特表-13157590IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2013年10月24日
【発行日】2015年12月21日
(54)【発明の名称】積層フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 3/26 20060101AFI20151124BHJP
   C23C 16/52 20060101ALI20151124BHJP
【FI】
   B32B3/26 Z
   C23C16/52
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】23
【出願番号】特願2014-511241(P2014-511241)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2013年4月11日
(31)【優先権主張番号】特願2012-95802(P2012-95802)
(32)【優先日】2012年4月19日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113000
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100151909
【弁理士】
【氏名又は名称】坂元 徹
(72)【発明者】
【氏名】山下 恭弘
(72)【発明者】
【氏名】黒田 俊也
【テーマコード(参考)】
4F100
4K030
【Fターム(参考)】
4F100AK00A
4F100AK00B
4F100BA02
4F100BA07
4F100DD01A
4F100EH90B
4F100JD02
4K030AA06
4K030AA09
4K030AA14
4K030BA44
4K030CA07
4K030CA17
4K030FA01
4K030GA14
4K030JA01
(57)【要約】
本発明は、基材の表面が平坦化された、ガスバリア性に優れた積層フィルムを提供する。
基材2と、その表面上に形成された薄膜層3を備えた積層フィルム1において、基材2の表面に対して垂直な方向の断面において、基材の表面21の一方の端部211と他方の端部212を結ぶ方向をX方向、X方向に対して垂直な方向をY方向とし、基材の表面21上の突起部23の縁213を通り、且つX方向に平行な線分x1と、突起部23の頂点232を通り、且つY方向に平行な線分y1との交点p1を求め、線分y1の頂点232と交点p1との間の距離をa、線分x1の縁231と交点p1との間の距離をb、突起部23近傍の平坦部211上の薄膜層3の厚さをhとし、但し、前記断面はa/bの値が最大となるように設定し、前記表面21の全ての突起部23が、下記式(1)で表される関係を満たすようにする。
a/b<0.7(a/h)−1+0.31・・・・(1)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の少なくとも一方の表面上に形成された少なくとも1層の薄膜層と、を備えた積層フィルムであって、
前記基材の表面に対して垂直な方向の断面において、前記基材の前記薄膜層が形成された側の、表面の両端部を結ぶ方向をX方向とし、前記X方向に対して垂直な方向をY方向としたときに、
前記基材が、前記薄膜層が形成された側の表面に、突起部を有する場合には、前記突起部の縁を通り、且つX方向に平行な線分x1と、前記突起部の頂点を通り、且つY方向に平行な線分y1との交点p1を求め、前記線分y1の前記頂点と前記交点p1との間の距離をa、前記線分x1の前記縁と前記交点p1との間の距離をb、前記基材の前記突起部近傍の平坦部上における前記薄膜層の厚さをhとし、
前記基材が、前記薄膜層が形成された側の表面に、陥没部を有する場合には、前記陥没部の縁を通り、且つX方向に平行な線分x2と、前記陥没部の底を通り、且つY方向に平行な線分y2との交点p2を求め、前記線分y2の前記底と前記交点p2との間の距離をa、前記線分x2の前記縁と前記交点p2との間の距離をb、前記基材の前記陥没部近傍の平坦部上における前記薄膜層の厚さをhとし、
ただし、前記断面は、a/bの値が最大となるように設定されたものであり、
前記表面におけるすべての前記突起部及び陥没部が、下記式(1)で表される関係を満たす積層フィルム。
a/b<0.7(a/h)−1+0.31 ・・・・(1)
【請求項2】
前記表面におけるすべての前記突起部及び陥没部が、下記式(2)で表される関係を満たす請求項1に記載の積層フィルム。
a/h<1.0 ・・・・(2)
【請求項3】
前記表面におけるすべての前記突起部及び陥没部が、下記式(3)で表される関係を満たす請求項1又は2に記載の積層フィルム。
0<a/b<1.0 ・・・・(3)
【請求項4】
前記基材の前記薄膜層が形成された側の表面における平均表面粗さRaが、下記式(4)で表される関係を満たす請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層フィルム。
10Ra<a ・・・・(4)
【請求項5】
前記薄膜層の表面における平均表面粗さRa’が、0.1〜5.0nmである請求項1〜4のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材の表面上に薄膜層が形成され、該薄膜層におけるクラックの発生が抑制された積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
フィルム状の基材に機能性を付与するために、基材の表面に薄膜層を形成(積層)した積層フィルムが知られている。例えば、プラスチックフィルム上に薄膜層を形成することによりガスバリア性を付与した積層フィルムは、飲食品、化粧品、洗剤等の物品の充填包装に適している。近年、プラスチックフィルム等の基材フィルムの一方の表面上に、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化アルミニウム等の無機酸化物の薄膜を形成してなる積層フィルムが提案されている。
このように無機酸化物の薄膜をプラスチック基材の表面上に形成する方法としては、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法等の物理気相成長法(PVD)や、減圧化学気相成長法、プラズマ化学気相成長法等の化学気相成長法(CVD)等の成膜法が知られている。
