(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2013年6月13日
【発行日】2015年4月27日
(54)【発明の名称】有機半導体材料及び有機電子デバイス
(51)【国際特許分類】
H01L 51/30 20060101AFI20150331BHJP
H01L 51/05 20060101ALI20150331BHJP
H01L 51/40 20060101ALI20150331BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20150331BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20150331BHJP
H01L 51/46 20060101ALI20150331BHJP
C07D 487/22 20060101ALI20150331BHJP
【FI】
H01L29/28 250H
H01L29/28 100A
H01L29/28 310J
H01L29/78 618B
H05B33/14 A
H05B33/22 B
H05B33/22 D
H01L31/04 154C
C07D487/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】25
【出願番号】特願2013-548219(P2013-548219)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2012年12月3日
(31)【優先権主張番号】特願2011-268919(P2011-268919)
(32)【優先日】2011年12月8日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】新日鉄住金化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100082739
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 勝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣
(74)【代理人】
【識別番号】100088203
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 英一
(72)【発明者】
【氏名】軸丸 真名
【テーマコード(参考)】
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【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
高電荷移動度,溶媒可溶性、酸化安定性、良好な製膜性を有する有機半導体材料並びにこれを使用した有機電子デバイス、例えば有機半導体素子を提供する。
下記一般式(1)で示されるインドロカルバゾール骨格を有する化合物を含有する有機半導体材料である。また、この有機半導体材料を使用した有機半導体膜、又は有機電子デバイスである。本発明の有機半導体材料を薄膜層として有する有機電子デバイスとしては、発光素子、有機薄膜トランジスタ素子又は光起電力素子がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される化合物を含有することを特徴とする有機半導体材料。
式(1)中、Rはそれぞれ独立に水素、又は炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基を示し、nは1〜4の整数を表す。
【請求項2】
一般式(1)で示される化合物が、下記一般式(2)で示される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の有機半導体材料。
式(2)中、Rはそれぞれ独立に水素、又は炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基を示す。
【請求項3】
請求項1または2に記載の有機半導体材料から形成されたことを特徴とする有機半導体膜。
【請求項4】
請求項1または2に記載の有機半導体材料の有機溶媒溶液を塗布・乾燥して形成されたことを特徴とする有機半導体膜。
【請求項5】
請求項1または2に記載の有機半導体材料を用いることを特徴とする有機電子デバイス。
【請求項6】
有機電子デバイスが、発光素子、有機薄膜トランジスタ素子又は光起電力素子のいずれかである請求項5に記載の有機電子デバイス。
【請求項7】
有機電子デバイスが、有機薄膜トランジスタ素子又は光起電力素子のいずれかである請求項5に記載の有機電子デバイス。
【請求項8】
有機電子デバイスが、有機薄膜トランジスタ素子である請求項5に記載の有機電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体材料、有機半導体膜、有機電子デバイス、有機薄膜トランジスタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、無機半導体材料のシリコンを用いる半導体デバイスでは、その薄膜形成において、高温プロセスと高真空プロセスが必須である。高温プロセスを要することから、シリコンをプラスチック基板上等に薄膜形成することができず、半導体デバイスを組み込んだ製品に対して、可とう性の付与や軽量化を行うことは困難であった。また、高真空プロセスを要することから、半導体デバイスを組み込んだ製品の大面積化と低コスト化が困難であった。
【0003】
