特表-16190304IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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再表2016-190304固体電解質組成物、混合物、複合化ゲル、全固体二次電池用電極シートおよび全固体二次電池ならびに固体電解質組成物、複合化ゲル、全固体二次電池用電極シートおよび全固体二次電池の製造方法
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  • 再表WO2016190304-固体電解質組成物、混合物、複合化ゲル、全固体二次電池用電極シートおよび全固体二次電池ならびに固体電解質組成物、複合化ゲル、全固体二次電池用電極シートおよび全固体二次電池の製造方法 図000022
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2016年12月1日
【発行日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】固体電解質組成物、混合物、複合化ゲル、全固体二次電池用電極シートおよび全固体二次電池ならびに固体電解質組成物、複合化ゲル、全固体二次電池用電極シートおよび全固体二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0562 20100101AFI20171201BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20171201BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20171201BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20171201BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20171201BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20171201BHJP
   H01B 1/10 20060101ALI20171201BHJP
【FI】
   H01M10/0562
   H01M10/058
   H01M4/13
   H01M4/139
   H01M4/62 Z
   H01B1/06 A
   H01B1/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】53
【出願番号】特願2017-520714(P2017-520714)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2016年5月24日
(31)【優先権主張番号】特願2015-108513(P2015-108513)
(32)【優先日】2015年5月28日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-226395(P2015-226395)
(32)【優先日】2015年11月19日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】特許業務法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(72)【発明者】
【氏名】牧野 雅臣
(72)【発明者】
【氏名】望月 宏顕
(72)【発明者】
【氏名】三村 智則
(72)【発明者】
【氏名】目黒 克彦
【テーマコード(参考)】
5G301
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5G301CA04
5G301CA05
5G301CA08
5G301CA12
5G301CA14
5G301CA16
5G301CA17
5G301CA23
5G301CA27
5G301CA30
5G301CD01
5H029AJ05
5H029AJ06
5H029AK01
5H029AK02
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL04
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM11
5H029AM12
5H029BJ03
5H029BJ12
5H029CJ02
5H029CJ06
5H029CJ08
5H029CJ22
5H029DJ08
5H029DJ09
5H029EJ03
5H029EJ07
5H029EJ11
5H029EJ12
5H029EJ14
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ05
5H029HJ11
5H029HJ14
5H050AA07
5H050AA12
5H050BA15
5H050CA01
5H050CA02
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB05
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA11
5H050DA13
5H050DA14
5H050DA18
5H050EA01
5H050EA12
5H050EA15
5H050EA22
5H050EA23
5H050EA24
5H050EA28
5H050FA17
5H050GA02
5H050GA08
5H050GA10
5H050GA22
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA11
5H050HA14
(57)【要約】
低分子ゲル化剤と周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質と分散媒体とを含有する固体電解質組成物、混合物、複合化ゲル、これを用いた全固体二次電池用電極シートおよび全固体二次電池ならびに固体電解質組成物、複合化ゲル、全固体二次電池用電極シートおよび全固体二次電池の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低分子ゲル化剤と周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質と分散媒体とを含有する固体電解質組成物。
【請求項2】
前記低分子ゲル化剤が、分子量300以上1,000未満であって、かつ、炭素数8以上のアルキル基および下記式(I)で表される部分構造を有する化合物を含んでなる請求項1に記載の固体電解質組成物。
【化1】
式(I)中、Xは単結合、酸素原子およびNHのいずれかを表す。
【請求項3】
前記低分子ゲル化剤が、前記式(I)で表される部分構造を2つ以上有し、かつ、炭素数8以上のアルキル基を1つ以上有する化合物を含んでなる請求項2に記載の固体電解質組成物。
【請求項4】
前記低分子ゲル化剤が、炭素数8以上のアルキル基を分子末端に有する化合物を含んでなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
【請求項5】
前記低分子ゲル化剤の融点が80℃以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
【請求項6】
前記低分子ゲル化剤が、光学活性を有する化合物を含んでなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
【請求項7】
前記式(I)で表される部分構造が、下記式(I−1)および(I−2)のいずれかで表される請求項2または3に記載の固体電解質組成物。
【化2】
【請求項8】
前記低分子ゲル化剤が、下記式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物の少なくも1種を含んでなる請求項1〜7のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
【化3】
式(1)〜(4)中、Rは1価の有機基、nは0〜8の整数、Rは1価の有機基、Rは1価の有機基または−Y−Z、Rは1価の有機基、Rは1価の有機基を表す。Lは単結合、酸素原子およびNHのいずれかの基を表す。Yは単結合または2価の連結基、Zは炭素数8以上のアルキル基、Lは2価の連結基を表す。*は光学活性な炭素原子を表す。
【請求項9】
前記式(1)〜(4)において、Zで示される炭素数8以上のアルキル基が、ラジカル重合性またはカチオン重合性の官能基を有する請求項8に記載の固体電解質組成物。
【請求項10】
前記周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質が硫化物系無機固体電解質である請求項1〜9のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
【請求項11】
前記周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質の一部または全部が溶解している請求項1〜10のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
【請求項12】
前記低分子ゲル化剤が、無機固体電解質100質量部に対して0.1〜20質量部含有される請求項1〜11のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
【請求項13】
前記分散媒体が炭化水素系溶媒である請求項1〜12のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
【請求項14】
バインダーを含有する請求項1〜13のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
【請求項15】
前記バインダーが、平均粒子径0.05μm〜20μmのポリマー粒子である請求項14に記載の固体電解質組成物。
【請求項16】
周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質と分散媒体とゲルとを含有する固体電解質組成物用の混合物であって、
該ゲルが、前記低分子ゲル化剤と溶媒とを少なくとも含んでなる、請求項1〜15のいずれか1項に記載の固体電解質組成物用の混合物。
ただし、該ゲルは、周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する第2の無機固体電解質、および/または電極活物質を含んでいてもよく、該第2の無機固体電解質は、前記ゲル中に分散していても溶解していてもよい。
【請求項17】
請求項16に記載の固体電解質組成物用の混合物を混合する、固体電解質組成物の製造方法。
【請求項18】
下記工程(i)〜(iii)を含む、固体電解質組成物の製造方法。
工程(i):低分子ゲル化剤と溶媒とを含有するプレ混合液aを加熱し、前記低分子ゲル化剤が溶解する混合液aを調製する工程
工程(ii):前記混合液aを冷却し、ゲルを形成させる工程
工程(iii):前記ゲルと、周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する第1の無機固体電解質と分散媒体とを混合し、固体電解質組成物を調製する工程
ただし、周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する第2の無機固体電解質、および/または電極活物質を、前記プレ混合液a、前記混合液aまたは前記ゲルに含有させる工程を有してもよく、該第2の無機固体電解質は、前記ゲル中に分散していても溶解していてもよい。
【請求項19】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の固体電解質組成物または請求項17もしくは18に記載の製造方法により得られる固体電解質組成物を金属箔上に適用し、該固体電解質組成物をゲル化させた後、製膜する全固体二次電池用電極シートの製造方法。
【請求項20】
正極活物質層、固体電解質層および負極活物質層をこの順に有する全固体二次電池用電極シートであって、
該正極活物質層、固体電解質層および負極活物質層のいずれか1層が、低分子ゲル化剤と周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質とを含有する全固体二次電池用電極シート。
【請求項21】
請求項20に記載の全固体二次電池用電極シートを用いて構成される全固体二次電池。
【請求項22】
請求項19に記載の製造方法を介して、正極活物質層、固体電解質層および負極活物質層をこの順に有する全固体二次電池を製造する全固体二次電池の製造方法。
【請求項23】
低分子ゲル化剤と溶媒と、周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質とを含有する複合化ゲル。ただし、該無機固体電解質は、該複合化ゲル中に分散していても溶解していてもよい。
【請求項24】
下記工程(i−A)および(ii−A)をこの順に含み、かつ、下記工程(A)を含む、請求項23に記載の複合化ゲルの製造方法。
工程(i−A):前記低分子ゲル化剤と前記溶媒とを含有するプレ混合液Aaを加熱し、前記低分子ゲル化剤が溶解する混合液Aaを調製する工程
工程(ii−A):前記混合液Aaを冷却し、ゲルを形成させる工程
工程(A):前記プレ混合液Aa、前記混合液Aaまたは前記ゲルに、前記周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質を含有させる工程
ただし、前記複合化ゲルは、電極活物質を含んでいてもよく、前記無機固体電解質は、前記複合化ゲル中に分散していても溶解していてもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解質組成物、混合物、複合化ゲル、全固体二次電池用電極シートおよび全固体二次電池ならびに固体電解質組成物、複合化ゲル、全固体二次電池用電極シートおよび全固体二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池には、電解液が用いられてきた。その電解液を固体電解質に置き換え、構成材料を全て固体にした全固体二次電池とする試みが進められている。無機の固体電解質を利用する技術の利点として挙げられるのが、電池の性能全体を総合した信頼性である。例えば、リチウムイオン二次電池に用いられる電解液には、その媒体として、カーボネート系溶媒など、可燃性の材料が適用されている。様々な安全対策が採られているものの、過充電時などに不具合を来たすおそれがないとは言えず、さらなる対応が望まれる。その抜本的な解決手段として、電解質を不燃性のものとしうる全固体二次電池が位置づけられる。
全固体二次電池のさらなる利点としては、電極のスタックによる高エネルギー密度化に適していることが挙げられる。具体的には、電極と電解質を直接並べて直列化した構造を持つ電池にすることができる。このとき、電池セルを封止する金属パッケージ、電池セルをつなぐ銅線やバスバーを省略することができるので、電池のエネルギー密度が大幅に高められる。また、高電位化が可能な正極材料との相性の良さなども利点として挙げられる。
【0003】
上記のような各利点から、次世代のリチウムイオン電池として全固体二次電池の開発が進められている(非特許文献1)。例えば、特許文献1では、硫化物固体電解質と、増粘効果を発現する物質と、溶媒とを用いて作製したペースト状組成物を塗膜する工程を含む、硫化物全固体電池の製造方法が記載されている。ここで、増粘効果を発現する物質は、2価の有機基である主鎖及びこの主鎖の両端に、ベンゾイルオキシ基等からなる群より選択される官能基を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−241240号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】NEDO技術開発機構,燃料電池・水素技術開発部,蓄電技術開発室「NEDO次世代自動車用蓄電池技術開発 ロードマップ2013」(平成25年8月)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載のペースト状組成物において、意図する形態の塗工膜を形成するため、硫化物固体電解質との反応性が低く、増粘効果を発現する物質を使用する。しかし、このペースト状組成物を用いて作製される硫化物全固体電池は、固体粒子間に良好な界面が形成されず、上記特許文献1に記載の硫化物全固体電池の製造方法では、全固体二次電池の抵抗の抑制やサイクル特性の向上といった電池性能の向上効果は十分でないと考えられる。
【0007】
そこで本発明は、全固体二次電池において、抵抗を抑制し、高いサイクル特性を実現できる固体電解質組成物、混合物および複合化ゲル、これを用いた全固体二次電池用電極シートおよび全固体二次電池ならびに固体電解質組成物、複合化ゲル、全固体二次電池用電極シートおよび全固体二次電池それぞれの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが鋭意検討した結果、自己組織化ナノファイバーを形成して分散媒体をゲル化し得る、低分子ゲル化剤を含有する固体電解質組成物を用いることにより、抵抗が抑制され、高いサイクル特性を有する全固体二次電池を実現できることを見出した。これは、推定も含めて以下の理由によるものと考えられる。すなわち、低分子ゲル化剤により形成される自己組織化ナノファイバーが存在することで、全固体二次電池中で無機固体電解質や活物質等の固体粒子間の距離が一定の範囲内に保たれる。また、自己組織化ナノファイバーは物理的な結合により形成されるため柔軟性に富み、活物質の膨張収縮に追随しやすい。さらに、ナノファイバー状であるためリチウムイオン伝導を阻害しないと考えられる。本発明はこれらの知見に基づきなされたものである。
すなわち、上記の課題は以下の手段により解決された。
【0009】
(1)低分子ゲル化剤と周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質と分散媒体とを含有する固体電解質組成物。
(2)低分子ゲル化剤が、分子量300以上1,000未満であって、かつ、炭素数8以上のアルキル基および下記式(I)で表される部分構造を有する化合物を含んでなる(1)に記載の固体電解質組成物。
【0010】
【化1】
【0011】
式(I)中、Xは単結合、酸素原子およびNHのいずれかを表す。
(3)低分子ゲル化剤が、式(I)で表される部分構造を2つ以上有し、かつ、炭素数8以上のアルキル基を1つ以上有する化合物を含んでなる(1)または(2)に記載の固体電解質組成物。