そして、特許文献1には、このような方法で薄膜層を形成して包装用フィルムとする際に、フィルム状基材の平均表面粗さを小さくすることで、ガスバリア性を高める技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−105190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、さらにガスバリア性を高めようとした場合、フィルム状基材の平均表面粗さよりも、基材の表面に局所的に突起部又は陥没部が存在することによって生じる起伏形状の方が問題になることが多い。その理由は、基材の表面にこのような起伏形状が存在すると、その上部又は近傍に形成された薄膜層に微小なクラックが生じてしまうからである。そして、特許文献1に開示された技術だけでは、このような観点からのガスバリア性の向上が不十分であった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、基材の表面が平坦化された、ガスバリア性に優れた積層フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、
本発明は、基材と、前記基材の少なくとも一方の表面上に形成された少なくとも1層の薄膜層と、を備えた積層フィルムであって、前記基材の表面に対して垂直な方向の断面において、前記基材の前記薄膜層が形成された側の、表面の両端部を結ぶ方向をX方向とし、前記X方向に対して垂直な方向をY方向としたときに、前記基材が、前記薄膜層が形成された側の表面に、突起部を有する場合には、前記突起部の縁を通り、且つX方向に平行な線分x1と、前記突起部の頂点を通り、且つY方向に平行な線分y1との交点p1を求め、前記線分y1の前記頂点と前記交点p1との間の距離をa、前記線分x1の前記縁と前記交点p1との間の距離をb、前記基材の前記突起部近傍の平坦部上における前記薄膜層の厚さをhとし、前記基材が、前記薄膜層が形成された側の表面に、陥没部を有する場合には、前記陥没部の縁を通り、且つX方向に平行な線分x2と、前記陥没部の底を通り、且つY方向に平行な線分y2との交点p2を求め、前記線分y2の前記底と前記交点p2との間の距離をa、前記線分x2の前記縁と前記交点p2との間の距離をb、前記基材の前記陥没部近傍の平坦部上における前記薄膜層の厚さをhとし、ただし、前記断面は、a/bの値が最大となるように設定されたものであり、前記表面におけるすべての前記突起部及び陥没部が、下記式(1)で表される関係を満たす積層フィルムを提供する。
a/b<0.7(a/h)−1+0.31 ・・・・(1)
本発明の積層フィルムにおいては、前記表面におけるすべての前記突起部及び陥没部が、下記式(2)で表される関係を満たすことが好ましい。
a/h<1.0 ・・・・(2)
本発明の積層フィルムにおいては、前記表面におけるすべての前記突起部及び陥没部が、下記式(3)で表される関係を満たすことが好ましい。
0<a/b<1.0 ・・・・(3)
本発明の積層フィルムにおいては、前記基材の前記薄膜層が形成された側の表面における平均表面粗さRaが、下記式(4)で表される関係を満たすことが好ましい。
10Ra<a ・・・・(4)
本発明の積層フィルムにおいては、前記薄膜層の表面における平均表面粗さRa’が、0.1〜5.0nmであることが好ましい。
本発明の積層フィルムにおいては、前記薄膜層がプラズマCVD法により形成されたものであることが好ましい。
本発明の積層フィルムは、長尺の前記基材を連続的に搬送しながら、該基材上に連続的に薄膜層を形成して得られたものであることが好ましい。
本発明の積層フィルムは、前記基材の前記薄膜層を形成する側の表面に1.5MPa以上の引張応力を加えつつ、前記表面を抱き角120°未満で搬送ロールの搬送面に1回以上接触させて、前記基材を搬送した後に、前記薄膜層を形成して得られたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、基材の表面が平坦化された、ガスバリア性に優れた積層フィルムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1は本発明に係る積層フィルムの一実施形態を模式的に示す図である。
図2は基材を搬送ロールで搬送するときの抱き角を説明する概略図である。
図3は実施例1及び2並びに比較例1の積層フィルムにおけるa/b及びa/hの関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に係る積層フィルムは、基材と、前記基材の少なくとも一方の表面上に形成された少なくとも1層の薄膜層と、を備えた積層フィルムであって、前記基材の表面に対して垂直な方向の断面において、前記基材の前記薄膜層が形成された側の、表面の両端部を結ぶ方向をX方向とし、前記X方向に対して垂直な方向をY方向としたときに、前記基材が、前記薄膜層が形成された側の表面に、突起部を有する場合には、前記突起部の縁を通り、且つX方向に平行な線分x1と、前記突起部の頂点を通り、且つY方向に平行な線分y1との交点p1を求め、前記線分y1の前記頂点と前記交点p1との間の距離をa、前記線分x1の前記縁と前記交点p1との間の距離をb、前記基材の前記突起部近傍の平坦部上における前記薄膜層の厚さをhとし、前記基材が、前記薄膜層が形成された側の表面に、陥没部を有する場合には、前記陥没部の縁を通り、且つX方向に平行な線分x2と、前記陥没部の底を通り、且つY方向に平行な線分y2との交点p2を求め、前記線分y2の前記底と前記交点p2との間の距離をa、前記線分x2の前記縁と前記交点p2との間の距離をb、前記基材の前記陥没部近傍の平坦部上における前記薄膜層の厚さをhとし、ただし、前記断面は、a/bの値が最大となるように設定されたものであり、前記表面におけるすべての前記突起部及び陥没部が、下記式(1)で表される関係を満たすことを特徴とする。
a/b<0.7(a/h)−1+0.31 ・・・・(1)
このように、前記式(1)で表される関係を満たすように、基材上に薄膜層が形成されていることにより、薄膜層に対する相対的な基材表面の平坦度が高いため、基材表面に突起部又は陥没部が存在しても、その影響が小さく、薄膜層中の突起部又は陥没部の上部あるいはその近傍においてクラックの発生が抑制され、積層フィルムはガスバリア性に優れたものとなる。
図1は、本発明に係る積層フィルムの一実施形態を模式的に示す図であり、(a)は基材の表面に対して垂直な方向の断面図、(b)は同方向の基材表面の突起部近傍の拡大断面図、(c)は同方向の基材表面の陥没部近傍の拡大断面図である。
