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特表2025-505953基板処理システムのESCのための下塗り被覆および抵抗制御
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-03-05
(54)【発明の名称】基板処理システムのESCのための下塗り被覆および抵抗制御
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20250226BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20250226BHJP
   C23C 16/458 20060101ALI20250226BHJP
【FI】
H01L21/31 C
H01L21/68 R
C23C16/458
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024544642
(86)(22)【出願日】2022-12-13
(85)【翻訳文提出日】2024-09-24
(86)【国際出願番号】 US2022052713
(87)【国際公開番号】W WO2023146648
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】63/304,379
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592010081
【氏名又は名称】ラム リサーチ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】LAM RESEARCH CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホン・トゥ
(72)【発明者】
【氏名】ジ・チュンハイ
(72)【発明者】
【氏名】チャン・ペンイ
(72)【発明者】
【氏名】ラナ・ニラジ
(72)【発明者】
【氏名】ビ・フェン
(72)【発明者】
【氏名】リー・ミン
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
5F131
【Fターム(参考)】
4K030GA02
5F045AA08
5F045AA15
5F045AA19
5F045AD01
5F045AE01
5F045BB08
5F045DP03
5F045DQ10
5F045EB05
5F045EB06
5F045EF05
5F045EK07
5F045EM05
5F131AA02
5F131CA17
5F131DA33
5F131DA42
5F131EA03
5F131EB11
5F131EB15
5F131EB17
5F131EB78
5F131EB79
(57)【要約】
【解決手段】静電チャック(ESC)下塗りシステムは、メモリおよびコントローラを備える。メモリは、下塗りアプリケーションを格納する。コントローラは下塗りアプリケーションを実行して、下塗りパラメータを決定し、完全洗浄プロセスを実施して基板処理システムの処理チャンバ内の下塗り堆積物を除去し、下塗りパラメータに基づいて1回以上の堆積プロセスを実施してESC上に1層以上の下塗り層を堆積させ、7~15μmの全厚を有する全面下塗り層を提供するように構成され、1層以上の下塗り層は、続くESCにおける基板の堆積処理の間、ESCの保護を提供する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電チャック(ESC)下塗りシステムであって、
下塗りアプリケーションを格納するメモリと、
コントローラであって、前記下塗りアプリケーションを実行して、
下塗りパラメータを決定し、
完全洗浄プロセスを実施して、基板処理システムの処理チャンバ内の下塗り堆積物を除去し、
前記下塗りパラメータに基づいて、1回以上の堆積プロセスを実施して前記ESC上に1層以上の下塗り層を堆積させ、7~15μmの全厚を有する全面下塗り層を提供し、前記1層以上の下塗り層は、続く前記ESCにおける基板の堆積処理の間に前記ESCの保護を提供する、ように構成されたコントローラと、
を備える、ESC下塗りシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のESC下塗りシステムであって、
前記下塗りパラメータは、無線周波数電力レベル、ガス流量、ガス流圧、ガス種、および堆積プロセスの継続時間を含む、ESC下塗りシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のESC下塗りシステムであって、
前記下塗りパラメータは、前記1層以上の下塗り層の堆積中に形成される各下塗り層に対する前記静電チャックとシャワーヘッドとの間のギャップのサイズを含む、ESC下塗りシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のESC下塗りシステムであって、
前記完全洗浄プロセスは、前記処理チャンバにアンモニアを供給することを含む、ESC下塗りシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のESC下塗りシステムであって、
前記1層以上の下塗り層は、
第1の下塗り層と、
前記第1の下塗り層の上に配置された第2の下塗り層と、
を含む、ESC下塗りシステム。
【請求項6】
請求項5に記載のESC下塗りシステムであって、
前記第1の下塗り層および前記第2の下塗り層の各々は、酸化シリコンおよび窒化シリコンの少なくともいずれかを含む、ESC下塗りシステム。
【請求項7】
請求項5に記載のESC下塗りシステムであって、
前記第1の下塗り層は、酸化シリコンを含み、
前記第2の下塗り層は、窒化シリコンまたは酸窒化シリコンを含む、ESC下塗りシステム。
【請求項8】
請求項5に記載のESC下塗りシステムであって、
前記第1の下塗り層および前記第2の下塗り層は、酸化シリコンを含む、ESC下塗りシステム。
【請求項9】
請求項5に記載のESC下塗りシステムであって、
前記第1の下塗り層は、酸化シリコンまたは酸窒化シリコンを含み、
前記第2の下塗り層は、窒化シリコンまたは酸窒化シリコンを含む、ESC下塗りシステム。
【請求項10】
請求項5に記載のESC下塗りシステムであって、
前記第2の下塗り層は、前記第1の下塗り層よりも薄い、ESC下塗りシステム。
【請求項11】
請求項5に記載のESC下塗りシステムであって、
前記コントローラは、前記ESCとシャワーヘッドとの間のギャップのサイズが、前記第1の下塗り層の堆積よりも前記第2の下塗り層の堆積について大きくなるよう設定するように構成されている、ESC下塗りシステム。
【請求項12】
請求項5に記載のESC下塗りシステムであって、
前記コントローラは、前記第1の下塗り層の堆積に対する前記ESCとシャワーヘッドの間のギャップのサイズを設定し、前記第2の下塗り層の堆積に対する前記ギャップの前記サイズを変更しないように構成されている、ESC下塗りシステム。
【請求項13】
請求項1に記載のESC下塗りシステムであって、
前記1層以上の下塗り層は、
第1の下塗り層と、
前記第1の下塗り層の上に配置された1層以上の中間下塗り層と、
前記1層以上の下塗り層の上に配置された最終下塗り層と、
を含む、ESC下塗りシステム。
【請求項14】
請求項13に記載のESC下塗りシステムであって、
前記第1の下塗り層は、酸化シリコンまたは酸窒化シリコンで形成され、
前記1層以上の中間下塗り層および前記最終下塗り層の各々は、酸化シリコンおよび窒化シリコンの少なくともいずれかで形成される、ESC下塗りシステム。
【請求項15】
請求項13に記載のESC下塗りシステムであって、
前記コントローラは、前記ESCとシャワーヘッドとの間のギャップのサイズが、前記第1の下塗り層の堆積よりも、前記1層以上の中間下塗り層および前記最終下塗り層の少なくともいずれかの堆積について大きくなるよう設定するように構成されている、ESC下塗りシステム。
【請求項16】
請求項13に記載のESC下塗りシステムであって、
