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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2016年9月1日
【発行日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】有機半導体デバイス用電極材料
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/28 20060101AFI20171201BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20171201BHJP
   H01L 51/05 20060101ALI20171201BHJP
   H01L 51/30 20060101ALI20171201BHJP
   H01L 51/40 20060101ALI20171201BHJP
   H01B 1/12 20060101ALI20171201BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20171201BHJP
   H01B 1/02 20060101ALI20171201BHJP
【FI】
   H01L21/28 301B
   H01L29/78 616V
   H01L29/78 618B
   H01L29/28 100A
   H01L29/28 250F
   H01L29/28 220A
   H01L29/28 370
   H01B1/12 Z
   H01B1/00 F
   H01B1/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
【出願番号】特願2017-501995(P2017-501995)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2016年1月27日
(31)【優先権主張番号】特願2015-38550(P2015-38550)
(32)【優先日】2015年2月27日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080159
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 望稔
(74)【代理人】
【識別番号】100090217
【弁理士】
【氏名又は名称】三和 晴子
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】梅田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】後瀉 敬介
【テーマコード(参考)】
4M104
5F110
5G301
【Fターム(参考)】
4M104AA09
4M104AA10
4M104BB36
4M104CC01
4M104DD51
4M104DD78
4M104GG09
4M104HH15
5F110AA05
5F110AA30
5F110CC03
5F110EE08
5F110FF02
5F110GG05
5F110GG42
5F110HK01
5F110HK02
5F110HK17
5F110HK32
5F110QQ06
5G301AA01
5G301AA02
5G301AA08
5G301AA11
5G301AA14
5G301AA16
5G301AA17
5G301AA20
5G301AA23
5G301AB20
5G301AD10
(57)【要約】
本発明は、優れた導電性を維持し、有機半導体とのコンタクト性が良好となる有機半導体デバイス用電極材料を提供すること課題とする。本発明の有機半導体デバイス用電極材料は、無機ナノ粒子および有機π共役系配位子を含有し、有機π共役系配位子が、電子吸引性の置換基を少なくとも1個有する配位子である、有機半導体デバイス用電極材料である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機ナノ粒子および有機π共役系配位子を含有し、
前記有機π共役系配位子が、電子吸引性の置換基を少なくとも1個有する配位子である、有機半導体デバイス用電極材料。
【請求項2】
前記無機ナノ粒子が、金属ナノ粒子である、請求項1に記載の有機半導体デバイス用電極材料。
【請求項3】
前記金属ナノ粒子が、金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、ルテニウム、インジウム、ロジウム、錫および亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種の金属を含む、請求項2に記載の有機半導体デバイス用電極材料。
【請求項4】
前記有機π共役系配位子が有する電子吸引性の置換基が、トシル基、メシル基、フェニル基、アシル基、ハロゲン基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルキルチオ基、ハロゲン化アリール基、および、ハロゲン化アリールチオ基からなる群から選択される少なくとも1種の置換基である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機半導体デバイス用電極材料。
【請求項5】
前記有機π共役系配位子が有する電子吸引性の置換基が、ハロゲン化アルキルチオ基またはハロゲン化アリールチオ基である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機半導体デバイス用電極材料。
【請求項6】