ここに示す積層フィルム1は、基材2の主たる二表面のうち、一方の表面(以下、「薄膜層形成側の表面」ということがある。)21上に1層(単層)の薄膜層3が形成されたものである。なお、積層フィルム1は、基材2の一方の表面21上だけでなく、他方の表面(前記一方の表面とは反対側の表面)22上にも薄膜層3が形成されたものでもよい。
また、薄膜層3は単層のものだけでなく、複数層からなるものでもよく、この場合の各層は、すべて同じでもよいし、すべて異なっていてもよく、一部のみが同じであってもよい。
基材2は、フィルム状又はシート状であり、その材料の例としては、樹脂、樹脂を含む複合材が挙げられる。
前記樹脂の例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、環状ポリオレフィン等のポリオレフィン;ポリアミド、アラミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物、ポリアクリロニトリル、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエーテルサルファイド(PES)、液晶ポリマー、セルロースが挙げられる。
また、樹脂を含む複合材の例としては、ポリジメチルシロキサン、ポリシルセスキオキサン等のシリコーン樹脂;ガラスコンポジット材;ガラスエポキシ樹脂が挙げられる。
基材2の材料は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
これらの中でも、基材2の材料は、耐熱性が高く、熱線膨張率が低いので、ポリエステル、ポリイミド、ガラスコンポジット基板又はガラスエポキシ基板が好ましい。
基材2は、光を透過させたり吸収させたりすることが可能であるので、無色透明であることが好ましい。より具体的には、全光線透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。また、曇価が5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。
基材2は、電子デバイス、エネルギーデバイス等の基材で使用できるので、絶縁性であることが好ましく、電気抵抗率が10Ωcm以上であることが好ましい。
基材2の厚さは、積層フィルム1を製造する際の安定性を考慮して適宜設定できる。例えば、真空中においてもフィルムの搬送が可能であるので、5〜500μmであることが好ましい。さらに、後述するようにプラズマCVD法により薄膜層3を形成する場合には、基材2を通して放電しつつ薄膜層3を形成することから、基材2の厚さは10〜200μmであることがより好ましく、50〜100μmであることがさらに好ましい。
基材2は、薄膜層3との密着性が向上することから、薄膜層3形成側の表面21を清浄するための表面活性処理が施されたものが好ましい。このような表面活性処理の例としては、コロナ処理、プラズマ処理、UVオゾン処理、フレーム処理が挙げられる。
薄膜層3は、フレキシビリティとガスバリア性を両立できるので、酸化珪素が主成分であること好ましい。ここで、「主成分である」とは、材料の全成分の質量に対してその成分の含有量が50質量%以上、好ましくは70質量%以上であることをいう。
前記酸化珪素は、一般式がSiOαで表される酸化珪素について、αが1.0〜2.0の数であることが好ましく、1.5〜2.0の数であることがより好ましい。αは、薄膜層3の厚さ方向において一定の値でもよいし、変化していてもよい。
薄膜層3は、珪素、酸素及び炭素を含有していてもよい。この場合、薄膜層3は、一般式がSiOαβで表される化合物が主成分であることが好ましい。この一般式において、αは2未満の正数から選択され、βは2未満の正数から選択される。上記の一般式におけるα及びβの少なくとも一方は、薄膜層3の厚さ方向において一定の値でもよいし、変化していてもよい。
さらに薄膜層3は、珪素、酸素及び炭素以外の元素、例えば、窒素、ホウ素、アルミニウム、リン、イオウ、フッ素及び塩素のうちの一種以上を含有していてもよい。
薄膜層3は、珪素、酸素、炭素及び水素を含有していてもよい。この場合、薄膜層3は、一般式がSiOαβγで表される化合物が主成分であることが好ましい。この一般式において、αは2未満の正数、βは2未満の正数、γは6未満の正数からそれぞれ選択される。上記の一般式におけるα、β及びγの少なくとも一個は、薄膜層3の厚さ方向で一定の値でもよいし、変化していてもよい。
さらに薄膜層3は、珪素、酸素、炭素及び水素以外の元素、例えば、窒素、ホウ素、アルミニウム、リン、イオウ、フッ素及び塩素のうちの一種以上を含有していてもよい。
薄膜層3は、後述するように、プラズマ化学気相成長法(プラズマCVD法)により形成されたものであることが好ましい。
薄膜層3の厚さは、後述する突起部23及び陥没部24の形状や、積層フィルム1を曲げた時に割れ難くなるので、5〜3000nmであることが好ましい。さらに、後述するようにプラズマCVD法により薄膜層3を形成する場合には、基材2を通して放電しつつ薄膜層3を形成することから、10〜2000nmであることがより好ましく、100〜1000nmであることがさらに好ましい。
図1(1)に示すように、前記断面において、X方向は、基材2の薄膜層形成側の表面21における一方の端部211と他方の端部212と(すなわち両端部)を結ぶ方向であり、Y方向は、このX方向に対して垂直な方向である。したがって、X方向は、後述する基材の薄膜層形成側の表面における突起部及び陥没部にとって、水平線と同じ方向に近似できるものである。
図1(2)に示すように、基材2は、薄膜層形成側の表面21に、この表面21において局所的な突起部23を有している。
ここで、突起部23は、薄膜層形成側の表面21において、平均表面粗さに関与するような微小な凸部よりも規模が大きいものであり、例えば、前記表面21に付着した異物、基材2内部からのブリード物、製造工程に起因する前記表面21の欠陥等に由来するものである。
符号x1は、突起部23の縁(ふち)231を通り、且つX方向に平行な線分であり、符号y1は、突起部23の頂点232を通り、且つY方向に平行な線分である。すなわち、線分x1及びy1は互いに直交する。そして、符号p1は、線分x1と線分y1との交点である。
符号aは、線分y1の前記頂点232と交点p1との間の距離であり、突起部23の高さに相当する。
