特表-16140251IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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再表2016-140251シラン架橋性ゴム組成物及びシラン架橋ゴム成形体とそれらの製造方法、並びに、シラン架橋ゴム成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2016年9月9日
【発行日】2017年12月14日
(54)【発明の名称】シラン架橋性ゴム組成物及びシラン架橋ゴム成形体とそれらの製造方法、並びに、シラン架橋ゴム成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 51/04 20060101AFI20171117BHJP
   C08K 3/00 20060101ALI20171117BHJP
   C08L 23/12 20060101ALI20171117BHJP
   C08J 3/24 20060101ALI20171117BHJP
   C08J 3/22 20060101ALI20171117BHJP
   C08F 255/04 20060101ALI20171117BHJP
   C08F 255/06 20060101ALI20171117BHJP
【FI】
   C08L51/04
   C08K3/00
   C08L23/12
   C08J3/24 ACES
   C08J3/22
   C08F255/04
   C08F255/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】33
【出願番号】特願2017-503677(P2017-503677)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2016年3月2日
(31)【優先権主張番号】特願2015-41468(P2015-41468)
(32)【優先日】2015年3月3日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(72)【発明者】
【氏名】千葉 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】西口 雅己
(72)【発明者】
【氏名】松村 有史
(72)【発明者】
【氏名】水野 晃一
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
4J026
【Fターム(参考)】
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4J026FA09
4J026GA02
4J026GA06
4J026GA09
(57)【要約】
ムーニー粘度(ML(1+4)125℃)が40を超え90以下であるエチレン−αオレフィンゴムを61〜100質量%含むベースゴムにシランカップリング剤がグラフト化したシラン架橋性ゴムと、前記ベースゴム100質量部に対して、無機フィラー0.3〜400質量部と、シラノール縮合触媒0.0001〜0.5質量部とを含有するシラン架橋性ゴム組成物、及び、これを成形した後に水と接触させてなるシラン架橋ゴム成形体、これを含むシラン架橋ゴム成形品、並びに、シラン架橋性ゴム組成物及びシラン架橋ゴム成形体の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
JIS K 6300−1:2013に基づき測定されたムーニー粘度(ML(1+4)125℃)が40を超え90以下であるエチレン−αオレフィンゴムを61〜100質量%含むベースゴムにシランカップリング剤がグラフト化したシラン架橋性ゴムと、前記ベースゴム100質量部に対して、無機フィラー0.3〜400質量部と、シラノール縮合触媒0.0001〜0.5質量部とを含有するシラン架橋性ゴム組成物。
【請求項2】
前記シラン架橋性ゴム組成物が、前記ベースゴム100質量部に対して、無機フィラー0.3〜400質量部と、シランカップリング剤1〜15質量部と、有機過酸化物0.01〜0.6質量部と、シラノール縮合触媒0.0001〜0.5質量部とを溶融混合してなる請求項1に記載のシラン架橋性ゴム組成物。
【請求項3】
前記無機フィラーが、金属水和物、タルク、クレー、シリカ及びカーボンブラックからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1又は2に記載のシラン架橋性ゴム組成物。
【請求項4】
前記ベースゴムが、ポリプロピレン系樹脂を1〜30質量%含む請求項1〜3のいずれか1項に記載のシラン架橋性ゴム組成物。
【請求項5】
前記シランカップリング剤の含有量が、前記ベースゴム100質量部に対して、3〜15質量部である請求項1〜4のいずれか1項に記載のシラン架橋性ゴム組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のシラン架橋性ゴム組成物を成形した後に水と接触させてなるシラン架橋ゴム成形体。
【請求項7】
請求項6に記載のシラン架橋ゴム成形体を含むシラン架橋ゴム成形品。
【請求項8】
JIS K 6300−1:2013に基づき測定されたムーニー粘度(ML(1+4)125℃)が40を超え90以下であるエチレン−αオレフィンゴムを61〜100質量%含むベースゴム100質量部に対して、無機フィラー0.3〜400質量部と、シランカップリング剤1〜15質量部と、有機過酸化物0.01〜0.6質量部と、シラノール縮合触媒0.0001〜0.5質量部とを溶融混合してシラン架橋性ゴム組成物を得る工程(1)を有するシラン架橋性ゴム組成物の製造方法であって、
前記工程(1)が、下記工程(a)及び工程(c)を有し、但し下記工程(a)で前記ベースゴムの一部を溶融混合する場合には下記工程(a)、工程(b)及び工程(c)を有する、
工程(a):前記ベースゴムの全部又は一部と、前記無機フィラーと、前記シランカップリング剤と、前記有機過酸化物とを前記有機過酸化物の分解温度以上の温度で溶融混合して、シランマスターバッチを調製する工程
工程(b):前記ベースゴムの残部と前記シラノール縮合触媒とを溶融混合して、触媒マスターバッチを調製する工程
工程(c):前記シランマスターバッチと、前記シラノール縮合触媒又は前記触媒マスターバッチとを溶融混合する工程
シラン架橋性ゴム組成物の製造方法。
【請求項9】
下記工程(1)、工程(2)及び工程(3)
工程(1):JIS K 6300−1:2013に基づき測定されたムーニー粘度(ML(1+4)125℃)が40を超え90以下であるエチレン−αオレフィンゴムを61〜100質量%含むベースゴム100質量部に対して、無機フィラー0.3〜400質量部と、シランカップリング剤1〜15質量部と、有機過酸化物0.01〜0.6質量部と、シラノール縮合触媒0.0001〜0.5質量部とを溶融混合してシラン架橋性ゴム組成物を得る工程
工程(2):前記工程(1)で得られたシラン架橋性ゴム組成物を成形して成形体を得る工程
工程(3):前記工程(2)で得られた成形体を水と接触させてシラン架橋ゴム成形体を得る工程
を有するシラン架橋ゴム成形体の製造方法であって、
前記工程(1)が、下記工程(a)及び工程(c)を有し、但し下記工程(a)で前記ベースゴムの一部を溶融混合する場合には下記工程(a)、工程(b)及び工程(c)を有する、
工程(a):前記ベースゴムの全部又は一部と、前記無機フィラーと、前記シランカップリング剤と、前記有機過酸化物とを前記有機過酸化物の分解温度以上の温度で溶融混合して、シランマスターバッチを調製する工程
工程(b):前記ベースゴムの残部と前記シラノール縮合触媒とを溶融混合して、触媒マスターバッチを調製する工程
工程(c):前記シランマスターバッチと、前記シラノール縮合触媒又は前記触媒マスターバッチとを溶融混合する工程
シラン架橋ゴム成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シラン架橋性ゴム組成物及びシラン架橋ゴム成形体とそれらの製造方法、並びに、シラン架橋ゴム成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
各種産業用ケーブル(電線を含む)の被覆材、ゴムモールド材(例えば、自動車用グラスランチャンネル、ウェザーストリップ、ゴムホース、ワイパーブレードゴム、ガスケット、防振ゴム)等のゴム製品には、圧縮永久歪みが小さいことが要求される。また、各種産業用ケーブルの被覆材のうち、外周部を覆うシース材(ジャケット材)や絶縁材、さらにはゴムモールド材(例えばウェザーストリップ、ガスケット)等については、ケーブル布設の際に引き込みを行うため材料が擦れる場合が多く、傷付きや破損等を防止する点で、高い引張強度も要求される。
従来、小さい圧縮永久歪みが要求される用途に用いられる製品は、エチレン−プロピレンゴム(EPゴム)を加硫(架橋)した架橋EPゴムが用いられてきた。しかし、架橋EPゴムは、EPゴムを成形した後に加硫することが必要であった。
例えば、特許文献1において、エチレン−プロピレンゴムを主成分とするゴム組成物を射出成形する方法において、上記のエチレン−プロピレンゴムとしてプロピレン含有量が30〜55重量%、ムーニー粘度(ML(1+4)100℃)が20〜80のものを使用し、加硫剤として有機過酸化物を添加することが提案されている。特許文献2において、加硫ゴム製品を、さらに大気圧下又は真空圧下で熱履歴処理することが提案されている。特許文献3において、ゴム100質量部及び金属水酸化物30質量部〜150質量部を含有し、前記ゴムが、エチレン比が60%〜64%のエチレン−プロピレンゴム1及びエチレン比が66%〜70%のエチレン−プロピレンゴム2を70:30〜30:70の質量比で混合したノンハロゲン難燃性ゴム組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−66931号公報
【特許文献2】特開平11−302415号公報
【特許文献3】特開2012−241041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1〜3では、いずれも製造において、ゴムを加硫する工程が必要であるため、ゴムが加硫する温度まで加熱可能な加硫設備が必要である。これに加えて、加硫時間が長くなり、生産性の点で課題を有していた。
また、一般的なEPゴムを使用して引張強度の高い成形品を得る場合、粘度の高い材料が用いられることが多い。しかしながら、粘度の高い材料は流動性に劣り、例えば押出成形を高い線速で生産性よく製造することが困難であった。
押出成形において、高速で生産性よく成形する場合、成形用組成物の流動性を高めるために成形温度を高くすることが効果的である。しかし、架橋EPゴム製品を製造する場合、高く設定した成形温度によって、押出成形機内で過酸化物が分解して架橋反応が生じることがある。架橋したEPゴムは成形時に溶融しないゲルを形成して、得られる成形体の表面に突出したツブ状物(ブツともいう)となる。これにより、製造されるゴム製品の外観を損なうという問題があった。
【0005】
本発明は、従来の上記課題を克服し、高い線速で押出成形されても、小さな圧縮永久歪みと高い引張強度とを両立し、しかも外観にも優れたシラン架橋ゴム成形体及びその製造方法を提供することを課題とする。
また、本発明は、上記の特性を有する上記シラン架橋ゴム成形体を、加硫設備を必要とせず、生産性よく製造することができるシラン架橋性ゴム組成物及びその製造方法を提供することを課題とする。
