フッ素置換アルコキシ、C
6-12フッ素置換アリール、C
2-12フッ素置換アシル、またはC
6-12フッ素置換アルコキシアリールであり、ここで、2つのR
b9が相互に結合してフッ素置換されたヘテロ環構造を形成していていもよい)
【化10】
(ここで、
R
b10は、水素、C
1-6アルキル、C
1-6アルコキシ、またはヒドロキシであり、
L
b2は、カルボニル、オキシまたはカルボニルオキシであり、
Y
bは、それぞれ独立に、水素またはフッ素であり、
nb4は、0~10の整数であり、かつ
nb5は、0~21の整数である)
【化11】
(ここで、
L
b3は、単結合またはC
1-3の二価のアルキレンであり、
X
bは、芳香環、ヘテロ芳香環、または脂環であり、これらの環は、1以上の、ニトロ、C
1-10アルキル、またはC
1-6フッ素置換アルキルによって置換されていてもよく、前記脂環中の環原子がカルボニルによって置き換えられていてもよい)
【化12】
【請求項4】
溶媒(C)が、水、炭化水素溶媒、エーテル溶媒、エステル溶媒、アルコール溶媒、ケトン溶媒、またはこれらのいずれかの組合せである、請求項1~3の少なくともいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
塩基性化合物(E)をさらに含んでなる、請求項1~4の少なくともいずれか一項に記載の組成物:
好ましくは、塩基性化合物(E)はC
1-16第一級脂肪族アミン化合物、C
2-32第二級脂肪族アミン化合物、C
3-48第三級脂肪族アミン化合物、C
6-30芳香族アミン化合物、またはC
5-30ヘテロ環アミン化合物であり;または
好ましくは、前記組成物は、界面活性剤(F)をさらに含んでなる。
【請求項6】
光酸発生剤(B)が、露光により、酸解離定数pKa(H
2O)-20~1.4の酸を放出するものである、請求項1~5の少なくともいずれか一項に記載の組成物:
好ましくは、塩基性化合物(E)の塩基解離定数pKb(H
2O)が-12~5である。
【請求項7】
ポリマー(G)をさらに含んでなり、ここでポリマー(G)はポリマー(A)とは異なるものである、請求項1~6の少なくともいずれか一項に記載の組成物
好ましくは、ポリマー(G)のcLogPは2.76~3.35であり;または
好ましくは、組成物中の、ポリマー(A)の総質量Maおよびポリマー(G)の総質量Mgが、
0<Ma/(Ma+Mg)≦100%、および
0≦Mg/(Ma+Mg)<70%、
を満たす。
【請求項8】
前記組成物から形成されるレジスト膜の厚さが50~1,500nmである、請求項1~7の少なくともいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
架橋剤(H)をさらに含んでなり、架橋剤(H)の含有量がポリマー(A)100質量部に対して0~1.0質量部である、請求項1~8の少なくともいずれか一項に記載の組成物:
好ましくは、前記組成物が可塑剤(I)をさらに含んでなり、可塑剤(I)の含有量がポリマー(A)100質量部に対して0~1.0質量部である。
【請求項10】
添加剤(J)をさらに含んでなり、ここで、添加剤(J)は、酸、光反応クエンチャー、表面平滑剤、色素、コントラスト増強剤、酸、ラジカル発生剤、基板密着増強剤、および消泡剤からなる群の少なくとも1つから選択される、請求項1~9の少なくともいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
ポリマー(A)の含有量が、前記組成物を基準として、1~20質量%であり、
光酸発生剤(B)の含有量が、前記組成物を基準として、0.05~10質量%であり、かつ
溶媒(C)の含有量が、前記組成物を基準として、80~98.95質量%である、請求項1~10の少なくともいずれか一項に記載の組成物:
好ましくは、塩基性化合物(E)の含有量が、前記組成物を基準として、0~1質量%であり、
好ましくは、界面活性剤(F)の含有量が、前記組成物を基準として、0~3質量%であり、
好ましくは、ポリマー(G)の含有量が、前記組成物を基準として、0~10質量%であり、または
好ましくは、添加剤(J)の含有量が、前記組成物を基準として、0~5質量%である。
【請求項12】
薄膜ポジ型リフトオフ化学増幅型レジスト組成物である、請求項1~11の少なくともいずれか一項に記載の組成物:
好ましくは、前記組成物が薄膜KrFポジ型リフトオフ化学増幅型レジスト組成物である。
【請求項13】
リソグラフィ工程において、耐熱性を向上させる、解像度を向上させる、逆テーパー形状を形成する、および/または定在波を低減させるための、請求項1~12の少なくともいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項14】
下記工程を含んでなる、レジストパターンの製造方法:
(1)基板の上方に請求項1~13の少なくともいずれか一項に記載の組成物を適用すること;
(2)前記組成物を加熱し、レジスト層を形成すること;
(3)前記レジスト層を露光すること;
(4)前記レジスト層を露光後加熱すること;および
(5)前記レジスト層を現像すること。
【請求項15】
前記レジストパターンの膜厚が、50~1,500nmである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記レジストパターンが、逆テーパー形状である、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
下記工程を含んでなる、金属パターンの製造方法:
請求項14~16の少なくともいずれか一項に記載の方法により、レジストパターンを製造すること;
(6)レジストパターンをマスクとして、基板の上方に金属を蒸着させること;および
(7)レジストパターンを剥離液で除去すること
【請求項18】
前記金属パターンの膜厚が、10~1,500nmである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項14~18の少なくともいずれか一項に記載の方法を含んでなる、デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポジ型リフトオフレジスト組成物およびそれを用いたレジストパターンの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体等のデバイスの製造過程において、レジスト組成物を用いたリソグラフィ技術による微細加工が一般的に行われている。微細加工の工程は、シリコンウェハ等の半導体基板上に薄いフォトレジスト層を形成し、その層を目的とするデバイスのパターンに対応するマスクパターンで覆い、その層をマスクパターンを介して紫外線等の活性光線で露光し、露光された層を現像することでフォトレジストパターンを得て、得られたフォトレジストパターンを保護膜として基板をエッチング処理することを含み、それにより上述のパターンに対応する微細凹凸を形成する。
【0003】
形成されたレジストパターン上に、金属等の材料を蒸着等により成膜し、レジストを溶媒により除去すると、レジストパターン上に乗った材料が除去され、レジストパターンが形成されていなかった部分にのみ、金属等の材料が残るというリフトオフ法が知られている。
リフトオフ法を行うには、レジストパターンが逆テーパー形状であることが好ましく、容易に逆テーパー形状を形成しやすいためネガ型レジスト組成物が用いられることが多い。例えば、架橋剤を含むネガ型レジスト組成物を用いて、逆テーパー形状を形成することが提案されている(特許文献1)。
【0004】
一般に、露光による光は、レジスト膜の下部に十分に届かず、レジスト膜の下部では酸の発生が抑えられ、また、レジスト膜の下部では発生した酸が基板の影響により失活してしまう。よって、ポジ型レジスト組成物を用いて形成されたレジストパターンは、テーパー形状(フッティング形状)になる傾向にある。
ポジ型レジスト組成物を用いて、逆テーパー形状のレジストパターンを形成する方法として、溶解速度調整剤を含むポジ型レジスト組成物を用いる方法が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開2017/169866
【特許文献2】国際公開2020/193686
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、ポジ型リフトオフレジスト組成物およびそれを用いたレジストパターンの製造方法について、いまだ改良が求められる1以上の課題が存在すると考えた。それらは例えば以下が挙げられる:
十分な解像度を得ることができない;リフトオフに適したレジストパターン形状を形成できない;レジスト組成物の感度が不十分である;薄膜でのレジストパターン形状を形成できない;レジストパターンの耐熱性が不十分である;露光部におけるレジスト膜の可溶性が十分に制御できない;現像液が可溶領域を十分に溶解できない。
本発明は、上述のような技術背景に基づいてなされたものであり、ポジ型リフトオフレジスト組成物およびそれを用いたレジストパターンの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるポジ型リフトオフレジスト組成物は、ポリマー(A)、光酸発生剤(B)および溶媒(C)を含んでなる。
ここで、
ポリマー(A)のcLogPが、2.76~3.35であり、
ポリマー(A)が、式(A-1)~(A-4)で示される繰り返し単位のうち少なくともいずれか1つを含んでなり、かつ
