特表-16194787IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士フイルム株式会社の特許一覧

再表2016-194787負極用材料、全固体二次電池用電極シートおよび全固体二次電池ならびに全固体二次電池用電極シートおよび全固体二次電池の製造方法
<>
  • 再表WO2016194787-負極用材料、全固体二次電池用電極シートおよび全固体二次電池ならびに全固体二次電池用電極シートおよび全固体二次電池の製造方法 図000022
  • 再表WO2016194787-負極用材料、全固体二次電池用電極シートおよび全固体二次電池ならびに全固体二次電池用電極シートおよび全固体二次電池の製造方法 図000023
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2016年12月8日
【発行日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】負極用材料、全固体二次電池用電極シートおよび全固体二次電池ならびに全固体二次電池用電極シートおよび全固体二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/587 20100101AFI20171201BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20171201BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20171201BHJP
   H01M 4/1393 20100101ALI20171201BHJP
【FI】
   H01M4/587
   H01M4/36 A
   H01M10/0562
   H01M4/1393
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】43
【出願番号】特願2017-521890(P2017-521890)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2016年5月26日
(31)【優先権主張番号】特願2015-112323(P2015-112323)
(32)【優先日】2015年6月2日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】特許業務法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(72)【発明者】
【氏名】目黒 克彦
(72)【発明者】
【氏名】望月 宏顕
(72)【発明者】
【氏名】牧野 雅臣
(72)【発明者】
【氏名】三村 智則
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ05
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AM12
5H029CJ22
5H029HJ02
5H050AA07
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB07
5H050CB08
5H050GA22
5H050HA02
(57)【要約】
負極活物質である炭素質材料、無機固体電解質、および導電性を有さない、3環以上の環構造を有する化合物を含有する負極用材料、これを用いた全固体二次電池用電極シートおよび全固体二次電池ならびに全固体二次電池用電極シートおよび全固体二次電池の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極活物質である炭素質材料、無機固体電解質、および導電性を有さない、3環以上の環構造を有する化合物を含有する負極用材料。
【請求項2】
前記導電性を有さない、3環以上の環構造を有する化合物が、下記一般式(D)で表される化合物または該化合物の少なくとも1つの水素原子を結合手に置き換えた構造を含む化合物である請求項1に記載の負極用材料。
【化1】
一般式(D)中、環αは3環以上の環を表し、RD1は環αの構成原子と結合している置換基を表し、d1は1以上の整数を表す。d1が2以上の場合、複数のRD1は同一でも異なっていてもよい。隣接する原子に置換するRD1が互いに結合して、環を形成してもよい。
【請求項3】
前記一般式(D)で表される化合物が、下記一般式(1)で表される芳香族炭化水素、下記一般式(2)で表される脂肪族炭化水素、および該芳香族炭化水素または該脂肪族炭化水素の少なくとも1つの水素原子を結合手に置き換えた構造を含む化合物からなる群から選択される少なくとも1種である請求項2に記載の負極用材料。
【化2】
一般式(1)において、Arはベンゼン環を表す。nは0〜8の整数を表す。R11〜R16は各々独立に、水素原子または置換基を表す。XおよびXは各々独立に、水素原子または置換基を表す。ここで、R11〜R16、XおよびXにおいて、互いに隣接する基が結合して、5または6員環を形成してもよい。ただし、nが0の場合、R11〜R13のいずれか1つの置換基は、−(Ar)m−Rxであるか、またはR11〜R13のいずれか2つが互いに結合して、−(Ar)m−を形成する。ここで、Arはフェニレン基を表し、mは2以上の整数を表し、Rxは水素原子または置換基を表す。また、nが1の場合、R11〜R16、XおよびXにおいて、互いに隣接する少なくとも2つが結合して、ベンゼン環を形成する。
【化3】
一般式(2)において、YおよびYは各々独立に水素原子、メチル基またはホルミル基を表す。R21、R22、R23およびR24は各々独立に、置換基を表し、a、b、cおよびdは0〜4の整数を表す。
ここで、A環は、飽和環、二重結合を1もしくは2個有する不飽和環または芳香環であってもよく、B環およびC環は、二重結合を1もしくは2個有する不飽和環であってもよい。なお、a、b、cまたはdの各々において、2〜4の整数の場合、互いに隣接する置換基が結合して環を形成してもよい。
【請求項4】
バインダーを含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の負極用材料。
【請求項5】
前記負極活物質である炭素質材料がハードカーボンまたは黒鉛である請求項1〜4のいずれか1項に記載の負極用材料。
【請求項6】
前記無機固体電解質が硫化物系無機固体電解質である請求項1〜5のいずれか1項に記載の負極用材料。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の負極用材料を金属箔上に適用して製膜した全固体二次電池用電極シート。
【請求項8】
正極活物質層、負極活物質層および無機固体電解質層を具備する全固体二次電池であって、該負極活物質層を請求項1〜6のいずれか1項に記載の負極用材料を適用して層とした全固体二次電池。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の負極用材料を金属箔上に適用して製膜する全固体二次電池用電極シートの製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の製造方法を介して全固体二次電池を製造する全固体二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負極用材料、全固体二次電池用電極シートおよび全固体二次電池ならびに全固体二次電池用電極シートおよび全固体二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池には、電解液が用いられてきた。その電解液を固体電解質に置き換え、構成材料を全て固体にした全固体二次電池とする試みが進められている。無機の固体電解質を利用する技術の利点として挙げられるのが、電池の性能全体を総合した信頼性である。例えば、リチウムイオン二次電池に用いられる電解液には、その媒体として、カーボネート系溶媒など、可燃性の材料が適用されている。このような電解液を用いる二次電池では、様々な安全対策が採られている。しかし、過充電時などに不具合を来たすおそれがないとは言えず、さらなる対応が望まれる。その抜本的な解決手段として、電解質を不燃性のものとしうる全固体二次電池が位置づけられる。
全固体二次電池のさらなる利点としては、電極のスタックによる高エネルギー密度化に適していることが挙げられる。具体的には、電極と電解質を直接並べて直列化した構造を持つ電池にすることができる。このとき、電池セルを封止する金属パッケージ、電池セルをつなぐ銅線やバスバーを省略することができるため、電池のエネルギー密度が大幅に高められる。また、高電位化が可能な正極材料との相性の良さなども利点として挙げられる。
【0003】
上記のような各利点から、次世代のリチウムイオン電池として全固体二次電池の開発が進められている(非特許文献1)。電池抵抗の増加および放電容量の低下を抑制するため、例えば、特許文献1では、活物質、実質的に架橋硫黄を有しない硫化物固体電解質材料および水素添加ゴム材料を用いて作製した全固体二次電池が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−134675号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】NEDO技術開発機構,燃料電池・水素技術開発部,蓄電技術開発室「NEDO次世代自動車用蓄電池技術開発 ロードマップ2013」(平成25年8月)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の全固体二次電池では、固体粒子間の界面を良好な状態にすることにより電池性能の向上を図っている。しかし、各層における固体粒子同士の距離の不均一さから、特許文献1に記載の全固体二次電池では、充放電の繰り返しによる活物質の体積が膨張および収縮することにより固体粒子間の界面が劣化しサイクル特性が劣るという問題がある。
【0007】
そこで本発明は、全固体二次電池において、良好なサイクル特性を実現できる、固体粒子の分散安定性に優れる負極用材料、これを用いた全固体二次電池用電極シートおよび全固体二次電池ならびに全固体二次電池用電極シートおよび全固体二次電池の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討し、本発明を完成した。
負極活物質である炭素質材料および無機固体電解質を含有し、かつ、導電性を有さない、3環以上の環構造を有する化合物を含有する負極用材料は、固体粒子の分散安定性に優れる。そのため、この負極用材料を用いて作製された負極活物質層は、負極活物質層を構成する固体粒子間の距離が均一となり、固体粒子間に良好な界面が形成される。その結果、この負極活物質層を具備する全固体二次電池は良好なサイクル特性を実現できることを本発明者らは見出した。本発明はこれらの知見に基づきなされたものである。
すなわち、上記の課題は以下の手段により解決された。
【0009】
<1>負極活物質である炭素質材料、無機固体電解質、および導電性を有さない、3環以上の環構造を有する化合物を含有する負極用材料。
【0010】
<2>導電性を有さない、3環以上の環構造を有する化合物が、下記一般式(D)で表される化合物またはこの化合物の少なくとも1つの水素原子を結合手に置き換えた構造を含む化合物である<1>に記載の負極用材料。
【化1】
一般式(D)中、環αは3環以上の環を表し、RD1は環αの構成原子と結合している置換基を表し、d1は1以上の整数を表す。d1が2以上の場合、複数のRD1は同一でも異なっていてもよい。隣接する原子に置換するRD1が互いに結合して、環を形成してもよい。
【0011】
<3>一般式(D)で表される化合物が、下記一般式(1)で表される芳香族炭化水素、下記一般式(2)で表される脂肪族炭化水素、および下記一般式(1)で表される芳香族炭化水素または下記一般式(2)で表される脂肪族炭化水素の少なくとも1つの水素原子を結合手に置き換えた構造を含む化合物からなる群から選択される少なくとも1種である<2>に記載の負極用材料。
