特表-13161267IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社クラレの特許一覧
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2013年10月31日
【発行日】2015年12月21日
(54)【発明の名称】メタクリル樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/14 20060101AFI20151124BHJP
   C08F 220/18 20060101ALI20151124BHJP
   C08F 2/38 20060101ALI20151124BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20151124BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20151124BHJP
   B29K 33/04 20060101ALN20151124BHJP
【FI】
   C08F220/14
   C08F220/18
   C08F2/38
   C08J5/00CEY
   B29C45/00
   B29K33:04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
【出願番号】特願2014-512351(P2014-512351)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2013年4月22日
(31)【優先権主張番号】特願2012-103790(P2012-103790)
(32)【優先日】2012年4月27日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
【住所又は居所】岡山県倉敷市酒津1621番地
(74)【代理人】
【識別番号】100109508
【弁理士】
【氏名又は名称】菊間 忠之
(72)【発明者】
【氏名】小西 啓之
【住所又は居所】新潟県胎内市倉敷町2番28号 株式会社クラレ内
(72)【発明者】
【氏名】松村 敦
【住所又は居所】新潟県胎内市倉敷町2番28号 株式会社クラレ内
(72)【発明者】
【氏名】小澤 宙
【住所又は居所】新潟県胎内市倉敷町2番28号 株式会社クラレ内
(72)【発明者】
【氏名】新村 卓郎
【住所又は居所】新潟県胎内市倉敷町2番28号 株式会社クラレ内
(72)【発明者】
【氏名】栗田 日出美
【住所又は居所】東京都千代田区大手町一丁目1番3号 株式会社クラレ内
(72)【発明者】
【氏名】田村 英孝
【住所又は居所】茨城県つくば市御幸が丘41番地 株式会社クラレ内
【テーマコード(参考)】
4F071
4F206
4J011
4J100
【Fターム(参考)】
4F071AA33
4F071AA88
4F071AF10Y
4F071AF53Y
4F071AH03
4F071AH05
4F071AH07
4F071AH11
4F071AH12
4F071AH16
4F071AH17
4F071BA01
4F071BB05
4F071BC01
4F071BC07
4F206AA21
4F206AH73
4F206AR17
4F206AR20
4F206JA07
4F206JL02
4J011AA05
4J011NA25
4J011NB04
4J100AL03P
4J100AL03R
4J100AL04R
4J100AL08Q
4J100BC02Q
4J100BC03Q
4J100BC04Q
4J100BC08Q
4J100BC09Q
4J100BC12Q
4J100CA05
4J100CA06
4J100DA36
4J100DA42
4J100FA04
4J100FA21
4J100JA28
4J100JA32
4J100JA43
4J100JA51
4J100JA57
4J100JA58
4J100JA67
(57)【要約】
メタクリル酸メチルに由来する構造単位30〜87質量%、メタクリル酸シクロアルキルエステルに由来する構造単位10〜50質量%、およびメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位3〜20質量%を含むメタクリル樹脂を99質量%以上含有し、230℃および3.8kg荷重の条件におけるメルトフローレートが5g/10分以上であるメタクリル樹脂組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタクリル酸メチルに由来する構造単位30〜87質量%、メタクリル酸シクロアルキルエステルに由来する構造単位10〜50質量%、およびメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位3〜20質量%を含むメタクリル樹脂を99質量%以上含有し、
230℃および3.8kg荷重の条件におけるメルトフローレートが5g/10分以上であるメタクリル樹脂組成物。
【請求項2】
メタクリル酸シクロアルキルエステルが、メタクリル酸ジシクロペンタニルである請求項1に記載のメタクリル樹脂組成物。
【請求項3】
メタクリル酸メチル以外のメタクリル酸アルキルエステルが、
式(1):
(ただし、R1およびR2はそれぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基を示し、R3は炭素数1〜6のアルキル基または水素原子を示す。)で表される化合物である請求項1または2に記載のメタクリル樹脂組成物。
【請求項4】
飽和吸水率が1.6質量%以下である請求項1〜3のいずれかひとつに記載のメタクリル樹脂組成物。
【請求項5】
メタクリル酸メチル30〜87質量%、メタクリル酸シクロアルキルエステル10〜50質量%、およびメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸アルキルエステル3〜20質量%からなる単量体混合物を、多価チオール化合物の存在下で重合することを含む請求項1
〜4のいずれかひとつに記載のメタクリル樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかひとつに記載のメタクリル樹脂組成物からなる成形品。