溶解速度調整剤(D)の含有量が、ポリマー(A)100質量部に対して、0~1.0質量部であり、溶解速度調整剤(D)は式(D-1)で表される。
【化1】
(ここで、
R
11、R
21、R
41およびR
45は、それぞれ独立にC
1-5アルキル(ここで、アルキル中の-CH
2-が-O-によって置きかえられていてもよい)であり;
R
12、R
13、R
14、R
22、R
23、R
24、R
32、R
33、R
34、R
42、R
43、およびR
44は、それぞれ独立に、水素、C
1-5アルキル、C
1-5アルコキシ、または-COOHであり;
p11は0~4であり、p15は1~2であり、p11+p15≦5であり、
p21は0~5であり、
p41は0~4であり、p45は1~2であり、p41+p45≦5であり;
P
31はC
4-20アルキルである(ここで、アルキルの一部または全部が環を形成してもよく、アルキルのHの一部または全部がハロゲンと置換してもよい))
【化2】
(式中、
nd1は、それぞれ独立に、1、2または3であり、
nd2は、それぞれ独立に、0、1、2または3であり、
R
d1は、それぞれ独立に、C
1-7アルキルであり、
L
dは、C
1-15の2価のアルキレン(これは、ヒドロキシ置換されていてもよいアリールによって置換されていてもよく、L
d以外の置換基と環を形成していてもよい)である)
【0008】
本発明によるレジストパターンの製造方法は、下記工程を含んでなる。
(1)基板の上方に上記に記載の組成物を適用すること;
(2)前記組成物を加熱し、レジスト層を形成すること;
(3)前記レジスト層を露光すること;
(4)前記レジスト層を露光後加熱すること;および
(5)前記レジスト層を現像すること。
【0009】
本発明によるデバイスの製造方法は、上記に記載の方法を含んでなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、以下の1または複数の効果を望むことが可能である。
十分な解像度を得ることができる。リフトオフに適したレジストパターン形状を形成できる。レジスト組成物の感度が高い。薄膜でのレジストパターン形状を形成できる。レジストパターンの耐熱性が高い。露光部におけるレジスト膜の可溶性を正確に制御できる。現像液による可溶領域の溶解を好適に進めることができる。光酸発生剤の偏在を制御し、パターン形状を制御することが可能である。溶解速度調整剤、架橋剤およびまたは可塑剤を必須とせずに、リフトオフプロセスに適したレジスト膜およびレジストパターンを得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】逆テーパー形状のレジストパターン、オーバーハング形状のレジストパターン、およびオーバーハング形状のレジストパターンの変形例を説明するための概念断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
定義
本明細書において、特に限定されて言及されない限り、本パラグラフに記載の定義や例に従う。
単数形は複数形を含み、「1つの」や「その」は「少なくとも1つ」を意味する。ある概念の要素は複数種によって発現されることが可能であり、その量(例えば質量%やモル%)が記載された場合、その量はそれら複数種の和を意味する。
「および/または」は、要素の全ての組み合わせを含み、また単体での使用も含む。
「~」または「-」を用いて数値範囲を示した場合、これらは両方の端点を含み、単位は共通する。例えば、5~25モル%は、5モル%以上25モル%以下を意味する。
「Cx-y」、「Cx~Cy」および「Cx」などの記載は、分子または置換基中の炭素の数を意味する。例えば、C1-6アルキルは、1以上6以下の炭素を有するアルキル鎖(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル等)を意味する。
ポリマーが複数種類の繰り返し単位を有する場合、これらの繰り返し単位は共重合する。これら共重合は、交互共重合、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合、またはこれらの混在のいずれであってもよい。ポリマーや樹脂を構造式で示す際、括弧に併記されるnやm等は繰り返し数を示す。
温度の単位は摂氏(Celsius)を使用する。例えば、20度とは摂氏20度を意味する。
添加剤は、その機能を有する化合物そのものをいう(例えば、塩基発生剤であれば、塩基を発生させる化合物そのもの)。その化合物が、溶媒に溶解または分散されて、組成物に添加される形態もあり得る。本発明の一形態として、このような溶媒は溶媒(C)またはその他の成分として本発明にかかる組成物に含有されることが好ましい。
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0014】
<ポジ型リフトオフレジスト組成物>
本発明によるポジ型リフトオフレジスト組成物(以下、組成物ということがある)は、特定の構造を有するポリマー(A)、光酸発生剤(B)、および溶媒(C)を含んでなる。
本発明による組成物は、好ましくは、薄膜ポジ型リフトオフ化学増幅型レジスト組成物である。
ここで、本発明において、レジスト膜の厚さは好ましくは50~1,500nm(より好ましくは90~1,200nm;さらに好ましくは90~1100nm;よりさらに好ましくは90~950nm)である。薄膜とは、形成されるレジスト膜が1μm以下であることを意味する。
本発明による組成物の粘度は、好ましくは5~900cPである(より好ましくは7~700cP)。ここで粘度は、細管粘度計により25℃で測定したものである。
本発明による組成物は、より好ましくは、薄膜KrFポジ型リフトオフ化学増幅型レジスト組成物である。
【0015】
ポリマー(A)
本発明において用いられるポリマー(A)は、酸と反応してアルカリ性水溶液に対する溶解度が増加するものである。このようなポリマーは、例えば保護基によって保護された酸基を有しており、外部から酸を添加されると、その保護基が脱離して、アルカリ性水溶液に対する溶解度が増加するものである。ポリマー(A)は、下記の(A-1)、(A-2)、(A-3)、または(A-4)で示される繰り返し単位を少なくともいずれか1つ含んでなるものである。
ポリマー(A)のcLogPは、2.76~3.35である(好ましくは2.77~3.12;より好ましくは2.78~3.00;よりさらに好ましくは2.78~2.99)。ここで、cLogPは、1-オクタノールと水への分配係数Pの常用対数LogPを算出する値である。cLogPは、「Prediction of Hydrophobic(Lipophilic) Properties of Small Organic Molecules」(Arup K.Ghoseら、J.Phys.Chem.A 1998,102,3762-3772)に記載の方法で算出できる。本明細書においては、CambridgeSoft社 ChemDraw Pro 12.0を用いて、各繰り返し単位のcLogPを算出し、それぞれの繰り返し単位のcLogP×構成比率を足し合わせ、ポリマー(A)のcLogPを算出する。各繰り返し単位のcLogPを算出する際、各繰り返し単位毎に重合したと仮定し、繰り返し単位外の末端は含めずに計算する。例えば、ポリマー(A)繰り返し単位A、BおよびCのcLogPが、それぞれ2.88、3.27、および2.05で、構成比率6:2:2である場合、ポリマー(A)のcLogPは、2.79である。
理論に拘束されないが、cLogPが、上記の範囲にあることで、上述の少なくともいずれかの効果がもたらされると考えられる。例えば、露光部における可溶性の制御が正確になる。これにより、多数存在するポリマーの中から、ポジ型リフトオフに有用な特性を有するポリマーを入手することが可能となる。
【0016】
式(A-1)は、以下である。
【化3】
ここで、
R
11は、それぞれ独立にC
1-5アルキル(ここで、アルキル中の-CH
2-が-O-によって置きかえられていてもよい)であり;
R
12、R
13、およびR
14は、それぞれ独立に、水素、C
1-5アルキル、C
1-5アルコキシ、または-COOHであり;
p11は0~4であり、p15は1~2であり、p11+p15≦5である。
本発明において、「アルキル中の-CH
2-(メチレン)が-O-(オキシ)によって置き換えられてよい」という表現は、置き換えられることでアルキル中の炭素間にオキシが存在してもよいことを意味しており、アルキル中の末端の炭素がオキシになる、つまりアルコキシや、ヒドロキシを有することを意図していない。以降、同様である。
【0017】
R11は、好ましくは、メチルまたはエチルであり;より好ましくはメチルである。
R12、R13、およびR14は、好ましくは水素またはメチルであり;より好ましくは水素である。
ポリマー(A)は式(A-1)で表される複数種の構成単位を含むことが可能である。例えば、p15=1の構成単位とp15=2の構成単位を1:1で有することが可能である。この場合、全体としてp15=1.5となる。以下、特に明記されない限り、本発明において樹脂やポリマーを表現する数について同様である。
p11は、好ましくは0または1であり;より好ましくは0である。
p15は、好ましくは0または1であり;より好ましくは1である。
【0018】
式(A-1)の具体例として以下が挙げられる。
【化4】
【0019】
式(A-2)は以下である。
【化5】
ここで、
R
21は、それぞれ独立に、C
