(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-28
(54)【発明の名称】表面処理した金属エフェクト顔料、その調製方法及び使用
(51)【国際特許分類】
C09C 3/06 20060101AFI20250220BHJP
C09C 3/12 20060101ALI20250220BHJP
C09D 7/62 20180101ALI20250220BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20250220BHJP
C09D 11/037 20140101ALI20250220BHJP
C09D 17/00 20060101ALI20250220BHJP
【FI】
C09C3/06
C09C3/12
C09D7/62
C09D201/00
C09D11/037
C09D17/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024544977
(86)(22)【出願日】2023-02-06
(85)【翻訳文提出日】2024-07-29
(86)【国際出願番号】 EP2023052775
(87)【国際公開番号】W WO2023152073
(87)【国際公開日】2023-08-17
(32)【優先日】2022-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】リ バンイン
【テーマコード(参考)】
4J037
4J038
4J039
【Fターム(参考)】
4J037AA10
4J037AA11
4J037AA14
4J037AA19
4J037AA21
4J037AA24
4J037AA30
4J037CA22
4J037CA23
4J037CB23
4J037EE02
4J037FF24
4J037FF25
4J038EA011
4J038HA066
4J038HA406
4J038HA436
4J038JC32
4J038KA08
4J038KA15
4J038NA01
4J038PB07
4J039BA06
4J039BA32
4J039BA33
4J039BA35
4J039BA36
4J039BA37
4J039BA38
4J039BA39
4J039BE01
4J039EA33
4J039EA34
(57)【要約】
金属エフェクト顔料であって、A)リン酸(H3PO4)、B)オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、及びC)少なくとも1種の有機カップリング剤で表面処理され、ベース金属エフェクト顔料のクロマ、光沢、及び色に影響を与えることなく卓越した耐湿性能を示す、金属エフェクト顔料、その製造方法及びその使用。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)リン酸(H
3PO
4)、B)オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、及びC)少なくとも1種の有機カップリング剤で表面処理された、金属エフェクト顔料。
【請求項2】
3種の有機カップリング剤が使用される、請求項1に記載の金属エフェクト顔料。
【請求項3】
前記有機カップリング剤は、アルキルシラン、エポキシシラン、(メタ)アクリルシラン、アミノシラン、及びビニルシランから選択される、請求項1又は2に記載の金属エフェクト顔料。
【請求項4】
C)有機カップリング剤の量は、前記金属エフェクト顔料の総質量を基準にして、炭素分換算で0.3~3.0質量%の範囲である、請求項1~3のいずれか一項に記載の金属エフェクト顔料。
【請求項5】
A)リン酸化合物(H
3PO
4)の量は、前記金属エフェクト顔料の総質量を基準にして、P
2O
5換算で0.01~1.0質量%の範囲である、請求項1~4のいずれか一項に記載の金属エフェクト顔料。
【請求項6】
B)オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)の量は、前記金属エフェクト顔料の総質量を基準にして、SiO
2換算で0.1~1.5質量%の範囲である、請求項1~5のいずれか一項に記載の金属エフェクト顔料。
【請求項7】
前記金属エフェクト顔料は、金属酸化物、金属酸化物水和物、金属亜酸化物、金属、金属フッ化物、金属硫化物、金属炭化物、金属窒化物、金属酸窒化物、及びこれらの混合物から選択される金属化合物の1つ以上の層で被覆された薄片状金属基材を含み;
前記薄片状金属基材は、アルミニウム、チタン、金、銀、鉄、ステンレス鋼、銅、亜鉛、スズ、ニッケル、及びクロムから選択される少なくとも1種の金属又は金属合金から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の金属エフェクト顔料。
【請求項8】
前記薄片状金属基材は、鉄、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、スズ、亜鉛、ビスマス、カルシウム、マンガン、セリウム、クロム、コバルト、ケイ素、及びホウ素からなる群から選択される1種以上の金属の1種以上の金属酸化物及び/又は金属硫化物で被覆されている、請求項7に記載の金属エフェクト顔料。
【請求項9】
前記金属エフェクト顔料は、前記薄片状金属基材の表面をリン酸化合物及び/又はホウ酸化合物で処理するステップの後、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、及びチタンからなる群から選択される1種以上の金属の、1つ以上の水和金属酸化物層を、ゾルゲル法により被覆するステップ、から得られた層を更に備える、請求項7又は8に記載の金属エフェクト顔料。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の金属エフェクト顔料の調製方法であって、
前記金属エフェクト顔料を、水及び/又は1種以上の溶媒に分散/懸濁するステップ、
A)リン酸(H
3PO
4)、B)オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、及びC)少なくとも1種の有機カップリング剤を、水及び/又は前記溶媒に添加することによって、表面処理を実施するステップ、
前記金属エフェクト顔料を乾燥するステップ、
を含む、調製方法。
【請求項11】
前記表面処理が、湿式化学法によって及び/又はゾルゲル法によって実施できる、請求項10に記載の金属エフェクト顔料の調製方法。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか一項に記載の金属エフェクト顔料を含む、水性コーティング系。
【請求項13】
塗料、塗膜、自動車コーティング、産業コーティング、顔料調製物、顔料ペースト、レーダー透過性コーティング、ライダー用途、塗装された材料、インク、印刷された材料、プラスチック、成形物、レーザーマーキング、又は化粧品における、請求項1~9のいずれか一項に記載の金属エフェクト顔料の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理した金属エフェクト顔料、その調製方法、及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウムフレーク等の薄片状金属基材の元来の表面平滑性を損なうことなく、高い耐腐食特性と良好な分散性とを有する、高耐腐食性薄片状金属顔料が周知である(例えば、特開2003-41150号公報)。高耐腐食性薄片状金属基材顔料の耐腐食性は、非水系において薄片状金属基材の表面をリン酸化合物及び/又はホウ酸化合物で処理し(第1層)、その後、非水系においてゾルゲル法によって水和金属酸化物をその上に被覆する(第2層)ことで実現される。更に、ベースとして使用される高耐腐食性薄片状金属顔料の外層上に、水系における湿式法によって、1種以上の水和金属酸化物層(第3層以上)を被覆することで、金属光沢干渉発色顔料が得られる(特開2003-41150号公報、段落[0034])。
エフェクト顔料が、例えば、塗料及びコーティング等の複数の異なる適用媒体に用いられる場合、まったく異なる要求を満たす必要がある。第1に、エフェクト顔料は、当該顔料を取り囲む適用媒体との適合性が必要なだけでなく、場合によっては長期間にわたって十分に安定でなければならない。屋外用途向けの表面コーティング層は、長期間にわたって極端な気象条件と、持続的で強力な水と光に曝露されることが多く、これはたいてい、材料の老化をもたらす。
