特表-16059669IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オリエンタル酵母工業株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2016年4月21日
【発行日】2017年7月27日
(54)【発明の名称】フラワーペースト調製用粉体組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 9/20 20160101AFI20170630BHJP
   A23G 3/00 20060101ALI20170630BHJP
   A23G 3/34 20060101ALI20170630BHJP
【FI】
   A23L9/20
   A23G3/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
【出願番号】特願2016-553771(P2016-553771)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2014年10月14日
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】000103840
【氏名又は名称】オリエンタル酵母工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】小島 清造
(72)【発明者】
【氏名】野本 博之
(72)【発明者】
【氏名】中林 秀郎
【テーマコード(参考)】
4B014
4B025
【Fターム(参考)】
4B014GG09
4B014GG10
4B014GG12
4B014GG17
4B014GG18
4B014GK01
4B014GK05
4B014GK08
4B014GL08
4B014GL11
4B025LB25
4B025LD00
4B025LD03
4B025LG14
4B025LG18
4B025LG28
4B025LG29
4B025LG32
4B025LG42
4B025LG44
4B025LG52
4B025LG53
4B025LG60
4B025LK02
4B025LK03
4B025LK05
(57)【要約】
フラワーペーストの保存性、耐熱性及び経時安定性の向上、ならびにフラワーペーストの輸送、保存、及び製造にかかるコストの低減。本発明は、所定量で加工澱粉、未加工澱粉、乳清タンパク質、及び増粘剤を含有するフラワーペースト調製用粉体組成物を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工澱粉30〜70%、未加工澱粉5〜35%、乳清タンパク質10〜40%、及び増粘剤0.5〜10%を含有する、フラワーペースト調製用粉体組成物。
【請求項2】
前記加工澱粉がリン酸架橋澱粉、エーテル化リン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、及びアセチル化アジピン酸架橋澱粉からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記未加工澱粉がコーンスターチ、ワキシーコンスターチ、米澱粉、馬鈴薯澱粉、及びタピオカ澱粉からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
前記増粘剤がアラビアガム、カラギナン、カロブビーンガム、寒天、キサンタンガム、グアーガム、ジェランガム、タマリンドシードガム、ペクチン、及びゼラチンからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
さらに乾燥卵2〜8質量%を含有する、請求項1〜4のいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載のフラワーペースト調製用粉体組成物を、少なくとも水、油脂、糖類及び乳製品と混合することと、該混合物を加熱することを含む、フラワーペーストの製造方法。
【請求項7】
さらに、卵、色素、香料、食塩、調味料、チョコレート、ココアパウダー、カカオマス、野菜又は果実及びその乾燥物、抽出物又はジュース、茶葉の粉砕物又は抽出物、ナッツ、チョコチップ、ならびにゼリーからなる群より選択される少なくとも1種の材料を前記フラワーペースト調製用粉体組成物と混合することを含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記混合物中における前記フラワーペースト調製用粉体組成物の含有量が5〜15質量%である、請求項6又は7記載の方法。