前記コントローラは、前記第1の下塗り層の堆積に対する前記ESCとシャワーヘッドの間のギャップのサイズを設定し、前記1層以上の中間層下塗りおよび前記最終下塗り層の堆積に対するギャップの前記サイズを変更しないように構成されている、ESC下塗りシステム。
【請求項17】
請求項1に記載のESC下塗りシステムであって、
前記コントローラは、処理される基板の推定ボーイング量に基づいて前記全厚を設定するように構成されている、ESC下塗りシステム。
【請求項18】
請求項1に記載のESC下塗りシステムであって、
前記コントローラは、前記1層以上の下塗り層の堆積のために1つ以上の前駆体を前記処理チャンバに導入するように構成され、
前記1つ以上の前駆体は、シレン、亜酸化窒素、および窒素から選択される、ESC下塗りシステム。
【請求項19】
請求項1に記載のESC下塗りシステムと、
前記処理チャンバと、
前記処理チャンバにガスを供給するように構成されたガス供給システムと、
前記処理チャンバ内でプラズマを生成するように構成された無線周波数生成システムと、
前記基板を前記ESCに静電気的にクランプするために前記ESCに電流を供給するように構成された電源回路と、を備え、
前記コントローラは、
前記ESC上に前記1層以上の下塗り層を堆積させるように前記ガス供給システムおよび前記無線周波数生成システムを制御し、
前記ESCにおける前記1層以上の下塗り層の形成に続いて、前記ESC上で前記基板の前記堆積処理を実施するように構成されている、基板処理システム。
【請求項20】
静電チャック(ESC)上に全面下塗り層を形成するための方法であって、
下塗りパラメータを決定する工程と、
完全洗浄プロセスを実施して、基板処理システムの処理チャンバ内の下塗り堆積物を除去する工程と、
前記下塗りパラメータに基づいて、1回以上の堆積プロセスを実施して前記ESC上に1層以上の下塗り層を堆積させ、7~15μmの全厚を有する前記全面下塗り層を提供し、前記1層以上の下塗り層は、続く前記ESCにおける基板の堆積処理の間に前記ESCの保護を提供する、工程と、
を含む、方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法であって、
前記下塗りパラメータは、無線周波数電力レベル、ガス流量、ガス流圧、ガス種、および堆積プロセスの継続時間を含む、方法。
【請求項22】
請求項20に記載の方法であって、
前記下塗りパラメータは、前記1層以上の下塗り層の堆積中に形成される各下塗り層に対する前記静電チャックとシャワーヘッドとの間のギャップのサイズを含む、方法。
【請求項23】
請求項20に記載の方法であって、
前記完全洗浄プロセスは、前記処理チャンバにアンモニアを供給することを含む、方法。
【請求項24】
請求項20に記載の方法であって、
前記1層以上の下塗り層は、
第1の下塗り層と、
前記第1の下塗り層の上に配置された第2の下塗り層と、
を含む、方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法であって、
前記第1の下塗り層および前記第2の下塗り層の各々は、酸化シリコンおよび窒化シリコンの少なくともいずれかを含む、方法。
【請求項26】
請求項24に記載の方法であって、
前記第1の下塗り層および前記第2の下塗り層は、酸化シリコンを含む、方法。
【請求項27】
請求項24に記載の方法であって、
前記第1の下塗り層は、酸化シリコンまたは酸窒化シリコンを含み、
前記第2の下塗り層は、窒化シリコンまたは酸窒化シリコンを含む、方法。
【請求項28】
請求項24に記載の方法であって、
前記第1の下塗り層は、酸化シリコンを含み、
前記第2の下塗り層は、窒化シリコンまたは酸窒化シリコンを含む、方法。
【請求項29】
請求項24に記載の方法であって、
前記第2の下塗り層は、前記第1の下塗り層よりも薄い、方法。
【請求項30】
請求項24に記載の方法であって、さらに、
前記静電チャックとシャワーヘッドとの間のギャップのサイズが、前記第1の下塗り層の堆積よりも前記第2の下塗り層の堆積について大きくなるように設定する工程を含む、方法。
【請求項31】
請求項24に記載の方法であって、さらに、
前記第1の下塗り層の堆積に対する前記静電チャックとシャワーヘッドとの間のギャップのサイズを設定し、前記第2の下塗り層の堆積に対する前記ギャップの前記サイズを変更しない工程を含む、方法。
【請求項32】
請求項20に記載の方法であって、
前記1層以上の下塗り層は、
第1の下塗り層と、
前記第1の下塗り層の上に配置された1層以上の中間下塗り層と、
前記1層以上の中間下塗り層の上に配置された最終下塗り層と、
を含む、方法。
【請求項33】
請求項32に記載の方法であって、
前記第1の下塗り層は、酸化シリコンまたは酸窒化シリコンで形成され、
前記1層以上の中間下塗り層および前記最終下塗り層の各々は、酸化シリコンおよび窒化シリコンの少なくともいずれかで形成される、方法。
【請求項34】
請求項32に記載の方法であって、さらに、
前記静電チャックとシャワーヘッドとの間のギャップのサイズが、前記第1の下塗り層の堆積よりも、前記1層以上の中間下塗り層および前記最終下塗り層の少なくともいずれかの堆積について大きくなるように設定する工程を含む、方法。
【請求項35】
請求項32に記載の方法であって、さらに、
前記第1の下塗り層の堆積に対する前記静電チャックとシャワーヘッドの間のギャップのサイズを設定し、前記1層以上の中間下塗り層および前記最終下塗り層の堆積に対するギャップの前記サイズを変更しない工程を含む、方法。
【請求項36】
請求項20に記載の方法であって、さらに、
処理される基板の推定ボーイング量に基づいて前記全厚を選択する工程を含む、方法。
【請求項37】
請求項20に記載の方法であって、さらに、
前記1層以上の下塗り層の堆積のために1つ以上の前駆体を前記処理チャンバに導入する工程を含み、前記1つ以上の前駆体は、シレン、亜酸化窒素、および窒素から選択される、方法。
【請求項38】
請求項20に記載の方法と、
前記基板を前記ESCに静電気的にクランプするために前記ESCに電流を供給する工程と、
前記ESC上に前記1層以上の下塗り層を堆積させるようにガス供給システムおよび無線周波数生成システムを制御する工程と、
前記ESCにおける前記1層以上の下塗り層の形成に続いて、前記ESC上で前記基板の前記堆積処理を実施する工程と、
を含む、基板堆積方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2022年1月28日出願の米国仮出願第63/304,379号の利益を主張する。上記出願の全ての開示は、本明細書において参照により援用される。
【0002】
本開示は、一般に基板処理システムに関し、特に静電チャックに関する。
【背景技術】
【0003】
本明細書に記載の背景技術は、本開示の内容を一般的に提示するためである。現在名前が挙げられている発明者の発明は、本背景技術欄、および出願時の先行技術に該当しない説明の態様において記載される範囲で、本開示に対する先行技術として明示的にも黙示的にも認められない。
【0004】
基板処理システム(例えば、プラズマ強化化学蒸着(PECVD)処理システム)は通常、シャワーヘッドと基板を支持するための基板支持体とを備える。基板支持体は通常、静電チャック(ESC)として実装される。ESCは、処理の間に基板をESCにクランプするためのクランプ電極を備える。動作時にシャワーヘッドは、基板上方に反応ガスを分配する。プラズマを生成するために、2つの電極(例えば、シャワーヘッドと基板支持体内のRF電極と)の間に無線周波数(RF)電位が設けられる。エネルギ化電子は、反応ガスをプラズマからイオン化し、または解離させ、化学反応性ラジカルを生成する。これらのラジカルが反応するにつれて、基板上に薄膜が堆積する。
【発明の概要】
【0005】
メモリおよびコントローラを備えるESC下塗りシステムが開示される。メモリは、下塗りアプリケーションを格納する。下塗りアプリケーションを実行するように構成されたコントローラは、下塗りパラメータを決定し、完全洗浄プロセスを実施して、基板処理システムの処理チャンバ内の下塗り堆積物を除去し、下塗りパラメータに基づいて1回以上の堆積プロセスを実施して、ESC上に1層以上の下塗り層を堆積させ、7~15μmの全厚を有する全面下塗り層を提供する。1層以上の下塗り層は、続くESC上の基板の堆積処理の間にESCの保護を提供する。