さらに、本発明は、上記の優れた特性を有するシラン架橋ゴム成形体を含むシラン架橋ゴム成形品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、EPゴムを用いた架橋ゴム成形体の製造において、特定のムーニー粘度を有するEPゴムに特定のシラン架橋法を適用すると、EPゴムの加硫設備が不要となること、原料ゴムとして粘度の高いEPゴムを用いても、その引張強度を損なうことなく、小さく優れた圧縮永久歪みと優れた外観を有するシラン架橋ゴム成形体を、必要により高速でも、成形できることを見出した。本発明者らはこの知見に基づきさらに研究を重ね、本発明をなすに至った。
ここで、ゴムのシラン架橋法とは、有機過酸化物の存在下で不飽和基を有する加水分解性シランカップリング剤をゴムにグラフト化反応させてシラングラフトゴムを得た後に、シラノール縮合触媒の存在下でシラングラフトゴムを水分と接触させることにより、シラングラフトゴムがシランカップリング剤を介して架橋された架橋ゴムを得る方法である。
【0007】
すなわち、本発明の課題は以下の手段によって達成された。
〔1〕JIS K 6300−1:2013に基づき測定されたムーニー粘度(ML(1+4)125℃)が40を超え90以下であるエチレン−αオレフィンゴムを61〜100質量%含むベースゴムにシランカップリング剤がグラフト化したシラン架橋性ゴムと、前記ベースゴム100質量部に対して、無機フィラー0.3〜400質量部と、シラノール縮合触媒0.0001〜0.5質量部とを含有するシラン架橋性ゴム組成物
〔2〕前記シラン架橋性ゴム組成物が、前記ベースゴム100質量部に対して、無機フィラー0.3〜400質量部と、シランカップリング剤1〜15質量部と、有機過酸化物0.01〜0.6質量部と、シラノール縮合触媒0.0001〜0.5質量部とを溶融混合してなる〔1〕に記載のシラン架橋性ゴム組成物。
〔3〕前記無機フィラーが、金属水和物、タルク、クレー、シリカ及びカーボンブラックからなる群より選ばれた少なくとも1種である〔1〕又は〔2〕に記載のシラン架橋性ゴム組成物。
〔4〕前記ベースゴムが、ポリプロピレン系樹脂を1〜30質量%含む〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載のシラン架橋性ゴム組成物。
〔5〕前記シランカップリング剤の含有量が、前記ベースゴム100質量部に対し、3〜15質量部である〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載のシラン架橋性ゴム組成物。
〔6〕〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載のシラン架橋性ゴム組成物を成形した後に水と接触させてなるシラン架橋ゴム成形体。
〔7〕〔6〕に記載のシラン架橋ゴム成形体を含むシラン架橋ゴム成形品。
〔8〕JIS K 6300−1:2013に基づき測定されたムーニー粘度(ML(1+4)125℃)が40を超え90以下であるエチレン−αオレフィンゴムを61〜100質量%含むベースゴム100質量部に対して、無機フィラー0.3〜400質量部と、シランカップリング剤1〜15質量部と、有機過酸化物0.01〜0.6質量部と、シラノール縮合触媒0.0001〜0.5質量部とを溶融混合してシラン架橋性ゴム組成物を得る工程(1)を有するシラン架橋性ゴム組成物の製造方法であって、
前記工程(1)が、下記工程(a)及び工程(c)を有し、但し下記工程(a)で前記ベースゴムの一部を溶融混合する場合には下記工程(a)、工程(b)及び工程(c)を有する、
工程(a):前記ベースゴムの全部又は一部と、前記無機フィラーと、前記シランカップリング剤と、前記有機過酸化物とを前記有機過酸化物の分解温度以上の温度で溶融混合して、シランマスターバッチを調製する工程
工程(b):前記ベースゴムの残部と前記シラノール縮合触媒とを溶融混合して、触媒マスターバッチを調製する工程
工程(c):前記シランマスターバッチと、前記シラノール縮合触媒又は前記触媒マスターバッチとを溶融混合する工程
シラン架橋性ゴム組成物の製造方法。
〔9〕下記工程(1)、工程(2)及び工程(3)
工程(1):JIS K 6300−1:2013に基づき測定されたムーニー粘度(ML(1+4)125℃)が40を超え90以下であるエチレン−αオレフィンゴムを61〜100質量%含むベースゴム100質量部に対して、無機フィラー0.3〜400質量部と、シランカップリング剤1〜15質量部と、有機過酸化物0.01〜0.6質量部と、シラノール縮合触媒0.0001〜0.5質量部とを溶融混合してシラン架橋性ゴム組成物を得る工程
工程(2):前記工程(1)で得られたシラン架橋性ゴム組成物を成形して成形体を得る工程
工程(3):前記工程(2)で得られた成形体を水と接触させてシラン架橋ゴム成形体を得る工程
を有するシラン架橋ゴム成形体の製造方法であって、
前記工程(1)が、下記工程(a)及び工程(c)を有し、但し下記工程(a)で前記ベースゴムの一部を溶融混合する場合には下記工程(a)、工程(b)及び工程(c)を有する、
工程(a):前記ベースゴムの全部又は一部と、前記無機フィラーと、前記シランカップリング剤と、前記有機過酸化物とを前記有機過酸化物の分解温度以上の温度で溶融混合して、シランマスターバッチを調製する工程
工程(b):前記ベースゴムの残部と前記シラノール縮合触媒とを溶融混合して、触媒マスターバッチを調製する工程
工程(c):前記シランマスターバッチと、前記シラノール縮合触媒又は前記触媒マスターバッチとを溶融混合する工程
シラン架橋ゴム成形体の製造方法。
【0008】
本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、従来の上記課題を克服し、小さな圧縮永久歪みと高い引張強度とを両立し、しかも外観にも優れたシラン架橋ゴム成形体を、EPゴムの加硫設備を必要とせず、必要により高速で、生産性よく製造することができる。
したがって、本発明により、高い線速で押出成形されても、小さな圧縮永久歪み(以下、優れた圧縮永久歪ということがある)と高い引張強度とを両立し、しかも外観にも優れたシラン架橋ゴム成形体及びその製造方法を提供することができる。また、このような優れた特性を有するシラン架橋ゴム成形体を、加硫設備を必要とせず、生産性よく製造することができるシラン架橋性ゴム組成物及びその製造方法を提供することができる。さらに、このような優れた特性を有するシラン架橋ゴム成形体を含むシラン架橋ゴム成形品を提供することができる。
本発明の上記及び他の特徴及び利点は、下記の記載からより明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のシラン架橋性ゴム組成物は、JIS K 6300−1:2013に基づき測定されたムーニー粘度(ML(1+4)125℃)が40を超え90以下であるエチレン−αオレフィンゴムを61〜100質量%含むベースゴムにシランカップリング剤がグラフト化したシラン架橋性ゴムと、ベースゴム100質量部に対して、無機フィラー0.3〜400質量部と、シラノール縮合触媒0.0001〜0.5質量部とを含有する。このシラン架橋性ゴム組成物は、ベースゴム100質量部に対して、無機フィラー0.3〜400質量部と、シランカップリング剤1〜15質量部と、有機過酸化物0.01〜0.6質量部と、シラノール縮合触媒0.0001〜0.5質量部とを、溶融混合して調製できる。これにより、後述するように、シランカップリング剤がベースゴムにグラフト化反応してシラン架橋性ゴムが形成される。
また、本発明のシラン架橋ゴム成形体は、本発明のシラン架橋性ゴム組成物を成形した後に水と接触させて得ることができる。これにより、後述するように、シラン架橋性ゴム組成物に含有されるシラン架橋性ゴムのシランカップリング剤が架橋反応してシラン架橋ゴム成形体となる。
【0011】
まず、本発明に用いる各成分について説明する。
<ベースゴム>
本発明に用いられるベースゴムは、シランカップリング剤がグラフト化反応可能な部位を有するゴム成分として、JIS K 6300−1:2013に基づき測定されたムーニー粘度(ML(1+4)125℃)が40を超え90以下であるエチレン−αオレフィンゴムを含有する。
ベースゴムは、さらにポリプロピレン系樹脂を含有していてもよい。
ベースゴムは、さらにエチレン−αオレフィンゴム以外のゴム成分やポリプロピレン系樹脂以外の樹脂成分を含有してもよい。エチレン−αオレフィンゴム以外のゴム成分としては、特に限定されず、例えば、天然ゴム(NR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴム(ACM)、シリコーンゴム(Q)等が挙げられる。ポリプロピレン系樹脂以外の樹脂成分としては、特に限定されず、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン系共重合体等が挙げられる。ベースゴムがこれらのゴム成分及び樹脂成分を含有する場合、これらのゴム成分及び樹脂成分それぞれの含有量は、特に限定されず、適宜に決定される。
このベースゴムは、ゴム成分及び樹脂成分の総計が100質量%となるように、各ゴム成分及び各樹脂成分の含有量が適宜に決定され、好ましくは下記範囲内から選択される。
【0012】
(エチレン−αオレフィンゴム)
本発明に用いるエチレン−αオレフィンゴムは、JIS K 6300−1:2013に基づき測定されたムーニー粘度(ML(1+4)125℃)が40を超え90以下であるエチレン−αオレフィンゴムである。ムーニー粘度が小さすぎると、引張強度が不足する場合がある。一方、ムーニー粘度が大きすぎると、高い線速での成形性(高速成形性)に劣る場合がある。
エチレン−αオレフィンゴムのムーニー粘度は、引張強度及び成形性の点で、50〜90(ML(1+4)125℃)であることが好ましく、50〜80(ML(1+4)125℃)がより好ましく、60〜70(ML(1+4)125℃)がさらに好ましい。
ムーニー粘度は、JIS K 6300−1:2013に規定された測定方法に基づいて測定される。試験は以下のように行う。用いる試験片として、JIS K 6300−1 5.3.1記載のロール通し法で、直径約50mm、厚さ約6mmの試験サンプルを2個1組作成する。二つのダイで構成される円筒状の中空部(キャビティ)の中に円盤状の金属製L型ロータを装着し、その中に得られたゴム試験片を充填する。その後、余熱時間1分、ロータ回転時間4分、試験温度125℃の一定条件でロータを回転させ、このときのゴムの抵抗によりロータが受けるトルクを、ゴムのムーニー粘度としてムーニー単位で測定する。
【0013】
エチレン−αオレフィンゴムとしては、エチレン−αオレフィン共重合体からなるゴムであって、好ましくは、エチレンとα−オレフィンとの二元共重合体からなるゴム、エチレンとα−オレフィンとジエンとの三元共重合体からなるゴムが挙げられる。三元共重合体のジエンは、共役ジエンであっても非共役ジエンであってもよく、非共役ジエンが好ましい。すなわち、三元共重合体は、エチレンとα−オレフィンと共役ジエンとの三元共重合体、及び、エチレンとα−オレフィンと非共役ジエンとの三元共重合体等が挙げられる。エチレンとα−オレフィンとの二元共重合体及びエチレンとα−オレフィンと非共役ジエンとの三元共重合体が好ましい。
共役ジエンとしては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等が挙げられ、ブタジエンが好ましい。非共役ジエンとしては、例えば、ジシクロペンタジエン(DCPD)、エチリデンノルボルネン(ENB)、1,4−ヘキサジエン等が挙げられ、エチリデンノルボルネンが好ましい。共役ジエン及び非共役ジエンの各構成成分は、それぞれ、1種単独で使用され、又は2種以上を併用できる。