1-5アルキル(ここで、アルキル中の-CH
2-が-O-によって置きかえられていてもよい)であり;
R
22、R
23、およびR
24は、それぞれ独立に、水素、C
1-5アルキル、C
1-5アルコキシ、または-COOHであり;
p21は0~5である。
【0020】
R21は、好ましくはメチル、エチル、t-ブチルまたはt-ブトキシであり;より好ましくはメチルまたはエチルであり;より好ましくはメチルである。
R22、R23、およびR24は、好ましくは水素、またはメチルであり;より好ましくは水素である。
p21は好ましくは0、1、2、3、4または5であり;より好ましくは0または1であり;さらに好ましくは0である。
【0021】
式(A-2)の具体例として以下が挙げられる。
【化6】
【0022】
式(A-3)は以下である。
【化7】
ここで、
R
32、R
33、およびR
34は、それぞれ独立に、水素、C
1-5アルキル、C
1-5アルコキシ、または-COOHである。
P
31はC
4-20アルキルである。ここで、アルキルの一部または全部が環を形成してもよく、アルキルのHの一部または全部がハロゲンと置換してもよい。P
31のアルキル部分は、分岐または環状であることが好ましい。P
31のC
4-20アルキルがハロゲンと置換する場合、全部が置換することが好ましく、置換するハロゲンはFまたはClが好ましく;Fがより好ましい。P
31のC
4-20アルキルのHはハロゲンで置換しないことが本発明の好適な一形態である。
【0023】
R32、R33、およびR34は、好ましくは水素、メチル、エチル、t-ブチル、メトキシ、t-ブトキシまたは-COOHであり;より好ましくは水素またはメチルであり;さらに好ましくは水素である。
P31は、好ましくは、メチル、イソプロピル、t-ブチル、シクロペンチル、メチルシクロペンチル、エチルシクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル、エチルシクロヘキシル、アダマンチル、メチルアダマンチルまたはエチルアダマンチルであり;より好ましくはt-ブチル、エチルシクロペンチル、エチルシクロヘキシルまたはエチルアダマンチルであり;さらに好ましくはt-ブチル、エチルシクロペンチルまたはエチルアダマンチルであり;よりさらに好ましくはt-ブチルである。
【0024】
式(A-3)の具体例として以下が挙げられる。
【化8】
【0025】
式(A-4)は以下である。
【化9】
ここで、
R
41およびR
45は、それぞれ独立に、C
1-5アルキル(ここで、アルキル中の-CH
2-が-O-によって置きかえられていてもよい)であり;
R
42、R
43、およびR
44は、それぞれ独立に、水素、C
1-5アルキル、C
1-5アルコキシ、または-COOHであり;
p41は0~4であり、p45は1~2であり、p41+p45≦5である。
【0026】
R45は、好ましくは、メチル、t-ブチルまたは-CH(CH3)-O-CH2CH3である(より好ましくはメチル)。
R41は、好ましくは、メチル、エチルまたはt-ブチルであり;より好ましくはメチルである。
R42、R43、およびR44は、好ましくは水素またはメチルであり;より好ましくは水素である。
p41は好ましくは0、1、2、3または4であり;より好ましくは0または1であり;さらに好ましくは0である。
p45は好ましくは1または2であり;より好ましくは1である。
【0027】
式(A-4)の具体例として以下が挙げられる。
【化10】
【0028】
これらの構成単位は、目的に応じて適切に配合され、それらの配合比はcLogPが2.76~3.35を満たすのであれば、特に限定されない。酸によってアルカリ性水溶液に対する溶解度の増加割合が適当になるように配合されるのが好適な形態である。
ポリマー(A)における繰り返し単位(A-1)、(A-2)、(A-3)および(A-4)の、繰り返し単位数nA-1、nA-2、nA-3およびnA-4について以下に説明する。
nA-1/(nA-1+nA-2+nA-3+nA-4)は好ましくは40~80%である(より好ましくは50~80%;さらに好ましくは55~75%;よりさらに好ましくは55~65%)。
nA-2/(nA-1+nA-2+nA-3+nA-4)は好ましくは0~40%である(より好ましくは5~35%;さらに好ましくは5~25%;よりさらに好ましくは15~25%)。
nA-3/(nA-1+nA-2+nA-3+nA-4)は好ましくは0~40%である(より好ましくは10~35%;さらに好ましくは15~35%;よりさらに好ましくは15~25%)。
nA-4/(nA-1+nA-2+nA-3+nA-4)は好ましくは0~60%である(より好ましくは10~55%であり;さらに好ましくは20~50%であり;よりさらに好ましくは35~45%)。
nA-1/(nA-1+nA-2+nA-3+nA-4)=40~80%、nA-2/(nA-1+nA-2+nA-3+nA-4)=0~40%、nA-3/(nA-1+nA-2+nA-3+nA-4)=0~40%、およびnA-4/(nA-1+nA-2+nA-3+nA-4)=0~60%が好適な形態として挙げられる。
本発明の一形態として、(nA-3+nA-4)/(nA-1+nA-2+nA-3+nA-4)>0%であることが好適である。(A-3)または(A-4)のように酸により脱保護する単位が存在することで、レジスト膜のポリマー部分の現像液に対する溶解性が増加することが可能となるためである。nA-3>0かつnA-4=0、またはnA-3=0かつnA-4>0が、より好適である。別の一形態として、nA-2>0かつnA-3>0、および又はnA-2=0かつnA-4>0が好適である。
【0029】
ポリマー(A)は、(A-1)、(A-2)、(A-3)および(A-4)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位を含むこともできる。ポリマー(A)に含まれる全ての繰り返し単位の総数ntotalとすると
(nA-1+nA-2+nA-3+nA-4)/ntotalは好ましくは80~100%である(より好ましくは90~100%;さらに好ましくは95~100%;よりさらに好ましくは100%)。
(A-1)、(A-2)、(A-3)および(A-4)で表される繰り返し単位以外の構成単位を含まないことも、本発明の好ましい一形態である。
【0030】
ポリマー(A)の具体例として以下が挙げられる。
【化11-1】
【化11-2】
【化11-3】
【0031】
下記ポリマー(A)は(A-1)、(A-2)および(A-3)の繰り返し単位を有する。本発明の組成物からレジスト膜を形成した後、露光によって光酸発生剤(B)から酸を受け、ポリマー(A)の中で(A-3)単位の保護基が外れる。該当(A-3)単位部分のcLogPは2.05から0.91に変化する。これにより酸受容部分のレジスト膜のcLogPはポリマー(A)全体で2.79から2.56に変化する(Δ0.23)。
【化12】
【0032】
下記ポリマー(A)は(A-1)、(A-2)および(A-3)の繰り返し単位を有する。本発明の組成物からレジスト膜を形成した後、露光によって光酸発生剤(B)から酸を受け、ポリマー(A)の中で(A-3)単位の保護基が外れる。該当(A-3)単位部分のcLogPは3.01から0.91に変化する。これにより酸受容部分のレジスト膜のcLogPはポリマー(A)全体で2.98から2.56に変化する(Δ0.42)。
【化13】
【0033】
下記ポリマー(A)は(A-1)、および2種の(A-4)の繰り返し単位を有する。本発明の組成物からレジスト膜を形成した後、露光によって光酸発生剤(B)から酸を受け、ポリマー(A)の中で右に記載の(A-4)単位の保護基が外れる。該当(A-4)単位部分のcLogPは3.84から2.88に変化する。これにより酸受容部分のレジスト膜のcLogPはポリマー(A)全体で3.30から3.11に変化する(Δ0.19)。
【化14】
【0034】
本発明の形態として、露光の前後でポリマー(A)全体のcLogPの減少する量は、好ましくは0.15~0.55である(より好ましくは0.18~0.50;さらに好ましくは0.19~0.45)。理論に拘束されないが、露光領域のレジスト膜のcLogPが上記の範囲で減少することで、現像液による露光領域の溶解を好適に進めることができると考えられる。
【0035】
後述の比較組成物1は下記ポリマーA1とポリマーGを質量比1:1で使用している。それぞれcLogPが2.79と3.21であり、cLogPの平均値は3.00になる。比較例組成物1からレジスト膜を形成した後、露光によって光酸発生剤(B)から酸を受け、ポリマーA1の中で(A-3)単位の保護基が外れる。上述のようにポリマーA1部分のcLogPは2.79から2.56に変化する。一方、ノボラック樹脂であるポリマーGは脱保護しないのでcLogPは3.21のままである。よって、露光の後のポリマーA1とポリマーGのcLogPの平均値は2.89である(Δ0.11)。
【化15】
【0036】
ポリマー(A)の質量平均分子量(以下、Mwということがある)は、好ましくは1,000~50,000である(より好ましくは2,000~30,000;さらに好ましくは5,000~20,000;よりさらに好ましくは8,000~15,000)。
ポリマー(A)の数平均分子量(以下、Mnということがある)は、好ましくは1,000~50,000である(より好ましくは2,000~30,000)。