符号bは、線分x1の前記縁231と交点p1との間の距離であり、突起部23の傾斜の度合いを決定する。
符号hは、基材2の突起部23近傍の平坦部211上における薄膜層3の厚さである。
突起部23の縁231とは、基材2の薄膜層形成側の表面21において、平坦部(例えば、図中の平坦部211)から、突起部23の頂点232へ向けて上り始める部位である。
また、突起部23近傍の平坦部211とは、基材2の薄膜層形成側の表面21において、平坦であり、且つ突起部23に連なる部位であり、平均表面粗さに関与するような微小な凹凸部を含み得る領域であって、前記表面21は、通常、突起部23及び後述する陥没部24を除いて、すべて平坦であるといえる。
本発明においては、基材2の薄膜層形成側の表面21におけるすべての突起部23が、下記式(1)で表される関係を満たす。
a/b<0.7(a/h)−1+0.31 ・・・・(1)
これにより、例えば、突起部23の距離aが薄膜層3の前記厚さhに対して大きくても、突起部23が十分に緩やかな傾斜を有する場合や、これとは反対に、突起部23が急勾配の傾斜を有していても、突起部23の距離aが薄膜層3の前記厚さhに対して十分に小さい場合には、突起部23が薄膜層3へ与えるストレスの影響が小さくなるので、薄膜層3におけるクラック等の欠陥の発生が顕著に抑制される。
なお、突起部23の形状は、前記断面において線分y1に対して必ずしも対称ではないので、例えば、距離bは2つの値をとることがあり、また、突起部23の2つの縁231の高さが互いに異なる場合には、線分x1が2本存在し、これによっても、距離a及び距離bはそれぞれ2つの値をとることがある。本発明においては、前記断面において、すべての距離a及び距離bが、前記式(1)で表される関係を満たすようにする。また、ある特定の突起部23に着目した場合、前記断面の採り方によっても、距離a及び距離bは異なる値となることがある。本発明においては、突起部23について、断面の採り方によらず、距離a及び距離bが前記式(1)で表される関係を満たすようにする。すなわち、「a/b」の値が最大となるような断面において、前記式(1)で表される関係を満たすようにすればよい。このような断面は、突起部23の形状を観察することで、容易に特定できる。
図1(3)に示すように、基材2が、薄膜層形成側の表面21に、この表面21において局所的な陥没部24を有している場合には、図1(b)における突起部23を陥没部24に読み替えて、同様の規定を行えばよい。具体的には、以下の通りである。
陥没部24は、突起部23と同様に、薄膜層形成側の表面21において、平均表面粗さに関与するような微小な凹部より規模が大きいものであり、突起部23と同様に、例えば、前記表面21に付着した異物、基材2内部からのブリード物、製造工程に起因する前記表面21の欠陥等に由来するものである。
符号x2は、陥没部24の縁(ふち)241を通り、且つX方向に平行な線分であり、符号y2は、陥没部24の底242を通り、且つY方向に平行な線分である。すなわち、線分x2及びy2は互いに直交する。そして、符号p2は、線分x2と線分y2との交点である。
符号aは、線分y2の前記底242と交点p2との間の距離であり、陥没部24の深さに相当する。
符号bは、線分x2の前記縁241と交点p2との間の距離であり、陥没部24の傾斜の度合いを決定する。
符号hは、基材2の陥没部24近傍の平坦部211上における薄膜層3の厚さである。
陥没部24の縁241とは、基材2の薄膜層形成側の表面21において、平坦部(例えば、図中の平坦部211)から、陥没部24の底242へ向けて下り始める部位である。
陥没部24の底242は、陥没部24において、深さが最も深い部位である。
また、陥没部24近傍の平坦部211とは、基材2の薄膜層形成側の表面21において、平坦であり、且つ陥没部24に連なる部位であり、平均表面粗さに関与するような微小な凹凸部を含み得る領域である。
本発明においては、基材2の薄膜層形成側の表面21におけるすべての陥没部24が、前記式(1)で表される関係を満たす。
これにより、例えば、突起部23の場合と同様に、陥没部24の距離aが薄膜層3の前記厚さhに対して大きくても、陥没部24が十分に緩やかな傾斜を有する場合や、これとは反対に、陥没部24が急勾配の傾斜を有していても、陥没部24の距離aが薄膜層3の前記厚さhに対して十分に小さい場合には、陥没部24が薄膜層3へ与えるストレスの影響が小さくなるので、薄膜層3におけるクラック等の欠陥の発生が顕著に抑制される。
陥没部24の形状は、突起部23と同様に、前記断面において線分y2に対して必ずしも対称ではないので、例えば、距離bは2つの値をとることがあり、また、陥没部24の2つの縁241の高さが互いに異なる場合には、線分x2が2本存在し、これによっても、距離a及び距離bはそれぞれ2つの値をとることがある。本発明においては、前記断面において、すべての距離a及び距離bが、前記式(1)で表される関係を満たすようにする。また、ある特定の陥没部24に着目した場合、前記断面の採り方によっても、距離a及び距離bは異なる値となることがある。本発明においては、陥没部24についても、断面の採り方によらず、距離a及び距離bが前記式(1)で表される関係を満たすようにする。すなわち、「a/b」の値が最大となるような断面において、前記式(1)で表される関係を満たすようにすればよい。このような断面も、突起部23の場合と同様に、陥没部24の形状を観察することで、容易に特定できる。
本発明においては、上記のように、基材2の薄膜層形成側の表面21におけるすべての突起部23及び陥没部24が、前記式(1)で表される関係を満たす。したがって、例えば、基材2の一方の表面21上だけでなく、他方の表面22上にも薄膜層2が形成されている場合には、他方の表面22におけるすべての突起部及び陥没部も、前記式(1)で表される関係を満たすようにする。
本発明においては、突起部23及び/又は陥没部24が、下記式(2)で表される関係を満たすことが好ましく、すべての突起部23及び陥没部24が、下記式(2)で表される関係を満たすことがより好ましい。この場合も、前記式(1)の場合と同様に、断面の採り方によらず、突起部23及び/又は陥没部24が、下記式(2)で表される関係を満たすようにする。
a/h<1.0 ・・・・(2)
これにより、突起部23及び/又は陥没部24の距離aが薄膜層3の前記厚さhよりも小さい(薄膜層3の前記厚さhが距離aよりも大きい)ため、突起部23及び/又は陥没部24が薄膜層3へ与えるストレスの影響が小さくなるので、薄膜層3におけるクラック等の欠陥の発生が顕著に抑制される。
