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再表2017-135359近赤外線吸収色素、光学フィルタおよび撮像装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2017年8月10日
【発行日】2018年12月20日
(54)【発明の名称】近赤外線吸収色素、光学フィルタおよび撮像装置
(51)【国際特許分類】
   C09B 23/00 20060101AFI20181122BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20181122BHJP
【FI】
   C09B23/00 HCSP
   G02B5/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】59
【出願番号】特願2017-565622(P2017-565622)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2017年2月2日
(31)【優先権主張番号】特願2016-18255(P2016-18255)
(32)【優先日】2016年2月2日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-130963(P2016-130963)
(32)【優先日】2016年6月30日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三宅 徳顕
(72)【発明者】
【氏名】岡田 悟史
(72)【発明者】
【氏名】入澤 潤
(72)【発明者】
【氏名】小西 哲平
(72)【発明者】
【氏名】松浦 啓吾
【テーマコード(参考)】
2H148
【Fターム(参考)】
2H148CA04
2H148CA06
2H148CA12
2H148CA13
2H148CA17
(57)【要約】
可視光の透過性、とくに波長430〜550nmの光の透過率を高めた近赤外線遮蔽特性を有する近赤外線吸収色素を提供する。
近赤外線吸収色素は、ジクロロメタンに溶解して測定される吸収特性が下記要件を満たす。
・波長400〜800nmの吸収スペクトルにおいて、670nm以上の波長領域に最大吸収波長λmaxを有する。
・波長430〜550nmの光に対する最大吸光係数εと、波長670nm以上の光に対する最大吸光係数εとの間に、次の関係式が成り立つ。
ε/ε≧65
・分光透過率曲線において、前記最大吸収波長λmaxにおける透過率を1%としたとき、波長430〜460nmの光の平均透過率が94.0%以上である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジクロロメタンに溶解して測定される吸収特性が(i−1)〜(i−3)の要件を満たすことを特徴とする近赤外線吸収色素。
(i−1)波長400〜800nmの吸収スペクトルにおいて、670nm以上の波長領域に最大吸収波長λmaxを有する。
(i−2)波長430〜550nmの光に対する最大吸光係数εと、波長670nm以上の光に対する最大吸光係数εとの間に、次の関係式が成り立つ。
ε/ε≧65
(i−3)分光透過率曲線において、前記最大吸収波長λmaxにおける透過率を1%としたとき、波長430〜460nmの光の平均透過率が94.0%以上である。
【請求項2】
ジクロロメタンに溶解して測定される吸収特性が(i−4)の要件を満たす請求項1に記載の近赤外線吸収色素。
(i−4)分光透過率曲線において、前記最大吸収波長λmaxにおける透過率を1%としたときの前記最大吸収波長λmaxより短波長側で透過率が80%、10%となる波長をそれぞれ波長λ80、波長λ10としたとき、前記波長λ80と前記波長λ10との間の前記分光透過率曲線の傾きの最大値が、−0.5[%/nm]以下である。
【請求項3】
ジクロロメタンに溶解して測定される吸収特性が(i−5)の要件を満たす請求項1または2に記載の近赤外線吸収色素。
(i−5)分光透過率曲線において、前記最大吸収波長λmaxにおける透過率を1%としたとき、波長410〜460nmの光の透過率が93.0%以上である。
【請求項4】
ジクロロメタンに溶解して測定される吸収特性が(i−6)の要件を満たす請求項1〜3のいずれか1項に記載の近赤外線吸収色素。
(i−6)分光透過率曲線において、前記最大吸収波長λmaxにおける透過率を1%としたとき、波長460nm以下の光に対して透過率が97%となる最長波長が457nm以下である。
【請求項5】
ジクロロメタンに溶解して測定される吸収特性が(i−7)の要件を満たす請求項1〜4のいずれか1項に記載の近赤外線吸収色素。
(i−7)分光透過率曲線において、前記最大吸収波長λmaxにおける透過率を1%としたときの前記最大吸収波長λmaxより短波長側で透過率が80%となる波長λ80と、前記最大吸収波長λmaxとの差が78nm以下である。
【請求項6】
(i−3)において、波長430〜460nmの光の平均透過率が95.0%以上である請求項1〜5のいずれか1項に記載の近赤外線吸収色素。
【請求項7】
スクアリリウム系化合物からなる請求項1〜6のいずれか1項に記載の近赤外線吸収色素。
【請求項8】
前記スクアリリウム系化合物が、式(AI)で示されるスクアリリウム系化合物である請求項7に記載の近赤外線吸収色素。
【化1】
式(AI)中、
環Zは、それぞれ独立して、ヘテロ原子を環中に0〜3個有し、かつ置換されていてもよい、5員または6員環であり、
とR、RとR、およびRと環Zを構成する炭素原子またはヘテロ原子は、互いに連結して窒素原子とともにそれぞれヘテロ環A、ヘテロ環Bおよびヘテロ環Cを形成していてもよく、ヘテロ環を形成していない場合、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、または炭素原子間に不飽和結合、ヘテロ原子、飽和もしくは不飽和の環構造を含んでよく、かつ置換されていてもよい炭化水素基を示し、Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、または炭素原子間にヘテロ原子を含んでもよいアルキル基もしくはアルコキシ基を示し、
は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基または炭素原子間にヘテロ原子を含んでもよいアルキル基もしくはアルコキシ基を示す。
【請求項9】
前記環Zは、少なくとも1つの窒素原子または硫黄原子をヘテロ原子として含む請求項8に記載の近赤外線吸収色素。
【請求項10】
前記環Zは、芳香族ヘテロ環である請求項8または9に記載の近赤外線吸収色素。
【請求項11】
前記環Zは、それぞれ独立して、ピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、ピロール環、チオフェン環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、トリアジン環またはトリアゾール環である請求項8に記載の近赤外線吸収色素。
【請求項12】
式(AI)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、または炭素原子間に不飽和結合、ヘテロ原子、飽和もしくは不飽和の環構造を含んでよく、かつ置換されていてもよい炭素数が1〜20の炭化水素基であり、
およびRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または炭素原子間にヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20のアルキル基もしくはアルコキシ基である請求項8〜11のいずれか1項に記載の近赤外線吸収色素。
【請求項13】
式(AI)中、RおよびRは、それぞれ独立して、炭素原子間にヘテロ原子を含んでよく、かつ置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基もしくはアルコキシ基である請求項8〜12のいずれか1項に記載の近赤外線吸収色素。
【請求項14】
前記スクアリリウム系化合物が、式(AII)で示されるスクアリリウム系化合物である請求項7に記載の近赤外線吸収色素。
【化2】
式(AII)中、
は、それぞれ独立して、水素原子、または炭素原子間に不飽和結合、ヘテロ原子、飽和もしくは不飽和の環構造を含んでよく、かつ置換されていてもよい炭化水素基を示し、
は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基または炭素原子間にヘテロ原子を含んでもよいアルキル基もしくはアルコキシ基を示し、
は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアシル基もしくはアシルオキシ基、炭素数1〜12のパーフルオロアルキル基、または−SO基(Rは、置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキル基を示す)を示し、
は、炭素原子間に不飽和結合、ヘテロ原子、飽和もしくは不飽和の環構造を含んでよく、かつ置換されていてもよい2価の炭化水素基を示す。
【請求項15】
式(AI)で示されるスクアリリウム系化合物からなることを特徴とする近赤外線吸収色素。
【化3】
式(AI)中、
環Zは、ヘテロ原子を環中に0〜3個有し、かつ置換されていてもよい、5員または6員環であり、
とR、RとR、およびRと環Zを構成する炭素原子またはヘテロ原子は、互いに連結して窒素原子とともにそれぞれヘテロ環A、ヘテロ環Bおよびヘテロ環Cを形成していてもよく、ヘテロ環を形成していない場合、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、または炭素原子間に不飽和結合、ヘテロ原子、飽和もしくは不飽和の環構造を含んでよく、かつ置換されていてもよい炭化水素基を示し、Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基または炭素原子間にヘテロ原子を含んでもよいアルキル基もしくはアルコキシ基を示し、
は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基または炭素原子間にヘテロ原子を含んでもよいアルキル基もしくはアルコキシ基を示す。
【請求項16】
前記環Zは、少なくとも1つの窒素原子または硫黄原子をヘテロ原子として含む請求項15に記載の近赤外線吸収色素。
【請求項17】
前記環Zは、芳香族ヘテロ環である請求項15または請求項16に記載の近赤外線吸収色素。
【請求項18】
前記環Zは、それぞれ独立して、ピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、ピロール環、チオフェン環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、トリアジン環またはトリアゾール環である請求項15に記載の近赤外線吸収色素。
【請求項19】
式(AII)で示されるスクアリリウム系化合物からなることを特徴とする近赤外線吸収色素。
【化4】
式(AII)中、
は、それぞれ独立して、水素原子、または炭素原子間に不飽和結合、ヘテロ原子、飽和もしくは不飽和の環構造を含んでよく、かつ置換されていてもよい炭化水素基を示し、
は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基または炭素原子間にヘテロ原子を含んでもよいアルキル基もしくはアルコキシ基を示し、
は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアシル基もしくはアシルオキシ基、炭素数1〜12のパーフルオロアルキル基、または−SO基(Rは、置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキル基を示す)を示し、
は、炭素原子間に不飽和結合、ヘテロ原子、飽和もしくは不飽和の環構造を含んでよく、かつ置換されていてもよい2価の炭化水素基を示す。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか1項に記載の近赤外線吸収色素と樹脂とを含有する吸収層を備えたことを特徴とする光学フィルタ。
【請求項21】
入射角0°の分光透過率曲線において、波長430〜550nmの光の平均透過率が90%以上であり、かつ波長430〜550nmの光の最小透過率が75%以上である請求項20に記載の光学フィルタ。
【請求項22】
入射角0°の分光透過率曲線において、波長430〜480nmの光の平均透過率が87%以上である請求項21に記載の光学フィルタ。
【請求項23】
(iii−3)〜(iii−6)の要件を満たす請求項22に記載の光学フィルタ。
(iii−3)入射角0°の分光透過率曲線において、波長600〜700nmの光の平均透過率が25%以上である。
(iii−4)入射角0°の分光透過率曲線において、波長350〜395nmの光の平均透過率が2%以下である。
(iii−5)入射角0°の分光透過率曲線において、波長710〜1100nmの光の平均透過率が2%以下である。
(iii−6)入射角0°の分光透過率曲線の波長600〜700nmの光の透過率と、入射角30°の分光透過率曲線における波長600nm〜700nmの光の透過率との差分の絶対値の平均値が7%/nm以下である。
【請求項24】
前記吸収層は、透明基材上に備えた請求項20〜23のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
【請求項25】
前記透明基材は、ガラス基板である請求項24に記載の光学フィルタ。
【請求項26】
前記透明基材は、近赤外線吸収ガラス基板である請求項25に記載の光学フィルタ。
【請求項27】
前記透明基材は、樹脂からなる請求項24に記載の光学フィルタ。
【請求項28】
前記吸収層は、樹脂基板として機能する請求項20〜23のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
【請求項29】