本発明において、MwおよびMnはゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatography、GPC)にて測定することが可能である。同測定では、GPCカラムを摂氏40度、溶出溶媒テトラヒドロフランを0.6mL/分、単分散ポリスチレンを標準として用いることが好適な1例である。
【0037】
説明のために記載する。本発明の組成物において、これらのポリマー(A)は上記の式で表される限り2種類以上を組合せて用いることもできる。例えば、以下の2種のポリマー(A)を共に含む組成物も、本発明の一形態である。
【化16】
本発明の組成物について、特に明記されない限り以下の説明において同様である。
好適には本発明にかかる組成物が含むポリマー(A)は1種類または2種類のポリマーからなり;より好適にはポリマー(A)は1種類のポリマーからなる。Mw分布や重合のばらつきは許容される。
【0038】
ポリマー(A)の含有量は、組成物を基準として、好ましくは1~20質量%である(より好ましくは5~19質量%;さらに好ましくは10~18質量%;よりさらに好ましくは14~18質量%)。
【0039】
光酸発生剤(B)
本発明による組成物は、光酸発生剤(B)を含んでなる。ここで、光酸発生剤(B)は光の照射によって酸を放出する。好適には光酸発生剤(B)由来の酸がポリマー(A)に作用して、ポリマー(A)のアルカリ性水溶液に対する溶解度を増加させる役割を果たす。例えばポリマー(A)が保護基によって保護された酸基を有している場合に、酸によって、その保護基を脱離させる。本発明による組成物に用いられる光酸発生剤(B)は、従来知られているものから選択することができる。
【0040】
光酸発生剤(B)は露光により酸を放出する。その酸の酸解離定数pKa(H2O)は好ましくは-20~1.4(より好ましくは-16~1.4;さらに好ましくは-16~1.2;よりさらに好ましくは-16~1.1)である。
【0041】
光酸発生剤(B)は、好ましくは以下の式(B-1)で表されるか、または式(B-2)の構造を含んでなる。より好ましくは光酸発生剤(B)は式(B-1)で表される。
【0042】
式(B-1)は、以下である。
Bn+カチオン Bn-アニオン (B-1)
ここで
Bn+カチオンは、式(BC1)で表されるカチオン、式(BC2)で表されるカチオン、式(BC3)で表されるカチオン、または式(BC4)で表されるカチオンある(好ましくは式(BC1)で表されるカチオンまたは(BC2)で表されるカチオン;より好ましくは(BC1)で表されるカチオン)。Bn+カチオンは全体としてn価であり、nは1~3である。
Bn-アニオンは、式(BA1)で表されるアニオン、式(BA2)で表されるアニオン、式(BA3)で表されるアニオン、式(BA4)で表されるアニオン、または式(BA5)で表されるアニオンである(好ましくは式(BA1)で表されるアニオンまたは式(BA5)で表されるアニオン;さらに好ましくは式(BA5)で表されるアニオン)。Bn-アニオンは、スルホン酸アニオンである。
Bn-アニオンは、全体としてn価である。
nは、好ましくは1または2であり;より好ましくは1である。
理論に拘束されないが、上記のような光酸発生剤(B)を用いることでレジスト膜の形成時に底面付近に光酸発生剤(B)を多く存在させるように制御することが可能となり、パターン形状を逆テーパ形状にするように制御することが可能になると考えられる。ポジ型レジストでは露光部を可溶化するが、レジスト膜の底面に近づくにつれて光の到達量が減るため、光酸発生剤(B)の存在の量によるパターン形状の制御が有効である。
【0043】
式(BC1)は、以下である。
【化17】
ここで、
R
b1は、それぞれ独立に、C
1-6アルキル、C
1-6アルコキシ、C
6-12アリール、C
6-12アリールチオ、またはC
6-12アリールオキシであり、 nb1は、それぞれ独立に、0、1、2または3である。
【0044】
Rb1は、好ましくは、メチル、エチル、t-ブチル、メトキシ、エトキシ、フェニルチオ、またはフェニルオキシである(より好ましくは、t-ブチル、メトキシ、エトキシ、フェニルチオ、またはフェニルオキシ)。
全てのnb1が1であり、全てのRb1が、同一であることも好適な一形態である。 また、全てのnb1が0であることも、好適な一形態である。
【0045】
式(BC1)の具体例として以下が挙げられる。
【化18】
【0046】
式(BC2)は以下である。
【化19】
ここで、
R
b2は、それぞれ独立に、C
1-6アルキル、C
1-6アルコキシ、またはC
6-12アリールであり、
nb2は、それぞれ独立に、0、1、2または3である。
【0047】
Rb2は、好ましくは、C4-6の分岐構造を有するアルキルである。式中のそれぞれのRb2は同一であっても異なっていてもよく、同一であるものがより好適である。Rb2はさらに好ましくは、t-ブチルまたは1,1-ジメチルプロピルである(よりさらに好ましくはt-ブチル)。
nb2は、それぞれ1であることが好ましい。
【0048】
式(BC2)の具体例として以下が挙げられる。
【化20】
【0049】
式(BC3)は以下である。
【化21】
ここで、
R
b3は、それぞれ独立に、C
1-6アルキル、C
1-6アルコキシ、またはC
6-12アリールであり、
R
b4は、それぞれ独立に、C
1-6アルキルであり、
nb3は、それぞれ独立に、0、1、2または3である。
【0050】
Rb3は、好ましくは、それぞれ独立にメチル、エチル、メトキシ、またはエトキシである(より好ましくは、それぞれ独立にメチルまたはメトキシ)。
Rb4は、好ましくは、メチル、またはエチルである(より好ましくはメチル)。 nb3は、好ましくは1、2または3である(より好ましくは3)。
【0051】
式(BC3)の具体例として以下が挙げられる。
【化22】
【0052】
式(BC4)は以下である。
【化23】
ここで、
L
b1は、単結合またはC
1-3の二価のアルキレンであり、前記アルキレン中のメチレンがカルボニルで置き換えられていてもよく、
R
b5は、それぞれ独立に、C
1-6アルキル、C
1-6アルコキシ、またはC
6-12アリールであり、
R
b6は、それぞれ独立に、C
1-6アルキルであり、
nb4は、それぞれ独立に、0、1、2または3である。
【0053】
Lb1は、好ましくは単結合またはカルボニルで置き換えられたエチレンである。
Rb5は、好ましくはC1-6アルキル、C1-6アルコキシであり、より好ましくはC3-6アルコキシである(より好ましくはC4アルコキシ;さらに好ましくはn-ブトキシ)。
Rb6は、好ましくはC3-6アルキルであり(より好ましくはn-ブチル)。
nb4は、好ましくは0、1または2である(より好ましくは0または2)。
【0054】
式(BC4)の具体例として以下が挙げられる。
【化24】
【0055】
式(BA1)は以下である。
【化25】
ここで、R
b7は、それぞれ独立に、C
1-6フッ素置換アルキル、C
1-6フッ素置換アルコキシ、またはC
1-6アルキルである。例えば、-CF
3はメチル(C
1)の水素の全てがフッ素に置換したものを意味する。前記のフッ素置換はアルキル部分に存在する水素の一部または全部がフッ素に置換することを意味し、より好適には全部がフッ素に置換する。
R
b7のアルキル部分は、好適にはメチル、エチルまたはt-ブチルである(より好適にはメチル)。
R
b7は、好ましくはフッ素置換アルキルである(より好ましくは-CF
3)。
【0056】
式(BA1)の具体例として以下が挙げられる。
【化26】
【0057】
式(BA2)は以下である。
【化27】
ここで、R
b8は、C
1-10フッ素置換アルキル、C
1-6フッ素置換アルコキシ、C
6-12フッ素置換アリール、C
2-12フッ素置換アシル、またはC
6-12フッ素置換アルコキシアリールである。例えば、-CF
3はメチル(C
1)の水素の全てがフッ素に置換したものを意味する。前記のフッ素置換はアルキル部分に存在する水素の一部または全部がフッ素に置換することを意味し、より好適には全部がフッ素に置換する。
R
b8のアルキル部分は直鎖であることが好適である。R
b8は、好適にはC
1-6フッ素置換アルキルである(より好適にはC
2-6フッ素置換アルキル)。
R
b8のアルキル部分は、好適にはメチル、エチル、プロピル、ブチルまたはペンチルである(より好適にはプロピル、ブチルまたはペンチル;さらに好適にはブチル;よりさらに好適にはn-ブチル)。R
b8のアルキル部分は、直鎖であることが好適である。
【0058】
式(BA2)の具体例として以下が挙げられる。
C4F9SO3
-、C3F7SO3
-
【0059】
式(BA3)は以下である。
【化28】
ここで、
R
b9は、それぞれ独立に、C
1-6フッ素置換アルキル、C
1-6フッ素置換アルコキシ、C
6-12フッ素置換アリール、C
2-12フッ素置換アシル、またはC
6-12フッ素置換アルコキシアリールであり、好ましくはC
2-6フッ素置換アルキルである。前記のフッ素置換はアルキル部分に存在する水素の一部または全部がフッ素に置換することを意味し、より好適には全部がフッ素に置換する。
2つのR
b9が相互に結合してフッ素置換されたヘテロ環構造を形成していていもよい。ヘテロ環構造は好適には飽和環である。ヘテロ環構造はNとSを含めて、好適には5~8の単環構造であり;より好適には五員環または六員環であり;よりさらに好適には六員環である。
【0060】