前記有機π共役系配位子が、ポルフィリン、フタロシアニン、ナフタロシアニンおよびこれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の配位子である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機半導体デバイス用電極材料。
【請求項7】
有機薄膜トランジスタの電極材料として用いる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機半導体デバイス用電極材料。
【請求項8】
ソース電極およびドレイン電極のいずれか一方または両方の電極材料として用いる、請求項7に記載の有機半導体デバイス用電極材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体デバイス用電極材料に関する。
【背景技術】
【0002】
有機半導体材料を用いたデバイス(以下、「有機半導体デバイス」ともいう。)は、従来のシリコンなどの無機半導体材料を用いたデバイスと比較して、様々な優位性が見込まれているため、高い関心を集めている。
有機半導体デバイスとしては、例えば、有機薄膜トランジスタ(OTFT:Organic thin film transistor)や、有機薄膜太陽電池(OPV:Organic photovoltaics)などが知られている。
また、このような有機半導体デバイスは、導電回路や電極の形成材料として、金属ナノ粒子などの無機ナノ粒子と分散媒とを含む分散液(導電性ナノインク)を用いることが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、「無機ナノ粒子と、有機π共役系配位子と、溶媒と、を含むナノインク組成物であって、前記無機ナノ粒子に前記有機π共役系配位子がπ接合し、強いπ接合と粒子間の接近により導電性を有することを特徴とするナノインク組成物。」が記載されている([請求項1])。
また、特許文献2には、有機薄膜太陽電池の製造方法において、金属ナノ粒子と有機π接合配位子を含む分散媒を用いて裏面電極層を形成することが記載されている([請求項1][請求項2])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2011/114713号
【特許文献2】特開2014−236064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、特許文献1および2に記載されたナノインク組成物や分散媒について検討したところ、これらの材料を用いて電極を作製すると、導電性は良好であるものの、有機π共役系配位子の種類によっては、電極と有機半導体との界面での電荷移動のエネルギー障壁が高くなり、電極としての性能が劣る場合があることを明らかとした。
なお、本明細書においては、「電極と有機半導体との界面での電荷移動のエネルギー障壁が低くなる」ことを「有機半導体とのコンタクト性が良好となる」とも表記する。
【0006】
そこで、本発明は、優れた導電性を維持し、有機半導体とのコンタクト性が良好となる有機半導体デバイス用電極材料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、無機ナノ粒子とともに、電子吸引性の置換基を有する有機π共役系配位子を用いて形成した電極が、優れた導電性を維持し、有機半導体とのコンタクト性が良好となることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、以下の構成により上記課題を達成することができることを見出した。
【0008】
[1] 無機ナノ粒子および有機π共役系配位子を含有し、
有機π共役系配位子が、電子吸引性の置換基を少なくとも1個有する配位子である、有機半導体デバイス用電極材料。
[2] 無機ナノ粒子が、金属ナノ粒子である、[1]に記載の有機半導体デバイス用電極材料。
[3] 金属ナノ粒子が、金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、ルテニウム、インジウム、ロジウム、錫および亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種の金属を含む、[2]に記載の有機半導体デバイス用電極材料。
[4] 有機π共役系配位子が有する電子吸引性の置換基が、トシル基、メシル基、フェニル基、アシル基、ハロゲン基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルキルチオ基、ハロゲン化アリール基、および、ハロゲン化アリールチオ基からなる群から選択される少なくとも1種の置換基である、[1]〜[3]のいずれかに記載の有機半導体デバイス用電極材料。
[5] 有機π共役系配位子が有する電子吸引性の置換基が、ハロゲン化アルキルチオ基またはハロゲン化アリールチオ基である、[1]〜[3]のいずれかに記載の有機半導体デバイス用電極材料。
[6] 有機π共役系配位子が、ポルフィリン、フタロシアニン、ナフタロシアニンおよびこれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の配位子である、[1]〜[5]のいずれかに記載の有機半導体デバイス用電極材料。
[7] 有機薄膜トランジスタの電極材料として用いる、[1]〜[6]のいずれかに記載の有機半導体デバイス用電極材料。
[8] ソース電極およびドレイン電極のいずれか一方または両方の電極材料として用いる、[7]に記載の有機半導体デバイス用電極材料。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、優れた導電性を維持し、有機半導体とのコンタクト性が良好となる有機半導体デバイス用電極材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0011】