【化2】
一般式(1)において、Arはベンゼン環を表す。nは0〜8の整数を表す。R11〜R16は各々独立に、水素原子または置換基を表す。XおよびXは各々独立に、水素原子または置換基を表す。ここで、R11〜R16、XおよびXにおいて、互いに隣接する基が結合して、5または6員環を形成してもよい。ただし、nが0の場合、R11〜R13のいずれか1つの置換基は、−(Ar)m−Rxであるか、またはR11〜R13のいずれか2つが互いに結合して、−(Ar)m−を形成する。ここで、Arはフェニレン基を表し、mは2以上の整数を表し、Rxは水素原子または置換基を表す。また、nが1の場合、R11〜R16、XおよびXにおいて、互いに隣接する少なくとも2つが結合して、ベンゼン環を形成する。
【化3】
一般式(2)において、YおよびYは各々独立に水素原子、メチル基またはホルミル基を表す。R21、R22、R23およびR24は各々独立に、置換基を表し、a、b、cおよびdは0〜4の整数を表す。
ここで、A環は、飽和環、二重結合を1もしくは2個有する不飽和環または芳香環であってもよく、B環およびC環は、二重結合を1もしくは2個有する不飽和環であってもよい。なお、a、b、cまたはdの各々において、2〜4の整数の場合、互いに隣接する置換基が結合して環を形成してもよい。
【0012】
<4>バインダーを含有する<1>〜<3>のいずれか1つに記載の負極用材料。
<5>負極活物質である炭素質材料がハードカーボンまたは黒鉛である<1>〜<4>のいずれか1つに記載の負極用材料。
<6>無機固体電解質が硫化物系無機固体電解質である<1>〜<5>のいずれか1つに記載の負極用材料。
<7> <1>〜<6>のいずれか1つに記載の負極用材料を金属箔上に適用して製膜した全固体二次電池用電極シート。
<8>正極活物質層、負極活物質層および無機固体電解質層を具備する全固体二次電池であって、負極活物質層を<1>〜<6>のいずれか1つに記載の負極用材料を適用して層とした全固体二次電池。
<9> <1>〜<6>のいずれか1つに記載の負極用材料を金属箔上に適用して製膜する全固体二次電池用電極シートの製造方法。
<10> <9>に記載の製造方法を介して全固体二次電池を製造する全固体二次電池の製造方法。
【0013】
本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、特定の符号で表示された置換基が複数あるとき、あるいは複数の置換基等(置換基数の規定も同様)を同時もしくは択一的に規定するときには、それぞれの置換基等は互いに同一でも異なっていてもよい。また、複数の置換基等が近接するときにはそれらが互いに結合したり縮合したりして環を形成していてもよい。
本明細書において、単に「アクリル」と記載するときは、メタアクリルおよびアクリルの両方を含む意味で使用する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の負極用材料は分散安定性に優れる。また、本発明の負極用材料を用いて作製した全固体二次電池は、良好なサイクル特性を実現できるという優れた効果を奏する。また、本発明の全固体二次電池用電極シートは、上記本発明の負極用材料を用いて好適に製造することができ、上記良好な性能を発揮する本発明の全固体二次電池に用いることができる。さらに、本発明の全固体二次電池用電極シートおよび全固体二次電池の製造方法は、上記全固体二次電池用電極シートおよび全固体二次電池の製造に好適に用いることができる。
本発明の上記及び他の特徴及び利点は、適宜添付の図面を参照して、下記の記載からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の好ましい実施形態に係る全固体リチウムイオン二次電池を模式化して示す縦断面図である。
図2図2は、実施例で利用した試験装置を模式的に示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の全固体二次電池は、正極活物質層、負極活物質層および無機固体電解質層を具備する。本発明においては、負極活物質である炭素質材料、無機固体電解質および導電性を有さない、少なくとも1種の3環以上の化合物を含有する負極用材料を用いて負極活物質層を形成する。
以下、その好ましい実施形態について説明する。
【0017】
図1は、本発明の好ましい実施形態に係る全固体二次電池(リチウムイオン二次電池)を模式化して示す断面図である。本実施形態の全固体二次電池10は、負極側からみて、負極集電体1、負極活物質層2、固体電解質層3、正極活物質層4、正極集電体5を、この順に有する。各層はそれぞれ接触しており、積層した構造をとっている。このような構造を採用することで、充電時には、負極側に電子(e)が供給され、そこにリチウムイオン(Li)が蓄積される。一方、放電時には、負極に蓄積されたリチウムイオン(Li)が正極側に戻され、作動部位6に電子が供給される。図示した例では、作動部位6に電球を採用しており、放電によりこれが点灯するようにされている。
【0018】
正極活物質層4、固体電解質層3、負極活物質層2の厚さは特に限定されない。なお、一般的な電池の寸法を考慮すると、10〜1,000μmが好ましく、20μm以上500μm未満がより好ましい。本発明の全固体二次電池においては、正極活物質層4、固体電解質層3および負極活物質層2の少なくとも1層の厚さが、50μm以上500μm未満であることがさらに好ましい。
【0019】
<<負極用材料>>
以下、本発明の負極用材料の含有成分を説明する。本発明の負極用材料は、本発明の全固体二次電池を構成する負極活物質層の成形材料として好ましく適用される。
本明細書において、正極活物質層と負極活物質層とを合わせて電極層と称することがある。また、本発明に用いられる電極活物質は、正極活物質層に含有される正極活物質と、負極活物質層に含有される負極活物質があり、いずれかまたは両方を合わせて示すのに単に活物質と称することがある。
【0020】
(無機固体電解質)
無機固体電解質とは、無機の固体電解質のことであり、固体電解質とは、その内部においてイオンを移動させることができる固体状の電解質のことである。主たるイオン伝導性材料として有機物を含むものではないことから、有機固体電解質(PEOなどに代表される高分子電解質、LiTFSIなどに代表される有機電解質塩)とは明確に区別される。また、無機固体電解質は定常状態では固体であるため、通常カチオンおよびアニオンに解離または遊離していない。この点で、電解液やポリマー中でカチオンおよびアニオンが解離または遊離している無機電解質塩(LiPF、LiBF,LiFSI,LiClなど)とも明確に区別される。無機固体電解質は周期律表第1族または第2族に属する金属のイオンの伝導性を有するものであれば特に限定されず電子伝導性を有さないものが一般的である。
【0021】
本発明において、無機固体電解質は、周期律表第1族または第2族に属する金属のイオン伝導性を有する。上記無機固体電解質は、この種の製品に適用される固体電解質材料を適宜選定して用いることができる。無機固体電解質は(i)硫化物系無機固体電解質と(ii)酸化物系無機固体電解質が代表例として挙げられる。
本発明において、負極活物質層において、負極活物質と無機固体電解質との間により良好な界面を形成することができる観点から、硫化物系無機固体電解質が好ましく用いられる。
【0022】
(i)硫化物系無機固体電解質
硫化物系無機固体電解質は、硫黄(S)を含有し、かつ、周期律表第1族または第2族に属する金属のイオン伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有するものが好ましい。硫化物系無機固体電解質は、元素として少なくともLi、SおよびPを含有し、リチウムイオン伝導性を有しているものが好ましいが、目的または場合に応じて、Li、SおよびP以外の他の元素を含んでもよい。
例えば下記式(A)で示される組成を満たすリチウムイオン伝導性無機固体電解質が挙げられる。

a1b1c1d1e1 (A)

(式(A)中、LはLi、NaおよびKから選択される元素を示し、Liが好ましい。Mは、B、Zn、Sn、Si、Cu、Ga、Sb、Al及びGeから選択される元素を示す。なかでも、B、Sn、Si、Al、Geが好ましく、Sn、Al、Geがより好ましい。Aは、I、Br、Cl、Fを示し、I、Brが好ましく、Iが特に好ましい。a1〜e1は各元素の組成比を示し、a1:b1:c1:d1:e1は1〜12:0〜1:1:2〜12:0〜5を満たす。a1はさらに、1〜9が好ましく、1.5〜4がより好ましい。b1は0〜0.5が好ましい。d1はさらに、3〜7が好ましく、3.25〜4.5がより好ましい。e1はさらに、0〜3が好ましく、0〜1がより好ましい。)
【0023】
式(A)において、L、M、P、S及びAの組成比は、好ましくはb1、e1が0であり、より好ましくはb1=0、e1=0で且つa1、c1及びd1の比(a1:c1:d1)がa1:c1:d1=1〜9:1:3〜7であり、さらに好ましくはb1=0、e1=0で且つa1:c1:d1=1.5〜4:1:3.25〜4.5である。各元素の組成比は、後述するように、硫化物系無機固体電解質を製造する際の原料化合物の配合量を調整することにより制御できる。
【0024】
硫化物系無機固体電解質は、非結晶(ガラス)であっても結晶化(ガラスセラミックス化)していてもよく、一部のみが結晶化していてもよい。例えば、Li、PおよびSを含有するLi−P−S系ガラス、またはLi、PおよびSを含有するLi−P−S系ガラスセラミックスを用いることができる。
硫化物系無機固体電解質は、[1]硫化リチウム(LiS)と硫化リン(例えば五硫化二燐(P))、[2]硫化リチウムと単体燐および単体硫黄の少なくとも一方、または[3]硫化リチウムと硫化リン(例えば五硫化二燐(P))と単体燐および単体硫黄の少なくとも一方、の反応により製造することができる。
【0025】
Li−P−S系ガラスおよびLi−P−S系ガラスセラミックスにおける、LiSとPとの比率は、LiS:Pのモル比で、好ましくは65:35〜85:15、より好ましくは68:32〜77:23である。LiSとPとの比率をこの範囲にすることにより、リチウムイオン伝導度を高いものとすることができる。具体的には、リチウムイオン伝導度を好ましくは1×10−4S/cm以上、より好ましくは1×10−3S/cm以上とすることができる。上限は特にないが、1×10−1S/cm以下であることが実際的である。
【0026】
具体的な化合物例としては、例えばLiSと、第13族〜第15族の元素の硫化物とを含有する原料組成物を用いてなるものを挙げることができる。具体的には、LiS−P、LiS−LiI−P、LiS−LiI−LiO−P、LiS−LiBr−P、LiS−LiO−P、LiS−LiPO−P、LiS−P−P、LiS−P−SiS、LiS−P−SnS、LiS−P−Al、LiS−GeS、LiS−GeS−ZnS、LiS−Ga、LiS−GeS−Ga、LiS−GeS−P、LiS−GeS−Sb、LiS−GeS−Al、LiS−SiS、LiS−Al、LiS−SiS−Al、LiS−SiS−P、LiS−SiS−P−LiI、LiS−SiS−LiI、LiS−SiS−LiSiO、LiS−SiS−LiPO、Li10GeP12などが挙げられる。その中でも、LiS−P、LiS−GeS−Ga、LiS−SiS−P、LiS−SiS−LiSiO、LiS−SiS−LiPO4、LiS−LiI−LiO−P、LiS−LiO−P、LiS−LiPO−P、LiS−GeS−P、Li10GeP12からなる結晶質およびまたは非晶質の原料組成物が、高いリチウムイオン伝導性を有するので好ましい。このような原料組成物を用いて硫化物固体電解質材料を合成する方法としては、例えば非晶質化法を挙げることができる。非晶質化法としては、例えば、メカニカルミリング法および溶融急冷法を挙げることができ、中でもメカニカルミリング法が好ましい。常温での処理が可能になり、製造工程の簡略化を図ることができるからである。