二酸化チタン、酸化鉄又はその他の金属酸化物層を有するエフェクト顔料は、水や光等の外部影響により、その特性に大きな変化を示すことがある。これは、変色、脆化、並びに機械的及び化学的安定性の低下から明らかである。
【0003】
上記の問題を回避するために、適用性の改善を目的として、エフェクト顔料に後処理を施すことが提案されている。後処理は、しばしば、エフェクト顔料を、ポリマー、種々の金属酸化物/水酸化物、及び/又はシランで被覆することを伴う。
例えば、国際公開第99/57204号は、表面コーティングにおいて良好な配向及び分布を示すエフェクト顔料を調製するための、反応性表面改質剤の使用を記載しており、国際公開第94/01498号は、互いの上に適用された3層の金属酸化物の使用を記載している。国際公開第98/13426号、独国特許出願公開第10348174号明細書、及び米国特許第4,544,415号明細書は、金属酸化物と、モノマー、オリゴマー、及びポリマー状カップリング剤とを含む層を有する顔料を記載している。
例えば、自動車塗料としての適用で要求される耐光性、耐水性、耐候性のための処理(例えば特開昭63-130673号公報、特開平01-292067号公報等による)、例えば塗料分野及び印刷分野で要求される高配向性(リーフィング効果)処理(例えば特開2001-106937号公報、特願平11-347084号公報による)、水系塗料又は水系印刷インクのための水系処理(例えば特開平8-283604号公報による)、化粧品分野の用途での分散性改善のためのシリコーン処理、及び撥水撥油特性改善のためのハイドロジェンポリシロキサン処理、樹脂として使用する場合のウエルドライン防止表面処理(例えば特開平03-100068号公報、特開平03-93862号公報)、並びに分散性改善のための各種処理を実施することができる。
しかし、最先端のエフェクト顔料は、光安定性及び/又は適用媒体との適合性の点で不利である。更に、上記の追加の表面処理には、耐湿性能が大幅に改善した金属エフェクト顔料を与えるものはない。換言すれば、表面処理なし、又は不十分な表面処理のみの金属エフェクト顔料は、時間と共に外観品質の低下を示し、顧客の水性システムにおいて耐湿性が不安定である。
このため、ベース金属エフェクト顔料のクロマ、光沢、及び色に影響を与えることなく耐湿性能が改善された金属エフェクト顔料、及びかかる金属エフェクト顔料の簡単な調製が、要求され続けている。
【発明の概要】
【0004】
従って、本発明の目的は、屋外用途にとって重要な良好な耐湿性能を、ベース金属エフェクト顔料のクロマ、光沢及び色に影響を与えることなく達成できる、表面処理した金属エフェクト顔料を提供することである。
【0005】
上記の問題を解決するために、本発明の発明者は熱心に調査し、A)リン酸(H3PO4)、B)オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、及びC)少なくとも1種の有機カップリング剤を用いた表面処理を金属エフェクト顔料の基材に行うことで、金属エフェクト顔料の耐湿性能を驚くほど改善できることを見出した。更に、本発明は、ベース金属エフェクト顔料のクロマ、光沢及び色に影響を与えない表面処理により、金属エフェクト顔料を安定化する可能性を提供する。
【0006】
従って、本発明は、A)リン酸(H3PO4)、B)オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、及びC)少なくとも1種、好ましくは2種以上の有機カップリング剤で表面処理された金属エフェクト顔料に関する。非常に好ましい実施形態では、3種の有機カップリング剤が使用される。
本発明は、少なくとも3種の有機カップリング剤が使用された上記の金属エフェクト顔料にも関する。
本発明は、有機カップリング剤(1種又は複数)が、アルキルシラン、エポキシシラン、(メタ)アクリルシラン、アミノシラン、及びビニルシランから選択される、上記金属エフェクト顔料にも関する。
本発明は更に、C)有機カップリング剤(1種又は複数)の量が、金属エフェクト顔料の総質量を基準にして、炭素分換算で0.3~3.0質量%の範囲である、上記金属エフェクト顔料に関する。
本発明は更に、A)リン酸化合物(H3PO4)の量が、金属エフェクト顔料の総質量を基準にして、P2O5換算で0.01~1.0質量%の範囲である、上記金属エフェクト顔料に関する。
本発明は更に、B)オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)の量が、金属エフェクト顔料の総質量を基準にして、SiO2換算で0.1~1.5質量%の範囲である、上記金属エフェクト顔料に関する。
【0007】
本発明は更に、金属エフェクト顔料が、金属酸化物、金属酸化物水和物、金属亜酸化物、金属、金属フッ化物、金属硫化物、金属炭化物、金属窒化物、金属酸窒化物、及びこれらの混合物から選択される金属化合物の1つ以上の層で被覆された薄片状金属基材を含み;薄片状金属基材が、アルミニウム、チタン、金、銀、鉄、ステンレス鋼、銅、亜鉛、スズ、ニッケル、及びクロムから選択される少なくとも1種の金属又は金属合金から選択される、上記金属エフェクト顔料に関する。
本発明は更に、薄片状金属基材が、鉄、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、スズ、亜鉛、ビスマス、カルシウム、マンガン、セリウム、クロム、コバルト、ケイ素、及びホウ素からなる群から選択される1種以上の金属の1種以上の金属酸化物及び/又は金属硫化物で被覆されている、上記金属エフェクト顔料に関する。好ましい実施形態では、薄片状金属基材は、Fe2O3及びTiO2から選択される1種以上の金属酸化物で被覆されている。
本発明は更に、金属エフェクト顔料が、薄片状金属基材の表面をリン酸化合物及び/又はホウ酸化合物で処理するステップ、その後ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、及びチタンからなる群から選択される1種以上の金属の、1つ以上の水和金属酸化物層を、ゾルゲル法によって被覆するステップから得られた層を更に備える、上記金属エフェクト顔料に関する。
【0008】
本発明は、以下のステップを含む、上記金属エフェクト顔料の調製方法にも関する:
金属エフェクト顔料を、水及び/又は1種以上の溶媒に分散/懸濁するステップ、
A)リン酸(H3PO4)、B)オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、及びC)少なくとも1種の有機カップリング剤を、水及び/又は溶媒(1種又は複数)に添加することによって、表面処理を実施するステップ、
金属エフェクト顔料を乾燥するステップ。
本発明は更に、表面処理が、湿式化学法によって、及び/又はゾルゲル法によって実施できる、上記金属エフェクト顔料の上記調製方法に関する。
【0009】
本発明は、上記金属エフェクト顔料を含む水性コーティング系にも関する。
本発明は、塗料、塗膜、自動車コーティング、産業コーティング、顔料調製物、顔料ペースト、レーダー透過性コーティング、ライダー(lidar)用途、塗装された材料、インク、印刷された材料、プラスチック、成形物、レーザーマーキング、又は化粧品における上記金属エフェクト顔料の使用にも関する。
【0010】
本発明の金属エフェクト顔料は、金属酸化物、金属酸化物水和物、金属亜酸化物、金属、金属フッ化物、金属硫化物、金属炭化物、金属窒化物、金属酸窒化物、及びこれらの混合物から選択される金属化合物の1つ以上の層で被覆された薄片状金属基材を含む。金属エフェクト顔料をベースとして、A)リン酸(H3PO4)、B)オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、及びC)少なくとも1種の有機カップリング剤を含む表面処理が基材に対して実施される。
表面処理した金属エフェクト顔料は、表面処理なし、又は不十分な表面処理のみの場合、すなわち、例えば、有機カップリング剤のみでの表面処理の場合と比べて、卓越した耐湿性能及び適用媒体との適合性を示す。更に、本発明は、ベース金属エフェクト顔料のクロマ、光沢及び色に影響を与えない金属エフェクト顔料を安定化する可能性を提供する。
更に、表面処理は、いわゆる湿式法を利用して実施できることから、手順が簡単で操作が容易であると同時に、製造コストが低減される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明を製造方法と共に詳細に説明する。