【請求項9】
加工澱粉30〜70%、未加工澱粉5〜35%、乳清タンパク質10〜40%、及び増粘剤0.5〜10%を含有する粉体組成物の、フラワーペースト調製のための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パン類及び菓子類の製造に使用されるフラワーペーストの基材となる粉体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フラワーペーストは、小麦粉や澱粉などに、砂糖、油脂、乳、卵、水、ココア、チョコレート、コーヒー、果汁などを加えてペースト状にしたクリームであり、パン類及び菓子類のフィリングやトッピング用クリームとして、又はパン類及び菓子類の生地に折り込んで使用するシート状クリームとして使用されている。
【0003】
加工澱粉を含む原料から製造されたフラワーペーストが従来開示されている。特許文献1には、ワキシースターチ由来の膨潤抑制澱粉と非ワキシースターチ由来の膨潤抑制澱粉を含む澱粉類、油脂、及び糖類を含有する原料を、均質化処理した後、加熱し、冷却して製造されたフラワーペーストが記載されている。特許文献2には、架橋エーテル化又は架橋エステル化加工した小粒子澱粉を原料とするフラワーペースト等のペースト状食品が記載されている。特許文献3には、緑豆澱粉及び/又はエンドウ豆澱粉、未処理の澱粉質、加工澱粉を特定比率で含む澱粉質を特定量で含む原料から製造されたフラワーペーストが記載されている。特許文献4には、特定の膨潤調節澱粉と、低温易増粘性澱粉とを特定比率で含む澱粉質原料から製造されたフラワーペーストが記載されている。特許文献5には、ワキシースターチ、タピオカ澱粉、甘藷澱粉、馬鈴薯澱粉及びそれらの加工澱粉であって膨潤抑制処理されていないものから選ばれた少なくとも一種と、架橋澱粉及び湿熱処理澱粉から選ばれた少なくとも一種とを含有するフラワーペースト等のペースト状食品が記載されている。特許文献6には、特定のアミロース含量の加工穀類澱粉と米澱粉とを含むフラワーペースト等のペースト状食品が記載されている。
【0004】
さらに、フラワーペーストの原料にタンパク質を添加することがある。特許文献7には、特定量で乳蛋白質、油脂、澱粉を含む、パン生地中に折り込むためのフィリングが記載されている。また特許文献8には、原料中に、小麦蛋白、大豆蛋白の単独若しくは組み合わせ、又は小麦蛋白とホエー蛋白濃縮物の組み合わせを含む、パン生地中に折り込むためのシート状フラワーペーストが記載されている。
【0005】
一方で、水又は牛乳を加えて攪拌することでクリームを即席的に調製することができる粉末クリームミックスが開示されている。例えば、特許文献9には、糖類、乳固形分、粉末油脂、粉末卵黄、澱粉及び乳化剤を含み、該澱粉が、コーン由来及び小麦由来の特定のアミロース含量を有するα化澱粉ならびにワキシーコーン由来のα化燐酸架橋澱粉のうちの2種類を組み合わせて含む、ミルフィーユ用クリーム粉末ミックスが記載されている。しかし、この粉末ミックスは加熱せずにクリームを製造するためのミックスであり、製造後の加熱処理を考慮していないため、耐熱性に劣るだけでなく、製造されたクリームも粉っぽく食感にも劣るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−268751号公報
【特許文献2】特開2006−042739号公報
【特許文献3】特開平09−154492号公報
【特許文献4】特開平10−084874号公報
【特許文献5】特開平11−018681号公報
【特許文献6】特開2004−173541号公報
【特許文献7】特開平07−184528号公報
【特許文献8】特開平11−127765号公報
【特許文献9】特開平10−295307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