【0027】
(ii)酸化物系無機固体電解質
酸化物系無機固体電解質は、酸素(O)を含有し、かつ、周期律表第1族または第2族に属する金属のイオン伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有するものが好ましい。
【0028】
具体的な化合物例としては、例えばLixaLayaTiO〔xa=0.3〜0.7、ya=0.3〜0.7〕(LLT)、LixbLaybZrzbbbmbnb(MbbはAl,Mg,Ca,Sr,V,Nb,Ta,Ti,Ge,In,Snの少なくとも1種以上の元素でありxbは5≦xb≦10を満たし、ybは1≦yb≦4を満たし、zbは1≦zb≦4を満たし、mbは0≦mb≦2を満たし、nbは5≦nb≦20を満たす。)Lixcyccczcnc(MccはC,S,Al,Si,Ga,Ge,In,Snの少なくとも1種以上の元素でありxcは0≦xc≦5を満たし、ycは0≦yc≦1を満たし、zcは0≦zc≦1を満たし、ncは0≦nc≦6を満たす。)、Lixd(Al,Ga)yd(Ti,Ge)zdSiadmdnd(ただし、1≦xd≦3、0≦yd≦1、0≦zd≦2、0≦ad≦1、1≦md≦7、3≦nd≦13)、Li(3−2xe)eexeeeO(xeは0以上0.1以下の数を表し、Meeは2価の金属原子を表す。Deeはハロゲン原子または2種以上のハロゲン原子の組み合わせを表す。)、LixfSiyfzf(1≦xf≦5、0<yf≦3、1≦zf≦10)、Lixgygzg(1≦xg≦3、0<yg≦2、1≦zg≦10)、LiBO−LiSO、LiO−B−P、LiO−SiO、LiBaLaTa12、LiPO(4−3/2w)(wはw<1)、LISICON(Lithium super ionic conductor)型結晶構造を有するLi3.5Zn0.25GeO、ペロブスカイト型結晶構造を有するLa0.55Li0.35TiO、NASICON(Natrium super ionic conductor)型結晶構造を有するLiTi12、Li1+xh+yh(Al,Ga)xh(Ti,Ge)2−xhSiyh3−yh12(ただし、0≦xh≦1、0≦yh≦1)、ガーネット型結晶構造を有するLiLaZr12等が挙げられる。またLi、P及びOを含むリン化合物も望ましい。例えばリン酸リチウム(LiPO)、リン酸リチウムの酸素の一部を窒素で置換したLiPON、LiPOD(Dは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Ru、Ag、Ta、W、Pt、Au等から選ばれた少なくとも1種)等が挙げられる。また、LiAON(Aは、Si、B、Ge、Al、C、Ga等から選ばれた少なくとも1種)等も好ましく用いることができる。
【0029】
無機固体電解質の体積平均粒子径は特に制限されないが、0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましい。上限としては、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。なお、無機固体電解質粒子の平均粒子径の測定は、以下の手順で行う。無機固体電解質粒子を、水(水に不安定な物質の場合はヘプタン)を用いて20mlサンプル瓶中で1質量%の分散液を希釈調製する。希釈後の分散試料は、1kHzの超音波を10分間照射し、その直後に試験に使用する。この分散液試料を用い、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920(商品名、HORIBA社製)を用いて、温度25℃で測定用石英セルを使用してデータ取り込みを50回行い、体積平均粒子径を得る。その他の詳細な条件等は必要によりJISZ8828:2013「粒子径解析−動的光散乱法」の記載を参照する。1水準につき5つの試料を作製しその平均値を採用する。
【0030】
無機固体電解質の負極用材料中の固形成分における濃度は、電池性能と界面抵抗の低減・維持効果の両立を考慮したとき、固形成分100質量%において、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることが特に好ましい。上限としては、同様の観点から、99.9質量%以下であることが好ましく、99.5質量%以下であることがより好ましく、99質量%以下であることが特に好ましい。
なお、本明細書において固形成分とは、170℃で6時間乾燥処理を行ったときに、揮発ないし蒸発して消失しない成分を言う。典型的には、後述の分散媒体以外の成分を指す。
上記無機固体電解質は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
(バインダー)
本発明の負極用材料はバインダーを含有してもよい。
本発明で使用するバインダーは、有機ポリマーであれば特に限定されない。
本発明に用いることができるバインダーは、通常、電池材料の正極または負極用結着剤として用いられるバインダーが好ましく、特に制限はなく、例えば、以下に述べる樹脂からなるバインダーが好ましい。
【0032】
含フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニレンジフルオリド(PVdF)、ポリビニレンジフルオリドとヘキサフルオロプロピレンの共重合物(PVdF−HFP)が挙げられる。
炭化水素系熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水素添加スチレンブタジエンゴム(HSBR)、ブチレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレンが挙げられる。
アクリル樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸イソプロピル、ポリ(メタ)アクリル酸イソブチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、ポリ(メタ)アクリル酸ヘキシル、ポリ(メタ)アクリル酸オクチル、ポリ(メタ)アクリル酸ドデシル、ポリ(メタ)アクリル酸ステアリル、ポリ(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸ベンジル、ポリ(メタ)アクリル酸グリシジル、ポリ(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、およびこれら樹脂を構成するモノマーの共重合体が挙げられる。
またそのほかのビニル系モノマーとの共重合体も好適に用いられる。例えばポリ(メタ)アクリル酸メチルーポリスチレン共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸メチルーアクリロニトリル共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸ブチルーアクリロニトリル-スチレン共重合体が挙げられる。本発明においては、HSBRが好ましく用いられる。
これらは1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
本発明に用いられるバインダーを構成するポリマーの水分濃度は、100ppm(質量基準)以下が好ましい。
また、本発明に用いられるバインダーを構成するポリマーは、晶析させて乾燥させてもよく、ポリマー溶液をそのまま用いてもよい。金属系触媒(ウレタン化、ポリエステル化触媒=スズ、チタン、ビスマス)は少ない方が好ましい。重合時に少なくするか、晶析で触媒を除くことで、共重合体中の金属濃度を、100ppm(質量基準)以下とすることが好ましい。
【0034】
ポリマーの重合反応に用いる溶媒は、特に限定されない。なお、無機固体電解質や活物質と反応しないこと、さらにそれらを分解しない溶媒を用いることが望ましい。例えば、炭化水素系溶媒(トルエン、ヘプタン、キシレン)やエステル系溶媒(酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、エーテル系溶媒(テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジエトキシエタン)、ケトン系溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン)、ニトリル系溶媒(アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル)、ハロゲン系溶媒(ジクロロメタン、クロロホルム)を用いることができる。
【0035】
本発明に用いられるバインダーを構成するポリマーの質量平均分子量は10,000以上が好ましく、20,000以上がより好ましく、50,000以上がさらに好ましい。上限としては、1,000,000以下が好ましく、200,000以下がより好ましく、100,000以下がさらに好ましい。
本発明において、ポリマーの分子量は、特に断らない限り、質量平均分子量を意味する。質量平均分子量は、GPCによってポリスチレン換算の分子量として計測することができる。このとき、GPC装置HLC−8220(東ソー(株)社製)を用い、カラムはG3000HXL+G2000HXLを用い、23℃で流量は1mL/minで、RIで検出することとする。溶離液としては、THF(テトラヒドロフラン)、クロロホルム、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)、m−クレゾール/クロロホルム(湘南和光純薬(株)社製)から選定することができ、溶解するものであればTHFを用いることとする。
【0036】
バインダーの負極用材料中での濃度は、全固体二次電池に用いたときの良好な界面抵抗の低減性とその維持性を考慮すると、固形成分100質量%において、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、1質量%以上がさらに好ましい。上限としては、電池特性の観点から、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下がさらに好ましい。
本発明では、バインダーの質量に対する、無機固体電解質と負極活物質の合計質量(総量)の質量比[(無機固体電解質の質量+負極活物質の質量)/バインダーの質量]は、1,000〜1の範囲が好ましい。この比率はさらに500〜2がより好ましく、100〜10がさらに好ましい。
【0037】
(リチウム塩)
本発明の固体電解質組成物は、リチウム塩を含有することも好ましい。
リチウム塩としては、通常この種の製品に用いられるリチウム塩が好ましく、特に制限はなく、例えば、特開2015−088486の段落0082〜0085記載のリチウム塩が好ましい。
【0038】
リチウム塩の含有量は、固体電解質100質量部に対して0質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。上限としては、50質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましい。
【0039】
(導電助剤)
次に、本発明の固体電解質組成物に用いることができる導電助剤について説明する。一般的な導電助剤として知られているものを用いることができる。例えば、電子伝導性材料である、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラックなどのカーボンブラック類、ニードルコークスなどの無定形炭素、気相成長炭素繊維やカーボンナノチューブなどの炭素繊維類、グラフェンやフラーレンなどの炭素質材料であっても良いし、銅、ニッケルなどの金属粉、金属繊維でも良く、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリフェニレン誘導体など導電性高分子を用いても良い。またこれらの内1種を用いても良いし、2種以上を用いても良い。
