特表-16199805IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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再表2016-199805固体電解質組成物、全固体二次電池用電極シートおよび全固体二次電池ならびに全固体二次電池用電極シートおよび全固体二次電池の製造方法
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  • 再表WO2016199805-固体電解質組成物、全固体二次電池用電極シートおよび全固体二次電池ならびに全固体二次電池用電極シートおよび全固体二次電池の製造方法 図000008
  • 再表WO2016199805-固体電解質組成物、全固体二次電池用電極シートおよび全固体二次電池ならびに全固体二次電池用電極シートおよび全固体二次電池の製造方法 図000009
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2016年12月15日
【発行日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】固体電解質組成物、全固体二次電池用電極シートおよび全固体二次電池ならびに全固体二次電池用電極シートおよび全固体二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0562 20100101AFI20171201BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20171201BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20171201BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20171201BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20171201BHJP
   H01B 1/10 20060101ALI20171201BHJP
【FI】
   H01M10/0562
   H01M4/62 Z
   H01M4/139
   H01M4/13
   H01B1/06 A
   H01B1/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】39
【出願番号】特願2017-523669(P2017-523669)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2016年6月8日
(31)【優先権主張番号】特願2015-116163(P2015-116163)
(32)【優先日】2015年6月8日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】特許業務法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(72)【発明者】
【氏名】牧野 雅臣
(72)【発明者】
【氏名】望月 宏顕
(72)【発明者】
【氏名】三村 智則
(72)【発明者】
【氏名】目黒 克彦
【テーマコード(参考)】
5G301
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5G301CA04
5G301CA05
5G301CA08
5G301CA12
5G301CA16
5G301CA17
5G301CA23
5G301CA27
5G301CA28
5G301CA30
5G301CD01
5H029AJ05
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL04
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM12
5H029CJ22
5H029DJ09
5H029EJ05
5H029EJ07
5H029HJ01
5H029HJ04
5H029HJ05
5H029HJ14
5H029HJ20
5H050AA07
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB05
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA13
5H050EA12
5H050EA15
5H050GA22
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA14
5H050HA17
(57)【要約】
周期律表第1族または第2族に属する金属のイオンのイオン伝導性を有する無機固体電解質と、
平均直径が0.001〜1μmであって、平均長さが0.1〜150μmであり、平均直径に対する平均長さの比が10〜100,000であり、電気伝導度が1×10−6S/m以下である線状構造体と、
有機溶媒とを含有する固体電解質組成物、これを用いた全固体二次電池用電極シートおよび全固体二次電池、ならびに全固体二次電池用電極シートおよび全固体二次電池の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期律表第1族または第2族に属する金属のイオンのイオン伝導性を有する無機固体電解質と、
平均直径が0.001〜1μmであって、平均長さが0.1〜150μmであり、該平均直径に対する該平均長さの比が10〜100,000であり、電気伝導度が1×10−6S/m以下である線状構造体と、
有機溶媒とを含有する固体電解質組成物。
【請求項2】
前記無機固体電解質が硫化物系無機固体電解質である請求項1に記載の固体電解質組成物。
【請求項3】
前記線状構造体の少なくとも1種が、有機物、カーボン、金属、セラミックスおよびガラスからなる群より選択されるいずれかからなるナノファイバーまたはナノワイヤーを含有する請求項1または2に記載の固体電解質組成物。
【請求項4】
前記線状構造体の少なくとも1種が、セルロースナノファイバーを含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
【請求項5】
前記線状構造体の少なくとも1種の表面が、中心部とは構造の異なるポリマーにより被覆されており、
該ポリマーが、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アミド樹脂、ウレア樹脂、イミド樹脂、エステル樹脂、シリコーン樹脂、炭化水素樹脂、エーテル樹脂、カーボネート樹脂および含フッ素樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1〜4のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
【請求項6】
固体電解質組成物の含水率が50ppm以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
【請求項7】
前記有機溶媒の少なくとも1種の沸点が100℃以上である請求項1〜6のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
【請求項8】
前記有機溶媒が、炭化水素系溶媒、エーテル化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エステル化合物溶媒およびニトリル化合物溶媒からなる群より選択される少なくとも1種であって、該有機溶媒の炭素原子数がいずれも4以上である請求項1〜7のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
【請求項9】
ポリマー粒子を含有し、該ポリマー粒子の平均粒子径φおよび前記線状構造体の平均長さLが下記式(A)で表される関係を満たす請求項1〜8のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
L/1000≦φ<L 式(A)
【請求項10】
前記線状構造体の総質量Wおよび前記ポリマー粒子の総質量Wが下記式(B)で表される関係を満たす請求項9に記載の固体電解質組成物。
/10<W<20×W 式(B)
【請求項11】
前記線状構造体の表面と、前記線状構造体の表面を被覆するポリマーが、共有結合により結合している請求項5に記載の固体電解質組成物。
【請求項12】
前記線状構造体の含有率が、全固形成分の0.1〜20質量%である請求項1〜11のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
【請求項13】
電極活物質を含有する請求項1〜12のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の固体電解質組成物を湿式スラリー塗工する全固体二次電池用電極シートの製造方法。
【請求項15】
正極活物質層、固体電解質層および負極活物質層をこの順に有する全固体二次電池用電極シートであって、
該正極活物質層、固体電解質層および負極活物質層の少なくとも1層が、
周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンのイオン伝導性を有する無機固体電解質と、
平均直径が0.001〜1μmであって、平均長さが0.1〜150μmであり、該平均直径に対する該平均長さの比が10〜100,000であり、電気伝導度が1×10−6S/m以下の線状構造体とを含有する全固体二次電池用電極シート。
【請求項16】
請求項15に記載の全固体二次電池用電極シートを用いて構成される全固体二次電池。
【請求項17】
請求項14に記載の製造方法を介して、正極活物質層、固体電解質層および負極活物質層をこの順に有する全固体二次電池を製造する全固体二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解質組成物、全固体二次電池用電極シートおよび全固体二次電池ならびに全固体二次電池用電極シートおよび全固体二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池には、電解液が用いられてきた。その電解液を固体電解質に置き換え、構成材料を全て固体にした全固体二次電池とする試みが進められている。無機の固体電解質を利用する技術の利点として挙げられるのが、電池の性能全体を総合した信頼性である。例えば、リチウムイオン二次電池に用いられる電解液には、その媒体として、カーボネート系溶媒など、可燃性の材料が適用されている。このような電解液を用いる二次電池では、様々な安全対策が採られている。しかし、過充電時などに不具合を来たすおそれがないとは言えず、さらなる対応が望まれる。その抜本的な解決手段として、電解質を不燃性のものとしうる全固体二次電池が位置づけられる。
全固体二次電池のさらなる利点としては、電極のスタックによる高エネルギー密度化に適していることが挙げられる。具体的には、電極と電解質を直接並べて直列化した構造を持つ電池にすることができる。このとき、電池セルを封止する金属パッケージ、電池セルをつなぐ銅線やバスバーを省略することができるため、電池のエネルギー密度が大幅に高められる。また、高電位化が可能な正極材料との相性の良さなども利点として挙げられる。
【0003】
上記のような各利点から、次世代のリチウムイオン電池として全固体二次電池の開発が進められている(非特許文献1)。例えば、特許文献1では、固体粒子間、固体粒子と集電体間等の界面抵抗の上昇を抑制するため、ポリオキシエチレン鎖を有する界面活性剤を含有する粒子状ポリマーからなる結着剤を用いて作製した全固体二次電池が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−008611号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】NEDO技術開発機構,燃料電池・水素技術開発部,蓄電技術開発室「NEDO次世代自動車用蓄電池技術開発 ロードマップ2013」(平成25年8月)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の全固体二次電池では、界面抵抗は抑制されている。しかし、粒子状ポリマーと固体粒子は点で接着しており、充放電の繰返しによる活物質の膨張収縮に対する追随性が十分ではなく、サイクル特性の向上を改善することが望まれる。
【0007】
そこで本発明は、抵抗が低く、かつサイクル特性に優れる全固体二次電池を提供することが可能な固体電解質組成物、これを用いた全固体二次電池用電極シートおよび全固体二次電池ならびに全固体二次電池用電極シートおよび全固体二次電池それぞれの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが鋭意検討した結果、アスペクト比が高い特定の線状構造体を含有する固体電解質組成物を用いれば、抵抗が低く、かつサイクル特性に優れる全固体二次電池を実現できることを見出した。これは、推定も含めて以下の理由によるものと考えられる。すなわち、本発明の固体電解質組成物を用いることにより得られる層は、線状構造体が絡まりあった網目状構造が内部に形成される。この網目状構造に活物質粒子および無機固体電解質粒子が捕捉されることで、全固体二次電池の駆動に伴う活物質の膨張収縮時にも、活物質からの無機固体電解質の剥がれを抑制できる。また、網目状構造であるために無機固体電解質によるリチウムイオン伝達経路が十分に確保され、リチウムイオン伝導が阻害されないと考えられる。本発明はこれらの知見に基づきなされたものである。
すなわち、上記の課題は以下の手段により解決された。
【0009】
(1)周期律表第1族または第2族に属する金属のイオンのイオン伝導性を有する無機固体電解質と、
平均直径が0.001〜1μmであって、平均長さが0.1〜150μmであり、平均直径に対する平均長さの比が10〜100,000であり、電気伝導度が1×10−6S/m以下である線状構造体と、