(4)低分子ゲル化剤が、炭素数8以上のアルキル基を分子末端に有する化合物を含んでなる(1)〜(3)のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
(5)低分子ゲル化剤の融点が80℃以上である(1)〜(4)のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
(6)低分子ゲル化剤が、光学活性を有する化合物を含んでなる(1)〜(5)のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
(7)式(I)で表される部分構造が、下記式(I−1)および(I−2)のいずれかで表される(2)または(3)に記載の固体電解質組成物。
【0012】
【化2】
【0013】
(8)低分子ゲル化剤が、下記式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物の少なくも1種を含んでなる(1)〜(7)のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
【0014】
【化3】
【0015】
式(1)〜(4)中、Rは1価の有機基、nは0〜8の整数、Rは1価の有機基、Rは1価の有機基または−Y−Z、Rは1価の有機基、Rは1価の有機基を表す。Lは単結合、酸素原子およびNHのいずれかの基を表す。Yは単結合または2価の連結基、Zは炭素数8以上のアルキル基、Lは2価の連結基を表す。*は光学活性な炭素原子を表す。
(9)式(1)〜(4)において、Zがラジカル重合性またはカチオン重合性の官能基を有する請求項(8)に記載の固体電解質組成物。
(10)周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質が硫化物系無機固体電解質である(1)〜(9)のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
(11)周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質の一部または全部が溶解している(1)〜(10)のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
(12)低分子ゲル化剤が、無機固体電解質100質量部に対して0.1〜20質量部含有される(1)〜(11)のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
(13)分散媒体が炭化水素系溶媒である(1)〜(12)のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
(14)バインダーを含有する(1)〜(13)のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
(15)バインダーが、平均粒子径0.05μm〜20μmのポリマー粒子である(14)に記載の固体電解質組成物。
(16)周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質と分散媒体とゲルとを含有する固体電解質組成物用の混合物であって、
ゲルが、低分子ゲル化剤と溶媒とを少なくとも含んでなる、(1)〜(15)のいずれか1つに記載の固体電解質組成物用の混合物。
ただし、ゲルは、周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する第2の無機固体電解質、および/または電極活物質を含んでいてもよく、第2の無機固体電解質は、ゲル中に分散していても溶解していてもよい。
(17) (16)に記載の固体電解質組成物用の混合物を混合する、固体電解質組成物の製造方法。
(18) 下記工程(i)〜(iii)を含む、固体電解質組成物の製造方法。
工程(i):低分子ゲル化剤と溶媒とを含有するプレ混合液aを加熱し、低分子ゲル化剤が溶解する混合液aを調製する工程
工程(ii):混合液aを冷却し、ゲルを形成させる工程
工程(iii):ゲルと、周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する第1の無機固体電解質と分散媒体とを混合し、固体電解質組成物を調製する工程
ただし、周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する第2の無機固体電解質、および/または電極活物質を、プレ混合液a、混合液aまたはゲルに含有させる工程を有してもよく、第2の無機固体電解質は、ゲル中に分散していても溶解していてもよい。
(19) (1)〜(15)のいずれか1つに記載の固体電解質組成物または(17)もしくは(18)に記載の製造方法により得られる固体電解質組成物を金属箔上に適用し、固体電解質組成物をゲル化させた後、製膜する全固体二次電池用電極シートの製造方法。
(20)正極活物質層、固体電解質層および負極活物質層をこの順に有する全固体二次電池用電極シートであって、
正極活物質層、固体電解質層および負極活物質層のいずれか1層が、低分子ゲル化剤と周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質とを含有する全固体二次電池用電極シート。
(21) (20)に記載の全固体二次電池用電極シートを用いて構成される全固体二次電池。
(22) (19)に記載の製造方法を介して、正極活物質層、固体電解質層および負極活物質層をこの順に有する全固体二次電池を製造する全固体二次電池の製造方法。
(23)低分子ゲル化剤と溶媒と、周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質とを含有する複合化ゲル。ただし、無機固体電解質は、複合化ゲル中に分散していても溶解していてもよい。
(24)下記工程(i−A)および(ii−A)をこの順に含み、かつ、下記工程(A)を含む、(23)に記載の複合化ゲルの製造方法。
工程(i−A):低分子ゲル化剤と溶媒とを含有するプレ混合液Aaを加熱し、低分子ゲル化剤が溶解する混合液Aaを調製する工程
工程(ii−A):混合液Aaを冷却し、ゲルを形成させる工程
工程(A):プレ混合液Aa、混合液Aaまたはゲルに、周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質を含有させる工程
ただし、複合化ゲルは、電極活物質を含んでいてもよく、無機固体電解質は、複合化ゲル中に分散していても溶解していてもよい。
【0016】
本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、特定の符号で表示された置換基が複数あるとき、あるいは複数の置換基等(置換基数の規定も同様)を同時もしくは択一的に規定するときには、それぞれの置換基等は互いに同一でも異なっていてもよい。
本明細書において、単に「アクリル」と記載するときは、メタアクリルおよびアクリルの両方を含む意味で使用する。
本明細書において、単に「電極活物質」と記載するときは、正極活物質および/または負極活物質を意味する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の固体電解質組成物、混合物および複合化ゲルは、抵抗が抑制され、高いサイクル特性を有する全固体二次電池の製造に好適に用いることができる。また、本発明の全固体二次電池用電極シートは、上記の優れた性能を有する全固体二次電池の製造を可能にする。また、本発明の製造方法によれば、本発明の全固体二次電池用電極シートおよび上記の優れた性能を有する全固体二次電池を効率良く製造することができる。さらに、本発明の固体電解質組成物および複合化ゲルの製造方法によれば、より優れた上記性能を有する全固体二次電池を製造することができる。
本発明の上記及び他の特徴及び利点は、適宜添付の図面を参照して、下記の記載からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の好ましい実施形態に係る全固体リチウムイオン二次電池を模式化して示す縦断面図である。
図2図2は、実施例で利用した試験装置を模式的に示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の固体電解質組成物は、低分子ゲル化剤と周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質と分散媒体とを含有する。
本発明の固体電解質組成物を用いた全固体二次電池の電池性能の向上は、以下のメカニズムによりなされると推定される。
本発明の固体電解質組成物は、機械分散による熱エネルギーを加えることで低分子ゲル化剤が溶解する。分散終了後、塗布前の分散スラリーは短時間の間ではゲル化および粘度変化は進行しない。この点で、本発明の低分子ゲル化剤は、上記特許文献1に記載されたゲル化でなく増粘効果を発現する物質とは機能が異なる化合物である。
分散スラリーを塗布した段階で一定時間静置すると分散媒体を包括した状態でゲル化が進行する。ゲル化が生じる機構としては「高分子ゲルの最新動向」(シーエムシー出版、2004年発刊)に記載のように、低分子ゲル化剤が水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用、静電的相互作用、π−π相互作用などの弱い二次結合により架橋し網目状の自己組織化ナノファイバーを形成するためと考えられる。ゲル化した塗布物を低分子ゲル化剤の融点以下の温度で乾燥させると分散媒体が揮発し自己組織化ナノファイバーのみが塗布膜中に残る。これにより網目状の自己組織化ナノファイバーに無機固体電解質がとりこまれた構造体が形成され、全固体二次電池の性能を向上させると考えられる。特に、自己組織化ナノファイバーが、上記弱い二次結合により架橋されているため、活物質の膨張収縮に追随しやすい柔軟性を有し、また、網目状であるためリチウムイオン伝導を阻害しにくいためと考えられる。
以下、その好ましい実施形態について説明する。
【0020】
<好ましい実施形態>
図1は、本発明の好ましい実施形態に係る全固体二次電池(リチウムイオン二次電池)を模式化して示す断面図である。本実施形態の全固体二次電池10は、負極側からみて、負極集電体1、負極活物質層2、固体電解質層3、正極活物質層4、正極集電体5を、この順に有する。各層はそれぞれ接触しており、積層した構造をとっている。このような構造を採用することで、充電時には、負極側に電子(e)が供給され、そこにリチウムイオン(Li)が蓄積される。一方、放電時には、負極に蓄積されたリチウムイオン(Li)が正極側に戻され、作動部位6に電子が供給される。図示した例では、作動部位6に電球を採用しており、放電によりこれが点灯するようにされている。本発明の固体電解質組成物は、上記負極活物質層、正極活物質層、固体電解質層の成形材料として好ましく用いることができる。
【0021】
正極活物質層4、固体電解質層3、負極活物質層2の厚さは特に限定されない。なお、一般的な電池の寸法を考慮すると、10〜1,000μmが好ましく、20μm以上500μm未満がより好ましい。
【0022】
以下、本発明の全固体二次電池の製造に好適に用いることができる、本発明の固体電解質組成物から説明する。
【0023】
<固体電解質組成物>
(低分子ゲル化剤)
低分子ゲル化剤自体は、例えば、「高分子加工」第45巻第1号第21〜26頁(1996年)や「高分子ゲルの最新動向(シーエムシー出版)」第27〜44頁(2004年)に記載されているように、有機溶剤やその他油類に少量添加することによって、全体をゼリー状に固めることができる薬剤であって、種々のものが知られている。
【0024】
本発明に用いられる低分子ゲル化剤とは、分散媒体中で自己組織化ナノファイバーを形成することが可能な低分子材料を言う。すなわち、分散媒体に少量添加し、加熱放冷を行うことで分散媒体をゼリー状に固める(ゲル化させる)ことができる機能を有する低分子(分子量10以上1,000未満)材料である。分散媒体のゲル化は、低分子ゲル化剤が分散媒体中で、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用、静電的相互作用、π−π相互作用などの弱い二次結合により一次元的な分子集合体を形成し、分子集合体が成長することで擬似的な高分子体(自己組織化ナノファイバー)を形成し、さらに自己組織化ナノファイバーが三次元的に絡み合うことにより生じると推定されている。
そのため、化学結合により架橋点を有する高分子量の高分子ゲル化剤(例えば、ポリアクリル酸ナトリウム等のポリマー)とは異なり、物理的な結合による会合のため自己組織化ナノファイバーは柔軟性に優れ、ゲルの柔軟性を適宜に設定できる。また、粘度を高める機能を有し、自己組織化ナノファイバーの形成によるゲル化能を有さない、いわゆる増粘剤(例えば、上記特許文献1に記載のn−オクタンジアミンと1,4−ジベンゾイルブタン)とも異なる。
本発明においては、自己組織化とは分子が自発的に集合する現象を言い、ナノファイバーとは直径が長径0.1〜100nm、短径0.1〜50nmの極細繊維を言い、長さは0.5μm以上であることが好ましい。
ナノファイバーについては、透過型電子顕微鏡や走査型電子顕微鏡により確認することができる。
【0025】
本発明においては、上記のように、オイルゲル化剤として知られているものであれば、特に、限定されることなく、低分子ゲル化剤として用いることができる。低分子ゲル化剤の好ましい具体例として、例えば、12−ヒドロキシステアリン酸、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−α,γ−ビス−n−ブチルアミド、1,2,3,4−ジベンジリデン−D−ソルビトール、ジアルキルリン酸アルミニウム、2,3−ビス−n−ヘキサデシロキシアントラセン、トリアルキル−シス−1,3,5−シクロヘキサントリカルボキシアミド、コレステロールのエステル誘導体、シクロヘキサンジアミン誘導体をあげることができる。
【0026】
本発明に用いられる低分子ゲル化剤は、分子量300以上1,000未満であって、かつ、炭素数8以上のアルキル基および下記式(I)で表される部分構造を有する化合物を含んでなることが好ましく、分子量300以上1,000未満であって、かつ、炭素数8以上のアルキル基および下記式(I)で表される部分構造を有する化合物であることがより好ましい。
【0027】
【化4】
【0028】
式(I)中、Xは単結合、酸素原子およびNHのいずれかを表す。
【0029】
本発明に用いられる低分子ゲル化剤は、上記式(I)で表される部分構造のなかでも、下記式(I−1)および(I−2)のいずれかで表される部分構造を有することが好ましく、下記式(I−1)で表される部分構造を有することがより好ましい。
【0030】
【化5】
【0031】
分子量は300以上800未満が好ましく、350以上650未満がより好ましい。ここで分子量は、例えば、NMR等の各種分光分析により構造を決定することで求められる。
【0032】
上記の炭素数8以上のアルキル基は、直鎖アルキル基でも分岐アルキル基でもよい。
炭素数は8〜20が好ましく、8〜16がより好ましく、8〜12がさらに好ましい。
分岐アルキル基である場合には、1番長いアルキル基の炭素数が8以上であることが好ましく、8〜18がより好ましく、8〜14がさらに好ましく、8〜10が特に好ましい。
具体的には、オクチル、ノニル、デシル、ジメチルオクチル、ウンデシル、ドデシル、トリメチルノニル、テトラデシル、オクタデシル等が挙げられる。
【0033】
式(I)で表される部分構造、特に式(I−1)および(I−2)で表される部分構造を有すると、低分子ゲル化剤が分子間水素結合により分子会合体を形成しやすい。よって、本発明の固体電解質組成物を用いて全固体二次電池を作製する際に形成される自己組織化ナノファイバー(以下、自己組織化ナノファイバーと称す。)が、分散媒体を除去した後も、無機固体電解質や活物質といった固体粒子を網目状に絡み取った構造を保持しやすい。そのため、本発明において好ましく用いることができる。
さらに、分子量が上記好ましい範囲内にあり、炭素数が上記好ましい範囲のアルキル基を有する低分子ゲル化剤も、上記と同様の点から好ましい。
【0034】
本発明に用いられる低分子ゲル化剤は、上記式(I)で表される部分構造を2つ以上有し、かつ、炭素数8以上のアルキル基を1つ以上有する化合物であることもゲル化効率をより高めるため好ましい。
また、本発明に用いられる低分子ゲル化剤は、炭化水素溶媒への溶解性を付与しかつ、炭化水素溶媒のゲル化効率をより高めるため炭素数8以上のアルキル基を分子末端に有することも好ましい。
本発明において、「低分子ゲル化剤が、炭素数8以上のアルキル基を分子末端に有する」とは、低分子ゲル化剤の任意の末端に炭素数8以上のアルキル基を有することを意味する。なお、後述の式(1)〜(4)の好ましい態様にあるように、炭素数8以上のアルキル基(Z)がラジカル重合性またはカチオン重合性の官能基を有する場合は、便宜上、Zを分子末端に有するものとする。
【0035】
本発明に用いられる低分子ゲル化剤は、融点が80℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることがさらに好ましい。上限値は、300℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましい。
融点が上記下限値以上であることで、全固体二次電池の製造時における分散媒体の除去工程で、低分子ゲル化剤が形成する自己組織化ナノファイバーの構造が保たれる。そのため、網目状の自己組織化ナノファイバーに固体電解質や活物質等の固体粒子が絡み取られた状態を維持できる。また、電池を駆動する際にも自己組織化ナノファイバーの構造が保たれるため好ましい。また上記上限値以下であることで、低分子ゲル化剤が溶融された状態を低エネルギーで調製できる。
なお、低分子ゲル化剤の融点は、後述の全固体二次電池の作製の項で記載する乾燥温度より高いことが好ましく、乾燥温度+30℃以上がより好ましく、乾燥温度+50℃以上がさらに好ましい。
融点は、DSC(Differential scanning calorimetry)により測定することができる。
【0036】
本発明に用いられる低分子ゲル化剤が光学活性を有することも好ましい。溶融した低分子ゲル化剤が自己組織化する際に、規則性を有する低分子ゲル化剤が配列してナノファイバーを形成しやすく、また、全固体二次電池においては、分散媒体の除去後も安定なナノファイバー構造を保持しやすいためである。
【0037】
本発明に用いられる低分子ゲル化剤は、下記式(1)〜(4)のいずれかで表されることが好ましい。ここで、下記式(1)〜(4)で表される低分子ゲル化剤は、いずれも光学活性を有する。
【0038】
【化6】
【0039】
式(1)〜(4)中、Rは1価の有機基、nは0〜8の整数、Rは1価の有機基、Rは1価の有機基または−Y−Z、Rは1価の有機基、Rは1価の有機基を表す。Lは単結合、酸素原子およびNHのいずれかの基を表す。Yは単結合または2価の連結基、Zは炭素数8以上のアルキル基、Lは2価の連結基を表す。*は光学活性な炭素原子を表す。なお、*はRであってもSであってもよい。
