(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
成形体中の繊維束の分散状態のバラつきが小さく、樹脂だまりの発生が抑制され、引張強度、弾性率などの物性のバラつきが抑制された繊維強化樹脂材料成形体及びその製造方法、並びに繊維強化樹脂材料の製造方法を提供する。強化繊維が複数本束ねられた繊維束とマトリックス樹脂とを含有する繊維強化樹脂材料成形体であって、厚み方向に沿った切断面における、0.1mm角の単位区画あたりの前記強化繊維の繊維含有率の変動係数が40%以下である、繊維強化樹脂材料成形体を提供する。
前記繊維強化樹脂材料成形体の厚み方向に沿った切断面における、0.1mm角の単位区画あたりの前記強化繊維の繊維含有率の平均値が50〜60%である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の繊維強化樹脂材料成形体。
前記繊維強化樹脂材料成形体における、直交する二つの方向それぞれの方向に沿ったそれぞれの曲げ弾性率の比が0.8:1〜1:0.8であり、それぞれの方向に沿った曲げ弾性率の変動係数がいずれも5〜15である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の繊維強化樹脂材料成形体。
前記第1含浸工程の後に、前記マトリックス樹脂を前記シート状繊維束群にさらに含浸させる工程として、ロール外周面に凹凸がない平面ロールを用いる第2含浸工程を有する、請求項10に記載の繊維強化樹脂材料の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の繊維強化樹脂材料成形体は、強化繊維が複数本束ねられた繊維束とマトリックス樹脂とを含有する。本発明の繊維強化樹脂材料成形体は、例えば、複数の前記繊維束からなる繊維束群にマトリックス樹脂が含浸された繊維強化樹脂材料(SMC)が成形されることで得られる。
【0018】
(繊維束)
本発明の繊維強化樹脂材料成形体が含有する繊維束は、強化繊維が複数本束ねられている。
繊維束を形成する強化繊維としては、特に限定されず、例えば、無機繊維、有機繊維、金属繊維、又はこれらを組み合わせたハイブリッド構成の強化繊維が使用できる
無機繊維としては、炭素繊維、黒鉛繊維、炭化珪素繊維、アルミナ繊維、タングステンカーバイド繊維、ボロン繊維、ガラス繊維等が挙げられる。有機繊維としては、アラミド繊維、高密度ポリエチレン繊維、その他一般のナイロン繊維、ポリエステル繊維等が挙げられる。金属繊維としては、ステンレス、鉄等の繊維が挙げられ、また金属を被覆した炭素繊維でもよい。
これらの中では、繊維強化樹脂材料成形体の強度等の機械物性を考慮すると、炭素繊維が好ましい。
強化繊維は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
強化繊維の平均繊維長は、5〜100mmが好ましく、10〜75mmがより好ましく、20〜60mmがさらに好ましい。
強化繊維の平均繊維長が前記下限値以上であれば、引張強度、弾性率などの物性に優れた繊維強化樹脂材料成形体が得られ、前記上限値以下であれば、成形時に繊維強化樹脂材料がより流動しやすくなるため、成形が容易になる。
【0020】
なお、強化繊維の平均繊維長は、以下の方法で測定する。
即ち、無作為に抽出した100本の繊維の繊維長を、ノギス等を用いて1mm単位まで測定し、その平均値を求める。
【0021】
繊維束を形成する強化繊維の本数は、3,000〜60,000本が好ましく、3,000〜24,000本がより好ましく、3,000〜15,000本がさらに好ましい。
繊維束を形成する強化繊維の本数が前記下限値以上であれば、引張強度、弾性率などの物性に優れた繊維強化樹脂材料成形体が得られやすく、前記上限値以下であれば、成形時に繊維強化樹脂材料がより流動しやすくなるため、成形が容易になる。
【0022】
繊維束の平均厚みは、0.01〜0.1mmが好ましく、0.02〜0.09mmがより好ましく、0.025〜0.07mmがさらに好ましい。
繊維束の平均厚みが前記下限値以上であれば、繊維束にマトリックス樹脂を含浸させることが容易になり、前記上限値以下であれば、引張強度、弾性率などの物性に優れた繊維強化樹脂材料成形体が得られやすい。
【0023】
なお、繊維束の平均厚みは、以下の方法で測定する。
電気炉などで繊維強化樹脂材料成形体を加熱してマトリックス樹脂を分解させ、残存した繊維束から無作為に10本の繊維束を選択する。10本の繊維束のそれぞれについて、繊維軸方向の両端部と中央部の3箇所で厚みをノギスにて測定し、それら測定値の全てを平均して平均厚みとする。
【0024】
繊維束の平均幅は、2〜50mmが好ましく、3〜15mmがより好ましく、3〜8mmがさらに好ましい。
繊維束の平均幅が下限値以上であれば、成形時に繊維強化樹脂材料がより流動しやすくなるため、成形が容易になり、前記上限値以下であれば、引張強度、弾性率などの物性に優れた繊維強化樹脂材料成形体が得られやすい。
【0025】
なお、繊維束の平均幅は、以下の方法で測定する。
平均厚みの測定と同様にして得た10本の繊維束のそれぞれについて、繊維軸方向の両端部と中央部の3箇所で幅をノギスにて測定し、それら測定値の全てを平均して平均幅とする。
【0026】
(マトリックス樹脂)
マトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂を用いることができる。マトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂のみを用いてもよく、熱可塑性樹脂のみを用いてもよく、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の両方を用いてもよい。
本発明の繊維強化樹脂材料成形体をSMCから製造する場合、マトリックス樹脂としては熱硬化性樹脂が好ましい。
本発明の繊維強化樹脂材料成形体をスタンパブルシートから製造する場合、マトリックス樹脂としては熱可塑性樹脂が好ましい。
【0027】
熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノキシ樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、尿素性樹脂、メラミン樹脂、マレイミド樹脂、シアネート樹脂等が挙げられる。
熱硬化性樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、芳香族ポリアミド樹脂などが挙げられる。
熱可塑性樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
(繊維含有率、繊維含有率の変動係数)
本発明の繊維強化樹脂材料成形体は、その厚み方向に沿った切断面における、0.1mm角の単位区画あたりの強化繊維の繊維含有率の変動係数(以下、「変動係数Q」とも言う。)が40%以下である。
ここで、厚み方向とは、本発明の繊維強化樹脂材料成形体において、前記繊維束がその厚み方向に積層される方向をいう。
【0030】
変動係数Qが40%以下であれば、繊維強化樹脂材料成形体中で各繊維束が均等に分散し、樹脂溜まりが抑制されていることで、繊維強化樹脂材料成形体における場所による引張強度、弾性率などの物性のバラツキが抑制される。
なお、変動係数Qは、繊維強化樹脂材料成形体を厚み方向に沿って切断し、その切断面において、0.1mm角の単位区画あたりの強化繊維の繊維含有率を2000箇所について測定し、その標準偏差と平均値(以下、「平均値P」という。)を算出し、標準偏差を平均値Pで除した値を意味する。
【0031】
本発明の繊維強化樹脂材料成形体における変動係数Qの上限値は、40%であり、35%が好ましく、30%がより好ましい。
変動係数Qが上限値以下であれば、引張強度、弾性率などの物性のバラツキがより抑制された繊維強化樹脂材料成形体が得られる。
【0032】
変動係数Qには、繊維強化樹脂材料成形体中の繊維束の分散状態はもちろん、各繊維束の繊維軸方向も影響する。