固体撮像素子と、撮像レンズと、請求項20〜28のいずれか1項に記載の光学フィルタとを備えたことを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視光を透過し、近赤外光を遮断する近赤外線吸収色素、光学フィルタ、および該光学フィルタを備えた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルスチルカメラ等に搭載されるCCDやCMOSイメージセンサ等の固体撮像素子を用いた撮像装置では、色調を良好に再現し、かつ鮮明な画像を得るために、可視光を透過し、近赤外光を遮蔽する光学フィルタ(近赤外線カットフィルタ)が用いられている。
かかる光学フィルタにおいては、とくに、近赤外域で高い吸収性を有し、可視域で高い透過性を有する色素を用いることで、近赤外光に対する急峻な遮断性が得られ、可視光による画像の良好な色再現性が得られる。
【0003】
一方、近赤外光の高遮断性と可視光の高透過性の両特性を得ようとしても、全可視域の光に対して100%の透過率を得ることは難しく、可視域の中でも相対的に透過率の低い領域が存在する。
例えば、既知のスクアリリウム系色素は、近赤外光の遮断性に優れ、可視光の透過率も高いレベルにあり、可視域から近赤外域に向かって透過率が急峻に変化する特性を有する。本出願人は、スクアリリウム系色素を含む光学フィルタが、一定レベル以上の可視光透過率を実現できることを見出した(特許文献1)。しかし、可視光透過率をさらに高くすることで、より高精度の色再現性実現の要求が高まってきている。とくに、可視域の中でも相対的に短波長側にある波長430〜550nmの光の透過率をより高めることで、青色系の色再現性の精度を高める要求も強くなってきている。
【0004】
そこで、可視光の透過率を高めるべく、新たな構造を有するスクアリリウム色素も種々提案されているが、未だ満足できるレベルには達していない(特許文献2、3)。
【0005】
また、スクアリリウム系色素にフタロシアニン系色素を併用した光学フィルタも提案されている(特許文献4)が、可視光の透過性として、とくに波長430〜550nmの光に対する透過率を高める技術は開示されていない。さらに、特許文献4は、複数種の色素を使用しているため、可視光の吸収が副次的に増大し、やはり、高い可視光透過率が得られない問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2014/088063号
【特許文献2】特開2014−148567号公報
【特許文献3】国際公開第2011/086785号
【特許文献4】国際公開第2013/054864号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、近赤外光に対して、優れた遮光性を実現できるとともに、高い可視光透過性、とくに波長430〜550nmの光の透過率を高めた、近赤外線吸収色素、光学フィルタ、および該光学フィルタを用いた色再現性に優れる撮像装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る近赤外線吸収色素は、ジクロロメタンに溶解して測定される吸収特性が(i−1)〜(i−3)の要件を満たすことを特徴とする。
(i−1)波長400〜800nmの吸収スペクトルにおいて、670nm以上の波長領域に最大吸収波長λmaxを有する。
(i−2)波長430〜550nmの光に対する最大吸光係数εと、波長670nm以上の光に対する最大吸光係数εとの間に、次の関係式が成り立つ。
ε/ε≧65
(i−3)分光透過率曲線において、前記最大吸収波長λmaxにおける透過率を1%としたとき、波長430〜460nmの光の平均透過率が94.0%以上である。
【0009】
また、本発明に係る近赤外線吸収色素は、式(AI)で示されるスクアリリウム系化合物からなることを特徴とする。
【化1】
式(AI)中、
環Zは、それぞれ独立して、ヘテロ原子を環中に0〜3個有し、かつ置換されていてもよい、5員または6員環であり、
とR、RとR、およびRと環Zを構成する炭素原子またはヘテロ原子は、互いに連結して窒素原子とともにそれぞれヘテロ環A、ヘテロ環Bおよびヘテロ環Cを形成していてもよく、ヘテロ環を形成していない場合、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、または炭素原子間に不飽和結合、ヘテロ原子、飽和もしくは不飽和の環構造を含んでよく、かつ置換されていてもよい炭化水素基を示し、Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基または炭素原子間にヘテロ原子を含んでもよいアルキル基もしくはアルコキシ基を示し、
は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基または炭素原子間にヘテロ原子を含んでもよいアルキル基もしくはアルコキシ基を示す。
【0010】
また、本発明に係る近赤外線吸収色素は、式(AII)で示されるスクアリリウム系化合物からなることを特徴とする。
【化2】
式(AII)中、
は、それぞれ独立して、水素原子、または炭素原子間に不飽和結合、ヘテロ原子、飽和もしくは不飽和の環構造を含んでよく、かつ置換されていてもよい炭化水素基を示し、
は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基または炭素原子間にヘテロ原子を含んでもよいアルキル基もしくはアルコキシ基を示し、
は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアシル基もしくはアシルオキシ基、炭素数1〜12のパーフルオロアルキル基、または−SO基(Rは、置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキル基を示す)を示し、
は、炭素原子間に不飽和結合、ヘテロ原子、飽和もしくは不飽和の環構造を含んでよく、かつ置換されていてもよい2価の炭化水素基を示す。
【0011】
また、本発明に係る光学フィルタは、上記近赤外線吸収色素と樹脂とを含有する吸収層を備えたことを特徴とする。
また、本発明に係る撮像装置は、固体撮像素子と、撮像レンズと、上記光学フィルタを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、近赤外光に対する遮断性に優れ、可視域、とくに波長430〜550nmの光の透過率が高い光学フィルタが得られる。また、該光学フィルタを搭載することで、色再現性に優れた撮像装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】光学フィルタの例を概略的に示す断面図である。
図2A】実施例で用いたNIR色素の分光透過率曲線を示す図である。
図2B】実施例で用いたNIR色素の分光透過率曲線を示す図である。
図2C】実施例で用いたNIR色素の分光透過率曲線を示す図である。
図2D】実施例で用いたNIR色素の分光透過率曲線を示す図である。
図3】実施例の光学フィルタに用いた反射層の分光透過率曲線を示す図である。
図4A】一実施例で得られた光学フィルタの分光透過率曲線を示す図である。
図4B】一実施例で得られた光学フィルタの分光透過率曲線を示す図である。
図4C】一実施例で得られた光学フィルタの分光透過率曲線を示す図である。
図4D】一実施例で得られた光学フィルタの分光透過率曲線を示す図である。
図4E】一実施例で得られた光学フィルタの分光透過率曲線を示す図である。
図4F】一実施例で得られた光学フィルタの分光透過率曲線を示す図である。
図4G】一実施例で得られた光学フィルタの分光透過率曲線を示す図である。
図4H】一実施例で得られた光学フィルタの分光透過率曲線を示す図である。
図4I】一実施例で得られた光学フィルタの分光透過率曲線を示す図である。
図4J】一実施例で得られた光学フィルタの分光透過率曲線を示す図である。
図4K】一実施例で得られた光学フィルタの分光透過率曲線を示す図である。
図4L】一実施例で得られた光学フィルタの分光透過率曲線を示す図である。
図4M】一実施例で得られた光学フィルタの分光透過率曲線を示す図である。
図4N】一実施例で得られた光学フィルタの分光透過率曲線を示す図である。
図4O】一実施例で得られた光学フィルタの分光透過率曲線を示す図である。
図4P】一実施例で得られた光学フィルタの分光透過率曲線を示す図である。
図4Q】一実施例で得られた光学フィルタの分光透過率曲線を示す図である。
図4R】一実施例で得られた光学フィルタの分光透過率曲線を示す図である。
図4S】一実施例で得られた光学フィルタの分光透過率曲線を示す図である。
図4T】一実施例で得られた光学フィルタの分光透過率曲線を示す図である。
図4U】一実施例で得られた光学フィルタの分光透過率曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明するが、光学フィルタを「NIRフィルタ」、近赤外線吸収色素を「NIR色素」、紫外線吸収色素を「UV色素」と略記することもある。
【0015】
<NIRフィルタ>
本発明の一実施形態のNIRフィルタ(以下、「本フィルタ」ともいう)は、1層または2層以上の吸収層を有する。吸収層が2層以上で構成される場合、各層は同じでも異なってもよい。吸収層が2層以上の構成の場合、一方の層が、NIR色素を含む樹脂からなる近赤外線吸収層、もう一方の層が、UV色素を含む樹脂からなる紫外線吸収層とする例が挙げられる。また、吸収層は、それそのものが基板(樹脂基板)であってもよい。
【0016】
本フィルタは、特定の波長域の光を遮蔽する選択波長遮蔽層を1層または2層以上有してもよい。選択波長遮蔽層が2層以上で構成される場合、各層は同じでも異なってもよい。選択波長遮蔽層が2層以上の構成の場合、一方の層が、少なくとも近赤外光を遮蔽する近赤外線遮蔽層、もう一方の層が、少なくとも紫外光を遮蔽する紫外線遮蔽層とする例が挙げられる。
【0017】
本フィルタは、さらに透明基材を有してもよい。この場合、吸収層と選択波長遮蔽層は、透明基材の同一主面上に有してもよく、異なる主面上に有してもよい。吸収層と選択波長遮蔽層を同一主面上に有する場合、これらの積層順はとくに限定されない。また、本フィルタは、さらに反射防止層等の、他の機能層を有してもよい。
【0018】
以下、本フィルタの構成例を説明する。図1(a)は、吸収層11を備えた例であり、図1(b)は、吸収層11と選択波長遮蔽層12を備えた例、さらに図1(c)は、透明基材13と吸収層11を備えた例である。吸収層11は、吸収基板として構成してもよい。
【0019】
図1(a)〜(c)において、吸収層11は、近赤外線吸収層および紫外線吸収層の2層が含まれてもよい。例えば、図1(b)において、選択波長遮蔽層12上に、近赤外線吸収層、紫外線吸収層の順に備える構成、これら2層が逆の順に備わる構成でもよい。同様に、図1(c)において、透明基材13上に、近赤外線吸収層、紫外線吸収層の順に備わる構成、これら2層が逆の順に備わる構成でもよい。
【0020】
図1(d)は、透明基材13の一方の主面上に吸収層11、他方の主面上および吸収層11の主面上に、それぞれ、選択波長遮蔽層12a、12bを備えた例である。
図1(e)は、透明基材13の一方の主面上に吸収層11a、他方の主面上に吸収層11bを備え、さらに吸収層11aの主面上に選択波長遮蔽層12a、吸収層11bの主面上に選択波長遮蔽層12bを備えた例である。
【0021】
選択波長遮蔽層12a、12bは、これらの層により、紫外光および近赤外光を反射し、可視光を透過する特性を有する。例えば、選択波長遮蔽層12aが、紫外光と第1の近赤外光を反射し、選択波長遮蔽層12bが、紫外光と第2の近赤外光を反射してもよい。
【0022】
図1(f)は、図1(d)に示すフィルタの吸収層11の主面上の選択波長遮蔽層12bの位置に反射防止層14を備えた例である。吸収層が最表面の構成をとる場合、吸収層上に反射防止層を設けるとよく、反射防止層は吸収層の防湿効果を高めるため、吸収層の側面全体も覆う構成(不図示)でもよい。なお、以下、とくにことわりがない場合、選択反射遮蔽層は、反射機能を有する「反射層」として説明する。
【0023】
本フィルタは、(iii−1)を満たせばよく、(iii−1)と(iii−2)を満たせば好ましく、(iii−1)と(iii−2)に加えて(iii−3)〜(iii−6)のうち少なくとも一つを満たせばより好ましく、(iii−1)〜(iii−6)全てを満たせばさらに好ましい。
【0024】
(iii−1)〜(iii−5)は、入射角0°の分光透過率曲線における要件である。
(iii−1)波長430〜550nmの光の平均透過率が90%以上であり、かつ波長430〜550nmの光の最小透過率が75%以上である。
(iii−2)波長430〜480nmの光の平均透過率が87%以上である。
(iii−3)波長600〜700nmの光の平均透過率が25%以上である。
(iii−4)波長350〜395nmの光の平均透過率が2%以下である。
(iii−5)波長710〜1100nmの光の平均透過率が2%以下である。
(iii−6)入射角0°の分光透過率曲線における波長600〜700nmの光の透過率と、入射角30°の分光透過率曲線における波長600nm〜700nmの光の透過率との差分の絶対値の平均値(以下、「波長600〜700nmの光の透過率平均シフト量」という)が7%/nm以下である。
【0025】
(iii−1)を満たすことで、青色系の撮像の色再現性の精度をさらに高めることができる。
(iii−2)を満たすことで、青色系の撮像の色再現性の精度をさらに高めることができる。
(iii−3)を満たすことで、固体撮像素子の分光感度に不要な波長700nm以上の光をカットしつつ、人間の視感度に関与する波長600〜700nmの光を効率よく透過できる。
(iii−4)を満たすことで、固体撮像素子の分光感度を人間の視感度に近づけることができる。
(iii−5)を満たすことで、固体撮像素子の分光感度を人間の視感度に近づけることができる。
(iii−6)を満たすことで、波長600〜700nmの光の入射角依存性を低くでき、この波長域における固体撮像素子の分光感度の入射角依存性を小さくできる。
【0026】
本フィルタは、(iii−1)において、波長430〜550nmの光の平均透過率は91%以上が好ましく、92%以上がより好ましい。また、(iii−1)において、波長430〜550nmの光の最小透過率は、77%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。また、本フィルタは、(iii−2)において、波長430〜480nmの光の平均透過率は、88%以上が好ましく、89%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。また、本フィルタは、(iii−3)において、波長600〜700nmの光の平均透過率は30%以上が好ましい。