【0040】
本発明において、負極活物質として炭素質材料が用いられ、これは実質的に炭素からなる材料である。例えば、石油ピッチ、ハードカーボン、黒鉛(天然黒鉛、気相成長黒鉛等の人造黒鉛等)、及びPAN系の樹脂やフルフリルアルコール樹脂等の各種の合成樹脂を焼成した炭素質材料を挙げることができる。さらに、PAN系炭素繊維、セルロース系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、脱水PVA系炭素繊維、リグニン炭素繊維、ガラス状炭素繊維、活性炭素繊維等の各種炭素繊維類、メソフェーズ微小球体、平板状の黒鉛等を挙げることもできる。
本発明においては、ハードカーボンまたは黒鉛が好ましく用いられ、黒鉛がより好ましく用いられる。なお、本発明において、上記炭素質材料は1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
負極活物質の平均粒子サイズは、0.1μm〜60μmが好ましい。所定の粒子サイズにするには、通常の粉砕機や分級機が用いられる。例えば、乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、衛星ボールミル、遊星ボールミル、旋回気流型ジェットミルや篩などが好適に用いられる。粉砕時には水、あるいはメタノール等の有機溶媒を共存させた湿式粉砕も必要に応じて行うことができる。所望の粒径とするためには分級を行うことが好ましい。分級方法としては特に限定はなく、篩、風力分級機などを必要に応じて用いることができる。分級は乾式、湿式ともに用いることができる。
【0042】
負極活物質の濃度は特に限定されないが、負極用材料中、固形成分100質量%において、10〜80質量%であることが好ましく、20〜70質量%であることがより好ましい。
【0043】
負極活物質層の単位面積(cm)当たりの負極活物質の質量(mg)(目付量)は特に限定されるものではない。設計された電池容量に応じて、任意に決めることができる。
【0044】
上記負極活物質は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
(導電性を有さない、3環以上の環構造を有する化合物)
次に、本発明に用いられる導電性を有さない、3環以上の環構造を有する化合物について説明する。
ここで、「導電性を有さない」とは、電気伝導度が1×10−6S/m以下であることをいう。電気伝導度は、下記に記載の方法により測定できる。
(1)化合物の有機溶媒分散物をポリフェニレンスルホンシートフイルム上に適用して乾燥と塗布を5回繰り返し、ポリフェニレンスルホンシートから剥がして独立膜を得る。
(2)この独立膜について、表面抵抗測定機(商品名「ハイレスタ−UX MCP−HT800」、三菱化学アナリテック社製)を用いて表面抵抗率R(Ω/sq.)を測定する。
一方、独立膜の膜厚d(μm)を、マイクロメータを用いて測定する。
(3)電気伝導度(S/m)は表面抵抗率R、膜厚dを用いて下記式より算出できる。
電気伝導度=(1/R)/(d×10−6
【0046】
本発明では、導電性を有さない、3環以上の環構造を有する化合物を、単独でまたは必要に応じて他の成分と合わせて分散剤として使用することが好ましい。
本発明の負極用組成物は、導電性を有さない、3環以上の環構造を有する化合物を含有することにより、分散安定性に優れ、金属箔上に適用して形成した負極活物質層中の固体粒子間の距離を均一にすることができる。そのため、この負極活物質層を用いて作製した全固体二次電池はサイクル特性に優れる。
【0047】
本発明に用いられる導電性を有さない、3環以上の環構造を有する化合物は、下記一般式(D)で表される化合物またはこの化合物の少なくとも1つの水素原子を結合手に置き換えた構造を含む化合物であることが好ましい。
このような化合物は炭素質材料との親和性に優れるため、この化合物を含有する固体電解質組成物の分散安定性を向上させることができる。分散安定性の向上に伴い、この固体電解質組成物を用いて作製した全固体二次電池はサイクル特性に優れる。
【化4】
【0048】
一般式(D)中、環αは3環以上の環を表し、RD1は環αの構成原子と結合している置換基を表し、d1は1以上の整数を表す。d1が2以上の場合、複数のRD1は同一でも異なっていてもよい。隣接する原子に置換するRD1が互いに結合して、環を形成してもよい。環αは、3環以上が好ましく、4環以上がより好ましい。また、環αは、18環以下が好ましく、16環以下がより好ましく、12環以下が特に好ましい。
【0049】
一般式(D)で表される化合物の少なくとも1つの水素原子を結合手「−」に置き換えた構造を含む化合物とは、一般式(D)で表される化合物の少なくとも1つの水素原子を結合手「−」に置き換えた構造を含むのであればどのような化合物でも構わない。例えば、環αに置換している置換基が、−OHの場合、環α−OHから、水素原子を結合手「−」に置き換えた構造、すなわち、環α−O−の部分構造を含む化合物である。
一般式(D)で表される化合物の少なくとも1つの水素原子を結合手「−」に置き換えた構造を含む化合物は、一般式(D)で表される化合物の誘導体(単量体)であっても、オリゴマーを含む重合体であっても構わない。
以下、一般式(D)で表される化合物の少なくとも1つの水素原子を結合手に置き換えた構造を含む化合物を一般式(D)で表される部分構造を含む化合物と称す。
【0050】
誘導体の場合、水素原子を結合手に置き換えた結合手には水素原子以外の基、すわなち置換基が結合する。
ここで、誘導体(単量体)とは、例えば、RD1における置換基のうち、ヒドロキシ基およびヒドロキシ基もしくはカルボキシ基のような反応性の基が置換したアルキル基において、ヒドロキシ基のエステル化、エーテル化など、カルボキシ基のエステル化、アミド化などで誘導される化合物である。
【0051】
本発明では、一般式(D)で表される部分構造を含む化合物が、オリゴマーを含む重合体である場合が好ましい。
一般式(D)で表される部分構造はポリマーの主鎖、側鎖またはポリマー末端のいずれに含まれていても構わない。
一般式(D)で表される部分構造において、結合手「−」の先には、例えばオリゴマーを含む重合体が残基として結合してもよい。
なお、ポリマーの主鎖に含むとは、一般式(D)で表される化合物の少なくとも2つの水素原子を結合手に置き換えた構造でポリマーに組込まれ、ポリマーの繰り返し構造となる鎖そのものとなるものである。一方、ポリマーの側鎖に含むとは、一般式(D)で表される化合物の1つの水素原子を結合手に置き換えた構造でポリマーに組込まれ、ポリマーの主鎖に、1つの結合のみで結合したものであり、ポリマー末端に含むとは、一般式(D)で表される化合物の1つの水素原子を結合手に置き換えた構造でポリマーに組込まれ、ポリマー鎖長の末端に有するものである。ここで、ポリマーの主鎖、側鎖およびポリマー末端の複数に含まれていても構わない。
本発明では、主鎖または側鎖が好ましく、側鎖がより好ましい。
【0052】
本発明において、上記一般式(D)で表される化合物の少なくとも1つの水素原子を結合手に置き換えた構造を含む化合物の質量平均分子量は、180〜100,000が好ましく、190〜80,000がより好ましく、200〜60,000が特に好ましい。質量平均分子量は、後述の実施例におけるバインダーの質量平均分子量の測定方法と同様にして求めることができる。
【0053】
また、本発明において、上記一般式(D)で表される化合物は、下記一般式(1)で表される芳香族炭化水素、下記一般式(2)で表される脂肪族炭化水素、およびこれらの芳香族炭化水素または脂肪族炭化水素の少なくとも1つの水素原子を結合手に置き換えた構造を繰り返し単位中に有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
下記一般式(1)で表される芳香族炭化水素、下記一般式(2)で表される脂肪族炭化水素、およびこれらの芳香族炭化水素または脂肪族炭化水素の少なくとも1つの水素原子を結合手に置き換えた構造を繰り返し単位中に有する化合物からなる群から選択される化合物は、負極活物質である炭素質材料との親和性に優れる。そのため、これらの化合物を含有する固体電解質組成物の分散安定性をより向上させることができる。また、分散安定性の向上に伴い、この固体電解質組成物を用いて作製した全固体二次電池のサイクル特性を向上させることができる。
【0054】
【化5】
【0055】
一般式(1)において、Arはベンゼン環を表す。nは0〜8の整数を表す。R11〜R16は各々独立に、水素原子または置換基を表す。XおよびXは各々独立に、水素原子または置換基を表す。ここで、R11〜R16、XおよびXにおいて、互いに隣接する基が結合して、5または6員環を形成してもよい。ただし、nが0の場合、R11〜R16のいずれか1つの置換基は、−(Ar)m−Rxであるか、またはR11〜R16のいずれか2つが互いに結合して、−(Ar)m−を形成する。ここで、Arはフェニレン基を表し、mは2以上の整数を表し、Rxは水素原子または置換基を表す。また、nが1の場合、R11〜R16、XおよびXにおいて、互いに隣接する少なくとも2つが結合して、ベンゼン環を形成する。
【0056】
11〜R16が表す置換基として、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基もしくはその塩、スルホ基もしくはその塩、アミノ基、メルカプト基、アミド基、ホルミル基、シアノ基、ハロゲン原子、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリルアミド基、エポキシ基、オキセタニル基等が挙げられる。
【0057】
なお、以下ではホルミル基をアシル基に含めて説明する。
【0058】
アルキル基の炭素数は、1〜30が好ましく、1〜25がより好ましく、1〜20が特に好ましい。具体的には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、オクチル、ドデシル、ステアリル、ベンジル、ナフチルメチル、ピレニルメチルおよびピレニルブチルが挙げられる。アルキル基としては内部に二重結合または三重結合の不飽和炭素結合を含有することがさらに好ましい。
【0059】
アリール基の炭素数は、6〜30が好ましく、6〜26がより好ましく、6〜15が特に好ましい。具体的には、フェニル、ナフチル、アントラセン、ターフェニル、トリル、キシリル、メトキシフェニル、シアノフェニルおよびニトロフェニルが挙げられる。
【0060】
ヘテロアリール基の炭素数は、1〜30が好ましく、1〜26がより好ましく、1〜15が特に好ましい。ヘテロアリール基のヘテロアリールとして具体的には、フラン、ピリジン、チオフェン、ピロール、トリアジン、イミダゾール、テトラゾール、ピラゾール、チアゾールおよびオキサゾールが挙げられる。
【0061】
アルケニル基の炭素数は、2〜30が好ましく、2〜25がより好ましく、2〜20が特に好ましい。具体的には、ビニルおよび1−プロペニルが挙げられる。
【0062】
アルキニル基の炭素数は、2〜30が好ましく、2〜25がより好ましく、2〜20が特に好ましい。具体的には、エチニル、2−プロピニルおよびフェニルエチニルが挙げられる。
【0063】
・アルコキシ基:アルコキシ基を構成するアルキル基は、上記アルキル基と同義である。
【0064】
・アリールオキシ基:アリールオキシ基を構成するアリール基は、上記アリール基と同義である。
【0065】
・ヘテロアリールオキシ基:ヘテロアリールオキシ基を構成するヘテロアリール基は、上記ヘテロアリール基と同義である。
【0066】
・アルキルチオ基:アルキルチオ基を構成するアルキル基は、上記アルキル基と同義である。
【0067】
・アリールチオ基:アリールチオ基を構成するアリール基は、上記アリール基と同義である。
【0068】
・ヘテロアリールチオ基:ヘテロアリールチオ基を構成するヘテロアリール基は、上記ヘテロアリール基と同義である。