具体的には、例えば断面形状が円形状の繊維束の場合、該繊維束の繊維軸方向に対する切断面の角度が90°であれば、該切断面における繊維束の断面形状は円形状となる。一方、該繊維束の繊維軸方向に対する切断面の角度が90°よりも小さいと、該切断面における繊維束の断面形状が楕円形状となる。このように、各繊維束の繊維軸方向が変わると、各単位区画あたりの繊維束の断面形状が変わることで、その繊維束の断面の占める割合が変化するため、変動係数Qに影響する。
【0033】
変動係数Qは小さいほど、繊維強化樹脂材料成形体中で各繊維束がより均等に分散していることを示す。しかし、変動係数Qがゼロに近いほど、各単位区画あたりの繊維束の断面形状の変化が小さい状態、即ち繊維強化樹脂材料成形体中で各繊維束の繊維軸方向が揃った状態になっている。
繊維強化樹脂材料成形体における物性のバラツキを抑制するには、各繊維束の繊維軸方向がランダムになっていることが好ましい。このことから、変動係数Qの下限値は、10%が好ましく、12%が好ましく、15%がより好ましい。
変動係数Qが下限値以上であれば、繊維強化樹脂材料成形体の物性のバラツキがより小さくなり、等方性に優れたものとなる。
【0034】
即ち、本発明の繊維強化樹脂材料成形体における変動係数Qは、10%〜40%であることが好ましく、12%〜35%がより好ましく、15%〜30%がさらに好ましい。
【0035】
本発明の繊維強化樹脂材料成形体における平均値Pは、50〜60%が好ましく、50〜58%がより好ましい。
平均値Pが前記範囲内であれば、各単位区画あたりの繊維含有率のバラツキが抑制されやすいため、繊維強化樹脂材料成形体の物性のバラツキがより小さくなる。平均値Pが前記下限値以上であれば、弾性率の高い繊維強化樹脂材料成形体が得られやすく、前記上限値以下であれば、複数の繊維束で形成された繊維束群に対するマトリックス樹脂の含浸がより容易になるため、繊維強化樹脂材料の製造が容易になる。
【0036】
繊維強化樹脂材料成形体の平均値Pや変動係数Qは、繊維強化樹脂材料成形体の製造に用いる繊維強化樹脂材料の繊維含有率を調節することで調節できる。
例えば、繊維強化樹脂材料における繊維含有率を高くすることにより、繊維強化樹脂材料成形体の平均値Pを高くすることができる。また、繊維強化樹脂材料において繊維束を均等に分散させ、樹脂溜まりの発生を抑制して繊維含有率のバラツキを小さくすることで、繊維強化樹脂材料成形体の変動係数Qを小さくすることができる。
【0037】
即ち、本発明の繊維強化樹脂材料成形体においては、その面方向に沿った切断面における、繊維束の繊維軸の方向が実質的にランダムに分布していることが好ましい。
ここで、面方向とは、前記厚さ方向をZ軸方向とした場合におけるXY軸方向、あるいは、前記厚さ方向に対して直交する平面の方向をいう。
また、実質的にランダムに分布するとは、面方向に沿った切断面における繊維束の断面の長軸の長さが無作為な状態であることを意味する。
【0038】
本発明の繊維強化樹脂材料成形体においては、直交する二つの方向それぞれの方向に沿った曲げ弾性率(単位:GPa)の比(以下、「比R」とも言う。)が、0.8:1〜1:0.8であることが好ましい。
また、本発明の繊維強化樹脂材料成形体においては、直交する二つの方向それぞれの方向に沿った曲げ弾性率のそれぞれの変動係数がいずれも5%〜15%であることが好ましい。
【0039】
比Rは、成形体中の繊維束の配向方向の均一性を示す値である。比Rの範囲は、0.8:1〜1:0.8であることが好ましく、0.9:1〜1:0.9がより好ましく、0.95:1〜1:0.95がさらに好ましい。
比Rが前記範囲内であれば、成形体の物性の異方性が充分に低く、実用上問題がない。
【0040】
直交する二つの方向それぞれの方向に沿った曲げ弾性率のそれぞれの変動係数は、5%〜15%が好ましく、5%〜12%がより好ましく、7%〜9%がさらに好ましい。
直交する二つの方向それぞれの方向に沿った曲げ弾性率のそれぞれの変動係数が前記下限値以上であれば、繊維束の配向の均一性が高くなりすぎ、SMCやスタンパブルシートとして成形加工する際のマトリックス樹脂の流動性が損なわれて成形性が低下することを抑制でき、また、繊維強化樹脂材料の生産ラインの速度を過度に下げる必要がなく、充分な生産性を確保できる。直交する二つの方向それぞれの方向に沿った曲げ弾性率のそれぞれの変動係数が前記上限値以下であれば、成形品の各方向の各部位間における物性のバラツキ(CV値)が充分に小さい。
【0041】
本発明の繊維強化樹脂材料成形体は、分散された繊維束の間にマトリックス樹脂が含浸され、X線回折法により回折角2θが25.4°の回折X線を検出し、下式(1)〜(3)により求められる粗さ度βが0.5〜4.5である、シート状の繊維強化樹脂材料を成形することにより製造されたものであることが好ましい。
なお、この回折X線の検出は、炭素繊維中では黒鉛結晶が繊維軸方向に配向しているため、繊維強化樹脂材料内部の黒鉛結晶の配向が、繊維の配向とみなせることを利用したものであり、の回折角2θが25.4°の回折X線は、黒鉛結晶の(002)面に由来するものである。
【数4】
但し、式(1)中、f(φ
i)は、下式(2)で表される、X線回折測定におけるi番目の回転角度(φ
i)の輝度(I(φ
i))から平均の輝度を差し引いた輝度であり、dφは、X線回折測定のステップ幅である。I(φ
i)は、下式(3)で表される、積分強度が10000になるように規格化されたものである。
【数5】
【0042】
粗さ度βは、繊維強化樹脂材料のX線回折測定における繊維配向に由来するプロファイルから求められる値であって、以下の方法で測定される。
長手方向に連続する繊維強化樹脂材料を幅方向でカットした2枚のサンプルを長手方向が同一になるように重ねたシート状の繊維強化樹脂材料における縦300mm×横300mmの範囲内から、縦15mm×横15mmの試験片を等間隔で25個切り出す(N=25)。X線装置を用い、前記試験片に透過法でX線を照射しながら、前記試験片をその厚さ方向を軸に回転させ、回折角2θ=25.4°に配置した検出器で回折X線を取り込み、i番目の回転角度(φ
i)における輝度(I(φ
i))を測定する。但し、I(φ
i)は、式(3)で表される、積分強度が10000になるように規格化されたものとする。
次いで、式(2)で表されるように、輝度(I(φ
i))から平均の輝度を引いた輝度f(φ
i)を定義し、輝度f(φ
i)を用いて導かれる式(1)から、25個の試験片それぞれについて粗さ度を求め、それらの平均値を粗さ度βとする。
【0043】
粗さ度βは、ゼロに近いほど繊維束の配向に乱れが少ないことを示している。
粗さ度βが0.5以上であれば、繊維束の配向の均一性が高くなりすぎることなく、SMCやスタンパブルシートとして成形加工する際のマトリックス樹脂の流動性が損なわれて成形性が低下することを抑制でき、また、繊維強化樹脂材料の生産ラインの速度を過度に下げる必要がなく、充分な生産性を確保できる。粗さ度βは、1.0以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、2.0以上がさらに好ましく、2.5以上が特に好ましい。
粗さ度βが4.5以下であれば、シート状の繊維強化樹脂材料を成形して得た成形品の各部位における物性の異方性(例えば、長さ方向と幅方向の曲げ弾性率の差)が高くなりすぎることを抑制できる。粗さ度βは、4.0以下が好ましく、3.5以下がより好ましい。
【0044】
即ち、本発明の繊維強化樹脂材料成形体の製造方法において成形されるシート状の繊維強化樹脂材料は、粗さ度βが0.5〜4.5であることが好ましく、1.0〜4.0がより好ましく、1.5〜4.0がさらに好ましく、2.0〜3.5がさらにより好ましく、2.5〜3.5が特に好ましい。
【0045】
本発明の繊維強化樹脂材料成形体は、分散された繊維束の間にマトリックス樹脂が含浸され、面方向に沿う直交する二つの方向の一方を0°方向、他方を90°方向としたときに、X線回折法により回折角2θが25.4°の回折X線を検出し、下式(4)により求められる、0°方向を基準にした繊維束の結晶配向度faの平均値と標準偏差の合計値が0.05〜0.13である、シート状の繊維強化樹脂材料を成形することにより製造されたものであることが好ましい。