製菓・製パン業界では、多様な種類のパン類及び菓子類を製造することが求められており、それに使用されるフラワーペーストにも同様の多様さが求められている。一方、従来の調製済みフラワーペーストは、一般に日持ちせず、常温保存に向かないという問題を有する。そのため従来のフラワーペーストは、パン類及び菓子類の製造施設内で製造されるか、又は冷蔵輸送、冷蔵保存される必要があった。しかし、多様な種類のフラワーペーストを全てパン類及び菓子類の製造施設内で製造することや、個別に冷蔵輸送、冷蔵保存することには多くの手間とコストを要する。また、従来のフラワーペーストは、その製造の際に加熱工程に起因する油分の分離やダマが発生することがあり、またその使用時、すなわちパン類及び菓子類の製造時の焼成等の際の加熱処理等により物性が変化しやすいため、安定した品質のものを提供することは容易ではなかった。さらに、上記従来の粉末クリームミックスも、その保存性、耐熱性及び経時安定性は必ずしも満足できるものではなかった。本発明は、常温での保存及び輸送が可能であり、かつ優れた作業性及び伸展性、ならびに良好な食感を有するフラワーペーストを製造することができるフラワーペースト調製用粉体組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、加工澱粉、未加工澱粉、乳清タンパク質、及び増粘剤を所定量で含有する粉体組成物が、保存性及び安定性に優れ、常温での輸送及び保存が可能であり、かつ、これに水、油脂、糖類、乳製品、卵などを加えて混合することにより、作業性、伸展性、耐熱性及び経時安定性、ならびに食感に優れたフラワーペーストを製造することができることを見出した。
【0009】
したがって、本発明は、加工澱粉30〜70%、未加工澱粉5〜35%、乳清タンパク質10〜40%、及び増粘剤0.5〜10%を含有するフラワーペースト調製用粉体組成物を提供する。
【0010】
また本発明は、上記フラワーペースト調製用粉体組成物を、少なくとも水、油脂、糖類及び乳製品と混合することと、該混合物を加熱することを含む、フラワーペーストの製造方法を提供する。
【0011】
また本発明は、加工澱粉30〜70%、未加工澱粉5〜35%、乳清タンパク質10〜40%、及び増粘剤0.5〜10%を含有する粉体組成物の、フラワーペースト調製のための使用を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のフラワーペースト調製用粉体組成物は、保存性及び安定性に優れており、常温での長期輸送及び長期保存が可能である。また該粉体組成物は、水、油脂、糖類、乳製品、卵などと混合するだけで、作業性、伸展性及び食感に優れたフラワーペーストへと調製される。さらに、該粉体組成物と水、油脂、糖類、乳製品、卵などとの混合の際に、別の材料を加えることで、様々な味及び外観のフラワーペーストを容易に製造することができる。したがって、本発明によれば、必要なときに必要な量のフラワーペーストを容易に供給することができるので、フラワーペーストの輸送、保存、及び製造に関するコストを低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
フラワーペーストは、日本の食品衛生法において、小麦粉、澱粉、ナッツ類もしくはその加工品、ココア、チョコレート、コーヒー、果実の果肉または果汁を主原料とし、砂糖、油脂、粉乳、卵、小麦粉等を加えて加熱殺菌し、ペースト状とし、パンまたは菓子に充填または塗布して食用に供するものと定義されている。本明細書において、フラワーペーストとは、パン類や菓子類のフィリングやトッピング用クリームとして、又はベーカリー食品の生地に折り込んで使用するシート状クリームとして使用される、小麦粉などの穀粉や澱粉などの澱粉質を含む粉を主原料とするペーストをいう。フラワーペーストは一般的には、小麦粉等の穀粉や澱粉に、水分、糖類、乳製品、卵、呈味成分、油脂類、香料などを加え、それらを加熱・撹拌してペーストを得ることによって製造される。フラワーペーストには、カスタード、チョコレート、チーズ、ミルク、ナッツ、フルーツ、茶葉などの様々な味やフレーバーの種類がある。
【0014】
本発明のフラワーペースト調製用粉体組成物は、フラワーペーストの基材として使用される組成物である。本発明のフラワーペースト調製用粉体組成物と水、油脂、糖類、乳製品、卵などとを混合することで、フラワーペーストを調製することができる。
【0015】
本発明のフラワーペースト調製用粉体組成物は、加工澱粉、未加工澱粉、乳清タンパク質、及び増粘剤を含有する。
【0016】