【0040】
〜Rにおける1価の有機基としては、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基が挙げられる。
アルキル基の炭素数は、1〜30が好ましく、1〜25がより好ましく、1〜20がさらに好ましい。具体的には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、オクチル、ドデシル、ステアリル、ベンジル等が挙げられる。
アリール基の炭素数は、6〜30が好ましく、6〜20がより好ましく、6〜14がさらに好ましい。具体的には、フェニル、1−ナフチル、トリル、キシリル、アントラセニル、ピレニル等が挙げられる。
アルコキシ基の炭素数は、1〜20が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜8がさらに好ましい。具体的には、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、ベンジルオキシ等が挙げられる。
アリールオキシ基の炭素数は、6〜20が好ましく、6〜12がより好ましく、6〜10がさらに好ましい。具体的には、フェノキシ、1−ナフチルオキシ、3−メチルフェノキシ、4−メトキシフェノキシ等が挙げられる。
アルキルチオ基の炭素数は、1〜20が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜8がさらに好ましい。具体的には、メチルチオ、エチルチオ、イソプロピルチオ、ベンジルチオ等が挙げられる。
アリールチオ基の炭素数は、6〜30が好ましく、6〜20がより好ましく、6〜14がさらに好ましい。具体的には、フェニルチオ、1−ナフチルチオ、3−メチルフェニルチオ、4−メトキシフェニルチオ等が挙げられる。
【0041】
における1価の有機基はアルキル基またはアルコキシ基が好ましい。
における1価の有機基はアルキル基が好ましい。
における1価の有機基はアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基またはアリールチオ基が好ましい。
における1価の有機基はアルキル基が好ましい。
における1価の有機基はアルキル基が好ましい。
は、アルコキシ基または−Y−Zが好ましい。
【0042】
nは0〜4の整数が好ましく、0〜2の整数がより好ましく、0がさらに好ましい。
Lは単結合またはNHが好ましい。
【0043】
Yにおける2価の連結基は、−O−、−S−、−NH−、−C(=O)−、−Lr−、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。
ここで、Lrはアルキレン基を表し、直鎖状でも分岐状でもよく、炭素数は1〜12が好ましく、1〜6がより好ましい。
2価の連結基の組み合わせとしては、例えば、−NHC(=O)−、−NHC(=O)O−、−NHC(=O)NH−、−Lr−O−、−Lr−NH−、−Lr−C(=O)−、−Lr−C(=O)O−、−Lr−O−C(=O)−、−Lr−C(=O)NH−、−Lr−NHC(=O)−が挙げられる。
Yにおける2価の連結基は、なかでも、−O−、−NH−、−Lr−C(=O)O−、−Lr−C(=O)NH−が好ましく、−O−、−NH−、−CHC(=O)O−、−CH(CH(CH)−C(=O)NH−がより好ましい。
【0044】
における2価の連結基は、アルキレン基が好ましい。
アルキレン基の炭素数は、1〜30が好ましく、1〜25がより好ましく、1〜20がさらに好ましい。具体的には、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、オクタメチレン、ドデカメチレン、オクタデカメチレン等が挙げられる。
【0045】
Zにおける炭素数8以上のアルキル基は、上記炭素数8以上のアルキル基と同義である。
【0046】
Zがラジカル重合性またはカチオン重合性の官能基を有することも好ましい。
【0047】
ラジカル重合性の官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニルオキシ基、スチリル基、アリル基等の炭素−炭素不飽和基を有する基などが挙げられ、なかでも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
カチオン重合性の官能基としては、エポキシ基、チオエポキシ基、ビニルオキシ基、オキセタニル基等が挙げられ、なかでも、オキセタニル基が好ましい。
なお、Zとラジカル重合性またはカチオン重合性の官能基は2価の連結基を介して結合していてもよく、2価の連結基の具体例としては、アルキレンオキシ基(炭素数は1〜10が好ましく、例えば、−CHO−)、カルボニルオキシ基(−C(=O)O−)、カーボネート基(―OC(=O)O−)が挙げられる。
【0048】
ラジカル重合性またはカチオン重合性の官能基が重合することで、自己組織化ナノファイバーを形成する低分子ゲル化剤の一部の分子間で化学的な結合が形成されるため、自己組織化ナノファイバー自体の物理的な結合と併せて、その物理形状を保持する観点から好ましい。また、化学的架橋が形成されることで、自己組織化ナノファイバーの構造を、低分子ゲル化剤の有する融点以上の高温下においても維持できるため好ましい。
【0049】
全固体二次電池の製造の項で後述するように、低分子ゲル化剤が溶解した固体電解質組成物を、製膜、放冷静置する工程を経ることで、自己組織化ナノファイバーが形成される。そのため、自己組織化ナノファイバーによる効果と化学的な結合(架橋)が形成されることによる相乗効果を得るためには、ラジカル重合またはカチオン重合を、自己組織化ナノファイバーの形成後に行うことが効果的である。すなわち、放冷静置後か、乾燥後に重合を行うことが好ましい。
【0050】
Zがラジカル重合性またはカチオン重合性の官能基を有する場合、本発明の固体電解質組成物は、適宜ラジカル開始剤、カチオン重合開始剤を含有することができる。
重合を開始させるために各種活性光線(紫外線、電子線、プラズマ、X線、エキシマレーザー等)に晒しても良く、全固体二次電池の充放電により電解重合を行ってもよい。
【0051】
本発明に用いられる低分子ゲル化剤は、ラジカル重合性またはカチオン重合性の官能基を分子内に2個以上有することが好ましい。
【0052】
上記式(1)〜(4)で表される低分子ゲル化剤のなかでも、式(2)または(4)で表される低分子ゲル化剤がより好ましい。
【0053】
以下に、本発明に用いられる低分子ゲル化剤の具体例を示すが、本発明がこれらに限定されるものではない。なお、下記化学構造式においては、(A−3)〜(A−18)が光学活性を有する。
【0054】
【化7】
【0055】
【化8】
【0056】
【化9】
【0057】
なお、低分子ゲル化剤は常法により合成することができる。
例えば、低分子ゲル化剤として代表的な(1)アミノ酸系オイルゲル化剤、(2)環状ジペプチド系オイルゲル化剤、(3)シクロヘキサンジアミン系オイルゲル化剤の合成法を以下に記載する。
【0058】
(1)アミノ酸系オイルゲル化剤(上記例示化合物A−7〜11)
アミノ酸を出発原料として用いる。アミノ酸のなかでも、L−イソロイシンやL−バリンを出発原料として合成した低分子ゲル化剤が、高いゲル化能を有することが知られている。まずアミノ酸のアミノ基を酸クロリドでアミド化またはウレタン化し、その後アミノ酸の有するカルボン酸部位とアミンを縮合剤(DCC:ジシクロヘキシルカルボジイミドなど)を用いて反応させてアミド化することで得られる。
(2)環状ジペプチド系オイルゲル化剤(上記例示化合物A−12、13)
アスパラギン酸ともう1つの異なるアミノ酸からなるジペプチドメチルエステルを出発原料として用いる。まずアスパラギン酸含有ジペプチドメチルエステルを加熱することでアスパラギン酸のアミノ基とメチルエステルが分子内環化縮合し、ジケトピペラジン類を形成する。残ったカルボン酸とアルコールを縮合剤(DCC:ジシクロヘキシルカルボジイミドなど)を用いて加熱脱水し縮合することでエステル化して得られる。中でもアスパラギン酸とフェニルアラニンからなるペプチドメチルエステル(アスパルテーム)を出発原料として合成した低分子ゲル化剤が、高いゲル化能を有することが知られている。
(3)シクロヘキサンジアミン系オイルゲル化剤(上記例示化合物A−3〜6、17、18)
光学活性なトランス−1,2−シクロヘキサンジアミンの2つのアミノ基を酸クロリドでアミド化するか、イソシアネートでウレア化することで得られる。なお、ゲル化能を有するためには、2つのアミノ基がトランス体であること、かつ反応により得られた化合物が光学活性体であることが必要である。
【0059】
本明細書において置換または無置換を明記していない置換基(連結基についても同様)については、その基に任意の置換基を有していてもよい意味である。これは置換または無置換を明記していない化合物についても同義である。好ましい置換基としては、下記置換基Tが挙げられる。
【0060】
置換基Tとしては、下記のものが挙げられる。
アルキル基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルキル基、例えばメチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、ペンチル、ヘプチル、1−エチルペンチル、ベンジル、2−エトキシエチル、1−カルボキシメチル等)、アルケニル基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、オレイル等)、アルキニル基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルキニル基、例えば、エチニル、ブタジイニル、フェニルエチニル等)、シクロアルキル基(好ましくは炭素原子数3〜20のシクロアルキル基、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル等)、アリール基(好ましくは炭素原子数6〜26のアリール基、例えば、フェニル、1−ナフチル、4−メトキシフェニル、2−クロロフェニル、3−メチルフェニル等)、ヘテロ環基(好ましくは炭素原子数2〜20のヘテロ環基、好ましくは、少なくとも1つの酸素原子、硫黄原子、窒素原子を有する5または6員環のヘテロ環基が好ましく、例えば、テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、2−ピリジル、4−ピリジル、2−イミダゾリル、2−ベンゾイミダゾリル、2−チアゾリル、2−オキサゾリル等)、
【0061】
アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、ベンジルオキシ等)、アリールオキシ基(好ましくは炭素原子数6〜26のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、1−ナフチルオキシ、3−メチルフェノキシ、4−メトキシフェノキシ等)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルコキシカルボニル基、例えば、エトキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数6〜26のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、1−ナフチルオキシカルボニル、3−メチルフェノキシカルボニル、4−メトキシフェノキシカルボニル等)、アミノ基(好ましくは炭素原子数0〜20のアミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基を含み、例えば、アミノ、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N−エチルアミノ、アニリノ等)、スルファモイル基(好ましくは炭素原子数0〜20のスルファモイル基、例えば、N,N−ジメチルスルファモイル、N−フェニルスルファモイル等)、アシル基(好ましくは炭素原子数1〜20のアシル基、例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリル等)、アリーロイル基(好ましくは炭素原子数7〜23のアリーロイル基、例えば、ベンゾイル等)、アシルオキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアシルオキシ基、例えば、アセチルオキシ等)、アリーロイルオキシ基(好ましくは炭素原子数7〜23のアリーロイルオキシ基、例えば、ベンゾイルオキシ等)、
【0062】
カルバモイル基(好ましくは炭素原子数1〜20のカルバモイル基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル等)、アシルアミノ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアシルアミノ基、例えば、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ等)、アルキルチオ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルキルチオ基、例えば、メチルチオ、エチルチオ、イソプロピルチオ、ベンジルチオ等)、アリールチオ基(好ましくは炭素原子数6〜26のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ、1−ナフチルチオ、3−メチルフェニルチオ、4−メトキシフェニルチオ等)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルキルスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル等)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素原子数6〜22のアリールスルホニル基、例えば、ベンゼンスルホニル等)、アルキルシリル基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルキルシリル基、例えば、モノメチルシリル、ジメチルシリル、トリメチルシリル、トリエチルシリル等)、アリールシリル基(好ましくは炭素原子数6〜42のアリールシリル基、例えば、トリフェニルシリル等)、ホスホリル基(好ましくは炭素原子数0〜20のリン酸基、例えば、−OP(=O)(R)、ホスホニル基(好ましくは炭素原子数0〜20のホスホニル基、例えば、−P(=O)(R)、ホスフィニル基(好ましくは炭素原子数0〜20のホスフィニル基、例えば、−P(R)、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ヒドロキシル基、シアノ基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が挙げられる。
また、これらの置換基Tで挙げた各基は、上記の置換基Tがさらに置換していてもよい。
【0063】
は水素原子または置換基である。置換基としては、アルキル基(炭素数1〜24が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜6がさらに好ましく、1〜3が特に好ましい)、アルケニル基(炭素数2〜24が好ましく、2〜12がより好ましく、2〜6がさらに好ましく、2〜3が特に好ましい)、アルキニル基(炭素数2〜24が好ましく、2〜12がより好ましく、2〜6がさらに好ましく、2〜3が特に好ましい)、アラルキル基(炭素数7〜22が好ましく、7〜14がより好ましく、7〜10が特に好ましい)、アリール基(炭素数6〜22が好ましく、6〜14がより好ましく、6〜10が特に好ましい)が好ましい。
【0064】
は水素原子、ヒドロキシル基、または置換基である。置換基としては、アルキル基(炭素数1〜24が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜6がさらに好ましく、1〜3が特に好ましい)、アルケニル基(炭素数2〜24が好ましく、2〜12がより好ましく、2〜6がさらに好ましく、2〜3が特に好ましい)、アルキニル基(炭素数2〜24が好ましく、2〜12がより好ましく、2〜6がさらに好ましく、2〜3が特に好ましい)、アラルキル基(炭素数7〜22が好ましく、7〜14がより好ましく、7〜10が特に好ましい)、アリール基(炭素数6〜22が好ましく、6〜14がより好ましく、6〜10が特に好ましい)、アルコキシ基(炭素数1〜24が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜6がさらに好ましく、1〜3が特に好ましい)、アルケニルオキシ基(炭素数2〜24が好ましく、2〜12がより好ましく、2〜6がさらに好ましく、2〜3が特に好ましい)、アルキニルオキシ基(炭素数2〜24が好ましく、2〜12がより好ましく、2〜6がさらに好ましく、2〜3が特に好ましい)、アラルキルオキシ基(炭素数7〜22が好ましく、7〜14がより好ましく、7〜10が特に好ましい)、アリールオキシ基(炭素数6〜22が好ましく、6〜14がより好ましく、6〜10が特に好ましい)、が好ましい。
【0065】
固体電解質組成物中の分散媒体に対する、低分子ゲル化剤の含有量は、分散媒体100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、1質量部以上が特に好ましい。上限としては、15質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、5質量部以下が特に好ましい。
上記好ましい範囲内にあることで、十分なゲル化能を有しつつ電池性能を劣化させないため好ましい。
【0066】
固体電解質組成物中の無機固体電解質100質量部に対する、低分子ゲル化剤の含有量は、0.1〜20質量部が好ましく、0.5〜18質量部がより好ましく、1〜15質量部が特に好ましい。ここで、無機固体電解質および低分子ゲル化剤以外の固形成分を含む場合には、無機固体電解質と上記固形成分を加えた全量を100質量部とする。
上記好ましい範囲内にあることで、十分なゲル化能を有しつつ電池性能を劣化させないため好ましい。
なお、本明細書において固形成分とは、100℃で6時間真空乾燥処理を行ったときに、揮発ないし蒸発して消失しない成分を言う。典型的には、後述の分散媒体以外の成分を指す。
【0067】
上記低分子ゲル化剤は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよく、1種単独で用いることが好ましい。
【0068】
