特表-13146964IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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再表2013-146964積層フィルム、有機エレクトロルミネッセンス装置、光電変換装置および液晶ディスプレイ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2013年10月3日
【発行日】2015年12月14日
(54)【発明の名称】積層フィルム、有機エレクトロルミネッセンス装置、光電変換装置および液晶ディスプレイ
(51)【国際特許分類】
   B32B 9/00 20060101AFI20151117BHJP
   C23C 16/42 20060101ALI20151117BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20151117BHJP
   H05B 33/04 20060101ALI20151117BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20151117BHJP
   H01L 31/048 20140101ALI20151117BHJP
【FI】
   B32B9/00 A
   C23C16/42
   H05B33/14 A
   H05B33/04
   H05B33/02
   H01L31/04 560
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】35
【出願番号】特願2014-507996(P2014-507996)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2013年3月21日
(31)【優先権主張番号】特願2012-71617(P2012-71617)
(32)【優先日】2012年3月27日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113000
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100151909
【弁理士】
【氏名又は名称】坂元 徹
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 彰
【テーマコード(参考)】
3K107
4F100
4K030
5F151
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107BB03
3K107CC23
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3K107FF14
3K107FF15
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4F100AB11C
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4F100YY00C
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5F151JA04
5F151JA05
(57)【要約】
基材と基材の少なくとも片方の面に形成された少なくとも1層の薄膜層とを備え、薄膜層のうちの少なくとも1層が珪素原子、酸素原子及び炭素原子を含有し、薄膜層の膜厚方向における薄膜層の表面からの距離と、距離の位置の薄膜層における珪素の原子数比、酸素の原子数比、炭素の原子数比との関係を示す珪素分布曲線、酸素分布曲線及び炭素分布曲線において、規定の条件を全て満たし、炭素分布曲線から求められる炭素の原子数比の平均値が、11at%以上21at%以下であり、薄膜層の平均密度が2.0g/cm以上である積層フィルムの提供。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と前記基材の少なくとも片方の面に形成された少なくとも1層の薄膜層とを備え、
前記薄膜層のうちの少なくとも1層が珪素原子、酸素原子及び炭素原子を含有し、
前記薄膜層の膜厚方向における前記薄膜層の表面からの距離と、前記距離の位置の前記薄膜層に含まれる珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計数に対する珪素原子数の比率(珪素の原子数比)、酸素原子数の比率(酸素の原子数比)、炭素原子数の比率(炭素の原子数比)との関係をそれぞれ示す珪素分布曲線、酸素分布曲線及び炭素分布曲線において、下記条件(i)〜(iii):
(i)珪素の原子数比、酸素の原子数比及び炭素の原子数比が、前記薄膜層の膜厚方向における90%以上の領域において下記式(1)で表される条件を満たすこと、
(酸素の原子数比)>(珪素の原子数比)>(炭素の原子数比)・・・(1)
(ii)前記炭素分布曲線が少なくとも1つの極値を有すること、
(iii)前記炭素分布曲線における炭素の原子数比の最大値及び最小値の差の絶対値が5at%以上であること、
を全て満たし、
前記炭素分布曲線から求められる前記炭素の原子数比の平均値が、11at%以上21at%以下であり、
前記薄膜層の平均密度が2.0g/cm以上である積層フィルム。
【請求項2】
前記薄膜層が、水素原子を更に含有し、
前記薄膜層の29Si固体NMR測定において求められる、酸素原子との結合状態が異なる珪素原子の存在比に基づいて、Qのピーク面積に対する、Q,Q,Qのピーク面積を合計した値の比が、下記条件式(I)を満たす請求項1に記載の積層フィルム。
(Q,Q,Qのピーク面積を合計した値)/(Qのピーク面積)<1.0 …(I)
(Qは、1つの中性酸素原子及び3つの水酸基と結合した珪素原子を示し、Qは、2つの中性酸素原子及び2つの水酸基と結合した珪素原子を示し、Qは、3つの中性酸素原子及び1つの水酸基と結合した珪素原子を示し、Qは、4つの中性酸素原子と結合した珪素原子を示す。)
【請求項3】
前記距離と、前記合計数に対する炭素原子及び酸素原子の合計数の比率(炭素及び酸素の原子数比)との関係を示す炭素酸素分布曲線から求められる、前記炭素及び酸素の原子数比の平均値が、63.7at%以上70.0at%以下である請求項1または2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記珪素分布曲線において、前記珪素の原子数比が29at%以上38at%以下の値を示す位置が、前記薄膜層の膜厚方向における90%以上の領域を占める請求項1から3のいずれか1項に記載の積層フィルム。
【請求項5】
前記炭素分布曲線が複数の極値を有し、
前記極値の最大値と前記極値の最小値との差の絶対値が、15%at以上である請求項1から4のいずれか1項に記載の積層フィルム。
【請求項6】
前記炭素分布曲線が3つ以上の極値を有し、
前記炭素分布曲線における連続する3つの前記極値において、隣接する極値の間の距離が、いずれも200nm以下である請求項1から5のいずれか1項に記載の積層フィルム。
【請求項7】
前記酸素分布曲線が3つ以上の極値を有し、
前記酸素分布曲線における連続する3つの前記極値において、隣接する極値の間の距離が、いずれも200nm以下である請求項1から6のいずれか1項に記載の積層フィルム。
【請求項8】
前記薄膜層が、水素原子を更に含有している請求項1から7のいずれか1項に記載の積層フィルム。
【請求項9】
前記薄膜層の膜厚が、5nm以上3000nm以下である請求項1から8のいずれか1項に記載の積層フィルム。
【請求項10】
前記基材が、ポリエステル系樹脂及びポリオレフィン系樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の樹脂からなる請求項1から9のうちのいずれか1項に記載の積層フィルム。
【請求項11】
前記ポリエステル系樹脂が、ポリエチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレートからなる群から選択される少なくとも一種の樹脂である請求項10に記載の積層フィルム。
【請求項12】
請求項1から11のうちのいずれか1項に記載の積層フィルムを備える有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項13】
請求項1から11のうちのいずれか1項に記載の積層フィルムを備える光電変換装置。
【請求項14】
請求項1から11のうちのいずれか1項に記載の積層フィルムを備える液晶ディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性を有する積層フィルムに関する。また、このような積層フィルムを有する有機エレクトロルミネッセンス装置、光電変換装置、液晶ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスバリア性フィルムは、飲食品、化粧品、洗剤等の物品の充填包装に適する包装用容器として好適に用いることができる。近年、プラスチックフィルム等を基材とし、基材の一方の表面に酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化アルミニウム等の物質を形成材料とする薄膜を積層してなる、ガスバリア性を有する積層フィルム(以下、「積層フィルム」と称することがある)が提案されている。
このような無機物の薄膜をプラスチック基材の表面上に成膜する方法としては、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法等の物理気相成長法(PVD)、減圧化学気相成長法、プラズマ化学気相成長法等の化学気相成長法(CVD)が知られている。例えば、特許文献1には、珪素、酸素及び炭素を含有しており、炭素の原子数比の平均値が、10.8at%以下である薄膜層を有する積層フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特開2011−73430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、ガスバリア性を有する積層フィルムにおいては、屈曲させた場合にガスバリア性を担保している薄膜層が破損し、ガスバリア性が低下するという課題があり、屈曲させた場合にガスバリア性を高く維持できる積層フィルムが求められていた。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、屈曲させても高いガスバリア性を維持可能な積層フィルムを提供することを目的とする。また、このような積層フィルムを有する有機エレクトロルミネッセンス装置、光電変換装置、液晶ディスプレイを提供することをあわせて目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様は、基材と前記基材の少なくとも片方の面に形成された少なくとも1層の薄膜層とを備え、前記薄膜層のうちの少なくとも1層が珪素原子、酸素原子及び炭素原子を含有し、前記薄膜層の膜厚方向における前記薄膜層の表面からの距離と、前記距離の位置の前記薄膜層に含まれる珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計数に対する珪素原子数の比率(珪素の原子数比)、酸素原子数の比率(酸素の原子数比)、炭素原子数の比率(炭素の原子数比)との関係をそれぞれ示す珪素分布曲線、酸素分布曲線及び炭素分布曲線において、下記条件(i)〜(iii):