【数6】
但し、式(4)中、aは式(5)で表される配向係数であり、I(φ
i)は、X線回折測定におけるi番目の回転角度(φ
i)の輝度であり、上式(6)で表される、積分強度が10000になるように規格化されたものである。
【0046】
結晶配向度faは、繊維強化樹脂材料にX線を照射することによって生じる回折像から算出される結晶配向度から求められる値であり、以下の方法で測定される。
粗さ度βの測定方法で用いた試験片の切り出し方法と同様に、シート状の繊維強化樹脂材料から25個の試験片を切り出し(N=25)、X線装置を用いて回折角2θ=25.4°の回折X線を取り込み、i番目の回転角度(φ
i)における輝度(I(φ
i))を測定する。但し、I(φ
i)は、式(6)で表される、積分強度が10000になるように規格化されたものとする。次いで、測定したI(φ
i)を用いて、25個の試験片それぞれについて式(5)により配向係数aを求める。さらに、得られた配向係数aを用いて、25個の試験片それぞれについて式(4)により結晶配向度faを求め、それらの平均値と標準偏差を算出する。
【0047】
結晶配向度faの平均値と標準偏差の合計値が0.05以上であれば、繊維束の配向の均一性が高くなりすぎることなく、SMCやスタンパブルシートとして成形加工する際のマトリックス樹脂の流動性が損なわれて成形性が低下することを抑制でき、また、繊維強化樹脂材料の生産ラインの速度を過度に下げる必要がなく、充分な生産性を確保できる。結晶配向度faの平均値と標準偏差の合計値は、0.06以上が好ましく、0.08以上がより好ましい。
結晶配向度faの平均値と標準偏差の合計値が0.13以下であれば、繊維強化樹脂材料を成形した成形品の長さ方向及び幅方向の各部位間における物性のバラツキ(CV値)が大きくなりすぎることを抑制できる。結晶配向度faの平均値と標準偏差の合計値は、0.12以下が好ましく、0.11以下がより好ましい。
【0048】
即ち、本発明の繊維強化樹脂材料成形体の製造方法において成形されるシート状の繊維強化樹脂材料は、結晶配向度faの平均値と標準偏差の合計値が0.05〜0.13であることが好ましく、0.06〜0.12がより好ましく、0.08〜0.11がさらに好ましい。
【0049】
(繊維強化樹脂材料の製造方法1)
繊維強化樹脂材料の製造方法の一態様としては、特に限定されず、例えば、
・長尺の繊維束を開繊により幅方向に拡幅し、さらに必要に応じて分繊により繊維束を幅方向に分割する開繊工程、
・開繊工程後の繊維束を繊維長が5〜100mmとなるように連続的に裁断し、マトリックス樹脂を含む第1樹脂シート上に、裁断された複数の繊維束をシート状に散布してシート状繊維束群を形成する散布工程、
・前記シート状繊維束群上に、マトリックス樹脂を含む第2樹脂シートを貼り合わせて加圧し、前記シート状繊維束群にマトリックス樹脂を含浸させて繊維強化樹脂材料を得る貼合含浸工程、
を含む方法が挙げられる。
【0050】
<開繊工程>
開繊工程における繊維束の開繊は、例えば、複数の開繊バーを用いることで行える。
具体的には、例えば、各開繊バーを互いに並行するように配置し、ボビンから巻き出した長尺の繊維束を、それら開繊バーの上下を順にジグザグに通過するように走行させる。これにより、各開繊バーによる加熱、擦過、揺動などにより繊維束が幅方向に拡幅される。
【0051】
開繊工程後の繊維束の厚みは、0.01〜0.1mmであることが好ましい。また、開繊工程後の繊維束の幅は、3〜100mmであることが好ましい。
開繊工程後の繊維束の厚み及び幅が前記範囲内であれば、変動係数Qが前記した範囲内である繊維強化樹脂材料成形体が得られやすくなる。
【0052】
また、必要に応じて行われる繊維束の分繊は、周方向に複数の刃が連なって並んで設けられた回転刃を用いることで行える。具体的には、例えば、複数の回転刃を走行する繊維束の幅方向に所定の間隔を空けて配置し、回転刃を回転させながら繊維束を通過させる。これにより、繊維束に複数の刃が間欠的に突き刺さり、繊維束が幅方向に分割される。但し、この方法による分繊後の繊維束は、完全に分繊された状態とはなっておらず、部分的に未分繊の状態(結合した状態)となる。
【0053】
<散布工程>
散布工程は、例えば、以下のように行うことができる。
一方向に搬送される長尺の第1キャリアシート上にマトリックス樹脂を含むペーストを所定の厚みで塗工して第1樹脂シートを形成し、第1キャリアシートを搬送することで第1樹脂シートを走行させる。そして、走行する第1樹脂シートの上方に設置された裁断機に開繊工程後の繊維束を供給し、繊維長が例えば5〜100mmとなるように連続的に裁断する。裁断された複数の繊維束は、第1樹脂シート上に落下することでシート状に散布され、シート状繊維束群が形成される。
【0054】
散布工程では、走行する第1樹脂シートと裁断機の間に、複数の傾斜コーム(ロッド)を配置することが好ましい。裁断機で裁断されて落下する繊維束のうち、傾斜コームに接触した繊維束は第1樹脂シートの走行方向とは異なる方向に倒れ込みやすくなる。これにより、シート状繊維束群における各繊維束の分散状態が均等で繊維軸方向がランダムな状態になりやすくなるため、繊維強化樹脂材料における繊維含有率のバラツキが抑制される。その結果、変動係数Qが前記範囲内である繊維強化樹脂材料成形体が得られやすくなる。
【0055】
各傾斜コームの第1樹脂シートからの高さは、適宜設定できる。傾斜コームの断面形状は、特に限定されず、円形、矩形、多角形等が挙げられ、円形が好ましい。各傾斜コームの直径は、例えば、0.1〜10mm程度とすることができる。
【0056】
隣り合う傾斜コームの平面視での間隔は、裁断機で裁断された繊維束の平均繊維長に対して0.9〜1.6倍が好ましい。
隣り合う傾斜コームの平面視での間隔が前記下限値以上であれば、傾斜コームの間に繊維束が堆積しにくくなり、前記上限値以下であれば、充分な割合の繊維束が傾斜コームに接触するため、繊維配向がランダムなシート状繊維束群が形成されやすくなる。
【0057】
水平方向に対する傾斜コームの傾斜角度は、0°超40°以下が好ましい。
【0058】
傾斜コームは、振動させてもよい。
この場合、傾斜コームを振動させる方向については、長さ方向と、幅方向と、高さ方向のうち、いずれの方向であってもよい。傾斜コームは複数の方向に振動させてもよい。
【0059】
シート状繊維束群における繊維束の繊維配向状態は、第1樹脂シートの走行速度、即ちライン速度も影響する。具体的には、裁断された繊維束の先端が第1樹脂シート上に着地した後も第1樹脂シートが走行しているため、各繊維束の繊維方向は第1樹脂シートの走行方向に揃いやすい。ライン速度が速いほど、繊維束が着地後に第1樹脂シートの走行方向に対して垂直な方向に倒れ込む前に、第1樹脂シートの走行方向に引きとられやすく、第1樹脂シートの走行方向への配向が顕著となる。そのため、ライン速度を制御し、シート状繊維束群における各繊維束の繊維配向状態を調節することが好ましい。
具体的には、ライン速度は、0.5〜5m/分が好ましい。これにより、物性のバラツキが抑制された繊維強化樹脂材料成形体が得られやすくなる。
【0060】
<貼合含浸工程>
貼合含浸工程は、例えば、以下のように行うことができる。
第1キャリアシートの上方で、第1キャリアシートの搬送方向と逆方向に搬送される長尺の第2キャリアシート上に、マトリックス樹脂を含むペーストを所定の厚みで塗工して第2樹脂シートを形成する。そして、第2樹脂シートが形成された第2キャリアシートの搬送方向を、第1キャリアシートの搬送方向と同じになるように反転させ、シート状繊維束群上に第2樹脂シートを貼り合わせる。次いで、第1樹脂シート、シート状繊維束群及び第2樹脂シートの積層体を、少なくとも一対のロール間を通過させることで両面から加圧し、シート状繊維束群にマトリックス樹脂を含浸させてシート状の繊維強化樹脂材料を得る。この場合、繊維強化樹脂材料は、第1キャリアシートと第2キャリアシートで挟持された状態で得られる。
【0061】
