(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2016年8月18日
【発行日】2017年12月7日
(54)【発明の名称】金属バナジウムの製造方法
(51)【国際特許分類】
C22B 34/22 20060101AFI20171110BHJP
C22B 5/04 20060101ALI20171110BHJP
C25C 3/26 20060101ALN20171110BHJP
C25C 3/02 20060101ALN20171110BHJP
【FI】
C22B34/22
C22B5/04
C25C3/26
C25C3/02 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
【出願番号】特願2016-574524(P2016-574524)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2015年2月9日
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(71)【出願人】
【識別番号】512160210
【氏名又は名称】LEシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139815
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 忠克
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 完二
(72)【発明者】
【氏名】古川 英樹
【テーマコード(参考)】
4K001
4K058
【Fターム(参考)】
4K001AA28
4K001BA04
4K001BA05
4K001BA06
4K001BA07
4K001CA05
4K001CA06
4K001CA09
4K001DA14
4K001HA07
4K058AA28
4K058BA04
4K058BA12
4K058BB05
4K058CB05
4K058CB12
4K058ED03
(57)【要約】
【課題】 低コストと省エネルギー化が実現された高純度金属バナジウムの製造方法の提供。【解決手段】 反応槽内の溶融塩電解浴を形成する無機溶融塩のうちの一部の無機溶融塩を電気分解してカルシウムを生成せしめ、前記カルシウムによりバナジウム化合物を熱還元して金属バナジウムを製造する金属バナジウムの製造方法であり、前記一部の無機溶融塩として、カルシウムの硫化物、硫酸化合物からなる群から選ばれる1種又は2種以上が含まれるか、又は前記バナジウム化合物として、バナジウム硫化物、バナジウム硫酸化合物、バナジウムのチオ硫酸化合物、メタバナジン酸アンモニウム及び硫酸バナジルからなる群から選ばれる1 種又は2種以上を含む混合バナジウム化合物であることの少なくともいずれか一方が満足される、金属バナジウムの製造方法。【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応槽内の溶融塩電解浴を形成する無機溶融塩のうちの一部の無機溶融塩を電気分解して還元性分解生成物を生成せしめ、還元性分解生成物によりバナジウム化合物を熱還元して金属バナジウムを製造する金属バナジウムの製造方法であり、
前記一部の無機溶融塩として、カルシウムの硫化物、硫酸化合物及び酸化物からなる群から選ばれる1種又は2種以上が含まれており、
前記還元性分解生成物には、前記一部の無機溶融塩を電気分解して得られるカルシウムが含まれており、
前記バナジウム化合物は、バナジウム硫化物、バナジウム硫酸化合物、バナジウムのチオ硫酸化合物、メタバナジン酸アンモニウム及び硫酸バナジルからなる群から選ばれる1種又は2種以上を含む混合バナジウム化合物である、金属バナジウムの製造方法。
【請求項2】
反応槽内の溶融塩電解浴を形成する無機溶融塩のうちの一部の無機溶融塩を電気分解して還元性分解生成物を生成せしめ、還元性分解生成物によりバナジウム化合物を熱還元して金属バナジウムを製造する金属バナジウムの製造方法であり、
前記一部の無機溶融塩として、硫化カルシウムおよび硫酸カルシウムからなる群から選ばれる1種又は2種以上が含まれており、
前記還元性分解生成物には、前記一部の無機溶融塩の電気分解により得られるカルシウムが含まれており、
前記バナジウム化合物は、バナジウム硫化物、バナジウム酸化物、バナジウム硫酸化合物、バナジウムのチオ硫酸化合物、メタバナジン酸アンモニウム及び硫酸バナジルからなる群から選ばれる1種又は2種以上を含む混合バナジウム化合物である、金属バナジウムの製造方法。
【請求項3】
陰極における熱還元によって生成される無機溶融塩として、前記一部の無機溶融塩が生成されており、
