特表-13161266IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2013年10月31日
【発行日】2015年12月21日
(54)【発明の名称】(メタ)アクリル樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/12 20060101AFI20151124BHJP
   C08F 20/14 20060101ALI20151124BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20151124BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20151124BHJP
   B29K 33/04 20060101ALN20151124BHJP
【FI】
   C08L33/12
   C08F20/14
   C08J5/00CEY
   B29C45/00
   B29K33:04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
【出願番号】特願2014-512350(P2014-512350)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2013年4月22日
(31)【優先権主張番号】特願2012-103789(P2012-103789)
(32)【優先日】2012年4月27日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
【住所又は居所】岡山県倉敷市酒津1621番地
(74)【代理人】
【識別番号】100109508
【弁理士】
【氏名又は名称】菊間 忠之
(72)【発明者】
【氏名】新村 卓郎
【住所又は居所】新潟県胎内市倉敷町2番28号 株式会社クラレ内
(72)【発明者】
【氏名】小西 啓之
【住所又は居所】新潟県胎内市倉敷町2番28号 株式会社クラレ内
(72)【発明者】
【氏名】小澤 宙
【住所又は居所】新潟県胎内市倉敷町2番28号 株式会社クラレ内
(72)【発明者】
【氏名】栗田 日出美
【住所又は居所】東京都千代田区大手町一丁目1番3号 株式会社クラレ内
(72)【発明者】
【氏名】田村 英孝
【住所又は居所】茨城県つくば市御幸が丘41番地 株式会社クラレ内
【テーマコード(参考)】
4F071
4F206
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4F071AA33
4F071AA83
4F071AA88
4F071AF53Y
4F071AH03
4F071AH05
4F071AH07
4F071AH11
4F071AH12
4F071AH16
4F071AH17
4F071BA01
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4F071BC07
4F206AA21
4F206AH73
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4J100AL03Q
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4J100CA04
4J100DA42
4J100FA18
4J100JA28
4J100JA32
4J100JA43
4J100JA51
4J100JA57
4J100JA58
4J100JA67
(57)【要約】
メタクリル酸メチルに由来する構造単位80〜100質量%およびアクリル酸エステルに由来する構造単位0〜20質量%を含む(メタ)アクリル樹脂を99.5質量%以上含有し、 窒素雰囲気下300℃における加熱減量速度が0.5%/分以下で、且つ 230℃および3.8kg荷重の条件におけるメルトフローレートが10g/10分以上である(メタ)アクリル樹脂組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタクリル酸メチルに由来する構造単位80〜100質量%およびアクリル酸エステルに由来する構造単位0〜20質量%を含む(メタ)アクリル樹脂を99.5質量%以上含有し、
窒素雰囲気下300℃における加熱減量速度が0.5%/分以下で、且つ
230℃および3.8kg荷重の条件におけるメルトフローレートが10g/10分以上である(メタ)アクリル樹脂組成物。
【請求項2】
(メタ)アクリル樹脂が、メタクリル酸メチルに由来する構造単位80〜96質量%およびアクリル酸エステルに由来する構造単位4〜20質量%を含む請求項1に記載の(メタ)アクリル樹脂組成物。
【請求項3】
(メタ)アクリル樹脂が塊状重合によって得られたものである請求項1または2に記載の(メタ)アクリル樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかひとつに記載の(メタ)アクリル樹脂組成物からなる成形品。
【請求項5】
厚さに対する樹脂流動長さの比が380以上である請求項4に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリル樹脂組成物に関する。より詳細に、本発明は、高いシリンダ温度において射出成形した場合でも、シルバーの無い薄肉且つ広面積の成形品を高い生産効率で得ることができる(メタ)アクリル樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置の部材である導光板は、例えば、(メタ)アクリル樹脂などの透明樹脂を含む樹脂組成物を射出成形して製造される(特許文献7参照)。近年、軽量かつ広面積の液晶表示装置への需要が高く、それに対応して導光板も薄肉化および広面積化が要求されている。