シート状繊維束群へのマトリックス樹脂の含浸においては、対になったロールの少なくとも一方に、平面状の先端面が形成された凸部がロール外周面に複数設けられ凹凸ロールを用いる予備含浸と、対になったロールの両方に、ロール外周面に凹凸がない平面ロールを用いる本含浸とを、この順に行うことが好ましい。
予備含浸における対になったロールにおいては、いずれか一方のみが凹凸ロールで他方が平面ロールであってもよく、両方が凹凸ロールであってもよい。
【0062】
凹凸ロールのロール外周面に複数の凸部が設けられる態様は、特に限定されず、例えば、千鳥状などが挙げられる。
【0063】
凹凸ロールにおける凸部に形成された平面上の先端面の形状は、例えば、円形や、四角形、五角形などの多角形などが挙げられる。
凸部の形状としては、例えば、円柱形状や、四角柱状、五角柱状などの多角柱状が挙げられる。
凸部の高さ及び先端面の面積は適宜設定できる。例えば、ロール外周面から先端面までの高さが1〜5mmで、先端面の面積が10〜100mm
2の凸部が挙げられる。
【0064】
隣り合う凸部と凸部の距離は、5〜30mmが好ましく、8〜15mmがより好ましい。
凹凸ロールのロール外周面の総面積に対する、全ての凸部の先端面の面積の合計の割合は、10〜50%が好ましく、20〜40%がより好ましい。
凹凸ロールのロール外周面に設ける凸部の数は、例えば、ロール外周面100cm
2あたり、10〜100個とすることができる。
【0065】
凹凸ロールの材質としては、特に限定されず、例えば、ニトリルゴム、フッ素ゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコンゴム、ウレタンゴムなどが挙げられる。
使用するゴム硬度は、加圧時の圧力とゴムの変形による繊維束の開繊性の点から、A50〜A80とすることが好ましい。
平面ロールの材質としては、特に限定されず、例えば、鉄鋼、炭素鋼等の金属、ニトリルゴム、フッ素ゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコンゴム、ウレタンゴムなどが挙げられる。
【0066】
凹凸ロールを用いた予備含浸では、加圧時の圧力がある程度高くても、凹凸ロールの凸部と凸部の間にマトリックス樹脂が入り込むため、積層体表面でのマトリックス樹脂のバックフローが抑制される。また、凸部の先端面が加圧面となるため、積層体をしっかりと加圧できる。そのため、シート状繊維束群へのマトリックス樹脂を含浸がスムーズに行える。また、本含浸において、平面ロール同士で積層体を加圧してマトリックス樹脂をさらに含浸させるため、マトリックス樹脂が充分にシート状繊維束群に含浸される。これにより、繊維強化樹脂材料中に樹脂溜まりが形成されることが抑制され、繊維強化樹脂材料における繊維含有率のバラツキも抑制される。その結果、変動係数Qが前記範囲内である繊維強化樹脂材料成形体が得られやすくなる。
【0067】
得られた繊維強化樹脂材料を成形して繊維強化樹脂材料成形体を製造する、繊維強化樹脂材料の成形方法は、特に限定されず、公知の成形方法を採用できる。
例えば、目的の繊維強化樹脂材料成形体の形状に応じた金型を用いて繊維強化樹脂材料を加熱し、加圧して成形する方法が挙げられる。加熱と加圧は同時に行われてもよく、加圧に先行して加熱が行われてもよい。
【0068】
(繊維強化樹脂材料の製造方法2)
繊維強化樹脂材料の製造方法の一態様としては、特に限定されず、例えば、含浸装置を利用した方法が挙げられる。
【0069】
<含浸装置>
本発明の繊維強化樹脂材料の製造方法の一態様に利用される含浸装置は、第1樹脂シートと第2樹脂シートにより、複数の開繊された繊維束からなるシート状繊維束群が挟持された積層体を加圧し、前記シート状繊維束群にマトリックス樹脂を含浸させる装置である。
含浸装置は、第1含浸手段を備え、さらに前記第1含浸手段の後段に設けられた第2含浸手段を備えていてもよい。
【0070】
第1含浸手段は、積層体を両面から加圧する少なくとも一対のロールを備える。第1含浸手段における対になったロールの少なくとも一方は、平面状の先端面が形成された凸部がロール外周面に複数設けられた凹凸ロールである。
第2含浸手段は、積層体を両面から加圧する複数のロールを備える。第2含浸手段における複数のロールは、ロール外周面に凹凸がない平面ロールである。
【0071】
含浸装置の一例としては、例えば、図1に示した含浸装置100が挙げられる。以下、図1を用いて、含浸装置100の詳細を説明する。
【0072】
含浸装置100は、第1含浸手段110と、第1含浸手段110の後段に設けられた第2含浸手段120とを備える。
【0073】
第1含浸手段110は、一対のプーリ111a、111bの間に無端ベルト112を掛け合わせたコンベア113と、コンベア113に設けられた加圧機構114とを備える。加圧機構114は、4対の凹凸ロール115及び平面ロール116を備える。対になった凹凸ロール115と平面ロール116は、無端ベルト112の上側部分における対応する位置に、凹凸ロール115が無端ベルト112の外側、平面ロール116が無端ベルト112の内側となるように上下に設けられている。凹凸ロール115のロール外周面115aには、図4に示すように、円形の平面状の先端面130aが形成された複数の円柱状の凸部130が規則的に並んで設けられている。平面ロール116は、ロール外周面に凹凸がないロールである。
【0074】
第1含浸手段110では、コンベア113の一対のプーリ111a、111bが同一方向に回転されることで無端ベルト112が周回し、それによって無端ベルト112上に供給された帯状の積層体Sが図1の右側に走行するようになっている。そして、対になった凹凸ロール115と平面ロール116とにより、走行する積層体Sが両面から加圧されるようになっている。
【0075】
第2含浸手段120は、一対のプーリ121a、121bの間に無端ベルト122を掛け合わせたコンベア123と、コンベア123に設けられた加圧機構124とを備える。コンベア123には、無端ベルト122に加わる張力を調整するための一対のテンションプーリ126a、126bが配置されている。これらのテンションプーリ126a、126bは、無端ベルト122における下側部分に設けられている。加圧機構124は、無端ベルト122の上側部分において、無端ベルト122の内側に設けられた4つの内側平面ローラ125aと、無端ベルト122の外側に設けられた3つの外側平面ローラ125bとを備える。内側平面ローラ125aと外側平面ローラ125bとは、無端ベルト122の長さ方向において互い違いに並んで配置されている。内側平面ローラ125aと外側平面ローラ125bは、ロール外周面に凹凸がない平面ロールである。
【0076】
第2含浸手段120では、コンベア123の一対のプーリ121a、121bが同一方向に回転されることで無端ベルト122が周回し、それによって無端ベルト122上に供給された帯状の積層体Sが図1の右側に走行するようになっている。そして、互い違いに配置された内側平面ローラ125aと外側平面ローラ125bの間を帯状の積層体Sがジグザグに通過することにより、積層体Sが両面から加圧されるようになっている。
第1含浸手段110及び第2含浸手段120で含浸が行われることで得られた繊維強化樹脂材料QはボビンBに巻き取られるようになっている。
【0077】
また、含浸装置の他の例としては、例えば、図2に示した含浸装置200が挙げられる。以下、図2を用いて、含浸装置200の詳細を説明するが、図1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略する。
【0078】
含浸装置200は、図2に示すように、第1含浸手段110と、第1含浸手段110の後段に設けられた第2含浸手段140とを備える。即ち、含浸装置200は、含浸装置100における第2含浸手段120に代えて、第2含浸手段140を備える。
【0079】
第2含浸手段140は、一対のプーリ141a、141bの間に無端ベルト142を掛け合わせたコンベア143と、コンベア143に設けられた加圧機構144とを備える。加圧機構144は、無端ベルト142の上側部分の対応する位置に設けられた、4対の内側平面ロール145a及び外側平面ロール145bを備える。内側平面ロール145a及び外側平面ロール145bは、内側平面ロール145aが無端ベルト142の内側、外側平面ロール145bが無端ベルト142の外側となるように上下に設けられている。
