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特表2025-521997大型車両のタイヤトレッドにおける使用のためのフロログルシノール樹脂を含有するゴム組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-07-10
(54)【発明の名称】大型車両のタイヤトレッドにおける使用のためのフロログルシノール樹脂を含有するゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20250703BHJP
   C08K 5/541 20060101ALI20250703BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20250703BHJP
   C08K 5/36 20060101ALI20250703BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20250703BHJP
【FI】
C08L21/00
C08K5/541
C08K3/013
C08K5/36
B60C1/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2025500893
(86)(22)【出願日】2023-07-14
(85)【翻訳文提出日】2025-01-30
(86)【国際出願番号】 US2023070198
(87)【国際公開番号】W WO2024015956
(87)【国際公開日】2024-01-18
(31)【優先権主張番号】63/389,127
(32)【優先日】2022-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519312463
【氏名又は名称】スミトモ ケミカル アドバンスト テクノロジーズ エルエルシー ディー・ビー・エー スミカ エレクトロニック マテリアルズ
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】信岡 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】ケイタ,マリ ジャタ ザ フィフス
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA01
3D131AA02
3D131AA33
3D131AA34
3D131AA36
3D131AA39
3D131BA01
3D131BA02
3D131BA05
3D131BA08
3D131BA12
3D131BA20
3D131BB03
3D131BC02
4J002AC011
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC071
4J002AC081
4J002AC101
4J002BP021
4J002CD002
4J002CK012
4J002CK022
4J002DA037
4J002DA049
4J002DE147
4J002DJ007
4J002DJ017
4J002EJ019
4J002ER008
4J002EV049
4J002EX036
4J002EX086
4J002FD017
4J002FD206
4J002FD208
4J002FD209
4J002GN01
(57)【要約】
シランをベースとする添加剤、その添加剤を含むゴム配合物及びその添加剤で作成されたトレッド部分を有するタイヤが、それらの製品を形成する方法と共に提供される。本発明の好ましい実施形態に従う未硬化のゴム配合物は(1)ゴム状の一次ポリマー又はポリマーブレンド、例えば天然ゴム及び/又は合成ゴム;(2)補強用シリカ充填材;(3)メチレン供与体化合物;(4)前述の網目形成性ポリマーの1つ以上の部分を含有するシラン及び(5)フロログルシノール樹脂を含む。特にその場で生成することができる網目が好ましい。硬化したゴム配合物はゴムマトリックス内でスルフィド結合を介して直接ゴム鎖に結合していない、荷重耐性パスを補強する相互貫入型ポリマー網目が結合したシリカを含むことが望ましい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ゴム状のポリマー又はポリマーのブレンド;
(b)少なくとも1つのオルガノシランカップリング剤;
(c)前記少なくとも1つのオルガノシランカップリング剤と反応性の少なくとも1つの補強用充填材;
(d)少なくとも1つのメチレン供与体化合物;
(e)少なくとも1つのフロログルシノール樹脂;及び
(f)少なくとも1つのイオウ供与性化合物
を含むゴム組成物。
【請求項2】
ゴム状の成分(a)がゴム組成物の総重量を基準にして約25~約95重量パーセントの範囲であり;オルガノシランカップリング剤(b)がゴム状ポリマーの100部当たり0.05部~30部のオルガノシランカップリング剤(b)の範囲であり;オルガノシランカップリング剤(b)と反応性の補強用充填材(c)がゴム状ポリマーの100部当たり1部~150部の補強用充填材の範囲であり;メチレン供与体化合物(d)がゴム状ポリマーの100部当たり0.1部~30部のメチレン供与体化合物の範囲であり;フロログルシノール樹脂(e)がゴム状ポリマーの100部当たり0.1部~10部のフロログルシノール樹脂の範囲であり;イオウ供与性化合物(f)がゴム状コンパウンド100部当たり0.1部~5部のイオウ供与性化合物の範囲である、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記ゴム状のポリマー(a)が天然ゴム(NR)、合成のポリイソプレン(IR)、ポリブタジエン(BR)、ブタジエンの各種コポリマー、イソプレンのコポリマー、溶液スチレン-ブタジエンゴム(SSBR)、エマルションスチレン-ブタジエンゴム(ESBR)、エチレン-プロピレンターポリマー(EPDM)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、及び少なくとも1つのアルコキシシリル基、スズ含有基、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボン酸基、ポリシロキサン基、エポキシ基又はフタロシアニモ基により修飾された官能化されたゴムからなる群から選択される、請求項2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記ゴム状のポリマー(a)が天然ゴム又は天然ゴムとブタジエンゴムの混合物を含む、請求項2に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記補強用充填材(c)が表面ヒドロキシル基を有する半金属酸化物若しくは金属酸化物を含む繊維、微粒子又はシート様構造体から選ばれる、請求項2に記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記補強用充填材(c)が沈降シリカを含む、請求項5に記載のゴム組成物。
【請求項7】
前記メチレン供与体化合物(d)がポリイソシアネート、ポリイソシアヌレート、エポキシ樹脂、アミノ樹脂及びポリウレタンからなる群から選択される、請求項2に記載のゴム組成物。
【請求項8】
前記アミノ樹脂が1,1,3,3-テトラ-メトキシメチル尿素、1,3,3-トリス-メトキシメチル尿素、1,3-ビス-メトキシメチル尿素、1,1-ビス-メトキシメチル尿素、1,1,3,3-テトラ-エトキシメチル尿素、1,3,3-トリス-エトキシメチル尿素、1,3-ビス-エトキシメチル尿素、1,1-ビス-エトキシメチル尿素、1,1,3,3-テトラ-プロポキシメチル尿素、1,3,3-トリス-プロポキシメチル尿素、1,3-ビス-プロポキシメチル尿素、1,1-ビス-プロポキシメチル尿素、1,1,3,3-テトラ-ブトキシメチル尿素、1,1,3,3-テトラ-フェノキシメチル尿素、N-(1,3,3-トリス-エトキシメチルウレイドメチル)-1,1,33-テトラ-エトキシメチル尿素、N,N′-ビス-(1,1,3-トリス-エトキシメチルウレイドメチル)-1,3-ビス-エトキシメチル尿素、N,N′-ビス-(1,1,3-トリス-エトキシメチルウレイド-メトキシメチル)-1,3-ビス-エトキシメチル尿素、N,N,N′,N′,N″,N″-ヘキサキス-メトキシメチル-[1,3,5]トリアジン-2,4,6-トリアミン、N,N,N′,N′,N″-ペンタキス-メトキシメチル-[1,3,5]トリアジン-2,4,6-トリアミン、N,N,N′,N″-テトラキス-メトキシメチル-[1,3,5]トリアジン-2,4,6-トリアミン、N,N,N′,N′,N″,N″-ヘキサキス-エトキシメチル-[1,3,5]トリアジン-2,4,6-トリアミン、N,N,N′,N′,N″-ペンタキス-エトキシメチル-[1,3,5]トリアジン-2,4,6-トリアミン、N,N,N′,N″-テトラキス-エトキシメチル-[1,3,5]トリアジン-2,4,6-トリアミン、N,N,N′,N′,N″,N″-ヘキサキス-プロポキシメチル-[1,3,5]トリアジン-2,4,6-トリアミン、N,N,N′,N′,N″-ペンタキス-プロポキシメチル-[1,3,5]トリアジン-2,4,6-トリアミン、N,N,N′,N″-テトラキス-プロポキシメチル-[1,3,5]トリアジン-2,4,6-トリアミン、N,N,N′,N′,N″,N″-ヘキサキス-フェノキシメチル-[1,3,5]トリアジン-2,4,6-トリアミン、N,N,N′,N′,N″-ペンタキス-フェノキシメチル-[1,3,5]トリアジン-2,4,6-トリアミン及びN,N,N′,N″-テトラキス-フェノキシメチル-[1,3,5]トリアジン-2,4,6-トリアミンからなる群から選択される、請求項7に記載のゴム組成物。
【請求項9】
前記フロログルシノール樹脂(e)が式(I):
【化1】
(式中、R1、R2、及びR3の少なくとも1つは第2のフロログルシノール単位と結合して二置換メチレン橋を形成し、R1、R2、及びR3の第2のものは水素原子であるか又は第3のフロログルシノール単位と結合して別の二置換メチレン橋を形成し、R1、R2及びR3の第3のものは水素原子である)の構造を有する、請求項2に記載のゴム組成物。
【請求項10】
前記フロログルシノール樹脂が固体であり、前記フロログルシノール樹脂が、前記形成される二置換メチレン橋がイソプロピリデン橋である請求項9に記載の化学構造を有する、請求項9に記載のゴム組成物。
【請求項11】
前記フロログルシノール樹脂が固体であり、前記フロログルシノール樹脂が、前記形成される二置換メチレン橋が2,2二置換ブタン橋である請求項9に記載の化学構造を有する、請求項9に記載のゴム組成物。
【請求項12】
前記フロログルシノール樹脂が固体であり、前記フロログルシノール樹脂が、前記形成される二置換メチレン橋が2,2二置換4-メチルペンタン橋である請求項9に記載の化学構造を有する、請求項9に記載のゴム組成物。
【請求項13】
固体のフロログルシノール樹脂が酸触媒の存在下におけるフロログルシノール及びケトンの反応生成物である、請求項2に記載のゴム組成物。
【請求項14】
請求項12に記載の固体のフロログルシノール樹脂においてケトンがアセトン、メチルエチルケトン(MEK)、及びメチルイソブチルケトン(MIBK)からなる群から選択される、請求項12に記載のゴム組成物。
【請求項15】
前記イオウ供与性化合物(f)がイオウである、請求項2に記載のゴム組成物。