【請求項7】
厚さに対する樹脂流動長さの比が380以上である請求項6に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタクリル樹脂組成物に関する。より詳細に、本発明は、着色が少なく、透明性が高く、ヘイズが低く、衝撃強度が高く、飽和吸水率が低く、寸法変化が小さく、且つ外観良好な、薄肉且つ広面積の成形品を高い生産効率で得ることができるメタクリル樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
メタクリル樹脂は透明性、耐光性、表面硬度などに優れている。該メタクリル樹脂を含むメタクリル樹脂組成物を成形することによって、導光板、レンズなどの種々の光学部材を得ることができる。
【0003】
近年、軽量かつ広面積の液晶表示装置への需要が高く、それに対応して光学部材も薄肉化および広面積化が要求されている。さらに、表示装置の高画質化に伴って、屈折率やレタデーションなどの光学特性に高い精度が求められている。薄肉且つ広面積の成形品は、吸湿や熱などに伴う寸法変化が光学特性に大きく影響しやすい。そのため、光学部材の原料であるメタクリル樹脂組成物には、高い透明性、低い吸湿性、高い耐熱性、小さい寸法変化、高い衝撃強度、高い成形性などが強く要求される。
吸湿性を低くすることを目指したものとして、例えば、特許文献1に、エステル部分に炭素数5〜22の脂環式炭化水素基を有するメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステル5〜40質量部、メタクリル酸メチル50〜80質量部、N−置換マレイミド5〜40質量部、メタクリル酸ベンジル0〜30質量部、及びエステル部分に炭素数1〜5の炭化水素基を有するアクリル酸エステルまたは芳香族ビニル化合物1〜10質量部を、総質量部を100質量部として、得られる樹脂の配向複屈折の絶対値が1×10-6未満、メルトフローレートが15g/10分以上、及び曲げ破壊強度が50MPa以上となるような組成比で共重合することにより得られる樹脂を含有してなる光学用樹脂組成物が開示されている。また、特許文献2には、エステル部分が炭素数5〜22の脂環式炭化水素基を有するメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルと、メタクリル酸メチルとを必須単量体成分として用いて重合して得られる樹脂を、示差走査熱量計での吸熱ピーク温度が70℃以上である脂肪酸アミドまたは脂肪酸エステルを含む有機溶剤存在下で、洗浄して得られる、ガラス転移温度が120℃以上である光学素子用樹脂が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−18710号公報
【特許文献2】特開2006−89610号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】日本油脂株式会社技術資料「有機化酸化物の水素引抜き能と開始剤効率」(2003年4月作成)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1にて開示されている(メタ)アクリル樹脂は着色しやすい傾向があった。また、特許文献2の実施例に記載されている組成物は非常に脆く、薄肉且つ広面積の成形品を得ることは難しかった。
そこで、本発明の目的は、着色が少なく、透明性が高く、ヘイズが低く、衝撃強度が高く、飽和吸水率が低く、寸法変化が小さく、且つ外観良好な、薄肉且つ広面積の成形品を高い生産効率で得ることができるメタクリル樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った。その結果、以下の態様を包含する本発明を完成するに至った。
【0008】
〔1〕メタクリル酸メチルに由来する構造単位30〜87質量%、メタクリル酸シクロアルキルエステルに由来する構造単位10〜50質量%、およびメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位3〜20質量%を含むメタクリル樹脂を99質量%以上含有し、
230℃および3.8kg荷重の条件におけるメルトフローレートが5g/10分以上であるメタクリル樹脂組成物。
〔2〕メタクリル酸シクロアルキルがメタクリル酸ジシクロペンタニルである〔1〕に記載のメタクリル樹脂組成物。
〔3〕メタクリル酸メチル以外のメタクリル酸アルキルエステルが式(1)で表される化合物である〔1〕または〔2〕に記載のメタクリル樹脂組成物。
【0009】
【化1】
(式(1)中、R1およびR2はそれぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基を示し、R3は炭素数1〜6のアルキル基または水素原子を示す。)
【0010】
〔4〕飽和吸水率が1.6質量%以下である〔1〕〜〔3〕のいずれかひとつに記載のメタクリル樹脂組成物。
【0011】
〔5〕メタクリル酸メチル30〜87質量%、メタクリル酸シクロアルキルエステル10〜50質量%、およびメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸アルキルエステル3〜20質量%からなる単量体混合物を、多価チオール化合物の存在下で塊状重合することを含む〔1〕〜〔4〕のいずれかひとつに記載のメタクリル樹脂組成物の製造方法。
【0012】
〔6〕前記の〔1〕〜〔4〕のいずれかひとつに記載のメタクリル樹脂組成物からなる成形品。
〔7〕厚さに対する樹脂流動長さの比が380以上である〔6〕に記載の成形品。
【発明の効果】
【0013】
本発明のメタクリル樹脂組成物を用いると、着色が少なく、透明性が高く、ヘイズが低く、衝撃強度が高く、飽和吸水率が低く、寸法変化が小さく、且つ外観良好な、薄肉且つ広面積の成形品を高い生産効率で得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のメタクリル樹脂組成物は、メタクリル樹脂を含有するものである。
【0015】
本発明に用いられるメタクリル樹脂は、全単量体単位のうちに、メタクリル酸メチルに由来する構造単位を30〜87質量%、好ましくは50〜80質量%含むものである。