本発明の粉体組成物に含まれる加工澱粉の例としては、α化澱粉及び架橋澱粉が挙げられる。架橋澱粉の例としては、好ましくは、リン酸架橋澱粉、エーテル化リン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、及びアセチル化アジピン酸架橋澱粉が挙げられ、より好ましくは、リン酸架橋澱粉及びヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉が挙げられる。該加工澱粉の原料となる澱粉の例としては、好ましくはコーンスターチ、ワキシーコンスターチ、米澱粉、馬鈴薯澱粉、及びタピオカ澱粉が挙げられ、より好ましくはコーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、及び米澱粉が挙げられる。本発明の粉体組成物に含まれる加工澱粉のさらに好ましい例としては、リン酸架橋コーンスターチ及びエーテル化(例えばヒドロキシプロピル化)リン酸架橋コーンスターチが挙げられる。上記に列挙した加工澱粉は、いずれか単独で又はいずれか2種以上の組み合わせで使用され得る。本発明の粉体組成物における該加工澱粉の含有量は、30〜70質量%が好ましく、40〜60質量%がより好ましい。
【0017】
本発明の粉体組成物に含まれる未加工澱粉の例としては、好ましくはコーンスターチ、ワキシーコンスターチ、米澱粉、馬鈴薯澱粉、及びタピオカ澱粉が挙げられ、より好ましくはコーンスターチが挙げられる。これらの未加工澱粉は、いずれか単独で又はいずれか2種以上の組み合わせで使用され得る。本発明の粉体組成物における該未加工澱粉の含有量は、5〜35質量%が好ましく、7〜25質量%がより好ましい。
【0018】
本発明の粉体組成物に含まれる増粘剤の例としては、好ましくはアラビアガム、カラギナン、カロブビーンガム、寒天、キサンタンガム、グアーガム、ジェランガム、タマリンドシードガム、ペクチンなどの増粘多糖類、及びゼラチンが挙げられる。これらの増粘剤は、いずれか単独で使用されてもよいが、好ましくはいずれか2種類以上を組み合わせて使用される。本発明の粉体組成物における該増粘剤の含有量は、0.5〜10質量%が好ましく、1〜7質量%がより好ましい。
【0019】
本発明の粉体組成物における乳清タンパク質の含有量は、10〜40質量%が好ましく、15〜35質量%がより好ましい。
【0020】
さらに、本発明の粉体組成物は、乾燥卵を含有していることが好ましい。乾燥卵としては、卵白粉、卵黄粉、全卵粉、及びそれらの混合物が挙げられ、好ましくは卵白粉及び全卵粉が挙げられる。本発明の粉体組成物における乾燥卵の含有量は、好ましくは2〜8質量%であり、より好ましくは3〜6質量%である。
【0021】
さらに、本発明の粉体組成物は、糖類(例えば、砂糖、異性化糖、単糖、二糖、オリゴ糖、糖アルコール、その他甘味料など)を含有していてもよい。本発明の粉体組成物における糖類の含有量は、好ましくは0〜20質量%であり、より好ましくは0〜15質量%である。
【0022】
さらに、本発明の粉体組成物は、フラワーペーストに色、味、香りを与える各種粉末素材、例えば、粉末食用色素、粉末香料、食塩、粉乳、粉末油脂、粉末調味料などが含まれていてもよい。
【0023】
さらに、本発明の粉体組成物は、フラワーペーストの保存性向上のために、慣用される酸化防止剤、安定剤、pH調整剤などの食品添加物を含有していてもよい。
【0024】
上記本発明のフラワーペースト調製用粉体組成物を、水、油脂、糖類、乳製品、卵などを含む材料と混合すれば、フラワーペーストを製造することができる。好ましくは、本発明の粉体組成物と、水、油脂、糖類、乳製品、卵などを含む材料を混合し、さらに該混合物を加熱することにより、フラワーペーストを製造する。
【0025】
上記フラワーペーストの製造に用いる材料のうち、水は、調理に通常使用される水、例えば水道水、精製水などが使用できる。油脂としては、例えばマーガリン、ショートニング、サラダ油などの食用油脂、それらの粉末油脂、及びそれらの混合物が挙げられる。糖類としては、砂糖、水飴、液糖、異性化糖、単糖、二糖、オリゴ糖、糖アルコール、その他甘味料、及びそれらの混合物が挙げられる。乳製品としては、牛乳、羊乳、豆乳、粉乳、チーズ、濃縮乳、ヨーグルト、乳加工品、及びそれらの混合物が挙げられる。卵としては、全卵、卵黄及び卵白の液卵及び乾燥卵、ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0026】
