(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-10-15
(54)【発明の名称】光変換効率を向上させた発光ダイオード
(51)【国際特許分類】
   G09F   9/33        20060101AFI20251007BHJP        
   G09F   9/30        20060101ALI20251007BHJP        
   H10H  20/851       20250101ALI20251007BHJP        
   H10H  20/855       20250101ALI20251007BHJP        
   H10H  29/14        20250101ALI20251007BHJP        
   G02B   5/20        20060101ALI20251007BHJP        
   G02B   5/22        20060101ALI20251007BHJP        
   H10H  29/30        20250101ALN20251007BHJP        
【FI】
G09F9/33 
G09F9/30 349B 
G09F9/30 349Z 
H10H20/851 
H10H20/855 
H10H29/14 
G02B5/20 
G02B5/22 
H10H29/30 
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2025515741
(86)(22)【出願日】2023-09-08
(85)【翻訳文提出日】2025-05-14
(86)【国際出願番号】 US2023073799
(87)【国際公開番号】W WO2024059475
(87)【国際公開日】2024-03-21
(32)【優先日】2022-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド  マテリアルズ  インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED  MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050  Bowers  Avenue  Santa  Clara  CA  95054  U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田  和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田  洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎  一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚  文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤  直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須  威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【氏名又は名称】鈴木  信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100176418
【氏名又は名称】工藤  嘉晃
(72)【発明者】
【氏名】ファン  ジアチェン
(72)【発明者】
【氏名】リ  ジヨン
【テーマコード(参考)】
2H148
5C094
5F142
【Fターム(参考)】
2H148AA07
2H148AA14
2H148AA24
5C094AA10
5C094BA23
5C094CA19
5C094ED01
5C094ED03
5C094ED20
5C094FA01
5C094FA02
5C094HA10
5C094JA01
5C094JA08
5C094JA09
5C094JA11
5F142CG07
5F142DA72
5F142DA73
5F142DB12
5F142DB20
5F142GA01
(57)【要約】
  本技術の実施形態は、画素構造を含む。画素構造は、紫外光を生成する発光ダイオード構造を含む。画素構造は、フォトルミネセンス材料を含有するフォトルミネセンス領域をさらに含む。画素構造は、発光ダイオード構造とフォトルミネセンス領域との間に配置された第1の帯域通過フィルタをさらに含み、第1の帯域通過フィルタは、約400nm以下の波長を有する光の50%超を透過させるように動作可能である。画素構造は、フォトルミネセンス領域の第1の帯域通過フィルタとは反対側に配置された第2の帯域通過フィルタをさらに含み、第2の帯域通過フィルタは、400nmよりも長い波長を有する光の50%超を透過させるように動作可能である。
【選択図】
図2
 
【特許請求の範囲】
【請求項1】
  紫外光を生成するように動作可能な発光ダイオード構造と、
  フォトルミネセンス材料を含有するフォトルミネセンス領域と、
  前記発光ダイオード構造と前記フォトルミネセンス領域との間に配置された第1の帯域通過フィルタであって、紫外光を透過させるように動作可能な第1の帯域通過フィルタと、
  前記フォトルミネセンス領域の前記第1の帯域通過フィルタとは反対側に配置された第2の帯域通過フィルタであって、可視光を透過させるように動作可能な第2の帯域通過フィルタと、
を備える、画素構造。
【請求項2】
  前記フォトルミネセンス領域が、前記第1の帯域通過フィルタに隣接する第1の側面と、前記第2の帯域通過フィルタに隣接する第2の側面とを含み、前記フォトルミネセンス領域の前記第2の側面が前記第1の側面よりも広い、請求項1に記載の画素構造。
【請求項3】
  前記フォトルミネセンス領域が、前記第1の帯域通過フィルタと接触する第1の側壁をさらに含み、前記第1の側壁と前記第1の帯域通過フィルタとが90°を超える傾斜角によって特徴付けられる、請求項2に記載の画素構造。
【請求項4】
  マイクロレンズ構造をさらに備え、前記第2の帯域通過フィルタが前記マイクロレンズ構造と前記フォトルミネセンス領域との間に配置されている、請求項1に記載の画素構造。
【請求項5】
  前記発光ダイオード構造と前記第1の帯域通過フィルタとの間に配置された保護領域をさらに備える、請求項1に記載の画素構造。
【請求項6】
  前記フォトルミネセンス領域の前記フォトルミネセンス材料が、前記発光ダイオード構造からの第1の波長の光を吸収し、前記第1の波長の光よりも長い第2の波長の光を放出するように動作可能な量子ドット材料を含む、請求項1に記載の画素構造。
【請求項7】
  前記フォトルミネセンス領域が、前記第1の側面と前記第2の側面との間の約1μm以上の深さによって特徴付けられる、請求項2に記載の画素構造。