有機溶媒とを含有する固体電解質組成物。
(2)無機固体電解質が硫化物系無機固体電解質である(1)に記載の固体電解質組成物。
(3)線状構造体の少なくとも1種が、有機物、カーボン、金属、セラミックスおよびガラスからなる群より選択されるいずれかからなるナノファイバーまたはナノワイヤーを含有する(1)または(2)に記載の固体電解質組成物。
(4)線状構造体の少なくとも1種が、置換または無置換セルロースナノファイバーである(1)〜(3)のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
(5)線状構造体の少なくとも1種の表面が、中心部とは構造の異なるポリマーにより被覆されており、
ポリマーが、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アミド樹脂、ウレア樹脂、イミド樹脂、エステル樹脂、シリコーン樹脂、炭化水素樹脂、エーテル樹脂、カーボネート樹脂および含フッ素樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である(1)〜(4)のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
(6)固体電解質組成物の含水率が50ppm以下である(1)〜(5)のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
(7)有機溶媒の少なくとも1種の沸点が100℃以上である(1)〜(6)のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
(8)有機溶媒が、炭化水素系溶媒、エーテル化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エステル化合物溶媒およびニトリル化合物溶媒からなる群より選択される少なくとも1種であって、有機溶媒の炭素原子数がいずれも4以上である(1)〜(7)のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
(9)ポリマー粒子を含有し、ポリマー粒子の平均粒子径φおよび線状構造体の平均長さLが下記式(A)表される関係を満たす(1)〜(8)のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
L/1000≦φ<L 式(A)
(10)線状構造体の総質量Wおよびポリマー粒子の総質量Wが下記式(B)表される関係を満たす(9)に記載の固体電解質組成物。
/10<W<20×W 式(B)
(11)線状構造体の表面と、線状構造体の表面を被覆するポリマーが、共有結合により結合している(5)に記載の固体電解質組成物。
(12)線状構造体の含有率が、全固形成分の0.1〜20質量%である(1)〜(11)のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
(13)電極活物質を含有する(1)〜(12)のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
(14) (1)〜(13)のいずれか1つに記載の固体電解質組成物を湿式スラリー塗工する全固体二次電池用電極シートの製造方法。
(15)正極活物質層、固体電解質層および負極活物質層をこの順に有する全固体二次電池用電極シートであって、
正極活物質層、固体電解質層および負極活物質層の少なくとも1層が、
周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンのイオン伝導性を有する無機固体電解質と、
平均直径が0.001〜1μmであって、平均長さが0.1〜150μmであり、平均直径に対する平均長さの比が10〜100,000であり、電気伝導度が1×10−6S/m以下の線状構造体とを含有する全固体二次電池用電極シート。
(16) (15)に記載の全固体二次電池用電極シートを用いて構成される全固体二次電池。
(17) (14)に記載の製造方法を介して、正極活物質層、固体電解質層および負極活物質層をこの順に有する全固体二次電池を製造する全固体二次電池の製造方法。
【0010】
本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、単に「アクリル」と記載するときは、メタアクリルおよびアクリルの両方を含む意味で使用する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の固体電解質組成物は、抵抗が低く、かつサイクル特性に優れる全固体二次電池の製造に好適に用いることができる。また、本発明の全固体二次電池用電極シートは、上記の優れた性能を有する全固体二次電池の製造を可能にする。また、本発明の製造方法によれば、本発明の全固体二次電池用電極シートおよび上記の優れた性能を有する全固体二次電池を効率良く製造することができる。
本発明の上記及び他の特徴及び利点は、適宜添付の図面を参照して、下記の記載からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の好ましい実施形態に係る全固体リチウムイオン二次電池を模式化して示す縦断面図である。
図2図2は、実施例で利用した試験装置を模式的に示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の固体電解質組成物は、周期律表第1族または第2族に属する金属のイオンのイオン伝導性を有する無機固体電解質と、平均直径が0.001〜1μmであって、平均長さが0.1〜150μmであり、平均直径に対する平均長さの比で表されるアスペクト比が10〜100,000であり、電気伝導度が1×10−6S/m以下である線状構造体と、有機溶媒とを含有する。
以下、その好ましい実施形態について説明する。
【0014】
<好ましい実施形態>
図1は、本発明の好ましい実施形態に係る全固体二次電池(リチウムイオン二次電池)を模式化して示す断面図である。本実施形態の全固体二次電池10は、負極側からみて、負極集電体1、負極活物質層2、固体電解質層3、正極活物質層4、正極集電体5を、この順に有する。各層はそれぞれ接触しており、積層した構造をとっている。このような構造を採用することで、充電時には、負極側に電子(e)が供給され、そこにリチウムイオン(Li)が蓄積される。一方、放電時には、負極に蓄積されたリチウムイオン(Li)が正極側に戻され、作動部位6に電子が供給される。図示した例では、作動部位6に電球を採用しており、放電によりこれが点灯するようにされている。本発明の固体電解質組成物は、上記負極活物質層、正極活物質層、固体電解質層の成形材料として好ましく用いることができる。
【0015】
正極活物質層4、固体電解質層3、負極活物質層2の厚さは特に限定されない。なお、一般的な電池の寸法を考慮すると、10〜1,000μmが好ましく、20μm以上500μm未満がより好ましい。本発明の全固体二次電池においては、正極活物質層4、固体電解質層3および負極活物質層2の少なくとも1層の厚さが、50μm以上500μm未満であることがさらに好ましい。
本明細書において、正極活物質層と負極活物質層をあわせて電極層と称することがある。また、本発明に用いられる電極活物質は、正極活物質層に含有される正極活物質と、負極活物質層に含有される負極活物質があり、いずれかまたは両方を合わせて示すのに単に活物質または電極活物質と称することがある。
【0016】
以下、本発明の全固体二次電池の製造に好適に用いることができる、固体電解質組成物から説明する。
【0017】
<固体電解質組成物>
(線状構造体)
本発明に用いられる線状構造体は、平均直径Dが0.001〜1μmであって、平均長さLが0.1〜150μmであり、平均直径に対する平均長さの比で表されるアスペクト比L/Dが10〜100,000であり、電気伝導度は1×10−6S/m以下である構造体を言う。
【0018】
平均直径Dは0.01〜0.5μmであることが好ましく、0.05〜0.3μmであることがより好ましい。
平均長さLは1〜50μmであることが好ましく、5〜30μmであることがより好ましい。
アスペクト比L/Dは50〜10,000であることが好ましく、100〜5,000であることがより好ましい。
なお、線状構造体の平均直径D、平均長さL、アスペクト比については、SEM(Scanning Electron Microscope)やTEM(Transmission Electron Microscope)等により算出することができる。
具体的な測定条件等については、実施例の項に記載のSEM解析を参照することができる。本発明においては、平均直径は数平均直径を意味し、平均長さは数平均長さを意味する。また、アスペクト比は数平均直径に対する数平均長さのアスペクト比を意味する。
【0019】
また、本発明に用いられる線状構造体は有機物であっても無機物であってもよいが、電気伝導度は1×10−6S/m以下であり、好ましくは5×10−7S/m以下である。このため、導電助剤として用いられるカーボンナノファイバーとは異なる。
なお、線状構造体の電気伝導度は、実施例の項に記載の表面抵抗測定器で測定した表面抵抗率を用いた算出法を参照することができる。
【0020】
本発明に用いられる線状構造体は、1種類の材料から形成されていてもよく、2種類以上の材料から形成されていてもよい。2種類以上の材料で形成される場合、線状構造体の表面がその内部(中心部)と異なる材料から形成されていてもよく、例えば、線状構造体の表面が、線状構造体の中心部とは異なる材料で被覆されている線状構造体が挙げられる。
ここで、線状構造体の中心部は、それ自体単独で線状構造体となりうる部分である。線状構造体の表面とは、中心部の外側の表面部分を意味する。そのため、1種類の材料から形成される場合には、表面が被覆されておらず、中心部のみからなる線状構造体を構成する。
表面を樹脂により被覆した線状構造体を例に説明すると、線状構造体の中心部は、樹脂により被覆される前の線状構造体であり、中心部の表面が樹脂により被覆されている。
【0021】
無機固体電解質粒子の粒子間に3次元網目状の橋架け構造を形成し、電池駆動の間にも粒子間の結合を効果的に維持できるため、線状構造体の少なくとも1種が、有機物、カーボン、金属、セラミックスおよびガラスからなる群より選択されるいずれかからなるナノファイバーまたはナノワイヤーを含有することが好ましく、なかでも線状構造体における中心部が有機物、カーボン、金属、セラミックスおよびガラスからなる群より選択されるいずれかからなるナノファイバーまたはナノワイヤーであることがより好ましい。
中心部が有機物からなる場合には、表面は他の有機物で被覆されていてもされていなくてもよく、中心部が、電気伝導度が1×10−6S/m以下の無機物からなる場合には、表面は有機物で被覆されていてもされていなくてもよい。
中心部が、電気伝導度が1×10−6S/mを超える半導体または導体からなる場合には、表面は電気伝導度が1×10−6S/m以下の材料で被覆されていることが好ましい。なお、線状構造体の電気伝導度が1×10−6S/m以下であればよい。
電気伝導度が1×10−6S/m以下の材料としては、有機物が好ましく、有機物であれば低分子化合物、オリゴマーおよびポリマーのいずれでもよいが、ポリマーであることが好ましい。
【0022】
線状構造体の表面を被覆する場合、表面被覆率は、被覆する前の線状構造体の質量100%に対する表面を被覆する有機物の質量比で、0.1%〜1000%が好ましく、1%〜100%がより好ましく、5%〜50%がさらに好ましい。
なお、表面被覆率の算出方法は、実施例の項に記載の表面被覆率の算出方法を参照することができる。
中心部の表面全てが均一に被覆されている必要はなく、線状構造体としての電気伝導度が上記好ましい範囲にある限り、一部、被覆されておらず、中心部の構造が最表面となっている箇所があってもよい。
【0023】
線状構造体の表面を有機物で被覆する方法としては、水素結合、イオン結合、共有結合、分子間相互作用、π−π相互作用、疎水性相互作用などを利用する方法が挙げられ、共有結合の形成により表面を被覆する方法が好ましい。
共有結合としては、例えば、線状構造体の表面(線状構造体の中心部の表面部分)に存在する−OH基と、表面を被覆する有機物が有する官能基との反応により形成される結合が挙げられる。具体的には、表面を被覆する有機物が有する官能基が−COOH基(や−COCl基等の活性基)、−NCO基、エポキシ基、アルコキシシリル基である場合に形成される共有結合として、それぞれエステル結合、ウレタン結合、炭素−炭素結合、シロキサン結合が挙げられる。
【0024】
線状構造体の表面に存在する−OH基と、表面を被覆する有機物が有する官能基との反応による共有結合の形成反応は、一般的な低分子および高分子有機合成反応における反応条件の適用により行うことができる。具体的には、線状構造体を分散媒体(後述の有機溶媒等)に分散させた後、表面を被覆するための反応活性な有機物を投入して結合を形成させる方法や、線状構造体に表面を被覆するための反応活性な有機物を噴霧する方法などが挙げられる。
結合を形成させるためのエネルギー供給源としては、例えば、有機物が低分子化合物の場合には、超音波照射、活性光線照射(例えば、UV、X線、エキシマレーザー、電子線)、加熱、撹拌が挙げられる。また、有機物がオリゴマーまたはポリマーの場合にも、低分子と同様の条件を適用することで反応さることができる。
【0025】
本発明においては、表面にポリマーが存在することで無機固体電解質との接着性を高めることができるため、線状構造体の少なくとも1種の表面が、線状構造体の中心部とは構造の異なるポリマーにより被覆されていることも好ましい。なお、本明細書において、ポリマーを樹脂と同義の用語として用いることがある。