(i)珪素の原子数比、酸素の原子数比及び炭素の原子数比が、前記薄膜層の膜厚方向における90%以上の領域において下記式(1)で表される条件を満たすこと、
(酸素の原子数比)>(珪素の原子数比)>(炭素の原子数比)・・・(1)
(ii)前記炭素分布曲線が少なくとも1つの極値を有すること、
(iii)前記炭素分布曲線における炭素の原子数比の最大値及び最小値の差の絶対値が5at%以上であること、
を全て満たし、前記炭素分布曲線から求められる前記炭素の原子数比の平均値が、11at%以上21at%以下であり、前記薄膜層の平均密度が2.0g/cm以上である積層フィルムを提供する。
本発明の一態様においては、前記薄膜層が、水素原子を更に含有し、前記薄膜層の29Si固体NMR測定において求められる、酸素原子との結合状態が異なる珪素原子の存在比に基づいて、Qのピーク面積に対する、Q,Q,Qのピーク面積を合計した値の比が、下記条件式(I)を満たすことが望ましい。
(Q,Q,Qのピーク面積を合計した値)/(Qのピーク面積)<1.0 …(I)
(Qは、1つの中性酸素原子及び3つの水酸基と結合した珪素原子を示し、Qは、2つの中性酸素原子及び2つの水酸基と結合した珪素原子を示し、Qは、3つの中性酸素原子及び1つの水酸基と結合した珪素原子を示し、Qは、4つの中性酸素原子と結合した珪素原子を示す。)
本発明の一態様においては、前記距離と、前記合計数に対する炭素原子及び酸素原子の合計数の比率(炭素及び酸素の原子数比)との関係を示す炭素酸素分布曲線から求められる、前記炭素及び酸素の原子数比の平均値が、63.7at%以上70.0at%以下であることが望ましい。
本発明の一態様においては、前記珪素分布曲線において、前記珪素分布曲線において、前記珪素の原子数比が29at%以上38at%以下の値を示す位置が、前記薄膜層の膜厚方向における90%以上の領域を占めることが望ましい。
本発明の一態様においては、前記炭素分布曲線が複数の極値を有し、前記極値の最大値と前記極値の最小値との差の絶対値が、15%at以上であることが望ましい。
本発明の一態様においては、前記炭素分布曲線が3つ以上の極値を有し、前記炭素分布曲線における連続する3つの前記極値において、隣接する極値の間の距離が、いずれも200nm以下であることが望ましい。
本発明の一態様においては、前記酸素分布曲線が3つ以上の極値を有し、前記酸素分布曲線における連続する3つの前記極値において、隣接する極値の間の距離が、いずれも200nm以下であることが望ましい。
本発明の一態様においては、前記薄膜層が、水素原子を更に含有していることが望ましい。
本発明の一態様においては、前記薄膜層の膜厚が、5nm以上3000nm以下であることが望ましい。
本発明の一態様においては、前記基材が、ポリエステル系樹脂及びポリオレフィン系樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の樹脂からなることが望ましい。
本発明の一態様においては、前記ポリエステル系樹脂が、ポリエチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレートからなる群から選択される少なくとも一種の樹脂であることが望ましい。
本発明の一態様は、上述の積層フィルムを備える有機エレクトロルミネッセンス装置を提供する。
本発明の一態様は、上述の積層フィルムを備える光電変換装置を提供する。
本発明の一態様は、上述の積層フィルムを備える液晶ディスプレイを提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、屈曲させても高いガスバリア性を維持可能な積層フィルムを提供することができる。また、このような積層フィルムを有する有機エレクトロルミネッセンス装置、光電変換装置、液晶ディスプレイを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1は本実施形態の積層フィルムの例を示す模式図である。
図2は積層フィルムの製造に用いられる製造装置の一例を示す模式図である。
図3は本実施形態の積層フィルムの製造時の成膜条件を求める方法の説明図である。
図4は本実施形態の積層フィルムの製造時の成膜条件を求める方法の説明図である。
図5は本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス装置の側断面図である。
図6は本実施形態の光電変換装置の側断面図である。
図7は本実施形態の液晶ディスプレイの側断面図である。
図8は実施例1で得られた積層フィルム1の薄膜層の珪素分布曲線、酸素分布曲線、炭素分布曲線及び酸素炭素分布曲線を示すグラフである。
図9は比較例1で得られた積層フィルム2の薄膜層の珪素分布曲線、酸素分布曲線、炭素分布曲線及び酸素炭素分布曲線を示すグラフである。
図10は比較例2で得られた積層フィルム3の薄膜層の珪素分布曲線、酸素分布曲線、炭素分布曲線及び酸素炭素分布曲線を示すグラフである。
図11は比較例3で得られた積層フィルム4の薄膜層の珪素分布曲線、酸素分布曲線、炭素分布曲線及び酸素炭素分布曲線を示すグラフである。
図12は比較例4で得られた積層フィルム5の薄膜層の珪素分布曲線、酸素分布曲線、炭素分布曲線及び酸素炭素分布曲線を示すグラフである。
図13は実施例2で得られた積層フィルム6の薄膜層の珪素分布曲線、酸素分布曲線、炭素分布曲線及び酸素炭素分布曲線を示すグラフである。
図14は実施例3で得られた積層フィルム7の薄膜層の珪素分布曲線、酸素分布曲線、炭素分布曲線及び酸素炭素分布曲線を示すグラフである。
図15は実施例4で得られた積層フィルム8の薄膜層の珪素分布曲線、酸素分布曲線、炭素分布曲線及び酸素炭素分布曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[積層フィルム]
本実施形態の積層フィルムは、基材と前記基材の少なくとも片方の面に形成された少なくとも1層の薄膜層とを備え、前記薄膜層のうちの少なくとも1層が珪素原子、酸素原子及び炭素原子を含有し、前記薄膜層の膜厚方向における前記薄膜層の表面からの距離と、前記距離の位置の前記薄膜層に含まれる珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計数に対する珪素原子数の比率(珪素の原子数比)、酸素原子数の比率(酸素の原子数比)、炭素原子数の比率(炭素の原子数比)との関係をそれぞれ示す珪素分布曲線、酸素分布曲線及び炭素分布曲線において、下記条件(i)〜(iii):
(i)珪素の原子数比、酸素の原子数比及び炭素の原子数比が、前記薄膜層の膜厚方向における90%以上の領域において下記式(1)で表される条件を満たすこと、
(酸素の原子数比)>(珪素の原子数比)>(炭素の原子数比)・・・(1)
(ii)前記炭素分布曲線が少なくとも1つの極値を有すること、
(iii)前記炭素分布曲線における炭素の原子数比の最大値及び最小値の差の絶対値が5at%以上であること、
を全て満たし、前記炭素分布曲線から求められる前記炭素の原子数比の平均値が、11at%以上21at%以下であり、前記薄膜層の平均密度が2.0g/cm以上である。
また、本実施形態の積層フィルムにおいては、薄膜層Hが水素原子を含有していても構わない。
以下、図を参照しながら、本実施形態に係る積層フィルムについて説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜異ならせてある。
図1は、本実施形態の積層フィルムの一例についての模式図である。本実施形態の積層フィルムは、基材Fの表面に、ガスバリア性を担保する薄膜層Hが積層してなるものである。薄膜層Hは、薄膜層Hのうちの少なくとも1層が珪素、酸素及び水素を含んでおり、後述する成膜ガスの完全酸化反応によって生じるSiOを多く含む第1層Ha、不完全酸化反応によって生じるSiOを多く含む第2層Hbを含み、第1層Haと第2層Hbとが交互に積層された3層構造となっている。
ただし、図は膜組成に分布があることを模式的に示したものであり、実際には第1層Haと第2層Hbとの間は明確に界面が生じているものではなく、組成が連続的に変化している。薄膜層Hは、上記3層構造を1単位として、複数単位積層していることとしてもよい。図1に示す積層フィルムの製造方法については後に詳述する。
(基材)
本実施形態の積層フィルムが備える基材Fは、可撓性を有し高分子材料を形成材料とするフィルムである。
基材Fの形成材料は、本実施形態の積層フィルムが光透過性を有する場合、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、環状ポリオレフィン等のポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリビニルアルコール樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物;ポリアクリロニトリル樹脂;アセタール樹脂;ポリイミド樹脂が挙げられる。これらの樹脂の中でも、耐熱性が高く、線膨張率が小さいという観点から、ポリエステル系樹脂又はポリオレフィン系樹脂が好ましく、ポリエステル系樹脂であるPET又はPENがより好ましい。また、これらの樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、積層フィルムの光透過性が重要視されない場合には、基材Fとして、例えば上記樹脂にフィラーや添加剤を加えた複合材料と用いることも可能である。
基材Fの厚みは、積層フィルムを製造する際の安定性等を考慮して適宜設定されるが、真空中においても基材の搬送が容易であることから、5μm〜500μmであることが好ましい。さらに、プラズマ化学気相成長法(プラズマCVD法)を用いて本実施形態で採用する薄膜層Hを形成する場合には、基材Fを通して放電を行うことから、基材Fの厚みは50μm〜200μmであることがより好ましく、50μm〜100μmであることが特に好ましい。
なお、基材Fは、形成する薄膜層との密着力を高めるために、表面を清浄するための表面活性処理を施してもよい。このような表面活性処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理が挙げられる。
(薄膜層)
本実施形態の積層フィルムが備える薄膜層Hは、基材Fの少なくとも片面に形成される層であり、少なくとも1層が珪素、酸素及び炭素を含有している。また、薄膜層Hは、窒素、アルミニウムを更に含有していてもよい。なお、薄膜層Hは、基材Fの両面に形成されることとしてもよい。