α−オレフィンとしては、炭素数3〜12のα−オレフィンが好適に挙げられる。α−オレフィンとしては、特に限定されず、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等が挙げられる。
【0014】
エチレンとα−オレフィンとの二元共重合体からなるゴムとして、例えば、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−ブテンゴム、エチレン−オクテンゴム等が挙げられる。エチレンとα−オレフィンとジエンとの三元共重合体からなるゴムとしては、例えば、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、エチレン−ブテン−ジエンゴム等が挙げられる。なかでも、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−ブテンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム及びエチレン−ブテン−ジエンゴムが好ましく、エチレン−プロピレンゴム及びエチレン−プロピレン−ジエンゴムがより好ましく、エチレン−プロピレンゴム又はエチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネンゴムが特に好ましい。
【0015】
エチレン−αオレフィンゴムは、共重合体中のエチレン構成成分量(エチレン含有量という)が55〜80質量%が好ましく、60〜75質量%がより好ましく、62〜70質量%がさらに好ましい。エチレン含有量が55〜80質量%の範囲であれば、引張強度と圧縮永久歪みとを両立することができる。エチレン含有量は、ASTM D3900に記載の方法に準拠して、測定される値である。
【0016】
エチレン−αオレフィンゴムは、共重合体中のジエン構成成分量(ジエン含有量という)が0〜10質量%が好ましく、0〜5質量%がより好ましく、0〜4質量%がさらに好ましい。ジエン含有量が0〜10質量%の範囲であれば、反応性が高くなりすぎず、工程(2)での成形性を保持できる。ジエン含有量は、例えば赤外線吸収分光法(FT−IR)、プロトンNMR(H−NMR)法等で測定できる。
【0017】
エチレン−αオレフィンゴムの含有量は、ベースゴム100質量部中、61〜100質量部である。エチレン−αオレフィンゴムの含有量が61質量部以上であると、上記の優れた特性を成形体に付与できる。本発明において、エチレン−αオレフィンゴムの含有量は、下限が、70質量部であることが好ましく、75質量部であることがより好ましく、80質量部であることがさらに好ましい。ベースゴムがポリプロピレン系樹脂を含有する場合、エチレン−αオレフィンゴムの含有量は、成形性や圧縮永久歪みの点で、70〜99質量部が好ましく、75〜95質量部がより好ましく、80〜90質量部がさらに好ましい。
【0018】
エチレン−αオレフィンゴムは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0019】
(ポリプロピレン系樹脂)
ポリプロピレン系樹脂(PP)は、構成成分としてプロピレン成分を含む重合体からなる樹脂であれば特に限定されない。ポリプロピレン系樹脂には、プロピレンの単独重合体(h−PP)、(好ましくは少量の)エチレン及び/又は1−ブテンとの共重合体であるランダムポリプロピレン(r−PP)、及び、エチレンゴム等のゴムをh−PPやr−PPに分散したブロックポリプロピレン(b−PP)等を含む。これらのなかでもランダムポリプロピレンが好ましい。
ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR、230℃、21.18N)は、特に限定されないが、0.5〜50g/10分が好ましく、特に好ましくは、10〜30g/10分である。MFRが0.5〜50g/10分のポリプロピレン系樹脂を用いることで、さらに高速成形性を付与できるとともに優れた外観の成形体を得られる。MFR(190℃、21.18N)は、JIS K 7210に規定の「A法(手動切り落とし法)」に基づき、190℃、21.18Nの条件Dで計測した値とする。
PPとして、例えば、ノバテック(登録商標)PP(日本ポリプロ社製)、PM940M、PM921V(いずれも、商品名、サンアロマー社製)、住友ノーブレン(登録商標、住友化学社製)、及びプライムポリプロ(登録商標、プライムポリマー社製)等が挙げられる。
ベースゴムがポリプロピレン系樹脂を含有する場合、ポリプロピレン系樹脂の含有量は、特に限定されないが、ベースゴム100質量部中、1〜30質量部であることが好ましく、5〜25質量部であることがより好ましく、10〜20質量部がさらに好ましい。
【0020】
ポリプロピレン系樹脂は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0021】
<無機フィラー>
本発明に用いられる無機フィラーは、その表面に、シランカップリング剤の反応部位と水素結合又は共有結合等により、化学結合しうる部位を有するものであれば特に制限なく用いることができる。この無機フィラーにおける、シランカップリング剤の反応部位と化学結合しうる部位としては、OH基(水酸基、含水若しくは結晶水の水分子、カルボキシ基等のOH基)、アミノ基、SH基等が挙げられる。
【0022】
このような無機フィラーとしては、例えば、水和水、水酸基あるいは結晶水を有する化合物のような金属水和物等が挙げられる。金属水和物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、さらには炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ほう酸アルミニウムウイスカなどのほか、水和水等を有する、水和ケイ酸アルミニウム、水和ケイ酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の無機酸塩又は無機酸化物等が挙げられる。
無機フィラーとしては、金属水和物以外にも、例えば、窒化ほう素、シリカ(結晶質シリカ、非晶質シリカ等)、カーボンブラック、クレー、酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタン、酸化モリブデン、三酸化アンチモン、シリコーン化合物、石英、タルク、ほう酸亜鉛、ホワイトカーボン、硼酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛、スズ酸亜鉛が挙げられる。
無機フィラーは、これらの中でも、金属水和物、タルク、クレー、シリカ、カーボンブラックからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
無機フィラーは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0023】
無機フィラーの平均1次粒径は、0.001〜10μmが好ましく、0.005〜5μmがより好ましく、0.01〜2μmがさらに好ましく、0.015〜1μmが特に好ましい。平均1次粒径が上記範囲内にあると、シランカップリング剤の保持効果が高く、引張強度や圧縮永久歪みに優れたものとなる。また、シランカップリング剤との混合時に無機フィラーが2次凝集しにくく、外観に優れたものとなる。平均1次粒径は、アルコールや水で分散させて、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置等の光学式粒径測定器によって求められる。
【0024】
無機フィラーは、シランカップリング剤等で表面処理した表面処理無機フィラーを使用することができる。例えば、シランカップリング剤表面処理無機フィラーとして、キスマ5L、キスマ5P(いずれも商品名、水酸化マグネシウム、協和化学社製等)等が挙げられる。シランカップリング剤による無機フィラーの表面処理量は、特に限定されないが、例えば、2質量%以下である。
【0025】
<シランカップリング剤>
本発明に用いられるシランカップリング剤は、有機過酸化物の分解により生じたラジカルの存在下でベースゴムにグラフト化反応しうるグラフト化反応部位(基又は原子)と、無機フィラーの化学結合しうる部位と反応し、シラノール縮合可能な反応部位(加水分解して生成する部位を含む。例えばシリルエステル基等)とを、少なくとも有するものであればよい。このようなシランカップリング剤として、末端に加水分解性基を有する加水分解性シランカップリング剤が好ましい。シランカップリング剤は、末端に、アミノ基、グリシジル基又はエチレン性不飽和基を含有する基と加水分解性基を含有する基とを有しているものがより好ましく、さらに好ましくは末端にエチレン性不飽和基を含有する基と加水分解性基を含有する基とを有しているシランカップリング剤である。エチレン性不飽和基を含有する基としては、特に限定されないが、例えば、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシアルキレン基、p−スチリル基等が挙げられる。またこれらのシランカップリング剤とその他の末端基を有するシランカップリング剤を併用してもよい。
【0026】
このようなシランカップリング剤としては、例えば下記の一般式(1)で表される化合物を用いることができる。
【0027】
【化1】
【0028】
一般式(1)中、Ra11はエチレン性不飽和基を含有する基、Rb11は脂肪族炭化水素基、水素原子又はY13である。Y11、Y12及びY13は加水分解しうる有機基である。Y11、Y12及びY13は互いに同じでも異なっていてもよい。
【0029】
一般式(1)で表されるシランカップリング剤のRa11は、エチレン性不飽和基を含有する基が好ましく、エチレン性不飽和基を含有する基は、上述した通りであり、好ましくはビニル基である。
【0030】
b11は脂肪族炭化水素基、水素原子又は後述のY13であり、脂肪族炭化水素基としては、脂肪族不飽和炭化水素基を除く炭素数1〜8の1価の脂肪族炭化水素基が挙げられる。Rb11は、好ましくは後述のY13である。
【0031】
11、Y12及びY13は、加水分解しうる有機基であり、例えば、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、炭素数1〜4のアシルオキシ基が挙げられ、アルコキシ基が好ましい。加水分解しうる有機基としては、具体的には例えば、メトキシ、エトキシ、ブトキシ、アシルオキシ等を挙げることができる。この中でも、シランカップリング剤の反応性の点から、メトキシ又はエトキシがさらに好ましく、メトキシが特に好ましい。
【0032】
シランカップリング剤としては、好ましくは加水分解速度の速いシランカップリング剤であり、より好ましくはRb11がY13であり、かつY11、Y12及びY13が互いに同じであるシランカップリング剤、又は、Y11、Y12及びY13の少なくとも1つがメトキシ基である加水分解性シランカップリング剤であり、さらに好ましくはRb11がY13であり、かつY11、Y12及びY13が互いに同じであるシランカップリング剤である。特に好ましくは、全てがメトキシ基である加水分解性シランカップリング剤である。
【0033】