本発明においては、突起部23及び/又は陥没部24が、下記式(3)で表される関係を満たすことが好ましく、すべての突起部23及び陥没部24が、下記式(3)で表される関係を満たすことがより好ましい。この場合も、前記式(1)の場合と同様に、断面の採り方によらず、突起部23及び/又は陥没部24が、下記式(3)で表される関係を満たすようにする。
0<a/b<1.0 ・・・・(3)
これにより、突起部23及び/又は陥没部24の「a/b」、すなわち、突起部23及び/又は陥没部24の傾斜が、十分に緩やかなため、前記表面21はより平坦に近く、うねりが少なくなり、突起部23及び/又は陥没部24が薄膜層3へ与えるストレスの影響が小さくなるので、薄膜層3におけるクラック等の欠陥の発生が顕著に抑制される。
基材2の薄膜層形成側の表面21において、突起部23及び/又は陥没部24は、長径(上方から平面視したときの長径)が1nm〜1mmであることが好ましく、1nm〜100μmであることがより好ましく、1nm〜10μmであることがさらに好ましく、1nm〜1μmであることが特に好ましい。このようにすることで、基材2上により緻密な薄膜層3を形成できる。ここで、「長径」とは、突起部23及び陥没部24における最大の径を意味する
そして、本発明においては、上記効果が特に顕著となることから、すべての突起部23及び陥没部24の長径が、上記の数値範囲を満たすことが好ましい。
基材2の薄膜層形成側の表面21において、突起部23及び陥没部24の総数は、1000個/cm以下であることが好ましく、100個/cm以下であることがより好ましく、10個/cm以下であることがさらに好ましく、1個/cm以下であることが特に好ましい。このようにすることで、基材2上に薄膜層3をより安定して形成できる。
本発明においては、基材2の薄膜層形成側の表面21における平均表面粗さRaが、突起部23及び/又は陥没部24に対して、下記式(4)で表される関係を満たすことが好ましく、すべての突起部23及び陥没部24に対して、下記式(4)で表される関係を満たすことがより好ましい。この場合も、前記式(1)の場合と同様に、断面の採り方によらず、突起部23及び/又は陥没部24に対して、下記式(4)で表される関係を満たすようにする。
10Ra<a ・・・・(4)
このように、突起部23及び/又は陥没部24の距離aに対して、前記表面21における平均表面粗さRaが十分に小さいことにより、基材2上に薄膜層3をより安定して形成できる。
平均表面粗さRaは、例えば、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope;AFM)を用いて測定でき、このとき1μm角視野で測定することが好ましい。
本発明においては、薄膜層3の表面における平均表面粗さRa’が、0.1〜5.0nmであることが好ましい。これにより、薄膜層3の表面の荒れが与える影響は、突起部23及び/又は陥没部24が与える影響よりも、無視できる程度に十分に小さく、薄膜層3はより緻密となる。
薄膜層3の表面における平均表面粗さRa’は、前記平均表面粗さRaの場合と同様の方法で測定できる。
積層フィルム1は、基材2の薄膜層形成側の表面21上に、プラズマCVD法等の公知の手法で薄膜層3を形成することで製造できる。なかでも、薄膜層3は、連続的な成膜プロセスで形成することが好ましく、長尺の基材2を連続的に搬送しながら、その上に連続的に薄膜層3を形成することがより好ましい。
そして、積層フィルム1の製造時には、基材2の薄膜層形成側の表面21に1.5MPa以上の引張応力を加えつつ、前記表面21を抱き角120°未満で搬送ロールの搬送面に1回以上接触させて、基材2を搬送した後に、薄膜層3を形成する。基材2の前記表面21に1.5MPa以上の引張応力を加えるためには、基材2に1.5MPa以上の引張応力を加えればよい。このように、突起部23及び/又は陥没部24を有する基材2の前記表面21に対して、一定値以上の引張応力を加え、さらに一定値以上の抱き角で搬送ロールの搬送面を接触させながら基材2を搬送することで、薄膜層3を形成する前の段階で基材2の前記表面21の平坦度を高くすることができる。そして、その後に前記表面21上に薄膜層3を形成することで、前記表面21上に突起部23及び/又は陥没部24が存在しても、薄膜層3に対する相対的な前記表面21の平坦度が高いため、薄膜層3でのクラックの発生が抑制される。上記のように、基材2の前記表面21に引張応力を加える場合には、基材2に対して、その搬送方向の上流側及び下流側の少なくとも一方から引張応力を加えればよい。
なお、ここで「抱き角」とは、図2に示すように、搬送ロール9の中心軸90の方向から見たときに、基材2の前記表面21が搬送ロール9の搬送面91に接触した状態で、基材2の搬送方向(図中、矢印Tで示す方向)の上流側における前記搬送面91との接触部911と前記中心軸90とを結ぶ線分が、基材2の搬送方向の下流側における前記搬送面91との接触部912と前記中心軸90とを結ぶ線分となす角度θのことである。
前記抱き角は、110°未満であることがより好ましく、100°未満であることがさらに好ましい。そして、加える引張応力は、引張応力1.7MPa以上であることがより好ましく、1.9MPa以上であることがさらに好ましい。このように、抱き角を小さくし、引張応力を強くすることで、薄膜層3でのクラックの発生を抑制するより優れた効果が得られる。
上記のように基材2を搬送ロールに接触させるときの、基材2の搬送速度は、0.1〜100m/分であることが好ましく、0.5〜20m/分であることがより好ましい。このようにすることで、薄膜層3でのクラックの発生を抑制するより優れた効果が得られる。
前記搬送ロールの搬送面は、平滑性が高いことが好ましく、具体的には、平均表面粗さが0.2μm以下であることが好ましい。平均表面粗さは、前記平均表面粗さRaの場合と同様の方法で測定できる。
このような搬送ロールの搬送面の材料としては、金属が好ましく、その例としては、ステンレス、アルミニウム、チタン等が挙げられる。
薄膜層3をプラズマCVD法により形成(成膜)する場合には、基材2を一対の成膜ロール上に配置し、前記一対の成膜ロール間に放電してプラズマを発生させるプラズマCVD法により形成することが好ましい。また、このようにして一対の成膜ロール間に放電する際には、前記一対の成膜ロールの極性を交互に反転させることが好ましい。