一般に、薄肉且つ広面積の成形品を射出成形するには、高いシリンダ温度が必要である。ところが、シリンダ温度を高めると、樹脂自身から発生する熱分解ガスによって成形品にシルバーなどが生じ、透明性が低下することがある。
【0003】
成形品にシルバーが発生するのを抑制する方策として、特許文献1は、メタクリル樹脂に有機ジスルフィド化合物を0.1〜10ppmで配合することを提案している。特許文献2は、メタクリル樹脂に2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニル アクリレート、2,4−ジ−t−ブチル−6−〔1−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)エチル〕フェニル アクリレート、または2,4−ジ−t−アミル−6−〔1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル〕フェニル アクリレーなどのフェノール系化合物を配合することを提案している。特許文献3は、メチルメタクリレートとマレイミド化合物とを共重合させて得られるメタクリル系重合体に有機リン系化合物およびチオエーテル型有機硫黄系化合物を配合することを提案している。また特許文献4または5は、重合体に結合する硫黄量が特定範囲に調整されたメタクリル系重合体が提案されている。特許文献6は、2段直列結合された完全混合槽を用いた重合反応によって熱分解率が特定の範囲に調整されたメタクリル樹脂が得られることを開示している。さらに特許文献7には、メタクリル酸メチル単位90〜99重量%、アルキル基の炭素数が1〜8である少なくとも1種のアクリル酸アルキルエステル単位1〜10重量%からなり、MFRが3〜13g/10分であり、ビカット軟化点が105℃以上、酸分が50ppm以下であることを特徴とする導光体用メタクリル樹脂が開示されている。特許文献8には、メタクリル樹脂中に、銅イオンを0.005〜3ppm含む熱安定性に優れた樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−166020号公報
【特許文献2】特開平7−149991号公報
【特許文献3】特開平9−165486号公報
【特許文献4】特開2001−172328号公報
【特許文献5】特開2005−82716号公報
【特許文献6】特開2004−211105号公報
【特許文献7】特開平9−31134号公報
【特許文献8】特開平8−169912号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】日本油脂株式会社技術資料「有機化酸化物の水素引抜き能と開始剤効率」(2003年4月作成)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記の先行技術文献1〜7にて提案されている方策は、生産性が低下したり、成形品の外観が良くなかったり、高いシリンダ温度において射出成形した場合にシルバーが十分に抑制できていなかったりなどの問題を有している。また先行技術文献8にて記載されている方策は、熱安定性は改良されているものの得られた成形品が着色するので用途が制限される。
そこで、本発明の目的は、高いシリンダ温度において射出成形した場合でも、シルバーが無い薄肉且つ広面積の成形品を高い生産効率で得ることができる(メタ)アクリル樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った。その結果、以下の態様を包含する発明を完成するに至った。
【0008】
〔1〕 メタクリル酸メチルに由来する構造単位80〜100質量%およびアクリル酸エステルに由来する構造単位0〜20質量%を含む(メタ)アクリル樹脂を99.5質量%以上含有し、 窒素雰囲気下300℃における加熱減量速度が0.5%/分以下で、 且つ230℃および3.8kg荷重の条件におけるメルトフローレートが10g/10分以上である(メタ)アクリル樹脂組成物。
〔2〕 (メタ)アクリル樹脂が、メタクリル酸メチルに由来する構造単位80〜96質量%およびアクリル酸エステルに由来する構造単位4〜20質量%を含む〔1〕に記載の(メタ)アクリル樹脂組成物。
〔3〕 (メタ)アクリル樹脂が塊状重合によって得られたものである〔1〕または〔2〕に記載の(メタ)アクリル樹脂組成物。
【0009】
〔4〕 前記の〔1〕〜〔3〕のいずれかひとつに記載の(メタ)アクリル樹脂組成物からなる成形品。
〔5〕 厚さに対する樹脂流動長さの比が380以上である〔4〕に記載の成形品。
【発明の効果】
【0010】
本発明の(メタ)アクリル樹脂組成物は、射出成形性に優れるので、外観良好な薄肉且つ広面積の成形品を提供することができる。本発明の(メタ)アクリル樹脂組成物を用いると、高いシリンダ温度において射出成形した場合でも、シルバーの発生が無い薄肉且つ広面積の成形品を高い生産効率で得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の(メタ)アクリル樹脂組成物は、(メタ)アクリル樹脂を含有するものである。
【0012】
本発明に用いられる(メタ)アクリル樹脂は、全単量体単位のうちに、メタクリル酸メチルに由来する構造単位を80〜100質量%、好ましくは80〜96質量%含むものである。また、本発明に用いられる(メタ)アクリル樹脂は、全単量体単位のうちに、アクリル酸エステルに由来する構造単位を0〜20質量%、好ましくは4〜20質量%含むものである。
アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルへキシルなどのアクリル酸アルキル;アクリル酸フェニルなどのアクリル酸アリール;アクリル酸シクロへキシル、アクリル酸ノルボルネニルなどのアクリル酸シクロアルキルなどが挙げられる。
【0013】