そこで、近年、有機半導体材料を有機電子部品として利用する有機電子デバイス(例えば、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子、有機薄膜トランジスタ素子または有機薄膜光電変換素子など)に関する研究がなされている。これら有機半導体材料は、無機半導体材料に比べて、作製プロセス温度を著しく低減できるため、プラスチック基板上等に形成することが可能となる。さらに、溶媒への溶解性が大きく、かつ、良好な成膜性を有する有機半導体材料を用いることにより、真空プロセスを要さない塗布法、例えば、インクジェット装置等を用いた薄膜形成が可能となり、結果として、無機半導体材料であるシリコンを用いる半導体素子では困難であった大面積化と低コスト化の実現が期待される。このように、有機半導体材料は、無機半導体材料と比べて、大面積化、可とう性、軽量化、低コスト化等の点で有利であるため、これらの特性を生かした有機半導体製品への応用、例えば、情報タグ、電子人工皮膚シートやシート型スキャナー等の大面積センサー、液晶ディスプレイ、電子ペーパーおよび有機ELパネル等のディスプレイなどへの応用が期待されている。
【0004】
このように、広範な用途が期待される有機電子デバイスに用いられる有機半導体材料には、高い電荷移動度が要求される。例えば、有機トランジスタデバイズでは、スイッチング速度や駆動する装置の性能に直接影響するので、実用化のためには電荷移動度の向上が、必須の課題である。さらに前述のように、塗布法による有機半導体素子の作成を可能とするためには、溶媒可溶性、酸化安定性、良好な製膜性が求められる。
【0005】
特に、電荷移動度が大きいことが有機半導体に対する要求特性として挙げられる。この観点から、近年、アモルファスシリコンに匹敵する電荷輸送性を有する有機半導体材料が報告されている。例えば、5個のベンゼン環が直線状に縮合した炭化水素系アセン型多環芳香族分子であるペンタセンを有機半導体材料として用いた有機電界効果型トランジスタ素子(OFET)では、アモルファスシリコン並みの電荷移動度が報告されている(非特許文献1)。また、真空蒸着法を用いずに、トリクロロベンゼンの希薄溶液中でペンタセン結晶を形成させる方法も提案されているが、製造方法が難しく安定な素子を得るには至っていない(特許文献1)。ペンタセンのような炭化水素系アセン型多環芳香族分子では酸化安定性が低いことも課題として挙げられる。
【0006】
また、チオフェン環が縮環したペンタチエノアセンはペンタセンに比べ耐酸化性が向上しているが、キャリア移動度が低いこと及びその合成に多工程を必要とすることから(非特許文献2)実用上好ましい材料ではなかった。
【0007】
有機半導体材料を薄膜状に積層して構成される有機薄膜太陽電池は、開発初期では、有機半導体材料としてメロシアニン色素等を用いた単層膜で研究が進められてきたが、正孔を輸送するp型有機半導体層と電子を輸送するn型有機半導体層とを有する多層膜にすることで、光入力から電気出力への変換効率(光電変換効率)が向上することが見出されて以降、多層膜が主流になってきている。多層膜の検討が行なわれ始めた頃に用いられた有機半導体材料は、p型有機半導体材料としては銅フタロシアニン(CuPc)、n型有機半導体材料としてはペリレンイミド類(PTCBI)であった。一方、高分子を用いた有機薄膜太陽電池では、p型有機半導体材料として導電性高分子を用い、n型有機半導体材料としてフラーレン(C60)誘導体を用いてそれらを混合し、熱処理することによりミクロ層分離を誘起してヘテロ界面を増やし、光電変換効率を向上させるという、いわゆるバルクヘテロ構造の研究が主に行なわれてきた。ここで用いられてきた材料系は、主に、p型有機半導体材料としてはポリ−3−ヘキシルチオフェン(P3HT)、n型有機半導体材料としてはC60誘導体(PCBM)であった。
【0008】
このように、有機薄膜太陽電池では、各層の材料は初期の頃からあまり進展がなく、依然としてフタロシアニン誘導体、ペリレンイミド誘導体、C60誘導体が用いられているが、有機薄膜太陽電池の最も重要な特性である光電変換効率は十分なものではなかった。光電変換効率を向上させるためには、高い電荷移動度を有する有機半導体材料が求められている。また、上述の有機薄膜トランジスタと同様に、塗布法による有機半導体素子の作成を可能とするためには、溶媒可溶性、酸化安定性、良好な製膜性が求められる。
【0009】
そこで、光電変換効率を高めるべく、これら従来の材料に代わる新規な材料の開発が熱望されている。例えば、特許文献2では、フルオランテン骨格を有する化合物を用いた有機薄膜太陽電池が開示されているが、満足な光電変換効率を与えるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO2003/016599号公報
【特許文献2】特開2009-290091号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Journal of Applied Physics, 92, 5259(2002)
【非特許文献2】Journal Of American Chemical Society, Vol.127, 13281(2005)
【発明の概要】
【0012】
本発明は、高い電荷移動性、酸化安定性を有する有機半導体材料及びそれを使用した有機電子デバイスを提供することを目的とする。
【0013】
本発明者らは、鋭意検討した結果、高い電荷移動性、酸化安定性、溶媒可溶性を有する新たな有機半導体材料を見出し、これを有機電子デバイスに使用することで、高特性の有機電子デバイスが得られることを見出し、本発明に到達した。
【0014】
本発明は、下記一般式(1)で示される化合物を含有することを特徴とする有機半導体材料に関する。
式(1)中、Rはそれぞれ独立に水素、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基を示し、nは1〜4の整数を表す。
【0015】
一般式(1)で示される化合物としては、一般式(2)で示される化合物がある。ここで、Rは一般式(1)と同意である。
【0016】
また、本発明の他の実施態様は、上記の有機半導体材料を含有することを特徴とする有機半導体膜である。更に、本発明の他の実施態様は、上記の有機半導体材料の有機溶媒溶液を塗布・乾燥して形成されたことを特徴とする有機半導体膜である。
【0017】