【0069】
・アシル基:炭素数は、1〜30が好ましく、1〜25がより好ましく、1〜20がさらに好ましい。アシル基はホルミル基、脂肪族カルボニル基、芳香族カルボニル基、ヘテロ環カルボニル基を含む。例えば、以下の基が挙げられる。
ホルミル、アセチル(メチルカルボニル)、ベンゾイル(フェニルカルボニル)、エチルカルボニル、アクリロイル、メタクリロイル、オクチルカルボニル、ドデシルカルボニル(ステアリン酸残基)、リノール酸残基、リノレン酸残基
【0070】
・アシルオキシ基:アシルオキシ基を構成するアシル基は、上記アシル基と同義である。
【0071】
・アルコキシカルボニル基:炭素数は2〜30が好ましく、2〜25がより好ましく、2〜20がさらに好ましい。アルコキシカルボニル基を構成するアルキル基の具体例として、上記アルキル基の具体例が挙げられる。
【0072】
・アリールオキシカルボニル基:炭素数は7〜30が好ましく、7〜25がより好ましく、7〜20がさらに好ましい。アリールオキシカルボニル基を構成するアリール基の具体例として、上記アリール基の具体例が挙げられる。
【0073】
・アルキルカルボニルオキシ基:炭素数は2〜30が好ましく、2〜25がより好ましく、2〜20がさらに好ましい。アルキルカルボニルオキシ基を構成するアルキル基の具体例として、上記アルキル基の具体例が挙げられる。
【0074】
・アリールカルボニルオキシ基:炭素数は7〜30が好ましく、7〜25がより好ましく、7〜20がさらに好ましい。アリールカルボニルオキシ基を構成するアリール基の具体例として、上記アリール基の具体例が挙げられる。
【0075】
これら置換基は一般的に、一般式(1)で示される芳香族炭化水素の求電子置換反応、求核置換反応、ハロゲン化、スルホン化、ジアゾ化、またはそれらの組み合わせによって導入することが可能である。例えばフリーデルクラフト反応によるアルキル化、フリーデルクラフト反応によるアシル化、ビルスマイヤー反応、遷移金属触媒カップリング反応などが挙げられる。
【0076】
nは、0〜6の整数がより好ましく、1〜4の整数が特に好ましい。
【0077】
一般式(1)で表される芳香族炭化水素は、下記一般式(1−1)または(1−2)で表される化合物が好ましい。
【0078】
【化6】
【0079】
一般式(1−1)において、Ar、R11〜R16、XおよびXは、一般式(1)におけるAr、R11〜R16、XおよびXと同義であり、好ましい範囲も同じである。n1は1以上の整数を表す。ただし、n1が1の場合、R11〜R16、XおよびXにおいて、互いに隣接する少なくとも2つが結合して、ベンゼン環を形成する。
一般式(1−2)において、Rxは一般式(1)におけるRxと同義であり、好ましい範囲も同じである。R10は置換基を表し、nxは0〜4の整数を表す。m1は3以上の整数を表す。Ryは、水素原子または置換基を表す。ここで、RxとRyが結合してもかまわない。
【0080】
n1は、1〜6の整数が好ましく、1〜3の整数がより好ましく、1〜2の整数が特に好ましい。
m1は、3〜10の整数が好ましく、3〜8の整数がより好ましく、3〜5の整数が特に好ましい。
【0081】
一般式(1)で表される芳香族炭化水素の具定例として、アントラセン、フェナントラセン、ピレン、テトラセン、テトラフェン、クリセン、トリフェニレン、ペンタセン、ペンタフェン、ペリレン、ベンゾ[a]ピレン、コロネン、アンタントレン、コランヌレン、オバレン、グラフェン、シクロパラフェニレン、ポリパラフェニレンおよびシクロフェンが挙げられる。ただし、本発明はこれらに限定されない。
【0082】
一般式(1)で表される部分構造を含む化合物は、極性官能基(特にヒドロキシ基、カルボキシ基もしくはその塩、スルホ基もしくはその塩、アミノ基、シアノ基)を有することが好ましい。
一般式(1)で表される部分構造を含む化合物は、炭化水素系溶媒に分散しうる長鎖アルキル基(炭素数8以上30以下)を有することが好ましい。
極性官能基と長鎖アルキル基とを含有することがさらに好ましい。
ポリマーの場合、一般式(1)で表される部分構造を含む繰り返し単位に加えて、共重合成分として、極性官能基を有するモノマーから得られる繰り返し構造を有する共重合ポリマーが好ましい。また、共重合成分として、炭化水素系溶媒に分散しうる長鎖アルキル基(炭素数8以上30以下)を有するモノマーから得られる繰り返し構造を有する共重合ポリマーも好ましい。極性官能基を有するモノマーから得られる繰り返し単位と長鎖アルキル基を有するモノマーから得られる繰り返し単位とを含有することがさらに好ましい。
【0083】
一般式(1)で表される芳香族炭化水素の少なくとも1つの水素原子を結合手に置き換えた構造を含む化合物の具定例として、以下の化合物が挙げられる。ただし、本発明はこれらに限定されない。
なお、ポリマーの繰り返し単位中、x、y、zはモル%を示し任意の1〜100の数値を取りうる。総和は100である。
【0084】
【化7】
【0085】
【化8】
【0086】
【化9】
【0087】
一般式(1)で表される芳香族炭化水素は、市販品を用いることができる。
また、一般式(1)で表される芳香族炭化水素の少なくとも1つの水素原子を結合手に置き換えた構造を含む化合物(一般式(1)で表される部分構造を含む化合物)は常法により合成することができる。例えば、以下のようにして合成できる。
一般式(1)で表される部分構造を含む化合物が有する置換基は一般的に、一般式(1)で示される芳香族炭化水素の求電子置換反応、求核置換反応、ハロゲン化、スルホン化、ジアゾ化、またはそれらの組み合わせによって導入することが可能である。例えばフリーデルクラフト反応によるアルキル化、フリーデルクラフト反応によるアシル化、ビルスマイヤー反応、遷移金属触媒カップリング反応などが挙げられる。
市販品において、芳香族環に直結するヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、スルホ基等は一般的な有機合成(例えば求核置換反応であるアルキル化、アリール化、アシル化など)により、他の置換基に変換することができる。
一般式(1)で表される部分構造を含むポリマーは、一般式(1)で表される部分構造を含むモノマーを合成し、それらの一般的な重合方法を適用することで得ることができる。
例えば、ラジカル重合性不飽和二重結合を有する一般式(1)で表される部分構造を含むモノマーを上記記載の方法で合成し、ラジカル重合開始剤存在下でラジカル重合することで、炭素鎖を主鎖に有するポリマーを得ることができる。
カチオン重合性環状エーテル官能基(−O−)を有する一般式(1)で表される部分構造を含むモノマーを上記記載の方法で合成し、カチオン重合開始剤存在下でカチオン重合することで、エーテル基を主鎖に有するポリマーを得ることができる。
2置換以上のヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基を有する一般式(1)で表される部分構造を含むモノマーを縮合触媒(例えばビスマス触媒、スズ触媒)存在下で縮合重合することで、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリイミド等の縮合性ポリマーを得ることができる。
【0088】
【化10】
【0089】
一般式(2)において、YおよびYは各々独立に水素原子、メチル基またはホルミル基を表す。R21、R22、R23およびR24は各々独立に、置換基を表し、a、b、cおよびdは0〜4の整数を表す。
ここで、A環は、飽和環、二重結合を1もしくは2個有する不飽和環または芳香環であってもよく、B環およびC環は、二重結合を1もしくは2個有する不飽和環であってもよい。なお、a、b、cまたはdの各々において、2〜4の整数の場合、互いに隣接する置換基が結合して環を形成してもよい。
【0090】
一般式(2)で表される脂肪族炭化水素は、ステロイド骨格を有する化合物である。
ここで、ステロイド骨格の炭素番号は、下記の通りである。
【0091】
【化11】
【0092】
最初に、一般式(2)で表される脂肪族炭化水素を説明する。
【0093】
21、R22、R23およびR24における置換基は、どのような置換基でも構わないが、アルキル基、アルケニル基、ヒドロキシ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシ基またはその塩、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリルアミド基、エポキシ基、オキセタニル基が好ましく、また、同一炭素原子に2つ置換した置換基が共同して形成された、=O基が好ましい。
アルキル基は、炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、置換基を有していてもよい。このような置換基としては、どのような置換基でも構わないが、アルキル基、アルケニル基、ヒドロキシ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホ基が挙げられる。アルキル基としては内部に二重結合または三重結合の不飽和炭素結合を含有することがさらに好ましい。
アルケニル基は、炭素数1〜12のアルケニル基が好ましく、置換基を有していてもよい。このような置換基としては、どのような置換基でも構わないが、アルキル基、アルケニル基、ヒドロキシ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホ基が挙げられる。
21は、炭素番号3に置換するのが好ましく、R22は、炭素番号6または7に置換するのが好ましく、R23は炭素番号11または12に置換するのが好ましく、R24は、炭素番号17に置換するのが好ましい。
【0094】
、Yは水素原子またはメチル基が好ましい。
【0095】
a、b、c、dは0〜2の整数が好ましい。
【0096】
A環が不飽和環である場合、二重結合は炭素番号4と5の結合が好ましく、B環が不飽和環である場合、二重結合は炭素番号5と6または6と7の結合が好ましく、C環が不飽和環である場合、二重結合は炭素番号8と9の結合が好ましい。
【0097】
なお、一般式(2)で表される化合物は、立体異性体のいずれをも包含するものである。置換基の結合方向が紙面下方向をα、紙面上方向をβで表すと、α、βのいずれであってもよく、これらの混合であってもよい。また、A/B環の配置、B/C環の配置、C/D環の配置は、トランス配置であっても、シス配置のいずれであってもよく、これらの混合配置であっても構わない。
【0098】
本発明では、a〜dの総和が1以上であって、かつR21、R22、R23およびR24のいずれかが、ヒドロキシ基または置換基を有するアルキル基が好ましい。
【0099】
ステロイド骨格を有する化合物としては下記に示されるようなステロイドが好ましい。
下記では、ステロイド環に有する置換基は、立体的に制御されているものである。
左からコレスタン類、コラン類、プレグナン類、アンドロスタン類、エストラン類である。
【0100】
【化12】
【0101】
一般式(2)で表される脂肪族炭化水素の具体例として、コレステロール、エルゴステロール、テストステロン、エストラジオール、エルドステロール、アルドステロン、ヒドロコルチゾン、スチグマステロール、チモステロール、ラノステロール、7−デヒドロデスモステロール、7−デヒドロコレステロール、コラン酸、コール酸、リトコール酸、デオキシコール酸、デオキシコール酸ナトリウム、デオキシコール酸リチウム、ヒオデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、デヒドロコール酸、ホケコール酸およびヒオコール酸が挙げられる。ただし、本発明はこれらに限定されない。
【0102】
一般式(2)で表される脂肪族炭化水素は、市販品を用いることができる
【0103】
次に一般式(2)で表される脂肪族炭化水素の少なくとも1つの水素原子を結合手に置き換えた構造を含む化合物を説明する。
【0104】