生成された無機溶融塩は前記溶融塩電解浴の一部を形成する、請求項1又は請求項2に記載の金属バナジウムの製造方法。
【請求項4】
陽極におけるアノード反応によって硫黄を生成する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の金属バナジウムの製造方法。
【請求項5】
前記バナジウム化合物及び前記一部の無機溶融塩のうちの少なくともいずれか一方に、酸化物が含まれていると共に、電気分解の陽極として炭素材を用いており、陽極におけるアノード反応によって炭酸ガスを生成する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の金属バナジウムの製造方法。
【請求項6】
電気分解用の陽極として炭素材を用いて溶融塩電解浴中の前記一部の無機溶融塩を電気分解し、陽極におけるアノード反応によって、少なくとも硫黄ガスを生成し、金属バナジウムの生成に伴い、少なくとも硫化カルシウムを生成し、当該生成物は溶融塩電解浴に溶解する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の金属バナジウムの製造方法。
【請求項7】
電気分解用の陽極として炭素材を用いて溶融塩電解浴中の前記一部の無機溶融塩を電気分解し、陽極におけるアノード反応によって少なくとも炭酸ガスを生成し、金属バナジウムの生成に伴い少なくとも酸化カルシウムを生成し、当該生成物は溶融塩電解浴に溶解する、請求項5に記載の金属バナジウムの製造方法。
【請求項8】
電気分解用の陽極として炭素材を用いて溶融塩電解浴中の前記一部の無機溶融塩を電気分解し、前記バナジウム化合物及び前記一部の無機溶融塩のうちの少なくともいずれか一方に硫酸化合物が含まれていることで、金属バナジウムの生成に伴い少なくとも硫化カルシウムを生成し、当該生成物は溶融塩電解浴に溶解する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の金属バナジウムの製造方法。
【請求項9】
前記一部の無機溶融塩はカルシウム化合物であり、前記溶融塩における当該カルシウム化合物の添加量は、0.01mol%〜30mol%である、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の金属バナジウムの製造方法。
【請求項10】
前記カルシウム化合物の添加量は、0.01mol%〜20mol%である、請求項9に記載の金属バナジウムの製造方法。
【請求項11】
電気分解における溶融塩電解浴の温度は873K以上1423Kであり、電解電圧は1.6V以上3.21V以下である、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の金属バナジウムの製造方法。
【請求項12】
前記硫化バナジウムは、VS、V2S3、V5S8、V3S4、V2S5からなる群から選ばれる1種又は2種以上であり、前記バナジウムチオ硫酸化物は、VS2O3であり、前記バナジウム硫酸化合物は、VSO4、V2(SO4)3、VOSO4からなる群から選ばれる1種又は2種以上である、請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の金属バナジウムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属バナジウム、特に高純度の金属バナジウムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属バナジウムは、被覆材、チタン、アルミニウム、ジルコニウムおよび鋼への添加剤、ジェット機、誘導ミサイルなどの耐熱材、スパッタリング・ターゲット、真空管蒸着、合金系超電導材などとして幅広く使用されており、放射化しない特性により原子炉の材料としても使用されている。
【0003】
また、金属バナジウムは、常温・常圧で約2.2mass%の水素吸蔵・放出特性を有することから単体金属で水素吸蔵材料として期待されている。例えば、ニッケルカドミ電池の代替品になり得るNi-水素電池の陰極として、バナジウム系の水素吸蔵合金の利用が考えられている。
さらに、バナジウムレドックスフロー電池の電解液や、よりエネルギー密度の高いバナジウム-空気電池での利用も考えられており、将来技術の基礎材料として期待されている。
【0004】
従来、金属バナジウムを製造する方法として、テルミット反応と電子ビーム溶解法を繰り返し用いる方法がある。簡単に説明すれば、この製造方法では、まず、五酸化バナジウムをアルミニウムで熱還元して、アルミニウムと酸素を多く含んだ粗バナジウムを製造する。その後、電子ビームを用いて、得られた粗バナジウムの溶解・凝固を繰り返して金属バナジウムを製造する。この方法によれば、溶解・凝固を繰り返して高純度化を図ることで、高純度のバナジウムを製造することができる。ところが、この製造方法では、装置及び大きなエネルギーが必要であると共に手間がかかるので、製造された金属バナジウムは、非常に高価になる。