本発明の有機半導体デバイス用電極材料(以下、「本発明の電極材料」と略す。)は、無機ナノ粒子および有機π共役系配位子を含有する。
また、本発明の電極材料は、有機π共役系配位子として、電子吸引性の置換基(以下、「電子吸引性基」ともいう。)を少なくとも1個有する配位子を用いる。
【0012】
本発明の電極材料は、上述した通り、無機ナノ粒子とともに、電子吸引性基を有する有機π共役系配位子を用いて形成した電極が、優れた導電性を維持し、有機半導体とのコンタクト性が良好となる。
まず、有機半導体と電極とのコンタクト性を良好にするためには、電極材料の仕事関数を有機半導体の仕事関数に近づけることで、ポテンシャル障壁を低減させることが求められる。有機半導体は、一般的に仕事関数が5eV以上であることが多いため、一般的な無機ナノ粒子(例えば、銀(4.7eV)や銅(4.8eV)などの金属粒子)の場合、仕事関数が5eV以下と有機半導体と比べると小さく、無機ナノ粒子の仕事関数を大きくすることが必要となる。
そして、一般的に仕事関数は、物質の表面状態に大きく依存するため、仕事関数を変化させるためには、物質表面の分極を制御することが有効である。
そのため、本発明者らは、本発明のようにリガンドを除去することなく導電性を付与できる有機π共役系配位子を用いた無機ナノ粒子材料においては、粒子表面に形成されているリガンドの分極を制御することが仕事関数の制御に有効であると考えた。
そして、検討の結果、無機ナノ粒子のリガンドとして電子吸引性基を有する有機π共役系配位子を用いた場合、電子吸引性基によって形成される粒子表面の分極により無機ナノ粒子(例えば、銀や銅などの金属粒子)の仕事関数が増大することが確認することができた。それにより、有機半導体の仕事関数(概ね5eV程度以上)に近づくことにより、作製される電極と有機半導体との界面での電荷移動のエネルギー障壁が低くすることができる。
また、逆の作用として、後述する比較例1〜3に示す結果から、電子供与性の置換基を有する有機π共役系配位子を用いた場合では、導電性は良好であるにもかかわらず仕事関数が小さくなり、有機半導体との界面でのエネルギー障壁が高くなってしまっていることが分かった。
【0013】
次に、本発明の電極材料が含有する無機ナノ粒子および有機π共役系配位子ならびに任意成分について詳述する。
【0014】
〔無機ナノ粒子〕
本発明の電極材料が含有する無機ナノ粒子は特に限定されず、従来公知の金属ナノ粒子、金属酸化物粒子などを用いることができる。
【0015】
本発明においては、形成される電極の導電性がより良好となる理由から、無機ナノ粒子は、金属ナノ粒子であるのが好ましく、具体的には、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、インジウム(In)、ロジウム(Rh)、錫(Sn)および亜鉛(Zn)からなる群から選択される少なくとも1種の金属を含む金属ナノ粒子であるのがより好ましい。
これらのうち、実用化やコストの観点から、AgやCuを含有する金属ナノ粒子であるのが好ましい。なお、Cuを含有する場合、耐酸化性の観点から、Cuより高い還元電位を有する金属元素(Ag、Pd、Pt、Au)を更に含有するのが好ましい。
【0016】
Ag原料としては、具体的には、例えば、Ag(NO3)、AgCl、Ag(HCOO)、Ag(CH3COO)、Ag(CH3CH2COO)、Ag2CO3、Ag2SO4等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
Cu原料としては、具体的には、例えば、Cu(NO32、CuCl2、Cu(HCOO)2、Cu(CH3COO)2、Cu(CH3CH2COO)2、CuCO3、CuSO4、C57CuO2等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
一方、金属酸化物粒子としては、具体的には、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)粒子、酸化アンチモンスズ(ATO)粒子、アルミニウムによりドープされていてもよい酸化亜鉛(AlによりドープされてもよいZnO)粒子、フッ素ドープ二酸化スズ(FドープSnO2)粒子、ニオブドープ二酸化チタン(NbドープTiO2)粒子などが挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
このような無機ナノ粒子の平均粒子径は、粒子を構成する材料によっても異なるため特に限定されないが、3nm以上500nm以下であるのが好ましく、5nm以上50nm以下であるのが好ましい。
ここで、無機ナノ粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)を用いて、分散媒中の無機ナノ粒子の粒子径を測定して求めることができる。例えば、TEMの画像で観察される粒子のうち、重なっていない独立した300個の金属ナノ粒子の粒子径を計測して、平均粒子径を算出することができる。
【0019】
本発明においては、無機ナノ粒子は、分散性を良好とし、後述する有機π共役系配位子と配位置換(リガンド置換)させる観点から、後述する有機π共役系配位子とを混合する前に、予めアミンを含む溶媒(以下、「アミン溶媒」という。)に分散させておくことが好ましい。