プラズマCVD法においてプラズマを発生させる際には、複数の成膜ロールの間の空間にプラズマ放電を発生させることが好ましく、一対の成膜ロールを用い、その一対の成膜ロールのそれぞれに基材2を配置して、一対の成膜ロール間に放電してプラズマを発生させることがより好ましい。このようにして、一対の成膜ロールを用い、この一対の成膜ロール上に基材2を配置して、この一対の成膜ロール間に放電することにより、成膜時に一方の成膜ロール上に存在する基材2の表面部分を成膜しつつ、もう一方の成膜ロール上に存在する基材2の表面部分も同時に成膜することが可能となって、効率よく薄膜層3を形成できるだけでなく、成膜速度(成膜レート)を倍にすることが可能となる。また、生産性が優れるので、薄膜層3は、ロールツーロール方式で基材2の表面上に形成することが好ましい。このようなプラズマCVD法により積層フィルム1を製造する際に用いることが可能な装置としては、特に限定されないが、少なくとも一対の成膜ロールと、プラズマ電源とを備え、且つ前記一対の成膜ロール間において放電することが可能な構成となっている装置であることが好ましい。
ロールツーロール方式のプラズマCVD法に適用する成膜装置の例としては、成膜上流側(基材の搬送方向の上流側)から順に、送り出しロール、搬送ロール、成膜ロール、搬送ロール、巻き取りロールを備え、ガス供給管、プラズマ発生用電源、及び磁場発生装置を備えたものが挙げられる。これらのうち、少なくとも成膜ロール、ガス供給管、及び磁場発生装置は、積層フィルムを製造するときに、真空チャンバー内に配置され、この真空チャンバーは、真空ポンプに接続される。真空チャンバーの内部の圧力は、真空ポンプの動作により調整される。そして、本発明においては、基材の搬送方向の、成膜ロールよりも上流側の搬送ロールにおいて、上記のように基材の表面に対して1.5MPa以上の引張応力を加えつつ、基材の表面を抱き角120°未満で搬送ロールの搬送面に接触させればよい。このように、引張応力及び抱き角を所定の値に調節して基材を接触させる搬送ロールは、基材の搬送方向において最上流側の成膜ロールよりも、さらに上流側(送り出しロールと最上流側の成膜ロールとの間)に配置されていれば、その配置位置は特に限定されない。
上記の成膜装置は、成膜ロールとして一対の成膜ロールを備えたものが好ましく、これら成膜ロール間にさらに搬送ロールを備えたものが好ましい。そして、これら成膜ロールの内部に磁場発生装置が配置され、これら磁場発生装置は、成膜ロールの回転に伴って姿勢が変化しないように取付けられているものが好ましい。
このような成膜装置を用いた場合、送り出しロールに巻き取られている基材2は、送り出しロールから最上流側の搬送ロールを経由して、前段(上流側)の成膜ロールへ搬送される。そして、基材2の表面に薄膜が形成されたフィルム基材は、前段の成膜ロールから、搬送ロールを経由して、後段(下流側)の成膜ロールへ搬送される。そして、さらに成膜されて薄膜層3が形成されて得られた積層フィルム1は、後段の成膜ロールからこれよりもさらに下流側(最下流側)の搬送ロールを経由して巻き取りロールへ搬送され、この巻き取りロールに巻き取られる。本発明では、前段の搬送ロールにおいて、基材2の薄膜層形成側の表面21に対して1.5MPa以上の引張応力を加えつつ、前記表面21を抱き角120°未満で搬送面に接触させればよい。
上記の成膜装置において、一対(前段及び後段)の成膜ロールは、互いに対向するように配置されている。そして、これら成膜ロールの軸は実質的に平行であり、これら成膜ロールの直径は実質的に同じである。このような成膜装置では、基材2が前段の成膜ロール上を搬送されているとき、及び前記フィルム基材が後段の成膜ロール上を搬送されているときに、成膜が行われる。
上記の成膜装置においては、一対の成膜ロールで挟まれる空間に、プラズマを発生可能となっている。プラズマ発生用電源は、これら成膜ロール中の電極と電気的に接続されており、これら電極は、前記空間を挟むように配置される。
上記の成膜装置は、プラズマ発生用電源から前記電極に供給された電力によって、プラズマを発生可能である。プラズマ発生用電源としては、公知の電源等を適宜用いることができ、例えば、前記二つの電極の極性を交互に反転可能な交流電源が挙げられる。プラズマ発生用電源は、効率よく成膜可能になるので、その供給する電力が、例えば0.1〜10kWに設定され、且つ交流の周波数が、例えば50Hz〜500kHzに設定される。
成膜ロールの内部に配置された磁場発生装置は、前記空間に磁場を発生可能であり、成膜ロール上での搬送方向で、磁束密度が変化するように磁場を発生させてもよい。
ガス供給管は、薄膜層3の形成に用いる供給ガスを前記空間に供給可能である。供給ガスは、薄膜層3の原料ガスを含む。ガス供給管から供給された原料ガスは、前記空間に発生するプラズマによって分解され、薄膜層3の膜成分が生成される。薄膜層3の膜成分は、一対の成膜ロール上を搬送されている基材2又は前記フィルム基材上に堆積する。
原料ガスとしては、例えば、珪素を含有する有機珪素化合物を用いることができる。このような有機珪素化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサンが挙げられる。これらの有機珪素化合物の中でも、化合物の取り扱い性及び得られる薄膜層のガスバリア性が優れるので、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンが好ましい。また、これらの有機珪素化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、原料ガスとして、前記有機ケイ素化合物の他にモノシランを含有させ、形成するバリア膜のケイ素源として用いてもよい。
供給ガスは、原料ガスの他に反応ガスを含んでいてもよい。反応ガスとしては、原料ガスと反応して酸化物、窒化物等の無機化合物となるガスを適宜選択して用いることができる。酸化物を形成するための反応ガスとしては、例えば、酸素、オゾンが挙げられる。また、窒化物を形成するための反応ガスとしては、例えば、窒素、アンモニアが挙げられる。これらの反応ガスは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができ、例えば、酸窒化物を形成する場合には、酸化物を形成するための反応ガスと窒化物を形成するための反応ガスとを組み合わせて用いることができる。