以下、一般式(2)で表される脂肪族炭化水素の少なくとも1つの水素原子を結合手に置き換えた構造を含む化合物を一般式(2)で表される部分構造を含む化合物と称す。
【0105】
一般式(2)で表される部分構造を含む化合物誘導体(単量体)は、R21、R22、R23およびR24における置換基のうち、ヒドロキシ基もしくはカルボキシ基のような反応性の基が置換したアルキル基において、ヒドロキシ基のエステル化、エーテル化など、カルボキシ基のエステル化、アミド化などで誘導される化合物が好ましい。
【0106】
本発明では、一般式(2)で表される部分構造を含む化合物が、オリゴマーを含む重合体であることが好ましい。
一般式(2)で表される部分構造はポリマーの主鎖、側鎖またはポリマー末端のいずれに含まれていても構わないが、本発明では、主鎖または側鎖が好ましく、側鎖がより好ましい。
【0107】
一般式(2)で表される部分構造を含む化合物が、オリゴマーを含む重合体である場合、一般式(2)で表される化合物において、R21、R22、R23およびR24における置換基の少なくとも1つが重合性基もしくは重合性基を含む基である化合物(モノマー)から得られる。
【0108】
ここで、重合性基とは、重合反応で重合することができる基であり、エチレン性不飽和基、エポキシ基やオキセタニル基のような、開環重合する基、水酸基、アミノ基またはカルボキシ基などの求核性の基を反応するイソシアナト基などが挙げられる。
なお、エチレン性不飽和基は、例えば、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基(アリル基を含む)が挙げられる。
【0109】
本発明では、重合性基は、エチレン性不飽和基、エポキシ基、オキセタニル基が好ましく、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基、エポキシ基、オキセタニル基がより好ましく、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、エポキシ基がさらに好ましく、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基が特に好ましい。
【0110】
重合性基を含む基とは、連結基を介して上記の重合性基が結合した基であり、このような連結基としては、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−C(=O)−、−N(RR1)−、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基もしくはこれらが組み合わさった基が挙げられる。ここで、RR1は、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。
【0111】
21、R22、R23およびR24における置換基が重合性基もしくは重合性基を含む基は、例えば、−O−C(=O)−CH=CH、−O−C(=O)−C(CH)=CH、−C(=O)−アルキレン−O−C(=O)−CH=CH、−C(=O)−アルキレン−O−C(=O)−C(CH)=CH、−O−CH−CH=CH、−C(=O)−アルキレン−O−CH−CH=CH、−アルキレン−O−C(=O)−CH=CH、−アルキレン−O−C(=O)−C(CH)=CH、−O−CH−エポキシ基、−O−CH−オキセタニル基、−C(=O)−アルキレン−O−CH−エポキシ基、−アルキレン−O−CH−エポキシ基、−アルキレン−C(=O)−O−CH−エポキシ基が挙げられる。
【0112】
重合性基もしくは重合性基を含む基は炭素番号3、6、7、11、12、17の少なくともいずれかであることが好ましい。
【0113】
一般式(2)で表される部分構造を含む重合体は、上記化合物の単独重合体であっても共重合体であってもよいが、本発明では、共重合体が好ましい。
【0114】
共重合成分としては、重合性基がエチレン性不飽和基もしくはこれを含む基の場合、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸アミド、芳香族ビニル化合物(例えば、スチレン)、エチレン、プロピレン、ビニルアルコール、ビニルアルコールのエステル(例えば、酢酸ビニル)などが挙げられる。
本発明では、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物から選択される化合物が好ましい。
【0115】
重合性基がエポキシ基、オキセタニル基、イソシアナト基もしくはこれらを含む基の場合、アルコール化合物、アミノアルコール化合物、アミン化合物、カルボン酸化合物、ヒドロキシカルボン酸化合物などが挙げられる。
【0116】
共重合成分は、1種類でも2種以上でも構わない。
【0117】
一般式(2)で表される部分構造を含む化合物は、極性官能基(特にヒドロキシ基、カルボキシ基もしくはその塩、スルホ基もしくはその塩、アミノ基、シアノ基)を有することが好ましい。
一般式(2)で表される部分構造を含む化合物は、炭化水素系溶媒に分散しうる長鎖アルキル基(炭素数8以上30以下)を有することが好ましい。
極性官能基と長鎖アルキル基とを含有することがさらに好ましい。
ポリマーの場合、一般式(2)で表される部分構造を含む繰り返し単位に加えて、共重合成分として、極性官能基を有するモノマーから得られる繰り返し構造を有する共重合ポリマーが好ましい。また、共重合成分として、炭化水素系溶媒に分散しうる長鎖アルキル基(炭素数8以上30以下)を有するモノマーから得られる繰り返し構造を有する共重合ポリマーも好ましい。極性官能基を有するモノマーから得られる繰り返し単位と長鎖アルキル基を有するモノマーから得られる繰り返し単位とを含有することがさらに好ましい。
【0118】
上記一般式(2)で表される脂肪族炭化水素の少なくとも1つの水素原子を結合手に置き換えた構造を含む化合物(一般式(2)で表される部分構造を含む化合物)は常法により合成することができる。例えば、以下のようにして合成できる。
市販品において、ステロイド環に直結するヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、スルホ基等は一般的な有機合成(例えば求核置換反応であるアルキル化、アリール化、アシル化など)により、他の置換基に変換することができる。
一般式(2)で表される部分構造を含むポリマーは、一般式(2)で表される部分構造を含むモノマーを合成し、それらの一般的な重合方法を適用することでポリマーを得ることができる。
例えば、ラジカル重合性不飽和二重結合を有する一般式(2)で表される部分構造を含むモノマーを上記記載の方法で合成し、ラジカル重合開始剤存在下でラジカル重合することで、炭素鎖を主鎖に有するポリマーを得ることができる。
カチオン重合性環状エーテル官能基(−O−)を有する一般式(2)で表される部分構造を含むモノマーを上記記載の方法で合成し、カチオン重合開始剤存在下でカチオン重合することで、エーテル基を主鎖に有するポリマーを得ることができる。
2置換以上のヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基を有する一般式(2)で表される部分構造を含むモノマーを縮合触媒(たとえばビスマス触媒、スズ触媒)存在下で縮合重合することで、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリイミド等の縮合性ポリマーを得ることができる。
【0119】
一般式(2)で表される部分構造を有する化合物の具体例を以下に記載するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、ポリマーの繰り返し単位中、x、y、zはモル%を示し任意の1〜100の数値を取りうる。総和は100である。
【0120】
【化13】
【0121】
【化14】
【0122】
本発明で用いられる導電性を有さない、3環以上の化合物の含有量は特に制限されないが、負極用材料の固形成分100質量%中、0.1〜20質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましく、0.1〜5質量%がさらに好ましい。
【0123】
(分散媒体)
本発明の負極用材料は、上記の各成分を分散させる分散媒体を含有してもよい。分散媒体の具体例としては下記のものが挙げられる。
【0124】
アルコール化合物溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、1−プロピルアルコール、2−プロピルアルコール、2−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、ソルビトール、キシリトール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオールが挙げられる。
【0125】
エーテル化合物溶媒としては、アルキレングリコールアルキルエーテル(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等)、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンが挙げられる。
【0126】
アミド化合物溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、2−ピロリジノン、ε−カプロラクタム、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロパンアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミドなどが挙げられる。
【0127】
アミノ化合物溶媒としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミンなどが挙げられる。
【0128】
ケトン化合物溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンが挙げられる。
【0129】
芳香族化合物溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
【0130】
脂肪族化合物溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカンなどが挙げられる。
【0131】
ニトリル化合物溶媒としては、例えば、アセトニトリル、プロピロニトリル、イソブチロニトリルなどが挙げられる。
【0132】
非水系分散媒体としては、上記芳香族化合物溶媒、脂肪族化合物溶媒等が挙げられる。
【0133】
負極用材料の全質量100質量部に対する分散媒体の含有量は、10〜95質量部が好ましく、15〜90質量部が好ましく、20〜85質量部が特に好ましい。
【0134】
分散媒体は常圧(1気圧)での沸点が50℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましい。上限は250℃以下であることが好ましく、220℃以下であることがさらに好ましい。上記分散媒体は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0135】
本発明において、これらの中でも脂肪族化合物溶媒が好ましく、ヘプタンがより好ましい。
【0136】
なお、負極用材料の粘度は特に制限されないが、負極材料を均一にかつ効率良く分散し、塗布することができるようにするため、100〜2,000mPa・sが好ましく、200〜1,000mPa・sがより好ましい。
【0137】
<<固体電解質組成物>>
以下、本発明の全固体二次電池を構成する固体電解質層および正極活物質層の成形材料として好ましく適用される固体電解質組成物(以下、正極活物質層の成形材料として好ましく適用される固体電解質組成物を「正極用材料」とも称する。)について説明する。