(薄膜層の密度)
本実施形態の積層フィルムが備える薄膜層Hは、平均密度が2.0g/cm以上の高い密度となっている。なお、本明細書において薄膜層Hの「平均密度」は、後述する「(5)薄膜層の平均密度、水素原子数の比率の測定」に記載された方法により求められる密度を指す。
薄膜層Hが2.0g/cm以上の密度を有していることにより、本実施形態の積層フィルムは、高いガスバリア性を示す。薄膜層Hが珪素、酸素、炭素及び水素からなる場合には、薄膜層の平均密度は2.22g/cm未満である。
(薄膜層内の珪素、炭素、酸素の分布)
また、本実施形態の積層フィルムが備える薄膜層Hは、薄膜層Hの膜厚方向における薄膜層Hの表面からの距離と、該距離の位置の珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計数に対する珪素原子数の比率(珪素の原子数比)、酸素原子数の比率(酸素の原子数比)及び炭素原子数の比率(炭素の原子数比)との関係をそれぞれ示す珪素分布曲線、酸素分布曲線及び炭素分布曲線において、上述した条件(i)〜(iii)の全てを満たす。
以下、まず各元素の分布曲線について説明し、次いで条件(i)〜(iii)について説明する。
珪素分布曲線、酸素分布曲線、炭素分布曲線、及び後述する酸素炭素分布曲線は、X線光電子分光法(XPS:X−ray Photoelectron Spectroscopy)の測定とアルゴン等の希ガスイオンスパッタとを併用することにより、試料内部を露出させつつ順次表面組成分析を行う、いわゆるXPSデプスプロファイル測定を行うことで作成することができる。
XPSデプスプロファイル測定により得られる分布曲線は、縦軸が元素の原子数比(単位:at%)、横軸がエッチング時間として求められる。このようなXPSデプスプロファイル測定に際しては、エッチングイオン種としてアルゴン(Ar)を用いた希ガスイオンスパッタ法を採用し、エッチング速度(エッチングレート)を0.05nm/sec(SiO熱酸化膜換算値)とすることが好ましい。
ただし、第2層に多く含まれるSiOは、SiO熱酸化膜よりも速くエッチングされるため、SiO熱酸化膜のエッチング速度である0.05nm/secはエッチング条件の目安として用いる。すなわち、エッチング速度である0.05nm/secと、基材Fまでのエッチング時間との積は、厳密には薄膜層Hの表面から基材Fまでの距離を表さない。
そこで、薄膜層Hの膜厚を別途測定して求め、求めた膜厚と、薄膜層Hの表面から基材Fまでのエッチング時間とから、エッチング時間に「薄膜層Hの膜厚方向における薄膜層Hの表面からの距離」を対応させる。
これにより、縦軸を各元素の原子数比(単位:at%)とし、横軸を薄膜層Hの膜厚方向における薄膜層Hの表面からの距離(単位:nm)とする各元素の分布曲線を作成することができる。
まず、薄膜層Hの膜厚は、FIB(Focused Ion Beam)加工して作製した薄膜層の切片の断面をTEM観察することにより求める。
次いで、求めた膜厚と、薄膜層Hの表面から基材Fまでのエッチング時間と、から、エッチング時間に「薄膜層Hの膜厚方向における薄膜層Hの表面からの距離」を対応させる。
XPSデプスプロファイル測定においては、SiOやSiOを形成材料とする薄膜層Hから、高分子材料を形成材料とする基材Fにエッチング領域が移る際に、測定される炭素原子数比が急激に増加する。そこで、本発明においては、XPSデプスプロファイルの上記「炭素原子数比が急激に増加する」領域において、傾きが最大となる時間を、XPSデプスプロファイル測定における薄膜層Hと基材Fとの境界に対応するエッチング時間とする。
XPSデプスプロファイル測定が、エッチング時間に対して離散的に行われる場合には、隣接する2点の測定時間における炭素原子数比の測定値の差が最大となる時間を抽出し、当該2点の中点を、薄膜層Hと基材Fとの境界に対応するエッチング時間とする。
また、XPSデプスプロファイル測定が、膜厚方向に対して連続的に行われる場合には、上記「炭素原子数比が急激に増加する」領域において、エッチング時間に対する炭素原子数比のグラフの時間微分値が最大となる点を、薄膜層Hと基材Fとの境界に対応するエッチング時間とする。
すなわち、薄膜層の切片の断面をTEM観察から求めた薄膜層の膜厚を、上記XPSデプスプロファイルにおける「薄膜層Hと基材Fとの境界に対応するエッチング時間」に対応させることで、縦軸を各元素の原子数比、横軸を薄膜層Hの膜厚方向における薄膜層Hの表面からの距離とする、各元素の分布曲線を作成することができる。
薄膜層Hが備える条件(i)は、薄膜層Hが、珪素の原子数比、酸素の原子数比及び炭素の原子数比が、該層の膜厚の90%以上の領域において下記式(1)を満たしていることである。
(酸素の原子数比)>(珪素の原子数比)>(炭素の原子数比)・・・(1)
薄膜層Hは、上記式(1)を、薄膜層Hの膜厚の95%以上の領域において満たすことが好ましく、薄膜層Hの膜厚の100%の領域において満たすことが特に好ましい。
薄膜層Hにおける珪素の原子数比、酸素の原子数比及び炭素の原子数比が、(i)の条件を満たす場合には、得られる積層フィルムのガスバリア性が十分なものとなる。
薄膜層Hが備える条件(ii)は、薄膜層Hは、炭素分布曲線が少なくとも1つの極値を有することである。
薄膜層Hにおいては、炭素分布曲線が少なくとも2つの極値を有することがより好ましく、少なくとも3つの極値を有することが特に好ましい。炭素分布曲線が極値を有さない場合には、得られる積層フィルムを屈曲させた場合にガスバリア性が低下し不十分となる。
また、このように少なくとも3つの極値を有する場合においては、炭素分布曲線の有する一つの極値及び該極値に隣接する極値における薄膜層Hの膜厚方向における薄膜層Hの表面からの距離の差の絶対値がいずれも200nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましい。
なお、本明細書において「極値」とは、各元素の分布曲線において、薄膜層Hの膜厚方向における薄膜層Hの表面からの距離に対する元素の原子数比の極大値又は極小値のことをいう。
また、本明細書において「極大値」とは、薄膜層Hの表面からの距離を変化させた場合に元素の原子数比の値が増加から減少に変わる点であって、且つその点の元素の原子数比の値よりも、該点から薄膜層Hの膜厚方向における薄膜層Hの表面からの距離を更に20nm変化させた位置の元素の原子数比の値が3at%以上減少する点のことをいう。
さらに、本実施形態において「極小値」とは、薄膜層Hの表面からの距離を変化させた場合に元素の原子数比の値が減少から増加に変わる点であり、且つその点の元素の原子数比の値よりも、該点から薄膜層Hの膜厚方向における薄膜層Hの表面からの距離を更に20nm変化させた位置の元素の原子数比の値が3at%以上増加する点のことをいう。
薄膜層Hが備える条件(iii)は、薄膜層Hは、炭素分布曲線における炭素の原子数比の最大値及び最小値の差の絶対値が5at%以上であることである。
薄膜層Hにおいては、炭素の原子数比の最大値及び最小値の差の絶対値が6at%以上であることがより好ましく、7at%以上であることが特に好ましい。絶対値が5at%未満では、得られる積層フィルムを屈曲させた場合におけるガスバリア性が不十分となる。
(薄膜層の炭素の原子数比)
また、本実施形態の積層フィルムが備える薄膜層Hは、炭素分布曲線から求められる炭素の原子数比の平均値が、11at%以上21at%以下である。
ここで本明細書における「炭素分布曲線から求められる炭素の原子数比の平均値」は、下記の2点間の領域に含まれる、炭素の原子数比を平均した値を採用した。
まず、本実施形態の積層フィルムにおいては、薄膜層Hが、膜厚方向にSiOを多く含む第1層Ha、SiOを多く含む第2層Hb、第1層Haという層構造を形成している。そのため、炭素分布曲線では膜表面近傍および基材F近傍に、第1層Haに対応する炭素原子数比の極小値を有することが予想される。
そのため、炭素分布曲線がこのような極小値を有する場合には、上記の平均値は、炭素分布曲線において最も薄膜層の表面側(原点側)にある極小値から、炭素分布曲線において「炭素原子数比が急激に増加する」領域に移る前の極小値までの領域に含まれる、炭素の原子数比を平均した値を採用した。
また、本実施形態の積層フィルムの比較対象となる他の構成の積層フィルムでは、表面側および基材側のいずれか一方または両方に、上述のような極小値を有さないこともある。そのため、炭素分布曲線がこのような極小値を有さない場合には、薄膜層Hの表面側および基材側で、以下のようにして平均値を算出する基準点を求める。
表面側では、薄膜層Hの表面からの距離を変化させた場合に炭素原子数比の値が減少している領域において、ある点(第1点)と、当該点から薄膜層Hの膜厚方向における薄膜層Hの表面からの距離を更に20nm変化させた点(第2点)との炭素原子数比の値の差の絶対値が5at%以下となるときの、第2点を基準点とした。
また、基材側では、薄膜層と基材との境界を含む領域である「炭素原子数比が急激に増加する」領域の近傍であって、薄膜層Hの表面からの距離を変化させた場合に炭素原子数比の値が増加している領域において、ある点(第1点)と、当該点から薄膜層Hの膜厚方向における薄膜層Hの表面からの距離を更に20nm変化させた点(第2点)との炭素原子数比の値の差の絶対値が5at%以下となるときの、第1点を基準点とした。
炭素の原子数比の「平均」は、炭素分布曲線の作成におけるXPSデプスプロファイル測定が、膜厚方向に対して離散的に行われる場合には、各測定値を算術平均することで求める。また、XPSデプスプロファイル測定が、膜厚方向に対して連続的に行われる場合には、平均を求める領域における炭素分布曲線の積分値を求め、当該領域の長さを一辺とし積分値に相当する面積を有する矩形の他の一辺を算出することで求める。
薄膜層Hにおける炭素の原子数比の平均値が、11at%以上21at%以下であると、積層フィルムを屈曲させた後にも、高いガスバリア性を維持することが可能となる。この平均値は、11at%以上20at%以下が好ましく、11at%以上19.5at%以下がより好ましい。
なお、積層フィルムが透明性を有している場合、積層フィルムの基材の屈折率と、薄膜層の屈折率と、の差が大きいと、基材と薄膜層との界面で反射、散乱が生じ、透明性が低下するおそれがある。この場合、薄膜層の炭素の原子数比を上記数値範囲内で調製し、基材と薄膜層との屈折率差を小さくすることにより、積層フィルムの透明性を改善することが可能である。
例えば、基材としてPENを用いている場合、炭素の原子数比の平均値が11at%以上21at%以下であると、炭素の原子数比の平均値が21at%よりも大きい場合と比べて積層フィルムの光線透過率が高く、良好な透明性を有するものとなる。
更に、本実施形態の積層フィルムにおいては、炭素酸素分布曲線から求められる炭素及び酸素の原子数比の平均値が、63.7at%以上70.0at%以下であることが好ましい。