【請求項8】
  前記第1の側面が、前記フォトルミネセンス領域を横切る約30μm以下の幅によってさらに特徴付けられる、請求項7に記載の画素構造。
【請求項9】
  紫外光を生成するように動作可能な発光ダイオード構造と、
  前記発光ダイオード構造の上に配置されたフォトルミネセンス領域であって、前記フォトルミネセンス領域が、前記フォトルミネセンス領域の第1の側面と第2の側面との間の深さによって特徴付けられ、前記フォトルミネセンス領域の前記第1の側面が前記第2の側面よりも短い、フォトルミネセンス領域と、
を備える、画素構造。
【請求項10】
  前記フォトルミネセンス領域が、前記フォトルミネセンス領域の前記第1の側面と前記第2の側面との間に側壁領域を含む第3の側面を含み、前記第1の側面と前記第3の側面との間の傾斜角が90°を超える、請求項9に記載の画素構造。
【請求項11】
  前記第1の側面が約4μm以下の幅によって特徴付けられる、請求項9に記載の画素構造。
【請求項12】
  前記第1の側面が4μmよりも大きい幅によって特徴付けられる、請求項9に記載の画素構造。
【請求項13】
  前記第1の側面が、前記発光ダイオード構造と前記フォトルミネセンス領域との間に配置された短帯域通過フィルタに隣接し、前記短帯域通過フィルタが紫外光を透過させるように動作可能であり、
  前記第2の側面が、前記フォトルミネセンス領域の前記短帯域通過フィルタとは反対側に配置された長帯域通過フィルタに隣接し、前記長帯域通過フィルタが可視光を透過させるように動作可能である、請求項9に記載の画素構造。
【請求項14】
  前記フォトルミネセンス領域が、前記発光ダイオード構造からの第1の波長の光を吸収し、前記第1の波長の光よりも長い第2の波長の光を放出するように動作可能な量子ドット材料を含むフォトルミネセンス材料を含む、請求項9に記載の画素構造。
【請求項15】
  複数の画素構造であって、前記画素構造のそれぞれが、
  紫外光を生成するように動作可能な発光ダイオード構造と、
  フォトルミネセンス材料を含有するフォトルミネセンス領域と、
  前記発光ダイオード構造と前記フォトルミネセンス領域との間に配置された第1の帯域通過フィルタであって、紫外光を透過させるように動作可能な第1の帯域通過フィルタと、
  前記フォトルミネセンス領域の前記第1の帯域通過フィルタとは反対側に配置された第2の帯域通過フィルタであって、可視光を透過させるように動作可能な第2の帯域通過フィルタと、
を備える、複数の画素構造を備える、ディスプレイ構成要素。
【請求項16】
  前記画素構造が、前記第1の帯域通過フィルタに隣接する前記フォトルミネセンス領域の第1の側面と、前記第2の帯域通過フィルタに隣接する前記フォトルミネセンス領域の第2の側面とをさらに含み、前記第2の側面が、前記第1の側面よりも広く、前記フォトルミネセンス領域が、前記第1の帯域通過フィルタと接触する第1の側壁をさらに含み、前記第1の側壁と前記第1の帯域通過フィルタとが90°を超える傾斜角によって特徴付けられる、請求項15に記載のディスプレイ構成要素。
【請求項17】
  前記画素構造のそれぞれにおいて、前記フォトルミネセンス領域の前記フォトルミネセンス材料が、前記発光ダイオード構造からの第1の波長の光を吸収し、前記第1の波長の光よりも短い第2の波長の光を放出するように動作可能な量子ドット材料を含み、前記発光ダイオード構造がマイクロ発光ダイオード構造である、請求項15に記載のディスプレイ構成要素。
【請求項18】
  約3000画素/インチ以上の画素密度によって特徴付けられる、請求項15に記載のディスプレイ構成要素。
【請求項19】
  約1以上の光学密度によって特徴付けられる、請求項15に記載のディスプレイ構成要素。
【請求項20】
  拡張現実ディスプレイデバイスに組み込まれるように動作可能である、請求項15に記載のディスプレイ構成要素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
  関連出願の相互参照
  本出願は、2023年9月15日に出願された「LIGHT  EMITTING  DIODE  WITH  INCREASED  LIGHT  CONVERSION  EFFICIENCY」と題する米国仮特許出願第63/406,937号の利益および優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
  本技術は、発光ダイオード(LED)構造と、フォトルミネセンス材料を含有するフォトルミネセンス領域とを組み合わせた画素構造を有するディスプレイに関する。例示的なフォトルミネセンス材料には、量子ドットが含まれる。
【背景技術】
【0003】
  高解像度発光ダイオード(LED)ディスプレイは、表示画面を形成するように配置された数百万個のミクロンサイズの画素を含むことができる。従来のLEDディスプレイは、LED光源からの白色光を赤色、緑色、および青色の画素にフィルタリングして、表示画面全体にわたって様々な強度で発光させてカラー画像を生成する。他のLEDディスプレイは、有機化合物または無機化合物を励起し、そのため、画素に応じて、赤色、緑色、または青色光などの特定の色の光を放出する。これらのLEDディスプレイは、典型的には、不要な色の光を遮断するために必要なフィルタが少なく、より正確な色域を生成することができる。しかしながら、多くのフォトルミネセンス材料は、励起光と目的とする可視光との間の変換効率が比較的低い。これらの材料は、光を全方向に放出し、散乱させる可能性もある。発光化合物のこれらの特性は、表示画像の輝度を低下させる可能性がある。
【0004】
  したがって、励起可能な発光材料を含むディスプレイデバイスのための、より明るい画像を生成する画素設計が必要とされている。これらおよび他のニーズは、本技術によって対処される。
【0005】
  本発明の性質および利点のさらなる理解は、本明細書の残りの部分および図面を参照することによって実現され得て、図面において、同様の参照番号は、いくつかの図面を通して、同様の構成要素を指すために使用される。一部の例では、サブラベルが参照番号に関連付けられ、ハイフンの後に続いて、複数の同様の構成要素のうちの1つを示す。既存のサブラベルを指定せずに参照番号を参照する場合、そのような複数の同様の構成要素のすべてを参照することが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
            【
図1】本技術の実施形態による画素構造を製造する例示的な方法の選択された操作を示す流れ図である。
 
            【
図2】本技術の実施形態による例示的な単一画素構造の簡略化された断面図である。
 
            【