【0005】
また、他の製造方法として、バナジウム酸化物のCa熱還元法が開発されている(特許文献1参照)。この製造方法を用いれば、上述した製造方法よりも低コストで、五酸化バナジウムから金属バナジウムが製造することができる。ところが、五酸化バナジウムは比較的融点が低いため、製造される金属バナジウムは、製造工程で用いる反応容器に固着した状態になりやすく、反応容器の還元物質などの不純物の混入を防止することが容易でない。
【0006】
さらに、他の製造方法として、バナジウムのハロゲン化物を原料とする金属バナジウムの製造方法がある(特許文献1参照)。ところが、バナジウムのハロゲン化物は、取り扱いが非常に難しく、しかも製造途中で生成される副生成物を除去するためのプロセス設計が複雑であるので装置の大型化が難しく、実用化には至っていない。
【0007】
ところで、近年、さらに別の金属バナジウムの製造方法として、溶融電解を用いて五酸化バナジウムをカルシウム還元する技術を用いた製造方法が開発されている。この製造方法は、近年、酸化チタンなどの金属の製造方法(新しい還元法)として注目されている技術(いわゆる「OS法」)をバナジウムの製造に応用したものである。「OS法」とは、簡単に説明すれば、溶融塩化カルシウムを用いた還元方法であり、「塩化カルシウム−酸化カルシウム電解法」と「カルシウム熱還元法」を一体化した技術である(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】宮内彰彦、岡部徹「バナジウム及びバナジウム合金の新しい製造 技術の開発」日本金属学会誌、第74巻、第11号(2010) 701-711 解説論文
【特許文献2】特許第3981601号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】岡 佑一、鈴木亮輔「溶融塩化カルシウム浴を用いた酸化バナ ジウムの直接還元」日本金属学会誌、第72号、第3巻 (2008)181-187
【非特許文献2】R.O.Suzuki etc. “Direct reduction of vanadium oxide in molten CaCl2” Mineral Processing and Extractive Metallurgy (Trans. Inst. Min. Metal. C) 2008, Vol.117, No.2, 108-112
【非特許文献3】Y.Oka, and R.O.Suzuki “Direct Reduction of Liquid V2O5 in Molten CaCl2” ECS Transactions, 16(49)255-264
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、「OS法」を応用した金属バナジウムの製造方法では、原料として融点が低い五酸化バナジウムを用いており、上述したように製造段階で不純物が混入するおそれがあり、高純度の金属バナジウムの製造は容易でない。より融点の高い三酸化バナジウムを用いることでこの問題を改善することが考えられるが、この場合、五酸化バナジウムを三酸化バナジウムに還元する必要があるため、その分だけ手間がかかり、金属バナジウムの製造効率が低下する。
【0011】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、高純度の金属バナジウムを、より簡便且つより低コスト・省エネルギーで製造することができる金属バナジウムの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の発明者らは、レドックスフロー電池などのバナジウム電池を開発する中で、これらの電池で必要な金属バナジウムを、簡便且つ低コストで製造できる製造技術が必要と考えた。また、上述したように、金属バナジウムは、様々な用途で幅広く使用されており、この点でも需要が高まると考えられる。
このようなことから、金属バナジウムを簡便且つ低コストで製造できる製造技術が必要であるとの結論に達し、今後は高純度の金属バナジウムの必要性が高まると判断から、高純度の金属バナジウムを簡便且つ低コストで製造する方法の開発を行うこととした。
そこで、上述の「OS法」を応用した金属バナジウムの製造方法に着目し、不純物の混入防止の観点で研究開発を進め、次に説明するような本発明をするに至った。
【0013】