【0006】
他の特徴では、下塗りパラメータには、無線周波数電力レベル、ガス流量、ガス流圧、ガス種、および堆積プロセスの継続時間が含まれる。他の特徴では、下塗りパラメータには、1層以上の下塗り層の堆積中に形成される各下塗り層に対する静電チャックとシャワーヘッドとの間のギャップサイズが含まれる。他の特徴では、完全洗浄プロセスには、処理チャンバにアンモニアを供給する工程が含まれる。
【0007】
他の特徴では、1層以上の下塗り層は、第1の下塗り層と、第1の下塗り層上に堆積する第2の下塗り層とを含む。他の特徴では、第1の下塗り層および第2の下塗り層の各々は、酸化シリコンおよび窒化シリコンの少なくともいずれかを含む。他の特徴では、第1の下塗り層は酸化シリコンを含み、第2の下塗り層は窒化シリコン、または酸窒化シリコンを含む。他の特徴では、第1の下塗り層および第2の下塗り層は酸化シリコンを含む。
【0008】
他の特徴では、第1の下塗り層は酸化シリコン、または酸窒化シリコンを含み、第2の下塗り層は窒化シリコン、または酸窒化シリコンを含む。他の特徴では、第2の下塗り層は第1の下塗り層よりも薄い。
【0009】
他の特徴では、コントローラは、ESCとシャワーヘッドとの間のギャップサイズが、第1の下塗り層の堆積よりも第2の下塗り層の堆積で大きくなるよう設定するように構成されている。他の特徴では、コントローラは、第1の下塗り層の堆積に対するESCとシャワーヘッドとの間のギャップサイズを設定し、第2の下塗り層の堆積に対するギャップサイズを変更しないように構成されている。
【0010】
他の特徴では、1層以上の下塗り層は、第1の下塗り層と、第1の下塗り層上に配置された1層以上の中間下塗り層と、1層以上の中間下塗り層上に配置された最終下塗り層とを含む。他の特徴では、第1の下塗り層は、酸化シリコンまたは酸窒化シリコンで形成される。1層以上の中間下塗り層および最終下塗り層の各々は、酸化シリコンおよび窒化シリコンの少なくともいずれかで形成される。
【0011】
他の特徴では、コントローラは、ESCとシャワーヘッドとの間のギャップサイズが、第1の下塗り層の堆積よりも1層以上の中間下塗り層および最終下塗り層の少なくともいずれかの堆積で大きくなるよう設定するように構成されている。
【0012】
他の特徴では、コントローラは、第1の下塗り層の堆積に対するESCとシャワーヘッドとの間のギャップサイズを設定し、1層以上の中間下塗り層および最終下塗り層の堆積に対するギャップサイズを変更しないように構成されている。
【0013】
他の特徴では、コントローラは、処理される基板の推定ボーイング量に基づいて全厚を設定するように構成されている。他の特徴では、コントローラは、1層以上の下塗り層の堆積のために処理チャンバに1つ以上の前駆体を導入するように構成されている。1つ以上の前駆体は、シレン、亜酸化窒素、および窒素から選択される。
【0014】
他の特徴では、基板処理システムであって、ESC下塗りシステムと、処理チャンバと、処理チャンバにガスを供給するように構成されたガス供給システムと、処理チャンバ内でプラズマを生成するように構成された無線周波数生成システムと、基板をESCに静電気的にクランプするためにESCに電流を供給するように構成された電源回路と、を備える基板処理システムが開示される。コントローラは、ESC上に1層以上の下塗り層を堆積させるようにガス供給システムおよび無線周波数生成システムを制御し、ESCにおける1層以上の下塗り層の形成に続いて、ESC上で基板の堆積処理を実施するように構成されている。
【0015】
他の特徴では、ESC上に全面下塗り層を形成するための方法が開示される。この方法は、下塗りパラメータを決定する工程と、完全洗浄プロセスを実施して、基板処理システムの処理チャンバ内の下塗り堆積物を除去する工程と、下塗りパラメータに基づいて1回以上の堆積プロセスを実施して、ESC上に1層以上の下塗り層を堆積させ、7~15μmの全厚を有する全面下塗り層を提供する工程と、を含む。1層以上の下塗り層は、続くESC上での基板の堆積処理の間にESCの保護を提供する。
【0016】
他の特徴では、下塗りパラメータには、無線周波数電力レベル、ガス流量、ガス流圧、ガス種、および堆積プロセスの継続時間が含まれる。他の特徴では、下塗りパラメータには、1層以上の下塗り層の堆積中に形成される各下塗り層に対する静電チャックとシャワーヘッドとの間のギャップサイズが含まれる。他の特徴では、完全洗浄プロセスには、処理チャンバにアンモニアを供給する工程が含まれる。
【0017】
他の特徴では、1層以上の下塗り層は、第1の下塗り層と、第1の下塗り層上に堆積する第2の下塗り層とを含む。他の特徴では、第1の下塗り層および第2の下塗り層の各々は、酸化シリコンおよび窒化シリコンの少なくともいずれかを含む。他の特徴では、第1の下塗り層および第2の下塗り層は酸化シリコンを含む。他の特徴では、第1の下塗り層は、酸化シリコンまたは酸窒化シリコンを含む。第2の下塗り層は、窒化シリコンまたは酸窒化シリコンを含む。他の特徴では、第1の下塗り層は酸化シリコンを含み、第2の下塗り層は窒化シリコンまたは酸窒化シリコンを含む。
【0018】
他の特徴では、第2の下塗り層は第1の下塗り層よりも薄い。他の特徴では、この方法はさらに、静電チャックとシャワーヘッドとの間のギャップサイズが、第1の下塗り層の堆積よりも第2の下塗り層の堆積で大きくなるように設定する工程を含む。他の特徴では、この方法はさらに、第1の下塗り層の堆積に対する静電チャックとシャワーヘッドとの間のギャップサイズを設定し、第2の下塗り層の堆積に対するギャップサイズを変更しない工程を含む。
【0019】
他の特徴では、1層以上の下塗り層は、第1の下塗り層と、第1の下塗り層上に配置された1層以上の中間下塗り層と、1層以上の中間下塗り層上に配置された最終下塗り層とを含む。他の特徴では、第1の下塗り層は、酸化シリコンまたは酸窒化シリコンで形成される。1層以上の中間下塗り層および最終下塗り層の各々は、酸化シリコンおよび窒化シリコンの少なくともいずれかで形成される。
【0020】
他の特徴では、この方法はさらに、静電チャックとシャワーヘッドとの間のギャップサイズが、第1の下塗り層の堆積よりも、1層以上の中間下塗り層および最終下塗り層の少なくともいずれかの堆積で大きくなるように設定する工程を含む。他の特徴では、この方法はさらに、第1の下塗り層の堆積に対する静電チャックとシャワーヘッドとの間のギャップサイズを設定し、1層以上の中間下塗り層および最終下塗り層の堆積に対するギャップサイズを変更しない工程を含む。
【0021】
他の特徴では、この方法はさらに、処理される基板の推定ボーイング量に基づいて全厚を選択する工程を含む。他の特徴では、この方法はさらに、1層以上の下塗り層の堆積のために処理チャンバに1つ以上の前駆体を導入する工程を含み、1つ以上の前駆体は、シレン、亜酸化窒素、および窒素から選択される。
【0022】
他の特徴では、基板堆積方法であって、ESC上に全面下塗り層を形成するための工程と、基板をESCに静電気的にクランプするためにESCに電流を供給する工程と、ESC上に1層以上の下塗り層を堆積させるようにガス供給システムおよび無線周波数生成システムを制御する工程と、ESCにおける1層以上の下塗り層の形成に続いて、ESC上で基板の堆積処理を実施する工程と、を含む基板処理方法が開示される。
【0023】
本開示のさらなる適用分野は、発明を実施するための形態、特許請求の範囲、および図面から明らかになるだろう。発明を実施するための形態および具体例は例示のみを目的とし、本開示の範囲を制限することを意図しない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本開示は、発明を実施するための形態および添付の図面からより深く理解されるだろう。
【0025】
図1】本開示の実施形態による、下塗りシステムを備える例示的な基板処理システムの機能ブロック図。
【0026】
図2】本開示による、下塗り層を表す下塗りシステムの一部を含む、図1の基板処理システムの一部の機能ブロック図。
【0027】
図3】ESCの下塗り層の厚さ変化に基づく、ESCの寿命とESCのクランプ力との間のトレードオフ関係を表す図。
【0028】
図4】「D」字形電極を含む例示的なバイポーラ型ESCの上部断面図。