【0027】
本フィルタは、(iii−4)において、波長350〜395nmの光の平均透過率は1.5%以下が好ましく、1%以下がより好ましく、0.5%以下がさらに好ましい。また、本フィルタは、(iii−5)において、波長710〜1100nmの光の平均透過率は1%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましく、0.3%以下がさらに好ましい。さらに、本フィルタは、(iii−6)において、波長600〜700nmの光の透過率平均シフト量が、3%/nm以下が好ましく、2%/nm以下がより好ましい。
【0028】
次に、本フィルタの吸収層、反射層、透明基材および反射防止層について説明する。
【0029】
[吸収層]
吸収層は、近赤外線吸収色素(A)と、透明樹脂(B)とを含有し、典型的には、透明樹脂(B)中に近赤外線吸収色素(A)が均一に溶解または分散した層または(樹脂)基板である。吸収層は、さらに紫外線吸収色素(U)を含有してもよい。また、吸収層は、前述のとおり、複数設けてもよい。近赤外線吸収色素(A)は、以下「色素(A)」、紫外線吸収色素(U)は以下「色素(U)」ともいう。
【0030】
本フィルタにおいて、吸収層の厚さは、0.1〜100μmが好ましい。吸収層が複数層からなる場合、各層の合計の厚さは、0.1〜100μmが好ましい。厚さが0.1μm未満では、所望の光学特性を十分に発現できないおそれがあり、厚さが100μm超では、層の平坦性が低下し、吸収率の面内バラツキが生じるおそれがある。吸収層の厚さは、0.3〜50μmがより好ましい。また、反射層や、反射防止層等の他の機能層を備えた場合、その材質によっては、吸収層が厚すぎると割れ等が生ずるおそれがある。そのため、吸収層の厚さは、0.3〜10μmがより好ましい。
【0031】
(近赤外線吸収色素(A))
色素(A)は、ジクロロメタンに溶解して測定される吸収特性が、(i−1)〜(i−3)を満たすとよい。
(i−1)波長400〜800nmの光の吸収スペクトルにおいて、波長670nm以上の波長域に最大吸収波長λmaxを有する。
(i−2)波長430〜550nmの光に対する最大吸光係数εと、波長670nm以上の光に対する最大吸光係数εとの間に、次の関係式が成り立つ。
ε/ε≧65
(i−3)分光透過率曲線において、最大吸収波長λmaxにおける透過率を1%としたとき、波長430〜460nmの光に対する平均透過率(TAvg.(430−460))が94.0%以上である。
【0032】
色素(A)は、(i−1)〜(i−3)に加えて、ジクロロメタンに溶解して測定される吸収特性が、(i−4)〜(i−7)の少なくとも1つを満たすと好ましく、少なくとも2つを満たすとより好ましく、少なくとも3つを満たすとさらに好ましく、全てを満たすととくに好ましい。
(i−4)分光透過率曲線において、最大吸収波長λmaxにおける透過率を1%としたときの最大吸収波長λmaxより短波長側で透過率が80%、10%となる波長をそれぞれ波長λ80、波長λ10としたとき、前記波長λ80と前記波長λ10との間の前記分光透過率曲線の傾き(ΔT/Δλ)の最大値が、−0.5[%/nm]以下である。
(i−5)分光透過率曲線において、最大吸収波長λmaxにおける透過率を1%としたとき、波長410〜460nmの光の透過率(T(410−460))が93.0%以上である。
(i−6)分光透過率曲線において、最大吸収波長λmaxにおける透過率を1%としたとき、波長460nm以下の光に対して透過率が97%となる最長波長(λ97)が457nm以下である。
(i−7)分光透過率曲線において、最大吸収波長λmaxにおける透過率を1%としたときの最大吸収波長λmaxより短波長側で透過率が80%となる波長λ80と、最大吸収波長λmaxとの差(λmax−λ80)が78nm以下である。
【0033】
(i−1)においてλmaxは、680〜770nmに有すると好ましく、680〜750nmに有するとより好ましく、690〜730nmに有するとさらに好ましい。
また、(i−2)において、ε/ε≧70がより好ましい。また、(i−2)において、波長430〜550nmの光に対する最大吸光係数εと、波長680〜770nmの光に対する最大吸光係数をεとし、該εとの間に、ε/ε≧65が成り立つとより好ましく、ε/ε≧70がより好ましい。
また、(i−3)において、TAvg.(430−460)は、95.0%以上が好ましく、96.0%以上がより好ましく、96.5%以上がさらに好ましい。
また、(i−4)において、(ΔT/Δλ)の最大値は、−0.52[%/nm]以下が好ましく、−0.55[%/nm]以下がより好ましい。なお、傾き(ΔT/Δλ)は、例えば、1nm間隔(即ち、Δλ=1nm)で得られる値等で与えることができる。
また、(i−5)において、T(410−460)は、93.5%以上が好ましく、94.0%以上がより好ましい。
また、(i−6)において、λ97は、455nm以下が好ましく、452nm以下がより好ましく、445nm以下がさらに好ましい。
さらに、(i−7)において、λmax−λ80は、75nm以下が好ましく、73nm以下がより好ましい。
【0034】
(i−1)〜(i−3)を満たす色素(A)を使用することにより、良好な近赤外線遮蔽特性を有しながら、可視光透過率が従来のものより高い、波長430〜550nmの光の透過率が高い光学フィルタが得られ、さらに、波長430〜460nmの光の透過率が高い光学フィルタが得られる。
具体的に、(i−1)を満たすことで、所定の近赤外光を十分に遮蔽できる。また、(i−2)および(i−3)を満たすことで、とくに青色系の可視光透過率を高くできる。また、(i−4)を満たすことで、可視域のうちの長波長側領域と近赤外域との間で急峻な透過率変化が得られ、赤色系の可視光透過率を高くできるとともに良好な近赤外線遮蔽特性を実現できる。また、(i−5)を満たすことで、とくに青色系の可視光透過率を高くできる。また、(i−6)を満たすことで、さらに青色系の可視光透過率を高くできる。さらに、(i−7)を満たすことで、可視域のうちの長波長側領域と近赤外域との間で急峻な透過率変化が得られ、良好な近赤外線遮蔽特性を実現できる。
【0035】
色素(A)は、上記の条件を満たす色素であればとくに限定されない。色素(A)としては、例えばスクアリリウム化合物、例えば、式(AI)または式(AII)(後述)で示されるスクアリリウム系化合物が挙げられる。本明細書において、式(AI)で示される化合物からなるNIR色素をNIR色素(AI)、また、(AII)で示される化合物からなるNIR色素をNIR色素(AII)ともいい、他の色素についても同様である(例えば、後述の式(A1−1)で示される化合物からなるNIR色素をNIR色素(A1−1)ともいう)。また、例えば、式(1n)で表される基を基(1n)とも記し、他の式で表される基も同様である。
【0036】
<NIR色素(AI)>
NIR色素(AI)は、分子構造の中央にスクアリリウム骨格を有し、スクアリリウム骨格の左右に各1個のベンゼン環が結合し、そのベンゼン環は4位で窒素原子と結合するとともに、ベンゼン環の2位と3位の炭素原子を含むヘテロ環が形成された縮合環構造を左右に有するスクアリリウム系化合物からなる。
【0037】
【化3】
式(AI)において、環Zは、ヘテロ原子を環中に0〜3個有する、5員または6員環である。ヘテロ原子は、窒素原子、硫黄原子、酸素原子のいずれであってもよいが、可視光透過率を高める観点から、窒素原子および硫黄原子が好ましい。環Zの具体例としては、ピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、ピロール環、チオフェン環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、トリアジン環、トリアゾール環等が挙げられる。これらの中でも、ヘテロ原子の電子を非局在化でき、非共有電子対の基底状態のエネルギー準位を安定化する効果が得られて可視光透過率が向上できることから、芳香族ヘテロ環が好ましく、とくにピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピロール環、チオフェン環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、トリアゾール環が好ましい。
【0038】
環Zは、該環Zを構成する炭素原子または窒素原子に結合する1つ以上の水素原子が、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、アミノ基、N−置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N−置換カルバモイル基、イミド基、ハロゲン原子等で置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキル基またはアルコキシ基等の置換基で置換されていてもよい。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、以下の説明に挙げるハロゲン原子においても同様の原子を例示できる。アルキル基、アルコキシ基を構成するアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、不飽和結合を含んでいてもよい。置換基は、透明樹脂への溶解性の観点から、炭素数4〜12の長鎖アルキル基が好ましく、また、可視光透過率を高める観点から、ハロゲン原子、スルホ基、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、カルバモイル基等の電子吸引性の高い基が好ましい。
【0039】
式(AI)において、RとR、RとR、およびRと環Zを構成する炭素原子またはヘテロ原子(窒素原子)は、互いに連結してベンゼン環の4位に結合した窒素原子とともにそれぞれヘテロ環A、ヘテロ環Bおよびヘテロ環Cを形成していてもよい。式(AI)は、ヘテロ環A〜ヘテロ環Cのすべてが形成されていてもよく、1個または2個が形成されていてもよい。1個以上のヘテロ環を有する式(AI)において、ヘテロ環Aおよびヘテロ環Bは、員数が3〜6のヘテロ環であり、ヘテロ環Cは員数が5または6のヘテロ環である。なお、「ヘテロ環A〜ヘテロ環C」は、以下、「環A〜環C」ともいう。
【0040】
環A、環Bとしては、アジリジン環、アゼチジン環、ピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環等が挙げられる。環Cとしては、ピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環等が挙げられる。
環A、BおよびCは、各々の環を構成する炭素原子または窒素原子に結合する1つ以上の水素原子が、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、アミノ基、N−置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N−置換カルバモイル基、イミド基、炭素数1〜12のアルキル基またはアルコキシ基等の置換基で置換されていてもよい。アルキル基、アルコキシ基を構成するアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。
【0041】
ヘテロ環を形成していない場合のRおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、または炭素原子間に不飽和結合、ヘテロ原子(酸素原子等)、飽和もしくは不飽和の環構造を含んでよく、かつ置換されていてもよい炭化水素基、好ましくは炭素数1〜20の炭化水素基を示す。置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、アミノ基、N−置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N−置換カルバモイル基、イミド基、炭素数1〜12のアルキル基またはアルコキシ基等が挙げられる。アルキル基、アルコキシ基を構成するアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。ヘテロ環を形成していない場合のR、Rとしては、可視光透過性や透明樹脂への溶解性等の観点から、分岐していてもよく、炭素原子間にヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、炭素数1〜12のアルキル基がより好ましく、炭素数2〜8のアルキル基がさらに好ましい。
【0042】
また、ヘテロ環を形成していない場合のR、およびRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基またはアルキル基もしくはアルコキシ基、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基もしくはアルコキシ基を示す。アルキル基、アルコキシ基を構成するアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。Rとしては、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基が好ましく、水素原子、アルキル基がより好ましい。また、Rは、吸収スペクトルの急峻性、とくに可視域と近赤外域の境界付近の変化の急峻性の観点から、水素原子、ハロゲン原子が好ましく、水素原子がとくに好ましい。
【0043】
なお、本明細書において、「飽和もしくは不飽和の環構造」とは、とくに他に明示しなければ、炭化水素環および環構成原子として酸素原子を有するヘテロ環をいう。この場合、環を構成する炭素原子に炭素数1〜10のアルキル基が結合した構造もその範疇に含むものとする。
【0044】
式(AI)において、スクアリリウム骨格の左右に結合するベンゼン環が有する基R〜R、ベンゼン環に隣接して縮合環を形成する環Zは、左右で異なってもよいが、生産性の観点から同一が好ましい。
【0045】
また、NIR色素(AI)は、式(AI)の共鳴構造の下記式(AI−1)で示される化合物も含むものとする。式(AI−1)中の記号は式(AI)における定義と同じである。
【化4】
【0046】