図3】本技術の実施形態による例示的なRGB画素構造の簡略化された断面図である。
 
            【
図4A】本技術の実施形態による例示的な第1の帯域通過フィルタのグラフである。
 
            【
図4B】本技術の実施形態による例示的な第2の帯域通過フィルタのグラフである。
 
          
【発明の概要】
【0007】
  本技術の実施形態は、画素構造を含む。画素構造は、紫外光を生成する発光ダイオード構造を含む。画素構造は、フォトルミネセンス材料を含有するフォトルミネセンス領域をさらに含む。画素構造は、発光ダイオード構造とフォトルミネセンス領域との間に配置された第1の帯域通過フィルタをさらに含み、第1の帯域通過フィルタは、紫外光を透過させるように動作可能である。画素構造は、フォトルミネセンス領域の第1の帯域通過フィルタとは反対側に配置された第2の帯域通過フィルタをさらに含み、第2の帯域通過フィルタは、可視光を透過させるように動作可能である。
【0008】
  追加の実施形態では、画素構造のフォトルミネセンス領域は、第1の帯域通過フィルタに隣接する第1の側面と、第2の帯域通過フィルタに隣接する第2の側面とを含むことができ、フォトルミネセンス領域の第2の側面は、第1の側面よりも広い。さらなる実施形態では、フォトルミネセンス領域は、第1の帯域通過フィルタと接触する第1の側壁をさらに含むことができ、第1の側壁と第1の帯域通過フィルタとは、90°を超える傾斜角によって特徴付けられる。なおさらなる実施形態では、画素構造は、マイクロレンズ構造を含むことができ、第2の帯域通過フィルタは、マイクロレンズ構造とフォトルミネセンス領域との間に配置される。さらに追加の実施形態では、画素構造は、発光ダイオード構造と第1の帯域通過フィルタとの間に配置された保護領域を含むことができる。さらなる実施形態では、画素構造のフォトルミネセンス領域のフォトルミネセンス材料は、発光ダイオード構造からの第1の波長の光を吸収し、第1の波長の光よりも長い第2の波長の光を放出するように動作可能な量子ドット材料を含むことができる。さらに他の実施形態では、フォトルミネセンス領域は、第1の側面と第2の側面との間の約1μm以上の深さによって特徴付けられる。さらに他の実施形態では、フォトルミネセンス領域の第1の側面は、フォトルミネセンス領域を横切る約30μm以下の幅によって特徴付けられる。
【0009】
  本技術の追加の実施形態は、追加の画素構造を含む。画素構造は、紫外光を生成するように動作可能な発光ダイオード構造と、発光ダイオード構造の上に配置されたフォトルミネセンス領域とを含む。フォトルミネセンス領域は、フォトルミネセンス領域の第1の側面と第2の側面との間の深さによって特徴付けられ、フォトルミネセンス領域の第1の側面は、第2の側面よりも短い。
【0010】
  さらなる実施形態では、画素構造のフォトルミネセンス領域は、フォトルミネセンス領域の第1の側面と第2の側面との間の側壁領域を含む第3の側面を含み、第1の側面と第3の側面との間の傾斜角は、90°を超える。なおさらなる実施形態では、フォトルミネセンス領域の第1の側面は、約4μm以下の幅によって特徴付けられる。追加の実施形態では、フォトルミネセンス領域の第1の側面は、発光ダイオード構造とフォトルミネセンス領域との間に配置された短帯域通過フィルタに隣接し、短帯域通過フィルタは、紫外光を透過させるように動作可能であり、フォトルミネセンス領域の第2の側面は、フォトルミネセンス領域の反対側に配置された長帯域通過フィルタに隣接し、長帯域通過フィルタは、可視光を透過させるように動作可能である。追加の実施形態では、画素構造のフォトルミネセンス領域は、発光ダイオード構造からの第1の波長の光を吸収し、第1の波長の光よりも長い第2の波長の光を放出するように動作可能な量子ドット材料を含むフォトルミネセンス材料を含むことができる。
【0011】
  本技術のさらなる実施形態は、ディスプレイ構成要素を含む。ディスプレイ構成要素は、複数の画素構造を有し、画素構造のそれぞれが、紫外光を生成するように動作可能な発光ダイオード構造と、フォトルミネセンス材料を含有するフォトルミネセンス領域とを含む。画素構造は、発光ダイオード構造とフォトルミネセンス領域との間に第1の帯域通過フィルタをさらに含み、第1の帯域通過フィルタは、紫外光を透過させるように動作可能である。画素構造は、フォトルミネセンス領域の第1の帯域通過フィルタとは反対側に配置された第2の帯域通過フィルタをさらに含み、第2の帯域通過フィルタは、可視光を透過させるように動作可能である。
【0012】
  さらなる実施形態では、画素構造は、第1の帯域通過フィルタに隣接するフォトルミネセンス領域の第1の側面と、第2の帯域通過フィルタに隣接するフォトルミネセンス領域の第2の側面とをさらに含み、第2の側面は、第1の側面よりも広く、フォトルミネセンス領域は、第1の帯域通過フィルタと接触する第1の側壁をさらに含み、第1の側壁と第1の帯域通過フィルタとは、90°を超える傾斜角によって特徴付けられる。さらに別の実施形態では、画素構造のフォトルミネセンス領域内のフォトルミネセンス材料は、発光ダイオード構造からの第1の波長の光を吸収し、第1の波長の光よりも短い第2の波長の光を放出するように動作可能な量子ドット材料を含み、発光ダイオード構造はマイクロ発光ダイオード構造である。さらなる実施形態では、ディスプレイ構成要素は、約3000画素/インチ(ppi)以上の画素密度によって特徴付けられる。なおさらなる実施形態では、ディスプレイ構成要素は、約1以上の光学密度によって特徴付けられる。追加の実施形態では、ディスプレイ構成要素は、拡張現実ディスプレイデバイスに組み込まれるように動作可能である。
【0013】
  本技術は、画素構造およびそれらを組み込むディスプレイ構成要素のための従来の設計に勝るいくつかの利点を提供する。多くの従来の設計では、画素構造は、UV生成発光ダイオード構造とフォトルミネセンス領域の底部との間に短帯域通過フィルタがなく、フォトルミネセンス領域の上部に長帯域通過フィルタがない。また、多くの従来の設計では、フォトルミネセンス領域の上面および底面に対して直角(すなわち、90°の傾斜角)に側壁が形成されている。これらの設計上の特性により、フォトルミネセンス領域において生成される可視光のうち表示画像に寄与する割合が減少する。本技術の実施形態では、短帯域通過フィルタが、UV生成発光ダイオード構造とフォトルミネセンス領域の底部との間に配置され、より多くの可視光をフォトルミネセンス領域内に反射させ、表示画像に出力する。本技術のさらなる実施形態は、フォトルミネセンス領域の上部に配置された長帯域通過フィルタを含み、UV光をフォトルミネセンス領域に反射して戻すと同時に、可視光を表示画像へと通過させることができる。本技術のさらに別の実施形態は、発光ダイオード構造に隣接して位置するフォトルミネセンス領域の底面に対して、可視光が通過して表示画像を形成するフォトルミネセンス領域の上面を広くする。フォトルミネセンス領域の底面に対して上面を広くすることで、上面と底面の幅が同じである従来のフォトルミネセンス領域と比較して、より多くの可視光を画像へと通過させることができる。これらおよび他の実施形態は、それらの利点および特徴の多くとともに、以下の説明および添付の図面と併せてより詳細に説明される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