表面を被覆するポリマーとしては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アミド樹脂、ウレア樹脂、イミド樹脂、エステル樹脂、シリコーン樹脂、炭化水素樹脂、エーテル樹脂、カーボネート樹脂および含フッ素樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アミド樹脂、ウレア樹脂、イミド樹脂およびエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、アクリル樹脂またはウレタン樹脂がさらに好ましい。
【0026】
アクリル樹脂としては、後述のバインダーの項で記載する樹脂の具体例が好ましく適用される。また特に限定されないが、特開2015−88486号公報に記載のアクリル樹脂も好適に用いられる。
ウレタン樹脂、アミド樹脂、ウレア樹脂、イミド樹脂、エステル樹脂としては、特に限定されないが、例えば、特開2015−88480号公報に記載の樹脂を好適に用いることができる。
シリコーン樹脂としては特に限定されないが、例えば、ジメチルシリコーンの側鎖または末端部に官能基を有する変性樹脂を好適に用いることができる。官能基としては、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、エポキシ基、アクリロイル基、メルカプト基、カルボン酸無水物含有基、ポリエーテル結合を有する基等が挙げられ、いずれも信越シリコーン(株)から入手可能である。
炭化水素樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、水素添加スチレンブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム、水素添加ニトリルブタジエンゴムが挙げられる。
エーテル樹脂としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリフェニレンエーテルが挙げられる。
カーボネート樹脂としては、アルキレンカーボネート樹脂などが挙げられる。
含フッ素樹脂としては、後述のバインダーの項で記載する樹脂の具体例が好ましく適用される。
上記に挙げた樹脂は、線状構造体と結合を形成するために、一部変性された極性官能基(例えば、−COCl基、−COBr基)や反応性官能基(例えば、−COOH基、−NCO基、エポキシ基、アルコキシシリル基、ハロゲン化アルキル基)を有していることが好ましい。
【0027】
表面を被覆するポリマーの合成方法は特に限定されず、常法により合成することができる。例えば、線状構造体の−OH基と反応する官能基を有するモノマーを重合することにより、線状構造体の−OH基と反応する官能基を有するポリマーを合成することができる。
線状構造体の表面と、線状構造体の表面を被覆するポリマーは、より強い結合を形成するため、共有結合により結合していることが好ましい。この場合、ポリマーは、線状構造体の−OH基と反応する官能基を、側鎖に有していてもよく、ポリマー末端に有していてもよく、両方に有していてもよい。なかでも、線状構造体の−OH基と反応する官能基をポリマー末端に有することが、線状構造体の−OH基と線状構造体の−OH基と反応する官能基との反応効率を向上し、ポリマーによる線状構造体の表面の被覆効率を高める観点から好ましい。
【0028】
表面を被覆するポリマーの、線状構造体の−OH基と反応する官能基の官能基当量は、反応したポリマーで線状構造体の表面が被覆される限り制限されるものではない。ここで、官能基当量とは、官能基1個当たりの化合物の分子量を表す。
表面を被覆するポリマーの、線状構造体の−OH基と反応する官能基の官能基当量は、被覆効率を高め、被覆強度を高める観点から、0.1g/mmol〜100g/mmolが好ましく、1g/mmol〜10g/mmolがより好ましい。上記好ましい範囲内にあることで、線状構造体の表面を被覆するポリマーが、線状構造体に強固に結合することができる。
【0029】
表面を被覆するポリマーの質量平均分子量は1,000以上100,000以下が好ましい。
線状構造体の−OH基と反応する官能基を側鎖に有する場合、質量平均分子量は8,000以上100,000以下がより好ましく、10,000以上50,000以下がさらに好ましい。
線状構造体の−OH基と反応する官能基をポリマー末端に有する場合、質量平均分子量は1,000以上30,000以下がより好ましく、3,000以上10,000以下がさらに好ましい。
【0030】
表面を被覆するポリマーのガラス転移温度は、−80℃以上50℃以下が好ましく、水分濃度は100ppm以下が好ましい。
【0031】
なお、質量平均分子量、ガラス転移温度および水分濃度の測定方法は、後述のバインダーにおける質量平均分子量、ガラス転移温度および水分濃度の測定方法の記載がそのまま好ましく適用される。
【0032】
また、線状構造体の少なくとも1種の表面が、線状構造体の中心部とは構造の異なる低分子化合物により被覆されていることも好ましい。
低分子化合物としては、例えば、飽和脂肪酸(炭素数1〜30が好ましく、炭素数8〜20がより好ましく、ラウリン酸、ステアリン酸等)、不飽和脂肪酸(炭素数2〜30が好ましく、炭素数8〜20がより好ましく、オレイン酸、リノレン酸等)が挙げられる。
線状構造体と表面を被覆する低分子化合物との間に共有結合が形成される場合、低分子化合物は、線状構造体の−OH基と反応する官能基を分子内に1つ以上有していればよい。
線状構造体の−OH基と反応する官能基を有する低分子化合物としては、例えば、脂肪酸クロリド(炭素数1〜30が好ましく、ラウリン酸クロリド等)、不飽和脂肪酸クロリド(炭素数2〜30が好ましく、オレイン酸クロリド、リノレン酸クロリド等)が挙げられる。
低分子化合物の分子量は、50〜1,000が好ましく、100〜500がより好ましい。
【0033】
有機物からなる線状構造体としては、例えば、セルロースナノファイバー(商品名:セリッシュ(ダイセルファインケム(株)製))、置換セルロースナノファイバー、ポリエステルナノファイバー(商品名:ナノフロント(帝人(株)製))、ポリアミドナノファイバー(商品名:ティアラ(ダイセルファインケム(株)製))、アクリルナノファイバー、ポリウレタンナノファイバー、ポリイミドナノファイバーが挙げられる。
カーボンからなる線状構造体としては、例えばカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーが挙げられる。
無機物からなる線状構造体としては、例えば、金属からなる線状構造体(銀ナノワイヤー、銅ナノワイヤー、ニッケルナノワイヤー、コバルトナノワイヤー、金ナノワイヤー等)、セラミックスからなる線状構造体(酸化アルミナノワイヤー、水酸化銅ナノワイヤー、ヒドロキシアパタイトナノワイヤー、酸化鉄水和物ナノワイヤー、酸化鉄ナノワイヤー、水酸化ニッケルナノワイヤー、酸化マグネシウムナノワイヤー、酸化モリブデンナノワイヤー、シリコンカーバイドナノワイヤー、酸化チタンナノワイヤー、酸化マンガンナノワイヤー、酸化ニッケルナノワイヤー、酸化タングステンナノワイヤー、酸化バナジウムナノワイヤー、酸化亜鉛ナノワイヤー等)、ガラスからなる線状構造体(シリカグラスナノファイバー等)が挙げられる。
【0034】
無機固体電解質に対して安定であり、かつセルロース由来の水酸基を多数有していることで、線状構造体の表面に容易に共有結合を形成させることができるため、線状構造体の少なくとも1種が、セルロースナノファイバーを含有することが好ましく、置換または無置換セルロースナノファイバーであることが好ましい。
置換セルロースナノファイバーとしては、市販品以外に、無置換セルロースナノファイバーの表面を前述の有機物で被覆したものが挙げられる。
【0035】
本発明に用いられる線状構造体は、有機溶媒で分散された状態がより好ましい。
水分散物の場合には、水よりも高い沸点の有機溶媒を用いて共沸脱水を行うことで脱水し、有機溶媒へ転相することができる。脱水方法としては、上記にあげた有機溶媒との共沸脱水による方法や、シリカゲル、モレキュラーシーブ、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム等の脱水剤による脱水方法が挙げられる。
【0036】
水分散物を有機溶媒に転相するには多段階で脱水をすることが好ましい。すなわち、1段階目の脱水では水溶性低沸点有機溶媒を用い、2段階目以降の脱水では前の段階で用いた有機溶媒よりも親油性で高沸点の有機溶媒を用いる。最終的に水層から油層(有機溶媒)に転相する。最終段階での脱水に用いる有機溶媒は水よりも沸点が高いことが好ましい。また1段階目の脱水で親水性有機溶媒を用い水分を大部分除去(10000ppm以下(1%以下)になるように)したあと、線状構造体を有機物で被覆する操作を行い線状構造体の表面を疎水化する。2段階目以降で親油性有機溶媒を用いてさらに脱水を進めていくと凝集が起こらず均一な分散体を得ることができる。
【0037】
上記の方法により脱水することで、線状構造体が凝集を引き起こさず、分散性が保たれ、かつ、含水率が下記好ましい範囲にある有機溶媒分散物とすることができるため好ましい。例えば、線状構造体の水分散物をそのまま乾燥することで水を揮発させると、線状構造体が凝集を引き起こし、再分散できなくなるため好ましくない。
【0038】
本発明に用いられる線状構造体分散物の含水率は、50ppm以下が好ましく、40ppm以下がより好ましく、30ppm以下がさらに好ましい。含水率の下限値は特に制限されないが、0.001ppm以上が実際的である。
なお、線状構造体分散物の含水率は、実施例の項に記載の線状構造体分散物の含水率の測定方法を参照して測定することができる。
上記好ましい範囲にあることで、無機固体電解質として硫化物系無機固体電解質を用いる場合に、水との反応を抑制することができる。
【0039】
線状構造体の含有率は、固体電解質組成物中の全固形成分の0.1〜20質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましく、0.1〜5質量%がさらに好ましく、0.1〜2質量%が特に好ましい。
なお、本明細書において固形成分とは、170℃で6時間乾燥処理を行ったときに、揮発ないし蒸発して消失しない成分を言う。典型的には、後述の有機溶媒以外の成分を指す。
上記好ましい範囲内にあることで、イオンの伝導を阻害することなく固体界面の結着性を高めることが出来るため好ましい。
上記線状構造体は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよく、1種単独で用いることが好ましい。
【0040】
線状構造体は、線状構造体単体で固体電解質組成物に混合してもよいし、線状構造体の有機溶媒分散物の状態で固体電解質組成物に混合してもよい。なかでも、線状構造体の有機溶媒分散物の状態で固体電解質組成物に混合することが好ましい。
線状構造体の有機溶媒分散物中での濃度(固形分濃度)は、線状構造体の分散性を維持する観点から、0.01〜5質量%が好ましく、0.1〜3質量%がより好ましい。
【0041】
(無機固体電解質)
無機固体電解質とは、無機の固体電解質のことであり、固体電解質とは、その内部においてイオンを移動させることができる固体状の電解質のことである。主たるイオン伝導性材料として有機物を含むものではないことから、有機固体電解質(PEOなどに代表される高分子電解質、LiTFSIなどに代表される有機電解質塩)とは明確に区別される。また、無機固体電解質は定常状態では固体であるため、通常カチオンおよびアニオンに解離または遊離していない。この点で、電解液やポリマー中でカチオンおよびアニオンが解離または遊離している無機電解質塩(LiPF、LiBF,LiFSI,LiClなど)とも明確に区別される。無機固体電解質は周期律表第1族または第2族に属する金属のイオンのイオン伝導性(以下、金属のイオン伝導性とも称する。)を有するものであれば特に限定されず電子伝導性を有さないものが一般的である。
【0042】
本発明において、無機固体電解質は、周期律表第1族または第2族に属する金属のイオンのイオン伝導性を有する。上記無機固体電解質は、この種の製品に適用される固体電解質材料を適宜選定して用いることができる。無機固体電解質は(i)硫化物系無機固体電解質と(ii)酸化物系無機固体電解質が代表例として挙げられる。
【0043】
(i)硫化物系無機固体電解質
硫化物系無機固体電解質は、硫黄(S)を含有し、かつ、周期律表第1族または第2族に属する金属のイオン伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有するものが好ましい。硫化物系無機固体電解質は、元素として少なくともLi、SおよびPを含有し、リチウムイオン伝導性を有しているものが好ましいが、目的または場合に応じて、Li、SおよびP以外の他の元素を含んでもよい。
例えば下記式(1)で示される組成を満たすリチウムイオン伝導性無機固体電解質が挙げられる。

a1b1c1d1e1 (1)

(式中、LはLi、NaおよびKから選択される元素を示し、Liが好ましい。Mは、B、Zn、Sn、Si、Cu、Ga、Sb、Al及びGeから選択される元素を示す。なかでも、B、Sn、Si、Al、Geが好ましく、Sn、Al、Geがより好ましい。Aは、I、Br、Cl、Fを示し、I、Brが好ましく、Iが特に好ましい。a1〜e1は各元素の組成比を示し、a1:b1:c1:d1:e1は1〜12:0〜1:1:2〜12:0〜5を満たす。a1はさらに、1〜9が好ましく、1.5〜4がより好ましい。b1は0〜0.5が好ましい。d1はさらに、3〜7が好ましく、3.25〜4.5がより好ましい。e1はさらに、0〜3が好ましく、0〜1がより好ましい。)
【0044】
式(1)において、L、M、P、S及びAの組成比は、好ましくはb1、e1が0であり、より好ましくはb1=0、e1=0で且つa1、c1及びd1の比(a1:c1:d1)がa1:c1:d1=1〜9:1:3〜7であり、さらに好ましくはb1=0、e1=0で且つa1:c1:d1=1.5〜4:1:3.25〜4.5である。各元素の組成比は、後述するように、硫化物系固体電解質を製造する際の原料化合物の配合量を調整することにより制御できる。
【0045】