【請求項16】
請求項2に記載のゴム組成物の調製のための方法。
【請求項17】
請求項2に記載のゴム組成物から調製された硬化したゴム組成物。
【請求項18】
請求項17に記載の硬化したゴム組成物を含む物品。
【請求項19】
前記物品がタイヤの要素である、請求項18に記載の物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は一般に大きいトラック及びバスのような大型車両(heavy vehicle)のタイヤにおける使用のためのゴムコンパウンド(rubber compound)に関する。より具体的には、本発明は、レゾルシノールを含まないが予想外なことにかかるゴムコンパウンドに対して優れた転がり抵抗特性を提供する、トラック及びバスのタイヤのトレッドにおける使用のための環境に優しく燃費の良いゴムコンパウンドに関する。
【背景技術】
【0002】
米国において道路輸送安全局(National Highway Transportation Safety Administration)(NHTSA)及び環境保護庁(Environmental Protection Agency)(EPA)により公布された企業別平均燃費(Corporate Average Fuel Economy)(CAFE)基準、温室効果ガス(Greenhouse Gas)(GHG)プロトコル、及びその他の法律、並びにカナダ運輸省(Transportation Canada)及びカナダ保健省(Canadian Health Ministry)により公布された規制、及び欧州における欧州連合タイヤラベル(European Union Tyre Label)のために、タイヤの燃料効率のさらなる低減に関して満たされていないニーズがある。燃料効率を決定する1つの方法はゴム組成物の転がり抵抗を検査することであり、この転がり抵抗はゴム組成物の様々な機械的性質によって決まる可能性がある。簡単にいうと、ゴム組成物の転がり抵抗が低いほど、タイヤの燃費はさらに良くなる。
【0003】
一般に、シリカ又はイオウを含有するオルガノシランカップリング剤をタイヤトレッドゴム組成物に加えることにより、ウェットトラクション(wet traction)及び転がり抵抗のような様々な特性を改良することができるということが当技術分野で公知である。例えば、日本国特許(Japanese Patent)第50-88150号に、ゴムコンパウンドに添加されたシリカ及びイオウ原子を含有するシラン化合物で処理された冬季タイヤ用のタイヤトレッドが改良された滑り抵抗を有することが示されている。同様に、欧州特許第0 299 074号は、シリカを補強用充填材(reinforcing filler)として含むゴム組成物において官能化されたアルコキシシランの使用を提案した。同様に、開示内容が参照によりその全体として本明細書に組み込まれる米国特許第5,227,425号は、ゴム成分が溶液中で調製された共役ジエン及びビニルを含有する芳香族化合物のコポリマーであり、カーボンブラック充填材が混合中にポリマーとは別々に加えられたシリカ及びシランカップリング剤と一部又は完全に置き換えられたタイヤトレッド組成物を開示した。
【0004】
しかしながら、これらのゴムコンパウンドは13,000ポンドより重量がある商業用の中型トラック又は26,000ポンドより重量がある重量級トラックのような大型車両に必要とされる荷重に耐えることができない。これらのゴムコンパウンドは乗用車及び軽トラックに使用されるような小さいタイヤにより適している。
【0005】
シリカを含む補強された天然ゴムの応力-歪み特性をもつ高荷重に耐えるトレッド組成物を提供してかかるトラック又はバス向けのタイヤに使用される燃費の良いトレッドを提供するという問題に対処する試みがなされて来ている。1つのかかる試みが米国特許出願公開第2020/0140661号、現米国特許第11,267,955号に提供されており、この特許は天然ゴム、ヘキサメトキシメチルメラミン(HMMM)で官能化されたシランのような特別なシランカップリング剤と反応性のシリカのような補強用充填材、及びレゾルシノール又はレゾルシノール-ホルムアルデヒド樹脂をベースとする二次網目(secondary network)を含有するゴムコンパウンドを開示し、特許請求の範囲に記載している。この特許では、フロログルシノールが潜在的な活性水素を含有する化合物として言及されていることが注目される。しかし、以下で記載するように、フロログルシノールはフロログルシノール樹脂ではない。その上、この特許は補強用充填材と反応性のヘキサメトキシメチルメラミンで官能化されたシランをその特許請求の範囲に記載していることが留意される。これはその特許の新規性であると考えられ、シランとは別にヘキサメトキシメチルメラミン(HMMM)を使用することをその特許請求の範囲に記載しているわけではない。
【0006】
一方、レゾルシノールとホルムアルデヒドの反応生成物として形成される、RF樹脂又はレゾルシノール系樹脂とも称されるレゾルシノール-ホルムアルデヒド樹脂はゴム配合を含む様々な用途で広く使用されている。ゴムコンパウンド配合物(formulation)において、固体RF樹脂は、長い間、ゴムと補強材の接着特性のようなゴム特性並びにタイヤ、ベルト及びホース製品のような物品の力学的特性を高めるために使用されて来ている。
【0007】
これらの樹脂に伴う問題はレゾルシノール樹脂が一般に10~20%の未反応又は遊離のレゾルシノールを有することである。遊離のレゾルシノールの量は、重要な性質のバランスを取るとき、及び遊離のレゾルシノールの存在が問題となる可能性があるとき極めて重大な要因となる可能性がある。例えば、遊離のレゾルシノールはゴムの混合中に揮発する可能性がある。かかる揮発は発煙といわれることが多く、したがってゴム混合工程に追加された新たな問題を引き起こす。さらに、遊離のレゾルシノールの存在はレゾルシノール樹脂の吸湿性の一因となり、これが次に保管及び取扱いの問題を引き起こす。
【0008】
また、長年にわたりホルムアルデヒドがレゾルシノール-ホルムアルデヒド樹脂を作成するのに使用されて来ている。その広範な使用、毒性、及び揮発性を考えて、ホルムアルデヒドは潜在的な健康及び環境の問題を呈示する。2011年、米国国家毒性プログラム(US National Toxicology Program)はホルムアルデヒドをヒトの発がん性物質であることが公知であると記載した。したがって、レゾルシノール又はレゾルシノール-ホルムアルデヒド樹脂化合物を含むゴム組成物は今日、新しいタイヤ製造業者により受け入れられない。
【0009】
国際公開第2021/141934号は、シラン添加剤(addivite)が使用されてない場合のみであるが、フロログルシノール樹脂のレゾルシノール又はレゾルシノール-ホルムアルデヒド樹脂の代用品としての使用を提供する。即ち、上で引用した他の特許の多くと同様に、これらの樹脂は軽重量車両のタイヤにおける使用のためのゴム組成物に適するのみである。それらの特許又はタイヤではシラン添加剤が使用されなかったからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、大型車両(例えば、中型~大型のトラック及びバス)のタイヤ用途における使用のための補強された天然ゴムの応力-歪み特性、及びシリカをベースとするトレッドの燃料効率をもつ高荷重に耐えるゴムコンパウンドの開発のニーズが存在している。
【課題を解決するための手段】
【0011】
レゾルシノール又はホルムアルデヒドを含まない重いトラック及びバスのタイヤ用の非常に燃費の良いタイヤを確立するために、天然ゴム、シリカ、特殊なシランカップリング剤、ヘキサメトキシメチルメラミン(HMMM)(シランカップリング剤とは別)及びフロログルシノール樹脂からなるゴムコンパウンド配合物を作成した。驚くべきことに、そして予想外なことに、これらのゴム配合物は、レゾルシノールを含むコンパウンドと比較してずっと良好な燃料効率及び耐久性を示した。この発明は、レゾルシノール又はホルムアルデヒドなしで、トラック及びバスのためのずっと良好な天然ゴム-シリカトレッドコンパウンドを提供する。
【0012】
本発明の少なくとも1つの局面は、(a)ゴム状のポリマー又はポリマーのブレンド;(b)少なくとも1つのオルガノシランカップリング剤;(c)少なくとも1つのオルガノシランカップリング剤と反応性の少なくとも1つの補強用充填材;(d)少なくとも1つのメチレン供与体化合物;(e)少なくとも1つのフロログルシノール樹脂;及び(f)少なくとも1つのイオウ供与性化合物を含むゴム組成物に見ることができる。様々な実施形態において、ゴム組成物は上記成分を含み、ゴム状の成分(a)はゴム組成物の総重量を基準にして約25~約95重量パーセントの範囲であり;オルガノシランカップリング剤(b)はゴム状ポリマーの100部当たり0.05部~30部のオルガノシランカップリング剤(b)の範囲であり;オルガノシランカップリング剤(b)と反応性の補強用充填材(c)はゴム状ポリマーの100部当たり1部~150部の補強用充填材の範囲であり;メチレン供与体化合物(d)はゴム状ポリマーの100部当たり0.1部~30部のメチレン供与体化合物の範囲であり;フロログルシノール樹脂(e)はゴム状ポリマーの100部当たり0.1部~10部のフロログルシノール樹脂の範囲であり;イオウ供与性化合物(f)はゴム状コンパウンド100部当たり0.1部~5部のイオウ供与性化合物の範囲である。
【0013】
1つ以上の実施形態において、ゴム状のポリマー(a)は天然ゴム(NR)、合成のポリイソプレン(IR)、ポリブタジエン(BR)、ブタジエンの各種コポリマー、イソプレンのコポリマー、溶液スチレン-ブタジエンゴム(SSBR)、エマルションスチレン-ブタジエンゴム(ESBR)、エチレン-プロピレンターポリマー(EPDM)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、及び少なくとも1つのアルコキシシリル基、スズ含有基、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボン酸基、ポリシロキサン基、エポキシ基又はフタロシアニモ基で修飾された官能化されたゴムからなる群から選択され得る。他のより特定的な実施形態において、ゴム状のポリマーは天然ゴム又は天然ゴムとブタジエンゴムの混合物を含む。
【0014】
これら及び他の実施形態において、補強用充填材(b)は繊維、微粒子又は表面ヒドロキシル基を有する半金属酸化物若しくは金属酸化物を含むシート様構造体から選ばれ得る。同一又は他の実施形態において、補強用充填材(b)は沈降シリカを含む。
【0015】