本発明のフラワーペースト調製用粉体組成物からフラワーペーストを製造する際には、上述した水、油脂、糖類、乳製品、卵以外の他の材料をさらに添加してもよい。当該他の材料としては、フラワーペーストに色、味、香り、食感を与える各種素材(例えば、色素、香料、食塩、調味料、チョコレート、ココアパウダー、カカオマス、野菜又は果実及びその乾燥物や抽出物やジュース、茶葉の粉砕物又は抽出物、ナッツ、チョコチップ、ゼリーなど)が挙げられる。これらの他の材料は、いずれか単独で又はいずれか2種以上の組み合わせで使用され得る。さらに、慣用される保存料、酸化防止剤、安定剤、pH調整剤などの食品添加物(例えば、ソルビン酸またはその塩、グリシン、およびクエン酸などの有機酸またはその塩)を添加することもできる。
【0027】
本発明の粉体組成物に対する上記水、油脂、糖類、乳製品、卵、他の材料、及び食品添加物の添加量は、該粉体組成物の組成、及び製造すべきフラワーペーストに所望される味、香り、色、粘度、固さなどの性状に応じて適宜調整することができる。例えば、本発明の粉体組成物に添加する水や乳、糖類の量を調整することで、フラワーペーストの味や粘度、固さを調節することができる。また、該粉体組成物が糖類、乾燥卵、色素などを含有していれば、それに応じて、ペースト調製の際に該粉体組成物に添加する糖類、卵、色素の量を減量するか、又は添加しないようにする。あるいは、チョコレートやココア、カカオマスを用いれば、チョコレート風味のフラワーペースト(例えばチョコレートクリーム)を、チーズを用いればチーズ風味のフラワーペースト(例えばチーズクリーム)を、全卵や卵黄とバニラを用いれば、カスタード風味のフラワーペースト(例えばカスタードクリーム)を製造することができる。
【0028】
したがって、本発明の粉体組成物からフラワーペーストを製造する場合、該粉体組成物に対して、少なくとも上述した水、油脂、糖類、及び乳製品を混合し、さらに必要に応じて、上述した卵、その他の材料、又は食品添加物を混合し、該混合物を加熱して、フラワーペーストを製造すればよい。その際に、加熱の温度は、製造するフラワーペーストの種類やタイプにより異なるが、通常は、品温約50℃以上まで、好ましくは約60〜130℃まで、より好ましくは70〜120℃まで加熱する。また、その際の加熱手段は、フラワーペーストやクリームの製造に慣用される加熱手段を適時採用することができる。
【0029】
上記本発明の粉体組成物と、上記少なくとも水、油脂、糖類、及び乳製品を含む材料との混合物中における本発明の粉体組成物の含有量は、好ましくは5〜15質量%、より好ましくは6〜13%質量である。
【0030】
製造されたフラワーペーストは、一般的なクリーム同様に、パン類及び菓子類の製造に使用することができる。例えば、該フラワーペーストを焼成前の生地に充填するか、生地上に積層するか、又は生地に塗布し、次いで該生地を焼成してパン類及び菓子類を製造することができる。または、該フラワーペーストを焼成後のパン類及び菓子類の生地に充填するか、生地上に積層するか、又は生地に塗布してもよい。あるいは、該フラワーペーストをシート状に成形した後、パン類及び菓子類の生地に折り込むか又は生地に積層し、次いで該生地を焼成してパン類及び菓子類を製造することもできる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0032】
参考例1
(フラワーペースト評価基準)
後述の実施例で得られたフラワーペーストは、下記基準にて評価した。
食感
A:滑らかで口溶けが良い
B:やや滑らかで口溶けがやや良い
C:滑らかさ、口溶けがやや劣る
D:滑らかさ、口溶けが劣る
作業性
A:作業性が良い
B:作業性がやや良い
C:作業性がやや悪い
D:作業性が悪い
伸展性
A:伸展性に優れ、均一によく伸びる
B:伸展性にやや優れ、伸ばしたときに切れや穴が生じない
C:伸展性にやや劣り、伸ばしたときに切れや穴が生じる
D:伸展性に劣り、伸ばしたとき切れや穴が多く発生する
耐熱性
A:耐熱性に優れ、焼成前後で外観がほとんど変化しない
B:耐熱性にやや優れ、焼成前後で外観がわずかに変化している
C:耐熱性にやや劣り、焼成前後で外観が変化している
D:耐熱性に劣り、焼成前後で著しく外観が変化している
経時安定性[包装フィルムに密封して20℃、1ヶ月保存した後のフラワーペーストの物性(ペーストの固さ、分離やダマの発生、伸展性の低下)及び形状]
A:物性や形状の変化がほとんど無い
B:物性や形状の変化がわずかである
C:物性や形状の変化がある
D:物性や形状の変化が顕著
【0033】
実施例1
(フラワーペーストの製造)
表1記載の材料を混合してフラワーペースト調製用粉体組成物を調製した。調製した粉体組成物を用いて、下記のレシピにてフラワーペーストを製造した。