本発明で使用される薄片状金属基材は、アルミニウム、チタン、金、銀、鉄、ステンレス鋼、銅、亜鉛、スズ、ニッケル、及びクロムから選択される少なくとも1種の金属又は金属合金から選択できる。薄片状金属基材の上に、金属酸化物、金属酸化物水和物、金属亜酸化物、金属、金属フッ化物、金属硫化物、金属炭化物、金属窒化物、金属酸窒化物、及びこれらの混合物から選択される金属化合物の1つ以上の層を被覆できる。例えば、薄片状金属基材に、鉄、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、スズ、亜鉛、ビスマス、カルシウム、マンガン、セリウム、クロム、コバルト、ケイ素、及びホウ素からなる群から選択される1種以上の金属の1種以上の金属酸化物及び/又は金属硫化物を被覆できる。
本発明で使用される高耐腐食性薄片状金属基材は、非水系における耐腐食性処理によって形成された層を有する。上記高耐腐食性薄片状金属基材のコアとしての薄片状金属基材は、金属及び金属合金で構成される。
本発明で使用される薄片状金属基材は、平均粒径が2~100μm、平均厚さが0.02~5μmであり、好ましくは平均粒径が5~50μm、平均厚さが0.02~2μmであり、より好ましくは平均粒径が5~30μm、平均厚さが0.05~1μmである。フレークの具体例としては、アルミニウムフレーク、チタンフレーク、鉄フレーク、青銅フレーク、ステンレス鋼フレーク、アルミニウム青銅フレーク、各種アルミニウム合金フレーク、各種チタン合金フレーク等が挙げられる。好ましいフレークとしては、アルミニウムフレーク、チタンフレーク、ステンレス鋼フレーク、青銅フレーク等が挙げられ;更により好ましいフレークとしては、アルミニウムフレーク(例えば、Silver Line Co.Ltd.、昭和アルミニウム社、東洋アルミニウム社、旭化成メタルズ社、Eckart-Werke等から供給されている)、チタンフレーク、及びステンレス鋼フレーク等のうち、ブリリアントメタリック顔料として市販され、安定に供給されているものが挙げられる。特に、平均粒径が5~50μmのアルミニウムフレークが好ましい。
上記のうち、様々な状態で市販されている薄片状金属基材を使用してもよく、例えば、空気中の湿気による酸化腐食防止のために既に有機溶剤に懸濁されている基材(例えばミネラルスピリットに懸濁した顔料ペースト等)、例えば、リーフィングのため又は分散性改善のために各種表面処理剤で処理され、有機溶剤に懸濁されている基材、及び予め表面に酸化保護膜(不動態膜、すなわち表面酸化薄膜層)が適用されている基材が使用できる。本発明の対象に関しては、本発明の効果は、表面の大部分が酸化されていない限り、特に腐食性の高い薄片状金属によってもたらされることから、その使用が好ましい。例えば、取扱いの前に既に有機溶剤に懸濁された状態で市販されているアルミニウムフレークのような高腐食性の基材、及び各種表面処理剤で処理されて有機溶剤に懸濁された基材が、特に本発明での使用に推奨される。予め耐腐食(不動態化)処理がされている薄片状金属基材及び薄片状合金基材を使用することも可能である。
【0012】
本発明で使用される非水系における耐腐食性処理によって形成された層を有する金属基材としては、その表面がリン酸化合物及び/又はホウ酸化合物で処理され、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、及びチタンからなる群から選択される1種以上の金属の1つ以上の水和金属酸化物層がゾルゲル法(例えば、特開2003-41150号公報に記載)によって更に被覆された、薄片状金属基材が挙げられる。その良好な表面平滑性、分散性、及び表面固有の光沢性、中間バインダー層とその外側に更に形成される鉄水和酸化物層との良好な付着性を考慮して、リン酸化合物及び/又はホウ酸化合物の層と、ケイ素、アルミニウム等から選択される1種以上の金属のゾルゲル法による1つ以上の水和金属酸化物層とを含む上記耐腐食性薄片状金属基材が採用される。
高耐腐食性薄片状金属基材のリン酸化合物及び/又はホウ酸化合物による処理は、特開2003-41150号公報の記載に従って実施されてもよい。
続いて形成される水和金属酸化物層に使用される金属は、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、及びチタンからなる群から選択され得る。このうち、ケイ素及びアルミニウムは、透明性に優れ、屈折率が低いことから好ましい。特に、取扱い易さの点からケイ素が好ましい。ゾルゲル法(特開2003-41150号公報に記載)は、この高耐腐食性処理の第2層を被覆するための非水系反応のうち、表面平滑性を保つために好ましい。
【0013】
本明細書の記載において、例えば、特開2003-41150号公報に記載されている、リン酸化合物及び/又はホウ酸化合物で処理され、更に非水系で水和金属酸化物層と組合された薄片状金属は、「非水系で耐腐食性処理により形成された層を有する薄片状金属基材」として定義され、その上に、水和酸化スズを含む層が「中間バインダー層」(第1層)として被覆され、その外層である水和酸化鉄層が「第2層」として被覆される。更に、本発明において、「水和金属酸化物」の「水和酸化物」という用語は、概して、特記のない限り、金属の「酸化物」、「水酸化物」、「酸化物の水和物」、「水和酸化物」、及び「これらの混合物」を指す。「金属酸化物」の「酸化物」という用語も、「水和酸化物」の定義に基づく。更に、このような「水和金属酸化物」を化学式(例えば、一実施形態等で記載される)で表わす場合は、便宜上、酸化物の形で表わす。
【0014】
次に、第2層の付着性及び緻密性を改善するための中間バインダー層(第1層)について記載する。
中間バインダー層は、上記高耐腐食性薄片状金属基材にすぐに続く外層で、以下の様に得ることができる。中間バインダー層(第1層)に好適な材料は、水和酸化スズである。
上記高耐腐食性薄片状金属基材を、均一な被覆層を制御し易いように60~90℃の温度に保った水に分散し、pHを一定に保ちながらスズ塩水溶液と塩基性水溶液とを同時に上記懸濁液に添加し、それにより水和酸化スズ層(中間バインダー層)を高耐腐食性金属基材上に被覆する。pHは、好ましくは4.7未満である。より好ましくは、0.5~3.0のpH値が採用され得る。
非水系における耐腐食性処理によって形成された層を有する薄片状金属基材の中間バインダー層(第1層)中の水和酸化スズの量は、下地(非水系で処理された層)が露出しないように十分な量とする必要がある。すなわち、この量は、単層を形成するのに必要な量を上回らなければならない。非水系における耐腐食性処理を伴った層を有する薄片状金属基材の単位面積(m2)当たりの水和酸化スズの量は、金属酸化物(SnO2)換算で約0.0008g以上である。
具体的には、中間バインダー層(第1層)に使用される水和酸化スズの量は、薄片状耐腐食性金属基材の種類、粒径及び粒径分布に応じて適切に調節する必要がある。高耐腐食性金属基材の単位表面積を考慮すると、当然、粒径が大きい場合には量を低減し、粒径が小さい場合には量を増やす必要がある。
水和酸化スズの量は、第2層の十分な付着と緻密性の改善とが達成され、且つ干渉色の色相を制御できる、実現可能な範囲内に調節される;従って、非水系における耐腐食性処理によって形成された層を有する薄片状金属基材の単位面積(m2)当たりの量は、金属酸化物(SnO2)換算で好ましくは0.0008g~0.3g、より好ましくは0.0009g~0.2g、更に好ましくは0.01g~0.1gである。例えば、金属アルミニウムを薄片状金属として含む高耐腐食性基材(比表面積3.01m2/g(特開2003-41150号公報の表3に記載)を使用した場合、好適な量は高耐腐食性金属基材の単位面積(m2)当たり0.001g~0.06gである。
使用されるスズ塩の水溶液は、水溶性スズ(II)塩又はスズ(IV)塩である。例えば、塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、硫酸スズ(II)、酢酸スズ(II)、シュウ酸スズ(II)等が好ましい。
【0015】
以下に、上記中間バインダー層を形成した後の水和酸化鉄(第2層)の被覆について記載する。中間バインダー層(第1層)の表面上への水和酸化鉄(第2層)の被覆は、気相法又はゾルゲル法等で実施できるが、湿式法(定義は特開2003-41150号公報参照)は、気相法及びゾルゲル法とは対照的に、原料及び製造設備に対する制約がなく、均一な被覆層が得られ易く、用途が広く簡単な方法で操作し易いことから、採用することがより好ましい。