これら及び他の実施形態において、メチレン供与体化合物(d)はポリイソシアネート、ポリイソシアヌレート、エポキシ樹脂、アミノ樹脂及びポリウレタンからなる群から選択され得る。これら及び他の実施形態において、アミノ樹脂が含まれ、1,1,3,3-テトラ-メトキシメチル尿素、1,3,3-トリス-メトキシメチル尿素、1,3-ビス-メトキシメチル尿素、1,1-ビス-メトキシメチル尿素、1,1,3,3-テトラ-エトキシメチル尿素、1,3,3-トリス-エトキシメチル尿素、1,3-ビス-エトキシメチル尿素、1,1-ビス-エトキシメチル尿素、1,1,3,3-テトラ-プロポキシメチル尿素、1,3,3-トリス-プロポキシメチル尿素、1,3-ビス-プロポキシメチル尿素、1,1-ビス-プロポキシメチル尿素、1,1,3,3-テトラ-ブトキシメチル尿素、1,1,3,3-テトラ-フェノキシメチル尿素、N-(1,3,3-トリス-エトキシメチルウレイドメチル)-1,1,33-テトラ-エトキシメチル尿素、N,N′-ビス-(1,1,3-トリス-エトキシメチルウレイドメチル)-1,3-ビス-エトキシメチル尿素、N,N′-ビス-(1,1,3-トリス-エトキシメチルウレイド-メトキシメチル)-1,3-ビス-エトキシメチル尿素、N,N,N′,N′,N″,N″-ヘキサキス-メトキシメチル-[1,3,5]トリアジン-2,4,6-トリアミン、N,N,N′,N′,N″-ペンタキス-メトキシメチル-[1,3,5]トリアジン-2,4,6-トリアミン、N,N,N′,N″-テトラキス-メトキシメチル-[1,3,5]トリアジン-2,4,6-トリアミン、N,N,N′,N′,N″,N″-ヘキサキス-エトキシメチル-[1,3,5]トリアジン-2,4,6-トリアミン、N,N,N′,N′,N″-ペンタキス-エトキシメチル-[1,3,5]トリアジン-2,4,6-トリアミン、N,N,N′,N″-テトラキス-エトキシメチル-[1,3,5]トリアジン-2,4,6-トリアミン、N,N,N′,N′,N″,N″-ヘキサキス-プロポキシメチル-[1,3,5]トリアジン-2,4,6-トリアミン、N,N,N′,N′,N″-ペンタキス-プロポキシメチル-[1,3,5]トリアジン-2,4,6-トリアミン、N,N,N′,N″-テトラキス-プロポキシメチル-[1,3,5]トリアジン-2,4,6-トリアミン、N,N,N′,N′,N″,N″-ヘキサキス-フェノキシメチル-[1,3,5]トリアジン-2,4,6-トリアミン、N,N,N′,N′,N″-ペンタキス-フェノキシメチル-[1,3,5]トリアジン-2,4,6-トリアミン及びN,N,N′,N″-テトラキス-フェノキシメチル-[1,3,5]トリアジン-2,4,6-トリアミンからなる群から選択され得る。
【0016】
これら及び他の実施形態において、フロログルシノール樹脂(e)は式(I):
【化1】
(式中、R1、R2、及びR3の少なくとも1つは第2のフロログルシノール単位と結合して二置換メチレン橋(bridge)を形成し、R1、R2、及びR3の第2のものは水素原子であるか又は第3のフロログルシノール単位と結合して別の二置換メチレン橋を形成し、R1、R2及びR3の第3のものは水素原子である)の構造を有する。より特定的には、フロログルシノール樹脂は固体であり得る。1つ以上の実施形態(emboidment)において、フロログルシノール樹脂は上記のような化学構造を有し得、したがって二置換メチレン橋の化学構造としてイソプロピリデン橋を有し得ることが分かる。他の実施形態において、フロログルシノール樹脂は上記のような化学構造を有し得、したがって二置換メチレン橋の化学構造として2,2二置換ブタン橋を有し得る。さらに他の実施形態において、フロログルシノール樹脂は上記のような化学構造を有し得、したがって二置換メチレン橋の化学構造として2,2二置換4-メチルペンタン橋を有し得る。
【0017】
さらにゴム組成物に使用される固体のフロログルシノール樹脂は酸触媒の存在下におけるフロログルシノールとケトンの反応生成物であり得ることが分かる。ケトンはアセトン、メチルエチルケトン(MEK)、及びメチルイソブチルケトン(MIBK)からなる群から選択され得る。
【0018】
一般に、イオウ供与性化合物(f)はイオウであり得ることが分かる。
【0019】
本発明の1つ以上の他の局面は上記ゴム組成物の調製のための方法に見ることができる。
【0020】
本発明のさらに他の局面は上記ゴム組成物から調製された硬化したゴム組成物に見ることができる。本発明の他の局面はこの硬化したゴム組成物を含むタイヤの成分のような物品により得ることができることが分かる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
トラックのタイヤ、及びその他の大型車両のタイヤはゴムの多数の収縮性バンドと複合材料の拡張できる構造物を含む。例えば、ゴム中に接合された細い織物繊維コードからなるインナーライナーの上の層はカーカス又はケーシングと呼ばれる。カーカス及びケーシングは同義の用語である。多くのタイヤカーカスは1つ又は2つのボディープライである。タイヤカーカスは、鋼、ポリエステル、ナイロン又はレーヨンコードの織物をカーカスゴムコンパウンド内に組み込むことができる。ベルトシステムは、タイヤ構築プロセスにおいてカーカス部分の上(半径方向外側)に配置することができる。トレッドスラブ又はキャップ部分は、ベルトシステム及び/又はカーカスの上(半径方向外側)に配置することができる。トレッド部分は道路と接触し、タイヤの性能特性及び耐久性を高めるように配合される。鍵となる重要な特性には取扱い、静止摩擦、転がり抵抗及び耐摩耗性(wear resistance)が含まれる。
【0022】
本明細書及び特許請求の範囲において、以下の用語及び表現は示されているように理解されたい。
【0023】
実施例又は他に示されている場合以外、本明細書及び特許請求の範囲で述べられる物質の量、反応条件、時間、物質の定量化された性質、などを表すすべての数はいかなる場合も用語「約」により修飾されていると理解されたい。さらに、ある表のある数がある請求項に提供される場合、同一の性質、量、等に対する同一の表内の他の数のほとんど又は多くが提供された数より低い場合その数は「以下」を意味することが分かる。逆に、ある表のある数がある請求項に提供される場合、同一の性質、量、等に対する同一の表内の他の数のほとんど又は多くが提供された数より高い場合その数は「以上」を意味することが分かる。
【0024】
本明細書に記載されるすべての方法は、本明細書中で他に示されるか若しくはその他文脈により明らかに否定されるかしない限り、又は特定の順序で特許請求の範囲に記載されない限り、いかなる適切な順序で実行してもよい。本明細書中に提供されるいずれか及びすべての例、又は例示を意味する言葉(例えば、「のような」)の使用は、単に本発明をより良好な理解を可能にすることが意図されており、特許請求の範囲で他に記載されない限り本発明の範囲に限定を課すものではない。
【0025】
本明細書中のいずれの言葉も、特許請求の範囲に記載されていない要素が本発明の実施に必須であることを示すと解釈してはならない。
【0026】
用語「例えば(for instance)」は「例えば(for example)」と同じ意味を有する。
【0027】
本明細書で列挙されるあらゆる数値範囲はその範囲内のすべての部分範囲及びかかる範囲又は部分範囲の様々な終点のあらゆる組合せを含むと理解される。
【0028】
本明細書で使用されるとき、化学量論下付きの整数値は分子種に関連し、化学量論下付きの非整数値は分子量平均基準、数平均基準又はモル分率基準の分子種の混合物に関連する。
【0029】
以下の記載で、すべての重量百分率は他に述べない限り有機物質の総重量パーセントに基づき、本明細書中で与えられるすべての範囲はすべての部分範囲及び範囲及び/又は部分範囲のあらゆる組合せを含む。
【0030】
「ゴム状のポリマー」は、本明細書で使用されるとき、少なくとも2つの炭素-炭素二重結合及び1つ以上の炭素原子の鎖を含む主鎖、又はそれらの混合物を含有する有機ポリマーである。本発明の1つの実施形態において、ゴム状のポリマーはジエンをベースとするエラストマー及びゴムからなる群から選択される少なくとも1つの一員であることができる。ゴム状のポリマーは当技術分野で周知であり数多くのテキストに記載されているもののいずれでもあることができ、そのうちの2つの例は参照により本明細書に組み込まれる(, include The)。
【0031】
用語ゴム状のポリマーは、ポリマーの一部分が一時的又は永久に一部又は完全な結晶状態であることができるということを排除しない。この記載で使用される用語は可能な限り、Vanderbilt Rubber Handbook; R.F. Ohm, ed.; R.T. Vanderbilt Company, Inc., Norwalk, CT; 1990及びManual For The Rubber Industry; T. Kempermann, S. Koch, J. Sumner, eds.; Bayer AG, Leverkusen, Germany; 1993に提示されているのと同じである。
【0032】
用語一次網目(primary network)とは硬化パッケージ(cure package)における架橋剤により加硫によって架橋されたゴム状のポリマー網目をいう。
【0033】
用語相互貫入網目(interpenetrating network)は、一次網目との共有結合性相互作用なしのコンパウンド内におけるゴムコンパウンド成分の重合を意味する。
【0034】
組成物のゴム成分である適切なゴム状のポリマーのいくつかの代表的な非限定例には、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、ポリブタジエン(BR)、ブタジエンの各種コポリマー、イソプレンの各種コポリマー、溶液スチレン-ブタジエンゴム(SSBR)、エマルションスチレン-ブタジエンゴム(ESBR)、エチレン-プロピレンターポリマー(EPDM)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)及びこれらの組合せからなる群から選択されるものがある。天然ゴム(NR)は限定されないがゴムの木、タンポポ、グアユールゴム、などを含む様々な天然植物源のゴムを含むと理解される。
【0035】
本発明においてゴム状のポリマーを調製するのに適切なモノマーはイソプレン及び1,3-ブタジエンの非限定例のような共役ジエン;及びスチレン及びアルファメチルスチレンの非限定例のような適切なビニル芳香族化合物;及びこれらの組合せからなる群から選択することができる。ゴム状のポリマーはイオウ硬化性ゴムであることができる。ジエンをベースとするエラストマー又はゴムは、天然ゴム及び合成ポリイソプレンゴムを含むcis-1,4-ポリイソプレンゴムの少なくとも1つ、より具体的には天然ゴム、エマルション重合で調製されたスチレン/ブタジエンコポリマーゴム、有機溶液重合で調製されたスチレン/ブタジエンゴム、3,4-ポリイソプレンゴム、イソプレン/ブタジエンゴム、スチレン/イソプレン/ブタジエンターポリマーゴム、cis-1,4-ポリブタジエン、中程度ビニルポリブタジエンゴム(35-50パーセントビニル)、高ビニルポリブタジエンゴム(50-75パーセントビニル)、スチレン/イソプレンコポリマー、エマルション重合で調製されたスチレン/ブタジエン/アクリロニトリルターポリマーゴム及びブタジエン/アクリロニトリルコポリマーゴムであるように選択することができる。エマルション重合で誘導されたスチレン/ブタジエンゴム(ESBR)、例えば20~28パーセント結合スチレンの比較的慣用のスチレン含有率を有するもの、又はいくつかの用途に対しては中程度~比較的高い結合スチレン含有率、即ち28~45パーセントの結合スチレン含有率を有するESBRも本発明で使用されるジエンをベースとするゴムとして考えられる。ターポリマー中に2~40重量パーセントの結合アクリロニトリルを含有するエマルション重合で調製されたスチレン/ブタジエン/アクリロニトリルターポリマーゴムも本発明で使用されるジエンをベースとするゴムとして考えられる。
【0036】