硫化物系無機固体電解質は、非結晶(ガラス)であっても結晶化(ガラスセラミックス化)していてもよく、一部のみが結晶化していてもよい。例えば、Li、PおよびSを含有するLi−P−S系ガラス、またはLi、PおよびSを含有するLi−P−S系ガラスセラミックスを用いることができる。
硫化物系無機固体電解質は、[1]硫化リチウム(LiS)と硫化リン(例えば五硫化二燐(P))、[2]硫化リチウムと単体燐および単体硫黄の少なくとも一方、または[3]硫化リチウムと硫化リン(例えば五硫化二燐(P))と単体燐および単体硫黄の少なくとも一方、の反応により製造することができる。
【0046】
Li−P−S系ガラスおよびLi−P−S系ガラスセラミックスにおける、LiSとPとの比率は、LiS:Pのモル比で、好ましくは65:35〜85:15、より好ましくは68:32〜77:23である。LiSとPとの比率をこの範囲にすることにより、リチウムイオン伝導度を高いものとすることができる。具体的には、リチウムイオン伝導度を好ましくは1×10−4S/cm以上、より好ましくは1×10−3S/cm以上とすることができる。上限は特にないが、1×10−1S/cm以下であることが実際的である。
【0047】
具体的な化合物例としては、例えばLiSと、第13族〜第15族の元素の硫化物とを含有する原料組成物を用いてなるものを挙げることができる。具体的には、LiS−P、LiS−LiI−P、LiS−LiI−LiO−P、LiS−LiBr−P、LiS−LiO−P、LiS−LiPO−P、LiS−P−P、LiS−P−SiS、LiS−P−SnS、LiS−P−Al、LiS−GeS、LiS−GeS−ZnS、LiS−Ga、LiS−GeS−Ga、LiS−GeS−P、LiS−GeS−Sb、LiS−GeS−Al、LiS−SiS、LiS−Al、LiS−SiS−Al、LiS−SiS−P、LiS−SiS−P−LiI、LiS−SiS−LiI、LiS−SiS−LiSiO、LiS−SiS−LiPO、Li10GeP12などが挙げられる。その中でも、LiS−P、LiS−GeS−Ga、LiS−SiS−P、LiS−SiS−LiSiO、LiS−SiS−LiPO4、LiS−LiI−LiO−P、LiS−LiO−P、LiS−LiPO−P、LiS−GeS−P、Li10GeP12からなる結晶質およびまたは非晶質の原料組成物が、高いリチウムイオン伝導性を有するので好ましい。このような原料組成物を用いて硫化物固体電解質材料を合成する方法としては、例えば非晶質化法を挙げることができる。非晶質化法としては、例えば、メカニカルミリング法および溶融急冷法を挙げることができ、中でもメカニカルミリング法が好ましい。常温での処理が可能になり、製造工程の簡略化を図ることができるからである。
【0048】
(ii)酸化物系無機固体電解質
酸化物系無機固体電解質は、酸素(O)を含有し、かつ、周期律表第1族または第2族に属する金属のイオン伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有するものが好ましい。
【0049】
具体的な化合物例としては、例えばLixaLayaTiO〔xa=0.3〜0.7、ya=0.3〜0.7〕(LLT)、LixbLaybZrzbbbmbnb(MbbはAl,Mg,Ca,Sr,V,Nb,Ta,Ti,Ge,In,Snの少なくとも1種以上の元素でありxbは5≦xb≦10を満たし、ybは1≦yb≦4を満たし、zbは1≦zb≦4を満たし、mbは0≦mb≦2を満たし、nbは5≦nb≦20を満たす。)Lixcyccczcnc(MccはC,S,Al,Si,Ga,Ge,In,Snの少なくとも1種以上の元素でありxcは0≦xc≦5を満たし、ycは0≦yc≦1を満たし、zcは0≦zc≦1を満たし、ncは0≦nc≦6を満たす。)、Lixd(Al,Ga)yd(Ti,Ge)zdSiadmdnd(ただし、1≦xd≦3、0≦yd≦1、0≦zd≦2、0≦ad≦1、1≦md≦7、3≦nd≦13)、Li(3−2xe)eexeeeO(xeは0以上0.1以下の数を表し、Meeは2価の金属原子を表す。Deeはハロゲン原子または2種以上のハロゲン原子の組み合わせを表す。)、LixfSiyfzf(1≦xf≦5、0<yf≦3、1≦zf≦10)、Lixgygzg(1≦xg≦3、0<yg≦2、1≦zg≦10)、LiBO−LiSO、LiO−B−P、LiO−SiO、LiBaLaTa12、LiPO(4−3/2w)(wはw<1)、LISICON(Lithium super ionic conductor)型結晶構造を有するLi3.5Zn0.25GeO、ペロブスカイト型結晶構造を有するLa0.55Li0.35TiO、NASICON(Natrium super ionic conductor)型結晶構造を有するLiTi12、Li1+xh+yh(Al,Ga)xh(Ti,Ge)2−xhSiyh3−yh12(ただし、0≦xh≦1、0≦yh≦1)、ガーネット型結晶構造を有するLiLaZr12(LLZ)等が挙げられる。またLi、P及びOを含むリン化合物も望ましい。例えばリン酸リチウム(LiPO)、リン酸リチウムの酸素の一部を窒素で置換したLiPON、LiPOD(Dは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Ru、Ag、Ta、W、Pt、Au等から選ばれた少なくとも1種)等が挙げられる。また、LiAON(Aは、Si、B、Ge、Al、C、Ga等から選ばれた少なくとも1種)等も好ましく用いることができる。
【0050】
本発明においては、周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオン伝導性を有する無機固体電解質が、高いイオン伝導度を有し、粒子界面の抵抗が小さいため、硫化物系無機固体電解質であることが好ましい。
【0051】
無機固体電解質の体積平均粒子径は特に限定されないが、0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましい。上限としては、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。なお、無機固体電解質粒子の平均粒子径の測定は、以下の手順で行う。無機固体電解質粒子を、水(水に不安定な物質の場合はヘプタン)を用いて20mlサンプル瓶中で1質量%の分散液を希釈調整する。希釈後の分散試料は、1kHzの超音波を10分間照射し、その直後に試験に使用する。この分散液試料を用い、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920(HORIBA社製)を用いて、温度25℃で測定用石英セルを使用してデータ取り込みを50回行い、体積平均粒子径を得る。その他の詳細な条件等は必要によりJISZ8828:2013「粒子径解析−動的光散乱法」の記載を参照する。1水準につき5つの試料を作製しその平均値を採用する。
【0052】
無機固体電解質の固体電解質組成物中の固形成分における濃度は、界面抵抗の低減と低減された界面抵抗の維持を考慮したとき、固形成分100質量%において、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることが特に好ましい。上限としては、同様の観点から、99.9質量%以下であることが好ましく、99.5質量%以下であることがより好ましく、99質量%以下であることが特に好ましい。
上記無機固体電解質は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
(バインダー)
本発明の固体電解質組成物は、バインダーを含有することも好ましい。本発明で使用することができるバインダーは、有機ポリマーであれば特に限定されない。
本発明に用いることができるバインダーは、通常、電池材料の正極または負極用結着剤として用いられるバインダーが好ましく、特に制限はなく、例えば、以下に述べる樹脂からなるバインダーが好ましい。
【0054】
含フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニレンジフルオリド(PVdF)、ポリビニレンジフルオリドとヘキサフルオロプロピレンの共重合物(PVdF−HFP)が挙げられる。
炭化水素系熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水素添加スチレンブタジエンゴム(HSBR)、ブチレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソプレンラテックスが挙げられる。
アクリル樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸イソプロピル、ポリ(メタ)アクリル酸イソブチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、ポリ(メタ)アクリル酸ヘキシル、ポリ(メタ)アクリル酸オクチル、ポリ(メタ)アクリル酸ドデシル、ポリ(メタ)アクリル酸ステアリル、ポリ(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸ベンジル、ポリ(メタ)アクリル酸グリシジル、ポリ(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、およびこれら樹脂を構成するモノマーの共重合体が挙げられる。
ウレタン樹脂としては、例えば、ポリウレタンが挙げられる。
またそのほかのビニル系モノマーとの共重合体も好適に用いられる。例えばポリ(メタ)アクリル酸メチルーポリスチレン共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸メチルーアクリロニトリル共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸ブチルーアクリロニトリル-スチレン共重合体などが挙げられる。
これらは1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
本発明に用いることができるバインダーはポリマー粒子であることが好ましく、ポリマー粒子の平均粒子径φは、0.01μm〜100μmが好ましく、0.05μm〜50μmがより好ましく、0.05μm〜20μmがさらに好ましい。平均粒子径φが上記好ましい範囲内にあることが出力密度向上の観点から好ましい。
【0056】
本発明に用いることができるポリマー粒子の平均粒子径φは、特に断らない限り、以下に記載の測定条件および定義によるものとする。
ポリマー粒子を任意の溶媒(固体電解質組成物の調製に用いる有機溶媒、例えば、ヘプタン)を用いて20mlサンプル瓶中で1質量%の分散液を希釈調製する。希釈後の分散試料は、1kHzの超音波を10分間照射し、その直後に試験に使用する。この分散液試料を用い、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920(商品名、HORIBA社製)を用いて、温度25℃で測定用石英セルを使用してデータ取り込みを50回行い、得られた体積平均粒子径を平均粒子径φとする。その他の詳細な条件等は必要によりJISZ8828:2013「粒子径解析−動的光散乱法」の記載を参照する。1水準につき5つの試料を作製して測定し、その平均値を採用する。
なお、作製された全固体二次電池からの測定は、例えば、電池を分解し電極を剥がした後、その電極材料について上記ポリマー粒子の平均粒子径φの測定方法に準じてその測定を行い、あらかじめ測定していたポリマー粒子以外の粒子の平均粒子径の測定値を排除することにより行うことができる。
【0057】
ポリマー粒子は、有機ポリマー粒子であれば構造は特に限定されない。有機ポリマー粒子を構成する樹脂は、上記バインダーを構成する樹脂として記載した樹脂が挙げられ、好ましい樹脂も適用される。
【0058】
ポリマー粒子は固形を保持していれば、形状は限定されない。ポリマー粒子は単一分散であっても多分散であってもよい。ポリマー粒子は真球状であっても扁平形状であってもよく、さらに無定形であってもよい。ポリマー粒子の表面は平滑であっても凹凸形状を形成していてもよい。ポリマー粒子はコアシェル構造を取ってもよく、コア(内核)とシェル(外殻)が同様の材料で構成されていても、異なる材質で構成されていてもよい。また中空であっても良く、中空率についても限定されない。
【0059】
ポリマー粒子は、界面活性剤、乳化剤または分散剤の存在下で重合する方法、分子量が増大するにしたがって結晶状に析出させる方法、によって合成することができる。
また既存のポリマーを機械的に破砕する方法や、ポリマー液を再沈殿によって微粒子状にする方法を用いてもよい。
【0060】
ポリマー粒子は、市販品であっても良いし、特開2015−88486号公報、国際公開第2015/046314号に記載の油性ラテックス状ポリマー粒子を用いても良い。
【0061】
ポリマー粒子の平均粒子径φおよび線状構造体の平均長さLが下記式(A)で表される関係を満たすことも好ましい。
【0062】
L/1000≦φ<L 式(A)
【0063】
上記式(A)は、L/500≦φ<L/2であることが好ましく、L/100≦φ<L/10であることがより好ましい。
上記式(A)で表される関係を満たすことで、ポリマー粒子と線状構造体が微細な網目状構造を形成しうるため好ましい。
【0064】
また、線状構造体の総質量Wおよびポリマー粒子の総質量Wが下記式(B)で表される関係を満たすことも好ましい。
【0065】
/10<W<20×W 式(B)
【0066】
上記式(B)は、W/5<W<10×Wであることが好ましく、W/2<W<5×Wであることがより好ましい。
上記式(B)で表される関係を満たすことで、ポリマー粒子と線状構造体が微細な網目状構造を形成しうるため好ましい。
【0067】
さらに、線状構造体とポリマー粒子が共有結合により結合していることも、ポリマー粒子と線状構造体によって形成される網目状構造の熱的安定性が向上する観点から好ましい。
共有結合としては、上述の線状構造体の表面と表面を被覆する有機物との間での共有結合が挙げられる。
【0068】