NIR色素(AI)は、スクアリリウム骨格の左右に結合するベンゼン環の2、3位に特定のヘテロ環が縮合した構造を有するので、近赤外光に対して高い吸収特性を有しながら、可視域のうち、とくに波長430〜550nmの光の透過率をより高められる。これは、ベンゼン環を縮合ヘテロ環とすることで、分子の平面性を高められるからと考えられる。さらに、ヘテロ環が芳香族ヘテロ環の場合、ヘテロ原子の電子を非局在化できるため、可視光透過率をより一層高められる。
【0047】
NIR色素(AI)は、有機溶媒に対する溶解性が良好であり、透明樹脂への相溶性も良好である。その結果、吸収層を薄くしても優れた分光特性を有し、光学フィルタを薄型化できるため、加熱による吸収層の熱膨張を抑制でき、反射層や、反射防止層等の機能層を形成する際の熱処理時において、それらの層の割れ等の発生を抑制できる。
【0048】
NIR色素(AI)の具体例として、式(A11)〜(A15)、(A21)〜(A26)、(A31)で示される化合物からなる色素が挙げられる。
【化5】
【化6】
【化7】
式(A11)〜(A15)中のR、R、RおよびRは式(AI)において環A〜Cが形成されていない場合のR、R、RおよびRの定義と同じであり、式(A21)〜(A26)中のRおよびRは式(AI)において環Cが形成されていない場合のRおよびRの定義と同じであり、式(A31)中のRおよびRは式(AI)において環Aが形成されていない場合のRおよびRの定義と同じである。また、式(A11)〜(A14)、(A21)〜(A26)、(A31)中のRは、いずれも、独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、アミノ基、N−置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N−置換カルバモイル基、イミド基、および炭素数1〜12のアルキル基またはアルコキシ基から選択される基である。アルキル基、アルコキシ基を構成するアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、不飽和結合を含んでいてもよい。さらに、式(A21)〜(A26)中2価の基Qは、式(AI)において環Aが形成される場合の、RとRが結合した2価の基を示しており、式(A31)中2価の基Xは、式(AI)において環Bが形成される場合の、RとRが結合した2価の基を示している。
【0049】
式(A11)〜(A15)において、RおよびRは、可視光透過性や透明樹脂への溶解性等の観点から、それぞれ独立して、炭素原子間にヘテロ原子を含んでよい炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、炭素原子間にヘテロ原子を含んでよい炭素数2〜12のアルキル基、例えば、基(1a)〜(5a)がより好ましい。
【化8】
また、式(A11)〜(A15)、(A21)〜(A26)において、Rは、透明樹脂への溶解性、可視光透過性等の観点から、独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基もしくはアルコキシ基(例えば、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基等)が好ましく、水素原子、ハロゲン原子、メチル基がより好ましい。Rは、可視域と近赤外域の境界付近の変化の急峻性の観点から、水素原子、ハロゲン原子が好ましく、水素原子がとくに好ましい。
さらに、式(A11)〜(A14)、(A21)〜(A26)、(A31)において、Rは、独立して、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、トリフルオロメチル基、シアノ基、アルコキシカルボニル基が好ましく、水素原子、ニトロ基、トリフルオロメチル基がより好ましい。
【0050】
式(A21)〜(A26)において、2価の基Qとしては、水素原子が炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、置換されてもよい炭素数1〜10のアシルオキシ基で置換されてもよいアルキレン基、またはアルキレンオキシ基が挙げられる。アルキレンオキシ基の場合の酸素の位置はNの隣以外の場所が好ましい。2価の基Qとしては、炭素数3〜5のアルキレン基がとくに好ましい。
【0051】
式(A31)において、2価の基Xの好ましい態様は、前述の2価の基Qと同様である。
また、式(A31)において、Rは、透明樹脂への溶解性、可視光透過性等の観点から、独立して、分岐していてもよく、炭素原子間にヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、炭素数2〜8のアルキル基がより好ましく、Rは、水素原子、ハロゲン原子が好ましく、水素原子がとくに好ましい。
【0052】
NIR色素(AI)として好ましい色素の例を表1に示す。なお、表1におけるRおよびRの具体的な構造は、それぞれ式(1a)〜(5a)に対応する。また、色素(A3−1)は、式(A3−1)で示される化合物からなる色素である。色素(A1−1)〜(A1−19)において、左右に1個ずつ計2個存在するRは左右で同じであり、R〜Rについても同様である。また、色素(A2−1)〜(A2−6)のQおよびR〜Rについても同様である。
【0053】
【表1】
【0054】
【化9】
【0055】
NIR色素(AI)は、例えば、米国特許公開第2014/0061505号明細書、国際公開第2014/088063号明細書等に記載の方法で製造可能である。具体的には、NIR色素(AI)は、3,4−ジヒドロキシ−3−シクロブテン−1,2−ジオン(スクアリン酸)と、スクアリン酸と結合して式(AI)に示す構造を形成可能な縮合環を有する化合物とを反応させて製造できる。例えば、NIR色素(AI)が左右対称の構造である場合、スクアリン酸1当量に対して上記範囲で所望の構造の縮合環を有する化合物2当量を反応させればよい。
【0056】
以下に、具体例として、NIR色素(A11)を得る際の反応経路を示す。下記スキーム(F1)においてスクアリン酸を(s)で示す。スキーム(F1)によれば、所望の置換基(R、R)を有するベンゾチアジアゾール化合物(a)のベンゼン環に、所望の置換基(R、R)を有する置換アミノ基を導入し(c)、これを還元することでフェニレンジアミン化合物(d)を得る。さらに所望の置換基Rを有するカルボン酸(e)またはアルデヒド(f)を反応させてベンゾイミダゾール化合物(g)を得る。スクアリン酸(s)1当量に対し、ベンゾイミダゾール化合物(g)2当量を反応させて、色素(A11)を得る。
【0057】
【化10】
【0058】
スキーム(F1)中、R〜Rは、式(A11)におけるR〜Rと同じ意味であり、Meはメチル基、Etはエチル基、Buはブチル基、Phはフェニル基、HBraq.は臭化水素酸、THFはテトラヒドロフランを示す。以下、本明細書中、Me、Et、Bu、Ph、HBraq.、THFは、使用した場合、前記と同じ意味で用いられる。
【0059】
<NIR色素(AII)>
NIR色素(AII)は、分子構造の中央にスクアリリウム骨格を有し、スクアリリウム骨格の左右に各1個のベンゼン環が結合し、そのベンゼン環は4位で窒素原子と結合するとともに、該窒素原子を含む飽和複素環が形成された構造を有するスクアリリウム系化合物からなる。
【0060】
【化11】
式(AII)において、Rは、それぞれ独立して、水素原子、または炭素原子間に不飽和結合、ヘテロ原子(酸素原子等)、飽和もしくは不飽和の環構造を含んでよく、かつ置換されていてもよい炭化水素基を示す。置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、アミノ基、N−置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N−置換カルバモイル基、イミド基、炭素数1〜12のアルキル基またはアルコキシ基等が挙げられる。アルキル基、アルコキシ基を構成するアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。Rとしては、可視光透過性や透明樹脂への溶解性等の観点から、分岐していてもよく、炭素原子間にヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、炭素数1〜12のアルキル基がより好ましく、炭素数2〜8のアルキル基がさらに好ましい。
【0061】
また、Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基またはアルキル基もしくはアルコキシ基、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基もしくはアルコキシ基を示す。アルキル基、アルコキシ基を構成するアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。Rとしては、吸収スペクトルの急峻性、とくに可視域と近赤外域の境界付近の変化の急峻性の観点から、水素原子、ハロゲン原子が好ましく、水素原子がとくに好ましい。
【0062】
また、Rは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアシル基もしくはアシルオキシ基、炭素数1〜12のパーフルオロアルキル基、または−SO基(Rは、置換基されていてもよい炭素数1〜12のアルキル基を示す)を示す。Rとしては、隣接するベンジル位の水素原子の酸性度を高める観点から、ハロゲン原子、水酸基、−SO基(但し、Rは、炭素数1〜12のアルキル基である)が好ましく、フッ素原子、水酸基、−SOMeがとくに好ましい。
【0063】
2価の基Xとしては、水素原子が炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、置換されてもよい炭素数1〜10のアシルオキシ基で置換されてもよいアルキレン基、またはアルキレンオキシ基が挙げられる。アルキレンオキシ基の場合の酸素の位置はNの隣以外の場所が好ましい。Xとしては、炭素数2〜5のアルキレン基がとくに好ましい。
【0064】
式(AII)において、スクアリリウム骨格の左右に結合するベンゼン環が有する基R〜R、Xは、左右で異なってもよいが、生産性の観点から同一が好ましい。
また、NIR色素(AII)は、式(AII)の共鳴構造の下記式(AII−1)で示される化合物も含むものとする。式(AII−1)中の記号は式(AII)における定義と同じである。
【化12】
【0065】
NIR色素(AII)は、不対電子を有する窒素原子を有さずにRに隣接するベンジル位に酸性度の高い水素原子を有するので、近赤外光に対して高い吸収特性を有しながら、可視域のうち、とくに波長430〜550nmの光の透過率をより高められる。
【0066】
NIR色素(AII)のより具体的な例として、式(A41)で示される化合物からなる色素が挙げられる。
【化13】
式(A41)中の記号R〜Rは式(AII)における定義と同じであり、好ましい態様も同様である。
【0067】
NIR色素(AII)として好ましい色素の例を表2に示す。なお、色素(A4−1)〜(A4−3)において、左右に1個ずつ計2個存在するRは左右で同じであり、R、Rについても同様である。
【0068】
【表2】
【0069】
本実施形態において、例えば、色素(A)としてNIR色素(AI)、NIR色素(AII)を用いる場合、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、NIR色素(AI)およびNIR色素(AII)以外の色素を含有してもよいが、可視光透過率を向上させる観点から、NIR色素(AI)のみ、またはNIR色素(AII)のみを使用することが好ましい。なお、NIR色素(AI)およびNIR色素(AII)はそれぞれ1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0070】
吸収層中における色素(A)の含有量は、透明樹脂(B)100質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましい。0.1質量部以上で所望の近赤外線吸収能が得られ、30質量部以下で、近赤外線吸収能の低下やヘイズ値の上昇等が抑制される。また、色素(A)の含有量は、0.5〜25質量部がより好ましく、1〜20質量部がさらに好ましい。
【0071】
(紫外線吸収色素(U))
吸収層は、色素(A)と、透明樹脂(B)に加え、色素(U)を含有できる。色素(U)は、具体例に、オキサゾール系、メロシアニン系、シアニン系、ナフタルイミド系、オキサジアゾール系、オキサジン系、オキサゾリジン系、ナフタル酸系、スチリル系、アントラセン系、環状カルボニル系、トリアゾール系等の色素が挙げられる。この中でも、オキサゾール系、メロシアニン系の色素が好ましい。また、色素(U)は、吸収層に1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0072】
(透明樹脂(B))
透明樹脂(B)として、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、エン・チオール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリパラフェニレン樹脂、ポリアリーレンエーテルフォスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、およびポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等のポリエステル樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0073】
上記樹脂の中でも、透明性、色素(A)、または色素(A)および色素(U)の、透明樹脂(B)に対する溶解性、ならびに耐熱性の観点からは、透明樹脂は、ガラス転移点(Tg)の高い樹脂が好ましい。具体的には、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド樹脂、およびエポキシ樹脂から選ばれる1種以上が好ましく、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂から選ばれる1種以上がより好ましい。
【0074】
(その他の成分)
吸収層は、さらに、本発明の効果を損なわない範囲で、密着性付与剤、色調補正色素、レベリング剤、帯電防止剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、分散剤、難燃剤、滑剤、可塑剤等の任意成分を有してもよい。