本明細書において、「炭素及び酸素の原子数比の平均値」は、上述した「炭素の原子数比の平均値」と同様に、炭素分布曲線において最も薄膜層の表面側(原点側)にある極小値から、炭素分布曲線において基材の領域に移る前の極小値までの領域に含まれる、炭素及び酸素の原子数比を算術平均した値を採用した。
また、本実施形態の積層フィルムにおいては、珪素分布曲線において、珪素の原子数比が29at%以上38at%以下の値を示す位置が、薄膜層の膜厚方向における90%以上の領域を占めることが好ましい。珪素の原子数比がこの範囲に含まれていると、得られる積層フィルムのガスバリア性が向上する傾向にある。また、珪素分布曲線において、珪素の原子数比が30at%以上36at%以下の値を示す位置が、薄膜層の膜厚方向における90%以上の領域を占めることがより好ましい。
このとき、薄膜層の膜厚方向における薄膜層の表面からの距離と、該距離の位置の珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計数に対する酸素原子及び炭素原子の合計数の比率(酸素及び炭素の原子数比)との関係をそれぞれ示す酸素炭素分布曲線において、酸素及び炭素の原子数比が62at%以上71at%以下の値を示す位置が、薄膜層の膜厚方向における90%以上の領域を占めることが好ましい。
また、本実施形態の積層フィルムにおいては、炭素分布曲線が複数の極値を有し、極値の最大値と極値の最小値との差の絶対値が、15%at以上であることが好ましい。
また、本実施形態の積層フィルムにおいては、得られる積層フィルムを屈曲させた場合におけるガスバリア性が向上するので、酸素分布曲線が少なくとも1つの極値を有することが好ましく、少なくとも2つの極値を有することがより好ましく、少なくとも3つの極値を有することが特に好ましい。
また、このように少なくとも3つの極値を有する場合においては、酸素分布曲線の有する一つの極値及び該極値に隣接する極値における薄膜層Hの膜厚方向における薄膜層Hの表面からの距離の差の絶対値がいずれも200nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましい。
また、本実施形態の積層フィルムにおいては、得られる積層フィルムを屈曲させた場合におけるガスバリア性が向上するので、薄膜層Hの酸素分布曲線における酸素の原子数比の最大値及び最小値の差の絶対値が5at%以上であることが好ましく、6at%以上であることがより好ましく、7at%以上であることが特に好ましい。
本実施形態の積層フィルムにおいては、得られる積層フィルムを屈曲させた場合におけるガスバリア性が向上するので、薄膜層Hの珪素分布曲線における珪素の原子数比について、最大値及び最小値の差の絶対値が5at%未満であることが好ましく、4at%未満であることがより好ましく、3at%未満であることが特に好ましい。
また、本実施形態の積層フィルムにおいては、得られる積層フィルムを屈曲させた場合におけるガスバリア性が向上するので、酸素炭素分布曲線における酸素及び炭素の原子数比について、最大値及び最小値の差の絶対値が5at%未満であることが好ましく、4at%未満であることがより好ましく、3at%未満であることが特に好ましい。
また、本実施形態の積層フィルムにおいては、膜面全体において均一で且つ優れたガスバリア性を有する薄膜層Hを形成するという観点から、薄膜層Hが膜面方向(薄膜層Hの表面に平行な方向)において実質的に一様であることが好ましい。本明細書において、薄膜層Hが膜面方向において実質的に一様とは、XPSデプスプロファイル測定により薄膜層Hの膜面の任意の2箇所の測定箇所について酸素分布曲線、炭素分布曲線及び酸素炭素分布曲線を作成した場合に、その任意の2箇所の測定箇所において得られる炭素分布曲線が持つ極値の数が同じであり、それぞれの炭素分布曲線における炭素の原子数比の最大値及び最小値の差の絶対値が、互いに同じであるかもしくは5at%以内の差であることをいう。
さらに、本実施形態の積層フィルムにおいては、炭素分布曲線は実質的に連続であることが好ましい。本明細書において、炭素分布曲線が実質的に連続とは、炭素分布曲線における炭素の原子数比が不連続に変化する部分を含まないことを意味し、具体的には、薄膜層Hの膜厚方向における該層の表面からの距離(x、単位:nm)と、炭素の原子数比(C、単位:at%)との関係において、下記数式(F1):
|dC/dx|≦ 0.5 ・・・(F1)
で表される条件を満たすことをいう。
29Si−固体NMRピーク面積)
また、本実施形態の積層フィルムが備える薄膜層Hは、少なくとも1層が珪素、酸素及び水素を含んでおり、薄膜層Hの29Si−固体NMR測定において求められる、Qのピーク面積に対する、Q,Q,Qのピーク面積を合計した値の比が、下記条件式(I)を満たすことが好ましい。
(Q,Q,Qのピーク面積を合計した値)/(Qのピーク面積)<1.0 …(I)
ここで、Q,Q,Q,Qは、薄膜層Hを構成する珪素原子を、該珪素原子に結合する酸素の性質により区別して示すものである。すなわち、Q,Q,Q,Qの各記号は、Si−O−Si結合を形成する酸素原子を、水酸基に対して「中性」酸素原子としたとき、珪素原子に結合する酸素原子が以下のようなものであることを示す。
:1つの中性酸素原子、及び3つの水酸基と結合した珪素原子
:2つの中性酸素原子、及び2つの水酸基と結合した珪素原子
:3つの中性酸素原子、及び1つの水酸基と結合した珪素原子
:4つの中性酸素原子と結合した珪素原子
ここで、「薄膜層Hの29Si−固体NMR」を測定する場合には、測定に用いる試験片に、基材Fが含まれていてもよい。
固体NMRのピーク面積は、例えば、以下のように算出することができる。
まず、29Si−固体NMR測定により得られたスペクトルをスムージング処理する。具体的には、29Si−固体NMR測定により得られたスペクトルをフーリエ変換し、100Hz以上の高周波を取り除いた後、逆フーリエ変換することでスムージング処理を行う(ローパスフィルタ処理)。29Si−固体NMR測定により得られたスペクトルには、ピークの信号より高い周波数のノイズが含まれているが、上記ローパスフィルタ処理によるスムージングで、これらのノイズを取り除く。
以下の説明においては、スムージング後のスペクトルを「測定スペクトル」と称する。
次に、測定スペクトルを、Q,Q,Q,Qの各ピークに分離する。すなわち、Q,Q,Q,Qのピークが、それぞれ固有の化学シフトを中心とするガウス分布(正規分布)曲線を示すこととして仮定し、Q,Q,Q,Qを合計したモデルスペクトルが、測定スペクトルのスムージング後のものと一致するように、各ピークの高さ及び半値幅等のパラメータを最適化する。
パラメータの最適化には、反復法を用いることにより行う。すなわち、反復法を用いて、モデルスペクトルと測定スペクトルとの偏差の2乗の合計が極小値に収束するようなパラメータを算出する。
次に、このようにして求めるQ,Q,Q,Qのピークをそれぞれ積分することで、各ピーク面積を算出する。このようにして求めたピーク面積を用いて、上記式(I)左辺(Q,Q,Qのピーク面積を合計した値)/(Qのピーク面積)を求め、ガスバリア性の評価指標として用いる。
本実施形態の積層フィルムは、固体NMR測定により定量した薄膜層Hを構成する珪素原子のうち、半数以上がQの珪素原子であると好ましい。
の珪素原子は、珪素原子の周囲が4つの中性酸素原子に囲まれ、さらに4つの中性酸素原子は珪素原子と結合して網目構造を形成している。対して、Q,Q,Qの珪素原子は、1以上の水酸基と結合しているため、隣り合う珪素原子との間には共有結合が形成されない微細な空隙が存在することとなる。したがって、Qの珪素原子が多いほど、薄膜層Hが緻密な層となり、高いガスバリア性を実現する積層フィルムとすることができる。
本実施形態の積層フィルムにおいては、上記式(I)に示すように(Q,Q,Qのピーク面積を合計した値)/(Qのピーク面積)が1.0未満であると、高いガスバリア性を示すため好ましい。
(Q,Q,Qのピーク面積を合計した値)/(Qのピーク面積)の値は、より好ましくは0.8以下であり、さらに好ましくは0.6以下である。
なお、基材Fとしてシリコーン樹脂やガラスを含む材料を用いた場合には、固体NMR測定における基材中の珪素の影響を避けるために、基材Fから薄膜層Hを分離して、薄膜層H中に含まれる珪素のみの固体NMRを測定するとよい。
薄膜層Hと基材Fとを分離する方法としては、例えば、薄膜層Hを金属製のスパチュラなどで掻き落とし、固体NMR測定における試料管に採取する方法が挙げられる。また、基材のみを溶解する溶媒を用いて基材Fを除去し、残渣として残る薄膜層Hを採取しても構わない。
本実施形態の積層フィルムにおいて、薄膜層Hの膜厚は、5nm以上3000nm以下の範囲であることが好ましく、10nm以上2000nm以下の範囲であることより好ましく、100nm以上1000nm以下の範囲であることが特に好ましい。薄膜層Hの膜厚が5nm以上であることで、酸素ガスバリア性、水蒸気バリア性等のガスバリア性が一層向上する。また、3000nm以下であることで、屈曲させた場合のガスバリア性の低下を抑制する一層高い効果が得られる。
また、本実施形態の積層フィルムは、(a)珪素原子、酸素原子及び炭素原子を含有し、(b)平均密度が2.0g/cm以上であり、(c)上記条件(i)〜(iii)を全て満たし、(d)炭素分布曲線から求められる炭素の原子数比の平均値が、11at%以上21at%以下である薄膜層Hを少なくとも1層備えるが、条件(a)〜(d)を全て満たす薄膜層を2層以上備えていてもよい。さらに、このような薄膜層Hを2層以上備える場合には、複数の薄膜層Hの材質は、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、このような薄膜層Hを2層以上備える場合には、このような薄膜層Hは基材Fの一方の表面上に形成されていてもよく、基材Fの両方の表面上に形成されていてもよい。また、このような複数の薄膜層Hとしては、ガスバリア性を必ずしも有しない薄膜層Hを含んでいてもよい。
また、本実施形態の積層フィルムが、薄膜層Hを2層以上積層させた層を有する場合には、薄膜層Hの膜厚の合計値(薄膜層Hを積層したバリア膜の膜厚)は、100nmより大きく、3000nm以下であることが好ましい。薄膜層Hの膜厚の合計値が100nm以上であることにより、酸素ガスバリア性、水蒸気バリア性等のガスバリア性が一層向上する。また、薄膜層Hの膜厚の合計値が3000nm以下であることで、屈曲させた場合のガスバリア性の低下を抑制する一層高い効果が得られる。そして、薄膜層Hの1層あたりの膜厚は50nmより大きいことが好ましい。
(その他の構成)
本実施形態の積層フィルムは、基材F及び薄膜層Hを備えるものであるが、必要に応じて、更にプライマーコート層、ヒートシール性樹脂層、接着剤層等を備えていてもよい。このようなプライマーコート層は、積層フィルムとの接着性を向上させることが可能な公知のプライマーコート剤を用いて形成することができる。また、このようなヒートシール性樹脂層は、適宜公知のヒートシール性樹脂を用いて形成することができる。さらに、このような接着剤層は、適宜公知の接着剤を用いて形成することができ、このような接着剤層により複数の積層フィルム同士を接着させてもよい。