本発明に用いられるメタクリル樹脂は、全単量体単位のうちに、メタクリル酸シクロアルキルエステルに由来する構造単位を10〜50質量%、好ましくは10〜30質量%含むものである。メタクリル酸シクロアルキルエステル中のシクロアルキル基の炭素数は、5以上であることが好ましく、5〜12であることがさらに好ましい。
該メタクリル酸シクロアルキルエステルとしては、メタクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸メチルシクロペンチル、メタクリル酸エチルシクロペンチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸メチルシクロヘキシル、メタクリル酸エチルシクロヘキシル、メタクリル酸トリメチルシクロヘキシル、メタクリル酸シクロデシル、メタクリル酸ノルボルニル、メタクリル酸メチルノルボルニル、メタクリル酸エチルノルボルニル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ボルニル、メタクリル酸メンチル、メタクリル酸フェンチル、メタクリル酸アダマンチル、メタクリル酸メチルアダマンチル、メタクリル酸エチルアダマンチル、メタクリル酸ジメチルアダマンチル、メタクリル酸ジシクロペンタニル(式(2):〔別名〕メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル)、メタクリル酸メチルジシクロペンタニル、メタクリル酸ジシクロペンテニル等が挙げられる。
これらのうち、低吸湿性の点で、メタクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸メチルシクロヘキシル、メタクリル酸トリメチルシクロヘキシル、メタクリル酸ノルボルニル、メタクリル酸メチルノルボルニル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ボルニル、メタクリル酸メンチル、メタクリル酸フェンチル、メタクリル酸アダマンチル、メタクリル酸ジメチルアダマンチル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、メタクリル酸メチルジシクロペンタニルが好ましく、メタクリル酸ジシクロペンタニルが特に好ましい。
【0016】
【化2】
【0017】
本発明に用いられるメタクリル樹脂は、全単量体単位のうちに、メタクリル酸メチル以外のメタクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位を3〜20質量%、好ましくは5〜15質量%含むものである。かかるメタクリル酸アルキルエステル中のアルキル基の炭素数は2以上であり、好ましくは2〜12である。
該メタクリル酸アルキルエステルとしては、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−メチルブチル、メタクリル酸2−メチルペンチル、メタクリル酸2−エチルブチル、メタクリル酸3−メチルペンチル、メタクリル酸2−メチルヘキシル、メタクリル酸3−メチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルへキシルなどが挙げられる。これらのうち、式(1)で表される化合物が好ましい。
【0018】
【化3】
式(1)中、R1およびR2はそれぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基を示し、R3は炭素数1〜6のアルキル基または水素原子を示す。
【0019】
本発明に用いられるメタクリル樹脂は、メタクリル酸メチル、メタクリル酸シクロアルキルエステルおよびメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位に加えて、これら以外の単量体に由来する構造単位を含んでいてもよい。かかる単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ノルボニル、アクリル酸ジシクロペンタニルなどのアクリル酸エステルなどの一分子中に重合性アルケニル基を一つだけ有する非架橋性ビニル系単量体が挙げられる。該単量体に由来する構造単位の量は、全単量体単位のうちに、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
【0020】
メタクリル樹脂は、重量平均分子量(以下、Mwと略称することがある。)が、好ましくは5万〜20万、より好ましくは8万〜15万、特に好ましくは9万〜12万である。Mwが小さすぎるとメタクリル樹脂組成物から得られる成形品の耐衝撃性や靭性が低下傾向になる。Mwが大きすぎるとメタクリル樹脂組成物の流動性が低下し成形加工性が低下傾向になる。
【0021】
メタクリル樹脂は、重量平均分子量/数平均分子量の比(以下、この比を分子量分布と表記することがある。)が、好ましくは1.7〜3.0、より好ましくは1.8〜2.8、特に好ましくは1.9〜2.7である。分子量分布が小さいとメタクリル樹脂組成物の成形加工性が低下傾向になる。分子量分布が大きいとメタクリル樹脂組成物から得られる成形品の耐衝撃性が低下傾向になり、脆くなりやすい。
なお、重量平均分子量および数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)で測定した標準ポリスチレン換算の分子量である。
また、メタクリル樹脂の分子量や分子量分布は、重合開始剤および連鎖移動剤の種類や量などを調整することによって制御できる。
【0022】
メタクリル樹脂は、上記質量比のメタクリル酸メチルとメタクリル酸シクロアルキルエステルとメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸アルキルエステルとを少なくとも含む単量体混合物を重合させることによって得られる。
【0023】