また、本発明の他の実施態様は、上記の有機半導体材料を用いることを特徴とする有機電子デバイスである。上記の有機電子デバイスが、発光素子、有機薄膜トランジスタ素子、又は光起電力素子のいずれかであることが好ましく、有機薄膜トランジスタ素子であることがより好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】有機薄膜トランジスタ素子の一例を示した模式断面図を示す。
【
図2】有機薄膜トランジスタ素子の一例を示した模式断面図を示す。
【
図3】有機薄膜トランジスタ素子の一例を示した模式断面図を示す。
【
図4】有機薄膜トランジスタ素子の一例を示した模式断面図を示す。
【
図5】光起電力素子の一構造例を示した模式断面図を示す。
【
図6】光起電力素子の一構造例を示した模式断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の有機半導体材料は、上記一般式(1)で示される化合物を必須とする。本発明の有機半導体材料は、一般式(1)で示される化合物のみからなってもよく、他の化合物を含んでもよい。他の化合物としては電荷移動性を有する有機化合物が適する。一般式(1)で示される化合物は、それ自体が有機半導体材料としての特性を有するので、この化合物が有機半導体材料でもある。
【0020】
一般式(1)において、Rは、それぞれ独立に水素、又は炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基を示し、好ましくは水素、又は炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基である。脂肪族炭化水素基としては、アルキル基が好ましく、より好ましくは無置換のアルキル基である。これら脂肪族炭化水素基は、直鎖であっても、分岐していても、脂環式であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよい。また、これら脂肪族炭化水素基の水素原子はフッ素等のハロゲン原子と置換されていても良い。また、これら脂肪族炭化水素基は置換基を有してもよく、1つ以上の置換基を有する場合は、炭素数の計算にはそれら置換基の炭素数を含む。複数のRは同一であっても、異なっていてもよい。一般式(1)において、Rは最大16個あるが、その中の8個以上がHであることが好ましく、より好ましくは14〜16個がHである。
【0021】
好ましい脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−オクタデシル基、n−ドコシル基、n−テトラコシル基の如き直鎖飽和炭化水素基、i-プロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、2−エチルヘキシル基、2−ヘキシルオクチル基、4−デシルドデシル基等の分岐飽和炭化水素基、エテニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、i-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基等の不飽和炭化水素基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、4−ブチルシクロヘキシル基、4−ドデシルシクロヘキシル基等の飽和脂環炭化水素基、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセニル基等の不飽和脂環炭化水素基が例示できる。より好ましくは、C1〜16のアルキル基、C2〜8のアルケニル基、C2〜8のアルキニル基、C5〜8のシクロアルキル基、C1〜16のアルキル基が置換したC5〜8のシクロアルキル基、又はC5〜8の不飽和脂環炭化水素基である。
【0022】
脂肪族炭化水素基がハロゲン原子と置換された脂肪族炭化水素基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロオクチル基等の全フッ素化アルキル基や、ジフルオロエチル基、ジフルオロブチル基、ジフルオロオクチル基等の部分フッ素化アルキル基が例示できる。
【0023】
Rが脂肪族炭化水素基であり、脂肪族炭化水素基が置換基を有する場合の置換基は有機半導体材料の性能を損なわなければ限定されるものではないが、置換基の総数は1〜4、好ましくは1〜2である。これらの好ましい置換基としては、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニルオキシ基、炭素数2〜10のアシルオキシ基、炭素数1〜10のアルキルスルホニル基、炭素数2〜10のアルキルアミド基、炭素数3〜20のトリアルキルシリル基、炭素数5〜20のトリアルキルシリルアルケニル基、炭素数5〜20のトリアルキルシリルアルキニル基等が挙げられる。これらの置換基は、一種または2種以上有していても良い。より好ましくは、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルキルチオ基、炭素数2〜8のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜8のアルコキシカルボニルオキシ基が挙げられ、具体例としてはメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n−ヘキシルオキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、トリイソプロピルシリルエチニル基、トリエチルシリルエチニル基、トリメチルシリルエチニル基等が例示できる。置換基を2つ以上有する場合は、同一であっても異なっていても良い。
【0024】
上記一般式(1)で示される化合物の中でも好ましい化合物として、上記一般式(2)で示される化合物がある。一般式(2)において、Rは一般式(1)と同じ意味を有する。Rは8個あるが、その中の4個以上がHであることが好ましく、より好ましくは6〜8個がHである。
【0025】