Rb9のアルキル部分は、好適にはメチル、エチル、プロピル、ブチルまたはペンチルである(より好適にはメチル、エチルまたはブチル;さらに好適にはブチル)。Rb9のアルキル部分は直鎖であることが好適である。
【0061】
式(BA3)の具体例として以下が挙げられる。
【化29】
【0062】
式(BA4)は以下である。
【化30】
ここで、
R
b10は、水素、C
1-6アルキル、C
1-6アルコキシ、またはヒドロキシであり、
L
b2は、カルボニル、オキシまたはカルボニルオキシであり、
Y
bは、それぞれ独立に、水素またはフッ素であり、
nb4は、0~10の整数であり、かつ
nb5は、0~21の整数である。
【0063】
Rb10は、好ましくは水素、メチル、エチル、メトキシ、またはヒドロキシである(より好ましくは水素またはヒドロキシ)。
Lb2は、好ましくはカルボニルまたはカルボニルオキシである(より好ましくはカルボニル)。
好ましくはYbの少なくとも1以上がフッ素である。
nb4は、好ましくは0である。
nb5は、好ましくは4、5または6である。
【0064】
式(BA4)の具体例として以下が挙げられる。
【化31】
【0065】
式(BA5)は以下である。
【化32】
ここで、
L
b3は、単結合またはC
1-3の二価のアルキレンであり、
X
bは、芳香環、ヘテロ芳香環、または脂環であり、これらの環は、1以上の、ニトロ、C
1-10アルキル、またはC
1-6フッ素置換アルキルによって置換されていてもよく、前記脂環中の環原子がカルボニルによって置き換えられていてもよい。
【0066】
Lb3は、好ましくは単結合、メチレン、またはエチレンである(より好ましくは単結合)。
Xbは、好ましくは、メチルまたはニトロによって置換されていてもよいベンゼン環またはピリジン環である(より好ましくはメチル置換されたベンゼン環)。
【0067】
式(BA5)の具体例として以下が挙げられる。
【化33】
【0068】
式(B-2)は、以下であり、この構造を含む非イオン型の光酸発生剤であることが好ましい。
【化34】
式(B-2)を含む化合物の具体例としては、以下が挙げられる。
【化35】
【0069】
光酸発生剤(B)の分子量は、好ましくは400~2,500である(より好ましくは400~1,500)。
【0070】
光酸発生剤(B)の含有量は、組成物を基準として、好ましくは0.05~10質量%である(より好ましくは0.10~2質量%;さらに好ましくは0.2~1質量%;よりさらに好ましくは0.40~0.80質量%)。
光酸発生剤(B)の含有量は、ポリマー(A)を基準にして、好ましくは0.1~20質量%である(より好ましくは0.5~10質量%;さらに好ましくは1.0~5.0質量%;よりさらに好ましくは2.0~4.5質量%)。
【0071】
溶媒(C)
本発明による組成物は、溶媒(C)を含んでなる。溶媒は、配合される各成分を溶解することができるものであれば特に限定されない。溶媒(C)は、好ましくは、水、炭化水素溶媒、エーテル溶媒、エステル溶媒、アルコール溶媒、ケトン溶媒、またはこれらいずれかの組合せである。
溶媒の具体例としては、例えば、水、n-ペンタン、i-ペンタン、n-ヘキサン、i-ヘキサン、n-ヘプタン、i-ヘプタン、2,2,4-トリメチルペンタン、n-オクタン、i-オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n-プロピルベンセン、i-プロピルベンセン、ジエチルベンゼン、i-ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ-i-プロピルベンセン、n-アミルナフタレン、トリメチルベンゼン、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、sec-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール、i-ペンタノール、2-メチルブタノール、sec-ペンタノール、t-ペンタノール、3-メトキシブタノール、n-ヘキサノール、2-メチルペンタノール、sec-ヘキサノール、2-エチルブタノール、sec-ヘプタノール、ヘプタノール-3、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、sec-オクタノール、n-ノニルアルコール、2,6-ジメチルヘプタノール-4、n-デカノール、sec-ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec-テトラデシルアルコール、sec-ヘプタデシルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フェニルメチルカルビノール、ジアセトンアルコール、クレゾール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ペンタンジオール-2,4、2-メチルペンタンジオール-2,4、ヘキサンジオール-2,5、ヘプタンジオール-2,4、2-エチルヘキサンジオール-1,3、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル-i-ブチルケトン、メチル-n-ペンチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、メチル-n-ヘキシルケトン、ジ-i-ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4-ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン、フェンチョン、エチルエーテル、i-プロピルエーテル、n-ブチルエーテル(ジ-n-ブチルエーテル、DBE)、n-ヘキシルエーテル、2-エチルヘキシルエーテル、エチレンオキシド、1,2-プロピレンオキシド、ジオキソラン、4-メチルジオキソラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、テトラエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジエチルカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、酢酸n-プロピル、酢酸i-プロピル、酢酸-n-ブチル(ノルマルブチルアセテート、nBA)、酢酸i-ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸n-ペンチル、酢酸sec-ペンチル、酢酸3-メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2-エチルブチル、酢酸2-エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n-ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-ブチル、プロピオン酸i-アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ-n-ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、乳酸n-ブチル、乳酸n-アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロピオンアミド、N-メチルピロリドン、硫化ジメチル、硫化ジエチル、チオフェン、テトラヒドロチオフェン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、および1,3-プロパンスルトンが挙げられる。これらの溶媒は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
溶媒(C)は、好ましくはPGME、PGMEA、EL、nBA、DBE、またはこれらのいずれかの混合物でる(より好ましくはPGME、PGMEA、nBA、DBE、またはこれらのいずれかの混合物;さらに好ましくはPGME、PGMEA、またはこれらの混合物;よりさらに好ましくはPGMEとPGMEAの混合物)。2種を混合する場合、第1の溶媒と第2の溶媒の質量比が95:5~5:95であることが好適である(より好適には90:10~10:90、さらに好適には80:20~20:80)。3種を混合する場合、第1の溶媒と3種の和の質量比が30~90%(より好ましくは50~80%;さらに好ましくは60~70%)であり、第2の溶媒と3種の和の質量比が10~50%(より好ましくは20~40%)であり、第3の溶媒と3種の和の質量比が5~40%(より好ましくは5~20%;さらに好ましくは5~15%)である。
【0072】
他の層や膜との関係で、溶媒(C)が水を実体的に含まないことも一形態である。例えば、溶媒(C)全体に占める水の量が、好ましくは0.1質量%以下である(より好ましくは0.01質量%以下、さらに好ましくは0.001質量%以下)。溶媒(C)が水を含まない(0質量%)ことも好適な一形態である。
【0073】
溶媒(C)の含有量は、組成物を基準として、好ましくは80~98.95質量%である(より好ましくは80~95質量%であり;さらに好ましくは80~90質量%)。組成物全体に占める溶媒の量を増減させることで、成膜後の膜厚を制御できる。
【0074】
溶解速度調整剤(D)