【0029】
図5】全ESC電流の例示的な図。
【0030】
図6】従来の下塗り層を含むESCの全ESC電流に対する、本開示による下塗り層を含むESCの全ESC電流の図。
【0031】
図7】本開示によるESC下塗り方法を含む例示的な基板処理方法。
【0032】
図8】本開示による複数の下塗り層を含むESCの一部を示す断面図。
【0033】
図面では、類似および/または同一の要素を識別するために、参照番号は繰り返し用いられてよい。
【発明を実施するための形態】
【0034】
基板処理システムの処理チャンバ内の構成部品は、過酷な動作条件に曝される。構成部品には、シャワーヘッドおよびESCが含まれる。構成部品は、様々な処理化学物質、高直流(DC)電圧(例えば、700~1000V)、高交流(AC)、高無線周波数(RF)電力レベル(例えば、10~15キロワット(kW))、および高温(例えば、600~700℃)に曝される。そのような過酷な化学的、電気的、および熱的条件への曝露は、構成部品を劣化させ損傷する傾向がある。
【0035】
処理チャンバ内の構成部品への損傷を防ぐために、「下塗り層」と呼ばれる保護層がチャンバ壁および内部部品上に堆積される。下塗り層は、保護を提供することに加えて、他の利点(例えば、堆積サイクル中に堆積する材料(例えば、炭素膜)の付着を助け、膜堆積のドリフト問題を予防すること)も提供する。下塗り層がないと、堆積中に不十分な付着が起こり、堆積材料の粒子が処理される基板上に落ち、基板を損傷する可能性がある。膜堆積ドリフトには、堆積膜厚の変化が含まれる。
【0036】
基板処理の間に、チャンバ部品上の下塗り層は劣化する。これは特に、シャワーヘッドおよびESCについて当てはまる。このため、チャンバ部品上の下塗り層の残留部分を除去するために完全洗浄プロセスが定期的に実施され、チャンバ部品上に新しい下塗り層が再堆積される。例として、完全洗浄プロセスは、各堆積サイクルセット(または、バッチ)(例えば、1セットあたり100堆積サイクル)の後に実施されてよく、各サイクルは、それぞれの基板ごとに堆積プロセスを実施することを含む。
【0037】
堆積の間、基板はバイポーラ型ESCに静電気的にクランプできる。バイポーラ型ESCは、第1の電圧(例えば、700Vの直流(DC)電圧)を受け取る第1の電極と、第2の電圧(例えば、-700VのDC電圧)を受け取る第2の電極との2つのクランプ電極を備える。電極は、「D」字形であってよい。電流は、第1の電極からESC上に配置された基板に流れ、次にESCから第2の電極に流れる。第1の電極に供給される全電流量のわずかな部分(例えば、30%未満)は、(i)静電クランプ電流または機能ESC電流と呼ばれ、(ii)第1の電極から基板まで垂直に流れ、基板から第2の電極まで垂直に流れる。静電クランプ電流は、基板をESC上に保持し、ESCに対する基板の移動を防ぐ。第1の電極に供給される全電流量の大部分は、(i)D間漏洩電流または非機能ESC電流と呼ばれ、(ii)基板に流れることなく、電極間に配置されたESCの一部を通って横方向に流れる。
【0038】
バイポーラ型ESCは、フッ化アルミニウム(AlFx)およびESCクランプ電流への曝露により、高温で高い不具合率を抱える可能性がある。完全洗浄プロセス中に、ESCは三フッ化窒素(NF3)で洗浄できる。ESCは窒化アルミニウム(AlNx)で形成されてよく、NF3に曝されると、ESCの表面はフッ化アルミニウム(AlFx)に変化できる。基板処理の間にAlFxは、ESCクランプ電流によりESCの本体にさらに移動する。AlFxは、静電クランプ電流に関連付けられたESCの電荷に引きつけられ、特に、ESCの本体から上向きに突出する極小接触領域(MCA)に移動する。AlFxへの曝露は粒子の劣化をもたらし、MCAの表面を変化させる。これにより、ESCの電荷均衡および基板の静電クランプに悪影響が及ぶ可能性がある。ESCの電荷均衡は、バイポーラ型ESC電極の電荷レベルにおける差を意味する。ESC不具合の根本原因は、高い電荷不均衡および/または高いESCクランプ電流に関連しうる。
【0039】
電荷不均衡がESCに存在すると、電流は、高圧電位を有するESCと低圧電位を有する(または、接地された)シャワーヘッドとの間で予想外に流れる可能性がある。その結果、堆積中にシャワーヘッドの孔にアーキングが起こりうる。アーキングはシャワーヘッドを劣化させ、シャワーヘッドから処理基板に落ちる金属球を形成し、クラスタ欠陥を引き起こす。クラスタ欠陥は、大量の金属球がシャワーヘッドの特定領域から基板に落ちることを意味する。クラスタ欠陥の根本原因はシャワーヘッドではなく、ESCにおける電荷不均衡およびAlFxの存在であることが予想外に判明した。
【0040】
例として、下塗り層は2段階で塗布できる。第1段階は、主にシャワーヘッドおよびESCなどの特定のチャンバ部品を被覆することを含む。第2段階は、主に遠隔領域ならびにシャワーヘッドおよびESC以外の構成部品を被覆することを含む。他の構成部品には、チャンバ壁、ESCスピンドルなどが含まれてよい。従来、下塗り層は適した付着のために設計されていた。例えば、2段階プロセス後のESC上の下塗り層の全厚は、付着要件を満たすように設定されてきた。付着要件を満たすため、全厚は5マイクロメートル(μm)であってよい。この厚さの下塗り層は付着要件を満たすことができ、新しい基板支持体および低温適用(例えば、200~400℃での適用)に適している。しかし、高温適用では、MCAの粒子損失による下塗り層の劣化および台座における不十分な下塗り被覆は、電荷不均衡量を増加させうる。
【0041】
新しいESCのバイポーラ型電極の電荷均衡は、わずかに不均衡であり、時間とともにより不均衡になりうる。これはMCAの劣化によるものであり、次にMCAへのAlFxの引力増加をもたらし、MCAのさらなる劣化の原因となる。下塗り層およびMCAの劣化は、クラスタ欠陥を引き起こしうる。加えて、MCAを被覆するための下塗り層の再適用能力は時間とともに低減し、さらなるアーキングおよびクラスタ欠陥をもたらす。これは、MCAの表面が粗くなり、時間とともに欠陥が多くなるからである。
【0042】
本明細書に記載の例は、増加した厚さおよび抵抗力、ならびに向上した被覆および平滑特性を有する下塗り層を形成するための下塗りシステムおよび方法を含む。下塗り層は、ESCを含む内部チャンバ部品に塗布される。下塗り層は、ESCの保護を提供し、それによりシャワーヘッドの保護を提供しながら、ESCクランプ力要件を満たす。下塗り層は、ESCの表面における粒子レベルの欠陥に充填することを含む極小レベルの被覆を提供して、MCAの表面・ウエハ表面間の接触の向上および段差被覆率向上のために平滑な外面を提供する。段差被覆率は、MCAの上面と側面との被覆率を意味する。段差被覆率は、(i)MCAの上面の下塗り層の厚さと、(ii)MCAの側面の下塗り層の厚さとの比であってよい。規定の被覆率は基板のクランプ引力を向上させ、基板の設置およびESCクランプ中の基板のスクラッチを防ぐ。
【0043】
下塗り層は向上した絶縁性を提供して、多くの堆積サイクルにわたってESCクランプ電流が増加する量を防ぐ、および/または最小限にする。下塗り層は、多くの堆積サイクルにわたって適したESCクランプ力を保つことも助ける。本明細書に記載の下塗り方法を実施することにより、ESCの寿命は延び、アーキングが予防され、または低減し、クラスタ欠陥率が大幅に減少する。
【0044】
図1は、ESC103およびシャワーヘッド104などの処理チャンバ102の内部部品に下塗り層を塗布する下塗りシステム101を含む基板処理システム100を示す。図1は容量結合プラズマ(CCP)システムを示すが、本明細書に開示の実施形態は、トランス結合プラズマ(TCP)システム、誘導結合プラズマ(ICP)システム、および/または、加熱できるシャワーヘッドを備える他のシステムおよびプラズマ源に適用可能である。本実施形態は、高温PECVDプロセスに適用可能であり、高温PEALDプロセス、高温プラズマ強化化学蒸着(CEPVD)プロセスに適用されてもよい。
【0045】
ESC103およびシャワーヘッド104は特定の構造を含むように示されているが、他の構造を有してもよい。例えば、ESC103はモノリス体105を有することが示されているが、複数のプレートを含んでよい。シャワーヘッド104は、複数プレートおよび/または積層構造を含んでよい。一実施形態では、ESC103はAlNxで形成され、シャワーヘッド104はアルミニウム(Al)で形成される。