本発明での使用が好ましい湿式法の定義は、これまでに与えられている。より具体的には、水系において、当該方法は、(1)中和加水分解の場合は、所望の水溶性金属塩(例えば、硝酸塩、硫酸塩、塩化物、酢酸塩、及び更なる金属酸塩等)及びその水溶液の所定量を選択する一方で、別にアルカリ性水溶液(金属酸塩の場合には酸性水溶液)を調製しておき、これらを、所定のpHを保ちながら、事前に得たベースである高耐腐食性薄片状金属顔料の懸濁液に滴下して、加水分解生成物層を表面上に形成し、その後、洗浄、濾過、乾燥し、場合によって焼成すること;及び(2)熱加水分解の場合は、所定量の所望の水溶性金属塩を、事前に得たベースである高耐腐食性薄片状金属顔料の懸濁液に添加し、加熱することによって加水分解生成物層を形成させ、その後、洗浄、濾過、乾燥し、場合によって焼成すること、からなる。更に、(1)の中和加水分解による方法の変形としては、アルカリ性水溶液の代わりに、加熱によってアルカリ性を生じる尿素及びアセトアミドを用いる方法(いわゆる「均一沈殿法」)も使用できる。
【0016】
使用される鉄(III)塩としては、塩化物、硫酸塩、硝酸塩等の水溶性塩を選択できる。上記中間バインダー層(第1層)の被覆後、アルカリ性水溶液を用いてpHを一定(4以下)に保ちながら、鉄塩水溶液を逐次的に添加する。本発明で使用されるアルカリ性水溶液の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物水溶液、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩水溶液、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩水溶液、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、又はアンモニア水溶液等が挙げられる。赤みがかった色を得るため、及び発色性を十分に改善するために、水和酸化鉄の量は、非水系における耐腐食性処理によって形成された層を有する薄片状金属基材の単位面積(m2)当たりの金属酸化物(Fe2O3)換算で、好ましくは0.01g~1.0gである。従って、上記量は、個々の薄片状金属基材の色相及び表面平滑性、並びに非水系で得られて処理された高耐腐食性金属基材の特性に応じて適宜変更し得る。この被覆工程中の温度は、効率の点から、上記中間バインダー層(第1層)の被覆中の温度と同じであることが好ましい。このようにして得られた、赤みがかった色の金属光沢を有する着色薄片状干渉顔料を含む懸濁液を、次いで、濾過、洗浄、乾燥、及び焼成する。
上記のように得られた赤みがかった色を有する金属光沢干渉発色顔料は、中間バインダー層を被覆することによって、その上に被覆される水和酸化鉄層(第2層)の付着及び緻密性が改善され、干渉色を有する赤みがかったボディカラーを示す。
【0017】
以下に、本発明によるベース金属エフェクト顔料のクロマ、光沢及び色に影響を与えることなくその耐湿性能を改善することを目的として金属エフェクト顔料に実施される表面処理について記載する。
金属エフェクト顔料に実施される表面処理は、A)リン酸(H3PO4)、B)オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、及びC)少なくとも1種の有機カップリング剤を用いた処理を含む。
このような表面処理は、湿式化学法及び/又はゾルゲル法によって実施できる。湿式化学法は操作が簡単で費用対効果が高く、一方、ゾルゲル法は、表面処理された顔料に、より優れた耐湿性を付与するが、コストはわずかに高くなる場合がある。
本発明による表面処理の必須成分の1つは、A)リン酸(H3PO4)である。金属エフェクト顔料をリン酸(H3PO4)溶液で耐腐食性処理した後、金属エフェクト顔料の表面にリン酸塩(例えば、リン酸アルミニウム)が形成される。
本発明による表面処理の別の必須成分は、B)オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)である。金属エフェクト顔料をオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)溶液で処理及び加水分解した後、水酸化ケイ素(Si(OH)4)が金属エフェクト顔料の表面上に形成され、これが更なる表面処理を促進し、有機カップリング剤(1種又は複数)の固定をはるかに容易にする。金属エフェクト顔料は、表面処理後に乾燥される。乾燥ステップの後、水酸化ケイ素(Si(OH)4)は二酸化ケイ素(SiO2)になる。
本発明による表面処理の別の必須成分は、C)少なくとも1種の有機カップリング剤である。少なくとも1種の有機カップリング剤は、好ましくは表面被覆内固定される、並びに/又は表面のA)リン酸(H3PO4)処理からのリン酸塩(例えば、リン酸アルミニウム)、及び/若しくはB)オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)処理からの水酸化ケイ素(Si(OH)4)に、及び/又は基材に(すなわち、シロキサンを介して)、固定される。
【0018】
本発明に好適且つ好ましい有機カップリング剤は、下記の一般式のオルガノシラン、-アルミネート、-チタネート、及び/又は-ジルコネートであり、
X4-n-mZ-Rn(-B-Y)m
式中、X=OH、ハロゲン、アルコキシ、アリールオキシ
Z=Si、Al、Ti、Zr
R=アルキル、フェニル、又は水素
B=少なくとも2官能性の有機基(アルキレン、アルキレンオキシアルキレン)
Y=アミノ、置換アミノ、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル、シロキサン、アセトキシ、イソシアネート、ビニル、アクリロイル、エポキシド、エポキシプロピルオキシ、イミダゾール、又はウレイド基
n,m=0、1、2、3であり、ここでn+m<3である。
有機カップリング剤は、好ましくは、Z=Siの化合物である。有機カップリング剤は、好ましくはアルコキシシラン基を含み、アルコキシシラン基は加水分解反応条件によって対応するヒドロキシ基に変換できる。後者は酸素架橋を介した固定を生じることができる。更に、種々のカップリング剤の混合物、特に、2種又は3種、最も好ましくは3種のカップリング剤の混合物を用いることもでき、これを混合物として、又は個別に、適用することができる。カップリング剤を適切に選択することにより、本発明の金属エフェクト顔料を種々の適用システムに適合させることができる。
有機カップリング剤は、好適な官能基を選択することにより、適用媒体に適合させることができる。更に、官能基と、適用媒体中の対応する官能基との間の反応により、有機カップリング剤を介して媒体との結合を更に形成できる。特に好ましい実施形態において、本発明の金属エフェクト顔料の表面は、適用媒体に適合した種々の有機カップリング剤の混合物の組合せによって修飾される。金属エフェクト顔料表面の疎水性は、例えばアルキルシランのようなアルキル含有有機カップリング剤を組み込むことで適合させることができる。オルガノシランの他に、加水分解物と、その均一及び不均一なオリゴマー及び/又はポリマーの使用も好ましく、これらは単独で、又はシラン、ジルコネート、アルミネート、ジルコアルミネート及び/若しくはカルボキシジルコアルミネートと組合せて、有機コーティングとして使用できる。種々の有機カップリング試薬、特に、互いに異なる官能基Yを有する試薬の混合物が特に好ましく、これは特定の範囲の適用を保証する。特に好ましいのは、オルガノシランの混合物、特に、異なる官能基を有する少なくとも2種、好ましくは少なくとも3種のオルガノシランを含む混合物である。
【0019】
オルガノシランの例は、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、へキシルトリメトキシシラン、n-オクチルトリメトキシシラン、i-オクチルトリメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、n-デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシル-トリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランである。好適なオリゴマー状アルコールフリーオルガノシラン加水分解物は、特にSiventoから商標名「Dynasylan(登録商標)」で販売されている製品、例えば、Dynasylan HS2926、Dynasylan HS2909、Dynasylan HS2907、Dynasylan HS2781、Dynasylan HS2776、Dynasylan HS2627である。更に、オリゴマー状ビニルシランとアミノシラン加水分解物も、有機コーティングとして好適である。官能化オルガノシランは、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、1,3-ビス(3-グリシドキシプロピル)-1,1,3,3,-テトラメチルジシロキサン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、好ましくは3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-イソシアナトプロピルトリメトキシシランである。ポリマー状シラン系の例は、国際公開第98/13426号に記載されており、例えば、Siventoから商標名Hydrosil(登録商標)で販売されている。