本出願に係る発明は、反応槽内の溶融塩電解浴を形成する無機溶融塩のうちの一部の無機溶融塩を電気分解して還元性分解生成物を生成せしめ、還元性分解生成物によりバナジウム化合物を熱還元して金属バナジウムを製造する金属バナジウムの製造方法であり、前記一部の無機溶融塩として、カルシウムの硫化物、硫酸化合物及び酸化物からなる群から選ばれる1種又は2種以上が含まれており、前記還元性分解生成物には、前記一部の無機溶融塩を電気分解して得られるカルシウムが含まれており、前記バナジウム化合物は、バナジウム硫化物、バナジウム硫酸化合物、バナジウムのチオ硫酸化合物、メタバナジン酸アンモニウム及び硫酸バナジルからなる群から選ばれる1種又は2種以上を含む混合バナジウム化合物である、金属バナジウムの製造方法である。
【0014】
不純物の混入を防止する方法を検討する中で、融点が高いバナジウム硫化物やバナジウム硫酸化合物を原料として用いることに着目し、さらに研究開発を進めて本発明をするに至った。
融点が高いこれらのバナジウム化合物は、溶融塩電解浴への投入時など、製造段階での取り扱いが容易である。したがって、原料やその取り扱いに起因する不純物混入をより容易に防止することができ、高純度の金属バナジウムをより容易に製造することができる。例えば、融点を比べると、V
2S
3は約2,400℃、V
2O
3は約1,970℃、V
2O
5 は約690℃である。
また、さらに研究を行ったところ、融点が高いバナジウム化合物を原料の一部として用いると、比較的融点が低いバナジウム酸化物が原料の一部に含まれる場合でも、不純物の混入が防止される傾向にあることを見出した。融点が高いバナジウム化合物が原料中に混在すると、バナジウム酸化物が溶融しにくくなり、あるいは、溶融したとしても、周囲に融点が高いバナジウム化合物が存在することで取り扱い性の低下が防止されると考えられる。
【0015】
さらに、熱還元に必要な還元性分解生成物を生成するための無機溶融塩に着目し、研究を行った。その結果、原料であるバナジウム化合物としてバナジウム硫化物やバナジウム硫酸化合物かを含めると否とにかかわらず、還元性分解生成物の生成に必要な一部の無機溶融塩として硫化カルシウムおよび硫酸カルシウムからなる群から選ばれる1種又は2種以上を含めることで、高純度の金属バナジウムを容易に製造できることを見出し、次の発明をするに至った。
【0016】
本出願に係る別の発明は、反応槽内の溶融塩電解浴を形成する無機溶融塩のうちの一部の無機溶融塩を電気分解して還元性分解生成物を生成せしめ、還元性分解生成物によりバナジウム化合物を熱還元して金属バナジウムを製造する金属バナジウムの製造方法であり、前記一部の無機溶融塩として、硫化カルシウムおよび硫酸カルシウムからなる群から選ばれる1種又は2種以上が含まれており、前記還元性分解生成物には、前記一部の無機溶融塩の電気分解により得られるカルシウムが含まれており、前記バナジウム化合物は、バナジウム硫化物、バナジウム酸化物、バナジウム硫酸化合物、バナジウムのチオ硫酸化合物、メタバナジン酸アンモニウム及び硫酸バナジルからなる群から選ばれる1種又は2種以上を含む混合バナジウム化合物である、金属バナジウムの製造方法である。
【0017】
原料として比較的融点が低いバナジウム酸化物を用いる場合であっても、溶融塩電解浴を形成する無機溶融塩として硫化カルシウムおよび硫酸カルシウムからなる群から選ばれる1種又は2種以上を含めることで、不純物の混入が防止されると考えられる。
つまり、先に説明した本出願に係る発明においては、原料であるバナジウム化合物として、バナジウム硫化物およびバナジウム硫酸化合物からなる群から選ばれる1種又は2種以上を含めていることと、前記一部の無機溶融塩に硫化カルシウムや硫酸カルシウムを含めたこととがあいまって、高純度の金属バナジウムをより容易に製造することができると考えられる。
【0018】
また、原料であるバナジウム化合物としてバナジウム硫化物やバナジウム硫酸化合物を用いると、より少ない電力量で金属バナジウムを製造することができる。つまり、低コストで効率よく金属バナジウムを製造することができる。この点について具体的に検討を進め、V
2S
3、V
2O
3 又はV
2O
5を例に、これらの原料から金属バナジウムを製造する場合の理論電気量Q
0を比較した。この計算を行うと、Q
0=2,923C/g-V
2S
3、Q
0=3,863C/g-V
2O
3、Q
0=5,305C/g-V
2O
5であった。硫化バナジウムの理論電気量は比較的少ない点が、金属バナジウムを生成する上で有利に作用する。
【0019】
なお、原料であるバナジウム化合物や電解浴を形成する無機溶融塩に、硫黄を含む化合物が含まれている場合、溶融塩電解浴から排出される成分がS
2ガスもしくは陽極炭素と反応して生成するCS
2ガスになるところ、当該ガスは反応容器から環境中へ排出するのではなく、冷却により析出させ、それぞれ固形物および液体として容易に回収可能であるという点でも優れている。