【0046】
ESC103およびシャワーヘッド104は、処理チャンバ102の内部に含まれる。処理チャンバ102は、RFプラズマを含んでよい。動作時に、基板107はESC103上に配置され、静電気的にクランプされる。シャワーヘッド104は、ガスを導入および分配する。シャワーヘッド104は、処理チャンバ102の上面に接続された一端を有するステム部111を含んでよい。シャワーヘッド104は、一般に円筒形であり、処理チャンバ102の上面から離れた位置でステム部111のもう一端から径方向外向きに延びる。シャワーヘッド104の基板対向面は、プロセスガスまたはパージガスが流れる孔を含む。
【0047】
RF生成システム120はRF電圧を生成し、シャワーヘッド104の1つ以上の上部電極112、および/またはESC103の下部(または、バイポーラ型)電極116に出力する。上部電極112は、DC接地されてよい、AC接地されてよい、または浮遊電位状態であってよい。例えのみで、RF生成システム120は、RF電圧を生成する1つ以上のRF発生器122(例えば、容量結合プラズマRF電力発生器、バイアスRF電力発生器、および/または他のRF電力発生器)を備えてよい。RF電圧は、1つ以上の整合分配ネットワーク124によって上部電極112および/または下部電極116に供給される。例として、プラズマRF発生器123、バイアスRF発生器125、プラズマRF整合ネットワーク127、およびバイアスRF整合ネットワーク129が示されている。プラズマRF発生器123は、例えば100ワット(W)~15キロワット(kW)の電力を生成する低電力RF発生器および/または高電力RF発生器であってよい。バイアスRF整合ネットワーク129は、電極116などのRF電極に電力を供給する。
【0048】
ガス供給システム130は、1つ以上のガス源132-1、132-2、・・・、および132-N(まとめて、ガス源132)を備える(Nは、ゼロよりも大きい整数)。ガス源132は、1つ以上の前駆体およびそのガス混合物を供給する。ガス源132は、堆積ガス、キャリアガス、および/またはパージガスを供給してもよい。気化前駆体が用いられてもよい。ガス源132は、弁134-1、134-2、・・・、および134-N(まとめて、弁134)、ならびに、マスフローコントローラ136-1、136-2、・・・、および136-N(まとめて、マスフローコントローラ136)によって、マニホールド140に接続されている。マニホールド140の出力は、処理チャンバ102に供給される。例えのみで、マニホールド140の出力は、シャワーヘッド104に供給される。
【0049】
電源回路144は、高電圧を含む電力を電極116に提供して、基板107をESC103に静電気的にクランプする。RF電圧および静電クランプ電圧が同じ電極116に印加されているように示されているが、RF電圧は、ESC103に含まれる他の電極に供給されてよい。電源回路144は、システムコントローラ160によって制御されてよい。例として、電源回路144は、第1のDC電圧(例えば、700V)を電極116の第1の電極に印加し、第2のDC電圧(例えば、-700V)を電極116の第2の電極に印加してよい。
【0050】
処理チャンバ102から反応物を排出するために、弁156およびポンプ158が用いられてよい。システムコントローラ160は、供給RF電力レベル、供給ガスの圧力および流量、RFの整合などを制御するなどして、基板処理システム100の構成部品を制御してよい。システムコントローラ160は、弁156およびポンプ158の状態を制御する。ロボット164は、基板をESC103に供給し、基板をESC103から取り外すために用いられてよい。例えば、ロボット164は、基板をESC103とロードロック166との間で搬送してよい。ロボット164は、システムコントローラ160によって制御されてよい。システムコントローラ160は、ロードロック166の動作を制御してよい。弁、ガスポンプ、電源、RF発生器などは、本明細書ではアクチュエータと呼ばれてよい。
【0051】
下塗りシステム101は、ESC103、RF生成システム120、ガス供給システム130、電源回路144、ギャップ調節システム(図2に例が示されている)、およびシステムコントローラ160を備えてよい。コントローラ160は、下塗りアプリケーション162を実行してチャンバ部品に下塗り層を塗布してよい。これには、下塗り動作時に1層以上の下塗り層を塗布することが含まれてよい。これについては、以下で図2~7に関してさらに説明する。
【0052】
図2は、図1の下塗りシステム101の一部分202を含む基板処理システム100の一部分200を示す。一部分200は、ESC103およびシャワーヘッド104を含む。一部分202は、ESC103、電源回路144、コントローラ160、およびギャップ調節システム210を含む。ギャップ調節システム210は、ESC103をシャワーヘッド104に対して動かすように構成されてよい。別の実施形態では、ギャップ調節システム210は、シャワーヘッド104をESC103に対して動かすように構成されたギャップ調節システム212に置き換えられる。ギャップ調節システム210および212は、1つ以上のモータ(図中のモータ214および216)ならびに、ESC103またはシャワーヘッド104を動かすための他の作動部品を備えてよい。
【0053】
コントローラ160は、ESC103とシャワーヘッド104との間のギャップGを設定するようにギャップ調節システム210または212を制御し、ESC103上に下塗り層を形成するように図1のガス供給システム130を制御してよい。シャワーヘッド104は下塗り層を有するように示されていないが、下塗り層はシャワーヘッド104上にも形成される。ESC103の本体105上に1層の全面下塗り層220が示されているが、全面下塗り層220は1層以上の下塗り層を含んでよい。全面下塗り層220の全厚Tが示されている。全面下塗り層220は保護誘電体層であり、基板処理を実施する前に形成されるチャンバ準備層と呼ばれてよい。
【0054】
図3は、ESCの下塗り層(または、保護誘電体層)の厚さの変化に基づく、ESCの寿命とESCのクランプ力との間のトレードオフ関係を表す図を示す。厚さが増加するにつれてESCの寿命は延びるが、抵抗力も同時に増加する。抵抗力が増加するにつれて、ESCのクランプ力は低下する。ESCのクランプ力が閾値未満に低下すると、基板は処理中に位置を変える、または動く可能性がある。例として、下塗り層の厚さTが最大厚さを超えると、基板の移動を防ぐのに十分なESCクランプ力がなくなる。下塗り層の厚さの減少はESCの抵抗力を低下させ、それによりESCのクランプ力を増加させる。下塗り層の厚さTが最小厚さよりも小さいときは、ESCの劣化速度は増加し、ESCの寿命は許容できないレベルまで減少する。そのため下塗り厚さTは、最小厚さと最大厚さとの間の範囲に設定されてよい。例示的な範囲は、破線の囲み部分300で表されている。
【0055】
例として、650~750および-650~750のESCクランプ電圧範囲では、下塗り厚さTは、7μm±0.05μmの最小厚さと15μm±0.05μmの最大厚さとの間に設定されてよい。劣化は、実質的に全面下塗り層の厚さTが7μm±0.05μmよりも小さくなったときに増加することが判明している。また、ESCクランプ力は、全面下塗り層の厚さTが15μm±0.05μmよりも大きくなったときに許容不可能になることが判明している。下塗り層の厚さは、ESCの本体全面にわたって同じであってよい。最小厚さおよび最大厚さは、ESCクランプ電極(例えば、図1の電極116)に印加される電圧に基づいて図1のコントローラ160によって決定されてよい。印加された電圧は、ESCクランプ電流量に直接関係する。下塗り層の厚さは、以下でさらに説明するように、基板のボーイング量に基づいて設定されてよい。
【0056】