  高解像度ディスプレイにおける技術的進歩には、無機半導体材料からマイクロ発光ダイオード(μLED)を開発することや、量子ドットのようなフォトルミネセンス材料をディスプレイに使用することが含まれる。μLEDは、印加された電界によって励起されると特定のピーク発光波長の光を放出するように構成することができる窒化インジウムガリウム(InGaN)などの半導体材料の層から作られる。半導体製造プロセスを使用して、最長寸法が約50μm以下で、赤色、緑色、または青色光を放出するように動作可能なμLEDを作製する。量子ドットは、よりエネルギーの高い光によって励起された後に特定の色の光を放出することができる無機材料のナノメートルサイズの粒子である。放出される光の色は、他の特性の中でも、サイズ、形状、および組成を含む、粒子の1つまたは複数の特性に左右されることがある。無機半導体材料で作られた量子ドットの場合、放出される光の色は、ドットの伝導帯と価電子帯との間のエネルギーギャップによって決まる。量子ドットが励起されると、1つまたは複数の電子が、よりエネルギーの低い伝導帯からよりエネルギーの高い価電子帯にジャンプする。励起された電子が伝導帯に戻ると、電子は、価電子帯と伝導帯との間のエネルギーギャップの大きさに依存する色の光を放出する。エネルギーギャップが狭くなるほど、放出される光は赤色にシフトし、エネルギーギャップが広くなるほど、放出される光は青色にシフトする。伝導帯と価電子帯との間のエネルギーギャップを変化させる量子ドットの1つまたは複数の特性を調整することによって、可視スペクトル内の実質的にすべての色の光を放出する量子ドットを作製することができる。
【0015】
  さらなる進歩により、高解像度ディスプレイにおいてμLEDと量子ドットとが組み合わされた。μLEDは、バックプレーン制御パネルの電子回路によって個別にオンとオフが切り替えられ、量子ドットを光励起する光源光を生成する。青色光または紫外光などのよりエネルギーの高いμLED光源光が量子ドットを励起し、量子ドットに、青色光、緑色光、橙色光、または赤色光などの特定の、よりエネルギーの低い色の光を放出させる。励起された量子ドットは、μLEDよりも狭帯域の半値全幅波長スペクトルなどの改善された発光特性を有する光を放出することができる。量子ドットはより鮮明な色の光を放出することができるため、不要な色の光が表示画像を汚染するのを阻止するためにディスプレイに必要なカラーフィルタおよび偏光子の数が減少する。
【0016】
  残念ながら、量子ドットは、可視光を全方向に均等に放出する(すなわち、等方的に光を放出する)。この結果、放出された光のかなりの部分が、光が表示画像に取り込まれる画像化方向から逸脱することになる。ディスプレイ構成要素の画素密度を高めるために、フォトルミネセンス領域の幅が、その深さよりも速く減少すると、量子ドットから放出される光のうち、画像化方向から逸脱する割合が増加する。その結果、画素密度の向上と、表示画像の輝度の低下との間にトレードオフが存在する可能性がある。μLEDがより多くのUV光を提供するようにμLEDへの電力を増加させることによってこのトレードオフに対処すると、ディスプレイ構成要素の電力効率が低下し、廃熱が増加する。仮想現実および拡張現実のウェアラブルデバイスのような、視認者の眼の近くに配置されたデバイス構成要素の場合、熱の増加は、デバイスを不快にし、または着用不可能にする可能性がある。
【0017】
  本技術は、非生産的な方向への放出にあまりにも多くの光が失われるという従来の積層型LEDおよびルミネッセンス材料構造の設計に伴うこれらおよび他の問題に対処する。実施形態では、本技術は、UV光を生成するように動作可能な発光ダイオード構造と、無機量子ドットまたは有機発光化合物などのフォトルミネセンス材料を含有するフォトルミネセンス領域との間に配置された第1の帯域通過フィルタを有する画素構造を含む。第1の帯域通過フィルタは、紫外光を透過させるが可視光を遮断するように動作可能である。実施形態では、この第1の帯域通過フィルタは、短帯域通過フィルタと呼ばれることがある。さらなる実施形態では、第1の帯域通過フィルタは、発光ダイオード構造から放出されたUV光を透過させるための窓と、フォトルミネセンス領域に含有されるフォトルミネセンス材料から非生産方向に放出される可視光をフォトルミネセンス領域に反射して戻すためのリフレクタとの両方として機能することができる。第1の帯域通過フィルタは、LED構造からのUV光によるフォトルミネセンス材料の励起を促進し、また、励起されたフォトルミネセンス材料によって放出された、画像表示方向に進む可視光の量を増加させる。実施形態では、本技術は、フォトルミネセンス領域の第1の帯域通過フィルタとは反対側に配置された第2の帯域通過フィルタを有する画素構造も含む。第2の帯域通過フィルタは、可視光を透過させるが紫外光を遮断するように動作可能である。追加の実施形態では、第2の帯域通過フィルタは、フォトルミネセンス領域から放出された可視光を表示画像に透過させるための窓と、以前の通過で吸収されなかったUV光をフォトルミネセンス領域に反射して戻すためのリフレクタとの両方として機能することができる。実施形態では、本技術は、第1の帯域通過フィルタに隣接する第1の側面が、第2の帯域通過フィルタに隣接する第2の側面よりも広いフォトルミネセンス領域も依然として含む。フォトルミネセンス領域の第1の側面が第2の側面よりも広いことにより、側壁と第2の側面との間に、直角ではなく、90°を超える傾斜角が作成される。本構造は、画素構造のフォトルミネセンス領域から表示画像の方向により多くの可視光を促進することもできる。
【0018】
  図1は、本技術の実施形態による画素を製造する方法100における選択された操作を有する流れ図を示す。方法100は、フロントエンド処理、堆積、エッチング、研磨、洗浄、または記載された操作の前に実行され得る任意の他の操作を含む、方法の開始前の1つまたは複数の操作を含む場合と含まない場合がある。本方法は、本技術による方法の一部の実施形態と具体的に関連付けられてもよく、または関連付けられなくてもよい任意選択の操作を含むことがある。方法100は、画素構造の実施形態を形成するための操作を説明しており、そのうちの1つは、
図2において単一の画素構造200として簡略化された概略形態で示され、もう1つは、
図3においてRGB画素構造300として示されている。