特に好ましいのは、アルキルシラン、エポキシシラン、(メタ)アクリルシラン、アミノシラン、及び/又はビニルシラン、特にこのようなシランの混合物である。特に好ましいのは、へキシルトリメトキシシラン、n-オクチルトリメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、n-デシルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、及び/又はβ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、特にこのようなシランの混合物、特にこれらのシランの少なくとも3種超の混合物である。
【0020】
本発明の金属エフェクト顔料にとって、金属エフェクト顔料の総質量を基準にして>0.3質量%の炭素分を有することが不可欠である。上限は、顔料の効果を阻害し始める量で固定されることが望ましい。概して、その量は約3.0%である。好ましくは、炭素分は、金属エフェクト顔料の総質量を基準にして0.5~3.0質量%の範囲、特に0.5~1.5質量%の範囲である。炭素分は、好ましくはElementar社のCHN分析装置UNICUBEによる、乾燥顔料の元素分析によって測定される。
外側被覆は、層状構造ではなく、リン酸塩と、二酸化ケイ素と、有機化合物との混合物であってもよい。有利なことに、外側被覆は化合物、特に酸化性化合物の不均一な分布を示す。所望であれば、外側被覆は、多層構造を有するように構造化されてもよい。好ましくは、有機カップリング剤の濃度は、金属エフェクト顔料の外面で最大になり、ベース基材に向かって減少する。一方、リン酸塩及び二酸化ケイ素化合物の濃度の低下は、金属エフェクト顔料の内面から始まって外面へと向かうことが好ましい。換言すると、リン酸塩及び二酸化ケイ素化合物の濃度は、金属エフェクト顔料の内面で最大であり、金属エフェクト顔料の外面に向かって減少する。
【0021】
A)リン酸化合物での処理は、リン酸化合物を金属エフェクト顔料の懸濁液に添加することで実施される。使用するリン酸化合物の量は、好ましくは、金属エフェクト顔料の総質量を基準にして、P2O5換算で0.01~1.0質量%に相当する量、より好ましくは0.02~0.8質量%に相当する量、更により好ましくは0.02~0.5質量%に相当する量である。
A)リン酸化合物による処理の後、B)オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)による処理を、金属エフェクト顔料の懸濁液にTEOSを添加することによって実施する。使用するTEOSの量は、好ましくは、金属エフェクト顔料の総質量を基準にして、SiO2換算で0.1~1.5質量%に相当する量、より好ましくは0.1~1.0質量%に相当する量、更により好ましくは0.15~0.6質量%に相当する量である。
【0022】
全ての質量%は、金属エフェクト顔料の総質量を基準にしている。
C)少なくとも1種の有機カップリング剤による処理は、次のように説明できる:第1に、C)少なくとも1種の有機カップリング剤の適用のための反応は、好ましくは10~120分の時間にわたって実施されるが、必要に応じて延長することもできる。次いで、得られた金属エフェクト顔料を、当業者に広く使用されている方法によって、例えば、濾過、乾燥及び篩過によって、精製及び単離する。乾燥工程は、市販の乾燥機、オーブン又はキルン内で、大気下又は窒素ガス若しくはその他の不活性ガス中で実施できる。乾燥温度は110~180℃の範囲、好ましくは120~160℃の範囲である。乾燥時間は、乾燥する材料の量に応じて、15~360分の範囲、好ましくは30~180分の範囲である。
上記の表面処理を用いると、A)リン酸(H3PO4)から生成したリン酸塩(例えば、リン酸アルミニウム)、B)オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)からの二酸化ケイ素(SiO2)、並びにC)少なくとも1種の有機カップリング剤からの有機炭素分は、耐湿性能を改善する相乗効果を有する。更に、リン酸塩と、二酸化ケイ素と、有機化合物との混合物は、金属エフェクト顔料の表面に非常に薄い層(1つ又は複数)を形成することから、ベース金属エフェクト顔料のクロマ、光沢及び色に影響することなく金属エフェクト顔料を安定化する。
【0023】
本発明は更に、ミネラルスピリット、軽質芳香族溶媒、エチレングリコールモノブチルエーテル(Butyl Cellosolve)、フタル酸ジブチル(DBP)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(Carbitol)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(Butyl Carbitol)、又はプロピレングリコールメチルエーテル(PGM)等の溶媒で、好ましくはミネラルスピリット、及び/又はジエチレングリコールモノエチルエーテル(Carbitol)でペースト化された、上記金属エフェクト顔料から作製された顔料ペーストに関する。
溶媒を用いた顔料ペーストは、上記金属エフェクト顔料の粘液化(phlegmatization)をもたらし、取扱い時及び輸送時の粉塵放出を回避する。更に、顔料ペーストは、塗料、塗膜、自動車コーティング、産業コーティング、顔料調製物、顔料ペースト、レーダー透過性コーティング、ライダー用途、塗装された材料、インク、印刷された材料、プラスチック、成形物、レーザーマーキング、又は化粧品等の種々の用途のために、更なる顔料、樹脂成分及び/又は油成分を追加的に含み得る組成物に使用したときに、操作が容易である。
本発明により得られた金属エフェクト顔料は、塗料、塗膜、自動車コーティング、産業コーティング、顔料調製物、顔料ペースト、レーダー透過性コーティング、ライダー用途、塗装された材料、インク、印刷された材料、プラスチック、成形物、レーザーマーキング、又は化粧品等の種々の用途のために、更なる顔料、樹脂成分及び/又は油成分を追加的に含み得る組成物に使用されてもよい。本発明は、上記の樹脂/油及び顔料の組成物を含む、少なくとも1つの塗装層を有する塗装された材料に関する。以下にその具体例を記載する。特に言及していないが、以下の実施例で使用される「本発明の顔料」は、本出願の段落[0003]に記載のように上記の種々の処理を適用することによって調製されるものを含む「金属エフェクト顔料」を示す。
【0024】
塗料への使用
塗料への使用の例は、有機溶剤型塗料、NAD系(非水系分散)塗料、水性塗料、エマルション塗料、コロイダル塗料、及び粉体塗料である。本発明の顔料は、塗料樹脂固形分に関して1~100質量%の割合で混合することができる。1~70質量%の割合が好ましい。1~20質量%の割合が特に好ましい。分散性改善のため、本発明の顔料表面をシランカップリング剤及びチタンカップリング剤で処理することができる。本発明における塗料の樹脂成分としては、例えば、アクリル樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、セルロース樹脂、ビニル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で、又は2種以上を組合せて用いてよい。
水性塗料では、アクリルメラミン樹脂をベースとした架橋樹脂を含むエマルション系樹脂等が例として挙げられる。