上記一般式(1)で表わされる化合物はNew Journal of Chemistry, 34(7),p1243-1246(2010)に示される合成例を参考にして以下の反応式(A)により合成することができるが、これら手法に限定するものではない。
【0027】
上記式(A)は、一般式(1)に示される化合物において、全部のRがHの場合の化合物(100)の合成例であり、インドールと2-クロロベンズアルデヒドを作用させることにより中間体A−1を得た後、二段階の環化反応を経て得る方法である。
【0028】
一般式(1)に示される化合物において、両端のベンゼン環に置換基Rとしてアルキル基を有する場合の合成例は、式(B)に示す反応式により合成することができるが、これら手法に限定するものではない。
式(B)に示すように、n−ブロモインドールと2-クロロ-n-ブロモベンズアルデヒドを用いる方法により中間体B-3を得た後、B-3とアルキン誘導体のソノガシラ反応を行うことにより、所望のアルキル置換体である化合物(3)を得ることができる。
【0030】
また、下記に示す2つの反応式のように、一般式(1)における置換基Rを有する原料を用いて、反応を行うことにより、所望の化合物を得ることも可能である。反応式(C)の場合、アルキル置換インドールと2-クロロベンズアルデヒドを作用させることにより、所望のアルキル基を有する化合物C-3を得ることができる。また、反応式(D)によれば、化合物C-3は、インドールとアルキル基を有する2-クロロベンズアルデヒドを作用させることによっても得ることができる。
【0033】
すなわち、所望の置換基を有するインドール及び2-クロロベンズアルデヒドを原料として用い、反応式(B)、(C)又は(D)のような環化反応と置換反応を行うことにより、所望の一般式(1)で示される化合物を得ることができる。また、2-クロロベンズアルデヒドのかわりに2-ブロモベンズアルデヒドや、2-ヨードベンズアルデヒドを用いても同様のことが可能である。
【0034】
このような方法により得られる化合物を含有する本発明の有機半導体材料の基本特性となる電荷移動度の評価は種々の方法、例えば、TOF(Time of Flight)法やFET法により行うことができる。TOF法とは、電界を印加した状態で有機半導体材料薄膜表面にパルス光を照射し、生成した電荷の膜中における移動時間を過渡光電流波形より測定することで電荷移動度を求める方法である。また、FET法は有機半導体材料を用いた有機電界効果トランジスタ素子を作成し、その特性を評価する方法である。これらの方法により、本発明の有機半導体材料の基本特性として電荷移動度を評価することができ、いずれの方法においても、高い特性を示す。
【0035】
以下に、一般式(1)で表される化合物の具体的な例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0037】
本発明の有機半導体材料は、一般式(1)の化合物を含むものであるが、この化合物を50wt%以上含有していることが好ましく、より好ましくは90wt%以上含有していることが良い。また、一般式(1)の化合物自体を有機半導体材料とすることも好ましい。有機半導体材料中に一般式(1)の化合物とともに含まれる成分としては、有機半導体材料としての性能を損なわない範囲であれば特に限定されるものではないが、電荷輸送性化合物であることが良い。
【0038】
続いて、本発明の有機半導体材料から形成される有機電子デバイスを、有機薄膜トランジスタ素子(OTFT素子)を例として、
図1〜
図4に基づいて説明する。有機電子デバイスとしては、有機半導体材料を使用する有機半導体デバイスであることが好ましい。
【0039】
図1、
図2、
図3及び
図4は、本発明のOTFT素子の実施形態を例示する模式的断面図である。
符号の説明;
1 基板、2 ゲート電極、3 絶縁膜層、4 有機半導体層、5 ソース電極、6 ドレイン電極、7 基板、8 正極、9 有機半導体層、9-a 電子供与性有機半導体層、9-b 電子受容性有機半導体層、10 負極。
【0040】
図1に示すOTFT素子は、基板1の表面上にゲート電極2を備え、ゲート電極2上には絶縁膜層3が形成されており、絶縁膜層3上にはソース電極5およびドレイン電極6が設けられ、さらに有機半導体層4が形成されている。
【0041】
図2に示すOTFT素子は、基板1の表面上にゲート電極2を備え、ゲート電極2上には絶縁膜層3が形成され、その上に有機半導体層4が形成されており、有機半導体層4上にはソース電極5およびドレイン電極6が設けられている。
【0042】
図3に示すOTFT素子は、基板1の表面上にソース電極5およびドレイン電極6が設けられ、有機半導体層4、絶縁膜層3を介して最表面にゲート電極2が形成されている。
【0043】
図4に示すOTFT素子は、基板1の表面上には有機半導体層4、ソース電極5およびドレイン電極6が設けられ、絶縁膜層3を介して最表面にゲート電極2が形成されている。
【0044】
基板1に用いられるものとしては、例えば、ガラス、石英、酸化アルミニウム、サファイア、窒化珪素、炭化珪素等のセラミックス基板、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム枇素、ガリウム燐、ガリウム窒素等半導体基板、ポリエチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、環状ポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミド、ポリスチレン等の樹脂基板等が挙げられる。基板の厚さは、約10μm〜約2mmとすることができるが、特に可撓性のプラスチック基板ではたとえば約50〜約100μm、剛直な基板、たとえばガラスプレートまたはシリコンウェハーなどでは約0.1〜約2mmとすることができる。
【0045】