【0075】
吸収層は、例えば、色素(A)と、色素(U)と、透明樹脂(B)または透明樹脂(B)の原料成分と、必要に応じて配合される各成分とを、溶媒に溶解または分散させて塗工液を調製し、これを基材に塗工し乾燥させ、さらに必要に応じて硬化させて形成できる。上記基材は、本フィルタに含まれる透明基材でもよいし、吸収層を形成する際にのみ使用する剥離性の基材でもよい。また、溶媒は、安定に分散できる分散媒または溶解できる溶媒であればよい。
【0076】
また、塗工液は、微小な泡によるボイド、異物等の付着による凹み、乾燥工程でのはじき等の改善のため界面活性剤を含んでもよい。さらに、塗工液の塗工には、例えば、浸漬コーティング法、キャストコーティング法、またはスピンコート法等を使用できる。上記塗工液を基材上に塗工後、乾燥させることにより吸収層が形成される。また、塗工液が透明樹脂の原料成分を含有する場合、さらに熱硬化、光硬化等の硬化処理を行う。
【0077】
また、吸収層は、押出成形によりフィルム状に製造可能でもあり、このフィルムを他の部材に積層し熱圧着等により一体化させてもよい。例えば、本フィルタが透明基材を含む場合、このフィルムを透明基材上に貼着してもよい。
【0078】
[反射層]
反射層としては、可視光を透過し、吸収層の遮光域以外の波長の光を主に反射する波長選択性を有するとよい。この場合、反射層の反射領域は、吸収層の近赤外域における遮光領域を含んでもよい。
【0079】
反射層は、低屈折率の誘電体膜(低屈折率膜)と高屈折率の誘電体膜(高屈折率膜)とを交互に積層した誘電体多層膜から構成される。高屈折率膜の材料としては、Ta、TiO、Nbが挙げられる。このうち、成膜性、屈折率等における再現性、安定性等の点から、TiOが好ましい。低屈折率膜の材料としては、SiO、SiO等が挙げられる。成膜性における再現性、安定性、経済性等の点から、SiOが好ましい。また、反射層の膜厚は、2〜10μmが好ましい。
【0080】
誘電体多層膜は、光の干渉を利用して特定の波長領域の光の透過と遮蔽を制御し、その透過・遮蔽特性には入射角依存性がある。一般に、反射により遮蔽する光の波長は、垂直に入射する光(入射角0°)より、斜めに入射する光の方が短波長になる。
【0081】
反射層は、下記(ii−1)および(ii−2)を満たすとよい。
(ii−1)入射角0°および30°の各分光透過率曲線において、波長420〜695nmの光の透過率が90%以上である。
(ii−2)入射角0°および30°の各分光透過率曲線において、波長λ〜1100nmの光の透過率が1%以下である(ここで、λは、吸収層の波長650〜800nmの光の透過率が1%となる最大波長である)。
【0082】
(ii−1)において、波長420〜695nmの光の透過率は、93%以上が好ましく、95%以上がより好ましく、97%以上がさらに好ましい。
(ii−2)において、波長λ〜1100nmの光の透過率は、0.5%以下がより好ましい。
反射層が、(ii−1)および(ii−2)を満たせば、本フィルタは、(iii−1)〜(iii−6)の要件を満たす分光透過率特性を容易に得られる。
【0083】
[反射防止層]
反射防止層としては、誘電体多層膜や中間屈折率媒体、屈折率が漸次的に変化するモスアイ構造等が挙げられる。中でも高い光利用効率、生産性の観点から誘電体多層膜の使用が好ましい。
【0084】
[透明基材]
透明基材を用いる場合、該透明基材の厚さは、0.03〜5mmが好ましく、薄型化の点から、0.05〜1mmがより好ましく、可視光を透過するものであれば、ガラスや(複屈折性)結晶、ポリイミド樹脂等種々の樹脂が利用できる。
【0085】
透明基材用のガラスとしては、フツリン酸塩系ガラスやリン酸塩系ガラス等にCuO等を添加した吸収型のガラス(近赤外線吸収ガラス基材)、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等が挙げられる。なお、「リン酸塩ガラス」には、ガラスの骨格の一部がSiOで構成されるケイリン酸塩ガラスも含むものとする。
【0086】
透明基材がフツリン酸塩系ガラスの場合、具体的にカチオン%表示で、P5+ 20〜45%、Al3+ 1〜25%、R 1〜30%(但し、Rは、Li、Na、Kのうち少なくとも1つであって、左記の値は、それぞれの含有割合を合計した値である)、Cu2+ 1〜20%、R2+ 1〜50%(但し、R2+は、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Zn2+のうち少なくとも1つであって、左記の値は、それぞれの含有割合を合計した値である)を含有するとともに、アニオン%表示で、F 10〜65%、O2− 35〜90%を含有していることが好ましい。
【0087】
また、透明基材がリン酸塩系ガラスの場合、質量%表示で、P 30〜80%、Al 1〜20%、RO 0.5〜30%、(但し、ROは、LiO、NaO、KOのうちの少なくとも1つであって、左記の値は、それぞれの含有割合を合計した値である。)、CuO 1〜12%、RO 0.5〜40%(但し、ROは、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnOのうちの少なくとも1つであって、左記の値は、それぞれの含有割合を合計した値である)を含有することが好ましい。
【0088】
市販品を例示すると、NF−50E、NF−50EX、NF−50T、NF−50TX(旭硝子(株)製、商品名)等、BG−60、BG−61(以上、ショット社製、商品名)等、CD5000(HOYA(株)製、商品名)等が挙げられる。
【0089】
上記したCuO含有ガラスは、金属酸化物をさらに含有してもよい。金属酸化物として、例えば、Fe、MoO、WO、CeO、Sb、V等の1種または2種以上を含有すると、CuO含有ガラスは紫外線吸収特性を有する。これらの金属酸化物の含有量は、上記CuO含有ガラス100質量部に対して、Fe、MoO、WOおよびCeOからなる群から選択される少なくとも1種を、Fe 0.6〜5質量部、MoO 0.5〜5質量部、WO 1〜6質量部、CeO 2.5〜6質量部、またはFeとSbの2種をFe 0.6〜5質量部+Sb 0.1〜5質量部、もしくはVとCeOの2種をV 0.01〜0.5質量部+CeO 1〜6質量部とすることが好ましい。
【0090】
なお、本フィルタが、透明基材13としてガラスや吸収型ガラスを含む場合、ガラスまたは吸収型ガラス(透明基材13)と、吸収層11(11a,11b)と、の間に吸収層の耐久性向上の目的で30nm以上の図示しない誘電体層を有してもよい。
【0091】
誘電体層は、例えば、ガラスからなる透明基材にNa原子やK原子等のアルカリ原子が含まれ、そのアルカリ原子が吸収層に拡散することで吸収層の光学特性や耐候性を劣化させ得る場合に、アルカリバリア膜として機能し、本フィルタの耐久性を向上できる。上記の場合、誘電体層は、SiOやSiO、Al等が好適に挙げられる。なお、ガラスまたは近赤外線吸収ガラス(吸収型ガラス)と吸収層との間に、上記の誘電体層を備える場合、ガラスまたは近赤外線吸収ガラス上に誘電体層を備えたものも「透明基材」として取り扱うものとする。
【実施例】
【0092】
例1〜例22は本発明に係る光学フィルタの実施例である。
【0093】
<色素の合成>
NIR色素(A1−1)〜(A1−19)、(A2−1)〜(A2−6)、(A3−1)、(A4−1)〜(A4−3)、および(C1)〜(C3)を合成した。なお、NIR色素(C1)および(C3)は、下記の構造式で表される色素であり、NIR色素(C2)は後述する市販品である。
【0094】
【化14】
【0095】
[NIR色素(A1−1)の製造]
以下、スキーム(F1)を用いて色素(A1−1)の製造例を具体的に記載する。なお、以下の説明において、原料成分および(中間)生成物におけるR〜Rについては記載しないが、RおよびRは2−エチルヘキシル基、R〜Rはいずれも水素原子である。
【0096】
NIR色素(A1−1)の製造においては、スキーム(F1)中の化合物(a)、2,1,3−ベンゾチアジアゾールを東京化成工業(株)より入手し出発物質として用いた。
【0097】
(化合物(b)の製造)
還流装置を装備したフラスコに、化合物(a)を25.0g(183.7mmol)、48%臭化水素酸を150mL加えた。100℃に昇温後、臭素を8.5mL(165.4mmol)滴下し、100℃で9時間撹拌し、放冷した。反応終了後、ジクロロメタン200mLを加え析出した固体を溶解し、さらに亜硫酸ナトリウム水溶液100mLを加えた。有機層を回収し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧除去して未精製の化合物(b)を得た。これを200mLのヘキサン/酢酸エチル(4:1、容量比)に懸濁させ、溶け残った固体を濾過することで複製生物である4,7−ジブロモ−2,1,3−ベンゾチアジアゾールを除去した。濾液を再び濃縮し、200mLのヘキサンに懸濁させ、溶け残った固体を濾過することで化合物(b)を11.2g得た。さらに濾液を濃縮し、ヘキサン/酢酸エチル(97:3、容量比)を展開液としたカラムクロマトグラフィー法にて精製し、化合物(b)を8.0g得た。合計19.2g(89.3mmol)で、収率は49%であった。
【0098】
(化合物(c)の製造)
還流装置を装備したフラスコに、t−ブトキシカリウムを3.3g(29.0mmol)、Pd触媒としてPEPPSITM−IPr(Sigma−Aldrich社製 商品名)を0.3g(0.5mmol)、トルエンを150mL、化合物(b)を5.2g(24.1mmol)、ビス(2−エチルヘキシル)アミンを8.0mL(26.5mmol)加え、窒素雰囲気下、120℃で5時間還流した。反応終了後、濾過にて反応液中の固体を除去し、濾液を濃縮した後、ヘキサン/酢酸エチル(99:1、容量比)を展開液としたカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物(c)(5.3g、14mmol、収率58%)を得た。
【0099】
(化合物(d)の製造)
還流装置を装備したフラスコに、化合物(c)を3.6g(9.5mmol)、THFを100mL、水素化アルミニウムリチウムを0.9g(23.8mmol)加え、窒素雰囲気下、75℃で1時間還流した。その後、氷冷しながら水0.9mL、15%水酸化ナトリウム水溶液0.9mL、水2.7mLを順次加えて反応を停止させた。濾過にて反応液中の固体を除去し、濾液を濃縮して未精製の化合物(d)を得た。化合物(d)は未精製のまま次の反応に使用した。
【0100】
(化合物(g)の製造)
還流装置を装備したフラスコに、上記で得られた化合物(d)と90%ギ酸を50mL加え、100℃で2時間還流した。反応終了後、ギ酸を減圧除去し、これに酢酸エチル50mL、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液50mLを加えた。有機層を回収し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧除去した。これをヘキサン/酢酸エチル(2:1、容量比)を展開液としたカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物(g)(2.7g、7.4mmol)を得た。化合物(c)からの収率は78%であった。
【0101】
(NIR色素(A1−1)の製造)
還流装置および分水装置を装備したフラスコに、化合物(g)を2.7g(7.4mmol)、スクアリン酸を0.5g(4.5mmol)、トルエンを30mLおよび1−ブタノールを30mL加え、撹拌しながら125℃で8時間還流した。反応終了後、溶媒を減圧除去した後、ヘキサン/酢酸エチル(9:1、容量比)を展開液としたカラムクロマトグラフィーで精製し、NIR色素(A1−1)(2.4g、3.0mmol、収率81%)を得た。
【0102】
[NIR色素(A1−2)の製造]
化合物(d)から化合物(g)を製造する工程において、ギ酸に代えて、亜硫酸水素ナトリウム存在下、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)を溶媒として、ピバロイルアルデヒドと反応させて、化合物(g)(但し、Rはtert−ブチル基)を製造するようにした以外は、NIR色素(A1−1)の場合と同様にして、NIR色素(A1−2)を製造した。
具体的には、化合物(d)から化合物(g)を製造する工程を次のように行った。
還流装置を装備したフラスコに、未精製の化合物(d)を2.8g(7.5mmol)、DMAcを20mL、亜硫酸水素ナトリウムを0.8g(7.5mmol)加えた。100℃に昇温後、ピバロイルアルデヒドを0.8mL(7.5mmol)とDMAcを20mL混合した溶液を15分間かけて滴下し、さらに100℃で2時間還流した。反応終了後、溶媒を減圧除去し、これに酢酸エチル50mL、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液50mLを加えた。有機層を回収し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧除去した後、ヘキサン/酢酸エチル(9:1、容量比)を展開液としたカラムクロマトグラフィーで精製し、2.3g(5.6mmol)の化合物(g)を得た。化合物(c)からの収率は74%であった。
【0103】
[NIR色素(A1−3)の製造]
化合物(d)から化合物(g)を製造する工程において、ギ酸に代えてトリフルオロ酢酸を用いて化合物(g)(但し、Rは−CF)を製造するようにした以外は、NIR色素(A1−1)の場合と同様にして、NIR色素(A1−3)を製造した。
具体的には、化合物(d)から化合物(g)を製造する工程を次のように行った。
還流装置を装備したフラスコに、未精製の化合物(d)3.0g(8.0mmol)とトリフルオロ酢酸を40mL加え、75℃で18時間還流した。反応終了後、トリフルオロ酢酸を減圧除去し、これに酢酸エチル50mL、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液50mLを加えた。有機層を回収し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧除去した後、ヘキサン/酢酸エチル(95:5、容量比)を展開液としたカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物(g)(2.5g、5.9mmol)を得た。化合物(c)からの収率は73%であった。