【0020】
そして、上述した両発明の製造方法によれば、金属バナジウムを連続的に製造することができる。連続的に金属バナジウムを製造できる製造方法は、工業化や量産化の際に有利であるということができる。
【0021】
また、上述した両発明によれば、粒状あるいは粉状の金属バナジウムを容易に製造することができる。金属バナジウムは、上述したように、例えば、触媒、水素吸蔵合金、化学電池など、多種多様な用途で用いられている。そして、これらの用途では、粉末の金属バナジウムが必要であるところ、粉末ではない金属バナジウムを製造してしまうと、その後、粉末にする手間がかかり、その分、高価になる。この点、上述した両発明の製造方法は、粒状あるいは粉状の金属バナジウムを容易に製造することができ、低コストを実現できる点で極めて優れている。
【0022】
さらに、上述した両発明によれば、粒状あるいは粉状で且つ多孔質の金属バナジウムを容易に製造することができる。粉末の金属バナジウムが要求される理由としては、例えば、混合性や溶解性及び反応性に優れていることや表面積が大きいことなどを挙げることができるが、多孔質であることは、こられの特性をより向上させる性質である。従って、粒状あるいは粉状で且つ多孔質の金属バナジウムは、上述した触媒、水素吸蔵合金、化学電池など用いる金属バナジウムとしてさらに好ましい。つまり、上述した両発明は、粒状あるいは粉状で且つ多孔質の金属バナジウムを容易に製造することができ、低コストを実現できる点で極めて優れている。
【0023】
さらに、上述した両発明によれば、より低酸素濃度の金属バナジウムを容易に製造することができる。酸素濃度が低い金属バナジウムは、水素吸蔵特性が大幅に向上することや原子炉材料に用いる場合不純物の放射化が低減する点で優れている。
つまり、上述した両発明は、低酸素濃度の金属バナジウムを容易に製造することができ、低コストを実現できる点で極めて優れている。
【0024】
そして、上記金属バナジウムの製造方法としては、陰極における熱還元もしくは熱分解によって生成される無機溶融塩として、前記一部の無機溶融塩が生成されており、生成された無機溶融塩は前記溶融塩電解浴の一部を形成する製造方法であってもよい。
また、陽極におけるアノード反応によって硫黄を生成する金属バナジウムの製造方法であってもよい。
さらに、前記バナジウム化合物及び前記一部の無機溶融塩のうちの少なくともいずれか一方に、酸化物が含まれていると共に、電気分解の陽極として炭素材を用いており、陽極におけるアノード反応によって炭酸ガスを生成する、金属バナジウムの製造方法であってもよい。
【0025】
そして、電気分解用の陽極として炭素材を用いて溶融塩電解浴中の前記一部の無機溶融塩を電気分解し、陽極におけるアノード反応によって、少なくとも硫黄ガスを生成し、金属バナジウムの生成に伴い、少なくとも硫化カルシウムを生成し、当該生成物は溶融塩電解浴に溶解する、金属バナジウムの製造方法であってもよい。
また、電気分解用の陽極として炭素材を用いて溶融塩電解浴中の前記一部の無機溶融塩を電気分解し、陽極におけるアノード反応によって少なくとも炭酸ガスを生成し、金属バナジウムの生成に伴い少なくとも酸化カルシウムを生成し、当該生成物は溶融塩電解浴に溶解する、金属バナジウムの製造方法であってもよい。
さらに、電気分解用の陽極として炭素材を用いて溶融塩電解浴中の前記一部の無機溶融塩を電気分解し、前記バナジウム化合物及び前記一部の無機溶融塩のうちの少なくともいずれか一方に硫酸化合物が含まれていることで、金属バナジウムの生成に伴い少なくとも硫化カルシウムを生成し、当該生成物は溶融塩電解浴に溶解する、金属バナジウムの製造方法であってもよい。なお、金属バナジウムの生成に伴い、副生成物として硫化カルシウムCaSおよび酸化カルシウムCaOが生成されてもよい。これらの生成物も、共に溶融塩電解浴に溶解して再び電解される。さらに、陽極におけるアノード反応によって少なくとも亜硫酸ガスが生成されてもよい。
また、一部の硫黄を含むバナジウム化合物(例えば、バナジウム硫酸化合物、バナジウムのチオ硫酸化合物、硫酸バナジル)は、昇温による熱分解によって硫黄分が亜硫酸ガスとなって除去され、五酸化バナジウムV
2O
5にすることができる。このようなことから、バナジウム硫化物以外の、一部の硫黄を含むバナジウム化合物は、反応温度では残留硫黄分を含む五酸化バナジウムV
2O
5となるバナジウム化合物であってもよい。
【0026】
そして、前記一部の無機溶融塩はカルシウム化合物であり、当該カルシウム化合物の添加量は、0.01mol%〜30mol%であることが好ましい。
また、前記カルシウム化合物の添加量は、0.01mol%〜20mol%であることがより好ましい。