本発明による組成物は、式(D-1)で表される溶解速度調整剤(D)をわずかに含んでいてもよい。溶解速度調整剤は、ポリマーの現像液への溶解性を調整する機能を有する。理論に拘束されないが、本発明による組成物では、溶解速度調整剤をほとんど含まなくても、リフトオフに適した解像度を得ること、またはパターン形状を形成することができる。本発明の組成物は、溶解速度調整剤を含むことが必須ではない。
式(D-1)は以下である。
【化36】
(式中、
nd1は、それぞれ独立に、1、2または3である(好ましくは1または2;より好ましくは1)。
nd2は、それぞれ独立に、0、1、2または3る(好ましくは0、2、または3)。
R
d1は、それぞれ独立に、C
1-7アルキルである(好ましくはメチル、エチル、またはシクロヘキシルで;より好ましくはメチルまたはシクロヘキシル)。
L
dは、C
1-15の2価のアルキレン(これは、ヒドロキシ置換されていてもよいアリールによって置換されていてもよく、L
d以外の置換基と環を形成していてもよい)である(好ましくはC
2-12の2価のアルキレン;より好ましくはC
2-7の2価のアルキレン)。
【0075】
(D)溶解速度調整剤の具体例は以下である。
【化37】
【0076】
溶解速度調整剤(D)の含有量は、ポリマー(A)100質量部に対して、0~1.0質量部(好ましくは0~0.1質量%;さらに好ましくは0~0.01質量%;よりさらに好ましくは0.00質量%)。溶解速度調整剤(D)を含まないことが、本発明の好適な一形態である。
【0077】
塩基性化合物(E)
本発明による組成物は、塩基性化合物(E)をさらに含むことができる。塩基性化合物は、露光部で発生した酸の拡散を抑える効果と、空気中に含まれるアミン成分によるレジスト膜表面の酸の失活を抑える効果がある。
【0078】
塩基化合物(E)としては、好ましくは、C1-16第一級脂肪族アミン化合物、C2-32第二級脂肪族アミン化合物、C3-48第三級脂肪族アミン化合物、C6-30の芳香族アミン化合物、またはC5-30のヘテロ環アミン化合物が挙げられる。
【0079】
塩基化合物(E)の具体例としては、エチルアミン、n-オクチルアミン、n-ヘプチルアミン、エチレンジアミン、トリエチルアミン、トリ-n-オクチルアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、トリス[2-(2-メトキシエトキシ)エチル]アミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン‐7、1,5‐ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンが挙げられる。
【0080】
塩基性化合物(E)の塩基解離定数pKb(H2O)は、好ましくは-12~5である(より好ましくは1~4)。
【0081】
塩基性化合物(E)の分子量は、好ましくは20~500である(より好ましくは60~400)。
【0082】
塩基性化合物(E)の含有量は、組成物を基準として、好ましくは0~1質量%である(より好ましくは0.01~0.5質量%;さらに好ましくは0.02~0.1質量%)。塩基性化合物(E)を含まないことも、好適な一形態である。
塩基性化合物(E)の含有量は、ポリマー(A)を基準にして、好ましくは0.1~20質量%である(より好ましくは0.1~5質量%;さらに好ましくは0.1~1.0質量%;よりさらに好ましくは0.1~0.5質量%)。
【0083】
界面活性剤(F)
本発明による組成物は、界面活性剤(F)をさらに含むことができる。界面活性剤を含むことで、塗布性を向上させることができる。本発明に用いることができる界面活性剤としては、(I)陰イオン界面活性剤、(II)陽イオン界面活性剤、または(III)非イオン界面活性剤を挙げることができ、より具体的には(I)アルキルスルホネート、アルキルベンゼンスルホン酸、およびアルキルベンゼンスルホネート、(II)ラウリルピリジニウムクロライド、およびラウリルメチルアンモニウムクロライド、ならびに(III)ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアセチレニックグリコールエーテル、フッ素含有界面活性剤(例えば、フロラード(スリーエム)、メガファック(DIC)、スルフロン(旭硝子)、および有機シロキサン界面活性剤(例えば、KF-53、KP341(信越化学工業))が挙げられる。
【0084】
これら界面活性剤は、単独で、または2種以上混合して使用することができる。界面活性剤(F)の含有量は、組成物を基準として、好ましくは0~3質量%である(より好ましくは0.005~0.5質量%;さらに好ましくは0.01~0.2質量%)。
界面活性剤(F)の含有量は、含有量は、ポリマー(A)を基準にして、好ましくは0.01~5質量%である(より好ましくは0.01~1質量%;さらに好ましくは0.05~0.5質量%)。
【0085】
ポリマー(G)
本発明による組成物は、ポリマー(A)とは異なる、ポリマー(G)をさらに含むことができる。ポリマー(G)はポリマー(A)とは異なる。ポリマー(G)としては、例えば、ノボラックポリマーが挙げられ、例えば、フェノール類とホルムアルデヒドとの縮合反応により得られる。ポリマー(G)のcLogPは、好ましくは2.76~3.35である(より好ましくは3.00~3.30;さらに好ましくは3.15~3.25)。
【0086】
好ましくは、組成物中の、ポリマー(A)の総質量Maおよびポリマー(G)の総質量Mgが以下を満たす。
Ma/(Ma+Mg)は、好ましくは0より大きく100%以下である(より好ましくは50~100%;さらに好ましくは80~100%;よりさらに好ましくは95~100%)。
Mg/(Ma+Mg)は、好ましくは0以上70%未満である(より好ましくは0~50%;さらに好ましくは0~20%;よりさらに好ましくは0~5%)。
0<Ma/(Ma+Mg)≦100%、および0≦Mg/(Ma+Mg)<70%
を同時に満たすことが好ましい。Mg/(Ma+Mg)=0.0%も、本発明の好適な形態である。
【0087】
ポリマー(G)の含有量は、組成物を基準として、好ましくは0~10質量%である(より好ましくは0~5質量%;さらに好ましくは0~1質量%)。本発明の組成物がポリマー(A)以外のポリマーを含まない態様が、本発明の好適な一形態である。
【0088】
架橋剤(H)
本発明による組成物は、架橋剤(H)をさらに含むことができる。理論に拘束されないが、本発明はポジ型レジスト組成物であるため露光部を架橋する必要がなく、また架橋剤がなくても膜化が実現できるため、架橋剤を必須としない。本発明の態様として、組成物は架橋剤の含有量が少ない方が好ましい。
架橋剤(H)の含有量は、ポリマー(A)100質量部に対して、好ましくは0~1.0質量部である(より好ましくは0~0.1質量部)。本発明の組成物が架橋剤(H)を含まない態様が、本発明の好適な一形態である。
【0089】
可塑剤(I)
本発明による組成物は、可塑剤(I)をさらに含むことができる。
可塑剤を含むことにより、厚膜形成時の膜割れを抑えることができる。
可塑剤の例としてアルカリ可溶性ビニルポリマーや酸解離性基含有ビニルポリマーを挙げることができる。より具体的には、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリヒドロキシスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルベンゾエート、ポリビニルエーテル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、ポリエーテルエステル、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸エステル、マレイン酸ポリイミド、ポリアクリルアミド、ポリアクリルニトリル、ポリビニルフェノール、ノボラックおよびそれらのコポリマーなどが挙げられ、ポリビニルエーテル、ポリビニルブチラール、ポリエーテルエステルがより好ましい。
【0090】
可塑剤(I)の含有量は、好ましくは、ポリマー(A)100質量部に対して、好ましくは0~1質量部である(より好ましくは0~0.1質量部)。本発明の組成物が可塑剤(I)を含まない態様が、本発明の好適な一形態である。
【0091】
添加剤(J)
本発明による組成物は、さらに添加剤(J)を含むことができる。添加剤(J)は、酸、光反応クエンチャー、表面平滑剤、色素、コントラスト増強剤、酸、ラジカル発生剤、基板密着増強剤、および消泡剤からなる群の少なくとも1つから選択される。
添加剤(J)の含有量(複数の場合、その和)は、組成物を基準として、好ましくは0~5質量%である(より好ましくは0~3質量%;さらに好ましくは0~1質量%)。本発明による組成物が、添加剤(J)を含まない(0質量%)ことも、本発明の形態の一つである。
【0092】
酸は、組成物のpH値の調整や添加剤成分の溶解性を向上させるために使用することができる。使用される酸は特に限定されないが、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、フタル酸、サリチル酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、アコニット酸、グルタル酸、アジピン酸、p-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、これらいずれかの水和物、およびこれらの組み合わせが挙げられる。酸の含有量は、組成物を基準として、好ましくは0.005~0.1質量%(より好ましくは0.01~0.1質量%)である。