混合物及び混和物の例は、有機顔料及び無機顔料等の更なる顔料、並びにタレ防止剤、粘度調整剤、沈降防止剤、架橋促進剤、硬化剤、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、防腐剤、防カビ剤、紫外線安定剤等を含む。本発明の顔料と併用される更なる顔料の例は、二酸化チタン;炭酸カルシウム;クレー;タルク;硫酸バリウム;ホワイトカーボン;酸化クロム;酸化亜鉛;硫化亜鉛;亜鉛粉末;金属粉顔料(例えば、アルミニウムフレーク、着色アルミニウムフレーク、ステンレス鋼フレーク、チタンフレーク等);鉄黒;黄色酸化鉄;べんがら;黄鉛;カーボンブラック;モリブデートオレンジ;紺青;群青;カドミウム系顔料;蛍光顔料;可溶性アゾ染料;不溶性アゾ染料;縮合型アゾ染料;フタロシアニン顔料;縮合多環式顔料;複合酸化物系顔料;グラファイト;雲母(例えば、白雲母、金雲母、合成雲母、フッ素四ケイ素雲母等);金属酸化物被覆雲母(例えば、酸化チタン被覆雲母、二酸化チタン被覆雲母、(水和)酸化鉄被覆雲母、酸化鉄及び酸化チタン被覆雲母、低次酸化チタン被覆雲母等);金属酸化物被覆グラファイト(例えば、二酸化チタン被覆グラファイト等);薄片状アルミナ;金属酸化物被覆アルミナ(例えば、二酸化チタン被覆アルミナ、酸化鉄被覆薄片状アルミナ、Fe2O3被覆薄片状アルミナ、Fe3O4被覆薄片状アルミナ、干渉色金属酸化物被覆薄片状アルミナ等);雲母状酸化鉄(MIO);金属酸化物被覆MIO;金属酸化物被覆シリカフレーク、及び金属酸化物被覆ガラスフレークである。これらの顔料等を相互に組合せることにより、新たな色調を得ることができ、発色性を改善することができる。この塗料は、木材、プラスチック、金属板、ガラス、セラミック、紙、フィルム、シート、LCディスプレイ用反射板の半透明膜等に適用できる。塗料の用途の例としては、自動車、建築、船舶、家電製品、缶詰、産業機器、路面表示、プラスチック、家庭用品等が挙げられる。
【0025】
塗装された材料の塗膜構造の例としては、例えば、下地層、中塗り層、本発明の顔料含有層及びクリア層の順序;又は、下地層、本発明顔料含有中塗り層及びクリア層の順序等の層状構造が挙げられるが、これらに限定されない。
塗装された材料を構成するための塗膜形成方法としては1コート/1ベーク、2コート/1べーク、2コート/2ベーク、3コート/1ベーク、3コート/2べーク、3コート/3ベーク等が挙げられる。塗装方法の例としては、静電塗装、スプレー塗装、エアレス塗装、ロールコータ塗装、浸漬塗装等が挙げられる。
レーダー透過性コーティングにおける使用の例としては、プラスチック基材上の水性OEM又は補修用自動車コーティング等が挙げられる。プラスチック基材は、自動車用バンパー、ラジエーターグリル、自動車用バックパネル、ドアトリムストリップ、バックミラーケーシング、又はハンディケーシングである。プラスチック基材は、例えばポリカーボネート(PC)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)コポリマー、アクリロニトリル-エチレン-スチレン(AES)コポリマー、及びポリプロピレン(PP)等の熱可塑性樹脂であってもよい。プラスチック基材上のレーダー透過性塗膜は、好ましくは自動車バンパー上にあり、金属エフェクト顔料を含有するコーティング配合物、及び/又は他の真珠光沢エフェクト顔料との混合物から作製される。プラスチック基材上の塗膜は、乾燥膜の厚さが15μm以下であり、金属(アルミニウム)部分の質量濃度(PWC)の割合が5質量%以下であることが好ましい。
ライダー用途の例としては、共にライダー適合性塗装系内のライダー透過性顔料及びライダー反射層が挙げられる。本発明の顔料は、メタリックグレー色のように、機能的黒色等のライダー反射材料を用いて配合して、ライダーの反射率と検出性を高めることができる。
【0026】
印刷インクへの使用
印刷インクへの使用の例としては、凸版インク、リソグラフ印刷インク、凹版印刷インク、金属板用インク、放射線硬化型インク、UVインク、EBインク、フレキソインク、スクリーンインク、オフセットインク、グラビアインク等、及びこれらの水性インク等が挙げられる。本発明の顔料は、インク固形分としての樹脂に関して1~100質量%の割合で混合することができる。1~70質量%の割合が好ましい。1~20質量%の割合が特に好ましい。なお、本発明の顔料は、顔料表面をシランカップリング剤、チタンカップリング剤等で処理することが可能である。樹脂成分の例としては、例えば、マレインロジン樹脂、マレイン樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、石油樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ブチラール樹脂、メラミン、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、セルロース樹脂、ビニル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、セルロース樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で、又は2種以上を組合せて用いてよい。
混合物の例としては、有機顔料、無機顔料等の更なる顔料、並びにワニス、レジューザー、コンパウンダー、号外ワニス、ゲル化剤、乾燥促進剤、酸化防止剤、裏移り防止剤、滑剤、表面活性剤等の添加剤が挙げられる。更なる例としては、タレ防止剤、粘度調整剤、沈降防止剤、架橋促進剤、硬化剤、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、防腐剤、防カビ剤、紫外線安定剤等が挙げられる。
本発明の顔料と併用される更なる顔料の例は、体質顔料;沈降性硫酸バリウム;沈降性炭酸カルシウム;アルミナホワイト;炭酸マグネシウム;ホワイトカーボン;酸化チタン、亜鉛華等の白色顔料;カーボンブラック等の黒色顔料;クロムイエロー、ジスアゾイエロー、ハンザイエロー等の黄色顔料;ブリリアントカーミン6B、レーキレッドC、パーマネントレッドF5R、ローダミンレーキ等の赤色顔料;フタロシアニンブルー、ビクトリアブルーレーキ、紺青等の青色顔料;クロムバーミリオン、ジスアゾオレンジ等の橙色顔料;フタロシアニングリーン等の緑色顔料;メチルバイオレッドレーキ、ジオキサジンバイオレッド等の紫色顔料;イソインドリノン、ベンズイミダゾリン、縮合アゾ、キナクドリン等のその他の顔料;複合酸化物系顔料;グラファイト;雲母(例えば、白雲母、金雲母、合成雲母、フッ素四ケイ素雲母等);金属酸化物被覆雲母(例えば、酸化チタン被覆雲母、二酸化チタン被覆雲母、(水和)酸化鉄被覆雲母、酸化鉄及び酸化チタン被覆雲母、低次酸化チタン被覆雲母等);金属酸化物被覆グラファイト(例えば、二酸化チタン被覆グラファイト等)、薄片状アルミナ;金属酸化物被覆アルミナ(例えば、二酸化チタン被覆アルミナ、酸化鉄被覆薄片状アルミナ、Fe2O3被覆薄片状アルミナ、Fe3O4被覆薄片状アルミナ、干渉色金属酸化物被覆薄片状アルミナ等);MIO;金属酸化物被覆MIO;金属酸化物被覆シリカフレーク、及び金属酸化物被覆ガラスフレークが挙げられる。これらのインクは、木材、プラスチック、金属鋼板、ガラス、セラミック、紙、ダンボール、フィルム、シート、缶詰、LCディスプレイ用反射板の半透明膜等に印刷することができる。本発明による顔料をこれらの顔料等と組合せると、新たな色相、色及び機能が出現し得る。特に、遊色効果顔料との適切な組合せにより、本発明による顔料は、有価証券、チケット、旅行券、乗車券等の偽造防止にも適したものとなり得る。
更に、印刷用インクに用いる場合、特に本発明の顔料に高配向性処理(上述)を実施することが特に好ましい。このように表面処理された顔料を各種印刷用インクに混合し、オフセット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、紫外線硬化印刷、凸版及びリソグラフ印刷に用いることができる。高配向性処理を施した顔料をインクに用いることで、印刷表面の干渉色の発色が改善される。
【0027】
プラスチックへの使用
本発明において、プラスチックに組み込む場合、顔料は、直接的に又は予めペレットを形成した後で、のいずれかで樹脂と混合することができ、その後、押出成形、カレンダー成形、ブロー成形等により各種成形物へと組み込むことができる。樹脂成分としてはポリオレフィン系の熱可塑性樹脂、エポキシ系、ポリエステル系及びポリアミド(ナイロン)系の熱硬化性樹脂のいずれも用いることができる。少量の顔料で、本発明の顔料の発色効果を有効に生じるのに十分となり得る。例えば、多層プラスチックボトルを成形する場合、外層の樹脂に顔料を組み込むことによりボトル外観を効果的なものにすることができる。特に、本発明によって得られる顔料において、更に面配向性処理が実施された(上記のように)ものが、発色性改善の目的で好ましい。当然、本発明の顔料において、ウエルドライン防止表面処理(例えば、カプセル化処理等)が実施されたものを使用することも可能である。