再び図2を参照すると、コントローラ160は、RF電力、ガスの流量および/または圧力、シャワーヘッドとESCとの間のギャップサイズ、堆積時間などの1つ以上のパラメータを調節することにより下塗り調整を実施してよい。パラメータは、被覆率を向上させ、ESCの機械的および電気的特性を向上させ、粒子形成およびアーキングを防ぐように調節されてよい。これらパラメータの各々は、結果として生じる下塗り層の厚さを調節するために調節されてよい。各下塗り層の形成中に供給されたガス種は、厚さ、抵抗力、および/または被覆率の特徴を調節するために変更されてもよい。
【0057】
コントローラ160は、基板(図2では示されていない)における堆積中に、ESCクランプ電極116Aおよび116B(まとめて、電極116)に設定電圧(例えば、700V、-700V)を提供するように電源回路144を制御してもよい。図4は、「D」字形電極402および404を含むバイポーラ型ESC400を示す。図1~2の電極116は、「D」字形電極402および404として実装されてよい。再び図2を参照すると、MCA232を通じて提供される静電クランプ電流が矢印230で表されている。MCAの高さHは同じであってよい、またはアプリケーションに応じて異なってよい。例として、メサの高さHは20μmであってよい。別の例として、MCAの高さは、本体105の中心から径方向距離とともに増加してよい。電極116の間を通る非機能電流は、矢印234で表されている。
【0058】
例として、電極116に供給される全電流量の2~10%は、矢印230で表されるESCクランプ電流を提供し、全電流量の90~98%は、非機能電流として電極116Aから電極116Bに流れてよい。
【0059】
図5は、基板の堆積プロセスに関するESCクランプ期間における曲線500によって表される全ESC電流の図を示す。図は、基板上で通常実施されるプロセス工程の例を示す。プロセス工程は、連続的に実施される。クランプ工程Cでは、クランプ電極にピーク電圧が印加される。保持工程Hでは、クランプ電極に印加された電圧は、ESC(図1~2のESC103)にクランプされた基板を保持するために低減される。工程Pでは、1つ以上のプロセスガスがシャワーヘッド(例えば、図1~2のシャワーヘッド104)を通じて供給される。工程Dでは、シャワーヘッドおよびESC全体にRF電力を印加することによりプラズマが生成され、材料が基板上に堆積する、または基板から除去される。工程Dは通常、工程C、H、およびPよりも長い。
【0060】
この図は、プラズマがなく、堆積するガス種がないときに提供されうるD間漏洩電流量および最小機能電流量を表す。図はさらに、プラズマおよび堆積するガス種が存在する場合に従来の下塗り層を有するESCに供給される余分な電流量を示す。ESCの劣化を引き起こしうるのは、この余分な電流である。
【0061】
図6は、従来の下塗り層を含むESC(従来型ESCと呼ばれる)の全ESC電流に対する、本明細書に記載の方法を用いて形成された下塗り層を含むESC(本開示のESCと呼ばれる)の全ESC電流の図を示す。従来型ESCの全ESC電流は、曲線600で表されている。本開示のESCの全ESC電流は、曲線602で表されている。図から分かるように、本開示のESCに供給される全電流量(曲線602)は、従来型ESCに供給される全電流量(曲線600)よりも少ない。両方向矢印M1によって表されている。また電流は、本開示のESCでは、従来型ESCのように保持工程中に跳ね上がらない、および/または実質的に増加しない。例えば、垂直の破線610と612との間の期間、および両方向矢印M1で表された差を参照されたい。図のような、保持期間、プロセスガス供給期間、およびプラズマ生成期間中のこの電流量の減少および安定化は、ESC表面上の堆積下塗り種の向上した被覆率を提供し、結果としてESCの抵抗力の上昇をもたらす。
【0062】
図7は、ESC下塗り法を含む例示的な基板処理方法を示す。ESC下塗り法は、動作702、704、706、708、710、716、718、および720を含む。以下の動作は繰り返し実施されてよい。この方法は700で始まってよい。702において、コントローラ160は下塗りプロセスのパラメータを決定する。これには、下塗り層堆積動作706および710の各々について、RF電力レベルを決定する工程と、ガスの流量および/または圧力を決定する工程と、シャワーヘッド104とESC103との間のギャップGのサイズ、提供される化学物質種、および堆積時間を決定する工程とが含まれてよい。RF電力レベル、ガスの流量・圧力、ギャップGのサイズ、化学物質種、および堆積時間は、動作706および710について同じであってよい、または異なってよい。動作710の各繰り返しにおける、RF電力レベル、ガスの流量・圧力、ギャップGのサイズ、化学物質種、および堆積時間は、ESC下塗り法の各繰り返しについて、および/または、基板堆積プロセスセットのための動作702、704、705、706、708、709、710、および712に至るサイクルについて同じであってよい、または異なってよい。下塗りプロセスのパラメータは、基板堆積プロセスセットのための動作706から710のサイクル中に形成されるいくつかの下塗り層を含んでもよい。下塗り層の数は、1層以上であってよい。
【0063】
704において、コントローラ160は、ガス供給システム130の動作を制御し、それまでに形成された既存の、および/または残存する下塗り層堆積物の除去を含む完全洗浄プロセスを実施する。この動作の間、基板はESC103上に設置されない。アンモニア(NH3)などの洗浄種は、処理チャンバ102の内部に供給される。
【0064】
705において、コントローラ160は、第1の下塗り層に対するシャワーヘッド104とESC103との間のギャップGを設定するようにギャップ調節システム210および212のいずれかを制御する。ギャップGは、ESC103をシャワーヘッド104の近くに設置して、主にESC103およびシャワーヘッド104を第1の下塗り層によって被覆する動作705に対して、第1のギャップで設定されてよい。
【0065】
706において、コントローラ160は、ガス供給システム130およびRF生成システム120の動作を制御し、主にESC103およびシャワーヘッド104の上に第1の下塗り層を堆積させる。一実施形態では、1つ以上の前駆体が処理チャンバ102に導入されて、ESC103およびシャワーヘッド104上に誘電体材料層が形成される。前駆体は、シレン(SiH4)、亜酸化窒素(N2O)、窒素(N2)、および/または他の適した前駆体を含んでよい。誘電体材料(または、第1の下塗り)層は、酸化シリコン(SiOx)、窒化シリコン(SiNx)、酸窒化シリコン(SiON)、および/または他の高抵抗力誘電体材料を含んでよい。SiOxは、被覆率の向上を提供するために形成されてよい。SiNxは、高抵抗力を有する下塗り層を提供するために形成されてよい。一実施形態では、SiH4は、N2OおよびN2のいずれかまたは両方と組み合わせて導入される。別の実施形態では、SiH4、N2O、およびN2が導入される。SiOx下塗り層が形成されるときは、処理チャンバ102に供給される全ガス量の重量比または容量比で高割合のN2Oが供給されてよい。コントローラ160は、N2OおよびN2の割合を調節して、結果として生じる下塗り層の抵抗力および/または平滑特性を調節してよい。
【0066】
一実施形態では、第1の下塗り層はSiOxで形成され、次の下塗り層はSiOxで形成される。別の実施形態では、第1の下塗り層はSiOxで形成され、次の下塗り層はSiNxで形成される。SiOxは、SiNxよりも優れた被覆率を提供する。SiNxは、SiOxよりも高抵抗力を有する。
【0067】
708において、コントローラ160は、別の下塗り層が形成されるべきか否かを決定する。Yesであれば動作710が実施され、そうでない場合は動作712が実施される。709において、コントローラ160は、次の下塗り層に対するシャワーヘッド104とESC103との間のギャップを設定するようにギャップ調節システム210および212のいずれかを制御する。一実施形態では、2層の下塗り層の合計がESC103およびシャワーヘッド104を含むチャンバ部品上に堆積される。第1の下塗り層は706で堆積され、第2の下塗り層は710で堆積される。第2の下塗り層のギャップGは、第1の下塗り層のギャップGよりも大きくてよい。一実施形態では、ギャップGは、第1および第2の下塗り層について同じである。ギャップGは、例えば、主にESC103およびシャワーヘッド104以外のチャンバ部品を被覆するために、第2の下塗りでは増加されてよい。