メタクリル樹脂の原料であるメタクリル酸メチル、メタクリル酸シクロアルキルエステル、メタクリル酸メチル以外のメタクリル酸アルキルエステルおよび任意成分であるその他の単量体は、イエロインデックスが2以下であることが好ましく、1以下であることがより好ましい。単量体のイエロインデックスが小さいと、得られる(メタ)アクリル樹脂組成物を成形した場合に、残留歪みが少なく且つ着色が殆んどない薄肉且つ広面積の成形品が高い生産効率で得られやすい。後述するようにメタクリル樹脂を製造するための塊状重合または溶液重合反応においては、重合転化率をあまり高くしないので、未反応の単量体が重合反応液中に残る。未反応単量体は重合反応液から回収して再び重合反応に使用する。回収された単量体のイエロインデックスは回収時などに加えられる熱によって高くなることがある。回収された単量体は、適切な方法で精製して、イエロインデックスを小さくすることが好ましい。なお、イエロインデックスは、日本電色工業株式会社製の測色色差計ZE−2000を用い、JIS Z−8722に準拠して測定した値である。
【0024】
単量体混合物の重合反応は、懸濁重合法、塊状重合法または溶液重合法、好ましくは懸濁重合法または塊状重合法で行う。重合反応は単量体混合物に重合開始剤を添加することによって開始される。また、必要に応じて連鎖移動剤を単量体混合物に添加することによって、得られる重合体の分子量などを調節できる。なお、単量体混合物は、溶存酸素量が好ましくは10ppm以下、より好ましくは5ppm以下である、さらに好ましくは4ppm以下、最も好ましくは3ppm以下である。このような範囲の溶存酸素量にすると重合反応がスムーズに進行し、シルバーや着色の無い成形品が得られやすくなる。
【0025】
本発明で用いられる重合開始剤は、反応性ラジカルを発生するものであれば特に限定されない。例えば、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート 、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエ−ト、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエ−ト、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、ベンゾイルパーオキシド 、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)が挙げられる。これらのうちt−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)が好ましい。
【0026】
これらのうち、重合開始剤は、1時間半減期温度が60〜140℃のものが好ましく、80〜120℃のものがより好ましい。また、塊状重合に用いられる重合開始剤は、水素引抜き能が30%以下のものが好ましく、20%以下のものがより好ましく、10%以下のものがさらに好ましい。これら重合開始剤は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、重合開始剤の添加量や添加方法などは、目的に応じて適宜設定すればよく特に限定されるものでない。例えば、塊状重合に用いられる重合開始剤の量は、単量体混合物100質量部に対して、好ましくは0.0001〜0.02質量部、より好ましくは0.001〜0.01質量部である。
【0027】
なお、水素引抜き能は、重合開始剤製造業者の技術資料(例えば、非特許文献1)などによって知ることができる。また、α−メチルスチレンダイマーを使用したラジカルトラッピング法、即ちα−メチルスチレンダイマートラッピング法によって測定することができる。当該測定は、一般に、次のようにして行われる。まず、ラジカルトラッピング剤としてのα−メチルスチレンダイマーの共存下で重合開始剤を開裂させてラジカル断片を生成させる。生成したラジカル断片のうち、水素引抜き能が低いラジカル断片はα−メチルスチレンダイマーの二重結合に付加して捕捉される。一方、水素引抜き能が高いラジカル断片はシクロヘキサンから水素を引き抜き、シクロヘキシルラジカルを発生させ、該シクロヘキシルラジカルがα−メチルスチレンダイマーの二重結合に付加して捕捉され、シクロヘキサン捕捉生成物を生成する。そこで、シクロヘキサン、またはシクロヘキサン捕捉生成物を定量することで求められる、理論的なラジカル断片発生量に対する水素引抜き能が高いラジカル断片の割合(モル分率)を水素引抜き能とする。
【0028】
連鎖移動剤としては、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、1,4−ブタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、エチレングリコールビスチオプロピオネート、ブタンジオールビスチオグリコレート、ブタンジオールビスチオプロピオネート、ヘキサンジオールビスチオグリコレート、ヘキサンジオールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリス−(β−チオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネートなどのアルキルメルカプタン類;α−メチルスチレンダイマー;テルピノレンなどが挙げられる。これら連鎖移動剤は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタンなどの単官能アルキルメルカプタンやペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネートなどの多官能メルカプタンが好ましく、多官能メルカプタン(多価チオール)がより好ましい。連鎖移動剤の使用量は、単量体混合物100質量部に対して、好ましくは0.1〜1質量部、より好ましくは0.2〜0.8質量部、さらに好ましくは0.3〜0.6質量部である。
【0029】
溶液重合に用いられる溶媒は、原料である単量体混合物と生成物であるメタクリル樹脂に対して溶解能を有するものであれば特に制限されないが、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素が好ましい。これらの溶媒は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。かかる溶媒の使用量は、単量体混合物100質量部に対して、好ましくは0〜100質量部、より好ましくは0〜90質量部である。溶媒の使用量が多いほど、反応液の粘度が下がり取り扱い性が良好となるが生産性が低下する傾向がある。