バインダーのガラス転移温度は、上限は50℃以下が好ましく、0℃以下がさらに好ましく、−20℃以下が最も好ましい。下限は−100℃以上が好ましく、−70℃以上がさらに好ましく、−50℃以上が最も好ましい。
【0069】
ガラス転移温度(Tg)は、乾燥試料を用いて、示差走査熱量計「X−DSC7000」(SII・ナノテクノロジー(株)社製)を用いて下記の条件で測定する。測定は同一の試料で二回実施し、二回目の測定結果を採用する。
測定室内の雰囲気:窒素(50mL/min)
昇温速度:5℃/min
測定開始温度:−100℃
測定終了温度:200℃
試料パン:アルミニウム製パン
測定試料の質量:5mg
Tgの算定:DSCチャートの下降開始点と下降終了点の中間温度の小数点以下を四捨五入することでTgを算定する。
【0070】
本発明に用いることができるバインダーを構成するポリマー(好ましくはポリマー粒子)の水分濃度は、100ppm(質量基準)以下が好ましく、Tgは100℃以下が好ましい。
また、本発明に用いることができるバインダーを構成するポリマーは、晶析させて乾燥させてもよく、ポリマー溶液をそのまま用いてもよい。金属系触媒(ウレタン化、ポリエステル化触媒であるスズ、チタン、ビスマス触媒)は少ない方が好ましい。重合時に少なくするか、晶析で触媒を除くことで、共重合体中の金属濃度を、100ppm(質量基準)以下とすることが好ましい。
なお、ポリマーの水分濃度は、実施例の項に記載の線状構造体分散物の含水率の測定方法を参照して測定することができる。
【0071】
ポリマーの重合反応に用いる溶媒は、特に限定されない。なお、無機固体電解質や活物質と反応しないこと、さらにそれらを分解しない溶媒を用いることが望ましい。例えば、炭化水素系溶媒(トルエン、ヘプタン、キシレン)やエステル系溶媒(酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、エーテル系溶媒(テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジエトキシエタン)、ケトン系溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン)、ニトリル系溶媒(アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル)、ハロゲン系溶媒(ジクロロメタン、クロロホルム)を用いることができる。
【0072】
本発明に用いることができるバインダーを構成するポリマーの質量平均分子量は10,000以上が好ましく、20,000以上がより好ましく、50,000以上がさらに好ましい。上限としては、1,000,000以下が好ましく、200,000以下がより好ましく、100,000以下がさらに好ましい。
本発明において、ポリマーの分子量は、特に断らない限り、質量平均分子量を意味する。質量平均分子量は、GPCによってポリスチレン換算の分子量として計測することができる。このとき、GPC装置HLC−8220(東ソー(株)社製)を用い、カラムはG3000HXL+G2000HXLを用い、23℃で流量は1mL/minで、RIで検出することとする。溶離液としては、THF(テトラヒドロフラン)、クロロホルム、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)、m−クレゾール/クロロホルム(湘南和光純薬(株)社製)から選定することができ、溶解するものであればTHFを用いることとする。
【0073】
バインダーの固体電解質組成物中での濃度は、全固体二次電池に用いたときの良好な界面抵抗の低減性とその維持性を考慮すると、固形成分100質量%において、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、1質量%以上がさらに好ましい。上限としては、電池特性の観点から、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3.5質量%以下がさらに好ましい。
本発明では、バインダーの質量に対する、無機固体電解質と必要により含有させる電極活物質の合計質量(総量)の質量比[(無機固体電解質の質量+電極活物質の質量)/バインダーの質量]は、1,000〜1の範囲が好ましい。この比率はさらに500〜2がより好ましく、100〜10がさらに好ましい。
【0074】
(分散剤)
本発明の固体電解質組成物は、分散剤を含有することも好ましい。分散剤を添加することで電極活物質および無機固体電解質のいずれかの濃度が高い場合においてもその凝集を抑制し、均一な電極層および固体電解質層を形成することができる、出力密度向上に効果を奏する。
【0075】
分散剤は分子量200以上3000未満の低分子またはオリゴマーからなり、官能基群(I)で示される官能基と、炭素原子数8以上のアルキル基または炭素原子数10以上のアリール基を同一分子内に含有する。
官能基群(I):酸性基、塩基性窒素原子を有する基、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリルアミド基、アルコキシシリル基、エポキシ基、オキセタニル基、イソシアネート基、シアノ基、チオール基及びヒドロキシ基
【0076】
分散剤の分子量としては好ましくは300以上2,000未満であり、より好ましくは500以上1,000未満である。上記上限値以下であると、粒子の凝集が生じにくくなり、出力の低下を効果的に抑制することができる。また上記下限値以上であると、固体電解質組成物スラリーを塗布し乾燥する段階で揮発しにくくなる。
【0077】
分散剤の含有量は、各層の全固形成分に対して0.01〜10質量%が好ましく、0.1〜5質量%が好ましく、1〜3質量%がより好ましい。
【0078】
(リチウム塩)
本発明の固体電解質組成物は、リチウム塩を含有することも好ましい。
リチウム塩としては、通常この種の製品に用いられるリチウム塩が好ましく、特に制限はなく、例えば、特開2015−088486号公報の段落0082〜0085記載のリチウム塩が好ましい。
【0079】
リチウム塩の含有量は、固体電解質100質量部に対して0質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。上限としては、50質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましい。
【0080】
(導電助剤)
本発明の固体電解質組成物は、導電助剤を含有することも好ましい。導電助剤としては一般的な導電助剤として知られているものを用いることができる。例えば、電子伝導性材料である、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラックなどのカーボンブラック類、ニードルコークスなどの無定形炭素、気相成長炭素繊維やカーボンナノチューブなどの炭素繊維類、グラフェンやフラーレンなどの炭素質材料であっても良いし、銅、ニッケルなどの金属粉、金属繊維でも良く、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリフェニレン誘導体など導電性高分子を用いても良い。またこれらの内1種を用いても良いし、2種以上を用いても良い。
【0081】
(正極活物質)
次に、本発明の全固体二次電池の正極活物質層を形成するための固体電解質組成物(以下、正極用組成物とも称す。)に用いられる正極活物質について説明する。正極活物質は、可逆的にリチウムイオンを挿入および放出できるものが好ましい。その材料は、特に制限はなく、遷移金属酸化物や、硫黄などのLiと複合化できる元素などでもよい。中でも、遷移金属酸化物を用いることが好ましく、遷移金属元素としてCo、Ni、Fe、Mn、Cu、Vから選択される1種以上の元素を有することがより好ましい。
遷移金属酸化物の具体例としては、(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物、(MB)スピネル型構造を有する遷移金属酸化物、(MC)リチウム含有遷移金属リン酸化合物、(MD)リチウム含有遷移金属ハロゲン化リン酸化合物、(ME)リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物等が挙げられる。
【0082】
(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物の具体例として、LiCoO(コバルト酸リチウム[LCO])、LiNi(ニッケル酸リチウム)LiNi0.85Co0.10Al0.05(ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム[NCA])、LiNi0.33Co0.33Mn0.33(ニッケルマンガンコバルト酸リチウム[NMC])、LiNi0.5Mn0.5(マンガンニッケル酸リチウム)が挙げられる。
(MB)スピネル型構造を有する遷移金属酸化物の具体例として、LiCoMnO4、LiFeMn、LiCuMn、LiCrMn8、LiNiMnが挙げられる。
(MC)リチウム含有遷移金属リン酸化合物としては、例えば、LiFePO、LiFe(PO等のオリビン型リン酸鉄塩、LiFeP等のピロリン酸鉄類、LiCoPO等のリン酸コバルト類、Li(PO(リン酸バナジウムリチウム)等の単斜晶ナシコン型リン酸バナジウム塩が挙げられる。
(MD)リチウム含有遷移金属ハロゲン化リン酸化合物としては、例えば、LiFePOF等のフッ化リン酸鉄塩、LiMnPOF等のフッ化リン酸マンガン塩、LiCoPOF等のフッ化リン酸コバルト類が挙げられる。
(ME)リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物としては、例えば、LiFeSiO、LiMnSiO、LiCoSiO等が挙げられる。
【0083】
本発明の全固体二次電池で使用する正極活物質の体積平均粒子径(球換算平均粒子径)は特に限定されない。なお、0.1μm〜50μmが好ましい。正極活物質を所定の粒子径にするには、通常の粉砕機や分級機を用いればよい。焼成法によって得られた正極活物質は、水、酸性水溶液、アルカリ性水溶液、有機溶剤にて洗浄した後使用してもよい。正極活物質粒子の体積平均粒子径(球換算平均粒子径)は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920(商品名、HORIBA社製)を用いて測定することができる。
【0084】
正極活物質の濃度は特に限定されないが、正極用組成物中、固形成分100質量%において、10〜90質量%が好ましく、20〜80質量%がより好ましい。
【0085】
上記正極活物質は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0086】
(負極活物質)
次に、本発明の全固体二次電池の正極活物質層を形成するための固体電解質組成物(以下、負極用組成物とも称す。)に用いられる負極活物質について説明する。負極活物質は、可逆的にリチウムイオンを挿入および放出できるものが好ましい。その材料は、特に制限はなく、炭素質材料、酸化錫や酸化ケイ素等の金属酸化物、金属複合酸化物、リチウム単体やリチウムアルミニウム合金等のリチウム合金、及び、SnやSi、In等のリチウムと合金形成可能な金属等が挙げられる。なかでも炭素質材料又はリチウム複合酸化物が信頼性の点から好ましく用いられる。また、金属複合酸化物としては、リチウムを吸蔵、放出可能であることが好ましい。その材料は、特には制限されないが、構成成分としてチタン及び/又はリチウムを含有していることが、高電流密度充放電特性の観点で好ましい。
【0087】
負極活物質として用いられる炭素質材料とは、実質的に炭素からなる材料である。例えば、石油ピッチ、アセチレンブラック(AB)等のカーボンブラック、天然黒鉛、気相成長黒鉛等の人造黒鉛、及びPAN(ポリアクリロニトリル)系の樹脂やフルフリルアルコール樹脂等の各種の合成樹脂を焼成した炭素質材料を挙げることができる。さらに、PAN系炭素繊維、セルロース系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、脱水PVA(ポリビニルアルコール)系炭素繊維、リグニン炭素繊維、ガラス状炭素繊維、活性炭素繊維等の各種炭素繊維類、メソフェーズ微小球体、グラファイトウィスカー、平板状の黒鉛等を挙げることもできる。
【0088】
負極活物質として適用される金属酸化物及び金属複合酸化物としては、特に非晶質酸化物が好ましく、さらに金属元素と周期律表第16族の元素との反応生成物であるカルコゲナイトも好ましく用いられる。ここでいう非晶質とは、CuKα線を用いたX線回折法で、2θ値で20°〜40°の領域に頂点を有するブロードな散乱帯を有するものを意味し、結晶性の回折線を有してもよい。2θ値で40°以上70°以下に見られる結晶性の回折線の内最も強い強度が、2θ値で20°以上40°以下に見られるブロードな散乱帯の頂点の回折線強度の100倍以下であるのが好ましく、5倍以下であるのがより好ましく、結晶性の回折線を有さないことが特に好ましい。
【0089】
上記非晶質酸化物及びカルコゲナイドからなる化合物群のなかでも、半金属元素の非晶質酸化物、及びカルコゲナイドがより好ましく、周期律表第13(IIIB)族〜15(VB)族の元素、Al、Ga、Si、Sn、Ge、Pb、Sb、Biの一種単独あるいはそれらの2種以上の組み合わせからなる酸化物、及びカルコゲナイドが特に好ましい。好ましい非晶質酸化物及びカルコゲナイドの具体例としては、例えば、Ga、SiO、GeO、SnO、SnO、PbO、PbO、Pb、Pb、Pb、Sb、Sb、Sb、Bi、Bi、SnSiO、GeS、SnS、SnS、PbS、PbS、Sb、Sb、SnSiSが好ましく挙げられる。また、これらは、酸化リチウムとの複合酸化物、例えば、LiSnOであってもよい。
【0090】