低分子ゲル化剤は、固体の状態で固体電解質組成物に混合しても良いし、あらかじめ低分子ゲル化剤を適当な溶媒に加熱して溶解させた後にゲル化させ、生成した物理ゲルを固体電解質組成物に混合しても良い。
また、固体電解質組成物への混合は、全固体二次電池の製造の項で後述する、機械分散の前であっても後であっても良いが、機械分散後に混合する場合には、低分子ゲル化剤を溶解することが好ましい。
【0069】
(無機固体電解質)
無機固体電解質とは、無機の固体電解質のことであり、固体電解質とは、その内部においてイオンを移動させることができる固体状の電解質のことである。主たるイオン伝導性材料として有機物を含むものではないことから、有機固体電解質(PEOなどに代表される高分子電解質、LiTFSIなどに代表される有機電解質塩)とは明確に区別される。また、無機固体電解質は定常状態では固体であるため、通常カチオンおよびアニオンに解離または遊離していない。この点で、電解液やポリマー中でカチオンおよびアニオンが解離または遊離している無機電解質塩(LiPF、LiBF,LiFSI,LiClなど)とも明確に区別される。無機固体電解質は周期律表第1族または第2族に属する金属のイオンの伝導性を有するものであれば特に限定されず電子伝導性を有さないものが一般的である。
【0070】
本発明において、無機固体電解質は、周期律表第1族または第2族に属する金属のイオン伝導性を有する。上記無機固体電解質は、この種の製品に適用される固体電解質材料を適宜選定して用いることができる。無機固体電解質は(i)硫化物系無機固体電解質と(ii)酸化物系無機固体電解質が代表例として挙げられる。
【0071】
(i)硫化物系無機固体電解質
硫化物系無機固体電解質は、硫黄(S)を含有し、かつ、周期律表第1族または第2族に属する金属のイオン伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有するものが好ましい。硫化物系無機固体電解質は、元素として少なくともLi、SおよびPを含有し、リチウムイオン伝導性を有しているものが好ましいが、目的または場合に応じて、Li、SおよびP以外の他の元素を含んでもよい。
例えば下記式(1)で示される組成を満たすリチウムイオン伝導性無機固体電解質が挙げられる。

a1b1c1d1e1 (1)

(式中、LはLi、NaおよびKから選択される元素を示し、Liが好ましい。Mは、B、Zn、Sn、Si、Cu、Ga、Sb、Al及びGeから選択される元素を示す。なかでも、B、Sn、Si、Al、Geが好ましく、Sn、Al、Geがより好ましい。Aは、I、Br、Cl、Fを示し、I、Brが好ましく、Iが特に好ましい。a1〜e1は各元素の組成比を示し、a1:b1:c1:d1:e1は1〜12:0〜1:1:2〜12:0〜5を満たす。a1はさらに、1〜9が好ましく、1.5〜4がより好ましい。b1は0〜0.5が好ましい。d1はさらに、3〜7が好ましく、3.25〜4.5がより好ましい。e1はさらに、0〜3が好ましく、0〜1がより好ましい。)
【0072】
式(1)において、L、M、P、S及びAの組成比は、好ましくはb1、e1が0であり、より好ましくはb1=0、e1=0で且つa1、c1及びd1の比(a1:c1:d1)がa1:c1:d1=1〜9:1:3〜7であり、さらに好ましくはb1=0、e1=0で且つa1:c1:d1=1.5〜4:1:3.25〜4.5である。各元素の組成比は、後述するように、硫化物系無機固体電解質を製造する際の原料化合物の配合量を調整することにより制御できる。
【0073】
硫化物系無機固体電解質は、非結晶(ガラス)であっても結晶化(ガラスセラミックス化)していてもよく、一部のみが結晶化していてもよい。例えば、Li、PおよびSを含有するLi−P−S系ガラス、またはLi、PおよびSを含有するLi−P−S系ガラスセラミックスを用いることができる。
硫化物系無機固体電解質は、[1]硫化リチウム(LiS)と硫化リン(例えば五硫化二燐(P))、[2]硫化リチウムと単体燐および単体硫黄の少なくとも一方、または[3]硫化リチウムと硫化リン(例えば五硫化二燐(P))と単体燐および単体硫黄の少なくとも一方、の反応により製造することができる。
【0074】
Li−P−S系ガラスおよびLi−P−S系ガラスセラミックスにおける、LiSとPとの比率は、LiS:Pのモル比で、好ましくは65:35〜85:15、より好ましくは68:32〜77:23である。LiSとPとの比率をこの範囲にすることにより、リチウムイオン伝導度を高いものとすることができる。具体的には、リチウムイオン伝導度を好ましくは1×10−4S/cm以上、より好ましくは1×10−3S/cm以上とすることができる。上限は特にないが、1×10−1S/cm以下であることが実際的である。
【0075】
具体的な化合物例としては、例えばLiSと、第13族〜第15族の元素の硫化物とを含有する原料組成物を用いてなるものを挙げることができる。具体的には、LiS−P、LiS−LiI−P、LiS−LiI−LiO−P、LiS−LiBr−P、LiS−LiO−P、LiS−LiPO−P、LiS−P−P、LiS−P−SiS、LiS−P−SnS、LiS−P−Al、LiS−GeS、LiS−GeS−ZnS、LiS−Ga、LiS−GeS−Ga、LiS−GeS−P、LiS−GeS−Sb、LiS−GeS−Al、LiS−SiS、LiS−Al、LiS−SiS−Al、LiS−SiS−P、LiS−SiS−P−LiI、LiS−SiS−LiI、LiS−SiS−LiSiO、LiS−SiS−LiPO、Li10GeP12などが挙げられる。その中でも、LiS−P、LiS−GeS−Ga、LiS−SiS−P、LiS−SiS−LiSiO、LiS−SiS−LiPO4、LiS−LiI−LiO−P、LiS−LiO−P、LiS−LiPO−P、LiS−GeS−P、Li10GeP12からなる結晶質および/または非晶質の原料組成物が、高いリチウムイオン伝導性を有するので好ましい。このような原料組成物を用いて硫化物系無機固体電解質材料を合成する方法としては、例えば非晶質化法を挙げることができる。非晶質化法としては、例えば、メカニカルミリング法および溶融急冷法を挙げることができ、中でもメカニカルミリング法が好ましい。常温での処理が可能になり、製造工程の簡略化を図ることができるからである。
【0076】
(ii)酸化物系無機固体電解質
酸化物系無機固体電解質は、酸素(O)を含有し、かつ、周期律表第1族または第2族に属する金属のイオン伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有するものが好ましい。
【0077】
具体的な化合物例としては、例えばLixaLayaTiO〔xa=0.3〜0.7、ya=0.3〜0.7〕(LLT)、LixbLaybZrzbbbmbnb(MbbはAl,Mg,Ca,Sr,V,Nb,Ta,Ti,Ge,In,Snの少なくとも1種以上の元素でありxbは5≦xb≦10を満たし、ybは1≦yb≦4を満たし、zbは1≦zb≦4を満たし、mbは0≦mb≦2を満たし、nbは5≦nb≦20を満たす。)Lixcyccczcnc(MccはC,S,Al,Si,Ga,Ge,In,Snの少なくとも1種以上の元素でありxcは0≦xc≦5を満たし、ycは0≦yc≦1を満たし、zcは0≦zc≦1を満たし、ncは0≦nc≦6を満たす。)、Lixd(Al,Ga)yd(Ti,Ge)zdSiadmdnd(ただし、1≦xd≦3、0≦yd≦1、0≦zd≦2、0≦ad≦1、1≦md≦7、3≦nd≦13)、Li(3−2xe)eexeeeO(xeは0以上0.1以下の数を表し、Meeは2価の金属原子を表す。Deeはハロゲン原子または2種以上のハロゲン原子の組み合わせを表す。)、LixfSiyfzf(1≦xf≦5、0<yf≦3、1≦zf≦10)、Lixgygzg(1≦xg≦3、0<yg≦2、1≦zg≦10)、LiBO−LiSO、LiO−B−P、LiO−SiO、LiBaLaTa12、LiPO(4−3/2w)(wはw<1)、LISICON(Lithium super ionic conductor)型結晶構造を有するLi3.5Zn0.25GeO、ペロブスカイト型結晶構造を有するLa0.55Li0.35TiO、NASICON(Natrium super ionic conductor)型結晶構造を有するLiTi12、Li1+xh+yh(Al,Ga)xh(Ti,Ge)2−xhSiyh3−yh12(ただし、0≦xh≦1、0≦yh≦1)、ガーネット型結晶構造を有するLiLaZr12(LLZ)等が挙げられる。またLi、P及びOを含むリン化合物も望ましい。例えばリン酸リチウム(LiPO)、リン酸リチウムの酸素の一部を窒素で置換したLiPON、LiPOD(Dは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Ru、Ag、Ta、W、Pt、Au等から選ばれた少なくとも1種)等が挙げられる。また、LiAON(Aは、Si、B、Ge、Al、C、Ga等から選ばれた少なくとも1種)等も好ましく用いることができる。
【0078】
本発明においては、イオン伝導度が高く、抵抗の低い電池が得られることから、周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質が硫化物系無機固体電解質であることが好ましい。
【0079】
無機固体電解質の体積平均粒子径は特に制限されないが、0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましい。上限としては、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。なお、無機固体電解質の体積平均粒子径の測定は、以下の手順で行う。無機固体電解質を、水(水に不安定な物質の場合はヘプタン)を用いて20mlサンプル瓶中で1質量%の分散液を希釈調製する。希釈後の分散試料は、1kHzの超音波を10分間照射し、その直後に試験に使用する。この分散液試料を用い、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920(商品名、HORIBA社製)を用いて、温度25℃で測定用石英セルを使用してデータ取り込みを50回行い、体積平均粒子径を得る。その他の詳細な条件等は必要によりJISZ8828:2013「粒子径解析−動的光散乱法」の記載を参照する。1水準につき5つの試料を作製しその平均値を採用する。
【0080】
固体電解質組成物の固形成分中における無機固体電解質の濃度は、界面抵抗の低減と低減された界面抵抗の維持を考慮したとき、固形成分100質量%において、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることが特に好ましい。上限としては、同様の観点から、99.9質量%以下であることが好ましく、99.5質量%以下であることがより好ましく、99質量%以下であることが特に好ましい。
上記無機固体電解質は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0081】
(バインダー)
本発明の固体電解質組成物は、バインダーを含有することも好ましい。バインダーにより、本発明の低分子ゲル化剤により生成するナノファイバーが保持されやすくなるため、電池電圧、サイクル特性を向上する観点から好ましい。
本発明で使用するバインダーは、有機ポリマーであれば特に限定されない。
本発明に用いることができるバインダーは、通常、電池材料の正極または負極用結着剤として用いられるバインダーが好ましく、特に制限はなく、例えば、以下に述べる樹脂からなるバインダーが好ましい。
【0082】
含フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニレンジフルオリド(PVdF)、ポリビニレンジフルオリドとヘキサフルオロプロピレンの共重合物(PVdF−HFP)などが挙げられる。
炭化水素系熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水素添加スチレンブタジエンゴム(HSBR)、ブチレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレンなどが挙げられる。
アクリル樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸イソプロピル、ポリ(メタ)アクリル酸イソブチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、ポリ(メタ)アクリル酸ヘキシル、ポリ(メタ)アクリル酸オクチル、ポリ(メタ)アクリル酸ドデシル、ポリ(メタ)アクリル酸ステアリル、ポリ(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸ベンジル、ポリ(メタ)アクリル酸グリシジル、ポリ(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、およびこれら樹脂を構成するモノマーの共重合体などが挙げられる。
またそのほかのビニル系モノマーとの共重合体も好適に用いられる。例えばポリ(メタ)アクリル酸メチルーポリスチレン共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸メチルーアクリロニトリル共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸ブチルーアクリロニトリル-スチレン共重合体などが挙げられる。
これらは1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0083】
本発明に用いることができるバインダーはポリマー粒子であることが好ましく、ポリマー粒子の平均粒子径は、0.01μm〜100μmが好ましく、0.05μm〜50μmがより好ましく、0.05μm〜20μmがさらに好ましい。平均粒子径が上記好ましい範囲内にあることが出力密度向上の観点から好ましい。
ここで、「ポリマー粒子」とは、後述の分散媒体に添加しても完全に溶解せず、粒子状のまま分散媒体に分散し、0.01μm超の平均粒子径を示すものを指す。
【0084】
本発明に用いられるポリマー粒子の平均粒子径は、特に断らない限り、以下に記載の測定条件および定義によるものとする。
ポリマー粒子を任意の溶媒(固体電解質組成物の調製に用いる分散媒体。例えば、ヘプタン)を用いて20mlサンプル瓶中で1質量%の分散液を希釈調製する。希釈後の分散試料は、1kHzの超音波を10分間照射し、その直後に試験に使用する。この分散液試料を用い、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920(商品名、HORIBA社製)を用いて、温度25℃で測定用石英セルを使用してデータ取り込みを50回行い、得られた体積平均粒子径を平均粒子径とする。その他の詳細な条件等は必要によりJISZ8828:2013「粒子径解析−動的光散乱法」の記載を参照する。1水準につき5つの試料を作製して測定し、その平均値を採用する。
なお、作製された全固体二次電池からの測定は、例えば、電池を分解し電極を剥がした後、その電極材料について上記ポリマー粒子の平均粒子径の測定方法に準じてその測定を行い、あらかじめ測定していたポリマー粒子以外の粒子の平均粒子径の測定値を排除することにより行うことができる。
【0085】
ポリマー粒子は、有機ポリマー粒子であれば構造は特に限定されない。有機ポリマー粒子を構成する樹脂は、上記バインダーを構成する樹脂として記載した樹脂が挙げられ、好ましい樹脂も適用される。
【0086】
ポリマー粒子は固形を保持していれば、形状は限定されない。ポリマー粒子は単一分散であっても多分散であってもよい。ポリマー粒子は真球状であっても扁平形状であってもよく、さらに無定形であってもよい。ポリマー粒子の表面は平滑であっても凹凸形状を形成していてもよい。ポリマー粒子はコアシェル構造を取ってもよく、コア(内核)とシェル(外殻)が同様の材料で構成されていても、異なる材質で構成されていてもよい。また中空であっても良く、中空率についても限定されない。
【0087】
ポリマー粒子は、界面活性剤、乳化剤または分散剤の存在下で重合する方法、分子量が増大するにしたがって結晶状に析出させる方法、によって合成することができる。
また既存のポリマーを機械的に破砕する方法や、ポリマー液を再沈殿によって微粒子状にする方法を用いてもよい。
【0088】
ポリマー粒子は、市販品であっても良いし、特開2015−88486、WO2015−046314記載の油性ラテックス状ポリマー粒子を用いても良い。
【0089】
バインダーのガラス転移温度は、上限は50℃以下が好ましく、0℃以下がさらに好ましく、−20℃以下が最も好ましい。下限は−100℃以上が好ましく、−70℃以上がさらに好ましく、−50℃以上が最も好ましい。
【0090】
ガラス転移温度(Tg)は、乾燥試料を用いて、示差走査熱量計「X−DSC7000」(SII・ナノテクノロジー(株)社製)を用いて下記の条件で測定する。測定は同一の試料で二回実施し、二回目の測定結果を採用する。
測定室内の雰囲気:窒素(50mL/min)
昇温速度:5℃/min
測定開始温度:−100℃
測定終了温度:200℃
試料パン:アルミニウム製パン
測定試料の質量:5mg
Tgの算定:DSCチャートの下降開始点と下降終了点の中間温度の小数点以下を四捨五入することでTgを算定する。
【0091】
本発明に用いられるバインダーを構成するポリマー(好ましくはポリマー粒子)の水分濃度は、100ppm(質量基準)以下が好ましく、Tgは100℃以下が好ましい。
また、本発明に用いられるバインダーを構成するポリマーは、晶析させて乾燥させてもよく、ポリマー溶液をそのまま用いてもよい。金属系触媒(ウレタン化、ポリエステル化触媒であるスズ、チタン、ビスマス触媒)は少ない方が好ましい。重合時に少なくするか、晶析で触媒を除くことで、共重合体中の金属濃度を、100ppm(質量基準)以下とすることが好ましい。
【0092】
ポリマーの重合反応に用いる溶媒は、特に限定されない。なお、無機固体電解質や活物質と反応しないこと、さらにそれらを分解しない溶媒を用いることが望ましい。例えば、炭化水素系溶媒(トルエン、ヘプタン、キシレン)やエステル系溶媒(酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、エーテル系溶媒(テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジエトキシエタン)、ケトン系溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン)、ニトリル系溶媒(アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル)、ハロゲン系溶媒(ジクロロメタン、クロロホルム)を用いることができる。
【0093】