ゴム状のポリマーはまた官能化されたゴムであることもできる。官能化されたゴムは炭素又は水素以外の原子を含有する少なくとも1つの官能基により変性されたゴムである。官能基は通例アルコキシシリル基、スズ含有基、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボン酸基、ポリシロキサン基、エポキシ基、など、又はこれらの官能基の組合せである。官能基は、ゴムを作成するために使用されるモノマーを、官能基を含有するモノマー、開始剤、又は終端単位と共に共重合することにより合成ゴムの調製中にゴム状のポリマーに導入することができる。
【0037】
あるいは、ゴムポリマーは、既に形成されたゴム状のポリマーに官能基をグラフト化することにより官能基で変性することができる。
【0038】
官能化されたゴム状のポリマーは他の官能化されてないゴム状のポリマーと組み合わせて使用することができる。混合物は、ゴム百部当たり少なくとも約5~約95部の、フタロシアニノ(phthalocyanino)、スズ含有基、ヒドロキシル、エポキシ、カルボキシレート、アミノ、アルコキシシリル及びスルフィド(sulfido)基から選択される少なくとも1つの基で官能化され、スチレン含有率が0~約12重量パーセントである、少なくとも1つのスチレン-ブタジエンゴムと、ゴム百部当たり約5~約95部の少なくとも1つのさらなるゴム状のポリマーを含有することができる。官能化されたゴム状のポリマー(ゴム)は一般に未加硫状態で-120~-10℃のDSCに従うガラス転移温度(Tg)を有する。
【0039】
本発明の別の実施形態において、ゴム状のポリマーはアルコキシシラン誘導体により官能化又は変性されたジエンポリマーであることができる。シランで官能化された有機の溶液重合で調製されたスチレン-ブタジエンゴム及びシランで官能化された有機の溶液重合で調製された1,4-ポリブタジエンゴムを使用し得る。これらのゴム組成物は公知である;例えば、全内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5,821,290号参照。
【0040】
本発明のさらにもう1つ別の実施形態において、ゴム状のポリマーはスズ誘導体により官能化又は変性されたジエンポリマーである。スチレン及びブタジエンのスズでカップリングしたコポリマーは、例えば有機溶媒溶液中でのスチレン及び1,3-ブタジエンモノマーの共重合反応中に、通常は重合反応の終了時又はその付近で、スズカップリング剤を導入することにより調製し得る。かかるスズでカップリングしたスチレン-ブタジエンゴムは当業者に周知である;例えば全内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5,268,439号参照。実際、スズの少なくとも約50パーセント、好ましくは約60~約85パーセントがスチレン-ブタジエンゴムのブタジエン単位に結合してスズ-ジエニル結合を生じる。
【0041】
天然ゴム(NR)の特性は大型車両のタイヤ、バスのタイヤ及びトラックのタイヤの製造の際に特に有用である。これの重要な1つの理由は天然ゴムの高いcis-1,4-ポリイソプレン含有率、その大きい分子量、及びその歪みに誘発された結晶化を受ける能力の組合せに起因する。本発明の1つの実施形態において、ゴム状のポリマーは天然ゴム、又は天然ゴムと合成ゴムの混合物を含む。好ましくは、ゴム状のポリマーがゴムの混合物であるとき、そのゴムの処方は少なくとも約10重量パーセントの天然ゴム、好ましくは約30重量パーセントの天然ゴム、より好ましくは少なくとも約50重量パーセントの天然ゴム、さらにより好ましくは少なくとも約70重量パーセントの天然ゴムを含まなければならない。
【0042】
未硬化のゴム組成物は好ましくは補強用充填材を含む。補強用充填材は、そのモジュラスがゴム組成物のゴム状のポリマーより高い材料であるべきであり、硬化したゴム組成物が引っ張られたときに応力を吸収することができるべきである。補強用充填材はオルガノシランカップリング剤と反応性の材料であることができ、繊維、微粒子及びシート様構造体を含むことができる。それらは無機鉱物、ケイ酸塩、シリカ、粘土、セラミック及び珪藻土からなることができる。オルガノシランカップリング剤と反応性の補強用充填材は別々の粒子又は凝集物若しくは塊の形態の粒子群であることができる。オルガノシランカップリング剤は充填材の表面と反応性であることができる。微粒子の沈降シリカは、特にシリカが反応性の表面シラノールを有するとき、オルガノシランカップリング剤と反応性の補強用充填材として有用であることができる。シリカは水和した形態で提供され得るか又は水との反応により水和した形態に変換され得る。補強用充填材はゴム状ポリマーの100部当たり1~150部の補強用充填材、より具体的にはゴム状ポリマーの100部当たり25~90部の補強用充填材、より具体的にはゴム状ポリマーの100部当たり40~80部の補強用充填材の量で使用することができる。
【0043】
オルガノシランカップリング剤と反応性の補強用充填材の代表的な非限定例には少なくとも1つの半金属酸化物又は金属酸化物、例えば焼成シリカ、沈降シリカ、二酸化チタン、アルミノケイ酸塩、アルミナ並びに粘土及びタルクを含めたシリカ質材料並びにこれらの組合せがある。
【0044】
本発明の1つ以上の実施形態において、補強用充填材は単独で又は1つ以上の他の充填材、例えばオルガノシランカップリング剤と反応しない有機及び/又は無機充填材と組み合わせて使用されるシリカであり得る。代表的な非限定例は、タイヤ用のトレッドの非限定例を含めて各種ゴム製品用の補強用充填材に対するようなシリカ及びカーボンブラックの組合せである。アルミナは単独で又はシリカと組み合わせて使用することができる。本明細書中で用語「アルミナ」は酸化アルミニウム又はAI2O3を意味する。ゴム組成物におけるアルミナの使用は公知である;例えば、両方の全内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5,116,886号及び欧州特許第631 982号参照。
【0045】
オルガノシランカップリング剤と反応性の補強用充填材はオルガノシランカップリング剤のための担体として使用され得る。担体として使用することができる他の充填材はオルガノシランカップリング剤と非反応性である。充填材の非反応性は、オルガノシランカップリング剤の、50パーセントより多くの負荷されたシランが有機溶媒を用いて抽出される能力により示される。抽出手順は、全内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第6,005,027号に記載されている。非反応性の担体の代表例には限定されないが多孔質の有機ポリマー及びカーボンブラックがある。担体に負荷することができるオルガノシランカップリング剤の量は好ましくは担体及びオルガノシランカップリング剤の総重量を基準にして0.1~70パーセント、より好ましくは10~50パーセントである。
【0046】
本発明の1つの非限定的実施形態において、オルガノシランカップリング剤と反応性の補強用充填材と混合され得る他の充填材は、カーボンブラック又は有機ポリマーの場合と同様に混合されるオルガノシランカップリング剤に対して本質的に不活性であり得る。別の実施形態において、オルガノシランカップリング剤と反応性の少なくとも2つの補強用充填材を一緒に混合することができ、それと反応性であることができる。半金属のヒドロキシル表面官能性を保有する補強用充填材、例えば表面シラノール官能性を保有するシリカ及びその他のシリカ質微粒子を、金属ヒドロキシル表面官能性を含有する補強用充填材、例えばアルミナ及び他のシリカ質充填材と組み合わせて使用することができる。
【0047】
本発明の1つの実施形態において、沈降シリカがオルガノシランカップリング剤と反応性の補強用充填材として利用される。本発明の好ましい実施形態において、シリカ充填材は窒素ガスを用いて測定して約40~約600m2/gの範囲、好ましくは約50~約300m2/gの範囲、より好ましくは約100~約220m2/gの範囲のBrunauer、Emmett及びTeller(BET)表面積を有することにより特徴付けることができる。Journal of the American Chemical Society、60巻、304頁(1930)に記載されている表面積を測定するBET法が本発明で使用される方法である。さらにもう1つ別の好ましい実施形態において、シリカは通例約100~約350、好ましくは約150~約300、より好ましくは約200~約250の範囲のジブチルフタレート(DBP)吸収値を有することにより特徴付けられる。他の実施形態において、オルガノシランカップリング剤と反応性の補強用充填材はアルミナ及びアルミノケイ酸塩充填材であり得、約80~約220m2/gの範囲のCTAB表面積を保有し得る。CTAB表面積は臭化セチルトリメチルアンモニウムにより約9のpHで決定される外部表面積であり;その測定方法はASTM D 3849に記載されている。
【0048】
水銀空隙率表面積は水銀ポロシメトリーにより決定される比表面積である。この技術では、揮発性物質を除くための熱処理の後水銀がサンプルの細孔に侵入する。より具体的な実施形態において、設定条件で100ミリグラムのサンプルを使用し、2時間にわたって105℃及び周囲の大気圧で揮発性物質を除き、周囲から2000バールの圧力までの測定範囲を使用する。かかる評価はWinslowらによりASTM bulletin、39頁(1959)に記載されている方法に従って、又はDIN 66133に従って行うことができ;かかる評価にはCARLO-ERBA Porosimeter 2000を使用することができる。シランと反応性の有用な補強用充填材には、約100~約300m2/g、好ましくは約150~約275m2/g、より好ましくは約200~約250m2/gの範囲の平均水銀空隙率比表面積を有するシリカがある。
【0049】
非限定例のシリカ、アルミナ及びアルミノケイ酸塩を含む、オルガノシランカップリング剤と反応性の補強用充填材に適切な細孔径分布は、かかる水銀空隙率評価に従って、本発明において、10nm未満の直径を有する細孔が5パーセント以下;10~100nmの直径を有する細孔が約60~約90パーセント;100~1,000nmの直径を有する細孔が約10~約30パーセント;及び1,000nmより大きい直径を有する細孔が約5~約20パーセントであると考えられる。これらの補強用充填材は通常電子顕微鏡法により決定して約0.005~約0.075mm、好ましくは約0.01~約0.05mmの範囲の平均最終粒径を有すると期待され得るが、粒子はそれより小さい又はそれより大きい平均径を有することができる。各種の市販のシリカ、例えばPPG IndustriesからHI-SILという商標、特にHI-SIL 210及び243で入手可能なもの;Solvayから入手可能なシリカ、例えばZEOSIL 1165MP;Evonikから入手可能なシリカ、例えばVN2及びVN3、等、並びにHuberから入手可能なシリカ、例えばHUBERSIL 8745を本発明に使用することができる。
【0050】