負極活物質の平均粒子径は、0.1μm〜60μmが好ましい。所定の粒子径にするには、よく知られた粉砕機や分級機が用いられる。例えば、乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、衛星ボールミル、遊星ボールミル、旋回気流型ジェットミルや篩などが好適に用いられる。粉砕時には水、あるいはメタノール等の有機溶媒を共存させた湿式粉砕も必要に応じて行うことができる。所望の粒子径とするためには分級を行うことが好ましい。分級方法としては特に限定はなく、篩、風力分級機などを必要に応じて用いることができる。分級は乾式、湿式ともに用いることができる。負極活物質粒子の平均粒子径は、前述の正極活物質の体積平均粒子径の測定方法と同様の方法により測定することができる。
【0091】
負極活物質はチタン原子を含有することも好ましい。より具体的にはLiTi12がリチウムイオンの吸蔵放出時の体積変動が小さいことから急速充放電特性に優れ、電極の劣化が抑制されリチウムイオン二次電池の寿命向上が可能となる点で好ましい。
【0092】
負極活物質の濃度は特に限定されないが、負極用組成物中、固形成分100質量%において、10〜80質量%であることが好ましく、20〜70質量%であることがより好ましい。
【0093】
上記負極活物質は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0094】
(有機溶媒)
本発明の固体電解質組成物は有機溶媒を含有する。有機溶媒としては、上記の各成分を分散させるものであればよく、具体例としては、例えば、下記のものが挙げられる。
【0095】
アルコール化合物溶媒は、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、1−プロピルアルコール、2−プロピルアルコール、2−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、ソルビトール、キシリトール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオールが挙げられる。
【0096】
エーテル化合物溶媒は、例えば、アルキレングリコールアルキルエーテル(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等)、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロヘキシルメチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンが挙げられる。
【0097】
アミド化合物溶媒は、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ε−カプロラクタム、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロパンアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミドが挙げられる。
【0098】
アミノ化合物溶媒は、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミンが挙げられる。
【0099】
ケトン化合物溶媒は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジイソブチルケトンが挙げられる。
芳香族化合物溶媒は、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンが挙げられる。
【0100】
エステル化合物溶媒は、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、イソ酪酸メチル、イソ酪酸イソプロピル、ピバル酸メチル、シクロヘキサンカルボン酸イソプロピルが挙げられる。
【0101】
脂肪族化合物溶媒は、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサンが挙げられる。
【0102】
ニトリル化合物溶媒は、例えば、アセトニトリル、プロピロニトリル、ブチロニトリルが挙げられる。
【0103】
有機溶媒は常圧(1気圧)での沸点が50℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましい。上限は250℃以下であることが好ましく、220℃以下であることがさらに好ましい。
【0104】
本発明に用いられる線状構造体が水分散物である場合には、上記線状構造体の項に記載するように、線状構造体水分散物を有機溶媒に転相する際の有機溶媒として、水よりも沸点の高い有機溶媒を用いて共沸脱水を行うことが好ましい。そのため、共沸脱水に用いる有機溶媒として、本発明に用いられる有機溶媒の少なくとも1種は、沸点が100℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましい。上限は250℃以下であることが好ましく、220℃以下であることがさらに好ましい。
水よりも沸点の高い有機溶媒は、さらに、ClogP値が3.0以下であることが、線状構造体が凝集することなく、有機溶媒に転相することが可能となるため好ましい。ClogP値の下限は特に制限されないが、−0.3以上であることが実際的である。
水よりも沸点が高く、ClogP値が3.0以下の有機溶媒としては、例えば、ジブチルエーテル(2.9)、ジイソブチルケトン(2.7)、ジシクロペンチルエーテル(2.8)、ジグリム(−0.18)が挙げられる。なお、括弧内の数値は、ClogP値を示す。
【0105】
オクタノール−水分配係数(logP値)の測定は、一般にJIS日本工業規格Z7260−107(2000)に記載のフラスコ浸とう法により実施することができる。また、オクタノール−水分配係数(logP値)は実測に代わって、計算化学的手法あるいは経験的方法により見積もることも可能である。計算方法としては、Crippen’s fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987))、Viswanadhan’s fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,29,163(1989))、Broto’s fragmentation法(Eur.J.Med.Chem.−Chim.Theor.,19,71(1984))などを用いることが知られている。本発明では、Crippen’s fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987))を用いる。
ClogP値とは、1−オクタノールと水への分配係数Pの常用対数logPを計算によって求めた値である。ClogP値の計算に用いる方法やソフトウェアについては公知の物を用いることができるが、特に断らない限り、本発明ではDaylight Chemical Information Systems社のシステム:PCModelsに組み込まれたClogPプログラムを用いることとする。
【0106】
本発明においては、有機溶媒が炭化水素系溶媒、エーテル化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エステル化合物溶媒およびニトリル化合物溶媒からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、かつ、有機溶媒の炭素原子数がいずれも4以上であることがより好ましい。炭化水素系溶媒としては、上記芳香族化合物溶媒、脂肪族化合物溶媒が挙げられる。
有機溶媒の炭素原子数は、6以上であることがさらに好ましく、炭素原子数の上限は、20以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。
上記好ましい範囲の有機溶媒を用いることで、固体電解質の劣化を防ぎ、かつ、線状構造体を分散させた組成物を得ることができる。
【0107】
上記有機溶媒は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の固体電解質組成物においては、線状構造体分散物に使用する有機溶媒(例えば、上述の水よりも沸点の高い有機溶媒)と、無機固体電解質や活物質等の分散用に使用する有機溶媒とが含有されうる。これらの有機溶媒は、相溶しうる限り同一であっても良く、異なっていても良い。
線状構造体分散物に使用する有機溶媒としては、エーテル化合物溶媒およびケトン化合物溶媒が好ましく、無機固体電解質や活物質等の分散用に使用する有機溶媒としては、エーテル化合物溶媒、ケトン化合物溶媒および炭化水素系溶媒からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0108】
固体電解質組成物が、有機溶媒として炭化水素系溶媒と極性溶媒を含有する場合、炭化水素系溶媒と極性溶媒との比率は、炭化水素系溶媒/極性溶媒の質量比で、90/10〜10/90が好ましい。
上記好ましい範囲内にあることで、固体電解質組成物中で線状構造体が凝集することなく分散状態が保たれる。また、無機固体電解質が溶出や劣化することなく存在することができる。
なお、極性溶媒としては、上記アルコール化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、アミド化合物溶媒、アミノ化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エステル化合物溶媒、ニトリル化合物溶媒が挙げられる。
【0109】
(固体電解質組成物の含水率)
本発明の固体電解質組成物の含水率、すなわち有機溶媒を含有する固体電解質組成物としての含水率は、50ppm以下が好ましく、40ppm以下がより好ましく、30ppm以下がさらに好ましい。含水率の下限値は特に制限されないが、0.001ppm以上が実際的である。
なお、固体電解質組成物の含水率は、前述の線状構造体分散物の含水率と同様の方法により測定することができる。
上記好ましい範囲にあることで、無機固体電解質として硫化物系無機固体電解質を用いる場合に、硫化物系無機固体電解質と水との反応を抑制することができる。
【0110】
固体電解質組成物の全質量100質量部に対する有機溶媒の含有量は、20〜80質量部が好ましく、30〜80質量部が好ましく、40〜75質量部がさらに好ましい。
【0111】
<集電体(金属箔)>
正極および負極の集電体は、電子伝導体が好ましい。正極の集電体は、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、チタンなどの他にアルミニウムやステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタンあるいは銀を処理させたものが好ましく、その中でも、アルミニウム、アルミニウム合金がより好ましい。負極の集電体は、アルミニウム、銅、ステンレス鋼、ニッケル、チタンが好ましく、アルミニウム、銅、銅合金がより好ましい。
【0112】
集電体の形状は、通常フィルムシート状のものが使用されるが、ネット、パンチされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の成形体なども用いることができる。
集電体の厚みは、特に限定されないが、1μm〜500μmが好ましい。また、集電体表面は、表面処理により凹凸を付けることも好ましい。
【0113】
<全固体二次電池の作製>
全固体二次電池の作製は常法によればよい。具体的には、本発明の固体電解質組成物を集電体となる金属箔上に塗布し、塗膜を形成した全固体二次電池用電極シートとする方法が挙げられる。
本発明の全固体二次電池において、電極層は活物質を含有する。イオン伝導性を向上させる観点から、電極層は上記無機固体電解質を含有することが好ましい。また、固体粒子間、電極間および電極−集電体間の結着性向上の観点から、電極層は線状構造体を含有することが好ましく、バインダーを含有することも好ましい。
固体電解質層は、線状構造体および無機固体電解質を含有する。固体粒子間および層間の結着性向上の観点から、固体電解質層はバインダーを含有することも好ましい。
【0114】
例えば、正極集電体である金属箔上に正極材料となる組成物を塗布し、正極活物質層を形成し、電池用正極シートを作製する。正極活物質層の上に、本発明の固体電解質組成物を塗布し、固体電解質層を形成する。さらに、固体電解質層の上に、負極材料となる組成物を塗布し、負極活物質層を形成する。負極活物質層の上に、負極側の集電体(金属箔)を重ねることで、正極層と負極層の間に、固体電解質層が挟まれた全固体二次電池の構造を得ることができる。
【0115】
なお、上記の各組成物の塗布方法は常法によればよい。このとき、正極活物質層を形成するための組成物、無機固体電解質層を形成するための組成物および負極活物質層を形成するための組成物は、それぞれ塗布した後に乾燥処理を施してもよいし、重層塗布した後に乾燥処理をしてもよい。
乾燥温度は特に限定されない。なお、下限は30℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、上限は、300℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましい。このような温度範囲で加熱することで、有機溶媒を除去し、固体状態にすることができる。
【0116】
[全固体二次電池の用途]
本発明の全固体二次電池は種々の用途に適用することができる。適用態様には特に限定はないが、例えば、電子機器に搭載する場合、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、コードレスフォン子機、ページャー、ハンディーターミナル、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、電気シェーバー、トランシーバー、電子手帳、電卓、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、メモリーカードなどが挙げられる。その他民生用として、自動車、電動車両、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、ロードコンディショナー、時計、ストロボ、カメラ、医療機器(ペースメーカー、補聴器、肩もみ機など)などが挙げられる。更に、各種軍需用、宇宙用として用いることができる。また、太陽電池と組み合わせることもできる。