本実施形態の積層フィルムは、以上のような構成となっている。
(積層フィルムの製造方法)
次いで、上述の条件(a)〜(d)を全て満たす薄膜層を有する積層フィルムの製造方法について説明する。
図2は、本実施形態にかかる積層フィルムの製造装置の一例を示す図であり、プラズマ化学気相成長法により薄膜層を形成する装置の模式図である。なお、図2においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜異ならせてある。
図に示す製造装置10は、送り出しロール11、巻き取りロール12、搬送ロール13〜16、第1成膜ロール17、第2成膜ロール18、ガス供給管19、プラズマ発生用電源20、電極21、電極22、第1成膜ロール17の内部に設置された磁場形成装置23、及び第2成膜ロール18の内部に設置された磁場形成装置24を備えている。
製造装置10の構成要素のうち、第1成膜ロール17、第2成膜ロール18、ガス供給管19、磁場形成装置23、及び磁場形成装置24は、積層フィルムを製造するときに、図示略の真空チャンバー内に配置される。この真空チャンバーは、図示略の真空ポンプに接続される。真空チャンバーの内部の圧力は、真空ポンプの動作により調整される。
この装置を用いると、プラズマ発生用電源20を制御することにより、第1成膜ロール17と第2成膜ロール18との間の空間に、ガス供給管19から供給される成膜ガスの放電プラズマを発生させることができ、発生する放電プラズマを用いて連続的な成膜プロセスでプラズマCVD成膜を行うことができる。
送り出しロール11には、成膜前の基材Fが巻き取られた状態で設置され、基材Fを長尺方向に巻き出しながら送り出しする。また、基材Fの端部側には巻取りロール12が設けられ、成膜が行われた後の基材Fを牽引しながら巻き取り、ロール状に収容する。
第1成膜ロール17及び第2成膜ロール18は、平行に延在して対向配置されている。両ロールは導電性材料で形成され、それぞれ回転しながら基材Fを搬送する。第1成膜ロール17及び第2成膜ロール18は、直径が同じものを用いることが好ましく、例えば、5cm以上100cm以下のものを用いることが好ましい。
また、第1成膜ロール17と第2成膜ロール18とは、相互に絶縁されていると共に、共通するプラズマ発生用電源20に接続されている。プラズマ発生用電源20から交流電圧を印加すると、第1成膜ロール17と第2成膜ロール18との間の空間SPに電場が形成される。プラズマ発生用電源20は、印加電力を100W〜10kWとすることができ、且つ交流の周波数を50Hz〜500kHzとすることが可能なものであると好ましい。
磁場形成装置23及び磁場形成装置24は、空間SPに磁場を形成する部材であり、第1成膜ロール17及び第2成膜ロール18の内部に格納されている。磁場形成装置23及び磁場形成装置24は、第1成膜ロール17及び第2成膜ロール18と共には回転しないように(すなわち、真空チャンバーに対する相対的な姿勢が変化しないように)固定されている。
磁場形成装置23及び磁場形成装置24は、第1成膜ロール17及び第2成膜ロール18の延在方向と同方向に延在する中心磁石23a,24aと、中心磁石23a,24aの周囲を囲みながら、第1成膜ロール17及び第2成膜ロール18の延在方向と同方向に延在して配置される円環状の外部磁石23b,24bと、を有している。磁場形成装置23では、中心磁石23aと外部磁石23bとを結ぶ磁力線(磁界)が、無終端のトンネルを形成している。磁場形成装置24においても同様に、中心磁石24aと外部磁石24bとを結ぶ磁力線が、無終端のトンネルを形成している。
この磁力線と、第1成膜ロール17と第2成膜ロール18との間に形成される電界と、が交叉するマグネトロン放電によって、成膜ガスの放電プラズマが生成される。成膜ガスの放電プラズマを生じさせる。すなわち、詳しくは後述するように、空間SPは、プラズマCVD成膜を行う成膜空間として用いられ、基材Fにおいて第1成膜ロール17、第2成膜ロール18に接しない面(成膜面)には、成膜ガスがプラズマ状態を経由して堆積した薄膜層が形成される。
空間SPの近傍には、空間SPにプラズマCVDの原料ガスなどの成膜ガスGを供給するガス供給管19が設けられている。ガス供給管19は、第1成膜ロール17及び第2成膜ロール18の延在方向と同一方向に延在する管状の形状を有しており、複数箇所に設けられた開口部から空間SPに成膜ガスGを供給する。図では、ガス供給管19から空間SPに向けて成膜ガスGを供給する様子を矢印で示している。
原料ガスは、形成するバリア膜の材質に応じて適宜選択して使用することができる。原料ガスとしては、例えば珪素を含有する有機ケイ素化合物を用いることができる。このような有機ケイ素化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ジメチルジシラザン、トリメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン、ペンタメチルジシラザン、ヘキサメチルジシラザンが挙げられる。これらの有機ケイ素化合物の中でも、化合物の取り扱い性や得られるバリア膜のガスバリア性等の観点から、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンが好ましい。また、これらの有機ケイ素化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。さらに、原料ガスとして、上述の有機ケイ素化合物の他にモノシランを含有させ、形成するバリア膜の珪素源として使用することとしてもよい。
成膜ガスとしては、原料ガスの他に反応ガスを用いてもよい。このような反応ガスとしては、原料ガスと反応して酸化物、窒化物等の無機化合物となるガスを適宜選択して使用することができる。酸化物を形成するための反応ガスとしては、例えば、酸素、オゾンを用いることができる。また、窒化物を形成するための反応ガスとしては、例えば、窒素、アンモニアを用いることができる。これらの反応ガスは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができ、例えば酸窒化物を形成する場合には、酸化物を形成するための反応ガスと窒化物を形成するための反応ガスとを組み合わせて使用することができる。
成膜ガスには、原料ガスを真空チャンバー内に供給するために、必要に応じて、キャリアガスを含むこととしてもよい。さらに、成膜ガスとしては、放電プラズマを発生させるために、必要に応じて、放電用ガスを用いてもよい。このようなキャリアガス及び放電用ガスとしては、適宜公知のものを使用することができ、例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン等の希ガス;水素を用いることができる。
真空チャンバー内の圧力(真空度)は、原料ガスの種類等に応じて適宜調整することができるが、空間SPの圧力が0.1Pa〜50Paであることが好ましい。気相反応を抑制する目的により、プラズマCVDを低圧プラズマCVD法とする場合、通常0.1Pa〜10Paである。また、プラズマ発生装置の電極ドラムの電力は、原料ガスの種類や真空チャンバー内の圧力等に応じて適宜調整することができるが、0.1kW〜10kWであることが好ましい。
基材Fの搬送速度(ライン速度)は、原料ガスの種類や真空チャンバー内の圧力等に応じて適宜調整することができるが、0.1m/min〜100m/minであることが好ましく、0.5m/min〜20m/minであることがより好ましい。ライン速度が下限未満では、基材Fに熱に起因する皺の発生しやすくなる傾向にあり、他方、ライン速度が上限を超えると、形成されるバリア膜の膜厚が薄くなる傾向にある。
以上のような製造装置10においては、以下のようにして基材Fに対し成膜が行われる。
まず、成膜前に、基材Fから発生するアウトガスが十分に少なくなるように事前の処理を行うとよい。基材Fからのアウトガスの発生量は、基材Fを製造装置に装着し、装置内(チャンバー内)を減圧したときの圧力を用いて判断することができる。例えば、製造装置のチャンバー内の圧力が、1×10−3Pa以下であれば、基材Fからのアウトガスの発生量が十分に少なくなっているものと判断することができる。
基材Fからのアウトガスの発生量を少なくする方法としては、真空乾燥、加熱乾燥、及びこれらの組み合わせによる乾燥、ならびに自然乾燥による乾燥方法が挙げられる。いずれの乾燥方法であっても、ロール状に巻き取った基材Fの内部の乾燥を促進するために、乾燥中にロールの巻き替え(巻き出し及び巻き取り)を繰り返し行い、基材F全体を乾燥環境下に曝すことが好ましい。
真空乾燥は、耐圧性の真空容器に基材Fを入れ、真空ポンプのような減圧機を用いて真空容器内を排気して真空にすることにより行う。真空乾燥時の真空容器内の圧力は、1000Pa以下が好ましく、100Pa以下がより好ましく、10Pa以下がさらに好ましい。真空容器内の排気は、減圧機を連続的に運転することで連続的に行うこととしてもよく、内圧が一定以上にならないように管理しながら、減圧機を断続的に運転することで断続的に行うこととしてもよい。乾燥時間は、8時間以上であることが好ましく、1週間以上であることがより好ましく、1ヶ月以上であることがさらに好ましい。
加熱乾燥は、基材Fを50℃以上の環境下に曝すことにより行う。加熱温度は、50℃以上200℃以下が好ましく、70℃以上150℃以下がさらに好ましい。200℃を超える温度では、基材Fが変形するおそれがある。また、基材Fからオリゴマー成分が溶出し表面に析出することにより、欠陥が生じるおそれがある。乾燥時間は、加熱温度や用いる加熱手段により適宜選択することができる。
加熱手段としては、常圧下で基材Fを50℃以上200℃以下に加熱できるものであれば、特に限られない。通常知られる装置の中では、赤外線加熱装置、マイクロ波加熱装置や、加熱ドラムが好ましく用いられる。
ここで、赤外線加熱装置とは、赤外線発生手段から赤外線を放射することにより対象物を加熱する装置である。
マイクロ波加熱装置とは、マイクロ波発生手段からマイクロ波を照射することにより対象物を加熱する装置である。
加熱ドラムとは、ドラム表面を加熱し、対象物をドラム表面に接触させることにより、接触部分から熱伝導により加熱する装置である。
自然乾燥は、基材Fを低湿度の雰囲気中に配置し、乾燥ガス(乾燥空気、乾燥窒素)を通風させることで低湿度の雰囲気を維持することにより行う。自然乾燥を行う際には、基材Fを配置する低湿度環境にシリカゲルなどの乾燥剤を一緒に配置することが好ましい。乾燥時間は、8時間以上であることが好ましく、1週間以上であることがより好ましく、1ヶ月以上であることがさらに好ましい。
これらの乾燥は、基材Fを製造装置に装着する前に別途行ってもよく、基材Fを製造装置に装着した後に、製造装置内で行ってもよい。