本発明の1つの実施形態において、充填材はオルガノシランカップリング剤と反応性の補強用充填材を約15~約95重量パーセントの沈降シリカ、アルミナ及び/又はアルミノケイ酸塩、好ましくはシリカ及び対応して約5~約85重量パーセントの、約80~約150の範囲のCTAB値を有するカーボンブラックの量で含むことができ、より好ましくは充填材は約60~約95重量パーセントの前記シリカ、アルミナ及び/又はアルミノケイ酸塩、好ましくはシリカ及び対応して約40~約50重量パーセントのカーボンブラックを含むことができる。沈降シリカ、アルミナ及び/又はアルミノケイ酸塩充填材及びカーボンブラックは予めブレンドするか又は加硫したゴムの製造中に一緒にブレンドすることができる。使用するとき、カーボンブラックはゴム状ポリマーの100部当たり0.5部~10部のカーボンブラックの範囲の量で加えることができる。
【0051】
タイヤトレッド部分は慣習的にカーボンブラック充填材と配合される。カーボンブラックはトレッド部分に格別の耐摩耗性(wear resistance)を提供し、これは高い走行可能距離の、長く持続するタイヤに通じる。シリカが充填材として使用されるとき、ゴム母材全体にわたるシリカの分散は高摩擦のシリカ-シリカ及びゴム-シリカ相互作用に反転することができる。この摩擦はタイヤの特性、例えば転がり抵抗と干渉することができる。タイヤ配合物に従来のシランを加えると、シリカ-シリカ相互作用の内部摩擦を制限し、シリカ表面上のポリマー鎖を動かなくすることにより転がり抵抗を低減することができる。しかしながら、理論に縛られることは望まないが、J.I. Cuneen, Rubber Chemistry and Technology、33巻、445頁、1960年;及びJ.I. Cuneen and F.W. Shipley, Journal of Polymer Science、36巻、77巻、1959年に論じられているように、ゴム鎖へのイオウを介したシランの結合は天然ゴムのトランス含量を増大することができると考えられる。これは耐摩耗性(wear resistance)のような性能特性に悪影響を及ぼしそうである。また、鎖の可動性を厳しく制限すると、天然ゴムが歪みに誘発される結晶化を起こす能力に影響し、耐摩耗性(wear resistance)及び引裂き抵抗を損なう可能性があろう。
【0052】
従来のシランは直接ポリマー鎖に反応し、一次ゴム網目の重大な特性を悪化させる。標準的なアミノ樹脂-レゾルシノール系は一次ポリマー網目を相互貫入網目で補強することができるが、重要な特性の低下を伴って不可逆的に歪む可能性がある。理論に縛られることなく、オルガノシランとHMMM及びフロログルシノール樹脂が反応して相互貫入網目を作り上げ、これが1つの充填材から別の充填材への荷重の移動を補強し、充填材凝集物間の摩擦を低下させると信じられる。充填材界面における熱硬化性相互貫入網目の集中は歪みが最小である熱硬化性樹脂を引き付ける。
【0053】
転がり抵抗はシリカを疎水性にする(hydrophobating)ことにより低下させることができる。有効な充填材体積を増大することは耐摩耗性(wear resistance)及び引裂き抵抗を助長する。さらに、二次ポリマー網目は得られるトレッドの静的及び動的変形の下での補強及び剛性を増大することができる。
【0054】
この荷重耐性パス(load-bearing-path)補強性相互貫入網目の重合はオルガノシランカップリング剤と反応した補強用充填材表面、殊にシリカ表面から成長すると考えられる。これらのオルガノシランカップリング剤はゴム混合及び/又は硬化プロセス中開始剤又は共開始剤(co-initiator)として機能することができる。得られる補強性相互貫入網目は充填材の直近の取り巻き内のゴム相に対する物理的及び化学的な鎖の絡み合いの追加の点を作り出し得る。これらの絡み合いは、得られた相互貫入するポリマー網目及びシリカと共に、そのモジュラス勾配が静的及び動的変形中のゴム状のポリマー鎖からシリカへの荷重移動に有用な階層構造を作り出し、これにより引裂き及び耐摩耗性(wear resistance)を高め、摩耗(abrasion)を低減すると考えられる。相互貫入するポリマー網目の充填材表面からの重合は充填材表面上に網目構造を作り出すことができ、有効な充填材容積を増大する。この網目構造及び有効な充填材体積は結果としてさらなる補強となり、改良された耐摩耗性(wear resistance)にも役立つ。
【0055】
理論に縛られることなく、かかるポリマー網目は補強性相互貫入ポリマー網目メチレン供与体化合物及びフロログルシノール樹脂から形成されると信じられる。当業者は理解するように、相互貫入網目は二次網目ということもできる。理論に縛られることなく、二次網目は、マクロスケールでは区別できない2つの別々のポリマー網目を意味する。荷重耐性パス補強性相互貫入網目を形成するフロログルシノール樹脂は、限定されないが、二置換メチレン結合で結合したフロログルシノールを含む。
【0056】
本発明の1つの実施形態において、メチレン供与体化合物はアミノ樹脂である。アミノ樹脂は-NHを含有する化合物、ホルムアルデヒド及びアルコールの反応から形成される樹脂であることができる。より好ましくは、アミノ樹脂は2,4,6-トリアミノ-1,3,5-トリアジン、ベンゾグアナミン、尿素、グリコールウリル及びポリ(メタ)アクリルアミドから誘導される。
【0057】
メチレン供与体化合物はゴム状のポリマー100部当たり0.1~30部のメチレン供与体化合物、より具体的にはゴム状のポリマー100部当たり0.2~15部のメチレン供与体化合物、さらにより具体的にはゴム状のポリマー100部当たり0.3~10部のメチレン供与体化合物の量で使用することができる。
【0058】
メチレン供与体化合物の代表的且つ非限定な例は1,1,3,3-テトラ-メトキシメチル尿素、1,3,3-トリス-メトキシメチル尿素、1,3-ビス-メトキシメチル尿素、1,1-ビス-メトキシメチル尿素、1,1,3,3-テトラ-エトキシメチル尿素、1,3,3-トリス-エトキシメチル尿素、1,3-ビス-エトキシメチル尿素、1,1-ビス-エトキシメチル尿素、1,1,3,3-テトラ-プロポキシメチル尿素、1,3,3-トリス-プロポキシメチル尿素、l,3-ビス-プロポキシメチル尿素、1,1-ビス-プロポキシメチル尿素、1,1,3,3-テトラ-ブトキシメチル尿素、1,1,3,3-テトラ-フェノキシメチル尿素、N-(l,3,3-トリス-エトキシメチルウレイドメチル)-1,1,3,3-テトラ-エトキシメチル尿素、N,N’-ビス-(1,1,3-トリス-エトキシメチルウレイドメチル)-1,3-ビス-エトキシメチル尿素、N,N’-ビス-(1,1,3-トリス-エトキシメチルウレイド-メトキシメチル)-1,3-ビス-エトキシメチル尿素、N,N,N’,N’,N”,N”-ヘキサキス-メトキシメチル-[l,3,5]トリアジン-2,4,6-トリアミン、N,N,N’,N’,N”-ペンタキス-メトキシメチル-[1,3,5]トリアジン-2,4,6-トリアミン、N,N,N’,N”-テトラキス-メトキシメチル-[l,3,5]トリアジン-2,4,6-トリアミン、N,N,N,,N’,N”,N”-ヘキサキス-エトキシメチル-[l,3,5]トリアジン-2,4,6-トリアミン、N,N,N’,N’,N”-ペンタキス-エトキシメチル-[l,3,5]トリアジン-2,4,6-トリアミン、N,N,N’,N”-テトラキス-エトキシメチル-[l,3,5]トリアジン-2,4,6-トリアミン、N,N,N’,N’,N”,N”-ヘキサキス-プロポキシメチル-[l,3,5]トリアジン-2,4,6-トリアミン、N,N,N’,Nl,N”-ペンタキス-プロポキシメチル-[l,3,5]トリアジン-2,4,6-トリアミン、N,N,N’,N”-テトラキス-プロポキシメチル-[l,3,5]トリアジン-2,4,6-トリアミン、N,N,N’,N’,N”,N”-ヘキサキス-フェノキシメチル-[1,3,5]トリアジン-2,4,6-トリアミン、N,N,N’,N’,N”-ペンタキス-フェノキシメチル-[l,3,5]トリアジン-2,4,6-トリアミン、N,N,N’,N”-テトラキス-フェノキシメチル-[l,3,5]トリアジン-2,4,6-トリアミン、1,3,4,6-テトラキス-メトキシメチル-テトラヒドロ-イミダゾ[4,5-d]イミダゾール-2,5-ジオン、1,3,4,6-テトラキス-エトキシメチル-テトラヒドロ-イミダゾ[4,5-J]イミダゾール-2,5-ジオン、1,3,4,6-テトラキス-プロポキシメチル-テトラヒドロ-イミダゾ[4,5-d]イミダゾール-2,5-ジオン、l,3,4,6-テトラキス-フェノキシメチル-テトラヒドロ-イミダゾ[4,5-d]イミダゾール-2,5-ジオン、1,3,4-トリス-エトキシメチル-テトラヒドロ-イミダゾ[4,5-d]イミダゾール-2,5-ジオン、1,4-ビス-エトキシメチル-テトラヒドロ-イミダゾ[4,5-d]イミダゾール-2,5-ジオン、1,3,4,-トリス-メトキシメチル-テトラヒドロ-イミダゾ[4,5-d]イミダゾール-2,5-ジオン及び1,3,4,-トリス-フェノキシメチル-テトラヒドロ-イミダゾ[4,5-d]イミダゾール-2,5-ジオンである。
【0059】
メチレン供与体化合物は商業的に得ることができる。例えば、アミノ樹脂はPERFERE、以前はINEOS Melamine GmbHからRESIMENE(登録商標)747 ULF、RESIMENE(登録商標)755、RESIMENE(登録商標)757、RESIMENE(登録商標)764、RESIMENE(登録商標)CE 8824 ULF及びMAPRENAL(登録商標)UF 134/60Bという商品名で商業的に購入することができる。
【0060】
1つの例において、オルガノシランカップリング剤は一般式(Ia)を有する:
(RO)a(R)3-aSi(RXH)
式中、各R2は独立して水素、1~10個の炭素原子を有し、場合により少なくとも1個の酸素原子を有していてもよいアルキル基、3~10個の炭素原子を有するシクロアルキル基、2~10個の炭素原子を有するアルケニル基、6~12個の炭素原子を有するアリール基又は7~12個の炭素原子を有するアラルキル基であり、より好ましくは1~3個の炭素原子を有するアルキル基、さらにより好ましくはエチルであり;各R3は独立して1~3個の炭素原子を有するアルキル基又はフェニルであり;R4は1~10個の炭素原子を有し、場合により少なくとも1個の酸素原子を有していてもよいアルキレン基、3~10個の炭素原子を有するシクロアルキレン基、2~10個の炭素原子を有するアルケニレン基、6~12個の炭素原子を有するアリーレン基、7~14個の炭素原子を有するアラルキレン基であり、より好ましくは1~6個の炭素原子を有するアルキレン基、さらにより好ましくはプロピレンであり;Xは1個以上、好ましくは2~10個、さらにより好ましくは平均して2~4個のイオウ原子である。
【0061】
式(Ia)の官能基を含有するシランの代表的な非限定例は3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリプロポキシシラン、3-メルカプトプロピルジメトキシエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、3-メルカプトプロピルジメチルエトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン、4-メルカプト-3,3-ジメチルブチルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルエトキシ-[l,3,2]ジオキサシリナン、3-メルカプトプロピル-(3-ヒドロキシ-2-メチルプロポキシ)-5-メチル-[l,3,2]ジオキサシリナン、6-メルカプトヘキシルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-エチル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-メチル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-エチル-3,3-ジメチル-4-アミノブチルトリエトキシシラン、n-フェニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン及びこれらの混合物を含む。