ゲート電極2は、金属薄膜、導電性ポリマ膜、導電性のインキまたはペーストから作った導電性膜などであってもよく、あるいは、たとえば重度にドープしたシリコンのように、基板そのものをゲート電極とすることができる。ゲート電極の材料の例としては、アルミニウム、銅、ステンレス、金、クロム、nドープまたはpドープされたシリコン、インジウムスズ酸化物、導電性ポリマたとえば、ポリスチレンスルホン酸をドープしたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、カーボンブラック/グラファイトを含む導電性インキ/ペースト、または、ポリマバインダの中にコロイド状の銀を分散させたもの等を例示できる。
【0046】
ゲート電極2は、真空蒸着、金属または導電性金属酸化物のスパッタリング、導電性ポリマ溶液または導電性インキのスピンコート、インクジェット、スプレー、コーティング、キャスティング等を用いることにより作成できる。ゲート電極2の厚さは、たとえば、約10nm〜10μmの範囲が好ましい。
【0047】
絶縁膜層3は一般に、無機材料膜または有機ポリマ膜とすることができる。絶縁膜層3として好適な無機材料の例としては、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコニウムバリウム等が例示できる。絶縁膜層3として好適な有機化合物の例としては、ポリエステル類、ポリカーボネート類、ポリ(ビニルフェノール)、ポリイミド類、ポリスチレン、ポリ(メタクリレート)類、ポリ(アクリレート)類、エポキシ樹脂などがある。また、有機ポリマ中に無機材料を分散して、絶縁層膜として使用してもよい。絶縁膜層の厚さは、使用する絶縁材料の誘電率によって異なるが、例えば約10nm〜10μmである。
【0048】
前記絶縁膜層を形成する手段としては、例えば、真空蒸着法、CVD法、スパッタリング法、レーザー蒸着法等のドライ成膜法や、スピンコート法、ブレードコート法、スクリーン印刷、インキジェット印刷、スタンプ法等のウエット製膜法が挙げられ、材料に応じて使用できる。
【0049】
ソース電極5およびドレイン電極6は、後述する有機半導体層4に対して低抵抗オーム性接触を与える材料から作ることができる。ソース電極5およびドレイン電極6として好ましい材料としては、ゲート電極2に好ましい材料として例示したものを用いることができ、例えば、金、ニッケル、アルミニウム、白金、導電性ポリマおよび導電性インキなどがある。ソース電極5およびドレイン電極6の厚さは、典型的には、たとえば、約10nm〜約10μm、より好ましくは厚さが10nm〜1μmである。
【0050】
ソース電極5およびドレイン電極6を形成する手段としては、例えば、真空蒸着法、スパッタ法、塗布法、熱転写法、印刷法、ゾルゲル法等が挙げられる。製膜時または製膜後、必要に応じてパターニングを行うのが好ましい。パターニングの方法として、例えば、フォトレジストのパターニングとエッチングを組み合わせたフォトリソグラフィー法等が挙げられる。また、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷の印刷法、マイクロコンタクトプリンティング法等のソフトリソグラフィー法等、これら手法を複数組み合わせた手法を利用し、パターニングすることも可能である。
【0051】
有機半導体層4を形成する手段としては、例えば、真空蒸着法、CVD法、スパッタリング法、レーザー蒸着法等のドライ成膜法や、基板上に溶液や分散液を塗布した後に、溶媒や分散媒を除去することで薄膜を形成するウエット成膜法が挙げられるが、ウエット成膜法を用いることが好ましい。ウエット成膜法としては、スピンコート法、ブレードコート法、スクリーン印刷、インキジェット印刷、スタンプ法などが例示できる。例えばスピンコート法を用いる場合、本発明の有機半導体材料を溶解する適切な溶媒に溶解させて、濃度が0.01wt%〜10wt%の溶液を調製した後、基板1に形成した絶縁膜層3上に有機半導体材料溶液を滴下し、次いで500〜6000回転で5〜120秒回転することにより行われる。上記溶媒としては、有機半導体材料の溶解度と製膜して得られる膜質によって選択されるが、たとえば、水、メタノールに代表されるアルコール類、トルエンに代表される芳香族炭化水素類、ヘキサンやシクロヘキサン等に代表される脂肪族炭化水素類、ニトロメタンやニトロベンゼン等の有機ニトロ化合物、テトラヒドロフランやジオキサン等の環状エーテル化合物、アセトニトリルやベンゾニトリル等のニトリル系化合物、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、スルホラン、N−メチルピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン等に代表される非プロトン性極性溶媒等から選ばれる溶媒を用いることができる。また、これらの溶媒は2種類以上を組合せて用いることもできる。
【0052】
上述の方法により、本発明の有機半導体材料を用いた有機薄膜トランジスタ素子を作成することが可能である。得られた有機薄膜トランジスタ素子では、有機半導体層がチャネル領域を成しており、ゲート電極に印加される電圧でソース電極とドレイン電極の間に流れる電流が制御されることによってオン/オフ動作する。
【0053】
本発明の有機半導体材料をから得られる有機電子デバイスの別の好適態様の一つとして、光起電力素子が挙げられる。具体的には、基板上に、正極、有機半導体層及び負極を有する光起電力素子であって、前記有機半導体層が上述した本発明の有機半導体材料を含む有機電子デバイスである。
【0054】
本発明の光起電力素子の構造について、図面を参照しながら説明するが、本発明の光起電力素子の構造は何ら図示のものに限定されるものではない。
【0055】
図5は本発明に用いられる一般的な光起電力素子の構造例を示す断面図であり、7は基板、8は正極、9は有機半導体層、10は負極を各々表わす。また、
図6は有機半導体層が積層されている場合の構造例を示す断面図であり、9−aはp型有機半導体層、9−bはn型有機半導体層である。
【0056】