【0093】
光反応クエンチャーは空気中に含まれるアミン等の成分によるレジスト膜表面の酸の失活を抑えるために、使用することができるものであり、光酸発生剤(B)とは異なる。本発明の好適な一態様として、ポリマー(A)に直接作用する酸は光反応クエンチャーではなく光酸発生剤(B)から放出される酸である。
光反応クエンチャーは、露光により酸を放出する。その酸は、好ましくは酸解離定数pKa(H
2O)が1.5~8である(より好ましくは1.5~5)。
光反応クエンチャーは、カチオンとアニオンとから構成され、具体的なカチオンとアニオンは以下が挙げられる。
【化38】
【0094】
本発明による組成物は、リソグラフィ工程において、耐熱性を向上させる、解像度を向上させる、逆テーパー形状を形成する、および/または定在波を低減させるために使用される。好ましくは、本発明による組成物は、リソグラフィ工程において、解像度を向上させるために使用される。
【0095】
<レジストパターンの製造方法>
本発明によるレジストパターンの製造方法は、以下を含んでなる。
(1)基板の上方に本発明による組成物を適用すること;
(2)組成物を加熱し、レジスト層を形成すること;
(3)レジスト層を露光すること;
(4)レジスト層を露光後加熱すること;および
(5)レジスト層を現像すること。
明確性のために記載すると、()の中の数字は、順番を意味する。例えば、(2)工程の前に、(1)の工程が行われる。
【0096】
以下、本発明による製造方法の一形態について説明する。
基板(例えば、シリコン/二酸化シリコン被覆基板、シリコンナイトライド基板、シリコンウェハ基板、ガラス基板およびITO基板等)の上方に、適当な方法により本発明による組成物を適用する。ここで、本発明において、上方とは、直上に形成される場合および他の層を介して形成される場合を含む。例えば、基板の直上に、平坦化膜やレジスト下層膜を形成し、その直上に本発明による組成物が適用されていてもよい。レジスト下層膜として、BARC層が挙げられる。適用方法は特に限定されないが、例えばスピナー、コーターによる塗布による方法が挙げられる。塗布後、加熱することにより本発明による膜が形成される。(2)の加熱は、例えばホットプレートによって行われる。加熱温度は、好ましくは100~250℃である(より好ましくは100~200℃;さらに好ましくは100~160℃)。ここでの温度は加熱雰囲気、例えばホットプレートの加熱面温度である。加熱時間は、好ましくは30~300秒間(より好ましくは30~120秒間;さらに好ましくは45~90秒間)。加熱は、好ましくは大気または窒素ガス雰囲気にて行われる。
本発明による製造方法で形成されるレジスト層の厚さは、好適には50~1,500nmである。
【0097】
レジスト層に、所定のマスクを通して露光が行なわれる。露光に用いられる光の波長は特に限定されないが、波長が13.5~248nmの光で露光することが好ましい。具体的には、KrFエキシマレーザー(波長248nm)、ArFエキシマレーザー(波長193nm)、および極紫外線(波長13.5nm)等を使用することができ、好ましくはKrFエキシマレーザーである。これらの波長は±1%の範囲を許容する。
【0098】
露光後、露光後加熱(post exposure bake、以下PEBということがある)が行われる。(4)の加熱は、例えばホットプレートによって行われる。露光後加熱の温度は好ましくは80~160℃(より好ましくは105~115℃)であり、加熱時間は好ましくは30~600秒間(より好ましくは45~120秒間;さらに好ましくは45~90秒間)である。加熱は、好ましくは大気または窒素ガス雰囲気にて行われる。
【0099】
PEB後、現像液を用いて現像が行なわれる。現像法としては、パドル現像法、浸漬現像法、揺動浸漬現像法など従来フォトレジストの現像の際用いられている方法を用いることができる。また現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウムなどの無機アルカリ、アンモニア、エチルアミン、プロピルアミン、ジエチルアミン、ジエチルアミノエタノール、トリエチルアミンなどの有機アミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)などの第四級アミンなどを含む水溶液が用いられ、好ましくは2.38質量%TMAH水溶液である。現像液に、さらに界面活性剤を加えることもできる。現像液の温度は好ましくは5~50℃(より好ましくは25~40℃)、現像時間は好ましくは10~300秒(より好ましくは45~90秒)である。現像後、必要に応じて、水洗またはリンス処理を行うこともできる。ポジ型レジスト組成物を用いているため、露光された部分が現像によって除去され、レジストパターンが形成される。このレジストパターンに、例えばシュリンク材料を用いることでさらに微細化することも可能である。
【0100】
形成されるレジストパターンの膜厚は、好ましくは50~1,500nmである。
形成されるレジストパターンの形状は、リフトオフに適した形状であれば特に限定されないが、好ましくは逆テーパー形状である。
【0101】
本発明において、逆テーパー形状とは、
図1(A)の断面図に示すように、基板11上に、レジストパターン12が形成されている場合、開口点(レジスト表面とレジストパターン側面との境界)13と底点(基板表面とレジストパターン側面との境界)14を結ぶ直線(テーパーライン)と、基板表面とがなす角度が90度より大きく、かつテーパーラインよりもレジストパターンが実質的に外側にはみ出さない、すなわち実質的にレジストパターンが太っていないことをいう。ここで、この角度をテーパー角度15という。このようなレジストパターンを逆テーパー形状のレジストパターン12という。なお、本発明において逆テーパー形状とは、逆円錐台形状(reverse truncated cone)だけを意味するのでは無く、ライン状のパターンにおいて、表面部のライン幅が、基板近傍のライン幅に比べて広い場合なども包含する。
本発明による逆テーパー形状のレジストパターンには、
図1(B)の断面図に示すように、開口点22と底点23を結ぶ直線(テーパーライン24)よりも、レジストパターンが内側にえぐれている、即ち、レジストパターンが痩せている場合も含まれる。ここでのテーパー角度は、テーパー角度25である。このようなレジストパターンをオーバーハング形状のレジストパターン21という。基板から、レジストパターンの膜厚26の半分の長さ27の高さの位置で、基板表面と並行に直線をひき、その直線上で、レジストパターンとの交点と、テーパーラインとの交点との距離を食い込み幅28とする。同じくその直線上で、レジストパターンとの交点と、開口点から基板に垂直にひいた直線との交点との距離をテーパー幅29という。食い込み幅/テーパー幅が0より大きい場合が
図1(B)であり、0である場合が
図1(A)である。
オーバーハング形状である場合、金属蒸着後のレジスト剥離時に、剥離液が入り込みやすい傾向にあるため、好ましい。
なお、オーバーハング形状の変形例として、
図1(C)のように、レジストパターン31の端が丸みを帯びるケースも考えられる。この場合、開口点32は、レジスト表面とレジストパターン側面との境界であって、底面と平行なレジスト表面の平面を想定し、その平面から、レジストパターンが離れる点とする。底点33が基板表面とレジストパターン側面との境界である。開口点32と底点33を結ぶ直線がテーパーライン34であり、ここでのテーパー角度は、テーパー角度35である。
テーパーラインの内側にあるが、レジストパターンではない部分の面積をS
in36とし、テーパーラインの外側にあるが、レジストパターンである部分の面積をS
out37とする。複数の場合は、面積の和を用いる。
S
out/(S
in+S
out)は、0~0.45であることが好ましい(0~0.1であることがより好ましい;0~0.05であることがさらに好ましい;0~0.01であることがよりさらに好ましい)。S
out/(S
in+S
out)が小さい形状は、金属を厚くレジストパターン上に蒸着しても剥離液がレジスト側壁に侵入しやすく有利である。
(S
in-S
out)/(S
in+S
out)は、0~1であることが好ましい(0.55~1であることがより好ましい;0.9~1であることがさらに好ましい;0.99~1であることがよりさらに好ましい)。0<(S
in-S
out)/(S
in+S
out)であることも、本発明の好適な一形態である。(S
in-S
out)/(S
in+S
out)が大きいと、全体としてレジストパターンがテーパーラインより内側にくぼんだ形状となり、金属を厚くレジストパターン上に蒸着しても剥離液がレジスト側壁に侵入しやすく有利である。
図1(A)および(B)の形状の場合にあてはめると、どちらも、S
out/(S
in+S
out)=0であり、どちらも(S
in-S
out)/(S
in+S
out)=1である。
【0102】
本発明の好適な形態として、レジストパターンの上部の幅Wtと、レジストパターンの下部の幅Wbとすると、
-50nm≦(Wt-Wb)であることが好ましく、0nm<(Wt-Wb)であることがより好ましく、50nm<(Wt-Wb)であることがさらに好ましい。逆テーパー形状のレジストパターンを形成できる場合、Wt>Wbとなる。
これらの数値の比較のための条件は可能な限り後述の実施例に揃えて測定することが好適であり、例えば900nm膜厚の膜を形成し、500nmの1:1のトレンチのレジストパターンを形成して比較することが好ましい。