本発明に用いられる(メタ)アクリル樹脂は、メタクリル酸メチルおよびアクリル酸エステル以外の単量体に由来する構造単位を含んでいてもよい。係る単量体としては、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどのメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸アルキル;メタクリル酸フェニルなどのメタクリル酸アリール;メタクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸ノルボルネニルなどのメタクリル酸シクロアルキル;アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレンなどその他のビニル系単量体;などの一分子中に重合性アルケニル基を一つだけ有する非架橋性ビニル系単量体が挙げられる。該単量体に由来する構造単位の量は、全単量体単位のうちに、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
【0014】
(メタ)アクリル樹脂は、重量平均分子量(以下、Mwと略称することがある。)が、好ましくは3.5万〜10万、より好ましくは4万〜8万、特に好ましくは4.5万〜6万である。Mwが小さすぎると(メタ)アクリル樹脂組成物から得られる成形品の耐衝撃性や靭性が低下傾向になる。Mwが大きすぎると(メタ)アクリル樹脂組成物の流動性が低下し成形加工性が低下傾向になる。
【0015】
(メタ)アクリル樹脂は、重量平均分子量/数平均分子量の比(以下、この比を分子量分布と表記することがある。)が、1.7〜2.6、より好ましくは1.7〜2.3、特に好ましくは1.7〜2.0である。分子量分布が小さいと(メタ)アクリル樹脂組成物の成形加工性が低下傾向になる。分子量分布が大きいと(メタ)アクリル樹脂組成物から得られる成形品の耐衝撃性が低下傾向になり、脆くなりやすい。
なお、重量平均分子量および数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)で測定した標準ポリスチレン換算の分子量である。
また、(メタ)アクリル樹脂の分子量や分子量分布は、後述する重合開始剤および連鎖移動剤の種類や量などを調整することによって制御できる。
【0016】
(メタ)アクリル樹脂は、上記質量比のメタクリル酸メチルとアクリル酸エステルとを少なくとも含む単量体混合物を重合させることによって得られる。
【0017】
(メタ)アクリル樹脂の原料であるメタクリル酸メチル、アクリル酸エステルおよびその他の単量体は、イエロインデックスが2以下であることが好ましく、1以下であることがより好ましい。単量体のイエロインデックスが小さいと、得られる(メタ)アクリル樹脂組成物を成形した場合に、残留歪みが少なく且つ着色が殆んどない薄肉且つ広面積の成形品が高い生産効率で得られやすい。後述するように(メタ)アクリル樹脂の重合反応においては、重合転化率をあまり高くしないので、未反応の単量体が重合反応液中に残る。未反応単量体は重合反応液から回収して再び重合反応に使用することができる。回収された単量体のイエロインデックスは回収時などに加えられる熱によって高くなることがある。回収された単量体は、適切な方法で精製して、イエロインデックスを小さくすることが好ましい。なお、イエロインデックスは、日本電色工業株式会社製の測色色差計ZE−2000を用い、JIS Z−8722に準拠して測定した値である。
【0018】
単量体混合物の重合反応は、好ましくは塊状重合法または溶液重合法、より好ましくは塊状重合法で行う。重合反応は単量体混合物に重合開始剤を添加することによって開始される。また、必要に応じて連鎖移動剤を単量体混合物に添加することによって、得られる重合体の分子量などを調節できる。なお、単量体混合物は、溶存酸素量が好ましくは10ppm以下、より好ましくは5ppm以下、さらに好ましくは4ppm以下、最も好ましくは3ppm以下である。このような範囲の溶存酸素量にすると重合反応がスムーズに進行し、シルバーや着色の無い成形品が得られやすくなる。
【0019】
本発明で用いられる重合開始剤は、反応性ラジカルを発生するものであれば特に限定されない。例えば、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート 、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエ−ト、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエ−ト、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、ベンゾイルパーオキシド 、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)が挙げられる。これらのうち、t−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)が好ましい。
これらのうち、重合開始剤は、1時間半減期温度が60〜140℃のものが好ましく、80〜120℃のものがより好ましい。また、塊状重合に用いられる重合開始剤は、水素引抜き能が20%以下のものが好ましく、10%以下のものがより好ましく、5%以下のものがさらに好ましい。これら重合開始剤は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、重合開始剤の添加量や添加方法などは、目的に応じて適宜設定すればよく特に限定されるものでない。例えば、塊状重合に用いられる重合開始剤の量は、単量体混合物100質量部に対して、好ましくは0.0001〜0.02質量部、より好ましくは0.001〜0.01質量部である。
【0020】