供給ガスは、キャリアガス及び放電用ガスの少なくとも一方を含んでいてもよい。キャリアガスとしては、原料ガスの真空チャンバー内への供給を促進するガスを適宜選択して用いることができる。放電用ガスとしては、空間SPでのプラズマ放電の発生を促進するガスを適宜選択して用いることができる。キャリアガス及び放電用ガスとしては、例えば、ヘリウムガス、アルゴンガス、ネオンガス、キセノンガス等の希ガス;水素ガスが挙げられる。キャリアガス及び放電用ガスは、いずれも、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
以下、珪素−酸素系の薄膜層を製造する場合を例に挙げて説明する。本例の供給ガスは、原料ガスとしてのヘキサメチルジシロキサン(有機珪素化合物:HMDSO:(CHSiO)と、反応ガスとしての酸素(O)とを含有している。
プラズマCVD法において、ヘキサメチルジシロキサン及び酸素を含有する供給ガスGを反応させると、下記式(A)で示す反応により、二酸化珪素が生成される。
(CHSiO+12O→6CO+9HO+2SiO ・・・・(A)
供給ガス中の原料ガスの量に対する反応ガスの量の比率は、例えば、原料ガスを完全に反応させるために化学量論的に必要な比率(化学量論比)に対して、過剰に高くなり過ぎないように設定される。例えば、式(A)に示す反応において、ヘキサメチルジシロキサン1モルを完全酸化するのに化学量論的に必要な酸素量は12モルである。すなわち、供給ガスGがヘキサメチルジシロキサン1モルに対して酸素を12モル以上含有している場合に、理論上は、薄膜層として均一な二酸化珪素膜が形成されることになる。しかし、実際には、供給された反応ガスの一部が反応に寄与しないことがある。そこで、原料ガスを完全に反応させるためには、通常は化学量論比よりも高い比率で反応ガスを含むガスが供給される。実際に原料ガスを完全に反応させ得る反応ガスの原料ガスに対するモル比(以下、「実効比率」という。)は、実験等によって調べることができる。例えば、プラズマCVD法でヘキサメチルジシロキサンを完全酸化するには、酸素のモル量(流量)を原料のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)の20倍(実効比率を20)以上にする場合もある。このような観点で、供給ガス中の原料ガスの量に対する反応ガスの量の比率は、実効比率(例えば20)未満でもよいし、化学量論比(例えば12)以下でもよく、化学量論比よりも低い値(例えば10)でもよい。
本例において、原料ガスを完全に反応させることができないように、反応ガスが不足する条件に反応条件を設定すると、完全酸化されなかったヘキサメチルジシロキサン中の炭素原子や水素原子が薄膜層中に取り込まれる。例えば、上記の成膜装置において、原料ガスの種類、供給ガス中の原料ガスのモル量に対する反応ガスのモル量の比率、電極に供給する電力、真空チャンバー内の圧力、一対の成膜ロールの直径、及び基材2(フィルム基材)の搬送速度等のパラメータの一以上を適宜調整することによって、所定の条件を満たすように、薄膜層を形成することができる。なお、前記パラメータの一以上は、基材2(フィルム基材)が前記空間に面する成膜エリア内を通過する期間内に時間的に変化してもよいし、成膜エリア内で空間的に変化してもよい。
電極に供給する電力は、原料ガスの種類や真空チャンバー内の圧力等に応じて適宜調整することができ、例えば、0.1〜10kWに設定できる。電力が0.1kW以上であることで、パーティクルの発生を抑制する効果が高くなる。また、電力が10kW以下であることで、電極から受ける熱によって基材2(フィルム基材)に皺や損傷が生じることを抑制する効果が高くなる。さらに、基材2(フィルム基材)の損傷に伴って、一対の成膜ロール間に異常放電が発生することを回避でき、これら成膜ロールが異常放電によって損傷することも回避できる。
真空チャンバー内の圧力(真空度)は、原料ガスの種類等に応じて適宜調整することができ、例えば、0.1Pa〜50Paに設定できる。
基材2(フィルム基材)の搬送速度(ライン速度)は、原料ガスの種類や真空チャンバー内の圧力等に応じて適宜調整することができるが、上記のように基材2を搬送ロールに接触させるときの、基材2の搬送速度と同じであることが好ましい。搬送速度が下限値以上であることで、基材2(フィルム基材)に皺が生じることを抑制する効果が高くなる。
また、搬送速度が上限値以下であることにより、形成される薄膜層の厚さを増すことが容易になる。
本発明に係る積層フィルムの製造に用いる成膜装置は、上記のものに限定されず、本発明の効果を損なわない範囲内において、一部構成が適宜変更されたものでもよい。
本発明に係る積層フィルムは、前記基材及び薄膜層以外に、必要に応じてさらに、プライマーコート層、ヒートシール性樹脂層及び接着剤層等のいずれか一以上を備えていてもよい。前記プライマーコート層は、前記基材及び薄膜層との接着性を向上させることが可能な、公知のプライマーコート剤を用いて形成することができる。また、前記ヒートシール性樹脂層は、適宜公知のヒートシール性樹脂を用いて形成することができる。また、前記接着剤層は、適宜公知の接着剤を用いて形成することができ、このような接着剤層により、複数の積層フィルム同士を接着させてもよい。
本発明に係る積層フィルムは、薄膜層においてクラックの発生が抑制されているので、ガスバリア性に優れており、例えば、薄膜層として、材料の全成分の質量に対して酸化珪素の含有量が50質量%以上のものなど、酸化珪素が主成分であるものを形成することで、フレキシビリティも兼ね備えたものとすることができる。
【実施例】
【0009】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。なお、基材がその薄膜層形成側の表面に有する局所的な突起部及び陥没部についての測定や観察、並びに薄膜層におけるクラックの有無の判定は、以下の方法で行った。
<レーザー顕微鏡による突起部及び陥没部の特定>
レーザー顕微鏡を用いて、積層フィルムの薄膜層表面の面内方向に走査することで、基材がその薄膜層形成側の表面に有する局所的な突起部及び陥没部を特定した。
<TEMによる突起部及び陥没部の断面の観察>