【0080】
第2含浸手段140では、コンベア143の一対のプーリ141a、141bが同一方向に回転されることで無端ベルト142が周回し、それによって無端ベルト142上に供給された帯状の積層体Sが図2の右側に走行するようになっている。そして、対になった内側平面ロール145aと外側平面ロール145bとにより、走行する積層体Sが両面から加圧されるようになっている。
第1含浸手段110及び第2含浸手段140で含浸が行われることで得られた繊維強化樹脂材料QはボビンBに巻き取られるようになっている。
【0081】
また、含浸装置の他の例としては、例えば、図3に示した含浸装置300が挙げられる。以下、図3を用いて、含浸装置300の詳細を説明するが、図1又は図2と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略する。
【0082】
含浸装置300は、図3に示すように、第1含浸手段110と、第1含浸手段110の後段に設けられた第2含浸手段150とを備える。即ち、含浸装置300は、含浸装置100における第2含浸手段120に代えて、第2含浸手段150を備える。
【0083】
第2含浸手段150は、一対のプーリ121a、121bの間に無端ベルト122を掛け合わせたコンベア123と、コンベア123に設けられた加圧機構124と、コンベア123の後段に設けられ、一対のプーリ141a、141bの間に無端ベルト142を掛け合わせたコンベア143と、コンベア143に設けられた加圧機構144とを備える。即ち、第2含浸手段150は、含浸装置100における第2含浸手段120のジグザグ方式の加圧機構124及びコンベア123と、含浸装置200における第2含浸手段140のニップ方式の加圧機構144及びコンベア143とをこの順に備える。
第1含浸手段110及び第2含浸手段150で含浸が行われることで得られた繊維強化樹脂材料QはボビンBに巻き取られるようになっている。
【0084】
含浸装置における第1含浸手段の凹凸ロールには、ロール外周面に、平面状の先端面が形成された凸部が複数設けられており、例えば、凹凸ロール115には、円形の平面上の先端面が形成された複数の凸部が設けられている。
凹凸ロールを備える一対のロールによって積層体を加圧する際には、凸部の先端面が積層体を加圧する加圧面となる。
【0085】
凹凸ロールのロール外周面に設けられる凸部の先端面の平面形状は、円形には限定されず、例えば、四角形、五角形などの多角形などであってもよい。凸部の形状は、円柱形状には限定されず、例えば、四角柱状、五角柱状などの多角柱状であってもよい。凸部は、先端に向かうにつれて窄んだ形状になっていてもよい。
凸部の形状及びその先端面の形状は、1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
【0086】
凹凸ロールのロール外周面に設けられる凸部は、一定のパターンを形成するように規則的に並んで設けられることが好ましい。凸部を設けるパターンとしては、積層体を加圧する際に積層体に対して均一に圧力を付与することができるパターンであればよく、例えば、千鳥状などが挙げられる。
【0087】
また、凹凸ロールのロール外周面に設けられる凸部は、先端面の面積が大きい複数の凸部と、先端面の面積が小さい複数の凸部とが、ロール外周面を正面視したときに、凹凸ロールのロール軸方向に対して傾斜した方向に配置され、かつロール軸方向に交互に設けられていてもよい。具体的には、例えば、図5に例示した凹凸ロール115Aであってもよい。
凹凸ロール115Aは、ロール外周面115aに、円形の先端面130aが形成された複数の円柱状の凸部130と、先端面130aよりも面積が小さい円形の平面状の先端面130bが形成された、凸部130よりも直径が小さい複数の円柱状の凸部130Aが設けられている。複数の凸部130と複数の凸部130Aとは、ロール外周面105aを正面視したときに、それぞれ凹凸ロールのロール軸方向Aに対して傾斜した方向に並び、かつロール軸方向Aにおいて凸部130と凸部130Aとが交互に位置するように設けられている。
【0088】
凹凸ロールのロール外周面に設けられる凸部をこのようなパターンで配置する態様とすることで、積層体を加圧した際に先端面の面積が大きい凸部と先端面の面積が小さい凸部の間にマトリックス樹脂が入り込みやすくなり、マトリックス樹脂のバックフローがより生じにくくなる。
【0089】
凹凸ロールのロール外周面に設けられる凸部の高さ、即ちロール外周面から凸部の先端面までの距離は、1〜5mmが好ましく、1.5〜3.5mmがより好ましい。凸部の高さが前記下限値以上であれば、マトリックス樹脂をシート状繊維束群に含浸させやすくなり、前記上限値以下であれば、第1含浸手段における積層体の加圧の際に、積層体の表層でマトリックス樹脂のバックフローがより生じにくくなる。
【0090】
凹凸ロールのロール外周面に設けられる凸部の各凸部の先端面の面積は、10〜100mm
2が好ましく、20〜50mm
2がより好ましい。
各凸部の先端面の面積が前記下限値以上であれば、マトリックス樹脂をシート状繊維束群に含浸させやすくなり、前記上限値以下であれば、第1含浸手段における積層体の加圧の際に、積層体の表層でマトリックス樹脂のバックフローがより生じにくくなる。
【0091】
凹凸ロールのロール外周面の総面積に対する、凹凸ロールのロール外周面に設けられる凸部全ての先端面の面積の合計の割合は、10〜50%が好ましく、20〜40%がより好ましい。
凹凸ロールのロール外周面の総面積に対する、凹凸ロールのロール外周面に設けられる凸部全ての先端面の面積の合計の割合が前記下限値以上であれば、マトリックス樹脂をシート状繊維束群に含浸させやすくなり、前記上限値以下であれば、第1含浸手段における積層体の加圧の際に、積層体の表層でマトリックス樹脂のバックフローがより生じにくくなる。
【0092】
凹凸ロールのロール外周面に設けられる凸部と凸部の距離は、5〜30mmが好ましく、8〜15mmがより好ましい。
凸部と凸部の距離が前記下限値以上であれば、マトリックス樹脂をシート状繊維束群に含浸させやすくなり、前記上限値以下であれば、第1含浸手段における積層体の加圧の際に、積層体の表層でマトリックス樹脂のバックフローがより生じにくくなる。
【0093】
凹凸ロールのロール外周面に設けられる凸部の数は、特に限定されず、例えば、ロール外周面100cm
2あたり、10〜100個とすることができる。
【0094】
凹凸ロールの材質としては、特に限定されず、例えば、ニトリルゴム、フッ素ゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコンゴム、ウレタンゴムなどが挙げられる。
使用するゴム硬度は、加圧時の圧力とゴムの変形による繊維束の開繊性の点から、A50〜A80とすることが好ましい。
【0095】
第1含浸手段及び第2含浸手段における平面ロールの材質としては、特に限定されず、例えば、鉄鋼、炭素鋼等の金属、ニトリルゴム、フッ素ゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコンゴム、ウレタンゴムなどが挙げられる。
【0096】
第1含浸手段における対になったロールにおいては、いずれか一方のみが凹凸ロールで他方が平面ロールであってもよく、両方が凹凸ロールであってもよい。
第1含浸手段110が備えるロールは4対であったが、第1含浸手段が備えるロールは3対以下であってもよく、5対以上であってもよい。
【0097】
第2含浸手段における平面ロールの数は、特に限定されない。具体的には、第2含浸手段120のようなジグザグ方式の場合、平面ロールの数は7つには限定されず、6つ以下であってもよく、8つ以上であってもよい。また、第2含浸手段140のようなニップ方式の場合、平面ロールは4対には限定されず、3対以下であってもよく、5対以上であってもよい。
【0098】