【0117】
なかでも、高容量かつ高レート放電特性が要求されるアプリケーションに適用することが好ましい。例えば、今後大容量化が予想される蓄電設備等においては高い安全性が必須となりさらに電池性能の両立が要求される。また、電気自動車などは高容量の二次電池を搭載し、家庭で日々充電が行われる用途が想定され、過充電時に対して一層の安全性が求められる。本発明によれば、このような使用形態に好適に対応してその優れた効果を発揮することができる。
【0118】
本発明の好ましい実施形態によれば、以下のような各応用形態が導かれる。
〔1〕電極活物質を含有する固体電解質組成物(正極または負極の電極用組成物)。
〔2〕正極活物質層、固体電解質層および負極活物質層をこの順に有する全固体二次電池用電極シートであって、
正極活物質層、固体電解質層および負極活物質層の少なくとも1層が、
周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオン伝導性を有する無機固体電解質と、
平均直径が0.001〜1μmであって、平均長さが0.1〜150μmであり、平均直径に対する平均長さの比が10〜100,000であり、電気伝導度が1×10−6S/m以下の線状構造体とを含有する全固体二次電池用電極シート。
〔3〕正極活物質層、固体電解質層および負極活物質層をこの順に有する全固体二次電池用電極シートであって、
正極活物質層、固体電解質層および負極活物質層の全ての層が、
周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオン伝導性を有する無機固体電解質と、
平均直径が0.001〜1μmであって、平均長さが0.1〜150μmであり、平均直径に対する平均長さの比が10〜100,000であり、電気伝導度が1×10−6S/m以下の線状構造体とを含有する全固体二次電池用電極シート。
〔4〕上記全固体二次電池用電極シートを用いて構成される全固体二次電池。
〔5〕上記固体電解質組成物を金属箔上に適用し、製膜する全固体二次電池用電極シートの製造方法。
〔6〕上記固体電解質組成物を湿式スラリー塗工する全固体二次電池用電極シートの製造方法。
〔7〕上記全固体二次電池用電極シートの製造方法を介して、全固体二次電池を製造する全固体二次電池の製造方法。
【0119】
なお、金属箔上に固体電解質組成物を適用する方法には、例えば、塗布(湿式塗布、スプレー塗布、スピンコート塗布、スリット塗布、ストライプ塗布、バーコート塗布ディップコート)が挙げられ、湿式塗布が好ましい。
【0120】
全固体二次電池とは、正極、負極、電解質がともに固体で構成された二次電池を言う。換言すれば、電解質としてカーボネート系の溶媒を用いるような電解液型の二次電池とは区別される。このなかで、本発明は無機全固体二次電池を前提とする。全固体二次電池には、電解質としてポリエチレンオキサイド等の高分子化合物を用いる有機(高分子)全固体二次電池と、上記のLi−P−S系ガラス、LLTやLLZ等を用いる無機全固体二次電池とに区分される。なお、無機全固体二次電池に高分子化合物を適用することは妨げられず、正極活物質、負極活物質、無機固体電解質のバインダーとして高分子化合物を適用することができる。
無機固体電解質とは、上述した高分子化合物をイオン伝導媒体とする電解質(高分子電解質)とは区別されるものであり、無機化合物がイオン伝導媒体となるものである。具体例としては、上記のLi−P−S系ガラス、LLTやLLZが挙げられる。無機固体電解質は、それ自体が陽イオン(Liイオン)を放出するものではなく、イオンの輸送機能を示すものである。これに対して、電解液ないし固体電解質層に添加して陽イオン(Liイオン)を放出するイオンの供給源となる材料を電解質と呼ぶことがある。上記のイオン輸送材料としての電解質と区別する際には、これを「電解質塩」または「支持電解質」と呼ぶ。電解質塩としては、例えばLiTFSIが挙げられる。
本発明において「組成物」というときには、2種以上の成分が均一に混合された混合物を意味する。ただし、実質的に均一性が維持されていればよく、所望の効果を奏する範囲で、一部において凝集や偏在が生じていてもよい。
【実施例】
【0121】
以下に、実施例に基づき本発明についてさらに詳細に説明する。なお、本発明がこれにより限定して解釈されるものではない。以下の実施例において「部」および「%」というときには、特に断らない限り質量基準である。また、表中において使用する「−」は、その列の組成を有しないことを意味する。
【0122】
<線状構造体の表面を被覆するポリマーの合成>
・合成例1
線状構造体を被覆するアクリルポリマー(b−1)の合成
200mL3つ口フラスコにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート30mLを加え窒素雰囲気下で80℃に加熱した。ここにあらかじめ調製しておいたメタクリル酸ベンジル(和光純薬(株)製)10.0g、アクリロニトリル(和光純薬(株)製)5.4g、カレンズMOI(商品名、昭和電工(株)製)2.1gとラジカル重合開始剤V−601(商品名、和光純薬(株)製)0.25gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液100mLを2時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃で6時間加熱撹拌を続けた後、ヘキサンにて再沈殿操作を行った。このようにして側鎖にイソシアネート基を有するアクリルポリマー(b−1)15.2gを得た。質量平均分子量は23,200であった。
【0123】
・合成例2
線状構造体を被覆するアクリルポリマー(b−2)の合成
200mL3つ口フラスコにジメトキシエタン20mLを加え窒素雰囲気下で70℃に加熱した。ここにあらかじめ調製しておいたメタクリル酸メチル(和光純薬(株)製)7.6g、スチレン(和光純薬(株)製)3.9g、3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート(東京化成(株)製)1.1gとラジカル重合開始剤V−60(商品名、和光純薬(株)製)0.22gのジメトキシエタン溶液100mLを2時間かけて滴下した。滴下終了後、70℃で6時間加熱撹拌を続けた後、ヘキサンにて再沈殿操作を行った。このようにして側鎖にアルコキシシリル基を有するアクリルポリマー(b−2)0.9gを得た。質量平均分子量は19,760であった。
【0124】
・合成例3
線状構造体を被覆するウレタンポリマー(b−3)の合成
200mL3つ口フラスコにN−メチルピロリドン120mLと1,4−ブタンジオール(和光純薬(株)製)3.1g、ポリエチレングリコール600(商品名、和光純薬(株)製 質量平均分子量600)12.9g、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(東京化成(株)製)22.1gを加え80℃で加熱撹拌した。ここに縮合剤としてネオスタンU−600(商品名、日東化成(株)製)0.12gを一括添加して重縮合反応を開始させた。そのまま80℃で8時間加熱撹拌を続けた後、アセトニトリルにて再沈殿操作を行った。このようにしてポリマー末端にイソシアネート基を有するウレタンポリマー(b−3)24.1gを得た。質量平均分子量は6,790であった。
【0125】
<セルロースナノファイバー水分散物の有機溶媒への転相>
・合成例4
セルロースナノファイバーのジブチルエーテル分散物(B−1)の調製
500mLナスフラスコにセルロースナノファイバー水分散物(商品名「セリッシュKY100G」、ダイセルファインケム(株)製、固形分濃度10%)10.0gを量りとり、純水30mLで希釈した。これにテトラヒドロフラン200gを加えて均一分散物とした後、200mmHg40℃で減圧濃縮した。残留物がおよそ50gになったところでジブチルエーテル300gを加え、50mmHg60℃でさらに減圧濃縮を行った。残留物がおよそ50gになるまで減圧濃縮した後、ジブチルエーテルを加えて内容物が200gとなるようにした。これに乾燥したモレキュラーシーブス3Aを5g加えて、セルロースナノファイバーのジブチルエーテル分散物(B−1)を200g(固形分濃度0.5%、水分32ppm)得た。得られたジブチルエーテル分散物(B−1)におけるセルロースナノファイバーの平均直径Dは0.25μmで、平均長さLは25μmで、アスペクト比L/Dは100であった。
【0126】
・合成例5
セルロースナノファイバーのジブチルエーテル分散物(B−2)の調製
500mLナスフラスコにセルロースナノファイバー水分散物(商品名「セリッシュKY110N」、ダイセルファインケム(株)製、固形分濃度15%)6.7gを量りとり、純水30mLで希釈した。これにテトラヒドロフラン200gを加えて均一分散物とした後、200mmHg40℃で減圧濃縮した。残留物がおよそ50gになったところでジブチルエーテル300gを加え、50mmHg60℃でさらに減圧濃縮を行った。残留物がおよそ50gになるまで減圧濃縮した後、ジブチルエーテルを加えて内容物が200gとなるようにした。これに乾燥したモレキュラーシーブス3Aを5g加えて、セルロースナノファイバーのジブチルエーテル分散物(B−2)を200g(固形分濃度0.5%、水分30ppm)得た。得られたジブチルエーテル分散物(B−2)におけるセルロースナノファイバーの平均直径Dは0.20μmで、平均長さLは100μmで、アスペクト比L/Dは500であった。
【0127】
<表面が被覆されたナノファイバーまたはナノワイヤーの合成>
・合成例6
無置換セルロースナノファイバーから置換セルロースナノファイバーの合成
100mLサンプル瓶に、上記で合成したセルロースナノファイバーのジブチルエーテル分散物(B−1)10gを量りとった。これにラウリン酸クロリドを0.23g加え、水浴中で超音波照射を1時間行い、表面をラウリン酸エステル化したセルロースナノファイバーのジブチルエーテル分散物(B−3)を得た。表面被覆率は18質量%であった。
【0128】
・合成例7
セルロースナノファイバーのポリマーによる表面被覆
100mLサンプル瓶に、上記で合成したセルロースナノファイバーのジブチルエーテル分散物(B−1)10gを量りとり、ジブチルエーテルで30gで希釈した。これに上記で合成したアクリルポリマー(b−1)を0.15g加え、撹拌してポリマーを溶解させた後、密閉して80℃のオイルバスで5時間撹拌した。このようにして、表面をアクリルポリマー(b−1)で被覆したセルロースナノファイバーのジブチルエーテル分散物(B−4)を得た。表面被覆率は27質量%であった。
【0129】
・合成例8〜12
線状構造体の中心部と表面を下記表1に示す種類に変更した以外は、合成例7と同様にして、下記表1に示す線状構造体の有機溶媒分散物(B−5)〜(B−9)(固形分濃度はいずれも0.5%、表面被覆率はそれぞれ順に、23、12、7、13、9質量%)を調製した。
【0130】
(線状構造体のアスペクト比、平均直径、平均長さ)
線状構造体の数平均直径と数平均長さをSEM解析により求めた。
詳細には、上記で調製した線状構造体の有機溶媒分散物をアルミ基板上にキャストしてSEM観察し、得られた1枚の画像当たり20本以上の繊維(線状構造体と同義)について繊維の直径と長さの値を読み取り、これを少なくとも3枚の重複しない領域の画像について行い、最低60本の繊維の直径と長さの情報を得た。
なお、「繊維の直径」とは、繊維の横断面における直径のうち最大の直径を意味する。つまり、横断面の位置によって横断面の直径が異なる場合があり、この場合には各横断面毎に直径を測定し、最大の直径を与える横断面における直径を「繊維の直径」とする。また、繊維の横断面が円形でない場合には、この横断面の外周上に存在する2つの点を結ぶ直線の長さが最大となる場合におけるこの直線の長さを、この横断面の直径とする。
得られた繊維径と長さのデータから、数平均直径(例えば60本の繊維の直径を測定した場合、数平均直径=60本の繊維の直径の合計/60本 となる。)と数平均長さ(60本の繊維の長さを測定した場合、数平均長さ=60本の繊維の長さの合計/60本 となる。)を算出し、数平均長さと数平均繊維径との比からアスペクト比を算出した。
下記表1では、数平均直径を「D」、数平均長さを「L」、数平均直径に対する数平均長さのアスペクト比を「D/L」と省略して記載した。
【0131】
(線状構造体の電気伝導度)
上記で調製した線状構造体の有機溶媒分散物をポリフェニレンスルホンシートフイルム上にキャストした。乾燥と塗布を5回繰り返し、ポリフェニレンスルホンシートから剥がして線状構造体からなる独立膜を得た。この独立膜について、表面抵抗測定機(商品名「ハイレスタ−UX MCP−HT800」、三菱化学アナリテック社製)を用いて、表面抵抗率R(Ω/sq.)を測定した。
一方、線状構造体からなる独立膜の膜厚d(μm)を、マイクロメータを用いて測定した。
電気伝導度(S/m)は得られた抵抗値R、膜厚dを用い、下記式より算出した。
【0132】
電気伝導度=(1/R)/(d×10−6
【0133】
(線状構造体の表面被覆率)
まず、表面被覆前の線状構造体分散物1gを採取し、100℃、真空下で6時間乾燥することで、表面被覆前の線状構造体分散物における固形分濃度X(%)を測定した。次に、被覆処理を行った後の被覆線状構造体の分散物1gをサンプリングし、遠心分離によって被覆されなかった有機物が溶解した上澄み溶液を除去した。遠心分離による残留物を100℃、真空下で6時間乾燥することで、被覆処理を行った後の被覆線状構造体の分散物における固形分濃度Y(%)を測定した。表面被覆率(%)は、下記式により算出した。
【0134】
表面被覆率=(Y−X)/X×100
【0135】
(線状構造体分散物の含水率)
上記で調製した線状構造体の有機溶媒分散物の含水率は、カールフィッシャー法により測定した。測定装置は微量水分測定装置CA−200(商品名、三菱化学アナリテック(株)製)、カールフィッシャー液はアクアミクロンAX(商品名、三菱化学(株)製)を使用した。