【0104】
[NIR色素(A1−4)の製造]
化合物(d)から化合物(g)を製造する工程において、ギ酸に代えて酢酸を用いて化合物(g)(但し、Rは−CH)を製造するようにした以外は、NIR色素(A1−1)の場合と同様にして、NIR色素(A1−4)を製造した。
【0105】
[NIR色素(A1−5)の製造]
化合物(d)から化合物(g)を製造する工程において、ピバロイルアルデヒドに代えて1−ノナノンを用いて化合物(g)(但し、Rは−C17)を製造するようにした以外は、NIR色素(A1−2)の場合と同様にして、NIR色素(A1−5)を製造した。
【0106】
[NIR色素(A1−13)の製造]
化合物(b)から化合物(c)を製造する工程において、ビス(2−エチルヘキシル)アミンに代えてジイソアミルアミンを用いて化合物(c)(但し、RおよびRは基(2a))を製造するようにした以外は、NIR色素(A1−1)の場合と同様にして、NIR色素(A1−13)を製造した。
【0107】
[NIR色素(A1−14)の製造]
化合物(b)から化合物(c)を製造する工程において、ビス(2−エチルヘキシル)アミンに代えてジイソブチルアミンを用いて化合物(c)(但し、RおよびRは基(3a))を製造するようにした以外は、NIR色素(A1−1)の場合と同様にして、NIR色素(A1−14)を製造した。
【0108】
[NIR色素(A1−15)の製造]
化合物(b)から化合物(c)を製造する工程において、ビス(2−エチルヘキシル)アミンに代えてビス(2−エトキシエチル)アミンを用いて化合物(c)(但し、RおよびRは基(4a))を製造するようにした以外は、NIR色素(A1−1)の場合と同様にして、NIR色素(A1−15)を製造した。
【0109】
[NIR色素(A1−16)の製造]
化合物(b)から化合物(c)を製造する工程において、ビス(2−エチルヘキシル)アミンに代えてビス(2−(2−エチルヘキシロキシ)エチル)アミンを用いて化合物(c)(但し、RおよびRは基(5a))を製造するようにした以外は、NIR色素(A1−1)の場合と同様にして、NIR色素(A1−16)を製造した。
【0110】
[NIR色素(A1−17)の製造]
化合物(b)から化合物(c)を製造する工程において、ビス(2−エチルヘキシル)アミンに代えてN−(2−エチルヘキシル)エチルアミンを用いて化合物(c)(但し、Rは基(1a)、Rは−C)を製造するようにした以外は、NIR色素(A1−1)の場合と同様にして、NIR色素(A1−17)を製造した。
【0111】
ここで、色素(A1−17)の製造に用いたN−(2−エチルヘキシル)エチルアミンの製造例を下記スキーム(F2)用いて説明する。出発物質には東京化成工業(株)より入手した化合物(aa)、2−エチルヘキシルアミンを用いた。
【0112】
【化15】
スキーム(F2)中、Acはアセチル基を示す。
【0113】
(化合物(ab)の製造)
フラスコに、化合物(aa)8.59mL(52.5mmol)、トリエチルアミン7.67mL(55.0mmol)、ジクロロメタン150mLを加え、窒素雰囲気下、0℃でアセチルクロリドを3.54mL(50.0mmol)滴下し、そのまま0℃で1時間撹拌した。反応終了後、ジクロロメタンを減圧除去し、酢酸エチル150mL、1M塩酸150mLを加えて有機層を回収した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧除去して未精製の化合物(ab)を得、これをそのまま次の反応に使用した。
【0114】
(化合物(ac)の製造)
還流装置を装備したフラスコに、上記で得られた化合物(ab)、THF200mL、水素化アルミニウムリチウム2.28g(60.0mmol)を加え、窒素雰囲気下、75℃で1時間還流した。その後、氷冷しながら飽和硫酸ナトリウム水溶液を3.5mL加えて反応を停止させた。ろ過にて反応液中の固体を除去し、ろ液を濃縮して未精製の化合物(ac)を得た。これを減圧蒸留にて精製し、化合物(ac)(7.24g、46.1mmol、収率は92%)を得た。
【0115】
[NIR色素(A1−18)の製造]
化合物(b)から化合物(c)を製造する工程において、ビス(2−エチルヘキシル)アミンに代えてN−ブチルヘキシルアミンを用いて化合物(c)(但し、Rは−(CHCH、Rは−(CHCH)を製造するようにした以外は、NIR色素(A1−1)の場合と同様にして、NIR色素(A1−18)を製造した。
【0116】
ここで、色素(A1−18)の製造に用いたN−(2−エチルヘキシル)エチルアミンの製造例を下記スキーム(F3)用いて説明する。出発物質には東京化成工業(株)より入手した化合物(ad)、ヘキシルアミンを用いた。
【0117】
【化16】
【0118】
(化合物(ae)の製造)
モレキュラーシーブを詰めた滴下漏斗および還流装置を装備したフラスコに、化合物(ad)6.57mL、ブタノール4.51mL、トルエン50mLを加え、135℃で3時間還流した。反応終了後、トルエンを減圧除去し、未精製の化合物(ae)を得、これをそのまま次の反応に使用した。
【0119】
(化合物(af)の製造)
フラスコに、上記で得られた化合物(ae)、メタノール50mLを加え、0℃で水素化ホウ素ナトリウム1.89g(50.0mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。その後、1M塩酸30mLを加えて反応を停止させた。メタノールを減圧除去し、酢酸エチル50mLを加え有機層を回収した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧除去した後、酢酸エチル/メタノール(20:1、容量比)を展開液としたカラムクロマトグラフィーで精製した。その結果、化合物(af)(1.76g、11.2mmol、収率22%)を得た。
【0120】
[NIR色素(A1−19)の製造]
以下、スキーム(F4)を用いてNIR色素(A1−19)の製造例を具体的に記載する。なお、スキーム(F4)中、RおよびRは2−エチルヘキシル基、RおよびRは水素原子である。また、Acはアセチル基を示す。
【0121】
色素(A1−19)の製造においては、NIR色素(A1−1)の場合と同様にして2,1,3−ベンゾチアジアゾール(スキーム(F1)中の化合物(a))から製造した化合物(c)を出発物質として用いた。
【0122】
【化17】
【0123】
(化合物(d)の製造)
還流装置を装備したフラスコに、化合物(c)を6.1g(16.2mmol)、THFを130mL、水素化アルミニウムリチウムを1.5g(40.6mmol)加え、窒素雰囲気下、75℃で1時間還流した。その後、氷冷しながら水1.5mL、15%水酸化ナトリウム水溶液1.5mL、水4.6mLを順次加えて反応を停止させた。濾過にて反応液中の固体を除去し、濾液を濃縮して未精製の化合物(d)を得た。化合物(d)は未精製のまま次の反応に使用した。
【0124】
(化合物(f1−1)の製造)
フラスコに、上記で得られた化合物(d)と酢酸を40mL、蒸留水を40mL加え、氷冷下、0.5Mの亜硝酸ナトリウム水溶液を15分かけて滴下した。氷冷下で1時間反応させた後、ヘキサン100mLを加え、室温に戻し、有機層を回収した。水層にヘキサン70mLを加えて抽出し、回収した有機層と合わせ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧除去した。これをヘキサン/酢酸エチル(4:1、容量比)を展開液としたカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物(f1−1)(4.0g、11.0mmol)を得た。化合物(c)からの収率は68%であった。
【0125】
(NIR色素(A1−19)の製造)
還流装置および分水装置を装備したフラスコに、化合物(f1−1)を4.0g(11.0mmol)、スクアリン酸を0.8g(6.6mmol)、トルエンを40mLおよび1−ブタノールを25mL加え、撹拌しながら125℃で12時間還流した。反応終了後、溶媒を減圧除去した後、トルエン/ジクロロメタン(3:2、容量比)を展開液としたカラムクロマトグラフィーで精製し、NIR色素(A1−19)(4.0g、10.0mmol、収率91%)を得た。
【0126】
[NIR色素(A2−1)の製造]
下記に示すように、化合物(b)から化合物(c)に代えて化合物(c2)(但し、RおよびRはいずれも水素原子)を製造するようにした以外は、NIR色素(A1−1)の場合と同様にして、NIR色素(A2−1)を製造した。
【化18】
【0127】
(化合物(c2)の製造)
還流装置を装備したフラスコに、t−ブトキシカリウムを2.7g(24.2mmol)、Pd触媒(PEPPSITM−IPr)を0.3g(0.4mmol)、トルエンを70mL、化合物(b)を4.3g(20.2mmol)、ピロリジンを1.8mL(22.2mmol)加え、窒素雰囲気下、120℃で3時間還流した。反応終了後、濾過にて反応液中の固体を除去し、濾液を濃縮した後、ジクロロメタンを展開液としたカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物(c2)(2.9g、14mmol、収率70%)を得た。
【0128】
[NIR色素(A2−2)の製造]
ギ酸に代えて、亜硫酸水素ナトリウム存在下、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)を溶媒として、ヘプタナールとを反応させるようにした以外は、NIR色素(A2−1)の場合と同様にして、NIR色素(A2−2)を製造した。
【0129】
[NIR色素(A1−6)の製造]
下記スキーム(F5)を用いてNIR色素(A1−6)の製造例を具体的に説明する。なお、以下の説明において、原料成分および中間生成物におけるR〜Rについては記載しないが、RおよびRは2−エチルヘキシル基、R〜Rはいずれも水素原子である。
NIR色素(A1−6)の製造においては、スキーム(F5)中の化合物(h)、5−ブロモイソキノリンを東京化成工業(株)より入手し出発物質として用いた。
【0130】
【化19】
【0131】
(化合物(i)の製造)
フラスコに5−ブロモイソキノリンを2.08g(10mmol)、トルエン10ml、ビス(2−エチルヘキシル)アミンを2.65g(11mmol)、Pd触媒(PEPPSITM−IPr)を0.13g(0.2mmol)、t−ブトキシカリウムを1.34g(12mmol)加え、120℃で5時間反応させた。反応終了後、濾過にて反応液中の固体を除去し、濾液を濃縮した後、カラムクロマトグラフィー法にて精製した。その結果、化合物(i)(1.36g、3.7mmol、収率37%)を得た。
【0132】
(NIR色素(A1−6)の製造)
フラスコに化合物(i)1.36g(3.7mmol)、スクアリン酸0.43g(2.2mmol)、トルエン12mL、ブタノール4mLを加え、120℃で8時間加熱撹拌した。反応終了後、エバポレーターを用いて溶媒を除去した後、酢酸エチルで洗浄し、カラムクロマトグラフィー法にて精製した。その結果、NIR色素(A1−6)(0.16g、0.2mmol、収率11%)を得た。
【0133】
[NIR色素(A1−7)の製造]
出発物質として5−ブロモイソキノリンに代えて7−ブロモベンゾチオフェンを用いた以外は、NIR色素(A1−6)の場合と同様にして、NIR色素(A1−7)を製造した。なお、7−ブロモベンゾチオフェンは、国際公開第2013/159862号明細書に記載された方法により製造した。
【0134】
[NIR色素(A2−3)の製造]
NIR色素(A1−6)の製造において、ビス(2−エチルヘキシル)アミンに代えてピロリジンを用いた以外は同様にして、NIR色素(A2−3)を製造した。
【0135】
[NIR色素(A2−4)の製造]
NIR色素(A1−7)の製造において、ビス(2−エチルヘキシル)アミンに代えてピロリジンを用いた以外は同様にして、NIR色素(A2−4)を製造した。
【0136】
[NIR色素(A2−5)の製造]
NIR色素(A2−3)の製造において、出発物質の5−ブロモイソキノリンを4−ブロモベンゾイソチアゾールに代えた以外は同様にして、NIR色素(A2−5)を製造した。なお、4−ブロモベンゾイソチアゾールは、国際公開第2011/100502号明細書に記載された方法により製造した。
【0137】
[NIR色素(A2−6)の製造]
NIR色素(A2−3)の製造において、出発物質の5−ブロモイソキノリンを下記に示す化合物(m)に代えた以外は同様にして、NIR色素(A2−6)を製造した。
以下、下記スキーム(F6)を用いて、化合物(m)の製造例を説明する。
化合物(m)の製造においては、化合物(j)を東京化成工業(株)より入手し出発物質として用いた。
【0138】
【化20】
(化合物(k)の製造)
フラスコに化合物(j)1.07g(4.0mmol)、ジクロロメタン15mL、塩化アセチル0.47g(6.0mmol)を加え、室温で5時間撹拌した。反応終了後、エバポレーターを用いて溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィー法にて精製した。その結果、化合物(k)(1.2g、3.9mmol、収率98%)を得た。
【0139】
(化合物(l)の製造)
フラスコに化合物(k)1.2g、(3.9mmol)、キシレン15mL、ローソン試薬(LR)1.6g(3.9mmol)を加え、110℃で12時間撹拌した。反応終了後、濾過した濾液をエバポレーターを用いて溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィー法にて精製した。その結果、化合物(l)(0.84g、2.6mmol、収率66%)を得た。
【0140】
(化合物(m)の製造)
フラスコに化合物(l)0.4g、(1.3mmol)、ジメトキシエタン(DME)15mL、炭酸セシウム0.7g(1.95mmol)、ヨウ化銅0.014g(0.06mmol)、1,10−フェナントロリン(Phen)0.028g、(0.12mmol)を加え、70℃で24時間撹拌した。反応終了後、濾過にて反応液中の固体を除去し、濾液を濃縮した後、カラムクロマトグラフィー法にて精製した。その結果、化合物(m)(0.1g、0.4mmol、収率31%)を得た。
【0141】
[NIR色素(A1−8)の製造]