基板は、特に限定されず、例えば、従来公知の構成とすることができる。機械的、熱的強度を有し、透明性を有するガラス基板や透明性樹脂フィルムを使用することが好ましい。透明性樹脂フィルムとしては、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルホン、ポリエーテルサルフォン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリプロピレン等が挙げられる。
【0057】
電極材料としては、一方の電極には仕事関数の大きな導電性素材、もう一方の電極には仕事関数の小さな導電性素材を使用することが好ましい。仕事関数の大きな導電性素材を用いた電極は正極となる。この仕事関数の大きな導電性素材としては金、白金、クロム、ニッケルなどの金属のほか、透明性を有するインジウム、スズなどの金属酸化物、複合金属酸化物(インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)など)が好ましく用いられる。ここで、正極に用いられる導電性素材は、有機半導体層とオーミック接合するものであることが好ましい。さらに、後述する正孔輸送層を用いた場合においては、正極に用いられる導電性素材は正孔輸送層とオーミック接合するものであることが好ましい。
【0058】
仕事関数の小さな導電性素材を用いた電極は負極となるが、この仕事関数の小さな導電性素材としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属、具体的にはリチウム、マグネシウム、カルシウムが使用される。また、錫や銀、アルミニウムも好ましく用いられる。さらに、上記の金属からなる合金や上記の金属の積層体からなる電極も好ましく用いられる。また、負極と電子輸送層の界面にフッ化リチウムやフッ化セシウムなどの金属フッ化物を導入することで、取り出し電流を向上させることも可能である。ここで、負極に用いられる導電性素材は、有機半導体層とオーミック接合するものであることが好ましい。さらに、後述する電子輸送層を用いた場合においては、負極に用いられる導電性素材は電子輸送層とオーミック接合するものであることが好ましい。
【0059】
−有機半導体層−
有機半導体層は、式(1)で表される化合物を含む有機半導体材料を用いて形成される。式(1)で表される化合物は、p型有機半導体材料(以下p型有機材料という)またはn型有機半導体材料(以下n型有機材料という)として機能し、本発明の有機半導体材料は式(1)で表される化合物を含み、式(1)で表される化合物はp型有機材料またはn型有機材料の少なくとも1つに含まれる。式(1)で表される化合物を2種以上使用し、その1以上をp型有機材料成分とし、他の1以上をn型有機材料成分としてもよく、p型有機材料成分(またはn型有機材料成分)として式(1)で表される化合物を使用し、n型有機材料成分(またはp型有機材料成分)として式(1)で表される化合物以外の化合物を使用してもよい。
【0060】
p型有機材料とn型有機材料は混合されていることが好ましく、p型有機材料とn型有機材料が分子レベルで相溶しているか、相分離していることが好ましい。この相分離構造のドメインサイズは特に限定されるものではないが通常1nm以上50nm以下のサイズである。また、p型有機材料とn型有機材料が積層されている場合は、p型半導体特性を示すp型有機材料を有する層が正極側、n型半導体特性を示すn型有機材料を有する層が負極側であることが好ましい。有機半導体層は5nm〜500nmの厚さが好ましく、より好ましくは30nm〜300nmである。積層されている場合は、本発明のp型有機材料を有する層は上記厚さのうち1nm〜400nmの厚さを有していることが好ましく、より好ましくは15nm〜150nmである。
【0061】
p型有機材料は、式(1)で表される化合物の内、p型半導体特性を示すものを単独で用いてもよいし、他のp型有機材料を含んでもよい。他のp型有機材料としては、例えばポリチオフェン系重合体、ベンゾチアジアゾール−チオフェン系誘導体、ベンゾチアジアゾール−チオフェン系共重合体、ポリ−p−フェニレンビニレン系重合体、ポリ−p−フェニレン系重合体、ポリフルオレン系重合体、ポリピロール系重合体、ポリアニリン系重合体、ポリアセチレン系重合体、ポリチエニレンビニレン系重合体などの共役系重合体や、H2フタロシアニン(H2Pc)、銅フタロシアニン(CuPc)、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)などのフタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、N,N'−ジフェニル−N,N'−ジ(3−メチルフェニル)−4,4'−ジフェニル−1,1'−ジアミン(TPD)、N,N'−ジナフチル−N,N'−ジフェニル−4,4'−ジフェニル−1,1'−ジアミン(NPD)などのトリアリールアミン誘導体、4,4'−ジ(カルバゾール−9−イル)ビフェニル(CBP)などのカルバゾール誘導体、オリゴチオフェン誘導体(ターチオフェン、クウォーターチオフェン、セキシチオフェン、オクチチオフェンなど)などの低分子有機化合物が挙げられる。
【0062】
n型有機材料は、式(1)で表される化合物の内、n型半導体特性を示すものを単独で用いてもよいし、他のn型有機材料を用いてもよい。