なお、水素引抜き能は、重合開始剤製造業者の技術資料(例えば、非特許文献1)などによって知ることができる。また、α−メチルスチレンダイマーを使用したラジカルトラッピング法、即ちα−メチルスチレンダイマートラッピング法によって測定することができる。当該測定は、一般に、次のようにして行われる。まず、ラジカルトラッピング剤としてのα−メチルスチレンダイマーの共存下で重合開始剤を開裂させてラジカル断片を生成させる。生成したラジカル断片のうち、水素引抜き能が低いラジカル断片はα−メチルスチレンダイマーの二重結合に付加して捕捉される。一方、水素引抜き能が高いラジカル断片はシクロヘキサンから水素を引き抜き、シクロヘキシルラジカルを発生させ、該シクロヘキシルラジカルがα−メチルスチレンダイマーの二重結合に付加して捕捉され、シクロヘキサン捕捉生成物を生成する。そこで、シクロヘキサン、またはシクロヘキサン捕捉生成物を定量することで求められる、理論的なラジカル断片発生量に対する水素引抜き能が高いラジカル断片の割合(モル分率)を水素引抜き能とする。
【0021】
連鎖移動剤としては、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、1,4−ブタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、エチレングリコールビスチオプロピオネート、ブタンジオールビスチオグリコレート、ブタンジオールビスチオプロピオネート、ヘキサンジオールビスチオグリコレート、ヘキサンジオールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリス−(β−チオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネートなどのアルキルメルカプタン類;α−メチルスチレンダイマー;テルピノレンなどが挙げられる。これらのうちn−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタンなどの単官能アルキルメルカプタンやペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネートなどの4官能メルカプタンが好ましい。これら連鎖移動剤は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。連鎖移動剤の使用量は、単量体混合物100質量部に対して、好ましくは0.1〜1質量部、より好ましくは0.2〜0.8質量部、さらに好ましくは0.3〜0.6質量部である。
【0022】
溶液重合に用いられる溶媒は、原料である単量体混合物と生成物である(メタ)アクリル樹脂に対して溶解能を有するものであれば特に制限されないが、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素が好ましい。これらの溶媒は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。かかる溶媒の使用量は、単量体混合物100質量部に対して、好ましくは0〜100質量部、より好ましくは0〜90質量部である。溶媒の使用量が多いほど、反応液の粘度が下がり取り扱い性が良好となるが生産性が低下する傾向がある。
【0023】
単量体混合物の重合転化率は、好ましくは20〜80質量%、より好ましくは30〜70質量%、さらに好ましくは35〜65質量%にする。重合転化率が、このような範囲にあると、加熱減量速度およびメルトフローレートを後述する範囲に調整することが容易である。なお、重合転化率が高すぎると粘度上昇のために大きな攪拌動力が必要となる傾向がある。重合転化率が低すぎると脱揮不十分となりやすく(メタ)アクリル樹脂からなる成形品にシルバーなどの外観不良を起こす傾向がある。
【0024】
塊状重合法または溶液重合法を行う装置としては、攪拌機付きの槽型反応器、攪拌機付きの管型反応器、静的攪拌能力を有する管型反応器などが挙げられる。これら装置を1基以上用いてよいし、また、異なる反応器2基以上を組み合せて用いてもよい。また、装置は回分式または連続流通式のどちらであってもよい。用いる攪拌機は、反応器の様式に応じて選択することができる。攪拌機として、例えば、動的撹拌機、静的攪拌機が挙げられる。本発明に用いられる(メタ)アクリル樹脂を得るために最も好適な装置は、連続流通式槽型反応器を少なくとも一つ有するものである。複数の連続流通式槽型反応器は直列に繋いでもよいし、並列に繋いでもよい。
【0025】
槽型反応器には、通常、反応槽内の液を撹拌するための撹拌手段、単量体混合物や重合副資材などを反応槽に供給するための供給部、反応槽から反応生成物を抜き出すための抜出部とを有する。連続流通式の反応では、反応槽に供給する量と反応槽から抜き出す量とをバランスさせて、反応槽内の液量がほぼ一定になるようにする。反応槽内の液量は、反応槽の容積に対して、好ましくは1/4〜3/4、より好ましくは1/3〜2/3である。
【0026】
撹拌手段としては、マックスブレンド式撹拌装置、中央に配した縦型回転軸の回りを回転する格子状の翼を有する撹拌装置、プロペラ式撹拌装置、スクリュー式撹拌装置などが挙げられる。これらのうちでマックスブレンド式撹拌装置が均一混合性の点から好ましく用いられる。
メタクリル酸メチル、アクリル酸エステル、重合開始剤および連鎖移動剤は、それら全てを反応槽に供給する前に混ぜ合わせて反応槽に供給してもよいし、それらを別々に反応槽に供給してもよい。本発明においては全てを反応槽に供給する前に混ぜ合わせて反応槽に供給する方法が好ましい。
【0027】
メタクリル酸メチル、アクリル酸エステル、重合開始剤および連鎖移動剤の混ぜ合わせは、窒素ガスなどの不活性雰囲気中で行うことが好ましい。また、連続流通式の操業を円滑に行うために、メタクリル酸メチル、アクリル酸エステル、重合開始剤および連鎖移動剤を貯留するタンクからそれぞれ管を介して反応槽の前段に設けた混合器に供給し連続的に混ぜ合わせ、混合物を反応槽に連続的に流すことが好ましい。該混合器は動的撹拌機または静的攪拌機を備えたものであることができる。