-10%≦(Wt-Wb)/Wtであることが好ましく、0%<(Wt-Wb)/Wtであることがより好ましく、10%<(Wt-Wb)/Wtであることがさらに好ましい。
【0103】
さらに、
(6)レジストパターンをマスクとして、基板の上方に金属を蒸着させること、および
(7)レジストパターンを剥離液で除去すること
を含んでなる方法により、金属パターンを製造することができる。
レジストパターンをマスクとして、基板の上方に、金、銅、等の金属(金属酸化物等であってもよい)を蒸着させる。なお、蒸着の他に、スパッタリングであってもよい。
その後、レジストパターンをその上部に形成された金属とともに、剥離液を用いて除去することで、金属パターンを形成することができる。剥離液は、レジストの剥離液として用いられているものであれば、特に限定されないが、例えば、N-メチルピロリドン(NMP)、アセトン、アルカリ溶液が使用される。本発明によるレジストパターンは逆テーパー形状であるため、レジストパターン上の金属と、レジストパターンが形成されていない部分に形成された金属との間が、隔たっているため、容易に剥離ができる。また、形成される金属パターンの膜厚も厚くすることができ、好ましくは膜厚10~1500nm(より好ましくは50~800nm;さらに好ましくは100~600nm)の金属パターンが形成される。理論に拘束されないが、本組成物から形成するレジストパターンは耐熱性が良いため、これらのリフトオフプロセスに適すると考えられる。
【0104】
本発明の別の一形態として、(5)工程までで形成されたレジストパターンをマスクとして、下地となる各種基板をパターニングすることもできる。レジストパターンをマスクとして直接基板を加工しても良いし、中間層を介して加工しても良い。例えば、レジストパターンをマスクとしてレジスト下層膜をパターニングし、レジスト下層膜パターンをマスクとして基板をパターニングしても良い。加工には、公知の方法が使用できるが、ドライエッチング法、ウェットエッチング法、イオン注入法、金属めっき法などが使用できる。パターニングされた基板に、電極等を配線することも可能である。
【0105】
その後、必要に応じて、加工基板に配線を形成する等のさらなる加工が施され、デバイスが形成される。これらのさらなる加工は、公知の方法を適用することができる。デバイスとしては、半導体素子、液晶表示素子、有機EL表示素子、プラズマディスプレイ素子、太陽電池素子が挙げられる。デバイスとは、好ましくは半導体素子である。
【実施例】
【0106】
本発明を諸例により説明すると以下の通りである。なお、本発明の形態はこれらの例のみに限定されるものではない。
【0107】
組成物1の調製
質量比PGMEA:PGME=30:70を準備し、これを混合溶媒とする。ポリマー(A)としてA1を100質量部に対して、光酸発生剤(B)としてB-1を2.6質量部、塩基化合物(E)としてEを0.32質量部、および界面活性剤(F)としてF-1を0.1質量部を、それぞれ混合溶媒中に添加する。添加量は固形成分濃度が16.5質量%となるように調整する。固形成分濃度は、(溶媒を除いた全成分の質量/全組成物の質量)で算出する。これを室温で30分間、攪拌する。溶質が溶解していることを目視で確認する。これを0.05μmフィルターでろ過する。これによって組成物1を得る。組成を表1に記載する。
使用される各成分は以下である。
A1:ヒドロキシスチレン:スチレン:t-ブチルアクリレート共重合体、モル比でそれぞれ6:2:2、cLogP=2.79、Mw12,000。
上記の比は、各繰り返し単位の構成比を示す。以下も同様である。
【化39】
6:2:2
B-1:
【化40】
E:トリス[2-(2-メトキシエトキシ)エチル]アミン、
F-1:KP341、信越化学工業。
【0108】
組成物2~10、比較組成物1の調製
成分、量を表1に記載のように変更し、「組成物1の調製」と同様に操作を行い、組成物2~10、および比較組成物1を得る。以降の表中、各成分の量を、質量部で示す。
比較組成物1では、ポリマー(A)としてA1とポリマー(G)としてGを質量比1:1で用いることで、ポリマーとする。
使用される各成分は以下である。
A2:
【化41】
6:2:2、cLogP=2.98、Mw12,000、
A3:
【化42】
6:2:2、cLogP=3.30、Mw12,000、
G:
【化43】
4:4:2、cLogP=3.21、Mw5,000、
B-2:
【化44】
B-3:
【化45】
B-4:
【化46】
J:カンファ―スルホン酸
【化47】
I:Lutonal、BASF
【化48】
D:TPPA
【化49】
F-2:KF-53、信越化学工業。
【表1】
【0109】
<組成物1~10レジストパターンの形成>
8インチシリコンウェハ表面を90℃60秒間HMDS処理する。それぞれの組成物をウェハ上に滴下し、回転塗布する。このウェハをホットプレート上で110℃60秒間ベークし、レジスト膜を形成する。この時点のレジスト膜の厚さを光干渉式膜厚測定装置M-1210(SCREEN)で測定すると、それぞれ900nmである。レジスト膜を、KrFステッパー(FPA3000-EX5、CANON)を用いて露光する。マスクパターンは、Dense Line(Line:Space=1:1、Line=500nm)を用いる。その後、このウェハをホットプレート上で110℃60秒間ベーク(PEB)する。これを2.38質量%TMAH水溶液で60秒間パドル現像し、DIWで洗浄し、1,000rpmでスピンドライする。これによりライン幅500nmのレジストパターンを得る。ライン幅はレジストパターン上部で計測する。
図2は、このパターンの垂直断面形状を模式的に示したものである。基板41上に、レジストパターン42が形成されている。3つの図は、レジストパターン上部43の幅が同一で、レジストパターン下部44の幅が異なるケースを示している。
組成物1~10、比較組成物1のレジストパターンを形成したとき、レジストパターン上部のライン幅500nmのパターンを形成する露光量を最適露光量とする。この最適露光量を用いて、後述する解像度、寸法差の評価、および耐熱性を評価する。
【0110】
<比較組成物1レジストパターンの形成>
比較組成物1を用い、KrFステッパー(FPA3000-EX5)に替えて、i線ステッパー(NSR-2205i11D、Nikon)を用いて露光する以外は、上述の「組成物1~10レジストパターンの形成」と同様の操作を行う。これによりこれによりライン幅500nmのレジストパターンを得る。ライン幅はパターン上部で計測する。
【0111】
<実施例101~110および比較例101:解像度の評価>
ライン幅およびスペース幅が250~500nm、ライン:スペース=1:1であるマスクパターンを用い、上述のパターン形成方法で最適露光量にて露光する。最適露光量で露光したときに解像が可能であるレジストパターンの上部最小寸法(nm)を、解像度とする。寸法はパターン上部の長さ測長する。パターンが倒れたり、スペースが潰れている場合は解像できていないとして処理する。パターン倒れもスペース潰れも観察されないライン幅の最小のものを最小寸法として採用する。評価基準は以下とする。
A:300nm未満
B:300~400nm
C:400nmより大きい
得られた結果を、表2に示す。
【表2】
【0112】
<実施例201~210:寸法差の評価>
ライン幅=500nmのレジストパターンのサンプルの切片を作成し、走査型電子顕微鏡(SU8230、日立ハイテク)でパターンの垂直断面を観察する。レジストパターンの断面形状を、SU8230を用いて確認し、レジスト上部と下部の寸法を測定する。このとき、レジストパターン上部の寸法をWt、下部の寸法をWbとする。評価基準は以下とする。
A:50nm<(Wt-Wb)
B:-50nm≦(Wt-Wb)≦+50nm
C:(Wt-Wb)<-50nm
得られた結果を、表3に示す。
【表3】
【0113】
<実施例301、302、比較例301:耐熱性の評価>
表4に記載の組成物を用いて、耐熱性の評価を行う。上述の「寸法差の評価」で得るレジストパターンの断面形状からWtを得る。これをInitial Wtとする。
ライン幅=500nm、スペース幅=500nm(Line:Space=1:1)のマスクパターンを使い、別のサンプルを準備する。これを大気条件下でホットプレートを用い、180秒間、追加の加熱を行う。追加の加熱温度はウェハごとに10℃ずつ120℃から160℃まで条件を変更する。SU8230でパターンの垂直断面図を得て、Wtを得る。これをadditional bake Wtとする。
(Initial Wt)-(additional bake Wt)≧100nmとなる加熱温度を得る。評価基準は以下とする。
A:150℃以上
B:120℃より大きく、150℃より小さい
C:120℃以下
得られた結果を、表4に示す。
【表4】
【符号の説明】
【0114】
11.基板
12.逆テーパー形状のレジストパターン
13.開口点
14.底点
15.テーパー角度
21.オーバーハング形状のレジストパターン
22.開口点
23.底点
24.テーパーライン
25.テーパー角度
26.レジストパターンの膜厚
27.レジストパターンの膜厚の半分の長さ
28.食い込み幅
29.テーパー幅
31.レジストパターン
32.開口点
33.底点
34.テーパーライン
35.テーパー角度
36.Sin
37.Sout
41.基板
42.レジストパターン
43.レジストパターン上部
44.レジストパターン下部
【国際調査報告】