さらに、電気分解における溶融塩電解浴の温度(反応温度)は873K以上1423Kであり、電解電圧は1.6V以上3.21V以下であることが好ましい。
さらに、前記硫化バナジウムは、VS、V
2S
3、V
5S
8、V
3S
4、V
2S
5からなる群から選ばれる1種又は2種以上であり、前記バナジウムチオ硫酸化物は、VS
2O
3であり、前記バナジウム硫酸化合物は、VSO
4、V
2(SO
4)
3、VOSO
4からなる群から選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本出願に係る発明である金属バナジウムの製造方法によれば、より簡便且つ低コストで高純度の金属バナジウムを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明に係る金属バナジウムの製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0029】
本発明は、概略的には、バナジウム化合物を溶融塩中で熱還元して金属バナジウムを製造する方法である。バナジウム化合物としては、例えば、バナジウムの酸化物、硫化物を挙げることができる。
【0030】
図1に示されるように、まず、ヒータ5で加熱可能なステンレス製の密閉容器4中に設置されたルツボ3を用意する。ここでは、緻密質酸化マグネシウム製のルツボを用いた。
また、ルツボ3内に配置する陽極1と、陰極2とを用意した。なお、陽極1は、上部のチタン製のロッド(チタン棒)1aと下端部の炭素棒1bとで構成されている。また、陰極2は、チタン棒2aと、バナジウム化合物を収容するための容器2bとで構成されている。容器2は、チタン製の網で構成されるかご形の容器であり、金属バナジウムの製造では、チタン棒2aを取り囲む位置に設置される(
図1参照)。そして、陽極1と陰極2との間に直流電圧を印加するための直流電源(不図示)を用意した。
【0031】
その後、ルツボ3内に混合溶融塩8の原料を投入し、密閉容器4内に真空脱水処理を施した後、密閉容器4内にアルゴンガスArを吸気口9から注入し、アルゴンガス雰囲気下で昇温させる。ここでは、900℃に昇温させた。このようにしてルツボ3内に混合溶融塩8を用意した。混合溶融塩8は、後述しているように、塩化カルシム(CaCl
2)と、硫化カルシウムや酸化カルシウムが混合されたものである。なお、ステンレス製の密閉容器4、ルツボ3及びルツボ3内の溶融塩8の温度を熱伝対6などの温度計で計測すると共に、通電時の電圧及び電流等を計測機器(不図示)で計測し、これらの計測値をデーターロガーによってパーソナルコンピューターに記録した。
【0032】
温度が安定したところで、密閉容器4を密閉する前にあらかじめ密閉容器4内に配置しておいた陽極1及び容器2b内にバナジウム化合物12が収容された陰極2を溶融塩8中に浸漬させ、電解を開始する。
ここでは、バナジウム化合物の還元に必要なカルシウムを、電解によって過不足なく還元発生させるために、通電量の指標として、カルシウムを発生させるために必要な理論電気量Q
0と供給した電気量Qの比(Q /Q
0)を用いた。なお、後述の実施例では印加電圧を3.0Vに固定した。また、供給電気量は理論電気量比の200〜307%とした。
【0033】
電解終了後、溶融塩8から引き出した陰極2すなわちチタン棒2a容器2bをアルゴンガス中で室温まで冷却した後、洗浄した。洗浄では、蒸留水、酢酸、蒸留水、エタノール、アセトンをこの順番で洗浄液として用いて洗浄を行った。そして、洗浄後の陰極2を真空乾燥した。このようにして得られた試料(製造試料)について、X線回折測定装置(
図4及び
図5参照)およびエネルギ分散X線分光分析装置を付属した走査型電子顕微鏡(
図6及び
図7参照)を用いて含有不純物の定量分析を行った(表1参照)。
【0034】
ところで、金属バナジウムの製造時、混合溶融塩中では、2つの反応が同時にすすむ。
例えば、混合溶融塩が塩化カルシムと硫化カルシウムと酸化カルシウムを含むものであり、バナジウム化合物がバナジウムの硫化物及び酸化物である場合、同時に進行する2つの反応とは、次の式(1)及び式(3)に示されるような熱還元反応(バナジウム化合物のカルシウムによる熱還元反応)と、式(2)及び式(4)に示されるような高温化学反応(還元されたバナジウム中の硫黄や酸素の脱硫・脱酸である高温化学反応である。
V
2S
3 + 3Ca → 2V+3CaS (1)
S(inV)+Ca → V+CaS (2)
V
2O
3 +3Ca → 2V+3CaO (3)
O(inV)+Ca → V+CaO (4)
【0035】
熱還元反応において酸化した還元剤CaSは、電解・再生である電気化学反応を行う(式
(5)、(6)、(7)参照)。
陽極: 2S
2- →S