本発明の顔料は、他の顔料と組合せて使用することもできる。このような顔料の例としては、二酸化チタン;炭酸カルシウム;クレー;タルク;硫酸バリウム;ホワイトカーボン;酸化クロム;酸化亜鉛;硫化亜鉛;亜鉛粉末;金属粉顔料;鉄黒;黄色酸化鉄;べんがら;黄鉛;カーボンブラック;モリブデートオレンジ;紺青;群青;カドミウム系顔料;蛍光顔料;可溶性アゾ染料;不溶性アゾ染料;縮合型アゾ染料;フタロシアニン顔料;縮合多環式顔料;複合酸化物系顔料;グラファイト;雲母(例えば、白雲母、金雲母、合成雲母、フッ素四ケイ素雲母等);金属酸化物被覆雲母(例えば、酸化チタン被覆雲母、二酸化チタン被覆雲母、(水和)酸化鉄被覆雲母、酸化鉄及び酸化チタン被覆雲母、低次酸化チタン被覆雲母等);金属酸化物被覆グラファイト(例えば、二酸化チタン被覆グラファイト等);薄片状アルミナ;金属酸化物被覆アルミナ(例えば、二酸化チタン被覆アルミナ、酸化鉄被覆薄片状アルミナ、Fe2O3被覆薄片状アルミナ、Fe3O4被覆薄片状アルミナ、干渉色金属酸化物被覆薄片状アルミナ等);MIO;金属酸化物被覆MIO;金属酸化物被覆シリカフレーク、及び金属酸化物被覆ガラスフレークが挙げられる。
【0028】
レーザーマーキングへの使用
本発明の顔料は、設計目的だけでなく、レーザー印刷を容易にし、その透明度を高めるためにも、上記プラスチックに混錬することで、種々の成形物に使用できる。
【0029】
化粧品への使用
本発明における顔料の化粧品への使用には、メイクアップ化粧品、ヘアケア製品、化粧品パック等が含まれる。顔料は、例えば、ジェル、口紅、ファンデーション(エマルション、リキッド、オイル型エマルション等)、ほお紅、マスカラ、ネイルエナメル、まゆずみ、アイシャドウ、アイライナー、毛髪剤等に使用できる。これらの顔料は、配合物を基準にして1~100質量%の割合で使用できる。例えば、ファンデーションでは1~50質量%、シャドウでは1~80質量%、口紅では1~40質量%、ネイルエナメルでは0.1~20質量%等が挙げられる。
混合成分の例を以下に示す。本発明の顔料と併用される顔料の例としては、二酸化チタン;炭酸カルシウム;クレー;タルク;硫酸バリウム;ホワイトカーボン;酸化クロム;酸化亜鉛;硫化亜鉛;亜鉛粉末;金属粉顔料;鉄黒;黄色酸化鉄;べんがら;黄鉛;カーボンブラック;モリブデートオレンジ;紺青;群青;カドミウム系顔料;蛍光顔料;可溶性アゾ染料;不溶性アゾ染料;縮合型アゾ染料;フタロシアニン顔料;縮合多環式顔料;複合酸化物系顔料;グラファイト;金属粉末顔料;雲母(例えば、白雲母、金雲母、合成雲母、フッ素四ケイ素雲母等);金属酸化物被覆雲母(例えば、酸化チタン被覆雲母、二酸化チタン被覆雲母、(水和)酸化鉄被覆雲母、酸化鉄及び酸化チタン被覆雲母、低次酸化チタン被覆雲母等);金属酸化物被覆グラファイト(例えば、二酸化チタン被覆グラファイト等);薄片状アルミナ;金属酸化物被覆アルミナ(例えば、二酸化チタン被覆アルミナ、酸化鉄被覆薄片状アルミナ、Fe2O3被覆薄片状アルミナ、Fe3O4被覆薄片状アルミナ、干渉色金属酸化物被覆薄片状アルミナ等);MIO;金属酸化物被覆MIO;金属酸化物被覆シリカフレーク、及び金属酸化物被覆ガラスフレーク、セリサイト、炭酸マグネシウム、シリカ、ゼオライト、ヒドロキシアパタイト、酸化クロム、チタン酸コバルト、ガラスビーズ、ナイロンビーズ、シリコーンビーズ等が挙げられる。有機顔料の例としては、赤色2、3、102、104、105、106、201、202、203、204、205、206、207、208、213、214、215、218、219、220、221、223、225、226、227、228、230の(1)、230の(2)、231、232、405の各号;黄色4、5、201、202の(1)、202の(2)、203、204、205、401、402、403、404、405、406、407の各号;緑色3、201、202、204、205、401、402の各号;青色1、2、201、202、203、204、205、403、404の各号;橙色201、203、204、205、206、207、401、402、403の各号;褐色201号;紫色201、401の各号;黒色401号が挙げられる。
天然色素の例としては、サロールイエロー、カーミン、β-カロチン、ハイビスカス色素、カプサイシン、カルミン酸、ラッカイ酸、グルクミン、リボフラビン、シコニン等が挙げられる。
更に、他の成分の例としては、油脂;界面活性剤;スクワラン、流動パラフィン、パルミチン酸、ステアリン酸、ミツロウ、ミリスチン酸ミリスチル等の炭化水素;アセトン、トルエン、酢酸ブチル、酢酸エステル、多価アルコール等の油成分及びその他の有機溶剤;ろう類;酸化防止剤;UV吸収剤;ビタミン;ホルモン;防腐剤;香料等が挙げられる。本発明の顔料を、上記顔料及び成分と組合せることにより、新たな効果色及び機能を見出すことができる。
化粧品に使用する場合、本発明の顔料を、例えばコンパクトケーキ、クリーム、口紅等に使用できるが、色が特に重要となるメイクアップ用化粧品に用いると特に効果的である。当然、本発明の顔料において、前もって表面処理(前述参照)が実施されたものを用いることができる。
【0030】
その他の用途
本発明の顔料は、複写機用カラートナー等に配合して使用できる。
【実施例】
【0031】
以下に、実施例及び比較例を参照することで、本発明をより詳細に記載するが、これらは本発明を制限するものではない。
【0032】
実施例1
赤みがかった色を有する金属光沢干渉発色顔料(Fe2O3/SnO2/[SiO2/Al(P)])の調製
質量中央径D50が約13.5μmで、耐腐食性処理によって形成された層を有する薄片状金属基材(例えばアルミニウム)(特開2003-41150号公報の段落[0061]の実施例4-b)に従って得られた[SiO2/Al(P)])100gを、2リットルの水に懸濁する。懸濁液を撹拌下で75℃に加熱する。上記懸濁液に、50g/Lの濃度のSnCl4・5H2O溶液186mLを滴下し、その間20質量%炭酸ナトリウム水溶液を用いてpHを1.8に保つ(第1層「中間バインダー層」の調製)。次いで、87.75g/Lの濃度のFeCl3(III)水溶液4540gを、所望の色相に達するまで滴下し、その間20質量%炭酸ナトリウム水溶液を用いてpHを3.0に保つ(第2層の調製)。上記懸濁液から固体部分を濾過、洗浄、乾燥し、350℃で30分間焼成すると、赤みがかった金属光沢干渉発色顔料が得られる。
【0033】
実施例2
本発明による赤みがかった色を有する金属光沢干渉発色顔料(Fe2O3/SnO2/[SiO2/Al(P)])の表面処理の例
10%の実施例1のスラリー(質量比100g/1000gの実施例1/イオン交換水)を調製し、撹拌しながら温度を室温に保持する。リン酸(H3PO4)溶液を添加した後、スラリーを30分間保持する。次いで、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)の溶液を滴下する。その後、スラリーのpHを6.0に調整し、温度を75℃に上げる。メタクリルシラン(Z6030:メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン)及びエポキシシラン(Z6040:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)の2種のシランカップリング剤を溶液に滴下する。1時間保持した後、アミノシラン(Z6020:N-(β-アミノエチル)-y-アミノプロピルトリメトキシシラン)溶液のシランカップリング剤を溶液に添加する。1時間保持した後、スラリーを濾過し、イオン交換水で洗浄する。ケークを130℃で2.5時間乾燥する。乾燥した試料を32μmのふるいで篩過する。
得られた金属エフェクト顔料は、0.025質量%のP2O5と、0.5質量%のSiO2と、1.0質量%の炭素分とを有する。全ての百分率は、金属エフェクト顔料の総質量を基準にした質量で測定されている。炭素分は、Elementar社のUNICUBE CHN分析装置によって測定されている。
【0034】
実施例3
本発明による赤みがかった色を有する金属光沢干渉発色顔料(Fe2O3/SnO2/[SiO2/Al(P)])の表面処理の例
質量中央径D50が約18μmであるMeoxal(登録商標)Victoria Red(Merck KGaAのFe2O3/SnO2/[SiO2/Al(P)])を、特願2004-004811、特開2005-264144号公報、特許第3987067号明細書に従って得る。10%の上記Meoxal(登録商標)Victoria Redのスラリー(質量比100g/1000gの上記Meoxal(登録商標)Victoria Red/イオン交換水)を調製し、撹拌しながら温度を室温に保持する。リン酸(H3PO4)溶液を添加した後、スラリーを30分間保持する。次いで、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)の溶液を滴下する。その後、スラリーのpHを6.0に調整し、温度を75℃に上げる。メタクリルシラン(Z6030:メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン)及びエポキシシラン(Z6040:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)の2種のシランカップリング剤を溶液に滴下する。1時間保持した後、アミノシラン(Z6020:N-(β-アミノエチル)-y-アミノプロピルトリメトキシシラン)溶液のシランカップリング剤を溶液に添加する。1時間保持した後、スラリーを濾過し、イオン交換水で洗浄する。ケークを130℃で2.5時間乾燥する。乾燥した試料を32μmのふるいで篩過する。