アミン溶媒としては、具体的には、例えば、ノニルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オレイルアミンなどのアルキルアミン;1,6−ジアミノヘキサン、N,N’−ジメチル−1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタンなどのアルキルジアミン;等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、このようなアミン溶媒に分散させることにより、無機ナノ粒子の表面に、アミン溶媒の一部のアミン化合物が配位し、分散性が良好となると考えられる。
【0020】
〔有機π共役系配位子〕
本発明の電極材料が含有する有機π共役系配位子は、電子吸引性基を有する有機π共役系配位子であれば、特に限定されない。
本発明においては、上述した通り、有機π共役系配位子が電子吸引性基を有していることにより、上述した無機ナノ粒子の仕事関数を増加させることができる。
【0021】
電子吸引性基としては、具体的には、例えば、トシル基(−Ts)、メシル基(−Ms)、フェニル基(−Ph)、アシル基(−Ac)、ハロゲン基(例えば、−F、−Cl、−Br、−Iなど)、ハロゲン化アルキル基〔−R−X(Rはアルキレン基を表し、Xはハロゲン原子を表す)〕、ハロゲン化アルキルチオ基〔−S−R−X(Rはアルキレン基を表し、Xはハロゲン原子を表す)〕、ハロゲン化アリール基〔−Ar−X(Arはアリール基を表し、Xはハロゲン原子を表す)〕、ハロゲン化アリールチオ基〔−S−Ar−X(Arはアリール基を表し、Xはハロゲン原子を表す)〕等が挙げられ、これらの官能基を1個単独で有していてもよく、2個以上または2種以上を有していてもよい。
これらのうち、溶解性および金属への配位性が良好となり、仕事関数を増加させる効果が大きくなる理由から、電子吸引性基と有機π共役系配位子との結合が硫黄原子で形成されていることが好ましく、具体的には、ハロゲン化アルキルチオ基やハロゲン化アリールチオ基であるのが好ましい。
【0022】
本発明においては、上述した無機ナノ粒子と近接しやすいなどの理由から、有機π共役系配位子が、ポルフィリン、フタロシアニン、ナフタロシアニンおよびこれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の配位子であるのが好ましい。
【0023】
本発明においては、電子吸引性基を有する有機π共役系配位子が、ハロゲン基を有するフタロシアニン系化合物であるが好ましく、例えば、下記式(1)で表されるフタロシアニン誘導体であるのがより好ましい。
【化1】

ここで、上記式(1)中、Mは、2つの水素原子、あるいは、元素周期表の1B、2B、2Aまたは3A族から選択される金属(カチオン)を表す。
また、Rは、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルキルチオ基、ハロゲン化アリール基、または、ハロゲン化アリールチオ基を表し、Rが複数ある場合は、複数のRは同一であっても異なっていてもよい。
また、Zは、0〜4の整数を表し、少なくとも1個のZは1〜4の整数を表す。
【0024】
〔任意成分〕
本発明の電極材料は、基板上に塗布する作業性の観点から、上述したアミン溶媒や、他の有機溶媒を含有していてもよい。
他の有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、シクロペンタノン、酢酸エチル、エチレンジクロライド、テトラヒドロフラン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、2,2,2、4−トリメチルペンタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、トルエン、キシレン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシプロパノール、メトキシメトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチル等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
本発明の電極材料の調製方法は特に限定されず、例えば、上述した無機ナノ粒子を含む分散液と、上述した有機π共役系配位子とを混合することにより調製することができるが、混合時にリガンド置換させることにより、無機ナノ粒子の表面に有機π共役系配位子を配位させて調製するのが好ましい。
【0026】
〔用途〕
本発明の電極材料は、有機半導体とのコンタクト性に優れる電極を形成することができるため、プリンテッドエレクトロニクス用の電極材料として有用であり、例えば、有機薄膜トランジスタの電極材料として用いるのが好ましく、具体的には、有機薄膜トランジスタのソース電極およびドレイン電極のいずれか一方または両方の電極材料として用いるのが好ましい。
【0027】
〔電極の作製方法〕
本発明の電極材料は、塗布によるウェットプロセスのみで電極を作製することができ、有機π共役系配位子を用いているため塗布後の焼成処理も不要となる。
ここで、基板(有機薄膜トランジスタの場合には絶縁膜や有機半導体層も含む)上に塗布する方法は特に限定されず、例えば、印刷法(例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法、インプリント法など)、スピンコーティング法、スリットコーティング法、スリットアンドスピンコーティング法、ディップコーティング法、カーテンコーティング法等が挙げられる。
【実施例】
【0028】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0029】
〔実施例1〕
<無機ナノ粒子(Ag粒子)の調製>