2+4e- (5)
陰極: 2Ca
2+ +4e- →2Ca (6)
合計: 2CaS →2Ca +S
2 (7)
【0036】
また、高温化学反応において酸化した還元剤CaOは、同じく、電解・再生である電気化学反応を行う(式(8)、(9),(10)、(11)、(12)参照)。硫黄に比べ反応性の強い酸素は陽極炭素と反応して一酸化炭素および二酸化炭素を生成する。
陽極: 2O
2- +C →CO
2+4e- (8)
O
2- +C →CO+2e- (9)
陰極: 3Ca
2+ +6e- →3Ca (10)
合計: 2CaO+C →2Ca+CO
2 (11)
CaO+C →Ca+CO (12)
【0037】
このような反応が一つの容器で同時に行われ、連続的にバナジウム化合物の熱還元とCaS、CaOの電気分解が行われる。
【0038】
なお、陰極2では、還元力を持ったカルシウムが発生する。発生したカルシウムは、液体カルシウム又は塩化カルシウムに溶解した形で存在する。このカルシウムを用いてバナジウム化合物の還元・脱酸を行う。
また、陽極1である炭素棒1bでは、バナジウム化合物中に硫化バナジウムが含まれている場合はS
2ガス(及び/又はCS
2ガス)が発生し、バナジウム化合物中に酸化バナジウムが含まれている場合はCO
2ガス(及び/又はCOガス)が発生する。そして、発生したガスは溶融塩から放出され、排気口10(
図1参照)から排出される。なお、S
2ガス(CS
2ガス)は冷却により容易に析出回収可能であり排ガス対策に有効である。
【0039】
すなわち、バナジウム化合物中に硫化バナジウムが含まれている場合は、S
2(及び/又はCS
2)が排出され、バナジウム化合物中に酸化バナジウムが含まれている場合は陽極1である炭素棒1bの炭素が消費されてCO
2が排出される。そして、その他の物質はリサイクルされ、連続的に使用される。これらを反応式で示すと、次のようになる。
2V
2S
3 → 4V+3S
2 (13)
2V
2O
3+3C → 4V+3CO
2 (14)
V
2O
3+3C → 2V+3CO (15)
【0040】
また、陰極1側でバナジウム化合物が還元されて得られる金属バナジウムは粉末状である(
図7及び
図8参照)。したがって、電解後のルツボから取り出した金属バナジウムを洗浄(水洗、酢酸洗浄等)して表面に付着した塩化カルシウム等を除去し、乾燥させることで、容易に金属バナジウム粉末を得ることができる。なお、得られた金属バナジウムは多孔質であるので(
図7及び
図8参照)、粉末でない部分についても粉末化が容易である。また、バナジウム化合物として硫化バナジウムを用いると、陽極1の炭素電極(炭素棒)1bが消耗することがないので、より効率良く粉末金属バナジウムを製造することができる。
【実施例1】
【0041】
次に実施例について説明する。
本実施例では、溶融塩(混合溶融塩)8として、塩化カルシウム(和光純薬製、試薬特級)600gに硫化カルシウム(和光純薬製、特級試薬)を0.5mol%添加したものをルツボ3(内径90mm、深さ200mm)に入れた。このルツボ3を密閉容器4(内径105mm、深さ480mm)に入れてフランジを装着して密閉し、真空脱水処理の後、アルゴンガス雰囲気下で900℃まで昇温した。
また、陽極1のチタン棒1a及び炭素棒1bと、陰極2のチタン棒2a及びチタン棒を取り囲むように取り付ける容器2bとを用意した。この容器2b内には硫化バナジウム12(フルウチ化学製 純度99%)を1.502g挿入した。
ルツボ内の溶融塩の温度が安定した後、両電極1,2を溶融塩8中に挿入して電解を開始した。印加電圧については3.0Vに固定し、装填した試料の硫化バナジウム量に対応して、その還元に必要なCa発生のために必要な電気量を通電した。ここでは理論電気量の307%の電気量を用いて電解を行った。
電解終了後、陰極2を溶融塩8から引き出し、アルゴンガス中で室温まで冷却した。そして、冷却後試料を蒸留水、酢酸、蒸留水、エタノール、アセトンの順に洗浄し、その後、真空乾燥を行って試料(製造試料)を得た。
【実施例2】
【0042】
本実施例では、溶融塩8として、塩化カルシウム(和光純薬製、試薬特級)600gに硫化カルシウム(和光純薬製、特級試薬)を0.5mol%添加したものをルツボ3(内径90mm、深さ200mm)に入れた。このルツボ3を密閉容器4(内径105mm、深さ480mm)に入れてフランジを装着して密閉し、真空脱水処理の後、アルゴンガス雰囲気下で900℃まで昇温した。
また、陽極1のチタン棒1a及び炭素棒1bと陰極2のチタン棒2a及びチタン棒を取り囲むように取り付ける容器2bとを用意した。この容器2bには、三酸化バナジウム12(太陽鉱工製 純度99%以上)を1.488g挿入した。