シランカップリング剤としては、具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルジメトキシエトキシシラン、ビニルジメトキシブトキシシラン、ビニルジエトキシブトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン等のビニルシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等の(メタ)アクリロキシシランを挙げることができる。
末端にグリシジル基を有するものとしては、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
上記シランカップリング剤の中でも、末端にビニル基とアルコキシ基を有するシランカップリング剤がさらに好ましく、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランが特に好ましい。
【0034】
シランカップリング剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。また、そのままで用いても、溶媒等で希釈して用いてもよい。
【0035】
<有機過酸化物>
有機過酸化物は、少なくとも熱分解によりラジカルを発生して、触媒としてシランカップリング剤のグラフト化反応部位とベースゴムとのラジカル反応(ゴムからの水素ラジカル引き抜き反応を含む)によるグラフト化反応を生起させる働きをする。
有機過酸化物としては、ラジカルを発生させるものであれば、特に制限はなく、例えば、一般式:R−OO−R、R−OO−C(=O)R、RC(=O)−OO(C=O)Rで表される化合物が好ましい。ここで、R〜Rは各々独立にアルキル基、アリール基又はアシル基を表す。各化合物のR〜Rのうち、いずれもアルキル基であるもの、又は、いずれかがアルキル基で残りがアシル基であるものが好ましい。
【0036】
このような有機過酸化物としては、例えば、ジクミルパーオキサイド(DCP)、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド等を挙げることができる。これらのうち、臭気性、着色性、スコーチ安定性の点で、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3が好ましい。
【0037】
有機過酸化物の分解温度は、130〜195℃であるのが好ましく、150〜185℃であるのが特に好ましい。
本発明において、有機過酸化物の分解温度とは、単一組成の有機過酸化物を加熱したとき、1分間のうちにある一定の温度又は温度域でそれ自身が2種類以上の化合物に半分分解反応を起こす温度(1分間半減期温度)を意味する。具体的には、DSC法等の熱分析により、窒素ガス雰囲気下で5℃/分の昇温速度で、室温から加熱したとき、吸熱又は発熱を開始する温度をいう。
【0038】
<シラノール縮合触媒>
シラノール縮合触媒は、ベースゴムにグラフトしたシランカップリング剤を水分の存在下で縮合反応させる働きがある。このシラノール縮合触媒の働きに基づき、シランカップリング剤を介して、ゴム同士が架橋される。その結果、加硫設備を用いなくとも優れた引張強度や小さな圧縮永久歪みを有し、必要により高温、高速で成形可能となり、従来の架橋EPゴムの製造方法よりも短時間でシラン架橋ゴム成形体が得られる。
【0039】
本発明に用いられるシラノール縮合触媒としては、有機スズ化合物、金属石けん、白金化合物等が挙げられる。一般的なシラノール縮合触媒としては、例えば、ジブチルスズジラウリレート、ジオクチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクチエート、ジブチルスズジアセテート、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ナフテン酸鉛、硫酸鉛、硫酸亜鉛、有機白金化合物等が用いられる。これらの中でも、特に好ましくは、ジブチルスズジラウリレート、ジオクチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクチエート、ジブチルスズジアセテート等の有機スズ化合物である。
【0040】
<キャリアゴム>
シラノール縮合触媒は、所望によりゴムに混合されて、用いられる。このようなゴム(キャリアゴムともいう)としては、特に限定されないが、上記ベースゴムとして説明した各ゴム成分又は各樹脂成分を用いることができる。
【0041】
<添加剤>
シラン架橋ゴム成形体及びシラン架橋性ゴム組成物は、上記ゴム製品に一般的に使用される各種添加剤を本発明の効果を損なわない範囲で含有してもよい。このような添加剤として、例えば、架橋助剤、酸化防止剤、滑剤、金属不活性剤、着色剤、又は、上記無機フィラー以外の充填剤(難燃(助)剤を含む。)等が挙げられる。
【0042】
次に、本発明のシラン架橋性ゴム組成物及びシラン架橋ゴム成形体の製造方法を具体的に説明する。
本発明の「シラン架橋ゴム成形体の製造方法」及び本発明の「シラン架橋性ゴム組成物の製造方法」は、いずれも、少なくとも下記工程(1)を行う。したがって、本発明の「シラン架橋ゴム成形体の製造方法」及び本発明の「シラン架橋性ゴム組成物の製造方法」を併せて以下に説明する(両製造方法に共通する説明においては、本発明の製造方法ということがある。)。
【0043】
工程(1):ベースゴム100質量部に対して、無機フィラー0.3〜400質量部と、シランカップリング剤1〜15質量部と、有機過酸化物0.01〜0.6質量部と、シラノール縮合触媒0.0001〜0.5質量部とを溶融混合して、溶融混合物としてシラン架橋性ゴム組成物を得る工程
工程(2):工程(1)で得られたシラン架橋性ゴム組成物を成形して成形体を得る工程
工程(3):工程(2)で得られた成形体を水と接触させてシラン架橋ゴム成形体を得る工程
【0044】
この工程(1)が、工程(a)でベースゴムの全部を溶融混合する場合には工程(a)及び工程(c)を有し、下記工程(a)でベースゴムの一部を溶融混合する場合には工程(a)、工程(b)及び工程(c)を有する。
工程(a):ベースゴムの全部又は一部と、無機フィラーと、シランカップリング剤と、有機過酸化物とを有機過酸化物の分解温度以上の温度で溶融混合して、シランマスターバッチを調製する工程
工程(b):ベースゴムの残部とシラノール縮合触媒とを溶融混合して、触媒マスターバッチを調製する工程
工程(c):シランマスターバッチと、シラノール縮合触媒又は前記触媒マスターバッチとを溶融混合する工程
ここで、混合するとは、均一な混合物を得ることをいう。
【0045】
本発明の製造方法において、「ベースゴム」とは、シラン架橋ゴム成形体又はシラン架橋性ゴム組成物を形成するためのベースゴムである。したがって、本発明の製造方法においては、工程(1)で得られるシラン架橋性ゴム組成物に100質量部のベースゴムが含有されていればよい。例えば、工程(a)において、「ベースゴムの全量(100質量部)が配合される態様」と、「ベースゴムの一部が配合される態様」とを含む。「ベースゴムの一部が配合される態様」においては、ベースゴムの残部が工程(b)でキャリアゴムとして混合されてもよい。
【0046】
本発明において、「ベースゴムの一部」とは、ベースゴムのうち工程(a)で使用するゴムであって、ベースゴムそのものの一部(ベースゴムと同一組成を有する)、ベースゴムを構成する成分(ゴム成分又は樹脂成分)の一部、ベースゴムを構成する一部の成分(例えば、複数の成分のうちの特定の成分全量)をいう。
また、「ベースゴムの残部」とは、ベースゴムのうち工程(a)で使用する一部を除いた残りのゴムであって、具体的には、ベースゴムそのものの残部(ベースゴムと同一組成を有する)、ベースゴムを構成する成分の残部、ベースゴムを構成する残りの成分をいう。
【0047】
工程(a)でベースゴムの一部を配合する場合、工程(1)におけるベースゴムの含有量100質量部は、工程(a)及び工程(b)で混合される各成分の合計量である。
ここで、工程(b)でベースゴムの残部が配合される場合、ベースゴムは、工程(a)において、好ましくは80〜99質量部、より好ましくは94〜98質量部が配合され、工程(b)において、好ましくは1〜20質量部、より好ましくは2〜6質量部が配合される。
【0048】
工程(1)において、エチレン−αオレフィンゴム及びポリプロピレン系樹脂の、ベースゴム中の含有量は、上記した通りである。ポリプロピレン系樹脂を添加することにより、優れた引張強度や圧縮永久歪みを達成しつつ、より高い線速で成形できる。
【0049】
工程(1)において、有機過酸化物の含有量は、ベースゴム100質量部に対して、0.01〜0.6質量部であり、0.1〜0.5質量部が好ましい。有機過酸化物の含有量が0.01質量部未満では、溶融混合時にグラフト化反応が進行せず、またシランカップリング剤同士が縮合して、十分な引張強度や小さな圧縮永久歪みを得ることができないことがある。一方、0.6質量部を超えると、副反応によってベースゴムの多くが直接的に架橋してブツを形成し、外観不良が生じる場合がある。このように、有機過酸化物の含有量を0.01〜0.6質量部にすることにより、適切な範囲でグラフト化反応を行うことができ、ゲル状のブツも発生することなく成形性に優れた組成物を得ることができる。
【0050】
無機フィラーの含有量は、ベースゴム100質量部に対して、0.3〜400質量部であり、1〜200質量部が好ましく、3〜100質量部がより好ましい。無機フィラーの含有量が0.3質量部未満では、シランカップリング剤が揮発しやすく、シランカップリング剤のグラフト化反応及び架橋反応が進行しないことがある。その結果、シラン架橋ゴム成形体とした際に小さな圧縮永久歪みや高い引張強度が得られないことがある。一方、400質量部を超えると、ゴム同士の相互作用が小さくなり、ゴム本来の特性が損なわれる。そのため、小さい圧縮永久歪みや高い引張強度が得られず、また、押出成形機のモーター等への負担が大きくなる等の理由で最大押出線速が遅くなることがある。
【0051】
シランカップリング剤の含有量は、ベースゴム100質量部に対して、1〜15質量部であり、好ましくは3〜15質量部であり、より好ましくは4質量部を超え15質量部以下であり、さらに好ましくは4質量部を超え、10質量部以下である。
シランカップリング剤の含有量が1質量部未満では、架橋反応が十分に進行せず、小さい圧縮永久歪みを得られないことがある。一方、15質量部を超えると、無機フィラーの表面にシランカップリング剤が吸着しきれず、シランカップリング剤が混練中に揮発してしまい、経済的でない。また、吸着しないシランカップリング剤が縮合してしまい、成形体にブツや焼けが生じて外観が悪化するおそれがある。
【0052】
シランカップリング剤の含有量が3〜15質量部、特に4質量部を超えて15質量部以下であると、ベースゴム同士の架橋反応、及び、シランカップリング剤同士の縮合反応のいずれをも抑えることができ、外観のきれいなシラン架橋ゴム成形体を製造することができる。
【0053】
その機構の詳細についてはまだ定かではないが次のように考えられる。
すなわち、工程(a)において、シランカップリング剤がベースゴムにグラフト化する際の有機過酸化物分解による反応は、シランカップリング剤の含有量が4質量部を超えると、ベースゴム同士の架橋反応よりも反応速度が速い、シランカップリング剤とベースゴムとのグラフト化反応、シランカップリング剤同士の縮合反応が支配的になる。したがって、外観荒れやブツの原因となるゴム同士の架橋反応は起こりにくくなる。このように、ベースゴム同士の架橋反応がシランカップリング剤の含有量に応じて効果的に抑えられる。これにより、成形時の外観は良好になる。また、ベースゴム同士の架橋反応による上記欠陥が少なくなるため、押出機を停止後再開しても外観不良が発生しにくくなる。このように、ベースゴム同士の架橋反応を抑えて、外観の良好なシラン架橋ゴム成形体を製造することができる。