【0028】
重合反応時の温度は、好ましくは110〜145℃、より好ましくは120〜140℃、特に好ましくは125〜135℃である。重合温度が上記範囲にあると、生産性が高くなり、また二量体や三量体の生成や末端2重結合量が減り熱安定性が高くなる。
【0029】
本発明における重合反応の時間は、0.5〜4時間が好ましく、1.5〜3.5時間がより好ましく、1.5〜3時間が特に好ましい。なお、連続流通式反応器の場合、重合反応時間は反応器における平均滞留時間である。重合反応時間を上記範囲にすることによって、メルトフローレートを適正範囲に調整するのが容易になり、また熱安定性が増す。また、重合は窒素ガスなど不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。
【0030】
重合終了後、必要に応じて、未反応の単量体および溶剤を除去する。除去方法は特に制限されないが、加熱脱揮が好ましい。脱揮法としては、平衡フラッシュ方式や断熱フラッシュ方式が挙げられる。特に断熱フラッシュ方式では、脱揮を、好ましくは200〜280℃、より好ましくは220〜260℃の温度で、且つ好ましくは0.3〜5分間、より好ましくは0.4〜3分間、さらに好ましくは0.5〜2分間の加熱時間となるようにして行う。脱揮温度および加熱時間を上記範囲にすることによって、熱による着色の原因となる二量体や三量体などの生成が抑制されるので、熱安定性が増す。
【0031】
本発明の(メタ)アクリル樹脂組成物に含有する(メタ)アクリル樹脂の量は、(メタ)アクリル樹脂組成物全体に対して、好ましくは99.5質量%以上、より好ましくは99.8質量%以上である。
【0032】
上記のように、原料である単量体のイエロインデックス、(メタ)アクリル樹脂に含まれる未反応単量体、二量体、三量体などの着色原因物質の量、分子鎖の末端構造などを調整することにより、熱安定性を向上させることができる。
【0033】
本発明の(メタ)アクリル樹脂組成物は、その他必要に応じて各種の添加剤を0.5質量%以下で、好ましくは0.2質量%以下で含有してもよい。添加剤の含有量が多すぎると、成形品にシルバーなどの外観不良を起こすことがある。
添加剤としては、酸化防止剤、熱劣化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、離型剤、高分子加工助剤、帯電防止剤、難燃剤、染顔料、光拡散剤、有機色素、艶消し剤、耐衝撃性改質剤、蛍光体などが挙げられる。
【0034】
酸化防止剤は、酸素存在下においてそれ単体で樹脂の酸化劣化防止に効果を有するものである。例えば、リン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤などが挙げられる。これらの酸化防止剤は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中、着色による光学特性の劣化防止効果の観点から、リン系酸化防止剤やヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく、リン系酸化防止剤とヒンダードフェノール系酸化防止剤との併用がより好ましい。
リン系酸化防止剤とヒンダードフェノール系酸化防止剤とを併用する場合、その割合は特に制限されないが、リン系酸化防止剤/ヒンダードフェノール系酸化防止剤の質量比で、好ましくは1/5〜2/1、より好ましくは1/2〜1/1である。
【0035】
リン系酸化防止剤としては、2,2−メチレンビス(4,6−ジt−ブチルフェニル)オクチルホスファイト(旭電化社製;商品名:アデカスタブHP−10)、トリス(2,4−ジt−ブチルフェニル)ホスファイト(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製;商品名:IRUGAFOS168)などが好ましい。
【0036】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製;商品名IRGANOX1010)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製;商品名IRGANOX1076)などが好ましい。
【0037】
熱劣化防止剤は、実質上無酸素の状態下で高熱にさらされたときに生じるポリマーラジカルを捕捉することによって樹脂の熱劣化を防止できるものである。
該熱劣化防止剤としては、2−t−ブチル−6−(3’−t−ブチル−5’−メチル−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート(住友化学社製;商品名スミライザーGM)、2,4−ジ−t−アミル−6−(3’,5’−ジ−t−アミル−2’−ヒドロキシ−α−メチルベンジル)フェニルアクリレート(住友化学社製;商品名スミライザーGS)などが好ましい。
【0038】
紫外線吸収剤は、紫外線を吸収する能力を有する化合物である。紫外線吸収剤は、主に光エネルギーを熱エネルギーに変換する機能を有すると言われる化合物である。
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、ベンゾエート類、サリシレート類、シアノアクリレート類、蓚酸アニリド類、マロン酸エステル類、ホルムアミジン類などが挙げられる。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、ベンゾトリアゾール類、または波長380〜450nmにおけるモル吸光係数の最大値εmaxが1200dm3・mol-1cm-1以下である紫外線吸収剤が好ましい。
【0039】
ベンゾトリアゾール類は、紫外線被照による着色などの光学特性低下を抑制する効果が高いので、本発明の(メタ)アクリル樹脂組成物を上記のような特性が要求される用途に適用する場合に用いる紫外線吸収剤として好ましい。
【0040】