本発明に用いられるバインダーを構成するポリマーの質量平均分子量は10,000以上が好ましく、20,000以上がより好ましく、50,000以上がさらに好ましい。上限としては、1,000,000以下が好ましく、200,000以下がより好ましく、100,000以下がさらに好ましい。
本発明において、ポリマーの分子量は、特に断らない限り、質量平均分子量を意味する。質量平均分子量は、GPCによってポリスチレン換算の分子量として計測することができる。このとき、GPC装置HLC−8220(東ソー(株)社製)を用い、カラムはG3000HXL+G2000HXLを用い、23℃で流量は1mL/minで、RIで検出することとする。溶離液としては、THF(テトラヒドロフラン)、クロロホルム、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)、m−クレゾール/クロロホルム(湘南和光純薬(株)社製)から選定することができ、溶解するものであればTHFを用いることとする。
【0094】
バインダーの固体電解質組成物中での濃度は、全固体二次電池に用いたときの良好な界面抵抗の低減性とその維持性を考慮すると、固形成分100質量%において、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、1質量%以上がさらに好ましい。上限としては、電池特性の観点から、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下がさらに好ましい。
本発明では、バインダーの質量に対する、無機固体電解質と必要により含有させる電極活物質の合計質量(総量)の質量比[(無機固体電解質の質量+電極活物質の質量)/バインダーの質量]は、1,000〜1の範囲が好ましい。この比率はさらに500〜2がより好ましく、100〜10がさらに好ましい。
【0095】
(分散剤)
本発明の固体電解質組成物は、分散剤を含有することも好ましい。分散剤を添加することで電極活物質および無機固体電解質のいずれかの濃度が高い場合においてもその凝集を抑制し、均一な電極層(以下、負極活物質層および正極活物質層の両方を含む意味で使用する。)および固体電解質層を形成することができる、出力密度向上に効果を奏する。
【0096】
分散剤は分子量200以上3000未満の化合物で、官能基群(A)で示される官能基群から選択される少なくとも1種と、炭素数8以上のアルキル基または炭素数10以上のアリール基を同一分子内に含有することが好ましい。
官能基群(A):酸性基、塩基性窒素原子を有する基、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリルアミド基、アルコキシシリル基、エポキシ基、オキセタニル基、イソシアネート基、シアノ基、チオール基及びヒドロキシ基
【0097】
分散剤の分子量としては好ましくは300以上2,000未満であり、より好ましくは500以上1,000未満である。上記上限値未満であると、粒子の凝集が生じにくくなり、出力の低下を効果的に抑制することができる。また上記下限値以上であると、固体電解質組成物スラリーを塗布し乾燥する段階で揮発しにくくなる。
【0098】
分散剤の含有量は、本発明の固体電解質組成物の全固形成分に対して0.01〜10質量%が好ましく、0.1〜5質量%が好ましく、1〜3質量%がより好ましい。
【0099】
(リチウム塩)
本発明の固体電解質組成物は、リチウム塩を含有することも好ましい。
リチウム塩としては、通常この種の製品に用いられるリチウム塩が好ましく、特に制限はなく、例えば、以下に述べるものが好ましい。
【0100】
(L−1)無機リチウム塩:LiPF、LiBF、LiAsF、LiSbF等の無機フッ化物塩;LiClO、LiBrO、LiIO等の過ハロゲン酸塩;LiAlCl等の無機塩化物塩等。
【0101】
(L−2)含フッ素有機リチウム塩:LiCFSO等のパーフルオロアルカンスルホン酸塩;LiN(CFSO、LiN(CFCFSO、LiN(FSO、LiN(CFSO)(CSO)等のパーフルオロアルカンスルホニルイミド塩;LiC(CFSO等のパーフルオロアルカンスルホニルメチド塩;Li[PF(CFCFCF)]、Li[PF(CFCFCF]、Li[PF(CFCFCF]、Li[PF(CFCFCFCF)]、Li[PF(CFCFCFCF]、Li[PF(CFCFCFCF]等のフルオロアルキルフッ化リン酸塩等。
【0102】
(L−3)オキサラトボレート塩:リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムジフルオロオキサラトボレート等。
これらのなかで、LiPF、LiBF、LiAsF、LiSbF、LiClO、Li(RfSO)、LiN(RfSO、LiN(FSO、及びLiN(RfSO)(RfSO)が好ましく、LiPF、LiBF、LiN(RfSO、LiN(FSO、及びLiN(RfSO)(RfSO)などのリチウムイミド塩がさらに好ましい。ここで、RfおよびRfはそれぞれ独立にパーフルオロアルキル基を表す。
なお、リチウム塩は、1種を単独で使用しても、2種以上を任意に組み合わせてもよい。
【0103】
リチウム塩の含有量は、固体電解質100質量部に対して0質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。上限としては、50質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましい。
【0104】
(導電助剤)
本発明の固体電解質組成物は、導電助剤を含有することも好ましい。導電助剤としては一般的な導電助剤として知られているものを用いることができる。例えば、電子伝導性材料である、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラックなどのカーボンブラック類、ニードルコークスなどの無定形炭素、気相成長炭素繊維やカーボンナノチューブなどの炭素繊維類、グラフェンやフラーレンなどの炭素質材料であっても良いし、銅、ニッケルなどの金属粉、金属繊維でも良く、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリフェニレン誘導体など導電性高分子を用いても良い。またこれらの内1種を用いても良いし、2種以上を用いても良い。
【0105】
(正極活物質)
次に、本発明の全固体二次電池の正極活物質層を形成するための固体電解質組成物(以下、正極用組成物とも称す。)に用いられる正極活物質について説明する。正極活物質は、可逆的にリチウムイオンを挿入・放出できるものが好ましい。その材料は、特に制限はなく、遷移金属酸化物や、硫黄などのLiと複合化できる元素などでもよい。中でも、遷移金属酸化物を用いることが好ましく、遷移金属元素としてCo、Ni、Fe、Mn、Cu、Vから選択される1種以上の元素を有することがより好ましい。
遷移金属酸化物の具体例としては、(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物、(MB)スピネル型構造を有する遷移金属酸化物、(MC)リチウム含有遷移金属リン酸化合物、(MD)リチウム含有遷移金属ハロゲン化リン酸化合物、(ME)リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物等が挙げられる。
【0106】
(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物の具体例として、LiCoO(コバルト酸リチウム[LCO])、LiNi(ニッケル酸リチウム)LiNi0.85Co0.10Al0.05(ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム[NCA])、LiNi0.33Co0.33Mn0.33(ニッケルマンガンコバルト酸リチウム[NMC])、LiNi0.5Mn0.5(マンガンニッケル酸リチウム)が挙げられる。
(MB)スピネル型構造を有する遷移金属酸化物の具体例として、LiCoMnO4、LiFeMn、LiCuMn、LiCrMn8、LiNiMnが挙げられる。
(MC)リチウム含有遷移金属リン酸化合物としては、例えば、LiFePO、LiFe(PO等のオリビン型リン酸鉄塩、LiFeP等のピロリン酸鉄類、LiCoPO等のリン酸コバルト類、Li(PO(リン酸バナジウムリチウム)等の単斜晶ナシコン型リン酸バナジウム塩が挙げられる。
(MD)リチウム含有遷移金属ハロゲン化リン酸化合物としては、例えば、LiFePOF等のフッ化リン酸鉄塩、LiMnPOF等のフッ化リン酸マンガン塩、LiCoPOF等のフッ化リン酸コバルト類が挙げられる。
(ME)リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物としては、例えば、LiFeSiO、LiMnSiO、LiCoSiO等が挙げられる。
【0107】
本発明の固体電解質組成物に使用することができる正極活物質の体積平均粒子径(球換算平均粒子径)は特に限定されない。なお、0.1μm〜50μmが好ましい。正極活物質を所定の粒子径にするには、通常の粉砕機や分級機を用いればよい。焼成法によって得られた正極活物質は、水、酸性水溶液、アルカリ性水溶液、有機溶剤にて洗浄した後使用してもよい。正極活物質の体積平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920(商品名、HORIBA社製)を用いて測定することができる。
【0108】
正極活物質の濃度は特に限定されないが、正極用組成物中、固形成分100質量%において、10〜90質量%が好ましく、20〜80質量%がより好ましい。
【0109】
上記正極活物質は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0110】
(負極活物質)
次に、本発明の全固体二次電池の正極活物質層を形成するための固体電解質組成物(以下、負極用組成物とも称す。)に用いられる負極活物質について説明する。負極活物質は、可逆的にリチウムイオンを挿入および放出できるものが好ましい。その材料は、特に制限はなく、炭素質材料、酸化錫や酸化ケイ素等の金属酸化物、金属複合酸化物、リチウム単体やリチウムアルミニウム合金等のリチウム合金、及び、SnやSi、In等のリチウムと合金形成可能な金属等が挙げられる。なかでも炭素質材料又はリチウム複合酸化物が信頼性の点から好ましく用いられる。また、金属複合酸化物としては、リチウムを吸蔵、放出可能であることが好ましい。その材料は、特には制限されないが、構成成分としてチタン及び/又はリチウムを含有していることが、高電流密度充放電特性の観点で好ましい。
【0111】
負極活物質として用いられる炭素質材料とは、実質的に炭素からなる材料である。例えば、石油ピッチ、アセチレンブラック(AB)等のカーボンブラック、天然黒鉛、気相成長黒鉛等の人造黒鉛、及びPAN(ポリアクリロニトリル)系の樹脂やフルフリルアルコール樹脂等の各種の合成樹脂を焼成した炭素質材料を挙げることができる。さらに、PAN系炭素繊維、セルロース系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、脱水PVA(ポリビニルアルコール)系炭素繊維、リグニン炭素繊維、ガラス状炭素繊維、活性炭素繊維等の各種炭素繊維類、メソフェーズ微小球体、グラファイトウィスカー、平板状の黒鉛等を挙げることもできる。
【0112】
負極活物質として適用される金属酸化物及び金属複合酸化物としては、特に非晶質酸化物が好ましく、さらに金属元素と周期律表第16族の元素との反応生成物であるカルコゲナイトも好ましく用いられる。ここでいう非晶質とは、CuKα線を用いたX線回折法で、2θ値で20°〜40°の領域に頂点を有するブロードな散乱帯を有するものを意味し、結晶性の回折線を有してもよい。2θ値で40°以上70°以下に見られる結晶性の回折線の内最も強い強度が、2θ値で20°以上40°以下に見られるブロードな散乱帯の頂点の回折線強度の100倍以下であるのが好ましく、5倍以下であるのがより好ましく、結晶性の回折線を有さないことが特に好ましい。
【0113】
上記非晶質酸化物及びカルコゲナイドからなる化合物群のなかでも、半金属元素の非晶質酸化物、及びカルコゲナイドがより好ましく、周期律表第13(IIIB)族〜15(VB)族の元素、Al、Ga、Si、Sn、Ge、Pb、Sb、Biの一種単独あるいはそれらの2種以上の組み合わせからなる酸化物、及びカルコゲナイドが特に好ましい。好ましい非晶質酸化物及びカルコゲナイドの具体例としては、例えば、Ga、SiO、GeO、SnO、SnO、PbO、PbO、Pb、Pb、Pb、Sb、Sb、Sb、Bi、Bi、SnSiO、GeS、SnS、SnS、PbS、PbS、Sb、Sb、SnSiSが好ましく挙げられる。また、これらは、酸化リチウムとの複合酸化物、例えば、LiSnOであってもよい。
【0114】
負極活物質の体積平均粒子径は、0.1μm〜60μmが好ましい。所定の粒子径にするには、任意の粉砕機や分級機が用いられる。例えば、乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、衛星ボールミル、遊星ボールミル、旋回気流型ジェットミルや篩などが好適に用いられる。粉砕時には水、あるいはメタノール等の有機溶媒を共存させた湿式粉砕も必要に応じて行うことができる。所望の粒子径とするためには分級を行うことが好ましい。分級方法としては特に限定はなく、篩、風力分級機などを必要に応じて用いることができる。分級は乾式、湿式ともに用いることができる。負極活物質粒子の体積平均粒子径は、前述の正極活物質の体積平均粒子径の測定方法と同様の方法により測定することができる。
【0115】
負極活物質はチタン原子を含有することも好ましい。より具体的にはLiTi12がリチウムイオンの吸蔵放出時の体積変動が小さいことから急速充放電特性に優れ、電極の劣化が抑制されリチウムイオン二次電池の寿命向上が可能となる点で好ましい。
【0116】
負極活物質の濃度は特に限定されないが、負極用組成物中、固形成分100質量%において、10〜80質量%であることが好ましく、20〜70質量%であることがより好ましい。
【0117】
上記負極活物質は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0118】
正極活物質および負極活物質の表面は別の金属酸化物で表面被覆されていてもよい。表面被覆剤としては、Ti、Nb、Ta、W、Zr、Si等を含有し、さらにLiを含有しても良い金属酸化物が挙げられる。
表面被覆する方法や表面被覆された正極活物質または負極活物質としては、以下に記載のものが挙げられ、本発明において適宜利用することができる。
たとえば、酸化物正極活物質の表面上に、ニオブ酸リチウム系化合物からなるコート部が形成された正極活物質材料およびその製造方法が、特開2010−225309公報、および非特許文献Narumi Ohta et al., “LiNbO−coated LiCoO as cathode material for all solid−state lithium secondary batteries”, Electrochemistry Communications 9 (2007) 1486−1490に記載されている。
また、チタン酸スピネル、タンタル系酸化物、ニオブ系酸化物等のコーティング材(具体的には、LiTi12,LiTaO,LiNbO,LiAlO,LiZrO,LiWO,LiTiO,Li,LiPO,LiMoO,LiBO等)で表面を被覆した、LiXO(式中、Xは、Co、Mn又はNiであり、Y及びZは、それぞれ1〜10の整数である。)で表される金属酸リチウムが、特開2008−103280号公報に記載されている。
硫黄及び/又はリンで表面処理された全固体二次電池用の電極材料が、特開2008−027581号公報に記載されている。
また酸化物正極活物質の表面がリチウム塩化物で担持されたものが、特開2001−052733号公報に記載されている。
【0119】
(分散媒体)
本発明の固体電解質組成物は分散媒体を含有する。分散媒体としては、上記の各成分を分散させるものであればよく、具体例としては、例えば、下記のものが挙げられる。
【0120】
アルコール化合物溶媒は、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、1−プロピルアルコール、2−プロピルアルコール、2−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、ソルビトール、キシリトール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオールが挙げられる。
【0121】
エーテル化合物溶媒は、例えば、アルキレングリコールアルキルエーテル(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等)、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンが挙げられる。
【0122】
アミド化合物溶媒は、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ε−カプロラクタム、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロパンアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミドが挙げられる。
【0123】
アミノ化合物溶媒は、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミンが挙げられる。
【0124】
ケトン化合物溶媒は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンが挙げられる。
【0125】
芳香族化合物溶媒は、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ニトロベンゼンが挙げられる。
【0126】
脂肪族化合物溶媒は、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカンが挙げられる。
【0127】
ニトリル化合物溶媒は、例えば、アセトニトリル、プロピロニトリル、ブチロニトリルが挙げられる。
【0128】
分散媒体は常圧(1気圧)での沸点が30℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましい。上限は250℃以下であることが好ましく、220℃以下であることがさらに好ましい。
上記好ましい範囲内にあることで、全固体二次電池の作製において、自己組織化ナノファイバーの構造を維持したまま分散媒体を乾燥することができる。なお、乾燥温度以上の沸点である分散媒体を用いる場合でも、揮発性を有しており、自己組織化ナノファイバーの構造を維持することができればよい。