固体電解質組成物は、上記無機固体電解質、上記バインダーおよび上記分散媒体を含有することが好ましい。固体電解質組成物は必要に応じて分散剤、上記導電助剤および上記リチウム塩を含有することができる。
なお、固体電解質組成物が正極活物質層を形成するための正極用材料として用いられる場合、下記正極活物質を含有する。
【0138】
(正極活物質)
正極活物質は可逆的にリチウムイオンを挿入および放出できるものが好ましい。その材料は、特に制限はなく、遷移金属酸化物や、硫黄などのLiと複合化できる元素などでもよい。中でも、遷移金属酸化物を用いることが好ましく、遷移金属元素としてCo、Ni、Fe、Mn、Cu、Vから選択される1種以上の元素を有することがより好ましい。遷移金属酸化物の具体例としては、(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属化合物、(MB)スピネル型構造を有する遷移金属酸化物、(MC)リチウム含有遷移金属リン酸化合物、(MD)リチウム含有遷移金属ハロゲン化リン酸化合物、(ME)リチウム含有遷移金属ケイ酸化物等が挙げられる。
(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属化合物の具体例として、LiCoO(コバルト酸リチウム[LCO])、LiNi(ニッケル酸リチウム)、LiNi0.85Co0.10Al0.05(ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム[NCA])、LiNi0.33Co0.33Mn0.33(ニッケルマンガンコバルト酸リチウム[NMC])、LiNi0.5Mn0.5(マンガンニッケル酸リチウム)が挙げられる。
(MB)スピネル型構造を有する遷移金属酸化物の具体例として、LiCoMnO、LiFeMn、LiCuMn、LiCrMn、LiNiMnが挙げられる。
(MC)リチウム含有遷移金属リン酸化物としては、例えば、LiFePO、LiFe(PO等のオリビン型リン酸鉄塩、LiFeP等のピロリン酸鉄類、LiCoPO等のリン酸コバルト類、Li(PO(リン酸バナジウムリチウム)等の単斜晶ナシコン型リン酸バナジウム塩が挙げられる。
(MD)リチウム含有遷移金属ハロゲン化リン酸化物としては、例えば、LiFePOF等のフッ化リン酸鉄塩、LiMnPOF等のフッ化リン酸マンガン塩、LiCoPOF等のフッ化リン酸コバルト類が挙げられる。
(ME)リチウム含有遷移金属ケイ酸化物としては、例えば、LiFeSiO、LiMnSiO、LiCoSiO等が挙げられる。
【0139】
本発明の正極用材料で使用する正極活物質の体積平均粒子径(球換算平均粒子径)は特に限定されない。なお、0.1μm〜50μmが好ましい。正極活性物質を所定の粒子径にするには、通常の粉砕機や分級機を用いればよい。焼成法によって得られた正極活物質は、水、酸性水溶液、アルカリ性水溶液、有機溶剤にて洗浄した後使用してもよい。正極活物質粒子の平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920(商品名、HORIBA社製)を用いて、体積平均粒子径(球換算平均粒子径)を測定した。
【0140】
正極活物質の含有量は特に限定されないが、正極用材料中、固形成分100質量%において、10〜90質量%が好ましく、20〜80質量%がより好ましい。
【0141】
上記正極活物質は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0142】
<集電体(金属箔)>
正極および負極の集電体は、電子伝導体が好ましい。正極の集電体としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、チタンなどの他にアルミニウムやステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタンあるいは銀を処理させたものが好ましく、その中でも、アルミニウム、アルミニウム合金がより好ましい。負極の集電体としては、アルミニウム、銅、ステンレス鋼、ニッケル、チタンが好ましく、アルミニウム、銅、銅合金がより好ましい。
【0143】
上記集電体の形状としては、通常フィルムシート状のものが使用されるが、ネット、パンチされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の成形体なども用いることができる。
上記集電体の厚みとしては、特に限定されないが、1μm〜500μmが好ましい。また、集電体表面は、表面処理により凹凸を付けることも好ましい。
【0144】
<全固体二次電池の作製>
全固体二次電池の作製は常法によればよい。具体的には、本発明の負極用材料、または固体電解質組成物を集電体となる金属箔上に塗布し、塗膜を形成した全固体二次電池用電極シートとする方法が挙げられる。
例えば、正極集電体である金属箔上に正極用材料を塗布し、正極活物質層を形成し、全固体二次電池用正極シートを作製する。正極活物質層の上に、固体電解質層を形成するための固体電解質組成物を塗布し、固体電解質層を形成する。さらに、固体電解質層の上に、負極用材料を塗布し、負極活物質層を形成する。負極活物質層の上に、負極側の集電体(金属箔)を重ねることで、正極活物質層と負極活物質層の間に、固体電解質層が挟まれた全固体二次電池の構造を得ることができる。
【0145】
本発明の全固体二次電池において、電極層は活物質を含有する。イオン伝導性を向上させる観点から、電極層は上記無機固体電解質を含有することが好ましい。また、固体粒子間、電極間および電極−集電体間の結着性向上の観点から、電極層はバインダーを含有することが好ましい。
固体電解質層は、無機固体電解質を含有する。固体粒子間および層間の結着性向上の観点から、固体電解質層はバインダーを含有することが好ましい。
【0146】
なお、上記の負極用材料および固体電解質組成物の塗布方法は常法によればよい。このとき、正極活物質層を形成するための固体電解質組成物、無機固体電解質層を形成するための固体電解質組成物および負極用材料は、それぞれ塗布した後に乾燥処理を施してもよいし、重層塗布した後に乾燥処理をしてもよい。乾燥温度は特に限定されない。なお、下限は30℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、上限は、300℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましい。このような温度範囲で加熱することで、分散媒体を除去し、固体状態にすることができる。
【0147】
<全固体二次電池の用途>
本発明に係る全固体二次電池は種々の用途に適用することができる。適用態様には特に限定はないが、例えば、電子機器に搭載する場合、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、コードレスフォン子機、ページャー、ハンディーターミナル、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、電気シェーバー、トランシーバー、電子手帳、電卓、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、メモリーカードなどが挙げられる。その他民生用として、自動車、電動車両、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、ロードコンディショナー、時計、ストロボ、カメラ、医療機器(ペースメーカー、補聴器、肩もみ機など)などが挙げられる。更に、各種軍需用、宇宙用として用いることができる。また、太陽電池と組み合わせることもできる。
【0148】
なかでも、高容量且つ高レート放電特性が要求されるアプリケーションに適用されることが好ましい。例えば、今後大容量化が予想される蓄電設備等においては高い信頼性が必須となりさらに電池性能の両立が要求される。また、電気自動車などは高容量の二次電池を搭載し、家庭で日々充電が行われる用途が想定され、過充電時に対して一層の信頼性が求められる。本発明によれば、このような使用形態に好適に対応してその優れた効果を発揮することができる。
【0149】
本発明の好ましい実施形態によれば、以下のような各応用形態が導かれる。
(1)バインダーを含有する負極用材料。
(2)上記負極用材料を金属箔上に適用し、負極活物質層を形成してなる全固体二次電池用電極シート。
(3)正極用材料を金属箔上に適用して正極活物質層を形成し、正極活物質層上に固体電解質組成物を適用して固体電解質層を形成し、固体電解質層上に上記負極用材料を適用して負極活物質層を形成してなる全固体二次電池用電極シート。
(4)上記負極用材料を金属箔上に適用し、製膜する全固体二次電池用電極シートの製造方法。
(5)負極活物質層が、非水系分散媒体によって硫化物系無機固体電解質が分散されたスラリーを湿式塗布し製膜される全固体二次電池の製造方法。
なお、金属箔上に負極用材料または固体電解質組成物を適用する方法には、例えば、塗布(好ましくは湿式塗布)、スプレー塗布、スピンコート塗布、ディップコート、スリット塗布、ストライプ塗布、バーコート塗布が挙げられる。
【0150】
全固体二次電池とは、正極、負極、電解質がともに固体で構成された二次電池を言う。換言すれば、電解質としてカーボネート系の溶媒を用いるような電解液型の二次電池とは区別される。このなかで、本発明は無機全固体二次電池を前提とする。全固体二次電池には、電解質としてポリエチレンオキサイド等の高分子化合物を用いる有機(高分子)全固体二次電池と、上記のLi−P−SやLLT、LLZ等を用いる無機全固体二次電池とに区分される。なお、無機全固体二次電池に高分子化合物を適用することは妨げられず、正極活物質、負極活物質、無機固体電解質粒子のバインダーとして高分子化合物を適用することができる。
無機固体電解質とは、上述した高分子化合物をイオン伝導媒体とする電解質(高分子電解質)とは区別されるものであり、無機化合物がイオン伝導媒体となるものである。具体例としては、上記のLi−P−SやLLT、LLZが挙げられる。無機固体電解質は、それ自体が陽イオン(Liイオン)を放出するものではなく、イオンの輸送機能を示すものである。これに対して、電解液ないし固体電解質層に添加して陽イオン(Liイオン)を放出するイオンの供給源となる材料を電解質と呼ぶことがあるが、上記のイオン輸送材料としての電解質と区別するときにはこれを「電解質塩」または「支持電解質」と呼ぶ。電解質塩としては例えばLiTFSI(リチウムビストリフルオロメタンスルホンイミド)が挙げられる。
本発明において「負極用材料」または「組成物」というときには、2種以上の成分が均一に混合された混合物を意味する。ただし、実質的に均一性が維持されていればよく、所望の効果を奏する範囲で、一部において凝集や偏在が生じていてもよい。
【実施例】
【0151】
以下に、実施例に基づき本発明についてさらに詳細に説明する。なお、本発明がこれにより限定して解釈されるものではない。以下の実施例において「部」および「%」というときには、特に断らない限り質量基準である。
【0152】
<硫化物系無機固体電解質の合成>
−Li−P−S系ガラスの合成−
硫化物系無機固体電解質として、T.Ohtomo,A.Hayashi,M.Tatsumisago,Y.Tsuchida,S.Hama,K.Kawamoto,Journal of Power Sources,233,(2013),pp231−235及びA.Hayashi,S.Hama,H.Morimoto,M.Tatsumisago,T.Minami,Chem.Lett.,(2001),pp872−873の非特許文献を参考にして、Li−P−S系ガラスを合成した。
【0153】
具体的には、アルゴン雰囲気下(露点−70℃)のグローブボックス内で、硫化リチウム(LiS、Aldrich社製、純度>99.98%)2.42g及び五硫化二リン(P、Aldrich社製、純度>99%)3.90gをそれぞれ秤量し、メノウ製乳鉢に投入し、メノウ製乳棒を用いて、5分間混合した。なお、LiS及びPの混合比は、モル比でLiS:P=75:25とした。