下記スキーム(F7)を用いてNIR色素(A1−8)の製造例を具体的に説明する。なお、以下の説明において、原料成分および(中間)生成物におけるR、Rについては記載しないが、いずれも基(2a)である。
NIR色素(A1−8)の製造においては、スキーム(F7)中の化合物(t)、2,6−ジフルオロベンズアルデヒドを東京化成工業(株)より入手し出発物質として用いた。
【0142】
【化21】
【0143】
(化合物(u)の製造)
フラスコに、ジイソアミルアミン8.3g(52.8mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)10mL、炭酸カリウム7.3g(52.8mmol)を加えて室温で撹拌し、さらに、2,6−ジフルオロベンズアルデヒド5g(35.1mmol)を加えた。オイルバスを使い反応温度を80℃にし3日間撹拌した。反応温度を室温に戻し、水30mLを加えて撹拌し、酢酸エチルとヘキサンをそれぞれ50mLずつ加えた。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧除去した後、ヘキサン/酢酸エチル(100:5、容量比)を展開液としたカラムクロマトグラフィーで精製した。その結果、化合物(u)(9.8g、35.2mmol、収率100%)を得た。
【0144】
(化合物(v)の製造)
フラスコに、化合物(u)9.8g(35.2mmol)、エチレングリコール25mL、ヒドラジン一水和物3.9g(77.8mmol)を加え、165℃で18時間撹拌した。反応温度を室温に戻し、水30mL、塩化メチレン30mLを加え撹拌した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧除去した後、ヘキサン/酢酸エチル(9:1、容量比)を展開液としたカラムクロマトグラフィーで精製した。その結果、化合物(v)(1.2g、4.5mmol、収率13%)を得た。
【0145】
(NIR色素(A1−8)の製造)
還流装置および分水装置を装備したフラスコに、化合物(v)1.2g(4.5mmol)、スクアリン酸0.25g(2.3mmol)、トルエン25mLおよび1−ブタノール25mLを加え、撹拌しながら110℃で12時間還流した。反応終了後、溶媒を減圧除去し、得られた固体を塩化メチレン、メタノールで洗浄した。その結果、NIR色素(A1−8)(1.0g、1.6mmol、収率72%)を得た。
【0146】
[NIR色素(A1−9)の製造]
化合物(t)から化合物(u)を製造する工程において、ジイソアミルアミンに代えてジ(2−エチルヘキシル)アミンを用いて化合物(u)(但し、R、Rは基(1a))を製造するとともに、NIR色素の精製方法をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに変更した以外は、NIR色素(A1−8)の場合と同様にして、NIR色素(A1−9)を製造した。
【0147】
具体的には、化合物(t)から化合物(u)を次のように製造した。
フラスコに、ジ(2−エチルヘキシル)アミン12.7g(52.8mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)10mL、炭酸カリウム7.3g(52.8mmol)を加えて室温で撹拌し、さらに、2,6−ジフルオロベンズアルデヒド5g(35.1mmol)を加えた。オイルバスを使い反応温度を80℃にし3日間撹拌した。反応温度を室温に戻し、水30mLを加えて撹拌し、酢酸エチルとヘキサンをそれぞれ50mLずつ加えた。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧除去した後、ヘキサン/酢酸エチル(9:1、容量比)を展開液としたカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物(u)(8.8g、24.2mmol、収率69%)を得た。
【0148】
[NIR色素(A1−10)の製造]
化合物(t)から化合物(u)を製造する工程において、ジイソアミルアミンに代えてジイソブチルアミンを用い化合物(u)(但し、R、Rは基(3a))を製造するとともに、NIR色素の精製方法をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに変更した以外は、NIR色素(A1−8)の場合と同様にして、NIR色素(A1−10)を製造した。
【0149】
具体的には、化合物(t)から化合物(u)を次のように製造した。
フラスコに、ジイソブチルアミン6.8g(52.8mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)10mL、炭酸カリウム7.3g(52.8mmol)を加えて室温で撹拌し、さらに、2,6−ジフルオロベンズアルデヒド5g(35.1mmol)を加えた。オイルバスを使い反応温度を80℃にし3日間撹拌した。反応温度を室温に戻し、水を30mL加えて撹拌し、酢酸エチルとヘキサンをそれぞれ50mLずつ加えた。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、後溶媒を減圧除去した後、ヘキサン/酢酸エチル(9:1、容量比)を展開液としたカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物(u)(8.8g、33.9mmol、収率96%)を得た。
【0150】
[NIR色素(A1−11)の製造]
化合物(t)から化合物(u)を製造する工程において、ジイソアミルアミンに代えてビス(2−エトキシエチル)アミンを用いて化合物(u)(但し、R、Rは基(4a))を製造するとともに、NIR色素の精製方法をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに変更した以外は、NIR色素(A1−8)の場合と同様にして、NIR色素(A1−11)を製造した。
【0151】
具体的には、化合物(t)から化合物(u)を次のように製造した。
フラスコに、ビス(2−エトキシエチル)アミン8.5g(52.8mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)10mL、炭酸カリウム7.3g(52.8mmol)を加えて室温で撹拌し、さらに、2,6−ジフルオロベンズアルデヒド5g(35.1mmol)を加えた。オイルバスを使い反応温度を80℃にし15時間撹拌した。反応温度を室温に戻し、水30mLを加えて撹拌し、酢酸エチルとヘキサンをそれぞれ50mLずつ加えた。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧除去した後、ヘキサン/酢酸エチル(8:2、容量比)を展開液としたカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物(u)(8.4g、29.9mmol、収率84%)を得た。
【0152】
[NIR色素(A1−12)の製造]
化合物(t)から化合物(u)を製造する工程において、ジイソアミルアミンに代えてビス(2−(2−エチルヘキシロキシ)エチル)アミンを用いて化合物(u)(但し、R、Rは基(5a))を製造するとともに、NIR色素の精製方法をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに変更した以外は、NIR色素(A1−8)の場合と同様にして、NIR色素(A1−12)を製造した。
【0153】
具体的には、化合物(t)から化合物(u)を次のように製造した。
フラスコに、ビス(2−(2−エチルヘキシロキシ)エチル)アミン6.6g(19.9mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)55mL、炭酸カリウム3.9g(28.4mmol)を加えて室温で撹拌し、さらに、2,6−ジフルオロベンズアルデヒド2.7g(18.9mmol)を加えた。オイルバスを使い反応温度を80℃にし2日間撹拌した。反応温度を室温に戻し、水30mLを加えて撹拌し、酢酸エチルとヘキサンをそれぞれ50mLずつ加えた。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧除去した後、ヘキサン/酢酸エチル(9:1、容量比)を展開液としたカラムクロマトグラフィー法にて精製し、化合物(u)(7.7g、17.1mmol、収率90%)を得た。
【0154】
ここで、色素(A1−12)の製造に用いたビス(2−(2−エチルヘキシロキシ)エチル)アミンの製造例を下記スキーム(F8)を用いて説明する。出発物質には関東化学(株)より入手した化合物(w)、2−(2−エチルヘキシルオキシ)エチルアルコールを用いた。なお、色素(A1−16)の製造においても、同様に製造したビス(2−(2−エチルヘキシロキシ)エチル)アミンを用いた。
【0155】
【化22】
スキーム(F8)中、Tsはパラトルエンスルホニル基、Bnはベンジル基を示す。
【0156】
(化合物(x)の製造)
フラスコに、化合物(w)10.0g(57.4mmol)、塩化メチレン150mLを加えて氷浴中で撹拌した。トリエチルアミン8.7g(86.1mmol)、パラトルエンスルホン酸クロリド11.5g(60.2mmol)を加えた後、室温に戻し、2時間撹拌し、水150mLを加えて撹拌した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧除去した後、ヘキサン/酢酸エチル(9:1、容量比)を展開液としたカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物(x)(17.1g、52.1mmol、収率91%)を得た。
【0157】
(化合物(y)の製造)
フラスコに、ベンジルアミン2.68g(25.0mmol)、アセトニトリル20mL、炭酸カリウム20.5g(14.9mmol)を加えて氷浴中で撹拌した。その後、アセトニトリル30mLに溶解した化合物(x)17.1g(52.1mmol)を加えた。氷浴をオイルバスに変更し、90℃で2日間還流撹拌した。その後炭酸カリウムをろ過し、ろ液を減圧留去し、ヘキサン/酢酸エチル(100:3、容量比)を展開液としたカラムクロマトグラフィーで精製した。その結果、化合物(y)(8.7g、20.7mmol、収率82%)を得た。
【0158】
(化合物(z)の製造)
フラスコに、化合物(y)8.7g(20.7mmol)、テトラヒドロフラン(THF)40mLを加え、氷浴中で撹拌した。10%パラジウムカーボン2.7gを加えた後、メタノール120mLを加え、ギ酸アンモニウム18.3g(290mmol)を加え室温で12時間撹拌した。減圧濾過によりパラジウムカーボンと不溶性のギ酸アンモニウムを取り除き、ろ液を減圧濃縮後、塩化メチレンと水で分液をした。得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した後、塩化メチレン/メタノール(100:3、容量比)を展開液としたカラムクロマトグラフィーで精製した。その結果、化合物(z)、ビス(2−(2−エチルヘキシロキシ)エチル)アミン、(6.6g、19.9mmol、収率96%)を得た。
【0159】
[NIR色素(A3−1)の製造]
以下、スキーム(F9)を用いてNIR色素(A3−1)の製造例を具体的に記載する。
色素(A3−1)の製造においては、スキーム(F9)中の化合物(n)を、国際公開第2014/088063号明細書に記載の方法により製造し出発物質として用いた。
【0160】
【化23】
【0161】
(化合物(o)の製造)
フラスコに、化合物(n)を10.0g(49.2mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を200mL加えた。0℃に冷却後、50mLのDMFに溶解させたN−ブロモコハク酸イミド(NBS)を8.8g(49.2mmol)滴下し、0℃で1時間撹拌した。水を100mL加え反応を停止させた後、DMFを減圧除去し、酢酸エチルを100mL加えた。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧除去して化合物(o)を得た。化合物(o)は未精製のまま次の反応に使用した。
【0162】
(化合物(p)の製造)
フラスコに化合物(o)を13.6g(48.3mmol)加え、0℃で濃硫酸48.7g(496.5mmol)をすばやく滴下し、30分攪拌した。その後、60%濃硝酸を6.1g(58.0mmol)と濃硫酸17.8g(181.1mmol)からなる混酸を、氷浴下で滴下し、室温に戻して2時間撹拌した。反応終了後、100mLの氷水中に適時氷塊を加えながら反応液を滴下し、その後、40%水酸化ナトリウム水溶液を滴下した。溶液が塩基性になったことをpH試験紙で確認した後、酢酸エチルを500mL加えた。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧除去した後、ヘキサン/酢酸エチル(9:1、容量比)を展開液としたカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物(p)(14.7g、45mmol)を得た。化合物(n)からの収率は92%であった。
【0163】
(化合物(q)の製造)
フラスコに化合物(p)を5.5g(16.7mmol)、THFを80mL加えた。窒素雰囲気下、−40℃にて1−プロペニルマグネシウムブロミド(0.5M、THF溶液)100mL(50mmol)を滴下し、1時間撹拌した。塩化アンモニウム水溶液を150mL加え反応を停止させた後、室温に戻し酢酸エチルを150mL加えた。有機層を飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧除去して化合物(q)を得た。化合物(q)は未精製のまま次の反応に使用した。
【0164】
(化合物(r)の製造)
フラスコに化合物(q)とTHFを40mL加えた。その後、0℃にてパラジウム炭素(Pd/C)を1.1g、メタノールを120mL、ギ酸アンモニウムを5.3g(83.4mmol)加え、室温に戻して1時間撹拌した。反応終了後、水を100mL加え、濾過して固体を除去し、濾液中のメタノールとTHFを減圧除去した。ここに酢酸エチル100mLを加え、有機層を回収し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧除去して粗化合物(r)を得た。これをヘキサン/酢酸エチル(9:1、容量比)を展開液としたカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物(r)(1.4g、5.4mmol)を得た。化合物(p)からの収率は32%であった。