上記分散媒体は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0129】
本発明においては、無機固体電解質に対して安定性が高いため、分散媒体が炭化水素系溶媒であることが好ましく、炭化水素系溶媒としては、上記芳香族化合物溶媒、脂肪族化合物溶媒が挙げられる。具体的には、ジブチルエーテル、トルエン、ヘプタン、キシレン、メシチレンおよびオクタンが好ましく用いられる。
【0130】
固体電解質組成物の全質量100質量部中、分散媒体の含有量は、20〜80質量部が好ましく、30〜70質量部が好ましく、40〜65質量部がさらに好ましい。
【0131】
分散媒体は、無機固体電解質の一部または全部を溶解するものであってもよい。
【0132】
<集電体(金属箔)>
正・負極の集電体は、化学変化を起こさない電子伝導体が好ましい。正極の集電体は、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、チタンなどの他にアルミニウムやステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタンあるいは銀を処理させたものが好ましく、その中でも、アルミニウム、アルミニウム合金がより好ましい。負極の集電体は、アルミニウム、銅、ステンレス鋼、ニッケル、チタンが好ましく、アルミニウム、銅、銅合金がより好ましい。
【0133】
集電体の形状は、通常フィルムシート状のものが使用されるが、ネット、パンチされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の成形体なども用いることができる。
集電体の厚みは、特に限定されないが、1μm〜500μmが好ましい。また、集電体表面は、表面処理により凹凸を付けることも好ましい。
【0134】
<全固体二次電池の作製>
全固体二次電池の作製は常法によればよい。具体的には、本発明の固体電解質組成物を集電体となる金属箔上に塗布し、塗膜を形成した全固体二次電池用電極シートとする方法が挙げられる。
本発明の全固体二次電池において、電極層は活物質を含有する。イオン伝導性を向上させる観点から、電極層は上記無機固体電解質を含有することが好ましい。また、固体粒子間、電極層−固体電解質層間および電極層−集電体間等の結着性向上の観点から、電極層は低分子ゲル化剤を含有することが好ましく、バインダーを含有することも好ましい。
固体電解質層は、低分子ゲル化剤および無機固体電解質を含有する。固体粒子間および層間の結着性向上の観点から、固体電解質層はバインダーを含有することも好ましい。
【0135】
本発明においては、低分子ゲル化剤が溶解した固体電解質組成物またはゲルが分散した固体電解質組成物を金属箔上に塗布した後、放冷することにより自己組織化ナノファイバーが形成され、ゲル化が進行した後に乾燥処理を施すことで製膜し、分散媒体が揮発し、網目状の自己組織化ナノファイバーに固体電解質や活物質等の固体粒子が絡み取られた構造を形成することが好ましい。
以下、詳細に説明する。
【0136】
i)低分子ゲル化剤の溶解、ゲルの分散
低分子ゲル化剤を溶解する方法としては、一般的な加熱による方法が挙げられるが、機械分散等の衝突の熱エネルギーによって溶解する方法が、製造工程数の削減、省エネルギーの観点から好ましい。低分子ゲル化剤が溶解した固体電解質組成物は、ゲル化する前に金属箔上に塗布することが、扱いやすさの観点から好ましい。
なお、低分子ゲル化剤は、低分子ゲル化剤の粉末(固体)を機械分散で固体電解質組成物に溶解させてもよいし、あらかじめ低分子ゲル化剤で適当な溶媒をゲル化させたものを、固体電解質組成物を機械分散により調製する際に加え、溶解させてもよい。
【0137】
本発明の固体電解質組成物を調製する際には、機械分散または粉砕処理を行ってもよい。これにより、固体電解質組成物中に無機固体電解質やゲルを分散、粉砕することができ、例えば機械分散法が好ましく挙げられる。機械分散法としては、ボールミル、ビーズミル、プラネタリミキサー、ブレードミキサー、ロールミル、ニーダー、ディスクミル、回転式ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー等が用いられる。
【0138】
ボールミルによる分散の場合、ボールミルのボールの材質は、メノー、シンタードアルミナ、タングステンカーバイト、クローム鋼、ステンレンススチール、ジルコニア、プラスチックポリアミド、ナイロン、窒化珪素、テフロン(登録商標)等が挙げられる。
【0139】
固体電解質組成物を機械分散により調製する際に、硬度が高い材質(例えば、ジルコニア)のボールを用いたり、撹拌の回転数が大きい(例えば、300〜700rpm)場合、衝突の熱エネルギーが高いため、低分子ゲル化剤の溶解や、ゲルの再溶解が起こりうる。一方で、硬度が低い材質(例えば、テフロン(登録商標))のボールを用いたり、撹拌の回転数が小さい(例えば、50〜200rpm)場合には、ゲルの再溶解(形成されているナノファイバーの水素結合がなくなり、低分子量化して溶解)は起こらず、ゲル状を維持したまま粘度を低下(ナノファイバー中の一部の水素結合を切断)させることができる。これらは、用いる低分子ゲル化剤の種類や溶媒、分散媒体によって適宜調整することができる。
【0140】
ii)塗布
例えば、正極集電体である金属箔上に正極材料となる組成物を塗布し、正極活物質層を形成し、電池用正極シートを作製する。正極活物質層の上に、本発明の固体電解質組成物を塗布し、固体電解質層を形成する。さらに、固体電解質層の上に、負極材料となる組成物を塗布し、負極活物質層を形成する。負極活物質層の上に、負極側の集電体(金属箔)を重ねることで、正極層と負極層の間に、固体電解質層が挟まれた全固体二次電池の構造を得ることができる。また、他の順序で組成物を塗布しても構わない。
【0141】
iii)放冷および乾燥
なお、上記の各組成物の塗布方法は常法によればよい。このとき、正極活物質層を形成するための組成物、無機固体電解質層を形成するための組成物および負極活物質層を形成するための組成物は、それぞれ塗布した後に乾燥処理を施してもよいし、重層塗布した後に乾燥処理をしてもよい。乾燥処理は、放冷(かつ静置)することにより自己組織化ナノファイバーが形成され、ゲル化が進行した後に施すことが好ましい。放冷時間に特に制限はないが、5分以上放冷することが好ましい。また、放冷時間の上限に特に制限はないが、現実的には、3日以下であることが好ましい。
また、上記の各組成物は、塗布する前までは撹拌や流動を加えておくことが好ましい。これにより、塗布した後に放冷、静置することにより分子が並びやすくなり、ゲル化が早く進行し、製造工程に係る時間を短縮化することができる。
乾燥温度は特に限定されない。なお、下限は30℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、上限は、200℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましい。このような温度範囲で加熱することで、低分子ゲル化剤が自己組織化ナノファイバーを形成したまま分散媒体を除去することができ、無機固体電解質や活物質が網目状の自己組織化ナノファイバーにからみとられた構造を維持したまま固体状態にすることができる。
【0142】
[全固体二次電池の用途]
【0143】
本発明の全固体二次電池は種々の用途に適用することができる。適用態様には特に限定はないが、例えば、電子機器に搭載する場合、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、コードレスフォン子機、ページャー、ハンディーターミナル、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、電気シェーバー、トランシーバー、電子手帳、電卓、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、メモリーカードなどが挙げられる。その他民生用として、自動車、電動車両、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、ロードコンディショナー、時計、ストロボ、カメラ、医療機器(ペースメーカー、補聴器、肩もみ機など)などが挙げられる。更に、各種軍需用、宇宙用として用いることができる。また、太陽電池と組み合わせることもできる。
【0144】
なかでも、高容量かつ高レート放電特性が要求されるアプリケーションに適用することが好ましい。例えば、今後大容量化が予想される蓄電設備等においては高い安全性が必須となりさらに電池性能の両立が要求される。また、電気自動車などは高容量の二次電池を搭載し、家庭で日々充電が行われる用途が想定され、過充電時に対して一層の安全性が求められる。本発明によれば、このような使用形態に好適に対応してその優れた効果を発揮することができる。
【0145】
本発明の好ましい実施形態によれば、以下のような各応用形態が導かれる。
〔1〕周期律表第1族または第2族に属する金属のイオンの挿入放出が可能な活物質を含んでいる本発明の固体電解質組成物(正極または負極用組成物)。
〔2〕正極活物質層、固体電解質層および負極活物質層をこの順に有する全固体二次電池用電極シートであって、
正極活物質層、固体電解質層および負極活物質層のいずれか1層が、低分子ゲル化剤と周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質とを含有する全固体二次電池用電極シート。
〔3〕上記全固体二次電池用電極シートを用いて構成される全固体二次電池。
〔4〕上記固体電解質組成物を金属箔上に適用し、固体電解質組成物をゲル化させた後、製膜する全固体二次電池用電極シートの製造方法。
〔5〕上記全固体二次電池用電極シートの製造方法を介して、全固体二次電池を製造する全固体二次電池の製造方法。
【0146】
なお、金属箔上に固体電解質組成物を適用する方法には、例えば、塗布(湿式塗布、スプレー塗布、スピンコート塗布、スリット塗布、ストライプ塗布、バーコート塗布ディップコート)が挙げられ、湿式塗布が好ましい。
また、全固体二次電池用電極シートおよび全固体二次電池においては、低分子ゲル化剤は自己組織化ナノファイバーを形成しており、自己組織化ナノファイバーが形成する網目状の三次元構造に、固体電解質や活物質が絡み取られている構造が好ましい。
上記〔2〕の応用形態のなかでも、全ての層が、低分子ゲル化剤と周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質とを含有する全固体二次電池用電極シートであることが好ましい。
【0147】
また、本発明の好ましい実施形態として、以下の各応用形態が挙げられる。特に、あらかじめ低分子ゲル化剤で適当な溶媒をゲル化させたゲルを使用する固体電解質組成物の調製方法として、下記〔7〕〜〔9〕の応用形態が挙げられる。
〔6〕周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質の一部または全部が溶解している固体電解質組成物。
〔7〕周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する第1の無機固体電解質と分散媒体とゲルとを含有する固体電解質組成物用の混合物であって、
ゲルが、低分子ゲル化剤と溶媒とを少なくとも含んでなる、固体電解質組成物用の混合物。
ただし、ゲルは、周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する第2の無機固体電解質、および/または電極活物質を含んでいてもよく、第2の無機固体電解質は、ゲル中に分散していても溶解していてもよい。
〔8〕上記〔7〕に記載の固体電解質組成物用の混合物を混合する、固体電解質組成物の製造方法。
〔9〕下記工程(i)〜(iii)を有する、低分子ゲル化剤と溶媒と周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する第1の無機固体電解質と分散媒体とを含有する固体電解質組成物の製造方法。
工程(i):低分子ゲル化剤と溶媒とを含有するプレ混合液aを加熱し、低分子ゲル化剤が溶解する混合液aを調製する工程
工程(ii):混合液aを冷却し、ゲルを形成させる工程
工程(iii):ゲルと、周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する第1の無機固体電解質と分散媒体とを混合し、固体電解質組成物を調製する工程
ただし、周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する第2の無機固体電解質、および/または電極活物質を、プレ混合液a、混合液aまたはゲルに含有させる工程を有してもよく、第2の無機固体電解質は、ゲル中に分散していても溶解していてもよい。なお、第2の無機固体電解質を混合液aに含有さる工程を有することが好ましい。
【0148】
ここで、上記工程(ii)で形成されるゲルとは、具体的には、溶媒が低分子ゲル化剤によってゲル化されたゲルを意味する。
また、上記〔7〕の固体電解質組成物用の混合物中および上記〔9〕の固体電解質組成物中(以下、混合物および組成物中とも称す。)には、混合物および組成物中に直接添加される無機固体電解質(本発明において、第1の無機固体電解質とも称す。)の他に、上記〔7〕のゲル中および上記〔9〕のプレ混合液a、混合液aまたはゲル中(以下、ゲルおよび混合液a中とも称す。)に含まれてもよい無機固体電解質(本発明において、第2の無機固体電解質とも称す。)を含有していてもよい。
第2の無機固体電解質は、第1の無機固体電解質と同じでも異なってもよく、第1、第2のいずれの無機固体電解質も、前述の固体電解質組成物の項における無機固体電解質の記載を好ましく適用することができる。
低分子ゲル化剤および分散媒体は、別段の断りがない限り、前述の固体電解質組成物の項における低分子ゲル化剤および分散媒体の記載をそれぞれ好ましく適用することができる。また、溶媒は、別段の断りがない限り、後述の複合化ゲルの項における溶媒gelの記載を好ましく適用することができる。
【0149】
上記〔8〕および〔9〕の製造方法により得られる固体電解質組成物が、混合物および組成物中に直接添加される第1の無機固体電解質とゲルおよび混合液a中に含有される第2の無機固体電解質の両方を含有する場合、得られる固体電解質組成物を用いて作製した全固体二次電池は、抵抗がより低く、かつ、より高いサイクル特性を示すため好ましい。
これは、以下の理由によるものと推定される。
すなわち、一般的には第1の無機固体電解質粒子は硬く、粒子間には空隙が存在すると考えられる。これに対し、ゲル中に分散または溶解していてもよい無機固体電解質(第2の無機固体電解質)は柔軟であり、かつ流動性を有し、第1の無機固体電解質粒子間の空隙を埋めることができると考えられる。また第2の無機固体電解質は、ゲルを形成する低分子ゲル化剤がネットワーク化した超分子ナノファイバーに周囲を包囲されているため、充放電時における電極活物質の膨張収縮に伴う無機固体電解質粒子の変形、剥がれが抑制されるものと考えられる。
この場合、混合物および組成物中の、第1の無機固体電解質に対する第2の無機固体電解質の含有比率は、質量比で、第1の無機固体電解質:第2の無機固体電解質=80:20〜99.9:0.1が好ましく、85:15〜99:1がより好ましく、90:10〜97:3がさらに好ましい。
【0150】
上記〔8〕および〔9〕の製造方法により得られる固体電解質組成物は、ゲルおよび混合液a中に含有される低分子ゲル化剤とは別に、混合物および組成物中に直接添加される低分子ゲル化剤を含有していてもよい。
また、上記〔7〕〜〔9〕における固体電解質組成物用の混合物、ゲルおよび固体電解質組成物は、低分子ゲル化剤等の成分以外に、前述の固体電解質組成物の項におけるバインダー、分散剤、リチウム塩、導電助剤等の添加剤を適宜適量含有していてもよい。
【0151】
上記〔6〕の固体電解質組成物は、例えば、無機固体電解質の一部または全部を溶解する分散媒体を使用することにより得られる。また、上記〔7〕および〔9〕における分散媒体および/または溶媒として、無機固体電解質の一部または全部が溶解する分散媒体および/または溶媒を使用することで、上記〔6〕の固体電解質組成物を調製することもできる。
無機固体電解質を溶解する分散媒体、溶媒としては、後述の複合化ゲルの項における溶媒gelの記載を好ましく適用することができる。
上記〔7〕の固体電解質組成物用の混合物および〔9〕の製造方法において、溶媒と分散媒体の比は、特に限定されるものではないが、溶媒に対する分散媒体の含有比率は、質量比で、溶媒:分散媒体=50:50〜95:5が好ましく、60:40〜93:7がより好ましく、70:30〜90:10がさらに好ましい。
【0152】
上記〔9〕の製造方法は、上記工程(i)〜(iii)を有する限り、特に限定されるものではない。
上記工程(i)および(ii)については、後述の複合化ゲルの製造方法における工程(i−A)および(ii−A)の記載を好ましく適用することができる。
また、上記工程(iii)は、工程(ii)で形成されたゲルが、固体電解質組成物中のその他の成分(無機固体電解質、分散媒体等)に混合される限り、特に限定されるものではない。混合により、ゲルが固体電解質組成物中に均一に分散されればよく、ゲルは、固体電解質組成物中に溶解していてもよいし、ゲル状で存在していてもよい。
ゲル状で存在する場合、混合前後で粘度が異なっていてもよい。一般的には、あらかじめ加熱冷却工程で生成したゲルは、ミリング混合等によりエネルギーが加わることで、粘度が低下する。これはゲルを形成する超分子ナノファイバーの長さが短くなり超分子鎖の絡まりあいが少なくなるためと考えられる。さらに高いエネルギーが加わると溶解することもありえる。ゲルが固体電解質組成物中に含まれることで本発明の効果がより顕著になる観点からは、低分子ゲル化剤が完全に溶解している固体電解質組成物よりも、高い粘度を有する固体電解質組成物が好ましい。すなわち、混合前後で形状や粘度が異なるにせよ、低分子ゲル化剤がゲル形態で存在していることが好ましい。
ゲルを溶解、分散させる方法としては、前述の全固体二次電池の作製の項で記載した、i)低分子ゲル化剤の溶解での記載が好ましく適用される。
上記工程(i)〜(iii)を経て得られる固体電解質組成物は、前述の全固体二次電池の作製において、集電体となる金属箔上に塗布する固体電解質組成物として好ましく用いることができる。
【0153】
上記〔8〕の製造方法は、上記〔9〕の工程(iii)の記載において、「工程(ii)で形成されたゲル」を「ゲル」に、「固体電解質組成物中のその他の成分」を「混合物中のその他の成分(無機固体電解質、分散媒体等)」に読み替えることで、好ましく適用することができる。
【0154】