一方で、工程(a)において、シランカップリング剤同士の縮合反応も反応速度が速い。しかし、多くのシランカップリング剤が無機フィラーに結合又は吸着して固定化されているため、無機フィラーに結合又は吸着しているシランカップリング剤同士の縮合反応は起こりにくくなる。無機フィラーに結合又は吸着せず、遊離しているシランカップリング剤同士の縮合反応が生じることがあるが、本発明においてシランカップリング剤は大部分が無機フィラーに結合又は吸着しているので、ゲル状のブツの発生に繋がることはない。
このように、特定量のシランカップリング剤を用いることにより、外観のきれいなシラン架橋ゴム成形体を製造することができると、考えられる。
【0054】
シラノール縮合触媒の含有量は、ベースゴム100質量部に対して、0.0001〜0.5質量部であり、好ましくは0.001〜0.3質量部である。シラノール縮合触媒の含有量が0.0001〜0.5質量部であると、シランカップリング剤の縮合反応による架橋反応がほぼ均一に進みやすく、シラン架橋ゴム成形体の外観、引張強度及び圧縮永久歪みが優れ、生産性も向上する。すなわち、シラノール縮合触媒の含有量が少なすぎると、十分な引張強度又は小さな圧縮永久歪みを得ることができないことがある。一方、多すぎると、シランカップリング剤の縮合反応による架橋反応が不均一になり、外観及び生産性が劣る場合がある。
【0055】
工程(a)において、ベースゴムの全部又は一部と、無機フィラーと、シランカップリング剤と、有機過酸化物とを、上記含有量で、混合機に投入し、有機過酸化物の分解温度以上の温度に加熱しながら溶融混練して、シランマスターバッチを調製する。
【0056】
上記成分を溶融混合(溶融混練、混練りともいう)する温度は、有機過酸化物の分解温度以上、好ましくは有機過酸化物の分解温度+(1〜80)℃の温度である。溶融混合の温度は、一義的に定めることは難しいが、一例を挙げると、80〜250℃が好ましく、100〜240℃がより好ましい。この混合温度はベースゴムが溶融してから設定することが好ましい。上記範囲の混合温度であれば、上記成分が溶融し、有機過酸化物が分解し、作用して必要なグラフト化反応が工程(a)において十分に進行する。その他の条件は適宜設定することができる。例えば、混合時間は、上記溶融温度でシランカップリング剤のポリオレフィン系樹脂へのグラフト化反応が十分に進行する時間であればよく、例えば、5分〜1時間が好ましい。
混合方法としては、ゴム、プラスチック等で通常用いられる方法であれば、特に限定されない。混合装置は、例えば無機フィラーの含有量に応じて適宜に選択される。混練装置として、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー又は各種のニーダー等が用いられる。ゴムの分散性、及び架橋反応の安定性の面で、バンバリーミキサー又は各種のニーダー等の密閉型ミキサーが好ましい。
また、無機フィラーがベースゴム100質量部に対して100質量部を超えて混合される場合、連続混練機、加圧式ニーダー、バンバリーミキサーで溶融混合するのがよい。
【0057】
本発明において、「ベースゴムの全部又は一部、有機過酸化物、無機フィラー及びシランカップリング剤を溶融混合する」とは、溶融混合する際の混合順を特定するものではなく、どのような順で混合してもよいことを意味する。すなわち、工程(a)における混合順は特に限定されない。
また、ゴムの混合方法も特に限定されない。例えば、予め混合調製されたゴムを用いてもよく、各ゴム成分又は樹脂成分それぞれを別々に混合してもよい。
【0058】
工程(a)においては、上記各成分を一度に溶融混合することができるが、好ましくは、シランカップリング剤は、シランマスターバッチに単独で混合されず、無機フィラーと前混合等した状態で混合されることもできる。前混合されたシランカップリング剤は、無機フィラーの表面を取り囲むように存在し、その一部又は全部が無機フィラーに吸着又は結合する。これにより、後の溶融混合の際にシランカップリング剤の揮発を低減できる。また、無機フィラーに吸着又は結合しないシランカップリング剤が縮合して溶融混合が困難になることも防止できる。さらに、押出成形の際に所望の形状を得ることもできる。
このような混合方法として、好ましくは、有機過酸化物の分解温度未満の温度、好ましくは室温(25℃)で有機過酸化物と無機フィラーとシランカップリング剤を、好ましくは1〜10分程度、前混合(分散)した後に、得られた混合物とベースゴムとを溶融混合させる方法が挙げられる。
【0059】
また、無機フィラーとシランカップリング剤と有機過酸化物とを混合する方法としては、特に限定されず、有機過酸化物は無機フィラー等と同時に混合されても、また無機フィラーとシランカップリング剤との混合段階のいずれにおいて混合されてもよい。
例えば、有機過酸化物は、シランカップリング剤と混合した後に無機フィラーと混合されてもよいし、シランカップリング剤と分けて別々に無機フィラーに混合されてもよい。本発明においては、有機過酸化物とシランカップリング剤とは実質的に一緒に混合した方がよい。一方、生産条件によっては、シランカップリング剤のみを無機フィラーに混合し、次いで有機過酸化物を混合してもよい。すなわち、工程(1)において、無機フィラーはシランカップリング剤と予め混合したものを用いることができる。
有機過酸化物は、他の成分と混合させたものでもよいし、単体でもよい。
有機過酸化物と無機フィラーとシランカップリング剤の混合方法においては、上記分解温度未満の温度が保持されている限り、ゴム成分又は樹脂成分が存在していてもよい。
【0060】
無機フィラーとシランカップリング剤と有機過酸化物との混合方法として、湿式処理、乾式処理等の混合方法が挙げられる。具体的には、アルコールや水等の溶媒に無機フィラーを分散させた状態でシランカップリング剤を加える湿式処理、加熱又は非加熱で両者を加え混合する乾式処理、及び、その両方が挙げられる。本発明においては、無機フィラー、好ましくは乾燥させた無機フィラー中にシランカップリング剤を、加熱又は非加熱で加え混合する乾式処理が好ましい。
この前混合は、好ましくは、バンバリーミキサーやニーダー等のミキサー型混練機で行われる。このようにすると、ベースゴム同士の過剰な架橋反応を防止することができ、外観が優れたものとなる。なお、前混合は、ヘンシェルミキサー等の混合機を用いてもよく、また人手により混合してもよい。
湿式混合では、シランカップリング剤と無機フィラーとの結力合が強くなるため、シランカップリング剤の揮発を効果的に抑えることができるが、ベースゴムへのグラフト化反応が進みにくくなることがある。一方、乾式混合では、無機フィラーとシランカップリング剤の結合力が比較的弱くなるため、効率的にグラフト化反応が進み、シラノール縮合反応が進みやすくなる。
【0061】
上記前混合する混合方法においては、次いで、得られた混合物とベースゴムの全部又は一部とを、有機過酸化物の分解温度以上に加熱しながら、溶融混練する。
【0062】
工程(a)においては、シラノール縮合触媒を実質的に混合せずに上述の各成分を混練することが好ましい。これにより、シランカップリング剤の縮合反応を抑えることができ、溶融混合しやすく、また押出成形の際に所望の形状を得ることができる。ここで、「実質的に混合せず」とは、不可避的に存在するシラノール縮合触媒をも排除するものではなく、シランカップリング剤のシラノール縮合による上述の問題が生じない程度に存在していてもよいことを意味する。例えば、工程(a)において、シラノール縮合触媒は、ベースゴム100質量部に対して0.01質量部以下であれば存在していてもよい。
【0063】
工程(1)において、上記添加剤、特に酸化防止剤や金属不活性剤は、いずれの工程で又は成分に混合されてもよいが、キャリアゴムに混合されるのがよい。例えば、酸化防止剤をシランマスターバッチに多量(例えば1質量部以上)に添加するとラジカル捕捉効果等により架橋阻害を生じ、結果グラフト化反応が十分に進行しないことがある。
【0064】
このようにして、工程(a)を行い、シランマスターバッチ(シランMBともいう)が調製される。このシランMBは、後述するように、工程(1)で調製される溶融混合物(シラン架橋性ゴム組成物)の製造に、好ましくは、シラノール縮合触媒又は後述する触媒マスターバッチとともに、用いられる。シランMBは、後述の工程(2)により成形可能な程度にシランカップリング剤がベースゴムにグラフトしたシラン架橋性ゴム(シラングラフトゴム)を含有している。
【0065】
本発明の製造方法において、次いで、工程(a)でゴムの一部を溶融混合する場合には、ベースゴムの残部とシラノール縮合触媒とを溶融混合して、触媒マスターバッチ(触媒MBともいう)を調製する工程(b)を行う。したがって、工程(a)でベースゴムの全部を溶融混合する場合は、工程(b)を行わなくてもよく、また他の樹脂とシラノール縮合触媒とを混合してもよい。
【0066】
キャリアゴムとしてのゴムとシラノール縮合触媒との混合割合は、特に限定されないが、好ましくは、工程(1)における上記含有量を満たすように、設定される。
混合は、均一に混合できる方法であればよく、ゴムの溶融下で行う混合(溶融混合)が挙げられる。溶融混合は上記行程(a)の溶融混合と同様に行うことができる。例えば、混合温度は、80〜250℃、より好ましくは100〜240℃で行うことができる。その他の条件、例えば混合時間は適宜設定することができる。
【0067】
工程(b)において、ベースゴムの残部に代えて、又は、加えて他のゴム成分若しくは樹脂成分をキャリアゴムとして用いることができる。すなわち、工程(b)は、工程(a)でベースゴムの一部を溶融混合する場合のベースゴムの残部、又は、工程(a)で用いたベースゴム以外のゴム成分若しくは樹脂成分と、シラノール縮合触媒とを溶融混合して、触媒MBを調製してもよい。キャリアゴムが他のゴム成分又は樹脂成分である場合、工程(a)においてシラン架橋を早く促進させることができるうえ、成形中にブツが生じにくい点で、他のゴム成分又は樹脂成分の含有量は、ベースゴム100質量部に対して、好ましくは1〜50質量部、より好ましくは2〜30質量部、さらに好ましくは4〜20質量部である。
【0068】
また、工程(b)において、無機フィラーを用いてもよい。この場合、無機フィラーの含有量は、特には限定されないが、キャリアゴム100質量部に対し、350質量部以下が好ましい。無機フィラーの含有量が多いとシラノール縮合触媒が分散しにくく、架橋反応が進行しにくくなる。
【0069】
このようにして調製される触媒MBは、シラノール縮合触媒及びキャリアゴム、所望により添加される無機フィラーの混合物である。
この触媒MBは、シランMBとともに、工程(1)で調製されるシラン架橋性ゴム組成物の製造に、マスターバッチセットとして、用いられる。
【0070】
本発明の製造方法において、次いで、シランMBと、シラノール縮合触媒又は触媒MBとを混合して、溶融混合物を得る工程(c)を行う。
混合方法は、上述のように均一な溶融混合物を得ることができれば、どのような混合方法でもよい。
【0071】
混合は、工程(a)の溶融混合と基本的に同様である。混合は、ベースゴムやその他樹脂成分が溶融する温度で混練する。混合温度は、ベースゴム又はキャリアゴムの溶融温度に応じて適宜に選択される。工程(c)において、混合温度は、例えば、好ましくは100〜250℃、より好ましくは120〜220℃である。その他の条件、例えば混合(混練)時間は適宜設定することができる。
【0072】
工程(c)においては、シラノール縮合反応を避けるため、シランMBとシラノール縮合触媒が混合された状態で高温状態に長時間保持されないことが好ましい。