温度が安定した後、両電極1,2を溶融塩8中に挿入し、電解を開始した。印加電圧については3.0Vに固定し、装填した試料の三酸化バナジウム量に対応して、その還元に必要なCa発生のために必要な電気量を通電した。ここでは理論電気量の200%の電気量を用いて電解を行った。
電解終了後、陰極2を溶融塩8から引き出し、アルゴンガス中で室温まで冷却した。そして、冷却後試料を蒸留水、酢酸、蒸留水、エタノール、アセトンの順に洗浄し、その後、真空乾燥を行って試料(製造試料)を得た。なお、実施例1と共通の事項については説明を省略した。
【実施例3】
【0043】
本実施例は、原料(バナジウム化合物12)として、メタバナジン酸アンモニウム(和光純薬 特級試薬)及び硫酸バナジル(新興化学)をそれぞれ4gずつ用意した。そして、用意した各原料ごとに前処理として加熱処理(加熱温度600℃、加熱時間10分)を施して処理物質を得た。得られた物質は、分析したところ、いずれも五酸化バナジウム酸化物(V
2O
5)であった。
このようにして得られた各五酸化バナジウム酸化物(V
2O
5)を用いて、それぞれ金属バナジウムの製造を行った。このとき、容器2に入れるバナジウム酸化物(V
2O
5)の量はいずれの場合とも1.500gであった。なお、バナジウム酸化物(V
2O
5)の量以外の製造条件は、実施例2と共通であったので、ここでは説明を省略した。
【0044】
各実施例における溶融塩電解還元によって製造された試料(製造試料)について、硫黄含有量及び酸素含有量(酸素濃度)の分析結果を次の表1に示す。なお、硫黄含有量の分析方法は、酸素ガス気流中溶解赤外分光分析法であり、酸素含有量の分析方法は、ヘリウムガス気流中溶解赤外分光分析法である。
表1及び
図4、
図5に示されるように、各実施例の製造方法によって、硫黄含有量及び酸素含有量の低い粉末金属バナジウムが得られた。なお、実施例3で得られた試料の分析結果は、実施例2で得られた試料の分析結果と同等であったので、ここではデータ掲載を省略した。
【0045】
【表1】
【0046】
なお、バナジウム化合物としては、バナジウムの酸化物や硫化物の他に、例えば、バナジウムの硫酸化合物、チオ硫酸化合物、メタバナジン酸アンモニウム(NH
4VO
3)および硫酸バナジル(VOSO
4)を用いることができる。そして、酸化バナジウムとしては、V
2O、VO、V
2O
3、VO
2、V
2O
5を挙げることができる。また、硫化バナジウムとしては、VS、V
2S
3、V
5S
8、V
3S
4、V
2S
5、V
3S、V
5S
4、VS、V
2S
3、V
2S
5、V
7S
8、V
3S
8、VS
4を挙げることができる。さらに、バナジウムの硫酸化合物としては、VSO
4、V
2(SO
4)
3、VOSO
4、V(SO
4)
2を挙げることができる。バナジウムのチオ硫酸化合物としては、VS
2O
3を挙げることができる。
これらのうち、メタバナジン酸アンモニウムを用いる場合は、熱分解工程を前工程として実施することが好ましい。熱分解工程を実施すると、熱分解により酸化バナジウムが得られる。熱分解工程の条件としては、たとえば、空気中で550℃、4時間の熱分解工程を実施すると、熱分解によって五酸化バナジウムが得られる。また、五酸化バナジウムを、ロータリキルンを用い、水素ガス中で600℃、4時間の還元処理を行うと、三酸化バナジウムが得られる。
【0047】
また、溶融塩を構成する際に、塩化カルシムに混合する無機溶融塩としては、硫化カルシウムや酸化カルシウムのほかに、例えば、カルシウムチオ硫酸化合物やカルシウム硫酸塩を挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】金属バナジウムの製造装置を示す模式図である。
【
図2】(a)及び(b)は、実施例1における通電時の電解電流曲線を示すグラフである。
【
図3】(a)及び(b)は、実施例2における通電時の電解電流曲線を示すグラフである。
【
図4】実施例1で製造された試料のX線回折測定結果を示すグラフである。
【
図5】実施例2で製造された試料のX線回折測定結果を示すグラフである。
【
図6】実施例1で製造された試料の走査電子顕微鏡写真である。
【
図7】実施例2で製造された試料の走査電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0049】
1…陽極電極、1a…チタン棒、1b…炭素棒、2…陰極電極、2a…チタン棒、
2b…チタン製の籠状容器、3…緻密質酸化マグネシウム製のルツボ、
4…ステンレス製の密閉容器(容器部とフランジ部)、5…ヒータ、
6…熱電対(温度計)、8…溶融塩(混合溶融塩、CaCl
2+CaS(CaO)、
9…吸気口、10…排気口、12…原料粉末(バナジウム化合物、V
2S
3、V
2O
3)。
【国際調査報告】