【0030】
塊状重合法または溶液重合法における単量体混合物の重合転化率は、好ましくは20〜80質量%、より好ましくは30〜70質量%、さらに好ましくは35〜65質量%にする。重合転化率が、このような範囲にあると、メルトフローレートなどの特性を後述する範囲に調整することが容易である。なお、重合転化率が高すぎると粘度上昇のために大きな攪拌動力が必要となる傾向がある。重合転化率が低すぎると脱揮不十分となりやすくメタクリル樹脂からなる成形品にシルバーなどの外観不良を起こす傾向がある。
【0031】
塊状重合法または溶液重合法を行う装置としては、攪拌機付きの槽型反応器、攪拌機付きの管型反応器、静的攪拌能力を有する管型反応器などが挙げられる。これら装置を1基以上用いてもよいし、また、異なる反応器を2基以上の組み合せて用いてもよい。また、装置は回分式または連続流通式のどちらであってもよい。用いる攪拌機は、反応器の様式に応じて選択することができる。攪拌機として、例えば、動的撹拌機、静的攪拌機が挙げられる。本発明に用いられるメタクリル樹脂を得るために最も好適な装置は、連続流通式槽型反応器を少なくとも一つ有するものである。複数の連続流通式槽型反応器は直列に繋いでもよいし、並列に繋いでもよい。
【0032】
槽型反応器には、通常、反応槽内の液を撹拌するための撹拌手段、単量体混合物や重合副資材などを反応槽に供給するための供給部、反応槽から反応生成物を抜き出すための抜出部とを有する。連続流通式の反応では、反応槽に供給する量と反応槽から抜き出す量とをバランスさせて、反応槽内の液量がほぼ一定になるようにする。反応槽内の液量は、反応槽の容積に対して、好ましくは1/4〜3/4、より好ましくは1/3〜2/3である。
【0033】
撹拌手段としては、マックスブレンド式撹拌装置、中央に配した縦型回転軸の回りを回転する格子状の翼を有する撹拌装置、プロペラ式撹拌装置、スクリュー式撹拌装置などが挙げられる。これらのうちでマックスブレンド式撹拌装置が均一混合性の点から好ましく用いられる。
メタクリル酸メチル、メタクリル酸シクロアルキルエステル、メタクリル酸メチル以外のメタクリル酸アルキルエステルおよび任意成分であるその他の単量体並びに重合開始剤および連鎖移動剤は、全てを反応槽に供給する前に混ぜ合わせて反応槽に供給してもよいし、別々に反応槽に供給してもよい。本発明においては全てを反応槽に供給する前に混ぜ合わせて反応槽に供給する方法が好ましい。
【0034】
メタクリル酸メチル、メタクリル酸シクロアルキルエステル、メタクリル酸メチル以外のメタクリル酸アルキルエステル、重合開始剤および連鎖移動剤の混ぜ合わせは、窒素ガスなどの不活性雰囲気中で行うことが好ましい。また、連続流通式の操業を円滑に行うために、メタクリル酸メチル、メタクリル酸シクロアルキルエステル、メタクリル酸メチル以外のメタクリル酸アルキルエステル、重合開始剤および連鎖移動剤を貯留するタンクからそれぞれを管を介して反応槽の前段に設けた混合器に供給し連続的に混ぜ合わせ、該混合物を反応槽に連続的に流すことが好ましい。該混合器は動的撹拌機または静的攪拌機を備えたものであることができる。
【0035】
塊状重合法または溶液重合法において、重合反応時の温度は、好ましくは90〜135℃、より好ましくは95〜130℃である。重合反応時の温度がこのような範囲にあるとメルトフローレートなどの特性を後述する範囲に調整することが容易である。
重合反応の時間は、0.5〜4時間が好ましく、1〜3時間がより好ましい。なお、連続流通式反応器の場合、重合反応時間は反応器における平均滞留時間である。重合反応時間が短すぎると重合開始剤の必要量が増える。また重合開始剤の増量により重合反応の制御が難しくなるとともに、分子量の制御が困難になる傾向がある。一方、重合反応時間が長すぎると反応が定常状態になるまでに時間を要し、生産性が低下する傾向がある。また、重合は窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。
【0036】
重合終了後、必要に応じて、未反応の単量体および溶剤を除去する。除去方法は特に制限されないが、加熱脱揮が好ましい。脱揮法としては、平衡フラッシュ方式や断熱フラッシュ方式が挙げられる。特に断熱フラッシュ方式では、好ましくは200〜300℃、より好ましくは220〜270℃の温度で脱揮を行う。200℃未満では脱揮に時間を要し、脱揮不十分になりやすい。脱揮が不十分なときには成形品にシルバーなどの外観不良を起こすことがある。逆に300℃を超えると酸化、焼けなどによってメタクリル樹脂組成物が着色する傾向がある。
【0037】
本発明のメタクリル樹脂組成物に含有するメタクリル樹脂の量は、メタクリル樹脂組成物全体に対して、99質量%以上、好ましくは99.5質量%以上、より好ましくは99.8質量%以上である。
【0038】
本発明のメタクリル樹脂組成物は、その他必要に応じて各種の添加剤を0.5質量%以下で、好ましくは0.2質量%以下で含有していてもよい。添加剤の含有量が多すぎると、成形品にシルバーなどの外観不良を起こすことがある。
添加剤としては、酸化防止剤、熱劣化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、離型剤、高分子加工助剤、帯電防止剤、難燃剤、染顔料、光拡散剤、有機色素、艶消し剤、耐衝撃性改質剤、蛍光体などが挙げられる。
【0039】
酸化防止剤は、酸素存在下においてそれ単体で樹脂の酸化劣化防止に効果を有するものである。例えば、リン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤などが挙げられる。これらの酸化防止剤は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中、着色による光学特性の劣化防止効果の観点から、リン系酸化防止剤やヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく、リン系酸化防止剤とヒンダードフェノール系酸化防止剤との併用がより好ましい。
リン系酸化防止剤とヒンダードフェノール系酸化防止剤とを併用する場合、その割合は特に制限されないが、リン系酸化防止剤/ヒンダードフェノール系酸化防止剤の質量比で、好ましくは1/5〜2/1、より好ましくは1/2〜1/1である。