【0073】
この工程(c)は、シランMBとシラノール縮合触媒とを混合して溶融混合物を得る工程であればよく、シラノール縮合触媒及びキャリアゴムを含有する触媒MBとシランMBとを溶融混合する工程であるのが好ましい。
【0074】
このようにして、工程(a)〜(c)(工程(1))、すなわち本発明のシラン架橋性ゴム組成物の製造方法を行い、溶融混合物として、本発明のシラン架橋性ゴム組成物が製造される。このシラン架橋性ゴム組成物は、JIS K 6300−1:2013に基づき測定されたムーニー粘度(ML(1+4)125℃)が40を超え90以下であるエチレン−αオレフィンゴムを61〜100質量%含むベースゴムにシランカップリング剤がグラフト化したシラン架橋性ゴムと、前記ベースゴム100質量部に対して、無機フィラー0.3〜400質量部と、シラノール縮合触媒0.0001〜0.5質量部とを含有する。
このシラン架橋性ゴム組成物中に含有されるシラン架橋性ゴムは、シランカップリング剤がベースゴムにグラフトしたシラン架橋性ゴムである。このシラン架橋性ゴムにおいて、シランカップリング剤の反応部位は、無機フィラーと結合又は吸着していてもよいが、後述するようにシラノール縮合していない。したがって、シラン架橋性ゴムは、無機フィラーと結合又は吸着したシランカップリング剤がベースゴムにグラフトした架橋性ゴムと、無機フィラーと結合又は吸着していないシランカップリング剤がベースゴムにグラフトした架橋性ゴムとを少なくとも含む。また、シラン架橋性ゴムは、無機フィラーが結合又は吸着したシランカップリング剤と、無機フィラーが結合又は吸着していないシランカップリング剤とを有していてもよい。また、シランカップリング剤と未反応のゴム成分を含んでいてもよい。
【0075】
シラン架橋性ゴムは、JIS K 6300−1:2013に基づき測定されたムーニー粘度(ML(1+4)125℃)が40を超え90以下であるエチレン−αオレフィンゴムを61〜100質量%含むベースゴム100質量部にシランカップリング剤1〜15質量部が70〜100質量%でグラフト化反応してなるゴムであることが好ましい。
シランカップリング剤がベースゴムにグラフト化反応するときのシランカップリング剤の反応割合(グラフト化率ともいう)は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されない。本発明において、グラフト化率は、一義的に定めることは難しいが、例えば、後述する実施例に記載の測定方法によるグラフト化率としては、70〜100質量%(シラングラフト量は0.7〜15質量部)であることが好ましく、75〜100質量%(シラングラフト量は0.75〜15質量部)であることがより好ましく、80〜100質量%(シラングラフト量は0.8〜15質量部)であることがさらに好ましい。グラフト化率が70〜100質量%であると、ベースゴムの架橋が十分になり、上記の優れた特性を付与するのに好適である。
本発明において、グラフト化率は、有機過酸化物の種類又は含有量、シランカップリング剤の種類、密閉型ミキサーの使用等によって、所定の範囲に設定できる。
【0076】
工程(1)により得られるシラン架橋性ゴムは、シランカップリング剤がシラノール縮合していない未架橋体である。実際的には、工程(c)で溶融混合されると、一部架橋(部分架橋)は避けられないが、得られるシラン架橋性ゴム組成物について、少なくとも工程(2)で成形可能な成形性が保持されたもの(未架橋状態又は部分架橋状態)とする。
【0077】
工程(1)において、工程(a)〜(c)は、同時又は連続して行うことができる。
【0078】
本発明のシラン架橋ゴム成形体の製造方法は、次いで、工程(2)及び工程(3)を行う。
本発明のシラン架橋ゴム成形体の製造方法において、得られた溶融混合物を成形して成形体を得る工程(2)を行う。この工程(2)は、溶融混合物を成形できればよく、本発明の製品の形態に応じて、適宜に成形方法及び成形条件が選択される。成形方法は、押出機を用いた押出成形、射出成形機を用いた射出成形、プレス成形機を用いたプレス成形、その他の成形機を用いた成形が挙げられる。押出成形は、本発明の製品が電線又は光ファイバケーブルである場合に、好ましい。
成形工程(2)を押出成形により行う場合、本発明のシラン架橋性ゴム組成物の成形速度(押出速度)は、特に限定されず、通常、線速で1〜20m/分未満、好ましくは1〜10m/分に設定できる。また、本発明においては、生産性のさらなる向上のため成形速度を線速で20〜100m/分の高速に設定することもできる。
また、押出成形は、高温で行うこともできる。成形温度を高温に設定すると、ムーニー粘度が高いゴムを用いても、上記のような高速な押出速度で押出成形ができる。特に、本発明の製造方法では、優れた外観をも実現できる。成形温度として、高温に設定する場合、例えば、150℃以上に設定でき、好ましくは180〜250℃に設定することもできる。
【0079】
また、工程(2)は、工程(c)と同時に又は連続して、行うことができる。すなわち、工程(c)の溶融混合の一実施態様として、溶融成形の際、例えば押出成形の際に、又は、その直前に、シランMBやシラノール縮合触媒又は触媒MB等の成形原料を溶融混合する態様が挙げられる。例えば、ドライブレンド等のペレット同士を常温又は高温で混ぜ合わせて成形機に導入(溶融混合)してもよいし、混ぜ合わせた後に溶融混合し、再度ペレット化をして成形機に導入してもよい。より具体的には、シランMBとシラノール縮合触媒又は触媒MBとの成形材料を被覆装置内で溶融混練し、次いで、導体等の外周面に押出被覆して、所望の形状に成形する一連の工程を採用できる。
このようにして、シラン架橋性ゴム組成物の成形体が得られる。この成形体はシラン架橋性ゴム組成物と同様に、一部架橋は避けられないが、工程(2)で成形可能な成形性を保持する部分架橋状態にある。したがって、この発明のシラン架橋ゴム成形体は、工程(3)を実施することによって、架橋又は最終架橋された成形体とされる。
【0080】
本発明のシラン架橋ゴム成形体の製造方法においては、工程(2)で得られた成形体を水と接触させる工程を行う。これにより、シランカップリング剤の反応部位が縮合して架橋反応が起こる。具体的には、反応部位が加水分解されてシラノールとなり、成形体中に存在するシラノール縮合触媒によりシラノールの水酸基同士が縮合して架橋反応が起こる。こうして、シランカップリング剤がシラノール縮合して架橋したシラン架橋ゴム成形体を得ることができる。
この工程(3)の処理自体は、通常の方法によって行うことができる。シランカップリング剤同士の縮合は、常温で放置するだけで進行する。したがって、工程(3)において、成形体を水に積極的に接触させる必要はない。この架橋反応を促進させるために、成形体を水分と積極的に接触させることもできる。例えば、温水への浸水、湿熱槽への投入、高温の水蒸気への暴露等の積極的に水に接触させる方法を採用できる。また、その際に水分を内部に浸透させるために圧力をかけてもよい。このような手法は、被覆厚さの大きい電線やその他体積の大きい成形体の場合、有効である。
【0081】
このようにして、本発明のシラン架橋ゴム成形体の製造方法が実施され、本発明のシラン架橋性ゴム組成物からシラン架橋ゴム成形体が製造される。このシラン架橋ゴム成形体は、後述するように、シラン架橋性ゴムがシランカップリング剤を介して架橋した架橋ゴムを含んでいる。このシラン架橋ゴム成形体の一形態は、シラン架橋ゴムと、無機フィラーとを含有する。ここで、無機フィラーはシラン架橋ゴムのシランカップリング剤に結合していてもよい。したがって、このシラン架橋ゴムは、複数の架橋ゴムがシランカップリング剤により無機フィラーに結合又は吸着することにより、無機フィラー及びシランカップリング剤を介して結合(架橋)した架橋ゴムと、上記架橋性ゴムのシランカップリング剤の反応部位が加水分解して互いにシラノール縮合反応することにより、シランカップリング剤を介して架橋した架橋ゴムとを少なくとも含む。また、シラン架橋ゴムは、無機フィラー及びシランカップリング剤を介した結合(架橋)と、シランカップリング剤を介した架橋とが混在していてもよい。さらに、シランカップリング剤と未反応のゴム成分及び/又は架橋していないシラン架橋性ゴムを含んでいてもよい。
【0082】
本発明の製造方法におけるグラフト化の理由についてはまだ定かではないが、以下のように考えられる。すなわち、ベースゴムを有機過酸化物の存在下、無機フィラー及びシランカップリング剤とともに有機過酸化物の分解温度以上で加熱混練すると、有機過酸化物が分解してラジカルを発生し、ベースゴムに対してシランカップリング剤のグラフト化が起こる。
また、上記溶融混合での加熱により、部分的には、シランカップリング剤と無機フィラーの表面での水酸基等の基との共有結合による化学結合の形成反応も起きる。
本発明では、工程(3)で、最終的な架橋反応を行うこともあり、ベースゴムにシランカップリング剤を上述のように特定量配合すると、成形時の押し出し加工性(成形性)を損なうことなく無機フィラーを多量に配合することが可能になる。これにより、優れた成形性を確保しながらも、優れた成形体の外観、さらには機械特性等を併せ持つことができる。
【0083】
本発明のシラン架橋ゴム成形体の製造方法は、高粘度のムーニー粘度を有するエチレン−αオレフィンゴムを上記含有率で含有するベースゴムを上記のシラン架橋法により、混合、成形及び架橋する。したがって、優れた圧縮永久歪、高い引張強度及び優れた外観を兼ね備えたシラン架橋ゴム成形体を製造することができる。
さらに、本発明シラン架橋ゴム成形体の製造方法は、上記ベースゴムを上記のシラン架橋法により、成形及び架橋するものであるから、架橋反応を行うに当たりEPゴムの加硫設備を不要とし、EPゴムの加硫法に対して生産性を高めることができる。
さらに、本発明のシラン架橋ゴム成形体の製造方法は、成形時にゴムの架橋を抑えることができ、必要により、成形温度を上記のように高温に設定することができ、さらに線速を高く設定することもできる。
【0084】
本発明の上記プロセスの作用のメカニズムはまだ定かではないが次のように推定される。すなわち、ベースゴムとの混練り前及び/又は混練り時に、無機フィラー及びシランカップリング剤を用いることにより、シランカップリング剤は、その反応部位で無機フィラーの化学結合しうる基と結合して、保持される。又は、無機フィラーと結合することなく、無機フィラーの穴や表面に物理的又は化学的に吸着して、保持される。このように、無機フィラーに対して、強い結合で結びつくシランカップリング剤(その理由は、例えば、無機フィラー表面の化学反応しうる基等との化学結合の形成が考えられる)と、弱い結合で結びつくシランカップリング剤(その理由は、例えば、水素結合による相互作用、イオン、部分電荷若しくは双極子間での相互作用、吸着による作用等が考えられる)を形成できる。この状態で、有機過酸化物の存在下で、ベースゴムと混練りを行うと、後述するようにシランカップリング剤がゴム組成物(ゴム混練物)からほとんど揮発することなく、もう一方の末端に存在するグラフト化反応部位でベースゴムのグラフト化反応可能な部位と結合する。こうして、無機フィラーとの結合が異なる、シランカップリング剤がベースゴムにグラフト化反応したシラン架橋性ゴムが形成される。
工程(1)においては、有機過酸化物が分解して生じるラジカルにより、ベースゴム中のジエン成分同士も架橋すると考えられる。しかし、上記の好ましい方法では、シランカップリング剤と有機過酸化物と無機フィラーとを混合するため、シランカップリング剤のグラフト化反応が優先的に進行するものと考えられる。
【0085】