図2および
図3の画素構造200および300の断面図は、第1のサブ画素と第2のサブ画素のペアの間で切断され、赤色画素、緑色画素、青色画素の断面の線形配置を明らかにするために分割展開された画素構造を示す、分割展開断面図である。
図2および
図3は、限定された詳細を含む部分的な概略図のみを示す。図示されていないさらなる実施形態では、例示的な画素構造は、図示されているような態様を有する追加の層、領域、および材料、ならびに本技術のいずれかの態様から依然として利益を得ることができる代替の構造的および材料的な態様を含むことができる。
 
【0019】
  方法100は、操作105において、基板202上にLED構造210を形成するステップを含む。実施形態では、LED構造210は、青色光または紫外光を放射するように動作可能なμLED構造であってもよい。一部の実施形態では、基板202は、フォトルミネセンス領域が形成される表面を露出させるために除去されてもよく、LED構造210は、紫外光を放出するように動作可能であってもよい。追加の実施形態では、基板202は、LED構造210と電子通信するバックプレーンを形成してもよく、LED構造は、可視スペクトルの可視青色部分にピーク発光波長を有する青色光を放出するように動作可能であってもよい。さらなる実施形態では、LED構造210は、約400nm以下、約390nm以下、約380nm以下、約370nm以下、約360nm以下、約350nm以下、約340nm以下、約330nm以下、またはそれを下回るピーク発光波長によって特徴付けられる光を放出するように動作可能であってもよい。
図2に示す画素構造200の実施形態では、基板202上に形成されたLED構造210は、紫外(UV)光を放出するように動作可能である。
 
【0020】
  実施形態では、LED構造210は、ガリウムと窒素を含有するLED構造であってもよい。さらなる実施形態では、LED構造210は、基板上にエピタキシャルに形成された窒化ガリウムLED構造、または以前に形成されたLED構造であってもよい。追加の実施形態では、基板202は、他の種類の基板の中でもとりわけ、シリコン基板またはサファイア基板であってもよい。さらに追加の実施形態では、LED構造210は、n型ドープされたGaN層およびp型ドープされたGaN層をさらに含むことができる。n型ドープされたGaN層とp型ドープされたGaN層との間には、LED構造210によって放出される光が生成される多重量子井戸(MQW)領域が形成される。LED構造210は、n型ドープされたGaN層を通過する電流の経路を形成する導電性Nパッドコンタクトをさらに含むことができる。LED構造210は、p型ドープされたGaN層を通過する電流の経路を形成する導電性Pパッドコンタクトも含むことができる。NパッドコンタクトおよびPパッドコンタクトは、LEDサブ画素内の導電層に接続されてもよく、またはバックプレーンの制御回路のコンタクトに直接接続されてもよい。実施形態において、制御回路からの電気信号によって、LED構造210を通る電流の流れが生成され、この構造のMQW領域から光が放出される。追加の実施形態では、MQW領域は、印加された電気信号(例えば、電流および/または電圧)に対して、再現性のあるピーク強度波長および量子効率によって特徴付けられる光を放出するように形成される。実施形態では、MQW領域から放出される光のピーク強度波長は、紫外光波長(例えば、約400nm以下の光の波長)であってもよい。
【0021】
  方法100は、操作115において、LED構造210をバックプレーン(図示せず)と接触させるステップをさらに含むことができる。実施形態では、バックプレーンは、LED構造210に対処する半導体層に形成されたコンタクトを含むことができる。実施形態では、コンタクトは、他の導電性材料の中でも、銅、アルミニウム、金、タングステン、クロム、またはニッケルなどの導電性材料から作製されてもよい。なおさらなる実施形態では、LED構造210は、LED構造とバックプレーンのコンタクトとの間の電気伝導経路の一部を形成する1つまたは複数の透明導電層間に配置されてもよい。追加の実施形態では、透明導電層は、他の透明導電性材料の中でも、インジウムスズ酸化物またはインジウム亜鉛酸化物から作製されてもよい。さらなる他の実施形態では、ミラー層(図示せず)を1つまたは複数の透明電気層に隣接して配置して、LED構造210によって放出された光をフォトルミネセンス領域216に向けて反射することができる。さらなる実施形態では、ミラー層は、他の反射性金属の中でも、銅、アルミニウム、クロム、銀、白金、またはモリブデンなどの1つまたは複数の反射性金属から作製されてもよい。なおさらなる実施形態では、LED基板202をバックプレーンに結合する導電性結合層(図示せず)を、ミラー層とバックプレーンとの間に配置してもよい。さらなる実施形態では、導電性結合層は、他の導電性材料の中でもとりわけ、スズ、金、またはインジウムなどの1つまたは複数の導電性材料から作製されてもよい。
【0022】
  実施形態では、LED構造210上に保護層212が形成されてもよい。追加の実施形態では、保護層212は、水分および他の化合物がLED構造210に接触するのを阻止または防止し、一方で、LED構造からの光が第1の帯域通過フィルタ214を通ってフォトルミネセンス領域216に透過することを可能にする。さらなる実施形態では、保護層212は、酸化ケイ素などのケイ素含有誘電体材料を含んでもよい。なおさらなる実施形態では、保護層は、LED構造210と第1の帯域通過フィルタ214との間が、約2μm以下、約1.5μm以下、約1μm以下、約0.75μm以下、約0.5μm以下、約0.4μm以下、約0.3μm以下、約0.2μm以下、約0.1μm以下、またはそれ未満の深さによって特徴付けられてもよい。
【0023】
  方法100は、操作120において、画素構造200内に第1の帯域通過フィルタ214を形成するステップをさらに含むことができる。実施形態では、第1の帯域通過フィルタは、LED構造210とフォトルミネセンス領域216との間に配置されてもよい。追加の実施形態では、第1の帯域通過フィルタは、LED構造210上に、または存在する場合は、保護層212上に形成されてもよい。さらなる実施形態では、第1の帯域通過フィルタ214は、可視波長と比較して、ほぼUV波長以下の波長を有する光をより高い割合で透過させるように動作可能な短帯域通過フィルタとして特徴付けられてもよい。さらに他の実施形態では、第1の帯域通過フィルタ214は、紫外光の50%超、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上を透過させるように動作可能であってもよい。追加の実施形態では、第1の帯域通過フィルタ214は、可視光の50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、1%未満、またはそれ未満を透過させるように動作可能であってもよい。