フラワーペースト組成(質量部)
粉体組成物 7
砂糖 22
酸味料 0.1
牛乳 25
卵黄 2.5
水飴 17
水 18.28
ショートニング 8
香料(バニラフレーバー)0.1
着色料 0.02
計 100
ショートニング、香料及び着色料以外の材料を混合し、加温しながら撹拌した後、ショートニングを添加し、混合物をさらに撹拌しながら湯煎して品温90℃まで加温した。次いで香料及び着色料を添加した後、加温を止めてさらに撹拌し、カスタード風味のフラワーペーストを製造した。製造したフラワーペーストは、品温が65℃以下にならないうちに包装フィルムで包装・密封し、室温(約20℃)まで冷却した。得られたフラワーペーストについて、参考例1の基準で食感、作業性、耐熱性、経時安定性を評価した。結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
実施例2
(フラワーペーストの製造)
表2記載の材料を混合してフラワーペースト調製用粉体組成物を調製した。調製した粉体組成物を用いて、下記のレシピにてフラワーペーストを製造した。
フラワーペースト組成(質量部)
粉体組成物 12
砂糖 28
粉乳 2
食塩 0.1
カラメル色素 0.1
ココアパウダー 1.5
水 37.2
カカオマス 9
サラダ油 10
香料(チョコレートフレーバー)0.1
計 100
カカオマス、サラダ油及び香料以外の原料を混合し、加温しながら撹拌した後、カカオマスとサラダ油を添加し、混合物をさらに撹拌しながら湯煎して品温90℃まで加温した。次いで香料を添加した後、加温を止めてさらに撹拌し、品温80℃になったところで撹拌を止めた。混合物を温度が65℃以下にないうちに包装フィルムで包み、次いで圧延してシート状に成型した後、密封し、シート状のチョコレート風味のフラワーペーストを製造した。得られたフラワーペーストについて、参考例1の基準で作業性、伸展性、経時安定性を評価した。結果を表2に示す。
【0036】
【表2】
【0037】
実施例3
(フィリングタイプフラワーペーストの製造)
製造例2、3及び6の粉体組成物を用いて、実施例1のレシピにて、ただし下記の工程により、フラワーペーストを製造した。
ショートニング、香料及び着色料以外の材料を混合し、加温しながら撹拌した後、ショートニングを添加し、混合物をさらに撹拌しながら香料及び着色料を添加した。次いで、掻き取り式熱交換機により110℃まで加熱処理した後、品温65℃まで冷却し、カスタード風味のフラワーペーストを製造した。製造したフラワーペーストは、品温が65℃以下にならないうちに包装フィルムで包装・密封し、室温(約20℃)まで冷却した。得られたフラワーペーストについて、参考例1の基準で食感、耐熱性、経時安定性を評価した。結果を表3に示す。
【0038】
【表3】
【0039】
実施例4
(フィリングタイプフラワーペーストの製造)
製造例2の粉体組成物を用いて、下記表4〜6に示す材料を用いてフィリングタイプのフラワーペースト(クリーム)を製造した。手順を以下に記載する。
(1)下記表中のAの材料を混合する。
(2)別途、Bの材料を混合し、(1)で得た混合物とともに攪拌する。
(3)(2)で得た混合物を加温し、品温が30℃になったらCの材料を加えてさらに攪拌しながら湯煎で加熱する(60℃くらいから混合物に粘りがでてくる)。
(4)(3)で得た混合物の品温が90℃になったら1分間程加熱を続け、火を止める。
(5)(4)で得た混合物にDの材料を加え、品温70℃程度になるまで攪拌する。
【0040】
【表4】
【表5】
【表6】
【0041】
実施例5
(シートタイプフラワーペーストの製造)
製造例10の粉体組成物を用いて、下記表7〜9に示す材料を用いてシートタイプのフラワーペーストを製造した。手順を以下に記載する。
(1)下記表中のAの材料を混合する。
(2)別途、Bの材料を混合し、(1)で得た混合物とともに攪拌する。
(3)(2)で得た混合物を加温し、品温が45℃になったらCの材料を加えてさらに攪拌しながら湯煎で加熱する(60℃くらいから混合物に粘りがでてくる)。
(4)(3)で得た混合物の品温が90℃になったら1分間程加熱を続け、火を止める。
(5)(4)で得た混合物にDの材料を加え、品温80℃程度になるまで攪拌する。
(6)(5)で得た混合物を容器に詰め、圧延してシート状に成形する。
【0042】
【表7】
【表8】
【表9】
【国際調査報告】