【0062】
式(Ia)のシランカップリング剤は、ゴム状ポリマー100部当たり0.05~30部のメルカプトシランカップリング剤、より具体的にはゴム状のポリマー100部当たり0.5~15部のメルカプトシランカップリング剤、さらにより具体的にはゴム状ポリマー100部当たり1~10部のメルカプトシランカップリング剤の量で使用することができる。
【0063】
式(Ia)のオルガノシランは商業的に得ることができる。例えば、メルカプトシランカップリング剤はMomentive Performance Materials, Inc.からSi263, Usi-5301、Silquest A-189、Z-6062、KBM-803. MTMO、GENIOSIL(登録商標)GF 70及びS 810という商品名で商業的に購入することができる。
【0064】
別の例において、オルガノシランカップリング剤は一般式(Ib)を有するシランである:
(RO) 3-aSi(R)XSi(R 3-a(RO)
式中、各R2は独立して水素、1~10個の炭素原子を有し、場合により少なくとも1個の酸素原子を有していてもよいアルキル基、3~10個の炭素原子を有するシクロアルキル基、2~10個の炭素原子を有するアルケニル基、6~12個の炭素原子を有するアリール基又は7~12個の炭素原子を有するアラルキル基であり、より好ましくは1~3個の炭素原子を有するアルキル基、さらにより好ましくはエチルであり;各R3は独立して1~3個の炭素原子を有するアルキル基又はフェニルであり;R4は1~10個の炭素原子を有し、場合により少なくとも1個の酸素原子を有していてもよいアルキレン基、3~10個の炭素原子を有するシクロアルキレン基、2~10個の炭素原子を有するアルケニレン基、6~12個の炭素原子を有するアリーレン基、7~14個の炭素原子を有するアラルキレン基、より好ましくは1~6個の炭素原子を有するアルキレン基、さらにより好ましくはプロピレンであり;Xは1個以上、好ましくは2~10個、さらにより好ましくは平均して2~4個のイオウ原子である。
【0065】
式(Ib)の官能基を含有するシランの代表的な非限定例はビス(トリプロポキシシリルプロピル)テトラスルフィド;ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド;ビス(トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド;ビス(トリメトキシメチル)テトラスルフィド;ビス(トリプロポキシシリルプロピル)ジスルファン;ビス(トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド;ビス(トリエトキシシリルメチル)テトラスルフィド;ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルファン;ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-ジスルフィド;ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]ペルスルフィド;3,3’-ビス-(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド;ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]ペルジスルフィド;ビス(トリエトキシシリル)-4,5-ジチオオクタン;ビス(トリプロポキシシリルプロピル)ジスルフィド;ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド;ビス(トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド;ビス(トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド;ビス(トリエトキシシリルメチル)ジスルフィドを含む。
【0066】
式(Ib)のシランカップリング剤はゴム状ポリマー100部当たり0.05~30部のオルガノシランカップリング剤、より具体的にはゴム状のポリマー100部当たり0.5~15部のオルガノシランカップリング剤、さらにより具体的にはゴム状ポリマー100部当たり1~10部のオルガノシランカップリング剤の量で使用することができる。
【0067】
X1が平均で4つのイオウを表す式(Ib)のオルガノシランは商業的に得ることができる。例えば、Si69カップリング剤はEvonikから商業的に購入することができる。Crosile 69 TESPTはGuangzhou Ecopowerから購入することができる。Z6940はOwen Corning Corporationから購入することができる。A-1289はMomentive Performance Materials, Inc.から購入することができる。KBE-846はShin-Etsu Coから購入することができる。また、式(Ib)のオルガノシランはX1が平均で2つのイオウを表す場合商品名Si 75、HP 1589、JH-S75、TESPDで購入することができる。
【0068】
別の実施形態において、オルガノシランは水素を含有する化合物と共有結合する。
【0069】
本発明のゴム組成物はさらにフロログルシノール樹脂を含み得る。フロログルシノール樹脂は標準条件で固体であり得る。固体のフロログルシノール樹脂は、一般に式(II):
【化2】
(式中、R1、R2、及びR3の少なくとも1つは第2のフロログルシノール単位と結合して二置換メチレン橋を形成し、R1、R2、及びR3の第2のものは水素原子であるか、又は第3のフロログルシノール単位と結合して別の二置換メチレン橋を形成し、R1、R2及びR3の第3のものは水素原子であり得る)により規定される複数のフロログルシノール単位を含む。式(II)に使用されている構造は、R1、R2又はR3の二置換メチレン橋が芳香環上の2、4、又は6位に結合することができるという事実を表すことが意図されている。また、R1、R2又はR3の水素原子も2、4、又は6位に位置する。当業者には分かるように、芳香環内のヒドロキシル基と結合していない炭素原子はいずれもR1、R2、又はR3に結合することができ、水素原子を含むか、又は二置換メチレン橋の一部である。
【0070】
一般に、二置換メチレン橋はメチレン橋から延びる少なくとも2つのC1~C10アルキル基に結合する。別の実施形態において、メチレン橋はそこから延びる少なくとも2つのC1~C5アルキル基を含む。さらに別の実施形態において、メチレン橋はそこから延びる少なくとも2つのC1~C4アルキル基を含む。さらにもう1つ別の実施形態において、メチレン橋はそこから延びる少なくとも2つのC1~C3アルキル基を含む。さらにさらなる実施形態において、メチレン橋はそこから延びる少なくとも2つのC1~C2アルキル基を含む。
【0071】
より特定的には、本発明のフロログルシノール樹脂は式(III)に示されるように記載され得る。
【化3】
式中左側のフロログルシノール単位のR1は2位に示されている二置換メチレン橋で置き換えられており、右側のフロログルシノール単位のR3は5位で置き換えられている。左側のR3及び右側のR1はまた本明細書に示されるように同じ二置換メチレン橋であることもできるか、又は水素原子であることができ、R2はこの実施形態において示されている水素原子であることができる。R4及びR5は同一でも異なってもよく、アルキル基である。1つの実施形態において、R4及びR5は両方ともメチル基であり得、そこで形成される二置換メチレン橋はイソプロピリデン橋である。別の実施形態において、R4はエチル基であり得、R5はメチル基であり得、そこで形成される二置換メチレン橋は2,2二置換ブタン橋である。さらにもう1つ別の実施形態において、R4はイソプロピル基であり得、R5はメチル基であり得、そこで形成される二置換メチレン橋は2,2二置換4-メチルペンタン橋である。
【0072】
樹脂は二量体、三量体、四量体、五量体及びそれ以上の多量体の分布であり、モノマーは40%未満が樹脂と共に機能することができる。フロログルシノール樹脂はゴム状ポリマー100部当たり0.1~15部のフロログルシノール樹脂、より具体的にはゴム状のポリマー100部当たり0.5~10部のフロログルシノール樹脂、さらにより具体的にはゴム状ポリマー100部当たり1~5部のフロログルシノール樹脂の量で使用することができる。
【0073】
イオウ供与性化合物もまたゴム組成物に組み込まれ得る。イオウ供与性化合物はゴム状のポリマーを架橋して架橋した一次網目を形成するために使用することができる。理論に縛られることを望まないが、イオウ供与性化合物は硬化条件下でイオウ原子を供与すると考えられる。イオウ供与性化合物は一般に互いに結合してイオウ原子の鎖を形成する2個より多くのイオウ原子を有する。ポリスルフィド及び元素状イオウ、好ましくはイオウSはイオウ供与性化合物である。
【0074】
加硫は加硫剤といわれることが多いイオウ供与性化合物の存在下で行うことができる。これは炭素-炭素二重結合を含有するゴム状のポリマーと反応して架橋した、又は硬化したゴムを形成する。適切なイオウ加硫剤のいくつかの非限定例は、例えば元素状イオウ(遊離のイオウ)又は非限定例としてアミノジスルフィド、ポリマー性ポリスルフィド若しくはイオウ-オレフィン付加物のようなイオウ供与性化合物を含む。これら並びにその他公知及び慣習の加硫剤はゴム組成物を調製するための方法において生産的混合ステップといわれる混合工程中に通常の量で加えられる。
【0075】
イオウ供与性化合物は一般に約0.1~約5phr、より好ましくは約1~約3phr、さらにより好ましくは約1.5~約2.5phrで使用される。
【0076】
ゴム組成物は、例えば遅延剤及び促進剤のような他の普通に使用される添加剤物質、油のようなプロセス添加剤、粘着付与樹脂のような樹脂、可塑剤、顔料、脂肪酸、酸化亜鉛、ワックス、抗酸化物質及びオゾン劣化防止剤、素練り促進剤、などと共に配合することができる。ゴム組成物の使用目的に応じて、これら及び/又はその他のゴム添加剤は慣用の量で使用される。
【0077】