ベンゾトリアゾール類としては、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製;商品名TINUVIN329)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製;商品名TINUVIN234)などが好ましい。
【0041】
また、波長380〜450nmにおけるモル吸光係数の最大値εmaxが1200dm3・mol-1cm-1以下である紫外線吸収剤は、得られる成形品の黄色味を抑制できる。該紫外線吸収剤は、本発明の(メタ)アクリル樹脂組成物をこのような特性が要求される用途に適用する場合に用いる紫外線吸収剤として好ましい。
【0042】
なお、紫外線吸収剤のモル吸光係数の最大値εmaxは、次のようにして測定する。シクロヘキサン1Lに紫外線吸収剤10.00mgを添加し、目視による観察で未溶解物がないように溶解させる。この溶液を1cm×1cm×3cmの石英ガラスセルに注入し、日立製作所社製U−3410型分光光度計を用いて、波長380〜450nmでの吸光度を測定する。紫外線吸収剤の分子量(Mw)と、測定された吸光度の最大値(Amax)とから次式により計算し、モル吸光係数の最大値εmaxを算出する。
【0043】
εmax=[Amax/(10×10-3)]×Mw
【0044】
波長380〜450nmにおけるモル吸光係数の最大値εmaxが1200dm3・mol-1cm-1以下である紫外線吸収剤としては、2−エチル−2’−エトキシ−オキサルアニリド(クラリアントジャパン社製;商品名サンデユボアVSU)などが挙げられる。
これら紫外線吸収剤の中、紫外線被照による樹脂劣化が抑えられるという観点からベンゾトリアゾール類が好ましく用いられる。
【0045】
光安定剤は、主に光による酸化で生成するラジカルを捕捉する機能を有すると言われる化合物である。好適な光安定剤としては、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン骨格を持つ化合物などのヒンダードアミン類が挙げられる。
【0046】
離型剤は、成形品の金型からの離型を容易にする機能を有する化合物である。離型剤としては、セチルアルコール、ステアリルアルコールなどの高級アルコール類;ステアリン酸モノグリセライド、ステアリン酸ジグリセライドなどのグリセリン高級脂肪酸エステルなどが挙げられる。本発明においては、離型剤として、高級アルコール類とグリセリン脂肪酸モノエステルとを併用することが好ましい。高級アルコール類とグリセリン脂肪酸モノエステルとを併用する場合、その割合は特に制限されないが、高級アルコール類/グリセリン脂肪酸モノエステルの質量比が、好ましくは2.5/1〜3.5/1、より好ましくは2.8/1〜3.2/1である。
【0047】
高分子加工助剤は、(メタ)アクリル樹脂組成物を成形する際、厚さ精度および薄膜化に効果を発揮する化合物である。高分子加工助剤は、通常、乳化重合法によって製造することができる、0.05〜0.5μmの粒子径を有する重合体粒子である。
該重合体粒子は、単一組成比および単一極限粘度の重合体からなる単層粒子であってもよいし、また組成比または極限粘度の異なる2種以上の重合体からなる多層粒子であってもよい。この中でも、内層に低い極限粘度を有する重合体層を有し、外層に5dl/g以上の高い極限粘度を有する重合体層を有する2層構造の粒子が好ましいものとして挙げられる。
【0048】
高分子加工助剤は極限粘度が3〜6dl/gであることが好ましい。極限粘度が小さすぎると成形性の改善効果が低い。極限粘度が大きすぎると(メタ)アクリル樹脂組成物の溶融流動性の低下を招きやすい。
【0049】
本発明の(メタ)アクリル樹脂組成物には、耐衝撃性改質剤を添加してもよい。耐衝撃性改質剤としては、アクリル系ゴムもしくはジエン系ゴムをコア層成分として含むコアシェル型改質剤;ゴム粒子を複数包含した改質剤などが挙げられる。
【0050】
有機色素としては、樹脂に対しては有害とされている紫外線を可視光線に変換する機能を有する化合物が好ましく用いられる。
光拡散剤や艶消し剤としては、ガラス微粒子、ポリシロキサン系架橋微粒子、架橋ポリマー微粒子、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどが挙げられる。
蛍光体として、蛍光顔料、蛍光染料、蛍光白色染料、蛍光増白剤、蛍光漂白剤などが挙げられる。
【0051】
これらの添加剤は、(メタ)アクリル樹脂を製造する際の重合反応液に添加してもよいし、重合反応により製造された(メタ)アクリル樹脂に添加してもよい。
【0052】
本発明の(メタ)アクリル樹脂組成物は、窒素雰囲気下300℃における加熱減量速度が、0.5%/分以下、好ましくは0.4%/分以下、より好ましくは0.3%/分以下である。本発明の(メタ)アクリル樹脂組成物では、窒素雰囲気下300℃に保持してから少なくとも60分間経過するまでの間は、上記加熱減量速度の範囲にあることが好ましい。
なお、加熱減量速度は、横軸に時間を、縦軸に窒素雰囲気下300℃の保持を開始した時点における質量に対する窒素雰囲気下300℃の保持を開始した以降に減った質量の割合〔%〕を配したグラフにデータをプロットしたときのその傾きである。すなわち、下式で定義される値である。
加熱減量速度[%/分]=d/dt(W(t))
tは時間を、W(t)は時間tにおける窒素雰囲気下300℃の保持を開始した時における質量に対する窒素雰囲気下300℃の保持を開始した以降に減った質量の割合〔%〕を、d/dtはW(t)をtで微分したことをそれぞれ表す。
【0053】
また、本発明の(メタ)アクリル樹脂組成物は、窒素雰囲気下300℃に60分間保持したときの加熱減量が、好ましくは30%以下、より好ましくは24%以下、さらに好ましくは18%以下である。