前記突起部及び陥没部に対して、集束イオンビーム(FIB)加工処理を行うことで、突起部及び陥没部の中心部を通る積層フィルムの断面を作製した。そして、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、この断面の写真を撮影した。撮影した断面写真で観察された、前記突起部及び陥没部において、a及びbを求め、さらにa/bを算出した。そして、撮影した断面写真から、薄膜層の厚さhを求めると共に、薄膜層中の前記突起部又は陥没部の近傍領域におけるクラックの有無を観察した。
<基材表面及び薄膜層表面の平均表面粗さの測定>
原子間力顕微鏡(AFM、SII社製「SPA400」)を用いて、基材表面及び薄膜層表面の平均的な表面形状を測定した。そして、前記突起部及び陥没部が存在しない箇所について、1μm角視野における平均表面粗さを測定した。
[実施例1]
上記製造方法により、積層フィルムを製造した。すなわち、ガラスクロス複合フィルム(住友ベークライト社製「スミライトTTRフィルム」、厚さ90μm、幅350mm、長さ100m)を基材として用い、これを送り出しロールに装着した。ターボ分子ポンプを用いて真空チャンバー内を12時間減圧した状態に保った後、薄膜層の成膜を行った。成膜時には、基材の搬送方向の最上流側の成膜ロールよりもさらに上流側に配置された金属製フリーロールにおいて、基材の搬送方向の上流側及び下流側の両方から、基材に対して1.9MPaの引張応力を加えながら、基材の薄膜層形成側の表面を抱き角90°で搬送ロールの搬送面に接触させ、基材を搬送した。なお、基材の前記表面における平均表面粗さRaは0.9nmであった。そして、一対の成膜ロール間に磁場を印加すると共に、これら成膜ロールにそれぞれ電力を供給して、これら成膜ロール間に放電してプラズマを発生させ、この放電領域に、成膜ガス(原料ガスとしてのヘキサメチルジシコキサン(HMDSO)と、反応ガスとしての酸素ガス(放電ガスとしても機能する)との混合ガス)を供給し、下記成膜条件にてプラズマCVD法により薄膜層を形成し、積層フィルムを得た。
<成膜条件1>
原料ガスの供給量:50sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute、0℃、1気圧基準)
酸素ガスの供給量:500sccm(0℃、1気圧基準)
真空チャンバー内の圧力:3Pa
プラズマ発生用電源からの供給電力:0.8kW
プラズマ発生用電源の周波数:70kHz
基材の搬送速度:0.5m/分
得られた積層フィルムについて、基材表面上に局所的な突起部及び陥没部を合計で8個特定し、FIB加工処理により積層フィルムの断面を作製して、TEMで観察することにより、前記突起部及び陥没部において、a及びbを求め、さらにa/bを算出し、薄膜層の厚さhを求めた。結果を表1に示す。また、図3に、a/b及びa/hの関係を表すグラフを示す。
いずれの断面でも、薄膜層中の前記突起部又は陥没部の近傍領域において、クラックは観察されず、クラックに由来するガスバリア性の低下を十分に抑制できる積層フィルムが得られたことを確認できた。なお、得られた積層フィルムの薄膜層の表面における平均表面粗さRa’は1.6nmであった。
[実施例2]
基材として「ガラスクロス複合フィルム(住友ベークライト社製「スミライトTTRフィルム」、厚さ90μm、幅350mm、長さ100m、平均表面粗さRa:0.9nm)」を用い、かつ、薄膜層の形成を成膜条件1で行ったことに代えて、ポリエチレンナフタレートフィルム(帝人デュポン社製「テオネックスQ65FA」、厚さ100μm、幅700mm、長さ100m、平均表面粗さRa:1.1nm)を用い、かつ、薄膜層の形成を成膜条件2で行ったこと以外は、実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。
<成膜条件2>
原料ガスの供給量:100sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute、0℃、1気圧基準)
酸素ガスの供給量:900sccm(0℃、1気圧基準)
真空チャンバー内の圧力:1Pa
プラズマ発生用電源からの供給電力:1.6kW
プラズマ発生用電源の周波数:70kHz
基材の搬送速度:0.5m/分
得られた積層フィルムについて、基材表面上に局所的な突起部及び陥没部を合計で4個特定し、FIB加工処理により積層フィルムの断面を作製して、TEMで観察することにより、前記突起部及び陥没部において、a及びbを求め、さらにa/bを算出し、薄膜層の厚さhを求めた。結果を表1に示す。また、図3に、a/b及びa/hの関係を表すグラフを示す。
いずれの断面でも、薄膜層中の前記突起部又は陥没部の近傍領域において、クラックは観察されず、クラックに由来するガスバリア性の低下を十分に抑制できる積層フィルムが得られたことを確認できた。なお、得られた積層フィルムの薄膜層の表面における平均表面粗さRa’は1.3nmであった。
[比較例1]
基材に加える引張応力を1.9MPaに代えて0.5MPaとし、抱き角を90°に代えて120°として基材を搬送したこと以外は、実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得て、クラックの有無の判定等を行った。結果を表1及び図3に示す。
得られた積層フィルムについて、基材表面上に局所的な突起部及び陥没部を合計で10個特定し、FIB加工処理により積層フィルムの断面を作製して、TEMで観察することにより、前記突起部及び陥没部において、a及びbを求め、さらにa/bを算出し、薄膜層の厚さhを求めた。結果を表1に示す。また、図3に、a/b及びa/hの関係を表すグラフを示す。
いずれの断面でも、薄膜層中の前記突起部又は陥没部の近傍領域において、薄膜層の厚さ方向に貫通したクラックが観察された。
【表1】
上記結果より、本発明に係る積層フィルムは、基材表面の平坦度が高く、薄膜層でのクラックの発生が抑制されており、ガスバリア性に優れたものであることを確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0010】
本発明は、ガスバリア性フィルムに利用可能である。
【符号の説明】
【0011】
1 積層フィルム
2 基材
21 基材の薄膜層形成側の表面
211 基材表面の平坦部
23 突起部
231 突起部の縁
232 突起部の頂点
24 陥没部
241 陥没部の縁
242 陥没部の底
3 薄膜層
9 搬送ロール
90 搬送ロールの中心軸
91 搬送ロールの搬送面
911 基材の搬送ロールの搬送面との接触部(上流側)
912 基材の搬送ロールの搬送面との接触部(下流側)
T 基材の搬送方向
θ 抱き角
図1
図2
図3
【国際調査報告】