【0068】
別の実施形態では、チャンバ部品上に3層以上の下塗り層が堆積される。3層の下塗り層を含むESCの例は、図8に示されている。第2の(または、第1の中間)下塗り層および/または他の中間下塗り層のギャップGは、第1の下塗り層のギャップGと同じであってよい、または異なってよい。最終下塗り層のギャップGは、第1の下塗り層および1層以上の中間下塗り層と同じであってよい、または異なってよい。一実施形態では、1層以上の中間層のギャップGは、第1の下塗り層のギャップGよりも大きい。この実施例では、最終下塗り層のギャップGは、(i)1層以上の中間層のギャップGよりも小さく、(ii)第1の下塗り層と同じであってよい、または異なってよい。一実施形態では、ギャップGは、第1の下塗り層、中間下塗り層、および最終下塗り層について同じである。
【0069】
710において、コントローラ160はガス供給システム130の動作を制御し、次の下塗り層を堆積させる。次の下塗り層は、主にESC103およびシャワーヘッド104に堆積されてよい、または、主に処理チャンバ102内の他の構成部品に堆積されてよい。一実施形態では、1つ以上の前駆体および1つ以上の誘電体材料種が処理チャンバ102に導入される。前駆体は、SiH4、N2O、N2、および/または他の適した前駆体を含んでよい。動作710の間に形成された各誘電体(または、下塗り)層は、SiOx、SiNx、SiON、および/または他の高抵抗力誘電体材料を含んでよい。
【0070】
一実施形態では、ESC103およびシャワーヘッド104を含むチャンバ部品上に2層の下塗り層の合計が堆積される。第1の下塗り層は706で堆積され、第2の下塗り層は710で堆積される。第1の下塗り層はSiOxまたはSiONで形成され、第2の下塗り層はSiOxおよび/またはSiNxで形成されてよい。一実施形態では、下塗り層はいずれもSiOxで形成される。さらに別の実施形態では、下塗り層はいずれもSiONで形成される。さらなる実施形態では、第1の下塗り層はSiOxで形成され、第2の下塗り層はSiONで形成される。
【0071】
別の実施形態では、ESC103およびシャワーヘッド104を含むチャンバ部品上に3層以上の下塗り層の合計が堆積される。第1の下塗り層は706で堆積され、続く下塗り層は、動作710のそれぞれの繰り返しで堆積される。第1の下塗り層はSiOxまたはSiONで形成され、続く下塗り層はSiOx、SiNx、またはSiONで形成されてよい。別の実施形態では、全ての下塗り層はSiOxまたはSiONで形成される。第1および第3(または、最終)の形成された下塗り層のギャップGは、同じであってよい、または異なってよい。1層以上の中間下塗り層のギャップGは、第1および第3(または、最終)の形成された下塗り層のギャップGよりも大きくてよい。大きいギャップは、主にESC103およびシャワーヘッド104以外のチャンバ部品上における下塗り層の形成に関係するが、ESC103およびシャワーヘッド104上には薄い下地層が形成される。
【0072】
一実施形態では、動作706および動作710の0回以上の繰り返しの間に形成された下塗り層は、ESC103上で全厚Tを有する。全厚は、7μm±0.05μmの最小厚さと15μm±0.05μmの最大厚さとの間であってよい。一実施形態では、全厚Tは8~12μmである。別の実施形態では、全厚Tは9~11μmである。別の実施形態では、全厚Tは7~10μmである。別の実施形態では、全厚Tは10~15μmである。一実施形態では、全厚Tは10μmである。形成された下塗り層の厚さは、全厚Tの合計になる。
【0073】
一実施形態では全厚が決定され、上記動作は、処理される基板のボーイング量に基づいて、コントローラ160によって制御される。ボーイングは、例えば、基板が異なる材料で形成された複数の積層を含むときに起こりうる。基板が加熱されると、異なる材料が熱くなり、および/または異なる比率で膨張し、ボーイングが生じうる。シリコンなどの単一材料で形成された基板は、平坦のままでボーイングを生じないだろう。ボーイング量は、基板の径方向外周端に対する基板の中心部のたわみ量を意味する。ボーイング量は、(i)基板の中心部と(ii)水平に延びて基板の外周端に接触する平面との間の垂直位置における差である。例として、ボーイングがない、および/または、ボーイング量が設定量よりも少ないときに、動作706および710の間に形成された下塗り層によって提供される全面下塗り層の全厚Tは、10~15μm±0.05μmであってよい。例として、ボーイング量が設定量以上であるときは、静電クランプ力の増加を提供するために、全厚Tは7~12μm±0.05μmであってよい。別の例として、設定量は3ミリメートル(mm)であってよく、0~3mmが低ボーイング量とみなされ、3mmより大きいと高ボーイング量とみなされる。設定量は、異なる適用(例えば、異なる基板、ESCなど)で異なってよい。
【0074】
動作706および710の全堆積時間は、全面下塗り層の厚さに応じて10~30分であってよい。形成される全面下塗り層が厚くなるほど全堆積時間は長くなる。堆積時間は、ガス組成、ガス流量、およびガス圧にも依存する。
【0075】
712において、コントローラ160は、基板プロセスレシピおよびプロセスパラメータ(例えば、RF電力レベル、ガスの流量および圧力、供給されるガス種、実施される動作の順序およびタイミングなど)を決定する。これには、基板上に堆積層を形成するための以下の堆積プロセスの間に供給される反応ガス(例えば、プロペン(C36)(プロピレンとも呼ばれる)またはアセチレン(C22))ならびに1つ以上の不活性ガス(例えば、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、および窒素(N2))を選択することが含まれる。堆積層は、炭素で形成されてよい。
【0076】
714において、コントローラ160は基板を処理する。図7は1つの堆積処理を示すが、複数のエッチングおよび/または堆積プロセスが動作714の間に実施されてよい。714Aでは、基板がESC103上に設置され、ESC103に静電気的にクランプされる。714Bにおいて、コントローラ160はPECVDプロセスを実施して、基板上に堆積層を堆積させる。例として、基板上に炭素層が堆積されてよい。714Cにおいて、基板は処理チャンバ102から取り出される。
【0077】
716において、コントローラ160は部分洗浄プロセスを実施して、処理チャンバ102内のチャンバ部品上の炭素堆積物を除去する。これには、酸素(O2)などの洗浄種を導入して炭素堆積物を除去することが含まれてよい。部分洗浄は、下塗り堆積物および下塗り層を除去しない。
【0078】
718において、コントローラ160は、別の基板が処理されるべきか否かを決定する。Yesであれば動作720が実施され、そうでなれば、この方法は722で終了する。720において、コントローラ160は、設定数(例えば、100)の基板堆積プロセスが実施されたか否かを決定する。Yesであれば動作702が実施され、そうでなければ動作712が実施されてよい。
【0079】
図8は、3層の下塗り層804、806、および808を含むESC802の一部分800を示す。下塗り層804、806、および808は、それぞれ厚さT1、T2、およびT3を有する。下塗り層804、806、および808は、全厚Tを有する全面下塗り層を提供する。全厚Tは、7~15μm±0.05μmであってよい。厚さT1、T2、およびT3は異なってよい。一実施形態では、厚さT1およびT3は同じであり、厚さT3は厚さT1およびT3よりも小さい。
【0080】
3層の下塗り層が示されているが、ESC802は2層以上の下塗り層を有してよい。ESC802が2層の下塗り層を有するときは、第2の下塗り層は第1の下塗り層よりも薄くてよい。単一の中間下塗り層806が示されているが、1層以上の中間下塗り層が形成されてよい。
【0081】