所望であれば加硫促進剤も使用することができる。加硫促進剤の非限定例にはベンゾチアゾール、アルキルチウラムジスルフィド、グアニジン誘導体及びチオカルバメートがある。かかる促進剤の他の例には、限定されないが、メルカプトベンゾチアゾール、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド、ベンゾチアゾールジスルフィド、ジフェニルグアニジン、ジチオカルバミン酸亜鉛、アルキルフェノールジスルフィド、亜鉛ブチルキサンテート、N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシジエチレンベンゾチアゾール-2-スルフェンアミド、N,N-ジフェニルチオ尿素、ジチオカルバミルスルフェンアミド、N,N-ジイソプロピルベンゾチオゾール-2-スルフェンアミド、亜鉛-2-メルカプトトルイミダゾール、ジチオビス(N-メチルピペラジン)、ジチオビス(N-ベータ-ヒドロキシエチルピペラジン)及びジチオビス(ジベンジルアミン)がある。別の実施形態において、他の追加のイオウ供与体には、例えばチウラム及びモルホリン誘導体がある。より具体的な実施形態において、かかる供与体の代表例には、限定されないがジモルホリンジスルフィド、ジモルホリンテトラスルフィド、テトラメチルチウラムテトラスルフィド、ベンゾチアジル-2,N-ジチオモルホリド、チオプラスト、ジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィド及びジスルフィドカプロラクタムがある。
【0078】
促進剤を使用して、加硫に必要な時間及び/又は温度を制御し、加硫物の特性を改良することができる。本発明の1つの実施形態においては、単一の促進剤系、即ち一次促進剤を使用することができる。別の実施形態において、慣習的に且つ好ましくは、一次促進剤は約0.5~約4phr、好ましくは約0.8~約2.0phrの範囲の合計量で使用される。好ましい実施形態において、一次及び二次促進剤の組合せを使用することができ、二次促進剤は、活性化し、加硫物の特性を改良するために、より小量で、例えば約0.05~約3phrで使用される。さらに別の実施形態において、遅延作用促進剤(delayed action accelerator)も使用することができる。さらにもう1つ別の実施形態においては、加硫遅延剤も使用することができる。適切な種類の促進剤は、非限定例のアミン、ジスルフィド、グアニジン、チオ尿素、チアゾール、チウラム、スルフェンアミド、ジチオカルバメート、キサンテート及びこれらの組合せのようなものである。好ましい実施形態において、一次促進剤はスルフェンアミドである。別の実施形態において、第2の促進剤が使用されるならば、二次促進剤はグアニジン、ジチオカルバメート又は、例えば約0.1~約0.3phr、より好ましくは約0.2phrのレベルで使用されるテトラベンジルチウラムジスルフィドのようなチウラム化合物であることができる。
【0079】
任意選択の粘着付与樹脂は約0.5~約10phr、好ましくは約1~約5phrのレベルで使用することができる。好ましい実施形態において、加工助剤の量は約1~約50phrの範囲である。適切な加工助剤には非限定例として芳香族系、ナフテン系、及び/又はパラフィン系加工油及びこれらの組合せを挙げることができる。さらにもう1つ別の実施形態において、抗酸化物質の好ましい量は約1~約5phrである。代表的な抗酸化物質には、非限定例として、ジフェニル-p-フェニレンジアミン及びその他、例えば、参照により本明細書に組み込まれるVanderbilt Rubber Handbook(1978)、344-346頁に開示されているものがある。さらに別の実施形態において、オゾン劣化防止剤の好ましい量は約1~約5phrの範囲である。非限定例としてステアリン酸を挙げることができる任意選択の脂肪酸の好ましい量は約0.5~約3phrの範囲である。
【0080】
酸化亜鉛の好ましい量は約2~約5phrの範囲である。ワックス、例えば微結晶ワックスの好ましい量は約1~約5phrの範囲である。ペプタイザーの好ましい量は約0.1~約1phrの範囲である。適切なペプタイザーとしては、非限定例として、ペンタクロロチオフェノール、ジベンザミドジフェニルジスルフィド及びこれらの組合せがある。
【0081】
本発明の1つの実施形態において、ゴム組成物はフロログルシノール樹脂を含有し、ゴム組成物は好ましくは(a)一次網目を形成するために使用される少なくとも1つのゴム状のポリマー、(b)オルガノシランカップリング剤と反応することができる少なくとも1つの補強用充填材;(c)少なくとも1つの荷重耐性パス補強性相互貫入網目を形成するメチレン供与体化合物;(d)補強用充填材と反応することができる少なくとも1つのオルガノシランカップリング剤、(e)少なくともフロログルシノール樹脂及び(f)少なくとも1つのイオウ供与性化合物、殊にイオウ(S)又は少なくとも1つのイオウ供与性化合物、殊にイオウ(S)を含む。ゴム状のポリマーは1つ以上ゴム成分を含み得、ゴム成分の合計は約100phr(ゴム百部当たりの部)になる。本発明の1つの実施形態において、天然ゴムはゴム組成物の約50~100phr、好ましくは約75~100phrの一次ポリマーブレンド部分であるべきである。補強用充填材は約1~約150phr、好ましくは約15~90phr、より好ましくは約20~55phrのゴム組成物を含み得る。本発明の1つの実施形態において、補強用充填材はシリカ、好ましくは沈降シリカである。オルガノシランカップリング剤自体及び/又は荷重耐性パス補強性相互貫入網目を形成するための材料(網目を形成するメチレン供与体及びフロログルシノール樹脂)は配合物の補強用充填材重量部分の約6~50%、好ましくは補強用充填材重量の約8~25%、より好ましくは配合物中の補強用充填材重量の約12~25%を含むことができる。
【0082】
したがって、1つ以上の実施形態において、ゴム組成物は:
(a)ゴム状のポリマー又はポリマーのブレンド;
(b)少なくとも1つのオルガノシランカップリング剤;
(c)オルガノシランカップリング剤と反応性の少なくとも1つの補強用充填材;
(d)少なくとも1つのメチレン供与体樹脂;
(e)少なくとも1つのフロログルシノール樹脂;及び
(f)場合により、少なくとも1つのイオウ供与性化合物
を含む。
【0083】
別の実施形態において、ゴム組成物はゴム組成物の総重量を基準にして約25~約95重量パーセントの量のゴム状の成分、ゴム組成物の総重量を基準にして約2~約70重量パーセントの量のオルガノシランカップリング剤と反応性の補強用充填材、ゴム組成物の総重量を基準にして約0.2~約25重量パーセントの量のメチレン供与体樹脂、ゴム組成物の総重量を基準にして約0.2~約25重量パーセントの量のフロログルシノール樹脂及び合計を基準にして約0.2~約5重量パーセントの量のイオウ供与性化合物を含む。
【0084】
硬化したゴム組成物において、一次のポリマー性網目は、ゴムポリマー又はゴムポリマーブレンド(a)を少なくとも1つのイオウ供与性化合物と反応させるのに充分な時間ゴム組成物を昇温にすることにより硬化して架橋したゴムポリマー又は架橋したポリマーブレンドを形成する。
【0085】
本発明の別の実施形態において、本明細書に記載されているゴム組成物を提供するための方法は、少なくとも1つの補強用充填材、少なくとも1つのメチレン供与体樹脂、少なくとも1つのオルガノシランカップリング剤、少なくとも1つのフロログルシノール樹脂、及び場合により少なくとも1つのイオウ供与性化合物の有効な量を天然ゴムのようなゴム状成分と混合することを含む。本発明による方法の1つの実施形態において、オルガノシランカップリング剤の有効な量はゴム組成物の総重量を基準にして約0.2~約20、好ましくは約0.5~約15、より好ましくは約2~約10重量パーセントの範囲であることができる。ゴム状成分の有効な量はゴム組成物の総重量を基準にして約25~約95、好ましくは約50~約90、より好ましくは約60~約80重量パーセントの範囲であることができる。オルガノシランカップリング剤と反応性の補強用充填材の有効な量はゴム組成物の総重量を基準にして約2~約70、好ましくは約5~約55、より好ましくは約20~約50重量パーセントの範囲であることができる。有機樹脂の有効な量はゴム組成物の総重量を基準にして約0.2~約25重量パーセント、好ましくは約2~約15重量パーセント、より好ましくは約5~約10重量パーセントの範囲であることができる。活性水素を含有する化合物(e)の有効な量はゴム組成物の総重量を基準にして約0.2~約25重量パーセント、好ましくは約2~約15重量パーセント、より好ましくは約5~約10重量パーセントの範囲であることができる。イオウ供与性化合物の有効な量はゴム組成物の総重量を基準にして約0.2~約5、好ましくは約0.5~約2.5、より好ましくは約1~約2重量パーセントの範囲であることができる。
【0086】
本発明のもう1つ別の実施形態において、ゴム組成物を調製するための方法は場合により、ゴム組成物の成形前、成形中及び/又は成形後にゴム組成物を硬化させることを含むことができる。加硫したゴム組成物はより高いモジュラス及びより良好な摩耗(wear)に寄与するのに充分な量の荷重耐性パス補強性相互貫入網目を含有するべきである。
【0087】
本発明の1つの実施形態において、オルガノシランカップリング剤はゴム状のポリマー成分を含有するプロセス混合物に別途加えられる。補強用充填材及びオルガノシランカップリング剤はその場でカップリング又は反応して、オルガノシランカップリング剤が充填材と化学結合した補強用充填材を形成すると考えることができる。
【0088】
本発明の1つの実施形態において、ゴム組成物を調製するための方法は多数のステップを含む。非生産的ステップ(i)では、ゴム状の成分、補強用充填材、メチレン供与体樹脂、及びオルガノシランを反応性機械加工(reactive-mechanical-working)条件下で混合する。本明細書で使用されるとき、表現「反応性機械加工条件」は、押出機、噛合い式混合機、又は接線式混合機のような機械加工装置内の高温、滞留時間及び剪断の条件を意味すると理解されるべきであり、かかる条件は以下の1つ以上を引き起こすのに充分である。
【0089】
補強用充填材上に存在する水によるオルガノシランカップリング剤の加水分解の反応工程はアルコキシメチルアミノ官能性のシラノールを形成し得る。これらのシラノールと補強用充填材との反応工程は充填材と共有化学結合を形成し得る。補強用充填材の凝集塊のより小さい凝集物及び/又は個々の充填材粒子への分解があり得る。補強用充填材はゴム状のポリマー中に分散すると、加水分解した後凝縮したアルコキシメチルアミノ官能性のシランに共有結合し得る。
【0090】
非生産的ステップ(ii)で、メチレン供与体及びフロログルシノール樹脂がステップ(i)の混合物に加えられる。非生産的ステップ(ii)では、すべての成分(この実施形態におけるイオウ供与性化合物を除く)が反応性機械加工条件下で混合され、ここで、その条件は、押出機、噛合い式混合機、又は接線式混合機のような機械加工装置内の高温、滞留時間、せん断であり、かかる条件は以下の1つ以上を引き起こすのに充分である。即ち、ゴム状のポリマー、ステップ(i)の加水分解した後凝縮したオルガノシランカップリング剤に共有結合した補強用充填材、メチレン供与体及びフロログルシノール樹脂の混合物中への分散;及び/又は加水分解した後凝縮したオルガノシランカップリング剤に共有結合した補強用充填材と、メチレン供与体及びフロログルシノール樹脂との反応;及び/又は場合により、一次網目内に分散した荷重耐性パス補強性相互貫入網目を形成し、未硬化のゴム組成物を提供するための、メチレン供与体とフロログルシノール樹脂との反応。
【0091】
メチレン供与体又はフロログルシノール樹脂のいずれかがステップ(ii)で加えられないならば、その足りない成分は第2の非生産的混合ステップ(ii)で加えることができる。
【0092】
生産的ステップ(iii)において、イオウ供与性化合物(f)がステップ(ii)の混合物に加えられる。
【0093】
ステップ(i)、(ii)又は(iii)のいずれかで、他の成分をゴム組成物に加えることができる。他の成分の代表的な非限定例には活性化剤、加工助剤、促進剤、ワックス、油、オゾン劣化防止剤及び酸化防止剤が含まれる。