プレ混合液a、混合液aおよびゲル中の、低分子ゲル化剤に対する溶媒の含有比率は、質量比で、低分子ゲル化剤:溶媒=0.1:99.9〜10:90が好ましく、0.5:99.5〜5:95がより好ましく、1:99〜5:95がさらに好ましい。
プレ混合液a、混合液aおよびゲルが第2の無機固体電解質を含有する場合、プレ混合液a、混合液aおよびゲル中の、低分子ゲル化剤と第2の無機固体電解質と溶媒の含有比率は、質量比で、低分子ゲル化剤:第2の無機固体電解質:溶媒=0.1〜10:0.1〜20:99.8〜70が好ましく、0.5〜5:0.5〜15:99〜80がより好ましく、1〜5:1〜10:98〜85がさらに好ましい。
ここで、プレ混合液a、混合液aおよびゲルが、第2の無機固体電解質および低分子ゲル化剤以外のその他の成分を含む場合には、第2の無機固体電解質と上記その他の成分を加えた全量を第2の無機固体電解質の含有量として、上記の低分子ゲル化剤と第2の無機固体電解質と溶媒の質量含有量比の記載を好ましく適用する。
【0155】
上記〔8〕および〔9〕の製造方法において、得られる固体電解質組成物の全質量100質量部に対するゲルの含有量は、特に限定されるものではないが、20〜80質量部が好ましく、30〜70質量部がより好ましく、40〜60質量部がさらに好ましい。
ここで、「ゲル」の含有量とは、低分子ゲル化剤(固形量)と溶媒の両方を少なくとも含み、場合により第2の無機固体電解質、ゲル中の電極活物質およびその他の成分を含む質量である。
【0156】
上記〔7〕の固体電解質組成物用の混合物中の成分における含有比率は、上記〔9〕における含有比率の記載を好ましく適用することができる。
【0157】
<複合化ゲル>
本発明の複合化ゲルは、低分子ゲル化剤(以下、低分子ゲル化剤gelと称す。)と溶媒(以下、溶媒gelと称す。)と、周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質(以下、無機固体電解質gelと称す。)とを含有する。ただし、無機固体電解質gelは、複合化ゲルgel中に分散していても溶解していてもよい。
低分子ゲル化剤gel、溶媒gelおよび無機固体電解質gelは、別段の断りがない限り、前述の固体電解質組成物の項における低分子ゲル化剤、分散媒体および無機固体電解質の記載をそれぞれ好ましく適用することができる。
【0158】
本発明において、低分子ゲル化剤gel、溶媒gelおよび無機固体電解質gelを含有する複合化ゲルとは、具体的には、溶媒gelが低分子ゲル化剤gelによってゲル化されたゲルであって、無機固体電解質gelがゲル中に含有されているゲルを言う。
無機固体電解質gelの形態は、例えば、溶媒gelによって適宜調製することができる。例えば、アミド化合物溶媒、アルコール化合物溶媒、ニトリル化合物溶媒、エーテル化合物溶媒等の極性の溶媒gelの場合には、無機固体電解質gelは複合化ゲルに溶解し、芳香族化合物溶媒、脂肪族化合物溶媒、含ハロゲン溶媒等の非極性の溶媒gelの場合には、無機固体電解質gelは複合化ゲル中に分散して存在することができる。
また、無機固体電解質gelが硫化物系無機固体電解質である場合、より好適に、無機固体電解質gelが溶媒gelに溶解する形態を調製することができる。
含ハロゲン溶媒は、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタンが挙げられる。
【0159】
本発明の複合化ゲルは、全固体二次電池の作製に好ましく用いることができ、全固体二次電池の作製に使用する固体電解質組成物に、より好ましく用いることができる。
無機固体電解質gelの一部または全部(好ましくは全部)が溶解していることが、本発明の複合化ゲルを含有する固体電解質組成物を用いて作製した全固体二次電池が、より良好な抵抗、かつ、より高いサイクル特性を示すため好ましい。
これは、以下の理由によるものと推定される。
すなわち、電極シートを作製する際に、固体電解質組成物を塗布することで、電極層または固体電解質層に存在する各粒子(無機固体電解質粒子、活物質粒子、導電助剤粒子など)の間隙に複合化ゲルが充填された塗布膜が形成され、この塗布膜の乾燥過程で複合化ゲル中の溶媒gelが除去されることで、ゲルと無機固体電解質粒子等の各粒子が3次元に絡まりあったキセロゲルを形成するためと考えられる。
【0160】
本発明の複合化ゲルは、低分子ゲル化剤gel、溶媒gelおよび無機固体電解質gel以外の成分を適宜適量含有していてもよく、前述の固体電解質組成物の項における負極活物質、正極活物質、バインダー、分散剤、リチウム塩、導電助剤等の添加剤が挙げられる。
例えば、本発明の複合化ゲルを負極または正極の電極用組成物に使用する場合には、それぞれ負極活物質または正極活物質を本発明の複合化ゲルに含有させることも好ましい。
複合化ゲル中の低分子ゲル化剤gel、溶媒gelおよび無機固体電解質gelの成分の含有比率(質量比)は、前述のプレ混合液a、混合液aおよびゲル中の低分子ゲル化剤と無機固体電解質と溶媒の含有比率(質量比)の記載を好ましく適用することができる。無機固体電解質gelおよび低分子ゲル化剤gel以外の成分を含有する場合の含有比率(質量)についても、同様である。
【0161】
<複合化ゲルの製造方法>
本発明の複合化ゲルは、下記工程(i−A)および(ii−A)をこの順に含み、かつ、下記工程(A)を含む方法により製造されることが好ましい。
工程(i−A):低分子ゲル化剤gelと溶媒gelとを含有するプレ混合液Aaを加熱し、低分子ゲル化剤gelが溶解する混合液Aaを調製する工程
工程(ii−A):混合液Aaを冷却し、ゲルを形成させる工程
工程(A):プレ混合液Aa、混合液Aaまたはゲルに、周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質gelを含有させる工程
ただし、複合化ゲルは、電極活物質を含んでいてもよく、無機固体電解質gelは、複合化ゲル中に分散していても溶解していてもよい。
【0162】
具体的には、本発明の複合化ゲルは、〔α〕下記工程(i−Aa)、(i−Ab)および(ii−Ac)を含む方法または〔β〕下記工程(i−Ac)、(ii−Aa)および(ii−Ab)を含む方法により製造されることがより好ましい。
〔α〕
工程(i−Aa):低分子ゲル化剤gelと溶媒gelとを含有するプレ混合液Aaを加熱し、低分子ゲル化剤gelを溶解させる工程
工程(i−Ab):低分子ゲル化剤gelが溶解し、かつ、周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質gelを含有する混合液Aを調製する工程
工程(ii−Ac):混合液Aを冷却し、複合化ゲルを形成させる工程
ただし、混合液Aは、電極活物質を含んでいてもよく、無機固体電解質gelは、混合液A中に分散していても溶解していてもよい。
〔β〕
工程(i−Ac):低分子ゲル化剤gelと溶媒gelとを含有するプレ混合液Aaを加熱し、低分子ゲル化剤gelが溶解した溶液Aを調製する工程
工程(ii−Aa):溶液Aを冷却し、ゲルを形成させる工程
工程(ii−Ab):ゲルに、周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質gelを含有させ、複合化ゲルを形成させる工程
ただし、複合化ゲルは、電極活物質を含んでいてもよく、無機固体電解質gelは、複合化ゲル中に分散していても溶解していてもよい。
【0163】
低分子ゲル化剤gel、溶媒gel、無機固体電解質gelおよびその他の成分ならびに各成分の含有率については、前述の複合化ゲルの項における低分子ゲル化剤gel、溶媒gel、無機固体電解質gelおよびその他の成分ならびに各成分の含有率の記載をそれぞれ好ましく適用することができる。
【0164】
上記工程(i−Aa)および(i−Ab)による混合液Aの具体的な調製方法としては、例えば、下記の態様が挙げられる。
工程(i−A1):低分子ゲル化剤gelと溶媒gelとを含有するプレ混合液Aaを加熱することにより低分子ゲル化剤gelを溶解させた後、さらに無機固体電解質gelを加えて混合することで、低分子ゲル化剤gelが溶解し、かつ、無機固体電解質gelを含有する混合液Aを調製する工程
工程(i−A2):低分子ゲル化剤gelと溶媒gelと無機固体電解質gelを含有するプレ混合液Aを加熱することで、低分子ゲル化剤gelが溶解し、かつ、無機固体電解質gelを含有する混合液Aを調製する工程
上記いずれのプレ混合液および混合液も、上記加熱工程を除けば、撹拌、機械分散等の任意の方法により混合し、調製することができる。機械分散については、前述のi)低分子ゲル化剤の溶解、ゲルの分散における機械分散法の記載を好ましく適用することができる。
【0165】
混合液Aにおける無機固体電解質gelや、複合化ゲル中の無機固体電解質gelの一部または全部(好ましくは全部)が溶解していることが、本発明の製造方法により得られる複合化ゲルを含有する固体電解質組成物を用いて作製した全固体二次電池が、より良好な抵抗、かつ、より高いサイクル特性を示すため好ましい。これは、前述の無機固体電解質gelの一部または全部(好ましくは全部)が溶解した複合化ゲルを含有する固体電解質組成物を用いた場合と同様の理由が推定される。
【0166】
なお、無機固体電解質gelは、溶媒gelを調整することにより、一部または全部(好ましくは全部)が溶解した形態とすることができる。前述の極性の溶媒gelを使用すると、無機固体電解質gelを複合化ゲルに溶解させることができる。このため、上記〔β〕の方法で、あらかじめ作製しておいたゲルに無機固体電解質gelを含有させる場合にも、無機固体電解質gelを複合化ゲルに容易に溶解させることができる。
【0167】
負極活物質、正極活物質等の添加剤を含有する複合化ゲルを製造する場合、これらの添加剤は上記工程のどの段階で混合してもよい。好ましくは低分子ゲル化剤gelを溶解させた後、より好ましくは低分子ゲル化剤gelを溶解させ、かつ、無機固体電解質gelを混合して分散または溶解させた後に混合する。
【0168】
ゲル化剤gelが溶媒gelに溶解する工程における加熱温度は、ゲル化剤gelが溶媒gelに溶解する限り限定されるものではないが、例えば、ゲル化剤の融点や溶媒の沸点の観点から40〜200℃であることが好ましく、60〜150℃であることがより好ましく、80〜120℃であることがさらに好ましい。
ゲルまたは複合化ゲルを形成する冷却工程については、ゲルまたは複合化ゲルが形成される限り限定されるものではないが、例えば、ゲルの安定性の観点から、0.1時間〜24時間かけて、150〜80℃から50〜0℃まで冷却することが好ましく、0.1時間〜5時間かけて、120〜80℃から40〜20℃まで冷却することがより好ましい。
冷却する際には、所望のゲルまたは複合化ゲルが得られる条件に適宜調製すればよく、上記混合液又は溶液を静置しても、撹拌してもよく、また、任意の方法により冷却してもよく、放冷により冷却してもよい。なお、製造適正の観点から、撹拌することが好ましい。
【0169】
全固体二次電池とは、正極、負極、電解質がともに固体で構成された二次電池を言う。換言すれば、電解質としてカーボネート系の溶媒を用いるような電解液型の二次電池とは区別される。このなかで、本発明は無機全固体二次電池を前提とする。全固体二次電池には、電解質としてポリエチレンオキサイド等の高分子化合物を用いる有機(高分子)全固体二次電池と、上記のLi−P−S系ガラス、LLTやLLZ等を用いる無機全固体二次電池とに区分される。なお、無機全固体二次電池に高分子化合物を適用することは妨げられず、正極活物質、負極活物質、無機固体電解質のバインダーとして高分子化合物を適用することができる。
無機固体電解質とは、上述した高分子化合物をイオン伝導媒体とする電解質(高分子電解質)とは区別されるものであり、無機化合物がイオン伝導媒体となるものである。具体例としては、上記のLi−P−S系ガラス、LLTやLLZが挙げられる。無機固体電解質は、それ自体が陽イオン(Liイオン)を放出するものではなく、イオンの輸送機能を示すものである。これに対して、電解液ないし固体電解質層に添加して陽イオン(Liイオン)を放出するイオンの供給源となる材料を電解質と呼ぶことがある。上記のイオン輸送材料としての電解質と区別する際には、これを「電解質塩」または「支持電解質」と呼ぶ。電解質塩としては、例えばLiTFSIが挙げられる。
本発明において「組成物」というときには、2種以上の成分が均一に混合された混合物を意味する。ただし、実質的に均一性が維持されていればよく、所望の効果を奏する範囲で、一部において凝集や偏在が生じていてもよい。
【実施例】
【0170】
以下に、実施例に基づき本発明についてさらに詳細に説明する。なお、本発明がこれにより限定して解釈されるものではない。以下の実施例において「部」および「%」というときには、特に断らない限り質量基準である。また、「室温」とは、25℃を意味する。
【0171】
<低分子ゲル化剤の合成>
・(A−1)の合成例
500mL3つ口フラスコにオクチルアミン(東京化成(株)製)26.5gを加え、テトラヒドロフラン200mLに溶解した。これを氷浴上で撹拌し、溶液温度を5℃まで冷却した。これにトリエチルアミン30gを加えた後、テレフタル酸クロリド(和光純薬(株)製)20.3gのテトラヒドロフラン100mL溶液を1時間かけて滴下した。反応液を室温で2時間撹拌した後、0.1N塩酸水1Lに注ぎ、得られた固体をろ取し乾燥して低分子ゲル化剤(A−1)42.9gを得た。融点は85℃であった。
【0172】
・(A−3)の合成例
200mL3つ口フラスコに(1R,2R)−(−)−1,2−シクロヘキサンジアミン(東京化成(株)製)4.0gを加え、テトラヒドロフラン100mLに溶解した。これを氷浴上で撹拌し、溶液温度を5℃まで冷却した。これにトリエチルアミン10.6gを加えた後、ラウリン酸クロリド(東京化成(株)製)16.1gを1時間かけて滴下した。滴下中に白色固体が析出した。反応液を室温で2時間撹拌した後、0.1N塩酸水1Lに注ぎ、得られた固体をろ取し、メタノール50mLで洗浄した後、乾燥して低分子ゲル化剤(A−3)18.3gを得た。融点は122℃であった。
【0173】
・(A−5)の合成例
200mL3つ口フラスコに(1R,2R)−(−)−1,2−シクロヘキサンジアミン(東京化成(株)製)3.7gを加え、テトラヒドロフラン100mLに溶解した。これを氷浴上で撹拌し、溶液温度を5℃まで冷却した。これにドデシルイソシアネート(東京化成(株)製)15.0gのテトラヒドロフラン50mL溶液を30分かけて滴下した。滴下中に白色固体が析出した。反応液を室温で5時間撹拌した後、ろ取し、5℃に冷却したテトラヒドロフラン100mLで洗浄して低分子ゲル化剤(A−5)15.1gを得た。融点は153℃であった。
【0174】
・(A−8)の合成例
200mL3つ口フラスコにL−イソロイシン(東京化成(株)製)13.1gと水酸化ナトリウム5.8gを加えN−メチルピロリドン100mLに溶解した。これにクロロ蟻酸ベンジル(東京化成(株)製)17.1gを1時間かけて滴下した。反応溶液を室温で2時間撹拌した後、0.1N塩酸水1Lに加えて得られた固体をろ取し、乾燥した。得られた固体23.2gとN,N−ジシクロヘキサンカルボジイミド22.9gをジクロロメタン300mLに溶解し、氷浴上で溶液温度を5℃に冷却した。これにオクタデシルアミン25.6gを1時間かけて滴下し、室温で4時間撹拌した。副生した固体をろ過して除き、ろ液を濃縮した。得られた固体をアセトニトリル中で再結晶し、得られた結晶を乾燥して低分子ゲル化剤(A−8)38.6gを得た。融点は132℃であった。
【0175】
・(A−11)の合成例
200mL3つ口フラスコにL−イソロイシン(東京化成(株)製)10.6gと水酸化ナトリウム5.1gを加えN−メチルピロリドン100mLに溶解した。これにクロロ蟻酸オクチル(東京化成(株)製)26.5gを1時間かけて滴下した。反応溶液を室温で2時間撹拌した後、0.1N塩酸水1Lに加えて得られた固体をろ取、乾燥した。得られた固体32.1gとN,N−ジシクロヘキサンカルボジイミド20.1gをジクロロメタン300mLに溶解し、氷浴上で溶液温度を5℃に冷却した。これにエタンジアミン4.8gを1時間かけて滴下し、室温で4時間撹拌した。副生した固体をろ過して除き、ろ液を濃縮した。得られた固体をアセトニトリル中で再結晶し、得られた結晶を乾燥して低分子ゲル化剤(A−11)25.1gを得た。融点は172℃であった。
【0176】
・(A−13)の合成例
J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1994,11,1401に記載の方法で低分子ゲル化剤(A−13)を合成した。融点は139℃であった。
【0177】
<硫化物系無機固体電解質の合成>
− Li−P−S系ガラスの合成 −
硫化物系無機固体電解質として、T.Ohtomo,A.Hayashi,M.Tatsumisago,Y.Tsuchida,S.Hama,K.Kawamoto,Journal of Power Sources,233,(2013),pp231−235およびA.Hayashi,S.Hama,H.Morimoto,M.Tatsumisago,T.Minami,Chem.Lett.,(2001),pp872−873の非特許文献を参考にして、Li−P−S系ガラスを合成した。
【0178】
具体的には、アルゴン雰囲気下(露点−70℃)のグローブボックス内で、硫化リチウム(LiS、Aldrich社製、純度>99.98%)2.42g、五硫化二リン(P、Aldrich社製、純度>99%)3.90gをそれぞれ秤量し、メノウ製乳鉢に投入し、メノウ製乳棒を用いて、5分間混合した。なお、LiSおよびPの混合比は、モル比でLiS:P=75:25とした。
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを66個投入し、上記硫化リチウムと五硫化二リンの混合物全量を投入し、アルゴン雰囲気下で容器を完全に密閉した。フリッチュ社製の遊星ボールミルP−7(商品名)にこの容器をセットし、温度25℃、回転数510rpmで20時間メカニカルミリングを行い、黄色粉体の硫化物系無機固体電解質(Li−P−S系ガラス)6.20gを得た。
【0179】
(実施例1)
−固体電解質組成物の調製−
(1)固体電解質組成物(K−1)の調製
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを180個投入し、無機固体電解質LLZ(LiLaZr12 ランタンジルコン酸リチウム、平均粒子径5.06μm、豊島製作所製)9.0g、低分子ゲル化剤(A−1)0.3g、バインダーとしてPVdF−HFP(ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、アルケマ(株)社製、質量平均分子量10万)0.3g、分散媒体としてトルエン15.0gを投入した。その後、フリッチュ社製の遊星ボールミルP−7(商品名)にこの容器をセットし、温度25℃、回転数500rpmで2時間攪拌を続け、固体電解質組成物(K−1)を調製した。