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを66個投入し、次いで上記の硫化リチウムと五硫化二リンの混合物の全量を投入し、アルゴン雰囲気下で容器を密閉した。この容器を遊星ボールミルP−7(商品名、フリッチュ社製)にセットし、温度25℃、回転数510rpmで20時間メカニカルミリングを行い、黄色粉末のLi−P−S系ガラス(硫化物系無機固体電解質)6.20gを得た。
【0154】
<分散剤の調製>
冷却管を備えたフラスコに、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)4質量部、ヘプタン230質量部を投入した。その後、スチレン4質量部、メタクリル酸12質量部、コレスタノールメタクリレート10質量部、メタクリル酸2−メチルグリシジル28質量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル24質量部およびメタクリル酸ベンジル16質量部を投入し、反応系を窒素置換した。攪拌機によりゆるやかに攪拌を始め、溶液の温度を70℃に上昇させ、温度を保持したまま4時間攪拌することにより重合体溶液を得た。得られた重合体溶液の固形分濃度は30.0質量%であり、重合体(ステロイド系高分子)の質量平均分子量は、30,000であった。
【0155】
(実施例1)
−固体電解質組成物の調製−
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを180個投入し、上記で合成したLi−P−S系ガラス9.5g、PVdF−HFP(ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)0.5g、及び分散媒体として1,4−ジオキサン15.0gを投入した。その後、この容器を遊星ボールミルP−7(フリッチュ社製)にセットし、温度25℃、回転数300rpmにて2時間攪拌を続け、固体電解質組成物を調製した。
【0156】
−全固体二次電池正極用組成物(正極用材料)の調製−
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを180個投入し、上記で合成したLi−P−S系ガラス0.5g、PVdF−HFP(ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)0.5g、及び分散媒体として1,4−ジオキサン12.3gを投入した。この容器を遊星ボールミルP−7(フリッチュ社製)にセットし、温度25℃、回転数300rpmの条件にて2時間機械分散を続けた。その後、活物質としてコバルト酸リチウム(LCO、日本化学工業(株)製)9.0gを容器に投入し、再びこの容器を遊星ボールミルP−7にセットし、温度25℃、回転数100rpmにて15分間混合を続けた。このようにして、正極用材料を調製した。
【0157】
−全固体二次電池負極用組成物(負極用材料)の調製−
(1)負極用材料(S−1)の調製
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを180個投入し、グラファイト(日本黒鉛工業社製の球状化黒鉛粉末、下記表1では「黒鉛」と記載する。)8質量部、下記表1記載の分散剤(ピレン)0.1質量部、上記で合成したLi−P−S系ガラス2質量部、バインダー(HSBR、水素添加スチレンブタジエンラバー、JSR製商品名:ダイナロン1321P)0.3質量部、及び分散媒体としてヘプタン10質量部を投入した。この容器を遊星ボールミルP−7(商品名、フリッチュ社製)にセットし、温度25℃、回転数360rpmにて90分間、機械分散を続け、負極用材料(S−1)を調製した。なお、上記HSBRをGPCで測定した質量平均分子量は200,000であり、Tgは−50℃であった。
【0158】
(2)負極用材料(S−2)〜(S−5)および(HS−1)の調製
負極用材料(S−1)の調製において、組成を下記表1に示すように変更したこと以外は、負極用材料(S−1)と同様にして、負極用材料(S−2)〜(S−5)および(HS−1)を調製した。なお、負極用材料(S−1)〜(S−5)は実施例となる負極用材料であり、負極用材料(HS−1)は比較用の負極用材料である。
【0159】
<測定方法>
−固形分濃度の測定方法−
調製した重合体溶液をアルミカップ上で10g秤量し、170℃のホットプレート上で6時間乾燥処理を行った後に、アルミカップの質量を除いた質量を測定した。アルミカップの質量を除いた質量が当初秤量した10gに占める割合を固形分濃度とした。
【0160】
−分子量の測定−
本発明に用いられる分散剤およびバインダーの質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって標準ポリスチレン換算したものを採用した。測定装置および測定条件を以下に示す。
カラム:TOSOH TSKgel Super HZM−H、
TOSOH TSKgel Super HZ4000、
TOSOH TSKgel Super HZ2000(いずれも商品名、東ソー社製)
をつないだカラムを用いた。
キャリア:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
キャリア流量:1.0ml/min
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI(屈折率)検出器
【0161】
−粘度−
負極用材料50mLを用いて、東京計器社製のB型粘度計BL2(商品名)で測定した。負極用材料は予め測定温度にて温度が一定となるまで保温しておき、測定はその後に開始した。測定温度は25℃とした。
【0162】
−ガラス転移温度(Tg)−
Tgは、乾燥試料を用いて、示差走査熱量計「X−DSC7000」(商品名、SII・ナノテクノロジー(株)社製)を用いて下記の条件で測定した。測定は同一の試料で二回実施し、二回目の測定結果を採用した。
測定室内の雰囲気:窒素(50mL/min)
昇温速度:5℃/min
測定開始温度:−100℃
測定終了温度:200℃
試料パン:アルミニウム製パン
測定試料の質量:5mg
Tgの算定:DSCチャートの下降開始点と下降終了点の中間温度の小数点以下を四捨五入することでTgを算定した。
【0163】
上記で調製した負極用材料(S−1)〜(S−5)および(HS−1)の分散安定性を評価した。
【0164】
<分散安定性試験>
上記で調製した負極用材料を外形18mm、長さ180mmの共栓試験管に入れ、25℃で24時間静置した。24時間経過後、目視観察し、以下の評価基準で評価した。結果を下記表1に示す。○以上が合格レベルである。
【0165】
−評価基準−
24時間経過後離漿したもの:×
24時間経過後変化が見られなかったもの:○
48時間しても変化が見られなかったもの:◎
【0166】
【表1】
【0167】
<表1の注>
・Li−P−S:上記で合成したLi−P−S系ガラス
・LLT:Li0.33La0.55TiO(平均粒径3.25μm、豊島製作所製)
・ステロイド系高分子:上記で合成したステロイド系高分子
【0168】
表1から明らかなように、本発明の負極用材料(S−1)〜(S−5)は、分散安定性に優れることがわかる。これに対して、本発明に用いられる分散剤を含有しない負極用材料(HS−1)は分散安定性が劣った。
【0169】
全固体二次電池用負極シートの作製
上記で調製した負極用材料を厚み20μmの銅箔上に、クリアランスが調節可能なアプリケーターにより塗布し、80℃で1時間加熱後、さらに110℃で1時間加熱し、分散媒体を乾燥した。その後、ヒートプレス機を用いて、加熱および加圧(10MPa、10秒間)し、負極活物質層を作製した。
【0170】
上記で作製した負極活物質層上に、上記で調製した固体電解質組成物を、クリアランスが調節可能なアプリケーターにより塗布し、80℃で1時間加熱後、さらに110℃で6時間加熱した。負極活物質層上に固体電解質層を形成したシートをヒートプレス機を用いて、加熱および加圧(10MPa、10秒間)し、全固体二次電池用負極シートを作製した。
【0171】
全固体二次電池用正極シートの作製
上記で調製した正極用材料を厚み20μmのアルミ箔上に、クリアランスが調節可能なアプリケーターにより塗布し、80℃で1時間加熱後、さらに110℃で1時間加熱し、分散媒体を乾燥した。その後、ヒートプレス機を用いて、加熱および加圧(10MPa、10秒間)し、全固体二次電池用正極シートを作製した。
【0172】
全固体二次電池の製造
図2に示す全固体二次電池を作製した。
上記で製造した全固体二次電池用負極シートを直径14.5mmの円板状に切り出し、直径13.0mmの円板状に切り出した全固体二次電池用正極シートの正極用材料の塗布面と固体電解質層が向かい合うように、スペーサーとワッシャーを組み込んだステンレス製の2032型コインケース11に入れ、下記表2に記載の試験No.101〜105およびc11の全固体二次電池(コイン電池)13を製造した。
全固体二次電池用電極シート12は図1の構成を有する。正極活物質層、負極活物質層および固体電解質層は、それぞれ表2に記載の膜厚を有する。
上記で製造した試験No.101〜105およびc11の全固体二次電池について、以下の試験を行った。結果をまとめて下記表2に示す。
【0173】
<サイクル特性>
全固体二次電池のサイクル特性を、東洋システム(株)製の充放電評価装置「TOSCAT−3000(商品名)」により測定した。
充電は、電流密度2A/mで電池電圧が4.2Vに達するまで行い、4.2Vに到達後は、電流密度が0.2A/m未満となるまで、定電圧充電を実施した。放電は、電流密度2A/mで電池電圧が3.0Vに達するまで行った。これを1サイクルとし、3サイクル目の放電容量を100とし、放電容量が80未満となったときのサイクル数が30回未満であったものをC(不合格)、30回以上のものをB(合格)、50回以上のものをA(合格)とした。
【0174】
<負極活物質−固体電解質の界面における剥離の有無>
サイクル特性試験後の全固体二次電池をコインケースから取り出し、カミソリ刃で積層方向に切断し、負極活物質層の断面を卓上顕微鏡「TM−1000」(商品名、日立ハイテクノロジーズ製)で×3000倍の拡大率で観察した。
黒鉛と固体電解質の界面に剥離が生じていたものをC(不合格)、剥離が生じていなかったものをB(合格)とした。さらに×5000倍で観察しても剥離の兆候が見られなかったものを特に良好なものとしてA(合格)とした。
【0175】
【表2】
【0176】
<表2の注>
種類:上記で調製した負極用材料のいずれを使用したかを意味する。
目付量:活物質層の単位面積(cm)当たりの活物質の質量(mg)を意味する。
【0177】
表2から明らかなように、本発明の負極用材料を用いて作製した、試験No.101〜105の全固体二次電池は、良好なサイクル特性を示した。負極活物質と固体電解質との界面において剥離が生じていなかったことから、本発明の負極用材料を用いて作製した全固体二次電池の負極活物質層において、固体粒子間に良好な界面が形成されていたと考えられる。これに対して、本発明の規定を満たさない試験No.c11の全固体二次電池は、サイクル特性に劣った。
【0178】
本発明をその実施態様とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
【0179】
本願は、2015年6月2日に日本国で特許出願された特願2015−112323に基づく優先権を主張するものであり、これはいずれもここに参照してその内容を本明細書の記載の一部として取り込む。
【符号の説明】
【0180】
1 負極集電体
2 負極活物質層
3 固体電解質層
4 正極活物質層
5 正極集電体
6 作動部位
10 全固体二次電池
11 コインケース
12 全固体二次電池用電極シート
13 コイン電池
図1
図2
【国際調査報告】