【0024】
  図4Aは、第1の帯域通過フィルタ214の一実施形態の例示的な光反射率および透過率プロファイルを示す。このプロファイルは、400nmよりも大幅に短い波長の光は、フィルタを通ってフォトルミネセンス領域216に透過され、一方、400nmよりも大幅に長い波長の光は、LED構造210に向かって反射されることを示す。他の実施形態では、第1の帯域通過フィルタ214の透過プロファイルは、400nmよりも短いまたは長い50%透過/反射波長を有することができる。これらの実施形態では、50%透過/反射波長よりも大幅に短い波長の光は、フィルタを通ってフォトルミネセンス領域216に透過され、一方、50%透過/反射波長よりも大幅に長い波長の光は、LED構造210に向かって反射される。追加の実施形態では、第1の帯域通過フィルタ214は、400nm未満、約390nm以下、約380nm以下、約370nm以下、またはそれを下回る50%透過/反射波長によって特徴付けられてもよい。さらなる実施形態では、第1の帯域通過フィルタ214は、400nm超、約410nm以上、約420nm以上、約430nm以上、またはそれを上回る50%透過/反射波長によって特徴付けられてもよい。フォトルミネセンス領域216の観点から、LED構造210の方向に進むより短い波長のUV光が、フォトルミネセンス領域内に反射される。これにより、LED構造210によって放出されるUV光のより多くの割合が、フォトルミネセンス領域216のフォトルミネセンス材料218によって吸収されるようになる。
 
【0025】
  方法100は、操作125において、画素構造200にフォトルミネセンス領域216を形成するステップも含むことができる。実施形態では、フォトルミネセンス領域216は、LED構造210から放出された光を吸収し、特定の色特性を有する光を放出するように動作可能な、量子ドットなどの1つまたは複数のフォトルミネセンス材料218を含むことができる。実施形態では、フォトルミネセンス領域216は、一部が画素分離構造220a~bから形成されてもよい。さらなる実施形態では、画素分離構造220a~bは、隣接する画素構造および近くの画素構造からの光によって生成されるクロストークを低減する。実施形態では、隣接するおよび近くの画素構造からの光の強度の低減は、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、約99%以上、またはそれを上回る場合がある。
【0026】
  さらなる実施形態では、画素分離構造220a~bは、LED構造210の上方および周囲に延在してもよい。さらなる他の実施形態では、サブ画素分離構造は、LED構造210のコンタクト領域に隣接してその下方に延在してもよく、画素構造のバックプレーンまでさらに延在してもよい。さらなる実施形態では、サブ画素分離構造220a~bは、アルミニウムまたは銅などの反射性材料の層などの、1つまたは複数の追加の材料層によって覆われた画素分離材料のコア列を含むことができる。実施形態では、コア列の材料は、他のタイプの材料の中でも、金属または誘電体材料を含むことができる。さらなる実施形態では、金属材料は、他の金属の中でも、シリコン、タングステン、銅、およびアルミニウムのうちの1つまたは複数を含むことができる。さらなる他の実施形態では、誘電体材料は、他の誘電体材料の中でも、酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、フォトレジスト材料、または誘電体有機ポリマー材料のうちの1つまたは複数を含むことができる。なおさらなる実施形態では、画素分離構造220a~bは、約2.5μm以上、約5μm以上、約7.5μm以上、約10μm以上、約12.5μm以上、約15μm以上、約17.5μm以上、約20μm以上、またはそれを上回る高さを有することができる。さらに追加の実施形態では、画素分離構造220a~bは、約5μm以下、約4.5μm以下、約4μm以下、約3.5μm以下、約3μm以下、約2.5μm以下、約2μm以下、またはそれを下回る幅を有することができる。なおさらなる実施形態では、画素分離構造220a~bは、約1.5:1以上、約2:1以上、約2.5:1以上、約3:1以上、約3.5:1以上、約4:1以上、約4.5:1以上、約5:1以上、またはそれを上回る高さ対幅のアスペクト比を有することができる。
図2に示す実施形態では、画素構造200は、画素分離構造220a~bを含む。
 
【0027】
  実施形態では、画素分離構造220a~bは、第1の帯域通過フィルタ214に隣接する第1の側面と、第1の側面の反対側にあり、第2の帯域通過フィルタ222に隣接する第2の側面とを含むフォトルミネセンス領域216の側壁を形成する。さらなる実施形態では、画素分離構造220aと画素分離構造220bとの間に延在する第1の側面の第1の幅は、同じ画素分離構造220a~b間に延在する第2の側面の第2の幅よりも小さい。追加の実施形態では、第1の幅は、約4μm以下、約3.5μm以下、約3μm以下、約2.5μm以下、約2μm以下、約1.5μm以下、約1μm以下、またはそれ未満であってもよい。フォトルミネセンス領域216の第1の側面の第1の幅と第2の側面の第2の幅との差により、画素分離構造220bと第1の側面との間に、90°を超える(すなわち、直角ではない)傾斜角(α)が作成される。実施形態において、傾斜角(α)は、90°を超える傾斜角、90.5°を超える傾斜角、91°を超える傾斜角、91.5°を超える傾斜角、92°を超える傾斜角、92.5°を超える傾斜角、93°を超える傾斜角、またはそれを超える傾斜角として特徴付けられてもよい。第2の帯域通過フィルタ222に隣接するフォトルミネセンス領域216の第2の側面の幅が広いため、可視光がフォトルミネセンス領域を出て、表示画像に取り込まれる面積が広くなる。
【0028】