なお、加熱減量は、窒素雰囲気下300℃の保持を開始した時における質量W0と、窒素雰囲気下300℃、60分間の保持を完了した時における質量W1に基づいて下式で算出することができる。
加熱減量[%]=(W0−W1)/W0×100=△W/W0×100
【0054】
また、本発明の(メタ)アクリル樹脂組成物は、230℃および3.8kg荷重の条件におけるメルトフローレートの下限が、好ましくは8g/10分、より好ましくは9g/10分、さらに好ましくは10g/10分であり、該メルトフローレートの上限が、好ましくは35g/10分、より好ましくは32g/10分である。なお、メルトフローレートは、JIS K7210に準拠して、230℃、3.8kg荷重、10分間の条件で測定した値である。
【0055】
本発明の好適な(メタ)アクリル樹脂組成物は、シリンダ温度280℃および成形サイクル1分で得られる射出成形品の光路長200mmのイエロインデックス(YI1)が、好ましくは5以下、より好ましくは4以下、さらに好ましくは3以下である。
【0056】
また、本発明の好適な(メタ)アクリル樹脂組成物は、銅イオン濃度が、好ましくは0.005ppm未満、より好ましくは0.004ppm以下、さらに好ましくは0.002ppm以下である。銅イオン濃度がこの範囲になると、イエロインデックスを低く調節することができる。
【0057】
このような本発明の(メタ)アクリル樹脂組成物を、射出成形、圧縮成形、押出成形、真空成形などの方法で溶融加熱成形することによって各種成形品を得ることができる。特に本発明の(メタ)アクリル樹脂組成物は、高いシリンダ温度において射出成形した場合でも、シルバーの無い薄肉且つ広面積の成形品を高い生産効率で提供することができる。
【0058】
本発明の(メタ)アクリル樹脂組成物からなる成形品としては、例えば、広告塔、スタンド看板、袖看板、欄間看板、屋上看板などの看板部品;ショーケース、仕切板、店舗ディスプレイなどのディスプレイ部品;蛍光灯カバー、ムード照明カバー、ランプシェード、光天井、光壁、シャンデリアなどの照明部品;ペンダント、ミラーなどのインテリア部品;ドア、ドーム、安全窓ガラス、間仕切り、階段腰板、バルコニー腰板、レジャー用建築物の屋根などの建築用部品;航空機風防、パイロット用バイザー、オートバイ、モーターボート風防、バス用遮光板、自動車用サイドバイザー、リアバイザー、ヘッドウィング、ヘッドライトカバーなどの輸送機関係部品;音響映像用銘板、ステレオカバー、テレビ保護マスク、自動販売機などの電子機器部品;保育器、レントゲン部品などの医療機器部品;機械カバー、計器カバー、実験装置、定規、文字盤、観察窓などの機器関係部品;液晶保護板、導光板、導光フィルム、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、各種ディスプレイの前面板、拡散板などの光学関係部品;道路標識、案内板、カーブミラー、防音壁などの交通関係部品;自動車内装用表面材、携帯電話の表面材、マーキングフィルムなどのフィルム部材;洗濯機の天蓋材やコントロールパネル、炊飯ジャーの天面パネルなどの家電製品用部材;その他、温室、大型水槽、箱水槽、時計パネル、バスタブ、サニタリー、デスクマット、遊技部品、玩具、熔接時の顔面保護用マスクなどが挙げられる。これらのうち、厚さが1mm以下の薄肉の射出成形品が好ましく、特に厚さに対する樹脂流動長さの比が380以上の薄肉且つ広面積の射出成形品に好適である。薄肉且つ広面積の射出成形品の好適例としては導光板が挙げられる。
【0059】
なお、樹脂流動長さは射出成形金型のゲートとゲートから最も離れた金型内壁との間の距離である。フィルムゲートにおける樹脂流動長さは射出成形金型のランナーとスプルゥとの取り付け部と該取り付け部から最も離れた金型内壁との間の距離である。
本発明に係る成形品を得るための金型のゲートはフィルムゲートであることが好ましい。フィルムゲートは切削機で切断し、ルータ等で仕上げ処理を行う。液晶表示装置に用いられる導光板を得るための金型では、光源を設置する予定の無い端面にゲートを設けることが好ましい。
【実施例】
【0060】
以下に実施例および比較例を示して本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例によって制限されるものではない。また、本発明は、以上までに述べた、特性値、形態、製法、用途などの技術的特徴を表す事項を、任意に組み合わせて成るすべての態様を包含している。
【0061】
実施例および比較例における物性値の測定等は以下の方法によって実施した。
【0062】
(単量体混合物のイエロインデックス)
単量体混合物を、縦10mm、横10mm、長さ45mmの石英セルに入れ、日本電色工業株式会社製測色色差計ZE−2000を用い、横10mm方向の透過率を測定した。得られた測定値から、JIS Z−8722に記載の方法に準じてXYZ値を求め、JIS K−7105に記載の方法に準じて黄色度(YI)を算出した。
【0063】
(重合転化率)
島津製作所社製ガスクロマトグラフ GC−14Aに、カラムとしてGL Sciences Inc.製 INERT CAP 1(df=0.4μm、0.25mmI.D.×60m)を繋ぎ、injection温度を180℃に、detector温度を180℃に、カラム温度を60℃(5分間保持)→昇温速度10℃/分→200℃(10分間保持)に設定して、分析を行い、それに基づいて算出した。
【0064】
(銅イオン濃度の測定)
(メタ)アクリル樹脂組成物3〜5gをフラスコに入れて400℃で加熱して樹脂分が無くなるまで解重合させたのち、放冷した。これに、水4ml、硫酸0.5ml、および60%過塩素酸水溶液0.5mlを加えて、100℃で、泡が生じなくなるまで加熱した。次いで、温度を200℃に上げ、液が無色になるまで加熱した。次いで、温度を400℃に上げ、2時間加熱して、分解残渣を得た。これを純水で定容して水溶液とする。分解残渣の水溶液を原子吸光光度計(日立Z−8100型)で測定して(メタ)アクリル樹脂組成物中の銅イオン濃度を算出した。