基材Fを製造装置に装着した後に乾燥させる方法としては、送り出しロールから基材Fを送り出し搬送しながら、チャンバー内を減圧することが挙げられる。また、通過させるロールがヒーターを備えるものとし、ロールを加熱することで該ロールを上述の加熱ドラムとして用いて加熱することとしてもよい。
基材Fからのアウトガスを少なくする別の方法として、予め基材Fの表面に無機膜を成膜しておくことが挙げられる。無機膜の成膜方法としては、真空蒸着(加熱蒸着)、電子ビーム(Electron Beam、EB)蒸着、スパッタ、イオンプレーティングなどの物理的成膜方法が挙げられる。また、熱CVD、プラズマCVD、大気圧CVDなどの化学的堆積法により無機膜を成膜することとしてもよい。さらに、表面に無機膜を成膜した基材Fを、上述の乾燥方法による乾燥処理を施すことにより、さらにアウトガスの影響を少なくしてもよい。
次いで、不図示の真空チャンバー内を減圧環境とし、第1成膜ロール17、第2成膜ロール18に印加して空間SPに電界を生じさせる。
この際、磁場形成装置23及び磁場形成装置24では上述した無終端のトンネル状の磁場を形成しているため、成膜ガスを導入することにより、該磁場と空間SPに放出される電子とによって、該トンネルに沿ったドーナツ状の成膜ガスの放電プラズマが形成される。この放電プラズマは、数Pa近傍の低圧力で発生可能であるため、真空チャンバー内の温度を室温近傍とすることが可能になる。
一方、磁場形成装置23及び磁場形成装置24が形成する磁場に高密度で捉えられている電子の温度は高いので、当該電子と成膜ガスとの衝突により生じる放電プラズマが生じる。すなわち、空間SPに形成される磁場と電場により電子が空間SPに閉じ込められることにより、空間SPに高密度の放電プラズマが形成される。より詳しくは、無終端のトンネル状の磁場と重なる空間においては、高密度の(高強度の)放電プラズマが形成され、無終端のトンネル状の磁場とは重ならない空間においては低密度の(低強度の)放電プラズマが形成される。これら放電プラズマの強度は、連続的に変化するものである。
放電プラズマが生じると、ラジカルやイオンを多く生成してプラズマ反応が進行し、成膜ガスに含まれる原料ガスと反応ガスとの反応が生じる。例えば、原料ガスである有機ケイ素化合物と、反応ガスである酸素とが反応し、有機ケイ素化合物の酸化反応が生じる。ここで、高強度の放電プラズマが形成されている空間では、酸化反応に与えられるエネルギーが多いため反応が進行しやすく、主として有機ケイ素化合物の完全酸化反応を生じさせることができる。一方、低強度の放電プラズマが形成されている空間では、酸化反応に与えられるエネルギーが少ないため反応が進行しにくく、主として有機ケイ素化合物の不完全酸化反応を生じさせることができる。
なお、本明細書において「有機ケイ素化合物の完全酸化反応」とは、有機ケイ素化合物と酸素との反応が進行し、有機ケイ素化合物が二酸化ケイ素(SiO)と水と二酸化炭素にまで酸化分解されることを指す。
例えば、成膜ガスが、原料ガスであるヘキサメチルジシロキサン(HMDSO:(CHSiO)と、反応ガスである酸素(O)と、を含有する場合、「完全酸化反応」であれば下記反応式(1)に記載のような反応が起こり、二酸化ケイ素が製造される。
【化1】
また、本明細書において「有機ケイ素化合物の不完全酸化反応」とは、有機ケイ素化合物が完全酸化反応をせず、SiOではなく構造中に炭素を含むSiO(0<x<2,0<y<2)が生じる反応となることを指す。
上述のように製造装置10では、放電プラズマが第1成膜ロール17、第2成膜ロール18の表面にドーナツ状に形成されるため、第1成膜ロール17、第2成膜ロール18の表面を搬送される基材Fは、高強度の放電プラズマが形成されている空間と、低強度の放電プラズマが形成されている空間と、を交互に通過することとなる。そのため、第1成膜ロール17、第2成膜ロール18の表面を通過する基材Fの表面には、完全酸化反応によって生じるSiOを多く含む層(図1の第1層Ha)に、不完全酸化反応によって生じるSiOを多く含む層(図1の第2層Hb)が挟持されて形成される。
これらに加えて、高温の2次電子が磁場の作用で基材Fに流れ込むのが防止され、よって、基材Fの温度を低く抑えたままで高い電力の投入が可能となり、高速成膜が達成される。膜の堆積は、主に基材Fの成膜面のみに起こり、成膜ロールは基材Fに覆われて汚れにくいために、長時間の安定成膜ができる。
次に、薄膜層中の炭素の原子数比の平均値を制御する方法を説明する。
上述の装置を用いて形成される薄膜層について、薄膜層に含まれる炭素の原子数比の平均値を11at%以上21at%以下とするためには、例えば、以下のようにして定めた範囲で原料ガスと反応ガスとを混合した成膜ガスを用いて成膜する。
図3は、原料ガスの量に対する、薄膜層に含まれる炭素の原子数比の平均値を示したグラフである。図のグラフでは、横軸に原料ガスの量(sccm:Standard Cubic Centimeter per Minute)、縦軸に炭素の原子数比の平均値(単位at%)を示しており、原料ガスとしてHMDSOを用い、反応ガスとして酸素を用いた場合の関係を示している。
図3には、酸素の量を250sccmに固定した場合の、HMDSOの量に対する炭素の原子数比の平均値の関係を示すグラフ(符号O1で示す)と、酸素の量を500sccmに固定した場合の、HMDSOの量に対する炭素の原子数比の平均値の関係を示すグラフ(符号O2で示す)と、を示している。図3のグラフは、各酸素量において、HMDSOの量を変えた3点について炭素の原子数比の平均値を測定してプロットした後、各点をスプライン曲線で曲線回帰させたものである。
なお、酸素及びHMDSOの量以外の成膜条件は、以下の通りである。
(成膜条件)
真空チャンバー内の真空度:3Pa
プラズマ発生用電源からの印加電力:0.8kW
プラズマ発生用電源の周波数:70kHz
フィルムの搬送速度:0.5m/min
図3(1)のグラフからは、定性的に以下のことが言える。
まず、酸素の流量が一定である場合、HMDSOの流量を増やすと、薄膜層中の炭素の原子数比の平均値は増加する。これは、酸素量に対して相対的にHMDSOの量が増えるため、HMDSOが不完全酸化をする反応条件となる結果、薄膜層中に含有される炭素量が増加するものとして説明できる。
また、HMDSOの流量が一定である場合、酸素の流量を増やすと、薄膜層中の炭素の原子数比の平均値は減少する。これは、酸素量に対して相対的にHMDSOの量が減少するため、HMDSOが完全酸化をする反応条件に近づく結果、薄膜層中に含有される炭素量が減少するものとして説明できる。
また、HMDSOと酸素との比が同じであっても、成膜ガスの全体量が多いと、薄膜層中の炭素の原子数比の平均値は増加する。これは、成膜ガス全体の流量が多いと、HMDSOが放電プラズマから得るエネルギーが相対的に低減するため、HMDSOが不完全酸化をする反応条件となる結果、薄膜層中に含有される炭素量が増加するものとして説明できる。
図3(2)は、図3(1)で示したグラフの一部拡大図であり、縦軸を11at%以上21at%以下としたグラフである。図3(2)におけるグラフO1と下の横軸との接点X1の座標から、酸素の流量250sccmの条件下において、炭素の原子数比の平均値が11at%である場合のHMDSOの流量が、約33sccmであることが分かる。また、グラフO1と上の横軸との接点X2から、酸素の流量250sccmの条件下において、炭素の原子数比の平均値が21at%である場合のHMDSOの流量が、約55sccmであることが分かる。すなわち、酸素の流量250sccmの条件下においては、HMDSOの流量が、約33sccm〜約55sccmであれば、炭素の原子数比の平均値が11at%以上21at%以下とすることができることが分かる。
同様に、グラフO2と上下の横軸との接点X3,X4の座標から、酸素の流量500sccmの条件下において、炭素の原子数比の平均値が11at%以上21at%以下とするためのHMDSOの流量の上限値と下限値とを読み取ることができ、それぞれ約51sccm、約95sccmであることが分かる。
図4は、図3の符号X1〜X4の点から求められたHMDSOの流量と酸素の流量との関係について、横軸にHMDSOの流量、縦軸に酸素の流量を示したグラフに変換した図である。図4において、符号X1,X2,X4,X3,X1の順に線分で接続したときの線分に囲まれた領域ARは、炭素の原子数比の平均値が11at%以上21at%以下となるHMDSOの流量と酸素の流量とを示している。すなわち、図4にプロットしたとき、領域AR内に含まれるような量にHMDSO及び酸素の流量を制御して成膜することにより、得られる薄膜層の炭素の原子数比の平均値を11at%以上21at%以下とすることができる。
なお、上述した説明では、酸素流量250sccm及び500sccmを条件として例示したが、もちろん酸素流量が250sccmより少ない場合や、500sccmより多い場合のHMDSOの流量と酸素の流量との関係も、同様の操作を行うことにより求めることができる。
このようにしてHMDSO及び酸素の量を制御して反応条件を定め、炭素の原子数比の平均値を11at%以上21at%以下である薄膜層を形成することが可能となる。
なお、上述の説明では、各酸素流量に対してHMDSOの量を変えた3点についてプロットしてグラフ化したが、酸素流量に対してHMDSOの量を変えた水準が2点であっても、当該2点の炭素の原子数比の平均値がそれぞれ11at%未満であり、また21at%より大きい場合には、当該2点の結果から図3に相当するグラフを作成してもよい。もちろん、4点以上の結果から図3に相当するグラフを作成してもよい。
その他、例えば成膜ガスの量を固定した上で、第1成膜ロール17、第2成膜ロール18に印加する印加電圧を変化させたときの、当該電圧の変化に対する炭素の原子数比の平均値の関係を求め、上述の説明と同様に、所望の炭素の原子数比の平均値となる印加電圧を求めることとしてもよい。
このようにして成膜条件を規定し、放電プラズマを用いたプラズマCVD法により、基材の表面に薄膜層の形成を行って、本実施形態の積層フィルムを製造することができる。
また、本実施形態の積層フィルムにおいては、形成される薄膜層の平均密度が2.0g/cm以上である。
薄膜層においては、不完全酸化反応によって生じるSiOを多く含む層が、SiO(密度:2.22g/cm)の網目構造から、酸素原子を炭素原子で置換した構造を有していると考えられる。SiOを多く含む層においては、多くの炭素原子でSiOの酸素原子を置換した構造であると(すなわち、薄膜層の炭素の原子数比の平均値が大きくなると)、Si−Oのsp3結合の結合長(約1.63Å)とSi−Cのsp3結合の結合長(約1.86Å)の違いから分子容積が大きくなるために薄膜層の平均密度が減少する。しかし、薄膜層の炭素の原子数比の平均値が11at%以上21at%以下である場合には、薄膜層の平均密度が2.0g/cm以上となる。
以上のような、条件(a)〜(d)を満たす本実施形態の積層フィルムによれば、屈曲させても高いガスバリア性を維持可能な積層フィルムとすることができる。