なお、下記表1において、線状構造体の有機溶媒分散物の含水率は含水率と省略して記載した。
【0136】
【表1】
【0137】
<表の注釈>
KY100G:無置換セルロースナノファイバー(ダイセルファインケム(株)製、商品名「セリッシュKY100G」の固形分)
KY100N:無置換セルロースナノファイバー(ダイセルファインケム(株)製、商品名「セリッシュKY100N」の固形分)
719781:カーボンナノファイバー(Aldrich社製、商品名「719781」)
773999:酸化亜鉛ナノワイヤー(Aldrich社製、商品名「773999」)
774529:酸化チタンナノワイヤー(Aldrich社製、商品名「774529」)
b−1〜b−3:上記で合成したポリマー
【0138】
<硫化物系無機固体電解質の合成>
− Li−P−S系ガラスの合成 −
硫化物系無機固体電解質として、T.Ohtomo,A.Hayashi,M.Tatsumisago,Y.Tsuchida,S.Hama,K.Kawamoto,Journal of Power Sources,233,(2013),pp231−235およびA.Hayashi,S.Hama,H.Morimoto,M.Tatsumisago,T.Minami,Chem.Lett.,(2001),pp872−873の非特許文献を参考にして、Li−P−S系ガラスを合成した。
【0139】
具体的には、アルゴン雰囲気下(露点−70℃)のグローブボックス内で、硫化リチウム(LiS、Aldrich社製、純度>99.98%)2.42g、五硫化二リン(P、Aldrich社製、純度>99%)3.90gをそれぞれ秤量し、メノウ製乳鉢に投入し、メノウ製乳棒を用いて、5分間混合した。なお、LiSおよびPの混合比は、モル比でLiS:P=75:25とした。
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを66個投入し、上記硫化リチウムと五硫化二リンの混合物全量を投入し、アルゴン雰囲気下で容器を完全に密閉した。フリッチュ社製の遊星ボールミルP−7(商品名)にこの容器をセットし、温度25℃、回転数510rpmで20時間メカニカルミリングを行い、黄色粉体の硫化物固体電解質(Li−P−S系ガラス)6.20gを得た。
【0140】
(実施例1)
−各組成物の調製−
各組成物(固体電解質組成物、正極用組成物および負極用組成物)の調製に用いる有機溶媒としては、いずれも超脱水品(含水率1ppm以下)を使用した。
【0141】
−固体電解質組成物の調製−
(1)固体電解質組成物(K−1)の調製
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを180個投入し、酸化物系無機固体電解質LLZ(LiLaZr12 ランタンジルコン酸リチウム、体積平均粒子径5.06μm、(株)豊島製作所製)9.0g、上記で調製した線状構造体分散物(B−1)(固形分濃度0.5%)3.0g、有機溶媒としてジブチルエーテル15.0gを投入した。その後、この容器を遊星ボールミルP−7(フリッチュ社製)にセットし、温度25℃、回転数300rpmで、2時間攪拌を続け、固体電解質組成物(K−1)を調製した。
【0142】
(2)固体電解質組成物(K−2)の調製
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを180個投入し、上記で合成した硫化物系無機固体電解質Li−P−S系ガラス9.0g、上記で調製した線状構造体分散物(B−1)(固形分濃度0.5%)3.0g、有機溶媒としてジブチルエーテル15.0gを投入した。その後、この容器を遊星ボールミルP−7(フリッチュ社製)にセットし、温度25℃、回転数300rpmで2時間攪拌を続け、固体電解質組成物(K−2)を調製した。
【0143】
(3)固体電解質組成物(K−3)〜(K−7)および(HK−1)の調製
下記表2に記載の組成に変えた以外は、上記固体電解質組成物(K−1)および(K−2)と同様の方法で、固体電解質組成物(K−3)〜(K−7)および(HK−1)を調製した。
【0144】
下記表2に、固体電解質組成物の組成をまとめて記載する。
ここで、固体電解質組成物(K−1)〜(K−7)が本発明の固体電解質組成物であり、固体電解質組成物(HK−1)が比較の固体電解質組成物である。
【0145】
【表2】
【0146】
<表の注釈>
B−1、3、4、6、7、8:上記で調製した線状構造体分散物(表1参照)
LLZ:LiLaZr12(ランタンジルコン酸リチウム、平均粒子径5.06μm、豊島製作所製)
Li−P−S:上記で合成したLi−P−S系ガラス
C−1:PVdF−HFP(ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体) アルケマ(株)社製 質量平均分子量10万
C−3:マイクロディスパーズ−200(商品名、PTFE粒子、平均粒子径0.2μm、テクノケミカル(株)社製)
C−5:アートパールP−800T(商品名、ポリウレタン粒子、平均粒子径6μm、根上工業(株)社製)
C−6:国際公開第2015/046314号に記載のアクリルラテックス粒子(B−1)、平均粒子径0.198μm
【0147】
−正極用組成物の調製−
(1)正極用組成物(U−1)の調製
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを180個投入し、上記で合成した硫化物系無機固体電解質Li−P−S系ガラス2.7g、上記で調製した線状構造体分散物(B−2)(固形分濃度0.5%)10.0g、バインダーとしてセポレックスIR100(商品名、ポリイソプレンラテックス、住友精化(株)社製)0.2g、有機溶媒としてヘプタン8.5gを投入した。この容器を遊星ボールミルP−7(フリッチュ社製)にセットし、温度25℃、回転数300rpmで2時間機械分散を続けた後、正極活物質としてNMC7.0gを容器に投入し、同様に、この容器に遊星ボールミルP−7をセットし、温度25℃、回転数100rpmで15分間混合を続け、正極用組成物(U−1)を調製した。
【0148】
(2)正極用組成物(U−2)〜(U−6)および(HU−1)の調製
下記表3に記載の組成に変えた以外は、上記正極用組成物(U−1)と同様の方法で、正極用組成物(U−2)〜(U−6)および(HU−1)を調製した。
【0149】
下記表3に、正極用組成物の組成をまとめて記載する。
なお、正極用組成物(U−1)〜(U−6)が本発明の正極用組成物であり、正極用組成物(HU−1)は比較の正極用組成物である。
【0150】
【表3】
【0151】
<表の注釈>
B−2、9:上記で調製した線状構造体分散物(表1参照)
C−2:SBR(スチレンブタジエンゴム) アルドリッチ(株)社製 質量平均分子量15万
C−4:セポレックスIR100(商品名、ポリイソプレンラテックス、住友精化(株)社製 質量平均分子量15万)
LCO:LiCoO コバルト酸リチウム
NMC:LiNi0.33Co0.33Mn0.33 ニッケルマンガンコバルト酸リチウム
【0152】
−負極用組成物の調製−
(1)負極用組成物(S−1)の調製
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを180個投入し、上記で合成した硫化物系無機固体電解質Li−P−S系ガラス5.0g、上記で調製した線状構造体分散物(B−2)(固形分濃度0.5%)30.0g、有機溶媒としてヘプタン3.5gを投入した。この容器を遊星ボールミルP−7(フリッチュ社製)にセットし、温度25℃、回転数300rpmで2時間機械分散を続けた後、負極活物質としてAB7.0gを容器に投入し、この容器を遊星ボールミルP−7にセットし、温度25℃、回転数100rpmで15分間混合を続け、負極用組成物(S−1)を調製した。
【0153】
(2)負極用組成物(S−2)〜(S−6)および(HS−1)〜(HS−2)の調製
下記表4に記載の組成に変えた以外は、上記負極用組成物(S−1)と同様の方法で、負極用組成物(S−2)〜(S−6)および(HS−1)〜(HS−2)を調製した。
【0154】
下記表4に、負極用組成物の組成をまとめて記載する。
ここで、負極用組成物(S−1)〜(S−6)が本発明の負極用組成物であり、負極用組成物(HS−1)〜(HS−2)が比較の負極用組成物である。
【0155】
【表4】
【0156】
<表の注釈>
B−5:上記で調製した線状構造体分散物
AB:アセチレンブラック
【0157】
(各組成物の含水率)
上記で調製した各組成物の含水率を、上記線状構造体分散物の含水率の測定と同様に、カールフィッシャー法により測定した。
固体電解質組成物(K−1)〜(K−7)、正極用組成物(U−1)〜(U−6)、負極用組成物(S−1)〜(S−6)の含水率は、いずれも5ppm以下であった。
【0158】
−二次電池用正極シートの作製−
上記で調製した正極用組成物を厚み20μmのアルミ箔上(集電体上)に、クリアランスが調節可能なアプリケーターにより塗布し、80℃で1時間加熱後、さらに110℃で1時間加熱し、塗布溶媒を乾燥した。その後、ヒートプレス機を用いて、加熱及び加圧(300MPa、1分間)し、正極活物質層/アルミ箔の積層構造を有する厚み150μmの二次電池用正極シートを得た。
【0159】
−全固体二次電池製造−
上記で製造した二次電池用正極シート上に、上記で調製した固体電解質組成物を、クリアランスが調節可能なアプリケーターにより塗布し、80℃で1時間加熱後、さらに110℃で1時間加熱し、厚み50μmの固体電解質層を形成した。その後、上記で調製した負極用組成物を、乾燥後の固体電解質組成物上にさらに塗布し、80℃で1時間加熱後、さらに110℃で1時間加熱し、厚み100μmの負極活物質層を形成した。負極活物質層上に厚み20μmの銅箔を合わせ、ヒートプレス機を用いて、固体電解質層及び負極活物質層を加熱及び加圧(300MPa、1分間)し、下記表5に記載の全固体二次電池の試験No.101〜110およびc11〜c12を製造した。
全固体二次電池は図1の構成を有し、銅箔/負極活物質層/無機固体電解質層/二次電池用正極シート(正極活物質層/アルミ箔)の積層構造を有する。正極活物質層、負極活物質層および無機固体電解質層は、それぞれ順に150μm、100μm、50μmの膜厚を有するように作製し、いずれの全固体二次電池においても、膜厚のばらつきが上記膜厚±10%になるように調製した。
【0160】
上記で製造した全固体二次電池15を直径14.5mmの円板状に切り出し、スペーサーとワッシャーを組み込んだステンレス製の2032型コインケース14に入れ、図2に示した試験体を用いて、コインケース14の外部からトルクレンチで8ニュートン(N)の力で締め付け、図1に示す構造の全固体二次電池がコインケースに収納された形態の、試験No.101の全固体二次電池(コイン電池)13を製造した。なお、図2において、11が上部支持板、12が下部支持板、Sがネジである。
【0161】
<評価>
上記で製造した本発明のNo.101〜110およびc11〜c12の全固体二次電池について、以下の評価を行った。
【0162】
<電池電圧の評価>
上記で製造した全固体二次電池の電池電圧を、東洋システム(株)製の充放電評価装置「TOSCAT−3000(商品名)」により測定した。
充電は、電流密度2A/mで電池電圧が4.2Vに達するまで行い、4.2Vに到達後は、電流密度が0.2A/m未満となるまで、定電圧充電を実施した。放電は、電流密度2A/mで電池電圧が3.0Vに達するまで行った。これを1サイクルとし、3サイクル目の5mAh/g放電後の電池電圧を読み取り、以下の基準で評価した。なお、評価「C」以上が本試験の合格レベルである。
【0163】
(評価基準)
A:4.1V以上
B:4.0V以上4.1V未満
C:3.9V以上4.0V未満
D:3.8V以上3.9V未満
E:3.8V未満
【0164】
<サイクル特性の評価>
上記で製造した全固体二次電池のサイクル特性を、東洋システム(株)製の充放電評価装置「TOSCAT−3000」により測定した。
充放電は、上記電池電圧の評価と同様の条件で行った。3サイクル目の放電容量を100とし、放電容量が80未満となったときのサイクル数から、以下の基準で評価した。なお、評価「C」以上が本試験の合格レベルである。
【0165】
(評価基準)
A:50回以上
B:40回以上50回未満
C:30回以上40回未満
D:20回以上30回未満
E:20回未満
【0166】
下記表5に、全固体二次電池用電極シートおよび全固体二次電池の構成および評価結果をまとめて記載する。
ここで、試験No.101〜110が本発明の全固体二次電池用電極シートおよび全固体二次電池であり、試験No.c11〜c12が比較の全固体二次電池用電極シートおよび全固体二次電池である。
なお、下記表5において、電池電圧は電圧と省略して記載した。
【0167】
【表5】
【0168】
表5から明らかなように、本発明の試験No.101〜110の全固体二次電池は、抵抗が低く、かつサイクル特性にも優れることが分かる。
これに対して、本発明に規定の線状構造体を有さない正極用組成物、固体電解質組成物および負極用組成物から製造した、試験No.c11およびc12の比較の全固体二次電池は、抵抗およびサイクル特性のいずれも十分でなかった。
【0169】
本発明をその実施態様とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
【0170】
本願は、2015年6月8日に日本国で特許出願された特願2015−116163に基づく優先権を主張するものであり、これはいずれもここに参照してその内容を本明細書の記載の一部として取り込む。
【符号の説明】
【0171】
1 負極集電体
2 負極活物質層
3 固体電解質層
4 正極活物質層
5 正極集電体
6 作動部位
10 全固体二次電池
11 上部支持板
12 下部支持板
13 コイン電池
14 コインケース
15 全固体二次電池
S ネジ
図1
図2
【国際調査報告】