  方法100は、操作130において、画素構造200のフォトルミネセンス領域216にフォトルミネセンス材料218を堆積させるステップをさらに含む。実施形態では、堆積させたままのフォトルミネセンス材料は、光硬化性流体および1つまたは複数のフォトルミネセンス粒子または化合物を含む混合物またはスラリー中に1つまたは複数のフォトルミネセンス前駆体を含むことができる。さらなる実施形態では、1つまたは複数のフォトルミネセンス化合物は、光源光によって励起されたときに特定の色特性を有する光を放出するように動作可能な量子ドット材料を含むことができる。追加の実施形態では、これらの量子ドット材料は、他の半導体材料の中でも、リン化インジウム、セレン化亜鉛、硫化亜鉛、シリコン、ケイ酸塩、およびグラフェン、ならびにドープされた無機酸化物などの1つまたは複数の種類の無機半導体材料から作られたナノ粒子を含むことができる。さらなる実施形態では、光硬化性流体は、1つまたは複数の架橋性化合物、光開始剤、および色変換剤を含むことができる。追加の実施形態では、架橋性化合物は、硬化したときにポリマーを形成するモノマーを含むことができる。さらなる実施形態では、モノマーは、アクリレートモノマー、メタクリレートモノマー、およびアクリルアミドモノマーを含むことができる。さらに別の実施形態では、架橋性化合物は、SU-8フォトレジストなどのネガ型フォトレジスト材料を含むことができる。さらなる実施形態では、光開始剤は、他の種類の光開始剤化合物の中でも、紫外光によって励起されると不飽和化合物の硬化を開始するラジカルを生成するホスフィンオキシド化合物およびケト化合物を含むことができる。市販の光開始剤化合物としては、他の光開始剤の中でも、Irgacure  184、Irgacure  819、Darocur  1173、Darocur  4265、Darocur  TPO、Omnicat  250、およびOmnicat  550が挙げられる。
【0029】
  堆積させたままのフォトルミネセンス材料が1つまたは複数のフォトルミネセンス前駆体を含む場合、前駆体を硬化させて、フォトルミネセンス材料218を形成することができる。実施形態では、硬化操作は、フォトルミネセンス領域216のフォトルミネセンス前駆体を、フォトルミネセンス前駆体をフォトルミネセンス材料218に変換する硬化光に曝露することを含んでもよい。なおさらなる実施形態では、硬化光は、フォトルミネセンス前駆体の光硬化性流体中の光硬化性化合物のうちの1つまたは複数を活性化するのに十分に短いピーク発光波長によって特徴付けられてもよい。さらに別の実施形態では、硬化光は、約405nm以下、約400nm以下、約395nm以下、約390nm以下、約385nm以下、約380nm以下、約375nm以下、約370nm以下、約365nm以下、約360nm以下、約355nm以下、約350nm以下、約340nm以下、約330nm以下、約320nm以下、約310nm以下、約300nm以下、またはそれを下回るピーク発光波長によって特徴付けられてもよい。なおさらなる実施形態では、硬化光はLED構造210によって供給されてもよい。これらの実施形態では、LED構造210から硬化光を供給することで、フォトルミネセンス領域216のフォトルミネセンス材料218とLED構造210との自己整合が可能となる場合がある。フォトルミネセンス材料とLED構造との自己整合は、サブ画素のサイズが減少し、画素密度が増加するにつれて、ますます有益になる。
【0030】
  方法100は、操作135において、画素構造200内に第2の帯域通過フィルタ222を形成するステップをさらに含むことができる。実施形態では、第2の帯域通過フィルタ222は、フォトルミネセンス領域216とマイクロレンズ224との間に配置されてもよい。追加の実施形態では、第2の帯域通過フィルタ222は、フォトルミネセンス領域216上に形成されてもよく、または存在する場合は、UVフィルタ(図示せず)上に形成されてもよい。さらなる実施形態では、第2の帯域通過フィルタ222は、より短いUV波長と比較して、可視波長領域の波長を有する光をより大きな割合で透過させるように動作可能な長帯域通過フィルタとして特徴付けられてもよい。さらに別の実施形態では、第2の帯域通過フィルタ222は、可視光の50%超、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上を透過させるように動作可能であってもよい。追加の実施形態では、第2の帯域通過フィルタ222は、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、1%未満、またはそれ未満の紫外光を透過させるように動作可能であってもよい。
【0031】
  図4Bは、第2の帯域通過フィルタ222の一実施形態の例示的な光反射率および透過率プロファイルを示す。プロファイルは、400nmよりも大幅に長い波長の光は、フィルタを通ってマイクロレンズ224および表示された画像に透過され、一方、400nmよりも大幅に短い波長の光は、フォトルミネセンス領域216に向かって反射されることを示す。追加の実施形態では、第2の帯域通過フィルタ222の透過プロファイルは、400nmよりも短いまたは長い50%透過/反射波長を有することができる。これらの実施形態では、50%透過/反射波長よりも大幅に長い波長の光は、フィルタを通ってマイクロレンズ224に透過され、一方、50%透過/反射波長よりも大幅に短い波長の光は、フォトルミネセンス領域216に向かって反射される。追加の実施形態では、第2の帯域通過フィルタ222は、400nm未満、約390nm以下、約380nm以下、約370nm以下、またはそれを下回る50%透過/反射波長によって特徴付けられてもよい。さらなる実施形態では、第2の帯域通過フィルタ222は、400nm超、約410nm以上、約420nm以上、約430nm以上、またはそれを上回る50%透過/反射波長によって特徴付けられてもよい。フォトルミネセンス領域216の観点から、マイクロレンズ224の方向に進むより短い波長のUV光が、フォトルミネセンス領域に反射して戻される。これにより、LED構造210によって放出されるUV光のより多くの割合が、フォトルミネセンス領域216のフォトルミネセンス材料218によって吸収されるようになる。
 
【0032】
  実施形態では、第2の帯域通過フィルタ222は、UV光がフォトルミネセンス領域から表示画像の方向に出るのを阻止するUVフィルタとして機能する。追加の実施形態では、UVフィルタ(図示せず)を第2の帯域通過フィルタ222に隣接して配置して、さらなるUV光が表示画像に到達するのを減衰または阻止することができる。さらなる実施形態では、UVフィルタは、画素構造200内の積層されたLED構造210によって生成されたUV光を吸収し、一方で、フォトルミネセンス領域216のフォトルミネセンス材料218によって放出された可視光を透過させる誘電体層であってもよい。さらなる実施形態では、誘電体層は、化学気相堆積または物理的気相堆積によって堆積させた酸化ケイ素層であってもよい。さらに追加の実施形態では、UVフィルタは、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、およびポリアクリレートとポリメチルメタクリレートとのコポリマーなどの有機ポリマーから作製されてもよい。さらなる他の実施形態では、UVフィルタは、BASFからのTinuvin  CarboProtect、およびEverlightからのEversorbシリーズなどの市販の材料から作製されてもよい。実施形態では、UVフィルタは、画素構造から放出される全光におけるUV光の割合を、約5%以下、約2.5%以下、約1%以下、約0.5%以下、約0.1%以下、約0.05%以下、約0.01%以下、またはそれ未満に低減することができる。追加の実施形態では、UVフィルタは、画素構造からの可視光を、約50%以上、約75%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、約99%以上、またはそれを超えて透過させることができる。