[有機EL装置]
図5は、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)装置の構成例を示す側断面図である。
本実施形態に係る有機EL装置は、光を利用する各種の電子機器に適用可能である。本実施形態の有機EL装置は、例えば携帯機器等の表示部の一部でもよいし、例えばプリンター等の画像形成装置の一部でもよい。本実施形態の有機EL装置は、例えば液晶表示パネル等の光源(バックライト)でもよいし、例えば照明機器の光源でもよい。
図6に示す有機EL装置50は、第1電極52、第2電極53、発光層54、積層フィルム55、積層フィルム56および封止材65を備えている。積層フィルム55,56には、上述した本実施形態の積層フィルムが用いられ、積層フィルム55は、基材57及びバリア膜58を備え、積層フィルム56は、基材59及びバリア膜60を備えている。
発光層54は、第1電極52と第2電極53との間に配置されており、第1電極52、第2電極53,発光層54は有機EL素子を形成している。積層フィルム55は、第1電極52に対して発光層54の反対側に配置されている。積層フィルム56は、第2電極53に対して発光層54の反対側に配置されている。さらに、積層フィルム55と積層フィルム56とは、有機EL素子の周囲を取り囲むように配置されている封止材65によって貼り合わされ、有機EL素子を内部に封止する封止構造を形成している。
有機EL装置50において、第1電極52と第2電極53との間に電力が供給されると、発光層54にキャリア(電子及び正孔)が供給され、発光層54に光が生じる。有機EL装置50に対する電力の供給源は、有機EL装置50と同じ装置に搭載されていてもよいし、この装置の外部に設けられていてもよい。発光層54から発せられた光は、有機EL装置50を含んだ装置の用途等に応じて、画像の表示や形成、照明等に利用される。
本実施形態の有機EL装置50においては、第1電極52、第2電極53,発光層54の形成材料(有機EL素子の形成材料)として、通常知られた材料が用いられる。一般に、有機EL装置の形成材料は、水分や酸素により容易に劣化することが知られているが、本実施形態の有機EL装置50では、屈曲させても高いガスバリア性を維持可能な本実施形態の積層フィルム55,56と封止材65とで囲まれた封止構造で有機EL素子が封止されている。そのため、屈曲させても性能の劣化が少なく信頼性が高い有機EL装置50とすることができる。
なお、本実施形態の有機EL装置50では、本実施形態の積層フィルム55,56を用いることとして説明したが、積層フィルム55,56のいずれか一方が、他の構成を有するガスバリア性の基板であってもよい。
[液晶ディスプレイ]
図6は、本実施形態に係る液晶ディスプレイの側断面図である。
図に示す液晶ディスプレイ100は、第1基板102、第2基板103、及び液晶層104を備えている。第1基板102は、第2基板103に対向して配置されている。液晶層104は、第1基板102と第2基板103との間に配置されている。液晶ディスプレイ100は、例えば、第1基板102と第2基板103とを封止材130を用いて貼り合せるとともに、第1基板102と第2基板103と封止材130とで囲まれた空間に液晶層104を封入することによって製造される。
液晶ディスプレイ100は、複数の画素を有している。複数の画素は、マトリックス状に配列されている。本実施形態の液晶ディスプレイ100は、フルカラーの画像を表示可能である。液晶ディスプレイ100の各画素は、サブ画素Pr、サブ画素Pg、及びサブ画素Pbを含んでいる。サブ画素の間は、遮光領域BMになっている。3種のサブ画素は、画像信号に応じた階調の互いに異なる色光を、画像の表示側に射出する。本実施形態では、サブ画素Prから赤色光が射出され、サブ画素Pgから緑色光が射出され、サブ画素Pbから青色光が射出される。3種のサブ画素から射出された3色の色光が混じり合って視認されることによって、フルカラーの1画素が表示される。
第1基板102は、積層フィルム105、素子層106、複数の画素電極107、配向膜108、及び偏光板109を備えている。画素電極107は、後述する共通電極114と一対の電極をなしている。積層フィルム105は、基材110及びバリア膜111を備えている。基材110は、薄板状又はフィルム状である。バリア膜111は、基材110の片面に形成されている。素子層106は、バリア膜111が形成された基材110の上に積層されて形成されている。複数の画素電極107は、素子層106の上に、液晶ディスプレイ100のサブ画素ごとに独立して設けられている。配向膜108は、複数のサブ画素にわたって、画素電極107の上に間に設けられている。
第2基板103は、積層フィルム112、カラーフィルター113、共通電極114、配向膜115、及び偏光板116を供えている。積層フィルム112は、基材117及びバリア膜118を備えている。基材117は、薄板状又はフィルム状である。バリア膜118は、基材117の片面に形成されている。カラーフィルター113は、バリア膜111が形成された基材110の上に積層されて形成されている。共通電極114は、カラーフィルター113の上に設けられている。配向膜115は、共通電極114の上に設けられている。
第1基板102と第2基板103は、画素電極107と共通電極114とが向き合うように対向して配置されて液晶層104を挟んだ状態で、互いに貼り合わされている。画素電極107、共通電極114,液晶層104は液晶表示素子を形成している。さらに、積層フィルム105と積層フィルム112とは、液晶表示素子の周囲を取り囲むように配置されている封止材130と協働して、液晶表示素子を内部に封止する封止構造を形成している。
このような液晶ディスプレイ100においては、ガスバリア性の高い本実施形態の積層フィルム105と積層フィルム112とが、液晶表示素子を内部に封止する封止構造の一部を形成しているため、屈曲させても液晶表示素子が空気中の酸素や水分で劣化し性能が低下するおそれが少なく、信頼性が高い液晶ディスプレイ100とすることができる。
なお、本実施形態の液晶ディスプレイ100では、本実施形態の積層フィルム105,112を用いることとして説明したが、積層フィルム105,112のいずれか一方が、他の構成を有するガスバリア性の基板であってもよい。
[光電変換装置]
図7は、本実施形態の光電変換装置の側断面図である。本実施形態の光電変換装置は、光検出センサーや太陽電池等のように、光エネルギーを電気エネルギーに変換する各種デバイス等に利用可能である。
図に示す光電変換装置400は、第1電極402、第2電極403、光電変換層404、積層フィルム405、及び積層フィルム406を備えている。積層フィルム405は、基材407及びバリア膜408を備えている。積層フィルム406は、基材409及びバリア膜410を備えている。光電変換層404は、第1電極402と第2電極403との間に配置されており、第1電極402、第2電極403,光電変換層404は光電変換素子を形成している。
積層フィルム405は、第1電極402に対して光電変換層404の反対側に配置されている。積層フィルム406は、第2電極403に対して光電変換層404の反対側に配置されている。さらに、積層フィルム405と積層フィルム406とは、光電変換素子の周囲を取り囲むように配置されている封止材420によって貼り合わされ、光電変換素子を内部に封止する封止構造を形成している。
光電変換装置400は、第1電極402が透明電極であり、第2電極403が反射電極である。本例の光電変換装置400において、第1電極402を通って光電変換層404へ入射した光の光エネルギーは、光電変換層404で電気エネルギーに変換される。この電気エネルギーは、第1電極402及び第2電極403を介して、光電変換装置400の外部に取出される。光電変換装置400の外部から光電変換層404へ入射する光の光路に配置される各構成要素は、光路に相当する部分が透光性を有するように、材質等が適宜選択される。光電変換層404からの光の光路以外に配置される構成要素については、透光性の材質でもよいし、この光の一部又は全部を遮る材質でもよい。
本実施形態の光電変換装置400においては、第1電極402、第2電極403、光電変換層404として、通常知られた材料が用いられる。本実施形態の光電変換装置400では、ガスバリア性の高い本実施形態の積層フィルム405,406と封止材420とで囲まれた封止構造で光電変換素子が封止されている。そのため、屈曲させても光電変換層や電極が空気中の酸素や水分で劣化し性能が低下するおそれが少なく、信頼性が高い光電変換装置400とすることができる。
なお、本実施形態の光電変換装置400では、本実施形態の積層フィルム405,406で光電変換素子を挟持することとして説明したが、積層フィルム405,406のいずれか一方が、他の構成を有するガスバリア性の基板であってもよい。
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【実施例】
【0009】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、積層フィルムについての各測定値は、以下の方法により測定した値を採用した。
[測定方法]
(1)水蒸気透過度の測定
積層フィルムの水蒸気透過度は、温度40℃、低湿度側の湿度0%RH、高湿度側の湿度90%RHの条件で、水蒸気透過度測定機(GTRテック社製、GTRテック−30XASC)を用いて測定した。
なお、「(1)水蒸気透過度の測定」で使用した測定機の検出限界は、1×10−4g/(m・day)である。
(2)屈曲試験後の水蒸気透過度の測定
まず、積層フィルムの屈曲試験は、測定対象である積層フィルムを、金属製の円柱状の棒に巻き付け、1分放置した後に平らに戻すことで行った。屈曲試験における曲率半径Rは、積層フィルムを巻き付ける棒の半径に相当するが、積層フィルムの巻き数が多くなる場合は、フィルムを巻き付けた時のフィルム外周までの直径の1/2を曲率半径Rとした。
屈曲試験後の積層フィルムの水蒸気透過度は、屈曲試験後の積層フィルムについて、温度40℃、低湿度側の湿度10%RH、高湿度側の湿度100%RHの条件で、水蒸気透過度測定機(Lyssy社製、Lyssy−L80−5000)を用いて測定した。
なお、「(2)屈曲試験後の水蒸気透過度の測定」で使用した測定機の検出限界は、2×10−2g/(m・day)である。
屈曲試験を行う積層フィルムについては、屈曲試験前には、同じ測定機による測定において検出限界以下の水蒸気透過度を有していることを確認した。そのような積層フィルムが、屈曲試験後に水蒸気透過度を検出できるか否かで、屈曲試験によるガスバリア性の低下の有無を確認した。
「(1)水蒸気透過度の測定」「(2)屈曲試験後の水蒸気透過度の測定」においては、いずれも、JIS K 7129:2008「プラスチック‐フィルム及びシート‐水蒸気透過度の求め方(機器測定法)」付属書C「ガスクロマトグラフ法による水蒸気透過度の求め方」(以下、JISのガスクロマト法という場合がある。)に従って測定した。