【0165】
(NIR色素(A3−1)の製造)
還流装置および分水装置を装備したフラスコに、化合物(r)を1.4g(5.4mmol)、スクアリン酸を0.4g(3.2mmol)、トルエンを25mLおよび1−ブタノールを25mL加え、撹拌しながら125℃で12時間還流した。反応終了後、溶媒を減圧除去した後、トルエン/ジクロロメタン(3:2、容量比)を展開液としたカラムクロマトグラフィーで精製し、NIR色素(A3−1)(1.0g、1.7mmol、収率63%)を得た。
【0166】
[NIR色素(A4−1)の製造]
以下、スキーム(F10)を用いてNIR色素(A4−1)の製造例を具体的に記載する。スキーム(F10)中、Pyはピリジル基を示す。
NIR色素(A4−2)の製造においては、スキーム(F10)中の化合物(x1)、インドール−6−カルボキシアルデヒドを東京化成工業(株)より入手し出発物質として用いた。
【0167】
【化24】
【0168】
(化合物(x2)の製造)
窒素雰囲気下、フラスコに、化合物(x1)を1.0g(6.89mmol)、エタノールを20mL、ピリジンボランを3.84g(41.33mmol)加え、氷冷下、6M塩酸水溶液11mLを滴下し、0℃で3時間、室温で18時間攪拌した。その後、氷冷下、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液50mLを加え、酢酸エチル100mLで抽出を行った。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムにより乾燥し、エバポレーターを用いて溶媒を除去した後、ヘキサン/酢酸エチル(3:2、容量比)を展開液としたカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物(x2)(0.35g、2.24mmol)を得た。化合物(x1)からの収率は34%であった。
【0169】
(化合物(x3)の製造)
フラスコに、化合物(x2)を0.35g(2.24mmol)、テトラブチルアンモニウムヨージドを85mg(0.23mmol)、33重量%水酸化カリウム水溶液を10mL、テトラヒドロフランを10mL加え、2−ヨードプロパン1.99gを滴下し、80℃で15時間攪拌した。その後、100mLの水を加え、エバポレーターを用いてテトラヒドロフランを大部分除去した後、酢酸エチル100mLで抽出を行った。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムにより乾燥し、エバポレーターを用いて溶媒を除去した後、ヘキサン/酢酸エチル(1:1、容量比)を展開液としたカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物(x3)(0.39g、1.95mmol)を得た。化合物(x2)からの収率は87%であった。
【0170】
(化合物(A4−1)の製造)
分水装置を装備したフラスコに、化合物(x3)を0.45g(2.51mmol)、トルエンを10mL、1−ブタノールを10mL、スクアリン酸を0.14g(1.25mmol)加え、アゼオトロープ加熱還流条件下で3時間攪拌した。反応終了後、エバポレーターを用いて反応溶媒を除去した後、ヘキサン/酢酸エチル(1:2、容量比)を展開液としたカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物(A4−1)(0.12g、0.39mmol)を得た。化合物(x3)からの収率は20%であった。
【0171】
[NIR色素(A4−2)の製造]
以下、スキーム(F11)を用いてNIR色素(A4−2)の製造例を具体的に記載する。
NIR色素(A4−2)の製造においては、NIR色素(A4−1)の場合と同様にしてインドール−7−カルボキシアルデヒド(スキーム(F10)中の化合物(x1))から製造した化合物(x3)を出発物質として用いた。
【0172】
【化25】
【0173】
(化合物(x4)の製造)
窒素雰囲気下、フラスコに、DeoxoFluor(登録商標)(Sigma−Aldrich社製)を3.69g(16.68mmol)およびジクロロメタン15mLを加え、ジクロロメタン15mL中に溶解させた化合物(x3)2.90g(15.16mmol)を滴下し、同温度で1時間攪拌した。その後、氷冷下、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液30mLを加え、ジクロロメタン100mLで抽出を行った。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムにより乾燥し、エバポレーターを用いて溶媒を除去した後、ヘキサン/酢酸エチル(2:1、容量比)を展開液としたカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物(x4)(0.21g、1.06mmol)を得た。化合物(x3)からの収率は7%であった。
【0174】
(化合物(A4−2)の製造)
分水装置を装備したフラスコに、化合物(x4)を0.20g(1.03mmol)、トルエンを10mL、1−ブタノールを10mL、スクアリン酸を0.06g(0.52mmol)加え、アゼオトロープ加熱還流条件下で3時間攪拌した。反応終了後、エバポレーターを用いて反応溶媒を除去した後、ヘキサン/酢酸エチル(1:2、容量比)を展開液としたカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物(A4−2)(0.05g、0.10mmol)を得た。化合物(x4)からの収率は10%であった。
【0175】
[NIR色素(A4−3)の製造]
以下、スキーム(F12)を用いてNIR色素(A4−3)の製造例を具体的に記載する。
NIR色素(A4−3)の製造においては、NIR色素(A4−1)の場合と同様にしてインドール−7−カルボキシアルデヒド(スキーム(F10)中の化合物(x1))から製造した化合物(x3)を出発物質として用いた。
【0176】
【化26】
【0177】
(化合物(x5)の製造)
窒素雰囲気中、氷冷下、フラスコに、化合物(x3)を2.10g(10.98mmol)、ジクロロメタンを30mL、トリエチルアミン(TEA)を1.22g(12.08mmol)、メタンスルホニルクロリド(MsCl)を2.30g(12.08mmol)を加え、同温度で5時間攪拌した後、室温で15時間撹拌した。その後、氷冷下、ジクロロメタン100mLで抽出を行った。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムにより乾燥し、エバポレーターを用いて溶媒を除去した後、ヘキサン/酢酸エチル(2:1、容量比)を展開液としたカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物(x5)(1.04g、4.94mmol)を得た。化合物(x3)からの収率は45%であった。
【0178】
(化合物(x6)の製造)
フラスコに、化合物(x5)を0.56g(2.67mmol)、ジメチルホルムアミド(DMF)を8mL、メタンスルホン酸ナトリウムを0.82g(8.01mmol)を加え、60℃で2時間攪拌した。その後、水30mLを加え、酢酸エチル100mLで抽出を行った。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムにより乾燥し、エバポレーターを用いて溶媒を除去した後、ヘキサン/酢酸エチル(1:1、容量比)を展開液としたカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物(x6)(0.48g、1.90mmol)を得た。化合物(x5)からの収率は71%であった。
【0179】
(化合物(A4−3)の製造)
分水装置を装備したフラスコに、化合物(x6)を0.48g(1.90mmol)、トルエンを10mL、1−ブタノールを10mL、スクアリン酸を0.11g(0.95mmol)加え、アゼオトロープ加熱還流条件下で3時間攪拌した。反応終了後、エバポレーターを用いて反応溶媒を除去した後、残渣をジクロロメタンおよびヘキサンで洗浄し、化合物(A4−3)(0.09g、0.32mmol)を得た。化合物(x6)からの収率は17%であった。
【0180】
なお、比較用として使用するNIR色素(C1)、(C3)は、それぞれ国際公開第2014/088063号明細書、特開2014−059550号に記載された方法により製造し、また、NIR色素(C2)はS2098(商品名、FEWChemicals社製)を使用した。
【0181】
<NIR色素の評価>
(1)ジクロロメタン中における色素の吸収特性
上記で得られたNIR色素をジクロロメタン中に溶解し、紫外可視分光光度計((株)島津製作所製、UV−3100)を用いて分光透過率曲線を測定し、波長430〜550nmにおける最大吸光係数ε、波長680〜770nmにおける最大吸光係数ε(=1で規格化)、およびそれらの比(ε/ε)を算出した。なお、吸光係数εは、波長670nm以上における最大吸光係数といずれも一致した。表3にその結果を示す。また、表3には、各色素の最大吸収波長をλmax、最大吸収波長λmaxにおける透過率を1%としたときの、波長430〜460nmの光の平均透過率(TAvg.(430〜460))、最大吸収波長λmaxより短波長側で透過率が80%となる波長λ80と透過率が10%となる波長λ10との間の分光透過率曲線の傾き(ΔT/Δλ)の最大値(ΔT/Δλ(max))、波長410〜460nmの光の透過率(T(410−460))の最小値(Tmin(410−460))、波長460nm以下の光に対して透過率が97%となる最長波長λ97、最大吸収波長λmaxより短波長側で透過率が80%となる波長λ80と、最大吸収波長λmaxとの差(λmax−λ80)をそれぞれ示す。なお、傾き(ΔT/Δλ)は、Δλ=1nmの間隔に基づき得られた値であり、傾き(ΔT/Δλ)の最大値は、得られた複数の傾きの最大値を示す。さらに、色素(A1−1)〜(A1−5)、(A1−7)〜(A1−19)、(A4−1)〜(A4−3)について、最大吸収波長λmaxにおける透過率を1%としたときの分光透過率曲線を図2A図2Dに示す。
【0182】
【表3】
【0183】
表3に示すとおり、色素(A1−1)〜(A1−5)、(A1−7)〜(A1−19)、(A2−1)〜(A2−4)、(A3−1)、(A4−1)〜(A4−3)はいずれも、要件(i−1)〜(i−3)を満たしている。一方、色素(C1)〜(C3)は要件(i−1)〜(i−3)のいずれかを満たさない。また、色素(A1−1)〜(A1−5)、(A1−8)〜(A1−19)、(A2−1)、(A2−2)は、さらに、要件(i−4)〜(i−7)も満たす。
【0184】
<NIRフィルタの製造>
(例1)
厚さ0.3mmのガラス(無アルカリガラス;旭硝子(株)製、商品名:AN100)基板に蒸着法により、TiO膜とSiO膜を交互に積層して、誘電体多層膜52層からなる反射層を形成した。反射層は、誘電体多層膜の積層数、TiO膜、SiO膜の膜厚をパラメータとしてシミュレーションし、入射角0°および30°の各分光透過率曲線において、要件(ii−1)および(ii−2)を満たすように求めた。図3に、作製した反射層の分光透過率曲線を示す。
【0185】
また、ポリイミド樹脂溶液(三菱ガス化学(株)製 ネオプリム(登録商標)C3450)に、シクロヘキサノン、N−メチルピロドリン、色素(A1−1)を加え、吸収層を形成するための塗工液を調製した。なお、ポリイミド樹脂100質量部に対して色素(A1−1)の割合は10.9質量部とした。
【0186】
この塗工液を、反射層を形成した上記ガラス基板の反射層形成面とは反対側の面に、スピンコート法により塗布し、その後、その溶媒を加熱乾燥し、厚さ約1.0μmの吸収層を形成した。この後、吸収層の表面に、反射層と同様、蒸着法により、TiO膜とSiO膜を交互に積層して反射防止層を形成し、NIRフィルタを得た。
【0187】
(例2〜22)
吸収層を形成するための塗工液に添加するNIR色素を表4および表5に示すように変えた以外は例1と同様にして、NIRフィルタを得た。
【0188】
<NIRフィルタの評価>
作製したNIRフィルタ(例1〜例22)について、紫外可視分光光度計((株)日立ハイテクノロジーズ社製、U−4100形)を用いて分光透過率曲線(入射角0°および30°)を測定した。図4A図4U(それぞれ、例1〜例21)に、得られた分光透過率曲線(入射角0°および30°)を示す。
【0189】
また、それらの測定結果から、各例のNIRフィルタについて、入射角0°に対する、波長430〜550nmの光の平均透過率、波長430〜550nmの光の最小透過率、波長430〜480nmの光の平均透過率、波長350〜395nmの光の平均透過率、波長710〜1100nmの光の平均透過率、および波長600〜700nmの光の透過率平均シフト量を算出した。これらの結果を表4および表5に示す。
【0190】
【表4】
【0191】
【表5】
【0192】
表4および表5から明らかなように、作製した実施例のNIRフィルタ(例1〜例21)は、いずれも要件(iii−1)〜(iii−6)を満足し、とくに波長430〜550nmの光の透過率の高い光学フィルタ特性を有することがわかった。なお、比較例のNIRフィルタ(例22)は、要件(iii−1)〜(iii−6)を満足しているものの、色素のジクロロメタン中での測定結果では、要件(i―1)〜(i−3)を全て満足しない。
【産業上の利用可能性】
【0193】
本発明の近赤外線吸収色素は、良好な近赤外線遮蔽特性を有し、かつ可視光、とくに、波長430〜550nmの光の透過性に優れるので、高い精度の色再現性が要求される光学フィルタおよび撮像装置に有用である。
【符号の説明】
【0194】
11…吸収層(吸収基板)、11a,11b…吸収層、12,12a,12b…選択波長遮蔽層(反射層)、13…透明基材、14…反射防止層。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図4I
図4J
図4K
図4L
図4M
図4N
図4O
図4P
図4Q
図4R
図4S
図4T
図4U
【国際調査報告】