【0180】
(2)固体電解質組成物(K−2)の調製
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを180個投入し、上記で合成したLi−P−S系ガラス9.0g、低分子ゲル化剤(A−1)0.3g、バインダーとしてPVdF−HFP0.3g、分散媒体としてヘプタン15.0gを投入した。その後、フリッチュ社製の遊星ボールミルP−7(商品名)にこの容器をセットし、温度25℃、回転数500rpmで2時間攪拌を続け、固体電解質組成物(K−2)を調製した。
【0181】
(3)固体電解質組成物(K−3)〜(K−8)および(HK−1)〜(HK−3)の調製
下記表1に記載の組成に変えた以外は、上記固体電解質組成物(K−1)および(K−2)と同様の方法で、固体電解質組成物(K−3)〜(K−8)および(HK−1)〜(HK−3)を調製した。
【0182】
下記表1に、固体電解質組成物の組成をまとめて記載する。
ここで、固体電解質組成物(K−1)〜(K−8)が本発明の固体電解質組成物であり、固体電解質組成物(HK−1)〜(HK−3)が比較の固体電解質組成物である。
なお、n−オクタンジアミンと1,4−ジベンゾイルブタンは自己組織化ナノファイバーを形成しないため、本発明に用いられる低分子ゲル化剤には該当しない。
【0183】
【表1】
【0184】
<表の注>
A−1、3、5、8、11、13:上記で合成した低分子ゲル化剤
LLZ:LiLaZr12(ランタンジルコン酸リチウム、平均粒子径5.06μm、豊島製作所製)
Li−P−S:上記で合成したLi−P−S系ガラス
C−1:PVdF−HFP(ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体) アルケマ(株)社製 質量平均分子量10万
C−2:SBR(スチレンブタジエンゴム) アルドリッチ(株)社製 質量平均分子量15万
C−3:アクリル系樹脂微粒子「テクポリマーMBX−5」(商品名、平均粒子径5μm、積水化成品工業(株)社製)
C−4:ウレタン系樹脂微粒子「ダイミックビーズUCN−8070CM」(商品名、平均粒子径7μm、大日精化(株)社製)
【0185】
−正極用組成物の調製−
(1)正極用組成物(U−1)の調製
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを180個投入し、上記で合成したLi−P−S系ガラス2.7g、低分子ゲル化剤(A−1)0.3g、バインダーとしてPVdF−HFP0.3g、分散媒体としてヘプタン12.3gを投入した。フリッチュ社製遊星ボールミルP−7(商品名)に容器をセットし、温度25℃、回転数500rpmで2時間混合を続けた後、活物質としてNMC(日本化学工業(株)製)7.0gを容器に投入し、同様に、遊星ボールミルP−7(商品名)に容器をセットし、温度25℃、回転数200rpmで15分間混合を続け、正極用組成物(U−1)を調製した。
【0186】
(2)正極用組成物(U−2)〜(U−6)および(HU−1)〜(HU−2)の調製
下記表2に記載の組成に変えた以外は、上記正極用組成物(U−1)と同様の方法で、正極用組成物(U−2)〜(U−6)および(HU−1)〜(HU−2)を調製した。
【0187】
下記表2に、正極用組成物の組成をまとめて記載する。
ここで、正極用組成物(U−1)〜(U−6)が本発明の正極用組成物であり、正極用組成物(HU−1)〜(HU−2)が比較の正極用組成物である。
【0188】
【表2】
【0189】
<表の注>
LCO:LiCoO コバルト酸リチウム
NMC:LiNi0.33Mn0.33Co0.33 ニッケルマンガンコバルト酸リチウム
【0190】
−負極用組成物の調製−
(1)負極用組成物(S−1)の調製
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを180個投入し、上記で合成したLi−P−S系ガラス5.0g、低分子ゲル化剤(A−1)0.5g、分散媒体としてヘプタン12.3gを投入した。フリッチュ社製遊星ボールミルP−7(商品名)に容器をセットし、温度25℃、回転数500rpmで2時間機械分散を続けた後、アセチレンブラック7.0gを容器に投入し、同様に、遊星ボールミルP−7(商品名)に容器をセットし、温度25℃、回転数100rpmで15分間混合を続け、負極用組成物(S−1)を調製した。
【0191】
(3)負極用組成物(S−2)〜(S−6)および(HS−1)〜(HS−2)の調製
下記表3に記載の組成に変えた以外は、上記負極用組成物(S−1)と同様の方法で、負極用組成物(S−2)〜(S−6)および(HS−1)〜(HS−2)を調製した。
【0192】
下記表3に、負極用組成物の組成をまとめて記載する。
ここで、負極用組成物(S−1)〜(S−6)が本発明の負極用組成物であり、負極用組成物(HS−1)〜(HS−2)が比較の負極用組成物である。
【0193】
【表3】
【0194】
<表の注>
AB:アセチレンブラック
【0195】
−二次電池用正極シートの作製−
上記で調製した正極用組成物を厚み20μmのアルミ箔上に、クリアランスが調節可能なアプリケーターにより塗布した後、室温で1時間静置することで塗布後の正極用組成物をゲル化した。60℃で2時間加熱し、分散媒体を乾燥して、二次電池用正極シートを得た。
【0196】
−全固体二次電池用電極シートおよび全固体二次電池の製造−
上記で製造した二次電池用正極シート上に、上記で調製した固体電解質組成物を、クリアランスが調節可能なアプリケーターにより塗布した後、室温で1時間静置することで塗布後の固体電解質組成物をゲル化した。60℃で2時間加熱して塗布溶媒を乾燥した。その後、上記で調製した負極用組成物を、乾燥した固体電解質組成物上にさらに塗布した後、室温で1時間静置することで塗布後の負極用組成物をゲル化した。その後60℃で2時間加熱して分散媒体を乾燥し、全固体二次電池用電極シートを作製した。このシートの負極活物質層上に厚み20μmの銅箔を合わせ、プレス機を用いて、任意の密度になるよう加圧し(300MPa、1分間)、下記表4に記載の全固体二次電池の試験No.101〜110およびc11〜c14を製造した。
全固体二次電池は図1の層構成を有し、銅箔/負極活物質層/固体電解質層/二次電池用正極シート(正極活物質層/アルミ箔)の積層構造を有する。正極層、負極層および固体電解質層は、それぞれ順に120μm、50μm、100μmの膜厚を有するように作製し、いずれの全固体二次電池においても、膜厚のばらつきが上記膜厚±10%になるように調製した。
【0197】
(試験例1)
上記で製造した全固体二次電池15を直径14.5mmの円板状に切り出し、スペーサーとワッシャーを組み込んだステンレス製の2032型コインケース14に入れ、図2に示した試験体を用いて、コインケース14の外部から拘束圧(ネジ締め圧:8N)をかけ、試験用のコイン電池13を製造した。なお、図2において、11が上部支持板、12が下部支持板、Sがネジである。
【0198】
<評価>
上記で製造した試験用のコイン電池13について、以下の評価を行った。
【0199】
<電池電圧の評価>
上記で製造したコイン電池(全固体二次電池)の電池電圧を、東洋システム(株)製の充放電評価装置「TOSCAT−3000(商品名)」により測定した。
充電は、電流密度2A/mで電池電圧が4.2Vに達するまで行い、4.2Vに到達後は、電流密度が0.2A/m未満となるまで、定電圧充電を実施した。放電は、電流密度2A/mで電池電圧が3.0Vに達するまで行った。これを1サイクルとし、3サイクル目の5mAh/g放電後の電池電圧を読み取り、以下の基準で評価した。なお、評価「C」以上が本試験の合格レベルである。
【0200】
(評価基準)
A:4.1V以上
B:4.0V以上4.1V未満
C:3.9V以上4.0V未満
D:3.8V以上3.9V未満
E:3.8V未満
【0201】
<サイクル特性の評価>
上記で製造した全固体二次電池のサイクル特性を、東洋システム(株)製の充放電評価装置「TOSCAT−3000」により測定した。
充放電は、上記電池電圧の評価と同様の条件で行った。3サイクル目の放電容量を100とし、放電容量が80未満となったときのサイクル数から、以下の基準で評価した。なお、評価「C」以上が本試験の合格レベルである。
【0202】
(評価基準)
A:50回以上
B:40回以上50回未満
C:30回以上40回未満
D:20回以上30回未満
E:20回未満
【0203】
下記表4に、全固体二次電池用電極シートおよび全固体二次電池の構成および評価結果をまとめて記載する。ここで、試験No.101〜110が本発明に用いられる低分子ゲル化剤を使用した全固体二次電池用電極シートおよび全固体二次電池であり、試験No.c11〜c14が比較の全固体二次電池用電極シートおよび全固体二次電池である。
なお、下記表4において、電池電圧は電圧と省略して記載した。
【0204】
【表4】
【0205】
表4から明らかなように、本発明に用いられる低分子ゲル化剤を使用する試験No.101〜110の全固体二次電池は、抵抗を抑制し、かつサイクル特性が高いことが分かる。
これに対して、添加剤を含有しない正極用組成物、固体電解質組成物および負極用組成物を用いて作製した試験No.c11の比較の全固体二次電池は、サイクル特性が低く、十分でなかった。また、自己組織化ナノファイバーを形成しない添加剤を固体電解質組成物に使用した試験No.c14の比較の全固体二次電池は、サイクル特性が十分でなく、正極用組成物、固体電解質組成物および負極用組成物のいずれにも自己組織化ナノファイバーを形成しない添加剤を使用した試験No.c12の比較の全固体二次電池、ならびに、固体電解質組成物および負極用組成物に自己組織化ナノファイバーを形成しない添加剤を使用した試験No.c13の比較の全固体二次電池は、抵抗の抑制および高いサイクル特性のいずれも十分でなかった。
【0206】
(実施例2)
<ゲルの作製>
・ゲル(Z−1)の作製
100mL3つ口フラスコに低分子ゲル化剤(A−3)を1.0gはかりとり、トルエン49.0gを加えて100℃で加熱溶解させた。これを3時間かけて室温(25℃)に放冷したところ溶液がゲル化し、ゲル(Z−1)を得た。
【0207】
・ゲル(Z−2)の作製
100mL3つ口フラスコに低分子ゲル化剤(A−3)を1.0gはかりとり、脱水ヘプタン47.0gを加えて、アルゴン雰囲気下で100℃で加熱溶解させた。これに上記で合成した硫化物系無機固体電解質(Li−P−S系ガラス)2.0gを加え、さらに1時間加熱撹拌を続けた。撹拌しながら3時間かけて室温(25℃)に放冷したところ硫化物系無機固体電解質の分散溶液がゲル化し、ゲル(Z−2)を得た。
【0208】
・ゲル(Z−3)の作製
100mL3つ口フラスコに低分子ゲル化剤(A−3)を1.0gはかりとり、脱水N,N−ジメチルホルムアミド47.0gを加えて、アルゴン雰囲気下で100℃で加熱溶解させた。これに上記で合成した硫化物系無機固体電解質(Li−P−S系ガラス)2.0gを加え、固体電解質を溶解させた。混合液は黄色透明溶液となった。撹拌しながら3時間かけて室温(25℃)に放冷したところ硫化物系無機固体電解質の黄色溶液がゲル化し、ゲル(Z−3)を得た。
【0209】
・ゲル(Z−4)の作製
100mL3つ口フラスコに低分子ゲル化剤(A−3)を1.0gはかりとり、脱水キシレン46.0gを加えて、アルゴン雰囲気下で100℃で加熱溶解させた。これに上記で合成した硫化物系無機固体電解質(Li−P−S系ガラス)1.0gと正極用活物質としてNMC(日本化学工業(株)製)2.0gを加え、さらに1時間加熱撹拌を続けた。撹拌しながら3時間かけて室温(25℃)に放冷したところ硫化物系無機固体電解質と正極活物質の分散溶液がゲル化し、ゲル(Z−4)を得た。
【0210】
・ゲル(Z−5)の作製
100mL3つ口フラスコに低分子ゲル化剤(A−3)を1.0gはかりとり、脱水N−メチルホルムアミド46.0gを加えて、アルゴン雰囲気下で100℃で加熱溶解させた。これに上記で合成した硫化物系無機固体電解質(Li−P−S系ガラス)1.0gを加え溶解させ黄色透明溶液とした。続けて負極用活物質としてアセチレンブラック2.0g加え、さらに1時間加熱撹拌を続けた。撹拌しながら3時間かけて室温(25℃)に放冷したところ硫化物系無機固体電解質と負極活物質の分散溶液がゲル化し、ゲル(Z−5)を得た。
【0211】
下記表5に、ゲルの組成をまとめて記載する。
ここで、ゲル(Z−2)〜(Z−5)は本発明の複合化ゲルである。
【0212】
【表5】
【0213】
<表の注>
A−3:上記で合成した低分子ゲル化剤
Li−P−S:上記で合成したLi−P−S系ガラス
NMC:LiNi0.33Mn0.33Co0.33 ニッケルマンガンコバルト酸リチウム
AB:アセチレンブラック
【0214】
−固体電解質組成物の調製−
(1)固体電解質組成物(K−9)の調製
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのテフロン(登録商標)ビーズを180個投入し、上記で合成したLi−P−S系ガラス9.0g、ゲル(Z−2)15.0g、バインダーとしてPVdF−HFP0.3g、分散媒体としてトルエン5.0gを投入した。その後、フリッチュ社製の遊星ボールミルP−7(商品名)にこの容器をセットし、温度25℃、回転数150rpmで2時間攪拌を続け、固体電解質組成物(K−9)を調製した。
【0215】
(2)固体電解質組成物(K−10)の調製
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのテフロン(登録商標)ビーズを180個投入し、上記で合成したLi−P−S系ガラス9.0g、ゲル(Z−3)15.0g、バインダーとしてPVdF−HFP0.3g、分散媒体としてトルエン5.0gを投入した。その後、フリッチュ社製の遊星ボールミルP−7(商品名)にこの容器をセットし、温度25℃、回転数150rpmで2時間攪拌を続け、固体電解質組成物(K−9)を調製した。
【0216】
(3)固体電解質組成物(K−11)の調製
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのテフロン(登録商標)ビーズを180個投入し、上記で合成したLi−P−S系ガラス9.0g、ゲル(Z−1)15.0g、分散媒体としてトルエン5.0gを投入した。その後、フリッチュ社製の遊星ボールミルP−7(商品名)にこの容器をセットし、温度25℃、回転数150rpmで2時間攪拌を続け、固体電解質組成物(K−11)を調製した。
【0217】
−正極用組成物の調製−
(1)正極用組成物(U−7)の調製
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのテフロン(登録商標)ビーズを180個投入し、上記で合成したLi−P−S系ガラス2.7g、ゲル(Z−4)15.0g、バインダーとしてPVdF−HFP0.3g、分散媒体としてヘプタン2.0gを投入した。フリッチュ社製遊星ボールミルP−7(商品名)に容器をセットし、温度25℃、回転数150rpmで2時間混合を続けた後、活物質としてNMC(日本化学工業(株)製)7.0gを容器に投入し、同様に、遊星ボールミルP−7(商品名)に容器をセットし、温度25℃、回転数150rpmで15分間混合を続け、正極用組成物(U−7)を調製した。
【0218】
−負極用組成物の調製−
(1)負極用組成物(S−7)の調製
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのテフロン(登録商標)ビーズを180個投入し、上記で合成したLi−P−S系ガラス5.0g、ゲル(Z−5)15.0g、分散媒体としてヘプタン3.0gを投入した。フリッチュ社製遊星ボールミルP−7(商品名)に容器をセットし、温度25℃、回転数150rpmで2時間機械分散を続けた後、アセチレンブラック7.0gを容器に投入し、同様に、遊星ボールミルP−7(商品名)に容器をセットし、温度25℃、回転数100rpmで15分間混合を続け、負極用組成物(S−7)を調製した。
【0219】
下記表6に、固体電解質組成物、正極用組成物および負極用組成物の組成をまとめて記載する。
ここで、固体電解質組成物(K−9)〜(K−11)は本発明の固体電解質組成物であり、正極用組成物(U−7)は本発明の正極用組成物であり、負極用組成物(S−7)は本発明の負極用組成物である。
【0220】
【表6】
【0221】
<表の注>
Z−1〜Z−5:上記で作製したゲル
A−3:上記で合成した低分子ゲル化剤
Li−P−S:上記で合成したLi−P−S系ガラス
NMC:LiNi0.33Mn0.33Co0.33 ニッケルマンガンコバルト酸リチウム
AB:アセチレンブラック
C−1:PVdF−HFP(ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体) アルケマ(株)社製 質量平均分子量10万
【0222】
<二次電池用正極シート、全固体二次電池の製造>
下記表7に記載の正極用組成物、固体電解質組成物および負極用組成物を使用した以外は実施例1と同様にして、下記表7に記載の試験No.111〜115の全固体二次電池を製造した。
上記で製造した全固体二次電池は図1の層構成を有する。
【0223】
(試験例2)
得られた全固体二次電池を用いて、実施例1と同様にして試験用のコイン電池13を作製した。
【0224】
<評価>
上記で製造した試験用のコイン電池13について、実施例1と同様の評価を行った。
【0225】
下記表7に、全固体二次電池用電極シートおよび全固体二次電池の構成および評価結果をまとめて記載する。
ここで、試験No.111〜115は本発明に用いられる低分子ゲル化剤を使用した全固体二次電池用電極シートおよび全固体二次電池である。
なお、下記表7において、電池電圧は電圧と省略して記載した。
【0226】
【表7】
【0227】
表7から明らかなように、本発明の複合化ゲルを含有させた固体電解質組成物を使用する試験No.111〜115の全固体二次電池は、抵抗の抑制およびサイクル特性の向上のいずれにも優れることが分かる。
【0228】
本発明をその実施態様とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
【0229】
本願は、2015年5月28日に日本国で特許出願された特願2015−108513、および2015年11月19日に日本国で特許出願された特願2015−226395に基づく優先権を主張するものであり、これらをここに参照してその内容を本明細書の記載の一部として取り込む。
【符号の説明】
【0230】
1 負極集電体
2 負極活物質層
3 固体電解質層
4 正極活物質層
5 正極集電体
6 作動部位
10 全固体二次電池
11 上部支持板
12 下部支持板
13 コイン電池
14 コインケース
15 全固体二次電池
S ネジ
図1
図2
【国際調査報告】