他のn型有機材料としては、例えば1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボキシリックジアンハイドライド(NTCDA)、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボキシリックジアンハイドライド(PTCDA)、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボキシリックビスベンズイミダゾール(PTCBI)、N,N'−ジオクチル−3,4,9,10−ナフチルテトラカルボキシジイミド(PTCDI−C8H)、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)、2,5−ジ(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール(BND)などのオキサゾール誘導体、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(TAZ)などのトリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、フラーレン化合物(C60、C70、C76、C78、C82、C84、C90、C94を始めとする無置換のものと、[6,6]−フェニル C61 ブチリックアシッドメチルエステル([6,6]−PCBM)、[5,6]−フェニル C61 ブチリックアシッドメチルエステル([5,6]−PCBM)、[6,6]−フェニル C61 ブチリックアシッドヘキシルエステル([6,6]−PCBH)、[6,6]−フェニル C61 ブチリックアシッドドデシルエステル([6,6]−PCBD)、フェニル C71 ブチリックアシッドメチルエステル(PC70BM)、フェニル C85 ブチリックアシッドメチルエステル(PC84BM)など)、カーボンナノチューブ(CNT)、ポリ−p−フェニレンビニレン系重合体にシアノ基を導入した誘導体(CN−PPV)などが挙げられる。
【0063】
本発明の光起電力素子では、正極と有機半導体層の間に正孔輸送層を設けてもよい。正孔輸送層を形成する材料としては、ポリチオフェン系重合体、ポリ−p−フェニレンビニレン系重合体、ポリフルオレン系重合体などの導電性高分子や、フタロシアニン誘導体(H2Pc、CuPc、ZnPcなど)、ポルフィリン誘導体などのp型半導体特性を示す低分子有機化合物が好ましく用いられる。特に、ポリチオフェン系重合体であるポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)やPEDOTにポリスチレンスルホネート(PSS)が添加されたものが好ましく用いられる。正孔輸送層は5nm〜600nmの厚さが好ましく、より好ましくは30nm〜200nmである。
【0064】
また、本発明の光起電力素子は、有機半導体層と負極の間に電子輸送層を設けてもよい。電子輸送層を形成する材料として、特に限定されるものではないが、上述のn型有機材料(NTCDA、PTCDA、PTCDI−C8H、オキサゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、フラーレン化合物、CNT、CN−PPVなど)のようにn型半導体特性を示す有機材料が好ましく用いられる。電子輸送層は5nm〜600nmの厚さが好ましく、より好ましくは30nm〜200nmである。
【0065】
また、本発明の光起電力素子は、1つ以上の中間電極を介して2層以上の有機半導体層を積層(タンデム化)して直列接合を形成してもよい。例えば、基板/正極/第1の有機半導体層/中間電極/第2の有機半導体層/負極という積層構成を挙げることができる。このように積層することにより、開放電圧を向上させることができる。なお、正極と第1の有機半導体層の間、および、中間電極と第2の有機半導体層の間に上述の正孔輸送層を設けてもよく、第1の有機半導体層と中間電極の間、および、第2の有機半導体層と負極の間に上述の正孔輸送層を設けてもよい。
【0066】
このような積層構成の場合、有機半導体層の少なくとも1層がp型有機材料として本発明の有機半導体材料を含み、他の層には、短絡電流を低下させないために、このp型有機材料とはバンドギャップの異なるp型有機材料を含むことが好ましい。このようなp型有機材料としては、例えば上述のポリチオフェン系重合体、ポリ−p−フェニレンビニレン系重合体、ポリ−p−フェニレン系重合体、ポリフルオレン系重合体、ポリピロール系重合体、ポリアニリン系重合体、ポリアセチレン系重合体、ポリチエニレンビニレン系重合体などの共役系重合体や、H2フタロシアニン(H2Pc)、銅フタロシアニン(CuPc)、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)などのフタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、N,N'−ジフェニル−N,N'−ジ(3−メチルフェニル)−4,4'−ジフェニル−1,1'−ジアミン(TPD)、N,N'−ジナフチル−N,N'−ジフェニル−4,4'−ジフェニル−1,1'−ジアミン(NPD)などのトリアリールアミン誘導体、4,4'−ジ(カルバゾール−9−イル)ビフェニル(CBP)などのカルバゾール誘導体、オリゴチオフェン誘導体(ターチオフェン、クウォーターチオフェン、セキシチオフェン、オクチチオフェンなど)などの低分子有機化合物が挙げられる。
【0067】
また、ここで用いられる中間電極用の素材としては高い導電性を有するものが好ましく、例えば上述の金、白金、クロム、ニッケル、リチウム、マグネシウム、カルシウム、錫、銀、アルミニウムなどの金属や、透明性を有するインジウム、スズなどの金属酸化物、複合金属酸化物(インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)など)、上記の金属からなる合金や上記の金属の積層体、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)やPEDOTにポリスチレンスルホネート(PSS)が添加されたもの、などが挙げられる。中間電極は光透過性を有することが好ましいが、光透過性が低い金属のような素材でも膜厚を薄くすることで充分な光透過性を確保できる場合が多い。
【0068】
有機半導体層の形成には、スピンコート塗布、ブレードコート塗布、スリットダイコート塗布、スクリーン印刷塗布、バーコーター塗布、鋳型塗布、印刷転写法、浸漬引き上げ法、インクジェット法、スプレー法、真空蒸着法など何れの方法を用いてもよく、膜厚制御や配向制御など、得ようとする有機半導体層特性に応じて形成方法を選択すればよい。
【0069】