【0040】
リン系酸化防止剤としては、2,2−メチレンビス(4,6−ジt−ブチルフェニル)オクチルホスファイト(旭電化社製;商品名:アデカスタブHP−10)、トリス(2,4−ジt−ブチルフェニル)ホスファイト(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製;商品名:IRUGAFOS168)などが好ましい。
【0041】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製;商品名IRGANOX1010)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製;商品名IRGANOX1076)などが好ましい。
【0042】
熱劣化防止剤は、実質上無酸素の状態下で高熱にさらされたときに生じるポリマーラジカルを捕捉することによって樹脂の熱劣化を防止できるものである。
該熱劣化防止剤としては、2−t−ブチル−6−(3’−t−ブチル−5’−メチル−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート(住友化学社製;商品名スミライザーGM)、2,4−ジ−t−アミル−6−(3’,5’−ジ−t−アミル−2’−ヒドロキシ−α−メチルベンジル)フェニルアクリレート(住友化学社製;商品名スミライザーGS)などが好ましい。
【0043】
紫外線吸収剤は、紫外線を吸収する能力を有する化合物である。紫外線吸収剤は、主に光エネルギーを熱エネルギーに変換する機能を有すると言われる化合物である。
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、ベンゾエート類、サリシレート類、シアノアクリレート類、蓚酸アニリド類、マロン酸エステル類、ホルムアミジン類などが挙げられる。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、ベンゾトリアゾール類、または波長380〜450nmにおけるモル吸光係数の最大値εmaxが1200dm3・mol-1cm-1以下である紫外線吸収剤が好ましい。
【0044】
ベンゾトリアゾール類は、紫外線被照による着色などの光学特性低下を抑制する効果が高いので、本発明のメタクリル樹脂組成物を上記のような特性が要求される用途に適用する場合に用いる紫外線吸収剤として好ましい。
【0045】
ベンゾトリアゾール類としては、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製;商品名TINUVIN329)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製;商品名TINUVIN234)などが好ましい。
【0046】
また、波長380〜450nmにおけるモル吸光係数の最大値εmaxが1200dm3・mol-1cm-1以下である紫外線吸収剤は、得られる成形品の黄色味を抑制できる。該紫外線吸収剤は、本発明のメタクリル樹脂組成物をこのような特性が要求される用途に適用する場合に用いる紫外線吸収剤として好ましい。
【0047】
なお、紫外線吸収剤のモル吸光係数の最大値εmaxは、次のようにして測定する。シクロヘキサン1Lに紫外線吸収剤10.00mgを添加し、目視による観察で未溶解物がないように溶解させる。この溶液を1cm×1cm×3cmの石英ガラスセルに注入し、日立製作所社製U−3410型分光光度計を用いて、波長380〜450nmでの吸光度を測定する。紫外線吸収剤の分子量(Mw)と、測定された吸光度の最大値(Amax)とから次式により計算し、モル吸光係数の最大値εmaxを算出する。
【0048】
εmax=[Amax/(10×10-3)]×Mw
【0049】
波長380〜450nmにおけるモル吸光係数の最大値εmaxが1200dm3・mol-1cm-1以下である紫外線吸収剤としては、2−エチル−2’−エトキシ−オキサルアニリド(クラリアントジャパン社製;商品名サンデユボアVSU)などが挙げられる。
これら紫外線吸収剤の中、紫外線被照による樹脂劣化が抑えられるという観点からベンゾトリアゾール類が好ましく用いられる。
【0050】
光安定剤は、主に光による酸化で生成するラジカルを捕捉する機能を有すると言われる化合物である。好適な光安定剤としては、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン骨格を持つ化合物などのヒンダードアミン類が挙げられる。
【0051】
離型剤は、成形品の金型からの離型を容易にする機能を有する化合物である。離型剤としては、セチルアルコール、ステアリルアルコールなどの高級アルコール類;ステアリン酸モノグリセライド、ステアリン酸ジグリセライドなどのグリセリン高級脂肪酸エステルなどが挙げられる。本発明においては、離型剤として、高級アルコール類とグリセリン脂肪酸モノエステルとを併用することが好ましい。高級アルコール類とグリセリン脂肪酸モノエステルとを併用する場合、その割合は特に制限されないが、高級アルコール類/グリセリン脂肪酸モノエステルの質量比が、好ましくは2.5/1〜3.5/1、より好ましくは2.8/1〜3.2/1である。
【0052】
高分子加工助剤は、メタクリル樹脂組成物を成形する際、厚さ精度および薄膜化に効果を発揮する化合物である。高分子加工助剤は、通常、乳化重合法によって製造することができる、0.05〜0.5μmの粒子径を有する重合体粒子である。
該重合体粒子は、単一組成比および単一極限粘度の重合体からなる単層粒子であってもよいし、また組成比または極限粘度の異なる2種以上の重合体からなる多層粒子であってもよい。この中でも、内層に低い極限粘度を有する重合体層を有し、外層に5dl/g以上の高い極限粘度を有する重合体層を有する2層構造の粒子が好ましいものとして挙げられる。
【0053】
高分子加工助剤は、剤全体としての極限粘度が3〜6dl/gであることが好ましい。極限粘度が小さすぎると成形性の改善効果が低い。極限粘度が大きすぎるとメタクリル樹脂組成物の溶融流動性の低下を招きやすい。
【0054】
本発明のメタクリル樹脂組成物には、耐衝撃性改質剤を添加してもよい。耐衝撃性改質剤としては、アクリル系ゴムもしくはジエン系ゴムをコア層成分として含むコアシェル型改質剤;ゴム粒子を複数包含した改質剤などが挙げられる。