(3)薄膜層の膜厚の測定
薄膜層の膜厚は、FIB(Focused Ion Beam)加工で作製した薄膜層の切片の断面を、透過型電子顕微鏡(日立製、HF−2000)を用いて観察することにより求めた。
(FIB条件)
・装置:SMI−3050(SII社製)
・加速電圧:30kV
(4)薄膜層の各元素の分布曲線
積層フィルムの薄膜層について、珪素原子、酸素原子、炭素原子の分布曲線は、下記条件にてXPSデプスプロファイル測定を行い、横軸を薄膜層の表面からの距離(nm)、縦軸を各元素の原子百分率としてグラフ化して作成した。
(測定条件)
エッチングイオン種:アルゴン(Ar
エッチングレート(SiO熱酸化膜換算値):0.05nm/sec
エッチング間隔(SiO熱酸化膜換算値):10nm
X線光電子分光装置:Thermo Fisher Scientific社製、VG Theta Probe
照射X線:単結晶分光AlKα
X線のスポット形状及びスポット径:800×400μmの楕円形。
(5)光線透過率の測定
積層フィルムの光透過率スペクトルの測定を、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光株式会社、商品名Jasco V−670)を用い、JIS R1635に準じて行い、波長550nmにおける可視光透過率を積層フィルムの光透過率とした。
(測定条件)
・積分球 :無し
・測定波長範囲 :190〜2700nm
・スペクトル幅 :1nm
・波長走査速度 :2000nm/分
・レスポンス :Fast
(6)薄膜層の平均密度、水素原子数の比率の測定
薄膜層の平均密度の測定と、水素原子数の比率の測定(水素原子の存在確認)とは、ラザフォード後方散乱法(Rutherford Backscattering Spectrometry:RBS)および水素前方散乱法(Hydrogen Forward scattering Spectrometry:HFS)により行った。
RBS法及びHFS法の測定は、下記の共通する測定装置を用いて行った。
(測定装置)
加速器:National Electrostatics Corp(NEC)社加速器
計測器:Evans社製エンドステーション
(i.RBS法測定)
積層フィルムの薄膜層に対して、薄膜層表面の法線方向からHeイオンビームを入射し、入射方向に対して後方に散乱するHeイオンのエネルギーを検出することで、RBSスペクトルを得た。
(分析条件)
He++イオンビームエネルギー:2.275MeV
RBS検出角度:160°
イオンビーム入射方向に対するGrazing Angle:約115°
Analysis Mode:RR(Rotation Random)
(ii.HFS法測定)
積層フィルムの薄膜層に対して、薄膜層表面の法線に対し75°の方向(薄膜層表面の仰角15°の方向)からHeイオンビームを入射し、イオンビーム入射方向に対して30°の前方に散乱する水素のエネルギーおよび収量を検出することで、HFSスペクトルを得た。
(分析条件)
He++イオンビームエネルギー:2.275MeV
検出角度:160°
イオンビーム入射方向に対するGrazing Angle:約30°
薄膜層の平均密度は、RBS法で求めた珪素の原子数、炭素の原子数、酸素の原子数と、HFS法で求めた水素の原子数と、から測定範囲の薄膜層の重さを計算し、測定範囲の薄膜層の体積(イオンビームの照射面積と膜厚との積)で除することで求めた。
水素原子数の比率は、RBS法で求めた珪素の原子数、炭素の原子数、酸素の原子数と、HFS法で求めた水素の原子数と、の合計原子数に対する水素の原子数の比(原子百分率)として求めた。
(7)29Si−固体NMRスペクトルの測定
29Si−固体NMRスペクトルは、下記条件に従って核磁気共鳴装置(BRUKER社製、AVANCE300)を用いて測定した。
〈測定条件〉
積算回数:49152回
緩和時間:5秒
共鳴周波数:59.5815676MHz
MAS回転:3kHz
CP法
また、固体NMRのピーク面積は、以下のように算出した。本実施例において測定対象となる薄膜層には、QまたはQのケイ素原子のいずれかが含まれ、QまたはQのケイ素原子は含まれないことが予め分かっている。
まず、29Si−固体NMR測定により得られたスペクトルをスムージング処理した。
すなわち、29Si−固体NMR測定により得られたスペクトルをフーリエ変換し、100Hz以上の高周波を取り除いた後、逆フーリエ変換することでスムージング処理を行う(ローパスフィルタ処理)。以下の説明においては、スムージング後のスペクトルを「測定スペクトル」と称する。
次に、測定スペクトルを、QおよびQのピークに分離した。すなわち、QのピークおよびQのピークが、それぞれ固有の化学シフト(Q:−102ppm、Q:−112ppm)を中心とするガウス分布(正規分布)曲線を示すこととして仮定し、QとQとを合計したモデルスペクトルが、測定スペクトルのスムージング後のものと一致するように、各ピークの高さおよび半値幅等のパラメータを最適化した。
パラメータの最適化には反復法を用い、モデルスペクトルと測定スペクトルとの偏差の2乗の合計が極小値に収束するように計算を行った。
次に、このようにして求めたQ,Qのピークと、ベースラインと、に囲まれた部分の面積を積分して求め、Q,Qのピーク面積として算出した。さらに、算出されたピーク面積を用い、(Qのピーク面積)/(Qのピーク面積)を求め、(Qのピーク面積)/(Qのピーク面積)の値と、ガスバリア性との関係の確認を行った。
(実施例1)
前述の図2に示す製造装置を用いて積層フィルムを製造した。
すなわち、2軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム(PENフィルム、厚み:100μm、幅:350mm、帝人デュポンフィルム(株)製、商品名「テオネックスQ65FA」)を基材(基材F)として用い、これを送り出しロール11に装着した。
そして、第1成膜ロール17と第2成膜ロール18との間の空間に無終端のトンネル状の磁場が形成されているところに、成膜ガス(原料ガス(HMDSO)及び反応ガス(酸素ガス)の混合ガス)を供給し、第1成膜ロール17と第2成膜ロール18にそれぞれ電力を供給して第1成膜ロール17と第2成膜ロール18との間に放電させ、下記条件にてプラズマCVD法による薄膜形成を行った。この工程により積層フィルム1を得た。
(成膜条件)
原料ガスの供給量:50sccm
酸素ガスの供給量:250sccm
真空チャンバー内の真空度:3Pa
プラズマ発生用電源からの印加電力:0.8kW
プラズマ発生用電源の周波数:70kHz
フィルムの搬送速度:0.5m/min
得られた積層フィルム1についてFIB加工した切片の断面TEM写真を確認すると、色の異なる4層(上の2層はFIB加工する際に薄膜層の上に設けた保護層であり、保護層の下の2層が順に薄膜層および基材である)が観察できる。
また、得られた積層フィルム1についての炭素分布曲線、珪素分布曲線、酸素分布曲線及び炭素酸素分布曲線を図8に示す。
(比較例1)
酸素ガスの供給量を500sccmとした以外は実施例1と同様にして、積層フィルム2を得た。得られた積層フィルム2についての炭素分布曲線、珪素分布曲線、酸素分布曲線及び炭素酸素分布曲線を図9に示す。
(比較例2)
原料ガスの供給量を100sccmとした以外は実施例1と同様にして、積層フィルム3を得た。得られた積層フィルム3についての炭素分布曲線、珪素分布曲線、酸素分布曲線及び炭素酸素分布曲線を図10に示す。
(比較例3)
原料ガスの供給量を25sccmとした以外は実施例1と同様にして、積層フィルム4を得た。得られた積層フィルム4についての炭素分布曲線、珪素分布曲線、酸素分布曲線及び炭素酸素分布曲線を図11に示す。
(比較例4)
基材として、2軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム(PENフィルム、厚み:100μm、サイズ:165mm×170mm、帝人デュポンフィルム(株)製、商品名「テオネックスQ65FA」)を用い、バッチ式のプラズマCVD装置を用いて、プラズマCVD法による薄膜形成を行った。
成膜ガスには、原料ガスとしてHMDSOを用い、反応ガスとして酸素ガスを用いた。成膜ガスの供給量を、HMDSOが12sccm、酸素ガスが68sccmとなるように制御して成膜し、積層フィルム5を得た。得られた積層フィルム5についての炭素分布曲線、珪素分布曲線、酸素分布曲線及び炭素酸素分布曲線を図12に示す。
(実施例2)
酸素ガスの供給量を400sccmとした以外は実施例1と同様にして、積層フィルム6を得た。得られた積層フィルム6についての炭素分布曲線、珪素分布曲線、酸素分布曲線及び炭素酸素分布曲線を図13に示す。
(実施例3)
酸素ガスの供給量を450sccmとした以外は実施例1と同様にして、積層フィルム7を得た。得られた積層フィルム7についての炭素分布曲線、珪素分布曲線、酸素分布曲線及び炭素酸素分布曲線を図14に示す。
(実施例4)
酸素ガスの供給量を480sccmとした以外は実施例1と同様にして、積層フィルム8を得た。得られた積層フィルム8についての炭素分布曲線、珪素分布曲線、酸素分布曲線及び炭素酸素分布曲線を図15に示す。
実施例1及び比較例1〜4の積層フィルム1〜5について、各測定結果を表1に示す。また、実施例2〜4の積層フィルム6〜8について、各測定結果を表2に示す。
【表1】
【表2】
評価の結果、実施例1〜4の積層フィルム1、6〜8は、屈曲試験後も良好なガスバリア性を維持していた。
一方、比較例1〜3の積層フィルム2〜4は、屈曲試験によりガスバリア性が低下した。
また、比較例4の積層フィルム5は、水蒸気透過度が1.3g/(m・day)であり、基材のPENフィルムと同等の水蒸気透過度であることがわかり、形成された薄膜層によるガスバリア性の付与が認められなかった。
これらの結果から、本発明の積層フィルムは屈曲させても高いガスバリア性を維持可能であることが確かめられた。本発明の積層フィルムは、有機EL装置、光電変換装置、液晶ディスプレイは、好適に用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0010】
本発明は、屈曲させても高いガスバリア性を維持可能な積層フィルムであり、このような積層フィルムは、例えば、有機エレクトロルミネッセンス装置、光電変換装置、液晶ディスプレイに適用できる。
【符号の説明】
【0011】
10 製造装置
11 送り出しロール
12 巻き取りロール
13〜16 搬送ロール
17 第1成膜ロール
18 第2成膜ロール
20 プラズマ発生用電源
23,24 磁場形成装置
50 有機エレクトロルミネッセンス装置
100 液晶ディスプレイ
400 光電変換装置
55,56,105,106,405,406 積層フィルム
F フィルム(基材)
SP 空間(成膜空間)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図14
図15
【国際調査報告】