上述の混練りにより、シランカップリング剤のうち無機フィラーと強い結合を有するシランカップリング剤は、無機フィラーとの結合が保持され、かつ、グラフト化反応部位がベースゴムのグラフト化反応可能な部位(有機過酸化物の分解で生じたラジカルによる水素ラジカルの引き抜きで生じたゴムのラジカル化部位)とグラフト化反応する。特に、1つの無機フィラー粒子の表面に複数のシランカップリング剤が強い結合を介して結合した場合、この無機フィラー粒子を介してゴムが複数結合する。これらの反応又は結合により、この無機フィラーを介した架橋ネットワークが広がる。すなわち、無機フィラーに結合しているシランカップリング剤がベースゴムにグラフト化反応してなるシラン架橋性ゴムが形成される。
【0086】
無機フィラーと強い結合を有するシランカップリング剤の場合は、このシラノール縮合触媒による水存在下での縮合反応が生じにくく、無機フィラーとの結合が保持される。シラノール縮合反応が生じにくい理由は無機フィラーとシランカップリング剤の結合エネルギーが非常に高く、シラノール縮合触媒下にあっても、縮合反応が起こらないからであると考えられる。このように、ベースゴムと無機フィラーの結合が生じ、シランカップリング剤を介したゴムの架橋が生じる。これによりベースゴムと無機フィラーの密着性が強固になり、機械強さ、引張強度、圧縮永久歪みに優れた成形体が得られる。
また、1つの無機フィラー粒子表面に複数のシランカップリング剤を複数結合でき、高い機械強さを得ることができる。
このように、無機フィラーに対して強い結合で結合したシランカップリング剤は、機械特性及び引張強度の向上に寄与すると考えられる。
【0087】
一方、シランカップリング剤のうち無機フィラーと弱い結合を有するシランカップリング剤は、無機フィラーの表面から離脱して、シランカップリング剤のグラフト化反応部位が、ベースゴムのグラフト化反応可能な部位と反応してグラフト化反応が起こる。すなわち、無機フィラーから離脱したシランカップリング剤がベースゴムにグラフト化反応したシラン架橋性ゴムが形成される。このようにして生じたグラフト部分のシランカップリング剤は、その後シラノール縮合触媒と混合され、水分と接触することにより、縮合反応(架橋反応)が生じる。この架橋反応により得られたシラン架橋ゴム成形体の引張強度は高くなり、耐熱性に加えて、圧縮永久歪みの小さいシラン架橋ゴム成形体を得ることが可能となる。このように、無機フィラーに対して弱い結合で結合したシランカップリング剤は、架橋度の向上、すなわち耐熱性の向上と、圧縮永久歪みの抑制に寄与すると考えられる。
【0088】
特に、本発明では、工程(3)における、水存在下でのシラノール縮合触媒を使用した縮合による架橋反応を、成形体を形成した後に行う。これにより、例えば特許文献1に記載の方法のように押出成形と架橋反応を同時に行う方法と比較して、成形体形成までの工程での作業性が優れる。また、シラノール縮合触媒を使用した縮合反応は、水分のほとんど存在しない押出機内では進行しないため、工程(2)において高温での押出成形が可能になる。したがって、高温及び高速での成形も可能となる。
【0089】
さらに、本発明の製造方法によりシランカップリング剤を無機フィラーに混合すると、上記のように、シランカップリング剤同士の縮合が抑えられる等により、外観に優れたものとなる。しかも、本発明において、3〜15質量部、特に4質量部を超え15質量部以下のシランカップリング剤を無機フィラーに混合する場合には、上述したように、工程(1)、特に工程(a)での溶融混練時におけるゴム同士の架橋反応を効果的に抑えることができる。また、シランカップリング剤は無機フィラーに結合しており、工程(1)、特に工程(a)での溶融混練中にも揮発しにくく、遊離しているシランカップリング剤同士の反応も効果的に抑えることができる。したがって、押出機を停止した後に再開しても外観不良が発生しにくく、外観の良好なシラン架橋ゴム成形体を製造できる。ここで、一旦停止後、再開するとは、ベースゴムの組成、加工条件等に左右され一義的に述べることはできないが、例えば、190℃で、間隔30分間まで、好ましくは90分間まで再開できることをいう。
【0090】
本発明のシラン架橋ゴム成形体は、少なくとも下記の特性(測定方法は実施例と同じ。)を有し、外観にも優れる。
すなわち、シラン架橋ゴム成形体は、圧縮永久歪みが、好ましくは40%以下であり、より好ましくは30%以下であり、さらに好ましくは20%以下である。下限は特に限定されないが、例えば、10%である。
シラン架橋ゴム成形体は、引張強度が、好ましくは8MPa以上であり、より好ましくは10MPa以上であり、さらに好ましくは12MPa以上である。上限は特に限定されないが、例えば、25MPaである。引張強度の測定方法は後述する。
【0091】
本発明のシラン架橋性ゴム組成物は、上記優れた特性を有するシラン架橋ゴム成形体を製造できる。また、ゴムの架橋工程が不要となり、生産性に優れる。さらには高温成形性及び高速成形性にも優れ、高い生産性を発揮する。高温成形性及び高速成形性については、上記した通りであり、具体的には実施例において説明する。
【0092】
本発明のシラン架橋ゴム成形品は、シラン架橋ゴム成形体を含む製品でもよく、シラン架橋ゴム成形体のみからなる製品でもよい。シラン架橋ゴム成形体を含む製品としては、シラン架橋ゴム成形体と、他の部材、例えば支持体、支持枠等とからなる製品が挙げられる。本発明において、製品には、半製品、部品、部材も含む意味で用いる。
本発明のシラン架橋ゴム成形品として、各種産業用ケーブル(電線を含む)の被覆材、ゴムモールド材(例えば、自動車用グラスランチャンネル、ウェザーストリップ、ゴムホース、ワイパーブレードゴム、ガスケット、防振ゴム)等が挙げられる。
【0093】
本発明のシラン架橋ゴム成形品は、好ましくは、優れた圧縮永久歪み及び高い引張強度の少なくとも一方の特性が要求される製品とされる。このような製品としては、特に限定されない。例えば、70℃において40%以下の圧縮永久歪みが求められる製品、8MPa以上の引張強度が求められる製品、又は、上記圧縮永久歪み及び上記引張強度が求められる製品が挙げられる。具体的には、本発明のシラン架橋ゴム成形品として、好ましくは、各種産業用ケーブルの被覆材のうちのシース材(ジャケット材)や絶縁材、さらにはゴムモールド材(ウェザーストリップ、ガスケット等)が挙げられる。
【0094】
本発明の製造方法は、小さな圧縮永久歪みが要求される製品、高い引張強度が求められる製品、ゴム材料等の製品の構成部品又はその部材の製造に適用することができる。
上記のように、本発明の製造方法は、優れた上記特性を有するシラン架橋ゴム成形体を、加硫設備を必要とせず、生産性よく製造することもできる。したがって、本発明の製造方法は、小さな圧縮永久歪み及び高い引張強度の少なくとも一方の特性が要求される製品に特に好ましく適用することができる。
【0095】
本発明の製造方法は、上記製品のなかでも、特に電線及び光ケーブルの製造に好適に適用され、これらの被覆材(絶縁体、シース)を形成することができる。
本発明の製品が電線、ケーブル等の押出成形品である場合、好ましくは、成形材料を押出機(押出被覆装置)内で溶融混練しながら、導体等の外周に押し出して導体等を被覆する等により、製造できる(工程(c)及び工程(2))。このような製品は、無機フィラーを大量に加えたシラン架橋性ゴム組成物を電子線架橋機等の特殊な機械も、ゴムの加硫設備も使用することなく汎用の押出被覆装置を用いて、導体の周囲に、又は抗張力繊維を縦添え若しくは撚り合わせた導体の周囲に押出被覆することにより、成形することができる。例えば、導体としては軟銅の単線又は撚り線等を用いることができる。また、導体としては裸線の他に、錫メッキしたものやエナメル被覆絶縁層を有するものを用いることもできる。導体の周りに形成される絶縁層(本発明のシラン架橋性ゴム組成物又はシラン架橋ゴム成形体からなる被覆層)の肉厚は特に限定されないが、一般的には、0.15〜5mm程度である。
【実施例】
【0096】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
表1において、各例の含有量に関する数値は特に断らない限り質量部を表す。
【0097】
実施例1〜9及び比較例1〜8は、下記成分を用いて、それぞれの諸元を表1に示す条件に設定して、実施した。
【0098】
表1中に示す各化合物(成分)の詳細を以下に示す。エチレン−αオレフィンゴムの、ムーニー粘度(ML(1+4)125℃)、エチレン含有量及びジエン含有量(測定は赤外線吸収分光法による)は表1に示す。
<ゴム成分>
(エチレン−αオレフィンゴム、EPゴム)
「EP24」(商品名、JSR社製、エチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネンゴム)
「ノーデル3745P」(NORDEL(登録商標)、ダウ・ケミカル社製、エチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネンゴム)
「EPT3092PM」(三井EPT(登録商標)、三井化学社製、エチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネンゴム)
「ノーデル4785HM」(NORDEL(登録商標)、ダウ・ケミカル社製、エチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネンゴム)
「EP103AF」(商品名、JSR社製、エチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネンゴム)
「Vistalon878P」(Vistalon(登録商標)、エクソン・モービル社製、エチレン−プロピレン−ゴム)
「EPT3091」(三井EPT(登録商標)、三井化学社製、エチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネンゴム)
「ノーデル3640」(NORDEL(登録商標)、ダウ・ケミカル社製、エチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネンゴム)
「ESPRENE 553」(ESPRENE(登録商標)、住友化学社製、エチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネンゴム)
「ノーデル4760P」(NORDEL(登録商標)、ダウ・ケミカル社製、エチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネンゴム)
<樹脂成分>
(ポリプロピレン系樹脂)
「PM940M」(商品名、サンアロマー社製、r−PP、MFR(230℃、21.18N)30g/10分)
【0099】
<無機フィラー>
「アエロジル200」(アエロジル(登録商標)、日本アエロジル社製、親水性フュームドシリカ、平均1次粒径12nm)
「クリスタライト5X」(商品名、龍森社製、結晶質シリカ、平均1次粒径1.4μm)
「キスマ5L」(キスマ(登録商標)、水酸化マグネシウム、協和化学社製、平均1次粒径0.8μm)
【0100】
<シランカップリング剤>
「KBM1003」(商品名、信越シリコーン社製、ビニルトリメトキシシラン)
<有機過酸化物>
「パーヘキサ25B」(商品名、日本油脂社製、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1分間の半減期温度179.8℃)
<シラノール縮合触媒>
「アデカスタブOT−1」(商品名、ADEKA社製、ジオクチルスズジラウレート)
【0101】
(実施例1〜9及び比較例1〜6)