本発明の繊維強化樹脂材料の製造方法の一態様に利用される含浸装置が、第1含浸手段とともに、さらに前記第1含浸手段の後段に設けられた第2含浸手段を備える場合には、凹凸ロールを備える第1含浸手段により積層体を加圧してマトリックス樹脂を含浸させた後、平面ロールで挟み込む第2含浸手段により積層体を加圧してさらにマトリックス樹脂を含浸させることができる。
第1含浸手段が凹凸ロールを備えることで、加圧時の圧力がある程度高くても、凹凸ロールのロール外周面に設けられる複数の凸部間にマトリックス樹脂が入り込み、シート状繊維束群を形成するための繊維束を開繊して扁平にした場合でも、積層体の表層でマトリックス樹脂のバックフローが起きることが抑制される。また、凸部の先端面が加圧面となるため、積層体をしっかりと加圧することができ、シート状繊維束群へのマトリックス樹脂を含浸がスムーズに行える。また、さらに第2含浸手段において、積層体を平面ロールで挟み込んで加圧するため、マトリックス樹脂が充分に含浸された機械特性に優れた繊維強化樹脂材料が得られる。
また、本発明に用いる含浸装置においては、第1含浸手段の凹凸ロールが、平面状の先端面が形成された凸部を備えることで、第1含浸手段における加圧によって、繊維束がより開繊される効果も得られる。
【0099】
なお、含浸装置における第1含浸手段の凹凸ロール及び平面ロールとしては、繊維強化樹脂材料の製造方法1の貼合含浸工程で説明した凹凸ロール及び平面ロールを用いることもできる。
【0100】
<繊維強化樹脂材料の製造>
本発明の繊維強化樹脂材料の製造方法は、複数の繊維束からなるシート状繊維束群が、それぞれマトリックス樹脂を含む第1樹脂シートと第2樹脂シートにより挟持された積層体を、ロールで加圧し、マトリックス樹脂をシート状繊維束群に含浸させる工程として、平面上の先端面が形成された凸部がロール外周面に複数設けられた凹凸ロールを用いる第1含浸工程を有する、本発明の繊維強化樹脂材料成形体の製造に使用する繊維強化樹脂材料の製造方法である。また、本発明の繊維強化樹脂材料の製造方法は、第1含浸工程の後に、マトリックス樹脂をシート状繊維束群にさらに含浸させる工程として、ロール外周面に凹凸がない平面ロールを用いる第2含浸工程を有することが好ましい。
本発明の繊維強化樹脂材料の製造方法における第1含浸工程及び/又は第2含浸工程は、前述の含浸装置を用いて行うことができる。
【0101】
本発明の繊維強化樹脂材料の製造方法における繊維強化樹脂材料の製造は、繊維強化樹脂材料の製造装置を用いて行うことができる。
【0102】
繊維強化樹脂材料の製造装置の一例としては、例えば、図6に示した繊維強化樹脂材料の製造装置1(以下、単に「製造装置1」とも言う。)が挙げられる。以下、図6を用いて、製造装置1の詳細を説明する。
【0103】
本実施形態の繊維強化樹脂材料の製造方法に使用する繊維強化樹脂材料の製造装置1(以下、単に製造装置1という。)について、図6に基づいて説明する。なお、以下の説明においては、図6に示されるXYZ直交座標系を設定し、必要に応じてこのXYZ直交座標系を参照しつつ、各部材の位置関係について説明する。
【0104】
製造装置1は、開繊分繊部10と、第1のキャリアシート供給部11と、第1の搬送部20と、第1の塗工部12と、裁断機13と、第2のキャリアシート供給部14と、第2の搬送部28と、第2の塗工部15と、貼合部31と、含浸装置300とを備える。
【0105】
開繊分繊部10は、ラージトウである長尺の繊維束f1を幅方向(Y軸方向)に開繊する開繊部50と、開繊された繊維束f2を複数の繊維束f3に分繊する分繊部52とを構成している。
開繊部50は、X軸方向に間隔を空けて並んで設けられた複数の開繊バー17を備える。複数の開繊バー17は、繊維束f1が各開繊バー17の上下を順にジグザグに通過する際に、各開繊バー17による加熱、擦過、揺動などの手段により繊維束f1が幅方向に拡幅されるようになっている。繊維束f1が開繊されることで、扁平な繊維束f2が得られる。
【0106】
分繊部52は、複数の回転刃18と、複数のゴデットローラ19とを備える。
複数の回転刃18は、開繊された繊維束f2の幅方向(Y軸方向)に所定の間隔で並んで配置されている。また、各回転刃18には、複数の刃物18aが周方向に連なって並んで設けられている。回転刃18を回転させながら繊維束f2を通過させることで、繊維束f2に複数の刃物18aが間欠的に突き刺さり、繊維束f2が幅方向に分割されて複数の繊維束f3となる。但し、分繊された複数の繊維束f3は、完全に分繊された状態とはなっておらず、部分的に未分繊の状態(結合した状態)となっている。
複数のゴデットローラ19は、分繊後の繊維束f3を裁断機13へと案内するものである。
【0107】
第1のキャリアシート供給部11は、第1の原反ロールR1から巻き出された長尺の第1のキャリアシートC1を第1の搬送部20へと供給する。第1の搬送部20は、一対のプーリ21a、21bの間に無端ベルト22を掛け合わせたコンベア23を備える。コンベア23では、一対のプーリ21a、21bを同一方向に回転させることによって無端ベルト22を周回させ、無端ベルト22の面上において第1のキャリアシートC1をX軸方向の右側に向けて搬送する。
【0108】
第1の塗工部12は、第1の搬送部20におけるプーリ21a側の直上に位置しており、マトリックス樹脂を含むペーストPを供給するコータ24を備える。第1のキャリアシートC1がコータ24を通過することで、第1のキャリアシートC1の面上にペーストPが所定の厚み(100〜1000μm、好ましくは200〜800μm)で塗工され、第1樹脂シートS1が形成される。第1樹脂シートS1は、第1のキャリアシートC1の搬送に伴って走行する。
【0109】
裁断機13は、第1の塗工部12よりも搬送方向の後段において、第1のキャリアシートC1の上方に位置している。裁断機13は、分繊後の繊維束f3を所定の長さに連続的に裁断するものであり、ガイドローラ25と、ピンチローラ26と、カッターローラ27とを備える。ガイドローラ25は、供給された繊維束f3を回転しながら下方に向けて案内する。ピンチローラ26は、ガイドローラ25との間で繊維束f3を挟み込みながら、ガイドローラ25とは逆向きに回転する。これにより、ボビンB1から繊維束f1が引き出される。カッターローラ27は、回転しながら繊維束f3を所定の長さとなるように裁断する。裁断機13により所定の長さに裁断された繊維束f4は、落下して第1樹脂シートS1の上に散布され、シート状繊維束群Fが形成される。
【0110】
第2のキャリアシート供給部14は、第2の原反ロールR2から巻き出された長尺の第2のキャリアシートC2を第2の搬送部28へと供給する。第2の搬送部28は、コンベア23により搬送される第1のキャリアシートC1の上方に位置しており、複数のガイドローラ29を備える。第2の搬送部28は、第2のキャリアシート供給部14から供給された第2のキャリアシートC2を、第1のキャリアシートC1とは反対方向(X軸方向の左側)に搬送した後、搬送方向を複数のガイドローラ29によって第1のキャリアシートC1と同じ方向(X軸方向の右側)に反転させる。
【0111】
第2の塗工部15は、第1のキャリアシートC1とは反対方向に搬送されている第2のキャリアシートC2の直上に位置し、マトリックス樹脂を含むペーストPを供給するコータ30を備える。第2のキャリアシートC2がコータ30を通過することで、第2のキャリアシートC2の面上にペーストPが所定の厚み(100〜1000μm、好ましくは200〜800μm)で塗工され、第2樹脂シートS2が形成されるようになっている。第2樹脂シートS2は、第2のキャリアシートC2の搬送に伴って走行する。
【0112】
貼合部31は、第1の搬送部20における裁断機13よりも後段に位置している。貼合部31は、コンベア23のプーリ21bの上方に位置し、複数の貼合ローラ33を備える。複数の貼合ローラ33は、第2樹脂シートS2が形成された第2のキャリアシートC2の背面に接触した状態で搬送方向に並んで配置されている。また、複数の貼合ローラ33は、第1のキャリアシートC1に対して第2のキャリアシートC2が徐々に接近するように配置されている。