本明細書に記載の実施例は、ESCクランプ電流レベルおよびESC表面粗さを低減する厚さおよび抵抗力レベルを有する下塗り層の形成を含む、ESC下塗り層プロセスを提供する。ESC下塗り層プロセスは、アーキングおよびクラスタ欠陥を防止および/または最小化しながら基板クランプ実施要件を満たす、高品質な誘電体層を提供する。ESCクランプ電流の減少は、AlFxの引きつけを低減し、MCAおよび他のESC表面の劣化を低減する。ESCクランプ電流レベルの低減は、ESC本体の劣化を最小限にし、基板の堆積処理中のMCAの劣化を最小限にすることを含む。その結果、ESCの健全状態は向上し、ESCの寿命(または、使用寿命)が延びる。粒子形成およびアーキングの低減のために、フッ素攻撃により耐性があり、段差被覆率の向上、ならびに機械的および電気的特性を提供する下塗り層が形成される。
【0082】
前記は本質的に単なる説明であり、本開示、その適用、または使用を限定する意図はない。本開示の広義の教示は、様々な形態で実施されうる。よって、本開示は特定の実施例を含むが、本図面、本明細書、および以下の特許請求の範囲を検討すると他の変更形が明らかになるため、本開示の真の範囲はそれほど限定されるべきでない。方法内の1つ以上の工程は、本開示の原理を変更することなく、異なる順序で(または、同時に)実行されてよいことを理解されたい。さらに、各実施形態は特定の特徴を有するように上記されているが、本開示の実施形態に関して説明されたそれらの特徴の任意の1つ以上は、他の実施形態において実施されうる、および/または、他の実施形態の特徴と組み合わせて(その組み合わせが明記されていない場合でも)実施されうる。つまり、記載の実施形態は互いに排他的でなく、1つ以上の実施形態の相互の並べ替えは、本開示の範囲内に留まる。
【0083】
要素間(例えば、モジュール間、回路素子間、半導体層間など)の空間的関係および機能的関係は、「接続された」、「係合された」、「結合された」、「隣接する」、「近接する」、「上に」、「上方」、「下方」、および「配置された」などの様々な用語を用いて説明される。上記開示において第1の要素と第2の要素との関係が説明されるときは、「直接的」であると明記されない限り、その関係は、第1の要素と第2の要素との間に他の介在要素が存在しない直接的関係でありうるが、同時に、第1の要素と第2の要素との間に1つ以上の介在要素が(空間的または機能的に)存在する間接的関係でもありうる。本明細書で用いられる、A、B、およびCのうちの少なくとも1つという表現は、非排他的論理ORを用いる論理(A OR B OR C)を意味すると解釈されるべきであり、「Aのうちの少なくとも1つ、Bのうちの少なくとも1つ、およびCのうちの少なくとも1つ」を意味すると解釈されるべきでない。
【0084】
いくつかの実施形態では、コントローラは、上記実施例の一部でありうるシステムの一部である。そのようなシステムは、処理ツール、チャンバ、処理用プラットフォーム、および/または、特定の処理構成部品(ウエハ台座、ガス流システムなど)を備える半導体処理装置を含みうる。これらのシステムは、半導体ウエハまたは基板の処理前、処理中、および処理後の動作を制御するための電子機器と一体化されてよい。この電子機器は「コントローラ」と呼ばれ、システムの様々な構成部品または副部品を制御してよい。
【0085】
コントローラは、処理要件および/またはシステムの種類に応じて、処理ガスの供給、温度設定(例えば、加熱および/または冷却)、圧力設定、真空設定、電力設定、高周波(RF)発生器の設定、RF整合回路の設定、周波数設定、流量設定、流体供給設定、位置動作設定、ツールおよび他の搬送ツールおよび/または特定のシステムに接続もしくは結合されたロードロックに対するウエハ搬入出を含む、本明細書に開示されたあらゆるプロセスを制御するようにプログラムされてよい。
【0086】
概して、コントローラは、命令を受信し、命令を発行し、動作を制御し、洗浄動作を可能にし、エンドポイント測定を可能にするなどの様々な集積回路、ロジック、メモリ、および/または、ソフトウェアを有する電子機器として定義されてよい。集積回路は、プログラム命令を記憶するファームウェア形式のチップ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)として定義されるチップ、および/または、プログラム命令(例えば、ソフトウェア)を実行する1つ以上のマイクロプロセッサもしくはマイクロコントローラを含んでよい。プログラム命令は、半導体ウエハ上で、もしくは半導体ウエハ向けに、またはシステムに対して特定のプロセスを実行するための動作パラメータを定義する様々な個別設定(または、プログラムファイル)の形でコントローラに伝達される命令であってよい。いくつかの実施形態では、動作パラメータは、1つ以上の層、材料、金属、酸化物、シリコン、二酸化シリコン、表面、回路、および/または、ウエハ金型の製作時における1つ以上の処理工程を実現するために、プロセスエンジニアによって定義されるレシピの一部であってよい。
【0087】
いくつかの実施形態では、コントローラは、システムと一体化もしくは接続された、そうでなければシステムにネットワーク接続された、もしくはこれらが組み合わされたコンピュータの一部であってよい、またはそのコンピュータに接続されてよい。例えば、コントローラは、ウエハ処理のリモートアクセスを可能にする「クラウド」内にあってよい、またはファブホストコンピュータシステムの全てもしくは一部であってよい。コンピュータは、システムへのリモートアクセスを可能にして、製造動作の進捗状況を監視し、過去の製作動作の経歴を調査し、複数の製作動作から傾向または性能の基準を調査して、現在の処理のパラメータを変更してよい、現在の処理に続く処理工程を設定してよい、または新しいプロセスを開始してよい。
【0088】
いくつかの例では、リモートコンピュータ(例えば、サーバ)は、ローカルネットワークまたはインターネットを含みうるネットワークを通じて、システムにプロセスレシピを提供できる。リモートコンピュータは、次にリモートコンピュータからシステムに伝達されるパラメータおよび/もしくは設定のエントリまたはプログラミングを可能にするユーザインタフェースを含んでよい。いくつかの例では、コントローラは、1つ以上の動作中に実施すべき処理工程の各々についてパラメータを特定する命令をデータ形式で受信する。パラメータは、実施されるべきプロセスの種類、および、コントローラが接続または制御するツールの種類に固有であってよいことを理解されたい。
【0089】
よって、上記のように、コントローラは、例えば、互いにネットワーク接続された1つ以上の別々のコントローラを含むことと、本明細書に記載のプロセスおよび制御などの共通の目的に向けて協働することとによって分散されてよい。そのような目的のために分散されたコントローラの例は、遠隔に(例えば、プラットフォームレベルで、またはリモートコンピュータの一部として)位置し、組み合わされてチャンバにおけるプロセスを制御する1つ以上の集積回路と通信する、チャンバの1つ以上の集積回路だろう。
【0090】
制限するものではないが、例示のシステムは、プラズマエッチングチャンバまたはプラズマエッチングモジュール、堆積チャンバまたは堆積モジュール、スピンリンスチャンバまたはスピンリンスモジュール、金属めっきチャンバまたは金属めっきモジュール、洗浄チャンバまたは洗浄モジュール、ベベルエッジエッチングチャンバまたはベベルエッチングモジュール、物理蒸着(PVD)チャンバまたはPVDモジュール、化学蒸着(CVD)チャンバまたはCVDモジュール、原子層堆積(ALD)チャンバまたはALDモジュール、原子層エッチング(ALE)チャンバまたはALEモジュール、イオン注入チャンバまたはイオン注入モジュール、トラックチャンバまたはトラックモジュール、ならびに、半導体ウエハの製作および/または製造において関連または使用できる任意の他の半導体処理システムを含んでよい。
【0091】
上記のように、ツールによって実施される処理工程に応じて、コントローラは、他のツール回路もしくはモジュール、他のツール部品、クラスタツール、他のツールインタフェース、隣接するツール、近接するツール、工場全体に設置されたツール、メインコンピュータ、別のコントローラ、または、半導体製造工場においてツール位置および/もしくはロードポートに対してウエハ容器を搬入出する材料搬送に用いられるツール、のうちの1つ以上と通信してよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】