三口フラスコに、オレイルアミン90mlと、硝酸銀(AgNO)1.04gとを添加し、真空脱気後に窒素置換した。
次いで、180℃に加熱し、1時間反応させた後、空冷により反応溶液を冷却することにより、オレイルアミン中にAg粒子(平均粒子径:10.79nm)が分散したAg粒子分散液を調製した。
<電極材料の調製>
調製したAg粒子分散液と、上記式(1)中のMが2つの水素原子であり、Rが電子吸引性のトリフルオロメチルチオ基(−SCF3)であり、Zが2であるフタロシアニンとを混合し、リガンド置換を実施した後、トルエン中に再分散させることにより、Ag粒子の表面にフタロシアニンが配位した電極材料を調製した。
【0030】
〔実施例2〕
<無機ナノ粒子(Cu粒子)の調製>
三口フラスコに、オレイルアミン90mlと、銅アセチルアセトネート(CCuO)1.55gとを添加し、真空脱気後に窒素置換した。
次いで、240℃に加熱し、3時間反応させた後、空冷により反応溶液を冷却することにより、オレイルアミン中にCu粒子(平均粒子径:17.23nm)が分散したCu粒子分散液を調製した。
<電極材料の調製>
調製したCu粒子分散液と、上記式(1)中のMが2つの水素原子であり、Rが電子吸引性のトリフルオロメチルチオ基(−SCF3)であり、Zが2であるフタロシアニンとを混合し、リガンド置換を実施した後、トルエン中に再分散させることにより、Cu粒子の表面にフタロシアニンが配位した電極材料を調製した。
【0031】
〔比較例1〕
実施例1で用いたフタロシアニンに代えて、上記式(1)中のMが2つの水素原子であり、Rが電気供与性のメチルチオ基(−SCH3)であり、Zが2であるフタロシアニンを用いた以外は、実施例1と同様の方法により、Ag粒子の表面にフタロシアニンが配位した電極材料を調製した。
【0032】
〔比較例2〕
実施例2で用いたフタロシアニンに代えて、上記式(1)中のMが2つの水素原子であり、Rが電気供与性のメチルチオ基(−SCH3)であり、Zが2であるフタロシアニンを用いた以外は、実施例2と同様の方法により、Cu粒子の表面にフタロシアニンが配位した電極材料を調製した。
【0033】
〔比較例3〕
実施例1で用いたフタロシアニンに代えて、上記式(1)中のMが2つの水素原子であり、Rが電気供与性のジメチルアミノエタンチオール基(−SCH2CH2N(CH32)であり、Zが2であるフタロシアニン(下記式で表されるOTAP)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、Ag粒子の表面にフタロシアニンが配位した電極材料を調製した。なお、下記式で表されるOTAPは、特許文献1および2に好適態様として記載された有機π共役系配位子(有機π接合配位子)である。
【化2】
【0034】
〔比較例4〕
実施例1の電極材料の調製において、有機π共役系配位子(フタロシアニン)を用いず、リガンド置換を実施しなかった以外は、実施例1と同様の方法により調製し、Ag粒子の表面にオレイルアミンが配位した電極材料を調製した。
【0035】
〔比較例5〕
実施例2の電極材料の調製において、有機π共役系配位子(フタロシアニン)を用いず、リガンド置換を実施しなかった以外は、実施例2と同様の方法により調製し、Cu粒子の表面にオレイルアミンが配位した電極材料を調製した。
【0036】
作製した各電極材料について、以下に示す方法により、仕事関数、導電性および電極性能を評価した。これらの結果を下記表1に示す。
【0037】
<仕事関数>
得られた各電極材料のトルエン分散液をガラス基板上にスピンコートにより塗布し、60℃で1時間乾燥させた後、AC2(理研計器製)を用いて仕事関数の測定を行った。
なお、下記表1には、無機ナノ粒子そのものの仕事関数として、Ag(4.7eV)およびCu(4.8eV)とした場合の差分を示す。例えば、実施例1では、仕事関数が5.4eVと測定されたため、Ag粒子そのものの仕事関数(4.7eV)からの差分として+0.7eVと表記している。
【0038】
<導電性>
仕事関数の測定に用いたガラス基板上の塗布膜について、導電性を評価した。
評価には、三菱化学製ロレスタを用い、抵抗率として、1×10-2Ωcm未満である場合は導電性に優れるものとして「A」と評価し、1×10-2Ωcm以上である場合は導電性に劣るものとして「B」と評価した。
【0039】
<電極性能>
シリコン基板上に熱酸化膜(厚み:350nm)が形成された基板上に、得られた各電極材料のトルエン分散液をインクジェット装置(DIMATIX製)を用いて塗布して厚み100nmのソース電極およびドレイン電極を形成した後、厚み50nmの有機半導体(C8−BTBT、シグマ−アルドリッチ社製)を形成し、ボトムゲート−ボトムコンタクト型の有機薄膜トランジスタを作製した。
半導体パラメータアナライザー(Agilent4155、Agilent社製)にてTFT特性を測定し、On−Off比が4桁以上とれたものに関しては「A」と評価し、4桁未満のものに関しては「B」と評価した。
【0040】
【表1】
【0041】
表1に示す通り、電子供与性の置換基を有するフタロシアニンを含有する電極材料を用いると、導電性は良好であったが、仕事関数が低下し、電極性能も劣ることから、有機半導体とのコンタクト性が悪いことが分かった(比較例1〜3)。
また、有機π共役系配位子を用いていない電極材料を用いると、導電性が劣り、仕事関数が低下し、電極性能も劣ることが分かった(比較例4〜5)。
これに対し、電子吸引性の置換基を有する有機π共役系配位子を含有する電極材料を用いると、優れた導電性を維持しつつ、仕事関数が増加し、電極性能も良好となることから、有機半導体とのコンタクト性が良好となることが分かった(実施例1〜2)。
【国際調査報告】