【0113】
貼合部31では、第1のキャリアシートC1と第2のキャリアシートC2とが、その間に第1樹脂シートS1、シート状繊維束群F及び第2樹脂シートS2を挟み込んだ状態で貼り合わされる。これにより、第1樹脂シートS1、シート状繊維束群F及び第2樹脂シートS2をこの順で下から積層した積層体が形成される。ここで、積層体を挟み込んだ状態で第1のキャリアシートC1と第2のキャリアシートC2が貼合されたものを貼合シートS3と言う。
【0114】
含浸装置300は、貼合部31の後段に位置している。含浸装置300における第1含浸手段110及び第2含浸手段150において貼合シートS3が順次加圧されることで、積層体においてマトリックス樹脂がシート状繊維束群に含浸される。これにより、繊維強化樹脂材料を含む原反Rが得られる。原反Rは、所定の長さに切断して成形に使用することができる。なお、第1のキャリアシートC1及び第2のキャリアシートC2は、繊維強化樹脂材料の成形前に繊維強化樹脂材料から剥離される。
【0115】
次に、製造装置1を用いた繊維強化樹脂材料の製造方法について説明する。以下に説明する製造装置1を用いた繊維強化樹脂材料の製造方法は、
・長尺の繊維束f1を開繊により幅方向に拡幅して繊維束f2とし、さらに繊維束f2を分繊により幅方向に分割して複数の繊維束f3とする開繊分繊工程、
・繊維束f3を連続的に裁断し、第1樹脂シートS1上に裁断された複数の繊維束f4をシート状に散布してシート状繊維束群Fを形成する散布工程、
・シート状繊維束群F上に第2樹脂シートS2を貼り合わせ、第1樹脂シートS1、シート状繊維束群F及び第2樹脂シートS2がこの順で下から積層された積層体を形成する貼合工程、
・積層体を含浸装置300の第1含浸手段110により加圧して、マトリックス樹脂をシート状繊維束群Fに含浸させる第1含浸工程、
・第1含浸工程後の前記積層体を第2含浸手段150により加圧し、マトリックス樹脂をさらに含浸させて繊維強化樹脂材料を得る第2含浸工程、
を有する。
【0116】
<開繊分繊工程>
開繊分繊部10の前段に位置するボビンBからラージトウである長尺の繊維束f1を巻き出し、開繊部50において、繊維束f1を各開繊バー17の上下に順にジグザグに通過させ、開繊により幅方向に拡幅して扁平な状態の繊維束f2とする。さらに、分繊部52において複数の回転刃18を回転させながら繊維束f2を通過させ、複数の刃物18aを間欠的に突き刺し、繊維束f2を幅方向に分割して複数の繊維束f3とする。
【0117】
繊維束としては、炭素繊維束が好ましい。なお、繊維束としては、ガラス繊維束を用いてもよい。ラージトウである繊維束としては、特に限定されず、例えば、繊維数が20,000本以上の繊維束が挙げられる。
【0118】
<散布工程>
第1のキャリアシート供給部11により、第1の原反ロールR1から長尺の第1のキャリアシートC1を巻き出して第1の搬送部20へと供給し、第1の塗工部12によりペーストPを所定の厚みで塗工して第1樹脂シートS1を形成する。第1の搬送部20によって第1のキャリアシートC1を搬送することにより、第1のキャリアシートC1上の第1樹脂シートS1を走行させる。
【0119】
ペーストPに含まれるマトリックス樹脂としては、特に限定されず、例えば、不飽和ポリエステル樹脂などが挙げられる。ペーストPには、炭酸カルシウムなどの充填剤や、低収縮化剤、離型剤、硬化開始剤、増粘剤などを配合してもよい。
【0120】
また、開繊分繊部10から供給された分繊後の長尺の繊維束f3を、裁断機13において所定の長さとなるように連続的に裁断し、裁断された繊維束f4を第1樹脂シートS1の上に落下させて散布する。これにより、走行する第1樹脂シートS1上に、各繊維束f4がランダムな繊維配向で散布されたシート状繊維束群Fが連続的に形成される。
【0121】
<積層工程>
第2のキャリアシート供給部14により、第2の原反ロールR2から長尺の第2のキャリアシートC2を巻き出して第2の搬送部28へと供給する。第2の塗工部15により、第2のキャリアシートC2の面上にペーストPを所定の厚みで塗工し、第2樹脂シートS2を形成する。第2のキャリアシートC2を搬送することで第2樹脂シートS2を走行させ、貼合部31において第1のキャリアシートC1と第2のキャリアシートC2とを貼り合わせる。これにより、第1樹脂シートS1、シート状繊維束群F及び第2樹脂シートS2がこの順で下から積層された積層体が、第1のキャリアシートC1と第2のキャリアシートC2で挟持された貼合シートS3を形成する。
【0122】
<第1含浸工程>
含浸装置300の第1含浸手段110において、積層体を含む貼合シートS3を、加圧機構114の凹凸ロール115及び平面ロール116を回転させながらそれらの間に通して加圧し、第1樹脂シートS1及び第2樹脂シートS2のマトリックス樹脂の一部をシート状繊維束群Fに含浸させる。本発明では、第1含浸工程において、第1含浸手段における加圧によってマトリックス樹脂を含浸させるとともに、シート状繊維束群を形成する各繊維束を開繊させることが好ましい。
【0123】
<第2含浸工程>
第1含浸手段110による含浸後の貼合シートS3を、第2含浸手段150における加圧機構124の内側平面ローラ125a及び外側平面ローラ125bを回転させながらそれらの間にジグザグに通して加圧する。第2含浸手段150における加圧機構124の加圧は、加圧機構114における凹凸ロール115及び平面ロール116の加圧よりも高い圧力とする。これにより、第1樹脂シートS1及び第2樹脂シートS2におけるマトリックス樹脂をシート状繊維束群Fにさらに含浸させる。
【0124】
さらに、貼合シートS3を、加圧機構144の内側平面ロール145a及び外側平面ロール145bを回転させながらそれらの間を通過させて加圧する。加圧機構144における内側平面ロール145a及び外側平面ロール145bの加圧は、加圧機構124における内側平面ローラ125aと外側平面ローラ125bの加圧よりも高い圧力とする。これにより、第1樹脂シートS1及び第2樹脂シートS2におけるマトリックス樹脂の残りをシート状繊維束群Fに完全に含浸させる。これにより、繊維強化樹脂材料が第1のキャリアシートC1と第2のキャリアシートC2で挟持された原反Rが得られる。
【0125】
本発明の繊維強化樹脂材料の製造方法においては、第1含浸工程において凹凸ロールを備える第1含浸手段により積層体を加圧してマトリックス樹脂を含浸させる。
これにより、加圧時の圧力がある程度高くても凸部と凸部の間にマトリックス樹脂が入り込むため、シート状繊維束群を形成するための繊維束を開繊して扁平にした場合でも、積層体表面でマトリックス樹脂のバックフローが起きることが抑制される。
また、凸部の先端面が加圧面となるため、積層体をしっかりと加圧することができ、シート状繊維束群へのマトリックス樹脂を含浸がスムーズに行える。
さらに、第2含浸工程において平面ロールで挟み込む第2含浸手段により積層体を加圧してさらにマトリックス樹脂を含浸させるため、マトリックス樹脂が充分にシート状繊維束群に含浸された機械強度に優れる繊維強化樹脂材料を製造することができる。
また、本発明では、第1含浸手段において、平面状の先端面が形成された凸部を備える凹凸ロールにより加圧を行うため、マトリックス樹脂のバックフローを抑制しつつ、繊維束をより開繊させることもできる。
【0126】
なお、本発明の繊維強化樹脂材料の製造方法は、製造装置1を用いる方法には限定されない。例えば、含浸装置300の代わりに含浸装置100又は含浸装置200を備える製造装置を用いる方法であってもよい。
【実施例】
【0127】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
【0128】
[繊維含有率平均値Pと繊維含有率変動係数Q]