得られた金属エフェクト顔料は、0.15質量%のP2O5と、0.5質量%のSiO2と、1.8質量%の炭素分とを有する。全ての百分率は、金属エフェクト顔料の総質量を基準にした質量で測定されている。炭素分は、Elementar社のUNICUBE CHN分析装置によって測定されている。
【0035】
比較例1
赤みがかった色を有する金属光沢干渉発色顔料(Fe2O3/SnO2/[SiO2/Al(P)])の不十分な表面処理の例
10%の実施例1のスラリー(質量比100g/1000gの実施例1/イオン交換水)を調製し、撹拌しながら温度を室温に保持する。次いで、スラリーのpHを6.0に調整し、温度を75℃に上げる。その後、メタクリルシラン(Z6030:メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン)及びエポキシシラン(Z6030:メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン)の2種のシランカップリング剤を溶液に滴下する。1時間保持した後、アミノシラン(Z6020:N-(β-アミノエチル)-y-アミノプロピルトリメトキシシラン)溶液のシランカップリング剤を溶液に添加する。1時間保持した後、スラリーを濾過し、イオン交換水で洗浄する。ケークを130℃で2.5時間乾燥する。乾燥した試料を32μmのふるいで篩過する。
【0036】
比較例2
赤みがかった色を有する金属光沢干渉発色顔料(Fe2O3/SnO2/[SiO2/Al(P)])の不十分な表面処理の例
質量中央径D50が約18μmであるMeoxal(登録商標)Victoria Red(Merck KGaAのFe2O3/SnO2/[SiO2/Al(P)])を、特願2004-004811、特開2005-264144号公報、特許第3987067号明細書に従って得る。10%の上記Meoxal(登録商標)Victoria Redのスラリー(質量比100g/1000gの上記Meoxal(登録商標)Victoria Red/イオン交換水)を調製し、撹拌しながら温度を室温に保持する。次いで、スラリーのpHを6.0に調整し、温度を75℃に上げる。その後、メタクリルシラン(Z6030:メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン)及びエポキシシラン(Z6030:メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン)の2種のシランカップリング剤を溶液に滴下する。1時間保持した後、アミノシラン(Z6020:N-(β-アミノエチル)-y-アミノプロピルトリメトキシシラン)溶液のシランカップリング剤を溶液に添加する。1時間保持した後、スラリーを濾過し、イオン交換水で洗浄する。ケークを130℃で2.5時間乾燥する。乾燥した試料を32μmのふるいで篩過する。
【0037】
耐湿性能の評価
本発明による金属エフェクト顔料と、比較例の金属エフェクト顔料とを、以下のように湿潤試験で調べた。対応する試験結果を表1に示す。
湿潤試験:
湿潤試験は、ERICHSEN INCのHYGROTHERM 519内で、DIN EN ISO 6270-2に従って、コーティングしたパネルを、湿度100%及び40℃のチャンバ内で10日間保管した後、コーティング又はコーティング内に埋め込まれた顔料の挙動を評価する。
試験は、水性コーティング系で実施する。湿潤試験の終了後、パネルを取り出して1時間及び4時間置いた。性能(耐湿性)は、画像鮮明度(DOI)によって評価した{テストスケール10(良い)~0(悪い)}
湿潤試験の結果を表1に示す。
【0038】
【表1】
金属エフェクト顔料に表面処理がない場合、例えば、実施例1から得られた金属エフェクト顔料は、屋外用途にほぼ使用できない非常に低い耐湿性能を示す。比較例1及び比較例2に示されるように、表面処理が不十分な場合、得られる金属エフェクト顔料は、なおも耐湿性能が低い(表1参照)。本出願に開示される表面処理のみの場合(例えば、実施例2及び実施例3)、得られる金属エフェクト顔料は、優れた耐湿性能を達成できる(表1参照)。
【0039】
以下に使用の具体例を示す。本発明による表面処理した金属エフェクト顔料は、非常に優れた適用媒体適合性を示す。
使用例1
塗料への使用例:
真珠光沢顔料ベースの塗料:
(組成物A)
Acrydic 47-712 70質量部
Super Beckamine G821-60 30質量部
(組成物B)
実施例2の試料 10質量部
真珠光沢顔料 10質量部
(組成物C)
酢酸エチル 50質量部
トルエン 30質量部
n-ブタノール 10質量部
Solvesso #150 40質量部
100質量部の組成物Aを、20質量部の組成物Bと混合し、得られた混合物を希釈して、組成物Cを用いたスプレー塗装に好適な粘度(Ford Cup #4で12~15秒)を得て、これをスプレー塗装して下地層を形成する。
クリアペイント:
Acrydic 44-179 14質量部
Super Beckamine L117-60 6質量部
トルエン 4質量部
MIBK(メチルイソブチルケトン) 4質量部
Butyl cellosolve 3質量部
この組成物を、上記真珠光沢下地の上に被覆し、40℃で30分間乾燥し、室温で空気乾燥し、ベークする(130℃で30分間)。得られた塗膜は、高い彩度を有する鮮やかな赤みがかった色の金属光沢を有する干渉色を示す。
【0040】
使用例2
プラスチックへの使用例:
高密度ポリエチレン(ペレット) 100質量部
実施例2の試料 1質量部
ステアリン酸マグネシウム 0.1質量部
ステアリン酸亜鉛 0.1質量部
上記の成分を、ドライブレンドし、射出成形により成形する。
実施例2の試料を含む成形物は、鮮やかな赤みがかった色で金属光沢を有する干渉色を示す。
【0041】
使用例3
インクへの使用例:
CCST媒体(ニトロセルロース樹脂) 10質量部
実施例2の試料 8質量部
溶媒NC102を、上記成分からブレンドしたインク組成物に添加し、Zahn Cup No.3で20秒の粘度を有するインクを調製する。実施例2の試料を含むこのインクで得られる印刷物は、鮮やかな赤みがかった色で金属光沢を有する干渉色を示す。
【0042】
使用例4
化粧品への使用例
コンパクトパウダーへの使用例:
タルク 50質量部
実施例2の試料 25質量部
着色顔料 5質量部
ミリスチン酸イソプロピル 適量
ステアリン酸マグネシウム 2質量部
ファンデーション用配合物:
タルク 38質量部
実施例2の試料 25質量部
雲母(8μm) 10質量部
ステアリン酸マグネシウム 3質量部
ナイロンパウダー12 8質量部
黄色酸化鉄 1.9質量部
べんがら 0.8質量部
酸化チタン 1.0質量部
鉱油(油成分) 適量
(カプリル酸、カプリン酸)トリグリセリド(油成分)
3.3質量部
ブチルパラベン 0.1質量部
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の金属エフェクト顔料は、薄片状金属基材が、金属酸化物、金属酸化物水和物、金属亜酸化物、金属、金属フッ化物、金属硫化物、金属炭化物、金属窒化物、金属酸窒化物、及びこれらの混合物から選択される金属化合物の1つ以上の層で被覆されている顔料である。金属エフェクト顔料をベースとして、リン酸(H3PO4)と、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)と、少なくとも1種の有機カップリング剤とを含む表面処理が基材に対して実施される。表面処理した金属エフェクト顔料は、ベース金属エフェクト顔料のクロマ、光沢及び色に影響を与えることなく卓越した耐湿性能を示す。従って、該顔料は、塗料、塗膜、自動車コーティング、産業コーティング、顔料調製物、顔料ペースト、レーダー透過性コーティング、ライダー用途、塗装された材料、インク、印刷された材料、プラスチック、成形物、レーザーマーキング、又は化粧品等に使用できる。
【国際調査報告】