【0055】
有機色素としては、樹脂に対しては有害とされている紫外線を可視光線に変換する機能を有する化合物が好ましく用いられる。
光拡散剤や艶消し剤としては、ガラス微粒子、ポリシロキサン系架橋微粒子、架橋ポリマー微粒子、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどが挙げられる。
蛍光体として、蛍光顔料、蛍光染料、蛍光白色染料、蛍光増白剤、蛍光漂白剤などが挙げられる。
【0056】
これらの添加剤は、メタクリル樹脂を製造する際の重合反応液に添加してもよいし、重合反応により製造されたメタクリル樹脂に添加してもよい。
【0057】
本発明のメタクリル樹脂組成物は、230℃および3.8kg荷重の条件におけるメルトフローレートが5g/10分以上、好ましくは8〜35g/10分、より好ましくは10〜32g/10分である。なお、メルトフローレートは、JIS K7210に準拠して、230℃、3.8kg荷重、10分間の条件で測定した値である。
【0058】
本発明の好適なメタクリル樹脂組成物は、飽和吸水率が、好ましくは1.6質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下である。
また、本発明の好適なメタクリル樹脂組成物は、シリンダ温度260℃および成形サイクル1分で得られる射出成形品の板厚3mmのイエロインデックス(YI)が、好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1以下である。
【0059】
このような本発明のメタクリル樹脂組成物を、射出成形、圧縮成形、押出成形、真空成形などの方法で溶融加熱成形することによって各種成形品を得ることができる。特に本発明のメタクリル樹脂組成物は、透明性が高く、ヘイズが低く、衝撃強度が高く、飽和吸水率が低く、寸法変化が小さく、且つ外観良好な薄肉且つ広面積の成形品を高い生産効率で提供することができる。
【0060】
本発明のメタクリル樹脂組成物からなる成形品としては、例えば、広告塔、スタンド看板、袖看板、欄間看板、屋上看板などの看板部品;ショーケース、仕切板、店舗ディスプレイなどのディスプレイ部品;蛍光灯カバー、ムード照明カバー、ランプシェード、光天井、光壁、シャンデリアなどの照明部品;ペンダント、ミラーなどのインテリア部品;ドア、ドーム、安全窓ガラス、間仕切り、階段腰板、バルコニー腰板、レジャー用建築物の屋根などの建築用部品;航空機風防、パイロット用バイザー、オートバイ、モーターボート風防、バス用遮光板、自動車用サイドバイザー、リアバイザー、ヘッドウィング、ヘッドライトカバーなどの輸送機関係部品;音響映像用銘板、ステレオカバー、テレビ保護マスク、自動販売機などの電子機器部品;保育器、レントゲン部品などの医療機器部品;機械カバー、計器カバー、実験装置、定規、文字盤、観察窓などの機器関係部品;液晶保護板、導光板、導光フィルム、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、各種ディスプレイの前面板、拡散板などの光学関係部品;道路標識、案内板、カーブミラー、防音壁などの交通関係部品;自動車内装用表面材、携帯電話の表面材、マーキングフィルムなどのフィルム部材;洗濯機の天蓋材やコントロールパネル、炊飯ジャーの天面パネルなどの家電製品用部材;その他、温室、大型水槽、箱水槽、時計パネル、バスタブ、サニタリー、デスクマット、遊技部品、玩具、熔接時の顔面保護用マスクなどが挙げられる。これらのうち、厚さが1mm以下の薄肉の射出成形品が好ましく、特に厚さに対する樹脂流動長さの比が380以上の薄肉且つ広面積の射出成形品に好適である。薄肉且つ広面積の射出成形品の好例としては導光板が挙げられる。
【0061】
なお、樹脂流動長さとは射出成形金型のゲートとゲートから最も離れた金型内壁との間の距離である。フィルムゲートにおける樹脂流動長さは射出成形金型のランナーとスプルゥとの取り付け部と該取り付け部から最も離れた金型内壁との間の距離である。
本発明に係る薄肉且つ広面積の成形品を得るための金型のゲートはフィルムゲートであることが好ましい。フィルムゲートは切削機で切断し、ルータ等で仕上げ処理を行う。液晶表示装置に用いられる導光板を得るための金型では、光源を設置する予定の無い端面にゲートを設けることが好ましい。また本発明に係る成形品を得るための金型のゲートとしてピンポイントゲート(別名:センターゲートまたはピンゲート)を用いることができる。ピンポイントゲートはランナーとの切断が自動的に為され、仕上げ処理などの手間が少ない。
【実施例】
【0062】
以下に実施例および比較例を示して本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例によって制限されるものではない。また、本願発明は、以上までに述べた、特性値、形態、製法、用途などの技術的特徴を表す事項を、任意に組み合わせて成るすべての態様を包含している。
【0063】
実施例および比較例における単量体、無機塩および懸濁分散剤は、メタクリル酸メチルをMMA、メタクリル酸ジシクロペンタニルをTCDMA、アクリル酸メチルをMA、メタクリル酸エチルをEMA、メタクリル酸2−エチルへキシルを2―EHMA、N−シクロヘキシルマレイミドをCHMI、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリルをAIBN、n−オクチルメルカプタンをOM、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネートをPETP、燐酸二水素ナトリウムを(A−1)、燐酸水素(二)ナトリウムを(A−2)、硫酸ナトリウムを(A−3)と記載する。
【0064】
実施例および比較例で使用した懸濁分散剤(B)は、スチレンp−スルホン酸ナトリウム100g、メタクリル酸ナトリウム20g、メタクリル酸メチル30g、イオン交換水600gを2Lのセパラブルフラスコに仕込み、窒素雰囲気下、撹拌しながら60℃に昇温後、過硫酸アンモニウム0.2gを添加して3時間保持し、ついで70℃で3時間保持後冷却して37Pa・s(25℃)の無色透明な溶液として得た。