各例の繊維強化樹脂材料成形体を厚み方向に切断し、その切断面が覆われるように切断片をメタクリル樹脂(製品名「テクノビット4004」、ヘレウス社製)で包埋した後、研磨を行って切断面を露出させた。次いで、切断面を光学顕微鏡(製品名「BX51M」、オリンパス社製)により倍率100倍にて撮像した。切断面の画像を、画像処理ソフト(製品名「Winroof2015」、三谷商事社製)により0.1mm角の単位区画に分割した後、輝度の閾値を136として二値化処理を行って繊維束とマトリックス樹脂とを区別した。次いで、2000箇所の単位区画のそれぞれについて、単位区画の面積に対して輝度が閾値以上である領域(繊維束が占める領域)の面積が占める割合を測定し、繊維含有率を求めた。次いで、2000箇所の単位区画についての繊維含有率の平均値(平均値P)と標準偏差を算出し、標準偏差を平均値Pで除して変動係数Qを算出した。
【0129】
[粗さ度β]
各例の繊維強化樹脂材料を25±5℃の温度で1週間養生した後、ローリングカッターで縦300mm、横300mmのサイズに2枚切り出し、これら約250gの繊維強化樹脂材料の長手方向が同一になるように積層した。この約500gの繊維強化樹脂材料の積層体の中心を基準に、左右2列と上下2列から30mm間隔で縦15mm、横15mmのサイズの試験片を25個切り出した。
次いで、X線装置を用い、前記試験片に透過法でX線を照射しながら、試験片をその厚さ方向を軸に回転させ、回折角2θ=25.4°に配置した検出器で回折X線を取り込み、i番目の回転角度(φ
i)における輝度(I(φ
i))を測定した。但し、I(φ
i)は積分強度が10000になるように規格化されたものとした。
この粗さ度βの測定に際しては、X線回折装置としてPANalytical社製Empyreanを用い、管電圧を45kVとし、管電流は40mAとした。また、入射側にはダブルクロススリットを取り付け、上流及び下流のスリットの縦及び横の幅をすべて2mmにセットした。さらに、受光側にはパラレルプレートコリメータを取り付け、検出器にはプロポーショナルカウンターを取り付けた。測定データを0.04度間隔で取り込むことにより、前記試験片の結晶配向を評価した。
なお、の測定条件はあくまで一例であり、粗さ度βの測定の趣旨が変わらない範囲で適宜変更して実施することができる。
次いで、測定したI(φ
i)から式(2)によりf(φ
i)を求め、さらに式(1)を用いて、25個の試験片の測定値の平均値として粗さ度βを求めた。
【0130】
[結晶配向度faの平均値と標準偏差]
粗さ度βの試験片の作製と同様にして、縦15mm、横15mmのサイズの試験片を25個切り出した。切り出した25個の試験片について輝度(I(φ
i))を測定した。但し、I(φ
i)は積分強度が10000になるように規格化されたものとした。次いで、測定したI(φ
i)を用いて、25個の試験片それぞれについて式(5)により配向係数aを求めた。さらに、得られた配向係数aを用いて、25個の試験片それぞれについて式(4)により結晶配向度faを求め、それらの平均値と標準偏差を算出した。
【0131】
実施例1
長尺の繊維束として炭素繊維束(商品名「TR50S15L」、三菱レイヨン社製)を使用した。
熱硬化性樹脂であるエポキシアクリレート樹脂(製品名:ネオポール8051、日本ユピカ社製)100質量部に対して、硬化剤として、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサンの75%溶液(製品名:パーヘキサC−75、日本油脂社製)0.5質量部と、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートの74%溶液(製品名:カヤカルボンBIC−75、化薬アクゾ社製)0.5質量部とを添加し、内部離型剤として、リン酸エステル系誘導体組成物(製品名:MOLD WIZ INT−EQ−6、アクセルプラスチックリサーチラボラトリー社製)0.35質量部を添加し、増粘剤として、変性ジフェニルメタンジイソシアネート(製品名:コスモネートLL、三井化学社製)15.5質量部を添加し、安定剤として、1,4−ベンゾキノン(製品名:p−ベンゾキノン、和光純薬工業社製)0.02質量部を添加して、これらを十分に混合撹拌してマトリックス樹脂を含むペーストを得た。
【0132】
搬送している第1キャリアシート上に前記ペーストを塗工して厚み0.45mmの第1樹脂シートを形成した。また、開繊及び分繊を行った厚み0.05mm、幅7.5mmの炭素繊維束を裁断機で裁断し、平均繊維長が50.8mmのチョップド繊維束として落下させ、厚み1.3mmのシート状繊維束群を形成した。第1樹脂シートと裁断機の間には、直径3mmの断面円形状の複数の傾斜コームを第1樹脂シートの走行方向と平行するように並べて配置した。傾斜コームの第1樹脂シートからの高さは400mm、隣り合う傾斜コームの間隔は65mm、傾斜コームの水平方向に対する傾斜角度を15°とした。ライン速度は1.5m/分とした。
第1キャリアシートの上方で、第1キャリアシートと逆方向に搬送している第2キャリアシート上に前記ペーストを塗工して厚み0.45mmの第2樹脂シートを形成し、搬送方向を反転させて第2樹脂シートを前記シート状繊維束群の上に貼り合わせて積層した。さらに、第1樹脂シート、シート状繊維束群及び第2樹脂シートの積層体に対して、予備含浸と本含浸を行い、厚み2mmのシート状の繊維強化樹脂材料を得た。予備含浸は、ロール外周面に円柱状の凸部(凸部の高さ:3mm、凸部の先端面の面積:38mm
2、凸部のピッチ:8mm)が千鳥状に設けられた凹凸ロールと、平面ロールとを組み合わせた5対のロールによって行った。本含浸は、11対の平面ロールにより行った。
【0133】
得られた繊維強化樹脂材料の粗さ度βは3.89であり、0°方向を基準にした繊維束の結晶配向度faの平均値と標準偏差の合計値は0.077であった。
【0134】
得られた繊維強化樹脂材料を25±5℃の温度で1週間養生したものを250mm×250mmに切断し、端部に嵌合部を有するパネル成形用金型(300mm×300mm×2mm、表面クロムめっき仕上げ)に、製造装置での繊維強化樹脂材料の搬送方向(MD方向)を揃えて、2枚(合計およそ156g)を金型中央に投入した。そして、金型内で繊維強化樹脂材料を140℃、8MPa、5分の条件で加熱加圧し、繊維強化樹脂材料成形体を得た。
得られた繊維強化樹脂材料成形体の繊維含有率平均値Pは55.7%、繊維含有率変動係数Qは26.1%であった。
また、得られた繊維強化樹脂材料成形体の面方向に沿った切断面における繊維束の繊維軸の方向は、実質的にランダムに分布していた。
【0135】
次に、繊維強化樹脂材料成形体の曲げ強度と曲げ弾性率とを測定するため、繊維強化樹脂材料成形体から、繊維強化樹脂材料の搬送方向(0°方向)と幅方向(90°方向)に沿って、長さ110mm、幅25mmの試験片をそれぞれ6枚切り出した。そして、5kNインストロン万能試験機を用いて、L/D=40、クロスヘッド速度5mm/分で3点曲げ試験を各試験片に対して行い、それぞれの曲げ強度と曲げ弾性率とを測定し、それぞれの平均値と変動係数を求めるとともに、それぞれの方向に沿った曲げ弾性率の比を求めた。
【0136】
実施例2
チョップド繊維束の幅を15mmに変更した以外は実施例1と同様にして、繊維強化樹脂材料及び繊維強化樹脂材料成形体を得た。
得られた繊維強化樹脂材料成形体の繊維含有率平均値Pは56.0%、繊維含有率変動係数Qは20.3%であった。
【0137】
比較例1
繊維強化樹脂材料として製品名「STR120N131−KA6N」(三菱レイヨン社製、粗さ度β 3.71、繊維束の結晶配向度faの平均値と標準偏差の合計値0.105)を使用し、厚み2mmの25cm角の試料片を2枚切り出して重ね、プレス成形して30cm角の板状の繊維強化樹脂材料成形体を得た。得られた成形体の繊維含有率の平均値Pは44.2%、変動係数Qは47.1%であった。
【0138】
実施例1で得られた繊維強化樹脂材料成形体の評価結果を表1に、実施例2で得られた繊維強化樹脂材料成形体の評価結果を表2に、比較例1で得られた繊維強化樹脂材料成形体の評価結果を表3に、それぞれ示す。
【0139】
【表1】
【0140】
【表2】
【0141】
【表3】
【0142】
実施例1及び実施例2の繊維強化樹脂材料成形体は、繊維含有率の変動係数Qは40%以下であり、変動係数Qが40%超の比較例1の繊維強化樹脂材料成形体に比べて、繊維含有率のバラツキが抑制されているため、物性のバラツキが小さい。