【0033】
  方法100は、操作140において、画素構造200にマイクロレンズ224を形成するステップも含む。実施形態では、マイクロレンズ224は、第2の帯域通過フィルタ222、および存在する場合は、UVフィルタに隣接して配置されてもよい。追加の実施形態では、マイクロレンズ224は、他のレンズ形状の中でも、凸形状レンズ、凹形状レンズ、フレネル形状レンズであってもよい。さらなる実施形態では、マイクロレンズ224は、画素構造200から放出される可視光を透過させることができる無機材料または有機材料から作製されてもよい。追加の実施形態では、マイクロレンズ224は、他のポリマーの中でも、ポリジメチルシロキサン、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリスチレン、およびポリ(ベンジルメタクリレート)などのポリマーから作製されてもよい。さらなる実施形態では、マイクロレンズ224は、他の無機材料の中でも、シリカ、酸化亜鉛、および酸化アルミニウムなどの無機材料から作製されてもよい。マイクロレンズ224は、画素構造によって放出された光を曲げ、集束させ、他のデバイスの中でも、VRヘッドセットおよびAR眼鏡などのデバイス用のディスプレイ構成要素からの画像の品質を向上させる。
図2に示す実施形態では、画素構造200はマイクロレンズ224を含む。
 
【0034】
  ここで
図3を参照すると、本技術の実施形態による別の画素構造300が示されている。画素構造300は、赤色、緑色、および青色の波長の光をそれぞれ放出するように動作可能なフォトルミネセンス材料318a~cを有する3つのサブ画素構造302a~cを含む。実施形態では、フォトルミネセンス領域316a~cにおけるフォトルミネセンス材料318a~cの形成には、画素構造300のサブ画素302a~cのうちの1つにおいて特定のピーク強度波長によって特徴付けられる光を放出するように動作可能なフォトルミネセンス材料を形成するための順次操作が含まれてもよい。さらなる実施形態では、順次操作は、画素構造300の第1のフォトルミネセンス領域316aに赤色発光量子ドットを含む第1のフォトルミネセンス材料318aを形成するステップと、画素構造の第2のフォトルミネセンス領域316bに緑色発光量子ドットを含む第2のフォトルミネセンス材料318bを形成するステップと、画素構造の第3のフォトルミネセンス領域316cに青色発光量子ドットを含む第3のフォトルミネセンス材料318cを形成するステップとを含むことができる。さらなる実施形態では、第4のサブ画素構造(図示せず)が、画素構造300に含まれていてもよい。第4のサブ画素は、他のサブ画素構造302a~cのうちの1つが適切に照明することができない場合を除いて、フォトルミネセンス材料を含まなくてもよい。
 
【0035】
  実施形態では、画素構造200および300は、追加の画素構造と組み合わされて、ディスプレイ構成要素を形成することができる。さらなる実施形態では、ディスプレイ構成要素は、他のディスプレイ装置の中でも、ヘッドセット、眼鏡、スクリーン、またはモニタなどのディスプレイ装置に組み込まれてもよい。なおさらなる実施形態では、本画素構造を含むディスプレイ構成要素は、仮想現実および/または拡張現実サービス用のディスプレイ装置に組み込まれてもよい。
【0036】
  さらなる実施形態では、本画素構造を組み込むディスプレイ構成要素は、約500画素/インチ(ppi)以上、約1000ppi以上、約1500ppi以上、約2000ppi以上、約2500ppi以上、約3000ppi以上、約3500ppi以上、約4000ppi以上、約4500ppi以上、約5000ppi以上、またはそれを上回る画素密度によって特徴付けられてもよい。さらなる実施形態では、ディスプレイ構成要素の画素密度の向上は、ディスプレイ構成要素によって生成される表示画像の輝度の低下をもたらさない。実施形態では、画像の輝度は、約100nit以上、約250nit以上、約500nit以上、約750nit以上、約1000nit以上、約2500nit以上、またはそれを上回るものとして特徴付けられてもよい。なおさらなる実施形態では、本技術の画素構造は、約0.5以上、約0.75以上、約0.8以上、約0.9以上、約0.95以上、約0.99以上、またはそれを上回る光学密度によって特徴付けられてもよい。
【0037】
  いくつかの実施形態について説明してきたが、当業者であれば、本発明の精神から逸脱することなく、様々な修正、代替構成、および均等物を使用できることを認識するであろう。さらに、本発明を不必要に曖昧にすることを避けるために、いくつかの周知のプロセスおよび要素は説明されていない。したがって、上記の説明は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0038】
  値の範囲が提供される場合、文脈が明確に指示しない限り、その範囲の上限と下限との間の各中間値も、下限の単位の10分の1まで具体的に開示されていることを理解されたい。記載された範囲内の任意の記載された値または中間値と、その記載された範囲内の任意の他の記載された値または中間値との間のそれぞれのより小さい範囲が包含される。これらのより小さい範囲の上限および下限は、独立して、その範囲内に含めることも、除外することもでき、いずれか一方の限界を含む、いずれの限界も含まない、または両方の限界を含む各範囲も、記載された範囲内で任意の具体的に除外された限界を条件として、本発明に包含される。記載された範囲が限界の一方または両方を含む場合、それらの含まれる限界のいずれかまたは両方を除外する範囲も含まれる。
【0039】
  本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「プロセス(a  process)」への言及は、複数のそのようなプロセスを含み、「画素構造(the  pixel  structure)」への言及は、1つまたは複数の画素構造および当業者に知られているその等価物への言及を含むなどである。
【0040】
  また、「備える(comprise)」、「備えている(comprising)」、「含む(include)」、「含んでいる(including)」、および「含む(includes)」という単語は、本明細書および以下の特許請求の範囲で使用される場合、記載された特徴、整数、構成要素、またはステップの存在を指定することを意図しているが、1つまたは複数の他の特徴、整数、構成要素、ステップ、動作、またはグループの存在または追加を排除するものではない。
【国際調査報告】