実施例1〜9及び比較例1〜6において、EPゴムの一部を工程(a)で用い、EPゴムの残部(5質量部)を工程(b)で触媒MBのキャリアゴムとして用いた。
無機フィラーと、シランカップリング剤と、有機過酸化物とを、表1に示す質量比で、室温(25℃)下で、混合した。得られた混合物とEPゴムの一部を含むベースゴムとを、2Lバンバリーミキサー(日本ロール社製)を用いて、有機過酸化物の分解温度以上の温度(185℃)において5分間にわたり溶融混合した後、材料排出温度130℃で排出し、ペレット化してシランMBを得た(工程(a))。得られたシランMBは、EPゴムにシランカップリング剤がグラフト化反応したシラン架橋性EPゴムを含有している。
【0102】
また、EPゴムの残部とシラノール縮合触媒0.1質量部とを150℃でバンバリーミキサー(日本ロール社製)にて溶融混合し、材料排出温度130℃で排出して、触媒MBを得た(工程(b))。
【0103】
工程(a)で得たシランMBと工程(b)で得た触媒MBを電線被覆用押出成形機(L/D(スクリュー有効長Lと直径Dとの比)が25で、スクリュー直径が25mmφ)の直上で、25℃で約1分間にわたりドライブレンドして、ドライブレンド物を得た。
【0104】
−電線の製造−
得られたドライブレンド物を、上記電線被覆用押出成形機に投入して、下記押出温度条件により、0.8mmφの導体(軟銅線)の外周に仕上がり外径1.2mmφとなるように、線速10m/分で、押出被覆して、電線前駆体を製造した。
押出温度条件は、電線被覆用押出成形機のシリンダー部分における温度制御をフィーダー側からダイス側に向けて3ゾーンC1、C2、C3に分け、C1ゾーンを150℃、C2ゾーンを170℃、C3ゾーンを190℃に設定し、さらにダイス温度(成形温度)を200℃に設定した。
上記ドライブレンド物を電線被覆用押出成形機内で押出成形前に溶融混合することにより、シラン架橋性ゴム組成物を調製した。このシラン架橋性ゴム組成物は、上記シラン架橋性EPゴムと、表1に示す含有量の無機フィラー及びシラノール縮合触媒を、含有している。
このようにして得られた電線前駆体を、25℃、50%RH環境に24時間放置することにより、水と接触させて、電線を製造した。この電線は、EPゴムがシランカップリング剤により架橋したシラン架橋EPゴムと表1に示す含有量の無機フィラーとを含有するシラン架橋ゴム成形体を被覆材として有していた。
【0105】
−円柱状ゴム成形品の製造−
上記電線の製造において、導体を用いることなく、ドライブレンド物を押出成形したこと以外は上記電線の製造と同様にして、直径約35mmの溶融ストランドを得た。得られた溶融ストランドを約15mmの長さに切り分け、溶融状態のまま、29.0mmφ、厚さ12.5mmの円柱状金型に押し込み、プレス予備成形した。
その後、プレス成形機を用いて、円柱状金型を150℃で10分予熱した後、プレス予備成形したストランドを予熱した円柱状金型に入れ、150℃で3分、圧力4MPaでプレス成形した。これにより、29.0mmφ、12.5mm厚の円柱状ゴム成形品を得た。
このようにして得られた円柱状ゴム成形品を、25℃、50%RH環境に24時間放置することにより、水と接触させて、円柱状ゴム成形品を製造した。この円柱状ゴム成形品は、EPゴムがシランカップリング剤により架橋したシラン架橋EPゴムと表1に示す含有量の無機フィラーとを含有するシラン架橋ゴム成形体であった。
【0106】
(比較例7及び8)
−電線の製造−
表1に示す割合の有機過酸化物を、8インチオープンロールを用いて、表1に示すEPゴム100質量部に100℃で練り込み、ペレット化した。得られたペレットを、上記電線被覆用押出成形機を用いて、実施例1の電線の製造と同様にして上記導体上に押出被覆して、電線前駆体を製造した。
ここで、比較例7及び8については、実施例1と同様の押出温度条件で成形すると押出成形機内で、架橋反応が生じて、押出成形ができず、押出成形できたものであっても電線前駆体の外観を損なった。そこで、押出成形機のC1〜C3ゾーンを90℃、ダイス温度を100℃に設定して、押出成形した。
得られた電線前駆体を、温度200℃、圧力10MPaの水蒸気環境に設定された、長さ20mの化学架橋管内を通過させることで、架橋し、電線を製造した。
【0107】
−円柱状ゴム成形品の製造−
上記電線の製造において、導体を用いることなく、ペレットを押出成形したこと以外は上記電線の製造と同様にして、直径35mmの溶融ストランドを得た。次いで、その溶融ストランドを15mmの長さに切り分け29.0mmφ、厚さ12.5mmの円柱状金型に押し込みプレス予備成形を行った。
その後、プレス成形機を用いて、金型を170℃で10分予熱した後、プレス予備成形したストランドを予熱した金型に入れ、170℃で60分、圧力4MPaでプレス成形した。これにより、29.0mmφ、12.5mm厚の円柱状ゴム成形品を製造した。
【0108】
得られた各電線について、下記のようにしてグラフト化率を確認し、その結果を表1に示した。
本発明において、シランカップリング剤のゴムへのグラフト化反応のグラフト化率は、次のようにして、測定した。まず、得られた各電線から任意の箇所の被覆をサンプリングした試験片を、80℃の真空環境下で24時間乾燥させた後、赤外線吸収分光法によって、3750cm−1付近に見られる吸収ピークから孤立シラノール(未反応のシランカップリング剤)の質量を定量した。次いで、得られた値と、実際に用いたシランカップリング剤の質量(含有量)から、下記計算式によって、グラフト化率を算出した。
グラフト化率(質量%)={(実際に用いた質量−赤外線吸収分光法による孤立シラノールの質量)/実際に用いた質量)×100
【0109】
得られた各電線又は円柱状ゴム成形品について、下記試験をし、その結果を表1に示した。
【0110】
<外観試験>
製造した各電線の外観を目視で観察して評価した。電線の外観が優れていたものを「A」、外観に製品上問題があるほどブツが発生していたものを「B」とした。
【0111】
<引張強度>
JIS C 3005に基づき、引張試験を行った。得られた電線から導体を引き抜いた管状片を用いて、標点間距離20mm、引張速度200mm/分で引張強度を計測し、下記評価基準にて評価した。
引張強度が、12MPa以上であった場合を「A」、10MPa以上12MPa未満であった場合を「B」、8MPa以上10MPa未満であった場合を「C」、8MPa未満であった場合を「D」とした。
本発明において、引張強度は、評価「C」が本発明の試験の合格レベルである。
【0112】
<圧縮永久歪み>
JIS K 6262 A法に基づき、各例で製造した円柱状ゴム成形品を用いて、その圧縮永久歪を測定した。2枚の圧縮板とスペーサ(厚さは円柱状ゴム成形品の厚さの75%)を備えた圧縮装置を利用して、円柱状ゴム成形品を厚さ方向に25%分の圧縮を加え(圧縮率25%)、その状態で70℃に加熱して22時間保持した。その後、常温(23℃)にて圧縮を開放し、30分間の冷却後(最終的な温度は23℃)、円柱状ゴム成形品の厚さを測定した。
円柱状ゴム成形品の、圧縮前後の厚さから、以下の式によって、圧縮永久歪みを算出して、下記評価基準にて、評価した。
式:CS=[(t−t)/(t−t)]×100
式中、CS:圧縮永久歪み(%)
:円柱状ゴム成形品の圧縮前の厚さ(元の厚さ)(mm)
:スペーサの厚さ(mm)
円柱状ゴム成形品の圧縮後の厚さ(圧縮装置から取り外して、30分後の厚さ)(mm)
圧縮永久歪みが、20%以下であった場合を「A」、20%を超え30%以下であった場合を「B」、30%を超え40%以下であった場合を「C」、40%を超えた場合を「D」とした。
本発明において、圧縮永久歪は、評価「C」が本発明の試験の合格レベルである。
【0113】
<押出成形性>
上記各例で調製したシラン架橋性ゴム組成物(溶融混合された各ドライブレンド物)の押出成形性(高温成形性及び高速成形性)を、評価した、
1.高温成形性(成形温度)
上記電線の製造において、設定した押出成形温度(ダイス温度)により、下記評価基準で、高温成形性を評価した。
評価基準は、押出成形機のダイス温度を200℃に設定した押出温度条件でドライブレンド物を押出成形できた場合を「A」、押出成形できなかった場合を「B」とした。
本発明において、高温成形性は、評価「A」が本発明の試験の合格レベルである。
【0114】
2.高速成形性
各例で調製したドライブレンド物を、L/Dが25で、スクリュー直径が40mmφの電線用押出成形機(モーター負荷限界:80A)に投入して、下記押出温度条件により、0.8mmφの導体(軟銅線)の外周に、仕上がり外径2.4mmφとなるように、線速を変更して、押出被覆した。
押出温度条件は、実施例1〜9及び比較例1〜6においては、C1ゾーンを150℃、C2ゾーンを170℃、C3ゾーンを190℃に設定し、さらにダイス温度を200℃に設定した。比較例7及び8においては、C1〜C3ゾーンを90℃、ダイス温度を100℃に設定した。
上記押出被覆において、押出成形可能な最大の製造スピード(最高線速)により、下記評価基準で、高速成形性を評価した。ここで、押出成形可能な最大の製造スピードとは、押出された被覆が押出途中で切れ(所謂樹脂切れ)することなく、かつ、モーター負荷が上記限界値を超えない線速であって、最速のものとする。
最高線速が、60m/分以上であった場合を「A」、40m/分以上60m/分未満であった場合を「B」、20m/分以上40m/分未満であった場合を「C」、20m/分未満であった場合を「D」とした。
本発明において、高速成形性は、評価「C」が本発明の試験の合格レベルである。
【0115】
【表1】
【0116】
表1に示す結果から明らかなように、実施例1〜9は、いずれも、200℃の高温で、さらに20m/分以上の最高線速で押出成形が可能であった。また、各実施例で製造されたシラン架橋ゴム成形品(電線又は円柱状ゴム成形品)は、いずれも、外観、引張強度、圧縮永久歪みに優れていた。
【0117】
これに対して、ムーニー粘度(ML(1+4)125℃)が低いEPゴムを使用した比較例1は、引張強度が低かった。一方、ムーニー粘度(ML(1+4)125℃)が高いEPゴムを使用した比較例2は最高線速が遅かった。
また、無機フィラーの含有量が少ない比較例3は引張強度が低く、圧縮永久歪みが大きかった。無機フィラーの含有量が過剰な比較例4は引張強度が低く、圧縮永久歪みが大きく、しかも最高線速も遅かった。
さらに、シランカップリング剤の含有量が少ない比較例5は圧縮永久歪みが大きかった。シランカップリング剤の含有量が多い比較例6は外観が悪く、また押出成形性試験において線速45m/分での押出成形は可能であったが得られた電線の外観は悪かった。
シラン架橋法ではないゴム架橋法である比較例7及び8は、いずれも、200℃で押出成形ができず、100℃で押出成形できたとしても最高線速が遅かった。また、比較例7は引張強度も不合格であった。
【0118】
以上のように、本発明は、小さな圧縮永久歪み、高い引張強度及び優れた外観のいずれも兼ね備えたシラン架橋ゴム成形体及びシラン架橋ゴム成形品を製造することができる。また、本発明は、このような優れた特性を有するシラン架橋ゴム成形体及びシラン架橋ゴム成形品を、EPゴムの加硫設備を必要とせず、必要により高温高速で成形でき、生産性よく製造することができる。
【0119】
本発明をその実施態様とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
【0120】
本願は、2015年3月3日に日本国で特許出願された特願2015−041468に基づく優先権を主張するものであり、これはここに参照してその内容を本明細書の記載の一部として取り込む。
【国際調査報告】