本発明の有機半導体材料は、高電荷移動度,溶媒可溶性、酸化安定性、良好な製膜性を有しており、これを使用した有機電子デバイスも高い特性を発揮する。本発明の有機半導体材料の特徴を生かせる具体的な有機電子デバイスとしては、例えば、有機電界効果トランジスタや有機薄膜太陽電池を示すことができ、さらには、これらの有機電子デバイスを組み込むことにより、情報タグ、電子人工皮膚シートやシート型スキャナー等の大面積センサー、液晶ディスプレイ、電子ペーパーおよび有機ELパネル等のディスプレイに応用していくことができる。
【実施例】
【0070】
以下、本発明につき、実施例によって更に詳しく説明するが、本発明は勿論、これらの実施例に限定されるものではなく、その要旨を越えない限りにおいて、種々の形態で実施することが可能である。なお、化合物番号は上記化学式に付した番号に対応する。
【0071】
合成例1
上記式(A)にしたがって、化合物(100)を合成した。
【0072】
還流管、メカニカルスタラーを備え付けた2000 mL三口フラスコに、インドール(100 g、848 mmol)、2−クロロベンズアルデヒド(60 g、424 mmol)、メタノール1.2 Lを加え80℃で22時間攪拌した。室温まで冷却した後、溶媒留去を行った。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製を行うことで、白色固体3−[(2−クロロフェニル)(1H−インドリル)メチル]−1H−インドール85 g(A-1、237 mmol、収率 56%)を得た。
1H−NMR(DMSO-d
6):δ7.65(s、2H)、6.80-7.30(m、12H)、6.42(s、2H)、6.17(s、1H)
【0073】
還流管を備え付けた500 mLの三口フラスコに、中間体(A-1) 80 g(223 mmol)、よう素2.23 g(8.92 mmol)、アセトニトリル360 mLを加え、7時間加熱還流した。室温まで冷却した後、ろ過を行い、白色固体の6,12−ビス(2−クロロフェニル)−5,11−ジハイドロインドロ[3, 2−b]カルバゾール17 g(A-2、36 mmol、収率16%)を得た。
1H−NMR(DMSO-d
6):δ10.81(s、2H)、6.77-7.28(m、16H)
【0074】
窒素雰囲気下、還流管を備え付けた500 mL三口フラスコに、中間体(A-2)15 g(31 mmol)、脱水DMF310 mL、38%テトラブチルアンモニウムヒドロキシドメタノール溶液(0.15 g, 0.23 mmol)、よう化銅を加え、120℃で攪拌した。室温まで冷却した後、溶媒留去を行った。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製を行うことで、淡緑色固体のジベンゾ[2, 3:5, 6]ピロリジノ[1, 7-bc]インドロ[1, 2, 3-lm]カルバゾール1.1 g(2.72 mmol、収率 8.8%)を得た。これは化合物(100)である。
1H−NMR(DMSO-d
6):δ7.80(d、4H)、7.33(d、4H)、6.93 (t、4H)、6.78 (t、4H)
【0075】
実施例1
膜厚150 nmのITO基板上に、合成例1で合成した化合物(100)を真空蒸着法により蒸着製膜し膜厚が約2.5 mmの有機半導体膜を形成した後、銀を真空蒸着法により170 nm蒸着製膜した。得られた素子をTOF法により、電荷移動度を評価した。その結果電界強度53.6 MV/cmにおいて、正孔移動度が2.6×10
-2 cm
2/Vsであった。
【0076】
実施例2
本発明の有機半導体材料の特性を、
図1に示す構成の有機電界効果トランジスタを作成し、評価した。まず、約300nmの厚みの熱成長酸化ケイ素層を有するシリコンウェハ(nドープ)を、硫酸−過酸化水素水溶液で洗浄し、イソプロピルアルコールで煮沸した後、乾燥した。得られたシリコンウェハにフォトレジストをスピンコート後、フォトマスクを介して露光機により露光した。次いで、現像液で現像を行った後、イオン交換水で洗浄し、空気乾燥した。そのパターニングされたフォトレジストが塗布されたシリコンウェハ上に、真空蒸着法により、厚さ3nmのクロム、更にその上から50nmの金を蒸着した。そのシリコンウェハを、リムーバー溶液に浸すことでシリコンウェハ上にソース電極およびドレイン電極を作製した。ソース電極およびドレイン電極が作成されたシリコンウェハをアセトンで洗浄し、さらに、イソプロピルアルコールで煮沸し乾燥した有機電界効果トランジスタ基板を作製した。チャネル長はL=25μm、チャネル幅はW=15.6cmであった。
次に、実施例1で得た化合物(100)を真空蒸着法により蒸着製膜し膜厚が50nmの有機半導体膜を基板上に形成した。このようにして
図1に示す構造を有する有機電界効果トランジスタを得た。得られた有機電界効果トランジスタの特性を評価したところ、移動度;2.0×10
-1cm
2/Vsであった。
【0077】
比較例1
実施例2において、化合物(100)の代わりに、ペンタセンを使用し、同様の操作を行い、有機電界効果トランジスタ素子を作製した。得られた素子を実施例2と同様に評価したところ、移動度;1.0×10
-1cm
2/Vsであった。
【0078】
以上のように、実施例2と比較例1を比較することにより、式(1)で示される構造が、有機半導体として高い特性を有していることが明らかとなった。
【0079】
一般式(1)で示される化合物は、分子構造全体に広がった共役構造を有しているため、その電子軌道も分子構造全体に広がっている。また、その立体構造は高い平面性を有するという特徴を有しているため、分子間のパッキングが密となり、その結果、一般式(1)で示される化合物を含む本発明の有機半導体材料は、高い電荷移動特性を有するものとなる。この有機半導体材料を使用した有機半導体デバイスには、例えば、有機電界効果トランジスタ、有機薄膜太陽電池、情報タグ、電子人工皮膚シートやシート型スキャナー等の大面積センサー、液晶ディスプレイ、電子ペーパーおよび有機ELパネル等のディスプレイ等が考えられ、その技術的価値は大きいものである。
【国際調査報告】