【0065】
(メルトフローレート(MFR))
JIS K7210に準拠して、230℃、3.8kg荷重、10分間の条件で測定した。
【0066】
(加熱減量)
熱天秤(島津TGA-50型)により、窒素雰囲気下、昇温速度20℃/分で300℃
にし60分間保持したときの加熱減量速度および加熱減量を算出した。
【0067】
(イエロインデックス(YI1))
射出成形機(株式会社日本製鋼所製、J−110ELIII)を使用し、長さ200mm、幅60mm、厚さ6mmの平板用金型を用い、シリンダ温度280℃および金型温度60℃に設定し、成形サイクル1分にて平板を作製した。
株式会社島津製作所製の分光光度計PC-2200を用い、C光源にて、光路長200mm(平板L1およびL2の長さ)、波長340nm〜700nmの範囲で、1nm毎に光線透過率を測定した。得られた測定値からJIS Z−8722に記載の方法に準じてXYZ値を求め、JIS K−7105に記載の方法に準じて黄色度(YI)を算出した。算出されたイエロインデックスをYI1と称する。
【0068】
(射出成形における最低シリンダ温度および外観評価)
射出成形機(住友重機械工業株式会社製、SE−180DU−HP)にて、長さ205mm、幅160mmおよび厚さ0.5mmの平板用金型(厚さに対する樹脂流動長さ(190mm)の比が380である。)に、シリンダ温度を280℃〜320℃の範囲で10℃刻みで変更し、金型温度75℃、成形サイクル1分で射出成形した。金型と同サイズの平板が得られる最低シリンダ温度を記録した。また、その最低シリンダ温度時に得られた平板を肉眼で観察して以下の基準で評価した。
A;気泡(シルバ−)の発生無し、B;シルバー発生有り、C;全面発泡
【0069】
(単量体増加率)
ペレット状の(メタ)アクリル樹脂組成物をジクロロメタンに溶かし、該溶液をガスクロマトクロマトグラフで測定して単量体含有量M0を算出した。最低シリンダ温度時に得られた平板をジクロロメタンに溶かし、該溶液をガスクロマトクロマトグラフで測定して単量体含有量M1を算出した。単量体増加率を次式に基づいて算出した。
単量体増加率(%)=((M1-M0)/M0)×100
【0070】
実施例1
攪拌機および採取管付オートクレーブに、精製されたメタクリル酸メチル92質量部、およびアクリル酸メチル8質量部を入れて単量体混合物を調製した。単量体混合物のイエロインデックスは0.9であった。単量体混合物に重合開始剤(2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル(AIBN)、水素引抜能:1%、1時間半減期温度:83℃)0.007質量部および連鎖移動剤(n−オクチルメルカプタン)0.43質量部を加え溶解させて原料液を得た。窒素ガスにより製造装置内の酸素ガスを追出した。
前記原料液を、オートクレーブから一定量で排出し、温度120℃に制御された連続流通式槽型反応器に、平均滞留時間120分間となるように、一定流量で供給して、塊状重合させた。反応器の採取管より反応液を分取し、ガスクロマトグラフィーによって測定したところ、重合転化率は55質量%であった。
【0071】
反応器から一定流量で排出される液を、加熱器にて230℃に1分間かけて加熱し、それを250℃に制御された二軸押出機に一定流量で供給した。該二軸押出機において未反応単量体を主成分とする揮発分が分離除去されて、樹脂成分がストランド状に押し出された。該ストランドをペレタイザーでカットし、ペレット状の(メタ)アクリル樹脂組成物を得た。得られた(メタ)アクリル樹脂組成物の評価結果を表1に示す。
【0072】
実施例2
単量体混合物中のメタクリル酸メチルの量を95質量部に、アクリル酸メチルの量を5質量部に、n−オクチルメルカプタンの量を0.35質量部に変えた以外は実施例1と同じ手法によって、ペレット状の本発明の(メタ)アクリル樹脂組成物を得た。得られた(メタ)アクリル樹脂組成物の評価結果を表1に示す。
【0073】
比較例1
AIBNの量を0.0075質量部に、重合温度を175℃、平均滞留時間を1時間に変えた以外は実施例1と同じ手法によって、ペレット状の本発明の(メタ)アクリル樹脂組成物を得た。得られた(メタ)アクリル樹脂組成物の評価結果を表1に示す。
【0074】
比較例2
単量体混合物中のメタクリル酸メチルの量を95質量部に、アクリル酸メチルの量を5質量部に、n−オクチルメルカプタンの量を0.35質量部に、AIBNの量を0.0075質量部に、重合温度を175℃、平均滞留時間を1時間に変えた以外は実施例1と同じ手法によって、ペレット状の本発明の(メタ)アクリル樹脂組成物を得た。得られた(メタ)アクリル樹脂組成物の評価結果を表1に示す。
【0075】
比較例3
単量体混合物中のメタクリル酸メチルの量を99質量部に、アクリル酸メチルの量を1質量部に、n−オクチルメルカプタンの量を0.26質量部に変えた以外は実施例1と同じ手法によって、ペレット状の本発明の(メタ)アクリル樹脂組成物を得た。得られた(メタ)アクリル樹脂組成物の評価結果を表1に示す。
【0076】
比較例4
実施例1において、単量体混合物中100質量部に対して酢酸銅(II)を1.9×10-6質量部加えた事意外は実施例1と同じ手法によって、ペレット状の本発明の(メタ)アクリル樹脂組成物を得た。得られた(メタ)アクリル樹脂組成物の評価結果を表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
表1に示すように、本発明の(メタ)アクリル樹脂組成物は、射出成形性に優れるので、シルバーの無い外観良好な薄肉且つ広面積の成形品を提供することができる。これらのことから、本発明の(メタ)アクリル樹脂組成物を用いると、高いシリンダ温度において射出成形した場合でも、シルバーがない薄肉且つ広面積の成形品を高い生産効率で得ることができることがわかる。
【国際調査報告】