【0094】
ゴム組成物は通例高剪断条件下の混合装置で混合され、そこでは主としてゴム混合物内で起こる剪断及びそれに伴う摩擦のために混合の結果として自己生成的に熱くなる。
【0095】
本発明の好ましい実施形態において、ステップ(i)の所望量のゴム状のポリマー、補強用充填材、メチレン供与体及びオルガノシランカップリング剤の混合物は連続的又は非連続的に行われる混合ステップ(i)において反応性機械加工条件下で実質的に均一にブレンドされる。過剰の加熱が起こってしまいゴム組成物を冷却する必要があり得る場合非連続混合を使用することができる。ゴムの冷却はゴム組成物中のゴム状のポリマー成分又は他の成分の熱分解を回避又は最小にする。好ましくは、混合ステップ(i)は100℃~200℃、より好ましくは140℃~180℃の温度で行われる。
【0096】
ステップ(iii)において、少なくとも1つのイオウ供与性化合物(f)は他の加硫促進剤と共にステップ(ii)からのゴム組成物と混合することができる。混合は非反応性機械加工条件下で行うべきである。本明細書で使用されるとき、表現「非反応性機械加工」条件は押出機、噛合い式混合機、接線式混合機、又はロールミルのような機械加工装置内の周囲以下、周囲又は軽く昇温した温度、滞留時間及び剪断の条件を意味すると理解されるべきであり、かかる条件は、ゴム組成物の相当の加硫を生じることなくステップ(ii)のゴム組成物へのイオウ供与性化合物、例えば加硫剤、及び加硫促進剤の分散を引き起こすのに充分である。低い温度及び低い剪断がステップ(iii)で使用されるのが有利である。
【0097】
ステップ(iii)において、滞留時間はかなり変えることができ、一般に加硫剤の分散が完了するように選ばれる。滞留時間はほとんどの場合0.5~30分、好ましくは5~20分の範囲であることができる。
【0098】
ステップ(iii)において使用される温度は5℃~150℃、好ましくは30℃~120℃、より好ましくは50℃~110℃の範囲であることができる。これらの温度は、より高い温度では起こるかもしれない、ゴム組成物のスコーチといわれることがある、イオウ硬化性ゴムの早過ぎる硬化を防ぐか又は抑えるために、反応性機械加工条件で利用される温度より低い。
【0099】
ゴム組成物は、例えばステップ(iii)中若しくはその後、又はステップ(i)とステップ(ii)の間又はステップ(ii)とステップ(iii)の間に50℃以下の温度に放冷され得る。
【0100】
本発明のもう1つ別の実施形態において、ゴム組成物を成形し硬化することが望まれるとき、ゴム組成物は所望の金型に入れられ、ゴムの加硫を起こすために少なくとも約130℃で約200℃以下に1~60分加熱される。
【0101】
本発明の好ましい実施形態によるタイヤトレッド部分を形成するのに好ましいゴム組成物は(a)ゴム状の一次ポリマー又はポリマーのブレンド、(b)補強性シリカ充填材粒子、(c)その場で生成することができる荷重耐性パス補強性相互貫入網目を形成することができるメチレン供与体、(d)補強用充填材と反応することができるオルガノシランカップリング剤及び/又は(e)活性水素を含有する化合物、即ち少なくとも1つのフロログルシノール樹脂を含み、ここで成分(b)、(c)、(d)及び(e)は前述の荷重耐性パス補強性相互貫入網目に寄与する。
【0102】
本発明のゴム組成物は様々な目的に使用することができる。本発明の1つの実施形態において、少なくとも1つの要素が本明細書に記載された硬化したゴム組成物である物品が提供される。本発明の別の実施形態において、少なくとも1つの要素、例えばトレッドが本明細書に記載された硬化したゴム組成物であるタイヤが提供される。
【0103】
さらに別の好ましい実施形態において、例えば、ゴム組成物は靴底、ホース、シール、ケーブル外被、ガスケット及びその他の工業製品のような物品の製造に使用することができる。かかる物品は当業者には自明の各種公知で慣用の方法により作成し、造形し、成形し、硬化することができる。特に、本発明による組成物及び方法はタイヤ、特にトラック又はバスのタイヤの製造に特によく適している。
【実施例
【0104】
本発明の実施を示すために、以下の実施例を調製し試験した。しかしながら、実施例は本発明の範囲を制限すると考えるべきではない。特許請求の範囲が本発明を規定する役割をする。略号PGは「フロログルシノール」を意味する。
【0105】
PG樹脂実施例1。
440.0gのフロログルシノール、628.7gのアセトン及び349.3gの酸カチオン交換触媒(DIAION PK212LH, Mitsubishi Chemical Corporation)をフラスコに仕込み、70℃に加熱した。反応混合物を約70℃で24時間維持した。次いで、0.4gの水酸化ナトリウム25%溶液を加えた。次に溶媒を真空蒸留により除いて155℃にした。155℃の温度に到達したら、真空を解き、樹脂をフラスコから排出した。
【0106】
表1に、天然ゴムを用いてゴム組成物を調製するのに使用される成分をリストする。組成物はビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド(TESPT)又はメルカプトシランカップリング剤でカップリングしたシリカ、メチレン供与体化合物及びレゾルシノール又はレゾルシノール樹脂をコントロールとして含有する。組成物はメルカプトシランカップリング剤、メチレン供与体化合物及び合成されたフロログルシノール樹脂を含有する。「非生産的」組合せは、硬化しない材料の組合せを指し、「生産的」組合せは結果として硬化した組成物を生じるために使用される。トラックバスタイヤトレッドの現在の技術を説明するために、N121カーボンブラックを含有する組成物も調製される。
【0107】
すべての4つの配合物 (TESPT、メルカプトシランカップリング剤(couplig agent)、ヘキサ(メトキシメチル)メラミンをレゾルシノール又はPenacoliteと共に、及びメルカプトシランカップリング剤 ヘキサ(メトキシメチル)メラミンをフロログルシノール樹脂と共に、内部ゴムミキサーで、3つの連続非生産的混合工程、続いて最終の生産的(硬化性)混合を含む混合手順を利用して混合した。TESPTを含有するシリカ配合物をすべての3つの非生産的な工程中150秒間145℃で熱処理した。メチレン供与体化合物を樹脂と共に含有するシリカ配合物は、第1の非生産的工程中150秒間155℃で、第2の非生産的工程中150秒間150℃で、そして第3の非生産的工程中150秒間140℃で熱処理した。荷重耐性パス補強性相互貫入網目のその場重合のためのヘキサ(メトキシメチル)メラミン及びレゾルシノール、Penacolite又はフロログルシノール樹脂はそれぞれ第2及び第3の非生産的段階で加えた。ヘキサ(メトキシメチル)メラミン及びレゾルシノールのためのphr充填量は、硬化したコンパウンドのためのショアA硬度(Shore A Hardness)がトラックタイヤ配合物に典型的な範囲(60-65のショアA硬度)内に確実に入るために、また最良のバランスの物理的及び動的特性を達成するために最適な値である。表1に示すゴム組成物は160℃で15分硬化した。得られた動的及び物理的性質をそれぞれ下記表2及び表3に示す。
【表1】
【表2】
【表3】
【0108】
メルカプトシランカップリング剤、メチレン供与体化合物及びレゾルシノール又はレゾルシノール樹脂を含有するコンパウンドは、DIN研摩器とAngle Abraderの両方を用いて(12°及び16°の両方のスリップ角で、それぞれ61N及び123Nの通常の荷重により、回転砥石を研削面として用いて)測定して、TESPTコンパウンドと比較してより良好な摩耗(wear)及び摩耗抵抗(abrasion resistance)を示した。しかし、予想外に、また驚くべきことに、メルカプトシランカップリング剤、メチレン供与体化合物及びフロログルシノール樹脂を含有するコンパウンドは他のものと比較して動的機械分析、Metravibを用いて測定してずっと良好な転がり抵抗特性(tanD、60C)を示した。即ち、この発明はレゾルシノールなしでNR/シリカトレッドシステムを得ただけでなく低い転がり抵抗の改良の進歩も達成した。
【0109】
PG RESIN 1は予想外に、カーボンブラックコントロールより48%良好、penacoliteより30%良好、レゾルシノールより13%良好、TESPTより17%良好な転がり抵抗でうまくいき、一方TESPTより62%改良、レゾルシノールより21%改良、そしてpenacoliteと同等でPG RESIN実施例1のコンパウンドのDIN摩耗を維持することが分かる。
【0110】
PG樹脂実施例2。
440.0gのフロログルシノール、628.7gのアセトン及び349.3gの酸カチオン交換触媒(DIAION PK212LH、Mitsubishi Chemical Corporation)をフラスコに仕込み、70℃に加熱した。反応混合物を約70℃に24時間維持した。次いで、0.4gの25%水酸化ナトリウム溶液を加えた。次に溶媒を真空蒸留により除いて155℃にした。温度が155℃に到達したとき真空を解き、樹脂をフラスコから排出した。
【0111】
表2に、天然ゴムを用いてゴム組成物を調製するのに使用される成分をリストする。組成物はTESPTカップリング剤でカップリングしたシリカ、メチレン供与体化合物及び先の実施例と類似のフロログルシノール樹脂をコントロールとして含有する。組成物はメチレン供与体化合物を高い及び低い量で、TESPTを高い及び低い量で、そして合成されたフロログルシノール樹脂を高い及び低い量で含有する。「非生産的な」組合せは硬化しない材料の組合せを指し、「生産的な」組合せは低い及び高いイオウ量で硬化した組成物を生成するのに使用される。
【0112】
3つすべての配合物(通常のイオウ、高いイオウ、低いイオウ)を、内部ゴムミキサーで、3つの連続非生産的混合工程と続いて最終の生産的(硬化性)混合を含む混合手順を利用して混合した。3つすべての配合物を同じプロセスに供した。それは、65rpmで3minの第1の工程で混合して確実に組み込み、さらに3分80rpmで添加剤分配を完了することからなっていた。最初のマスターバッチの混合は160℃で2分のシラン処理で完了する。第2の工程では2分140Cで混合し、1.5min140℃に保持し、ダンプする。第3の混合工程は1.5分40rpmで混合した後1min100℃に温度保持する。生産的ステップは1.5min混合し、1分100℃に保持した。シラン、HMMM、TESPT、樹脂及びイオウのphr値を調節して同様な物理的性質を得た。
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【0113】
3つすべての実験コンパウンドは同等な物理的性質を示した。理論に縛られることなく、高いイオウは低レベルの相互貫入網目モノマーで相殺された。低いイオウのコンパウンドは高レベルの相互貫入網目成分により相殺された。予想外なことに、荷重耐性パス相互貫入網目は広範囲の添加にわたって一次網目を十分に相殺することができる。
【0114】
当業者には理解されるように、硬度はDIN摩耗(abrasion)試験において摩耗(wear)性能の予測判断材料である。
【0115】
この発明の範囲及び趣旨から逸脱しない様々な修正及び変更が当業者には明らかとなろう。この発明は本明細書に記載された説明のための実施形態に正当に限定されることはない。

【国際調査報告】