また、実施例および比較例で使用した懸濁分散剤(C)は、水酸化カリウム112g、イオン交換水300gを2Lセパラブルフラスコに仕込み、窒素雰囲気下、撹拌しながら50℃に昇温し、メタクリル酸メチル200gを添加する。ケン化発熱により内温が上昇し、70℃で1.5時間保持後60℃まで降温し、過硫酸アンモニウム0.2gを添加して5時間後イオン交換水500gを加えて稀釈し、2.0Pa・s(25℃)の白濁した溶液として得た。
【0065】
実施例および比較例における物性値の測定等は以下の方法によって実施した。
【0066】
(単量体混合物のイエロインデックス)
単量体混合物を、縦10mm、横10mm、長さ45mmの石英セルに入れ、日本電色工業株式会社製測色色差計ZE−2000を用い、横10mm方向の透過率を測定した。得られた測定値から、JIS Z−8722に記載の方法に準じてXYZ値を求め、JIS K−7105に記載の方法に準じて黄色度(YI)を算出した。
【0067】
(重合転化率)
島津製作所社製ガスクロマトグラフ GC−14Aに、カラムとしてGL Sciences Inc.製 INERT CAP 1(df=0.4μm、0.25mmI.D.×60m)を繋ぎ、injection温度を250℃に、detector温度を250℃に、カラム温度を60℃(5分間保持)→昇温速度10℃/分→250℃(10分間保持)に設定して、分析を行い、それに基づいて算出した。
【0068】
(メルトフローレート)
JIS K7210に準拠して、230℃、3.8kg荷重、10分間の条件で測定した。
【0069】
(熱分解温度)
空気中での熱質量分析(TG)を行い。得られた減量曲線の変曲点から導出した。
【0070】
(飽和吸水率)
株式会社日本製鋼所製射出成形機:J−110ELIIIにて、長さ290mm、幅100mmおよび厚さ2mmの平板用金型に、シリンダ温度260℃、金型温度70℃の条件で射出成形して平板を得た。この平板を、温度50℃、5mmHgの条件下において3日間を真空乾燥させて、絶乾状態にした。絶乾状態の平板の質量W0を測定した。その後、絶乾状態の平板を温度60℃、湿度90%の条件下で200時間放置した。その後、平板の質量W1を測定した。下式により飽和吸水率(%)を算出した。
飽和吸水率={W1−W0}/W0×100
【0071】
(シャルピー衝撃強度)
株式会社東洋精機製デジタル衝撃試験機「DG−CB」を用い、JIS K7111試験法に準拠してノッチ無し試験片のシャルピー衝撃強度を測定した。
【0072】
(荷重撓み温度)
絶乾状態の試験片(寸法127mm×14mm×6.4mm)を用い、ASTM D648(荷重18.6kg/cm2)に基づく試験により測定した。
【0073】
(イエロインデックス(YI1))
株式会社日本製鋼所製射出成形機J−110ELIIIを使用し、長さ50mm、幅50mmおよび厚さ3mmの平板用金型を用い、シリンダ温度260℃および金型温度70℃に設定し、成形サイクル1分にて平板を作製した。日本電色工業株式会社製の測色色差計ZE−2000を用い、光路長3mmにおける光線透過率を波長340nm〜700nmの範囲で1nm毎に測定した。得られた測定値から、JIS Z−8722に記載の方法に準じてXYZ値を求め、JIS K−7105に記載の方法に準じてイエロインデックス(YI1)を算出した。
【0074】
(ヘイズ)
日本電色工業株式会社製の濁度計「NDH−5000」を用い、平板について、JIS K7105に準じて光路長3mmで測定した。
【0075】
(射出成形性)
住友重機械工業株式会社製射出成形機:SE−180DU−HPにて、長さ205mm、幅160mmおよび厚さ0.5mmの平板用金型(厚さに対する樹脂流動長さ(190mm)の比が380である。)に、シリンダ温度290℃、金型温度75℃、成形サイクル1分で射出成形し、平板Tを製造した。得られた平板Tを肉眼で観察し、以下の基準で評価した。
ヒケなどが有り成形不良(×)
ヒケなどが無く成形良好(○)
【0076】
(寸法変化率)
平板Tを温度60℃で相対湿度90%の恒温器に入れて大気中で500時間放置した。恒温器から平板を取り出して、長さ方向の寸法を測定した。恒温器に入れる前の長さ方向の寸法からの寸法変化率を算出した。
【0077】
実施例1
MMA67質量部、TCDMA20質量部、EMA10質量部、MA3質量部を入れて単量体混合物を調製した。単量体混合物のイエロインデックスは0.7であった。単量体混合物100質量部に対して、AIBN0.06質量部およびOM0.3質量部を加え溶解させて原料液を得た。この原料液20kgと、イオン交換水100質量部、(A−1)0.2質量部、(A−2)0.2質量部、懸濁分散剤(B)0.2質量部および懸濁分散剤(C)0.05質量部からなる水溶液50kgを、ジャケット付きの100L耐圧重合槽に仕込み、窒素雰囲気下で撹拌し、ジャケットに温水を通して重合温度80℃で重合を開始した。重合開始後2時間で重合槽を密閉し、ジャケットにスチームを通して120℃に昇温し、さらに2時間保持して重合を完結させた。
重合系は泡立ちもなく、重合槽壁面あるいは撹拌翼への付着ポリマーは殆ど観察されなかった。得られたポリマー分散液を適量のイオン交換水で洗浄し、脱水して平均粒径0.26mmの均一なビーズ状のメタクリル樹脂組成物を得た。該ビーズ状のメタクリル樹脂は、熱風乾燥機にて80℃で4時間以上乾燥してから評価に供した。
該ビーズ状のメタクリル樹脂は260℃に制御された二軸押出機に供給し、未反応単量体を主成分とする揮発分が分離除去されて、樹脂成分がストランド状に押し出された。該ストランドをペレタイザーでカットし、ペレット状のメタクリル樹脂組成物を得た。得られたメタクリル樹脂組成物の評価結果を表1に示す。
【0078】
実施例2〜3および比較例1〜7
表1に示す処方に変えた以外は実施例1と同じ手法によって、ペレット状のメタクリル樹脂組成物を得た。これらのメタクリル樹脂組成物の評価結果を表1に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
表1に示すように、本発明のメタクリル樹脂組成物を用いると射出成形法によって、着色が少なく、透明性が高く、ヘイズが低く、衝撃強度が高く、飽和吸水率が低く、寸法変化が小さく、外観良好な薄肉且つ広面積の成形品を高い生産効率で得ることができる。
【国際調査報告】